(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-05
(54)【発明の名称】NOX除去を有するグリーン水素のためのアンモニア分解
(51)【国際特許分類】
C01B 3/04 20060101AFI20240628BHJP
C01B 3/56 20060101ALI20240628BHJP
B01D 53/86 20060101ALI20240628BHJP
B01D 53/047 20060101ALI20240628BHJP
B01D 53/14 20060101ALI20240628BHJP
【FI】
C01B3/04 B
C01B3/56 Z
B01D53/86 222
B01D53/047 ZAB
B01D53/14 200
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023577372
(86)(22)【出願日】2021-06-18
(85)【翻訳文提出日】2023-12-14
(86)【国際出願番号】 US2021037996
(87)【国際公開番号】W WO2022265648
(87)【国際公開日】2022-12-22
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591035368
【氏名又は名称】エア プロダクツ アンド ケミカルズ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】AIR PRODUCTS AND CHEMICALS INCORPORATED
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100195213
【氏名又は名称】木村 健治
(74)【代理人】
【識別番号】100202441
【氏名又は名称】岩田 純
(72)【発明者】
【氏名】ビンセント ホワイト
(72)【発明者】
【氏名】サイモン クレイグ サロウェイ
【テーマコード(参考)】
4D012
4D020
4D148
4G140
【Fターム(参考)】
4D012CA06
4D012CA20
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4G140FA02
4G140FB06
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4G140FE06
(57)【要約】
アンモニア分解プロセスにおいて生成された煙道ガス中のNOx不純物は、分解されたガスを精製する水素PSAデバイスからの圧縮された排ガスを冷却することによって生成されたアンモニア水溶液を使用して、選択触媒還元(SCR)によって煙道ガスから除去され得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンモニアから水素を生成する方法であって、
液体アンモニアを加圧して、加圧された液体アンモニアを生成することと、
1つ以上の高温流体との熱交換によって、前記加圧された液体アンモニアを加熱して(及び任意選択的に、気化させて)、加熱されたアンモニアを生成することと、
炉内で燃料を燃焼させて、触媒を含む反応器管を加熱し、窒素酸化物(NO
x)を含む煙道ガスを形成することと、
選択触媒還元(SCR)反応器内のアンモニアの存在下で前記煙道ガスを選択的還元触媒と接触させて、NO
xを窒素ガス及び水に変換することと、
前記加熱されたアンモニアを、前記触媒を含む反応器管に供給して、水素ガス、窒素ガス、及び残留アンモニアを含む分解されたガスに前記アンモニアの分解を引き起こすことと、
第1のPSAデバイス内の前記分解されたガスを精製して、アンモニアを含む第1の水素生成物ガス及び第1のPSA排ガスを生成することと、
前記第1のPSA排ガスの少なくとも一部分を圧縮して、圧縮されたPSA排ガスを生成することと、
前記圧縮されたPSA排ガスを冷却して、冷却されたアンモニア枯渇排ガス及びアンモニア水溶液を生成することと、
前記冷却されたアンモニア枯渇排ガスを前記アンモニア水溶液から分離することと、を含み、
分離されたアンモニア水溶液の少なくとも一部分が、前記SCR反応器に供給されて、前記SCR反応のための前記アンモニアを提供し、
前記1つ以上の高温流体が、前記煙道ガス及び/又は前記分解されたガスを含む、方法。
【請求項2】
前記圧縮されたPSA排ガスが、約5℃~約60℃の温度に冷却される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記圧縮されたPSA排ガスが、水、前記加圧された液体アンモニア、及び前記液体アンモニアを加熱することから生成された1つ以上の冷却流体から選択される少なくとも1つの冷却剤との熱交換によって冷却される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
水が、前記圧縮された第1のPSA排ガスに追加される、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記水が、前記圧縮された第1のPSA排ガスに追加される前に、約25℃を下回る温度に冷やされる、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記液体アンモニアが、0.2~0.5重量%の水を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記分解されたガス又はそれから誘導されたアンモニア枯渇ガスで精製するために、前記冷却されたアンモニア枯渇排ガスを前記第1のPSAデバイスに再循環させることを含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記冷却されたアンモニア枯渇排ガスを、第2のPSAデバイスにおいて精製して、第2の水素生成物ガス及び第2のPSA排ガスを生成することを含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記第2の水素生成物ガスが、前記第1の水素生成物ガスと組み合わされて、組み合わされた水素生成物ガスを生成する、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記炉内で燃焼される前記燃料が、アンモニア、前記第1のPSA排ガス、前記第2のPSA排ガス、水素、メタン、前記冷却されたアンモニア枯渇排ガス、又はそれらから誘導されるガスのうちの1つ以上を含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記炉内で燃焼される前記燃料が、前記第2のPSA排ガスを含む、請求項8~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記選択的還元触媒が、酸化チタン、酸化バナジウム、酸化モリブデン、酸化タングステン、又はゼオライトのうちの少なくとも1つを含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記第1のPSA排ガスが、約5~約50barの圧力に圧縮される、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
アンモニアから水素を生成するための装置であって、
液体アンモニアを加圧して、加圧された液体アンモニアを生成するためのポンプと、
1つ以上の高温流体との熱交換によって、前記ポンプからの前記加圧された液体アンモニアを加熱する(及び任意選択的に、気化する)ために、前記ポンプと流体連通している少なくとも1つの第1の熱交換器と、
前記第1の熱交換器からの加熱されたアンモニアを分解して、水素ガス、窒素ガス、及び残留アンモニアを含む第1の分解されたガスを生成するために、前記第1の熱交換器と流体連通している触媒を含む反応器管と、
前記触媒を含む反応器管を加熱して、窒素酸化物(NO
x)を含む煙道ガスを形成するための燃料の燃焼のために、前記触媒を含む反応器管と熱連通する炉と、
前記分解されたガスを精製して、第1の水素生成物ガス及び第1のPSA排ガスを生成するために、前記触媒を含む反応器管と流体連通している第1のPSAデバイスと、
前記第1のPSA排ガスの少なくとも一部分を圧縮して、圧縮されたPSA排ガスを生成するための前記第1のPSAデバイスと流体連通している圧縮機と、
前記圧縮されたPSA排ガスを冷却して、冷却されたアンモニア枯渇排ガス及びアンモニア水溶液を生成するために、前記圧縮機と流体連通している少なくとも1つの第2の熱交換器と、
前記冷却されたアンモニア枯渇排ガスを前記アンモニア水溶液から分離するために、前記第2の熱交換器と流体連通している分離デバイスと、
NO
xを窒素ガス及び水に変換するための前記炉及び前記分離デバイスと流体連通している選択的触媒還元(SCR)反応器と、を備え、
前記装置が、前記アンモニア水溶液を前記SCR反応器に供給するための導管を備え、
前記装置が、前記煙道ガスを高温流体として前記炉から前記第1の熱交換器に供給するための煙道ガス導管、及び/又は前記分解されたガスを高温流体として前記触媒を含む反応器管から前記第1の熱交換器に供給するための分解されたガス導管を備える、装置。
【請求項15】
前記冷却されたアンモニア枯渇排ガスを前記第1のPSAデバイスに再循環するための導管を更に備える、請求項14に記載の装置。
【請求項16】
前記冷却されたアンモニア枯渇排ガスを精製して、第2の水素生成物ガス及び第2のPSA排ガスを生成するために、前記分離デバイスと流体連通している第2のPSAデバイスと、
前記第2のPSAデバイスから前記第2の水素ガスを除去するための第2の水素ガス導管と、
前記第2のPSAデバイスから前記第2のPSA排ガスを除去するための第2のPSA排ガス導管と、を更に備える、請求項14に記載の装置。
【請求項17】
前記分離デバイスに水を供給するための導管を更に備える、請求項14~16のいずれか一項に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
再生可能エネルギーへの世界的な関心、及びこの再生可能エネルギーを使用してグリーン水素を発生させることは、アンモニアが数百又は数千マイルの距離を移送することにおいてより簡単であるため、グリーン水素をグリーンアンモニアに変換することへの関心を高めている。特に、液体水素の輸送は、現在商業的には可能ではないが、液体状態にあるアンモニアの輸送は、現在実践されている。
【0002】
市販の燃料電池における使用の場合、アンモニアは、反応により水素に変換されなければならない。
【数1】
これは吸熱プロセス、すなわち、熱を必要とするプロセスであり、触媒を介して実施される。このプロセスは、分解として既知である。生成されるガス(又は「分解されたガス」)は、水素(H
2)と窒素(N
2)の組み合わせである。分解反応は、平衡反応であるため、残留アンモニアもまた存在する。現行の分解装置のほとんどの用途において、水素+窒素の混合物は、そのまま利用される。しかしながら、アンモニアは、燃料電池にとって害になるものであり得るため、この流れは、水で洗浄することによってなど、アンモニアを好適に除去することで、燃料電池において直接使用することができる。しかしながら、水素が車両の燃料供給において使用される場合、存在する窒素は、プロセスにペナルティを提供する。車両の燃料供給システムへの燃料は、最大900barという著しい圧力に圧縮される。これは、プロセスにおいて単なる希釈剤である窒素も圧縮され、電力を要し、貯蔵量を要し、アノードガスパージ要件を増加させ、効率を低下させることを意味する。したがって、水素が車両の燃料供給において使用される場合、水素+窒素が精製されることが有益である。
【0003】
小規模分解反応器、又は「分解装置」は、典型的には、圧力スイング吸着(「PSA」)デバイスを使用して、分解されたガスを分離し、水素を回収し、PSA排ガス(又はオフガス)を生成する。しかしながら、これらの分解装置は、概して、電気的に加熱され、PSA排ガスは、典型的には、大気中に排気される。
【0004】
蒸気メタン改質(SMR)反応器からの水素生成において一般的であるように、PSAは、窒素+水素を精製するために使用することができる。分解反応は、炉によって外部的に加熱される触媒が充填された管内で実施される(GB1142941を参照)。
【0005】
分解反応に必要とされる熱は、典型的には、炉内での複数の燃料のうちの1つの燃焼によって提供される。燃料、特に炭化水素及びアンモニアを含む燃料の燃焼は、必然的に窒素酸化物(NOx)を含む様々な大気汚染物質を生成する。NOxは、高温での燃料の燃焼中に生成される単一窒素酸化物、すなわち、NO及びNO2の一般的な用語である。環境及び人間の健康に悪影響を及ぼすため、NOxの排出を制御する必要がある。
【0006】
GB1142941は、アンモニアから都市ガスを作製するためのプロセスを開示する。アンモニアを、分解し、分解されたガスを、水で洗浄して、残留アンモニアを除去する。次いで、精製された水素/窒素混合物をプロパン及び/又はブタン蒸気で濃縮して、分配用の都市ガスを生成する。
【0007】
US6835360Aは、炭化水素原料及びメタノールを、水素及び一酸化炭素などの有用なガスに変換するための吸熱触媒反応装置を開示する。装置は、放射性燃焼室と組み合わせて、管状の吸熱触媒反応器を備える。結果として得られた分解されたガスは、ガス調節システムを通過した後、燃料電池内で直接使用される。
【0008】
GB977830Aは、アンモニアを分解して、水素を生成するためのプロセスを開示する。このプロセスでは、分解されたガスを、窒素を吸着する分子ふるいの床に通すことによって、水素が窒素から分離される。次いで、窒素は、床から駆動され、ホルダ内に貯蔵され得る。
【0009】
JP5330802Aは、アンモニアが10kg/cm2(又は約9.8bar)の圧力及び300~700℃の温度でアンモニア分解触媒と接触するアンモニア分解プロセスを開示する。水素は、PSAデバイスを使用して分解されたガスから回収される。参考文献は、脱着された窒素が上流プロセスを後押しするために使用され得ることに言及しているが、詳細は提供されていない。
【0010】
US2007/178034Aは、アンモニア及び炭化水素原料の混合物が、600℃及び3.2MPa(又は約32bar)の燃焼蒸気改質器を通過し、約70体積%の水素を含む合成ガスに変換されるプロセスを開示する。合成ガスは、シフト反応で水素が濃縮され、冷却され、縮合物が除去される。結果として得られたガスは、PSAシステムに供給されて、99体積%以上の水素を有する精製水素生成物を生成する。PSAシステムからのオフガスは、燃料として燃焼蒸気改質器に供給される。
【0011】
CN111957270Aは、アンモニアが炉内の管状反応器内で分解されるプロセスを開示する。分解されたガスは、吸着によって分離されて、水素ガス及び窒素リッチオフガスを生成する。分解されたガス、水素生成物ガス、及び/又はオフガスの組み合わせを使用して、炉の燃料需要が満たされるように見える。
【0012】
概して、アンモニアからの水素の生成のための改善されたプロセス、具体的には、エネルギー消費の観点からより効率的であるプロセス、及び/又はより高いレベルの水素回収を有するプロセス、及び/又は化石燃料を燃焼させる必要性を低減若しくは排除するプロセス、及び/又はNOx排出を低減させるプロセスのための改善されたプロセスが、必要である。
【0013】
以下の本発明の実施形態の考察では、特に明記されない限り、与えられた圧力は絶対圧力である。
【発明の概要】
【0014】
本明細書で説明されるのは、アンモニアから水素を生成するための方法及び装置である。本発明者らは、アンモニア水溶液がPSAオフガス(排ガス)から回収することができ、選択的触媒還元(SCR)プロセスで使用して、煙道ガスから有害なNOxを除去することができることを見出した。
【0015】
本発明の第1の態様によれば、アンモニアから水素を生成するための方法が提供され、
液体アンモニアを加圧して、加圧された液体アンモニアを生成することと、
1つ以上の高温流体との熱交換によって、加圧された液体アンモニアを加熱して(及び任意選択的に、気化させて)、加熱されたアンモニアを生成することと、
炉内で燃料を燃焼させて、触媒を含む反応器管を加熱し、窒素酸化物(NOx)を含む煙道ガスを形成することと、
選択触媒還元(SCR)反応器内のアンモニアの存在下で煙道ガスを選択的還元触媒と接触させて、NOxを窒素ガス及び水に変換することと、
加熱されたアンモニアを、触媒を含む反応器管に供給して、水素ガス、窒素ガス、及び残留アンモニアを含む分解されたガスにアンモニアの分解を引き起こすことと、
第1のPSAデバイス内の分解されたガスを精製して、アンモニアを含む第1の水素生成物ガス及び第1のPSA排ガスを生成することと、
第1のPSA排ガスの少なくとも一部分を圧縮して、圧縮されたPSA排ガスを生成することと、
圧縮されたPSA排ガスを冷却して、冷却されたアンモニア枯渇排ガス及びアンモニア水溶液を生成することと、
冷却されたアンモニア枯渇排ガスをアンモニア水溶液から分離することと、を含み、
分離されたアンモニア水溶液が、SCR反応器に供給されて、SCR反応のためのアンモニアを提供し、
1つ以上の高温流体が、煙道ガス及び/又は分解されたガスを含む。
【0016】
液体アンモニア供給物は、典型的には、1.1bar超、例えば、少なくとも5bar又は少なくとも10barの圧力に加圧される。いくつかの実施形態では、液体アンモニアは、約5bar~約50barの範囲内、又は約10~約45barの範囲内、又は約30bar~約40barの範囲内の圧力に加圧される。
【0017】
液体アンモニアは、典型的には、約250℃超、例えば、約350℃~約800℃、又は約400℃~約600℃の範囲内にある温度で加熱アンモニアを生成するように加熱される。問題の圧力において、液体アンモニアは、典型的には、完全に気化して、加熱されたアンモニア蒸気を形成する。
【0018】
温度は、最終的に、触媒の同一性、動作圧力、及び所望の「スリップ」、すなわち、分解されることなく分解反応器を通過するアンモニアの量によって決定される。これに関して、プロセスは、典型的には、約4%以下のスリップで動作し、これは、分解プロセスが平衡に近いアプローチで5bar及び350℃で動作させた場合のスリップ量である。いくつかの構造材料では、約700℃を上回る温度で任意の認識可能な圧力において問題が発生する可能性がある。
【0019】
分解反応は、炉によって加熱される触媒で充填された反応器管内で起こる。しかしながら、理論的には、任意の不均一に触媒されたガス反応器は、潜在的に変換のために使用することができる。
【0020】
アンモニア分解反応に有用であるとして当技術分野において既知の多くの触媒が存在し、これらの従来の触媒のいずれかが、本発明において使用され得る。
【0021】
炉のための燃料は、水素、アンモニア、分解されたガス、PSAオフガス又はメタンを含み得るが、典型的には、メタンを含む。燃料は、純粋なメタンであり得るが、天然ガス又はバイオガスである可能性も高い。いくつかの実施形態では、一次燃料は、任意選択的に、アンモニア分解ガスの形態で、二次燃料として水素で補完された天然ガス又はバイオガスである。これらの実施形態では、液体アンモニアは、ポンプ圧送され、分解されて、一次燃料に追加される分解ガスを形成することができる。いくつかの実施形態では、燃料は、冷却されたアンモニア枯渇排ガス、又はそれから誘導されたガスを含む。
【0022】
第1のPSAデバイスは、PSAサイクル又は真空スイング吸着(VSA)サイクルを動作させ得る。TSAデバイスは、第1のPSAデバイス、アンモニアを除去するためのTSAデバイス(US10787367を参照)、及び窒素を除去し、水素生成物を生成するための第1のPSAデバイスと組み合わせて使用され得る。好適なPSAサイクルは、US9381460、US6379431、及びUS877051に開示されているサイクルのいずれかを含み、これらの開示は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0023】
圧縮されたPSA排ガスは、好ましくは、水及びアンモニアの除去を容易にするために冷却される。この点で、圧縮されたガスは、好ましくは、約5℃~約60℃、又は約10℃~約60℃、好ましくは、約50℃の範囲内にある温度に冷却される。当業者は、温度が排ガスの圧力に依存し、それ自体が分解装置圧力及びPSA動作圧力などのシステム内の他の圧力に依存することを理解するであろう。
【0024】
圧縮されたPSA排ガスは、典型的には、水、冷却供給アンモニア、及び液体アンモニアを加熱することから生成された1つ以上の冷却流体から選択される少なくとも1つの冷却剤との熱交換によって冷却される。
【0025】
水は、任意選択的に、圧縮されたPSA排ガスに追加されて、アンモニア水溶液を形成し得る。いくつかの実施形態では、供給アンモニアは、典型的には、約0.1重量%~約0.5重量%、例えば、約0.2重量%の量で水を含み得る。この水は、輸送及び貯蔵中の船舶内の応力腐食分解を防止するために存在する。しかしながら、これらのレベルの水は、いくつかの場合では、アンモニア分解触媒への損傷を防止するために、供給アンモニアから除去される必要があり得る。水が供給アンモニア中に存在し、分解前に除去する必要がない場合(すなわち、触媒が耐水性である場合)、追加の水は必要とされない可能性がある。
【0026】
水は、圧縮された第1のPSA排ガスに追加する前に、周囲温度、例えば約25℃を下回る温度まで冷ますことができる。この点で、冷水は、約5℃~約25℃、例えば、約5℃~約10℃の温度であり得る。
【0027】
方法は、任意選択的に、分解されたガス又はそれから誘導されたアンモニア枯渇ガスで精製するために、冷却されたアンモニア枯渇排ガスを、第1のPSAデバイスに再循環させることを含み得る。かかる実施形態では、アンモニア枯渇排ガスは、圧縮され得、圧縮されたPSA排ガスは、第1のPSAデバイスに再循環され得る。このようにして再循環することで、約94%~約96%の全体的な水素回収を達成することができる。
【0028】
方法は、任意選択的に、第2のPSAデバイスにおいて冷却されたアンモニア枯渇排ガスを精製して、第2の水素生成物ガス及び第2のPSA排ガスを生成することを含み得る。これらの実施形態では、第2の水素生成物ガスは、第1の水素生成物ガスと組み合わされて、組み合わされた水素生成物ガスを生成し、炉内で燃焼された燃料は、第2のPSA排ガスを含み得る。
【0029】
この方法における更なる処理は、約95%~約97%の全体的な水素回収を達成することができる。例えば、第1のPSAデバイスが83%の回復を達成し、第2のPSAが80%の回復を達成する場合、全体の回復は、96.6%である。
【0030】
第2のPSAデバイスは、PSAサイクル又は真空スイング吸着(VSA)サイクルを動作させ得る。TSAデバイスは、第2のPSAデバイス、アンモニアを除去するためのTSAデバイス(US10787367を参照)、及び窒素を除去し、水素生成物を生成するための第2のPSAデバイスと組み合わせて使用され得る。好適なPSAサイクルとしては、US9381460、US6379431及びUS8778051内に開示されたサイクルのうちのいずれかが挙げられる。
【0031】
第1のPSA排ガスは、典型的には、第1のPSAデバイスへの供給物の圧力に圧縮される。第1のPSA排ガスは、典型的には、約1.1bar超、例えば、少なくとも5bar又は少なくとも10barの圧力に加圧される。いくつかの実施形態では、第1のPSA排ガスは、約5bar~約50barの範囲内、又は約10~約45barの範囲内、又は約30bar~約40barの範囲内の圧力に加圧される。
【0032】
第1又は第2のPSA排ガスの更なる部分、又はそれから誘導されたガスは、任意選択的に、膜セパレータを使用して分離されて、窒素リッチ残留ガスを放出し、水素リッチ透過ガスを再循環して、PSAデバイス内で更に処理し、及び/又は水素生成物ガスに混合することができる。
【0033】
水素と同様に、アンモニアは、ガス分離に使用される膜を容易に透過する「高速ガス」である。ポリアミド又はポリスルホンポリマーで構成された膜など、いくつかの膜は、アンモニアに対してより耐性がある。しかしながら、ポリイミドポリマーで構成された膜などの一部の膜は、アンモニアに対する耐性が低い。したがって、アンモニアは、典型的には、膜セパレータの上流で除去されるか、又はその濃度が少なくとも低減される。
【0034】
アンモニア除去は、プロセス内のいくつかの異なる場所で達成され得る。PSA排ガスを分離する前に、アンモニアは、PSA排ガスから除去され得る。代替的に、分解されたガスを精製する前に、アンモニアは、分解されたガスから除去され得る。両方の場合において、除去されたアンモニアは回収され、触媒を含む反応器管に供給されるアンモニアに再循環され得る。
【0035】
アンモニアは、吸着によって(例えば、TSAによって)、又は水中での吸収によって、例えば、スクラバ内の水でガスを洗浄することによって、ガスから除去され得る。結果として得られたアンモニア枯渇ガス及びアンモニア溶液は分離されるため、アンモニア枯渇ガスは、アンモニアが困難を引き起こすことなく更に処理することができる。アンモニアは、カラム内でストリッピングすることにより、アンモニア溶液から回収することができる。かかるプロセスは、PSAユニットに供給される前に分解されたガスに、又は代替的に、膜セパレータに供給される前にPSA排ガスに適用され得る。
【0036】
選択的還元触媒は、当該技術分野で既知の任意の好適な触媒であり得る。典型的な選択的還元触媒は、チタン、バナジウム、モリブデン若しくはタングステン、又はゼオライトの酸化物である。白金又は他の貴金属は、低温用途などの特定のプロセスにおいて使用され得る。
【0037】
本発明の第2の態様によると、アンモニアから水素を生成するための装置が提供され、
液体アンモニアを加圧して、加圧された液体アンモニアを生成するためのポンプと、
1つ以上の高温流体との熱交換によって、ポンプからの加圧された液体アンモニアを加熱する(及び任意選択的に、気化する)ために、ポンプと流体連通している少なくとも1つの第1の熱交換器と、
第1の熱交換器からの加熱されたアンモニアを分解して、水素ガス、窒素ガス、及び残留アンモニアを含む第1の分解されたガスを生成するために、第1の熱交換器と流体連通している触媒を含む反応器管と、
触媒を含む反応器管を加熱し、窒素酸化物(NOx)を含む煙道ガスを形成するための燃料の燃焼のために、触媒を含む反応器管と熱連通する炉と、
分解されたガスを精製して、第1の水素生成物ガス及び第1のPSA排ガスを生成するために、触媒を含む反応器管と流体連通している第1のPSAデバイスと、
第1のPSA排ガスの少なくとも一部分を圧縮して、圧縮されたPSA排ガスを生成するための第1のPSAデバイスと流体連通している圧縮機と、
圧縮されたPSA排ガスを冷却して、冷却されたアンモニア枯渇排ガス及びアンモニア水溶液を生成するために、圧縮機と流体連通している少なくとも1つの第2の熱交換器と、
冷却されたアンモニア枯渇排ガスをアンモニア水溶液から分離するために、第2の熱交換器と流体連通している分離デバイスと、
NOxを窒素ガス及び水に変換するための炉及び分離デバイスと流体連通している選択的触媒還元反応器と、を備え、
装置は、水性アンモニア溶液をSCR反応器に供給するための導管を備え、
装置は、煙道ガスを、高温流体として炉から熱交換器に供給するための煙道ガス導管、及び/又は分解されたガスを、高温流体として触媒を含む反応器管から第1の熱交換器に供給するための分解されたガス導管を備える。
【0038】
冷却されたアンモニア枯渇排ガスは、分解されたガス又はそれから誘導されたアンモニア枯渇ガスでの更なる精製のために、第1のPSAデバイスに再循環され得る。これらの実施形態では、装置は、分解されたガス又はそれから誘導されたアンモニア枯渇ガスで精製するために、冷却されたアンモニア枯渇排ガスを第1のPSAデバイスに再循環するための導管を備える。
【0039】
冷却されたアンモニア枯渇排ガスは、第2のPSAデバイス内で更に精製され得る。これらの実施形態では、装置は、
冷却されたアンモニア枯渇排ガスを精製して、第2の水素生成物ガス及び第2のPSA排ガスを生成するために、分離デバイスと流体連通している第2のPSAデバイスと、
第2のPSAデバイスから第2の水素生成物ガスを除去するための第2の水素ガス導管と、
第2のPSAデバイスから第2のPSA排ガスを除去するための第2のPSA排ガス導管と、を備える。
【0040】
装置は、任意選択的に、分離デバイスに水を供給して、アンモニア水溶液を形成するための導管を備え得る。
【0041】
発明は、ここで以下の図面に描写されるプロセスを参照して説明される。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【
図1】水素を生成するためのアンモニア分解プロセスの第1の参考例のプロセスフロー図である。
【
図2】水素生成物を燃料として使用しない、
図1のアンモニア分解プロセスに基づく、別の参考例のプロセスフロー図である。
【
図3】PSA排ガスのみを燃料として使用する、
図1及び2のアンモニア分解プロセスに基づく、更なる参考例のプロセスフロー図である。
【
図4】本発明による、水素を生成するためのアンモニア分解プロセスの第1の実施形態のプロセスフロー図である。
【
図5】本発明による、水素を生成するためのアンモニア分解プロセスの第2の実施形態のプロセスフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
アンモニアを分解することによって水素を生成するためのプロセスが本明細書において説明される。プロセスは、化石燃料の代わりに再生可能エネルギーを使用して生成される水素である、いわゆる「グリーン」水素を生成するための特定の用途を有する。この場合、アンモニアは、典型的には、水素を生成するために、風力及び/又は太陽エネルギーなどの再生可能エネルギーから生成された電気を使用して水を電解することによって生成され、次いで、水素よりも輸送しやすいアンモニアを生成するために窒素と触媒的に反応させる(Haberプロセス)。目的地に到達した後、アンモニアは、次いで分解されて、水素を再生する。
【0044】
本発明のプロセスでは、反応に必要とされる熱は、炉内でのPSA排ガス(典型的には、ある程度の量の残留水素及びアンモニアを含む)の燃焼によって提供される。PSA排ガスが、気化されたアンモニア、生成物水素の一部分、又は代替燃料のいずれかよりも不十分な加熱値を有する場合、トリム燃料として排ガスとともに使用され得る。
【0045】
実際には、天然ガスは、H2のSMRで実践されるように、PSA排ガスとともにトリム燃料として使用することができる。しかしながら、そのように生成された水素の「グリーン」又は再生可能な資質を維持することを所望して、「再生可能な燃料」を使用する動機が存在する。これは、分解された「再生可能な」アンモニア、アンモニア自体、又はバイオガスなどの別の再生可能エネルギー源であり得、又は電気が、それ自体が再生可能な源からであるかどうかにかかわらず、実際には電気加熱であり得、この場合は、アンモニアの形態で輸送された水素を生成するために使用される再生可能な電気とは対照的に、分解プロセスに対して局所的である。
【0046】
プロセスの参考例は、
図1に示される。このプロセスは、貯蔵(図示せず)から液体アンモニアを取り出す。分解されるアンモニア(ライン2)は、所望の分解圧力(GB1142941を参照)を超える圧力に液体としてポンプ圧送される(ポンプP201)。反応圧力は、ルシャトリエの原理により、動作圧力と変換との間の折衷である。液体アンモニアをポンプ圧送することは、生成物の水素を圧縮するよりも少ない電力及び資本を必要とするため、反応器(8)をより高い圧力で動作させる動機となる。
【0047】
次いで、加圧された液体アンモニア(ライン4)を加熱し、気化させ(それがその臨界圧力を下回る場合)、反応管を離れる分解されたガス及び炉からの煙道ガスにおいて利用可能な熱を使用して、熱交換器(E101)を介して最大250℃超の温度に更に加熱する。図では、熱交換器(E101)は、1つの熱交換器として示されているが、実際には、ネットワーク内の一連の熱交換器になる。
【0048】
代替的に、加圧された液体アンモニアの初期加熱及び気化は、冷却水又は周囲空気などの代替熱源に対して行われてもよい。典型的な反応温度は、500℃超(US2601221参照)であり、パラジウム系システムは、600℃及び10barで動作することができ、一方でRenCatの金属酸化物系システムは、300℃及び1bar未満で動作する。(https://www.ammoniaenergy.org/articles/ammonia-cracking-to-high-purity-hydrogen-for-pem-fuel-cells-in-denmark/を参照されたい)。分解装置の動作圧力は、典型的には、いくつかの要因の最適化である。水素及び窒素へのアンモニアの分解は、低圧によって好まれるが、他の要因は、消費電力(生成物水素を圧縮するのではなく供給アンモニアをポンプ圧送することによって最小限に抑えられる)、及びPSAサイズ(より高い圧力でより小さい)などのより高い圧力を好む。
【0049】
高温のアンモニア(ライン6)は、所望の圧力で反応器(8)の反応管に入り、そこで炉(10)によって追加の熱が提供されて、アンモニアを窒素及び水素に分解する。結果として得られた残留アンモニア、水素、及び窒素の混合物は、反応温度及び圧力で反応器の反応管(8)を出る(ライン12)。反応生成物は、供給アンモニア(ライン4から)、炉燃料(この場合はライン14、ポンプP202及びライン16からポンプ圧送されたアンモニア、ライン18からのPSA排ガス、並びにライン20内の生成物水素)、及び燃焼空気(ライン22、ファンK201及びライン24から)の組み合わせに対して熱交換器(E101)内で冷却されて、PSAデバイス(26)の入口に必要とされる温度にできるだけ近づくように温度を低減させる。分解されたガス混合物(ライン28)中の残留熱は、水冷装置(図示せず)内で除去されて、PSAデバイス(26)への入口温度を約20℃~約60℃の範囲内、例えば、約50℃で達成する。
【0050】
PSA生成物(ライン30)は、ISO規格14687(水素燃料品質)に準拠した純粋な水素であり、ほぼ反応圧力で、残留アンモニア<0.1ppmv、窒素<300ppmvを有する。生成物水素(ライン30)は、輸送のため、管トレーラ(図示せず)に充填するために更に圧縮(図示せず)されるか、又は任意の必要な圧縮後に水素液化器(図示せず)内で液化され得る。PSAデバイス(26)からのPSA排ガス(ライン18)又は「パージガス」は、燃焼燃料として(ライン36内で)炉に送られる前に、反応器(8)の反応管を離れる分解されたガス(ライン12)又は炉煙道ガス(ライン32)を使用して、熱交換器E101を介して加熱されるように示される。しかしながら、PSA排ガス(ライン18)は、加熱せずに炉(10)に直接供給される場合もある。代替的に、PSA排ガスは、水素回収を増加させるPSA排ガスのためのより低い圧力を可能にするために、中間流体によって予熱されてもよい。
【0051】
結果として得られた加温されたアンモニア燃料(ライン34)及び加温された水素(ライン40)は、ミキサ(42)内で(任意選択的に)加温されたPSA排ガス(ライン36)と組み合わされて、組み合わされた燃料を生成するように描写され、これは燃焼のために炉(10)に供給されて(ライン44)、煙道ガスを生成する(ライン32、及び、E101で冷却した後、ライン48)。しかしながら、1つ以上の燃料は、事前に混合することなく、炉に直接供給され得ることに留意されたい。加温された空気(燃料との燃焼用)は、ライン46において炉(10)に供給される。
【0052】
本プロセスの目的のうちの1つは、再生可能なアンモニアを分解することによって生成されるH2の量を最大化することである。つまり、燃料として使用されるH2の量を最小限に抑えること、又はアンモニアを直接燃料として使用する場合はアンモニアの量を最小限に抑えることを意味する。したがって、熱煙道ガス及び分解されたガスを適切に使用するために、例えば、空気(ライン24)及びアンモニア(ライン4)を分解装置に対して予熱するために、熱統合が重要であり、これにより、炉(10)のバーナにおいて使用される「燃料」の量を低減させる。これは、より少ない水素が水として炉煙道ガス(ライン32及び48)中で失われるので、より高い水素回収につながる。したがって、例えば、蒸気生成は、プロセス内熱統合を支持して最小限に抑えられるべきである。
【0053】
図1は、燃料(ライン34&44)及び供給物(ライン6)として提供されるアンモニアを示し、また、燃料として生成物水素(ライン40&44)も示し、実際には、これらの流れのうちの1つのみが燃料として使用される可能性が高い。これに関連して、
図2は、アンモニアが燃料(ライン34)として使用されているが、生成物水素が使用されていない
図1と同様のプロセスを描写する。
図2に描写されるプロセスの他の全ての特徴は、
図1と同じであり、共通の特徴は、同じ参照番号を与えられている。
【0054】
図3は、
図2に描写されているものと同様のプロセスを描写するが、これは、PSAからのアンモニアによってのみ駆動される。このプロセスでは、PSAからの水素の回収(ライン30)が調整されて、燃焼時にプロセスに必要な全ての熱を提供し、そのためトリム燃料の必要性を排除する排ガス(ライン18)を提供し得る。
図3に描写されるプロセスの他の全ての特徴は、
図1と同じであり、共通の特徴は、同じ参照番号を与えられている。
【0055】
上で考察されたように、分解反応のための実行可能な再生可能エネルギーの代替源が存在する場合、PSAから生成された水素に加えて、プロセスからの純水素生成を増加させるために、PSA排ガスから水素を回収することを検討することができる。かかるプロセスは、水素に対して容易に透過性であるが、窒素に対して相対的に不透過性である選択層を有する膜を使用して、窒素リッチPSA排ガス流から水素を分離することができる。
【0056】
アンモニアを特に除去する必要があるが、膜材料は高濃度のアンモニアに耐性がなく、アンモニアは高速ガスであり、水素で浸透するため、除去されない場合プロセス内に蓄積するため、膜が分離プロセスの一部として使用されている場合、この限りではない。NH3は、例えば、水洗い又はアンモニア除去のための他の周知の技術によって、膜の上流で除去することができる。アンモニア除去工程で回収されたアンモニアは、ストリッピングカラムを使用して分解プロセスへの供給物に回収されて、分解されたガスからアンモニアを吸収するために使用された水からアンモニアを回収することができる。これは、理論的には、プロセスからの水素回収率を最大100%まで増加させることができる。分解されたガスからNH3を回収することは、水素精製工程を簡素化し、分離されたアンモニアが供給物として回収される場合、アンモニアからの水素の回収率を増加させ得、また、バーナへの供給物からアンモニアを除去し、アンモニア除去工程の範囲に応じて、NH3を燃焼させることによって引き起こされるNOxの生成に関する懸念を著しく低減させる。
【0057】
アンモニア分解触媒への損傷を防止するために、供給アンモニアから水を除去する必要もあり得る。典型的には、アンモニアには少量の水が追加されており、輸送及び貯蔵中の船舶内の応力腐食分解を防止する。これは、除去される必要があり得る。しかしながら、水除去は、上記のストリッピングカラムに組み込むことができる。アンモニアは、必要な圧力で気化し、水が蒸発器アンモニアを有するストリッピングカラムを通って搬送されることを確実とするように、蒸発器の設計に注意を払う。この主に気相アンモニアは、カラムの中間点に入り、純粋なアンモニアはカラムの上部を通って離れる。カラムは、部分凝縮器(還流に十分な液体のみを凝縮)を有し、オーバーヘッド蒸気は、供給アンモニア(水を含まない)と分解装置ガス流から回収されたアンモニアを含む。
【0058】
分解されたガスを最初に膜に供給して、濃縮されたH2透過物流及び排気され得るN2リッチ残留物流を生成することは、よりエネルギー効率が高い場合がある。濃縮されたH2透過物は、PSA中で更に精製することができる。第2の膜を、PSA排ガス流に追加して、全体的なH2回収を更に促進することができる。この構成は、排ガス圧縮機のサイズを大幅に低減させるであろう。
【0059】
水素回収を増加させるための膜分離器の使用は、プロセスの燃焼セクションを通過することなく、プロセスから窒素を排気することを可能にする。窒素流が圧力であるプロセスでは、膨張タービンを通じて電力を回収するための排気前に、窒素を大気圧に膨張させることが有益であろう。煙道ガス又は分解されたガス流中で利用可能な熱を使用して膨張前に加圧窒素を加熱する場合、回収される電力量が増加する。
【0060】
上で考察されたように、分解反応に必要とされる熱は、炉(10)内の複数の燃料のうちの1つの燃焼によって提供される。結果として生じる煙道ガス(ライン32)は、NO
Xを含む。
図4は、アンモニア水流(ライン64)が第1のPSA排ガス(ライン54)から回収される、本発明によるプロセスを描写する。
図1~3のプロセスに共通する
図4のプロセスの特徴は、同じ参照番号を与えられている。以下は、
図4の新機能の考察である。
【0061】
燃料(ライン50)は、熱交換器(E101)で加温され、(任意選択的に)加温されたPSA排ガス(ライン36)と組み合わされて、燃焼のために炉(10)に供給される組み合わされた燃料(ライン44)を生成し、分解反応器(8)の触媒充填管を加熱し、煙道ガス(ライン32、及びE101における冷却後のライン48)を生成する。加温された空気は、ライン46において炉(10)に供給される。燃料(ライン50)及びPSA排ガス(ライン36)は、混合することなく別々に炉に供給することができる(図示せず)。
【0062】
冷却された分解されたガス(ライン28)は、第1のPSAデバイス(26)に供給される。分解されたガスは、水素生成物(ライン30)及び排ガス(ライン54)を形成するように分離される。第1のPSAからの排ガス(ライン54)の部分は、圧縮機(K301)内で圧縮されて、圧縮されたPSA排ガス(ライン56)を生成する。圧縮されたPSA排ガス(ライン56)を約10℃~約60℃の範囲の温度に冷却し、セパレータ(58)に供給する。圧縮されたPSA排ガスの冷却は、水、冷却供給アンモニア、及び液体アンモニアを加熱することから生成された1つ以上の冷却流体(
図4に示されているが、冷却流は番号付けされていない)から選択された1つ以上の冷却剤に対する熱交換によって達成することができる。
【0063】
水(ライン60)は、任意選択的に、圧縮された第1のPSA排ガスに追加して、冷却されたアンモニア枯渇排ガス及びアンモニア水溶液を含む混合物を形成し得る。水が供給アンモニア中に存在し、分解前に除去する必要がない場合(すなわち、分解触媒が耐水性である場合)、追加の水は必要とされない可能性がある。しかしながら、追加の水は、溶媒として作用することによってPSA排ガスからのアンモニアの除去を補助するため、依然として追加され得る。水が多く存在するほど、より多くのアンモニアがPSAから除去されるが、結果として生じるアンモニア溶液の濃度はもちろん低下するはずである。アンモニア溶液の濃度は、典型的には、約10重量%~約30重量%、好ましくは、約25重量%である。目的は、必ずしもPSA排ガスから全てのアンモニアを除去することではなく、むしろ選択的触媒還元のための十分な量のアンモニア溶液を提供することである。
【0064】
セパレータ(58)は、当該技術分野で知られている任意の好適な分離デバイスであり得る。分離器は、好ましくは、単相分離器又は分離カラムである。
【0065】
冷却されたアンモニア枯渇排ガス(ライン62)は、アンモニア水溶液(ライン64)から分離され、アンモニア水溶液(ライン64)は、選択的触媒還元(SCR)反応器(16)に供給される。冷却された煙道ガス(ライン48)をSCR反応器(16)に供給し、アンモニア水溶液の存在下で選択的還元触媒と接触させて、NOXを窒素ガス及び水に変換する。
【0066】
SCR反応器は、冷却された煙道ガスに接続されていることを簡略化するためにこの図に示されているが、熱交換システムE101内又は他の場所に位置決めすることもできる。SCR反応器は、典型的には、約200℃~約500℃、好ましくは、約300℃~約400℃の範囲内にある温度で動作するため、反応器は、それらの温度で動作するように適切に位置決めされる。
【0067】
第1のPSAデバイス(26)からの冷却されたアンモニア枯渇排ガス(ライン62)又は「パージガス」(ライン18)は、第1のPSAデバイス(26)に再循環される。再循環されるPSA排ガスの量は、水素回収の増加に対応するが、ほぼ50%になる。
【0068】
代替的に、
図5に示されるように、アンモニア枯渇排ガス(ライン62)は、第2のPSAデバイス(66)に供給することができる。第2のPSAデバイス(ライン70)からの生成物の水素は、水素生成物(ライン30)と組み合わせて、組み合わされた水素生成物ガス(ライン72)を生成し、プロセスで生成された水素の量を増加させる。
図1及び2のプロセスと同様に、第2のPSAデバイス(66)からのPSA排ガス(ライン68)は、(ライン36において)燃焼燃料として炉(10)に送られる前に、反応管又は炉煙道ガス(ライン32)を離れる分解されたガス(ライン12)を使用して、熱交換器E101を介して加熱され得る。しかしながら、第2のPSA排ガス(ライン68)は、加熱せずに炉(10)に直接供給される場合もある。代替的に、第2のPSA排ガス(ライン68)は、1つ以上の高温流体との熱交換によって加熱され得る。
【実施例】
【0069】
ここで、本発明を、以下の発明の実施例を参照して、及び以下の参考例との比較によって例解する。
【0070】
シミュレーションの目的のために、発明の実施例及び参考例の両方は、11bara及び500℃での分解反応の平衡を想定している。
【0071】
参考例1
図2に描写されるプロセスは、コンピュータ(Aspen Technology Inc.によるAspen Plus,ver.10)によってシミュレートされ、結果は、表1に描写される。
表1
【表1】
【0072】
この参考例では、アンモニアからの水素回収率は、77.18%であり、PSA回収率は83.5%である。アンモニア供給ポンプ(P201)、アンモニア燃料ポンプ(P202)及び空気ファン(K201)の総出力は、約1.36kWである。
【0073】
参考例2
図3に描写されるプロセスは、コンピュータ(Aspen Plus、ver.10)によってシミュレートされており、結果は、表2に描写される。
表2
【表2】
【0074】
この参考例では、アンモニアからの水素回収率は、77.05%であり、PSA回収率は79.4%である。アンモニア供給ポンプ(P201)及び空気ファン(K201)の総出力は、約1.37kWである。
【0075】
発明の実施例1
図4に描写されるプロセスは、コンピュータ(Aspen Plus、ver.10)によってシミュレートされており、結果は、表3に描写される。
表3
【表3】
【0076】
この実施例では、アンモニアからの水素回収率は、77.18%であり、PSA回収率は83.5%である。アンモニア供給ポンプ(P201)及び空気ファン(K201)の総出力は、約1.35kWである。
【0077】
1トン/日の水素生産に基づいて、アンモニア化された水は、0.15kmol/hrのアンモニアの総モル流量で22.1モル%である。煙道ガスの流量は、25kmol/hrである。煙道ガスが0.125kmol/hrのNOである5000ppmのNOを含有している場合、したがって、NOは、煙道ガスから回収されたアンモニアと反応させることによって除去され得、それによって、アンモニア溶液の別個の供給を有する要件を節約することができる。
【国際調査報告】