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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-05
(54)【発明の名称】鋳造品の鋳造方法
(51)【国際特許分類】
   B22C 9/04 20060101AFI20240628BHJP
【FI】
B22C9/04 L
B22C9/04 M
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023578003
(86)(22)【出願日】2022-06-15
(85)【翻訳文提出日】2024-02-13
(86)【国際出願番号】 EP2022066323
(87)【国際公開番号】W WO2022263517
(87)【国際公開日】2022-12-22
(31)【優先権主張番号】102021115727.7
(32)【優先日】2021-06-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】506016772
【氏名又は名称】フリッツ ビンター アイゼンギーセライ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニー コマンディトゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100095614
【弁理士】
【氏名又は名称】越川 隆夫
(72)【発明者】
【氏名】イェルク ルミケヴィッツ
(57)【要約】
本発明は、鋳造品の鋳造プロセスに関する。金属溶湯が鋳型に注入され、消失鋳型として形成された鋳型は、中子砂と、粘結剤と、場合によっては更に、鋳型材料の特定の特性を調整するための1つ以上の添加剤と、で構成された鋳型材料から形成された1つ以上の鋳型部品または鋳造用中子で構成されている。本発明による方法の過程では、鋳型が用意され、鋳型はハウジング内に封入され、ハウジングの少なくとも1つの内面部分と鋳型の対応する外面部分との間に充填空間が形成され、注入可能な充填材料が充填空間に充填される。充填材料は、充填空間への充填後、充填材料からそこに形成された充填材料パッケージを通ってガス流が流れ得るほど、嵩密度が低い。金属溶湯が鋳型に注入される。鋳型は、高温の金属溶湯によって引き起こされた入熱の結果として、熱を放射し始める。金属溶湯によって引き起こされた入熱の結果として、鋳型材料の粘結剤が蒸発して燃焼し始めるので、粘結剤はその効果を失い、鋳型は複数の断片に分解する。本発明によると、充填材料は、充填空間への充填時、100℃未満の充填材料温度を有するので、鋳型の高速且つエネルギー効率の良い分解を少ない手間で実現できる。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋳造品(G)の鋳造方法であって、製造される鋳造品を形成するキャビティ(3)を取り囲む鋳型(1)に金属溶湯が注入され、消失鋳型として形成された前記鋳型(1)は、中子砂と、粘結剤と、場合によっては更に鋳型材料の特定の特性を調整するための1つ以上の添加剤と、で構成された前記鋳型材料から形成された1つ以上の鋳型部品または鋳造用中子で構成されており、前記方法は、
- 前記鋳型(1)を用意するステップと、
- 前記鋳型(1)をハウジング(7)内に封入するステップであって、前記ハウジング(7)の少なくとも1つの内面部分(9)と前記鋳型(1)の対応する外面部分(8)との間に充填空間(10)が形成される、ステップと、
- 前記充填空間(10)に自由流動性充填材料(F)を充填するステップであって、前記充填空間(10)に充填される前記充填材料(F)は、前記充填空間(10)への前記充填後、前記充填材料(F)からそこに形成された前記充填材料パッケージを通ってガス流(S1、S2)が流れ得るほど、嵩密度が低い、ステップと、
- 前記金属溶湯を前記鋳型(1)に注入するステップと、
を含み、
- 前記鋳型(1)は、前記金属溶湯の注入に伴い、高温の前記金属溶湯によって引き起こされた入熱の結果として、熱を放射し始め、
- 前記金属溶湯によって引き起こされた前記入熱の結果として、前記鋳型材料の前記粘結剤が蒸発して燃焼し始めるので、前記粘結剤はその効果を失い、前記鋳型(1)は複数の断片(B)に崩壊する、方法において、
前記充填材料(F)は、前記充填空間(10)への充填時、100℃未満の充填材料温度を有することを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記充填材料温度は、前記充填空間(10)への前記充填材料(F)の充填時、最大で45℃であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記充填材料(F)の前記温度は、少なくとも室温に等しいことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋳造品の鋳造方法であって、製造される鋳造品を形成するキャビティを取り囲む鋳型に金属溶湯が注入され、消失鋳型として形成された鋳型は、中子砂と、粘結剤と、場合によっては鋳型材料の特定の特性を調整するための1つ以上の添加剤と、で構成された鋳型材料から形成された1つ以上の鋳型部品または鋳造用中子で構成されている、方法に関する。この方法の過程で、用意された各鋳型は、ハウジング内に、ハウジングの少なくとも1つの内面部分と鋳型の対応する外面部分との間に充填空間が形成されるように、封入される。その後、この充填空間に自由流動性充填材料が充填される。充填空間に充填される充填材料は、充填空間への充填後、充填材料からそこに形成された充填材料パッケージを通ってガス流が流れ得るほど、嵩密度が低い。このように封入された鋳型に金属溶湯が注入される。金属溶湯の注入に伴い、高温の金属溶湯によって引き起こされた入熱の結果として、鋳型は熱を放射し始める。更に、金属溶湯によって引き起こされた入熱の結果として、鋳型材料の粘結剤が蒸発して燃焼し始めるので、粘結剤はその効果を失い、鋳型は複数の断片に崩壊する。
【背景技術】
【0002】
このように実施される方法の基本的特徴および実用化のために有利な、この方法の各実施形態が特許文献1に記載されている。
【0003】
特許文献1に説明されているように、鉄鋳物の分野においては、鋳型の外装を形成する鋳型部品のための鋳型材料として、ベントナイト、ラストラスカーボン形成体、および水と混合された珪砂が通常使用されている。他方、鋳造品の内部キャビティおよびチャネルを形成する鋳造用中子は、有機粘結剤または無機粘結剤、例えば合成樹脂または水ガラス、と混合された市販の中子砂から通常形成されている。
【0004】
中子砂および粘結剤の種類に関係なく、上記種類の鋳型材料から形成される鋳型の製作における基本的原則は、成形後、適した熱または化学処理によって、粘結剤を硬化させることである。したがって、中子砂の粒子同士が互いに付着するので、それぞれの鋳型部品または鋳造用中子の寸法安定性が十分な時間にわたって保証される。
【0005】
鋳鉄から大型の鋳造品を製造するときは特に、金属溶湯の注入後に鋳型にかかる内圧が極めて高い。この圧力を吸収して鋳型の破裂を防止するために、肉厚で大型の鋳型、または鋳型をその外側で支持する支持構造、のどちらかを使用する必要がある。
【0006】
このような支持構造の1つの可能性は、鋳型に被せられる囲壁である。この囲壁は、鋳型をその周方向側面で取り囲むジャケットの形態で通常設計されるが、鋳型への溶湯の注入を可能にするために十分に大きな開口部をその上側に有する。この囲壁は、載置後、囲壁の内面と鋳型の外面との間に、少なくとも鋳型を支持するために重要な部分に、充填空間が残るように、寸法設計される。この充填空間に自由流動性充填材料が充填されるので、囲壁のそれぞれの表面部分の大面積の支持が保証される。充填空間へのできる限り一様な充填、鋳型と充填材料との同じく一様な接触、および脆弱な鋳型材料の相応に一様な支持、を実現するために、嵩密度が高い、砂または鋼ショットなど、粒子の細かい自由流動性充填材料が充填材料として通常使用されている。加えて、充填後、充填材料は圧縮される。ここでの目的は、できる限りコンパクトな充填質量を生じさせて、非圧縮性モノリスのように、囲壁から鋳型への支持力の直接伝達を保証することである。
【0007】
金属溶湯は高温で鋳型に注入されるので、鋳型を構成する鋳型部品および鋳造用中子も大幅に加熱される。その結果、鋳型は熱を放射し始める。鋳型の温度が特定の最小温度を超えると、鋳型材料の粘結剤が蒸発して燃焼し始め、更なる熱を放出する。これにより、粘結剤はその効果を失う。粘結剤のこの分解の故に、鋳型の鋳型部品および鋳造用中子を形成している鋳型材料の粒子同士の結合が失われるので、この鋳型材料で構成された鋳型またはその部品および中子が個々の断片に崩壊する。
【0008】
これに基づき、特許文献1は、鋳型と囲壁との間の充填空間の充填のために、予熱された充填材料の使用を提案している。充填材料の充填温度は、鋳型によって放射された熱によって、および粘結剤の燃焼中に放出された熱によって、発生したプロセス熱の故に、充填材料の温度が充填温度から上昇するほど高く、充填材料の温度は、鋳型から蒸発して充填材料に接触する粘結剤が発火して燃焼し始める限界温度を超えて上昇する。これにより、充填材料は蓄熱体として使用される。この蓄熱体は、温度の影響の故に、鋳型の鋳型部品および鋳造用中子を形成している鋳型材料の粘結剤の分解が囲壁内の滞留時間中にできる限り進行するように、温度調節および設計される。500℃が充填温度範囲の適切な下限として見做されていた。
【0009】
上記に基づき、鋳型の急速でエネルギー効率の良い分解が少ない手間で実現されるように、公知の方法を改良するという目的が生じた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】国際公開第2016/016035(A1)号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、この目的を請求項1に記載の方法によって達成した。
【0012】
本発明の有利な複数の実施形態が従属請求項に記載されており、本発明の全般的思想であるので、以下に詳細に説明する。
【0013】
したがって、本発明は、鋳造品の鋳造方法を提供する。本方法においては、上記の従来技術に従って、製造される鋳造品を形成するキャビティを取り囲む鋳型に金属溶湯を注入する。消失鋳型として形成された鋳型は、中子砂と、粘結剤と、場合によっては鋳型材料の特定の特性を調整するための1つ以上の添加剤と、で構成された鋳型材料から形成された1つ以上の鋳型部品または鋳造用中子で構成されている。本方法は、
- 鋳型を用意するステップと、
- 鋳型をハウジング内に封入し、ハウジングの少なくとも1つの内面部分と鋳型の対応する外面部分との間に充填空間を形成するステップと、
- 充填空間に自由流動性充填材料を充填するステップであって、充填空間に充填される充填材料は、充填空間への充填後、充填材料からそこに形成された充填材料パッケージを通ってガス流が流動できるほど、嵩密度が低い、ステップと、
- 金属溶湯を鋳型に注入するステップと、
を含み、
- 金属溶湯の注入に伴い、高温の金属溶湯によって引き起こされた入熱の結果として、鋳型は熱を放射し始め、
- 金属溶湯によって引き起こされた入熱の結果として、鋳型材料の粘結剤が蒸発して燃焼し始めるので、粘結剤はその効果を失い、鋳型は複数の断片に崩壊する。
【0014】
本発明によると、充填材料は、充填空間への充填中、鋳造前の鋳型材料の特性に悪影響を及ぼさない充填材料温度を有する。本発明によると、充填空間への充填中の充填材料の充填材料温度は、100℃未満に制限される。ここで、本発明にとって基本的なことは、特定の目標温度への充填材料の意図的な加熱が行われないことである。むしろ、充填空間への充填材料の充填は、現在の充填材料の温度で、すなわち、例えば、充填材料が貯蔵されていた場所の周囲温度の、または、例えばリサイクルプロセスまたはこれに類するものにおいて、発生したプロセス熱の、結果として帯びた充填材料の温度で、行われると有利である。したがって、本発明によりもたらされる充填材料温度は、充填材料の貯蔵場所の、または特定の鋳造装置の、近傍において優勢である室温に少なくとも等しいことが好ましい。あるいは、充填材料は、その充填空間に充填材料が充填される鋳造装置に、熱の意図的な能動的供給なしに、その温度で達することが好ましい。本発明によると、充填空間への充填材料の充填時の充填材料温度は、一般に10℃~45℃、特に18~45℃、の範囲内であり、一般的な室温は、季節に応じて10~25℃、特に18~25℃、の範囲内である。
【0015】
驚くべきことに、冒頭に記載の従来技術において想定されたことに反して、充填材料の予熱が不要であることが分かった。むしろ、溶湯の注出後の鋳型から発生する気化性粘結剤成分で構成されたガスは、鋳造材料によって導入された熱の故に、既に燃焼し始めていることが分かった。実地試験から得られた知識によると、この燃焼は、充填空間に充填された充填材料パッケージを通るガス流が十分に存在するときは、追加の入熱を必要とせずに、開始される。
【0016】
鋳型への接触時、および本発明により使用される鋳造装置の充填空間への充填時、鋳型の鋳型材料の特性に悪影響を及ぼさないほど低温の本発明による充填材料を使用することによって、本発明による方法は、従来技術に比べ、大幅に簡素化された施設での実施が可能である。充填空間への充填時の充填材料の充填材料温度が100℃未満、特に最大で45℃未満、であることを保証するために、必要であれば、充填材料を能動的または受動的に冷却できる。
【0017】
したがって、本発明では、充填空間への充填材料の充填プロセスを鋳型への金属溶湯の充填から時間的に分離できる。したがって、充填空間内の充填材料が、従来技術において現実的と見做されている、例えば少なくとも500℃などの、特定の高温、しかし鋳型の鋳型材料に影響を及ぼさない温度、を有することは最早重要ではないので、金属溶湯の注入よりかなり前に充填空間への充填を行うことができる。これにより可能になる、鋳造プロセスからの充填プロセスの一時的分離は、プロセス制御のロバスト性および安定性を著しく向上させる。その結果、最適化された運用信頼性と本方法の簡単な実用化とが同時に実現される。
【0018】
本発明による方法における鋳造品の冷却は、冒頭に記載の従来技術における冷却より急速である。その理由は、低温の、すなわち100℃未満、特に最大45℃の温度、好ましくは室温、で充填された充填材料が熱を鋳型から除去するヒートシンクとして機能し、最終的に温度を等しくするからである。その結果、鋳造品のより急速な凝固によって、被加工物の寸法安定性の向上がもたらされる。充填材料の加熱のために従来技術において必要とされていたエネルギー投入も回避されるので、本発明による方法はエネルギー効率の更なる向上が実証されている。
【0019】
充填空間を取り囲む充填枠を空間的に適切に広げた設計によって、鋳型への鋳鉄溶湯の注入後に発生したガスは鋳型から既に出て燃焼状態であり、その後、燃焼し続けて燃え尽きる。これにより、囲壁の除去後、鋳型材料で構成された鋳型の部品および鋳造用中子は複数の断片に崩壊し、これら断片は鋳造品から離れ落ち、鋳造品は、少なくともその外面領域に、付着している鋳型部品または鋳造用中子がほぼ皆無になる。
【0020】
この時点で、中子も少なくとも大まかな断片に崩壊し、鋳造品の内部にチャネルまたはキャビティを形成しているので、これら中子の中子砂および鋳型材料断片は、囲壁内で鋳造品から自動的に落ちるか、あるいは公知の方法で、例えば、振動などの機械的方法によって、または適切な流体による洗流によって、鋳造品から除去できるか、のどちらかである。
【0021】
ここで、従来技術において利用可能な粉砕システムが、本発明との組み合わせで、鋳型断片の経済的な処理を可能にすることが分かった。
【0022】
中子砂断片は、例えば従来のグラインダで、破砕可能である。処理後に得られた再生砂と新しい砂とをそれ自体は公知の方法で混合できる。
【0023】
したがって、本発明によるプロセスは、従来技術と異なり、高精度の鋳造品を技術的および経済的に有効な方法で製造するために、充填材料によって鋳型を安定化させるばかりでなく、熱の除去を加速させるという着想に基づく。
【0024】
鋳型と囲壁との間に形成された充填空間に充填される本発明による充填材料は、自由流動性であるので、鋳型の外面の領域にアンダーカット、キャビティ、およびこれらに類するもの、が存在する場合でも、充填空間を完全に充填する。
【0025】
本発明により使用される充填材料は、充填空間への充填後でも、ガス流が依然として流動できるほど嵩密度が低いので、従来技術から公知の方法では、充填空間に充填された充填材料は恐らく圧縮されていた。すなわち、上記の従来技術と異なり、本発明は、鋳型の最適な支持を保証するが、ガスに対する不透過性が大きい極めて圧縮された詰め込みを充填空間内に明らかに生じさせない。むしろ、本発明により使用される充填材料は、例えば熱対流の結果として、発生するガス流を通すように選択される必要がある。このガス流が発生するのは、鋳型に注入された金属溶湯によって鋳型が加熱され、鋳型部分および鋳造用中子の鋳型材料の気化性粘結剤成分が蒸発して燃焼し、熱を放出するときである。
【0026】
ここで、蒸発して燃焼する粘結剤について話すと、それは入熱によって蒸気状且つ可燃性になる粘結剤成分を常に指している。これは、他の粘結剤成分が中実または他の形態で、例えば亀裂生成物として、鋳型内に残る可能性を排除しない。鋳型内の他の粘結剤成分も入熱によって分解されると理想的である。
【0027】
本発明によるガス流による充填空間に充填された充填材料の流動性、およびこのために適合化された充填空間を取り囲む大きな充填枠の設計は、鋳型から蒸発した粘結剤が充填材料自体の領域で燃焼し、ひいては充填材料を加熱する可能性をもたらすばかりでなく、粘結剤の燃焼を促進する酸素の供給も可能にする。
【0028】
有機粘結剤によって結合された鋳型材料で構成された鋳型部品および鋳造用中子を有する鋳型は、本発明による方法のために特に適している。例えば、市販の溶剤系の粘結剤、または化学反応によって作用が引き起こされる粘結剤、がこの目的のために適している。今日では、対応する粘結剤系が所謂「コールドボックス法」において使用されている。
【0029】
充填空間への充填材料の充填時の充填材料の充填材料温度は、上記のように、本発明によると、鋳造前に充填材料が充填空間に充填される場合でも、鋳型材料に、特に、鋳型の部品および中子を形成する鋳型材料の粒子同士を一緒に保持する粘結剤に、悪影響を及ぼさないように、選択される。
【0030】
充填材料温度が充填空間への充填時の周囲温度に等しいとき、すなわち、充填空間への充填前の充填材料が貯蔵されている場所において優勢な温度に等しいとき、本発明によって実現される効果が既に生じていると、コストの観点から、特に有利であることが判明している。したがって、本発明のこの変形例においては、充填材料の温度制御が一切行われないので、従来技術と異なり、充填材料の温度制御およびおそらく必要な断熱貯蔵のためのコストが一切発生しない。
【0031】
上記のように、本発明による一般的な充填材料温度は、45℃までの範囲内である。
【0032】
粘結剤の漏出、燃焼、および分解に伴い、鋳型材料から形成された鋳型の部品および中子は複数のばらばらな断片に崩壊する。これらは、囲壁が除去されて処理のために送られた後に廃棄することも、あるいは、有利に、金属溶湯の注入と囲壁の除去との間の滞留時間中に囲壁から取り出しておくこともできる。この目的のために、鋳型を篩底の上に載置し、篩底を通って落ちる鋳型の断片を収集できる。実際には、篩底の開口部は、鋳型の断片と充填材料とが篩底を通って一緒に落ち、収集され、処理され、処理後に互いから分離されるように、設計される。これは、囲壁の除去時、ばらばらになった充填材料が囲壁内に残っていないという利点を有する。
【0033】
鋳型の囲壁は、充填空間を形成するために十分な距離を置いて鋳型を取り囲む十分に剛性のシート材で構成可能である。このシート材の断熱性は如何なる特殊要件にも影響されない。篩板として機能する有孔支持板を設けることができる。鋳型はその上に載置される。充填空間において生じた排出ガスの排出を制御された方法で可能にするために、排出ガス用開口部を設けることができる。
【0034】
本発明による方法においては、鋳型と囲壁との間にプレストレスを生じさせるために、充填空間に充填された充填材料をそれ自体は公知の方法で圧縮することもできる。これにより、鋳型が多数の鋳型部品および鋳造用中子で構成された中子パッケージとして設計されている場合でも、鋳型が確実に、且つ所定位置に精確に、まとまることが保証される。ただし、上記のように、低い嵩密度は、そのような圧縮された充填材料の場合でも、ガス流の通過の可能性を保証する。
【0035】
鋳造品の表面または内部の特定ゾーンの冷却を加速するために、あるいは、各ゾーンにおいて鋳造品の特定の特性を実現するために、そのように加速された冷却を回避するために、鋳型に特に導入されたチャネルを使用することもできる。
【0036】
粒体または他の粒状バルク材が充填材料として適していることが実証されている。嵩密度が最大4kg/dm、特に1kg/dm未満、または0.5kg/dm未満、のこのようなバルク材は、本発明による目的のために特に適している。
【0037】
注入可能な自由流動性の粒状充填材料が使用される場合、充填材料の粒子が球形であると有利であることが実地試験で証明されている。球体の直径は、1.5~100mm、特に1.5~40mm、の範囲内であることが好ましい。
【0038】
原則として、上記の諸条件を満たす、且つ十分に耐熱性である、全ての熱弾性型バルク材が充填材料として適している。セラミック材料製の粒体など、非金属製バルク材がこの目的のために特に適している。充填空間に充填された充填材料の良好なガス透過性と低い蓄熱特性とを同時に実現するために、これらバルク材を不規則な形状または球形にし得る、またはキャビティを設け得る。充填材料をリング状または多角形要素で構成することもできる。この場合、要素同士の接触時に点のみで接触するので、それらの間に十分な空間が存在し、良好な流動が保証される。
【0039】
例えば、充填材料をセラミックまたは耐火材料で構成できる。
【0040】
鋳型の崩壊後、本発明による離型後に露出された鋳造品をそれ自体は公知の方法で熱処理にかけることができる。この熱処理においては、鋳造品を特定の状態にするために、特定の冷却曲線に従って制御された方法で、それ自体は公知の方法で、鋳造品を冷却する。
【0041】
勿論、本発明による方法では、いくつかの鋳型を1つの囲壁内に同時に一緒に収容できる。これら鋳型に同時に、または次々と、金属溶湯を充填できる。
【0042】
原則として、本発明による方法は、加工によって十分に高いプロセス熱が発生する金属鋳造材であれば何れの種類の金属鋳造材にも適している。本発明による方法は、鋳鉄溶湯が高温である故に、粘結剤の燃焼に必要な本発明による温度が特に確実に実現されるので、鋳鉄からの鋳造品の製造に特に適している。本発明によると、特に、GJL、GJS、およびGJV鋳鉄材料および鋳鋼を加工できる。
【0043】
本発明による方法は、内燃機関のためのシリンダクランクケースおよびシリンダヘッドの鋳造製造のために特に適している。特に、対象の構成要素が商用車両向けである場合は、その構成要素およびその製造に必要な鋳型は比較的大型である。この場合、本発明による方法の諸利点が特に明らかである。
【0044】
以下においては、一実施形態を示す図面を参照して、本発明をより詳細に説明する。以下の図は、何れの場合も模式的に示している。
【図面の簡単な説明】
【0045】
図1】構成要素をその長手方向軸線に沿った断面図で示した、本発明による方法の実施の一段階である。
図2】構成要素をその長手方向軸線に沿った断面図で示した、本発明による方法の実施の別の段階である。
図3】構成要素をその長手方向軸線に沿った断面図で示した、本発明による方法の実施の別の段階である。
図4】構成要素をその長手方向軸線に沿った断面図で示した、本発明による方法の実施の別の段階である。
図5】構成要素をその長手方向軸線に沿った断面図で示した、本発明による方法の実施の別の段階である。
図6】構成要素をその長手方向軸線に沿った断面図で示した、本発明による方法の実施の別の段階である。
図7】構成要素をその長手方向軸線に沿った断面図で示した、本発明による方法の実施の別の段階である。
図8】構成要素をその長手方向軸線に沿った断面図で示した、本発明による方法の実施の別の段階である。
図9】構成要素をその長手方向軸線に沿った断面図で示した、本発明による方法の実施の別の段階である。
図10】構成要素をその長手方向軸線に沿った断面図で示した、本発明による方法の実施の別の段階である。
【発明を実施するための形態】
【0046】
特許文献1から公知の従来技術のように、本発明による方法においては、複数の鋳型部品と鋳造用中子とが用意される。
【0047】
従来、鋳造用中子と鋳型部品とは、従来の鋳型材料からコールドボックス法で製造されていた。この従来の鋳型材料は、市販の中子砂と、同じく市販の有機粘結剤と、場合によっては、例えば、粘結剤による中子砂の粒子の湿潤化を向上させるために役立つ、追加の添加剤と、の混合物であり得る。成形後、得られた鋳造用中子および鋳型部品を反応ガスでガス処理することによって、化学反応によって有機粘結剤を硬化させ、鋳造用中子および鋳型部品に必要な寸法安定性をもたらす。
【0048】
所謂「中子パッケージ」として設計された鋳型1を形成するために、この従来の方法では、同じく公知のように、用意された鋳型部品および鋳造用中子から鋳型1が組み立てられる。加えて、鋳型1は、鋼鉄製または他の壊れ難い材料製の構成要素を備えることができる。これら構成要素として、例えば、冷却用鋳型およびこれに類するものが挙げられる。これらは、冷却用鋳型に接触した溶湯の急速凝固による鋳造品Gの指向性凝固を実現するために、鋳型1の中に配置される。
【0049】
鋳型1は、鋳造品Gの鋳造製造のために意図されている。この例において、鋳造品Gは、商用車両の燃焼機関のためのシリンダクランクケースである。
【0050】
新しい充填材料、例えば、篩分けによって従来どおり決定された粒径が1.5~25mmの、粒状の、特に球形の、セラミック粒体が更に用意される。この充填材料は、室温(一般に18~25℃)であり、ここでは最大45℃の充填材料温度が現実的である。
【0051】
更に、これら原料は、以下に説明するように、周期的に再使用可能である。
【0052】
本発明による方法のさまざまな段階で図1図8に示されている装置Tは、篩板2を有する。鋳鉄溶湯を注入するために用意された鋳型1が篩板2の上に載置される。
【0053】
鋳型1は、鋳型キャビティ3を周辺部Uから区切る。鋳造品Gを形成するために、鋳鉄溶湯が鋳型キャビティ3に注入される。この鋳鉄溶湯は、ここでは明瞭化のために図示されていない堰システムを介して、鋳型キャビティ3に流入する。
【0054】
篩板2の縁端部は、収集容器5の周縁肩部4の上に支持されている。密封要素6が周縁肩部4の周方向接触面に組み込まれている。
【0055】
鋳型1が篩板2の上に位置付けられた後、これも装置Tの一部である囲壁7が収集容器5の周縁肩部4の上に載置される。囲壁7はフードのように設計されており、鋳型1の外周面8を包み込む。囲壁7によって囲まれた空間の周囲は、鋳型1の周囲より大きいので、囲壁7が篩板2の上に載置された後、鋳型1の外周面と囲壁7の内面9との間に充填空間10が形成される。囲壁7は、収集容器5に対応付けられたその縁端部が密封要素6の上に載るので、周辺部Uに対する充填空間10の密封が保証される。
【0056】
囲壁は、如何なる特殊要件にも影響されない断熱性を有する板金材で構成されている。この板金材は、囲壁7の必要な寸法安定性を保証するために、公知のように設計されている。囲壁7は、その上側に、大きな開口部11を有する。この開口部11を通して鋳型1に鋳鉄溶湯を充填でき、更には充填空間10に充填材料Fを充填できる(図2)。
【0057】
供給された非加熱の、すなわちその温度が少なくとも室温に等しく、最大で45℃の、充填材料Fを充填空間10に充填するために、貯蔵容器Vが開口部11の上方に位置付けられている。この加熱されていない充填材料Fは、貯蔵容器Vから分配システム12を介して充填空間10に落ちる(図3)。
【0058】
充填プロセスの完了後、必要であれば、充填空間10に充填された充填材料パッケージを圧縮できる。その後、蓋13が開口部11の上に載置される。蓋13も開口部14を有し、そこを通して鋳鉄溶湯を鋳型1に注入できる(図4)。
【0059】
その後、鋳鉄溶湯が鋳型1に注入される(図5)。
【0060】
その一方で、囲壁7の下端領域に形成されたガス流入口15から酸素含有周囲空気が充填空間10に進入し得る。同様に、流入口16から収集容器5に進入した周囲空気が篩底2を通して充填空間10に引き込まれる(図6)。
【0061】
鋳鉄溶湯の注入によって開始される鋳型1の意図的な破壊とそれに伴う鋳造品Gの離型とは、2段階で行われる。
【0062】
第1段階で、粘結剤に含まれている溶剤が蒸発する。鋳型1から漏出した溶剤蒸気は、鋳造品Gからの熱放射の故に、鋳型1から出るに伴い、燃焼する。粘結剤成分の、および鋳型1から漏出し得る他の汚染物質の、燃焼は、鋳型1から蒸発する粘結剤がなくなるまで、更なるエネルギー入力なしに、継続する。鋳型1から依然として漏出しうる蒸発物質は、充填空間10において優勢な高温によって、酸化される、または別様に無害化される。
【0063】
ガス流入口15および篩底2を通って囲壁7の充填空間10に進入した周囲空気から形成された酸素含有ガス流S1、S2も鋳型1から出たガスの完全燃焼に寄与する。
【0064】
充填材料Fの嵩密度は、圧縮後も、充填空間10に存在する充填材料パッケージの良好なガス透過性が保証されるほど低いので、鋳型1から出たガスと、その燃焼のための酸素を供給するガス流S1、S2との良好な混合が保証される。同時に、充填空間10内の充填材料パッケージは、鋳型1をその周面8で支持し、ひいては鋳型1からの鋳鉄溶湯の突破を防止する。
【0065】
鋳型1の鋳型部品および鋳造用中子は複数の断片Bまたは個々の砂粒に崩壊する。これらは、篩底2を通って収集容器5に落ち、そこに収集される。鋳型1の破壊の進捗に応じて、篩底2を開くことができるので、充填材料Fも収集容器5に達する(図7)。
【0066】
鋳型1の破壊の進捗と鋳型1に注入された鋳鉄溶湯の凝固プロセスとは、鋳型1の崩壊の開始時に鋳造品Gが十分に凝固しているように、互いに適合化される。充填材料Fの低温は、鋳型1および鋳造品Gの確実な急速冷却を助ける。これにより、鋳造品Gの特に良好な寸法精度が実現される。
【0067】
鋳型1が基本的に完全崩壊した後、鋳型材料と充填材料との混合物を収容している収集容器5が篩底2から分離され、囲壁7も篩底2から取り外される(図8)。これで、砂がほぼ除去された鋳造品Gに自由にアクセスでき、鋳造品Gの冷却用に設けられたトンネル様空間17において、制御された方法で鋳造品Gを冷却できる(図9)。
【0068】
このプロセスの故に、取り出し時の鋳造品Gは高温であり、オーステナイト変態が未だ完了していないので、急速冷却は残留応力ひいては亀裂を招くことになる。この理由により、鋳造品Gは、歪取焼鈍中、冷却用トンネル17の中で焼鈍曲線に従って徐冷される。供給される冷却用空気は、特定の製品のための冷却プロファイルが実現されるように、量が決められる。
【0069】
収集容器5に収集された充填材料F、中子砂、および断片Bの依然として高温の混合物は、特許文献1に記載のように処理される。
【0070】
この処理から得られた中子砂は、新しい鋳型部品および鋳造用中子の製作のために利用可能になる。
【0071】
この処理から得られた充填材料Fは、空気中で、追加のエネルギー入力なしに、室温に冷却され、充填空間10の再充填のために貯蔵容器Vに貯蔵される。
【0072】
したがって、本発明は、鋳造品(G)の鋳造方法であって、金属溶湯が鋳型1に注入され、消失鋳型として形成された鋳型1は、鋳型材料から形成された1つ以上の鋳型部品または鋳造用中子で構成され、鋳型材料は、中子砂と、粘結剤と、場合によっては、鋳型材料の特定の特性を調整するための、1つ以上の添加剤と、で構成されている、方法を提供する。本発明による方法の過程では、
- 鋳型1が用意される。
- 鋳型1がハウジング7に封入され、ハウジング7の少なくとも1つの内面部分9と鋳型1の対応する外面部分8との間に充填空間10が形成される。
- 自由流動性充填材料Fが充填空間10に充填される。充填材料Fの嵩密度は、充填空間への充填後、充填材料Fから形成された充填材料パッケージを通ってガス流S1、S2が流動できるほど低い。
- 金属溶湯が鋳型1に注入される。
金属溶湯の注入に伴い、高温の金属溶湯によって引き起こされた入熱の結果として、鋳型1は熱を放射し始める。更には、金属溶湯によって引き起こされた入熱の結果として、鋳型材料の粘結剤が蒸発して燃焼し始めるので、粘結剤はその効果を失い、鋳型1は複数の断片Bに分解する。
【0073】
本発明によると、充填空間10への充填材料の充填時に100℃未満の充填材料温度を有する充填材料Fによって、鋳型1の急速且つエネルギー効率の良い崩壊を少ない手間で実現できる。
【符号の説明】
【0074】
1 鋳型
2 篩板
3 鋳型キャビティ
4 周縁肩部
5 収集容器
6 密封要素
7 囲壁(ハウジング)
8 鋳型1の周面
9 囲壁7の内面
10 充填空間
11 囲壁の開口部
12 分配システム
13 蓋
14 蓋13の開口部
15 ガス流入口
16 流入口
17 冷却用トンネル
B 断片
F 充填材料
G 鋳造品
S1、S2 酸素含有ガス流
T 装置
U 周辺部
V 貯蔵容器
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
【国際調査報告】