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特表2024-524085アンモニア分解プロセスからの再生可能な水素生成物の回収
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-05
(54)【発明の名称】アンモニア分解プロセスからの再生可能な水素生成物の回収
(51)【国際特許分類】
   C01B 3/04 20060101AFI20240628BHJP
   C01B 3/56 20060101ALI20240628BHJP
   B01D 53/047 20060101ALI20240628BHJP
   B01D 53/14 20060101ALI20240628BHJP
【FI】
C01B3/04 B
C01B3/56 Z
B01D53/047
B01D53/14 200
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023577354
(86)(22)【出願日】2021-06-18
(85)【翻訳文提出日】2023-12-14
(86)【国際出願番号】 US2021037995
(87)【国際公開番号】W WO2022265647
(87)【国際公開日】2022-12-22
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591035368
【氏名又は名称】エア プロダクツ アンド ケミカルズ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】AIR PRODUCTS AND CHEMICALS INCORPORATED
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100195213
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 健治
(74)【代理人】
【識別番号】100202441
【弁理士】
【氏名又は名称】岩田 純
(72)【発明者】
【氏名】ビンセント ホワイト
(72)【発明者】
【氏名】エドワード ランディス ウェイスト,ジュニア
(72)【発明者】
【氏名】アンドリュー ショウ
(72)【発明者】
【氏名】サイモン クレイグ サロウェイ
【テーマコード(参考)】
4D012
4D020
4G140
【Fターム(参考)】
4D012CA07
4D012CA20
4D012CB11
4D012CD07
4D012CD10
4D012CE03
4D012CF05
4D012CF10
4D012CH04
4D020AA10
4D020BA23
4D020BB03
4D020BC01
4D020CB25
4D020CD03
4D020DA03
4D020DB03
4D020DB20
4G140FA02
4G140FB06
4G140FC03
4G140FE01
(57)【要約】
分解されたガスが、第1のPSAデバイス内で精製され、第1のPSA排ガスの少なくとも一部分が、燃料として再循環されて、再生可能な水素生成物の炭素強度を低減する、アンモニア分解プロセスからの再生可能な水素生成物の回収。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
再生可能な水素の供給源から誘導されたアンモニアから再生可能な水素を回収するためのプロセスであって、
再生可能な水素の供給源から誘導された液体アンモニア供給物を提供することと、
前記液体アンモニア供給物を加圧することと、
1つ以上の高温流体との熱交換によって、前記液体アンモニア供給物を加熱して(及び任意選択的に、気化させて)、加熱されたアンモニアを生成することと、
炉内で一次燃料を燃焼させて、触媒を含む反応器管を加熱し、煙道ガスを形成することと、
前記加熱されたアンモニアを、前記触媒を含む反応器管に供給して、水素ガス、窒素ガス、及び残留アンモニアを含む分解されたガスへの前記アンモニアの分解を引き起こすことと、
前記分解されたガス、又はそれから誘導されたアンモニアが枯渇したガスを、第1のPSAデバイスにおいて精製して、第1のPSA排ガス、及び第1の水素ガスを含む再生可能な水素生成物ガスを生成することと、を含み、
前記1つ以上の高温流体が、前記煙道ガス及び/又は前記分解されたガスを含み、
前記一次燃料が、必要に応じて、前記第1のPSA排ガス及び/又はそれから誘導されたPSA排ガスの少なくとも一部分を含む二次燃料で補完され、
水素が、前記第1のPSA排ガスの任意の残りの部分から前記再生可能な水素生成物ガスに回収され、
前記プロセスの総炭素強度値が、前記再生可能な水素生成物ガスの全体的な炭素強度値が、所定の値を下回って留まるように、前記二次燃料対前記一次燃料の比を調整することによって変更される、プロセス。
【請求項2】
前記第1のPSA排ガスの前記残りの部分を圧縮して、圧縮されたPSA排ガスを生成することと、
前記圧縮されたPSA排ガスを、前記分解されたガス又は前記それから誘導されたアンモニア枯渇ガスで精製するために、前記第1のPSAデバイスに再循環させることと、を含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記第1のPSA排ガスの前記残りの部分を圧縮して、圧縮されたPSA排ガスを生成することと、
第2のPSAデバイス内の前記圧縮されたPSA排ガスを精製して、第2のPSA排ガス及び第2の水素ガスを生成することと、を含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項4】
前記二次燃料が、前記第2のPSA排ガスを含む、請求項3に記載のプロセス。
【請求項5】
前記再生可能な水素生成物ガスが、前記第1の水素ガス及び前記第2の水素ガスを含む、請求項3又は4に記載のプロセス。
【請求項6】
前記一次燃料が、0~100%超の前記第1のPSA排ガスによって補完される、請求項1~5のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項7】
前記一次燃料が、前記第1のPSA排ガスの0~100%で補完される、請求項3~5のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項8】
前記一次燃料が、アンモニア、水素、及びメタンのうちの1つ以上を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項9】
前記一次燃料が、天然ガス又はバイオガスである、請求項1~8のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項10】
再生可能な水素の供給源から誘導されるアンモニアから再生可能な水素を回収するための装置であって、
再生可能な水素の供給源から誘導された液体アンモニア供給物を加圧するためのポンプと、
1つ以上の高温流体との熱交換によって前記ポンプからの前記液体アンモニア供給物を加熱して(及び任意選択的に、気化して)、加熱されたアンモニアを生成するために、前記ポンプと流体連通している少なくとも1つの熱交換器と、
前記第1の熱交換器からの加熱されたアンモニアを分解して、水素ガス、窒素ガス、及び残留アンモニアを含む分解されたガスを生成するために、前記第1の熱交換器と流体連通している触媒を含む反応器管と、
一次燃料を燃焼させて、前記触媒を含む反応器管を加熱し、煙道ガスを生成するために、前記触媒を含む反応器管と熱連通する炉と、
前記炉に一次燃料を供給するための燃料導管であって、任意選択的に前記熱交換器を通る通路を含む、燃料導管と、
前記炉への前記一次燃料の流量を調整するための前記燃料導管内の燃料バルブと、
前記熱交換器に煙道ガスを供給するための煙道ガス導管と、
前記熱交換器を通過した後、前記分解されたガスを精製して、第1のPSA排ガス、及び第1の水素ガスを含む再生可能な水素生成物ガスを生成するために、前記触媒を含む反応器管と流体連通している第1のPSAデバイスと、
前記第1のPSAデバイスから前記第1の水素ガスを除去するための第1の水素ガス導管と、
任意選択的に前記熱交換器を通過した後、前記第1のPSAデバイスから前記炉へと第1のPSA排ガスの一部分を再循環させるための第1のPSA排ガス導管と、
前記炉への前記第1のPSA排ガスの流量を調整するための前記第1のPSA排ガス導管内のPSA排ガスバルブと、を備え、
前記装置が、前記炉内での燃焼のために前記二次燃料対前記一次燃料の比を調整するために、前記燃料バルブを単独で、前記PSA排ガスバルブを単独で、又は前記燃料バルブと前記PSA排ガスバルブとを並行して動作させるための制御システムを備える、装置。
【請求項11】
前記制御システムが、前記二次燃料対前記一次燃料の比を自動的に調整する、請求項10に記載の装置。
【請求項12】
前記第1のPSA排ガスを圧縮して、圧縮されたPSA排ガスを生成するための前記第1のPSAデバイスと流体連通している圧縮機と、
前記圧縮されたPSA排ガスを前記第1のPSAデバイスに再循環するための再循環導管と、を備える、請求項10又は11に記載の装置。
【請求項13】
前記第1のPSA排ガスを圧縮して、圧縮されたPSA排ガスを生成するための前記第1のPSAデバイスと流体連通している圧縮機と、
前記圧縮されたPSA排ガスを精製して、第2のPSA排ガス及び第2の水素ガスを生成するために前記圧縮機と流体連通している第2のPSAデバイスと、
前記第2のPSAデバイスから前記第2の水素ガスを除去するための第2の水素ガス導管と、
前記第2のPSAデバイスから前記第2のPSA排ガスを除去するための第2のPSA排ガス導管と、を備える、請求項10又は11に記載の装置。
【請求項14】
前記第1及び第2の水素ガス導管が、組み合わせて、再生可能な水素生成物ガス導管を形成する、請求項13に記載の装置。
【請求項15】
前記第2のPSA排ガス導管が、任意選択的に前記熱交換器を通過した後に、前記第2のPSAデバイスから前記炉に前記第2のPSA排ガスを再循環させる、請求項13又は14に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
再生可能エネルギーへの世界的な関心、及びこの再生可能エネルギーを使用してグリーン水素を発生させることは、アンモニアが数百又は数千マイルの距離を移送することにおいてより簡単であるため、グリーン水素をグリーンアンモニアに変換することへの関心を高めている。特に、液体水素の輸送は、現在商業的には可能ではないが、液体状態にあるアンモニアの輸送は、現在実践されている。
【0002】
市販の燃料電池における使用の場合、アンモニアは、反応により水素に変換されなければならない。
【数1】
これは吸熱プロセス、すなわち、熱を必要とするプロセスであり、触媒を介して実施される。このプロセスは、分解として既知である。生成されるガス(又は「分解されたガス」)は、水素(H2)と窒素(N2)の組み合わせである。分解反応は、平衡反応であるため、残留アンモニアもまた存在する。現行の分解装置のほとんどの用途において、水素+窒素の混合物は、そのまま利用される。しかしながら、アンモニアは、燃料電池にとって害になるものであり得るため、この流れは、水で洗浄することによってなど、アンモニアを好適に除去することで、燃料電池において直接使用することができる。しかしながら、水素が車両の燃料供給において使用される場合、存在する窒素は、プロセスにペナルティを提供する。車両の燃料供給システムへの燃料は、最大900barという著しい圧力に圧縮される。これは、プロセスにおいて単なる希釈剤である窒素も圧縮され、電力を要し、貯蔵量を要し、アノードガスパージ要件を増加させ、効率を低下させることを意味する。したがって、水素が車両の燃料供給において使用される場合、水素+窒素が精製されることが有益である。
【0003】
小規模分解反応器、又は「分解装置」は、典型的には、圧力スイング吸着(「PSA」)デバイスを使用して、分解されたガスを分離し、水素を回収し、PSA排ガス(又はオフガス)を生成する。しかしながら、これらの分解装置は、概して、電気的に加熱され、PSA排ガスは、典型的には、大気中に排気される。
【0004】
蒸気メタン改質(SMR)反応器からの水素生成において一般的であるように、PSAは、窒素+水素を精製するために使用することができる。分解反応は、炉によって外部的に加熱される触媒が充填された管内で実施される(GB1142941を参照)。
【0005】
GB1142941は、アンモニアから都市ガスを作製するためのプロセスを開示する。アンモニアを、分解し、分解されたガスを、水で洗浄して、残留アンモニアを除去する。次いで、精製された水素/窒素混合物をプロパン及び/又はブタン蒸気で濃縮して、分配用の都市ガスを生成する。
【0006】
US6835360Aは、炭化水素原料及びメタノールを、水素及び一酸化炭素などの有用なガスに変換するための吸熱触媒反応装置を開示する。装置は、放射性燃焼室と組み合わせて、管状の吸熱触媒反応器を備える。結果として得られた分解されたガスは、ガス調節システムを通過した後、燃料電池内で直接使用される。
【0007】
GB977830Aは、アンモニアを分解して、水素を生成するためのプロセスを開示する。このプロセスでは、分解されたガスを、窒素を吸着する分子ふるいの床に通すことによって、水素が窒素から分離される。次いで、窒素は、床から駆動され、ホルダ内に貯蔵され得る。
【0008】
JP5330802Aは、アンモニアが10kg/cm2(又は約9.8bar)の圧力及び300~700℃の温度でアンモニア分解触媒と接触するアンモニア分解プロセスを開示する。水素は、PSAデバイスを使用して分解されたガスから回収される。参考文献は、脱着された窒素が上流プロセスを後押しするために使用され得ることに言及しているが、詳細は提供されていない。
【0009】
US2007/178034Aは、アンモニア及び炭化水素原料の混合物が、600℃及び3.2MPa(又は約32bar)の燃焼蒸気改質器を通過し、約70体積%の水素を含む合成ガスに変換されるプロセスを開示する。合成ガスは、シフト反応で水素が濃縮され、冷却され、縮合物が除去される。結果として得られたガスは、PSAシステムに供給されて、99体積%以上の水素を有する精製水素生成物を生成する。PSAシステムからのオフガスは、燃料として燃焼蒸気改質器に供給される。
【0010】
CN111957270Aは、アンモニアが炉内の管状反応器内で分解されるプロセスを開示する。分解されたガスは、吸着によって分離されて、水素ガス及び窒素リッチオフガスを生成する。分解されたガス、水素生成物ガス、及び/又はオフガスの組み合わせを使用して、炉の燃料需要が満たされるように見える。
【0011】
概して、アンモニアからの水素の生成のための改善されたプロセス、具体的には、エネルギー消費の観点からより効率的であるプロセス、及び/又はより高いレベルの水素回収を有するプロセス、及び/又は化石燃料を燃焼させる必要性を低減若しくは排除するプロセスのための改善されたプロセスが、必要である。
【0012】
以下の本発明の実施形態の考察では、特に明記されない限り、与えられた圧力は絶対圧力である。
【発明の概要】
【0013】
本発明の第1の態様によれば、再生可能な水素源から誘導されるアンモニアから再生可能な水素を回収するためのプロセスが提供され、
再生可能な水素源から誘導される液体アンモニア供給物を提供することと、
液体アンモニア供給物を加圧することと、
1つ以上の高温流体との熱交換によって、液体アンモニア供給物を加熱して(及び任意選択的に、気化させて)、加熱されたアンモニアを生成することと、
炉内で一次燃料を燃焼させて、触媒を含む反応器管を加熱し、煙道ガスを形成することと、
加熱されたアンモニアを、触媒を含む反応器管に供給して、水素ガス、窒素ガス、及び残留アンモニアを含む分解されたガスにアンモニアの分解を引き起こすことと、
分解されたガス、又はそれから誘導されたアンモニア枯渇ガスを、第1のPSAデバイスにおいて精製して、第1のPSA排ガス及び第1の水素ガスを含む再生可能な水素生成物ガスを生成することと、を含み、
1つ以上の高温流体が、煙道ガス及び/又は分解されたガスを含み、
一次燃料が、必要に応じて、第1のPSA排ガス及び/又はそれから誘導されたPSA排ガスの少なくとも一部分を含む二次燃料で補完され、
水素は、第1のPSA排ガスの任意の残りの部分から再生可能な水素生成物ガスに回収され、
プロセスの総炭素強度値は、再生可能な水素生成物ガスの総炭素強度値が、所定の値を下回って留まるように、二次燃料対一次燃料の比を調整することによって変更される。
【0014】
炭素強度(CI)は、生成された再生可能な水素内に含まれるエネルギーの単位当たりに排出される重量による二酸化炭素の量として定義することができる。具体的には、水素(gCO2/MJH2)のメガジュール(MJ)当たりの二酸化炭素のグラム(g)として、再生可能な水素生成物のより低い加熱値に基づいて、報告される。炭素強度は、燃料がどの程度「グリーン」であるかの尺度として使用することができる。水素燃料の総炭素強度は、いくつかの部分で構成されている。これらには、輸送のための再生可能な水素のアンモニアへの変換と関連付けられた炭素強度、再生可能な水素の供給源から、分解によって再生可能な水素がアンモニアキャリアから解放される点までのアンモニア供給物の出荷及び輸送と関連付けられた二酸化炭素の量、アンモニアを分解するために必要な燃料、プラントを動作させるために使用される電力と関連付けられた二酸化炭素の量、並びに生成物の水素の分配と関連付けられた二酸化炭素の量が挙げられる。
【0015】
電力生産の炭素強度が、より多くの再生可能電力が送電網に追加されるにつれて低下し、船舶、トラック、及び他の輸送が炭素強度を低減させるにつれて(例えば、再生可能アンモニアを燃料として、又は水素燃料電池、又は再生可能電気で充電された電池を使用することによって)、アンモニア分解によって生成される水素燃料の炭素強度もまた低下する。鎖全体の炭素強度が低減するにつれて、再生可能な水素の回収を増加させることができ、それによって、水素のコストを低減させながら、再生可能な水素生成物の炭素強度値を制御することが可能である。
【0016】
「本プロセスの総炭素強度値」という表現は、プロセスの本質的な特徴によって定義されるアンモニアから再生可能な水素を回収するためのプロセスの炭素強度を指し、任意選択的に、本明細書において説明されたプロセスの任意選択的な特徴のいずれか又は全てを含む。
【0017】
「再生可能な水素生成物ガスの全体的な炭素強度値」という表現は、本プロセス及び本プロセス自体の上流及び下流のサプライチェーン全体を含む、水素生成物ガスの炭素強度である。
【0018】
本発明者らは、二次燃料対一次燃料の比を調整することによって、再生可能な水素生成物ガスの全体的な炭素強度値が所定の値を下回って留まるように、分解プロセスの炭素強度値を制御することが可能であることを認識している。所定の値は、国の規制によって規定されている通りであり得る。例えば、European Red II Directiveは、「再生可能水素」とラベル付けされた水素は、炭素強度は28.2gのCO2/MJ H2以下でなければならず、UKは、32.9gのCO2/MJ H2の制限を有する。
【0019】
再生可能な水素のアンモニアへの変換、及びアンモニアの再生可能な水素に戻す回収部位への分配と関連付けられた炭素強度値は、10~20gのCO2/MJH2を消費し得、規制上の限界を超える前に、回収プロセスの炭素強度に対して相対的に小さい許容量のみ残す。
【0020】
プロセスの総炭素強度値はまた、アンモニアスリップを増加させ、アンモニアの水素への変換を低減させ、燃料として使用されるPSA排ガスの加熱量(すなわち、発熱量)を増加させるために、分解反応器をより低い温度で動作させることによって低減させることができ、これにより、必要な一次燃料の量を低減させ、それによって、炭素強度を低減させる。
【0021】
液体アンモニア供給物は、典型的には、1.1bar超、例えば、少なくとも5bar又は少なくとも10barの圧力に加圧される。いくつかの実施形態では、液体アンモニアは、約5bar~約50barの範囲内、又は約10~約45barの範囲内、又は約30bar~約40barの範囲内の圧力に加圧される。
【0022】
液体アンモニア供給物は、典型的には、約250℃超、例えば、約350℃~約800℃、又は約400℃~約600℃の範囲内にある温度で加熱アンモニアを生成するように加熱される。問題の圧力において、液体アンモニアは、典型的には、完全に気化して、加熱されたアンモニア蒸気を形成する。
【0023】
温度は、最終的に、触媒の同一性、動作圧力、及び所望の「スリップ」、すなわち、分解されることなく分解反応器を通過するアンモニアの量によって決定される。これに関して、プロセスは、典型的には、約4%以下のスリップで動作し、これは、分解プロセスが平衡に近いアプローチで5bar及び350℃で動作させた場合のスリップ量である。いくつかの構造材料では、約700℃を上回る温度で任意の認識可能な圧力において問題が発生する可能性がある。
【0024】
分解反応は、炉によって加熱される触媒で充填された反応器管内で起こる。しかしながら、理論的には、任意の不均一に触媒されたガス反応器は、潜在的に変換のために使用することができる。
【0025】
アンモニア分解反応に有用であるとして当技術分野において既知の多数の触媒が存在し、これらの従来の触媒のいずれかが、本発明において使用され得る。
【0026】
炉のための一次燃料は、典型的には、メタンを含む。燃料は、純粋なメタンであり得るが、天然ガス又はバイオガスである可能性も高い。いくつかの実施形態では、一次燃料は、任意選択的に、アンモニア分解ガスの形態で、二次燃料として水素で補完された天然ガス又はバイオガスである。これらの実施形態では、液体アンモニアは、ポンプ圧送され、分解されて、一次燃料に追加される分解ガスを形成することができる。
【0027】
第1のPSAデバイスは、PSAサイクル又は真空スイング吸着(VSA)サイクルを動作させ得る。TSAデバイスは、第1のPSAデバイス、アンモニアを除去するためのTSAデバイス(US10787367を参照)、及び窒素を除去し、水素生成物を生成するための第1のPSAデバイスと組み合わせて使用され得る。好適なPSAサイクルは、US9381460、US6379431、及びUS877051に開示されているサイクルのいずれかを含み、これらの開示は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0028】
方法は、任意選択的に、第1のPSAデバイスにおける更なる処理のために、第1のPSA排ガスの任意の残りの部分(すなわち、一次燃料を補完するために使用されない任意の部分)の再循環を含み得る。かかる実施形態では、プロセスは、第1のPSA排ガスの任意の残りの部分を圧縮して、圧縮されたPSA排ガスを生成することと、分解されたガス又はそれから誘導されたアンモニア枯渇ガスでの精製のため、圧縮されたPSA排ガスを第1のPSAデバイスに再循環させることを含み得る。この方法で第1のPSA排ガスを再循環させることは、約94%~約96%の全体的な回収を達成することができる。
【0029】
第1のPSA排ガスは、典型的には、第1のPSAデバイスへの供給物の圧力に圧縮される。第1のPSA排ガスは、典型的には、1.1bar超、例えば、少なくとも5bar又は少なくとも10barの圧力に加圧される。いくつかの実施形態では、第1のPSA排ガスは、約5bar~約50barの範囲内、又は約10~約45barの範囲内、又は約30bar~約40barの範囲内の圧力に加圧される。
【0030】
方法は、任意選択的に、第2のPSAデバイスにおいて一次燃料を補完するために使用されない第1のPSA排ガスの任意の部分を精製することを含んでもよい。かかる実施形態では、プロセスは、第1のPSA排ガスの任意の残りの部分を圧縮して、圧縮されたPSA排ガスを生成することと、第2のPSAデバイスにおいて圧縮されたPSA排ガスを精製して、第2のPSA排ガス(すなわち、第1のPSA排ガスから誘導される排ガス)及び第2の水素ガスを生成することと、を含み得る。炉内で燃焼した燃料は、第2のPSA排ガスを含み得る。
【0031】
かかる実施形態では、再生可能な水素生成物ガスは、第1の水素ガス及び第2の水素ガスを含む。この方法における更なる処理は、約95%~約97%の全体的な水素回収を達成することができる。
【0032】
第1のPSAデバイスと同様に、第2のPSAデバイスは、PSAサイクル又は真空スイング吸着(VSA)サイクルを動作させ得る。TSAデバイスは、第2のPSAデバイスと組み合わせて使用され得、TSAデバイスは、アンモニアを除去し、第2のPSAデバイスは、窒素を除去し、水素生成物を生成する。好適なPSAサイクルとしては、US9381460、US6379431及びUS8778051に開示されているサイクルのいずれかが挙げられる。
【0033】
二次燃料は、第1のPSA排ガス、第2のPSA排ガス、又は第1のPSA排ガス及び第2のPSA排ガスの両方の混合物を含み得る。圧縮されたPSA排ガスが第1のPSAデバイスに再循環される実施形態では、第1のPSA排ガスの残りの部分は、一次燃料を補完するために使用され、0よりも大きく、最大100%であり、すなわち、その部分はゼロにすることができない。圧縮されたPSA排ガスが第2のPSAデバイス内で精製される実施形態では、一次燃料を補完するために使用される第1のPSA排ガスの残りの部分は、0から100%であり、すなわち、その部分は、ゼロであり得る。
【0034】
二次燃料として再循環される第1のPSA排ガスの部分が高いほど(例えば、二次燃料対一次燃料の比が高いほど)、水素の回収率は低いが、プロセスの総炭素強度値も低くなり、そのため再生可能な水素生成物の全体的な炭素強度値が低くなる。第1のPSA排ガスのいずれも二次燃料として再循環されないとき(すなわち、一次燃料及び第2のPSA排ガスのみが炉内で燃焼されるとき)、水素回収は、典型的には、炭素強度値と同様に、その最高値である。第1のPSA排ガスの全てが二次燃料として再循環される場合、水素回収は、プロセスの総炭素強度値及び再生可能水素生成物の全体的な炭素強度と同様に、その最小値になるであろう。
【0035】
第1又は第2のPSA排ガスの更なる部分、又はそれから誘導されたガスは、任意選択的に、膜分離器を使用して分離されて、窒素リッチ残留ガスを放出し、水素リッチ透過ガスを再循環して、PSAデバイス内で更に処理し、及び/又は水素生成物ガスに混合することができる。
【0036】
水素と同様に、アンモニアは、ガス分離に使用される膜を容易に透過する「高速ガス」である。ポリアミド又はポリスルホンポリマーで構成された膜など、いくつかの膜は、アンモニアに対してより耐性がある。しかしながら、ポリイミドポリマーで構成された膜などの一部の膜は、アンモニアに対する耐性が低い。したがって、アンモニアは、典型的には、膜分離器の上流で除去されるか、又はその濃度が少なくとも低減される。
【0037】
アンモニア除去は、プロセス内のいくつかの異なる場所で達成され得る。PSA排ガスを分離する前に、アンモニアは、PSA排ガスから除去され得る。代替的に、分解されたガスを精製する前に、アンモニアは、分解されたガスから除去され得る。両方の場合において、除去されたアンモニアは回収され、触媒を含む反応器管に供給されるアンモニアに再循環され得る。
【0038】
アンモニアは、吸着によって(例えば、TSAによって)、又は水中での吸収によって、例えば、スクラバ内の水でガスを洗浄することによって、ガスから除去され得る。結果として得られたアンモニア枯渇ガス及びアンモニア溶液は分離されるため、アンモニア枯渇ガスは、アンモニアが困難を引き起こすことなく更に処理することができる。アンモニアは、カラム内でストリッピングすることにより、アンモニア溶液から回収することができる。かかるプロセスは、PSAユニットに供給される前に分解されたガスに、又は代替的に、膜分離器に供給される前にPSA排ガスに適用され得る。
【0039】
本発明の第2の態様によれば、再生可能な水素の源から誘導されるアンモニアから再生可能な水素を回収するための装置が提供され、
再生可能な水素源に由来する液体アンモニア供給物を加圧するためのポンプと、
1つ以上の高温流体との熱交換によってポンプからの液体アンモニア供給物を加熱して(及び任意選択的に、気化して)、加熱されたアンモニアを生成するために、ポンプと流体連通している少なくとも1つの熱交換器と、
第1の熱交換器から加熱されたアンモニアを分解して、水素ガス、窒素ガス、及び残留アンモニアを含む分解されたガスを生成するために、第1の熱交換器と流体連通している触媒を含む反応器管と、
一次燃料を燃焼させて、触媒を含む反応器管を加熱し、煙道ガスを生成するために、触媒を含む反応器管と熱連通する炉と、
任意選択的に、熱交換器を通る通路を含む、炉に一次燃料を供給するための燃料導管と、
炉への一次燃料の流量を調整するための燃料導管内の燃料バルブと、
熱交換器に煙道ガスを供給するための煙道ガス導管と、
熱交換器を通過した後、分解されたガスを精製して、第1のPSA排ガス及び第1の水素ガスを含む再生可能な水素生成物ガスを生成するために、触媒を含む反応器管と流体連通している第1のPSAデバイスと、
第1のPSAデバイスから第1の水素ガスを除去するための第1の水素ガス導管と、
第1のPSAデバイスから炉への第1のPSA排ガスの一部分を再循環させるための第1のPSA排ガス導管であって、任意選択的に、少なくとも1つの熱交換器を通る通路を含む、第1のPSA排ガス導管と、
炉への第1のPSA排ガスの流量を調整するための、第1のPSA排ガス導管内のPSA排ガスバルブと、を備え、
装置は、炉内での燃焼のために二次燃料対一次燃料の比を調整するために、燃料バルブを単独で、PSA排ガスバルブを単独で、又は燃料バルブとPSA排ガスバルブとを並行して動作させるための制御システムを備える。
【0040】
炉は、触媒充填された反応器管から分離され得るが、炉及び触媒充填された反応器管は、好ましくは、同一ユニット内に統合される。好ましい実施形態では、蒸気メタン再形成(SMR)タイプの反応器が使用され、炉は、触媒を含む反応器管を通過させる放射線部分を含む。
【0041】
いくつかの好ましい実施形態では、制御システムは、二次燃料対一次燃料の比を自動的に調整する。燃料の比は、分解プラントに送達される再生可能なアンモニアの上流処理及び分配によって既に割り当てられた炭素強度、並びに再生可能な水素生成物ガスの炭素強度値の所定値を超えないという目標を達成するために、再生可能な水素生成物の下流処理又は分配に割り当てられる必要があり得る任意の炭素強度によって決定される。
【0042】
圧縮機は、典型的には、第1のPSA排ガスを圧縮して、圧縮されたPSA排ガスを生成するために、第1のPSAデバイスの下流に提供される。圧縮機は、1つ以上のステージからなり得、冷却は、各ステージの間及び最終ステージの後に行われる。水は、典型的には、インターステージ又はアフタークーラステージで圧縮されたPSA排ガスから凝縮する。水性凝縮物は、典型的には、圧縮機の各冷却ステージの後に除去され、少量のアンモニアが、この凝縮物とともに第1のPSA排ガスから出る。
【0043】
第1のPSAデバイスから炉に再循環されていない第1のPSA排ガスの任意の部分は、分解されたガス又はそれから誘導されたアンモニア枯渇ガスで更に精製するために、第1のPSAデバイスに再循環され得る。かかる実施形態では、装置は、
第1のPSA排ガスを圧縮して、圧縮されたPSA排ガスを生成するための第1のPSAデバイスと流体連通している圧縮機と、
圧縮されたPSA排ガスを第1のPSAデバイスに再循環するための再循環導管と、を備える。
第1のPSAデバイスから炉に再循環されない第1のPSA排ガスの任意の部分は、任意選択的に、第2のPSAデバイス内で精製され得る。かかる実施形態では、装置は、
第1のPSA排ガスを圧縮して、圧縮されたPSA排ガスを生成するための第1のPSAデバイスと流体連通している圧縮機と、
圧縮されたPSA排ガスを精製して、第2のPSA排ガス及び第2の水素ガスを生成するために圧縮機と流体連通している第2のPSAデバイスと、
第2のPSAデバイスから第2の水素ガスを除去するための第2の水素ガス導管と、
第2のPSAデバイスから第2のPSA排ガスを除去するための第2のPSA排ガス導管と、を備える。
【0044】
これらの実施形態では、第1及び第2の水素ガス導管は、組み合わせて、再生可能な水素生成物ガス導管を形成し得る。
【0045】
二次PSA排ガス導管は、典型的には、任意選択的に、熱交換器を通過した後に、第2のPSA排ガスを、第2のPSAデバイスから炉に再循環する。
【0046】
ここで、本発明を、以下の図面を参照しながら詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0047】
図1】水素を生成するためのアンモニア分解プロセスの第1の参考例のプロセスフロー図である。
図2】水素生成物を燃料として使用しない、図1のアンモニア分解プロセスに基づく、別の参考例のプロセスフロー図である。
図3】PSA排ガスのみを燃料として使用する、図1及び2のアンモニア分解プロセスに基づく、更なる参考例のプロセスフロー図である。
図4】本発明による、再生可能な水素の供給源から誘導されるアンモニアから再生可能な水素を回収するためのプロセスの第1の実施形態のプロセスフロー図である。
図5】本発明による、再生可能な水素の供給源から誘導されるアンモニアから再生可能な水素を回収するためのプロセスの第2の実施形態のプロセスフロー図である。
図6】燃料として再循環された第1のPSA排ガスのパーセンテージの関数として、再生可能な水素生成物ガス及び水素回収の炭素強度を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0048】
アンモニアを分解することによって水素を生成するためのプロセスが本明細書において説明される。プロセスは、化石燃料の代わりに再生可能エネルギーを使用して生成される水素である、いわゆる「グリーン」水素を生成するための特定の用途を有する。この場合、アンモニアは、典型的には、水素を生成するために、風力及び/又は太陽エネルギーなどの再生可能エネルギーから生成された電気を使用して水を電解することによって生成され、次いで、水素よりも輸送しやすいアンモニアを生成するために窒素と触媒的に反応させる(Haberプロセス)。目的地に到達した後、アンモニアは、次いで分解されて、水素を再生する。
【0049】
本発明のプロセスでは、反応に必要とされる熱は、典型的には、炉内でのPSA排ガス(通常、ある程度の量の残留水素及びアンモニアを含む)の燃焼によって提供される。PSA排ガスが、気化されたアンモニア、生成物水素の一部分、又は代替燃料のいずれかよりも不十分な加熱値を有する場合、トリム燃料として排ガスとともに使用され得る。
【0050】
実際には、天然ガスは、水素に関するSMRで実践されるように、PSA排ガスとともにトリム燃料として使用され得る。しかしながら、そのように生成された水素の「グリーン」又は再生可能な資質を維持することを所望して、「再生可能な燃料」を使用する動機が存在する。これは、分解された「再生可能な」アンモニア、アンモニア自体、又はバイオガスなどの別の再生可能エネルギー源であり得、又は電気が、それ自体が再生可能な源からであるかどうかにかかわらず、実際には電気加熱であり得、この場合は、アンモニアの形態で輸送された水素を生成するために使用される再生可能な電気とは対照的に、分解プロセスに対して局所的である。
【0051】
プロセスの参考例は、図1に示される。このプロセスは、貯蔵(図示せず)から液体アンモニアを取り出す。分解されるアンモニア(ライン2)は、所望の分解圧力(GB1142941を参照)を超える圧力に液体としてポンプ圧送される(ポンプP201)。反応圧力は、ルシャトリエの原理により、動作圧力と変換の間の折衷である。液体アンモニアをポンプ圧送することは、生成物の水素を圧縮するよりも少ない電力及び資本を必要とするため、反応器(8)をより高い圧力で動作させる動機となる。
【0052】
次いで、加圧された液体アンモニア(ライン4)を加熱し、気化させ(それがその臨界圧力を下回る場合)、反応管を離れる分解されたガス及び炉からの煙道ガスにおいて利用可能な熱を使用して、熱交換器(E101)を介して最大250℃超の温度に更に加熱する。図では、熱交換器(E101)は、1つの熱交換器として示されているが、実際には、ネットワーク内の一連の熱交換器になる。
【0053】
代替的に、加圧された液体アンモニアの初期加熱及び気化は、冷却水又は周囲空気などの代替熱源に対して行われてもよい。典型的な反応温度は、500℃超(US2601221参照)であり、パラジウム系システムは、600℃及び10barで動作することができ、一方でRenCatの金属酸化物系システムは、300℃及び1bar未満で動作する。(https://www.ammoniaenergy.org/articles/ammonia-cracking-to-high-purity-hydrogen-for-pem-fuel-cells-in-denmark/を参照されたい)。分解装置の動作圧力は、典型的には、いくつかの要因の最適化である。水素及び窒素へのアンモニアの分解は、低圧によって好まれるが、他の要因は、消費電力(生成物水素を圧縮するのではなく供給アンモニアをポンプ圧送することによって最小限に抑えられる)、及びPSAサイズ(より高い圧力でより小さい)などのより高い圧力を好む。
【0054】
高温のアンモニア(ライン6)は、所望の圧力で反応器(8)の反応管に入り、そこで炉(10)によって追加の熱が提供されて、アンモニアを窒素及び水素に分解する。結果として得られた残留アンモニア、水素、及び窒素の混合物は、反応温度及び圧力で反応器の反応管(8)を出る(ライン12)。反応生成物は、供給アンモニア(ライン4から)、炉燃料(この場合はライン14、ポンプP202及びライン16からポンプ圧送されたアンモニア、ライン18からのPSA排ガス、並びにライン20内で燃料として使用される生成物水素)、及び燃焼空気(ライン22、ファンK201及びライン24から)の組み合わせに対して熱交換器(E101)内で冷却されて、PSAデバイス(26)の入口に必要な温度にできるだけ近づくように温度を低減させる。分解されたガス混合物(ライン28)中の残留熱は、水冷装置(図示せず)内で除去されて、PSAデバイス(26)への入口温度を約20℃~約60℃の範囲内、例えば約50℃で達成する。
【0055】
PSA生成物(ライン30)は、ISO規格14687(水素燃料品質)に準拠した純粋な水素であり、ほぼ反応圧力で、残留アンモニア<0.1ppmv、窒素<300ppmvを有する。生成物水素(ライン30)は、輸送のため、管トレーラ(図示せず)に充填するために更に圧縮(図示せず)されるか、又は任意の必要な圧縮後に水素液化器(図示せず)内で液化され得る。PSAデバイス(26)からのPSA排ガス(ライン18)又は「パージガス」は、燃焼燃料として(ライン36内で)炉に送られる前に、反応器(8)の反応管を離れる分解されたガス(ライン12)又は炉煙道ガス(ライン32)を使用して、熱交換器E101を介して加熱されるように示される。しかしながら、PSA排ガス(ライン18)は、加熱せずに炉(10)に直接供給される場合もある)。代替的に、PSA排ガスは、水素回収を増加させるPSA排ガスのためのより低い圧力を可能にするために、中間流体によって予熱されてもよい。
【0056】
結果として得られた加温されたアンモニア燃料(ライン34)及び加温された水素(ライン40)は、ミキサ(42)内で(任意選択的に)加温されたPSA排ガス(ライン36)と組み合わされて、組み合わされた燃料を生成するように描写され、これは燃焼のために炉(10)に供給されて(ライン44)、煙道ガスを生成する(ライン32、及び、E101で冷却した後、ライン48)。しかしながら、1つ以上の燃料は、事前に混合することなく、炉に直接供給され得ることに留意されたい。加温された空気(燃料の燃焼用)は、ライン46において炉(10)に供給される。
【0057】
本プロセスの好ましい実施形態の目的のうちの1つは、再生可能なアンモニアを分解することによって生成される水素の量を最大化することである。つまり、燃料として使用される水素の量を最小限に抑えること、又はアンモニアを直接燃料として使用する場合はアンモニアを最小限に抑えることを意味する。したがって、熱煙道ガス及び分解されたガスを適切に使用するために、例えば、空気(ライン24)及びアンモニア(ライン4)を分解装置に対して予熱するために、熱統合が重要であり、これにより、炉(10)のバーナにおいて使用される「燃料」の量を低減させる。これは、より少ない水素が水として炉煙道ガス(ライン32及び48)中で失われるので、より高い水素回収につながる。したがって、例えば、蒸気生成は、プロセス内熱統合を支持して最小限に抑えられるべきである。
【0058】
図1は、燃料(ライン34&44)及び供給物(ライン6)として提供されるアンモニアを示し、また、燃料として生成物水素(ライン40&44)も示し、実際には、これらの流れのうちの1つのみが燃料として使用される可能性が高い。これに関連して、図2は、アンモニアが燃料(ライン34)として使用されているが、生成物水素が使用されていない図1と同様のプロセスを描写する。図2に描写されるプロセスの他の全ての特徴は、図1と同じであり、共通の特徴は、同じ参照番号を与えられている。
【0059】
本発明者らは、水素が燃料としても使用される場合、特に、起動時及びウォームアップ時に、アンモニアの安定した燃焼が促進されることを認識している。
【0060】
図3は、図2において描写されるものと同様のプロセスを描写する。このプロセスでは、PSAからの水素の回収(ライン30)が調整されて、燃焼時にプロセスに必要な全ての熱を提供し、そのためトリム燃料の必要性を排除する排ガス(ライン18)を提供し得る。図3に描写されるプロセスの他の全ての特徴は、図1と同じであり、共通の特徴は、同じ参照番号を与えられている。
【0061】
上で考察されたように、分解反応のための実行可能な再生可能エネルギーの代替源が存在する場合、PSAから生成された水素に加えて、プロセスからの純水素生成を増加させるために、PSA排ガスから水素を回収することを検討することができる。かかるプロセスは、水素に対して容易に透過性であるが、窒素に対して相対的に不透過性である選択層を有する膜を使用して、窒素リッチPSA排ガス流から水素を分離することができる(図4)。
【0062】
アンモニアを特に除去する必要があるが、膜材料は高濃度のアンモニアに耐性がなく、アンモニアは高速ガスであり、水素で浸透するため、除去されない場合プロセス内に蓄積するため、膜が分離プロセスの一部として使用されている場合、この限りではない。アンモニアは、例えば、水洗い又はアンモニア除去のための他の周知の技術によって、膜の上流で除去することができる。アンモニアは、ストリッピングカラムを使用して水洗いで生成されたアンモニア水溶液から回収され得、回収されたアンモニアは、分解反応器への供給物に再循環され得る。これは、理論的には、プロセスからの水素回収率を最大100%まで増加させることができる。分解されたガスからアンモニアを回収することは、水素精製工程を簡素化し、分離されたアンモニアが供給物として回収された場合、アンモニアからの水素の回収率を増加させ得、また、バーナへの供給物からアンモニアを除去し、アンモニアを燃焼させることによって引き起こされるNOxの生成に関する懸念を排除する。
【0063】
アンモニア分解触媒への損傷を防止するために、供給アンモニアから水を除去する必要もあり得る。典型的には、アンモニアには少量の水が追加されており、輸送及び貯蔵中の船舶内の応力腐食分解を防止する。これは、除去される必要があり得る。しかしながら、水除去は、上記のストリッピングカラムに組み込むことができる。アンモニアは、必要な圧力で気化し、水が蒸発器アンモニアを有するストリッピングカラムを通って搬送されることを確実とするように、蒸発器の設計に注意を払う。この主に気相アンモニアは、カラムの中間点に入り、純粋なアンモニアはカラムの上部を通って離れる。カラムは、部分凝縮器(還流に十分な液体のみを凝縮)を有し、オーバーヘッド蒸気は、供給アンモニア(水を含まない)と分解装置ガス流から回収されたアンモニアを含む。
【0064】
分解されたガスを最初に膜に供給して、水素濃縮透過物流及び排気され得る窒素リッチ残留物流を生成することは、よりエネルギー効率が高い可能性がある。水素濃縮透過物は、PSA中で更に精製され得る。第2の膜を、PSA排ガス流に追加して、全体的な水素回収を更に促進することができる。この構成は、排ガス圧縮機のサイズを大幅に低減させるであろう。
【0065】
水素回収を増加させるための膜分離器の使用は、プロセスの燃焼セクションを通過することなく、プロセスから窒素を排気することを可能にする。窒素流が圧力であるプロセスでは、膨張タービンを通じて電力を回収するための排気前に、窒素を大気圧に膨張させることが有益であろう。煙道ガス又は分解されたガス流中で利用可能な熱を使用して膨張前に加圧窒素を加熱する場合、回収される電力量が増加する。
【0066】
図4は、一次燃料が、第1のPSA排ガスの一部分を含む二次燃料で補完される、本発明の第1の実施形態によるプロセスを描写する。図1~3のプロセスに共通する図4のプロセスの特徴は、同じ参照番号を与えられている。以下は、図4の新機能の考察である。
【0067】
一次燃料(ライン50)は、熱交換器(E101)で加温され、任意選択的に、加温されたPSA排ガス(ライン36)と組み合わされて、燃焼のために炉(10)に供給される組み合わされた燃料(ライン44)を生成し、分解反応器(8)の触媒充填管を加熱し、煙道ガス(ライン32、及びE101における冷却後のライン48)を生成する。加温された空気は、ライン46において炉(10)に供給される。一次燃料(ライン50)及びPSA排ガス(ライン36)は、混合することなく別々に炉に供給することができる(図示せず)。
【0068】
冷却された分解されたガス(ライン28)は、第1のPSAデバイス(26)に供給される。分解されたガスは、水素生成物(ライン30)及び排ガス(ライン18)を形成するように分離される。第1のPSAデバイス(26)からの排ガス(ライン54)の第1の部分は、圧縮機(K301)内で圧縮され、圧縮されたPSA排ガス(ライン62)を生成する。圧縮されたPSA排ガス(ライン62)は、冷却された分解されたガス(28)又はそれから誘導されたアンモニア枯渇ガスで精製するために、第1のPSAデバイス(26)に再循環される。
【0069】
第1のPSA排ガスの第2の部分(ライン56)は、(任意選択的に、熱交換器(E101)及びミキサ(42)を介して)炉に戻って供給される第1のPSA排ガス(60)の一部分を制御するPSA排ガスバルブ(58)を通して供給される。第1のPSA排ガスの全てが炉に戻って供給される場合、水素回収は、その最小値(典型的には、約50%)である。第1のPSA排ガスの約50%が燃料として再循環される場合、約95%の水素回収を達成することができる。
【0070】
代替的に、図5に示されるように、圧縮されたPSA排ガス(ライン62)は、第2のPSAデバイス(64)に供給することができる。第2のPSAデバイス(ライン68)からの生成物水素は、第1のPSAデバイス(26)からの水素生成物(ライン30)と組み合わされて、組み合わされた水素生成物ガス(ライン70)を形成する。燃料として使用される第1のPSA排ガスの部分(ライン60)は、第2のPSAデバイス(64)からのPSA排ガス(ライン66)と組み合わされて、組み合わされたPSA排ガス(ライン72)を生成する。図1及び2のプロセスと同様に、組み合わされたPSA排ガス(ライン66)は、(ライン36において)燃焼燃料として炉に送られる前に、反応管又は炉煙道ガス(ライン32)を離れる分解されたガス(ライン12)を使用して、熱交換器E101を介して加熱され得る。しかしながら、組み合わされたPSA排ガス(ライン72)は、加熱なしで炉(10)に直接供給されてもよい(図示せず)。
【実施例
【0071】
ここで、本発明を、以下の発明の実施例を参照して、及び以下の参考例との比較によって例解する。シミュレーションの目的のために、発明の実施例及び参考例の両方は、11bar及び500℃での分解反応の平衡を想定している。
【0072】
参考例1
図2に描写されるプロセスは、コンピュータ(Aspen Plus,ver.10、Aspen Technology,Inc.)によってシミュレートされ、及び結果は、表1に描写される。
表1
【表1】
【0073】
この参考例では、アンモニアからの水素回収率は、77.18%であり、PSA回収率は83.5%である。アンモニア供給ポンプ(P201)、アンモニア燃料ポンプ(P202)及び空気ファン(K201)の総出力は、約1.36kWである。
【0074】
参考例2
図3に描写されるプロセスは、コンピュータ(Aspen Plus、ver.10)によってシミュレートされており、結果は、表2に描写される。
表2
【表2】
【0075】
この参考例では、アンモニアからの水素回収率は、77.05%であり、PSA回収率は79.4%である。アンモニア供給ポンプ(P201)及び空気ファン(K201)の総出力は、約1.37kWである。
【0076】
発明の実施例1
図5に描写されるプロセスは、コンピュータ(Aspen Plus、ver.10)によってシミュレートされており、結果は、表3に描写される。
表3
【表3】
【0077】
発明の実施例では、アンモニアからの水素回収率は、93.85%である。発明の実施例では、PSA排ガスバルブは閉鎖されているため、第1のPSA排ガスの全てが、第2のPSAデバイスにおける更なる精製のために再循環される。第2のPSAデバイスからの第2のPSA排ガスは、二次燃料として炉に再循環される。これは、第1のPSAデバイスから燃料への排ガスの再循環が、プロセスの炭素強度値に及ぼす影響を示すための出発点として提供される。
【0078】
本発明の実施例2
図5に描写されるプロセスは、コンピュータ(Aspen Plus、ver.10)によってシミュレートされており、結果は、表4に描写される。
表4
【表4】
【0079】
発明の実施例では、燃料バルブを通って迂回され、二次燃料として再循環される第1のPSA排ガスの部分は、0%~100%で変化する。この実施例では、水素生成を一定に保ち、ライン2を通るアンモニア供給速度を増加させて、水素回収における低減を補償した。図6のデータは、二次燃料として再循環された第1のPSA排ガスの量を増加させることは、水素回収を低減させるが、また必要な一次燃料が少ないため、再生可能な水素生成物の炭素強度も低減させることを示す。
【0080】
これらのデータは、再生可能な水素生成物の炭素強度値に対する燃焼プロセスの影響を明示する。このデータはまた、一次燃料対二次燃料の比を変化させることによって、再生可能な水素生成物の炭素強度値を制御することができることを明示する。
【0081】
本発明は、本発明のいくつかの態様の例解として意図される実施例に開示される特定の態様又は実施形態によって範囲が限定されるべきではなく、機能的に等価である任意の実施形態は、本発明の範囲内にある。本明細書に示され、説明されるものに加えて、本発明の様々な修正が、当業者に明らかとなり、添付の特許請求の範囲内であることが意図される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【国際調査報告】