(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-05
(54)【発明の名称】攻撃的作用に対する抵抗性が改善されたゴム組成物
(51)【国際特許分類】
C08L 23/08 20060101AFI20240628BHJP
C08L 9/00 20060101ALI20240628BHJP
C08K 3/04 20060101ALI20240628BHJP
C08K 5/3445 20060101ALI20240628BHJP
C08K 5/32 20060101ALI20240628BHJP
B60C 1/00 20060101ALI20240628BHJP
【FI】
C08L23/08
C08L9/00
C08K3/04
C08K5/3445
C08K5/32
B60C1/00 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023578771
(86)(22)【出願日】2022-06-16
(85)【翻訳文提出日】2023-12-20
(86)【国際出願番号】 FR2022051166
(87)【国際公開番号】W WO2022269170
(87)【国際公開日】2022-12-29
(32)【優先日】2021-06-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】514326694
【氏名又は名称】コンパニー ゼネラール デ エタブリッスマン ミシュラン
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100123766
【氏名又は名称】松田 七重
(72)【発明者】
【氏名】フェラン トマ
(72)【発明者】
【氏名】ウェッカーレ ニコラ
(72)【発明者】
【氏名】リベール ロマン
【テーマコード(参考)】
3D131
4J002
【Fターム(参考)】
3D131AA02
3D131BA07
3D131BA08
3D131BA18
3D131BB04
3D131BB12
3D131BC35
3D131LA28
4J002AC021
4J002BB021
4J002BL011
4J002BL021
4J002DA036
4J002ES007
4J002EU117
4J002FD016
4J002FD020
4J002FD070
4J002FD140
4J002FD150
4J002FD207
4J002GM01
4J002GN01
(57)【要約】
本発明はゴム組成物に関し、これは少なくとも、エチレン単位と1,3-ジエン単位とを含有するコポリマーであって、コポリマー中のエチレン単位がコポリマーのモノマー単位の50モル%超を占める、コポリマーを50phrより多く含むエラストマーマトリックスと、式「Q-Sp-B」に相当する1,3-双極子化合物であって、式中、Qは、少なくとも及び好ましくは1個の窒素原子を含有する双極子を含み、好ましくは二価であるSpはQとBを連結する原子又は原子群であり、Bは特有のイミダゾール環を含む、1,3-双極子化合物と、主にカーボンブラックを含むフィラーであって、ゴム組成物中のフィラーの体積分率が18%より大きいフィラーと、架橋系とをベースとする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴム組成物であって、少なくとも、
-エチレン単位と1,3-ジエン単位とを含有するコポリマーを50phrより多く含むエラストマーマトリックスであって、前記コポリマー中のエチレン単位が、前記コポリマーのモノマー単位の50モル%超を占める、エラストマーマトリックスと、
-下記式(I)に相当する1,3-双極子化合物であって、
Q-Sp-B (I)
式中:
・Qは、少なくとも及び好ましくは1個の窒素原子を含有する双極子であり、
・Sp、好ましくは二価であるSp、は、QとBを連結する原子又は原子群であり、
・Bは、下記式(II)に相当するイミダゾール環であって、
【化1】
式中:
・4つの記号Z、Y、R及びR’の3つは、同一又は異なり、それぞれ原子又は原子群を表し、Z及びYは、それらが付着している炭素原子と一緒に環を形成することがあり、
・かつ第4の記号Z、Y、R又はR’は、Spへの直接付着を意味する、
イミダゾール環を含む、1,3-双極子化合物と、
-カーボンブラックを含む補強フィラーであって、前記カーボンブラックは、前記補強フィラーの50質量%超を占め、前記ゴム組成物中のフィラーの体積分率は18%より大きい、補強フィラーと、
-架橋系と
をベースとする、前記ゴム組成物。
【請求項2】
エチレン単位と1,3-ジエン単位とを含有する前記コポリマーが、エチレンと1,3-ジエンとのコポリマーである、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記1,3-ジエンが1,3-ブタジエンである、請求項1~2のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項4】
R’が、Spへの直接付着を意味し、Z及びYが、それぞれ水素原子であり、Rが、水素原子を表すか、又は少なくとも1個のヘテロ原子を含有することができ、かつ好ましくは1~20個の炭素原子を含有する炭素ベースの基を表す、請求項1~3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項5】
Spが、20個までの炭素原子を含有する基であり、この基は、少なくとも1個のヘテロ原子を含有することができる、請求項1~4のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項6】
前記1,3-双極子化合物が、ニトリルオキシド、ニトリルイミン及びニトロンから成る群より選択される、請求項1~5のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項7】
Qが、下記式(V):
【化2】
に相当する単位であって、
式中:
5つの記号X
1~X
5の4つは、同一又は異なり、それぞれ原子又は原子群、優先的には脂肪族基若しくは芳香族基であり、かつ第5の記号は、Spへの直接付着を意味し、X
1及びX
5は、水素原子でないことが知られている、単位を含み、好ましくは前記単位を表す、
請求項1~6のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項8】
前記1,3-双極子化合物が、2,4,6-トリメチル-3-((2-メチル-1H-イミダゾール-1-イル)メチル)ベンゾニトリルオキシド又は2,4,6-トリエチル-3-((2-メチル-lH-イミダゾール-1-イル)メチル)ベンゾニトリルオキシド、好ましくは 2,4,6-トリメチル-3-((2-メチル-lH-イミダゾール-1-イル)メチル)ベンゾニトリルオキシドである、請求項1~7のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項9】
前記1,3-双極子化合物の含量が、前記コポリマーを構成するモノマー単位100モル当たり0.03と3の間のモル当量、優先的には0.05と2の間のモル当量、さらに優先的には0.07と1の間のモル当量のイミダゾール環に相当する、請求項1~8のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項10】
前記フィラーが、100質量%のカーボンブラックを含む、請求項1~9のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項11】
前記フィラーの含量が47~120phr、好ましくは49~110phr、好ましくは50~105phr、さらに好ましくは55~85phrに及ぶ範囲内である、請求項1~10のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項12】
前記ゴム組成物中のフィラーの体積分率が19%より大きく、好ましくは20%~26%、好ましくは21%~24%に及ぶ範囲内である、請求項1~11のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項13】
カーボンブラックの含量が、47~80phr、好ましくは49~80phr、好ましくは49~75phr、好ましくは49~70phrに及ぶ範囲内である、請求項1~12のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項14】
前記ゴム組成物中のカーボンブラックの体積分率が、18%より大きく、好ましくは19%より大きく、好ましくは20%~26%、好ましくは21%~24%に及ぶ範囲内である、請求項1~13のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項15】
請求項1~14のいずれか1項に記載の組成物を含むゴム物品であって、前記物品が、好ましくは空気入りタイヤ、非空気入りタイヤ、無限軌道及びコンベヤーベルトから成る群より選択される、前記ゴム物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機械的攻撃への抵抗性改善を示すゴム組成物に関する。本発明は、特にゴム物品、例えば空気入りタイヤ、非空気入りタイヤ、無限軌道(caterpillar tracks, キャタピラ)、コンベヤーベルト又は上記性能が有利であろう任意の他のゴム物品に関係している。
【背景技術】
【0002】
特に、本発明のゴム組成物は、それらを民間のエンジニアリング車両用の空気入りタイヤのトレッドに使用すると非常に有利である。というのは、これらのタイヤが主にその上を移動するオフロード表面の性質は非常に様々であり、特にその石の多い性質のため、ずっと攻撃的なので、排他的に道路(すなわち、アスファルト表面)の上を走る車両を意図したタイヤとは非常に異なる技術的特徴をこれらのタイヤは持たなければならないからである。さらに、乗用車のタイヤとは異なり、例えば、民間の大型エンジニアリング車両は、極端に重質であり得る荷重に耐える能力がなければならない。結果として、アスファルト表面の上を走行するタイヤで知られている解決法は、民間のエンジニアリング車両用タイヤのようなオフロードタイヤにそのまま適用できない。
【0003】
走行中に、トレッドは機械的応力及び地面と直接接することから生じる攻撃を受ける。重荷重を支える車両にふさわしいタイヤの場合、タイヤが受ける機械的応力及び攻撃は、タイヤによって支えられる重量の作用下で拡大される。採掘車両用タイヤは特に、局所的に、すなわちそれから軌道が形成される石(破砕岩)によって代表される圧入巨体の上を走行するので高い応力を受け、また全体的にも、すなわち採掘坑に出入りするための軌道、又は露天掘り鉱山の傾斜は10%のオーダーのものなので高いトルク伝達、並びに積み荷及び積み下ろし操作のために車両のUターン中にタイヤに高い応力を受ける。
この結果は、これらの応力及びこれらの攻撃の作用下でタイヤトレッドに引き起こされる初期亀裂は、トレッドの表面又は内部でさらに伝播する傾向を有し、トレッドの局所的又は全般的断裂をもたらす恐れがある。従ってこれらの応力がトレッドの破損につながり、結果としてトレッドの寿命ひいてはタイヤの寿命を短くする可能性がある。
このことは、一般的に鉱山及び採石場で動き回る民間のエンジニアリング車両に備え付けるタイヤにとっては特に真実である。これは、ゴム製無限軌道又は重荷重を運ぶ可能性があり、石の多い地面の上を移動するいずれものタイプの車両、例えば農業用車両、建設用車両等のタイヤにとっても真実である。機械的攻撃に対する抵抗の問題は、大量の土、鉱石、石及び岩を受ける可能性があるコンベヤーベルト(又はベルトコンベヤー)にも関連している。
【0004】
従って機械的攻撃に対して抵抗を示す有用なゴム組成物を有することが重要である。この問題を解決するために、例えば、天然ゴムは、亀裂の伝播への抵抗という特性向上を得られるようにすることは当業者に知られている。
従って、製造業者は、機械的攻撃に対するゴム組成物の抵抗性を改善するための解決策を常に探している。好ましくは、これらの解決策は、破壊することなくショック又は障害物を吸収できるように、限界特性(応力及び破断点伸び)を不利にしてはならず、又はほんのわずかしか不利にしてはならない。
その調査研究の継続中に、出願会社は、予想外に、大きい体積分率のフィラーと組み合わせた、エチレン単位と1,3-ジエン単位とを含有するコポリマーであって、コポリマー中のエチレン単位がコポリマーのモノマー単位の50モル%超を占めるコポリマーと、特有の1,3-双極子化合物との併用が、補強フィラーとして主にカーボンブラックを含む組成物において、機械的攻撃に対する抵抗性を向上させることができることを発見した。
【発明の概要】
【0005】
従って、本発明の主題は、ゴム組成物であって、少なくとも、
-エチレン単位と1,3-ジエン単位とを含有するコポリマーを50phrより多く含むエラストマーマトリックスであって、前記コポリマー中のエチレン単位が、前記コポリマーのモノマー単位の50モル%超を占める、エラストマーマトリックスと、
-下記式(I)に相当する1,3-双極子化合物であって、
Q-Sp-B (I)
式中:
○Qは、少なくとも及び好ましくは1つの窒素原子を含有する双極子を含み、
○Sp、好ましくは二価であるSp、は、QとBを連結する原子又は原子群であり、
○Bは、下記式(II)に相当するイミダゾール環であって、
【化1】
式中、
●4つの記号Z、Y、R及びR’の3つは、同一又は異なり、それぞれ原子又は原子群を表し、ZとYは、それらが付着している炭素原子と一緒に環を形成することがあり、
●かつ第4の記号Z、Y、R又はR’は、Spへの直接付着を意味する、
イミダゾール環を含む、1,3-双極子化合物と、
-カーボンブラックを含む補強フィラーであって、カーボンブラックは、補強フィラーの50質量%超を占め、ゴム組成物中のフィラーの体積分率は18%より大きい、
補強フィラーと、
-架橋系と
をベースとするゴム組成物である。
本発明の別の主題は、本発明の組成物を含むゴム物品、特に空気入りタイヤ又は非空気入りタイヤのトレッドである。
【発明を実施するための形態】
【0006】
I-定義
「をベースとする組成物」という表現は、種々の使用成分のその場反応の混合物及び/又は生成物を含む組成物を意味するものと理解すべきであり、これらの成分のいくつかは、少なくとも部分的に、組成物の製造の種々の段階中に、互いに反応する能力があり及び/又は反応するよう意図され;従って、組成物は、完全に又は部分的に架橋状態又は非架橋状態であり得る。
本発明の意味の範囲内で、表現「エラストマー100重量部当たりの重量部」(又はphr)は、エラストマー100質量部当たりの質量部を意味するものと理解すべきである。
本テキストでは、明示的に別段の指示がない限り、全ての指示百分率(%)は、質量百分率(%)である。
さらに、「aとbの間」という表現で示される値のいずれの区間も、a超からb未満に及ぶ値の範囲(すなわち、限界a及びbは除外される)を表し、一方で、「a~b」という表現で示される値のいずれの区間も、aからbまでに及ぶ値の範囲(すなわち、厳密な限界a及びbを含む)を意味する。本文書では、値の区間が「a~b」という表現で示されるとき、「aとbの間」という表現で表される区間をもかつ優先的に意味する。
【0007】
「主」化合物に言及するとき、これは、本発明の意味の範囲内では、この化合物は、組成物中の同タイプの化合物の中で主である、すなわち、同タイプの化合物の中で質量で最大量を占めることを意味すると理解される。従って、例えば、主エラストマーは、組成物中のエラストマーの総質量に対して最大質量を占めるエラストマーである。同様に、「主」フィラーは、組成物のフィラーの中で最大質量を占めるフィラーである。例として、1種だけのエラストマーを含む系では、このエラストマーは、本発明の意味の範囲内で主であり、2種のエラストマーを含む系では、主エラストマーは、エラストマーの質量の半分より多くを占める。対照的に、「少量(minor)」化合物は、同タイプの化合物の中で最大質量分率を占めない化合物である。好ましくは、用語「主」は、50%超、好ましくは60%超、70%超、80%超、90%超で存在することを意味すると理解され、さらに優先的には「主」化合物は100%を占める。
本特許出願では、表現「コポリマーのモノマー単位全体」又は「コポリマーのモノマー単位の合計」は、重合によってエラストマー鎖にモノマーを挿入することから生じるコポリマーの全ての構成反復単位を意味すると理解される。別段の指示がない限り、エチレン単位と1,3-ジエンとを含有するコポリマー中のモノマー単位又は反復単位の含量は、コポリマーのモノマー単位全体に基づいて計算されるモル百分率で与えられる。
【0008】
本説明で言及する化合物は、化石起源のものであるか又はバイオベースであり得る。後者の場合、それらは部分的又は完全にバイオマス由来であるか又はバイオマスから生じる再生可能出発材料から得られることがある。同様に、言及化合物は、使用済み材料の再利用に由来することもあり、すなわちそれら部分的に又は完全に再利用プロセスに起因し、又は再利用プロセスの結果として生じる出発材料自体から得られることもある。ポリマー、可塑剤、フィラー等が、特に関係する。
本文書に記載のガラス転移温度「Tg」に関する全ての値は、DSC(示差走査熱量測定)によって既知の方法でASTM規格D3418(1999)に準拠して測定される。
【0009】
II-発明の説明
II-1 エラストマーマトリックス
本発明のタイヤの組成物は、エチレン単位と1,3-ジエン単位とを含有するコポリマーであって、コポリマー中のエチレン単位がコポリマーのモノマー単位の50モル%超を占める、コポリマーを50phrより多く含むエラストマーマトリックスを含むという本質的特徴を有する。
本文書では、「エチレン単位と1,3-ジエン単位とを含有するコポリマーであって、コポリマー中のエチレン単位が、コポリマーのモノマー単位の50モル%超を占める、コポリマー」という表現は、文言の簡潔さのために「コポリマー」又は「エチレン単位と1,3-ジエン単位とを含有するコポリマー」で表すことができる。
用語「エラストマーマトリックス」は、組成物のエラストマーの全部を意味すると理解される。
用語「エチレン単位と1,3-ジエン単位とを含有するコポリマー」は、その構造内に、少なくともエチレン単位と1,3-ジエン単位とを含むいずれのコポリマーをも意味すると理解される。従って、コポリマーは、エチレン単位及び1,3-ジエン単位以外のモノマー単位を含むことができる。例えば、コポリマーは、αオレフィン単位、特に3~18個の炭素原子を有し、有利には3~6個の炭素原子を有するαオレフィン単位を含むこともできる。例えば、αオレフィン単位は、プロピレン、ブテン、ペンテン、ヘキセン又はこれらの混合物から成る群より選択され得る。
既知の方法で、表現「エチレン単位」は、エラストマー鎖へのエチレンの挿入の結果として生じる-(CH2-CH2)-単位を指す。
既知の方法で、表現「1,3-ジエン単位」は、イソプレンの場合は1,4-付加、1,2-付加又は3,4-付加による1,3-ジエンの挿入の結果として生じる単位を指す。1,3-ジエン単位は、例えば、1,3-ジエン又は1,3-ジエンの混合物の単位であり、該1,3-ジエンは、4~12個の炭素原子を有する1,3-ジエン(複数可)、例えば非常に特に1,3-ブタジエン及びイソプレンである。好ましくは、1,3-ジエンは1,3-ブタジエンである。
有利には、コポリマー中のエチレン単位は、コポリマーのモノマー単位の、50モル%と95モル%の間、好ましくは55モル%と90モル%の間を占める。
有利には、エチレン単位と1,3-ジエン単位とを含有するコポリマーは、エチレンと1,3-ジエンとのコポリマーであり、すなわち、コポリマーは、エチレン及び1,3-ジエン以外の単位を含有しない。
【0010】
コポリマーが、エチレンと1,3-ジエンとのコポリマーであるとき、前記コポリマーは、有利には、下記式(III)及び/又は(IV)の単位を含有する。コポリマー中のモノマー単位としての飽和6員環状単位、すなわち式(III)の1,2-シクロヘキサンジイルの存在は、ポリマー鎖の成長中のポリマー鎖への一連のエチレン及び1,3-ブタジエンという非常に特定の挿入から生じ得る。
【化2】
例えば、エチレンと1,3-ジエンとのコポリマーは式(III)の単位を欠くことがある。この場合、コポリマーは、好ましくは式(IV)の単位を含有する。
【0011】
エチレンと1,3-ジエンとのコポリマーが、式(III)の単位若しくは式(IV)の単位又はまた式(III)の単位と式(IV)の単位とを含むとき、コポリマー中の式(III)の単位及び式(IV)の単位のモル百分率は、それぞれo及びpであり、好ましくは下記方程式(eq. 1)を満たし、さらに優先的には下記方程(eq. 2)を満たし、o及びpは、コポリマー中のモノマー単位全体に基づいて計算される。
0<o+p≦25 (eq. 1)
0<o+p<20 (eq. 2)
本発明によれば、コポリマーは、好ましくはエチレンと1,3-ジエン(好ましくは1,3-ブタジエン)とのコポリマーは、ランダムコポリマーである。
有利には、コポリマー、好ましくはエチレンと1,3-ジエン(好ましくは1,3-ブタジエン)とのコポリマーの数平均質量(number-average mass)(Mn)は、100,000~300,000g/モル、好ましくは150,000~250,000g/モルに及ぶ範囲内である。
【0012】
コポリマーのMnは、後述するようにサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)によって既知の方法で決定される。
SEC(サイズ排除クロマトグラフィー)技術は、溶液中の巨大分子を、多孔性ゲルを充填したカラムを通してそれらのサイズに従って分離できるようにする。巨大分子は、それらの流体力学的容積に従って分離され、最も嵩高いものが最初に溶出される。絶対的方法ではないが、SECはポリマーのモル質量の分布の理解を可能にする。種々の数平均モル質量(number-average molar masses)(Mn)及び重量平均モル質量(weight-average molar masses)(Mw)は商業標準物質から決定可能であり、多分散性指数(PI=Mw/Mn)は、「ムーア(Moore)」キャリブレーションによって計算可能である。分析前のポリマーサンプルの特定の処理はない。ポリマーサンプルを約1g.l-1の濃度で溶出溶媒に単に溶かすだけである。次に溶液を注入前に0.45μmのポロシティを有するフィルターを通して濾過する。使用装置は、Waters Acquity又はWaters Allianceクロマトグラフラインである。溶出溶媒は、250ppmのBHT(ブチル化ヒドロキシトルエン)型酸化防止剤を含むテトラヒドロフランであり、流速は1ml.分-1、カラム温度は35℃、分析時間は40分である。使用カラムは、商品名InfinityLab PolyPoreを有する3つのAgilentカラムのセットである。注入サンプルの溶液体積は100μlである。検出器は、「Acquity屈折計」又は「Waters 2410」示差屈折計であり、クロマトグラフデータを処理するためのソフトウェアはWaters Empowerシステムである。計算される平均分子質量は、ポリスチレン標準物質から作成されるキャリブレーション曲線に関するものである。
【0013】
コポリマーは、当業者に既知の種々の合成方法に従って、特にコポリマーの目標とするミクロ構造に応じて得ることができる。一般的に、コポリマーは、少なくとも1,3-ジエン、好ましくは1,3-ブタジエンと、エチレンとの共重合によって、既知の合成方法に従って、特にメタロセン錯体を含む触媒系の存在下で調製可能である。このような訳で、メタロセン錯体をベースとする触媒系に言及することができ、この触媒系は、出願会社の代わりに文献EP 1 092 731、WO 2004035639、WO 2007054223及びWO 2007054224に記載されている。コポリマーがランダムである場合を含め、コポリマーは、プレフォームド型の触媒系、例えば文献WO 2017093654 A1, WO 2018020122 A1及びWO 2018020123 A1に記載の触媒を用いるプロセスによって調製することもできる。
コポリマーは、それらのミクロ構造及び/又はそれらのマクロ構造が互いに異なる、エチレン単位とジエン単位とを含有するコポリマーの混合物から成り得る。
有利には、組成物中のエチレン単位と1,3-ジエン単位とを含有するコポリマーの含量は、60~100phr、好ましくは80~100phrに及ぶ範囲内である。
エラストマーマトリックスは、エラストマーとして、有利には、エチレン単位と1,3-ジエン単位とを含有するコポリマーだけを含み得る。
【0014】
或いは、エラストマーマトリックスは、エチレン単位と1,3-ジエン単位とを含有するコポリマー以外のジエンエラストマー(本文書では「他のエラストマー」とも呼ぶ)をさらに含むことができる。他のエラストマーは、それが存在するときには少量であり、すなわち、それは、エラストマーマトリックスの質量で50%未満、40%未満、30%未満、20%未満、実に10%よりさらに少ない。例えば、組成物中の他のエラストマーの含量は、0~40phr、好ましくは0~20phrに及ぶ範囲内であり得る。
本発明のタイヤのエラストマーマトリックスの他のエラストマーは、優先的には、高度に不飽和のジエンエラストマー、例えばポリブタジエン(「BR」と略す)、合成ポリイソプレン(IR)、天然ゴム(NR)、ブタジエンコポリマー、イソプレンコポリマー及びこれらのエラストマーの混合物から成る群より選択される。用語「高度に不飽和のジエンエラストマー」は、一般的に、少なくとも部分的に、50%(モル%)を超えるジエン起源(共役ジエン)の含量を有する共役ジエンモノマーの結果として生じるジエンエラストマーを意味すると理解される。
【0015】
II-2 1,3-双極子化合物
本発明のゴム組成物は1,3-双極子化合物を含む。用語「1,3-双極子化合物」はIUPACによって与えられる定義に従って理解される。
1,3-双極子化合物は下記式(I):
Q-Sp-B (I)
に相当し、
式中:
-Qは、少なくとも及び好ましくは1個の窒素原子を含有する双極子を含み、
-好ましくは二価であるSpは、QとBを連結する原子又は原子群であり、
-Bは、下記式(II)に相当するイミダゾール環であって、
【化3】
式中、
〇4つの記号Z、Y、R及びR’の3つは、同一又は異なり、それぞれ原子又は原子群を表し、ZとYは、それらが付着している炭素原子と一緒に環を形成することがあり(当然にZもYも第4の記号を意味しないとき)、
〇かつ第4の記号Z、Y、R又はR’は、Spへの直接付着を意味する。
【0016】
本発明の第1の代替形態によれば、Rは、Spへの直接付着を意味し、この場合、Rが第4の記号である。
この代替形態によれば、R’は、水素原子であるか又は少なくとも1個のヘテロ原子を含有し得る炭素ベースの基であり得る。
この代替形態の優先的実施形態によれば、R’は、1~20個の炭素原子を含有する炭素ベースの基、優先的には脂肪族基、さらに優先的には好ましくは1~12個の炭素原子を含有するアルキル基を表す。
本発明の第2の代替形態によれば、R’は、Spへの直接付着を意味し、この場合、R’が第4の記号である。
第1又は第2の代替形態によれば、Z及びYは、それぞれ水素原子であり得る。
第1の代替形態又は第2の代替形態によれば、Z及びYは、それらが付着している炭素原子と一緒に環を形成することができる。Zと、Yと、Z及びYが付着している原子とで形成される環は、置換され又は非置換でよく、少なくとも1個のヘテロ原子を含むことができる。Z及びYは、それらが付着している2個の炭素原子と芳香環を形成することができる。この場合、イミダゾール環は、置換又は非置換ベンズイミダゾールであり得る。
【0017】
本発明の第3の代替形態によれば、当然にY及びZが、それらが付着している炭素原子と一緒に環を形成しないとき、Y又はZは、Spへの直接付着を意味し、この場合、Y又はZが第4の記号である。
本発明の第2又は第3の代替形態によれば、Rは、有利には水素原子を表すか又は少なくとも1個のヘテロ原子を含有し得る炭素ベースの基を表す。この場合、Rは、1~20個の炭素原子の基、好ましくは脂肪族基、さらに優先的には好ましくは1~12個の炭素原子を含有するアルキル基、さらに優先的にはメチルであり得る。
有利には、Spは二価である。
Spは、20個までの炭素原子を含有する基であってよく、この基は、少なくとも1個のヘテロ原子を含有し得る。Spは、脂肪族又は芳香族基であり得る。
Spが脂肪族基であるとき、Spは、優先的には1~20個の炭素原子、さらに優先的には1~12個の炭素原子、さらに優先的には1~6個の炭素原子、非常に特に1~3個の炭素原子を含有する。Spが芳香族基であるとき、Spは、優先的には6~20個の炭素原子、さらに優先的には6~12個の炭素原子を含有する。
有利には、Spは、1~20個の炭素原子、優先的には1~12個の炭素原子、さらに優先的には1~6個の炭素原子、さらに優先的には1~3個の炭素原子を含有するアルキレン基から選択される二価基である。この場合もやはり好ましくは、Spは、1~3個の炭素原子を含有する二価基、好ましくはメチレン基である。
好ましくは6~20個の炭素原子、さらに優先的には6~12個の炭素原子を含有するアリーレン基も二価基Spとして適切であり得る。
【0018】
ニトリルオキシド、ニトリルイミン及びニトロンから成る群より選択される化合物は、この場合、Qは、-C≡N→O、-C≡N→N-又は-C=N(→O)-単位を含有し、1,3-双極子化合物として非常に特に適している。
Qが-C≡N→O単位を含むとき、Qは、好ましくは下記式(V)に相当する単位を含み、さらに優先的には下記式(V)に相当する単位を表す。
【化4】
式中、5つの記号X
1~X
5の4つは、同一又は異なり、それぞれ原子又は原子群であり、第5の記号はSpへの直接付着を意味し、X
1及びX
5は、両方ともH以外であることが知られている。5つの記号X
1~X
5の4つは、脂肪族又は芳香族基であり得る。脂肪族基は、1~20個の炭素原子、優先的には1~12個の炭素原子、さらに優先的には1~6個の炭素原子、さらに優先的には1~3個の炭素原子を含有し得る。芳香族基は、6~20個の炭素原子、優先的には6~12個の炭素原子を含有し得る。
X
1、X
3及びX
5は、優先的にはそれぞれ1~6個の炭素原子、さらに優先的には1~3個の炭素原子のアルキル基、さらに優先的にはメチル又はエチル基である。
有利には、X
1、X
3及びX
5は同一である。さらに、X
1、X
3及びX
5は、優先的にはそれぞれ1~6個の炭素原子、さらに優先的には1~3個の炭素原子のアルキル基、さらに優先的にはメチル又はエチル基である。
【0019】
特に有利には、1,3-双極子化合物は、下記式(Va)に相当する化合物2,4,6-トリメチル-3-((2-メチル-1H-イミダゾール-1-イル)メチル)ベンゾニトリルオキシド、又は下記式(Vb)に相当する化合物2,4,6-トリエチル-3-((2-メチル-1H-イミダゾール-1-イル)メチル)ベンゾニトリルオキシドである。
【化5】
【0020】
Qが-C=N(→O)-単位を含むとき、Qは、下記式(VI)又は(VII)に相当する単位を含み得る。
【化6】
式中:
-Y
1は、脂肪族基、優先的には好ましくは1~12個の炭素原子を含有するアルキル基、又は6~20個の炭素原子を含有する芳香族基、優先的にはアルキルアリール基、さらに優先的にはフェニル又はトリル基であり、及び
-Spへの直接付着を含むY
2は、脂肪族基、優先的には好ましくは1~12個の炭素原子を含有するアルキレン基、又は優先的には6~20個の炭素原子を含有し、かつそのベンゼン核に、Spへの直接付着を含む芳香族基である。
この場合、Y
2のベンゼン核のSpへの直接付着は、SpがY
2のベンゼン核の置換基であるということを意味する。
【0021】
Qが-C=N(→O)-単位を含むとき、1,3-双極子化合物は、下記式(VIa)、(VIb)、(VIIa)又は(VIIb)の化合物であり得る。
【化7】
【0022】
式(I)に相当する1,3-双極子化合物は、下記セクションIV-2に記載の合成プロセスに従うことによって容易に合成することができる。
ゴ組成物に導入される1,3-双極子化合物の量は、イミダゾール環のモル当量で表される。例えば、1,3-双極子化合物が、上記定義どおりの式(II)のイミダゾール環を1つだけ含有する場合、1モルのイミダゾール環が1モルの1,3-双極子化合物に相当する。1,3-双極子化合物が、上記定義どおりの式(II)の2つのイミダゾール環を含有する場合、2モルのイミダゾール環が1モルの1,3-双極子化合物に相当する。後者の場合、1モル当量のイミダゾール環に応じた1,3-双極子化合物の使用は、半モルの1,3-双極子化合物に相当する。
本発明によれば、組成物中の1,3-双極子化合物の量は、コポリマーを構成するモノマー単位100モル当たり0と50の間、好ましくは0.01と15の間のモル当量であり得る。例えば、それは、4と15の間のモル当量、例えば5と15の間のモル当量であり得る。しかしながら、優先的には、組成物中の1,3-双極子化合物の量は、優先的にはコポリマーを構成するモノマー単位100モル当たり0と3の間のモル当量、さらに優先的には0と2の間のモル当量、さらに優先的には0と1の間のモル当量、実にさらに優先的には0と0.7の間のモル当量のイミダゾール環である。これらの優先的範囲は、特にタイヤにおけるその用途に応じてゴム組成物の硬化状態での剛性とヒステリシスとの間の妥協点を精巧に最適化できるようにする。この場合もやはり好ましくは、組成物中の1,3-双極子化合物の量は、優先的にはコポリマーを構成するモノマー単位100モル当たり0.03と3の間のモル当量、優先的には0.05と2の間のモル当量、さらに優先的には0.07と1の間のモル当量、実にさらに優先的には0.08と0.7の間のモル当量のイミダゾール環である。
【0023】
II-3 フィラー
本発明の組成物は、カーボンフラックを含む補強フィラーをベースとするという本質的特徴をも有し、このカーボンブラックは、補強フィラーの50質量%超を占め、ゴム組成物中のフィラーの体積分率は18%より大きい。
ゴム組成物中のフィラーの体積分率は、組成物の成分全ての体積に対するフィラーの体積の比として定義され、成分全ての体積は、組成物の各成分の体積を合計することによって計算されることが分かる。
本発明の文脈で使用できるブラックは、空気入りタイヤ若しくは非空気入りタイヤ又はそれらのトレッドに従来法で使用されているいずれのブラック(「タイヤグレード」ブラック)でもあり得る。さらに特に、タイヤグレードタイヤの中で、100、200及び300シリーズの補強カーボンブラック、又は500、600又は700シリーズ(ASTMフレード)のブラック、例えば、N115、N134、N234、N326、N330、N339、N347、N375、N550、N683及びN772ブラックに言及することになる。これらのカーボンブラックは、市販されているように、単離状態で、又はいずれの他の形態でも、例えば使用するゴム用添加剤のいくつかの支持体として使用可能である。カーボンブラックは、例えば、ジエンエラストマー、特にイソプレンエラストマーに、マスターバッチの形態で既に組み込まれていることもある(例えば、出願WO97/36724又はWO99/16600参照)。数種のカーボンブラックの混合物を所定含量で使用することもできる。
【0024】
有利なことに、フィラーは50質量%超、好ましくは80質量%超のカーボンブラックを含む。この場合もやはり好ましくは、フィラーは、排他的にカーボンブラックから成る。すなわち、カーボンブラックがフィラーの100質量%を占める。
有利には、フィラーは、50質量%超、好ましくは80質量%超の少なくとも1種の、60~160m2/g、好ましくは70~130m2/g、好ましくは100~120m2/gに及ぶ範囲内のBET比表面積を示すカーボンブラックを含む。カーボンブラックのBET比表面積は、ASTM規格D6556-10[マルチポイント(5ポイントの最小)法-ガス:窒素-相対圧力p/p0範囲:0.1~0.3]に従って測定される。
有利には、本発明の組成物中のフィラーの含量は、47~120phr、好ましくは49~110phr、好ましくは50~105phr、好ましくは55~85phrに及ぶ範囲内である。
有利には、ゴ組成物中のフィラーの体積分率は、19%超、好ましくは20%~26%、好ましくは21%~24%に及ぶ範囲内である。
さらに、本発明の組成物中のカーボンブラック(その1種又は複数であろうと)の含量は、有利には47~80phr、好ましくは49~80phr、好ましくは49~75phr、好ましくは49~70phr又は50~75phr、好ましくは55~75phrに及ぶ範囲内である。
有利には、ゴム組成物中の、カーボンブラック、好ましくは60~160m2/g、好ましくは70~130m2/gに及ぶ範囲内のBET比表面積を示すカーボンブラックの体積分率は、18%超、好ましくは19%超、好ましくは20%~26%、好ましくは21%~24%に及ぶ範囲内である。
本発明の組成物は、カーボンブラック以外のフィラーを含むことができるが、これは必須ではなく又は好ましくない。これは、特に無機フィラー、例えばシリカに関連し得る。
【0025】
II-4 架橋系
架橋系は、タイヤ用ゴム組成物の分野の当業者に既知のいずれのタイプの系であってもよい。それは、特に硫黄及び/又はペルオキシド及び/又はビスマレイミドをベースとし得る。
優先的には、架橋系は、硫黄をベースとし;従ってそれは加硫系と呼ばれる。硫黄はいずれの形態で寄与してもよく、特に分子硫黄及び/又は硫黄供与剤の形態で寄与し得る。優先的には少なくとも1種の加硫促進剤も存在し、場合により、また優先的には、種々の既知の加硫活性化剤、例えば酸化亜鉛、ステアリン酸又は等価化合物、例えばステアリン酸塩、及び遷移金属の塩、グアニジン誘導体(特にビフェニルグアニジン)、又は既知の加硫遅延剤を利用してもよい。
硫黄は、0.3phrと12phrの間、特に0.5phrと5.0phrの間の優先的含量で使用される。加硫促進剤は、0.5phrと10phrの間、さらに優先的には0.5phrと5.0phrの間の優先的含量で使用される。
促進剤として、硫黄の存在下でのジエンエラストマーの加硫の促進剤として作用する能力があるいずれの化合物をも、特にチアゾールタイプの促進剤、及びまたそれらの誘導体、又はスルフェンアミド、チウラム、ジチオカルバマート、ジチオホスファート、チオ尿素及びキサンタートタイプの促進剤を利用してよい。特に、該促進剤の例として、下記化合物に言及し得る:2-メルカプトベンゾチアジルジスルフィド(「MBTS」と略記)、N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド(「CBS」)、N,N-ジシクロヘキシル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド(「DCBS」)、N-(tert-ブチル)-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド(「TBBS」)、N-(tert-ブチル)-2-ベンゾチアゾールスルフェンイミド(「TBSI」)、テトラベンジルチウラムジスルフィド(「TBZTD」)、亜鉛ジベンジルジチオカルバマート(「ZBEC」)及びこれらの化合物の混合物に言及し得る。
【0026】
II-5 可能な添加剤
ゴム組成物は、場合により、タイヤ用エラストマー組成物に慣用される有用な添加剤の全て又はいくつか、例えば、可塑剤(例えば、可塑化油及び/又は可塑化樹脂)、顔料、保護剤、例えば抗オゾンワックス、化学抗オゾン剤又は酸化防止剤、抗疲労剤、補強樹脂(例えば、出願WO02/10269に記載のもの)等を含むこともできる。
有利には、本発明の組成物は、可塑化炭化水素樹脂を含まないか、又は10phr未満、好ましくは5phr未満の可塑化炭化水素樹脂を含む。さらに好ましくは、本発明の組成物は、可塑化炭化水素樹脂を含まない。本発明の組成物は、有利には、20℃で液体である可塑化油をも含まないか、又は15phr未満、好ましくは10phr未満、好ましくは5phr未満の該可塑化油を含む。この場合もやはり好ましくは、本発明の組成物は、20℃で液体である可塑化油を含まない。
【0027】
II-6 ゴム組成物の調製
本発明の組成物は、適切なミキサー内で、当業者に周知の下記2つの連続調製段階を用いて製造可能である。
-第1の熱機械加工又は混練段階(「非生産」段階)、これは単一の熱機械段階で行うことができ、この間に、架橋系以外の全ての必要成分、特にエラストマーマトリックス、補強フィラー及び種々の他の任意的添加剤が、(例えばバンバリー型の)通例の内部ミキサー等の適切なミキサーに導入される。エラストマーへの任意的フィラーの組み込みは、熱機械的に混練しながら1回又は複数回で行うことができる。例えば、出願WO97/36724及びWO99/16600に記載されているように、マスターバッチの形態で、エラストマーに全て又は部分的にフィラーが既に組み込まれている場合、直接混練されるのは、マスターバッチであり、適宜、マスターバッチの形態でなく組成物に存在する他のエラストマー又はフィラー、及び架橋系以外の種々の他の任意的添加剤も組み込まれる。非生産段階は、110℃と200℃の間、好ましくは130℃と185℃の間の最大温度までの高温で、一般的に2分と10分の間の時間にわたって行うことができる;
-第2の機械加工段階(「生産」段階)、これは、第1の非生産段階中に得られた混合物を典型的に120℃未満、例えば40℃と100℃の間のより低い温度まで冷却した後にオープンミル等の外部ミキサー内で行われる。その後、架橋系が組み込まれてから、あらゆる成分が数分間、例えば5分と15分の間の時間にわたって混合される。
該段階については、例えば、出願EP-A-0 501 227、EP-A-0 735 088、EP-A-0 810 258、WO 00/05300及びWO 00/05301に記載されている。
【0028】
このようにして得られた最終組成物は、引き続き、例えばシート又はプラークの形態で、特に実験室特徴づけのためにカレンダー加工されるか、或いは例えば、タイヤトレッドとして使用可能なゴム半完成品(又は異形要素(profiled element))の形態で押し出される(又は別のゴム組成物と共押し出しされる)。これらの製品は、次に当業者に既知の技術に従って、タイヤの製造で使用することができる。
組成物の架橋は、当業者に既知の方法で、例えば130℃と200℃の間の温度で、圧力下で行うことができる。
【0029】
本文書には、本発明のゴム組成物の調製プロセスをも記載する。このプロセスは、
-第1の「非生産」段階中に1,3-双極子化合物及びフィラーをコポリマーに添加し、
130℃と200℃の間の最高温度に達するまで熱機械的に混練し、
-この混ぜ合わさった混合物を100℃未満の温度まで冷却し、
-その後に架橋系を組み込み、
-あらゆる成分を120℃未満の最大温度まで混練する
段階を含む。
1,3-双極子化合物の添加量は、優先的にはコポリマーを構成するモノマー単位100モル当たり0と3の間のモル当量、さらに優先的には0と2の間のモル当量、さらに優先的には0と1の間のモル当量、さらに優先的には0と0.7の間のモル当量のイミダゾール環である。これらの各優先的範囲について、下限は、好ましくは少なくとも0.1モル当量の1,3-双極子化合物である。
有利には、1,3-双極子化合物は、ゴム組成物の他の成分の導入前、特にフィラーの添加前にコポリマーと混合される。混合され、好ましくは熱機械的に混練されるコポリマーと1,3-双極子化合物との間の接触時間は、配合、特に熱機械的混練の条件に応じて、特に温度の関数として調整される。温度が高いほど、この接触時間は短い。典型的に、100℃~130℃の温度では接触時間は1~5分である。
好ましくは、従来法で行われているように、好ましくはミキサーへのコポリマーの導入前に、特にコポリマーの合成の最後に、少なくとも1種の酸化防止剤がコポリマーに添加される。
ゴム組成物の全ての成分の組み込み後に、このようにして得られた最終組成物は、引き続き、例えばシート又はプラークの形態で、特に実験室特徴づけのためにカレンダー加工されるか、或いはまた例えば、タイヤの調製でゴム部品として使用されるゴム異形要素を形成するために押し出される。
【0030】
II-7 ゴム物品
本発明の別の主題は、本発明の少なくとも1種の組成物を含むゴム物品である。
本発明の文脈における性能品質の妥協点改善を考えると、ゴム物品は、有利には、空気入りタイヤ、非空気入りタイヤ、無限軌道及びコンベヤーベルトから成る群より選択される。好ましくは、ゴム物品は、空気入りタイヤ又は非空気入りタイヤである。
さらに特に、本発明の別の主題は、本発明の組成物を含むトレッドを備えた空気入りタイヤ又は非空気入りタイヤである。
トレッドは、材料及びまた空隙の縁を作り出すようにレリーフ状の要素(ブロック、リブ)を区切る複数の溝によって形成されたパターンを備える走行面を示す。これらの溝は、トレッドの総容積(レリーフ状要素の容積と全ての溝の容積を両方含む)に対して、本文書では、「容積空隙率(volumetric void ratio)」によって示される百分率によって表される容積の空隙に相当する。ゼロに等しい容積空隙率は、溝又は空隙のないトレッドを意味する。
【0031】
本発明は、民間のエンジニアリング車両又は農業用車両に装備することを意図したタイヤトレッド、及び走行する石の多い地面において特にタイヤが非常に特有の応力を受けるヘビーデューティー車両、さらに特に民間のエンジニアリング車両に特によく適している。従って、有利には、本発明の組成物を含むトレッドを備えた空気入りタイヤ又は非空気入りタイヤは、民間のエンジニアリング車両、農業用車両又はヘビーデューティー車両、好ましくは民間のエンジニアリング車両用のタイヤである。これらのタイヤは、軽車両、特に乗用車又はバン用のタイヤトレッドの厚さに比べて大きいゴム材料の厚さを示すトレッドを備える。典型的に、ヘビーデューティー車両用タイヤトレッドの摩耗部分は少なくとも15mmの厚さを示し、民間のエンジニアリング車両のタイヤトレッドの摩耗部分は少なくとも30mm、実際には120mmまでの厚さを示す。従って、本発明のタイヤトレッドは、有利には1つ以上の溝を示し、その平均深さは15~120mm、好ましくは65~120mmである。
本発明の空気入りタイヤは、20~63インチ、好ましくは35~63インチの範囲の直径を有し得る。
さらに、本発明の空気入りタイヤ又は非空気入りタイヤのトレッド全体にわたる平均容積空隙率は、5%~40%、好ましくは5%~25%に及ぶ範囲内であり得る。
本発明の別の主題は、本発明の組成物を含む少なくとも1つのゴム要素を含むゴム製無限軌道であって、この少なくとも1つのゴム要素が好ましくはエンドレスゴムベルト又は複数のゴムパッドである無限軌道、及び本発明の組成物を含むゴム製コンベヤーベルトである。
本発明は、未加工状態(すなわち、硬化前)と硬化状態(すなわち、架橋又は加硫後)の両方の上記ゴム物品に関する。
【0032】
III-好ましい実施形態
上記の観点から、本発明の好ましい実施形態を以下に述べる。
1. ゴム組成物であって、少なくとも、
-エチレン単位と1,3-ジエン単位とを含有するコポリマーであって、コポリマー中のエチレン単位が、コポリマーのモノマー単位の50モル%超を占める、コポリマーを50phrより多く含むエラストマーマトリックスと、
-下記式(I)に相当する1,3-双極子化合物であって、
Q-Sp-B (I)
式中:
○Qは、少なくとも及び好ましくは1個の窒素原子を含有する双極子であり、
○好ましくは二価であるSpは、QとBを連結する原子又は原子群であり、
○Bは、下記式(II)に相当するイミダゾール環であって、
【化8】
式中:
●4つの記号Z、Y、R及びR’の3つは、同一又は異なり、それぞれ原子又は原子群を表し、Z及びYは、それらが付着している炭素原子と一緒に環を形成することがあり、
●かつ第4の記号Z、Y、R又はR’は、Spへの直接付着を意味する、
イミダゾール環を含む、
1,3-双極子化合物と、
-カーボンブラックを含む補強フィラーであって、カーボンブラックは、補強フィラーの50質量%超を占め、ゴム組成物中のフィラーの体積分率は18%より大きい、
補強フィラーと、
-架橋系と
をベースとするゴム組成物。
【0033】
2. コポリマー中のエチレン単位が、コポリマーのモノマー単位の50モル%と95モル%の間、好ましくは55モル%と90モル%の間を占める、実施形態1に記載の組成物。
3. エチレン単位と1,3-ジエン単位とを含有するコポリマーが、エチレンと1,3-ジエンとのコポリマーである、実施形態1~2のいずれか1つに記載の組成物。
4. 1,3-ジエンが1,3-ブタジエンである、実施形態1~3のいずれか1つに記載の組成物。
【0034】
5. コポリマーが下記式(III)の単位若しくは下記式(IV)の単位又はまた下記式(III)の単位と下記式(IV)の単位とを含有する、実施形態1~4のいずれか1つに記載の組成物。
【化9】
【0035】
6. コポリマー中の式(III)の単位及び式(IV)の単位のモル百分率、それぞれo及びpが、下記方程式(eq. 1)を満たし、優先的には下記方程(eq. 2)を満たし、o及びpは、コポリマー中のモノマー単位全体に基づいて計算される、実施形態5に記載の組成物。
0<o+p≦25 (eq. 1)
0<o+p<20 (eq. 2)
7. エチレン単位と1,3-ジエン単位とを含有するコポリマーがランダムコポリマーである、実施形態1~6のいずれか1つに記載の組成物。
8. エチレン単位と1,3-ジエン単位とを含有するコポリマーの含量が、60~100phr、好ましくは80~100phrに及ぶ範囲内である、実施形態1~7のいずれか1つに記載の組成物。
9. R’がSpへの直接付着を意味する、実施形態1~8のいずれか1つに記載の組成物。
10. Z及びYが、それぞれ水素原子である、実施形態1~9のいずれか1つに記載の組成物。
11. Z及びYが、それらが付着している炭素原子と一緒に環、好ましくは芳香環を形成する、実施形態1~9のいずれか1つに記載の組成物。
12. Rが、水素原子を表すか、又は少なくとも1個のヘテロ原子を含有することができ、かつ好ましくは1~20個の炭素原子を含有する炭素ベースの基を表す、実施形態1~11のいずれか1つに記載の組成物。
13. Rが脂肪族基、優先的には好ましくは1~12個の炭素原子を含有するアルキル基である、実施形態1~12のいずれか1つに記載の組成物。
14. Rがメチルである、実施形態1~13のいずれか1つに記載の組成物。
15. Spが、20個までの炭素原子を含有する基であり、かつ少なくとも1個のヘテロ原子を含有することができる、実施形態1~14のいずれか1つに記載の組成物。
16. Spが、優先的には1~20個の炭素原子、さらに優先的には1~12個の炭素原子、さらに優先的には1~6個の炭素原子を含有する脂肪族基、又は優先的には6~20個の炭素原子、さらに優先的には6~12個の炭素原子を含有する芳香族基である、実施形態1~15のいずれか1つに記載の組成物。
17. Spが、1~20個の炭素原子、優先的には1~12個の炭素原子、さらに優先的には1~6個の炭素原子、さらに優先的には1~3個の炭素原子を含有するアルキレン基、又は優先的には6~20個の炭素原子、さらに優先的には6~12個の炭素原子を含有するアリーレン基である、実施形態1~16のいずれか1つに記載の組成物。
18. 1,3-双極子化合物が、ニトリルオキシド、ニトリルイミン及びニトロンから成る群より選択される、実施形態1~17のいずれか1つに記載の組成物。
19. Qが-C=N→O単位を含有する、実施形態1~18のいずれか1つに記載の組成物。
【0036】
20. Qが、下記式(V):
【化10】
に相当する単位であって、
式中:
5つの記号X
1~X
5の4つが、同一又は異なり、それぞれ原子又は原子群、優先的には脂肪族基若しくは芳香族基であり、かつ第5の記号が、Spへの直接付着を意味し、X
1及びX
5が、水素原子でないことが知られている、単位を含み、好ましくは該単位を表す、
実施形態1~19のいずれか1つに記載の組成物。
【0037】
21. X1、X3及びX5が同一である、実施形態20に記載の組成物。
22. X1、X3及びX5が、それぞれ1~6個の炭素原子、優先的には1~3個の炭素原子のアルキル基である、実施形態20又は21に記載の組成物。
23. X1、X3及びX5が、それぞれメチル又はエチル、好ましくはメチルである、実施形態20~22のいずれか1つに記載の組成物。
24. 1,3-双極子化合物が、2,4,6-トリメチル-3-((2-メチル-1H-イミダゾール-1-イル)メチル)ベンゾニトリルオキシド又は2,4,6-トリエチル-3-((2-メチル-1H-イミダゾール-1-イル)メチル)ベンゾニトリルオキシド、好ましくは2,4,6-トリメチル-3-((2-メチル-1H-イミダゾール-1-イル)メチル)ベンゾニトリルオキシドである、実施形態1~23のいずれか1つに記載の組成物。
25. 1,3-双極子化合物の含量が、コポリマーを構成するモノマー単位100モル当たり、0と50の間のモル当量、好ましくは0.01と15の間のモル当量、例えば4と15の間のモル当量に相当する、実施形態1~24のいずれか1つに記載の組成物。
26. 1,3-双極子化合物の含量が、コポリマーを構成するモノマー単位100モル当たり、0.1と3の間のモル当量、コポリマーを構成するモノマー単位100モル当たり、優先的には0.1と2の間のモル当量、さらに優先的には0.1と1の間のモル当量、実にさらに優先的には0.1と0.7の間のモル当量のイミダゾール環に相当する、実施形態1~24のいずれか1つに記載の組成物。
【0038】
27. フィラーが、70質量%超、好ましくは80質量%超のカーボンブラックを含む、実施形態1~26のいずれか1つに記載の組成物。
28. フィラーが、100質量%のカーボンブラックを含む、実施形態1~27のいずれか1つに記載の組成物。
29. フィラーの含量が47~120phr、好ましくは49~110phr、好ましくは50~105phr、好ましくは55~85phrに及ぶ範囲内である、実施形態1~28のいずれか1つに記載の組成物。
30. ゴム組成物中のフィラーの体積分率が、19%超、好ましくは20%~26%、好ましくは21%~24%に及ぶ範囲内である、実施形態1~29のいずれか1つに記載の組成物。
31. カーボンブラックの含量が、47~80phr、好ましくは49~80phr、好ましくは49~75phr、好ましくは49~70phr、又は50~75phr、好ましくは55~75phrに及ぶ範囲内である、実施形態1~30のいずれか1つに記載の組成物。
32. ゴム組成物中のカーボンブラックの体積分率が、18%超、好ましくは19%超、好ましくは20%~26%、好ましくは21%~24%に及ぶ範囲内である、実施形態1~31のいずれか1つに記載の組成物。
33. 組成物が、可塑化炭化水素樹脂を含まないか又は10phr未満、好ましくは5phr未満の可塑化炭化水素樹脂を含む、実施形態1~32のいずれか1つに記載の組成物。
34. 組成物が、20℃で液体である可塑化油を含まないか、又は15phr未満、好ましくは10phr未満、好ましくは5phr未満の該可塑化油を含む、実施形態1~33のいずれか1つに記載の組成物。
35. 架橋系が、分子硫黄及び/又は硫黄供与剤をベースとする加硫系である、実施形態1~34のいずれか1つに記載の組成物。
【0039】
36. 実施形態1~35のいずれか1つに記載の組成物を含む、ゴム物品。
37. 前記物品が、空気入りタイヤ、非空気入りタイヤ、無限軌道及びコンベヤーベルトから成る群より選択される、実施形態36に記載のゴム物品。
38. 実施形態1~35のいずれか1つに記載の組成物を含むトレッドを備える空気入りタイヤ又は非空気入りタイヤ。
39. 民間のエンジニアリング車両、農業用車両又はヘビーデューティー車両、好ましくは民間のエンジニアリング車両用のタイヤである、実施形態38に記載のタイヤ。
40. 組成物が、トレッドの容積の少なくとも50%、好ましくは少なくとも70%で存在する、実施形態38又は39に記載のタイヤ。
41. そのトレッドが1つ以上の溝を示し、その平均深さが、30~120mm、好ましくは45~75mmに及ぶ範囲内である、実施形態38~40のいずれか1つに記載のタイヤ。
42. 5%~40%、好ましくは5%~25%に及ぶ範囲内である、トレッド全体にわたる平均容積空隙率を示す、実施形態38~41のいずれか1つに記載のタイヤ。
43. 20~63インチ、好ましくは35~63インチに及ぶ範囲内である直径を示す、実施形態38~42のいずれか1つに記載のタイヤ。
44. 実施形態1~35のいずれか1つに記載の組成物を含む少なくとも1つのゴム要素を含む、無限軌道。
45. 少なくとも1つのゴム要素が、エンドレスゴムベルト又は複数のゴムパッドである、実施形態44に記載の無限軌道。
46. 実施形態1~35のいずれか1つに記載の組成物を含む、ゴムコンベヤーベルト。
【実施例】
【0040】
IV-例
IV-1 使用した測定及び試験
モル質量の決定:サイズ排除クロマトグラフィーによるコポリマーの分析
a) 周囲温度でテトラヒドロフラン(THF)に溶解するコポリマーについては、THF中サイズ排除クロマトグラフィーによりモル質量を決定した。一連のPolymer LaboratoriesカラムでWaters 717インジェクター及びWaters 515 HPLCポンプを用いて1ml.分-1の流量でサンプルを注入した。サーモスタットで45℃に保持したチャンバー内に置いたこの一連のカラムは、以下で構成される。
-1つのPL Gel 5μmのプレカラム、
-2つのPL Gel 5μmのMixed Cカラム、
-1つのPL Gel 5μm-500Åのカラム。
Waters 410屈折計を用いて検出を行った。Polymer Laboratoriesにより認証されたポリスチレン標準物質並びに屈折計による検出と粘度計との連結による二重検出を用いるユニバーサルキャリブレーションによってモル質量を決定した。
絶対的方法ではないが、SECはポリマーの分子質量分布の理解を可能にする。ポリスチレンタイプの商業標準物質から始め、種々の数平均質量(number-average masses)(Mn)及び重量平均質量(weight-average masses)(Mw)を決定し、多分散性指数を決定することができる(PI=Mw/Mn)。
b) 周囲温度でテトラヒドロフランに溶解しないコポリマーについては、1,2,4-トリクロロベンゼン中でモル質量を決定した。それらをまず最初に熱条件下で(150℃で4時間)全て溶かしてから150℃にて1ml.分-1の流量で、3つのStyragelカラム(2つのHT6Eカラム及び1つのHT2カラム)を備えたWaters Alliance GPCV 2000クロマトグラフに注入した。Waters屈折計を用いて検出を行った。Polymer Laboratoriesにより認証されたポリスチレン標準物質を用いて相対キャリブレーションによりモル質量を決定した。
【0041】
モル分率の決定
エチレン単位、共役ジエン単位及び可能性のあるtrans-1,2-シクロヘキサン単位のモル分率を決定するために本特許出願で具体的に用いた1H NMR及び13C NMR技術の詳細な説明については、論文“Investigation of Ethylene/Butadiene Copolymers Microstructure by 1H and 13C NMR”, Llauro M.F., Monnet C., Barbotin F., Monteil V., Spitz R. and Boisson C., Macromolecules, 2001, 34, 6304-6311を参照されたい。
【0042】
NMR分析
構造解析及びまた合成分子のモル純度決定はNMR分析により行う。5mm BBFO Z-grad「広帯域」プローブを備えたBruker Avance 3400MHz分光計でスペクトルを得る。定量的1H NMR実験は簡易な30°パルスシーケンス及び64の各取得間の3秒の反復時間を用いる。サンプルを重水素化ジメチルスルホキシド(DMSO)に溶かす。この溶媒はロックシグナルのためにも用いられる。0ppmのTMS基準に対する2.44ppmの重水素化DMSOのプロトンのシグナルに関してキャリブレーションを行う。2D 1H/13C HSQC及び1H/13C HMBC実験と合わせた1H NMRスペクトルは分子の構造決定を可能にする(帰属表参照)。定量的1D 1H NMRスペクトルからモル定量化を行う。
【0043】
ムーニーML 1+4
下記原理に従い、ASTM規格D-1646に準拠してムーニー可塑性測定を行う。所与の温度、通常は100℃に加熱した円筒状チャンバー内で一般的に未加工ポリマーを形作る。1分間の予熱後、試験片内で2回転/分にてL型ローターが回転する。この動きを維持するための作業トルクを4分間の回転後に測定する。ムーニー可塑性(ML 1+4)は、「ムーニー単位」(MU、1MU=0.83ニュートン.メートル)で表される。
【0044】
無限軌道試験
この試験は、攻撃に対する抵抗性の代表的なものである。それは、ホイール及び車両に適合した空気入りタイヤに取り付けられ、かつ上に所与の組成物のゴムパッドが付着されて膨らんだ金属製無限軌道を、ある一定時間にわたって、石を詰めた軌道の上で、走行させることにある。走行の最後に、パッドを取り出し、表面の裸眼で見える切れ目の数をカウントする。数が少ないほど、攻撃に対する抵抗能力が高い。
この試験を行うため、下記ポイントIV-4に記載のプロセスに従って異なる組成物のパッドを製造した(下表1参照)。パッドを得るため、ポイントIV-4で得られた非架橋組成物を5.5mmの厚さにカレンダー加工し、プラーク(2つの260×120mm、2つの250×100mm及び2つの235×90mm)を切り取った後にピラミッドのように積み重ねた。その後、この6プラークのブロックをび表面積260×120mmの矩形底部及び235×90mmのフラットトップを有するピラミッド状の型に挿入し、120℃の温度で300分間180バールの圧力で硬化させ、組成物の架橋を可能にした。
引き続きパッドをCaterpillar社からの2つのX-Track10金属製無限軌道に取り付け、これ自体をScania R410ローリーの後輪車軸ユニットの2つのMichelin Xmine D2 12.00R24タイヤに取り付けた。タイヤを再びカットして無限軌道を支持した。タイヤを7バールの圧力まで膨らませ、タイヤ1本当たり4250kgの荷重を掛けた。
Sonvoles, Murcia, Spainから得た30/60サイズの斑岩石で覆われた水平軌道の上で5km/時間の速度にて5時間ローリーを走らせた。軌道上の石の密度は、1平方メートル当たり約1000~1500個の石だった。
試験の最後に、パッドの表面に見える切れ目を数えた。6つのパッドに基づいて結果を平均した。攻撃に対する性能結果は、コントロール組成物C1に対するベース100の百分率で表される。100を超える結果は、攻撃に対する抵抗性の改善を意味する。
【0045】
引張試験(硬化後)
H2型のダンベル試験片について2005年12月の規格NF ISO 37に基づいて破断点伸び(EB%)及び破壊応力(BS)試験を行い、500mm/分の引張速度で測定する。破断点伸びは、伸びの%として表される。破壊応力はMpaで表される。これらの値は、コントロール組成物C1に対するベース100で表される。100より大きい値は、検討中の組成物の機械的特性の、コントロール組成物と比べた改善を反映する。
全てのこれらの引張測定は、仏国規格NF T 40-101(1979年12月)に従って、温度(23±2℃)及び湿度測定(50±5%相対湿度)の標準条件下で行う。
【0046】
IV-2 1,3-双極子化合物2,4,6-トリメチル-3-((2-メチル-1H-イミダゾール-1-イル)メチル)ベンゾニトリルオキシドの合成
この化合物は、下記反応スキームに従って調製することができる。
【化11】
【0047】
IV.2-1 2-(クロロメチル)-1,3,5-トリメチルベンゼンの合成:
この化合物は、Zenkevich, I. G.及びMakarov, A. A.による論文Russian Journal of General Chemistry; Vol. 77; No. 4 (2007), pp. 611 - 619 (Zhurnal Obshchei Khimii, Vol. 77, No. 4 (2007), pp. 653 - 662)に記載の手順に従って得ることができる。
【化12】
酢酸(240ml)中のメシチレン(100.0g、0.832mol)、パラホルムアルデヒド(26.2g、0.874mol)及び塩酸(240ml、37%、2.906mol)の混合物を撹拌し、非常にゆっくり(1.5時間)37℃まで加熱する。周囲温度に戻した後、混合物を水(1.0リットル)及びCH
2Cl
2(200ml)で希釈し、生成物をCH
2Cl
2で(50mlで4回)抽出する。有機相を混ぜ合わせてから、水で(100mlで5回)洗浄し、11~12mbar(浴温度=42℃)までエバポレートする。無色油(133.52g、収率95%)が得られる。+4℃で15~18時間後、油が結晶化する。結晶を濾別し、-18℃に冷却した石油エーテル(40ml)で洗浄してから、大気圧下、周囲温度で3~5時間乾燥させる。融点が39℃の白色固体(95.9g、収率68%)が得られる。モル純度は、96%より高い(
1H NMR)。
【0048】
【0049】
IV.2-2 3-(クロロメチル)-2,4,6-トリメチルベンズアルデヒドの合成:
この化合物は、Yakubov, A. P., Tsyganov, D. V., Belen'kii, L. I.及びKrayushkin, M. M.よる論文Bulletin of the Academy of Sciences of the USSR, Division of Chemical Science (English Translation), Vol. 40, No. 7.2 (1991), pp. 1427 - 1432 (Izvestiya Akademii Nauk SSSR, Seriya Khimicheskaya, No. 7 (1991), pp. 1609 - 1615)に記載の手順に従って得ることができる。
【化14】
ジクロロメタン(200ml)中の2-(クロロメチル)-1,3,5-トリメチルベンゼン(20.0g、0.118mol)及びジクロロメチルメチルエーテル(27.26g、0.237mol)の溶液をアルゴン下で10~12分かけてジクロロメタン(200ml)中のTiCl
4(90.0g、0.474mol)の溶液に17℃で添加する。17~20℃で15~20分間撹拌した後、水(1000ml)及び氷(500g)を反応媒体に加える。10~15分間の撹拌後、有機相を分離する。水相をCH
2Cl
2で(75mlで3回)抽出する。混ぜ合わせた有機相を水で(100mlで4回)洗浄し、減圧下でエバポレートして固体をもたらす(浴温度=28℃)。目標生成物(22.74g)は97%の収率で得られる。その融点は58℃である。
1H NMRによって推定されるモル純度は95モル%である。
【0050】
【0051】
IV.2-3 2,4,6-トリメチル-3-((2-メチル-1H-イミダゾール-1-イル)メチル)ベンズアルデヒドの合成
【化16】
DMF(10ml)中の3-(クロロメチル)-2,4,6-トリメチルベンズアルデヒド(10.0g、0.051mol)とイミダゾール(10.44g、0.127mol)の混合物を80℃で1時間撹拌する。
40~50℃に戻した後、混合物を水(200ml)で希釈し、10分間撹拌する。得られた沈殿物を濾別し、フィルター上で水を(25mlで4回)用いて洗浄してから周囲温度で乾燥させる。融点が161℃の白色固体(7.92g、収率64%)が得られる。モル純度は91%(
1H NMR)である。
【0052】
【0053】
IV.2-4 2,4,6-トリメチル-3-((2-メチル-1H-イミダゾール-1-イル)メチル)ベンズアルデヒドオキシムの合成:
【化18】
EtOH(10ml)中のヒドロキシルアミン水溶液(809g、0.134mol、水中50%、Aldrich)を40℃でEtOH(110ml)中の2,4,6-トリメチル-3-((2-メチル-1H-イミダゾール-1-イル)メチル)ベンズアルデヒド(20.3g、0.084mol)の溶液に加える。反応媒体を50~55℃の温度で2.5時間撹拌する。23℃に戻した後、得られた沈殿物を濾別し、フィルター上で2回EtOH/H
2O(10ml/15ml)混合物で洗浄し、大気圧下で周囲温度にて15~20時間乾燥させる。融点が247℃の白色固体(19.57g、収率91%)が得られる。モル純度は、87%より高い(
1H NMR)。
【0054】
【0055】
IV.2-5 2,4,6-トリメチル-3-((2-メチル-1H-イミダゾール-1-イル)メチル)ベンゾニトリルオキシドの合成:
【化20】
NaOCl(4%の活性塩素、Aldrich、49ml)の水溶液を5分かけて6℃でCH
2Cl
2(280ml)中の2,4,6-トリメチル-3-((2-メチル-1H-イミダゾール-1-イル)メチル)ベンズアルデヒドオキシム(8.80g、0.034mol)の混合物に滴加する。反応媒体の温度を6℃と8℃の間で維持する。その後に反応媒体を8℃~21℃で2時間撹拌する。有機相を分離する。有機相を水で(50mlで3回)洗浄する。減圧下(浴温度=22~23℃、220mbar)での濃縮後、石油エーテル(10ml)を加え、溶媒を蒸発させて8~10mlにし、沈殿物を得るために溶液を-18℃で10~15時間維持する。沈殿物を濾別し、フィルター上でCH
2Cl
2/石油エーテル(2ml/6ml)混合物、次に石油エーテルで(10mlで2回)洗浄し、最後に大気圧下で10~15時間囲温度で乾燥させる。融点が139℃の白色固体(5.31g、収率61%)が得られる。
モル純度は95モル%より高い(
1H NMR)。
【0056】
【0057】
IV-3 組成物の調製
下記例では、上記ポイントII-6に記載どおりにゴム組成物を作製した。特に、以下のようにこれらの組成物を製造する:エラストマーと、適宜エラストマーとだけ120℃で約1分間混練する1,3-双極子化合物と、次にフィラーと、また加硫系を除く他の成分とを内部ミキサーに導入する(最終充填度:約70容積%)。この容器の初期温度は約80℃である。次に、少なくとも約3~6分間、160℃の最大「降下」温度に達するまで、一段階で熱機械的作業(非生産段階)を行う。このようにして得られた混合物を回収し、冷却してから加硫系をミキサー(ホモフィニシャー(homofinisher))に23℃で組み入れ、あらゆる成分を適切な時間(例えば5分と12分の間)混合する(生産段階)。
このようにして得られた組成物は、引き続きそれらの物性及び機械的特性の測定のため、ゴムのプラーク(2~3mmの範囲の厚さ)又は薄板の形態のどちらかで、或いは所望寸法にカット及び/又は組み立てた後、例えばタイヤ用、特にトレッド用の半完成品として、ゴム製無限軌道用の半完成品としてそのまま使用できる異形要素の形態でカレンダー加工する。
架橋は150℃で行う。適用する架橋時間t'c(90)は、組成物のトルクが組成物の最大トルクの90%に達するのに必要な時間である。組成物のトルクは、規格DIN 53529 - Part 3(1983年6月)に従って、150℃でムービングダイレオメーターを用いて測定する。各組成物について規格NF T 43-015に従ってt'c(90)を決定する。それは、組成物によって約20~40分まで幅があり。
【0058】
IV-4 ゴム組成物についての試験
以下に示す例の目的は、本発明の2つの組成物(I1及びI2)の剛性と、破断点伸びと、機械的攻撃に対する抵抗性との間の性能妥協点を5つのコントロール組成物(C0~C4)と比較することである。
試験した組成物(phrで)、及び得られた結果を下表1に示す。
コントロール組成物C0は、民間のエンジニアリングタイヤ用トレッドに従来の方法で使用されている組成物に相当する。組成物C1、C3及びC4は、それぞれ組成物C2、I1及びI2とはそれらが本発明に従って1,3-双極子化合物を含まなかったという点で異なる。組成物C1と組成物C2、組成物Cと組成物I1、及び組成物C4と組成物I2の間のカーボンブラック含量は、それぞれフィラーの容積分率が一定に保たれるように調整した。
【0059】
【表1】
(1) EBR:74モル%のエチレン単位、7.5モル%の1,2-シクロヘキサンジイル単位、11.5モル%の1,2-単位及び7モル%の1,4-単位を含有するエラストマー;100℃でのムーニー:68;Mn:148,110g/モル、特許EP 1 954 705 B1の実施例4-2に沿ったエチレンとブタジエンの重合プロセスに従って調製
(2) 1,3-双極子化合物、この合成はセクションIV.2(2,4,6-トリメチル-3-((2-メチル-1H-イミダゾール-1-イル)メチル)ベンゾニトリルオキシド)で上述
(3) ASTM規格D-1765に従うN234グレードのカーボンブラック
(4) シリカ、SolvayからのZeosil 1165MP
(5) 抗オゾンワックス、Sasol WaxからのVarazon 4959
(6) N-(1,3-ジメチルブチル)-N-フェニル-パラ-フェニレンジアミン、FlexsysからのSantoflex 6-PPD
(7) Umicoreからの工業グレードの酸化亜鉛
(8) N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド、FlexsysからのSantocure CBS
【0060】
上表1に提示した結果は、エチレン単位と1,3-ジエン単位とを含有するコポリマーをベースとする組成物であって、コポリマー中のエチレン単位がコポリマーのモノマー単位の50モル%超を占める組成物における、本発明に従う1,3-双極子化合物と、高体積分率のフィラーとの特有の組み合わせが、機械的攻撃に対する抵抗性の改善を可能にすることを示す。
本発明の組成物は、空気入りタイヤ又は非空気入りタイヤ、特に機械的攻撃に対して高い抵抗性が望まれるトレッドの分野で多数の用途に役立つ。
【国際調査報告】