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特表2024-524092グリーン水素のためのアンモニア分解
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-05
(54)【発明の名称】グリーン水素のためのアンモニア分解
(51)【国際特許分類】
   C01B 3/04 20060101AFI20240628BHJP
   H01M 8/0662 20160101ALI20240628BHJP
【FI】
C01B3/04 B
H01M8/0662
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023577403
(86)(22)【出願日】2021-06-18
(85)【翻訳文提出日】2023-12-14
(86)【国際出願番号】 US2021038004
(87)【国際公開番号】W WO2022265651
(87)【国際公開日】2022-12-22
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591035368
【氏名又は名称】エア プロダクツ アンド ケミカルズ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】AIR PRODUCTS AND CHEMICALS INCORPORATED
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100195213
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 健治
(74)【代理人】
【識別番号】100202441
【弁理士】
【氏名又は名称】岩田 純
(72)【発明者】
【氏名】エドワード ランディス ウェイスト,ジュニア
(72)【発明者】
【氏名】シュブフラ ジェイ.バドラ
(72)【発明者】
【氏名】ウィリアム ジェイ.キャスティール,ジュニア
(72)【発明者】
【氏名】ティモシー シー.ゴールデン
(72)【発明者】
【氏名】ジェフリー アール.ハフトン
(72)【発明者】
【氏名】ギャレット シー.ラウ
(72)【発明者】
【氏名】サイモン クレイグ サロウェイ
【テーマコード(参考)】
5H127
【Fターム(参考)】
5H127AB04
5H127AC02
5H127AC05
5H127AC15
5H127BA01
5H127BA16
5H127BA17
(57)【要約】
残留アンモニアは、活性炭、活性アルミナ、又はシリカゲルなどの非ゼオライト系吸着剤を使用して、水素PSAシステム内のアンモニア分解されたガスから効果的に除去される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2つのPSAユニットを並列に備える圧力スイング吸着(PSA)システムにおいて、昇圧で動作するアンモニア分解反応器の流出物ガスから水素ガスを分離する方法であって、
前記方法が、
熱交換によって、前記流出物ガスを冷却して、冷却された流出物ガスを生成することと、
前記冷却された流出物ガスを前記昇圧で前記PSAシステムに供給して、水素生成物ガス及びPSA排ガスを生成することと、を含み、
各PSAユニットが、供給物端部と、前記供給物端部から下流の生成物端部と、それらの間に位置付けられた吸着床と、を備え、前記吸着床が、少なくともアンモニアに対して選択的に吸着性である非ゼオライト系吸着剤の上流層と、窒素に対して選択的に吸着性であるゼオライト系吸着剤の下流層と、を含む、方法。
【請求項2】
前記非ゼオライト系吸着剤が、0.005bar及び40℃において、少なくとも0.01mmol/gのアンモニアに対する容量を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記非ゼオライト系吸着剤が、1.4bar及び40℃において、窒素パージを使用して、100秒後に吸着されたアンモニアの少なくとも10%を脱離させる、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記非ゼオライト系吸着剤が、1.4barの窒素パージを使用して、600秒後に吸着されたアンモニアの少なくとも30%を脱離させる、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記非ゼオライト系吸着剤が、水を選択的に共吸着する、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記非ゼオライト系吸着剤が、窒素を選択的に共吸着する、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記非ゼオライト系吸着剤が、5bar及び40℃において、少なくとも0.18mmol/gの窒素に対する容量を有する、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記非ゼオライト系吸着剤が、約pH6.3~約pH9.8の範囲内にある表面酸性度を有する、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記非ゼオライト系吸着剤が、活性炭である、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記活性炭が、ポリマー由来炭素、石油ピッチ炭素、木質系炭素、石炭系炭素、及びココナッツシェル炭素からなる群から選択される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記活性炭が、酸で前処理される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記活性炭が、窒素を、少なくとも150℃の昇温で前記ココナッツシェルの層に流動させることによって、インサイチュで前処理される、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記活性炭が、塩基で前処理される、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
前記活性炭が、1重量%未満の無機含有量を有する、請求項9~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記非ゼオライト系吸着剤が、活性化アルミナである、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記活性化アルミナが、塩基で前処理される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
非ゼオライト系吸着剤が、広孔シリカゲル、狭孔シリカゲル、及びシリカライトからなる群から選択される、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記吸着床が、前記上流層と下流層との間に位置付けられた1%未満の無機含有量を有する活性炭の中間層を含む、請求項1~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記中間層の前記活性炭が、ポリマー由来炭素及び石油ピッチ炭素からなる群から選択される、請求項1~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記流出物ガスが、0体積%~約0.5体積%の水及び約0.1体積%~約5体積%のアンモニアを有し、残りの前記ガスが、約3:1の比の水素及び窒素の混合物からなる、請求項1~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記冷却された流出物ガスが、約15℃~約100℃の範囲内の温度である、請求項1~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記冷却された流出物ガスの前記昇圧が、約5bar~約40barの範囲内にある、請求項1~21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記PSA排ガスが、前記流出物ガスの前記昇圧の約0.2%~約20%の範囲内の背圧を有する、請求項1~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
昇圧で動作するアンモニア分解反応器の流出物ガスから水素ガスを分離するためのPSAユニットであって、前記PSAユニットが、供給物端部と、前記供給物端部から下流の生成物端部と、それらの間に位置付けられた吸着床と、を備え、前記吸着床が、少なくともアンモニアに対して選択的に吸着性である非ゼオライト系吸着剤の上流層と、窒素に対して選択的に吸着性であるゼオライト系吸着剤の下流層と、を含む、PSAユニット。
【請求項25】
前記非ゼオライト系吸着剤が、0.005bar及び40℃において、少なくとも0.01mmol/gのアンモニアに対する容量を有する、請求項24に記載のPSAユニット。
【請求項26】
前記非ゼオライト系吸着剤が、1.4barの窒素パージを使用して、100秒後に脱離されたアンモニアの少なくとも10%を脱離させる、請求項24又は25に記載のPSAユニット。
【請求項27】
前記非ゼオライト系吸着剤が、1.4barの窒素パージを使用して、600秒後に、吸着されたアンモニアの少なくとも30%を脱離させる、請求項24~26のいずれか一項に記載のPSAユニット。
【請求項28】
前記非ゼオライト系吸着剤が、水を選択的に共吸着する、請求項24~27のいずれか一項に記載のPSAユニット。
【請求項29】
前記非ゼオライト系吸着剤が、窒素を選択的に共吸着する、請求項24~28のいずれか一項に記載のPSAユニット。
【請求項30】
前記非ゼオライト系吸着剤が、5bar及び40℃において、少なくとも0.18mmol/gの窒素に対する容量を有する、請求項29に記載のPSAユニット。
【請求項31】
前記非ゼオライト系吸着剤が、約pH6.3~約pH9.8の範囲内にある表面酸性度を有する、請求項24~30のいずれか一項に記載のPSAユニット。
【請求項32】
前記非ゼオライト系吸着剤が、活性炭である、請求項24~31のいずれか一項に記載のPSAユニット。
【請求項33】
前記活性炭が、ポリマー由来炭素、石油ピッチ炭素、木質系炭素、石炭系炭素、及びココナッツシェル炭素からなる群から選択される、請求項32に記載のPSAユニット。
【請求項34】
前記活性炭が、酸で前処理されている、請求項32に記載のPSAユニット。
【請求項35】
前記活性炭が、窒素を、少なくとも150℃の昇温で前記ココナッツシェルの層に流動させることによって、インサイチュで前処理されている、請求項32に記載のPSAユニット。
【請求項36】
前記活性炭が、塩基で前処理されている、請求項32に記載のPSAユニット。
【請求項37】
前記活性炭が、1重量%未満の無機含有量を有する、請求項32~36のいずれか一項に記載のPSAユニット。
【請求項38】
前記非ゼオライト系吸着剤が、活性化アルミナである、請求項24~31のいずれか一項に記載のPSAユニット。
【請求項39】
前記活性化アルミナが、塩基で前処理される、請求項38に記載のPSAユニット。
【請求項40】
非ゼオライト系吸着剤が、広孔シリカゲル、狭孔シリカゲル、及びシリカライトからなる群から選択される、請求項24~31のいずれか一項に記載のPSAユニット。
【請求項41】
前記吸着床が、前記上流層と下流層との間に位置付けられた1%未満の無機含有量を有する活性炭の中間層を含む、請求項24~40のいずれか一項に記載のPSAユニット。
【請求項42】
前記中間層の前記活性炭が、ポリマー由来炭素及び石油ピッチ炭素からなる群から選択される、請求項24~41のいずれか一項に記載のPSAユニット。
【請求項43】
昇圧で動作するアンモニア分解反応器の流出物ガスから水素ガスを分離するためのPSAシステムであって、前記PSAシステムが、請求項24~42のいずれか一項に記載の少なくとも2つのPSAユニットを並列で備える、PSAシステム。
【請求項44】
アンモニアから水素を生成するための装置であって、
液体アンモニアを加圧するためのポンプと、
1つ以上の高温流体との熱交換によって前記ポンプからの前記液体アンモニアを加熱して(及び任意選択的に、気化して)、加熱されたアンモニアを生成するために、前記ポンプと流体連通する少なくとも1つの第1の熱交換器と、
前記第1の熱交換器からの加熱されたアンモニアを分解して、水素ガス、窒素ガス、及び残留アンモニアを含む第1の分解されたガスを生成するために、前記第1の熱交換器と流体連通する触媒を含む反応器管と、
燃料を燃焼させて、前記触媒を含む反応器管を加熱し、煙道ガスを形成するために、前記触媒を含む反応器管と熱連通する炉と、
前記第1の熱交換器に、前記触媒を含む反応器管からの分解されたガスを供給するための分解されたガス導管と、
前記第1の熱交換器に、前記炉からの煙道ガスを供給するための煙道ガス導管と、
前記少なくとも1つの熱交換器を通過した後に冷却された分解されたガスを精製して、第1の水素生成物ガス及び第1のPSA排ガスを生成するために、前記触媒を含む反応器管と流体連通する、請求項43に記載の第1のPSAシステムと、
前記第1のPSAシステムから第1のPSA排ガスを除去するための第1のPSA排ガス導管と、
前記第1のPSAシステムから第1の水素生成物ガスを除去するための第1の水素生成物ガス導管と、を備える、装置。
【請求項45】
第1のPSA排ガスを圧縮して、圧縮されたPSA排ガスを生成するための前記第1のPSAシステムと流体連通する圧縮機と、
前記圧縮されたPSA排ガスを前記第1のPSAシステムに再循環させるための再循環導管と、を備える、請求項44に記載の装置。
【請求項46】
任意選択的に、前記熱交換器を通過した後に、前記第1のPSAデバイスからの第1のPSA排ガスを前記炉に再循環させるための第1のPSA排ガス再循環導管を備える、請求項45に記載の装置。
【請求項47】
第1のPSA排ガスを圧縮して、圧縮されたPSA排ガスを生成するための前記第1のPSAシステムと流体連通する圧縮機と、
前記圧縮されたPSA排ガスを精製して、第2のPSA排ガス及び第2の水素生成物ガスを生成するために前記圧縮機と流体連通する第2のPSAシステムと、
前記第2のPSAシステムから前記第2の水素ガスを除去するための第2の水素生成物ガス導管と、
前記第2のPSAデバイスから前記第2のPSA排ガスを除去するための第2のPSA排ガス導管と、を備える、請求項44に記載の装置。
【請求項48】
前記第1及び第2の水素生成物ガス導管が、組み合わせて、組み合わされた水素生成物ガス導管を形成する、請求項47に記載の装置。
【請求項49】
前記第2のPSA排ガス導管が、任意選択的に、前記熱交換器を通過した後に、前記第2のPSAシステムからの前記第2のPSA排ガスを前記炉に再循環させる、請求項47又は48に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
再生可能エネルギーへの世界的な関心、及びこの再生可能エネルギーを使用してグリーン水素を発生させることは、アンモニアが数百又は数千マイルの距離を移送することにおいてより簡単であるため、グリーン水素をグリーンアンモニアに変換することへの関心を高めている。特に、液体水素の輸送は、現在商業的には可能ではないが、液体状態にあるアンモニアの輸送は、現在実践されている。
【0002】
市販の燃料電池における使用の場合、アンモニアは、反応により水素に変換されなければならない。
【数1】
【0003】
これは吸熱プロセス、すなわち、熱を必要とするプロセスであり、触媒を介して実施される。このプロセスは、分解として既知である。生成されるガス(又は「分解されたガス」)は、水素(H2)と窒素(N2)の組み合わせである。分解反応は平衡反応であるため、反応式によって与えられるアンモニアの変換は、100%未満であり、反応器流出物中に残留アンモニアが存在する。現行の分解装置のほとんどの用途において、水素+窒素の混合物は、そのまま利用される。しかしながら、アンモニアは、燃料電池にとって害になるものであり得るため、この流れは、水で洗浄することによってなど、アンモニアを好適に除去することで、燃料電池において直接使用することができる。しかしながら、水素が車両の燃料供給において使用される場合、存在する窒素は、プロセスにペナルティを提供する。車両の燃料供給システムへの燃料は、最大900barという著しい圧力に圧縮される。これは、プロセスにおいて単なる希釈剤である窒素も圧縮され、電力を要し、貯蔵量を要し、アノードガスパージ要件を増加させ、効率を低下させることを意味する。したがって、水素が車両の燃料供給において使用される場合、水素+窒素が精製されることが有益である。
【0004】
小規模分解反応器、又は「分解装置」は、典型的には、圧力スイング吸着(「PSA」)デバイスを使用して、分解されたガスを分離し、水素を回収し、PSA排ガス(又はオフガス)を生成する。しかしながら、これらの分解装置は、概して、電気的に加熱され、PSA排ガスは、典型的には、大気中に排気される。
【0005】
蒸気メタン改質(SMR)反応器からの水素生成において一般的であるように、PSAは、窒素+水素を精製するために使用することができる。分解反応は、炉によって外部的に加熱される触媒が充填された管内で実施される(GB1142941を参照)。
【0006】
GB1142941は、アンモニアから都市ガスを作製するためのプロセスを開示する。アンモニアを、分解し、分解されたガスを、水で洗浄して、残留アンモニアを除去する。次いで、精製された水素/窒素混合物をプロパン及び/又はブタン蒸気で濃縮して、分配用の都市ガスを生成する。
【0007】
US6835360Aは、炭化水素原料及びメタノールを、水素及び一酸化炭素などの有用なガスに変換するための吸熱触媒反応装置を開示する。装置は、放射性燃焼室と組み合わせて、管状の吸熱触媒反応器を備える。結果として得られた分解されたガスは、ガス調節システムを通過した後、燃料電池内で直接使用される。
【0008】
GB977830Aは、アンモニアを分解して、水素を生成するためのプロセスを開示する。このプロセスでは、分解されたガスを、窒素を吸着する分子ふるいの床に通すことによって、水素が窒素から分離される。次いで、窒素は、床から駆動され、ホルダ内に貯蔵され得る。
【0009】
JP5330802Aは、アンモニアが10kg/cm2(又は約9.8bar)の圧力及び300~700℃の温度でアンモニア分解触媒と接触するアンモニア分解プロセスを開示する。水素は、PSAデバイスを使用して分解されたガスから回収される。参考文献は、脱離した窒素が上流プロセスを後押しするために使用され得ることに言及しているが、詳細は提供されていない。
【0010】
US2007/178034Aは、アンモニア及び炭化水素原料の混合物が、600℃及び3.2MPa(又は約32bar)の燃焼蒸気改質器を通過し、約70体積%の水素を含む合成ガスに変換されるプロセスを開示する。合成ガスは、シフト反応で水素が濃縮され、冷却され、縮合物が除去される。結果として得られたガスは、PSAシステムに供給されて、99体積%以上の水素を有する精製水素生成物を生成する。PSAシステムからのオフガスは、燃料として燃焼蒸気改質器に供給される。
【0011】
CN111957270Aは、アンモニアが炉内の管状反応器内で分解されるプロセスを開示する。分解されたガスは、吸着によって分離されて、水素ガス及び窒素リッチオフガスを生成する。分解されたガス、水素生成物ガス、及び/又はオフガスの組み合わせを使用して、炉の燃料需要が満たされるように見える。
【0012】
アンモニア分解反応器の気相流出物は、典型的には、約15℃~約60℃の範囲内の温度に冷却され、及び約10~40barの範囲内の圧力であり、水素及び窒素の3:1の混合物、いくつかの残留(又は未変換)アンモニアとともに含み、通常、約0.5体積%~5体積%の範囲内にある。いくつかの場合では、低レベルの水蒸気、例えば、0~0.5体積%もまた存在する。
【0013】
アンモニア分解反応器流出物から使用可能な水素流を生成するには、典型的には、精製工程が必要である。上で挙げられたように、窒素は、水素PSAなどの吸着プロセスによって流出物流から除去することができる。アンモニアは、水素PSA工程の前に、冷水で洗浄することによって非常に低いレベル(例えば、50ppm未満)まで除去され得る。冷水洗浄後、次いで溶解したアンモニアは、熱で水からストリッピングされ、更なる処理のために回収される。しかしながら、かかる洗浄及びストリッピングプロセスは、エネルギー集約的である。
【0014】
US3111387は、アンモニア分解反応器の流出物から残留アンモニアを除去するための代替的な方法を開示する。このプロセスでは、流出物ガスは、少なくとも4Å(又は0.4nm)の見かけの孔径を有するゼオライト系分子ふるい材料の床を通過して、ガスから窒素、アンモニア、及び水分を同時に除去し、実質的に純粋な水素生成物ガスを床から出す。参考文献は、分解されたガスを200psi(又は14bar)の圧力で-20°F(又は-29℃)に冷却し、次いで、冷却されたガスをPSAシステム内のカルシウムゼオライトA(すなわち、5Aゼオライト)の床に通して、水素生成物ガスを生成することを例示する。ゼオライト系吸着床は、真空下で再生される。
【0015】
しかしながら、本発明者らは、アンモニアがかかるゼオライト系材料に非常に強力に吸着され、このことが床を再生するとき、アンモニアの全てを除去することを困難にすることを認識している。本発明者らは、これがUS3111387において真空再生が使用される理由であると予想する。経時的に(及び多くのPSAサイクル)、アンモニアは、床に蓄積し、最終的には非常に望ましくない水素生成物ガスに突入する可能性がある。
【0016】
したがって、概して、アンモニアからの水素の生成のための改善されたプロセス、具体的には、エネルギー消費の観点からより効率的であるプロセス、及び/又はより高いレベルの水素回収を有するプロセス、及び/又は化石燃料を燃焼させる必要性を低減若しくは排除するプロセスのための改善されたプロセスが、必要である。
【0017】
以下の本発明の実施形態の考察を含む、明細書を通して、特に明記されない限り、与えられた圧力は絶対圧力である。
【発明の概要】
【0018】
本発明の第1の態様によると、少なくとも2つのPSAユニットを並列に備えるPSAシステムにおいて、昇圧で動作するアンモニア分解反応器の流出物ガスから水素ガスを分離する方法が提供され、
熱交換によって、流出物ガスを冷却して、冷却された流出物ガスを生成することと、
冷却された流出物ガスを昇圧でPSAシステムに供給して、水素生成物ガス及びPSA排ガスを生成することと、を含み、
各PSAユニットは、供給物端部と、供給物端部から下流の生成物端部と、それらの間に位置付けられた吸着床と、を備え、吸着床は、少なくともアンモニアに対して選択的に吸着性である非ゼオライト系吸着剤の上流層と、窒素に対して選択的に吸着性であるゼオライト系吸着剤の下流層と、を含む。
【0019】
「昇圧」という表現は、大気圧、例えば、少なくとも5barよりも実質的に大きい圧力を意味することが意図され、アンモニア分解装置について本明細書に開示される動作圧力、例えば、約5bar~約50barを含むことが意図される。
【0020】
「上流」及び「下流」という用語は、PSAサイクルの吸着相中のPSAユニットを通る冷却された流出物ガスの流量の方向を参照して、床内の非ゼオライト系吸着剤及びゼオライト系吸着剤の層の相対的な場所を識別することを意図する。そのため、上流層は、下流層よりもユニットの供給物端部に近い(が生成物端部から更に離れる)。
【0021】
「選択的吸着」という表現は、本件のガスが、水素ガスよりも吸着材料により強力に吸着されることを意味することを意図する。本明細書において使用される「選択的共吸着」という用語は、それに応じて解釈される。
【0022】
本発明を利用する水素PSAシステムは、そのアンモニアのパーセントレベルで反応器流出物を取り扱うことができ、それによって、洗浄及びストリッピングのプロセス工程、並びに水を冷やし、加熱するために必要とされるエネルギーを排除する。
【0023】
加えて、本発明者らは、非ゼオライト系吸着材料は、かかる材料がゼオライト系材料ほど強力にアンモニアを吸着しないため、水素PSAプロセス中にアンモニア分解反応器の流出物ガスからアンモニアのパーセントレベルを除去するのに予想外により適していることを発見した。この低い吸着強度は、経時的に吸着床を通るアンモニア「クリープ」の問題を低減し、潜在的に排除する。
【0024】
好適な非ゼオライト系吸着剤は、0.005bar及び40℃で、少なくとも0.01mmol/g、及び任意選択的に、約2mmol/g以下のアンモニアに対する容量を有し得る。例えば、アンモニア容量は、典型的には、これらの条件下において、約0.01mmol/g~約2mmol/g、例えば、約0.01mmol/g~約0.5mmol/g、又は約0.01mmol/g~約0.3mmol/gの範囲内にある。
【0025】
好適な非ゼオライト系吸着剤は、1.4barの窒素パージを使用して、100秒後に少なくとも10%、好ましくは、少なくとも25%、より好ましくは、少なくとも45%の吸着アンモニアを脱離させ得る。これらのパーセンテージは、パージ工程中、例えば、床が再生されるときに脱離される吸着された分子の割合を指す。
【0026】
好適な非ゼオライト系吸着剤は、40℃で1.4barの窒素パージを使用して、600秒後に少なくとも30%、好ましくは、少なくとも50%、より好ましくは、少なくとも90%の吸着アンモニアを脱離させ得る。
【0027】
本発明者らは、吸着剤層は、典型的には、実質的に純粋な水素でパージされるが、パージ工程の開始時に窒素が下流層において吸着されるため、水素と脱離した窒素の混合物は、実際にプロセス中にアンモニア層をパージすることに留意する。
【0028】
いくつかの好ましい実施形態では、好適な非ゼオライト系吸着剤は、また、選択的に、水を共吸着する。これに関して、水に対する非ゼオライト系吸着剤の容量は、0.02bar及び40℃の水分圧力で、少なくとも1.8重量%、任意選択的に、5重量%以下であり得る(表1を参照されたい)。
表1
【表1】
【0029】
これらの実施形態では、水除去専用の床の供給物端部の上流層の前にある追加の吸着剤層のサイズを低減する(又は完全に避ける)ことが可能であり得る。
【0030】
追加的又は代替的に、好適な非ゼオライト系吸着剤はまた、窒素を選択的に共吸着し得る。これに関して、窒素に対する非ゼオライト系材料の容量は、5bar及び40℃において、少なくとも0.18mmol/g、例えば、少なくとも0.7mmol/gであり得る。これらの実施形態では、非ゼオライト系吸着剤の上流層の下流のゼオライト吸着剤の層のサイズを低減させることが可能であり得る。
【0031】
特に好適な非ゼオライト系吸着剤は、約pH6.3~約pH9.8、例えば、約pH8~約pH9の範囲内にある(電荷零点又はZPCとして測定される)表面酸性度であり得る。ZPCは、2グラムの吸着剤を10ミリリットルの脱イオン水に追加し、20時間後に水のpHを測定することによって決定される。
【0032】
いくつかの好ましい実施形態では、非ゼオライト系吸着剤は、例えば、合成(すなわち、ポリマー由来)炭素、石油ピッチ炭素、木質系炭素、石炭系炭素及びココナッツシェル炭素からなる群から選択される活性炭である。これらの炭素は、前駆体材料、通常は、石油ピッチ、木材、石炭又はココナッツシェルなどの生体物質の粒子の炭化(すなわち、空気の不在下で、約300℃~約900℃で加熱)によって形成される。ポリマー由来の炭素は、典型的には、ポリスチレン、ポリアクリレート、ポリアルキルアミン、フェノール-ホルムアルデヒド樹脂、又はジビニルベンゼン若しくはアクリル酸とスチレンのスルホン化されたコポリマー、又はこれらの混合物などのポリマーの小球の炭素化によって形成される。
【0033】
活性炭のいずれかは、床に搭載される前に酸又は塩基で前処理され得るか、又は少なくとも100℃、例えば、約150℃、又は少なくとも300℃、例えば、約340℃の昇温で活性炭の層を通して窒素を流すことによってインサイチュで前処理され得る。この方法におけるインサイチュの前処理は、酸素官能性及び炭素の表面の酸性を低減させる効果を有する(Water Research vol.31,p3414,1998及びCarbon vol.37,p1379,1999を参照されたい)。
【0034】
特に好適な炭素吸着剤は、8重量%未満、例えば、4重量%未満、1重量%未満、0.5重量%未満、又は更に0.2重量%未満の無機含有量を有する。かかる吸着剤は、「低灰分」吸着剤と呼ばれ得る。かかる材料は、アンモニアに向かう特に高い吸着可逆性を有し、例えば、床が1.4bar及び40℃において流動窒素中で再生されたとき、吸着したアンモニアの少なくとも50%又は少なくとも90%が、600秒以内に脱離する。
【0035】
他の実施形態では、非ゼオライト系吸着剤は、活性アルミナ、おそらく、塩基で前処理された活性アルミナである。
【0036】
更なる実施形態では、非ゼオライト系吸着剤は、広孔シリカゲル、狭孔シリカゲル、及びシリカライトからなる群から選択される。
【0037】
異なる吸着剤を容器内に重ねて、床を形成し、ガス流から水蒸気、アンモニア、及び窒素を除去する。このため、容器内の吸着剤層を通って流れる供給物ガスの方向において、最も強力に吸着された分子として、水蒸気が最初に除去され、アンモニアが第2に除去され、2番目に少なく吸着される分子として、窒素が最後に除去される。最も少なく吸着される分子として、水素が、相対的に吸着されていない吸着剤層を通過する。
【0038】
吸着床は、水及びアンモニアを除去するための1つ又は2つの層の非ゼオライト系吸着剤を、窒素を除去するための1つ又は2つの層のゼオライト系吸着剤とともに含み得る。
【0039】
他の実施形態では、吸着床は、上流層と下流層との間に位置付けられた1%未満の無機含有量を有する活性炭の中間層を含み得る。かかる活性炭の例としては、ポリマー由来炭素、石油ピッチ炭素、及び木質系炭素が挙げられる。アンモニアはそれらから容易に脱離されるため、これらの「低灰分」材料は、高いアンモニア吸着能力を有する第1の非ゼオライト系(例えば、炭素)層と、PSAプロセスにおける窒素の吸着に使用されるゼオライト系吸着剤の下流層(例えば、分子ふるい)との間の、第2の非ゼオライト系(炭素)層として使用することができる。パージ工程中、第2の非ゼオライト系層からの容易な脱離により、かかる層の配置は、アンモニアが分子ふるいに到達することを防止する。
【0040】
PSAプロセスにおける水除去のための他の吸着剤は、よく知られている。水の吸着に一般的に使用される材料は、活性化アルミナ、シリカゲル、及び炭素である。いくつかの実施形態では、吸着床は、供給物端部においてこれらの材料のうちの1つの初期層を有する。
【0041】
PSAプロセスにおける窒素除去のためのゼオライト系吸着剤もまたよく知られている。窒素吸着に関して一般的に使用される材料は、13X、LiX、LiLSX、CaX、CaA(5A)、及びCa-Chabaziteなどのゼオライト又は分子ふるいである。アンモニア分解反応器からの水素の精製では、これらの材料のうちの1つ以上が、窒素除去に利用され得る。
【0042】
実質的に純粋な水素を生成するためにアンモニア分解反応器の流出物から水、アンモニア及び窒素を除去するのに適した充填床の例としては、(供給物端部から生成物端部へ)以下が挙げられる:
活性アルミナ/活性炭(例えば石炭系又はココナッツ系炭素)/5Aゼオライト
活性アルミナ/狭孔シリカゲル/5Aゼオライト
活性アルミナ/狭孔シリカゲル/CaXゼオライト
活性アルミナ/狭孔シリカゲル/CaXゼオライト/5Aゼオライト
活性炭/「低灰分」炭素(例えば石油ピッチ炭素)/5Aゼオライト
PSAシステムへのガス供給は、アンモニア分解反応器から起点となり、典型的には、0体積%~約0.5体積%の水及び約0.1体積%~約5体積%のアンモニアを有し、残りのガスは、本質的に、約3:1の比の水素及び窒素の混合物からなる。
【0043】
アンモニア分解反応器の動作温度は、典型的には、高く、通常、約250℃~約800℃の範囲内、例えば、約400℃~約600℃であり、このため、流出物ガスは、PSAシステムに供給される前に冷却される必要がある。これに関連して、冷却された流出物ガスは、典型的には、約15℃~約100℃の範囲内の温度、例えば、約50℃である。
【0044】
アンモニア分解反応器の動作圧力はまた、典型的には高く、通常、約5bar~約50bar、例えば、約10bar~約40barの範囲内にある。したがって、流出物ガスはすでに昇圧であるため、ガスがPSAシステムに供給される前に、圧力調整は、典型的には、必要とされない。このため、冷却された流出物ガスの昇圧は、通常、約5bar~約50bar、例えば、約10bar~約40barの範囲内にある。
【0045】
典型的には、PSA排ガスは、流出物ガスの昇圧の約0.2%~約20%の範囲内の背圧を有する。
【0046】
本発明の第2の態様によると、昇圧で動作するアンモニア分解反応器の流出物ガスから水素ガスを分離するためのPSAユニットが提供され、当該PSAユニットは、供給物端部と、供給物端部から下流の生成物端部と、それらの間に位置付けられた吸着床と、を備え、吸着床は、少なくともアンモニアに対して選択的に吸着性である非ゼオライト系吸着剤の上流層と、窒素に対して選択的に吸着性であるゼオライト系吸着剤の下流層と、を含む。
【0047】
本発明の第3の態様によると、昇圧で動作するアンモニア分解反応器の流出物ガスから水素ガスを分離するためのPSAシステムが提供され、当該PSAシステムは、第2の態様による少なくとも2つのPSAユニットを並列で備える。PSAシステムは、かかるPSAユニットのうちの少なくとも4つを並列に備え得る。
【0048】
PSAユニットにおける使用に好適な非ゼオライト系吸着剤は、上に説明された通りである。
【0049】
本発明の第4の態様によると、アンモニアから水素を生成するための装置が提供され、
液体アンモニアを加圧するためのポンプと、
1つ以上の高温流体との熱交換によってポンプからの液体アンモニアを加熱して(及び任意選択的に、気化して)、加熱されたアンモニアを生成するために、ポンプと流体連通する少なくとも1つの第1の熱交換器と、
第1の熱交換器からの加熱されたアンモニアを分解して、水素ガス、窒素ガス、及び残留アンモニアを含む第1の分解されたガスを生成するために、第1の熱交換器と流体連通する触媒を含む反応器管と、
燃料を燃焼させて、触媒を含む反応器管を加熱し、煙道ガスを形成するために、触媒を含む反応器管と熱連通する炉と、
第1の熱交換器に、触媒を含む反応器管からの分解されたガスを供給するための分解されたガス導管と、
炉からの煙道ガスを第1の熱交換器に供給するための煙道ガス導管と、
少なくとも1つの熱交換器を通過した後に冷却された分解されたガスを精製して、第1の水素生成物ガス及び第1のPSA排ガスを生成するために、触媒を含む反応器管と流体連通する、本発明の第3の態様による第1のPSAシステムと、
第1のPSAシステムから第1のPSA排ガスを除去するための第1のPSA排ガス導管と、
第1のPSAシステムから第1の水素生成物ガスを除去するための第1の水素生成物ガス導管と、を備える。
【0050】
いくつかの実施形態では、装置は、第1のPSA排ガスを圧縮して、圧縮されたPSA排ガスを生成するための第1のPSAシステムと流体連通する圧縮機と、圧縮されたPSA排ガスを第1のPSAシステムに再循環させるための再循環導管と、を備える。これらの実施形態では、典型的には、任意選択的に、熱交換器を通過した後に、第1のPSAデバイスからの第1のPSA排ガスを炉に再循環させるための第1のPSA排ガス再循環導管が存在する。
【0051】
他の実施形態では、装置は、第1のPSA排ガスを圧縮して、圧縮されたPSA排ガスを生成するための第1のPSAシステムと流体連通する圧縮機と、圧縮されたPSA排ガスを精製して、第2のPSA排ガス及び第2の水素生成物ガスを生成するための圧縮機と流体連通する第2のPSAシステムと、第2のPSAシステムから第2の水素ガスを除去するための第2の水素ガス導管と、第2のPSAデバイスから第2のPSA排ガスを除去するための第2のPSA排ガス導管と、を備える。第2のPSAシステムはまた、本発明の第3の態様に従ってもよく、又は吸着床内の異なる配置の層を有してもよい。
【0052】
これらの実施形態では、第1及び第2の水素生成物ガス導管は、組み合わせて、組み合わされた水素生成物ガス導管を形成し得る。追加的に、又は代替的に、第2のPSA排ガス導管は、任意選択的に、熱交換器を通過した後に、第2のPSAシステムからの第2のPSA排ガスを炉に再循環させ得る。
【0053】
PSAシステムは、任意の好適なPSAサイクルを使用して動作することができる。特に、好適なPSAサイクルは、US9381460、US6379431、及びUS8778051に開示されているサイクルのいずれかを含み、これらの開示は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0054】
少なくとも第1のPSAシステムが並列して少なくとも4つのPSAユニットを備える実施形態では、PSAシステムは、US8778051において開示されるPSAサイクルを動作させ得る。反復サイクルは、順に、(a)供給工程、(b)第1の圧力低下均等化工程、(c)提供パージ工程、(d)ブローダウン工程、(e)パージ工程、(f)第1の圧力増加均等化工程、及び(g)再加圧工程を含む。これらの工程は、以下のように定義される。
【0055】
供給工程(a)は、約10bar~約50barの範囲の供給ガス圧力で、冷却された流出物ガスを、工程(a)を受ける吸着床に導入することと、工程(a)を受ける吸着床内の水分、アンモニア、及び窒素を吸着しながら、同時に、工程(a)を受ける吸着床から水素生成物ガスを引き出すことと、を含む。
【0056】
第1の圧力低減均等化工程(b)は、工程(b)を受ける吸着床から圧力均等化ガスを同時に引き出すことと、圧力均等化ガスを、工程(f)を受ける吸着床に通し、それによって工程(b)及び(f)を受ける吸着床間の圧力を均等化することと、を含む。
【0057】
提供パージ工程(c)は、工程(c)を受ける吸着床からパージガスを並流で引き出すことと、工程(c)を受ける吸着床からのパージガスを、工程(e)を受ける吸着床に通過させることと、を含む。
【0058】
ブローダウン工程(d)は、工程(d)を受ける吸着床からブローダウンガスを逆流で引き出すことを含み、ブローダウンガスは、冷却された流出物ガス供給におけるこれらの成分の濃度よりも高い水分、アンモニア、及び窒素の濃度を有する。
【0059】
パージ工程(e)は、工程(c)を受ける吸着床からのパージガスを、工程(e)を受ける吸着床に逆流で導入し、工程(e)を受ける吸着床からのパージガス流出物を逆流で引き出すことを含み、パージガス流出物は、冷却された流出物ガス供給におけるこれらの成分の濃度よりも高い水分、アンモニア、及び窒素の濃度を有する。
【0060】
第1の圧力増加均等化工程(f)は、工程(b)を受ける吸着床からの圧力均等化ガスを、工程(f)を受ける吸着床に逆流で導入することを含む。
【0061】
再加圧工程(g)は、冷却された流出物ガスを、工程(g)を受ける吸着床内に並流で導入することと、工程(a)を受ける吸着床からの生成物ガスの一部分を、工程(g)を受ける吸着床に逆流で導入することと、のうちの少なくとも1つによって、工程(g)を受ける吸着床が実質的に供給ガス圧力になるまで、工程(g)を受ける吸着床内の圧力を増加させることを含む。
【0062】
プロセスは、(i)工程(b)が、圧力均等化ガスの引き出しと同時にリンスガスを並流で導入することを更に含む工程と、(ii)工程(c)が、パージガスの引き出しと同時にリンスガスを並流で導入することを更に含むこと、のうちの少なくとも1つを含む。リンスガスは、工程(d)を受ける吸着床からのブローダウンガス、工程(e)を受ける吸着床からのパージガス流出物のうちの少なくとも1つの少なくとも一部分を圧縮することによって形成される。
【0063】
第1の圧力増加均等化工程(f)は、(i)工程(b)を受ける吸着床からの圧力均等化ガスの逆流導入と同時に、供給ガス混合物を、工程(f)を受ける吸着床に並流で導入することと、(ii)工程(b)を受ける吸着床からの圧力均等化ガスの逆流導入と同時に、工程(a)を受ける吸着床の少なくとも1つからの生成物ガスを、工程(f)を受ける吸着床に逆流で導入すること、のうちの少なくとも1つを更に含む。
【0064】
発明は、ここで以下の図面に描写される実施形態を参照して説明される。
【図面の簡単な説明】
【0065】
図1】本発明を利用することができる、水素を生成するためのアンモニア分解プロセスの第1の実施形態のプロセスフロー図である。
図2】本発明を利用することができる、水素を生成するためのアンモニア分解プロセスの第2の実施例のプロセスフロー図である。
図3】本発明を利用することができる、水素を生成するためのアンモニア分解プロセスの第3の実施形態のプロセスフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0066】
アンモニアを分解することによって水素を生成するためのプロセスが本明細書において説明される。プロセスは、化石燃料の代わりに再生可能エネルギーを使用して生成される水素である、いわゆる「グリーン」水素を生成するための特定の用途を有する。この場合、アンモニアは、典型的には、水素を生成するために、風力及び/又は太陽エネルギーなどの再生可能エネルギーから生成された電気を使用して水を電解することによって生成され、次いで、水素よりも輸送しやすいアンモニアを生成するために窒素と触媒的に反応させる(Haberプロセス)。目的地に到達した後、アンモニアは、次いで分解されて、水素を再生する。
【0067】
本プロセスでは、反応に必要とされる熱は、典型的には、炉内でのPSA排ガス(通常、ある程度の量の残留水素及びアンモニアを含む)の燃焼によって提供される。PSA排ガスが、気化されたアンモニア、生成物水素の一部分、又は代替燃料のいずれかよりも不十分な加熱値を有する場合、トリム燃料として排ガスとともに使用され得る。
【0068】
実際には、天然ガスは、水素に関するSMRで実践されるように、PSA排ガスとともにトリム燃料として使用され得る。しかしながら、そのように生成された水素の「グリーン」又は再生可能な資質を維持することを所望して、「再生可能な燃料」を使用する動機が存在する。これは、分解された「再生可能な」アンモニア、アンモニア自体、又はバイオガスなどの別の再生可能エネルギー源であり得、又は電気が、それ自体が再生可能な源からであるかどうかにかかわらず、実際には電気加熱であり得、この場合は、アンモニアの形態で輸送された水素を生成するために使用される再生可能な電気とは対照的に、分解プロセスに対して局所的である。
【0069】
プロセスの実施例は、図1に示される。このプロセスは、貯蔵(図示せず)から液体アンモニアを取り出す。分解されるアンモニア(ライン2)は、所望の分解圧力(GB1142941を参照)を超える圧力に液体としてポンプ圧送される(ポンプP201)。反応圧力は、ルシャトリエの原理により、動作圧力と変換との間の折衷である。液体アンモニアをポンプ圧送することは、生成物の水素を圧縮するよりも少ない電力及び資本を必要とするため、反応器(8)をより高い圧力で動作させる動機となる。
【0070】
次いで、加圧された液体アンモニア(ライン4)を加熱し、気化させ(それがその臨界圧力を下回る場合)、反応管を離れる分解されたガス及び炉からの煙道ガスにおいて利用可能な熱を使用して、熱交換器(E101)を介して最大250℃超の温度に更に加熱する。図では、熱交換器(E101)は、1つの熱交換器として示されているが、実際には、ネットワーク内の一連の熱交換器になる。
【0071】
代替的に、加圧された液体アンモニアの初期加熱及び気化は、冷却水又は周囲空気などの代替熱源に対して行われてもよい。典型的な反応温度は、500℃超(US2601221参照)であり、パラジウム系システムは、600℃及び10barで動作することができ、一方でRenCatの金属酸化物系システムは、300℃及び1bar未満で動作する。(https://www.ammoniaenergy.org/articles/ammonia-cracking-to-high-purity-hydrogen-for-pem-fuel-cells-in-denmark/を参照されたい)。分解装置の動作圧力は、典型的には、いくつかの要因の最適化である。水素及び窒素へのアンモニアの分解は、低圧によって好まれるが、他の要因は、消費電力(生成物水素を圧縮するのではなく供給アンモニアをポンプ圧送することによって最小限に抑えられる)、及びPSAサイズ(より高い圧力でより小さい)などのより高い圧力を好む。
【0072】
高温のアンモニア(ライン6)は、所望の圧力で反応器(8)の触媒を含む反応管に入り、そこで炉(10)によって追加の熱が提供されて、アンモニアを窒素及び水素に分解する。結果として得られた残留アンモニア、水素、及び窒素の混合物は、反応温度及び圧力で反応器の反応管(8)を出る(ライン12)。反応生成物は、供給アンモニア(ライン4から)、炉燃料(この場合はライン50からの天然ガス)、及び燃焼空気(ライン22、ファンK201及びライン24から)の組み合わせに対して熱交換器(E101)内で冷却されて、PSAシステム(26)の入口に必要とされる温度にできるだけ近づくように温度を低減させる。分解されたガス混合物(ライン28)中の残留熱は、水冷装置(図示せず)内で除去されて、PSAシステム(26)への入口温度を約20℃~約100℃の範囲内、例えば約50℃で達成する。
【0073】
PSAシステム(26)は、本発明による吸着床を各々有する、複数のPSAユニット(図示せず)を備える。このため、各PSAユニットは、供給物端部、供給物端部から下流の生成物端部、及びそれらの間に位置付けられた吸着床を備える。吸着床は、活性炭など、少なくともアンモニアに対して選択的に吸着性である非ゼオライト系吸着剤の上流層と、分子ふるいなどの窒素に対して選択的に吸着性であるゼオライト系吸着剤の下流層と、を含む。床はまた、任意選択的に、床の生成物端部におけるゼオライト系吸着剤の第2の層とともに、床の供給物端部に水吸着材料の更なる層を含み得る。最後に、いわゆる上流層と下流層との間に位置付けられた「低灰分」炭素の中間層も存在し得る。
【0074】
PSA生成物(ライン30)は、ISO規格14687(水素燃料品質)に準拠した純粋な水素であり、ほぼ反応圧力で、残留アンモニア<0.1ppmv、窒素<300ppmvを有する。生成物水素(ライン30)は、輸送のため、管トレーラ(図示せず)に充填するために更に圧縮(図示せず)されるか、又は任意の必要な圧縮後に水素液化器(図示せず)内で液化され得る。PSAデバイス(26)からのPSA排ガス(ライン18)又は「パージガス」は、燃焼燃料として(ライン36内で)炉(10)に送られる前に、反応器(8)の反応管を離れる分解されたガス(ライン12)又は炉煙道ガス(ライン32)を使用して、熱交換器E101を介して加熱されるように示される。しかしながら、PSA排ガス(ライン18)は、加熱せずに炉(10)に直接供給される場合もある。
【0075】
結果として得られた加温された天然ガス燃料(ライン52)は、ミキサ(42)内で(任意選択的に)加温されたPSA排ガス(ライン36)と組み合わされて、組み合わされた燃料を生成するように描写され、これは、燃焼のために炉(10)に供給されて(ライン44)、煙道ガスを生成する(ライン32、及び、E101で冷却した後、ライン48)。しかしながら、1つ以上の燃料は、事前に混合することなく、炉に直接供給され得ることに留意されたい。加温された空気(燃料の燃焼用)は、ライン46において炉(10)に供給される。
【0076】
プロセスの好ましい実施形態の目的のうちの1つは、再生可能なアンモニアを分解することによって生成される水素の量を最大化することである。つまり、燃料として使用される水素の量を最小限に抑えること、又はアンモニアを直接燃料として使用する場合はアンモニアを最小限に抑えることを意味する。したがって、熱煙道ガス及び分解されたガスを適切に使用するために、例えば、空気(ライン24)及びアンモニア(ライン4)を分解装置に対して予熱するために、熱統合が重要であり、これにより、炉(10)のバーナにおいて使用される「燃料」の量を低減させる。これは、より少ない水素が水として炉煙道ガス(ライン32及び48)中で失われるので、より高い水素回収につながる。したがって、例えば、蒸気生成は、プロセス内熱統合を支持して最小限に抑えられるべきである。
【0077】
図2は、図1と同様のプロセスを描写する。図1及び2に描写されるプロセスの共通の特徴の全てには、同じ参照番号が与えられている。以下の段落では、図1図2を区別する特徴について考察する。
【0078】
図2では、PSAシステム(26)からのPSA排ガスは、2つの部分に分割される。第1の部分(ライン56)は、バルブ58、ライン60、及びライン36を介して、燃料として、図1のプロセスとともに炉(10)に供給され、ライン18は、図2のライン60と同等である。バルブ58は、ライン60内のPSA排ガスの流量、したがって、炉(10)に供給される燃料混合物中のPSA排ガスの量対天然ガスの量の比を制御するために使用され得る。
【0079】
炉(10)内で燃焼される燃料の量及び組成を変化させることは、分解プロセスの炭素強度を変化させ、これにより、水素生成物の全体的な炭素強度値の制御を可能にする。このようにして、プロセスの上流の炭素強度の変動に直面して、「再生可能な水素」について規制当局によって指定されたような、全体的な炭素強度値を特定の所定の制限以下に維持することが可能である。
【0080】
第2の部分(ライン54)は、圧縮機K301内で圧縮されて、圧縮された排ガスを形成し、これは、更なる処理のためにPSAシステム(26)に戻される(ライン62)。
【0081】
図1のPSAシステムは、約75%~約85%の水素を回収することができる。PSA排ガスをPSAシステムに戻すことは、水素の回収を改善する。この方法でPSA排ガスを再循環させることは、約94%~約96%の全体的な水素回収を達成することができる。
【0082】
図3は、図1及び2と同様のプロセスを描写する。図1及び図3に描写されるプロセスの共通の特徴の全てには、同じ参照番号が与えられている。以下の段落では、図1及び2の両方と図3を区別する特徴について考察する。
【0083】
図3では、圧縮されたPSA排ガスの第2の部分(ライン62)は、第2のPSAシステム(64)に供給され、第2の実質的に純粋な水素生成物ガス(ライン68)及び第2のPSA排ガス(ライン72)に分離される。
【0084】
第2のPSAシステム(64)は、本発明により吸着床を各々有する、複数のPSAユニット(図示せず)を備える。このため、各PSAユニットは、供給物端部、供給物端部から下流の生成物端部、及びそれらの間に位置付けられた吸着床を備える。吸着床は、活性炭など、少なくともアンモニアに対して選択的に吸着性である非ゼオライト系吸着剤の上流層と、分子ふるいなどの窒素に対して選択的に吸着性であるゼオライト系吸着剤の下流層と、を含む。床はまた、任意選択的に、床の生成物端部におけるゼオライト吸着剤の第2の層とともに、床の供給物端部に水吸着材料の更なる層を含み得る。最後に、いわゆる上流層と下流層との間に位置付けられた「低灰分」炭素の中間層も存在し得る。
【0085】
第2の水素生成物ガスは、第1の水素生成物ガス(ライン30)と組み合わされて、組み合わされた水素生成物ガス(ライン70)を形成することができる。
【0086】
第2のPSA排ガス(ライン72)は、第1のPSAシステム(26)からのPSAオフガスの第2の部分(ライン60)と組み合わされ、組み合わされた流れは、燃料として炉(10)に供給される。この方法における更なる処理は、約95%~約97%の全体的な水素回収を達成することができる。例えば、第1のPSAシステムが、83%の回収を達成し、第2のPSAシステムが、80%の回収を達成する場合、全体の回収は、96.6%である。
【0087】
図2及び3のプロセスの別の違いは、図2のバルブ58が、第1のPSAシステムからのいくつかのPSA排ガスが、炉(10)内の燃料として使用されることを可能にするために、ある程度開放されたままでなければならないことに対し、図3のバルブ58は、第2のPSAシステム(64)から炉へのPSA排ガスの流量が常に存在するため、第1のPSAシステムから炉へのPSA排ガスの流量を完全に遮断することができることである。
【0088】
ここで、本発明を、以下の図面を参照しながら例解する。
【実施例
【0089】
水素PSAプロセスにおけるアンモニア除去のための吸着剤を、動的吸着装置を使用して特徴付けた。実験システムは、
吸着剤の充填カラムと、
流量制御デバイスと、
圧力制御デバイスと、
アンモニア濃度分析装置と、を使用した。
【0090】
実験方法は、
まず、充填カラムを、水素ガスと窒素ガスの50:50の混合物でパージすること、
充填カラムを通して、500ppmのアンモニアの流動ガスを、10barの水素ガスと窒素ガスの50:50の混合物の希釈ガス中に導入すること、
アンモニアの濃度が500ppmに達するまで、充填カラムの出口でアンモニア濃度を監視すること、
充填カラムを1.4barに減圧すること、
充填カラムを1.4barの流動窒素ガスでパージすること、
アンモニアの濃度が0ppmに達するまで、充填カラムの出口においてアンモニア濃度を監視することからなる。
【0091】
実験の空のカラム滞留時間は、アンモニア吸着工程では3.4秒、窒素パージ工程では1.3秒であった。
【0092】
これらの材料に対するアンモニアの吸着速度は、相対的に速かった。ポリマー由来の炭素及び石油ピッチから作製された炭素を除いて、アンモニアの脱離速度は遅かった。アンモニアについて、吸着量が、吸着物の分圧に直接比例する吸着領域であるヘンリーの法則定数を、実験データから抽出した。
【0093】
酸処理されたココナッツシェル炭素を、ココナッツシェル炭素を塩酸で処理することによって、125gのココナッツシェル炭素を、300mlの3%HCl(水溶液)に2時間、25℃で浸漬することによって調製した。次いで、炭素を濾過し、300mlの脱イオン水に再懸濁し、30分間浸漬し、次いで濾過した。脱イオン水洗浄/濾過プロセスを、空気乾燥炭素の最終pHが6.2に達するまで4回繰り返した。空気乾燥炭素を、一晩150℃に加熱し、試験前に吸着水及び二酸化炭素を除去した。
【0094】
塩基処理されたココナッツシェル炭素を、初期湿潤によって、3%のNaOH(水性)でココナッツシェル炭素を含浸させることによって調製した。含浸した炭素を、空気乾燥させ、次いで、試験前に150℃で一晩活性化した。40℃、0.005barではアンモニアの容量が増加したが、600秒のパージでの脱離量は、未処理試料と同じであった。
【0095】
ココナッツシェル炭素もまた、150℃、次いで340℃の流動窒素中で、インサイチュで処理した。
【0096】
PSAサイクルにおけるアンモニアの吸着剤の作動能力は、吸着工程中にどれだけ吸着されるか、及びパージ工程でどれだけ容易に脱離するかによる。分解されたガスからの水素の精製のための全体的なPSA性能は、水素に対する吸着能力、窒素に対する吸着能力、及び充填カラム内の密度を含むいくつかの要因による。以下のデータは、これらの態様に関連している。
【0097】
実験で取得された結果は、表2に要約される。
表2
【表2】
【0098】
比較として、バインダーレス5Aゼオライトは、0.005bar及び2.5mmol/gを超える40℃でのアンモニア容量を有する。加えて、吸着されたアンモニアの0.015mmol/g(すなわち、0.5%未満)のみが、100秒で脱離し、吸着されたアンモニアの0.062mmol/g(すなわち、2.5%未満)のみが、600秒で脱離する。
【0099】
吸着プロセスのための組織内の動的シミュレーションプログラムを使用して結果を分析した。動的シミュレーションプログラムは、各層を等しいサイズのノードに離散化することによって質量とエネルギーのバランスを数値的に解決し、それによって偏微分方程式を常微分方程式に還元する。各ノード内の運動量移動と平衡吸着の物理は、Ergun方程式やLangmuir方程式などの、これらの現象に関する標準モデルによって表現される。動的アンモニア吸着/脱離実験のシミュレーションを通じて、モデル定数を抽出した。次いで、動的シミュレーションプログラムを使用して、工業規模の水素PSAプロセスにおけるこれらの材料の性能を評価した。
【0100】
水素PSAプロセスの動的シミュレーションを通じて、アンモニア分解反応器流出物からアンモニアを除去するためのいくつかの吸着剤の有効性を評価した。水素PSAプロセスへの供給ガスは、45℃及び20barにおいて、0.1モル%の水、1.2モル%のアンモニア、24.7モル%の窒素、74.0モル%の水素であった。シミュレートされたサイクルは、送り時間(P/SP)が150秒でUS9381460の図22に開示されたサイクルであった。廃ガス上の背圧は、1.45barであった。プロセスにおけるアンモニア除去を、表1に要約された実験結果から抽出されたパラメータを有する吸着モデルを使用してシミュレートした。アンモニア吸着剤の量は、吸着剤層の端部のアンモニアのレベルが、フィード(吸着)工程の終了時に、0.1ppmであるように変化させた。プロセス内の窒素除去を、5A分子ふるいを表す吸着モデル及びパラメータを使用してシミュレートした。窒素吸着剤の量を変化させて、水素生成物中の50ppmの窒素の不純物を達成した。
【0101】
シミュレーション結果は、アンモニア除去のためのこれらの吸着剤の有効性を示す表3、及び50ppm窒素への水素の精製のためのアンモニア吸収剤と窒素吸着剤の全体的なPSA性能を示す表4において要約される。
表3
【表3】
システムの水素生産性は、1つの吸着器容器からの精製水素の流量、1日当たりのトン(又はTPD)、対その容器内の吸着剤の量の比である。
表4
【表4】
アンモニア除去吸着剤の有効性は、循環定常状態でのアンモニア作動容量によって測定され、これは、供給工程中に吸着剤に導入されるアンモニアの量(mmol)対シミュレートされた容器内の吸着剤の質量(グラム)の比である。作動容量は、供給(吸着)工程の終了時の吸着器容器内のアンモニアの量と、再生工程の終了時の吸着器容器内のアンモニアの量との差である。結果は、炭素、活性アルミナ、及びシリカゲルが全て、水素PSAプロセスにおけるアンモニアの除去に好適であることを示す。
【0102】
1つを選択するかどうかは、アンモニア及び水蒸気の存在下でのコスト及び安定性を含む、いくつかの要因に依存する。表2にも列挙されている窒素に関する吸着能力はまた、このプロセスのためのアンモニア吸着剤の適切な選択を決定する。アルミナ及びシリカゲルと比較して、活性炭は、窒素に対する吸着能力が著しく高い。この第1の層中の窒素吸着は、第2の層によって必要とされる窒素除去量を減少させる。
【0103】
ポリマービーズの炭化によって形成されるポリマー由来の炭素のアンモニア容量(US2011/296990を参照)、及び石油ピッチ炭素は低いが、40℃及び0.005barで吸着されたほぼ全てのアンモニアは、1.4bar及び40℃で600秒の窒素パージ後に放出された。同じパージ条件下で、石炭系及びココナッツシェル炭素からはるかに低い画分が脱離される。
【0104】
ポリマー由来炭素及び石油ピッチ炭素は、石炭ベース及びココナッツシェル炭素よりもはるかに低い無機灰分を有する(表4)。これらの低灰分炭素は、酸素の不在下で、ポリスチレン(コ)ポリマーからなるポリマービーズ、又は石油ピッチ、石油から誘導された粘弾性ポリマーを、300~900℃に加熱することによって形成される。
表5
【表5】
【0105】
アンモニアは容易に脱離するため、ポリマー由来の炭素又は石油ピッチ炭素は、高いアンモニア吸着能力を有する第1の炭素層と、PSAプロセスにおける窒素の吸着のために使用される分子ふるいの層との間の第2の炭素層として利用することができる。パージ工程中、ポリマー由来の炭素からの容易な脱離により、かかる層化は、アンモニアが分子ふるいに到達することを防止する。低圧におけるアンモニアの非常に高い容量により、アンモニアは、分子ふるいから容易に脱離されない。アンモニアは、分子ふるい層に蓄積し続け、窒素の能力を低下させる。
【0106】
異なる非ゼオライト系吸着剤に対するZPCと比較した100秒における脱離されたアンモニアのパーセンテージを、以下にプロットする。これらのデータは、約pH6.3~約pH9.8の範囲内、特に、約pH8~約pH9の範囲内のZPC値を有する非ゼオライト系吸着剤が、アンモニア分解反応器の流出物ガスを精製することを任務とする水素PSAの吸着床中のアンモニアを除去するのに好適であることを示す。
【表6】
【0107】
実施例1
石炭系炭素上のアンモニア及び窒素の吸着に関するモデル及びパラメータ、並びに5A分子ふるい上の窒素の吸着のためのパラメータを用いた動的シミュレーションプログラムを使用して、精製された水素の流れを提供するプロセスを実証した。
【0108】
吸着サイクルは、US6379431の表5に示されるものであった。
【0109】
水素PSAシステムへの供給ガスは、34bar及び40℃で3mol%のアンモニア、24.2mol%の窒素、及び72.8mol%の水素であった。吸着剤を、ブローダウン及びパージ工程中に1.4barの背圧で再生した。各吸着器容器は、直径6feet(1.8m)であった。10feet(3.0m)の石炭系炭素を使用して、アンモニアを0.1ppmに減少させた。20.5feet(6.2m)の5A分子ふるいを使用して、窒素レベルを50ppmに減少させた。吸着時間は、100秒であった。第1のPSAシステムからの水素回収率は、83.3%であった。
【0110】
第1のPSAシステムからの廃ガスは、7.6mol%のアンモニア、61.5mol%の窒素、30.9mol%の水素を含んだ。流量は、988kmol/時であった。動的シミュレーションプログラムを使用して、34barに圧縮し、40℃に冷却した後、この流れのアンモニア及び窒素を吸着した。6feet(1.8m)の石炭系炭素を使用して、アンモニアを0.1ppmに減少させた。24.5feet(7.5m)の5A分子ふるいを使用して、窒素レベルを50ppmに減少させた。第1のPSAからの廃ガス上で動作する第2のPSAからの水素回収は、78.5%であった。
【0111】
直列に動作する2つのPSAシステム(図3に描写されるような)からの全体的な水素回収率は、96.4%であった。水素流量は、85トン/日であった。
【0112】
実施例2
石炭系炭素上のアンモニア及び窒素の吸着に関するモデル及びパラメータ、並びに5A分子ふるい上の窒素の吸着のためのパラメータを用いた動的シミュレーションプログラムを使用して、実質的に純粋な水素の流れを提供するプロセスを実証した。
【0113】
吸着サイクルは、US8778051の図13に示されるものであった。排ガスの一部分を圧縮し、同時に減圧eq1d及びeq2dを受ける吸着器容器を導入した。Eq1d及びeq2d中の吸着器容器への流量は、594kmol/時であった。
【0114】
水素PSAシステムへの供給ガスは、34bar及び40℃で3mol%のアンモニア、24.2mol%の窒素、及び72.8mol%の水素であった。吸着剤を、ブローダウン及びパージ工程中に1.4barの圧力で再生した。各吸着器容器は、直径7feet(2.1m)であった。10フィート(3.0m)の石炭系炭素を、アンモニアを0.1ppmに減少させるために使用した。19.5feet(5.9m)の5A分子ふるいを使用して、窒素レベルを50ppmに減少させた。吸着時間は、100秒であった。
【0115】
このPSAシステム(図2に描写されるような)からの水素回収率は、94.3%であった。純水素流量は、85トン/日であった。
【0116】
本発明は、本発明のいくつかの態様の例解として意図される実施例に開示される特定の態様又は実施形態によって範囲が限定されるべきではなく、機能的に等価である任意の実施形態は、本発明の範囲内にある。本明細書に示され、説明されるものに加えて、本発明の様々な修正が、当業者に明らかとなり、添付の特許請求の範囲内であることが意図される。
図1
図2
図3
【国際調査報告】