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特表2024-524211異常な灌流パターンを特定するためのシステムおよび方法。
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-05
(54)【発明の名称】異常な灌流パターンを特定するためのシステムおよび方法。
(51)【国際特許分類】
   A61B 10/00 20060101AFI20240628BHJP
   A61B 34/10 20160101ALI20240628BHJP
【FI】
A61B10/00 E
A61B34/10
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023578913
(86)(22)【出願日】2022-06-24
(85)【翻訳文提出日】2023-12-21
(86)【国際出願番号】 EP2022067381
(87)【国際公開番号】W WO2022269051
(87)【国際公開日】2022-12-29
(31)【優先権主張番号】21181561.8
(32)【優先日】2021-06-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520492248
【氏名又は名称】パーフュージョン テック アーペーエス
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ホルスト アーガード マドセン, マッツ
(72)【発明者】
【氏名】アスプ ヴォンシル ルンド, モーテン
(72)【発明者】
【氏名】ベーレントセン, エリック
(57)【要約】
本開示は、被験体において、異常な灌流パターンを特定するためのシステムおよび方法を提供することによって、上述の需要および難題を解決する。これは、正常組織および異常組織が、例えば、蛍光画像化剤の一連のボーラスの形態において振動している入力シグナルに対して異なる影響を有する(これは、蛍光出力シグナルのパターンが組織の状態に基づいて変化することを意味する)ということを本発明者らが気づいたことから達成される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
医学的手順の間に被験体の組織中で異常な灌流パターンを有する1またはこれより多くの領域を検出するためのコンピューター実行方法であって、前記方法は、
-前記組織の蛍光画像を連続して獲得する工程であって、ここで前記蛍光画像は、少なくとも1種の蛍光画像化剤の一連のボーラスによって定義される入力シグナルと相関した蛍光出力シグナルと関連し、ここで前記一連のボーラスは、引き続くボーラス間で予め規定および/または制御された継続時間で投与される、工程、
-前記蛍光画像を分析する工程、
-少なくとも強度ドメインにおいておよび/または時間ドメインにおいて、正常な灌流パターンを得る、定義するおよび/または決定する工程、ならびに
-正常な灌流パターンを有する組織領域において、前記被験体の身体によって前記少なくとも1種の蛍光画像化剤に課されるフィルターである少なくとも第1の身体カーネルを得る工程、および/または
-異常な灌流パターンを有する組織領域において、前記被験体の身体によって前記少なくとも1種の蛍光画像化剤に課されるフィルターである少なくとも第2の身体カーネルを得る工程、
その結果、前記少なくとも第1の身体カーネルおよび/または前記少なくとも第2の身体カーネルが、前記入力シグナルと前記蛍光出力シグナルとの間で少なくとも1つの伝達関数になる、工程、
-前記少なくとも第1の身体カーネルおよび/または前記少なくとも第2の身体カーネルに基づいて、前記蛍光画像において、異常な灌流パターンを有する、可能性のある組織領域を検出する工程、
を包含する、方法。
【請求項2】
前記引き続くボーラス間の継続時間は、少なくとも2分、または3分、好ましくは少なくとも5分の期間にわたって、5秒~5分の間、可能であれば10分までであり、前記入力シグナルは、蛍光画像化剤の容積 対 時間に関して定義される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
正常な灌流を有する少なくとも1つの組織領域を特定する工程およびそこから前記正常な灌流パターンを決定する工程を包含する、前述の請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項4】
少なくとも時間ドメインにおいて、正常な灌流パターンを自動的に検出および定義する工程を包含する、前述の請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記蛍光画像において、好ましくは連続的に血管を特定し、その結果、特定した血管を、組織中での正常なおよび異常な灌流パターンの評価から排除する工程を包含する、前述の請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
正常な灌流を有する少なくとも1つの組織領域は、手動で、例えば、外科医が、組織領域が正常な灌流を有すると選択することによって特定される、前述の請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記画像獲得以外の手段によって経皮的様式で、前記蛍光出力シグナルの強度 対 時間を連続して測定する工程を包含し、ここで前記経皮的に測定された強度 対 時間は、正常な灌流パターンを定義するために使用される、前述の請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
身体カーネルは、少なくとも1つの組織領域に相当する前記蛍光画像において少なくとも1つの目的の領域(ROI)を選択し、前記ROIを前記入力シグナルに対してデコンボリューションして、前記ROIの身体カーネルを決定することによって得られ、その結果、前記身体カーネルでの前記入力シグナルのコンボリューションは、前記組織領域からの前記蛍光出力シグナルに相当する、前述の請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
前記入力シグナルおよび前記身体カーネルに基づいて少なくとも1つの予測出力シグナルを計算する工程を包含する、前述の請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
異常な灌流パターンを有する組織領域は、前記組織領域の前記蛍光出力シグナルと前記組織領域の前記予測出力シグナルとを比較することによって検出される、前述の請求項9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
複数のラベル付けされた身体カーネルを利用することによって、異常な灌流パターンを有すると検出される組織領域を分類する工程を包含する、前述の請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
異常な灌流パターンを有する組織領域は、身体カーネルを比較することによって、例えば、前記第1の身体カーネルおよび前記第2の身体カーネルを比較することによって、検出される、前述の請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
異常な灌流パターンを有する組織領域は、前記少なくとも1つの第2の身体カーネルと、1またはこれより多くのラベル付けされた身体カーネルとを比較することによって検出および/または分類される、前述の請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
前記蛍光画像において複数の目的の領域(ROI)を分析する工程を包含し、前記ROIは、異なる組織領域にわたって分布しており、そして複数のこれらのROIの前記蛍光出力シグナルが実質的に類似であるおよび/または複数のこれらのROIの関連の身体カーネルが実質的に類似である場合、これらのROIのうちの1またはこれより多くが、正常な灌流パターンを有すると定義される、前述の請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
前記少なくとも1種の蛍光画像化剤は、インドシアニングリーン(ICG)、インフラシアニングリーン(IfCG)、ブリリアントブルーグリーン(BBG)、およびブロモフェノールブルー(BPB)、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、フィコエリトリン、フィコシアニン、アロフィコシアニン、オルトフタルアルデヒド、フルオレスカミン、ローズベンガル、トリパンブルー、フルオロゴールド、緑色蛍光タンパク質、フラビン、メチレンブルー、ポルフィソム、シアニン色素、IRDDye800CW、標的化リガンドと組み合わせたCLR 1502、標的化リガンドと組み合わせたOTL38、またはこれらの組み合わせの群より選択される、前述の請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
前記蛍光剤は、ICGであり、ここで予め規定されたボーラス中のICGの量は、体重1kgあたり0.005mg未満であり、ボーラスは、5秒~5分の間の間隔で注射される、前述の請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
前記少なくとも第1の身体カーネルおよび/または前記少なくとも第2の身体カーネルに基づいて、正常な灌流パターンを有するとして検出される前記組織領域のうちの1またはこれより多くは、筋組織、体脂肪、靱帯組織、静脈、または動脈として分類され、ここで前記分類は、前記少なくとも1つの第1の身体カーネルがラベル付けされていることに基づく、前述の請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項18】
前記少なくとも第1の身体カーネルおよび/または前記少なくとも第2の身体カーネルに基づいて、異常な灌流パターンを有するとして検出される前記組織領域のうちの1またはこれより多くは、がん組織、腺組織、腫瘍組織、炎症組織、または虚血組織として分類され、ここで前記分類は、前記少なくとも1つの第2の身体カーネルがラベル付けされていることに基づく、前述の請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項19】
被験体において組織の灌流関連身体カーネルを決定するためのコンピューター実行方法であって、前記身体カーネルは、前記被験体の身体によって蛍光画像化剤に課されるフィルターとして定義され、前記方法は、
-前記組織の蛍光画像を連続して獲得する工程であって、ここで前記蛍光画像は、前記蛍光画像化剤の一連のボーラスによって定義される入力シグナルと相関した蛍光出力シグナルと関連し、ここで前記一連のボーラスは、引き続くボーラス間で予め規定および/または制御された継続時間で投与される、工程、
-少なくとも1つの目的の領域(ROI)を組織領域に相当する前記蛍光画像の中で選択する工程、および
-前記ROIを前記入力シグナルに対してデコンボリューションして、前記ROIの身体カーネルを決定する工程であって、その結果、前記身体カーネルでの前記入力シグナルのコンボリューションは、前記組織領域からの前記蛍光出力シグナルに相当し、前記身体カーネルは、前記入力シグナルと前記蛍光出力シグナルとの間の伝達関数になる、工程、
を包含する、方法。
【請求項20】
前記身体カーネルは、正常な灌流パターンを有する組織領域において、前記被験体の身体によって蛍光画像化剤に課されるフィルターであるか、または前記身体カーネルは、異常な灌流パターンを有する組織領域において、前記被験体の身体によって蛍光画像化剤に課されるフィルターである、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
コンピューティングデバイスまたはコンピューティングシステムによって実行される場合、前記コンピューティングデバイスまたはコンピューティングシステムに前述の請求項のいずれかに記載の方法を実行させる指示を有するコンピュータープログラム。
【請求項22】
被験体において組織の灌流関連身体カーネルを決定するためのシステムであって、前記身体カーネルは、前記被験体の身体によって蛍光画像化剤に課されるフィルターとして定義され、前記システムは、
-前記組織の蛍光画像を連続して獲得する工程であって、ここで前記蛍光画像は、前記蛍光画像化剤の一連のボーラスによって定義される入力シグナルと相関した蛍光出力シグナルと関連し、ここで前記一連のボーラスは、引き続くボーラス間で予め規定および/または制御された継続時間で投与される、工程、
-組織領域に相当する前記蛍光画像の中で少なくとも1つの目的の領域(ROI)を選択する工程、および
-前記ROIを前記入力シグナルに対してデコンボリューションして、前記ROIの身体カーネルを決定する工程であって、その結果、前記身体カーネルでの前記入力シグナルのコンボリューションは、前記組織領域からの前記蛍光出力シグナルに相当し、前記身体カーネルは、前記入力シグナルと前記蛍光出力シグナルとの間の伝達関数になる、工程、
のために構成されている、システム。
【請求項23】
前記身体カーネルは、正常な灌流パターンを有する組織領域において、前記被験体の身体によって蛍光画像化剤に課されるフィルターであるか、または前記身体カーネルは、異常な灌流パターンを有する組織領域において、前記被験体の身体によって蛍光画像化剤に課されるフィルターである、請求項22に記載のシステム。
【請求項24】
例えば、医学的手順の間に、被験体の組織において異常な灌流パターンを特定するためのシステムであって、前記システムは、少なくとも1種の第1の蛍光画像化剤を保持するための制御可能な注射ポンプであって、前記注射ポンプは、前記第1の蛍光画像化剤の一連の予め規定されたボーラスを前記被験体の静脈に注射し、それによって入力シグナルを生成するように構成されている制御可能な注射ポンプを含み、
前記システムは、
-前記組織の蛍光画像を連続して獲得する工程であって、ここで前記蛍光画像は、前記少なくとも1種の蛍光画像化剤の一連のボーラスによって定義される前記入力シグナルと相関した蛍光出力シグナルと関連し、ここで前記一連のボーラスは、引き続くボーラス間で規定され、制御された継続時間で投与される、工程、
-前記蛍光画像を分析する工程、
-少なくとも時間ドメインにおいて、正常な灌流パターンを自動的に決定する工程、および
-前記蛍光画像において、異常な灌流パターンを有する、可能性のある組織領域を検出する工程、
のために構成されているシステム。
【請求項25】
前記少なくとも1種の蛍光画像化剤は、インドシアニングリーン(ICG)、インフラシアニングリーン(IfCG)、ブリリアントブルーグリーン(BBG)、およびブロモフェノールブルー(BPB)、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、フィコエリトリン、フィコシアニン、アロフィコシアニン、オルトフタルアルデヒド、フルオレスカミン、ローズベンガル、トリパンブルー、フルオロゴールド、緑色蛍光タンパク質、フラビン、メチレンブルー、ポルフィソム、シアニン色素、IRDDye800CW、標的化リガンドと組み合わせたCLR 1502、標的化リガンドと組み合わせたOTL38、またはこれらの組み合わせの群から選択される、請求項24に記載のシステム。
【請求項26】
前記蛍光剤は、ICGであり、ここで予め規定されたボーラス中のICGの量は、体重1kgあたり0.005mg未満であり、前記システムは、5秒~5分の間の間隔でボーラスを注射するように構成される、前述の請求項24~25のいずれかに記載のシステム。
【請求項27】
前述の請求項1~18のいずれかの工程を実行するように構成されている、前述の請求項24~25のいずれかに記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、蛍光画像化によって、組織中で異常な灌流パターンを連続的に検出し、必要に応じて分類するためのシステムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
外科医は、彼らの臨床上の意思決定を補助するために、ビデオ補助手術中に蛍光画像化をますます使用している。今日、蛍光ガイド手術はしばしば、光学的造影剤(optical contrast agent)、例えば、インドシアニングリーン(ICG)の比較的大きなボーラスを、末梢静脈へと投与し、組織中での分布を待ち、次いで、その組織を視覚的に検査して、低シグナル強度または高シグナル強度のいずれかを有する領域を特定する工程を包含する。低シグナル強度またはシグナル強度なしは、低減した組織血液灌流(すなわち、虚血)に相当するのに対して、高シグナル強度は、正常な組織血液灌流に相当する。一般に、患者が目的の組織中で正常な血液灌流を有するか否かを知ることは、重要である。特に、これは、異常な血液灌流が例えば、がん組織または炎症組織の徴候であり得ることから重要である。
【0003】
現在、人の眼には正常組織から通常は識別できない例えば、がん組織または炎症組織を、例えば、手術手順の間に直接検出し得るように、異常な灌流パターンを有する領域を客観的にかつ信頼性をもって検出および/または特定することができるシステムおよび方法が必要である。
【0004】
別の既存の方法は、造影剤が投与される間に、選択した目的の領域を視覚的に評価することによって組織灌流を評価することである。蛍光の流入および流出を観察することによって、組織灌流についての情報が推論され得る。シグナル強度における流入関連の増大は数秒しかかからないことから、流入速度と画像にわたる種々の領域におけるタイミングとの間を識別すること、外科医単独の視覚的評価に依拠することは、ほぼ不可能である。よって、このアプローチの限界は、灌流が「十分」か「不十分か」に関して特徴づけられるに過ぎない、すなわち、それは定量的評価ではないことである。従って、組織灌流を、例えば、蛍光の流入および流出のダイナミクスに基づいて客観的に定量することができるシステムおよび方法を開発することは重要である。
【0005】
全ての既存の動的適用に共通する大きな制限は、1つの規定の領域がICG評価ごとに可視化され得るに過ぎないこと、および大用量によって、測定間でかなりのウォッシュアウト期間がなければ、多数のこのような測定を行うことが実行不可能になることである。実際には、このことは、既存のICG蛍光使用が、特定の規定の目的の解剖学的構造からの情報を集めることに限定されることを意味する。
【0006】
難題は、異常な組織、例えば、がん組織および炎症組織が、人の眼には正常組織から滅多に識別がつかないことである。結論として、外科医は、がん/炎症の完全な範囲をしばしば見落とし、患者の転帰の増悪、ならびにおそらくは疾患進行および再手術に至る。これについての別の結論は、医療スタッフおよび病院サービスに関連するコストの増大である。現在の方法に伴う別のリスクは、外科医が多くの組織を除去しすぎることである。なぜなら外科医は現在、健常組織と非健常組織との間の境界を特定するためのリアルタイムツールを持っていないからである。従って,外科医は、患者においてがん組織および炎症組織を、好ましくは連続的にかつリアルタイムで検出および特定し得るツールを必要としている。これは、より安全でかつより迅速な組織切開を可能にし、手術時間を実質的に減少させる可能性を有する。
【0007】
よって、低灌流および血管の解剖学的構造を特定し得るのみならず、患者の組織(例えば、がん組織および炎症組織)における異常な灌流パターンを検出および特定し得るシステムおよび方法が必要である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
発明の要旨
本開示は、被験体において、異常な灌流パターンを特定するためのシステムおよび方法を提供することによって、上述の需要および難題を解決する。これは、正常組織および異常組織が、例えば、蛍光画像化剤の一連のボーラスの形態において振動している入力シグナルに対して異なる影響を有する(これは、蛍光出力シグナルのパターンが組織の状態に基づいて変化することを意味する)ということを本発明者らが気づいたことから達成される。言い換えると、組織は、入力シグナルをひずませるフィルターとして理解され得、本開示の方法は、入力シグナルがどのようにひずんでいるかに基づいてこのフィルターに関する情報を導出し得る。
【0009】
本発明者らは、少なくとも1種の蛍光剤の時間を隔てたマイクロボーラスの自動化投与に基づいて、連続灌流モニタリングを可能にする蛍光画像化のための新規な投与レジメンを以前に開発した。このアプローチは、所定のパターンを伴って時間単位で振動している灌流している組織からの蛍光シグナルを作り出す。このことは、外科医が白色光の中で手術している間にバックグラウンドにおいて組織灌流を追跡および登録する能力を促進し、任意の所与の時間でカメラの焦点の中の解剖学的構造における組織灌流のあらゆる逸脱を外科医に警告する。これは、PCT/EP2019/065648(WO 2019/238912 A1として公開)(これはその全体において本明細書に参考として援用される)として係属中の発明の名称「System and method for automatic perfusion measurement」というPCT出願においてさらに記載される。
【0010】
さらに、本発明者らは、被験体の組織中の血管を特定するための新規な方法を以前に開発した。この方法は、PCT/EP2020/087507(これはその全体において本明細書に参考として援用される)として係属中の発明の名称「Fluorescent anatomical mapping」というPCT出願に記載される。この方法は、動脈における振動している蛍光シグナルの、静脈に対する位相シフトの検出を利用して、器官または結合組織(脂肪を含む)における表層組織の血管マップを作り出す。蛍光シグナルから生成される血管マップは、バックグラウンドにおいて実行され得、外科医の要請時に、白色光画像上に、例えば、拡張現実として重ね合わせられ得る。
【0011】
よって、特定された血管は、例えば、組織切開前および組織切開中に医療関係者に可視化およびマッピングされ得る。主な利点は、自動化されかつ連続した血管の特定が、外科医が通常の白色光カメラ画像を見て作業している間に、バックグラウンドで実行され得ることである。マイクロボーラス手順は、手術の開始時に開始され得、バックグラウンドで実行され得、蛍光シグナルを測定しかつ受容し、マイクロボーラスレジメンの間隔および投与を制御するコンピューターシステムによってモニターされ得る。すると、外科医は、手術中のいかなる時にも、目的の領域中の血管を示すコンピューターが生成した「血管ビュー」にシフトし得る。有利なことには、その連続して特定した血管は、リアルタイムで白色光画像へと重ね合わせられ得、その結果、他に隠された血管が、拡張現実物体として白色光画像の中にリアルタイムで出現する。
【0012】
本発明者らは、多くの小さなボーラスを用いて制御された入力シグナルから生成される患者からの種々の蛍光シグナルを伴う新規な投与レジメンを、異常な灌流パターンを有する組織領域(例えば、がん組織および炎症組織)を検出するために使用し得ることをここで気づいた。これは、とりわけ、少なくとも1種の蛍光画像化剤(例えば、ICG)の多数の小用量(「マイクロボーラス」)を含む種々の入力シグナルの使用に起因する可能性がある。それはまた、患者から得られた蛍光出力シグナルを分析する新規な方法に起因して、および/または患者の組織から得られた蛍光画像を分析することによって可能である。本開示の方法は、各患者の特定の「正常」組織の事前の知見の生成を可能にし、さらに、異常に灌流している組織(例えば、がん組織および炎症組織)の特徴的な流入および流出パターンをと特定するためにこの知見を使用することを可能にする。本開示のシステムおよび方法は、次いで、この組織に「異常に灌流している」としてフラグを立て得、それによって、その組織を外科医に認識させ、最終的には、外科医が十分な情報を得た上でどのように進めるかを決定し得る。
【0013】
本開示の1つの実施形態は、例えば、医学的手順の間に、被験体の組織において異常な灌流パターンを有する1またはこれより多くの領域を検出(および/または特定)するためのコンピューター実行方法であって、上記方法は、上記組織の蛍光画像を、好ましくは連続して獲得する工程を包含する方法に関する。上記蛍光画像は、好ましくは少なくとも1種の蛍光画像化剤の一連のボーラスによって定義される入力シグナルと相関する蛍光出力シグナルと関連する。上記一連のボーラスは、好ましくは、引き続くボーラス間で予め規定および/または制御された継続時間で投与される。上記方法は、上記蛍光画像を分析する工程をさらに包含し得る。正常な灌流パターンを有する少なくとも1つの組織領域は、例えば、手動で、半自動で、および/または自動で特定または選択され得る。正常な灌流パターンが特定され得、その特定は、強度ドメインにおいておよび/または時間ドメインにおいて提供され得る。正常な灌流パターンがいったん決定されると、異常な(正常でない)灌流パターンを有する、可能性のある組織領域が、上記蛍光画像の中で検出され得、それによって、異常に灌流している組織が、患者において検出され得る。
【0014】
正常なおよび/または異常な灌流を有する組織領域を検出、特定および/または分類する1つの方法は、本明細書で記載されるとおりの身体カーネル(body kernel)という概念を利用することである。好ましくは、少なくとも第1の身体カーネルが得られ、ここで上記少なくとも第1の身体カーネルは、正常な灌流パターンを有する組織領域において、上記被験体の身体によって上記少なくとも1種の蛍光画像化剤に課されるフィルターである、および/または少なくとも第2の身体カーネルが得られ、ここで少なくとも第2の身体カーネルは、異常な灌流パターンを有する組織領域において、上記被験体の身体によって上記少なくとも1種の蛍光画像化剤に課されるフィルターである。その点において、上記少なくとも第1の身体カーネルおよび/または上記少なくとも第2の身体カーネルは、上記入力シグナルと上記蛍光出力シグナルとの間で少なくとも1つの伝達関数として理解され得る。
【0015】
別の実施形態は、被験体の組織の灌流関連身体カーネルを決定するためのコンピューター実行方法であって、上記身体カーネルは、上記被験体の身体によって(特定の)蛍光画像化剤に課されるフィルターとして定義され、上記方法は、上記組織の蛍光画像を連続して獲得する工程であって、ここで上記蛍光画像は、上記蛍光画像化剤の一連のボーラスによって定義される入力シグナルと相関した蛍光出力シグナルと関連し、ここで上記一連のボーラスは、引き続くボーラス間で予め規定および/または制御された継続時間で投与される工程を包含する方法に関する。少なくとも1つの目的の領域(ROI)は、組織領域に相当する上記蛍光画像の中で選択され得る。次いで、上記ROIの身体カーネルは、上記ROIを上記入力シグナルに対してデコンボリューションすることによって決定され得、すなわち、その結果、上記身体カーネルでの上記入力シグナルのコンボリューションは、上記組織領域からの蛍光出力シグナルに相当する。この組織領域が正常な灌流ダイナミクスを有する場合、他の組織領域、例えば、隣接する/近傍の(proximitized)組織領域に関する予測出力シグナルは、次いで、制御されたかつ既知の入力シグナルを上記身体カーネルで連続してコンボリューションすることによって、連続して計算され得る。次いで、異常な灌流ダイナミクスを有する組織領域は、好ましくはリアルタイムで連続して検出および/またはモニターされ得る。なぜなら上記蛍光出力シグナルと上記予測出力シグナルとの間の比較は、適切な身体カーネルが提供される限りにおいて、分析される蛍光画像の中の実質的にあらゆる組織領域のために提供され得るからである。そしてこのような比較は、上記蛍光出力シグナルと上記予測出力シグナルとの間の差異をほぼ直ぐに明らかにし得 - そして任意の差異は、異常な灌流パターンの指標を提供する。本開示のアプローチの主な利点は、これが医学的手順の間にバックグラウンドにおいてリアルタイムで実行され得る体系的方法論を提供し、獲得した蛍光画像を連続して分析し、異常な灌流パターンを自動的に検出し、それによって、異常に灌流している組織領域を同様に検出することであり、それは、例えば、拡張現実によってディスプレイ上に適切な医療関係者に示され得る。獲得した蛍光画像の中で異常な灌流パターンを検出するために必要とされる全ては、既知の(振動している)入力シグナルおよび正常な灌流パターンと関連する少なくとも1つの関連する身体カーネルである。そしてこのような関連する身体カーネルはまた、上記手順の間に、例えば、初期工程として自動的に決定され得る。
【0016】
さらに別の実施形態は、被験体の時間ドメイン灌流参照を確立するためのコンピューター実行方法であって、上記方法は、上記蛍光画像化剤の一連のボーラスによって定義される入力シグナルと相関した蛍光出力シグナルを連続して測定する工程であって、ここで上記一連のボーラスは、引き続くボーラス間で予め規定および/または制御された継続時間で投与される、工程、および上記被験体特異的時間ドメイン灌流参照を蛍光出力シグナル 対 時間として定義する工程を包含する方法に関する。上記被験体特異的時間ドメイン灌流参照はまた、ボーラス注射と相当するピーク蛍光出力シグナルとの間の時間差として定義され得る。上記被験体特異的時間ドメイン灌流参照は、より簡潔な機構で、例えば、フォトダイオードベースのフィンガークリップで、すなわち、画像獲得することなしに決定され得、例えば、正常な灌流パターンを定義および/または特定するための時間参照(clock reference)として機能し得る。
【0017】
開示される方法のうちのいずれかは、上記蛍光画像の中で血管を特定する工程をさらに包含し得る。この開示の文脈において、血管における灌流は、正常な灌流パターンの一例ではない。なぜなら血管は、「組織」ではないからである。しかし、血管が正常な灌流パターンの例として選択されないように、血管がどこに位置するかを特定することの利点はなお存在し得る。例えば、医学的手順の間に、被験体の組織において血管を特定するためのシステムおよび方法は、同一出願人によるPCT/EP2020/087507においてさらに説明される。
【0018】
本開示のさらなる局面は、例えば、医学的手順の間に、被験体の組織において異常な灌流パターンを特定するためのシステムであって、上記システムは、
-上記組織の蛍光画像を連続して獲得する工程であって、ここで上記蛍光画像は、少なくとも1種の蛍光画像化剤の一連のボーラスによって定義される入力シグナルと相関した蛍光出力シグナルと関連し、ここで上記一連のボーラスは、引き続くボーラス間で予め規定および/または制御された継続時間で投与される、工程、
-上記蛍光画像を分析する工程、
-上記蛍光画像の中で、正常な灌流を有する少なくとも1つの組織領域を、上記分析に基づいて特定する工程、
-正常な灌流パターンを、強度ドメインにおいておよび時間ドメインにおいて定義する工程、ならびに
-上記蛍光画像の中で、異常な(正常でない)灌流パターンを有する、可能性のある組織領域を検出する工程、
のために構成されているシステムにさらに関する。
【0019】
本開示のシステムは、好ましくは、本明細書で開示される方法を行うように構成される。これは、少なくとも1つのプロセッサーおよび指示が保存されたメモリを有するシステムによって提供され得、指示は、1またはこれより多くのプロセッサーによって実行される場合、上記システムに本開示の方法のうちのいずれかを行わせる。
【0020】
本開示のシステムおよび方法は、手術中に、任意の器官でおよび任意の適応症のために、特に、血管の構造および解剖学的構造が重要であり得る場合には、外科医にとって大いに有用であり得る。同一出願人による係属中の出願PCT/EP2020/087507は、外科医が、画像の中で隠れている血管を別の方法で見ることができるように、どのようにして血管マップがリアルタイムで生成され得、白色光画像上に重ね合わせられ得るかを記載した。
【0021】
本開示は、例えば、正常組織から他の方法では識別できない炎症組織が、例えば、手術手順の間に直接的に検出され得るように、異常な灌流パターンを有する領域の特定を可能にする新たな機能性を提供することによって、このアプローチの上に構築される。
【0022】
手術手順内で使用される本開示のアプローチは、外科手術における意思決定のサポートとして理解され得る。しかし、本開示のアプローチの使用は、手術手順の間に使用することに限定されない。本開示のアプローチはまた、有利なことには、手術前もしくは手術後に、または全く手術を受けていない患者における創傷治癒、血管の解剖学的構造および灌流パターンのモニタリングのためにすら、血管の構造、灌流マップおよび解剖学的構造に関する情報を提供するために適用され得る。このような場合に、本開示のアプローチは、CTスキャンとして同じように、身体検査ツールとして理解され得る。
【0023】
光学的造影剤がICGである種々の例が、本明細書で提供される。しかし、本開示のアプローチは、ICGに限定されない。なぜなら造影剤が使用され得る場合、多くのタイプが、さらには数種の異なる造影剤が同時に使用され得るからであり、本開示の身体カーネル原理は、概して、造影剤を使用する蛍光画像化に適用されるからである。適用可能なICG投与の種々の例は、本明細書中に列挙される。他の造影剤に関しては、同じ用量が適用されることもあり、そうでない場合には、他の造影剤、特に、本明細書中で列挙した造影剤に関して、関連する用量を評価することは難題ではない。蛍光シグナルが検出され得るように、いくつかのボーラスが数秒または数分の時間間隔で注射され得るように、蛍光出力シグナルの基礎を形成する予め規定された振動している入力シグナルが生成されるように、1またはこれより多くの身体カーネルが決定され得るように、十分小さい用量を選択することが問題である。
【0024】
本開示はさらに、コンピューティングデバイスまたはコンピューティングシステムによって実行される場合、上記コンピューティングデバイスまたはコンピューティングシステムに本明細書で開示される方法のうちのいずれかを実行させる指示を有するコンピュータープログラムに関する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1図1Aは、ICGのボーラスが被験体に提供された後の強度曲線の例を示し、図1Bは、血行動態パラメーターである灌流傾き、傾き開始、傾き終了、最高強度、ウォッシュアウト傾き、ウォッシュアウト開始およびウォッシュアウト傾き終了が計算され、グラフに示される、対応する強度曲線を示す。
【0026】
図2-1】図2Aは、ヒト被験体において虚血の開始に起因して振動が混乱される振動時間強度蛍光曲線を示す。
【0027】
図2Bは、虚血の開始が起こる前のグラフのt=3800秒あたりの時間間隔の拡大を示す。
【0028】
図2-2】図2Cは、虚血状態ありおよびなしの理想化したデータを示す。
【0029】
図2Dは、振動時間強度蛍光曲線の一部のみが検出され得る理想化したデータを示す。
【0030】
図3図3Aは、マイクロボーラスを注射したヒト被験体の連続測定を示す。
【0031】
図3Bは、図3Aに示された間隔の拡大図を示す。
【0032】
図4図4は、血流が部分的にのみ制限されている、静脈閉塞を受けたヒトの測定を示す。
【0033】
図5図5Aは、ヒューマノイド被験体(右前腕)上で実行しているICG分析のスナップショットを示す。その画像を、ICGのマイクロボーラスが単に投与されており、動脈に入り始めている非常に早期の段階で撮る。
【0034】
図5Bは、複数の動脈が特定され得る、図5Aより数秒の後のスナップショットを示す。
【0035】
図6図6Aは、特定のマイクロボーラスICGからの蛍光強度がそのピーク値に達しつつある、図5Bより数秒後のスナップショットを示す。
【0036】
図6Bは、図6Aよりおよそ1分間後のスナップショットを示し、静脈が特定され得るウォッシュアウト位相を図示する。
【0037】
図7図7は、図6Bのエッジフィルタリングしたバージョンを示す。
【0038】
図8図8は、動脈が図5A~6Bに示される画像のシーケンスにおいて特定された画像を示す。
【0039】
図9図9は、静脈が図5A~6Bに示される画像のシーケンスにおいて特定された画像を示す。
【0040】
図10図10は、図8~9に示される動脈および静脈が、赤(動脈)および青(静脈)で視覚的に増強され、それらが容易に識別可能であるように画像が重ね合わせられた画像を示す。
【0041】
図11図11は、身体カーネルが、実測ICGシグナルからどのように推定され得るか、および上記身体カーネルが、上記実測シグナルを推定するためにどのように使用され得るかを図示するために役立つ4つのプロットを示す。この例では、合成データが使用されている。
【0042】
図12図12は、4つのプロットを介して、図11と本質的に同じ視覚的説明を示す。しかし、ここでは、上記入力シグナルは2つのパルスを含み、これらにより、図11の実測シグナルと比較して、その実測シグナルが変化している。
【0043】
図13図13は、実測蛍光出力シグナル(「ICGシグナル」)が予め推定される身体カーネルの知見に基づいてどのように見えるはずかを推測/推定するために、推定身体カーネルをどのように使用するかの一例を示す。
【0044】
図14図14は、図13にいったん示されたものと同じ入力シグナル、身体カーネル、および推定シグナルを示す。しかし、このシナリオでは、上記実測シグナルは、関連した目的の領域から本発明者らが通常予測するものとは異なる。
【0045】
図15-1】図15は、どのように身体カーネルが目的の領域に関して推定され得るか、および次いで、予測ICGシグナルを推定するために使用され得るかの一例を示す。上記実測シグナルは、上記予測シグナルに対して比較され得、それによって異常な灌流パターンが検出され得る。
図15-2】同上。
図15-3】同上。
【0046】
図16図16は、リアルライフデータ、すなわち、ヒトのデータを使用する、本開示の方法の一例を示す。この例では、測定されたデータは被験体の前腕から得られた。
【0047】
図17-1】図17は、3つの周期、PR、P1、およびP2において実測蛍光出力シグナル 対 時間の1つのグラフを示す。ここで身体カーネルは、PRから決定され、P1およびP2における予測出力シグナルを計算するために使用される。P1において、上記予測出力シグナルは、上記実測蛍光出力シグナルに従うのに対して、P2において、虚血に起因して明確な逸脱が存在する。
図17-2】同上。
図17-3】同上。
【発明を実施するための形態】
【0048】
発明の詳細な説明
本明細書で使用されるとおりの入力シグナルは、所定のパターンを作り出すと認められ得るボーラス注射に相当する、少なくとも10分、または少なくとも15分、または少なくとも30分、または少なくとも1時間、または少なくとも2時間の期間にわたって30秒~15分の間、例えば、1~10分の間、または1~2分、2~3分、3~4分、4~5分、5~6分、6~8分、または8~10分の間の周期での予め規定された周波数によって特徴づけられ得る。上記入力シグナルは、上記一連のボーラスが引き続くボーラス間で予め規定および/または制御された継続時間で投与される限りにおいて、固定されたおよび/または一定の周波数を必ずしも有するわけではない。得られる蛍光シグナルは、少なくとも血管および/または正常に灌流している組織に関してこの所定のパターンに従う強度で振動しているとして理解され得る。また本明細書で説明されるように、この所定のパターンは、少なくとも1種の蛍光剤(例えば、インドシアニングリーン(ICG))の一連の小さなボーラスの制御された注射に由来し得る。
【0049】
上記組織の白色光画像はまた、連続して受容されかつ獲得され得る。よって、上記組織の少なくとも1つの白色光画像が、生成され得(ここで例えば、特定された血管、正常に灌流している組織領域、および/または異常に灌流している組織領域は、例えば、その相当する要素を白色光画像へと重ね合わせ、好ましくは、その相当する要素を、例えば、高コントラスト色によって視覚的に増強することによっても視覚的に増強される)、その特定された血管、正常に灌流している組織領域、および/または検出された異常に灌流している組織領域が、拡張現実物体として出現するようにスクリーン上にディスプレイされ得る。
【0050】
術中の蛍光画像化
灌流(例えば、血流)は、術中に画像化され得、手術用マイクロスコープまたはカメラから近赤外光を使用し、トレーサーとして静脈内投与された蛍光性血管造影剤から励起される近赤外線領域の蛍光の動画を獲得して、リアルタイムで評価され得る。術中の灌流の状態は、それによって、リアルタイムで確認され得る。本開示において、組織および/または血管における灌流は、蛍光画像化を利用して血管、正常に灌流している組織および/または異常に灌流している組織を特定するために使用されるが、手術用カメラの術中使用に必ずしも限定されない。
【0051】
本開示のシステムおよび方法は、特に、種々の蛍光画像化剤が使用される場合、表層のおよびより深部の血管、正常に灌流している組織および/または異常に灌流している組織の位置を含む組織特性の増強された情報を提供し得る。なぜなら種々の蛍光画像化剤を注意深く選択すると、組織中の種々の深度から灌流情報を得るという選択肢が提供されるからである。
【0052】
蛍光画像化を伴う医学的手順、例えば、診断、スクリーニング、検査および/または手術手順の間に、蛍光画像化剤(例えば、ICG)を含む溶媒は、静脈内注射され、その分子は、赤外光源(例えば、赤外線波長範囲にある波長(例えば、およそ780nm)を有するレーザー)によって励起される。次いで、およそ830nmの波長を有する蛍光は、励起した画像化剤分子から発せられ、例えば、カメラの形態での画像化デバイスを用いて記録され得る。フィルターは、励起光を遮断するために提供され得る。なぜなら励起強度は代表的には、蛍光強度より遙かに大きいからである。励起強度は、放射角度あたりおよそ1Wであり得るのに対して、画素当たりの蛍光出力(fluorescent power)は、およそ0.15pWであり得る。差異が数桁あるにもかかわらず、良好なシグナル対ノイズ比(SNR)が達成され得る。記録された蛍光は、画像化した組織における灌流の画像を提供し、ICGに関する5~10mmの浸透深度(penetration depth)に起因して、より深部を見ることを可能にする。ICG分子は、血中のタンパク質に結合されることから、ビデオ画像は、灌流のレベルについての情報を含む - しかし、その情報は、その獲得したビデオ画像のみを見る場合には、術中に外科医が定量することは困難であり得る。
【0053】
本開示のシステムおよび方法において、上記蛍光画像化剤は、インドシアニングリーン(ICG)およびフルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、フィコエリトリン、フィコシアニン、アロフィコシアニン、オルトフタルアルデヒド、フルオレスカミン、ローズベンガル、トリパンブルー、フルオロゴールド、緑色蛍光タンパク質、フラビン、メチレンブルー、ポルフィソム(porphysome)、シアニン色素、IRDDye800CW、標的化リガンドと組み合わせたCLR 1502、標的化リガンドと組み合わせたOTL38、またはこれらの組み合わせの群から選択される。
【0054】
インドシアニングリーン(ICG)は、医療診断において使用されるシアニン色素であり、灌流評価に群を抜いて一般駅な色素である。それは、約800nmでピークスペクトル吸収を有する。これらの赤外線周波数は、レチナール層を透過し、ICG血管造影法がフルオレセイン血管造影法より深部の循環パターンを画像化することを可能にする。ICGは、血漿タンパク質と強く結合し、血管系に拘束される。それは、静脈内投与され、肝機能に依存して、肝臓によって、約3~4分間の半減期で身体から胆汁へと排出される。ICGナトリウム塩は、通常粉末形態で入手可能であり、種々の溶媒中に溶解され得る;
5%(バッチに依存して<5%) ヨウ化ナトリウムは、通常、より良好な溶解度を確実にするために添加される。水-ICG溶液の滅菌凍結乾燥物は、ICG-Pulsion、IC-GreenおよびVERDYEの名称の下で静脈内用途の診断剤として多くの欧州諸国および米国において承認されている。
【0055】
ICGの吸収および蛍光スペクトルは、近赤外線領域にある。代表的には、およそ780nmの波長を有するレーザーが、励起のために使用される。この波長では、励起光から散乱した光をフィルターで除去することによって、ICGの蛍光を検出することが可能である。
【0056】
ICGの毒性は、低いと分類されるが、投与は、リスクがないわけではない(例えば、妊娠中)。ICGがUV光の影響の下で毒性の廃棄物質へと分解し、多くのなお未知の物質を作り出すことは、公知である。すなわち、蛍光画像化の間に使用されるICGの用量が、本明細書で示されるように最小化されることは、患者の利益の範囲内である。
【0057】
フルオレセインは、多くの適用のために蛍光トレーサーとして広く使用されている別の色素である。フルオレセインは、494nmの吸収最大および512nmの発光最大(水中)を有する。よって、それは、ICGとの組み合わせでの使用に適切である。なぜならその2種の色素の吸収波長および発光波長は、数百ナノメートル離れているからである。
【0058】
1つの実施形態によれば、上記蛍光画像化剤は、正常でない組織を標的化する分子(例えば、腫瘍標的化分子)に結合され、被験体に術前薬物(pre-surgery drug)として与えられる。次いで、上記腫瘍標的化分子は、上記被験体の内部にある腫瘍組織に結合する。それによって、上記腫瘍組織に固定化される蛍光画像化剤は、腫瘍組織の領域を示す(なぜならこのような領域は、他の領域より明るく光っているからである)。その結果、これらの領域は、画像/ビデオの中でより容易に特定され得る。上記組織は、腫瘍組織である必要はないが、他のタイプの正常でない組織(例えば、炎症組織)であり得る。その重要な局面は、蛍光画像化剤が、正常でない組織を標的化する分子に結合されることである。よって、このアプローチは、正常でない組織の検出を増強するために、本明細書で開示される方法のうちのいずれかと組み合わせて使用され得る。
【0059】
2タイプの分子の組み合わせ
本開示はさらに、異常な灌流パターンを有する1またはこれより多くの領域を検出(および/または特定)するためのコンピューター実行方法であって、ここで少なくとも2種の蛍光画像化剤が、2種の異なる蛍光シグナルを同時に生成するために使用される方法に関する。上記少なくとも2種の蛍光画像化剤は、本明細書中他の箇所で提供される画像化剤のリストから選択され得る。好ましくは、上記少なくとも2種の蛍光画像化剤は、異なるエミッタンス波長を有し、このことは、蛍光画像が組織の少なくとも2つの異なる深度から同時に得られることを可能にする。よって、2種の蛍光画像化剤(異なるエミッタンス波長を有する)を使用することの利点は、階層分析が提供される(ここで画像は、組織の異なる深度から同時に得られ得る)ことである。好ましくは、上記少なくとも2つの異なる深度は、少なくとも0.5cm、好ましくは少なくとも1cm、さらにより好ましくは少なくとも1.5cm分離している。一例として、その2つの深度は、被験体の皮膚レベルから測定される場合、0.5cmおよび2cmであり得る。2種の異なる蛍光画像化剤の使用は、本明細書で開示されるコンピューター実行方法のうちのいずれかに適用され得る。
【0060】
用量レジメン
本開示はさらに、被験体の解剖学的構造の自動的灌流評価のための方法に関し、上記方法は、灌流評価のために使用される通常用量の約1/10のボーラスを静脈に投与する工程を包含する。インドシアニングリーン(ICG)については、その通常のボーラスは、0.1~0.3mg/kg 体重である。本開示によれば、ICGのような第1の蛍光画像化剤の0.01mg/kg 体重未満、好ましくは、0.005mg/kg 体重未満、より好ましくは0.0049mg/kg 体重未満のボーラスが、使用され得、さらにより好ましくは第1の蛍光画像化剤の0.0048mg/kg 体重未満、なおより好ましくは0.0047mg/kg 体重未満、最も好ましくは0.0046mg/kg 体重未満、およびさらにより好ましくは0.004mg/kg 体重未満が使用され得る。本明細書で記載される他の蛍光画像化剤に関しては、上記ボーラスは、本開示に従って同様に低減される。上記で述べられるように、上記薬剤は、制御可能な注射ポンプによって、例えば、引き続くボーラス間で規定される時間で一連のボーラスとして注射され得る。各ボーラスの注射後に、上記解剖学的構造からの蛍光の発光が測定され得る。この方法は、被験体の解剖学的構造の自動的灌流評価のために、特に、ボーラス投与レジメンに関して、組織中の血管を連続して特定するために、本開示の方法と組み合わされ得る。
【0061】
解剖学的構造および/または特定可能な血管の灌流を代表する定量可能な蛍光発光を提供する最小のボーラスは、一連の漸増するボーラスを投与した後に決定され得る。そのボーラスは、徐々に漸増するまたは徐々に漸減する量の薬剤を含んでいてもよく、例えば、その量は、1つのボーラスから引き続くボーラスへと10%の増分で増大または減少してもよい。
【0062】
上記ボーラスは、好ましくは、規定され、かつ規則的な時間間隔の各ボーラスを伴う規則的な一連の注射として提供される。ボーラス間の間隔は、5~600秒の間、例えば、5~300秒の間、例えば、10~180秒の間、例えば、10~140秒の間、例えば、10~90秒の間、例えば、15~80秒の間、例えば、20~70秒の間、例えば、30~60秒の間)であり得る。別の実施形態において、上記ボーラス間の間隔は、5~600秒の間、例えば、10~600秒の間、例えば、15~600秒の間、例えば、15~300秒の間、例えば、30~240秒の間、例えば、45~240秒の間、例えば、90~240秒の間、例えば、90~120秒の間であり得る。好ましくは、60~600秒の間、または120~600秒の間であり得る。ボーラス間の間隔は、好ましくは上記解剖学的構造において各ボーラスに関する1またはこれより多くの灌流関連パラメーター(例えば、灌流傾き、傾き開始、およびウォッシュアウト傾き)の測定/計算を可能にするために十分長い。非常に短い時間間隔で注射されるボーラスに関しては、例えば、傾き開始および/またはウォッシュアウト傾きを評価することのみが可能(および十分)である。
【0063】
ICGに関して、蛍光画像化剤の量は、好ましくは、0.0001~0.001mg/kg 体重/ボーラスの間、例えば、0.001~0.01mg/kg 体重/ボーラスの間、好ましくは、0.0005~0.005mg/kg 体重/ボーラスの間、より好ましくは0.001~0.004mg/kg 体重/ボーラスの間である。蛍光画像化剤の最初の量は、有利なことには、少なくとも0.001mg/kg 体重、好ましくは、0.005mg/kg 体重未満である。次いで、引き続くボーラスは、1つのボーラスから引き続くボーラスに少なくとも0.001mg/kg 体重程度、好ましくは、0.005mg/kg 体重/ボーラス未満増大してもよい。他のタイプの蛍光画像化剤に関しては、その用量は、好ましくは、ICGに対するその蛍光に基づいて選択される。従って、より高い発光率を有する蛍光画像化剤は、好ましくは、相応に低い用量で投与される。その用量は、例えば、上記蛍光画像化剤の量子収率に実質的に逆の線形性であり得る。その用量はさらに、ICGに対する吸収および発光スペクトルに基づき得る。
【0064】
上記ボーラスは、好ましくは、0.5μL~10mLの間(例えば、0.5~5mL)の液体容積である。すなわち、上記第1の蛍光画像化剤の量は、好ましくは、液体(代表的には、水)の中で溶解される。1つの実施形態において、ある容積の等張性溶液(例えば、生理食塩水)は、蛍光画像化剤のボーラスの注射の直後に注射され、例えば、その場合、等張性溶液の容積は、1~20mL(例えば、2.5~15mL、例えば、5~10mL)である。ある容積の等張性溶液の引き続く注射は、代表的には、上記ボーラスが、例えば、末梢静脈に注射される場合に、適用され得る。
【0065】
本開示のさらなる実施形態において、第2の蛍光画像化剤が投与され、上記第2の蛍光画像化剤は、第1の蛍光画像化剤の発光最大から少なくとも50nm、または少なくとも100nm程度異なる発光最大を有する。上記第1のおよび第2の蛍光画像化剤は、好ましくは、交互に投与される。有利なことには、異なる蛍光画像化剤の投与間の間隔は、同じ蛍光画像化剤の引き続く投与間の間隔の半分である。
【0066】
本開示の方法のさらなる実施形態において、解剖学的構造および/または組織の一連の蛍光画像は、灌流の評価および/または血管の特定のために形成される。上記蛍光は、解剖学的構造/組織を、蛍光画像化剤を励起し得る光源で照射することによって自動的に検出され得、上記発光は、解剖学的構造/組織の一連の蛍光画像を通じて定量および/または分析される。
【0067】
ボーラス間の周期は、各ボーラスによって引きおこされる灌流傾きを検出するように構成されたコンピューターによって決定され得る。さらに、ボーラス中の蛍光画像化剤の量は、上記解剖学的構造の灌流を代表する最小の蛍光発光に相当する最小のボーラスを決定するように構成されたコンピューターによって制御され得る。このコンピューターは、本開示のシステムの一部であり得る。
【0068】
さらなる実施形態において、上記灌流評価は、解剖学的構造における灌流合併症の位置を特定する工程を包含する。よって、上記灌流評価は、診断手順または手術手順に関連して使用され得る。例えば、上記手順は、腹腔鏡による診断検査、腹腔鏡による診査、旧来の腹腔鏡検査を伴う腹腔鏡による手術、ロボット手術、および開放手術を含む。上記手順は、吻合の作製(例えば、腸吻合、創傷、形成外科手術、噴門手術またはがん)を代わりに含み得る。
【0069】
本開示のさらなる実施形態は、本明細書で開示される方法における使用のための蛍光画像化剤に関する。なおさらなる実施形態は、本明細書で開示されるとおりの血管の自動的灌流評価および/または連続特定の方法における使用のための医薬の調製における蛍光画像化剤の使用に関する。
【0070】
本開示のさらなる実施形態において、上記蛍光画像化剤は、反復して注射される。ある特定の場合には、より長い周期、例えば、少なくとも2分間、好ましくは少なくとも3分間、さらにより好ましくは少なくとも4分間、なおさらにより好ましくは少なくとも5分間、ほぼ最も好ましくは少なくとも8分間、最も好ましくは少なくとも10分間が必要であり得る。ここで上記蛍光画像化剤は、上記蛍光画像化剤がウォッシュアウトされることを可能にするために注射されず、その結果、そのバックグラウンドレベルが低減される。上記バックグラウンドレベルが許容可能なレベル(例えば、最大蛍光強度のある特定のパーセンテージ未満)へと、または実質的な蛍光を測定することができなくなるまで、一旦低減されると、上記蛍光画像化剤の注射は、継続され得る。
【0071】
振動ダイナミクス
本発明者らは、反復可能なボーラス注射の測定および分析が、単一の流入および/または単一の流出位相の解釈および定量から振動している蛍光ダイナミクスの分析までさらに拡げられ得ることを以前に気づいた。上記入力シグナルの制御に起因するその蛍光ダイナミクスのこの制御された変動は、侵襲的な測定なしにはこれまで得られなかった物理的灌流特性を開示し得る。上記入力シグナルは、身体へと送られるモールス信号のようなものであり、その測定される蛍光ダイナミクス、および特に、既知の入力シグナルとの組み合わせでの蛍光ダイナミクスの分析は、検査される組織における灌流パターンについての新たな情報を提供する。
【0072】
本開示のシステムおよび方法は、規則的な間隔での小さなボーラス(例えば、最小のボーラス)の制御された注射(それによって、上記入力シグナルを作り出す)のために構成され得る。これらのボーラスは、例えば、注射時間間隔に依存して、測定される場合に、正弦曲線の近似形態をとる入力シグナルの周期的変動をもたらし得る。
このような曲線では、その測定された強度シグナルは、所与のボーラスからの蛍光画像化剤の流入に伴って増大し、その後、引き続くボーラスなどでもう一度増大するまで、上記ボーラスのウォッシュアウト位相の間に減少し、周期的(正弦)パターンを生じると予測される。
【0073】
一実施形態において、本開示のシステムは、振動強度曲線のパラメーター(例えば、周波数および/または振幅)を認識し得るように構成され得る。次いで、その訓練されたシステムは、順に、次に来るシグナルダイナミクスの方向性および規則性の両方を予期し得る。上記システムは、好ましくは、振動パターンを認識するために測定された値を使用し、その結果、上記システムは、その後、測定された値と予測された値との間の矛盾を検出し得る。その測定された値はさらに、パターン認識、すなわち、予測される値を改善するために連続して使用され得る。代わりにまたはさらに、注射パラメーター(例えば、ボーラス頻度、用量および流速)は、その予測される値(すなわち、振動パターン)を決定するために使用され得る。
【0074】
上記システムがその予測される値を予想すると、早い時点で - 理想的には即時に、虚血状態の開始を検出および警告し得る。虚血状態の検出は、その予測される値およびその検出される値(例えば、閾値のような)の関数であり得る。しかし、血管を連続して特定するという本開示のアプローチを用いれば、虚血状態、または血管または血管のネットワークの混乱または違反(breach)の任意のタイプが、適切な医療関係者によってほぼ即時に視覚的に観察され得る。
【0075】
その予測される正弦パターンからの不一致は、例えば、ビデオ画像の中で見て分かる解剖学的構造/組織のうちの少なくとも一部における虚血状態の開始によって、または示された領域に対する灌流の局部的変化によって、引きおこされ得る。ヒト被験体における虚血の開始に起因するダイナミクスのこの変化を示す説明図は、図2Aにしめされ、より狭い箇所の拡大図は、図2Bに示される。認められるように、規則的な振動性蛍光シグナルから虚血の平坦線までの移行を検出することは可能である。しかし、目的の解剖学的構造の灌流に対する変化が、虚血の平坦線に加えて、他の測定されたパターンを生じ得ることは、注記されるべきである。一例は、静脈閉塞であり、その場合、解剖学的領域からの血液の流出が、遮断または低減され、示された領域における蛍光剤の密集またはプールされることに起因して、振動ダイナミクスの変化をもたらす。図4に認められ得るように、周期的振動が止まっている間は、その結果は、平坦線ではない。
【0076】
しかし、本開示のシステムおよび方法はまた、生成される入力シグナルが制御されかつ知られるようにボーラスの注射が制御される限りにおいて、不規則な間隔での小さなボーラス(例えば、最小のボーラス)の制御された注射のために構成され得る。本開示の身体カーネルアプローチは、入力シグナルが既知である限りにおいて、予測シグナルを計算することが可能になる。よって、その点において、本開示のアプローチは、規則的な入力シグナルに依存しない。
【0077】
本明細書で記載されるシステムは、ビデオ画像の中の所与の領域の灌流レベルの変化を数秒以内に観察しかつ検出し得る。これは、上記ダイナミクスが連続して可視化され、その予測シグナルが連続して計算され得る、長期間(例えば、何分間も)観察された領域において検出され得る。虚血/健常組織領域に関して観察することが予測され得るシグナル間の差異を強調する説明図は、図2Cに示される。しかし、それは、短い時間間隔(例えば、10~20秒)の間に可視化されただけの解剖学的領域においても等しく決定され得る。なぜならその記載されるシステムは、時間-強度シグナルにおいて規則的な上昇および下降からなる、組織において所与の時間でその規則的なダイナミックシグナルのある特定の位相を予測および検出するように訓練されるからである。目的の解剖学的領域が、記録された画像の焦点の中および外にドリフトした場合に、どのように見える可能性があるかを図示する図2Dを参照のこと。
【0078】
好ましくは、本開示のアプローチは、バックグラウンドで独立して実行され得る追跡技術を利用し得る一方で、外科医は、目に見える白色光シグナルにのみ曝され、従って、警告シグナルによってのみ、例えば、異常な灌流パターンの検出の間に、中断される/知らされる。
【0079】
振動している入力シグナル
本開示の方法は、ボーラス容積 対 時間において変動する入力シグナルを利用する。よって、入力シグナルは、少なくとも1種の蛍光画像化剤の一連のボーラスによって定義され、上記一連のボーラスは、引き続くボーラス間で予め規定および/または制御された継続時間で投与される。振動している入力シグナルを提供する1つの方法は、入力シグナルがボーラス注射に従って振動するように、一定期間にわたって予め規定された規則的なまたは不規則な間隔において蛍光画像化剤(例えば、インドシアニングリーン(ICG))のマイクロボーラスを注射することである。上記ボーラス容積は、一定であり得るが、上記ボーラスのうちの1またはこれより多くのものに関して制御可能に変動され得る。規則的な間隔での注射は、所定の周波数を有する入力シグナルを提供する。
【0080】
よって、上記入力シグナルは、蛍光画像化剤の容積 対 時間に関して定義され得る。上記蛍光画像化剤は、静脈内注射され得、上記画像化剤は、以前に記載されるように、画像化剤を励起するために適した波長または波長範囲を有する光源によって励起され得る。マイクロボーラスは、1時間またはさらには数時間の周期にわたって制御可能な、所定のおよび/または規則的なもしくは不規則的な間隔で、例えば、1~10分間の間の規則的な間隔、例えば、1~2分、2~3分、3~4分、4~5分、5~6分、6~8分または8~10分間隔において上記蛍光画像化剤を連続して注射することを可能にする。1つの実施形態において、上記引き続くボーラス間の継続時間は、数分から数時間の範囲に及び得る医学的手順の期間にわたって5秒~10分の間である。よって、上記入力シグナルは、好ましくは、少なくとも1種の蛍光画像化剤の一連のボーラスによって定義され、ここで上記一連のボーラスは、引き続くボーラス間で予め規定および/または制御された継続時間で投与される。上記少なくとも1種の蛍光画像化剤の一連のボーラスは、画像獲得中に上記被験体の静脈へと提供され得、それによって、上記入力シグナルを生成し得る。
【0081】
蛍光画像の獲得
開示されるコンピューター実行方法の第1の工程は、好ましくは、被験体の解剖学的構造/組織の蛍光画像の獲得である。さらにまたは代わりに、第1の工程は、被験体の組織からの蛍光出力シグナルの獲得であり得る。蛍光は、解剖学的構造/組織を、上記蛍光画像化剤を励起し得る光源で照射することによって自動的に検出され得、上記発光は、解剖学的構造/組織の一連の蛍光画像を通じて定量および/または分析される。開示される方法のうちのいずれかは、蛍光画像を分析する工程および/または蛍光出力シグナルを分析する工程、例えば、各ボーラスに関して少なくとも1つのピーク蛍光シグナルを検出する工程を包含し得る。
【0082】
身体カーネルの計算
一般に、本明細書で開示される方法は全て、被験体の身体へと(例えば、静脈内に)導入される入力シグナルの存在に依拠する。上記入力シグナルは、時間単位で振動しており、一連のマイクロボーラス(別名マイクロ用量)を含み、上記マイクロボーラスの各々は、以前により詳細に記載されるとおりの蛍光剤を含む。一般に、上記入力シグナルは、身体を通過するときに時間を経るにつれて不鮮明になり、その実測蛍光出力シグナルは、身体の影響が原因で、上記入力シグナルのひずんだまたは変化したバージョンである。これは、図11~14で図示される。不鮮明化/ゆがみの程度は、身体および身体のどの部分が本開示の方法を使用して調査されているかに依存する。一例として、指および趾は、心臓から離れて位置し、結論として、心臓により近い身体部分とは異なって上記入力シグナルに影響する(すなわち、異なる応答を与える)。この点において、上記身体/身体部分を、上記入力シグナルに影響するフィルターとして考えることができる。
【0083】
身体カーネルは、本明細書では関数として理解されるべきである。その関数は、身体がどのように上記入力シグナルに影響するかを表すかまたは記載する、すなわち、上記身体カーネルは、前述のフィルターとして理解され得る。一般に、上記身体カーネルは、先験的に知られてはいない。しかし、本発明者らは、身体カーネルが、身体から測定される蛍光シグナルに基づいて推定され得ることに気づいた - なぜなら入力シグナルは既知であるからである。
【0084】
画像処理およびシグナル処理の分野から名案が得られる。画像処理において、カーネル(別名コンボリューション行列、またはマスク)は、ぼかし、鮮明化、エンボス加工、エッジ検出などのために使用される小さな行列である。これは、カーネルと画像との間でコンボリューションを行うことによって達成される。コンボリューションは、行列演算の1タイプであり、画像の各要素を、カーネルによって重み付けされたその局所近傍に加算するというプロセスである。
【0085】
通常の画像処理では、カーネルは、画像からより多くの情報を抽出するために画像に適用される、すなわち、カーネルは、事前に分かっている。本開示の文脈では、身体カーネルは、出力シグナルを推測するために、入力シグナルでコンボリューションされる- そしてそれによって、異常に灌流している組織領域を検出する。しかし、実際の身体カーネルは、代表的には、既知ではない。なぜならそれは状況に依存するからである。よって、本開示の1つの局面は、デコンボリューションが登場する、身体カーネルの決定に関する。
【0086】
デコンボリューションは、コンボリューションの逆の演算である。上記で述べられるように、コンボリューションは、画像処理においてフィルターを適用するために使用され得、フィルターが分かっている場合、デコンボリューションは、元のシグナルを回復させるために適用され得る。顕微鏡画像化において、デコンボリューションは、顕微鏡で捕捉したデジタル画像のコントラストおよび解像度を改善するために利用される画像処理技術である。
【0087】
画像処理内では、デコンボリューションの目的は、代表的には、以下の形式のコンボリューション方程式の解fを求めることである: f*g=h(ここでhは、何らかの記録されたシグナルであり、fは、復元しようとしている何らかのシグナルであるが、そのシグナルfは、これが記録される前に、フィルターまたは歪み関数gでコンボリューションされている)。関数gは、機器の伝達関数または物理的システムに適用された駆動力を表し得る。
【0088】
この場合、fは、既知の入力シグナルを表し、hは、実測出力シグナルを表し、すると、関数gは、身体カーネルを表す。身体カーネルgの知見があれば、出力シグナルhを推測することは可能である。なぜなら入力シグナルfは、制御され、それによって分かるからである。そして出力シグナルが推測され得る場合、例えば、その推測される出力シグナルが正常な灌流パターンを表す場合、正常な灌流パターンおよび/または異常な灌流パターンを検出することも可能である。そしてそれによって、正常に灌流している組織領域および/または異常に灌流している組織領域を特定および/または検出することが可能になる。そしてそこに達するための1つの方法は、身体カーネルを、例えば、周知技術であるデコンボリューションを適用することによって決定することである。
【0089】
よって、被験体の身体によって蛍光画像化剤に課されるフィルターとして定義される身体カーネルは、組織(例えば、組織の目的の領域)からの実測蛍光シグナルをデコンボリューションすることによって決定され得、それによって、上記ROIの身体カーネルが得られる。上記デコンボリューション(時間での)は、当該分野で公知の種々の方法において(例えば、最適化式(optimization formulation)を通じて、またはフーリエ空間において)行われ得る。その点において、上記身体カーネルは、入力シグナル(すなわち、蛍光剤のボーラス)と上記蛍光出力シグナル(例えば、上記蛍光画像およびその分析)との間の伝達関数として理解され得る。身体カーネルの推定は、図11~15(合成データを使用する)および図16(リアルライフデータを使用する)において例示される。例えば、上記組織の蛍光画像を連則して獲得することによって、上記蛍光画像は、本明細書で定義されるとおりの入力シグナルと相関した蛍光出力シグナルと関連する。少なくとも1つの目的の領域(ROI)は、蛍光画像の中で、手動で、半自動でおよび/または自動で、のいずれかで選択され得;上記ROIを入力シグナルに対してデコンボリューションすることによって、上記ROIの身体カーネルが決定され得、その結果、上記身体カーネルでの上記入力シグナルのコンボリューションは、上記ROIからの蛍光出力シグナルに相当する。上記引き続くボーラス間の継続時間は、上記ROIの組織のタイプに従って選択され得る。
【0090】
1名の被験体、すなわち、患者は、多数の身体カーネルを有し得る。ここで各身体カーネルは、特定の身体部分が上記入力シグナルにどのように影響するかを表す。よって、身体カーネルは、空間依存性、すなわち、局所現象があると理解され得る。よって、同じ被験体の異なる身体部分/目的の領域は、異なる身体カーネルと関連し得る。しかし、被験体の組織を示す一連の蛍光画像において、上記組織の大部分は、通常は正常に灌流しており、その点では、正常に灌流している組織の正常な灌流パターンを表す単一の身体カーネルを決定することが可能である。このような単一の身体カーネルは、複数の目的の領域、複数の組織領域、または単に複数の画素からの平均またはメジアンなどから生成され得る。その点において、血管が特定され得、上記身体カーネルの決定から「除去」されることは注記される。なぜなら血管は、正常に灌流している組織を表さないからである。上記身体カーネルは、一次元または二次元(またはより高い次元)において数学的に行列として表され得る。
【0091】
身体カーネルの使用は、大きな利点である。なぜならそれは、組織からの予測蛍光出力シグナルがどのように見えるはずかに関する体系的知見を提供するからである。結論として、これは、上記方法の速度を改善する。なぜなら何が予測されるかが分からないのではなく、その実測シグナルが、その計算された予測出力シグナルと、可能であればリアルタイムで比較され得るからである。上記予測出力シグナルは、上記入力シグナルを関連する身体カーネルでコンボリューションすることによって計算される。身体カーネルが、特定の目的の領域に関して、例えば、正常に灌流している領域に関していったん推定されると、上記身体カーネルは、予測出力シグナルを計算し、その相当する蛍光出力シグナルと比較し、それによって、異常な灌流パターンを検出するために、既知の入力シグナルと組み合わせて使用され得る。上記実測蛍光出力シグナルと上記予測出力シグナルとの間の類似性の評価は、例えば、2つのグラフ/曲線または2つの画像を比較するために、種々の数学的方法を使用して行われ得る。この文脈での類似性は、例えば、上記グラフ/曲線間の距離として理解され得、例えば、関数間の二乗平均平方根差(root-mean-square difference)、曲線間の加重最小二乗法(WLS)、ハウスドルフ距離、2つの曲線間にわたる差分面積、χとして、または概して位相もしくは周波数、特に、周波数組成(frequency composition)、および/または比較されるシグナル/曲線の振幅において測定され得る。しかし、本明細書でも述べられるように、正常な灌流パターンおよび/もしくは異常な灌流パターンの検出、特定および/もしくは分類、ならびに/または領域比較はまた、上記身体カーネルレベルの比較/マッチによって提供され得、これは多くの場合、本質的に身体カーネルが入力シグナルから独立していることから、好ましい選択肢であり得る。
【0092】
正常な灌流の定義および異常な灌流の特定
異常な灌流パターンを検出するために、通常は、正常な灌流パターンを定義することが必要である。従って、本開示の方法は、好ましくは、正常な灌流パターンを、例えば、正常な灌流を有する組織領域を特定することによって定義する工程を包含する。本発明者らは、正常な灌流を特定および定義する多数の方法を見出した。その異なるアプローチは、以下に記載される。
【0093】
正常な灌流を推定する1つの方法は、正常な灌流の手動での定義である。本開示の方法の一実施形態によれば、正常な灌流を有する少なくとも1つの組織領域は、手動で、例えば、外科医が、組織領域が正常な灌流を有すると選択することによって特定される。このアプローチでは、外科医または医師は、正常な灌流を有するとみなされる組織領域を単に選択する(すなわち、視覚的評価)。これは、その外科医/医師の経験に基づいて評価され、その評価は完全に客観的ではないという欠点がある。その領域がいったん指定されると、空間的に位置を特定された身体カーネルが、その領域に関して推定され得る。引き続き、正常な灌流を有するとみなされるその領域の身体カーネルが、その予測出力シグナル(正常な灌流を有する組織領域から予測される出力シグナル)を計算するために、入力シグナルでコンボリューションされ得る。(例えば、炎症に起因する)異常な灌流を有する領域からの蛍光出力シグナルは、上記予測出力シグナルから逸脱する。よって、蛍光出力シグナルと予測シグナルとを比較することによって、異常な灌流の領域が、検出/特定され得る。よって、開示される方法の1つの実施形態は、蛍光画像の中の少なくとも1つの目的の領域(ROI)の身体カーネルを決定し、入力シグナルを身体カーネルでコンボリューションし、それによって、上記ROIの正常な灌流パターンを定義する工程をさらに包含する。
【0094】
正常な灌流を推定する別の方法は、画像の異なる領域にわたって分布している、目的の複数の領域(area)/領域(region)からの蛍光出力シグナルを分析することである。複数のまたはこれらの領域の蛍光出力シグナルが実質的に類似である場合、これらの領域は正常な灌流パターンを表すことが想定され得、1またはこれより多くの関連する身体カーネルが決定され得る。このアプローチは、1またはこれより多くの関連する身体カーネルが自動的に決定され得るという点で、第1のアプローチとは異なる。空間的に局所の身体カーネルは、正常な灌流と割り当てられた各領域に関して決定され得、このような局所の身体カーネルは、シグナル推測に関して有効と見做される空間的信頼領域を割り当てられ得る。逆に、予め規定された許容誤差内で計算された予測出力シグナルと相関する出力シグナルを提供する領域は、正常な灌流パターンを有すると考えられ得る。
【0095】
正常な灌流を特定、または特定を補助するさらに別の方法は、患者の身体の他の場所で参照検出をもつことである。一例として、外科医が患者の腕を手術している場合、その参照は、患者の指で、例えば、発光ダイオードフィンガークリップを使用して得られ得る。上記発光ダイオードフィンガークリップは、脈拍および血中酸素レベル測定のために使用されるもの(すなわち、パルスオキシメーター)に類似であり得る。上記発光ダイオードフィンガークリップは、組織において使用される蛍光画像化剤(例えば、ICG)のピーク吸収周波数に相当する波長を有するはずであり、それは、好ましくは、励起光源、および蛍光画像化剤によって発せられる波長においてピーク感度を有する感光性要素をさらに含むべきである。これは、蛍光シグナルの強度が経皮的に測定されることを可能にする。よって、開示される方法の1つの実施形態は、画像獲得以外の手段によって、例えば、フォトダイオードおよび/または発光ダイオードフィンガークリップを使用して、蛍光出力シグナルの強度を経皮的様式で測定する工程を包含する。上記強度は、好ましくは、連続して、すなわち、強度 対 時間として測定される。このアプローチでは、上記発光ダイオードフィンガークリップによって得られる参照シグナルは、正常な灌流パターンの代表であると考えられる。これは、獲得した蛍光画像の中で、1またはこれより多くの目的の領域からの蛍光出力シグナルと比較され得る。経皮的に測定されたシグナルと、例えば、位相、周波数組成、および/または振幅において十分に比較する目的の領域は、正常な灌流パターンを有する組織領域を表すと考えられ得、次いで、1またはこれより多くの関連する身体カーネルが決定され得る。このアプローチはまた、それによって、正常な灌流を自動的に特定し得る。
【0096】
正常な灌流および/または正常な灌流パターンを定義する別の、または補足的な方法は、以前の蛍光出力シグナル(例えば、正常な灌流パターンを有するとラベル付けされた、可能であれば検査されている組織および/または解剖学的領域のタイプに関してもラベル付けした、蛍光出力シグナルのデータベース)を比較することによるものである。再度、本開示のカーネルアプローチが適用され、ここでラベル付けされた身体カーネルが、ラベル付けされた身体カーネルのデータベースが存在するように、正常に灌流している組織領域に関して生成されている。次いで、これらのラベル付けされた身体カーネルのうちの1またはこれより多くのものが、本開示のアプローチにおいて正常な灌流パターンを定義する方法として直接適用され得る。
【0097】
代わりに、または補足的に、正常な灌流パターンが特定されるべきである場合、複数の正常にラベル付けされた身体カーネルは、正常に灌流している組織に関する複数の予測出力シグナルを生成するために、現在の入力シグナルでコンボリューションされ得る。上記予測出力シグナルは、1またはこれより多くの正常な灌流パターンが、蛍光出力画像の中の1またはこれより多くの目的の領域の中で特定され得、それによって1またはこれより多くの正常に灌流している組織領域を特定するように、現在の蛍光出力シグナルと比較され得る。次いで、正常に灌流している組織を表す1またはこれより多くの身体カーネルは、入力シグナルおよび正常に灌流している組織領域からの蛍光出力シグナルに基づいて生成され得る。
【0098】
よって、正常な灌流パターンの特定を自動化する多くの方法が存在する。
【0099】
灌流パターンの分類
本開示は、異常な灌流パターンを分類するための方法、すなわち、異常に灌流していると特定された関連組織領域が、例えば、異常な灌流パターンの原因に関して分類され得る、例えば、その関連組織領域が、がん組織、腺組織、甲状腺組織、腫瘍組織、炎症組織、虚血組織などとして分類され得るような方法にさらに関する。腫瘍組織は、がん組織である可能性はあるが、腫瘍が良性である可能性もあり、それによってがん性でないが、異常な灌流パターンをなおも有することもある。
【0100】
よって、上記少なくとも第1の身体カーネルおよび/または上記少なくとも第2の身体カーネルに基づいて異常な灌流パターンを有するとして検出された組織領域のうちの1またはこれより多くのものが、がん組織、腺組織、甲状腺組織、腫瘍組織、炎症組織、または虚血組織として分類され得る。その点において、上記分類は、好ましくは、上記少なくとも1つの第2の身体カーネルがラベル付けされていることに基づく。
【0101】
しかし、異常な灌流パターンが分類され得るのと同様に、正常な灌流パターンは、いくつかのタイプの組織、例えば、筋組織、体脂肪、靱帯組織、器官組織、ならびに同様に動脈および静脈を網羅し得る。よって、上記少なくとも第1の身体カーネルおよび/または上記少なくとも第2の身体カーネルに基づいて正常な灌流パターンを有すると検出された組織領域のうちの1またはこれより多くのものは、筋組織、体脂肪、靱帯組織、器官組織、静脈、または動脈として分類され得る。その点では、上記分類は、好ましくは、上記少なくとも1つの第1の身体カーネルがラベル付けされていることに基づく。
【0102】
本開示の身体カーネルアプローチは、再度適用され得るが、このとき、上記身体カーネルは、正常に灌流している組織領域または異常に灌流している組織領域において、被験体の身体によって蛍光画像化剤に課されるフィルターになり、ラベル付けされた身体カーネルは、ラベル付けされた身体カーネルのデータベースが存在するように、異常に灌流している分類された組織領域、または正常に灌流している分類された組織領域に関して生成されている。
【0103】
よって、異常なまたは正常な灌流パターンが、例えば、本開示のアプローチによって検出された場合、複数のラベル付けされた身体カーネルは、複数の予測出力シグナルを生成するために、既知の入力シグナルでコンボリューションされ得る。上記複数の予測出力シグナルは、上記検出された正常にまたは異常に灌流している組織領域からの蛍光出力シグナルと比較され得る。これは、リアルタイムで、および/または以前に獲得した画像を用いて提供され得る。代わりにおよび/または補足的に、身体カーネルは、本明細書で記載されるとおりのデコンボリューションによって、上記検出された正常なまたは異常な灌流パターンから計算され得る。その計算された身体カーネルは、次いで、上記ラベル付けされた身体カーネルと比較され得、それによって可能であれば分類され得る。すなわち、分類は、身体カーネルを比較することによって、および/または実測シグナルとラベル付けされた身体カーネルから計算された予測シグナルとを比較することによって、提供され得る。
【0104】
異常に灌流している組織領域(これは検出されたものである)はまた、上記異常に灌流している組織領域からの蛍光出力シグナルを、分類された異常に灌流している組織領域からの以前に獲得した蛍光出力シグナル(すなわち、ラベル付けされた蛍光出力データ)と比較することによって分類され得る。しかし、その欠点は、蛍光出力シグナルが入力シグナルに依存することである。本開示の身体カーネルアプローチは、入力シグナルから独立している。すなわち、ラベル付けされた身体カーネルが異なるタイプの入力シグナルに基づくとしても、それらはなおも適用され得、現在の入力シグナルでコンボリューションされ得、それによって、異常に灌流している組織領域からの測定された蛍光出力シグナルと比較するために、遙かに多くの正確なラベル付けされた予測出力シグナルを提供し得る。
【0105】
1またはこれより多くの組織領域が、正常または異常としていったん検出され、同様に分類されたら、それらは、それに応じて、例えば、画像の中で視覚的に、例えば、拡張現実によって、好ましくはリアルタイムで、例えば、これらの領域が外科医のために印が付けられるように、印が付けられ得る。
【0106】
例えば、腫瘍における異常な灌流パターンは、血管の非協調的かつ増大した増殖によって引き起こされ得る。非協調的な性質に起因して、蛍光分子は、腫瘍の中に長く留まり得、従って、正常組織に関して代表的なものより遅いウォッシュアウトを有し得る。蛍光ダイナミクスのこの変化は、本開示のアプローチによって検出され得る。
【0107】
例えば、炎症組織における異常な灌流パターンは、炎症における拡張した血管によって引き起こされ得、これは、血液の流入の増大を生じ得る炎症組織の増大した灌流を生じる。蛍光ダイナミクスのこの変化は、本開示のアプローチによって検出され得る。
【0108】
人工知能(AI)の適用
本開示のアプローチは、正常および/または異常な灌流パターンを特定するために訓練され、可能であれば異常な灌流パターンの場合には、異常な灌流パターンを、例えば、本開示の身体カーネルアプローチ(ここではラベル付けされた身体カーネルのデータベースが存在する)によって分類し、それによって、可能であれば異常な灌流パターンの原因を特定するようにも訓練された人工知能、例えば、機械学習、ニューラルネットワークなどの利用によって改善され得る。
【0109】
例えば、ニューラルネットワークの教師あり学習の形態では、上記ネットワークは、大量のラベル付けされたデータを使用して、例えば、画像もしくはビデオ、および/または上述のとおりのラベル付けされた身体カーネルの形態で訓練される。上記データは、画像および/またはビデオの中で腺組織のような異常な組織を特定し得る外科医および医師のような専門家によってラベル付けされ得る。次いで、そのラベル付けされたデータは、データベース(「知見バンク」)の中に保存され得、後に検索して、新たな測定値と比較され得る。次いで、上記データベースの中のラベル付けされたデータは、より多くの手術からのより多くのデータが(異なる患者から)収集されるにつれて改良され得る。「知見バンク」がいったん十分なサイズ(例えば、500~1000例の手術のデータ)になると、ニューラルネットワークは、新たな手術からの局所的に推定される身体カーネルと、上記データベースの中に保存された「真の」身体カーネルとを比較するように構成される。推定身体カーネルが上記データベースの中の身体カーネルと相関/マッチするとすれば、その組織領域は、好ましくは、自動的にフラグが立てられ/自動セグメント化され、その結果、外科医はより詳細に領域をチェックし得る。
【0110】
動脈および静脈の識別
開示される方法の1つの実施形態は、特定された血管において動脈および静脈を識別する工程を包含する。動脈と静脈との間のこの識別は、有利なことには、上記振動している蛍光シグナル、すなわち、上記入力シグナルの所定のパターンに基づく。ボーラス血行動態は、動脈および静脈に関して異なり、例えば、ICGのボーラスが患者の中に拡がる場合に、上記蛍光シグナルは、最初に動脈に、次いで、その周辺組織の微小循環に、およびしばらくして静脈に出現する。よって、ボーラス注射と、動脈シグナル、組織シグナル、静脈との間の時間差は、例えば、一連の相当する画像を分析することによって最初のボーラスまたは最初の数ボーラスから決定され得、その順序でシグナルを探し得る。すなわち、現在使用される新規なマイクロボーラス用量レジメンは、利用され得る多数の時間および/または波長ダイナミクスを課している。蛍光画像化剤の1回または数回のマイクロボーラスしか、ボーラス注射と動脈シグナルとの間、および動脈シグナルと静脈シグナルとの間で患者特異的/状況特異的な時間差を決定するために必要としないことから、これらの時間差は、動脈および静脈を連続して識別するために、引き続く制御されるマイクロボーラス投与において利用され得る。動脈シグナルと組織シグナルとの間、および組織シグナルと静脈シグナルとの間の時間差がまた、利用され得る。さらに、各マイクロボーラスのウォッシュアウト期間は、動脈、静脈および周辺組織の異なる血行動態が関わり、これは、ボーラス注射間のウォッシュアウト期間中ですら、血管を特定し、動脈と静脈との間を識別するために利用され得る。
【0111】
血管の特定
蛍光画像の中で血管を特定する1つの例は、画像フィルタリング、例えば、時間変動画像勾配(time-varying image gradient)に基づいた、獲得した蛍光画像のフィルタリングによるものである。組織における振動している蛍光シグナルおよび血行動態に起因して、獲得した画像の中には、画像の明るさが顕著に変化する領域が周期的に存在する。これらの領域は、最も頻繁には、動脈または静脈のいずれかであり、よって、適切な画像フィルタリングを絶えず適用することによって、血管は、連続ボーラス投与中に実質的に絶えず出現する。
【0112】
別のより正確なアプローチは、血管および周辺組織それぞれと関連する蛍光シグナルとの間の固有の位相差に基づいて、血管を特定することである。これは、被験体/患者の身体における血行動態に起因する。本明細書で開示されるとおりの全体的な振動している蛍光シグナルは、ICGのような蛍光剤の小さなボーラスの、制御されかつ反復される注射によって課される。上記蛍光剤の各ボーラスはまた、被験体における血行動態に起因して、より局所レベルで変動する蛍光シグナルを生じる。各小さなボーラスの蛍光剤は、種々の時点で、動脈、組織および静脈に到達し、本開示のアプローチは、これらの時間差を利用して血管を特定し、血管および組織を識別し、動脈、静脈および組織を識別する。動脈、組織および静脈それぞれに由来する蛍光シグナル間の時間差は、蛍光シグナルを連続して展開するにあたって位相差として見られ得る。すなわち、振動している蛍光シグナルの間のいつでも、動脈、静脈および周辺組織における変動する血行動態から、すなわち、被験体の血行動態に由来する固有の時間差に起因して生じる相当する獲得蛍光画像において異なる位置で、位相差が存在する。被験体特異的時間差は既知であるか、または数回のボーラスのうちの最初の1回が、被験体特異的時間差を決定する、すなわち、以下の群から選択される少なくとも1つの時間差を決定するために使用され得る。
ボーラス注射と動脈蛍光シグナルまたは静脈蛍光シグナルとの間の時間差、動脈蛍光シグナルと静脈蛍光シグナルとの間の時間差、および動脈蛍光シグナルまたは静脈蛍光シグナルと組織蛍光シグナルとの間の時間差。よって、本明細書で開示される方法のうちのいずれかは、蛍光画像/シグナルの少なくとも一部を分析し、以下の群:
-ボーラス注射と動脈蛍光シグナルまたは静脈蛍光シグナルまたは組織蛍光シグナルとの間の時間差、
-動脈蛍光シグナルと静脈蛍光シグナルとの間の時間差、および
-動脈蛍光シグナルまたは静脈蛍光シグナルと組織蛍光シグナルとの間の時間差、
から選択される少なくとも1つの時間差を決定する工程、ならびに
上記時間差および上記蛍光出力シグナルに基づいて、上記蛍光画像の中で組織および/または血管を連続して特定する工程
をさらに包含し得る。
【0113】
これは、上記ボーラス注射のうちのいくらか、または上記ボーラス注射の各々に関して1回提供され得る。
【0114】
これらの時間差のうちの1またはこれより多くが、相当する位相/位相差または血管、動脈、静脈、周辺組織および/または他の何かのうちの1もしくはこれより多くのものに「変換」され得る。よって、動脈、静脈および周辺組織の予測される位相を知れば、それによって、蛍光画像中の各画素、またはROIを、動脈、静脈、周辺組織もしくは他の何かのいずれかの分類と関連付けることは可能である。
【0115】
所与の時点での動脈、静脈および周辺組織の予測位相は、振動している蛍光シグナルの周期および振動周波数を決定する所定の振動パターンに直接関連し得る。その予測される位相は、医学的手順の間に、例えば、振動している蛍光シグナルが、特異的状況においてその関連の血行動態を測定するために、1回または数回のマイクロボーラスに関して観察される初期学習期として、概算、計算および/または決定されるかのいずれかであり得る。それによって、動脈、静脈および周辺組織の予測される位相は、ボーラスが注射される時点に直接的に関連し得る。よって、引き続く医学的手順において、各ボーラス注射の時点は、動脈、静脈および周辺組織の予測される位相の情報を提供する。
【0116】
よって、本開示の方法は、組織中の動脈に由来する蛍光シグナルと組織中の静脈に由来する蛍光シグナル、および必要に応じて血管の周辺の組織に由来する蛍光シグナルとの間の位相差を決定する工程、ならびにこの位相差を所定の振動パターンに関連させる工程を包含し得る。
【0117】
従って、位相および/または蛍光画像のシーケンスにおける位相差を分析することは、蛍光画像において血管を特定する1つの方法である。すなわち、血管は、蛍光シグナルの位相を知ることによって、画素ごとのレベルで蛍光画像シーケンスにおいて特定/検出され得る - そしてこれは、マイクロボーラス用量レジメン中のいつでも検出され得る。この位相情報は、所定のボーラス投与の知見、すなわち、上記蛍光シグナルが所定のパターンで振動していることと結びつけられて、画像中の画素、または目的の領域(ROI)が血管であるか否か、およびさらには、画像中の画素、または目的の領域が動脈、静脈、組織または何か他のものであるかどうかの必要な情報を提供する。それによって、血管(動脈および静脈を含む)の実際のマッピングは、実質的に各蛍光画像において、血管(好ましくは、動脈または静脈を含む)、周辺組織または必要に応じて他のものとして分類される各画素 - またはROI - の形態においてマッピングされて、例えば、画素ごとに、または画素の群、またはROIごとに提供され得る。
【0118】
本開示のアプローチは、医療関係者に、外科医の視野/目的の解剖学的領域の中で、血管(動脈および静脈を含む)の絶えず更新されるマップを提供し得る。特に、その特定された動脈および静脈は、白色光画像へと重ね合わされ得、動脈および静脈が視覚的に識別可能である(例えば、各々は、別個の高コントラストカラーを有する)ように視覚的に増強され得、スクリーン上にディスプレイされ得る。
【0119】
一旦特定され、可能であればマッピングされた後、蛍光画像、またはそのシーケンスにおいて、上記血管(好ましくは、特定された動脈および静脈を含む)は、運動(例えば、蠕動運動)が関与していても、引き続く蛍光画像において追跡され得る。特定された血管および/または正常な灌流パターンを有する組織領域および/または異常な灌流パターンを有する組織領域の追跡は、例えば、先行技術において利用可能であり、当業者に公知の追跡方法を使用することによって提供され得る。蛍光画像の追跡の例は、WO 2018/104552に開示される。
【0120】
システム
先に記載されるように、本開示はさらに、本明細書で開示される方法のうちのいずれかを行うように構成されたシステムに関する。
【0121】
1つの実施形態において、上記システムは、少なくとも1種の第1の蛍光画像化剤を保持するための制御可能な注射ポンプをさらに含み、上記注射ポンプは、上記第1の蛍光画像化剤の一連の予め規定されたボーラスを、上記被験体の静脈に注射し、それによって、上記入力シグナルを生成するように構成されている。
【0122】
上記蛍光画像は、本開示のシステムの一部であり得る適切な画像化ユニット(例えば、カメラ、例えば、手術用の、腹腔鏡用のまたはマイクロスコープのカメラ(例えば、ビデオカメラ))によって受容され得る。上記分析は、ローカルまたはクラウドサービスの一部としてのいずれかで、処理装置によって提供され得る。本開示のシステムは、本開示の方法の工程全てを行うように構成され得る。
【0123】
上記予め規定されたボーラスは、好ましくは、体重1kgあたり0.01mg未満のICGの上記第1の蛍光画像化剤、より好ましくは体重1kgあたり0.005mg未満のICGの上記第1の蛍光画像化剤に相当する。予め規定されたボーラスはまた、0.5mg未満のICGの上記第1の蛍光画像化剤に相当し得る。好ましくは、上記蛍光剤は、ICGであり、予め規定されたボーラス中のICGの量は、好ましくは、上記被験体の体重1kgあたり0.01mg未満、最も好ましくは上記被験体の体重1kgあたり0.005mg未満である。よって、好ましくは、予め規定されたボーラス中のICGの量は、1mg未満のICGまたは0.5mg未満のICGであり、最も好ましくは、0.25mg未満のICGである。
【0124】
上記システムは、5~600秒の間(例えば、15~300秒の間、例えば、45~210秒の間、例えば、90~120秒の間)の間隔でボーラスを注射するように構成され得る。
【0125】
本開示のアプローチのさらなる利点は、血管の局所ネットワークを特定する機会である。自由に目に見える血管を短期間クランプ留めすることによって、その関連の灌流領域は、範囲が定められ、引き続いてその変動しているICGシグナルを観察することによって、その関連のネットワークは、明らかに目に見えるようになる。なぜならその領域における灌流は、急速に変化するからである。
【0126】
消化管
消化管に関する合併症はしばしば、局所の血行動態に関連する。したがって、通常の血行動態状態の変化は、合併症の増大したリスクの指標であり得る。消化管の、特に、消化管壁の組織のような消化管の中および表面付近における灌流評価は、従って、消化管を、例えば、合併症の診断または位置の特定のために、例えば、腹腔鏡による診断検査、腹腔鏡による検査もしくは旧来の腹腔鏡検査を伴う腹腔鏡による手術、またはロボット手術、および開放手術において検査する場合に、重要な診断ツールであり得る。灌流評価はまた、消化管の以前は離れていた2つの部分の間に連絡を確立するために提供され得る吻合を作るという手術手順の間に重要である。一例として、腸吻合は、腸の以前は離れていた2つの部分の間に連絡を確立し、代表的には、腸に影響を与えている病的な状態の除去の後に腸の連続性を回復させる。腸吻合は、例えば、1)病的な腸の切除後の腸(intestinal)(例えば、腸(bowel)の連続性の回復、および2)切除不能な病的な腸(intestine)(例えば、腸(bowel))のバイパスのために提供され得る。ある特定の小児の状態はまた、腸吻合を必要とし得る。
病的な腸の切除は、以下の状況において行われ得る:
・腸間膜の血管の疾患、長期の腸閉塞、腸重積症、または腸捻転によって引きおこされる血管障害(vascular compromise)に起因する腸壊疽
・悪性腫瘍
・良性状態(例えば、腸ポリープ、腸重積症、腸閉塞に伴う回虫感染症)
・感染症(例えば、狭窄または穿孔と合併した結核)
・外傷性穿孔
・一次的創傷閉鎖(primary closure)を受けられない大きな穿孔(外傷性)
・出血、狭窄、または穿孔に合併した放射線腸炎、
・炎症性腸疾患、潰瘍性大腸炎、または医学的治療に対して難治性のまたは合併症(例えば、出血、穿孔、中毒性巨大結腸、異形成/癌腫)と関連するクローン病
・慢性便秘、特発性結腸通過遅延型便秘(idiopathic slow transit constipation)、またはヒルシュスプルング病: 上記疾患が医学的治療に対して難治性である場合には、結腸亜全摘が行われ得る。
【0127】
切除できない病的な腸のバイパスは、以下の状況において行われ得る:
・内腔の閉塞を引きおこす局所的に進行した腫瘍
・腸閉塞を引きおこす転移性の疾患
・全身状態が悪いまたは大きな切除を妨げる状態
【0128】
腸吻合が必要とされ得る小児の状態としては、以下が挙げられる:
・先天異常(例えば、メッケル憩室、腸閉鎖症、壊疽をもたらす腸捻転に伴う回転異常、胎便性イレウス、胃重複症(duplication cyst)、ヒルシュスプルング病)
・炎症状態(例えば、壊死性腸炎、腸炎、結核、腸穿孔)
・他の状態(例えば、腸重積症、血管形成異常、ポリープ病(polypoid disease)、回虫症)
・他の手術手順の一部として(例えば、葛西式肝門部空腸吻合術、総胆管嚢胞、尿路変向術、膵臓腫瘍)
【0129】
消化管における吻合に関連する術後合併症は、不運なことに頻繁にあり、しばしば、吻合(すなわち、管の2つの部分の結合)での不十分な灌流(毛細管血液供給)に起因する。不十分な灌流、すなわち、異常な灌流の例は、、吻合不全(anastomotic leakage)を引きおこし得、これは、例えば、大腸手術に関連して重篤でかつ頻繁な合併症(上記手順のうちの10%超が合併症を生じる)である。結腸がん手術内では、吻合不全を有する患者のうちの30%超が術後合併症に起因して死亡し、残りの患者のうちのおよそ25%は、彼らの人生の残りをストーマに悩まされる。吻合不全と関連するリスク因子としては、吻合の張力、組織損傷および特に、血液灌流の低減が挙げられる。
【0130】
本開示はさらに、例えば、手術(特に、消化管が関わる手術)の術前、術中および/または術後に獲得した消化管のうちの少なくとも一部を表す1またはこれより多くのビデオシーケンス(ここで上記組織の蛍光画像は、本明細書で記載されるように絶えず獲得される)の画像分析を行うことに関する。これは、消化管手術に該当し得る - 従って、上記ビデオシーケンスは、好ましくは、消化管壁のうちの少なくとも一部における灌流が、測定および評価され得るように、消化管のうちの少なくとも一部の外側部分を含み得る。
【0131】
消化管は、食物を摂取し、それを消化して、エネルギーおよび栄養を抽出および吸収し、残りの廃棄物を糞便および尿として排出する、ヒトおよび他の動物の中の器官系である。消化管は、食物を消化器官へと運ぶ管として理解され得る。従って、用語消化管は、本明細書で使用される場合、頬側口腔;咽頭;十二指腸、空腸、および回腸を含む小腸;食道、噴門、および幽門を含む胃;盲腸、結腸、直腸および肛門管を含む大腸を含む。
【0132】
臨床適用
血管の解剖学的構造の可視化、ならびに本明細書で開示されるとおりの異常な灌流パターンの検出および分類は、ほぼどのような種類の手術中にも非常に重要である。なぜなら血管の連続検出は、血管の意図せぬ切断のリスクを低減するからである。それに対して、異常に灌流している組織の検出および必要に応じた分類は、悪性組織、がん組織、および/または炎症組織の領域を特定することにおいて役立ち得る。本開示のシステムおよび方法はまた、特に、以下の臨床適用内で使用され得る:
【0133】
腹部/一般外科
・切除手術, 切断/結紮されるべき正確な血管の位置を迅速に特定する、および低減した灌流を有する組織領域を検出するため。
・虚血腸手術, どの血管がおよびどこで血管が遮断され、解剖学的構造が不十分にしか灌流していないかを迅速に決定するため。
・急性腹症, 根底にある病理を発見する、例えば、虚血を除外するのを助けるため。
・反復手術, 多くの手術による癒着を有する以前手術を受けた患者における手術。
・一般外科医が行ったがん手術, 切除手術におけるように、血管および異常な灌流パターンを検出するため。
・一般外科手術, 腹腔(abdominal tract)中の実質的にあらゆる器官が関わる。例えば、胃(室)に対して吻合または手術を行う場合。
・一般外科手術, 表面または深部の感染が関わり、血管を検出およびマッピングするため、ならびに/または異常に灌流している組織領域を検出、分類および/もしくはマッピングするため。
【0134】
甲状腺手術
・甲状腺手術, 甲状腺組織の切除を含む。血管および異常な灌流パターンの連続検出は、大きな利点である。なぜなら甲状腺手術は、過度の出血のリスクを有するからである。甲状腺手術はまた、副甲状腺の1またはこれより多くの部分の切除または除去のリスクを有し、本開示のアプローチは、副甲状腺が、外科医により見やすくなるように、関連領域中の血管を特定およびマッピングするために適用され得る。1つの実施形態において、上記画像は、甲状腺手術中に獲得され、ここで副甲状腺のうちの1またはこれより多くの中で血管および/または異常に灌流している組織領域が外科手術に関与する医療関係者に特定および可視化される。
【0135】
骨盤手術
・婦人科系/泌尿婦人科系手術, 切断/結紮されるべき正確な血管の位置を迅速に特定するため、および術中に血管を特定および識別するため。
・がん手術, 血管を検出するならびに/または異常に灌流している組織領域を検出および有利に分類するため。
【0136】
腎臓手術
がん手術, 血管を検出するならびに/または異常に灌流している組織領域を検出および有利に分類するため。
【0137】
形成外科手術
・皮膚移植, 切断/結紮されるべきドナーの異常に灌流している組織領域および/または正確な血管の位置を迅速に特定するため、およびレシピエント上で同じ血管の灌流をモニターするため; 術中の急性状況において、その後の数日間においても、治癒および血管形成をモニターするため。
・手術手順に近い全ての皮膚において, 手術手順が開始される前に、解剖学的領域中の異常に灌流している組織領域を検出およびマッピングする、ならびに/または血管構造を検出およびマッピングするため、ならびに外科医が、さらなる情報のためにこれを必要と見做す場合に、手術手順の間に。すなわち、本開示のアプローチは、手術手順が行われることになる数日前または数週間前に患者の血管およびその関連の血管の解剖学的構造を特定およびマッピングするための臨床用ツールとして使用され得、医療関係者に、その手順を注意深く計画するための時間を与える。このマッピングは、例えば、30~45分にわたって目的の領域の皮膚を通る蛍光シグナルを測定し、医療関係者が計画に使用するために2Dマップまたは3Dマップを作成する本開示のアプローチに従って行われ得る。特定された血管のマップは、他の検査(例えば、CTスキャン、MRスキャンまたは超音波スキャン)と統合され得る。本開示のアプローチは、例えば、CTスキャンにおいて正確にマッピングするには小さすぎる血管の特定およびマッピングを可能にするという利点を有する。
【0138】
耳、咽喉、および頸部手術
以下を含む種々の手順: 顔面美容外科、気管切開、がんなど。
【0139】
整形外科手術
・切断術, 四肢(limp)または解剖学的領域が切断される前に、異常に灌流している組織領域を迅速に特定およびマッピングするため、ならびに/または血管を特定およびマッピングするため、切断の正確な部位および最良の部位を選択して、皮膚を再び閉じ、最適な治癒を保証するため。
・感染症など, 異常に灌流している組織領域を検出およびマッピングするため、ならびに/またはデブリドマンまたは類似の手順が必要とされる血管を検出およびマッピングするため。
【0140】
心臓手術
・CABG, バイパス手術を行う場合に、異常に灌流している組織領域を迅速に検出およびマッピングするため、ならびに/または心臓への辺縁部の血管を特定し、位置を特定するため。
【0141】
血管手術
・切断手術, 異常に灌流している組織領域を迅速に検出およびマッピングするため、ならびに/または上記のように切断/結紮されるべき正確な血管を特定し、位置を特定するため。
・バイパス手術用の血管の採取, 異常に灌流している組織領域を検出およびマッピングするため、ならびに/または切断/結紮されるべき正確な血管を迅速に特定し、位置を特定するため。
【実施例
【0142】
実施例
図1A~Bに示される強度曲線は、蛍光剤(これらの場合には、ICG)の通常の量でのボーラスの注射の結果である。各ボーラスにおけるICGの量を、蛍光の発光がヒトの眼に見えるように選択した。実施例は、蛍光画像化後に計算され得る種々の灌流パラメーターを例証するために提供される。これらの同じパラメーターはまた、かなりの程度まで、遙かにより小さな用量の注射の後に決定され得る(すなわち、おそらく灌流の反復および連続した測定ならびに関連する評価および血管の特定を伴い、本明細書で開示されるマイクロ用量アプローチ)。
【0143】
図1Aは、ICGのボーラスが被験体に提供された後に組織から、例えば、ビデオシーケンスにおいて目的の領域から獲得された強度曲線の一例である。同種のデータは、別の造影剤を使用した場合には得ることができた。その強度は、強度の急増が画像化した組織におけるICG分子(そのICG分子は、蛍光を発するために励起される)の通過を示すまで実質的にゼロである。強度のピークに、ICG分子の漸進的なウォッシュアウトが続く。強度は、任意単位で示される。
【0144】
図1Bは、相当する強度曲線であり、ここで血行動態パラメーターである、灌流傾き、傾き開始、傾き終了、最高強度、ウォッシュアウト傾き、ウォッシュアウト開始およびウォッシュアウト傾き終了が計算され、グラフに示される。灌流パラメーターの評価は、係属中の出願WO 2018/104552(これは、その全体において本明細書に参考として援用される)にさらに開示される。
【0145】
図2Aは、ヒト被験体からの実際の測定データを示す。そのヒト被験体に、ICGのマイクロボーラスを規則的な間隔で反復して注射する(この実施例では、間隔はおよそ2分間)。ICGの最初のマイクロボーラスは、0.00456mg ICG/kg ヒト被験体体重の量を含み、ICGの引き続くマイクロボーラスの各々は、0.00456mg
ICG/kg ヒト被験体体重の同量を含んだ。時間強度曲線は、経時的に線形的に増大する実質的に正弦パターンを示す。経時的な強度の増大は、蛍光剤の用量とウォッシュアウト時間(その間に、蛍光強度が減少する)との間の割合に関連する。ある特定の時点(およそt=3800s、図2B)で、灌流を制限し、虚血の開始を引きおこす。これは、この時点後に振動の欠如がみとめられ得、虚血平坦線として記載され得るものを形成する。
【0146】
図2Cは、正弦時間-強度曲線を示す理想化したデータを示す。測定したROI強度は、蛍光画像化剤の注射の際に増大し、ウォッシュアウト位相の間に減少する。およそt=3750秒では、測定したデータは、虚血状態の開始に起因して、一定の測定されたROI強度値を示す。あるいは、虚血状態がなかった場合、その測定された値は、代わりに、その測定されたROI値が正弦パターンを連続してたどるように、破線をたどると予測される。
【0147】
図2Dは、目的の解剖学的領域が、焦点の中および外にドリフトした場合の虚血状態なしの正弦時間-強度曲線を示す理想化したデータを示す。その破線は、ROIが連続して観察可能である場合に予測される測定値を示す。例えば、記録された画像の焦点の中および外にドリフトしている目的の解剖学的領域に起因してこれが可能でない場合、その測定されたデータは、完全ではなくてもよく、代わりにギャップ 目的の解剖学的領域の測定データが獲得されなかった時間間隔 - があってもよい。従って、上記システムは、好ましくは、その記録されたデータが完全ではない場合にすら、正弦パターンを認識し得る。なぜならダイナミクスの位相は既知だからである。なぜなら、例えば、予測蛍光出力が、関連する身体カーネルが得られた場合に決定され得るからである。上記システムが、正弦パターンを正確に認識し得る場合、それは、各時点でのROIの予測される強度値とともに提供される。それはその後、測定された値との比較のために使用され得る。その測定された値が、予想された値とは異なる場合、上記システムは、外科医に警告を提供するように構成され得る。従って、上記システムは、測定された時点または間隔の振動している/正弦パターンの位相を認識するように構成され得る。それはその後、その時点または間隔の予測された位相と比較され、ここでその予測された位相は、好ましくは、認識される振動パターンまたは/反復ボーラス注射の既知の頻度に基づく。結果として、上記システムは、連続する測定値を必ずしも必要としないが、代わりに、振動パターンの特異的位相が、その測定された間隔に存在することが予測されるように、その測定された時点または間隔の時間情報との組み合わせにおいて振動パターンの予測される位相に基づき得る。
【0148】
図3Aは、より長い時間間隔(およそ40分)にわたって行ったヒト被験体の蛍光強度測定を示す。ここで上記ヒト被験体は、ICGのマイクロボーラスを反復して注射した。ICGの最初のマイクロボーラスは、ヒト被験体の体重1kgあたり0.0046mg ICGの量を含み、ICGの引き続くマイクロボーラスの各々は、同量のヒト被験体の体重1kgあたり0.0046mg ICGを含んだ。7個の別個のROIの強度を測定し、グラフの中で別個の色に割り当てた。その測定した蛍光強度は、周期的正弦パターンを示し、ここでその周波数は、注射頻度(およそ120s)と一致する。パターンは、用量サイズに比較して注射の比較的短い周期に起因して、蛍光画像化剤の蓄積に起因して実質的に線形的に増大している。およそt=2000sで、蛍光画像化剤の反復注射を停止し、蛍光強度のほぼ指数関数的減衰を引きおこす。
【0149】
図3Bは、図3Aの印を付けた領域の拡大を示す。ここでは、同じROI内でおよび異なるROI間でより小さな変動がみとめられ得る。同時に、周期的強度パターンは、同一周期を有する各ROIのパターンとは別個である。
【0150】
図4は、蛍光画像化剤のマイクロボーラスの反復注射によってヒト被験体で行われた測定の時間-強度プロットを示す。ICGの最初のマイクロボーラスは、0.00456mg ICG/kg ヒト被験体体重の量を含み、ICGに引き続くマイクロボーラスの各々は、同量の0.00456mg ICG/kg ヒト被験体体重を含んだ。グラフは、静脈閉塞の結果を示し、ここでおよそt=62~78分間の間で、灌流が制限される一方で、完全には妨げられていない。この場合、測定された蛍光強度の振動ダイナミクスは止まり、その測定値は、静脈閉塞中に不規則な増大を示す。従って、減少した灌流が、他の場合に、代表的には、虚血状態の間の結果と同様に、必ずしも平坦線を生じないことは、注記されるべきである。
【0151】
図5Aは、ヒューマノイド被験体に対して実行するICG分析ツールのスナップショットを示す。図5~10中の獲得された画像は、右前腕の部位を示し、すなわち、蛍光シグナルが腕の皮膚にわたって認められる。図5Aの画像は、ボーラス注射の非常に早い段階で撮られ、ここでICGのマイクロボーラスは、注射されたばかりであり、動脈に入り始めている。すなわち、いくらかの動脈を、特定し得る。画像中の4個のボックスは、測定領域(別名、目的の領域(ROI))を示し、4つのICG強度曲線が右側に示される(各ROIの1つ)。そのROIのうちの1つは、動脈に位置し、その相当する強度曲線は、最も高い。1つのROIは、組織領域に位置し、関連の強度曲線は、いくらかのICGが、組織中に既に拡散したことを示す。2つのROIは、静脈に位置し、ほぼ平坦であり、ICGが未だ組織領域を出て、静脈を経て輸送されて戻ってきていないことを示す。その2つの静脈ROIの強度曲線は一致し、互いから識別することはできない。その4つのICG強度曲線の位相差は、明らかに見て分かる。よって、動脈、静脈および組織の予測される位相が知られれば、図5A中の4つのROIは、それぞれ、動脈、静脈、および周辺組織として分類され得る。
【0152】
図5Bは、複数の動脈が視覚的に特定され得る、図5Aより数秒後のスナップショットを示す。いくつかの暗い領域がなお存在し、そこではICGは未だ拡がっていない。すなわち、ICGは、被験体になお入りつつある。4つのROIの全4つのICG強度曲線は、着実に増大している。しかし、その曲線から認められるように、曲線のうちの3つの群に関して明確な位相差が存在する: 1)動脈、2)組織、および3)静脈。動脈ROIは、2つの他の群の前にある。組織ROIは、動脈曲線の「後ろ」にある。そして組織ROIは、静脈ROIの「前」にある。両方向における位相差が、多かれ少なかれ等しい、すなわち、組織は、動脈から組織へ、静脈へのICG分子の移動のおよそ途中にあることに注意のこと。繰り返しになるが、ROIは、その予測される位相が既知である場合には、動脈、静脈、周辺組織またはその他のいずれかとして分類され得る。これは、画像中の全画素、または画素群に関して提供され得る。すなわち、全画素は、その予測される位相が既知である場合には、動脈、静脈、周辺組織またはその他として分類され得る。すなわち、画像フィルタリングは、血管の視覚的特定を提供し得るが、種々のシグナルの位相が所定の振動パターンに対して既知である場合、その画像中の画素の全てまたは大部分は、分類され得る。すなわち、遙かにより詳細な情報が得られる。これは、例えば、血管を白色光画像へと重ね合わせる場合に、およびそれが、運動、例えば、蠕動運動が起こっている場所の画像のシーケンスにおいて物体を追跡するために必要とされる場合にも、利用され得る。
【0153】
図6Aは、特定のマイクロボーラスICGからの蛍光強度がそのピーク値に達しつつある図5Bより数秒後のスナップショットを示す。この時点の後、より多くのICGは、組織領域に入るICGの量より組織領域を離れ始める。この画像と、図5A~Bにおいて先に示されたスナップショットとを比較すると、ほぼ全ての領域がここで見て分かることが理解される。最も暗い領域は、ここでは静脈であり、これは、未だ、ICGを組織から離れるように輸送し始めていない。これは、右側の相当するICG強度曲線にも反映される。そのICG曲線は、全てなお増大しつつある。すなわち、本発明者らは、なお動脈が支配している位相にあるが、その曲線の凹形状は、ピーク強度が近づいていることを示した。しかし、位相差は、ICG強度曲線の間でなおも認められる。このスナップショットにおいて、血管は、明らかには特定可能でない。なぜなら余りに多くのICGが動脈から組織領域に入り、十分なICGが未だ静脈に入っていないからである。しかし、静脈は、実際には、暗い領域として特定可能であり得る。
【0154】
図6Bは、図6Aよりおよそ1分後のスナップショットを示し、静脈が明らかに特定され得るウォッシュアウト位相を図示する。関連のICG曲線からの相当する灌流分析は、静脈ROIが、最も高い強度を明らかに有するが、時間スケールがウォッシュアウト位相において異なることも示す。すなわち、それは、ウォッシュアウト位相において動脈と、組織、静脈との間で位相差を評価するために、より長い時間スケールを必要とし得る。しかし位相差は、ICG曲線において見て分かる。
【0155】
図7は、本開示のアプローチを利用することによって、医学的手順の間に医療関係者に提供され得る視覚的増強の一例を図示する図6Bのエッジフィルタリングしたバージョンを示す。位相差が特定の状況に関して一旦知られた後、いつ動脈および静脈がそれぞれ最適に特定されるかが知られる。図7では、静脈は視覚的に増強され、これは、外科医が、いかなる静脈をも偶然に切断することを回避することを可能にする。画素ごとのアプローチは、図6Bに対するエッジフィルタリング、続いて、平滑化フィルタリングと組み合わせて、図7において使用される。結果は、主な静脈を除いて、画像全体を明らかに暗くする。この情報は、術中に外科医に見える任意のスクリーン(白色光画像スクリーンも同様)にオーバーレイ/重ね合わせられて、外科医が彼の決断を引き出す根拠を改善し得る。
【0156】
図8は、図5A~6Bに示される画像のシーケンスにおいて動脈が特定された画像を示す。動脈は、グレースケール画像で見て分かるように、黒で視覚的に増強される。
【0157】
図9は、図5A~6Bに示される画像のシーケンスにおいて静脈が特定された画像を示す。静脈は、グレースケール画像で見て分かるように、黒で視覚的に増強される。
【0158】
図10は、図8~9に示される動脈および静脈が、赤色(動脈)および青色(静脈)において視覚的に増強され、動脈および静脈が明らかに見て分かりかつ容易に識別可能であるように、画像において重ね合わせられる画像を示す。これは、本開示のアプローチを使用する医学的手順の間に外科医に提供され得る拡張現実(AR)ビューの一例である。赤色の画素を動脈群にマッピングし、青色の画素を静脈群にマッピングした。これらのマッピングは、マイクロボーラスレジメンがバックグラウンドにおいて実行され得ることから、連続して更新され得る。実際には、与えられた群(例えば、動脈群)は、マイクロボーラスレジメンの最初の学習期(ここで動脈位相は、各ボーラス注射の時点と関連付けられ得る)において特定され得る既知の位相を有する。動脈位相が一旦既知になった後、蛍光シグナルのセグメント(例えば、数秒間)が、画像のシーケンスにおいて1またはこれより多くの画素またはROIの関連する灌流を評価し、位相マッチングスコアを計算するために十分である。画素/ROIにおける位相が動脈位相とマッチする場合、その位相マッチングスコアは高く、結果的にその画素は動脈として特定され得、この場合、赤で色づけされ得る。類似の循環は、静脈に関して行われ得る。このような位相マッチング評価は、ICGの流入中およびウォッシュアウト周期中の両方に提供され得る。組織中の血管を連続して特定するという本開示のアプローチは、従って、バックグラウンドにおいて連続して実行され得る。
【0159】
図11は、身体カーネルが、実測ICGシグナル(別名蛍光出力シグナル)からどのように推定され得るか、および上記身体カーネルが、予測出力シグナル(すなわち、上記推定シグナル)を計算するためにどのように使用され得るかを図示するために役立つ4つのプロットを示す。左上のプロットは、ICGの単一ボーラス注射の入力シグナルのグラフ(ICG容積 対 時間)を示す。右上のプロットは、蛍光出力シグナル(「実測ICGシグナル」)を示す。左下のプロットは、推定身体カーネルおよび真の身体カーネルを示し、右下のプロットは、蛍光出力シグナル(「実測ICGシグナル」)とともに、予測出力シグナル(「推定シグナル」)を示す。この例では、合成データ(すなわち、コンピューターで生成されたもの)が使用されている。なぜならその図は、説明目的に過ぎないからである。すなわち、左下の図で示される計算された身体カーネルが、左上のグラフに示される入力シグナルでコンボリューションされる場合、その結果は、右下に示される予測シグナルである。この理想化された状況に関しては、右下のグラフに示される予測シグナルおよび実測シグナルが、完全に一致している。同じことが、左下の「真の」および「推定される」身体カーネルにもあてはまる。上記原理は、他の図に関連して説明されるように、リアルライフデータにも該当する。
【0160】
図12は、4つのプロットを介して、図11と本質的に同じ視覚的説明を示す。しかし、ここでは、上記入力シグナルは、2つのパルス、すなわち、2つのボーラスを含み、これらにより、図11の実測シグナルと比較して、その実測シグナルは変化する。上記身体カーネルは、図11にあるものと同じままである。なぜならそれは、ヒト身体の特性、すなわち、調査された組織が、上記入力シグナルをどのようにフィルタリングするかまたは変化させるかの尺度であり、それによって、実測出力シグナルは、入力シグナルからいくぶんひずむ/変化するからである。図11に関連して使用されるデータに類似して、図12のデータは、予測される実測シグナルを推測するために、身体カーネルを推定するという基本原理を図示するために合成的に作成されたデータである。しかし、重要なことは、身体カーネルが図11および図12におけるものと同じだが、身体カーネルの知見がなければ、図12に示される二重ボーラス入力シグナルがどの種類の出力シグナルを生じるかを推測することは実質的に不可能であるということである。しかし、身体カーネルの知見があれば、図12の左上に示される二重ボーラス入力シグナルは、身体カーネルでコンボリューションされ得、それによって、予測出力シグナルを計算し得、それは、図12の右下にある実測出力シグナルとマッチすることが理解される。
【0161】
図13は、推定身体カーネルを使用して、実測蛍光出力シグナル(「ICGシグナル」)が、予測出力シグナル(推定シグナル)を計算することによってどのように見えるはずかを推測する方法の別の例を示す。この例では、上記入力シグナルは既知であり(左上のプロット)、上記推定身体カーネルは、図11および図12に示される推定から既知である。右下のプロットにおいて、上記推定身体カーネルは、推定シグナルを得るために、上記入力シグナルでコンボリューションされている。上記実測シグナルは、上記推定において身体カーネルを使用することの有用性を例証するためにさらにプロットされる。観察されるように、上記実測シグナルは、上記推定シグナルによく似ている。よって、上記身体カーネルが特定の目的の領域に関していったん推定されたら、身体カーネルを推定するために使用される入力シグナルとは異なる入力シグナルを使用する場合にすら、この身体カーネルを使用して、実測ICGシグナルがどのように見えると予測されるかを推測し得る。これらのプロットは、例証目的のためだけに合成データを使用して生成された。
【0162】
図14は、図13に示されるものと同じ入力シグナルおよび同じ身体カーネルを示し、それによって、推定シグナルも示す。しかし、この例では、上記実測ICGシグナル(実測蛍光出力シグナル)は、予測シグナル(これは右下のプロットに認められる)とは異なる。よって、このシナリオでは、上記実測シグナルは、関連した目的の領域から本発明者らが通常予測するものとは異なり、これは、上記領域中の組織からの灌流パターンが異常であるということの指標である。結論として、このような組織は異常としてフラグを立てられ得、外科医/医師によってさらに調査され得る。これらのプロットは、例証目的のためだけに合成データを使用して生成された。
【0163】
図15は、どのようにして、身体カーネルが目的の領域に関して推定され得、引き続いて、予測出力シグナルを計算するために使用され得るかの別の例を示す。次いで、実際の実測シグナルは、上記予測シグナルと比較され得、それによって、異常な灌流パターンが検出され得る。以下の参照「左上」などは、横方向(landscape orientation)で見た場合の図に言及する。左上のプロットは、単一パルス、すなわち、単一ボーラス注射を含む入力シグナル(強度 対 時間)を示す。中央上のプロットは、実測蛍光シグナル(強度 対 時間)を示し、右上のプロットは、上記実測シグナルおよび上記入力シグナルをデコンボリューションすることによって計算された推定身体カーネルを示す。上記灌流パターンは、正常な灌流パターンを有するとして特定される。上記領域に関する身体カーネルがいったん決定されたら、それは、同じまたは他の組織領域に関する予測出力シグナルを生成し、それによって、異常な灌流パターンを有する組織領域を探すために、他の入力シグナル(例えば、別パターンのパルスを有する)と組み合わせて使用され得る。下の2行は、3つのパルスを含む入力シグナル(左列)からの実測シグナル(中央の列)を示す。下の2行に関しては、同じ身体カーネル(上の行の単一パルスを含む入力シグナルに関連して推定され、正常とラベル付けされる)は、予測出力シグナルを生成するために使用されている。中央の行に示されるシナリオでは、その実測シグナルが、予測出力シグナルと整列し、相関することが観察され得る。これは、測定される組織領域中の正常な灌流パターンを示す。しかし、下の行に示されるシナリオでは、その実測出力シグナルは、予測出力シグナルからかなり逸脱し、これは、測定される組織領域中の異常な灌流パターンを示す。よって、開示される方法は、組織を、正常なまたは異常な灌流パターンのいずれかを有するとして識別し得る。これは、上記組織に、正常または異常のいずれかとしてフラグを立てる/分類するために使用され得る。この実施例では、合成データ(実測シグナル上にノイズを有する)が使用されている。なぜならこの例は、例証/例示目的として役立つからである。身体カーネルは、連続して計算され得、それによって、比較目的でも使用され得る。これは、図15の右列に図示される。中央の行では、右列のグラフは、中央の行の中央の列における実測シグナルから計算された身体カーネルと比較して、計算され、正常とラベル付けされた身体カーネルを示し、その2つの身体カーネルは類似であると認められる。しかし、下の行では、異常な灌流パターンを有する組織領域から計算された身体カーネル(「推定」)は、正常とラベル付けされた身体カーネル(「予測」)とは非常に異なることが認められる。
【0164】
図16は、リアルライフデータ、すなわち、ヒトからのデータを使用する本開示の方法の一例を示す。左上のプロットは、単一パルスを含む(すなわち、単一注射に相当する)入力シグナルを示す。注射を、シリンジを使用して手動で行ったので、この入力シグナルは、推定/近似されることに注意。真の入力シグナルは、この場合には分からない。右上のプロットは、被験体からの実測蛍光出力シグナル(強度 対 時間)を示す。この例では、その実測データを、被験体の前腕から得た。左下のプロットは、前腕の目的の領域に関する推定身体カーネルを示す。右下のプロットは、推定シグナルが重ね合わされた、実測シグナルを示す。上記実測シグナルは、シグナルのかなりの部分に関して、上記推定シグナルと十分に相関することが観察される。これは、目的の領域における正常な灌流パターンを示す。分布のすそは無視され得るか、またはより正確な身体カーネルを得ることができるか、または上記入力シグナルを変動し得る。より正確な身体カーネルは、より長い時間にわたって測定することによって得られ得る。
【0165】
図17は、3つの周期、左から右にPR、P1、P2において、実測蛍光出力シグナル 対 時間のグラフである。身体カーネルは、周期PRにおける蛍光出力シグナルおよび既知の入力シグナル(ここで示される)に基づいて計算される。その計算された身体カーネルは、図17の右上隅に示される。
【0166】
周期P1では、上記実測蛍光出力は、相当するボーラス注射に由来する多くのパルスを含む。中央列の上のグラフでは、P1からの蛍光出力パルスは、単離され、一緒にプロットされ、同じパルス長(入力シグナルから既知)に対して正規化されている。P1からのパルスは、実質的に同じパターンに従うことが理解される。中央列に上のグラフでは、P1からの蛍光出力パルスは、単離され、一緒にプロットされ、同じパルス長に対して正規化されており、計算された身体カーネルでコンボリューションされた既知の入力シグナルから計算された予測出力シグナルと一緒にもプロットされている。上記予測シグナルは、実測パルスと同じパターンに実質的に従うことが理解される。しかし、周期P2において認められるように、上記予測出力シグナル(既知の入力シグナルから計算される)は、蛍光出力シグナルと非常に不十分にしかマッチしないことが理解され、異常な灌流パターン(その理由は虚血である)は、容易に検出され得る。
【0167】
本発明のさらなる詳細
1.例えば、医学的手順の間に、被験体の組織において異常な灌流パターンを有する1またはこれより多くの領域を検出(および/または特定)するためのコンピューター実行方法であって、前記方法は、
-前記組織の蛍光画像を連続して獲得する工程であって、ここで前記蛍光画像は、少なくとも1種の蛍光画像化剤の一連のボーラスによって定義される入力シグナルと相関した蛍光出力シグナルと関連し、ここで前記一連のボーラスは、引き続くボーラス間で予め規定および/または制御された継続時間で投与される、工程、
-前記蛍光画像を分析する工程、
-少なくとも強度ドメインにおいておよび/または時間ドメインにおいて、正常な灌流パターンを得る、定義するおよび/または決定する工程、ならびに
-前記蛍光画像において、異常な(正常でない)灌流パターンを有する、可能性のある組織領域を検出する工程、
を包含する、方法。
【0168】
2.前記引き続くボーラス間の継続時間は、少なくとも2分または3分、または少なくとも5分または少なくとも10分、または少なくとも15分、または少なくとも30分、または少なくとも1時間の期間にわたって、5秒~5分またはさらには10分の間である、項目1に記載の方法。
【0169】
3.正常な灌流パターンを有する組織領域において、前記被験体の身体によって前記少なくとも1種の蛍光画像化剤に課されるフィルターである少なくとも第1の身体カーネルを得る工程を包含する、前述の項目のいずれかに記載の方法。
【0170】
4.異常な灌流パターンを有する組織領域において、前記被験体の身体によって前記少なくとも1種の蛍光画像化剤に課されるフィルターである少なくとも第2の身体カーネルを得る工程を包含する、前述の項目のいずれかに記載の方法。
【0171】
5.前記少なくとも第1の身体カーネルおよび/または前記少なくとも第2の身体カーネルは、前記入力シグナルと前記蛍光出力シグナルとの間で少なくとも1つの伝達関数になる、前述の項目のいずれかに記載の方法。
【0172】
6.正常な灌流を有する少なくとも1つの組織領域を特定する工程を包含する、前述の項目のいずれかに記載の方法。
【0173】
7.前記入力シグナルは、蛍光画像化剤の容積 対 時間に関して定義される、前述の項目のいずれかに記載の方法。
【0174】
8.前記蛍光画像の中で血管を特定する工程を包含する、前述の項目のいずれかに記載の方法。
【0175】
9.正常な灌流を有する少なくとも1つの組織領域が、手動で、例えば、外科医が、組織領域が正常な灌流を有すると選択することによって特定される、前述の項目のいずれかに記載の方法。
【0176】
10.正常な灌流パターンは、自動で決定される、前述の項目のいずれかに記載の方法。
【0177】
11.画像獲得以外の手段によって経皮的様式で、例えば、フォトダイオードおよび/または発光ダイオードフィンガークリップを使用して、前記蛍光出力シグナルの前記強度、好ましくは前記強度 対 時間を測定する、好ましくは連続して測定する工程を包含する、前述の項目のいずれかに記載の方法。
【0178】
12.前記経皮的に測定された強度(例えば、連続して測定された強度 対 時間)は、正常な灌流パターンを定義するために使用される、項目11に記載の方法。
【0179】
13.少なくとも1つの身体カーネルを得る工程を包含する、前述の項目のいずれかに記載の方法。
【0180】
14.前記身体カーネルは、正常な灌流パターンを有する組織領域において、前記被験体の身体によって蛍光画像化剤に課されるフィルターである、前述の項目13のいずれかに記載の方法。
【0181】
15.前記身体カーネルは、異常な灌流パターンを有する組織領域において、前記被験体の身体によって蛍光画像化剤に課されるフィルターである、前述の項目13~14のいずれかに記載の方法。
【0182】
16.身体カーネルは、少なくとも1つの組織領域に相当する前記蛍光画像の中で少なくとも1つの目的の領域(ROI)を選択し、前記ROIを前記入力シグナルに対してデコンボリューションして、前記ROIの身体カーネルを決定することによって得られ、その結果、前記身体カーネルでの前記入力シグナルのコンボリューションは、前記組織領域からの前記蛍光出力シグナルに相当する、前述の項目13~15のいずれかに記載の方法。
【0183】
17.予測出力シグナルを、好ましくは、前記蛍光画像の中で少なくとも1つの目的の領域において、前記入力シグナルに基づいて計算する工程を包含する、前述の項目のいずれかに記載の方法。
【0184】
18.異常な灌流パターンを有する組織領域は、前記組織領域の前記蛍光出力シグナルと前記組織領域の前記予測出力シグナルとを比較することによって検出される、前述の項目17のいずれかに記載の方法。
【0185】
19.前記予測出力シグナルは、前記入力シグナルを関連の身体カーネルでコンボリューションすることによって決定される、前述の項目17~18のいずれかに記載の方法。
【0186】
20.前記蛍光画像の中で複数の目的の領域(ROI)を分析する工程を包含し、前記ROIは、異なる組織領域にわたって分布しており、複数のこれらのROIの前記蛍光出力シグナルが実質的に類似であるおよび/または複数のこれらのROIの関連の身体カーネルが実質的に類似である場合、これらのROIのうちの1またはこれより多くが、正常な灌流パターンを有すると定義され、それによって、正常な灌流パターンを自動的に定義および/または決定する、前述の項目のいずれかに記載の方法。
【0187】
21.前記獲得した蛍光画像のシーケンスが分析され、前記蛍光画像中の画素は、前記入力シグナルに対してそれぞれの画素での前記蛍光シグナルの位相に基づいて、1)動脈、2)静脈、3)組織、または4)その他のいずれかとして分類される、前述の項目のいずれかに記載の方法。
【0188】
22.前記少なくとも第1の身体カーネルおよび/または前記少なくとも第2の身体カーネルに基づいて、正常な灌流パターンを有するとして検出される前記組織領域のうちの1またはこれより多くは、筋組織、体脂肪、靱帯組織、静脈、または動脈として分類され、前記分類は、前記少なくとも1つの第1の身体カーネルがラベル付けされていることに基づく、前述の項目のいずれかに記載の方法。
【0189】
23.前記少なくとも第1の身体カーネルおよび/または前記少なくとも第2の身体カーネルに基づいて、異常な灌流パターンを有するとして検出される前記組織領域のうちの1またはこれより多くは、がん組織、腺組織、腫瘍組織、炎症組織、または虚血組織として分類され、ここで前記分類は、前記少なくとも1つの第2の身体カーネルがラベル付けされていることに基づく、前述の項目のいずれかに記載の方法。
【0190】
24.異常な灌流パターンを有する組織領域は、身体カーネルを比較することによって、例えば、前記第1の身体カーネルおよび前記第2の身体カーネルを比較することによって、検出される、前述の項目のいずれかに記載の方法。
【0191】
25.異常な灌流パターンを有する組織領域は、前記少なくとも1つの第2の身体カーネルと、1またはこれより多くのラベル付けされた身体カーネルとを比較することによって検出および/または分類される、前述の項目のいずれかに記載の方法。
【0192】
26.前記獲得した蛍光画像のシーケンスが分析され、前記蛍光画像中の画素は、前記入力シグナルに対してそれぞれの画素での前記蛍光シグナルの位相に基づいて、1)正常に灌流している組織、2)異常に灌流している組織、または3)その他、のいずれかとして分類される、前述の項目のいずれかに記載の方法。
【0193】
27.被験体において組織の灌流関連身体カーネルを決定するためのコンピューター実行方法であって、前記身体カーネルは、前記被験体の身体によって蛍光画像化剤に課されるフィルターとして定義され、前記方法は、
-前記組織の蛍光画像を連続して獲得する工程であって、ここで前記蛍光画像は、前記蛍光画像化剤の一連のボーラスによって定義される入力シグナルと相関した蛍光出力シグナルと関連し、ここで前記一連のボーラスは、引き続くボーラス間で予め規定および/または制御された継続時間で投与される、工程、
-少なくとも1つの目的の領域(ROI)を組織領域に相当する前記蛍光画像の中で選択する工程、および
-前記ROIを前記入力シグナルに対してデコンボリューションして、前記ROIの身体カーネルを決定し、その結果、前記身体カーネルでの前記入力シグナルのコンボリューションは、前記組織領域からの前記蛍光出力シグナルに相当する工程、
を包含する、方法。
【0194】
28.前記引き続くボーラス間の継続時間は、前記ROIの組織のタイプに従って選択される、前述の項目27のいずれかに記載の方法。
【0195】
29.前記身体カーネルは、正常な灌流パターンを有する組織領域において、前記被験体の身体によって蛍光画像化剤に課されるフィルターである、前述の項目27~28のいずれかに記載の方法。
【0196】
30.前記身体カーネルは、異常な灌流パターンを有する組織領域において、前記被験体の身体によって蛍光画像化剤に課されるフィルターである、前述の項目27~28のいずれかに記載の方法。
【0197】
31.前記入力シグナルを前記身体カーネルでコンボリューションすることによって、予測出力シグナルを計算する工程を包含する、前述の項目27~29のいずれかに記載の方法。
【0198】
32.
-項目27~31のいずれかに記載の方法に従って、少なくとも1つのROIの身体カーネルを決定する工程、
-前記入力シグナルを前記身体カーネルでコンボリューションし、それによって、前記ROIの正常な灌流パターンを定義する工程、
をさらに包含する、前述の項目1~21のいずれかに記載の方法。
【0199】
33.被験体の時間ドメイン灌流参照を確立するためのコンピューター実行方法であって、前記方法は、
-前記蛍光画像化剤の一連のボーラスによって定義される入力シグナルと相関した蛍光出力シグナルを連続して測定する工程であって、ここで前記一連のボーラスは、引き続くボーラス間で予め規定および/または制御された継続時間で投与される、工程、ならびに
-前記被験体に特異的な時間ドメイン灌流参照を、前記蛍光出力シグナル 対 時間として定義する工程、
を包含する、方法。
【0200】
34.前記蛍光出力シグナルは、経皮的様式で、例えば、発光ダイオードフィンガークリップによって測定される、前述の項目33のいずれかに記載の方法。
【0201】
35.前記蛍光出力シグナルの強度は、フォトダイオードによって測定される、前述の項目33~34のいずれかに記載の方法。
【0202】
36.前記蛍光出力シグナルを分析する工程、例えば、各ボーラスに関して少なくとも1つのピーク蛍光シグナルを検出する工程を包含する、前述の項目33~35のいずれかに記載の方法。
【0203】
37.前記被験体に特異的な時間ドメイン灌流参照は、ボーラス注射と、相当するピーク蛍光出力シグナルとの間の時間差として定義される、前述の項目33~36のいずれかに記載の方法。
【0204】
38.
-項目33~37のいずれかに記載の方法に従って、前記被験体の時間ドメイン灌流参照を確立する工程、
-前記蛍光画像の分析と、前記時間ドメイン灌流参照とを相関させ、それによって、正常な灌流パターンを特定する工程、
をさらに包含する、前述の項目1~21のいずれかに記載の方法。
【0205】
39.前記蛍光画像/シグナルの少なくとも一部を分析し、以下の群:
-ボーラス注射と動脈蛍光シグナルまたは静脈蛍光シグナルまたは組織蛍光シグナルとの間の時間差、
-動脈蛍光シグナルと静脈蛍光シグナルとに間の時間差、および
-動脈蛍光シグナルまたは静脈蛍光シグナルと組織蛍光シグナルとの間の時間差、
から選択される少なくとも1つの時間差を決定する工程、ならびに
前記時間差および前記蛍光出力シグナルに基づいて、前記蛍光画像の中で組織および/または血管を連続して特定する工程、
を包含する、前述の項目のいずれかに記載の方法。
【0206】
40.少なくとも1種の蛍光画像化剤の一連のボーラスは、前記画像獲得中に前記被験体の静脈に提供され、それによって、前記入力シグナルを生成し、そしてここで前記一連のボーラスは、引き続くボーラス間の予め規定された継続時間で投与される、前述の項目のいずれかに記載の方法。
【0207】
41.前記蛍光画像化剤は、インドシアニングリーン(ICG)であり、ICGの各ボーラスは、体重1kgあたり0.01mg未満のICGに相当する、前述の項目のいずれかに記載の方法。
【0208】
42.前記蛍光画像化剤は、ICGであり、ICGの各ボーラスは、体重1kgあたり0.005mg未満のICGに相当する、前述の項目のいずれかに記載の方法。
【0209】
43.前記蛍光画像化剤は、ICGであり、、ICGの各ボーラスは、体重1kgあたり0.004mg未満のICG、より好ましくは体重1kgあたり0.003mg未満のICG、さらにより好ましくは体重1kgあたり0.002mg未満のICG、最も好ましくは体重1kgあたり0.001mg未満のICGに相当する、前述の項目のいずれかに記載の方法。
【0210】
44.前記一連のボーラスは、制御可能な注射ポンプによって自動で注射される、前述の項目のいずれかに記載の方法。
【0211】
45.前記画像化した組織は、消化管における解剖学的構造の一部であり、好ましくは、口腔;咽頭;十二指腸、空調、および回腸を含む小腸;食道、噴門、および幽門を含む胃;盲腸、結腸、直腸および肛門管を含む大腸から選択される、前述の項目のいずれかに記載の方法。
【0212】
46.前記画像化した組織は、前記医学的手順の間に蠕動運動を受ける、前述の項目のいずれかに記載の方法。
【0213】
47.前記画像化した組織は、前記被験体の内部器官の一部、または前記被験体の皮膚の一部、または前記被験体の創傷の一部である、前述の項目のいずれかに記載の方法。
【0214】
48.前記画像は、甲状腺手術中に獲得され、副甲状腺のうちの1またはこれより多くのものにおける血管が特定され、前記手術に関与する医療関係者に可視化される、前述の項目のいずれかに記載の方法。
【0215】
49.少なくとも2種の蛍光画像化剤は、2つの異なる蛍光シグナルを同時に生成するために使用される、前述の項目のいずれかに記載の方法。
【0216】
50.前記少なくとも2種の蛍光画像化剤は、異なるエミッタンス波長を有し、前記蛍光画像は、前記組織の少なくとも2つの異なる深度から同時に獲得される、項目49に記載の方法。
【0217】
51.前記少なくとも2つの異なる深度は、少なくとも1cm、好ましくは少なくとも1.5cm分離されている、項目50に記載の方法。
【0218】
52.前記蛍光画像化剤は、正常でない組織を標的化する分子(例えば、腫瘍標的化分子)に結合される、前述の項目のいずれかに記載の方法。
【0219】
53.前記少なくとも1種の蛍光画像化剤は、インドシアニングリーン(ICG)、インフラシアニングリーン(IfCG)、ブリリアントブルーグリーン(BBG)、およびブロモフェノールブルー(BPB)、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、フィコエリトリン、フィコシアニン、アロフィコシアニン、オルトフタルアルデヒド、フルオレスカミン、ローズベンガル、トリパンブルー、フルオロゴールド、緑色蛍光タンパク質、フラビン、メチレンブルー、ポルフィソム、シアニン色素、IRDDye800CW、標的化リガンドと組み合わせたCLR 1502、標的化リガンドと組み合わせたOTL38、またはこれらの組み合わせの群から選択される、前述の項目のいずれかに記載の方法。
【0220】
54.コンピューティングデバイスまたはコンピューティングシステムによって実行される場合、前記コンピューティングデバイスまたはコンピューティングシステムに前述の項目のいずれかに記載の方法を実行させる指示を有するコンピュータープログラム。
【0221】
55.例えば、医学的手順の間に、被験体の組織において異常な灌流パターンを特定するためのシステムであって、前記システムは、
-前記組織の蛍光画像を連続して獲得する工程であって、ここで前記蛍光画像は、少なくとも1種の蛍光画像化剤の一連のボーラスによって定義される入力シグナルと相関した蛍光出力シグナルと関連し、ここで前記一連のボーラスは、引き続くボーラス間で予め規定および/または制御された継続時間で投与される、工程、
-前記蛍光画像を分析する工程、
-前記分析に基づいて、前記蛍光画像において、正常な灌流を有する少なくとも1つの組織領域を特定する工程、
-強度ドメインにおいて、および時間ドメインにおいて、正常な灌流パターンを定義する工程、ならびに
-前記蛍光画像において、異常な(正常でない)灌流パターンを有する、可能性のある組織領域を検出する工程、
のために構成されているシステム。
【0222】
56.少なくとも1種の第1の蛍光画像化剤を保持するために制御可能な注射ポンプであって、前記注射ポンプは、前記第1の蛍光画像化剤の一連の予め規定されたボーラスを前記被験体の静脈に注射し、それによって前記入力シグナルを生成するように構成されている制御可能な注射ポンプを含む、項目55に記載のシステム。
【0223】
57.前記蛍光剤は、ICGであり、予め規定されたボーラスにおけるICGの量は、体重1kgあたり0.005mg未満であり、前記システムは、5秒~10分の間の間隔でボーラスを注射するように構成される、項目55~56のいずれかに記載のシステム。
【0224】
58.前記システムは、項目1~53のいずれかに記載の工程を実行するために構成される、項目55~57のいずれかに記載のシステム。
図1
図2-1】
図2-2】
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15-1】
図15-2】
図15-3】
図16
図17-1】
図17-2】
図17-3】
【国際調査報告】