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特表2024-524083アンモニアから水素を生成するための方法および装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-05
(54)【発明の名称】アンモニアから水素を生成するための方法および装置
(51)【国際特許分類】
   C01B 3/04 20060101AFI20240628BHJP
   C01B 3/56 20060101ALI20240628BHJP
   B01D 53/047 20060101ALI20240628BHJP
【FI】
C01B3/04 B
C01B3/56 Z
B01D53/047
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023577331
(86)(22)【出願日】2022-06-01
(85)【翻訳文提出日】2023-12-14
(86)【国際出願番号】 EP2022025256
(87)【国際公開番号】W WO2023274573
(87)【国際公開日】2023-01-05
(31)【優先権主張番号】21020334.5
(32)【優先日】2021-06-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519288685
【氏名又は名称】リンデ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Linde GmbH
【住所又は居所原語表記】Dr.-Carl-von-Linde-Str. 6-14, 82049 Pullach i. Isartal, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】シュヴァルツフーバー、ヨゼフ
(72)【発明者】
【氏名】ハインツェル、アルブレヒト
(72)【発明者】
【氏名】ラインケ、ミヒャエル
(72)【発明者】
【氏名】ぺシェル、アンドレアス
【テーマコード(参考)】
4D012
4G140
【Fターム(参考)】
4D012CA20
4D012CB11
4D012CD07
4G140FA02
4G140FB06
4G140FC03
4G140FE01
(57)【要約】
本発明は、水素を生成するための方法ならびに装置に関し、第1のアンモニア含有投入原料(3、3’)が、エネルギー担体(13)を取り入れることによって加熱された第1の分解反応器(R1)に供給され、それにより、触媒によってアンモニアを水素と窒素に分解し、水素と窒素を含む高温の第1の分解ガス(6、6’)を得る。ここでは、第2のアンモニア含有投入原料(4、2)が第2の分解反応器(R2)において水素と窒素を含む第2の分解ガス(7、3’)に変換され、高温の第1の分解ガス(6、6’)は第2の分解反応器(R2)を加熱するために使用され、このとき冷却されることを特徴とする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素を生成するための方法であって、第1のアンモニア含有投入原料(3、3’)が、エネルギー担体(13)を取り入れることによって加熱された第1の分解反応器(R1)に供給され、それにより、触媒によってアンモニアを水素と窒素に分解し、水素と窒素を含む高温の第1の分解ガス(6、6’)を得る方法において、第2のアンモニア含有投入原料(4、2)が第2の分解反応器(R2)において水素と窒素を含む第2の分解ガス(7、3’)に変換され、前記高温の第1の分解ガス(6、6’)は前記第2の分解反応器(R2)を加熱するために使用され、このとき冷却されることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記第2のアンモニア含有投入原料(4、2)を変換するために、前記第2の分解反応器(R2)において触媒が使用されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1のアンモニア含有投入原料(3)および前記第2のアンモニア含有投入原料(4)は、共通のアンモニア源から取り出されることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記第2の分解反応器(R2)で得られた前記第2の分解ガス(3’)は、前記第1のアンモニア含有投入材料の形成に使用されることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項5】
少なくとも前記冷却された第1の分解ガス(8、8’)は、分離工程に送られる、前記分離工程において、水素リッチな生成ガス(11)と、可燃性物質を含む窒素リッチな残留ガス(12)とが生成されることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記第1の分解反応器(R1)の稼動に用いる熱(5)を提供するために、前記残留ガス(12)を燃焼させることを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記残留ガス(12)から製品純度を有する窒素画分が分離されることを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
酸素源から酸素リッチな物質流を供給し、それを直接または酸化剤(14)として空気を混合した後で前記残留ガスの燃焼時に使用することを特徴とする、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
アンモニアから水素を生成するための装置であって、取り込まれたエネルギー担体(13)を介して加熱可能な第1の分解反応器(R1)を備え、前記第1の分解反応器(R1)に第1のアンモニア含有投入原料(4、3’)を供給できることにより、触媒によってアンモニアを分解し、水素と窒素を含む高温の第1の分解ガス(6、6’)を得る装置において、前記第1の分解反応器(R1)に接続された第2の分解反応器(R2)を備え、前記第2の分解反応器(R2)に第2のアンモニア含有投入原料(4、2)を供給できることにより、アンモニアを分解して水素と窒素を含む第2の分解ガス(7、3’)を得て、前記高温の第1の分解ガス(6、6’)を使って、冷却された第1の分解ガス(8、8’)を形成しながら、前記第2の分解反応器を加熱できることを特徴とする装置。
【請求項10】
前記第2の分解反応器(R2)は、アンモニア分解を支援する触媒を備えていることを特徴とする、請求項9に記載の装置。
【請求項11】
前記装置は、前記第1の分解反応器(R1)と、前記第2の分解反応器(R2)と、アンモニア源とに接続されている分流器(S)を、前記第1のアンモニア含有投入原料(3)および前記第2のアンモニア含有投入原料(4)を形成するために備えていることを特徴とする、請求項9または10に記載の方法。
【請求項12】
前記第1の分解反応器(R1)が前記第2の分解反応器(R2)に接続されており、これによって、前記第2の分解反応器(R2)で得られる前記第2の分解ガス(3’)を、前記第1のアンモニア含有投入材料の形成に使用できることを特徴とする、請求項9または11に記載の装置。
【請求項13】
前記装置は分離装置(T)を備え、前記分離装置(T)において少なくとも前記冷却された第1の分離ガス(8、8’)から、水素リッチな生成ガス(11)と、可燃性物質を含む窒素リッチな残留ガス(12)とが生成可能であることを特徴とする、請求項9から12のいずれか一項に記載の装置。
【請求項14】
前記装置は、前記分離装置(T)および前記第1の分解反応器(R1)に接続されている燃焼装置(B)を備え、これにより、前記第1の分解反応器(R1)の稼動に用いる熱(5)を提供するために、前記残留ガス(12)が燃焼可能であることを特徴とする、請求項13に記載の装置。
【請求項15】
前記装置は、前記燃焼装置(B)に接続されている酸素源を備え、前記酸素源から酸素を取り出し、それを直接または酸化剤(14)として空気を混合した後で前記残留ガスの燃焼時に使用できることを特徴とする、請求項14に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水素を生成するための方法に関し、第1のアンモニア含有投入原料が、エネルギー担体を取り入れることによって加熱された第1の分解反応器に供給され、それにより、触媒によってアンモニアを水素と窒素に分解し、水素と窒素を含む高温の第1の分解ガスを得る。
【0002】
さらに、本発明は、本発明に基づく方法を実施するための装置にも関する。
【0003】
アンモニアの触媒的分解による水素の生成は公知であり、長年にわたって従来技術となっている。このとき生じる反応
2NH⇔N+3H
は、吸熱性である(ΔH=46.2kJ/mol)。平衡の位置と反応速度は、圧力および温度、ならびに使用する触媒の種類に強く依存する。
【0004】
特に、例えば金属の熱処理を行う場合のように、水素必要量が1000mn/h未満と比較的少ない工業的用途では、分解反応器の中でアンモニア分解が実施され、分解反応器を加熱するために、別の場所で発電した電力が取り入れられる。ここでは、原理的に、二酸化炭素を遊離させることなく水素を得ることができる。
【0005】
より高い割合でアンモニアから水素を製造するには、今日、炭化水素の水蒸気改質による大規模合成ガス製造に使用されているものと同じような設備を使用することができる。このような設備は、触媒材料を充填した分解管が配置されている燃焼室を持つ、水蒸気改質器とも呼ばれる分解反応器と、廃熱回収システムを備えている。この燃焼室は、取り入れられた燃料によって稼動する1つまたは複数のバーナーによって加熱され、分解管を通して送られるアンモニアの吸熱分解のためにエネルギーを供給する。
【0006】
生成された水素を、圧縮作業なしに、または僅かな圧縮作業だけで生成物として送り出すことができるようにするため、好適にはアンモニア分解が20~30barの圧力で実施される。このことは、分解用に特定されているアンモニアが、通常は液体の状態で使用可能であることからより簡単に可能であり、従って、僅かなエネルギーだけで圧力を上げることができる。このような条件の下で、使用されるアンモニアの変換度を十分に高く、経済的に意味のあるものにするためには、約500~1000℃の高温で分解を進める必要がある。
【0007】
分解ガスは、大部分が水素と窒素からなるが、その他に変換されていないアンモニアや、水を含む場合もある。水は、アンモニア含有投入原料の中にすでに存在するか、または温度調整剤として分解反応器に追加的に導入されるが、分解反応には関与しない。
【0008】
水素を取得するために分解ガスが分離装置に供給され、その中で分解ガスは、変換されていないアンモニアの大部分を取り除いて、好ましくは圧力スイング吸着により処理される。このとき、窒素をほとんど含まない水素画分、ならびに大部分が窒素からなり、かつアンモニアを含む残留ガスが生成される。水素画分は製品として送り出すことができるが、残留ガスは、例えば分解反応器に点火するために、燃焼させることができる。
【0009】
分解反応器のバーナーから発生する煙道ガスが、その熱をある程度しか分解反応に利用できないのと同様に、分解ガスは、高温のまま余熱容量の高い状態で分解反応器から出る。アンモニア分解に使用されるエネルギーを可能な限り完全に利用し、水素生成を効率的に実施できるようにするために、プロセス内のガスの余熱をアンモニアやバーナー空気などの投入原料の予熱または蒸気の生成に使用することが試みられている。アンモニア分解の際、プロセス蒸気は必要ないか、または非常に僅かしか必要ではないため、余熱によって生成された蒸気は搬出されるか、例えば「有機ランキンサイクル」によって発電に使用される。
【0010】
しかし、発電は、極めて大きな技術的労力が必要であり、経済的な蒸気搬出が可能な購買者が常にいるわけではない。
【0011】
従って、本発明の課題は、アンモニアからの水素生成の際に、従来技術に従って可能であったよりも少ない水蒸気を副産物として生成することを可能にする特定の種類の方法および装置を提供することである。
【0012】
この課題は、本方法において、発明に基づき、第2のアンモニア含有投入原料が第2の分解反応器において水素と窒素を含む第2の分解ガスに変換され、高温の第1の分解ガスは第2の分解反応器を加熱するために使用され、このとき冷却されることによって解決される。
【0013】
本発明に基づく方法により、アンモニアを分解するための第1の分解反応器の加熱のために取り入れられる熱エネルギーのより大きな部分が利用されることにより、先行技術と比較して水素収率がより高くなり、および/または比エネルギー消費量はより低くなる。さらに、余熱利用時に発生する蒸気量も低下する。
【0014】
アンモニア分解を支援するため、第1の分解反応器には触媒材料が含まれ、第1のアンモニア含有供給ガスはこの触媒材料を通過する。好ましくは、第2の分解反応器におけるアンモニア分解も同様に触媒によって支援され、そのために第2の分解反応器は、第1の分解反応器と同じ触媒材料を用いて実施されていてよい。しかしまた、第2の分解反応器には、例えば低温において第1の分解反応器で使用される触媒材料と同等の活性を有するその他の触媒材料も使用することが可能である。
【0015】
本発明に基づく方法の好ましい変形形態では、第1のアンモニアを含む投入原料も、第2のアンモニアを含む投入原料も、例えばアンモニア貯蔵庫などの外部アンモニア源から取り出されるようになっており、両方のアンモニア源は異なるものでも、または同一のものでもよい。この場合、好適には、水素と窒素を含む第1の分離ガスが第2の分離反応器の上流または下流で、水素と窒素を含む第2の分離ガスとともに分離ガス流にまとめられ、この分離ガス流は、その後、例えば水素製品を得るために再処理される。しかし、第1の分離ガスと第2の分離ガスを別々に継続し、処理することが除外されるべきではない。
【0016】
本発明に基づく方法の別の好ましい変形形態では、第2のアンモニアを含む投入原料が外部アンモニア源から取り入れられ、第2の分離反応器内で得られた第2の分離ガスを使用して、第1のアンモニアを含む投入原料が形成されるようになっている。好適には、第2の分解ガスの総量は、第1のアンモニア含有投入原料を形成するために使用され、変更されないまま、または例えば外部アンモニア源から取り出したアンモニアを含むさらなる物質流を混合した後に、第1のアンモニア含有投入原料として、第1の分解ガスに変換するために第1の分解反応器に供給される。
【0017】
本発明に基づく方法の発展形態では、第2の分解反応器の加熱時に冷却された分解ガスが、必要に応じて第2の分解ガスを混合した後に分離工程に送られることが提案され、この分離工程においては、水素リッチな生成ガスと、可燃性物質を含む窒素リッチな残留ガスとが生成される。これに加え、さらなる冷却後、分解ガスは、好ましくは圧力スイング吸着器によって処理され、ほとんど窒素を含まない水素画分と、大部分が窒素からなる可燃性物質とを含む残留ガスが生成される。さらなる冷却では例えば調整可能なエアクーラーが使用されるが、好適には露点の上部の直前までしか行われないため、水以外に、変換されていないアンモニアを含む凝縮水は発生しない。さらなる冷却中に凝縮水の発生が回避できない場合、全部または一部の凝縮水を戻し、両方の分解反応器のいずれか1つに供給することも可能である。水素画分は製品として送り出すことができるが、一方、残留ガスは、例えば第1の分解反応器を加熱するために燃焼させるか、またはさらなる分離工程に送られ、この分離工程において、追加の製品水素、および/または製品純度を有する商業的に使用可能な窒素画分、ならびに投入原料として利用可能なアンモニア画分が生成される。
【0018】
その高い窒素割合により、残留ガスの発熱量は比較的少ない。第1の分解反応器を加熱する際に、該当する小型で安価な熱交換器を使用して煙道ガス余熱を利用できる十分に高温かつ大量の煙道ガスを生成することができるように、酸素源から酸素リッチな物質流を供給し、それを直接または酸化剤として空気を混合した後に残留ガスの燃焼時に使用することが提案される。
【0019】
酸素リッチとは、本発明において、25%よりも多くの酸素からなる酸素流に該当する。しかし、例えば99%よりも多くの、より高い酸素含有量を有していることが好ましい。
【0020】
酸素源とは、例えば極低温空気分離器などであってよい。また、水を電気化学的に分解し、水素リッチな物質流ならびに酸素リッチな物質流を生成する電解槽を酸素源として使用することも考えられる。酸素リッチな物質流の少なくとも一部は、直接または酸化剤として空気を混合した後で残留ガスの燃焼時に使用し、一方、水素リッチな物質流は、第1の分解反応器に点火するための燃料として、および/またはアンモニア分解によって生成される水素の量を補充するために使用することができる。電解槽は、同じ圧力または異なる圧力で2つの物質流を生成することができる。好適には、酸素リッチな物質流も、水素リッチな物質流も、十分高い圧力で生成され、これにより、2つの物質流のそれぞれを、コンプレッサーを使用せずにさらなる用途に供給することができる。
【0021】
過熱を回避するため、分解反応器は終了運転中に蒸気および/または窒素および/またはアンモニアで冷却されるようになっている。
【0022】
さらに、本発明は、アンモニアから水素を生成するための装置にも関し、この装置は、取り込まれたエネルギー担体を介して加熱可能な第1の分解反応器を備え、この第1の分解反応器に第1のアンモニア含有投入原料を供給できることにより、触媒によってアンモニアを分解し、水素と窒素を含む高温の第1の分解ガスを得る。
【0023】
設定された課題は、装置側において、この装置が、第1の分解反応器に接続された第2の分解反応器を備え、この分解反応器に第2のアンモニア含有投入原料を供給できることにより、アンモニアを分解して水素と窒素を含む第2の分解ガスを得て、高温の第1の分解ガスを使って、冷却された第1の分解ガスを形成しながら、第2の分解反応器を加熱できることによって解決される。
【0024】
第1の分解反応器は、好適には、大規模合成ガス製造に使用される、電流および/またはバーナーによって加熱可能な水蒸気改質器または自己熱改質器と同様に構成されているが、本発明の好ましい変形形態では、第2の分解反応器が、合成ガス製造にも使用可能な、当業者にはガス加熱改質器またはGHRという名称で知られている反応器と同様に実施されている。GHRは、高温の加熱ガスが流れる反応管を備えており、この反応管を介して、変換する投入原料が送られる。例えばバヨネット管として実施されている、第2の分解反応器の反応管には、好適にはアンモニア分解を支援する触媒材料が含まれている。
【0025】
本発明に基づく装置の発展形態では、第2の分解反応器を、第1の分解反応器と同じか、または別の触媒材料を用いて実施することが提案される。
【0026】
さらに、本発明の変形形態には、第1および第2の分解反応器、ならびに外部アンモニア源に接続された分配装置が設けられており、この分配装置を介して、アンモニアを含む物質流を外部アンモニア源から得て、第1および第2のアンモニア含有投入原料として2つの分解反応器に分配することができる。好ましくは、両方の分解反応器のいずれも、さらなる外部アンモニア源には接続されていない。
【0027】
本発明の別の変形形態では、第1の分解反応器が第2の分解反応器に接続されており、これによって、第2の分解反応器で得られる分解ガスを、第1のアンモニア含有投入材料の形成に使用できるようになっている。この変形形態では、好ましくは、第2の分解反応器だけが、供給ラインを介して、第2のアンモニア含有投入原料を供給する外部アンモニア源に接続されている。しかしながら、第1の分解反応器を同一の、または別の外部アンモニア源に接続することも排除すべきではなく、これにより、第1のアンモニア含有投入原料を形成するために、アンモニアを含む物質流を取り入れて、第2の分解反応器内で得られる第2の分解ガスと混合することができる。
【0028】
好適には、本発明に基づく装置には分離装置が含まれており、この分離装置によって、窒素リッチな可燃性物質を含む残留ガスを得ながら、分解ガスから水素を分離することができる。好ましくは、分離装置は圧力スイング吸着器を備え、この圧力スイング吸着器は、分解ガスから水素画分を分離し、その純度と圧力により生成物として送り出し、製品ガスラインを介して購買者に供給することができる。分解ガス中に存在する窒素とアンモニアは、残留ガスとして圧力スイング吸着器から除去することができる。
【0029】
この分離装置は第2の圧力スイング吸着器を備えることができ、この第2の圧力スイング吸着器は、水素画分の生成時に発生する残留ガスから製品純度を有する窒素画分を分離するために設置されている。代替として、この分離装置は燃焼装置に接続されていてもよく、残留ガスをこの燃焼装置に送り込んで燃焼させ、例えば第1の分解反応器を加熱するための熱を供給することが可能である。
【0030】
残留ガスを効果的に燃焼できるようにするため、本発明に基づく好ましい変形形態の装置は、燃焼装置に接続された酸素源を有しており、そこから酸素リッチな物質流を取り出し、それを直接または酸化剤として空気を混合した後で残留ガスの燃焼時に使用することができる。特に好ましくは、酸素源は、水を電気化学的に分解し、水素リッチな物質流ならびに酸素リッチな物質流を生成することができる電解槽である。電解槽は、例えば、500℃~850℃の作動温度で水蒸気を分解し、高温の酸素リッチな物質流を生成することができる固体酸化物電解セルを備えることができる。
【0031】
好適には、酸素源として用いられる電解槽は、燃焼装置に接続されているだけでなく、分離装置にも接続されているため、電解槽によって生成可能な水素リッチな物質流を、アンモニア分解によって生成された、製品として送り出すことのできる水素画分の量を補うために使用することができる。水素リッチな物質流の組成が水素生成物に設定された要件を満たさない場合は、電解槽と分離装置の間に不純物を分離するための精製装置を配置することができる。代替的に、電解槽を、水素画分を生成するために使用される圧力スイング吸着器の上流で分離装置に接続し、水素リッチな物質流に含まれる不純物をこの圧力スイング吸着器で除去することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
以下では、図1および図2に概略的に示されている2つの実施例に基づいて本発明をさらに詳しく説明する。
【0033】
図1図1は本発明の好ましい実施形態を示し、この場合、分解反応器に供給されるアンモニア含有投入原料は同じ成分を有している。
【0034】
図2図2は本発明の別の好ましい実施形態を示し、この場合、分解反応器に供給されるアンモニア含有投入原料は異なる成分を有している。
【0035】
両方の図において、同一のコンポーネントには同一の符号が付けられている。
【0036】
図1の実施例において、アンモニアを含む物質流は、ライン1を介して外部のアンモニア源(図示されていない)から取り出され、熱回収Dに供給され、加熱された状態でライン2を介して熱回収Dから出て、分流器Sにおいて第1のアンモニア含有投入原料3と第2のアンモニア含有投入原料4とに分割される。
【0037】
第1のアンモニア含有投入原料は、水蒸気改質器と同じ構造の第1の分解反応器R1に供給され、その分解管Rに送り込まれ、この分解管Rは燃焼装置Bで発生する熱5で加熱される。触媒によって、供給されたアンモニアの大部分は500~1000℃の温度および5~50barの圧力で分解され、これにより、大部分が窒素と水素からなる、水と変換されていないアンモニアとを含む高温の第1の分解ガス6を、第1の分解反応器R1から取り出すことができる。
【0038】
第1の投入原料3と同じ成分を有する第2のアンモニア含有投入原料4は、ガス加熱改質器と同じ構造の第2の分解反応器R2に供給され、その分解管Gに送り込まれ、この分解Gは高温の第1の分解ガス6によって加熱される。触媒によって、供給されたアンモニアの大部分は分解されるため、大部分が窒素とからなる、変換されていないアンモニアを含む分解ガス7と、冷却された第1の分解ガス8とを第2の分解反応器R2から取り出すことができる。続いて、両方の分解ガス7および8は分解ガス流9に統合され、この分解ガス流9は、ライン10を介して分離装置Tに達する前に、外部アンモニア源から供給されたアンモニアを含む物質流1に対して熱回収装置Dで冷却され、そこで、例えば圧力スイング吸着器によって処理され、これにより、製品純度を有する水素画分11と残留ガス12を得る。残留ガス12は、大部分が窒素からなるが、その他に、アンモニアおよび水素のような可燃性成分も含んでおり、図示されていない外部供給源から取り入れられた燃料13と一緒に燃焼装置Bに供給され、そこで空気または酸素富化空気、あるいは技術的に純粋な酸素である酸化剤14とともに燃焼され、第1の分解反応器R1を加熱する。
【0039】
図1の実施例とは異なり、図2の実施例では、加熱されたアンモニアを含む物質流2は分割されず、全部が第2のアンモニア含有投入原料として第2の分解反応器R2に供給され、第2の分解ガスに変換される。ライン3’を介して、この第2の分解ガスは、第1のアンモニア含有投入原料として第1の分解反応器G1の分解管Rに送られ、そこから、大部分が窒素と水素からなる、変換されていないアンモニアを含む高温の第1の分解ガス6’が取り出され、第2の分解反応器R2を加熱するために転送される。加熱時に冷却された第1の分解ガス8’は、次に熱回収Dに供給され、図1の分解ガス流9に従ってさらに処理される。
図1
図2
【国際調査報告】