(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-05
(54)【発明の名称】車体及び駆動エネルギー貯蔵部を有する原動機付き車両
(51)【国際特許分類】
B60K 1/04 20190101AFI20240628BHJP
B62D 25/20 20060101ALI20240628BHJP
【FI】
B60K1/04 Z
B62D25/20 E
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023576399
(86)(22)【出願日】2022-07-21
(85)【翻訳文提出日】2023-12-12
(86)【国際出願番号】 EP2022070536
(87)【国際公開番号】W WO2023001979
(87)【国際公開日】2023-01-26
(31)【優先権主張番号】102021119166.1
(32)【優先日】2021-07-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】398037767
【氏名又は名称】バイエリシエ・モトーレンウエルケ・アクチエンゲゼルシヤフト
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100191835
【氏名又は名称】中村 真介
(74)【代理人】
【識別番号】100221981
【氏名又は名称】石田 大成
(74)【代理人】
【識別番号】100191938
【氏名又は名称】高原 昭典
(72)【発明者】
【氏名】ハルシュ・トーマス
(72)【発明者】
【氏名】クライッツ・ミヒャエル
(72)【発明者】
【氏名】ヴァーグナー・マティアス
(72)【発明者】
【氏名】マイヤー・ゼバスティアン
【テーマコード(参考)】
3D203
3D235
【Fターム(参考)】
3D203AA31
3D203AA34
3D203BB06
3D203BB12
3D203DB05
3D235AA02
3D235BB03
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3D235BB25
3D235CC14
3D235DD35
3D235EE63
3D235FF06
3D235FF07
3D235FF12
3D235FF37
3D235HH26
(57)【要約】
【課題】原動機付き車両がより軽量で、より大きな到達距離を有し、安価に製造可能な、車体及び駆動エネルギー貯蔵部を有する原動機付き車両を提供する。
【解決手段】車体1及び駆動エネルギー貯蔵部3を有する原動機付き車両であって、車体が、左側の長手ビーム7及び右側の長手ビーム8を有するフロアアセンブリ5を備えており、駆動エネルギー貯蔵部3が駆動エネルギー貯蔵部ハウジング301,302を備えており、該駆動エネルギー貯蔵部ハウジング301,302が、フロアアセンブリ5に下方から取り付けられており、取り付けられた駆動エネルギー貯蔵部ハウジング301,302が、少なくとも部分的にフロアアセンブリ5の床部を形成している。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体(1)及び駆動エネルギー貯蔵部(3)を有する原動機付き車両であって、車体が、左側の長手ビーム(7)及び右側の長手ビーム(8)を有するフロアアセンブリ(5)を備えており、駆動エネルギー貯蔵部(3)が駆動エネルギー貯蔵部ハウジング(301,302)を備えており、該駆動エネルギー貯蔵部ハウジング(301,302)が、フロアアセンブリ(5)に下方から取り付けられており、取り付けられた駆動エネルギー貯蔵部ハウジング(301,302)が、少なくとも部分的にフロアアセンブリ(5)の床部を形成していることを特徴とする原動機付き車両。
【請求項2】
駆動エネルギー貯蔵部ハウジング(301,302)がフロアアセンブリ(5)と共に、原動機付き車両の車室(9)の流体密な床部を形成しており、車室(9)の流体密性が、特に駆動エネルギー貯蔵部ハウジング(301,302)とフロアアセンブリ(5)の協働によってのみ得られることを特徴とする請求項1に記載の原動機付き車両。
【請求項3】
駆動エネルギー貯蔵部ハウジング(301,302)が、フロアアセンブリ(5)に対して駆動エネルギー貯蔵部ハウジング(301,302)をシールする連続的に周設されたシール面を有する周設されたシールフランジ(306)を備えていることを特徴とする請求項1又は2に記載の原動機付き車両。
【請求項4】
フロアアセンブリ(5)が、前方のクロスビーム構造部(11)及び後方のクロスビーム構造部(13)を備えており、駆動エネルギー貯蔵部ハウジング(301)が、左側の長手ビーム(7)及び右側の長手ビーム(8)並びに前方のクロスビーム構造部(11)及び後方のクロスビーム構造部(13)に取り付けられていることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の原動機付き車両。
【請求項5】
フロアアセンブリ(5)が、前方のクロスビーム構造部(11)と後方のクロスビーム構造部(13)の間に、左側の長手ビーム(7)及び/又は右側の長手ビーム(8)に結合された少なくとも1つの別のクロスビーム(15,16,17,18)、特にシートクロスビーム及び/又はヒールプレートクロスビームを備えており、及び/又はフロアアセンブリ(5)が、左側の長手ビーム(7)と右側の長手ビーム(8)の間に、前方のクロスビーム構造部(11)及び/又は後方のクロスビーム構造部(13)に結合された少なくとも1つの別の長手ビームを備えていることを特徴とする請求項4に記載の原動機付き車両。
【請求項6】
駆動エネルギー貯蔵部ハウジング(301)が、特にネジ結合部(23)を用いて別のクロスビーム(15,16,17,18)に取り付けられており、及び/又は駆動エネルギー貯蔵部ハウジング(301)が別のクロスビーム(15,16,17,18)に接着されていることを特徴とする請求項5に記載の原動機付き車両。
【請求項7】
フロアアセンブリ(5)が、前方のクロスビーム構造部(11)と後方のクロスビーム構造部(13)の間に、又は前方のクロスビーム構造部(11)と別のクロスビーム(18)の間にフロアパネルを備えておらず、これにより、フロアアセンブリ(5)のより大きな範囲が開放して形成されていることを特徴とする請求項4~6のいずれか1項に記載の原動機付き車両。
【請求項8】
右側の長手ビーム(7)と左側の長手ビーム(8)の間及び前方のクロスビーム構造部(11)と後方のクロスビーム構造部(13)の間の面積の少なくとも40~85%が開放して形成されていることを特徴とする請求項4~7のいずれか1項に記載の原動機付き車両。
【請求項9】
駆動エネルギー貯蔵部ハウジング(301)の上側の壁部が、駆動エネルギー貯蔵部(3)、特に駆動エネルギー貯蔵部(3)のバッテリセル及び/又は電気/電子構成要素の調温のための熱交換器として形成されており、駆動エネルギー貯蔵部ハウジング(301)の上側の壁部が、特に追加的に、車室(9)の調温のための熱交換器として形成されていることを特徴とする請求項1~8のいずれか1項に記載の原動機付き車両。
【請求項10】
駆動エネルギー貯蔵部(3)が更に追加ハウジング(302)を備えており、該追加ハウジングが、駆動エネルギー貯蔵部ハウジング(301)に配置されているとともに、特に駆動エネルギー貯蔵部(3)の電気/電子構成要素及び/又は別のバッテリセルを収容し、追加ハウジング(302)が、特に車両シートの下方、例えば後方のシート列の下方に配置されていることを特徴とする請求項1~9のいずれか1項に記載の原動機付き車両。
【請求項11】
駆動エネルギー貯蔵部ハウジング(301)の上側が本質的に平坦に形成されていることを特徴とする請求項1~10のいずれか1項に記載の原動機付き車両。
【請求項12】
駆動エネルギー貯蔵部ハウジング(301)がハウジング下部(303)及びハウジング上部(305)で形成されており、ハウジング下部(303)がハウジング下部フランジ(304)を備えており、ハウジング上部(305)がハウジング上部フランジ(306)を備えており、ハウジング下部(303)及びハウジング上部(305)が、ハウジング下部フランジ(304)及びハウジング上側フランジ(306)を介して互いに結合されており、ハウジング上部フランジ(306)又はハウジング下部フランジ(304)が、フロアアセンブリ(5)に駆動エネルギー貯蔵部ハウジング(301)を取り付けるためにハウジング上部フランジ(306)と共に形成されていることを特徴とする請求項1~11のいずれか1項に記載の原動機付き車両。
【請求項13】
駆動エネルギー貯蔵部(3)が、原動機付き車両の走行動作についての車体剛性を高めるように、及び衝突負荷状態に対する車体剛性を高めるように、構成され、フロアアセンブリ(5)に結合されていることを特徴とする請求項1~12のいずれか1項に記載の原動機付き車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体及び駆動エネルギー貯蔵部を有する原動機付き車両に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電気駆動部を有する原動機付き車両は、通常、バッテリモジュールあるいはバッテリセル、電気部品/電子部品及び冷却装置が配置された駆動バッテリハウジングを備えた駆動バッテリを有している。他方、駆動バッテリハウジングは、車両車体におけるフロアアセンブリの下方に配置されている。公知の駆動バッテリハウジングは、例えばアルミニウムから成るとともに、側方のビーム、カバー及び床部を備えている。側方のビームは、例えば押出成形物又は鋳造部材として構成されている。
【0003】
特許文献1に示されているように、公知の駆動バッテリハウジングは、長手ビームと、当該長手ビーム間で延びる複数のクロスビームとを有している。また、駆動バッテリハウジングは上側の壁部及び下側の壁部を有しており、当該上側の壁部及び下側の壁部は、それぞれ少なくとも外側のビーム構造部、すなわち外側の長手ビーム及び外側のクロスビームと結合されている。長手ビーム及びクロスビームは押出成形物で形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】独国特許出願公開第102017223407号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、原動機付き車両がより軽量で、より大きな到達距離を有し、安価に製造可能な、車体及び駆動エネルギー貯蔵部を有する原動機付き車両を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
当該課題は、請求項1の特徴を有する原動機付き車両によって解決される。本発明の有利な形態は、各従属請求項に挙げられている。
【0007】
本発明による原動機付き車両は、車体及び駆動エネルギー貯蔵部を有している。原動機付き車両は、乗用車又は商用車であってよい。特に、原動機付き車両は、電気駆動部を有している。駆動エネルギー貯蔵部は、特に高電圧貯蔵部とも呼ばれる駆動バッテリ(走行用バッテリ)であり得る。車体は、左側の長手ビーム及び右側の長手ビームを有するフロアアセンブリを備えている。このような車体長手ビームは、サイドスカート又は外側下方の長手ビームとも呼ばれる。駆動エネルギー貯蔵部は駆動エネルギー貯蔵部ハウジングを備えており、駆動エネルギー貯蔵部あるいは駆動エネルギー貯蔵部ハウジングは、フロアアセンブリにおいて下方から取り付けられている。取り付けられた駆動エネルギー貯蔵部あるいは取り付けられた駆動エネルギー貯蔵部ハウジング、特に駆動エネルギー貯蔵部ハウジングカバーは、少なくとも部分的にフロアアセンブリの床部を形成する。
【0008】
これにより、駆動貯蔵部ハウジングは、フロアアセンブリの床部の代わりとなる。これにより、原動機付き車両、すなわち車体、特にフロアアセンブリは、より軽量であり、かつ、よりわずかな部材しか必要としない。また、これにより、車両高さ方向(Z方向)における構造空間を削減することができるか、あるいはより高さのあるバッテリセルを組み込むことが可能である。
【0009】
有利には、駆動エネルギー貯蔵部ハウジングは、本質的にフロアアセンブリの全幅にわたって、すなわち本質的に左側の長手ビームと右側の長手ビームの間の構造空間全体にわたって延在している。
【0010】
これにより、十分なバッテリセルを駆動バッテリに収容することができ、フロアアセンブリの床部の十分に大きな部分の代わりとなることが可能である。
【0011】
また、駆動エネルギー貯蔵部ハウジングは、ある範囲において、あるいは原動機付き車両のフロントアクスルとリヤアクスルの間のできる限り大きな範囲にわたって延在することが可能である。有利には、駆動エネルギーハウジングは、前方の(車室の)前壁あるいは前方の前壁の下方から左側のホイールハウス及び右側のホイールハウスの前方の端部まで延在している。また、駆動エネルギーハウジングは、原動機付き車両の第2のシート列の下方まで延在することが可能である。換言すれば、駆動エネルギー貯蔵部ハウジングは、少なくとも前方の車体ピラー(Aピラー)と後方の車体ピラー(特にCピラー)の間の範囲で延びることができるとともに配置されることが可能である。このとき、駆動エネルギー貯蔵部ハウジングは、前方の車体ピラーの範囲から後方の車体ピラーの範囲まで延在している。
【0012】
本発明の好ましい一発展形態によれば、駆動エネルギー貯蔵部ハウジング及びフロアアセンブリは、原動機付き車両の車室の流体密な床部を共に形成する。特に、駆動エネルギー貯蔵部ハウジングとフロアアセンブリの協働のみによって、下方へ向けた車室の流体密性が得られ、フロアアセンブリは、駆動エネルギー貯蔵部ハウジングなしでは流体密な床部を有さず、あるいは、フロアアセンブリ単独では下方へ向けて流体密ではない。
【0013】
したがって、駆動エネルギー貯蔵部ハウジングは、フロアアセンブリの連続した流体密な床部の機能の代わりとなる。なお、「流体密」という用語は、この関係において、フロアアセンブリ又は駆動エネルギー貯蔵部ハウジングがフロアアセンブリによって共に閉鎖可能な、ケーブルブッシング、水流出部又はこれらに類するもののための開口部を備えることを除外するものではない。「流体密」は、特に「液体密」を意味する。
【0014】
取り付けられた駆動エネルギー貯蔵部ハウジングがフロアアセンブリを下方へ向けて完全にシールするように、駆動エネルギー貯蔵部ハウジングとフロアアセンブリの間には、シール又はシール性の接着剤を適切に配置することが可能である。
【0015】
シールは、例えばブチルで形成され得る。シールは、フラットシール、リップシール又はプロファイルシールとして形成され得る。
【0016】
有利には、駆動エネルギー貯蔵部ハウジングは、フロアアセンブリに対して駆動エネルギー貯蔵部ハウジングを密閉する周設された連続したシール面を有する、同時に取付フランジでもあり得る周設されたシールフランジを有している。
【0017】
周設されたシールフランジは、有利には1つの面、すなわち車両座標系のxy-平面に対して平行な面に配置されている。これにより、シール性をより良好に形成可能である。
【0018】
本発明による原動機付き車両の有利な一発展形態によれば、フロアアセンブリは、前方のクロスビーム構造部及び後方のクロスビーム構造部を備えており、駆動エネルギー貯蔵部ハウジングは、左側の長手ビーム及び右側の長手ビーム並びに前方のクロスビーム構造部及び後方のクロスビーム構造部に取り付けられている。この場合、上述のシールフランジは、長手ビーム及びクロスビーム構造部の対応するフランジシール面に接触する。
【0019】
有利には、フロアアセンブリは前方のクロスビーム構造部と後方のクロスビーム構造部の間に少なくとも1つの別のクロスビームを有しており、当該別のクロスビームは、それぞれ左側の長手ビーム及び右側の長手ビームと結合されているか、あるいは左側の長手ビームと右側の長手ビームの間で延びている。別のクロスビームは、シートクロスビーム又はヒールプレートクロスビームであってよい。有利には、フロアアセンブリは複数の別のクロスビームを有しており、当該別のクロスビーム間には、フロアアセンブリが下方へ向けて開放されるように、それぞれ自由空間が形成されている。有利には、1つ又は複数のシートクロスビームは、前壁の後方の範囲において、Bピラーまで配置されているとともに、前方のシート列、すなわちフロントシートの固定及び横方向におけるフロアアセンブリの衝突剛性に寄与する。ヒールプレートクロスビームは、通常、第2のシート列の前方の端部の範囲に配置されているとともに、第2のシート列の固定及び同様に横方向におけるフロアアセンブリの衝突剛性に寄与する。
【0020】
好ましくは、駆動エネルギー貯蔵部ハウジングは、特にネジ結合部を用いて別のクロスビームに取り付けられている。これに加えて、又はこれに代えて、駆動エネルギー貯蔵部ハウジングは、接着結合部によってクロスビームに結合され、すなわち接着されることが可能である。
【0021】
これにより、フロアアセンブリの全体的な剛性を駆動エネルギー貯蔵部ハウジングによって更に高めることができるとともに、走行動作における原動機付き車両の振動特性にもポジティブに影響を与えることが可能である。また、これにより、駆動エネルギー貯蔵部ハウジングは、側方衝突時の屈曲に対してクロスビームあるいはクロスビーム構造部をサポートする。
【0022】
別の一発展形態によれば、フロアアセンブリは、前方のクロスビーム構造部と後方のクロスビーム構造部の間又は前方のクロスビーム構造部と別のクロスビームとの間にフロアパネルを備えていない。換言すれば、フロアアセンブリは、有利には、フロアパネルなしに形成されているか、あるいはフロアパネルを有さない。したがって、フロアアセンブリのより大きな範囲が開放して形成されている。
【0023】
「開放して形成」という表現は、フロアアセンブリが下方へ向けて開放して形成されるように、貫通開口部を形成する空いて開放された範囲が形成されていることを意味する。
【0024】
これに代えて、又はこれに加えて、フロアアセンブリは、左側の長手ビームと右側の長手ビームの間に、前方のクロスビーム構造部及び/又は後方のクロスビーム構造部に結合された少なくとも1つの別の長手ビームを備えることが可能である。別の長手ビームは、例えば中央に配置されることができるとともにそこでセンタートンネルを形成することが可能である。
【0025】
有利には、フロアアセンブリはフロアパネルを全く備えていない。
【0026】
通常、フロアパネルは、単一部材、特に平坦な部材、場合によっては単層の部材であり、当該部材は、中空成形物又はこれに類するものを備えていないか、あるいは形成せず、したがって、車体ビームを形成しない。
【0027】
好ましくは、右側の長手ビームと左側の長手ビーム及び前方のクロスビーム構造部と後方のクロスビーム構造部の間の面積の40~85%、有利には50~75%、更に好ましくは55~70%が開放されて、すなわちフロアパネル及びクロスビームなしに形成されている。
【0028】
一発展形態によれば、駆動エネルギー貯蔵部ハウジングの上側の壁部、すなわち上側の層あるいは上側、したがって車両車室へ向いた側は、駆動エネルギー貯蔵部、特にバッテリセル及び/又は電気/電子構成要素を調温する熱交換器として形成されている。加えて、駆動エネルギー貯蔵部ハウジングの上側の壁部は、車室を調温する熱交換器として形成されることが可能である。
【0029】
これは、駆動エネルギー貯蔵部のバッテリセルが、車室と同様に低い外部温度においては加熱され、高い外部温度においては冷却されるため、この点では有利である。また、車室は、車両乗員の温度感覚にとって十分有利な床部調温を有している。
【0030】
駆動エネルギー貯蔵部は更に追加ハウジングを備えることができ、当該追加ハウジングは、駆動エネルギー貯蔵部ハウジングに、すなわち上側に配置されている。追加ハウジングは、車両シートの下方に、例えば車両リヤシートあるいは車両リヤシート座部に配置されることが可能である。なぜなら、ここには、車室内に高さ方向における追加的な構造空間が提供されるためである。追加ハウジングには、駆動エネルギー貯蔵部の電気/電子構成要素及び/又は駆動エネルギー貯蔵部の別のバッテリセルを収容することが可能である。追加ハウジングは、フロアパネルとしての機能を有することなく形成されることができるため、駆動エネルギー貯蔵部ハウジングカバーのみがフロアパネル機能を有するか、フロアパネルの代わりとなる。しかし、これに代えて、追加ハウジングは、同様にフロアアセンブリのフロアパネルの一部の代わりとなるか、当該一部を形成することが可能である。特に、追加ハウジングは、フロアアセンブリの後方の床部を形成することが可能である。後方の負荷部は、車両リヤシートあるいは車両リヤシート座部の下方の範囲である。追加ハウジングは、特に駆動エネルギー貯蔵部ハウジングの上側の壁部、すなわち駆動エネルギー貯蔵部ハウジングカバーによって、及び上側の壁部の外側に載置された、あるいは上側の壁部の外側に結合された追加ハウジングカバーによって形成されている。追加ハウジングあるいは追加ハウジングにおける構成要素は、同様に上述の熱交換器によって調温可能であり得る。
【0031】
駆動エネルギー貯蔵部ハウジングの上側は、本質的に平坦に形成されることが可能である。これにより、駆動エネルギー貯蔵部ハウジングの製造は、特に駆動エネルギー貯蔵部ハウジングの内部におけるバッテリセルの配置に関して単純化されている。これにより、同様に、フロアアセンブリの対応するビームへの結合あるいは駆動エネルギー貯蔵部ハウジングとフロアアセンブリの間の密封が単純化されている。これにより、最終的に、有利には車室用の平坦な床部を実現することが可能である。
【0032】
好ましくは、駆動エネルギー貯蔵部ハウジングは、ハウジング下部及びハウジング上部で形成されている。有利には、ハウジング下部はハウジング下部フランジを備え、ハウジング上部はハウジング上部フランジを備えている。ハウジング下部及びハウジング上部は、ハウジング下部フランジ及びハウジング上部フランジを介して互いに結合されることが可能である。更に好ましくは、ハウジング上部フランジは、フロアアセンブリにおける駆動エネルギー貯蔵部ハウジングの取付のために形成されているとともに、同様にシールフランジを形成することが可能である。
【0033】
好ましい一発展形態によれば、駆動エネルギー貯蔵部は、原動機付き車両の走行動作についての車体剛性を高めるように、及び/又は衝突負荷状態に対する車体剛性を高めるように、構成され、フロアアセンブリに結合されている。これにより、駆動エネルギー貯蔵部は、車体あるいはフロアアセンブリに取り付けられた支持する構造部材を形成する。これにより、駆動エネルギー貯蔵部は車体構造機能を担うため、フロアアセンブリあるいは車体をより軽量に構成することが可能である。
【0034】
駆動エネルギー貯蔵部ハウジングの上述のハウジング上部は、車体の床部を形成することが可能である。また、ハウジング上部には、上述の熱交換器を形成することが可能である。
【0035】
駆動バッテリハウジングは、流体密に形成されることが可能である。
【0036】
有利には、フロアアセンブリはセンタートンネルを形成しない。この点では、車室の床部は、有利には本質的に平坦に形成されることが可能である。
【0037】
本発明の上述した発展形態は、可能かつ有意義である限り、互いに任意に組み合わせることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【
図1】本発明の一実施例による、車体における駆動エネルギー貯蔵部の取付前の車体及び駆動エネルギー貯蔵部を有する原動機付き車両の概略的な斜視図である。
【
図2】本発明の一実施例による、車体及び駆動エネルギー貯蔵部を有する原動機付き車両の概略的な断面図である。
【
図3】本発明の一実施例による、車体を有し、駆動エネルギー貯蔵部を有さない原動機付き車両の、下方から見た概略的な斜視図である。
【
図4】本発明の一実施例による、車体における駆動エネルギー貯蔵部の取付後の車体及び駆動エネルギー貯蔵部を有する原動機付き車両の、上方から見た概略的な斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
図1~
図4を参照しつつ本発明の一実施例を説明する。
【0040】
本発明の実施例によれば、乗用車は、車体1及び駆動エネルギー貯蔵部3を有している。駆動エネルギー貯蔵部3は、乗用車の電気駆動モータを駆動するいわゆる高電圧貯蔵部、すなわち駆動バッテリである。
図1では、車体への駆動エネルギー貯蔵部3の取付前の状態が示されている。車体1は、
図1では完全には図示されておらず、本質的に車体1のフロアアセンブリ(プラットフォーム)5のみが図示されている。車体1あるいはフロアアセンブリ5は、左側のサイドスカート7及び右側のサイドスカート8、すなわち本発明による長手ビームを有している。駆動エネルギー貯蔵部3は、全長にわたって本質的に同一の高さを有する駆動エネルギー貯蔵部ハウジング301と、駆動エネルギー貯蔵部3の後部範囲において載置された追加ハウジング302とを有している。駆動エネルギー貯蔵部ハウジング301には、本質的にバッテリセル309が収容されている。追加ハウジング302には、例えば、充電装置、変換器及び更なる電気/電子構成要素が収容されている。駆動エネルギー貯蔵部3は、フロアアセンブリ5において、ネジ結合(部)及び場合によっては更に接着結合(部)を用いて下方から取り付けられる。
【0041】
図2には、車体1のy方向及びz方向に沿った非常に概略的な断面図が示されている。断面は、原動機付き車両の車室9を通って延びている。
図2における左下及び右下にはサイドスカート7,8が図示されており、当該サイドスカートでは、駆動エネルギー貯蔵部ハウジング301がネジ結合部21を用いて下方から取り付けられている。特に、駆動エネルギー貯蔵部ハウジング301は、その周設されたフランジ304,306において、その間に配置されたシール19と共にフロアアセンブリ5に取り付けられている。また、断面図には、フロアアセンブリ5の別のクロスビーム15,16,17,18が概略的に図示されている。駆動エネルギー貯蔵部ハウジング301は、ネジ結合部23を用いて別のクロスビーム15,16,17,18と結合されているとともに、追加的に接着されている。
【0042】
取り付けられた駆動エネルギー貯蔵部ハウジング301は、少なくとも部分的にフロアアセンブリ5のフロアを形成するとともに、フロアアセンブリ5の全幅にわたって左側のサイドスカート7と右側のサイドスカート8の間で延在している。車室9は、シール19によって、下方へ向けてシールされている。
【0043】
図3には、駆動エネルギー貯蔵部3を有さないフロアアセンブリ5のみが下方からの斜視図で示されている。
図3に示されているように、フロアアセンブリ5は、前方のホイールハウスの後方あるいはフロントアクスルの後方に、いわゆる前壁(隔壁)を有する前方のクロスビーム構造部11を有しており、前壁は、車室を前方へ向けて車両フロントエンドまで画定するとともに、サイドスカート7,8の前端部を互いに結合する。また、フロアアセンブリ5は、後方のホイールハウスの前方あるいはリヤアクスルの前方に後方のクロスビーム構造部13を有しており、当該後方のクロスビーム構造部は、サイドスカート7,8の後方の端部を互いに結合するとともに、原動機付き車両の第2の不図示のシート列を形成する不図示の後方のリヤシートの範囲に配置されている。フロアアセンブリ5は、前方のシート列及び車体1のBピラーの範囲におけるシートクロスビーム15,16,17のように、前方のクロスビーム構造部11と後方のクロスビーム構造部13の間に別のクロスビームを更に備えている。後方のシート列の範囲には、本発明による別のクロスビームを同様に形成するヒールプレートクロスビーム18が配置されている。全てのクロスビーム15,16,17,18は、左側のサイドスカート7と右側のサイドスカート8の間で延びているとともに、これらに結合されている。サイドスカート7,8の間及び各クロスビーム構造部11,13あるいは別のクロスビーム15,16,17,18の間の範囲は開放されている。フロアアセンブリ5は、ビーム間のフロアパネルなしに形成されている。
【0044】
図4には、取り付けられた駆動エネルギー貯蔵部3を有するフロアアセンブリ5が斜め上方からの斜視図で示されている。サイドスカート7,8と、フロアアセンブリの前方のクロスビーム構造部11及び後方のクロスビーム構造部13との間のハッチングされた面は、フロアアセンブリ5の各ビーム間の開放された範囲における駆動エネルギー貯蔵部3、特に駆動エネルギー貯蔵部ハウジング301及び追加ハウジング302の上側を示している。駆動エネルギー貯蔵部3の上側は、ハッチングされた範囲において、車室9の床部(フロア)を形成しており、したがって、従来のフロアパネルを置き換えるものである。
図4において更に分かるように、駆動エネルギー貯蔵部3は、前壁を有する前方のクロスビーム構造部11から、サイドスカート7,8の後方の端部を互いに結合する後方のクロスビーム構造部13まで、すなわち第2のシート列を形成するリヤシートの下方のフロアアセンブリ3の後方のホイールハウスまで延在している。
【0045】
駆動エネルギー貯蔵部ハウジング301の取付シールフランジ306は、全体として、環状に周囲をシールするようにフロアアセンブリ5の対応する構成部材に接触しているため、駆動エネルギー貯蔵部ハウジング301及びフロアアセンブリ5は、原動機付き車両の車室9の流体密な床部(フロア)を共に形成している。周設された取付シールフランジ306は、本実施例ではシール平面に配置されている。
【0046】
フロアアセンブリ5は、車体の従来のフロアアセンブリと比べてフロアパネルを有しておらず、したがって、隣り合うクロスビーム/クロスビーム構造部の間の自由空間を有している。当該自由空間は、駆動エネルギー貯蔵部ハウジング301-本実施例では車体によってシールされるフロアパネルを形成しない追加ハウジング302-によって閉鎖されている。本実施例では、前方のクロスビーム構造部11とヒールプレートクロスビーム18の間のフロアアセンブリ5の65%が、駆動エネルギー貯蔵部ハウジング301なしにサイドスカート7,8とクロスビーム構造部11,13の間で下方へ向けて開放されている。
【0047】
駆動エネルギー貯蔵部3は、駆動エネルギー貯蔵部ハウジング301に加えて追加ハウジング302を備えており、当該追加ハウジングは、駆動エネルギー貯蔵部ハウジング301の後方の範囲、リヤシートの下方の範囲で、すなわちヒールプレートクロスビーム18の後方において駆動エネルギー貯蔵部ハウジング301に載置されている。追加ハウジング302には、充電装置、変換器及び駆動エネルギー貯蔵部3の更なる電気/電子構成要素が収容されている。追加ハウジング302は、ヒールプレートクロスビーム18と後方のクロスビーム構造部13の間の中間空間へ突出している。駆動エネルギー貯蔵部ハウジング301の上側は、本質的に平坦に形成されている。
図2から分かるように、駆動エネルギー貯蔵部ハウジングはハウジング下部303及びハウジング上部305で形成されており、ハウジング下部303はハウジング下部フランジ304を備え、ハウジング上部305はハウジング上部フランジ306を備え、ハウジング下部303及びハウジング上部305は、ハウジング下部フランジ304及びハウジング上部フランジ306を介して互いに結合されており、ハウジング上部フランジ306は、フロアアセンブリ5に駆動エネルギー貯蔵部ハウジング303を取り付けるために形成されている。ハウジング上部フランジ306とハウジング下部フランジ304の間にはシール307が配置されている。また、ハウジング上部フランジ306とフロアアセンブリ5の間にはシール19が配置されている。
【0048】
駆動エネルギー貯蔵部ハウジング301は、ネジ結合部21、取付シールフランジ304,306を介してフロアアセンブリ5に結合されている。また、駆動エネルギー貯蔵部ハウジング301あるいはハウジング上部305は、ネジ結合部23を介してクロスビーム15,16,17,18に結合されている。
【国際調査報告】