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特表2024-524118体内での治療に適したナノゲンを気化させる装置及びその装置を含む装置
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  • 特表-体内での治療に適したナノゲンを気化させる装置及びその装置を含む装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-05
(54)【発明の名称】体内での治療に適したナノゲンを気化させる装置及びその装置を含む装置
(51)【国際特許分類】
   A61N 7/02 20060101AFI20240628BHJP
【FI】
A61N7/02
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023577746
(86)(22)【出願日】2022-06-16
(85)【翻訳文提出日】2024-01-29
(86)【国際出願番号】 TR2022050599
(87)【国際公開番号】W WO2022265611
(87)【国際公開日】2022-12-22
(31)【優先権主張番号】2021/009884
(32)【優先日】2021-06-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】514023586
【氏名又は名称】アセルサン・エレクトロニク・サナイ・ヴェ・ティジャレット・アノニム・シルケティ
【氏名又は名称原語表記】Aselsan Elektronik Sanayi ve Ticaret Anonim Sirketi
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100225543
【弁理士】
【氏名又は名称】上原 真
(72)【発明者】
【氏名】チャン バリス トップ
【テーマコード(参考)】
4C160
【Fターム(参考)】
4C160JJ33
4C160JJ36
4C160JJ38
4C160JJ50
(57)【要約】
本発明は、体内の特定の標的部位(V)において治療効果または診断効果、あるいは治療効果と診断効果の両方を有するナノ薬剤(E)を気化させるための装置(1)および装置(1)を構成する装置(10)に関する。アセンブリ(1)は、第1の方向に第1の磁場(MF1)を発生するように構成された少なくとも1つの第1の磁気要素(2)と、第1の方向と実質的に反対の方向に第2の磁場(MF2)を発生するように構成された少なくとも1つの第2の磁気要素(3)とを備える、磁場自由領域(MFFR)に位置する磁性ナノ粒子(B)を励起するための可変磁場(MF3)を発生するように構成された少なくとも1つの第3磁性素子(4)であって、第1の磁場(MF1)と第2の磁場(MF2)とが反対方向に向けられ、互いの効果を抑制する、第3磁性素子(4)、可変磁場(MF3)が印加された磁性ナノ粒子(B)の磁化を測定するように構成された少なくとも1つの受信コイル(5)と、磁場自由領域(MFFR)に位置するナノ試薬(E)に音響波(AW)を送信することによって超音波エネルギーを印加するように構成された少なくとも1つの第1の超音波トランスデューサ(6)とを備える。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の方向に第1の磁場(MF1)を発生するように構成された少なくとも1つの一次磁気要素(2)であって、予め身体(V)に導入された気化可能な液体(A)と、液体(A)中に配置された磁気特性を有するナノ粒子(B)からなるコア(C)と、コア(C)を取り囲み、コア(C)を外部環境から分離する表面(D)とを備え、治療効果または診断効果、あるいは治療効果と診断効果の両方を有するナノ薬剤(E)の気化を可能にする、少なくとも1つの一次磁気要素(2); 第1の方向に第1の磁場(MF1)を発生するように構成された少なくとも1つの第1の磁気要素(2)、第1の方向とは実質的に反対の方向に第2の磁場(MF2)を発生するように構成された少なくとも1つの第2の磁気要素(3)、磁場自由領域(MFFR)に位置する磁性ナノ粒子(B)を励起するための可変磁場(MF3)を発生するように構成された少なくとも1つの第3磁性素子(4)であって、第1の磁場(MF1)と第2の磁場(MF2)とが反対方向に向けられ、互いの効果を抑制する、第3磁性素子(4)、可変磁場(MF3)が印加される磁性ナノ粒子(B)の磁化を測定するように構成され、ナノ薬剤(E)の蒸発中に一定の超音波周波数を生じさせ、前記超音波周波数で組織内に慣性キャビテーションを生じさせるのに十分な少なくとも1つの受信コイル(5)を含み 所定の最小絶対圧よりも低い絶対圧を有する音響波(AW)を送信するように構成された少なくとも1つの第1の超音波トランスデューサ(6)と、を備えることを特徴とするアセンブリ(1)。
【請求項2】
第1の超音波トランスデューサ(6)が、磁場自由領域(MFFR)に位置するナノ薬剤(E)に1MHz未満の周波数を有する音響波(AW)を送信することによって超音波エネルギーを印加するように構成されていることを特徴とする、請求項1に記載のアセンブリ(1)。
【請求項3】
三次磁気要素(4)が、150kHz未満の周波数を有する可変磁場(MF3)を発生するように構成されていることを特徴とする、請求項1または2に記載のアセンブリ(1)。
【請求項4】
三次磁気要素(4)は、100kHzから500kHzの間の周波数を有する可変磁場(MF3)を発生するように構成されていることを特徴とする、請求項1または2に記載のアセンブリ(1)。
【請求項5】
第1の超音波トランスデューサ(6)が、磁場自由領域(MFFR)内の気化したナノ薬剤(E)を慣性キャビテーション状態に誘導するのに十分な絶対圧を有する音響波(AW)を送信するように構成されていることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載のアセンブリ(1)。
【請求項6】
少なくとも1つの第2の超音波トランスデューサ(7)が、蒸発するナノ試薬(E)を画像化するように構成されていることを特徴とする、前記請求項のいずれか1項に記載の装置(1)。
【請求項7】
第1の超音波トランスデューサ(6)および/または第2の超音波トランスデューサ(7)と本体(V)との間に音響波(AW)の低損失伝送を提供するように構成された少なくとも1つの結合要素(8)を備えることを特徴とする、前記請求項のいずれか1項に記載のアセンブリ(1)。
【請求項8】
第1の超音波トランスデューサ(6)、第2の超音波トランスデューサ(7)及び結合要素(8)が、モノリシック構造を形成するように互いに組み合わせて配置されていることを特徴とする、請求項7に記載のアセンブリ(1)。
【請求項9】
三次磁気素子(4)によって発生される可変磁場(MF3)の方向に対して垂直な2つの方向に磁場を発生するように構成された複数の撮像磁気素子と、これらの方向の磁性ナノ粒子(B)の磁化信号を受信するように構成された撮像受信コイルとを備えることを特徴とする、前記請求項のいずれか1項に記載のアセンブリ(1)。
【請求項10】
アセンブリ(1)と、アセンブリ(1)を制御可能に駆動し、その動作を制御するように構成された少なくとも1つの制御ユニット(9)とを備える、請求項1から9のいずれか一項に記載の装置(10)。
【請求項11】
治療効果もしくは診断効果、または治療効果および診断効果の両方を有するナノ薬剤(E)を気化させる方法であって、予め身体(V)に導入された気化可能な液体(A)と、液体(A)中に配置された磁性ナノ粒子(B)からなるコア(C)と、コア(C)を包囲し、コア(C)を外部環境から分離する表面(D)とを含み、ナノ薬剤(E)が治療効果または診断効果を有することを特徴とする方法;
第1の磁場(MF1)と第2の磁場(MF2)を発生させ、身体(V)内の治療が必要な患部上に無磁場領域(MFFR)を形成すること、
磁場自由領域(MFFR)を覆うように特別に発生させた可変磁場(MF3)による、磁場自由領域(MFFR)に位置するナノ試薬(E)内に含まれる磁性ナノ粒子(B)の励起および/または加熱
特定の超音波周波数を有する音響波(AW)、およびその超音波周波数で組織に慣性キャビテーションを引き起こすのに十分な所定の最小絶対圧よりも低い絶対圧を印加することによる、磁場自由領域(MFFR)に位置するナノ試薬(E)の気化 ステップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、治療効果もしくは診断効果、または治療効果と診断効果の両方を有するナノ薬剤を、体内の特定の標的部位で気化させるための装置、およびその装置を含む装置に関連する。
【背景技術】
【0002】
マイクロ・ナノスケールのセラノシス(治療・診断)剤の開発は、微生物・細胞レベルで様々な病気を治療し、治療結果をモニターするための個別化されたプラットフォームを提供する。例えば、がん関連因子の過剰発現を認識する抗体を添加した薬剤入りナノ粒子を用いて、がん細胞を標的にすることができる。
【0003】
ナノ粒子は、pH、温度、光、圧力などの刺激に応答して薬物を放出することができ、ハイパーサーミア治療にも使用できる。理想的には、治療薬は病変部(例えば腫瘍)にのみ有効で、健康な組織にはダメージを与えないことが望ましい。治療中に患部に適用される薬剤の投与量をモニターすることも、治療の効果を高める。
【0004】
マイクロバブルは、超音波の圧力波(音響波)下で体積変化を起こすことができる、気体で満たされたマイクロスケールの粒子である。この粒子は超音波信号を高い確率で散乱し返すため、体内に静脈注射され、超音波画像診断で血管を高コントラストで画像化するための造影剤として使用される。マイクロバブルの体積膨張と収縮(キャビテーション)は、毛細血管の内皮細胞間の空間を広げ、血液-臓器バリアを開く。このような応用の例としては、血液脳関門(脳の毛細血管の周囲にある構造で、大きな分子が通過するのを防ぐことで脳を保護している)を一時的に開くことが挙げられる。この血液脳関門は、脳疾患の治療において、治療薬や薬剤の脳への輸送を妨げる可能性がある。米国特許文献US6514221で公知技術として説明されているように、超音波エネルギーを体内の微小気泡のある部位に印加することで、血液臓器関門を開き、治療薬を血管外に放出することができる。マイクロバブルの構造を乱すことなく収縮・膨張することを安定キャビテーションという。超音波の出力が比較的高い場合、マイクロバブルは膨張し、突然崩壊することがある。その間に高いエネルギーが発生し、それに伴って非常に小さな体積の中で温度が非常に高くなり、フリーラジカルが発生する。この現象は慣性キャビテーションと呼ばれる。マイクロバブルを用いて血液脳関門を開通させるためには、十分に高い超音波エネルギーを印加することで安定したキャビテーションを実現する必要があるが、慣性キャビテーションを防ぐためには、印加する音響波の絶対圧をある閾値以下に抑える必要がある。これを実現するために、キャビテーション活性は、例えば音響センサーによって連続的に監視され、この監視プロセス中に慣性キャビテーションが検出されると、マイクロバブルに印加される超音波エネルギー、すなわち音響波の絶対圧が低減される。慣性キャビテーション閾値(慣性キャビテーションに必要な超音波出力)は、印加する超音波の絶対圧に依存し、印加する超音波周波数が低くなるにつれて低下する。頭蓋骨の減衰効果は周波数が高くなるにつれて大きくなるので、頭蓋内超音波アプリケーションは比較的低い周波数(<1MHz)で行うことができる。その結果、脳内治療では慣性キャビテーションが発生する確率が比較的高くなる。このため、治療中に健康な組織が損傷する可能性が高くなる。
【0005】
既知の技術分野では、マイクロバブルの慣性キャビテーション効果を治療に利用する研究が行われている。例えば、体内の疾患部位で慣性キャビテーションが発生し、疾患細胞を供給する血管に損傷を与える。この目的のために行われた研究では、サルの脳内の超音波で集束した領域にあるマイクロバブルを超音波エネルギーで慣性キャビテーションさせ、組織を損傷させた。 (C. D. Arvanitis, N. Vykhodtseva, F. Jolesz, M. Livingstone ve N. MacDannold, “Cavitation-enhanced nonthermal ablation in deep brain targets: feasibility in a large animal model” J. Neurosurgery 9, 1-10 (2015))。しかし、その処置の間に、焦点以外の部分でも組織損傷が起こり、血液脳関門が開かれたことも観察された。これらの副作用のため、前述の手順を実行するには、健康にとってより安全な方法が必要である。
【0006】
上述の手技が健康にとって安全であることを保証するためには、マイクロバブルが疾患部位にのみ有効であることを保証する必要がある。一方、超音波ビームの焦点の外側では、特に頭蓋骨や骨からの反射によるキャビテーションの可能性があり、不要な領域で超音波エネルギーが高くなること、すべての血管にマイクロバブルが全身的に存在するため、現在の技術では、安定キャビテーションと慣性キャビテーションに基づく治療法はいずれも安全性に大きな問題がある。
【0007】
今日、ナノテクノロジーの急速な発展により、ナノ粒子の表面は、疾患部位の分子に結合できる抗体やイメージング成分でコーティングすることができる。薬物、ウイルス、核酸などの元素がナノ粒子に添加され、病気の治療が可能になる。ナノ粒子を外部刺激に感作し、標的領域での効果を高めることが可能である。現在の技術では、光学的、電磁気的、または音響的エネルギー下で媒体に治療電荷を放出するナノ試薬が提案されている。磁性ナノ粒子は可変磁場下で加熱することができる。米国特許文献番号US2005/0090732では、公知技術として抗体と薬剤をコーティングした磁性粒子が提案されており、疾患部位を含む領域に均一な磁場を印加することで治療効果を得ることを目的としている。イメージングによる治療用ナノ粒子の位置特定やその数の決定は、治療の投与量制御にとって重要である。このため、ナノ試薬の治療効果だけでなく、可視化も可能でなければならない。磁性ナノ粒子は磁気共鳴画像診断の造影剤として使用されるため、治療と画像診断の両方に適している。また、外部磁場を利用することで、身体の特定部位に集積させることもできる。
【0008】
公知技術である米国特許文献番号US20130204181には、疎水性ガスを含み、その表面に疎水性薬物と親油性超常磁性ナノ粒子を担持するマイクロバブルが記載されている。問題のマイクロバブルは気体を含むため超音波で画像化できるが、超常磁性ナノ粒子を含むため磁気共鳴でも画像化できる。これらに加えて、高周波と低強度の超音波が、問題のマイクロバブルを破壊し、薬剤を環境中に放出するために適用される。しかし、前述のように、特に骨や頭蓋骨のような硬い組織では、超音波ビームが弱くなったり反射したりするため、体内の限られた領域にしか適用できない。
【0009】
公知技術である米国特許文献番号US2015/0231282では、加熱すると気体になるパーフルオロカーボンなどの疎水性液体を含むナノバブルと、金属、磁性体、強誘電体、半導体などの異なる種類のナノ粒子を含むナノ粒子が挙げられている。問題の液体は、超音波エネルギーで気化させたり、温度を上げたりすることで、気泡の直径を大きくすることができる。このプロセスは音響液滴蒸発と呼ばれる。音響液滴の蒸発は比較的速く起こるため、治療負荷は蒸発の際に勢いよく組織内に放出され、細胞の深部まで到達することができる。気化したナノバブルは超音波で可視化できる。音響液滴の蒸発プロセスを組織の焦点で行うことができれば、マイクロバブルは焦点領域でのみ形成されるため、健康な組織を損傷することなく、マイクロバブルによる上述の治療効果を達成することができる。しかし、超音波による液滴の気化を達成するためには、イメージングのために定義された安全限界をはるかに超える高周波数(1MHz以上)と高出力の超音波エネルギーが必要である。したがって、このような高出力の超音波エネルギーが組織内に発生すると、健康な組織に損傷を与える可能性がある。加えて、すでに述べたように、高周波の超音波は身体のすべての部位に効果的に当てることはできない(例えば、脳への応用では、効果的に当てるべき超音波の周波数は1MHzより低くなければならない)。このため、脳を含む特定の部位ではナノバブルを気化させることができず、その結果、該当する部位で所望の治療を行うことができない。
【0010】
本発明の目的は、治療効果または診断効果、あるいは治療効果と診断効果の両方を有するナノ薬剤を、これらの効果を与えるために、頭蓋骨のような硬組織を通過することができ、安全限界以下の低周波かつ低出力の音響波で、集束領域において気化させるための装置およびその装置を含む装置を提供することである。
【0011】
好ましくは体内に静脈内投与される気化可能な液体と、該液体中に配置された磁性ナノ粒子からなるコアと、該コアを取り囲み、該コアを外部環境から分離する表面とからなる、治療効果または診断効果、あるいは治療効果と診断効果の両方を有するナノ試薬を気化させるための装置であって、本発明の第1の請求項および従属請求項に定義される装置;
第1の方向に少なくとも第1の磁界を発生するように構成された少なくとも1つの第1の磁気素子と、 第1の方向と実質的に反対の方向に少なくとも第2の磁界を発生するように構成された少なくとも1つの第2の磁気素子とを備え、磁性ナノ粒子を励起するための可変磁場を発生するように構成された少なくとも1つの第3の磁気素子と、
可変磁場の影響下で磁性ナノ粒子の磁化を測定するように構成された少なくとも1つの受信コイルと、特定の超音波周波数を有する音響波を、特にナノ試薬の気化中に、前記超音波周波数で組織内に慣性キャビテーションを引き起こす所定の最小絶対圧よりも低い絶対圧で印加するように構成された少なくとも1つの第1の超音波トランスデューサと、を備える。
【0012】
集合体を通して体内で気化することにより、治療効果または診断効果、あるいは治療効果と診断効果の両方をもたらすナノ薬剤は、体内に投与された後も液相で安定であるべきであり、適用されたエネルギーで気化できるものでなければならない。コア内の液体の沸騰温度は、ナノ試薬が体内に導入された後、エネルギーを加えることなく直接気化するのを防ぐために比較的高い。好ましい実施形態では、パーフルオロカーボンが液体として使用される。パーフルオロカーボンの沸点は、ナノ剤の内部圧力がラプラス圧力によって大気圧よりも大きいため、ナノ剤の外部よりもナノ剤内部で高くなる。直径200nmのナノ試薬中のパーフルオロカーボンの沸点は、オクタフルオロプロパン、デカフルオロブタン、ドデカフルオロペンタン、パーフルオロヘキサンで、それぞれほぼ35℃、79℃、117℃、152℃である。本発明による装置では、第1の磁性素子によって発生する第1の磁界と第2の磁性素子によって発生する第2の磁界は、互いにほぼ反対であり、体内のある点で相殺される。この磁場がゼロになる点とその近傍を磁場のない領域と呼ぶことができる。磁場のない領域は、治療中に治療される患部に配置される。磁気的自由領域の位置は、第1の磁界と第2の磁界の特性によって任意に得られ、磁気的自由領域の位置と直径は、第1の磁性素子と第2の磁性素子の位置および/または第1の磁性素子と第2の磁性素子に印加される電流によって任意に調整することができる。体内に投与されたナノ薬剤が磁場のない領域にある場合、ナノ薬剤中の磁性ナノ粒子は遊離状態にある、つまり、外部から別の磁場が加わっても反応できる状態ではないのだ。無磁場領域の外側の領域では、ナノ試薬中の磁性ナノ粒子が磁気飽和(飽和状態)になるのに十分な振幅の磁場が存在する。したがって、磁場フリーゾーンの外側に位置するナノ試薬は自由な状態ではなく、言い換えれば、外部から別の磁場を印加されても反応することができる。したがって、磁場を発生させない領域とその周辺に三次磁性素子によって可変磁場を発生させると、磁場を発生させない領域に位置するナノ試薬中の磁性ナノ粒子のみが磁化される。好ましい実施形態では、100kHzから500kHzの周波数範囲の可変磁場が三次磁性要素によって生成され、それによって磁性ナノ粒子、したがってコアとナノアガーを局所的に加熱する。このように、三次磁性素子によって発生する可変磁場は、体内の所望の領域におけるナノ試薬の気化に寄与する。アセンブリ内の受信コイルは、磁性ナノ粒子上の可変磁場によって生成された磁化信号を受信する。受信コイルによって受信された磁化信号を、例えばコンピューターによって処理することによって、消磁ゾーン内のナノ試薬の量と温度を決定することができる。治療の効果は、磁場のない部分のナノ薬剤の量と温度を測定することによっても判断できる。第1の超音波トランスデューサから音響波によって供給される超音波エネルギーによって、磁場のない領域にある磁性ナノ粒子がキャビテーション核生成によってナノ試薬を蒸発させる。本発明の好ましい実施形態では、1MHz未満の超音波周波数が第1の超音波トランスデューサによって印加され、1MHz未満の超音波周波数によって、頭蓋骨のような硬組織を含む身体の任意の所望の領域において、標的化されたナノ薬剤を気化させることができる。本発明装置により、ナノ試薬は、三次磁性素子から供給される可変磁場により局所的に加熱されるとともに、第一超音波トランスデューサから供給される超音波エネルギーにより気化され、気化によりナノ試薬の直径が高速で増大する。このようにして、ナノ試薬の構造内にある薬物や類似の治療薬が高い勢いで環境中に放出され、治療薬が深部組織に浸透して治療効果を高めることが保証される。
本発明の目的を達成するための装置およびその装置を構成する器具を添付図に示す。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明装置により体内で気化したナノ薬剤の代表図である。
図2】本発明装置の概略図である。
図3】本発明装置によって体内で発生する第1の磁場と第2の磁場を簡略化して示す図である。
図4】本発明装置によって体内で発生する可変磁場の簡略図である。
図5】本発明装置によって体内で発生する音響波の簡略図である。
図6】本発明の一実施形態に係る第1の超音波トランスデューサ、第2の超音波トランスデューサ、及び結合要素からなる統合構造の代表的な透視図である。
図7】本発明装置を構成する装置の概略図である。
【0014】
図中の部品にはそれぞれ番号が振られており、その番号に相当するものを以下に示す。
【符号の説明】
【0015】
1.装置
2. 一次磁性素子
3. 二次磁性体
4. 三次磁性素子
5. 受信コイル
6. 第1超音波振動子
7. 第2超音波振動子
8. 結合装置
9. 制御装置
10. 装置
11. 本体
A. 液体
B. 磁性ナノ粒子
C. コア
D. 表面
E. ナノジャン
F. 分子
MF1.第一磁場
MF2.第2磁場
MF3.可変磁場
MFFR 磁場フリーゾーン
AW 音響波
V: ボディ
【0016】
治療効果もしくは診断効果、または治療効果と診断効果の両方を有するナノ薬剤(E)(図1)を気化させるための装置(1)であって、予め身体(V)に導入された気化可能な液体(A)と、液体(A)中に配置された磁性ナノ粒子(B)を含むコア(C)と、コア(C)を取り囲み、コア(C)を外部環境から分離する表面(D)とを備える;治療効果または診断効果、あるいは治療効果と診断効果の両方を有するナノ薬剤(E)(図1)を気化させるための装置(1);第1の方向に第1の磁場(MF1)を発生するように構成された少なくとも1つの第1の磁気要素(2)と、第1の方向と実質的に反対の方向に第2の磁場(MF2)を発生するように構成された少なくとも1つの第2の磁気要素(3)とを備える、磁場自由領域(MFFR)に位置する磁性ナノ粒子(B)を励起するための可変磁場(MF3)を発生するように構成された少なくとも1つの第3の磁気素子(4)であって、第1の磁場(MF1)と第2の磁場(MF2)とが反対方向に向けられ、互いの効果を抑制する、少なくとも1つの第3の磁気素子(4)と、可変磁場(MF3)が印加された磁性ナノ粒子(B)の磁化を測定するように構成された少なくとも1つの受信コイル(5)と、を備える。組立体(1)によって体内(V)で気化され、治療効果または診断効果、あるいは治療効果と診断効果の両方をもたらすナノ薬剤(E)のコア(C)は、気化可能な液体(A)と、好ましくは液体(A)中の複数の磁性ナノ粒子(B)からなる(図2)。前記磁性ナノ粒子(B)は、好ましくは、5nm~50nmの範囲の直径を有する酸化鉄である。磁性ナノ粒子(B)が液体(A)中で互いに合体して局在化するのを防止するために、前記磁性ナノ粒子(B)は、好ましくは、キトサンまたは同様の特性を有する他の材料のようなポリマーでコーティングされている。カーネル(C)は、治療効果をもたらす薬剤などの追加薬剤を含むこともある。一実施形態では、コア(C)は、10nm~1000nmの範囲の直径を有する。一実施形態では、外部環境からコア(C)を分離する表面(D)は、コア(C)の間に空気が充填された空間が残るようにコア(C)を取り囲む。表面(D)は、好ましくは単層または二層のリン脂質構造を有する。一実施形態では、表面(D)は、疾患細胞または疾患細胞が存在する領域に多量に存在するタンパク質に直接結合することができる少なくとも1つの抗体を含む。また、前記表面(D)は、治療効果をもたらす薬剤、ウイルス、核酸などの様々な分子(F)を含んでいてもよい。代替実施形態では、前記表面(D)は、余分な磁性ナノ粒子(B)を含んでいてもよい。前記ナノ薬剤(E)を気化させるための装置(1)において、前記第1の磁性素子(2)によって発生される第1の磁場(MF1)と、前記第2の磁性素子(3)によって発生される第2の磁場(MF2)とは、互いに対向しているため、前記本体(V)内の一点においてゼロにされる。この磁場がゼロになる点とその近傍を磁場フリーゾーン(MFFR)と呼ぶことができる。この磁場フリーゾーン(MFFR)は、治療する患部上に配置される。磁気フリーゾーンの位置は、第1磁界(MF1)と第2磁界(MF2)の特性によって決まり、磁気フリーゾーンの位置(MFFR)と直径は、第1磁性素子(2)と第2磁性素子(3)に印加される電流によって適切に調整することができます。磁場自由領域(MFFR)およびその周辺において、三次磁性素子(4)によって可変磁場(MF3)が発生すると、磁場自由領域(MFFR)に位置するナノ試薬(E)中の磁性ナノ粒子(B)だけが磁化される。好ましい実施形態では、100kHzから500kHzの間の周波数を有する可変磁場(MF3)が、磁性ナノ粒子(B)、したがってコア(C)およびナノアガー(E)を局所的に加熱するために、三次磁性要素(4)によって生成される。このように、三次磁気素子(4)によって発生する可変磁場(MF3)は、本体(V)内の所望の領域におけるナノ薬剤(E)の気化に寄与する。好ましい実施形態では、三次磁性素子(4)はまた、磁性ナノ粒子が測定可能な磁化信号を生成するように、周波数範囲が1kHzから150kHzの可変磁場を生成する。アセンブリ(1)内の受信コイル(5)は、磁性ナノ粒子(B)上の可変磁場(MF3)によって生成された磁化信号を受信する。受信コイル(5)で受信した磁化信号を、例えばコンピュータで処理することにより、ナノ剤(E)の量と無磁場領域(MFFR)の温度を計算することができる。治療の有効性は、磁場フリーゾーン(MFFR)におけるナノ薬剤の量(E)と温度を計算することで判断できる。組立体(1)の一次磁性要素(2)および二次磁性要素(3)は、自然磁石または電磁石として選択することができるが、三次磁性要素(4)は、可変磁場(MF3)を形成する必要があるため、好ましくは電磁石として選択される。
【0017】
本発明装置(1)は、超音波周波数を有する音響波(AW)と、ナノ薬剤(E)の気化中に前記超音波周波数で組織内に慣性キャビテーションを引き起こすのに十分な所定の最小絶対圧よりも低い絶対圧とを送信するように構成された少なくとも1つの第1の超音波トランスデューサ(6)を備える(図5)。本発明装置(1)によって、ナノ薬剤(E)は、三次磁気素子(4)によって提供される可変磁場(MF3)によって局所的に加熱されるとともに、第1の超音波トランスデューサ(6)によって提供される超音波エネルギーによって気化されるので、ナノ薬剤(E)の直径は、気化によって高速で増大する。このようにして、ナノ薬剤(E)は、その構造中の薬剤や類似の治療薬を高い勢いで環境中に放出し、治療薬が深部組織に浸透して治療効果を高めることが保証される。第1の超音波トランスデューサ(6)は、ナノ薬剤(E)を慣性キャビテーションさせるのに十分な最小絶対圧よりも低い絶対圧で音響波(AW)を供給し、それにより、ナノ薬剤(E)を気化させる際に印加される超音波エネルギーによる組織への損傷を防止し、治療中の健康安全性を高める。さらに、安定したキャビテーションは、第1の超音波トランスデューサ(6)から供給される低出力の超音波で気化したナノシート(E)を励起することによって形成される。安定したキャビテーションにより毛細血管壁が開き、血管内の薬剤様治療薬が血管外に排出されると同時に、ポンプとして作用することで治療薬の拡散が促進される。これらに加え、安定したキャビテーションは患部に温熱効果をもたらし、病変細胞を弱らせる。
【0018】
本発明の一実施形態において、第1の超音波トランスデューサ(6)は、1MHz未満の周波数を有する音響波(AW)を磁場自由領域(MFFR)内のナノ粒子(E)に送信することによって超音波エネルギーを印加するように構成される。音響波(AW)によって第1の超音波トランスデューサ(6)から供給される超音波エネルギーは、ナノ薬剤(E)が配置されている環境において圧力変化を引き起こし、ナノ薬剤(E)の気化を可能にする。
【0019】
第1の超音波トランスデューサー(6)によって1MHz未満の周波数を印加することにより、頭蓋骨のような硬組織を含む身体(V)の任意の所望の領域において、標的とするナノ薬剤(E)を気化させることができる。
【0020】
本発明の一実施形態では、三次磁気要素(4)は、150kHz未満の周波数の可変磁場(MF3)を発生するように構成されている。本願では、磁場自由領域(MFFR)において150kHzより低い周波数で発生する可変磁場(MF3)により、当該磁場自由領域(MFFR)における磁性ナノ粒子(B)の磁気緩和を行う。この磁性ナノ粒子(B)の磁化信号を受信コイル(5)で受信することにより、磁性ナノ粒子(B)の磁気緩和を測定することができ、換言すれば、測定された磁気緩和により、磁場自由領域(MFFR)における磁性ナノ粒子(B)の量、ひいてはナノ薬剤(E)の量を定量的に測定することができる。磁性ナノ粒子(B)の緩和特性は温度によって変化するので、磁場自由領域(MFFR)におけるナノ試薬(E)の温度、したがって磁場自由領域(MFFR)の温度は、これらの磁性ナノ粒子(B)から受信した磁化信号に応じて、少なくとも近似的に計算することができる。
【0021】
本発明の一実施形態では、第1の超音波トランスデューサ(6)は、磁場自由領域(MFFR)内の気化したナノ試薬(E)を慣性キャビテーション状態に誘導するのに十分な絶対圧を有する音響波(AW)を送信するように構成される。気化したナノ粒(E)が慣性キャビテーション状態に入るために必要な絶対超音波圧力は、気化していないナノ粒(E)が慣性キャビテーション状態に入るために必要な絶対超音波圧力よりもはるかに低いため、慣性キャビテーションは磁場自由領域(MFFR)でのみ達成される。その結果、気化したナノ薬剤(E)が高速でそれ自体に崩壊し、局所的に非常に高い温度が形成され、ナノ薬剤(E)の構造に含まれるラジカルが環境に拡散することによってフリーラジカルが形成される。これは病気の細胞や組織の中で起こるので、治療効果がさらに高まる。
【0022】
本発明の一実施形態では、装置(1)は、気化したナノ試薬(E)を画像化するように構成された少なくとも第2の超音波トランスデューサ(7)をさらに備える。蒸発するナノ試薬(E)を画像化することで、蒸発したナノ試薬(E)の量を測定することができる。気化したナノ試薬(E)が、第1の超音波トランスデューサ(6)によって印加される超音波エネルギーによって慣性キャビテーションに投入される本発明の実施形態では、広帯域の音響放射が慣性キャビテーション中に生成され、第2の超音波トランスデューサ(7)は、前記音響放射を収集し、慣性キャビテーションプロセスを監視することを可能にする。このプロセスをモニターすることで、慣性キャビテーションを起こすナノ薬剤の量(E)を推定することができ、適用された治療の効果を瞬時にモニターすることができる。
【0023】
本発明の一実施形態では、装置(1)は、第1の超音波トランスデューサ(6)および/または第2の超音波トランスデューサ(7)と身体(V)との間に音響波(AW)の低損失伝送を提供するように構成された少なくとも1つの結合要素(8)をさらに備える。
【0024】
結合素子(8)は、第1の超音波トランスデューサ(6)及び/又は第2の超音波トランスデューサ(7)が身体(V)に直接接触できない場合に、第1の超音波トランスデューサ(6)及び/又は第2の超音波トランスデューサ(7)と身体(V)との間の音響インピーダンス整合を提供するように、身体(V)の音響インピーダンスに近い材料を使用するように適合されている。
【0025】
本発明の一実施形態では、第1の超音波トランスデューサ(6)、第2の超音波トランスデューサ(7)および結合素子(8)は、互いに組み合わされ、モノリシック構造を有するように配置される(図6)。このようにして、組立体(1)の製造・組立工程数、労力、時間が削減され、製造・組立上の利点が得られる。
【0026】
本発明の一実施形態では、アセンブリ(1)は、三次磁気要素(4)によって生成された可変磁場(MF3)の方向に対して垂直な2つの方向に磁場を生成するように構成された複数の撮像磁気要素(図示せず)と、これらの方向の磁性ナノ粒子(B)の磁化信号を受信するように構成された撮像受信コイル(図示せず)とをさらに備える。このアプリケーションでは、イメージング受信コイルによって受信された磁化信号は、例えばコンピュータによって処理され、無磁場領域(MFFR)における磁性ナノ粒子(B)およびしたがってナノ薬剤(E)の2次元または3次元イメージングを可能にする。
【0027】
本発明はまた、上述のタイプの装置(1)、および装置(1)を制御された方法で駆動し、その動作を制御するように構成された少なくとも1つの制御ユニット(9)を含む装置(10)に関する(図7)。本発明の一実施形態では、一次磁性素子(2)、二次磁性素子(3)、三次磁性素子(4)、受信コイル(5)、第1の超音波トランスデューサ(6)、第2の超音波トランスデューサ(7)及び結合素子(8)は、ヘッドとも呼ばれ得る本体(11)に収容され、本発明の代替実施形態では、前記素子(2、3、4、5、6、7、8)の少なくともいくつかは、本体(V)の周囲に配置されるように互いに独立して配置され得る。本発明の一実施形態では、装置(10)は、制御ユニット(9)によって制御され、第1の磁場(MF1)を発生させるために必要な電流を第1の磁気要素(2)に供給するように構成された、少なくとも第1の電源および駆動回路(図示せず)をさらに備える。本発明の一実施形態では、装置(10)は、制御ユニット(9)によって制御され、第2の磁場(MF2)を発生させるために必要な電流を第2の磁気素子(3)に供給するように構成された少なくとも第2の電源及び駆動回路(図示せず)をさらに備える。本発明の一実施形態では、装置(10)は、可変磁場(MF3)を発生させるために必要な電流を三次磁性素子(4)に供給するために、制御ユニット(9)によって制御される少なくとも1つの波動発生器、電力増幅器および駆動回路(図示せず)をさらに備える。本発明の一実施形態では、装置(10)は、制御ユニット(9)によって制御され、第1の超音波トランスデューサ(6)が適切な音響波(AW)を放射するのに必要な信号を供給するように構成された、少なくとも1つの音響波(AW)発生器、電力増幅器及び駆動回路(図示せず)をさらに備える。一次磁性素子(2)と二次磁性素子(3)を互いに独立に制御・駆動することで、治療に適した場所、すなわち治療すべき身体(V)の患部や大きさに無磁場領域(MFFR)を形成することが可能です。第3の磁気素子(4)と第1の超音波振動子(6)を互いに独立に制御して駆動することにより、磁場フリーゾーン(MFFR)に位置するナノ薬剤(E)の気化のために印加する磁場強度と超音波エネルギーを所望に応じて調整し、効果的な治療を提供することができる。本発明の一実施形態では、装置(10)はさらに、疾患組織が位置し、したがって治療が必要な部位と一致する身体(V)上に配置されたマーキング(図示せず)を検出するように構成された少なくとも1つのセンサー(図示せず)を備える。このようにして、センサーによって検出された信号の位置に磁場フリーゾーン(MFFR)が自動的に作られる。
【0028】
本発明はまた、治療効果もしくは診断効果、または治療効果と診断効果の両方を有するナノ薬剤(E)を気化させる方法であって、予め体内(V)に導入された気化可能な液体(A)と、液体(A)中に配置された磁性ナノ粒子(B)からなるコア(C)と、コア(C)を包囲し、コア(C)を外部環境から分離する表面(D)とを含む方法に関する;
第1の磁場(MF1)および第2の磁場(MF2)を生成した結果として、体内(V)内の治療が必要な患部に無磁場ゾーン(MFFR)を生成し、
磁場自由領域(MFFR)を覆うように特別に発生させた可変磁場(MF3)による、磁場自由領域(MFFR)に位置するナノ試薬(E)内に含まれる磁性ナノ粒子(B)の励起および/または加熱、
特定の超音波周波数を有する音響波(AW)と、前記超音波周波数で組織に慣性キャビテーションを引き起こすのに十分な所定の最小絶対圧よりも低い絶対圧とを印加することにより、磁場自由領域(MFFR)に位置するナノ試薬(E)を気化させるステップ。本発明の方法では、第1の磁気要素(2)による第1の磁場(MF1)および第2の磁気要素(3)による第2の磁場(MF2)の生成の結果として、身体(V)内の標的領域に磁場フリーゾーン(MFFR)が形成される。その後、磁場自由領域(MFFR)に位置するナノ薬剤(E)内の磁性ナノ粒子(B)を励起および/または加熱するために、第3の磁気素子(4)によって可変磁場(MF3)が発生される。さらに、第1の超音波トランスデューサ(6)によって、ある音響周波数で、かつ、印加された周波数でナノ薬剤(A)を慣性キャビテーションさせるのに十分な所定の最低絶対圧値よりも低い絶対圧値で音響波(AW)が印加され、それによって、磁場自由領域(MFFR)に位置するナノ薬剤(E)が気化される。本発明の好ましい実施形態では、第1の超音波トランスデューサ(6)は、好ましくは1MHzより低い周波数の音響波を、磁場自由領域(MFFR)に位置するナノ試薬(E)に送信する。第1の超音波トランスデューサー(6)によって1MHz未満の周波数を印加することにより、頭蓋骨のような硬組織を含む身体(V)の任意の所望の領域において、標的とするナノ薬剤(E)を気化させることができる。
【0029】
本発明装置(1)により、身体(V)に予め投与された治療上有効なナノ薬剤(E)は、好ましくは1MHzより低い周波数の音響波(AW)によって気化され、2つの異なる効果を有する。アセンブリ(1)内の三次磁性素子(4)によって100kHz~500kHzの範囲の周波数で提供される可変磁場(MF3)は、ナノ試薬(E)の核(C)を加熱し、ナノ試薬(E)の気化を助ける。第二に、ナノ薬剤(E)中の磁性ナノ粒子(B)、特にコア(C)中の磁性ナノ粒子(B)は、第一の超音波トランスデューサ(6)によって供給される1MHz未満の周波数の音響波(AW)によってキャビテーション核として作用し、低い超音波エネルギーで気化を開始することができる。これらのナノ薬剤(E)は気化後にマイクロバブルに変化し、超音波ビームの影響を受けることなく、体内の患部(V)に形成される無磁場領域(MFFR)で安定した慣性キャビテーションに基づく治療効果が得られる。このため、患部以外の領域、言い換えれば磁場自由領域(MFFR)以外の領域は、印加された超音波エネルギーの影響を受けない。さらに、安定したキャビテーションは、第1の超音波トランスデューサ(6)から供給される低出力の超音波で気化したナノシート(E)を励起することによって形成される。安定したキャビテーションにより毛細血管壁が開き、血管内の薬剤様治療薬が血管外に排出されると同時に、ポンプとして作用することで治療薬の拡散が促進される。 これらに加え、安定したキャビテーションは患部に加熱効果をもたらし、病変細胞を弱らせる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【手続補正書】
【提出日】2024-04-11
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の方向に第1の磁場(MF1)を発生するように構成された少なくとも1つの一次磁気要素(2)であって、予め身体(V)に導入された気化可能な液体(A)と、液体(A)中に配置された磁気特性を有するナノ粒子(B)からなるコア(C)と、コア(C)を取り囲み、コア(C)を外部環境から分離する表面(D)とを備え、治療効果または診断効果、あるいは治療効果と診断効果の両方を有するナノ薬剤(E)の気化を可能にする、少なくとも1つの一次磁気要素(2);第1の方向に第1の磁場(MF1)を発生するように構成された少なくとも1つの第1の磁気要素(2)、第1の方向とは実質的に反対の方向に第2の磁場(MF2)を発生するように構成された少なくとも1つの第2の磁気要素(3)、磁場自由領域(MFFR)に位置する磁性ナノ粒子(B)を励起するための可変磁場(MF3)を発生するように構成された少なくとも1つの第3磁性素子(4)であって、第1の磁場(MF1)と第2の磁場(MF2)とが反対方向に向けられ、互いの効果を抑制する、第3磁性素子(4)、可変磁場(MF3)が印加される磁性ナノ粒子(B)の磁化を測定するように構成され、ナノ薬剤(E)の蒸発中に一定の超音波周波数を生じさせ、前記超音波周波数で組織内に慣性キャビテーションを生じさせるのに十分な少なくとも1つの受信コイル(5)を含み 所定の最小絶対圧よりも低い絶対圧を有する音響波(AW)を送信するように構成された少なくとも1つの第1の超音波トランスデューサ(6)と、を備えることを特徴とするアセンブリ(1)。
【請求項2】
第1の超音波トランスデューサ(6)が、磁場自由領域(MFFR)に位置するナノ薬剤(E)に1MHz未満の周波数を有する音響波(AW)を送信することによって超音波エネルギーを印加するように構成されていることを特徴とする、請求項1に記載のアセンブリ(1)。
【請求項3】
三次磁気要素(4)が、150kHz未満の周波数を有する可変磁場(MF3)を発生するように構成されていることを特徴とする、請求項1に記載のアセンブリ(1)。
【請求項4】
三次磁気要素(4)は、100kHzから500kHzの間の周波数を有する可変磁場(MF3)を発生するように構成されていることを特徴とする、請求項1に記載のアセンブリ(1)。
【請求項5】
第1の超音波トランスデューサ(6)が、磁場自由領域(MFFR)内の気化したナノ薬剤(E)を慣性キャビテーション状態に誘導するのに十分な絶対圧を有する音響波(AW)を送信するように構成されていることを特徴とする、請求項1に記載のアセンブリ(1)。
【請求項6】
少なくとも1つの第2の超音波トランスデューサ(7)が、蒸発するナノ試薬(E)を画像化するように構成されていることを特徴とする、請求項1に記載の装置(1)。
【請求項7】
第1の超音波トランスデューサ(6)および/または第2の超音波トランスデューサ(7)と本体(V)との間に音響波(AW)の低損失伝送を提供するように構成された少なくとも1つの結合要素(8)を備えることを特徴とする、請求項6に記載のアセンブリ(1)。
【請求項8】
第1の超音波トランスデューサ(6)、第2の超音波トランスデューサ(7)及び結合要素(8)が、モノリシック構造を形成するように互いに組み合わせて配置されていることを特徴とする、請求項7に記載のアセンブリ(1)。
【請求項9】
三次磁気素子(4)によって発生される可変磁場(MF3)の方向に対して垂直な2つの方向に磁場を発生するように構成された複数の撮像磁気素子と、これらの方向の磁性ナノ粒子(B)の磁化信号を受信するように構成された撮像受信コイルとを備えることを特徴とする、請求項1に記載のアセンブリ(1)。
【請求項10】
アセンブリ(1)と、アセンブリ(1)を制御可能に駆動し、その動作を制御するように構成された少なくとも1つの制御ユニット(9)とを備える、請求項1から9のいずれか一項に記載の装置(10)。
【請求項11】
治療効果もしくは診断効果、または治療効果および診断効果の両方を有するナノ薬剤(E)を気化させる方法であって、予め身体(V)(ヒトの身体を除く)に導入された気化可能な液体(A)と、液体(A)中に配置された磁性ナノ粒子(B)からなるコア(C)と、コア(C)を包囲し、コア(C)を外部環境から分離する表面(D)とを含み、ナノ薬剤(E)が治療効果または診断効果を有することを特徴とする方法;
第1の磁場(MF1)と第2の磁場(MF2)を発生させ、身体(V)(ヒトの身体を除く)内の治療が必要な患部上に無磁場領域(MFFR)を形成すること、
磁場自由領域(MFFR)を覆うように特別に発生させた可変磁場(MF3)による、磁場自由領域(MFFR)に位置するナノ試薬(E)内に含まれる磁性ナノ粒子(B)の励起および/または加熱、
特定の超音波周波数を有する音響波(AW)、およびその超音波周波数で組織に慣性キャビテーションを引き起こすのに十分な所定の最小絶対圧よりも低い絶対圧を印加することによる、磁場自由領域(MFFR)に位置するナノ試薬(E)の気化 ステップ。
【国際調査報告】