(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-05
(54)【発明の名称】負極活物質、その製造方法およびこれを含むリチウム二次電池
(51)【国際特許分類】
H01M 4/38 20060101AFI20240628BHJP
H01M 4/36 20060101ALI20240628BHJP
H01M 4/48 20100101ALI20240628BHJP
【FI】
H01M4/38 Z
H01M4/36 C
H01M4/48
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023578168
(86)(22)【出願日】2022-06-24
(85)【翻訳文提出日】2023-12-19
(86)【国際出願番号】 KR2022009017
(87)【国際公開番号】W WO2022270967
(87)【国際公開日】2022-12-29
(31)【優先権主張番号】10-2021-0082927
(32)【優先日】2021-06-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519350498
【氏名又は名称】ハンソル ケミカル カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】HANSOL CHEMICAL CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】7-8F, 513, Teheran-ro, Gangnam-gu, Seoul 06169, Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】110001494
【氏名又は名称】前田・鈴木国際特許弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】クォン, セ-マン
(72)【発明者】
【氏名】ホン, スン-ホ
(72)【発明者】
【氏名】パク, ビュン-フン
(72)【発明者】
【氏名】イ, ジョン-フン
(72)【発明者】
【氏名】コン, ミン-ギョン
【テーマコード(参考)】
5H050
【Fターム(参考)】
5H050AA07
5H050AA08
5H050BA17
5H050CA01
5H050CA02
5H050CA07
5H050CA08
5H050CA09
5H050CB02
5H050CB11
5H050DA09
5H050EA10
5H050EA23
5H050EA28
5H050FA17
5H050FA18
5H050GA02
5H050GA05
5H050GA10
5H050HA02
5H050HA04
5H050HA05
5H050HA13
5H050HA14
(57)【要約】
本発明は、金属炭化物で表面の全体または一部がコーティングされた金属粒子を含むシェルを含む負極活物質、その製造方法およびこれを含むリチウム二次電池に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コアと、
前記コアを取り囲むシェルと、を含み、
前記シェルは、金属炭化物で表面の全体または一部がコーティングされた金属粒子を含み、
前記金属は、Si、Al、Sn、Ge、Pb、In、As、Sb、PおよびAgからなる群より選択されるいずれか1つ以上を含む、
負極活物質。
【請求項2】
前記コアは、金属粒子を含み、
前記金属は、Si、Al、Sn、Ge、Pb、In、As、Sb、PおよびAgからなる群より選択されるいずれか1つ以上を含む、
請求項1に記載の負極活物質。
【請求項3】
前記金属粒子は、シリコン粒子、シリコン酸化物粒子およびシリコン合金粒子からなる群より選択されるいずれか1つ以上を含む、
請求項1に記載の負極活物質。
【請求項4】
前記金属粒子の平均粒径(D50)が50~1,000nmであり、
下記化1で表される、
請求項1に記載の負極活物質。
SiOx(0≦x≦0.5) (化1)
【請求項5】
前記金属粒子の結晶粒の大きさが5~50nmである、
請求項1に記載の負極活物質。
【請求項6】
前記金属炭化物の結晶粒の大きさが1~50nmである、
請求項1に記載の負極活物質。
【請求項7】
XRD分析による前記金属炭化物の該当ピークおよび前記金属の該当ピークの高さの比(金属炭化物の該当ピークの高さ/金属の該当ピークの高さ)が0.01~0.55である、
請求項1に記載の負極活物質。
【請求項8】
ラマン分析による非晶質炭素の該当ピーク(I
d)と結晶質炭素の該当ピーク(I
g)との高さの比(I
d/I
g)が0.1~1.8である、
請求項1に記載の負極活物質。
【請求項9】
ラマン分析による前記金属炭化物の該当ピーク(I金属炭化物)の高さと前記金属の該当ピーク(I金属)の高さとの比(I金属炭化物/I金属)が0.01~0.2である、
請求項1に記載の負極活物質。
【請求項10】
ラマン分析による前記金属炭化物の該当ピーク(I金属炭化物)の高さと非晶質炭素の該当ピーク(I
d)の高さとの比(I金属炭化物/I
d)が0.001~0.1である、
請求項1に記載の負極活物質。
【請求項11】
前記シェルは、結晶質炭素を含む、
請求項1に記載の負極活物質。
【請求項12】
金属粒子を粉砕するステップと、
粉砕された金属粒子、非晶質炭素および結晶質炭素を混合して複合化するステップと、
熱処理ステップと、を含み、
前記金属は、Si、Al、Sn、Ge、Pb、In、As、Sb、PおよびAgからなる群より選択されるいずれか1つ以上を含む、
負極活物質の製造方法。
【請求項13】
前記非晶質炭素は、石炭系ピッチ、メソフェーズピッチ(mesophase pitch)、石油系ピッチ、タール、石炭系オイル、石油系重質油、有機合成ピッチ、スクロース(sucrose)、ナフタレン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、フルフリルアルコール(furfuryl alcohol)樹脂、ポリアクリロニトリル樹脂、ポリアミド樹脂、フェノール樹脂、フラン樹脂、セルロース樹脂、スチレン樹脂、エポキシ樹脂または塩化ビニル樹脂、ブロック共重合体、ポリオールおよびポリイミド樹脂からなる群より選択されるいずれか1つ以上であり、
前記結晶質炭素は、天然黒鉛、人造黒鉛、膨張黒鉛、グラフェン、カーボンブラックおよびフラーレンからなる群より選択されるいずれか1つ以上である、
請求項12に記載の負極活物質の製造方法。
【請求項14】
前記複合化ステップは、ミリング、撹拌、混合および圧縮からなる群より選択されるいずれか1つ以上によって行われる、
請求項12に記載の負極活物質の製造方法。
【請求項15】
前記熱処理ステップの処理温度は、970℃以上である、
請求項12に記載の負極活物質の製造方法。
【請求項16】
請求項1~11のいずれか1項に記載の負極活物質を含む、
電極。
【請求項17】
請求項1~11のいずれか1項に記載の負極活物質を含む負極と、
前記負極に対向して位置する正極と、
前記負極と前記正極との間に配置された電解質と、を含む、
リチウム二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、負極活物質、その製造方法およびこれを含むリチウム二次電池に関し、具体的には、金属炭化物で表面の全体または一部がコーティングされた金属粒子を導入して電池寿命を向上させる負極活物質、その製造方法およびこれを含むリチウム二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン電池(Lithium Ion Battery:LIB)は、高いエネルギー密度を有し、設計が容易で、モバイル電子機器の主な電力供給源として採用されて用いられており、今後、電気自動車あるいは新再生エネルギーの電力貯蔵装置などにその応用範囲がさらに広がっている。
【0003】
新たな応用分野への適用のためには、より高いエネルギー密度、長寿命などの特性を有するLIB素材に関する研究が持続的に要求されている。
【0004】
特に、負極素材の場合、炭素をはじめとしてシリコン、スズ、ゲルマニウムなど様々な物質について研究が進められてきている。
【0005】
このうち、シリコン系負極素材は、現在商用化された黒鉛負極素材に比べて非常に高いエネルギー密度を有していて多くの関心がもたれてきている。
【0006】
しかし、シリコン系負極素材は、シリコンの表面と電解質との副反応によって不安定なSEI層が形成されて電気化学的特性が低下したり、充放電時に発生する急激な体積膨張による内部応力で電極物質の粉砕が起こるなどの致命的なデメリットがあった。
【0007】
これを解決するために、シリコン系負極素材の多様な表面処理により電池の特性を向上させる研究が多く進められてきており、特に炭素素材を表面コーティングしたり複合化する方法が広く研究されている。
【0008】
しかし、依然として電池の寿命改善には限界があり、シリコン系負極素材の体積膨張を抑制すると同時に、電池の寿命を向上させるシリコン系負極活物質の表面処理に関する技術開発が要求されているのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】大韓民国公開特許公報第2018-0002715号
【特許文献2】大韓民国登録特許公報第10-1666878号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、高容量および高エネルギー密度を有する長寿命の二次電池のための負極活物質を提供することを目的とする。
【0011】
また、高効率、低費用で前記負極活物質を製造可能な製造方法を提供することを目的とする。
【0012】
これとともに、前記負極活物質を含む電極およびリチウム二次電池を提供することを目的とする。
【0013】
しかし、本願が解決しようとする課題は以上に言及した課題に制限されず、言及されていない他の課題は以下の記載から当業者に明確に理解されるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本願の一態様は、コアと、
前記コアを取り囲むシェルと、を含み、
前記シェルは、金属炭化物で表面の全体または一部がコーティングされた金属粒子を含み、
前記金属は、Si、Al、Sn、Ge、Pb、In、As、Sb、PおよびAgからなる群より選択されるいずれか1つ以上を含む、
負極活物質を提供する。
【0015】
本願の他の態様は、金属粒子を粉砕するステップと、
粉砕された金属粒子、非晶質炭素および結晶質炭素を混合して複合化するステップと、
熱処理ステップと、を含み、
前記金属は、Si、Al、Sn、Ge、Pb、In、As、Sb、PおよびAgからなる群より選択されるいずれか1つ以上を含む、
負極活物質の製造方法を提供する。
【0016】
本願のさらに他の態様は、前記負極活物質を含む、
電極を提供する。
【0017】
本願のさらに他の態様は、前記負極活物質を含む負極と、
前記負極に対向して位置する正極と、
前記負極と前記正極との間に配置された電解質と、を含むリチウム二次電池を提供する。
【発明の効果】
【0018】
本発明による負極活物質は、高容量および高エネルギー密度を有する長寿命の二次電池を提供する効果がある。
【0019】
また、負極活物質を高効率、低費用で製造できる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の一実施形態によるコア-シェル構造の負極活物質を示す模式図である。
【
図2a】
図2aは、本発明の実施例1、実施例3および比較例3による負極活物質のXRDおよびラマンスペクトルである。
【
図2b】
図2bは、本発明の実施例1、実施例3および比較例3による負極活物質のXRDおよびラマンスペクトルである。
【
図3a】
図3aは、本発明の実施例1による負極活物質の走査電子顕微鏡(Scanning Electron Microscopy、SEM)写真である。
【
図3b】
図3bは、本発明の実施例1による負極活物質の走査電子顕微鏡(Scanning Electron Microscopy、SEM)写真である。
【
図3c】
図3cは、本発明の実施例1による負極活物質の走査電子顕微鏡(Scanning Electron Microscopy、SEM)写真である。
【
図4a】
図4aは、本発明の実施例1による負極活物質の断面に対するエネルギー分散型分光(Energy Dispersive X-ray Spectroscopy、EDS)ラインスキャン(line scan)分析の結果である。
【
図4b】
図4bは、本発明の実施例1による負極活物質の断面に対するエネルギー分散型分光(Energy Dispersive X-ray Spectroscopy、EDS)ラインスキャン(line scan)分析の結果である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本明細書および特許請求の範囲に使用された用語や単語は通常または辞書的な意味に限定して解釈されてはならず、発明者は自らの発明を最も最善の方法で説明するために用語の概念を適切に定義できるという原則に則り、本発明の技術的思想に符合する意味と概念で解釈されなければならない。
【0022】
したがって、本明細書に記載された実施例の構成は本発明の最も好ましい一つの実施例に過ぎず、本発明の技術的思想をすべて代弁するものではないので、本出願時点においてこれらを代替できる多様な均等物と変形例が存在できることを理解しなければならない。
【0023】
本明細書において、単数の表現は文脈上明らかに異なって意味しない限り、複数の表現を含む。本明細書において、「含む」、「備える」または「有する」などの用語は、実施された特徴、数字、段階、構成要素、またはこれらを組み合わせたものが存在することを指定しようとするものであって、1つまたはそれ以上の他の特徴や、数字、段階、構成要素、またはこれらを組み合わせたものの存在または付加の可能性を予め排除しないことが理解されなければならない。
【0024】
本願の一態様による負極活物質は、
図1に示すように、コアと、前記コアを取り囲むシェルと、を含み、前記シェルは、金属炭化物で表面の全体または一部がコーティングされた金属粒子を含み、前記金属は、Si、Al、Sn、Ge、Pb、In、As、Sb、PおよびAgからなる群より選択されるいずれか1つ以上を含むことができる。
【0025】
前記負極活物質の前記金属粒子の表面の一部または全体が前記金属炭化物でコーティングされる。
【0026】
例えば、前記金属炭化物は、前記金属粒子の全体表面の30%以上、40%以上、50%以上、60%以上、70%以上、80%以上、90%以上、100%をコーティングすることができ、コーティングの程度は、負極活物質の製造時に工程条件を変化させて調節可能である。
【0027】
一実施形態において、前記負極活物質の前記コアは、金属粒子を含み、前記金属は、Si、Al、Sn、Ge、Pb、In、As、Sb、PおよびAgからなる群より選択されるいずれか1つ以上を含むことができる。
【0028】
すなわち、前記負極活物質のコアは、金属炭化物が表面にコーティングされない金属粒子を含み、前記負極活物質のシェルは、表面の一部または全体が金属炭化物でコーティングされた金属粒子を含むことができる。
【0029】
前記表面の一部または全体が金属炭化物でコーティングされた金属粒子は、電池の寿命安定性を向上させることができる。
【0030】
一実施形態において、前記金属粒子は、シリコン粒子、シリコン酸化物粒子、シリコン炭化物粒子、シリコン合金粒子、またはこれらの組み合わせであってもよい。
【0031】
前記シリコン含有粒子は、下記化1で表される。
SiOx(0≦x≦0.5) (化1)
【0032】
前記化2中、xが0.5を超える場合、電池容量と効率において不利な効果がありうる。すなわち、リチウムイオンが酸素と反応してLi2O、Li-silicate(LixSiyOz)のような不可逆生成物が生成される。これによって、負極材と反応したリチウムイオンが電解質あるいは正極材に戻れずに負極の内部に閉じ込められて容量を発現できなくなり、効率も低下する。
【0033】
また、例えば、前記シリコン炭化物は、SiCであってもよく、前記シリコン合金は、例えば、Si-Z合金(前記Zは、アルカリ金属、アルカリ土類金属、13族元素、14族元素、遷移金属、希土類元素、およびこれらの組み合わせから選択された1種以上の元素であり、Siではない)であってもよい。
【0034】
前記シリコン含有粒子の平均粒径(D50)は、50~1,000nmであってもよく、好ましくは600~900nmであってもよい。
【0035】
前記シリコン含有粒子の平均粒径が1,000nmを超える場合、高い電池容量を得ることができるが、電池寿命が非常に短くなり、前記シリコン含有粒子の平均粒径が50nm未満の場合、電池容量および効率が低くなり、製造経費が高くなりうる。
【0036】
一実施形態において、前記金属粒子の結晶粒の大きさが5~50nmであってもよく、好ましくは10~35nmであってもよい。
【0037】
前記金属粒子の結晶粒の大きさが50nmを超える場合、製造経費が高くなり、寿命安定性が低下することがあり、前記金属粒子の結晶粒の大きさが5nm未満の場合、電池容量が低下することがある。
【0038】
また、前記金属炭化物の結晶粒の大きさが1~50nmであってもよく、好ましくは5~20nmであってもよい。
【0039】
前記金属炭化物の結晶粒の大きさが50nmを超える場合、電池容量の発現を阻害させることがあり、前記金属炭化物の結晶粒の大きさが1nm未満の場合、電池の寿命改善効果が現れない。
【0040】
一実施形態において、前記負極活物質のXRD分析による前記金属炭化物の該当ピークおよび前記金属の該当ピークの高さの比(金属炭化物の該当ピークの高さ/金属の該当ピークの高さ)が0.01~0.55であってもよく、好ましくは0.01~0.2であってもよいし、さらに好ましくは0.02~0.1であってもよい。
【0041】
前記金属炭化物の該当ピークおよび前記金属の該当ピークの高さの比が0.55を超える場合、電池の容量特性が低下し、前記金属炭化物の該当ピークおよび前記金属の該当ピークの高さの比が0.01未満の場合、電池の寿命が短くなりうる。
【0042】
一実施形態において、前記負極活物質のラマン分析による非晶質炭素の該当ピーク(Id)と結晶質炭素の該当ピーク(Ig)との高さの比(Id/Ig)が0.1~1.8であってもよい。
【0043】
また、前記負極活物質のラマン分析による前記金属炭化物の該当ピーク(I金属炭化物)の高さと前記金属の該当ピーク(I金属)の高さとの比(I金属炭化物/I金属)が0.01~0.2であってもよく、好ましくは0.05~0.1であってもよい。
【0044】
前記I金属炭化物/I金属が0.2を超える場合、電池の容量特性が低下し、前記I金属炭化物/I金属が0.01未満であれば、電池寿命が短くなりうる。
【0045】
一方、前記負極活物質のラマン分析による前記金属炭化物の該当ピーク(I金属炭化物)の高さと非晶質炭素の該当ピーク(Id)の高さとの比(I金属炭化物/Id)が0.005~0.1であってもよく、好ましくは0.02~0.07であってもよい。
【0046】
前記I金属炭化物/Idが0.1を超える場合、電池の容量特性が低下し、前記I金属炭化物/Idが0.005未満であれば、電池寿命が短くなりうる。
【0047】
一実施形態において、前記シェルは、結晶質炭素を含むことができる。
【0048】
すなわち、前記シェルは、炭素系シェルであってもよく、大部分結晶質炭素からなり、少量の非晶質炭素を含むことができる。
【0049】
前記炭素系シェルの炭素成分は、充放電時に金属炭化物で表面の全体または一部がコーティングされた金属粒子の体積膨張を緩和させる役割を果たすことができる。
【0050】
一方、前記負極活物質のコアは、空隙が形成され、前記コアの内部気孔は、電池の初期不可逆容量を減らし、Siの体積膨張の緩和を助けることができる。
【0051】
前記コア内に形成された空隙の体積は、0.01~0.5cc/gであってもよい。前記コアの中心から遠くなるほど、空隙の比重が減少することができる。
【0052】
本願の他の態様による負極活物質の製造方法は、金属粒子を粉砕するステップと、粉砕された金属粒子、非晶質炭素および結晶質炭素を混合して複合化するステップと、熱処理ステップとを含むことができる。
【0053】
前記金属は、Si、Al、Sn、Ge、Pb、In、As、Sb、PおよびAgからなる群より選択されるいずれか1つ以上を含むことができる。
【0054】
すなわち、本願の負極活物質の製造方法は、別の金属炭化物の製造および金属炭化物のコーティングステップを必要とせず、複合化ステップおよび熱処理ステップにより金属粒子が金属炭化物でコーティングされる。
【0055】
一実施形態において、前記非晶質炭素は、石炭系ピッチ、メソフェーズピッチ(mesophase pitch)、石油系ピッチ、タール、石炭系オイル、石油系重質油、有機合成ピッチ、スクロース(sucrose)、ナフタレン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、フルフリルアルコール(furfuryl alcohol)樹脂、ポリアクリロニトリル樹脂、ポリアミド樹脂、フェノール樹脂、フラン樹脂、セルロース樹脂、スチレン樹脂、エポキシ樹脂または塩化ビニル樹脂、ブロック共重合体、ポリオールおよびポリイミド樹脂からなる群より選択されるいずれか1つ以上であり、結晶質炭素は、天然黒鉛、人造黒鉛、膨張黒鉛、グラフェン、カーボンブラックおよびフラーレンからなる群より選択されるいずれか1つ以上であってもよい。
【0056】
天然黒鉛は、天然的に産出される黒鉛で、鱗状(flake)黒鉛、高結晶質(high crystalline)黒鉛、非晶質(microcrystalline or cryptocrystalline;amorphous)黒鉛などがある。人造黒鉛は、人工的に合成された黒鉛で、無定形炭素を高温に加熱して作られ、一次(primary)あるいは電気黒鉛(electrographite)、二次(secondary)黒鉛、黒鉛繊維(graphite fiber)などがある。
【0057】
膨張黒鉛は、黒鉛の層間に酸やアルカリのような化学品を挿入(intercalation)し、加熱して分子構造の垂直層を膨らませたものである。グラフェンは、黒鉛の単一層または複数の単一層を含む。
【0058】
カーボンブラックは、黒鉛より規則性が小さい結晶性物質であって、カーボンブラックを約3,000℃で長期間加熱すれば黒鉛に変化することができる。フラーレンは、60個またはそれ以上の炭素原子からなる多面体束状の化合物であるフラーレンが少なくとも3重量%含まれた炭素混合物である。前記第1炭素系素材は、このような結晶質炭素を1種単独または2種以上組み合わせて使用可能である。例えば、天然黒鉛または人造黒鉛が使用できる。前記結晶質炭素は、球状、板状、繊維状、チューブ状または粉末状を有することができる。
【0059】
好ましくは、前記非晶質炭素としてピッチを使用することができる。ピッチは、軟化点100~250℃のピッチを使用することができ、特にQI(Quinolone Insoluble)成分が5重量%以下、さらに好ましくは1重量%以下の石油系または石炭系ピッチを使用することができる。
【0060】
一方、結晶質炭素としては、好ましくは、天然黒鉛を使用することができる。黒鉛の純度は、固定炭素(Fixed Carbon)の含有量が99重量%以上、さらに好ましくは99.95重量%以上の高純度品位を使用することができる。
【0061】
また、鱗片状黒鉛は、金属粒子との接触により導電性を高めるのに適することができる。
【0062】
一実施形態において、前記複合化ステップは、物理的方法によって行われる。
【0063】
前記物理的方法は、高エネルギー工程であるミリング、撹拌、混合および圧縮などからなる群より選択されるいずれか1つ以上を含むことができる。
【0064】
例えば、前記複合化ステップは、ボールミリングによって行われる。特に、遊星ボールミル(planetary ball mill)は、組成物と非接触式方式で自転および公転する混合方式により混合物を効率的に混合および粉砕することができる。
【0065】
ボールミリングに使用可能なボールは、例えば、ジルコニアボールなどであってもよいし、ボールの種類には制限がなく、ボールの大きさは、例えば、約0.3~10mmであってもよいが、これに限定されるものではない。
【0066】
一方、前記複合化ステップの反応時間は1分~24時間、反応温度は40~250℃、反応雰囲気は大気または不活性雰囲気の条件下で行われる。
【0067】
また、前記熱処理ステップの処理温度は、970℃以上であってもよく、好ましくは1,400℃以下であってもよい。
【0068】
熱処理時間は特に限定されるものではないが、例えば、10分~5時間の範囲で行われる。
【0069】
本願のさらに他の態様による電極は、前記負極活物質を含むことができ、リチウム二次電池は、前記負極活物質を含む電極を負極とし、前記負極に対向して位置する正極と、前記負極と前記正極との間に配置された電解質とを含むことができる。
【0070】
前記負極は、前記負極活物質を含み、例えば、前記負極活物質、バインダー、および選択的に導電剤を溶媒中に混合して負極活物質組成物を製造した後、これを一定の形状に成形するか、銅箔(copper foil)などの集電体に塗布する方法で製造される。
【0071】
前記負極は、上述した負極活物質のほか、当該技術分野にてリチウム電池の負極活物質として通常使用される負極活物質材料を追加的にさらに含むことができる。通常使用される負極活物質材料としては、例えば、リチウム金属、リチウムと合金可能な金属、遷移金属酸化物、非遷移金属酸化物および炭素系材料からなる群より選択されたいずれか1つ以上を含むことができる。
【0072】
例えば、前記リチウムと合金可能な金属は、Si、Sn、Al、Ge、Pb、Bi、Sb、Si-Y合金(前記Yは、アルカリ金属、アルカリ土類金属、13族元素、14族元素、遷移金属、希土類元素、またはこれらの組み合わせ元素であり、Siではない)、Sn-Y合金(前記Yは、アルカリ金属、アルカリ土類金属、13族~16族元素、遷移金属、希土類元素、またはこれらの組み合わせ元素であり、Snではない)などであってもよい。前記元素Yとしては、Mg、Ca、Sr、Ba、Ra、Sc、Y、Ti、Zr、Hf、Rf、V、Nb、Ta、Db、Cr、Mo、W、Sg、Tc、Re、Bh、Fe、Pb、Ru、Os、Hs、Rh、Ir、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、B、Al、Ga、Sn、In、Ti、Ge、P、As、Sb、Bi、S、Se、Te、Po、またはこれらの組み合わせであってもよい。
【0073】
例えば、前記遷移金属酸化物は、リチウムチタン酸化物、バナジウム酸化物、リチウムバナジウム酸化物などであってもよい。
【0074】
例えば、前記非遷移金属酸化物は、SnO2、SiOx(0<x≦2)などであってもよい。前記炭素系材料としては、結晶質炭素、非晶質炭素、またはこれらの混合物であってもよい。前記結晶質炭素は、無定形、板状、鱗片状(flake)、球状または繊維状の天然黒鉛または人造黒鉛のような黒鉛であってもよいし、前記非晶質炭素は、ソフトカーボン(soft carbon:低温焼成炭素)またはハードカーボン(hard carbon)、メソフェーズピッチ(mesophase pitch)炭化物、焼成されたコークスなどであってもよい。
【0075】
前記負極活物質と炭素系材料を共に使用する場合、シリコン系活物質の酸化反応を抑制し、SEI膜を効果的に形成して安定した被膜を形成し、電気伝導度の向上をもたらしてリチウムの充放電特性をさらに向上させることができる。
【0076】
通常の負極活物質材料は、上述した負極活物質と混合してブレンドされるか、上述した負極活物質の表面にコーティングされるか、またはその他の任意の組み合わされた形態で使用されてもよい。
【0077】
前記負極活物質組成物に使用されるバインダーは、負極活物質と導電剤などとの結合と集電体への結合に助力する成分であって、負極活物質100重量部を基準として1~50重量部添加される。例えば、負極活物質100重量部を基準として1~30重量部、1~20重量部、または1~15重量部の範囲でバインダーを添加することができる。
【0078】
このようなバインダーの例としては、ポリビニリデンフルオライド、ポリビニリデンクロライド、ポリベンズイミダゾール、ポリイミド、ポリビニルアセテート、ポリアクリロニトリル、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース(CMC)、デンプン、ヒドロキシプロピルセルロース、再生セルロース、ポリビニルピロリドン、テトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリアニリン、アクリロニトリルブタジエンスチレン、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフェニルスルフィド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリエチレンスルホン、ポリアミド、ポリアセタール、ポリフェニレンオキシド、ポリブチレンテレフタレート、エチレン-プロピレン-ジエンターポリマー(EPDM)、スルホン化EPDM、スチレンブタジエンゴム、フッ素ゴム、多様な共重合体などが挙げられる。
【0079】
前記負極は、前記負極活物質に導電通路を提供して電気伝導性をより向上させるために、選択的に導電剤をさらに含むことができる。
【0080】
前記導電剤としては、一般的にリチウム電池に用いられるものはいずれも使用可能であり、その例として、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、炭素繊維(例、気相成長炭素繊維)などの炭素系物質;銅、ニッケル、アルミニウム、銀などの金属粉末または金属繊維などの金属系物質;ポリフェニレン誘導体などの導電性ポリマー、またはこれらの混合物を含む導電性材料を使用することができる。導電剤の含有量は適度に調節して使用可能である。例えば、前記負極活物質および導電剤の重量比が99:1~90:10の範囲で添加される。
【0081】
前記溶媒としては、N-メチルピロリドン(NMP)、アセトン、水などが使用できる。前記溶媒の含有量は、負極活物質100重量部を基準として1~10重量部を使用する。溶媒の含有量が前記範囲の時、活物質層を形成するための作業が容易である。
【0082】
また、前記集電体は、一般的に3~500μmの厚さで作られる。前記集電体としては、当該電池に化学的変化を誘発することなく導電性を有するものであれば特に限定されるものではなく、例えば、銅、ステンレススチール、アルミニウム、ニッケル、チタン、焼成炭素、銅やステンレススチールの表面にカーボン、ニッケル、チタン、銀などで表面処理したもの、アルミニウム-カドミウム合金などが使用できる。
【0083】
さらに、表面に微細な凹凸を形成して負極活物質の結合力を強化させることもでき、フィルム、シート、箔、ネット、多孔質体、発泡体、不織布体などの多様な形態で使用可能である。
【0084】
製造された負極活物質組成物を集電体上に直接コーティングして負極極板を製造するか、別の支持体上にキャストし、前記支持体から剥離させた負極活物質フィルムを銅箔集電体にラミネーションして負極極板を得ることができる。前記負極は、前記列挙した形態に限定されるものではなく、前記形態以外の形態であってもよい。
【0085】
前記負極活物質組成物は、リチウム二次電池の電極の製造に使用されるだけでなく、柔軟な(flexible)電極基板上に印刷されて印刷電池(printable battery)の製造にも使用可能である。
【0086】
これとは別に、正極を作製するために、正極活物質、導電剤、バインダーおよび溶媒が混合された正極活物質組成物が用意される。
【0087】
前記正極活物質としては、リチウム含有金属酸化物であって、当該技術分野にて通常用いられるものであればすべて使用可能である。
【0088】
例えば、LiaA1-bBbD2(前記式中、0.90≦a≦1.8、および0≦b≦0.5である);LiaE1-bBbO2-cDc(前記式中、0.90≦a≦1.8、0≦b≦0.5、0≦c≦0.05である);LiE2-bBbO4-cDc(前記式中、0≦b≦0.5、0≦c≦0.05である);LiaNi1-b-cCobBcDα(前記式中、0.90≦a≦1.8、0≦b≦0.5、0≦c≦0.05、0<α≦2である);LiaNi1-b-cCobBcO2-αFα(前記式中、0.90≦a≦1.8、0≦b≦0.5、0≦c≦0.05、0<α<2である);LiaNi1-b-cCobBcO2-αFα(前記式中、0.90≦a≦1.8、0≦b≦0.5、0≦c≦0.05、0<α<2である);LiaNi1-b-cMnbBcDα(前記式中、0.90≦a≦1.8、0≦b≦0.5、0≦c≦0.05、0<α≦2である);LiaNi1-b-cMnbBcO2-αFα(前記式中、0.90≦a≦1.8、0≦b≦0.5、0≦c≦0.05、0<α<2である);LiaNi1-b-cMnbBcO2-αFα(前記式中、0.90≦a≦1.8、0≦b≦0.5、0≦c≦0.05、0<α<2である);LiaNibEcGdO2(前記式中、0.90≦a≦1.8、0≦b≦0.9、0≦c≦0.5、0.001≦d≦0.1である);LiaNibCocMndGeO2(前記式中、0.90≦a≦1.8、0≦b≦0.9、0≦c≦0.5、0≦d≦0.5、0.001≦e≦0.1である);LiaNiGbO2(前記式中、0.90≦a≦1.8、0.001≦b≦0.1である);LiaCoGbO2(前記式中、0.90≦a≦1.8、0.001≦b≦0.1である);LiaMnGbO2(前記式中、0.90≦a≦1.8、0.001≦b≦0.1である);LiaMn2GbO4(前記式中、0.90≦a≦1.8、0.001≦b≦0.1である);QO2;QS2;LiQS2;V2O5;LiV2O5;LiIO2;LiNiVO4;Li(3-f)J2(PO4)3(0≦f≦2);Li(3-f)Fe2(PO4)3(0≦f≦2);LiFePO4の化学式のいずれか1つで表現される化合物を使用することができる。
【0089】
前記化学式において、Aは、Ni、Co、Mn、またはこれらの組み合わせであり;Bは、Al、Ni、Co、Mn、Cr、Fe、Mg、Sr、V、希土類元素、またはこれらの組み合わせであり;Dは、O、F、S、P、またはこれらの組み合わせであり;Eは、Co、Mn、またはこれらの組み合わせであり;Fは、F、S、P、またはこれらの組み合わせであり;Gは、Al、Cr、Mn、Fe、Mg、La、Ce、Sr、V、またはこれらの組み合わせであり;Qは、Ti、Mo、Mn、またはこれらの組み合わせであり;Iは、Cr、V、Fe、Sc、Y、またはこれらの組み合わせであり;Jは、V、Cr、Mn、Co、Ni、Cu、またはこれらの組み合わせである。
【0090】
もちろん、この化合物の表面にコーティング層を有するものも使用することができ、または前記化合物とコーティング層を有する化合物とを混合して使用することもできる。このコーティング層は、コーティング元素のオキシド、ヒドロキシド、コーティング元素のオキシヒドロキシド、コーティング元素のオキシカーボネート、またはコーティング元素のヒドロキシカーボネートのコーティング元素化合物を含むことができる。これらのコーティング層をなす化合物は、非晶質または結晶質であってもよい。前記コーティング層に含まれるコーティング元素としては、Mg、Al、Co、K、Na、Ca、Si、Ti、V、Sn、Ge、Ga、B、As、Zr、またはこれらの混合物を使用することができる。コーティング層形成工程は、前記化合物にこのような元素を用いて正極活物質の物性に悪影響を与えない方法(例えば、スプレーコーティング、浸漬法など)でコーティングできればいかなるコーティング方法を用いても構わず、これについては当該分野にて従事する者によく理解できる内容であるので、詳しい説明は省略する。
【0091】
例えば、LiNiO2、LiCoO2、LiMnxO2x(x=1、2)、LiNi1-xMnxO2(0<x<1)、LiNi1-x-yCoxMnyO2(0≦x≦0.5、0≦y≦0.5)、LiFeO2、V2O5、TiS、MoSなどが使用できる。
【0092】
正極活物質組成物において、導電剤、バインダーおよび溶媒は、上述した負極活物質組成物の場合と同じものを使用することができる。場合によっては、前記正極活物質組成物および負極活物質組成物に可塑剤をさらに付加して電極板の内部に気孔を形成することも可能である。前記正極活物質、導電剤、バインダーおよび溶媒の含有量は、リチウム電池において通常使用する水準である。
【0093】
前記正極集電体は、3~500μmの厚さであって、当該電池に化学的変化を誘発することなく高い導電性を有するものであれば特に限定されるものではなく、例えば、ステンレススチール、アルミニウム、ニッケル、チタン、焼成炭素、またはアルミニウムやステンレススチールの表面にカーボン、ニッケル、チタン、銀などで表面処理したものなどが使用できる。集電体は、その表面に微細な凹凸を形成して正極活物質の接着力を高めることもでき、フィルム、シート、箔、ネット、多孔質体、発泡体、不織布体などの多様な形態が可能である。
【0094】
用意された正極活物質組成物は、正極集電体上に直接コーティングおよび乾燥して正極極板を製造することができる。あるいは、前記正極活物質組成物を別の支持体上にキャストした後、前記支持体から剥離して得たフィルムを正極集電体上にラミネーションして正極極板を製造することができる。
【0095】
前記正極および負極は、セパレータによって分離され、前記セパレータとしては、リチウム電池において通常用いられるものであればすべて使用可能である。特に、電解質のイオン移動に対して低抵抗でかつ電解液含湿能力に優れているものが適する。例えば、ガラス繊維、ポリエステル、テフロン(登録商標)、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、その組み合わせ物の中から選択された材質であって、不織布または織布形態でも構わない。前記セパレータは、気孔径が0.01~10μmであり、厚さは一般的に5~300μmのものを使用する。
【0096】
リチウム塩含有非水系電解質は、非水電解質とリチウムとからなっている。非水電解質としては、非水電解液、固体電解質、無機固体電解質などが使用される。
【0097】
前記非水電解液としては、例えば、N-メチル-2-ピロリジノン、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ガンマ-ブチロラクトン、1,2-ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、ジメチルスルホキシド、1,3-ジオキソラン、ホルムアミド、ジメチルホルムアミド、アセトニトリル、ニトロメタン、ギ酸メチル、酢酸メチル、リン酸トリエステル、トリメトキシメタン、ジオキソラン誘導体、スルホラン、メチルスルホラン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、プロピレンカーボネート誘導体、テトラヒドロフラン誘導体、エーテル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチルなどの非プロトン性有機溶媒が使用できる。
【0098】
前記有機固体電解質としては、例えば、ポリエチレン誘導体、ポリエチレンオキシド誘導体、ポリプロピレンオキシド誘導体、リン酸エステルポリマー、ポリアジテーションリジン(agitation lysine)、ポリエステルスルフィド、ポリビニルアルコール、ポリフッ化ビニリデン、イオン性解離基を含む重合体などが使用できる。
【0099】
前記無機固体電解質としては、例えば、Li3N、LiI、Li5NI2、Li3N-LiI-LiOH、LiSiO4、LiSiO4-LiI-LiOH、Li2SiS3、Li4SiO4、Li4SiO4-LiI-LiOH、Li3PO4-Li2S-SiS2などのLiの窒化物、ハロゲン化物、硫酸塩などが使用できる。
【0100】
前記リチウム塩は、リチウム電池において通常用いられるものであればすべて使用可能であり、前記非水系電解質に溶解しやすい物質として、例えば、LiCl、LiBr、LiI、LiClO4、LiBF4、LiB10Cl10、LiPF6、LiCF3SO3、LiCF3CO2、LiAsF6、LiSbF6、LiAlCl4、CH3SO3Li、CF3SO3Li、(CF3SO2)2NLi、リチウムクロロボレート、低級脂肪族カルボン酸リチウム、4フェニルホウ酸リチウム、イミドなどの物質を1つ以上使用することができる。
【0101】
リチウム二次電池は、使用するセパレータと電解質の種類によってリチウムイオン電池、リチウムイオンポリマー電池およびリチウムポリマー電池に分類され、形態によって円筒形、角形、コイン型、パウチ型などに分類されてもよいし、サイズによってバルクタイプと薄膜タイプとに分けられる。
【0102】
これら電池の製造方法はこの分野にて広く知られているので、詳細な説明は省略する。
【実施例】
【0103】
以下、実施例および比較例を用いて本願をより具体的に説明するが、本願がこれに限定されるものではない。
【0104】
[実施例1]
全体混合量100重量部中、35重量部のシリコン(Si、D50:809nm)、40重量部のピッチ(Pitch)系炭素および25重量部の鱗片状黒鉛を混合し、2,000rpmで3分間乾式ミリングを進行させた後、アルゴン(Ar)ガス雰囲気、約1,150℃で4時間熱処理して負極活物質を製造した。
【0105】
[実施例2]
平均粒径(D50)が107nmのシリコンを用いたことを除けば、実施例1と同様に負極活物質を製造した。
【0106】
[実施例3]
熱処理温度を1,250℃としたことを除けば、実施例1と同様に負極活物質を製造した。
【0107】
[実施例4]
熱処理時間を1時間としたことを除けば、実施例1と同様に負極活物質を製造した。
【0108】
[実施例5]
熱処理時間を8時間としたことを除けば、実施例1と同様に負極活物質を製造した。
【0109】
[比較例1]
シリコンおよび鱗片状黒鉛の重量部の比を35:65として混合したことを除けば、実施例1と同様に負極活物質を製造した。
【0110】
[比較例2]
シリコンおよびピッチ系炭素の重量部の比を35:65として混合したことを除けば、実施例1と同様に負極活物質を製造した。
【0111】
[比較例3]
熱処理温度を950℃としたことを除けば、実施例1と同様に負極活物質を製造した。
【0112】
[比較例4]
平均粒径(D50)が1.06μmのシリコンを用いたことを除けば、実施例1と同様に負極活物質を製造した。
【0113】
[比較例5]
シリコン(Si、D50:809nm)、ピッチ(Pitch)系炭素および鱗片状黒鉛の混合量をそれぞれ35重量部、15重量部および55重量部としたことを除けば、実施例1と同様に負極活物質を製造した。
【0114】
[比較例6]
シリコン(Si、D50:809nm)、ピッチ(Pitch)系炭素および鱗片状黒鉛の混合量をそれぞれ35重量部、55重量部および10重量部としたことを除けば、実施例1と同様に負極活物質を製造した。
【0115】
実施例1~5および比較例1~6のシリコンの粒度、各成分の混合比および熱処理条件を下記表1に示した。
【0116】
【0117】
[製造例]
コインハーフセルの作製
前記実施例1~5および比較例1~4により製造された負極活物質、導電剤(Super P)およびバインダー(SBR-CMC)を93:3:4の重量比で均一に混合して負極スラリーを用意した。
【0118】
用意した負極スラリーを厚さが20μmの銅箔集電体にコーティングし、コーティングが完了した極板は120℃で30分間乾燥させた後、圧延(pressing)して負極を製造した。
【0119】
前記負極および対極(counter electrode)としては金属リチウムを用い、分離膜としてPE分離膜(separator)を用い、電解質としてはEC(エチレンカーボネート):DEC(ジエチルカーボネート):DMC(ジメチルカーボネート)(3:5:2の体積比)混合溶媒に1.0MのLiPF6が溶解したものを用いて、CR2032 typeのコインハーフセルを製造した。
【0120】
コインフルセルの作製
前記コインハーフセルに使用された負極を用い、正極は次のように製造した。正極活物質としてLiNi0.6Co0.2Mn0.2O2およびバインダーとしてPVA-PAAを1:1の重量比で混合して正極スラリーを用意し、前記正極スラリーを厚さが12μmのアルミニウム箔集電体にコーティングし、コーティングが完了した極板を120℃で15分間乾燥させた後、圧延(pressing)して正極を製造した。
【0121】
前記正極および負極を用い、分離膜としてPE分離膜(separator)を用い、電解質としてはEC(エチレンカーボネート):DEC(ジエチルカーボネート):DMC(ジメチルカーボネート)(2:1:7の体積比)+FEC20%混合溶媒に1.5MのLiPF6が溶解したものを用いて、CR2032 typeのコインフルセルを製造した。
【0122】
評価例1:XRD、Ramanおよび空隙率の分析
実施例1、実施例3および比較例3で製造した負極活物質に対してXRD(X-ray diffraction)実験を行い、その結果を
図2Aに示した。XRDは、Cu-Kα線を用いて測定した。
【0123】
図2Aに示すように、実施例1および実施例3で製造した負極活物質の場合、炭素に相当するピーク(26゜付近)とともに、炭化シリコン(silicon carbide)に相当するピーク(36゜付近)が測定された。シリコンに相当するピーク(26゜付近)も併せて測定された。しかし、比較例3で製造した負極活物質は、炭化シリコン(silicon carbide)に相当するピークが測定されなかった。
【0124】
また、LabRam HR Evolutionラマン分光計(Horiba Jobin-Yvon、France)を用いて実施例1、実施例3および比較例3で製造した負極活物質を分析して、その結果を
図2Bに示した。
【0125】
ラマンシステムは、514nmの励起波長を有し、10mWの力で作動するAr+ionレーザを用いた。
【0126】
図2Bに示すように、シリコンに相当するピーク(500cm
-1付近)と炭素のDバンド(1320cm
-1付近)およびGバンド(1600cm
-1付近)に相当するピークをそれぞれ確認することができた。
【0127】
また、実施例1および実施例3で製造した負極活物質の場合、炭化シリコンに相当するピーク(900cm-1付近)を確認することができた。しかし、比較例3で製造した負極活物質は、炭化シリコンに相当するピークが測定されなかった。
【0128】
XRDおよびラマン分析により、本願の負極活物質がシリコン、炭化シリコンおよび炭素を含むことを確認することができた。
【0129】
空隙率(コア部の空隙率)は下記数1によって計算された。下記数1中、真密度は2.33g/ccであった。
【0130】
また、下記数1の全体空隙体積はMicromeritics社のTriStar II 3020装置で測定した。全体空隙体積は液体窒素温度(77K)で相対圧力の変化による窒素ガスの吸着量により測定された。
【0131】
【数1】
実施例1~実施例5および比較例1~6により製造された負極活物質のXRD測定結果に基づく炭化シリコン(SiC)のピークおよびシリコン(Si)のピークの高さの比、およびラマン測定結果に基づいて非晶質炭素の該当ピーク(I
d)と結晶質炭素の該当ピーク(I
g)との高さの比と炭化シリコンのピーク(I
sic)の高さと非晶質炭素の該当ピーク(I
d)の高さとの比を下記表2に示した。
【0132】
また、前記数1により計算された空隙率を下記表2に示した。
【0133】
【表2】
鱗片状黒鉛のみを用いた比較例1と熱処理温度を950℃に下げた比較例3の場合、炭化シリコンが形成されていないことを確認することができた。
【0134】
評価例2:SEM分析
実施例1により製造された負極活物質の断面に対して電子走査顕微鏡(SEM)分析を実施した結果を
図3Aに示した。
【0135】
図3Aから負極活物質のコアとシェルが明確に区分されることを確認することができた。
【0136】
また、コアとシェルそれぞれをさらに高い倍率で分析した結果、シリコン粒子を含むコア(
図3B)と、炭化シリコン(SiC)が表面にコーティングされたシリコン粒子を含む炭素系シェル(
図3C)を確認することができた。
【0137】
これに対し、比較例1および比較例2により製造された負極活物質は、SEM分析の結果、本願のコア-シェル構造が形成されていないことを確認することができた。
【0138】
評価例3:FIB-EDS分析
FIB(FEI社製Nova200)によって実施例1により製造された負極活物質をサンプリングし、STEM-EDS(日本電子社製JEOL-2200FS)を用いて、加速電圧200kVの条件でEDSラインスキャン(line scan)分析を行った。
【0139】
図4Aに示すように、実施例1により製造された負極活物質の断面の横軸に相当するXY線に沿って行われたEDSラインスキャンによって、コアとシェルでの炭素、シリコン、酸素の濃度比を分析することができた。
【0140】
分析の結果、
図4Bに示すように、コアではシェルに比べて相対的にシリコンと酸素の濃度が高いことが測定され、シェルではコアに比べて炭素の濃度が高いことが測定された。
【0141】
すなわち、EDSラインスキャン分析により、本願のコア-シェル構造の負極活物質のコアおよびシェルの成分を具体的に確認することができた。
【0142】
評価例4:電池特性評価
実施例1~5および比較例1~4により製造された負極活物質を用いて製造したコインハーフセルおよびコインフルセルに対して電池特性を下記のように評価した。
【0143】
比較例5および比較例6の場合、製造過程で炭素の粗粒子が多数発生して電池特性の測定に適しておらず、電池特性の測定を行わなかった。
【0144】
寿命特性評価のためにはコインフルセルを用い、その他の電池特性評価にはコインハーフセルが用いられた。
【0145】
実施例1~5および比較例1~4により製造された負極活物質を用いて製造したコインハーフセルをそれぞれ25℃で0.1C rateの電流で電圧が0.01V(vs.Li)に達するまで定電流充電し、0.01Vを維持しながら電流が0.05Cになるまで定電圧充電した。充電が完了したセルを10分間休止させた後、放電時に電圧が1.5V(vs.Li)に達するまで0.1Cの定電流で放電した(2回実施、初期formation)。前記「C」はセルの放電速度であって、セルの総容量を総放電時間で割って得られた値を意味する。
【0146】
また、実施例1~5および比較例1~4により製造された負極活物質を用いて製造したコインフルセルをそれぞれ25℃で0.1C rateの電流で電圧が4.2V(vs.Li)に達するまで定電流充電し、4.2Vを維持しながら電流が0.05Cになるまで定電圧充電した。充電が完了したセルを10分間休止させた後、放電時に電圧が2.7V(vs.Li)に達するまで0.1Cの定電流で放電した(2回実施、初期formation)。
【0147】
以後、セルを25℃で1.0C rateの電流で電圧が4.2V(vs.Li)に達するまで定電流充電し、4.2Vを維持しながら電流が0.05Cになるまで定電圧充電した。充電が完了したコインセルを10分間休止させた後、放電時に電圧が2.7V(vs.Li)に達するまで1.0Cの定電流で放電するサイクルを繰り返した(1~100番目サイクル)。
【0148】
実施例1~5および比較例1~4により製造された負極活物質を用いたセルの測定された初期充電容量、初期放電容量、初期効率および寿命特性を下記表3に示した。
【0149】
初期充電容量および初期放電容量は、1番目サイクルでの充電および放電容量である。
【0150】
初期効率および寿命特性は、それぞれ下記数2および3から計算された。
【0151】
<数2>
初期効率[%]=[1番目サイクルでの放電容量/1番目サイクルでの充電容量]×100
【0152】
<数3>
寿命特性[%]=[100番目サイクルの放電容量/1番目サイクルの放電容量]×100
【0153】
【表3】
実施例1~実施例5は、比較例1~4に比べて電池の寿命特性が特に優れていることを確認することができた。
【0154】
すなわち、コア-シェル構造が形成されておらず、SiCが形成されなかった比較例1、コア-シェル構造が形成されなかったもののSiCは形成された比較例2、およびコア-シェル構造が形成されたもののSiCは形成されなかった比較例3と、実施例とを対比した時、実施例の負極活物質が適用された電池の寿命特性が比較例1~3の負極活物質の適用された電池に比べて優れていることを確認することができた。
【0155】
また、シリコン粒子の大きさが1μmを超える比較例4の負極活物質が適用された電池に比べても、実施例の負極活物質が適用された電池の寿命特性に優れていることを確認することができた。
【0156】
すなわち、本願のコア-シェル構造を有し、シェルに金属炭化物(SiC)が表面にコーティングされた金属粒子(Si)が含まれる負極活物質は、コア-シェル構造でなかったり、金属炭化物(SiC)が表面にコーティングされた金属粒子(Si)を含まない負極活物質に比べて優れた電池寿命特性を示した。
【0157】
本発明の範囲は上記の詳細な説明よりは後述する特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲の意味および範囲、そしてその均等概念から導出されるすべての変更または変形された形態が本発明の範囲に含まれると解釈されなければならない。
【産業上の利用可能性】
【0158】
本発明による負極活物質は、高容量および高エネルギー密度を有する長寿命の二次電池を提供する効果がある。
【0159】
また、負極活物質を高効率、低費用で製造できる効果がある。
【国際調査報告】