IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ リンデ・アクツィエンゲゼルシャフトの特許一覧

特表2024-524082アンモニアから水素を生成するための方法および装置
<>
  • 特表-アンモニアから水素を生成するための方法および装置 図1
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-05
(54)【発明の名称】アンモニアから水素を生成するための方法および装置
(51)【国際特許分類】
   C01B 3/04 20060101AFI20240628BHJP
   C01B 3/56 20060101ALI20240628BHJP
   C01C 1/12 20060101ALI20240628BHJP
   B01D 53/047 20060101ALI20240628BHJP
   C25B 1/04 20210101ALI20240628BHJP
   C25B 9/00 20210101ALI20240628BHJP
【FI】
C01B3/04 B
C01B3/56 Z
C01C1/12 A
B01D53/047
C25B1/04
C25B9/00 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023577325
(86)(22)【出願日】2022-06-01
(85)【翻訳文提出日】2023-12-14
(86)【国際出願番号】 EP2022025255
(87)【国際公開番号】W WO2023274572
(87)【国際公開日】2023-01-05
(31)【優先権主張番号】21020333.7
(32)【優先日】2021-06-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519288685
【氏名又は名称】リンデ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Linde GmbH
【住所又は居所原語表記】Dr.-Carl-von-Linde-Str. 6-14, 82049 Pullach i. Isartal, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヴァウルジネク、クレメンス
(72)【発明者】
【氏名】ぺシェル、アンドレアス
(72)【発明者】
【氏名】ボンフェルト、ハイケ
【テーマコード(参考)】
4D012
4G140
4K021
【Fターム(参考)】
4D012CA20
4D012CB11
4D012CD07
4D012CE03
4D012CF04
4D012CH04
4G140FB06
4G140FC03
4G140FE01
4K021AA01
4K021BA02
4K021CA09
4K021DC01
4K021DC03
(57)【要約】
本発明は、アンモニアから水素製品(6)を生成するための方法ならびに装置に関し、アンモニアを含む投入原料(1)を、触媒担体を備えるバーナー燃焼分解炉(S)を用いて水素と窒素を含む分解ガス(3)に変換し、そこから水素製品(6)を分離して可燃性物質を含む窒素リッチな残留ガス(7)を得て、残留ガス(7)の少なくとも一部を分解炉(S)の点火のために燃焼させる。ここでは、酸素源(E)から酸素リッチな物質流(8)を供給し、それを酸化剤として直接または空気(13)を混合した後で残留ガス(7)の燃焼時に使用することを特徴とする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンモニアから水素製品(6)を生成するための方法であって、アンモニアを含む投入原料(1)を、触媒担体を備えるバーナー燃焼分解炉(S)を用いて水素と窒素を含む分解ガス(3)に変換し、そこから前記水素製品(6)を分離して可燃性物質を含む窒素リッチな残留ガス(7)を得て、前記残留ガス(7)の少なくとも一部を前記分解炉(S)の点火のために燃焼させる方法において、酸素源(E)から酸素リッチな物質流(8)を供給し、それを直接または酸化剤として空気(13)を混合した後で前記残留ガス(7)の燃焼時に使用することを特徴とする方法。
【請求項2】
酸素源として電解槽(E)が使用され、前記電解槽(E)において、水(9)の電気化学的分解により、水素リッチな物質流(11)ならびに酸素リッチな物質流(8)が得られることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記電解槽(E)は、アノード側で空気(10)によってフラッシングされる固体酸化物電解セルを備え、前記フラッシング中に加熱され、かつ酸素富化された空気は、前記残留ガス(7)を燃焼させるための酸化剤(8)として使用されることを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記電解槽(E)内で得られる前記水素リッチな物質流(11)は、前記分解炉(S)の点火のための燃料として、および/またはアンモニア分解によって生成される前記水素(6)の量を補充するために使用されることを特徴とする、請求項2または3に記載の方法。
【請求項5】
前記分解ガス(5)を分離するために、圧力スイング吸着器(D)が使用されることを特徴とする、請求項2から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記分解ガス(3)は、前記分解炉(S)で変換されなかったアンモニアを除去するために水スクラビング(W)を受けることを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記水スクラビング(W)内の前記分解ガス(5)は、30℃~70℃の温度まで冷却され、水を凝縮して、この凝縮水によってアンモニアが洗い落とされることを特徴とする、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記分解ガス(5)から、水スクラビング(W)で洗い落とされたアンモニア(4)が前記分解炉(S)に戻されることを特徴とする、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記分解炉で得られた高温の分解ガスは、分解反応器を加熱するために利用され、前記分解反応器内では、アンモニアを水素と窒素に分解することでさらなる分解ガスが形成されることを特徴とする、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
アンモニアから水素製品(6)を生成するための装置であって、アンモニア含有の投入原料(1)を、水素と窒素を含む分解ガス(3)に触媒的に変換するための少なくとも1つのバーナー(B)と、前記分解ガス(3)から前記水素(6)を分離して窒素リッチな可燃性物質を含む残留ガス(7)を得ることができる分離装置(T)と、前記少なくとも1つのバーナー(B)によって前記分解炉(S)に点火するために燃焼させる少なくとも一部の前記残留ガス(7)を戻すことができる戻し装置とを備える装置において、前記装置は、前記少なくとも1つのバーナー(B)に接続された酸素源(E)を備え、そこから酸素リッチな物質流(8)を取り出し、それを直接または酸化剤として空気(13)を混合した後で前記残留ガス(7)の燃焼時に使用できることを特徴とする装置。
【請求項11】
前記酸素源は、前記水(9)を電気化学的に分解し、水素リッチな物質流(11)ならびに酸素リッチな物質流(8)を生成することができる電解槽(E)であることを特徴とする、請求項10に記載の装置。
【請求項12】
前記分離装置(T)は、圧力スイング吸着器(D)を備えることを特徴とする、請求項10または11に記載の装置。
【請求項13】
前記分離装置(T)は、前記分解ガス(3)からアンモニア(4)を分離するために、前記圧力スイング吸着器(D)の上流に配置された水スクラビング(W)を備えることを特徴とする、請求項12に記載の装置。
【請求項14】
前記水スクラビング(W)は、追加の洗浄水の供給装置なしに、30℃~70℃の温度まで前記分解ガス(3)を冷却できる冷却装置付きで実施されていることを特徴とする、請求項13に記載の装置。
【請求項15】
前記装置は、アンモニアを分解するために分解反応器を備え、前記分解反応器は、前記分解炉(S)内で得られる高温の分解ガスによって加熱可能であることを特徴とする、請求項10~14のいずれか一項に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンモニアから水素製品を生成するための方法に関し、アンモニアを含む投入原料を、触媒担体を備えるバーナー燃焼分解炉を用いて水素と窒素を含む分解ガスに変換し、そこから水素製品を分離して可燃性物質を含む窒素リッチな残留ガスを得て、残留ガスの少なくとも一部を分解炉の点火のために燃焼させる。
【0002】
さらに、本発明は、本発明に基づく方法を実施するための装置にも関する。
【0003】
アンモニアの触媒的分解による水素の生成は公知であり、長年にわたって従来技術となっている。このとき生じる反応
2NH⇔N+3H
は、吸熱性である(ΔH=46.2kJ/mol)。平衡の位置と反応速度は、圧力および温度、ならびに使用する触媒の種類に強く依存する。
【0004】
特に、例えば金属の熱処理を行う場合のように、水素必要量が1000mn/h未満と比較的少ない工業的用途では、電気加熱分解炉を用いたアンモニア分解が経済的に有利である。ここでは、原理的に、二酸化炭素を遊離させることなく水素を得ることができる。
【0005】
より高い割合でアンモニアから水素を製造するには、今日、炭化水素の水蒸気改質による大規模合成ガス製造に使用されているものと同じような設備を使用することができる。このような設備は、触媒材料を充填した分解管が配置されている燃焼室を持つ分解炉と、廃熱回収システムを備えている。この燃焼室は、1つまたは複数のバーナーによって加熱され、分解管を通して送られるアンモニアの吸熱分解のためにエネルギーを供給する。バーナーから発生する煙道ガスは、その顕熱のわずかな部分しか分離管に送り出すことができないため、高温で大量の余熱を持ったまま燃焼室から排出される。水素生成を効率的に実施できるようにするためには、高温の煙道ガスが、分解管から流出する高温の分解ガスと同様に、アンモニアおよびバーナー空気などの投入原料を予熱し、必要に応じて蒸気を発生させるために使用される。アンモニア分解の際、プロセス自体において蒸気は使用されないか、または非常に僅かしか使用できないため、発生した蒸気は搬出されるか、例えば「有機ランキンサイクル」によって発電に使用される。
【0006】
生成された水素を、圧縮作業なしに、または僅かな圧縮作業だけで生成物として送り出すことができるようにするため、好適にはアンモニア分解が10~40barの圧力で実施される。このことは、通常は液体で存在するアンモニアを含む投入原料の圧力を、僅かなエネルギー入力で上昇させることができるので、なおさら容易に実現できる。このような条件の下で、使用されるアンモニアの変換度を十分に高く、経済的に意味のあるものにするためには、500~1000℃の温度で分解を進める必要がある。
【0007】
分解ガスは、大部分が水素と窒素からなるが、その他に変換されていないアンモニアや、水を含む場合もある。水は、アンモニアを含む投入原料の中にすでに存在するか、または温度調整剤として分解管に追加的に導入されるが、分解反応には関与しない。
【0008】
水素を取得するために分解ガスが分離装置に供給され、その中で分解ガスは、変換されていないアンモニアの大部分を取り除いて、含有する水を分離した後、好ましくは圧力スイング吸着により処理される。このとき、窒素をほとんど含まない水素画分、ならびに大部分が窒素からなり、かつアンモニアを含む残留ガスが生成される。水素画分は生成物として送り出すことができる一方で、この残留ガスは送り戻され、酸化剤として空気を使用して分解炉の点火のために燃焼させられる。
【0009】
その高い窒素割合により、残留ガスの発熱量は比較的少ないため、分解炉の点火には、状況に応じてその他の燃料、例えばアンモニアなどを追加する必要がある。さらに、高い窒素割合により大量の煙道ガスが生じるが、その余熱は、それなりに大型の高価な熱交換器を使用しなければ排熱回収システムにおいて利用することができない。
【0010】
本発明の課題は、従来技術に従って可能であったよりも経済的に、アンモニアからの水素生成を可能にする特定の種類の方法および装置を提供することである。
【0011】
この設定された課題は、本方法において、酸素源から酸素リッチな物質流を供給し、それを直接または酸化剤として空気を混合した後で残留ガスの燃焼時に使用することによって解決される。
【0012】
酸素リッチとは、本発明において、25%よりも多くの酸素からなる酸素流に該当する。しかし、例えば99%よりも多くの、より高い酸素含有量を有していることが好ましい。
【0013】
本発明に基づいて使用される酸化剤は、空気よりも少ない窒素割合を有しているので、分解炉を加熱するのに必要な燃料必要量も、生成される煙道ガスの量も、先行技術と比較して低下する。従って、煙道ガスの余熱を利用するため、排熱回収システムは、より小型の熱交換器、または例えば蒸気発生を省略できる場合には、より少ない熱交換器を用いてより低コストで実施することができる。高い窒素含有量により、空気による残留ガス燃焼にも使用されるような従来のバーナーを用いて、使用している酸化剤の酸素含有量に依存せずに残留ガスを燃焼させることが可能である。
【0014】
酸素源とは、例えば極低温空気分離器などであってよい。また、水を電気化学的に分解し、水素リッチな物質流ならびに酸素リッチな物質流を生成する電解槽を酸素源として使用することも考えられる。酸素リッチな物質流の少なくとも一部は、直接または酸化剤として空気を混合した後で残留ガスの燃焼時に使用し、一方、水素リッチな物質流は、分解炉の点火のための燃料として、および/またはアンモニア分解によって生成される水素の量を補充するために使用することができる。電解槽は、同じ圧力または異なる圧力で2つの物質流を生成することができる。好適には、酸素リッチな物質流も、水素リッチな物質流も、十分高い圧力で生成され、これにより、2つの物質流のそれぞれを、コンプレッサーを使用せずにさらなる用途に供給することができる。
【0015】
分解炉で得られる分解ガスからの水素の分離は分離装置内で行われ、この分離装置は、生成物として送り出し可能な水素画分と、窒素リッチな可燃性物質を含む残留ガスとを提供する。アンモニア分解によって生成された水素量を増加させるために、電解槽によって生成された水素リッチな物質流を、分離装置の下流で水素画分に直接加えるか、または水およびその他の不純物を除去した後に加えることができる。しかしまた、水素リッチな物質流を電解槽から分離装置に移し、分解ガスとともに処理して、生成物として送り出し可能な水素画分にすることも可能である。
【0016】
水素は、分解炉にまとめて供給される燃料の発熱量を増加させ、それにより煙道ガスの発生量を減少させるので、微量の水素は電解槽の酸素リッチな物質流の中にそのまま残しておいてよい。
【0017】
本発明に基づく方法の有利な形態は、生産された酸素の量が常に分解炉の現在の酸素必要量と同量になるように電解槽を稼動するようになっている。電解槽の酸素出力を分解炉の酸素必要量に素早く十分に適合させることができない場合、過剰に生産された酸素は中間貯蔵室に移しておき、一方で、不足している時に中間貯蔵室から酸素を取り出して、および/または周囲空気を供給することによって補う。
【0018】
本発明に基づき使用される電解槽は、500℃~950℃の高い作動温度で水蒸気を分解する固体酸化物電解セルを含んでいてよい。電解セルでは、酸素イオンに伝導性のある材料からなる電解質が、カソード区画をアノード区画から分離する。カソード区画に運び込まれた水蒸気は、電解質との界面で、カソード側に残っている水素と、アノード側へ移動する酸素イオンとに分解され、酸素イオンはそこで酸化して酸素分子になる。酸素分圧を低く維持し、使用されている材料を酸化から保護するため、アノード区画は空気でフラッシングされる。従って、固体酸化物電解セルは、酸素富化空気である高温の酸素含有物質流を供給する。好ましくは、酸素含有物質流は、さらなる処理なしに、特に冷却なしに、本発明に基づく酸化剤形成のために使用される。
【0019】
その他の本発明に基づく使用可能な、比較的高温で稼動する電解セルでは、電解質がセラミック製のプロトン伝導膜からなり、この膜ではアノード側で蒸気の形で供給された水が分解される。このとき発生する水素イオンはカソード側に拡散し、水素分子の形成後に乾燥流の中で抜き取られ、アノードでは水を含む酸素リッチな物質流が生成される。
【0020】
低温で稼動可能なさらなる電解セルは、当業者にはプロトン交換セル、陰イオン交換セル、またはアルカリ電解セルとして知られており、同様に本発明に基づく使用に適している。
【0021】
アンモニア分解において、使用されたアンモニアの一部は常に変換されずに分解ガス中に達するので、そこから水素製品を得るためにそのアンモニアを分離する必要がある。変換されなかったアンモニアの量は、反応温度の低下および反応圧力の上昇に伴って増加する。分解ガスのアンモニア含有量が低い場合、アンモニアは、好ましくは圧力スイング吸着のみによって分離され、残留ガスとともに熱として利用される。しかし、アンモニア含有量が高い場合は、圧力スイング吸着の上流で分解ガスからアンモニアを追加的に除去し、材料として利用することが経済的な場合がある。
【0022】
本発明に基づく方法の発展形態では、分解ガスを水の露点以下まで冷却させることにより、水を凝縮し、この凝縮した水によってアンモニアを分解ガスから洗い落とすことが提案される。
【0023】
分解ガスが30℃~70℃の温度に冷却される場合、温度調整剤としてアンモニアと一緒に分解管に導入される水の量は、分解ガス中に残っているアンモニアの一部を、経済的に不利になることなく、アンモニア含有量を圧力スイング吸着によって分離できる程度にまで低下させるのに十分である。少なくとも通常稼動では、別に洗浄水を供給する必要はない。
【0024】
好ましくは、水スクラビングで得られたアンモニア/水の混合物は、再び分解炉で使用される。このとき、大部分の混合物は水素製造のために分解管に送られ、残りの部分は、分解管に運び込まれる水の量を調整するために制御された形で排出され、例えば分解炉の点火に使用される。
【0025】
この手順では、凝縮水によるスクラビングによって分解ガス中のアンモニア含有量を十分に低下させるために、始動運転中に十分な水が分解炉に戻されない可能性がある。この場合、本発明によれば、外部から追加的に水が水スクラビングに供給されるようになっている。
【0026】
終了運転中の分解炉の過熱を回避するため、分解炉は蒸気または窒素で冷却される。
【0027】
本方法で使用されるエネルギーをより効果的に利用できるようにするため、本発明に基づく方法の1つの形態では、分解炉で得られた高温の分解ガスが、分解反応器を加熱するために利用され、この分解反応器内では、アンモニアを水素と窒素に分解することで、さらなる分解ガスが形成される。分解反応器において一部またはすべてのアンモニアを含む投入原料から形成された分解ガスは、分解炉の分解管でさらに処理されるか、または分解炉の加熱時に冷却された分解ガスと一緒にされる。
【0028】
さらに、本発明は、アンモニアから水素製品を生成するための装置にも関し、この装置は、アンモニア含有の投入原料を、水素と窒素を含む分解ガスに触媒的に変換するための少なくとも1つのバーナーと、分解ガスから水素を分離して窒素リッチな可燃性物質を含む残留ガスを得ることができる分離装置と、少なくとも残留ガスの一部を戻して、少なくとも1つのバーナーによって分解炉に点火するために燃焼させることができる戻し装置とを備えている。
【0029】
本発明によれば、設定された課題は、装置側において、この装置が少なくとも1つのバーナーに接続された酸素源を備え、そこから酸素リッチな物質流を取り出し、それを直接または酸化剤として空気を混合した後で残留ガスの燃焼時に使用できることによって解決される。
【0030】
好ましくは、酸素源は、水を電気化学的に分解し、水素リッチな物質流ならびに酸素リッチな物質流を生成することができる電解槽である。電解槽は、500℃~850℃の作動温度で水蒸気を分解し、高温の酸素リッチな物質流を生成することができる固体酸化物電解セルを備えることができる。
【0031】
分離装置は、好ましくは圧力スイング吸着器を備え、この圧力スイング吸着器は、分解ガスから水素画分を分離し、その純度と圧力により生成物として送り出され、製品ガスラインを介して購買者に供給することができる。分解ガス中に存在する窒素とアンモニアは、残留ガスとして圧力スイング吸着器から除去することができる。
【0032】
好適には、酸素源として用いられる電解槽は、分解炉の少なくとも1つのバーナーに接続されているだけでなく、分離装置にも接続されているため、電解槽によって生成可能な水素リッチな物質流を、アンモニア分解によって生成された、製品として割当可能な水素画分の量を補うために使用することができる。水素リッチな物質流の組成が水素生成物に設定された要件を満たさない場合は、電解槽と分離装置の間に不純物を分離するための精製装置を配置することができる。代替的に、電解槽を圧力スイング吸着器の上流で分離装置に接続し、水素リッチな物質流に含まれる不純物を圧力スイング吸着器で除去することもできる。
【0033】
アンモニア含有量が限界値を超えない限り、分解ガスからの窒素とアンモニアの分離は圧力スイング吸着器によって経済的に実施することができる。有利には、液体が圧力スイング吸着器の中に入るのを防ぐため、圧力スイング吸着器の上流の分解ガスは露点まで冷却されない。このために、本発明に基づく装置は、分解ガスの冷却を制御するために例えば調整可能なエアクーラーが装備されていてよい。
【0034】
分解ガスのアンモニア含有量が限界値を超えている場合、圧力スイング吸着器の上流に水スクラビングを配置することが提案され、この水スクラビングは、有利には、アンモニアを洗い落として、アンモニア/水混合物を形成しながら、分解ガスのアンモニア含有量を限界値以下に低下させることができる。さらに、この水スクラビングを分解炉に接続することが提案され、これにより、アンモニア/水混合物の少なくとも一部を分解管に戻すことができる。
【0035】
好ましくは、水スクラビングが冷却装置を装備しており、この冷却装置により、分解ガスは水の露点以下まで冷却可能であり、これにより、水を凝縮し、アンモニアを凝縮水によって分解ガスから洗い落とすことができる。特に好ましくは、水スクラビングが追加の洗浄水の供給装置なしに、30℃~70℃の温度まで分解ガスを冷却できる冷却装置付きで実施されている。
【0036】
本発明に基づく装置は、アンモニアを分解するために、分解炉に接続されている分解反応器を備えることができ、この分解反応器は、分解炉内で得られる高温の分解ガスによって加熱可能である。
【図面の簡単な説明】
【0037】
以下では、図1に概略的に示されている実施例に基づいて本発明を更に詳しく説明する。
【0038】
図1図1は、本発明の好ましい実施形態による、アンモニアからの水素の生成を示しており、ここでは、固体酸化物電解セルを備えた電解槽が酸素源として用いられている。
【0039】
ライン1を介して、分解炉Sには、大部分がアンモニアからなる、水を含む投入原料が供給され、バーナーBによって発生する熱2で加熱される分解管Rの中に送り込まれる。触媒によって、供給されたアンモニアの大部分は500~1000℃の温度で分解され、これにより、大部分が窒素と水素からなる、水と変換されていないアンモニアとを含む高温の分解ガス3が分解管Rから取り出され、これを分離装置Tに移送することができる。分離装置Tに属する水スクラビングWでは、分解ガス3が30℃~70℃の温度まで冷却され、このとき水が凝縮し、アンモニアの大部分を洗い落とす。ここで形成されるアンモニア/水混合物4は、本方法の水素収率を高めるために分解管Rに戻され、一方、水とアンモニアをほとんど含まない分解ガス5は、圧力スイング吸着器Dに送られ、そこでこの分解ガス5は、製品純度を有する水素画分6と残留ガス7に分離される。しかし、大部分が窒素からなる残留ガス7は、その他にアンモニアおよび水素などの可燃性成分も含んでおり、燃料としてバーナーBに供給され、酸化剤8と一緒に燃焼される。分解管Rに対して、冷却されたバーナーBの煙道ガス15の残留熱は、排熱回収システム(図示されていない)において、例えば投入原料1の気化および余熱に利用される。
【0040】
空気よりも高い酸素含有量を有する酸化剤8は、酸素源として機能する電解槽Eから取り出される。固体酸化物電解セルを備えた電解槽Eは、500℃~950℃の作動温度で水蒸気を分解する。電解セルでは、酸素イオンに伝導性のある材料からなる電解質が、カソード区画Kをアノード区画Aから分離する。カソード区画Kに運び込まれた水蒸気9は、電解質Mとの界面で、カソード側に残っている水素と、アノード側へ移動する酸素イオンとに分解され、酸素イオンはそこで酸化して酸素分子になる。アノード区画Aは空気10でフラッシングされ、このとき発生する高温の酸化剤8は、冷却されずにバーナーBに供給される。水素リッチな物質流11は、カソード区画Kから抜き取られ、製品純度を有する水素画分6と混合されて水素製品12にされる。選択的にバーナーBには、さらなる酸化剤として空気13が供給され、および/または補助燃料としてアンモニア14が供給される。
図1
【国際調査報告】