(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-05
(54)【発明の名称】トロフィネチドの結晶形態
(51)【国際特許分類】
C07K 5/083 20060101AFI20240628BHJP
A61K 9/16 20060101ALI20240628BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20240628BHJP
A61K 38/05 20060101ALI20240628BHJP
【FI】
C07K5/083
A61K9/16
A61P25/00
A61K38/05
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023577893
(86)(22)【出願日】2022-07-12
(85)【翻訳文提出日】2023-12-18
(86)【国際出願番号】 US2022036768
(87)【国際公開番号】W WO2023287750
(87)【国際公開日】2023-01-19
(32)【優先日】2021-07-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516149181
【氏名又は名称】アカディア ファーマシューティカルズ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】ACADIA Pharmaceuticals Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ピーターソン, マシュー
(72)【発明者】
【氏名】カルロス, マーロン
(72)【発明者】
【氏名】ブースマン, マルタン ベルナール カトリーヌ
(72)【発明者】
【氏名】ベッティ, セシリア
(72)【発明者】
【氏名】ジョナイティス, デイビッド ティー.
(72)【発明者】
【氏名】マクラッケン, リサ エム.
(72)【発明者】
【氏名】グローブ, リサ エム.
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4H045
【Fターム(参考)】
4C076AA31
4C076CC01
4C076FF01
4C076FF06
4C084AA02
4C084AA03
4C084AA07
4C084BA01
4C084BA08
4C084BA14
4C084BA23
4C084MA41
4C084NA02
4C084NA14
4C084ZA01
4H045AA10
4H045AA30
4H045BA12
4H045EA20
4H045FA20
(57)【要約】
本開示は、トロフィネチド及びトロフィネチド水和物の結晶形態、トロフィネチド及びトロフィネチド水和物の結晶形態を含む医薬組成物、トロフィネチド又はトロフィネチド水和物の結晶形態を作製する方法、並びにトロフィネチド又はトロフィネチド水和物の結晶形態を含む組成物を対象に投与することを含む、対象の疾患、病態、又は障害を治療する方法を提供する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
結晶性トロフィネチド・xH
2O(式中、xが、約2~約4である)であって、
(i)Cu Kα放射線を使用した、6.6~6.8度2θの範囲内にピーク、11.3~11.6度2θの範囲内にピーク、12.5~12.7度2θの範囲内にピーク、及び13.6~13.8度2θの範囲内にピークを有する粉末X線回折パターンであって、2θ値が±0.2度2θである、粉末X線回折パターン、あるいは
(ii)Cu Kα放射線を使用した、13.1、7.7、7.0、6.4、及び5.3Åのd間隔を有する粉末X線回折パターン、あるいは
(iii)2989、2934、2883、1685、1637、1459、及び930cm-1にピークを有するFT-ラマンスペクトルであって、前記cm-1値が±4cm-1である、FT-ラマンスペクトル、あるいは
(iv)13、24、67、及び77cm-1にピークを有する低周波(LF)ラマンスペクトルであって、前記cm-1値が±4cm-1である、低周波(LF)ラマンスペクトル、あるいは
(v)179.7、177.9、177.5、177.2、177.0、165.3、164.9、164.8、67.8、67.4、58.6、58.2、46.8、40.3、33.3、25.3、23.5、及び21.1ppmにピークを有する13C固体核磁気共鳴スペクトルであって、前記ppm値が±3pmである、13C固体核磁気共鳴スペクトル、あるいは
(vi)最遠のダウンフィールドピークから(i)第2の最遠のダウンフィールドピークまでのΔが1.8ppmである、(ii)第3の最遠のダウンフィールドピークまでのΔが2.2ppmである、(iii)第4の最遠のダウンフィールドピークまでのΔが2.5ppmである、(iv)第5の最遠のダウンフィールドピークまでのΔが2.7ppmである、(v)第6の最遠のダウンフィールドピークまでのΔが14.4ppmである、(vi)第7の最遠のダウンフィールドピークまでのΔが14.8ppmである、(vii)第8の最遠のダウンフィールドピークまでのΔが14.9ppmである、(viii)第9の最遠のダウンフィールドピークまでのΔが111.9ppmである、(ix)第10の最遠のダウンフィールドピークまでのΔが112.3ppmである、(x)第11の最遠のダウンフィールドピークまでのΔが121.1ppmである、(xi)第12の最遠のダウンフィールドピークまでのΔが121.5ppmである、(xii)第13の最遠のダウンフィールドピークまでのΔが133.1ppmである、(xiii)第14の最遠のダウンフィールドピークまでのΔが139.4ppmである、(xiv)第15の最遠のダウンフィールドピークまでのΔが146.3ppmである、(xv)第16の最遠のダウンフィールドピークまでのΔが154.6ppmである、(xvi)第17の最遠のダウンフィールドピークまでのΔが156.2ppmである、及び/若しくは(xvii)最遠のダウンフィールドピークから最遠のアップフィールドピークまでのΔが158.6ppmである、又はそれらの任意の組み合わせである、18個のピークを有する13C固体核磁気共鳴スペクトル、あるいは
(vii)示差走査熱量測定に基づく、71.71℃の開始温度及び72.06℃のピーク温度を有する融点、あるいは
(viii)1678、1636、1589、1525、1214、及び1196cm-1にピークを有する赤外線(IR)スペクトルであって、前記cm-1値が±4cm-1である、IRスペクトル、あるいは
(ix)5145、4630、及び4423cm-1にピークを有する近赤外線(NIR)スペクトルであって、前記cm-1値が±4cm-1である、NIRスペクトル、あるいは
それらの組み合わせを有することを特徴とする、結晶性トロフィネチド・xH
2O。
【請求項2】
結晶性トロフィネチド・xH
2O(式中、xが、約2~約4である)であって、
(i)Cu Kα放射線を使用した、6.8、11.5、12.6、13.8、及び16.8度2θにピークを有する粉末X線回折パターンであって、前記2θ値が±0.2度2θである、粉末X線回折パターン、並びに/あるいは
(ii)Cu Kα放射線を使用した、13.1、7.7、7.0、6.4、及び5.3Åのd間隔を有する粉末X線回折パターン、並びに/あるいは
(iii)2989、2934、2883、1685、1637、1459、及び930cm
-1にピークを有するFT-ラマンスペクトルであって、前記cm
-1値が±4cm
-1である、FT-ラマンスペクトル、並びに/あるいは
(iv)13、24、67、及び77cm
-1にピークを有する低周波(LF)ラマンスペクトルであって、前記cm
-1値が±4cm
-1である、低周波(LF)ラマンスペクトル、並びに/あるいは
(v)179.7、177.9、177.5、177.2、177.0、165.3、164.9、164.8、67.8、67.4、58.6、58.2、46.8、40.3、33.3、25.3、23.5、及び21.1ppmにピークを有する
13C固体核磁気共鳴スペクトルであって、前記ppm値が±3pmである、
13C固体核磁気共鳴スペクトル、並びに/あるいは
(vi)最遠のダウンフィールドピークから(i)第2の最遠のダウンフィールドピークまでのΔが1.8ppmである、(ii)第3の最遠のダウンフィールドピークまでのΔが2.2ppmである、(iii)第4の最遠のダウンフィールドピークまでのΔが2.5ppmである、(iv)第5の最遠のダウンフィールドピークまでのΔが2.7ppmである、(v)第6の最遠のダウンフィールドピークまでのΔが14.4ppmである、(vi)第7の最遠のダウンフィールドピークまでのΔが14.8ppmである、(vii)第8の最遠のダウンフィールドピークまでのΔが14.9ppmである、(viii)第9の最遠のダウンフィールドピークまでのΔが111.9ppmである、(ix)第10の最遠のダウンフィールドピークまでのΔが112.3ppmである、(x)第11の最遠のダウンフィールドピークまでのΔが121.1ppmである、(xi)第12の最遠のダウンフィールドピークまでのΔが121.5ppmである、(xii)第13の最遠のダウンフィールドピークまでのΔが133.1ppmである、(xiii)第14の最遠のダウンフィールドピークまでのΔが139.4ppmである、(xiv)第15の最遠のダウンフィールドピークまでのΔが146.3ppmである、(xv)第16の最遠のダウンフィールドピークまでのΔが154.6ppmである、(xvi)第17の最遠のダウンフィールドピークまでのΔが156.2ppmである、及び/若しくは(xvii)最遠のダウンフィールドピークから最遠のアップフィールドピークまでのΔが158.6ppmである、又はそれらの任意の組み合わせである、18個のピークを有する
13C固体核磁気共鳴スペクトル、並びに/あるいは
(vii)示差走査熱量測定に基づく、71.71℃の開始温度及び72.06℃のピーク温度を有する融点、並びに/あるいは
(viii)1678、1636、1589、1525、1214、及び1196cm
-1にピークを有する赤外線(IR)スペクトルであって、前記cm
-1値が±4cm
-1である、IRスペクトル、並びに/あるいは
(ix)5145、4630、及び4423cm
-1にピークを有する近赤外線(NIR)スペクトルであって、前記cm
-1値が±4cm
-1である、NIRスペクトル、並びに/あるいは
それらの組み合わせを有することを特徴とする、結晶性トロフィネチド・xH
2O。
【請求項3】
Cu Kα放射線を使用した、6.8、11.5、12.6、13.8、及び16.8度2θにピークを有する粉末X線回折パターンであって、前記2θ値が±0.2度2θである、粉末X線回折パターンを有することを特徴とする、請求項1又は2に記載の結晶性トロフィネチド・xH
2O。
【請求項4】
Cu Kα放射線を使用した、22.3、23.6、25.3及び/又は28.1度2θにピークを有する粉末X線回折パターンであって、前記2θ値が±0.2度2θである、粉末X線回折パターンを有することを更に特徴とする、請求項3に記載の結晶性トロフィネチド・xH
2O。
【請求項5】
Cu Kα放射線を使用した、6.7又は6.8、11.4又は11.5、12.6、及び13.7又は13.8度2θにピークを有する粉末X線回折パターンであって、前記2θ値が±0.2度2θである、粉末X線回折パターンを有することを特徴とする、請求項1又は2に記載の結晶性トロフィネチド・xH
2O。
【請求項6】
Cu Kα放射線を使用した、6.7又は6.8、11.4又は11.5、12.6、及び13.7又は13.8度2θにピークを有する粉末X線回折パターンを有することを特徴とする、請求項1又は2に記載の結晶性トロフィネチド・xH
2O。
【請求項7】
Cu Kα放射線を使用した、22.3、23.6、25.3及び/又は28.1度2θ±0.2度2θにピークを有する粉末X線回折パターンを有することを更に特徴とする、請求項5又は6に記載の結晶性トロフィネチド・xH
2O。
【請求項8】
Cu Kα放射線を使用した、6.7、11.4、12.6、13.7、22.3、23.6、25.3及び28.1度2θにピークを有する粉末X線回折パターンであって、前記2θ値が±0.2度2θである、粉末X線回折パターンを有することを特徴とする、請求項7に記載の結晶性トロフィネチド・xH
2O。
【請求項9】
Cu Kα放射線を使用した、13.1、7.7、7.0、6.4、及び5.3Åのd間隔を有する粉末X線回折パターンを有することを特徴とする、請求項1又は2に記載の結晶性トロフィネチド・xH
2O。
【請求項10】
2989、2934、2883、1685、1637、1459、及び930cm
-1にピークを有するFT-ラマンスペクトルであって、前記cm
-1値が±4cm
-1である、FT-ラマンスペクトルを有することを特徴とする、請求項1又は2に記載の結晶性トロフィネチド・xH
2O。
【請求項11】
13、24、67、及び77cm
-1にピークを有する低周波(LF)ラマンスペクトルであって、前記cm
-1値が±4cm
-1である、低周波(LF)ラマンスペクトルを有することを特徴とする、請求項1又は2に記載の結晶性トロフィネチド・xH
2O。
【請求項12】
179.7、177.9、177.5、177.2、177.0、165.3、164.9、164.8、67.8、67.4、58.6、58.2、46.8、40.3、33.3、25.3、23.5、及び21.1ppmにピークを有する
13C固体核磁気共鳴スペクトルであって、前記ppm値が±3pmである、
13C固体核磁気共鳴スペクトルを有することを特徴とする、請求項1又は2に記載の結晶性トロフィネチド・xH
2O。
【請求項13】
最遠のダウンフィールドピークから(i)第2の最遠のダウンフィールドピークまでのΔが1.8ppmである、(ii)第3の最遠のダウンフィールドピークまでのΔが2.2ppmである、(iii)第4の最遠のダウンフィールドピークまでのΔが2.5ppmである、(iv)第5の最遠のダウンフィールドピークまでのΔが2.7ppmである、(v)第6の最遠のダウンフィールドピークまでのΔが14.4ppmである、(vi)第7の最遠のダウンフィールドピークまでのΔが14.8ppmである、(vii)第8の最遠のダウンフィールドピークまでのΔが14.9ppmである、(viii)第9の最遠のダウンフィールドピークまでのΔが111.9ppmである、(ix)第10の最遠のダウンフィールドピークまでのΔが112.3ppmである、(x)第11の最遠のダウンフィールドピークまでのΔが121.1ppmである、(xi)第12の最遠のダウンフィールドピークまでのΔが121.5ppmである、(xii)第13の最遠のダウンフィールドピークまでのΔが133.1ppmである、(xiii)第14の最遠のダウンフィールドピークまでのΔが139.4ppmである、(xiv)第15の最遠のダウンフィールドピークまでのΔが146.3ppmである、(xv)第16の最遠のダウンフィールドピークまでのΔが154.6ppmである、(xvi)第17の最遠のダウンフィールドピークまでのΔが156.2ppmである、及び/若しくは(xvii)最遠のダウンフィールドピークから最遠のアップフィールドピークまでのΔが158.6ppmである、又はそれらの任意の組み合わせである、18個のピークを有する
13C固体核磁気共鳴スペクトルを有することを特徴とする、請求項1又は2に記載の結晶性トロフィネチド・xH
2O。
【請求項14】
示差走査熱量測定に基づく、71.71℃の開始温度及び72.06℃のピーク温度を有する融点を有することを特徴とする、請求項1又は2に記載の結晶性トロフィネチド・xH
2O。
【請求項15】
1678、1636、1589、1525、1214、及び1196cm
-1にピークを有する赤外線(IR)スペクトルであって、前記cm
-1値が±4cm
-1である、IRスペクトルを有することを特徴とする、請求項1又は2に記載の結晶性トロフィネチド・xH
2O。
【請求項16】
5145、4630、及び4423cm
-1にピークを有する近赤外線(NIR)スペクトルであって、前記cm
-1値が±4cm
-1である、NIRスペクトルを有する有することを特徴とする、請求項1又は2に記載の結晶性トロフィネチド・xH
2O。
【請求項17】
約10μm~約500μmの平均粒径分布を有する、請求項1~16のいずれか一項に記載の結晶性トロフィネチド・xH
2O。
【請求項18】
xが、約2.5~約3.5である、請求項1~17のいずれか一項に記載の結晶性トロフィネチド・xH
2O。
【請求項19】
xが、約2である、請求項1~17のいずれか一項に記載の結晶性トロフィネチド・xH
2O。
【請求項20】
xが、約2.5である、請求項1~17のいずれか一項に記載の結晶性トロフィネチド・xH
2O。
【請求項21】
xが、約3である、請求項1~17のいずれか一項に記載の結晶性トロフィネチド・xH
2O。
【請求項22】
xが、約3.5である、請求項1~17のいずれか一項に記載の結晶性トロフィネチド・xH
2O。
【請求項23】
xが、約4である、請求項1~17のいずれか一項に記載の結晶性トロフィネチド・xH
2O。
【請求項24】
請求項1~23のいずれか一項に記載の結晶性トロフィネチド・xH
2Oと、薬学的に許容される賦形剤と、を含む、医薬組成物。
【請求項25】
顆粒状形態の請求項24に記載の医薬組成物。
【請求項26】
水に溶解した請求項1~23のいずれか一項に記載の結晶性トロフィネチド・xH
2Oを含む、水性医薬製剤。
【請求項27】
約1グラムの結晶性トロフィネチド・xH
2Oが各5mLの前記水に溶解した、請求項26に記載の水性医薬製剤。
【請求項28】
前記結晶性トロフィネチド・xH
2Oと水とを混合することを含む、請求項26又は27に記載の水性医薬製剤を作製する方法。
【請求項29】
請求項1~23のいずれか一項に記載の結晶性トロフィネチド・xH
2Oと、水中に結晶性トロフィネチド・xH
2Oを溶解して水性医薬製剤を提供するための説明書と、を備える、キット。
【請求項30】
前記水性医薬製剤を、疾患、障害、又は病態を有する対象に投与するための説明書を更に備える、請求項29に記載のキット。
【請求項31】
前記疾患、障害又は病態が、外傷性脳損傷である、請求項30に記載のキット。
【請求項32】
前記疾患、障害又は病態が、神経発達障害である、請求項30に記載のキット。
【請求項33】
前記神経発達障害が、レット症候群、脆弱X症候群、又は自閉症スペクトラム障害である、請求項32に記載のキット。
【請求項34】
疾患、障害又は病態の治療を必要とする対象におけるそれを治療する方法であって、請求項24又は25に記載の医薬組成物、又は請求項26又は27に記載の水性医薬製剤を前記対象に投与することを含む、方法。
【請求項35】
前記疾患、障害又は病態が、外傷性脳損傷である、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記疾患、障害又は病態が、神経発達障害である、請求項34に記載の方法。
【請求項37】
前記神経発達障害が、レット症候群、脆弱X症候群、又は自閉症スペクトラム障害である、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記疾患、障害又は病態が、レット症候群である、請求項34に記載の方法。
【請求項39】
疾患、障害又は病態の治療を必要とする対象におけるその治療に使用するための、請求項24若しくは25に記載の医薬組成物、又は請求項26若しくは27に記載の水性医薬製剤。
【請求項40】
前記疾患、障害又は病態が、外傷性脳損傷である、請求項39に記載の組成物又は製剤。
【請求項41】
前記疾患、障害又は病態が、神経発達障害である、請求項39に記載の組成物又は製剤。
【請求項42】
前記神経発達障害が、レット症候群、脆弱X症候群、又は自閉症スペクトラム障害である、請求項41に記載の組成物又は製剤。
【請求項43】
前記疾患、障害又は病態が、レット症候群である、請求項42に記載の組成物又は製剤。
【請求項44】
疾患、障害又は病態の治療を必要とする対象におけるその疾患、障害又は病態に対する医薬の製造における、請求項24若しくは25に記載の医薬組成物、又は請求項26若しくは27に記載の水性医薬製剤の使用。
【請求項45】
前記疾患、障害又は病態が、外傷性脳損傷である、請求項44に記載の使用。
【請求項46】
前記疾患、障害又は病態が、神経発達障害である、請求項44に記載の使用。
【請求項47】
前記神経発達障害が、レット症候群、脆弱X症候群、又は自閉症スペクトラム障害である、請求項46に記載の使用。
【請求項48】
前記疾患、障害又は病態が、レット症候群である、請求項44に記載の使用。
【請求項49】
請求項1~23のいずれか一項に記載の結晶性トロフィネチド・xH
2Oを作製する方法であって、i)約25℃でエタノールをトロフィネチドの水溶液に添加することと、ii)前記溶液を約0℃に冷却することと、iii)このようにして得られた固体を単離して、結晶性トロフィネチド・xH
2Oを得ることと、を含む、方法。
【請求項50】
水:エタノール比が、約3:7w/wである、請求項49に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、トロフィネチド及びトロフィネチド水和物の結晶形態、トロフィネチド及びトロフィネチド水和物の結晶形態を含む医薬組成物、トロフィネチド又はトロフィネチド水和物の結晶形態を作製する方法、並びにトロフィネチド又はトロフィネチド水和物の結晶形態を含む組成物を対象に投与することを含む、対象の疾患、病態、又は障害を治療する方法を提供する。
【背景技術】
【0002】
グリシル-L-2-メチルプロリル-L-グルタミン酸(トロフィネチドとしても知られる)は、グリシン-プロリン-グルタメート(グリプロメート又はGPEとしても知られる)の合成類似体である。GPEは、脳に天然に存在する。これは、インスリン様成長因子1(IGF-1)タンパク質のN末端トリペプチドである。
US7,041,314は、トロフィネチド、トロフィネチドを作製する方法、及びトロフィネチドを使用して疾患、障害、又は病態、例えば、低酸素虚血又は毒性傷害によって引き起こされる神経変性を治療する方法を開示している。US7,605,177は、トロフィネチドを使用して、疾患、例えば、神経変性及び慢性神経変性疾患、例えば、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病、I型若しくはII型糖尿病により引き起こされる糖尿病性神経障害、脳の自己免疫疾患、又は多発性硬化症を治療する方法を開示している。US7,714,020は、トロフィネチドを使用して、疾患、障害、又は病態、例えば、外傷性脳損傷により引き起こされる脳損傷、脳卒中、低酸素/虚血、及び毒性損傷を治療する方法を開示している。US7,863,304は、トロフィネチドを使用して、疾患、障害、又は病態、例えば、パーキンソン病などの慢性神経変性障害を治療する方法を開示している。US8,637,567は、トロフィネチドを使用して、疾患、障害、又は状態、例えば、認知障害又は記憶障害を治療する方法を開示している。US7,887,839、US8,178,125、及びUS8,496,963は、様々な疾患、障害、又は病態を治療するためのトロフィネチドの経口製剤を開示している。US9,708,366及びUS9,212,204は、トロフィネチドを使用して、疾患、障害、又は病態、例えば、自閉症スペクトラム障害、例えば、自閉症、自閉症性障害アスペルガー症候群、小児崩壊性障害、他に特定されない広範囲の発達障害(PDD-NOS)、脆弱X症候群、又はレット症候群を治療する方法を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第7,041,314号明細書
【特許文献2】米国特許第7,605,177号明細書
【特許文献3】米国特許第7,714,020号明細書
【特許文献4】米国特許第7,863,304号明細書
【特許文献5】米国特許第8,637,567号明細書
【特許文献6】米国特許第7,887,839号明細書
【特許文献7】米国特許第8,178,125号明細書
【特許文献8】米国特許第8,496,963号明細書
【特許文献9】米国特許第9,708,366号明細書
【特許文献10】米国特許第9,212,204号明細書
【発明の概要】
【0004】
対象におけるレット症候群、脆弱X症候群、外傷性脳損傷、並びに他の疾患、障害、及び病態の治療に使用するための、化学的に安定した固体形態のトロフィネチドが必要である。
【0005】
一態様では、本開示は、トロフィネチド又はトロフィネチド水和物の結晶多形形態を提供する。
【0006】
別の態様では、本開示は、トロフィネチドの結晶多形形態を作製する方法を提供する。
【0007】
別の態様では、本開示は、トロフィネチド又はトロフィネチド水和物の結晶多形形態と、1種以上の賦形剤と、を含む、組成物を提供する。
【0008】
別の態様では、本開示は、トロフィネチド又はトロフィネチド水和物の結晶多形形態と、1種以上の賦形剤と、を含む、組成物を作製する方法を提供する。
【0009】
別の態様では、本開示は、トロフィネチド又はトロフィネチド水和物の結晶多形形態を使用して、対象の疾患、障害、又は病態、例えば、外傷性脳損傷又は神経発達障害を治療する方法を提供する。
【0010】
別の態様では、本開示は、トロフィネチド又はトロフィネチド水和物の結晶多形形態を備えるキットを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図8】形態Aの単結晶X線回折非対称単位である。水素原子は明確にするために省略されている。
【
図9】形態Aの動的蒸気収着/脱着データを示す折れ線グラフである。
【
図10】異なる量の水を含有する、形態Aの3つの一連のXRPD回折図である。
【
図11】異なる湿度条件で保存された、形態Aの5つの一連のXRPD回折図である。
【
図12】形態AのTGA/DCSサーモグラムである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
I.結晶性トロフィネチド又はトロフィネチド水和物
一実施形態では、本開示は、総称して「トロフィネチド多形体」と称される、トロフィネチドの結晶多形形態又はトロフィネチド水和物の結晶多形形態を提供する。
【0013】
別の実施形態では、トロフィネチド多形は、式:トロフィネチド・xH2Oで表される結晶性トロフィネチド水和物であり、式中、xは、約2~約4である。別の実施形態では、トロフィネチド多形は、トロフィネチド・xH2Oであり、式中、xは、約2.5~約3.5である。別の実施形態では、トロフィネチド多形は、トロフィネチド・xH2Oであり、式中、xは、約2である。別の実施形態では、トロフィネチド多形は、トロフィネチド・xH2Oであり、式中、xは、約2.5である。別の実施形態では、トロフィネチド多形は、トロフィネチド・xH2Oであり、式中、xは、約3である。別の実施形態では、トロフィネチド多形は、トロフィネチド・xH2Oであり、式中、xは、約3.5である。別の実施形態では、トロフィネチド多形は、トロフィネチド・xH2Oであり、式中、xは、約4である。これらの結晶性トロフィネチド・xH2O多形は、総称して「形態A」と称される。
【0014】
別の実施形態では、形態Aは、Cu Kα放射線を使用した、6.6~6.8度2θの範囲内にピーク、11.3~11.6度2θの範囲内にピーク、12.5~12.7度2θの範囲内にピーク、及び13.6~13.8度2θの範囲内にピークを有するPXRDパターン、すなわち粉末X線回折パターンであって、2θ値が±0.2度2θであり、任意選択で、Cu Kα放射線を使用した、16.8、22.3、23.6、25.3及び/又は28.1度2θ±0.2度2θにピークを有する、PXRDパターンを有することを特徴とする。
【0015】
別の実施形態では、形態Aは、Cu Kα放射線を使用した、6.7又は6.8、11.4又は11.5、12.6、及び13.7又は13.8度2θにピークを有し、任意選択で、16.8、22.3、23.6、25.3及び/又は28.1度2θ±0.2度2θにピークを有するPXRDパターンを有することを特徴とする。
【0016】
別の実施形態では、形態Aは、Cu Kα放射線を使用した、6.7、11.4、12.6、13.7、22.3、23.6、25.3及び28.1度2θにピークを有するPXRDパターンであって、2θ値が±0.2度2θである、PXRDパターンを有することを特徴とする。
【0017】
別の実施形態では、形態Aは、Cu Kα放射線を使用した、6.7、11.4、12.6、13.7、22.3、23.6、25.3及び28.1度2θにピークを有するPXRDパターンを有することを特徴とする。
【0018】
別の実施形態では、形態Aは、Cu Kα放射線を使用した、6.8、11.5、12.6、13.8、及び16.8度2θにピークを有するPXRDパターンであって、2θ値が±0.2度2θである、PXRDパターンを有することを特徴とする。
【0019】
別の実施形態では、形態Aは、Cu Kα放射線を使用した、11.5、12.6、及び13.8度2θにピークを有するPXRDパターンであって、2θ値が±0.2度2θである、PXRDパターンを有することを特徴とする。
【0020】
別の実施形態では、形態Aは、Cu Kα放射線を使用した、6.8、11.5、及び12.6度2θにピークを有するPXRDパターンであって、2θ値が±0.2度2θである、PXRDパターンを有することを特徴とする。
【0021】
別の実施形態では、形態Aは、Cu Kα放射線を使用した、6.8、9.9、11.5、12.6、13.5、13.8、13.9、15.4、15.7、16.3、16.8、18.2、18.7、19.0、19.2、19.8、20.4、20.8、21.2、21.5、22.3、22.8、23.3、23.6、25.4、26.4、28.1、30.2、32.9、33.7、35.4、及び/又は39.1度2θに少なくとも3つのピークを有するPXRDパターンであって、2θ値が±0.2度2θであるPXRDパターンを有することを特徴とする。
【0022】
別の実施形態では、形態Aは、Cu Kα放射線を使用した、6.8、9.9、11.5、12.6、13.5、13.8、13.9、15.4、15.7、16.3、16.8、18.2、18.7、19.0、19.2、19.8、20.4、20.8、21.2、21.5、22.3、22.8、23.3、23.6、25.4、26.4、28.1、30.2、32.9、33.7、35.4、及び/又は39.1度2θに少なくとも4つのピークを有するPXRDパターンであって、2θ値が±0.2度2θであるPXRDパターンを有することを特徴とする。
【0023】
別の実施形態では、形態Aは、Cu Kα放射線を使用した、6.8、9.9、11.5、12.6、13.5、13.8、13.9、15.4、15.7、16.3、16.8、18.2、18.7、19.0、19.2、19.8、20.4、20.8、21.2、21.5、22.3、22.8、23.3、23.6、25.4、26.4、28.1、30.2、32.9、33.7、35.4、及び/又は39.1度2θに少なくとも5つのピークを有するPXRDパターンであって、2θ値が±0.2度2θであるPXRDパターンを有することを特徴とする。
【0024】
別の実施形態では、形態Aは、Cu Kα放射線を使用した、6.8、9.9、11.5、12.6、13.5、13.8、13.9、15.4、15.7、16.3、16.8、18.2、18.7、19.0、19.2、19.8、20.4、20.8、21.2、21.5、22.3、22.8、23.3、23.6、25.4、26.4、28.1、30.2、32.9、33.7、35.4、及び/又は39.1度2θに少なくとも6つのピークを有するPXRDパターンであって、2θ値が±0.2度2θであるPXRDパターンを有することを特徴とする。
【0025】
別の実施形態では、形態Aは、Cu Kα放射線を使用した、6.8、9.9、11.5、12.6、13.5、13.8、13.9、15.4、15.7、16.3、16.8、18.2、18.7、19.0、19.2、19.8、20.4、20.8、21.2、21.5、22.3、22.8、23.3、23.6、25.4、26.4、28.1、30.2、32.9、33.7、35.4、及び/又は39.1度2θに少なくとも7つのピークを有するPXRDパターンであって、2θ値が±0.2度2θであるPXRDパターンを有することを特徴とする。
【0026】
別の実施形態では、形態Aは、Cu Kα放射線を使用した、6.8、9.9、11.5、12.6、13.5、13.8、13.9、15.4、15.7、16.3、16.8、18.2、18.7、19.0、19.2、19.8、20.4、20.8、21.2、21.5、22.3、22.8、23.3、23.6、25.4、26.4、28.1、30.2、32.9、33.7、35.4、及び/又は39.1度2θに少なくとも8つのピークを有するPXRDパターンであって、2θ値が±0.2度2θであるPXRDパターンを有することを特徴とする。
【0027】
別の実施形態では、形態Aは、Cu Kα放射線を使用した、6.8、9.9、11.5、12.6、13.5、13.8、13.9、15.4、15.7、16.3、16.8、18.2、18.7、19.0、19.2、19.8、20.4、20.8、21.2、21.5、22.3、22.8、23.3、23.6、25.4、26.4、28.1、30.2、32.9、33.7、35.4、及び/又は39.1度2θに少なくとも9つのピークを有するPXRDパターンであって、2θ値が±0.2度2θであるPXRDパターンを有することを特徴とする。
【0028】
別の実施形態では、形態Aは、Cu Kα放射線を使用した、6.8、9.9、11.5、12.6、13.5、13.8、13.9、15.4、15.7、16.3、16.8、18.2、18.7、19.0、19.2、19.8、20.4、20.8、21.2、21.5、22.3、22.8、23.3、23.6、25.4、26.4、28.1、30.2、32.9、33.7、35.4、及び/又は39.1度2θに少なくとも10個のピークを有するPXRDパターンであって、2θ値が±0.2度2θであるPXRDパターンを有することを特徴とする。
【0029】
別の実施形態では、形態Aは、Cu Kα放射線を使用した、6.8、9.9、11.5、12.6、13.5、13.8、13.9、15.4、15.8、16.3、16.8、18.2、18.7、19.0、19.270、19.8、20.4、20.8、21.2、21.5、22.380、22.8、23.3、23.6、25.4、26.4、28.1、30.2、32.9、33.7、35.4、及び39.120度2θにピークを有するPXRDパターンであって、2θ値が±0.2度2θであるPXRDパターンを有することを特徴とする。
【0030】
別の実施形態では、形態Aは、Cu Kα放射線を使用した、13.1、7.7、7.0、6.4、及び5.3Åのd間隔を有するPXRDパターンを有することを特徴とする。
【0031】
別の実施形態では、形態Aは、Cu Kα放射線を使用した、13.1、7.7、及び7.0Åのd間隔を有するPXRDパターンを有することを特徴とする。
【0032】
別の実施形態では、形態Aは、Cu Kα放射線を使用した、7.7、7.0、及び6.4Åのd間隔を有するPXRDパターンを有することを特徴とする。
【0033】
別の実施形態では、形態Aは、Cu Kα放射線を使用した、13.1、8.9、7.7、7.0、6.6、6.43、6.36、5.8、5.6、5.4、5.3、4.9、4.8、4.7、4.6、4.5、4.34、4.27、4.2、4.1、4.0、3.9、3.81、3.76、3.5、3.4、3.2、3.0、2.72、2.66、2.5、及び/又は2.3Åの少なくとも3つのd間隔を有するPXRDパターンを有することを特徴とする。
【0034】
別の実施形態では、形態Aは、Cu Kα放射線を使用した、13.1、8.9、7.7、7.0、6.6、6.43、6.36、5.8、5.6、5.4、5.3、4.9、4.8、4.7、4.6、4.5、4.34、4.27、4.2、4.1、4.0、3.9、3.81、3.76、3.5、3.4、3.2、3.0、2.72、2.66、2.5、及び/又は2.3Åの少なくとも4つのd間隔を有するPXRDパターンを有することを特徴とする。
【0035】
別の実施形態では、形態Aは、Cu Kα放射線を使用した、13.1、8.9、7.7、7.0、6.6、6.43、6.36、5.8、5.6、5.4、5.3、4.9、4.8、4.7、4.6、4.5、4.34、4.27、4.2、4.1、4.0、3.9、3.81、3.76、3.5、3.4、3.2、3.0、2.72、2.66、2.5、及び/又は2.3Åの少なくとも5つのd間隔を有するPXRDパターンを有することを特徴とする。
【0036】
別の実施形態では、形態Aは、Cu Kα放射線を使用した、13.1、8.9、7.7、7.0、6.6、6.43、6.36、5.8、5.6、5.4、5.3、4.9、4.8、4.7、4.6、4.5、4.34、4.27、4.2、4.1、4.0、3.9、3.81、3.76、3.5、3.4、3.2、3.0、2.72、2.66、2.5、及び/又は2.3Åの少なくとも6つのd間隔を有するPXRDパターンを有することを特徴とする。
【0037】
別の実施形態では、形態Aは、Cu Kα放射線を使用した、13.1、8.9、7.7、7.0、6.6、6.43、6.36、5.8、5.6、5.4、5.3、4.9、4.8、4.7、4.6、4.5、4.34、4.27、4.2、4.1、4.0、3.9、3.81、3.76、3.5、3.4、3.2、3.0、2.72、2.66、2.5、及び/又は2.3Åの少なくとも7つのd間隔を有するPXRDパターンを有することを特徴とする。
【0038】
別の実施形態では、形態Aは、Cu Kα放射線を使用した、13.1、8.9、7.7、7.0、6.6、6.43、6.36、5.8、5.6、5.4、5.3、4.9、4.8、4.7、4.6、4.5、4.34、4.27、4.2、4.1、4.0、3.9、3.81、3.76、3.5、3.4、3.2、3.0、2.72、2.66、2.5、及び/又は2.3Åの少なくとも8つのd間隔を有するPXRDパターンを有することを特徴とする。
【0039】
別の実施形態では、形態Aは、Cu Kα放射線を使用した、13.1、8.9、7.7、7.0、6.6、6.43、6.36、5.8、5.6、5.4、5.3、4.9、4.8、4.7、4.6、4.5、4.34、4.27、4.2、4.1、4.0、3.9、3.81、3.76、3.5、3.4、3.2、3.0、2.72、2.66、2.5、及び/又は2.3Åの少なくとも9つのd間隔を有するPXRDパターンを有することを特徴とする。
【0040】
別の実施形態では、形態Aは、Cu Kα放射線を使用した、13.1、8.9、7.7、7.0、6.6、6.43、6.36、5.8、5.6、5.4、5.3、4.9、4.8、4.7、4.6、4.5、4.34、4.27、4.2、4.1、4.0、3.9、3.81、3.76、3.5、3.4、3.2、3.0、2.72、2.66、2.5、及び/又は2.3Åの少なくとも10個のd間隔を有するPXRDパターンを有することを特徴とする。
【0041】
別の実施形態では、形態Aは、
図1に示されるものと本質的に同じであるPXRD回折図を有することを特徴とする。
【0042】
別の実施形態では、形態Aは、2989、2934、2883、1685、1637、1459、及び930cm-1にピークを有するFT-ラマンスペクトルであって、cm-1値が±4cm-1である、FT-ラマンスペクトルを有することを特徴とする。
【0043】
別の実施形態では、形態Aは、2989、2960、2934、2883、1685、1637、1459、1417、1346、1272、1199、1058、1023、967、930、782、552、496、425、及び342cm-1にピークを有するFT-ラマンスペクトルであって、cm-1値が±4cm-1である、FT-ラマンスペクトルを有することを特徴とする。
【0044】
別の実施形態では、形態Aは、
図2に示されるものと本質的に同じであるFT-ラマンスペクトルを有することを特徴とする。
【0045】
別の実施形態では、形態Aは、13、24、67、及び77cm-1にピークを有する低周波(LF)ラマンスペクトルであって、cm-1値が±で次の値である、低周波(LF)ラマンスペクトルを有することを特徴とする。
4cm-1
.
【0046】
別の実施形態では、形態Aは、13、24、34、67、77、208、283、348、422、495、及び552cm-1にピークを有するLFラマンスペクトルであって、cm-1値が±4cm-1である、LFラマンスペクトルを有することを特徴とする。
【0047】
別の実施形態では、形態Aは、
図3に示されるものと本質的に同じであるLF-ラマンスペクトルを有することを特徴とする。
【0048】
別の実施形態では、形態Aは、179.7、177.9、177.5、177.2、177.0、165.3、164.9、164.8、67.8、67.4、58.6、58.2、46.8、40.3、33.3、25.3、23.5、及び21.1ppmにピークを有する13C固体核磁気共鳴(ssNMR)スペクトルであって、ppm値が±3ppmである、ssNMRスペクトルを有することを特徴とする。
【0049】
別の実施形態では、形態Aは、最もダウンフィールドのピークから(i)第2の最もダウンフィールドのピークまでのΔが1.8ppmである、(ii)第3番の最もダウンフィールドのピークまでのΔが2.2ppmである、(iii)第4の最もダウンフィールドのピークまでのΔが2.5ppmである、(iv)第5の最もダウンフィールドのピークまでのΔが2.7ppmである、(v)第6の最もダウンフィールドのピークまでのΔが14.4ppmである、(vi)第7の最もダウンフィールドのピークまでのΔが14.8ppmである、(vii)第8の最もダウンフィールドのピークまでのΔが14.9ppmである、(viii)第9の最もダウンフィールドのピークまでのΔが111.9ppmである、(ix)第10の最もダウンフィールドのピークまでのΔが112.3ppmである、(x)第11の最もダウンフィールドのピークまでのΔが121.1ppmである、(xi)第12の最もダウンフィールドのピークまでのΔが121.5ppmである、(xii)第13の最もダウンフィールドのピークまでのΔが133.1ppmである、(xiii)第14の最もダウンフィールドのピークまでのΔが139.4ppmである、(xiv)第15の最もダウンフィールドのピークまでのΔが146.3ppmである、(xv)第16の最もダウンフィールドのピークまでのΔが154.4ppmである、(xvi)第17の最もダウンフィールドのピークまでのΔが156.2ppmである、及び/若しくは(xvii)最もダウンフィールドのピークから最もアップフィールドのピークまでのΔが158.6ppmである、又はそれらの任意の組み合わせである、18個のピークを有するssNMRスペクトルを有することを特徴とする。例えば、表5及び6を参照されたい。
【0050】
別の実施形態では、形態Aは、
図4に示されるものと本質的に同じであるssNMRスペクトルを有することを特徴とする。
【0051】
別の実施形態では、形態Aは、示差走査熱量測定(DSC)に基づく、71.71℃の開始温度及び72.06℃のピーク温度を有する融点を有することを特徴とする。
【0052】
別の実施形態では、形態Aは、
図5に示されるものと本質的に同じであるDSCサーモグラムを有することを特徴とする。
【0053】
別の実施形態では、形態Aは、1678、1636、1589、1525、1214、及び1196cm-1にピークを有する赤外線(IR)スペクトルであって、cm-1値が±4cm-1である、IRスペクトルを有することを特徴とする。
【0054】
別の実施形態では、形態Aは、3560、3400、3343、3296、2881-3012、1678、1636、1589、1525、1458、1435、1413、1376、1352、1292、1255、1214、1196、1142、1120、1015、964、924、898、827、843、777、649、599、576、551、502、及び426cm-1にピークを有するIRスペクトルであって、cm-1値が±4cm-1である、IRスペクトルを有することを特徴とする。
【0055】
別の実施形態では、形態Aは、
図6に示されるものと本質的に同じであるIRスペクトルを有することを特徴とする。
【0056】
別の実施形態では、形態Aは、5145、4630、及び4423cm-1にピークを有する近赤外線(NIR)スペクトルであって、cm-1値が±4cm-1である、NIRスペクトルを有することを特徴とする。
【0057】
別の実施形態では、形態Aは、5908、5796、5145、4875、4630、4423、及び4298cm-1にピークを有するNIRスペクトルであって、cm-1値が±4cm-1である、NIRスペクトルを有することを特徴とする。
【0058】
別の実施形態では、形態Aは、
図7に示されるものと本質的に同じであるNIRスペクトルを有することを特徴とする。
【0059】
別の実施形態では、トロフィネチド多形、例えば、形態Aは、約1重量%~約10重量%、例えば、約10重量%、約9重量%、約8重量%、約7重量%、約6重量%、約5重量%、約4重量%、約3重量%、約2重量%、又は約1重量%の任意の他の物理的形態、例えば、結晶又は非晶質形態のトロフィネチド又はトロフィネチド水和物を含むことを特徴とする。
【0060】
別の実施形態では、トロフィネチド多形、例えば、形態Aは、約0.1重量%~約1重量%、例えば、約1重量%、約0.9重量%、約0.8重量%、約0.7重量%、約0.6重量%、約0.5重量%、約0.4重量%、約0.3重量%、約0.2重量%、又は約0.1重量%の任意の他の物理的形態のトロフィネチド又はトロフィネチド水和物を含むことを特徴とする。
【0061】
別の実施形態では、トロフィネチド多形は、PXRD検出可能な量の任意の他の物理的形態のトロフィネチド又はトロフィネチド水和物を含まないことを特徴とする。別の実施形態では、トロフィネチド多形は、形態Aである。
【0062】
別の実施形態では、トロフィネチド多形は、約10μm~約500μm、例えば、約500μm、約400μm、約300μm、約200μm、約100μm、約90μm、約80μm、約70μm、約60μm、約50μm、約40μm、約30μm、約20μm、又は約10μmの平均粒径分布を有する。別の実施形態では、トロフィネチド多形は、形態Aである。
【0063】
別の実施形態において、トロフィネチド多形は、約1μm~約10μm、例えば、約10μm、約9μm、約8μm、約7μm、約6μm、又は約5μm、約4μm、約3μm、約2μm、又は約1μmの平均粒径分布を有する。別の実施形態では、トロフィネチド多形は、形態Aである。
【0064】
別の実施形態では、トロフィネチド多形は、約1μm以下、例えば、約0.9μm、約0.8μm、約0.7μm、約0.6μm、約0.5μm、約0.4μm、約0.3μm、約0.2μm、約0.1μm、約0.09μm、約0.08μm、約0.07μm、約0.06μm、約0.05μm、約0.04μm、約0.03μm、約0.02μm、又は約0.01μm以下である平均粒径分布を有する。別の実施形態では、トロフィネチド多形は、形態Aである。
【0065】
別の実施形態では、トロフィネチド多形は、約25℃の温度及び約60%の相対湿度で3ヶ月間の保管中化学的に安定である。別の実施形態では、トロフィネチド多形は、形態Aである。
【0066】
別の実施形態では、トロフィネチド多形は、約25℃の温度及び約60%の相対湿度で6ヶ月間の保管中化学的に安定である。別の実施形態では、トロフィネチド多形は、形態Aである。
【0067】
別の実施形態では、トロフィネチド多形は、約25℃の温度及び約60%の相対湿度で12ヶ月以上の保管中化学的に安定である。別の実施形態では、トロフィネチド多形は、形態Aである。
【0068】
II.医薬組成物及び製剤
別の実施形態では、本開示は、トロフィネチド多形体と1種以上の薬学的に許容される賦形剤と、を含む、医薬組成物を提供する。
【0069】
別の実施形態では、本開示は、顆粒状形態のトロフィネチド多形を含む医薬製剤を提供し、顆粒は、任意選択で、1種以上の薬学的に許容される結合剤若しくは充填剤、又はそれらの組み合わせを含む。結合剤は、顆粒の約1重量%~約30重量%の総量で、例えば、顆粒の約5重量%~約15重量%の総量で、例えば、顆粒の約1重量%、約2重量%、約3重量%、約4%、約5重量%、約6重量%、約7重量%、約8重量%、約9重量%、約10重量%、約11重量%、約12重量%、約13重量%、約14重量%、約15重量%、約16重量%、約17重量%、約18重量%、約19重量%、又は約20重量%の合計量で使用され得る。充填剤は、合計で顆粒の約5重量%~約80重量%、例えば、顆粒の約10重量%~約60重量%の総量で、例えば、顆粒の約5重量%、約10重量%、約15重量%、約20重量%、約25重量%、約30重量%、約35重量%、約40重量%、約45重量%、約50重量%、約55重量%、約60重量%、約65重量%、約70重量%、約75重量%、又は約80重量%の総量で使用され得る。
【0070】
別の実施形態では、結合剤は、アカシア、ゼラチン、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、ポリエチレングリコール(PEG)、ポビドン(ポリビニルピロリドン、PVP)、スクロース、若しくはデンプン、又はそれらの組み合わせである。
【0071】
別の実施形態では、充填剤は、微結晶性セルロースである。
【0072】
別の実施形態では、本開示は、水に溶解したトロフィネチド多形と、任意選択で1種以上の追加の賦形剤と、を含む、水性医薬製剤を提供する。
【0073】
別の実施形態では、水は、精製水である。
【0074】
別の実施形態では、約1gのトロフィネチド多形が各5mLの水に溶解される。
【0075】
別の実施形態では、トロフィネチド多形は、形態Aである。
【0076】
別の実施形態において、医薬製剤は、1重量%~99重量%、例えば、約1%、約2%、約3%、約4%、約5%、約6%、約7%、約8%、約9%、又は約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、又は約95%のトロフィネチド多形を含有する。任意の特定の製剤中の量は、トロフィネチドの有効用量、すなわち、所望のレベルの治療活性を惹起するために必要な用量に依存する。一実施形態では、医薬製剤は、水に溶解した形態Aを含む。
【0077】
III.医薬製剤の作製方法
別の実施形態では、本開示は、トロフィネチドを含む水性医薬製剤を作製する方であって、トロフィネチド多形体を水に溶解することを含む、方法を提供する。
【0078】
別の実施形態では、水は、精製水である。
【0079】
別の実施形態では、約1gのトロフィネチド多形が各5mLの水に溶解される。
【0080】
別の実施形態では、トロフィネチド多形は、形態Aである。
【0081】
IV.キット
別の実施形態では、本開示は、本開示の方法を実践するためのその使用を容易にするように包装されたトロフィネチド多形を含むキットを提供する。
【0082】
別の実施形態では、キットは、対象における疾患、障害、又は病態を治療するための本開示の方法を実践するためのトロフィネチド多形の使用を説明する、容器に貼り付けられたラベル又は添付文書とともに、封止されたボトル又は槽などの容器内に包装されたトロフィネチド多形を含む。別の実施形態では、トロフィネチド多形は、単位剤形で包装される。
【0083】
別の実施形態では、キットは、トロフィネチド多形を水に溶解して、水性医薬製剤を提供するための説明書を更に備える。
【0084】
別の実施形態では、キットは、添付文書、例えば、疾患、障害又は病態を有する対象にトロフィネチド多形又は水性医薬製剤を投与するための説明書を更に備える。別の実施形態では、疾患、障害又は病態は、外傷性脳損傷である。別の実施形態では、疾患、障害又は病態は、神経発達障害である。別の実施形態では、神経発達障害は、レット症候群、脆弱X症候群、又は自閉症スペクトラム障害である。
【0085】
別の実施形態では、トロフィネチド多形は、形態Aである。
【0086】
V.疾患、障害、又は病態を治療する方法
別の実施形態において、本開示は、疾患、障害又は病態の治療を必要とする対象におけるそれを治療する方法であって、水に溶解したトロフィネチド多形を含む水性医薬製剤を対象に投与することを含む、方法を提供する。別の実施形態では、疾患、障害又は病態は、外傷性脳損傷である。別の実施形態では、疾患、障害又は病態は、神経発達障害である。別の実施形態では、神経発達障害は、レット症候群、脆弱X症候群、又は自閉症スペクトラム障害である。
【0087】
別の実施形態では、水性医薬製剤は、経口投与用の溶液である。
【0088】
別の実施形態では、水は、精製水である。
【0089】
別の実施形態では、約1gのトロフィネチド多形が各5mLの水に溶解される。
【0090】
別の実施形態では、トロフィネチド多形は、形態Aである。
【0091】
VI.結晶性トロフィネチド又はトロフィネチド水和物を作製する方法
別の実施形態では、本開示は、トロフィネチド多形を作製する方法を提供する。
【0092】
別の実施形態では、本開示は、形態Aを作製する方法を提供する。
【0093】
別の実施形態では、本開示は、形態Aを作製する方法であって、i)約25℃でエタノールをトロフィネチドの水溶液に添加することと、ii)溶液を約0℃に冷却することと、を含む、方法を提供する。別の実施形態では、水:エタノール比は、約3:7w/wである。別の実施形態では、トロフィネチドの溶液濃度は、約15%w/wである。
【0094】
別の実施形態では、形態Aを作製する方法は、形態Aを添加して溶液に播種し、スラリーを得ることを更に含む。
【0095】
別の実施形態では、形態Aを作製する方法は、このようにして得られた固体を、例えば濾過によって単離して、形態Aを含む湿潤ケーキを得ることを更に含む。
【0096】
別の実施形態では、形態Aを作製する方法は、形態Aを含む湿潤ケーキを約0℃で予備冷却されたエタノールで洗浄することを更に含む。
【0097】
別の実施形態では、形態Aを作製する方法は、形態Aを含む湿潤ケーキを真空下で乾燥させることを更に含む。
【0098】
VII.定義
本明細書で使用される「トロフィネチド」という用語は、式I:
【化1】
のグリシル-L-2-メチルプロリル-L-グルタミン酸を指し、各立体中心は、S配置にある。トロフィネチドのIUPAC名は、(2S)-2-[[(2S)-1-(2-アミノアセチル)-2-メチルピロリジン-2-カルボニル]アミノ]ペンタン二酸である。トロフィネチドは、「G-2-MePE」、「H-Gly-MePro-Glu-OH」、又は「Gly-MePro-Glu-OH」とも称される。
【0099】
トロフィネチドは、溶媒和物、例えば、水又はメタノールを、トロフィネチド分子の化学変化なしに結晶格子に組み込む結晶性固体を形成し得る。「トロフィネチド水和物」という用語は、式:トロフィネチド・xH2Oで表され、式中、xは、トロフィネチドのモル当たりのH2Oモルの比率である。トロフィネチド水和物は、化学量論的量の水を含有する必要はなく、例えば、xは、約2.5であり得る。一実施形態では、xは約1~約5である。別の実施形態では、xは、約2~約4である。別の実施形態では、xは、約2.5~約3.5である。別の実施形態では、xは、約2である。別の実施形態では、xは、約2.5である。別の実施形態では、xは、約3である。別の実施形態では、xは、約3.5である。別の実施形態では、xは、約4である。別の実施形態では、xは、約4.5である。
【0100】
本明細書で使用される場合、トロフィネチド多形に関する「実質的に純粋な」という用語は、結晶性材料が、約10重量%以下、例えば、約1%~約10重量%、例えば、約9重量%、約8重量%、約7重量%、約6重量%、約5重量%、約4重量%、約3重量%、約2重量%、又は約1重量%の任意の他の結晶又は非晶質形態のトロフィネチド又はトロフィネチド水和物を含むことを意味する。別の実施形態では、トロフィネチド多形は、実質的に純粋な形態Aである。
【0101】
本明細書で使用される場合、トロフィネチド多形に関する「純粋な」という用語は、結晶性材料が、約1重量%以下、例えば、約0.1重量%~約1重量%、例えば、約1重量%、約0.9重量%、約0.8重量%、約0.7重量%、約0.6重量%、約0.5重量%、約0.4重量%、約0.3重量%、約0.2重量%、又は約0.1重量%以下の任意の他の結晶又は非晶質形態のトロフィネチドを含むことを意味する。一実施形態では、結晶性トロフィネチド多形、例えば、形態Aは、PXRD検出可能な量の任意の他の結晶又は非晶質形態のトロフィネチド又はトロフィネチド水和物を含まない。別の実施形態では、トロフィネチド多形は、純粋な形態Aである。
【0102】
本明細書で使用される場合、「非晶質」という用語は、結晶の長距離秩序特性を欠くトロフィネチド又はトロフィネチド水和物の固体形態を指し、すなわち固体は非晶質である。
【0103】
本明細書で使用される場合、PXRDピーク位置及び/又は相対強度に関する「本質的に同じ」という用語は、PXRD回折図を比較するときにピーク位置及び/又は強度変動が考慮されることを意味する。同様に、ラマン又はIRピーク位置に関する「本質的に同じ」という用語は、ラマン又はIRスペクトルを比較するときにピーク位置変動が考慮されることを意味する。例えば、PXRDピーク位置は、例えば、装置間の変動、例えば、最大0.2°2θ、すなわち±0.2°2θを示し得、ラマン及びIRピーク位置は、例えば、装置間の変動、例えば、最大4cm-1、すなわち±4cm-1を示し得る。例えば、PXRD回折図において、相対的なピーク強度もまた、結晶性の程度、配向、調製された試料表面、及び当業者に既知の他の要因に起因する装置間の変動を示し得、定性的尺度としてのみ考慮されるべきである。
【0104】
本明細書で使用される場合、「微粒化」という用語は、粒子集団のサイズが、典型的にはミクロンスケールに低減されるプロセス又は方法を指す。
【0105】
本明細書で使用される場合、「ミクロン」又は「μm」という用語は、1×10-6メートルである「マイクロメートル」を指す。
【0106】
本明細書で使用される場合、「治療有効量」という用語は、疾患、病態、傷害若しくは障害の1つ以上の症状を治療するか、又は疾患、病態、傷害若しくは障害の進行を予防するか、又は疾患、病態、傷害若しくは障害の退行を引き起こすのに十分なトロフィネチドの量を指す。
【0107】
本明細書で使用される場合、トロフィネチド多形に関する「化学的に安定した」などの用語は、トロフィネチド結晶性固体が、約25℃の温度及び約60%の相対湿度で少なくとも3ヶ月間保存した後、0.5%未満の化学分解、例えば、0.4%未満、0.3%未満、0.2%未満、0.1%未満、又は0.05%未満の化学分解を示すことを意味する。分解量を決定する際、当該技術分野で既知の方法、例えば、HPLCを使用して、1種以上の化学不純物の出現を測定することができ、及び/又はトロフィネチドの消失を測定することができる。
【0108】
「a」及び「an」という用語は、1つ又は2つ以上を指す。
【0109】
本明細書で使用される場合、「約」という用語は、記載される数値±10%を含む。したがって、「約10」は、9~11を意味する。
【0110】
本明細書で使用される場合、「平均粒径分布」又は「D50」という用語は、例えば、Malvern Master Sizer Microplus機器又はその等価物において、レーザー回折によって決定されるように、粒子の50質量%がより大きな等価直径を有し、他の50質量%がより小さい等価直径を有する直径である。
【0111】
本明細書で使用される場合、「賦形剤」という用語は、トロフィネチド多形以外の、対象への投与に適した医薬製剤、例えば経口投与用溶液中の、又はそれを生成するために添加される任意の成分を指す。賦形剤は、典型的には、トロフィネチド多形の処理、取り扱い、溶解、投与等を容易にするために組成物に添加される不活性物質、例えば、水である。有用な賦形剤としては、アジュバント、抗接着剤、結合剤、担体、崩壊剤、充填剤、香料、色素、希釈剤、潤滑剤、流動促進剤、保存剤、収着剤、溶媒、界面活性剤、及び甘味料が挙げられるが、これらに限定されない。
【0112】
従来の薬学的賦形剤は、当業者に周知である。多種多様な薬学的賦形剤がトロフィネチド多形と混合して使用することができ、これには、水、及びHandbook of Pharmaceutical Excipients,Pharmaceutical Press 4th Ed.(2003)、及びRemington:The Science and Practice of Pharmacy,Lippincott Williams & Wilkins,21st ed.(2005)に列挙されるその他のものが含まれる。一実施形態では、組成物は、水に溶解した形態Aを含む。
【0113】
本明細書で使用される場合、「対象」という用語は、動物、例えば、ヒト又は獣医動物、例えば、ウシ、ヒツジ、ブタ、ウマ、イヌ、若しくはネコを指す。一実施形態では、対象は、ヒトである。
【0114】
本明細書で使用される場合、「容器」という用語は、したがって、医薬品又は賦形剤の保存、出荷、分配、及び/又は取り扱いに適した任意の容器及び封鎖を意味する。
【0115】
「添付文書」という用語は、医者、薬剤師、及び患者が製品の使用に関する情報に基づいた決定を下すことを可能にするために必要な安全性及び有効性データとともに、製品の投与方法の説明を提供する医薬品に付随する情報を意味する。添付文書は、一般に、医薬品の「ラベル」と見なされる。
【0116】
本明細書で使用される場合、「及び/又は」という用語は、他方の有無にかかわらず、2つの指定された特徴又は構成要素のそれぞれの特定の開示として解釈されるべきである。したがって、本明細書で「A及び/又はB」などの語句で使用される「及び/又は」という用語は、「A及びB」、「A又はB」、「A」(単独)、並びに「B」(単独)を含むように意図される。同様に、「A、B、及び/又はC」などの語句で使用される「及び/又は」という用語は、以下の態様のそれぞれを包含することが意図される。A、B、及びC;A、B、又はC;A又はC;A又はB;B又はC;A及びC;A及びB;B及びC;A(単独);B(単独);並びにC(単独)。
【0117】
VII.特定の実施形態
本開示は、以下の特定の実施形態を提供する。
【0118】
実施形態1.結晶性トロフィネチド・xH2O(式中、xが、約2~約4である)であって、
(i)Cu Kα放射線を使用した、6.8、11.5、12.6、13.8、及び16.8度2θにピークを有する粉末X線回折パターンであって、2θ値が±0.2度2θである、粉末X線回折パターン、あるいは
(ii)Cu Kα放射線を使用した、13.1、7.7、7.0、6.4、及び5.3Åのd間隔を有する粉末X線回折パターン、あるいは
(iii)2989、2934、2883、1685、1637、1459、及び930cm-1にピークを有するFT-ラマンスペクトルであって、cm-1値が±4cm-1である、FT-ラマンスペクトル、あるいは
(iv)13、24、67、及び77cm-1にピークを有する低周波(LF)ラマンスペクトルであって、cm-1値が±4cm-1である、低周波(LF)ラマンスペクトル、あるいは
(v)179.7、177.9、177.5、177.2、177.0、165.3、164.9、164.8、67.8、67.4、58.6、58.2、46.8、40.3、33.3、25.3、23.5、及び21.1ppmにピークを有する13C固体核磁気共鳴スペクトルであって、ppm値が±3pmである、13C固体核磁気共鳴スペクトル、あるいは
(vi)最遠のダウンフィールドピークから(i)第2の最遠のダウンフィールドピークまでのΔが1.8ppmである、(ii)第3の最遠のダウンフィールドピークまでのΔが2.2ppmである、(iii)第4の最遠のダウンフィールドピークまでのΔが2.5ppmである、(iv)第5の最遠のダウンフィールドピークまでのΔが2.7ppmである、(v)第6の最遠のダウンフィールドピークまでのΔが14.4ppmである、(vi)第7の最遠のダウンフィールドピークまでのΔが14.8ppmである、(vii)第8の最遠のダウンフィールドピークまでのΔが14.9ppmである、(viii)第9の最遠のダウンフィールドピークまでのΔが111.9ppmである、(ix)第10の最遠のダウンフィールドピークまでのΔが112.3ppmである、(x)第11の最遠のダウンフィールドピークまでのΔが121.1ppmである、(xi)第12の最遠のダウンフィールドピークまでのΔが121.5ppmである、(xii)第13の最遠のダウンフィールドピークまでのΔが133.1ppmである、(xiii)第14の最遠のダウンフィールドピークまでのΔが139.4ppmである、(xiv)第15の最遠のダウンフィールドピークまでのΔが146.3ppmである、(xvi)第16の最遠のダウンフィールドピークまでのΔが154.6ppmである、(xvi)第17の最遠のダウンフィールドピークまでのΔが156.2ppmである、及び/若しくは(xvii)最遠のダウンフィールドピークから最遠のアップフィールドピークまでのΔが158.6ppmである、又はそれらの任意の組み合わせである、18個のピークを有する13C固体核磁気共鳴スペクトル、あるいは
(vii)示差走査熱量測定に基づく、71.71℃の開始温度及び72.06℃のピーク温度を有する融点、あるいは
(viii)1678、1636、1589、1525、1214、及び1196cm-1にピークを有する赤外線(IR)スペクトルであって、cm-1値が±4cm-1である、IRスペクトル、あるいは
(ix)5145、4630、及び4423cm-1にピークを有する近赤外線(NIR)スペクトルであって、cm-1値が±4cm-1である、NIRスペクトル、あるいは
それらの組み合わせを有することを特徴とする、結晶性トロフィネチド・xH2O。
【0119】
実施形態2.結晶性トロフィネチド・xH2O(式中、xが、約2~約4である)であって、
(i)Cu Kα放射線を使用した、6.8、11.5、12.6、13.8、及び16.8度2θにピークを有する粉末X線回折パターンであって、2θ値が±0.2度2θである、粉末X線回折パターン、並びに/あるいは
(ii)Cu Kα放射線を使用した、13.1、7.7、7.0、6.4、及び5.3Åのd間隔を有する粉末X線回折パターン、並びに/あるいは
(iii)2989、2934、2883、1685、1637、1459、及び930cm-1にピークを有するFT-ラマンスペクトルであって、cm-1値が±4cm-1である、FT-ラマンスペクトル、並びに/あるいは
(iv)13、24、67、及び77cm-1にピークを有する低周波(LF)ラマンスペクトルであって、cm-1値が±4cm-1である、低周波(LF)ラマンスペクトル、並びに/あるいは
(v)179.7、177.9、177.5、177.2、177.0、165.3、164.9、164.8、67.8、67.4、58.6、58.2、46.8、40.3、33.3、25.3、23.5、及び21.1ppmにピークを有する13C固体核磁気共鳴スペクトルであって、ppm値が±3pmである、13C固体核磁気共鳴スペクトル、並びに/あるいは
(vi)最遠のダウンフィールドピークから(i)第2の最遠のダウンフィールドピークまでのΔが1.8ppmである、(ii)第3の最遠のダウンフィールドピークまでのΔが2.2ppmである、(iii)第4の最遠のダウンフィールドピークまでのΔが2.5ppmである、(iv)第5の最遠のダウンフィールドピークまでのΔが2.7ppmである、(v)第6の最遠のダウンフィールドピークまでのΔが14.4ppmである、(vi)第7の最遠のダウンフィールドピークまでのΔが14.8ppmである、(vii)第8の最遠のダウンフィールドピークまでのΔが14.9ppmである、(viii)第9の最遠のダウンフィールドピークまでのΔが111.9ppmである、(ix)第10の最遠のダウンフィールドピークまでのΔが112.3ppmである、(x)第11の最遠のダウンフィールドピークまでのΔが121.1ppmである、(xi)第12の最遠のダウンフィールドピークまでのΔが121.5ppmである、(xii)第13の最遠のダウンフィールドピークまでのΔが133.1ppmである、(xiii)第14の最遠のダウンフィールドピークまでのΔが139.4ppmである、(xiv)第15の最遠のダウンフィールドピークまでのΔが146.3ppmである、(xv)第16の最遠のダウンフィールドピークまでのΔが154.6ppmである、(xvi)第17の最遠のダウンフィールドピークまでのΔが156.2ppmである、及び/若しくは(xvii)最遠のダウンフィールドピークから最遠のアップフィールドピークまでのΔが158.6ppmである、又はそれらの任意の組み合わせである、18個のピークを有する13C固体核磁気共鳴スペクトル、並びに/あるいは
(vii)示差走査熱量測定に基づく、71.71℃の開始温度及び72.06℃のピーク温度を有する融点、並びに/あるいは
(viii)1678、1636、1589、1525、1214、及び1196cm-1にピークを有する赤外線(IR)スペクトルであって、cm-1値が±4cm-1である、IRスペクトル、並びに/あるいは
(ix)5145、4630、及び4423cm-1にピークを有する近赤外線(NIR)スペクトルであって、cm-1値が±4cm-1である、NIRスペクトル、並びに/あるいは
それらの組み合わせを有することを特徴とする、結晶性トロフィネチド・xH2O。
【0120】
実施形態3.Cu Kα放射線を使用した、6.8、11.5、12.6、13.8、及び16.8度2θにピークを有する粉末X線回折パターンであって、2θ値が±0.2度2θである、粉末X線回折パターンを有することを特徴とする、実施形態1又は2に記載の結晶性トロフィネチド・xH2O。
【0121】
実施形態4.Cu Kα放射線を使用した、13.1、7.7、7.0、6.4、及び5.3Åのd間隔を有する粉末X線回折パターンを有することを特徴とする、実施形態1~3のいずれか1つに記載の結晶性トロフィネチド・xH2O。
【0122】
実施形態5.2989、2934、2883、1685、1637、1459、及び930cm-1にピークを有するFT-ラマンスペクトルであって、cm-1値が±4cm-1である、FT-ラマンスペクトルを有することを特徴とする、実施形態1~4のいずれか1つに記載の結晶性トロフィネチド・xH2O。
【0123】
実施形態6.13、24、67、及び77cm-1にピークを有する低周波(LF)ラマンスペクトルであって、cm-1値が±4cm-1である、低周波(LF)ラマンスペクトルを有することを特徴とする、実施形態1~5のいずれか1つに記載の結晶性トロフィネチド・xH2O。
【0124】
実施形態7.179.7、177.9、177.5、177.2、177.0、165.3、164.9、164.8、67.8、67.4、58.6、58.2、46.8、40.3、33.3、25.3、23.5、及び21.1ppmにピークを有する13C固体核磁気共鳴スペクトルであって、ppm値が±3pmである、13C固体核磁気共鳴スペクトルを有することを特徴とする、実施形態1~6のいずれか1つに記載の結晶性トロフィネチド・xH2O。
【0125】
実施形態8.最遠のダウンフィールドピークから(i)第7の最遠のダウンフィールドピークまでのΔが1.8ppmである、(ii)第3の最遠のダウンフィールドピークまでのΔが2.2ppmである、(iii)第4の最遠のダウンフィールドピークまでのΔが2.5ppmである、(iv)第5の最遠のダウンフィールドピークまでのΔが2.7ppmである、(v)第6の最遠のダウンフィールドピークまでのΔが14.4ppmである、(vi)第7の最遠のダウンフィールドピークまでのΔが14.8ppmである、(vii)第8の最遠のダウンフィールドピークまでのΔが14.9ppmである、(viii)第9の最遠のダウンフィールドピークまでのΔが111.9ppmである、(ix)第10の最遠のダウンフィールドピークまでのΔが112.3ppmである、(x)第11の最遠のダウンフィールドピークまでのΔが121.1ppmである、(xi)第12の最遠のダウンフィールドピークまでのΔが121.5ppmである、(xii)第13の最遠のダウンフィールドピークまでのΔが133.1ppmである、(xiii)第14の最遠のダウンフィールドピークまでのΔが139.4ppmである、(xiv)第15の最遠のダウンフィールドピークまでのΔが146.3ppmである、(xvi)第16の最遠のダウンフィールドピークまでのΔが154.6ppmである、(xvi)第17の最遠のダウンフィールドピークまでのΔが156.2ppmである、及び/若しくは(xvii)最遠のダウンフィールドピークから最遠のアップフィールドピークまでのΔが158.6ppmである、又はそれらの任意の組み合わせである、18個のピークを有する13C固体核磁気共鳴スペクトルを有することを特徴とする、実施形態1~7のいずれか1つに記載の結晶性トロフィネチド・xH2O。
【0126】
実施形態9.示差走査熱量測定に基づく、71.71℃の開始温度及び72.06℃のピーク温度を有する融点を有することを特徴とする、実施形態1~8のいずれか1つに記載の結晶性トロフィネチド・xH2O。
【0127】
実施形態10.1678、1636、1589、1525、1214、及び1196cm-1にピークを有する赤外線(IR)スペクトルであって、cm-1値が±4cm-1である、IRスペクトルを有することを特徴とする、実施形態1~8のいずれか1つに記載の結晶性トロフィネチド・xH2O。
【0128】
実施形態11.5145、4630、及び4423cm-1にピークを有する近赤外線(NIR)スペクトルであって、cm-1値が±4cm-1である、NIRスペクトルを有することを特徴とする、実施形態1~10のいずれか1つに記載の結晶性トロフィネチド・xH2O。
【0129】
実施形態12.約10μm~約500μmの平均粒径分布を有する、実施形態1~11のいずれか1つに記載の結晶性トロフィネチド・xH2O。
【0130】
実施形態13.xが、約2.5~約3.5である、実施形態1~12のいずれか1つに記載の結晶性トロフィネチド・xH2O。
【0131】
実施形態14.xが、約2である、実施形態1~12のいずれか1つに記載の結晶性トロフィネチド・xH2O。
【0132】
実施形態15.xが、約2.5である、実施形態1~12のいずれか1つに記載の結晶性トロフィネチド・xH2O。
【0133】
実施形態16.xが、約3である、実施形態1~12のいずれか1つに記載の結晶性トロフィネチド・xH2O。
【0134】
実施形態17.xが、約3.5である、実施形態1~12のいずれか1つに記載の結晶性トロフィネチド・xH2O。
【0135】
実施形態18.xが、約4である、実施形態1~12のいずれか1つに記載の結晶性トロフィネチド・xH2O。
【0136】
実施形態19.実施形態1~18のいずれか1つに記載の結晶性トロフィネチド・xH2Oと、薬学的に許容される賦形剤と、を含む、医薬組成物。
【0137】
実施形態20.顆粒状形態の実施形態19に記載の医薬組成物。
【0138】
実施形態21.水に溶解した実施形態1~18のいずれか1つに記載の結晶性トロフィネチド・xH2Oを含む、水性医薬製剤。
【0139】
実施形態22.約1グラムの結晶性トロフィネチド・xH2Oが各5mLの水に溶解した、実施形態15に記載の水性医薬製剤。
【0140】
実施形態23.結晶性トロフィネチド・xH2Oと水とを混合することを含む、実施形態21又は22に記載の水性医薬製剤を作製する方法。
【0141】
実施形態24.実施形態1~18のいずれか一項に記載の結晶性トロフィネチド・xH2Oと、水中に結晶性トロフィネチド・xH2Oを溶解して水性医薬製剤を提供するための説明書と、を備える、キット。
【0142】
実施形態25.水性医薬製剤を、疾患、障害、又は病態を有する対象に投与するための説明書を更に備える、実施形態24に記載のキット。
【0143】
実施形態26.疾患、障害又は病態が、外傷性脳損傷である、実施形態25に記載のキット。
【0144】
実施形態27.疾患、障害又は病態が、神経発達障害である、実施形態25に記載のキット。
【0145】
実施形態28.神経発達障害が、レット症候群、脆弱X症候群、又は自閉症スペクトラム障害である、実施形態27に記載のキット。
【0146】
実施形態29.疾患、障害又は病態の治療を必要とする対象におけるそれを治療する方法であって、実施形態19又は20に記載の医薬組成物、又は実施形態21又は22に記載の水性医薬製剤を対象に投与することを含む、方法。
【0147】
実施形態30.疾患、障害又は病態が、外傷性脳損傷である、実施形態29に記載の方法。
【0148】
実施形態31.疾患、障害又は病態が、神経発達障害である、実施形態29に記載の方法。
【0149】
実施形態32.神経発達障害が、レット症候群、脆弱X症候群、又は自閉症スペクトラム障害である、実施形態31に記載の方法。
【0150】
実施形態33.疾患、障害又は病態が、レット症候群である、実施形態29に記載の方法。
【0151】
実施形態34.疾患、障害又は病態の治療を必要とする対象におけるその治療に使用するための、実施形態19若しくは20に記載の医薬組成物、又は実施形態21若しくは22に記載の水性医薬製剤。
【0152】
実施形態35.疾患、障害又は病態が、外傷性脳損傷である、実施形態34に記載の組成物又は製剤。
【0153】
実施形態36.疾患、障害又は病態が、神経発達障害である、実施形態34に記載の組成物又は製剤。
【0154】
実施形態37.神経発達障害が、レット症候群、脆弱X症候群、又は自閉症スペクトラム障害である、実施形態36に記載の組成物又は製剤。
【0155】
実施形態38.疾患、障害又は病態が、レット症候群である、実施形態34に記載の組成物又は製剤。
【0156】
実施形態39.疾患、障害又は病態の治療を必要とする対象におけるその疾患、障害又は病態に対する医薬の製造における、実施形態1~18のいずれか1つのトロフィネチド、又は実施形態19若しくは20に記載の医薬組成物、又は実施形態21若しくは22に記載の水性医薬製剤の使用。
【0157】
実施形態40.疾患、障害又は病態が、外傷性脳損傷である、実施形態39に記載の使用。
【0158】
実施形態41.疾患、障害又は病態が、神経発達障害である、実施形態39に記載の使用。
【0159】
実施形態42.神経発達障害が、レット症候群、脆弱X症候群、又は自閉症スペクトラム障害である、実施形態41に記載の使用。
【0160】
実施形態43.疾患、障害又は病態が、レット症候群である、実施形態39に記載の使用。
【0161】
実施形態44.実施形態1~18のいずれか1つに記載の結晶性トロフィネチド・xH2Oを作製する方法であって、i)約25℃でエタノールをトロフィネチドの水溶液に添加することと、ii)溶液を約0℃に冷却することと、iii)このようにして得られた固体を結晶性トロフィネチド・xH2Oとして単離することと、を含む、方法。
【0162】
実施形態45.水:エタノール比が、約3:7w/wである、実施形態44に記載の方法。
【実施例】
【0163】
機器
粉末X線回折(PXRD又はXRPD)
PXRD及びXRPDは同義語である。Rigaku Smart-Lab X線回折システムは、線源X線ビームを使用して、反射Bragg-Brentanoジオメトリ用に構成された。X線源は、40kV及び44mAで動作したCu Long Fine Focus管(λ=1.54)である。その源は、試料での入射ビームプロファイルを提供し、これは、高い角度での狭い線から低い角度での広い矩形に変化する。ビーム調整スリットは、最大ビームサイズが線に沿っても線に垂直にも10mm未満であることを保証するために、線X線源に使用される。Bragg-Brentanoジオメトリは、パッシブ発散及び受容スリットによって制御されるパラフォーカシングジオメトリであり、試料自体が光学系の合焦成分として機能する。Bragg-Brentanoジオメトリの固有の分解能は、使用される回折計の半径及び受容スリットの幅によって部分的に左右される。典型的には、Rigaku Smart-Labは、0.1°2θ以下のピーク幅を与えるように操作される。X線ビームの軸方向発散は、入射ビーム経路及び回折ビーム経路の両方で5.0度のSollerスリットによって制御される。
【0164】
試料表面を平坦に保ち、試料ホルダの基準表面と水平に保つために、軽い手動圧力を使用して、低バックグラウンドSiホルダ内で粉末試料を調製した。各試料を、0.02°2θの有効ステップサイズで毎分6°2θの連続スキャンを使用して、2~40°2θで分析した。
【0165】
示差走査熱量測定(DSC)
DSC分析は、TA Instruments Q2500 Discovery Series機器を使用して行った。機器の温度較正は、インジウムを使用して行った。DSCセルを、分析中に毎分約50mLの窒素パージ下に維持した。試料を標準的な圧着されたアルミニウムパンに入れ、約25℃から350℃まで毎分10℃の速度で加熱した。
【0166】
動的蒸気収着(DVS)分析
DVS分析は、TA Instruments Q5000 Dynamic Vapor Sorption分析器で行った。この機器は、標準重量で、及び湿度に関して臭化ナトリウム標準で較正した。試料を、5~95%RH(吸着サイクル)及び95~5%RH(脱着サイクル)の10%相対湿度(RH)ステップで、60分の最大平衡時間で25℃で分析した。
【0167】
赤外線(IR)分光法
赤外線スペクトルは、Nicolet SMART iTR減衰全反射率デバイスを使用して、Nicolet 6700 FT-IRシステムで得た。
【0168】
近赤外線(NIR)分光法
近赤外線スペクトルは、Nicolet iS50 IRシステムで得た。乾燥したKBr中の約1%w/wのトロフィネチド形態AをDRIFT(拡散反射率赤外線フーリエ変換分光法)マクロカップに入れ、8000及び400波数のスペクトル範囲で分析した。
【0169】
FT-ラマン分光法
フーリエ変換(FT)ラマンスペクトルは、Nexusラマンアクセサリモジュールにインターフェースで接続されたNicoletモデル6700分光計で得た。この機器は、1024nmで動作するNd:YAGレーザー、CaF2ビームスプリッタ、及びヒ素化インジウムガリウム検出器で構成されている。データ取得の制御及びスペクトルの処理のために、OMNIC 8.1ソフトウェアを使用した。分析のために、試料を3インチガラスNMR管に充填した。
【0170】
低周波(LF)ラマン分光法
低周波ラマンスペクトルは、Ondax THz-ラマンシステム(TR-PROBE;励起レーザー853.1nm、ノッチフィルタ)を備えたRenishaw inViaラマン顕微鏡を使用して得た。試料粉末を、プローブ先端アタッチメントを使用して外気中で分析した。スペクトルは、36cm-1を中心とする静的スキャンを使用して取得し、スペクトル範囲-575~575cm-1にわたって、100%の出力、1秒の曝露時間、及び32の蓄積で収集した。波長較正は、硫黄参照標準を使用して確認した。データ取得は、WiRE 3.4ソフトウェアを使用して行った。
【0171】
カール・フィッシャー(KF)分析
カール・フィッシャー分析は、Mettler-Toledo C20 Coulometric KF滴定装置を使用して行った。機器は、1%の水を含むHydranal水標準を使用して較正した。滴定剤は、Hydranalメタノール溶液であった。
【0172】
13C固体核磁気共鳴(NMR)分光法
固体状態
13C交差分極マジック角回転(CPMAS)実験を、Doty プローブ(DSI-1630)1H(19F)/X二重共鳴を備えたBruker Avance II 400分光計で行った。試料(109mg)を、後続のデータ取得のためにKel-Fエンドキャップで閉じられた4-mm 4mmの窒化ケイ素回転子に充填した。TMSスケールで38.48ppmでアダマンタンのメチレンシグナルに設定されたアダマンタンを、外部標準として使用した。使用された取得及び処理パラメータを、以下の表に示す。
【表A】
9.4テスラ(
13Cで100MHz、
1Hで400MHz)以上などの異なる磁場で、NMR分光計で
13C CPMAS解析を行うことが可能である。取得時間、滞留時間、リサイクル遅延、スピン速度、スキャン数などのパラメータは、NMR分光計に応じて変更及び最適化され得る。
【0173】
単結晶構造決定
X線回折分析は、Cu Kα放射線(λ=1.54Å)を使用して、150Kの温度で行った。式C13H21N3O6・3(H2O)の単斜胞パラメータ及び計算体積は、a=18.8946(8)Å、b=7.2849(3)Å、c=27.8601(12)Å、β=109.8540(16)°、及びV=3606.9(3)Å3である。Z=8及び式量が369.37の場合、計算密度は1.360g/cm3である。
【0174】
実施例1
形態Aの合成及び特性評価
以下の方法に従って、形態Aを調製した。
【0175】
方法1
19.9mgの非晶質トロフィネチドを、1つの金属ボールを有する機械研削容器に充填した。7.6mgのL-アスパラギン及び10マイクロリットルの水を研削容器に添加した。容器を密封し、100%の出力レベルでRetschミルで約20分間粉砕した。得られた固体を除去し、真空乾燥機に入れて一晩乾燥させた。得られた材料は、XRPDにより、形態A及び結晶性L-アスパラギン酸の混合物であった。
【0176】
方法2
18.6mgの非晶質トロフィネチドを、1つの金属ボールを有する機械研削容器に充填した。8.0mgのL-アスパラギン酸及び10マイクロリットルの水を研削容器に添加した。容器を密封し、Retschミルで約20分間粉砕した。得られた固体を開いた容器内で乾燥させてから、固体を移した。得られた材料は、XRPDにより、形態A及び結晶性L-アスパラギン酸の混合物であった。同じ実験を、20mgのトロフィネチド非晶質形態及び1mgのL-アスパラギン酸を使用して繰り返した。得られた材料は、XRPDにより、ほとんどが形態Aであり、また微量の結晶性L-アスパラギン酸であった。この材料を、非晶質トロフィネチド(19.7mg)のみを使用した別の反復実験のためのシード(3mg)として使用した。得られた固体は、XRPDにより形態Aであった。
【0177】
方法3
トロフィネチドの溶液(300mL、水中32%w/wのトロフィネチド非晶質形態)を、周囲温度で無水エタノール(1200mL)に投入した。得られた溶液を撹拌(300rpm)しながら2℃に冷却した。溶液を25℃に再加熱し(12℃/時、3時間保持)、2℃に冷却した(6℃/時)。沈殿した固体を濾過し、冷エタノール(2℃)で洗浄し、窒素下、70%RH/周囲温度で16時間乾燥させて、残留エタノールを除去した。得られた固体は、XRPDにより形態Aであった。
【0178】
方法4
以下のステップを使用して、方法4に従い形態Aを調製した。
【0179】
室温で、205.7Kgの非晶質トロフィネチド(KF5.0%、乾燥基準で195.4Kg)を反応器内の617Kgの水に溶解する。
【0180】
2808Kgのエタノールを反応器内の溶液に室温で激しく混合しながら添加する。
【0181】
溶液を0~2℃に冷却する。
【0182】
1.0Kgのトロフィネチドシードを反応器に添加し、ゆっくりと撹拌しながらNLT6時間バッチを寝かせる。結晶化が生じる。
【0183】
反応器内のスラリーを濾過し、濾過乾燥機で分離する。
【0184】
湿潤ケーキを、0~2℃に予冷した325Kgのエタノールで2回洗浄する。
【0185】
残留溶媒のバルクが蒸発するまで湿潤ケーキを真空乾燥し、次いで濾過乾燥機のジャケット温度を室温に上げて乾燥を完了する。170.0Kgの結晶性トロフィネチド・xH2O(KF13.5%、乾燥基準で147.0Kg)を単離した(収率75%)。
【0186】
方法5
以下のステップを使用して、方法5に従い形態Aを調製した。
【0187】
エタノール(4479Kg)を、トロフィネチド(総重量1272Kg、23.2w/w%のトロフィネチド、294.5Kgのトロフィネチド、977.5Kgの水)の水溶液に室温で激しく混合しながら添加する。
【0188】
溶液を0~2℃に冷却する。
【0189】
2.5Kgの結晶性トロフィネチド・xH2Oシードを反応器に添加し、ゆっくりと撹拌しながらNLT6時間バッチを寝かせる。結晶化が生じる。
【0190】
反応器内のスラリーを濾過し、濾過乾燥機で分離する。
【0191】
湿潤ケーキを、0~2℃に予冷した502Kgのエタノールで2回洗浄する。
【0192】
残留溶媒のバルクが蒸発するまで湿潤ケーキを真空乾燥し、次いで濾過乾燥機のジャケット温度を室温に上げて乾燥を完了する。292.0Kgの結晶性トロフィネチド・xH2O(KF14.3%、乾燥基準で250.2.0Kg)を単離した(収率85%)。
【0193】
方法6
以下のステップを使用して、方法6に従い形態Aを調製した。
【0194】
58.1gの結晶性トロフィネチド・xH2O(KF14.0%、乾燥基準で50.0g)を、反応器1内の100gの水に室温で溶解する。
【0195】
233g(296mL)のエタノールを反応器1内の溶液に室温で激しく混合しながら添加する。(水/エタノール比は約3/7 w/wであり、目標溶液濃度は約15%w/wトロフィネチドである)。
【0196】
反応器1内の溶液128gを反応器2に移す(溶液の約1/3)。
【0197】
反応器2を0~2℃に冷却する。
【0198】
0.5gのトロフィネチドシード材料を5gのエタノール/水(95/5 w/w)中でスラリー化する。
【0199】
トロフィネチドシードスラリーを反応器2に添加し、ゆっくりと撹拌しながらNLT2時間バッチを寝かせる。核形成が発生してシードベッドを生成する。
【0200】
反応器1から反応器2に残りの溶液をNLT2時間にわたって移し、反応器2を0~2℃に維持してよく混合する。
【0201】
334g(423mL)のエタノールを反応器1に投入し、0~2℃に冷却する。
【0202】
反応器1から反応器2にエタノールをNLT2時間にわたって移し、反応器2を0~2℃に維持してよく混合する(最終水/エタノール比は約15/85 w/wである)。
【0203】
反応器2でスラリーをよく混合しながら0~2℃で2時間以上寝かせる。
【0204】
25gの水及び475gのEtOHを混合し、0~2℃に冷却することにより、ケーキ洗浄液を調製する。
【0205】
反応器2内のスラリーを濾過し、0~2℃でフィルタ上の湿潤ケーキを洗浄する。
【0206】
残留溶媒のバルクが蒸発するまで湿潤ケーキを0~2℃で真空乾燥し、次いでバッチを室温に上げて乾燥を完了する。53.2gの結晶性トロフィネチド・xH2O(KF13.5%、乾燥基準で46.0g)を単離した(収率92%)。
【0207】
形態Aの構造は、単結晶X線回折によって解明された。この構造は、トロフィネチド分子当たり3つの水分子を示した。形態Aの非対称単位を
図8に示す。水素原子は明確にするために省略されている。形態Aの構造は、3つの水分子のそれぞれがトロフィネチドの酸素又は窒素原子に結合した水素であることを示している。3つの水分子のそれぞれはまた、隣接する水分子に結合した水素である。
【0208】
形態AのX線粉末回折(XRPD)回折図を
図1に示す。XRPDピークリスト(±0.2°2θ)は、表1に記載されている。
【表1】
【0209】
形態Aのラマンスペクトルを、
図2に示す。ラマンピークリスト(±4cm
-1)は、表2に記載されている。
【表2】
【0210】
形態Aの低周波(LF)ラマンスペクトルを、
図3に示す。LFラマンピークリスト(±4cm
m-1)は、表3に記載されている。
【表3】
【0211】
形態Aの
13C固体核磁気共鳴(ssNMR)スペクトルを、
図4に示す。SsNMRピークリストは、表4に記載されている。選択されたピーク(Δppm)は、表5及び6に記載されている。
【表4】
【表5】
【表6】
【0212】
形態Aは、DSC分析に基づいて、71.71℃の開始温度及び72.06℃のピーク温度で溶解する。
図5を参照されたい。
【0213】
形態Aの赤外線(IR)スペクトルを、
図6に示す。IRピークリスト
(±4cm
-1)は、表7に記載されている。
【表7】
【0214】
形態Aの近赤外線(NIR)スペクトルを、
図7に示す。NIRピークリスト(±4cm
-1)は、表8に記載される。
【表8】
【0215】
形態Aは、非吸湿性である。形態Aの動的蒸気収着-脱着(DVS)分析は、材料を5%RHから95%RHに曝露した場合に水分取り込みがほとんどなく、材料を95 %RHから5%RHに曝露した場合に水分損失がほとんどないことを示した(
図9)。DVS後の得られた材料は、XRPDにより、トロフィネチド形態Aとして残った(
図10)。
【0216】
形態Aは、約50~120℃の間で12~14%の重量損失を示す。これは、水の損失が原因である可能性があり、カール・フィッシャーの分析によって測定された12~14%の含水量と一致する。例示的なTGAスキャンを、
図12に示す。形態AのDSCデータは、溶融に対応する約70~72℃(ピーク温度)での鋭い吸熱を一貫して示している。
【0217】
形態Aは、トロフィネチドの分子当たり3つの水分子を示した単結晶X線構造に基づく三水和物である(
図8)。しかし、形態Aは、約12%~約14%の含水量で生成されている。これは、水のいくつかは結晶格子に不可欠であるが、水分子の少なくとも1つはゆるやかに結合され得、結晶格子を変更することなく除去することができることを示唆している。このため、形態Aは、トロフィネチド・xH
2Oとして示され、式中、xは、約2~約4である。
【0218】
実施例2
形態Aの安定性
形態Aは、広範囲の湿度条件下で安定である。2日間、33%RH、59%RH、75%RH、及び97%RHで曝露された形態Aは、2~4モル当量の水を示した。極度の乾燥条件下(0%RH下で2日間曝露した開いた容器)では、形態Aは水を失い、無秩序になった。形態Aの信号は、XRPDパターンにおいて依然として可視であるが、結晶の信号は広範であり、XRPDパターンはベースラインにおいていくつかの無定形のハロを示し、無秩序及び無定形物質の形成を示していた(
図11)。
【0219】
形態A及び非晶質トロフィネチドの長期(6ヶ月)化学的安定性を、25±2℃/60±5%相対湿度(RH)の同じ条件下で試験した。形態Aは、これらの条件下で非晶質トロフィネチドよりも驚くほど安定である(表9)。
【表9】
【0220】
不純物アッセイで使用された分析方法は、表10に記載されている。
【表10】
【0221】
前述の記載された実施形態及び例示は、本開示の範囲をいかなる点においても限定することを意図するものではなく、本明細書に提示される特許請求の範囲は、本明細書に明示的に提示されるか否かにかかわらず、全ての実施形態及び例示を包含することを意図するものであることを理解されたい。
【0222】
本明細書で引用される全ての特許及び刊行物は、参照によりそれらの全体が完全に組み込まれる。
【国際調査報告】