(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-05
(54)【発明の名称】能動的マイクロボットを用いた局所送達用の医薬品有効成分(API)含有製剤
(51)【国際特許分類】
A61K 9/20 20060101AFI20240628BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20240628BHJP
A61K 38/02 20060101ALI20240628BHJP
A61K 35/12 20150101ALI20240628BHJP
A61K 9/10 20060101ALI20240628BHJP
A61K 47/18 20170101ALI20240628BHJP
A61K 47/06 20060101ALI20240628BHJP
A61K 47/32 20060101ALI20240628BHJP
A61K 47/36 20060101ALI20240628BHJP
A61K 47/34 20170101ALI20240628BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20240628BHJP
A61K 47/04 20060101ALI20240628BHJP
A61K 47/12 20060101ALI20240628BHJP
A61K 47/42 20170101ALI20240628BHJP
A61K 47/40 20060101ALI20240628BHJP
A61K 31/704 20060101ALI20240628BHJP
A61K 31/4745 20060101ALI20240628BHJP
A61K 31/4188 20060101ALI20240628BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240628BHJP
A61K 9/00 20060101ALI20240628BHJP
【FI】
A61K9/20
A61K45/00
A61K38/02
A61K35/12
A61K9/10
A61K47/18
A61K47/06
A61K47/32
A61K47/36
A61K47/34
A61K47/26
A61K47/04
A61K47/12
A61K47/42
A61K47/40
A61K31/704
A61K31/4745
A61K31/4188
A61P35/00
A61K9/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023578843
(86)(22)【出願日】2022-06-13
(85)【翻訳文提出日】2024-01-15
(86)【国際出願番号】 US2022033256
(87)【国際公開番号】W WO2022271476
(87)【国際公開日】2022-12-29
(32)【優先日】2021-06-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519392030
【氏名又は名称】バイオナット ラブス リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001379
【氏名又は名称】弁理士法人大島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】キセリョフ、アレックス
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C086
4C087
【Fターム(参考)】
4C076AA09
4C076AA22
4C076AA36
4C076AA95
4C076AA99
4C076BB01
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4C087ZC80
(57)【要約】
本開示は、医薬製剤、その製造方法、及び治療方法を提供する。本開示の医薬製剤は、マイクロボット上またはマイクロボット内に搭載されペイロードとして機能するように構成される。本開示の医薬製剤は、治療上有効な用量の医薬品を含有し、かつ、マイクロボット内またはマイクロボット上に搭載可能な寸法を有する錠剤を含む。また、本開示の医薬製剤は、例えば、1mmの寸法の円柱形または楕円形の形状に成形される。医薬品は、小分子薬物、ペプチド、ペプチド、生物学的薬物、細胞、またはそれらの任意の組み合わせであり得る。したがって、本開示の医薬製剤は、患者の体内の標的部位、例えば腫瘍に対する標的療法の適用を提供する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロボット内またはマイクロボット上に搭載されペイロードとして搬送されるように構成された医薬製剤であって、
治療上有効な用量の医薬品を含有し、かつ、マイクロボット内またはマイクロボット上に搭載可能な寸法を有する錠剤を含む、医薬製剤。
【請求項2】
請求項1に記載の医薬製剤であって、
前記医薬品は、小分子薬物、ペプチド、ペプトイド、細胞、または生物学的薬物、またはそれらの任意の組み合わせを含む、医薬製剤。
【請求項3】
請求項2に記載の医薬製剤であって、
前記生物学的薬物または前記細胞は、ヒドロゲルマトリックス中に懸濁されている、医薬製剤。
【請求項4】
請求項3に記載の医薬製剤であって、
前記ヒドロゲルマトリックスは、交差共役ホモシステイン-ノルボルネン複合体からなる、医薬製剤。
【請求項5】
請求項1に記載の医薬製剤であって、
前記医薬品は、放射線増感剤を含む、医薬製剤。
【請求項6】
請求項1に記載の医薬製剤であって、
前記医薬品は、ドキソルビシン、トポテカン、及びテモゾロマイドからなる群から選択される、医薬製剤。
【請求項7】
請求項1に記載の医薬製剤であって、
前記医薬品は、錠剤1錠あたり約1μg~約3000μgの凝集質量を有する、医薬製剤。
【請求項8】
請求項1に記載の医薬製剤であって、
前記医薬品は、錠剤1錠あたり約3μg~約25μgの凝集質量を有する、医薬製剤。
【請求項9】
請求項1に記載の医薬製剤であって、
前記錠剤は、湿式造粒、乾式造粒、または溶融押出によって製剤化される、医薬製剤。
【請求項10】
請求項1に記載の医薬製剤であって、
前記錠剤は、前記マイクロボット内に搭載されるように構成される、医薬製剤。
【請求項11】
請求項1に記載の医薬製剤であって、
前記錠剤は、実質的に円柱形または実質的に楕円形の形状を有する、医薬製剤。
【請求項12】
請求項10に記載の医薬製剤であって、
前記錠剤は、実質的に円柱形の形状を有する、医薬製剤。
【請求項13】
請求項10に記載の医薬製剤であって、
前記錠剤は、実質的に楕円形の形状を有する、医薬製剤。
【請求項14】
請求項1に記載の医薬製剤であって、
前記錠剤は、約2mmの長さ/長軸寸法、及び、約1mmの直径/短軸寸法を有する、医薬製剤。
【請求項15】
請求項1に記載の医薬製剤であって、
前記錠剤は、約1mmの長さ/長軸寸法、及び、約0.85mmの平均直径/短軸寸法を有する、医薬製剤。
【請求項16】
請求項1に記載の医薬製剤であって、
前記錠剤は、少なくとも1つの薬学的に許容される結合剤、担体、及び/または賦形剤をさらに含む、医薬製剤。
【請求項17】
請求項16に記載の医薬製剤であって、
前記少なくとも1つの薬学的に許容される結合剤、担体、及び/または賦形剤は、ポリビニルピロリドン、デキストリンまたはデキストリン誘導体、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、乳酸とグリコール酸との混合ポリマー(PLGA)、含水ラクトース、ポリビニルアルコール、水、ヒュームドシリカ、ステアリン酸マグネシウム、ヒアルロン酸、アガロース、コラーゲン、キトサン、トレハロース、スクロース、ラクトスクロース、デキストラン、ヒドロキシプロイルベタデックス、及び、ポビドンからなる群から選択される、医薬製剤。
【請求項18】
請求項1に記載の医薬製剤であって、
前記医薬品は、少なくとも1つの生物学的薬物を含む、医薬製剤。
【請求項19】
請求項18に記載の医薬製剤であって、
前記少なくとも1つの生物学的薬物は、等張凍結乾燥ポリプレックス中に懸濁されている、医薬製剤。
【請求項20】
請求項19に記載の医薬製剤であって、
前記等張凍結乾燥ポリプレックスは、ポリ-L-リジン、ホスホリルコリン修飾ポリエチレンイミン、及びPEG化ポリエチレンイミンからなる群から選択される、医薬製剤。
【請求項21】
請求項1に記載の医薬製剤であって、
前記錠剤は、薬学的に許容されるコーティングをさらに含む、医薬製剤。
【請求項22】
請求項1に記載の医薬製剤であって、
USP905の一貫した均一性要件に適合する、医薬製剤。
【請求項23】
治療薬送達システムであって、
50nm~1cmの範囲の寸法を有し、かつ、運動要素を備えるマイクロボットを含み、
請求項1~22のいずれかに記載の医薬製剤を含む治療薬カーゴを搬送する、治療薬送達システム。
【請求項24】
マイクロボット上に搭載されるカーゴとして機能するように構成された錠剤を製造する方法であって、
治療上有効な用量の医薬品を含有する混合物を含むプレミックスを調製するステップと、
前記プレミックスを前記マイクロボット上または前記マイクロボット内に搭載可能な寸法を有する錠剤に成形するステップと、を含む、方法。
【請求項25】
請求項24に記載の方法であって、
前記錠剤の成形は、湿式造粒、乾式造粒、または溶融押出によって達成される、方法。
【請求項26】
請求項24に記載の方法であって、
前記医薬品は、小分子薬物、ペプチド、ペプトイド、細胞、生物学的薬物、またはそれらの任意の組み合わせを含む、方法。
【請求項27】
請求項26に記載の方法であって、
前記生物学的薬物または前記細胞は、ヒドロゲルマトリックス中に懸濁されている、方法。
【請求項28】
請求項27に記載の方法であって、
前記ヒドロゲルマトリックスは、「クリック」化学に基づいている、方法。
【請求項29】
請求項24に記載の方法であって、
前記医薬品は、放射線増感剤を含む、方法。
【請求項30】
請求項24に記載の方法であって、
前記医薬品は、ドキソルビシン、トポテカン、及びテモゾロマイドからなる群から選択される、方法。
【請求項31】
請求項24に記載の方法であって、
前記医薬品は、錠剤1錠あたり約1μg~約3000μgの凝集質量を有する、方法。
【請求項32】
請求項24に記載の方法であって、
前記錠剤は、前記マイクロボット内に搭載されるように構成される、方法。
【請求項33】
請求項24に記載の方法であって、
前記錠剤は、実質的に円柱形または実質的に楕円形の形状を有する、方法。
【請求項34】
請求項32に記載の方法であって、
前記錠剤は、実質的に円柱形の形状を有する、方法。
【請求項35】
請求項32に記載の方法であって、
前記錠剤は、実質的に楕円形の形状を有する、方法。
【請求項36】
請求項24に記載の方法であって、
前記錠剤は、約2mmの長さ/長軸寸法、及び、約1mmの直径/短軸寸法を有する、方法。
【請求項37】
請求項24に記載の方法であって、
前記錠剤は、約1mmの長さ/長軸寸法、及び、約0.85mmの平均直径/短軸寸法を有する、方法。
【請求項38】
請求項24に記載の方法であって、
前記錠剤は、少なくとも1つの薬学的に許容される結合剤、担体、及び/または賦形剤をさらに含む、方法。
【請求項39】
請求項38に記載の方法であって、
前記少なくとも1つの薬学的に許容される結合剤、担体、及び/または賦形剤は、ポリビニルピロリドン、デキストリンまたはデキストリン誘導体、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、乳酸とグリコール酸との混合ポリマー(PLGA)、含水ラクトース、ポリビニルアルコール、水、ヒュームドシリカ、ステアリン酸マグネシウム、ヒアルロン酸、アガロース、コラーゲン、キトサン、トレハロース、スクロース、ラクトスクロース、デキストラン、ヒドロキシプロイルベタデックス、及び、ポビドンからなる群から選択される、方法。
【請求項40】
請求項24に記載の方法であって、
前記医薬品は、少なくとも1つの生物学的薬物を含む、方法。
【請求項41】
請求項40に記載の方法であって、
前記少なくとも1つの生物学的薬物は、等張凍結乾燥ポリプレックス中に懸濁されている、方法。
【請求項42】
請求項41に記載の方法であって、
前記等張凍結乾燥ポリプレックスは、ポリ-L-リジン、ホスホリルコリン修飾ポリエチレンイミン、及びPEG化ポリエチレンイミンからなる群から選択される、方法。
【請求項43】
請求項24に記載の方法であって、
前記錠剤を薬学的に許容されるコーティング材料でコーティングするステップをさらに含む、方法。
【請求項44】
請求項24に記載の方法であって、
前記錠剤は、USP905の一貫した均一性要件に適合する、方法。
【請求項45】
マイクロボット内またはマイクロボット上に搭載されペイロードとして搬送されるように構成された錠剤を製造する方法であって、
約90部のドキソルビシン、約450部の含水ラクトース、約60部のポリビニルアルコール、約35部の精製水、約6部のヒュームドシリカ、及び約6部のステアリン酸マグネシウムからなるプレミックスを調製するステップと、
前記プレミックスを約16時間にわたって約50℃に昇温するステップと、
前記プレミックスを30メッシュの標準スクリーンに通すステップと、
前記プレミックスをプレス成形して錠剤を形成するステップと、を含む、方法。
【請求項46】
マイクロボット内またはマイクロボット上に搭載されペイロードとして搬送されるように構成された錠剤を製造する方法であって、
約444部のドキソルビシン、約545部の含水ラクトース、及び約10部のステアリン酸マグネシウムからなるプレミックスを調製するステップと、
前記プレミックスを乾式混合するステップと、
前記プレミックスを、長さ約1mm及び平均直径約0.85mmの楕円形の錠剤をプレス成形するように構成された錠剤プレス機に投入するステップと、を含む、方法。
【請求項47】
少なくとも1つの生物学的または細胞ベース治療薬を保持し、マイクロボット内またはマイクロボット上に搭載されペイロードとして搬送されるように構成されたカーゴを製造する方法であって、
少なくとも1つの生物学的または細胞ベース治療薬を、NorHAを含むヒドロゲルマトリックス中に懸濁させるステップと、
前記カーゴを、前記マイクロボット上または前記マイクロボット内に搭載可能な寸法に成形するステップと、を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、医薬製剤、送達システム、及び治療方法の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
治療薬は従来、様々な送達経路や送達手段を用いて患者に投与されてきた。治療薬の送達手段としては、例えば、摂取可能な錠剤またはカプセル、粉末、シロップ、軟膏またはクリーム、ゲル、皮下注射器、噴霧スプレー、水溶液、非水溶液、座薬、及び、経皮パッチが挙げられる。これらの従来の送達手段にはそれぞれ、何らかの利点や欠点がある。
【0003】
しかしながら、従来の送達手段はいずれも、治療薬の患者の体内への局所送達には適していない。多くの場合、治療薬の患者への全身投与は副作用のリスクがあるため、例えば腫瘍などの所望の標的部位に対してのみ治療薬を送達することが望ましい。さらに、治療薬によっては非常に高価なものもあることから、そのような高価な治療薬を効率的に使用するためには、患者の体内の所望の標的部位に対してのみ送達することが望ましい。多くの医療用途において、患者の体内で移動可能な医療機器を使用することが有用であろう。例えば、治療薬を制御された態様で放出するためには、患者の体内で医療機器を所望の特定の解剖学的位置まで移動させることが望ましい。
【0004】
加えて、バイオアベイラビリティや薬物動態により、とりわけ腫瘍などの局所的な送達標的の近傍では、患者の体内での理想的な有効用量を維持することが非常に困難となる。患者の身体は、治療薬を代謝または排泄するため、これにより、患者の体内での治療薬の濃度が変動または低下する。そのため、治療薬を患者の体内の所望の標的部位及び所望のタイミングで、オンデマンドで放出することを可能にするシステム及び方法が望まれている。
【0005】
さらに、従来の治療薬の送達経路及び送達手段は、患者または医療専門家が投与計画に積極的に従うことを必要とする。これには、例えば、錠剤を正しい量及びタイミングで正しく服用することや、注射可能な生物学的製剤を正しく投与することが含まれる。治療法によっては、何度も通院する必要がある。とりわけ、摂取可能な薬剤の場合、柑橘類などの特定の食品を避けるなどの、様々な付随的な投与指示を受ける場合がある。このような投与計画は、例えば小児や認知症患者などの、自分で自分の面倒を見る能力が限られている患者では、重大な問題を引き起こす可能性がある。投与計画の遵守は、単に忘れる可能性があるか、または、医師の予約を取るために容易に移動することができない可能性がある成人にとっては、負担の大きい問題である。そのため、患者が投与計画の指示を管理する必要性を軽減または排除することができるシステム及び方法が非常に望まれている。
【0006】
また、従来の治療薬の送達経路及び送達手段の多くは、患者にとって苦痛や不快を伴うものであった。例えば、皮下注射や静脈注射の頻度や期間を減らすことは、患者の快適さや生活の質を大幅に改善するであろう。
【0007】
本開示は、従来の治療薬の送達における上記の欠点を改善するように設計された医薬製剤を提供する。本開示の医薬製剤は、副作用を防ぎ、かつ、希少な及び/または高価な治療薬を効率的に使用することができる局所的な薬物放出を提供する。本開示の医薬製剤(治療薬)は、患者の体内の所望の局所的な送達標的に送達し、好ましいタイミングで、徐放的にまたは長期的な放出計画で放出することができる。これにより、治療薬の用量や投与頻度に対する臨床医の管理の強化、及び、より長い持続的治療の提供が可能となり、その結果、反復注射や長期静脈点滴などによる頻繁な投与の必要性を減らすことができる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示は、マイクロボット上またはマイクロボット内に搭載されるように構成された医薬製剤、そのような医薬製剤を製造する方法、及び、そのような医薬製剤を使用した治療方法を提供する。一実施形態では、本開示は、マイクロボット内またはマイクロボット上に搭載されペイロードとして搬送されるように構成された医薬製剤であって、治療上有効な用量の医薬品を含有し、かつ、マイクロボット内またはマイクロボット上に搭載可能な寸法を有する錠剤を含む、医薬製剤を提供する。
【0009】
一実施形態では、医薬品は、小分子薬物、ペプチド、ペプトイド、細胞、または生物学的薬物、またはそれらの任意の組み合わせを含み得る。一実施形態では、医薬品は、生物学的薬物である。医薬品が生物学的薬物である一実施形態では、生物学的薬物は、ヒドロゲルマトリックス中に懸濁され得る。一実施形態では、ヒドロゲルマトリックスは、交差共役ホモシステイン-ノルボルネン錯体、または、「クリック」化学に基づく代替物から構成され得る。一態様では、生物学的薬物は、等張凍結乾燥ポリプレックス中に懸濁され得る。一態様では、等張凍結乾燥ポリプレックスは、ポリ-L-リジン、ホスホリルコリン修飾ポリエチレンイミン、及びPEG化ポリエチレンイミンからなる群から選択され得る。
【0010】
一実施形態では、医薬品は、1以上の放射線増感剤を含み得る。一実施形態では、医薬品は、ドキソルビシン、トポテカン、及びテモゾロマイドからなる群から選択され得る。
【0011】
医薬製剤の一実施形態では、医薬品は、錠剤1錠あたり約1μg~約3000μgの凝集質量を有し得る。
【0012】
一実施形態では、錠剤は、湿式造粒、乾式造粒、または溶融押出によって製剤化され得る。
【0013】
一実施形態では、錠剤は、マイクロボット内またはマイクロボット上に搭載されるように構成され得る。一実施形態では、錠剤は、実質的に円柱形または実質的に楕円形(回転楕円体)の形状を有し得る。一実施形態では、錠剤は、実質的に円柱形の形状を有し得る。一実施形態では、錠剤は、実質的に楕円形の形状を有し得る。一態様または一実施形態では、錠剤は、約2mmの長さ/長軸寸法、及び、約1mmの直径/短軸寸法を有し得る。一態様または一実施形態では、約1mmの長さ/長軸寸法、及び、約0.85mmの平均直径/短軸寸法を有し得る。
【0014】
一態様または一実施形態では、錠剤は、少なくとも1つの薬学的に許容される結合剤、担体、及び/または賦形剤をさらに含み得る。一実施形態では、少なくとも1つの薬学的に許容される結合剤、担体、及び/または賦形剤は、ポリビニルピロリドン、デキストリンまたはデキストリン誘導体、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、乳酸とグリコール酸との混合ポリマー(PLGA)、含水ラクトース、ポリビニルアルコール、水、ヒュームドシリカ、ステアリン酸マグネシウム、ヒアルロン酸、アガロース、コラーゲン、キトサン、トレハロース、スクロース、ラクトスクロース、デキストラン、ヒドロキシプロイルベタデックス、及び、ポビドンからなる群から選択され得る。一実施形態では、錠剤は、薬学的に許容されるコーティングをさらに含み得る。
【0015】
一実施形態では、本開示の医薬製剤は、USP905の一貫した均一性要件に適合し得る。
【0016】
一態様では、本開示は、治療薬送達システムであって、50nm~1cmの範囲の寸法を有し、かつ、運動要素を備えるマイクロボットを含み、マイクロボット内またはマイクロボット上に搭載されペイロードとして搬送されるように構成された医薬製剤を含む治療薬カーゴを搬送する、治療薬送達システムを提供する。医薬製剤は、治療上有効な用量の医薬品を含有し、かつ、マイクロボット内またはマイクロボット上に搭載可能な寸法を有する錠剤を含む。
【0017】
一態様では、本開示は、マイクロボット上に搭載されカーゴとして機能するように構成された錠剤を製造する方法であって、治療上有効な用量の医薬品を含有する混合物を含むプレミックスを調製するステップと、プレミックスをマイクロボット上またはマイクロボット内に搭載可能な寸法を有する錠剤に成形するステップと、を含む、方法を提供する。
【0018】
製造方法の一実施形態では、錠剤の成形は、湿式造粒、乾式造粒、または溶融押出によって達成され得る。製造方法の一実施形態では、医薬品は、小分子薬物、ペプチド、ペプトイド、細胞、生物学的薬物、またはそれらの任意の組み合わせであり得る。製造方法の一実施形態では、医薬品は、生物学的薬物であり得る。製造方法の一実施形態では、生物学的薬物は、ヒドロゲルマトリックス中に懸濁され得る。製造方法の一実施形態では、生物学的薬物は、等張凍結乾燥ポリプレックス中に懸濁され得る。製造方法の一実施形態では、等張凍結乾燥ポリプレックスは、ポリ-L-リジン、ホスホリルコリン修飾ポリエチレンイミン、及びPEG化ポリエチレンイミンからなる群から選択され得る。
【0019】
製造方法の一実施形態では、ヒドロゲルマトリックスは、「クリック」化学に基づいてもよい。製造方法の一実施形態では、医薬品は、放射線増感剤であり得る。製造方法の一実施形態では、医薬品は、ドキソルビシン、トポテカン、及びテモゾロマイドからなる群から選択され得る。
【0020】
製造方法の一実施形態では、医薬品は、錠剤1錠あたり約1μg~約3000μgの凝集質量を有し得る。製造方法の一実施形態では、錠剤は、マイクロボット内に搭載されるように構成され得る。製造方法の一実施形態では、錠剤は、実質的に円柱形または実質的に楕円形(回転楕円体)の形状を有し得る。製造方法の一実施形態では、錠剤は、実質的に円柱形の形状を有し得る。製造方法の一実施形態では、錠剤は、実質的に楕円形の形状を有し得る。製造方法の一実施形態では、錠剤は、約2mmの長さ/長軸寸法、及び、約1mmの直径/短軸寸法を有し得る。製造方法の一実施形態では、錠剤は、約1mmの長さ/長軸寸法、及び、約0.85mmの直径/短軸寸法を有し得る。
【0021】
製造方法の一実施形態では、錠剤は、少なくとも1つの薬学的に許容される結合剤、担体、及び/または賦形剤をさらに含み得る。製造方法の一実施形態では、少なくとも1つの薬学的に許容される結合剤、担体、及び/または賦形剤は、ポリビニルピロリドン、デキストリンまたはデキストリン誘導体、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、乳酸とグリコール酸との混合ポリマー(PLGA)、含水ラクトース、ポリビニルアルコール、水、ヒュームドシリカ、ステアリン酸マグネシウム、ヒアルロン酸、アガロース、コラーゲン、キトサン、トレハロース、スクロース、ラクトスクロース、デキストラン、ヒドロキシプロイルベタデックス、及び、ポビドンからなる群から選択され得る。製造方法の一実施形態では、錠剤は、薬学的に許容されるコーティング材料をさらに含み得る。
【0022】
製造方法の一実施形態では、錠剤は、USP905の一貫した均一性要件に適合し得る。
【0023】
一態様では、本開示は、マイクロボット内またはマイクロボット上に搭載されペイロードとして搬送されるように構成された錠剤を製造する方法であって、(1)約90部のドキソルビシン、約450部の含水ラクトース、約60部のポリビニルアルコール、約35部の精製水、約6部のヒュームドシリカ、及び約6部のステアリン酸マグネシウムからなるプレミックスを調製するステップと、(2)プレミックスを約16時間にわたって約50℃に昇温するステップと、(3)プレミックスを30メッシュの標準スクリーンに通すステップと、(4)プレミックスをプレス成形して錠剤を形成するステップと、を含む、方法を提供する。
【0024】
別の態様では、本開示は、マイクロボット内またはマイクロボット上に搭載されペイロードとして搬送されるように構成された錠剤を製造する方法であって、(1)約444部のドキソルビシン、約545部の含水ラクトース、及び約10部のステアリン酸マグネシウムからなるプレミックスを調製するステップと、(2)プレミックスを乾式混合するステップと、(3)プレミックスを、長さ約1mm及び平均直径約0.85mmの楕円形の錠剤をプレス成形するように構成された錠剤プレス機に投入するステップと、を含む、方法を提供する。
【0025】
さらに別の態様では、本開示は、少なくとも1つの生物学的または細胞ベース治療薬を保持し、マイクロボット内またはマイクロボット上に搭載されペイロードとして搬送されるように構成されたカーゴを製造する方法であって、(1)少なくとも1つの生物学的または細胞ベース治療薬を、NorHAを含むヒドロゲルマトリックス中に懸濁させるステップと、(2)カーゴを、マイクロボット上またはマイクロボット内に搭載可能な寸法に成形するステップと、を含む、方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
本発明の例示的な実施形態は、添付図面と併せた例示としてのみの以下の詳細な説明によって、当業者にとってよりよく理解され、かつ容易に明らかになるであろう。
【0027】
【
図1】
図1は、図中で「Bionaut(商標)マイクロロボット」とラベル付けされたマイクロボットの例示的な概略図を示す。
【
図2】
図2は、マイクロボット上またはマイクロボット内に搭載されペイロードとして搬送されるように構成された医薬製剤の例示的な概略図を示す。
【
図3】
図3は、様々な製剤製造技術、様々な治療薬を含む錠剤を形成するための各製造技術の適合性、及び、そのような治療薬の推定最大許容用量を反映した表を示す。
【
図4A】
図4Aは、様々な寸法の錠剤の様々な典型的な実施形態のスケール写真である。
【
図4B】
図4Bは、マイクロボットへの搭載に適した直径約0.85mmの円柱形の錠剤の写真である。
【
図5】
図5は、湿式造粒、乾式造粒、及び/または溶融押出によって達成される、本開示の錠剤の製造方法のステップを示すフロー図である。
【
図6】
図6は、ノルボルネン修飾ヒアルロン酸(NorHA)ヒドロゲルの合成についての概略図を示す。パート(a)は、ヒアルロン酸-テトラブチルアンモニウム(HA-TBA)から、ノルボメンカルボン酸とHA上のペンダントアルコールとのカップリングを介したNorHAの合成を示す。反応は、ジ-tert-ブチルジカーボネート(Boc
2O)活性化プロセスで進行し、20wt%の繰り返し単位がノルボルネンで官能基化されたNorHAが得られる。パート(b)は、ジチオール架橋剤とNorHAとの光開始チオレン反応を介してゲルを形成し、続いて、モノチオール及び/またはジチオールによる化学修飾を行う合成スキームを示す。
【
図7A】
図7Aは、オリゴヌクレオチドなどの生物学的薬物のマイクロボットによる局所送達のための、長期安定性を有する凍結乾燥プラスミド/線状ポリエチレンイミン(LPEI)ポリプレックス製剤の開発及び評価の概略フロー図を示す。
【
図7B】
図7Bは、オリゴヌクレオチドなどの生物学的薬物のマイクロボットによる局所送達のための、凍結乾燥された安定的な活性siRNAポリプレックス製剤の開発及び評価の概略フロー図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本明細書で使用するとき、単数形の「1つの(a)」、「1つの(an)」、「その(the)」は、文脈が他の意味を明確に示さない限り、その指示対象の複数形も含むものとする。
【0029】
本明細書に引用されたすべての刊行物、特許、及び特許出願は、それぞれが参照により組み込まれることが具体的かつ個別に示されると同じ程度で、参照により本明細書に組み込まれる。
【0030】
様々な医学的介入のためには、例えば腫瘍などの患者の特定の部位に治療薬を送達することができるように、治療薬を患者の体内に指定された態様で配置するための組成物、システム、及び方法を有することが望ましい。
【0031】
本開示は、マイクロボットでの使用のための小分子、生物学的薬物、及び細胞に基づく治療などの様々な治療モダリティの製剤であって、治療対象の特定の部位への治療薬の正確かつ能動的な送達のために設計された製剤を提供する。治療対象の特定の部位としては、病変部位、内腔、心室、腫瘍、導管、血管系、組織、器官、層、外皮、生理的障壁、及びそれらの任意の組み合わせが挙げられる。
【0032】
本開示は、医薬製剤、送達システム、及びそれらの製造方法を提供する。本開示の医薬製剤は、マイクロボットに搭載して送達するために製剤化された錠剤を含む。
【0033】
マイクロボットは、患者の内腔、組織、臓器などの複雑な3次元軌跡に沿って、3次元制御で高精度にナビゲーションできるように設計された、寸法が5cm未満(マイクロメートルスケールの寸法ほどの大きさしかない)の診断用及び/または治療用のロボットである。マイクロボットは、永久磁石、電磁石、電気的、圧電的、超音波的、光学的、高周波的、及び/またはそれらの任意の組み合わせなどの外力(すなわち遠隔力)によって推進(移動)させることができる。
【0034】
マイクロボットは、(a)広範囲な剛性特性(例えば、0.1~100GPaのヤング率を有する)、(b)表面特徴(コーティング、研磨剤、接着剤、固定及び/または吸収された材料、多層、親水性、疎水性、帯電、中性、酵素活性)、(c)形状(球形、楕円形、円柱形、角柱形、スクリュー型、ブレード型)、(d)大きさ(長さ100μm~5cm、外径50μm~5mm)、及び、(e)(i)磁石などの外部推進力応答要素、及び(ii)診断用及び/または治療用のペイロードを収容するコンパートメント、を有する様々な材料から作製することができる。診断用及び/または治用療のペイロードは、対象部位における特定の状態を診断及び/または治療できるように、マイクロボット用に特別に構成される。
【0035】
マイクロボットを使用する治療のモダリティ(例えば、小分子、生物学、細胞)、用量、レジメン、期間/頻度は、特定の疾患をモデルとするマイクロボットを用いたインビトロ、エクスビモ、またはインビトロでの試験、あるいは、臨床または前臨床の文献から決定される。具体的な試験としては、これに限定しないが、マイクロボットを用いた医薬品または診断薬の局所送達後の、効力、選択性、特異性、有効性、薬物動態、分布、曝露、薬力学、または毒性についての試験が挙げられる。
【0036】
特定の製剤は、上記の基準、並びに、所望のペイロード放出機構、治療用/診断用のカーゴコンパートメントの寸法、及び滅菌プロセスなどに基づいて選択することができる。
【0037】
マイクロボットの診断用及び/または治療用のカーゴのための代表的な製剤化技術としては、生理学的溶液、ミニ錠剤、マイクロ錠剤、ミセル、リポソーム、ナノ粒子、ビーズ、ゲルなどによって例示される、液体、固体、及び/または様々なコロイド系が挙げられる。
【0038】
このマイクロボットは、多種多様な送達方法に適している汎用性が高い「ペイロード非依存性」であり、目的のかに適合するように調整することができる。例えば、治療薬は、水溶性であってもよいし、不水溶性であってもよい。また、治療薬は、安定的なものであってもよいし、温度やpHなどに対して敏感なものであってもよい。
【0039】
一般に、小分子医薬品は適度に安定しており、様々な送達機構に耐えられる傾向があるため、小分子ベースの治療薬やペプチド/ペプチドベースの治療薬は、利用可能な製剤オプションに関して大きな柔軟性を提供する。一方、生物学的薬物や細胞は、特定の送達技術を必要とする。特に、生物学的薬物に基づく治療法の大部分は、懸濁液、緩衝液、温度制御などを必要とする。
図3に示す表では、これらのモダリティとそのペイロード製法オプションのいくつかが強調されている。
【0040】
本開示は、マイクロボットによって送達するための製剤を提供する。1以上の治療薬が、マイクロボット上またはマイクロボット内にペイロードとして搭載されるように製剤化または成形された錠剤、例えば、ミニ錠剤またはマイクロ錠剤の形態で送達される。マイクロボットは、血清、脳脊髄液(CSF)、または、組織や器官などの弾性、粘弾性、または粘性の生物学的媒体によって例示されるニュートン媒体または非ニュートン媒体を介して、例えば切開部などの導入部から患者の体内の標的部位まで、(例えば、電磁力によって)推進(移動)させることができる。これにより、マイクロボットは、開口部や切開部から腫瘍などの局所的な標的部位に、治療薬を送達することができる。マイクロボットは、治療薬の即時放出、遅延放出、制御放出、または徐放放出を達成するように構成することができる。治療薬を含む錠剤は、速放性(例えば、高溶解性)または徐放性(例えば、低溶解性)であってもよく、溶解度特性は、治療薬の所望の放出速度に合わせて調整される。
【0041】
マイクロボットは、
図1に示す小型治療薬送達ロボットを含む。このマイクロボットは、50nm~1cmの寸法を有し、運動要素(motility component)を備える。運動要素は、磁気手段によってマイクロボットを移動させるように構成されている。例えば、運動要素は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる米国特許出願第16/609,493号及び/またはPCT出願第US2019/041309号の開示内容に従って作動することができる。また、マイクロボットは、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる米国特許出願第16/620、748号の開示内容に従って制御することができる。マイクロボットは、外部刺激、内部刺激、またはその両方に応答して、マイクロボットに搭載された医薬製剤を搬送することができる。一実施形態では、マイクロボットは、患者の体内の内部刺激(例えば、温度、pH、レドックスシグナル、圧力、塩分濃度、酵素、これに限定しないが例えばケモカインやサイトカインなどによって例示される生化学的勾配、受容体、及び/またはアゴニスト)に応答して治療用カーゴを放出することができる。患者は、非哺乳類、哺乳類、及びヒト患者を含むいかなる動物であってもよい。
【0042】
一般に、医薬製剤は錠剤に製剤化され、錠剤はペイロードとしてマイクロボット上またはマイクロボット内に搭載される。マイクロボットは、外力に応答して医薬製剤を放出することができる。外力は、機械磁気、電磁、圧電、超音波、高周波、光学処理、またはそれらの任意の組み合わせから選択することができる。例えば、医薬製剤は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれるPCT出願第US2018/030949号及び/または米国特許出願第17/052、201号の開示内容に従って、外部超音波刺激により放出される。
【0043】
マイクロボットは、患者の身体表面の導入部位、例えば注射部位から、患者の体内の標的部位まで、マイクロボットを移動させる運動要素を含む。例えば、マイクロボットは、マイクロカテーテルを介して患者の腰椎に挿入した後、運動要素によって患者の中脳内の部位まで移動させ、そこで医薬製剤を放出することができる。別の例では、マイクロボットは、ヒト患者の腕の血管内に挿入した後、運動要素によって患者の肝臓まで移動させることができる。さらに別の例では、マイクロボットは、患者の食道に挿入した後、運動要素によって患者の十二指腸の内腔に位置する病変部位まで移動させることができる。運動要素は、電磁、超音波、高周波、光学、電気、代替手段、またはそれらの任意の組み合わせによって、マイクロボットを移動させることができる。一実施形態では、マイクロボットは、生物学的マトリックス、組織、器官、回路、血管、管腔、またはそれらの任意の組み合わせを通って、導入部位から標的部位まで移動させることができる。マイクロボットは、参照によりその全体が本明細書に組み込まれるPCT出願第US2019/059178号の開示内容に従って移動させることができる。一実施形態では、マイクロボットは、別の部位に移動させるか、または、患者の体内から除去することができる。マイクロボットの配置及び回収に関する詳細情報は、参照によってその全体が本明細書に組み込まれるPCT出願第US2019/030355号に開示されている。
【0044】
医薬製剤は、錠剤を含む。錠剤は、小分子薬物、生物学的薬物、微生物(すなわち、細菌、古細菌、及び/または単細胞真核生物)、ウイルス、ウイルス構築物、ミセル、栄養素、ミネラル、ビタミン、ペプチド、ペプトイド、酵素、抗体または抗体断片(遺伝子操作されたもの、または天然のもの)、核酸(DNA及び/またはRNAを含む)、炭水化物、脂質または脂肪酸、水溶液、非水溶液、ナノ材料、ナノ粒子(例えば、免疫金ナノ粒子)、接着剤、結合剤、化学縫合糸、標識(例えば、放射性標識)、またはそれらの任意の組み合わせを含み得る。
【0045】
本開示は、マイクロボット上またはマイクロボット内に搭載されるように構成された医薬製剤、そのような医薬製剤を製造する方法、及び、そのような医薬製剤を使用した治療方法を提供する。一実施形態では、本開示は、マイクロボット内またはマイクロボット上に搭載されペイロードとして搬送されるように構成された医薬製剤であって、治療上有効な用量の医薬品を含有し、かつ、マイクロボット内またはマイクロボット上に搭載可能な寸法を有する錠剤を含む、医薬製剤を提供する。
【0046】
一実施形態では、医薬品は、小分子薬物、ペプチド、ペプトイド、細胞、または生物学的薬物、またはそれらの任意の組み合わせを含み得る。一実施形態では、医薬品は、生物学的薬物、例えば、タンパク質、抗体、抗体断片、DNA、RNA、プラスミドなどの生物学的材料に由来する薬物などであり得る。医薬品が生物学的薬物である一実施形態では、生物学的薬物はヒドロゲルマトリックス中に懸濁され得る。一態様では、ヒドロゲルマトリックスは、交差共役ホモシステイン-ノルボルネン複合体から構成され得る。一態様では、生物学的薬物は、等張凍結乾燥ポリプレックス中に懸濁され得る。一態様では、等張凍結乾燥ポリプレックスは、ポリ-L-リジン、ホスホリルコリン修飾ポリエチレンイミン、及びPEG化ポリエチレンイミンからなる群から選択され得る。
【0047】
医薬製剤の一実施形態では、医薬品は、1以上の放射線増感剤を含み得る。一実施形態では、医薬品は、ドキソルビシン、トポテカン、及びテモゾロマイドからなる群から選択され得る。
【0048】
一実施形態では、医薬品は、錠剤1錠あたり約1μgから最大で約1000μgの凝集質量を有し得る。例えば、医薬品は、50μgの放射線増感剤と、50μgの微小管標的化剤(MTA)とを含み、合計100μgの凝集質量を有し得る。医薬製剤は、錠剤1錠あたり約1、2、3、4、5、10、15、20、50、100、200、300、400、500、600、700、800、900、1000、及び、最大で約3000μgの凝集質量を有し得る。一実施形態では、医薬品は、錠剤1錠あたり約3μgから最大で約25μgの凝集質量を有し得る。
【0049】
一実施形態では、錠剤は、湿式造粒、乾式造粒、または溶融押出によって製剤化され得る。
【0050】
一実施形態では、錠剤は、マイクロボットに搭載されるように構成され得る。製造方法の一実施形態では、錠剤は、実質的に円柱形または実質的に楕円形(回転楕円体)の形状を有し得る。製造方法の一実施形態では、錠剤は、楕円形、実質的に楕円形、または半球状の形状を有し得る。一態様または一実施形態では、錠剤は、約2mmの長さ/長軸寸法、及び、約1mmの直径/短軸寸法を有し得る。一態様または一実施形態では、錠剤は、約1mmの長さ/主軸寸法、及び、約0.85mmの平均直径/短軸寸法を有し得る。長さ/長軸寸法は、50nm、55nm、60nm、70nm、80nm、90nm、100nm、150nm、200nm、300nm、400nm、500nm、750nm、1000nm(1μm)、1.1μm、1.2μm、1.3μm、1.4μm、1.5μm、1.6μm、1.7μm、1.8μm、1.9μm、2.0μm、5.0μm、10μm、15μm、20μm、25μm、30μm、40μm、50μm、75μm、100μm、200μm、300μm、400μm、500μm、600μm、700μm、800μm、850μm、900μm、1000μm(1mm)、1.1mm、1.2mm、1.3mm、1.4mm、1.5mm、1.6mm、1.7mm、1.8mm、1.9mm、2.0mm、2.5mm、3.0mm、3.5mm、4.0mm、5.0mm、6.0mm、7.0mm、8.0mm、9.0mm、または、10.0mm(1cm)であり得る。幅/直径/短軸寸法は、50nm、55nm、60nm、70nm、80nm、90nm、100nm、150nm、200nm、300nm、400nm、500nm、750nm、1000nm(1μm)、1.1μm、1.2μm、1.3μm、1.4μm、1.5μm、1.6μm、1.7μm、1.8μm、1.9μm、2.0μm、5.0μm、10μm、15μm、20μm、25μm、30μm、40μm、50μm、75μm、100μm、200μm、300μm、400μm、500μm、600μm、700μm、800μm、850μm、900μm、1000μm(1mm)、1.1mm、1.2mm、1.3mm、1.4mm、1.5mm、1.6mm、1.7mm、1.8mm、1.9mm、2.0mm、2.5mm、3.0mm、3.5mm、4.0mm、5.0mm、6.0mm、7.0mm、8.0mm、9.0mm、または、10.0mm(1cm)であり得る。
【0051】
一態様または一実施形態では、錠剤は、少なくとも1つの薬学的に許容される結合剤、担体、及び/または賦形剤をさらに含み得る。一実施形態では、少なくとも1つの薬学的に許容される結合剤、担体、及び/または賦形剤は、ポリビニルピロリドン、デキストリンまたはデキストリン誘導体、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、乳酸とグリコール酸との混合ポリマー(PLGA)、含水ラクトース、ポリビニルアルコール、水、ヒュームドシリカ、ステアリン酸マグネシウム、ヒアルロン酸、アガロース、コラーゲン、キトサン、トレハロース、スクロース、ラクトスクロース、デキストラン、ヒドロキシプロイルベタデックス、及び、ポビドンからなる群から選択され得る。一実施形態では、錠剤は、薬学的に許容されるコーティングをさらに含み得る。
【0052】
一実施形態では、本開示の医薬製剤は、USP905の一貫した均一性要件に適合し得る。
【0053】
一態様では、本開示は、治療薬送達システムであって、50nm~1cmの範囲の寸法を有し、かつ、運動要素を備えるマイクロボットを含み、マイクロボット内またはマイクロボット上に搭載されペイロードとして搬送されるように構成された医薬製剤を含む治療用カーゴを搬送する、治療薬送達システムを提供する。医薬製剤は、治療上有効な用量の医薬品を含有し、かつ、マイクロボット内またはマイクロボット上に搭載可能な寸法を有する錠剤を含む。
【0054】
一態様では、本開示は、マイクロボット上に搭載されカーゴとして機能するように構成された錠剤を製造する方法であって、治療上有効な用量の医薬品を含有する混合物を含むプレミックスを調製するステップと、プレミックスをマイクロボット上またはマイクロボット内に搭載可能な寸法を有する錠剤に成形するステップと、を含む、方法を提供する。
【0055】
製造方法の一実施形態では、錠剤の成形は、湿式造粒、乾式造粒、または溶融押出によって達成され得る。製造方法の一実施形態では、医薬品は、小分子薬物、ペプチド、ペプトイド、細胞、生物学的薬物、またはそれらの任意の組み合わせであり得る。製造方法の一実施形態では、医薬品は、生物学的薬物であり得る。製造方法の一実施形態では、生物学的薬物は、ヒドロゲルマトリックス中に懸濁され得る。製造方法の一実施形態では、生物学的薬物は、等張凍結乾燥ポリプレックス中に懸濁され得る。製造方法の一実施形態では、等張凍結乾燥ポリプレックスは、ポリ-L-リジン、ホスホリルコリン修飾ポリエチレンイミン、及びPEG化ポリエチレンイミンからなる群から選択され得る。
【0056】
製造方法の一実施形態では、ヒドロゲルマトリックスは、これに限定しないが、アルキン-アジド、マイケル付加、ホモシステイン-ノルボルネン交差共役として例示される「クリック」化学に基づいてもよい。製造方法の一実施形態では、医薬品は、放射線増感剤であり得る。製造方法の一実施形態では、医薬品は、ドキソルビシン、トポテカン、及びテモゾロマイドからなる群から選択され得る。
【0057】
製造方法の一実施形態では、医薬品は、錠剤1錠あたり約1μg~約1000μgの凝集質量を有し得る。本開示の医薬製剤は、錠剤1錠あたり約1、2、3、4、5、10、15、20、50、100、200、300、400、500、600、700、800、900、1000、または、最大で3000μgの凝集質量を有し得る。一実施形態では、医薬品は、錠剤1錠あたり約3μgから最大で25μgの凝集質量を有し得る。
【0058】
製造方法の一実施形態では、錠剤は、マイクロボット内に搭載されるように構成され得る。製造方法の一実施形態では、錠剤は、実質的に円柱形または実質的に楕円形(回転楕円体)の形状を有し得る。製造方法の一実施形態では、錠剤は、楕円形、実質的に楕円形、または半球状の形状を有し得る。製造方法の一実施形態では、錠剤は、約2mmの長さ/長軸寸法、及び、約1mmの直径/短軸寸法を有し得る。製造方法の一実施形態では、錠剤は、約1mmの長さ/長軸寸法、及び、約0.85mmの直径/短軸寸法を有し得る。長さ/長軸寸法は、50nm、55nm、60nm、70nm、80nm、90nm、100nm、150nm、200nm、300nm、400nm、500nm、750nm、1000nm(1μm)、1.1μm、1.2μm、1.3μm、1.4μm、1.5μm、1.6μm、1.7μm、1.8μm、1.9μm、2.0μm、5.0μm、10μm、15μm、20μm、25μm、30μm、40μm、50μm、75μm、100μm、200μm、300μm、400μm、500μm、600μm、700μm、800μm、850μm、900μm、1000μm(1mm)、1.1mm、1.2mm、1.3mm、1.4mm、1.5mm、1.6mm、1.7mm、1.8mm、1.9mm、2.0mm、2.5mm、3.0mm、3.5mm、4.0mm、5.0mm、6.0mm、7.0mm、8.0mm、9.0mm、または、10.0mm(1cm)であり得る。幅/直径/短軸寸法は、50nm、55nm、60nm、70nm、80nm、90nm、100nm、150nm、200nm、300nm、400nm、500nm、750nm、1000nm(1μm)、1.1μm、1.2μm、1.3μm、1.4μm、1.5μm、1.6μm、1.7μm、1.8μm、1.9μm、2.0μm、5.0μm、10μm、15μm、20μm、25μm、30μm、40μm、50μm、75μm、100μm、200μm、300μm、400μm、500μm、600μm、700μm、800μm、850μm、900μm、1000μm(1mm)、1.1mm、1.2mm、1.3mm、1.4mm、1.5mm、1.6mm、1.7mm、1.8mm、1.9mm、2.0mm、2.5mm、3.0mm、3.5mm、4.0mm、5.0mm、6.0mm、7.0mm、8.0mm、9.0mm、または、10.0mm(1cm)であり得る。
【0059】
製造方法の一実施形態では、錠剤は、少なくとも1つの薬学的に許容される結合剤、担体、及び/または賦形剤をさらに含み得る。製造方法の一実施形態では、少なくとも1つの薬学的に許容される結合剤、担体、及び/または賦形剤は、ポリビニルピロリドン、デキストリンまたはデキストリン誘導体、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、乳酸とグリコール酸との混合ポリマー(PLGA)、含水ラクトース、ポリビニルアルコール、水、ヒュームドシリカ、ステアリン酸マグネシウム、ヒアルロン酸、アガロース、コラーゲン、キトサン、トレハロース、スクロース、ラクトスクロース、デキストラン、ヒドロキシプロイルベタデックス、及び、ポビドンからなる群から選択され得る。製造方法の一実施形態では、錠剤は、薬学的に許容されるコーティング材料をさらに含み得る。
【0060】
製造方法の一実施形態では、製造方法の一実施形態では、錠剤は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれるステージ6ハーモナイゼーションモノグラフ(2011年12月1日)(www.usp.org/sites/default/files/usp/document/harmonization/gen-method/q0304_stage_6_monograph_25_feb_201l.pdf)に規定されるUSP905の一貫した均一性要件に適合し得る。
【0061】
一態様では、本開示は、マイクロボット内またはマイクロボット上に搭載されペイロードとして搬送されるように構成された錠剤を製造する方法であって、(1)約90部のドキソルビシン、約450部の含水ラクトース、約60部のポリビニルアルコール、約35部の精製水、約6部のヒュームドシリカ、及び約6部のステアリン酸マグネシウムからなるプレミックスを調製するステップと、(2)プレミックスを約16時間にわたって約50℃に昇温するステップと、(3)プレミックスを30メッシュの標準スクリーンに通すステップと、(4)プレミックスをプレス成形して錠剤を形成するステップと、を含む、方法を提供する。
【0062】
別の態様では、本開示は、マイクロボット内またはマイクロボット上に搭載されペイロードとして搬送されるように構成された錠剤を製造する方法であって、(1)約444部のドキソルビシン、約545部の含水ラクトース、及び約10部のステアリン酸マグネシウムからなるプレミックスを調製するステップと、(2)プレミックスを乾式混合するステップと、(3)プレミックスを、長さ約1mm及び平均直径約0.85mmの楕円形の錠剤をプレス成形するように構成された錠剤プレス機に投入するステップと、を含む、方法を提供する。
【0063】
さらに別の態様では、本開示は、少なくとも1つの生物学的または細胞ベース治療薬を保持し、マイクロボット内またはマイクロボット上に搭載されペイロードとして搬送されるように構成されたカーゴを製造する方法であって、(1)少なくとも1つの生物学的または細胞ベース治療薬を、NorHAを含むヒドロゲルマトリックス中に懸濁させるステップと、(2)カーゴを、マイクロボット上またはマイクロボット内に搭載可能な寸法に成形するステップと、を含む、方法を提供する。
【国際調査報告】