(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-05
(54)【発明の名称】交流電場、チェックポイント阻害剤、及び組合せ化学療法によってがんを処置する方法
(51)【国際特許分類】
A61N 1/40 20060101AFI20240628BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240628BHJP
A61K 31/337 20060101ALI20240628BHJP
A61K 31/7068 20060101ALI20240628BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20240628BHJP
A61N 1/36 20060101ALI20240628BHJP
A61N 1/04 20060101ALI20240628BHJP
【FI】
A61N1/40
A61P35/00
A61K31/337
A61K31/7068
A61K39/395 U
A61N1/36
A61N1/04
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023576401
(86)(22)【出願日】2022-06-28
(85)【翻訳文提出日】2023-12-12
(86)【国際出願番号】 IB2022056024
(87)【国際公開番号】W WO2023275766
(87)【国際公開日】2023-01-05
(32)【優先日】2021-06-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519275847
【氏名又は名称】ノボキュア ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】オリ・ファーバー
【テーマコード(参考)】
4C053
4C085
4C086
【Fターム(参考)】
4C053JJ02
4C053JJ04
4C053JJ21
4C053JJ31
4C085AA14
4C085BB11
4C085CC23
4C085EE01
4C086AA01
4C086AA02
4C086BA02
4C086EA17
4C086MA02
4C086MA04
4C086NA05
4C086ZB26
(57)【要約】
がんを処置する方法が提供される。一部の例では、本方法は、100~500kHzの周波数の交流電場を対象の腹部に印加する工程、チェックポイント阻害剤を対象に投与する工程、全身性がん療法を対象に施行する工程を含む。一部の例では、がんは膵管腺癌である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
50kHz~10MHzの周波数の交流電場を対象の腹部又は胴体に印加する工程、
チェックポイント阻害剤を対象に投与する工程、及び
全身性がん療法を対象に施行する工程を含む、がんを有すると診断されたか、その疑いがある対象におけるがんを処置する方法。
【請求項2】
がんが、膵管腺癌、膵がん、肝がん、乳がん、卵巣がん、頸がん、子宮内膜癌、結腸直腸がん、膀胱がん、胆管がん、腎細胞癌、胃がん、食道がん、尿路上皮癌、及び黒色腫からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
がんが膵がんである、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
がんが膵管腺癌である、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
交流電場の周波数が100kHz~500kHzである、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
交流電場の周波数が120kHz~180kHzである、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
交流電場の周波数が150kHzである、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
交流電場の強度が0.1V/cm~20V/cmである、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
強度が1.0V/cm~4V/cmである、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
チェックポイント阻害剤が、PD-1阻害剤、PD-L1阻害剤、及びCTLA-4阻害剤からなる群から選択される、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
チェックポイント阻害剤が、アテゾリズマブ、ペンブロリズマブ、ニボルマブ、デュルバルマブ、イピリムマブ、ドスタルリマブ、アベルマブ、トレメリムマブ、及びセミプリマブからなる群から選択される、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
チェックポイント阻害剤がアテゾリズマブである、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
アテゾリズマブが4週ごとに投与される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
アテゾリズマブの用量が4週ごとに投与される1680mgである、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
全身性がん療法がゲムシタビン及びナブ-パクリタキセルの1つ又は複数を含む、請求項1から14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
全身性がん療法がゲムシタビン及びナブ-パクリタキセルを含む、請求項1から14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
ナブ-パクリタキセルが、それぞれ28日のサイクルの1、8、及び15日目に投与される、請求項15又は16に記載の方法。
【請求項18】
ゲムシタビンが、それぞれ28日のサイクルの1、8、及び15日目に投与される、請求項15から17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
ゲムシタビンの用量が、それぞれ28日のサイクルの1、8、及び15日目に100mg/m
2である、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
ナブ-パクリタキセルの用量が、それぞれ28日のサイクルの1、8、及び15日目に125mg/m2である、請求項16から19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
交流電場が対象の胴体に印加される、請求項1から20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
交流電場が対象の腹部に少なくとも3時間、印加される、請求項1から21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
交流電場が対象の腹部に少なくとも18時間、印加される、請求項22に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本出願は、参照により全体として本明細書に組み込まれる、2021年6月30日出願の米国仮出願第63/216,864号の利益を主張する。
【背景技術】
【0002】
膵管腺癌(PDAC)は、典型的には治癒的切除が実施不能で予後が思わしくない晩期に診断され、5%未満の患者が5年生存している1, 2。過去数十年の間、化学療法の2つの組合せ、即ちFOLFIRINOX(オキサリプラチン、フォリン酸、イリノテカン、及びフルオロウラシル)及びアルブミン結合パクリタキセル(ナブ-パクリタキセル)とゲムシタビンが、フロントラインの処置(例えば標準治療)として認められてきた1, 3-5。しかし奏効率は高くなく、応答の期間は短く、一次治療の後の進行は避けられない。
【0003】
免疫療法は近年、多くの型のがんにおいてがんの治療を変革してきた。CTLA-4、PD-1、及びPD-L1を標的とする免疫チェックポイント阻害剤は、抗炎症性腫瘍微小環境を逆転し、免疫系が抗腫瘍応答を発揮することを助ける可能性を有している。FDAによって承認されたイピリムマブ、ニボルマブ、ペンブロリズマブ、及びアテゾリズマブ等の免疫チェックポイント阻害剤は、多くのがん患者において生存を延長することを示した。しかし、免疫療法は一部のがんの型、とりわけPDACにおいて、患者の転帰の改善には成功していない6。
【0004】
腫瘍処置フィールド(TTフィールド)は毒性が最小の非侵襲的、局地的な抗有糸分裂処置手段であり、再発及び新規診断の膠芽腫(GBM)及び悪性胸膜中皮腫(MPM)の処置のために食品医薬品局(FDA)によって承認され、同じ適応症のために欧州で市販のためのCEマークを取得している。TTフィールドは、腫瘍を含む身体の領域の周囲の皮膚の上に設置した非侵襲的なトランスデューサーアレイを用いて、低強度(例えば1~3V/cm)、中間周波数(例えば100~300kHz)の交流電場を腫瘍に送達することによって作用する。TTフィールドは、主として有糸分裂の2つの相の間、即ち1)紡錘体の形成を妨害することによって中期に、及び2)アポトーシスをもたらす細胞内成分の誘電泳動による転位によって細胞質分裂の間に、作用する。集積されつつある証拠によって、TTフィールドには、DNA修復機構との干渉、オートファジー、及び移動特性、並びに細胞の透過性の増大等のさらなる抗新生物機構があることが実証されている。重要なことに、TTフィールドは、マクロファージを刺激して反応性酸素種及び炎症促進性サイトカインを分泌させ、樹状細胞の動員及び成熟を促進し、腫瘍部位におけるCD4+及びCD8+の集積をもたらすことによって、抗腫瘍免疫を増強することが示された7-14。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書に記載した態様は、50kHz~10MHzの周波数の交流電場を対象の腹部に印加し、チェックポイント阻害剤を対象に投与し、全身性がん療法を対象に施行することによって、がんを有すると診断されたか、その疑いがある対象におけるがんを処置する方法を提供する。一部の例では、印加するステップの少なくとも一部は、送達するステップの少なくとも一部と同時に実施される。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】転移がんを有する対象を処置する方法のための例示的な試験スキームを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
TTフィールドはヒト及びマウスの膵がん細胞系の増殖を阻害することが示された15。インビトロの結果も、ゲムシタビン、イリノテカン、5-FU、及びパクリタキセル等の化学療法と組み合せた場合に細胞傷害性を増強することを示した。更に、インビボの実験は、TTフィールドを化学療法(5-FU又はゲムシタビン)に加えると、腫瘍成長の顕著な阻害がもたらされることを示した15。
【0008】
これらの結果に基づいて、PANOVA試験(NCT01971281)が膵臓患者においてTTフィールドを試験する最初の試験となった16。進行した膵がんを有する40名の患者を、TTフィールドとゲムシタビン(n=20)又はTTフィールドとナブ-パクリタキセル及びゲムシタビン(n=20)を受けるように登録した。
【0009】
全身性化学療法単独で予想された有害事象と比較して、重篤な有害事象(SAE)の増加は観察されず、TTフィールド関連のSAEは報告されなかった16。TTフィールドとナブ-パクリタキセル及びゲムシタビンを受けた患者においては、メディアンPFSは12.7か月(95% CI 5.4、NA)であった。局所的に進行した疾患群ではメディアンPFSに到達せず、転移疾患では9.3か月であった。
【0010】
これらを合わせて、TTフィールド及びアテゾリズマブを標準のゲムシタビン/ナブ-パクリタキセル化学療法に加えることにより、疾患制御率を増大させ、究極的にこの患者集団における生存を延長すると仮定される。
【0011】
本明細書に記載した態様は、50kHz~10MHzの周波数の交流電場を対象の腹部に印加し、チェックポイント阻害剤を対象に投与し、全身性がん療法を対象に施行することによって、がんを有すると診断されたか、その疑いがある対象におけるがんを処置する方法を提供する。一部の例では、印加するステップの少なくとも一部は、送達するステップの少なくとも一部と同時に実施される。
【0012】
一部の態様では、がんは、膵管腺癌、膵がん、肝がん、乳がん、卵巣がん、頸がん、子宮内膜癌、結腸直腸がん、膀胱がん、胆管がん、腎細胞癌、胃がん、食道がん、尿路上皮癌、及び黒色腫からなる群から選択される。一部の態様では、がんは膵管腺癌である。別の態様では、がんは腹部がんである。
【0013】
一部の態様では、交流電場の周波数は50kHz~10MHz、50kHz~1MHz、100kHz~500kHz、120kHz~180kHzである。一部の態様では、交流電場の周波数は150kHzである。
【0014】
一部の態様では、交流電場の強度は0.1V/cm~20V/cmである。一部の態様では、強度は1.0V/cm~4V/cmである。
【0015】
一部の態様では、チェックポイント阻害剤は、PD-1阻害剤、PD-L1阻害剤、CTLA-4阻害剤からなる群から選択される。
【0016】
一部の態様では、チェックポイント阻害剤は、アテゾリズマブ、ペンブロリズマブ、ニボルマブ、デュルバルマブ、イピリムマブ、ドスタルリマブ、アベルマブ、トレメリムマブ、及びセミプリマブからなる群から選択される。一部の例では、チェックポイント阻害剤はアテゾリズマブである。
【0017】
一部の態様では、アテゾリズマブは4週ごとに投与される。一部の例では、アテゾリズマブの用量は4週ごとに投与される1680mgである。一部の例では、本明細書に記載した交流電場及び全身療法と組み合せて用いる場合、チェックポイント阻害剤の用量は、標準治療用量より少なくとも10、少なくとも20、少なくとも30、少なくとも40、少なくとも50、少なくとも60、少なくとも70、少なくとも80、又は少なくとも90パーセント低くてもよい。
【0018】
一部の態様では、全身性がん療法は、ゲムシタビン及びナブ-パクリタキセルの1つ又は複数を含む。一部の例では、全身性がん療法はゲムシタビンを含む。一部の例では、全身性がん療法はナブ-パクリタキセルを含む。一部の例では、全身性がん療法はゲムシタビン及びナブ-パクリタキセルを含む。
【0019】
一部の態様では、ナブ-パクリタキセルは、それぞれ28日のサイクルの1、8、及び15日目に投与される。一部の例では、ゲムシタビンは、それぞれ28日のサイクルの1、8、及び15日目に投与される。
【0020】
一部の態様では、ゲムシタビンの用量は、それぞれ28日のサイクルの1、8、及び15日目に100mg/m2である。一部の例では、ナブ-パクリタキセルの用量は、それぞれ28日のサイクルの1、8、及び15日目に125mg/m2である。一部の例では、本明細書に記載した交流電場及び全身療法と組み合せて用いる場合、全身性がん療法(例えばゲムシタビン、ナブ-パクリタキセル)の用量は、標準治療用量より少なくとも10、少なくとも20、少なくとも30、少なくとも40、少なくとも50、少なくとも60、少なくとも70、少なくとも80、又は少なくとも90パーセント低くてもよい。
【0021】
一部の態様では、交流電場は対象の腹部又は胴体に印加される。
【0022】
一部の態様では、交流電場は対象の腹部又は胴体に少なくとも3時間、印加される。一部の例では、交流電場は対象の腹部又は胴体に少なくとも18時間、印加される。
【0023】
一部の態様では、交流電場は、チェックポイント阻害剤の投与の前、又はその間に印加される。一部の例では、交流電場は、全身性がん療法の施行の前、又はその間に印加される。
【0024】
用語「全身性がん療法の施行」は、規制当局によって製品ラベルの上に承認された、又は承認された臨床試験の一部として、医療従事者又は患者によって、好適な許容される任意の投与経路(例えば経口、静脈内、非経口、局所、その他)を通して全身性がん療法(例えば化学療法剤)を患者に提供することを意味する。チェックポイント阻害剤を処方することは、チェックポイント阻害剤を「投与する」ことでもあり得る。
【0025】
交流電場は、連続的又は非連続的に印加してもよい。用語「連続的に」は、交流電場を実質的に一定の期間、印加することを意味する。交流電場の連続的な印加は、装置を適切に位置決めするために短時間(例えば数秒)印加を中断した場合、又は電力の短時間の途絶があった場合でも起こり得る。
【0026】
用語「非連続的に」は、数秒、数分、1時間、数日、又はそれ以上の周期的な中断又は途絶を伴ってある時間、交流電場を印加することを意味する。この態様では、患者は、交流電場を印加しない15分、30分、45分、又は1時間の期間を伴ってある期間(例えば1、2、3、4、8、24、48、又は72時間)、交流電場を印加してもよい。別の態様では、患者は、睡眠時は連続的、覚醒時は不連続的に、交流電場を印加してもよい。さらなる態様では、患者は、食事の間、又は社会的行事の間を除いて、交流電場を連続的に印加してもよい。
【0027】
一部の態様では、交流電場は、対象の腹部又は胴体に位置する臓器(例えば肝、膵、胆管、及び脾)に印加される。第1の方法の一部の例では、交流電場は、全身性がん療法の施行の後、又はその間に印加される。
【0028】
第1の方法の一部の態様では、化学療法剤は、特定の型の原発又は転移したがんの「標準治療」であると決定される。第1の方法の一部の例では、化学療法剤は、膵がんの「標準治療」であると決定される。
【0029】
以下の非限定的な実施例は、改変及び変更を含む本明細書に記載した実施形態及び態様について図面を参照して、どのように本明細書に記載した態様を作製して使用し、さらなる支持データを提供するかを説明する。いかなる理論又は仮説に縛られることはないが、実施例は、記載したデータについての可能な説明を含み得る。したがって、本発明は以下に提供する実施例に限定されず、以下に列挙した特許請求の範囲及びその等価物の言語によって定義される完全な範囲を有することが意図されている。
【実施例】
【0030】
以前にPDACについて処置を受けていない対象において、IVのアテゾリズマブ、ナブ-パクリタキセル、及びゲムシタビンと併用し、NovoTTF-200Tシステムを用いて、腹部への150kHzの腫瘍処置フィールド(TTフィールド)の例示的なマルチセンター、シングルアーム、オープンラベルの試験を実施する。アテゾリズマブ、ナブ-パクリタキセル、及びゲムシタビンを併用したTTフィールドの有効性及び安全性の検討のため、約76名の対象をこの試験に登録する。対象は、アテゾリズマブ1680mgのQ4WのIV注入、ナブ-パクリタキセル125mg/m2のそれぞれ28日サイクルの1、8、及び15日目のIV注入、及びゲムシタビン1000mg/m2のそれぞれ28日サイクルの1、8、及び15日目のIV注入との併用で、NovoTTF-200Tシステムを用いて1日平均少なくとも18時間、150kHzのTTフィールドを腹部に受けるように登録する。
【0031】
対象は4週(28±7日)ごとに臨床的に、8週(56±7日)ごとにX線イメージングによって評価し、処置への応答について評価する。試験で得られた全てのイメージングはDCR、ORR、PFS、PFS6、及びDORの判定のためのResponse Evaluation Criteria in Solid Tumors(RECIST)v1.1を用いるサイトによって評価する。有害事象(AE)のモニタリングは試験を通じて進行中であり、National Cancer Institute(NCI)Common Terminology Criteria for Adverse Events(CTCAE)バージョン5.0に概要が示されたガイドラインに従って重症度についてグレード分類する。TTフィールド、アテゾリズマブ、ナブ-パクリタキセル、及びゲムシタビンによる処置は、記録された疾患の進行、許容されない有害事象、さらなる処置の施行を阻む併発疾患、対象を試験から外す責任医師の決定、対象による同意の撤回、対象の妊娠、試験処置若しくは手順の要求事項に対する不履行、又は管理上の理由があるまでは継続される。
【0032】
処置の終了後、それぞれの対象をAEのモニタリングのために最低30日間、追跡する。重篤な有害事象(SAE)は、処置の中止後90日又は対象が新たな抗がん療法を開始するまでのいずれか早い方まで収集する。対象には、死亡、同意の撤回、又はフォローアップの喪失まで、非試験抗がん処置の開始及び疾患の進行の経験を含む疾患状態についての処置後フォローアップを行なう。
【0033】
試験の一次エンドポイントは、RECIST 1.1による16週におけるDCRである。二次エンドポイントには、PFS、PFS6、1年生存率、DOR、及び安全性が含まれる。予備解析には、試験処置と処置の前後の応答及び腫瘍の特徴を予測するバイオマーカーとの間の関係が含まれる。
【0034】
PD-L1の発現状態及びマイクロサテライト不安定性(MSI)の高い状態は、利用可能な試料について評価する。
【0035】
転移性膵管腺癌(PDAC)の第一線(1L)処置のためのアテゾリズマブ、ゲムシタビン、及びナブ-パクリタキセルと併用した腫瘍処置フィールド(TTフィールド、150kHz)のパイロット、シングルアーム、オープンラベル試験を、以前に処置されなかった転移性PDAC(mPDAC)を有する患者について行なう。
【0036】
一次目標
アテゾリズマブ、ゲムシタビン、及びナブ-パクリタキセルと併用したTTフィールドによって処置された1L mPDACを有する対象において、RECIST 1.1によって16週目に疾患制御率(DCR)を評価する。
【0037】
二次目標
(1)アテゾリズマブ、ゲムシタビン、及びナブ-パクリタキセルと併用したTTフィールドによって処置された1L mPDACを有する対象における全生存率(OS)を評価する。
【0038】
(2)アテゾリズマブ、ゲムシタビン、及びナブ-パクリタキセルと併用したTTフィールドによって処置された1L mPDACを有する対象におけるRECIST v1.1による無増悪生存率(PFS)を評価する。
【0039】
(3)アテゾリズマブ、ゲムシタビン、及びナブ-パクリタキセルと併用したTTフィールドによって処置された1L mPDACを有する対象における1年生存率を評価する。
【0040】
(4)アテゾリズマブ、ゲムシタビン、及びナブ-パクリタキセルと併用したTTフィールドによって処置された1L mPDACを有する対象におけるRECIST v1.1による客観的奏効率(ORR)を評価する。
【0041】
(5)アテゾリズマブ、ゲムシタビン、及びナブ-パクリタキセルと併用したTTフィールドによって処置された1L mPDACを有する対象における6か月でのPFS率(PFS6)を評価する。
【0042】
(6)アテゾリズマブ、ゲムシタビン、及びナブ-パクリタキセルと併用したTTフィールドによって処置された1L mPDACを有する対象におけるRECIST v1.1による奏功期間(DOR)を評価する。
【0043】
(7)1L mPDACを有する対象におけるアテゾリズマブ、ゲムシタビン、及びナブ-パクリタキセルと併用したTTフィールドの安全性及び忍容性のプロファイルを評価する。
【0044】
例示的な処置レジメン
NovoTTF-200Tシステムを用いる少なくとも1日平均18時間の腹部への150kHzの連続TTフィールド、及び
【0045】
アテゾリズマブ1680mg、IV、4週ごと(Q4W)、及び
【0046】
ナブ-パクリタキセル125mg/m2、IV注入、それぞれ28日サイクルの1、8、及び15日目、及び
【0047】
ゲムシタビン1000mg/m2 IV注入、それぞれ28日サイクルの1、8、及び15日目。
【0048】
疾患制御率(DCR)は、ゲムシタビン及びナブ-パクリタキセルの投与後、16週で評価し、フェーズ3のヒストリカルコントロール試験で48%であった3。ヒストリカルコントロールにおける48%のDCRと比較して、アテゾリズマブ、ゲムシタビン、及びナブ-パクリタキセルと併用してNovoTTF-200Tで処置した対象において63%のDCRを検出するため、フォローアップまでの10%までの損失を考慮すると、比率のための一標本の正確な検定を用いて片側アルファレベル0.05で80%の検出力を達成するためには76名の対象の標本サイズが必要である。標本サイズは、NCSS/PASS11 16.04ソフトウェアで計算した。
【0049】
予想される見込み期間は24か月であり、試験の全期間は36か月である。試験には12か月を予想した。
【0050】
例示的な選択基準
・18歳以上。
・Eastern Cooperative Oncology Group(ECOG)パフォーマンスステータス0又は1。
・組織学的又は細胞学的に確認された転移性膵管腺癌のデノボ診断。
・PDACについて以前に処置されていないこと。
・余命が3か月以上であること。
・RECIST v1.1によって定義して測定可能な疾患。
・ゲムシタビン及びナブ-パクリタキセルによる治療を受けることに適し、治験責任医師によって割り当てられていること。
・独立に又は介護者の補助によってNovoTTF200Tシステムを操作できること。
・試験プロトコルについて署名したインフォームドコンセントフォーム。
【0051】
例示的な除外基準
・既知のCNS転移又は軟髄膜疾患。
・腫瘍に対する以前の緩和的処置(例えば手術、照射)。
・ドレーン手順(即ち毎月2回以上)を必要とする制御されない胸水、心外膜液、又は腹水。
・活動性の自己免疫疾患若しくは免疫不全又はその病歴。
・特発性肺線維症、器質化肺炎、薬物誘起性肺臓炎、若しくは特発性肺臓炎の病歴、又はスクリーニング胸部コンピューター断層撮影(CT)スキャンにおける活動性肺臓炎の証拠。
・スクリーニング時又はスクリーニングの前の任意の時におけるヒト免疫不全(HIV)検査陽性。
・活動性のB型若しくはC型の肝炎ウイルス感染又は活動性の結核。
・試験処置の開始前4週以内の重篤な感染。
・以前の同種幹細胞又は固形臓器の移植。
・本試験に組み入れられる前2年以内の原発又は再発のために処置された既往の悪性疾患。完全に切除された非黒色腫皮膚癌又は処置に成功した皮膚若しくは子宮頸部のインサイチュ癌腫を除く。
・好中球数1.5×109/L未満及び血小板数100×109/L未満、ビリルビン:正常値の上限(ULN)×1.5超、AST及び/又はALT:ULN×2.5超、記録された肝転移を有する患者:AST及び/又はALT:ULN×5超、及び血清クレアチニン:ULN×1.5超として定義される、臨床的に有意な(治験責任医師によって判定される)血液学、肝、及び腎の機能不全。
・疾患がよく制御されていない場合の有意な心血管系疾患の病歴。有意な心疾患には、第2度/第3度の心ブロック、有意な虚血性心疾患、制御不良の高血圧、New York Heart Association(NYHA)クラスII又はそれより悪いうっ血性心不全(身体的活動性のわずかな制限、休息時には心地良いが、通常の活動が疲労、動悸、又は呼吸困難をもたらす)が含まれる。
・兆候性又は処置を必要とする不整脈の病歴。医薬によって制御できる心房細動又は鼓動を有する患者は、試験への参加から除外しない。
・ランダム化前6か月以内又は安定でない脳血管障害(CVA)の病歴。
・対象がプロトコル療法を受ける能力を害する可能性がある重篤な基礎疾患。
・試験の要求事項を理解若しくは遵守するか、又は同意を提供する患者の能力を害する可能性があるいずれかの精神的状態の病歴。
・ゲムシタビン及びナブ-パクリタキセル以外の同時進行の抗腫瘍療法。
・ペースメーカー等の胴体に埋め込み可能な電子医療デバイス。
・医療用接着剤若しくはハイドロゲル、又は本試験で用いる化学療法の1つに対する既知のアレルギー。
・妊娠又は授乳(生殖可能性のある女性患者及びそのパートナーは、全試験期間及び処置終了後3か月、有効な避妊法を使用することを受容しなければならない)。妊娠可能な全ての患者は、処置の開始前72時間以内に陰性である妊娠検査を受けなければならない。有効な避妊法の定義は、治験責任医師の決定に委ねられる。
・医学的、心理的、家族的、地理的、又はその他の理由によってプロトコルに従うことができない。
【0052】
特許及び特許出願を含むがそれらに限らない本明細書で引用した全ての参考文献は、参照により全体として本明細書に組み込まれる。
【0053】
特定の実施形態を参照して本発明を開示したが、添付した特許請求の範囲で定義した本発明の領域及び範囲から逸脱することなく、記載した実施形態に対して多くの改変、変更、及び変化が可能である。したがって、本発明は記載した実施形態に限定されず、以下の特許請求の範囲及びその等価物の言語によって定義される完全な範囲を有することを意図している。