(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-05
(54)【発明の名称】末梢神経を標的とした集束超音波の適用により痛みを抑制するためのデバイス、システムおよび方法
(51)【国際特許分類】
A61N 7/00 20060101AFI20240628BHJP
【FI】
A61N7/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023577170
(86)(22)【出願日】2022-06-15
(85)【翻訳文提出日】2024-02-07
(86)【国際出願番号】 US2022033687
(87)【国際公開番号】W WO2022266261
(87)【国際公開日】2022-12-22
(32)【優先日】2021-06-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2022-02-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】503115205
【氏名又は名称】ザ ボード オブ トラスティーズ オブ ザ レランド スタンフォード ジュニア ユニバーシティー
(74)【代理人】
【識別番号】110001302
【氏名又は名称】弁理士法人北青山インターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】アンダーソン,トーマス アンソニー
【テーマコード(参考)】
4C160
【Fターム(参考)】
4C160JJ33
4C160JJ36
4C160JJ50
(57)【要約】
対象者の末梢神経の痛みを緩和するためのデバイス、システムおよび方法が提供される。一例では、デバイスが、対象者の皮膚に当てて配置されるように構成された表面と、この表面から対象者の体内に信号を送信し、体からの反射信号を受信するように構成されたハウジング上の撮像素子と、表面から体内に集束超音波を送達するように構成された1または複数のトランスデューサ素子とを含む。コントローラは、撮像素子に結合され、反射信号を処理して体内の標的神経を識別するとともに、1または複数のトランスデューサ素子に結合され、痛みを緩和するために標的神経への集束超音波の送達を制御する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象者の末梢神経痛を緩和するためのデバイスであって、
対象者の皮膚に当てて配置するように構成された表面を含むハウジングと、
前記表面から対象者の体内に信号を送信し、体からの反射信号を受信するように構成されたハウジング上の撮像素子と、
前記表面から体内に集束超音波を送達するように構成された1または複数のトランスデューサ素子と、
前記撮像素子に結合され、前記反射信号を処理して体内の標的神経を識別するとともに、前記1または複数のトランスデューサ素子に結合され、痛みを緩和するために標的神経への集束超音波の送達を制御するコントローラとを備えることを特徴とするデバイス。
【請求項2】
請求項1に記載のデバイスにおいて、
前記1または複数のトランスデューサ素子が、皮膚に音響的に結合されるように前記表面に隣接して取り付けられた圧電素子のアレイを含むことを特徴とするデバイス。
【請求項3】
請求項2に記載のデバイスにおいて、
前記表面が、前記アレイを皮膚に結合するように構成されたパッドを含むことを特徴とするデバイス。
【請求項4】
請求項3に記載のデバイスにおいて、
前記パッドが、集束超音波が送達される軸に沿って調節可能な高さを有することを特徴とするデバイス。
【請求項5】
請求項2に記載のデバイスにおいて、
前記コントローラが、標的神経に集束される超音波ビームを生成するように、前記圧電素子への信号の位相、強度、パルス幅および周波数のうちの1または複数を制御するために、前記アレイに結合されていることを特徴とするデバイス。
【請求項6】
請求項1~5の何れか一項に記載のデバイスにおいて、
前記1または複数のトランスデューサ素子および前記コントローラに結合され、集束超音波を送達するために、前記1または複数のトランスデューサ素子に電気エネルギーを供給する電源をさらに備えることを特徴とするデバイス。
【請求項7】
請求項1~5の何れか一項に記載のデバイスにおいて、
前記1または複数のトランスデューサ素子が、集束超音波を第1の軸に沿って送達するように構成され、前記撮像素子は、撮像信号が前記第1の軸と交差する第2の軸に沿って送達されるように、前記1または複数のトランスデューサからオフセットされていることを特徴とするデバイス。
【請求項8】
請求項7に記載のデバイスにおいて、
前記撮像素子が、前記第1の軸に対する前記第2の軸の角度を調整するために前記ハウジングに対して移動可能であることを特徴とするデバイス。
【請求項9】
請求項8に記載のデバイスにおいて、
前記撮像素子が、前記第2の軸の角度を調整するように構成されたヒンジによって前記ハウジングに取り付けられていることを特徴とするデバイス。
【請求項10】
請求項8に記載のデバイスにおいて、
前記第2の軸の角度を調節するために前記撮像素子に取り付けられたハンドルをさらに備えることを特徴とするデバイス。
【請求項11】
請求項1~5の何れか一項に記載のデバイスにおいて、
前記撮像素子が、体内に超音波信号を送信して、体内の組織構造から反射された超音波信号を受信するように構成された超音波撮像素子を含むことを特徴とするデバイス。
【請求項12】
請求項11に記載のデバイスにおいて、
前記超音波撮像素子が、圧電トランスデューサのアレイを含むことを特徴とするデバイス。
【請求項13】
請求項1~5の何れか一項に記載のデバイスにおいて、
前記コントローラが、前記1または複数のトランスデューサから標的神経までの距離に少なくとも部分的に基づいて、集束超音波の送達を較正するように構成されていることを特徴とするデバイス。
【請求項14】
対象者の末梢神経痛を緩和するためのデバイスであって、
対象者の皮膚に当てて配置されるように構成された表面を含むハウジングと、
前記表面から第1の軸に沿って体内に集束超音波を送達するように構成された1または複数のトランスデューサ素子と、
前記表面から第2の軸に沿って対象者の体内に超音波信号を送信し、体からの反射信号を受信するように構成されたハウジング上の超音波撮像素子であって、前記第2の軸が前記第1の軸と交差するように前記1または複数のトランスデューサ素子からオフセットされた超音波撮像素子と、
前記撮像素子に結合され、前記反射信号を処理して体内の標的神経を識別するとともに、前記1または複数のトランスデューサ素子に結合され、痛みを緩和するために標的神経への集束超音波の送達を制御するコントローラとを備えることを特徴とするデバイス。
【請求項15】
請求項14に記載のデバイスにおいて、
前記撮像素子が、前記第1の軸に対する前記第2の軸の角度を調整するために前記ハウジングに対して移動可能であることを特徴とするデバイス。
【請求項16】
請求項15に記載のデバイスにおいて、
前記撮像素子が、前記第2の軸の角度を調整するように構成されたヒンジによって前記ハウジングに取り付けられていることを特徴とするデバイス。
【請求項17】
請求項15に記載のデバイスにおいて、
前記第2の軸の角度を調節するために前記撮像素子に取り付けられたハンドルをさらに備えることを特徴とするデバイス。
【請求項18】
請求項14に記載のデバイスにおいて、
前記1または複数のトランスデューサ素子が、皮膚に音響的に結合されるように前記表面に隣接して取り付けられた圧電素子のアレイを含むことを特徴とするデバイス。
【請求項19】
請求項18に記載のデバイスにおいて、
前記表面が、前記アレイを皮膚に結合するように構成されたパッドを含むことを特徴とするデバイス。
【請求項20】
請求項19に記載のデバイスにおいて、
前記パッドが、前記第1の軸に沿って調節可能な高さを有することを特徴とするデバイス。
【請求項21】
対象者の末梢神経痛を緩和するためのデバイスであって、
対象者の皮膚に当てて配置するように構成された表面を含むハウジングと、
対象者の体内の標的神経に前記表面および皮膚を通して集束超音波を送達するように構成された1または複数の音響トランスデューサと、
前記1または複数のトランスデューサに結合され、集束超音波の送達を制御するコントローラとを備えることを特徴とするデバイス。
【請求項22】
請求項21に記載のデバイスにおいて、
前記ハウジングが、対象者の皮膚に当てて配置されるように構成されたパッチを含むことを特徴とするデバイス。
【請求項23】
請求項22に記載のデバイスにおいて、
前記パッチが、対象者の皮膚に前記パッチを固定するために前記表面上に接着剤を含むことを特徴とするデバイス。
【請求項24】
請求項21に記載のデバイスにおいて、
前記1または複数のトランスデューサを対象者の皮膚に音響的に結合させるための材料を前記表面にさらに含むことを特徴とするデバイス。
【請求項25】
対象者の末梢神経痛を緩和するためのデバイスであって、
標的神経に隣接する対象者の体内に埋め込むことができるサイズのハウジングと、
前記ハウジングから介在組織を介して標的神経に集束超音波を送達するように構成された1または複数の音響トランスデューサと、
前記1または複数のトランスデューサに結合され、集束超音波の送達を制御するコントローラとを備えることを特徴とするデバイス。
【請求項26】
請求項25に記載のデバイスにおいて、
前記ハウジングが、標的神経を少なくとも部分的に取り囲むような形状であることを特徴とするデバイス。
【請求項27】
請求項25に記載のデバイスにおいて、
前記コントローラが、前記1または複数のトランスデューサから標的神経までの距離に少なくとも部分的に基づいて、集束超音波の送達を較正するように構成されていることを特徴とするデバイス。
【請求項28】
請求項25に記載のデバイスにおいて、
前記ハウジングが、標的神経に直接結合するように構成されていることを特徴とするデバイス。
【請求項29】
請求項28に記載のデバイスにおいて、
前記1または複数のトランスデューサを標的神経に音響的に結合するように構成された材料をさらに含むことを特徴とするデバイス。
【請求項30】
請求項28に記載のデバイスにおいて、
前記材料が、流体が充填された部材を含むことを特徴とするデバイス。
【請求項31】
請求項1~5および25~30の何れか一項に記載のデバイスにおいて、
前記コントローラが、約1キロヘルツ~10メガヘルツ(1KHz~10MHz)の周波数で低強度の超音波を送信するために、前記1または複数のトランスデューサを作動させるように構成されていることを特徴とするデバイス。
【請求項32】
請求項31に記載のデバイスにおいて、
前記強度が、1平方センチメートル当たり約0~500ワット(すなわち、0~500W/cm
2)であることを特徴とするデバイス。
【請求項33】
請求項1~5および21~30の何れか一項に記載のデバイスにおいて、
前記コントローラが、約1キロヘルツ~10メガヘルツ(1KHz~10MHz)の周波数で高強度の超音波を送信するために、前記1または複数のトランスデューサを作動させるように構成されていることを特徴とするデバイス。
【請求項34】
請求項33に記載のデバイスにおいて、
前記強度が、1平方センチメートル当たり約500~2000ワット(すなわち、500~2000W/cm
2)であることを特徴とするデバイス。
【請求項35】
請求項1~5および21~30の何れか一項に記載のデバイスにおいて、
前記コントローラが、前記1または複数のトランスデューサを実質的に連続的に作動させるように構成されていることを特徴とするデバイス。
【請求項36】
請求項1~5および21~30の何れか一項に記載のデバイスにおいて、
前記コントローラが、前記1または複数のトランスデューサを断続的に作動させるように構成されていることを特徴とするデバイス。
【請求項37】
請求項1~5および21~30の何れか一項に記載のデバイスにおいて、
前記コントローラが、前記1または複数のトランスデューサをパルス形式で作動させるように構成されていることを特徴とするデバイス。
【請求項38】
請求項1~5および21~30の何れか一項に記載のデバイスにおいて、
前記コントローラが、高強度の超音波を送達して、痛み軽減のために標的神経の熱焼灼または神経溶解を引き起こすべく前記1または複数のトランスデューサを作動させるように構成されていることを特徴とするデバイス。
【請求項39】
請求項1~5および21~30の何れか一項に記載のデバイスにおいて、
前記コントローラが、神経伝導の刺激および抑制の一方または両方を引き起こすように前記1または複数のトランスデューサを作動させるように構成されていることを特徴とするデバイス。
【請求項40】
対象者の末梢神経痛を緩和するためのシステムであって、
請求項25に記載のデバイスと、
対象者の体内の標的神経を識別して、対象者の皮膚上の前記デバイスを置く位置を決定するように構成された撮像デバイスとを備えることを特徴とするシステム。
【請求項41】
請求項40に記載のシステムにおいて、
前記撮像デバイスが、前記ハウジング上の超音波撮像トランスデューサを含むことを特徴とするシステム。
【請求項42】
請求項40に記載のシステムにおいて、
前記コントローラが、前記1または複数のトランスデューサから標的神経までの距離に少なくとも部分的に基づいて、集束超音波の送達を較正するように構成されたプロセッサを含むことを特徴とするシステム。
【請求項43】
対象者の末梢神経痛を緩和するための方法であって、
超音波デバイスの接触表面を対象者の皮膚に当てて配置して、前記デバイスの1または複数のトランスデューサを皮膚に音響的に結合させるステップと、
前記デバイスの撮像素子を作動させて、前記表面から対象者の体内に信号を送信するとともに、体からの反射信号を受信して、体内の標的神経を識別するステップと、
前記1または複数のトランスデューサ素子からの集束超音波を前記表面から体内の標的神経に送達して、痛みを緩和するステップとを備えることを特徴とする方法。
【請求項44】
請求項43に記載の方法において、
前記撮像素子が、前記表面から対象者の体内に超音波信号を送信し、体からの反射信号を受信する超音波撮像素子を含み、前記デバイスのコントローラが、前記撮像素子に結合され、前記反射信号を処理して体内の標的神経を識別するとともに、前記1または複数のトランスデューサ素子に結合され、痛みを緩和するために標的神経への集束超音波の送達を制御することを特徴とする方法。
【請求項45】
請求項44に記載の方法において、
前記コントローラが、前記1または複数のトランスデューサから標的神経までの距離に少なくとも部分的に基づいて、集束超音波の送達を自動的に較正することを特徴とする方法。
【請求項46】
請求項44に記載の方法において、
前記コントローラが、標的神経に集束される超音波ビームを生成するために、前記1または複数のトランスデューサ素子への信号の位相、強度、パルス幅および周波数のうちの1または複数を変更することを特徴とする方法。
【請求項47】
請求項44に記載の方法において、
前記接触表面を皮膚に当てて配置することが、前記接触表面を押してパッドを少なくとも部分的に圧縮し、それにより前記1または複数のトランスデューサ素子から標的神経までの距離を調整することを含むことを特徴とする方法。
【請求項48】
請求項44に記載の方法において、
集束超音波を送達することが、前記1または複数のトランスデューサを移動させて、集束超音波の焦点ゾーンを移動させ、それにより前記焦点ゾーンよりも大きい領域を治療することを含むことを特徴とする方法。
【請求項49】
請求項44~48の何れか一項に記載の方法において、
対象者の体に前記デバイスを固定するステップをさらに含むことを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、対象者の体内に集束超音波を送達するためのデバイス、システムおよび方法に関し、より詳細には、例えば、神経調節または神経の焼灼を引き起こすか、または引き起こすことなく、痛みを有する対象者の1または複数の神経を標的とする集束超音波を使用して、急性または慢性の痛みを緩和するためのデバイス、システムおよび方法に関する。
【0002】
関連出願データ
本出願は、2021年6月15日に出願された同時係属中の米国仮出願第63/210,864号、および2022年2月25日に出願された米国仮出願第63/314,143号の利益を主張するものであり、それらの開示全体は、引用により本明細書に明示的に援用されるものとする。
【背景技術】
【0003】
対象者は、様々な状況により末梢神経の痛みを経験することがある。例えば、患者は、例えば、手術または怪我による急性の痛みを経験することがあり、または痛みは、例えば、複合性局所疼痛症候群(CRPS)1型および2型、幻肢痛、三叉神経痛、ベル麻痺、肋間痛、帯状疱疹後神経痛、子宮内膜症、神経腫などの疾病による慢性の痛みであることがある。
【0004】
痛みを管理するための最も一般的な方法は麻薬であるが、これには様々な副作用を伴う可能性がある。
【0005】
したがって、例えば、非麻薬ベースの疼痛抑制など、疼痛管理を改善するためのデバイスおよび方法が有用であろう。
【発明の概要】
【0006】
本出願は、集束超音波を対象者の体内に送達するためのデバイス、システムおよび方法に関する。より詳細には、痛みを有する対象者の1または複数の神経を標的とする集束超音波を使用して痛みを緩和するためのデバイス、システムおよび方法が提供される。一例では、標的神経または他の組織を損傷することなく、痛みを緩和するために、集束超音波を送達することができる。代替的には、1または複数の標的神経の神経調節または焼灼を引き起こすために、集束超音波を送達することができる。治療される痛みは急性の痛みであり、特定の末梢神経遮断によって痛みが解消される急性の外科的痛みを含むが、これに限定されるものではない。また、痛みは慢性疼痛であってもよく、複合性局所疼痛症候群(CRPS)1型および2型、幻肢痛、三叉神経痛、ベル麻痺、肋間痛、帯状疱疹後神経痛、子宮内膜症、神経腫などが含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0007】
神経調節のための集束超音波の使用は、アルツハイマー病におけるアミロイド斑の除去から電気生理学的な発作活動の阻害に至るまで、幅広い用途で成功を収めていることが実証されている。低強度集束超音波を用いた先行研究の殆どは、経頭蓋集束超音波パルスを使用した脳領域の直接活性化や、経頭蓋集束超音波に応答した運動活動の誘発など、神経構造の経頭蓋刺激または抑制に用いられてきた。高強度超音波は、これまで固形腫瘍などの組織の焼灼に使用されてきた。迷走神経の部分的抑制など、末梢神経系の神経調節に低強度超音波を使用したこれまでの研究は限られている。
【0008】
しかしながら、現在のところ、急性および慢性の疼痛抑制を目的として、末梢神経の抑制と興奮の一方または両方を含む末梢神経系神経調節のために集束超音波を使用するデバイスまたは手順は存在しない。現在、疼痛管理の大部分は麻薬によって達成されているが、麻薬には様々な副作用がある。集束超音波は、疼痛抑制のための、非侵襲的で非薬物ベースの代替的方法として使用することができる。
【0009】
一例によれば、対象者の痛みを緩和するためのデバイスが提供され、このデバイスが、対象者の皮膚に当てて配置するように構成された表面を含むハウジングと、表面から対象者の体内に信号を送信し、体からの反射信号を受信するように構成されたハウジング上の撮像素子と、表面から体内に集束超音波を送達するように構成された1または複数のトランスデューサ素子と、撮像素子に結合され、反射信号を処理して体内の標的領域、例えば末梢神経を識別するとともに、1または複数のトランスデューサ素子に結合され、痛みを緩和するために標的領域への集束超音波の送達を制御するコントローラとを含む。
【0010】
別の例によれば、対象者の痛みを緩和するための方法が提供され、この方法が、超音波デバイスの接触表面を対象者の皮膚に当てて配置して、デバイスの1または複数のトランスデューサを皮膚に音響的に結合させるステップと、デバイスの撮像素子を作動させて、表面から対象者の体内に信号を送信するとともに、体からの反射信号を受信して、体内の標的領域、例えば末梢神経を識別するステップと、1または複数のトランスデューサ素子からの集束超音波を表面から体内の標的領域に送達して、痛みを緩和するステップとを含む。
【0011】
一例では、本明細書のデバイスが、コントローラに結合された1または複数の音響トランスデューサを含むことができ、当該デバイスが、例えば、1平方センチメートル当たり500ワットまでの強度(すなわち、0~500W/cm2)を有する低強度の超音波を、例えば、約1キロヘルツ~10メガヘルツ(1KHz~10MHz)の周波数で送信するように構成されている。別の例では、デバイスが、例えば、1平方センチメートル当たり約500~2000ワット(500~2000W/cm2)の強度を有する高強度の超音波を、例えば、約1キロヘルツ~10メガヘルツ(1KHz~10MHz)の周波数で送信するように構成され得る。
【0012】
いくつかの例では、1または複数の超音波トランスデューサによって実質的に連続的に超音波エネルギーが放出される。他の例では、超音波エネルギーが断続的に放出される。さらに他の例では、超音波エネルギーがパルスの形態で放出される。
【0013】
任意選択的には、本明細書のデバイスおよび方法は、疼痛を軽減するために標的神経の熱焼灼または神経溶解を引き起こすべく高強度の超音波を送達するように構成され得る。代替的には、本方法は、熱メカニズムおよび非熱メカニズム(すなわち、高強度対低強度超音波)の両方を通じて、急性および慢性の痛みを緩和するために末梢神経組織に集束超音波を利用することができる。任意選択的には、神経調節は、組織への神経伝導または超音波エネルギー伝達の刺激および抑制の一方または両方を通じて達成され得る。
【0014】
様々な例では、侵襲性または非侵襲性のデバイスを提供することができる。一例では、特定の末梢神経を標的とするために対象者の表皮上に直接適用され得る1または複数の集束超音波トランスデューサを含む非侵襲性超音波デバイスを提供することができる。標的末梢神経に対するデバイスの表皮上の適用位置は、超音波またはMRI画像化などの画像ガイダンスによって決定することができる。
【0015】
一例では、トランスデューサの位置を、トランスデューサの適用前または適用中に決定することができ、任意選択的には、超音波トランスデューサの焦点距離を、画像ガイダンスに基づいて較正することができる。例えば、コントローラは、撮像素子からの信号に少なくとも部分的に基づいて、皮膚と標的神経との間の様々な組織構造を識別することができ、例えば、皮膚の厚さ、および/または脂肪層および筋層の位置および/または厚さを特定することができ、さらに、音響エネルギーの集束を強化するために、標的神経までの経路に沿った組織の異なる超音波減衰を考慮してFUSトランスデューサに対する信号を修正することができる。正しい位置および/または焦点距離を決定したら、トランスデューサと表皮の間にゲルなどの結合材料を使用して、または使用せずに、トランスデューサを表皮に直接適用することができる。その後、集束超音波エネルギーを、皮膚および介在する軟組織を介して標的末梢神経に伝達することができる。
【0016】
別の例では、埋め込み型のマイクロ超音波デバイスを提供することができ、例えば、デバイス全体を標的末梢神経または神経叢に近接して対象者の体内に埋め込んで、集束超音波エネルギーを神経に局所的に伝達するように使用することができる。そのようなデバイスは、末梢神経を外科的に露出させて、末梢神経を取り囲むかまたは末梢神経に近接してデバイスを埋め込むことによって適用することができる。焦点距離は、神経までの距離および神経の直径に応じて較正することができる。
【0017】
さらに別の例は、露出した末梢神経に結合された超音波トランスデューサを有する集束超音波デバイスを含む。このような例は、末梢神経を外科的に露出させて、例えば流体を充填した結合コーンまたはシリンダまたは他の結合材料を使用して、超音波トランスデューサを末梢神経に結合することによって適用されるであろう。
【0018】
さらに別の例には、経皮集束超音波トランスデューサが、撮像超音波デバイスなどの画像管理デバイスとともに対象者の表皮上に配置され、かつ/または取り付けられるデバイスおよび方法が含まれる。その後、撮像デバイスを使用して、標的とする神経または他の構造の位置を特定することができる。例えば、ソフトウェアプログラムを使用して、集束超音波エネルギーを、ある期間(数時間から数日間)、連続的、断続的またはパルス的に、標的構造に経皮的に送信することができる。
【0019】
本発明の他の態様および特徴は、添付の図面と併せて、以下の説明を検討することにより明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0020】
本発明は、添付の図面と併せて、以下の特定の例の説明からより良好に理解されると考えられる。図面において、同様の符号は同じ要素を特定している。
【
図1】
図1は、痛みを抑制するために集束超音波を対象者の体内の標的神経に送達するためのデバイスの一例を示している。
【
図2】
図2は、
図1のデバイスに含まれ得る例示的なコンポーネントを示す概略図である。
【
図3】
図3は、調節可能な超音波撮像素子を含むデバイスの代替例を示している。
【0021】
図面は、決して限定することを意図したものではなく、本発明の様々な例は、必ずしも図面に描かれていないものも含めて、他の様々な方法で実施され得ることが考えられる。本明細書に組み込まれ、その一部を構成する添付の図面は、本発明のいくつかの態様を示しており、詳細な説明とともに本発明の原理を説明するのに役立つが、本発明は、図示の正確な配置構成に限定されないことを理解されたい。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の特定の例に関する以下の説明は、本発明の範囲を限定するために使用されるべきではない。本発明の他の例、特徴、態様、実施形態および利点は、本発明を実施するために考えられる最良の態様の1つである例示としての以下の説明から当業者には明らかになるであろう。理解されるように、本発明はいずれも、本発明から逸脱することなく、他の様々な自明の態様も可能である。このため、図面および説明は、本質的に例示であって限定的なものではないとみなされるべきである。
【0023】
実施例を説明する前に、本発明は、記載の特定の実施例に限定されるものではなく、当然のことながら、変更し得ることを理解されたい。また、本発明の範囲は添付の特許請求の範囲によってのみ限定されるものであるため、本明細書で使用する用語は、特定の実施例を説明することのみを目的としており、限定することを意図したものではないことを理解されたい。
【0024】
値の範囲が与えられる場合、文脈が明確に別段の指示をしない限り、下限値の単位の10分の1までの、その範囲の上限値と下限値との間の各介在値も具体的に開示されているものと理解されたい。任意の記載値または記載の範囲内の介在値と、任意の他の記載値または記載の範囲内の介在値との間の小さい各範囲は、本発明に包含される。それら小さい範囲の上限値および下限値は、それぞれ独立に範囲に含まれることも除外されることもあり、その両方または一方が小さい範囲に含まれる場合においても、またはどちらも小さい範囲に含まれない場合においても、各範囲は、記載の範囲内の特に除外された限界値を条件として、本発明に包含される。記載の範囲が限界値の一方または両方を含む場合、それらの含まれる限界値の一方または両方を除外した範囲もまた本発明に含まれるものとする。
【0025】
別段の定義がない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語および科学用語は、本発明が属する技術分野における当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書に記載されたものと同様または同等の任意の方法および材料を、本発明の実施または試験に使用することができるが、いくつかの可能性のある例示的な方法および材料をここで説明する。
【0026】
本明細書および添付の特許請求の範囲において、単数形「a」、「an」および「the」は、文脈上明らかに別段の指示がない限り、複数の指示対象を含むことに留意されたい。このため、例えば、「化合物」に対する言及は、複数のそのような化合物を含み、「ポリマー」に対する言及は、当業者に公知の1または複数のポリマーおよびその均等物に対する言及を含む。
【0027】
本明細書では、特定の範囲が、数値の前に「約」という用語が付されて示される。「約」という用語は、本明細書において、その用語の後の正確な数値と、その用語の後の数値に近い数値または近似値に対する文字通りの裏付けを提供するために使用される。ある数値が具体的に言及された数値に近いかまたは近似しているか否かを判断する際に、その近いまたは近似している未言及の数値は、それが提示される文脈において、具体的に言及された数値と実質的に同等のものを提供する数値であり得る。
【0028】
図面を参照すると、
図1は、対象者の体90の末梢神経痛を緩和するためのデバイス10の一例を示しており、
図2に示すように、デバイス10を作動させるための1または複数のコンポーネント、例えば、FUSトランスデューサ30、撮像または位置特定素子40、コントローラ50および電源60を収容するハウジング20を含む。ハウジング20は、例えば、本明細書の他の箇所でさらに説明するように、集束超音波がトランスデューサ30から表面22を通して対象者の体90内に送達されるようにするために、対象者の皮膚92に当てて配置されるように構成された接触表面22を含むことができる。
【0029】
任意選択的には、ハウジング20は、ハンドヘルドデバイスを提供するような形状、例えば、対象者がデバイス10を保持するのを容易にするような形状を有することができる。例えば、ハウジング20自体は、ユーザがデバイス10を保持することができるような形状、例えば、細長い円筒形または他の形状を有することができ、かつ/または1または複数のハンドル、グリップまたは他の特徴部(図示せず)がハウジング20から延びて、使用中にデバイス10の操作を容易にすることができる。
【0030】
追加的または代替的には、ハウジング20が、対象者の体90に対するデバイス10の固定を容易にするための1または複数の特徴部を含むことができる。例えば、接触表面22は、使用中に表面22を皮膚92に固定することができるが、皮膚92を損傷することなくデバイス10を取り外すことができる接着剤または他の粘着性材料を含むことができる。追加的または代替的には、対象者の体の周りに少なくとも部分的に巻き付けることができる1または複数のストラップ(図示せず)をハウジング20に設けることができ、例えば、接触表面22の両側のストラップのペアであって、使用中に対象者の体の付属器官、例えば、腕もしくは脚、または胴体の周りにストラップを巻き付けることを可能にするのに十分な長さを有するストラップを設けることができる。任意選択的には、ストラップは、接触表面22を皮膚92に当てて保持するために端部同士を取り外し可能に固定するための協働する留め具、例えば、ホック留め具、スナップ、クリップ、ボタン、紐など(図示せず)を有する端部を含むことができる。代替的には、対象者または他の人は、使用中、ハウジング20を単に保持して、表面22を皮膚92に押し付けることができる。
【0031】
引き続き
図1を参照すると、FUSトランスジューサ30は、アレイを提供する複数の圧電素子31を含むことができ、本明細書の他の箇所でさらに説明するように、トランスジューサ30が第1の軸34に沿って集束超音波を送達して、例えば、第1の軸34に沿った所望の位置、例えば、標的神経94に超音波エネルギーを集束させるビームを生成することができる。例えば、
図1に示すように、トランスデューサ素子31は、接触表面22に隣接して取り付けられて、この素子31が表面22に接触された皮膚92に音響的に結合されることができ、この素子31によって生成された超音波エネルギーが、表面22から対象者の体90内に第1の軸34に沿って伝達される。図示の例では、トランスデューサ素子31は、実質的に平坦なアレイで実質的に平坦な表面32に取り付けられるか、または隣接しているが、この素子31は、必要に応じて、例えば、凹面、凸面を有する他の配置構成、または軸38を中心とする他の配置構成(図示せず)で提供され得ることが理解されよう。一例では、素子31が、平面32上で互いに隣接して配置され、例えば、素子31の1または複数の環状のセットにより表面32上に円形配列で配置され、各々が互いに半径方向に間隔をあけて配置された複数の素子31を含むものであってもよく、または線形アレイで提供されて、例えば、1または複数の列を含み、各列が、複数の正方形、長方形、六角形または他の形状の圧電素子(図示せず)を含むものであってもよい。
【0032】
音響パッド38は、デバイス10の接触表面22を規定する平面32に取り付けられるか、または他の方法で結合され、その結果、例えば、トランスデューサ30を対象者の皮膚92に音響的に結合することができ、かつ/またはデバイス10を皮膚92に押し付けるのを容易にすることができる。例えば、パッド38は、平面32と接触表面22との間の空間を満たし、トランスデューサ30と皮膚92の結合を強化する音響ゲル、水または他の流体、発泡体または他の材料を含む袋または他の可撓性膜であってもよい。任意選択的には、パッド46は、例えば、第1の軸34に沿って調節可能であり、皮膚92に押し付けられたときに超音波エネルギーの焦点ゾーンを対象者の体90に対して手動で調節することができる。例えば、膜は、ゲルまたは他のパッド材料を膜内で外側に変位させることによって表面32、22間の距離を調整することができるように十分に可撓性であってよく、膜は、破裂することなく、外側に膨張して、変位を可能にすることができる。
【0033】
代替的には、表面44、2間の高さを他の機構を用いて調整して、FUSエネルギーの焦点深度を調整することもできる。例えば、一つの代替例では、異なる寸法、例えば異なる高さおよび/または異なる音響特性を有する音響パッドのセット(図示せず)が提供され、ユーザは、その中からデバイス10に取り付けるものを選択することができる。この代替例では、ハウジング20が、平面32に隣接する1または複数のコネクタを含むことができ、それにより、選択したパッドをハウジング20に取り付けて接触表面22を提供することが可能となっている。選択したパッドは、例えば、複数の位置が治療される場合や、単一のデバイスが複数の対象者の治療に使用される場合など、必要に応じて取り外して交換することができる。これにより、単一のデバイス、すなわちFUSトランスデューサ30と撮像素子40を備えたデバイスを、使用中または使用の間にユーザがカスタマイズすることができる。パッドは、使用中または必要に応じて滅菌または他の方法で洗浄できるように密封することができる。
【0034】
引き続き
図1を参照すると、撮像素子40は、入射超音波信号D
iを、例えば接触表面22から対象者の体90内に、例えば第2の軸44を中心にして送信し、体90からの反射信号D
rを受信するように構成された撮像または診断用超音波トランスデューサ42を含む。撮像素子40は、撮像トランスデューサ42がFUSトランスデューサ30から、例えば平面32に対して横方向にオフセットされ、かつ第2の軸44が第1の軸34と交差するような角度をなすように、ハウジング20に取り付けることができる。撮像トランスデューサ42は、例えば、撮像信号D
i、D
rもパッド38を通過するようにFUSトランスデューサ30に隣接して取り付けられた撮像ハウジング46の遠位端に設けられた1または複数の圧電素子(簡単のため1つだけ図示)を含むことができる。代替的には、標的神経92または他の関心組織を識別するのに使用できる信号を生成することができる他の撮像デバイスを設けることができる。
【0035】
撮像素子40は、例えば、
図1に示すように、軸34、44の交差角度が固定されるように、ハウジング20に対して固定することができる(本明細書の他の箇所で説明するように、角度が他の方法で電子的に変更され得る場合であっても)。代替的には、撮像素子40は、第2の軸44の方向を変更するためにハウジング20に対して移動可能であってもよい。例えば、
図3に示すように、ハウジング20に対する撮像素子40’の移動の1または複数の自由度を提供する機構によってハウジング20に結合される撮像素子40’を提供することができる。図示の例では、撮像素子40’がハウジング20に対して単一の軸を中心として相対的に揺動することを可能にするヒンジ48’を使用して、撮像素子40’がハウジング20に取り付けられ、例えば、撮像トランスデューサ42を揺動することにより、第2の軸44が第1の軸34に対して実質的に平行となり、撮像素子40’が揺動されるにつれて増大する鋭角、例えば、約0~90度(0~90゜)で第1の軸34と交差することができる。追加的または代替的には、撮像素子40全体が、ハウジング20に対して空間的に、例えば、平面32に平行な面内の1または複数の方向に移動可能であってもよい。
【0036】
図2をさらに参照すると、コントローラ50(1または複数のプロセッサ、メモリおよび/または他の電子部品(図示せず)を含む)が、撮像素子40に結合され、入射信号D
iの送達を制御し、反射信号D
rを処理して、例えば、体90内の1または複数の組織構造を識別することができる。例えば、コントローラ50は反射信号を解析して標的神経94(または他の関心組織)を特定し、FUSトランスデューサ30に対する神経94の深さおよび/または他の空間情報を得ることができる。
【0037】
また、コントローラ50は、FUSトランスデューサ30にも結合され、例えば、トランスデューサ素子31にエネルギーを供給して、標的神経94への集束超音波の送達を制御することができ、それにより痛みを緩和することができる。コントローラ50は、電源60に結合され、例えば、この電源は、例えば、1または複数のバッテリ、変圧器、および/または信号をトランスデューサ素子31に送達して、第1の軸34に沿って導かれる音響エネルギーを素子31に生成させるのに必要な他のコンポーネントを含むことができる。追加的または代替的には、デバイス10は、例えば単に電気コンセントに差し込むことにより、デバイス10を外部電源に接続することを可能にするコネクタ62を含むことができ、またはトランスデューサ30および/または撮像素子40を作動させるのに必要な電力および/または信号を生成することができる外部電源に接続することを可能にするコネクタを含むことができる。デバイス10は、作動すると、必要に応じて、実質的に連続的に、断続的にかつ/または所望のパルス形式で、FUSエネルギーを供給することができる。任意選択的には、デバイス10は、ユーザインターフェース、例えば、タッチスクリーン、ボタンのセットなど(図示せず)を含むことができ、ユーザが、供給するエネルギーの所望のパラメータを選択すること、例えば、強度、持続時間、波形などのうちの1または複数を必要に応じて変更することを可能にすることができる。
【0038】
任意選択的には、コントローラ50は、圧電素子31への信号の位相、強度、パルス幅および周波数のうちの1または複数を制御し、それにより、標的神経94に導かれる焦点ゾーンに集束される超音波ビームを生成することができる。例えば、撮像素子40により特定された標的神経94の位置に少なくとも部分的に基づいて、コントローラ50は、音響エネルギーを標的神経94に集中させるために、超音波ビームBの焦点ゾーンの深さを移動させるように、かつ/または第1の軸34に対して焦点ゾーンを横方向に移動させるように、信号を変更することができる。さらに、コントローラ50は、撮像素子40からの信号に少なくとも部分的に基づいて、皮膚92と標的神経94との間の様々な組織構造を識別することができ、例えば、皮膚の厚さ、および/または脂肪層および筋肉層の位置および/または厚さを特定することができる。コントローラ50は、音響エネルギーの集束を強化するために、標的神経92までの経路に沿った組織の異なる超音波減衰を考慮して、トランスデューサ30の素子31への信号を修正することができる。追加的または代替的には、撮像素子40が移動可能である場合、撮像素子40の向きを手動で調整することができ、コントローラ50は、標的神経の位置に少なくとも部分的に基づいて焦点ゾーンを調整するように信号を修正することができる。
【0039】
追加的または代替的には、焦点ゾーンの位置を、例えば音響パッド38を使用して、手動で調整することができる。例えば、平面32(ひいてはトランスデューサ素子31)から接触表面22までの距離は、パッド38に加える圧力を調整して、例えばパッド38内のゲルまたは他の材料を変位させることにより、調整することができ、それにより、FUSエネルギーを供給する前に関心組織を焦点ゾーン内に位置させるために所望の距離を提供することができる。
【0040】
代替的には、例えば1または複数のサーボモータや他のアクチュエータを使用して、使用中にFUSトランスデューサ30を移動させることができるように、FUSトランスデューサ30をハウジング20内に取り付けることもできる。例えば、ハウジング20は、例えば、1または複数のストラップまたは他の特徴部(図示せず)を使用して、対象者の体90に固定することができ、コントローラ50は、撮像素子40からの信号を処理して、体90内の1または複数の領域を治療のために特定することができる。トランスデューサ30は、連続的または断続的に作動された後、ハウジング20内で、体90に対して相対的に移動され、それにより焦点ゾーンを移動させることができる。一例では、トランスデューサ30が、平面32に平行な面内で移動可能であってもよく、それにより、焦点ゾーンを体90内の組織に対して横方向に移動させることができる。例えば、標的治療領域が焦点ゾーンよりも大きい場合、トランスデューサ30は、音響エネルギーを領域全体に送達するために、治療中に移動させることができる。同様に、標的領域が長い神経を含む場合、神経の所望の長さに沿ってFUSを送達するために、トランスデューサ30を移動させることができる。代替的には、トランスデューサ30を移動させて、各領域に音響エネルギーを予め設定またはカスタマイズされた持続時間供給しながら、複数の領域にFUSを送達することもできる。
【0041】
任意選択的には、デバイス10は、コントローラ50に結合されて、ユーザが標的神経に対して焦点ゾーンを位置決めするのを支援し得る出力デバイス(図示せず)を含むことができる。例えば、標的神経が焦点ゾーン内にあるときに出力を提供し得る1または複数の光インジケータ、スピーカなど(図示せず)をハウジング20に設けることができる。追加的または代替的には、ディスプレイ(これも図示せず)をハウジング20に設けることもでき、それにより、撮像素子40からの信号に少なくとも部分的に基づいて画像を提供し、例えば、標的神経94(および/または他の組織構造)の位置を特定し、焦点ゾーンの表示を重ね合わせて、ユーザが焦点ゾーン内に標的神経94を手動で配置することを可能にすることができる。例えば、コントローラ50は、撮像素子40からの信号を処理し、焦点ゾーンに対する標的神経94の位置を示す画像をディスプレイ上に提示することができる。ユーザが、例えばパッド38を押すことにより、かつ/または皮膚92に沿って接触表面22を動かすことにより、デバイス10を動かすと、焦点ゾーンが画像内で標的神経94に重なるまで、デバイス10に対して相対的に移動するときに標的神経94の位置を監視することができ、その後、ユーザはFUSトランスデューサ30を作動させてFUSエネルギーを供給し、対象者の痛みを和らげることができる。
【0042】
デバイス10は、例えば1平方センチメートル当たり最大500ワット(すなわち、0~500W/cm2)の強度を有する、低強度の超音波を、例えば約1キロヘルツ~10メガヘルツ(1KHz~10MHz)の周波数で送信するように構成することができる。代替的には、デバイス10は、例えば1平方センチメートル当たり約500~2000ワット(500~2000W/cm2)の強度を有する、高強度の超音波を、例えば約1キロヘルツ~10メガヘルツ(1KHz~10MHz)の周波数で送信するように構成することができる。このため、デバイス10は、標的神経を損傷することなくFUSエネルギーを印加することによって一時的に痛みを和らげるために使用することができ、あるいは、神経調節、アブレーション、または神経の他の少なくとも部分的な破壊を引き起こすことによって永久的に痛みを和らげるために使用することもできる。
【0043】
図1をさらに参照すると、使用中、デバイス10は、対象者の末梢神経の痛みを和らげるために、対象者または介護者によって使用され得る。一般に、接触表面22を対象者の皮膚92に当てて配置することにより、FUSトランスデューサ20を皮膚92に音響的に結合させることができる。任意選択的には、音響結合を高めるために、必要に応じて、配置前に皮膚92および/または接触表面22に音響ゲルまたは他の材料を塗布するようにしてもよい。
【0044】
撮像素子40を作動させると、コントローラ50は、撮像トランスジューサ42に、表面22から対象者の体90内に信号Diを送信させるとともに、体20からの反射信号Drを受信させて、体90内の標的神経または他の関心組織94を識別させることができる。任意選択的には、デバイス10を皮膚92に沿って移動させることができ、かつ/または、例えば撮像素子40からのガイダンスの下で、パッド38を必要に応じて押圧または解放することができる。追加的または代替的には、撮像素子40が移動可能である場合、デバイス10を標的神経94のほぼ上の皮膚92に適用し、撮像素子40を移動させてFUSトランスデューサ30に対する位置を特定することができ、コントローラ50は、標的神経94に焦点ゾーンを向けるのに必要な信号を較正することができる。
【0045】
標的神経94がFUSトランスデューサ30の焦点ゾーン内に入ると、例えば痛みを軽減するために、標的神経94に集束超音波を送達するようにFUSトランスデューサ30を作動させることができる。任意選択的には、例えば標的神経94の位置を確認した後(例えば、ハウジング20上の出力デバイスを使用して確認した後)、ユーザによりFUSトランスデューサ30を手動で作動させることができる。代替的には、コントローラ50は、標的神経94が焦点ゾーン内にあることを確認すると、FUSトランスデューサ30を自動的に作動させることができる。FUSエネルギーは予め設定された時間だけ供給するようにしてもよいし、ユーザが所望の時間だけFUSトランスデューサ30を作動させるようにしてもよい。
【0046】
本明細書のデバイス、システムおよび方法は、急性および/または慢性の痛みを軽減するために、例えば、腰神経叢、大腿神経、伏在神経、閉鎖神経、外側大腿皮神経、坐骨神経、後脛骨神経、腓腹神経、総腓骨神経、深腓骨神経、浅腓骨神経、腕神経叢、肋間腕神経、筋皮神経、正中神経、橈骨神経、尺骨神経、腸脛神経、腸腰神経、肋間神経、表在性頚神経叢、耳介側頭神経、オトガイ神経、頬側神経、眼窩下神経、眼窩上神経、上耳介神経、大後頭神経、大耳介神経および小後頭神経など、様々な末梢神経に集束超音波を送達するために使用することができる。治療対象となり得る疾患には、幻肢痛、CRPS(I型およびII型)、急性外科痛:特定の末梢神経遮断、神経腫、頭痛、三叉神経痛、ベル麻痺、舌咽神経、肋間神経痛、三叉神経痛、神経溶解(例えば、腹腔神経叢、上下腹神経叢など)、子宮内膜症痛、帯状疱疹(例えば、帯状疱疹後神経痛)、神経根切断、腰痛、関節リウマチの疼痛、癌関連の疼痛などが挙げられる。
【0047】
本発明は、様々な変更および代替的な形態が可能であるが、その具体的な例が図面に示され、本明細書で詳細に説明されている。しかしながら、本発明は、開示の具体的な形態または方法に限定されるものではなく、本発明は、添付の特許請求の範囲に含まれるすべての変更物、均等物および代替物を網羅するものであることを理解されたい。
【国際調査報告】