(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-05
(54)【発明の名称】アンモニア分解プロセス
(51)【国際特許分類】
C01B 3/04 20060101AFI20240628BHJP
C01B 3/56 20060101ALI20240628BHJP
B01D 53/047 20060101ALI20240628BHJP
B01D 53/14 20060101ALI20240628BHJP
【FI】
C01B3/04 B
C01B3/56 Z
B01D53/047
B01D53/14 200
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023577388
(86)(22)【出願日】2021-06-18
(85)【翻訳文提出日】2023-12-14
(86)【国際出願番号】 US2021038000
(87)【国際公開番号】W WO2022265650
(87)【国際公開日】2022-12-22
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591035368
【氏名又は名称】エア プロダクツ アンド ケミカルズ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】AIR PRODUCTS AND CHEMICALS INCORPORATED
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100195213
【氏名又は名称】木村 健治
(74)【代理人】
【識別番号】100202441
【氏名又は名称】岩田 純
(72)【発明者】
【氏名】アンドリュー ショウ
(72)【発明者】
【氏名】サイモン クレイグ サロウェイ
(72)【発明者】
【氏名】ビンセント ホワイト
【テーマコード(参考)】
4D012
4D020
4G140
【Fターム(参考)】
4D012CA07
4D012CA20
4D012CB11
4D012CD07
4D012CD10
4D012CE03
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4D020DB20
4G140FA02
4G140FB06
4G140FC03
4G140FE01
(57)【要約】
分解されたガスが、PSAシステムにおいて精製されるアンモニア分解プロセスは、PSA排ガス、又はそれから誘導されたガスを二次分解反応器に供給し、第2の分解されたガスを更に処理することによって、第1の分解されたガス中の残留アンモニアを更なる水素及び窒素に変換することによって改善される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンモニアから水素を生成する方法であって、
液体アンモニアを加圧することと、
1つ以上の高温流体との熱交換によって、前記液体アンモニアを加熱して(及び任意選択的に、気化させて)、加熱されたアンモニアを生成することと、
炉内で燃料を燃焼させて、第1の組の触媒を含む反応器管を加熱し、煙道ガスを形成することと、
前記加熱されたアンモニアを、前記第1の組の触媒を含む反応器管に供給して、水素ガス、窒素ガス、及び残留アンモニアを含む第1の分解されたガスにアンモニアの分解を引き起こすことと、
第1のPSA内の前記第1の分解されたガスを精製して、第1の水素生成物ガス及び第1のPSA排ガスを生成することと、
前記第1のPSA排ガス、又はそれから誘導されたガスを、供給物として、水素ガス及び窒素ガスを含む第2の分解されたガスへのアンモニアの分解を引き起こす触媒を含む二次分解反応器に供給することと、を含み、
前記1つ以上の高温流体が、前記煙道ガス及び/又は前記第1の分解されたガスを含む、方法。
【請求項2】
前記二次分解反応器への前記供給物が、前記第2の分解されたガスとの熱交換によって加熱される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記二次分解反応器への前記供給物が、前記煙道ガスとの熱交換によって加熱される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記二次分解反応器が、約250℃~約700℃の範囲内にある温度で動作する、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記二次分解反応器への前記供給物が、前記反応器に供給される前に圧縮される、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記二次分解反応器が、約1.5bar~約50barの圧力で動作する、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記二次分解反応器が、約10bar~約12barの圧力で動作する、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記二次分解反応器が、約3bar~約5bar、好ましくは、約4barの圧力で動作する、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記第1のPSA排ガスが、前記二次分解反応器に供給される前に圧縮される、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記第1のPSA排ガスが、2つのステージを備える多段式圧縮機内で圧縮され、前記プロセスが、
前記圧縮機の中間ステージから前記二次分解反応器への前記供給物を取り出すことと、
更なる圧縮のために、前記第2の分解されたガスを前記圧縮機の前記中間ステージに供給することと、を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
水素が、前記第2の分解されたガスから回収される、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
水素が、第2のPSAにおいて前記第2の分解されたガスを精製して、第2の水素生成物ガス及び第2のPSA排ガスを生成することによって、前記第2の分解されたガスから回収される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記炉内で燃焼される前記燃料が、前記第2のPSA排ガスを含む、請求項11又は12に記載の方法。
【請求項14】
第2のPSA内の前記第1のPSA排ガスを精製して、第2の水素生成物ガス及び第2のPSA排ガスを生成することと、前記第2のPSA排ガスを、前記供給物として、前記二次分解反応器に供給することと、を含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記炉内で燃焼された前記燃料が、前記第2の分解されたガスを含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記第1のPSA排ガスが、圧縮することなく、前記二次分解反応器に供給される、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記第1のPSA排ガスを第1の圧縮機において圧縮して、圧縮された第1のPSA排ガスを生成することと、
膜分離器を使用して前記圧縮された第1のPSA排ガスを分離して、アンモニアを含む水素リッチ透過ガス、及び窒素リッチ残留ガスを生成することと、を含み
前記透過ガスが、前記二次分解反応器への前記供給物として供給される、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記透過ガスが、前記二次分解反応器への前記供給物として供給される前に、第2の圧縮機内で圧縮される、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記第2の圧縮機が、2つのステージを備え、
前記第2の圧縮機の中間ステージから前記二次分解反応器への前記供給物を取り出すことと、
更なる圧縮のために、前記第2の分解されたガスを前記第2の圧縮機の前記中間ステージに供給することと、を含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
水素が、前記第2の分解されたガスから回収される、請求項17~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
水素が、前記第1のPSA内の前記第1の分解されたガスで前記第2の分解されたガスを精製することによって、前記第2の分解されたガスから回収される、請求項17~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
アンモニアから水素を生成するための装置であって、
液体アンモニアを加圧するためのポンプと、
1つ以上の高温流体との熱交換によって、前記ポンプからの前記液体アンモニアを加熱する(及び任意選択的に、気化する)ために、ポンプと流体連通する少なくとも1つの熱交換器と、
前記熱交換器からの加熱されたアンモニアを分解して、水素ガス、窒素ガス、及び残留アンモニアを含む第1の分解されたガスを生成するために、前記熱交換器と流体連通する第1の組の触媒を含む反応器管と、
燃料を燃焼させて、前記第1の組の触媒を含む反応器管を加熱し、煙道ガスを形成するために、前記第1の組の触媒を含む反応器管と熱連通する炉と、
前記第1の分解されたガスを精製して、第1の水素生成物ガス及び第1のPSA排ガスを生成するために、前記第1の組の触媒を含む反応器管と流体連通する第1のPSAデバイスと、
前記第1のPSA排ガス又はそれから誘導されたガスを分解して、水素ガス及び窒素ガスを含む第2の分解されたガスを生成するための触媒を含む二次分解反応器と、
前記第2の分解されたガス又は前記第1のPSA排ガスからの水素を回収して、第2の水素生成物ガス及び第2のPSA排ガスを生成するための第2のPSAデバイスと、を備え、
前記装置が、前記煙道ガスを高温流体として前記炉から前記熱交換器に供給するための煙道ガス導管、及び/又は前記第1の分解されたガスを高温流体として前記第1の組の触媒を含む反応器管から前記熱交換器に供給するための分解されたガス導管を備える、装置。
【請求項23】
前記装置が、前記二次分解反応器の上流の前記第1のPSA排ガスを圧縮するための圧縮機を備える、請求項22に記載の装置。
【請求項24】
前記装置が、
前記二次分解反応器の上流の前記第1のPSA排ガスを圧縮するための第1のステージと、
前記二次分解反応器の下流の前記第2の分解されたガスを圧縮するための第2のステージと、を備える、多段式圧縮機を備える、請求項23に記載の装置。
【請求項25】
前記第2のPSAデバイスが、前記圧縮機の下流にあり、前記二次分解反応器の上流にある、請求項22又は23に記載の装置。
【請求項26】
前記装置が、前記第2のPSAデバイスの上流の前記第2の分解されたガスを圧縮するための圧縮機を備える、請求項22に記載の装置。
【請求項27】
アンモニアから水素を生成するための装置であって、
液体アンモニアを加圧するためのポンプと、
1つ以上の高温流体との熱交換によって、前記ポンプからの前記液体アンモニアを加熱する(及び任意選択的に、気化する)ために、前記ポンプと流体連通する少なくとも1つの熱交換器と、
前記熱交換器からの加熱されたアンモニアを分解して、水素ガス、窒素ガス、及び残留アンモニアを含む第1の分解されたガスを生成するために、前記熱交換器と流体連通する第1の組の触媒を含む反応器管と、
燃料を燃焼させて、前記第1の組の触媒を含む反応器管を加熱し、煙道ガスを形成するために、前記第1の組の触媒を含む反応器管と熱連通する炉と、
前記第1の分解されたガスを精製して、水素生成物ガス及び第1のPSA排ガスを生成するために、前記第1の組の触媒を含む反応器管と流体連通する第1のPSAデバイスと、
前記第1のPSA排ガス又はそれから誘導されたガスを分解して、水素ガス及び窒素ガスを含む第2の分解されたガスを生成するための触媒を含む二次分解反応器と、
前記第1のPSA排ガスを分離して、窒素リッチ残留ガス、及び前記二次分解反応器内で更に処理するためのアンモニアを含む水素リッチ透過ガスを生成するための膜分離器と、を備え、
前記装置が、前記煙道ガスを高温流体として前記炉から前記熱交換器に供給するための煙道ガス導管、及び/又は前記第1の分解されたガスを高温流体として前記第1の組の触媒を含む反応器管から前記熱交換器に供給するための分解されたガス導管を備える、装置。
【請求項28】
前記膜分離器内で分離する前に、前記第1のPSA排ガスを圧縮するための第1の圧縮機を備える、請求項27に記載の装置。
【請求項29】
前記水素リッチガスを圧縮するための第2の圧縮機を備える、請求項27又は28に記載の装置。
【請求項30】
前記装置が、
前記二次分解反応器の上流の前記水素リッチガスを圧縮するための第1のステージと、
前記二次分解反応器の下流の前記第2の分解されたガスを圧縮するための第2のステージと、を備える多段式圧縮機を備える、請求項27又は28に記載の装置。
【請求項31】
前記第2の分解されたガスを圧縮するための第2の圧縮機を備える、請求項27又は28に記載の装置。
【請求項32】
前記第2の分解されたガスとの熱交換によって、前記二次熱分解反応器への前記PSA排ガス供給物を加熱するための第1のエコノマイザを備える、請求項22~31のいずれか一項に記載の装置。
【請求項33】
前記煙道ガスとの熱交換によって前記二次分解反応器への前記PSA排ガス供給物を加熱するための第2のエコノマイザを備える、請求項22~32のいずれか一項に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
再生可能エネルギーへの世界的な関心、及びこの再生可能エネルギーを使用してグリーン水素を発生させることは、アンモニアが数百又は数千マイルの距離を移送することにおいてより簡単であるため、グリーン水素をグリーンアンモニアに変換することへの関心を高めている。特に、液体水素の輸送は、現在商業的には可能ではないが、液体状態にあるアンモニアの輸送は、現在実践されている。
【0002】
市販の燃料電池における使用の場合、アンモニアは、反応により水素に変換されなければならない。
【数1】
これは吸熱プロセス、すなわち、熱を必要とするプロセスであり、触媒を介して実施される。このプロセスは、分解として既知である。生成されるガス(又は「分解されたガス」)は、水素(H
2)と窒素(N
2)の組み合わせである。分解反応は、平衡反応であるため、残留アンモニアもまた存在する。現行の分解装置のほとんどの用途において、水素+窒素の混合物は、そのまま利用される。しかしながら、アンモニアは、燃料電池にとって害になるものであり得るため、この流れは、水で洗浄することによってなど、アンモニアを好適に除去することで、燃料電池において直接使用することができる。しかしながら、水素が車両の燃料供給において使用される場合、存在する窒素は、プロセスにペナルティを提供する。車両の燃料供給システムへの燃料は、最大900barという著しい圧力に圧縮される。これは、プロセスにおいて単なる希釈剤である窒素も圧縮され、電力を要し、貯蔵量を要し、アノードガスパージ要件を増加させ、効率を低下させることを意味する。したがって、水素が車両の燃料供給において使用される場合、水素+窒素が精製されることが有益である。
【0003】
小規模分解反応器、又は「分解装置」は、典型的には、圧力スイング吸着(「PSA」)デバイスを使用して、分解されたガスを分離し、水素を回収し、PSA排ガス(又はオフガス)を生成する。しかしながら、これらの分解装置は、概して、電気的に加熱され、PSA排ガスは、典型的には、大気中に排気される。
【0004】
蒸気メタン改質(SMR)反応器からの水素生成において一般的であるように、PSAは、窒素+水素を精製するために使用することができる。分解反応は、炉によって外部的に加熱される触媒が充填された管内で実施される(GB1142941を参照)。
【0005】
GB1142941は、アンモニアから都市ガスを作製するためのプロセスを開示する。アンモニアを、分解し、分解されたガスを、水で洗浄して、残留アンモニアを除去する。次いで、精製された水素/窒素混合物をプロパン及び/又はブタン蒸気で濃縮して、分配用の都市ガスを生成する。
【0006】
US6835360Aは、炭化水素原料及びメタノールを、水素及び一酸化炭素などの有用なガスに変換するための吸熱触媒反応装置を開示する。装置は、放射性燃焼室と組み合わせて、管状の吸熱触媒反応器を備える。結果として得られた分解されたガスは、ガス調節システムを通過した後、燃料電池内で直接使用される。
【0007】
GB977830Aは、アンモニアを分解して、水素を生成するためのプロセスを開示する。このプロセスでは、分解されたガスを、窒素を吸着する分子ふるいの床に通すことによって、水素が窒素から分離される。次いで、窒素は、床から駆動され、ホルダ内に貯蔵され得る。
【0008】
JP5330802Aは、アンモニアが10kg/cm2(又は約9.8bar)の圧力及び300~700℃の温度でアンモニア分解触媒と接触するアンモニア分解プロセスを開示する。水素は、PSAデバイスを使用して分解されたガスから回収される。参考文献は、脱着された窒素が上流プロセスを後押しするために使用され得ることに言及しているが、詳細は提供されていない。
【0009】
US2007/178034Aは、アンモニア及び炭化水素原料の混合物が、600℃及び3.2MPa(又は約32bar)の燃焼蒸気改質器を通過し、約70体積%の水素を含む合成ガスに変換されるプロセスを開示する。合成ガスは、シフト反応で水素が濃縮され、冷却され、縮合物が除去される。結果として得られたガスは、PSAシステムに供給されて、99体積%以上の水素を有する精製水素生成物を生成する。PSAシステムからのオフガスは、燃料として燃焼蒸気改質器に供給される。
【0010】
CN111957270Aは、アンモニアが炉内の管状反応器内で分解されるプロセスを開示する。分解されたガスは、吸着によって分離されて、水素ガス及び窒素リッチオフガスを生成する。分解されたガス、水素生成物ガス、及び/又はオフガスの組み合わせを使用して、炉の燃料需要が満たされるように見える。
【0011】
概して、アンモニアからの水素の生成のための改善されたプロセス、具体的には、エネルギー消費の観点からより効率的であるプロセス、及び/又はより高いレベルの水素回収を有するプロセス、及び/又は化石燃料を燃焼させる必要性を低減若しくは排除するプロセスのための改善されたプロセスが、必要である。
【0012】
以下の本発明の実施形態の考察では、特に明記されない限り、与えられた圧力は絶対圧力である。
【発明の概要】
【0013】
本発明の第1の態様によれば、アンモニアから水素を生成するための方法が提供され、
液体アンモニアを加圧することと、
1つ以上の高温流体との熱交換によって、液体アンモニアを加熱して(及び任意選択的に、気化させて)、加熱されたアンモニアを生成することと、
炉内で燃料を燃焼させて、第1の組の触媒を含む反応器管を加熱し、煙道ガスを形成することと、
加熱されたアンモニアを、第1の組の触媒を含む反応器管に供給して、水素ガス、窒素ガス、及び残留アンモニアを含む第1の分解されたガスにアンモニアの分解を引き起こすことと、
第1のPSAデバイス内の第1の分解されたガスを精製して、第1の水素生成物ガス及び第1のPSA排ガスを生成することと、
第1のPSA排ガス、又はそれから誘導されたガスを、供給物として、水素ガス及び窒素ガスを含有する第2の分解されたガスへのアンモニアの分解を引き起こす触媒を含む二次分解反応器に供給することと、を含み、
1つ以上の高温流体が、煙道ガス及び/又は第1の分解されたガスを含む。
【0014】
液体アンモニア供給物は、典型的には、1.1bar超、例えば、少なくとも5bar又は少なくとも10barの圧力に加圧される。いくつかの実施形態では、液体アンモニアは、約5bar~約50barの範囲内、又は約10~約45barの範囲内、又は約30bar~約40barの範囲内の圧力に加圧される。
【0015】
液体アンモニアは、典型的には、約250℃超、例えば、約350℃~約800℃、又は約400℃~約600℃の範囲内にある温度で加熱アンモニアを生成するように加熱される。問題の圧力において、液体アンモニアは、典型的には、完全に気化して、加熱されたアンモニア蒸気を形成する。
【0016】
温度は、最終的に、触媒の同一性、動作圧力、及び所望の「スリップ」、すなわち、分解されることなく分解反応器を通過するアンモニアの量によって決定される。これに関して、プロセスは、典型的には、約4%以下のスリップで動作し、これは、分解プロセスが平衡に近いアプローチで5bar及び350℃で動作させた場合のスリップ量である。いくつかの構造材料では、約700℃を上回る温度で任意の認識可能な圧力において問題が発生する可能性がある。
【0017】
第1の分解反応は、炉によって加熱される第1の組の触媒で充填された反応器管内で起こる。しかしながら、理論的には、任意の不均一に触媒されたガス反応器は、潜在的に変換のために使用することができる。
【0018】
アンモニア分解反応に有用であるとして当技術分野において既知の多数の触媒が存在し、これらの従来の触媒のいずれかが、本発明において使用され得る。
【0019】
炉のための一次燃料は、典型的には、メタンを含む。燃料は、純粋なメタンであり得るが、天然ガス又はバイオガスである可能性も高い。いくつかの実施形態では、一次燃料は、任意選択的に、アンモニア分解ガスの形態で、二次燃料として水素で補完された天然ガス又はバイオガスである。これらの実施形態では、液体アンモニアは、ポンプ圧送され、分解されて、一次燃料に追加される分解ガスを形成することができる。
【0020】
第1のPSAデバイスは、PSAサイクル又は真空スイング吸着(VSA)サイクルを動作させ得る。TSAデバイスは、第1のPSAデバイス、アンモニアを除去するためのTSAデバイス(US10787367を参照)、及び窒素を除去し、水素生成物を生成するための第1のPSAデバイスと組み合わせて使用され得る。好適なPSAサイクルは、US9381460、US6379431、及びUS8778051に開示されているサイクルのいずれかを含み、これらの開示は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0021】
典型的には、二次分解反応器は、約250℃~約700℃の範囲内、例えば、約300℃~約700℃の範囲内、又は約400℃~約600℃の範囲内の温度で動作する。このため、二次分解反応器への供給物は、典型的には、反応器に供給される前に加熱されなければならない。好ましい実施形態では、二次分解反応器への供給物は、第2の分解されたガス及び/又は排気ガスとの熱交換によって加熱される。例えば、二次分解反応及び反応への供給物の加熱は、単一の「熱交換器反応器」で実施され得る。
【0022】
二次分解反応器は、約1.5bar~約50bar、例えば、約1.5bar~約40barの圧力で動作し得る。典型的には、二次分解反応器は、約2bar~約15bar、好ましくは、約10bar~約12bar、より好ましくは、約11bar又は約12barの圧力で動作する。他の実施形態では、二次分解反応器は、約2bar~約5bar、好ましくは、約4barの圧力で動作する。このため、二次分解反応器への供給物は、反応器に供給される前に、二次分解反応器の動作圧力に圧縮されなければならない場合がある。第1のPSA排ガスは、圧縮することなく、二次分解反応器に供給され得る。
【0023】
いくつかの実施形態では、第1のPSA排ガスは、二次分解反応器に供給される前に圧縮される。これに関連して、この方法は、少なくとも2つのステージを備える多段式圧縮機内で第1のPSA排ガスを圧縮することを含み得、当該プロセスは、圧縮機の中間ステージから二次分解装置への供給物を取り出し、更なる圧縮のために第2の分解されたガスを圧縮機の中間ステージに戻って供給することを含む。
【0024】
水素は、第2の分解されたガスから回収され得る。回収は、第2のPSAにおいて第2の分解されたガスを精製して、第2の水素生成物ガス及び第2のPSA排ガスを生成することによって達成され得る。第2の水素生成物ガスは、第1の水素生成物ガスと組み合わされて、組み合わされた水素生成物ガスを形成し得る。追加的に又は代替的に、炉内で燃焼した燃料は、第2のPSA排ガスを含み得る。
【0025】
いくつかの実施形態では、第1のPSA排ガスは、第2のPSAにおいて精製されて、第2の水素生成物ガス及び第2のPSA排ガスを生成する。第2のPSA排ガスは、二次分解反応器への供給物として供給され得る。任意選択的に、炉内で燃焼された燃料は、第2の分解されたガスを含む。
【0026】
第2のPSAデバイスは、PSAサイクル又は真空スイング吸着(VSA)サイクルを動作させ得る。TSAデバイスは、第2のPSAデバイスと組み合わせて使用され得、TSAデバイスは、アンモニアを除去し、第2のPSAデバイスは、窒素を除去し、水素生成物を生成する。好適なPSAサイクルとしては、US9381460、US6379431及びUS8778051内に開示されたサイクルのうちのいずれかが挙げられる。
【0027】
他の実施形態では、この方法は、膜分離器を使用して第1のPSAテールを分離することを含む。水素と同様に、アンモニアは、ガス分離に使用される膜を容易に透過する「高速ガス」である。これらの実施形態では、方法は、第1の圧縮機内の第1のPSA排ガスを圧縮して、圧縮された第1のPSA排ガスを生成することと、膜分離器を使用して、圧縮された第1のPSA排ガスを分離して、アンモニアを含む水素リッチ透過ガス、及び窒素リッチ残留ガスを生成することと、を含み得、透過ガスは、二次分解反応器への供給物として供給される。
【0028】
透過ガスはまた、二次分解反応器への供給物として供給される前に、第2の圧縮機内で圧縮され得る。
【0029】
PSAデバイス(又は、簡略化のために、「PSA」)における更なる処理のために水素リッチ透過ガスを再循環させることは、水素回収を著しく改善し、回収率は、100%に近づくことができ、例えば、約99%であり得る。
【0030】
プロセスは、少なくとも2つのステージを備える多段式圧縮機の中間ステージから二次分解装置への供給物を取り出すことと、更なる圧縮のために第2の分解されたガスを圧縮機の中間ステージに供給することと、を含み得る。
【0031】
典型的には、水素は、膜分離器を利用する方法において、第2の分解されたガスから回収される。任意選択的に、水素は、第1のPSA中の第1の分解されたガスで第2の分解されたガスを精製することによって、第2の分解されたガスから回収される。
【0032】
本発明の第2の態様によると、アンモニアから水素を生成するための装置が提供され、
液体アンモニアを加圧するためのポンプと、
1つ以上の高温流体との熱交換によって、ポンプからの液体アンモニアを加熱する(及び任意選択的に、気化する)ために、ポンプと流体連通する少なくとも1つの熱交換器と、
熱交換器からの加熱されたアンモニアを分解して、水素ガス、窒素ガス、及び残留アンモニアを含む第1の分解されたガスを生成するために、熱交換器と流体連通する第1の組の触媒を含む反応器管と、
燃料を燃焼させて、第1の組の触媒を含む反応器管を加熱し、煙道ガスを形成するために、第1の組の触媒を含む反応器管と熱連通する炉と、
第1の分解されたガスを精製して、第1の水素生成物ガス及び第1のPSA排ガスを生成するために、第1の組の触媒を含む反応器管と流体連通する第1のPSAデバイスと、
第1のPSA排ガス又はそれから誘導されたガスを分解して、水素ガス及び窒素ガスを含む第2の分解されたガスを生成するための触媒を含む二次分解反応器と、
第2の分解されたガス又は第1のPSA排ガスからの水素を回収して、第2の水素生成物ガス及び第2のPSA排ガスを生成するための第2のPSAデバイスと、を備え、
装置は、煙道ガスを、高温流体として炉から熱交換器に供給するための煙道ガス導管、及び/又は第1の分解されたガスを、高温流体として第1の組の触媒を含む反応器管から熱交換器に供給するための分解されたガス導管を備える。
【0033】
炉は、触媒充填された反応器管から分離され得るが、炉及び触媒充填された反応器管は、好ましくは、同一ユニット内に統合される。好ましい実施形態では、蒸気メタン再形成(SMR)タイプの反応器が使用され、炉は、触媒を含む反応器管を通過させる放射線部分を含む。
【0034】
装置は、二次分解反応器の上流の第1のPSA排ガスを圧縮するための圧縮機を備え得る。
【0035】
代替的に、装置は、二次分解反応器の上流の第1のPSA排ガスを圧縮するための第1のステージと、二次分解反応器の下流の第2の分解されたガスを圧縮するための第2のステージと、を備える多段式圧縮機を備え得る。
【0036】
第2のPSAデバイスは、圧縮機の下流にあり、二次分解反応器の上流にあり得る。
【0037】
装置は、第2のPSAデバイスの上流の第2の分解されたガスを圧縮するための圧縮機を備え得る。
【0038】
典型的には、装置はまた、第2の分解されたガスとの熱交換によって二次熱分解反応器へのPSA排ガス供給物を加熱するための第1のエコノマイザを備える。追加的又は代替的に、装置は、典型的には、煙道ガスとの熱交換によって二次分解反応器へのPSA排ガス供給を加熱するための第2のエコノマイザを備える。
【0039】
本発明の第3の態様によると、アンモニアから水素を生成するための装置が提供され、
液体アンモニアを加圧するためのポンプと、
1つ以上の高温流体との熱交換によって、ポンプからの液体アンモニアを加熱する(及び任意選択的に、気化する)ために、ポンプと流体連通する少なくとも1つの熱交換器と、
熱交換器からの加熱されたアンモニアを分解して、水素ガス、窒素ガス、及び残留アンモニアを含む第1の分解されたガスを生成するために、熱交換器と流体連通する第1の組の触媒を含む反応器管と、
燃料を燃焼させて、第1の組の触媒を含む反応器管を加熱し、煙道ガスを形成するために、第1の組の触媒を含む反応器管と熱連通する炉と、
第1の分解されたガスを精製して、水素生成物ガス及び第1のPSA排ガスを生成するために、第1の組の触媒を含む反応器管と流体連通する第1のPSAデバイスと、
第1のPSA排ガス又はそれから誘導されたガスを分解して、水素ガス及び窒素ガスを含む第2の分解されたガスを生成するための触媒を含む二次分解反応器と、
第1のPSA排ガスを分離して、窒素リッチ残留ガスと、二次分解反応器で更に処理するためのアンモニアを含む水素リッチ透過ガスとを生成するための膜分離器と、を備え、
装置は、煙道ガスを、高温流体として炉から熱交換器に供給するための煙道ガス導管、及び/又は第1の分解されたガスを、高温流体として第1の組の触媒を含む反応器管から熱交換器に供給するための分解されたガス導管を備える。
【0040】
装置は、膜分離器内で分離する前に、第1のPSA排ガスを圧縮するための第1の圧縮機を備え得る。任意選択的に、装置は、水素リッチガスを圧縮するための第2の圧縮機を備え得る。
【0041】
いくつかの実施形態では、装置は、二次分解反応器の上流の水素リッチガスを圧縮するための第1のステージと、二次分解反応器の下流の第2の分解されたガスを圧縮するための第2のステージと、を備える多段式圧縮機を備える。
【0042】
別の実施形態では、装置は、第2の分解されたガスを圧縮するための第2の圧縮機を備える。
【0043】
典型的には、装置はまた、第2の分解されたガスとの熱交換によって二次熱分解反応器へのPSA排ガス供給物を加熱するための第1のエコノマイザを備える。追加的又は代替的に、装置は、典型的には、煙道ガスとの熱交換によって二次分解反応器へのPSA排ガス供給を加熱するための第2のエコノマイザを備える。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【
図1】水素を生成するためのアンモニア分解プロセスの第1の参考例のプロセスフロー図である。
【
図2】水素生成物を燃料として使用しない、
図1のアンモニア分解プロセスに基づく、別の参考例のプロセスフロー図である。
【
図3】PSA排ガスのみを燃料として使用する、
図1及び2のアンモニア分解プロセスに基づく、更なる参考例のプロセスフロー図である。
【
図4】膜分離器を利用する水素を生成するためのアンモニア分解プロセスの第4の参考例のプロセスフロー図である。
【
図5】2つのPSAデバイスを利用する水素を生成するためのアンモニア分解プロセスの第5の参考例のプロセスフロー図である。
【
図6】本発明による、水素を生成するためのアンモニア分解プロセスの第1の実施形態のプロセスフロー図である。
【
図7】
図6に描写されたアンモニア分解プロセスの第1の代替的な配置を示すプロセスフロー図である。
【
図8】
図6に描写されたアンモニア分解プロセスの第2の代替的な配置を示すプロセスフロー図である。
【
図9】
図6に描写されたアンモニア分解プロセスの第3の代替的な配置を示すプロセスフロー図である。
【
図10】本発明による、水素を生成するためのアンモニア分解プロセスの第2の実施形態のプロセスフロー図である。
【
図11】
図10に描写されたアンモニア分解プロセスの第1の代替的な配置を示すプロセスフロー図である。
【
図12】
図10に描写されたアンモニア分解プロセスの第2の代替的な配置を示すプロセスフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0045】
アンモニアを分解することによって水素を生成するためのプロセスが本明細書において説明される。プロセスは、化石燃料の代わりに再生可能エネルギーを使用して生成される水素である、いわゆる「グリーン」水素を生成するための特定の用途を有する。この場合、アンモニアは、典型的には、水素を生成するために、風力及び/又は太陽エネルギーなどの再生可能エネルギーから生成された電気を使用して水を電解することによって生成され、次いで、水素よりも輸送しやすいアンモニアを生成するために窒素と触媒的に反応させる(Haberプロセス)。目的地に到達した後、アンモニアは、次いで分解されて、水素を再生する。
【0046】
本発明のプロセスでは、反応に必要とされる熱は、典型的には、炉内でのPSA排ガス(通常、ある程度の量の残留水素及びアンモニアを含む)の燃焼によって提供される。PSA排ガスが、気化されたアンモニア、生成物水素の一部分、又は代替燃料のいずれかよりも不十分な加熱値を有する場合、トリム燃料として排ガスとともに使用され得る。
【0047】
実際には、天然ガスは、水素に関するSMRで実践されるように、PSA排ガスとともにトリム燃料として使用され得る。しかしながら、そのように生成された水素の「グリーン」又は再生可能な資質を維持することを所望して、「再生可能な燃料」を使用する動機が存在する。これは、分解された「再生可能な」アンモニア、アンモニア自体、又はバイオガスなどの別の再生可能エネルギー源であり得、又は電気が、それ自体が再生可能な源からであるかどうかにかかわらず、実際には電気加熱であり得、この場合は、アンモニアの形態で輸送された水素を生成するために使用される再生可能な電気とは対照的に、分解プロセスに対して局所的である。
【0048】
プロセスの参考例は、
図1に示される。このプロセスは、貯蔵(図示せず)から液体アンモニアを取り出す。分解されるアンモニア(ライン2)は、所望の分解圧力(GB1142941を参照)を超える圧力に液体としてポンプ圧送される(ポンプP201)。反応圧力は、ルシャトリエの原理により、動作圧力と変換との間の折衷である。液体アンモニアをポンプ圧送することは、生成物の水素を圧縮するよりも少ない電力及び資本を必要とするため、反応器(8)をより高い圧力で動作させる動機となる。
【0049】
次いで、加圧された液体アンモニア(ライン4)を加熱し、気化させ(それがその臨界圧力を下回る場合)、反応管を離れる分解されたガス及び炉からの煙道ガスにおいて利用可能な熱を使用して、熱交換器(E101)を介して最大250℃超の温度に更に加熱する。図では、熱交換器(E101)は、1つの熱交換器として示されているが、実際には、ネットワーク内の一連の熱交換器になる。
【0050】
代替的に、加圧された液体アンモニアの初期加熱及び気化は、冷却水又は周囲空気などの代替熱源に対して行われてもよい。典型的な反応温度は、500℃超(US2601221参照)であり、パラジウム系システムは、600℃及び10barで動作することができ、一方でRenCatの金属酸化物系システムは、300℃及び1bar未満で動作する。(https://www.ammoniaenergy.org/articles/ammonia-cracking-to-high-purity-hydrogen-for-pem-fuel-cells-in-denmark/を参照されたい)。分解装置の動作圧力は、典型的には、いくつかの要因の最適化である。水素及び窒素へのアンモニアの分解は、低圧によって好まれるが、他の要因は、消費電力(生成物水素を圧縮するのではなく供給アンモニアをポンプ圧送することによって最小限に抑えられる)、及びPSAサイズ(より高い圧力でより小さい)などのより高い圧力を好む。
【0051】
高温のアンモニア(ライン6)は、所望の圧力で反応器(8)の反応管に入り、そこで炉(10)によって追加の熱が提供されて、アンモニアを窒素及び水素に分解する。結果として得られた残留アンモニア、水素、及び窒素の混合物は、反応温度及び圧力で反応管(8)を出る(ライン12)。反応生成物は、供給アンモニア(ライン4から)、炉燃料(この場合はライン14、ポンプP202及びライン16からポンプ圧送されたアンモニア、ライン18からのPSA排ガス、並びにライン20内で燃料として使用される生成物水素)、及び燃焼空気(ライン22、ファンK201及びライン24から)の組み合わせに対して熱交換器(E101)内で冷却されて、PSAデバイス(26)の入口に必要な温度にできるだけ近づくように温度を低減させる。分解されたガス混合物(ライン28)中の残留熱は、水冷装置(図示せず)内で除去されて、PSAデバイス(26)への入口温度を約20℃~約60℃の範囲内、例えば約50℃で達成する。
【0052】
PSA生成物(ライン30)は、ISO規格14687(水素燃料品質)に準拠した純粋な水素であり、ほぼ反応圧力で、残留アンモニア<0.1ppmv、窒素<300ppmvを有する。生成物水素(ライン30)は、輸送のため、管トレーラ(図示せず)に充填するために更に圧縮(図示せず)されるか、又は任意の必要な圧縮後に水素液化器(図示せず)内で液化され得る。PSAデバイス(26)からのPSA排ガス(ライン18)又は「パージガス」は、燃焼燃料として(ライン34内で)炉に送られる前に、反応管を離れる分解されたガス(ライン12)又は炉煙道ガス(ライン32)を使用して、熱交換器E101を介して加熱されるように示される。しかしながら、PSA排ガス(ライン18)は、加熱せずに炉(10)に直接供給される場合もある。
【0053】
結果として得られた加温されたアンモニア燃料(ライン36)及び加温された水素(ライン40)は、ミキサ(42)内で(任意選択的に)加温されたPSA排ガス(ライン38)と組み合わされて、組み合わされた燃料を生成するように描写され、これは燃焼のために炉(10)に供給されて(ライン44)、煙道ガスを生成する(ライン32、及び、E101で冷却した後、ライン48)。しかしながら、1つ以上の燃料は、事前に混合することなく、炉に直接供給され得ることに留意されたい。加温された空気(燃料の燃焼用)は、ライン46において炉(10)に供給される。
【0054】
本プロセスの好ましい実施形態の目的のうちの1つは、再生可能なアンモニアを分解することによって生成される水素の量を最大化することである。つまり、燃料として使用される水素の量を最小限に抑えること、又はアンモニアを直接燃料として使用する場合はアンモニアを最小限に抑えることを意味する。したがって、熱煙道ガス及び分解されたガスを適切に使用するために、例えば、空気(ライン24)及びアンモニア(ライン4)を分解装置に対して予熱するために、熱統合が重要であり、これにより、炉(10)のバーナにおいて使用される「燃料」の量を低減させる。これは、より少ない水素が水として炉煙道ガス(ライン32及び48)中で失われるので、より高い水素回収につながる。したがって、例えば、蒸気生成は、プロセス内熱統合を支持して最小限に抑えられるべきである。
【0055】
図1は、燃料(ライン34及び44)及び供給物(ライン6)として提供されるアンモニアを示し、また、燃料として生成物水素(ライン40及び44)も示し、実際には、これらの流れのうちの1つのみが燃料として使用される可能性が高い。これに関連して、
図2は、アンモニアが燃料(ライン34)として使用されているが、生成物水素が使用されていない
図1と同様のプロセスを描写する。
図2に描写されるプロセスの他の全ての特徴は、
図1と同じであり、共通の特徴は、同じ参照番号を与えられている。
【0056】
本発明者らは、水素が燃料としても使用される場合、特に、起動時及びウォームアップ時に、アンモニアの安定した燃焼が促進されることを認識している。
【0057】
図3は、
図2において描写されるものと同様のプロセスを描写する。このプロセスでは、PSAからの水素の回収(ライン30)が調整されて、燃焼時にプロセスに必要な全ての熱を提供し、そのためトリム燃料の必要性を排除する排ガス(ライン18)を提供し得る。
図3に描写されるプロセスの他の全ての特徴は、
図1と同じであり、共通の特徴は、同じ参照番号を与えられている。
【0058】
上で考察されたように、分解反応のための実行可能な再生可能エネルギーの代替源が存在する場合、PSAから生成された水素に加えて、プロセスからの純水素生成を増加させるために、PSA排ガスから水素を回収することを検討することができる。かかるプロセスは、水素に対して容易に透過性であるが、窒素に対して相対的に不透過性である選択層を有する膜を使用して、窒素リッチPSA排ガス流から水素を分離することができる(
図4)。
【0059】
アンモニアを特に除去する必要があるが、膜材料は高濃度のアンモニアに耐性がなく、アンモニアは高速ガスであり、水素で浸透するため、除去されない場合プロセス内に蓄積するため、膜が分離プロセスの一部として使用されている場合、この限りではない。アンモニアは、例えば、水洗い又はアンモニア除去のための他の周知の技術によって、膜の上流で除去することができる。アンモニアは、ストリッピングカラムを使用して水洗いで生成されたアンモニア水溶液から回収され得、回収されたアンモニアは、分解反応器への供給物に再循環され得る。これは、理論的には、プロセスからの水素回収率を最大100%まで増加させることができる。分解されたガスからアンモニアを回収することは、水素精製工程を簡素化し、分離されたアンモニアが供給物として回収された場合、アンモニアからの水素の回収率を増加させ得、また、バーナへの供給物からアンモニアを除去し、アンモニアを燃焼させることによって引き起こされるNOxの生成に関する懸念を排除する。
【0060】
アンモニア分解触媒への損傷を防止するために、供給アンモニアから水を除去する必要もあり得る。典型的には、アンモニアには少量の水が追加されており、輸送及び貯蔵中の船舶内の応力腐食分解を防止する。これは、除去される必要があり得る。しかしながら、水除去は、上記のストリッピングカラムに組み込むことができる。アンモニアは、必要な圧力で気化し、水が蒸発器アンモニアを有するストリッピングカラムを通って搬送されることを確実とするように、蒸発器の設計に注意を払う。この主に気相アンモニアは、カラムの中間点に入り、純粋なアンモニアはカラムの上部を通って離れる。カラムは、部分凝縮器(還流に十分な液体のみを凝縮)を有し、オーバーヘッド蒸気は、供給アンモニア(水を含まない)と分解装置ガス流から回収されたアンモニアを含む。
【0061】
分解されたガスを最初に膜に供給して、水素濃縮透過物流及び排気され得る窒素リッチ残留物流を生成することは、よりエネルギー効率が高い可能性がある。水素濃縮透過物は、PSA中で更に精製され得る。第2の膜を、PSA排ガス流に追加して、全体的な水素回収を更に促進することができる。この構成は、排ガス圧縮機のサイズを大幅に低減させるであろう。
【0062】
水素回収を増加させるための膜分離器の使用は、プロセスの燃焼セクションを通過することなく、プロセスから窒素を排気することを可能にする。窒素流が圧力であるプロセスでは、膨張タービンを通じて電力を回収するための排気前に、窒素を大気圧に膨張させることが有益であろう。煙道ガス又は分解されたガス流中で利用可能な熱を使用して膨張前に加圧窒素を加熱する場合、回収される電力量が増加する。
【0063】
図4は、窒素を除去しながら、PSA排ガスから水素を回収するための膜を伴うプロセスを描写する。
図1~3のプロセスに共通する
図4のプロセスの特徴は、同じ参照番号を与えられている。以下は、
図4の新機能の考察である。
【0064】
燃料(ライン50)は、おそらく「再生可能な」燃料であるが、典型的には、天然ガス又はバイオガスであり、熱交換器(E101)内で加温され、燃焼のために炉(10)に供給されて(ライン52)、分解反応器(8)の触媒充填管を加熱する。
【0065】
冷却された分解されたガス(ライン28)は、圧縮された水素リッチ透過ガス(ライン62)と組み合わされて、PSAデバイス(26)に供給される(ライン64)、組み合わされたガスを形成する。組み合わされたガスは、水素生成物を形成するように分離される(ライン30)。PSAからの排ガス(ライン54)は、第1の圧縮機(K301)内で圧縮され、圧縮されたガスは、膜分離ユニット(M301)に供給されて(ライン56)、濃縮水素透過物流(ライン58)及び窒素リッチ残留物流(ライン60)を生成する。膜分離ユニットは、供給物流量及び所望の水素回収によって決定される際、並列又は直列に配置された複数の膜デバイスからなることができる。透過物流は、第2の圧縮機(K302)内で圧縮されて、圧縮された水素リッチガス(ライン62)を形成し、これは、冷却された分解されたガス(ライン28)でPSA(26)に再循環されて(ライン64)、水素の全回収率を増加させる。
【0066】
膜によって生成された水素の純度が十分に高いと仮定すると、水素透過ガスの一部(ライン68)は、水素生成物(ライン30)と圧縮した後に組み合わされ得、残りは冷却された分解されたガス(ライン28)でPSAに再循環されてもよい(ライン64)。このようにして水素透過ガスの一部を水素生成物と組み合わせることで、PSAの必要サイズ及びK301及びK302の出力を低減することができる。
【0067】
代替的に、圧縮された水素リッチ透過ガス(ライン62)の全ては、水素生成物(ライン30)と組み合わされ得、PSA(26)に再循環されるものはない。
【0068】
図4は、分解されたガスからアンモニアを除去及び回収するためのシステム(ユニット90として描写される)を有する。このシステムは、水でガスからアンモニアを除去するためのスクラバ、及び水からアンモニアを回収するためのストリッパを伴い得るか、又は吸着によってアンモニアを除去するためのTSAデバイスを伴い得る(US10787367を参照)。
【0069】
代替的に、第1のPSAからの排ガスは、圧縮され、第2のPSAに供給されて、水素を更に回収し得(
図5)、第2のPSAからのPSA排ガスは、任意選択的に、分解プロセスのための燃料の一部として使用される。第2のPSAは、再生可能なアンモニアからの再生可能な水素の回収を最大化する。第1のPSAからの排ガスは、両方のPSAからの水素が同じ高さの圧力になるようなレベルに圧縮される。
【0070】
両方のPSAは、供給物流内のアンモニアに耐性がある必要がある。PSA中の吸着剤は、アンモニアの吸着及び脱着に好適である必要がある。
【0071】
第2のPSA排ガス圧力は、第1のPSA排ガス圧力よりも高くなり得、すなわち、回収を最大化するために第1のPSAにおいてより低く、第2のPSAにおいてより高くなり、優先的にPSA排ガスを再加熱し、バーナに供給するために使用される熱交換器における圧力降下を可能にする。再生可能燃料プロセスのエネルギー効率(炭素強度)要件は、同様の水素生成プロセスで通常考慮されるものよりも効率的な熱統合を必要とする。任意選択的に、PSA排ガスからの低圧は、低圧降熱交換器又は中間熱交換流体を使用することによって耐えることができる。
【0072】
低炭素燃料がバーナへの燃料として使用されることが見出せない場合、
図5に示される2つのPSAプロセスのような高い水素回収プロセスは、その燃料が再生不可能な炭化水素、例えば天然ガスであり、排出される二酸化炭素(CO
2)が再生可能燃料からの二酸化炭素として考慮されない場合、部分的に燃料と関連付けられた高炭素強度を有するであろう。より低い水素回収が許容される場合、必要とされる天然ガス燃料の量は低下する。
【0073】
図5は、第1のPSA排ガスから水素を回収するための第2のPSAを伴うプロセスを描写する。
図1~4のプロセスに共通する
図5のプロセスの特徴は、同じ参照番号を与えられている。以下は、
図5の新機能の考察である。
【0074】
燃料(ライン50)、例えば、天然ガス又は再生可能燃料は、熱交換器(E101)内で加温されて、加温された燃料を生成する(ライン52)。加温された燃料(ライン52)は、ミキサ(42)に供給されて、組み合わされた燃料(ライン44)を生成し、これは、燃焼のために炉(10)に供給されて、分解反応器(8)の触媒充填管を加熱する。冷却された分解されたガス(ライン28)は、第1のPSAデバイス(26)に供給される。ガスは、第1の水素生成物を形成するために分離される(ライン30)。第1のPSAデバイス(26)からの排ガス(ライン70)は、圧縮機(K301)内で圧縮され、圧縮されたガスは、第2のPSAデバイス(74)に供給される(ライン72)。ガスは、第2の水素生成物(ライン78)を形成するために分離されて、これはライン80において第1の水素生成物(ライン30)と組み合わされる。第2のPSA排ガス(ライン76)は、熱交換器E101を介して加熱されて、加温された第2のPSA排ガス(ライン82)を生成し、これは、ミキサ(42)に供給される。
【0075】
二次分解は、主分解反応器(8)をすり抜けたアンモニアが、水素に変換することによって回収されることを可能にし、これは次いでPSAデバイス内で回収される。代替的に、二次分解反応器を分解反応器内の燃料として使用される前にPSA排ガス上に配置することは、水素がアンモニアよりもより容易に燃焼するため、燃焼を補助し、燃焼プロセス内でNOxを生成する可能性を低減するという利点を有する。
【0076】
二次分解反応器は、断熱固定床反応器であり得るが、他のタイプの反応器、例えば、触媒熱交換器反応器であり得る。典型的に、二次分解反応器は、断熱固定床反応器である。
【0077】
第1のPSAデバイス(26)からのPSA排ガス(再圧縮の前若しくは後、又は中間ステージ)が第2の分解反応器(88)内の触媒に供給されて、第1のPSA排ガス内のアンモニアを更に分解させる場合、二次分解反応器が使用され得る。これは、第2のPSAデバイス(74)内でより多くの水素が回収され、バーナへの燃料におけるアンモニアと関連付けられた問題が低減されることを意味する。かかるプロセスが、
図6に描写される。
【0078】
図1~5のプロセスに共通する
図6のプロセスの特徴は、同じ参照番号を与えられている。以下は、
図6の新機能の考察である。
【0079】
図6は、第1のPSAデバイス(26)からのPSA排ガス(ライン70)が、圧縮機(K301)内で圧縮されて、圧縮されたPSA排ガス(ライン72)を生成する本発明によるプロセスを描写する圧縮されたPSA排ガス(ライン72)は、第1のエコノマイザ(E102)内の第2の分解されたガス(ライン92)との熱交換によって加熱されて、加熱された圧縮されたPSA排ガス(ライン84)を生成する。加熱された圧縮されたPSA排ガス(ライン84)は、第2のエコノマイザ(E103)内の煙道ガス(ライン32)に対する熱交換によって更に550℃まで加熱されて、二次分解装置(88)のための供給物(ライン86)を生成する。供給物は、二次分解反応器(88)内の触媒を通過して、第2の分解されたガスを生成する(ライン92)。二次分解反応器内で使用される触媒は、アンモニア分解のための任意の好適な触媒、例えば、ニッケル触媒(GB768091A)、鉄触媒(GB1353751A)、ルテニウム触媒、ロジウム触媒、及び/又はイリジウム触媒(US2601221)であり得る。好適な有機金属触媒はまた、例えば、金属アミド及び/又は金属イミド触媒(GB2589621A)を使用してもよい。触媒は、第1のアンモニア分解装置において使用されるのと同じ触媒であり得るか、又は異なる触媒であってもよい。触媒は、1つのタイプの金属を含み得るか、又は1つ以上のタイプの金属を含み得る。第2の分解されたガス(ライン92)は、第1のエコノマイザ(E102)内で圧縮されたPSA排ガス(ライン72)との熱交換によって冷却されて、第2のPSAデバイス(74)に供給される、冷却された第2の分解されたガス(ライン94)を生成する。第2の分解されたガスは、第2の水素生成物(ライン98)及び第2のPSA排ガス(ライン96)を形成するように分離される。第1の水素生成物(ライン30)及び第2の水素生成物(ライン98)は、組み合わされて、組み合わされた水素生成物(ライン100)を生成する。次いで、第2のPSA排ガス(ライン96)は、ミキサ(42)内で燃料源(ライン50)と混合される。
【0080】
二次分解反応器(88)は、
図6に描写されるプロセス内のいくつかの異なる位置に位置付けることができる。これに関連して、
図6に描写されるプロセスの代替的な配置は、
図7~9に描写される。また、ポンプ式液体アンモニアを炉の燃料として使用するとき、二次分解反応器が使用されて、ポンプ圧送された液体アンモニアを分解し、任意選択的に、ミキサ42内の一次燃料に追加される分解されたガスを生成することができることに留意されたい。
【0081】
図7は、圧縮機(K301)及び第2のPSAデバイス(74)の上流、及び第1のPSAデバイス(26)の下流に位置付けられた二次分解反応器(88)を示す。第1のPSAデバイス(26)からのPSA排ガス(ライン70)は、第1のエコノマイザ(E102)内の第2の分解されたガス(ライン108)との熱交換によって加熱されて、加熱されたPSA排ガス(ライン104)を生成する。加熱されたPSA排ガス(ライン104)は、第2のエコノマイザ(E103)内の煙道ガス(ライン32)に対する熱交換によって更に加熱され、二次分解装置(88)に供給される。第2の分解されたガス(ライン108)は、第1のエコノマイザ(E102)内で第1のPSA排ガス(ライン70)との熱交換によって冷却されて、冷却された第2の分解されたガス(ライン110)を生成し、これは圧縮機K301に供給され、圧縮されて、圧縮された冷却された第2の分解されたガス(ライン112)を生成する。圧縮された冷却された第2の分解されたガス(ライン112)を第2のPSAデバイス(74)に供給し、分離して、第2の水素生成物(ライン116)及び第2のPSA排ガス(ライン114)を形成する。二次分解反応器(88)を圧縮機(K301)の上流に配置することは、アンモニアの変換がより高い圧力よりも低い圧力に有利に働くため、アンモニアの水素への変換が増加する可能性がある。
【0082】
図8は、多段式圧縮システム(K301A、K301B)の中間ステージに位置付けられた二次分解反応器(88)を示す。中間ステージ圧力において分解反応を行うことは、反応が圧縮システムの最終圧力で実行された場合よりも反応の生成物に有利に働く。したがって、より低い圧力におけるアンモニアの変換量は、より高い圧力におけるアンモニアの変換量よりも大きい。
【0083】
第1のPSAデバイス(26)からのPSA排ガス(ライン70)は、多段式圧縮機の第1のステージ(K301A)内で圧縮されて、圧縮されたPSA排ガス(ライン72)を生成する。圧縮されたPSA排ガス(ライン72)は、多段式圧縮機の中間ステージから除去され、第1のエコノマイザ(E102)内で第2の分解されたガス(ライン92)との熱交換によって加熱されて、加熱された圧縮されたPSA排ガス(ライン84)を生成する。加熱された圧縮されたPSA排ガス(ライン84)は、第2のエコノマイザ(E103)内の煙道ガス(ライン32)に対する熱交換によって更に550℃まで加熱されて、二次分解装置(88)のための供給物(ライン86)を生成する。供給物は、二次分解反応器(88)内の触媒を通過して、第2の分解されたガスを生成する(ライン92)。第2の分解されたガス(ライン92)は、第1のエコノマイザ(E102)内で圧縮されたPSA排ガス(ライン72)との熱交換によって冷却されて、冷却された第2の分解されたガス(ライン94)を生成し、これは、多段式圧縮機の中間ステージに戻って供給され、圧縮機の第2のステージ(K301B)内で圧縮されて、圧縮された冷却された第2の分解されたガス(ライン122)を生成する。圧縮された冷却された第2の分解されたガス(ライン122)は、第2のPSAデバイス(74)に供給され、及び分離されて、第2の水素生成物(ライン126)及び第2のPSA排ガス(ライン124)を形成する。第1の水素生成物(ライン30)及び第2の水素生成物(ライン168)は、組み合わされて、組み合わされた水素生成物(ライン128)を形成する。次いで、第2のPSA排ガス(ライン124)は、ミキサ(42)内で燃料源(ライン50)と混合される。
【0084】
図9は、第2のPSAデバイス(74)の下流に位置付けられた二次分解反応器(88)を示す。PSA排ガス(ライン70)は、圧縮機(K301)内で圧縮されて、圧縮されたPSA排ガス(ライン72)を生成する。圧縮されたPSA排ガス(ライン72)は、第2のPSAデバイス(74)に供給されて、第2の水素生成物(ライン134)及び第2のPSA排ガス(ライン132)を生成する。第1及び第2の水素生成物(ライン30及び134)は組み合わされて、組み合わされた水素生成物を形成する(ライン136)。第2のPSA排ガス(ライン132)は、第1のエコノマイザ(E102)内の第2の分解されたガス(ライン142)との熱交換によって加熱されて、加熱された第2のPSA排ガス(ライン138)を生成する。加熱された第2のPSA排ガス(ライン138)は、第2のエコノマイザ(E103)内の煙道ガス(ライン32)に対する熱交換によって更に加熱されて、二次分解装置(88)のための供給物(ライン140)を生成する。供給物は、二次分解反応器(88)内の触媒を通過して、第2の分解されたガスを生成する(ライン142)。第2の分解されたガス(ライン142)は、第1のエコノマイザ(E102)内で第2のPSA排ガス(ライン132)との熱交換によって冷却されて、冷却された第2の分解されたガス(ライン144)を生成し、これは、ユニットE101を通ってミキサ42に通過し、燃料を生成する(ライン44)。この配置では、水素回収における増加は存在しないが、燃料中の高レベルのアンモニアによって引き起こされるNO
x生成と関連付けられた問題が大幅に低減されるため、アンモニアよりも水素を燃焼させることが容易である。
【0085】
図10では、二次分解反応器(88)からの未変換アンモニアは、第1のPSAデバイス(26)及び膜ユニット(M301)を通して再循環され、100%に近いアンモニアの水素への変換をもたらし、唯一のアンモニア損失は、非透過性窒素リッチ流である。膜の使用は、第1のPSA排ガスを分離して、アンモニアを含む水素透過ガスを取得する。このガスは、分解触媒の上を通過する。このオプションの利点は、(i)触媒床におけるより低い速度(より長い滞留時間を意味する)、及び(ii)平衡の位置を変更する窒素生成物の除去を含む。
【0086】
図10は、第1のPSAデバイス(26)からのPSA排ガス(ライン54)が、圧縮機(K301)内で圧縮されて、圧縮されたPSA排ガス(ライン56)を生成する本発明によるプロセスを描写する。圧縮されたPSA排ガス(ライン56)は、膜分離器(M301)を通過して、窒素リッチパージ流(ライン60)及びアンモニアを含む水素リッチガス(ライン58)を生成する。膜分離器(M301)は、当該技術分野で既知の任意の好適な膜分離器であり得る。従来の膜としては、アンモニアにより耐性があることが既知であるポリアミド若しくはポリスルホンポリマー、又はアンモニアに対する耐性が低いことで既知であるポリイミドポリマーから作製されたものが挙げられる。水素リッチガス(ライン58)は、第2の圧縮機(K302)内で圧縮されて、圧縮された水素リッチガス(62)を生成する。圧縮された水素リッチガス(ライン62)は、第1のエコノマイザ(E102)における熱交換によって350℃に加熱されて、加熱された水素リッチガス(ライン148)を生成する。加熱された水素リッチガス(ライン148)は、第2のエコノマイザ(E103)における熱交換によって更に550℃に加熱されて、二次分解装置(88)のための供給物(ライン150)を生成する。供給物は、二次分解装置(88)を通過して、第2の分解されたガス(ライン152)を生成する。第2の分解されたガス(ライン152)は、第1のエコノマイザ(E102)内の水素リッチガス(ライン62)との熱交換(E102)によって冷却されて、冷却された第2の分解されたガス(ライン154)を生成する。冷却された第2の分解されたガス(ライン154)は、ライン156を介して第1のPSAデバイス(26)に再循環される。
【0087】
一方で二次圧縮機を有する第1及び第2のPSAデバイスオプションでは、二次分解装置への低圧供給物を使用することに平衡利点が存在する。このPSA/膜構成では、未変換のアンモニアは、PSA及び膜を通して戻って再循環されるため、二次分解装置を低圧力で動作させることによって高い変換を達成する必要はない。
【0088】
図10~12のPSAデバイスにおける水素回収率は、第1のPSA排ガス中の水素が再循環されているため、PSAのみのスキームにおける水素回収率ほど高い必要はない。より高いPSA排ガス圧力は、第1のPSA排ガス圧縮機における圧縮機電力を低減させ、これはPSA水素回収率を低減させるが、排ガス再循環に起因する非透過性の窒素リッチ流の任意の損失を差し引いて、全体的な水素回収率は、依然として100%である。
【0089】
二次分解反応器(88)は、
図10に描写されるプロセス内のいくつかの異なる位置において位置付けられ得る。これに関連して、
図10に描写されたプロセスの代替的な配置は、
図11及び12に描写される。
【0090】
図11は、膜分離器(M301)の下流及び第2の圧縮機(K302)の上流に位置付けられた二次分解装置(88)を示す。第1のPSAデバイス(26)からのPSA排ガス(ライン54)は、圧縮機(K301)内で圧縮されて、圧縮されたPSA排ガス(ライン56)を生成する。圧縮されたPSA排ガス(ライン56)は、膜分離器(M301)を通過して、窒素リッチパージ流(ライン60)及びアンモニアを含む水素リッチガス(ライン58)を生成する。水素リッチガス(ライン58)は、第1のエコノマイザ(E102)における熱交換によって加熱されて、加熱された水素リッチガス(ライン158)を生成する。加熱された水素リッチガス(ライン158)は、第2のエコノマイザ(E103)内の熱交換によって更に加熱されて、二次分解装置(88)のための供給物(ライン160)を生成する。供給物は、二次分解装置(88)を通過して、第2の分解されたガス(ライン162)を生成する。第2の分解されたガス(ライン162)は、第1のエコノマイザ(E102)内の水素リッチガス(ライン58)との熱交換(E102)によって冷却されて、冷却された第2の分解されたガス(ライン164)を生成する。冷却された第2の分解されたガス(ライン164)は、圧縮機(K302)内で圧縮されて、ライン168を介して第1のPSAデバイス(26)に再循環される、圧縮された冷却された第2の分解されたガス(ライン166)を生成する。この配置の利点は、低圧力におけるアンモニアの変換量が高圧力よりも大きいため、より高いアンモニア変換が達成されることである。
【0091】
図12は、多段式圧縮システム(K302A、K302B)の中間ステージに位置付けられた二次分解装置(88)を示す。第1のPSAデバイス(26)からのPSA排ガス(ライン54)は、圧縮機(K301)内で圧縮されて、圧縮されたPSA排ガス(ライン56)を生成する。圧縮されたPSA排ガス(ライン56)は、膜分離器(M301)に供給されて、窒素リッチパージ流(ライン60)及びアンモニアを含む水素リッチガス(ライン58)を生成する。水素リッチガス(ライン58)は、多段式圧縮機の第1のステージ(K301A)内で圧縮されて、圧縮された水素リッチガスを生成し、これは圧縮システムの中間ステージから除去され(ライン62)、第1のエコノマイザ(E102)における熱交換によって加熱されて、加熱された水素リッチガス(ライン148)を生成する。加熱された水素リッチガス(ライン148)は、第2のエコノマイザ(E103)内の熱交換によって更に加熱されて、二次分解装置(88)のための供給物(ライン150)を生成する。供給物は、二次分解装置(88)を通過して、第2の分解されたガス(ライン152)を生成する。第2の分解されたガス(ライン152)は、第1のエコノマイザ(E102)内の水素リッチガス(ライン62)との熱交換(E102)によって冷却されて、冷却された第2の分解されたガス(ライン154)を生成する。冷却された第2の分解されたガス(ライン154)は、圧縮システムの中間ステージに戻って供給され、第2のステージ(K301B)で圧縮されて、圧縮された冷却された第2の分解されたガス(ライン170)を生成する。圧縮された冷却された第2の分解されたガス(ライン170)は、ライン172を介して第1のPSAデバイス(26)に再循環される。
【0092】
ここで本発明を、以下の参考例及び非限定的な本発明の実施例を参照して説明する。
【実施例】
【0093】
シミュレーションの目的のために、発明の実施例及び参考例の両方は、11bar及び500℃での分解反応の平衡を想定している。
参考例1
図2に描写されるプロセスは、コンピュータ(Aspen Plus,ver.10、Aspen Technology,Inc.)によってシミュレートされ、及び結果は、表1に描写される。
表1
【表1】
【0094】
この参考例では、アンモニアからの水素回収率は、77.18%であり、PSA回収率は83.5%である。アンモニア供給ポンプ(P201)、アンモニア燃料ポンプ(P202)及び空気ファン(K201)の総出力は、約1.36kWである。
【0095】
参考例2
図3に描写されるプロセスは、コンピュータ(Aspen Plus,ver.10)によってシミュレートされ、及び結果は、表2に描写される。
表2
【表2】
【0096】
この参考例では、アンモニアからの水素回収率は、77.05%であり、PSA回収率は79.4%である。アンモニア供給ポンプ(P201)及び空気ファン(K201)の総出力は、約1.37kWである。
【0097】
参考例3
図5に描写されるプロセスは、コンピュータ(Aspen Plus,ver.10)によってシミュレートされ、及び結果は、表3に描写される。
表3
【表3】
【0098】
この参考例では、アンモニアからの水素回収率は、93.65%である。アンモニア供給ポンプ(P201)、空気ファン(K201)及び第1のPSA排ガス圧縮の総出力は、約27.92kWである。
【0099】
本発明の実施例1
図6に描写されるプロセスは、コンピュータ(Aspen Plus,ver.10)によってシミュレートされ、及び結果は、表4に描写される。
表4
【表4】
【0100】
発明の実施例では、アンモニアからの水素回収率は、95.60%である。アンモニア供給ポンプ(P201)、空気ファン(K201)及び第1のPSA排ガス圧縮の総出力は、約28.36kWである。第1の分解反応器をすり抜けるアンモニアの80%未満が、11barで動作する第2の分解反応器内で追加の水素及び窒素に分解される。
【0101】
本発明の実施例2
図8に描写されるプロセスは、コンピュータ(Aspen Plus,ver.10)によってシミュレートされ、及び結果は、表5に描写される。
表5
【表5】
【0102】
発明の実施例では、アンモニアからの水素回収率は、95.87%である。アンモニア供給ポンプ(P201)、空気ファン(K201)、第1のPSA排ガス圧縮及び第2のPSA排ガス圧縮の総出力は、約28.32kWである。第1の分解反応器をすり抜けるアンモニアの92%超は、本発明の実施例1よりも低い圧力(4bar)で動作する第2の分解反応器によって追加の水素及び窒素に分解される。
【0103】
本発明の実施例3
図10に描写されるプロセスは、コンピュータ(Aspen Plus,ver.10)によってシミュレートされ、及び結果は、表6に描写される。
表6
【表6】
【0104】
発明の実施例では、アンモニアからの水素回収率は、99.00%である。アンモニア供給ポンプ(P201)、空気ファン(K201)、PSA排ガス圧縮及び膜圧縮の総出力は、約59.24kWである。第1の分解反応器をすり抜けるアンモニアの約70%は、第2の分解反応器内で追加の水素及び窒素に変換される。
【0105】
本発明は、本発明のいくつかの態様の例解として意図される実施例に開示される特定の態様又は実施形態によって範囲が限定されるべきではなく、機能的に等価である任意の実施形態は、本発明の範囲内にある。本明細書に示され、説明されるものに加えて、本発明の様々な修正が、当業者に明らかとなり、添付の特許請求の範囲内であることが意図される。
【国際調査報告】