(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-05
(54)【発明の名称】多金属バルク水素化触媒
(51)【国際特許分類】
B01J 23/888 20060101AFI20240628BHJP
B01J 37/04 20060101ALI20240628BHJP
B01J 37/03 20060101ALI20240628BHJP
B01J 35/60 20240101ALI20240628BHJP
B01J 37/00 20060101ALI20240628BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20240628BHJP
【FI】
B01J23/888 Z
B01J37/04 102
B01J37/03 B
B01J35/60 A
B01J37/00 D
C07B61/00 300
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023578159
(86)(22)【出願日】2022-05-04
(85)【翻訳文提出日】2023-12-19
(86)【国際出願番号】 IB2022054105
(87)【国際公開番号】W WO2022269376
(87)【国際公開日】2022-12-29
(32)【優先日】2021-06-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】503148834
【氏名又は名称】シェブロン ユー.エス.エー. インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】オウヤン、シャオイン
(72)【発明者】
【氏名】クーパーマン、アレクサンダー イー.
【テーマコード(参考)】
4G169
4H039
【Fターム(参考)】
4G169AA02
4G169AA05
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4G169EB18Y
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4G169FB67
4G169FB78
4G169FC02
4G169FC07
4G169FC08
4H039CB10
4H039CE40
(57)【要約】
多金属バルク触媒及びそれを合成する方法が提供される。多金属バルク触媒は、ニッケル、モリブデンタングステン、イットリウム、及び任意選択で、銅、チタン、及び/またはニオブを含有する。触媒は、炭化水素供給原料の、水素化処理に、特に、水素化脱硫及び水素化脱窒素に有用である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バルク触媒前駆体であって、
(a)金属酸化物を基準にした1~60重量%のNi、
(b)金属酸化物を基準にした1~40重量%のMo、
(c)金属酸化物を基準にした5~80重量%のW、
(d)金属酸化物を基準にした0.01~30重量%のY、
(e)金属酸化物を基準にした0~20重量%のCu、
(f)金属酸化物を基準にした0~45重量%のTi、
(g)金属酸化物を基準にした0~20重量%のNb、
を含む、前記バルク触媒前駆体。
【請求項2】
有機化合物系成分をさらに含む、請求項1に記載のバルク触媒前駆体。
【請求項3】
前記有機化合物系成分は、有機酸もしくはその塩、糖、糖アルコール、またはこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項2に記載のバルク触媒前駆体。
【請求項4】
前記有機化合物系成分は、グリオキシル酸、ピルビン酸、乳酸、マロン酸、オキサロ酢酸、リンゴ酸、フマル酸、マレイン酸、酒石酸、グルコン酸、クエン酸、オキサミド酸、セリン、アスパラギン酸、グルタミン酸、イミノ二酢酸、エチレンジアミン四酢酸、フルクトース、グルコース、ガラクトース、マンノース、ショ糖、ラクトース、マルトース、エリスリトール、キシリトール、マンニトール、ソルビトール、またはこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項2に記載のバルク触媒前駆体。
【請求項5】
Niと前記有機化合物系成分とのモル比は、3:1~20:1の範囲である、請求項2に記載のバルク触媒前駆体。
【請求項6】
Y/(Ni+Mo+W+Cu+Ti+Nb)のモル比は、10:1~1:100の範囲である、請求項1に記載のバルク触媒前駆体。
【請求項7】
Ni/Wのモル比は、10:1~1:10の範囲である、請求項1に記載のバルク触媒前駆体。
【請求項8】
W/Moのモル比は、100:1~1:100の範囲である、請求項1に記載のバルク触媒前駆体。
【請求項9】
前記バルク触媒前駆体は、式
A
v[Ni
1-a-b-cY
aCu
bNb
c(OH)
x(L)
p
y]
z[Mo
mW
1-mO
4][Ti(OH)
nO
2-n/2]
wであり、
式中、
(i)Aは、アルカリ金属カチオン、希土類金属カチオン、アンモニウムカチオン、有機アンモニウムカチオン、ホスホニウムカチオン、またはこれらの組み合わせであり、
(ii)Lは、有機化合物系成分であり、かつ、
(iii)0<a<1、0≦b<1、0≦c<1、a+b+c<1、0<y≦2/p、0<x<2、0≦v<2、0<z、0<m<1、0<n<4、0≦w/(z+1)<10である、請求項1に記載のバルク触媒前駆体。
【請求項10】
1~15重量%の結合剤をさらに含む、請求項1に記載のバルク触媒前駆体。
【請求項11】
50~250m
2/gのBET比表面積、0.02~0.80cm
3/gの細孔体積、及び1.00~3.00cm
3/gの粒子密度の特性のうち1つ以上を有する、請求項1に記載のバルク触媒前駆体。
【請求項12】
硫化されている請求項1に記載のバルク触媒前駆体であることを特徴とする硫化バルク触媒。
【請求項13】
請求項1に記載のバルク触媒前駆体を調製するための方法であって、
(a)反応混合物として
(i)Ni含有前駆体、
(ii)Mo含有前駆体、
(iii)W含有前駆体、
(iv)Y含有前駆体、
(v)任意選択で、Cu含有前駆体、Ti含有前駆体、及び/またはNb含有前駆体、
(vi)任意選択で、有機化合物系成分、ならびに
(vii)プロトン性液体、
を混合することと、
(b)前記混合物を、前記バルク触媒前駆体の沈殿を生じさせるのに十分な条件下で反応させることと、を含み、
前記バルク触媒前駆体を調製する前記工程は、200℃以下の温度で実施される、前記方法。
【請求項14】
前記反応混合物は、
Ni含有前駆体、Y含有前駆体、任意のCu含有前駆体、任意のNb含有前駆体、プロトン性液体、及び任意の有機化合物系成分を含む第1の混合物を調製することと、
Mo含有前駆体、W含有前駆体、及びプロトン性液体を含む第2の混合物を調製することと、
任意選択で、Ti含有前駆体を前記第1の混合物、前記第2の混合物、またはこれらの組み合わせに添加することと、
前記第1の混合物及び前記第2の混合物の両方を60℃から150℃までの温度に加熱することと、
前記第1の混合物及び前記第2の混合物を一緒に混合することと、
によって調製される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記Ti含有前駆体は、TiO
2ナノ粒子、コロイド状TiO
2、フュームドTiO
2、水酸化チタン、有機チタン化合物、ハロゲン化チタン、ハロゲン化有機チタン、水溶性チタン塩、またはこれらの組み合わせから選択される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記方法は、
(a)反応混合物として
(i)Ni含有前駆体、
(ii)Mo含有前駆体、
(iii)W含有前駆体、
(iv)Y含有前駆体、
(v)任意選択で、Cu含有前駆体、及び/またはNb含有前駆体、
(vi)任意選択で、有機化合物系成分、ならびに
(vii)プロトン性液体、
を混合することと、
(b)前記混合物を、中間バルク触媒前駆体の沈殿を生じさせるのに十分な条件下で反応させることと、
(c)前記中間バルク触媒前駆体をTi含有前駆体と合成して、前記バルク触媒前駆体を形成することと、を含み、
前記バルク触媒前駆体を調製する前記工程は、200℃以下の温度で実施される、請求項1に記載のバルク触媒前駆体を調製するための方法。
【請求項17】
前記反応混合物は、
Ni含有前駆体、Y含有前駆体、任意のCu含有前駆体、任意のNb含有前駆体、プロトン性液体、及び任意の有機化合物系成分を含む第1の混合物を調製することと、
Mo含有前駆体、W含有前駆体、及びプロトン性液体を含む第2の混合物を調製することと、
前記第1の混合物及び前記第2の混合物の両方を60℃から150℃までの温度に加熱することと、
前記第1の混合物及び前記第2の混合物を一緒に混合することと、
によって調製される、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記Ti含有前駆体は、TiO
2ナノ粒子、フュームドTiO
2、またはこれらの組み合わせから選択される、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記中間バルク触媒前駆体は、Ni-Mo-W-Y、Ni-Mo-W-Y-Cu、Ni-Mo-W-Y-Nb、またはNi-Mo-W-Y-Cu-Nbバルク触媒前駆体である、請求項16に記載の方法。
【請求項20】
前記反応させることは、(a)大気圧下の60℃から100℃の範囲、または(b)自己圧力下の100℃を超える温度のいずれかの1つ以上の温度で実施される、請求項13または請求項16に記載の方法。
【請求項21】
前記有機化合物系成分は、有機酸もしくはその塩、糖、糖アルコール、またはこれらの組み合わせから選択される、請求項13または請求項16に記載の方法。
【請求項22】
前記有機化合物系成分は、グリオキシル酸、ピルビン酸、乳酸、マロン酸、オキサロ酢酸、リンゴ酸、フマル酸、マレイン酸、酒石酸、グルコン酸、クエン酸、オキサミド酸、セリン、アスパラギン酸、グルタミン酸、イミノ二酢酸、エチレンジアミン四酢酸、フルクトース、グルコース、ガラクトース、マンノース、ショ糖、ラクトース、マルトース、エリスリトール、キシリトール、マンニトール、ソルビトール、またはこれらの組み合わせから選択される、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
0~40重量%の前記バルク触媒前駆体を、結合剤物質、従来の水素化処理触媒、分解化合物、またはこれらの混合物からなる群から選択される物質と合成することと、
噴霧乾燥、(フラッシュ)乾燥、粉砕、混練、スラリー混合、乾燥もしくは湿式混合、またはこれらの組み合わせ、
成形、
200℃以下の温度での乾燥及び/または熱処理、あるいは
硫化、
の工程のうち1つ以上をさらに含む、請求項13または請求項16に記載の方法。
【請求項24】
炭化水素供給原料を水素化処理するプロセスであって、前記炭化水素供給原料を、バルク触媒の存在下で、少なくとも1つの生成物を得る水素化処理条件で、水素と接触させることを含み、
前記バルク触媒は、
(a)金属酸化物を基準にした1~60重量%のNi、
(b)金属酸化物を基準にした1~40重量%のMo、
(c)金属酸化物を基準にした5~80重量%のW、
(d)金属酸化物を基準にした0.01~30重量%のY、
(e)金属酸化物を基準にした0~20重量%のCu、
(f)金属酸化物を基準にした0~45重量%のTi、
(g)金属酸化物を基準にした0~20重量%のNb、
を含むバルク触媒前駆体から誘導されるか、または誘導可能である、前記プロセス。
【請求項25】
前記水素化処理は、水素化脱硫、水素化脱窒素、水素化脱酸素、水素化脱金属、水素化脱芳香族、水素化、水素化分解、水素化精製、水素異性化、及び水素添加分解からなる群から選択される、請求項24に記載のプロセス。
【請求項26】
前記水素化処理条件は、200℃~450℃の温度、250~5000psig(1.7~34.6MPa)の圧力、0.1~10h
-1の液時空間速度、及び100~15,000SCF/B(17.8~2672m
3/m
3)の水素ガスレート、を含む、請求項24に記載のプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年6月22日に出願の米国仮出願第63/213,324号に対する優先権及び利益を主張するものであり、その開示は参照により本明細書に援用される。
【0002】
本開示は、炭化水素原料の水素化処理における使用のための多金属バルク触媒、ならびに、かかる触媒を調製するための方法に関する。
【背景技術】
【0003】
炭化水素供給原料の水素化処理は、一般に、炭化水素供給原料が、触媒の存在下で、かつ水素化処理条件下で、典型的には、高温かつ高圧力で水素と反応する全てのプロセスを包含する。水素化処理は、水素化脱硫、水素化脱窒素、水素化脱酸素、水素化脱金属、水素化脱芳香族、水素化、水素化分解、水素化精製、水素異性化、及び水素添加分解などのプロセスを含む。
【0004】
水素化処理触媒は、通常、アルミナなどの耐火性担体上に、1つ以上の硫化された第6族の金属と、助触媒である1つ以上の8~10族の非貴金属とを含む。水素化脱硫、ならびに水素化脱窒素に特に好適な水素化処理触媒は、一般に、コバルト、ニッケル、鉄、またはこれらの組み合わせなどの金属によって助触される硫化モリブデンまたは硫化タングステンを含む。
【0005】
担持触媒に加えて、バルク触媒(「非担持」触媒とも呼ばれる)を使用した水素化処理もまた知られている。バルク水素化処理触媒組成物は、従来の担持水素化処理触媒と比較して、触媒活性が比較的高いが、さらに改良された水素化処理活性を伴う新規なバルク触媒組成物の開発が当技術分野において継続的に必要とされている。
【0006】
水素化精製用途向けの最も一般的な卑金属は、Ni、Co、Mo、及びWである。本発明者らは、最近、水素化精製用途向けのバルク触媒の活性及び選択性を調整するために、チタニア、ニオブ、及び銅を使用することを報告した。三価の遷移金属であるイットリウムは、これまでによく研究されていないものの、イットリウムは、ジルコニア、チタニア及びニオビアに対する安定剤として使用できることが報告されている(例えば、米国特許第10,843,176号を参照されたい)。Ni、Mo、W、及びYの組み合わせ、及び任意選択で、Cu、Nb、及びTiのうち1つ以上から選択される金属は、場合により、水素化精製用途向けに、興味深い活性及び選択性をもたらす可能性がある。
【発明の概要】
【0007】
第1の態様では、(a)金属酸化物を基準にした1~60重量%のNi、(b)金属酸化物を基準にした1~40重量%のMo、(c)金属酸化物を基準にした5~80重量%のW、(d)金属酸化物を基準にした0.01~30重量%のY、(e)金属酸化物を基準にした0~20重量%のCu、(f)金属酸化物を基準にした0~45重量%のTi、及び(g)金属酸化物を基準にした0~20重量%のNbを含む、バルク触媒前駆体が提供される。
【0008】
第2の態様では、硫化されている本明細書に記載のバルク触媒前駆体であることを特徴とする硫化バルク触媒が提供される。
【0009】
第3の態様では、本明細書に記載のバルク触媒前駆体を調製するための方法が提供され、該方法は、(a)反応混合物として(i)Ni含有前駆体、(ii)Mo含有前駆体、(iii)W含有前駆体、(iv)Y含有前駆体、任意選択で、(v)Cu含有前駆体、Ti含有前駆体、及び/またはNb含有前駆体、(vi)任意選択で、有機化合物系成分、ならびに(vii)プロトン性液体を混合することと、(b)該混合物を、バルク触媒前駆体の沈殿を生じさせるのに十分な条件下で反応させることと、を含み、ここで、該バルク触媒前駆体を調製する工程は、200℃以下の温度で実施される。
【0010】
第4の態様では、本明細書に記載のバルク触媒前駆体を調製するための方法が提供され、該方法は、(a)反応混合物として(i)Ni含有前駆体、(ii)Mo含有前駆体、(iii)W含有前駆体、(iv)Y含有前駆体、(v)任意選択で、Cu含有前駆体、Ti含有前駆体、及び/またはNb含有前駆体、(vi)任意選択で、有機化合物系成分、ならびに(vii)プロトン性液体を混合することと、(b)該混合物を、中間バルク触媒前駆体の沈殿を生じさせるのに十分な条件下で反応させることと、(c)該中間バルク触媒前駆体をY含有前駆体と合成して、バルク触媒前駆体を形成することと、を含み、ここで、該バルク触媒前駆体を調製する工程は、200℃以下の温度で実施される。
【0011】
第5の態様では、炭化水素供給原料を水素化処理するためのプロセスが提供され、該プロセスは、炭化水素供給原料を、バルク触媒の存在下で、少なくとも1つの生成物を得る水素化処理条件で、水素と接触させることを含み、ここで、該バルク触媒は、(a)金属酸化物を基準にした1~60重量%のNi、(b)金属酸化物を基準にした1~40重量%のMo、(c)金属酸化物を基準にした5~80重量%のW、(d)金属酸化物を基準にした0.01~30重量%のY、(e)金属酸化物を基準にした0~20重量%のCu、及び(f)金属酸化物を基準にした0~45重量%のTi、及び(g)金属酸化物を基準にした0~20重量%のNbを含む、触媒前駆体から誘導されるか、または誘導可能である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
定義
「バルク」という用語は、混合された金属触媒組成物について説明する場合に、「非担持」と同じ意味で用いられる場合があり、該触媒組成物が、既製の成形された触媒担体を有し、それにより、その触媒担体が含浸または析出を経て金属と共に付加される従来の触媒の形態ではないことを意味する。
【0013】
「大気圧」という用語は、外圧修正手段は利用されない場合の地球の空気圧を説明するために本明細書で使用される。通常、極度の地上高度で実施されない限り、「大気圧」は、約1気圧である(あるいは、約14.7psiまたは約101kPaである)。
【0014】
「重量%」、「体積%」、または「モル%」という用語は、成分を含む物質の総重量、総体積、または総モルを基準とした、それぞれ、成分の重量、体積、またはモルの百分率を意味する。非限定的例では、100モルの物質中の10モルの成分は、10モル%の成分である。
【0015】
バルク触媒及びバルク触媒前駆体
Ni、Mo、W、Y、及び任意選択で、Cu、Ti、及び/またはNbの酸化物を含む多金属バルク触媒前駆体組成物が提供される。水素化処理のために使用する前に、触媒前駆体は、硫化され得、それにより、金属から、金属硫化物に変換される。硫化後、組成物は、添付の特許請求の範囲の目的である「触媒」に相当する/として定義される。
【0016】
バルク触媒及び/または対応するバルク触媒前駆体は、ニッケル(Ni)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、イットリウム(Y)、及び任意選択で、銅(Cu)、チタン(Ti)、及び/またはニオブ(Nb)金属を含む。バルク触媒及び/または対応するバルク触媒前駆体は、金属酸化物を基準にした1~60重量%、例えば、5~40重量%、もしくは20~60重量%のNi、金属酸化物を基準にした1~40重量%、例えば、1~25重量%、もしくは3~20重量%のMo、金属酸化物を基準にした5~80重量%、例えば、10~35重量%、もしくは20~75重量%のW、金属酸化物を基準にした0.01~30重量%、例えば、0.1~30重量%、もしくは1~30重量%のY、金属酸化物を基準にした0~20重量%、例えば、0.1~20重量%、もしくは1~20重量%のCu、金属酸化物を基準にした0~45重量%、例えば、2~45重量%、5~40重量%、10~35重量%、もしくは20~30重量%のTi、及び金属酸化物を基準にした0~10重量%、例えば、0.01~10重量%、0.1~10重量%、もしくは1~10重量%のNbを含有し得る。それゆえに、本明細書にて開示するバルク触媒を、Ni-Mo-W-Y、Ni-Mo-W-Y-Cu、Ni-Mo-W-Y-Ti、Ni-Mo-W-Y-Nb、Ni-Mo-W-Y-Cu-Ti、Ni-Mo-W-Y-Cu-Nb、Ni-Mo-W-Y-Ti-Nb、またはNi-Mo-W-Y-Cu-Ti-Nbと命名した。ここで、各金属は、上述した量で存在する。
【0017】
バルク触媒及び/または対応するバルク触媒前駆体中の金属のモル比は、原則として、広範囲にわたって変化し得る。バルク触媒及び/または対応するバルク触媒前駆体中のY/(Ni+Mo+W+Cu+Ti+Nb)のモル比は、10:1~1:100、または3:1~1:3の範囲とすることができる。バルク触媒及び/または対応するバルク触媒前駆体中のNi/Wのモル比は、10:1~1:10の範囲とすることができる。バルク触媒及び/または対応する触媒前駆体中のW/Moのモル比は、100:1~1:100の範囲とすることができる。
【0018】
バルク触媒前駆体は、水酸化物であり、下記の化学式を有することを特徴とする場合があり、
Av[Ni1-a-b-cYaCubNbc(OH)x(L)p
y]z[MomW1-mO4][Ti(OH)nO2-n/2]w
式中、(i)Aは、アルカリ金属カチオン、希土類金属カチオン、アンモニウムカチオン、有機アンモニウムカチオン、ホスホニウムカチオン、またはこれらの組み合わせであり、(ii)Lは、有機化合物系成分であり、かつ(iii)0<a<1、0≦b<1、0≦c<1、a+b+c<1、0<y≦2/p、0<x<2、0≦v<2、0<z、0<m<1、0<n<4、0≦w/(z+1)<10である。
【0019】
バルク触媒前駆体は、硫化されてバルク触媒を形成する前に、少なくとも55重量%(少なくとも60重量%、または少なくとも70重量%、または少なくとも80重量%、または少なくとも90重量%)のNi、Mo、W、及びYの酸化物からなる場合がある。任意の態様では、バルク触媒及び/または対応するバルク触媒前駆体は、40重量%以下の結合剤物質を含有してよい。結合剤物質は、触媒の物理的特性及び/または熱的特性を向上させるために加えられてもよい。
【0020】
バルク触媒及び/または対応するバルク触媒前駆体は、さらに、有機化合物系成分を含んでもよく、この有機化合物系成分は、該バルク触媒及び/または該対応するバルク触媒前駆体の調製に使用される少なくとも1つの有機錯化剤に基づくか、またはそれから誘導され得る。有機化合物系成分が存在する場合、組成物中のニッケルと有機化合物系組成物とのモル比は、3:1~20:1の範囲とすることができる。
【0021】
バルク触媒及び/または対応するバルク触媒前駆体は、BET比表面積が少なくとも20m2/g、または少なくとも50m2/g、または少なくとも75m2/g、または少なくとも100m2/gであり得る。任意の態様では、自己担持触媒及び/または対応する自己担持触媒前駆体は、BET表面積が250m2/g以下、または200m2/g以下、または175m2/g以下、または150m2/g以下、または125m2/g以下であり得る。BET比表面積の上記の下限のそれぞれは、上記の上限のそれぞれに関連して明確に熟慮される。「BET比表面積」という用語は、S.Brunauer、P.H.Emmett及びE.Tellerの方法(J.Am.Chem.Soc.1938,60,309-331)に従って、窒素吸着データから決定された比表面積を意味する。
【0022】
バルク触媒及び/または対応するバルク触媒前駆体は、細孔体積が少なくとも0.02cm3/g、または少なくとも0.03cm3/g、または少なくとも0.04cm3/g、または少なくとも0.05cm3/g、または少なくとも0.06cm3/g、または少なくとも0.08cm3/g、または少なくとも0.09cm3/g、または少なくとも0.10cm3/g、または少なくとも0.11cm3/g、または少なくとも0.12cm3/g、または少なくとも0.13cm3/g、または少なくとも0.14cm3/g、または少なくとも0.15cm3/gであり得る。任意の態様では、自己担持触媒及び/または対応する自己担持触媒前駆体は、細孔体積が0.80cm3/g以下、または0.70cm3/g以下、または0.60cm3/g以下、または0.50cm3/g以下、または0.45cm3/g以下、または0.40cm3/g以下、または0.35cm3/g以下、または0.30cm3/g以下であり得る。細孔体積の上記の下限のそれぞれは、上記の上限のそれぞれに関連して明確に熟慮される。細孔体積は、E.P.Barrett、L.G.Joyner及びP.P.Halendaによって説明された手順(J.Am.Chem.Soc.1951,73,373-380)に従って、窒素吸着データから決定されたものである。
【0023】
バルク触媒及び/または対応するバルク触媒前駆体は、粒子密度が少なくとも1.00g/cm3(例えば、少なくとも1.10g/cm3、または少なくとも1.20g/cm3、または少なくとも1.30g/cm3、または少なくとも1.40g/cm3、または少なくとも1.50g/cm3、または少なくとも1.60g/cm3)であり得る。任意の態様では、自己担持触媒及び/または対応する自己担持触媒前駆体は、粒子密度が3.00g/cm3以下(例えば、2.90g/cm3以下、または2.80g/cm3以下、または2.70g/cm3以下、または2.60g/cm3以下、または2.50g/cm3以下、または2.40g/cm3以下、または2.30g/cm3以下、または2.20g/cm3以下)であり得る。粒子密度の上記の下限のそれぞれは、上記の上限のそれぞれに関連して明確に熟慮される。粒子密度(D)は、式D=M/Vを適用することで得られ、式中、Mは触媒サンプルの重量であり、Vは触媒サンプルの体積である。体積は、28mmHg真空下でサンプルを水銀柱に入れることによる体積変位を測定することによって決定される。
【0024】
バルク触媒及び/または対応するバルク触媒前駆体は、粉末X線回折を介して、低強度の広い回折ピークを有する結晶性が不十分な物質として特徴付けられることがある。本明細書で使用される場合、広い回折ピークとは、半値全幅(FWHM)が1°を超える(2シータスケールで)ピークを意味する。
【0025】
バルク触媒及び触媒前駆体の調製
本発明のバルク触媒前駆体は、水酸化物であり、かつ硫化してバルク触媒を形成する前の工程が200℃以下の温度で実施され、また、ここで、硫化してバルク触媒を形成する前に、該触媒前駆体が水酸化物のままである方法によって調製される。
【0026】
一態様では、バルク触媒前駆体の調製の第1工程は、析出または共ゲル化工程であり、これは、反応混合物として、溶液中のニッケル及びニオブ前駆体化合物、ならびに溶液中のモリブデン及びタングステン前駆体化合物を反応させて、沈殿物または共ゲルを得ることを含む。析出または共ゲル化は、金属前駆体が沈殿するか、または共ゲルを形成する温度及びpHで行われる。
【0027】
チタンが存在する場合、チタンは、in-situまたはex-situルートのいずれかを介して導入され得る。in-situルートでは、Ni-Mo-W-Y酸化物、またはNi--Mo-W-Y-Cu酸化物、またはNi-Mo-W-Y-NbもしくはNi-Mo-W-Y-Cu-Nb酸化物の共沈または共ゲル化中にチタンを沈殿させるために、Ti含有前駆体化合物が、反応混合物に添加される場合がある。ex-situルートでは、1つ以上のチタン前駆体化合物は、Ni-Mo-W-Y酸化物、またはNi-Mo-W-Y-Cu酸化物、またはNi-Mo-W-Y-NbもしくはNi-Mo-W-Y-Cu-Nb酸化物の沈殿物または共ゲルと合成される場合がある。
【0028】
任意の態様では、in-situでのチタンの添加は、(a)反応混合物として(i)Ni含有前駆体、(ii)Mo含有前駆体、(iii)W含有前駆体、(iv)Y含有前駆体、(v)Ti含有前駆体、(vi)任意選択で、Cu含有前駆体及び/またはNb含有前駆体、(vii)任意選択で、有機化合物系成分、ならびに(viii)プロトン性液体を混合することと、(b)該混合物を、バルク触媒前駆体の沈殿を生じさせるのに十分な条件下で反応させることと、を含む場合がある。反応混合物は、(1)Ni含有前駆体、Y含有前駆体、任意のNb含有前駆体、及び/または任意のCu含有前駆体、プロトン性液体、及び任意の有機化合物系成分を含む第1の混合物を調製することと、(2)Mo含有前駆体、W含有前駆体、及びプロトン性液体を含む第2の混合物を調製することと、(3)Ti含有前駆体を第1の混合物、第2の混合物、またはこれらの組み合わせに添加することと、(4)第1の混合物及び第2の混合物の両方を60℃から150℃までの温度に加熱することと、(5)第1の混合物及び第2の混合物を一緒に混合することと、によって得ることができる。反応工程の後、必要に応じて、得られたバルク触媒前駆体は、例えば、濾過または噴霧乾燥を介して、液体と分離される場合がある。
【0029】
任意の態様では、ex-situでのチタンの添加は、(a)反応混合物として(i)Ni含有前駆体、(ii)Mo含有前駆体、(iii)W含有前駆体、(iv)Y含有前駆体、(v)任意選択で、Cu含有前駆体またはNb含有前駆体、(vi)任意選択で、有機化合物系成分、ならびに(vii)プロトン性液体を混合することと、(b)該混合物を、中間バルク触媒前駆体の沈殿を生じさせるのに十分な条件下で反応させることと、(c)該中間バルク触媒前駆体をTi含有前駆体と合成して、バルク触媒前駆体を形成することと、を含む場合がある。反応混合物は、(1)Ni含有前駆体、Y含有前駆体、任意のCu含有前駆体、及び/または任意のNb含有前駆体、プロトン性液体、及び任意の有機化合物系成分を含む第1の混合物を調製することと、(2)Mo含有前駆体、W含有前駆体、及びプロトン性液体を含む第2の混合物を調製することと、(3)第1の混合物及び第2の混合物の両方を60℃から150℃までの温度に加熱することと、(4)第1の混合物及び第2の混合物を一緒に混合することと、によって得ることができる。反応工程の後、必要に応じて、得られた中間バルク触媒前駆体は、例えば、濾過または噴霧乾燥を介して、液体と分離される場合がある。
【0030】
触媒前駆体が形成される温度は、60℃から150℃の範囲である場合がある。温度がプロトン性液体の沸点、例えば、水の場合100℃を下回る場合、プロセスは、一般的に、大気圧で行われる。反応はまた、熱水条件下で行われる場合があり、ここで、反応温度は、プロトン性液体の沸騰温度を上回るものである。典型的には、このような条件により、大気圧を上回る圧力が生じ、次に、反応は、好ましくは、オートクレーブ内で、好ましくは、自己圧力下で、すなわち、圧力をさらに加えることなく行われる。オートクレーブは、液体をその沸騰温度を上回るように加熱することを目的とした圧力に耐えることができる装置である。任意の態様では、バルク触媒前駆体形成プロセスは、(a)大気圧下の50℃から100℃の範囲、または(b)自己圧力下の100℃を超える温度のいずれかの1つ以上の温度で実施される。
【0031】
大気反応条件下及び熱水反応条件下の両方での反応時間は、反応を実質的に完了させるのに十分に長い時間が選択される。反応時間は、非常に短時間(例えば、非常に高い反応性のある反応物で1時間未満)である場合がある。明らかに、より長い反応時間、おそらく24時間はどの長さが、反応性が低い原料に対しては必要とされる場合がある。反応時間は、一部の状況では、温度と反比例する場合がある。
【0032】
一般的に、反応混合物は、反応工程中、その自然なpHに保たれる。pHは、0~12の範囲(例えば、3~9、または5~8)で維持され得る。pHは、生成物の所望の特性に応じて、析出または共ゲル化の速度を増減するように変更され得る。
【0033】
金属前駆体は、溶液、懸濁液、またはこれらの組み合わせ中の反応混合物に添加され得る。可溶塩がこのように添加される場合、それらは、反応混合物に溶解し、その後、沈殿するか、共ゲル化する。
【0034】
Mo含有前駆体化合物の代表的な例としては、モリブデン(ジ及びトリ)酸化物、モリブデン酸、モリブデン酸アルカリ金属(例えば、モリブデン酸ナトリウム、モリブデン酸カリウム)、モリブデン酸アンモニウム(例えば、モリブデン酸アンモニウム、ジモリブデン酸アンモニウム、ヘプタモリブデン酸アンモニウム)、及びヘテロポリモリブデン酸塩(例えば、珪モリブデン酸、リンモリブデン酸)が挙げられる。
【0035】
W含有前駆体化合物の代表的な例としては、タングステン(ジ及びトリ)酸化物、タングステン酸、タングステン酸アルカリ金属(例えば、タングステン酸ナトリウム、タングステン酸カリウム、メタタングステン酸ナトリウム、ポリタングステン酸ナトリウム)、タングステン酸アンモニウム(例えば、タングステン酸アンモニウム、メタタングステン酸アンモニウム、パラタングステン酸アンモニウム)、及びヘテロポリタングステン酸塩(例えば、珪タングステン酸、リンタングステン酸)が挙げられる。
【0036】
Ni含有前駆体化合物の代表的な例としては、酢酸ニッケル、ニッケルアセチルアセトネート、臭化ニッケル、炭酸ニッケル、ヒドロキシ炭酸ニッケル、重炭酸ニッケル、塩化ニッケル、硝酸ニッケル、及び硫酸ニッケルが挙げられる。
【0037】
Y含有前駆体化合物の代表的な例としては、硝酸イットリウム(III)、酢酸イットリウム(III)、イットリウム(III)アセチルアセトネート、水酸化イットリウム(III)、塩化イットリウム(III)、臭化イットリウム(III)、炭酸イットリウム(III)、リン酸イットリウム(III)、硫酸イットリウム(III)、イットリウム(iii)イソプロポキシド、及びイットリウム(III)ブトキシドが挙げられる。
【0038】
Cu含有前駆体化合物の代表的な例としては、酢酸銅(II)、銅(II)アセチルアセトネート、水酸化銅(II)、塩化銅(II)、臭化銅(II)、炭酸銅(II)、硝酸銅(II)、リン酸銅(II)、及び硫酸銅(II)が挙げられる。
【0039】
Nb含有前駆体化合物の代表的な例としては、シュウ酸ニオブ、シュウ酸アンモニウムニオブ、塩化ニオブ、臭化ニオブ、ニオブエトキシド、ニオブn-プロポキシド、及びニオブイソプロポキシドが挙げられる。
【0040】
本明細書に記載のタイプのバルク触媒の調製に適した任意のチタン含有化合物は、Ti含有前駆体化合物として使用することができる。Ti含有前駆体は、四価のチタン(Ti4+)含有化合物、三価のチタン(Ti3+)含有化合物、またはこれらの組み合わせを含み得る。
【0041】
代表的なTi含有前駆体化合物としては、TiO2ナノ粒子、コロイド状TiO2、フュームドTiO2、水酸化チタン、有機チタン化合物、ハロゲン化チタン、及び水溶性チタン塩が挙げられる。
【0042】
二酸化チタンナノ粒子は、二酸化チタンの任意のタイプであってもよい。二酸化チタンは、鋭錐石及び/または金紅石の高含有量を有する場合がある。例えば、二酸化チタンは、少なくとも50、または少なくとも55、または少なくとも60、または少なくとも65、または少なくとも70、または少なくとも75、または少なくとも80、または少なくとも85、または少なくとも90、または少なくとも95、または少なくとも98、あるいは少なくとも99重量%の鋭錐石及び/または金紅石を含む場合がある。いくつかの実施形態では、二酸化チタンは、鋭錐石及び/または金紅石から本質的になる。二酸化チタン粒子は、好ましくは、メジアン粒子径(D50)が100nm未満(例えば、3~50nm)である。酸化チタンナノ粒子は、分散剤の分散によって調製される溶液、水もしくは溶剤含有ペースト、または粉末として、組成物に導入され得る。溶液を調製するのに使用される分散剤の例としては、水、アルコール(例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n-ブタノール、イソブタノール)、及びケトン(例えば、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン)が挙げられる。
【0043】
代表的な有機チタン化合物としては、一般的構造Ti(OR)4のチタンアルコキシド(式中、各Rは、別々のC1~C4アルキルである)及びチタンアシル化合物が挙げられる。代表的なチタンアルコキシドとしては、チタンテトラメトキシド、チタンテトラエトキシド、チタンテトラ-n-プロポキシド、チタンテトライソプロポキシド、チタンテトラ-n-ブトキシド、及びチタンテトラ-tert-ブトキシドが挙げられる。代表的なチタンアシル化合物としては、チタンアセチルアセトネート、チタンオキシアセチルアセトネート、及び酢酸チタンが挙げられる。その他の代表的な有機チタン化合物としては、一般式Ti(OR’)2(acac)2(式中、各R’は、別々のC1~C4アルキルであり、「acac」は、アセチルアセトネートである)を特徴とするようなものが挙げられる。
【0044】
式TiX4またはTiX3で表されるハロゲン化チタン(式中、Xは、クロロ、ブロモ、ヨード、もしくはフルオロ、またはこれらの混合物である)が、チタン前駆体として使用されてよい。一態様では、ハロゲン化チタンは、四塩化チタン、四臭化チタン、またはこれらの組み合わせである。
【0045】
本開示はまた、Ti含有前駆体化合物としてのクロロチタントリイソプロポキシド[Ti(O-i-Pr)3Cl]などの有機チタンハロゲン化物の使用も企図する。
【0046】
代表的な水溶性チタン塩としては、硝酸チタン及び硫酸チタンが挙げられる。
【0047】
有機化合物系成分は、溶液中で金属リガンド複合体を形成するのに適した有機化合物であり得る。有機化合物系成分は、有機酸もしくはその塩、糖、糖アルコール、またはこれらの組み合わせから選択され得る。
【0048】
代表的な有機酸としては、グリオキシル酸、ピルビン酸、乳酸、マロン酸、オキサロ酢酸、リンゴ酸、フマル酸、マレイン酸、酒石酸、グルコン酸、クエン酸、オキサミド酸、セリン、アスパラギン酸、グルタミン酸、イミノ二酢酸、エチレンジアミン四酢酸などが挙げられる。
【0049】
代表的な糖としては、フルクトース、グルコース、ガラクトース、マンノース、ショ糖、ラクトース、マルトースなど、及びそれらの誘導体が挙げられる。
【0050】
代表的な糖アルコールとしては、エリスリトール、キシリトール、マンニトール、ソルビトールなど、及びそれらの誘導体が挙げられる。
【0051】
プロトン性液体は、金属化合物の反応を妨げない任意のプロトン性液体であり得る。例としては、水、カルボン酸、及びアルコール(例えば、メタノール、エタノール、エチレングリコール)が挙げられる。プロトン性液体は、水のみであるか、または水とアルコールとの混合物である場合がある。
【0052】
追加の処理
バルク触媒前駆体は、水素化処理プロセスで使用される前に、(i)結合剤物質、従来の水素化処理触媒、分解化合物、またはこれらの混合物からなる群から選択される物質との合成、(ii)噴霧乾燥、(フラッシュ)乾燥、粉砕、混練、スラリー混合、乾燥もしくは湿式混合、またはこれらの組み合わせ、(iii)成形、(iv)乾燥及び/または熱処理、ならびに(v)硫化、の処理工程のうち1つ以上にかけられる場合がある。(i)から(v)のこれらの処理工程のリストは、単に便宜上のためのものであり、これらのプロセスを、この順番通りに行うように制約する説明ではない。これらの処理工程については、下記により詳しく説明する。
【0053】
追加の処理工程(i)-さらなる物質との合成
所望の場合、結合剤物質、従来の水素化処理触媒、分解化合物、またはこれらの混合物からなる群から選択される追加の物質は、バルク触媒前駆体の上述した調製中、またはバルク触媒前駆体の調製後に添加することができる。好ましくは、物質は、バルク触媒前駆体の調製の後、及び、噴霧乾燥または任意の代替的技法の前に添加されるか、あるいは噴霧乾燥または任意の代替的技法が適用されない場合は、成形前に添加される。任意選択で、上記のように調製されたバルク金属前駆体は、物質と複合体を形成させる前に、固液分離にかけられる場合がある。固液分離後、任意選択で、洗浄工程が含まれる場合がある。さらに、任意の固液分離及び乾燥工程後、かつ物質との複合体形成の前に、バルク触媒粒子を熱処理することが可能である。
【0054】
上述のプロセスの変形例の全てにおいて、語句「バルク触媒前駆体を物質と合成する」とは、その物質をバルク金属粒子に添加するか、またはその逆を行い、かつ、得られた組成物を混合することを意味する。混合は、好ましくは、液体の存在下で行われる(「湿式混合」)。これにより、最終のバルク触媒組成物の機械的強度が向上する。
【0055】
バルク触媒前駆体の追加の物質との合成及び/または触媒前駆体の調製中の物質の組み込みにより、特に、バルク金属粒子のメジアン粒子径が、少なくとも0.5μm(例えば、少なくとも1μm、または少なくとも2μm)の範囲であるが、5000μm以下(例えば、1000μm以下、または500μm以下、または150μm以下)である場合に、特に高い機械的強度のバルク触媒が得られる。触媒前駆体のメジアン粒子径は、1~150μm(例えば、2~150μm)の範囲である場合がある。
【0056】
バルク金属粒子の物質との合成により、この物質内に埋め込まれたバルク金属粒子、またはその逆が得られる。通常、バルク金属粒子の形態は、得られたバルク触媒組成物内で本質的に維持される。
【0057】
利用される結合剤物質は、従来より水素化処理触媒における結合剤として利用されている任意の物質であってよい。結合剤物質の例としては、シリカ、シリカアルミナ(例えば、従来のシリカアルミナ、シリカでコーティングしたアルミナ、及びアルミナでコーティングしたシリカ)、アルミナ(例えば、ベーマイト、擬似ベーマイト、またはギブサイト)、チタニア、チタニアでコーティングしたアルミナ、ジルコニア、ハイドロタルサイト、またはこれらの混合物が挙げられる。好ましい結合剤は、シリカ、シリカアルミナ、アルミナ、チタニア、チタニアでコーティングしたアルミナ、ジルコニア、ベントナイト、またはこれらの混合物である。これらの結合剤は、このように、または解膠後に適用されてよい。
【0058】
アルミナが結合剤として使用される場合、アルミナの表面積は、BET法によって測定した際に、50~600m2/g(例えば、100~450m2/g)の範囲であり得る。アルミナの細孔体積は、窒素吸着によって測定した際に、0.1~1.5cm3/gの範囲であり得る。
【0059】
一般的に、添加される結合剤物質は、バルク金属粒子よりも、触媒活性が低いか、または触媒活性が全くない。全組成物の0~40重量%の結合剤量が、想定される触媒用途に応じて適切な量であり得る。しかし、本開示のバルク金属粒子の得られた高活性を利用するために、添加される結合剤の量は、概して、全組成物の0.1~30重量%(例えば、1~20重量%、または3~20重量%、または4~12重量%)の範囲である。
【0060】
追加の処理工程(ii)-噴霧乾燥、(フラッシュ)乾燥、粉砕、混練、スラリー混合、乾燥もしくは湿式混合
任意選択で上記の(さらなる)物質のいずれかを含むバルク触媒前駆体は、噴霧乾燥、(フラッシュ)乾燥、粉砕、混練、スラリー混合、乾燥もしくは湿式混合、またはこれらの組み合わせにかけられる場合があり、湿式混合及び混練、またはスラリー混合及び噴霧乾燥の組み合わせが好ましい。
【0061】
これらの技術は、上記の(さらなる)物質のいずれかが添加される前または後のいずれか(少しでもそのような添加がある場合)、固液分離後、熱処理の前後、及び再湿潤の後に、適用することができる。
【0062】
好ましくは、触媒前駆体は、上記の物質のいずれかと合成され、かつ上記の技術のいずれかにかけられる。噴霧乾燥、(フラッシュ)乾燥、粉砕、混練、スラリー混合、乾燥もしくは湿式混合、またはこれらの組み合わせの上述の技術のいずれかを適用することによって、触媒前駆体粒子と上記の物質のいずれかとの混合の程度が改善されると考えられる。これは、物質が、上述の方法のいずれかの適用の前後に添加される場合に該当する。しかし、工程(ii)の前に物質を添加することが一般的には望ましい。物質が、工程(ii)の後に添加される場合、得られた組成物は、任意の従来の技法によって、成形などの任意のさらなる処理工程の前に、完全に混合され得る。噴霧乾燥の利点は、この技術が適用される際に、廃水流が起こらないことである。
【0063】
噴霧乾燥は、100℃~200℃(例えば、120℃~180℃)の範囲の出口温度で実施することができる。
【0064】
乾燥混合とは、乾燥状態の触媒前駆体粒子を乾燥状態の上記の物質のいずれかと混合することを意味する。湿式混合は、一般に、触媒前駆体粒子を含む湿式フィルタケーキと、任意選択で、粉末または湿式フィルタケーキである上記の物質のいずれかとを混合して、それらの均質のペーストを形成することを含む。
【0065】
追加の処理工程(iii)-成形
所望の場合、任意選択で上記の(さらなる)物質のいずれかを含むバルク触媒前駆体は、任意選択で、工程(ii)が適用された後に成形され得る。成形は、押出成形、ペレット化、ビーディング、及び/または噴霧乾燥を含む。バルク触媒組成物がスラリー型反応器、流動層、移動層、または拡張層内で利用される場合、一般に、噴霧乾燥またはビーディングが適用されることに留意されたい。固定層または沸騰層の用途では、一般に、バルク触媒組成物は、押出加工され、ペレット化され、及び/またはビーディングされる。後者の場合、成形工程の前または間の任意の段階で、通常、従来より成形を促進するのに使用される任意の添加剤が添加される場合がある。これらの添加剤は、ステアリン酸アルミニウム、界面活性剤、グラファイト、デンプン、メチルセルロース、ベントナイト、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシド、またはこれらの混合物を含む場合がある。さらに、アルミナが結合剤として使用される場合、硝酸などの酸を、成形工程の前に添加して、アルミナを解膠させ、かつ押出物の機械的強度を高めることが望ましい場合がある。
【0066】
成形が、押出成形、ビーディング、及び/または噴霧乾燥を含む場合、成形工程は、水などの液体の存在下にて実施されることが好ましい。押出成形及び/またはビーディングでは、強熱減量として表される成形混合物中の液体の量は、20%~80%の範囲とすることができる。
【0067】
追加の処理工程(iv)-乾燥及び/または熱処理
好ましくは100℃を超える任意の乾燥工程の後、得られた成形バルク触媒組成物は、必要に応じて、熱処理されてよい。しかし、熱処理は、本開示のプロセスに必須ではない。本開示による「熱処理」とは、窒素などの不活性ガス中で、または空気もしくは純酸素などの酸素含有ガス中で、0.5~48時間の様々な期間で、100℃~200℃の温度で実施される処理を意味する。熱処理は、水蒸気の存在下で実施される場合がある。
【0068】
上記の全処理工程中に、液体の量は、制御される必要がある。バルク触媒組成物が、噴霧乾燥にかけられる前に、液体の量が少なすぎる場合、追加の液体が添加される必要がある。逆に、バルク触媒組成物の押出成形の前に、液体の量が多すぎる場合、液体の量は、濾過、デカンテーション、または蒸発などの固液分離技術を使用して、減らされる必要があり、かつ必要に応じて、得られた物質は、乾燥され、その後ある程度まで再湿潤される場合がある。上記の全処理工程中に適切に液体の量を制御することは、当業者の範囲内である。
【0069】
追加の処理工程(v)-硫化
四金属性のバルク触媒は、一般に、その硫化形態で使用される。触媒硫化は、従来の硫化方法を含む、硫化物形態の触媒を作るのに有効な任意の方法で実施され得る。硫化は、触媒前駆体を、その調製の直後または追加の処理工程(i)~(iv)のうちのいずれか1つの後に、単体硫黄、硫化水素、二硫化ジメチル、または有機もしくは無機の多硫化物などの硫黄含有化合物と接触させることによって実施され得る。硫化工程は、液相及び気相で実施され得る。
【0070】
硫化は、一般に、in-situ及び/またはex-situで実施され得る。好ましくは、硫化は、in-situで実施される(すなわち、硫化は、水素化処理装置にバルク触媒前駆体組成物を入れた後に、水素化処理反応器内で実施される)。
【0071】
水素化処理での使用
本開示のバルク触媒前駆体は、水素化処理炭化水素供給原料向けに特に有用である。水素化処理は、水素化脱硫、水素化脱窒素、水素化脱金属、水素化脱芳香族、水素化、水素化分解、水素化精製、水素異性化、及び水素添加分解などのプロセスを含む。
【0072】
広範囲にわたる石油及び化学的炭化水素供給原料が、本開示に従って水素化処理され得る。炭化水素供給原料としては、粗製の鉱油から、タールサンドから、石炭液化から、シェールオイルから、及び、炭化水素合成から得られるまたは誘導されるようなもの、例えば、常圧蒸留残油、水素化分解生成物、抽残物、水素化処理油、大気及び減圧軽油、コーカ軽油、大気及び減圧残留物、脱れき油、脱ろう油、スラックワックス、フィッシャー・トロプシュワックス、バイオ再生可能供給原料、及びそれらの混合物が挙げられる。適切な供給原料は、軽油、潤滑油、及び残留物など、比較的軽質の蒸留留分から重質供給原料までの範囲のものである。軽質留分供給原料の例としては、ナフサ(典型的な沸点範囲が約25℃~約210℃)、ディーゼル油(典型的な沸点範囲が約150℃~約400℃)、灯油またはジェット燃料(典型的な沸点範囲が約150℃~約250℃)などが挙げられる。重質供給原料の例としては、減圧(または重質)軽油(典型的な沸点範囲が約315℃~約610℃)、抽残物、潤滑油、サイクル油、ワックス状油などが挙げられる。好ましい炭化水素供給原料は、沸点範囲が約150℃~約650℃(例えば、約150℃~約450℃)である。
【0073】
水素化処理条件には、200℃~450℃もしくは315℃~425℃の温度、250~5000psig(1.7~34.6MPa)もしくは300~3000psig(2.1~20.7MPa)の圧力、0.1~10h-1もしくは0.5~5h-1の液時空間速度(LHSV)、及び100~15,000SCF/B(17.8~2672m3/m3)もしくは500~10,000SCF/B(89~1781m3/m3)の水素ガスレートが含まれる場合がある。
【0074】
本開示による水素化処理は、1つ以上の固定層、移動層または流動層反応器などの任意の好適な反応器システムを使用して1つ以上の反応域で実施され得る。固定層反応器は、1つ以上の容器、各容器内の触媒の単一または複数の層、及び1つ以上の容器内の水素化処理触媒の種々の組み合わせを含む場合がある。
【実施例】
【0075】
以下の例示的実施例は非限定であることを意図している。
【0076】
実施例1(比較)
バルク触媒前駆体の合成
[Ni(2.5)-Mo(1)-W(1)]
溶液Aの調製:45gのヘプタモリブデン酸アンモニウム及び72gのメタタングステン酸アンモニウムを、4Lのフラスコ内の2000gの脱イオン水に添加した。アンモニア水でpHを9.8に調整した。次に、溶液を80℃まで加熱した。
【0077】
溶液Bの調製:500mLの別々のビーカー内で、184.5gの硝酸ニッケル、及び10.1gのマレイン酸を、100gの脱イオン水中に溶解させた。溶液Bを、15分かけて溶液Aに添加した。添加中、pHをモニタリングした。溶液Bを添加するとすぐに、緑色の沈殿物が発生した。添加後の最終のpHは、6.0~7.0であった。スラリーを、80℃で4時間エージングさせた。エージング後、生成物を濾過によって回収し、脱イオン水で洗浄し、オーブン内で130℃で乾燥させた。
【0078】
実施例2(比較)
バルク触媒前駆体の合成
[Ni(7.5)-Mo(1)-W(3)]
溶液Aの調製:10.4gのヘプタモリブデン酸アンモニウム及び44.8gのメタタングステン酸アンモニウムを、4Lのフラスコ内の2000gの脱イオン水に添加した。アンモニア水でpHを9.8に調整した。次に、溶液を80℃まで加熱した。
【0079】
溶液Bの調製:500mLの別々のビーカー内で、128.3gの硝酸ニッケル、及び5.8gのマレイン酸を、100gの脱イオン水中に溶解させた。
【0080】
溶液Bを、15分かけて溶液Aに添加した。添加中、pHをモニタリングした。溶液Bを添加するとすぐに、緑色の沈殿物が発生した。添加後の最終のpHは、6.0~7.0であった。スラリーを、80℃で4時間エージングさせた。エージング後、生成物を濾過によって回収し、脱イオン水で洗浄し、オーブン内で130℃で乾燥させた。
【0081】
実施例3(比較)
バルク触媒前駆体の合成
[Ni(3.8)-Mo(1)-W(1.1)]
溶液Aの調製:17.6gのヘプタモリブデン酸アンモニウム及び27.8gのメタタングステン酸アンモニウムを、4Lのフラスコ内の2000gの脱イオン水に添加した。アンモニア水でpHを9.8に調整した。次に、溶液を80℃まで加熱した。
【0082】
溶液Bの調製:500mLの別々のビーカー内で、110.3gの硝酸ニッケル、及び5.8gのマレイン酸を、100gの脱イオン水中に溶解させた。
【0083】
溶液Bを、15分かけて溶液Aに添加した。添加中、pHをモニタリングした。溶液Bを添加するとすぐに、緑色の沈殿物が発生した。添加後の最終のpHは、6.0~7.0であった。スラリーを、80℃で4時間エージングさせた。エージング後、生成物を濾過によって回収し、脱イオン水で洗浄し、オーブン内で130℃で乾燥させた。
【0084】
実施例4(比較)
バルク触媒前駆体の合成
[Ni(7)-Mo(1)-W(3)-Nb(0.5)]
溶液Aの調製:18gのヘプタモリブデン酸アンモニウム及び79gのメタタングステン酸アンモニウムを、4Lのフラスコ内の1875gの脱イオン水に添加した。アンモニア水でpHを9.8に調整した。次に、溶液を80℃まで加熱した。
【0085】
溶液Bの調製:500mLの別々のビーカー内で、188gの硝酸ニッケル、16gのニオブ酸アンモニウムオキサラート及び10gのマレイン酸を、100gの脱イオン水中に溶解させた。
【0086】
溶液Bを、15分かけて溶液Aに添加した。添加中、pHをモニタリングした。溶液Bを添加するとすぐに、緑色の沈殿物が発生した。添加後の最終のpHは、6.0~7.0であった。スラリーを、80℃で4時間エージングさせた。エージング後、生成物を濾過によって回収し、脱イオン水で洗浄し、オーブン内で130℃で乾燥させた。
【0087】
実施例5(比較)
バルク触媒前駆体の合成
[Ni(6.2)-Mo(1)-W(3)-Nb(1)-Cu(0.3)]
溶液Aの調製:18gのヘプタモリブデン酸アンモニウム及び79gのメタタングステン酸アンモニウムを、4Lのフラスコ内の1875gの脱イオン水に添加した。アンモニア水でpHを9.8に調整した。次に、溶液を80℃まで加熱した。
【0088】
溶液Bの調製:500mLの別々のビーカー内で、166gの硝酸ニッケル、32gのニオブ酸アンモニウムオキサラート、8gの硝酸銅(II)、及び9gのマレイン酸を、100gの脱イオン水中に溶解させた。
【0089】
溶液Bを、15分かけて溶液Aに添加した。添加中、pHをモニタリングした。溶液Bを添加するとすぐに、緑色の沈殿物が発生した。添加後の最終のpHは、6.0~7.0であった。スラリーを、80℃で4時間エージングさせた。エージング後、生成物を濾過によって回収し、脱イオン水で洗浄し、オーブン内で130℃で乾燥させた。
【0090】
実施例6
バルク触媒前駆体の合成
[Ni(6.2)-Mo(1)-W(3)-Y(1)]
溶液Aの調製:18gのヘプタモリブデン酸アンモニウム及び79gのメタタングステン酸アンモニウムを、4Lのフラスコ内の1875gの脱イオン水に添加した。アンモニア水でpHを9.8に調整した。次に、溶液を80℃まで加熱した。
【0091】
溶液Bの調製:500mLの別々のビーカー内で、174gの硝酸ニッケル、40gの硝酸イットリウム(III)六水和物、及び9gのマレイン酸を、100gの脱イオン水中に溶解させた。
【0092】
溶液Bを、15分かけて溶液Aに添加した。添加中、pHをモニタリングした。溶液Bを添加するとすぐに、緑色の沈殿物が発生した。添加後の最終のpHは、6.0~7.0であった。スラリーを、80℃で4時間エージングさせた。エージング後、生成物を濾過によって回収し、脱イオン水で洗浄し、オーブン内で130℃で乾燥させた。
【0093】
実施例7
バルク触媒前駆体の合成
[Ni(6.5)-Mo(1)-W(3)-Nb(0.5)-Y(0.1)]
溶液Aの調製:18gのヘプタモリブデン酸アンモニウム及び79gのメタタングステン酸アンモニウムを、4Lのフラスコ内の1875gの脱イオン水に添加した。アンモニア水でpHを9.8に調整した。次に、溶液を80℃まで加熱した。
【0094】
溶液Bの調製:500mLの別々のビーカー内で、174gの硝酸ニッケル、4gの硝酸イットリウム(III)六水和物、16gのニオブ酸アンモニウム(V)水和物、及び10gのマレイン酸を、100gの脱イオン水中に溶解させた。
【0095】
溶液Bを、15分かけて溶液Aに添加した。添加中、pHをモニタリングした。溶液Bを添加するとすぐに、緑色の沈殿物が発生した。添加後の最終のpHは、6.0~7.0であった。スラリーを、80℃で4時間エージングさせた。エージング後、生成物を濾過によって回収し、脱イオン水で洗浄し、オーブン内で130℃で乾燥させた。
【0096】
実施例8
バルク触媒前駆体の合成
[Ni(6.5)-Mo(1)-W(3)-Y(0.1)]
溶液Aの調製:18gのヘプタモリブデン酸アンモニウム及び79gのメタタングステン酸アンモニウムを、4Lのフラスコ内の1875gの脱イオン水に添加した。アンモニア水でpHを9.8に調整した。次に、溶液を80℃まで加熱した。
【0097】
溶液Bの調製:500mLの別々のビーカー内で、174gの硝酸ニッケル、4gの硝酸イットリウム(III)六水和物、及び10gのマレイン酸を、100gの脱イオン水中に溶解させた。
【0098】
溶液Bを、15分かけて溶液Aに添加した。添加中、pHをモニタリングした。溶液Bを添加するとすぐに、緑色の沈殿物が発生した。添加後の最終のpHは、6.0~7.0であった。スラリーを、80℃で4時間エージングさせた。エージング後、生成物を濾過によって回収し、脱イオン水で洗浄し、オーブン内で130℃で乾燥させた。
【0099】
実施例9
バルク触媒前駆体の合成
[Ni(6.5)-Mo(1)-W(3)-Nb(0.5)-Y(0.5)]
溶液Aの調製:18gのヘプタモリブデン酸アンモニウム及び79gのメタタングステン酸アンモニウムを、4Lのフラスコ内の1875gの脱イオン水に添加した。アンモニア水でpHを9.8に調整した。次に、溶液を80℃まで加熱した。
【0100】
溶液Bの調製:500mLの別々のビーカー内で、174gの硝酸ニッケル、20gの硝酸イットリウム(III)六水和物、16gのニオブ酸アンモニウム(V)水和物、及び10gのマレイン酸を、100gの脱イオン水中に溶解させた。
【0101】
溶液Bを、15分かけて溶液Aに添加した。添加中、pHをモニタリングした。溶液Bを添加するとすぐに、緑色の沈殿物が発生した。添加後の最終のpHは、6.0~7.0であった。スラリーを、80℃で4時間エージングさせた。エージング後、生成物を濾過によって回収し、脱イオン水で洗浄し、オーブン内で130℃で乾燥させた。
【0102】
実施例10
バルク触媒前駆体の合成
[Ni(4.5)-Mo(1)-W(3)-Y(1)-Nb(1)-Cu(0.3)-Ti(5.5)]
溶液Aの調製:35gのヘプタモリブデン酸アンモニウム及び151gのメタタングステン酸アンモニウムを、4Lのフラスコ内の2500gの脱イオン水に添加した。アンモニア水でpHを9.8に調整した。次に、溶液を80℃まで加熱した。
【0103】
溶液Bの調製:1Lの別々のビーカー内で、389gの硝酸ニッケル、113gの硝酸イットリウム六水和物、60gのニオブ酸アンモニウムオキサラート、14gの硝酸銅三水和物、及び20gのマレイン酸を、800gの脱イオン水中に溶解させた。
【0104】
溶液Bを、30分かけて溶液Aに添加した。添加中、pHをモニタリングした。溶液Bを添加するとすぐに、緑色の沈殿物が発生した。添加後の最終のpHは、6.0~7.0であった。スラリーを、80℃で4時間エージングさせた。エージング後、生成物を濾過にて回収した。フィルタケーキ及び87gのTiO2(Venator Hombikat 8602)を混合して均質な相にし、80℃で2時間撹拌した。混合物を濾過によって回収し、脱イオン水で洗浄し、オーブン内で130℃で乾燥させた。
【0105】
実施例11
バルク触媒前駆体の合成
[Ni(4.5)-Mo(1)-W(3)-Y(1)-Cu(1)-Ti(5.5)]
溶液Aの調製:35gのヘプタモリブデン酸アンモニウム及び151gのメタタングステン酸アンモニウムを、4Lのフラスコ内の2500gの脱イオン水に添加した。アンモニア水でpHを9.8に調整した。次に、溶液を80℃まで加熱した。
【0106】
溶液Bの調製:1Lの別々のビーカー内で、389gの硝酸ニッケル、113gの硝酸イットリウム六水和物、46gの硝酸銅三水和物、及び20gのマレイン酸を、800gの脱イオン水中に溶解させた。
【0107】
溶液Bを、30分かけて溶液Aに添加した。添加中、pHをモニタリングした。溶液Bを添加するとすぐに、緑色の沈殿物が発生した。添加後の最終のpHは、6.0~7.0であった。スラリーを、80℃で4時間エージングさせた。エージング後、生成物を濾過にて回収した。フィルタケーキ及び87gのTiO2(Venator Hombikat 8602)を混合して均質な相にし、80℃で2時間撹拌した。混合物を濾過によって回収し、脱イオン水で洗浄し、オーブン内で130℃で乾燥させた。
【0108】
実施例12
押出物の生成
触媒の評価の前に、触媒前駆体を成形して押出物にした。乾燥させた触媒前駆体を微粉末に粉砕し(<100メッシュ)、適切な量の結合剤及び水と混合して、押出可能な混合物を作り、続いて、カーヴァー圧搾器で押出成形を行った。
【0109】
実施例13
バルク触媒前駆体の特性評価
実施例1~11のバルク触媒前駆体の、粒子密度(D)、BET表面積(SA)、及び細孔体積(PV)を測定した。結果を、下記の表1に示し、ニオブの添加が粒子密度を減少させる可能性があることを示す。
【表1】
【国際調査報告】