(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-05
(54)【発明の名称】テレフタレートポリマーを再使用可能な原材料に解重合する方法及び反応器システム
(51)【国際特許分類】
C07C 67/03 20060101AFI20240628BHJP
C07C 69/82 20060101ALI20240628BHJP
B01J 21/10 20060101ALI20240628BHJP
B01J 23/18 20060101ALI20240628BHJP
B01J 23/06 20060101ALI20240628BHJP
B01J 23/745 20060101ALI20240628BHJP
B01J 31/04 20060101ALI20240628BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20240628BHJP
【FI】
C07C67/03
C07C69/82 B
B01J21/10 M ZAB
B01J23/18 M
B01J23/06 M
B01J23/745 M
B01J31/04 M
C07B61/00 300
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023578812
(86)(22)【出願日】2022-06-20
(85)【翻訳文提出日】2024-02-09
(86)【国際出願番号】 NL2022050347
(87)【国際公開番号】W WO2022271013
(87)【国際公開日】2022-12-29
(32)【優先日】2021-06-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】NL
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517222797
【氏名又は名称】イオニカ・テクノロジーズ・ベー・フェー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】エゴール・ヴァシリエヴィッチ・フファチェフ
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンダー・トーマス・ヴォルテルス
(72)【発明者】
【氏名】アンドレ・バニール・デ・ハーン
(72)【発明者】
【氏名】ヨースト・ロベルト・ヴォルテルス
【テーマコード(参考)】
4G169
4H006
4H039
【Fターム(参考)】
4G169AA02
4G169AA06
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4H006AA02
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4H006KA03
4H039CA60
4H039CA66
4H039CL30
4H039CL60
(57)【要約】
再使用可能な原材料にテレフタレートポリマーを解重合する方法及び反応器システム、並びに前記方法によって入手可能な原材料が記載される。本方法はとりわけ、ポリマー及びエチレングリコール等の溶媒を反応器内に反応混合物として用意する工程を含む。金属含有粒子等の不均一触媒及び/又は均一触媒が反応混合物中に用意され、反応混合物は加熱されてポリマーを解重合する。ビス-(2-ヒドロキシエチル)-テレフタレート(BHET)を含むモノマー、及び副生物として2-ヒドロキシエチル[2-(2-ヒドロキシエトキシ)エチル]テレフタレート(BHEET)が形成される。BHETは、反応器を出る解重合生成物流から回収され、BHET減耗流が形成される。解重合生成物流中及び/又はBHET減耗流中のBHEETの質量分率は、モニターされ、解重合生成物流中のBHEET質量分率の所定の制限値未満に調節される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
テレフタレート繰り返し単位を含むホモポリマー又はコポリマーであるテレフタレートポリマーを再使用可能な原材料に解重合する方法であって、
a)前記ポリマーの反応混合物、及び前記ポリマーと反応する能力があり、エチレングリコールを含むか又は本質的にそれからなる溶媒を反応器内に用意する工程;
b)オリゴマー及び/又はモノマーへの前記ポリマーの分解を触媒する能力があり、金属含有粒子等の不均一触媒及び/又は均一触媒を含む触媒を用意する工程;
c)前記反応混合物中で前記触媒の分散体又は溶液を形成する工程;
d)前記反応混合物を加熱し、前記触媒を使用して前記反応混合物中で前記ポリマーを解重合してビス-(2-ヒドロキシエチル)-テレフタレート(BHET)を含むモノマー、及び副生物として2-ヒドロキシエチル[2-(2-ヒドロキシエトキシ)エチル]テレフタレート(BHEET)を形成する工程;
e)前記反応器を出、少なくとも前記形成されたBHET、BHEET及び前記溶媒を含む解重合生成物流から前記形成されたBHETを分離する工程;
f)工程e)でのBHETの分離後にBHET減耗流を回収する工程、及び
g)工程a)での前記溶媒の少なくとも一部として前記BHET減耗流を、前記反応器にそれを再供給することにより再使用する工程を含み、
前記解重合生成物流中及び/又は前記BHET減耗流中のBHEETの質量分率がモニターされ、前記解重合生成物流中の前記BHEET質量分率の所定の制限値未満に調節され、前記解重合生成物流中の前記BHET質量分率に対して規定された、前記解重合生成物流中の前記BHEET質量分率の所定の制限値が10質量%未満であり、BHEETが式I:
【化1】
によって定義される、方法。
【請求項2】
前記解重合生成物流中のBHEETの前記質量分率が、工程g)で前記反応器にそれを再供給する前に前記BHET減耗流の一部のパージにより、前記所定の制限値未満に調節される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記パージが、工程a)~g)の各サイクル中、又は工程a)~g)の各複数のサイクルの後に遂行される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記パージが、前記BHET減耗流中のBHEETの質量分率が前記所定の制限値のパージ率を超えるとき遂行される、請求項2又は3に記載の方法。
【請求項5】
前記BHET減耗流中のBHEETの前記質量分率が所定の制限値のパージ率にほぼ等しくなるまで、前記パージが遂行される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記所定のパージ率が前記所定の制限値の5~50質量%の範囲にある、請求項4又は5に記載の方法。
【請求項7】
前記解重合生成物流中の前記BHET質量分率に対して規定された、前記解重合生成物流中の前記BHEET質量分率の前記所定の制限値が、0.1質量%~10質量%の範囲にある、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
BHETの前記回収工程e)が、好ましくは前記解重合生成物流に水を添加することによって前記解重合生成物流が冷却されて前記分解工程d)の温度から160℃未満に前記温度を低下させ、それによって前記解重合生成物流からBHET結晶を形成し、それによって、BHET結晶と、エチレングリコール及びBHEETを含むBHET減耗流としての母液との混合物を得る結晶化工程を含む、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
- 前記解重合生成物流からエチレングリコール及びBHEETを含む前記母液流を回収する工程、及び
- 工程a)中の前記溶媒の少なくとも一部として前記回収母液流を再使用する工程を更に含み、
前記再使用工程f)の前に、前記回収母液流の一部が、前記回収母液流中のBHEETの質量分率が、前記所定の制限値の所定のパージ率を超えたとき、パージされる、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
BHETの結晶化のユニットの下流及び前記母液流の前記一部をパージするユニットの上流に配置された固体/液体分離器内で前記母液流から前記BHET結晶を分離する工程を更に含む、請求項8又は9に記載の方法。
【請求項11】
前記パージが、前記再使用された溶媒及び任意選択的に水から前記BHEETの一部を分離する蒸留ユニット内で遂行される、請求項4から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記反応混合物中のポリマーに対するEGの質量比が、20:10~100:10、より好ましくは40:10~90:10、最も好ましくは60:10~80:10の範囲である、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記分散体中のポリマー濃度が、前記反応混合物の全質量の1~30質量%である、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記分解工程d中の前記BHETモノマーの平均滞留時間が30秒~3時間、又は最大24時間である、請求項1から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記分解工程dが190℃を超える温度、好ましくは最高250℃で1.0バールを超える、好ましくは3.0バール未満の圧力で前記モノマーを形成する工程を含む、請求項1から14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
好ましくは遠心分離及び/又は濾過及び/又は磁気吸引によって分離することによって前記触媒を回収する工程を更に含む、請求項1から15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記触媒が金属含有粒子を含む、請求項1から16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記金属含有粒子が金属酸化物を含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記金属が遷移金属であり、好ましくは前記金属酸化物が酸化鉄である、請求項17又は18に記載の方法。
【請求項20】
前記酸化鉄がマグネタイト(Fe
3O
4)である、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記金属が、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム及びバリウムから選択されるアルカリ土類元素であり、好ましくは前記金属酸化物が酸化マグネシウム(MgO)である、請求項18から20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
テレフタレートポリマーを再使用可能な原材料に解重合するための反応器システムであって、
- テレフタレート含有ポリマー流、並びにエチレングリコール並びにオリゴマー及び/又はモノマーへの前記ポリマーの分解を触媒する能力のある触媒を含む又は本質的にそれらからなる溶媒流のための少なくとも1つの入口を含み、前記エチレングリコール及び前記触媒の使用により前記テレフタレート含有ポリマーを、ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタレート(BHET)を含む少なくとも1種のモノマー、及び副生物として2-ヒドロキシエチル[2-(2-ヒドロキシエトキシ)エチル]テレフタレート(BHEET)を含む解重合された混合物へ解重合するように構成された解重合反応器;
- 前記解重合反応器の下流に配置され、前記反応器を出る解重合生成物流からBHETを分離し、BHET減耗流を回収する分離器を含むBHET回収ステージ;
- 前記反応器内の溶媒の少なくとも一部として前記BHET減耗流を再使用するための前記反応器に対するフィードバックループ、並びに
- 前記解重合生成物流中及び/又は前記BHET減耗流中のBHEETの質量分率をモニターし、前記解重合生成物流中の前記BHEET質量分率の所定の制限値未満に調節する手段を含む反応器システム。
【請求項23】
前記解重合生成物流中のBHEETの前記質量分率を調節する前記手段が、前記フィードバックループを介して前記反応器にそれを再供給する前に前記BHET減耗流の一部をパージするように構成された、請求項22に記載の反応器システム。
【請求項24】
前記BHET減耗流中のBHEETの前記質量分率が前記所定の制限値のパージ率とほぼ等しくなるように前記パージを制御するように構成された少なくとも1つの制御器ユニットを含む、請求項23に記載の反応器システム。
【請求項25】
前記BHET回収ステージが、前記生成物流からのBHETモノマーの結晶化のための結晶化ユニットを含み、残りのBHET減耗流が、エチレングリコール及びBHEETを含む母液を構成する、請求項22から24のいずれか一項に記載の反応器システム。
【請求項26】
前記反応器内の前記溶媒の少なくとも一部として前記回収母液流を再使用するための前記反応器へのフィードバックループ、及び、前記回収母液流中のBHEETの質量分率が、前記所定の制限値の所定のパージ率を超えたとき、前記フィードバックループの上流に配置された前記母液流をパージするためのユニットを更に含む、請求項25に記載の反応器システム。
【請求項27】
BHETの結晶化のための前記結晶化ユニットの下流、かつ前記母液流の一部をパージするためのパージユニットの上流に配置された、前記母液流から前記BHET結晶を分離するための固体/液体分離器を更に含む、請求項25又は26に記載の反応器システム。
【請求項28】
前記パージユニットが、前記再使用された溶媒、及び任意選択的に水からの前記BHEETの一部を分離するための蒸留ユニットを含む、請求項22から27のいずれか一項に記載の反応器システム。
【請求項29】
前記解重合生成物流から触媒複合体を分離し回収するための分離器ユニット、及び、任意選択的に、前記回収された触媒複合体を再使用するための前記反応器へのフィードバックループを更に含む、請求項22から28のいずれか一項に記載の反応器システム。
【請求項30】
結晶性形態の少なくとも90.0質量%のBHETを含み、固体組成物が、BHETに対して5質量%未満のBHEET、より好ましくはBHETに対して2質量%未満のBHEETを含む、請求項1から21のいずれか一項に記載の方法によって入手可能な固体BHET組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、テレフタレートモノマー及びオリゴマー等の再使用可能な原材料にテレフタレートポリマーを解重合する方法に関する。本発明は更に、再使用可能な原材料にテレフタレートポリマーを解重合するための反応器システムに関する。本発明は、最終的に、解重合の方法から入手可能な重合性原材料である固体組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
テレフタレートポリマーは骨格にテレフタレートを含むポリエステルの群である。テレフタレートポリマーの最も一般的な例は、PETとしても知られるポリエチレンテレフタレートである。代替例は、ポリブチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリペンタエリトリチルテレフタレート及びそれらのコポリマー、例えばエチレンテレフタレート及びポリグリコールのコポリマー、例えばポリオキシエチレングリコール及びポリ(テトラメチレングリコール)コポリマーを含む。PETは最も一般的なポリマーの1つであり、再使用可能な原材料へのその解重合によってPETをリサイクルすることが大いに望まれている。
【0003】
解重合の1つの好ましい方法は解糖であり、好ましくは触媒される。通常、エチレングリコールの使用の結果として、ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタレート(BHET)を含む少なくとも1種のモノマーを含む反応混合物が形成されてもよい。解糖による適切な解重合の1つの例は、本出願人の名称のもとでの国際公開第2016/105200号から知られている。このプロセスによると、テレフタレートポリマーは、特に設計された触媒の存在下で解糖によって解重合される。解重合プロセスの終わりに、水が添加され、相分離が生じる。これによって、BHETモノマーを含む第1の相を、触媒、オリゴマー及び添加剤を含む第2の相から分離することが可能になる。第1の相は、溶解した形態及び分散した粒子としての不純物を含んでいてもよい。BHETモノマーは結晶化によって得ることができる。
【0004】
高い純度が、解重合された原材料の再使用に必要になる。よく知られているように、何らかの汚染物が、原材料から、後の重合反応に影響を及ぼすことがある。なおその上に、テレフタレートポリマーが食品及びまた医療の用途にも使用されるので、厳しい規則が健康に関する問題を防止するために適用されている。
【0005】
国際公開第2016/105200号による出願人のプロセスはテレフタレートポリマーの非常に高い転化率をもたらし、またBHETモノマーからの様々な添加剤の分離を容易にするが、本発明者らは、解重合反応の副生物、特に両方とも結晶化したBHETモノマーの品質に影響を及ぼし得る2-ヒドロキシエチル[2-(2-ヒドロキシエトキシ)エチル]テレフタレート(BHEET)及びジエチレングリコール(DEG)を特定した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2016105200号
【特許文献2】国際公開第2015056377号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、新しいテレフタレートポリマーの調製に適するように、高純度を有する再使用可能な原材料へテレフタレートポリマーを解重合するプロセスの提供が必要とされている。そのようなプロセスは、必ずしも非常に高い転化率のテレフタレートポリマーを与えるとは限らないが、しかし、許容できる転化(率)を達成することができる。そのような解重合プロセスが実施され得る反応器システムを提供する必要性もまたある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の態様によると、テレフタレート繰り返し単位を含むポリマーを再使用可能な原材料に解重合する方法であって、
a)前記ポリマーの反応混合物、及び前記ポリマーと反応する能力があり、エチレングリコールを含むか又は本質的にそれからなる溶媒を反応器内に用意する工程;
b)オリゴマー及び/又はモノマーへの前記ポリマーの分解を触媒する能力があり、金属含有粒子等の不均一触媒及び/又は均一触媒を含む触媒を用意する工程;
c)前記反応混合物中で前記触媒の分散体又は溶液を形成する工程;
d)前記反応混合物を加熱し、前記触媒を使用して前記反応混合物中で前記ポリマーを解重合してビス-(2-ヒドロキシエチル)-テレフタレート(BHET)を含むモノマー、及び副生物として2-ヒドロキシエチル[2-(2-ヒドロキシエトキシ)エチル]テレフタレート(BHEET)を形成する工程;
e)前記反応器を出、少なくとも前記形成されたBHET、BHEET及び前記溶媒を含む解重合生成物流から前記形成されたBHETを分離する工程;
f)工程e)でのBHETの分離後にBHET減耗流を回収する工程、及び
g)工程a)での前記溶媒の少なくとも一部として前記BHET減耗流を、前記反応器にそれを再供給することにより再使用する工程を含み、
前記解重合生成物流中及び/又は前記BHET減耗流中のBHEETの質量分率はモニターされ、前記解重合生成物流中の前記BHEET質量分率の所定の制限値未満に調節され、前記解重合生成物流中の前記BHET質量分率に対して規定された、前記解重合生成物流中の前記BHEET質量分率の所定の制限値は10質量%未満であり、BHEETは式I:
【0009】
【0010】
によって定義される、方法が提供される。
【0011】
本発明の第2の態様によると、反応器システムが本発明の方法の遂行のために提供され、以下により詳細に論じられる。
【0012】
本発明の第3の態様によると、本発明は、解重合から得られる重合性原材料であり、結晶性形態の少なくとも90.0質量%のBHETを含む固体組成物に関し、固体組成物は、BHETに対して5質量%未満のBHEETを含む。
【0013】
本発明を導く研究において、本発明者らは、好ましくは結晶化によって回収されたBHETの汚染が、2-ヒドロキシエチル[2-(2-ヒドロキシエトキシ)エチル]テレフタレート(BHEET)、及びまたエチレングリコール(EG)、例えばジエチレングリコール(DEG)、モノ-2-ヒドロキシエチルテレフタレート(MHET)及びビス-2-ヒドロキシエチルイソフタレート(iso-BHET)を含有する他の可溶性不揮発性不純物の解重合時の少なくとも一部は可能性のある形成によることを理解している。BHEETの存在、及び/又は、反応器を出る生成物流中の、及びBHETが好ましくは結晶化によって回収される溶液中の例示された他の不純物の存在は、結晶及び他の性質の観点でより劣った品質のBHET生成物をもたらすことがある。BHEETは、特にこの点で重要であることが見いだされた。本発明は、特にBHET生成物の性質についてBHEETの重要性を認識し、したがって、解重合生成物流中のBHEETの質量分率が、解重合生成物流が回収工程e)に入るとき所定の制限値未満となるように、所定の制限値未満に解重合生成物流中のBHEETの質量分率をモニターし調節することを提案する。結果として、後の重合のための純度の要件をより良好に満たす回収された結晶性BHETモノマー生成物を得ることができる。また、BHETモノマー最終生成物中の他の可溶性不揮発性不純物、例えばDEG、MHET及びiso-BHETの量もまたBHEETの量の低下により低下し得ることが確証された。
【0014】
使用した触媒、すなわち、オリゴマー及び/又はモノマーへのポリマーの分解を触媒する能力のある触媒、金属含有粒子等の不均一触媒及び/又は均一触媒を含むこれらの触媒は、許容できるBHET収率で本発明の目的を大規模に達成するには過剰な量のBHEETを生成することが判明した。したがって、本発明は、解重合生成物流がBHET回収工程e)に入るとき、解重合生成物流中のBHEETの質量分率が所定の制限値未満となるように、解重合生成物流中のBHEETの質量分率を調節する工程を提案する。
【0015】
本発明は、したがってテレフタレート繰り返し単位を含むポリマーを再使用可能な原材料に解重合する方法であって、
a)前記ポリマーの反応混合物、及び前記ポリマーと反応する能力があり、エチレングリコールを含むか又は本質的にそれからなる溶媒を反応器内に用意する工程;
b)オリゴマー及び/又はモノマーへの前記ポリマーの分解を触媒する能力があり、金属含有粒子等の不均一触媒及び/又は均一触媒を含む触媒を用意する工程;
c)前記反応混合物中で前記触媒の分散体又は溶液を形成する工程;
d)前記反応混合物を加熱し、前記触媒を使用して前記反応混合物中で前記ポリマーを解重合してビス-(2-ヒドロキシエチル)-テレフタレート(BHET)を含むモノマー、及び副生物として2-ヒドロキシエチル[2-(2-ヒドロキシエトキシ)エチル]テレフタレート(BHEET)を形成する工程;
e)前記反応器を出、少なくとも前記形成されたBHET、BHEET及び前記溶媒を含む解重合生成物流から前記形成されたBHETを分離する工程;
f)工程e)でのBHETの分離後にBHET減耗流を回収する工程、及び
g)工程a)での前記溶媒の少なくとも一部として前記BHET減耗流を、前記反応器にそれを再供給することにより再使用する工程を含み、
前記解重合生成物流中及び/又は前記BHET減耗流中のBHEETの質量分率は、モニターされ、前記解重合生成物流中の前記BHEET質量分率の所定の制限値未満に調節され、前記解重合生成物流中の前記BHET質量分率に対して規定された、前記解重合生成物流中の前記BHEET質量分率の所定の制限値は、10質量%未満であり、BHEETは式I:
【0016】
【0017】
によって定義される、方法を提供する。
【0018】
反応器を出る解重合生成物流は、形成されたBHET、BHEET、DEG及び解重合中に使用された溶媒を少なくとも含む。本発明の実施形態によると、生成物流中のBHET質量分率に対して規定された、生成物流中のBHEET質量分率の所定の制限値が、1質量%~10質量%、より好ましくは2質量%~9質量%、最も好ましくは3質量%~8質量%の範囲である方法が提供される。
【0019】
本発明の別の実施形態において、解重合生成物流中のBHET質量分率に対して規定された、解重合生成物流中のBHEET質量分率が10質量%未満であるか、又は他の好ましい実施形態において、0.3質量%~10質量%、より好ましくは1質量%~9質量%、最も好ましくは2質量%~8質量%の範囲である方法が提供される。そのような量は、本発明に従って、解重合生成物流中及び/又はBHET減耗流中のBHEETの質量分率をモニターし調節することにより達成可能である。
【0020】
生成物流中のBHEETの質量分率のモニターは当技術分野において知られる任意の手段によって達成されてもよい。例えば、質量分率が、HPLCによって、インラインで測定されても、断続的に実施されてもどちらでもよい。BHEETの質量分率を求めるために、例えば反応器を出た直後に、試料が生成物流から採取されてもよい。試料はまた、例えばBHETの回収ステージの直前に生成物流中の他の位置から採取されてもよい。生成物流がBHETモノマーからストリップされ、次いで残りの溶媒が反応器に再供給される循環的方法において、幾つかのサイクル中でのみBHEET質量分率を測定することが必要であり得る。他の実施形態において、BHEET質量分率は数回だけモニターされ、次に今後の反応実行に対して推定される。BHEETの量のモニター及び調節は本発明に従って遂行されるが、本発明は、他の不純物又は副生物、例えばDEG、MHET及びiso-BHETの少なくとも1つのモニタリング及び調節が同様に遂行されることを排除しない。
【0021】
完全のためには、幾つかの実施形態における解重合生成物流中のBHEETの質量分率の調節が、幾つかの方法で達成することができることが遵守される。例えば、反応器を出る解重合生成物流中のBHEETの質量分率が、溶媒を用いる稀釈及び/又は別の供給源から来るBHETによって低下することは排除されない。解重合生成物流は、言いかえれば、好ましくは結晶化及び形成された結晶の分離によってBHETの回収に適した条件に達するように別の流れと混合されてもよい。
【0022】
特許請求される方法の実施形態において、解重合生成物流中及び/又はBHET減耗流中のBHEETの質量分率は、例示された生成物流の少なくとも1つからBHEETを除去することにより解重合生成物流中の所定の制限値未満の質量分率に調節されてもよい。除去は、循環的生成物流が循環的プロセスで創出されるとき、回収溶媒(及び一部のBHEET)が反応器に再供給されるように、方法の任意のステージで、例えば反応器自体から、反応器とBHET回収の間で、しかし、好ましくは、BHET回収から下方で遂行されてもよい。基本的な特徴は、解重合生成物流中のBHEETの質量分率がBHET回収工程e)に入る前に所定の制限値より低いことである。
【0023】
本発明によると、回収工程e)が解重合生成物流からBHETを分離しBHET減耗流を回収する工程を含む方法、及び、工程a)の溶媒の少なくとも一部としてf)BHET減耗流を再使用する工程を更に含む方法が提供される。BHEETの一部が回収され、例えば新しい重合のための原材料として役立つように更に加工されることは排除されない。他の使用もまた可能であり得る。
【0024】
更に改善された実施形態では、次に、工程g)で反応器にそれを再供給する前に、好ましくは、工程f)でのBHETの分離後にBHET減耗流を回収した後、解重合生成物流中のBHEETの質量分率をBHET減耗流の一部のパージにより所定の制限値未満に調節する。
【0025】
さらなる実施形態では、パージが工程a~g)の各サイクルで、又は工程a~g)の各複数のサイクルの後に遂行される方法を提供する。複数のサイクルが必要性に応じて選ばれてもよく、少なくとも2、より好ましくは少なくとも3、更により好ましくは少なくとも4、最大20、好ましくは最大15、更により好ましくは最大10であってもよい。
【0026】
本発明のなお別の実施形態において、工程g)でBHET減耗流を反応器に再供給する前、好ましくは工程f)でBHETの分離後のBHET減耗流を回収した後のパージが、BHET減耗流中のBHEETの質量分率が所定の制限値のパージ率を超えるとき遂行される方法が提供される。パージ率は例えば、幾つかの実施形態において1つのプロセスサイクル中に形成されたBHEETの量にそれが適合するように選ばれてもよい。これによって、BHEETの質量分率が各プロセスサイクル中に蓄積するのを防止する。そのような好ましい実施形態において、BHET減耗流中のBHEETの質量分率が所定の制限値のパージ率とほぼ同等になるまでパージは実行される。
【0027】
幾つかの実施形態において、パージ率が所定の制限値の5~50質量%の範囲にあることが判明した。所定の制限値はそれ自体、好ましくは解重合生成物流の0~1質量%の範囲であるが、しかし、より適切には、解重合生成物流中のBHETの質量分率に対する質量分率の観点で規定される。幾つかの実施形態において、パージ率は、5~20質量%の所定の制限値の範囲であってもよい。
【0028】
BHEETのパージは、好ましくは蒸留単位で実行され、再使用される溶媒及び任意選択的に水からBHEETの一部を分離する。幾つかの実施形態によるこのプロセスにおいて、BHEETは、BHET減耗流中の他の成分、例えば結晶化によるBHETの回収を起源とする母液から分離される。
【0029】
解重合工程は、解糖を含み、エチレングリコール溶媒はまた、BHET、及び、結局は、BHEETとは別に、例えば加水分解で生じるテレフタル酸ではなく他の副生物を得る反応体である。反応混合物又は分散体中のポリマー濃度は、通常反応混合物の全質量の1~30質量%であるが、この範囲の外側の濃度もまた可能であり得る。
【0030】
反応混合物中のエチレングリコール(EG)の量は広い範囲内で選ばれてもよい。しかしながら、EGの量に対するテレフタレート繰り返し単位(短いPET中の)を含むポリマーの量の比が、反応混合物中のBHEET質量分率に影響を及ぼす作用をすることが確証された。特に、PET:EG質量比と共に反応混合物中のBHEET質量分率が低下することが確証された。有用な実施形態において、ポリマーに対するEGの質量比は、20:10~100:10、より好ましくは40:10~90:10、最も好ましくは60:10~80:10の範囲である。
【0031】
反応混合物は工程d)で適温に加熱され、好ましくは解重合中維持される。温度は160℃~250℃の範囲で選択されてもよい。高い温度は、特許請求される触媒と組み合わせて、反応混合物及び続いて生じる生成物流中に比較的少量のBHEETを与えることが判明した。したがって、好ましい実施形態において、分解工程d)は185℃~225℃の範囲の温度でモノマーを形成する工程を含んでいてもよい。反応器内の適切な圧力は1~5バールであり、1.0バールを超える圧力が好ましく、3.0バール未満がより好ましい。
【0032】
分解工程d)でのBHETモノマーの平均滞留時間は、30秒~3時間、またそれ以上の範囲であってもよい。解重合反応を停止する及び/又は触媒を失活させるために、温度は160℃以下、しかし、好ましくは85℃以上の温度に低下されてもよい。
【0033】
生成物流中のBHETは幾つかの方法に従って回収されてもよい。有用な実施形態において、BHETの回収工程e)は、解重合生成物流が、例えば熱交換器を通過することによって、又は、好ましくは、解重合生成物流に水を添加することによって冷却される結晶化工程を含む。このようにして、分解工程d)の温度から結晶化温度までの温度の低下が達成される。その結果として、BHET結晶は解重合生成物流中で生成され、それによってBHET結晶と、少なくともエチレングリコール及びBHEETを含むBHET減耗流としての母液との混合物を得る。結晶化温度は好ましくは85℃未満で選択され、室温から85℃の間の温度を含んでいてもよい。
【0034】
有利な実施例において、BHET結晶化の結晶化温度は、10℃~70℃の範囲、例えばおよそ55℃であるが、好ましくは15℃~40℃、より好ましくは約18~25℃の範囲の、より低い温度が選ばれてもよい。結晶化温度は、結晶化工程の開始、したがって本明細書において通常核形成が生じる規定の温度と規定される。温度が変化すること、又は結晶化中に積極的に修正されることは排除されない。
【0035】
なお別の実施形態は、以下の工程:
- 生成物流からエチレングリコール及びBHEETを含む母液流を回収する工程、及び
- 工程a)中の溶媒の少なくとも一部として回収母液流を再使用する工程を更に含み、
再使用工程f)の前に、回収母液流の一部は、回収母液流中のBHEETの質量分率が所定の制限値のパージ率を超えたとき、パージされる、方法を提供する。
【0036】
方法の別の実施形態において、方法は、BHETの結晶化のユニットの下流、及び母液流の前記部分をパージするユニットの上流に配置された固体/液体分離器内で母液流からBHET結晶を分離する工程を更に含む。BHETの結晶化のために2つ以上のユニットを使用することもまた可能である。
【0037】
好ましくは、BHET結晶化中のプロセス条件は制御される。実現可能な制御パラメーターは、BHET結晶を形成する工程の開始時の組成物中の、特許請求されるBHEETの質量分率;及び/又はBHET結晶を形成する工程中に解重合生成物流中の水とエチレングリコールとの間の体積比;及び/又は特に2分~120分等の、好ましくは5分~60分の範囲の予め定義された滞留時間、所定範囲内に温度を制御することによる結晶化の持続時間を含む。
【0038】
また、反溶媒(anti-solvent)が、BHET結晶を形成する前に、生成物流に添加されてもよい。反溶媒は、好ましくは水又は水性塩溶液等の水溶液である。BHETの溶解度は反溶媒の添加によって低減される。
【0039】
より一般には、プロセス条件は、結晶化工程前に解重合生成物流を制御するように、BHEET、及びまた結晶化されるBHETの質量分率に対して、更に水とエチレングリコールとの間の体積比、及び予め定義された期間の温度の制御に対して制御されてもよい。
【0040】
本発明の他の実施形態によると、BHET結晶の形成は、対応する母液が除去され、固体BHET結晶がそれから分離される固体/液体分離工程に先行する。分離工程は、当技術分野において公知の任意の方法を用いて、例えば濾過によって行なわれてもよい。
【0041】
結晶化反応器が、例えば予め定義された滞留時間の後に活性化される分離器を含むことは排除されない。しかし、別個の分離器が好ましいと考えられる。結晶が回収されるという事例において、洗浄工程は、好ましくは分離工程の後に行なわれる。バンドフィルターは分離工程及び後の洗浄工程の遂行のための1つの実用的な配置と考えられる。固体/液体分離手段の特徴的なサイズは、生じる結晶のサイズ及び分離工程として所望の持続時間に応じて選ぶことができる。実例として、BHET結晶の回収は、フィルターエレメントを使用する濾過によって、母液からBHET結晶を分離する工程を含む。
【0042】
BHETモノマーは、好ましくは固体の形態で回収される。回収の後に洗浄工程及び乾燥工程が続くことが好適であると考えられる。好ましくは、BHETモノマー結晶は、本質的に例えば、少なくとも95質量%、より好ましくは少なくとも96質量%又は更に少なくとも97質量%のBHETからなる。より好ましくは、前記BHETモノマー結晶は、最大5.0質量%のBHEET、最大4.0質量%のBHEET、最大3.0質量%のBHEET、最大2.0質量%のBHEET、最大1.5質量%のBHEET、又は更に最大1.0質量%のBHEETを含む。
【0043】
本発明は目的にとって適切な任意の触媒を使用して実行されてもよい。適切な触媒は不均一触媒を含む。実施形態による解重合法において、触媒は、次に、工程c)の間に反応混合物中の分散体を形成する。他の適切な触媒は均一触媒を含む。これらは分散体を形成しないが、通常工程c)の間に反応混合物中に溶解される。
【0044】
可能な不均一解重合触媒の幾つかはフェロ磁性及び/又はフェリ磁性材料に基づく。また反フェロ磁性材料、合成磁性材料、常磁性材料、超常磁性材料、例えば、Fe、Co、Ni、Gd、Dy、Mn、Nd、Smの少なくとも1つ、及び好ましくはO、B、C、Nの少なくとも1つを含む材料、例えば酸化鉄、例えばフェライト、例えばマグネタイト、ヘマタイト及びマグヘマイトを使用することができる。触媒粒子はナノ粒子を含んでいてもよい。
【0045】
触媒粒子は解重合反応を触媒する。この解重合反応において、縮合ポリマーの個々の分子は、固体ポリマーから触媒反応を介して放出され、そのポリマーは例えば半結晶性である。この放出によって、反応性溶媒中へのポリマー材料の分散及び/又は反応性溶媒中の個々のポリマー分子の溶解をもたらす。そのような分散及び/又は溶解は、モノマー及びオリゴマーへのポリマーからの解重合を更に増強すると考えられる。
【0046】
適切な触媒の1つの種類は、遷移金属を、その金属又はイオンの形態で含む。イオンの形態は、溶液及びイオン結合の遊離イオン、又は共有結合を含む。1個の原子が別の原子に1個又は複数の電子を与えると、イオン結合が形成される。2個の原子間の電子対の共有に由来する原子間の連結と共に、共有結合が形成される。遷移金属は、3d軌道の遷移金属としても公知である遷移金属の第1の系列から選ばれてもよい。とりわけ、遷移金属は、鉄、ニッケル及びコバルトから選ばれる。しかしながら、コバルトが健康によくなく、鉄及びニッケル粒子が純粋な形態で形成され得るので、鉄及びニッケル粒子が最も好ましい。更に、個々の遷移金属の合金を使用することができる。
【0047】
触媒粒子が金属でできている場合、それは、接触反応を更に高め得る酸化物表面が提供されてもよい。酸化物表面は、単独で、空気に接して、水に接して形成されてもよく、又は、酸化物表面は意識的に施されてもよい。
【0048】
鉄含有粒子の使用は最も好ましい。鉄含有粒子が磁性であることの他に、それらは、例えば最大6時間の許容できる反応時間内に70~90%のモノマーへの転化率にPETの解重合を触媒することが見いだされたが、しかしながら、触媒装填及びPET/溶媒比等の他の加工因子に依存する。
【0049】
非多孔質金属粒子、特に遷移金属粒子は、カルボニル複合体、例えば鉄ペンタカルボニル及びニッケルテトラカルボニルの熱分解によって適切に調製されてもよい。或いは、酸化鉄及び酸化ニッケルは、高温、例えば400℃以上で酸素への金属の曝露を介して調製されてもよい。非多孔質粒子は、アルコールへのその曝露がより少ないことがあり、したがって粒子の腐食も同様に少ないことがあるので、多孔質粒子より適切であり得、粒子は接触反応としてより高い頻度で再使用することができる。更に、限定された表面積により、表面の酸化は、それから除去されるべき浸出汚染物として生成物流中に存在する、より少量の金属イオン及びそれに伴うより低レベルのイオンをもたらし得る。
【0050】
適切な触媒の別の種類は、ベリリウム(Be)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)及びバリウム(Ba)、並びにそれらの酸化物から選択されるアルカリ土類元素に基づく粒子を含む。好ましいアルカリ土類金属酸化物は酸化マグネシウム(MgO)である。他の適切な金属は、以下に限定されないがチタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、マンガン(Mn)、亜鉛(Zn)、アルミニウム(Al)、ゲルマニウム(Ge)及びアンチモン(Sb)、並びにそれらの酸化物、及び更にそれらの合金を含む。また、貴金属、例えばパラジウム(Pd)及び白金(Pt)もまた適切である。MgO及びZnOは、例えば許容できる反応時間内に70~90%のモノマーへの転化率にPETの解重合を触媒することが見いだされたが、しかしながら、触媒装填及びPET/溶媒比等の他の加工因子に依存する。ヒドロタルサイトに基づく適切な触媒も考慮に入れられる。
【0051】
好ましくは、触媒粒子は、(アルコール)反応性溶媒中で、また100℃を超える高温で実質上不溶性になるように選択される。エチレングリコール等のアルコール中、より高温で容易に溶解する傾向がある酸化物、例えば非晶質SiO2等は、あまり適していない。
【0052】
触媒の好ましい濃度は、PETの量に対して1質量%又はそれよりも低い。好結果はまた、PETの量に対して0.2質量%未満、更に0.1質量%未満の触媒装填率を用いて達成された。触媒のそのような低い装填率は非常に有益であり、発明の方法は、ナノ粒子触媒の増加した量の回収を可能にする。
【0053】
本発明による非多孔質粒子は、適切には10m2/g未満、好ましくは最大5m2/g、更により好ましくは最大1m2/gの表面積を有する。別の実施形態において、表面積は少なくとも3m2/gである。空隙率は適切には、10-2cm3/g未満、又は例えば最大10-3cm3/gである。多孔質粒子もまた使用されてもよく、一般により大きい表面積を示す。
【0054】
最近、解重合触媒としてのナノ粒子には、極めて大きな注目がなされている。そのようなナノ粒子は、小さな直径、及び0.1から最大200m2/gの範囲の表面積を有する。縮合ポリマーの、これらの種類のナノ粒子との著しい吸着が起こり、より高速の解重合及びそれと共に経済的に実現可能なプロセスをもたらすと考えられる。そのようなナノ粒子を分離するために、幾つかの選択肢が利用可能である。
【0055】
触媒ナノ粒子は、好ましくは磁気特性のものであり、磁性材料を含むか、又は、例えば本方法で適用される比較的適度の磁界の下で十分に磁化する能力を有するかのどちらかである。適切には、磁性ナノ粒子は、鉄、ニッケル及び/又はコバルトを、それらの酸化物若しくは金属形態、又はそれらの組み合わせで含有する。酸化鉄は、例えば、しかしそれに限定されないがFe3O4の形態が好ましい。別の適切な例は、Fe2O3である。合金からの適切な例はCoFe2O4である。他の好ましい例は、NiFe2O4、Ni2Fe2O5又はNiOである。触媒複合体が触媒として機能して、それをもってポリマーをより小さな単位に分解し、それらのより小さな単位、特にそのモノマーの収率が、商業的な理由のために十分に高くなるためには、ナノ粒子が十分に小さくなければならないことが見いだされた。更に、本発明の触媒を回収することによって再使用することを可能にするためには、ナノ粒子は十分大きくなければならないことが見いだされた。触媒が、廃棄物又は得られた分解生成物のいずれかと共に除去されることは経済的に好ましくない。適切なナノ粒子は、2から最大500nmの範囲、より好ましくは3から最大200nm、更により好ましくは4から最大100nmの範囲の平均直径を有する。例えば収率及び触媒複合体の回収の観点では、5~40nmの粒子のむしろ小さいサイズが最適であることが見いだされた。「サイズ」という用語は、粒子の平均直径に関係することに注意が必要であり、粒子の実際の直径は、その特性によって多少変動し得る。加えて、凝集体が、例えば溶液中で形成され得る。これらの凝集体は、通常50~200nm、例えば80~150nmの範囲、例えばおよそ100nmのサイズを有する。酸化鉄を含むナノ粒子を使用することが好ましい。
【0056】
粒子のサイズ及びその分布は、光散乱法によって、例えば、Malvern社の動的光散乱設備、例えば、NS 500シリーズを使用して測定することができる。典型的にはより小さい粒子サイズに適用され、同様に大きいサイズにも適用される、より労力のかかる方法では、代表的な電子顕微鏡写真をとり、個々の粒子のサイズがその写真から測定される。平均粒径については、数平均が採用されてもよい。近似では、平均は、最も数の多い粒子のサイズ、又はメジアン径とすることができる。
【0057】
上記不均一触媒の他に、又はそれに加えて、均一触媒はまたPETの解重合を触媒することができる。これらの塩基性化合物は、反応混合物中に溶解し、均一系として働く可能性が最も高い。均一触媒のさらなる例は、以下に限定されないが、深共晶溶媒であるか又は深共晶溶媒中にある、酢酸亜鉛及びリチウム等の金属酢酸塩;炭酸ナトリウム(Na2CO3)等の金属炭酸塩、重炭酸ナトリウム(NaHCO3)等の金属重炭酸塩;並びに金属塩化物を含む。使用されてもよい他の適切な塩基は、NaOH、CaO、KOH及びKOtBuを含む。上記のものの組み合わせも使用されてもよい。
【0058】
他の適切な触媒は、トリアルキルアミン等のアミン含有化合物;イオン性液体;及び深共晶溶媒を含んでいてもよい。適切なアミン含有化合物は、列挙されたアミン含有化合物に関する限り、例えば国際公開第2015056377号に開示され、本明細書において明確に組み込まれる。深共晶溶媒も使用されてよく、これは、2種以上の成分を含むイオン性溶媒の種類を表わし、それらの少なくとも2つ、1種の水素結合供与体及び1種の水素結合受容体を含む、水素結合能力を有する。深共晶溶媒は、有機塩(例えば第四級アンモニウム塩、例えば塩化コリン)の、金属塩(例えばZnCl2、Zn(CH3CO2)2、FeCl3等)又は金属塩水和物(例えばFeCl2・H2O)又は水素結合供与体化合物(例えばアミン又はカルボン酸、例えば尿素)との混合物;又は金属塩の水素結合供与体化合物との混合物であってもよい。
【0059】
イオン性液体もまた均一触媒として使用されてもよい。イオン性液体は一般に、負に帯電した部分(陰イオン)及び正に帯電した部分(陽イオン)を含む。陽イオンは、芳香族又は脂肪族、及び/又は複素環式であってもよい。適切な脂肪族陽イオンは、好ましくはグアニジニウム(カルバムイミドイルアザニウム)、アンモニウム、ホスホニウム及びスルホニウムから選択されてもよい。適切な非芳香族又は芳香族複素環式の陽イオンは好ましくは、少なくとも1個、好ましくは少なくとも2個のヘテロ原子を有する複素環を含む。複素環は、5又は6個の原子、好ましくは5個の原子を有していてもよい。陽イオンは、好ましくは正電荷を安定させる芳香族部分であってもよい。典型的には、それらは、ヘテロ原子の正電荷を担持してもよく、又は、正電荷は非局在化される。ヘテロ原子は、例えば窒素N、リンP又は硫黄Sであってもよい。適切な芳香族複素環はピリミジン、イミダゾール、ピペリジン、ピロリジン、ピリジン、ピラゾール、オキサゾール、トリアゾール、チアゾール、メチマゾール、ベンゾトリアゾール、イソキノル及びビオロゲン型化合物(例えば(f.i.)2個連結したピリジン環構造を有する)である。ヘテロ原子としてNを有する適切な陽イオンは、イミダゾリウム(2個のNを有する五員環)、ピペリジニウム(1個のNを有する六員環)、ピロリジニウム(1個のNを有する五員環)、及びピリジニウム(1個のNを有する六員環)を含む。他の適切な陽イオン性部分は、以下に限定されないが、トリアゾリウム(3個のNを有する五員環)、チアゾリジウム(N及びSを有する五員環)、及び(イソ)キノリニウム(quiloninium)(Nを有する2個の六員環(ナフタレン))を含む。
【0060】
陰イオンは、陰イオン性複合体、或いはハライド等の単純なイオンに関係し得る。それは、塩複合体部分、好ましくは2又は3価のプラスに帯電した金属イオンを有する金属塩複合体部分、例えばFe3+、Zn2+、Al3+、Ca2+及びCu2+、並びに負に帯電した対イオン、例えばCl-、F-及びBr-等のハロゲニドに関係し得る。例として、塩は、Fe3+を含む塩複合体部分、例えばFeCl4-等のハロゲニドである。或いは、それ自体公知のハライド等の、金属塩複合体を含まない対イオンを使用することができる。
【0061】
均一触媒は生成物流から回収することがより難しいことは留意されるべきである。そのような触媒は、回収することができないことさえある。しかし、例えば、BHETモノマーの結晶化前にそれらを回収すること可能であり得るが、しかし、これには、問題を克服する特別の手段を必要とする。したがって、発明の方法における不均一触媒の使用が好ましい。
【0062】
触媒は、好ましい実施形態においてポリマー質量に対して0.001~20質量%、より好ましくは0.01~10質量%、最も好ましくは0.01~5質量%の比で使用される。
【0063】
本発明の別の態様によると、テレフタレートポリマーを再使用可能な原材料に解重合するための反応器システムであって、
- テレフタレート含有ポリマー流、並びにエチレングリコール並びにオリゴマー及び/又はモノマーへの前記ポリマーの分解を触媒する能力のある、金属含有粒子を含む触媒を含む又は本質的にそれらからなる溶媒流のための少なくとも1つの入口を含み;前記解重合ステージは、前記エチレングリコール及び前記触媒の使用により前記テレフタレート含有ポリマーを、ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタレート(BHET)を含む少なくとも1種のモノマー、及び副生物として2-ヒドロキシエチル[2-(2-ヒドロキシエトキシ)エチル]テレフタレート(BHEET)を含む解重合された混合物へ解重合するように構成された解重合反応器;
- 前記解重合反応器の下流に配置され、前記反応器を出る解重合生成物流からBHETを分離し、BHET減耗流を回収する分離器を含むBHET回収ステージ;
- 前記反応器内の溶媒の少なくとも一部として前記BHET減耗流を再使用するための前記反応器に対するフィードバックループ、並びに
- 前記解重合生成物流中及び/又は前記BHET減耗流中のBHEETの質量分率をモニターし、任意選択的に、前記解重合生成物流中の前記BHEET質量分率の所定の制限値未満に調節する手段を含む、反応器システムが提供される。
【0064】
この反応器システムは本発明のプロセスの実行のために構成される。
【0065】
実施形態による反応器システムは、解重合生成物流中のBHEETの質量分率を調節する手段が、フィードバックループを介して反応器にそれを再供給する前にBHET減耗流の一部をパージするように構成されるように提供される。
【0066】
なお別の実施形態は、BHET減耗流中のBHEETの前記質量分率が前記所定の制限値のパージ率とほぼ等しくなるようにパージを制御するように構成された少なくとも1つの制御器ユニットを含む反応器システムを提供する。
【0067】
別の実際的な実施形態において、BHET回収ステージが、前記生成物流からのBHETモノマーの結晶化のための結晶化ユニットを含み、残りのBHET減耗流が、エチレングリコール及びBHEETを含む母液を構成する反応器システムが提供される。
【0068】
実施形態による好ましい反応器システムは、前記反応器内の前記溶媒の少なくとも一部として回収母液流を再使用するための前記反応器へのフィードバックループ、及び、前記回収母液流中のBHEETの質量分率が、前記所定の制限値のパージ率を超えたとき、フィードバックループの上流に配置された前記母液流をパージするためのユニットを更に含む。
【0069】
そのような実施形態において、反応器システムは好ましくは、BHETの結晶化用の前記結晶化ユニットの下流、かつ前記母液流の前記部分をパージするためのパージユニットの上流に配置された、前記母液流から前記BHET結晶を分離するための固体/液体分離器を更に含む。
【0070】
好ましい別の実施形態は、前記パージユニットが、前記再使用された溶媒、及び任意選択的に水からの前記BHEETの一部を分離するための蒸留ユニットを含む反応器システムに関する。
【0071】
また、生成物流から触媒複合体を分離し回収するための分離器ユニット、及び、任意選択的に、回収された触媒複合体を再使用するための、反応器へのフィードバックループを更に含むなお別の実施形態による反応器システムを提供することは有利であり得る。適切な分離器ユニットは、1つ又は複数の濾過ユニット、遠心分離ユニット、又は磁気吸引ユニット、又はこれらの組み合わせを含んでいてもよい。
【0072】
通常、BHET回収ステージは、入口及び出口を有する少なくとも1つの容器として具現された結晶化ユニットを含む。好ましくは、前記容器のそれぞれにプロセス条件を制御するための制御器が存在する。当業者に知られているように、センサーがそれに利用可能であってもよい。結晶化ユニット及び分離器は、バッチ操作、又は連続操作用に構成されてもよい。或いは、システムは半連続的であり、結晶化ユニットはバッチ式であるが、しかし、さらなるプロセスステージからの流れ及びそれを過ぎた流れは連続的である。この実施において、1つの結晶化ユニットを働かせ、その間に別の平行に配置されたユニットで結晶化処理を遂行するように複数の結晶化ユニットが平行に配置されてもよい。別の実施形態において、複数の結晶化ユニットがより多くの連続操作の系列で配置されてもよい。
【0073】
統合反応器システムは、熱損失が最小限に抑制され、予知されない沈殿を防止するので有利である。更に、BHETの結晶化後に残る母液が、ある特定量のBHEETがそれからパージされた後、解重合ステージでの使用のためにリサイクルされるので有利である。それに対して、好ましくは、エチレングリコール中のBHEET及び水の含有率を低減するために蒸留処理にかけられる。
【0074】
実施形態において、モノマー結晶回収ステージは、濾過によって母液からBHET結晶を分離するように構成された濾過ユニットを含み、濾過ユニットは、濾過ユニット内で分離されたBHET結晶の任意選択の洗浄を行うように構成される。
【0075】
図を参照して、又は実施例の文脈において、又は本発明の一態様に関する従属請求項で定義されているように、上記及び/又は下記で論じられる実施形態のいずれも適用可能であり、本発明の他の任意の態様との関係で開示されていると考えられ、それらの態様は、出願された特許請求の範囲において更に定義されていることは理解されるはずである。
【0076】
本発明の特徴及び対象の上記及び他の利点は、添付の図面と併せて読むと、以下の詳細な説明からより明らかとなり、本発明がより良好に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【
図1】本発明の実施形態による反応器システムを概略的に図示する。
【
図2】本発明の実施形態による解重合時の時間内のBHETモノマーの形成を概略的に図示する。
【
図3】本発明の実施形態による100分から開始する解重合時の時間内の対数目盛でのBHEETモノマーの形成を概略的に図示する。
【発明を実施するための形態】
【0078】
添付の図面は、目下、本発明の装置の好ましい非限定的な例示の実施形態を図示するために使用される。図は縮尺通りに描かれていない。異なる図中の同じ参照番号は、同等又は対応する要素を指す。
【0079】
図1は、本発明の反応器システム10の実施形態を概略的に図示する。示された反応器システム10は本質的に解重合反応器1及び4つの分離手段2、3、4及び5を含む。反応器1への入口流A、B及びC、並びに、それぞれ触媒及び溶媒、特にエチレングリコールをリサイクルするフィードバック流X及びYが示される。パージ流Zは生成されたBHEETとして定義される。
図1が非常に模式的な図であり、任意の変形又は修正も排除されないことは理解されよう。
【0080】
反応器システム10に、ポリマー状材料を含む入力流Aが用意される。好ましくは、このポリマー状材料は、少なくともそのバルクが解重合用のテレフタレートポリマー、とりわけPETとなるように、前もって分離される。入力流Aは、固体形態、例えば薄片の形をとってもよい。しかし、入力流が分散体又は更に溶液の形をとることは排除されない。
【0081】
入力流Aは解重合反応器1に入る。この解重合反応器に入る他の流れは、エチレングリコール等の新しい溶媒の流れB及び新しい触媒Cの流れを含む。流れCは、また任意選択の、触媒のリサイクルされた流れXを含んでいてもよい。エチレングリコール等の溶媒のリサイクルされた流れYはまた反応器1に進入する。入力流A、B、C、並びにリサイクル流X及びYが個々の入口として配置されてもよく、又は、1つ又は複数の入口に組み合わせられてもよい。解重合反応器1はバッチ式又は連続式であってもよい。それは単一反応器として示されているが、タンク形反応器の組み合わせ等の反応容器の組み合わせ、及び参照により本明細書に組み込まれる国際公開第2016/105200号に開示されている複数の栓流反応器が使用されることは排除されない。また、複数の容器が1つのユニット内に平行に配置されてもよい。示されていないが、反応器システム10に制御器が備えられること、及び反応器への流速設定及び反応器内の滞留時間設定のためにセンサーが弁と同様に存在してもよいことは理解されよう。更に、反応器1及び分離手段2、3、4及び5に、加熱手段及び/又は他の温度調節手段が予め定義された温度及び他の可変量からの乖離を防止するために備えられてもよい。
【0082】
反応器1での解重合に続いて、解重合された反応混合物は、水D用の入口が備えられてもよい分離/濾過ユニット2にポンプ輸送される。或いは、水Dは水溶液として用意されてもよい。1種又は複数のさらなる添加剤が、分離/濾過ユニット2で生じるように意図される相分離を容易にするためにそれに添加されることは排除されない。分離/濾過ユニット2は、通常160~200℃の範囲の解重合温度から、加工温度、例えば、およそ100℃に解重合された混合物を冷却する役目をする。任意選択の水Dは冷却プロセス、及びまた分離/濾過ユニット2内の二相混合物の生成に貢献し得る。第1の相は、エチレングリコールと任意選択的に水との混合物中に溶質として少なくともモノマーBHET及びBHEETを含む。第2の相は、BHETオリゴマー、触媒、添加剤を含む。二相混合物は、第1の分離器、例えば遠心分離機を含む分離/濾過ユニット2内で分離される。触媒を含有する第2の相は、その後、流れXとして解重合反応器1にリサイクルされてもよい。分離/濾過ユニット2が1つのユニットとして示されているが、このユニット2が幾つかの別個のユニット、例えば、冷却容器、第1の分離器及び濾過ユニットを含むことは排除されない。或いは、冷却機能は、物理的に単一ユニットとして、特にバッチプロセスの使用の場合には解重合反応器1中で実際に組み込まれてもよい。また他の実施形態において、さらなる精製ユニットが備えられてもよい。BHEETの分離もまた、BHET結晶化ステージ3の上方にBHEET流にとって適切な分離ユニットを備えることによってBHET結晶化の前に実行されてもよい。
【0083】
分離/濾過ユニット2を出る第1の相はまた本発明の文脈において溶液Sと称される。純粋な溶液というよりむしろ、溶液Sはコロイド溶液又は分散体であってもよい。溶液Sは、BHET結晶化ステージ3に移送され、BHETは固体BHETモノマー生成物Iとして分離器4内で結晶化し、続いて回収される。分離/濾過ユニット2に対して温度を下げることではなく、又は下げることに加えて、ラインEによって図に示されるように、水E等の反溶媒が結晶化ステージ3で溶液Sに添加されてもよい。これによって、BHETの溶解度を低下させ、結晶化及びより高温を可能にする。BHETの結晶化で、溶液Sは、固体BHET、並びにBHEETを含むスラリーMに転換される。スラリーMは固体/液体分離ステージ4に入り、固体BHETモノマー生成物IはスラリーMから分離される。またBHEETを含有する残りの母液M1は、次に好ましくは少なくとも1つの蒸留塔を含む加工ステージ5へ導かれる。加工ステージ5で、母液M1はその水の含有率、並びにBHEETパージZに通してそのBHEET含有率を低下させるために加工される。結果として得られた格上げされたエチレングリコールは、流れYとして解重合反応器1に戻される。脱水プロセスは、結果として水リサイクル流をもたらす。
【0084】
本発明のプロセスによって、白く夾雑物を多くは含まないBHETモノマー生成物Iにすることが実現可能であると判明した。
【0085】
当業者によって、さらなる変形を目論むことができる。例えば、流れX及びYの1つ又は複数の再利用が(さらなる)精製工程、加熱又は冷却工程を含むことは実現可能である。流れX及びYが解重合ステージへの進入前に合流することは排除されない。
【実施例】
【0086】
500mlの丸底フラスコを使用して、解重合実験を実行した。50gのポリエチレンテレフタレート(PET)薄片(0.3×0.3cm2の数片)及び200gのエチレングリコール(EG)と組み合わせて0.025gの量の乾燥した不均一触媒を使用した。解重合反応において0.02gの量の均一な酢酸亜鉛触媒(Zn(CH3CO2)2)を使用した。Table 1(表1)に示すように、実施例1~5の試験の不均一触媒を選んだ。またTable 1(表1)に示すように、実施例3において均一触媒を使用した。
【0087】
加熱装置に丸底フラスコを置いた。撹拌しながら加熱を開始し、20分後、反応混合物は、還流下197℃の反応温度に到達した。その反応に続いて、時間内にプロセス内管理試料を採取して、時間の関数として、生成したモノマー(ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタレート、又はBHET)及び副生物(BHEET等)の質量分率を測定した。HPLCを用いてBHET及びBHEETの質量分率を求めた。
【0088】
【0089】
【0090】
図2は実施例1~5において使用した触媒は、酸化アンチモン触媒は別として、比較的高い解重合率と、許容できるBHET形成とを兼ね備えていることを示す。酸化アンチモン触媒は実際には相当ひどい。
【0091】
図3は、実施例1~5において使用した触媒が解重合中に比較的多量のBHEETを生成することを示す。100から300分の間に生成した相対量のBHEETを対数目盛で示していることに注意すること。結果は、BHEETパージが、特許請求されるように、これらのタイプの触媒には必要であることを意味する。特に、酸化アンチモン触媒は、非常に多量のBHEETを生成する。この触媒に関しては、したがって、比較的多量のBHEETパージが必要である。
【0092】
添付された特許請求の範囲によって請求される本発明は、BHEET等の不純物、並びに、DEG、MHET及びiso-BHETのような他のものが、PETの解重合から得られたBHETモノマー生成物に入ることから防止するための溶液を提供する。
【符号の説明】
【0093】
1 解重合反応器
2 分離/濾過ユニット
3 BHET結晶化ステージ
4 固体/液体分離ステージ
5 加工ステージ
10 反応器システム
A 入口流
B 新しい溶媒
C 新しい触媒
D 水
E 水
I 固体BHETモノマー生成物
M スラリー
M1 残りの母液
S 溶液
X フィードバック流
Y フィードバック流
Z パージ流
【国際調査報告】