(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-05
(54)【発明の名称】音響振動の再生の制御
(51)【国際特許分類】
H04R 3/00 20060101AFI20240628BHJP
H04R 1/00 20060101ALI20240628BHJP
【FI】
H04R3/00 310
H04R1/00 310G
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2023577364
(86)(22)【出願日】2021-06-15
(85)【翻訳文提出日】2023-12-14
(86)【国際出願番号】 EP2021066079
(87)【国際公開番号】W WO2022262950
(87)【国際公開日】2022-12-22
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516140731
【氏名又は名称】フレクソウンド システムズ オサケユイチア
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100153729
【氏名又は名称】森本 有一
(72)【発明者】
【氏名】トンミ インモネン
(72)【発明者】
【氏名】ユッカ リニヤマ
(72)【発明者】
【氏名】アキ キビビルタ
(72)【発明者】
【氏名】ベサ バリマキ
【テーマコード(参考)】
5D017
5D220
【Fターム(参考)】
5D017AA14
5D017AA15
5D220AA34
5D220AB04
(57)【要約】
例示的な実施形態によれば、信号処理アセンブリ(101)を提供し、信号処理アセンブリ(101)は、入力信号に基づいて出力信号を導出する信号処理部(110)と、音響振動再生装置(130)によるレンダリングのために、信号処理部(110)における出力信号の導出を制御する制御部(120)と、を備え、制御部(120)は、第1の周波数帯域及び第2の周波数帯域における出力信号の導出のためにそれぞれの増幅を個別に制御するように配置され、第1の周波数帯域は、触覚周波数を表し、第2の周波数帯域は、可聴周波数を表し、信号制御部は、第2の周波数帯域のためのユーザが選択した第2の増幅に依存する第1の周波数帯域のための第1の増幅を決定することと、入力信号によって表される信号コンテンツタイプに依存する第1の周波数帯域のための第1の増幅を決定することと、のうちの少なくとも一方を行うように配置される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力信号に基づいて出力信号を導出する信号処理部(110)と、
音響振動再生装置(130)による提供のために、前記信号処理部(110)における前記出力信号の導出を制御する制御部(120)と、
を備え、前記制御部(120)は、第1の周波数帯域及び第2の周波数帯域における前記出力信号の導出のためにそれぞれの増幅を個別に制御するように配置され、前記第1の周波数帯域は、触覚周波数を表し、前記第2の周波数帯域は、可聴周波数を表し、前記信号制御部は、
前記第2の周波数帯域のためのユーザが選択した第2の増幅に依存する前記第1の周波数帯域のための第1の増幅を決定することと、
前記入力信号によって表される信号コンテンツタイプに依存する前記第1の周波数帯域のための第1の増幅を決定することと、
のうちの少なくとも一方を行うように配置された、信号処理アセンブリ(101)。
【請求項2】
前記第1の増幅は、前記第1の周波数帯域に亘る周波数の関数として定義される、請求項1に記載の信号処理アセンブリ(101)。
【請求項3】
前記第1の増幅は、複数の異なる第2の増幅値に対して前記第2の増幅と異なる、請求項1又は2に記載の信号処理アセンブリ(101)。
【請求項4】
前記制御部(120)は、前記第2の増幅に依存して前記第1の増幅を決定するように配置され、前記制御部(120)は、基準マスキングスペクトルを考慮して前記第2の周波数帯域に対して選択された増幅の関数として前記第1の周波数帯域に適用可能な増幅を定義する予め定義されたマッピング関数の使用により前記第1の増幅を決定するように配置された、請求項3に記載の信号処理アセンブリ(101)。
【請求項5】
前記予め定義されたマッピング関数は、前記第2の周波数帯域における第2の信号レベルのそれぞれの範囲を表す第2の増幅値の範囲から前記第1の周波数帯域における第1の振幅レベルのそれぞれの範囲を表す第1の増幅値の対応する範囲へのマッピングに基づく、請求項4に記載の信号処理アセンブリ(101)。
【請求項6】
前記第2の増幅値の範囲及び前記第1の増幅値の対応する範囲は、前記基準マスキングスペクトルに従ってそれぞれのマスキングレベルに関連付けられた第2の増幅値及び対応する第1の増幅値の複数の対を含み、各対において、それぞれの前記第2の増幅値は、それぞれの前記マスキングレベルにおいて前記第2の周波数帯域における前記基準マスキングスペクトルを克服するのに十分であると考えられる第2の信号レベルを表し、それぞれの対応する前記第1の増幅値は、それぞれの前記マスキングレベルにおいて前記第1の周波数帯域における前記基準マスキングスペクトルを克服するのに十分であると考えられる第1の信号レベルを表す、請求項5に記載の信号処理アセンブリ(101)。
【請求項7】
前記制御部(120)は、前記第2の増幅に依存するとともに前記入力信号によって表される信号コンテンツタイプに更に依存して前記第1の増幅を決定するように配置され、前記制御部(120)は、
前記入力信号の前記信号コンテンツタイプを、割り当てられたそれぞれの前記基準マスキングスペクトルを考慮して前記第1の周波数帯域に適用可能な増幅を前記第2の周波数帯域に対して選択された増幅の関数として定義するそれぞれのマッピング関数をそれぞれ有する予め定義された複数の信号コンテンツタイプのうちの一つとして決定し、
前記決定された信号コンテンツタイプに割り当てられた前記マッピング関数を使用して前記第1の増幅を決定するように配置された、請求項1~3のいずれか一項に記載の信号処理アセンブリ(101)。
【請求項8】
前記決定された信号コンテンツタイプに割り当てられた前記予め定義されたマッピング関数は、前記決定された信号コンテンツタイプを考慮して前記第2の周波数帯域における第2の信号レベルのそれぞれの範囲を表す第2の増幅値の範囲から前記第1の周波数帯域における第1の信号レベルのそれぞれの範囲を表す対応する第1の増幅値の範囲へのマッピングに基づく、請求項7に記載の信号処理アセンブリ(101)。
【請求項9】
前記第2の増幅値の範囲及び対応する前記第1の増幅値の範囲は、前記基準マスキングスペクトルに従ってそれぞれのマスキングレベルに関連付けられた第2の増幅値及び対応する第1の増幅値の複数の対を含み 各対において、それぞれの前記第2の増幅値は、それぞれの前記マスキングレベルにおいて前記第2の周波数帯域における前記基準マスキングスペクトルを克服するのに十分であると考えられる第2の信号レベルを表し、それぞれの対応する前記第1の増幅値は、それぞれの前記マスキングレベルにおいて前記第1の周波数帯域における前記基準マスキングスペクトルを克服するのに十分であると考えられる第1の信号レベルを表す、請求項8に記載の信号処理アセンブリ(101)。
【請求項10】
前記予め定義された基準マスキングスペクトルは、
前記音響振動再生装置(130)の目標動作環境における背景雑音状態のスペクトル特性を表す予め定義された基準背景雑音スペクトルと、
前記音響振動再生装置(130)の一つ以上の態様をモデル化する予め定義された音響再生スペクトルと、
のうちの一つ以上を更に表す、請求項4~9のいずれか一項に記載の信号処理アセンブリ(101)。
【請求項11】
前記制御部(120)は、前記入力信号によって表される信号コンテンツタイプに依存して前記第1の増幅を決定するように配置され、前記制御部(120)は、
前記入力信号の前記信号コンテンツタイプを、割り当てられるそれぞれの増幅プロファイルをそれぞれ有する複数の予め定義された信号コンテンツタイプのうちの一つとして決定し、
前記決定された信号コンテンツタイプに割り当てられた前記増幅プロファイルに従って前記第1の増幅を決定するように配置された、請求項1~3のいずれか一項に記載の信号処理アセンブリ(101)。
【請求項12】
前記決定された信号コンテンツタイプに割り当てられた前記増幅プロファイルは、前記第1の周波数帯域における周波数の関数として調整係数を定義する調整曲線を定義し、
前記制御部(120)は、前記第2の増幅と前記調整曲線の積として前記第1の増幅を決定するように配置された、請求項11に記載の信号処理アセンブリ(101)。
【請求項13】
前記決定された信号コンテンツタイプに割り当てられた前記増幅プロファイルは、
前記第1の周波数帯域における周波数の関数として最大エネルギーを定義する最大エネルギー曲線と、
前記第1の周波数帯域における周波数の関数として最小エネルギーを定義する最小エネルギー曲線と、
のうちの少なくとも一方を更に定義し、
前記制御部(120)は、前記最大エネルギー曲線と前記最小エネルギー曲線とのうちの少なくとも一方に従って前記第1の増幅を制限するように配置された、請求項12に記載の信号処理アセンブリ(101)。
【請求項14】
前記複数の信号コンテンツタイプは、
音声と、
音楽と、
混合音声と、
サウンドマッサージと、
音響及び/又は振動効果と、
アラーム音及び/又は振動と、
のうちの少なくとも二つを含む、請求項7~13のいずれか一項に記載の信号処理アセンブリ(101)。
【請求項15】
前記制御部(120)は、
前記入力信号に関連するメタデータと、
前記入力信号の分析と、
のうちの一つを介して前記信号コンテンツタイプを決定するように配置された、請求項7~14のいずれか一項に記載の信号処理アセンブリ(101)。
【請求項16】
前記制御部(120)は、前記第1の周波数帯域における信号電力が少なくとも予め定義された期間中に予め定義された閾値を連続的に超えることに応答して、前記第1の増幅を低減するように配置された、請求項1~15のいずれか一項に記載の信号処理アセンブリ(101)。
【請求項17】
請求項1~16のいずれか一項に記載の信号処理アセンブリ(101)と、
出力信号に従って音響及び振動を生成する音響振動再生装置(130)と、
を備える音響振動再生配置(100)。
【請求項18】
前記音響振動再生装置(130)は、パッドと、前記パッドの少なくとも一つの外面における振動及び音響として知覚可能な機械的な振動を生成するとともに前記パッドの少なくとも一つの外面を通して音を発するために前記パッドの内部に配置された音響振動再生アセンブリと、を備え、前記音響振動再生アセンブリの各々は、前記出力信号のそれぞれのオーディオチャンネルを表す音響振動を再生するように配置された、請求項17に記載の配置。
【請求項19】
入力信号に基づいて出力信号を導出する信号処理部(110)の動作を制御する方法(200)であって、第1の周波数帯域及び第2の周波数帯域における前記出力信号の導出のためにそれぞれの増幅を個別に制御することを備え、前記第1の周波数帯域は、触覚周波数を表し、前記第2の周波数帯域は、可聴周波数を表し、前記個別に制御することは、
前記第2の周波数帯域のためのユーザが選択した第2の増幅に依存する前記第1の周波数帯域のための第1の増幅を決定することと、
前記入力信号によって表される信号コンテンツタイプに依存する前記第1の周波数帯域のための第1の増幅を決定することと、
のうちの少なくとも一方を行うことを備える、方法(200)。
【請求項20】
コンピュータ装置(300)で実行するときに少なくとも請求項19に記載の方法(200)を実行させるように構成されたコンピュータ可読なプログラムコード(325)を含むコンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の例示的な実施形態は、音響振動の改善された再生に関する。
【背景技術】
【0002】
人間の聴覚は、主に耳を通して知覚されるが、特に周波数スペクトルの低域では触覚によってサポートされる。例えば、50Hz以下の周波数では、人間のリスナーが音を知覚するために、80dBを超える音圧レベルが通常必要とされる。そのような音圧レベルでは、人間の皮膚も知覚可能なレベルで振動し始め、聴覚をサポートする役割を果たす触感覚すなわち触覚が生じる。20Hzより下の周波数(超低周波数)では、聴覚又は気圧振動の感知は、触覚のみに基づく。20Hzより下の超低周波に加え、皮膚の触覚の周波数範囲は、典型的には、約500Hzまで広がり、他の感覚に障害を持つ感受性の強い人の場合は、約1000Hzまで広がることもある。したがって、触覚は、知覚可能な音声周波数スペクトルのかなりの部分で人間の聴覚をサポートする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
その結果、可聴周波数を触覚周波数と共に伝える音響再生は、没入感のあるリスニング体験を可能にする多感覚的なアプローチを提供する。しかしながら、音響振動の高品質な再生のためには、一方では、リスナーに追加情報を伝える方法で可聴周波数を正確に補完し、他方では、広範囲な振動による不快感を回避するようにするように、周波数スペクトルの触覚部分を注意深く制御する必要がある。
【0004】
したがって、本発明の目的は、人間のリスナーに対する触覚周波数の再生の改善された制御を促進する技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
例示的な実施形態によれば、信号処理アセンブリを提供し、信号処理アセンブリは、入力信号に基づいて出力信号を導出する信号処理部と、音響振動再生装置による提供(rendering)のために、信号処理部における出力信号の導出を制御する制御部と、を備え、制御部は、第1の周波数帯域及び第2の周波数帯域における出力信号の導出のためのそれぞれの増幅を個別に制御するように配置され、第1の周波数帯域は、触覚周波数を表し、第2の周波数帯域は、可聴周波数を表し、信号制御部は、第2の周波数帯域のためのユーザが選択した第2の増幅に依存する第1の周波数帯域のための第1の増幅を決定することと、入力信号によって表される信号コンテンツタイプに依存する第1の周波数帯域のための第1の増幅を決定することと、のうちの少なくとも一方を行うように配置される。
【0006】
別の例示的な実施形態によれば、音響振動再生配置を提供し、配置は、上述した例示的な実施形態による信号処理アセンブリと、出力信号に従って音響及び振動を生成する音響振動再生装置と、を備える。
【0007】
別の例示的な実施形態によれば、入力信号に基づいて出力信号を導出する信号処理エンティティの動作を制御するための方法を提供し、方法は、第1の周波数帯域及び第2の周波数帯域における出力信号の導出のためにそれぞれの増幅を個別に制御することを備え、第1の周波数帯域は、触覚周波数を表し、第2の周波数帯域は、可聴周波数を表し、個別に制御することは、第2の周波数帯域のためのユーザが選択した第2の増幅に依存する第1の周波数帯域のための第1の増幅を決定することと、入力信号によって表される信号コンテンツタイプに依存する第1の周波数帯域のための第1の増幅を決定することと、のうちの少なくとも一方を行うことを備える。
【0008】
別の例示的な実施形態によれば、コンピュータプログラムを提供し、コンピュータプログラムは、コンピュータ装置で実行するときに少なくとも上述した例示的な実施形態による方法を実行させるように構成されたコンピュータ可読プログラムコードを含む。
【0009】
上述した例示的な実施形態によるコンピュータプログラムを、揮発性又は不揮発性のコンピュータ可読記録媒体、例えば、プログラムコードが格納された少なくとも一つの非一時的なコンピュータ可読媒体を含むコンピュータプログラム製品として実施してもよく、コンピュータプログラム製品は、一つ以上のコンピュータ装置によって実行されるときに少なくとも上述した例示的な実施形態による方法をコンピュータ装置に実行させる。
【0010】
本願に提示された本発明の例示的な実施形態は、添付の特許請求の範囲の適用可能性を制限するものと解釈されるものではない。本願において、「備える」という動詞及びその派生語は、未記載の特徴の存在を排除しない開放的な限定として使用される。以下に説明する特徴は、明示的に別段の記載がない限り相互に自由に組み合わせることができる。
【0011】
本発明のいくつかの特徴を、添付の特許請求の範囲に記載する。しかしながら、本発明の態様は、その構造とその操作方法の両方に関して、その付加的な目的及び利点と共に、添付の図面と関連して読まれるときにいくつかの例示的な実施形態の以下の説明から最もよく理解される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
本発明の実施形態は、添付図面に例示的に示されており、限定されるものではない。
【0013】
【
図1】
図1は、実施例による音響振動再生配置の一部の構成要素のブロック図である。
【
図2】
図2は、信号処理部及び制御部の一部の構成要素を示すブロック図である。
【
図3】
図3は、実施例による一般的なマッピング関数を示している。
【
図4】
図4は、実施例による信号コンテンツタイプ固有のマッピング機能を示す図である。
【
図5】
図5は、実施例による装置の一部の構成要素のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1は、実施例による音響振動再生配置100の一部の(論理的な)構成要素のブロック図である。以下では、説明を簡潔かつ明瞭にするために、音響振動再生配置100を単に音響再生配置100と呼ぶが、音響と振動の両方の同時再生を意味する。
図1の実施例による音再生配置100は、信号処理アセンブリ101及び音響振動再生装置130を有し、信号処理アセンブリ101は、信号処理部110及び制御部120を備える。この関連で、信号処理部110を、制御部120の制御下で入力信号に基づいて出力信号を導出するように配置してもよく、一方、制御部120を、制御入力信号に少なくとも部分的に依存して出力信号の導出を制御するように配置してもよい。この関連で、制御部120を、入力制御信号に少なくとも部分的に依存して一つ以上の制御信号を生成するように配置してもよく、一方、信号処理部110を、一つ以上の制御信号に従って出力信号を導出するように配置してもよい。
【0015】
入力信号及び出力信号の各々は、音響振動を表し、一方、信号処理部110は、音響振動再生装置130による触覚周波数の再生を改善するように入力信号に基づいて出力信号を導出してもよい。出力信号を音響振動再生装置130に供給してもよく、音響振動再生装置130を、それに応じて音及び振動を同時に発生するように配置してもよい。本開示を通じて、入力信号及び出力信号を、音声と振動の両方を表す信号を意味するとしても主に入力音声信号及び出力音声信号とそれぞれ呼ぶ。同様に考えると、入力信号及び/又は出力信号のチャンネルを、音と振動の両方を表すチャンネルを意味するとしてもオーディオチャンネルとそれぞれ呼ぶこともある。
【0016】
入力オーディオ信号は、単一チャネル(モノラル)オーディオ信号を備えてもよい、又は、入力オーディオ信号は、ステレオサウンド若しくは(当該技術分野において公知の5.1サラウンドサウンド、7.1サラウンドサウンド、10.2サラウンドサウンド又は11.1サラウンドサウンドのうちの一つのような)予め定義されたスピーカ構成に従ったサラウンドサウンドのそれぞれのチャネルを表す二つ以上のオーディオチャネルのオーディオ信号を表す2チャネルオーディオ信号のようなマルチチャネルオーディオ信号を備えてもよい。この関連で、信号処理部110を、入力オーディオ信号の一つ以上のオーディオチャネルのそれぞれを処理して出力オーディオ信号のそれぞれのオーディオチャネルにするように配置してもよい。以下の実施例において、信号処理部110及び制御部120の動作への言及は、明示的に別段の記載がない限り、単一のオーディオチャンネルの処理を意味する。しかしながら、これらの実施例は、信号処理部110が複数のオーディオチャネルに対してそれぞれの処理を適用することに容易に一般化し、この場合、処理は、それぞれのオーディオチャネルに対して実質的に同様であってもよい、又は、処理は、オーディオチャネル間で異なってもよい。
【0017】
以下では、説明を簡潔かつ明瞭にするために、音響振動再生装置130を単に音再生装置130と呼ぶが、音と振動の両方の同時再生を意味する。一実施例では、音響振動再生装置130は、パッドの内部に配置された音響振動再生アセンブリを備えてもよく、音響振動再生アセンブリは、ボードを介して誘導される振動がパッドの外面における振動として知覚可能であるとともにパッドの外面を通して発する可聴音として知覚可能であるように、出力音声信号に従ってボード(又は振動アセンブリの別の略剛性の構造要素)を振動させるように配置されたアクチュエータを備えてもよく、それにより、出力音声信号によって表される音響振動が同時に再生される。
【0018】
別の実施例では、音再生装置130は、出力音声信号によって表される音及び振動をそれぞれ同時に再生するように配置されるように互いに別個に設けられた音再生アセンブリ及び振動再生アセンブリを備えてもよい。そのような設定において、音再生アセンブリは、出力オーディオ信号の可聴周波数を表す音をパッドの外面を通して発するように出力するように配置されたスピーカを備え、振動再生アセンブリは、ボードを介して誘導される振動がパッドの外面で振動として知覚可能であるように出力オーディオ信号によって表される触覚周波数に従ってボード(又は振動アセンブリの別の略剛性の構造要素)を振動させるように配置されたアクチュエータを備えてもよい。
【0019】
本開示は、主に、単数の音響振動再生アセンブリに言及しているが、一般に、音再生装置130は、出力オーディオ信号の対応するオーディオチャネルによって表される音響及び振動を再生するために、上述した種類の一つ以上の音響振動再生アセンブリを備えてもよい。一例として、音波再生装置130は、出力音声信号の一つ以上の(例えば、各々の)音声チャンネルに対応するそれぞれの音響振動再生アセンブリを備えてもよい。その結果、この関連の例として、音再生装置130は、モノラル音響振動の再生のために配置した単一の音響振動再生アセンブリを備えてもよい、ス音再生装置130は、テレオフォニック出力オーディオ信号に従ってステレオフォニック音響振動の再生のために配置された二つの音響振動再生アセンブリを備えてもよい、又は、音再生装置130は、サラウンド音響振動の再生のために二つ以上の音響振動再生アセンブリを備えてもよい。
【0020】
別の例では、音再生装置130は、振動を再生することが可能な少なくとも一つの音再生アセンブリと、可聴音を再生することが可能な一つ以上の音再生アセンブリと、を備えてもよい。そのような配置の例として、音再生装置は、振動を再生する単一の音再生アセンブリと、可聴音を再生する二つ以上の音再生アセンブリと、を備えてもよく、振動を再生することが可能な単一の音再生アセンブリは、出力オーディオ信号の全てのオーディオチャンネルによって表される振動を再生するために適用され、可聴音を再生することが可能な二つ以上の音再生アセンブリは、それぞれのオーディオチャンネルによって表される音を再生するために適用される。一例として、振動を発生させることができる単一の音響再生アセンブリは、可聴音を再生することもできる。
【0021】
そのような音響再生装置の非限定的な例として、一つ以上の音響振動再生アセンブリを囲む音響再生装置130のパッドは、家庭用又はオフィス用のアームチェア、映画館の座席、車両の座席、飛行機の座席、バス又は列車の座席等の乗り物の座席のような椅子又は座席のクッションを備えてもよい。一つ以上の音響振動再生アセンブリを、例えば、座席のクッションに配置される場合、例えば、座席に座っている人の頭部の近傍に配置されるように座席の背もたれ及び/又は座席のヘッドレストに配置してもよい。したがって、音響再生配置100を利用することに関係する非限定的な実施例は、一つ以上の座席を有する車両を備え、音響再生配置130の一つ以上の音響振動再生アセンブリを、座席のクッション内に配置し、信号処理アセンブリ101を、信号処理アセンブリ101から音響再生配置130への音声出力信号の転送を可能にするために両者の間の通信結合が設けられる提供されるように座席の構造体内又は車両内の他の場所に配置してもよい。
【0022】
制御部120を、第1の周波数帯域及び第2の周波数帯域における出力オーディオ信号の導出のためにそれぞれの増幅を個別に制御するように配置してもよく、一方、信号処理部110を、制御部120によって決定されたそれぞれの増幅に従って入力オーディオ信号の第1の周波数帯域及び第2の周波数帯域をそれぞれ増幅することによって出力オーディオ信号の第1の周波数帯域及び第2の周波数帯域を導出するように配置してもよい。ここで、増幅という用語は、1よりも大きい増幅率による増幅(すなわち、実際の増幅)及び/又は1よりも小さい増幅率による増幅(すなわち、減衰)の両方を包含し、広く解釈されるべきである。信号処理アセンブリ101によるそのような処理の一例として、
図2は、信号処理部110及び制御部120の一部の(論理的な)構成要素のブロック図を示す。
図2の例による信号処理部110は、周波数帯域分解部112と、第1の周波数帯域処理部114と、第2の周波数帯域処理部116と、周波数帯域合成部118と、を備える。
【0023】
周波数帯域分解部112を、入力オーディオ信号を(少なくとも)二つのサブバンドオーディオ信号に分解するように配置してもよく、サブバンドオーディオ信号のそれぞれは、少なくとも二つの周波数帯域のそれぞれの一つを表す。この関連で、分解は、少なくとも入力オーディオ信号の第1の周波数帯域を表す第1のサブバンドオーディオ信号及び入力オーディオ信号の第2の周波数帯域を表す第2のサブバンドオーディオ信号をもたらす可能性がある。さらに、第1のサブバンドオーディオ信号及び第2のサブバンドオーディオ信号を、増幅のために第1の周波数帯域処理部114及び第2の周波数帯域処理部116にそれぞれ供給してもよい。この関連で、第1の周波数帯域処理部114を、出力オーディオ信号の第1の周波数帯域を表す増幅された第1のサブアンドオーディオ信号を導出するために第1のサブバンドオーディオ信号に第1の増幅を適用するように配置してもよく、一方、第2の周波数帯域処理部116を、出力オーディオ信号の第2の周波数帯域を表す増幅された第2のサブアンドオーディオ信号を導出するために第2のサブバンドオーディオ信号に第2の増幅を適用するように配置してもよい。周波数帯域分解エンティティ118を、少なくとも増幅された第1のサブバンド信号及び第2のサブバンド信号に基づいて出力オーディオ信号を(再)構成するように配置してもよい。
【0024】
図2の例では、周波数帯域分解部112は、例えば、適切な分析フィルタバンクを備えてもよく、一方、周波数帯域合成部118は、例えば、対応する合成フィルタバンクを備えてもよい。第1の周波数帯域及び第2の周波数帯域は、重なっていなくても部分的に重なっていてもよく、第2の周波数帯域は、第1の周波数帯域の周波数より高い周波数を含んでもよい。第1の周波数帯域と第2の周波数帯域とが重なる場合、予め定義されたサブレンジの周波数は、第1の周波数帯域と第2の周波数帯域の両方に含まれてもよい、又は、第2の周波数帯域は、第1の周波数帯域全体を含んでもよい。第1の周波数帯域及び第2の周波数帯域が重ならない場合、第1の周波数帯域及び第2の周波数帯域は、周波数が隣接していてもよい、又は、第1の周波数帯域及び第2の周波数帯域は、周波数範囲によって分離されていてもよい。上述したように、周波数帯域分解部112の出力は、少なくとも第1の周波数帯域及び第2の周波数帯域を含み、一方、周波数帯域分解部112の出力は、(例えば、第1の周波数帯域と第2の周波数帯域との間の周波数範囲をカバーする)一つ以上の別の周波数帯域を含んでもよい。分解から生じる可能性のあるそのような別の周波数帯域を、出力オーディオ信号の合成のために周波数帯域合成部118に渡してもよい。
【0025】
一例として、第1の周波数帯域は、音響再生装置130の動作を介して振動として再生される周波数を表してもよく、第2の周波数帯域は、音響再生装置130の動作を介して可聴音として再生される周波数を表してもよい。別の観点では、第2の周波数帯域は、音再生配置130を介して可聴音として再生してもよい入力オーディオ信号の複数の態様を表してもよく、一方、第1の周波数帯域は、音再生配置130を介して振動として再生してもよい入力オーディオ信号の複数の態様を表してもよい。その結果、第1の周波数帯域を、触覚周波数帯域又は振動周波数帯域と呼ぶことができ、一方、第2の周波数帯域を、可聴周波数帯域又は音周波数帯域と呼ぶことができる。非限定的な例として、触覚周波数帯域は、略5Hzから略500Hzまでの周波数をカバーしてもよく、可聴周波数帯域は、略50Hzから略20kHzまでの周波数をカバーしてもよい。指摘したように、上述した触覚周波数帯域及び可聴周波数帯域のそれぞれのエンドポイントは、この関連の非限定的な例として機能し、他の例では、触覚周波数帯域の低い方のエンドポイントは、0Hzから50Hzの範囲から選択された予め定義された値であってもよく、触覚周波数帯域の高い方のエンドポイントは、200Hzから1kHzの範囲から選択された予め定義された値であってもよい。同様に、他の例では、可聴周波数帯域の低い方のエンドポイントは、20Hzから100Hzの範囲から選択された予め定義された値であってもよく、可聴周波数帯域の高い方のエンドポイントは、16kHzから24kHzの範囲から選択された予め定義された値であってもよい。
【0026】
依然として
図2の例を参照すると、制御部120を、入力制御信号に従って第1の周波数帯域のための第1の増幅及び第2の周波数帯域のための第2の増幅を導出するように配置してもよい。この関連の一例として、入力制御信号は、ユーザが選択した音量の指示を含んでもよく、一方、制御部120を、ユーザが選択した音量をそれぞれの増幅値に変換するように配置してもよく、その増幅値を、ユーザが選択した増幅又はユーザが選択した選択増幅値と呼ぶことができる。ユーザ選択増幅値を、第2の周波数帯域処理部116において出力音声信号の第2の周波数帯域を導出する際の第2の増幅として適用してもよい。この関連で、さらに、制御部120を、ユーザが選択した第2の増幅に依存して第1の増幅度を導出するように配置してもよく、それにより、第1の増幅度の自動化された導出を介して、改善されたユーザ体験を提供する。第1の増幅を、第1の周波数帯域処理部114における出力オーディオ信号の第1の周波数帯域の導出において適用してもよい。この関連の一例として、第1の増幅を、第1のサブバンドオーディオ信号をスケーリングする(例えば、乗算する)ために第1の周波数帯域処理部114において第1のサブバンドオーディオ信号に適用される第1の利得を介して定義してもよい、及び/又は、第2の増幅を、第2のサブバンドオーディオ信号をスケーリングする(例えば、乗算する)ために第2の周波数帯域処理部116において第2のサブバンドオーディオ信号に適用される第2の利得を介して定義してもよい。
【0027】
制御部120が第2の増幅度に依存して第1の増幅度を決定する態様は、基準マスキングスペクトルを考慮して第2の周波数帯域に対して適用される増幅度の関数として第1の周波数帯域に対して適用可能な増幅を定義する予め定義されたマッピング関数の使用を備えてもよい。この関連の一例として、マッピング関数は、例えば、第2の周波数帯域に適用されるユーザが選択した第2の増幅を表す第2の増幅値(例えば、第2の利得)から第1の周波数帯域に適用される第1の増幅を表す第1の増幅値(例えば、第1の利得)へのマッピングとして、第2の増幅と第1の増幅との間の関係を直接定義してもよい。
【0028】
マッピング関数を、基準マスキングスペクトルに従って調整されてもよく、マッピング関数は、知覚可能な振動が第2の周波数帯域について比較的低いユーザが選択した第2の増幅度から生じる比較的低い音圧レベルでも提供されるのと同時に第2の周波数帯域について比較的高いユーザが選択した第2の増幅から生じる比較的高い音圧レベルでユーザに不快感を与える可能性のある広範な振動の生成を回避するように基準マスキングスペクトルを考慮して第1の増幅の導出することを目的としてもよい。そのような状況では、マッピング機能は、第2の周波数帯域に対する音圧レベル(SPL)の範囲を第1の周波数帯域に対するSPLの対応する範囲にマッピングする予め定義された曲線を備えてもよい、又は、それに基づいてもよい。この関連で、第1の周波数帯域のSPLを、音響再生装置130によって振動として再生される触覚周波数を表す第1の周波数帯域の態様を強調するためにそれぞれの振動加速度レベル(VAL)と呼んでもよい。マッピング関数は、ユーザの好みに基づいてもよい、及び/又は、基準マスキングスペクトルに基づいてもよい。
図3は、そのようなマッピング関数の非限定概念的な例を示し、実線の曲線は、マッピング関数に従うSPL値から対応するVAL値へのマッピングを示し、破線は、(VALが対応するSPLに等しくなるように)SPL値から対応するVALへの直接的なマッピングに対応する基準として機能する。
【0029】
SPL及びVALは、出力オーディオ信号に基づいて音響再生装置130の動作を介して再生される音響振動のそれぞれの尺度であり、したがって、SPL及びVALは、出力オーディオ信号の特性に依存するだけでなく、音響再生装置130の特性にも依存する。信号処理アセンブリ101の動作に関連して、第2の周波数帯域における信号レベル及び第1の周波数帯域における信号レベルをそれぞれSPL及びVALに対応する尺度として考えてもよい。この関連で、第2の周波数帯域における信号レベルを、第2の信号レベルと呼んでもよく、第1の周波数帯域における信号レベルを、第1の信号レベルと呼んでもよい。ここで、第1の信号レベル及び第2の信号レベルの各々は、それぞれの周波数帯域における信号電力(例えば、ピーク電力又は実効電力)及び/又は所定の時間ウィンドウに亘るそれぞれの周波数帯域における信号振幅(例えば、最大振幅又は平均振幅)を含んでもよい。一例では、(出力音声信号の)第1の信号レベル及び第2の信号レベルはそれぞれSPL及びVALを直接表してもよい。別の実施例では、基準マスキングスペクトルは、第2の信号レベルとSPLとの間及び/又は第1の信号レベルとVALとの間のそれぞれの関係に影響を及ぼす可能性がある範囲で音響再生装置130の音響及び振動再生特性を考慮した成分(例えば、以下で更に詳しく説明する基準音響再生スペクトル)を含んでもよい。
【0030】
基準マスキングスペクトルは、音響再生配置100のターゲット動作環境の予め定義された基準スペクトル特性、例えば、ターゲット動作環境における予め定義された基準背景雑音スペクトルを表してもよい。この関連で、基準背景雑音スペクトルは、ターゲット動作環境で測定された背景雑音スペクトルの形状を表す又はターゲット動作環境における典型的な背景雑音特性を反映する。家庭、オフィス、映画館などの比較的静かな動作環境では、基準背景雑音スペクトルは比較的平坦であるためにマッピング関数にわずかな影響しか及ぼさない又は無視できる程度の影響しか及ぼさないかもしれないが、自動車若しくはバスのような車両の内部又は航空機の客室のような比較的騒々しい動作環境では、基準背景雑音スペクトルは、周波数スペクトルの所定のサブレンジにおいて、典型的には、第1の周波数帯域と一致する低周波数において強く強調されることがある。そのような雑音環境では、背景雑音スペクトルの絶対的な大きさが雑音レベルによって変化するとしても、他方では、背景雑音スペクトルのスペクトル包絡線は、雑音レベルに関係なく実質的に同様の形状を保持すると仮定することができ、その結果、基準背景雑音スペクトルは、音響再生配置100のターゲット動作環境で典型的に発生する背景雑音の相対的な大きさ、すなわち、スペクトル包絡線の形状をモデル化する役割を果たしてもよい。
【0031】
基準マスキングスペクトルは、追加的に又は代替的に、音再生装置130の音響振動再生特性の一つ以上の態様をモデル化する役割を果たしてもよい予め定義された基準音再生スペクトルを表してもよい。この関連で、(第1の周波数帯域における)音再生配置130の音響振動再生アセンブリの周波数応答は、そこから発生する知覚可能な振動に大きな影響を及ぼす可能性があり、したがって、基準音再生スペクトルは、それぞれの音響振動再生アセンブリの周波数応答を説明することができる。さらに、音響振動再生アセンブリから想定されるリスニング位置に位置するユーザの身体及び耳への音響振動の伝達経路も同様に、特に、振動に関連してユーザの知覚に影響を及ぼす可能性がある。この態様は、基準音再生スペクトルにおいて説明することができる。この関連の一例として、音響振動再生アセンブリから発生する振動は、例えば、音響振動再生アセンブリをカバーするパッドの特性及び厚さに依存する周波数依存的な方法で伝送経路において減衰する可能性がある。別の例として、人体の異なる部分(例えば、頭、首、背中、腕等)は、通常、触覚に対して異なる感度を有し、したがって、結果的に生じる振動が伝達されるべきユーザの身体の部分に関連する音響振動再生アセンブリの位置を、基準音波再生スペクトルにおいて説明してもよい。基準音再生スペクトルは、出力オーディオ信号の所定のオーディオチャネルの再生を意図する所定の音響振動再生アセンブリに固有であってもよい態様をモデル化する役割を果たすので、音再生装置130の音響振動再生アセンブリの各々、したがって、出力オーディオ信号の各オーディオチャネルのための専用のそれぞれの音再生スペクトルが存在する可能性がある。
【0032】
したがって、導出/校正及び/又はマッピング関数の使用は、第1の増幅の強度が第1の周波数帯域における基準マスキングスペクトルの相対的な大きさに従うように、第1の増幅の導出において基準マスキングスペクトルを適用してもよい。略平坦な基準マスキングスペクトルの場合、第1の増幅(例えば、第1の利得)は、ほとんど周波数に依存しなくてもよく、マッピング関数の使用を介して第2の増幅値から導出された第1の増幅値を、第1の周波数帯域に亘って第1の増幅として適用してもよい。略平坦でない基準マスキングスペクトルの場合、所定の周波数における第1の増幅が、例えば、マッピング関数の使用によって取得した第1の増幅と基準マスキングスペクトルとの積として導出可能な増幅曲線に従ってそれぞれの周波数における基準マスキングスペクトルの相対的な大きさに従うように、第1の増幅(例えば、第1の利得)を、マッピング関数の使用によって第2の増幅値から導出された第1の増幅値及びマッピング関数の使用によって導出した第1の増幅値に基づく(第1の周波数帯域に亘る)周波数の関数として定義してもよい。対照的に、第2の増幅は、周波数に依存せず、したがって、第2の周波数帯域の基準マスキングスペクトルに関係なく、第2の周波数帯域に亘って同一の第2の増幅(例えば、同一の第2の利得)を適用してもよい。上述したように、第2の増幅は、ユーザが選択した音量から変換された増幅値を含んでもよい。
【0033】
その結果、マッピング関数は、典型的には、
第2の増幅及び第1の増幅のそれぞれの大きさの差及び/又は第2の増幅及び第1の増幅の間の比が第2の増幅の異なる値において異なるという点で、第2の増幅値から第1の増幅値へのマッピングが非線形であってもよい態様と、
マッピング関数の使用によって取得した第1の増幅が(第1の周波数帯域に亘る)周波数の関数としての第1の増幅の相対的な大きさを定義する増幅曲線を備えてもよく、それによって、第2の周波数帯域に亘って略一定であってもよい第2の増幅を、第1の周波数帯域に亘って周波数の関数として変化する第1の増幅にマッピングするという点で、マッピングを非線形にする態様と、
(第1の周波数帯域に亘る)周波数の関数としての第1の増幅の相対的な大きさを定義する増幅曲線は、典型的には、基礎となる音響再生配置100のターゲット動作環境及び/又は音響再生装置130の音響及び振動再生特性で発生する基礎となるマスキング特性を表す非線形曲線である態様と、
のうちの一つ以上において非線形であるマッピングを提供する。
【0034】
マッピング関数の導出及び/又は較正は、基準マスキングスペクトル(すなわち、背景雑音状態及び/又は音響再生装置130の音響再生特性に起因して発生するマスキングを表すもの)に従った所定のマスキングレベルにおける第2の周波数帯域に対する好適な第2の増幅が第2の周波数帯域において基準マスキングスペクトルを克服するのに十分であると考えられるSPLに対応する第2の信号レベル(例えば、ユーザによって十分であるとみなされるもの、又は、第1の周波数帯域において基準マスキングスペクトルをそれぞれの予め定義されたマージンだけ超えるもの)をもたらすものであるという仮定から進行することができ、一方、対応する第1の増幅は、第1の周波数帯域における基準マスキングスペクトルを克服するのに十分であると考えられるVALに対応する第1の信号レベル(例えば、ユーザによって十分であると考えられるもの、又は、第1の周波数帯域における基準マスキングスペクトルをそれぞれ予め定義されたマージンだけ超えるもの)をもたらすものであってもよく、それによって、可聴知覚と触覚知覚との間のバランスのとれた感覚的経験をもたらす。この関連で、本明細書に記載されるマッピング関数を、それが表す信号コンテンツのタイプ(例えば、オーディオコンテンツのタイプ)に関係なく出力オーディオ信号に適用可能な汎用マッピング関数とみなしてもよく、一方、マッピング関数の導出及び/又は較正において考慮してもよいそれぞれの予め定義されたマージンは、それぞれの汎用マージンとみなしてもよい。
【0035】
実施例によれば、マッピング関数を、第1の増幅を設定することなく基準マスキングスペクトルに対応する背景雑音条件における複数の異なるマスキングレベルで信号処理アセンブリ101及び/又は音響再生配置100を動作させるとともにマスキングレベルの各々について、
それぞれのマスキングレベルにおいて、第2の周波数帯域における(ユーザに)好適なSPLをもたらす第2の増幅値を決定することと、
それぞれのマスキングレベルにおいて、第1の周波数帯域における(ユーザに)好適なVALをもたらす対応する第1の増幅値を決定することと、
決定された第2の増幅値及び対応する第1の増幅値の対を、後のマッピング関数の導出のために記録することと、
を実施することによって導出してもよい。
【0036】
その結果、第1の増幅値を第2の増幅値の関数として定義するマッピング関数を、基準マスキングスペクトルに従ってマスキング雑音の存在に対応するリスニング条件における複数のマスキングレベルについて記録された第2の増幅値及び第1の増幅値に基づいて導出してもよい。マッピング関数を、例えば、マスキングレベルの範囲に亘る第2の増幅値と第1の増幅値との間の対応を定義するマッピングテーブルとして提供してもよい。
【0037】
一例として、上述したマッピング関数を、単一のユーザの好みを反映するマッピングを見つける又は別の方法で定義することによって導出してもよく、それによって、それぞれのユーザに合わせた個人的なマッピング関数が得られ、別の例では、マッピング関数を、複数のユーザのそれぞれの好みを反映するマッピングを見つける又は別の方法で定義することによって導出してもよく、それによって、どのユーザにも適用可能な設定を表す一般的なマッピング関数が得られる。一実施例では、信号処理アセンブリ101は、単一のユーザ又は複数のユーザのために導出された複数の(例えば、二つ以上の)異なるマッピング関数を有してもよく、異なるマッピング関数は、異なる知覚嗜好(例えば、異なる特性の四つのサウンドコンテンツ及び/又はユーザの異なる気分)を反映してもよく、ユーザは、例えば、制御入力信号を介して適用されるマッピング関数を選択してもよい。ある例では、同一のマッピング関数を、入力オーディオ信号のオーディオチャンネル及び出力オーディオ信号のオーディオチャンネルに亘って適用してもよく、別の例では、(出力オーディオ信号のチャンネルのそれぞれの再生を目的とする音響振動再生アセンブリの間のあり得る異なる再生スペクトルを考慮するために)出力オーディオ信号のオーディオチャンネルの一つ以上に対して専用の(異なる)マッピング関数を導出及び適用してもよい。
【0038】
したがって、振動は、第一の周波数帯域(例えば、触覚周波数帯域)の出力オーディオ信号から発生するので、マッピング機能は、第二の周波数帯域(例えば、可聴周波数帯域)の知覚可能な音の大きさとバランスのとれた振動強度を確保する役割を果たし、リスニング環境に存在するバックグラウンドノイズにもかかわらず振動が知覚可能であるのと同時に不快又は妨害とさえ知覚されることがある広範な振動を回避し、その結果、触覚知覚が全体的なリスニング体験を真に高めるリスニング状況を実現する。
【0039】
マッピング関数は、典型的には、複数の異なる第2の増幅について第1の増幅を第2の(ユーザが選択した)増幅と異なるように設定する結果となる。この関連の非限定的な例として、マッピング機能の動作を介して提供されるマッピングは、
予め定義された閾値よりも小さい第2の増幅度に対して、第1の増幅度が第2の増幅度よりも大きくてもよいことと、
予め定義された閾値よりも大きい第2の増幅に対して、第1の増幅が第2の増幅よりも小さいことと、
の少なくとも一つを提供する結果となり得る。
【0040】
マッピング関数の上述した特性は、
図3の例でも観察可能であり、L
Lより小さい第2の増幅値は、対応する第2の増幅値より大きい第1の増幅値にマッピングされ、L
Lより大きい第2の増幅値は、対応する第2の増幅値より小さい第1の増幅値にマッピングされる。換言すれば、(ユーザが選択した比較的低い音量に対応する)比較的低い第2の増幅の場合、触覚周波数帯域で知覚可能な振動を確保するために、第1の増幅度を第2の増幅度よりも高くしてもよく、一方、(ユーザが選択した比較的高い音量に対応する)比較的高い第2の増幅度の場合、ユーザに不快感を与える可能性のある広範な振動を確実に回避するために、第1の増幅度を第2の増幅度よりも低くしてもよい。
【0041】
上述した実施例において、制御部120を、導出の目的のために設計された予め定義されたマッピング関数の使用を介して、ユーザが選択した第2の増幅に依存して第1の増幅を導出するように配置しもよい。別の例において、制御部120は、入力オーディオ信号によって伝達される信号コンテンツに依存して第1の増幅を定義してもよい。したがって、そのような信号コンテンツに基づく第1の増幅の導出を、マッピング関数に基づく第1の増幅の導出の代わりに行ってもよい。この関連で、入力オーディオ信号は、複数の信号コンテンツタイプのうちの一つを表すように分類されてもよく、一方、第1の増幅の導出は、少なくとも部分的にこの分類に依存してもよい。非限定的な例として、複数の信号コンテンツタイプは、複数の信号コンテンツタイプを含んでもよい。
【0042】
入力オーディオ信号の信号コンテンツに依存して第1の増幅を決定する制御部120の態様は、例えば、
入力オーディオ信号の信号コンテンツタイプを、割り当てられたそれぞれの増幅プロファイルを有する複数の(例えば、二つ以上の)予め定義された信号コンテンツタイプのうちの一つであると決定することと、
複数の予め定義された信号コンテンツタイプのうちの決定された一つに割り当てられた増幅プロファイルに従って、ユーザが選択した第2の増幅に基づいて第1の増幅を決定することと、
を行う制御部120を備えてもよい。
【0043】
任意の増幅プロファイルは、第2の周波数帯域に対して選択された第2の増幅を考慮してそれぞれの信号コンテンツタイプに適していると考えられるレベルで振動を提供するために、第2の増幅に基づいて第1の増幅を計算するための一つ以上の規則を定義してもよい。この関連の一例として、所定の信号コンテンツタイプに割り当てられた増幅プロファイルは、第1の増幅の導出のために第2の増幅に適用されるそれぞれの調整曲線を定義してもよい。この関連で、調整曲線は、それぞれの信号コンテンツタイプに対する(第1の周波数帯域に亘る)周波数の関数としての調整係数を定義してもよく、(第1の周波数帯域に亘る)周波数の関数としての第1の増幅を定義する増幅曲線を、第2の増幅と調整曲線との積として導出してもよい。したがって、上述したマッピング関数ベースの例とは異なり、ユーザが選択した第2の増幅値は、第2の増幅固有の第1の増幅値にマッピングされないが、第2の増幅の全ての値は、それぞれの信号コンテンツタイプに割り当てられた増幅プロファイルで定義された調整曲線の同様の適用をもたらす可能性がある。
【0044】
所定の信号コンテンツタイプに割り当てられた増幅プロファイルは、それぞれの信号コンテンツタイプに対する第1の周波数帯域の予め定義された最大エネルギー及び/又は予め定義された最小エネルギーを更に定義してもよい。この関連で、最大エネルギーは、それぞれの信号コンテンツタイプに適していると考えられる予め定義された最大VALを反映してもよく、最小エネルギーは、それぞれの信号コンテンツタイプに適していると考えられるそれぞれの最小VALを反映してもよい。ここで、最大エネルギーを、第1の周波数帯域全体に亘って適用可能な単一の値として又は第1の周波数帯域全体に亘る周波数の関数として最大エネルギーを定義する最大エネルギー曲線として定義してもよい。同様に、最小エネルギーを、第1の周波数帯域全体に亘って適用可能な単一の値として又は第1の周波数帯域に亘る周波数の関数として最小エネルギーを定義する最小エネルギー曲線として定義してもよい。その結果、第2の増幅と調整曲線の積として導出可能な第1の増幅を、第1の周波数帯域における結果的に得られる信号エネルギーが増幅プロファイルによって定義可能な最大エネルギー及び/又は最小エネルギーに適合するように制限してもよい。したがって、増幅プロファイルに定義される可能性のある最大エネルギー及び/又は最小エネルギーは、異なるユーザが選択した音量で十分な触覚知覚を可能にするのと同時に不快又は邪魔にさえ感じられる可能性のある広範な振動を回避する。
【0045】
一例によれば、複数の信号コンテンツタイプは、音声と、音楽と、混合音声と、サウンドマッサージと、音響及び/又は振動効果と、アラーム音及び/又は振動と、のうちの少なくとも一つを含んでもよい。したがって、信号コンテンツタイプを、入力オーディオ信号の短期的又は瞬間的な特性を定義するのではなく入力オーディオ信号の長期的な特性、例えば、その信号レベル、その信号レベルの変動、時間的特性及び/又はスペクトル特性を説明するラベリングと考えてもよい。これらの信号コンテンツタイプの各々は、他の信号コンテンツタイプに割り当てられたそれぞれの増幅プロファイルとは異なるそれぞれの増幅プロファイルを有してもよく、一方、それぞれの増幅プロファイルにおいて定義される増幅曲線を、(場合によっては、最大エネルギー及び/又は最小エネルギーと共に)それぞれの信号コンテンツタイプのオーディオ信号の再生に適していると考えられる振動特性を提供するように調整してもよい。この関連の非限定的な例として、音声コンテンツに割り当てられた増幅プロファイルは、音楽コンテンツに割り当てられた増幅プロファイルに定義された強度よりも低い強度の振動を定義してもよく、一方、音楽コンテンツに割り当てられた増幅プロファイルは、サウンドマッサージコンテンツ又は音響効果コンテンツに割り当てられた増幅プロファイルに定義された強度よりも低い強度の振動を定義してもよい。
【0046】
一例によれば、制御部120は、入力オーディオ信号に関連付けられるとともに入力オーディオ信号と共に信号処理アセンブリ101で受信したメタデータに基づいて、入力オーディオ信号の信号コンテンツタイプの情報を取得してもよい。メタデータに基づくアプローチの一例として、メタデータは、関連する入力オーディオ信号が表す信号コンテンツタイプの直接的な表示を含んでもよい、及び/又は、メタデータは、信号コンテンツタイプを導出するために適用可能な情報を含んでもよい。別の例では、制御部120は、入力オーディオ信号の信号コンテンツタイプを決定するために、入力オーディオ信号の分析を行ってもよい。
【0047】
上述した実施例において、制御部120を、汎用マッピング関数の使用を介して又は入力オーディオ信号の信号コンテンツタイプに依存して、ユーザが選択した第2の増幅に依存して第1の増幅を導出するように配置してもよい。別の例において、制御部120が、ユーザが選択した第2の増幅度に依存するとともに入力オーディオ信号の信号コンテンツタイプに更に依存して第1の増幅度を定義するように、これらの二つのアプローチを一緒に適用してもよい。
【0048】
そのような組み合わされたアプローチの一例として、制御部120を、複数のマッピング関数のうちの一つを選択して適用するように配置してもよく、マッピング関数の各々は、複数の信号コンテンツタイプのうちのそれぞれの一つに割り当てられる。そのような組み合わされたアプローチにおいて、制御部120は、例えば、
入力オーディオ信号の信号コンテンツタイプを、第2の周波数帯域に対して選択された増幅の関数として第1の周波数帯域に適用可能な増幅を定義するそれぞれのマッピング関数を有する複数の(例えば、二つ以上の)予め定義された信号コンテンツタイプのうちの一つであると決定することと、
決定された信号コンテンツタイプに割り当てられたマッピング関数の使用を通じて、ユーザが選択した第2の増幅に基づいて第1の増幅を決定するとと、
を行ってもよい。
【0049】
この関連で、所定の信号コンテンツタイプに割り当てられたマッピング関数は、他の信号コンテンツタイプに割り当てられたそれぞれのマッピング関数とは異なっていてもよく、それによって、それぞれの信号コンテンツタイプのオーディオ信号に特有であるとともにそれぞれの信号コンテンツタイプのオーディオ信号に適していると考えられるマッピングを提供する。所定の信号コンテンツタイプのマッピング関数を、上述した手順に従って導出及び/又は較正してもよい。一般的なマッピング関数について上述したように、所定の信号コンテンツタイプに特有であるマッピング関数も、音響再生配置100のターゲット動作環境を表す基準マスキングスペクトルに部分的に基づいてもよい。一般的なマッピング関数の導出と異なる点は、第1の周波数帯域におけるマスキングレベルを考慮して十分であると考えられる第1の増幅を考慮する方法である。全ての信号コンテンツタイプに亘って同一の増幅を考慮する代わりに、所定の第2の増幅から対応する第1の増幅への異なるマッピングを、(例えば、それぞれのユーザ嗜好を見つけることによって又はそれぞれの信号コンテンツタイプに適していると考えられるそれぞれの予め定義されたマージンを適用することによって)複数の信号コンテンツタイプについて定義してもよい。
【0050】
異なる信号コンテンツタイプのための異なるマッピング関数に関する非限定的な例として、
音楽コンテンツのためのマッピング関数は、複数の(例えば、全ての)第2の増幅値の値に対して、音声コンテンツのためのマッピング関数によって定義される増幅値よりも大きい第1の増幅値を定義してもよく、それによって、音声コンテンツを表す出力音声信号に対して提供される振動強度より高い振動強度を有する音楽コンテンツを表す出力音声信号を提供することと、
サウンドマッサージ又は音響及び/又は振動効果コンテンツのためのマッピング関数は、音楽コンテンツのためのマッピング関数によって定義される増幅値よりも大きい第1の増幅値を定義してもよく、それによって、音楽コンテンツを表す出力オーディオ信号に提供される振動強度より高い振動強度でサウンドマッサージ又は音響及び/又は振動効果コンテンツを表す出力オーディオ信号を提供することと、
のうちの一つ以上を適用してもよい。
【0051】
この関連で、
図4は、音声コンテンツ及び音楽コンテンツに適用可能なマッピング関数のそれぞれの非限定的な概念例を示し、黒色の実線曲線は、音声コンテンツに適用可能なマッピング曲線を表し、黒色の破線曲線は、音楽コンテンツに適用可能なマッピング曲線を表し、灰色の破線は、(VALが対応するSPLに等しくなるような)SPL値から対応するVALへの直接的なマッピングに対応する基準としての役割を果たす。
【0052】
上述した例は、少なくとも暗黙的に、入力オーディオ信号の単一のオーディオチャネルを出力オーディオ信号の対応するオーディオチャネルにマッピングすることに関係する。別の例において、マッピング関数に基づく第1の増幅の導出、信号コンテンツに基づく第1の増幅の導出又はこれらの二つの組合せであるアプローチのいずれかを、入力オーディオ信号の二つ以上のチャネルに基づいて出力オーディオ信号のチャネルを導出するために適用してもよい。そのような状況では、出力オーディオ信号のそれぞれのオーディオチャンネルに対する第1の増幅を導出するために適用されるマッピング関数又は増幅プロファイルを、特に、結果として生じる振動から生じるVALを所望の範囲内に維持するという観点から出力オーディオ信号のそれぞれのオーディオチャンネルの第1の周波数帯域が入力オーディオ信号の二つ以上のオーディオチャンネルに由来する振動を表すという事実を追加的に考慮するように設計してもよい。
【0053】
上述した例は、少なくとも暗黙的に、入力オーディオ信号のオーディオチャネルと出力オーディオ信号のオーディオチャネルとの間の予め定義されたマッピング及びそれに適用されるそれぞれのマッピング関数又は増幅プロファイルを想定する。別の例では、制御部120は、適用可能なマッピング関数又は増幅プロファイルを決定するための制御入力である入力オーディオ信号と共に信号処理アセンブリ101で受信される可能性のあるメタデータを適用してもよい。この関連の例として、メタデータは、入力オーディオ信号のチャネル構成(又は想定されるスピーカ構成)を定義してもよく、一方、制御部120は、オーディオチャネルに関するこの情報を、出力オーディオ信号のそれぞれのオーディオチャネルの導出のために適用すべき適切な予め定義されたマッピング関数を選択するために適用してもよい。
【0054】
別の例では、制御部120を、予め定義された時間補正関数を適用するように配置してもよく、これは、第1の周波数帯域における信号電力が少なくとも予め定義された時間期間中に予め定義された信号電力閾値を連続的に超えることに応答して第1の増幅を低減するために適用可能であってもよい。ここで、第1の増幅は、マッピング関数の使用又は上述したタイプの増幅プロファイルを介して導出されるものであってもよい。この関連の一例として、時間補正関数を、第1の周波数帯域における信号電力が少なくとも予め定義された時間の間中に予め定義された信号電力閾値を連続的に超えることに応答して予め定義された減衰曲線に従って第1の増幅を低減するように配置してもよい。この関連で、減衰曲線は、関数時間として第1の増幅に適用される減衰係数(例えば、1より小さいスケーリング係数又はスケーリング利得)を定義する単調な非増加関数であってもよい。一例では、曲線は、略平坦であってもよく、それによって、十分に固定された減衰係数を定義し、別の例では、曲線は、少なくとも部分的に単調減少する曲線であってもよく、それによって、時間と共に減少する減衰係数を定義する。
【0055】
別の例では、制御部120は、入力オーディオ信号の(一つ以上の)それぞれのオーディオチャネルに存在しない信号成分の導入を介して出力オーディオ信号の第1の周波数帯域を補完するように配置してもよい。この関連の例として、制御部120は、出力オーディオ信号の触覚特性を補完又は導入するために、第2の周波数帯域に出現する信号成分のサブハーモニック成分を第1の周波数帯域に導入してもよい。また、そのようなアプローチにおいて、第1の増幅を、上述したアプローチのいずれかに従って導出してもよい。第1の周波数帯域のそのような「ブースト」は、所定の信号コンテンツタイプ、例えば、音楽、サウンドマッサージ及び/又は音響効果に特に適してもよい。
【0056】
上述した説明は、信号処理アセンブリ101及び音響再生装置130に関連した入力オーディオ信号に基づく出力オーディオ信号の処理及び/又は出力オーディオ信号によって表される音響振動の提供(rendering)の態様に関する様々な例を説明したが、信号処理アセンブリ101及び/又は音響再生装置130の動作のいくつかの態様を、代替的に、入力オーディオ信号に基づいて出力オーディオ信号を導出するために信号処理部110の動作を制御する方法のステップとして提供してもよい。この関連で、方法は、第1の周波数帯域及び第2の周波数帯域における出力信号の導出のためにそれぞれの増幅を別個に制御することを備えてもよく、第1の周波数帯域は、触覚周波数を表し、第2の周波数帯域は、可聴周波数を表し、前記別個の制御は、ユーザが選択した第2の周波数帯域のための第2の増幅に依存して第1の周波数帯域のための第1の増幅を決定すること、及び/又は、入力信号によって表される信号コンテンツタイプに依存して第1の周波数帯域のための第1の増幅を決定することと、のうちの少なくとも一つを備える。方法を、例えば、制御部120及び/又は信号処理部110の動作及び特性に関連して上述した実施例に従って変更及び/又は補完してもよい。
【0057】
図5は、例示的な装置300の一部の構成要素のブロック図である。装置300は、
図5に描かれていない別の構成要素、素子又は部分を備えてもよい。装置300を、コンピュータ装置と呼ぶことができ、例えば、信号処理アセンブリ101に関連して上述した操作、手順及び/又は機能の少なくとも一部を実現する際に採用してもよい。
【0058】
装置300は、プロセッサ310と、メモリ320と、を備える。メモリ320は、データ及びコンピュータプログラムコード325を記憶してもよい。装置300は、通信ネットワーク及び/又は通信リンクを介して他の装置と有線又は無線で通信を行うための通信部330を更に備えてもよく、通信部330は、他の装置から入力オーディオ信号を受信すること及び/又は(例えば、音響再生装置130を実現する)他の装置に出力オーディオ信号を供給することを可能にしてもよい。
【0059】
装置300は、プロセッサ310及びコンピュータプログラムコード325の一部と共にユーザからの入力の受信及び/又はユーザへの出力の提供のためのユーザインターフェースを提供するように配置してもよいユーザI/O(入出力)構成要素340を更に備えてもよい。この関連で、ユーザからの入力は、例えば、上述した制御入力信号を含んでもよい。特に、ユーザI/O構成要素340は、一つ以上のキー若しくはボタン、キーボード、タッチスクリーン又はタッチパッド等のユーザ入力部分を有してもよい。ユーザI/O構成要素は、ディスプレイ又はタッチスクリーンのような出力部を有してもよい。装置300の構成要素は、構成要素間のデータ及び制御情報の転送を可能にするバス350を介して互いに通信可能に結合される。
【0060】
メモリ320及びメモリ320に記憶されたコンピュータプログラムコード325の一部を、信号処理アセンブリ101に関連して上述した操作、手順及び/又は機能の少なくとも一部を装置300に実行させるようにプロセッサ310と共に更に配置してもよい。プロセッサ310は、メモリ320からの読出し及びメモリ320への書込みを行うように構成される。プロセッサ310をそれぞれ単一のコンポーネントとして描いているが、プロセッサ310を、一つ以上の別個の処理コンポーネントとしてそれぞれ実現してもよい。同様に、メモリ320をそれぞれの単一の構成要素として描いているが、メモリ320を、一つ以上の別個の構成要素としてそれぞれ実現してもよく、その一部又は全部は、統合/取り外し可能であってもよく、及び/又は、永久記憶装置/半永久記憶装置/動的記憶装置/キャッシュメモリを提供してもよい。
【0061】
コンピュータプログラムコード325は、プロセッサ310にロードされたときに、信号処理アセンブリ101に関連して上述した操作、手順及び/又は機能の少なくとも一部を実現するコンピュータ実行可能命令を含んでもよい。一例として、コンピュータプログラムコード325は、一つ以上の命令のシーケンスからなるコンピュータプログラムを含んでもよい。プロセッサ310は、コンピュータプログラムに含まれる一つ以上の命令の一つ以上のシーケンスをメモリ320から読み出すことによって、コンピュータプログラムをロードして実行することができる。一つ以上の命令の一つ以上のシーケンスは、プロセッサ310によって実行されるとき、信号処理アセンブリ101に関連して上述した操作、手順、及び/又は、機能の少なくとも一部を装置300に実行させるように構成されてもよい。したがって、装置300は、少なくとも一つのプロセッサ310と、一つ以上のプログラムのためのコンピュータプログラムコード325を含む少なくとも一つのメモリ320と、を備えてもよく、少なくとも一つのメモリ320及びコンピュータプログラムコード325は、信号処理アセンブリ101に関連して上述した操作、手順及び/又は機能の少なくとも一部を装置300に実行させるように少なくとも一つのプロセッサ310と共に構成される。
【0062】
コンピュータプログラムコード325は、例えば、コンピュータプログラムコード325が記憶された少なくとも一つの非一時的なコンピュータ可読媒体を含むコンピュータプログラム製品を提供してもよく、コンピュータプログラムコード325は、プロセッサ310によって実行されるとき、信号処理アセンブリ101に関連して上述した操作、手順、及び/又は機能の少なくとも一部を装置300に実行させる。非一時的なコンピュータ可読媒体は、コンピュータプログラムを有形に実施するメモリデバイス又は記録媒体を含んでもよい。別の例として、コンピュータプログラムを、コンピュータプログラムを確実に転送するように構成された信号として提供してもよい。
【0063】
本明細書におけるプロセッサへの(一つ以上の)言及は、プログラマブルプロセッサのみを包含するものと理解されるべきではなく、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、特定用途向け回路(ASIC)、信号プロセッサ等の専用回路も包含するものと理解されるべきである。
【手続補正書】
【提出日】2023-12-18
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0021
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0021】
そのような音響再生装置の非限定的な例として、一つ以上の音響振動再生アセンブリを囲む音響再生装置130のパッドは、家庭用又はオフィス用のアームチェア、映画館の座席、車両の座席、飛行機の座席、バス又は列車の座席等の乗り物の座席のような椅子又は座席のクッションを備えてもよい。一つ以上の音響振動再生アセンブリを、例えば、座席のクッションに配置される場合、例えば、座席に座っている人の頭部の近傍に配置されるように座席の背もたれ及び/又は座席のヘッドレストに配置してもよい。したがって、音響再生配置100を利用することに関係する非限定的な実施例は、一つ以上の座席を有する車両を備え、音響再生装置130の一つ以上の音響振動再生アセンブリを、座席のクッション内に配置し、信号処理アセンブリ101を、信号処理アセンブリ101から音響再生装置130への音声出力信号の転送を可能にするために両者の間の通信結合が設けられる提供されるように座席の構造体内又は車両内の他の場所に配置してもよい。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0023
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0023】
周波数帯域分解部112を、入力オーディオ信号を(少なくとも)二つのサブバンドオーディオ信号に分解するように配置してもよく、サブバンドオーディオ信号のそれぞれは、少なくとも二つの周波数帯域のそれぞれの一つを表す。この関連で、分解は、少なくとも入力オーディオ信号の第1の周波数帯域を表す第1のサブバンドオーディオ信号及び入力オーディオ信号の第2の周波数帯域を表す第2のサブバンドオーディオ信号をもたらす可能性がある。さらに、第1のサブバンドオーディオ信号及び第2のサブバンドオーディオ信号を、増幅のために第1の周波数帯域処理部114及び第2の周波数帯域処理部116にそれぞれ供給してもよい。この関連で、第1の周波数帯域処理部114を、出力オーディオ信号の第1の周波数帯域を表す増幅された第1のサブアンドオーディオ信号を導出するために第1のサブバンドオーディオ信号に第1の増幅を適用するように配置してもよく、一方、第2の周波数帯域処理部116を、出力オーディオ信号の第2の周波数帯域を表す増幅された第2のサブアンドオーディオ信号を導出するために第2のサブバンドオーディオ信号に第2の増幅を適用するように配置してもよい。周波数帯域分解部118を、少なくとも増幅された第1のサブバンド信号及び第2のサブバンド信号に基づいて出力オーディオ信号を(再)構成するように配置してもよい。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0025
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0025】
一例として、第1の周波数帯域は、音響再生装置130の動作を介して振動として再生される周波数を表してもよく、第2の周波数帯域は、音響再生装置130の動作を介して可聴音として再生される周波数を表してもよい。別の観点では、第2の周波数帯域は、音再生装置130を介して可聴音として再生してもよい入力オーディオ信号の複数の態様を表してもよく、一方、第1の周波数帯域は、音再生装置130を介して振動として再生してもよい入力オーディオ信号の複数の態様を表してもよい。その結果、第1の周波数帯域を、触覚周波数帯域又は振動周波数帯域と呼ぶことができ、一方、第2の周波数帯域を、可聴周波数帯域又は音周波数帯域と呼ぶことができる。非限定的な例として、触覚周波数帯域は、略5Hzから略500Hzまでの周波数をカバーしてもよく、可聴周波数帯域は、略50Hzから略20kHzまでの周波数をカバーしてもよい。指摘したように、上述した触覚周波数帯域及び可聴周波数帯域のそれぞれのエンドポイントは、この関連の非限定的な例として機能し、他の例では、触覚周波数帯域の低い方のエンドポイントは、0Hzから50Hzの範囲から選択された予め定義された値であってもよく、触覚周波数帯域の高い方のエンドポイントは、200Hzから1kHzの範囲から選択された予め定義された値であってもよい。同様に、他の例では、可聴周波数帯域の低い方のエンドポイントは、20Hzから100Hzの範囲から選択された予め定義された値であってもよく、可聴周波数帯域の高い方のエンドポイントは、16kHzから24kHzの範囲から選択された予め定義された値であってもよい。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0031
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0031】
基準マスキングスペクトルは、追加的に又は代替的に、音再生装置130の音響振動再生特性の一つ以上の態様をモデル化する役割を果たしてもよい予め定義された基準音再生スペクトルを表してもよい。この関連で、(第1の周波数帯域における)音再生装置130の音響振動再生アセンブリの周波数応答は、そこから発生する知覚可能な振動に大きな影響を及ぼす可能性があり、したがって、基準音再生スペクトルは、それぞれの音響振動再生アセンブリの周波数応答を説明することができる。さらに、音響振動再生アセンブリから想定されるリスニング位置に位置するユーザの身体及び耳への音響振動の伝達経路も同様に、特に、振動に関連してユーザの知覚に影響を及ぼす可能性がある。この態様は、基準音再生スペクトルにおいて説明することができる。この関連の一例として、音響振動再生アセンブリから発生する振動は、例えば、音響振動再生アセンブリをカバーするパッドの特性及び厚さに依存する周波数依存的な方法で伝送経路において減衰する可能性がある。別の例として、人体の異なる部分(例えば、頭、首、背中、腕等)は、通常、触覚に対して異なる感度を有し、したがって、結果的に生じる振動が伝達されるべきユーザの身体の部分に関連する音響振動再生アセンブリの位置を、基準音波再生スペクトルにおいて説明してもよい。基準音再生スペクトルは、出力オーディオ信号の所定のオーディオチャネルの再生を意図する所定の音響振動再生アセンブリに固有であってもよい態様をモデル化する役割を果たすので、音再生装置130の音響振動再生アセンブリの各々、したがって、出力オーディオ信号の各オーディオチャネルのための専用のそれぞれの音再生スペクトルが存在する可能性がある。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0063
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0063】
本明細書におけるプロセッサへの(一つ以上の)言及は、プログラマブルプロセッサのみを包含するものと理解されるべきではなく、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、特定用途向け回路(ASIC)、信号プロセッサ等の専用回路も包含するものと理解されるべきである。
本明細書に開示される発明は以下を含む。
[態様1]
入力信号に基づいて出力信号を導出する信号処理部(110)と、
音響振動再生装置(130)による提供のために、前記信号処理部(110)における前記出力信号の導出を制御する制御部(120)と、
を備え、前記制御部(120)は、第1の周波数帯域及び第2の周波数帯域における前記出力信号の導出のためにそれぞれの増幅を個別に制御するように配置され、前記第1の周波数帯域は、触覚周波数を表し、前記第2の周波数帯域は、可聴周波数を表し、前記信号制御部は、
前記第2の周波数帯域のためのユーザが選択した第2の増幅に依存する前記第1の周波数帯域のための第1の増幅を決定することと、
前記入力信号によって表される信号コンテンツタイプに依存する前記第1の周波数帯域のための第1の増幅を決定することと、
のうちの少なくとも一方を行うように配置された、信号処理アセンブリ(101)。
[態様2]
前記第1の増幅は、前記第1の周波数帯域に亘る周波数の関数として定義される、態様1に記載の信号処理アセンブリ(101)。
[態様3]
前記第1の増幅は、複数の異なる第2の増幅値に対して前記第2の増幅と異なる、態様1又は2に記載の信号処理アセンブリ(101)。
[態様4]
前記制御部(120)は、前記第2の増幅に依存して前記第1の増幅を決定するように配置され、前記制御部(120)は、基準マスキングスペクトルを考慮して前記第2の周波数帯域に対して選択された増幅の関数として前記第1の周波数帯域に適用可能な増幅を定義する予め定義されたマッピング関数の使用により前記第1の増幅を決定するように配置された、態様3に記載の信号処理アセンブリ(101)。
[態様5]
前記予め定義されたマッピング関数は、前記第2の周波数帯域における第2の信号レベルのそれぞれの範囲を表す第2の増幅値の範囲から前記第1の周波数帯域における第1の振幅レベルのそれぞれの範囲を表す第1の増幅値の対応する範囲へのマッピングに基づく、態様4に記載の信号処理アセンブリ(101)。
[態様6]
前記第2の増幅値の範囲及び前記第1の増幅値の対応する範囲は、前記基準マスキングスペクトルに従ってそれぞれのマスキングレベルに関連付けられた第2の増幅値及び対応する第1の増幅値の複数の対を含み、各対において、それぞれの前記第2の増幅値は、それぞれの前記マスキングレベルにおいて前記第2の周波数帯域における前記基準マスキングスペクトルを克服するのに十分であると考えられる第2の信号レベルを表し、それぞれの対応する前記第1の増幅値は、それぞれの前記マスキングレベルにおいて前記第1の周波数帯域における前記基準マスキングスペクトルを克服するのに十分であると考えられる第1の信号レベルを表す、態様5に記載の信号処理アセンブリ(101)。
[態様7]
前記制御部(120)は、前記第2の増幅に依存するとともに前記入力信号によって表される信号コンテンツタイプに更に依存して前記第1の増幅を決定するように配置され、前記制御部(120)は、
前記入力信号の前記信号コンテンツタイプを、割り当てられたそれぞれの前記基準マスキングスペクトルを考慮して前記第1の周波数帯域に適用可能な増幅を前記第2の周波数帯域に対して選択された増幅の関数として定義するそれぞれのマッピング関数をそれぞれ有する予め定義された複数の信号コンテンツタイプのうちの一つとして決定し、
前記決定された信号コンテンツタイプに割り当てられた前記マッピング関数を使用して前記第1の増幅を決定するように配置された、態様1~3のいずれか一つに記載の信号処理アセンブリ(101)。
[態様8]
前記決定された信号コンテンツタイプに割り当てられた前記予め定義されたマッピング関数は、前記決定された信号コンテンツタイプを考慮して前記第2の周波数帯域における第2の信号レベルのそれぞれの範囲を表す第2の増幅値の範囲から前記第1の周波数帯域における第1の信号レベルのそれぞれの範囲を表す対応する第1の増幅値の範囲へのマッピングに基づく、態様7に記載の信号処理アセンブリ(101)。
[態様9]
前記第2の増幅値の範囲及び対応する前記第1の増幅値の範囲は、前記基準マスキングスペクトルに従ってそれぞれのマスキングレベルに関連付けられた第2の増幅値及び対応する第1の増幅値の複数の対を含み 各対において、それぞれの前記第2の増幅値は、それぞれの前記マスキングレベルにおいて前記第2の周波数帯域における前記基準マスキングスペクトルを克服するのに十分であると考えられる第2の信号レベルを表し、それぞれの対応する前記第1の増幅値は、それぞれの前記マスキングレベルにおいて前記第1の周波数帯域における前記基準マスキングスペクトルを克服するのに十分であると考えられる第1の信号レベルを表す、態様8に記載の信号処理アセンブリ(101)。
[態様10]
前記基準マスキングスペクトルは、
前記音響振動再生装置(130)の目標動作環境における背景雑音状態のスペクトル特性を表す予め定義された基準背景雑音スペクトルと、
前記音響振動再生装置(130)の周波数応答をモデル化する予め定義された音響再生スペクトルと、
のうちの一つ以上を更に表す、態様4~9のいずれか一つに記載の信号処理アセンブリ(101)。
[態様11]
前記制御部(120)は、前記入力信号によって表される信号コンテンツタイプに依存して前記第1の増幅を決定するように配置され、前記制御部(120)は、
前記入力信号の前記信号コンテンツタイプを、割り当てられるそれぞれの増幅プロファイルをそれぞれ有する複数の予め定義された信号コンテンツタイプのうちの一つとして決定し、
前記決定された信号コンテンツタイプに割り当てられた前記増幅プロファイルに従って前記第1の増幅を決定するように配置された、態様1~3のいずれか一つに記載の信号処理アセンブリ(101)。
[態様12]
前記決定された信号コンテンツタイプに割り当てられた前記増幅プロファイルは、前記第1の周波数帯域における周波数の関数として調整係数を定義する調整曲線を定義し、
前記制御部(120)は、前記第2の増幅と前記調整曲線の積として前記第1の増幅を決定するように配置された、態様11に記載の信号処理アセンブリ(101)。
[態様13]
前記決定された信号コンテンツタイプに割り当てられた前記増幅プロファイルは、
前記第1の周波数帯域における周波数の関数として最大エネルギーを定義する最大エネルギー曲線と、
前記第1の周波数帯域における周波数の関数として最小エネルギーを定義する最小エネルギー曲線と、
のうちの少なくとも一方を更に定義し、
前記制御部(120)は、前記最大エネルギー曲線と前記最小エネルギー曲線とのうちの少なくとも一方に従って前記第1の増幅を制限するように配置された、態様12に記載の信号処理アセンブリ(101)。
[態様14]
前記複数の信号コンテンツタイプは、
音声と、
音楽と、
混合音声と、
サウンドマッサージと、
音響及び/又は振動効果と、
アラーム音及び/又は振動と、
のうちの少なくとも二つを含む、態様7~13のいずれか一つに記載の信号処理アセンブリ(101)。
[態様15]
前記制御部(120)は、
前記入力信号に関連するメタデータと、
前記入力信号の分析と、
のうちの一つを介して前記信号コンテンツタイプを決定するように配置された、態様7~14のいずれか一つに記載の信号処理アセンブリ(101)。
[態様16]
前記制御部(120)は、前記第1の周波数帯域における信号電力が少なくとも予め定義された期間中に予め定義された閾値を連続的に超えることに応答して、前記第1の増幅を低減するように配置された、態様1~15のいずれか一つに記載の信号処理アセンブリ(101)。
[態様17]
態様1~16のいずれか一つに記載の信号処理アセンブリ(101)と、
出力信号に従って音響及び振動を生成する音響振動再生装置(130)と、
を備える音響振動再生配置(100)。
[態様18]
前記音響振動再生装置(130)は、パッドと、前記パッドの少なくとも一つの外面における振動及び音響として知覚可能な機械的な振動を生成するとともに前記パッドの少なくとも一つの外面を通して音を発するために前記パッドの内部に配置された音響振動再生アセンブリと、を備え、前記音響振動再生アセンブリの各々は、前記出力信号のそれぞれのオーディオチャンネルを表す音響振動を再生するように配置された、態様17に記載の配置。
[態様19]
入力信号に基づいて出力信号を導出する信号処理部(110)の動作を制御する方法(200)であって、第1の周波数帯域及び第2の周波数帯域における前記出力信号の導出のためにそれぞれの増幅を個別に制御することを備え、前記第1の周波数帯域は、触覚周波数を表し、前記第2の周波数帯域は、可聴周波数を表し、前記個別に制御することは、
前記第2の周波数帯域のためのユーザが選択した第2の増幅に依存する前記第1の周波数帯域のための第1の増幅を決定することと、
前記入力信号によって表される信号コンテンツタイプに依存する前記第1の周波数帯域のための第1の増幅を決定することと、
のうちの少なくとも一方を行うことを備える、方法(200)。
[態様20]
コンピュータ装置(300)で実行するときに少なくとも態様19に記載の方法(200)を実行させるように構成されたコンピュータ可読なプログラムコード(325)を含むコンピュータプログラム。
【手続補正6】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
信号処理アセンブリ(101)、パッド及び音響振動再生装置(130)を備える音響振動再生配置(100)であって、前記音響振動再生装置(130)は、前記パッドの内部に配置された音響振動再生アセンブリを備え、前記音響振動再生アセンブリは、基板を介して誘導される振動が前記パッドの外面における振動として知覚可能であるとともに前記パッドの外面を通して発した音として知覚可能であるように出力信号に従って前記基板を振動させるように配置されたアクチュエータを備え、前記音響振動再生装置(130)は、
入力信号の第1の周波数帯域及び第2の周波数帯域をそれぞれ増幅することによって前記出力信号
の第1の周波数帯域及び第2の周波数帯域を導出するように配置された信号処理部(110)と、
前記音響振動再生装置(130)による提供のために、前記信号処理部(110)における前記出力信号の導出を制御する制御部(120)と、
を備え、前記制御部(120)は、
前記第1の周波数帯域及び
前記第2の周波数帯域における前記出力信号の導出のためにそれぞれの増幅を個別に制御するように配置され、前記第1の周波数帯域は、触覚周波数を表し、前記第2の周波数帯域は、可聴周波数を表し、
前記制御部(120)は、
前記第2の周波数帯域のためのユーザが選択した第2の増幅及び前記第1の周波数帯域のための第1の増幅のそれぞれの大きさの差が前記第2の増幅の異なる値において異なる態様及び/又は前記第2の増幅及び前記第1の増幅の間の比が前記第2の増幅の異なる値において異なる態様のうちの少なくとも一つにおいて非線形である予め定義されたマッピング関数を介して、前記第2の増幅に依存して前記第1の増幅を決定するように配置され、
前記予め定義されたマッピング関数は、想定されるリスニング位置に位置するユーザの身体及び耳への前記音響振動再生装置(130)からの伝送経路をモデル化する予め定義された音響再生スペクトルを表す基準マスキングスペクトルを考慮して前記第2の周波数帯域に対して選択された増幅の関数として前記第1の周波数帯域に適用可能な増幅を定義する、音響振動再生配置(100)。
【請求項2】
前記第1の増幅は、前記第1の周波数帯域に亘る周波数の関数として定義される、請求項1に記載の
音響振動再生配置(100)。
【請求項3】
前記第1の増幅は、複数の異なる第2の増幅値に対して前記第2の増幅と異なる、請求項
1に記載の
音響振動再生配置(100)。
【請求項4】
前記予め定義されたマッピング関数は、前記第2の周波数帯域における第2の信号レベルのそれぞれの範囲を表す第2の増幅値の範囲から前記第1の周波数帯域における第1の振幅レベルのそれぞれの範囲を表す第1の増幅値の対応する範囲へのマッピングに基づく、請求項
3に記載の
音響振動再生配置(100)。
【請求項5】
前記第2の増幅値の範囲及び前記第1の増幅値の対応する範囲は、前記基準マスキングスペクトルに従ってそれぞれのマスキングレベルに関連付けられた第2の増幅値及び対応する第1の増幅値の複数の対を含み、各対において、それぞれの前記第2の増幅値は、それぞれの前記マスキングレベルにおいて前記第2の周波数帯域における前記基準マスキングスペクトルを克服するのに十分であると考えられる第2の信号レベルを表し、それぞれの対応する前記第1の増幅値は、それぞれの前記マスキングレベルにおいて前記第1の周波数帯域における前記基準マスキングスペクトルを克服するのに十分であると考えられる第1の信号レベルを表す、請求項
4に記載の
音響振動再生配置(100)。
【請求項6】
前記制御部(120)は、前記第2の増幅に依存するとともに前記入力信号によって表される信号コンテンツタイプに更に依存して前記第1の増幅を決定するように配置され、前記制御部(120)は、
前記入力信号の前記信号コンテンツタイプを、割り当てられるそれぞれの前記基準マスキングスペクトルを考慮して前記第1の周波数帯域に適用可能な増幅を前記第2の周波数帯域に対して選択された増幅の関数として定義するそれぞれのマッピング関数をそれぞれ有する複数の予め定義された信号コンテンツタイプのうちの一つとして決定し、
前記決定された信号コンテンツタイプに割り当てられた前記マッピング関数を使用して前記第1の増幅を決定するように配置された、請求項
1に記載の
音響振動再生配置(100)。
【請求項7】
前記決定された信号コンテンツタイプに割り当てられた前記予め定義されたマッピング関数は、前記決定された信号コンテンツタイプを考慮して前記第2の周波数帯域における第2の信号レベルのそれぞれの範囲を表す第2の増幅値の範囲から前記第1の周波数帯域における第1の信号レベルのそれぞれの範囲を表す対応する第1の増幅値の範囲へのマッピングに基づく、請求項
6に記載の
音響振動再生配置(100)。
【請求項8】
前記第2の増幅値の範囲及び対応する前記第1の増幅値の範囲は、前記基準マスキングスペクトルに従ってそれぞれのマスキングレベルに関連付けられた第2の増幅値及び対応する第1の増幅値の複数の対を含み 各対において、それぞれの前記第2の増幅値は、それぞれの前記マスキングレベルにおいて前記第2の周波数帯域における前記基準マスキングスペクトルを克服するのに十分であると考えられる第2の信号レベルを表し、それぞれの対応する前記第1の増幅値は、それぞれの前記マスキングレベルにおいて前記第1の周波数帯域における前記基準マスキングスペクトルを克服するのに十分であると考えられる第1の信号レベルを表す、請求項
7に記載の
音響振動再生配置(100)。
【請求項9】
前記基準マスキングスペクトルは、
前記音響振動再生装置(130)の目標動作環境における背景雑音状態のスペクトル特性を表す予め定義された基準背景雑音スペクトルと、
前記音響振動再生装置(130)の周波数応答をモデル化する予め定義された音響再生スペクトルと、
のうちの
一つ以上を更に表す、請求項
1~
8のいずれか一項に記載の音響振動再生配置(100)。
【請求項10】
前記複数の予め定義された信号コンテンツタイプは、
音声と、
音楽と、
混合音声と、
サウンドマッサージと、
音響及び/又は振動効果と、
アラーム音及び/又は振動と、
のうちの少なくとも二つを含む、請求項
6に記載の
音響振動再生配置(100)。
【請求項11】
前記制御部(120)は、
前記入力信号に関連するメタデータと、
前記入力信号の分析と、
のうちの一つを介して前記信号コンテンツタイプを決定するように配置された、請求項
6に記載の
音響振動再生配置(100)。
【請求項12】
前記制御部(120)は、前記第1の周波数帯域における信号電力が少なくとも予め定義された期間中に予め定義された閾値を連続的に超えることに応答して、前記第1の増幅を低減するように配置された、請求項1~
8のいずれか一項に記載の
音響振動再生配置(100)。
【請求項13】
前記音響振動再生装置(130)は
、前記パッドの少なくとも一つの外面に振動及び音響として知覚可能な機械的振動を発生させるとともに前記パッドの前記少なくとも一つの外面を通して音を発するために前記パッドの内部に配置された
二つ以上の音響振動再生アセンブリを備え、前記音響振動再生アセンブリの各々は、
前記出力信号のそれぞれのオーディオチャンネルを表す音響振動を再生するように配置された、請求項
1~8のいずれか一項に記載の
音響振動再生配置(100)。
【請求項14】
座席と、請求項1~8のいずれか一項に記載の音響振動再生配置(100)と、を備え、前記パッドは、前記座席のクッションを含む、配置。
【請求項15】
前記座席は、映画館の座席又は車両の座席を含む、請求項14に記載の配置。
【請求項16】
信号処理アセンブリ(101)、パッド及び音響振動再生装置(130)を備える音響振動再生配置(100)の前記信号処理アセンブリ(101)の信号処理部(110)の動作を制御する方法(200)であって、
前記音響振動再生装置(130)は、前記パッドの内部に配置された音響振動再生アセンブリを備え、前記音響振動再生アセンブリは、基板を介して誘導される振動が前記パッドの外面における振動として知覚可能であるとともに前記パッドの外面を通して発した音として知覚可能であるように出力信号に従って前記基板を振動させるように配置されたアクチュエータを備え、前記信号処理部(110)は、入力信号の第1の周波数帯域及び第2の周波数帯域をそれぞれ増幅することによって前記出力信号の第1の周波数帯域及び第2の周波数帯域を導出するように配置され、
前記第1の周波数帯域及び
前記第2の周波数帯域における前記出力信号の導出のためにそれぞれの増幅を個別に制御することであって、前記第1の周波数帯域は、触覚周波数を表し、前記第2の周波数帯域は、可聴周波数を表し、前記個別に制御することは、
前記第2の周波数帯域のためのユーザが選択した第2の増幅及び前記第1の周波数帯域のための第1の増幅のそれぞれの大きさの差が前記第2の増幅の異なる値において異なる態様及び/又は前記第2の増幅及び前記第1の増幅の間の比が前記第2の増幅の異なる値において異なる態様のうちの少なくとも一つにおいて非線形である予め定義されたマッピング関数を介して、前記第2の増幅に依存して前記第1の増幅を
決定することを備え、
前記予め定義されたマッピング関数は、想定されるリスニング位置に位置するユーザの身体及び耳への前記音響振動再生装置(130)からの伝送経路をモデル化する予め定義された音響再生スペクトルを表す基準マスキングスペクトルを考慮して、前記第2の周波数帯域に対して選択された増幅の関数として、前記第1の周波数帯域に適用される増幅を定義する、方法(200)。
【請求項17】
音波振動再生配置(100)の信号処理アセンブリ(101)の制御部(120,300)で実行するときに少なくとも請求項
16に記載の方法(200)を実行させるように構成されたコンピュータ可読なプログラムコード(325)を含む
コンピュータプログラムであって、前記音波振動再生配置(100)は、信号処理アセンブリ(101)、パッド及び音響振動再生装置(130)を備え、前記音響振動再生装置(130)は、前記パッドの内部に配置された音響振動再生アセンブリを備え、前記音響振動再生アセンブリは、基板を介して誘導される振動が前記パッドの外面における振動として知覚可能であるとともに前記パッドの外面を通して発した音として知覚可能であるように出力信号に従って前記基板を振動させるように配置されたアクチュエータを備える、コンピュータプログラム。
【国際調査報告】