(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-05
(54)【発明の名称】多元素ゾーンドープコバルトフリー正極材料およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01M 4/525 20100101AFI20240628BHJP
H01M 4/505 20100101ALI20240628BHJP
【FI】
H01M4/525
H01M4/505
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023578051
(86)(22)【出願日】2022-04-01
(85)【翻訳文提出日】2023-12-19
(86)【国際出願番号】 CN2022084725
(87)【国際公開番号】W WO2023005251
(87)【国際公開日】2023-02-02
(31)【優先権主張番号】202110841291.7
(32)【優先日】2021-07-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522126132
【氏名又は名称】浙江▲ぱ▼瓦新能源股▲ふん▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100216471
【氏名又は名称】瀬戸 麻希
(72)【発明者】
【氏名】張宝
(72)【発明者】
【氏名】▲とう▼鵬
(72)【発明者】
【氏名】程誠
(72)【発明者】
【氏名】林可博
(72)【発明者】
【氏名】周亜楠
(72)【発明者】
【氏名】▲とう▼夢軒
【テーマコード(参考)】
5H050
【Fターム(参考)】
5H050AA07
5H050AA12
5H050AA15
5H050AA19
5H050BA16
5H050BA17
5H050CA08
5H050CA09
5H050FA17
5H050GA02
5H050GA10
5H050GA12
5H050GA27
5H050HA01
5H050HA02
5H050HA05
5H050HA10
5H050HA14
5H050HA20
(57)【要約】
本発明は、分子式がLixNiaMnbAlcMgdWeO2(式中、0.95≦x≦
1.1、0.5≦a≦0.9、0.1≦b≦0.5、0<c≦0.01、0<d≦0.0
1、0<e≦0.01、a+b=1)であり、内側から外側へAlドープ領域、Mgドー
プ領域およびWドープ領域をこの順で含む多元素ゾーンドープコバルトフリー正極材料お
よびこの正極材料の製造方法を提供する。本発明のコバルトフリー正極材料は、ゾーンご
とにAl、Mg、W元素をドーピングした正極材料により、応力解放へより良く適応し、
適度な調整を達成し、不均衡を回避することで、材料の構造がより安定となり、レート性
能およびサイクル性能がより優れている。この材料の製造方法は、プロセスが簡単であり
、実現しやすく、かつ構造および性能に優れた正極材料を安定して製造できる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
分子式がLi
xNi
aMn
bAl
cMg
dW
eO
2(式中、0.95≦x≦1.1、0
.5≦a≦0.9、0.1≦b≦0.5、0<c≦0.01、0<d≦0.01、0<e
≦0.01、a+b=1)であり、内側から外側へAlドープ領域、Mgドープ領域およ
びWドープ領域をこの順で含むことを特徴とする多元素ゾーンドープコバルトフリー正極
材料。
【請求項2】
前記正極材料の粒子径が10~12μmであることを特徴とする請求項1に記載の多元
素ゾーンドープコバルトフリー正極材料。
【請求項3】
(1)可溶性ニッケル塩および可溶性マンガン塩から混合塩溶液Aを調製し、可溶性A
l塩溶液B、可溶性Mg塩溶液C、可溶性W塩溶液D、錯化剤溶液Eおよび沈殿剤溶液F
を調製する工程と、
(2)A、B、E、F溶液を平行流に流し反応させる第1段階と、A、C、E、F溶液
を平行流に流し反応させる第2段階と、A、D、E、F溶液を平行流に流し反応させる第
3段階とに分けて、溶液A、B、C、D、E、Fを反応釜に入れて共沈反応させ、粒子が
所定の粒子径に成長したら仕込みを停止する工程と、
(3)得られたスラリーを洗浄し、乾燥させ、湿式ドーピングコバルトフリー前駆体材
料を得る工程と、
(4)リチウム塩と前記湿式ドーピングコバルトフリー前駆体をボールミルで混合した
後、焼結処理し、コバルトフリー正極材料を得る工程と、
を含むことを特徴とする請求項1または2に記載の多元素ゾーンドープコバルトフリー
正極材料の製造方法。
【請求項4】
工程(2)では、第1段階で、粒子の平均粒子径が1~4μmになるまで共沈反応させ
;第2段階で、粒子の平均粒子径が2~8μmになるまで共沈反応させ;第3段階で、粒
子の平均粒子径が10~12μmになるまで共沈反応させることを特徴とする請求項3に
記載の多元素ゾーンドープコバルトフリー正極材料の製造方法。
【請求項5】
工程(2)では、前記第1段階の反応条件として、撹拌速度は200~1200rpm
、反応温度は30~90℃、錯化剤濃度は5~15g/L、pHは11~14とし;前記
第2段階の反応条件として、撹拌速度は300~1100rpm、反応温度は40~90
℃、錯化剤濃度は5.2~14g/L、pHは10~13とし;前記第3段階の反応条件
として、撹拌速度は400~1200rpm、反応温度は30~70℃、錯化剤濃度は5
.2~15g/L、pHは10~12とすることを特徴とする請求項3に記載の多元素ゾ
ーンドープコバルトフリー正極材料の製造方法。
【請求項6】
工程(1)では、前記混合塩溶液Aにおけるニッケルおよびマンガン金属イオンの合計
濃度は0.4~10mol/Lであることを特徴とする請求項3~5のいずれか1項に記
載の多元素ゾーンドープコバルトフリー正極材料の製造方法。
【請求項7】
工程(1)では、前記可溶性Al塩溶液の濃度は0.01~6mol/Lであり、可溶
性Mg塩溶液の濃度は0.01~6mol/Lであり、可溶性W塩溶液の濃度は0.01
~6mol/Lであることを特徴とする請求項3~5のいずれか1項に記載の多元素ゾー
ンドープコバルトフリー正極材料の製造方法。
【請求項8】
工程(1)では、前記錯化剤溶液はアンモニア水溶液であり;前記沈殿剤はNaOH溶
液であり;前記アンモニア水溶液の濃度は5~25wt%であり、前記NaOH溶液の濃
度は2~11mol/Lであることを特徴とする請求項3~5のいずれか1項に記載の多
元素ゾーンドープコバルトフリー正極材料の製造方法。
【請求項9】
工程(4)では、前記リチウム塩と前記湿式ドーピングコバルトフリー前駆体とのモル
比は1~1.15:1であり;前記ボールミルの回転速度は200~600rpmである
ことを特徴とする請求項3~5のいずれか1項に記載の多元素ゾーンドープコバルトフリ
ー正極材料の製造方法。
【請求項10】
工程(4)では、前記焼結雰囲気は酸素雰囲気であり、焼結条件として、先に200~
600℃で2~9h焼結した後、800~1200℃に昇温して10~30h焼結するこ
とを特徴とする請求項3~5のいずれか1項に記載の多元素ゾーンドープコバルトフリー
正極材料の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウムイオン電池正極材料の製造分野に属し、特に高性能の多元素ゾーン
ドープコバルトフリー正極材料およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
石油などの非再生なエネルギーの乱開発により、資源不足や環境汚染の問題がますます
深刻化になっている。このような問題を解決するために、世界各国では燃料自動車に代わ
る新エネルギー自動車産業の発展が精力的に進められており、温室効果ガスの排出量を削
減するための電気自動車にはリチウムイオン電池が新たな動力源として広く使われている
。現在、主流となる正極材料であるコバルト酸リチウム(Li2CoO2)、リチウム・
ニッケル・コバルト・マンガン酸塩(NCM)およびリチウム・ニッケル・コバルト・ア
ルミン酸塩(NCA)はいずれもコバルト含有材料であるが、我が国のコバルト資源は非
常に乏しく、主に輸入に依存し、コバルトの価格は需給関係の影響を受けて上がり続けて
おり、また新エネルギー自動車市場の急速な発展に伴い、この問題はますます顕著になっ
ている。よって、新たなコバルトフリー電極材料の開発が急務となっている。
しかしながら、コバルトフリー材料は、現在のところ、層状構造が不安定であり、リチ
ウム-ニッケル混合配置の割合が高く、サイクル性能およびレート性能が劣るなどの大き
な欠陥を抱えており、また高活性ニッケルの割合が増えるほど、正極材料の熱安定性が低
下し、熱暴走を起こしやすくなる。それで、研究者らは、大量の研究活動を行っており、
その中でも特にバルクドーピング修飾戦略が際立っている。バルクドーピングは、リチウ
ム-ニッケル混合配置を効果的に改善し、リチウムイオンの拡散速度を高めることができ
ると共に、結晶構造の安定性を向上させ、相変化による不具合を軽減し、そしてクラック
の発生を低減し、正極材料の電気化学的性能を向上させることができる。しかし、従来の
ドーピング手段の多くは、均一なドーピングプロセスに焦点を当てており、材料内の応力
分布が不均一であり、バルク構造を安定化するために1つの元素をドーピングすると、サ
イクル中に構造強度の不均衡が生じやすくなり、やはりクラックが発生しやすくなり、修
飾効果が非常に低かった。
【発明の概要】
【0003】
従来技術における上記の問題に対して、本発明は、構造安定性が高く、電気化学的性能
が良好なコバルトフリー正極材料、および、プロセスが簡単で、実現しやすく、かつ高性
能のコバルトフリー正極材料を製造できる製造方法を提供する。
本発明は、下記の技術手段を提供する。
分子式がLixNiaMnbAlcMgdWeO2(式中、0.95≦x≦1.1(好
ましくは0.98≦x≦1.05)、0.5≦a≦0.9、0.1≦b≦0.5、0<c
≦0.01、0<d≦0.01、0<e≦0.01、a+b=1)であり、内側から外側
へAlドープ領域、Mgドープ領域およびWドープ領域をこの順で含む多元素ゾーンドー
プコバルトフリー正極材料。
本手段において、前記Alドープ領域、Mgドープ領域およびWドープ領域とは、それ
ぞれ、Alが集中的にドーピングされている領域、Mgが集中的にドーピングされている
領域およびWが集中的にドーピングされている領域であることをいう。例えば、前記Al
が集中的にドーピングされている領域とは、この領域で、主にAl元素がドーピングされ
ていることをいい、前駆体にリチウムを混合して焼成するプロセスで他のドーピング元素
であるMgおよびWも拡散するため、Alが集中的にドーピングされている領域は、主な
ドーピング元素Alのほか、少量のMgおよびW元素も有する。ただし、これらの少量の
MgおよびW元素は、この領域がAlドープ領域となるのに影響を与えない。
好ましくは、前記正極材料の粒子径は、10~12μmである。
同様の発明思想として、本発明は、下記の工程を含む、多元素ゾーンドープコバルトフ
リー正極材料の製造方法をさらに提供する。
(1)可溶性ニッケル塩および可溶性マンガン塩から混合塩溶液Aを調製し、可溶性A
l塩溶液B、可溶性Mg塩溶液C、可溶性W塩溶液D、錯化剤溶液Eおよび沈殿剤溶液F
を調製する工程と、
(2)A、B、E、F溶液を平行流に流し反応させる第1段階と、A、C、E、F溶液
を平行流に流し反応させる第2段階と、A、D、E、F溶液を平行流に流し反応させる第
3段階とに分けて、溶液A、B、C、D、E、Fを反応釜に入れて共沈反応させ、粒子が
所定の粒子径に成長したら仕込みを停止する工程と、
(3)得られたスラリーを洗浄し、乾燥させ、湿式ドーピングコバルトフリー前駆体材
料を得る工程と、
(4)リチウム塩と前記湿式ドーピングコバルトフリー前駆体をボールミルで混合した
後、焼結処理し、コバルトフリー正極材料を得る工程。
好ましくは、工程(2)では、前記反応段階は、主に3つに分ける。第1段階で、粒子
の平均粒子径が1~4μmになるまでA、B、E、F溶液を添加し;第2段階で、粒子の
平均粒子径が2~8μmになるまでA、C、E、F溶液を添加し;第3段階で、粒子の平
均粒子径が10~12μmになるまでA、D、E、F溶液を添加する。
好ましくは、工程(2)では、前記反応条件として、第1段階で、撹拌速度は200~
1200rpm、より好ましくは200~900rpm、アンモニア水の濃度は5~15
g/L、より好ましくは6~9g/L、反応温度は30~90℃、より好ましくは40~
90℃、pHは11~14、より好ましくは11~13とする;
第2段階で、撹拌速度は300~1100rpm、より好ましくは300~900rp
m;アンモニア水の濃度は5.2~14g/L、より好ましくは6~9g/L、反応温度
は40~90℃、より好ましくは40~80℃、pHは10~13、より好ましくは10
.5~12とする;
第3段階で、撹拌速度は400~1200rpm、より好ましくは400~1000r
pm;アンモニア水の濃度は5.2~15g/L、より好ましくは6~9g/L;反応温
度は30~70℃、より好ましくは35~70℃、pHは10~12、より好ましくは1
0.5~11.9とする。
好ましくは、工程(1)では、前記混合塩溶液Aにおけるニッケルおよびマンガン金属
イオンの合計濃度は0.4~10mol/Lであり、より好ましくは3~7mol/Lで
ある。
好ましくは、工程(1)では、前記可溶性Al塩溶液の濃度は0.01~6mol/L
であり、より好ましくは0.01~2mol/Lであり、可溶性Mg塩溶液の濃度は0.
01~6mol/Lであり、より好ましくは0.01~2mol/Lであり、可溶性W塩
溶液の濃度は0.01~6mol/Lであり、より好ましくは0.01~2mol/Lで
ある。
好ましくは、工程(1)では、前記錯化剤溶液はアンモニア水溶液であり;前記沈殿剤
はNaOH溶液であり;前記アンモニア水溶液の質量濃度は5~25wt%であり、より
好ましくは15~25wt%であり、前記NaOH溶液の濃度は2~11mol/Lであ
り、より好ましくは3~9mol/Lである。
好ましくは、工程(4)では、前記リチウム塩と前記湿式ドーピングコバルトフリー前
駆体とのモル比は1~1.15:1であり;前記ボールミルの回転速度は200~600
rpmである。
好ましくは、工程(4)では、前記焼結雰囲気は酸素雰囲気であり;前記焼結処理の条
件として、先に200~600℃で2~9h焼結した後、800~1200℃に昇温して
10~30h焼結する。
従来技術に比べて、本発明の技術手段は、下記の利点を有する。
(1)本発明のLiNiaMnbAlcMgdWeO2は、ゾーンごとにAl、Mg、
W元素をドーピングした正極材料により、応力解放へより良く適応し、適度な調整を達成
し、不均衡を回避することで、構造がより安定となり、レート性能およびサイクル性能が
より優れている。
(2)本発明では、前駆体段階で湿式法によりゾーンごとにAl、Mg、W元素を共沈
ドーピングすることにより、ドーピング元素の特性を最大限に利用して構造がより安定な
結晶構造を構築できるだけではなく、材料内のドーピング元素の均一な分布を実現すると
共に、その後の工程を削減し、生産効率を向上させることができる。本発明の製造方法は
、プロセスが簡単であり、実現しやすく、かつ構造が安定で性能に優れた正極材料を安定
して製造できる。
(3)ゾーンごとに共沈ドーピングすることで製造した本発明の正極材料は、優れた構
造安定性、レート性能および長サイクル安定性能を有する。
【発明を実施するための形態】
【0004】
以下、具体的な実施例に基づいて本発明をさらに説明する。なお、挙げたのは、本発明
のすべての実施例ではなく、その一部に過ぎない。これらの実施例は、本願の特許請求の
範囲を限定するものであると解釈してはいけない。本発明における実施例に基づいて、創
造的な努力なしに当業者によって行われる他の変更や修正は、すべて本願の特許請求の範
囲に含まれるものとする。
実施例1
(1)NiSO4・6H2OおよびMnSO4・H2Oを用いて5mol/Lの塩溶液
Aを調製し;0.5mol/LのAl塩溶液をBとして調製し;0.5mol/LのMg
塩溶液をCとして調製し;0.5mol/LのW塩溶液をDとして調製し;工業用アンモ
ニア水(25%)を溶液Eとして調製し;8mol/Lの水酸化ナトリウム溶液をFとし
て調製した。
(2)溶液A、B、C、D、E、Fをそれぞれのパイプラインにより平行流に持続的に
反応釜にポンプして反応させた。第1段階で、粒子が3μmに成長するまでに、A、B、
E、F溶液を平行流に流して反応させ、釜内のアンモニア水の濃度を7.4g/Lに維持
し、pHを12.0に維持し、反応釜の温度を60℃とし、撹拌速度を300r/min
とし;第2段階で、粒子が7μmに成長するまでに、A、C、E、F溶液を平行流に流し
て反応させ、釜内のアンモニア水の濃度を7.6g/Lに維持し、pHを11.8に維持
し、反応釜の温度を55℃とし、撹拌速度を350r/minとし;第3段階で、粒子が
10μmに成長するまでに、A、D、E、F溶液を平行流に流して反応させ、釜内のアン
モニア水の濃度を7.8g/Lに維持し、pHを11.3に維持し、反応釜の温度を55
℃とし、撹拌速度を450r/minとし、湿式ドーピングコバルトフリー正極材料の前
駆体スラリーを得た。
(3)工程(2)で得られたスラリーを遠心分離機に移して遠心分離させ、ろ過し、得
られた固体を洗浄し、乾燥させ、篩い分け、脱磁し、湿式ドーピングコバルトフリー正極
材料の前駆体を得た。
(4)水酸化リチウム一水和物と湿式ドーピングコバルトフリー前駆体を1.06:1
のモル比でボールミルで混合し、回転速度を200rpm、時間を4hとした。
(5)得られた混合材料を酸素雰囲気下で300℃、5h焼結した後、1000℃に昇
温して19h焼結し、湿式ドーピングコバルトフリー正極材料を得た。
本実施例で製造した正極材料LiNi0.8Mn0.2Al0.004Mg0.004
W0.002O2から電極板を製造しボタン半電池を組み立て、常温で電気化学的性能試
験を行った。0.1Cでの最初の放電は220mAh/gに達し、最初のサイクルの効率
は89%に達し、特に1.0Cでの高レート試験で、最初のサイクルの放電容量は204
mAh/gに達し、200サイクル後の放電容量は186mAh/gであり、容量維持率
は91.18%に達し、コバルトフリー材料の安定性能およびレート性能が劣る問題を大
幅に改善できた。
【0005】
実施例2
(1)NiSO4・6H2OおよびMnSO4・H2Oを用いて5mol/Lの塩溶液
Aを調製し;0.5mol/LのAl塩溶液をBとして調製し;0.5mol/LのMg
塩溶液をCとして調製し;0.5mol/LのW塩溶液をDとして調製し;工業用アンモ
ニア水(25%)を溶液Eとして調製し;8mol/Lの水酸化ナトリウム溶液をFとし
て調製した。
(2)溶液A、B、C、D、E、Fをそれぞれのパイプラインにより平行流に持続的に
反応釜にポンプして反応させた。第1段階で、粒子が2μmに成長するまでに、A、B、
E、F溶液を平行流に流して反応させ、釜内のアンモニア水の濃度を7.4g/Lに維持
し、pHを12.0に維持し、反応釜の温度を60℃とし、撹拌速度を300r/min
とし;第2段階で、粒子が8μmに成長するまでに、A、C、E、F溶液を平行流に流し
て反応させ、釜内のアンモニア水の濃度を7.6g/Lに維持し、pHを11.8に維持
し、反応釜の温度を55℃とし、撹拌速度を350r/minとし;第3段階で、粒子が
10μmに成長するまでに、A、D、E、F溶液を平行流に流して反応させ、釜内のアン
モニア水の濃度を7.8g/Lに維持し、pHを11.3に維持し、反応釜の温度を55
℃とし、撹拌速度を450r/minとし、湿式ドーピングコバルトフリー正極材料の前
駆体スラリーを得た。
(3)工程(2)で得られたスラリーを遠心分離機に移して遠心分離させ、ろ過し、得
られた固体を洗浄し、乾燥させ、篩い分け、脱磁し、湿式ドーピングコバルトフリー正極
材料の前駆体を得た。
(4)水酸化リチウム一水和物と湿式ドーピングコバルトフリー前駆体を1.06:1
のモル比でボールミルで混合し、回転速度を200rpm、時間を4hとした。
(5)得られた混合材料を酸素雰囲気下で300℃、5h焼結した後、1000℃に昇
温して19h焼結し、湿式ドーピングコバルトフリー正極材料を得た。
本実施例で製造した正極材料LiNi0.8Mn0.2Al0.003Mg0.005
W0.0015O2から電極板を製造しボタン半電池を組み立て、常温で電気化学的性能
試験を行った。0.1Cでの最初の放電は218mAh/gに達し、最初のサイクルの効
率は88%に達し、特に1.0Cでの高レート試験で、最初のサイクルの放電容量は20
0mAh/gに達し、200サイクル後の放電容量は180mAh/gであり、容量維持
率は90.0%に達した。
【0006】
比較例1
(1)NiSO4・6H2OおよびMnSO4・H2Oを用いて5mol/Lの塩溶液
Aを調製し;0.5mol/LのAl塩溶液をBとして調製し;工業用アンモニア水(2
5%)を溶液Eとして調製し;8mol/Lの水酸化ナトリウム溶液をFとして調製した
。
(2)粒子が10μmに成長するまでに、溶液A、B、E、Fをそれぞれのパイプライ
ンにより平行流に持続的に反応釜にポンプして反応させ、釜内のアンモニア水の濃度を7
.7g/Lに維持し、pHを11.4に維持し、反応釜の温度を54℃とし、撹拌速度を
400r/minとし、Alドーピングコバルトフリー正極材料の前駆体スラリーを得た
。
(3)工程(2)で得られたスラリーを遠心分離機に移して遠心分離させ、ろ過し、得
られた固体を洗浄し、乾燥させ、篩い分け、脱磁し、湿式ドーピングコバルトフリー正極
材料の前駆体を得た。
(4)水酸化リチウム一水和物と湿式ドーピングコバルトフリー前駆体を1.06:1
のモル比でボールミルで混合し、回転速度を200rpm、時間を4hとした。
(5)得られた混合材料を酸素雰囲気下で320℃、4.5h焼結した後、960℃に
昇温して19h焼結し、Alドーピングコバルトフリー正極材料を得た。
本実施例で製造した正極材料LiNi0.8Mn0.2Al0.008O2から電極板
を製造しボタン半電池を組み立て、常温で電気化学的性能試験を行った。0.1Cでの最
初の放電は202mAh/gに達し、最初のサイクルの効率は85%に達し、特に1.0
Cでの高レート試験で、最初のサイクルの放電容量は190mAh/gに達し、200サ
イクル後の放電容量は150mAh/gであり、容量維持率は76.92%に達した。
以上は本発明の好ましい実施例に過ぎず、本発明を限定するものではない。本発明の精
神および原理内で行われるあらゆる修正、等価な置換及び改良などは、本発明の保護範囲
に含まれるものとする。
【国際調査報告】