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特表2024-5241142つのバッテリセルを備えるエアロゾル発生デバイス電力システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-05
(54)【発明の名称】2つのバッテリセルを備えるエアロゾル発生デバイス電力システム
(51)【国際特許分類】
   A24F 40/53 20200101AFI20240628BHJP
   A24F 40/50 20200101ALI20240628BHJP
   A24F 40/20 20200101ALI20240628BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20240628BHJP
【FI】
A24F40/53
A24F40/50
A24F40/20
H02J7/00 302C
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023577704
(86)(22)【出願日】2022-06-24
(85)【翻訳文提出日】2023-12-15
(86)【国際出願番号】 EP2022067363
(87)【国際公開番号】W WO2022269043
(87)【国際公開日】2022-12-29
(31)【優先権主張番号】21181571.7
(32)【優先日】2021-06-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516004949
【氏名又は名称】ジェイティー インターナショナル エスエイ
【住所又は居所原語表記】8,rue Kazem Radjavi,1202 Geneva,SWITZERLAND
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100138759
【弁理士】
【氏名又は名称】大房 直樹
(72)【発明者】
【氏名】ピラトビッチ,グジェゴシュ・アレクサンデル
【テーマコード(参考)】
4B162
5G503
【Fターム(参考)】
4B162AA03
4B162AA22
4B162AB12
4B162AC32
4B162AC34
4B162AD06
4B162AD08
4B162AD22
4B162AD23
5G503AA01
5G503BA03
5G503BB01
5G503DA02
5G503DA13
5G503DA18
(57)【要約】
直列に接続可能な第1のバッテリセル(104-1)及び第2のバッテリセル(104-2)と、スイッチング手段(501、502、503)と、コントローラ(102)とを備えるエアロゾル発生デバイス電力システムが提供される。コントローラは、バッテリセルの一方がエアロゾル化セッションを終了するのに十分なエネルギーレベルを有しておらず、他方のバッテリセルが有することを特定することに応答して、電力システムを第1の状態から第2の状態に切り替えるようスイッチング手段を制御する。第1の状態において、両方のバッテリセルは、電力をヒータコンポーネント108に直列に供給するよう構成される。第2の状態において、エアロゾル化セッションを終了するのに十分なエネルギーレベルを有するバッテリセルのうちの1つのみがヒータコンポーネントに電力を供給するよう構成されるように、バッテリセルのうちの一方が、他方とは独立してヒータコンポーネントに接続される。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エアロゾル発生デバイス電力システムであって、前記電力システムは、ヒータコンポーネントに接続可能であり、前記電力システムは、
直列に接続可能な第1のバッテリセル及び第2のバッテリセルと、
前記第1のバッテリセル及び前記第2のバッテリセルから前記ヒータコンポーネントへの電力フローを制御するよう構成されるスイッチング手段と、
前記第1のバッテリセル及び前記第2のバッテリセルのそれぞれのエネルギーパラメータを監視し、前記スイッチング手段を制御するよう構成されるコントローラであって、トリガ条件を検出することに応答して、前記電力システムを第1の状態から第2の状態に切り替えるよう前記スイッチング手段を制御するよう構成されるコントローラと、を備え、
前記トリガ条件は、前記コントローラが、前記第1のバッテリセルの前記監視したエネルギーパラメータ及び前記第2のバッテリセルの前記監視したエネルギーパラメータに基づいて、前記第1のバッテリセル又は前記第2のバッテリセルの一方がエアロゾル化セッションを終了するのに十分なエネルギーレベルを有しておらず、前記第1のバッテリセル及び前記第2のバッテリセルの他方が前記エアロゾル化セッションを終了又は延長するのに十分なエネルギーレベルを有することを特定することを含み、
前記第1の状態において、前記第1のバッテリセル及び前記第2のバッテリセルは、電力を前記ヒータコンポーネントに直列に供給するよう構成され、
前記第2の状態において、前記エアロゾル化セッションを終了又は延長するのに十分なエネルギーレベルを有する前記第1のバッテリセル又は前記第2のバッテリセルのうちの一方のみが、前記ヒータコンポーネントに電力を供給するよう構成されるように、前記第1のバッテリセル又は前記第2のバッテリセルのうちの一方が、前記第1のバッテリセル又は前記第2のバッテリセルのうちの他方とは独立して前記ヒータコンポーネントに接続される、
エアロゾル発生デバイス電力システム。
【請求項2】
前記コントローラは、エアロゾル化セッション中に、前記第1のバッテリセルの前記エネルギーパラメータ及び前記第2のバッテリセルの前記エネルギーパラメータを監視するよう構成され、
前記エアロゾル化セッション中に前記トリガ条件を特定することに応答して、前記コントローラは、前記エアロゾル化セッションの残りの間、前記電力システムを前記第1の状態から前記第2の状態に切り替えるよう構成される、
請求項1に記載のエアロゾル発生デバイス電力システム。
【請求項3】
前記コントローラは、エアロゾル化セッションを開始する前に、前記第1のバッテリセルの前記エネルギーパラメータ及び前記第2のバッテリセルの前記エネルギーパラメータを監視するよう構成され、
前記エアロゾル化セッションを開始する前に前記トリガ条件を特定することに応答して、前記コントローラは、前記エアロゾル化セッションのために前記電力システムを前記第2の状態に設定するよう構成される、
請求項1又は2に記載のエアロゾル発生デバイス電力システム。
【請求項4】
前記エアロゾル化セッションを開始する前に前記トリガ条件を特定することに応答して、前記コントローラは、更に、前記エアロゾル化セッションにおける予熱時間を増加させるよう構成される、請求項3に記載のエアロゾル発生デバイス電力システム。
【請求項5】
前記第1のバッテリセルの前記エネルギーパラメータは、前記第1のバッテリセルの電圧レベルであり、前記第2のバッテリセルの前記エネルギーパラメータは、前記第2のバッテリセルの電圧レベルである、請求項1~4のいずれか一項に記載のエアロゾル発生デバイス電力システム。
【請求項6】
前記コントローラは、前記第1のバッテリセルの前記電圧レベルと前記第2のバッテリセルの前記電圧レベルとの間の差と所定の閾電圧とに基づいて、前記第1のバッテリセル又は前記第2のバッテリセルのうちの一方がエアロゾル化セッションを終了するのに十分なエネルギーレベルを有しておらず、前記第1のバッテリセル及び前記第2のバッテリセルのうちの他方が前記エアロゾル化セッションを終了又は延長するのに十分なエネルギーレベルを有することを特定するよう構成される、請求項5に記載のエアロゾル発生デバイス電力システム。
【請求項7】
前記第1のバッテリセル及び前記第2のバッテリセルは、2s1pバッテリパックのコンポーネントである、請求項1~6のいずれか一項に記載のエアロゾル発生デバイス電力システム。
【請求項8】
前記スイッチング手段は、前記第2のバッテリセルと直列に接続される第1のスイッチング手段を備え、前記第2のバッテリセルは、前記第1のバッテリセルと前記第1のスイッチング手段との間に接続される、請求項1~7のいずれか一項に記載のエアロゾル発生デバイス電力システム。
【請求項9】
前記スイッチング手段は、第2のスイッチング手段が閉じられると、前記第2のバッテリセルがバイパス可能であるように、前記第1のバッテリセルと前記第2のバッテリセルとの間のノードに接続され、前記第2のバッテリセルと並列である前記第2のスイッチング手段を備える、請求項1~8のいずれか一項に記載のエアロゾル発生デバイス電力システム。
【請求項10】
前記スイッチング手段は、第3のスイッチング手段が閉じられると、前記第1のバッテリセルがバイパス可能であるように、前記第1のバッテリセルと前記第2のバッテリセルとの間のノードに接続され、前記第1のバッテリセルと並列である前記第3のスイッチング手段を備える、請求項1~9のいずれか一項に記載のエアロゾル発生デバイス電力システム。
【請求項11】
更に、前記第1のバッテリセル及び/又は前記第2のバッテリセルからの前記電力フローを、前記ヒータコンポーネントに供給されるパルス幅変調電力フローに変換するよう構成されるパルス幅変調モジュールを備える、請求項1~10のいずれか一項に記載のエアロゾル発生デバイス電力システム。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか一項に記載のエアロゾル発生デバイス電力システムを備えるエアロゾル発生デバイス。
【請求項13】
前記エアロゾル発生デバイスは、たばこロッドを受け入れ、前記たばこロッドを燃焼させることなく加熱して、エアロゾル化セッションにおいてエアロゾルを生成するよう構成される、請求項12に記載のエアロゾル発生デバイス。
【請求項14】
エアロゾル発生デバイス電力システムを動作させる方法であって、前記電力システムは、直列に接続可能な第1のバッテリセル及び第2のバッテリセルと、前記第1のバッテリセル及び前記第2のバッテリセルから前記電力システムに接続可能なヒータコンポーネントへの電力フローを制御するよう構成されるスイッチング手段とを備え、前記方法は、
前記第1のバッテリセル及び前記第2のバッテリセルのそれぞれのエネルギーパラメータを監視することと、
トリガ条件を検出することであって、前記トリガ条件は、前記第1のバッテリセルの前記監視したエネルギーパラメータ及び前記第2のバッテリセルの前記監視したエネルギーパラメータに基づいて、前記第1のバッテリセル又は前記第2のバッテリセルの一方がエアロゾル化セッションを終了するのに十分なエネルギーレベルを有しておらず、前記第1のバッテリセル及び前記第2のバッテリセルの他方が前記エアロゾル化セッションを終了又は延長するのに十分なエネルギーレベルを有することを特定することを含む、ことと、
前記トリガ条件を検出することに応答して、前記電力システムを第1の状態から第2の状態に切り替えるよう前記スイッチング手段を制御することであって、
前記第1の状態において、前記第1のバッテリセル及び前記第2のバッテリセルは、電力を前記ヒータコンポーネントに直列に供給するよう構成され、
前記第2の状態において、前記エアロゾル化セッションを終了又は延長するのに十分なエネルギーレベルを有する前記第1のバッテリセル又は前記第2のバッテリセルのうちの一方のみが、前記ヒータコンポーネントに電力を供給するよう構成されるように、前記第1のバッテリセル又は前記第2のバッテリセルのうちの一方が、前記第1のバッテリセル又は前記第2のバッテリセルのうちの他方とは独立して前記ヒータコンポーネントに接続される、ことと、を含む、
方法。
【請求項15】
命令を格納する非一時的コンピュータ読取可能媒体であって、直列に接続可能な第1のバッテリセル及び第2のバッテリセルと、前記第1のバッテリセル及び前記第2のバッテリセルから電力システムに接続可能なヒータコンポーネントへの電力フローを制御するよう構成されるスイッチング手段と、を備えるエアロゾル発生デバイス電力システムと共に動作するために構成されるコントローラの1つ以上のプロセッサによって実行される場合、前記1つ以上のプロセッサに、
前記第1のバッテリセル及び前記第2のバッテリセルのそれぞれのエネルギーパラメータを監視することと、
トリガ条件を検出することであって、前記トリガ条件は、前記第1のバッテリセルの前記監視したエネルギーパラメータ及び前記第2のバッテリセルの前記監視したエネルギーパラメータに基づいて、前記第1のバッテリセル又は前記第2のバッテリセルの一方がエアロゾル化セッションを終了するのに十分なエネルギーレベルを有しておらず、前記第1のバッテリセル及び前記第2のバッテリセルの他方が前記エアロゾル化セッションを終了又は延長するのに十分なエネルギーレベルを有することを特定することを含む、ことと、
前記トリガ条件を検出することに応答して、前記電力システムを第1の状態から第2の状態に切り替えるよう前記スイッチング手段を制御することであって、
前記第1の状態において、前記第1のバッテリセル及び前記第2のバッテリセルは、電力を前記ヒータコンポーネントに直列に供給するよう構成され、
前記第2の状態において、前記エアロゾル化セッションを終了又は延長するのに十分なエネルギーレベルを有する前記第1のバッテリセル又は前記第2のバッテリセルのうちの一方のみが、前記ヒータコンポーネントに電力を供給するよう構成されるように、前記第1のバッテリセル又は前記第2のバッテリセルのうちの一方が、前記第1のバッテリセル又は前記第2のバッテリセルのうちの他方とは独立して前記ヒータコンポーネントに接続される、ことと、を含むステップを実行させる命令を格納する、
非一時的コンピュータ読取可能媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアロゾル発生デバイスに関し、より詳細には、エアロゾル発生デバイスの電力システムに関する。
【背景技術】
【0002】
電子たばこ及び他のエアロゾル吸入器又は気化デバイス等のエアロゾル発生デバイスは、一層人気のある消費者向け製品となっている。
【0003】
気化又はエアロゾル化のための加熱デバイスは、当該技術分野において公知である。かかるデバイスは、一般に、加熱チャンバ及びヒータを含んでいる。動作中、操作者は、エアロゾル化又は気化させる製品を加熱チャンバ内に挿入する。製品は、次いで、電子ヒータにより加熱されて、操作者が吸入するために製品の成分を気化させる。幾つかの実施例において、製品は、従来の紙巻きたばこと同様のたばこ製品である。かかるデバイスは、製品が燃焼されることなくエアロゾル化点まで加熱されるという点で、「加熱非燃焼式」デバイスと称することもある。
【0004】
公知のエアロゾル発生デバイスが直面する問題は、エネルギーの効果的利用を提供することを含む。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
第1の態様において、エアロゾル発生デバイス電力システムであって、電力システムは、ヒータコンポーネントに接続可能であり、電力システムは、
直列に接続可能な第1のバッテリセル及び第2のバッテリセルと、
第1のバッテリセル及び第2のバッテリセルからヒータコンポーネントへの電力フローを制御するよう構成されるスイッチング手段と、
第1のバッテリセル及び第2のバッテリセルのそれぞれのエネルギーパラメータを監視し、スイッチング手段を制御するよう構成されるコントローラであって、トリガ条件を検出することに応答して、電力システムを第1の状態から第2の状態に切り替えるようスイッチング手段を制御するよう構成されるコントローラと、を備え、
トリガ条件は、コントローラが、第1のバッテリセルの監視したエネルギーパラメータ及び第2のバッテリセルの監視したエネルギーパラメータに基づいて、第1のバッテリセル又は第2のバッテリセルの一方がエアロゾル化セッションを終了するのに十分なエネルギーレベルを有しておらず、第1のバッテリセル及び第2のバッテリセルの他方がエアロゾル化セッションを終了又は延長するのに十分なエネルギーレベルを有することを特定することを含み、
第1の状態において、第1のバッテリセル及び第2のバッテリセルは、電力をヒータコンポーネントに直列に供給するよう構成され、
第2の状態において、エアロゾル化セッションを終了又は延長するのに十分なエネルギーレベルを有する第1のバッテリセル又は第2のバッテリセルのうちの一方のみが、ヒータコンポーネントに電力を供給するよう構成されるように、第1のバッテリセル又は第2のバッテリセルのうちの一方が、第1のバッテリセル又は第2のバッテリセルのうちの他方とは独立してヒータコンポーネントに接続される、エアロゾル発生デバイス電力システムが提供される。
【0006】
このようにして、バッテリセルを直列に接続することの利点が活用される一方で、直列のバッテリセルのうちの1つがエアロゾル化セッションを完了するのに不十分なエネルギーを有していた場合に生じる電力システムの性能に対する制限を未然に防いでいる。バッテリセルを直列に接続することの利点は、より高い出力電圧を含むことができ、これは、ヒータに必要な電力を供給するために電力システムにDC/DC又はステップアップコンバータを含む必要性を排除し、それによって、エネルギー損失を低減し、デバイス内により高い抵抗を有するヒータ技術の実装を可能にし、デバイス内により高い抵抗を有するヒータ技術の実装を可能にし、より高いエネルギー密度バッテリが用いられるように各バッテリセル上の最大電流要件の低減を可能にし、高速充電のより効率的且つ容易な実装を提供する。従って、エネルギーリソースの使用及び改善されたデバイス設計の提供において改善がもたらされる。
【0007】
好ましくは、コントローラは、エアロゾル化セッション中に、第1のバッテリセルのエネルギーパラメータ及び第2のバッテリセルのエネルギーパラメータを監視するよう構成され、
エアロゾル化セッション中にトリガ条件を特定することに応答して、コントローラは、エアロゾル化セッションの残りの間、電力システムを第1の状態から第2の状態に切り替えるよう構成される。
【0008】
このようにして、エアロゾル化セッションを終了するのに十分なエネルギーレベルを有していないより弱いバッテリセルは、電力システム全体の性能を制限せず、既に開始されたエアロゾル化セッションを完了又は延長することができる。
【0009】
好ましくは、コントローラは、エアロゾル化セッションを開始する前に、第1のバッテリセルのエネルギーパラメータ及び第2のバッテリセルのエネルギーパラメータを監視するよう構成され、
エアロゾル化セッションを開始する前にトリガ条件を特定することに応答して、コントローラは、エアロゾル化セッションのために電力システムを第2の状態に設定するよう構成される。
【0010】
このようにして、エアロゾル化セッションを終了するのに十分なエネルギーレベルを有していないより弱いバッテリセルは、電力システム全体の性能を制限せず、エアロゾル化セッションを実行することができる。
【0011】
好ましくは、エアロゾル化セッションを開始する前にトリガ条件を特定することに応答して、コントローラは、更に、エアロゾル化セッションにおける予熱時間を増加させるよう構成される。
【0012】
このようにして、エアロゾル化セッションのための十分なエネルギーを有するバッテリセルに対する歪みが低減され、単一のバッテリセルは、エアロゾル化セッションのための十分なエネルギーレベルを有していないより弱いバッテリセルが電力システム全体の性能を制限することなく、エアロゾル化セッションを実行することができる。
【0013】
好ましくは、第1のバッテリセルのエネルギーパラメータは、第1のバッテリセルの電圧レベルであり、第2のバッテリセルのエネルギーパラメータは、第2のバッテリセルの電圧レベルである。
【0014】
このようにして、コントローラは、バッテリセル電圧の特定に基づいてエアロゾル化セッションを完了することができるかどうかを特定することができる。
【0015】
代替として、第1のバッテリセルのエネルギーパラメータは、時間の関数としての第1のバッテリセルの電圧レベルの変化率であり、第2のバッテリセルのエネルギーパラメータは、時間の関数としての第2のバッテリセルの電圧レベルの変化率である。
【0016】
好ましくは、コントローラは、第1のバッテリセルの電圧レベルと第2のバッテリセルの電圧レベルとの間の差と所定の閾電圧とに基づいて、第1のバッテリセル又は第2のバッテリセルのうちの一方がエアロゾル化セッションを終了するのに十分なエネルギーレベルを有しておらず、第1のバッテリセル及び第2のバッテリセルのうちの他方がエアロゾル化セッションを終了又は延長するのに十分なエネルギーレベルを有することを特定するよう構成される。
【0017】
好ましくは、バッテリセルの電圧が所定の閾電圧を上回る場合、バッテリセルは、エアロゾル化セッションを完了又は延長するのに十分なエネルギーを有すると特定される。好ましくは、電圧が所定の閾電圧を超えていない場合、バッテリセルはエアロゾル化セッションを完了するのに十分なエネルギーを有していないと特定される。
【0018】
代替として、コントローラは、2つのバッテリセル間の監視したエネルギーパラメータ(例えば、電圧)間の差が所定の閾差を超える場合、第1のバッテリセル又は第2のバッテリセルの一方がエアロゾル化セッションを終了するのに十分なエネルギーレベルを有しておらず、他方のバッテリセルがエアロゾル化セッションを終了又は延長するのに十分なエネルギーレベルを有することを特定する。2つのバッテリセル間の監視したエネルギーパラメータ(例えば、電圧)間の差が所定の閾差を超える場合、より低い電圧を有するバッテリセルは、エアロゾル化セッションを終了するのに十分なエネルギーレベルを有していないバッテリセルであると考えることができる。
【0019】
好ましくは、第1のバッテリセル及び第2のバッテリセルは、2s1pバッテリパックのコンポーネントである。
【0020】
このようにして、2s1pバッテリパックをエアロゾル発生デバイスに組み込むことができ、これは、かかるバッテリパック又は「パウチセル」が充電の間に複数のエアロゾル化セッション(例えば、20セッション)のための電力を供給することができるという利点をもたらす。2s1pパック内のバッテリセル間の直列接続はまた、より高い出力電圧を供給する。
【0021】
2s1pバッテリパックは、向上した安全性を提供することができる。例えば、1s2pバッテリと比較すると、一方のセルが内部短絡する(又は低電圧状態に移行する)場合、他方のセルは、それを通してそれ自体を放電することができず、それによって、過剰な熱の発生を回避する。更に、2つの独立したバッテリを用いることと比較して、2s1pバッテリパックは、向上した効率及びより高い電圧を提供することができる。2つの独立したバッテリはまた、並列充電のための種々の充電器及びチップを必要とする可能性があるより複雑な制御を有する可能性があり、それによって、デバイスにおけるコスト及び設計の複雑さを増加させる。2s1pバッテリパックを用いることは、これらの問題を回避する。
【0022】
好ましくは、スイッチング手段は、第2のバッテリセルと直列に接続される第1のスイッチング手段を備え、第2のバッテリセルは、第1のバッテリセルと第1のスイッチング手段との間に接続される。
【0023】
好ましくは、スイッチング手段は、第2のスイッチング手段が閉じられると、第2のバッテリセルがバイパス可能であるように、第1のバッテリセルと第2のバッテリセルとの間のノードに接続され、第2のバッテリセルと並列である第2のスイッチング手段を備える。
【0024】
好ましくは、スイッチング手段は、第3のスイッチング手段が閉じられると、第1のバッテリセルがバイパス可能であるように、第1のバッテリセルと第2のバッテリセルとの間のノードに接続され、第1のバッテリセルと並列である第3のスイッチング手段を備える。
【0025】
好ましくは、第1のスイッチング手段、第2のスイッチング手段、及び/又は第3のスイッチング手段はそれぞれ、コントローラによって制御されるトランジスタである。
【0026】
好ましくは、エアロゾル発生デバイス電力システムは、更に、第1のバッテリセル及び/又は第2のバッテリセルからの電力フローを、ヒータコンポーネントに供給されるパルス幅変調電力フローに変換するよう構成されるパルス幅変調モジュールを備える。
【0027】
このようにして、固定電力レベルを、第1及び/又は第2のバッテリセルから出力することができ、次いで、ヒータコンポーネントに供給される前に調整することができる。
【0028】
第2の態様において、第1の態様のエアロゾル発生デバイス電力システムを備えるエアロゾル発生デバイスが提供される。
【0029】
好ましくは、エアロゾル発生デバイスは、たばこロッドを受け入れ、たばこロッドを燃焼させることなく加熱して、エアロゾル化セッションにおいてエアロゾルを生成するよう構成される。
【0030】
第3の態様において、エアロゾル発生デバイス電力システムを動作させる方法であって、電力システムは、直列に接続可能な第1のバッテリセル及び第2のバッテリセルと、第1のバッテリセル及び第2のバッテリセルから電力システムに接続可能なヒータコンポーネントへの電力フローを制御するよう構成されるスイッチング手段とを備え、方法は、
第1のバッテリセル及び第2のバッテリセルのそれぞれのエネルギーパラメータを監視することと、
トリガ条件を検出することであって、トリガ条件は、第1のバッテリセルの監視したエネルギーパラメータ及び第2のバッテリセルの監視したエネルギーパラメータに基づいて、第1のバッテリセル又は第2のバッテリセルの一方がエアロゾル化セッションを終了するのに十分なエネルギーレベルを有しておらず、第1のバッテリセル及び第2のバッテリセルの他方がエアロゾル化セッションを終了又は延長するのに十分なエネルギーレベルを有することを特定することを含む、ことと、
トリガ条件を検出することに応答して、電力システムを第1の状態から第2の状態に切り替えるようスイッチング手段を制御することであって、
第1の状態において、第1のバッテリセル及び第2のバッテリセルは、電力をヒータコンポーネントに直列に供給するよう構成され、
第2の状態において、エアロゾル化セッションを終了又は延長するのに十分なエネルギーレベルを有する第1のバッテリセル又は第2のバッテリセルのうちの一方のみが、ヒータコンポーネントに電力を供給するよう構成されるように、第1のバッテリセル又は第2のバッテリセルのうちの一方が、第1のバッテリセル又は第2のバッテリセルのうちの他方とは独立してヒータコンポーネントに接続される、ことと、を含む方法が提供される。
【0031】
第4の態様において、命令を格納する非一時的コンピュータ読取可能媒体であって、直列に接続可能な第1のバッテリセル及び第2のバッテリセルと、第1のバッテリセル及び第2のバッテリセルから電力システムに接続可能なヒータコンポーネントへの電力フローを制御するよう構成されるスイッチング手段と、を備えるエアロゾル発生デバイス電力システムと共に動作するために構成されるコントローラの1つ以上のプロセッサによって実行される場合、1つ以上のプロセッサに、
第1のバッテリセル及び第2のバッテリセルのそれぞれのエネルギーパラメータを監視することと、
トリガ条件を検出することであって、トリガ条件は、第1のバッテリセルの監視したエネルギーパラメータ及び第2のバッテリセルの監視したエネルギーパラメータに基づいて、第1のバッテリセル又は第2のバッテリセルの一方がエアロゾル化セッションを終了するのに十分なエネルギーレベルを有しておらず、第1のバッテリセル及び第2のバッテリセルの他方がエアロゾル化セッションを終了又は延長するのに十分なエネルギーレベルを有することを特定することを含む、ことと、
トリガ条件を検出することに応答して、電力システムを第1の状態から第2の状態に切り替えるようスイッチング手段を制御することであって、
第1の状態において、第1のバッテリセル及び第2のバッテリセルは、電力をヒータコンポーネントに直列に供給するよう構成され、
第2の状態において、エアロゾル化セッションを終了又は延長するのに十分なエネルギーレベルを有する第1のバッテリセル又は第2のバッテリセルのうちの一方のみが、ヒータコンポーネントに電力を供給するよう構成されるように、第1のバッテリセル又は第2のバッテリセルのうちの一方が、第1のバッテリセル又は第2のバッテリセルのうちの他方とは独立してヒータコンポーネントに接続される、ことと、を含むステップを実行させる命令を格納する非一時的コンピュータ読取可能媒体が提供される。
【0032】
第2の態様のエアロゾル発生デバイス、第3の態様の方法、及び第4の態様の非一時的コンピュータ読取可能媒体は、第1の態様の好ましい特徴と適宜組み合わせることができる。
【0033】
ここで、図面を参照して本発明の実施形態を例として説明する。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1】エアロゾル発生デバイスのブロック図である。
図2】エアロゾル発生デバイスの動作モードのフロー図である。
図3A】エアロゾル化セッションの時間に対するヒータ温度のプロットである。
図3B】エアロゾル化セッションの時間に対するヒータへ供給される電力のプロットである。
図3C】エアロゾル化セッションの時間に対するエネルギー消費のプロットである。
図4】パルス幅変調電力フローのプロットである。
図5】第1の状態における電力システムの図である。
図6A】第1のバッテリセルのみがヒータに電力供給するよう構成される第2の状態における電力システムの図である。
図6B】第2のバッテリセルのみがヒータに電力を供給するよう構成される第2の状態における電力システムの図である。
図7】フロートフェーズの間に第2の状態に再構成される電力システムの時間に対するヒータへ供給される電力のプロットである。
図8】エアロゾル化セッションを開始する前に第2の状態に再構成される電力システムの時間に対するヒータへ供給される電力のプロットである。
図9】充電及び放電サイクル数が増加するにつれて、多数のバッテリセルの充電容量の変化のプロットである。
図10】多数のバッテリセルの放電容量のプロットである。
図11】電力システムを第1の状態から第2の状態に切り替えることを特定することにおいてコントローラによって実行されるステップのプロセスフローである。
【発明を実施するための形態】
【0035】
図1は、電子たばことしても公知のエアロゾル発生デバイス100又は蒸気発生デバイスのコンポーネントのブロック図を示している。本説明の目的のために、蒸気及びエアロゾルという用語は置き替え可能であることが理解されよう。
【0036】
エアロゾル発生デバイス100は、コントローラ102を含む本体部分112と、エネルギー貯蔵モジュール104を備える電力システムとを有している。電力システムは、複数の選択可能な動作モードにおいて動作可能である。コントローラ102は、後で説明するように、選択された動作モードに基づいて、エネルギー貯蔵モジュール104の電力フローを制御するよう構成されている。コントローラ102は、選択可能な動作モードを実行し、且つ電力フローを制御するための命令を含むエアロゾル発生デバイス100を動作させるための命令がそれに格納されるメモリと、命令を実行するよう構成される1つ以上のプロセッサとを備える少なくとも1つのマイクロコントローラユニットとすることができる。
【0037】
一実施例において、ヒータ108は本体部分112により収容される。かかる実施例において、図1に示すように、ヒータ108は、本体部分112内のキャビティ110又はチャンバ内に配置される。キャビティ110は、本体部分112における開口部110Aによってアクセスされる。キャビティ110は、関連するエアロゾル発生消耗品114を受け入れるよう配置される。エアロゾル発生消耗品は、たばこを含有するたばこロッド等のエアロゾル発生材料を含有することができる。たばこロッドは、従来の紙巻きたばこと同様であることができる。キャビティ110は、エアロゾル発生消耗品114のものと略等しい断面と、関連するエアロゾル発生消耗品114がキャビティ110に挿入される場合に、エアロゾル発生消耗品114の第1の端部114Aがキャビティ110の底部110B(即ち、キャビティ開口部110Aから遠位のキャビティ110の端部110B)に到達し、第1の端部114Aより遠位のエアロゾル発生消耗品114の第2の端部114Bがキャビティ110から外側に延在するような深さとを有する。このようにして、消費者は、エアロゾル発生消耗品114がエアロゾル発生デバイス100に挿入される場合に、それを吸入することができる。図1の実施例において、ヒータ108は、エアロゾル発生消耗品114がキャビティ110内に挿入される場合にヒータ108と係合するように、キャビティ110内に配置される。図1の実施例において、ヒータ108は、エアロゾル発生消耗品の第1の端部114Aがキャビティ内に挿入される場合にヒータ108がキャビティ110内部のエアロゾル発生消耗品114の一部を実質的に又は完全に取り囲むように、キャビティ内に管として配置される。ヒータ108は、コイル状ワイヤヒータ等のワイヤ、又はセラミックヒータ、又は任意の他の適切な種類のヒータとすることができる。ヒータ108は、順次、独立して作動する(即ち、電源投入される)ことができる、キャビティの軸方向長さに沿って連続的に配置される複数の発熱体を備えることができる。
【0038】
代替の実施形態(図示せず)において、ヒータは、キャビティ内部に細長い穿孔部材(針、ロッド、又はブレードの形態等)として配置することができ、かかる実施形態において、ヒータは、エアロゾル発生消耗品を貫通し、エアロゾル発生消耗品がキャビティ内に挿入される場合にエアロゾル発生材と係合するよう配置することができる。
【0039】
別の代替実施形態(図示せず)において、ヒータは誘導ヒータの形態であってもよい。かかる実施形態において、発熱体(即ち、サセプタ)が消耗品内に設けられ、発熱体は、消耗品がキャビティに挿入されると、キャビティ内の誘導素子(即ち、誘導コイル)に誘導結合される。誘導ヒータは、次いで、誘導によって発熱体を加熱する。
【0040】
ヒータ108は、発熱体又は誘導コイル等のヒータコンポーネントであり得ることが、前述から理解されるであろう。以下、かかるヒータコンポーネントをヒータと称するが、この用語は、前述のヒータコンポーネントのいずれか、並びにより一般的なヒータを指すことができることは理解されるであろう。
【0041】
ヒータ108は、エアロゾル発生消耗品114を所定の温度まで加熱してエアロゾル化セッションにおいてエアロゾルを生成するよう配置される。エアロゾル化セッションは、デバイスがエアロゾル発生消耗品114からエアロゾルを生成するよう操作される場合と考えることができる。エアロゾル発生消耗品114がたばこロッドである実施例において、エアロゾル発生消耗品114はたばこを備える。ヒータ108は、エアロゾルを発生させるよう、たばこを燃焼させることなくたばこを加熱するよう配置される。即ち、ヒータ108は、たばこベースのエアロゾルが生成されるように、たばこの燃焼点未満の所定の温度でたばこを加熱する。当業者は、エアロゾル発生消耗品114が必ずしもたばこを備えている必要はなく、特に物質を燃焼させることなく加熱することによるエアロゾル化(又は気化)のための任意の他の適切な物質がたばこの代わりに用いることができることを容易に理解するであろう。
【0042】
代替例において、エアロゾル発生消耗品は気化可能な液体とすることができる。気化可能液体は、エアロゾル発生デバイス内に受け入れ可能なカートリッジ内に収容することができるか、又はエアロゾル発生デバイス内に直接入れることができる。
【0043】
エネルギー貯蔵モジュール104は、1つ以上のバッテリ又はバッテリパック(単数又は複数)とすることができる。特定の実施例において、エネルギー貯蔵モジュールは、直列に接続される2つのバッテリセルを含む2s1pバッテリ又はバッテリパックとすることができる。
【0044】
コントローラ102は、エアロゾル化セッションの選択された動作モードに基づいて、エネルギー貯蔵モジュール104の電力フローを制御するよう構成される。動作モードは、予熱モード及びフロートモードを含むことができる。
【0045】
予熱モードからフロートモードへの進行は、図2から理解することができる。
【0046】
予熱モード202において、エアロゾル発生デバイス100に関連するヒータ108は、エアロゾル発生消耗品114からエアロゾルを発生させるための所定の温度まで加熱される。予熱フェーズは、予熱モードが実行されている時間、例えば、ヒータ108が所定の温度に達するのにかかる時間と考えることができる。予熱モードはエアロゾル化セッションの第1の期間中に生じる。一実施例において、第1の期間は、固定された所定の期間とすることができる。他の実施例において、第1の期間は、ヒータ108を所定の温度まで加熱するのに必要な時間の長さに対応して変化することができる。
【0047】
予熱フェーズが完了すると、コントローラ102は予熱モード202を終了し、電力システムを制御してフロートモード204を実行する。フロートモード204において、コントローラ102は、消費者が吸入するためにエアロゾルが生成されるように、ヒータ108を実質的に所定の温度に維持するよう電力システムからの電力フローを制御する。フロートフェーズは、フロートモードが実行されている時間、例えば、ヒータ108が予熱フェーズ後に1つの(又は1つの少なくとも一部の)エアロゾル発生消耗品114をエアロゾル化している時間と考えることができる。コントローラ102は、エアロゾル化動作の第2の期間にわたりフロートモードを動作させるよう電力システムを制御することができる。第2の期間は予め決定され、コントローラ102に格納することができる。
【0048】
図3A、3B、及び3Cは、エアロゾル化セッションのための時間302に対するヒータ温度304、ヒータに供給される平均電力312、及び総エネルギー消費314(それぞれ)の例示的なプロットを示している。予熱フェーズにおいて、コントローラ102は、ヒータ温度が所定の温度306に達するまで、第1の期間308に、電力をヒータに印加するよう電力システムを制御する。一実施例において、所定の温度は230℃である。一実施例において、第1の期間は20秒である。幾つかの実施例において、コントローラ102は、固定された所定の第1の期間内にヒータを所定の温度まで加熱するよう構成される。他の実施例において、第1の期間は、ヒータが所定の温度に達するのにかかる時間の長さに応じて変化する。
【0049】
ヒータが所定の温度306に達すると、コントローラ102は、第2の期間310に、動作モードをフロートモードに切り替え、この第2の期間310に、ヒータの温度を実質的に所定の温度306に維持する。一実施例において、第2の期間は250秒であってよい。
【0050】
通常、ヒータを所定温度に維持する場合のフロートモードにおいて、予熱モードにおいてヒータを所定温度に加熱するようヒータに印加される電力レベルよりも低い電力レベルがヒータに印加される。このことは、図3Bにおいて、第2の期間310(フロートモード)においてヒータに供給される電力が、第1の期間308(予熱モード)においてヒータに供給される電力よりも低いことから見て取ることができる。ヒータに供給される電力レベルは、種々の手段によって、例えば、エネルギー貯蔵モジュールからの電力出力を調整することによって、又は(後に説明するように)パルス幅変調電力フローにおけるオン/オフ周期を調整することによって、制御することができる。
【0051】
エアロゾル化セッションに続いて、エアロゾル発生デバイスのユーザに、消耗品がもはやエアロゾル化されていないことに気付くように、視覚的又は聴覚的インジケータによりエアロゾル化セッションが終了した旨を知らせることができる。
【0052】
予熱モード及びフロートモードにおいて、コントローラ102は、電力フローが1つ以上のパルス幅変調サイクルを有するパルス幅変調された電力フローであるように、電力システムからヒータへの電力フローを制御する。例示的なパルス幅変調電力フローを、図4に示している。パルス幅変調電力フローは、1つ以上のパルス幅変調(PWM)サイクル402(パルス幅変調切替期間としても知られる)を備える。単一のPWMサイクル、すなわち切替期間402は、1つのPWMサイクル「オン期間」Dと、1つのPWMサイクル「オフ期間」1-Dと、を備える。PWMサイクルオン期間DとPWMサイクルオフ期間1-Dとの組み合わせは、全体のPWMサイクル又は切替期間402を形成する。
【0053】
PWMサイクルのPWMオン期間中、ヒータへの電力ラインにおいてPWM制御を実施するスイッチを閉じることによって、電力がヒータに印加される。PWMオフ期間中、ヒータへの電力ラインにおいてPWM制御を実施するスイッチを開くことによって、電力はヒータに印加されない。そのPWM制御を実施するスイッチは、例えば、コントローラ102によって制御されるPWMモジュール内のトランジスタとすることができる。
【0054】
1つのパルス幅変調サイクル402は、オン状態とオフ状態との間での電力の1回の切り替えを含み、従って、パルス幅変調電力フローは、デューティサイクルによってPWMオン期間とオフ期間との間で急速に切り替えられる電力フローのヒータへの連続的な給電を含む。
【0055】
パルス幅変調デューティサイクルは、周期402の合計期間(D+(1-D))(即ち、切替期間402の「オン期間」と「オフ期間」の合計)の比率としてのオン期間(D)に対応する。
【0056】
複数のPWM周期を含むパルス幅変調電力フローは、デューティサイクルに基づくPWMオン期間とPWMオフ期間の平均電力をヒータに連続的に給電する。デューティサイクルの制御により、ヒータに供給される電力の量を制御する。パルス幅変調電力フローのデューティサイクルが高いほど高い平均電力が供給され、パルス幅変調電力フローのデューティサイクルが低いほど低い平均電力が供給される。即ち、デューティサイクルが高いほど、低いデューティサイクルに比べて周期402のより大きな比率が「オン期間」Dとなる。このようにして、ヒータに印加される電力のレベルの慎重な制御を、パルス幅変調電力フローのデューティサイクルの制御によって達成することができる。
【0057】
フロートモードにおいて、コントローラ102は、電力システムを制御して、第1のデューティサイクルレジームでパルス幅変調電力フローをヒータに印加して、ヒータを実質的に所定のエアロゾル発生温度に維持するよう構成されている。予熱モードにおいて、コントローラ102は、電力システムを制御して、第1のデューティサイクルレジームと異なる第2のデューティサイクルレジームでパルス幅変調電力フローをヒータに印加して、ヒータをエアロゾル発生温度に加熱するよう構成されている。第2のデューティサイクルレジームは、第1のデューティサイクルレジームよりも高いデューティサイクルを有することができ、このようにして、ヒータを所定の温度まで急速に加熱するためにより大きい量の電力がヒータに印加される一方で、ヒータを所定の温度に維持するためにより小さい量の電力が使用される。第1のデューティサイクルレジームは、第1のデューティサイクル比D1を有する1つ以上のPWM周期を含み、第2のデューティサイクルレジームは、第2のデューティサイクル比D2を有する1つ以上のPWM周期を含み、D1とD2との間の関係は、D2=D1×Kであると考えることができ、式中、Kは、>>1の係数であり、実装の選択肢として選択することができる。理論上の最大デューティサイクルは、オフ期間のない1、又は非常に短いオフ期間のある1に近いが1未満である。実施例において、第1のデューティサイクルレジームは、1よりもはるかに小さいデューティサイクル比を有する1つ以上のデューティサイクルを含み、第2のデューティサイクルレジームは、1に近いが1未満のデューティサイクル比を有する1つ以上のデューティサイクルを含む。他の実施例において、第1のデューティサイクルレジームは、<<0.5のデューティサイクル比を有する1つ以上のデューティサイクルを含み、第2のデューティサイクルレジームは、≧0.5のデューティサイクル比を有する1つ以上のデューティサイクルを含む。更なる実施例において、第1のデューティサイクルは、フロートモードにおいて<3Wが印加されるように構成され、第2のデューティサイクルは、予熱モードにおいて約16Wが印加されるように構成されている。他の実施例において、第1のデューティサイクルレジームは、ヒータを所定の温度に維持するためにフロートモード中にデューティサイクルが適合されるという点で可変とすることができ、通常、第1のデューティサイクルレジームにおけるこの可変デューティサイクルは、予熱モードのための第2のデューティサイクルレジームにおいて用いられるより高いデューティサイクルよりも小さい。
【0058】
図5は、図1~4を参照して説明した電力システムの特定の実装を示している。
【0059】
図5の実施例において、エネルギー貯蔵モジュール104は、互いに直列に接続される第1のバッテリセル104-1及び第2のバッテリセル104-2を有するバッテリパック(2s1pバッテリパック)である。代替例において、2s1pバッテリパックは、互いに直列に接続される2つの別個のバッテリであってもよい。
【0060】
第1のバッテリセル104-1及び第2のバッテリセル104-2は、第1のバッテリセル104-1及び第2のバッテリセル104-2の一方又は両方がエアロゾル化セッション中にヒータ108に電力を供給するように、ヒータ108に接続される。
【0061】
電力システムは、更に、図4を参照して説明したような、第1のバッテリセル104-1及び第2のバッテリセル104-2からの電力フローを、ヒータ108に供給されるPWM電力フローに変換するよう構成されるPWMモジュール504を備える。PWMモジュールは、コントローラ102によって制御される。
【0062】
ヒータ温度センサ(明確にするため、図示せず)は、ヒータ温度又は加熱キャビティ/チャンバ110内の温度を監視するよう、コントローラ102と通信して、ヒータ108に配置することができる。コントローラがバッテリセルの動作温度を監視することができるように、コントローラ102と通信する1つ以上のバッテリ温度センサ(明確にするため、やはり図示せず)を第1のバッテリセル104-1及び第2のバッテリセル104-2に配置することもできる。
【0063】
図5の電力システムは、3つのスイッチ、第1のスイッチング手段501と、第2のスイッチング手段502と、第3のスイッチング手段503とを備えるスイッチング手段を有する。
【0064】
第1のスイッチング手段501は、第2のバッテリセル104-2と直列に接続され、第2のバッテリセル104-2は、第1のバッテリセル104-1と第1のスイッチング手段501との間に接続される。第2のスイッチング手段502は、第2のスイッチング手段502が閉じられる場合に、第2のバッテリセル104-2がバイパス可能であるように、第1のバッテリセル104-1と第2のバッテリセル104-2との間のノードに接続され、第2のバッテリセル10-4と並列である。第3のスイッチング手段503は、第3のスイッチング手段503が閉じられる場合に、第1のバッテリセルがバイパス可能であるように、第1のバッテリセル104-1と第2のバッテリセル104-2との間のノードに接続され、第1のバッテリセル104-1と並列である。第1のスイッチング手段501、第2のスイッチング手段502、及び第3のスイッチング手段503は、コントローラ102によって制御されるよう接続されるトランジスタとすることができる。
【0065】
図5において、電力システムは第1の状態にある。第1の状態において、第1のバッテリセル及び第2のバッテリセルの両方は、電力をヒータに供給するよう構成される。第1のスイッチング手段501は閉じられ、第2のスイッチング手段502は開かれ、第3のスイッチング手段503は開かれる。このようにして、電力システムは、第1のバッテリセル104-1及び第2のバッテリ104-2の両方が直列に接続されてヒータ108に電力を供給するように構成される。
【0066】
トリガ条件の検出に応答して、コントローラは、電力システムが第1の状態から第2の状態に再構成されるようにスイッチング手段を制御することができる。第2の状態において、第1のバッテリセル104-1又は第2のバッテリセル104-2のうちの一方のみが、ヒータに電力供給するよう構成される。
【0067】
図6Aは、第1のバッテリセルのみがヒータに電力供給するよう構成される第2の状態に再構成される図5の電力システム(又は第1の再構成状態)を示している。第2のバッテリセルはバイパス/切り離されている。これは、第1のスイッチング手段が開き、第2のスイッチング手段が閉じ、第3のスイッチング手段が開くように、スイッチング手段を切り替えることによって達成される。
【0068】
図6Bは、第2のバッテリセルのみがヒータに電力供給するよう構成される第2の状態に再構成される図5の電力システム(又は第2の再構成状態)を示している。第1のバッテリセルはバイパス/切り離されている。これは、第1のスイッチング手段が閉じ、第2のスイッチング手段が開き、第3のスイッチング手段が閉じるように、スイッチング手段を切り替えることによって達成される。
【0069】
第3のスイッチング手段503は、閉じられた場合に第1のバッテリセル104-1をバイパスさせることを可能にするので、第1のバッテリセル104-1のためのバイパススイッチと考えることができる。第2のスイッチング手段502は、閉じられた場合に第2のバッテリセル104-2をバイパスさせることを可能にするので、第2のバッテリセル104-2のためのバイパススイッチと考えることができる。
【0070】
コントローラ102は、第1のバッテリセル104-1及び第2のバッテリセル104-2のエネルギーパラメータを監視するよう構成される。例えば、コントローラ102は、第1のバッテリセル104-1及び第2のバッテリセル104-2のそれぞれの電圧を監視することができる。このようにして、第1のバッテリセル104-1のエネルギーパラメータは、第1のバッテリセル104-1の電圧レベルとすることができ、第2のバッテリセル104-2のエネルギーパラメータは、第2のバッテリセル104-2の電圧レベルとすることができる。明確にするために図5及び6には示していないが、これは、第1のバッテリセル104-1の両端に接続される第1の電圧計と、第2のバッテリセル104-2の両端に接続される第2の電圧計とによってもたらすことができ、第1の電圧計及び第2の電圧計はコントローラ102と通信する。幾つかの実施例において、第1の電圧計は、第1のバッテリセルに接続される電圧センサ又は電圧感知回路として実装されてもよく、第2の電圧計は、第2のバッテリセルに接続される電圧センサ又は電圧感知回路として実装されてもよい。
【0071】
前述のトリガ条件は、コントローラ102が電力システムを第1の状態から第2の状態に切り替えるようスイッチング手段を制御することの検出時に、第1のバッテリセル104-1又は第2のバッテリセル104-2のうちの一方がエアロゾル化セッションを終了するのに十分なエネルギーレベルを有しておらず、第1のバッテリセル104-1及び第2のバッテリセル104-2のうちの他方がエアロゾル化セッションを終了するのに十分なエネルギーレベルを有することを、コントローラ102が特定することを含む。この特定は、第1のバッテリセル104-1の監視したエネルギーパラメータ及び第2のバッテリセル104-2の監視したエネルギーパラメータに基づく。
【0072】
コントローラ102が、第1のバッテリセル104-1の監視したエネルギーパラメータ及び第2のバッテリセル104-2の監視したエネルギーパラメータに基づいて、第2のバッテリセル104-2がエアロゾル化セッションを終了するのに十分なエネルギーレベルを有しておらず、第1のバッテリセル104-1がエアロゾル化セッションを終了するのに十分なエネルギーレベルを有すると特定する場合、コントローラ102は、電力システムを第1の状態から図6Aを参照して説明した第2の状態に切り替える。このようにして、エアロゾル化セッションを終了するのに十分なエネルギーを有する第1のバッテリセル104-1は、第2のバッテリセル104-2とは独立してヒータ108に接続される。エアロゾル化セッションを終了するのに十分なエネルギーを有していない第2のバッテリセル104-2は、ヒータ108から切り離される。このため、エアロゾル化セッションを終了するのに十分なエネルギーレベルを有する第1のバッテリセル104-1のみが、ヒータ108に電力を供給するよう構成される。
【0073】
コントローラ102が、第1のバッテリセル104-1の監視したエネルギーパラメータ及び第2のバッテリセル104-2の監視したエネルギーパラメータに基づいて、第1のバッテリセル104-1がエアロゾル化セッションを終了するのに十分なエネルギーレベルを有しておらず、第2のバッテリセル104-2がエアロゾル化セッションを終了するのに十分なエネルギーレベルを有すると特定する場合、コントローラ102は、電力システムを第1の状態から図6Bを参照して説明した第2の状態に切り替える。このようにして、エアロゾル化セッションを終了するのに十分なエネルギーを有する第2のバッテリセル1042は、第1のバッテリセル104-1とは独立してヒータ108に接続される。エアロゾル化セッションを終了するのに十分なエネルギーを有していない第1のバッテリセル104-1は、ヒータ108から切り離される。このため、エアロゾル化セッションを終了するのに十分なエネルギーレベルを有する第2のバッテリセル104-2のみが、ヒータ108に電力を供給するよう構成される。
【0074】
言い換えれば、バッテリセルの一方がエアロゾル化セッションを終了するのに十分なエネルギーレベルを有しておらず、他方のバッテリセルがエアロゾル化セッションを終了又は延長するのに十分なエネルギーレベルを有するとコントローラ102が特定する場合、コントローラは、エアロゾル化セッションを終了又は延長するのに十分なエネルギーレベルを有するバッテリセルのみがヒータに接続されるように電力システムを再構成するようスイッチング手段を制御する。いずれのバッテリセルもエアロゾル化セッションを終了又は延長するのに十分なエネルギーレベルを有していない場合、エアロゾル化セッションは再構成することなく継続する。
【0075】
第1のバッテリセル104-1と第2のバッテリセル104-2とを直列に接続することは、例えば、バッテリを並列に接続するよりも高い出力電圧が供給されるという点で有利である。このより高い出力電圧は、ヒータ108に必要な電力を供給するために、電力システムにおいてDC/DC又はステップアップコンバータを含む必要性を排除する。その結果、DC/DC又はステップアップコンバータを含むことによるエネルギー効率の損失が回避され、部品コストが削減される。より高い出力電圧の供給はまた、デバイス内により高い抵抗を有するヒータ技術の実装も可能にする。
【0076】
更に、より高い電力を達成するよう電圧を増加させることは、各バッテリセル上の最大電流要件の低減を可能にする。これにより、より高いエネルギー密度のバッテリ(即ち、同じエネルギー含有量に対してより小さいサイズのバッテリ)を用いることが可能になる。
【0077】
他の利点は、高速充電のより効率的でより容易な実施の提供において見出される。充電電力は、同じ範囲の電流レートで増加させることができる。通常、より高い電流レートは、より良好な熱管理のために、デバイスサイズの増加を要求する。同じ範囲の電流レートで充電電力を増加させることを可能にすることによって、この問題は回避される。更に、高電流用のシャグリニングIC及び電子機器の限られた選択の問題が制限され、従って、この問題も回避される。
【0078】
しかし、2つのバッテリセルの直列での使用(例えば、2s1pバッテリパック)は、バッテリセルの一方が他方よりも弱い場合に問題が生じる可能性がある。第1の状態において、第1のバッテリセル104-1及び第2のバッテリセル104-2が直列に接続されるため、より弱いバッテリセル(即ち、エアロゾル化セッションを終了するのに十分なエネルギーを有していないバッテリセル)は、バッテリパックの性能を制限する。より弱いセルは、セル/システム電圧を極めて低いレベルに「引き寄せる」。これは、より強力なバッテリセルが利用可能な十分なエネルギーを有する場合であっても、バッテリパックがエアロゾル化セッションを完了するのに必要な電力を供給することを妨げる可能性がある。
【0079】
この問題は、時間と共に、又は充電及び放電サイクルの数と共により一般的になるバッテリセル間の不均一性によって引き起こされる可能性がある。
【0080】
図9を参照すると、充電及び放電サイクル902の数が増加するにつれて、多数のバッテリセルの充電容量904の変化のプロットが提示されている。このデータは、PANASONICによって製造される48個の市販の18650 2Ahセルに関する(結果は、Journal of Power Sources,Volume 247,1 February 2014,Pages 332-338に掲載されている)。2s1pバッテリパックは、約20回のエアロゾル化セッション(即ち、20本のたばこロッドをエアロゾル化すること)に対する電荷を蓄えることができる。消費者が1日当たり20回のエアロゾル化セッションを行うことに基づくと、線906は、約2年の使用に相当する。見てわかるように、最も高い容量を有するバッテリセルと最も低い容量を有するバッテリセルとの間には目に見える差がある。この差は、充電及び放電サイクルの数と共に増加している。約2年後、広がりは5%にもなる可能性があり、これはエアロゾル化セッション全体に相当する。これは、2年間の使用後に、かつて20回のエアロゾル化セッションに電力供給することができたエアロゾル発生デバイスが、19回のセッションしか電力供給することができないことを意味している。線908は、約3年の使用に対応し、最も高い容量を有するバッテリセルと最も低い容量を有するバッテリセルとの間の差異は、更に大きい。2s1pバッテリパックが、この充電容量範囲の上端に第1のバッテリセルを含み、この充電容量範囲の下端に第2のバッテリセルを含む場合、バッテリパックの全体的な性能は、より弱い第2のバッテリセルによって制限されることになる。その結果、エアロゾル発生デバイスの寿命が影響を受ける。
【0081】
新しいバッテリセルであっても、例えば製造公差に起因して、セル間に不均一性が存在する可能性がある。図10は、20個の350mAhパウチセルの放電容量のプロットを示している。見てわかるように、最も高い放電容量を有するバッテリセル(番号14)と最も低い放電容量を有するバッテリセル(番号8)の放電容量間には、かなりの差(約4mAh又は1.1%)がある。
【0082】
バッテリセル間の不均一性は、エアロゾル発生デバイス内部の温度勾配によっても引き起こされる可能性があり、これは、バッテリセルのそれぞれに対して異なる温度及び異なる劣化速度を引き起こす可能性がある。バッテリセル間の異なる温度はまた、2つのバッテリセル間の異なる自己放電率を引き起こす可能性がある。
【0083】
上で説明したように、直列配置におけるより弱いバッテリセルは、バッテリパック全体の性能を制限する。本発明は、かかる問題を克服する。第1のバッテリセル104-1又は第2のバッテリセル104-2のうちの一方が、第1のバッテリセル104-1又は第2のバッテリセル104-2のうちの他方とは独立してヒータコンポーネント108に接続される第2の状態に切り替えることにより、より弱いバッテリセル(不十分なエネルギーレベルを有するバッテリセル)が切り離されるため、より弱いバッテリセルに関連する問題を克服する。これは、より弱いセルに起因する性能の制限を取り除く。
【0084】
これは、バッテリセルを直列に接続することの利点を活用することを可能にする一方で、直列のバッテリセルのうちの1つがエアロゾル化セッションを完了するのに不十分なエネルギーを有する場合に生じる問題を回避する。
【0085】
第1のバッテリセル104-1及び第2のバッテリセル104-2のエネルギーパラメータの監視、並びにトリガ条件の検出は、エアロゾル化セッション中又はエアロゾル化セッション前に行うことができる。
【0086】
コントローラ102は、エアロゾル化セッション中に第1のバッテリセル104-1のエネルギーパラメータ及び第2のバッテリセル104-2のエネルギーパラメータを監視するよう構成することができる。エアロゾル化セッション中にトリガ条件を特定することに応答して、コントローラ102は、エアロゾル化セッションの残りの間、電力システムを第1の状態から第2の状態に切り替えるよう構成される。
【0087】
即ち、エアロゾル化セッション中に、第1のバッテリセル104-1がセッションを完了するのに十分なエネルギーレベルを有していない(即ち、第1のバッテリセル104-1がより弱いセルである)が、第2のバッテリセル104-2がセッションを完了するのに十分なエネルギーレベルを有することをコントローラ102が識別した場合、コントローラ102は、電力システムを第1の状態(例えば、図5)から、第2のバッテリセル104-2のみがヒータ108に電力を供給するよう構成される第2の状態(例えば、図6B)に切り替える。
【0088】
図7は、予熱フェーズ708及びフローティングフェーズ710を有するエアロゾル化セッションについて、時間702に対するヒータに供給される電力712のプロットを示している。エアロゾル化セッション中、コントローラ102は、第1のバッテリセル104-1及び第2のバッテリセル104-2の場合のエネルギーパラメータを監視している。時間t1において、コントローラ102は、第1のバッテリセル104-1がエアロゾル化セッションを終了するのに十分なエネルギーレベルを有していないと特定する。即ち、エアロゾル化セッションの終了前に、第1のバッテリセル104-1は平坦になる。見てわかるように、時間t1の後、セッションを終了するのに必要な電力は、セッション全体に必要な電力に比べて比較的低い。第2のバッテリセル104-2がエアロゾル化セッションを終了する(又は少なくともそれを延長する)のに十分なエネルギーレベルを有するとコントローラ102が特定した場合、コントローラ102は、電力システムを第1の状態(例えば図5)から、第2のバッテリセル104-2のみがヒータに電力を供給するよう構成される第2の状態(例えば図6B)に切り替えることができる。このようにして、より弱い第1のバッテリセル104-1は、電力システム全体の性能を制限せず、既に開始されたエアロゾル化セッションを完了することができる。
【0089】
同様に、エアロゾル化セッション中に、第2のバッテリセル104-2がセッションを完了するのに十分なエネルギーレベルを有していない(即ち、第2のバッテリセルがより弱いセルである)が、第1のバッテリセル104-1がセッションを完了するのに十分なエネルギーレベルを有することをコントローラ102が識別した場合、コントローラ102は、電力システムを第1の状態(例えば、図5)から、第1のバッテリセル104-1のみがヒータ108に電力を供給するよう構成される第2の状態(例えば、図6A)に切り替える。
【0090】
即ち、両方のバッテリセルは、予熱フェーズ及びフロートフェーズの一部のために電力を供給することができ、一方のバッテリセルは、フロートフェーズの残りの部分のために電力を供給する。
【0091】
エアロゾル化セッション中に第1のバッテリセル及び第2のバッテリセルのエネルギーパラメータを監視するよう構成されることに加えて、又はその代わりに、コントローラ102はまた、エアロゾル化セッションを開始する前に、第1のバッテリセル104-1のエネルギーパラメータ及び第2のバッテリセル104-2のエネルギーパラメータを監視するよう構成することもできる。エアロゾル化セッションを開始する前にトリガ条件を特定することに応答して、コントローラ102は、エアロゾル化セッションのために電力システムを第2の状態に設定するよう構成される。
【0092】
即ち、エアロゾル化セッション前に、第1のバッテリセル104-1がセッションを完了するのに十分なエネルギーレベルを有していない(即ち、第1のバッテリセルがより弱いセルである)が、第2のバッテリセル104-2がセッションを完了する(又は第1のバッテリセル104-1に対して部分的に完了/延長する)のに十分なエネルギーレベルを有することをコントローラ102が識別した場合、コントローラ102は、エアロゾル化セッションが開始する場合に第2のバッテリセル104-2のみがヒータ108に電力を供給するよう構成される第2の状態(例えば、図6B)になるように電力システムを切り替える。
【0093】
図8は、予熱フェーズ808及びフローティングフェーズ810を有するエアロゾル化セッションについて、時間802に対するヒータ108に供給される電力812のプロットを示している。エアロゾル化セッション前、コントローラ102は、第1のバッテリセル104-1及び第2のバッテリセル104-2の場合のエネルギーパラメータを監視する。エアロゾル化セッションが始まる前に、第1のバッテリセル104-1がエアロゾル化セッションを完了するのに十分なエネルギーレベルを有していないと、コントローラ102が特定した場合、コントローラ102は、第2のバッテリセル104-2のみがエアロゾル化セッションのためにヒータ108に電力を供給するように構成される第2の状態(例えば、図6B)になるように、電力システムを切り替えることができる。このようにして、より弱い第1のバッテリセル104-1は、電力システム全体の性能を制限せず、エアロゾル化セッションを実行することができる。
【0094】
同様に、エアロゾル化セッション前に、第2のバッテリセル104-2がセッションを完了するのに十分なエネルギーレベルを有していない(即ち、第2のバッテリセルがより弱いセルである)が、第1のバッテリセル104-1がセッションを完了する(又は第2のバッテリセル104-2に対して部分的に完了/延長する)のに十分なエネルギーレベルを有することをコントローラ102が識別した場合、コントローラ102は、エアロゾル化セッションが開始する場合に第1のバッテリセル104-1のみがヒータ108に電力を供給するよう構成される第2の状態(例えば、図6A)になるように電力システムを切り替える。
【0095】
エアロゾル化セッションが始まる前に、第1のバッテリセル104-1又は第2のバッテリセル104-2のうちの一方がセッションを完了するのに十分なエネルギーレベルを有していないが、他方のバッテリセルがセッションを完了するのに十分なエネルギーレベルを有していると、コントローラ102が特定した場合、バッテリセルのうちの一方のみがエアロゾル化セッションに電力供給するために用いられるように(先に説明したように)、コントローラ102は、バッテリパック内の単一のセルによって電力供給されるエアロゾル化セッションに対応するよう、予熱モードのパラメータを調整することができる。例えば、予熱フェーズにおいて印加される電力レベルを低減して、単一のバッテリセルにかかる歪みを低減することができる。ヒータ108を適切に予熱するために、予熱時間808を次いで増加させることができる。これは、図8において見ることができ、予熱フェーズ808における印加電力レベル(P2)は、予熱のために両方のバッテリセルを用いる図7の予熱フェーズ(P1)における印加電力レベルよりも比較的低く、図8の予熱フェーズ808は、図7の予熱フェーズ708よりも時間が比較的長い。
【0096】
このようにして、より弱いバッテリセルは、電力システム全体の性能を制限せず、エアロゾル発生デバイスがエアロゾル化セッションを実行することができることを低減又は阻害しない。
【0097】
上述の実施例において、エアロゾル化セッションが始まる前に、バッテリセルのうちの1つがエアロゾル化セッションを完了するのに十分な充電レベルを有していないと特定することは、バッテリパックがその作動寿命の終わりに達していることを示すことができる。このため、コントローラ102がエアロゾル化セッションを開始する前にトリガ条件を特定する場合、コントローラ102は、インジケータ又はインターフェースによって、デバイス及び/又はバッテリが直ぐに交換されるべきであることをオペレータに知らせるよう構成することができる。
【0098】
監視したエネルギーパラメータに基づいて、コントローラ102は、電力システムを第1の状態から第2の状態へ再構成することなく、第1の状態から第2の状態への再構成を伴って、エアロゾル化セッションを完了することができるかどうか、又は再構成を伴って、若しくは伴わずに、エアロゾル化セッションを終了することが達成可能ではないかどうかを特定することができる。再構成の有無に関わらずエアロゾル化セッションを終了することが達成可能ではない場合、コントローラは、バッテリパックが空であることをユーザに示すことを特定することができる。
【0099】
前述の実施例において、コントローラ102は、第1のバッテリセル104-1及び第2のバッテリセル104-2のエネルギーパラメータを監視し、トリガ条件は、コントローラ102が、第1のバッテリセル104-1の監視したエネルギーパラメータ及び第2のバッテリセル104-2の監視したエネルギーパラメータに基づいて、第1のバッテリセル104-1又は第2のバッテリセル104-2の一方がエアロゾル化セッションを終了するのに十分なエネルギーレベルを有しておらず、第1のバッテリセル104-1及び第2のバッテリセル104-2の他方がエアロゾル化セッションを終了又は延長するのに十分なエネルギーレベルを有することを特定することを含む。
【0100】
一実施例において、監視したエネルギーパラメータは、第1のバッテリセル104-1の電圧及び第2のバッテリセル104-2の電圧である。バッテリセルの電圧が所定の閾電圧を上回る場合、バッテリセルは、エアロゾル化セッションを完了する(又は延長する)のに十分なエネルギーを有すると特定される。電圧が所定の閾電圧を超えていない場合、バッテリセルはエアロゾル化セッションを完了するのに十分なエネルギーを有していないと特定される。幾つかの実施例において、所定の閾電圧は、固定電圧レベルとすることができる。他の実施例において、所定の閾電圧は、エアロゾル化セッションの残り時間と共に時間変化し得る。所定の閾電圧は、コントローラ102に関連付けられるメモリに格納することができる。
【0101】
関連する実施例において、第1のバッテリセル104-1の電圧の変化率及び第2のバッテリセル104-2の電圧の変化率は、エアロゾル化セッションにおける時間の関数として監視される(即ち、エアロゾル化セッションにおける時間の関数としての電圧減少率)。変化率が所定の閾値を超えない場合、バッテリセルは、エアロゾル化セッションを完了する(又は延長する)のに十分なエネルギーを有すると特定される。変化率が所定の閾値を上回る場合、完全に放電されようとしているセルは、完全に放電されようとしていないセルよりも著しく高い電圧勾配を示すため、バッテリセルは、エアロゾル化セッションを完了するのに十分なエネルギーを有していないと特定される。所定の閾変化率は、コントローラ102に関連付けられるメモリに格納することができる。
【0102】
別の実施例において、コントローラは、2つのバッテリセル間の監視したエネルギーパラメータ(例えば、電圧)間の差が所定の許容差(又は閾差)を超える場合、バッテリセルの一方がエアロゾル化セッションを終了するのに十分なエネルギーレベルを有しておらず、他方のバッテリセルがエアロゾル化セッションを終了するのに十分なエネルギーレベルを有すると特定する。2つのバッテリセル間の監視したエネルギーパラメータ(例えば、電圧)間の差が所定の閾差を超える場合、より低い電圧を有するバッテリセルは、エアロゾル化セッションを終了するのに十分なエネルギーレベルを有していないバッテリセルであると考えることができる。許容差を超える2つのバッテリセル間の電圧差は、一方のセルが他方よりも弱いことを示すことができる。
【0103】
別の実施例において、コントローラは、バッテリセルの一方がエアロゾル化セッションを終了するのに十分なエネルギーレベルを有しておらず、他方のバッテリセルがエアロゾル化セッションを終了する(又は延長する)のに十分なエネルギーレベルを有することを、両方のセルにおける利用可能なエネルギーの連続的な特定を用いて、完全なエアロゾル化セッションが2つのセルにより、1つのセルへの再構成により達成可能であるかどうか、又は電力システムの再構成の有無に関わらず達成可能ではないかどうかの決定を行うことによって特定することができる。かかる連続的な特定は、充電状態推定アルゴリズム、健全状態及び利用可能電力推定アルゴリズムにより行うことができる。
【0104】
図11は、前述の説明に従って電力システムを第1の状態から第2の状態に切り替えることを特定することにおいてコントローラ102によって実行されるステップの例示的なプロセスフローを提示している。先に説明した特徴のいずれもこのプロセスフローに含まれ得ることは理解されるであろう。
【0105】
ステップS1101において、コントローラ102は、第1のバッテリセル104-1及び第2のバッテリセル104-2のそれぞれのエネルギーパラメータを監視する。
【0106】
ステップS1102において、コントローラ102は、トリガ条件を検出する。トリガ条件は、第1のバッテリセル104-1の監視したエネルギーパラメータ及び第2のバッテリセル104-2の監視したエネルギーパラメータに基づいて、第1のバッテリセル104-1又は第2のバッテリセル104-2の一方がエアロゾル化セッションを終了するのに十分なエネルギーレベルを有しておらず、第1のバッテリセル104-1及び第2のバッテリセル104-2の他方がエアロゾル化セッションを終了又は延長するのに十分なエネルギーレベルを有することを特定することを含む。
【0107】
ステップS1103において、コントローラ102は、トリガ条件の検出に応答して、電力システムを第1の状態から第2の状態に切り替えるようスイッチング手段を制御する。第1の状態において、第1のバッテリセル104-1及び第2のバッテリセル104-2は、電力をヒータコンポーネント108に直列に供給するよう構成される。第2の状態において、エアロゾル化セッションを終了するのに十分なエネルギーレベルを有する第1のバッテリセル104-1又は第2のバッテリセル104-2の一方のみがヒータ108に電力を供給するよう構成されるように、第1のバッテリセル104-1又は第2のバッテリセル104-2の一方が、第1のバッテリセル104-1又は第2のバッテリセル104-2の他方とは独立してヒータコンポーネントに接続される。
【0108】
前述の説明において、コントローラ102は、説明した方法でエアロゾル発生デバイス及び電力システムを制御するための命令を格納することができる。当業者は、コントローラ102が、必要に応じて互いに組み合わせて前述の方法のいずれかを実行するよう構成することができることを容易に理解するであろう。コントローラ102によって実行される本明細書に記載の処理ステップは、コントローラ102に関連付けられる非一時的コンピュータ読取可能媒体又はストレージに格納されてもよい。コンピュータ読取可能媒体は、不揮発性媒体及び揮発性媒体を含むことができる。揮発性媒体は、特に、半導体メモリ及び動的メモリを含むことができる。不揮発性媒体は、特に、光学ディスク及び磁気ディスクを含むことができる。
【0109】
前述の説明における先行実施形態は限定ではないことが、当業者には容易に理解されるであろう。各実施形態の特徴は、必要に応じて他の実施形態に組み込まれてもよい。
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図4
図5
図6A
図6B
図7
図8
図9
図10
図11
【国際調査報告】