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▶ ハイブリット ディベロップメント アーベーの特許一覧

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-05
(54)【発明の名称】鉄ブリケット
(51)【国際特許分類】
   C22B 1/00 20060101AFI20240628BHJP
【FI】
C22B1/00 101
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2023578047
(86)(22)【出願日】2022-07-04
(85)【翻訳文提出日】2024-01-30
(86)【国際出願番号】 SE2022050678
(87)【国際公開番号】W WO2023282824
(87)【国際公開日】2023-01-12
(31)【優先権主張番号】2150893-2
(32)【優先日】2021-07-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522429011
【氏名又は名称】ハイブリット ディベロップメント アーベー
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】コジョラ,ニクラス
(72)【発明者】
【氏名】シチェン,ドゥ
(72)【発明者】
【氏名】フス,ジョア
(72)【発明者】
【氏名】ビッカーフェルト,アマンダ
(72)【発明者】
【氏名】ペイ,マーティン
【テーマコード(参考)】
4K001
【Fターム(参考)】
4K001AA10
4K001BA02
4K001BA23
4K001CA18
4K001CA19
4K001CA23
4K001KA02
4K001KA06
(57)【要約】
本開示は、海綿鉄ペレットを提供することと、炭素粉末を提供することと、海綿鉄ペレット及び炭素粉末の混合物を製造することと、混合物をブリケット化して、圧縮海綿鉄ペレットと圧縮海綿鉄ペレットの間の介在空間に位置する炭素粉末とを含む鉄ブリケットを得ることとによって製造される鉄ブリケットであって、鉄ブリケットが、少なくとも0.2重量%の炭素粉末を含み、海綿鉄ペレットが、少なくとも0.5重量%の酸化鉄を含み、炭素を本質的に含まない、鉄ブリケットに関する。本開示はさらに、そのような鉄ブリケットの製造方法に関する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
海綿鉄ペレット(108、208)を提供することと、炭素粉末(114、214)を提供することと、前記海綿鉄ペレット及び前記炭素粉末を含む混合物を製造することと、前記混合物をブリケット化して、圧縮海綿鉄ペレット(245)と、前記圧縮海綿鉄ペレットの間の介在空間(247)に位置する炭素粉末(214)とを含む鉄ブリケットを得ることとによって製造される、鉄ブリケット(109、209)であって、前記鉄ブリケットが、少なくとも0.2重量%の炭素粉末を含み、前記海綿鉄ペレットが、少なくとも0.5重量%の酸化鉄を含み、炭素を本質的に含まない、鉄ブリケット(109、209)。
【請求項2】
前記混合物のホットブリケット化によって製造される、請求項1に記載の鉄ブリケット。
【請求項3】
約95重量%~約99.5重量%の圧縮海綿鉄ペレットと、約0.5重量%~約5重量%の炭素粉末とを含む、請求項1又は2に記載の鉄ブリケット。
【請求項4】
約4000kg/mを超える有効密度を有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の鉄ブリケット。
【請求項5】
約20mmを超える最小寸法を有する、請求項1~4のいずれか一項に記載の鉄ブリケット。
【請求項6】
前記海綿鉄ペレットが、ブリケット化前に約7mmを超え、好ましくは約10mmを超えるメジアン直径を有する、請求項1~5のいずれか一項に記載の鉄ブリケット。
【請求項7】
前記海綿鉄ペレットが、ブリケット化前に約1500kg/m~約2000kg/mのかさ密度を有する、請求項1~6のいずれか一項に記載の鉄ブリケット。
【請求項8】
前記海綿鉄ペレットが、85%を超え、好ましくは90%を超え、例えば95%を超える金属化を有する、請求項1~7のいずれか一項に記載の鉄ブリケット。
【請求項9】
前記海綿鉄ペレットが、約85重量%を超える全鉄、好ましくは約90重量%を超える全鉄を含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の鉄ブリケット。
【請求項10】
前記炭素粉末が、約80重量%を超える炭素、好ましくは約90重量%を超える炭素を含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の鉄ブリケット。
【請求項11】
前記炭素粉末が、現在から10000年未満前、好ましくは現在から1000年未満前、さらにより好ましくは現在から100年未満前の放射性炭素年代を有する、請求項1~10のいずれか一項に記載の鉄ブリケット。
【請求項12】
添加フラックスをさらに含み、好ましくは約0.1重量%~約4重量%の添加フラックスをさらに含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の鉄ブリケット。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか一項に記載の鉄ブリケットの製造方法であって、
少なくとも0.5重量%の酸化鉄を含み、炭素を本質的に含まない海綿鉄ペレットを提供するステップと、
炭素粉末を提供するステップと、
前記海綿鉄ペレット及び前記炭素粉末を含む混合物を製造するステップであって、前記混合物が少なくとも0.2重量%の炭素粉末を含むステップと、
前記混合物をブリケット化するステップと、
を含む、方法。
【請求項14】
前記混合物をブリケット化する前記ステップが500℃を超える温度で行われる、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記海綿鉄ペレット及び炭素粉末が、別々にブリケット化装置に供給されて、前記ブリケット化装置内で混合される、請求項13又は14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本発明は、鉄ブリケット、及びそのような鉄ブリケットの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
背景技術
鋼は、世界で最も重要な工業材料及び建設材料である。現代世界においては、鋼を含まない物体、又はその製造及び/又は輸送に関して鋼に依存しない物体を見出すことは困難である。このように、鋼は、私たちの現代生活のほぼあらゆる側面に複雑に関与している。
【0003】
2018年において、粗鋼の世界での全生産量は、1810百万メートルトンであり、これはあらゆる別の金属よりはるかに多く、2050年には2800百万メートルトンに到達すると予想され、その50%はバージン鉄源から得られると予想される。鋼は、世界で最も再利用される材料でもあり、一次エネルギー源として電気を使用して再溶融した後に何度も使用できる金属の能力のために、非常に高い再利用グレードを有する。
【0004】
したがって、鋼は、現代社会の礎石であり、将来はさらにより重要な役割を果たすであろう。
【0005】
鋼は、主として3つの経路によって製造される:
i)鉱石中の酸化鉄が炭素によって還元されて鉄が製造される、高炉(BF)中でバージン鉄鉱石を用いる一貫製造。鉄は、鋼プラントにおいて、塩基性精錬炉(BOF)中の酸素吹き付けによってさらに処理され、続いて精錬することによって鋼が製造される。このプロセスは一般に「酸素製鋼」とも呼ばれる。
【0006】
ii)一次エネルギー源として電気を用いる電気アーク炉(EAF)内で溶融させる、リサイクル鋼を用いたスクラップに基づく製造。このプロセスは、一般に「電気製鋼」とも呼ばれる。
【0007】
iii)炭素質還元ガスを用いた直接還元(DR)プロセスで還元されて海綿鉄が製造される、バージン鉄鉱石に基づく直接還元製造。シャフトに基づくプロセスでは海綿鉄ペレット(DRI)が製造され、一方、別のプロセスでは海綿鉄微粉が製造されうる。DRI及び海綿鉄微粉の両方は圧縮して、輸送により適した海綿鉄の形態であるホットブリケットアイアン(HBI)を製造することができる。続いて、EAF内で海綿鉄をスクラップとともに溶融させて鋼が製造される。
【0008】
本明細書では、粗鉄という用語は、高炉(すなわち銑鉄)又は直接還元シャフト(すなわち、DRI、HBI、又は海綿鉄微粉などの海綿鉄)のいずれから得られるかとは無関係に、鋼までさらに処理するために製造されるあらゆる鉄を表すために用いられる。
【0009】
上記名称のプロセスは、数十年にわたって改良されてきており、理論的な最小エネルギー消費に近づいているが、まだ解決されていないある基本的問題が存在する。炭素質還元剤を用いた鉄鉱石の還元によって、副生成物としてCO2が生成する。2018年に製造された鋼1トン当たり、平均で1.83メートルトンのCO2が生成した。鉄鋼業は最もCO2を排出する産業の1つであり、世界でのCO2排出の約7%を占める。炭素質還元剤が用いられる限り、鋼製造プロセス内で過剰なCO2生成を回避することはできない。
【0010】
この問題に対処するためにHYBRITイニシアチブが設立されている。HYBRITは、HYdrogen BReakthrough Ironmaking Technology(水素による画期的な製鉄技術)の略語であり、スウェーデンエネルギー庁(Swedish Energy Agency)により部分的に資金提供されたSSAB、LKAB、及びVattenfallの間の共同事業であり、CO2排出の削減及び鉄鋼業の脱炭素化を目標としている。
【0011】
HYBRITの構想の中核は、バージン鉱石からの海綿鉄の直接還元シャフトに基づく製造である。しかし、現在の商業的な直接還元プロセスのような天然ガスなどの炭素質還元剤ガスを使用する代わりに、HYBRITでは、水素直接還元(H-DR)と呼ばれる、還元剤としての水素ガスの使用を提案している。水素ガスは、例えばスウェーデンの電力生産の場合のように、化石燃料を用いない及び/又は再生可能な一次エネルギー源を主として用いて水を電気分解することによって生成することができる。したがって、鉄鉱石の還元の重要なステップは、投入材料として化石燃料を必要とせず、CO2の代わりに水が副生成物となって実現することができる。
【0012】
しかし、水素直接還元によって製造された海綿鉄は、下流の製鋼ステップにおいて幾つかの欠点が生じやすい場合がある。
【0013】
従来の化石に基づく炭素質還元剤を用いて製造される海綿鉄は、鉄鉱石の還元中に炭素質還元ガスからの炭素が混入するため、典型的にはかなりの量の分散炭素(典型的には最大5重量%)を含む。分散炭素は、主としてセメンタイト(FeC)の形態であり、より少ない比率は海綿鉄全体にわたって分散した黒鉛からなる。鉄-セメンタイト系の共晶(溶融)温度は1147℃であり(純鉄の融点1536℃よりも低い)、セメンタイトは湯の中で発熱して分離し、海綿鉄の溶融が促進される。水素直接還元によって製造された海綿鉄は、当然ながらセメンタイトがなく、したがって、EAF中での溶融がより困難となる。これによって、EAF溶融ステップにおける電力要求の増大、EAF電極の過度な消耗、及び出湯間時間の増加が生じうる。
【0014】
このような不都合を克服するため、従来の化石手段によって製造される海綿鉄により類似した海綿鉄を得るために、浸炭ガスを用いた水素直接還元によって製造される海綿鉄を処理する手段が提案されている。
【0015】
文献の国際公開第2019/238720号には、浸炭された直接還元海綿鉄を酸化鉄材料から製造する方法が開示されている。最初に、少なくとも主としてH2からなる還元ガスによって直接還元が行われる。その後、浸炭ガスが供給されることで、海綿鉄中の炭素含有量が増加し、その後、このプロセスに用いられた浸炭ガスは、主として還元ガスとの混合を回避するために、少なくとも部分的に除去される。浸炭ガスは、例えば、天然ガス、メタン、エタン、プロパン、ブタン、一酸化炭素、又はこれらのガスの数種類の混合物であってよい。
【0016】
文献の米国特許出願公開第2015/0259760 A1号には、鉄鉱石が水素で還元され、結果として得られる還元された鉄鉱石と、場合により付随する物質との中間生成物に対して、さらなる冶金処理が行われる、鋼の製造方法が記載されている。中間生成物を生成するための鉄鉱石の還元において、中間生成物中に炭素を混入するために、水素に炭素含有ガス又は水素含有ガスが加えられる。炭素含有ガス又は水素含有ガスの例としては、CH4、コークス炉ガス(COG)、合成ガス、天然ガス、バイオガス、熱分解で得られるガス、及び再生可能資源が挙げられる。
【0017】
より環境に優しい方法で鋼を製造する手段が依然として必要とされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
発明の概要
水素直接還元によって製造された海綿鉄ペレット(DRI)は、従来のDRIよりも、溶解炉中での溶融が困難である。この溶融の困難さのため、EAF溶融ステップにおける電力要求の増大、EAF電極の過度な消耗、及び出湯間時間の増加が生じうる。DRIの投入の局所的な速度が炉の溶融能力を超える場合、DRIの未溶融の山(「フェロバーグ」(ferroberg))が蓄積することがあり、このようなフェロバーグは、溶融及び分散させるために、長い時間及び多い電力消費が必要となりうる。
【0019】
このような不都合を克服するため、従来の化石手段によって製造された海綿鉄により類似した海綿鉄を得るために、水素直接還元によって製造された海綿鉄を浸炭ガスを用いて処理する手段が提案されている。本発明の発明者らは、水素直接還元によって製造された海綿鉄の下流処理の効率を改善するこのように提案された従来技術の手段に関連する多数の欠点を特定している。
【0020】
提案された従来技術の手段では、海綿鉄は、還元中又は還元後のいずれかに、浸炭ガスを用いて比較的より溶融可能な形態に変換される。浸炭ガスが化石ガスであるかどうかとは無関係に、広範な追加のガス処理及び装置を必要とするため、提案されたプロセスは費用がかかり、還元中に浸炭される場合にあまり効率的な還元は行われない(水素と比較すると、還元剤としての一酸化炭素の還元速度が遅いため)。このようなプロセスは、浸炭ガス中に含まれる炭素の使用も比較的不十分となるが、その理由は、安定なガス組成を維持するために、ある比率の浸炭ガスは、典型的にはパージされ燃焼されるからである。浸炭ガスが化石由来の場合、これによって正味のCO2排出も生じる。さらに、直接還元プロセスの一部として浸炭を行うことは、還元プロセスの設定に依存するので、炭素含有量を自由に最適化できないことを意味する。
【課題を解決するための手段】
【0021】
上記欠点の少なくとも一部を克服する、又は少なくとも緩和する手段が実現されると有利となる。特に、製造が効率的であり、効率的な下流処理に容易に適用でき、特に容易に溶融可能である、水素直接還元の海綿鉄由来製品が得られることが望ましい。これらの問題の1つ以上により十分に対処するため、添付の独立請求項において規定される特徴を有する水素直接還元の海綿鉄由来製品が提供される。
【0022】
水素直接還元の海綿鉄由来製品は、鉄ブリケットである。この鉄ブリケットは、圧縮された海綿鉄ペレットと、圧縮された海綿鉄ペレットの間の介在空間内に位置する炭素粉末とを含む。この鉄ブリケットは、少なくとも0.2重量%の炭素粉末を含む。鉄ブリケットの製造に用いられる海綿鉄ペレットは、少なくとも0.5重量%の酸化鉄を含み、本質的に炭素を含まない。
【0023】
鉄ブリケットは、海綿鉄ペレットを提供することと、炭素粉末を提供することと、海綿鉄ペレット及び炭素粉末を含む混合物を製造することと、混合物をブリケット化することとによって製造することができる。
【0024】
驚くべきことに、本発明者らは、海綿鉄中に分散したセメンタイトを有することによって典型的には得られる下流処理の利点は、炭素を含まない海綿鉄を炭素粉末とともにブリケット化することによって実質的に得ることもできることを見出した。すなわち、鉄ブリケットは、従来の化石に基づく海綿鉄を用いて製造された対応するブリケットとほぼ同様に溶融し、海綿鉄中の残留酸化鉄の効率的な還元が行われる。このことは、炭素が鉄中に溶解しておらず、圧縮ペレット間の介在空間に実質的に限定されるにもかかわらず行われる。しかし、これらの利点を得るためには、鉄ブリケットが十分な量の酸化鉄及び炭素を含むことが重要である。これは、機械的に加えられた固体炭素は、セメンタイトとして鉄中に溶解する炭素と同じ方法で鉄の溶融温度を低下させることがないからである。その代わり、理論によって束縛しようと望むものではないが、本発明者らは、分散した残留酸化鉄(FeO、1377℃の融点を有する)の初期の溶融によって、溶融時に相が膨張するため、溶融した酸化物が圧縮海綿鉄から流出することによる機構を特定した。この液体酸化物は、ブリケットの介在空間の固体酸化物と出会い、それによって鉄の還元が起こり、炭素で飽和した液体鉄相が得られる。次に、この液体鉄相は周囲の固体鉄を溶解させる。したがって、本発明者らは、不均一に分散した固体炭素のみを有する鉄ブリケットでさえも、あらゆる溶融プロセス、例えば電気アーク炉(EAF)中又は誘導炉(IF)中でのさらなる処理に適した溶融特性を有しうることを発見した。
【0025】
本明細書に開示される方法での炭素を含まない海綿鉄ペレットと炭素粉末とのブリケット化によって、幾つかのさらなる利点が得られる。これは、設備、材料、及び操業費に関して比較的低コストである。必要な炭素がより少なく、これは排出が減少することを意味する。さらに、炭素の要求が少なくなるので、再生可能資源からの炭素の使用が容易になる。還元ステージとは無関係に溶融物中の酸化鉄含有量を制御することができ、したがって、還元及び還元後の製鋼ステージを独立に最適化することができる。例えば、還元ステージで得られる金属化度の自由度がより大きくなる。これによって、例えば、電力のコスト(及びしたがって還元ガスとしての電気分解水素のコスト)が高い場合に、より少ない金属化を使用することが可能となりうる。酸化鉄と炭素との間の反応によって生じるガスは、EAF中の動的条件及びエネルギー効率を改善することもできる。溶解炉内で一般的な条件において、濃縮された溶融酸化鉄が濃縮された炭素に出会うときに生じる急速なガスの発生によって、鉄ブリケットの「爆発」が促進されることがあり、それによってブリケットの急速な崩壊が起こり、溶融がさらに改善されるとも考えられる。
【0026】
鉄ブリケットの製造に用いられる海綿鉄ペレットは、少なくとも0.5重量%の酸化鉄を含む。これらは、少なくとも1重量%の酸化鉄、例えば少なくとも1.5重量%の酸化鉄、例えば少なくとも3重量%の酸化鉄、又は少なくとも4重量%の酸化鉄を含むことができる。海綿鉄中の酸化鉄量がより多いことは、改善された溶融特性と関連があるが、残留酸化鉄を効果的に還元するために、鉄ブリケット中の炭素粉末の量が付随して増加することが要求されうる。
【0027】
鉄ブリケットは、混合物のホットブリケット化によって製造することができる。ホットブリケット化は、従来のDRIよりも空気に対する反応性が低い、したがって輸送及び取り扱いが容易である安定化された製品を得るために海綿鉄を処理する従来手段である。ホットブリケット化の製品は、ホットブリケットアイアン、HBIと呼ばれ、タイプ(A)DRIとしても知られている。ホットブリケット化を用いた鉄ブリケットの製造によって、鉄ブリケットは、比較的小さな修正のみが必要となるが当技術分野において既に広く利用されている設備を用いて製造することができる。これによって、工業的実施のコストをさらに減少させることができる。
【0028】
鉄ブリケットは、約95重量%~約99.5重量%の圧縮鉄ペレットと、約0.5重量%~約5重量%の炭素粉末とを含むことができる。これによって、EAF中の性能を最適化するための十分な炭素が保証されるべきである。
【0029】
EAFスラグ中で適切なFeO濃度を得るために、鉄ブリケット中の炭素量は、海綿鉄ペレットの金属化度に合わせることができる。これは、歩留まりの最適化、及び鋼中の不純物の減少に役立つ。
【0030】
鉄ブリケットは、約4000kg/mを超え、例えば約5000kg/mを超える有効密度を有することができる。このような密度は、HBIの場合に典型的であり、これによって、適切に受動態になるようにするために海綿鉄が適切な圧縮を有することが保証される。
【0031】
鉄ブリケットは、約20mmを超え、好ましくは約30mmを超える最小寸法を有することができる。鉄ブリケットは、約150mm未満の最大寸法を有することができる。このような寸法は、HBIの場合に典型的であり、これは鉄ブリケットを従来のHBIと交換可能に使用できることを保証するのに役立つ。
【0032】
海綿鉄ペレットは、ブリケット化前に約7mmを超え、好ましくは約10mmを超えるメジアン直径を有することができる。すなわち、海綿鉄は、標準的な寸法を有し微粉ではないDRIである。海綿鉄ペレットは、本質的に球形であってよい。ブリケット化される海綿鉄ペレットの大きな直径は、ブリケットに加えられる炭素粉末が、ペレット中に必然的に不均一に分散することを意味する。
【0033】
海綿鉄ペレットは、ブリケット化前に約1500kg/m~約2000kg/mのかさ密度を有することができる。このような密度は、DRIの場合に典型的であり、これは初期のペレットと比較して最終ブリケットが大幅に圧縮されることを意味する。海綿鉄ペレットは、85%を超え、好ましくは90%を超え、例えば95%を超える金属化を有することができる。より高い金属化度は、鉄ブリケット中の残留酸化鉄の還元のために必要な炭素がより少ないことを意味し、したがって場合により、製鋼プロセス中の炭素消費及び全体的な排出が減少する。海綿鉄ペレットは、約85重量%を超える全鉄、好ましくは約90重量%を超える全鉄を含むことができる。このような全鉄含有量は、従来のDRIと同じであり、これによって良好な品質の最終製品を得ることができる。
【0034】
炭素粉末は、約80重量%を超える炭素、好ましくは約90重量%を超える炭素を含むことができる。このことは、ブリケット化中に典型的には一般的である高温における鉄ブリケットの劣化を防止するために、炭素粉末の十分な揮発分除去が行われることを保証するのに役立つ。炭素粉末は、例えば、粉砕された無煙炭、コークス、黒鉛、又はバイオコールであって、無煙炭、コークス、若しくは黒鉛、又はそれらのあらゆる組合せに実質的に対応する組成を有するバイオコールを含む/から本質的になる/からなることができる。例えば、炭素粉末は、バイオマス、例えばリグノセルロース系バイオマス、例えば森林残留物の高温熱分解から誘導されるバイオコールを含む/から本質的になる/からなることができる。
【0035】
炭素粉末が再生可能資源から誘導される場合、これは、現在から10000年未満前、好ましくは現在から1000年未満前、さらにより好ましくは現在から100年未満前の放射性炭素年代を有することができる。鉄ブリケット中には比較的少量の炭素が必要となるため、比較的まれな再生可能な炭素源の使用が容易となる。再生可能な炭素を使用することによって、製鋼プロセスの環境影響をさらに低下させることができる。
【0036】
鉄ブリケットは、添加フラックスをさらに含むことができる。例えば、鉄ブリケットは、好ましくは約0.1重量%~約4重量%の添加フラックスをさらに含むことができる。フラックスは、EAF中の最適なスラグ組成を得るために適切な量で加えることができる。したがって、酸化鉄を還元するための炭素と、別のスラグ酸化物を制御するためのフラックスとの両方を加えることによって、直接還元パラメーターとは独立してスラグ組成を制御することができ、これは、還元ステップと、引き続く製鋼ステップとの両方を独立して最適化できることを意味する。このことは、フラックスが主として鉱石のペレット化中に加えられ、炭素が還元ステップ中に海綿鉄に導入される従来プロセスでは不可能である。
【0037】
本発明のさらなる一態様によると、本発明の目的は、添付の独立請求項による鉄ブリケットの製造方法によって達成される。
【0038】
上記方法は、少なくとも0.5重量%の酸化鉄を含み本質的に炭素を含まない海綿鉄ペレットを提供するステップと;炭素粉末を提供するステップと;海綿鉄ペレット及び炭素粉末を含む混合物を製造するステップであって、混合物が少なくとも0.2重量%の炭素粉末を含むステップと;混合物をブリケット化するステップとを含む。
【0039】
上記方法によって、本明細書に記載の鉄ブリケットが得られ、したがって対応するそれらの利点が得られる。
【0040】
混合物をブリケット化するステップは、500℃を超え、例えば600℃を超え、好ましくは650℃を超える温度で行うことができる。このような温度は、HBIの製造において従来通りである。
【0041】
海綿鉄ペレット及び炭素粉末は、別々にブリケット化装置に加えて、ブリケット化装置内で混合することができる。このことは、炭素粉末と海綿鉄ペレットとの間のサイズが非常に異なるため混合物が分離する問題を回避するのに役立ちうる。或いは、海綿鉄ペレット及び炭素粉末の混合物は、ブリケット化装置内に導入する前に製造することができる。
【0042】
本発明のさらなる目的、利点、及び新規な特徴は、以下の詳細な説明から当業者には明らかとなるであろう。
【0043】
図面の簡単な説明
本発明並びにそのさらなる目的及び利点のより十分な理解のために、以下に記載の詳細な説明を添付の図面とともに読むべきであり、種々の図において同じ参照記号は類似の項目を示している。
【図面の簡単な説明】
【0044】
図1】Hybrit構想による鉱石に基づく製鋼バリューチェーンの例示的な一実施形態を概略的に示している。
図2a】HBIを製造するための装置を概略的に示している。
図2b】本明細書に開示される方法によって製造された鉄ブリケットを概略的に示している。
図3】種々の時点(a)~(e)における海綿鉄ペレットから製造した3つのブリケットの溶融の進行を示す画像を示している。
図4】還元していないKPRSペレットの顕微鏡写真を示している。
図5】還元した(90%のDoR)KPRSペレットの顕微鏡写真を示している。
図6】(a)加熱前、及び(b)1500℃で240sの間加熱した後の水素還元したKPRSペレット顕微鏡写真を示している。
図7】1600℃で種々の時間(a)~(f)の間加熱した後の99%の還元度の水素還元したKPRSペレットの顕微鏡写真を示している。
図8】時間及び温度に対する鉄ブリケット試料B2~B5の相対炭素質量減を示している。
図9】1500℃で300sの間加熱した後の鉄ブリケットの微細構造を示している。
【発明を実施するための形態】
【0045】
詳細な説明
ある例示的な実施形態及び図面を参照しながら、これより本発明をより詳細に説明する。しかしながら本発明は、本明細書において議論され及び/又は図面に示される例示的な実施形態に限定されるものではなく、添付の請求項の範囲内で変化しうる。さらに、特定の特徴をより明確に示すために、一部の特徴は誇張される場合があるので、図面は縮尺通りに描かれていると見なすべきではない。
【0046】
炭素を含まない海綿鉄ペレット(H-DRI)と炭素粉末とのブリケット化によって、驚くべきことに、炭素を用いずにブリケット化されたH-DRIよりもはるかに優れた溶融特性を示し、従来の化石に基づくDRIを用いて製造されたブリケットと同等の溶融特性を示すブリケットが得られるという本発明者らの発見に本発明は基づいている。鉄ブリケットは、従来のDRIのように均一に分散した炭素がなく、その代わりに、炭素を含まない圧縮海綿鉄ペレットの大きな破片と、このような圧縮ペレットの間の間隙の中に実質的に位置する炭素粉末とからなるので、これは予期せぬことである。
【0047】
理論によって束縛しようと望むものではないが、本発明者らは、鉄ブリケットの有利な溶融は、酸化鉄がブリケット中で最初に溶融し、圧縮ペレット内の細孔を流れて通過し、圧縮ペレットの間隙にたまるという、これまで開示されていない機構によるものであることを発見した。これらの間隙において、炭素は、液体酸化物中に溶解し、同時に酸化物を液体鉄に還元する。この結果として、純鉄の溶融温度未満の温度でさえも炭素で飽和した液体鉄相が得られる。この液体鉄のプールは周囲の固体鉄を溶解させる。鉄ブリケットの初期の多孔質構造と比較すると、この方法において細孔及び間隙の中に液体金属が貯蔵されることで、ブリケットの有効熱伝導率が増加し、これによって溶融プロセスが促進され加速する。比較のため、空気の熱伝導率は0.113Wm-1-1であり、一方、液体鉄では約40Wm-1-1である。この機構を進行させるために、鉄ブリケット中の十分な量の残留鉄(II)酸化物(FeO)が重要となる。
【0048】
得られた有利な溶融に加えて、残留酸化物が還元されるとき、又は炭素がスラグ中のFeOと反応するときに生成する一酸化炭素によって、さらなる利点が得られる。これらは、ガスが発生するために泡状スラグが形成されることを含み、このことは溶融物の分離、及びEAFの電極の保護に役立つ。次にこれによって、エネルギー消費が少なくなり、EAF電極の消耗が少なくなる。さらに、ガスの発生によって、金属浴からの窒素などの溶存気体元素のパージが促進される。
【0049】
本開示によって、エネルギー利用に関してより効率的になり、必要な炭素が少なくなり、排出物の生成が少なくなる、鉱石に基づく製鋼バリューチェーンが促進される。図1は、Hybrit構想によるものであり、本開示が組み込まれる鉱石に基づく製鋼バリューチェーンの例示的な一実施形態を概略的に示している。鉱石に基づく製鋼バリューチェーンは、鉄鉱石鉱山101において開始する。採鉱後、鉄鉱石103は、ペレット化プラント105に集められて処理され、鉄鉱石ペレット107が製造される。これらのペレットは、直接還元シャフト111中で、主要還元剤として水素ガス115を用いて主要副生成物として水117を生成して還元されることによって、海綿鉄ペレット108に変換される。水素ガス115は、化石を含まない資源又は再生可能資源122からの電気121を用いて電解槽119中で水117を電気分解することによって主として生成される。水素ガス115は、直接還元シャフト111中に導入する前に、水素貯蔵所120内に貯蔵することができる。本開示によると、海綿鉄は、引き続くEAF処理ステップで容易に溶融可能となることが望ましい。したがって、直接還元シャフト111から得られた海綿鉄ペレット108は、好ましくは再生可能資源からの炭素粉末114とともに、ブリケット化ユニット113に供給される。ブリケット化ユニット113中で、海綿鉄ペレット108は炭素粉末114とともにブリケット化され、これによって鉄ブリケット109が得られる。次に鉄ブリケット109は、電気アーク炉123を用いて、場合によりある比率のスクラップ鉄125又は別の鉄源とともに溶融されて、溶融物127が得られる。電気アーク炉123内で使用される電気121は、好ましくは再生可能資源122に由来するものである。溶融物127に対して、さらに下流の二次的冶金プロセス129が行われて、鋼131が製造される。
【0050】
鉄ブリケットは、炭素を含まない海綿鉄ペレットと、炭素粉末と、場合により添加フラックスなどのさらなる添加剤とを含む、から本質的になる、又はからなる混合物を用いて製造される。混合物は、約95重量%~約99.5重量%の海綿鉄ペレットを含むことができる。混合物は、約0.5重量%~約5重量%の炭素粉末を含むことができる。場合により、混合物は、約0.1重量%~約4重量%の添加フラックスを含むことができる。
【0051】
炭素を含まない海綿鉄ペレット
鉄ブリケット中に用いられる海綿鉄ペレットは、本質的に炭素を含まない。このようなペレットは、本質的に炭素を含まない還元ガスのみが用いられるシャフトに基づく直接還元プロセスの生成物として得ることができる。還元ガスは、例えば、水素と、場合により、プロセス中で不活性であるガス(例えば窒素、アルゴン)とから本質的になることができる。水素を還元ガスとして用いてこのような炭素を含まない海綿鉄ペレットを製造可能なパイロットプラントは、Lulea, Swedenにおいて稼働中である。
【0052】
本質的に炭素を含まないとは、例えば浸炭ガスを使用することによって、炭素が海綿鉄ペレット中に意図的に導入されることがないことを意味する。しかし、還元していないペレットの炭素含有成分が残存するために、少量の炭素がペレット中に存在する場合がある。例えば、直接還元シャフト中の凝集及び固着を防止するために、鉄鉱石ペレットは、典型的には炭酸塩含有無機物(例えば石灰又はセメント)で被覆され、このような炭酸塩から誘導される炭素が、海綿鉄ペレット中に残存する場合がある。海綿鉄ペレットは、約0.1重量%未満の炭素、好ましくは約0.05重量%未満の炭素を含むことができる。比較のため、従来の化石手段によって製造されたDRIは、典型的には約1重量%~約5重量%の炭素を含む。
【0053】
海綿鉄ペレットは、85%を超え、好ましくは90%を超え、例えば95%を超える金属化(metallisation)を有することができる。しかしながら、本明細書に記載の有利な溶融特性を得るために、少なくとも0.5重量%の残留酸化鉄が海綿鉄中に維持されることが重要である。
【0054】
上記の考慮に加えて、鉄ブリケットの製造に用いられる海綿鉄ペレットは、DRI又はタイプ(B)DRIとしても知られる従来の海綿鉄ペレットに非常に類似している場合がある。これらは、ブリケット化前に約7mmを超え、好ましくは約10mmを超えるメジアン直径を有することができる。これらは、ブリケット化前に約25mm未満、好ましくは約20mm未満のメジアン直径を有することができる。これらは、約1500kg/m~約2000kg/m、好ましくは約1750kg/m~約1900kg/mのかさ密度を有することができる。これらは、約85重量%を超える全鉄、好ましくは約90重量%を超える全鉄を含むことができる。
【0055】
炭素粉末
あらゆる適切な炭素粉末を鉄ペレットの製造に用いることができる。適切な炭素粉末とは、適切な高炭素含有量、例えば約80重量%を超える炭素、好ましくは約90重量%を超える炭素を有する粉末を意味する。炭素粉末は、ブリケット化中に一般的な温度において過剰な量の揮発分を放出しないことが好ましいが、その理由は、これによってブリケット化が妨害されたり、ブリケットの完全性の低下が生じることがあるからである。したがって、ホットブリケット化プロセスが用いられる場合、炭素粉末は、適切には、低揮発分と一定の高炭素含有量とを有する炭素粉末、例えば、粉砕された無煙炭、コークス、若しくは黒鉛、又はこのような炭素に実質的に対応する組成を有するバイオコールであってよい。例えば、炭素粉末は、リグノセルロース系バイオマスなどのバイオマスの高温熱分解により誘導されるバイオコールであってよい。
【0056】
鉄ブリケット中に比較的少量の炭素が必要となるため、比較的まれな再生可能炭素源の使用が促進される。再生可能炭素を使用することによって、製鋼プロセスの環境への影響をさらに低下させることができる。バイオマスの高温熱分解からなど、再生可能資源から誘導される炭素粉末は、化石源から誘導される炭素よりもはるかに若い放射性炭素年代を有する。例えば、化石資源から誘導される炭素は、典型的には35000年を超える放射性炭素年代を有し、一方、再生可能資源から誘導される炭素は「近代」であることが分かっている。炭素粉末中の再生可能炭素の化石炭素に対する比によるが、炭素粉末の放射性炭素年代は、約35000年(炭素粉末が排他的に化石から誘導される場合)から「近代」(炭素粉末が排他的に再生可能なものから誘導される場合)の範囲となりうる。炭素粉末は、少なくとも一部が、又は完全に、再生可能資源から誘導されることが好ましい。したがって、炭素粉末は、現在から10000年未満前、好ましくは現在から1000年未満前、さらにより好ましくは現在から100年未満前の放射性炭素年代を有することができる。加速器質量分析(AMS)などの方法を用いた、バイオコール及び石炭などの炭素粉末の放射性炭素年代測定の非常に信頼性の高い方法が、当技術分野において周知である。
【0057】
鉄ブリケット中に一体化され、液体鉄中に効率的に溶解するために、炭素粉末は、十分に微細に粉砕されるべきである。しかし、ダスティング及び材料の取り扱いに関連する問題が生じるまで微粉砕すべきではない。これらの一般的な考察に加えて、炭素粉末の粒度は、現在までに行われた実験では重要であることは分かっていない。約3mm未満、例えば約0.01mm~約2mmの平均粒度(D50、MMD)を有する粉末が適切となりうる。
【0058】
さらなる添加剤
海綿鉄ペレットの組成によるが、自溶性ブリケットを製造するために鉄ブリケットにさらなるフラックスを加えることが望ましい場合がある。フラックスは、溶融時にスラグの形態の不純物の除去を促進するためにブリケットに加えられる物質を意味する。これによって、EAF中での溶融中にスラグ形成剤を添加する必要性の減少又は回避が可能であり、最適なスラグ組成を得ることの保証に役立つ場合がある。次に、このことが、ブリケットから得られる鋼製品の品質及び歩留まりの最適化に役立つ場合がある。さらに、現在の直接還元プロセスでは、直接還元の前の鉄鉱石ペレット化の段階で既にフラックスがペレットに導入されている自溶性鉄鉱石ペレットを典型的には使用することができる。本明細書では「添加フラックス」と呼ばれる、ブリケット化ステップではなく(又はこれに加えて)フラックスを導入できることによって、鉄鉱石の水素直接還元からの最適な鉄鉱石ペレット及びプロセスの設計において、さらなる自由度が得られる。
【0059】
適切なフラックスは、当技術分野において周知であり、そのようなものとしては、石灰、ドロライム(dololime)、焼成石灰、焼成ドロライム、シリカ、及びそれらの組合せが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0060】
フラックスは、鉄ブリケットに加えられる場合、あらゆる適切な量で加えることができる。例えば、鉄ブリケットは、約0.1重量%~約4重量%の添加フラックスを含むことができる。
【0061】
ブリケット化
ブリケット化は、あらゆる適切な装置を用いて行うことができ、本明細書に記載の海綿鉄ペレットを提供するステップと;本明細書に記載の炭素粉末を提供するステップと;海綿鉄ペレット及び炭素粉末を含む混合物を製造するステップであって、混合物が少なくとも0.2重量%の炭素粉末を含むステップと、混合物をブリケット化するステップとを含む。
【0062】
混合物は、ブリケット化装置に導入する前に製造することができる。或いは、海綿鉄ペレット及び炭素粉末を別々にブリケット化装置に導入し、ブリケット化装置内で混合することができる。このことは、ブリケット化の前に混合物の過度の分離を回避する役割を果たすことができ、これによってブリケット組成の大きなばらつきを回避することができる。
【0063】
ブリケット化は、ホットブリケット化を用いて行って、ホットブリケットアイアン(HBI)ブリケットを得ることができ、これ自体は当技術分野において十分に確立された技術である。HBIの製造に適した装置は、図2中に概略的に示されており、2つの同調的に逆回転するローラー235と、スクリューフィーダー237と、材料供給部239とを有するブリケット化プレス233を含む。ブリケット化の前のあらゆる適切な時点で、直接還元シャフトからの高温海綿鉄ペレット208と、炭素(図示せず)との混合物が形成される。この混合物はローラー235の間に供給され、ブリケット241の連続ストリングを製造するためにローラーによって形成されたポケット中で圧縮される。ブリケット化プレスの下流には、形成されたブリケットのブリケットを個別のブリケット209に分離するための、インパクトバーを有するローラーなどのブリケットストリングセパレーター243が配置される。
【0064】
ホットブリケット化は、600℃を超える温度、例えば、約600℃~約800℃、又は約650℃~約750℃、例えば約700℃の温度で行うことができる。
【0065】
或いは、ブリケット化は、あらゆる別の適切な技術を用いて行うことができる。
【0066】
このようなプロセスによって形成された鉄ブリケットの拡大断面の概略図が図2b中に示される。このブリケットは、圧縮海綿鉄ペレット245を含み、圧縮ペレットの間に介在空間247を有することが分かる。炭素粉末214は、主としてこれらの介在空間の中に存在するが、一部の少ない比率の粉末は、海綿鉄の非常に多孔質の性質のために、混合後でブリケット化前の海綿鉄中に浸透する場合がある。
【0067】
別の点では、本開示の方法によって製造された鉄ブリケットは、従来のHBIに類似している場合がある。これらは約4000kg/mを超え、例えば約5000kg/mを超える有効密度を有することができる。これによって、EAFに投入されるときに、HBIは、スラグに容易に浸透し、溶融物に到達することができる。これらは、おおよそ20mmを超え、例えばおおよそ30mmを超える最小直径を有することができる。典型的なHBIは、おおよそ同じサイズであり、標準的な棒状せっけんの形状に類似している。
【実施例
【0068】
実験
海綿鉄ペレット調製
異なる還元度のペレットを得るために、LKABより市販のKPRS赤鉄鉱ペレットを、垂直管状炉中、純水素(2Lmin-1)によって900℃で還元した。還元度は以下の式:
【数1】

によって計算され、ここで、m及びmは、それぞれ還元前及び還元後のペレットの質量であり、m100%は、完全金属化時の質量である。
【0069】
さらに、ペレットは、20%CO-80%Hの雰囲気中900℃で還元した。推測されるカーボンポテンシャルは、黒鉛を基準として0.7であった。したがって、すべての炭素は、金属相中に溶解すると推測される。次にペレットを、LECO分析のためにSSAB Oxeloesundに送り、炭素含有量を求めた。炭素によって増加した質量を引いた後に、式(1)によって還元度を計算した。
【0070】
鉄ブリケットの調製
還元されたペレットのブリケット化は、鋼製ダイ及び液圧プレスを用いて室温で行った。ブリケット化中の圧力は300barであった。2つの異なるサイズの鋼製ダイを使用した。直径11mmの鋼製ダイを用いて、約6.6グラムの還元鉄鉱石ペレットをプレスした。これによって、5.34gcm-3の有効密度に相当するφ11mm×高さ13mmの寸法のブリケットが得られ、一方、95グラムの試料サイズを直径30mmの鋼製ダイとともに使用した。黒鉛粉末としての炭素をペレットに不均一に加え、すなわちブリケット化前に実質的な混合は全く行わなかった。
【0071】
実験技術
この研究の範囲内で異なる実験技術を使用した。これらの技術は、(a)異なるDRI試料(1.炭素なし、2.溶存炭素を有する、及び3.機械的に加えられた炭素粉末を有する)がどのように溶融するかと;(b)DRIの溶融速度に対する炭素の効果と;(c)溶融及びFeOの還元中の炭素の挙動を理解するための機構の研究とを調べる目的で使用した。水平炉及び垂直炉の両方を使用した。
【0072】
水平炉の主な特徴は、試料が溶融するときに、石英ガラス窓を通して試料を観察することができることである。したがって、その場の溶融挙動を観察し、異なる試料の溶融速度を比較するために水平炉を用いた。
【0073】
炭素によるDRIの溶融機構及びFeOの還元を調べるために、より速い冷却が可能な垂直炉を用いた。以下に実験技術が簡潔に説明されているであろうし、より深く掘り下げた説明を見ることができる:A. Vickerfalt, J. Martinsson and D. Sichen, “Effect of Reduction Degree on Characteristics of Slag Formed by Melting Hydrogen-Reduced DRI and Partitions of P and V between Slag and Metal”, Steel Research International, 2021, 92, pp. 1-11。
【0074】
試料を溶融させるために、アルミナ反応管を有する垂直管状炉を用いた。アルミナ反応管は、上端で水冷アルミニウム冷却チャンバーに、下端で水冷アルミニウムキャップに接続した。すべての接続はOリングによって封止した。冷却チャンバーの上部から、鋼製ロッドを入れた。試料のシステムサイズに依存して40cmのMoワイヤ又はMoロッドのいずれかを用いて、試料を下端で鋼製ロッドに接続した。次に、鋼製ロッドを上端でリフティングシステムに接続した。このリフティングシステムによって、試料の垂直方向での迅速な移動が可能となった。管の下端のアルミニウムキャップに熱電対を挿入した。均一温度ゾーン内の温度は、5cmの長さにわたって均一であった。
【0075】
1つのペレット又はブリケットのいずれかである各試料をMgOるつぼ中に入れた。1つのペレット及び小さなブリケットの実験におけるるつぼを保持するためにMoワイヤの小さなバスケットを編み、一方、より大きな試料サイズの試料を保持するためにMoホルダーを用いた。ペレット/ブリケット、るつぼ、及びバスケットの質量は、試料の熱容量が変わらないように、同じシステムサイズの範囲内で、すべての実験回で同じとなるよう維持した。
【0076】
炉を1500℃又は1600℃のいずれかまで加熱した。加熱手順中、試料は冷却チャンバー中に配置した。目標温度に到達すると、試料を1200℃又は1300℃(FeOの融点より低い)の予熱位置まで下げた。
【0077】
試料を予熱位置に10分間維持し、次に高速で均一温度ゾーンまで下げ、そこで60~1800秒のあらかじめ決定された時間範囲の間維持した。あらゆる反応を停止させ、微細構造を固定するために、あらかじめ決定された時間の後、試料を約数秒間冷却チャンバーまで持ち上げ、同時に、多量のアルゴン流を吹き込んで対流を増加させた。炭素との望ましくない反応を排除するために予熱を行わなかったことを除けば、同じ手順を小さなブリケットの実験の場合に使用した。
【0078】
実験前後の試料の総重量を測定した。LECOによる炭素分析のために、一部の鉄試料をSSAB Oxeloesundに送った。走査型電子顕微鏡(SEM)中で電子分散分光法(EDS)を用いて相の組成を求めた。異なる相の存在を求めるため、組成データを使用した。実際の組成は、EDSの制限及び非常に小さなサイズの一部の相(1μm程度)を考慮して、半定量的方法で分析すべきである。95gのより大きなシステムサイズに関して、全体のスラグ相組成が得られるXRF分析、及びOESによる金属相の分析を行うことができた。
【0079】
異なるブリケットの溶融挙動
還元鉄鉱石ペレットのその場の溶融挙動を観察するために、石英窓を取り付けた水平炉を使用した。試料は、黒鉛トラック上を水平方向に移動し、石英窓を通して見ることができた。窓の前に配置したビデオカメラによって、溶融をリアルタイムで記録した。ブリケット化した海綿鉄ペレットの3つの試料をアルミナ基材上に一列に配置した。この基材を黒鉛ホルダーの上部に置いた。炉が1600℃の目標温度に到達してから、試料を冷却チャンバーから均一温度ゾーンまで移動させた。均一温度ゾーン内で試料が静止したときに記録を開始した。
【0080】
海綿鉄ペレットから製造された3つのブリケットの溶融の進行を図3(a~e)中に示す。3つの試料は、同じDRI質量を有し、すなわち6.6グラムであり、同じ還元度(99.5%の金属化)を有した。一番右の試料(試料1)は、0.9重量%の溶存炭素を有するペレット(CO-Hガス混合物によって還元した)からなった。中央に位置する試料(試料2)は、0.06グラムの黒鉛粉末とともにブリケット化した炭素を含まないDRIペレット(純水素中で還元した)からなった。これは0.9重量%の炭素に相当する。したがって、試料1及び試料2の全炭素含有量は同じであった。一番左に位置する試料3は、炭素を有さず、炭素を含まないDRIペレットのみからなる。
【0081】
図3(a)は、初期状態のブリケットを示している。この画像は、水平炉の均一温度ゾーン中への挿入の時点で撮影される。図3(a)の中央の試料を観察することによって、炭素の不均一な分布を見ることができる。ブリケット化中、黒鉛はペレット間の空隙内に押し込まれた。この結果、ブリケット中に黒鉛のポケットが形成され、表面上の黒い領域として見ることができる。
【0082】
図3(b)は、均一温度ゾーン中への挿入から70秒後の試料を示している。試料1(一番右の試料)及び試料3(一番左の試料)は影響が見られない。しかし、試料2(中央の試料)の表面上の気泡形成により見ることができるように、ガスの発生が明らかである。これは、このブリケットの溶融過程中に、機械的に加えられた炭素による酸化鉄の還元が起こることを示している。
【0083】
挿入時点から155秒後及び156秒後の試料の外観をそれぞれ図3(c)及び3(d)中に示している。試料3は依然として変化がないが、試料1及び試料2は初期状態からの形態変化を示している。中央の試料(試料2)の表面上に、スラグ及び溶融鉄の液膜が形成されている。このことは、ブリケットの表面を横断する球状のスラグ液滴の移動によって確認される。さらに、式2に示される反応によって生成したガスのため、試料2が迅速に振動することが観察された。
FeO(l)+C(s)→Fe(l)+CO(g) (2)
【0084】
この振動は、図3(c)から3(d)における試料2の相対位置を比較することによって示される。試料1では振動が観察されず、これによって、この試料中では還元が全く起こらなかったことが示されている。機械的に加えられた黒鉛は、溶存炭素よりも高い反応性を示した。試料2中の炭素活量は1であり、これは試料1中の炭素活量よりもはるかに高いので、このことは理解できる。理論によって束縛しようと望むものではないが、溶融酸化鉄と機械的に加えられた炭素との間の反応による急速なガスの発生によって、溶解炉中で一般的な条件下で鉄ブリケットの「爆発」が生じることがあり、これによってブリケットの迅速な崩壊及び溶融がさらに促進されうると考えられる。
【0085】
挿入時点から195秒後、図3(e)中に示されるように、試料1は完全に溶融している。試料2(中央)の実質的に部分的な溶融は明らかであり、一方、炭素を有しない試料3は、初期状態からの変化を示していない。したがって、これらの試料は、195後に純鉄のよう融温度に到達していないことは明らかである。さらに、試料2は部分的な溶融を示している。これは、溶融中、機械的に加えられた炭素は鉄中に溶解して、液体金属相を形成していることを示している。液体金属は有効熱伝導率が大幅に増加し、これによって溶融プロセスが促進される。したがって、炭素を含まないDRIと機械的に加えられた炭素とからなるブリケットの溶融時間は、溶存炭素を有するDRI(すなわち従来の化石に基づくDRI)からなるブリケットの溶融時間と同等になる。
【0086】
炭素を含まない海綿鉄ペレットにおける微細構造の推移
DRIペレットの溶融機構を理解するために、溶融中のマイクルスケールでの変化を調べることが重要である。したがって、種々の還元度を有するKPRSペレットの溶融中の微細構造の推移を詳細に調べた。このために、18の試料を調べた。これらの試料の実験条件を以下の表1中に列挙する。
【0087】
【表1】
【0088】
最初に、還元していないKRPSペレットをSEM-EDSで調べて、存在する相を観察した。顕微鏡写真の例を図4中に示す。4つの相が見られ、すなわち、(1)赤鉄鉱相、(2)ケイ酸カルシウム相、(3)MgO(約10重量%)と酸化鉄との両方を含有する相、及び(4)アパタイト相が見られた。
【0089】
さらに、2つの還元されたペレットを調べた:1つは90%の還元度を有し、1つは99%の還元度を有した。図5は、90%の還元の試料における顕微鏡写真の一例を示している。還元されたペレット中に存在する主要相は、金属鉄、鉄マトリックスに取り囲まれた島として存在する酸化鉄相(FeO)、及びCaO-SiO相である。これらすべての相は99%まで還元された材料中にも見られるが、酸化鉄相は、90%金属化のペレットよりもはるかに少ない。
【0090】
1500℃における90%のDoRを有するペレットの微細構造(試料B1)
90%の還元度のペレットを1500℃まで加熱して、金属相の溶融前のスラグの形成を調べた(試料B1)。加熱前後の微細構造をそれぞれ図6(a)及び(b)中に示す。図6(a)は、90%の還元度のペレットの微細構造を示している。図6(b)は、1500℃で240s維持した後の同じ還元度のペレットの微細構造を示している。
【0091】
図6(a)及び6(b)の比較により以下のことが分かる:(1)微細構造は粗くなり、一方、鉄相は1500℃で240秒維持した後で依然として固体である。(2)固体Feの細孔中に、既にスラグが形成されている。図6(b)中に示されるように、形成されたスラグは、2つの異なる相のマトリックス液相及びウスタイト相を含む。液相は、(<1重量%のすべての化合物は無視して)CaO、SiO、FeO、Al、MgO、TiO、Pを含む。ウスタイト相は、FeOと、少量のMgO及びVとを含む。FeOとCaO及びSiOに富む相とは反応して、スラグ相を形成することが明らかである。
【0092】
FeOは1377℃で溶融し、1377℃で0.3ポアズの粘度を有する。その理由のため、FeOからCaO及びSiOに富む相への流動は、スラグ形成の開始の原因となる可能性が高い。ペレット内部の細孔によって、FeOの流動が可能となる。図6(a)及び(b)中に示される微細構造が粗くなることに関して、グレイン構造の再配列もこの過程に含まれる。
【0093】
1600℃における99%のDoRを有するペレットの微細構造(試料A1~A5)
99%の還元度のペレットを1600℃で異なる時間(60~600s)の間維持した。1600℃で60s後、鉄はまだ液体ではない。しかし、スラグ相が既に形成されており、ペレットの細孔中に分布している(図7(b))。加熱前の還元されたペレットを示す図7(a)と図7(b)との間で比較すると、この場合も微細構造が粗くなっていることが分かる。これは、図6(a)及び(b)において行った観察を裏付けている。図7(c)中の顕微鏡写真は、より高倍率を有し、1600℃で60s後に存在する相を示している。
【0094】
主要相は鉄相である。スラグは、液相、並びに2つの析出相のウスタイト及びスピネルから構成される。スピネル相は、90%の還元度においては観察されず、これは以前の経験によるものである。このスラグ形成は、KPRSペレットの溶融による自己形成スラグから得られるバルクスラグの相について詳細に議論している早期の報告中に示される発見と一致している。これは、FeO含有量の大きな差にもかかわらず、90%まで還元したペレットと及び99%まで還元したペレットとの両方が、FeO、CaO、及びSiO(及びそれ以上)のスラグを非常に迅速に形成することを示している。実際にスラグ形成は、溶融中に完了する。
【0095】
90s後、鉄は液体である。図7(d)中に示されるように、最大1mmの数個の球状のスラグ液滴が、鉄溶融物中に存在する。マイクロメートルスケール上でほとんどのスラグ液滴は、これよりもはるかに小さい。鉄の表面上に、スラグ層が形成されている。60s後と同じ種類のスラグ相が存在する。
【0096】
120s後、大部分のスラグ相は、液体金属相から分離している。しかし、複数のスラグ相を含むおおよそ30μmのサイズの幾つかのスラグ粒子が金属浴中に依然として存在し、図7(e)が参照される。
【0097】
240s後、最大スラグ粒子は約10μmである。大部分のスラグ粒子は均一であり、純FeOに近く、別の酸化物があるパーセント値で溶解しており、図7(f)が参照される。
【0098】
炭素によるFeOの還元(脱炭)及び溶融の機構
炭素を含まないDRIのブリケット中に黒鉛粉末として炭素を含めた。実験の前後に試料の重量を測定して、脱炭の程度を評価した。次に、式(2)中に示される脱炭反応に基づいたストキオメトリック(stochiometric)物質収支を用いて重量差から相対炭素減少を計算した。
【0099】
図8中の時間及び実験温度に関して、試料B2~B5の相対炭素質量減少を見ることができる。1つの試料B5は、LECOによる炭素分析に送った。この結果も図8中に示しており、ここで炭素濃度を相対炭素質量減少に再計算している。加えた炭素の質量の70~85%は、1500℃において240~300s後に反応しており、1600℃において180s後には炭素は残存しなかったことが分かる。
【0100】
図8から、2つの明確な段階で脱炭が起こることが明らかである。(a)金属相の溶融前、及び(b)金属相の溶融後。このことは、図3(b)で行った観察を裏付けている。脱炭は溶融プロセス中に生じ、実際、このステップで脱炭の大部分が行われる。物質収支計算を用いた残存炭素の予測量は、LECO分析と一致することが分かった。これは、式(2)が脱炭反応を表しており、ブリケット化中に加えられた炭素の効率がストキオメトリック(理論的最大)に近いことを意味する。
【0101】
より大きな質量の場合の上記発見を裏付けるために、約95gの還元ペレットからなるブリケットを調べた。7つの実験が行われ、表1中の試料C1~C7が参照される。
【0102】
OES分析によって、試料の金属相中の炭素含有量を求めた(表1参照)。炭素添加量は、還元度、及びスラグ10~50重要%のFeO含有量を目標とした物質収支計算に基づいて異なった。より大きなシステムサイズの溶融時間を求めると900秒であった。加えた炭素の量は、溶融後に鋼を完全に脱炭したときの溶存炭素の最終濃度に対して0.47~1.14重量%の範囲にわたるわずかな影響を有した。
【0103】
1500℃における炭素を含まないペレット及び黒鉛からなる鉄ブリケットの微細構造(試料B2)
さらに、1500℃の実験温度で300sの間維持した加えた炭素を有するブリケットの試料B2(90%金属化、6.6gのブリケット中に0.084gの炭素を加えた)の微細構造をSEMで調べた。図9は、加えた炭素を有するブリケット(試料B2)の微細構造が、空隙(黒色)の近くに液体金属相(白色)を示すことを示している。
【0104】
液体金属相(白色)が大きな空隙(黒色)の周囲に形成されている。次に空隙は、試料の表面に接続されている。影響のない領域は、図6(b)と類似の構造を示している。このことは、図3(e)中で行った観察を裏付けている。炭素は、純鉄の融点未満の温度で液体金属相を形成する鉄の中に溶解している。より低い溶融温度まで、Fe中への炭素の溶解は必要条件であることに留意されたい。この結果から、炭素によるFeOの還元と、製造された金属中への炭素の溶解とが同時に起こることが明らかである。これらは、プロセス、例えば必要な溶融温度、鋼中の炭素含有量、及びスラグ中のFeO含有量を考慮することによる炭素添加量の最適化が望ましいことも示している。
【0105】
結論
図6(b)中に示されるように、加熱中、還元後に残存する酸化鉄は、鉄グレインがペレットの多孔質構造中に流出し、脈石を取り込み、酸化物を溶融させて、スラグを形成する。スラグが細孔を通過して流れると、これが、プレスされたペレットの間のポケット中にある固体炭素粒子と出会い、それらと容易に反応する。脱炭は2段階で起こる。脱炭は、溶融プロセス中に開始し(Feは依然として固体である)、表面上の気泡形成(図3(b)中に見られる)と、図3(c)及び(d)中のブリケットの振動とによって明らかなように、ガスが発生する。FeOと炭素との間の反応によって、溶融中に炭素が溶解した液体金属相が生成し、図9が参照される。最初に形成された液体金属は、残存炭素粒子を溶解させ続け、同時に固体Fe(炭素を有しない)を溶解させる。したがって、ブリケット全体の溶融プロセスが加速される。液体金属相によって、図3(e)のCO-Hガス混合物によって浸炭されたペレットと同等の程度までブリケットの溶融時間が短縮される。脱炭は、金属相の完全な溶融後も続き、図8が参照される。炭素と酸化鉄との間の反応は、ストキオメトリックに近づくことが示され、式(2)及び図8が参照される。水素還元された鉄鉱石ペレットと炭素とのブリケット化によって、最小の炭素放出が得られ、同時に粗鋼の製造のための効率的な溶融が得られる。
図1
図2a
図2b
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【手続補正書】
【提出日】2023-07-31
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
海綿鉄ペレット(108、208)を提供することと、炭素粉末(114、214)を提供することと、前記海綿鉄ペレット及び前記炭素粉末を含む混合物を製造することと、前記混合物をブリケット化して、圧縮海綿鉄ペレット(245)と、前記圧縮海綿鉄ペレットの間の介在空間(247)に位置する炭素粉末(214)とを含む鉄ブリケットを得ることとによって製造される、鉄ブリケット(109、209)であって、前記鉄ブリケットが、少なくとも0.2重量%の炭素粉末を含み、前記海綿鉄ペレットが、少なくとも0.5重量%の酸化鉄を含み、炭素を本質的に含まない、鉄ブリケット(109、209)。
【請求項2】
前記混合物のホットブリケット化によって製造される、請求項1に記載の鉄ブリケット。
【請求項3】
約95重量%~約99.5重量%の圧縮海綿鉄ペレットと、約0.5重量%~約5重量%の炭素粉末とを含む、請求項1又は2に記載の鉄ブリケット。
【請求項4】
約4000kg/mを超える有効密度を有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の鉄ブリケット。
【請求項5】
約20mmを超える最小寸法を有する、請求項1~4のいずれか一項に記載の鉄ブリケット。
【請求項6】
前記海綿鉄ペレットが、ブリケット化前に約7mmを超え、好ましくは約10mmを超えるメジアン直径を有する、請求項1~5のいずれか一項に記載の鉄ブリケット。
【請求項7】
前記海綿鉄ペレットが、ブリケット化前に約1500kg/m~約2000kg/mのかさ密度を有する、請求項1~6のいずれか一項に記載の鉄ブリケット。
【請求項8】
前記海綿鉄ペレットが、85%を超え、好ましくは90%を超え、例えば95%を超える金属化を有する、請求項1~7のいずれか一項に記載の鉄ブリケット。
【請求項9】
前記海綿鉄ペレットが、約85重量%を超える全鉄、好ましくは約90重量%を超える全鉄を含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の鉄ブリケット。
【請求項10】
前記炭素粉末が、約80重量%を超える炭素、好ましくは約90重量%を超える炭素を含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の鉄ブリケット。
【請求項11】
前記炭素粉末が、現在から10000年未満前、好ましくは現在から1000年未満前、さらにより好ましくは現在から100年未満前の放射性炭素年代を有する、請求項1~10のいずれか一項に記載の鉄ブリケット。
【請求項12】
添加フラックスをさらに含み、好ましくは約0.1重量%~約4重量%の添加フラックスをさらに含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の鉄ブリケット。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか一項に記載の鉄ブリケットの製造方法であって、
少なくとも0.5重量%の酸化鉄を含み、炭素を本質的に含まない海綿鉄ペレットを提供するステップと、
炭素粉末を提供するステップと、
前記海綿鉄ペレット及び前記炭素粉末を含む混合物を製造するステップであって、前記混合物が少なくとも0.2重量%の炭素粉末を含むステップと、
前記混合物をブリケット化するステップと、
を含む、方法。
【請求項14】
前記混合物をブリケット化する前記ステップが500℃を超える温度で行われる、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記海綿鉄ペレット及び炭素粉末が、別々にブリケット化装置に供給されて、前記ブリケット化装置内で混合される、請求項13又は14に記載の方法。
【請求項16】
海綿鉄ペレット(108、208)を提供することと、炭素粉末(114、214)を提供することと、前記海綿鉄ペレット及び前記炭素粉末を含む混合物を製造することと、前記混合物をブリケット化して、圧縮海綿鉄ペレット(245)と、前記圧縮海綿鉄ペレットの間の介在空間(247)に位置する炭素粉末(214)とを含む鉄ブリケットを得ることとによって製造される、鉄ブリケット(109、209)であって、前記鉄ブリケットが、少なくとも0.2重量%の炭素粉末を含み、前記海綿鉄ペレットが、ブリケット化前に約7mmを超えるメジアン直径を有し、少なくとも0.5重量%の酸化鉄を含み、炭素を本質的に含まず、約0.1重量%未満の炭素を含む、鉄ブリケット(109、209)。
【国際調査報告】