(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-05
(54)【発明の名称】シタグリプチン、ダパグリフロジン及びメトホルミンを含む経口用複合錠剤
(51)【国際特許分類】
A61K 31/4985 20060101AFI20240628BHJP
A61K 31/7034 20060101ALI20240628BHJP
A61K 31/155 20060101ALI20240628BHJP
A61K 9/24 20060101ALI20240628BHJP
A61P 3/10 20060101ALI20240628BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240628BHJP
A61K 31/351 20060101ALN20240628BHJP
【FI】
A61K31/4985
A61K31/7034
A61K31/155
A61K9/24
A61P3/10
A61P43/00 121
A61K31/351
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023577696
(86)(22)【出願日】2022-06-27
(85)【翻訳文提出日】2023-12-15
(86)【国際出願番号】 KR2022009126
(87)【国際公開番号】W WO2023282517
(87)【国際公開日】2023-01-12
(31)【優先権主張番号】10-2021-0089566
(32)【優先日】2021-07-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】599139534
【氏名又は名称】ハンミ ファーム. シーオー., エルティーディー.
【住所又は居所原語表記】#893-5,Hajeo-ri,Paltan-myeon,Hwaseong-si,Gyeonggi-do 445-910,Korea
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】タク,ジン・ウク
(72)【発明者】
【氏名】ペク,ジ・ウォン
(72)【発明者】
【氏名】クォン,テク・クァン
(72)【発明者】
【氏名】イム,ホ・テク
(72)【発明者】
【氏名】キム,ヨン・イル
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
4C206
【Fターム(参考)】
4C076AA40
4C076AA44
4C076BB01
4C076CC21
4C076DD26A
4C076DD29
4C076DD29C
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4C206MA72
4C206NA05
4C206ZC35
4C206ZC75
(57)【要約】
本発明は、二層錠形態の経口用複合錠剤に関し、第1層の総重量に対してコロイド状二酸化ケイ素を0.5~2重量%で含む経口用複合錠剤及びこの製造方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シタグリプチンまたは薬剤学的に許容可能なその塩、またはこれらの水和物、及び
ダパグリフロジンまたは薬剤学的に許容可能なその塩、またはこれらの水和物を含む乾式顆粒、及び
コロイド状二酸化ケイ素を含む第1層、及び
メトホルミンまたは薬剤学的に許容可能なその塩を含む湿式顆粒を含む第2層を含む複合錠剤で、
前記コロイド状二酸化ケイ素は第1層の総重量に対して0.5~2重量%で含まれる経口用複合錠剤。
【請求項2】
前記第1層は、主成分としてシタグリプチンリン酸塩及びダパグリフロジンプロパンジオールを含む、請求項1に記載の経口用複合錠剤。
【請求項3】
前記第2層は、主成分としてメトホルミン遊離塩基を含む、請求項1に記載の経口用複合錠剤。
【請求項4】
前記第1層は、無水リン酸二カルシウム、マンニトール、ヒドロキシプロピルセルロース、フマル酸ステアリルナトリウム、未結晶セルロース、前糊化澱粉、クロスポビドン、架橋カルボキシメチルセルロースナトリウム、ステアリン酸マグネシウム及びこれらの任意の組み合わせの中で選択される賦形剤を含む、請求項1に記載の経口用複合錠剤。
【請求項5】
前記第2層は、フマル酸ステアリルナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース、ローカストビーンガム、コロイド状二酸化ケイ素、微細結晶セルロース、マンニトール、スクロース、ラクトース、ソルビトール、キシリトール、グルコース及びこれらの任意の組み合わせの中で選択される賦形剤を含む、請求項1に記載の経口用複合錠剤。
【請求項6】
前記複合錠剤を60℃の苛酷条件下で4週間保管する時、シタグリプチンの柔軟物質の総含有量は0.2重量%以下で、ダパグリフロジンの柔軟物質の総含有量は2重量%以下である、請求項1に記載の経口用複合錠剤。
【請求項7】
単位剤形当たり前記シタグリプチンをシタグリプチン遊離塩基として25~100mg、ダパグリフロジンをダパグリフロジン遊離塩基として5~10mg及びメトホルミンをメトホルミン遊離塩基として500~1000mgで含む、請求項1に記載の経口用複合錠剤。
【請求項8】
(1)シタグリプチンまたは薬剤学的に許容可能なその塩、またはこれらの水和物と、ダパグリフロジンまたは薬剤学的に許容可能なその塩、またはこれらの水和物及び賦形剤を含む混合部を製造する段階と、
(2)前記混合部を乾式顆粒化する段階と、
(3)前記乾式顆粒物をコロイド状二酸化ケイ素及び滑沢剤とともに混合して第1混合部を製造する段階と、
(4)メトホルミンまたは薬剤学的に許容可能なその塩、またはこれらの水和物及び賦形剤を含む混合部を湿式顆粒化して第2混合部を製造する段階と、
(5)二層錠打錠機を使って前記第2混合部を下層部に位置させ、前記第1混合部を上層部に位置させた後打錠する段階を含む、請求項1~請求項7のいずれか一項による経口用複合錠剤の製造方法であって、
前記コロイド状二酸化ケイ素は、第1混合部の総重量に対して0.5~2重量%で含まれる経口用複合錠剤の製造方法。
【請求項9】
前記(2)段階の乾式顆粒化はローラー圧搾機を利用して圧搾物を形成する段階を含む、請求項8に記載の経口用複合錠剤の製造方法。
【請求項10】
前記(5)段階で第2混合部を下層部に位置させた後、1~7KNの予圧を加える段階をさらに含む、請求項8に記載の経口用複合錠剤の製造方法。
【請求項11】
前記(5)段階の必要打錠圧は2,000~3,000KNである、請求項8に記載の経口用複合錠剤の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2021年7月8日付け韓国特許出願第10‐2021‐0089566号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示された全ての内容を本明細書の一部として組み込む。
【0002】
本発明は、シタグリプチン、ダパグリフロジン及びメトホルミンを含む経口用複合錠剤及び製造方法に関し、より具体的に、打錠障害がなく、層分離が発生しない経口用複合錠剤及び製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
第2型糖尿病患者は、一般的に過体重、腹部肥満、高血圧を伴うようになり、これによって糖尿病は高血圧、高脂血症、心筋梗塞、脳卒中など2次的な慢性疾患あるいは代謝症候群を引き起こす疾病と知られ、大韓糖尿病学会の診療指針によれば、症状改善の増大のために薬物併合療法が積極的に勧められている。特に、DPP‐4抑制剤系列の薬物とSGLT‐2抑制剤系列の薬物の併用は、最近学界で糖尿病治療において優れる効能と効果が立証され、メトホルミン(Metformin)との3剤治療までも研究されている分野である。
【0004】
シタグリプチン(Sitagliptin)(製品名:ジャヌビア錠)は、ジペプチジルペプチダーゼ‐4(DPP‐4)抑制剤系列の薬剤として、化合物名は(R)‐3‐アミノ‐1‐(3‐(トリフルオロメチル)‐5,6‐ジヒドロ‐[1,2,4]トリアゾロ[4,3‐a]ピラジン-7(8H)‐イル)‐4‐(2,4,5‐トリフルオロフェニル)ブタン‐1‐オンである。シタグリプチンは、インクレチンという胃腸管ホルモンの分解を抑制してインスリンとグルカゴンを調節するインクレチンの機能が体内でよく行われるようにすることで血糖を調節し、第2型糖尿病患者にシタグリプチンを経口投与時、HbA1cレベルが有意に減少し、空腹時の血糖及び食後血糖分泌が減少すると知られている。
【0005】
ダパグリフロジン(Dapagliflozin)(製品名:フォシーガ錠)は、ナトリウム‐グルコース共輸送体2(Sodium‐Glucose linked transporter 2:SGLT‐2)抑制剤系列の薬剤として化合物名は(2S,3R,4R,5S,6R)‐2‐[4‐クロロ‐3‐(4‐エトキシベンジル)フェニル]‐6‐(ヒドロキシメチル)テトラヒドロ‐2H‐ピラン‐3,4,5‐トリオールである。ダパグリフロジンは腎臓でSGLT‐2を選択的に抑制し、尿でグルコースの排出を増強させ、これによってインスリン感受性を改善させ、糖尿病の合併症の発病を引き延ばすことで血漿グルコースの水準を正常化することができる。元の開発社であるアストラゼネカABでダパグリフロジンプロピレングリコール水和物を有効成分とする錠剤形態(フォシーガ錠)で市販中である。
【0006】
メトホルミン(metformin)は、ビグアニド(biguanide)系糖尿病治療剤として、第2型糖尿病患者の治療に主に使われる経口用抗高血糖薬物である。メトホルミンの血糖調節機序はインスリン分泌とは無関係に作用し、例えば、肝でブドウ糖輸送体を活性化させると知られている。メトホルミンは糖尿病患者の体重減少を誘導し、血中中性脂肪と低密度リポタンパクの減少及び高密度リポタンパクの増加効果を示す。したがって、インスリン抵抗性を示すインスリン非依存性糖尿病患者の1次薬剤として使うことができる。
【0007】
メトホルミンは、この塩酸塩としてグルコファージ(GLUCOPHAGE、Bristol‐Myers Squibb Company)の錠剤(tablet)形態で市販されている。市販されているグルコファージ錠剤は、500mg、850mg、または1000mgのメトホルミン塩酸塩を含有し、その投与は効能及び耐性の両側面を考慮して1日2550mgの最大要求用量を超過しない範囲内で行われている。メトホルミンの使用と係る副作用は、服用患者の20~30%で表れる食欲減退、腹部膨満感、吐き気、下痢などであり、ほとんどは一過性で、服用後2~3週が経ると消失する場合が多い。下痢やひどい腹部膨満感などが消失されないと服用を中断した方がよい。珍しくは肌発疹とじんま疹などができることがある。このような副作用は最低及び/または持続用量を減少させたり、投薬回数を減らすことができる徐放性製剤を利用する方法によって部分的に避けることができる。
【0008】
糖尿病は、血糖調節、副作用などの減少などを目的として一つ以上の抗糖尿病約を複合的に投与する場合が多い。シタグリプチン及びダパグリフロジンは、低血糖の危険なしに血糖を降下させる主な効果以外も、シタグリプチンの場合、膵膓ベータ細胞の保護効果、GLP‐1増加効果があり、ダパグリフロジンの場合、体重減少効果、血圧降下効果があって、2つの有効成分の組み合わせが相乗効果を示すことが臨床結果として紹介されている。また、シタグリプチン単独、またはシタグリプチン及びメトホルミンの二重投与で血糖調節が効果的ではない場合、ダパグリフロジンを付け加えてシタグリプチン、メトホルミン及びダパグリフロジンの3重投与が血糖調節に効果的であることが報告された(Diabetes Care 2014 Mar;37(3):740‐750)。
【0009】
また、糖尿病患者の場合、糖尿が進行されるほど血糖調節が難しくて合併症を伴うようになり、特に、年寄りの糖尿病患者の場合、高血圧、肥満、高脂血症を一緒に病んでいる可能性が高い。このような糖尿病患者の特性上、服薬順応度はとても重要な要素であり、服薬順応度の低下は患者の生活の質を落とすだけでなく、患者の治療率を減少させ、個人医療費の増加と保険財政の悪化をもたらすおそれがある。よって、主成分としてシタグリプチン、ダパグリフロジン及びメトホルミンのすべてを含む3重複合錠剤の開発が必要である。
【0010】
しかし、前記複合錠剤の開発は、各主成分(API)の物性の差による錠剤の生産性、安定性などの山積んだ問題点によって困難がある。例えば、メトホルミンは錠剤製造の際に流れ性などの問題によって湿式顆粒化を要するが、シタグリプチン及びダパグリフロジンは水分に不安定な特徴がある。また、ダパグリフロジンの場合、密度が低くて少量にもかかわらず、主成分の体積が大きくて生産性がよくないし、他の主成分及び賦形剤と層分離が発生する可能性が高い。
【0011】
したがって、前記問題点を解決することができるシタグリプチン、ダパグリフロジン及びメトホルミンをすべて含む3重複合錠剤の開発が必要な状況である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】Diabetes Care 2014 Mar;37(3):740‐750
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、打錠障害がなく、層間分離が発生しない経口用複合錠剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前記目的を達成するために、
本発明は、シタグリプチンまたは薬剤学的に許容可能なその塩、またはこれらの水和物、及び
ダパグリフロジンまたは薬剤学的に許容可能なその塩、またはこれらの水和物を含む乾式顆粒、及び
コロイド状二酸化ケイ素を含む第1層と、
メトホルミンまたは薬剤学的に許容可能なその塩を含む湿式顆粒を含む第2層と、を含む複合錠剤で、
前記コロイド状二酸化ケイ素は、第1層の総重量に対して0.5~2重量%で含まれる経口用複合錠剤を提供する。
【0015】
また、本発明は、
(1)シタグリプチンまたは薬剤学的に許容可能なその塩、またはこれらの水和物と、ダパグリフロジンまたは薬剤学的に許容可能なその塩、またはこれらの水和物と、賦形剤とを含む混合部を製造する段階と、
(2)前記混合部を乾式顆粒化する段階と、
(3)前記乾式顆粒物をコロイド状二酸化ケイ素及び滑沢剤とともに混合して第1混合部を製造する段階と、
(4)メトホルミンまたは薬剤学的に許容可能なその塩、またはこれらの水和物及び賦形剤を含む混合部を湿式顆粒化して第2混合部を製造する段階と、
(5)二層錠打錠機を使って前記第2混合部を下層部に位置させ、前記第1混合部を上層部に位置させた後打錠する段階を含む、前記本発明の経口用複合錠剤の製造方法であって、
前記コロイド状二酸化ケイ素は、第1混合部の総重量に対して0.5~2重量%で含まれる経口用複合錠剤の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0016】
本発明の経口用複合錠剤は、シタグリプチン及びダパグリフロジンを含む第1層及びメトホルミンを含む第2層を一つの製剤にすべて含み、キャッピング(capping)またはラミネーティング(laminating)などの打錠障害が発生せず、層間分離が発生しないため、主成分の安定性を確保することができ、生産性に優れる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】実施例1~4及び比較例3~4の複合錠剤のシタグリプチンの総柔軟物質の量を測定した結果を示すグラフである。
【
図2】実施例1~4及び比較例3~4の複合錠剤のダパグリフロジンの総柔軟物質の量を測定した結果を示すグラフである。
【
図3】コロイド状二酸化ケイ素の含有量による複合錠剤のシタグリプチン溶出率を測定した結果を示すグラフである。
【
図4】第2層の予圧による複合錠剤のシタグリプチン溶出率を測定した結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
[発明を実施するための最良の形態]
以下、本発明をより詳しく説明する。
【0019】
本明細書で使われるすべての技術用語は、他に定義されない以上、関連分野で通常の当業者が一般的に理解するような意味で使われる。また、本明細書には好ましい方法や試料が記載されるが、これと類似したり同等なものなども本明細書の範疇に含まれる。また、本明細書に記載された数値は明示しなくても「約」の意味を含むものと見做す。本明細書に参考文献として記載されるすべての刊行物の内容は全体が本明細書に参考として統合される。本明細書で使われた用語、「約」は言及する値がある程度変わることができることを意味する。例えば、前記値は10%、5%、2%または1%に変わることができる。例えば、「約5」は4.5と5.5との間、4.75と5.25との間、または4.9と5.1との間、または4.95と5.05との間の任意の値を含むことを意味する。本明細書で使われた用語、「有する」、「有することができる」、「含む」、または「含むことができる」などの表現は、該当特徴(例:数値、または成分などの構成要素)の存在を示し、追加的な特徴の存在を排除しない。
【0020】
本明細書において、用語「必要打錠圧」とは、所望の錠剤硬度を有するために錠剤製造過程で打錠の際に必要な打錠圧を意味する。
【0021】
本発明は、シタグリプチンまたは薬剤学的に許容可能なその塩、またはこれらの水和物、及び
ダパグリフロジンまたは薬剤学的に許容可能なその塩、またはこれらの水和物を含む乾式顆粒、及び
コロイド状二酸化ケイ素を含む第1層、及び
メトホルミンまたは薬剤学的に許容可能なその塩を含む湿式顆粒を含む第2層と、を含む複合錠剤であって、
前記コロイド状二酸化ケイ素は第1層の総重量に対して0.5~2重量%で含まれる経口用複合錠剤に関する。
【0022】
前記第1層の主成分である前記シタグリプチン及びダパグリフロジンは、これらの結晶形、水和物、共結晶、溶媒化物、塩、部分立体異性体または鏡像異性体をすべて含むものである。
【0023】
前記第2層の主成分であるメトホルミンは、これらの各々の結晶形、共結晶、溶媒化物または異性体をすべて含むものである。
【0024】
前記薬剤学的に許容可能なその塩は、当該技術分野で通常的に使われることができる任意の薬剤学的に許容される塩を指称する。
【0025】
一具体例において、前記シタグリプチンまたは薬剤学的に許容可能なその塩、またはこれらの水和物はシタグリプチンリン酸塩であってもよい。
【0026】
一具体例において、前記ダパグリフロジンまたは薬剤学的に許容可能なその塩、またはこれらの水和物は薬剤学的に許容可能なダパグリフロジンの共結晶であってもよい。一具体例において、前記ダパグリフロジンまたは薬剤学的に許容可能なその塩は、ダパグリフロジンL‐プロリンまたはダパグリフロジンプロパンジオールであってもよい。一具体例において、前記ダパグリフロジンはダパグリフロジンプロパンジオールであってもよい。
【0027】
一具体例において、前記メトホルミンは、メトホルミン塩酸塩またはメトホルミン遊離塩基であってもよい。一具体例において、前記メトホルミンは、メトホルミン遊離塩基であってもよい。
【0028】
本明細書でシタグリプチン、ダパグリフロジン、メトホルミンと記載しても、前記言及された各々のすべての塩、溶媒化物、異性体のいずれを含むことを指称するものとして理解しなければならない。
【0029】
本発明の経口用複合錠剤は、シタグリプチン及びダパグリフロジンを含む乾式顆粒及びコロイド状二酸化ケイ素を含む第1層と、メトホルミン湿式顆粒を含む第2層と、を含む。
【0030】
前記シタグリプチン及びダパグリフロジンはメトホルミンに比べて相対的に水分に脆弱なので、このように二層錠の構造を有することで主成分の安定性をはかることができる。また、メトホルミンは流れ性が低くて湿式顆粒の形態を有することで優れる流れ性を確保することができ、二層錠製造の際に高い生産性を確保することができる。
【0031】
本発明のコロイド状二酸化ケイ素は第1層の総重量に対して0.5~2重量%で含まれることができる。
【0032】
患者の服薬順応度と服用用量を考慮した最低限の錠剤の大きさ及び第1層(上層部)と第2層(下層部)との重量比にしたがって打錠する場合、第1層と対比して第2層の重量比が大きくなる。また、第1層の放出様相は速放性で、第2層の放出様相は徐放性であるため、前記第1層及び第2層に使われる賦形剤の性質もまったく異なる。したがって、第1層と第2層とからなる複合錠剤は、打錠障害が発生しやすい。
【0033】
前記打錠障害はキャッピング(capping)またはラミネーティング(laminating)であってもよい。
【0034】
前記キャッピングまたはラミネーティングは、第1層と対比して第2層の重量比が大きいか、または打錠の際に打錠圧が高くて発生することである。
【0035】
したがって、本発明では第1層にコロイド状二酸化ケイ素を含み、第1層の総重量に対してコロイド状二酸化ケイ素を0.5~2重量%で含むことによって打錠圧を下げて打錠障害なしに適切な硬度範囲である15~25kpを有する複合錠剤を提供することができる。
【0036】
実験結果、コロイド状二酸化ケイ素を第1層の総重量に対して0.5重量%以上で含む場合、複合錠剤が適切な硬度を有するようにする打錠時の打錠圧を下げることができるものと示された。打錠時の打錠圧が高い場合、錠剤のキャッピングまたはラミネーティングなどの打錠障害が発生することがあるが、コロイド状二酸化ケイ素を0.5重量%以上含むことによって打錠圧を下げることができ、打錠障害なしに適切な硬度を有する二層錠形態の、経口用複合錠剤を製造することができると確認された(実験例1参照)。
【0037】
また、実験の結果、前記コロイド状二酸化ケイ素が第1層の総重量に対して2重量%を超過して含まれる場合、シタグリプチンは苛酷3週または4週、ダパグリフロジンは苛酷4週で基準超過または基準に近い柔軟物質の増加を示した。また、全般的にコロイド状二酸化ケイ素の量が増加するほど、シタグリプチン及びダパグリフロジンの柔軟物質が増加した。よって、コロイド状二酸化ケイ素の量は第1層の総重量に対して2重量%以内で使うことが安定性を確保できると評価された(実験例2参照)。
【0038】
すなわち、本発明の経口用複合錠剤は、第1層にコロイド状二酸化ケイ素を第1層の総重量に対して0.5~2重量%で含むことによって、打錠障害が発生せずに生産性が高く、保存の際に柔軟物質の発生が基準値以内に維持され、化学的安定性まで有することができる。したがって、本発明の経口用複合錠剤は生産性及び安定性に優れる複合錠剤として製造されることができるものと確認された。
【0039】
一具体例において、前記第1層は希釈剤、崩壊剤、結合剤及び滑沢剤からなる群から選択される1種以上の賦形剤を含むことができる。
【0040】
前記希釈剤は、例えば、無水リン酸二カルシウム、D‐マンニトール、前糊化澱粉、低置換ヒドロキシプロピルセルロース(L‐HPC)、未結晶セルロース、スクロース、ソルビトール、キシリトール、グルコース及びこの任意の混合物からなる群から選択されることができるが、これに限定されるものではない。一具体例において、前記希釈剤は、無水リン酸二カルシウム、D‐マンニトール、前糊化澱粉、低置換ヒドロキシプロピルセルロース(L‐HPC)、未結晶セルロース及びこれらの任意の組み合わせで構成された群から選択されることができる。
【0041】
前記滑沢剤は、例えば、モノステアリン酸グリセロール、パルミトステアリン酸グリセロール、ステアリン酸マグネシウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ステアリルフマル酸ナトリウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸、硬化された植物性オイル、ポリエチレングリコール、安息香酸ナトリウム、滑石及びこれらの任意の組み合わせからなる群から選択されてもよいが、これに限定されるものではない。一具体例において、前記滑沢剤はステアリルフマル酸ナトリウムである。
【0042】
前記崩壊剤は、例えば、クロスポビドン、架橋カルボキシメチルセルロースナトリウム(Cross‐linked CMC Na、C.CMC Na、またはクロスカルメロースナトリウム)、とうもろこし澱粉、カルボキシメチルセルロースカルシウム、澱粉グリコール酸ナトリウム、低置換ヒドロキシプロピルセルロース(L‐HPC)及びこれらの任意の組み合わせからなる群から選択されてもよいが、これに限定されるものではない。一具体例において、前記崩壊剤は架橋カルボキシメチルセルロースナトリウムである。
【0043】
前記結合剤は、例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、ゼラチン、ポビドン及びこれらの任意の組み合わせからなる群から選択されてもよいが、これに限定されるものではない。一具体例において、前記結合剤は架橋カルボキシメチルセルロースナトリウムである。
【0044】
一具体例において、前記第1層は、無水リン酸二カルシウム、マンニトール、ヒドロキシプロピルセルロース、フマル酸ステアリルナトリウム、未結晶セルロース、前糊化澱粉、クロスポビドン、架橋カルボキシメチルセルロースナトリウム、ステアリン酸マグネシウム及びこれらの任意の組み合わせの中で選択される賦形剤を含むことができる。
【0045】
一具体例において、前記第2層は、希釈剤、結合剤、徐放化担体及び滑沢剤からなる群から選択される1種以上の賦形剤を含むことができる。
【0046】
前記希釈剤は、微細結晶セルロース、無水リン酸水素カルシウム、マンニトール、スクロース、ラクトース、ソルビトール、キシリトール、グルコース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース及びこれらの任意の組み合わせからなる群から選択されてもよいが、これに限定されるものではない。
【0047】
前記結合剤は、例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、ゼラチン、ポビドン及びこれらの任意の組み合わせからなる群から選択されてもよいが、これに限定されるものではない。
【0048】
前記徐放化担体は、当該技術分野に公知されている任意の徐放化担体であってもよい。前記徐放化担体は、例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ポリエチレンオキサイド、グアーガム、ローカストビーンガム、キサンタンガム、ジステアリン酸グリセリル、カルボキシメチルセルロース ナトリウム、ポリビニルピロリドン及びこれらの任意の組み合わせからなる群から選択されてもよいが、これに限定されるものではない。一具体例において、前記徐放化担体は、ヒドロキシプロピルメチルセルロース2208、ヒドロキシプロピルメチルセルロース2910及びローカストビーンガムの組み合わせである。前記徐放化担体は、メトホルミンまたは薬剤学的に許容可能なその塩100重量部に対して10~50重量部、具体的には約20~40重量部の量で含有されることができる。
【0049】
前記滑沢剤は、ステアリン酸カルシウム、コロイド状二酸化ケイ素(fumed silica、Aerosil)、モノステアリン酸グリセロール、パルミトステアリン酸グリセロール、ステアリン酸マグネシウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ステアリルフマル酸ナトリウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸、硬化された植物性オイル、ポリエチレングリコール、安息香酸ナトリウム、滑石及びこれらの任意の組み合わせからなる群から選択されてもよいが、これに限定されるものではない。一具体例において、前記滑沢剤は、ステアリン酸マグネシウムまたはコロイド状二酸化ケイ素であってもよい。
【0050】
一具体例において、前記第2層は、フマル酸ステアリルナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース、ローカストビーンガム、コロイド状二酸化ケイ素、微細結晶セルロース、マンニトール、スクロース、ラクトース、ソルビトール、キシリトール、グルコース及びこれらの任意の組み合わせの中で選択される賦形剤を含むことができる。
【0051】
一具体例において、前記複合錠剤は60℃の苛酷条件下で4週間保管の際に、シタグリプチンの柔軟物質の総含有量は0.2重量%以下で、ダパグリフロジンの柔軟物質の総含有量は2重量%以下である経口用複合錠剤であってもよい。
【0052】
前記複合錠剤は、単位剤形当たり前記シタグリプチンをシタグリプチン遊離塩基として25~100mg、ダパグリフロジンを遊離塩基として5~10mg及びメトホルミンを遊離塩基として500~1000mgの量を含むことができる。例えば、前記複合錠剤は単位剤形当たり遊離塩基としてメトホルミンを500mg、750mg、850mgまたは1,000mg含み、シタグリプチン50mg及びダパグリフロジン5mgを含むことができる。
【0053】
前記複合錠剤は、シタグリプチン及びダパグリフロジンを含む乾式顆粒を第1層にし、前記メトホルミンを含む湿式顆粒を第2層にして二層錠の形態に打錠することで形成されることができる。
【0054】
前記複合錠剤は、外部表面にフィルムコーティング層をさらに含むことができる。前記フィルムコーティング層は、速放性を示す任意のフィルムコーティング剤及び着色剤を含むことができる。前記フィルムコーティング剤としては、ヒドロキシプロピルセルロース(hydroxypropyl cellulose、HPC)及びヒドロキシプロピルメチルセルロース(hydroxypropylmethyl cellulose、HPMC)の混合物、またはポリビニルアルコール(PVA)及びポリエチレングリコール(PEG)の混合物などがあって、これに限定されるものではない。前記着色剤としては、二酸化チタン、酸化鉄などがあって、これに限定されるものではない。商業的に市販される代表的なフィルムコーティング剤としては、Opadry(登録商標)がある。前記フィルムコーティング層は、味を遮蔽する役目及び最終的な複合錠剤に安定性を付える役目をすることができる。
【0055】
前記複合錠剤は、シタグリプチン、ダパグリフロジン、またはメトホルミン単独あるいは2種複合では充分制御されない第2型糖尿病の成人患者、または既にシタグリプチン、ダパグリフロジン、及びメトホルミンの3重併用治療を受けている患者の治療のために使われることができる。前記複合錠剤は、含む主成分の含有量によって1日1回、1日2回、1日3回、または1日4回投与することができる。
【0056】
また、本発明は経口用複合錠剤の製造方法に関し、具体的に、
(1)シタグリプチンまたは薬剤学的に許容可能なその塩、またはこれらの水和物と、ダパグリフロジンまたは薬剤学的に許容可能なその塩、またはこれらの水和物と、賦形剤とを含む混合部を製造する段階と、
(2)前記混合部を乾式顆粒化する段階と、
(3)前記乾式顆粒物をコロイド状二酸化ケイ素及び滑沢剤とともに混合して第1混合部を製造する段階と、
(4)メトホルミンまたは薬剤学的に許容可能なその塩、またはこれらの水和物及び賦形剤を含む混合部を湿式顆粒化して第2混合部を製造する段階と、
(5)二層錠打錠機を使って前記第2混合部を下層部に位置させ、前記第1混合部を上層部に位置させた後打錠する段階を含み、
前記コロイド状二酸化ケイ素は、第1混合部の総重量に対して0.5~2重量%で含まれる経口用複合錠剤の製造方法に関する。
【0057】
前記複合錠剤の製造方法の詳細は、前記本発明の一態様による複合錠剤に対する説明がそのまま適用されることができる。
【0058】
前記第1層製造段階において、前記(2)段階の乾式顆粒化する段階は、当該技術分野に公知されている通常的な乾式顆粒製法によって製造されることができる。一具体例において、前記乾式顆粒化は、主成分、希釈剤、結合剤及び滑沢剤を含む混合物をローラー圧搾機(Roller compactor)を利用して圧搾物を形成する段階を含むことができる。
【0059】
前記第2層製造段階において、前記(4)段階の湿式顆粒化する段階は、当該技術分野に公知されている通常的な湿式顆粒製法によって製造されることができる。
【0060】
前記複合錠剤の製造方法に伴われる各段階の工程は、当該技術分野で遂行される通常的な二層錠形態の複合錠剤製造工程に基づいて遂行することができる。
【0061】
一具体例において、前記(5)段階で、前記二層錠形態の複合錠剤製造の際に、二層錠打錠に必要な必要打錠圧は約2,000~3,000KNである。
【0062】
本発明の経口用複合錠剤の製造方法において、前記(5)段階で第2混合部を下層部に位置させた後、1~7KNの予圧を加える段階をさらに含むことができる。
【0063】
二層錠形態の複合錠剤は、層分離が発生することがあって、これは第1層及び第2層に使われる各々の賦形剤の性質が異なって発生することである。
【0064】
前記層分離現象を防止するために第2層に予圧を少なく与える試みがあった。しかし、予圧を少なく与えれば、第1層及び第2層の層間干渉によって速放層である第1層で徐放化現象が表れ、第1層の所望の薬効をまともに示しにくい問題が発生した。
【0065】
したがって、本発明では第2混合部を下層部に位置させた後、予圧を1~7KNにして層分離現象及び層間干渉による速放層の徐放化現象を防止しようとした。
【0066】
実験の結果、第2混合部の予圧が7KN以下である場合、加速露出条件で層分離現象が表れなかった。しかし、予圧が7KNを超過する場合、加速露出条件が5日以上持続する時、二層錠形態の複合錠剤の層分離現象が示された。したがって、第2混合部を第2層に打錠する際に、第2混合部の予圧は7KN以下であることが層分離現象を防止することができると評価された(実験例4参照)。
【0067】
また、実験の結果、第2混合部の予圧が1KN以上である場合、シタグリプチンの初めの溶出率は速く、偏差が小さい結果を示す。しかし、予圧が1KN未満の場合、第1層の速放溶出が第2層の徐放効果を受けるようになって溶出が低下する結果を示した。よって、第2混合部を第2層に打錠する際に第2混合部の予圧は1KN以上であることが層間干渉による速放層である第1層で徐放化現象が起きることを防止することができると評価された(実験例5参照)。
【0068】
すなわち、本発明の経口用複合錠剤の製造方法において、第2混合部の予圧を1~7KNにすることによって、二層錠形態の複合錠剤において層分離現象を防止することができ、速放層の徐放化現象を防止することができることが確認された。
【実施例】
【0069】
[発明を実施するための形態]
以下、本発明を下記実施例によって、より詳細に説明する。ただし、下記実施例は本発明を例示するためのものに過ぎず、これによって本発明の範囲が限定されることではない。
【0070】
実施例1~4及び比較例1~4.複合錠剤の製造
シタグリプチン、ダパグリフロジン、無水リン酸二カルシウム、マンニトール、ヒドロキシプロピルセルロースEXFタイプ及びフマル酸ステアリルナトリウムを30号篩にかけて大きい塊を粉砕させ、よく混合した。この混合物をローラーコンパクトで圧力をかけてスラグを製造した。製造したスラグを20号篩にかけて乾式顆粒を製造した。製造した乾式顆粒に崩壊剤でクロスカルメロースナトリウム、打錠性確保のための賦形剤でコロイド状二酸化ケイ素を30号篩にかけた後、前記乾式顆粒と混合して2次混合粉を製造した。滑沢剤でフマル酸ステアリルナトリウムを使って、これを2次混合粉と混合して第1層(上層部)を製造した。
【0071】
メトホルミン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース及びローカストビーンガムを篩にかけた後、高速顆粒製造機を利用して水を結合液溶媒にした湿式顆粒を製造した。製造された湿式顆粒を流動層乾燥器で水分基準に合うように乾燥した後、整粒機を利用して整粒した。コロイド状二酸化ケイ素を篩にかけた後、前記湿式顆粒と混合し、植物性ステアリン酸マグネシウムを篩にかけて第2層(下層部)を製造した。
【0072】
前記第1層と第2層とを二層錠打錠機を利用して4KNの予圧で第2層を打錠し、硬度は20kpをターゲットにして打錠後に外被コーティングを実施した。
【0073】
前記複合錠剤の製造の際に使った構成の含有量は下記表1のとおりである。
【0074】
【0075】
【0076】
実験例1.複合錠剤の特性評価
前記実施例1~4及び比較例1~4で製造した複合錠剤の必要打錠圧、キャッピング(capping)の割合及び摩損度評価を実施し、結果を下記表2に示す。
【0077】
一般的に前記摩損度は1回摩損度の場合、打錠工程で打錠障害を確認するための評価項目で使われるもので、4回摩損度の場合、コーティング機内で錠剤性状の安定性確保のための評価項目で使われるものである。1回摩損度の評価基準は0.2%以内であり、4回摩損度の評価基準は1%以内である。
【0078】
【0079】
前記表2の結果で、第1層の総重量に対してコロイド状二酸化ケイ素を0.5~2重量%で含む実施例1~4の複合錠剤は、20kpのターゲット硬度の打錠時にキャッピングが起こらない必要打錠圧が3000KN以下で、適切な範囲で測定された。また、1回及び4回摩損度も良好な結果を示した。
【0080】
しかし、コロイド状二酸化ケイ素を第1層の総重量に対して0.5重量%未満に含む比較例1及び2の複合錠剤は、20kpのターゲット硬度を確保するための必要打錠圧が非常に高く測定され、これによって打錠時またはコーティング時にコーティング機内で回転時にキャッピングが生じ、摩損度が不良であることを確認することができた。
【0081】
したがって、コロイド状二酸化ケイ素を第1層の総重量に対して0.5重量%以上に含まなければならないことが分かった。
【0082】
実験例2.複合錠剤の柔軟物質評価
前記実施例1~4及び比較例3~4に対し、シタグリプチン及びダパグリフロジンの柔軟物質の量を評価することで、コロイド状二酸化ケイ素の量による複合錠剤の軽視的な安定性を評価した。具体的には、各二層錠に対して60℃の苛酷条件で1、2及び4週経過時にそれぞれシタグリプチン及びダパグリフロジンに対する総柔軟物質を測定した。
【0083】
柔軟物質の測定方法は下記のとおりである。
サンプル製造
実施例で製造した錠剤20錠を取って、これを粉砕して5錠の該当量を精密に取って250mL用量のフラスコに入れ、これにアセトニトリル60mL及びマグネチックバーを入れて30分間撹拌した。その後、希釈液140mLを入れて、さらに60分間撹拌した後、マグネチックバーを取り出して希釈液10mLで洗浄した液を該当用量のフラスコに入れて希釈液25mLを入れた。アセトニトリルで標線を合わせた後、よく交ぜて、この液を3000rpmで10分間円心分離した上澄み液を検液にした。前記検液を下記条件で試験した。
【0084】
移動相
A液:0.1%のリン酸
B液:85%のリン酸:アセトニトリル:メタノール=0.1:80:20(v/v/v)
希釈液
pH2.5のリン酸塩緩衝液
HPLC条件
カラム:内径4.6mm、長さ150mmのステンレス管に3μmのオクタデシルシルリル化したシリカゲルを充填したカラム
ポンプ:1.2mL/min
注入体積(Injection Vol.):20uL
UVランプ:220nm
分析時間:80min
【0085】
【0086】
シタグリプチンの柔軟物質の結果を下記表4及び
図1に示し、ダパグリフロジンの柔軟物質の結果を下記表5及び
図2に示す。
【0087】
【0088】
【0089】
柔軟物質の安定性は60℃の苛酷条件で米国薬局方(USP)及び既存市販単一制の基準を適用して、シタグリプチンは0.2%以内、ダパグリフロジンは2%以内を基準に設定した。
【0090】
前記表4の結果で、実施例1~4の複合錠剤は、苛酷4週までシタグリプチンの柔軟物質増加を示すが、いずれも基準以内であった。一方、比較例3は苛酷4週で、比較例4は苛酷2週で柔軟物質の基準が超過した結果を示した。
【0091】
また、前記表5の結果で、実施例1~4の複合錠剤は、苛酷4週までダパグリフロジンの柔軟物質増加を示すが、いずれも基準以内であった。一方、比較例4は苛酷4週で柔軟物質の基準が超過した結果を示した。
【0092】
すなわち、第1層の総重量に対するコロイド状二酸化ケイ素の含有量が増加するほど柔軟物質が増加する傾向を示す。
【0093】
前記結果より、第1層の総重量に対するコロイド状二酸化ケイ素の含有量は2重量%以下でなければならないことを確認することができた。
【0094】
実験例3.コロイド状二酸化ケイ素の含有量による複合錠剤のシタグリプチン溶出評価
前記実施例1~4及び比較例3~4の複合錠剤のシタグリプチン溶出評価を実施した。前記溶出評価はpH1.2の溶媒900mLでBakset法を利用して125rpmで評価した。
【0095】
【0096】
【0097】
前記表6の結果で、実施例1~4の複合錠剤は、顆粒の崩壊時間が早く、初期溶出の偏差が小さい結果を示した。一方、比較例3及び4の複合錠剤は顆粒の崩壊時間の偏差が大きく、大きい塊が観察され、初期溶出の偏差が大きい結果を示した。
【0098】
これはコロイド状二酸化ケイ素の顆粒コーティングによる崩壊低下及び溶出偏差増加現象が表れるためである。このような顆粒崩壊速度の減少は、徐放層であるメトホルミンを含む第2層のマトリックスゲル化(gelling)によって第1層の徐放溶出が第2層の徐放効果を受けるようになって溶出が低下することが分かった。
【0099】
したがって、前記実験例1~3の結果より、コロイド状二酸化ケイ素は第1層の総重量に対して0.5~2重量%で含むことが打錠障害が発生せず、柔軟物質が基準以内に発生し、層間干渉による徐放層の徐放化現象を防止することができることが分かる。
【0100】
実験例4.第2層の予圧による複合錠剤の層分離評価
前記実施例4と同一で、予圧を下記表7の条件に変更して実施例5~10の複合錠剤を製造した。
【0101】
前記実施例4~10の複合錠剤を加速露出条件で3、5及び7日保管した時、層分離が発生するのか観察し、結果を下記表7に示す。
【0102】
ここで加速露出条件とは、40℃、75%RHの温・湿度条件で密閉しないペトリ皿(Petri dish)に保管する条件を意味する。
【0103】
【0104】
前記表7の結果で、下層部である第2層の予圧が7KN以下の実施例4~8の複合錠剤は層分離が発生しなかった。
【0105】
しかし、第2層の予圧が7KNを超過した実施例9及び10の複合錠剤は、それぞれ5及び3日から層分離が発生することが観察された。
【0106】
下層部である第2層の予圧が7KNを超過すれば、下層部が形を取りながら、固まるよりは錠剤形態で打錠される。それによって、第1層(上層部)及び第2層(下層部)賦形剤のまったく異なる性質によって、2つの堅い錠剤を上層及び下層に打錠することと同じ状態になる。よって、2つの層間の結合力が減少して層分離現象が発生する。
【0107】
前記結果より、第2層の予圧は7KN以下でなければならないことが分かった。
実験例5.第2層の予圧による複合錠剤のシタグリプチン溶出評価
前記実施例4~8の複合錠剤のシタグリプチン溶出評価を実施した。前記溶出評価は、pH1.2の溶媒900mLでBakset法を利用して125rpmで評価した。
【0108】
【0109】
【0110】
前記表8の結果で、実施例4~6の複合錠剤は溶出率が早く、初期溶出の偏差が小さい結果を示す。一方、実施例7及び8の複合錠剤は、打錠時に第1層(上層部)及び第2層(下層部)顆粒間の干渉が起こり、これによって徐放層であるメトホルミンを含む第2層のマトリックスゲル化(gelling)によって第1層の速放溶出が第2層の徐放効果を受けるようになって溶出が低下することが分かった。
【0111】
したがって、前記実験例4及び5の結果より、第2層の予圧を1~7KNにすることが二層錠形態である複合錠剤の層分離が発生せず、層間干渉による速放層の徐放化現象を防止することができることが分かる。
【手続補正書】
【提出日】2024-01-10
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シタグリプチンまたは薬剤学的に許容可能なその塩、またはこれらの水和物、及び
ダパグリフロジンまたは薬剤学的に許容可能なその塩、またはこれらの水和物を含む乾式顆粒、及び
コロイド状二酸化ケイ素を含む第1層、及び
メトホルミンまたは薬剤学的に許容可能なその塩を含む湿式顆粒を含む第2層を含む複合錠剤で、
前記コロイド状二酸化ケイ素は第1層の総重量に対して0.5~2重量%で含まれる経口用複合錠剤。
【請求項2】
前記第1層は、主成分としてシタグリプチンリン酸塩及びダパグリフロジンプロパンジオールを含む、請求項1に記載の経口用複合錠剤。
【請求項3】
前記第2層は、主成分として
メトホルミン塩酸塩またはメトホルミン遊離塩基を含む、請求項1に記載の経口用複合錠剤。
【請求項4】
前記第1層は、無水リン酸二カルシウム、マンニトール、ヒドロキシプロピルセルロース、フマル酸ステアリルナトリウム、未結晶セルロース、前糊化澱粉、クロスポビドン、架橋カルボキシメチルセルロースナトリウム、ステアリン酸マグネシウム及びこれらの任意の組み合わせの中で選択される賦形剤を含む、請求項1に記載の経口用複合錠剤。
【請求項5】
前記第2層は、フマル酸ステアリルナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース、ローカストビーンガム、コロイド状二酸化ケイ素、微細結晶セルロース、マンニトール、スクロース、ラクトース、ソルビトール、キシリトール、グルコース及びこれらの任意の組み合わせの中で選択される賦形剤を含む、請求項1に記載の経口用複合錠剤。
【請求項6】
前記複合錠剤を60℃の苛酷条件下で4週間保管する時、シタグリプチンの柔軟物質の総含有量は0.2重量%以下で、ダパグリフロジンの柔軟物質の総含有量は2重量%以下である、請求項1に記載の経口用複合錠剤。
【請求項7】
単位剤形当たり前記シタグリプチンをシタグリプチン遊離塩基として25~100mg、ダパグリフロジンをダパグリフロジン遊離塩基として5~10mg及びメトホルミンをメトホルミン遊離塩基として500~1000mgで含む、請求項1に記載の経口用複合錠剤。
【請求項8】
(1)シタグリプチンまたは薬剤学的に許容可能なその塩、またはこれらの水和物と、ダパグリフロジンまたは薬剤学的に許容可能なその塩、またはこれらの水和物及び賦形剤を含む混合部を製造する段階と、
(2)前記混合部を乾式顆粒化する段階と、
(3)前記乾式顆粒物をコロイド状二酸化ケイ素及び滑沢剤とともに混合して第1混合部を製造する段階と、
(4)メトホルミンまたは薬剤学的に許容可能なその塩、またはこれらの水和物及び賦形剤を含む混合部を湿式顆粒化して第2混合部を製造する段階と、
(5)二層錠打錠機を使って前記第2混合部を下層部に位置させ、前記第1混合部を上層部に位置させた後打錠する段階を含む、請求項1~請求項7のいずれか一項による経口用複合錠剤の製造方法であって、
前記コロイド状二酸化ケイ素は、第1混合部の総重量に対して0.5~2重量%で含まれる経口用複合錠剤の製造方法。
【請求項9】
前記(2)段階の乾式顆粒化はローラー圧搾機を利用して圧搾物を形成する段階を含む、請求項8に記載の経口用複合錠剤の製造方法。
【請求項10】
前記(5)段階で第2混合部を下層部に位置させた後、1~7KNの予圧を加える段階をさらに含む、請求項8に記載の経口用複合錠剤の製造方法。
【請求項11】
前記(5)段階の必要打錠圧は2,000~3,000KNである、請求項8に記載の経口用複合錠剤の製造方法。
【国際調査報告】