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特表2024-524103少なくとも部分的な自動運転車両において自動運転の割合を高めるための方法及び装置
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  • 特表-少なくとも部分的な自動運転車両において自動運転の割合を高めるための方法及び装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-05
(54)【発明の名称】少なくとも部分的な自動運転車両において自動運転の割合を高めるための方法及び装置
(51)【国際特許分類】
   B60W 50/08 20200101AFI20240628BHJP
   B60W 50/04 20060101ALI20240628BHJP
   B60W 40/08 20120101ALI20240628BHJP
   B60W 60/00 20200101ALI20240628BHJP
   G08G 1/16 20060101ALI20240628BHJP
【FI】
B60W50/08
B60W50/04
B60W40/08
B60W60/00
G08G1/16 C
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023577520
(86)(22)【出願日】2022-06-02
(85)【翻訳文提出日】2024-02-14
(86)【国際出願番号】 EP2022065050
(87)【国際公開番号】W WO2022263188
(87)【国際公開日】2022-12-22
(31)【優先権主張番号】102021003073.7
(32)【優先日】2021-06-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】598051819
【氏名又は名称】メルセデス・ベンツ グループ アクチェンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Mercedes-Benz Group AG
【住所又は居所原語表記】Mercedesstrasse 120,70372 Stuttgart,Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100176946
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 智恵
(74)【代理人】
【識別番号】110003649
【氏名又は名称】弁理士法人真田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ホイス ジョアナ
(72)【発明者】
【氏名】ハヌシキン アレクサンダー
【テーマコード(参考)】
3D241
5H181
【Fターム(参考)】
3D241BA29
3D241BA51
3D241BA60
3D241BA70
5H181AA01
5H181BB20
5H181CC04
5H181CC27
5H181LL01
5H181LL02
5H181LL07
5H181LL08
5H181LL09
(57)【要約】
本発明は、自動運転のための条件が監視される少なくとも部分的な自動運転車両において自動運転の割合を高めるための方法に関する。交通流、交通安全性、及びエネルギーバランスに合わせて最善に設計された自動運転の利点を生かすために、運転者による手動引継の回数が低減される方法では、自動運転のための条件が満たされた場合、手動車両制御によって自動運転が終了するであろうことがモデルを用いて予測され、運転者による引継が予測された場合、自動運転が運転状況を確実に制御していることを運転者に通知する情報が運転者に出力される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動運転のための条件が監視される少なくとも部分的な自動運転車両において自動運転の割合を高めるための方法であって、
自動運転のための前記条件が満たされた場合、手動車両制御によって自動運転が終了するであろうことがモデルを用いて予測され、運転者による引継が予測された場合、自動運転が運転状況を確実に制御していることを前記運転者に通知する情報が前記運転者に出力される
ことを特徴とする方法。
【請求項2】
自動運転のための前記条件を監視することにより自動運転の機能品質が決定され、前記運転者による引継が予測された場合、前記機能品質が所定の限界値を上回っているときにのみ、前記運転者に前記情報が出力される
ことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
要請無しの手動車両引継の場合であって、かつ、自動運転のための前記条件が満たされている場合、特に機能品質が前記限界値を上回る場合は、前記運転者は、前記手動車両引継無しでの仮定的な自動運転における前記運転操作データがどのようであったかに関して通知を受ける
ことを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記モデルを用いて、前記車両を介した要請無しで前記運転者が前記手動車両制御を引き継ぐ時間を予測することができるように、前記モデルは、前記運転者の挙動、前記自動運転車両の挙動、前記運転状況、及び/又は環境条件を含むデータによってトレーニングされる
ことを特徴とする、請求項1~3の何れか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記モデルは中央のサーバーに保存され、全保有車両のデータによってトレーニングされる
ことを特徴とする、請求項1~4の何れか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記情報は、機能的グラフィックス、音声出力、及び/又はテキスト出力によって、前記運転者へ出力される
ことを特徴とする、請求項1~5の何れか一項に記載の方法。
【請求項7】
自動運転は、前記運転者による引継が予測された場合に、前記自動運転車両の挙動の変更によって、引継頻度を低減するように調節される
ことを特徴とする、請求項1~6の何れか一項に記載の方法。
【請求項8】
引継頻度を低減するために有効であると判定された、自動運転モード中の或る車両における運転パラメータが、前記サーバーを通じて他の車両に伝送される
ことを特徴とする、請求項1~7の何れか一項に記載の方法。
【請求項9】
自動運転のための条件を監視するためのモジュール(15)を含んでおり、少なくとも部分的な自動運転車両において自動運転の割合を高めるための装置であって、
手動車両制御によって自動運転を終わらせようとする運転者の意図を予測するためのモデル(7)を保存した監視モジュール(5)が装備されており、自動運転のための前記条件が満たされたときに前記運転者による引継が予測された場合、アクションユニット(9)が、自動運転が運転状況を確実に制御していることを前記運転者に通知する情報を前記運転者に出力する
ことを特徴とする装置。
【請求項10】
全保有車両における各車両(1)の前記監視モジュール(5)及び/又は前記アクションモジュール(9)が、自動運転から手動運転モードへの引継に関し類似する特性を有するグループを分類するための車両外部サーバー(21)と無線接続される
ことを特徴とする、請求項9に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動運転のための条件が監視される少なくとも部分的な自動運転車両において、自動運転の割合を高めるための方法、及び、この方法を実施するための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
独国特許出願公開第10335900号明細書は、センサと接続されており自律運転のための条件を監視するためのモジュールを有する運転者支援システムを開示している。特に、部分的な自動運転(半自動運転)車両では、車両運転者の信頼不足や不確かさのため、車両の制御を車両運転者が手動運転に引き継ぐことがしばしば起こる。そのために交通流が負の影響を受け、このことは、交通安全性や車両のエネルギーバランスに悪影響を与える。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の目的は、自動運転の割合を高めるための方法及び装置であって、交通流、交通安全性、及びエネルギーバランスに合わせて最善に設計された自動運転の利点を活用するために、運転者による手動運転への引継の回数が低減される方法及び装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、独立請求項の特徴から明らかになる。有利な発展形態及び実施形態は、従属請求項の主題である。本発明のその他の特徴、適用可能性、及び利点は、以下の記載及び図面に示された本発明の例示的実施形態の説明から、明らかとなる。
【0005】
この目的は、冒頭に述べた方法によって解決されるものである。すなわち、自動運転のための条件が満たされた場合、手動運転制御によって自動運転が終了するであろうことがモデルを用いて予測され、運転者による引継が予測された場合、自動運転、すなわち自動運転車両が運転状況を確実に制御していることを運転者に通知する情報を運転者に出力する。運転者は、運転を引継いで手動運転モードに切り替える必要がないことを知らされる。たとえば、モデルは、トレーニングされたニューラルネットワークである。モデルは、たとえば代表的な運転者によって予めトレーニングされて、車両に実装される。好ましくは、車両制御の手動引継が運転者に固有の方法で予測できるように、モデルは、個別の運転者毎に個別化されながらトレーニングされる。モデルは、蓋然性が所定値を上回っているとき直ちに手動引継を予測する。或る特定の運転状況において、手動引継が稀にしか行われないのであれば蓋然性が低く、引継が頻繁にないしは常時、行われるのであれば、蓋然性が高い。自動運転に対する運転者の信頼が向上するので、運転者による運転モードの手動引継回数は、低減される。自動運転が長くなることは、交通安全性を高め、交通流を改善する。
【0006】
好ましくは、自動運転のための条件の監視によって自動運転の機能品質が決定され、運転者による引継が予測された場合、自動運転の機能品質が所定の限界値を上回っているときにのみ、運転者に情報が出力される。それにより、自動運転の機能品質が低い場合に手動運転モードを引き継ごうとする自らの意図に運転者が影響を受けないことが保証される。引継の意図に関して運転者をサポートするために、このような場合には、車両によって引継要請が発動され得る。
【0007】
一実施形態において、要請無しの手動車両引継の場合であって、かつ、自動運転のための条件が満たされている場合、特に機能品質が限界値を上回る場合は、運転者は、手動車両引継無しでの仮定的な自動運転における運転操作データがどのようでああったかに関して通知を受ける。それにより、運転者は、手動運転操縦とシミュレーションされた自動運転操縦とを比較でき、自分の決定をチェックすることができる。
【0008】
一変形例では、モデルを用いて、車両を介した要請無しで運転者が手動車両制御を引き継ぐ時間を予測することができるように、モデルは、運転者の挙動、自動運転車両の挙動、運転状況、及び/又は環境条件を含むデータによってトレーニングされる。多数のデータにより、運転者による車両制御の引継を非常に正確に予測することができる。特に、モデルは、運転者固有にパーソナライズされ、保存され、及び評価される、すなわち、常に現在の運転者に割り当てられたモデルを用いて予測を実施することができる。
【0009】
一実施形態において、モデルは中央のサーバーに保存され、全保有車両のデータによってトレーニングされる。この目的のために、全保有車両の各運転者がそれぞれの挙動に関して分類され、或る運転者に割り当てられた運転種別により手動引継を予測するための基準として使用される個別のモデルが、それぞれ一つの分類のデータによって、トレーニングされる。
【0010】
情報は、機能的グラフィックス、音声出力、及び/又はテキスト出力によって、運転者へ出力されることが好ましい。それにより、それぞれの情報形式及び伝達されるべきデータの量によって、運転者が確実に情報を通知されていることが保証される。
【0011】
別の実施形態において、自動運転は、引継要請無しでの運転者による引継が予測される場合に、自動運転車両の挙動の変更によって、引継頻度を低減するように調節される。このとき、相応に高い蓋然性によって手動引継が予測されると直ちに、速度や車間距離などの運転パラメータは、反復的、又は、実験的に、又は、保存されている特性マップに従って、変更される。手動車両引継を予測するためのモデルのトレーニングが続行されているので、実際の引継及び予測された引継の頻度、及び、これと結びついた運転者情報も、車両の運転挙動の変化に応じて減少していく。情報出力と車両挙動の変更とが同時に手動引継の蓋然性を低減させるように、自動運転車両の挙動が変更された後に運転者への情報出力が維持される。理想的なケースでは、運転挙動が変更されており且つ運転者の信頼が増大しているので、引継の蓋然性が低減されたことにより運転者が情報を受け取らなくなると直ちに、対応する運転状況において手動車両引継が行われなくなる。別の変形例では、情報出力は、運転挙動が変更された後に抑制され、該当する運転状況において運転挙動の変更にもかかわらず手動車両引継が実施されると直ちに、再び作動する。
【0012】
更に別の変形例では、引継頻度を低減するために有効であると判定された、自動運転モード中の或る車両における運転パラメータが、サーバーを通じて他の車両に伝送される。この方策は、運転者が、車両による要請無しでの手動引継によって自動運転モードを頻繁に終了させる場合には、いつでも使用され得る。この方策は、自動運転に対する運転者の信頼をいっそう強めるのに役立つ。
【0013】
本発明の更に別の態様は、少なくとも部分的な自動運転車両において自動運転の割合を高めるための装置に関し、自動運転のための条件を監視するためのモジュールを含む。交通流、交通安全性、及びエネルギーバランスに合わせて最適に設計された自動運転の利点を生かすために、運転者による手動引継の回数を低減する装置において、手動車両制御によって自動運転を終わらせようとする運転者の意図を予測するためのモデルを保存した監視モジュールが装備されており、自動運転のための条件が満たされたとき運転者による引継が予測された場合、アクションユニット、すなわち制御装置が、自動運転、すなわち自動運転車両が運転状況を確実に制御していることを運転者に通知する情報を運転者に出力する。
【0014】
好ましくは、全保有車両における各車両の監視モジュール及び/又はアクションモジュールが、自動運転から手動運転モードへの引継に関し類似する特性を有するグループを分類するための車両外部サーバーと無線接続される。このようにして、全保有車両においてさまざまな運転者に合わせてトレーニングされたモデルを一元的に評価することができ、必要に応じて、これらの分類のうちの1つに運転者が該当している車両に出力することができる。
【0015】
その他の利点、特徴、及び詳細は、場合により図面を参照しながら、少なくとも1つの例示的実施形態が詳しく説明された以下の記載から明らかになる。記載された及び/又は図示された構成要件は、それ自体としても、又は、任意の論理的組み合わせとしても、場合によっては特許請求の範囲からも独立して、発明の対象を形成することができ、特に追加的に、1つ又は複数の別個の出願の対象ともなり得る。同一、類似、及び/又は機能的に同一の部品には、同じ参照符号が付されている。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明による装置を有する自動運転車両の実施形態の例である。
図2】本発明による方法の実施形態の例である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1において、本発明に係る装置3を有する自動運転車両1が示されている。装置3は車両アシスタントとして構成されており、手動車両制御によって車両1の自動運転を終了させようとする運転者の意図を予測するためのモデル7が保存された監視モジュール5を含んでいる。この監視モジュール5は、アクションモジュール9に接続されていて、このアクションモジュール9は、自動運転のための条件が満たされたときに運転者による引継が予測された場合に、自動運転が運転状況を確実に制御していることを運転者に通知する情報を運転者に出力する。このような情報を出力するために、アクションモジュール9は、機能的グラフィックス又はテキストとして情報を表示するための表示ユニット11に接続され、また、音声出力のためのスピーカ13に接続されている。自動運転のための条件が車両1によって満たされているかどうかチェックするために、同じくアクションモジュール9へと通じる、自動運転のための条件を監視するためのモジュール15が装備されている。アクションモジュール9、モジュール15、及び監視モジュール5は、それぞれ独立した制御装置であるか、又は、1つの制御装置に組み込まれる。
【0018】
監視モジュール5は、車両1のカメラ、ステアリングセンサ、バイオメトリックセンサなどのセンサ17を用いて運転者の状態、注意力、挙動を継続的に判定して、これをモデル7へ出力する。それと同時にモデル7には、交通データ、天候、経路図、運転状況、時刻などが供給される。これらすべてのデータによってモデル7が継続的にトレーニングされて、運転者により自主的にすなわち車両による要請無しで実施される運転モードの手動引継の時点又は特徴を予想するようになっており、このことは自動運転の終了に相当する。モデル7は、統計的な手法又は機械学習の手法を用いる。好ましくは、モデル7は、ニューラルネットワークとして構成されてよい。モデル7は独自の制御装置に、又は、上述のモジュールのうちの少なくとも1つを有する制御装置に組み込まれる。
【0019】
自動運転を監視するためのモジュール15により、自動運転のために必要な条件が、その機能品質に関して監視される。車両1の周囲が、別のセンサ19によって、たとえば交通参加者、障害物、交差点などに関して観察される。アクションモジュール9は、監視をもとにして自動運転の現在の機能品質を決定し、これを限界値と比較する。判定された機能品質が限界値を下回っている場合、自動運転が安全ではなくなっているため、手動運転モードを開始する引継要請が、アクションモジュール9によって運転者へ自動的に出力される。
【0020】
アクションモジュール9には、自動運転を監視するために監視モジュール5及びモジュール15からのデータが組み合わせられるので、アクションモジュール9は、車両運転者との通信のために必要なアクチュエータを作動させて、手動運転操縦と、シミュレーションされた(部分的な)自動運転操縦とを比較する。情報は、予測された引継時点の前に、所定の期間、運転者へ出力される。この期間は、判定された機能品質と限界値との差異に応じて決定される。すなわち、機能品質と限界値との差異が小さいほど、情報が出力される前の期間が短くなる。それにより、予測される引継の時点になっても自動運転の機能品質が依然として限界値を上回ることを確実にでき、これにより走行の安全性が常に保証される。
【0021】
車両1による要請無しで、かつ、自動運転のための条件が満たされた場合、すなわち機能品質が限界値を上回る場合に、運転者が運転モードを手動引継することが予測されると、アクションモジュール9は、手動引継無しでの仮定的な自動運転における運転操作データがどのようであったかに関する情報を運転者に出力する。これらの情報には、手動の介入無しで自動運転されるべき距離が含まれていてよく、手動運転との比較において、自動運転を続行した場合の安全性の増加に関する目安も含まれていてよい。そのために、検出された、手動運転により生じた先行車両への接近、速度超過、注意散漫などを、使用することができる。
【0022】
これに加えて監視モジュール5はOEMデータセンターやクラウドアプリケーションなどの車両外部サーバー21と無線接続されており、全保有車両の多数の車両と通信する。各車両1の監視モジュール5は、それぞれのモデル7により加工されたデータ並びに予測の結果を、車両外部サーバー21に伝送する。車両外部サーバー21は、これらのデータを参照して全保有車両の運転者を分類する。これらの運転者は、たとえば、スポーティ、慎重、安全意識が高いなどにと評価され得る。この分類を参考にして、分類された運転者タイプ毎の運転者に適したさまざまなモデル7が、トレーニングされる。
【0023】
自動運転の規則を修正し、最適化し、又は、調節するために、監視モジュール5から車両外部サーバー21へのフィードバックを利用することができる。特に、使用されるモデル7の基礎となる予測的特徴値を抽出することができる。更に、自動運転の使用の挙動が類似しているグループが、全保有車両における車両1の個別のモデル7から抽出することができる。これにより、自動運転のグループ固有の特徴づけを開発することが可能になる。
【0024】
図2には、本発明に係る方法の例示的実施形態が示されている。自動運転中に、車両アシスタント(装置1)に保存された方法がブロック100で開始される。ブロック110において、監視モジュール5が運転者による運転操作の手動引継の蓋然性pを決定する。高い蓋然性p(ブロック120における蓋然性閾値pの超過)、及び、これに伴って運転者による差し迫った手動引継が決定されると、対応する信号がアクションモジュール9に送信される。それと同時に、自動運転を監視するためのモジュール15は、環境データを決定するととともに、この環境データを用いて自動運転の機能品質FGを決定し、これらもブロック140においてアクションモジュール9へ伝送される。ブロック150において、機能品質FGが限界値GFGと比較される。ブロック150において、機能品質FGが限界値GFGを下回っていると決定された場合、ブロック160において、手動車両制御のための引継要請が自動的に発動されるか、又は、自動運転のシステム故障を防止するために自動運転が終了する。
【0025】
機能品質FGが限界値GFG,を上回っているとき、ブロック170において、アクションモジュール9によって車両運転者との通信が開始される。このとき、自動運転の性能に関して運転者に通知するために、適切な通信パスが選択される。グリーンランプのような警告記号や、表示インストルメント13のアイコンなどを利用することができ、これがテキスト情報によって追加的に補足され得る。その追加又は代替として、運転者が車両操作の手動引継を意図する蓋然性pを低下させるために、たとえば速度の低減や先行車両との安全距離の拡大などによって、自動運転の運転挙動が、調節され得る。
【0026】
ブロック180において、手動運転モードが開始されたか否かチェックされる。否の場合、ブロック110へと戻る。手動引継では、ブロック190において、アクションモジュール9が、現在の手動引継におけるエネルギーバランス、交通流バランス、及び安全性バランスが、仮定的に継続された自動運転(シャドーモード)とどのように相違するかを計算する。ブロック200において、運転者は、自動運転中の運転性能がどのようになっていたはずであるかを、事後的に通知され得る。この情報は、たとえばエネルギーバランス、交通流バランス、及び安全性バランスに関して自動運転と手動引継との間の差異が小さすぎるとみなされる場合に、予測された手動引継の意図によって運転者への通信が開始されるべきかどうかを、決定するためにも、将来的に利用され得る。この情報は、更に、監視モジュール5で決定された蓋然性pが高すぎて通信を用いても手動引継を回避し得ない場合に、利用され得る。次いで、本方法はブロック210で終了する。
【0027】
車両アシスタントの作業形態について、下記の適用例を取りあげて詳しく説明する。この適用例では、自動運転が、出口より前の高速道路上で個々の運転者によって規則的に不作動化される。車両アシスタントの制御による自動運転から手動制御へ移行するための運転者の要請のそれぞれの時点tiが記録される。これに加えて、各時点ti及び各時点tiが保存される前の期間tn-iにおける、監視モジュール5及び自動運転を監視するためのモジュール15での特徴値が保存される。モデル7において、トレーニングのときに、記録された特徴値が、移行要請の高い蓋然性pと組み合わされる。ここで、モデル7は、たとえば高速道路走行モード及び出口直前の地理的位置が、手動移行の要請の蓋然性を高めることを学習する。そして、個別の運転者の車両1が高速道路における出口の直前にくると、アクションユニット9は、運転者に対して、車両アシストが情報を送信する前に、手動引継が必要ないことを運転者に通知する。このことは、手動引継の要請を運転者が自分で意識的に決断するよりも前の時点で行われる。これに加えて、このような手動引継が予測される運転状況において、車両は、たとえば先行車両に対してより広い又はより狭い安全距離、若しくは、高速道路の中央車線又は左車線を選択することや、あるいは、たとえば車両周辺を移動している交通参加者などの周囲に対する追加的通信を発信することによって、車両1の運転挙動のさまざまなバリエーションをテストすることができる。バリエーションが引き続き手動引継につながるか、それとも手動引継を成功裏に回避できるかを観察できるように、運転者が挙動を変更する場合、運転者に情報を出力しないのが好ましい。或るバリエーションが手動引継を成功裏に回避することにつながった場合、このバリエーションは、運転アシスタントの運転プロファイルに追加される。その結果として、モデルは、この改変された運転形態では手動引継の蓋然性が低いことを学習し、それに伴って、この運転形態では、運転状況において手動引継の予測と、これに関連付けられたステップとが実施されない。
【0028】
車両1における運転挙動のこのようなバリエーションは、車両アシスタントで予め定義され得るし、又は、予め定義された限度内でシステムにより探索的に学習され得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0029】
【特許文献1】独国特許出願公開第10335900号明細書
図1
図2
【手続補正書】
【提出日】2024-02-28
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動運転のための条件が監視される少なくとも部分的な自動運転車両において自動運転の割合を高めるための方法であって、
自動運転のための前記条件が満たされた場合、手動車両制御によって自動運転が終了するであろうことがモデルを用いて予測され、運転者による引継が予測された場合、自動運転が運転状況を確実に制御していることを前記運転者に通知する情報が前記運転者に出力される
ことを特徴とする方法。
【請求項2】
自動運転のための前記条件を監視することにより自動運転の機能品質が決定され、前記運転者による引継が予測された場合、前記機能品質が所定の限界値を上回っているときにのみ、前記運転者に前記情報が出力される
ことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
要請無しの手動車両引継の場合であって、かつ、自動運転のための前記条件が満たされている場合、特に機能品質が前記限界値を上回る場合は、前記運転者は、前記手動車両引継無しでの仮定的な自動運転における運転操作データがどのようであったかに関して通知を受ける
ことを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記モデルを用いて、前記車両を介した要請無しで前記運転者が前記手動車両制御を引き継ぐ時間を予測することができるように、前記モデルは、前記運転者の挙動、前記自動運転車両の挙動、前記運転状況、及び/又は環境条件を含むデータによってトレーニングされる
ことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記モデルは中央のサーバーに保存され、全保有車両のデータによってトレーニングされる
ことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記情報は、機能的グラフィックス、音声出力、及び/又はテキスト出力によって、前記運転者へ出力される
ことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
自動運転は、前記運転者による引継が予測された場合に、前記自動運転車両の挙動の変更によって、引継頻度を低減するように調節される
ことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
引継頻度を低減するために有効であると判定された、自動運転モード中の或る車両における運転パラメータが、前記サーバーを通じて他の車両に伝送される
ことを特徴とする、請求項に記載の方法。
【請求項9】
自動運転のための条件を監視するためのモジュール(15)を含んでおり、少なくとも部分的な自動運転車両において自動運転の割合を高めるための装置であって、
手動車両制御によって自動運転を終わらせようとする運転者の意図を予測するためのモデル(7)を保存した監視モジュール(5)が装備されており、自動運転のための前記条件が満たされたときに前記運転者による引継が予測された場合、アクションモジュール(9)が、自動運転が運転状況を確実に制御していることを前記運転者に通知する情報を前記運転者に出力する
ことを特徴とする装置。
【請求項10】
全保有車両における各車両(1)の前記監視モジュール(5)及び/又は前記アクションモジュール(9)が、自動運転から手動運転モードへの引継に関し類似する特性を有するグループを分類するための車両外部サーバー(21)と無線接続される
ことを特徴とする、請求項9に記載の装置。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0024
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0024】
図2には、本発明に係る方法の例示的実施形態が示されている。自動運転中に、車両アシスタント(装置)に保存された方法がブロック100で開始される。ブロック110において、監視モジュール5が運転者による運転操作の手動引継の蓋然性pを決定する。高い蓋然性p(ブロック120における蓋然性閾値pの超過)、及び、これに伴って運転者による差し迫った手動引継が決定されると、対応する信号がアクションモジュール9に送信される。それと同時に、自動運転を監視するためのモジュール15は、環境データを決定するととともに、この環境データを用いて自動運転の機能品質FGを決定し、これらもブロック140においてアクションモジュール9へ伝送される。ブロック150において、機能品質FGが限界値GFGと比較される。ブロック150において、機能品質FGが限界値GFGを下回っていると決定された場合、ブロック160において、手動車両制御のための引継要請が自動的に発動されるか、又は、自動運転のシステム故障を防止するために自動運転が終了する。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0027
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0027】
車両アシスタントの作業形態について、下記の適用例を取りあげて詳しく説明する。この適用例では、自動運転が、出口より前の高速道路上で個々の運転者によって規則的に不作動化される。車両アシスタントの制御による自動運転から手動制御へ移行するための運転者の要請のそれぞれの時点tiが記録される。これに加えて、各時点ti及び各時点tiが保存される前の期間tn-iにおける、監視モジュール5及び自動運転を監視するためのモジュール15での特徴値が保存される。モデル7において、トレーニングのときに、記録された特徴値が、移行要請の高い蓋然性pと組み合わされる。ここで、モデル7は、たとえば高速道路走行モード及び出口直前の地理的位置が、手動移行の要請の蓋然性を高めることを学習する。そして、個別の運転者の車両1が高速道路における出口の直前にくると、アクションモジュール9は、運転者に対して、車両アシストが情報を送信する前に、手動引継が必要ないことを運転者に通知する。このことは、手動引継の要請を運転者が自分で意識的に決断するよりも前の時点で行われる。これに加えて、このような手動引継が予測される運転状況において、車両は、たとえば先行車両に対してより広い又はより狭い安全距離、若しくは、高速道路の中央車線又は左車線を選択することや、あるいは、たとえば車両周辺を移動している交通参加者などの周囲に対する追加的通信を発信することによって、車両1の運転挙動のさまざまなバリエーションをテストすることができる。バリエーションが引き続き手動引継につながるか、それとも手動引継を成功裏に回避できるかを観察できるように、運転者が挙動を変更する場合、運転者に情報を出力しないのが好ましい。或るバリエーションが手動引継を成功裏に回避することにつながった場合、このバリエーションは、運転アシスタントの運転プロファイルに追加される。その結果として、モデルは、この改変された運転形態では手動引継の蓋然性が低いことを学習し、それに伴って、この運転形態では、運転状況において手動引継の予測と、これに関連付けられたステップとが実施されない。
【国際調査報告】