(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-05
(54)【発明の名称】ペピーノモザイクウイルスによる感染抵抗性植物
(51)【国際特許分類】
A01H 5/00 20180101AFI20240628BHJP
C12N 5/04 20060101ALI20240628BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20240628BHJP
A01H 6/82 20180101ALI20240628BHJP
C12N 15/01 20060101ALI20240628BHJP
C12N 15/29 20060101ALI20240628BHJP
A01H 5/02 20180101ALI20240628BHJP
A01H 5/04 20180101ALI20240628BHJP
A01H 5/12 20180101ALI20240628BHJP
A01H 5/08 20180101ALI20240628BHJP
A01H 5/10 20180101ALI20240628BHJP
A01H 5/06 20180101ALI20240628BHJP
C12N 15/09 20060101ALI20240628BHJP
C12N 15/113 20100101ALI20240628BHJP
C12N 15/90 20060101ALI20240628BHJP
A01H 1/06 20060101ALI20240628BHJP
A01H 1/02 20060101ALI20240628BHJP
A01H 1/00 20060101ALI20240628BHJP
C12Q 1/6895 20180101ALI20240628BHJP
C12Q 1/6869 20180101ALI20240628BHJP
【FI】
A01H5/00 Z
C12N5/04 ZNA
C12N5/10
A01H6/82
C12N15/01 Z
C12N15/29
A01H5/02
A01H5/04
A01H5/12
A01H5/08
A01H5/10
A01H5/06
C12N15/09 110
C12N15/09 100
C12N15/113 Z
C12N15/90 100Z
A01H1/06
A01H1/02 Z
A01H1/00 A
C12Q1/6895 Z
C12Q1/6869 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023578120
(86)(22)【出願日】2022-06-16
(85)【翻訳文提出日】2023-12-15
(86)【国際出願番号】 EP2022066499
(87)【国際公開番号】W WO2022263602
(87)【国際公開日】2022-12-22
(32)【優先日】2021-06-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】ES
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523474830
【氏名又は名称】アビオペップ,エセ.エレ.
【住所又は居所原語表記】Parque Cientifico de Murcia,Carretera de Madrid,Km.388-,Complejo de Espinardo,Edif. R,2a,Espinardo,30100 Murcia SPAIN
(71)【出願人】
【識別番号】306001703
【氏名又は名称】コンセホ スペリオール デ インベスティガシオネス シエンティフィカス(シーエスアイシー)
(74)【代理人】
【識別番号】110000051
【氏名又は名称】弁理士法人共生国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】アランダ レグレス,ミゲル ア.
(72)【発明者】
【氏名】ブレト モンフォール,エメア パウ
(72)【発明者】
【氏名】ルイス ラモン,ファビオラ
(72)【発明者】
【氏名】ロドリゲス セペルベダ,パスクアル
(72)【発明者】
【氏名】ドネール セガラ,リビア
【テーマコード(参考)】
4B063
4B065
【Fターム(参考)】
4B063QA01
4B063QA07
4B063QA13
4B063QA17
4B063QQ04
4B063QQ12
4B063QQ13
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4B063QQ53
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4B063QX02
4B065AA88X
4B065AA89X
4B065AC20
4B065BA01
4B065BA18
4B065CA53
(57)【要約】
【課題】植物のPepMV感染に対する感受性を低下させる新しいメカニズムが必要であり、そのようなメカニズムは、PepMVのいくつか又は全ての株に対して機能し、ウイルスの適応と回避に抵抗する安定したメカニズムであり、育種に有用である。
ペピーノモザイクウイルスによる感染抵抗性植物:本発明は、ゲノム中に、ペピーノモザイクウイルス(PepMV)感染に対して植物を不活性化し、抵抗性を増す遺伝子をもった植物に関するものである。また、本発明は、PepMV感染に必要な遺伝子の不活性化についても言及する。本発明は、遺伝子を不活性化し、その結果としてPepMV感染抵抗性の観点から改善された表現型を示す植物及びその子孫の部分を包含する。PepMV感染に対する抵抗性を有する植物、又は植物若しくは種子を得る方法もまた、本発明の一部である。本発明はさらに、PepMV感染に抵抗性植物を選択するためのマーカーとしての遺伝子及びそれに連結された配列に関する。したがって、本発明は農業の分野に属するものである。
【選択図】図なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
タンパク質をコードする遺伝子を含み、
前記タンパク質のアミノ酸配列が、SEQ ID NO:1を少なくとも60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又は100%含み、
前記遺伝子が、不活性化されていることを特徴とする植物若しくはその一部、生殖若しくは繁殖植物、又は植物細胞。
【請求項2】
前記植物若しくはその一部、生殖若しくは繁殖植物、又は植物細胞が、本質的に生物学的プロセスに限らず得られることを特徴とする請求項1に記載の植物若しくはその一部、生殖若しくは繁殖植物、又は植物細胞。
【請求項3】
前記遺伝子は不活性化され、タンパク質をコードするアミノ酸配列が、SEQ ID NO:2からなることを特徴とする請求項1又は2に記載の植物若しくはその一部、生殖若しくは繁殖植物、又は植物細胞。
【請求項4】
前記遺伝子は不活性化され、タンパク質をコードするアミノ酸配列が、SEQ ID NO:3からなることを特徴とする請求項1又は2に記載の植物若しくはその一部、生殖若しくは繁殖植物、又は植物細胞
【請求項5】
ソラナセア(Solanaceae)科に属することを特徴とする植物若しくはその一部、生殖若しくは繁殖植物、又は植物細胞
【請求項6】
ソラナム(Solanum)属、カプシカム(Capsicum)属、ニコチアナ(Nicotiana)属、又はフィサリス(Physalis)属に属することを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに1項に記載の植物若しくはその一部、生殖若しくは繁殖植物、又は植物細胞。
【請求項7】
前記植物は、ソラナム・リコペルシシクム(S. lycopersicum)、ソラナム・チュベロサム(S. tuberosum)、ソラナム・ペネルリィ(S. pennellii)、ソラナム・ピンピネルリフォリウム(S. pimpinellifolium)、ソラナム・ペルヴィアヌム(S. peruvianum)、ソラナム・チーズマニィ(S. cheesmanii)、ソラナム・ガラパゲンス(S. galapagense)、ソラナム・チレンセ(S. chilense)、ソラナム・メロンゲナ(S. melongena)、ソラナム・アエチオピカム(S. aethiopicum)ソラナム・キトエンセ(S. quitoense)ソラナム・トルヴァム(S. torvum)ソラナム・ムリカツム(S. muricatum)ソラナム・ベタセウム(S. betaceum)ソラナム・キミエレウスキー(S. chmielewskii)ソラナム・アルカヌム(S. arcanum)ソラナム・コルネリオムレリ(S. cornelliomulleri)ソラナム・ハブロカイチ(S. habrochaiti)ソラナム・フアイラセンス(S. huaylasense)ソラナム・ネオリッキイ(S. neorickii)ソラナム・デュルカマラ(S. dulcamara)ソラナム・リコペルシコイデス(S. Iycopersicoides)ソラナム・シティエンス(S. sitiens)ソラナム・ジュグランディフォリウム(S. juglandifolium)ソラナム・オクランツム(S. ochranthum),及びソラナム・チーズマニアエ(S. cheesmaniae)から選ばれることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに1項に記載の植物若しくはその一部、生殖若しくは繁殖植物、又は植物細胞。
【請求項8】
植物の部分は、葉、茎、花、卵巣、又はカルスからなる群から選ばれることを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに1項に記載の植物若しくはその一部、生殖若しくは繁殖植物、又は植物細胞
【請求項9】
生殖又は繁殖植物は、果実、種子、塊茎又は子孫からなる群から選ばれることを特徴とする請求項1乃至8のいずれかに1項に記載の植物若しくはその一部、生殖若しくは繁殖植物、又は植物細胞
【請求項10】
植物若しくはその一部、生殖若しくは繁殖植物、又は植物細胞は、ペピーノモザイクウイルス(PepMV)による感染に抵抗性を示し、又はPepMV感染抵抗性の点で改善された表現型を示し、
a)植物若しくはその一部、生殖若しくは繁殖植物、又は植物細胞を、ランダム突然変異又は指示した突然変異を誘発させる、及び
b)タンパク質をコードしている遺伝子を検出し、
ここで、タンパク質は、植物若しくはその一部、生殖若しくは繁殖植物、又は植物細胞で、アミノ酸配列の少なくとも60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、又は100%がSEQ ID NO:1と同じであり、遺伝子は、突然変異で不活性化されている、ことを特徴とする植物若しくはその一部、生殖若しくは繁殖植物、又は植物細胞の製造方法。
【請求項11】
前記ランダム突然変異誘発は、植物若しくはその一部、生殖若しくは繁殖植物、又は植物細胞を変異原性物質と接触させることによって達成され、
前記変異原性物質が、化学物質、電離放射線、アルファ線、ガンマ線、X線、紫外線、又はこれらの任意の組み合わせからなる群から選ばれることを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記指示した突然変異は、相同組換え依存性遺伝子ターゲティング、アンチセンスRNA、指向性トランスポゾン挿入、ウイルス誘導遺伝子サイレンシング、又はゲノム編集技術によって行われ、
前記ゲノム編集技術がCRISPR/Cas技術であることを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項13】
請求項1乃至9のいずれかに1項に記載の植物若しくはその一部、生殖若しくは繁殖植物、又は植物細胞の農工業製品の製造のための使用であって、
前記農工業製品が食品又は飼料であることを特徴とすることを特徴とする植物若しくはその一部、生殖若しくは繁殖植物、又は植物細胞の使用。
【請求項14】
農工業製品の製造方法であって、
前記農工業製品が、食品又は飼料であり、
a)請求項1乃至9のいずれかに1項に記載の植物若しくはその一部、生殖若しくは繁殖植物、又は植物細胞を培養し、
b)農工業製品を製造するために、果実、種子、塊茎又は植物の食用部分を収穫し、及び
c)消費のために、そのまま又は変換された農工業製品を製造することからなることを特徴とする農工業製品の製造方法。
【請求項15】
遺伝子が、そのアミノ酸配列の少なくとも60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、又は100%がSEQ ID NO:1と同じであるタンパク質をコードしていることを特徴とするPepMVによる感染抵抗性を有する植物、又はPepMV感染抵抗性に関して表現型が改善された植物を選択するためのバイオマーカーとしての遺伝子の使用。
【請求項16】
前記選択は、前記遺伝子のヌクレオチド配列を決定することによって行われることを特徴とする請求項15に記載の使用。
【請求項17】
前記選択は、前記遺伝子の発現の生成物を検出又は定量することによって行われ、
前記生成物は、相補的DNA又はそのフラグメント、メッセンジャーRNA又はそのフラグメント、及びタンパク質又はそのフラグメントからなる群から選ばれることを特徴とする請求項15に記載の使用。
【請求項18】
C18 PepMVによる感染抵抗性を有する植物を選択するためのマーカー遺伝子座の使用であって、
前記マーカー遺伝子座がSEQ ID NO:4と共分離し、SEQ ID NO:4の100000ヌクレオチド上流又は下流の範囲に局在していることを特徴とするマーカー遺伝子座の使用。
【請求項19】
前記選択が、請求項18に記載のマーカー遺伝子座をさらに決定することによって行われることを特徴とする請求項15に記載の使用。
【請求項20】
野生型と比較してPepMVによる感染抵抗性のある植物、又はPepMVに関して表現型が改善された植物を選択する方法であって、
a)アミノ酸配列の少なくとも60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、又は100%がSEQ ID NO:1と同じであるタンパク質をコードする遺伝子を検出し、及び
b)前記a)ステップの該遺伝子が不活性化されているか否かを判定し、
ここで、不活性化された遺伝子は、PepMVによる感染に対する抵抗性、又はWTと比較してPepMV感染抵抗性の観点から改善された表現型を示している、ステップを含むことを特徴とする選択方法。
【請求項21】
前記a)ステップでの選択は、前記遺伝子又はそのフラグメントのヌクレオチド配列を決定することにより行われることを特徴とする請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記a)ステップにおける検出は、遺伝子の発現の生成物を検出又は定量することによって行われ、
ここで、前記生成物は、相補的DNA又はそのフラグメント、メッセンジャーRNA又はそのフラグメント、及びタンパク質又はそのフラグメントからなる群から選ばれることを特徴とする請求項20に記載の方法。
【請求項23】
請求項1乃至9のいずれか1項に記載の植物若しくはその一部、生殖若しくは繁殖植物、又は植物細胞のハイブリッドの製造方法であって、
前記ハイブリッドは、ペピーノモザイクウイルス(PepMV)による感染に対して抵抗性を示す、又はPepMV感染抵抗性の観点から改善された表現型を示し、
a)請求項1乃至9のいずれか1項に記載の植物若しくはその一部、生殖若しくは繁殖植物、又は植物細胞と第2の植物と交配し、及び
b)前記交配のハイブリッド子孫を収穫する、ことからなっていることを特徴とするハイブリッドの製造方法。
【請求項24】
請求項1又は請求項3乃至9のいずれか1項に記載の植物若しくはその一部、生殖若しくは繁殖植物、又は植物細胞を製造する方法であって、
前記植物若しくはその一部、生殖若しくは繁殖植物、又は植物細胞が、ペピーノモザイクウイルス(PepMV)による感染に対する抵抗性、又は、PepMVによる感染抵抗性が、野生型と比較して、改善された表現型を示し、
a)請求項1乃至9いずれか1項による育成植物若しくはその一部、生殖若しくは繁殖植物、又は育成植物細胞を、第2植物と交配し、
b)PepMVに対する抵抗性又はPepMV感染抵抗性の点で改善された表現型と関連する請求項1乃至9いずれか1項による育種植物若しくはその一部、育成生殖若しくは繁殖植物、又は育種植物細胞から、前記a)ステップで交配して遺伝子移入した子孫植物を選択すし、
c)前記b)ステップで、前記育種植物若しくはその一部、育成生殖植物若しくは又は繁殖植物、又は育種植物細胞を前記a)ステップでの第2の植物を親として使用し、選択された子孫植物を、自家及び/又は戻し交配し、
d)PepMVに対する抵抗性又はPepMV感染抵抗性の観点で改善された改良表現型に関連した育種植物若しくはその一部、育種生殖植物若しくは繁殖植物、又は育種植物細胞を、前記c)ステップで交配して得た子孫植物を選択し、及び
e)前記c)ステップ及び前記d)ステップの選択した自家交配及び/又は戻し交配し、及び選択を繰り返して、植物育成ラインを実質的に均質化して遺伝子移入を行う、ここで、少なくとも1つの選択は、前記b)ステップ又は前記d)ステップでマーカー支援選択によって行い、
ここで、遺伝子移入は、タンパク質をコードする遺伝子の変異を含み、そのタンパク質が、アミノ酸配列の少なくとも60%、62%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%がSEQ ID NO:1と同じであり、変異は、遺伝子の不活性化となっている、ことからなることを特徴とする方法。
【請求項25】
前記a)ステップにおける第2の植物が、ソラナム(Solanum)属、又はカプシカム(Capsicum)属、ニコチアナ(Nicotiana)属又はフィサリス(Physalis)属に属し、前記第2植物が、ソラナム・リコペルシシクム(S. lycopersicum)、ソラナム・チュベロサム(S. tuberosum)、ソラナム・ペネルリィ(S. pennellii)、ソラナム・ピンピネルリフォリウム(S. pimpinellifolium)、ソラナム・ペルヴィアヌム(S. peruvianum)、ソラナム・チーズマニィ(S. cheesmanii)、ソラナム・ガラパゲンス(S. galapagense)、ソラナム・チレンセ(S. chilense)、ソラナム・メロンゲナ(S. melongena)、ソラナム・アエチオピカム(S. aethiopicum)ソラナム・キトエンセ(S. quitoense)ソラナム・トルヴァム(S. torvum)ソラナム・ムリカツム(S. muricatum)ソラナム・ベタセウム(S. betaceum)ソラナム・キミエレウスキー(S. chmielewskii)ソラナム・アルカヌム(S. arcanum)ソラナム・コルネリオムレリ(S. cornelliomulleri)ソラナム・ハブロカイチ(S. habrochaiti)ソラナム・フアイラセンス(S. huaylasense)ソラナム・ネオリッキイ(S. neorickii)ソラナム・デュルカマラ(S. dulcamara)ソラナム・リコペルシコイデス(S. Iycopersicoides)ソラナム・シティエンス(S. sitiens)ソラナム・ジュグランディフォリウム(S. juglandifolium)ソラナム・オクランツム(S. ochranthum),及びソラナム・チーズマニアエ(S. cheesmaniae)に属していることを特徴とする請求項23又は24に記載の方法。
【請求項26】
前記a)ステップにおける第2の植物が、前記b)ステップの近交系で、単交雑F1ハイブリッドのハイブリッド子孫であることを特徴とする請求項23又は24に記載の方法。
【請求項27】
さらに、前記b)ステップで収穫されたハイブリッドが、タンパク質をコードする遺伝子の不活性化を示す追加のc)ステップを有し、前記タンパク質が、アミノ酸配列の少なくとも60%、62%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%がSEQ ID NO:1と同じで、ヒトが介入して選択されることを特徴とする請求項23、25又は26のいずれか1項に記載の方法。
【請求項28】
タンパク質をコードする遺伝子を含み、前記タンパク質のアミノ酸配列がSEQ ID NO:1を少なくとも60%、62%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%含み、不活性化されている遺伝子を有する請求項23乃至25のいずれか1項に記載の植物若しくはその一部、生殖若しくは繁殖植物、又は植物細胞。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不活性化したゲノム又は遺伝子を含み、ペピーノモザイクウイルス(PepMV)感染に対して抵抗性の植物に関する。また、本発明は、PepMV感染に必要な遺伝子の不活性化についても言及する。本発明は、この遺伝子不活性化、及びその結果としてPepMV感染に対する抵抗性の点で改善された表現型を含むこれらの植物及びそれらの子孫の一部を包含する。PepMV感染に対する抵抗性を有する植物、植物部分又は種子を得る方法も本発明の一部である。本発明はさらに、PepMV感染に対して抵抗性の植物を選択するためのマーカーとしての遺伝子及びそれに連結された配列に関する。したがって、本発明は農業の分野に属するものである。
【背景技術】
【0002】
ウイルス、特に植物ウイルスは、非常に小さなタンパク質レパートリーをコードする小さなゲノムを持っている。すなわち、これらの僅かなツールで、ウイルスは、複製、宿主内での移動、宿主防御を弱める、宿主間の移動など主要な機能を引き出すサイクルを完了する必要がある。これを達成するために、ウイルスは、植物細胞機構を乗っ取りそして破壊し、プロウイルス機能を持つ宿主因子と相互作用する(非特許文献1);宿主プロウイルス因子は、宿主感受性がない(又は、ウイルスに対して機能しないアイソフォームが存在して)ことからしばしば宿主感受性因子と呼ばれ、この宿主は感受性でない又は完全に感受性でない、植物とウイルスの相互作用の表現型に注目すると、感受性がないことは、植物の抵抗性と同じで(非特許文献2)、それ故に、繁殖においては最大の関心事である。植物の育種家は、長年にわたって、劣性抵抗性遺伝子を使用してウイルス抵抗性品種を作り上げてきた。充分深く研究されたケースでは、全ての劣性ウイルス抵抗性遺伝子は、プロウイルス因子をコードするという仮説と一致している(非特許文献3)。作物種の自然多様性の中で今日まで特徴付けられているウイルス劣性抵抗性遺伝子は、4E及び4G科の真核細胞翻訳開始因子(eIF)をコードする1つのクラスに属しているように見える(非特許文献4)。モデル種からの突然変異体を集めることは、ウイルスに対する感受性の喪失をスクリーニングすることである別の状況が浮かび上がる。この場合、eIF4E又は4Gとは異なる宿主因子が報告されている(非特許文献5)。しかしながら、ウイルス抵抗性作物品種の育種に使用する可能性は、まだ十分に検討されていない。
【0003】
ペピーノモザイクウイルス(PepMV)は、ポテックスウイルス(Potexvirus)属(アルファフレキシウイルス(Alphaflexiviridae)科)に属する一本鎖プラス鎖RNAウイルスであり、世界中のトマト作物に流行している、実際、PepMVは、世界中の集約的なトマト作物に非常に重要な経済的損失をもたらしている。ペピーノモザイクウイルス種は、非常に多様であり、現在までに少なくとも5つの株が報告されている。その経済的影響を考慮して、PepMVに対する抵抗性源を特定するためのスクリーニングがソラナム種アクセッションのコレクションで実施されている(非特許文献6)が、成功は限定的であり、同定された抵抗性は部分的及び/又は菌株特異的であり、栽培トマトに対しての抵抗性源の遺伝的な近似性と相俟って、育種における関心は限られている。PepMV因子と相互作用する宿主因子も同定されている。これは、PepMV外被タンパク質(CP)と相互作用する熱ショックコニァート(heat shock cognate)70(Hsc70)アイソフォームの場合である(非特許文献7)。Hsc70は、PepMVに対してプロウイルス機能を持っているようだが、そのサイレンシングは、標的植物に重篤な表現型を誘発し(非特許文献7)、育種には使用できない。ポテックスウイルスにはその他いくつかのプロウイルス因子が同定されているが、その機能は、PepMVに対して検証されておらず、トマトのPepMV抵抗性品種の育種に用いることは想定されていない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Hyodoら, 2020, Advances in Virus Research, vol 107. Academic Press, Cambridge, pp 37-86
【非特許文献2】Kourelisら, 2018, Plant Cell 30, 285-299)
【非特許文献3】Nicaise, 2014, Front Plant Sci 5, 1-18
【非特許文献4】Trunigerら, 2009, Advances in Virus Research, vol 75. Academic Press, Cambridge, pp 119-159
【非特許文献5】Makiinen, 2020, Ann Appl Biol 176, 122-129
【非特許文献6】Solerら, 2011, J. Plant Dis Prot 118, 149-155.
【非特許文献7】Mathioudakisら, 2014, Mol Plant-Microbe Interact 27, 135.6-1369
【非特許文献8】Agueroら, 2018, Front Plant Sci 9, 1-12.
【非特許文献9】Marcoら, 2003, Phytopathology 93, 844-852
【非特許文献10】Gomezら, 2009, J Virol 83, 12378-12387
【非特許文献11】Liら, 2009, Bioinformatics 25, 1754-1760
【非特許文献12】Bolgerら, 2014, Nat Genet 46, 1034-1038
【非特許文献13】Zhuら, 2008, Nat Genet 40, 854-861
【非特許文献14】Yuanら, 2014, Nature 514, 367-371
【非特許文献15】Fujiら, 2007, Plant Cell 19, 597-609
【非特許文献16】Delgadilloら, 2020, PNAS 117, 9884-9895
【非特許文献17】Tanら, 1987, Plant cell reports, 6(3), 172-175
【非特許文献18】Cingolaniら, 2012, SnpEff. Fly 5, 29-30
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そのため、植物のPepMV感染に対する感受性を低下させる新しいメカニズムが必要であり、そのようなメカニズムは、PepMVのいくつか又は全ての株に対して機能し、ウイルスの適応と回避に抵抗する安定したメカニズムであり、育種に有用である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
植物におけるPepMVに対する前述の使用可能な抵抗性欠如に対処するために、出願人らはトマト突然変異植物を集めてスクリーニングし、PepMVに対する感受性の低下と関連する変異体を特定した。スクリーニングの結果、ウイルス量の減少、及びPepMV感染に典型的な症状がない突然変異植物を見出した。このような突然変異体のゲノムを、バルクセグレガント解析をハイスループットシーケンシングと組み合わせて特徴付け、植物がPepMV感染抵抗性となる原因を特定した。その原因は、最終的に、タンパク質をコードする特定遺伝子の不活性化であると断定された。野生型植物への戻し交配と子孫分析により、抵抗性が単一遺伝子で劣性であるモデルにおいて、分離頻度が予想される遺伝子分配とほぼ完全に適合するため、抵抗性は劣性であるとことが確かであった(実施例を参照)。
【0007】
突然変異植物は、PepMV抵抗性の改善、すなわちPepMVに対する感受性の低下以外に明らかな表現型を有していない(実施例を参照)。
【0008】
そこで、本発明の第1態様は、植物(以下、本発明の植物)又はその一部、種子を含む生殖又は繁殖植物由来物、又は植物細胞(以下、本発明の植物細胞)であり、又は、植物細胞(以下、本発明の植物細胞)が、タンパク質をコードする遺伝子(以下、本発明の遺伝子)を含むことを特徴とする、このタンパク質は、アミノ酸配列がSEQ ID NO: 1を少なくとも60%、62%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性であり、前記遺伝子が不活性化されている。好ましい実施形態で、本発明の植物若しくはその一部、本発明の生殖若しくは繁殖植物又は本発明の植物細胞は、本質的に生物学的プロセスに限らず得られる。
【0009】
述べたように、本発明者らは、PepMVによる感染に対して抵抗性を有する突然変異植物を決定した。ここで使用する用語「植物」は、全植物、植物の任意の「生殖又は繁殖物」、植物の子孫、及び植物の部分(種子、長角果、果実、葉、花、新芽、茎、塊茎、根、単離された植物細胞、カルス、組織及び器官を含む)である。植物への参照は、また、植物細胞、植物プロトプラスト、植物組織培養物、植物カルス、植物群及び植物又は植物の一部に損傷のない植物細胞であり、例えば胚、花粉、胚珠、種子、葉、花、枝、果実、穀物、スパイク、耳、外皮、茎、根、根先端などを含むことができる。ここに記載の植物のいずれかの子孫、変異体及び突然変異体は、本発明の範囲内である。前記植物のいずれかの種子も含まれる。ここで使用するように、「植物の部分」という用語は、種子、珪藻、果実、葉、花、新芽、茎及び/又は根を含む植物の任意の部分又は部分を含んでいる。
【0010】
当該分野の専門家が認識し、知識を有するように、本発明は、植物細胞においても実施できる。ここで用いる「植物細胞」という用語は、植物細胞組織又は植物細胞培養物に由来する及び/又は単離された植物細胞を含んでいる。
【0011】
ここに記載の本発明は、PepMVにより感染に対する抵抗性が改善された植物、又はPepMV感染抵抗性に関して改善された表現型を有する植物に関するものである。別の好ましい実施形態で、本発明の植物若しくはその一部、又は本発明の生殖若しくは繁殖植物、又は本発明の植物細胞は、野生型コントロール植物と比較して、PepMV感染抵抗性に関して、改良された抵抗性若しくは感受性の低下、又はPepMV感染抵抗性に関して改善された表現型を有することを特徴としている。
【0012】
ここで使用しているように、「PepMV感染に対する抵抗性」及び「PepMV感染に対する感受性の低下」という表現は、野生型コントロール植物、物質又は植物細胞と比較して、本発明の植物、又は本発明の生殖又は繁殖植物、又は本発明の植物細胞でのウイルス力価の低下又はウイルスの不在を意味している。好ましい実施形態で、ウイルス力価の低下は、野生型植物と比較して、少なくとも50%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又は100%である。さらに、「PepMV感染抵抗性」及び「PepMV感染抵抗性に関する表現型の改善」という表現は、感染によって引き起こされる症状の軽減又は不在を指している。
好ましい実施形態で、PepMV感染に対する抵抗性又はPepMV感染抵抗性の観点からの表現型の改善は、このような試験における病害スケール試験(実施例参照)で野生型植物よりも良好なスコアを得て、この症状の軽減となっている。
すなわち、0~2のスケール(0は症状がない、1は新葉に散発性な明るい黄色斑点があり、 2は新葉全てに明るい黄色のモザイクがある)で2から1又は0のスコアである。
【0013】
本発明の発明者らは、PepMV感染に対する抵抗性又はPepMV感染抵抗性に関する表現型の改善は、本発明の遺伝子の不活性化によるものであると判断した。好ましい実施形態において、本発明の植物若しくはその一部、又は本発明の生殖若しくは繁殖植物、又は本発明の植物細胞は、この不活性化遺伝子が、アミノ酸配列の少なくとも60%、62%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%がSEQ ID NO:1と同じであるタンパク質をコードすることを特徴としている。
別の好ましい実施形態では、本発明の植物、又は本発明の生殖若しくは繁殖植物、又は本発明の植物細胞は、この不活性化遺伝子が、SEQ ID NO: 1のアミノ酸配列からなるプロテインであることを特徴としている。
【0014】
[SEQ ID NO: 1]MIQSSFSADSPSMAANSTFSPPPAAGDGDFNYDVAWYGNIQYLLNISAIGALTCLLIFIFGKLRSDHRRMPGPTAIVSKLLAAWHATGVEIARHCGADAAQYLLIEGGSSALLLFLALLSLAVMLPLNIYAGKAPMADQFSKTTINHIEKGSPLLWIHFIFVVIVVVLVHYGISEIQERLKITRLRDGYGNPSNSGTNVSAIFSIMVQGVPKTLGFDKTPLVEYFQHKYPGKVYRVVVPMDLCALDDLATELVKVREDISKLVSRIELRGYLNEGEEDEYNNDSVNGRGLLERLCFLWRKAKDTWYHVVDQLGFSDEERLRKLQELRADLEMEMASYKEGRARGAGVAFVVFKDVFTANKAVQDLRNEKRRRYGRFFSVIELQLQRNQWKVERAPLATDIYWNHLGSTKFSLKLRRVLVNTCLLLMLLFCSSPLAVISAIQSAGRIINAEAMDHAQMWLNWVQGSSWLATIIFQFLPNVLIFVSMYIVVPSVLSYLSKFEQHLTVSGEQRAELLKMVCFFLVNLILLRALVESTLEGALLSMGRCYLDGEDCKKIEQYMTASFLTRTCLSSLAFLITSSFLGISFDLLAPIPWIKKKLQKFRKNDMLQLVPERSEEYPLENQDIDSLERPLIHERSSTVIADNNGFLHDASPNEIDFPGQDLSEYPPVSRTSPVPKPKFDFAQYYAFNLTIFALTLIYCSFAPLVVPVGAVYFGYRYLVDKYNFLFVYRVRGFPAGNDGRLMDTVLSIMRFCVDLFLLSMLLFFSVRGDSTKLQAIFTLGLLVVYKLLPSDKDSFQPALLQGIQTIDNIVEGPTDYEVFSQPTFDWDTYNS
【0015】
本明細書中で使用する用語「不活性化」は、野生型植物にける正常な発現と比較して、標的遺伝子又は標的対立遺伝子の発現を少なくとも約50%、60%、65%、70%、75%、80%、85%から100%で減少、又は全体的若しくは部分的に阻害していることを指している。さらに、ここで使用する「不活性化」という用語は、非機能性メッセンジャーRNA又は機能性が低下若しくは機能性のないタンパク質を産生するような方法で遺伝子ヌクレオチド配列を修飾することを指す「サイレンシング」の同義語として、及び「ノックアウト」の同義語としても使用する。より好ましい実施形態で、本発明の植物、又は本発明の生殖若しくは繁殖植物、又は本発明の植物細胞は、この不活性化遺伝子が、SEQ ID NO:2を含む、好ましくはSEQ ID NO:2からなるタンパク質をコードしていることを特徴としている。ここで、SEQ ID NO:2は、SEQ ID NO:1の554位にあるアミノ酸リジンが終止コドンに置換された突然変異したものである。別の好ましい実施形態で、本発明の植物、又は本発明の生殖若しくは繁殖植物、又は本発明の植物細胞は、不活性化遺伝子がSEQ ID NO:3を含み、好ましくはSEQ ID NO:3からなるタンパク質でコードすることを特徴としている。ここで、SEQ ID NO:3は、SEQ ID NO:1の11から408のアミノ酸を欠いているものである。
【0016】
[SEQ ID NO:2]
MIQSSFSADSPSMAANSTFSPPPAAGDGDFNYDVAWYGNIQYLLNISAIGALTCLLIFIFGKLRSDHRRMPGPTAIVSKLLAAWHATGVEIARHCGADAAQYLLIEGGSSALLLFLALLSLAVMLPLNIYAGKAPMADQFSKTTINHIEKGSPLLWIHFIFVVIVVVLVHYGISEIQERLKITRLRDGYGNPSNSGTNVSAIFSIMVQGVPKTLGFDKTPLVEYFQHKYPGKVYRVVVPMDLCALDDLATELVKVREDISKLVSRIELRGYLNEGEEDEYNNDSVNGRGLLERLCFLWRKAKDTWYHVVDQLGFSDEERLRKLQELRADLEMEMASYKEGRARGAGVAFVVFKDVFTANKAVQDLRNEKRRRYGRFFSVIELQLQRNQWKVERAPLATDIYWNHLGSTKFSLKLRRVLVNTCLLLMLLFCSSPLAVISAIQSAGRIINAEAMDHAQMWLNWVQGSSWLATIIFQFLPNVLIFVSMYIVVPSVLSYLSKFEQHLTVSGEQRAELLKMVCFFLVNLILLRALVESTLEGALLSMGRCYLDGEDCK
【0017】
[SEQ ID NO:3]
MIQSSFSADSQKFSLKLRRVLVNTCLLLMLLFCSSPLAVISAIQSAGRIINAEAMDHAQMWLNWVQGSSWLATIIFQFLPNVLIFVSMYIVVPSVLSYLSKFEQHLTVSGEQRAELLKMVCFFLVNLILLRALVESTLEGALLSMGRCYLDGEDCKKIEQYMTASFLTRTCLSSLAFLITSSFLGISFDLLAPIPWIKKKLQKFRKNDMLQLVPERSEEYPLENQDIDSLERPLIHERSSTVIADNNGFLHDASPNEIDFPGQDLSEYPPVSRTSPVPKPKFDFAQYYAFNLTIFALTLIYCSFAPLVVPVGAVYFGYRYLVDKYNFLFVYRVRGFPAGNDGRLMDTVLSIMRFCVDLFLLSMLLFFSVRGDSTKLQAIFTLGLLVVYKLLPSDKDSFQPALLQGIQTIDNIVEGPTDYEVFSQPTFDWDTYNS
【0018】
本発明において、不活性化は、本発明の遺伝子に関していう。この記載で使用しているように、「遺伝子」という用語は、生物学的機能に関連したDNAの任意の領域を指している。したがって、この遺伝子は、それらの発現に必要なコード配列及び/又は制御配列を含んでいる。この遺伝子は、また、例えば、他のタンパク質の認識配列を形成する未発現DNAセグメントも含んでいる。この遺伝子は、関連の供給源からのクローニング又は既知若しくは予測された配列情報からの合成を含む様々な供給源から得ることができ、所望のパラメータを有するように設計された配列であってもよい。ここで使用する「タンパク質をコードする」という表現は、本発明の遺伝子が、メッセンジャーRNAに転写されることを可能にする必要なヌクレオチド配列を含むという事実を指し、メッセンジャーRNAは、その後、機能性タンパク質に折りたたまれるアミノ酸配列に翻訳される。好ましい実施形態において、本発明の遺伝子は、SEQ ID NO:4のゲノムDNA配列を含んでいる。
別の好ましい実施形態で、本発明の遺伝子は、不活性化され、SEQ ID NO:5又はSEQ ID NO: 6に従うヌクレオチド配列を含んでいる。別の好ましい実施形態で、本発明の遺伝子は、不活性化され、SEQ ID NO:5又は SEQ ID NO:6のヌクレオチド配列からなっている。
【0019】
前述したように、PepMVによる感染抵抗性又はPepMV感染抵抗性の観点から改善された表現型の植物は、野生型植物と比較してウイルス力価が低い、又は感染症状が少ない植物を指している。同様に、本発明の遺伝子の不活性化は、遺伝子発現レベルの低下、該遺伝子から転写される利用可能なmRNAのレベルの低下、該遺伝子によってコードされる機能性タンパク質の量の低下、ならびに遺伝子及び/又は機能性タンパク質の完全な喪失を含んでいる。低下がある場合、その低下は野生型植物と比較して決定される。この「野生型」(同様、「野生型」、「野生の型」又はWTとも表記される)という用語は、本発明の不活性化遺伝子を含まないコントロール植物としての植物又は遺伝子の典型的な形態を指し、コントロール植物のより優れたものは同質遺伝子系統に近い。「野生型植物」とは、自然集団において本発明の不活化遺伝子を含まない植物に対応する表現型の植物を指す。
【0020】
トマト植物においてPepMV感染に対しての感受性低下、又はPepMV感染抵抗性の観点から改善された表現型の原因として同定されていたにも拘わらず、本発明の遺伝子及びそのコードされたタンパク質は、発明者らによって示されたように、類似した構造のタンパク質特性を有するオルソログを有している(実施例を参照)。このタンパク質同族体を同定するために、当業者の熟練者は、2つのタンパク質間のアミノ酸配列の同一性を一般的に用いている。ここで使用する用語「同一性」は、2つの比較されたペプチド/タンパク質又はヌクレオチド配列間の同一のアミノ酸又はヌクレオチドの割合を、それぞれそれらの完全な長さの配列に沿って指している。配列を比較する方法は、最先端の技術で公知であり、限定するものではないが、プログラムBLASTP又はBLASTN、EMBOSS Needle、ClustalW及びFASTAがある。我々は、同一%が少なくとも60%、70%、80%、90%のペプチド、タンパク質、又はヌクレオチド配列は、それらが比較されている配列と同じ特性を維持すると考えることができる。
【0021】
本発明の遺伝子の同族体の同定は、この同族体の不活性化を使用して、PepMV感染に対する抵抗性の植物を作製する、又はPepMV感染抵抗性に関して改善された表現型を作製することができることを示している。そこで、別の好ましい実施形態で、本発明の植物若しくはその一部、又は本発明の生殖若しくは繁殖植物、又は本発明の植物細胞は、ソラナセア(Solanaceae)科に属している。別の好ましい実施形態で、本発明の植物若しくはその一部、又は本発明の生殖若しくは繁殖植物、又は本発明の植物細胞は、ソラナセア属、キャプシカム(Capsicum)属、ニコチアナ(Capsicum)属、又はフィサリス(Physalis)属に属している。さらにより好ましい実施形態で、植物種は、以下からなる群から選択される: ソラナム・リコペルシシクム(S. lycopersicum)、ソラナム・チュベロサム(S. tuberosum)、ソラナム・ペネルリィ(S. pennellii)、ソラナム・ピンピネルリフォリウム(S. pimpinellifolium)、ソラナム・ペルヴィアヌム(S. peruvianum)、ソラナム・チーズマニィ(S. cheesmanii)、ソラナム・ガラパゲンス(S. galapagense)、ソラナム・チレンセ(S. chilense)、ソラナム・メロンゲナ(S. melongena)、ソラナム・アエチオピカム(S. aethiopicum)ソラナム・キトエンセ(S. quitoense)ソラナム・トルヴァム(S. torvum)ソラナム・ムリカツム(S. muricatum)ソラナム・ベタセウム(S. betaceum)ソラナム・キミエレウスキー(S. chmielewskii)ソラナム・アルカヌム(S. arcanum)ソラナム・コルネリオムレリ(S. cornelliomulleri)ソラナム・ハブロカイチ(S. habrochaiti)ソラナム・フアイラセンス(S. huaylasense)ソラナム・ネオリッキイ(S. neorickii)ソラナム・デュルカマラ(S. dulcamara)ソラナム・リコペルシコイデス(S. Iycopersicoides)ソラナム・シティエンス(S. sitiens)ソラナム・ジュグランディフォリウム(S. juglandifolium)ソラナム・オクランツム(S. ochranthum)、及びソラナム・チーズマニアエ(S. cheesmaniae)。本発明はまた、これらの植物種の同義語、例えば、リコペルシコン・エスクレンツム(Lycopersicon esculentum)、リコペルシコン・エスクレンツム・ミル(Lycopersicon esculentum Mill.)、リコペルシコン・エスクレンツム・ヴァール・ミルエスクレンツム(Lycopersicon esculentum var. esculentum)、ソラナム・エスクレンツム(Solanum esculentum)、ソラナム・エスクレンツム・デュナル(Solanum esculentum Dunal)がある。
【0022】
植物種はまた、その中のすべての亜種及び品種又は栽培品種を含むことを理解される。本明細書で使用する用語「変種」は、その種内の他の可能な品種からそれらを分離する特性を共有する種内の植物のグループを指している。そのような特徴的な形質又は形質の組み合わせは、繁殖後に安定し、その個体と子孫の間で十分に均質でなければならない。ソラナセア属のように自家受粉(autogamous)又は自家受粉(self-pollinating)植物の場合、ほとんどの商業品種は、純粋な系統又は近親交配、及び2つの近親交配間のF1ハイブリッドである。ここで用いる「栽培品種」という用語は、「野生」状態以外の生物学的状態を有する植物を指し、この「野生」状態は、植物又はアクセッションのオリジナルな非栽培状態、又は自然状態を示している。この「品種」という用語には、半自然、半野生、雑草のような、伝統的及び先祖伝来の品種、在来種、育種材料、研究材料、育種系統、合成集団、ハイブリッド、創始者ストック/ベース集団、近交系(ハイブリッド品種の親)、分離集団、変異体/遺伝的ストック、及び高度/改良品種が含まれが、これらに限定するものでない。
【0023】
そこで本発明の植物若しくはその一部、又は本発明の生殖若しくは繁殖植物、又は本発明の植物細胞の別の好ましい実施形態は、リコペルシクム属(S.lycopersicum)であり、アンナ・ラシアン(Anna Russian)、アプロース(Applause)、オージー(Aussie)、バラドレ(Baladre)、ベラ・ローザ(Bella Rosa)、ブラック・チェリー(Black cherry)、ブラック・ピアー(Black Pear)、ブラック・ラシアン(Black russian)、ブロンドコプヒェン(Blondkopfchen)、ブランディワイン(Brandywine)、カブリ(Cabri)、カラカス(Caracas)、カールボーン(Carbon)、セイラン(Ceylan)、チェロキー・パープル(Cherokee purple)、チェリー(Cherry)、コマンチェ(Comanche)、コストルート・ジェノヴェーゼ(Costoluto genovese)、ディトマルシェ(Ditmarcher)、ドムビート(Dombito)、エステラ(Estrella)、エロス(Eros)、ガリシアン( Gallician)、グラシエール(Glacier)、ガルテンペルル(Gartenperle)、グリーン・ソーセージ(Green sausage)、グラショフカ(Grushovka)、ハルツフォイアー(Harzfeuer)、フーフ(Hugh)、ジャルセイ・デヴィル(Jersey devil)、ジュボリーヌ(Juboline)、コソヴォ(Kosovo)、クリム・ブラック(Krim black)、クマト(Kumato)、リグリア (Liguria)、リマチーノ(Limachino)、ライム・グリーン・サラド(Lime green salad)、マニトバ(Manitoba)、マーヴェル・ストライプ(Marvel stripe)、マネーメーカー(Moneymaker)、マルグローブ(Marglobe)、マルチーヌ(Meltine)、モンセラット(Monserrat)、ムチャミエル(Muchamiel)、ネマト(Nemato)、オパールカ(Opalka)、パラ・デ・ジローナ(Pera de Girona)、ピーニャ・ハワイアーナ(Pina Hawaiana)、リオ・グランデ(Rio grande)、RAF、ローマ(Roma)、シベリアンン(Siberian)、スプライト(Sprite)、シュガリー(Sugary)、サン・シュガー(Sun sugar)、ソベート(Sobeto)、ソナティヌ(Sonatine)、チゲレルラ(Tigerella)、テラデス(Terrades)、ヴェルゲル(Vergel)、ホワイト・クイーン(White Queen)、ラフ・クラウディア(Raf Claudia)、ローマ(Roma)、ヴァレンチアーノ(Valenciano)、アドラチオン(Adoration)、アリカンテ(Alicante)、アゾイクカ(Azoychka)、ベター・ボーイ(Better Boy)、ビッグ・ビーフ(Big Beef)、ビッグ・レインボウ(Big Rainbow)、ブラビィ・スペシャル(Blaby Special)、ブラック・クリム(Black Krim)、ブラニィワイン(Branywine)、カンパリ(Campari)、カレブリティ(Celebrity)、カナリオ(トマト)(Canario (tomato))、トムキン(Tomkin)、アーリー・ガール(Early Girl)、エンチャントメント(Enchantment)、フェリス・ホイール(Ferris Wheel)、フラメンコ(Flamenco)、フォース・オブ・ジュライ(Fourth of July),ガルデン・ピーチ(Garden Peach)、ガーデナース・,デライト(Gardener’s Delight)、グラナデロ(Granadero)、グレート・ホワイト(Great White)、グリーン・ゼブラ(Green Zebra)、ハノバー・トマト(Hanover tomato)、ジャパニーズ・ブラック・トリフェラ(Japanese Black Trifele)、ジュビレー(Jubilee)、ジュリエット(Juliet)、リリアンズ・イエロー(Lillian’s Yellow)、マッツ・ワイルド・チェリー(Matt’s Wild Cherry)、マイクロ・トム(Micro-Tom)、マネーメーカー(Moneymaker)、モンテローザ(Monterosa)、モルトガーゲ・リフター(Mortgage Lifter)、ミスター・ストリペイ(Mr. Stripey)、パンタナ・ロマネスコ(Pantano Romanesco)、プラム・トマト(Plum tomato)、ラフ・トマト(Raf tomato)、レベルリオン(Rebellion)、レッド・カレント(Red Currant)、ローザ・デ・バルバストロ(Rosa de Barbastro)、サン・マルザーノ(San Marzano)、サン・ペドロ(San Pedro)、サーシャ・アルタイ(Sasha Altai)、タイニー・ティム(Tiny Tim)、チェリー・バンベロ(Cherry Bambelo)、チェリー・ネブラ(Cherry Nebula)、サントリーニー(Santorini)、トマッチオ(Tomaccio)、イエロー・ピアー(Yellow Pear)、ホワイト・クイーン(White Queen)、コラゾン・ブエイ(Corazon de Buey)、アンゲラ(Angela)、コルガー・エン・ローマ(Colgar en Rama)、チルエラ・ネグロ(Ciruela Negro)、オプチマ(Optima)、パタ・ネグロ(Pata Negra)、コピア(Copia)、ヴァレスコ(Velasco)、モンテネグロ(Montenegro)、ヴェルティコ(Vertyco)、ヴェンテロ(Ventero)、ラミレ(Ramyle)、ピテンザ(Pitenza)、パラディウム(Paladium)、マヨラル(Mayoral)、ラジモ(Razymo)、モット(Motto)、カニレス(Caniles)、ビエルサ(Byelsa)、ロィアルテ(Royalty)、トゥルジルロ(Trujillo)、ダリジア(Delizia)、デュマス・デゥラトム(Dumas Duratom)、ラルグエロ(Larguero)、トリー(Torry)、トヴィスター(Tovistar)、ピントーン(Pinton)、グルエッソ(Grueso)、ラルガ・ヴィダ(Larga Vida)、マレンザ(Marenza)、ウィンドゥ・ボックス・ローマ(Window box Roma)、ニネッテ(Ninette)、レティント(Retinto)、ボルド(Boludo)、アネイリス(Anairis)、トビ・スター(Tobi Star)、ミラ(Myla)、グァラーポ(Guarapo)、アタゴ(Atago)、ジャワラ(Jawara)、ヴェラスコ(Velasco)、マニチュ(Manitu)、コルビ(Colbi)、デュラトン(Duraton)、パトリアルカ(Patriarca)、ダニュビオ(Danubio)、インテンセ(Intense)、パラ・フィット(Pera Fitto)、ヴェルナール(Vernal)、セシリオ(Cecilio)、チェリー・クマト(Cherry Kumato)、チェリー・アマリーリョ(Cherry Amarillo)、チェリー・レドンド(Cherry Redondo)、チェリー・ミニスター(Cherry Ministar)、チェリー・ギュインドス(Cherry Guindos)、チェリー・マリニカ(Cherry Marinica)、及びチェリー・エンジェル(Cherry Angel)の品種(varieties/cultivars)である。
【0024】
本発明の植物若しくはその一部、又は本発明の生殖若しくは繁殖植物、又は本発明の植物細胞の別の好ましい実施形態は;チュベロサム(S. tuberosum)属で、ケンネベック(Kennebec)、モナリザ(Monalisa)、デジレェ(Desiree)、ビンチィエ(Bintje)、アラヴァ(Alava)、パロガン(Palogan)、ペドロ・ミュニョズ(Pedro Munoz)、ロジャ・リニョーン(Roja Rinon)、デュクエサ(Duquesa)、ゴヤ(Goya)、オラルラ(Olalla)、チュリア(Turia)、ヴィクター(Victor)、ローラ(Lora)、ガウナ(Gauna)、アルダ(Alda)、ベルダ(Belda)、ブエサ(Buesa)、イチュリエッタ(Iturrieta)、ダイバ(Diba)、フェニックス(Fenix)、オンダ(Onda)、アレーナ(Arene)、アスン(Asun)、アイアラ(Ayala)、エデュルネ(Edurne)、ゴルベア(Gorbea)、イドイア(Idoia)、イケール(Iker)、インカ(Inca)、イスラ(Isla)、メイカ(Mayka)、マイケル(Mikel)、モンチコ(Montico)、ナゴーレ(Nagore)、ネレア(Nerea)、ザドーラ(Zadorra)、ザリーナ(Zarina)及びゼラ(Zela)の品種/栽培品種がある。
【0025】
ここで言及する本発明の植物、生殖若しくは繁殖する植物、又は本発明の植物細胞を得るために、生物学的方法のみと生物学的方法又は手順のみ以外の方法又は手順の両方を使用した。そこで、「本質的に生物学的プロセスに限らず得られる」という表現は、交配、交雑、選択的育種、遺伝子移入、自家交配、又はゲノム又はゲノム又はプロテオームを改変する技術的ステップを伴わないその他の生物学的プロセスなど本質的に生物学的方法以外の方法によってそのゲノム又はプロテオームが改変されている植物細胞、種子、植物又は植物の一部などの宿主生物を指している。本発明の遺伝子が不活性化されている植物を、本質的に生物学的プロセス以外で得るための方法は、限定するものではないが、体細胞ハイブリッド化、突然変異誘発物質を用いた突然変異誘発があり、例として、限定するものではないが、X線、高速中性子、紫外線照射等による電離放射線、又は限定するものではないが、エチルメタンスルホン酸(EMS)、ジエチル硫酸(DES)、エチレンイミン(EI)、プロパンスルトン、N-メチル-N-ニトロソウレタン(MNU)、N-ニトロソ-N-メチルウレア(NMU)、N-エチル-N-ニトロソウレア(ENU)、アジ化ナトリウム等の化学薬品、及び遺伝子工学がある。後者の方法の例としては、限定するものではないが、微生物ベクター、微粒子銃、エレクトロポレーション、マイクロインジェクション、トランスポゾン用いての標的植物のゲノムへの外因性核酸の挿入、又は内因性核酸又はゲノムの形質転換、又はCRISPR/Cas技術を含むゲノム編集技術、又はその他、限定するものではないが、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)などの転写活性化剤などの使用に基づくものがある。
【0026】
本発明の目的のために、「本質的に生物学的プロセスに限らず得られる」という表現は、タンパク質をコードする遺伝子を変化させるように故意に遺伝物質を改変された植物を指しており、そのタンパク質は、アミノ酸配列の少なくとも60%、62%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%がSEQ ID NO:1と同じであるタンパク質をコードしている。好ましくは、このタンパク質は、高浸透圧ゲート型カルシウム透過性チャネル4.1(OSCA4.1)である。具体的には、本発明の植物は、本質的に及び非本質的に生物学的プロセスによって改質して、ここに記載した本発明の遺伝子の発現を不活性化、及び/又はその発現物を改変して機能的に低下又は非機能的にしている。
【0027】
本発明の植物は、他のすべての植物と同様に、本発明の範囲に入る細胞、組織及び器官から構成される。そこで、別の好ましい実施形態で、生殖又は繁殖植物は、細胞、果実、種子、塊茎又は子孫から選択される。本発明の植物のさらに別の好ましい実施形態では、植物の部分は、葉、茎、花、子房、又はカルスからなる群から選択される。生殖又は繁殖物と本発明の植物の一部である本発明の植物の成分は、アミノ酸配列の少なくとも60%、62%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%がSEQ ID NO:1と同じであるタンパク質をコードしている遺伝子を含み、その遺伝子が不活性化されていることを特徴としている。
【0028】
本発明の植物、本発明の生殖又は繁殖植物、本発明の植物細胞、又は本発明の植物の成分のいずれかを得るのに当業者にはいくつかの方法が利用できるが、専門家は、本発明の遺伝子を不活性化した植物を得る最善の方法を選び採用するであろう。そこで、本発明の別の態様は、本発明の植物、又は本発明の生殖若しくは繁殖植物、又は本発明の植物細胞、又は本発明の植物の構成物を製造する方法に関するもので、その植物又はその一部、生殖若しくは繁殖植物、又は植物細胞は、PepMVによる感染に抵抗性を示し、又はPepMV感染抵抗性の点で改善された表現型を示し、この方法(以下、本発明の方法)は:
a) 植物又はその一部、生殖又は繁殖する植物、又は植物細胞を、ランダム突然変異又は指示した突然変異を誘発させる、及び
b) タンパク質をコードしている遺伝子を検出する。ここで、タンパク質は、植物若しくはその一部、生殖若しくは繁殖する植物、又は植物細胞で、アミノ酸配列の少なくとも60%、62%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%がSEQ ID NO:1と同じであり、遺伝子は、突然変異で不活性化されている。
【0029】
本発明の方法の好ましい態様で、植物、又は本発明の生殖若しくは繁殖植物、又は本発明の植物細胞、又は本発明の植物の種は、ソラナセア科に属している。本発明の方法のさらに別の好ましい実施形態で、植物、又は本発明の生殖若しくは繁殖植物、又は本発明の植物細胞、又は本発明の植物の成分は、ソラナセア属、キャプシカム属、ニコチアナ属、又はフィサリス属に属している。本発明の方法のより好ましい実施形態で、植物、又は本発明の生殖物若しくは繁殖物、又は本発明の植物細胞、又は本発明の植物種は、ソラナム・リコペルシシクム、ソラナム・チュベロサム、ソラナム・ペネルリィ、ソラナム・ピンピネルリフォリウム、ソラナム・ペルヴィアヌム、ソラナム・チーズマニィ、ソラナム・ガラパゲンス、ソラナム・チレンセ、ソラナム・メロンゲナ、ソラナム・アエチオピカム、ソラナム・キトエンセ、ソラナム・トルヴァム、ソラナム・ムリカツム、ソラナム・ベタセウム、ソラナム・キミエレウスキー、ソラナム・アルカヌム、ソラナム・コルネリオムレリ、ソラナム・ハブロカイチ、ソラナム・フアイラセンス、ソラナム・ネオリッキイ、ソラナム・デュルカマラ、ソラナム・リコペルシコイデス(S. Iycopersicoides)ソラナム・シティエンス、ソラナム・ジュグランディフォリウム、ソラナム・オクランツム、及びソラナム・チーズマニアエ、に属している。植物種は、その全ての亜種及び品種又は栽培品種を含むと理解されるべきである。いくつかの植物種についての品種/栽培品種の例は、限定するものではないが、先の説明に列挙しており、その品種/栽培品種は、この態様及びその実施形態について有効である。
【0030】
植物、生殖又は繁殖物質、植物細胞、子孫又は植物の一部、特に遺伝子が不活性化される場所を得る方法は、当該技術分野において広く公知であり、専門家は、所望の植物を得るために適用する最良の方法を識別することができるであろう。このような方法には、有向変異誘発戦略とランダム変異誘発戦略の両方が含まれる。ランダム突然変異誘発方法は、化学物質(エチルメチルスルホン酸(EMS)、エチルニトロソウレア(ENU)など)又は電離放射線(高速中性子突然変異誘発などの中性子、高速中性子突然変異誘発などの中性子)、アルファ線、ガンマ線(コバルト60源によって供給されるものなど) 、X線、紫外線など、又はこれらの任意の組み合わせなどの変異原性物質との接触など、細胞のDNAに変異を誘導する技術に基づいているが、これらに限定するものではない。指示した突然変異誘発方法は、相同組換え依存性遺伝子ターゲティング、アンチセンスRNA、指向性トランスポゾン挿入、ウイルス誘導遺伝子サイレンシング、及びCRISPR/Cas技術を含むがこれらに限定されないゲノム編集技術が含まれるが、これらに限定されない。
【0031】
このように、本発明の方法の好ましい実施形態において、本発明の遺伝子は、変異原性物質による突然変異誘発、化学剤による突然変異誘発、遺伝子工学又はゲノム編集技術(CRISPR/Cas技術を含む)によって不活性化される。
【0032】
本発明の植物は、農業用途を見出すものである。この用途の中で、最も広く使用されているのは、飼料又は消費物品を取る又は生成するための植物の成長である。このように、本発明の別の態様は、本発明の植物、本発明の生殖又は繁殖植物、本発明の植物細胞、又は本発明の植物の成分を、農工業製品を生産するための用途に関し、好ましくは、農工業製品は、食品又は飼料である。
【0033】
このような使用は、農工業製品の製造方法と密接に関連している。そこで、本発明の他の態様は、農工業製品の製造方法に関し、好ましくは、農工業製品が食品又は飼料であり、以下を含んでなる。
a)本発明の植物、本発明の生殖又は繁殖植物、本発明の植物細胞、又は本発明の植物の成分を培養し、
b)果実、種子、塊茎又は植物の食用部分を収穫して農工業製品を生産し、及び
c)必要ならば、消費のために、そのまま、又は変換された農工業製品を製造する。
【0034】
本明細書及び後述する特許請求の範囲に記載の発明は、本発明の遺伝子の不活性化が、PepMVによる感染に対する抵抗性を付与する、又はPepMV感染抵抗性の点で改善された表現型を付与する植物に関するものである。また、本明細書は、PepMVによる感染に対しての抵抗性を有する植物、又は改良された表現型を有する植物が、遺伝子の発現レベルに影響を及ぼすことができる遺伝子のヌクレオチド配列における変化をスクリーニングする、又はこの遺伝子の生成物の発現レベルの変化をスクリーニングすることによって同定できると規定する。そこで、本発明の他の態様は、バイオマーカーとしての遺伝子の使用に関するもので、以後、本発明のバイオマーカーの使用は、PepMVによる感染抵抗性を有する植物、又はPepMV感染抵抗性の点で表現型が改善された植物を選択することである。ここで、この遺伝子は、そのアミノ酸配列の少なくとも60%、62%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%がSEQ ID NO:1と同じであるタンパク質をコードしている。本発明のバイオマーカーの別の好ましい実施形態で、遺伝子は、少なくとも60%、62%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%がSEQ ID NO:4と同じであるヌクレオチド配列からなっている。検出された遺伝子が、不活性化する方法で改変された場合、その植物はPepMV感染に対して抵抗性を示す。本発明のバイオマーカー使用の別の実施形態で、バイオマーカーは不活性化され、SEQ ID NO:2 又はSEQ ID NO:3のアミノ酸配列でなるタンパク質をコードしている。また、本発明のバイオマーカー使用のさらに別の好ましい実施形態で、バイオマーカーは不活性化され、SEQ ID NO:5 又はSEQ ID NO:6のヌクレオチド配列を含んでいる。PepMV耐性形質を有する選択された近交系、子孫及び/又は植物に対するメーカー支援育種プログラムにおける本発明のバイオマーカーの使用もまた、本説明の一部である。
【0035】
本発明のバイオマーカー使用のさらに別の好ましい実施形態において、バイオマーカーは不活性化され、配列番号5又は配列番号6に記載のヌクレオチド配列を含む。
PepMV耐性形質を有する選択された近交系、子孫及び/又は植物に対するメーカー支援育種プログラムにおける本発明のバイオマーカーの使用もまた、本説明の一部である。別の実施形態で、この選択は、本発明の遺伝子の発現物を検出又は定量することによって行われ、ここで、この発現物は、相補的DNA又はそのフラグメント、メッセンジャーRNA又はそのフラグメント、及びタンパク質又はそのフラグメントからなる群から選ばれる。本発明のバイオマーカーの別の好ましい実施形態で、この選択は、SEQ ID NO:4と共分離するマーカー遺伝子座をさらに決定することによって行われ、好ましくは、このマーカー遺伝子座は、本発明のバイオマーカーの100000ヌクレオチド上流又は下流の範囲に局在している。
【0036】
本発明の別の態様は、PepMVによる感染抵抗性を有する植物、又はPepMV感染抵抗性に関して表現型が改善された植物を選ぶためのマーカー遺伝子座に関し、このマーカー遺伝子座は、SEQ ID NO:4と共分離し、SEQ ID NO:4の100000ヌクレオチド上流又は下流の範囲に局在している。
【0037】
ここで使用する用語「マーカー遺伝子座」は、特定の遺伝子又は遺伝子マーカーが位置する染色体上の特定の固定位置を指し、SEQ ID NO:4.と共分離する。
ここで使用する「共分離」という用語は、互いに物理的に近接した、つまり、リンクした結果として一緒に伝達される1つの染色体中の2つ以上の遺伝子マーカーを指している。このマーカー遺伝子座は、任意の遺伝的ヌクレオチド配列又は一般的な形質、例えば、限定するものではないが、遺伝子、イントロン、エクソン、エンハンサー、プロモーター、単一ヌクレオチド多型、小規模の挿入/欠失、転位因子、マイクロサテライト、又は単にヌクレオチド配列の10、20、30、40、50、60、70、80、90、100又はそれ以上の塩基対のヌクレオチドフラグメントを含む、又はそれらからなることができる。
【0038】
ここで使用する用語「上流」及び「下流」は、それぞれ本発明のバイオマーカーの5’方向又は3’方向にある位置に関するものである。
【0039】
バイオマーカーを検出する方法は、専門家の分野では常識である。例えば、限定するものではないが、本発明の遺伝子又はそのフラグメントのヌクレオチド配列における変化の同定は、全遺伝子又はそのフラグメントのポリメラーゼ連鎖反応(PCR)生成物の電気泳動分析又は配列分析によって行うことができる。ここで使用する「ヌクレオチド配列における変化」は、ヌクレオチド配列における変異、すなわちヌクレオチドに置換、挿入又は欠失があることを意味し、本発明の遺伝子のタンパク質コード領域に在ると、アミノ酸が別のアミノ酸に置換されるミスセンス変異、又は早期終止コドンが形成されるナンセンス変異となることがある。このタイプの変化は、本発明の遺伝子の機能的低下又は非機能的な発現物をもたらす可能性が高く、その結果、遺伝子の不活性化又は本発明の遺伝子のより強力なサイレンシングをもたらす可能性が高くなる。ここで使用する「ヌクレオチド配列における変化」という表現は、タンパク質コード領域、例えば限定するものではないがプロモーター及び/又はエンハンサー領域、の外で本発明の遺伝子に、又は本発明の遺伝子に連結した配列に生じる変化を含んでおり、本発明の遺伝子の生成物の発現レベルに影響を及ぼすことがある。
【0040】
バイオマーカーのヌクレオチド配列における変化は、当該技術分野の専門家が認識しているように、小さなフラグメント又は配列全体のフラグメントに検出することができ、このフラグメントが明確に同定され、自然の又は野生型配列にマッピングされると、その変異を同定し、バイオマーカーを不活性化する可能性を決めることができる。このフラグメントは、10塩基対からバイオマーカーの全長まで及ぶことができる。そこで、好ましい実施形態で、バイオマーカーは、遺伝子配列が少なくとも10、20、30、40、50、60、70、80、90又は100塩基対のフラグメントである。
【0041】
本発明の遺伝子の発現を検出するには、遺伝子の転写に由来するメッセンジャーRNA(mRNA)のレベル、又はそのフラグメントを検出又は定量することによって行うことができ、mRNAレベルの分析は、例えば、限定するものではないが、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)増幅、逆転写PCR(RT-PCR)、リガーゼ連鎖反応(RT-LCR)と組み合わせた逆転写、又はその他任意の核酸増幅法;又は任意のメカニズムによって堆積したオリゴヌクレオチドを使用して製造するDNAマイクロアレイであり;ここで、DNAマイクロアレイは、任意のメカニズムによりデポジットしたオリゴヌクレオチドを用いて製造され、DNAマイクロアレイは、フォトリソグラフィー又はその他任意のメカニズムによってin situで合成されたオリゴヌクレオチドから作られ、in situハイブリダイゼーションは、任意の標識方法によって、電気泳動ゲルによって;膜トランスファーと特定のプローブを用いたハイブリダイゼーションによって;核磁気共鳴、又は常磁性ナノ粒子、又はDNA/RNAプローブ、抗体又はその他手段で機能化した検知可能なナノ粒子を用いたその他イメージング技術によって標識した特異的プローブを用いる。
【0042】
ここで使用する用語「mRNAフラグメント」は、本発明の遺伝子の転写によって得られたヌクレオチド配列を指し、ここで、この配列は、本発明の遺伝子の転写から得られた全ヌクレオチド配列と比べて5末端及び/又は3末端領域又は任意の領域から1つ以上のヌクレオチドを欠いている。
【0043】
mRNAの検出に加えて、本発明のバイオマーカーの検出は、本発明のバイオマーカー又はそのフラグメントのタンパク質物を検出及び/又は定量することによって行うこともできる。前述したように、この方法は、当該技術分野において周知であり、限定するものではないが、ウェスタンブロット、タンパク質アレイ、ELISA、免疫組織化学又は免疫沈降を含む。
【0044】
ここで使用する用語「タンパク質フラグメント」は、通常の完全な長さのタンパク質と比較して、N末端及び/又はC末端又はタンパク質の任意の部分から1つ以上のアミノ酸が欠損しているタンパク質を指し、ここで、そのフラグメントは、完全な長さのタンパク質がもつ本来の機能を保持していない。本発明において、タンパク質は、本発明の遺伝子の翻訳により得られるOSCA4.1タンパク質である。
【0045】
タンパク質又はタンパク質フラグメントを検出するより一般的な方法の1つは、抗体及びその抗体を使用する技術の使用である。ここで使用する用語「抗体」は、免疫グロブリン分子及び免疫グロブリン分子の免疫活性フラグメント、すなわち、タンパク質と特異的に結合する(免疫反応する)抗原の結合部位を含む分子を指す。免疫グロブリンには、免疫グロブリンM(IgM)、免疫グロブリンD(IgD)、免疫グロブリンG(IgG)、免疫グロブリンA(IgA)、免疫グロブリンE(IgE)の5つの主要なクラスがある。
【0046】
ここに記載した使用に関連して、本発明の別の態様は、WTと比較してPepMVにより感染抵抗性のある植物、又はPepMVに関して表現型が改善された植物を選択する方法に関しており、以降、本発明の選択方法は、以下のステップを含むものである:
a)アミノ酸配列の少なくとも60%、62%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%がSEQ ID NO:1と同じであるタンパク質をコードする遺伝子を検出するステップ、
b) a)ステップの該遺伝子が不活性化されているか否かを判定する、ここで、不活性化された遺伝子は、PepMVによる感染に対する抵抗性、又はWTと比較してPepMV感染抵抗性の観点から改善された表現型を示す。
【0047】
本発明の選択方法の好ましい実施形態で、a)ステップにおける検出は、遺伝子又はそのフラグメントのヌクレオチド配列を決定することによって行う。本発明の選択方法の別の好ましい実施形態で、a)ステップにおける検出は、本発明の遺伝子の発現体を検出又は定量することによって行う。ここで、発現体は、相補的DNA又はそのフラグメント、メッセンジャーRNA又はそのフラグメント、及びタンパク質又はそのフラグメントからなるリストから選択される。
【0048】
「植物」、「PepMVによる感染に対する抵抗性」、「遺伝子」、「タンパク質」、「アミノ酸配列」、「同一性」、「不活性化」、「サイレンシング」、「遺伝子フラグメント」、「タンパク質フラグメント」、「メッセンジャーRNA」、「mRNAフラグメント」、「相補的DNA」、「cDNAフラグメント」という用語及び表現は、本発明以前の態様に関連して既に定義されており、この定義は、本態様及びその実施形態について等しく有効である。
【0049】
そのヌクレオチド配列若しくはそのフラグメント、又はmRNAのような発現体を決定することによって遺伝子を検出する方法;すなわち、cDNA若しくはそのタンパク質若しくはそのフラグメントは、バイオマーカーのヌクレオチド配列内の変化を検出する方法及び技術、又はバイオマーカー発現体の変化を検出する方法及び技術に関して、本発明のバイオマーカー使用に関連して既に記載されている。この方法及び技術は、本態様及びその実施形態について等しく有効である。
【0050】
本発明の植物若しくはその一部、本発明の生殖若しくは繁殖植物、又は本発明の植物細胞を生成する他の用途及び方法は、所望の結果を得るために本発明のバイオマーカーを利用する生物学的プロセスにおける実質的な人の介入に依存する方法である。それ故、本説明の別の態様は、PepMVによる感染に対する抵抗性を有する、又は野生型と比較してPepMV感染抵抗性の点で表現型が改善された選択された植物に対する補助繁殖プログラムにおける本発明のバイオマーカーの使用である。本発明のさらに別の態様は、本発明の遺伝子の不活化対立遺伝子の存在について植物の集団をスクリーニングするための本発明のバイオマーカーの使用に関し、この存在は、野生型と比較して、PepMVによる感染に対する抵抗性の増加又はPepMV感染抵抗性の観点から改善された表現型を示す。
【0051】
「補助育種プログラム」という用語は、「マーカー支援選択」とも呼ばれ、ここで使用するように、形質自体ではなく、その形質にリンクされているマーカーに基づいて、所望の形質が選択される選択プロセスを指す。本発明において、マーカーは本発明のバイオマーカーであり、形質はPepMVによる感染に対する抵抗性、又はPepMV感染抵抗性の観点から改善された表現型である。
【0052】
本発明の別の態様は、本発明の植物若しくはその一部のハイブリッド、本発明の生殖若しくは繁殖植物のハイブリッド、又は本発明の植物細胞のハイブリッドの製造方法に関し、このハイブリッド植物若しくはその一部は、ハイブリッド生殖若しくは繁殖植物、又はハイブリッド植物細胞が、PepMVによる感染に対する抵抗性を示す、又はPepMV感染抵抗性の観点から改善された表現型を示し、ここ以降本発明のハイブリッド方法は、
a)本発明の植物若しくはその一部、本発明の生殖若しくは繁殖植物、又は本発明の植物細胞と第2の植物と交配する、そして
b)前記交配のハイブリッド子孫を収穫する、
ことである。
【0053】
ここで使用する用語「ハイブリッド」、「ハイブリッド植物」、又は「ハイブリッド子孫」は、遺伝的に異なる両親(例えば、遺伝的にヘテロ接合体又は大部分がヘテロ接合体の個体)から産生された個体を指している。本発明のハイブリッド方法の好ましい実施形態で、ステップa)における第2の植物は、ソラナム(Solanum)属、又はカプシカム(Capsicum )属、ニコチアナ(Nicotiana)属又はフィサリス(Physalis)属に属する。別の好ましい実施形態において、第2植物は、以下の群から選択される: ソラナム・リコペルシシクム(S. lycopersicum)、ソラナム・チュベロサム(S. tuberosum)、ソラナム・ペネルリィ(S. pennellii)、ソラナム・ピンピネルリフォリウム(S. pimpinellifolium)、ソラナム・ペルヴィアヌム(S. peruvianum)、ソラナム・チーズマニィ(S. cheesmanii)、ソラナム・ガラパゲンス(S. galapagense)、ソラナム・チレンセ(S. chilense)、ソラナム・メロンゲナ(S. melongena)、ソラナム・アエチオピカム(S. aethiopicum)ソラナム・キトエンセ(S. quitoense)ソラナム・トルヴァム(S. torvum)ソラナム・ムリカツム(S. muricatum)ソラナム・ベタセウム(S. betaceum)ソラナム・キミエレウスキー(S. chmielewskii)ソラナム・アルカヌム(S. arcanum)ソラナム・コルネリオムレリ(S. cornelliomulleri)ソラナム・ハブロカイチ(S. habrochaiti)ソラナム・フアイラセンス(S. huaylasense)ソラナム・ネオリッキイ(S. neorickii)ソラナム・デュルカマラ(S. dulcamara)ソラナム・リコペルシコイデス(S. Iycopersicoides)ソラナム・シティエンス(S. sitiens)ソラナム・ジュグランディフォリウム(S. juglandifolium)ソラナム・オクランツム(S. ochranthum),及びソラナム・チーズマニアエ(S. cheesmaniae)に属している。
【0054】
本発明のハイブリッド方法の別の実施形態で、a)の第2の植物は近交系であり、b)のハイブリッド子孫は単交雑F1ハイブリッドである。ここで使用する用語「近交系」は、遺伝的にホモ接合体又はほぼホモ接合体の集団を指す。近交系は、例えば、兄弟/姉妹の繁殖、自家繁殖、又は二倍体生産のいくつかのサイクルを通じて得ることができる。ここで使用する場合、「シングルクロスF1ハイブリッド」という表現は、2つの近交系間の交配から製造された第1世代(又は「フィリアル1」)ハイブリッドを指している。本発明のハイブリッド方法のいくつかの好ましい実施形態で、近交系は、所望の1つ以上の表現型形質に対して真を繁殖させる。本発明のハイブリッド方法の別のさらなる好ましい実施形態では、近交系はエリート系統である。本明細書で使用される「エリートライン」という用語は、一定の品質の製品を提供するプラントラインを指す。エリートラインは長年の近親交配の結果であり、高収量、果実の品質、害虫、病気、非生物的ストレスに対する抵抗性など、複数の優れた特性を兼ね備えている。これらのエリート系統の平均収量は、一般に、元の野生(在来種)よりもはるかに高い。エリートラインは、作物として直接使用することも、シングルクロスF1ハイブリッドの製造にも使用できる。
【0055】
本発明のハイブリッド方法のより好ましい実施形態において、b)ステップで収穫されたハイブリッドが、タンパク質をコードする遺伝子の不活性化を示す追加のc)ステップをさらに有している。ここで、このタンパク質は、アミノ酸配列の少なくとも60%、62%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%がSEQ ID NO:1と同じであり、ヒトが介入して選択される。
【0056】
本発明の別の態様は、本発明のハイブリッド方法によって得た植物若しくはその一部、生殖若しくは繁殖する植物、又は植物細胞に関するものである。
【0057】
本発明の別の態様は、本発明の植物若しくはその一部、本発明の生殖若しくは繁殖する植物、又は本発明の植物細胞を製造する方法に関するものであり、ここで、この植物若しくはその一部、この生殖若しくは繁殖、又はこの植物細胞は、;
a)本発明の育成植物若しくはその一部、本発明の生殖若しくは繁殖植物、又は本発明の育成植物細胞を、第2植物と交配する、
b)PepMVに対する抵抗性又はPepMV感染抵抗性の点で改善された表現型に関連する本発明の育種植物若しくはその一部、本発明の育成生殖若しくは繁殖植物、又は本発明の育種植物細胞から、a)ステップで交配して遺伝子移入した子孫植物を選択する、
c)b)ステップで、本発明の育種植物若しくはその一部、本発明の育成生殖植物若しくは繁殖植物、本発明の育種植物細胞をa)ステップでの第2の植物を親として使用し、選択された子孫植物を、自家及び/又は戻し交配する、
d)PepMVに対する抵抗性又はPepMV感染抵抗性の観点で改善された改良表現型に関連した本発明又はその一部の育種植物、本発明の育種生殖植物若しくは繁殖植物、又は育種植物細胞を、c)ステップで交配して得た子孫植物を選択する、
e) c)ステップ及びd)ステップの選択した自家交配及び/又は戻し交配し、及び選択を繰り返して、植物育成ラインを実質的に均質化して遺伝子移入を行う、ここで、少なくとも1つの選択は、b)ステップ又はd)ステップでマーカー支援選択によって行う。ここで、遺伝子移入は、タンパク質をコードする遺伝子の変異を含み、そのタンパク質は、アミノ酸配列の少なくとも60%、62%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%がSEQ ID NO:1と同じであり、変異は、遺伝子の不活性化となる。
【0058】
ここで用いる「遺伝子移入」という用語は、形質が可視又は検出可能になる第1世代からのように、遺伝的決定基を持たない植物に、交配及び選択によって遺伝的決定因子を導入することを意味することを意図している。優性形質の場合、形質を呈する植物と形質を持たない植物との間の交配のF1の子孫が、当該形質について分離し始めるとすぐに選択が開始する(例えば、F2又は最初の戻し交配[BC1]世代)。劣性形質の場合、F2からも可能である。又は、特に多遺伝子形質の場合、形質に連結された分子マーカーを用いて選択を行うことができる。マーカー支援選択は、マーカーを担持する植物を含み得る任意の世代又は集団において実施される。
【0059】
ここで使用する「交配」という用語は、雌植物(又は配偶子)の雄植物(又は配偶子)による受精を指している。「配偶子」という用語は、配偶体から有糸分裂によって植物中に産生され、異性の2つの配偶子が融合して二倍体受精卵を形成する有性生殖に関与する一倍体生殖細胞(卵子又は精子)を指している。この用語は一般に、花粉(精子細胞を含む)と胚珠(卵子を含む)を参照することを含んでいる。
したがって、「交配」とは一般に、ある個体の胚珠と別の個体からの花粉との受精を指すが、「自家交配」とは、同じ個体からの花粉で個体の胚珠の受精することを指している。ゲノム領域又はセグメント、当業者は、ある植物の染色体の一部のみが別の植物の染色体への侵入するために、両親系統のゲノムのランダムな部分を、親系統における配偶子の産生における交叉があることで交配中に組み換えることが必要であることを理解するであろう。それ故、両親のゲノムは、交配によって単一の細胞に結合されなければならず、細胞から配偶子を産生して受精する融合は、遺伝子移入となる。
【0060】
「戻し交配」という用語は、2つの親系統間の交配から生じる植物が、その親系統の1つと交配されるプロセスを指し、ここで、戻し交配で使用される親系統は、再発親と呼ばれる。戻し交配を繰り返すと、ゲノムはますますホモ接合体又は近親交配になる。
【0061】
本発明の別の態様は、植物若しくはその一部、生殖若しくは繁殖する植物、又は本発明の侵入方法によって得られた植物細胞に関し、タンパク質をコードする遺伝子を含むことを特徴とする、タンパク質は、そのアミノ酸配列の少なくとも60%、62%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%がSEQ ID NO:1と同じであり、変異は、遺伝子が不活性化されている。
【0062】
本発明の他の態様との関係で先に説明した用語のすべての定義は、本発明のすべての態様及び実施形態について等しく有効である
【発明の効果】
【0063】
ゲノム編集技術を用い、トマト品種マイクロトム突然変異体を作製し、PepMVを接種したT1世代の個々の植物にホモ接合性変異が観察され、突然変異体2F531植物と同様の感染表現型が観察された。編集された植物では病気の症状は見られず、WT植物と比較して突然変異体にPepMVの蓄積が有意に減少しており、細胞内でのPepMV複製におけるその役割が確認された。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【
図1】野生型と突然変異トマト植物の葉に、PepMV-H30によって誘発する症状: トマト品種M82の野生型(WT)及び2F531突然変異植物に、感染した植物の葉に明るい黄色のモザイクを誘導する攻撃的な分離株PepMV-H30を接種(又は、健康なコントロールでは接種してない(-))した。写真は、接種16日後に撮影したものである。
【
図2】異なる菌株からのPepMV分離株に対する突然変異体2F531トマト植物の抵抗性: ウイルス量を、特異的プライマーを用い、PepMV RNA の絶対的定量を行う検量線を参照してRT-qPCRにより測定した。2F531では、WT植物に関してPepMV蓄積に急激な減少が観察された。PepMV分離株は、PepMV-Sp13、-H30(EU変異株)、-PS5及びKLP2(CH2変異株)であった。それぞれ3つの植物の4つの複製物の平均と標準偏差。全RNAは、接種16日目に抽出した。*は有意差を示す(p<0.05、Tスチューデント検定)。
【
図3】変異体2F531の抵抗性の耐久性: WT及び突然変異植物で2つのPepMV分離株を5代まで継代して、抵抗性がなくなる確率を推定した:(A)WT及び2F531植物におけるPepMV-Sp13の6系統及びPepMV-PS5の6系統を安定化するためのセットアップのスキーム。(B)分離株PepMV-Sp13(上)とPepMV-PS5(下)の実験に沿ったウイルス量の変化(接種16日後(dpi)ウイルスRNA のlog10 ng/総RNA100 ng)。
【
図4】2F531におけるPepMVに対する抵抗性を付与する変異体のマップ: (A)WT及び2F531と比較したPepMV-H30に対するBC1F1の感受性:接種16日(dpi)でのウイルス蓄積量(ウイルスRNAのng/総RNA100ng)。それぞれ3つの植物の8つの複製物の平均と標準偏差。aとbは、PepMVの蓄積レベルが有意に異なることを示している(p<0.05、LSDテスト)。 (B)BC1F3の表現型:感受性個体の%に関するBC1F3科のヒストグラム。 (C)参照ゲノム(Heinz 1706、SL2.50)に従ってトマト染色体に沿って検出された全ての変異体における、WTとRプール(y軸)間の対立遺伝子頻度の差を表すマンハッタンプロット。点線は、対立遺伝子頻度の差の閾値が0.7を超えることを示しており、抵抗性との関連を示している。 (D)2番染色体候補領域におけるSNPの遺伝子マップと関連解析:BC1F2個体200個体の分離解析後の候補領域における12マーカーの連鎖マップで、cMの遺伝的距離(中央);及びマーカーに関連付けられ、LOD スコアとして表された(グラフ上部のスケール、右)感受性損失の確率プロット。
【
図5】候補遺伝子にマッピングするペアリードの数: 6つのF2植物それぞれの3つのプールに、RNA-seq(Y軸)後に候補遺伝子それぞれにマッピングされた正規化ペアリードの数で、その子孫が抵抗性(R)又は感受性(WT)表現型のいずれかを示す。
【
図6】CRISPR/Cas9を用いたSlOSCA4.1遺伝子の編集: (A) 野生型(WT)SlOSCA4.1遺伝子のコード配列の模式
図CRISPR/Cas9と、WT遺伝子に対して1192 bpが欠損している編集植物から配列した編集遺伝子Sloca4.1-2による遺伝子編集に用いた所望gRNAの位置を示している。 (B) WT及びPepMV-H30で感染したslosca4.1_2ノックアウトトマト植物(又は、健康なコントロールでは感染していない)におけるPepMV症状の発現 (C) トマトWT植物及びslosca4.1_2ノックアウト突然変異体における接種後16日目のPepMV-Sp13の蓄積。データは、感染した6つの植物の平均値と標準偏差である。アスタリスクは、一元配置ANOVA統計検定を使用した有意差を示す(*** p<0.001)。
【
図7】WT及び2F531突然変異葉プロトプラストでの相対的PepMV表現: WT及び2F531突然変異体の葉からのプロトプラストは、PepMV-SP13精製ビリオンで感染させた。感染後0時間、17時間、24時間でのPepMVの相対発現をRT-qPCRで分析した。17時間と24時間の発現を、0時間と相対化した。データは、WTと7つの突然変異体に対しの8回実験繰返してその平均値と標準偏差である。アスタリスクは、t統計的検定を使用した有意差を示す(p<0.05)。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0065】
1.1.方法:
トマト突然変異体スクリーニング
突然変異体集団は、トマト種子品種M82をエチルメタンスルホン酸(EMS)で処理した後に供給された1,000M2科で構成されていた。1つの科あたり25本の植物を苗床(Murcia, Spain)に播種し、播種33日後に温室(Murcia, Spain)に移植し、窓と入口をアザミウマ除けメッシュで保護した。WTトマト品種M82植物は、感受性コントロールとして、及び境界線用として用いた。植物密度は、平方メートルあたり植物4本とした。植物は、移植と同日に攻撃的な分離株PepMV-KLP2(非特許文献8)を接種した。
【0066】
接種を行うのにニコチナ・ベンタミアナ(Nicotina benthamiana)植物を用いた:14日後(dpi)に、接種した葉の上に症候性のある葉を収穫し、pH8の30 mMリン酸緩衝液と混合して100 g/Lの濃度にし、-80℃で保存し;接種の場合、このストックを5倍に希釈した。トマト植物に、接種液中のカーボランダム粉末(粒径0.037mm;10g/L)の懸濁液を高圧で散布した。トマト植物は、接種液中カーボランダム粉末(粒径0.037mm;10g/L)の懸濁液を高圧で散布した。我々は、トマト突然変異体集団全体に合計28Lの希釈接種液を使用した。28日後に2回目の接種を行い、感染を確認した。M2植物それぞれを、最初の接種から42日後に症状を点数評価した。0~2の症状重症度スケールは、次のように定義した。0:症状なし;1:新葉に散発的に明るい黄色の斑点がある;2:全ての新葉に明るい黄色のモザイクがある。スコアが0と1の植物を選んだ。症状と実際の感染との関連を確認するため、PepMV検出を科毎に10の植物で行った;我々は、Marcoら(非特許文献9)のように、葉柄断面の組織プリントに分子ハイブリダイゼーションを用いた。作物は、温室内で働く人に極度の衛生対策を施したことを除いて、従来慣行に従って管理した。評価した後、軽症又は無症状の植物から果実を収穫し、種子を抽出した結果、600以上のM3科を保存した。
【0067】
2回目の選別で、M3科あたり10~12の植物を評価した。種子を、4%H2O2で30分間消毒して汚染されたPepMVを除去した後、40個の苗トレイに播種し、接種し、実験温室(CEBAS-CSIC、Murcia, Spain)で栽培した。接種に使用したウイルス分離株は、PepMV-H30で、PepMV-KLP2と同様に明るい黄色のモザイクを発生させるが、より安定した感染表現型である(非特許文献8)。この場合、トマト植物(品種 Moneymaker)に接種し、播種後21日目にAgueroら(非特許文献8)にあるように手動で機械的接種を行った。植物を、最初の接種から14日後に再接種した。症状の表示は、25dpiで注釈を付け、科毎に症状のある植物の割合を記録した。評価後、選択した科の3~6本の植物をヤシ繊維嚢に移植し、果実が成熟する迄、標準的な栽培条件下で温室(Finca “La Matanza”, CEBAS-CSIC,Murcia, Spain)で栽培した。選んだ植物について、制御受粉を行い、2回の自家交配(M4及びM5種子)をした。
【0068】
2F531植物のウイルス量の測定:
4つのPepMV分離株を、WT及び2F531(M5種子)植物で分析した:EU株に属するPepMV-Sp13とPepMV-H30、及びCH2株に属するPepMV-PS5とPepMV-KLP2、PepMV-Sp13及びPS5は、軽度の症状を誘発する弱毒化分離株であり、PepMV-H30と-KLP2は、攻撃的な分離株である(非特許文献8)。接種は、以下の標準的な手順でN.ベンサミアナの植物で復活させた。遺伝子型毎に3本のトマト植物を3~4の複製体に、ウイルス又はウイルス分離株それぞれを接種した。いずれの場合も、本葉が2枚ある植物は、前述のように機械的に接種し(非特許文献10)、サンプル採取は、16dpiで行った。植物を泥炭とココナツ繊維の混合物(2:1)を入れた1.1リットル鉢に植え、気候制御(日中の温度を24~25℃、夜間の温度を16~18℃に設定し、光を16時間照射)を備えたクリスタル温室(CEBAS-CSIC)で栽培した。ウイルスRNAは、全RNAを抽出した後に定量した。複製体それぞれの植物から全ての葉を収穫し、植物組織1gあたり4 mLのTNAバッファー(TNA:2% SDS、100 mMTris HCl・pH 8、10 mM EDTA・pH 8)とブレンダーでホモジナイズし;ホモジナイズした液500μlを採って同量のTRI-Reagent(RNA 単離試薬, Sigma Chemical Co, USA)と混合し;該試薬メーカーの指示に従ってRNAを抽出した。最終の沈殿物を50 μLの無菌RNaseを純水に溶解し、メーカーのプロトコルに従って、TURBO DNA-free TMキット(Invitrogen, USA),で処理して、残留DNAを除去した。RNAの量は、Nano-Drop(登録商標) One(Thermo Scientific、USA)で推定した。RT-qPCRは、ウイルスRNAの定量に使用した。分析したウイルスそれぞれについて、既知濃度のウイルス RNA を 1:10 段階で希釈して標準曲線を作成した。精製ウイルスRNA希釈液又は抽出した植物RNAを2μL、及び特定プライマー(非特許文献10)で反応容量を20μLとし、KAPA SYBR(登録商標) FAST Universal One-Step RT-qPCR Kit (KAPA Biosystems, USA)を用いた。生物学的複製体毎に3っのテクニカル複製体を、サーモサイクラー StepOnePlus(Applied Biosystems, USA)を使用して分析した。
【0069】
連続的な継代実験:
2F531植物のPepMVに対する抵抗性安定性を、連続的な継代実験で特徴付けた。
この実験では、2つの植物(2F531とWT)及び2つのウイルス(PepMV-Sp13とPepMV-PS5)に遺伝子型を含んでいた。2F531にはM5種子を使用した。遺伝子型毎及びPepMV分離株毎に3つの植物を使用して、12の系統を確立した(
図3A)。両方の分離株について最初の接種を、まずWT植物でリフレッシュし、上記したようにして定量し、0から約107ウイルスコピー/ngの総RNAの濃度まで継代した。50μLの接種物を使用して、それぞれの系統で本葉が2つとなった段階で各系統の初代植物それぞれに機械的に接種し、次いで、5回連続して継代を行った。そのために、16 dpiで接種した植物の2番目の葉から10.7mmの円形で4枚採取し、その系統の次の継代の新しい接種源として使用した(
図3A)。同じ葉から採取した別の4枚の円形物を-80℃で凍結し、上記したようにウイルス量を定量した。全ての植物は、泥炭とココナッツ繊維の混合物(2:1)を入れた1.1Lの鉢で、気候制御(日中の温度が24~25℃、夜間の温度が16~18℃で、16時間の光照射)を備えたクリスタル温室(CEBAS-CSIC)で栽培した。
【0070】
マッピング集団と表現型:
M82(BC1F1)へ戻し交配するために、制御受粉した。BC1F2は、BC1F1の自己制御によって得た。204個のBC1F2個体を育成し、マッピング集団として使用し、204個のBC1F3子孫を自家交配させた。全ての場合において、植物を、PVC温室(Finca “La Matanza”, CEBAS-CSIC)内ココナツ繊維嚢で栽培した。あるBC1F2の表現型値は、そのBC1F3子孫10~12のPepMV-H30に対する感受性を分析することによって決定した。この子孫試験の方法論は、7dpiで行った再接種と14dpiでの最終採点を除いて、大規模スクリーニングの2回目の選抜で前述した方法と同様である。
【0071】
バルクセグレガント分析とハイスループット遺伝子型解析:
BC1F3が100%の症候性子孫を示した18のBC1F2個体であるWTバルクと、0%の症候性子孫を持つ18の個体であるRバルクの2つのバルクが生成した。BC1F2個体それぞれの葉組織を核酸抽出に用いた。自動DNA抽出を、Maxwell(登録商標) CSC (Promega Corp., USA)の「PureFood GMO and Authentification Kit for Food, Feed and Seed samples」のプロトコルに従って実施した。歩留まりを改善するために僅かに変更した;すなわち、出発物質として60 mgの粉砕組織、600 μLのCTAB、30 μLのプロテイナーゼK、65℃で2時間インキュベーション、及び最終容量80 μLとした。DNAは、Qubit(登録商標) 2.0蛍光度計(Life technologies, USA)のQubitTM dsDNA BR Assay Kitで定量し、1%アガロースとNano-Drop(登録商標) Oneでの電気泳動でその品質をチェックした。選ばれた個体のDNAは、それぞれが等しく代表されるようにプールし、両方のプールはMacrogen Inc. (South Corea)によってディープシーケンスした。TruSeq DNA PCR-Freeライブラリを、350 pbのフラグメントサイズで生成し、HiSeq(登録商標)2500-High Throughtput HORM (Illumina Inc., USA)中、ペアエンドリードすることで、約50倍のカバレッジ深さとなった。生データは次のように分析した。リード品質を、FastQCでテストした(http://www.bioinformatics.babraham.ac.uk/projects/fastqc/);トマト参照ゲノム(cv Heinz 1706, version SL2.50; http://solgenomics.net/organism/Solanum_lycopersicum/genome; Tomato Genome Consortium, 2012)に対してのリードマッピングを、BWAアライナー(非特許文献11)を用いて行った。M82配列は、公的データベース(非特許文献12)から検索した。 このプログラムFreebayes (Garrison and Marth, 2012, ArXiv:1207.3907 [q-bio.GN])は、プールとM82 の両方の変異体呼び出しに使用し、対立遺伝子頻度は、フィルタリング後にプールとM82で計算した (基準: 両方のプールで利用可能なデータ、サンプルあたり 20あるいはそれ 以上のカバレッジ、少なくとも25の変異体品質、及び 0.9より小さい対立遺伝子の合計頻度)。最後に、プール間の対立遺伝子頻度の差を計算し、Rソフトウェアを使用してマンハッタンプロットとして表した。観察された機能喪失に関連したメンデル劣性突然変異の場合、そのような差は、0.7以上になると推定された。
【0072】
RNA-配列:
バルクあたり同じ18個のBC1F2個体を、さらに6つの植物の3回の複製に細分化した。得られたRNA調製は、Nano-Drop・OneとAgilent 2100バイオアナライザー(Agilent Technologies, USA)で評価した。全てのサンプルで、RNAインテグリティナンバーが7.4を超えた。6つのプールは、配列決定しMacrogen Inc.)、続いてキットTruSeq Stranded mRNA LT (Illumina Inc.)を用い、NovaSeqTM 6000 platform (Illumina Inc.)中、151 bpのペアリードを読み取って、ライブラリを構築した。生データは、プログラムTrimmomatic (Bolger et al., 2014b),で整え(アダプターと5’末端の10ヌクレオチド)、品質を上げるためにFastQCでフィルタリングした (最小QCが30、長さが70 bp以上) 。リードを、BBMap (www.sourceforege.net/projects/bbmap)とペアにし、BWAのMEMアルゴリズム(非特許文献11)を用いて参照ゲノムに対してマッピングし、Qualimap (bampc)でマッピングの品質を確認した。変異体の呼び出し及び対立遺伝子頻度の計算は、DNAの再配列決定について説明した通りに実施した。アノテーションされた遺伝子にマッピングされたリードの数は、SubReadの関数featureCountsで計算し、その品質はDESeq2で計算し、rlogで正規化した。DESeq2は、遺伝子型と複製の2つの因子を考慮して、RサンプルとWTサンプル間の発現の違いを調べることもできた。Goseqを用いて、分析GOに使用して濃縮した。最後に、変異体の生物学的影響を、SnpEffで予測した(非特許文献18)。
【0073】
CRISPR/Cas9編集:
SlOSCA4.1コード配列に相補的な3つのgRNAは、BreakingCasバイオインフォマティクスツール(Oliveros et al., 2016)を使用して設計した。SlOSCA4.1の標的配列は、5’-ACTTCAATTACGACGTCGCT-3’(配列番号:7)、5’-CAGAGCTGCCGCCCTCAATA-3’(配列番号:8)、及び5’-ATAAGGCTGTCCAGGACCTC-3’(配列番号:9)であった。センス及びアンチセンスオリゴヌクレオチド(Integrated DNA Technologies, Inc.)をアニールし、Cermakらが記載したプロトコルに従って、pDIRECT_22C(Addgene ref. # 91135)バイナリープラスミドにクローニングした。得られたプラスミドは、Agrobacterium tumefaciens株GV3101を形質転換するに使用し、これは、次にVan Eckら(分子生物学の方法、2006年、343、459-473)が記述しているプロトコルに従ってトマト品種Micro-Tomの外植体に形質転換するに用いた。選択培地に根付いた植物を、基質に移し、成長チャンバーで順応させた。SlOSCA4.1の編集物がT0植物で発生したかどうかを確認するために、遺伝子内の標的領域を、メーカーの仕様に従ってPhire Tissue direct PCR kit (Thermo Scientific)を用いて直接組織PCRでPCR増幅し、Sangerで配列決定した。編集した植物を、自家交配してT1種子を得た。基質で増殖したT1植物を遺伝子型決定し、ホモ接合体に変異を有する植物を選別した。
【0074】
実施例1.2:トマト突然変異体の集合体におけるPepMVに対する感受性喪失:
1,000 M2 科から 25,000のトマト突然変異体でスクリーニングした。突然変異植物を、明らかな明るい黄色のモザイクを誘導する攻撃的なPepMV分離株と共に接種しました。症状の重症度は、0~2のスケールに従って各植物についてスコア付けした。0は症状がない、1は新しく出た葉の散発的な明るい黄色の斑点、2は新しく出た全ての葉に及ぶ明るい黄色のモザイクである(
図1)。攻撃性の症状(スコア2)は、感受性として記録した植物の97.5%に現れた。379科にスコアが0又は1の植物があった。
症状のある植物と無症候性の植物の亜集団を、PepMV感染の検査をしたところ、感染と症状が現れることの間に完全な相関関係があることが明らかになった。スコアが0又は1である科から1つから4つの植物を選び、自家交配し、600以上のM3科を生み出した。これらから、453のM3科それぞれから10から12にPepMVを接種し、症状のスコア付けリングに再度注釈を付けた。科2F531は100%無症状の植物であり、PepMVに対する感受性の喪失となるホモ接合性変異とした。この科の植物は、自家交配してM4種子を生成し、野生型アクセッションM82に戻し交配してBC1F1を得た。今後は、これらの植物の感受性喪失表現型を抵抗性と呼ぶことにする。
【0075】
本発明の不活性遺伝子を有するトマト植物は、PepMVによる感染に対する抵抗性又はPepMV感染抵抗性に関して改善された表現型以外に、野生型と比較して表現型に相違を示さない。苗木(
図6B)も、突然変異体2F531又はslosca4.1_2ノックアウトの植物も、PepMVによる感染がないWT植物と区別することができない:これらは、葉の成長習慣、サイズ、色、形状、果実の外観、数又は設定、種子形成(収量及び発芽性)が類似しており、すなわち、変異がトマト植物の適応度を変えていない。
【0076】
突然変異体2F531における抵抗性の幅と耐久性
野生型(WT)と2F531植物のPepMV蓄積を、PepMV-Sp13、PepMV-H30(いずれもEU株に属する)、PepMV-PS5又はPepMV-KLP2(CH2株に属する)接種後に比較した。4つの分離株全てについて、WTプラントに対する突然変異体のウイルス量が急激かつ有意に減少している(
図2)。これは、CH2分離株(3~5倍)よりもEU(9~10倍)の方が顕著であり、軽度分離株(PepMV-Sp13及びPS5)よりも攻撃性分離株(PepMV-H30及びKLP2)の方がより顕著であった。
【0077】
抵抗性の持続性は、持続可能な病原体制御戦略を実際に展開するための鍵である。PepMVが2F531抵抗性を簡単に克服できるかどうかをテストするために、継代実験を行った。PepMV-Sp13又はPepMV-PS5を最初に接種した後、M82又は2F531遺伝子型それぞれの植物に3つのウイルス系統を設定し、5回連続継代した(
図3A)。
継代それぞれについてウイルス量を測定した。PepMV-PS5継代では、ウイルス量は変動したが、2F531ではWTプラントよりも常に小さかった(ほとんどの場合、ほぼ1桁)。PepMV-Sp13では、継代に伴うウイルス量の変動がより顕著であり、実際、3回目、4回目、5回目の継代までに、2F531系統のウイルス集団はそれぞれほぼ絶滅した(
図3B)。
【0078】
PepMVに対する感受性喪失に関連する変異体の配列決定によるマッピング
BC1F1植物は、PepMVと同様の蓄積があり、WT植物より症状を示しており(
図4A)、2F531抵抗性が劣っていることを示している。
BC1F1植物を、自家交配して200本以上のBC1F2植物を得て、これを成長させ、自家交配してBC1F3子孫とし、それぞれにDNA及びRNA抽出してサンプル採取した。204のBC1F3科で、科あたり12の植物にPepMVを接種して表現型とした。BC1F3家系50と54科では、それぞれ全ての個体が抵抗性又は感受性のいずれかであったが、100例で科内分離が観察された(
図4B)。
これらの頻度は、抵抗性が単一遺伝子で劣性であるモデルで予想される遺伝子分配にほぼ完全に適合する(χ
2統計、2df=0.23;α>0.001)。PepMV抵抗性に関連する変異体をマッピングするために、ハイスループットシーケンシング(HTS)と組み合わせたバルクセグレガント分析(BSA)を採用した。2つのバルクを構築し、Rプールに18のBC1F2個体(すなわち、BC1F3に感受性植物0%)、WTプールに別の18のBC1F2個体(すなわち、BC1F3に感受性植物100%)を配置した。プールされたDNAは、各バルクについて50倍の深さまでシーケンスした。品質フィルタリングと参照ゲノムへのアライメント(Heinz 1706, SL2.50)の後、99%のリードをマッピングすることができ、そのうち78%は品質スコアMAPQ>57であった。参照ゲノムに対する変異体呼び出しでは、カバレッジが低いためにフィルタリングした後、1,285,278の変異体が検出された。変異体の大部分は、M82とHeinz 1706の間の自然多型に起因する可能性があり、EMS誘発の変異誘発はわずか6,302(0.49%)であった。これは、突然変異体2F531において、150Kbp毎におおよそ1つの突然変異が起きていることを示している。各プールの対立遺伝子頻度を、全ての変異体について計算した。対立遺伝子頻度の差が、2番染色体の遠位端に位置する10個のSNPと1個の挿入/喪失のために0.7より大きく、変異体対立遺伝子とプール型との関連を示している(
図4C)。
【0079】
これら11の変異体は、位置 45,135,056 から 47,155,034の2.02 Mbの領域にまたがっている。変異体のうち5つは、アノテーションされた遺伝子にある。この領域には、カバー率の低い他の448の変異体が含まれ、145のアノテーションされた遺伝子が含まれている。遺伝子マップを精密にするため、組換えの解析を行った。200のBC1F2個体で、対象ゲノム領域内又はゲノム領域に隣接して同定された24のSNPを選択し、分析した;集団内で分離したマーカーの12のみである。これらマーカーの連鎖マップを作成し、マーカーの遺伝子型と感受性を相関させる関連解析を行った。
図4Dは、遺伝子マップとそれに沿った確率密度を示しており、抵抗性とマーカーC18とC19との強い関連を示している。組換え体の分析では、PepMVに対する感受性喪失は、C16とC20で囲まれた領域(734,632 bpに及ぶ)にあるホモ接合体で代替対立遺伝子を持つ個体でのみみられることがさらに示されている。この領域内では、BSA-HTS分析により4つの変異株が特定された;これらの変異の予測される機能的影響は、Solyc02g083430エクソン内ヌクレオチドの1803位でのAからTの変異を除いて、低度から中等度であった。これは、Solyc02g083430メインオープンリーディングフレーム内の1660位に対応する。
【0080】
Solyc02g083430によってコードされるタンパク質は、831のアミノ酸を持ち、変異は554位のリジンに影響し、代わりに早期ストップコドンが入っている。上記のデータを検証、補完するために、R及びWTバルクからプールされたRNAを使用してRNA-Seq解析を行った。転写物は、配列を決定し、参照ゲノムにマッピングし、フィルターにかけ、変異は同定し、プール間の対立遺伝子頻度を比較した。ここでも、対立遺伝子頻度が0.7以上異なる遺伝子座だけは、以前に発見されたのと同じゲノム領域に位置し、変異体は3つの遺伝子座、Solyc02g081200、Solyc02g082660及びSolyc02g083430で特異的に検出された。この領域では、いくつかの新しいSNPが同定されたが、カバレッジは低い。RプールとWTプールの3つのRNA-Seq候補それぞれにマップの読み取りの数を比較すると(
図5)、Solyc02g083430に違いが見られた。これらは統計的に有意ではなかったが、Solyc02g083430の読み取りは、この遺伝子で観察された変異体の性状と一致し、感受性バルクよりも抵抗性が低いように思われた。
【0081】
他方、遺伝子オントロジー(GO)エンリッチメント解析では、過剰表現されたGO用語が27特定された。制御解除された遺伝子の凡そ9%は、細胞成分のカテゴリー内ATPase複合体に関連している。分子機能カテゴリーでは、ATP結合(GO:0005524)、アスパラギン酸型エンドペプチダーゼ活性(GO:0004190)、酸化還元酵素活性(GO:0016491)が最も濃縮された。最後に、生物学的機能カテゴリー内では、創傷に対する反応(GO:0009611)とアルコール代謝プロセス(GO:0006066)の2つの濃縮生物学的プロセスのみが同定された。Solyc02g083430は、SlOSCA4.1をコードしていて、液胞輸送に関与するタンパク質で、高浸透圧依存性カルシウム透過性チャネル1(OSCA)科のメンバーである。
【0082】
Solyc02g083430(ゲノム配列SEQ ID NO:4)、SEQ ID NO:1によってコードされるタンパク質は、3つの保存ドメインを有している: (RSN1_7TM)(非特許文献13)。すなわち、浸透圧ストレスなどの物理的シグナルによって活性化されるカルシウム透過性カチオン交換チャネル1(Csc1_N)の一部である膜貫通ドメイン;細胞基質(PHM7_cyt)として予測されるリン酸トランスポータードメイン;推定リン酸トランスポーター(RSN1_7TM)の一部である7つの膜貫通ドメイン領域である(非特許文献13)。アミノ酸554での終止コドンの早期導入は、RSN1_7TM膜貫通ドメインの多くの損失をもたらし、タンパク質機能の全体的又は部分的な喪失を引き起こし、突然変異体表現型をもたらす可能性がある。その最も近いアラビドプシス(Arabidopsis)オルソログは、高浸透圧ゲート/機械的に活性化されたカルシウム透過性チャンネル(OSCA)科(非特許文献14)に属し、69%のアミノ酸同一性を共有するAtOSCA4.1をコードしている。アラビドプシスと同様に、トマトOSCA4.1(SlOSCA4.1)は、アラビドプシスと同じ4つのクレードに系統発生的に編成された12のメンバーで構成される小科に属している。
【0083】
AtOSCA4.1は、2つの独立した報告(非特許文献15、16)で、液胞選別因子として明確に同定されている。構造的に同様の構成を持つ農業上の重要な植物種において、遺伝子Solyc02g083430でコードされるタンパク質のオルソログをさらに検索したところ、2組のタンパク質が得られた:1つは、極度に多く保存されたのはサラナシーSolanaceae)内で、タンパク質全体で91.29%以上の同一性があり(表1)、2つ目は、高度に保存されたのはサラナシー外であり、タンパク質全体で62.77%以上の同一性を示している(表2)。
【0084】
両方のタンパク質の構造的な類似と領域分布は、タンパク質がSolyc02g083430によってコードされるタンパク質に保存された機能を持たなければならないことを示していた。トマト品種Micro-Tomの編集SlOSCA4.1から、PepMVのプロウイルス機能を確認するPepMV中のSlOSCA4.1が感受性に及ぼす影響を確認するため、我々は、ゲノム編集技術CRISPR/Cas9を用い、Solyc02g083430遺伝子座にトマト品種マイクロトム突然変異体を作製した。ガイドRNAは、Solyc02g083430エクソンだけの始点で、標的とする配列をデザインした。PepMVを接種したT1世代(
図6A)の個々の植物に、ホモ接合性変異が観察された。突然変異体2F531植物と同様の感染表現型が観察された:編集された植物では病気の症状は見られず(
図6B)、WT植物と比較して突然変異体にPepMVの蓄積が有意に減少し(
図6C)、このようにして開始仮説が検証された。
【0085】
【0086】
【実施例2】
【0087】
例 2.1.: 方法:
プロトプラストの単離と接種;
プロトプラストは、Tanら(非特許文献17)によって記述された手順によって、WT及び2F531突然変異トマト植物の葉から単離した。WTと2F531突然変異体の両方から約2gのトマト葉を収穫し、プロトプラストを単離した。約2x106細胞を含むプロトプラストサンプルそれぞれに、PEG 4000法により50μgのPepMV精製ビリオンを接種し、増殖チャンバー内26℃で湿度と一定の光で24時間インキュベートした。プロトプラストは、感染後0、17、及び24時間後にサンプル採取した。全RNAを、トリゾール試薬によってプロトプラストから単離した。RNAサンプルからゲノムDNAを除去し、RNAを正規化し、RT-qPCRによる発現解析に使用した。
PepMV発現は、内在性遺伝子として伸長因子1-αを用い標準化した。
【0088】
例2.2:トマトWTと2F531プロトプラストのPepMV感染を、細胞内でのPepMV複製におけるその役割を確認:
PepMVの感受性と複製におけるSLOSCA4.1の意味に関するデータを補完するために、WTと突然変異体2F531の両トマト品種M82の葉プロトプラストを使用した。プロトプラストは、WT及び突然変異植物の葉から単離し、PepMV精製ビリオンで感染させ、感染後0、17、及び24時間にサンプル採取した。ウイルス発現は、正規化のための内因性遺伝子としてα伸長因子1(EF-1α)を用いた。その結果は、突然変異体2F531植物からのプロトプラストにおけるPepMVの相対的蓄積は、WT植物と比較して有意に減少しており(
図7)、SlOSCA4.1が細胞内でのPepMV複製に関与していることが示された。
【配列表】
【国際調査報告】