IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ バグジー ソーラー エルエルシーの特許一覧

特表2024-524027生物電気化学的エネルギー変換セル内のバイオフィルム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-05
(54)【発明の名称】生物電気化学的エネルギー変換セル内のバイオフィルム
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/16 20060101AFI20240628BHJP
   H01M 8/02 20160101ALI20240628BHJP
   H01M 4/86 20060101ALI20240628BHJP
   H01G 9/20 20060101ALI20240628BHJP
   C12M 1/42 20060101ALI20240628BHJP
【FI】
H01M8/16
H01M8/02
H01M4/86 B
H01G9/20 113Z
C12M1/42
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023575499
(86)(22)【出願日】2022-06-06
(85)【翻訳文提出日】2024-02-05
(86)【国際出願番号】 US2022032386
(87)【国際公開番号】W WO2022261020
(87)【国際公開日】2022-12-15
(31)【優先権主張番号】63/202,333
(32)【優先日】2021-06-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/363,798
(32)【優先日】2022-04-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515348448
【氏名又は名称】バグジー ソーラー エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ステイン、エミリー エー.
(72)【発明者】
【氏名】サーバイテス、ジョナサン
(72)【発明者】
【氏名】ワシバーン、ケアトン
(72)【発明者】
【氏名】アザール、ジャスティン
【テーマコード(参考)】
4B029
5H018
5H126
【Fターム(参考)】
4B029AA27
4B029BB01
4B029DG10
5H018AA01
5H018EE02
5H018EE17
5H126AA02
5H126BB08
(57)【要約】
本明細書で示されるのは、生物電気化学的エネルギー変換セル内のエネルギー変換を促進するためのバイオフィルムを含むボルタセルであり、ここで前記バイオフィルムは1又は複数の微生物集団を含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)電子を受信し、電子を外部回路又は負荷へ提供するためのアノード;
(b)電子を電気化学的反応へ供与するためのカソード;
(c)微生物を有するバイオフィルム、前記バイオフィルムは前記アノード又はカソードと電気的に接触している;
(d)前記アノード及びカソードと接触しているイオン伝導性媒体を有するバッファ;及び
(e)前記バイオフィルム及び前記バッファを少なくとも部分的に格納する容器
を備えるボルタセル。
【請求項2】
前記バッファをアノードコンパートメント及びカソードコンパートメントへと分離し、これにより前記電子供与体集団が前記カソードに接触することを防ぐイオン透過性且つ電子供与体不浸透性の障壁を更に備える、請求項1に記載のボルタセル。
【請求項3】
前記バイオフィルムは、前記アノード及び前記カソードのうちの少なくとも1つと接触している、請求項1に記載のボルタセル。
【請求項4】
前記バイオフィルムは、前記アノード、前記カソード、及び前記イオン透過性且つ電子供与体不浸透性の障壁のうちの少なくとも1つと接触している、請求項2に記載のボルタセル。
【請求項5】
前記バイオフィルムは、2以上の微生物を有する、請求項1に記載のボルタセル。
【請求項6】
前記バイオフィルムは、前記ボルタセルの中の基板上に形成されている、請求項1に記載のボルタセル。
【請求項7】
前記基板は、前記アノード又は前記カソードのいずれかである、請求項6に記載のボルタセル。
【請求項8】
前記基板は、前記アノード又は前記カソードの表面と接触している、請求項6に記載のボルタセル。
【請求項9】
前記バイオフィルムは、正荷電部分を有する、請求項1に記載のボルタセル。
【請求項10】
前記バイオフィルムは、負荷電部分を有する、請求項1に記載のボルタセル。
【請求項11】
前記バイオフィルムは、合成部分を有する、請求項1に記載のボルタセル。
【請求項12】
前記バイオフィルムは、非合成部分を有する、請求項1に記載のボルタセル。
【請求項13】
前記バイオフィルムは、1つ又は複数のフィラメント状付属器を有する、請求項1に記載のボルタセル。
【請求項14】
前記バイオフィルムは、嫌気性、好気性、及び通性嫌気性微生物からなる群から選択される、1又は複数の微生物綱を有する、請求項1に記載のボルタセル。
【請求項15】
前記バイオフィルムは、硫黄酸化微生物及び硫黄還元微生物を有する、請求項1に記載のボルタセル。
【請求項16】
前記バイオフィルムは、ロドフェラックス・フェリレドゥセンス、ラクトバシラス・アシドフィルス、ロドスピリルム・ルブルム、デスルフォビブリオ・デスルフリカンス亜種デスルフリカンス、ペプトストレプトコッカス・アナエロビウス、ロドスピリラム・センテナム、カトネラ・モルビ、ラクノスピラ科の一種、フォトバクテリウム・レイオグナティ、アロクロマチウム・ビノスム、ラクトバシラス・カセイ、フソバクテリウム・ヌクレアタム亜種ポリモーファム、ヘルココッカス・クンジイ、キューティバクテリウム・アクネス、ロドスピリルム・ルブルム、ヘルココッカス・クンジイ、アロクロマチウム・ビノスム、及びフェロヴァム・ミクソファシエンスからなる群から選択される1又は複数の微生物を有する、請求項1に記載のボルタセル。
【請求項17】
前記バイオフィルムは、天然ポリマー、合成ポリマー、DNAの水和物、タンパク質の水和物、又は炭水化物の水和物を含む基質を有する、請求項1に記載のボルタセル。
【請求項18】
前記障壁は電子伝導性である、請求項2に記載のボルタセル。
【請求項19】
前記障壁は前記アノードに接触する、請求項2に記載のボルタセル。
【請求項20】
前記アノードと電気的通信状態にある電流コレクタを更に有する、請求項1から19のいずれか一項に記載のボルタセル。
【請求項21】
前記第1の種の微生物及び/又は前記第2の種の微生物は、光捕集アンテナを有する、請求項1から20のいずれか一項に記載のボルタセル。
【請求項22】
前記第1の種の微生物は、第1のバンドにおいて電磁放射によって励起され、前記バッファの中の少なくとも1の他の種の微生物は、第2のバンドにおいて電磁放射によって励起され、前記第1のバンド及び前記第2のバンドは実質的に重複しない、請求項21に記載のボルタセル。
【請求項23】
前記第1の種の微生物は、光栄養又は化学栄養微生物を有する、請求項1から22のいずれか一項に記載のボルタセル。
【請求項24】
前記第1の種の微生物は化学栄養生物であり、前記第2の種の微生物は光栄養生物である、請求項1から23のいずれか一項に記載のボルタセル。
【請求項25】
前記第1の主要代謝経路は、炭素、窒素、リン、又は硫黄を含有する化合物を酸化し、前記第2の主要代謝経路は、前記第1の主要代謝経路によって生産された前記酸化化合物を還元する、請求項1から24のいずれか一項に記載のボルタセル。
【請求項26】
前記第1の種の微生物は、線毛、線維、鞭毛、及び/又はフィラメント形状を有する、請求項1から25のいずれか一項に記載のボルタセル。
【請求項27】
前記第1の種の微生物は、複数の代謝経路を有する、請求項1から26のいずれか一項に記載のボルタセル。
【請求項28】
前記第1の種の微生物は、自然発生する微生物種である、請求項1から27のいずれか一項に記載のボルタセル。
【請求項29】
前記第1の主要代謝経路及び前記第2の主要代謝経路の各々は、細胞呼吸に関与する、請求項1から28のいずれか一項に記載のボルタセル。
【請求項30】
化学的及び/又は光エネルギーを電気的エネルギーに変換する方法であって、前記方法は:
請求項1から29のいずれか一項に記載のボルタセルを動作させる段階
を備える、方法。
【請求項31】
(a)カソード空気流ハードウェア;
(b)カソードガス拡散層;
(c)カソード寒天層;
(d)前記アノード及びカソードと接触しているイオン伝導性媒体を有する電解質層;
(e)電子を受信し、電子を外部回路又は負荷へ提供するためのアノード層;
(f)アノード寒天層;
(g)窓層;及び
(h)微生物を有するバイオフィルム
を備える、ボルタセル。
【請求項32】
前記微生物は、前記層のうちの1つ又は複数の中に存在する、請求項31に記載のボルタセル。
【請求項33】
前記アノード層は、アルミニウムナノ粒子、アルミニウムマイクロ粒子、透明伝導体粒子、親水性ポリマー、及び親水性ゲルからなる群から選択される材料を有する、請求項31に記載のボルタセル。
【請求項34】
前記窓層はガラスを有する、請求項31に記載のボルタセル。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
[参照による援用]
PCTリクエストフォームは、本出願の一部分として本明細書と同時に提出される。本出願が、同時に提出されたPCTリクエストフォームにおいて識別される利益又は優先権を主張する各出願は、それら全体として、全ての目的のために本明細書において参照により組み込まれる。
【0002】
現在のボルタセル及びソーラーパネルシステムは、制限された効率性を有し、複雑な材料を必要とし、著しい関連コストを結果として生じる。多くのソーラーパネルは、ウェハベースの結晶ケイ素セル又はカドミウム又はケイ素ベースの薄いフィルムセルを使用する。これらのセルは脆弱であり、複数の保護層を追加することを介して水分から保護されなければならない。パネルは、増加する電圧のために直列で及び/又は増加する電流のために並列で配備される。パネルは、伝導金属ワイヤを介して相互接続されている。一般的なシステムの固有の問題は、パネルの一部分が日陰になっており、当該パネルの別の部分が直接太陽光にさらされている場合に、逆電流に起因する過熱に対するセルの感受性である。別の固有の問題は、太陽電池がより高い温度で効率がより低くなることであり、それは、電気への光変換の地理的有効性を限定する。改善、例えば配列されたレンズ及びミラーは、光のフォーカスを改善し効率を増加させるが、さらなる製造の複雑性及びより高い関連コストを有する。
【0003】
生化学的ボルタセルは好適な代替案であり得る一方、生化学的ボルタセルは多くの困難に直面してもいる。生化学的ボルタセルは、電位エネルギーを生成するために回収及び変換され得るエネルギーを生成することが可能な生物に依拠している。しかしながら、これらの生物の利用には、生物を生きたまま保つためにセル内の活性の十分なレベルを維持すること、及び信頼性の高い様式で運用することを含む。いくつかのインスタンスにおいて、生物は、例えば、特定のセルにとって望ましいレベルよりも小さい又はそれを超えるレベルの電流及び/又は電圧で電気を生成することによって、セル自体の動作に干渉し得る。更に、生物が生化学的ボルタセル内で成長するための持続可能な条件を可能にするために適切な環境を維持することは、困難且つ高コストであり得る。
【0004】
本明細書で提供される背景技術の説明は、本開示の文脈を全般的に提示するという目的のためである。本出願で挙げられる発明者の研究成果は、それがこの背景技術のセクションで説明される限り、及びそうでなければ出願時に従来技術としての資格がない可能性がある説明の態様は、明示的にも暗示的にも、本開示に対する従来技術として認めるものではない。
【発明の概要】
【0005】
1つの態様は:(a)電子を受信し、電子を外部回路又は負荷へ提供するためのアノード;(b)電子を電気化学的反応へ供与するためのカソード;(c)微生物を有するバイオフィルム、前記バイオフィルムは前記アノード又はカソードと電気的に接触している;(d)前記アノード及びカソードと接触しているイオン伝導性媒体を有するバッファ;及び(e)前記バイオフィルム及び前記バッファを少なくとも部分的に格納する容器を含むボルタセルを含む。
【0006】
様々な実施形態において、前記ボルタセルは、前記バッファをアノードコンパートメント及びカソードコンパートメントへと分離し、これにより前記電子供与体集団が前記カソードに接触することを防ぐイオン透過性且つ電子供与体不浸透性の障壁も含む。いくつかの実施形態において、前記障壁は、電子伝導性である。
【0007】
いくつかの実施形態において、前記障壁は前記アノードに接触する。
【0008】
様々な実施形態において、前記バイオフィルムは、前記アノード及び前記カソードのうちの少なくとも1つと接触している。いくつかの実施形態において、前記バイオフィルムは、前記アノード、前記カソード、及び前記イオン透過性且つ電子供与体不浸透性の障壁のうちの少なくとも1つと接触している。
【0009】
様々な実施形態において、前記バイオフィルムは、2以上の微生物を含む。
【0010】
様々な実施形態において、前記バイオフィルムは、前記ボルタセルの中の基板上に形成されている。いくつかの実施形態において、前記基板は、前記アノード又は前記カソードのいずれかである。いくつかの実施形態において、前記基板は、前記アノード又は前記カソードの表面と接触している。
【0011】
様々な実施形態において、前記バイオフィルムは、正荷電部分を含む。
【0012】
様々な実施形態において、前記バイオフィルムは、負荷電部分を含む。
【0013】
様々な実施形態において、前記バイオフィルムは、合成部分を含む。
【0014】
様々な実施形態において、前記バイオフィルムは、非合成部分を含む。
【0015】
様々な実施形態において、前記バイオフィルムは、1つ又は複数のフィラメント状付属器を含む。
【0016】
様々な実施形態において、前記バイオフィルムは、嫌気性、好気性、及び通性嫌気性微生物のうちの1又は複数である、1又は複数の微生物綱を含む。
【0017】
様々な実施形態において、前記バイオフィルムは、硫黄酸化微生物及び硫黄還元微生物を含む。
【0018】
様々な実施形態において、バイオフィルムは、ロドフェラックス・フェリレドゥセンス(Rhodoferax ferrireducens)、ラクトバシラス・アシドフィルス、ロドスピリルム・ルブルム(Rhodospirillum rubrum)、デスルフォビブリオ・デスルフリカンス亜種デスルフリカンス、ペプトストレプトコッカス・アナエロビウス、ロドスピリラム・センテナム、カトネラ・モルビ、ラクノスピラ科の一種、フォトバクテリウム・レイオグナティ(Photobacterium leiognathi)、アロクロマチウム・ビノスム、ラクトバシラス・カセイ、フソバクテリウム・ヌクレアタム亜種ポリモーファム(Fusobacterium nucleatum subsp. polymorphum)、ヘルココッカス・クンジイ(Helcococcus kunzii)、キューティバクテリウム・アクネス、ロドスピリルム・ルブルム、ヘルココッカス・クンジイ、アロクロマチウム・ビノスム、及びフェロヴァム・ミクソファシエンス(Ferrovum myxofaciens)からなる群から選択される1又は複数の微生物を含む。
【0019】
様々な実施形態において、前記バイオフィルムは、天然ポリマー、合成ポリマー、DNAの水和物、タンパク質の水和物、又は炭水化物の水和物を含む基質を含む。
【0020】
上記で説明された実施形態のいずれかにおいて、前記ボルタセルは前記アノードと電気的通信状態にある電流コレクタも含み得る。
【0021】
上記で説明された実施形態のいずれかにおいて、前記第1の種の微生物及び/又は前記第2の種の微生物は、光捕集アンテナを含む。様々な実施形態において、前記第1の種の微生物は、第1のバンドにおいて電磁放射によって励起され、前記バッファの中の少なくとも1の他の種の微生物は、第2のバンドにおいて電磁放射によって励起され、前記第1のバンド及び前記第2のバンドは実質的に重複しない。
【0022】
上記で説明された実施形態のいずれかにおいて、前記第1の種の微生物は、光栄養又は化学栄養微生物を含む。
【0023】
上記で説明された実施形態のいずれかにおいて、前記第1の種の微生物は化学栄養生物であり、前記第2の種の微生物は光栄養生物である。
【0024】
上記で説明された実施形態のいずれかにおいて、前記第1の主要代謝経路は、炭素、窒素、リン、又は硫黄を含有する化合物を酸化し、前記第2の主要代謝経路は、前記第1の主要代謝経路によって生産された前記酸化化合物を還元する。
【0025】
上記で説明された実施形態のいずれかにおいて、前記第1の種の微生物は、線毛、線維、鞭毛、及び/又はフィラメント形状を有する。
【0026】
上記で説明された実施形態のいずれかにおいて、前記第1の種の微生物は、複数の代謝経路を有する。
【0027】
上記で説明された実施形態のいずれかにおいて、前記第1の種の微生物は、自然発生する微生物種である。
【0028】
上記で説明された実施形態のいずれかにおいて、前記第1の主要代謝経路及び前記第2の主要代謝経路の各々は、細胞呼吸に関与する。
【0029】
別の態様は、化学的及び/又は光エネルギーを電気的エネルギーに変換する方法を含み、前記方法は:任意の先行する実施形態に記載のボルタセルを動作させる段階を含む。
【0030】
別の態様は、(a)カソード空気流ハードウェア;(b)カソードガス拡散層;(c)カソード寒天層;(d)前記アノード及びカソードと接触しているイオン伝導性媒体を含む電解質層;(e)電子を受信し、電子を外部回路又は負荷へ提供するためのアノード層;(f)アノード寒天層;(g)窓層;及び(h)微生物を含むバイオフィルムを含むボルタセルを含む。
【0031】
様々な実施形態において、前記微生物は、前記層のうちの1つ又は複数の中に存在する。
【0032】
様々な実施形態において、前記アノード層は、材料、例えば、アルミニウムナノ粒子、アルミニウムマイクロ粒子、透明伝導体粒子、親水性ポリマー、及び親水性ゲルのうちのいずれか1つ又は複数を含む。
【0033】
様々な実施形態において、前記窓層はガラスを含む。
【0034】
様々な実施形態において、前記バイオフィルムは、前記アノード及び前記カソードのうちの少なくとも1つと接触している。いくつかの実施形態において、前記バイオフィルムは、前記アノード、前記カソード、及び前記イオン透過性且つ電子供与体不浸透性の障壁のうちの少なくとも1つと接触している。
【0035】
様々な実施形態において、前記バイオフィルムは、2以上の微生物を含む。
【0036】
様々な実施形態において、前記バイオフィルムは、前記ボルタセルの中の基板上に形成されている。いくつかの実施形態において、前記基板は、前記アノード又は前記カソードのいずれかである。いくつかの実施形態において、前記基板は、前記アノード又は前記カソードの表面と接触している。
【0037】
様々な実施形態において、前記バイオフィルムは、正荷電部分を含む。
【0038】
様々な実施形態において、前記バイオフィルムは、負荷電部分を含む。
【0039】
様々な実施形態において、前記バイオフィルムは、合成部分を含む。
【0040】
様々な実施形態において、前記バイオフィルムは、非合成部分を含む。
【0041】
様々な実施形態において、前記バイオフィルムは、1つ又は複数のフィラメント状付属器を含む。
【0042】
様々な実施形態において、前記バイオフィルムは、嫌気性、好気性、及び通性嫌気性微生物のうちの1又は複数である、1又は複数の微生物綱を含む。
【0043】
様々な実施形態において、前記バイオフィルムは、硫黄酸化微生物及び硫黄還元微生物を含む。
【0044】
様々な実施形態において、バイオフィルムは、ロドフェラックス・フェリレドゥセンス、ラクトバシラス・アシドフィルス、ロドスピリルム・ルブルム、デスルフォビブリオ・デスルフリカンス亜種デスルフリカンス、ペプトストレプトコッカス・アナエロビウス、ロドスピリラム・センテナム、カトネラ・モルビ、ラクノスピラ科の一種、フォトバクテリウム・レイオグナティ、アロクロマチウム・ビノスム、ラクトバシラス・カセイ、フソバクテリウム・ヌクレアタム亜種ポリモーファム、ヘルココッカス・クンジイ、キューティバクテリウム・アクネス、ロドスピリルム・ルブルム、ヘルココッカス・クンジイ、アロクロマチウム・ビノスム、及びフェロヴァム・ミクソファシエンスからなる群から選択される1又は複数の微生物を含む。
【0045】
様々な実施形態において、前記バイオフィルムは、天然ポリマー、合成ポリマー、DNAの水和物、タンパク質の水和物、又は炭水化物の水和物を含む基質を含む。
【0046】
上記で説明された実施形態のいずれかにおいて、前記ボルタセルは前記アノードと電気的通信状態にある電流コレクタも含み得る。
【0047】
上記で説明された実施形態のいずれかにおいて、前記第1の種の微生物及び/又は前記第2の種の微生物は、光捕集アンテナを含む。様々な実施形態において、前記第1の種の微生物は、第1のバンドにおいて電磁放射によって励起され、前記バッファの中の少なくとも1の他の種の微生物は、第2のバンドにおいて電磁放射によって励起され、前記第1のバンド及び前記第2のバンドは実質的に重複しない。
【0048】
上記で説明された実施形態のいずれかにおいて、前記第1の種の微生物は、光栄養又は化学栄養微生物を含む。
【0049】
上記で説明された実施形態のいずれかにおいて、前記第1の種の微生物は化学栄養生物であり、前記第2の種の微生物は光栄養生物である。
【0050】
上記で説明された実施形態のいずれかにおいて、前記第1の主要代謝経路は、炭素、窒素、リン、又は硫黄を含有する化合物を酸化し、前記第2の主要代謝経路は、前記第1の主要代謝経路によって生産された前記酸化化合物を還元する。
【0051】
上記で説明された実施形態のいずれかにおいて、前記第1の種の微生物は、線毛、線維、鞭毛、及び/又はフィラメント形状を有する。
【0052】
上記で説明された実施形態のいずれかにおいて、前記第1の種の微生物は、複数の代謝経路を有する。
【0053】
上記で説明された実施形態のいずれかにおいて、前記第1の種の微生物は、自然発生する微生物種である。
【0054】
上記で説明された実施形態のいずれかにおいて、前記第1の主要代謝経路及び前記第2の主要代謝経路の各々は、細胞呼吸に関与する。
【0055】
これらの態様及び他の態様は、図面を参照して下記で更に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0056】
図1A】特定の実施形態に係る、エネルギー変換セルの概略図である。
【0057】
図1B図1A中に示されるセルの変化形の図である。
【0058】
図1C】例示的な光化学系の図である。
【0059】
図1D】特定の開示される実施形態に係る、電極及びバイオフィルムを有する微生物拘束エンクロージャの図である。
【0060】
図1E】微生物拘束エンクロージャのために多層バイオフィルム内に実装され得る2つの層の図である。
【0061】
図1F】微生物ベースのメタノール燃料電池用のコンポーネントの配置を示すプロセスフローダイアグラムである。
【0062】
図1G】特定の開示される実施形態に係る、複数の微生物拘束エンクロージャの図である。
【0063】
図1H】特定の開示される実施形態に係る、電極上の微生物拘束エンクロージャの図である。
【0064】
図1I】特定の開示される実施形態に係る、実行され得る動作を示すプロセスフロー図である。
【0065】
図2A】バイオフィルム上に形成されたフィラメント形状の1つの例の図である。
【0066】
図2B】表面上に微生物を有するバイオフィルムの概略図である。
図2C】表面上に微生物を有するバイオフィルムの概略図である。
図2D】表面上に微生物を有するバイオフィルムの概略図である。
【0067】
図2E】微生物の例の概略図である。
図2F】微生物の例の概略図である。
【0068】
図2G】微生物の間の連結性の概略図である。
【0069】
図2H】微生物のフィラメントに沿った電子流の図である。
【0070】
図3A】基板表面上の様々な形状のバイオフィルムの図である。
図3B】基板表面上の様々な形状のバイオフィルムの図である。
図3C】基板表面上の様々な形状のバイオフィルムの図である。
図3D】基板表面上の様々な形状のバイオフィルムの図である。
【0071】
図4A】バイオフィルムが基板上に形成されたエネルギー変換セルの断面図である。
【0072】
図4B図4Aのエネルギー変換セル内のバイオフィルム及び基板の多孔質表面の図である。
【0073】
図5A】水平フォーマットにおける例示的なエネルギー変換セルの図である。
【0074】
図5B】例示的な3層変換セルフォーマットの図である。
【0075】
図5C】水平フォーマットにおけるエネルギー変換セル用の例示的な「パック」設計の図である。
【0076】
図5D】エネルギー変換セル内のバイオフィルム中の微生物の層の図である。
【0077】
図5E】特定の開示される実施形態に係る、使用され得る例示的なボルタセルの側面図である。
【0078】
図6】特定の開示される実施形態に係る方法において実行され得る動作を示すプロセスフロー図である。
【0079】
図7】異なる炭素含有アノードを有する例示的なエネルギー変換セルの図である。
図8】異なる炭素含有アノードを有する例示的なエネルギー変換セルの図である。
【0080】
図9】特定の開示される実施形態に係る、生物電気化学的ボルタセルとして実装され得る層の例示的なスタックの図である。
【0081】
図10】特定の開示される実施形態に係る、実行された実験において測定された電流を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0082】
下記の説明において、提示される実施形態の十分な理解をもたらすために、多くの具体的な詳細が記載される。開示される実施形態は、これらの具体的な詳細の一部又は全部を用いずに実施され得る。他のインスタンスにおいて、開示される実施形態を不必要に不明瞭にしないために、周知のプロセス動作は詳細に説明されていない。開示される実施形態は具体的な実施形態と併せて説明される一方、開示される実施形態を限定することは意図されていないことが理解されるであろう。
I.定義
【0083】
別段定義されていない限り、本明細書で使用される全ての技術的及び科学的な用語は、当業者によって共通して理解されるものと同じ意味を有している。本明細書に含まれる用語を含む様々な科学的辞書が、当業者には周知であり且つ利用可能である。説明されるものと同様又は同等の任意の方法及び材料は、開示される実施形態の実施に役立つ。
【0084】
直ぐ下に定義される用語は、本明細書を参照することによってより十分に理解される。定義は、特定の実施形態のみを説明し、本明細書において説明される複雑な概念を理解することにおいての援助をするべく与えられる。それらは、本開示の全範囲を限定するように意図されていない。具体的には、特定の組成、システム、設計、手法、プロトコル、及び/又は説明される試薬は、これらが当業者によって使用される状況に依存して変動し得るので、本開示がそれらに限定されないことが理解されるであろう。
【0085】
本明細書及び添付の特許請求の範囲において使用されるように、「1つの(a)」「1つの(an)」及び「当該(the)」の単数形は、内容及び文脈が別様に指示しない限り、複数の指示対象を含む。例えば、「1つのセル」と称することは、2つ以上のそのようなセルの組み合わせを含む。別様に示されない限り、「又は(or)」という接続詞は、ブール論理演算子としてのその正しい意味で使用され、選択肢における特徴の選択(A又はB、ここでAの選択はBとは相互排他的である)及び組み合わせた特徴の選択(A又はB、ここでA及びBの両方が選択される)の両方を包含する。
【0086】
「電子供与体」は、放射線(例えば、光)、化学的成分、機械的操作からのエネルギーの変換を含むプロセス、又は他のプロセスの一部分として電子を供与するコンポーネントである。本開示において、電子供与体の例は、光合成微生物及び非光合成微生物、光捕集アンテナ、及び色素を含む。
【0087】
「光捕集アンテナ」は、光エネルギーによって励起されることが可能である生化学的又は化学的構造である。対象となる、光は、アンテナが電気又は電気化学的エネルギーを生成することを可能にする状態へ、当該アンテナを励起し得る。場合により、光合成微生物は光捕集アンテナを含む。
【0088】
「色素」は、通常波長選択的吸収を介して光エネルギーによって励起されることが可能である、任意の組成物である。色素は、1つの光捕集アンテナであるか、又はそのコンポーネントである。色素は、合成的に又は生物学的に生成され得る。
【0089】
「非光合成微生物」は、光エネルギーを増殖及び代謝プロセスのために必要としない微生物細胞である。そのような微生物は、電子伝達コンポーネントを含み得、それらは、細胞膜及び/又は膜陥入及び/又は膜小胞及び/又は細胞器官の中に埋め込まれ得る。
【0090】
「光合成微生物」又は「光栄養微生物」は、増殖及び代謝プロセスのために光エネルギーを使用する微生物細胞である。そのような微生物は、通常、光エネルギー及び電子伝達コンポーネントを利用することが可能な光捕集アンテナを含み、それらは細胞膜及び/又は膜陥入及び/又は膜小胞及び/又は細胞器官の中に埋め込まれ得る。
【0091】
「化学栄養微生物」は、それらの環境内の電子供与体の有機又は無機酸化を使用して、増殖及び代謝プロセス用のエネルギーを生成する微生物細胞である。
【0092】
「有機栄養微生物」は、増殖及び代謝プロセスのために使用される1又は複数の代謝経路において、有機化合物を電子供与体として使用する微生物細胞である。
【0093】
「無機栄養微生物」は、増殖及び代謝プロセスのために使用される1又は複数の代謝経路において、無機化合物を電子供与体として使用する微生物細胞である。
【0094】
「従属栄養微生物」は、有機化合物を炭素ソースとして使用する微生物細胞である。
【0095】
「独立栄養微生物」は、二酸化炭素を炭素ソースとして使用する微生物細胞である。
【0096】
「バイオフィルム」は、表面に接着し、生物電気化学的エネルギー変換セルの機能を促進することが可能な1又は複数の微生物集団を含む微生物のフィルムである。バイオフィルムは、非微生物成分(例えば、細胞外基質)を含み得る。細胞外コンポーネントは、限定されないが、多糖類、例えば、キトサン及びカラギーナンを含む。
【0097】
「電子伝導性材料」は、電子伝導性材料の1つの場所から別の場所への、電子の移動を可能にする材料である。電子伝導性材料は、電子伝導性又は半導性であり得る。それは、正孔を伝導させ得る。
II.導入
【0098】
生物電気化学的エネルギー変換セルは、エネルギーを生成するための有効な代替案である。そのようなセルは、限定されないが、光合成生物、光栄養生物、化学栄養生物、化学有機栄養生物、化学無機栄養生物、光従属栄養生物、独立栄養生物、従属栄養生物、及びボルタセル内で利用するために捕捉可能なエネルギーを生成することが可能な他の生物を含む、様々な生物を使用できる。電子キャリアは、電子伝達鎖を介して励起電子を連続的に渡し、同時に、膜の全域のプロトン分離の組織的な取り組みを促進し、電位エネルギーを生成する。
【0099】
光合成微生物及び植物は、光エネルギーを他の使用可能な形態のエネルギーへと変換することにおいて非常に効率的である。光合成微生物は、光捕集色素及びアンテナシステム又は反応中心をそれらの膜の中に含み、光子によって供給されるエネルギーを利用する。
【0100】
非酸素発生型及び酸素発生型の2種類の光合成がある。非酸素発生型光合成は、歴史的に酸素発生型光合成に先立つと考えられており、酸素を生成しない。酸素発生型光合成は、植物及びシアノバクテリア内で生じ、HOを光合成栄養のために電子供与体として使用する。非酸素発生型光合成は、水素、硫黄、及び特定の化合物を光合成栄養のための電子供与体として利用し得る。
【0101】
最大の光利用の実証された能力は、海面の下ほぼ1マイルで、これらの微生物に最小限の光が到達する深海熱通気孔の中に存在する緑色硫黄細菌において特定されている。これらの微生物は、非酸素発生型光合成において残留光のほぼ100%を利用できる。
【0102】
使用可能なエネルギーを生成するための光合成微生物の使用は、主に、バイオ燃料生成に集中してきた。
【0103】
光合成微生物に加えて、又はそれに代えて、生物電気化学的エネルギー変換セルは海の深い領域内で発見され得るものを含む、化学栄養生物を使用し得る。また、生物電気化学的エネルギー変換セルは、炭素含有栄養を使用可能な形態のエネルギーへと変換することにおいて効率的な従属栄養生物を使用してもよい。
【0104】
いくつかの生物電気化学的エネルギー変換セルは、2以上の上記の種類の生物を含んでもよい。例えば、いくつかの生物電気化学的エネルギー変換セルは、エネルギー変換経路の生産物が同じ生物電気化学的エネルギー変換セル内の別の生物のエネルギー変換経路のためのエネルギーソースとして使用され得るエネルギー変換経路を有する生物を有してもよい。
【0105】
本明細書で開示されるのは、セルの性能(例えば、効率)を高めるためにバイオフィルムを利用する、微生物ベースの電気生成セルである。いくつかの実装において、バイオフィルムの組み込みは、現在の生物電気化学的エネルギー生成技術に比較して、当該セルが、低コストのエネルギー生産プロセス、及び高い光から電気への変換率を提供することを可能にする。バイオフィルムを有するセルは、バイオフィルムを使用して、セル内のエネルギー変換プロセスを制御し得、そのようなバイオフィルムが自然に生じ得る多様な地理的場所において実装され得る。セルは、地形、気候、季節、構造的な必要性等の要件に対応するようにカスタマイズ可能であり得る。特定の実施形態において、セルは生物電気化学的変換セル内の1つ又は複数の表面上に配置された1つ又は複数のバイオフィルムを有する。
【0106】
特定の実施形態において、ボルタセルは、バッファシステム、微生物細胞集団、微生物細胞集団の少なくとも一部分を運ぶ1つ又は複数のバイオフィルム、及び電流コレクタを格納する容器を含む。いくつかの実施形態において、ボルタセルはバッファシステム、微生物細胞集団、及び伝導性バイオフィルムを格納する容器を含む。いくつかの実施形態において、ボルタセルは、バッファシステム、微生物細胞集団、1つ又は複数のバイオフィルム、及び電流コレクタを格納する容器を含む。いくつかの実施形態において、ボルタセルは、光捕集アンテナ集団、バッファシステム、1つ又は複数のバイオフィルム、ミラー又は他の光学エネルギー誘導コンポーネント、及びレギュレータシステムを格納する容器を含む。いくつかのセル設計において、バイオフィルムは、電子伝達、イオン及び電子伝導性、及びセル内の他の機能を促進し得る。いくつかの態様において、ボルタセルは、光捕集アンテナ集団、バッファシステム、1つ又は複数のバイオフィルム、電子伝導性材料、ミラーシステム及びレギュレータシステムを格納する容器を含む。更に他の態様において、ボルタセルは、微生物集団、バッファシステム、1つ又は複数のバイオフィルム、レギュレータシステム及び電荷貯蔵デバイスを格納する容器を含む。レギュレータは感知及び制御フィードバック機能を有し得る。いくつかの設計において、セルは、光の存在なしでの電気生成能力を有する。いくつかの実装において、セルは、ソーラーパネルの中に配備される。
III.ボルタセルの実施形態
【0107】
図1Aは、1又は複数の微生物集団が中に存在する流体をその内部109に保持する格納容器107を有するエネルギー変換セル105を概略的に図示する。セル105は、容器107の上に嵌合されたオプションのカバー要素131も含む。要素131は、微生物集団が応答する波長範囲における放射に対して透明である。オプションで、セル105は、内部領域109内の微生物、電子供与体、及び/又は他のコンポーネントが透過性障壁111の反対側のコンパートメント113へと通過することを防ぐべく、容器107内に配置されているイオン透過性障壁又はセルセパレータ111を含む。透過性障壁111はオプションであり、場合により、単一の溶液だけが容器107内に与えられることが理解されるべきである。
【0108】
図1Aに戻ると、セル105は、コンパートメント109において、及び存在する場合、オプションでコンパートメント113において、イオン伝導性流体によって電子的に互いから分離されているアノード115及びカソード117を含む。流体は、液体、ゲル(ヒドロゲルを含む)又は基質であり得る。動作中、コンパートメント109内の微生物集団は、アノード115で回収される電子を生成し得る。これらの電子は、カソード117及びアノード115を結合している回路内の負荷119を通って流れる。いくつかの実装において、コンパートメント109内の微生物は、アノード115からプロトン又は他の正荷電種を受容する。
【0109】
図1Aに戻ると、コンパートメント113が使用される場合、それは別個の微生物集団を含み得る。いくつかの実装において、コンパートメント113内の微生物は、カソード117にプロトン又は他の正荷電種を供与する。いくつかの実装において、コンパートメント113内の微生物は、カソード117から電子、プロトン、又は他の負荷電種を受容する。コンパートメント109及びオプションのコンパートメント113内の微生物は、様々な機序によってエネルギーを変換する。様々な実施形態において、少なくともコンパートメント109内の微生物は、光栄養性である。
【0110】
示されるように、エネルギー変換セルは、1つ又は複数のバイオフィルムを含み得る。図1Aは、セル105の様々なコンポーネント上のオプションのバイオフィルムを図示する。バイオフィルム199a、199b、199c、及び199dを含むオプションのバイオフィルムは、アノード115、カソード117、及び半透性障壁111に、それぞれ隣接しており、場合により付着しているか、又は別様に接触している。アノード115におけるバイオフィルム199aは、電子伝導性を改善し、及び/又は電子がアノード115において回収されるときに他の機能を実行し得る。例えば、バイオフィルム199a内の微生物は、電子又は他の負荷電種をアノード115へ供与し得る。更に又は代替的に、そのような微生物は、プロトン又は他の正荷電種をアノード115から受容し得る。同様に、カソード117におけるバイオフィルム199bは、電子伝導性を促進し、及び/又は電子がカソード117から移動されるときに他の機能を実行し得る。バイオフィルム199b、199c、及び199d上に存在する微生物は、プロトン又は他の正荷電種をカソード117へ供与し得る。更に又は代替的に、そのような微生物は、電子又は他の負荷電種をカソード117から受容し得る。バイオフィルム199a、199b、199c、及び199d内の微生物は、1又は複数の機序によってエネルギーを変換することもできる。いくつかの実施形態において、微生物は光栄養性である。
【0111】
特定の実施形態において、流体システム121は、容器107に結合されており、オプションでコンパートメント109及び113のための別個のポートを有する。流体システム121は、様々な要素、例えば、コンパートメント109及び/又は113に対して補給用の流体を保持するための貯水槽、1つ又は複数のポンプ、1つ又は複数の圧力ゲージ、質量流量メーター、バッフル、及び同様のものを含み得る。流体システム121は、未使用のバッファ溶液及び/又は微生物をセル105へ提供し得る。それは、また、様々な制御剤のうちの1つ又は複数をこれらの流体に供給し得る。そのような制御剤は、酸、塩基、塩、栄養、染料及び同様のものを含み得る。1又は複数の塩は、溶液のためにpHバッファ剤として機能し得る。いくつかの場合、制御剤は、溶液を制御するために、化学的に、電気化学的に、及び/又は生化学的に関与し得る酸化還元種を含む。酸化還元種の1つの例は、硫黄含有種、例えば、硫化水素(HS)、二酸化硫黄(SO)、又は硫酸イオン(SO 2-)である。いくつかの実施形態において、微生物は、バッファ溶液内に含まれる場合よりも、バイオフィルム199a、199b、199c、又は199d内に含まれる場合の方が効率が良い可能性がある。
【0112】
セル105は、また、流体システム121を制御するコントローラ125と連動し得る。コントローラ125は、1つ又は複数の他の機能を有し得る。例えばそれは、アノード115、カソード117、流体システム121、及び/又はコンパートメント109及び113の中にそれぞれ設けられているセンサ127及び129を結合する回路のようなシステムの様々なコンポーネントからの入力を受信し得る。センサは、セル105に関する、任意の1つ又は複数の関連する動作パラメータを監視してもよい。そのようなパラメータの例は、温度、化学的特性(例えば、成分濃度及びpH)、光学的特性(例えば、不透明性)、電気的特性(例えば、イオン伝導性)、及び同様のものを含む。
【0113】
図1Bは、セル105の変化形を図示する。具体的には、図は、アノードプレート137、カソードプレート139、及びプレート137及び139の間にスペーサ143によって規定されるコンパートメント141を有する代替的なセル135を図示する。コンパートメント141内にはイオン伝導性媒体がある。アノードプレート137は、プレートの2つの側の間でのイオン伝送を可能にするが、微生物又は微生物成分の通過は許可しない半透性材料を含むか又はそれから構成され得る。アノードプレート137の上に設けられているのは、光子捕集アンテナを含む光栄養微生物の集団145である。オプションのバイオフィルム189a及び189bは、アノードプレート137及びカソードプレート139にそれぞれ、隣接している。バイオフィルムは、セル135の他の表面上に存在することも可能であることが理解されるであろう。
【0114】
光変換システムは、アノード及びカソードを含む回路において電子を移動させ電流を生成するように構成されているバイオフィルムに直接隣接して位置づけられたアノードを含み得る。回路は、配電網又は他のシステムのための変換モジュールに結合され得る。
【0115】
1つの形態において、開示される微生物エネルギー変換セルは、バッファシステム、光捕集アンテナ集団、及び1つ又は複数のバイオフィルムを格納する容器を含む。本開示のいくつかの態様において、セルは、光捕集アンテナ集団、バッファ、1つ又は複数のバイオフィルム、ミラーシステム及びレギュレータシステムを格納する容器を含み得る。
【0116】
いくつかの実施形態において、光変換システムは、低減された複雑性及びコストでの電気への光変換の改善された効率のために、光捕集アンテナコンポーネント集団及び1つ又は複数のバイオフィルムを含む。
【0117】
特定の実施形態において、光変換システムは、微生物由来光捕集アンテナ集団を包囲するバッファ電解質溶液を含み、集団は、複数の光捕集アンテナをコンポーネントごとに有し、ここでコンポーネント集団は、紫外線及び遠赤色光を含む幅広い波長範囲にわたって光を捕集する能力を有し、散光を含む、様々な強度にわたって光を捕集できる。集団は、光合成微生物及び非光合成微生物の混合物を含む1又は複数の微生物種、当該微生物由来の膜コンポーネント、又は光捕集アンテナコンポーネント及び電子キャリアコンポーネントを含む小胞を含み得る。
【0118】
いくつかの実施形態において、光捕集アンテナ集団は、光捕集色素又は電子キャリア分子及び反応中心を含む光化学系を含む。いくつかの実装において、光捕集アンテナ集団は、様々な異なる光捕集色素及び光化学系を含み、同様の電子キャリア分子を有し得る。
【0119】
いくつかの実施形態において、開示される微生物エネルギー変換セルは、バッファシステム、1又は複数の化学栄養微生物を含む微生物集団、及び1つ又は複数のバイオフィルムを格納する容器を含む。本開示のいくつかの態様において、セルは、1又は複数の化学栄養微生物、バッファ、1つ又は複数のバイオフィルム、ミラーシステム、及びレギュレータシステムを格納する容器を含み得る。
【0120】
いくつかの実施形態において、エネルギー変換システムは、低減された複雑性及びコストでの電気へのエネルギーソース変換の改善された効率のために、化学栄養微生物集団及び1つ又は複数のバイオフィルムを含む。
【0121】
いくつかの実施形態において、エネルギー変換システムは、低減された複雑性及びコストでの電気への炭素変換の改善された効率のために、有機栄養微生物集団及び1つ又は複数のバイオフィルムを含む。
【0122】
特定の実施形態において、エネルギー変換システムは、微生物集団を包囲するバッファ電解質溶液を含み、当該集団は複数の微生物を有し、ここで各微生物は様々なエネルギーソースを、様々な条件において、様々な代謝経路を使用して変換する能力を有する。微生物集団は、光合成微生物、非光合成微生物、化学栄養微生物、独立栄養微生物、従属栄養微生物、有機栄養微生物の混合物を含む1又は複数の微生物種、当該微生物由来の膜コンポーネント、又は電子キャリアコンポーネントを含む小胞を含み得る。
【0123】
電極で生じる化学的酸化還元反応は、外部の電気回路に電子を供与する(アノード)又はそれから電子を受容する(カソード)ことによって、化学的エネルギーを電気的エネルギーへと変換する。適切な電荷のイオンは、(酸化還元反応を介して)適切な電極で消費又は供与されて、局所的電荷バランス及び全体の電流を維持する(外部回路内の電子及びセル媒体(電解質)内のイオン)。
【0124】
生物学的生物(又はその成分)は、セルの動作に関与する。それらは(i)セルによって必要とされる電子及び/又はイオン伝導を促進し得、(ii)それらは電極でのエネルギー生成酸化還元反応に関与し得、及び/又は(iii)それらは外部ソースからのエネルギー(例えば、光合成微生物のための太陽光又は化学栄養生物のための化学的エネルギー)を捕集し、捕集したエネルギーを電極における酸化還元反応に関与し得る化学的化合物の形で提供し得る。
【0125】
特定の開示される実施形態において、バイオフィルムは、電子及び/又はイオン伝導を促進すること、エネルギー生成酸化還元反応に関与すること、及び/又は外部ソースからのエネルギーを捕集することが可能である。
【0126】
1つの例示的な光化学系は、図1C中に示されるように動作し得る。いくつかの実施形態において、光化学系は、生体の細胞膜内に存在する。いくつかの実施形態において、光化学系は、生体由来の膜内に存在するが、もはやその生物の一部分ではない。他の実施形態において、光化学系は、合成ミセル構造の中に組み込まれる。そのような構造は、当該技術分野において周知の技法、例えば、溶媒中の油及び脂質を界面活性剤を用いて超音波分解することによって作成され得る。結果として生じるミセル構造は、光化学系の必要なコンポーネントをスパイクされ得る。そのようなコンポーネントは、通常、反応中心、例えば、分子クロロフィルa、光捕集色素、及び電子間輸送分子を含む。特定の色素分子は、光捕集色素及び電子間輸送分子の両方として機能し得る。特定の実施形態において、光化学系の1つ又は複数の要素が、バイオフィルム又はボルタセルの同様のコンポーネントに設けられる。例えば、1又は複数の色素は、ヒドロゲル又は分岐ポリマー基質へ添加され得る。そのような基質の例は、アルギン酸塩、寒天、アガロース、ペクチン、ゼラチン、及びセファデックスを含む。
【0127】
光が微生物膜において光捕集色素に当たると、励起電子は、膜内の電子キャリアコンポーネント(図1C中のアンテナ補助色素)へと、及び電子を終端電子受容体に渡す電子間輸送コンポーネントへと、一方向に渡される。いくつかの場合、輸送コンポーネントはバイオフィルムである。電子は、微生物膜を出て、電子流を促進することを助け得るバイオフィルム上へ流れる。電子流は、次に、近くのアノード、例えば、金属プレート又はワイヤによって利用され、微生物の集団から出る電流の流れを最大化し得る。(1つの電極での)セルの一部分上の電子の正味の流量が(異なる電極での)セルの別の部分とは著しく異なる場合、電流が生成され得る。
【0128】
電子は、光化学系からアノードへ様々な手段によって流れ得る。場合により、微生物は、アノードにバイオフィルム又は他の接着性の構造体として直接付着される。そのような場合において、光化学系によって生成される電子は、直接光化学系からアノードへ移動する。他の場合、光化学系はアノードに付着されておらず、電子は溶液へと流れ、ここで電子は当該溶液中の媒体物によって又はセルの別の部分上のバイオフィルム、例えば、カソードに隣接するバイオフィルムによって捕捉及び伝達され得る。同様の実施形態において、電子は、アノードを溶液内の微生物又は他の光化学系を含む要素へリンクしている伝導性ネットワークに供給される。特定の実施形態において、光化学系は、光捕集アンテナに相当する。
【0129】
光化学系は、開示される実施形態に関し電子のソースとして頻繁に説明される一方、電子を生産する非光合成型生化学的プロセスが、光化学系の代わりに、又はそれに加えて使用されてもよい。従って、適切な場合、光化学系及び同様の用語のへの言及は、エネルギー変換セルにおいてアノードへの供与のために利用可能な電子を生産する代謝及び他の生化学的システムを含むとみなされ得る。
A.滅菌
【0130】
いくつかの実施形態において、生物電気化学的エネルギー変換セルは、1つ又は複数のコンポーネントがセル又は部分的に製造されたセル内に取り付けられる前又は後に、それらを滅菌することを含むプロセスによって製造される。
【0131】
本明細書で説明されるような生物電気化学的エネルギー変換セル用の開始材料は、微生物が導入されるときに、注目する微生物のみが変換セルに導入され、望ましくない微生物が導入されないように、無菌であるべきである。生物電気化学的エネルギー変換セルの動作中に、変換セルの外部の有害な微生物又は条件がセル環境及びデバイスに侵入することを防ぐように、セルは完全に密封されており、及び/又は閉鎖されている。
【0132】
1つの例として、生物電気化学的エネルギー変換セルの全ての部品は、無菌様式で作成及び製造され得る。例えば、アルミニウムアノードは、熱湯浴させ、次にエタノール又はイソプロピルアルコール噴霧を行い、次に乾燥させることによって滅菌され得、又は金属アノードは、高温の炉の中で1時間ベークすることによって滅菌され得る。ゲル媒体は、無菌脱イオン水を用いて製造され得、又は非無菌脱イオン水を使用して製造され、次にオートクレーブされ得る。ゲル冷却及び成型は、滅菌箔鋳型を無菌コンテナ内に覆い配置し、冷却チャンバ内に配置して形成され得る。炭素布は、70%エタノール又は殺菌スプレーに曝され得、次に乾燥される。コンテナ及びシーラントを含む予め滅菌された部品は、パッケージされ低スループットシェルフ内に貯蔵され、組み立て時にフードの下で開けられる。リード線は、エタノール又は殺菌スプレーに曝され乾燥され得る。
IV.ゲル及びポリマー電解質生物電気化学的エネルギー変換セル設計
【0133】
特定の実施形態において、生物電気化学的エネルギー変換セルは、オプションでバイオフィルム及び次にイオン伝導ポリマーを用いてコーティングされている1又は複数の金属又は非金属含有電極を有する。
【0134】
特定の実施形態において、生物電気化学的エネルギー変換セルはゲル又はポリマー電解質を有する。いくつかの場合、そのようなセルはオプションで、別個の液体電解質コンパートメント又は領域を有さない。アノード及びカソードの間のイオン伝導は、主に又はもっぱら、ゲル又はポリマー基質内で生じる。他の場合、そのようなセルは、液体電解質部分及びゲル又は固体電解質部分を有する。1つの例として、そのようなセルは、バイオフィルム及び当該バイオフィルム上にコーティングされたイオン伝導ポリマーを用いてコーティングされた又は部分的にコーティングされた電極を有し得る。構造体全体(電極/バイオフィルム/ポリマー)は、対電極とイオン接触している液体電解質と接触している。
【0135】
図1D及び図1Eはゲル又はポリマー電解質を有する生物電気化学的エネルギー変換セルを概略的に示す。図1Dは、アノード1017、オプションのバイオフィルム1099a、ポリマー電解質1016、オプションのバイオフィルム1099b、及びカソード1015を有するボルタセル1019の単純化した概略図を示す。例えばバイオフィルム1099b中の微生物が光合成微生物であるいくつかの実施形態において、カソード1015は透明である。図1Eは、アノード1117、バイオフィルム1199a、ポリマー電解質1116、液体電解質1105、オプションのバイオフィルム1199b、及びカソード1115を有するボルタセル1119の単純化した概略図を示す。
【0136】
電解質は、アノード及びカソードの間のイオンの伝導を可能にしつつ、電子の伝導をブロックする。電解質が固体又はゲルである(又はそれを含む)とき、当該電解質はセパレータと称され得る。イオンを伝導することに加えて、セパレータは電気的エネルギーを生成する電気化学的プロセスに関与する1又は複数の微生物にとって快適な環境を提供するために機能することができる。ゲル又はポリマーセパレータは、適切な寸法、例えば、微生物を収容するマイクロメートル規模の細孔を含み得る。細孔は、微生物を運び、及び/又はその移動(進入及び退出)を可能にし得る。
【0137】
特定の実施形態において、電解質又はセパレータは複数の成分を含み、それらの成分のうちの少なくとも1つは固体又はゲル状態であるイオン伝導基質である。そのような基質は、任意の様々な組成を有し得る。いくつかの実施形態において、水中に溶解したNaClが、イオン伝導性をもたらすために使用される(すなわち、電解質である)。これは、様々な微生物にとって好適な環境を提供し得る。いくつかの実施形態において、水中に溶解した塩は、イオン伝導性を提供する。いくつかの実施形態において、水ベースの電解質は、ゲル又はポリマーによって吸収される。ゲル又はポリマーは、いくつかの実施形態において、イオン伝導性である可能性がある。ゲル又はポリマーは、いくつかの実施形態において、イオン伝導性ではない可能性がある。いくつかの実施形態において、電解質は異なる種類のイオン、例えば、H+及びOH-を伝導するために使用され得る。特定の開示される実施形態のために選択される電解質は、伝導されるイオンに基づく、特定の燃料電池又は太陽電池の実施形態の化学反応に依拠し得る。例えば、水素燃料電池の実施形態が実装される場合、H+(プロトン)伝導電解質が使用され得る。
【0138】
好適なゲル状基質材料の例は、多糖類材料、例えばアルギン酸塩(例えば、アルギン酸ナトリウム)、アガロース、寒天、アクリルアミド、ポリアクリルアミド、グリセリン、グリセロール、ヒドロゲル、ゼラチン、ペクチン、PEG、セルロース類、核酸鎖、ポリプロテイン、合成ポリマー、セルロース、他のウィノグラドスキ無機培地、及びその混合物を含む。ゲル状基質材料は、バクテリアの増殖に対して成長可能な足場を提供し得る。いくつかの実施形態において、バイオフィルム基質はまた、カルシウムのソースを有し得るか、又はカルシウムが豊富なバッファ溶液の中にあり得る。
A.製造方法
【0139】
いくつかの実施形態において、電極はポリマーゲルによって包囲されるか、又はそれによってコーティングされ得る。そのような実施形態において、電極は鋳型へと敷設され得、それに溶融ゲルが塗布され硬化させられる。これによりゲル及び電極表面の間の直接接触が可能となる。
【0140】
いくつかの実施形態において、電極は硬化ポリマーゲルへと挿入され得る。そのような実施形態において、溶融ゲルは鋳型に塗布され硬化させられる。電極は次に、ゲルが鋳型から外されると、硬化ゲルへと挿入され得る。これにより、ゲルが不活性になるとゲル及び電極表面の間の直接接触が可能となる。
【0141】
いくつかの実施形態において、セルは、ポリマー膜を設け、ポリマー膜の両面に電極を塗布することによって製造され得る。電極の塗布は、限定されないが、印刷、コーティング、及び噴霧を含む任意の堆積技法によって実行され得る。
【0142】
いくつかの実施形態において、セルは、セルへと組み込まれ得る微生物を生成するための熱ソース、例えば、地熱ソースを含む。本明細書で説明される任意のセルの実施形態に関して、大気からの又は二酸化炭素生成ソース、例えば、車両又は燃焼発電所からの二酸化炭素消費は、特定の開示される実施形態と併せて利用され得る。
V.イオン伝導性ポリマーを使用する電極フォーマット
【0143】
イオン伝導性ポリマーは、他の電極コンポーネントと共に含まれる。集合的に、ポリマー及び他のコンポーネントは電極を形成する。イオン伝導性ポリマーは、アノード内で、カソード内で、又は両方で、使用され得る。イオン伝導性ポリマーは、カチオン伝導体、アニオン伝導体、又は混合アニオン及びカチオン伝導体であり得る。
A.アノードコンポーネント
【0144】
アノードは、(a)放電中に酸化され、電子を放出し得る電気化学的活物質、(b)オプションで電子伝導性材料、及び(c)オプションでイオン伝導性材料を含む。アノードは、通常は負の極性を有する電流コレクタと電気的に接触していてもよい。
1.イオン伝導材料
【0145】
アノードで生じる反応に応じて、イオン伝導性ポリマーは、アニオン、カチオン、又は両方を伝導し得る。金属含有アノードを使用する特定の実施形態において、アイオノマは水酸化物イオンを伝導する。例えば、アルミニウム金属電極は、水酸化物イオンを伝導するアイオノマを使用し得る。
【0146】
特定の実施形態において、イオン伝導ポリマーはカチオン伝導性ポリマーである。カチオン伝導性ポリマーは、カチオン(例えば、プロトン)をアニオンよりも優先的に伝導する。いくつかの実施形態において、カチオン伝導性ポリマーは、アノードから電解質へとカチオンを伝導し得る。カチオンは、使用されている電極の種類によって決まる。伝導されるカチオンの例は、水素イオン、アルミニウムイオン、及び亜鉛イオンを含む。伝導されるアニオンの例は、水酸化イオン、重炭酸イオン、及び重硫酸イオンを含む。化学的にイオン伝導性ポリマー基質は、ペンダントイオン基、例えば、スルホン酸基、ジスルフィド結合;芳香環構造;メチル基;リン酸基;水酸基;カルボニル基;アルデヒド基;ニトロキシル基;ニトロソニウム基;又は第四級アンモニウム基を有する有機ポリマーバックボーンを含み得る。イオン伝導ポリマーは、芳香環、二重結合、又は芳香環及び二重結合を含む主鎖を有し得る。芳香環を有するイオン伝導ポリマーは、ヘテロ原子を有してもよいし、存在するヘテロ原子を有さなくてもよい。主鎖が芳香環を含むがヘテロ原子を含まないイオン伝導ポリマーは、ポリ(フルオレン)、ポリフェニレン、ポリピレン、ポリアズレン、及びポリナフタレンを含む。主鎖が芳香環を含み芳香環内に窒素含有ヘテロ原子を有するイオン伝導ポリマーは、ポリ(ピロール)(PPY)、ポリカルバゾール、ポリインドール、及びポリアゼピンを含む。主鎖が芳香環を含み芳香環の外側に窒素含有ヘテロ原子を有するイオン伝導ポリマーは、ポリアニリン(PANI)を含む。主鎖が芳香環を含み芳香環内に硫黄含有ヘテロ原子を有するイオン伝導ポリマーは、ポリ(チオフェン)(PT)、及びポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)を含む。主鎖が芳香環を含み芳香環の外側に硫黄含有ヘテロ原子を有するイオン伝導ポリマーは、ポリ(p-フェニレンスルファイド)(PPS)を含む。主鎖が二重結合を含むイオン伝導ポリマーは、ポリ(アセチレン)(PAC)を含む。主鎖が芳香環及び二重結合の両方を含むイオン伝導ポリマーは、ポリ(p-フェニレンビニレン)(PPV)を含む。イオン伝導ポリマーは、直鎖多糖類であってもよい。イオン伝導ポリマーは、アニオン性コポリマー高分子電解質であってもよい。いくつかの実施形態において、アニオン性コポリマー高分子電解質は、イオン移動及びバイオフィルム構造の支持を援助し得る。イオン伝導ポリマーは、少なくとも1mS/cmの、アニオン及び/又はカチオンに対する特定の伝導率を有する。アニオン伝導ポリマーは、(依然としていくらかの少量のカチオン伝導があるが)主にアニオンを伝導するイオン伝導ポリマーである。カチオン伝導性ポリマーは、主にカチオンを伝導する(例えば、依然として偶発的な量のアニオン伝導があり得る)イオン伝導ポリマーである。様々な実施形態において、イオン伝導ポリマーは、ペンダントイオン基、例えば、スルホン酸基又は第四級アンモニウム基を有する有機ポリマーである。
【0147】
上記で説明されたようなポリマー又はゲル基質材料に加えて、電解質又はセパレータは、基質に水分補給し及び/又は膨らませる水、1又は複数のイオン種類、1又は複数の生体適合剤、及びその組み合わせを含み得る。1つの例において、細胞外多糖類が使用され得る。
【0148】
特定の実施形態において、ポリマー又はゲル電解質の厚さは、およそ0.025mm~10cmである。電解質の厚さは、セル内で使用される微生物によって決まり得る。いくつかの実施形態において、厚さはおよそ25μm~およそ250μmであり得る。
【0149】
しかしながら、いくつかの微生物は、この範囲よりも厚い層を使用し得る。
【0150】
ポリマー又はゲル電解質又は電極は、特筆すべき光学特性を有し得る。特定の実施形態において、電解質は、電磁スペクトルのUV、IR、及び/又は可視領域の一部又は全部における波長に対して透明であるか、又は部分的に透明である。このことは、光合成微生物を使用するシステムにおいて有益な特性であり得る。
【0151】
様々な実施形態において、微生物は、生物電気化学的エネルギー変換セルのアノード及び/又はカソードの中で運ばれており、及び/又はそれを介して移動する。本明細書の他の箇所で説明されるとおり、特定の微生物は、生物電気化学的エネルギー変換セルの動作を促進し得る。いくつかの場合、イオン伝導性ポリマーは、電極内に微生物を収容し得る細孔又は他の開口部を含む。いくつかの実施形態において、イオン伝導性ポリマーは、およそ0.1~10μmの平均断面直径又は他の断面寸法を有する細孔を含む。
2.電子伝導材料
【0152】
オプションでアノードは1つのコンポーネントとして電子伝導材料を含む。そのような材料は、電気化学的活物質及びイオン伝導性コンポーネントを含む他のコンポーネントと混合され得る。ここで説明される電子伝導性材料は、電子伝導性電流コレクタとは異なる。
【0153】
好適な電子伝導材料の例は、炭素、金属、有機電子伝導性材料、及び伝導性酸化物、窒化物などを含む。炭素が使用される場合、それは様々な形態、例えばカーボンブラック、グラファイト、グラフェン構造体、フラーレン構造体、例えばナノチューブなどであり得る。金属又は金属含有構造体が使用される場合、それはアノードで経験される化学的及び電気的条件下で不活性であるべきである。特定の実施形態において、電子伝導材料は伝導性酸化物である。いくつかの場合、伝導性酸化物は透明伝導性酸化物、例えば、インジウム酸化スズ又はフッ素化酸化スズである。
【0154】
いくつかの実施形態において、電子伝導材料は、絶縁バッキング材料、例えば、PVCリードワイヤを有するポリエチレンテレフタレート(PET)及び25%の炭素及び75%のポリエチレンを有する伝導性プラスチックフィルムを含み得る。材料は、20%の高重合体材料、59%のグリセリン、20%の水、及び1%の塩を有する伝導性ヒドロゲルを更に含み得る。
【0155】
いくつかの実施形態において、粒子又は電子伝導性材料の他の単位は、電子が電極内の場所の間を、又は電極及び他の生物電気化学的エネルギー変換セルコンポーネント、例えば、バイオフィルム、電解質、及び/又は電流コレクタの間を移動するための経路を提供する形状又は形態を有する。別のセクションにおいて、本開示はそのような電子伝導性材料の特性を更に説明している。そのような特性の例は、電子伝導性粒子の形状及び寸法を含む。更に、電子伝導性材料の場所は、それが電子を間で伝導するコンポーネントに基づいて選択され得る。
3.生物化学電気的活物質
【0156】
多くの異なる種類の電気化学的活物質がアノードにおいて使用され得る。これらのうちのいくつかは、本明細書の他の箇所で説明されている。特定の実施形態において、電気化学的活物質は金属、金属酸化物、及び/又は金属カルコゲニドである。アノード金属の例は、アルミニウム、亜鉛、銀、銀/塩化銀、炭素、ヒスチジン修飾した炭素、アルギニン又はポリアルギニン修飾した炭素、ヒスチジン又はポリヒスチジン、及び/又は双性イオン性部分によって修飾された炭素を含む。
【0157】
いくつかの実施形態において、燃料電池還元剤、例えば、水素又はメタノールは、アノードへと継続的に供給され得、当該アノードにおいてそれが酸化され電子を供与する。そのような実装は、メタノール又は水素を生成する微生物を利用し得る。メタノール酸化微生物は、メタノールをエネルギー用の炭素ソースとして使用する微生物である。いくらかのメタノール酸化微生物は、細菌及び真核生物ドメインのものであり得る。例は、ピキア・パストリス、ハンゼヌラ酵母菌、カンジダ属、トリコスポロン属を含み得る。更なる例は、https://academic.oup.com/femsle/article/300/1/1/528736で入手可能である、Steffen Kolb, Aerobic methanol-oxidizing Bacterial in soil, 300 FEMS Microbiology Letters 1, Nov. 2009, pp. 1-10内で説明されている。特定の微生物は、官能化炭素ドープ寒天/アルギン酸ナトリウムバイオフィルムと共にナフィオンを含む材料を使用する、燃料電池還元剤二重層設計において利用され得る。
【0158】
メタノール燃料電池は、2つの一般的方法、間接及び直接メタノール燃料電池でカテゴリ化され得る。図1Fは、特定の開示される実施形態に係る、メタノール燃料電池を形成するために使用され得るプロセスフローを示す。動作120において、メタノールは微生物反応を介して生産される。動作130において、メタノールは回収及び精製される。動作140において、水及び精製されたメタノールは、溶液内で混ぜ合わせられ、当該溶液は燃料電池アノードにフィードされる。ダイアグラム150は、アノード、電解質、及びカソードを有する直接又は間接メタノール燃料電池を示し、ここで電解質はアノード及びカソードの間に挟まれている。間接メタノール燃料電池は、改質メタノール燃料電池(RMFC)とも称され、これはアノードの上流でメタノールを水素及び二酸化炭素へと改質するメタノール改質器を有する。次に、H/CO混合物が、低濃度の一酸化炭素のような改質器汚染物質と共にアノードへフィードされる。Hはこの場合、アノードでの燃料である。他方で、直接メタノール燃料電池(DMFC)では、メタノール/水溶液が直接アノードへフィードされる。次に、メタノール/水溶液は燃料電池アノードで反応する。
【0159】
いくつかの実施形態において、無金属のポリマーベースの電極が使用されてもよい。ポリマーベースの電極は、ポリペプチドから形成されてもよい。ポリペプチドベースの電極は、酸化還元活性ペンダント基を有する非分解性脂肪族バックボーンを有してもよい。いくつかの実施形態において、ポリペプチドは酵素である。他の実施形態において、ポリペプチドベースの電極は、タンパク質分解及び加水分解活性から保護される。更に他の実施形態において、ポリペプチドベースの電極は、加水分解を受けアミノ酸を形成し、デバイスへのエネルギーソースとして、及び更に微生物集団への二次栄養ソースとしての両方で機能する。1つの例において、ポリペプチドバックボーンは、カソード伝導性材料であり得、一方でビオロゲン及びニトロキシドラジカル及び他の酸化還元活性基は、アノード伝導性材料であり得る。ポリペプチドベースの電極は、廃棄物ゼロプロセスのために必要な場合、簡単に分解されるという更なる利点を有し得る。また、分解されたアミノ酸及び他の成分は、再利用及び/又は再合成され、新しい電極を形成し得る。ポリペプチド有機ラジカルバッテリ材料は、更にNguyen et al., "Polypeptide organic radical batteries," Nature, Vol. 583, p. 61, May 6, 2021において説明される。
【0160】
別の実施形態において、自然界では核酸である無金属のポリマーベースの電極は、受容表面上に、又はそれ自体の層として形成され得る。DNAのキラリティーは、DNAバックボーンの負の電荷及び核酸塩基上の水酸部分を、電子移動を提供するように編成する。DNAの極性を生む配向は、特定の実施形態において有利であり得る。また、DNAは経時的に分解され、微生物集団のための栄養ソースとして機能し得る。
2.アノードの全体の組成
【0161】
示されるように、アノードは電気化学的活物質、オプションの電子伝導材料、及びオプションのイオン伝導材料、例えばイオン伝導ポリマーを含む。それは、アノードの電子的又は電気化学的特性に寄与しない他の成分を含み得る。そのような他の成分の例は、バインダ及び湿潤材料を含む。これらの成分の範囲又は相対的な量は、セル設計、使用される微生物、及び他の要因に応じて、もちろん変動し得る。
【0162】
特定の実施形態において、アノードは、およそ5質量%~およそ70質量%又はおよそ15質量%~およそ50質量%又はおよそ25質量%~およそ40質量%の濃度でイオン伝導材料を含む。特定の実施形態において、アノードは、およそ30質量%~およそ95質量%又はおよそ50質量%~およそ85質量%又はおよそ60質量%~およそ75質量%の濃度で電子伝導材料を含む。特定の実施形態において、アノードは、およそ40質量%未満、又はおよそ25質量%未満、又はおよそ10質量%未満の濃度で電気化学的活物質を含む。いくつかの実施形態において、アノードは、およそ0.1w/v(重量/体積)%~およそ55w/v%の濃度を有するイオン伝導材料を含む。そのような実施形態は、電気化学的セルの内側又は外側の微生物を含み得る。例えば、メタノール生産菌を有する直接メタノール燃料電池(DMFC)は、燃料電池の外側に微生物を有する。いくつかの実施形態において、アノード、セパレータ、カソード、及び包囲材料は、電気化学的セル反応に直接関与する微生物にとって友好的な環境を提供もし得る。
【0163】
特定の実施形態において、アノードは、およそ20質量%~およそ80質量%、又はおよそ30質量%~およそ70質量%、又はおよそ35質量%~およそ60質量%の濃度で微生物親和性材料を含む。特定の実施形態において、アノードは、およそ20質量%~およそ80質量%、又はおよそ30質量%~およそ70質量%の濃度で電子伝導性粒子を含む。特定の実施形態において、アノードは、およそ40質量%未満の電気化学的活物質、又はおよそ25質量%未満の電気化学的活物質、又はおよそ10質量%未満の電気化学的活物質を含む。いくつかの実施形態において、アノードは、いくらかのイオン伝導性を提供するために、水及び溶解したイオン、例えば、NaClに浸され得る。そのような実施形態は、電気化学的セルの内側の微生物を含み得る。しかしながら、このことは、更なる機能を提供する電気化学的セルの外側の微生物も含む可能性を排除しない(例えば、電気化学的セルの外側の微生物は、電気化学的セル及びその内側の微生物へ原料を提供し得る)。いくつかの実施形態において、アノード、例えば、本明細書で説明されたものを含むボルタセルは、更なる層、例えば、限定されないが、伝導性炭素層、金属層、透明伝導性層、及び/又はガス拡散層(GDL)を含み得る。
【0164】
いくつかの実装に関して、電子伝導性材料と比較して比較的少量の電気化学的活物質のみが使用される。例えばアノードは、炭素のパーセンテージと比較して比較的低いパーセンテージのアルミニウム粉末を有し得る。これは比較的少量の電気化学的活物質のみが電極の電位を設定するのに必要だからである。
【0165】
微生物が電気化学的エネルギー変換プロセスに顕著な貢献をすることを可能にするために、材料、例えば、アルミニウムにエネルギー変換及びセルの電気的特性を決定させるよりもむしろ、少量の無機電気化学的活物質のみが使用され得る。特定の実施形態において、電気化学的伝導性材料の電子伝導材料に対する重量比は、およそ1:1~1:5以下である。
【0166】
アノードは、任意の様々な形態を有し得る。例えば、アノードは、粒子の混合物、自立シート、又は基板上の層又はコーティングであり得る。いくつかの場合、シートは可撓性構造体、例えば、通常は膜電極アセンブリにおいて使用されるフィルムである。いくつかの場合、層又はコーティングは、インクとして塗布される。いくつかの場合、基板は電流コレクタである。
【0167】
いくつかの場合、1又は複数の微生物はアノードの動作を促進する。本明細書の他の箇所で説明されるとおり、バイオフィルムはアノード上に、又はその中に設けられ得る。
【0168】
特定の実施形態において、アノードの厚さは、少なくともおよそ25μmの厚さである。アノードの最大の厚さは、使用される微生物によって決まり得る。
【0169】
アノードは、特筆すべき光学特性を有し得る。特定の実施形態において、アノードは、電磁スペクトルのUV、IR、及び/又は可視領域の一部又は全部における波長に対して透明であるか、又は部分的に透明である。このことは、光合成微生物を使用するシステムにおいて有益な特性であり得る。いくつかの場合、透明電極は、透明伝導性酸化物、例えば、インジウム酸化スズ又はフッ素化酸化スズを使用する。
【0170】
いくつかの実施形態において、アノードは透明でない。いくつかの実施形態において、アノードは不透明である。
B.カソードコンポーネント
【0171】
カソードは、(a)放電中に還元され、回路から電子を受容し得る電気化学的活物質、(b)オプションで電子伝導性材料、及び(c)オプションでイオン伝導性材料を含む。
【0172】
特定の実施形態において、カソードは、例えば燃料電池における従来の空気電極と同様であり得る。それは、例えば、炭素粒子又はファイバ、及び疎水性材料、例えば、フッ素化ポリマー(例えば、PTFE)を有するガス拡散層を含み得る。それは、空気が電極に達するための流路も有し得、当該流路は任意の様々な経路を有し得る。1つの例において、流路は複数の平行な経路を含む。いくつかの場合、流路は曲がりくねった経路を辿る。いくつかの実装において、カソードは、エアカソードであり得、太陽スペクトルの大部分に対して不透明であるか、又は別様に非透明である。この理由のために、光栄養生物を使用する生物電気化学的エネルギー変換システムは、光栄養生物が配置されている領域、及び太陽放射がセルに接触する方向の間にカソードが配置されないように、設計され得る。いくつかの実施形態において、カソードは、インク又はペーストとして、炭素粒子及びナフィオンアイオノマを含む。これは、炭素、ナフィオン懸濁液又は溶液、及び溶媒によって支持される白金触媒を含むペーストを使用すること、及び白金を除去して炭素含有ペーストを形成することによって、製造され得る。ペーストは、イソプロピルアルコール中で混合され得る。いくつかの実施形態において、ナフィオンは、pHを変化させるため、生体適合性環境を提供するため、及び製造のコストを低減するために、ポリマー又はゲルで代替され得る。いくつかの実施形態において、微生物は炭素層内に組み込まれ得る。いくつかの実施形態において、炭素層は代替的伝導性炭素材料、例えば、グラファイト、グラフェン、又は炭素ナノ粒子から構成され得る。いくつかの実施形態において、伝導体は、例えば、金属粒子(例えば、銀)及び/又は伝導性金属酸化物を使用することによって、セル内の炭素を代替し得る。
【0173】
エアカソードは、空気へのアクセスを必要とする。いくつかの実施形態において、これは、カソードの少なくとも1つの表面又は面が空気に曝されている生物電気化学的エネルギー変換セル設計によって実現される。いくつかの水平構成セル設計において、空気電極の一部分は、電解質又はバッファを越えて延在し、空気と接触する。いくつかの実装において、空気は、例えば、空気をカソードへと押し流すポンプを介して提供される。
【0174】
水管理は、特定のセル設計、特にエアカソードを使用するものにおいて考慮すべき事項であり得る。一部の電極反応は、水を消費し、一部は水を生成する。更に水はセルから蒸発し得る。セル内の正味の水損失が存在する場合、セルに補充する水を提供するために、なんらかの機序が設けられ得る。いくつかの実施形態において、この目的のためにポンプが使用される。
C.電極を製造する方法
【0175】
1つの実施形態において、アノードは液体キャリア、例えば、エタノール、炭素粒子、規定された量のアルミニウム粉末又は他の電気化学的活物質、及びイオン伝導性ポリマーを含むカーボンインクとして調製され基板へ塗布される。インクが塗布された後、液体は蒸発させられ、基板上にアノードが形成される。例として、基板は電流コレクタ、ガラスシート、又は透明プラスチックシートを含み得る。
【0176】
別の実施形態において、液体のポリペプチド又はDNAが鋳型に塗布され、水の一部又はほとんどは、加熱、凍結乾燥、又は蒸発によって除去される。結果として得られる電極は、ゲル又は粉末であり得る。
【0177】
別の実施形態において、電極は特定の構造特性を有するバックボーン/表面上へ形成され得、バックボーン構造体/表面上へ噴霧又は堆積され硬化させられ得る。
【0178】
超音波処理又は同様の技法は、いくつかの実施形態において、カーボンインク及びアルミニウム粉末の分散を援助するために使用され得る。
【0179】
アルミニウムアノードの製造において、別個の電流コレクタが使用されなくてもよい。リード線は、製造中に、ゲルへと直接埋め込まれ得る。
VI.電極内の電子伝導性経路
【0180】
いくつかの実施形態において、生物電気化学的エネルギー変換セルは、電子伝導性経路を提供する電解質又は電極内の構造体を含む。これらの経路は、微生物種によって供与される電子の移動を促進する構造体として提供され得る。構造体は、供与される電子を、電極又は電極に関連するコンポーネント、例えば、電流コレクタに伝達する。いくつかの場合、構造体は、電子を、電極内の電気化学的に活性の酸化還元材料へ移動させる。
【0181】
電子経路を提供する構造体は、自然発生であるか、又は合成され、及び/又は電子経路を助けるために提供され得る。いくつかの実施形態において、構造体は、微生物集団及びそれらの対応する成長環境の選択に特有の、特定の特性を有するように意図的に形成される。いくつかの実施形態において、構造体は、電極それ自体の中で、例えば、生物電気化学的エネルギー変換セルが結合されている電気回路のために電子を受容するアノードの中で混合されている。代替的に、これらの材料は、電極の界面において、例えばアノード及び電解質の間の界面において、位置付けられ得る。
【0182】
電子経路は、任意の数の電子伝導材料から構成され得る。例は、炭素含有材料、金属、例えば銅、及び透明伝導性材料、例えばフッ素化酸化スズ及びインジウム酸化スズを含む。1つの例として、炭素含有材料は、炭素フラーレン構造体、例えば、ナノチューブであり得る。いくつかの実施形態において、構造体は電子サイフォンである。しかしながら、好ましい実施形態において、長さは、設計に基づいて変動し得、長さはユニット当たり5nm~5cmの範囲であり、コイル、円筒、点、ワイヤ、棒、線毛及びメッシュといった形状で変動し得、炭素、金属、バイオポリマーから構成され得る。
【0183】
いくつかの実施形態において、電子経路は粉末又は粒状材料として提供される。いくつかの実施形態において、それらは連続的な基板、例えばシート上に設けられる。シートは、例えば、透明伝導性酸化物を含み得る。いくつかの場合、シート状の構造体は、それにより大きな表面積を与えるためにエッチングされる。エッチングは、電子の動き又は動きの方向を助ける指又は線を作成し得る。
【0184】
電子経路を提供する構造体は通常、電子を1つの領域から別の領域へ伝達するための形状をしている。この目的で、それらはワイヤ状であるか、又はワイヤの形状であり得る。特定の実施形態において、それらは平均して、1より大きいか、又は3より大きいアスペクト比を有する。平均の粒子の長さ(電子伝達の方向)は、少なくともおよそ5ナノメートルであるか、又はおよそ5ナノメートル~500ミリメートルであり得る。
【0185】
そのような構造体は、生物電気化学的変換セルの伝導性コンポーネント、例えば、電子伝導性材料、アノード伝導性材料、カソード伝導性材料、及びイオン伝導性材料と直接又は間接に接触していてもよい。短絡を生む対電極との接触なしで、微生物のうちの1又は複数から電極への電子の移動を助けるのに役立つように、構造体は、選択及び形成される。電子伝導経路は、1又は複数の微生物が電子を供与し得る電極の近くの場所においてそれらを保持し、対電極への電子の伝達を回避することを助けるイオン伝導ポリマーと併せて使用され得る。
A.電子伝導経路を生物電気化学的エネルギー変換セル内に組み込む方法
【0186】
電子伝導経路を電極、バイオフィルム、電解質、又は生物電気化学的エネルギー変換セルの他のコンポーネントのうちの1つ又は複数のコンポーネントと混合することを含む実施形態。
【0187】
特定の実施形態において、アノードは調製され、エッチングされた透明伝導性材料、例えば、透明伝導性酸化物(例えば、インジウム酸化スズ)を有する基板に塗布される。エッチングは、化学的エッチング液、レーザ、又は材料を部分的に除去するための他の薬剤を使用して実施され得る。
VII.微生物拘束エンクロージャ(ケージ)
【0188】
特定の実施形態において、生物電気化学的エネルギー変換セルは、微生物をセル製造及び動作中に正しい位置に維持するために、1つ又は複数の微生物拘束エンクロージャ(場合により「ケージ」と称される)を使用して製造される。
【0189】
図1Gは、斜視図で微生物拘束エンクロージャ1800Aを示す。示されるように、構造体は微生物1810によって占有される領域を完全に閉鎖する。そのようなエンクロージャは、生物電気化学的セルの製造中に使用され得る。例えば液体又はゲル媒体中の1又は複数の種類の微生物は、エンクロージャ内に提供され得、次に生物電気化学的エネルギー変換セルの容器内に位置付けられ、その後オプションで基質形成材料を追加されることによって、バイオフィルム又はバイオフィルムの一部分へ変換される。図1Gは、斜視図で第2の微生物1820Aを有する第2の微生物拘束エンクロージャ1800Bを示す。
【0190】
図1Hは、電極1820Bを有する生物電気化学的エネルギー変換セル1800の多層バイオフィルム1801内のin situの微生物拘束エンクロージャ1800A及び微生物拘束エンクロージャ1800Bを示す。微生物拘束エンクロージャ1800Aは、ポリプロピレン材料又はホウケイ酸強化ガラスから構成される壁を有し得る。
【0191】
特定の実施形態において、エンクロージャはその壁内に細孔を有し、当該細孔は水又は他の流体がエンクロージャの内側及び外側の間を通ることを可能にする。しかしながら、細孔は通常、微生物が構造体の内側から外側へ通ることを可能にするには小さすぎる。そのような細孔は、およそ0.22μm未満の直径であり得る。また、細孔は、微生物のセルからの損失を防ぎながら、水流に適合する細孔径における柔軟性を可能にするフィルタで密封され得る。
【0192】
いくつかの場合、バイオフィルムを形成するためのプロセスは、開口面を有する微生物拘束エンクロージャから開始する。図1Iは、そのようなプロセス2001に係る、実行され得る動作を示すプロセスフロー図を示す。動作2003において、開口面を有する微生物拘束エンクロージャ、例えば、図1G中に図示される微生物拘束エンクロージャが提供される。動作2005において、バイオフィルムへと組み込まれるべき微生物を備える液体又はゲル媒体が微生物拘束エンクロージャの開口面へと注がれる。エンクロージャは、微生物培地の一部又は全部を囲う。オプションで、微生物拘束エンクロージャは微生物を製造中に内部に維持するために閉鎖される。動作2007において、エンクロージャ内の拘束された微生物はオプションで、基板又はバイオフィルムの基質を形成する材料と混合され、それへと組み込まれる。例えば微生物拘束エンクロージャは、アルギン酸塩及び/又はアガロース含有基質と混合されるか、又はその中へと位置付けられ得る。動作2009において、結果として得られるバイオフィルムは次に、ボルタ又は生物電気化学的エネルギー変換セルコンポーネントに適用される。動作2011において、バイオフィルム基質内の成分は次に、生物電気化学的エネルギー変換セルへと組み込まれ得る。
VIII.バイオフィルムの役割
【0193】
開示されるボルタセルは、各々がボルタセル内のエネルギー生成を促進する1つ又は複数の機能を有し得る1つ又は複数の場所におけるバイオフィルムを含む。バイオフィルムは、微生物コミュニティのための安定化要因として使用され得る。また、バイオフィルムは、電子伝達の効率を、固体表面上でそうすることで、高め得る。特定の開示される実施形態におけるバイオフィルムは、多くの異なる機能を実行する。
【0194】
いくつかの実施形態において、微生物は、セルによって必要とされる電子及び/又はイオン伝導を促進し、電極でエネルギー生成酸化還元反応に関与し、及び/又は外部ソースからのエネルギーを捕集し得る。これら役割のうちのいずれか1つ又は複数は、微生物がバイオフィルム内にない場合と比較してバイオフィルム内にそれらが存在する場合によりよく実行され得る。例えば、電解質又はバッファ媒体内に懸濁される微生物は、バイオフィルム内に配置されている場合に同じ機能を同じ微生物が実行することに比較して、低減されたエネルギー生成、低減された電子及び/又はイオン伝導、又はより遅い酸化還元反応を有し得る。
【0195】
バイオフィルムは、2以上の微生物がバイオフィルム上に存在する場合、栄養共生関係のための培地を提供し得る。例えば、同じバイオフィルム上で相補的経路を有する2の微生物は、第1の微生物の代謝経路によって生成された廃棄物が第2の微生物によってより効率的に消費されるので、共により多くのエネルギーを集合的に生成し得る。その例は、硫黄還元菌とペアになった硫黄酸化菌;窒素固定菌とペアになった窒素酸化菌;有機従属栄養生物とペアになった光合成菌(炭素固定菌)を含み得る。相補的経路を有する微生物の追加の例は、2018年10月2日に発行された米国特許第10,090,113号内で議論されており、これは相補的経路微生物の例を提供する目的で、その全体が参照によって本明細書に組み込まれる。他の例として、バイオフィルム内の2の生物は、任意の様々な種類の共生などに起因して、互恵的にやりとりし、より健康になり得る。
【0196】
バイオフィルム内で使用され得る例示的な微生物は、限定されないが、バシラス属、ロドシュードモナス属(例えば、ロドシュードモナス・パルストリス)、ジオバクター属(例えば、ジオバクター・スルフレドゥセンス)、アシディチオバシラス属、シェワネラ属(例えば、シェワネラ・オネイデンシス)、デスルフォバクター目、デスルフォビブリオ目、シントロフォバクター目、デスルフォトマクルム属、デスルフォスポロムサ属(Desulfosporomusa spp.)、デスルフォスポロシナス属(Desulfosporosinus spp.)、サーモデスルフォビブリオ属(Thermodesulfovibrio spp.)、サーモデスルフォバクテリア属、サーモデスルフォビウム属(Thermodesulfobium spp.)、アルカエオグロブス属、サーモクラジウム属(Thermocladium)、カルディヴァーガ属(Caldivirga)、プロテウス属、シュードモナス属、サルモネラ属、スルフロスピリルム属、デスルフォマイクロビウム属(Desulfomicrobium spp.)、ピュロバクルム属、クリシオゲネス属、ナイセリア属、エスケリキア属、エイケネラ属(Eikenella spp.)、コリネバクテリウム属、ロドスピリラム属、ロドバクター属、アクアスピリルム属、ピレルラ属(Pirellula)、ネンジュモ属、ヘリコバクター属、エンテロバクター属、フォトバクテリウム属、ブルセラ属、ボレリア属、アゾアルカス属、渦鞭毛虫門、ゾーザンテラ属、アゾトバクター属、パラバサリア類、エロモナス属、サーモコックス属、メタノピュルス属、サーモプラズマ属、ピュロコッカス属、メタノコッカス属、デスルフロコッカス属(Desulfurococcus spp.)、メタノクレウス属(Methanoculleus spp.)、アルカエオグロブス属、チオバシラス属、シネココッカス属、スピリラム属、スフェロチルス属、ルミノバクター属(Ruminobacter spp.)、ロゼオバクター属、ストレプトマイセス属、スピルリナ属、ツリガネムシ属、黄緑藻綱、プロピオニバクテリウム属、レプトスリックス属、フランキア属、プレウロカプサ属、クロロフレクサス属、ベギアトア属、アナベナ属、ウスチラゴ属、マグネトスピリルム属、モレラ・サーモアセティカ(Moorella thermoacetica)、デスルフォバクター属、デスルフォコッカス属、デスルフォビブリオ属、エリスロバクター属、サーモトガ属、ロドフェラックス属(Rhodoferax spp.)、ペロバクター属、カルボキシドサーマス属(Carboxydothermus spp.)、ローソニア属、サーモデスルフォバクテリア属、デスルフロモナス属、メタノフォリス属(Methanofollis spp.)、メタノサルキナ属、メタノスファエラ属、メタノサーモバクサー属、グループI(例えば、デュボスケリダ(Duboscquellida))及びグループII(例えば、シンディニウム目)アルベオラータからのクレン古細菌門/タウム古細菌門、ユーリ古細菌門、放散虫門が支配するプランクトン、及びオピストコンタ及びアルベオラータ、アルテロモナス・マクレオディイ「表面生態型(surface ecotype)」、ペラジバクター・ユビーク、ニトロソプミルス・マリティムス、クロロビウム属、クロロヘルペトン属(Chloroherpeton)、GSB1、プロクロロコッカス属、ポルフィロバクター属(Porphyrobacter)、イデユコゴメ属、フェオダクチラム属、クロマチウム属、ロゼイフレクサス属(Roseiflexus spp.)、及びポルフィロバクター属、その他、及びタイプIV線毛又は電子受容外膜コンポーネントを有する他の微生物(Reguera et al, 2006; Leang et al., 2010; Richter et al., 2012、これはその全体が参照によって本明細書に組み込まれる)を含む。
【0197】
バイオフィルム内で使用され得る微生物の具体例は、限定されないが、ロドフェラックス・フェリレドゥセンス、ラクトバシラス・アシドフィルス、ロドスピリルム・ルブルム、デスルフォビブリオ・デスルフリカンス亜種デスルフリカンス、ペプトストレプトコッカス・アナエロビウス、ロドスピリラム・センテナム、カトネラ・モルビ、ラクノスピラ科の一種、フォトバクテリウム・レイオグナティ、アロクロマチウム・ビノスム、ラクトバシラス・カセイ、フソバクテリウム・ヌクレアタム亜種ポリモーファム、ヘルココッカス・クンジイ、キューティバクテリウム・アクネス、ロドスピリルム・ルブルム、ヘルココッカス・クンジイ、アロクロマチウム・ビノスム、及びフェロヴァム・ミクソファシエンスを含む。表1は、これらの例及びバイオフィルム内に形成される場合に生物電気化学的ボルタセル機能を促進し得るこれらの微生物の特性の一覧である。
【表1】
【0198】
別の例において、太陽スペクトルの異なる領域を利用する2の微生物は、資源を求めて競合する必要なくエネルギーを変換することによって、共により多くのエネルギーを生成し得る。
【0199】
別の例において、異なる種類のエネルギーを使用する2の微生物は、バイオフィルムの存在から恩恵を受け得る。例えば1の微生物は、それらの環境からの電子供与体を酸化することによってエネルギーを得る化学栄養生物であり得、一方で別の微生物は、太陽エネルギーを使用する光栄養生物であり得る。
【0200】
別の例において、異なるソースを電子又は水素供与体として使用する2の微生物は、バイオフィルムが存在する場合に使用され得る。例えば、1の微生物は、有機栄養生物であり得、一方で別の微生物は、無機栄養生物であり得る。
【0201】
別の例において、異なる有機化合物をエネルギーとして使用する2の微生物は、バイオフィルムが存在する場合に使用され得る。例えば、1の微生物は従属栄養生物であり得、一方で別の微生物は独立栄養生物であり得る。
【0202】
別の例において、異なる触媒が関与する代謝経路を使用してエネルギーを得る2の微生物も利用され得る。例えば、嫌気性微生物は好気性生物と組み合わせられ得る。
【0203】
別の例において、電子伝導構造体は、微生物によって生成又は消費される電子が電極に接触し、それらがセルの短絡をもたらし得る対電極に接触しないことを確実にするように設計されている。電子伝導経路は、微生物が電子を供与し得る電極の近くの場所でそれらを維持することを助け、対電極への電子の伝達を回避するイオン伝導ポリマー電解質を使用して電子を伝導するために使用され得る。
【0204】
使用され得る2以上の微生物は、下記の種類の微生物のうち2以上を含む:光栄養生物、光有機栄養生物、光無機栄養生物、光有機従属栄養生物、光有機独立栄養生物、光無機従属栄養生物、光無機独立栄養生物、化学栄養生物、化学有機栄養生物、化学無機栄養生物、化学有機従属栄養生物、化学有機独立栄養生物、化学無機従属栄養生物、化学無機独立栄養生物、及び混合栄養生物。
【0205】
バイオフィルムと共に利用され得る微生物の具体的な組み合わせは、相補性、同じ又は同様の条件、例えば、温度、pH、塩分濃度、支配的なガス種、流体力学的流動といった条件の下での成長能力、化学種への抵抗、露光量、露光の種類、バイオフィルム環境(例えば、共通の細胞外基質を有している)、又はその組み合わせに基づいて選択され得る。
【0206】
2以上の微生物がバイオフィルム上に存在する場合の栄養共生関係を有するバイオフィルムの追加の例。
【0207】
いくつかの実施形態において、バイオフィルムは選択された微生物に適した環境を維持し得る特徴を含み得る。例えば、持続放出栄養物(炭水化物ディスク、ナノ及びマイクロペレット状アミノ酸、CO/Oガスカートリッジ)、バッファ剤(クエン酸、酢酸、リン酸カリウム、CHES、ホウ酸塩)、酸(塩酸、過塩素酸、氷酢酸、リン酸、硝酸)、又は塩基(水酸化ナトリウム、重炭酸ナトリウム、炭酸カルシウム、水酸化カリウム)を有するゲルが、特定の微生物に適した環境を最適化するために使用され得る。追加の例は、限定されないが、持続放出pH調整剤(例えば、双性イオン性化合物、例えば、ヒスチジン、及びバッファ材料、例えば、ホウ酸)及び持続放出栄養物を含む。ホウ酸は、好酸性微生物に適した長期の酸性環境を提供するために、バイオフィルムの合成物内に添加され得る。いくつかの実施形態において、ポリヒスチジンタグが使用され得る。
【0208】
いくつかの実施形態において、微生物は、微生物がバイオフィルム内にない場合には通常形成されることが予想されないバイオフィルム内の形態学的構造を形成し得る。使用される形態学的構造は、例えば、セルによって必要とされる電子及び/又はイオン伝導を高めること、電極でのエネルギー生成酸化還元反応の高められた反応率又は触媒作用、及び/又は外部ソースから捕集される増加したエネルギーによって、微生物の機能を改善する効率を改善し得る。いくつかの実施形態において、形成される形態学的構造は、電解質及び電極の間の伝達を促進する、電子、化学的、又はイオン伝達フィラメントである。
【0209】
いくつかの実施形態において、バイオフィルムは単一の種の微生物を含む。いくつかの実施形態において、バイオフィルムは2以上の種の微生物を含む。
【0210】
バイオフィルム内の微生物は、任意の特定の形状又はトポグラフィーを取り得る。いくつかの実施形態において、微生物は、バイオフィルム表面上でランダムに成長する。いくつかの実施形態において、微生物は、バイオフィルム表面上で優先的な構成で成長する。いくつかの実施形態において、微生物は、バイオフィルム表面上で互いの上に成長する。いくつかの実施形態において、微生物は、表面の共通の軸に沿って優先的に成長する。いくつかの実施形態において、微生物は、それらが各々自体で栄養の利用を最大化するために互いに結合するように配置される。
【0211】
いくつかの実施形態において、微生物は生物電気化学的ボルタセル内を浮遊する。
【0212】
いくつかの実施形態において、メタノールを生産する微生物(例えば、「メタン菌」)、又はメタノールを消費する微生物、又はその両方は、メタノール燃料電池実施形態内で使用され得る。いくつかの実施形態において、基質はペクチンから製造され得るか、又は寒天、アガロース、及び/又はポリアクリルアミドに添加され得、メタノール生産微生物は、メタン燃料電池実施形態内でメタノールを生成するために生育され得る。
【0213】
例示的なメチル栄養性微生物は、限定されないが、アルファ-、ベータ-、及びガンマプロテオバクテリア門、ウェルコミクロビウム門、フィルミクテス門、及び放線菌門;及び放線菌綱、スピロヘータ綱、アルファ-、ベータ-、ガンマ-、及びデルタプロテオバクテリア綱といった綱の、フィルミクテス門、バクテロイデス門、クロロフレクサス門、アキドバクテリウム門、ニトロスピラ門、ウェルコミクロビウム門、シアノバクテリア門、及びプランクトミケス門の、及び/又は古細菌ドメインのメンバーを含む。
【0214】
メタン菌は電気合成によって生育され得る。いくつかの実施形態において、メタン菌は、電気伝導性ナノワイヤ又は線毛に沿って、又はその上に、アノード又はカソードとの直接膜又は電極接触によって、又は細胞外電子キャリアの拡散によって、生育され得る。メタン菌は、エネルギーを保存するために、又は特定の代謝反応を光触媒するために、光子を使用して生育され得る。いくつかの実施形態において、メタン菌は、膜貫通イオンポンプ又は光触媒酸化還元反応のための発色団として機能し得る光活性共同因子を合成し得る。
【0215】
例示的なメタン菌目は、メタノピュルス目(例えば、メタノピュルス・カンドレリ)、メタノコッカス目(例えば、メタノコッカス・マリパルディス)、メタノバクテリウム目(例えば、メタノバクテリウム・サーモオートトロフィカム)、メタノサルキナ目(例えば、メタノサルキナ・マゼイ)、メタノミクロビウム目(例えば、メタノスピリラム・ヒュンゲイテイ)、メタノケッラ目(例えば、メタノケッラ・パルディコラ)、メタノマッシリイコッカス目(例えば、メタノマッシリイコッカス・ルミニュエンシス)、ハロバクテリウム目(例えば、ハロバクテリウム・サリナルム)、サーモプラズマ目(例えば、サーモプラズマ・ヴォルカニウム)、及びアルカエオグロブス目(例えば、アルカエオグロブス・フルギダス)を含む。メタン生成経路は、水素栄養性、メチル栄養性、カルボキシド栄養性、又は酢酸分解性であり得る。いくつかの実施形態において、特定のメタン菌目は、好気性好塩性従属栄養生物(例えば、ハロバクテリウム目)、好熱性従属栄養生物(例えばサーモプラズマ目)、又は嫌気性硫酸塩還元菌(例えば、アルカエオグロブス目)であり得る。例示的な水素栄養性メタン菌目は、メタノピュルス目、メタノコッカス目、メタノバクテリウム目、メタノサルキナ目、メタノミクロビウム目、及びメタノケッラ目を含む。例示的なメチル栄養性メタン菌目は、メタノサルキナ目及びメタノマッシリイコッカス目を含む。例示的なカルボキシド栄養性メタン菌目は、メタノサルキナ目である。例示的な酢酸分解性メタン菌目は、メタノサルキナ目である。
【0216】
図2Aは、微生物集団260を有するバイオフィルム299a内のフィラメント265aの1つの例を示す。
【0217】
図2Bは、表面201b上のバイオフィルム299b内に含まれる線毛280、微生物265bの1つの例を示す。例は、微生物が編成された様式で配置されているバイオフィルム構成内の電極表面上の、同じ種類の微生物の間の連結性の1つの例を示す。微生物の間の線毛280は、接続、例えば、物理的結合、電子シンク、電子移動、又は他の物質の移動を表し得る。様々な実施形態において、線毛は伝導体であるか、電荷を貯蔵し得るか、酸化還元反応を実行し得るか、又はその任意の組み合わせである。いくつかの実施形態において、線毛は構造をバイオフィルムへ与え得る。他のタンパク質は、線毛の代わりに、又はそれに加えて存在してもよい。
【0218】
図2Cは、2種類の微生物、すなわち、線毛281を有する第1の微生物265c及びフィラメント282を有する第2の微生物267aを含むバイオフィルム299cの1つの例を示す。この例は、全般的にアモルファスな不揃いの構造の微生物を示し、それはいくつかの場合にバイオフィルム299c内に存在し得る。限定されないが、線毛、鞭毛、及びフィンブリアを含む他のタンパク質は、線毛281及びフィラメント282の代わりに、又はそれに加えて使用され得る。
【0219】
図2Dは、2の微生物を有するバイオフィルム299dの1つの例を示し、ここで微生物はフィラメント283及び284が微生物265d及び267bの特定の面へ優先的に接続するように配向されている。これは、1の微生物が第2の微生物によって消費され得る廃棄物を生成する実施形態内で使用され得、その結果、優先的配向が第1の微生物の特定の面から放出される廃棄物が消費のために第2の微生物へ効率的に移動させられ得ることを可能にする。そのような実施形態において、第1の微生物の各々及び/又は第2の微生物の各々は、同じ資源を求めて競合しないように全般的に同じ種の他の微生物から離間して配置され得る。限定されないが、線毛、鞭毛、及びフィンブリアを含む他のタンパク質は、フィラメント283及び284の代わりに、又はそれに加えて使用され得る。
【0220】
バイオフィルムは、様々な種類の微生物を含み得、そのうちのいくつかは、1つ又は複数の線毛(例えば、図2Eの微生物269の線毛284において示される)を有し、そのうちのいくつかは、鞭毛(例えば図2Fのフィラメント285と共に鞭毛を有する微生物270において示される)を有する。線毛がpilAポリマーの場合の1つの例。線毛及びフィラメントは、電子シンクとして機能し、電子伝導性を可能にし、表面又は近くの微生物に結合するための物理的固定点として機能し得る。
【0221】
いくつかの場合、フィラメントは微生物の間の伝導性接続を提供し得る。図2Gは、2の微生物、すなわち、第1の微生物271及び第2の微生物272を示し、ここでフィラメント286は第1の微生物271及び第2の微生物272を接続している。3つのフィラメントが図2G中に図示されているが、1つ又は複数のフィラメントが微生物の様々な領域内で微生物を接続し得ることが理解されるであろう。
【0222】
バイオフィルムは、微生物の集団にわたってより効率的に移動する電子伝導性を可能にする。線毛又はフィラメント接続を有する微生物を有するセル内の電子流は、微生物がバイオフィルム内に配置されている場合、より効率的に流れ得る。例示的な電子流のダイアグラムは、図2H中に概略的に図示されている。図2Hにおいて、電子は電子伝達鎖210から結合部位220へ流れる。過剰な電子は、フィラメント240内に貯蔵される。電子が電子伝達鎖210から結合部位220へ流れる場合、それらはフィラメント230を流れて下り、フィラメント240内に貯蔵され得る。
IX.バイオフィルムの位置
【0223】
バイオフィルムは、ボルタセル内の様々な場所のいずれにおいても位置付けられ得る。位置は、ボルタセル自体の構成(例えば、図1A及び図1B中のボルタセルの異なる構成を参照)によって決まり得る。概して、バイオフィルムはボルタセル内の任意の表面に付着させられ得る。例は、電極、容器の壁、フィルタ及び障壁を含む。いくつかの場合、バイオフィルムは、陽性種が供与される表面、又は陽性種が受容される表面、又は陰性種が供与される表面、又は陰性種が受容される表面、又はその任意の組み合わせにおいて、又はその近くで形成され得る。いくつかの実施形態において、エネルギー変換セルと共に使用するために選択されるバイオフィルムの種類は、エネルギー変換セルの表面に対するその接着特性のために選択される。
【0224】
1つ又は複数のバイオフィルムは、アノードの表面上に、例えば、図1Aのアノード115上に示されるバイオフィルム199aのように、形成され得る。アノードの表面上に形成されるバイオフィルムは、表面上に直接育成され得る。アノードは、表面への接着を改善するようにテクスチャ加工又は処理の両方をされ得る。いくつかの実施形態において、接着層は、アノード上へのバイオフィルムの結合を促進するために、バイオフィルムを生育する前にアノード上に形成される。いくつかの実施形態において、バイオフィルムは、テクスチャ加工、処理、又は別様にアノードの表面を改良することなく、アノード上に直接形成される。バイオフィルムの組成は、アノードの表面の材料に応じて選択され得る。
【0225】
1つ又は複数のバイオフィルムは、カソードの表面上に、例えば、図1Aのカソード117上に示されるバイオフィルム199bのように、形成され得る。カソードの表面上に形成されるバイオフィルムは、表面上に直接育成され得る。カソードは、表面への接着を改善するようにテクスチャ加工又は処理の両方をされ得る。いくつかの実施形態において、接着層は、カソード上へのバイオフィルムの結合を促進するために、バイオフィルムを生育する前にカソード上に形成される。いくつかの実施形態において、バイオフィルムは、テクスチャ加工、処理、又は別様にカソードの表面を改良することなく、カソード上に直接形成される。バイオフィルムの組成は、カソードの表面の材料に応じて選択され得る。いくつかの実施形態において、電極の表面上の生物学的活性バイオフィルムは、フィルムコンポーネントへ微生物を添加することによって形態される。例えば、微生物は、溶融したヒドロゲル上へ直接添加され得、それは次に電極の表面上へ直接注がれる。
【0226】
1つ又は複数のバイオフィルムは、透過性障壁の表面上に形成され得、微生物集団(例えば図1Aの透過性障壁111の表面上のバイオフィルム199d)に曝されているか、又は別のコンパートメント内の微生物集団(例えば、図1A中のコンパートメント113に曝されている透過性障壁111上のバイオフィルム199c)に曝されているバイオフィルムの表面に面するエネルギー変換セルの内部に曝され得る。透過性障壁の表面上に形成されるバイオフィルムは、直接障壁に接し得る。透過性障壁は、障壁の表面上への接着を改善するために、テクスチャ加工又は処理の両方をされ得る。いくつかの実施形態において、接着層は、透過性障壁上へのバイオフィルムの結合を促進するために、バイオフィルムを生育する前に透過性障壁上に形成される。いくつかの実施形態において、バイオフィルムは、テクスチャ加工、処理、又は別様に透過性障壁の表面を改良することなく、透過性障壁上に直接形成される。バイオフィルムの組成は、透過性障壁の表面の材料に応じて選択され得る。
【0227】
1つ又は複数のバイオフィルムは、エネルギー変換セルのコンパートメント内で使用されるスペーサ、例えば、図1Bのスペーサ143上に形成され得る。スペーサの表面上に形成されるバイオフィルムは、表面上に直接育成され得る。スペーサは、表面の接着を改善するようにテクスチャ加工又は処理の両方をされ得る。いくつかの実施形態において、接着層は、スペーサ上へのバイオフィルムの結合を促進するために、バイオフィルムを生育する前にスペーサ上に形成される。いくつかの実施形態において、バイオフィルムは、テクスチャ加工、処理、又は別様にスペーサの表面を改良することなく、スペーサ上に直接形成される。バイオフィルムの組成は、スペーサの表面の材料に応じて選択され得る。
【0228】
1つ又は複数のバイオフィルムは、バイオフィルムがエネルギー変換セルの底部で生育され得るか、又は液体中に浮遊しているか又は懸濁され得る、1又は複数の微生物集団と接触できる限り、エネルギー変換セルの任意の他の表面上に、例えば、エネルギー変換セルの底部の1つ又は複数の領域上に、又はエネルギー変換セルのオプションのカバー要素上に形成され得る。
【0229】
1つ又は複数のバイオフィルムは、微生物集団と接触しているが、イオン伝導性媒体とは接触していないエネルギー変換セルの表面上に、例えば、微生物集団145に面する図1Bのアノードプレート137上に形成され得る。この表面上に形成されるバイオフィルムは、表面上に直接育成され得る。表面は、表面上への接着を改善するようにテクスチャ加工又は処理の両方をされ得る。いくつかの実施形態において、接着層は、表面上へのバイオフィルムの結合を促進するために、バイオフィルムを生育する前に表面上に形成される。いくつかの実施形態において、バイオフィルムは、テクスチャ加工、処理、又は別様に表面の表面を改良することなく、表面上に直接形成される。バイオフィルムの組成は、表面の表面の材料に応じて選択され得る。
【0230】
1つ又は複数のバイオフィルムは、1又は複数の微生物集団を含み得る液体の表面上に形成され得る。例えば、液体の表面上に形成されるバイオフィルムは、微生物集団が互いに結合又は相互作用し微生物の薄い基質を生成する場合に形成され得る。いくつかの実施形態において、液体の表面上に形成されるバイオフィルムは、なんらかの分子及び/又は細胞間結合によって共に保持される。
【0231】
バイオフィルムは、エネルギー変換セルの固体表面の表面全体の上に形成され得るか、又はエネルギー変換セルの表面上で、クラスタになって、又は不規則に、又は成形された領域内に形成され得る。バイオフィルムは、エネルギー変換セルのある表面においてはより厚く形成されるが、同じエネルギー変換セルの別の表面上ではより薄い可能性がある。
【0232】
様々なバイオフィルム又は様々な特性を有するバイオフィルムがエネルギー変換セルの同じ表面上に形成され得、互いから離間して配置され得るか、又は互いから分離され得るか、又は互いと接触し得る。
【0233】
バイオフィルムを配置する際の1つの考慮すべき事項及びバイオフィルムの特性は、電極ファウリングの可能性である。電極ファウリングは、バイオフィルムが電極の一部分をブロック又は別様に無効化する場合に生じ、ブロックされた部分においてその有効性を下げるか又は全く有効でなくする。例えば、バイオフィルムは、種の電極表面への、及び/又はそこからの伝達、又はイオン透過性セパレータを越えての伝達をブロックし得る。そのような種は、電極表面で起こる電気化学的反応に関与するか、又はそれを促進し得る。そのような種の例は、陽イオン、陰イオン、非電荷化学種、水分子、及び同様のものを含む。いくつかの実装において、電極ファウリングは、当該種を受容するバイオフィルムを使用することによって低減又は回避される。1つの例として、金属還元菌微生物は、アノードで電気化学的に酸化された金属を再生できる。そして下記で説明されるように、バイオフィルムは表面上の特定の領域、例えばアノード又はカソードの活性表面又はイオン透過性ボルタセルセパレータの表面に制限され得る。換言すれば、バイオフィルムは影響される表面の一部のみを占有する。
【0234】
バイオフィルムは、電極表面上の、又は電極表面に近接する一部の領域上にも存在するが、電極表面のための他の領域から排除され得る。図3A図3Dは、電解質又はバッファと接触する表面が視認者に面する電極の表面の視点からの、電極表面の特定の領域上のバイオフィルムの例を提供するが、一方で電極表面の他の領域の例は提供しない。図3A図3D中に図示されるバイオフィルムは電極の表面にわたって連続している一方、いくつかの実施形態において、バイオフィルムは電極表面上の様々な離間した領域上に形成され得ることが理解されるであろう。図3Aは、バイオフィルムが電極表面の指定された半分の領域を占有するような、電極315a上のバイオフィルム399aを示す。図3Bは、バイオフィルムが電極表面の角部の領域を占有するような、電極315b上のバイオフィルム399bを示す。図3Cは、バイオフィルム399cが電極315cの領域上に自由形の形状を取る、電極315c上のバイオフィルム399cを示す。図3Dは、バイオフィルム399dが電極315dの領域上におよそ円形の形状を取る、電極315d上のバイオフィルム399dを示す。電極の表面上のバイオフィルム構成及び占有領域は、これらの例に限定されず、バイオフィルム中の生物、電極の材料、及びバイオフィルムの全般的な構成に応じて変動し得ることが当業者によって理解されるであろう。
【0235】
示されるように、バイオフィルムはボルタセルの中の基板上に設けられるか、又は生育される。いくつかの実施形態において、基板は電極又はセルセパレータ自体である。いくつかの実施形態において、基板は別個の中間構造体であり、これは、いくつかの実施形態において、電極及びバイオフィルムの間に挟まれ得る。
【0236】
多孔性の、又は小さな斑点で覆われた表面は、表面積を増やし、バイオフィルムが占有するためのより多くの結合部位を提供する。材料は、ナノ粒子(金属、シリカ)、多孔質ヒドロゲル(アガロース、寒天、ニトロセルロース、メチルセルロース、ゼラチン、アルギン酸塩)及び粘液(多糖類)を含む。
【0237】
図4Aは、電極415及びバイオフィルム499の間の中間基板480を有する電極表面の1つの例の断面図を図示する。基板は、バイオフィルムを支持及び固定することを支援するように使用され得、一方で電解質が電極又はセルセパレータにアクセスすることを可能にする。いくつかの実施形態において、中間基板480は、多孔質であり得、その結果、バイオフィルム499が中間基板480に接着されている間でも、バイオフィルム499及び/又は中間基板480中の開口部は電解質の電極415へのアクセスを可能にする。
【0238】
中間基板は任意の好適な厚さを有し得る。基板上で、バイオフィルムは任意の好適な厚さへ生育され得る。多孔質中間基板は、特定の多孔性を有し得る。
【0239】
例示的な多孔質構造体は、図4B中に示される。この図は図4A中に図示される角度からである。中間基板480は、バイオフィルム499及び電極415の間に挟まれている。細孔470は、それを介して電解質が電極415と接触できるアクセスを提供する。この例において、細孔470はバイオフィルム499及び電極415の両方を通じて広がる。しかし、特定の開示される実施形態において、細孔はバイオフィルム499上にのみ、又は電極415上にのみ、又はバイオフィルム499及び電極415の両方上に出現し得るが、完全に重複して連続する細孔を電解質及び電極の間に形成しなくともよいことが理解されるであろう。
【0240】
基板が電極でない場合、基板は生体適合性ポリマー、セラミック、又は金属であり得る。
【0241】
いくつかの実施形態において、バイオフィルムが結合する基板が電極である場合、電極の電気化学的役割は、その構造及び組成を制限し得る。しかし、電極は、直接結合したバイオフィルムと親和的になる特定の特性を有し得る。例えば、電極は多孔質構造を有し得る。例示的な電極構造は、泡状、織布、フェルト、メッシュ、有孔、又は同様の形態を有する、炭素、金属、又はセラミック材料を含む。
X.水平電極セル設計
【0242】
一部の微生物は、自然に重力の影響下でコンテナの底部へと分離する。いくつかの場合、これらの生物は非運動性(amotile)である。換言すれば、それらはそれら自体の駆動力のもとに動き回る機能を備えていない。非運動性微生物は、駆動力を促進する構造体をしばしば含まない。運動性生物におけるそのような構造体の例は、線毛及び鞭毛を含む。
【0243】
非運動性微生物が生物電気化学的エネルギー変換セル内の特定の場所で必要とされる範囲で、その場所は水平方向に配向されたセルの底部に設けられ得る。例えば、非運動性微生物がそのようなセルのアノードで使用される場合、アノードは実質的に水平方向に配向され、セルの底部に位置付けられ得る。このようにして、生物は、それらが生物電気化学的エネルギー変換セルの動作を促進する電極の近くに優先的に存在する。生物は自然にセルの底部へ重力によって引き寄せられ得ることに留意されたい。
【0244】
水平方向に配向されたセルの別の機能又は潜在的な恩恵は、液体電解質の一部が(例えばカソードで押し流される空気との接触によって)蒸発する場合、電極又は少なくともセルの底部にある電極は部分的にさえ、空気に曝されないことである。電極が大気に曝される結果の他の困難の中には、大気に曝される表面領域が電気化学的エネルギー変換内で利用できないことがある。いくつかの実施形態において、水平方向に配向されたセルは、バイオフィルムを空気に曝すためにセルの鉛直状態を利用し、一方で電極が大気に曝されることから防ぎ得る。
【0245】
例示的な非運動性微生物綱は、コッシ綱及び非運動性バシラス綱を含む。非運動性微生物の具体例は、ブドウ球菌属、レンサ球菌属、バシラス属、シュードモナス属、クロレラ属、カサノリ属、チリモ及び他のものを含む。
【0246】
図5Aは、水平方向に配向されたセル505の断面の概略図を示す。エネルギー変換セル505は、その内部509中に流体、例えば、バッファを保持する格納容器407を含む。セル505は、容器507の上に嵌合されたオプションのカバー要素531も含む。要素531は、光合成微生物集団が応答する波長範囲における放射に対して透明であり得る。セル505は、この例において、バイオフィルム599によって互いから電子的に分離されたアノード515及びカソード517を含む。いくつかの実施形態において、バイオフィルム599は、微生物及び電極の界面の間の直接接触を可能にする電解質として機能する。いくつかの実施形態において、イオン伝導性媒体は、アノード515をカソード517から分離し得る。動作中に、バイオフィルム599中の微生物集団は、アノード515で回収される電子を生成し得る。これらの電子は、カソード517及びアノード515を結合している回路内の負荷519を通って流れる。セル505は、処理コントローラ525を含み得、流体システム521は容器507に結合されオプションでコンパートメント509のための別個のポートを有する。セル505は、また、流体システム521を制御するコントローラ525と連動し得る。コントローラ525は、1つ又は複数の他の機能を有し得る。例えば、それは、システムの様々なコンポーネント、例えば、回路結合アノード515、カソード517、流体システム521、及び/又はコンパートメント509内に設けられているセンサ527及び529からの入力を受信し得る。センサ527及び529は、セル505に関する、任意の1つ又は複数の関連する動作パラメータを監視してもよい。そのようなパラメータの例は、温度、化学的特性(例えば、成分濃度及びpH)、光学的特性(例えば、不透明性)、電気的特性(例えば、イオン伝導性)、及び同様のものを含む。
【0247】
容器507は、電極、例えば、容器507の底部に位置付けられたアノード517を含む。アノード517は、容器507の底部に配置された連続するシートであり得る。アノード517の端部は、障壁又は他の非伝導性媒体によって対電極又はカソード515から空間的に分離され得る。対電極(又はカソード)515は、様々な場所に配置され得る。対電極の1つの場所は、容器507の外周の周りである。包囲している対電極515は、自体が水平方向に又は鉛直方向に配向されてもよい。そのため、例えば、銅カソードは、セルの外周に線状に沿う銅の鉛直なシートであり得、これはディスク又は円筒形状のエンクロージャであり得る。別の例において、包囲しているカソードは、酸素(例えば、空気中の)の還元を可能にする炭素材料及び触媒を含む。示されるように、アルミニウム含有材料であり得るアノード517は、容器507の底部で水平方向に配向及び配置され得る。例えば、容器507が円筒型形状であり、その結果、容器507の底部が丸形、楕円形、又は円形の形状であり容器507の壁が鉛直である場合、カソード515は、容器507の底部に位置付けられるが、容器507の壁に平行に伸びている壁を有する円筒型でもあり得る。
【0248】
図5Bは3層水平設計:アノード層565/バイオフィルム599層/カソード層567を有するボルタセルの1つの例である。これらの層のいずれか又は全ては、ゲルの形態であり得る。いくつかの実施形態において、第1の層はアノード層565である。アノード層565は、イオン伝導性ゲル中にアルミニウム粉末560を含み得る。次の層は、バイオフィルム層599であり、これはアルギン酸塩及び/又はアガロースを含み得る。オプションの第3の層(図示せず)は、電子の伝達を防ぎ、微生物を正しい位置で保持するように機能し得るイオン伝導ポリマーのようなイオン伝導層を含む。最終層は、カソード層567である。カソード層567は、炭素層、金属含有層、例えば銅メッシュ、フェルト層、又はイオン伝導性ゲル基質であり得る。
【0249】
いくつかの実施形態において、アノードは電気陽性材料(カソード中の電気化学的活物質に対して)、例えば、金属を含む。いくつかの場合、アノードは、オプションで粉末の形態で、アルミニウムを含む。アルミニウム又は他の電気陽性材料は、イオン伝導ポリマーであり得るゲル中に配置され得る。いくつかの実施形態において、アルミニウム又は他の電気陽性材料は、均等に、又は層内に勾配として、分散され得る。いくつかの実施形態において、カソード組成は、銅(オプションでメッシュの形態で)、又は炭素(オプションで粉末の形態で)を含む。
【0250】
図5Cは、斜視図での、カソード層525、イオン伝導ポリマー、ゲル、又は液体(図示せず)、バイオフィルム599、及びアノード層577を含む、「パック」形態の容器597の水平構成の例である。いくつかの実施形態において、液体バッファ509が使用され得る。バッファは、いくつかの実施形態において、液体電解質であり得る。いくつかの場合、液体電解質は、イオン伝導媒体525を用いずに使用され得る。いくつかの実施形態において、バイオフィルム599は、アノード577及びカソード525の間の障壁として機能するための十分なゲル容量を有する。
【0251】
特定の開示される実施形態は、バイオフィルム中の微生物の増殖及び成長のために表面積を増やすために使用され得る。リード線は、ゲル媒体へと直接に、又はアルミニウムアノードに物理的に端部を結合することによって埋め込まれ得る。
【0252】
図5Dは、ゲル媒体でコーティングされたアルミニウムアノード767の上の、無菌ガーゼ799の層によって分離された、炭素布760を有する例示的なボルタセルの別の側面図を示す。リード線(アルミニウムリード線775及び炭素リード線765)は、炭素布/アルミニウムアノードに接続され、開けられた小さな開口部を介して通されている。これは、ゲル媒体をアノードの表面に沿って微生物が増殖することを確実にするための捕捉機序の両方として利用しつつ、また、バクテリア活動の望ましい分析測定値である電圧出力を促進しそれに寄与するために、当該バクテリア種に構造ネットワークを提供もしつつ、炭素布のためのよりよい空気のアクセスを可能にする。変調されたこのボルタセルのパラメータ及び特徴は、電圧出力ノイズ低減、信号減衰、溶液/バッファ再導入、及びバクテリア組み込みを含む。
【0253】
複数の例示的な水平セルフォーマットがここで説明される。
1.中央領域におけるアノード及び外周の周りのカソードを有する水平設計は以下を含み得る:
a.アノードはオプションで金属を含み、ここで、金属が酸化される;
b.カソードは、空気還元電極であり得る;及び
c.アノード上のバイオフィルム、オプションで光栄養生物を有し、及び/又はオプションで2つ又はより多くのサブ層を有する。
この実施形態において、アノード及びカソードは、物理的にそれらの構造によって、電解質として機能し得る物理的セパレータによって、又はその両方によって、分離され得る。
2.中心におけるカソード及び外周の周りのアノードを有する水平設計は以下を含み得る:
a.アノードはオプションで金属を含み、ここで、金属が酸化する;
b.カソードは空気還元電極であり得る;及び
c.アノード上のバイオフィルム、オプションで光栄養生物を有し、及び/又はオプションで2つ又はより多くのサブ層を有する。
この実施形態において、アノード及びカソードは、物理的にそれらの構造によって、電解質として機能し得る物理的セパレータによって、又はその両方によって、分離され得る。設計1及び2は、バイオフィルムが太陽放射へ曝されていることを可能にする。これはそれの上に太陽放射をブロックするカソードが存在しないからである。
3.3層スタックを有する水平設計は、以下を含み得る:
a.スタックの底部上のカソード;
b.中間層としてのバイオフィルム;オプションで光栄養生物を有し、及び/又はオプションで2つ又はより多くのサブ層を有する;及び
c.バイオフィルムの上のアノード。アノードは、少なくとも部分的に太陽放射に対して透明であり得、これにより放射が光栄養生物に達することを可能にする。
XI.バイオフィルム組成
【0254】
バイオフィルムの組成は、1又は複数の微生物、及び水及び1つ又は複数の他の材料を含み得る基質を含み得る。いくつかの実施形態において、基質は自然発生するポリマーを含む。いくつかの実施形態において、基質は合成ポリマーを含む。様々な実施形態において、基質は任意の1又は複数の材料、例えば、核酸、タンパク質、炭水化物、又はその任意の組み合わせの水和物を含む。自然発生する基質において、基質の1又は複数の成分は、バイオフィルムの微生物によって分泌又は別様に生成され得る。例示的な核酸基質材料は、RNA、及びDNAを含む。例示的なタンパク質基質材料は、PilA、フィンブリア、プロテイナーゼ、及び代謝酵素を含む。例示的な炭水化物基質材料は、デキストラン、及び他の多糖類を含む。別の例は、芳香族色素分子である。
【0255】
いくつかの実施形態において、バイオフィルム基質は、ヒドロゲルの形態で提供される。ヒドロゲルを形成するために使用され得る成分の例は、ペクチン及びアルギン酸塩(例えば、アルギン酸ナトリウム)を含む。いくつかの実装において、バイオフィルム基質は、およそ5~15重量%のペクチン、およそ1~8重量%のアルギン酸ナトリウム及び水を含む。いくつかの実施形態において、バイオフィルム基質は、およそ2~5w/v%の寒天を有する寒天組成物を使用する、およそ2~7w/v%のペクチンを含む。また、バイオフィルム合成は、特定のバクテリア株を層内に捕捉すること、及び規定されたATCC増殖条件に応じて、増殖促進材料(例えば、トリプシン大豆寒天(TSA)、HCl、HBO、など)を導入することも含み得る。
【0256】
ゲルは、粘性、半固体、又は固体であり得る。様々な実施形態において、ゲルは、イオン流及び栄養流を可能にするが、微生物のゲル基質から出る移動は許可しない多孔性を有する基質を含む。
【0257】
ゲルは、1つ又は複数の添加物を含み得る。添加物の例は、限定されないが、塩(例えば、海塩培地)、DNA(例えば、サケ精液DNA)、及び生理食塩水溶液、例えば、リン酸バッファ生理食塩水(PBS)を含む。1つの例示的な添加物は、タンパク質ソースである。例示的なタンパク質ソースは、タンパク質加水分解物、例えば、ペプトンであり得る。
【0258】
いくつかの実施形態において、特定の開示される実施形態用に使用されるゲル媒体のバクテリア特有の合成物は、好酸性菌用のゲル媒体の合成において、アルギン酸ナトリウム粉末、TSA、及び塩酸の利用を含み得る。
【0259】
いくつかの実施形態において、特定の開示される実施形態用に使用されるゲル媒体のバクテリア特有の合成物は、好中球用のゲル媒体の合成において、TSA粉末の利用を含み得る。
【0260】
下記はゲルの例示的な組成である:
例1. 1.25%アガロース+0.5%アルギン酸ゲル。
例2. 0.75%ゼラチン+0.5%アルギン酸塩+0.15%ペクチンゲル。
例3. 2%アガロースゲル。
例4. 0.5%アガロース+1%セルロース+0.25%アルギン酸ゲル。
例5. 1%サケ精液DNA+1.25%寒天ゲル。
例6. 1%サケ精液DNA+3.5%ポリアクリルアミドゲル。
例7. 8%ヒドロゲル。
例8. 1倍リン酸バッファ生理食塩水(PBS)の中に、最適な数の双性イオン性アミノ酸、例えば、ヒスチジンを含有する、5w/v%ポリペプチド。
例9. 1.25倍PBSの中の5w/v%サケ精液DNA
例10. 水の中の5%海塩培地
例11. ロズウェルパーク記念研究所(RPMI)培地の中の、50mM塩化ナトリウム(NaCl)
例12. ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)培地の中の、50mM NaCl
例13. ブレインハートインフュージョン(BHI)培地
例14. 溶原(LB)培地
例15. 1.0L蒸留水の中の、0.2g硫酸アンモニウム((NHSO)、0.5g硫酸マンガン(II)(MgSO)、0.25g塩化カルシウム二水和物(CaCl・2HO)、3.0gリン酸カリウム(KHPO)、2.0g酵母エキスを、硫酸(HSO)を使用して0.7の最終pHに調整し、121℃で15分間オートクレーブする。
例16. 4mLの0.025%レサズリンを有する976mL蒸留水の中の、1.5g塩化アンモニウム(NHCl)、0.6gリン酸ナトリウム(NaHPO)、0.1g塩化カリウム(KCl)、2.5g重炭酸ナトリウム(NaHCO)、0.82gの酢酸ナトリウム、10.0mLウォルフェのビタミン(Wolfe's vitamins)、10.0mLのウォルフェの金属(Wolfe's metals)を調製し、80%窒素(N)及び20%二酸化炭素(CO)の下で嫌気的にフマル酸塩なしの媒体に分注し、各々2mLの2つのチューブの1M(16g/100mL)フマル酸ナトリウムの中で121℃で15分間オートクレーブする。
【0261】
いくつかの実施形態において、個別のバイオフィルム層は薄く、バクテリア種、媒体、及び他の増殖要因を加えて好適な構造体を得るために、段階的層化様式でフィルムが導入される。
【0262】
いくつかの実施形態において、基質のコンポーネントは、架橋形態で提供される。架橋は、共有結合、静電結合、ファンデルワールス結合、水素結合、又はその任意の組み合わせの形態であり得る。
【0263】
通常、本明細書で使用されるバイオフィルムは、いくらかの量の水を含む。水は、バイオフィルム内の微生物によって生産され、ボルタセルの構築中に添加され、及び/又はボルタセル内に存在する電解質又はバッファから組み込まれ得る。いくつかの実施形態において、水は、バイオフィルムに機械的、生物学的及び/又は電気的特性を授ける。例えば、イオン伝導性水は、電解質、及びバイオフィルムがその上に存在する電極の間のイオン伝達を促進し得る。いくつかの場合、水は、バイオフィルム基質材料に、接着、機械的強度、又は、他の物理的特性を与える。いくつかの実施形態において、水は、バイオフィルムの中に、およそ60~90重量%の濃度で存在する。
A.多層バイオフィルム
【0264】
特定の実施形態において、ボルタセルは、異なる微生物を含む異なる層を有する、多層バイオフィルムを含む。いくつかの場合、異なる層内の微生物は、互いに相補的である。相補的微生物は、本明細書の他の箇所で説明される。
【0265】
いくつかの実施形態において、バイオフィルムはラミネート又は他の多層構造体として提供される。いくつかの場合、バイオフィルムは、1つはある種類の微生物を組み込むように構成され、別のサブ層は異なる種類の微生物を組み込むように構成されている、2つの異なるサブ層を有する。そのような実施形態は、2の異なる微生物が相補的特性を有する場合、適切であり得るが、互いと密接に混合されているか、又は直接接触している場合、不適である。
1.多層バイオフィルムの構造
【0266】
個別の層の物理的、化学的、及び生物学的特性は、層から層へ変動し得る。
【0267】
バイオフィルムそれ自体から結果として生じる抵抗を最小化するために、基質は、通常よりもずっと薄い、例えば、およそ0.5cm未満の、厚さを有し得る。更に、燃料電池のこの機能的態様のために、アルギン酸ナトリウムバイオフィルム基質の製造は、長期の期間、例えばおよそ3~およそ4週にわたって、柔軟性及び組成を維持する。いくつかの実施形態において、DMEM+CaClの、2%アルギン酸ナトリウム/ペクチン(1:1)溶液への30分の時間にわたる添加は、架橋という結果となる。
【0268】
組成は、株特有の微生物増殖のための更なる増殖要因において主に変動する。いくつかの例は、限定されないが、特定の微生物のために10mLの0.1MのHCl及びDMEMの添加、及びロドスピリルム・ルブルム微生物用のヴァン・ニールの酵母寒天の添加を含む。
【0269】
複数のバイオフィルムは、大きな水平表面領域にわたって直接物理的に接触し得る。バイオフィルムのスタック化/編成は、セルのために使用される複数の生物の関係性によって決まる。1つの例は、伝導性フィラメント状バイオフィルムの上の光合成バクテリアバイオフィルムを含む。
【0270】
いくつかの実施形態において、微生物のうちの1つは光合成生物であり、他は光合成生物ではない。そのような場合において、光合成生物は、光ソースにより近く位置付けられ得る。いくつかの実装において、このことは、光合成微生物は多層バイオフィルムスタックの上方の層の中にあるべきだということを意味する。
【0271】
バイオフィルムの各層の厚さ及び/又は組成は、層から層へ変動し得る。
2.多層バイオフィルムの多孔性
【0272】
いくつかの場合、サブ層は別々に製造され、異なる微生物が別々に層の中に組み込まれる。他の実施形態において、1つのサブ層は、別のサブ層内の細孔径範囲とは異なる細孔径範囲を有し得る。いくつかの場合、1つのサブ層は微生物それら自体を収容する細孔径を有し、一方で別のサブ層は微生物の小胞を収容する細孔径を有し、すなわち、当該別のサブ層は第1のサブ層より小さい細孔径を有する。様々な細孔径が、イオン流及び安定性を援助し得る。
【0273】
バイオフィルム内の微生物は、バイオフィルムの任意の様々な領域に位置付けられるか、又は分散され得る。そのような領域の例は、バイオフィルムがその上に存在する基板の2次元表面の部分を含み、バイオフィルムの連続する領域の間で、バイオフィルム内の基質内に埋め込まれるか、又は2つ以上のバイオフィルムの間で挟まれるか、又は液体中で懸濁されるかしている。いくつかの実施形態において、バイオフィルムは1つ又は複数の層を含む。いくつかの実施形態において、微生物は、層のサブセット内に優先的に配置される。例えば、微生物は1つ又は複数の層のうちの1つの中に優先的に配置され得る。いくつかの実施形態において、微生物は、2つ以上の層の中に配置される。例えば、図5Eはバイオフィルム599内の微生物層570の1つの例を示す。1つの層が示される一方、2つ以上の層がまた存在し得ることが理解されるであろう。いくつかの実施形態において、層は、バイオフィルム全体の表面にわたる位置に応じて、数又はサイズにおいて変動する。
【0274】
バイオフィルム内の微生物は、1cmあたりの微生物で測定される密度によって特徴づけられる。
3.多層スタックを製造する方法
【0275】
いくつかの実装において、個別の層は別々に製造され、次に組み立てられる。いくつかの実装において、第1の層、例えば、容器壁又は電極に最も近い層は、正しい位置で製造される。次に第2の層及び後続の層が第1の層上に製造される。特定の実施形態において、多層バイオフィルムの1つ又は複数の層は、本明細書の他の箇所で説明されるように、微生物エンクロージャを使用して製造される。
【0276】
各層は、in situで個別に製造される。いくつかの実施形態において、ポスト凝結スタック化は、構造上の懸念に起因して使用されなくてもよい。基質ゲルが合成されると、溶融した溶液は、特定のプロセス条件で、前の層の上に直接注がれる。例えば溶液は酸性溶液である。いくつかの実施形態において、溶液はアルカリ溶液である。バクテリア層捕捉は、成型前にゲルの冷却フェーズ中に生じる。超音波処理は、添加された材料コンポーネントの完全な分散を援助するために使用され得る。超音波処理は、バクテリア株が存在する場合は使用されない。
B.バイオフィルム微生物組成
【0277】
バイオフィルムは、様々な種類の微生物を含み得る。微生物の例示的な綱は、嫌気性、好気性、及び通性嫌気性微生物を含む。
【0278】
バイオフィルムは、相補的微生物の組み合わせを含み得る。2の微生物の組み合わが特定の相補的特性を有する場合、2の微生物は、相補的であり得る。例えば、相補的特性の1つの例は、硫黄酸化する微生物及び硫黄還元する微生物である。
1.微生物相補性の種類
【0279】
いくつかの場合、ある微生物の代謝経路が異なる微生物によって消費される生産物を生成するように、相補性は代謝経路に基づく。いくつかの場合、相補性はある微生物の、異なる微生物にとって有益な環境の生産及び維持に基づく。有益な環境は、特定の範囲のpH値又は本明細書で説明される他の条件であり得る。いくつかの場合、複数の微生物は、複数の生物がその中で成長する環境を生成する。
【0280】
特定の実施形態において、のうちの少なくとも1つの層の中の微生物は、電子を生成するか、又は別様に、生物電気化学的エネルギー変換プロセスに強く関与する。
【0281】
バイオフィルム構造を有利に利用し得る相補的微生物は、セクションVIIIに関連して上記で説明されている。
XII.バイオフィルム特性
1.微生物の選択
【0282】
バイオフィルムの種類の選択は、生物電気化学的セル及びその目的によって決まる可能性がある。バイオフィルム内で使用される微生物の選択を決定し得る別の要因は、限定されないが、微生物増殖条件、バイオフィルムが生育する表面、エネルギー変換セルの構成、及び生物電気化学的セル内の各微生物のための代謝経路を含む。
2.電気的特性
【0283】
バイオフィルムは、様々な電気的特性を呈し得る。いくつかの実施形態において、バイオフィルムは結合した表面上の正味の電荷を有する。荷電バイオフィルムは、逆荷電移動性種、例えば、電解質中のイオンの誘因及び/又は伝達を促進し得る。いくつかの実施形態において、バイオフィルムの基質は荷電コンポーネントを含む。いくらかの実施形態において、自然発生する荷電基質タンパク質、又は他のポリマーは、正荷電モノマのおかげで正味の正電荷を有する。例示的な荷電ポリマーは、リジンに富み、ヒスチジンに富み、及び/又はアルギニンに富むタンパク質又はペプチドを含む。負電荷基質コンポーネントの例は、負荷電モノマ、例えば、アスパラギン酸及び/又はグルタミン酸に富むタンパク質又は他のポリマーを含む。
3.機械的特性
【0284】
バイオフィルムは機械的特性を有し、そのうちのいくつかは、生化学的ボルタセル内のバイオフィルムの役割に影響し得る。例えばいくつかの実施形態において、生物電気化学的エネルギー変換セル内のバイオフィルムは、基板表面に強く接着し得る。接着力は、コーティング接着用の標準検査、例えば、スクラッチテストによって測定され得る。
【0285】
バイオフィルムの寸法及び他の物理的特性は、微生物、基質、及びバイオフィルムの他のコンポーネントによっても決まり得る。多層構造体の中のバイオフィルム層の各々の層の厚さは、少なくともおよそ0.5cmの厚さであり得る。いくつかの実施形態において、バイオフィルムは特定の表面粗さを有し、表面粗さは、電解質と接触している露出した表面上で測定される粗さを指す。いくつかの実施形態において、バイオフィルムの厚さはおよそ10~300マイクロメートルである。
4.多孔性
【0286】
バイオフィルムは、特定のトポグラフィー及び/又は多孔性も有し得る。多孔質バイオフィルムは、特定の最大断面寸法の細孔又は開口部を有し得る。特定の実施形態において、バイオフィルム基質内の細孔は、およそ10nm~10μmの平均又は中央細孔径を有する。機能的に、バイオフィルムの細孔径は、バイオフィルム内に組み込まれる微生物のサイズ又はサイズ範囲に一致し得る。いくつかの実施形態において、細孔径はバイオフィルム内の微生物によって生成される小胞のサイズに一致する。特定の実施形態において、微生物を収容するための細孔径は、平均しておよそ1~100マイクロメートルであり得る。特定の実施形態において、微生物小胞を収容するための細孔径は、平均しておよそ10~100ナノメートルであり得る。
XIII.バイオフィルムを作成する方法
【0287】
様々な方法が、バイオフィルムを作成するために使用され得る。バイオフィルムは、ゲル状物質上に、又はそれを使用して製造され得る。ゲル状物質は、アルギン酸塩、寒天、アガロース、ペクチン、ゼラチン、及びセファデックスを含む。1つの例において、バイオフィルムは、ヒドロゲル形成分子を使用してヒドロゲルを製造することによって形成される。例えば、藻類培養物及びアルギン酸ナトリウムは、濡れた状態で均質化及び混合され、次にフィルタリングされ、回収されてアルギン酸塩ヒドロゲルを形成し得る。ヒドロゲルは、リンス及びフィルタリングされて、バイオフィルムパッドを形成し得る。いくつかの実施形態において、バイオフィルムパッドは、それらの中に捕捉された微生物を有する。いくつかの実施形態において、バイオフィルムパッドは微生物がその上で生育できる構造体を形成する。アルギン酸塩に対する代替は、限定されないが、ゼラチン及びペクチンを含む。いくつかの実施形態において、アルギン酸塩及びペクチンの混合物が使用され得る。例えば、バイオフィルムパッドは、およそ3%及びおよそ15%の間のペクチン、及びおよそ3%~およそ7%のアルギン酸ナトリウムを有して形成され得る。いくつかの実施形態において、パッドはアルミニウムアノード上にコーティングされ得る。いくつかの実施形態において、均質化された液体混合物は、別個の鋳型への堆積のために使用されて、運搬可能バイオフィルムパッドを形成し得る。バイオフィルムは生物電気化学的ボルタセルの表面上に、互いに隣り合って、又は互いに重なって層状に、又はその組み合わせで、直接塗布され得る。いくつかの実施形態において、微生物は、エアロゾル懸濁液を使用して、例えば粉末コーティングによって、バイオフィルムパッドへ塗布され得る。
【0288】
図6はボルタセル内で使用するためのバイオフィルムを作成するために使用され得る複数の段階を含むプロセスフロー601を示す。図示されたプロセスは、1又は複数の前駆体又はコンポーネント材料がバイオフィルム基質のために提供される、動作603から始まる。いくつかの実施形態において、前駆体は、ポリマー及び/又はゲル形成材料である。いくつかの実施形態において、前駆体はそれに多孔質基質を形成させる特性を有する。
【0289】
いくつかの実施形態において、プロセスは、1又は複数の前駆体の化学的又は物理的化学的特性を修正してバイオフィルム基質を形成する。図6中で、これはオプションの動作605によって図示される。いくつかの実施形態において、修正は1又は複数のポリマー前駆体を反応させ、架橋基質を形成することを含む。架橋は、静電力、例えば、イオン又はファンデルワールス力を介し得るか、又はそれは共有結合を介し得る。いくつかの実施形態において、動作605は、形態的特性、例えば、多孔性又は表面粗さを変化させることを含む。いくつかの実施形態において、動作605は、物理的特性、例えば、湿潤性、及び/又は接着性を変化させる段階を含む。いくつかの実施形態において、動作605は、生物学的特性、例えば、1又は複数の種類の微生物との適合性(又は適合性の欠如)を変化させることを含む。1つの例として、微生物栄養は、基質の中に組み込まれ得る。修正は、物理的効果、例えば、熱、圧力(又は真空)、又は照射(例えば、UV照射)を加えることを含み得る。1つの実施形態において、修正は、まず前駆体をおよそ80~110℃の温度へ加熱すること、及び次におよそ20~50℃の温度へ組成物を冷却することを含む。そのような加熱及び冷却動作は、特定の前駆体、例えば、ヒドロゲル前駆体を架橋するために機能し得る。いくつかの実装において、動作605は、例えば前駆体がバイオフィルムの役割を実行するために修正が必要ない形態で提供されるので、実行されないことに留意されたい。
【0290】
バイオフィルム基質コンポーネントが提供されオプションで修正された後、プロセス601はオプションで、基質を、ボルタセル内で使用され得るバイオフィルム形状へと形成する。動作607を参照。この動作は、特定の実施形態では基質を最初にバイオフィルム基質コンポーネントを好適な形状へと形成せずにボルタセルコンポーネント上に直接形成するので、オプションである。動作607が実行されるとき、それは、溶融処理、溶液処理、又は固体状態処理を介してバイオフィルム基質を形成することを含み得る。いくつかの実施形態において、バイオフィルム形状は、成型すること、バイオフィルムを基板上に噴霧すること、溶融又は可溶化バイオフィルム基質を基板上へ注ぐこと、バイオフィルムをシート又は他の形状へと押し出すこと、固体バイオフィルム基質を圧縮すること、及び同様のものによって形成される。
【0291】
プロセス601は、バイオフィルム基質を、ボルタセル内で使用される構造コンポーネントへと適用する。動作609を参照。そのような構造コンポーネントの例は、本明細書の他の箇所で説明される。電極及び電解質セパレータは、使用され得る構造コンポーネントの例である。バイオフィルム基質を構造コンポーネントへ適用することは、バイオフィルム基質をコンポーネントの表面へ接着することを含み得る。接着することは、例えば、バイオフィルム及び/又はコンポーネント表面に接着剤を適用すること、溶融又は可溶化バイオフィルム基質とコンポーネント表面を接触させることなどによって、実現され得る。いくつかの実施形態において、予め形成されたバイオフィルム基質(例えば、オプションの形成動作607の結果得られる基質)は、最初に構造コンポーネントと位置合わせされ、次に接着される。
【0292】
いくつかの実施形態において、動作607及び/又は609は、2つ以上のバイオフィルム基質サブ層を有する、ラミネート又は他の多層構造体を作成するように実行される。他の箇所で説明されるように、そのようなサブ層は、様々な形態、化学的組成、生物学的組成を有し、異なる種類の微生物を収容するなどの可能性がある。
【0293】
プロセス601において、最終の図示される動作は、そのバイオフィルム基質を有するコンポーネントをボルタセルに取り付けるか、又は別様に提供することであり、ここで、平常動作中、バイオフィルム内の微生物は、電気を生産する電気化学的エネルギー変換を促進する。動作611を参照。コンポーネントは電極又は電解質セパレータである場合、電極又はセパレータは、そのバイオフィルム基質と共に、ボルタセルの境界を画定する容器の中に取り付けられる。
【0294】
図示されたプロセス601は、微生物をバイオフィルム基質へと組み込むプロセスを示していない。概して、微生物は、プロセス内の後続の動作が微生物を殺す又は実質的に傷つけない限り、プロセス内のいずれの時点でも組み込まれ得る。
【0295】
いくつかの実施形態において、1又は複数の微生物が、動作603において前駆体に提供される。いくつかの実施形態において、1又は複数の微生物が、基質修正動作605中に提供される。例えば、ポリマー混合物は、加熱又は放射誘発架橋動作から冷却しつつ、微生物にスパイクされ得る。いくつかの実施形態において、1又は複数の微生物は、バイオフィルム基質形成動作607中に提供される。いくつかの実施形態において、1又は複数の微生物は、動作609において基質がコンポーネントへ適用されるとき、基質へと組み込まれる。いくつかの実施形態において、1又は複数の微生物は、動作611においてコンポーネントがボルタセル内に取り付けられる間又はその後に、基質へ提供される。1つの例として、基質含有コンポーネントがボルタセル内に取り付けられた後、微生物は、基質を微生物を含むバッファ又は他の媒体と接触させることによって、基質へと組み込まれる。接触は、媒体をコンポーネント上へ流すこと、媒体をコンポーネント上へ噴霧することなどによって、実現され得る。
【0296】
いくつかの実施形態において、微生物は2つ以上のフェーズにおいて適用される。例えば、いくつかの微生物は、動作605中に適用され得、いくつかの他の微生物は動作611中に適用され得る。
【0297】
バイオフィルムは、微生物が生物電気化学的ボルタセルの表面と接触する表面領域を増やす材料を含み得る。例えば、セルは、微生物がバイオフィルムをその上で成長させる表面領域を増加させるために、特定の表面上で炭素塗料を利用し得る。炭素塗料は、比較的低抵抗の材料だが、バイオフィルムがその上で成長するための広い表面領域を可能にする。バイオフィルムは、バッテリの内部抵抗に比較して低抵抗を有する表面上で成長させられ得る。
【0298】
1つの例が、図7中に提供されている。図7は、アルミニウムベースの塗料及び伝導性炭素塗料が混合されて、炭素塗料がその中にアルミニウムの粒子を含むアノードが形成されている構造体を示す。この例において、炭素塗料及びアルミニウム混成物はアノードとして機能し、ろ紙がそれ及び銅カソードの間を分離する。銅がこの例において示されているが、他の材料及び他の金属がカソード材料用に使用され得ることが理解されるであろう。示されるように、菌又は微生物は、カソード及び/又は炭素/アルミニウム混成物材料と接触している可能性があり、いくつかの実施形態において、炭素/アルミニウム混成物及びろ紙セパレータの間にある可能性があり、又はカソード及びろ紙セパレータの間にある可能性がある。いくつかの実施形態において、微生物は、バイオフィルム構成の前、その最中に、又はその後に、溶液中にある可能性がある。
【0299】
図8は、炭素塗料が使用されるが、図7中のようにそれをアルミニウムベースの塗料と混合することの代わりに、この例においては、炭素塗料はアルミニウムシートの両面にコーティングされ、図7のように、ろ紙セパレータによって銅カソードから分離されている、別の例を示す。アルミニウムシートの両面が炭素塗料でコーティングされているが、いくつかのインスタンスにおいて、アルミニウムシートの片面のみが、例えば、微生物に曝されている面のみがコーティングされていることが理解されるであろう。特定の理論に縛られることなく、図8中に図示されるもののようなセルがより低い電流密度の実施形態のために利用され得ると考えられる。実施形態及びその変化形の両方は、バイオフィルムをその上に形成するために、及び安定した電力を生成するためのより大きな産業サイズのツールへスケーリングするために、好適な可能性がある。
【0300】
図9は、太陽光又は人工光に曝されている窓層(例えば、ガラス)を含む、水平方向に配向されたボルタセルが図示される別の例を示す。窓層の下には、アノード寒天層;アルミニウムナノ粒子又はマイクロ粒子、透明伝導体粒子、親水性ポリマー又はゲルであり得る、アノード層;セパレータ又は電解質層;カソード寒天層;カソードガス拡散層(GDL);及びカソード空気流ハードウェアがある。層は再配置され得、各層のための材料は、特定の用途及び使用される微生物に応じて変動し得る。微生物は、アノード寒天層、アノード層、セパレータ、及びカソード寒天層のうちの1つ又は複数の中に存在し得る。
XIV.バイオフィルムを維持する方法。
【0301】
様々な方法が、生物電気化学的エネルギー変換セルの平常動作中にバイオフィルムを維持し、バイオフィルムの非微生物構築ブロックの作動供給を確実にするために使用され得る。
【0302】
様々な実施形態において、電極上に形成されたバイオフィルム、例えば、図7及び図8中で説明されたもの及びその変化形は、表面に再び水分補給した後に利用され得る。様々な実施形態において、本明細書で説明される生物電気化学的ボルタセルは、自立している。
【0303】
いくつかの実施形態において、特定の好酸性エネルギー生成微生物は、バイオフィルムとして使用され得る。微生物はその環境をアルカリ化し、代謝的に活性であることを止めるので、酸をシステムへと添加することは、微生物を若返らせ、その機能を維持する。
【0304】
図10は、経時的に好酸性エネルギー生成微生物の電気的エネルギーを測定する実験からの結果を示す。示されるように酸が再導入されたとき、電流中のスパイクが見られたが、これは、酸を導入することによって又は微生物にとって好適なバッファを利用することによって実行され得る、セル内のpHを維持することによって、好酸性エネルギー生成微生物の維持は活性化され得ることを示す。
XV.ボルタセル用の容器の特徴
【0305】
1つの実施形態において、ボルタセルの重要な機能は、光合成微生物及び光合成微生物膜の集団を使用して電流を生成するべく、光子を捕集し、セル内に含まれる励起電子を利用することである。セルは、微生物エネルギー変換セル培地及び微生物集団のための漏れ防止容器又はハウジングを含み得る。いくつかの実施形態において、微生物エネルギー変換セルは、更に、電極、センサ、半透性障壁、イオン性伝導性材料、ワイヤ及び同様のものを含む。
【0306】
通常、光合成微生物を利用するセルは、外部の放射を受容し、その中のエネルギーを微生物膜の光捕集アンテナの励起電子に変換するように、且つ微生物の各膜内の電子伝達鎖によって生成される結果として得られる高エネルギー電子の利用のための伝導性材料を提供するように設計されるべきである。
【0307】
開示される実施形態の微生物エネルギー変換セルは、環境に対して完全なアクセスを有し得、-20℃~65℃に及ぶ温度、及び完全な晴れから、曇又は霧で覆われるに及ぶ天気においての光子変換を可能にするように構築され得る。開示される実施形態の微生物エネルギー変換セルは、また、ポータブルであり得、ユーザによって決定されるように、環境に対して変化し得るアクセスを有し得る。
【0308】
特定の実施形態において、容器は、高温(例えば、およそ50℃以上)及びおよそ50Pa~およそ10kPa;およそ500Pa~およそ3kPa;およそ800Pa~およそ1.5kPaの内部圧力(大気圧を越える)に耐えることができる。いくつかの実施形態は、自然の生息環境が高圧環境、例えば、深海通気孔である微生物を使用することに留意されたい。
【0309】
いくつかの実施形態において、セルは、未使用のバッファ又は他の溶液のシステムへの流れがなく、大気気体交換への露出がないクローズドシステムである。他の実施形態において、それは、例えば、管類、バルブ及びポートのシステムを含む半クローズドシステムであって、未使用のバッファ、制御要素、未使用の微生物アンテナ集団及び/又は大気気体のそのシステムへの流入を可能にする。そのポートは、大気微生物汚染物質による上記システムの汚染を防ぐべく、0.22μmフィルタを含む。他の態様において、ポートは、より大きな大気微生物汚染物質による上記システムの汚染を防ぐべく、0.45μmフィルタを含む。
【0310】
更に他の実施形態において、セルは、環境に対して完全なアクセスを持つオープンシステムである。いくつかの場合、オープンシステムは、池、湖、川、貯水池、ストリーム又は他の開水域等の水域である。オープンシステムは、また、管類、バルブ及びポートのシステムを含み得、内在する未使用の微生物アンテナ集団の、オープンシステム微生物エネルギー変換セルへの循環を可能にする。
【0311】
浸水可能オープンシステムは、アノード及びカソード、及びイオン伝導を可能にするが微生物の伝達をブロックする半透性障壁を有し得る。障壁は、抗菌性コーティング(例えば、銀)であり得る。アノード及びカソードからの伝導性電気リード線が存在し得る。システムは、回路の一部、機械的支持構造の一部、又はその両方であるコンポーネントを含み得る。
【0312】
ボルタセルと隣接する容器は、例として、ポリマー、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、又はポリウレタン、ガラス、金属、又はその組み合わせを含む複数の材料のうちのいずれかから構成され得る。様々な実施形態において、容器材料は、気体及び液体不浸透性材料である。
【0313】
容器は、最も外側の層及び1つ又は複数の内側層を含む多層ユニットを含み得る。外側の層は、環境に対する保護を提供するべく、透明なプラスチック、ガラス、金属又は他の材料を含み得る。いくつかの実施形態において、容器は、電磁放射の様々なスペクトル波長の通過を可能にする最も外側の層を有する。いくつかの実施形態において、最も外側の層は、光エネルギーのほとんどのスペクトル波長に対して透過性であり得る。いくつかの実施形態において、容器の一部分は、光エネルギーのほとんどのスペクトル波長に対して不浸透性であり得る最も外側の層、及び光エネルギーのほとんどのスペクトル波長に対して透過性であり得る最も外側の層を含む容器の第2の部分を含み得る。
【0314】
いくつかの実施形態において、微生物エネルギー変換セルの外側境界を画定する容器は固い。固いエンクロージャは、およそ1.3GPa超の剛性を有するガラス又はポリマーを含み得、立方体、直方体、球体、柱体、円筒、円錐、錐台、ピラミッド又はプリズムに似た形状を有する。エンクロージャの壁の厚みは、およそ1mm~20cmの範囲にわたり得る。壁の厚みがおよそ5mm~25mmに及ぶエンクロージャが好ましい。
【0315】
容器の体積、形状、及び寸法は、それが存在するエネルギー変換システムの全体の構造を補完するべく選択され得る。いくつかの実施形態において、容器の体積は、およそ0.0000001m~およそ3m;およそ0.000001m~およそ2m;およそ0.0001m~およそ1.5m;およそ0.01m~およそ1m;又はおよそ0.1m~およそ0.5mの範囲であり得る。
【0316】
容器は、部品成型、射出成型、押し出し、レーザエッチング、粘着、半田付け、コーキング、及び他の好適な技法を含む標準方法で製造され得る。
【0317】
いくつかの実施形態において、微生物エネルギー変換セルの外側境界を画定する容器は、電気的絶縁特性を有するフレームである。本開示のいくつかの態様において、フレームに入れられたエンクロージャは、熱的絶縁特性を有し、泡状物質で充填されている。開示される実施形態のフレームは、グラスファイバ、アルミニウム、ステンレス鋼、グラファイト、ポリカーボネート、カーボンファイバ、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリエチレンテレフタレート、メタアラミドポリマー、又はコポリアミドを含む。
【0318】
他の実施形態において、微生物エネルギー変換セルの外側境界を画定するエンクロージャは、可撓性である。可撓性エンクロージャの例は、およそ1.2GPa未満の剛性を有し、アモルファス形状を有するか又は立方体、直方体、球体、柱体、円筒、円錐、錐台、ピラミッド、又はプリズムに似た形状を有する1又は複数の透明なポリマーを含む。好適なポリマーの例は、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリエチレンテレフタレート、メタアラミドポリマー、又はコポリアミドを含む。エンクロージャの壁の厚みは例えば、およそ0.5mm~25mmの範囲にわたり得る。いくつかの実施形態において、エンクロージャは、およそ1mm~10mmの範囲の壁の厚みを有する。
【0319】
いくつかの実施形態において、窓は、エネルギー変換セルへの光子エネルギー侵入のために、微生物エネルギー変換セル内に含まれている。窓は、およそ100nm及び1060nmの間の範囲の光に対して透過性であり得、ガラス、結晶複合材料及びポリマー、例えば、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)、ポリ(スチレンスルホン酸塩)、ポリ(4,4-ジオクチルシクロペンタジチオフェン)又は他の透明なポリマーを含み得る。特定の実施形態において、窓は、およそ1mm~30cmの厚さであり得る。いくつかの場合、窓は、およそ5mm~25mmの厚さの範囲である。
【0320】
いくつかの実施形態において、ガスケット又は密封材は、微生物エネルギー変換セル内に含まれ、セルのフレーム及び窓の間、及びセルのエンクロージャ及びポート又は管類の間の漏れ防止密封を提供するように使用され得る。好適なガスケット又は密封は、耐UVシリコーン、キュアインプレイス樹脂、エチレン‐プロピレンジエン、クローズドセルニトリル、又は他の耐UVガスケット又はシーラントを含み得る。
【0321】
1つの例において、格納チャンバは、連続する射出成型されたポリマー側壁及びバッキングユニット上へ嵌合されている耐UVガスケットに並列して置かれているガラスパネルを含む。連続する射出成型されたポリマー側壁及びバッキングユニットは、流体のための流入口及び/又は流出口及び/又は0.22μmフィルタ気体交換ポート、及びソーラーパネルの交流変換器への直流の集中的な流れのために電気配線に接続されている、嵌合された電子流導管プレートを有する。
【0322】
別の例において、容器形状は、中空ポリマーチューブである。いくつかの実施形態において、容器は、円筒;長方形;正方形;球体;柱状物体;又は面状物体として成形されている。いくつかの実施形態において、容器は、発酵槽;増殖チャンバ又は他の細胞培養装置として設計されている。
【0323】
特定の実施形態において、セルシステムは、ハウジングフレーム、光変換システムアダプタ、ACアダプタ及び電気コードを含む。いくつかの実施形態において、システムは、光変換システムのアレイを収容できる。他の実施形態において、ソーラーパネルは、ハウジングフレームが光変換システムの除去及び置き換えを可能にすることができるような様式で製造され得る。本明細書で開示されるようなセルは、機能的役割を果たすことができ、専用の外部電気負荷(例えば、グリッド)へ電流を提供するべくソーラーパネルにおいて使用され得、一方で本開示の他の態様は、デバイスに電流を提供するべくポータブルな光起電セルを使用する。
【0324】
いくつかの実施形態において、セルハウジングは、固いシステムであって、放射エネルギー受容役割に加えて構造的役割を提供する。
【0325】
特定の実施形態において、ボルタセルは、構造的及び機能的役割において使用され得、自動車及び航空機において、フード、ルーフ、サンルーフ、ムーンルーフ、トランク、フレーム、ウィング、窓又は他のものとして使用され得る。更に、セルは、建物において壁、壁カーテン、ルーフ、窓、ドア、歩道、パティオ、車路、デッキ、フェンス又は他のものとして使用され得る。
【0326】
他の実施形態において、セルハウジングは、エネルギー変換役割に加えて物理的役割を提供し得る可撓性システムである。可撓性微生物エネルギー変換セルに対する使用の例は:格納式要素、例えば、オーニング、帆、カバー、タープ、クローク、ケープ;及び折畳み式要素、例えば、ブランケット、バイザー、傘、パラソル、ファン及び衣類である。
【0327】
セルは、電子サイフォンも含み得る。電子サイフォンの例は、2018年10月2日発行の米国特許第10,090,113号において議論されており、これは、電子サイフォンの例を提供する目的で、その全体が参照によって本明細書に組み込まれる。
XVI.結論
【0328】
明確に理解する目的で、上述の実施形態は、いくらか詳細に説明されたが、添付の特許請求の範囲の範囲内で、特定の変更及び修正が実施され得ることは明らかであろう。本実施形態のプロセス、システム、及び装置を実装するための代替的な態様が多く存在することに留意されたい。従って、本実施形態は、限定するものではなく、例示としてみなされるべきであり、実施形態は本明細書で与えられた詳細に限定されない。
図1A
図1B
図1C
図1D
図1E
図1F
図1G
図1H
図1I
図2A
図2B
図2C
図2D
図2E
図2F
図2G
図2H
図3A
図3B
図3C
図3D
図4A
図4B
図5A
図5B
図5C
図5D
図5E
図6
図7
図8
図9
図10
【手続補正書】
【提出日】2024-02-08
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)電子を受信し、電子を外部回路又は負荷へ提供するためのアノード;
(b)電子を電気化学的反応へ供与するためのカソード;
(c)微生物を有するバイオフィルム、前記バイオフィルムは前記アノード又はカソードと電気的に接触している;
(d)前記アノード及びカソードと接触しているイオン伝導性媒体を有するバッファ;及び
(e)前記バイオフィルム及び前記バッファを少なくとも部分的に格納する容器
を備えるボルタセル。
【請求項2】
前記バッファをアノードコンパートメント及びカソードコンパートメントへと分離し、これにより電子供与体集団が前記カソードに接触することを防ぐイオン透過性且つ電子供与体不浸透性の障壁を更に備える、請求項1に記載のボルタセル。
【請求項3】
前記バイオフィルムは、前記アノード及び前記カソードのうちの少なくとも1つと接触している、請求項1に記載のボルタセル。
【請求項4】
前記バイオフィルムは、前記アノード、前記カソード、及び前記イオン透過性且つ電子供与体不浸透性の障壁のうちの少なくとも1つと接触している、請求項2に記載のボルタセル。
【請求項5】
前記バイオフィルムは、2以上の微生物を有する、請求項1に記載のボルタセル。
【請求項6】
前記バイオフィルムは、前記ボルタセルの中の基板上に形成されている、請求項1に記載のボルタセル。
【請求項7】
前記基板は、前記アノード又は前記カソードのいずれかである、請求項6に記載のボルタセル。
【請求項8】
前記基板は、前記アノード又は前記カソードの表面と接触している、請求項6に記載のボルタセル。
【請求項9】
前記バイオフィルムは、正荷電部分を有する、請求項1に記載のボルタセル。
【請求項10】
前記バイオフィルムは、負荷電部分を有する、請求項1に記載のボルタセル。
【請求項11】
前記バイオフィルムは、合成部分を有する、請求項1に記載のボルタセル。
【請求項12】
前記バイオフィルムは、非合成部分を有する、請求項1に記載のボルタセル。
【請求項13】
前記バイオフィルムは、1つ又は複数のフィラメント状付属器を有する、請求項1に記載のボルタセル。
【請求項14】
前記バイオフィルムは、嫌気性、好気性、及び通性嫌気性微生物からなる群から選択される、1又は複数の微生物綱を有する、請求項1に記載のボルタセル。
【請求項15】
前記バイオフィルムは、硫黄酸化微生物及び硫黄還元微生物を有する、請求項1に記載のボルタセル。
【請求項16】
前記バイオフィルムは、ロドフェラックス・フェリレドゥセンス、ラクトバシラス・アシドフィルス、ロドスピリルム・ルブルム、デスルフォビブリオ・デスルフリカンス亜種デスルフリカンス、ペプトストレプトコッカス・アナエロビウス、ロドスピリルム・センテナム、カトネラ・モルビ、ラクノスピラ科の一種、フォトバクテリウム・レイオグナティ、アロクロマチウム・ビノスム、ラクトバシラス・カセイ、フソバクテリウム・ヌクレアタム亜種ポリモーファム、ヘルココッカス・クンジイ、キューティバクテリウム・アクネス、ロドスピリルム・ルブルム、ヘルココッカス・クンジイ、アロクロマチウム・ビノスム、及びフェロヴァム・ミクソファシエンスからなる群から選択される1つ又は複数の微生物を有する、請求項1に記載のボルタセル。
【請求項17】
前記バイオフィルムは、天然ポリマー、合成ポリマー、DNAの水和物、タンパク質の水和物、又は炭水化物の水和物を含む基質を有する、請求項1に記載のボルタセル。
【請求項18】
前記イオン透過性且つ電子供与体不浸透性の障壁は電子伝導性である、請求項2に記載のボルタセル。
【請求項19】
前記イオン透過性且つ電子供与体不浸透性の障壁は前記アノードに接触する、請求項2に記載のボルタセル。
【請求項20】
前記アノードと電気的通信状態にある電流コレクタを更に有する、請求項1に記載のボルタセル。
【請求項21】
前記イオン伝導性媒体は第1の種の微生物及び第2の種の微生物を含み、前記第1の種の微生物及び/又は前記第2の種の微生物は、光回収アンテナを有する、請求項1に記載のボルタセル。
【請求項22】
前記第1の種の微生物は、第1のバンドにおいて電磁放射によって励起され、前記バッファの中の少なくとも1つの他の種の微生物は、第2のバンドにおいて電磁放射によって励起され、前記第1のバンド及び前記第2のバンドは実質的に重複しない、請求項21に記載のボルタセル。
【請求項23】
前記第1の種の微生物は、光栄養又は化学栄養微生物を有する、請求項21に記載のボルタセル。
【請求項24】
前記第1の種の微生物は化学栄養生物であり、前記第2の種の微生物は光栄養生物である、請求項21に記載のボルタセル。
【請求項25】
前記イオン伝導性媒体は、第1の主要代謝経路を有する第1の種の微生物、及び第2の主要代謝経路を有する第2の種の微生物を含み、前記第1の主要代謝経路は、炭素、窒素、リン、又は硫黄を含有する化合物を酸化して酸化化合物を形成し、前記第2の主要代謝経路は、前記第1の主要代謝経路によって生産された前記酸化化合物を還元する、請求項1に記載のボルタセル。
【請求項26】
前記イオン伝導性媒体は第1の種の微生物を含み、前記第1の種の微生物は、線毛、線維、鞭毛、及び/又はフィラメント形状を有する、請求項1に記載のボルタセル。
【請求項27】
前記イオン伝導性媒体は第1の種の微生物を含み、前記第1の種の微生物は、複数の代謝経路を有する、請求項1に記載のボルタセル。
【請求項28】
前記イオン伝導性媒体は第1の種の微生物を含み、前記第1の種の微生物は、自然発生する微生物種である、請求項1に記載のボルタセル。
【請求項29】
前記イオン伝導性媒体は、第1の主要代謝経路を有する第1の種の微生物、及び第2の主要代謝経路を有する第2の種の微生物を含み、前記第1の主要代謝経路及び前記第2の主要代謝経路の各々は、細胞呼吸に関与する、請求項1から28のいずれか一項に記載のボルタセル。
【請求項30】
(a)カソード空気流ハードウェア;
(b)カソードガス拡散層;
(c)カソード寒天層;
(d)アノード及びカソードと接触しているイオン伝導性媒体を有する電解質層;
(e)電子を受信し、電子を外部回路又は負荷へ提供するためのアノード層;
(f)アノード寒天層;
(g)窓層;及び
(h)微生物を有するバイオフィルム
を備える、ボルタセル。
【請求項31】
前記微生物は、前記カソードガス拡散層、カソード寒天層、電解質層、アノード層、アノード寒天層、及び窓層のうちの1つ又は複数の中に存在する、請求項30に記載のボルタセル。
【請求項32】
前記アノード層は、アルミニウムナノ粒子、アルミニウムマイクロ粒子、透明伝導体粒子、親水性ポリマー、及び親水性ゲルからなる群から選択される材料を有する、請求項30に記載のボルタセル。
【請求項33】
前記窓層はガラスを有する、請求項30から32のいずれか一項に記載のボルタセル。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0328
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0328】
明確に理解する目的で、上述の実施形態は、いくらか詳細に説明されたが、添付の特許請求の範囲の範囲内で、特定の変更及び修正が実施され得ることは明らかであろう。本実施形態のプロセス、システム、及び装置を実装するための代替的な態様が多く存在することに留意されたい。従って、本実施形態は、限定するものではなく、例示としてみなされるべきであり、実施形態は本明細書で与えられた詳細に限定されない。
(他の可能な項目)
(項目1)
(a)電子を受信し、電子を外部回路又は負荷へ提供するためのアノード;
(b)電子を電気化学的反応へ供与するためのカソード;
(c)微生物を有するバイオフィルム、前記バイオフィルムは前記アノード又はカソードと電気的に接触している;
(d)前記アノード及びカソードと接触しているイオン伝導性媒体を有するバッファ;及び
(e)前記バイオフィルム及び前記バッファを少なくとも部分的に格納する容器
を備えるボルタセル。
(項目2)
前記バッファをアノードコンパートメント及びカソードコンパートメントへと分離し、これにより前記電子供与体集団が前記カソードに接触することを防ぐイオン透過性且つ電子供与体不浸透性の障壁を更に備える、項目1に記載のボルタセル。
(項目3)
前記バイオフィルムは、前記アノード及び前記カソードのうちの少なくとも1つと接触している、項目1に記載のボルタセル。
(項目4)
前記バイオフィルムは、前記アノード、前記カソード、及び前記イオン透過性且つ電子供与体不浸透性の障壁のうちの少なくとも1つと接触している、項目2に記載のボルタセル。
(項目5)
前記バイオフィルムは、2以上の微生物を有する、項目1に記載のボルタセル。
(項目6)
前記バイオフィルムは、前記ボルタセルの中の基板上に形成されている、項目1に記載のボルタセル。
(項目7)
前記基板は、前記アノード又は前記カソードのいずれかである、項目6に記載のボルタセル。
(項目8)
前記基板は、前記アノード又は前記カソードの表面と接触している、項目6に記載のボルタセル。
(項目9)
前記バイオフィルムは、正荷電部分を有する、項目1に記載のボルタセル。
(項目10)
前記バイオフィルムは、負荷電部分を有する、項目1に記載のボルタセル。
(項目11)
前記バイオフィルムは、合成部分を有する、項目1に記載のボルタセル。
(項目12)
前記バイオフィルムは、非合成部分を有する、項目1に記載のボルタセル。
(項目13)
前記バイオフィルムは、1つ又は複数のフィラメント状付属器を有する、項目1に記載のボルタセル。
(項目14)
前記バイオフィルムは、嫌気性、好気性、及び通性嫌気性微生物からなる群から選択される、1又は複数の微生物綱を有する、項目1に記載のボルタセル。
(項目15)
前記バイオフィルムは、硫黄酸化微生物及び硫黄還元微生物を有する、項目1に記載のボルタセル。
(項目16)
前記バイオフィルムは、ロドフェラックス・フェリレドゥセンス、ラクトバシラス・アシドフィルス、ロドスピリルム・ルブルム、デスルフォビブリオ・デスルフリカンス亜種デスルフリカンス、ペプトストレプトコッカス・アナエロビウス、ロドスピリラム・センテナム、カトネラ・モルビ、ラクノスピラ科の一種、フォトバクテリウム・レイオグナティ、アロクロマチウム・ビノスム、ラクトバシラス・カセイ、フソバクテリウム・ヌクレアタム亜種ポリモーファム、ヘルココッカス・クンジイ、キューティバクテリウム・アクネス、ロドスピリルム・ルブルム、ヘルココッカス・クンジイ、アロクロマチウム・ビノスム、及びフェロヴァム・ミクソファシエンスからなる群から選択される1又は複数の微生物を有する、項目1に記載のボルタセル。
(項目17)
前記バイオフィルムは、天然ポリマー、合成ポリマー、DNAの水和物、タンパク質の水和物、又は炭水化物の水和物を含む基質を有する、項目1に記載のボルタセル。
(項目18)
前記障壁は電子伝導性である、項目2に記載のボルタセル。
(項目19)
前記障壁は前記アノードに接触する、項目2に記載のボルタセル。
(項目20)
前記アノードと電気的通信状態にある電流コレクタを更に有する、項目1から19のいずれか一項に記載のボルタセル。
(項目21)
前記第1の種の微生物及び/又は前記第2の種の微生物は、光捕集アンテナを有する、項目1から20のいずれか一項に記載のボルタセル。
(項目22)
前記第1の種の微生物は、第1のバンドにおいて電磁放射によって励起され、前記バッファの中の少なくとも1の他の種の微生物は、第2のバンドにおいて電磁放射によって励起され、前記第1のバンド及び前記第2のバンドは実質的に重複しない、項目21に記載のボルタセル。
(項目23)
前記第1の種の微生物は、光栄養又は化学栄養微生物を有する、項目1から22のいずれか一項に記載のボルタセル。
(項目24)
前記第1の種の微生物は化学栄養生物であり、前記第2の種の微生物は光栄養生物である、項目1から23のいずれか一項に記載のボルタセル。
(項目25)
前記第1の主要代謝経路は、炭素、窒素、リン、又は硫黄を含有する化合物を酸化し、前記第2の主要代謝経路は、前記第1の主要代謝経路によって生産された前記酸化化合物を還元する、項目1から24のいずれか一項に記載のボルタセル。
(項目26)
前記第1の種の微生物は、線毛、線維、鞭毛、及び/又はフィラメント形状を有する、項目1から25のいずれか一項に記載のボルタセル。
(項目27)
前記第1の種の微生物は、複数の代謝経路を有する、項目1から26のいずれか一項に記載のボルタセル。
(項目28)
前記第1の種の微生物は、自然発生する微生物種である、項目1から27のいずれか一項に記載のボルタセル。
(項目29)
前記第1の主要代謝経路及び前記第2の主要代謝経路の各々は、細胞呼吸に関与する、項目1から28のいずれか一項に記載のボルタセル。
(項目30)
化学的及び/又は光エネルギーを電気的エネルギーに変換する方法であって、前記方法は:
項目1から29のいずれか一項に記載のボルタセルを動作させる段階
を備える、方法。
(項目31)
(a)カソード空気流ハードウェア;
(b)カソードガス拡散層;
(c)カソード寒天層;
(d)前記アノード及びカソードと接触しているイオン伝導性媒体を有する電解質層;
(e)電子を受信し、電子を外部回路又は負荷へ提供するためのアノード層;
(f)アノード寒天層;
(g)窓層;及び
(h)微生物を有するバイオフィルム
を備える、ボルタセル。
(項目32)
前記微生物は、前記層のうちの1つ又は複数の中に存在する、項目31に記載のボルタセル。
(項目33)
前記アノード層は、アルミニウムナノ粒子、アルミニウムマイクロ粒子、透明伝導体粒子、親水性ポリマー、及び親水性ゲルからなる群から選択される材料を有する、項目31に記載のボルタセル。
(項目34)
前記窓層はガラスを有する、項目31に記載のボルタセル。
【国際調査報告】