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特表2024-524062光センサを備えたグレージングのための光学楔素子
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  • 特表-光センサを備えたグレージングのための光学楔素子 図1
  • 特表-光センサを備えたグレージングのための光学楔素子 図2a
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  • 特表-光センサを備えたグレージングのための光学楔素子 図5
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-05
(54)【発明の名称】光センサを備えたグレージングのための光学楔素子
(51)【国際特許分類】
   B60J 1/00 20060101AFI20240628BHJP
   B60J 1/02 20060101ALI20240628BHJP
   B60R 1/24 20220101ALI20240628BHJP
【FI】
B60J1/00 G
B60J1/02 Z
B60R1/24
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023576231
(86)(22)【出願日】2022-06-23
(85)【翻訳文提出日】2023-12-11
(86)【国際出願番号】 EP2022067281
(87)【国際公開番号】W WO2023274854
(87)【国際公開日】2023-01-05
(31)【優先権主張番号】21182615.1
(32)【優先日】2021-06-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】510191919
【氏名又は名称】エージーシー グラス ユーロップ
【氏名又は名称原語表記】AGC GLASS EUROPE
【住所又は居所原語表記】Avenue Jean Monnet 4, 1348 Louvain-la-Neuve, Belgique
(74)【代理人】
【識別番号】100103816
【弁理士】
【氏名又は名称】風早 信昭
(74)【代理人】
【識別番号】100120927
【弁理士】
【氏名又は名称】浅野 典子
(72)【発明者】
【氏名】リ, メイジエ
(72)【発明者】
【氏名】ラロワイヨ, グザヴィエ
(72)【発明者】
【氏名】サルトナエ, ヤニック
(57)【要約】
本発明はグレージングに関し、グレージングは、その内面に面する光学センサを含む。最適化された楔角度を有する光学楔素子は、グレージングと光学センサとの間のグレージングの内面上に置かれる。本発明はまた、光学楔素子を含むグレージングの使用とこのような光学楔素子の最適楔角度γを決定する方法とに関する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内面(1i)及び外面(1e)を有するグレージング(1)であって、前記グレージング(1)は、
a.前記グレージング(1)の前記内面(1i)に面するとともに固有視野(α)を有する発射/受信光学センサ(2);
b.前記グレージング(1)の前記内面(1i)と前記発射/受信光学センサ(2)との間に置かれた内面(3i)及び外面(3e)を有する光学楔素子(3)であって、前記光学楔素子(3)の前記外面(3e)は前記グレージング(1)の前記内面(1i)に面し、前記内面(3i)及び前記外面(3e)は楔角度(γ)を形成する、光学楔素子(3)
を含み;
前記グレージング(1)は、前記発射/受信光学センサ(2)が前記グレージング(1)の前記内面(1i)に面する領域において水平面に対して設置角度τで置かれ;
ここで、スケーリング係数は
であり、βは前記グレージング(1)の前記内面(1i)上に置かれた前記発射/受信光学センサ(2)の要求視野であり、
i.前記発射/受信光学センサ(2)により発射される信号の前記光学楔素子(3)の前記内面(3i)への最大入射角ιmaxは、60°、より好適には50°、更に好適には40°の値に設定されること;
ii.前記楔角度(γ)は、前記発射/受信光学センサ(2)の前記視野(α)と前記光学楔素子(3)の前記内面(3i)との交差が前記最大入射角(ιmax)以下の入射角(ιL+,ιL-)を形成する値に等しいこと
を特徴とする、グレージング(1)。
【請求項2】
前記楔角度(γ)は、前記発射/受信光学センサ(2)の前記視野(α)と前記光学楔素子(3)の前記内面(3i)との前記交差が前記最大入射角(ιmax)以下の入射角(ιL+,ιL-)を形成する最低値である、請求項1に記載のグレージング(1)。
【請求項3】
前記光学楔素子(3)は、ポリビニルブチラール(PVB)、ポリウレタン(PU)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリカーボネート(PC)、又は光学的珪素、又はその組み合わせなどのガラス又はプラスチックで作られる、請求項1乃至2のいずれか一項に記載のグレージング(1)。
【請求項4】
前記光学楔素子(3)の前記内面(3i)は反射防止膜で被覆される、請求項1乃至3のいずれか一項に記載のグレージング(1)。
【請求項5】
前記光学楔素子(3)は、糊付け、オートクレービング、機械的クリッピング、レーザ溶接又は光結合により前記グレージング(1)へ固定される、請求項1乃至4のいずれか一項に記載のグレージング(1)。
【請求項6】
前記発射/受信光学センサ(2)はライダである、請求項1乃至5のいずれか一項に記載のグレージング(1)。
【請求項7】
前記発射/受信光学センサ(2)の前記固有視野(α)のサイズ及び信号分布を再スケーリングするようにされた歪みレンズなどの追加補正光学素子を、前記発射/受信光学センサ(2)と前記光学楔素子(3)との間に更に含む、請求項1乃至6のいずれか一項に記載のグレージング(1)。
【請求項8】
前記グレージング(1)は自動車グレージングである、請求項1乃至7のいずれか一項に記載のグレージング(1)。
【請求項9】
前記グレージング(1)はフロントガラス又はリアライトである、請求項8に記載のグレージング(1)。
【請求項10】
前記グレージング(1)はガラス若しくはプラスチック又はその組み合わせで作られる、請求項1乃至9のいずれか一項に記載のグレージング(1)。
【請求項11】
前記グレージング(1)は積層グレージングである、請求項1乃至10のいずれか一項に記載のグレージング(1)。
【請求項12】
前記グレージング(1)は前記発射/受信光学センサの動作波長範囲において90%以上の透過率の値を有する、請求項1乃至11のいずれか一項に記載のグレージング(1)。
【請求項13】
前記光学楔素子(3)は前記発射/受信光学センサの動作波長範囲において90%以上の透過率の値を有する、請求項1乃至12のいずれか一項に記載のグレージング(1)。
【請求項14】
前記グレージング(1)の前記内面(1i)において前記発射/受信光学センサ(2)からの前記信号の反射を低減するための請求項1乃至13のいずれか一項に記載のグレージング(1)の使用。
【請求項15】
光学楔素子(3)の内面(3i)及び外面(3e)により形成される最適楔角度(γ)を決定する方法であって、
- 前記光学楔素子(3)は内面(1i)及び外面(1e)を有するグレージング(1)の前記内面(1i)上に置かれ、前記光学楔素子(3)の前記外面(3e)は前記グレージング(1)の前記内面(1i)に面し;
- 前記光学楔素子(3)の前記内面(3i)は発射/受信光学センサ(2)に面し、前記発射/受信光学センサは固有視野(α)を有し;
- 前記車両グレージング(1)は、前記発射/受信光学センサ(2)が前記グレージング(1)の近くに置かれた領域において水平面に対して設置角度(τ)を形成し;
前記方法は、
a.前記設置角度(τ)に基づきスケーリング係数Sを決定すること、ここで
であり、βは前記車両グレージング(1)の前記内面(1i)上に置かれた前記発射/受信光学センサ(2)の視野である;
b.最大定義反射に基づき前記光学楔素子(3)の前記内面(3i)における最大入射角(ιmax)を決定すること;
c.前記発射/受信光学センサ(2)の前記視野(α)と前記光学楔素子(3)の前記内面(3i)との交差が工程b)で定義された前記最大入射角(ιmax)以下の入射角(ιL+,ιL-)を形成する最低楔角度(γ)を決定すること
を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、傾斜グレージングの背後に置かれる光学センサの分野に関する。具体的には、傾斜グレージングの内面上に置かれる光学楔素子に関する。本発明はまた、傾斜グレージングの背後に(具体的には車両の傾斜グレージングの背後に)置かれる光学センサの視野を再スケーリングする方法に関する。
【背景技術】
【0002】
今日、車両は益々増加する光学センサを装備する。車両は自動車、ヴァン、ローリ、モータバイク、バス、トラム、列車、ドローン、飛行機、ヘリコプタ等々を含む。車両に加えて、光学センサを建物(風車、油田掘削装置、道路標識等々も含む)のグレージングの背後に設置するための益々増加する要求もある。
【0003】
車両上で使用される光学センサの中でも、発射/受信(E/R:emitting and receiving)光学センサ(車両の外側に向かって車両から信号を先ず発射し、次に車両の外側の或る障害により反射される信号を受信する光学センサを意味する)に向けての益々増加する要求がある。ライダ(lidar)はこのようなE/R光学センサの代表例である。表現「発射/受信」又は表現「E/R」の両方が本明細書を通して使用され得、両方は同じ概念を指す。
【0004】
傾向は、このようなE/R光学センサを車両のグレージングの背後に一体化することに向かっている。E/R光学センサはグレージングの背後に置かれるので、グレージングの内部表面(車両の内側に面するグレージングの表面を意味する)上の発射信号の反射から、重大な信号損失が生じる。このような反射は、光線が外側に向かって発射されると空気/グレージング界面において発生する。この減衰はE/R光学センサによる検出を損ない、その結果、正確な距離測定はもはや可能ではない。
【0005】
E/R光学センサが車両の傾斜グレージングの背後に置かれる場合、信号は更に大きく減衰する。例えば、フロントガラスの場合、E/R光学センサは水平面と25°~40°の角度で設置される。E/R光学センサは通常はフロントガラスの上方部内に置かれ、フロントガラスはその上方部においてより大きく曲げられ得るので、グレージングと水平面との角度は更に小さい(通常は20°~35°)。従って、E/R光学センサが水平に置かれる場合、これは55°~70°のグレージング上の信号の入射角(グレージングと水平面との角度の余角)を意味する。従って、30°のE/R光学センサの視野(FOV:field of view)を考慮すると、これはグレージング上の85°までも大きくなり得る入射角に至り、反射される信号の重要部分をもたらす。
【0006】
このような反射を減少させるための1つのやり方は、グレージングの内部表面を反射防止(AR:antireflective)被膜により被覆することである。AR被膜が例えば物理気相蒸着法(PVD:physical vapor deposition)によりグレージング上に塗布され得る。AR被膜はグレージングの小エリア上に(これは「光学センサの視野(FOV)の内側のグレージングの一部分上に」を意味する)のみ必要とされる。しかし、局所的蒸着はかなり複雑である。従って、むしろ完全被覆が適用され、AR被膜を必要としないエリア上のAR被膜に至る。マスキングが、AR被膜の専用エリア上以外のガラス表面全体上に必要とされ、これは製造上の制約に至る。局所的蒸着はPVD以外の技術により行われ得るが、これらの技術は通常、粗度、一様性及び耐久性の観点で高レベル光学品質に達しない。その上、標準的AR被膜は通常、法線入射に関して最適化される。このようなAR被膜の性能は入射光の入射角の増加とともに低下する。特別に設計されたAR被膜は、大きな入射角に関して最適化され得るが、このようなAR被膜は、設置するのがより複雑、より高価及び挑戦的である。AR被膜は製造困難性及び費用を明らかに増加する。更に、AR被膜は、塗布されるグレージングの機械的、化学的及び熱的抵抗を低減し得る。
【0007】
このような反射を減少させる別のやり方は、国際公開第9419705号パンフレットにおいて開示されるように、ビームの入射角を適合させるためにグレージングの内面上に適切な屈折率及び吸収レベルを有するプリズム状素子を置くことである。このような光学楔素子は反射を減少させることになる。しかし、光学楔素子は、かなりの重量及びサイズを有する大きな材料片であり得、車両のグレージング上の一体化を複雑にする又は光学楔素子をグレージングへ接合する困難性に至る。更に、光学楔素子の厚さに起因して、光学楔素子は信号の一部を吸収し、従って信号減衰を生じることになる。
【0008】
光学楔素子の使用はまた、光学センサの視野(FOV)の修正に至る。通常、車両のグレージングのうちの1つのグレージングの背後に光学センサを含む車両に関して、製造者は、光学センサがグレージングの背後に置かれる場合は光学センサの特定視野を必要とする。この特定FOVは、光学センサが車両の外側の物体を検出することができるためだけでなくこのような物体と車両との間の距離を測定することができるためにも必要とされる。従って、光学センサのFOVは製造者からのFOV仕様書に基づき設計される。しかし、光学センサが光学楔素子(及びグレージング)に面して置かれる場合、そのFOVは修正される。この修正されたFOVは要求FOVに、もはや対応しない。
【0009】
国際公開第2018087223号パンフレットはまた、カメラの光導体(可視波長範囲において活性である)の使用を開示する。このような光導体はまた、光学プリズムとして働き、光学楔素子として同化され得る。しかし、この光学楔素子の目的は、外側から車両窓を通過し、センサにより検出される放射線をセンサの作用角が拡大されるように偏向することである。このとき、検出のために使用される車両窓の領域は低減される。従って、センサを隠すために、それほど透明でないマスキングプリントを使用することが可能となり、車両窓の全光透過率及び美的外観の改良に至る。この特許文書において述べられるように、楔角度が大きければ大きいほど、放射線の偏向はより強くなり、その影響はより顕著になるが、楔角度は空間要件により制限される。しかし、楔角度が大きければ大きいほど、光学楔素子はより厚くなり、光学楔素子に起因する光の吸収はより高くなり、従ってカメラがより少ない光を受信するのであまり正確でない測定に至る。
【0010】
従って、従来技術から知られる光学楔素子の欠点を補正し、車両製造者からの要件に答える、光学楔素子の必要性がある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、内面及び外面を有するグレージングに関する。グレージングは、グレージングの内面に面するE/R光学センサを含む。E/R光学センサは固有視野αを有する。グレージングはまた、内面及び外面をまた有する光学楔素子を含む。光学楔素子はグレージングの内面とE/R光学センサとの間に置かれる。光学楔素子の外面はグレージングの内面に面する。内面及び外面は楔角度γを形成する。グレージングは、E/R光学センサがグレージングの内面に面する領域に、水平面に対して設置角度τで置かれる。スケーリング係数は
であり、ここで、βはグレージングの内面上に置かれたE/R光学センサの視野である。E/R光学センサにより発射された信号の光学楔素子の内面への最大入射角ιmaxは、60°、より好適には50°、更に好適には40°の値に設定される。楔角度γは、E/R光学センサの視野αと光学楔素子の内面との交差が最大入射角ιmax以下の入射角ιL+、ιL-を形成する値に等しい。
【0012】
本発明はまた、光学楔素子を含むグレージングの使用に、並びにこのような光学楔素子の最適楔角度γを決定する方法にも関する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
本発明は添付図面を参照して一例として更に説明され、同様な参照符号は様々な図面における同様な素子を指す。これらの例は、例示として提供されるのであって制限として提供されるのではない。添付図面は概略図であって、原寸に比例していない。添付図面は本発明をいかなるやり方でも制限しない。より多くの利点がいくつかの例により説明されることになる。
【0014】
図1】車両のフロントガラスの背後に置かれる本発明による光学楔素子の3D図を示す。
図2a】車両グレージングの背後に置かれる本発明による光学楔素子の2D図を示す。図2bは図2aの拡大図である。
図2b】車両グレージングの背後に置かれる本発明による光学楔素子の2D図を示す図2aの拡大図である。
図2c】E/R光学センサが水平面と比較して傾斜された実施形態を示す。
図3】設置角度の様々な値の楔角度に応じたスケーリング係数Sのグラフである。
図4】1.5の屈折率を有する材料と空気との間の界面でのフレネル式に基づく反射率を示す。
図5】所与の構成のための、本発明による光学楔素子を使用するプラスの影響を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明は、特定の実施形態に関していくつかの図面を参照して説明されることになるが、本発明はそれらに制限されるのではなく、特許請求の範囲のみにより制限される。
【0016】
本明細書に記載のいくつかの実施形態は、他の実施形態に含まれる特徴のいくつかを含み、他の特徴を含まないが、様々な実施形態の特徴の組み合わせが、当業者により理解されるように、本発明の範囲内にあり様々な実施形態を形成するように意図されている。例えば、以下の特許請求の範囲では、請求される実施形態の任意のものが任意の組み合わせで使用され得る。
【0017】
本発明は、発射/受信光学(E/R)光学センサと、グレージングとE/R光学センサとの間に置かれた光学楔素子とを含む、グレージングを提案する。以下の説明は車両グレージングのケースに焦点を当てるが、本発明は任意の種類のグレージング上に置かれる光学楔素子に適用され得る。
【0018】
車両グレージングは、車両の任意の従来の窓(フロントガラス、リアライト又はサイドライト(三角窓を含む)など)を指す。基本的に、このような車両グレージングは車両内部を外側環境から分離するために提供される。しかし、このような車両グレージングはまた、E/R光学センサの波長範囲に対し透明である限り、車両の任意の他の外部部分を指し得る。例えば、E/R光学センサはヘッドライト隔室の内側に置かれ得る。この場合、グレージングはヘッドライトを形成する透明な部分を指す。別の例は、自走車両のピラーの1つの背後に置かれるE/R光学センサになるだろう。この場合、グレージングは、ピラーカバーとしてE/R光学センサの前に置かれる部分を指す。
【0019】
車両グレージングは少なくとも1つの窓枠を含む。設置位置において車両の外囲体に面する少なくとも1つの窓枠の面は「外面」と呼ばれる。設置位置において車両の内部に面する少なくとも1つの窓枠の面は「内面」と呼ばれる。同じ語法が、光学楔素子の面を説明するために使用される:「外面」がグレージングの内面に接触する面を指す一方で、「内面」はE/R光学センサの前の面を指す。
【0020】
車両グレージングは、E/R光学センサの動作波長範囲において透明である限り、ガラス(単体ガラス)若しくはプラスチック、又はその組み合わせ(積層ガラスなど)で作られる。グレージングは平らであってもよいし曲げられてもよい。車両グレージング(例えば自動車のフロントガラスなど)はまた、上側部において下側部とは異なる曲率を示し得る。
【0021】
E/R光学センサは、ライダ又はレーダなどの発射/受信光学センサを指す。ライダの場合、ライダは最初に、IR光を車両の内側から車両の外側に向かって発射する。次に、IR光は車両の外側の物体によりセンサへ反射され戻され、センサは次に車両と前記物体との間の距離を評価することができる。
【0022】
光学楔素子は、ポリビニルブチラール(PVB)、ポリウレタン(PU)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリカーボネート(PC)又は光学的珪素などのガラス又はプラスチックで作られ得る。光学楔素子はまた、これらの材料の組み合わせで作られ得る。基本的に、光学楔素子は、E/R光学センサの動作波長範囲において透明である限り任意の材料で作られ得る。光学楔素子はまた、本発明の目的のためのグレージングの屈折率に近い屈折率を示さなければならない。光学楔素子はまた、その面上の反射を減少させるために、反射防止膜により被覆され得る。このような反射防止膜を光学楔素子上に塗布することは、従来技術と比較して、論述されるようなグレージングの表面全体上に塗布するよりも簡単且つ安価である。更に、法線入射のために設計された標準的AR被膜は、入射角が定義値未満に維持される(本明細書において後で説明される)ように使用され得る。この光学楔素子へ、加熱被覆又はシルバープリントのような追加機能が加えられ得る。光学楔素子は、糊付け、オートクレービング、機械的クリッピング、レーザ溶接、光結合、又は当業者により知られている任意の他の方法により、車両グレージングへ取り付けられ得る。
【0023】
楔角度γは、光学楔素子の外面と内面とにより形成される角度である。
【0024】
設置角度τは、グレージングの領域において車両グレージングと水平面とにより形成される角度であり、ここで、E/R光学センサはグレージングの内面に面する。
【0025】
FOVスケーリング
通常、そのグレージングの少なくとも1つのグレージングの背後にE/R光学センサを含む車両に関して、製造者は、光学センサがグレージングの背後に置かれる場合、E/R光学センサの特定視野(FOV)を必要とする。この特定FOVは、E/R光学センサが車両の外側の物体を検出することができるためだけでなくこのような物体と車両との間の距離を測定することができるためにも必要とされる。この要求FOVは、光線がグレージングを通過する必要があり、従って屈折に遭遇することになるので、E/R光学センサの固有FOVとは異なる。従って、要求FOVは常にE/R光学センサの固有FOVより大きい。スケーリング係数Sは固有FOVと要求FOVとの比率を決定する:
【0026】
固有FOVはE/R光学センサに特有である。光線追跡シミュレーション方法を使用することにより、グレージング及び光学楔素子の設置角度、楔角度、並びに屈折率に基づきスケーリング係数Sを決定することが可能である。
【0027】
基本的に、E/R光学センサの固有FOVはできるだけ小さくあるべきである。このようにして、グレージング上のセンサゾーン(グレージング内のゾーンを意味する):光線がE/R光学センサから進行する又はE/R光学センサへ進行する(並びに、E/R光学センサの作動波長範囲に対し透明である)ゾーンは、比較的小さい可能性がある。このセンサゾーンは小さいので、光学楔素子厚さも低減され得、グレージング上の少ない吸収に到るだけでなく一体化が容易になる。
【0028】
光学センサの固有FOVはスケーリングされる必要があり、信号分布は、要求FOV(光学楔素子を備えた車両グレージングの後ろの)が車両製造者からの要求構成に従うように再分散される必要がある。通常、E/R光学センサの傾斜及び光学楔素子の楔角度だけを操作することにより、要求FOVは要求構成へ調節され得る。しかし、固有FOVのサイズ及び信号分布を再スケーリングするために、歪レンズなどの追加補正光学素子もまたE/R光学センサと光学楔素子との間に追加される可能性がある。
【0029】
光学楔素子の内部表面上の最大入射角
入射角ιは、光学楔素子の内面におけるE/R光学センサの信号の入射角である。当業者により知られているように、入射角が小さければ小さいほど、より少ない反射が発生し、光線の透過率はより高くなる。
【0030】
フレネル式に基づき、及びグレージング及び光学楔素子両方の屈折率を知ることにより、反射は入射角に応じて計算され得る。E/R光学センサが十分な精度で動作するために必要とされる最小透過率に依存して最大反射が推定され得る。この最大反射は光学楔素子の内部表面上の最大入射角である最大入射角ιmaxに対応する。
【0031】
最大入射角ιmaxは60°、より好適には50°、更に好適には40°の値に設定される。
【0032】
最小楔角度
光学楔素子の内面とE/R光学センサの固有FOVとの交差が最大入射角ιmax以下の入射角を形成する、楔角度γが決定される。最低楔角度γを選択することは、光学楔素子をできるだけ薄くすることになり、従って光学楔素子の材料からのより少ない吸収に、次により高い透過率に到る。
【0033】
本発明はまた、グレージングの内面におけるE/R光学センサからの信号の反射を低減するための光学楔素子を含むグレージングの使用に関する。
【0034】
本発明はまた、グレージングの内面上に置かれた光学楔素子の最適楔角度を決定する方法に関し、光学楔素子の内面はE/R光学センサに面する。
【実施例
【0035】
以下の例では、本発明は添付図面(例示的実施形態)を参照して詳細に説明される。添付図面は概略図であり、原寸に比例していない。添付図面は本発明を決して制限しない。
【0036】
図1は、車両グレージング(1)に面するE/R光学センサ(2)を有する車両グレージング(1)(この場合フロントガラス)の3D図である。光学楔素子(3)は車両グレージング(1)とE/R光学センサ(2)との間に置かれる。見て分かるように、固有FOV(α)及び要求FOV(β)の両方は円錐状である。しかし、説明の明確化のために、以下の説明は2D図に基づき行われることになるが、論法は同じである。
【0037】
図2aはE/R光学センサ(2)を有する車両グレージング(1)を描き、E/R光学センサ(2)は車両グレージング(1)の内面(1i)に面する。光学楔素子(3)は車両グレージング(1)とE/R光学センサ(2)との間に置かれる。光学楔素子(3)の外面(3e)及びグレージング(1)の内面(1i)は互いに整合される。この例では、グレージング(1)及び光学楔素子(3)の両方は1.5の同じ屈折率を有する。
【0038】
要求FOV(β)は垂直面内のこのFOVの範囲を形成するその極限光線(L-、L+)により表される。この例では、要求FOV(β)は30°に等しい。極限光線(L-、L+)はそれぞれ、この例では水平である要求FOV(β)の中心と比較して、対称的に-15°及び+15°に在る。
【0039】
図2bは、同じE/R光学センサ(2)を有し、同じ光学楔素子(3)を含む同じ車両グレージング(1)を、説明の明確化のために高倍率で描く。図2bはまた、E/R光学センサ(2)が車両グレージング(1)の近くに置かれる領域において水平面と車両グレージング(1)とにより形成される角度に対応する設置角度(τ)を示す。この例では、E/R光学センサ(2)は水平に置かれるが、図2cに示すように車両グレージング(1)と比較して傾斜される可能性がある。
【0040】
E/R光学センサ(2)の固有FOV(α)はまた、垂直面内のこのFOVの限度を形成するその極限光線(L-,L+)により表される。光学楔素子(3)の内面(3i)との固有FOV(α)の極限光線(L-,L+)の入射角(ιL-、ιL+)も描写されている。
【0041】
楔角度(γ)は光学楔素子(3)の外面(3e)及び内面(3i)により形成される角度である。
【0042】
スケーリング係数は下記式により与えられる:
【0043】
図3は設置角度(τ)の様々な値の楔角度(γ)に応じたスケーリング係数Sを示す。設置角度(τ)が増加すると、スケーリング係数Sも同様に増加する。固定設置角度(τ)≦40°に関して、スケーリング係数Sは楔角度(γ)の増加(30°までの)とともに減少する:楔角度(γ)が大きければ大きいほど固有FOV(α)はより小さくなる。その上、固定設置角度(τ)>40°に関して、スケーリング係数Sは楔角度(γ)<30°の最小値に達する。これは、設計が、最小固有FOV(α)を有するためにこの楔角度(γ)にできるだけ近づくべきであるということを意味する。
【0044】
光学楔素子(3)の内部表面(3i)上の最大入射角(ιmax)の値は、60°、より好適には50°、更に好適には40°である。フレネル式に基づき、図4は1.5の屈折率を有する材料と空気との間の界面における反射を示す。最大反射値が5%に固定されると仮定する。この値は、一例として選択されおり、従ってE/R光学センサ感度に応じて異なり得る。この値は40°より低い入射角(ιmax)に対応する。これは、E/R光学センサは、光学楔素子(3)の内部表面(3i)上の入射角(ι)が40°未満である限り正確な測定のための十分な透過信号を受信するということを意味する。
【0045】
表1は、設置角度(τ)に依存する楔角度(γ)のいくつかの値に関する光学楔素子(3)の内面(3i)と固有FOV(α)の極限光線との入射角(L+,L-)にそれぞれ対応する入射角(ιL+,ιL-)の値を示す。この例に関して、前に定義された40°未満の値は太字で強調された。
【0046】
【0047】
最低楔角度(γ)は、光学楔素子(3)の内面(3i)とE/R光学センサ(2)の固有FOV(α)との交差が前に定義された最大入射角(ιmax)(この例では40°)未満の入射角(ιL+,ιL-)を形成する値に等しい。
【0048】
表2は設置角度(τ)に依存した楔角度(γ)の最適値を示す。楔角度(γ)の最小値はハイライトされた太字値の中でも表1から選択された。
【0049】
【0050】
比較例
前の例に基づき、グレージング(1)及び光学楔素子(3)の両方の材料は非常に低い吸収係数(0.01cm-1未満)を有するという事実に基づき、図5は、30°の設置角度(τ)に関する15°の楔角度(γ)を有する光学楔素子(3)の有る無しの要求FOV(β)内の全透過率を示す。前に定義された楔角度(γ)の最適値を有する光学楔素子(3)のおかげで、透過率は10%まで増加され得、このことは自動車産業において非常に意味のあることである。
【0051】
本発明は、添付図面及びこれまでの明細書において示され、詳細に説明されたが、このような図解及び説明は例示的又は一例であり、従って限定的でないと考えるべきである。これまでの明細書は、本発明のいくつかの実施形態を詳述するものである。しかし、前述の明細書がいかに詳細にテキストに現れても、本発明は多くのやり方で実施され得るということを理解されたい。本発明は開示された実施形態に限定されない。
図1
図2a
図2b
図2c
図3
図4
図5
【国際調査報告】