IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ アレグロ・マイクロシステムズ・エルエルシーの特許一覧

<>
  • 特表-低音響ノイズ開ループモータ始動 図1
  • 特表-低音響ノイズ開ループモータ始動 図2
  • 特表-低音響ノイズ開ループモータ始動 図3
  • 特表-低音響ノイズ開ループモータ始動 図4
  • 特表-低音響ノイズ開ループモータ始動 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-05
(54)【発明の名称】低音響ノイズ開ループモータ始動
(51)【国際特許分類】
   H02P 6/16 20160101AFI20240628BHJP
   H02P 1/04 20060101ALI20240628BHJP
【FI】
H02P6/16
H02P1/04
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023578708
(86)(22)【出願日】2022-06-15
(85)【翻訳文提出日】2024-01-31
(86)【国際出願番号】 US2022033572
(87)【国際公開番号】W WO2023283029
(87)【国際公開日】2023-01-12
(31)【優先権主張番号】17/371,409
(32)【優先日】2021-07-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】501105602
【氏名又は名称】アレグロ・マイクロシステムズ・エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100138759
【弁理士】
【氏名又は名称】大房 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100201743
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 和真
(72)【発明者】
【氏名】栗原 雅平
(72)【発明者】
【氏名】サハロフ,ディミトロ
(72)【発明者】
【氏名】バブシュキン,アントン
【テーマコード(参考)】
5H001
5H560
【Fターム(参考)】
5H001AB12
5H001AC02
5H001AD03
5H560AA01
5H560AA08
5H560BB04
5H560BB07
5H560BB12
5H560DA02
5H560DA04
5H560DA13
5H560DC02
5H560EB01
5H560JJ12
5H560JJ20
5H560RR01
5H560TT11
5H560TT15
5H560TT18
5H560UA05
5H560XA12
(57)【要約】
音響ノイズを低減する3相モータの開ループ始動方法および装置。モータのロータアライメント中、モータへの相電流には最大レベルが存在する。ロータアライメント後、開ループモータ始動が実行され、その間に相電流は第1の勾配を有する。相電流の周波数が第1の閾値に達したときなど、選択されたときに相電流は第2の勾配に遷移する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
3相BLDCモータを開ループで始動するステップを含む方法であって、当該ステップが、
前記モータのロータアライメント中に、前記モータへの相電流に最大始動振幅を許容するステップと、
前記ロータアライメント後に、前記相電流の振幅が第1の勾配を有する間に開ループモータ始動を実行するステップと、
前記相電流の前記振幅を第2の勾配に遷移させるステップと
により行われる、方法。
【請求項2】
前記相電流の周波数が、遷移周波数を定める第1の閾値に達したときに、前記相電流を前記第2の勾配に遷移させるステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1の勾配は負である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記第2の勾配は正である、請求項3記載の方法。
【請求項5】
前記第2の勾配の変化率は前記第1の勾配の変化率より大きい、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記相電流の振幅が第2の閾値に達したとき、前記相電流の勾配は1に等しくなる、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記遷移周波数の値をユーザから受信するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記ロータアライメントは前記ロータを既知の位置に移動させる、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記相電流は、前記開ループ始動の開始時に最大始動振幅にある、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記遷移周波数は前記モータの所定の速度に対応する、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
モータコントローラであって、
3相BLDCモータを開ループで始動を行うように構成された回路を含み、
当該始動は、
前記モータのロータアライメント中に、前記モータへの相電流に最大始動振幅を許容し、
前記ロータアライメント後に、前記相電流の振幅が第1の勾配を有する間に開ループモータ始動を実行し、
前記相電流の前記振幅を第2の勾配に遷移させる
ことにより行われる、モータコントローラ。
【請求項12】
前記回路は、前記相電流の周波数が、遷移周波数を定める第1の閾値に達したときに、前記相電流を前記第2の勾配に遷移させるようにさらに構成される、請求項11に記載のモータコントローラ。
【請求項13】
前記第1の勾配は負である、請求項11に記載のモータコントローラ。
【請求項14】
前記第2の勾配は正である、請求項13に記載のモータコントローラ。
【請求項15】
前記第2の勾配の変化率は前記第1の勾配の変化率より大きい、請求項14に記載のモータコントローラ。
【請求項16】
前記相電流の振幅が第2の閾値に達したとき、前記相電流の勾配は1に等しくなる、請求項15に記載のモータコントローラ。
【請求項17】
前記回路は、前記遷移周波数の値をユーザから受信するようにさらに構成されている、請求項11に記載のモータコントローラ。
【請求項18】
前記ロータアライメントは前記ロータを既知の位置に移動させる、請求項11に記載のモータコントローラ。
【請求項19】
前記相電流は、前記開ループ始動の開始時に最大始動振幅にある、請求項11に記載のモータコントローラ。
【請求項20】
前記遷移周波数は前記モータの所定の速度に対応する、請求項11に記載のモータコントローラ。
【請求項21】
前記モータコントローラは、BLDCモータコントローラICパッケージを含む、請求項11に記載のモータコントローラ。
【請求項22】
3相BLDCモータを駆動する信号を供給する出力端子と、
相電流の振幅が第1の勾配を有する間に開ループモータ始動を実行し、前記相電流の周波数が遷移周波数を定める第1の閾値に達したときに、前記相電流の前記振幅を第2の勾配に遷移させることにより、前記3相BLDCモータを始動する手段と
を含む、モータコントローラICパッケージ。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
ブラシレスDC(BLDC)電気モータを制御および駆動するための様々な回路が知られている。従来のBLDCモータ制御技術では、位置推定にBEMF(逆起電力)情報を用いることがあるが、BEMF情報は、例えばモータの始動時などのゼロ速度では利用できない。もう1つの従来の始動技術は、位置推定を行わずに開ループでモータを駆動する方法(例えば、アライメントアンドゴー)であり、始動時に逆回転を引き起こす可能性がある。さらに、この技術は、比較的保守的な始動プロファイルを選択した場合には始動時間が長くなり、または、積極的な始動プロファイルを選択した場合にはモータの始動が信頼できなくなる可能性がある。
【0002】
3相BLDCモータの始動技術の中には、ホールセンサを使用できるものがあることが知られている。他の技術では、センサレス制御が使用される。様々な始動技術には利点と欠点がある可能性がある。例えば、従来のホール効果センサベースの始動構成は、通常、各相に1つずつ、3つのホール素子を有する。ホール効果センサの構成は、コントローラのパラメータを変更することなく、比較的信頼性の高い始動、高速始動、ならびに異なるモータおよび負荷条件への適応を提供することができる。しかし、典型的なホール効果センサの始動技術は、音響ノイズを発生させるように電流の変化位相が比較的滑らかでない矩形電流を生成する。
【0003】
従来のセンサレスモータ始動制御は、始動トルクをセンサレス動作の通常動作電流よりも高くする必要があるため、静止摩擦からモータを回転させるのに十分なトルクを得るために開ループとなっている。このようなシステムでは、始動電流は始動を確保するために十分高くする必要がある。しかし、従来のコントローラでは、始動時の大電流がモータから音響ノイズを発生させる。
【0004】
自動車業界では、信頼性およびコストの観点から、モータ制御はセンサレス制御に移行しつつある。また、電気自動車(EV)およびハイブリッド車(HEV)では、モータ動作の静粛性が求められている。内燃機関で発生されるモータの音響ノイズは、電気自動車に比べ問題は少ない。しかし、特に内燃機関停止時のモータ動作の静粛性が求められている。
【発明の概要】
【0005】
本開示の実施形態は、従来のシステムと比較して始動時の音響ノイズを低減するために、開ループ始動時にモータへの相電流を調整するBLDCモータコントローラのための方法および装置を提供する。モータ始動時の低音響ノイズは、電気自動車などの車両において有用である。
【0006】
例示的な実施形態では、モータコントローラは、電流制限動作を伴う位置開ループ制御を使用する。始動電流の第1の勾配は、相電流制限の下降トレンド比を決定する。第2の勾配は、相電流制限の上昇傾向を決定する。例えばモータ駆動信号の駆動周波数の遷移時に、始動電流の勾配は第1の電流勾配から第2の電流勾配に遷移する。本明細書で説明する様々なパラメータ、例えば電流勾配および駆動周波数は、特定のアプリケーションのニーズを満たすように選択することができる。相電流レベルの開ループ終点が、センサレス制御を使用して必要な駆動電流と一致すると、位相進み誤差が最小化され、モータからの音響ノイズも最小化される。
【0007】
一態様では、方法は、3相BLDCモータを開ループで始動するステップを含み、当該ステップが、モータのロータアライメント中に、モータへの相電流に最大始動振幅を許容するステップと、ロータアライメント後に、相電流の振幅が第1の勾配を有する間に開ループモータ始動を実行するステップと、相電流の振幅を第2の勾配に遷移させるステップとにより行われる。
【0008】
方法は、以下の特徴の1つまたは複数をさらに含むことができる:相電流の周波数が、遷移周波数を定める第1の閾値に達したときに、相電流を第2の勾配に遷移させるステップ、第1の勾配は負である、第2の勾配は正である、第2の勾配の変化率は第1の勾配の変化率より大きい、相電流の振幅が第2の閾値に達したとき、相電流の勾配は1に等しくなる、遷移周波数の値をユーザから受信するステップ、ロータアライメントはロータを既知の位置に移動させる、相電流は、開ループ始動の開始時に最大始動振幅にある、および/または、遷移周波数はモータの所定の速度に対応する。
【0009】
別の態様では、モータコントローラは、3相BLDCモータを開ループで始動を行うように構成された回路を含み、当該始動が、モータのロータアライメント中に、モータへの相電流に最大始動振幅を許容し、ロータアライメント後に、相電流の振幅が第1の勾配を有する間に開ループモータ始動を実行し、相電流の振幅を第2の勾配に遷移させることにより行われる。
【0010】
モータコントローラは、以下の特徴のうちの1つまたは複数をさらに含むことができる:回路は、相電流の周波数が、遷移周波数を定める第1の閾値に達したときに、相電流を第2の勾配に遷移させるようにさらに構成される、第1の勾配は負である、第2の勾配は正である、第2の勾配の変化率は第1の勾配の変化率より大きい、相電流の振幅が第2の閾値に達したとき、相電流の勾配は1に等しくなる、回路は、遷移周波数の値をユーザから受信するようにさらに構成されている、ロータアライメントはロータを既知の位置に移動させる、相電流は、開ループ始動の開始時に最大始動振幅にある、遷移周波数はモータの所定の速度に対応する、および/または、モータコントローラは、BLDCモータコントローラICパッケージを含む。
【0011】
さらなる態様において、モータコントローラICパッケージは、3相BLDCモータを駆動する信号を供給する出力端子と、相電流の振幅が第1の勾配を有する間に開ループモータ始動を実行し、相電流の周波数が遷移周波数を定める第1の閾値に達したときに、相電流の振幅を第2の勾配に遷移させることにより、3相BLDCモータを始動する手段とを含む。
【0012】
本発明の前述の特徴および本発明自体は、以下の図面の説明からより完全に理解され得る。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本開示の例示的な実施形態に従って、音響ノイズを低減するために開ループ始動でモータへの相電流を制御するモータコントローラの概略図である。
図2図1のコントローラの例示的なICパッケージの実施形態である。
図3】本開示の例示的な実施形態に従った、始動中の音響ノイズを低減するための3相モータへの相電流の例示的な波形図である。
図4】本開示の例示的な実施形態に従った、始動中の音響ノイズを低減するための3相モータへの相電流を制御するためのステップのシーケンスの一例を示すフロー図である。
図5】本明細書で説明する処理の少なくとも一部を実行することができる例示的なコンピュータの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1は、本開示の例示的な実施形態に従って、低音響ノイズ開ループ始動でBLDCモータ始動を提供するために電動モータ104に結合された例示的なモータ制御回路102を示す。相電流は、以下でより詳細に説明するように、音響ノイズを低減するために開ループモータ始動中に制御される。
【0015】
モータ104は、3つの巻線104a、104b、104cを含むように示されており、これらはそれぞれ、抵抗器と直列で、逆起電力(BEMF)電圧源と直列のインダクタを有する等価回路として描くことができる。例えば、巻線A104aは、抵抗器131と直列で、逆起電力電圧源VA136と直列のインダクタを含むように示されている。
【0016】
モータ制御回路102は、モータ制御回路102の外部から外部速度要求信号106を受信するように結合された速度要求発生器107を含む。外部速度要求信号106は、様々な形式のうちの1つであることができる。一般に、外部速度要求信号106は、モータ制御回路102の外部から要求されるモータ104の速度を示す。
【0017】
速度要求発生器107は、速度要求信号107aを発生させるように構成されている。パルス幅変調(PWM)発生器108は、速度要求信号107aを受信するように結合され、速度要求信号107aによって制御されるデューティサイクルを有するPWM信号を発生させるように構成される。PWM発生器108は、変調信号発生モジュール146から変調波形を受信するようにも結合されている。PWM信号は、変調波形に応じた変調特性(すなわち、相対的に時間変化するデューティサイクル)を有して発生される。
【0018】
モータ制御回路102はまた、PWM信号を受信するように結合され、3つのハーフブリッジ回路112/114、116/118、120/122として配置された6つのトランジスタ112、114、116、118、120、122を駆動するためのPWMゲート駆動信号110a、110b、110c、110d、110e、110fを発生させるように構成されたゲートドライバ回路110を含む。6つのトランジスタ112、114、116、118、120、122は飽和状態で動作し、3つのモータ駆動信号VoutA、VoutB、VoutC、124、126、128をそれぞれノード102d、102c、102bに供給する。モータ駆動信号を供給するために、スイッチング素子の任意の適切な構成を使用できることを理解されたい。
【0019】
モータ制御回路102は、センサモジュール147からの信号を処理するための信号処理モジュール143も含むことができる。実施形態では、信号処理モジュール143は、モータの始動を制御するための始動モジュール149を含むことができる。センサモジュール147は、逆起電力信号を受信するように構成され得る(例えば、モータ巻線104a、104b、104cが駆動されておらず、それぞれの巻線電流がゼロである時間に直接観測可能な逆起電力信号を含む、モータ駆動信号124、126、128のうちの1つまたは複数を受信するように結合され得る)。
【0020】
信号処理モジュール143は、モータ104の回転基準位置を示す位置基準信号を発生させるように構成される。変調信号発生モジュール146は、位置基準信号を受信するように結合され、PWM発生器108に供給される変調波形の位相を変更するように構成される。
【0021】
モータ制御回路102は、ノード102aでモータ電圧VMOT、または単にVMを受信するように結合することができ、この電圧は、上部トランジスタ112、116、120がオンにされる時間中にトランジスタ112、116、120を介してモータに供給される。トランジスタ112、116、120がオンになってモータ104に電流を供給しているとき、トランジスタ112、116、120を介して小さな電圧降下(例えば、0.1ボルト)があり得ることが理解されよう。
【0022】
本開示の実施形態は、モータ始動時の低音響ノイズが望ましい広範な用途に適用可能であることが理解される。車両用途の例としては、バッテリ冷却ファン、ラジエータファン、燃料制御、オイルポンプなどが挙げられる。
【0023】
図2は、本開示の例示的な実施形態による例示的なBLDCモータコントローラICパッケージ200を示す。電源入力端子VBBは、チャージポンプ入力VCPも結合され得る電圧電源に結合され得る。コンデンサは、チャージポンプ入力CP1、CP2にわたって結合され得る。モータコントローラ200は、3相モータMOT用のゲートドライバ信号を発生させる。図示の実施形態では、モータコントローラ200は、モータMOTの3相を駆動するブリッジトランジスタを制御するためのハイサイドGHxおよびローサイドGLxゲートドライバ信号を発生させる。
【0024】
コントローラ200の実施形態は、開ループ始動中の低音響ノイズのための、3相、センサレス、ブラシレスDC(BLDC)モータドライバ(ゲートドライバ)を提供する。実施形態では、コントローラ200は、効率および音響ノイズ性能のためのフィールド指向制御(FOC)モジュールを含むことができる。モータ速度は、パルス幅変調(PWM)によって制御されてもよい。
【0025】
実施形態では、コントローラ200は、スタートコマンドを受け付け、BEMF信号をチェックする。モータが逆回転している場合、コントローラは、ブレーキ電流がなくなるまでブレーキをかけることができる。モータが正回転している場合、コントローラ200は駆動周波数を同期させ、完全なセンサレス制御に入る。モータが停止している場合、コントローラ200は、ロータアライメントを適用し、モータ制御を開始することができる。コントローラ200は、モータのロータアライメントを実行し、ロータが既知の位置に停止していることを確認する。
【0026】
ロータアライメントが完了すると、開ループ始動プロセスが実行され、安定したトルクを提供するために相電流の振幅が調整される。駆動周波数は安定したBEMF条件が達成されるまで上昇する。開ループ始動が完了すると、コントローラ200はセンサレスFOC制御モードで動作し得る。
【0027】
開ループ始動は、開ループ始動からセンサレス制御への音響ノイズを最小化するために、相電流ランプアップを制御する。適切な位相進みを維持するには、任意の駆動速度と負荷において電流振幅が要因となる。適切な電流レベルはモータの特性と接続された負荷に依存する。信頼性の高い始動を行うためには、始動電流はモータを回転させる必要がある。より静かな遷移を達成するために、負荷条件が許せば、開ループ始動期間の終わりに向かう電流を減少させることができる。電流レベルがフィードバック制御で要求される電流レベルに近づけば、遷移ノイズを最小限に抑えることができる。
【0028】
図3は、本開示の例示的な実施形態に従って、開ループ始動中の音響ノイズを低減するための、3相モータの相の1つに対する相電流IPHASEに関する例示的な波形図を示す。ロータアライメント300の間、相電流IPHASEは、始動電流として示される最大振幅302を有する。モータを回転させるように命令されると、コントローラは、ロータが既知の位置に停止していることを確認するために、モータのロータアライメントを実行する。アライメント完了後、開ループ始動304プロセスが開始する。開ループ始動304の間、相電流IPHASEは、相電流の下降トレンド比を決定するI_limit_slope_1(I_制限_勾配_1)として示される第1の勾配306を有する。相電流IPHASEの周波数が選択された閾値よりも大きい場合、相電流IPHASEは、フィードバック制御フェーズ310に入ると、I_limit_slope_2(I_制限_勾配_2)として示される第2の勾配308に遷移する。相電流IPHASEの振幅は、定格電流レベル312に達するまで増加する。実施形態では、駆動信号の周波数は、選択された周波数に達するまで増加する。
【0029】
例示的な実施形態から分かるように、相電流IPHASEは、始動電流振幅302で開ループ始動304を開始し、相電流の周波数がSpeed_1(速度_1)に対応する所定の閾値を超えて増加するまで、第1の勾配306で振幅が減少する。その後、相電流IPHASEは、フィードバック制御フェーズ310dで定格電流に達するまで、第2の勾配308で振幅が増加する。
【0030】
相電流レベルの開ループ終点が、センサレス制御を用いて必要な駆動電流と一致すれば、位相進み誤差は最小になる。したがって、モータからの音響ノイズも同様に最小化される。
【0031】
本明細書で使用する開ループモータ制御とは、制御アルゴリズムによってロータ位置に関する情報が使用されない動作モードを指す。
【0032】
実施形態では、第1の勾配306の絶対値は、第2の勾配308の絶対値よりも小さい。すなわち、第2の勾配308における相電流振幅の変化率は、第1の勾配306における変化率よりも大きい。いくつかの実施形態では、第1の勾配は、水平線である1であってもよい。
【0033】
第1および第2の勾配306、308ならびに遷移周波数は、モータ特性に依存することが理解される。遷移周波数は、例えば、内部推定周波数(実際の駆動周波数)に基づいてもよい。駆動周波数が閾値を超えると、電流振幅は第2の勾配308によって定められる。実施形態において、開ループ始動の終わりにおける遷移は、始動相電流の選択された周波数値によって定められる。実施形態では、遷移周波数値はユーザによって選択される。相電流周波数は、所望のモータ速度に達するまである割合で増加し、電流振幅は、第1の勾配306、次に第2の勾配308、次に定格電流312によって制限される。
【0034】
第1の勾配および第2の勾配の値は、所与のモータに対する所望の動作特性を満たすように定められることを理解されたい。実施形態では、第1の勾配、第2の勾配、および/または遷移周波数の値は、構成パラメータとしてユーザなどによって選択することができる。
【0035】
図4は、音響ノイズを低減するために開ループ始動中にモータへの相電流を制御するためのステップのシーケンス例を示す。ステップ400では、モータコントローラが開ループ始動に入る。例えば、ロータアライメントの後、コントローラは開ループ始動に遷移することができる。ステップ402で、コントローラは、第1の勾配を有するように相電流振幅を制御する。実施形態では、振幅が減少するように、第1の勾配は負である。ステップ404では、相電流の周波数が選択された閾値以上であると判定され、コントローラはフィードバック制御フェーズに遷移する。ステップ406では、コントローラは、第2の勾配を有するように相電流振幅を制御する。実施形態では、第2の勾配は、電流振幅が増加するように正である。ステップ408において、コントローラは、選択された周波数を達成するように相電流の周波数を制御する。ステップ410において、相電流は、定格電流と呼ぶことができる選択された振幅に制限される。
【0036】
図5は、図3に示すような相電流振幅の制御など、本明細書で説明する処理の少なくとも一部を実行できる例示的なコンピュータ500を示す。コンピュータ500は、プロセッサ502、揮発性メモリ504、不揮発性メモリ506(例えば、ハードディスク)、出力デバイス507、およびグラフィカルユーザインターフェース(GUI)508(例えば、マウス、キーボード、ディスプレイ)を含む。不揮発性メモリ506は、コンピュータ命令512、オペレーティングシステム516、およびデータ518を格納する。一実施例では、コンピュータ命令512は、揮発性メモリ504からプロセッサ502によって実行される。一実施形態では、物品520は、非一過性のコンピュータ可読命令を含む。
【0037】
処理は、ハードウェア、ソフトウェア、またはこれら2つの組み合わせで実施され得る。処理は、各々が、プロセッサ、プロセッサによって読み取り可能な記憶媒体または他の製造物品(揮発性および不揮発性メモリならびに/または記憶要素を含む)、少なくとも1つの入力デバイス、および1つまたは複数の出力デバイスを含むプログラマブルコンピュータ/マシンで実行されるコンピュータプログラムにおいて実施されてもよい。プログラムコードは、入力デバイスを用いて入力されたデータに適用され、処理を実行し、出力情報を発生させることができる。
【0038】
本システムは、データ処理装置(例えば、プログラマブルプロセッサ、コンピュータ、または複数のコンピュータ)による実行のため、またはデータ処理装置の動作を制御するために、(例えば、機械可読記憶デバイス内の)コンピュータプログラム製品を介して、少なくとも部分的に、処理を実行することができる。このような各プログラムは、コンピュータシステムと通信するために、高レベルの手続き型プログラミング言語またはオブジェクト指向プログラミング言語で実装することができる。しかし、プログラムは、アセンブリ言語または機械言語で実装されてもよい。言語は、コンパイルされた言語であっても解釈された言語であってもよく、スタンドアロンプログラムとして、またはモジュール、コンポーネント、サブルーチン、またはコンピューティング環境での使用に適した他のユニットとしてなど、どのような形態で展開されてもよい。コンピュータプログラムは、1台のコンピュータで実行されるか、1つのサイトの複数のコンピュータで実行されるか、複数のサイトに分散して配置され、通信ネットワークによって相互接続されるように配置される。コンピュータプログラムは、記憶媒体またはデバイス(例えば、CD-ROM、ハードディスク、または磁気ディスケット)に格納されてもよく、記憶媒体またはデバイスがコンピュータによって読み取られたときに、コンピュータを構成し、動作させるために、汎用または専用プログラマブルコンピュータによって読み取り可能である。処理はまた、コンピュータプログラムで構成された機械可読記憶媒体として実施することもでき、この場合、コンピュータプログラムの命令が実行されると、コンピュータが動作する。
【0039】
処理は、システムの機能を実行するために1つまたは複数のコンピュータプログラムを実行する1つまたは複数のプログラマブルプロセッサによって実行されてもよい。システムの全部または一部は、専用論理回路(例えば、FPGA(フィールドプログラマブルゲートアレイ)および/またはASIC(特定用途向け集積回路))として実装されてもよい。本明細書で使用される場合、回路は、少なくとも1つのトランジスタを含むハードウェア、ファームウェア、および/またはソフトウェアの任意の実装を指し、すなわち、それ自体はソフトウェアではない。
【0040】
本明細書で使用される場合、「磁界感知素子」という用語は、磁界を感知することができる様々な電子素子を説明するために使用される。磁界感知素子は、ホール効果素子、磁気抵抗素子、または磁気トランジスタであり得るが、これらに限定されない。周知のように、ホール効果素子には様々なタイプがあり、例えば、平面ホール素子、垂直ホール素子、円形垂直ホール(CVH)素子などがある。また、周知のように、磁気抵抗素子には様々なタイプがあり、例えば、アンチモン化インジウム(InSb)などの半導体磁気抵抗素子、巨大磁気抵抗(GMR)素子、例えば、スピンバルブ、異方性磁気抵抗素子(AMR)、トンネル磁気抵抗(TMR)素子、磁気トンネル接合(MTJ)などがある。磁界感知素子は、単一の素子であってもよいし、あるいは、例えばハーフブリッジまたはフル(ホイートストン)ブリッジなど、様々な構成で配置された2つ以上の磁界感知素子を含んでもよい。デバイスのタイプおよびその他のアプリケーション要件に応じて、磁界感知素子は、シリコン(Si)またはゲルマニウム(Ge)などのIV族半導体材料、またはガリウムヒ素(GaAs)またはインジウム化合物、例えばインジウムアンチモン(InSb)などのIII-V族半導体材料で作られたデバイスであってもよい。
【0041】
周知のように、上述の磁界感知素子の一部は、磁界感知素子を支持する基板に平行な最大感度軸を有する傾向があり、上述の磁界感知素子の他は、磁界感知素子を支持する基板に垂直な最大感度軸を有する傾向がある。特に、平面ホール素子は、基板に垂直な感度軸を有する傾向があり、金属ベースまたは金属磁気抵抗素子(例えば、GMR、TMR、AMR)および垂直ホール素子は、基板に平行な感度軸を有する傾向がある。
【0042】
本明細書において、「磁界センサ」という用語は、一般に他の回路と組み合わせて磁界感知素子を使用する回路を表すために使用される。磁界センサは、磁界の方向の角度を感知する角度センサ、通電導体によって運ばれる電流によって発生される磁界を感知する電流センサ、強磁性体の近接を感知する磁気スイッチ、通過する強磁性物品、例えばリング磁石の磁区や強磁性体ターゲット(歯車の歯など)を感知する回転検出器などを含む、様々な用途に使用されるが、これらに限定されるものではなく、磁界センサは、バックバイアス磁石または他の磁石と組み合わせて使用され、磁界の磁界密度を感知する。
【0043】
本発明の例示的な実施形態について説明してきたが、当業者には、それらの概念を組み込んだ他の実施形態も使用できることが明らかになるであろう。本明細書に含まれる実施形態は、開示された実施形態に限定されるべきではなく、むしろ添付の特許請求の範囲の思想および範囲によってのみ限定されるべきである。本明細書において引用される全ての刊行物および参考文献は、その全体が参照により本明細書に明示的に組み込まれる。
【0044】
本明細書に記載された異なる実施形態の要素は、上記に具体的に規定されていない他の実施形態を形成するために組み合わされてもよい。また、単一の実施形態の文脈で説明される様々な要素は、別個に、または任意の適切なサブコンビネーションで提供されてもよい。本明細書に具体的に記載されていない他の実施形態も、以下の特許請求の範囲に含まれる。
図1
図2
図3
図4
図5
【国際調査報告】