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特表2024-524086グリーン水素のためのアンモニア分解
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-05
(54)【発明の名称】グリーン水素のためのアンモニア分解
(51)【国際特許分類】
   C01B 3/04 20060101AFI20240628BHJP
   H01M 8/0662 20160101ALI20240628BHJP
【FI】
C01B3/04 B
H01M8/0662
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023577359
(86)(22)【出願日】2021-06-18
(85)【翻訳文提出日】2023-12-14
(86)【国際出願番号】 US2021037997
(87)【国際公開番号】W WO2022265649
(87)【国際公開日】2022-12-22
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591035368
【氏名又は名称】エア プロダクツ アンド ケミカルズ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】AIR PRODUCTS AND CHEMICALS INCORPORATED
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100195213
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 健治
(74)【代理人】
【識別番号】100202441
【弁理士】
【氏名又は名称】岩田 純
(72)【発明者】
【氏名】ビンセント ホワイト
(72)【発明者】
【氏名】アンドリュー ショー
(72)【発明者】
【氏名】サイモン クレイグ サロウェイ
【テーマコード(参考)】
5H127
【Fターム(参考)】
5H127AB04
5H127AC05
5H127BA01
5H127BA16
5H127BA17
(57)【要約】
アンモニア分解プロセスにおいて使用されるアンモニアの含水量の低減は、水不耐性分解触媒の使用を可能にする。水除去プロセスはまた、分解されたガスからアンモニアを回収及び再循環するためにも使用され得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンモニアから水素を生成するための方法であって、
微量不純物として水を含む液体アンモニア供給物を加圧して、加圧された液体アンモニア供給物を生成することと、
炉内で一次燃料を燃焼させて、触媒を含む反応器管を加熱し、煙道ガスを形成することと、
加熱されたアンモニアを、前記触媒を含む反応器管に供給して、水素ガス、窒素ガス、及び残留アンモニアを含む分解されたガスへの前記アンモニアの分解を引き起こすことと、
熱交換によって、前記分解されたガスを冷却して、冷却された分解されたガスを生成することと、
洗浄カラム内の水を使用して、前記冷却された分解されたガスからアンモニアを洗浄して、アンモニアが枯渇した分解されたガス及び水性アンモニア溶液を生成することと、
蒸留カラムシステム内の前記水性アンモニア溶液からアンモニアをストリッピングして、水が枯渇したアンモニア供給蒸気及びアンモニアが枯渇した水性底部液体を生成することと、
1つ以上の高温流体との熱交換によって前記水が枯渇したアンモニア供給蒸気を加熱して、前記加熱されたアンモニアを生成することと、
第1のPSAデバイス内の前記アンモニアが枯渇した分解されたガスを精製して、水素生成物ガス及び第1のPSA排ガスを生成することと、を含み、
前記加圧された液体アンモニア供給物が、前記1つ以上の高温流体との熱交換によって加熱及び気化されて、アンモニア供給蒸気を生成し、これが、前記アンモニア供給蒸気から水を除去するために前記蒸留カラムシステムに供給されることを特徴とし、
前記1つ以上の高温流体が、前記分解されたガス及び/又は前記煙道ガスを含む、方法。
【請求項2】
前記1つ以上の高温流体との熱交換によって、前記蒸留カラムシステム内又は前記蒸留カラムシステムからの前記水性底部液体を再沸騰させることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
電動加熱器を使用して、前記蒸留カラムシステム内又は前記蒸留カラムシステムからの前記水性底部液体を再沸騰させることを含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記加熱器が、少なくとも1つの再生可能源から発生した電気によって、少なくとも部分的に給電される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
熱交換によって、前記蒸留カラムシステム内又は前記蒸留カラムシステムからのオーバーヘッド蒸気を部分的に凝縮して、凝縮された液体及び前記水が枯渇したアンモニア供給蒸気を生成することを含み、前記凝縮された液体が、前記蒸留カラムシステムへの還流として再循環される、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記洗浄カラムに、前記蒸留カラムシステムからの前記水性底部液体を供給することを含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記蒸留カラムシステムに供給される前記水性アンモニア溶液が、前記洗浄カラムに供給される前記水性底部液体との熱交換によって加温される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記水性底部液体が、前記洗浄カラムに供給される前に、熱交換によって更に冷却される、請求項6又は7に記載の方法。
【請求項9】
前記洗浄カラムから前記蒸留カラムシステムに前記水性アンモニア溶液をポンプ圧送することを含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記第1のPSA排ガスを圧縮して、圧縮された第1のPSA排ガスを生成することと、
前記圧縮されたPSA排ガスを前記第1のPSAデバイスに再循環させて、更なる水素ガスを回収することと、を含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記第1のPSA排ガスを圧縮して、圧縮された第1のPSA排ガスを生成することと、
第2のPSAデバイス内の前記圧縮された第1のPSA排ガスを精製して、更なる水素生成物ガス及び第2のPSA排ガスを生成することと、を含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記炉内で、二次燃料として前記第2のPSA排ガスを燃焼させることを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
アンモニアから水素を生成するための装置であって、
微量不純物として水を含む液体アンモニア供給物を加圧して、加圧された液体アンモニア供給物を生成するためのポンプと、
1つ以上の高温流体との熱交換によって加圧された液体アンモニアを気化させて、アンモニア供給蒸気を生成するために、前記ポンプと流体連通する少なくとも1つの第1の熱交換器と、
前記第1の熱交換器からの加熱されたアンモニアを分解して、水素ガス、窒素ガス、及び残留アンモニアを含む分解されたガスを生成するために、前記第1の熱交換器と流体連通する触媒を含む反応器管と、
燃料を燃焼させて、前記触媒を含む反応器管を加熱し、煙道ガスを形成するために、前記触媒を含む反応器管と熱連通する炉と、
前記少なくとも1つの第1の熱交換器に、前記炉からの煙道ガスを供給するための煙道ガス導管と、
分解されたガスを、前記少なくとも1つの第1の熱交換器に供給するための分解されたガス導管と、
水を使用して、冷却された分解されたガスからアンモニアを洗浄して、アンモニアが枯渇した分解されたガス及び水性アンモニア溶液を生成するための、前記少なくとも1つの第1の熱交換器と流体連通する洗浄カラムと、
前記水性アンモニア溶液からアンモニアをストリッピングして、水が枯渇したアンモニア供給蒸気及びアンモニアが枯渇した水性底部液体を生成するために、前記洗浄カラムと流体連通する蒸留カラムシステムと、
アンモニア供給蒸気を、前記第1の熱交換器から前記蒸留カラムシステムに供給するためのアンモニア供給蒸気導管と、
前記高温流体のうちの1つ以上との熱交換によって更に加熱して、前記加熱されたアンモニアを生成するために、水が枯渇したアンモニア供給物を、前記蒸留カラムシステムから前記第1の熱交換器に供給するための水が枯渇したアンモニア供給蒸気導管と、
前記アンモニアが枯渇した分解されたガスを精製して、水素生成物ガス及び第1のPSA排ガスを生成するために、前記洗浄カラムと流体連通するPSAデバイスと、
前記PSAデバイスからの水素生成物ガスを除去するための水素生成物ガス導管と、を備える、装置。
【請求項14】
前記蒸留カラムシステムが、前記第1の熱交換器と熱的に統合された底部リボイラを備える、請求項13に記載の装置。
【請求項15】
前記蒸留カラムシステムが、電動式リボイラを備える、請求項13に記載の装置。
【請求項16】
前記蒸留カラムシステムが、冷却剤との熱交換によって、オーバーヘッド蒸気を部分的に凝縮するためのオーバーヘッド凝縮器を備える、請求項13~15のいずれか一項に記載の装置。
【請求項17】
前記オーバーヘッド凝縮器から前記蒸留カラムシステムへの還流として凝縮された液体を供給するための還流導管を備える、請求項16に記載の装置。
【請求項18】
前記蒸留カラムシステムから前記洗浄カラムに水性底部液体を供給するための水性底部液体導管を含む、請求項13~17のいずれか一項に記載の装置。
【請求項19】
前記蒸留カラムシステムからの水性底部液体との熱交換によって、前記洗浄カラムからの水性アンモニア溶液を加温するための第2の熱交換器を備える、請求項18に記載の装置。
【請求項20】
冷却剤との熱交換によって、前記蒸留カラムシステムからの水性底部液体を冷却するための第3の熱交換器を備える、請求項18又は19に記載の装置。
【請求項21】
前記洗浄カラムから前記蒸留カラムシステムに水性アンモニア溶液をポンプ圧送するためのポンプを備える、請求項13~20のいずれか一項に記載の装置。
【請求項22】
第1のPSA排ガスを圧縮して、圧縮された第1のPSA排ガスを生成するための圧縮機と、
圧縮された第1のPSA排ガスを、前記第1のPSAデバイスに再循環させるための再循環導管と、を備える、請求項13~21のいずれか一項に記載の装置。
【請求項23】
第1のPSA排ガスを圧縮して、圧縮された第1のPSA排ガスを生成するための圧縮機と、
前記圧縮された第1のPSA排ガスを精製して、更なる水素生成物ガス及び第2のPSA排ガスを生成するために、前記圧縮機と流体連通する第2のPSAデバイスと、を備える、請求項13~21のいずれか一項に記載の装置。
【請求項24】
前記炉内での燃焼の前に、前記1つ以上の高温流体との熱交換によって加熱するために、第2のPSA排ガスを前記第1の熱交換器に供給するための導管を備える、請求項13~23のいずれか一項に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
再生可能エネルギーへの世界的な関心、及びこの再生可能エネルギーを使用してグリーン水素を発生させることは、アンモニアが数百又は数千マイルの距離を移送することにおいてより簡単であるため、グリーン水素をグリーンアンモニアに変換することへの関心を高めている。特に、液体水素の輸送は、現在商業的には可能ではないが、液体状態にあるアンモニアの輸送は、現在実践されている。
【0002】
市販の燃料電池における使用の場合、アンモニアは、反応により水素に変換されなければならない。
【数1】
これは、吸熱プロセス、すなわち、熱を必要とするプロセスであり、触媒を介して実施される。このプロセスは、分解として既知である。生成されるガス(又は「分解されたガス」)は、水素(H2)と窒素(N2)との組み合わせである。分解反応は、平衡反応であるため、残留アンモニアもまた存在する。現行の分解装置のほとんどの用途において、水素+窒素の混合物は、そのまま利用される。しかしながら、アンモニアは、燃料電池にとって害になるものであり得るため、この流れは、水で洗浄することによってなど、アンモニアを好適に除去することで、燃料電池において直接使用することができる。しかしながら、水素が車両の燃料供給において使用される場合、存在する窒素は、プロセスにペナルティを提供する。車両の燃料供給システムへの燃料は、最大900barという著しい圧力に圧縮される。これは、プロセスにおいて単なる希釈剤である窒素も圧縮され、電力を要し、貯蔵量を要し、アノードガスパージ要件を増加させ、効率を低下させることを意味する。したがって、水素が車両の燃料供給において使用される場合、水素+窒素が精製されることが有益である。
【0003】
小規模分解反応器、又は「分解装置」は、典型的には、圧力スイング吸着(「PSA」)デバイスを使用して、分解されたガスを分離し、水素を回収し、PSA排ガス(又はオフガス)を生成する。しかしながら、これらの分解装置は、概して、電気的に加熱され、PSA排ガスは、典型的には、大気中に排気される。
【0004】
蒸気メタン改質(SMR)反応器からの水素生成において一般的であるように、PSAは、窒素+水素を精製するために使用することができる。分解反応は、炉によって外部的に加熱される触媒が充填された管内で実施される(GB1142941を参照)。
【0005】
GB1142941は、アンモニアから都市ガスを作製するためのプロセスを開示する。アンモニアを、分解し、分解されたガスを、水で洗浄して、残留アンモニアを除去する。残留アンモニアは、蒸留カラムを使用して回収され、分解プロセスに再循環される。次いで、精製された水素/窒素混合物をプロパン及び/又はブタン蒸気で濃縮して、分配用の都市ガスを生成する。
【0006】
US6835360Aは、炭化水素原料及びメタノールを、水素及び一酸化炭素などの有用なガスに変換するための吸熱触媒反応装置を開示する。装置は、放射性燃焼室と組み合わせて、管状の吸熱触媒反応器を備える。結果として得られた分解されたガスは、ガス調節システムを通過した後、燃料電池内で直接使用される。
【0007】
GB977830Aは、アンモニアを分解して、水素を生成するためのプロセスを開示する。このプロセスでは、分解されたガスを、窒素を吸着する分子ふるいの床に通すことによって、水素が窒素から分離される。次いで、窒素は、床から駆動され、ホルダ内に貯蔵され得る。
【0008】
JP5330802Aは、アンモニアが10kg/cm2(又は約9.8bar)の圧力及び300~700℃の温度でアンモニア分解触媒と接触するアンモニア分解プロセスを開示する。水素は、PSAデバイスを使用して分解されたガスから回収される。参考文献は、脱着された窒素が上流プロセスを後押しするために使用され得ることに言及しているが、詳細は提供されていない。
【0009】
US2007/178034Aは、アンモニア及び炭化水素原料の混合物が、600℃及び3.2MPa(又は約32bar)の燃焼蒸気改質器を通過し、約70体積%の水素を含む合成ガスに変換されるプロセスを開示する。合成ガスは、シフト反応で水素が濃縮され、冷却され、縮合物が除去される。結果として得られたガスは、PSAシステムに供給されて、99体積%以上の水素を有する精製水素生成物を生成する。PSAシステムからのオフガスは、燃料として燃焼蒸気改質器に供給される。
【0010】
CN111957270Aは、アンモニアが炉内の管状反応器内で分解されるプロセスを開示する。分解されたガスは、吸着によって分離されて、水素ガス及び窒素リッチオフガスを生成する。分解されたガス、水素生成物ガス、及び/又はオフガスの組み合わせを使用して、炉の燃料需要が満たされるように見える。
【0011】
US2020/123006は、酸素含有ガスによるアンモニアの無触媒部分酸化によって生成された熱を使用してアンモニアを分解するためのプロセスを開示する。残留アンモニアは、プロセスガスから分離され、酸化プロセスにおいて使用するために再循環される。
【0012】
概して、アンモニアからの水素の生成のための改善されたプロセス、具体的には、エネルギー消費の観点からより効率的であるプロセス、及び/又はより高いレベルの水素回収を有するプロセス、及び/又は化石燃料を燃焼させる必要性を低減若しくは排除するプロセスのための改善されたプロセスが、必要である。
【0013】
以下の本発明の実施形態の考察では、特に明記されない限り、与えられた圧力は絶対圧力である。
【発明の概要】
【0014】
本発明の第1の態様によれば、アンモニアから水素を生成するための方法が提供され、
微量不純物として水を含む液体アンモニア供給物を加圧して、加圧された液体アンモニア供給物を生成することと、
炉内で一次燃料を燃焼させて、触媒を含む反応器管を加熱し、煙道ガスを形成することと、
加熱されたアンモニアを、触媒を含む反応器管に供給して、水素ガス、窒素ガス、及び残留アンモニアを含む分解されたガスへのアンモニアの分解を引き起こすことと、
熱交換によって、分解されたガスを冷却して、冷却された分解されたガスを生成することと、
洗浄カラム内の水を使用して、冷却された分解されたガスからアンモニアを洗浄して、アンモニアが枯渇した分解されたガス及び水性アンモニア溶液を生成することと、
蒸留カラムシステム内の水性アンモニア溶液からアンモニアをストリッピングして、水が枯渇したアンモニア供給蒸気及びアンモニアが枯渇した水性底部液体を生成することと、
1つ以上の高温流体との熱交換によって水が枯渇したアンモニア供給蒸気を加熱して、加熱されたアンモニアを生成することと、
第1のPSAデバイス内のアンモニアが枯渇した分解されたガスを精製して、第1の水素生成物ガス及び第1のPSA排ガスを生成することと、を含み、
加圧された液体アンモニア供給物は、1つ以上の高温流体に対する熱交換によって加熱及び気化されて、アンモニア供給蒸気を生成し、これは、蒸留カラムシステムに供給されて、アンモニア供給蒸気から水を除去することを特徴とし、
1つ以上の高温流体が、分解されたガス及び/又は煙道ガスを含む。
【0015】
液体アンモニア供給物は、典型的には、1.1bar超、例えば、少なくとも5bar又は少なくとも10barの圧力に加圧される。いくつかの実施形態では、液体アンモニアは、約5bar~約50barの範囲内、又は約10~約45barの範囲内、又は約30bar~約40barの範囲内の圧力に加圧される。
【0016】
典型的には、液体アンモニア供給物は、少量の水が追加されており、輸送及び貯蔵中の船舶内の応力腐食分解を防止する。液体アンモニア供給物は、微量の不純物として、例えば、約0.1重量%~約0.5重量%の範囲内の量で、典型的には、約0.2重量%の量で水を含む。アンモニア分解触媒への損傷を防止するために、供給アンモニアから水を除去する必要もあり得る。いくつかの触媒、例えば、鉄系触媒は、水不耐性であり、水を含有する原料との相溶性が低い。
【0017】
液体アンモニア供給物は、加熱され、及び気化されて、アンモニア供給蒸気を生成する。蒸留カラムシステムに供給されるアンモニア供給蒸気の温度は、典型的には、約25℃~約90℃の範囲内にあり、これにより、水がまた気化されたアンモニアを用いて蒸留システムにも搬送されたことを確実とする。実際の温度は、ポンプ圧送された圧力でのアンモニアの沸点によって決定される。カラムに入る気化されたアンモニアは、蒸留システムを通して搬送される小さい(例えば、1~2%)水リッチ液相を含み得る。代替的に、水を含むアンモニア流は、気化され、別々に蒸留システムに供給され得る水リッチ液体流を離す。
【0018】
水は、蒸留カラムシステムを使用してアンモニア供給蒸気から除去される。アンモニア供給物はすでに気化されているため、蒸留カラムシステムの上部付近に導入され得る。生成された水が枯渇したアンモニア供給蒸気は、典型的には、5ppm未満、好ましくは、2ppm未満、より好ましくは、1ppm未満の水を含む。
【0019】
水が枯渇したアンモニア供給蒸気は、典型的には、加熱されて、約250℃超、例えば、約350℃~約800℃、又は約400℃~約600℃の範囲内にある温度で加熱されたアンモニアを生成する。
【0020】
温度は、最終的に、触媒の同一性、動作圧力、及び所望の「スリップ」、すなわち、分解されることなく分解反応器を通過するアンモニアの量によって決定される。これに関して、プロセスは、典型的には、約4%以下のスリップで動作し、これは、分解プロセスが平衡に近いアプローチで5bar及び350℃で動作させた場合のスリップ量である。いくつかの構造材料では、約700℃を上回る温度で任意の認識可能な圧力において問題が発生する可能性がある。
【0021】
分解反応は、炉によって加熱される触媒で充填された反応器管内で起こる。しかしながら、理論的には、任意の不均一に触媒されたガス反応器は、潜在的に変換のために使用することができる。
【0022】
アンモニア分解反応に有用であるとして当技術分野において既知の多数の触媒が存在し、これらの従来の触媒のいずれかが、本発明において使用され得る。鉄系触媒は、一般的にアンモニアの製造のためにHaber-Boschプロセスにおいて使用され、両方のプロセスは、同じ平衡制限反応であるため、かかる鉄系触媒が、アンモニア分解プロセスに利用され得ることが期待される。しかしながら、アンモニア生成プロセスでは、触媒は、供給物中に存在するppmレベルの水及び酸素によって被毒されることは広く既知である。したがって、鉄系触媒を使用する場合、供給アンモニア中の水を除去する必要があることが予想される。
【0023】
炉用の一次燃料は、典型的には、水素、アンモニア、分解されたガス、及び/又はPSA排ガスを含むが、一次燃料は、好ましくは、メタンを含む。燃料は、純粋なメタンであり得るが、天然ガス又はバイオガスである可能性も高い。
【0024】
PSAデバイスは、PSAサイクル又は真空スイング吸着(VSA)サイクルを動作させ得る。好適なPSAサイクルは、US9381460、US6379431、及びUS8778051に開示されているサイクルのいずれかを含み、これらの開示は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0025】
単一のPSAデバイスを有する通常のPSAシステムでは、水素の回収率は、典型的には、約75%~85%の範囲内にある。しかしながら、回収を増加させるためには2つの選択肢が存在する。第一に、PSA排ガスは、第1のPSAに再循環され得る。かかる実施形態では、第1のPSA排ガスは、圧縮され得、圧縮されたPSA排ガスは、第1のPSAデバイスに再循環され得る。このようにして再循環することで、約94%~約96%の全体的な水素回収を達成することができる。
【0026】
代替的に、2つのPSAデバイスは、直列に使用されてもよく、第1のPSA排ガスは、第2のPSAデバイスにおいて更に処理される。これらの実施形態では、プロセスは、第1のPSA排ガスを圧縮して、圧縮されたPSA排ガスを生成することと、第2のPSAデバイスにおいて圧縮されたPSA排ガスを精製して、第2のPSA排ガス及び第2の水素生成物ガスを生成することと、を含む。この方法における更なる処理は、約95%~約97%の全体的な水素回収を達成することができる。例えば、第1のPSAデバイスが83%の回復を達成し、第2のPSAが80%の回復を達成する場合、全体の回復は、96.6%である。
【0027】
これらの実施形態では、第2の水素ガスは、第1の水素生成物ガスと組み合わされて、組み合わされた水素生成物ガスを形成し得る。
【0028】
第1のPSAデバイスと同様に、第2のPSAデバイスは、PSAサイクル又は真空スイング吸着(VSA)サイクルを動作させ得る。好適なPSAサイクルとしては、US9381460、US6379431及びUS8778051内に開示されたサイクルのうちのいずれかが挙げられる。
【0029】
第1のPSAデバイス又は第2のPSAデバイスのいずれかからのPSA排ガスは、炉内での燃焼のための二次燃料として供給され得る。好ましくは、PSA排ガスは、1つ以上の高温流体に対する熱交換によって加温され、及び/又は任意選択的に、炉に供給される前に一次燃料と混合される。
【0030】
PSA排ガス、又はそれから誘導されたガスは、膜分離器を使用して分離されて、窒素リッチ残留ガスを放出し、水素リッチ透過ガスを再循環して、PSAデバイス内で更に処理し、及び/又は水素生成物ガスに混合することができる。
【0031】
水素と同様に、アンモニアは、ガス分離に使用される膜を容易に透過する「高速ガス」である。ポリアミド又はポリスルホンポリマーで構成された膜など、いくつかの膜は、アンモニアに対してより耐性がある。しかしながら、ポリイミドポリマーで構成された膜などの一部の膜は、アンモニアに対する耐性が低い。したがって、アンモニアは、典型的には、膜分離器の上流で除去されるか、又はその濃度が少なくとも低減される。
【0032】
冷却された分解されたガスは、典型的には、加圧された液体アンモニア供給物及び水が枯渇したアンモニア供給蒸気に対する熱交換、及び任意選択的に、一次燃料源、炉への空気供給、及び/又はPSA排ガスに対する熱交換によって生成される。
【0033】
アンモニアは、例えば、洗浄カラム内で、水でガスを洗うことによって、水中への吸収作用によって、冷却された分解されたガスから除去される。結果として得られたアンモニアが枯渇したガス及びアンモニア溶液は分離されるため、アンモニアが枯渇したガスは、アンモニアが困難を引き起こすことなく更に処理することができる。アンモニアは、蒸留カラムシステム内でストリッピングすることによって、水性アンモニア溶液から回収される。好ましくは、水性アンモニア溶液は、洗浄カラムから蒸留カラムシステムにポンプ圧送される。かかるプロセスはまた、膜分離器に供給される前に、PSA排ガスにも適用され得る。
【0034】
分解されたガスからアンモニアを回収することは、水素精製工程を簡素化するだけでなく、回収されたアンモニアがアンモニア供給物に再循環される際、アンモニアからの水素の回収を増加させる可能性がある。また、バーナへの供給物からアンモニアを除去し、アンモニアを燃焼させることによって引き起こされる窒素酸化物(NOx)の生成に関する懸念を低減させる。
【0035】
蒸留カラムシステムは、典型的には、アンモニア及び水性底部液体を含有するオーバーヘッド蒸気を生成する。蒸留カラムからの底部液体の一部は、パージされ得る。追加的又は代替的に、蒸留カラムからの底部液体の全部又は一部は、再沸騰され得る。これに関して、蒸留カラムシステム内又は蒸留カラムシステムからの底部液体は、1つ以上の高温流体に対する熱交換によって再沸騰され得る。
【0036】
他の実施形態では、蒸留カラムシステム内又は蒸留カラムシステムからの底部液体は、電動加熱器を使用して再沸騰される。加熱器は、プロセスの炭素強度を低減するため、太陽、風、又は潮汐エネルギーなどの少なくとも1つの再生可能源から発生した電気によって、少なくとも部分的に給電され得る。
【0037】
蒸留カラムシステムからの水性底部液体は、洗浄カラムに供給され得る。洗浄カラムに入る前に、水性底部液体は、好ましくは、冷却剤、好ましくは、洗浄カラムから蒸留システムに供給される水性アンモニア溶液との熱交換によって冷却される。
【0038】
いくつかの好ましい実施形態では、蒸留カラムシステム内又は蒸留カラムシステムからのオーバーヘッド蒸気は、冷却剤に対する熱交換によって部分的に凝縮されて、凝縮された流れ及び水が枯渇したアンモニア供給蒸気を生成する。凝縮された流れは、次いで、蒸留カラムシステムの還流として使用される。
【0039】
本発明の第2の態様によると、アンモニアから水素を生成するための装置が提供され、
微量不純物として水を含む液体アンモニア供給物を加圧して、加圧された液体アンモニア供給物を生成するためのポンプと、
1つ以上の高温流体との熱交換によって加圧された液体アンモニアを気化させてアンモニア供給蒸気を生成するために、ポンプと流体連通する少なくとも1つの第1の熱交換器と、
第1の熱交換器から加熱されたアンモニアを分解して、水素ガス、窒素ガス、及び残留アンモニアを含む分解されたガスを生成するために、第1の熱交換器と流体連通する触媒を含む反応器管と、
燃料を燃焼させて、触媒を含む反応器管を加熱し、煙道ガスを形成するために、触媒を含む反応器管と熱連通する炉と、
少なくとも1つの第1の熱交換器に、炉からの煙道ガスを供給するための煙道ガス導管と、
分解されたガスを、少なくとも1つの第1の熱交換器に供給するための分解されたガス導管と、
水を使用して、第1の熱交換器を通過した後に冷却された分解されたガスからアンモニアを洗浄して、アンモニアが枯渇した分解されたガス及び水性アンモニア溶液を生成するための、少なくとも1つの第1の熱交換器と流体連通する洗浄カラムと、
水性アンモニア溶液からアンモニアをストリッピングして、水が枯渇したアンモニア供給蒸気及びアンモニアが枯渇した水性底部液体を生成するために、洗浄カラムと流体連通する蒸留カラムシステムと、
アンモニア供給蒸気を、第1の熱交換器から蒸留カラムシステムに供給するためのアンモニア供給蒸気導管と、
高温流体のうちの1つ以上との熱交換によって更に加熱して、加熱されたアンモニアを生成するために、水が枯渇したアンモニア供給物を、蒸留カラムシステムから第1の熱交換器に供給するための水が枯渇したアンモニア供給蒸気導管と、
アンモニアが枯渇した分解されたガスを精製して、水素生成物ガス及び第1のPSA排ガスを生成するために、洗浄カラムと流体連通するPSAデバイスと、
PSAデバイスからの水素生成物ガスを除去するための水素生成物ガス導管と、を備える。
【0040】
炉は、触媒充填された反応器管から分離され得るが、炉及び触媒充填された反応器管は、好ましくは、同一ユニット内に統合される。好ましい実施形態では、蒸気メタン再形成(SMR)タイプの反応器が使用され、炉は、触媒を含む反応器管を通過させる放射線部分を含む。
【0041】
圧縮機は、第1のPSA排ガスを圧縮して、圧縮されたPSA排ガスを生成するために、第1のPSAデバイスの下流に提供され得る。圧縮機は、1つ以上のステージからなり得、冷却は、各ステージの間及び最終ステージの後に行われる。水は、典型的には、インターステージ又はアフタークーラステージで圧縮されたPSA排ガスから凝縮する。水性凝縮物は、典型的には、圧縮機の各冷却ステージの後に除去され、少量のアンモニアが、この凝縮物とともに第1のPSA排ガスから出る。
【0042】
いくつかの好ましい実施形態では、装置は、
第1のPSA排ガスを圧縮して、圧縮されたPSA排ガスを生成するための第1のPSAデバイスと流体連通する圧縮機と、
圧縮されたPSA排ガスを第1のPSAデバイスに再循環するための再循環導管と、を備える。
【0043】
いくつかの代替的な好ましい実施形態では、装置は、
第1のPSA排ガスを圧縮して、圧縮されたPSA排ガスを生成するための第1のPSAデバイスと流体連通する圧縮機と、
圧縮されたPSA排ガスを精製して、第2のPSA排ガス及び第2の水素ガスを生成するために圧縮機と流体連通する第2のPSAデバイスと、
第2のPSAデバイスから第2の水素ガスを除去するための第2の水素ガス導管と、
第2のPSAデバイスから第2のPSA排ガスを除去するための第2のPSA排ガス導管と、を備える。
【0044】
これらの実施形態では、第1及び第2の水素ガス導管は、組み合わせて、水素生成物ガス導管を形成する。
【0045】
いくつかの好ましい実施形態では、第1のPSA排ガス及び/又は第2のPSA排ガスの一部又は全部は、再循環され、炉内での燃焼のための二次燃料として使用することができる。これらの実施形態では、装置は、第1のPSA排ガス及び/又は第2のPSA排ガスを炉に供給するための導管を備える。好ましくは、導管は、炉内で燃焼する前に、1つ以上の高温流体に対する熱交換によって加熱するために、第1の熱交換器と流体連通する。
【0046】
ここで、本発明を、以下の図面を参照しながら一例として説明する。
【図面の簡単な説明】
【0047】
図1】水素を生成するためのアンモニア分解プロセスの第1の参考例のプロセスフロー図である。
図2】水素生成物を燃料として使用しない、図1のアンモニア分解プロセスに基づく、別の参考例のプロセスフロー図である。
図3】PSA排ガスのみを燃料として使用する、図1及び2のアンモニア分解プロセスに基づく、更なる参考例のプロセスフロー図である。
図4】分解されたガスからの残留アンモニアの回収を含む、アンモニア分解プロセスのプロセスフロー図である。
図5】本発明による、水が供給アンモニアから除去される水素を生成するためのアンモニア分解プロセスの一実施形態のプロセスフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0048】
アンモニアを分解することによって水素を生成するためのプロセスが本明細書において説明される。プロセスは、化石燃料の代わりに再生可能エネルギーを使用して生成される水素である、いわゆる「グリーン」水素を生成するための特定の用途を有する。この場合、アンモニアは、典型的には、水素を生成するために、風力及び/又は太陽エネルギーなどの再生可能エネルギーから生成された電気を使用して水を電解することによって生成され、次いで、水素よりも輸送しやすいアンモニアを生成するために窒素と触媒的に反応させる(Haberプロセス)。目的地に到達した後、アンモニアは、次いで分解されて、水素を再生する。
【0049】
本発明のプロセスでは、反応に必要とされる熱は、典型的には、炉内でのPSA排ガス(通常、ある程度の量の残留水素及びアンモニアを含む)の燃焼によって提供される。PSA排ガスが、気化されたアンモニアよりも不十分な加熱値を有する場合、生成物水素の一部分、又は別の燃料が使用され得る。
【0050】
実際には、天然ガスは、水素に関するSMRで実践されるように、PSA排ガスとともに燃料として使用され得る。しかしながら、そのように生成された水素の「グリーン」又は再生可能な資質を維持することを所望して、「再生可能な燃料」を使用する動機が存在する。これは、分解された「再生可能な」アンモニア、アンモニア自体、又はバイオガスなどの別の再生可能エネルギー源であり得、又は電気が、それ自体が再生可能な源からであるかどうかにかかわらず、実際には電気加熱であり得、この場合は、アンモニアの形態で輸送された水素を生成するために使用される再生可能な電気とは対照的に、分解プロセスに対して局所的である。
【0051】
プロセスの参考例は、図1に示される。このプロセスは、貯蔵(図示せず)から液体アンモニアを取り出す。分解されるアンモニア(ライン2)は、所望の分解圧力(GB1142941を参照)を超える圧力に液体としてポンプ圧送される(ポンプP201)。反応圧力は、ルシャトリエの原理により、動作圧力と変換との間の折衷である。液体アンモニアをポンプ圧送することは、生成物の水素を圧縮するよりも少ない電力及び資本を必要とするため、反応器(8)をより高い圧力で動作させる動機となる。
【0052】
次いで、加圧された液体アンモニア(ライン4)を加熱し、気化させ(それがその臨界圧力を下回る場合)、反応管を離れる分解されたガス及び炉からの煙道ガスにおいて利用可能な熱を使用して、熱交換器(E101)を介して最大250℃超の温度に更に加熱する。図では、熱交換器(E101)は、1つの熱交換器として示されているが、実際には、ネットワーク内の一連の熱交換器になる。
【0053】
代替的に、加圧された液体アンモニアの初期加熱及び気化は、冷却水又は周囲空気などの代替熱源に対して行われてもよい。典型的な反応温度は、500℃超(US2601221参照)であり、パラジウム系システムは、600℃及び10barで動作することができ、一方でRenCatの金属酸化物系システムは、300℃及び1bar未満で動作する。(https://www.ammoniaenergy.org/articles/ammonia-cracking-to-high-purity-hydrogen-for-pem-fuel-cells-in-denmark/を参照されたい)。分解装置の動作圧力は、典型的には、いくつかの要因の最適化である。水素及び窒素へのアンモニアの分解は、低圧によって好まれるが、他の要因は、消費電力(生成物水素を圧縮するのではなく供給アンモニアをポンプ圧送することによって最小限に抑えられる)、及びPSAサイズ(より高い圧力でより小さい)などのより高い圧力を好む。
【0054】
高温のアンモニア(ライン6)は、所望の圧力で反応器(8)の反応管に入り、そこで炉(10)によって追加の熱が提供されて、アンモニアを窒素及び水素に分解する。結果として得られた残留アンモニア、水素、及び窒素の混合物は、反応温度及び圧力で反応器の反応管(8)を出る(ライン12)。反応生成物は、供給アンモニア(ライン4から)、炉燃料(この場合はライン14、ポンプP202及びライン16からポンプ圧送されたアンモニア、ライン18からのPSA排ガス、並びにライン20内で燃料として使用される生成物水素)、及び燃焼空気(ライン22、ファンK201及びライン24から)の組み合わせに対して熱交換器(E101)内で冷却されて、PSAデバイス(26)の入口に必要な温度にできるだけ近づくように温度を低減させる。分解されたガス混合物(ライン28)中の残留熱は、水冷装置(図示せず)内で除去されて、PSAデバイス(26)への入口温度を約20℃~約60℃の範囲内、例えば、約50℃で達成する。
【0055】
PSA生成物(ライン30)は、ISO規格14687(水素燃料品質)に準拠した純粋な水素であり、ほぼ反応圧力で、残留アンモニア<0.1ppmv、窒素<300ppmvを有する。生成物水素(ライン30)は、輸送のため、管トレーラ(図示せず)に充填するために更に圧縮(図示せず)されるか、又は任意の必要な圧縮後に水素液化器(図示せず)内で液化され得る。PSAデバイス(26)からのPSA排ガス(ライン18)又は「パージガス」は、燃焼燃料として(ライン36内で)炉に送られる前に、反応器(8)の反応管を離れる分解されたガス(ライン12)又は炉煙道ガス(ライン32)を使用して、熱交換器E101を介して加熱されるように示される。しかしながら、PSA排ガス(ライン18)は、加熱せずに炉(10)に直接供給される場合もある。
【0056】
結果として得られた加温されたアンモニア燃料(ライン34)及び加温された水素(ライン40)は、ミキサ(42)内で(任意選択的に)加温されたPSA排ガス(ライン36)と組み合わされて、組み合わされた燃料を生成するように描写され、これは燃焼のために炉(10)に供給されて(ライン44)、煙道ガスを生成する(ライン32、及び、E101で冷却した後、ライン48)。しかしながら、1つ以上の燃料は、事前に混合することなく、炉に直接供給され得ることに留意されたい。加温された空気(燃料の燃焼用)は、ライン46において炉(10)に供給される。
【0057】
本プロセスの好ましい実施形態の目的のうちの1つは、再生可能なアンモニアを分解することによって生成される水素の量を最大化することである。つまり、燃料として使用される水素の量を最小限に抑えること、又はアンモニアを直接燃料として使用する場合はアンモニアを最小限に抑えることを意味する。したがって、熱煙道ガス及び分解されたガスを適切に使用するために、例えば、空気(ライン24)及びアンモニア(ライン4)を分解装置に対して予熱するために、熱統合が重要であり、これにより、炉(10)のバーナにおいて使用される「燃料」の量を低減させる。これは、より少ない水素が水として炉煙道ガス(ライン32及び48)中で失われるので、より高い水素回収につながる。したがって、例えば、蒸気生成は、プロセス内熱統合を支持して最小限に抑えられるべきである。
【0058】
図1は、燃料(ライン34及び44)及び供給物(ライン6)として提供されるアンモニアを示し、また、燃料として生成物水素(ライン40及び44)も示し、実際には、これらの流れのうちの1つのみが燃料として使用される可能性が高い。これに関連して、図2は、アンモニアが燃料(ライン34)として使用されているが、生成物水素が使用されていない図1と同様のプロセスを描写する。図2に描写されるプロセスの他の全ての特徴は、図1と同じであり、共通の特徴は、同じ参照番号を与えられている。
【0059】
本発明者らは、水素が燃料としても使用される場合、特に、起動時及びウォームアップ時に、アンモニアの安定した燃焼が促進されることを認識している。
【0060】
図3は、図2において描写されるものと同様のプロセスを描写する。このプロセスでは、PSAからの水素の回収(ライン30)が調整されて、燃焼時にプロセスに必要な全ての熱を提供し、そのためトリム燃料の必要性を排除する排ガス(ライン18)を提供し得る。図3に描写されるプロセスの他の全ての特徴は、図1と同じであり、共通の特徴は、同じ参照番号を与えられている。
【0061】
上で考察されたように、分解反応のための実行可能な再生可能エネルギーの代替源が存在する場合、PSAから生成された水素に加えて、プロセスからの純水素生成を増加させるために、PSA排ガスから水素を回収することを検討することができる。かかるプロセスは、直列又は並列の膜を使用して、窒素リッチPSA排ガス流から水素を分離することができる。
【0062】
分解されたガス(ライン12)は、残留量のアンモニアを含有し、これは、除去され、分解プロセスに再循環させることができる。これは、2つの利点を有し、第一に、吸着プロセスを簡素化し、第二に、蒸留システム中で水からアンモニアをストリッピングすることによって、分解されていないアンモニアをプロセスに戻すことを可能にする。アンモニアを特に除去する必要があるが、膜材料はアンモニアに耐性がなく、アンモニアは高速ガスであり、水素で浸透するため、除去されない場合プロセス内に蓄積するため、膜が分離プロセスの一部として使用されている場合、この限りではない。NH3は、例えば、水洗い又はアンモニア除去のための他の既知の技術によって、膜の上流で除去され得る。アンモニア除去工程において回収されたアンモニアは、蒸留システムを使用して分解プロセスへの供給物に回収されて、分解されたガスからアンモニアを吸収するために使用された水からアンモニアを回収することができる。これは、理論的には、プロセスからの水素回収率を最大100%まで増加させることができる。分解されたガスからNH3を回収することは、水素精製工程を簡素化し、分離されたアンモニアが供給物として回収された場合、アンモニアからの水素の回収率を増加させ得、また、バーナへの供給物からアンモニアを除去し、NH3を燃焼させることによって引き起こされるNOxの生成に関する懸念を排除する。
【0063】
図4は、分解されたガスから残留アンモニアを回収し、回収されたアンモニアを分解のために触媒を含む反応器管に再循環させる従来の手段を伴うプロセスを描写する。図1~3のプロセスに共通する図4のプロセスの特徴は、同じ参照番号を与えられている。以下は、図4の新機能の考察である。
【0064】
燃料(ライン50)は、熱交換器(E101)で加熱される。結果として得られた加温された燃料(ライン52)は、ミキサ(42)内で加温されたPSA排ガス(ライン36)と組み合わされて、組み合わされた燃料を生成するように描写され、これは、燃焼のために炉(10)に供給されて(ライン44)、煙道ガスを生成する(ライン32、及び、E101で冷却した後、ライン48)。しかしながら、1つ以上の燃料は、事前に混合することなく、炉に直接供給され得ることに留意されたい。加温された空気は、ライン46において炉(10)に供給される。
【0065】
分解されたガスは、供給アンモニア(ライン4から)、炉燃料(この場合は、ライン50、ライン18からのPSA排ガス)、及び燃焼空気(ライン22、ファンK201及びライン24から)の組み合わせに対して熱交換器(E101)内で冷却されて、洗浄カラム(60)の入口に必要とされる温度にできるだけ近づくように温度を低減させる。洗浄カラム(60)への入口温度は、好ましくは、約5℃~約30℃の範囲内、例えば、約10℃である。
【0066】
冷却された分解されたガス(ライン28)は、洗浄カラム(60)に供給され、ここで水(ライン61)が使用されて、分解されたガスから残留アンモニアを回収し、アンモニアが枯渇した分解されたガス及び水性アンモニア溶液を生成する。水性アンモニア溶液は(ライン70)ポンプ(P301)を使用して蒸留カラムシステム(72)に移送される。いくつかの実施形態では、この目的のためにポンプを使用する必要はない場合がある。
【0067】
蒸留カラムシステム(72)は、水性アンモニア溶液から水を除去して、水が枯渇したアンモニア供給蒸気及びアンモニアが枯渇した水性底部液体を生成する。水が枯渇したアンモニア供給蒸気は、分解のためにライン76を介して触媒を含む反応器管に再循環される。アンモニアを含むオーバーヘッド蒸気は、凝縮器(82)によって部分的に凝縮され、二相流体は、分離器(80)内で相分離されて、還流としてカラムシステム(72)に供給される凝縮液体(ライン78)、及び水が枯渇したアンモニア供給蒸気(ライン76)を生成する。
【0068】
カラムシステム(72)からの水性底部液体は、パージされるか(ライン86)又は再沸騰させることができる。これに関して、水性底部液体(ライン88)は、ライン90を介して分離器(92)に供給される前に、熱交換器(E101)内で加温され、部分的に気化させることができる。代替的に、又は追加的に、水性底部液体(ライン88)は、電力加熱器(図示せず)を使用して加温され及び部分的に気化され得る。分離器(92)は、再沸騰された水性底部液体の液体部分及び蒸気部分を分離する。蒸気部分は、ライン94を介して蒸留カラムシステム(72)に戻して供給されて、カラムシステムのための蒸気を提供する。再沸騰液体の液体部分は、現在、アンモニアの大部分がストリッピングされた水リッチ液体であり、ライン96を介して洗浄カラム(60)に供給される。代替的に、加温され、部分的に気化した水性底部液体(ライン90)は、蒸留システム(72)に直接戻って供給されることもある(図示せず)。
【0069】
再沸騰した水性底部液体から誘導される水リッチ液体(ライン96)は、洗浄カラム(60)に入る前に冷却される。好ましくは、冷却は、熱交換器(98)内の水性アンモニア溶液(ライン106及び108)に対する熱交換によって達成される。冷却された水リッチ液体(ライン100)は、洗浄カラム(60)に供給される前に、熱交換器(102)内の冷却剤に対する熱交換によって更に冷却される。
【0070】
アンモニアが枯渇した分解されたガスは、第1のPSAデバイス(26)に供給される(ライン62)。分解されたガスは、第1の水素生成物ガス(ライン30)及び排ガス(ライン54)を形成するように分離される。排ガスは、任意選択的に、熱交換器(E101)及びミキサ(42)(図示せず)を介して、炉に戻って供給され得る(ライン54)。
【0071】
1つの代替例では、図4及び5に示されるように、第1のPSAデバイス(26)からの排ガス(ライン54)は、圧縮機(K301)内で圧縮されて、圧縮されたPSA排ガス(ライン56)を生成し、これは、第2の水素生成物ガス(ライン66)及び第2のPSA排ガス(ライン18)を生成するために、第2のPSAデバイス(64)に供給される。第2の水素生成物ガス(ライン66)は、第1のPSAデバイス(26)からの水素生成物ガス(ライン30)と組み合わされて、組み合わされた水素生成物ガス(ライン68)を生成する。第2のPSA排ガス(ライン18)は、熱交換器(E101)内の分解されたガス(ライン12)及び煙道ガス(ライン32)に対する熱交換によって加温され、次いで燃料(ライン36及び44)として炉(10)に供給される。
【0072】
任意選択的に、(ライン54からの)第1のPSA排ガスの一部分は、第2のPSA排ガス(ライン18)と組み合わされて、組み合わせたPSA排ガスを生成することができこれは、次いで、炉(10)内で燃料として使用することができる。
【0073】
第2のPSA排ガス、又は組み合わされたPSA排ガスは、任意選択的に、一次燃料(ライン50及び52)(図示せず)と加熱及び/又は混合することなく、炉(10)に直接供給され得る。
【0074】
単一のPSAデバイス(26)のみを有する別の実施形態では、圧縮されたPSA排ガス(ライン56)は、冷却されたアンモニアが枯渇した分解されたガス(62)(図示せず)で精製するために、第1のPSAデバイス(26)に戻って再循環させることができる。
【0075】
更なる実施形態では、第1のPSA排ガス(ライン54)の第1の部分は、圧縮機(K301)内で圧縮して、圧縮されたPSA排ガス(ライン56)を生成し、上で説明されたように更に処理することができる。しかしながら、第1のPSA排ガスの第2の部分(図示せず)は、流量制御バルブ(図示せず)を介して炉に戻して供給することができる。バルブは、燃料に使用されるPSA排ガス対一次燃料の比を制御し、それによってプロセスの炭素強度を制御することができる。
【0076】
アンモニア分解触媒への損傷を防止するために、供給アンモニアから水を除去する必要もあり得る。いくつかの触媒、例えば、鉄系触媒は、水不耐性であることが既知であり、水を含有する原料と相溶性がない。残念なことに、アンモニアは、典型的に、少量の水が追加されており、輸送及び貯蔵中の船舶内の応力腐食分解を防止する。この水が除去される場合、水不耐性触媒を含む、任意の好適な分解触媒が使用され得る。
【0077】
水除去は、図5に示されるように、蒸留カラムシステムに組み込むことができる。図1~4のプロセスに共通する図5のプロセスの特徴は、同じ参照番号を与えられている。以下は、図5の追加的な機能の考察である。
【0078】
図5では、加圧された液体アンモニア供給物(ライン4)が加温され、熱交換器(E101)内で少なくとも部分的に気化される。アンモニアは、必要な圧力で蒸発し、水が気化したアンモニアとともに蒸留システムを通して搬送されたことを確実とする。
【0079】
加温され、気化したアンモニア供給物(ライン110)は、通常、カラムの中間場所において、蒸留システム(72)に供給される。カラムシステム内で生成されたオーバーヘッド蒸気は、実質的に水を含まず(例えば、約1ppmの水を含有する)、分解されたガスから回収されたアンモニアとともに、供給物からのアンモニアを含む。
【0080】
回収されたアンモニア(ライン76)は、熱交換器(E101)に戻されて、反応器(8)の反応管に供給される(ライン6)前に、更に加熱される。
【0081】
ここで、本発明を、以下の発明の実施例を参照して、及び以下の参考例との比較によって例解する。
【0082】
参考例1
図2に描写されるプロセスは、コンピュータ(Aspen Plus,ver.10、Aspen Technology,Inc.)によってシミュレートされ、及び結果は、表1に描写される。この実施例は、11bar及び500℃における分解反応の平衡を想定している。
表1
【表1】
【0083】
この参考例では、アンモニアからの水素回収率は、77.18%であり、PSA回収率は83.5%である。アンモニア供給ポンプ(P201)、アンモニア燃料ポンプ(P202)及び空気ファン(K201)の総出力は、約1.36kWである。加えて、PSAオフガス中のアンモニアのパーセンテージは、3.6492%である。
【0084】
参考例2
図3に描写されるプロセスは、コンピュータ(Aspen Plus,ver.10)によってシミュレートされ、及び結果は、表2に描写される。この実施例は、11bar及び500℃における分解反応の平衡を想定している。
表2
【表2】
【0085】
この参考例では、アンモニアからの水素回収率は、77.05%であり、PSA回収率は79.4%である。アンモニア供給ポンプ(P201)及び空気ファン(K201)の総出力は、約1.37kWである。加えて、PSAオフガス中のアンモニアのパーセンテージは、3.3810%である。
【0086】
参考例3
図4に描写されるプロセスは、コンピュータ(Aspen Plus,ver.10)によってシミュレートされ、及び結果は、表3に描写される。シミュレーションの目的のために、11bar及び500℃における分解反応の平衡を想定した。
表3
【表3】
【0087】
発明の実施例では、アンモニアからの水素回収率は、96.47%である。加えて、第2のPSAからのPSAオフガス中のアンモニアのパーセンテージは、0.083%であり、粗水素が1.398から0.024%までアンモニア含有量を低減させたことが分かる。分解されたガスから全てのアンモニアが回収されたわけではない。より多くのアンモニア回収が、ストリッピングカラム内でより多くのリボイラデューティを必要とするため最適化が実施され、プロセスの効率に影響を与えることなく、プロセス内のデューティに利用可能な熱に制限がある。
【0088】
参考例4
図4に描写されるプロセスは、コンピュータ(Aspen Plus,ver.10)によってシミュレートされ、及び結果は、表4に描写される。シミュレーションの目的のために、21bar及び500℃での分解反応の平衡を想定した。
表4
【表4】
【0089】
発明の実施例では、アンモニアからの水素回収率は、96.45%である。加えて、粗水素は、アンモニア含有量が2.614%から0.029%に低減したことが分かる。
【0090】
発明の実施例1
図5に描写されるプロセスは、コンピュータ(Aspen Plus,ver.10)によってシミュレートされ、及び結果は、表5に描写される。シミュレーションの目的のために、11bar及び500℃における分解反応の平衡を想定した。
表5
【表5】
【0091】
発明の実施例では、アンモニアからの水素回収率は、96.41%である。加えて、粗水素は、アンモニア含有量が1.401%から0.087%に低減したことが分かる。
【0092】
発明の実施例2
図5に描写されるプロセスは、コンピュータ(Aspen Plus,ver.10)によってシミュレートされ、及び結果は、表6に描写される。シミュレーションの目的のために、21bar及び500℃での分解反応の平衡を想定した。
表6
【表6】
【0093】
発明の実施例では、アンモニアからの水素回収率は、96.41%である。加えて、粗水素は、アンモニア含有量が2.619%から0.053%に低減したことが分かる。
【0094】
本発明は、本発明のいくつかの態様の例解として意図される実施例に開示される特定の態様又は実施形態によって範囲が限定されるべきではなく、機能的に等価である任意の実施形態は、本発明の範囲内にある。本明細書に示され、説明されるものに加えて、本発明の様々な修正が、当業者に明らかとなり、添付の特許請求の範囲内であることが意図される。
図1
図2
図3
図4
図5
【国際調査報告】