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特表2024-524030水性コーティング組成物、その調製方法及びその適用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-05
(54)【発明の名称】水性コーティング組成物、その調製方法及びその適用
(51)【国際特許分類】
   C09D 201/02 20060101AFI20240628BHJP
   C09D 7/43 20180101ALI20240628BHJP
   C09D 7/63 20180101ALI20240628BHJP
   C09D 133/00 20060101ALI20240628BHJP
   C09D 133/04 20060101ALI20240628BHJP
   C09D 133/14 20060101ALI20240628BHJP
   C09D 125/00 20060101ALI20240628BHJP
   C08G 18/28 20060101ALI20240628BHJP
   C08G 18/73 20060101ALI20240628BHJP
   C08F 220/26 20060101ALI20240628BHJP
【FI】
C09D201/02
C09D7/43
C09D7/63
C09D133/00
C09D133/04
C09D133/14
C09D125/00
C08G18/28 065
C08G18/73
C08F220/26
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023575552
(86)(22)【出願日】2022-06-03
(85)【翻訳文提出日】2024-02-02
(86)【国際出願番号】 EP2022065158
(87)【国際公開番号】W WO2022258507
(87)【国際公開日】2022-12-15
(31)【優先権主張番号】PCT/CN2021/098610
(32)【優先日】2021-06-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】390008981
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ コーティングス ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】BASF Coatings GmbH
【住所又は居所原語表記】Glasuritstrasse 1, D-48165 Muenster,Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【弁理士】
【氏名又は名称】江藤 聡明
(74)【代理人】
【識別番号】100167106
【弁理士】
【氏名又は名称】倉脇 明子
(74)【代理人】
【識別番号】100194135
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 修
(74)【代理人】
【識別番号】100206069
【弁理士】
【氏名又は名称】稲垣 謙司
(74)【代理人】
【識別番号】100185915
【弁理士】
【氏名又は名称】長山 弘典
(72)【発明者】
【氏名】ワン,ミン
(72)【発明者】
【氏名】ヨウ,シヤオ カン
(72)【発明者】
【氏名】サルヴィ,ランジット
(72)【発明者】
【氏名】ソン,ユワン ユワン
(72)【発明者】
【氏名】スイ,リン ユイ
(72)【発明者】
【氏名】チェン,チン ユワン
(72)【発明者】
【氏名】タン,ウェン ウェン
(72)【発明者】
【氏名】ワン,ハン ピン
【テーマコード(参考)】
4J034
4J038
4J100
【Fターム(参考)】
4J034BA02
4J034BA08
4J034CA13
4J034CB01
4J034CC03
4J034CC08
4J034CC12
4J034CD04
4J034DA01
4J034DB03
4J034DB07
4J034DC02
4J034DC43
4J034DE02
4J034DF01
4J034DF16
4J034DF17
4J034DF20
4J034DF21
4J034DF22
4J034DF28
4J034DG02
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4J034HA07
4J034HB07
4J034HB08
4J034HB09
4J034HC03
4J034HC34
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4J034JA01
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4J034QB11
4J034QC05
4J034RA07
4J038CC021
4J038CE021
4J038CF021
4J038CG001
4J038CG011
4J038CG141
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4J038DD001
4J038DF001
4J038DG001
4J038DG262
4J038DG302
4J038GA03
4J038GA06
4J038JB03
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4J038KA03
4J038KA07
4J038MA08
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4J038NA24
4J038PA19
4J038PB07
4J038PC02
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4J100AB02R
4J100AB03R
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4J100AL03P
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4J100BC03P
4J100BC04P
4J100BC07P
4J100CA03
4J100CA05
4J100CA06
4J100DA01
4J100DA29
4J100DA30
4J100JA01
(57)【要約】
本発明は、a)少なくとも1つの水溶性又は水分散性バインダー、及びb)少なくとも1つの垂れ制御剤(SCA)であって、b1)少なくとも1つの脂肪族ポリイソシアネートと、b2)C~C10-アルコキシ-C~C10-アルキルアミン、ジ-C~C10-アルコキシ-C~C10-アルキルアミン、C~C10-アルキル置換アニリン及びジ-C~C10-アルキル置換アニリンからなる群から選択される少なくとも1つのアミンとの、成分a)の存在下における反応によって得られるSCAを含む、水性コーティング組成物を提供する。本発明はまた、本発明のコーティング組成物の調製方法を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)少なくとも1つの水溶性又は水分散性バインダー、
b)少なくとも1つの垂れ制御剤(SCA)、
を含む水性コーティング組成物であって、
成分b)が、
b1)少なくとも1つの脂肪族ポリイソシアネートと、
b2)C~C10-アルコキシ-C~C10-アルキルアミン、ジ-C~C10-アルコキシ-C~C10-アルキルアミン、C~C10-アルキル置換アニリン及びジ-C~C10-アルキル置換アニリンからなる群から選択される少なくとも1つのアミンとの、成分a)の存在下における反応によって得られる、
水性コーティング組成物。
【請求項2】
成分c):少なくとも1つの架橋剤をさらに含む、請求項1に記載の水性コーティング組成物。
【請求項3】
10質量%~90質量%、好ましくは15質量%~70質量%、及びより好ましくは20~50質量%の成分a)、
0.1質量%~40質量%、好ましくは5質量%~35質量%、及びより好ましくは15質量%~30質量%の成分b)、及び
0.1質量%~70質量%、好ましくは15質量%~60質量%、及びより好ましくは30質量%~50質量%の成分c)を含み、
成分a)、b)及びc)の質量パーセンテージ値が水性コーティング組成物の総質量に対するものである、請求項2に記載の水性コーティング組成物。
【請求項4】
成分a)が、ポリアクリレート樹脂、ポリエステル樹脂、メラミン樹脂、ポリエーテル樹脂及びポリウレタン樹脂からなる群から選択される少なくとも1つである、請求項1から3のいずれか一項に記載の水性コーティング組成物。
【請求項5】
前記水溶性又は水分散性のポリアクリレート樹脂が、ヒドロキシル官能基を除いた(メタ)アクリレート、少なくとも1つのヒドロキシル官能基を有する(メタ)アクリレート、任意に(メタ)アクリル酸、及び少なくとも1つのオレフィン性二重結合を有する他のモノマーから合成されたポリマー有機化合物からなる群から選択される少なくとも1つである、請求項4に記載の水性コーティング組成物。
【請求項6】
ヒドロキシル官能基を除いた前記(メタ)アクリレートが、C~C18-アルキル(メタ)アクリレート及びC~C-シクロアルキル(メタ)アクリレートからなる群から、好ましくは、C~C12-アルキル(メタ)アクリレート及びC~C-シクロアルキル(メタ)アクリレートからなる群から、及びより好ましくは、C~C-アルキル(メタ)アクリレート及びC~C-シクロアルキル(メタ)アクリレートからなる群から選択される少なくとも1つである、請求項5に記載の水性コーティング組成物。
【請求項7】
少なくとも1つのヒドロキシル官能基を有する前記(メタ)アクリレートが、C~C-ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートからなる群から、及び好ましくはC~C-ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートからなる群から選択される少なくとも1つである、請求項5に記載の水性コーティング組成物。
【請求項8】
少なくとも1つのオレフィン性二重結合を有する前記モノマーが、ビニル芳香族炭化水素からなる群から、好ましくはスチレン、ビニルトルエン及びアルファ-メチルスチレンからなる群から、及びより好ましくはスチレン、アクリル酸、メタクリル酸のアミド、ニトリル、ビニルエステル及びビニルエーテルからなる群から選択される少なくとも1つである、請求項5に記載の水性コーティング組成物。
【請求項9】
前記ポリアクリレート樹脂の数平均分子量が、1,000~10,000g/モル、及び好ましくは1,500~5,000g/モルである、請求項4から8のいずれか一項に記載の水性コーティング組成物。
【請求項10】
前記ポリアクリレート樹脂の質量平均分子量が、3,000~20,000g/モル、及び好ましくは5,000~12,000g/モルである、請求項4から9のいずれか一項に記載の水性コーティング組成物。
【請求項11】
前記ポリアクリレート樹脂が、10~200mgKOH/g、好ましくは20~100mgKOH/g、及びより好ましくは30~50mgKOH/gの酸価を有する、請求項4から10のいずれか一項に記載の水性コーティング組成物。
【請求項12】
前記ポリアクリレート樹脂が、50~300mgKOH/g、好ましくは60~240mgKOH/g、及びより好ましくは80~200mgKOH/gのヒドロキシル価を有する、請求項4から11のいずれか一項に記載の水性コーティング組成物。
【請求項13】
前記成分c):架橋剤が、非ブロック化、部分的にブロック化及びブロック化されたポリイソシアネート及びアミノ樹脂から選択される少なくとも1つである、請求項2から12のいずれか一項に記載の水性コーティング組成物。
【請求項14】
前記b1):脂肪族ポリイソシアネートが、対称脂肪族ジイソシアネート及び対称脂肪族ジイソシアネートのオリゴマーからなる群から選択される、請求項1から13のいずれか一項に記載の水性コーティング組成物。
【請求項15】
前記b1):脂肪族ポリイソシアネートが、テトラメチレン-1,4-ジイソシアネート、ヘキサメチレン-1,6-ジイソシアネート、オクタメチレンジイソシアネート、デカメチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、テトラデカメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサンジイソシアネート及びテトラメチルヘキサンジイソシアネート、及びヘキサメチレン-1,6-ジイソシアネートの三量体からなる群から選択される少なくとも1つである、請求項14に記載の水性コーティング組成物。
【請求項16】
前記b2):アミンが、C~C-アルコキシ-C~C-アルキルアミン、ジ-C~C-アルコキシ-C~C-アルキルアミン、C~C-アルキル置換アニリン及びジ-C~C-アルキル置換アニリンからなる群から、及び好ましくは、C~C-アルコキシ-C~C-アルキルアミン及びC~C-アルキル置換アニリンからなる群から選択される少なくとも1つである、請求項1から15のいずれか一項に記載の水性コーティング組成物。
【請求項17】
前記b2):アミンが、2-メトキシエチルアミン、2-エトキシエチルアミン、3-メトキシ-1-プロピルアミン、1-メトキシブチル-2-アミン、1,1-ジメトキシ-2-プロピルアミン、3-エトキシ-1-プロピルアミン、3-ブトキシ-1-プロピルアミン、3-(2-エチルヘキシルオキシ)-1-プロピルアミン、4-n-ブチルアニリン、4-sec-ブチルアニリン、4-イソブチルアニリン、4-tert-ブチルアニリン、4-n-ペンチルアニリン、4-イソペンチルアニリン及び4-n-ヘキシルアニリン、好ましくは3-メトキシ-1-プロピルアミン、3-エトキシ-1-プロピルアミン、3-ブトキシ-1-プロピルアミン、4-n-ブチルアニリン、4-sec-ブチルアニリン、4-イソブチルアニリン及び4-tert-ブチルアニリンからなる群から、及びより好ましくは3-メトキシ-1-プロピルアミン、3-エトキシ-1-プロピルアミン、4-n-ブチルアニリン、4-イソブチルアニリン及び4-tert-ブチルアニリンからなる群から選択される少なくとも1つである、請求項16に記載の水性コーティング組成物。
【請求項18】
b2):アミンのアミノ基対b1):脂肪族ポリイソシアネートのイソシアネート基のモル比が、0.7~1.5、好ましくは0.8~1.2、及びより好ましくは0.9~1.1の範囲である、請求項1から17のいずれか一項に記載の水性コーティング組成物。
【請求項19】
成分a)、b)、及び任意に、c)を混合することによって、請求項1から18のいずれか一項に記載の水性コーティング組成物を調製する方法。
【請求項20】
基材上に塗布される請求項1から18のいずれか一項に記載の水性コーティング組成物を硬化させることによって形成されるコーティング層。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は水性コーティング組成物に関するものであり、より詳細には、自動車仕上げ及び再仕上げ用の水性コーティング組成物に関するものである。本発明はまた、前記コーティング組成物の調製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車用コーティングの重要な要件のひとつは、塗布時によく広がるが、後で基材表面から垂れないことである。言い換えれば、基材の表面に塗布する間、コーティングの粘度を適切な範囲に保ち、形成されるコーティング層が滑らかで均一になるようにしなければならない。しかしその後、基材の垂直面からの垂れを防ぐために、コーティングの粘度を上げなければならない。
【0003】
このような要求を満たすために、垂れ制御剤(SCA)などのレオロジー添加剤がコーティングに添加される。SCAの機能は硬化防止であり、そしてSCAの多くは低分子量を有する半結晶性ウレイド含有有機化合物である。これらのSCAは、中~高固形分を有する溶媒系コーティング組成物において特に有用である。
【0004】
別の側面では、環境保護に関する規制がますます厳しくなっていることから、近年は水性コーティングが普及している。水性コーティングもSCAを必要とする。しかしながら、一般的に使用されているSCAは有機溶媒の含有量を増加させる傾向があり、水性コーティングには好適ではない場合がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、適切なSCAによって可能となる改善されたレオロジー特性を有する水性コーティング剤を調製することが依然として求められている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一態様において、本発明は、
a)少なくとも1つの水溶性又は水分散性バインダー、
b)少なくとも1つの垂れ制御剤(SCA)、
を含む水性コーティング組成物であって、
成分b)が、
b1)少なくとも1つの脂肪族ポリイソシアネートと、
b2)C~C10-アルコキシ-C~C10-アルキルアミン、ジ-C~C10-アルコキシ-C~C10-アルキルアミン、C~C10-アルキル置換アニリン及びジ-C~C10-アルキル置換アニリンからなる群から選択される少なくとも1つのアミンとの、成分a)の存在下における反応によって得られる、水性コーティング組成物を提供する。
【0007】
別の態様において、本発明は、あらゆる成分を混合することにより、本発明の水性コーティング組成物を調製する方法を提供する。
【0008】
さらなる態様において、本発明は、基材上に塗布された本発明の水性コーティング組成物を硬化させることにより形成されるコーティング層を提供する。
【0009】
驚くべきことに、本発明の水性コーティング組成物は、著しく改善されたレオロジー特性を有することが見出された。
【発明を実施するための形態】
【0010】
他に定義がない限り、ここで使用されるあらゆる技術的及び科学的用語は、本発明が属する技術分野における一般的な当業者によって通常理解されるのと同じ意味を有する。
【0011】
「a」、「an」、「the」という表現は、ある用語を定義するために使用される場合、その用語の複数形と単数形の両方を含む。
【0012】
他に断りのない限り、あらゆるパーセンテージ、部及び比は、質量によるものである。
【0013】
水性分散体は、水性溶液及び水性エマルジョンからなる群の同義語として使用される。
【0014】
成分a)
本発明の水性コーティング組成物の成分a)は、少なくとも1つの水溶性又は水分散性バインダーを含み、そして前記バインダーは、架橋剤に対して反応性の官能基を有してよい。
【0015】
水性コーティング組成物を調製するために一般的に使用される水溶性又は水分散性バインダーを、バインダー成分a)として使用することができる。これら水溶性又は水分散性バインダー及びその調製方法は、当業者に既知である。
【0016】
水溶性又は水分散性バインダーの例には、限定するものではないが、水に溶解する又は分散する、ポリアクリレート樹脂、ポリエステル樹脂、メラミン樹脂、ポリエーテル及びポリウレタン樹脂が含まれる。
【0017】
水溶性又は水分散性のポリアクリレート樹脂は、(メタ)アクリレートのポリマー及び/又はコポリマーである。いくつかの実施形態において、(メタ)アクリレートポリマー及び/又はコポリマーは、ヒドロキシル官能基を除いた(メタ)アクリレート、少なくとも1つのヒドロキシル官能基を有する(メタ)アクリレート、及び任意に、少なくとも1つのオレフィン性二重結合を有する(メタ)アクリル酸及び他のモノマーから合成されたポリマー有機化合物である。(メタ)アクリレートという用語は、アクリレート及び/又はメタクリレートを意味する。(メタ)アクリル酸という用語は、アクリル酸及び/又はメタクリル酸を意味する。
【0018】
ヒドロキシル官能基を除いた前記(メタ)アクリレートモノマーの例には、限定するものではないが、アルキル(メタ)アクリレート及びシクロアルキル(メタ)アクリレート、例えばC~C18-アルキル(メタ)アクリレート及びC~C-シクロアルキル(メタ)アクリレート、好ましくは、C~C12-アルキル(メタ)アクリレート及びC~C-シクロアルキル(メタ)アクリレート、及びより好ましくは、C~C-アルキル(メタ)アクリレート及びC~C-シクロアルキル(メタ)アクリレートが含まれる。いくつかの実施形態において、ヒドロキシル官能基を除いた前記アルキル(メタ)アクリレートは、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、プロピルアクリレート、プロピルメタクリレート、イソプロピルアクリレート、イソプロピルメタクリレート、ブチルアクリレート、ブチルメタクリレート、イソブチルアクリレート、イソブチルメタクリレート、tert-ブチルアクリレート、tert-ブチルメタクリレート、アミルアクリレート、アミルメタクリレート、ヘキシルアクリレート、ヘキシルメタクリレート、エチルヘキシルアクリレート、エチルヘキシルメタクリレート、3,3,5-トリメチルヘキシルアクリレート、3,3,5-トリメチルヘキシルメタクリレート、ステアリルアクリレート、ステアリルメタクリレート、ラウリルアクリレート、ラウリルメタクリレート、トリデシルアクリレート及びトリデシルメタクリレートからなる群から、及び好ましくはメチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、プロピルアクリレート、プロピルメタクリレート、ブチルアクリレート、ブチルメタクリレート、エチルヘキシルアクリレート、エチルヘキシルメタクリレート、トリデシルアクリレート及びトリデシルメタクリレートからなる群から選択される少なくとも1つである。いくつかの実施形態において、ヒドロキシル官能基を除いた前記シクロアルキル(メタ)アクリレートは、シクロペンチルアクリレート、シクロペンチルメタクリレート、イソボルニルアクリレート、イソボルニルメタクリレート、シクロヘキシルアクリレート及びシクロヘキシルメタクリレートからなる群から、及び好ましくはシクロヘキシルアクリレート及びシクロヘキシルメタクリレートからなる群から選択される少なくとも1つである。
【0019】
少なくとも1つのヒドロキシル官能基を有する前記(メタ)アクリレートモノマーの例には、限定するものではないが、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、好ましくはC~C-ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、及びより好ましくはC~C-ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートが含まれる。いくつかの実施形態において、少なくとも1つのヒドロキシル官能基を有する前記ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートは、2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、2-ヒドロキシプロピルアクリレート、2-ヒドロキシプロピルメタクリレート、3-ヒドロキシプロピルアクリレート、3-ヒドロキシプロピルメタクリレート、3-ヒドロキシブチルアクリレート、3-ヒドロキシブチルメタクリレートからなる群から、及び好ましくは2-ヒドロキシエチルアクリレート及び2-ヒドロキシエチルメタクリレートからなる群から選択される少なくとも1つである。
【0020】
ポリアクリレート樹脂は、任意に、モノマー単位の形態で、アクリル酸、メタクリル酸又はそれらの任意の組み合わせをコモノマーとして含んでよい。この場合、ポリアクリレート樹脂は遊離カルボン酸、好ましくはアクリル酸を含んでよい。
【0021】
ポリアクリレート樹脂は、任意に、モノマー単位の形態で、少なくとも1つのオレフィン性二重結合を有するモノマーを含んでよい。これらのモノマーの例には、限定するものではないが、ビニル芳香族炭化水素が含まれる。いくつかの実施形態において、前記モノマーは、スチレン、ビニルトルエン、アルファ-メチルスチレン、(メタ)アクリル酸のアミド又はニトリル、ビニルエステル及びビニルエーテルからなる群から、及び好ましくはスチレン、(メタ)アクリル酸のアミド又はニトリル、ビニルエステル及びビニルエーテルからなる群から選択される少なくとも1つである。
【0022】
前記ポリアクリレート樹脂の分子量について、特に制限はない。好ましくは、前記ポリアクリレート樹脂の数平均分子量は1,000~10,000g/モル、及びより好ましくは1,500~5,000g/モルである。或いは、前記ポリアクリレート樹脂の質量平均分子量は、好ましくは3,000~20,000g/モル、及びより好ましくは5,000~12,000g/モルである。
【0023】
いくつかの実施形態において、前記ポリアクリレート樹脂は、10~200mgKOH/g、好ましくは20~100mgKOH/g、及びより好ましくは30~50mgKOH/gの酸価を有してよい。
【0024】
いくつかの実施形態において、前記ポリアクリレート樹脂は、50~300mgKOH/g、好ましくは60~240mgKOH/g、及びより好ましくは80~200mgKOH/gのヒドロキシル価を有してよい。
【0025】
市販のポリアクリレート樹脂の他に、調製した(メタ)アクリレート(コ)ポリマーを使用することも可能である。前記(メタ)アクリレート(コ)ポリマーの調製方法は当業者に既知であり、例えば、連続的又はバッチ式で、バルク、溶液、エマルジョン又はマイクロエマルジョン中大気圧下又は高圧下における、ステンレス鋼反応器、撹拌槽、オートクレーブ、チューブ反応器、ループ反応器又はテイラー反応器中、50℃~200℃、好ましくは80℃~180℃、及びより好ましくは100℃~150℃の温度でのフリーラジカル開始(共)重合である。フリーラジカル(共)重合のための開始剤の例は、ジアルキルペルオキシド、例えばジ-tert-ブチルペルオキシド又はジクミルペルオキシド、ヒドロペルオキシド、例えばクメンヒドロペルオキシド又はtert-ブチルヒドロペルオキシド、又はペルオキシエステル、例えばtert-ブチルペルオキシベンゾエート、tert-ブチルペルオキシピバレート、tert-ブチルペルオキシ-3,5,5-トリメチルヘキサノエート又はtert-ブチルペルオキシ-2-エチルヘキサノエート、ペルオキソジカーボネート、カリウム、ナトリウム又はアンモニウムペルオキソジスルフェート、アゾビスイソブチロニトリルなどのアゾ開始剤、又はベンズピナコールシリルエーテルなどのC-C開裂開始剤からなる群から選択される少なくとも1つである。
【0026】
水溶性又は水分散性ポリエステル樹脂は当業者に既知であり、そして多価アルコール及びポリカルボン酸又は無水物を反応させることによって調製することができる。
【0027】
好ましくは、前記ポリエステル樹脂は、10~25の平均縮合度を有する。縮合度とは、縮合反応によって得られるポリエステル樹脂中の繰り返し単位の数を意味する。
【0028】
好ましくは、前記ポリエステル樹脂は、最大酸価30、及び最大ヒドロキシル価150を有する。
【0029】
ポリエステル樹脂を合成するための前記酸成分は、飽和又は不飽和脂肪族及び/又は脂環式及び/又は芳香族多塩基性カルボン酸、好ましくは2~14個、及びより好ましくは4~12個の炭素原子を有するジ-、トリ-及びテトラカルボン酸、又はエステル化可能なそれらの誘導体(例えば無水物又はエステル)である。例えば、限定するものではないが、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、テトラヒドロ-及びヘキサヒドロ無水フタル酸、エンドメチレンテトラヒドロフタル酸、コハク酸、グルタル酸、セバシン酸、アゼライン酸、トリメリット酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、フマル酸及びマレイン酸が挙げられる。無水フタル酸は最も広く使用されている酸成分である。ポリエステル樹脂は、フマル酸及びマレイン酸ラジカルを、縮合用ポリカルボン酸ラジカルの総数に対して20モル%以下の量で含有するべきである。
【0030】
ポリエステル樹脂を合成するための前記多価アルコールは、1~15個、及び好ましくは2~6個の炭素原子と、非芳香族炭素原子に結合した1~6個、及び好ましくは1~4個のヒドロキシル基とを有する脂肪族及び/又は脂環式及び/又は芳香脂肪族アルコール、例えば、グリコール、例えばエチレングリコール、プロパン-1,2-及びプロパン-1,3-ジオール、ブタン-1,2-、-1,3-及び-1,4-ジオール、2-エチルプロパン-1,3-ジオール、2-エチルヘキサン-1,3-ジオール、ネオペンチルグリコール、2,2-トリメチルペンタン-1,3-ジオール、ヘキサン-1,6-ジオール、シクロヘキサン-1,2-及び-1,4-ジオール、1,2-及び1,4-ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン、ビス(エチレングリコール)アジペート、エーテルアルコール、例えばジエチレングリコール及びトリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ジメチロールプロピオン酸、2個のC~C-ヒドロキシアルキル基を有するオキサアルキル化ビスフェノール、過水素化ビスフェノール、ブタン-1,2,4-トリオール、ヘキサン-1,2,6-トリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリメチロールヘキサン、グリセロール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、マンニトール及びソルビトール、1~8個の炭素原子を有する鎖末端一価アルコール、例えばプロパノール、ブタノール、シクロヘキサノール及びベンジルアルコール、ヒドロキシピバリン酸である。最も広く使用されているアルコールは、グリセロール、トリメチロールプロパン、ネオペンチルグリコール及びペンタエリスリトールである。
【0031】
ポリエステル樹脂はまた、モノカルボン酸及び一価アルコールによって修飾されていてもよい。
【0032】
モノカルボン酸の例として、飽和又は不飽和脂肪酸、安息香酸、p-tert-ブチル安息香酸、ヘキサヒドロ安息香酸及びアブレチン酸が挙げられる。
【0033】
一価アルコールの例として、メタノール、プロパノール、シクロヘキサノール、2-エチルヘキサノール及びベンジルアルコールが挙げられる。
【0034】
エステル結合の25モル%以下をウレタン結合に置き換えることも可能である。
【0035】
水溶性又は水分散性のメラミン樹脂は当業者に既知である。前記メラミン樹脂は、エーテル化メラミン/ホルムアルデヒドである。縮合度の他に、前記メラミン樹脂の水溶性はエーテル化成分に依存する。メラミン樹脂は、好ましくはメタノールでエーテル化したメラミンである。可溶化剤を添加すれば、ブタノールでエーテル化したメラミンを水に分散できる。
【0036】
水溶性又は水分散性ポリエーテルの例として、直鎖状又は分岐状のポリ(オキシアルキレン)グリコール、好ましくは直鎖状又は分岐状のポリ(オキシプロピレン)グリコールが挙げられ、これらの質量平均分子量は400~1,000、好ましくは600~900である。
【0037】
好ましくは、前記水溶性又は水分散性ポリウレタン樹脂は、独国特許第3,545,618号及び米国特許第4,423,179号に開示されているポリウレタン樹脂である。
【0038】
水溶性又は水分散性バインダーは、反応性又は非反応性樹脂を含んでよい。バインダーは、溶媒の蒸発、埋め込まれた官能基を介した又は添加された架橋剤による架橋によって、硬化し得る。架橋は、例えば、イオン及び/又はラジカル重合、重縮合及び/又は重付加反応によって起こる。架橋のためのバインダー中の基は、例えば、ヒドロキシル基、ブロック化ヒドロキシル基、ブロック化イソシアネート基、アセトアセチル基、(メタ)アクリロイル基、アリル基、エポキシド基、カルボキシル基、カルバメートアミン基及びブロック化アミン基である。
【0039】
十分な水溶性を得るため、バインダーは修飾してより親水性にすることができる。バインダーは、イオン性(アニオン性及び/又はカチオン性)又は非イオン性に修飾してよい。そして、アニオン性又は非イオン性の修飾が好ましい。アニオン性修飾は、例えば、塩基によって少なくとも部分的に中和されるカルボキシル基又はスルホン酸基を組み込むことによって達成してよい。前記塩基の例は、第三級アミン、例えばトリメチルアミン、トリエチルアミン、ジメチルエチルアミン、ジメチルブチルアミン、N-メチルモルホリン、ジメチルエタノールアミン及びジメチルイソプロパノールアミンである。非イオン性修飾は、例えば、ポリエチレンオキシド単位を組み込むことによって達成してよい。或いは、又はそれに加えて、乳化剤を使用して親水性を高めることもできる。
【0040】
成分b)
本発明によるコーティング組成物は、少なくとも1つのSCA(垂れ制御剤)を含む。SCAは、少なくとも1つの脂肪族ポリイソシアネートb1)と、C~C10-アルコキシ-C~C10-アルキルアミン、ジ-C~C10-アルコキシ-C~C10-アルキルアミン、C~C10-アルキル置換アニリン及びジ-C~C10-アルキル置換アニリンからなる群から選択される少なくとも1つのアミンb2)とを、成分a)の存在下で反応させることによって調製される。
【0041】
SCAの調製には、任意の好適な脂肪族ポリイソシアネートb1)を使用することができる。例えば、NCO官能価が2.0~5.0の任意の脂肪族ポリイソシアネートを使用することができる。ポリイソシアネートは、3~40個、及び好ましくは4~20個の炭素原子を有する。対称脂肪族ジイソシアネート及び/又はそのオリゴマー、例えば対称ジイソシアネート及び/又は対称ジイソシアネートの三量体を使用することが好ましい。
【0042】
ジイソシアネートの他の例には、限定するものではないが、テトラメチレン-1,4-ジイソシアネート、ヘキサメチレン-1,6-ジイソシアネート、オクタメチレンジイソシアネート、デカメチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、テトラデカメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサンジイソシアネート、テトラメチルヘキサンジイソシアネート、及びジイソシアネートの二量体及び/又は三量体誘導体のようなジイソシアネートのオリゴマー、例えば、ウレトジオン、イソシアヌレート及びビウレット類似体が含まれる。ポリイソシアネートは、カルボジイミド、アロファネート、ウレタン及びウレア基を有していてもよい。好ましくは、SCAは、ヘキサメチレン-1,6-ジイソシアネートのオリゴマー、及びより詳細にはヘキサメチレン-1,6-ジイソシアネートの三量体を含む。これらのポリイソシアネートは、単独で又は無作為な組み合わせで使用することができる。
【0043】
SCAの調製に使用される成分b2)は、C~C10-アルコキシ-C~C10-アルキルアミン、ジ-C~C10-アルコキシ-C~C10-アルキルアミン、C~C10-アルキル置換アニリン及びジ-C~C10-アルキル置換アニリンからなる群から、好ましくはC~C-アルコキシ-C~C-アルキルアミン、ジ-C~C-アルコキシ-C~C-アルキルアミン、C~C-アルキル置換アニリン及びジ-C~C-アルキル置換アニリン、及びより好ましくはC~C-アルコキシ-C~C-アルキルアミン及びC~C-アルキル置換アニリンからなる群から選択される少なくとも1つである。
【0044】
~C10-アルキルオキシの例には、限定するものではないが、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、sec-ブトキシ、イソブトキシ及びtert-ブトキシ、ペントキシ、イソペントキシ、ヘキソキシ、ヘプトキシ、オクトキシ及びデシルオキシ、好ましくはメトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、sec-ブトキシ、イソブトキシ及びtert-ブトキシ、ペントキシ、イソペントキシ及びヘキソキシ、及びより好ましくはメトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、sec-ブトキシ、イソブトキシ及びtert-ブトキシが含まれる。
【0045】
~C10-アルキルの例には、限定するものではないが、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n-ブチル、sec-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、2-エチルブチル、n-ペンチル、イソペンチル、1-メチルペンチル、1,3-ジメチルブチル、n-ヘキシル、1-メチルヘキシル、n-ヘプチル、イソヘプチル、1,1,3,3-テトラメチルブチル、1-メチルヘプチル、3-メチルヘプチル、n-オクチル、2-エチルヘキシル、1,1,3-トリメチル-ヘキシル、1,1,3,3-テトラメチルペンチル、ノニル、デシル及びそれらの異性体、好ましくはエチル、プロピル、イソプロピル、n-ブチル、sec-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、2-エチルブチル、n-ペンチル、イソペンチル、1-メチルペンチル、1,3-ジメチルブチル及びn-ヘキシル、及びより好ましくはエチル、プロピル、イソプロピル、n-ブチル、sec-ブチル、イソブチル及びtert-ブチルが含まれる。
【0046】
~C10-アルキルの例には、限定するものではないが、n-ブチル、sec-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、2-エチルブチル、n-ペンチル、イソペンチル、1-メチルペンチル、1,3-ジメチルブチル、n-ヘキシル、1-メチルヘキシル、n-ヘプチル、イソヘプチル、1,1,3,3-テトラメチルブチル、1-メチルヘプチル、3-メチルヘプチル、n-オクチル、2-エチルヘキシル、1,1,3-トリメチル-ヘキシル、1,1,3,3-テトラメチルペンチル、ノニル、デシル及びそれらの異性体、好ましくはn-ブチル、sec-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、2-エチルブチル、n-ペンチル、イソペンチル、1-メチルペンチル、1,3-ジメチルブチル、n-ヘキシル、1-メチルヘキシル、n-ヘプチル、イソヘプチル、1,1,3,3-テトラメチルブチル、1-メチルヘプチル、3-メチルヘプチル、n-オクチル及び2-エチルヘキシル、及びより好ましくはn-ブチル、sec-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、2-エチルブチル、n-ペンチル、イソペンチル、1-メチルペンチル、1,3-ジメチルブチル及びn-ヘキシルが含まれる。
【0047】
好ましくは、成分b2)は、2-メトキシエチルアミン、2-エトキシエチルアミン、3-メトキシ-1-プロピルアミン、1-メトキシブチル-2-アミン、1,1-ジメトキシ-2-プロピルアミン、3-エトキシ-1-プロピルアミン、3-ブトキシ-1-プロピルアミン、3-(2-エチルヘキシルオキシ)-1-プロピルアミン、4-n-ブチルアニリン、4-sec-ブチルアニリン、4-イソブチルアニリン、4-tert-ブチルアニリン、4-n-ペンチルアニリン、4-イソペンチルアニリン及び4-n-ヘキシルアニリンからなる群から、より好ましくは3-メトキシ-1-プロピルアミン、3-エトキシ-1-プロピルアミン、3-ブトキシ-1-プロピルアミン、4-n-ブチルアニリン、4-sec-ブチルアニリン、4-イソブチルアニリン及び4-tert-ブチルアニリンからなる群から、及びさらにより好ましくは3-メトキシ-1-プロピルアミン、3-エトキシ-1-プロピルアミン、4-n-ブチルアニリン、4-イソブチルアニリン及び4-tert-ブチルアニリンからなる群から選択される少なくとも1つである。
【0048】
成分b1)及びb2)の反応によってSCAを得るために、アミンのアミノ基対ポリイソシアネートのイソシアネート基のモル比は、0.7~1.5、好ましくは0.8~1.2、及びより好ましくは0.9~1.1の範囲である。理想的には、このモル比は1:1である。
【0049】
成分a)の存在下、水相中で成分b1)及びb2)を反応させることによりSCAを調製することが必須である。
【0050】
成分b1)及びb2)の間の反応は、成分a)の存在下、以下の様々な方法で行ってよい:
選択肢1:アミンを水溶性又は水分散性バインダーと混合し、その後アミン及びバインダーの混合物にポリイソシアネートを添加する。
選択肢2:ポリイソシアネートを水溶性又は水分散性バインダーと混合し、その後ポリイソシアネート/バインダーの混合物にアミンを添加する。
選択肢3:水溶性又は水分散性バインダー及びアミンの混合物と、水溶性又は水分散性バインダー及びポリイソシアネートの混合物とを混合する。
選択肢4:アミン及びポリイソシアネートを、水溶性又は水分散性の希釈可能なバインダーと同時に混合する。
【0051】
必要であれば、ポリイソシアネート及び/又はアミンの添加は、1つ以上の工程で行ってよい。選択肢2又は3を選択する場合、ポリイソシアネートがバインダーの反応性基と反応しないことを確実にしなければならない。
【0052】
好ましくは、反応温度は0℃~95℃、及びより好ましくは10℃~40℃の範囲である。
【0053】
成分b1)及びb2)はどのように組み合わせてもよいが、ポリイソシアネートをアミンに添加すること、すなわち成分b2)を成分a)と混合し、その後成分b1)とa)の混合物に成分b2)を添加することが好ましい。
【0054】
好ましくは、アミンを水溶性又は水分散性バインダーと混合し、混合物を均質化した後、直ちにポリイソシアネートを撹拌しながら混合物に添加する。
【0055】
SCAは、レオメーターによって測定して、1秒-1の剪断速度で1,000~22,000mPa・s、好ましくは1,600~20,000mPa・s、及びより好ましくは2,500~18,000mPa・sの範囲、及び1,000秒-1の剪断速度で200~2,000mPa・s、好ましくは400~1,600mPa.s、及びより好ましくは500~1,400mPa.sの範囲の粘度を有する。
【0056】
成分c)
本発明によるコーティング組成物は、任意に、少なくとも1つの架橋剤成分c)を含んでよい。架橋剤成分c)には、非ブロック化、部分的ブロック化及び/又はブロック化ポリイソシアネート、及びアミノ樹脂も含まれる。非ブロック化ポリイソシアネートの使用が非常に特に好ましい。本発明の目的のため、架橋剤としてのポリイソシアネートは、少なくとも2個のイソシアネート基を含有する有機化合物と理解される。原理的には、少なくとも2個のイソシアネート基を含有するあらゆる有機化合物を使用することが可能である。イソシアネート基を含有し、例えば多価アルコール及びポリアミン及びポリイソシアネートから形成される反応生成物を使用することも可能である。
【0057】
脂肪族又は脂環式ポリイソシアネート、好ましくはジイソシアネート、非常に好ましくは脂肪族ジイソシアネート、しかし特にヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、二量体及び/又は三量体ヘキサメチレンジイソシアネートを使用することも可能である。
【0058】
好適なポリイソシアネートのさらなる例は、イソホロンジイソシアネート、2-イソシアナトプロピルシクロヘキシルイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン2,4’-ジイソシアネート又はジシクロヘキシルメタン4,4’-ジイソシアネート、ダイマー脂肪酸から誘導されるジイソシアネート(Henkel社からDDI1410の商品名で販売されている種のもの)、1,8-ジイソシアナト-4-イソシアナトメチルオクタン、1,7-ジイソシアナト-4-イソシアナトメチルヘプタン又は1-iso-シアナト-2-(3-イソシアナトプロピル)シクロヘキサン、又はこれらのポリイソシアネートの混合物である。
【0059】
同様に、例えばテトラメチレン1,4-ジイソシアネート、シクロヘキシル1,4-ジイソシアネート、1,5-ジメチル-2,4-ジ(イソシアナトメチル)ベンゼン、1,5-ジメチル-2,4-ジ(イソシアナトエチル)ベンゼン、1,3,5-トリメチル-2,4-ジ(イソシアナトメチル)ベンゼン、1,3,5-トリエチル-2,4-ジ(イソシアナトメチル)ベンゼン、ジシクロヘキシルジメチルメタン4,4’-ジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート及びジフェニルメタン4,4’-ジイソシアネートが挙げられる。
【0060】
特に好ましい実施形態では、ヘキサメチレン1,6-ジイソシアネートの三量体が架橋剤として使用される。この化合物は、例えば、Desmodur N3390(Bayer MaterialScience社製)又はBasonat HI190(BASF SE社製)の名称で市販品として入手可能である。
【0061】
好適なポリイソシアネートのさらなる例は有機ポリイソシアネート、特に脂肪族、脂環式、芳香脂肪族及び/又は芳香族に結合した遊離イソシアネート基を有する、いわゆる塗料ポリイソシアネートである。好ましくは、2~5個のイソシアネート基を有し、100~10,000、好ましくは100~5,000、及び特に100~2,000mPa・s(23℃)の粘度を有するポリイソシアネートを使用する。任意に、ポリイソシアネートはまた、イソシアネートの組み込みの容易さを改善し、任意にポリイソシアネートの粘度を上記の範囲内のレベルまで下げるために、少量の有機溶媒、好ましくは、純粋なポリイソシアネートに対して1質量%~25質量%の有機溶媒と混合してよい。ポリイソシアネートへ添加する好適な溶媒の例には、エトキシエチルプロピオネート、アミルメチルケトン又はブチルアセテートが含まれる。さらに、ポリイソシアネートは従来の親水性又は疎水性修飾に供されていてもよい。
【0062】
イソシアネート基を有するポリウレタンプレポリマーも使用することができ、そして多価アルコールと過剰のポリイソシアネートとの反応によって調製することができる。ポリイソシアネートの他の例は、イソシアヌレート基、ビウレット基、アロファネート基、イミノオキサジアジンジオン基、ウレタン基、尿素基及び/又はウレトジオン基を有するものである。ウレタン基を有するポリイソシアネートは、イソシアネート基の一部と多価アルコール、例えばトリメチロールプロパン及びグリセロールとを反応させることにより得られる。
【0063】
イソシアネートのさらなる例は、「Methoden der organischen Chemie」,Houben-Weyl、第14/2巻、第4版、Georg Thieme Verlag,Stuttgart、1963年、第61~70頁、W.Siefken,Liebigs Ann.Chem.562,75~136、欧州特許EP-A-101832又は米国特許US-PS-3,290,350、UP-PS-4,130,577及びUS-PS-4,439,616に記載されている。
【0064】
上記のポリイソシアネートは、架橋剤として遊離形態(非ブロック化)で存在する。多成分系、特に2成分系で使用されるこれらの遊離ポリイソシアネートは、当業者に既知である。本発明では、これは、成分a)及び成分c)が、2成分系の場合別々に貯蔵され、そして塗布直前に混合されることを意味する。
【0065】
一方、ブロック化ポリイソシアネートを代わりに使用することもできる。ブロック化ポリイソシアネートは、本発明の文脈において、1成分系の場合に架橋剤として使用される。これは、成分a)と成分c)を混合物として貯蔵及び塗布できることを意味する。遊離イソシアネートとは対照的に、架橋剤としてのブロック化ポリイソシアネートは、バインダーの官能基と高温でのみ反応することができる。架橋剤としてのこのようなブロック化ポリイソシアネートは、多成分系、特に2成分系でも使用してよい。
【0066】
ブロック化架橋剤は、高温(約80℃~100℃)で脱ブロックされ、そしてバインダーと反応できるようになる。
【0067】
典型的なブロック剤の例は、フェノール、アルコール、オキシム、ピラゾール、アミン、及びCH-酸性化合物、例えばジエチルマロネートである。ブロック剤は、触媒、例えばジブチルスズジラウレート又はスズ(II)ビス(2-エチルヘキサノエート)の存在下、架橋剤の遊離NCO基と反応する。ブロック剤及び反応は当業者に公知であり、US4444954Aに記載されている。好ましくは、ブロック剤は、カプロラクタム、ブタノンオキシム、アセトンオキシム、ジエチルマロネート、ジメチルピラゾール及びフェノールからなる群から選択される少なくとも1つである。
【0068】
さらに、架橋剤として、メラミン-ホルムアルデヒド樹脂、ベンゾグアナミン-ホルムアルデヒド樹脂及び尿素-ホルムアルデヒド樹脂、及び好ましくはメラミン-ホルムアルデヒド樹脂などのアミノ樹脂を使用することもできる。これらは典型的には、メタノール及び/又はブタノールなどのアルコールによるエーテル化の形態で使用される。アミノ樹脂の一例は、ヘキサメトキシメチルメラミンである。他のアミン及びアミドの縮合生成物を使用してよく、例として、トリアジン、ジアジン、トリアゾール、グアニジン、グアニミンのアルデヒド縮合物、及びこれら化合物のアルキル置換及びアリール置換誘導体、例えばN,N’-ジメチル尿素、ベンゾ尿素、ジシアンジアミド、ホルムグアナミン、アセトグアナミン、アンメリン、2-クロロ-4,6-ジアミノ-1,3,5-トリアジン、6-メチル-2,4-ジアミノ-1,3,5-トリアジン、3,5-ジアミノトリアゾール、トリアミノピリミジン、2-メルカプト-4,6-ジアミノピリミジン、3,4,6-トリス(エチルアミノ)-1,3,5-トリアジン、トリス(アルコキシカルボニルアミノ)トリアジンが挙げられる。さらに、ホルムアルデヒドとの縮合生成物に加えて、他のアルデヒドとの縮合生成物も使用することができる。
【0069】
アミノ樹脂のメチロール基は、カルバメート基又はアロファネート基によってブロックできる。この種の架橋剤は、US4710542A及びEP0245700B、及びB.Singhらの論文、すなわち「Carbamylmethylated Melamines,Novel Crosslinkers for the Coatings Industry」,Advanced Organic Coatings Science and Technology Series、1991年、第13巻、第193~207頁に記載されている。
【0070】
前記アミノ樹脂は市販されており、例えばCymel、Luwipal、Maprenal、Resimene及びBeetleなどの銘柄の製品がある。
【0071】
その他の成分
コーティング組成物は、顔料、充填剤などの他の成分をさらに含むことができる。コーティング組成物には、あらゆる有機又は無機タイプの着色顔料及び/又は特殊効果顔料を使用することができる。着色顔料の例は、二酸化チタン、微粉化二酸化チタン、酸化鉄顔料、カーボンブラック、アゾ顔料、フタロシアニン顔料、キナクリドン及びピロロピロール顔料である。特殊効果顔料の例は、金属顔料、例えばアルミニウム又は銅、干渉顔料、例えば二酸化チタンでコーティングされたアルミニウム、コーティングされた雲母、グラファイト効果顔料である。充填剤の例は、二酸化ケイ素、硫酸バリウム、タルカム、アルミニウムシリケート及びマグネシウムシリケートである。
【0072】
コーティング産業で一般的に使用される他の添加剤、例えば光安定剤、増粘剤、消泡剤及び湿潤剤なども添加できる。これらの添加剤は、当業者に既知の量で添加する。
【0073】
コーティング組成物は、水を10質量%~60質量%、好ましくは15質量%~50質量%、及びより好ましくは20質量%~40質量%の量で含有し、そして有機溶媒を5質量%~30質量%、好ましくは10質量%~25質量%、及び好ましくは15質量%~20質量%の量で含有してもよく、これらはコーティング組成物の総質量に対するものである。溶媒の例は、一価又は多価アルコール、例えばプロパノール、ブタノール、ヘキサノール、グリコールエーテル又はエステル、例えばジエチレングリコールジ-C~C-アルキルエーテル、ジプロピレングリコールジ-C~C-アルキルエーテル、エトキシプロパノール、ブチルグリコール、ブチルグリコールアセテート、ブチルグリコールプロピオネート、グリコール、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、N-メチルピロリドン、及びケトン、例えばメチルエチルケトン、アセトン、シクロヘキサノン、芳香族又は脂肪族炭化水素、例えばトルエン、キシレン及び脂肪族C~C12-炭化水素である。有機溶媒が存在する場合、水混和性有機溶媒が好ましい。
【0074】
「固形分」という用語は、コーティング組成物の総質量に対する、溶媒の蒸発後の残留物の質量比を意味する。コーティング組成物の固形分は、GB24409-2020に従って測定して、好ましくは35質量%~85質量%、より好ましくは45質量%~80質量%、及びさらにより好ましくは50質量%~70質量%の範囲である。
【0075】
コーティング組成物の垂れ限界は30~75μm、好ましくは35~70μm、及びより好ましくは40~65μmである。
【0076】
コーティング組成物は、既知の装置、例えば撹拌タンク、撹拌ミル、押出機、コンパウンダー、Ultraturrax、インラインディゾルバー、スタティックミキサー、歯車型分散機、圧力開放ノズル及び/又はマイクロフルイダイザーを用いて(任意に化学線の放射を除く)、あらゆる成分を混合することによって調製される。
【0077】
本発明のコーティング組成物は、好ましくは、自動車の仕上げ又は再仕上げに使用され、様々な基材上に塗布される。よって、コーティング組成物を硬化させることにより形成されるコーティング層も提供する。
【0078】
基材へのコーティング組成物の塗布は、当業者に既知のあらゆる方法、例えば噴霧、ナイフコーティング、散布、流し込み、浸漬、含浸、トリクリング又は圧延によって行うことができる。このような塗布の間、基材は静止している一方、塗布装置は動いていなければならない。或いは、基材、好ましくはコイルが動き、塗布装置が静止していてもよい。
【0079】
好ましくは、噴霧塗布、例えば圧縮空気スプレー(空気式塗布システム)、エアレススプレー、高速回転、静電スプレー塗布(ESTA)を、任意に熱風スプレーなどの高温スプレー塗布と組み合わせて使用する。
【0080】
休止時間又は蒸発時間とは、塗布後及び硬化前の間隙を意味する。休止時間中、コーティング組成物は平準化し、そして内部の揮発性溶媒は蒸発する。不完全な架橋などの損傷がもたらされない限り、温度を上げる及び/又は大気中の湿度を下げることにより、休止時間を短縮してよい。
【0081】
休止時間の終了後、コーティング組成物の熱又はNIR(近赤外放射)による硬化は、当業者に既知の方法、例えば強制空気オーブンでの加熱又はIRランプによる照射によって行うことができる。熱硬化は、40℃~190℃、好ましくは50℃~180℃、及びより好ましくは120℃~160℃の温度で、1分~10時間、好ましくは2分~5時間、より好ましくは3分~3時間、及びさらにより好ましくは10分~0.5時間行う。2成分コーティング系について、熱硬化は80℃~160℃の温度で20分~1時間行う。そして熱硬化は、好ましくは、金属基材に対しては100℃~160℃の温度で20分~40分間行い、一方でプラスチック基材に対しては60℃~100℃の温度で30分~1時間行う(「低温ベーク」法)。
【0082】
コーティング組成物は、基材上に直接塗布して単一コーティング層を形成でき、又は基材に接着した塗料層上に塗布してマルチコーティング層を形成することもできる。基材は、好ましくは金属又はプラスチックであり、例えば、PP(ポリプロピレン)/EPDM(エチレン-プロピレン-ジエンのコポリマー)、ポリアミド及び/又はABS(アクリロニトリル-ブタジエン-スチレンのコポリマー)などの自動車部品の製造に使用されるものである。
【0083】
金属基材の場合、コーティングは、エレクトロコート、プライマー、ベースコートが形成された後に塗布される。プラスチック基材の場合、コーティングは単一コーティング層とマルチコーティング層の両方に適用でき、そしてマルチコーティング層を選択する場合、プライマー、ベースコート、トップコートなどの使用は当業者に既知である。
【0084】
実施形態
以下の実施形態を用いて、本発明がどのように実施できるかをさらに説明する。
【0085】
実施形態1
a)少なくとも1つの水溶性又は水分散性バインダー、
b)少なくとも1つの垂れ制御剤(SCA)、
を含む水性コーティング組成物であって、
成分b)が、
b1)少なくとも1つの脂肪族ポリイソシアネートと、
b2)C~C10-アルコキシ-C~C10-アルキルアミン、ジ-C~C10-アルコキシ-C~C10-アルキルアミン、C~C10-アルキル置換アニリン及びジ-C~C10-アルキル置換アニリンからなる群から選択される少なくとも1つのアミンとの、成分a)の存在下における反応によって得られる、
水性コーティング組成物。
【0086】
実施形態2
成分c):少なくとも1つの架橋剤をさらに含む、実施形態1による水性コーティング組成物。
【0087】
実施形態3
10質量%~90質量%、好ましくは15質量%~70質量%、及びより好ましくは20~50質量%の成分a)、0.1質量%~40質量%、好ましくは5質量%~35質量%、及びより好ましくは15質量%~30質量%の成分b)、及び0.1質量%~70質量%、好ましくは15質量%~60質量%、及びより好ましくは30質量%~50質量%の成分c)を含み、成分a)、b)及びc)の質量パーセンテージ値が水性コーティング組成物の総質量に対するものである、実施形態2による水性コーティング組成物。
【0088】
実施形態4
成分a)が、好ましくは、ポリアクリレート樹脂、ポリエステル樹脂、メラミン樹脂、ポリエーテル樹脂及びポリウレタン樹脂からなる群から選択される少なくとも1つである、実施形態1から3のいずれか1つによる水性コーティング組成物。
【0089】
実施形態5
前記水溶性又は水分散性のポリアクリレート樹脂が、好ましくは、ヒドロキシル官能基を除いた(メタ)アクリレート、少なくとも1つのヒドロキシル官能基を有する(メタ)アクリレート、任意に(メタ)アクリル酸、及び少なくとも1つのオレフィン性二重結合を有する他のモノマーから合成されたポリマー有機化合物からなる群から選択される少なくとも1つである、実施形態4による水性コーティング組成物。
【0090】
実施形態6
ヒドロキシル官能基を除いた前記(メタ)アクリレートが、好ましくは、C~C18-アルキル(メタ)アクリレート及びC~C-シクロアルキル(メタ)アクリレートからなる群から、より好ましくは、C~C12-アルキル(メタ)アクリレート及びC~C-シクロアルキル(メタ)アクリレートからなる群から、及びさらにより好ましくは、C~C-アルキル(メタ)アクリレート及びC~C-シクロアルキル(メタ)アクリレートからなる群から選択される少なくとも1つである、実施形態5による水性コーティング組成物。
【0091】
実施形態7
少なくとも1つのヒドロキシル官能基を有する前記(メタ)アクリレートが、好ましくは、C~C-ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートからなる群から、及びより好ましくはC~C-ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートからなる群から選択される少なくとも1つである、実施形態5による水性コーティング組成物。
【0092】
実施形態8
少なくとも1つのオレフィン性二重結合を有する前記モノマーが、好ましくは、ビニル芳香族炭化水素からなる群から、より好ましくはスチレン、ビニルトルエン及びアルファ-メチルスチレンからなる群から、及びさらにより好ましくはスチレン、アクリル酸、メタクリル酸のアミド、ニトリル、ビニルエステル及びビニルエーテルからなる群から選択される少なくとも1つである、実施形態5による水性コーティング組成物。
【0093】
実施形態9
前記ポリアクリレート樹脂の数平均分子量が、1,000~10,000g/モル、及び好ましくは1,500~5,000g/モルである、実施形態4から8のいずれか1つによる水性コーティング組成物。
【0094】
実施形態10
前記ポリアクリレート樹脂の質量平均分子量が、3,000~20,000g/モル、及び好ましくは5,000~12,000g/モルである、実施形態4から9のいずれか1つによる水性コーティング組成物。
【0095】
実施形態11
前記ポリアクリレート樹脂が、10~200mgKOH/g、好ましくは20~100mgKOH/g、及びより好ましくは30~50mgKOH/gの酸価を有する、実施形態4から10のいずれか1つによる水性コーティング組成物。
【0096】
実施形態12
前記ポリアクリレート樹脂が、50~300mgKOH/g、好ましくは60~240mgKOH/g、及びより好ましくは80~200mgKOH/gのヒドロキシル価を有する、実施形態4から11のいずれか1つによる水性コーティング組成物。
【0097】
実施形態13
前記成分c):架橋剤が、好ましくは、非ブロック化、部分的にブロック化及びブロック化されたポリイソシアネート及びアミノ樹脂から選択される少なくとも1つである、実施形態2から12のいずれか1つによる水性コーティング組成物。
【0098】
実施形態14
前記b1):脂肪族ポリイソシアネートが、好ましくは、対称脂肪族ジイソシアネート及び対称脂肪族ジイソシアネートのオリゴマーからなる群から選択される、実施形態1から13のいずれか1つによる水性コーティング組成物。
【0099】
実施形態15
前記b1):脂肪族ポリイソシアネートが、好ましくは、テトラメチレン-1,4-ジイソシアネート、ヘキサメチレン-1,6-ジイソシアネート、オクタメチレンジイソシアネート、デカメチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、テトラデカメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサンジイソシアネート及びテトラメチルヘキサンジイソシアネート、及びヘキサメチレン-1,6-ジイソシアネートの三量体からなる群から選択される少なくとも1つである、実施形態14による水性コーティング組成物。
【0100】
実施形態16
前記b2):アミンが、好ましくは、C~C-アルコキシ-C~C-アルキルアミン、ジ-C~C-アルコキシ-C~C-アルキルアミン、C~C-アルキル置換アニリン及びジ-C~C-アルキル置換アニリンからなる群から、及びより好ましくは、C~C-アルコキシ-C~C-アルキルアミン及びC~C-アルキル置換アニリンからなる群から選択される少なくとも1つである、実施形態1から15のいずれか1つによる水性コーティング組成物。
【0101】
実施形態17
前記b2):アミンが、好ましくは、2-メトキシエチルアミン、2-エトキシエチルアミン、3-メトキシ-1-プロピルアミン、1-メトキシブチル-2-アミン、1,1-ジメトキシ-2-プロピルアミン、3-エトキシ-1-プロピルアミン、3-ブトキシ-1-プロピルアミン、3-(2-エチルヘキシルオキシ)-1-プロピルアミン、4-n-ブチルアニリン、4-sec-ブチルアニリン、4-イソブチルアニリン、4-tert-ブチルアニリン、4-n-ペンチルアニリン、4-イソペンチルアニリン及び4-n-ヘキシルアニリン、好ましくは3-メトキシ-1-プロピルアミン、3-エトキシ-1-プロピルアミン、3-ブトキシ-1-プロピルアミン、4-n-ブチルアニリン、4-sec-ブチルアニリン、4-イソブチルアニリン及び4-tert-ブチルアニリンからなる群から、及びより好ましくは3-メトキシ-1-プロピルアミン、3-エトキシ-1-プロピルアミン、4-n-ブチルアニリン、4-イソブチルアニリン及び4-tert-ブチルアニリンからなる群から選択される少なくとも1つである、実施形態16による水性コーティング組成物。
【0102】
実施形態18
b2):アミンのアミノ基対b1):脂肪族ポリイソシアネートのイソシアネート基のモル比が、0.7~1.5、好ましくは0.8~1.2、及びより好ましくは0.9~1.1の範囲である、実施形態1から17のいずれか1つによる水性コーティング組成物。
【0103】
実施形態19
成分a)、b)、及び任意に、c)を混合することによって、実施形態1から18のいずれか1つによる水性コーティング組成物を調製する方法。
【0104】
実施形態20
基材上に塗布される実施形態1から18のいずれか1つによる水性コーティング組成物を硬化させることによって形成されるコーティング層。
【実施例
【0105】
以下の非限定的な例は、本開示の種々の実施形態をさらに説明するために含まれ、本開示の範囲を限定するものではない。
【0106】
あらゆる実施例で使用された材料:
Desmodur N3300:脂肪族ポリイソシアネート(HDI三量体)、Covestro AG社から市販されている。
Cymel327:架橋剤、Allnex社から市販されている。
TBN-75PS:架橋剤、ブロック化ポリイソシアネート、旭化成社から市販されている。
Disparlon AQ-7180:湿潤剤、楠本化成社から市販されている。
Tinuvin400及びTinuvin292:光安定剤、BASF社から市販されている。
【0107】
ポリアクリレートの分子量(質量平均分子量及び数平均分子量を含む)は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって測定した:
装置: Agilent1200シリーズ
溶離液: 1モル/L CHCOOH-THF
注入量: 100μL
温度: 35℃
流量: 1.0ml/分
測定時間: 50分
分子標準: PMMA
SCAの粘度は、レオメーター(Antor paar MCR302)によって剪断速度1秒-1及び1,000秒-1で測定した。
【0108】
実施例1:ポリアクリレートAの合成
ステンレス鋼製反応器に、173.9質量部のブチルグリコールを、大気圧下、窒素ガスをフラッシュオフして100RPM(1分間あたりの回転数)の速度で撹拌しながら予備投入した。反応器を120℃に加熱し、温度が安定した時点で、40.2質量部のtert-ブチルペルオキシ-2-エチルヘキサノエートと38.0質量部のブチルグリコールの予備混合物を、4.75時間かけて投入した。開始剤装入の約15分後、81.5質量部のスチレン、108.7質量部のヒドロキシエチルメタクリレート、81.5質量部のtert-ブチルアクリレート、81.5質量部のトリデシルメタクリレート、163質量部のシクロヘキシルメタクリレート、24.5質量部のアクリル酸及び5.4質量部のブチルグリコールの予備混合物を、4時間かけて投入した。モノマー及び開始剤を投入した後、反応器を120℃で1時間保持した。次いで、反応器を80℃に冷却し、11.7質量部のジメチルエタノールアミンを中和のため5分以内に装入した。反応器を70℃で30分間保持した後、190.2質量部の脱イオン水を、滴下ロートを通し1時間かけて装入した。30分間撹拌した後、合成した樹脂を200umの大きさのスチール製フィルターバッグでろ過した。GPCで分子量を測定したところ、Mw(質量平均分子量):9,600、Mn(数平均分子量):4,600であった。
【0109】
実施例2:ポリアクリレートBの合成
ステンレス鋼製反応器に、167.6質量部のブチルグリコールを、大気圧下、窒素ガスをフラッシュオフして100RPMの速度で撹拌しながら予備投入した。反応器を120℃に加熱した。温度が安定した時点で、40.3質量部のtert-ブチルペルオキシ-2-エチルヘキサノエート及び36.1質量部のブチルグリコールの予備混合物を、4.75時間かけて投入した。開始剤装入の約15分後、26.2質量部のスチレン、246.2質量部のヒドロキシエチルメタクリレート、65質量部のtert-ブチルアクリレート、66質量部のトリデシルメタクリレート、131質量部のシクロヘキシルメタクリレート、23.6質量部のアクリル酸及び5.2質量部のブチルグリコールの予備混合物を、4時間かけて投入した。モノマー及び開始剤を投入した後、反応器を120℃で1時間保持した。次いで、反応器を80℃に冷却し、10質量部のジメチルエタノールアミンを中和のため5分以内に装入した。反応器を70℃で30分間保持した後、194質量部の脱イオン水を、滴下ロートを通し1時間かけて装入した。30分間撹拌した後、合成した樹脂を200umの大きさのスチール製フィルターバッグでろ過した。GPCで分子量を測定したところ、Mw:8,100、Mn:4,100であった。
【0110】
実施例3:SCA Cの合成
ステンレス鋼製反応器中、251質量部のポリアクリレートA(固形分:59質量%)と4.59質量部の3-メトキシ-1-プロピルアミンを、室温(5~40℃)で2分間混合した。次いで、9.75質量部のDesmodur N3300と9.11質量部のブチルグリコールの予備混合物を、2,000RPMのフル撹拌力下で10分間反応器に添加した。添加後、混合物をさらに10分間撹拌してから反応を完了させた。得られたSCA Cはバター状の固体であり、粘度は測定不能であった。
【0111】
実施例4:SCA Dの合成
ステンレス製反応器中、251質量部のポリアクリレートA(固形分:59質量%)と4.61質量部の3-メトキシ-1-プロピルアミンを、室温(5~40℃)で2分間混合した。次いで、4.26質量部のHDIモノマーと9.13質量部のブチルグリコールの予備混合物を、2,000RPMのフル撹拌力下で10分間反応器に添加した。添加後、混合物をさらに10分間撹拌してから、反応を完了させた。得られたSCA Dの粘度は、剪断速度1秒-1及び1,000秒-1の条件下で、それぞれ17,647及び686mpa・sであった。
【0112】
実施例5:SCA Eの合成
ステンレス鋼製反応器中、251質量部のポリアクリレートA(固形分:59質量%)、3.85質量部の4-ブチルアニリン及び10.74質量部のブチルグリコールを、室温(5~40℃)で2分間混合した。次いで、4.83質量部のDesmodur N3300と13.46質量部のブチルグリコールの予備混合物を、2,000RPMのフル撹拌力下で10分間反応器に添加した。添加後、混合物をさらに10分間撹拌してから、反応を完了させた。得られたSCA Eの粘度は、剪断速度1秒-1及び1,000秒-1の条件下で、それぞれ6,370及び632mpa・sであった。
【0113】
実施例6:SCA Fの合成
ステンレス製反応器中、251質量部のポリアクリレートA(固形分59質量%)と7.81質量部の4-ブチルアニリンを、室温(5~40℃)で2分間混合した。次いで、4.33質量部のHDIモノマーと9.27質量部のブチルグリコールの予備混合物を、2,000RPMのフル撹拌力下で10分間反応器に添加した。添加後、混合物をさらに10分間撹拌してから、反応を完了させた。得られたSCA Fの粘度は、剪断速度1秒-1及び1,000秒-1の条件下で、それぞれ13,129及び1,196mpa・sであった。
【0114】
実施例7:SCA Gの合成(比較例)
ステンレス製反応器中、251質量部のポリアクリレートA(固形分:59質量%)、1.58質量部のエタノールアミン及び6.6質量部のブチルグリコールを、室温(5~40℃)で2分間混合した。次いで、4.83質量部のDesmodur N3300と20.20質量部のブチルグリコールの予備混合物を、2,000RPMのフル撹拌力下で10分間反応器に添加した。添加後、混合物をさらに10分間撹拌してから、反応を完了させた。得られたSCA Gの粘度は、剪断速度1秒-1及び1,000秒-1の条件下で、それぞれ2,952及び537mpa・秒であった。
【0115】
実施例8:SCA Hの合成(比較例)
ステンレス製反応器中、251質量部のポリアクリレートA(固形分59質量%)と3.15質量部のエタノールアミン及び0.31質量部のブチルグリコールを、室温(5~40℃)で2分間混合した。次いで、4.26質量部のHDIモノマーと9.11質量部のブチルグリコールの予備混合物を、2,000RPMのフル撹拌力下で10分間反応器に添加した。添加後、混合物をさらに10分間撹拌してから、反応を完了させた。得られたSCA Hの粘度は、剪断速度1秒-1及び1,000秒-1の条件下で、それぞれ2,621及び1,017mpa・sであった。
【0116】
実施例9:SCA Iの合成(比較例)
ステンレス製反応器中、251質量部のポリアクリレートA(固形分:59質量%)、3.54質量部の4-メトキシベンジルアミン及び10.51質量部のブチルグリコールを、室温(5~40℃)で2分間混合した。次いで、4.83質量部のDesmodur N3300と20.20質量部のブチルグリコールの予備混合物を、2,000RPMのフル撹拌力下で10分間反応器に添加した。添加後、混合物をさらに10分間撹拌してから、反応を完了させた。得られたSCA Iの粘度は、剪断速度1秒-1及び1,000秒-1の条件下で、それぞれ7,440及び647mpa・sであった。
【0117】
実施例10:SCA Jの合成(比較例)
ステンレス製反応器中、251質量部のポリアクリレートA(固形分:59質量%)と7.07質量部の4-メトキシベンジルアミンを、室温(5~40℃)で2分間混合した。次に、4.26質量部のHDIモノマーと9.11質量部のブチルグリコールの予備混合物を、2,000RPMのフル撹拌力下で10分間反応器に添加した。添加後、混合物をさらに10分間撹拌してから、反応を完了させた。得られたSCA Jの粘度は、剪断速度1秒-1及び1,000秒-1の条件下で、それぞれ6,187及び1,192mpa・sであった。
【0118】
水性コーティング組成物の垂れ試験
水性コーティング組成物は、表1に列挙する成分を室温(5~40℃)で撹拌しながら混合して調製した。
【0119】
垂れ試験は以下の方法に従って行った:
コーティング組成物を、電気蒸着コーティング(厚さ:15μm、BASF Coatings社のCG800)で覆われたスチールパネル(寸法:60cm×30cm)に空気式スプレーで噴霧し、厚さに勾配をつけたクリアコートの層を形成した。噴霧したパネルを、オーブン中垂直に吊るして140℃で20分間硬化させた。硬化終了後、垂れが発生した位置のパネルの厚さを測定し、その位置のパネルの厚さを垂れ値として記録した。実施例の垂れ試験結果を表1にまとめる。
【0120】
【表1】
【0121】
MPA:3-メトキシ-1-プロピルアミン、BLA:4-ブチルアニリン、MBA:4-メトキシベンジルアミン、EA:エタノールアミン
三量体:Desmodur N3300、HDI:HDIモノマー
【0122】
表1に示すように、本発明の実施例による水性コーティング組成物を使用することにより、比較例によるものと比較して、増加した垂れ値が得られた。垂れ値が大きいほど、コーティング組成物は垂れの傾向が少ない。
【国際調査報告】