(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-05
(54)【発明の名称】安定な生分解性容器
(51)【国際特許分類】
B65D 65/46 20060101AFI20240628BHJP
D21J 5/00 20060101ALI20240628BHJP
D21H 17/03 20060101ALI20240628BHJP
D21H 17/04 20060101ALI20240628BHJP
D21H 17/25 20060101ALI20240628BHJP
D21H 17/24 20060101ALI20240628BHJP
B65D 65/42 20060101ALI20240628BHJP
B65D 85/804 20060101ALI20240628BHJP
【FI】
B65D65/46
D21J5/00
D21H17/03
D21H17/04
D21H17/25
D21H17/24
B65D65/42
B65D85/804 100
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023575884
(86)(22)【出願日】2022-06-08
(85)【翻訳文提出日】2024-02-08
(86)【国際出願番号】 EP2022065571
(87)【国際公開番号】W WO2022258696
(87)【国際公開日】2022-12-15
(31)【優先権主張番号】102021114743.3
(32)【優先日】2021-06-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521456999
【氏名又は名称】パパックス・セールス・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】PAPACKS SALES GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100166268
【氏名又は名称】田中 祐
(74)【代理人】
【識別番号】100180231
【氏名又は名称】水島 亜希子
(72)【発明者】
【氏名】ダグ,タフシン
【テーマコード(参考)】
3E086
4L055
【Fターム(参考)】
3E086AA22
3E086AD06
3E086AD24
3E086BA04
3E086BA14
3E086BA24
3E086BA25
3E086BB01
3E086BB85
3E086BB90
3E086CA40
3E086DA08
4L055AF09
4L055AG44
4L055AG51
4L055AG54
4L055BE10
4L055BF09
4L055CJ06
4L055FA11
4L055FA13
4L055FA14
4L055FA21
4L055FA22
4L055GA05
4L055GA30
(57)【要約】
本発明は、少なくとも1つの開口部(7)および底部(3)を有し、かつ生分解性コーティングを有する繊維材料の収納部(2)、ならびに開口部(7)のためのカバー(10)を有する容器(1)に関する。本発明はさらに、容器(1)を製造するための方法に関する。
本発明の根本的な問題は、生分解性構成成分のみから形成され、高いガス不透過性および高い機械的安定性を有しており、その製造が特に柔軟であり対費用効果が高い、容器(1)を提供することである。
その問題を解決するために、収納部(2)は、収納部(2)の構造を少なくとも局所的に強化する、生分解性の硬化した含浸物を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの開口部(7)および底部(3)を有し、かつ生分解性コーティングを有する繊維材料の収納部(2)、ならびに前記開口部(7)のためのカバー(10)を有する容器(1)であって、前記収納部(2)が生分解性の硬化した含浸物を有し、その含浸物が前記収納部(2)を構造的に少なくとも局所的に強化することを特徴とする、容器(1)。
【請求項2】
前記含浸物が、前記開口部(7)の領域および/または前記底部(3)の領域に塗布されたことを特徴とする、請求項1に記載の容器(1)。
【請求項3】
前記コーティングが、以下の構成成分、
- セルロース繊維、
- カゼイン、
- 乳清、
- 寒天、
- サイリウムハスク
の少なくとも1種を含有することを特徴とする、請求項1または2のいずれか1項に記載の容器(1)。
【請求項4】
前記含浸物が、以下の構成成分、
- カルナウバワックス、
- 蜜蝋、
- セラック、
- サトウキビワックス
の少なくとも1種を含有することを特徴とする、請求項1~3のいずれか1項に記載の容器(1)。
【請求項5】
前記収納部(2)が、フランジ(8)を有しており、このフランジが、前記含浸物を備えることを特徴とする、請求項1~4のいずれか1項に記載の容器(1)。
【請求項6】
前記カバー(10)が、シーリングフィルムとして設計されていることを特徴とする、請求項1~5のいずれか1項に記載の容器(1)。
【請求項7】
少なくとも1つの開口部(7)および底部(3)を有する繊維材料の収納部(2)、前記開口部(7)のためのカバー(10)、生分解性コーティング、ならびに前記収納部を構造的に少なくとも局所的に強化し、硬化している生分解性含浸物を含む容器(1)を製造する方法であって、
- 吸引モールドを使用してパルプから繊維材料を吸引し、前記繊維材料を圧縮して、成型体を形成する工程(A)と、
- 成型品を脱水し、乾燥させ、その結果、前記収納部(2)を形成する工程(B)と、
- 前記収納部(2)の少なくとも一部に前記含浸物を含浸させる工程(D)と、
- 前記含浸物を硬化させる工程(F)と、
- 前記収納部(2)を前記コーティングでコーティングする工程(G)と、
- 前記カバー(10)を取り付ける工程(H)と
を含む、方法。
【請求項8】
前記収納部(2)が、少なくとも1回ホットプレスされる(C、E)ことを特徴とする、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記含浸物が、前記収納部(2)を高温浴に浸漬させることによって塗布される(D)ことを特徴とする、請求項7または8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記コーティングが、前記収納部(2)に噴霧によって塗布される(G)ことを特徴とする、請求項7~9のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1つの開口部および底部を有する繊維材料製の収納部(container)、ならびに開口部のためのカバーを有する容器(receptacle)に関し、その収納部は生分解性コーティングを有する。本発明はさらに、容器を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
WO2020/216719A1は、ガス不透過性を増大する、流動性で生分解性の第1のコーティングがセルロースを含有する基材に塗布(applied to)され、これが固化してコーティングを形成する、コーティングされた基材の生成のための方法を開示している。良好なガスおよび水不透過性を有する天然原料から主になるパッケージングを達成するために、動物性および/または植物性のワックスおよび/または脂質の第2の防水性コーティングが、第1のコーティングに塗布される。
【0003】
WO2006/059112A2は、植物材料から生分解性複合材料を生成するための方法を開示している。植物材料は、パルプの形態であってよく、それを使用して収納部を製造できる。そのような複合収納部を高温ワックスに浸漬させることによって、収納部を生分解性ワックスでコーティングできる。WO2006/059112A2はまた、コーティングされた基材を高温加圧し得ることを開示している。
【0004】
GB2567418は、生分解性で堆肥化可能な繊維材料製のコーヒーカプセルを開示しており、そのカプセルには、内側および/または外側に生分解性プラスチックコーティングが備えられる。コーティングは、特にカプセルの上端のフランジ/輪の領域をより厚くすることができ、その領域では機械的強化を引き起こすことができる。
【0005】
生分解性ポーションパック(例えばコーヒーカプセル)は、EP2218653A1からも公知であり、そのパックは、例えば、ガス不透過性材料から形成される。ポーションパックは、完全にまたは部分的に表面処理および/またはコーティングし得る。ポーションパックはまた、繊維層からなる局所的強化を有することもできる。シール膜は、ポーションパックをシールするために設けられ、そのシール膜は、特にヒートシールによって、気密にポーションパックに接合される。
【0006】
現況の技術分野において既知の容器は、生分解性の構成成分のみから作製されたものではなく、これらの機械安定性は比較的低い。
【0007】
本発明の根本的な問題は、生分解性構成成分のみから形成されており、高いガス不透過性および高い機械的安定性を有しており、その製造が特に柔軟であり対費用効果が高い、容器を提供することである。
【0008】
この問題は、本発明の独立請求項の特色を有する容器および方法によって解決される。
【発明の概要】
【0009】
容器は、少なくとも1つの開口部および底部を有する繊維材料の収納部、ならびに開口部のためのカバーを含み、その収納部は生分解性コーティングを有する。
【0010】
繊維収納部は、セルロース繊維を有する水性パルプから作製される。セルロース繊維は、吸引形態を使用する簡単なふるい分けプロセスによって、ある形態にされる。吸引モールドの孔を通して水が吸引して出され、孔を有する吸引モールドの表面上にセルロース繊維が堆積する。吸引モールドによって形成された成型品は、トランスファープロセスで両側から成形されるようにトランスファーモールドに移される。さらなる熱処理および加圧プロセスを使用して、成型品の表面の質を改善できる。このようにして形成された繊維材料の成型品は、頑丈で寸法安定性がある。
【0011】
このようにして生成された繊維材料製の収納部は、開口部、開口部とは反対側の底部、ならびに開口部および底部を取り囲む周壁を有している。開口部および底部は、例えば、円形、楕円形または多角形でもよい。カバーは、収納部の開口部に取り付けられているか、または取り付けることができ、それを用いて収納部の開口部が閉じられているか、または閉じることができる。カバーは、収納部の内部が環境から閉じられているか、または閉じることができるように、収納部と相互作用する。カバーも生分解性である。
【0012】
コーティングを有していない繊維材料は、ある一定のガスおよび水透過性を有する。本明細書に記載の繊維収納部は、特にカバーが収納部と相互作用するときにそのガスおよび水不透過性を増大する生分解性コーティングを有する。コーティングは、収納部の強度を増大することもできる。繊維材料のコーティングは、一般に従来技術から公知である。コーティングは、例えば噴霧できる。代替的または追加的に、コーティングは、繊維材料をコーティング浴に浸漬させ、次にそれを乾燥させることによって塗布できる。例えば、出願人による国際公開WO2020/216719A1は、セルロース基材のための生分解性バリアコーティングを開示しており、そのコーティングは、本明細書に記載の繊維収納部をコーティングするのに十分に適している。
【0013】
上述の問題を解決するために、収納部は、収納部の構造を少なくとも局所的に強化する、生分解性の硬化した含浸物を有する。
【0014】
換言すれば、構造的に収納部を少なくとも局所的に強化し、硬化時により高い強度を与えるように、収納部の繊維材料と相互作用する生分解性薬剤が提案される。加えて、含浸物は、湿気に対して耐性となり得る。
【0015】
一般に、含浸物という用語は、多孔質材料を薬剤で浸すことを指す。それゆえに、選択された薬剤は、孔に浸透し、硬化することによって多孔質材料の強度を増大する。選択された含浸物は、疎水性薬剤としても公知の防水剤になり得る。このような薬剤が水滴で湿潤する場合、疎水性薬剤の表面と水滴との間のいわゆる濡れ角度は大きくなる。特に、湿気は含浸物に浸透できない。
【0016】
繊維材料から作製された繊維製品、例えば本明細書に記載の繊維収納部は、湿気、水または他の液体が浸透できる孔を一定の間隔で含有する。通常、セルロース含有繊維材料から作製されるそのような多孔質繊維収納部は、通常、特に浸される場合には強度が限られる。耐性を増大するために、孔は、少なくとも選択された領域において硬化性の含浸物でシールできる。例えば、含浸物は、繊維収納部の孔に浸透し、これらを充填できる。含浸物は、前述の通り、好ましくは湿気自体を全く吸収しないので、含浸された繊維材料は、より強力になるだけでなく、充填された孔で湿気をほとんどまたは全く吸収しない。
【0017】
本明細書に記載の収納部では、繊維材料の完全な含浸が絶対に必要というわけではない。少なくとも局所的に限定された領域の孔が含浸物で充填され、および/または少なくとも繊維材料の表面近くの孔が含浸物によってシールされれば十分である。孔をシールするために、孔は、含浸物で完全に充填されなくてもよい。孔は、少なくとも部分的に充填され、および/または部分的にシールされれば十分である。
【0018】
本明細書に記載の含浸物は、少なくとも2種の凝集状態を有することができる。含浸物は、塗布中は液体であり、硬化しているときは含浸物として意図した状態にある。特に含浸物は、この目的のために熱可塑性物質とし得る。このことは、含浸物が、加熱状態では流動的であり、冷却されるときには固化することを意味する。このような変化は、熱可塑性材料の凝集状態において可逆的である。代替的に、含浸物は、含浸中は単に流動的であり、そのデュロマー(duromer)またはエラストマーの様式の含浸物として意図した状態で不可逆的に硬化することもできる。
【0019】
含浸物は、硬化すると、収納部を形成している繊維材料よりも高い強度を有する。含浸物の強度は、繊維材料のシールコーティングの強度より高いこともある。それゆえに収納部は、含浸後、含浸物なしのコーティングを有する収納部よりも高い機械的ストレスに耐えることができる。含浸物は生分解性なので、容器全体が、生分解性材料のみから作製される。生分解性とは、材料がある一定の嫌気条件または好気条件下で分解し得ることを意味する。
【0020】
実際上、含浸物は、堆肥化可能なものであってよい。堆肥化可能とは、含浸物が、大気酸素の影響下、すなわち好気条件下で土壌生物によって分解される有機材料から形成されることを意味する。好ましくは、含浸物が堆肥化可能なだけでなく、容器のすべての構成成分が堆肥化可能である。実際、容器および特に含浸物は、工業的に定義された条件なしに堆肥化可能とし得る。このことは、堆肥化が、工業的な堆肥化工場なしに可能であることも意味する。選別された堆肥廃棄物を含む容器が処分されず、環境に放出されたとしても、その容器は数カ月以内に分解できる。対照的に、堆肥化可能な、機械的に強化された容器の大部分は、通常、工業的に定義された条件下で、または数年もの長期間にわたって、初めて堆肥化可能となる。したがって、本明細書に記載の容器のエコロジー的なフットプリントは、類似した機械的安定性を有する他の多くの材料から作製された容器と比較して、大幅に小さくなっている。
【0021】
実際、含浸物は、開口部の領域および/または底部の領域に塗布できる。これらの領域は、多くの場合、特に高い機械的ストレスに曝露され、したがって、これらの領域における収納部材料の機械的強化は特に有用である。
【0022】
実際、含浸物は、収納部の内部に向いている表面(内側)に塗布できる。追加的または代替的に、含浸物は、収納部の外部に向いている表面(外側)に塗布するか、または収納部壁部に完全に染み込ませることができる。前述の通り、含浸物を局所的にのみ塗布することが十分な場合がある。
【0023】
含浸物は、収納部のコーティングのためのプライマーを形成できる。含浸物が収納部の片側だけ(すなわち内側または外側のいずれか)に塗布される場合、コーティングは、代替的または追加的に、含浸物が塗布されない収納部の側に塗布してもよい。収納部に、含浸物が局所的に設けられる場合、コーティングは、含浸物上に部分的に、および繊維材料上に直接、部分的に塗布できる。
【0024】
実際、コーティングは、以下の構成成分
- セルロース繊維、
- カゼイン、
- 乳清、
- 寒天、
- サイリウムハスク
の少なくとも1種を含有できる。
【0025】
前述の通り、コーティングは、収納部のガス不透過性を増大し、その強度を増大することもできる。
【0026】
セルロースナノフィブリルまたはマイクロフィブリルは、例えば水に溶解させて、収納部上に噴霧できる。ナノセルロースは、30~100nmの範囲の中央径を有するセルロースマイクロフィブリルおよび/または5~20nmの範囲の中央径を有するセルロースナノフィブリルを有する。工業的に販売されるセルロースフィブリルは、多くの場合、マイクロフィブリルおよびナノフィブリルの混合物である。実際、98重量%の水中の2重量%のナノセルロースの混合物は、プライマーのために有効であることが証明されている。より高い割合のセルロースが選択される場合、湿気による収納部の変形を低減または回避でき、プライマーの乾燥時間を短縮できる。実際、プライマー溶液のセルロース含量は2~10重量%であることが好適である。
【0027】
ガス透過に対する収納部の不透過性を増大するため、コーティングに使用できる他の有機材料が存在する。例えば、カゼイン粉末は、水と混合し、水酸化カルシウムを使用して変性できる。カゼインは、収納部の不透過性および機械的強度を増大する。水酸化カルシウムを用いて変性されたカゼインは、ある一定程度、撥水性にもなる。炭酸水素ナトリウムを用いてカゼインを変性させることも可能であるが、カゼインは撥水性にならない。
【0028】
実際に、30gのカゼイン粉末を水100mlで約8~10時間膨潤させておき、30gの水酸化カルシウムを添加して、撹拌した。さらに50mlの水を添加した後、溶液をふるい分けして、コーティングのために使用した。このコーティングは、セルロース繊維でコーティングした後、またはセルロース繊維を用いるコーティングの代替として塗布できる。コーティングはまた、セルロース繊維およびカゼインの両方を含有していてもよい。
【0029】
乳清も、コーティングの構成成分として好適である。乳清は、熱(90~100℃)によって変性させることができる。コーティングの構成成分としての乳清はまた、コーティングされた収納部の強度を増大する。乳清コーティング自体は撥水性ではないが、第2のコーティングで防水性にすることができる。
【0030】
最後に、ゲル形成成分、例えば寒天(藻類由来のゼラチン)またはサイリウムハスク(エダウチオオバコ(Plantago indica)、セイヨウオオバコ(Plantago afra)の種子殻)は、コーティングへの添加に好適である。寒天粉末は、例えば、この目的のために水と混合され、100℃で1分間変性させられる。それが冷却すると固化し、ゲル化する。ゲルは収納部に塗布され、まだシールされていない繊維材料の孔をシールし、強度を増大し、水をはじく薄層を形成できる。
【0031】
粉砕サイリウムハスクを水に浸し、約20分間膨潤させた後に収納部に塗布すると、類似の効果が達成される。
【0032】
前述の通り、コーティングの構成成分は、水に同時に溶解させて、混合物として塗布できる。一方、コーティングを、異なる構成成分を含むいくつかの層として収納部に塗布することも可能である。前述のプライマーの可能なすべての構成成分が生分解性である。
【0033】
実際、含浸物は、カルナウバワックスによって構成できる。カルナウバワックスは、高い融解温度(約85~89℃)を有する非常に硬い熱帯のワックスである。カルナウバワックスは、それ自体匂いも味もほとんどなく、防水性である。カルナウバワックスは、乾燥するときは非常に脆く、数秒以内に固化する。その硬度により、摩擦に対する耐性も非常に高い。カルナウバワックスは、食品パッケージングに承認されており、マンゴー、スイーツ等の保存期間を増大するためのコーティングとして長い間使用されてきた。加えて、含浸物は、蜜蝋または他の天然ワックスを含有し得る。生分解性ワックスと、好ましくはやはり堆肥化可能なワックスとの組合せを、含浸物のために使用でき、このような組合せは、成型された繊維製品に所望の強度を与え、パッケージされた食品との併用に特に好適である。カルナウバワックスおよび蜜蝋に加えて、例えば、セラックおよびサトウキビワックスも、収納部の成型された繊維体に含侵させるための薬剤における使用に好適である。
【0034】
蜜蝋は、他の場所の中でもとりわけ欧州で生成されているワックスであり、カルナウバワックスよりも硬度が低い。蜜蝋は、カルナウバワックスとの混合物において脆性を低減する助けになる。蜜蝋もまた、それ自体匂いも味もほとんどなく、食品と組み合わせて使用するのに承認されている。蜜蝋の融点は約65℃である。
【0035】
実際、収納部は、フランジをさらに含むことができ、このフランジに含浸物を備えることができる。フランジは、コーティングされた繊維材料の収納部と一体に形成される。特に、フランジは、開口部の領域の周壁の上端部に、外側に向かって放射状に突き出ることができる。これによって、カバーを取り付けることができる表面が大きくなる。容器のこの設計は、特に、例えば飲料粉末ポーションパッケージングとして、特にコーヒーカプセルとして十分に適している。フランジに含浸させることによって、フランジおよびフランジに隣接する収納部領域が機械的に強化される。コーヒーカプセルのためのコーヒーマシンのグリップ機構は、コーヒーカプセルを第1の位置から第2の位置に移動させるためにフランジに係合するので、そのような強化は、繊維材料製の収納部を有するコーヒーカプセルに特に有利である。フランジの含浸により、繊維コーヒーカプセルに必要な強度および耐湿性が付与される。
【0036】
本明細書に記載の容器からなるカプセルの形態のコーヒーポーションパッケージングは、コーティングされていないセルロース繊維製の従来のコーヒーポッドよりもはるかに高い、高度な不透過性を有しており、アルミニウム製の従来のコーヒーカプセルよりも良好な環境適合性を有している。結果として、コーヒーは、大量の廃棄物を生じることなく長時間保存できる。本明細書に記載のコーヒーカプセルは、天然原料だけからなり、容易に生分解および/または分解し得る。
【0037】
なお、本明細書に記載の容器は、他の目的のためにも使用できる。容器は、固体または液体形態の任意の食料品のための、およびバルク製品のための輸送収納部、特に、使い捨ての輸送収納部として使用できる。収納部は、ボトルの形状を有することができる。含浸物は、構造的に、雄ネジの輪郭を有する上部を強化できる。この雄ネジ上に、ネジ蓋をねじ込むことができる。さらに、ボトル底部は、含浸物によって構造的に強化できる。容器は、シーリングフィルムでシールされたヨーグルトポットでもよい。容器はまた、特に食品以外の製品を乾燥に対してまたは環境とのガス交換に対して保護すべきである場合に、これらの製品のためのパッケージングとして使用できる。
【0038】
実際、容器のカバーは、シーリングフィルムとして設計してもよい。シーリングフィルムは、高密度にコーティングされた繊維材料からなり得る。シーリングフィルムは、薄く、可撓性であると同時に、気密である。特に、シーリングフィルムのコーティングは、収納部のコーティングと同一であってもよい。また、異なる組成を有することもできる。カバーのコーティングが収納部のコーティングと同一であり、および/またはこれらの2つのコーティングが同じ溶媒に溶解し得る場合、収納部およびカバーは、材料接着によって、特に容易かつ確実に一緒に接合できる。例えば、コーティングされており、まだ完全には乾燥していないカバーは、開口部を完全に覆うように、収納部の開口部上に配置できる。次に、収納部およびカバーを、一緒に加圧することができ、これによって収納部のコーティングをカバーのコーティングと共に溶解させ、後に乾燥させる。このようにして覆い、接合することによって、容器の材料消費が最小限に抑えて、異なる材料が僅かで済み、生分解性および/または堆肥化可能性に有利である。
【0039】
本発明はまた、少なくとも1つの開口部および底部を有する繊維材料製の収納部、開口部のためのカバー、生分解性コーティング、ならびに収納部を少なくとも局所的に強化する生分解性の硬化した含浸物を含む容器を製造するための方法に関する。当該方法は、
- 吸引モールドを使用してパルプから繊維材料を吸引し、繊維材料を収納部に圧縮する工程と、
- 収納部を脱水し、乾燥させる工程と、
- 収納部の少なくとも一部に含浸物を含浸させる工程と、
- 含浸物を硬化させる工程と、
- 収納部をコーティングでコーティングする工程と、
- カバーを取り付ける工程と
を含む。
【0040】
収納部は、慣用的に、最初に繊維材料でパルプを形成することによって製造される。繊維材料は、パルプからふるいにかけ、および/または吸引モールドを用いることによって吸引し、例えば対向モールド(counter mold)を用いる加圧によって圧縮して、繊維材料製の成型品を形成できる。その後のステップで、得られた繊維収納部に液体含浸物を少なくとも局所的に含浸させる前に、成型品を、例えば再び加圧することによって脱水し、例えばオーブンで加熱することによって乾燥できる。例えば、底部だけおよび/または開口部を有する領域だけが含浸される。次に、含浸物を硬化させることができ、その結果、含浸物は固体になり、繊維収納部の含浸された領域の強度および場合により耐湿性を増大する。硬化は、例えば上昇させた温度のオーブンで行うことができる。
【0041】
更なるステップにて、含浸された収納部は、コーティングすることができ、これによって、ガスまたは液体の通過に対する収納部の不透過性が増大される。シールコーティングは、内部の食料品を安全にしっかりと含有するために、特に収納部の内側に塗布される。
【0042】
充填後、カバーを成型された繊維収納部に取り付けることができ、その結果、収納部の開口部が閉じられ、閉じられた気密の、少なくとも局所的に強化され局所的に撥水性の容器が形成される。
【0043】
それぞれの方法ステップのさらなる詳細に関して、こうして得られる特色の上述の説明も参照される。したがって、これらの特色と関連して言及される利点は、本方法に適用される。
【0044】
前述の通り、収納部を、少なくとも含浸物が塗布された後にホットプレスし、含浸物を繊維材料により良好に浸透させることができる。これによって、収納部の特に高い幾何学的精度および平坦な表面を達成することもできる。追加的または代替的に、繊維材料製品の脱水および乾燥後に、ホットプレスを行うことができる。この場合、残留水分も繊維材料から除去し得る。最後に、収納部は、コーティング後かつ充填前にホットプレスすることができる。
【0045】
実際上、含浸物は、収納部を高温浴に浸漬させることによって塗布できる。高温浴における浸漬は、含浸物を塗布する、特に簡単で迅速な対費用効果の高い方法である。加えて、コーティングは、局所的に、特に収納部の底部領域および/または開口部領域(場合により、フランジが設けられる場合にはフランジを有する)に塗布できる。次に、塗布された含浸物を硬化させることができる。
【0046】
含浸物を噴霧し、次に必要に応じてホットプレスすることもできる。最後に、含浸物が生成されることになるホットプレスモールドの領域にワックスを導入することが可能である。この場合、ホットプレスモールドは、含浸物の融解温度を上回る温度に加熱される。
【0047】
実際、コーティングは、噴霧によって収納部に塗布できる。コーティングの噴霧は、繊維材料製品のコーティングを塗布する、特に簡単で迅速な対費用効果の高い方法である。さらに、噴霧は、特に均質なおよび/または薄いコーティングの形成を可能にする。
【0048】
以下に、本発明の更に実際的な実施形態および利点について、図を参照して記載する。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【
図1】コーヒーカプセルとしての実施形態の本発明に係る容器を垂直断面図で示す。
【
図2】カバーがない
図1の本発明に係る容器を上から見た斜め図を示す。
【
図3】
図1の本発明に係る容器を下から見た斜め図を示す。
【
図4】本発明に係る容器を製造するための製造方法を示す。
【発明を実施するための形態】
【0050】
図1~3に、コーヒーカプセルとして設計されている容器1を示す。容器1は、収納部2を有しており、本質的に回転対称性である。容器1は、底部3および底部3を取り囲む周壁4を有している。中心の回転対称性陥凹5は、陥凹の中心に配置されている、やはり回転対称性の穿孔領域6を含み、底部3に形成される。穿孔領域は、容器1に供給された液体が圧力下で流れ出るように、少なくとも1つのニードルによって穿孔されることになる。陥凹5は、収納部の内部に向かって、すなわち収納部2の底部3とは反対側の開口部7に向かって配向している。収納部2は、開口部7において、開口部7を回転対称的に取り囲むフランジ8および周壁4を有している。フランジ8は、周壁4から径方向に外側に向かっており、底部3に本質的に並行に配向している。
【0051】
底部3、周壁4およびフランジ8を含む収納部2は、繊維材料から一体で形成される。コーティング(図示せず)は、収納部内部に向いている収納部2の内側9、およびフランジ8の上向きの表面に塗布される。コーティングは、例えばセルロースおよびカゼインから作製でき、それゆえに生分解性である。なお、コーティングは、追加的または代替的に、他の生分解性構成成分、例えば乳清、寒天および/またはサイリウムハスクを含有することもできる。コーティングは、収納部2のガス不透過性および機械的な安定性を増大する。
【0052】
開口部7は、
図1ではより良好な概観のために収納部2の上に少し離れて示されている、シーリングフィルムとして設計されるカバー10で覆うことができる。シーリングフィルム10は、可撓性であると同時に気密である。意図される通り、シーリングフィルム10は、フランジ8上の適所に固定され、したがって環境から収納部内部をシールする。シーリングフィルム10は、フランジ上に固定するために、フランジ8の方向に配向している表面上に、収納部の内側9およびフランジ8の上向きの表面と同じコーティングを有している(図示せず)。シーリングフィルム10およびフランジ8のコーティングは、互いに接着する。
【0053】
容器1は、底部3の領域および開口部7の領域の両方に、含浸された領域11a、11bを有している。
図1の断面図において、含浸された領域11a、11bは、クロスハッチングによって強調されている。
図2および
図3において、含浸された領域11a、11bの表面は、ドットで強調されている。領域11aおよび
図11bの両方において、含浸物は、冷却時に固化する同様の強度増強材料からなる。この材料は、例えば、カルナウバワックス、またはカルナウバワックスおよび蜜蝋の混合物でもよい。含浸された領域11a、11bは、収納部2を形成する繊維材料に完全に浸透している。これに関して、本明細書に記載の底部3および開口部7の領域における繊維材料の孔のすべてのまたはほぼすべてが、収納部の壁厚全体にわたって、含浸物が完全にまたはほぼ完全に充填される。浸漬は、繊維材料の孔を充填するだけでなく、少なくとも収納部の外側の繊維も含浸物で覆う。したがって、含浸物は、最上部に塗布されるコーティングのためのプライマーも形成する。
【0054】
図4に、方法ステップA~Hを用いて本発明に係る容器を製造できる製造方法を示す。
【0055】
この製造方法によれば、第1の方法ステップAにて、繊維材料を含むパルプが形成される。繊維材料を、吸引モールドを使用してパルプから吸引し、次にトランスファーモールドを用いて加圧することによって圧縮して、繊維材料製の収納部2を形成する。更なる方法ステップBにて、収納部2をトランスファーモールドから対向モールドに移し、その中で収納部2を、新たなより強い加圧によって脱水する。次に、収納部2を、オーブンチャンバに移し、そこで例えば180℃の上昇させた温度で乾燥させる。更なる方法ステップCにて、収納部の寸法安定性を増大し、任意の残りの湿気を除去するために、乾燥させた繊維収納部をホットプレスする。更なる方法ステップDにて、収納部2にワックスを局所的に塗布して、含浸された領域11a、11bを形成する。ワックスは、最初に、収納部2の底部3を、ワックスの高温浴に事前に規定された浸漬深度まで浸漬させることによって塗布できる。次に、収納部2をひっくり返し、開口部7の領域を同じ高温浴に浸漬させる。当然のことながら、含浸物の第2の領域のために、異なる高温浴を、場合により異なる含浸物と共に使用することもできる。その後(方法ステップE)、収納部の寸法安定性をさらに改善し、繊維材料の孔に含浸物をより良好に導入できるようにするために、含浸された収納部2を再びホットプレスすることができる。
【0056】
高温浴への含浸物の塗布の代替として、ホットプレスのためのモールドに、塗布される薬剤を充填することもできる。次に、方法ステップDを省略できる。
【0057】
ホットプレス後、収納部2を、方法ステップFにて別のオーブンに移す。この更なるオーブンにおいて、ワックスを繊維材料の孔により深く浸透させることができる。この処理は、例えば90℃で行うことができる。
【0058】
その後の方法ステップGにて、コーティングを、繊維収納部2の内側9およびフランジ8の上向きの側に噴霧によって塗布する。最終的な方法ステップHにて、シーリングフィルム10を、繊維収納部の内側と同じ水性コーティングでコーティングし、フランジの上側およびシーリングフィルム10を、フランジ8の上向きの側に、コーティングがまだ湿っている状態で密着させ、その結果、収納部の開口部を気密方式で閉じるカバーが形成される。
【0059】
結果として、本明細書に記載の容器1は、収納部2の底部3および開口部7の領域の収納部壁部に浸透している、生分解性の硬化した含浸物を有している。加えて、容器1は、収納部2の内側9全体および収納部の内側に向いているカバー10の側を覆う、生分解性の気密コーティングを有する。収納部2の開口部7の領域において、コーティングは、最初に塗布された含浸物に塗布される。それゆえに、この領域においては、内側9上に直接位置付けられた含浸物およびその上に形成されたコーティングからなる多層システムが、収納部2の内側9上に存在する。
【0060】
本明細書、図および特許請求の範囲に開示されている本発明の特色は、その様々な実施形態において本発明を実現させるために、個々にでも任意の組合せでも必須となり得る。本発明は、記載される実施形態に限定されない。本発明は、特許請求の範囲内で、当業者の知識を考慮に入れて変わり得る。
【符号の説明】
【0061】
1 容器、コーヒーカプセル
2 収納部
3 底部
4 周壁
5 陥凹
6 穿孔領域
7 収納部の開口部
8 フランジ
9 内側
10 カバー、シール箔
11a 含浸された領域
11b 含浸された領域
A 方法ステップ(吸引モールドを使用してパルプから繊維材料を吸引し、繊維材料を収納部に圧縮する)
B 方法ステップ(収納部を脱水し、乾燥させる)
C 方法ステップ(収納部のホットプレス)
D 方法ステップ(含浸薬剤の高温浴に収納部の一部を浸漬させる)
E 方法ステップ(含浸された収納部のホットプレス)
F 方法ステップ(含浸物の硬化)
G 方法ステップ(噴霧によってコーティングで収納部をコーティングする)
H 方法ステップ(カバーを取り付ける)
【国際調査報告】