(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-05
(54)【発明の名称】電極アレイを有する半導体-超伝導体ハイブリッドデバイス
(51)【国際特許分類】
H10N 60/00 20230101AFI20240628BHJP
【FI】
H10N60/00 Z ZAA
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023575385
(86)(22)【出願日】2021-07-12
(85)【翻訳文提出日】2023-12-06
(86)【国際出願番号】 EP2021069284
(87)【国際公開番号】W WO2023284936
(87)【国際公開日】2023-01-19
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】314015767
【氏名又は名称】マイクロソフト テクノロジー ライセンシング,エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100135079
【氏名又は名称】宮崎 修
(72)【発明者】
【氏名】マーカス,チャールズ,マサメド
(72)【発明者】
【氏名】ポシュル、アンドレアス、シモン
(72)【発明者】
【氏名】ダニレンコ,アリサ
【テーマコード(参考)】
4M113
【Fターム(参考)】
4M113AC45
4M113AC50
4M113CA12
4M113CA14
(57)【要約】
半導体-超伝導体ハイブリッドデバイス(100)は、使用の際にナノワイヤの形態のチャネルを有する半導体部材(110)と、近接効果によって半導体部材に超伝導性を誘起することができる超伝導部材(120)と、フィンガーゲートのアレイ(140)と、を有する。フィンガーゲートは、個々に作動可能であり、チャネルのそれぞれのセグメントにそれぞれの静電場が印加される。フィンガーゲートのアレイは、ナノワイヤの対応するセグメント内の電位に対する局所的な制御を可能にする。また、半導体-超伝導体ハイブリッドデバイスを製造する方法、および作動させる方法が提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体-超伝導体ハイブリッドデバイスであって、
使用の際、ナノワイヤの形態のチャネルを有する半導体部材と、
近接効果により、前記半導体部材に超伝導性を誘起できる超伝導体部材と、
フィンガーゲートのアレイであって、前記フィンガーゲートは、前記チャネルのそれぞれのセグメントにそれぞれの静電場を印加するように、個々に作動可能である、フィンガーゲートのアレイと、
を有する、半導体-超伝導体ハイブリッドデバイス。
【請求項2】
さらに、
前記フィンガーゲートのアレイの第1のサブアレイの下側に配置された第1のリードと、
前記第1のリードと前記フィンガーゲートのアレイの間に配置された誘電体であって、前記第1のリードは、端部を有し、該端部は、前記チャネルと前記第1のリードの間で電子トンネルが可能となるように選択された距離だけ、前記チャネルから離間される、誘電体と、
を有し、
必要な場合、前記第1のリードは、増幅器回路に作動可能に連結される、請求項1に記載の半導体-超伝導体ハイブリッドデバイス。
【請求項3】
さらに、第2のリードを有し、
前記第2のリードは、前記第1のサブアレイとは別に、前記フィンガーゲートのアレイの第2のサブアレイの下側に配置され、
前記誘電体は、さらに、前記第2のリードと前記フィンガーゲートのアレイの間に配置され、
前記第2のリードは、端部を有し、該端部は、前記チャネルと前記第2のリードの間で電子トンネルが可能となるように選択された距離だけ、前記チャネルから離間され、
必要な場合、前記第2のリードは、増幅器回路に作動可能に連結される、請求項2に記載の半導体-超伝導体ハイブリッドデバイス。
【請求項4】
前記半導体部材は、ヘテロ構造であり、上側バリアと下側バリアの間に配置された量子井戸を有し、
必要な場合、
i)当該半導体-超伝導体ハイブリッドデバイスは、さらに、前記チャネルの第1の端部を静電的に定めるように作動可能な境界空乏ゲートを有し、前記フィンガーゲートのアレイは、前記チャネルの前記第1の端部とは反対側の第2の端部を静電的に定めるように作動可能であり、または
ii)当該半導体-超伝導体ハイブリッドデバイスは、さらに、前記フィンガーゲートのアレイとは反対の側に配置されたフィンガーゲートの別のアレイを有し、前記フィンガーゲートのアレイは、前記チャネルの静電的に対向する端部を定めるように作動可能である、請求項1乃至3のいずれか一つに記載の半導体-超伝導体ハイブリッドデバイス。
【請求項5】
前記フィンガーゲートのアレイは、フィンガーゲートの下層およびフィンガーゲートの上層を有し、
当該デバイスは、さらに、前記フィンガーゲートの下層を被覆する誘電体層を有し、
前記フィンガーゲートの上層は、前記誘電体層の上部に配置され、前記フィンガーゲートの下層から横方向にオフセットされ、
必要な場合、
前記下層の前記フィンガーゲートは、絶縁性の自然酸化物を有する金属を含み、前記誘電体層は、前記金属の前記自然酸化物を有する、請求項1乃至4のいずれか一つに記載の半導体-超伝導体ハイブリッドデバイス。
【請求項6】
前記誘電体層は、前記下層の前記フィンガーゲート同士の間の空間に対応する凹部を画定し、
前記上層の前記フィンガーゲートは、少なくとも一部が前記凹部に配置される、請求項5に記載の半導体-超伝導体ハイブリッドデバイス。
【請求項7】
i)前記フィンガーゲートの各々は、150nm以下の幅、必要な場合、25nm以下の幅を有し、および/または
ii)前記フィンガーゲートのアレイは、少なくとも10個のフィンガーゲート、必要な場合、少なくとも40個のフィンガーゲートを有する、請求項1乃至6のいずれか一つに記載の半導体-超伝導体ハイブリッドデバイス。
【請求項8】
前記超伝導体部材は、超伝導体の細長いストリップを有し、
前記細長いストリップは、前記チャネルの上部に配置され、前記細長いストリップは、125nm以下の幅を有し、
必要な場合、前記超伝導体部材は、2つの端部を有し、前記2つの端部の各々は、電気的に接地される、請求項1乃至7のいずれか一つに記載の半導体-超伝導体ハイブリッドデバイス。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれか一つに記載の半導体-超伝導体ハイブリッドデバイスを作動させる方法であって、
当該方法は、
前記半導体-超伝導体ハイブリッドデバイスを、前記超伝導体部材が超伝導性を示す温度まで冷却するステップと、
少なくとも、前記半導体-超伝導体ハイブリッドデバイスの前記チャネルに磁場を印加するステップと、
前記フィンガーゲートに電圧を印加するステップと、
を有する、方法。
【請求項10】
前記フィンガーゲートに電圧を印加するステップは、前記フィンガーゲートのそれぞれに、個々に選択された電圧を印加するステップを有し、
必要な場合、前記フィンガーゲートに電圧を印加するステップは、少なくとも1つのフィンガーゲートを作動させ、前記チャネルのそれぞれのセグメントにおける局所的な不規則性を補償するステップを有する、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
さらに、
第1の端部フィンガーゲートとして機能するフィンガーゲートを選択するステップを有し、
前記電圧を印加するステップは、前記第1の端部フィンガーゲートを作動させ、前記チャネルのそれぞれのセグメントから電荷キャリアを枯渇させるステップを有し、これにより、前記チャネルの活性領域の第1の端部が定められ、
必要な場合、
当該方法は、さらに、第2の端部フィンガーゲートとして機能するフィンガーゲートを選択するステップを有し、
前記電圧を印加するステップは、前記第2のフィンガーゲートを作動させ、前記チャネルのそれぞれのセグメントから電荷キャリアを枯渇させるステップを有し、これにより、前記チャネルの前記活性領域の第2の端部が定められる、請求項9または10に記載の方法。
【請求項12】
さらに、前記チャネルの前記活性領域の前記長さを変更するステップを有し、および/または
前記第1の端部フィンガーゲートおよび前記第2の端部フィンガーゲートは、両者の間に別のフィンガーゲートを有し、前記電圧を印加するステップは、前記別のフィンガーゲートを作動させ、前記チャネルの前記活性領域のそれぞれのセグメントにおける局所的な不規則性を補償するステップを有する、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記デバイスは、さらに、
前記フィンガーゲートのアレイの第1のサブアレイの下側に配置された第1のリードと、
前記リードと前記フィンガーゲートのアレイの間に配置された誘電体と、
を有し、
前記第1のリードは、端部を有し、該端部は、前記チャネルと前記第1のリードの間で電子トンネルが可能になるように選択された距離だけ、前記チャネルから離間され、
当該方法は、さらに、
前記第1のサブアレイの1つのフィンガーゲートを選択するステップと、
前記選択されたフィンガーゲートに電圧を印加するステップであって、前記選択されたフィンガーゲートは、前記選択されたフィンガーゲートに対応する前記チャネルのセグメントと前記第1のリードとの間に、電子のトンネルが生じるように選択される、ステップ、および
前記第1のリードを通る電流を測定するステップ、
により、トンネル電流を測定するステップと、
を有し、
必要な場合、当該方法は、さらに、前記第1のサブアレイの異なるフィンガーゲートを選択するステップ、および前記トンネル電流を測定するステップ、を有する、請求項9乃至12のいずれか一つに記載の方法。
【請求項14】
前記デバイスは、さらに、第2のリードを有し、
前記第2のリードは、前記第1のサブアレイとは別に、前記フィンガーゲートのアレイの第2のサブアレイの下側に配置され、
前記誘電体は、さらに、前記第2のリードと前記フィンガーゲートのアレイの間に配置され、
前記第2のリードは、端部を有し、該端部は、前記チャネルと前記第2のリードの間で電子トンネルが可能となるように選択された距離だけ、前記チャネルから離間され、
当該方法は、さらに、
前記第2のサブアレイの1つのフィンガーゲートを選択するステップと、
前記選択されたフィンガーゲートに電圧を印加するステップであって、前記選択されたフィンガーゲートは、前記選択されたフィンガーゲートに対応する前記チャネルのセグメントと前記第1のリードとの間で電子のトンネルが生じるように選択される、ステップ、
前記第1のリードおよび前記第2のリードに、それぞれの電圧バイアスを印加するステップ、ならびに
前記第2のリードを通る電流を測定するステップ、
により、トンネル電流を測定するステップと、
を有し、
必要な場合、当該方法は、さらに、前記第2のサブアレイの異なるフィンガーゲートを選択するステップ、および前記トンネル電流を測定するステップを有する、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
請求項1乃至8のいずれか一つに記載の半導体-超伝導体ハイブリッドデバイスを製造する方法であって、
当該方法は、
前記半導体部材を製造するステップと、
前記超伝導体部材を製造するステップと、
前記フィンガーゲートのアレイの製造するステップと、
を有し、
必要な場合、前記フィンガーゲートのアレイを製造するステップは、
前記フィンガーゲートの下層を形成するステップであって、前記フィンガーゲートの下層は、間に空間を有する複数のフィンガーゲートを有する、ステップと、
前記フィンガーゲートの下層の上部に誘電体を形成するステップと、
前記誘電体上にフィンガーゲートの上層を形成するステップであって、前記上層のフィンガーゲートは、前記下層のフィンガーゲート同士の間の空間にわたって配置される、ステップと、
を有し、
必要な場合、前記フィンガーゲートの下層は、絶縁性の自然酸化物を有する金属で形成され、前記誘電体は、前記金属の前記自然酸化物を有する、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、電極アレイを有する半導体-超伝導体ハイブリッドデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
超伝導体に近接された半導体ナノワイヤは、適切な条件下において、物質のトポロジカル位相をホストすることが期待される。これにより、それらは、フォルトトレラント量子コンピュータのビルディングブロックとしての有望な候補となる。実際の実現は、従来の超伝導体に近接結合される二次元電子ガス(「2DEG」)に基づく半導体ナノワイヤによって提供され、これは、通常、エピタキシャル2Dウエハスタックの一部として成長されるが、製造中の材料成長の後に堆積されてもよい。この材料プラットフォームは、相応のスピン‐軌道結合、および大きな電子g因子を有し、これらは、位相状態の形成の鍵となる要素である、2Dプラットフォームにより、エッチングおよび成膜を含むトップダウンリソグラフィパターニングを介し、複雑なデバイス形状が可能となる。
【0003】
トポロジカル位相は、それ自体、ナノワイヤの端部でのマヨナラゼロモード(MZM)の対の形態で現れる。ワイヤのバルクに沿って、端部から遠ざかる、単一電子スペクトルのギャップが存在する。実験では、通常、ナノワイヤの端部におけるトンネル分光法が使用され、トンネルコンダクタンスにゼロバイアスピーク(ZBP)が検出される。
【0004】
そのようなナノワイヤのネットワークを形成し、ネットワークの一部にトポロジカル領域を誘導することによって、量子計算のために操作可能な量子ビットを形成することができる。量子ビットは、qubitとも称され、2つの可能な結果を有する測定を実施できる素子であるが、任意の時点(測定されない場合)において、実際には異なる結果に対応する2つの状態の量子重ね合わせであり得る。
【0005】
トポロジカル位相を誘起させるため、デバイスは、超伝導体(例えば、アルミニウム)が超伝導挙動を示す温度に冷却される。超伝導体は、隣接する半導体に近接効果を生じさせ、これにより、超伝導体との界面の近傍の半導体の領域が超伝導特性を示し、すなわち、隣接する半導体において超伝導対ギャップが誘起される。半導体のこの領域では、デバイスに磁場が印加された際に、MZMが形成される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
磁場の役割は、半導体のスピン縮退を引き上げることである。量子系における縮退とは、異なる量子状態が同じエネルギー準位を持つ場合を表す。縮退を引き上げることは、そのような状態に異なるエネルギー準位を採用させることを意味する。スピン縮退とは、異なるスピン状態が同じエネルギー準位を有する場合を意味する。スピン縮退は、磁場によって引き上げられ、異なるスピン分極電子間に、エネルギー準位の分割が生じる。これは、ゼーマン効果として知られている。ゼーマンエネルギー、すなわち、エネルギー準位の分割の大きさは、微小な超伝導ギャップを閉じ、システム内のトポロジーギャップを再開放するため、少なくとも超伝導ギャップと同じ大きさである必要がある。
【0007】
また、MZMを誘起するには、通常、ナノワイヤを静電電位でゲートすることにより、ナノワイヤ内の電荷キャリアの静電電位を調整することが必要となる。静電電位は、ゲート電極を用いて印加される。静電電位の印加により、半導体部材の伝導帯または価電子帯における電荷キャリアの数が操作される。
【0008】
半導体‐超伝導ハイブリッドシステムの電子特性を特徴化する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
ある態様では、本発明により、半導体-超伝導体ハイブリッドデバイスであって、使用の際、ナノワイヤの形態のチャネルを有する半導体部材と、近接効果により、前記半導体部材に超伝導性を誘起できる超伝導体部材と、フィンガーゲートのアレイであって、前記フィンガーゲートは、前記チャネルのそれぞれのセグメントにそれぞれの静電場を印加するように、個々に作動可能である、フィンガーゲートのアレイと、を有する、半導体-超伝導体ハイブリッドデバイスが提供される。
【0010】
別の態様では、本発明により、半導体-超伝導体ハイブリッドデバイスを作動させる方法であって、当該方法は、前記半導体-超伝導体ハイブリッドデバイスを、前記超伝導体部材が超伝導性を示す温度まで冷却するステップと、少なくとも、前記半導体-超伝導体ハイブリッドデバイスの前記チャネルに磁場を印加するステップと、前記フィンガーゲートに電圧を印加するステップと、を有する、方法が提供される。
【0011】
さらに別の態様では、本発明により、半導体-超伝導体ハイブリッドデバイスを製造する方法であって、当該方法は、前記半導体部材を製造するステップと、前記超伝導体部材を製造するステップと、前記フィンガーゲートのアレイの製造するステップと、を有する、方法が提供される。
【0012】
この要約は、以下の詳細な説明においてさらに説明される、簡略化された形式での概念の選定を導入するために提供される。この要約は、クレームされた主題事項の主要な特徴または本質的な特徴を特定することを意図するものではなく、クレームされた主題事項の範囲を限定するために使用されることを意図するものでもない。また、クレームされた主題事項は、本願に記載の任意のまたは全ての問題を解決する実施形態に限定されるものではない。
【0013】
本開示の実施形態の理解を助け、そのような実施形態がどのように実施され得るかを示すため、添付図面が参照される。添付図面は、単なる例示に過ぎない。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】半導体-超伝導ハイブリッドデバイスの平面図である。
【
図2】
図1のデバイスの一部の概略的な断面図である。
【
図3a】
図1に示した種類のデバイスを有するチップの光学顕微鏡写真であり、デバイスはAの位置に配置される。
【
図3b】
図3aの位置Aの走査型電子顕微鏡SEM画像である。
【
図4】半導体ヘテロ構造上に配置されたフィンガーゲートのアレイを示した概略的な断面図である。
【
図5】半導体-超伝導ハイブリッドデバイスを作動させる方法の概要を示すフローチャートである。
【
図6】チャネルの長さに沿った電位の不規則な例を、理想的な場合と比較して示したプロットである。
【
図7】半導体-超伝導ハイブリッドデバイスを製造する方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本願で使用される「有する」という動詞は、「含み、またはからなる」の省略形として使用される。言い換えれば、「有する」という動詞は、オープン用語であることを意図する。ただし、この用語を「からなる」というクローズ用語に置換することは、特に化学組成物に関して使用される場合、明示的に考慮される。
【0016】
「上部」、「下部」、「左」、「右」、「上側」、「下側」、「水平」および「垂直」のような指向性の用語は、本願において説明の便宜のために使用され、関連する図面に示された方向が参照される。疑義を回避するため、この用語は、参照の外部フレームにおける装置の配向を限定することを意図するものではない。
【0017】
本願で使用される「チャネル」という用語は、材料における物理的なトレンチではなく、電流が流れ得る半導体の領域の意味で使用される。チャネルは、特に、ナノワイヤの形態であってもよい。
【0018】
本願で使用される「超伝導体」という用語は、材料の臨界温度Tc未満の温度に冷却された際に超伝導になる材料を意味する。この用語の使用は、デバイスの温度を限定することを意図するものではない。
【0019】
「ナノワイヤ」は、ナノスケール幅を有する細長い部材であり、少なくとも100、少なくとも500、または少なくとも1000の長さ対幅比を有する。ナノワイヤの典型的な例は、10から500nm、必要な場合、50から100nm、または75から125nmの幅を有する。長さは、通常、マイクロメーターのオーダであり、例えば、少なくとも1pm、または少なくとも10pmである。ナノワイヤは、準一次元であるとみなされ得る。
【0020】
ナノワイヤの端部は、材料境界(例えば、半導体の選択的面積成長ナノワイヤの場合)によって、または静電的に(例えば、静電場を印加して、半導体から電荷キャリアを枯渇させ、端部を定めることによって)、またはこれらの2つの組み合わせによって(例えば、一方の端部は、材料境界であり、他方の端部は、静電的に画定されてもよい)、定められてもよい。
【0021】
本開示の文脈における「結合」という用語は、エネルギー準位のハイブリッド化を意味する。
【0022】
「磁場」という用語は、文脈が明確にそうでないことを示さない限り、「実際の」磁場および「有効な」磁場を包含する。「実際の」磁場は、「古典的」磁場と称され、電磁石または永久磁石によって生じるタイプの磁場である。「有効な」磁場は、伝導性または超伝導性の成分と強磁性絶縁体成分との間の境界からの、電子のスピン依存性の散乱から生じる。
【0023】
「半導体-超伝導体ハイブリッド構造」は、特定の作動条件下で互いに結合され得る、半導体部材および超伝導体部材を有する。特に、この用語は、マヨナラゼロモード、または量子計算用途に有効な他の励起のような、トポロジカル挙動を示すことができる構造を表す。一般に、作動条件は、超伝導体部材のTc未満の温度まで構造体を冷却し、構造体に磁場を印加し、構造体に静電ゲートを印加することを有する。一般に、半導体部材の少なくとも一部は、超伝導体部材と密接に接触しており、例えば、超伝導体部材は、半導体部材上にエピタキシャル成長されてもよい。ただし、半導体部材と超伝導体部材の間に1つ以上のさらなる部材を有する、特定のデバイス構造が提案されている。
【0024】
電位を測定するために用いられている一つの技術は、走査型トンネル顕微鏡、STMである。STMは、鋭い金属先端を用いて試料を走査し、先端と試料との間にトンネルする電子から、状態密度に関する情報を得るステップを有する。半導体-超伝導体ハイブリッドデバイスにSTMを適用することは、極めて難しい。トポロジカル位相(低温、高磁場など)を誘起するために必要な条件下でSTM測定を実施することは、困難である。また、ほとんどの場合、親の超伝導体の状態密度を測定することになる。
【0025】
半導体-超伝導体ハイブリッドナノワイヤの場合、トンネルコンダクタンス測定が実施され得る。トンネルコンダクタンス測定では、超伝導体材料で被覆されていないナノワイヤの端部を、走査型トンネル顕微鏡の先端のように動作させることができる。電子は、半導体ナノワイヤの端部から、近接システムにトンネルすることができ、ナノワイヤの端部における状態密度に関する情報が明らかとなる。しかしながら、この種の測定は、超伝導体で被覆されていないデバイスの端部にしか適用できない。超伝導体で被覆されたデバイスの部分に対して、直接測定を実施できることが有益である。
【0026】
さらに、ナノワイヤにおける不規則性(すなわち、電位の無秩序な変化)は、ナノワイヤの全長に沿って、望ましくないトポロジカル境界を生成する場合があり、トポロジカル位相に有害であり、トポロジカル量子計算のその値が減少する。さらに、ナノワイヤに沿った電位の不均一性により、特にナノワイヤの端部付近で、非トポロジカルなアンドレーエフ束縛状態(ABS)によるゼロバイアスピークも生じ得る。本願で提供されるデバイスは、不規則性を補償するように作動可能であってもよい。
【0027】
ここで、ナノワイヤに沿ったポテンシャルのin-situ微調整を可能にするデバイスアーキテクチャが開示される。例えば、デバイスにより、ポテンシャルの調整が可能となり、不規則性による望ましくない変動が除去され、または異なる形状のポテンシャルの調査が可能となる。本願に記載のデバイスアーキテクチャは、任意の配置で、ワイヤの側面に1つ以上のトンネルコンタクトを形成する手段を提供してもよい。100nmのオーダの長さスケールにわたる調整および測定が達成されてもよい。
【0028】
以下、
図1乃至
図3を参照して、半導体-超伝導体ハイブリッドデバイス100の一例を説明する。
図1は、デバイスの概略的な平面図である。
図2は、デバイスの一部の概略的な断面図である。
図3aは、デバイスを組み込んだ先端の一例の光学顕微鏡写真であり、
図3bは、装置の一例の走査型電子顕微鏡像である。
【0029】
デバイス100は、半導体部材110と、該半導体部材上に配置された超伝導体部材120と、を有する。
図2に示すように、デバイスは、基板105の上に配置される。
【0030】
基板105は、半導体部材110が成長されるベースを提供する。基板105は、通常、ウェハ、すなわち、単結晶材料のピースを有する。一例のウェハ材料は、インジウムリンである。ウェハ材料の他の例には、ガリウムヒ素、インジウムアンチモン、インジウムヒ素、およびシリコンが含まれる。
【0031】
基板は、さらに、ウェハ上またはウェハの上方に配置された追加構造を有してもよい。基板は、2つ以上の材料の層を有してもよい。特に、基板は、バッファ層を有してもよい。材料の直接隣接する層同士の間に、良好な格子整合が得られることが望ましい。換言すれば、隣接する層は、できる限り同等の格子定数を有することが好ましい。この目的のため、バッファ層は、本実施例では半導体部材110の下側バリア112である後続の層と、結晶質基板105との間の格子定数を有するように選択された材料を有してもよい。
【0032】
この例における半導体部材110は、半導体ヘテロ構造であり、基板105上にエピタキシャルに配置された下側バリア112と、下側バリア112上にエピタキシャルに配置された量子井戸114と、量子井戸114上にエピタキシャルに配置された上側バリア116と、を有する。下側バリア112、量子井戸114、および上側バリア116は、それぞれ、層の形態である。
【0033】
この構造は、量子井戸が、下側バリアおよび上側バリアの材料とは異なる材料を有することから、ヘテロ構造と称される。下側バリア層の材料および上側バリア層の材料の各々は、独立に選択されてもよい。
【0034】
下側バリア112および上側バリア116の構成は、これらの層により、電子が量子井戸114にトラップされる限り、特に限定されない。下側バリア112は、1つ以上の異なる材料の1つ以上の層を含んでもよい。上側バリア116は、1つ以上の異なる材料の1つ以上の層を含んでもよい。複数の層からバリアを構築することにより、欠陥フィルタリングが提供され、すなわち、使用材料の結晶構造における転位の影響が低減され得る。
【0035】
量子井戸層114は、半導体材料の層を有し、この層は、下側バリア122および上側バリア126の材料と比べて、比較的小さなバンドギャップを有してもよい。量子井戸を形成する上で有益な材料の例は、例えば、OdohおよびNjapba,“A Review of Semiconductor Quantum Well Devices,”Advances in Physics Theories and Applications,vol46,2015年、26-32ページ;およびS.Kasap,P.Capper(Eds.),「Springer Handbook of Electronic and Photonic Materials」、DOI 10.1007/978-3-319-48933-9_40に記載されている。
【0036】
作動の際には、電荷が量子井戸114に局在化される。特に、量子井戸は、二次元電子ガスをホストしてもよい。2次元電子ガスは、以下により詳細に説明されるように、ゲート電極の使用を介して、領域114aにさらに拘束されてもよい。特に、領域114aは、ナノワイヤの形態であってもよい。そのようなナノワイヤ中に、マヨナラゼロモードのような有益な励起が生成されてもよい。また領域114aは、チャネルとも称される。
【0037】
デバイスは、さらに、超伝導体部材120を有する。この例では、超伝導体部材は、各端部にコンタクトパッドを有する超伝導体材料の細長いストリップを有する。
図3aには、コンタクトパッド335の例を示す。コンタクトパッドの各々は、電気接地に接続されてもよい。細長いストリップは、半導体部材110のチャネルにわたって配置される。作動の際、細長いストリップの超伝導材料とチャンネル114aの半導体材料との間で、エネルギー準位ハイブリダイゼーションが生じてもよい。
【0038】
超伝導体の性質は、特に限定されるものではなく、好適に選択されてもよい。超伝導体は、通常、s波超伝導体である。従来知られている、任意の各種s波超伝導体が使用されてもよい。一例では、アルミニウム、インジウム、スズ、および鉛が含まれ、アルミニウムが使用されるある実施形態では、超伝導体部材は、3から20nmの範囲の厚さを有してもよい。
【0039】
図2に示すように、超伝導体部材は、チャネル114a上に直接配置される代わりに、半導体部材110の上側バリア116上に配置される。上側バリア層116は、超伝導体部材120とチャネルの間の相互作用の強さを調整する役割を果たしてもよい。超伝導体と半導体の間の相互作用の強さを調整するためにバリア層を使用するというコンセプトは、米国特許出願公開第2021/0126181A1号に詳細に記載されている。
【0040】
デバイス100は、さらに、境界空乏ゲート130を有する。作動の際、境界空乏ゲート130を用いて、境界空乏ゲート130の下側の領域において、量子井戸114から電荷キャリアを枯渇させることにより、チャネル114aの一方の端部を定める静電場が印加される。また、境界空乏ゲート130を用いて印加される静電場は、チャネル114aにおける電位の大まかな調整を提供してもよい。
【0041】
境界空乏ゲートは端部を有し、該端部は、平面において、超伝導体部材120の細長いストリップ部分の端部に平行である。
図2に示すように、境界空乏ゲート130は、超伝導体部材120と重なってもよく、誘電体160により超伝導体部材120から分離されてもよい。そのような実施形態では、超伝導体部材は、境界空乏ゲートによって印加される静電場から、少なくとも部分的にチャネル114aを遮蔽する。
【0042】
デバイス100は、さらに、フィンガーゲート140a、140b...140nのアレイを有する。ゲート電極140のアレイは、境界空乏ゲート130に対して、超伝導体部材120の反対側に沿って配置される。アレイの各フィンガーゲートは、平面において、チャネル114aに隣接する端部を有する。
【0043】
フィンガーゲートは、狭小のゲート電極である。通常、フィンガーゲートは、150nm以下の幅、必要な場合、50nm未満、または25nm未満の幅を有する。各フィンガーゲートは、可能な限り狭くすることが望ましい。最小幅は、フィンガーゲートを製造するために選択される方法の解像度によってのみ制限される。
【0044】
横方向に隣接するフィンガーゲートの間の間隔は、小さいことが好ましく、例えば10nm未満であってもよい。
図4を参照して示すように、横方向に隣接するフィンガーゲートは、必ずしも同じ平面上に存在しなくてもよい。フィンガーゲートは、誘電体材料によって相互に分離され、フィンガーゲート同士の間の電流の流れが防止される。
【0045】
フィンガーゲートの数は、例えば、デバイスのチャネルの長さに依存して、必要に応じて選択されてもよい。通常、デバイスは、少なくとも10個のフィンガーゲートを有する。配列内のフィンガーゲートの数には、特に上限はない。
【0046】
デバイスは、個々に選択された電圧がアレイ140の各フィンガーゲートに印加され得るように構成されてもよい。例えば、各フィンガーゲートは、それぞれのコンタクトパッドに接続されてもよい。
図3aには、フィンガーゲートのアレイ用の複数のコンタクトパッド345を示す。
【0047】
作動の際、アレイ140のフィンガーゲートに電圧が印加される。フィンガーゲートは、チャネル114aの端部を定めるように作動する。アレイの各フィンガーゲートは、チャネル114aの対応するセグメントに静電場を印加する。フィンガーゲート140の個々の一つに、個々に選択された電圧を印加することによって、チャネルの個々のセグメントの電位を制御することが可能となる。チャンネル内のポテンシャルにわたる微細な制御は、各種異なる目的に有益であり、これは、デバイスを作動させる方法を参照して、以降により詳細に説明される。
【0048】
図3bは、
図3aに示す先端の領域Aの一部の走査型電子顕微鏡、SEMの画像である。図からわかるように、デバイスは、接近間隔で配置されたフィンガーゲートのアレイを有する。画像は、超伝導体部材320の位置を示すために注釈付けされている。このデバイスのチャネルは、超伝導体部材の下側にある。
【0049】
デバイス100は、さらにリード150a、150bを有する。リード150a、150bは、フィンガーゲート140の各グループの下に配置された電極である。アレイ140のサブセットであるフィンガーゲートのグループは、サブアレイとも称され得る。リード150a、150bは、誘電体160によってフィンガーゲートから分離される。リード150a、150bの各々は、それぞれの増幅器回路に動作可能に連結されてもよい。増幅回路は、デバイスと同じ基板上に配置されてもよい。あるいは、リードの各々は、それぞれのコンタクトパッド(例えば、
図3aのコンタクトパッド355a、355b)に接続されてもよく、これは、その後、増幅器回路に接続され得る。好適な市販の増幅器の例は、バーゼル精密機器社から入手可能なSP938c電流-電圧変換器である。
【0050】
リード150a、150bの端部は、平面において、チャネル114aに隣接される。リード150a、150bの端部とチャネルの間の距離は、サブアレイのフィンガーゲートの1つに適切な静電場が印加された際に、リードとチャネル114aの間の電子のトンネルが可能となるように選択される。チャネルとリードの一方または両方との間にトンネル電流が流れることによって、チャネル上で各種測定を行うことができる。測定の一例の方法は、以下に考察される。
【0051】
リードは、超伝導体部材120と同じ材料から製造されてもよい。超伝導体部材の細長いストリップ部分に平行な方向に磁場を印加することにより、リードは、通常の導体として機能する一方、超伝導体部品の細長いストリップは、超伝導性となる。
【0052】
一例としてのデバイスには、各種修正がなされてもよい。
【0053】
境界空乏層ゲートを含めることは、任意である。その代わりに、チャネルの端部は、材料境界によって提供されてもよい。材料境界は、半導体ヘテロ構造をエッチングすることにより形成され、基板上に配置されたメサの形態の半導体部材が形成されてもよい。あるいは、半導体部材は、選択的-領域成長ナノワイヤの形態であってもよい。
【0054】
示した例には、単一の境界空乏層ゲートが含まれるが、2つ以上の境界空乏層ゲートが使用されてもよい。そのような実施形態では、各境界空乏ゲートは、ゲート電極のアレイのサブアレイの反対側に配置されてもよい。さらなる可能性に従って、境界空乏ゲートは、フィンガーゲート140のアレイを参照して記載された種類のフィンガーゲートの第2のアレイによって置換されてもよい。フィンガーゲートの第2のアレイは、リード150a、150bを参照して説明された種類の1つ以上のリードに関連付けられてもよい。
【0055】
一例のデバイスは、2つのリードを有する。任意の数のリードが存在してもよい。デバイスは、単一のリード、または3つ以上のリードを含んでもよい。
【0056】
トンネル測定を実施する機能が必要ではない実施形態では、リードを含めることは任意である。そのような実施形態では、電極のアレイを用いて、チャネルの長さが規定され、および/またはチャネルの不規則性が補償されてもよい。好適なゲート電圧は、試行および改良によって、例えば、個々のゲート電圧を漸増的に調整することによって、決定することができる。増分調整は、好適な最適化プロセスを実施する古典的なコンピュータによって制御され得る。
【0057】
以下、
図4を参照して、フィンガーゲートのアレイの例示的な構成について説明する。
図4には、
図1に示した種類のデバイスにおけるフィンガーゲートのアレイに対して垂直な方向における概略的な断面を示す。
【0058】
示された構造400は、基板405の上部の半導体部材410上に配置される。半導体部材410は、
図1および
図2を参照して説明した通りであり、下側バリア412と上側バリア416の間に配置された量子井戸414を有する。
【0059】
半導体部材410上には、誘電体460が配置される。誘電体として有益な材料の例には、酸化ケイ素(SiOx)、窒化ケイ素(SiNx)、酸化アルミニウム(AlOx)、および酸化ハフニウム(HfOx)が含まれる。2つ以上の誘電体層が存在してもよい。誘電体460は、短絡を防止する上で有益である。そうでなければ、フィンガーゲートまたは超伝導体部材は、半導体部材とオーミック接触するおそれがある。誘電体460は、フィンガーゲートの製造中、特に、フィンガーゲートを製造するステップがエッチング操作を含む実施形態において、半導体部材を保護する上で有益であり得る。誘電体460は、半導体部材と超伝導体部材/フィンガーゲートの間にショットキーバリアが存在する実施形態では、省略されてもよい。
【0060】
フィンガーゲート442a、442b、442c、440dの第1の層は、誘電体460上に配置される。第1の層442のフィンガーゲートは、相互に対して横方向に離間される。
【0061】
第2の誘電体462は、フィンガーゲート442の第1の層を被覆する。この実施例では、第2の誘電体460も、第1の層442のフィンガーゲート同士の間の空間を越えて延在する。第2の誘電体462を形成するために使用される材料は、特に限られず、例えば、酸化ケイ素(SiOx)、窒化ケイ素(SiNx)、および酸化ハフニウム(HfOx)から選択される材料を含んでもよい。
【0062】
フィンガーゲートの第1の層は、絶縁性の自然酸化物を有する金属から製造されてもよい。そのような金属の例には、アルミニウム、ニオブ、またはタンタルが含まれ、アルミニウムが特に好ましい。これにより、金属の酸化によって、第2の誘電体462をより好適に形成することができる。例えば、フィンガーゲートは、パターン化された後、酸素に曝され、第2の誘電体462が形成されてもよい。あるいは、フィンガーゲートは、該フィンガーゲート442をパターン化する選択的陽極酸化を用いることによって、第2の誘電体を作製すると同時にパターン化されてもよい。特に、フィンガーゲートは、アルミニウムを含んでもよく、第2の誘電体は、酸化アルミニウムを含んでもよい。
【0063】
フィンガーゲートの第2の層444a、444b、444cは、第2の誘電体462上の、第1の層442のフィンガーゲート同士の間の空間に配置される。2段階でフィンガーゲートを形成することにより、隣接するフィンガーゲート同士間の横方向の間隔を、そうではない場合に可能な間隔よりも小さくすることができる。第2の誘電体により、フィンガーゲート同士の間に短絡を生じさせることなく、フィンガーゲートの第1の層および第2の層を計画通りにオーバーラップさせることができる。
【0064】
示された例では、第2の誘電体362は、第1の組のフィンガーゲート同士の間の空間に延在するが、他の実施形態では、第2の誘電体362は、単一の層でなくてもよく、フィンガーゲート442自体をちょうど被覆してもよい。特に、フィンガーゲートがアルミニウムを含む実施形態では、誘電体は、酸素に曝された際にアルミニウム上に形成される自然酸化物であってもよい。誘電体362の形態は、隣接するフィンガーゲート同士が相互に電気的に絶縁されている限り、特に限られない。
【0065】
次に、
図5を参照して、半導体-超伝導体ハイブリッドデバイスを作動させる方法について説明する。
図5は、本方法の概要を示すフローチャートである。
【0066】
ブロック501では、半導体-超伝導体ハイブリッドデバイスが、超伝導体部材が超伝導性となる温度まで冷却される。換言すれば、デバイスは、超伝導体部材の臨界温度より低い温度に冷却される。一例では、本願で提供される種類のデバイスの典型的な作動温度は、50mK以下であってもよい。デバイスは、その作動の間、臨界温度未満に維持される。
【0067】
超伝導体デバイスを作動温度まで冷却させることに適した各種低温システムは、良く知られている。例示的な一例は、希釈冷蔵庫である。
【0068】
ブロック502では、少なくともデバイスのチャネルに磁場が印加される。
【0069】
磁場は、「実際の」磁場、換言すれば古典的磁場であってもよく、電磁石などを用いて外部から印加される。
【0070】
磁場は、「有効な」磁場であってもよい。デバイスは、強磁性絶縁体部材を有し、これは、超伝導体と強磁性絶縁体の間の界面からの電子のスピン依存性散乱を提供してもよい。電子のスピン依存性散乱は、有効な磁場として作用する。強磁性絶縁体の例には、EuSおよびEuOが含まれる。
【0071】
強磁性絶縁体によって提供される有効磁場は、電磁石によって提供される実際の磁場と組み合わせて使用されてもよい。そのような実施形態では、有効な磁場の強度は、実際に印加される磁場との平均により、制御することができる。
【0072】
実際のまたは有効な磁場を(スピン依存性散乱を介して)デバイスに印加すると、デバイス内の異なるスピン状態が異なるエネルギー準位を採用できるようになる。この効果は「リフティングスピン縮退」と称される。スピン縮退をリフトさせることにより、デバイス内のわずかな超伝導ギャップが閉じ、トポロジカルギャップが再開放されてもよい。
【0073】
磁場は、スピン-軌道フィールド方向に垂直な成分、例えば、チャネル114aの上部に配置された超伝導体部材の細長い部分の長さに平行な成分、を含んでもよい。超伝導体材料から作製造される部材の臨界磁場は、異方性であってもよく、換言すれば、磁場の方向に依存して変化してもよい。デバイスがリードを含む実施形態では、超伝導体部材の細長い部分の長さに平行な方向に磁場を印加した際に、リードが通常の導体として機能する一方、超伝導体部材は、超伝導性を維持し得る。これにより、チャネルとリードの間で、超-絶縁体-超(SIS)トンネルコンダクタンスではなく、通常-絶縁体-超(NIS)トンネルコンダクタンスが可能となる。例えば、チャネルに平行な方向のリードの臨界磁場は、約200mTのオーダであってもよい。
【0074】
磁場は、デバイスの動作全体にわたって印加される。例えば、磁場強度は、1T以上であってもよい。
【0075】
境界空乏ゲートが使用され、チャネルの端部が定められる実施形態では、境界空乏ゲートにゲート電圧が印加される。境界空乏ゲートは、境界空乏ゲートの下側の半導体部材の領域から電荷キャリアを空乏化させることによって、静電的にチャネルの端部を定める。また、境界空乏ゲートは、チャネルにおける電位の大まかな静電調整を提供してもよい。
【0076】
ブロック503では、フィンガーゲートに電圧が印加される。これにより、フィンガーゲートは、チャネルのそれぞれのセグメントに、それぞれの静電場を印加する。各フィンガーゲートに印加される電圧は、個々に選択されてもよい。これにより、チャネルにおける静電電位にわたる制御が可能となる。ゲート電圧を選択することにより、様々な効果が得られてもよい。
【0077】
ナノワイヤ内の静電電位は、その長さに沿ってランダムに変化する。これは、空間不規則性と呼ばれ、または単に不規則性と称される。不規則性には、各種要因が想定される。理論に縛られることを望むものではないが、材料と材料内の不純物との間の界面にトラップされた電荷は、不規則性に寄与し得ると考えられる。不規則性は、ハイブリッド構造において拡張トポロジカル位相を誘起することを難しくする。
【0078】
フィンガーゲートのアレイのある使用例は、不規則性を補償することである。各フィンガーゲートに対して、個々にゲート電圧を選択することによって、ナノワイヤの対応するセグメントにおける静電電位の局所的な変化を、カウンターバランスさせることができる。ナノワイヤの各部分は、異なる静電場を受け、これらの異なる静電場は、不規則性を平滑にするように作用してもよい。
【0079】
特に、フィンガーゲートのアレイを用いて、ナノワイヤに沿った異なる区画での電位を制御してもよい。例えば、デバイスの挙動に対する異なる電位の影響を調査することが望ましい場合がある。例えば、電位ディップ、電位バンプ、もしくは電位の周期的な(各種波長での空間的振動)変動、または、例えば、電位のU字形変動の影響を調査することが望ましい場合がある。フィンガーゲートを用いて、不規則性を補償すると同時に、所望の調整された電位プロフィールが提供されてもよい。
【0080】
アレイのフィンガーゲートの別の使用例では、チャネルの長さの制御が可能となる。好適な電圧がフィンガーゲートに印加される場合、そのフィンガーゲートは、ナノワイヤの対応するセグメントを欠乏させてもよい。換言すれば、ナノワイヤの対応するセグメントは、微細な状態に調整される。欠乏したセグメントは、実質的にチャネルの末端となる。従って、チャネルの長さは、チャネルの端部の位置を画定するため、フィンガーゲートの選択されたものを作動させることにより、選択可能である。
【0081】
これらの3つの動作モード、すなわち、不規則性の補償、電位の調整、および有効長の制御の任意の組み合わせが可能である。例えば、外側フィンガーゲートを選択して、チャネルの長さを規定してもよく、選択された外側フィンガーゲート同士の間にあるフィンガーゲートを作動させて、チャネル内の静電電位を制御し、不規則性を補償し、および/または調整された電位プロファイルが提供されてもよい。選択された外側のフィンガーゲートは、単一のフィンガーゲートまたはフィンガーゲートのグループであってもよい。
【0082】
図6には、これら2つの使用例を示す。
図6は、ナノワイヤの長さに沿った静電電位を示すシミュレートされたプロットである。
【0083】
図6の実線トレースは、ナノワイヤにおいて、全長xのチャネルに一定の静電電位が誘導される、理想化されたケースを示す。
【0084】
図6の破線トレースは、理想化された場合と比較した、ナノワイヤの全長に沿った静電電位の無秩序な変化の図を示す。
【0085】
フィンガーゲートのアレイは、ナノワイヤのいずれかの端部でフィンガーゲートまたはフィンガーゲートのグループを選択し、選択されたフィンガーゲートにより、ナノワイヤの対応する領域を枯渇させることによって、チャネルの長さxを制御するように作動可能である。チャネルの長さxに沿って配置されたフィンガーゲートは、静電電位の不規則性を補償するように動作可能であり、実際のポテンシャルが理想的なケースに近づけられる。
【0086】
この実施例では、単一チャネルがナノワイヤ上に定義される。また、フィンガーゲートのアレイは、単一のナノワイヤに沿って2つ以上のチャネルを定めるように作動されることが想定される。換言すれば、フィンガーゲートは、直列に配置された複数のチャネル間の接合部を画定するように作動可能である。これは、複数の動作可能にリンクされたチャネルを有する量子ビットデバイスを構築する上で有益であり得る。
【0087】
半導体-超伝導体ハイブリッドデバイスが少なくとも1つのリードを有する実施形態では、フィンガーゲートは、チャネルの電子特性の各種測定が可能となるように作動可能である。
【0088】
これらの測定は、チャネルとリードの間の電子のトンネルに依存する。フィンガーゲートのアレイにより、トンネルが生じる場所にわたる制御が可能となり、ナノワイヤに沿った異なる点での電子特性の特徴化が可能となる。これにより、半導体-超伝導体ハイブリッドデバイスが作動される条件のため、およびチャネル上の超伝導体層の存在によって生じる課題のため、半導体-超伝導体ハイブリッドデバイスへの実際の適用が難しい、走査型トンネル顕微鏡との置換が提供される。
【0089】
チャネルとリードとの間に電子のトンネルを生じさせるために、リードの上に配置されたフィンガーゲートが選択される。選択されたフィンガーゲートに、チャネルとリードとの間にある半導体材料を完全には欠乏させないような電圧が印加される。この電圧は、通常、ゼロまたはチャネルの電位と比べて正の電圧である。これにより、選択されたフィンガーゲートの位置でのチャネルとリードの間のトンネルコンダクタンスが可能となり、半導体は、調整可能なトンネルバリアとして作用する。このように作動されるフィンガーゲートは、本願では「分光モード」と称される。
【0090】
同時に、アレイ内の他のフィンガーゲートが作動し、チャネルの端部が定められ、前述のように、不規則性が補償され、および/またはチャネル内の電位が調整されてもよい。特に、他のフィンガーゲートが作動して、分光モードで選択されたフィンガーゲートを作動させることによって、生じるチャネル内の静電電位の任意の変化が妨げられ、または修正されてもよい。
【0091】
リードを通るトンネル電流が測定される。これは、トンネル電流を増幅するためにリードに接続された増幅器回路の使用を含んでもよい。測定されたトンネル電流に基づいて、選択されたフィンガーゲートの位置でのチャネルの電子特性に関する情報が決定されてもよい。例えば、選択されたフィンガーゲートの位置にマヨナラゼロモードが存在する場合、または換言すれば、選択されたフィンガーゲートがトポロジカル領域の端部に対応する場合、ゼロバイアスピークが観察されてもよい。反対に、トポロジカル領域の中心に、分光モードにあるフィンガーゲートが配置される場合、トンネルコンダクタンスにゼロバイアス付近のギャップが、観測される。
【0092】
必要な場合、リードに電圧バイアスが印加されてもよく、トンネル電流は、電圧バイアスの関数として測定されてもよい。
【0093】
分光モードで作動するように、アレイの1つ以上の異なるフィンガーゲートを反復的に選択し、選択されたフィンガーゲートのトンネル電流を測定することによって、チャネルの特性が走査されてもよい。1つのフィンガーゲート、または任意のフィンガーゲートの組み合わせは、実施される測定に応じて、分光モードで一度に作動されてもよい。
【0094】
新しいゲートが選択され、分光モードで作動される場合、アレイの他のゲートに印加される電圧が修正され、選択されたゲートが分光モードで作動することで生じるチャネル内の静電電位の任意の変化が打ち消され、またはチャネル内の静電電位が修正されてもよい。換言すれば、各繰り返しは、選択されたフィンガーゲートに印加された電圧を修正することに加えて、1つ以上のさらなるフィンガーゲートに印加された電圧を修正することを含んでもよい。
【0095】
測定されるトンネル電流は、局部的なトンネル電流であってもよい。局部的なトンネル電流を測定するため、アレイの一つのフィンガーゲートが、分光モードで作動される。この方法は、局部的なトンネル電流に基づいて、局部的なコンダクタンスを決定するステップを含んでもよい。
【0096】
測定されたトンネル電流は、非局所的なトンネル電流であってもよい。非局所的なトンネル電流は、デバイスが2つのリードを含み、各リードに関する少なくとも1つのフィンガーゲートが分光モードで作動する場合に、測定されてもよい。トンネル電流は、チャネルを通る電流の測定値を提供してもよい。電流は、チャネルを通って一方のリードから他方のリードに流れ得るからである。非局所的なトンネル電流に基づいて、非局所的なコンダクタンスが決定されてもよい。チャネルのトポロジカルギャップのサイズは、非局所的なコンダクタンスに基づいて決定されてもよい。
【0097】
より一般的には、任意の数のリード上に配置された任意の数のフィンガーゲートが分光モードで作動され、任意の数の端子を介して測定が可能になってもよい。
【0098】
測定の間、リードに電圧バイアスが印加されてもよい。リードへの電圧バイアスの関数として、トンネルコンダクタンスを測定することが望ましい場合がある。
【0099】
測定の空間解像度は、フィンガーゲートの間隔に依存する。約100nmの空間解像度が達成可能である。
【0100】
以下、
図7を参照して、本願に記載の種類の半導体-超伝導体ハイブリッドデバイスを製造する方法について説明する。
図7は、本方法の概要を示すフロー図である。
【0101】
ブロック701では、半導体部材が製造される。半導体部材を製造するステップは、通常、1つ以上の半導体材料の1つ以上の層を基板上に成長させるステップを有する。半導体部材を成長させるための有益な技術の例には、分子線エピタキシー(MBE)、有機金属気相エピタキシー(MOVPE)などが含まれる。
【0102】
必要な場合、半導体部材を製造するステップは、さらに、半導体材料の層を選択的にエッチングして、所望の形状を有する半導体部材を形成するステップを有してもよい。例えば、層をエッチングしてメサを形成してもよい。エッチングは、超伝導体部材を作製する前または後に実施されてもよい。III-V族半導体材料をエッチングするために有益な一例としてのエッチャント組成物は、クエン酸、リン酸、および過酸化水素の水溶液を含む。
【0103】
ブロック702では、超伝導体部材が製造される。
【0104】
超伝導体部材を製造するステップは、半導体部材の上に超伝導体材料の層をグローバルに堆積するステップ、およびその後、超伝導体材料の層をパターン化して、超伝導体部材を形成するステップを有してもよい。本願で使用される「グローバル堆積」という用語は、堆積された材料の表面全体を覆うことを意味する。パターン化処理は、リフトオフプロセス、またはマスクによって制御される選択的エッチングを含んでもよい。超伝導材料に好適なエッチャントは、市販されている。アルミニウムのエッチングに適したエッチャントの一例は、トランセンDであり、これは、リン酸、ナトリウム-n-ニトロベンゼンスルホン酸、および酢酸の水溶液である。
【0105】
あるいは、超伝導体部材は、超伝導体材料の選択的堆積によって作製されてもよい。例えば、超伝導体部材は、シャドウ壁によって制御された指向性堆積によって製造されてもよい。シャドウ壁は、材料のビームをブロックする、基板上に配置された材料であり、これにより、材料が堆積されないシャドウ領域が定められる。シャドウ壁を利用する方法の1つの例は、米国特許出願公開第2020/0243742 Al号に記載されている。
【0106】
デバイスが1つ以上のリードを有する実施形態では、1つ以上のリードは、超伝導体部材が製造されると同時に、該超伝導体材料から製造されてもよい。あるいは、別個のステップにおいて、1つ以上のリードが製造されてもよい。1つ以上のリードが、超伝導体部材とは別個に製造される場合、1つ以上のリードは、超伝導体部材とは異なる材料を含んでもよい。
【0107】
ブロック703では、フィンガーゲートのアレイが製造される。任意の境界空乏ゲートまたはさらなるゲート電極が、フィンガーゲートのアレイと同時に製造されてもよい。
【0108】
半導体-超伝導体ハイブリッドデバイスが1つ以上のリードを有する実施形態では、フィンガーゲートのアレイを作製するステップは、1つ以上のリードおよび超伝導体部材の上部に誘電体材料の層を堆積させるステップと、その後、誘電体材料の層の上にフィンガーゲートのアレイを形成するステップと、を有してもよい。誘電体材料の層は、原子層成膜によって成長されてもよい。
【0109】
フィンガーゲートのアレイを形成するステップは、電極材料のグローバル堆積を含み、その後、電極材料をパターン化してフィンガーゲートのアレイが形成される。
【0110】
フィンガーゲートのアレイは、段階的に製造されてもよい。離間されたフィンガーゲートの第1の組は、誘電体材料の層上に作製されてもよい。次に、フィンガーゲートの第1の組の上に、誘電体が形成されてもよい。誘電体を形成するステップは、例えば、原子層堆積によって誘電体の層を堆積するステップを有してもよい。あるいは、フィンガーゲートがアルミニウムのような絶縁性の自然酸化物を有する金属から形成される実施形態では、誘電体を形成するステップは、第1の組のフィンガーゲートの表面を酸化させるステップを有してもよい。誘電体を形成した後、第1の組のフィンガーゲートの隙間に、第2の組のフィンガーゲートが形成されてもよい。これにより、フィンガーゲート同士をより緻密に充填できる。
【0111】
上記の実施形態は、単なる例示として示したものであることが理解される。
【0112】
より一般的には、本願に開示のある態様では、半導体-超伝導体ハイブリッドデバイスが提供され、これは、使用の際に、ナノワイヤの形態のチャネルを有する半導体部材と、近接効果によって半導体部材に超伝導性を誘導できる超伝導体部材と、フィンガーゲートのアレイであって、チャネルのそれぞれのセグメントにそれぞれの静電場を印加するように、個別に作動可能である、フィンガーゲートと、を有する。フィンガーゲートのアレイは、ナノワイヤの対応するセグメントにおける電位にわたり、局所的な制御を可能にする。
【0113】
チャネルは、例えば、10から125nmの範囲の幅、および少なくとも1pmの長さを有してもよい。超伝導体部材は、チャネルの上部に配置された細長いストリップを含んでもよい。
【0114】
半導体部材は、上側バリアと下側バリアの間に配置された量子井戸を有するヘテロ構造であってもよい。フィンガーゲートのアレイの使用は、特に、量子井戸に基づくデバイスに対して研究されてきた。代わりに、他の半導体部材、例えば、選択-領域成長部材が使用されてもよい。
【0115】
デバイスは、さらに、チャネルの第1の端部を静電的に定めるように作動可能な、境界空乏ゲートを含んでもよい。フィンガーゲートのアレイは、第1の端部とは反対側の、チャネルの第2の端部を静電的に定めるように作動可能であってもよい。
【0116】
半導体-超伝導体ハイブリッドデバイスは、さらに、フィンガーゲートのアレイの第1のサブアレイの下側に配置された第1のリードと、リードとフィンガーゲートのアレイの間に配置された誘電体と、を有してもよい。第1のリードは、端部を有し、これは、チャネルとリードとの間の電子トンネルが可能となるように選択された距離だけ、チャネルから離間されてもよい。例えば、距離は、20から200nmの範囲であってもよい。そのような実施形態では、フィンガーゲートが好適なレジメと調整された際に、リードとチャネルの間のトンネル電流の測定が可能になる。これにより、チャネルの電子特性の調査が可能となる。
【0117】
リードは、増幅器回路に作動可能に連結されてもよい。増幅器回路は、電流対電圧増幅器であってもよい。増幅器回路は、トンネル電流を増幅し、トンネル電流の検出を容易にするため有益である。
【0118】
半導体-超伝導体ハイブリッドデバイスは、さらに、第2のリードを含んでもよい。第2のリードは、第1のサブアレイとは別に、フィンガーゲートのアレイの第2のサブアレイの下側に配置されてもよい。さらに第2のリードとフィンガーゲートのアレイの間に、誘電体が配置されてもよい。第2のリードは、端部を有し、該端部は、チャネルと第2のリードの間で電子トンネルが可能となるように選定された距離だけ、チャネルから離間されてもよい。
【0119】
第1のリードと同様、第2のリードは、増幅器回路に作動可能に連結されてもよい。増幅器回路は、電流対電圧増幅器であってもよい。
【0120】
少なくとも2つのリードを含めることにより、チャネルのより広範囲の電子特性を測定することができる。例えば、非局所的なコンダクタンスの測定が可能になってもよい。
【0121】
本願で提供されるデバイスは、任意の数のリードを有してもよい。
【0122】
フィンガーゲートのアレイは、フィンガーゲートの下層およびフィンガーゲートの上層を含んでもよい。デバイスは、さらに、フィンガーゲートの下層を被覆する誘電体を有してもよい。フィンガーゲートの上層は、誘電体の上部に配置されてもよく、フィンガーゲートの下層から横方向にオフセットされてもよい。誘電体は、下層のフィンガーゲート同士の間の空間に対応する凹部を定めてもよい。上層のフィンガーゲートは、少なくとも一部が凹部に配置されてもよい。フィンガーゲートのアレイを2段階で作製することによって、フィンガーゲートのより高い密度が達成されてもよい。例えば、フィンガーゲートの第1の組は、フィンガーゲートの第2の組の製造を支援するテンプレートを提供してもよい。
【0123】
下層のフィンガーゲートは、絶縁性の自然酸化物を有する金属を有してもよい。誘電体層は、金属の自然酸化物を含んでもよい。これにより、フィンガーゲート同士の間の誘電体を、より簡便に形成することができる。例えば、金属はアルミニウムであってもよく、これは、単に酸素に暴露した際に、自然酸化物を形成し得る。
【0124】
フィンガーゲートの各々は、150nm以下の幅、および必要な場合、25nm以下の幅を有してもよい。隣接するフィンガーゲート同士の間の間隔は、25nm以下であってもよい。狭小の近接したフィンガーゲートを設けることによって、チャネルの電子特性に対するより高い解像度の制御および/または測定を可能にすることができる。
【0125】
フィンガーゲートの数は、チャネルの長さに応じて、好適に選択されてもよい。フィンガーゲートのアレイは、少なくとも10個のフィンガーゲート、必要な場合、少なくとも40個のゲート電極を有してもよい。多数のフィンガーゲートを提供することによって、ナノワイヤの電子特性にわたって、より高度な制御が可能となる。
【0126】
超伝導体部材は、超伝導体の細長いストリップを含んでもよい。細長いストリップは、チャネルの上部に配置されてもよい。細長いストリップは、125nm以下の幅を有してもよい。超伝導体部材は、2つの端部を有してもよい。両端の各々は、電気的に接地されてもよい。
【0127】
別の態様では、半導体-超伝導体ハイブリッドデバイスを作動させる方法が提供される。本方法は、超伝導体部材が超伝導を示す温度まで、半導体-超伝導ハイブリッドデバイスを冷却するステップと、少なくとも半導体-超伝導ハイブリッドデバイスのチャネルに磁場を印加するステップと、フィンガーゲートに電圧を印加するステップと、を有する。
【0128】
フィンガーゲートに電圧を印加するステップは、フィンガーゲートのそれぞれに、個別に選択された電圧を印加するステップを有してもよい。例えば、フィンガーゲートに電圧を印加するステップは、少なくとも1つのフィンガーゲートを作動させ、チャネルの各セグメントにおける局所的な不規則性を補償するステップを有してもよい。「局所的な不規則性」とは、目標静電電位からの、ナノワイヤの静電電位のランダムな偏差を意味する。局所的な不規則性は、例えば、捕獲された電荷、材料中の不純物、および他の発生源から生じ得る。チャネル内の不規則性を補償することにより、デバイス内に、拡張されたトポロジカル位相を誘起することができる。
【0129】
これとは別にまたはこれに加えて、フィンガーゲートのそれぞれに、個々に選択された電圧を印加するステップは、チャネル内に所定の電位プロファイルを誘起するステップを有してもよい。
【0130】
本方法は、さらに、第1の端部フィンガーゲートとして作用するように、フィンガーゲートを選択するステップを有してもよい。電圧を印加するステップは、第1の端部フィンガーゲートを作動させ、チャネルのそれぞれのセグメントから電荷キャリアを枯渇させるステップを有し、これにより、チャネルの活性部分の第1の端部が定められる。
【0131】
この方法は、さらに、第2の端部フィンガーゲートとして作用するように、フィンガーゲートを選択するステッを有し、電圧を印加するステップは、第2のフィンガーゲートを作動させ、チャネルのそれぞれのセグメントから電荷キャリアを枯渇させるステップを有し、これにより、チャネルの活性部分の第2の端部が定められる。フィンガーゲートのアレイは、チャネルの端部から電荷キャリアを選択的に空乏化させることによって、チャネルの活性部分の長さを制御するように作動さされてもよい。この方法は、さらに、例えば、第1および第2の端部フィンガーゲートとして作用するように、フィンガーゲートの新しい組合せを選択することによって、チャネルの活性部分の長さを変更するステップを有してもよい。
【0132】
この方法は、チャネルの長さを制御することに加えて、チャネルにおける不規則性を補償し、および/または電位を調整するステップを有してもよい。例えば、第1の端部フィンガーゲートおよび第2の端部フィンガーゲートは、さらに、それらの間のフィンガーゲートを有してもよく、電圧を印加するステップは、別のフィンガーゲートを作動させ、チャネルの各セグメントにおける局所的な不規則性を補償するステップを有してもよい。
【0133】
チャネルの活性部分と整列されていないフィンガーゲート、すなわち、第1の端部のフィンガーゲートおよび第2の端部のフィンガーゲートを越えるフィンガーゲートは、チャネルのそれぞれのセグメントから電荷キャリアを枯渇させるように作動されてもよい。隣接するフィンガーゲートのグループを作動させて、チャネルの第1の端部を定めてもよい。隣接するフィンガーゲートのグループを作動させ、チャンネルの第2の端部を定めてもよい。
【0134】
デバイスは、さらに、フィンガーゲートのアレイのサブアレイの下側に配置された、第1のリードと、リードとフィンガーゲートのアレイとの間に配置された誘電体と、を有してもよい。第1のリードは、端部を有し、該端部は、チャネルとリードの間の電子トンネルが可能となるように選択された距離だけ、チャネルから離間されてもよい。そのような実施形態では、本方法は、さらに、第1のサブアレイの1つのフィンガーゲートを選択するステップと、選択されたフィンガーゲートに電圧を印加することにより、トンネル電流を測定するステップであって、前記選択されたフィンガーゲートは、選択されたフィンガーゲートに対応するチャネルのセグメントと第1のリードの間に、電子のトンネルを生じさせるように選択される、ステップと、第1のリードを通る電流を測定するステップと、を有してもよい。トンネル電流の測定により、チャネルの電子特性の決定が可能になってもよい。例えば、ゼロバイアスピークの検出は、選択されたフィンガーゲートに対応するチャネルのセグメントにおける、マヨナラゼロモードの存在を示唆してもよい。
【0135】
この方法は、さらに、第1のリードにバイアス電圧を印加するステップを有してもよい。
【0136】
この方法は、選択されたフィンガーゲートを使用してトンネル電流を測定するステップと、同時に少なくとも1つの他のフィンガーゲートを作動させ、チャネル内の局所的な不規則性を補償するステップと、を有してもよい。本方法は、さらに、同時に、少なくとも1つの他のフィンガーゲートを使用して、チャネルの長さを制御するステップを有してもよい。
【0137】
この方法は、さらに、第1のサブアレイの異なるフィンガーゲートを選択し、トンネル電流を測定するステップを有してもよい。チャネルの長さに沿った電子特性は、ナノワイヤの複数の異なるセグメントにおけるトンネル電流を測定することによって特徴付けられてもよい。トンネル電流の測定では、チャネル内の電位の測定値が提供され、それ自体が、チャネルの特性を特徴付けるために有益であってもよい。
【0138】
デバイスは、さらに、第2のリードを有してもよく、該第2のリードは、第1のサブアレイから分離して、フィンガーゲートのアレイの第2のサブアレイの下側に配置され、誘電体は、さらに、第2のリードとフィンガーゲートのアレイとの間に配置されてもよい。第2のリードは、端部を有し、該端部は、チャネルと第2のリードの間で電子トンネルが可能にするように選択された距離だけ、チャネルから離間されてもよい。この方法は、さらに、第2のサブアレイの1つのフィンガーゲートを選択するステップと、前記選択されたフィンガーゲートに電圧を印加することにより、トンネル電流を測定するステップであって、前記選択されたフィンガーゲートに対応するチャネルのセグメントと前記第1のリードの間に、電子のトンネルを生じさせるように選択される、ステップと、前記第2のリードを通る電流を測定するステップと、を有してもよい。2つ以上のリードを通るトンネル電流を同時に測定することによって、トンネル電流に基づいて、チャネルを通る非局所的なコンダクタンスを決定することが可能となる。本方法は、さらに、バイアス電圧、例えば、ソースおよびドレインバイアスを、第1および第2のリードに印加するステップを有してもよい。
【0139】
この方法は、さらに、フィンガーゲートの異なる組み合わせを選択し、トンネル電流を測定するステップを有してもよい。フィンガーゲートの組み合わせを繰り返すことにより、チャネルの異なる部分を通る電子的特性が測定されてもよい。
【0140】
この方法は、さらに、測定された電流に基づいて、チャネルを通る非局所的なコンダクタンスを決定するステップを有してもよい。
【0141】
当該方法の態様の実施に使用されるデバイスは、デバイスの態様を参照して説明される任意の特徴を有してもよいことが理解される。
【0142】
さらに別の態様では、前述の種類の半導体-超伝導体ハイブリッドデバイスを製造する方法が提供される。この方法は、半導体部材を製造するステップと、超伝導体部材を製造するステップと、フィンガーゲートのアレイを製造するステップとを有する。
【0143】
半導体部材を製造するステップは、基板上にスタックの形態の半導体ヘテロ構造を形成し、次に、エッチングにより、半導体ヘテロ構造を選択的に除去し、メサ状に半導体部材を形成するステップを有してもよい。
【0144】
次に、ボンディングパッドおよび伝送線路のような、追加の金属部材が製造されてもよい。その後、フィンガーゲートのアレイが製造されてもよい。デバイスの活性部分のゲートから別個に追加の金属部材を製造することは、有益である。追加の金属部は、ゲートよりも厚くてもよく、より低い解像度の製造プロセスが使用され得るからである。
【0145】
フィンガーゲートのアレイを形成するステップは、フィンガーゲートの下層を形成するステップであって、前記フィンガーゲートの下層は、間に空間を有する複数のフィンガーゲートを有する、ステップと、フィンガーゲートの下層の上に誘電体を形成するステップと、誘電体上にフィンガーゲートの上層を形成するステップであって、前記上層のフィンガーゲートは、下層のフィンガーゲートの間の空間の上方に配置される、ステップと、を有してもよい。このように、フィンガーゲートのアレイを2段階で作製することにより、フィンガーゲートのより高い密度を得ることができる。そうでなければ、例えば、電子ビームリソグラフィーのような、限定された解像度の技術に生じる制約が、排除されてもよい。
【0146】
フィンガーゲートの下層は、絶縁性の自然酸化物を有する金属から形成されてもよい。誘電体は、金属の自然酸化物を有する。これにより、誘電体の簡便な形成が可能となり、フィンガーゲートの下層の上に誘電体の層を堆積するステップが不要となる。
【0147】
本願でいったん開示されることにより、当業者にとって、開示技術の他の変形例または適用例が明らかとなる。本開示の範囲は、記載された実施形態ではなく、添付の特許請求の範囲によってのみ限定される。
【国際調査報告】