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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-05
(54)【発明の名称】粒子支援航跡場電子加速装置
(51)【国際特許分類】
   H05H 15/00 20060101AFI20240628BHJP
【FI】
H05H15/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023578699
(86)(22)【出願日】2022-06-21
(85)【翻訳文提出日】2024-01-05
(86)【国際出願番号】 US2022034275
(87)【国際公開番号】W WO2022271654
(87)【国際公開日】2022-12-29
(31)【優先権主張番号】63/212,889
(32)【優先日】2021-06-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500039463
【氏名又は名称】ボード オブ リージェンツ,ザ ユニバーシティ オブ テキサス システム
【氏名又は名称原語表記】BOARD OF REGENTS,THE UNIVERSITY OF TEXAS SYSTEM
【住所又は居所原語表記】210 West 7th Street Austin,Texas 78701 U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100135703
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 英隆
(74)【代理人】
【識別番号】100161883
【弁理士】
【氏名又は名称】北出 英敏
(74)【代理人】
【識別番号】100221556
【弁理士】
【氏名又は名称】金田 隆章
(72)【発明者】
【氏名】ヘーゲリッチ,ビョルン マニュエル
(72)【発明者】
【氏名】アニキュレセイ,コンスタンティン
【テーマコード(参考)】
2G085
【Fターム(参考)】
2G085AA20
2G085BA04
(57)【要約】
本明細書に開示されるのは、粒子支援航跡場電子加速装置、当該装置を使用して生成された加速電子、及びその使用方法である。装置は、ガスセルを備える加速器チャンバを備え、加速器チャンバは、その中に低密度ガス及び粒子を含み、加速器チャンバは、パルスを受信するように構成されており、パルスは、低密度ガスの少なくとも一部をイオン化し、それによって、加速器チャンバ内に電子を含むプラズマ波(例えば、航跡場)を生成することと、粒子の少なくとも一部をイオン化し、それによって、自由電子を生成することと、行うように構成されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒子支援航跡場電子加速装置であって、
ガスセルを備え、かつ0.5センチメートル(cm)~500cmの長さを有する、加速器チャンバを備え、
前記加速器チャンバが、その中に低密度ガス及び粒子を含み、
前記加速器チャンバが、パルスを受信するように構成されており、前記パルスが、
前記低密度ガスの少なくとも一部をイオン化し、それによって、前記加速器チャンバ内に電子を含むプラズマ波(例えば、航跡場)を生成することと、
前記粒子の少なくとも一部をイオン化し、それによって、自由電子を生成することと、を行うように構成されており、
前記プラズマからの前記電子の少なくとも一部及び前記自由電子の少なくとも一部が、前記航跡場に注入され、前記プラズマからの前記電子の前記一部及び前記自由電子の前記一部が、前記注入された電子であり、
前記注入された電子が、前記航跡場によって10GeV以上のエネルギーまで加速されている、装置。
【請求項2】
粒子支援航跡場電子加速装置であって、
ガスセルを備え、かつ0.5cm~500cmの長さを有する、加速器チャンバを備え、
前記加速器チャンバが、その中に低密度ガス及び粒子を含み、
前記加速器チャンバが、パルスを受信するように構成されており、前記パルスが、
前記低密度ガスの少なくとも一部をイオン化し、それによって、前記加速器チャンバ内に電子を含むプラズマ波(例えば、航跡場)を生成することと、
前記粒子の少なくとも一部をイオン化し、それによって、自由電子を生成することと、を行うように構成されており、
前記プラズマからの前記電子の少なくとも一部及び前記自由電子の少なくとも一部が、前記航跡場に注入され、前記プラズマからの前記電子の前記一部及び前記自由電子の前記一部が、前記注入された電子であり、
前記注入された電子が、前記航跡場によって加速されており、
前記注入された電子が、前記粒子が存在しない場合に生成されるエネルギーよりも400%以上大きいエネルギーまで加速されている、装置。
【請求項3】
前記加速器チャンバ(例えば、前記ガスセル)が、0.5cm~250cm、0.5cm~100cm、0.5cm~50cm、又は10cm~20cmの長さを有する、請求項1又は2に記載の装置。
【請求項4】
前記ガスセルが、0.05cm~50,000cmの容積を有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の装置。
【請求項5】
前記粒子が、金属粒子を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の装置。
【請求項6】
前記金属粒子が、Al、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Mo、Pd、Ag、Pt、Au、及びそれらの組み合わせからなる群から選択された金属を含む、請求項5に記載の装置。
【請求項7】
前記粒子が、1ナノメートル(nm)~100マイクロメートル(μm)、1nm~1000nm、又は10nm~100nmの平均粒径を有する、請求項1~6のいずれか一項に記載の装置。
【請求項8】
前記粒子が、実質的に球形の形状を有する、請求項1~7のいずれか一項に記載の装置。
【請求項9】
前記粒子が、単一の粒子である、請求項1~8のいずれか一項に記載の装置。
【請求項10】
前記粒子が、複数の粒子である、請求項1~8のいずれか一項に記載の装置。
【請求項11】
前記低密度ガスが、ヘリウムを含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の装置。
【請求項12】
前記装置が、前記粒子を前記加速器チャンバに注入するように構成された粒子注入器を更に備える、請求項1~11のいずれか一項に記載の装置。
【請求項13】
前記装置が、前記粒子を提供するように構成された粒子源を更に備える、請求項1~12のいずれか一項に記載の装置。
【請求項14】
粒子が、金属粒子を含み、前記装置が、金属ターゲットをアブレーションし、それによって、前記金属粒子を生成するように構成されたアブレーションレーザを更に備える、請求項13に記載の装置。
【請求項15】
前記パルスが、レーザパルスを含む、請求項1~14のいずれか一項に記載の装置。
【請求項16】
前記レーザパルスを生成するように構成されたレーザ源を更に備える、請求項15に記載の装置。
【請求項17】
前記パルスが、前記加速器チャンバの前記長さよりも大きい焦点ずれ長を有する、請求項1~16のいずれか一項に記載の装置。
【請求項18】
請求項1~17のいずれか一項に記載の装置を使用して、電子ビームを生成する方法。
【請求項19】
請求項18に記載の方法によって生成された前記電子ビームを使用する方法。
【請求項20】
請求項1~17のいずれか一項に記載の装置を使用して、電子を加速する方法。
【請求項21】
請求項20に記載の方法によって生成された、前記加速電子を使用する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年6月21日に出願された米国仮出願第63/212,889号の優先権の利益を主張するものであり、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
政府支援の声明
本発明は、空軍科学研究局によって授与された助成金番号FA9550-17-1-0264に基づく政府支援を受けて行われた。政府は、本発明に一定の権利を有する。
【背景技術】
【0003】
レーザ航跡場加速は、約km規模の施設を、ルームサイズの機械まで縮小する潜在性を有する。世界的な主な研究目標は、単一の加速ステージで>10GeVの電子エネルギーに達するまで十分に長く加速プロセスをアクティブに保つことである。本明細書で考察される装置、方法、及びシステムは、これら及び他のニーズに対処する。
【発明の概要】
【0004】
本明細書で具体化され広範に説明される、開示された装置、方法、及びシステムの目的に従って、開示される主題は、粒子支援航跡場電子加速装置、当該装置を使用して生成される加速電子、及びその使用方法に関する。
【0005】
開示された装置、システム、及び方法の追加の利点は、以下の説明に部分的に記載され、またその説明から部分的に明らかであろう。開示された装置、システム、及び方法の利点は、添付の特許請求の範囲において特に指摘された要素及び組み合わせによって実現及び達成されるであろう。前述の一般的な説明及び以下の詳細な説明の両方は、例示的かつ説明的なものにすぎず、特許請求の範囲に記載されているように、開示された装置、システム、及び方法を限定するものではないことが理解されるべきである。
【0006】
本発明の1つ以上の実施形態の詳細は、添付の図面及び以下の説明に記載されている。本発明の他の特徴、目的、及び利点は、説明及び図面、並びに特許請求の範囲から明らかになろう。
【図面の簡単な説明】
【0007】
添付図面は、本明細書の一部に組み込まれ、本明細書の一部を構成し、本開示のいくつかの態様を例解し、明細書とともに、本開示の原理を説明するのに役立つ。
【0008】
図1】ナノ粒子を使用しないテキサスペタワットレーザ(Texas Petawatt Laser)での航跡場加速は、ピークエネルギー2~3GeVを有する幅広い電子スペクトルをもたらす。
図2】ナノ粒子注入を用いたテキサスペタワットレーザでの航跡場加速は、ピークエネルギーを>10GeVにブーストすることができる。しかしながら、正確なビーム特性は、ドライバレーザパルスを用いたナノ粒子の詳細な時空間の重なりに依存する。
図3】ナノ粒子注入を用いたテキサスペタワットレーザでの航跡場加速は、約6GeVで観察される狭いピークを呈するスペクトルをもたらすことができる。正確なビーム特性は、ドライバレーザパルスを用いたナノ粒子の詳細な時空間の重なりに依存する。
図4】テキサスペタワットレーザでの航跡場加速:(上部)ナノ粒子がないため、ピークエネルギー2~3GeVの広いスペクトルをもたらす。ナノ粒子注入によりエネルギーが、>10GeVにブーストされる(下部)。
図5】部分的断面図を有する、例示的なガスセルの概略例解図である。
図6】一実施形態による、本明細書に開示される例示的な装置の概略例解図である。
図7】一実施形態による、本明細書に開示される例示的な装置の概略例解図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本明細書に説明される装置、方法、及びシステムは、開示される主題の具体的な態様の以下の詳細な説明及びそれに含まれる実施例を参照することによってより容易に理解され得る。
【0010】
本装置、方法、及びシステムが開示及び説明される前に、以下に説明される態様は、具体的な合成方法又は具体的な試剤に限定されず、したがって、当然ながら変動し得ることを理解されたい。本明細書で使用される用語は特定の態様を説明することのみを目的としており、限定することを意図していないことも理解されるべきである。
【0011】
また、本明細書を通して、様々な刊行物が参照されている。開示された事項が関連する技術水準をより完全に説明するために、これらの刊行物の開示内容全体が参照により本出願に組み込まれる。開示された参考文献はまた、その参考文献が依拠している文中で考察されている、その中に含まれる材料について、参照により個別かつ具体的に本明細書に組み込まれる。
【0012】
本明細書及び添付の特許請求の範囲では、以下の意味を有するように定義されるいくつかの用語に言及する。
【0013】
本明細書の説明及び特許請求の範囲を通して、「備える、含む(comprise)」と、「備えている、含んでいる(comprising)」及び「備える、含む(comprises)」などのこの用語の他の形態は、限定するものではないが、例えば、他の追加物、構成要素、整数又は工程などの排除を意図するものではない。
【0014】
説明及び添付の特許請求の範囲で使用されるように、単数形「a」、「an」、及び「the」は、文脈が明らかにそうでないことを指示しない限り、複数の指示対象を含む。したがって、例えば、「組成物」への言及は2つ以上のそのような組成物の混合物を含み、「作用剤」への言及は2つ以上のそのような作用剤の混合物を含み、「構成要素」への言及は2つ以上のそのような構成要素の混合物を含む、などである。
【0015】
「任意選択的な」又は「任意選択的に」とは、後で説明する事象又は状況が発生し得る、又は発生し得ないことを意味し、説明には、事象又は状況が発生する場合及び発生しない場合が含まれる。
【0016】
本明細書では、範囲は、「約」を用いた一方の特定の値から、及び/又は「約」を用いた他方の特定の値までを表すことができる。「約」とは、値の5%以内、例えば、値の4%、3%、2%、又は1%以内を意味する。そのような範囲が表される場合、別の実施形態には、一方の特定の値から、及び/又は他方の特定の値までが含まれる。同様に、先行する「約」を使用することにより値が近似値として表される場合、その特定の値は別の態様をなすことが理解されよう。更に、範囲の各々の端点は、他の端点と関連している場合も、他の端点とは独立している場合でも、有意であることが理解されるであろう。
【0017】
値は、本明細書では「平均」値として表すことができる。「平均」は、概して、統計的な平均値を指す。
【0018】
「実質的に」は、5%以内、例えば、4%、3%、2%、又は1%以内を意味する。
【0019】
「例示的(exemplary)」は、「の例(an example of)」を意味し、好ましい又は理想的な実施形態の表示を伝えることを意図していない。「など(such as)」は、限定的な意味ではなく、説明目的で使用される。
【0020】
本明細書を通して、識別子「第1」及び「第2」は、開示された主題の様々な構成要素及び工程を区別する際に役立つようにもっぱら使用されることを理解されたい。識別子「第1」及び「第2」は、これらの用語によって修正された構成要素又は工程に対して、いかなる特定の順序、量、好み、又は重要性を暗示することを意図するものではない。
【0021】
本明細書で使用される「又はその組み合わせ」という用語は、その用語に先行する列挙された項目の全ての置換及び組み合わせを指す。例えば、「A、B、C、又はそれらの組み合わせ」は、以下のうちの少なくとも1つを含むことを意図している。A、B、C、AB、AC、BC、又はABC、また特定の状況で順序が重要な場合は、BA、CA、CB、CBA、BCA、ACB、BAC、又はCAB。この例を続けると、BB、AAA、AB、BBC、AAABCCCC、CBBAAA、CABABBなどの1つ以上の項目又は用語の繰り返しを含む組み合わせが明示的に含まれる。文脈から他に明らかでない限り、典型的には任意の組み合わせにおける項目の数又は用語に制限がないことを当業者は理解するであろう。
【0022】
本明細書で開示するのは、粒子支援航跡場電子加速装置である。例えば、本明細書で開示するのは、ガスセルを備える加速器チャンバ(例えば、単一の加速器チャンバ)、を備える、粒子支援航跡場電子加速装置である。例示的なガスセルが、図5に示されている。
【0023】
加速器チャンバ(例えば、ガスセル)は、例えば、0.5センチメートル(cm)以上(例えば、0.6cm以上、0.7cm以上、0.8cm以上、0.9cm以上、1cm以上、1.25cm以上、1.5以上、1.75cm以上、2cm以上、2.5cm以上、3cm以上、3.5cm以上、4cm以上、4.5cm以上、5cm以上、6cm以上、7cm以上、8cm以上、9cm以上、10cm以上、11cm以上、12cm以上、13cm以上、14cm以上、15cm以上、16cm以上、17cm以上、18cm以上、19cm以上、20cm以上、25cm以上、30cm以上、35cm以上、40cm以上、45cm以上、50cm以上、60cm以上、70cm以上、80cm以上、90cm以上、100cm以上、125cm以上、150cm以上、175cm以上、200cm以上、225cm以上、250cm以上、275cm以上、300cm以上、325cm以上、350cm以上、375cm以上、400cm以上、425cm以上、450cm以上、又は475cm以上)の長さを有することができる。いくつかの実施例では、加速器チャンバ(例えば、ガスセル)は、500cm以下(例えば、475cm以下、450cm以下、425cm以下、400cm以下、375cm以下、350cm以下、325cm以下、300cm以下、275cm以下、250cm以下、225cm以下、200cm以下、175cm以下、150cm以下、125cm以下、100cm以下、90cm以下、80cm以下、70cm以下、60cm以下、50cm以下、45cm以下、40cm以下、35cm以下、30cm以下、25cm以下、20cm以下、19cm以下、18cm以下、17cm以下、16cm以下、15cm以下、14cm以下、13cm以下、12cm以下、11cm以下、10cm以下、9cm以下、8cm以下、7cm以下、6cm以下、5cm以下、4.5cm以下、4cm以下、3.5cm以下、3cm以下、2.5cm以下、2cm以下、1.75cm以下、1.5cm以下、1.25cm以下、1cm以下、0.9cm以下、0.8cm以下、0.7cm以下、又は0.6cm以下)の長さを有することができる。加速器チャンバ(例えば、ガスコール)の長さは、上記の最小値のいずれかから、上記の最大値のいずれかまでの範囲であり得る。例えば、加速器チャンバ(例えば、ガスセル)は、0.5センチメートル(cm)~500cm(例えば、0.5cm~250cm、250cm~500cm、0.5cm~5cm、5cm~50cm、50cm~500cm、1cm~500cm、0.5cm~450cm、1cm~450cm、0.5cm~400cm、0.5cm~200cm、0.5cm~100cm、1cm~50cm、又は10cm~20cm)の長さを有することができる。
【0024】
いくつかの実施例では、加速器チャンバ(例えば、ガスセル)は、0.05cm以上(例えば、0.06cm以上、0.07cm以上、0.08cm以上、0.09cm以上、0.1cm以上、0.2cm以上、0.3cm以上、0.4cm以上、0.5cm以上、0.75cm以上、1cm以上、1.25cm以上、1.5cm以上、1.75cm以上、2cm以上、2.25cm以上、2.5cm以上、3cm以上、3.5cm以上、4cm以上、4.5cm以上、5cm以上、6cm以上、7cm以上、8cm以上、9cm以上、10cm以上、15cm以上、20cm以上、25cm以上、30cm以上、35cm以上、40cm以上、45cm以上、50cm以上、60cm以上、70cm以上、80cm以上、90cm以上、100cm以上、125cm以上、150cm以上、175cm以上、200cm以上、225cm以上、250cm以上、275cm以上、300cm以上、350cm以上、400cm以上、450cm以上、500cm以上、600cm以上、700cm以上、800cm以上、900cm以上、1000cm以上、1250cm以上、1500cm以上、1750cm以上、2000cm以上、2250cm以上、2500cm以上、3000cm以上、3500cm以上、4000cm以上、4500cm以上、5000cm以上、6000cm以上、7000cm以上、8000cm以上、9000cm以上、10,000cm以上、12,500cm以上、15,000cm以上、17,500cm以上、20,000cm以上、22,500cm以上、25,000cm以上、30,000cm以上、35,000cm以上、40,000cm以上、45,000cm以上、50,000cm以上、60,000cm以上、70,000cm以上、80,000cm以上、90,000cm以上、100,000cm以上、125,000cm以上、150,000cm以上、175,000cm以上、200,000cm以上、225,000cm以上、250,000cm以上、300,000cm以上、350,000cm以上、400,000cm以上、又は450,000cm以上)の容積を有する。
【0025】
いくつかの実施例では、加速器チャンバ(例えば、ガスセル)は、500,000cm以下(例えば、450,000cm以下、400,000cm以下、350,000cm以下、300,000cm以下、250,000cm以下、225,000cm以下、200,000cm以下、175,000cm以下、150,000cm以下、125,000cm以下、100,000cm以下、90,000cm以下、80,000cm以下、70,000cm以下、60,000cm以下、50,000cm以下、45,000cm以下、40,000cm以下、35,000cm以下、30,000cm以下、25,000cm以下、22,500cm以下、20,000cm以下、17,500cm以下、15,000cm以下、12,500cm以下、10,000cm以下、9000cm以下、8000cm以下、7000cm以下、6000cm以下、5000cm以下、4500cm以下、4000cm以下、3500cm以下、3000cm以下、2500cm以下、2250cm以下、2000cm以下、1750cm以下、1500cm以下、1250cm以下、1000cm以下、900cm以下、800cm以下、700cm以下、600cm以下、500cm以下、450cm以下、400cm以下、350cm以下、300cm以下、275cm以下、250cm以下、225cm以下、200cm以下、175cm以下、150cm以下、125cm以下、100cm以下、90cm以下、80cm以下、70cm以下、60cm以下、50cm以下、45cm以下、40cm以下、35cm以下、30cm以下、25cm以下、20cm以下、15cm以下、10cm以下、9cm以下、8cm以下、7cm以下、6cm以下、5cm以下、4.5cm以下、4cm以下、3.5cm以下、3cm以下、2.5cm以下、2.25cm以下、2cm以下、1.75cm以下、1.5cm以下、1.25cm以下、1cm以下、0.75cm以下、0.5cm以下、0.4cm以下、0.3cm以下、0.2cm以下、0.1cm以下、0.09cm以下、0.08cm以下、0.07cm以下、又は0.06cm以下)の容積を有する。
【0026】
加速器チャンバ(例えば、ガスセル)の容積は、上記の最小値のいずれかから、上記の最大値のいずれかまでの範囲であり得る。例えば、加速器チャンバ(例えば、ガスセル)は、0.05cm~500,00cm(例えば、0.05cm~500cm、500cm~500,000cm、0.05cm~0.5cm、0.5cm~5cm、5cm~50cm、50cm~500cm、500cm~5000cm、5000cm~50,000cm、50,000cm~500,000cm、0.05cm~450,000cm、0.5cm~50,000cm、又は0.5cm~450,000cm)の容積を有することができる。
【0027】
加速器チャンバは、その中に低密度ガス及び粒子を含む。低密度ガスは、任意の好適なガスを含むことができる。いくつかの実施例では、低密度ガスは、水素、ヘリウム、窒素など、又はそれらの組み合わせを含む。いくつかの実施例では、低密度ガスは、ヘリウムを含む。
【0028】
加速器チャンバは、近位端及び遠位端を有し、近位端は、パルスを受信するように構成された端部である。いくつかの実施例では、粒子は、加速器チャンバの近位端又はその近くに位置する。いくつかの実施例では、粒子は、加速器チャンバの遠位端又はその近くに位置することができる。いくつかの実施例では、粒子は、加速器チャンバ全体に分布した複数の粒子を含む。複数の粒子は、例えば、加速器チャンバ全体に均一に、不均一に、順番に、又はランダムに分布させることができる。
【0029】
本明細書で使用される場合、「粒子(a particle)」及び「粒子(the particle)」は、任意の配置で任意の数の粒子を含むことを意味する。いくつかの実施例では、粒子は、単一の粒子である。いくつかの実施例では、粒子は、複数の粒子(例えば、2つ以上、3つ以上、4つ以上、5つ以上、10以上、15以上、20以上、25以上、30以上、40以上、50以上、75以上、100以上、150以上、200以上、250以上、300以上、400以上、500以上、750以上、1000以上、1500以上、2000以上、2500以上、3000以上、4000以上、5000以上、7500以上、1×10以上、2.5×10以上、5×10以上、7.5×10以上、1×10以上、2.5×10以上、5×10以上、7.5×10以上、1×10以上、5×10以上、1×10以上、5×10以上、1×10以上、5×10以上、1×10以上、5×10以上、1×1010以上、1×1011以上、1×1012以上、1×1013以上、1×1014以上、1×1015以上、1×1016以上、1×1017以上、1×1018以上、1×1019以上、又は1×1020以上)である。
【0030】
粒子は、任意の好適な材料を含むことができる。例えば、粒子は、金属、半金属、非金属、それらの誘導体、又はそれらの組み合わせを含むことができる。粒子は、例えば、半導体、セラミック、透明導電性酸化物、ポリマー、炭素材料、金属(例えば、合金)、窒化物、酸化物、ケイ化物、ゲルマニド、炭化物、それらの誘導体、又はそれらの組み合わせを含むことができる。
【0031】
いくつかの実施例では、粒子は、Be、B、C、Mg、Al、Si、P、S、Ca、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Ge、As、Se、Sr、Y、Zr、Nb、Mo、Tc、Ru、Rh、Pd、Ag、Cd、In、Sn、Sb、Te、Ba、Hf、Ta、W、Re、Os、Ir、Pt、Au、Hg、Tl、Pb、Bi、Po、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、又はそれらの組み合わせ、を含むことができる。
【0032】
いくつかの実施例では、粒子は、金属粒子を含む。いくつかの実施例では、金属粒子は、Be、Mg、Al、Ca、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Sr、Y、Zr、Nb、Mo、Tc、Ru、Rh、Pd、Ag、Cd、In、Sn、Ba、Hf、Ta、W、Re、Os、Ir、Pt、Au、Hg、Tl、Pb、Bi、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される金属を含む。いくつかの実施例では、金属粒子は、Al、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Mo、Pd、Ag、Pt、Au、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される金属を含む。
【0033】
粒子は、平均粒径を有することができる。「平均粒径(Average particle size)」及び「平均粒径(mean particle size)」は、本明細書において互換的に使用され、一般に、粒子母集団中の粒子の統計的平均粒径を指す。例えば、実質的に球形の形状を有する複数の粒子の平均粒径は、複数の粒子の平均直径を含み得る。実質的に球形の形状を有する粒子の場合、粒子の直径は、例えば、流体力学的直径を指すことができる。本明細書で使用される場合、粒子の流体力学的直径は、粒子の表面上の2点間の最大直線距離を指すことができる。平均粒径は、走査型電子顕微鏡、透過型電子顕微鏡、原子間力顕微鏡、X線顕微鏡、及び/又は動的光散乱による評価などの、当技術分野で知られている方法を使用して測定することができる。
【0034】
いくつかの実施例では、粒子は、1ナノメートル(nm)以上(例えば、2nm以上、3nm以上、4nm以上、5nm以上、6nm以上、7nm以上、8nm以上、9nm以上、10nm以上、15nm以上、20nm以上、25nm以上、30nm以上、35nm以上、40nm以上、45nm以上、50nm以上、60nm以上、70nm以上、80nm以上、90nm以上、100nm以上、125nm以上、150nm以上、175nm以上、200nm以上、225nm以上、250nm以上、300nm以上、350nm以上、400nm以上、450nm以上、500nm以上、600nm以上、700nm以上、800nm以上、900nm以上、1マイクロメートル(ミクロン、μm)以上、1.25μm以上、1.5μm以上、1.75μm以上、2μm以上、2.5μm以上、3μm以上、3.5μm以上、4μm以上、4.5μm以上、5μm以上、6μm以上、7μm以上、8μm以上、9μm以上、10μm以上、15μm以上、20μm以上、25μm以上、30μm以上、35μm以上、40μm以上、45μm以上、50μm以上、60μm以上、70μm以上、80μm以上、又は90μm以上)の平均粒径を有することができる。いくつかの実施例では、粒子は、100マイクロメートル(ミクロン、μm)以下(例えば、90μm以下、80μm以下、70μm以下、60μm以下、50μm以下、45μm以下、40μm以下、35μm以下、30μm以下、25μm以下、20μm以下、15μm以下、10μm以下、9μm以下、8μm以下、7μm以下、6μm以下、5μm以下、4.5μm以下、4μm以下、3.5μm以下、3μm以下、2.5μm以下、2μm以下、1.75μm以下、1.5μm以下、1.25μm以下、1μm以下、900nm以下、800nm以下、700nm以下、600nm以下、500nm以下、450nm以下、400nm以下、350nm以下、300nm以下、250nm以下、225nm以下、200nm以下、175nm以下、150nm以下、125nm以下、100nm以下、90nm以下、80nm以下、70nm以下、60nm以下、50nm以下、45nm以下、40nm以下、35nm以下、30nm以下、25nm以下、20nm以下、15nm以下、10nm以下、9nm以下、8nm以下、7nm以下、6nm以下、5nm以下、4nm以下、3nm以下、又は2nm以下)の平均粒径を有することができる。粒子の平均粒径は、上記の最小値のいずれかから上記の最大値のいずれかまでの範囲であり得る。例えば、粒子は、1ナノメートル(nm)~100マイクロメートル(ミクロン、μm)(例えば、1nm~100nm、100nm~100μm、1nm~10nm、10nm~100nm、100nm~1000nm、1000nm~10μm、10μm~100μm、10nm~100μm、1nm~90μm、10nm~90μm、又は1nm~1000nm)の平均粒径を有することができる。
【0035】
いくつかの実施例では、粒子は、実質的に単分散であり得る。本明細書で使用される場合、「単分散」及び「均一サイズ分布」とは、一般に、全ての粒子が同じ又はほぼ同じサイズである粒子の集団をいう。本明細書で使用される場合、単分散分布とは、分布の80%(例えば、分布の85%、分布の90%、又は分布の95%)が中央粒径の25%以内にある粒子分布を指す(例えば、中央粒径の20%以内、中央粒径の15%以内、中央粒径の10%以内、又は中央粒径の5%以内)。
【0036】
粒子は、任意の形状(例えば球、棒、四辺形、楕円形、三角形、多角形、等)の粒子を含むことができる。いくつかの実施例では、粒子は、規則的な形状、不規則的な形状、等方性の形状、又は異方性の形状を有することができる。いくつかの実施例では、粒子は、実質的に球形の形状を有する。
【0037】
低密度ガス及び粒子を含む加速器チャンバは、パルスを受信するように構成され、パルスは、低密度ガスの少なくとも一部をイオン化し、それによって、加速器チャンバ内に電子を含むプラズマ波(例えば、航跡場)を生成するように構成されている。パルスは、粒子の少なくとも一部をイオン化し、それによって、自由電子を生成するように更に構成されている。プラズマからの電子の少なくとも一部及び自由電子の少なくとも一部が、航跡場に注入され、プラズマからの電子の当該一部及び自由電子の当該一部が、注入された電子である。注入された電子は、例えば、航跡場により加速されて、それによって、電子ビームを生成する。加速長が十分に長い場合、航跡場での初期加速に続いて、初期航跡場で加速された電子束によって駆動されるプラズマ航跡場(PWFA)で更に加速することができる。この第2のプロセスで加速された電子は、更に高いエネルギーに達することができる。例示的な装置が、図6に示されている。
【0038】
注入された電子は、10ギガ電子ボルト(GeV)以上(例えば、15GeV以上、20GeV以上、25GeV以上、30GeV以上、35GeV以上、40GeV以上、45GeV以上、50GeV以上、60GeV以上、70GeV以上、80GeV以上、90GeV以上、又は100GeV以上)のエネルギーまで加速することができる。
【0039】
いくつかの実施例では、注入された電子は、粒子が存在しない場合に生成されるエネルギーよりも400%以上(例えば、425%以上、450%以上、475%以上、500%以上、525%以上、550%以上、575%以上、600%以上、650%以上、700%以上、750%以上、8000%以上、900%以上、又は1000%以上)大きいエネルギーまで加速することができる。
【0040】
いくつかの実施例では、装置は、粒子を加速器チャンバに注入するように構成された粒子注入器を更に備える。任意の好適な粒子注入器を、使用することができる。いくつかの実施例では、粒子注入器は、ガスジェットを備える。いくつかの実施例では、粒子注入器は、粒子の流れを加速器チャンバに注入するように構成された空気力学的レンズを備える。
【0041】
いくつかの実施例では、装置は、粒子を提供するように構成された粒子源を更に備える。
【0042】
特定の実施例では、図7に示すように、粒子は金属粒子を含み、装置は、金属ターゲットをアブレーションするように構成されたアブレーションレーザを更に備え、それによって、金属粒子を生成することができる。
【0043】
いくつかの実施例では、パルスは、レーザパルスを含む。いくつかの実施例では、装置は、レーザパルスを生成するように構成されたレーザ源を更に備えることができる。
【0044】
いくつかの実施例では、パルスは、加速器チャンバの長さよりも大きい焦点ずれ長を有する。
【0045】
また、本明細書では、本明細書で開示される装置のいずれかを使用して、電子ビームを生成する方法も開示されている。また、本明細書では、本明細書に開示される方法によって生成される電子ビームを使用する方法も開示されている。
【0046】
本発明のいくつかの実施形態を説明した。それにもかかわらず、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく、様々な修正を加えることができることが理解されよう。したがって、他の実施形態は、添付の特許請求の範囲に記載の範囲内にある。
【0047】
以下の実施例は、本明細書に説明されるシステム及び方法の特定の態様を更に例解することを意図しており、特許請求の範囲を限定することを意図するものではない。
【実施例
【0048】
以下の実施例は、開示された主題にかかる方法及び結果を例解するために以下に記載される。これらの実施例は、本明細書に開示されている主題の全ての態様を含むことを意図するものではなく、むしろ代表的な方法及び結果を例解することを意図している。これらの実施例は、当業者に明らかである本発明の均等物及び変形を排除することを意図していない。
【0049】
数字(例えば、量、温度など)に関して正確性を確保するための努力がなされているが、一部の誤差及び偏差が考慮されるべきである。特に明記しない限り、部は重量部であり、温度は℃単位又は周囲温度であり、圧力は大気圧であるか又は大気圧に近い。測定条件、例えば、成分濃度、温度、圧力、及び他の測定範囲、並びに説明されたプロセスを最適化するために使用することができる条件には、多数の変形及び組み合わせがある。
【0050】
実施例1-ナノ粒子注入による10GeVを超えるレーザ航跡場加速
高度に相対論的電子ビームを備えた超高強度レーザ場の衝突は、シュウィンガーの限界を超えてEM場を作成する唯一の現在知られている方法であり、これは、強く相対論的場において量子プロセスを観察する最良の機会を与える。現在の高エネルギー電子加速器は、共同設置された超高強度レーザを有しないため、唯一の実行可能な方法は、レーザ自体を使用して航跡場加速を介して電子ビームを加速することである。更に、レーザ航跡場加速は、約km規模の施設を、病院、企業、等などの個々のユーザにとって入手可能であるルームサイズの機械まで縮小し、かつ、更にはそれらをモバイルになるのに十分に小さくする潜在性を有する。したがって、GeV電子ビームは、比較的低コストかつ大きな利用可能性で、多くの用途にとって利用可能になる。GeV電子ビームは、SLACのリニアックコヒーレント光源及びアルゴンヌ国立研究所の高度な光子源などの最新の光源を駆動している。それらは、材料科学、医学及び医薬品研究、安全保障及び不拡散、並びに多くの他の分野の研究に革命をもたらした。残念ながら、これらの施設は、非常に募集枠を上回って申し込まれており、特に民間商用ユーザ及び機密の国家安全保障用途の場合、利用可能なビーム時間は限られている。しかしながら、更に大規模な加速器施設を建設するには、法外な費用がかかる。レーザ駆動の電子加速器は、10,000倍(>GV/cm対約10MV/m)の加速勾配を作成及び使用することができるため、この問題を解決することができる。したがって、同じエネルギーへの加速は、1000~10,000倍の短い距離で達成することができる。レーザ及び関連ハードウェアを考慮しても、結果は、約km規模ではなく、ルームサイズの機械になる。
【0051】
原理実証実験が、本当の潜在性を実証してから久しいが、レーザ加速器は、機能する機械というよりもむしろ依然として実験室実験であり、ビームは、依然として多くの点で従来の加速器よりも劣っている。加速プロセスの詳細な物理的理解及びそれを詳細に制御する方法は、現在の最先端の研究及び開発の主題である。世界的な主な研究目標は、単一の加速ステージで>10GeVの電子エネルギーに達するまで十分に長く加速プロセスをアクティブに保つことである。これは、レーザ駆動XFELS及びレーザベースの衝突型加速器の両方で識別されている要件である。他の重要な研究努力は、電荷、発散、エネルギー拡散などのビームパラメータを制御することに集中している。
【0052】
結果。ビームエネルギーを増加させ、他のビームパラメータを制御することができる方法は、ナノ粒子支援航跡場電子加速(NA-LWFA)である。
【0053】
修正されたNA-LWFA方法を使用して、テキサスペタワットレーザを約0.8PWの電力レベルで使用して、電子束の>10GeVのピークエネルギーまでの加速が実証された。電子は、毛細管又は予熱されたプラズマチャネルなどの追加のガイド構造を使用せず、ヘリウムを充填した長さ10cmのガスセル内で加速された。航跡への電子注入は、ヘリウムガス全体に分布されたアルミニウムナノ粒子によってトリガされた。電子エネルギーにおける4~5倍の強化が、図1図3に示すように、約2~3GeVから約>10GeVのピークエネルギーまでの最適条件で観察された。観察されたビーム電荷は、ナノクーロン範囲にあり、ビーム発散は、約1~2mradである。いくつかのショットで観察された個々の電子ピークは、わずか数パーセントのエネルギーの広がりを呈する。ペタワットレーザを用いた最初の原理実証実験の結果は、テキサスペタワットレーザが、波面に著しいレーザパルス変動を有する単一ショットレーザ(約4ショット/日)であるため、大きい確率性を呈する。しかしながら、ナノ粒子を使用しない長年にわたる航跡場実験では、数百回のショットにわたって>2.5GeVのエネルギーは観察されなかった。ナノ粒子を用いた単一の実験では、全てのピークエネルギーで電子ビームを生成した全てのショットは、3GeVよりも大きく、多くの場合5~7GeVであり、少なくとも2回は、10GeVよりも大きい。ナノ粒子は、全加速容積全体にランダムに分布され、プロセスに更なる確率性を加え、場合によっては、ナノ粒子が最大エネルギーのための完全なスポットに存在することをもたらし、一方他のショットでは、複数のナノ粒子が加速に寄与し、複数の電子束を生成する。
【0054】
更に、この方法はまた、より小型のサブPWレーザシステムでも機能することができ、それを幅広い用途及びシステムで魅力あるものとしている。CoReLSでの100TWレーザビームラインを使用した原理実証NA-LWFA実験は、ビームエネルギーが約50%増加し、発散が約3倍減少し、エネルギー拡散が約10倍減少することを示した。
【0055】
LWFAにおける以前の記録は、ローレンス・バークレー国立研究所のBELLAセンターのチームによって行われた実験で達成された。彼らは、20cmの放電毛細管、レーザヒータ、0.88PWの一次レーザを含む非常に複雑なセットアップを使用して、当時の世界記録である7.8GeVの電子ビームを生成した。この種の設計は、非常に高い電子エネルギーを生成するが、多くの欠点もある。例えば、毛細管の内径が数百ミクロンであるため、メインレーザ及びレーザヒータのポインティング安定性は、非常に優れている必要がある。一方で、本明細書で説明するシステムのターゲットは、3mmピンホール開口部を有する3cm幅である。別の問題は、放電毛細管に関連しており、精巧なパルス電力セットアップを必要とする。また、毛細管は、放電のためにすぐに損傷し、高繰り返し率の動作に対して重大な課題を引き起こす。本明細書で説明するシステムのターゲットは、いかなる放電又はパルス電力も使用せず、このため同じ問題に悩まされることはない。追加的に、毛細管壁は、相互作用領域の何らかの光学的プロービングを非常に困難にするのに対し、本明細書で説明するシステムのガスセルは、はるかに容易な診断のためのアクセスを提供する。最後になるが、LBNLセットアップは、7.8GeVを達成するために20cmターゲットを必要とするのに対し、本明細書で説明するセットアップは、わずか10cmで>10GeVに達した。
【0056】
複雑なナノ粒子-レーザ相互作用及び注入物理を理解して制御するために、更なる研究を行うことができる。最初の結果は、観察されたエネルギーが物理学ではなく、ターゲットサイズによって制限されたことを示唆している。注入物理学を支配するもの、並びにサイズ、材料、及び位置などのナノ粒子の特性への依存性を更に調査することができる。マルチ粒子の注入が、一部のショットで観察されたが、全てのショットでは観察されなかった。実証された利得をより小型で高い繰り返し率のシステムにどの程度移すことができるか、及び更なる最適化によって利得が更にもっと増加するかどうかを、更に調査することができる。
【0057】
追加の実験において、単一のTPW駆動ステージで達成可能な粒子エネルギーが最大化されるであろう。レーザパラメータ及びターゲットパラメータに対する加速の依存性が、電子ビーム電荷及びエミッタンスを最適化するために調査され、高度な診断を処理することによってナノ粒子物理の詳細な理解を得ることができる。これらの目標は、より多くの実験データを収集し、診断を改善し、ターゲットを最適化し、実験のシミュレーションを実行して詳細なメカニズムを理解することによって、達成することができる。独自のアダプティブメッシュリファインメント能力を備えたPICコードPSCを使用して、大規模で高分解能のシミュレーションを実行することができる。PSCを使用して、最初のAWAKE実験を成功のうちにモデル化した(Moschuering,N.et al.”First fully kinetic three-dimensional simulation of the AWAKE baseline scenario.”Plasma Physics and Controlled Fusion 61.10(2019):104004)。
【0058】
ここでの結果は、観察された電子エネルギーが、ターゲットの長さ、現在は10cm、によって制限されていることを示している。したがって、追加の実験において、より長いターゲット(15~20cm)が使用され、これにより約15GeVの電子エネルギーが実現可能であると考えられている。最高のピークエネルギーと同時に非常に狭いエネルギーの広がりを得る能力も調査されるであろう。
【0059】
このような実験により、>10GeVのレーザベースの電子加速及び単一ステージから最大15~20GeVの潜在的な利得の詳細な理解を提供することができる。電荷、エミッタンス、及びエネルギー拡散などの他のビームパラメータの制御も達成することができる。その結果は、プラズマベースの電子加速を用途により近づけることができる。更に、開発された技術、ターゲット、診断、及びアルゴリズムを他の施設で使用して、特定の用途の結果をアップスケール又はダウンスケールすることができる。
【0060】
実施例2-ナノ粒子支援レーザ航跡場加速を介した10GeVを超える電子ビーム
レーザ航跡場加速は、約km規模の施設を、ルームサイズの機械まで縮小する潜在性を有する。世界的な主な研究目標は、単一の加速ステージで>10GeVの電子エネルギーに達するまで十分に長く加速プロセスをアクティブに保つことである。これは、レーザ駆動XFELS及びレーザベースの衝突型加速器の両方で識別されている要件である。
【0061】
ナノ粒子支援レーザ航跡場加速を使用して、テキサスペタワットで>10GeVのエネルギーまでの電子加速が実証されている。これは、同じレーザシステムでの以前の結果と比較して、約5倍の増加である(Wang,X.et al.,Nat.Commun.4,(2013))。電子は、追加のガイド構造を有しない、長さ10cmのHe充填ガスセル内で加速された。電子の注入及び加速は、ヘリウムガス全体に分布されたアルミニウムのナノ粒子によって支援される。図4に示すように、>10GeVのピークエネルギーが観察された。観察された電荷は、ナノクーロン範囲にあり、ビーム発散は約0.5mradであった。
【0062】
ナノLWFAについての研究は、テキサスペタワットレーザによって駆動された単一ステージから15~20GeVを目指して、更に高い電子エネルギーに向かって拡張することができる。これらの結果は、より高い繰り返し率(サブ及びマルチ)ペタワット(PW)レーザに転送して、ビームパラメータの制御を改善することができる。LWFAで達成可能なエネルギーは、電子と航跡場との間の位相ずれ、レーザポンプの枯渇、及び焦点ずれによって影響を受ける。テキサスペタワットレーザでの実験では、ポンプの枯渇は問題ではなく、位相ずれの長さは次のように推定することができる:
deph=λ /λ
ここで、λはプラズマの波長、aは正規化されたベクトルポテンシャルである。ここで説明する実験では、a=3及びλ=43.1μmであり、位相ずれ長Ldeph=21.7cmを生み出し、これは、長さ10cmのガスセルよりもずっと長く、達成される10.4GeVのピークエネルギーは、ガスセル長を増加することによって更に増加することを示唆している。検証された流体力学シミュレーションを使用して、より長い加速長及びナノ粒子注入のより優れた制御を可能にするナノLWFAターゲットの改良版を開発することができる。このターゲットは、H.-E.Tsaiによって実証された高度なプローブ干渉計と併用して、テキサスペタワットレーザでの実験で処理され得る(学位論文。UT Austin(2015))。ターゲットはまた、より短いパルス、より高い繰り返し率のペタワットシステムにも適応され得る。拡張されたシミュレーションを実行して、ナノ粒子支援LWFAの基礎となる物理メカニズムを理解することができる。例えば、独自のアダプティブメッシュリファインメント能力を備えたPICコードPSCは、大規模で、高分解能シミュレーションを可能にすることができる。PSCを使用して、最初のAWAKE実験を成功のうちにモデル化した(Moschuering,N.,et al.Plasma Physics and Controlled Fusion 61.10(2019):104004)。
【0063】
テキサスペタワットレーザでの最近の実験では、単一のLWFAステージにおいて100pCの電荷が10GeVまで加速された。追加の実験は、安定性、再現性、及び調整可能性の改善に焦点が当てられるであろう。これらの目標を果たすだけでなく、提案された手法の多用途性は、それを幅広い用途にとって興味深いものとしている。
【0064】
このプロジェクトの目標は、安定した10~15GeVの単一ステージレーザ航跡場加速器を実証することである。実験は、テキサスペタワットレーザで実行され、これには、加速長を長くし、ナノ粒子をよりよく制御するために、修正されたナノLWFAターゲットを設計及び処理することが含まれる。(代替的に、テキサスペタワットレーザ以外のレーザも使用することができる。)より高い繰り返し率及びレーザの安定性をより優れたナノ粒子制御と組み合わせることで、電子ビームパラメータのより優れた制御を可能にすることができる。これらの努力は、高度なPICシミュレーションによってサポートされ得る。
【0065】
このプロジェクトは、>100pC電荷を有する10~15GeVの電子ビームを生成する安定した単一ステージレーザ加速器を生み出すことができる。ターゲットは、非常に堅牢であり、毛細管又はヒータビームを必要とせず、はるかに損傷を受けにくい。ナノ粒子のより優れた制御は、電荷及びエミッタンスなどの他のビームパラメータの制御を可能にすることができ、これは、航跡場駆動FEL、又はレーザベースの電子衝突型加速器のユニットステージなどの最終的な用途にとって重要になる可能性がある。この結果は、プラズマベースの電子加速及びそれ以降の分野におけるパラダイムを変化させる潜在性を有する。
【0066】
実施例3-ナノ粒子支援電子航跡場加速器
ここで説明されるのは、ナノ粒子を使用してプラズマ航跡場への電子の注入をトリガするシステム及び方法である。これは、注入プロセス、ひいてはその後の加速プロセスのより優れた制御を可能にする。ナノ粒子注入は、注入の場所及びタイミング、注入される電子の数、加速される電子束の数、及び加速された電子のビーム特性:粒子エネルギー、ビーム発散、及びパルス長、つまり空間的及び時間的エミッタンス、並びに束当たりの電子の数及び束の数、を制御することができる。
【0067】
テキサスペタワットレーザでの最初の実験は、ナノ粒子を使用しない古い方法に勝る、粒子エネルギーにおける5倍以上の増加を示し、レーザ加速器から>10GeVの電子を初めて実証し、10年以上追い求められてきたコミュニティのマイルストーンを達成した。10GeVの単一ステージ電子は、レーザ駆動のe+e-衝突型加速器並びにレーザ駆動のXFELSの要件である。
【0068】
ここで説明されるシステム及び方法はまた、より小さいレーザシステムでも機能し、所与のレーザシステムのより高いパルスエネルギーを可能にするだけでなく、他のビームパラメータも改善し、したがってレーザ電子加速器及び光源の任意の将来のあらゆる用途において重要である。
【0069】
ここで説明されるシステム及び方法は、レーザ加速電子のエネルギーを改善し、レーザ加速電子のいくつかのビームパラメータ(電荷、エミッタンス、エネルギー、パルス持続時間)の完全な制御を可能にする。結果として、ここで説明されるシステム及び方法は、同一のレーザシステムに対してより優れた制御及びより優れたパラメータを提供する。ここで説明されるシステム及び方法は、ペタワットレーザからの>10GeVのエネルギーを可能にする。
【0070】
ここで説明されるシステム及び方法は、レーザ及びターゲットパラメータの所与のセットについて可能な最大の加速長を可能にし、加速航跡場への電子の制御された注入、及びビームパラメータの制御を可能にする。ここで説明されるシステム及び方法は、広範囲の航跡場加速器:レーザ駆動、ビーム駆動、広範囲の密度にわたる、ガスジェット、ガスセル、に対して機能する。
【0071】
ここで説明されるシステム及び方法は、他の方法よりも単純で、よりコンパクトで、より多用途である。ここで説明されるシステム及び方法は、半分のみの長さで高エネルギーを達成し、他の方法よりもはるかに簡単なセットアップを有し、複数の大きいレーザビーム又は本質的に損傷しやすい放電を使用しない。
【0072】
ここで説明されるシステム及び方法は、以下の利点のうちの1つ以上を有することができる:エネルギーの5倍の増加、エミッタンスの2倍の改善、パルス持続時間の短縮、電荷の増加、及び束数の制御。
【0073】
ここで説明されるシステム及び方法は、加速器会社、加速器研究所、光源、ヘルスケア、製薬、生物学的研究、材料科学研究、国土安全保障、高度なX線源、シンクロトロン、FEL、電子加速器、等を使用するあらゆる人々にとって興味深いものとなる可能性がある。
【0074】
明白かつ本発明に固有の他の利点は当業者には明らかであろう。特定の特徴及び部分組み合わせは有用であり、他の特徴及び部分組み合わせを参照せずに採用され得ることが理解されるであろう。これは特許請求の範囲によって企図され、その範囲内にある。本発明の範囲から逸脱することなく本発明から多くの可能な実施形態を構成することができるため、添付の図面に説明され又は示された全ての事項は例解的であるとして理解され、限定的な意味ではないことが理解されるべきである。
【0075】
添付の特許請求の範囲の装置、システム、及び方法は、本明細書に記載される具体的な装置、システム、及び方法によって範囲が限定されず、それらは、特許請求の範囲のいくつかの態様の例解として意図され、機能的に等価な任意の方法は、特許請求の範囲内に含まれることが意図される。本明細書に示されて説明されたものに加えて、装置、システム、及び方法の様々な変更は、添付の特許請求の範囲内に含まれることが意図される。更に、本明細書に開示されている一定の代表的な装置要素、システム要素、及び方法工程のみが具体的に記載されているが、具体的に明記されていなくても、装置要素、システム要素、及び方法工程の他の組み合わせも、添付の特許請求の範囲に属することが意図される。したがって、工程、要素、成分又は構成要素の組み合わせが本明細書又は以下において明示的に言及され得るが、明示的に記載されてなくても、工程、要素、成分又は構成要素の他の組み合わせが含まれる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【国際調査報告】