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特表2024-524240自律車両のテスト運転に使用するためのステアリング・システム及び解除方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-05
(54)【発明の名称】自律車両のテスト運転に使用するためのステアリング・システム及び解除方法
(51)【国際特許分類】
   B62D 6/00 20060101AFI20240628BHJP
   B62D 101/00 20060101ALN20240628BHJP
   B62D 119/00 20060101ALN20240628BHJP
【FI】
B62D6/00 ZYW
B62D101:00
B62D119:00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023579085
(86)(22)【出願日】2022-06-28
(85)【翻訳文提出日】2024-02-20
(86)【国際出願番号】 HU2022050054
(87)【国際公開番号】W WO2023281283
(87)【国際公開日】2023-01-12
(31)【優先権主張番号】P2100263
(32)【優先日】2021-07-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】HU
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518289852
【氏名又は名称】エーアイモーティブ ケーエフティー.
(74)【代理人】
【識別番号】110003797
【氏名又は名称】弁理士法人清原国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】コハリ,ローランド
【テーマコード(参考)】
3D232
【Fターム(参考)】
3D232CC20
3D232DA03
3D232DA15
3D232DA23
3D232DA25
3D232DA29
3D232DA33
3D232DA63
3D232DA64
3D232DC01
3D232DC02
3D232DC03
3D232DD01
3D232DD02
3D232DD17
3D232EB04
3D232EB11
3D232EC23
3D232GG01
(57)【要約】
本発明は、自律車両のテスト運転に使用するためのステアリング・システムであり、ステアリング・システムは、- 車両を手動で操舵するように構成された手動操舵手段と、- 手動操舵手段に取り付けられたステアリング・アクスル(30)と、- ステアリング・アクスル(30)に対するトルクに、制御可能に作用する直接駆動モータ(35)であって、ステアリング・アクスル(30)と同軸である回転の軸(37)を有する、直接駆動モータ(35)と、を備える。ステアリング・システムは、- ステアリング・システムが、異なる運転条件を特徴付ける少なくとも2つの予め定義された状態を有し、各予め定義された状態が、少なくとも1つの予め定義された解除制限を有し、かつ、- ステアリング・システムが、制御パラメータに基づいて動作可能なコントローラ・アセンブリを更に備え、コントローラ・アセンブリが、車両の実際の予め定義された状態を検出するように構成されており、コントローラ・アセンブリが、制御パラメータの規定の値と制御パラメータの実際の値との差分値に基づいて、実際の予め定義された状態に対応する少なくとも1つの予め定義された解除制限に達した場合に、直接駆動モータ(35)の解除を開始することを特徴とする。本発明は、更に、解除方法、並びにその方法を実施するデータ処理システム、コンピュータ・プログラム製品、及びコンピュータ可読媒体に関する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自律車両のテスト運転に使用するためのステアリング・システムであって、
前記車両を手動で操舵するように構成された手動操舵手段と、
前記手動操舵手段に取り付けられたステアリング・アクスル(20、30、50、601、70)と、
前記ステアリング・アクスル(20、30、50、601、70)に対するトルクに、制御可能に作用する直接駆動モータ(25、35、55、655、75)であって、前記ステアリング・アクスル(20、30、50、601、70)と同軸である回転の軸(27、37)を有する、直接駆動モータ(25、35、55、655、75)と、を備え、
前記ステアリング・システムが、異なる運転条件を特徴付ける少なくとも2つの予め定義された状態を有し、各予め定義された状態が、少なくとも1つの予め定義された解除制限(82、101、102、111、112)を有し、かつ
前記ステアリング・システムが、制御パラメータに基づいて動作可能なコントローラ・アセンブリ(56)を更に備え、前記コントローラ・アセンブリ(56)が、前記車両の実際の予め定義された状態を検出するように構成されており、前記コントローラ・アセンブリ(56)が、
達すべき前記制御パラメータの規定の値を含む指令を生成する動きコントローラと、
前記動きコントローラから受信した前記指令に基づいて、前記直接駆動モータ(25、35、55、655、75)に電力を供給するためのモータ駆動ユニットと、
前記制御パラメータの実際の値を監視し、かつ前記制御パラメータの前記規定の値と前記制御パラメータの前記実際の値との間の差分値を判定し、そして、前記差分値に基づいて、前記実際の予め定義された状態に対応する前記少なくとも1つの予め定義された解除制限(82、101、102、111、112)に達した場合に、前記直接駆動モータ(25、35、55、655、75)の解除を開始するためのフィードバック・デバイスと、を含む、ことを特徴とするステアリング・システム。
【請求項2】
前記予め定義された状態が少なくとも1つの状態パラメータに基づいて判定されることを特徴とする、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記少なくとも1つの状態パラメータが、前記車両の速度、横方向加速度、ヨーレート、及び/又は縦方向加速度であることを特徴とする、請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記予め定義された状態は、更に、駐車操作、渋滞、市街地運転、郊外運転、低速運転、高速運転、緊急操作、及び閉軌道運転のうちの少なくとも1つを含む運転状況に基づいて判定されることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項5】
前記ステアリング・システムが、前記2つの予め定義された状態間に、前記2つの予め定義された状態の前記解除制限(82、101、102、111、112)間の円滑な移行を提供する中間ブリッジ状態(121、131、133、141、143、145)を有することを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項6】
前記制御パラメータが、前記手動操舵手段の位置、前記手動操舵手段のトルク、前記手動操舵手段の力、前記手動操舵手段の速度、又は前記直接駆動モータ(25、35、55、655、75)の電流であることを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項7】
前記動きコントローラが、
前記直接駆動モータ(25、35、55、655、75)に対する前記制御パラメータの規定の値を含む動きプロファイルを生成する上位コントローラと、
前記動きプロファイルを受信し、達すべき前記制御パラメータの規定の値を含む前記指令を生成する下位コントローラと、を備えることを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項8】
前記コントローラ・アセンブリが、前記上位コントローラによって生成された前記動きプロファイルを前記下位コントローラによって受信可能な信号に変えるために、前記上位コントローラと前記下位コントローラとの間に配置されたドライブ・バイ・ワイヤユニット(74)を備えることを特徴とする、請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
前記直接駆動モータ(25、35、55、655、75)が、永久磁石同期モータであることを特徴とする、請求項1から8のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項10】
請求項1に記載のステアリング・システムの直接駆動モータ(25、35、55、655、75)を手動操舵手段から解除する方法であって、前記方法が、
制御パラメータの規定の値を達成するように、前記ステアリング・システムの前記直接駆動モータ(25、35、55、655、75)に指令するステップと、
前記制御パラメータの実際の値を監視するステップと、
前記制御パラメータの前記規定の値と前記制御パラメータの前記実際の値との間の差分値を生成するステップと、
前記差分値に基づいて、実際の予め定義された状態に対応する少なくとも1つの予め定義された解除制限(82、101、102、111、112)に達した場合に、解除を開始するステップと、を含む、方法。
【請求項11】
前記制御パラメータが、前記手動操舵手段の位置、前記手動操舵手段のトルク、前記手動操舵手段の力、前記手動操舵手段の速度、又は前記駆動モータ(25、35、55、655、75)の電流であることを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
請求項10から11のいずれか一項に記載の方法のステップを実施するための手段を含むデータ処理システム。
【請求項13】
非一時的コンピュータ・プログラム製品であって、前記プログラムがコンピュータによって実行されると、請求項10から11のいずれか一項に記載の方法を前記コンピュータに実施させる命令を含む、非一時的コンピュータ・プログラム製品。
【請求項14】
コンピュータによって実行されると、請求項10から11のいずれか一項に記載の方法を前記コンピュータに実施させる命令を含む非一時的コンピュータ可読媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自律車両のテスト運転に使用するためのステアリング・システムに関する。本発明はまた、解除方法、並びにその方法を実施するデータ処理システム、コンピュータ・プログラム製品、及びコンピュータ可読媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
人々は、より簡単でより快適な運転体験を求めており、したがって、車両を操舵する際に運転者を支援するための様々な解決策が当技術分野で知られている。自律的な自動運転機能を有する車両、すなわち、使用者の介入を伴わずに又は最小限の使用者の介入を伴って、自身を運転することができる車両も知られている。
【0003】
米国特許出願公開第2003/0221898(A1)号は、カウンタ・ステア動作時に操舵トルクを低減するように適合されるモータ駆動型操舵コントローラを開示している。EPSモータは、減速ギア及びラック・アンド・ピニオンを介して前ホイールを操舵するために設けられ、それによって、ステアリング・ホイールを動作させる操作者の力を低減し、これにより、操作者の車両運転を支援する。モータは、ステアリング・ホイールのシャフトに直接取り付けられているのではなく、ギアを通じて取り付けられているため、追加の可動部品が必要になり、これらの部品は摩耗及び不具合が発生しやすい。
【0004】
カウンタ・ステア・アシストに必要な操舵トルクが、計算され実行されるが、計算が誤っている場合には、操作者が操舵動作をオーバーライドすることができる。本文献は、安全なオーバーライドを保証する方式は開示していない。
【0005】
米国特許出願公開第2006/0015228(A1)号は、農業用車両などの移動機械における操舵不感帯のための方法及びシステムを開示している。方法は、操作者が手動で不感帯の値を測定し、この不感帯の値をコントローラで使用して不感帯を補償し、不感帯に関連する望ましくない影響を軽減することを含む。システムは、可逆式の電気モータを含み、これにより、ステアリング・ホイールを時計回り又は反時計回りの方向に旋回させることができる。電気モータの電流は、過大なトルクを発生させることなくステアリング・ホイールを旋回させるように調整されており、これにより、使用者によるオーバーライドが可能になる。モータはここでも直接駆動モータではなく、したがって、モータのトルクをステアリング・ホイールに伝達するために追加のギアが必要である。
【0006】
米国特許出願公開第2006/0195238(A1)号は、パラメータ駆動型解除による自動車両制御を実施するための方法及びシステムを開示しており、車両は、トラクター又は収穫機などの農業用車両である。車両は、予め定義されたルートに沿って自動的に誘導され、予め定義されたパラメータを超えた場合、新たな作動信号を受信するまで、自動運転のための操舵指令が一時停止される。システムのための予め定義されたパラメータは、最小車両速度、最大車両速度、車両とルートのベクトルとの間の進入角、クロストラック・エラー制限、車両の制動、座席スイッチ若しくはタイム・アウト・センサの信号、車両の過度の傾き若しくはロール、過度の加速など、又は使用者による手動オーバーライドとすることができる。車両は、好ましくは、非ギア式電気モータを利用する。
【0007】
EP1972482A2は、好ましくは産業トラック用のステアリング駆動システムを開示している。ステアリング駆動システムは、モータを有するステアリング駆動ユニットを備え、ステアリング駆動ユニットは、作動されると、駆動シャフトを介して調整ホイールを駆動する。本文献は、ステア・バイ・ワイヤの解決策を開示しており、ステアリング・システムにブラシレス電気モータが接続されている。調整ホイールがモータによって駆動されると、運転者又は操作者は、ステアリング・デバイスと調整ホイールとの間の直接接続を感じることができる。
【0008】
米国特許出願公開第2012/0130596(A1)号は、車両誘導システムを開示しており、車両は、農業用車両であり、燃料又は農業用資材の効率的な使用を保証するために、所定の経路に沿って誘導される。車両は、ハブが、ステアリング・シャフトに接続されている、ステアリング・ホイール及びハブを有するステアリング・ホイール・アセンブリと、ステアリング・ホイール・アセンブリを直接駆動する駆動アセンブリと、を含む。駆動アセンブリの軸は、ステアリング・ホイール・アセンブリと同軸である。本文献は、駆動アセンブリが超えることのできないトルク制限が開示されていないため、例えば、事故を回避するために必要と思われるときに運転者がいつでも車両の制御を引き継ぐことができることは保証されていない。
【0009】
米国特許出願公開第2014/0214275(A1)号は、精密農業用の操舵コントローラを開示している。操舵コントローラは、車両を所望の経路に向けるために、車両のステアリング・シャフトを回転させることができる。車両のステアリング・シャフトにハブを連結することができ、モータは、ハブを回転させることによってステアリング・シャフトを回転させることができる。車両は、好ましくは農業用車両であり、そのステアリング・システムは、典型的には、油圧ベースのシステムである。操作者は、ステアリング・ホイールを回転させることによって、車両の制御を引き継ぐことができるが、どのようにしてそれが可能であるかを本文献は開示していない。
【0010】
米国特許出願公開第2016/0334790(A1)号は、自律車両改造システムを開示している。ステアリング・モータは、ステアリング・コラムにトルクを加えるために利用され、ステアリング・モータは、ブラシ付きモータ又はブラシレス・モータなどの電気モータとすることができ、ステアリング・モータは、プーリ又はギアを介してステアリング・コラムと相互作用する。使用者の発見を検出することができ、使用者は車両の制御を引き継ぐことができ、システムは更に、使用者が加えたトルクの方向を導出することができる。
【0011】
知られているアプローチに鑑みると、様々な交通状況及び運転条件下での自律車両のテストに使用することができ、テスト中に起こり得る不測の事態又は危険な状況が生じた場合に、使用者又は運転者の介入を可能にするステアリング・システムが必要とされている。テスト中に、特に車両の自律操舵に不具合又は問題が生じた場合に、使用者による解除又はオーバーライドを可能にするステアリング・システムが同じく必要とされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の主な目的は、先行技術のアプローチの欠点を可能な限り排除した、自律車両のテストに使用するためのステアリング・システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
用語「自律車両」とは、人間の運転者の介入を伴わずに少なくとも部分的に動作可能な任意の車両を指し、これらの車両は、例えば、自動運転自動車であるか、自動運転機能又は自律運転機能を有する半自動化された車両であって、自動運転機能又は自律運転機能が特定の道路又は環境条件又は運転状況(自動化された駐車など)に制限され得る車両であるか、或いは前記車両の自律運転を可能にするための手段を装備した任意の従来の車両(運転ロボットを備えた車両など)である。
【0014】
近い将来、あらゆる人間の介入さえ伴わずに動作させることができる自律車両の使用により、輸送が完全に自動化されることが想定される。しかし、そのような車両は、使用者、乗員、輸送品、車両自体、及び自律車両のルートにいる任意の他の人、車両、又は物体の安全を確保するためにテストを受ける必要がある。例えば、必要な安全要件を満たすためには、冗長なハードウェア及びソフトウェアの解決策が求められる。車両の自律運転を担うソフトウェアは安全でなければならず、まれな不測の事象を含む、可能なあらゆる環境、車両、及び交通条件において、車両を安全に操作できるように準備されていなければならない。
【0015】
一部の車両は、半自動化された解決策を有するように、すなわち、特定の条件下で車両が自律的に自身を運転できるように設計されているが、危険な又は不測の状況が生じた場合には、人間の運転者が介入する必要がある。
【0016】
安全な動作及び安全規制への適合を保証するためには、自律車両及びその車両の運転を担うソフトウェアを徹底的にテストする必要がある。このようなテストには、車両の実際の使用中に起こり得る様々な運転シナリオを含める必要があるため、交通量の多い公道での運転も含める。
【0017】
本発明の目的は、交通条件及び様々な運転状況における自律車両の安全なテストを可能にし、また、異なる自動化レベルの車両、更には完全に自動化された車両のテストも可能にする、ステアリング・システムを提供することである。
【0018】
自動運転車両の大きな問題は、自動運転機能のほとんどが、特定の条件下(例えば、高速道路、市街地エリア、特定の気象条件下、暗闇又は夜間など)でのみ使用されることを意図しているため、「脆弱性」に悩まされることである。脆弱性とは、車両の自動化された機能が、その使用が意図されている条件下では上手く機能するが、ソフトウェアが対処するように設計されていない状況に対処するために、システムが人間の介入を必要とする現象を指す。したがって、これにより人間の運転者に課題がもたらされ、すなわち、人間の運転者は、自動化が正しく機能していないことに気づく必要があり、なぜ正しく機能していないのかを理解する必要がある。ヒューマン・ファクターに関する研究によると、人間は、自動化に問題があることを検出するのが遅く、また問題が検出された後でも問題を理解するのが遅いことが示されている。自動化に不具合が生じた場合、運転者が車両の手動制御を引き継ぐか又は再開することが求められる不測の移行が突然生じる可能性があり、運転者は、車両の制御を引き継ぐ準備ができていない可能性がある。したがって、本発明の更なる目的は、様々な運転状況及び交通条件であっても、安全な解除及びオーバーライドを可能にするステアリング・システムを提供することである。
【0019】
本発明の更なる目的は、運転者又は使用者が車両の制御を引き継ぐことを可能にする解除方法を提供することである。
【0020】
更に、本発明の目的は、方法のステップを実施するための手段と、本発明による方法のステップを1つ又は複数のコンピュータ上で実装するための非一時的コンピュータ・プログラム製品と、方法のステップを1つ又は複数のコンピュータ上で実施するための命令を含む非一時的コンピュータ可読媒体と、を含む、データ処理システムを提供することである。
【0021】
本発明の目的は、請求項1に記載のステアリング・システムによって達成することができる。本発明の目的は、請求項10に記載の方法によって、請求項12に記載のデータ処理システムによって、請求項13に記載の非一時的コンピュータ・プログラム製品によって、及び請求項14に記載の非一時的コンピュータ可読媒体によって、更に達成することができる。本発明の好ましい実施形態は、従属請求項に定義される。
【0022】
先行技術のアプローチと比べた本発明によるステアリング・システムの主な利点は、様々な運転状況において異なる自動化レベルであっても自律車両のテストが可能であり、このため、不具合及び事故が発生しにくい、より安全な自律車両に貢献するという事実に由来する。
【0023】
本発明によるステアリング・システムの更なる利点は、ステアリング・システムを任意の従来のステアリング・システムと同様に動作させることができるため、訓練された安全運転者だけでなく、あらゆる運転者が使用することができ、したがって、テスト車両の運転に特別な技能は必要ないということである。任意選択で、本発明によるステアリング・システムはまた、例えば、ロボット・タクシー会社の車両を公道でテストするために、又は好ましくは、テスト中に他の車両の進入が許容されない閉鎖エリアでテストするために、運転者を伴わずに機能することができる。
【0024】
加えて、本発明によるステアリング・システムは、テスト運転者の訓練に使用することができる。訓練は、本発明によるステアリング・システムを装備したテスト車両を運転することを含むことができ、又は本発明によるステアリング・システムは、安全かつ確実なテスト環境においてテスト運転者に現実的な訓練を提供するテスト・ベンチ若しくは他の任意のシミュレーション環境に搭載することができる。
【0025】
本発明によるステアリング・システムは、ステアリング・ホイール又はジョイスティックなどの手動操舵の手段を備えない完全に自動化された車両にも、手動操舵のための手段を有する車両、すなわち半自動化された車両又は特定の条件下で自動運転機能を有する車両にも実装することができる。前者の場合、手動操舵のための手段を追加することで、安全な様式で自律車両のより複雑なテストを行うことができ、すなわち、車両の不測の挙動又は誤った挙動が検出された場合、人間の運転者が介入することができ、したがって、車両は閉軌道だけでなく、現実の交通条件の一般道路でもテストすることができる。後者の場合、ステアリング・システムは、車両の既存のステアリング・アクスルに組み込むことができる。
【0026】
本発明によるステアリング・システムは、自律車両、或いは車両の1つ若しくは複数の自律又は自動運転の機能又は特徴構成の質を専門的かつ徹底的にテストするために使用することができる。
【0027】
本発明によるステアリング・システムは、異なる自動化レベル、好ましくは、自動化のレベル1からレベル5までの技術をテストするように設計されている。レベル5の自動化は人間の運転者を必要としないが、自律運転ソフトウェアの開発及び微調整の目的のために、手動操舵用のインターフェース、例えばステアリング・ホイール、ジョイスティック、又はテスト中に安全な手動運転入力を提供できる任意の機構を有するテスト車両を有することが好ましい場合がある。このような運転者の手動介入により、自動化された運転を担うソフトウェアに何らかの不具合又はバグが生じたか、又はテスト運転中に不測の状況が生じた場合でも、車両及びその環境の安全性を確保することができる。
【0028】
例えば、レベル1の自動化は、運転者が常に手及び/又は足(両方である必要はない)で、車両を物理的に動作させることを必要とする。レベル1の自動化の例は、運転者が他の車両と安全な距離を保持するのを助けるアダプティブ・クルーズ・コントロールである。レベル2の自動化は、運転者が道路を監視し、好ましくは、急な通知で制御を引き継ぐことができるように、常に対応可能であることを必要とする。レベル2の自動化の例は、自動駐車である。レベル3の自動化の場合、運転者は、時折制御のために対応可能であることが想定されるが、十分に余裕のある移行時間が必要である。レベル3の例は、車両は、高速道路で、好ましくは、入口ランプ及び出口ランプの運転も含め、いかなる運転者の介入も伴わずに自力で移動できる車両である。レベル4では、運転者は、目的地又はナビゲーションの入力を提供しなければならないが、運転者は、移動中いつでも制御を引き継ぐことに対応可能であることは想定されない。現在、レベル4の車両は市場に存在しないが、レベル4の車両は、運転者のいかなる入力も介入も伴わずに、出発地から目的地までの全行程を完了できるはずである。自動化レベル1~4はすべて、運転者が、自動化された車両を監視して、車両が想定通りに機能しているかを確認し、自動化された車両が対処できない状況では介入する(制御を再開する)ことを必要とする。
【0029】
車両のステアリング・アクスルに駆動モータを直接実装することによって、優れた動的性能及び快適な運転体験を達成することができ、なぜなら、直接駆動モータは、操舵にごくわずかな慣性を加えるだけであり、運転者はそれに気づかず、したがって、通常の運転体験が提供され得るためであることが、認識されている。更に、直接駆動モータは車両を直接駆動することができるため、ステアリングの位置及び速度の正確な制御を達成することができ、追加の伝達システム又はギア、プーリ、ギアリングなどの必要性が排除される。追加の伝達システム又はギアがなければ、バックラッシュ又は摩耗が想定されず、このことは、本発明によるステアリング・システムの信頼性を向上させ、更に、ステアリング・システム内の可動部品の数を減少させ、このことも、ステアリング・システムのより信頼性の高い動作に寄与する。可動部品の数が低減されると、中間機械部品における損失を排除できることでステアリング・システムのエネルギー効率が向上し、部品の数が少なくなると、ステアリング・コラムに加えられる重量が小さくなり、これにより、より簡単で正確な運転が可能になる。これらのことがすべて相まって、ステアリング・システムの環境への影響が小さくなる。
【0030】
本発明によるステアリング・システムの更なる利点は、ステアリング・システムが、軸方向寸法が小さく、ボアが大きいコンパクトなサイズであり、これにより、ステアリング・システムをテスト目的で多種多様な車両に搭載することができることである。
【0031】
直接駆動モータを備えた本発明によるステアリング・システムは、高トルク対慣性比及び高トルク対質量比を有し、低トルク・リップル又はコギングを有し、及び低速でも高トルクを有する。
【0032】
本発明によるステアリング・システムは、更に、直接駆動及びステアリング・システムの部品数がより少ないことに起因して、低騒音及び低レベルの自励振動を有する。部品数がより少なければ、メンテナンスの必要性及び頻度も低減される。
【0033】
特定の実施形態では、ステアリング・システムは、ステアリング・システムの部品間に相対的に大きなエアギャップを伴って実装され、これにより、冷却要件が低減され、相対的に高い耐衝撃性ももたらされ、また汚れた環境における回復力も得られる。
【0034】
したがって、本発明によるステアリング・システムは、あらゆる自律車両のテストに使用することができる。
【0035】
本発明の好ましい実施形態を、以下の図面を参照して例示的に以下に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1】従来の電動ステアリング駆動装置の断面の概略図である。
図2】直接駆動モータを有する本発明による好ましいステアリング・システムの断面の概略図である。
図3】本発明によるステアリング・システムの好ましい実施形態の側面図である。
図4図3によるステアリング・システムの好ましい実施形態の断面図である。
図5】本発明による好ましいステアリング・システムの概略図であり、ステアリング・システムが他の車両部品に接続されている。
図6】本発明によるステアリング・システムの例示的なアーキテクチャである。
図7】シミュレーション環境に含まれる、本発明によるステアリング・システムの例示的なアーキテクチャである。
図8】推定に基づく解除事象を示す概略図である。
図9】直接駆動モータの電流信号に基づく可能な解除事象を示すグラフである。
図10】状態間にブリッジ状態を伴わない状態の変化の影響を示す図である。
図11】状態間にブリッジ状態を伴う状態の変化の影響を示す図である。
図12】ブリッジ状態を間に挟んだ2つの異なる予め定義された状態、及びトルクに関する各状態の典型的な解除制限の図である。
図13】ブリッジ状態を間に挟んだ3つの異なる予め定義された状態、及びトルクに関する各状態の典型的な解除制限の図である。
図14】ブリッジ状態を間に挟んだ4つの異なる予め定義された状態、及びトルクに関する各状態の典型的な解除制限の図である。
図15】垂直方向加速度の信号に対するスピード・バンプの影響を示す図である。
図16】異なる予め定義された状態に対する直接駆動モータのトルクとEPASアシスト・トルクとの間の関係を示すグラフである。
図17】本発明によるステアリング・システムの様々な使用及びその使用の関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
本発明は、自律車両のテストに使用するためのステアリング・システムに関する。本発明によるステアリング・システムは、事故又は危険な状況を回避し、テスト対象車両だけでなく、他の車両、物体、乗員などを含む、車両の環境の安全を確保するために、運転者若しくは使用者がステアリング・システムをオーバーライドできるように、又は車両の制御を引き継ぐことができるように、車両を手動で操舵するように構成された手動操舵手段を備える。手動操舵手段は、好ましくは、ステアリング・ホイール、ジョイスティック、若しくは車両を手動で操舵するために使用できる任意の他のハンドルである。
【0038】
本発明によるステアリング・システムは、手動操舵手段に取り付けられたステアリング・アクスルと、ステアリング・アクスルに対するトルクに制御可能に作用する直接駆動モータと、を更に備え、直接駆動モータは、ステアリング・アクスルと同軸の回転軸を有する。直接駆動モータは、好ましくは、ブラシレスDCモータなどの永久磁石同期モータである。
【0039】
本発明によるステアリング・システムは、異なる運転条件を特徴付ける少なくとも2つの予め定義された状態を有し、運転条件は、好ましくは、駐車操作、渋滞、市街地運転、郊外運転、低速運転、高速運転、緊急操作、及び閉軌道運転のうちの少なくとも1つを含む。好ましくは、予め定義された状態は、少なくとも1つの状態パラメータに基づいて判定され、少なくとも1つの状態パラメータは、車両の速度、横方向加速度、ヨーレート、及び/又は縦方向加速度である。
【0040】
各予め定義された状態は、少なくとも1つの予め定義された解除制限を有し、予め定義された解除制限を超えると、好ましくは、直接駆動モータの解除を開始する。好ましくは、解除の場合、車両の運転者又は使用者は、通知を受け、車両の制御を引き継ぐように要求される。
【0041】
本発明によるステアリング・システムは、制御パラメータに基づいて動作可能なコントローラ・アセンブリを更に備える。制御パラメータは、好ましくは、手動操舵手段の位置、手動操舵手段に対するトルク、手動操舵手段に対する力、手動操舵手段の速度、又は直接駆動モータ電流である。
【0042】
コントローラ・アセンブリは、車両の実際の予め定義された状態を検出するように構成されており、コントローラ・アセンブリは、動きコントローラと、モータ駆動ユニットと、フィードバック・デバイスと、を含む。動きコントローラは、達すべき制御パラメータの規定の値を含む指令を生成するように構成されている。モータ駆動ユニットは、動きコントローラから受信した指令に基づいて、直接駆動モータに電力を供給するように構成されており、フィードバック・デバイスは、制御パラメータの実際の値を監視し、指令に従った制御パラメータの規定の値と制御パラメータの実際の値との間の差分値を判定するように構成されている。フィードバック・デバイスは、差分値に基づいて、実際の予め定義された状態に対応する少なくとも1つの予め定義された解除制限に達した場合に、直接駆動モータの解除を開始するように、更に構成されている。
【0043】
動きコントローラは、好ましくは、上位コントローラと、下位コントローラと、を備え、上位コントローラは、好ましくは、直接駆動モータのための制御パラメータの規定の値を含む動きプロファイルを生成し、下位コントローラは、動きプロファイルを受信し、達すべき制御パラメータの規定の値を含む指令を生成する。
【0044】
コントローラ・アセンブリは、好ましくは、上位コントローラによって生成された動きプロファイルを、下位コントローラによって受信可能な信号に変換するために、上位コントローラと下位コントローラとの間に配置されたドライブ・バイ・ワイヤ・ユニットを更に備える。
【0045】
本発明によるステアリング・システムは、好ましくは、2つの予め定義された状態の解除制限間の円滑な移行を提供する、2つの予め定義された状態間の中間ブリッジ状態を有する。
【0046】
本発明によるステアリング・システムの好ましい実施形態を、図1図17に関連してより詳細に以下に説明する。
【0047】
図1は、モータ15によって駆動されるステアリング・アクスル10を備える従来のモータ式ステアリング駆動装置の断面の概略図であり、モータ15は、駆動ギア12及び減速ギアボックス14を通じてステアリング・アクスル10に取り付けられている。ステアリング・アクスル10の周りには、好ましくは、少なくとも1つの軸受け11が配置されている。ステアリング・アクスル10は、第1の軸17の周りを回転可能であり、モータ15は、第2の軸18の周りを回転可能である。図1などの従来のモータ駆動装置では、第1の軸17と第2の軸18とは一致せず、同軸でもなく、したがって、駆動ギア12の必要性が生じる。好ましくは、角度センサ13が、モータ15に取り付けられて、手動操舵の手段として、ステアリング・アクスル10に取り付けられたステアリング・ホイールの位置を示すために使用することができるモータ15の回転を測定する。角度センサ13はまた、典型的には、第2の軸18の周りを回転する。モータ15がブラシレスDCモータ(BLDCモータ)である場合、モータは、好ましくは、ブラシレスDCモータを整流するための整流信号を生成する整流エンコーダ16を装備する。整流エンコーダ16はまた、好ましくは、第2の軸18、すなわちモータ15の軸の周りを回転するように配置される。
【0048】
図1とは逆に、図2は、本発明によるステアリング・システムの断面を示しており、ステアリング・システムは、第1の軸27の周りを回転可能なステアリング・アクスル20と、ステアリング・アクスル20の第1の軸27周りを同じく回転可能な直接駆動モータ25と、を含む。ステアリング・システムは、好ましくは、ステアリング・アクスル20の周りに少なくとも1つの軸受け21を更に備える。ステアリング・システムは、好ましくは、ギア22を介してステアリング・アクスル20に取り付けられる角度センサ23を更に含み、角度センサ23は、好ましくは、ステアリング・アクスル20及び直接駆動モータ25の第1の軸27と平行に配置される第2の軸28の周りを回転可能である。
【0049】
本発明によるステアリング・システムの実装形態の一例を以下に示す。当該例によるステアリング・システムは、以下のハードウェア構成要素を含む。
- 受動冷却及びアルミニウム合金ハウジングを有する直接駆動モータ25としてのブラシレスDCモータ(BLDCモータ)であって、アルミニウム合金が、好ましくは、7075アルミニウム合金(AA7075)である、ブラシレスDCモータ、
- 角度センサ23として、360°を上回る位置でも正確な位置測定が可能な光学走査機能を備えたアブソリュート多回転エンコーダ、
- 好ましくは18Aの連続RMS電流及び36AのピークRMS電流を有する、高性能サーボ・ドライブ、
- 直接駆動モータ25のロータの巻線の温度を監視するための巻線用温度センサ、
- 直接駆動モータ25に電力を供給するための昇圧コンバータ(好ましくは12V/48V及び50Aの仕様を有する)、及び
- 好ましくはテスト対象車両の元の(OEM)ステアリング・コラムである、ステアリング・アクスル20。
【0050】
図3及び図4は、本発明によるステアリング・システムの好ましい実施形態を示す図であり、図3は、ステアリング・システムの側面図であり、図4は、ステアリング・システムの断面図である。
【0051】
図3及び図4によるステアリング・システムは、ステータ35aと、ロータ35bと、モータ・シャフト35cと、を有する直接駆動モータ35を含み、直接駆動モータ35は、軸37の周りを回転可能である。モータ・シャフト35cは、モータ・シャフト35cの軸37がステアリング・アクスル30の軸と同軸になるように、すなわち、ステアリング・アクスル30とモータ・シャフト35cとの両方が軸37の周りを回転可能になるように、ステアリング・アクスル30の周りに配置されている。好ましくは、ステアリング・アクスル30は、テスト運転のために使用される車両の元のステアリング・コラムである。
【0052】
直接駆動モータ35は、好ましくは、モータ・ハウジング36内に配置される。直接駆動モータ35のステータ35aとモータ・ハウジング36との間に十分に強固な接触を提供するために、好ましくは、特殊な接着剤の形態の接合方法が使用される。ロータ35bとモータ・シャフト35cとの間にも、同様の接合方法を適用することができる。直接駆動モータ35のモータ・ハウジング36は、好ましくは、モータ・ハウジング36をステアリング・アクスル30に固定するために、ステアリング・アクスル30の元のボルト孔を使用する。
【0053】
好ましくは、モータ・シャフト35cの周りに1つ又は複数の第1の軸受け31が配置され、図3及び図4による好ましい実施形態では、直接駆動モータ35は、それぞれの軸受けハウジング38、48に配置される2つの第1の軸受け31を有する。
【0054】
直接駆動モータ35は、そのコンパクトなサイズにより慣性が低く、したがって、ステアリング・ホイールを制御するコントローラ・アセンブリが微調整又は調整されている場合、ステアリング・アクスル30に取り付けられたステアリング・ホイールを、要求された位置に正確に旋回することができる。更なる利点として、コンパクトなサイズの直接駆動モータ35は、ステアリング・アクスル30に過度の余分な重量を加えることがない。その結果、本発明によるステアリング・システムは非常に応答性が高く、十分なパワーを維持する。好ましくは、ロータ35bの巻線温度を監視するために、ステアリング・システム内に温度センサが配置される。
【0055】
ステアリング・システムは、好ましくは、48VのDC電流を使用するため、直接駆動モータ35に電力を供給するモータ駆動ユニットが必要となる。モータ駆動ユニットは、好ましくは、車両に組み込まれ、例えば、車両のトランクに組み込まれ、モータ駆動ユニットは、バッテリ及び/又は昇圧コンバータを含むことができる。
【0056】
モータ・シャフト35cは、好ましくは、クラッチ40を介してステアリング・アクスル30に接続され、クラッチ40は、好ましくは、第1のブラケット41を介してモータ・シャフト35cに接続される。
【0057】
ステアリング・アクスル30の延長部として、本発明によるステアリング・システムは、ステアリング・アクスル30の軸37に対して互いに同軸に配置された内側コラム32及び外側コラム34を含むことができる。内側コラム32と外側コラム34との間には、第2の軸受け49aを配置することができる。ステアリング・アクスル30の周りには、第3の軸受け49bなどの更なる軸受けを配置することができる。
【0058】
角度センサ33、好ましくは、アブソリュート・ロータリー・エンコーダは、ステアリング・アクスル30に直接搭載される。この好ましい実施形態による角度センサ33があれば、本発明によるステアリング・システムは、角度センサ33の設計能力のおかげで、動力喪失後であっても実際の操舵角位置を得ることができる。診断上の理由から、ステアリング・アクスル30とロータ35bとの間の差を測定するために、2つの角度センサ33を追加することが可能である。直接駆動モータ35に二重巻線を使用することによって、本発明によるステアリング・システムの冗長性を高めることもできる。
【0059】
図3及び図4の好ましい実施形態によれば、ステアリング・アクスル30及び角度センサ33は、プーリ42、44、及びタイミング・ベルト43を介して接続されている。
【0060】
ステアリング・システムは、ステアリング・システムの部品を互いに又は車両の構成要素に固定するための手段を更に含むことができる。例えば、連結具39を使用して、直接駆動モータ35に対する外側コラム34の位置を固定することができる。第2のブラケット45を使用して、直接駆動モータ35のモータ・ハウジング36の位置をステアリング・アクスル30に対して固定することができる。更に、第3のブラケット46を使用して、直接駆動モータ35を車両、すなわち車両のシャーシに接続することができる。第4のブラケット47を使用して、ステアリング・システム全体を車両のシャーシに搭載することができる。
【0061】
図5は、他の車両部品に接続されているステアリング・システムを示す、本発明による好ましいステアリング・システムの概略図である。図5によるステアリング・システムの好ましい実施形態は、人間の運転者54による車両の手動運転を可能にするためにステアリング・ホイール52に取り付けられたステアリング・アクスル50を備える。直接駆動モータ55が、ギアを伴わずにステアリング・アクスル50上に配置されており、直接駆動モータ55の回転軸は、ステアリング・アクスル50の回転軸と同軸である。図5によるステアリング・システムは、ステアリング・ホイール52の正確な位置を判定するための角度センサ53を更に含む。
【0062】
直接駆動モータ55及び角度センサ53は、ともに、角度センサ53からフィードバック位置信号を受信し、かつ車両を操舵するために直接駆動モータ55に指令を与えるコントローラ・アセンブリ56に接続されており、好ましくは、指令は、達すべき直接駆動モータ55の目標電流値を含む。コントローラ・アセンブリ56は、車両のステアリングに関する更なる情報を受信するために、インターネット、クラウド、又はデータベースなどの外部ネットワーク57に接続することができる。
【0063】
車両を操舵するためには、ステアリング・アクスル50を車両のホイール60と接続する必要がある。図5によると、ステアリング・アクスル50及びホイール60は、トルク・センサ59を有する中間シャフト51を介して接続されている。トルク・センサ59は、例えば、トーション・バーとして実装することができる。ホイール60及びトルク・センサ59は、好ましくは、ステアリング・アクスル50に加えられるステアリング・トルクをホイール60に伝達するラック・アンド・ピニオン61に取り付けられている。
【0064】
更に、電動パワー・アシスト・ステアリング(EPAS)63のための手段を、ギア62を介してラック・アンド・ピニオン61にも接続し、ホイール60のステアリングを更に支援することもできる。電動パワー・アシスト・ステアリング63のための手段は、好ましくは、電気制御ユニット(ECU)58から信号を受信する。
【0065】
図6は、本発明によるステアリング・システムの好ましいアーキテクチャ600を示している。破線の境界を有するボックスは、ステアリング・システムの部品及びそれに関連する部品が位置している、車両内の様々な位置を示している。可能な位置は、車両の運転席610、車両の助手席620、車両のトランク630、車両の中央コンソール640、及び車両のステアリング・コラム650である。
【0066】
運転席610には、車両を手動操舵するための手段が配置されており、好ましくは、ステアリング・アクスル601に接続されたステアリング・ホイール611が配置されている。ステアリング・ホイール611は、車両を操舵するために、ステアリング・アクスル601にトルクを加えることができる。
【0067】
助手席620に、好ましくは、助手席620の下方に、コントローラ・アセンブリが配置されており、コントローラ・アセンブリは、ステアリング・コラム650の要素と、好ましくは、車両のトランク630内に配置された電源632と、に接続されている。車両のトランク630には、主バッテリ631も配置されている。好ましくは、主バッテリ631と電源632とは両方とも、緊急停止のための手段641に接続されており、緊急停止のための手段641は、好ましくは、容易なアクセスのために中央コンソール640に配置されたボタンの形態で実装されている。
【0068】
ステアリング・コラム650には、クラッチ651、好ましくは滑り止めクラッチを介してステアリング・アクスル601に接続された直接駆動モータ655が配置されている。この配置において、直接駆動モータ655は、車両を操舵するために、ステアリング・アクスル601にトルクを加えることができる。直接駆動モータ655は、好ましくは、温度センサ652に熱的に連結されている。ステアリング・コラム650はまた、ステアリング・アクスル601と機械的に接触する操舵角センサ653を含む。
【0069】
直接駆動モータ655は、好ましくは、制御信号を受信するためにコントローラ・アセンブリ621と接続されており、コントローラ・アセンブリ621は、更に、直接駆動モータ655の温度を監視するために温度センサ652に接続され、またステアリング・アクスル601の回転位置に関する情報を受信するために操舵角センサ653に接続されている。
【0070】
ステアリング・アクスル601は、車両のサーボモータ602、好ましくは、車両の元のサーボモータ602に更に接続することができる。サーボモータ602も、直接駆動モータ655及びステアリング・ホイール611と同様に、ステアリング・アクスル601にトルクを加えることができる。
【0071】
図7は、シミュレーション環境に含まれる本発明によるステアリング・システムの例示的なアーキテクチャを示しているが、これは、自律車両のテストが必ずしも路上テストに限定されないためである。本発明によるステアリング・システムは、シミュレーション・テストにも使用することができ、その際、ステアリング・システムは、テスト・ベンチ、好ましくは、ハードウェア・イン・ザ・ループ(HIL(Hardware in the Loop))テスト・ベンチに搭載され、運転者は、テスト運転中と同様の様式でステアリング・システムと対話することができる。
【0072】
テスト・ベンチ、特にHILテスト・ベンチは、以下のテストを可能にすることができる。
- ステアリング・システムのコントローラ・アセンブリの堅牢性をテストすること、
- 直接駆動モータ75の機械的構造の堅牢性をテストすること、
- ステアリング・ホイール71などの手動操舵のための手段及びペダル76などのアクチュエータを使用することによって、オーバーライド機能及び運転者の可能な介入をテストすること、
- 実際の車両に組み込む前に、完全なステアリング・システムをテストすること、
- 新しいファームウェア、すなわちハードウェア構成要素又はソフトウェア構成要素を、それらの計画された更新の前にテストすること。
【0073】
上記のリストからわかるように、テスト・ベンチは、ステアリング・システムを車両に組み込む前の、ハードウェア構成要素の信頼性及び耐久性のテストを含む、本発明によるステアリング・システムのハードウェア構成要素のテスト及び微調整を可能にする。更に、ステアリング・システムを装備したテスト・ベンチは、サブシステム又はステアリング・システム全体のテスト及び検証にも使用することができる。また、本発明によるステアリング・システムを装備したテスト・ベンチは、車両の現実世界のテストに参加する前のテスト運転者の訓練にも使用することができる。ループテストにより、様々な運転シナリオをシミュレートすることもできる。
【0074】
運転者又は使用者は、ステアリング・ホイール71又は手動操舵のための任意の他の手段、及びペダル76などの1つ又は複数のアクチュエータなどのインターフェースと対話することができる。ステアリング・ホイール71は、直接駆動モータ75を装備したステアリング・アクスル70に接続されている。直接駆動モータ75は、ドライブ・バイ・ワイヤ・ユニット74を含むコントローラ・アセンブリによって制御される。ドライブ・バイ・ワイヤ・ユニット74は、好ましくは、ペダル76に接続されている。
【0075】
現実的な条件を提供するために、テスト・アーキテクチャには、車両電子制御ユニット(ECU(Electronic Control Unit))エミュレータ77及び電動パワー・アシスト・ステアリング(EPAS)エミュレータ73が含まれている。EPASエミュレータ73は、ステアリング・アクスル70に対するエミュレート・アシスト・ステアリング72を作成するために使用される。
【0076】
コントローラ・アセンブリへの入力パラメータを生成するために、シミュレーション・ソフトウェア79a及び仮想センサ79bを有するシミュレーション・コンピュータ78が使用される。シミュレーション・コンピュータ78は、好ましくは、仮想センサ・データ、交通シナリオ、及び車両モデルをコントローラ・アセンブリに提供する。コントローラ・アセンブリは、このシミュレートされた環境で実行可能であり、シミュレーション・コンピュータ78及び車両ECUエミュレータ77から信号及びデータを受信し、直接駆動モータ75及びペダル76に指令を与えることができる。指令は、好ましくは、直接駆動モータ75及びペダル76のために、ドライブ・バイ・ワイヤ・ユニット74によって変換される。EPASエミュレータ73は、好ましくは、シミュレーション・データ及びシミュレーション・コンピュータ78からの入力も使用する。
【0077】
以下では、解除の特徴についてより詳細に説明する。
【0078】
すでに上述したように、本発明によるステアリング・システムは、例えば、駐車、市街地運転などの異なる運転状況を特徴付ける少なくとも2つの予め定義された状態を有する。各予め定義された状態は、テスト対象車両の安全な動作を維持するために、少なくとも1つの予め定義された解除制限を有する。
【0079】
解除とは、安全上の理由から、自律運転を停止するべきであり、かつ車両の手動オーバーライドが必要となるアクションを指す。所定の解除制限は、車両の挙動が不安定になりつつあること、又は例えばエラーにより自律運転が危険になりつつあることを示し得る、ハードウェア制限又はその他の予め定義された閾値とすることができる。
【0080】
解除制限に達したとき、又はそれを超えたとき、テスト担当者、テスト対象車両の乗員、車両自体、及びテスト車両の計画ルートにいる任意の他の人、車両、又は物体の安全を確保するために、自律運転の手動オーバーライドが好ましい。
【0081】
安全なテストを保証するために、また、不必要な手動介入の可能性を低減するためにも、異なる運転状況には異なる解除制限が必要であることが認識されている。異なる運転状況は、予め定義された状態の基礎として機能する。
【0082】
予め定義された状態は、好ましくは、車両の速度(以下の点a)を参照)、横方向加速度、ヨーレート、及び/又は縦方向加速度などの、少なくとも1つの状態パラメータに基づいて判定される。状態パラメータ以外に、以下の点b)~f)に列挙されているパラメータも、所与の時点においてどの予め定義された状態が車両を特徴付けるか、すなわち車両の実際の予め定義された状態が何であるかを判定するための基礎として機能することができる。
a)車両の速度。車両の速度は、解除アクションの必要性を特徴付ける重要な要素であることが判明したため、車両の速度は、好ましくは、監視されるべきである。車両の速度を監視することで、車両の速度に基づく操舵制御(すなわち、速度依存の車両制御)も可能になる。車両の速度は、ABSブロックから発信され、CANバスを介して送信される表示された車両の速度によって導出することができる。車両のホイールに取り付けられたホール効果センサを探査し、ホイール・ティックに対応するセンサのアナログ信号を受信することなど、車両速度を判定するために、他の方法を使用することもできる。補助速度計も、車両の速度を判定するために知られており、市場で入手可能である。好ましくは、複数の方法を同時に使用して冗長な速度測定を行うことができる。速度信号の安全レベルは、可能な最高の安全性を達成するために、好ましくは、ASIL-Dレベルに対応し、したがって、冗長な速度信号認識が望まれる。
b)基準位置又はトルク。上位コントローラ及び下位コントローラを有するステアリング・システムでは、上位コントローラは、動きプロファイル、すなわち基準信号を下位コントローラに送信し、基準信号は、達成すべき目標位置又は目標トルクなどの制御パラメータの規定の値を含む。上位コントローラは、目標値に達するために必要な加速度を計算し、計算された加速度が安全制限を上回り、車両又は自律運転ソフトウェアの不測の挙動又は誤った挙動を示す場合に、自律運転システムから制御を引き継ぐよう運転者に警告する。警告は、視覚的及び/又は音声的なサインの形態で送信することができる。このような警告の場合、下位コントローラは、好ましくは、車両の安全を確保する下位リミッタ内で車両の制御を継続する。このようにして、目標値の急激な上昇を回避することができる。
c)ステアリング・ホイール又はステアリング・アクスルの速度。ステアリング・ホイール又はステアリング・アクスルの速度は、好ましくは、車両のステアリング位置センサ、又は直接駆動モータの位置センサのいずれかを使用して計算することができる。車両のステアリング位置センサ又は直接駆動モータの位置センサは、好ましくは角度センサである。安全性及び冗長性のために、ステアリング位置センサと直接駆動モータの位置センサとの両方を使用することが可能である。ステアリング・ホイールの最高速度は、好ましくは、解除制限を定義し、解除制限とは、これを超えることができないものであり、超えた場合は、下位コントローラが直ちに運転者に警告を発し、自動化された操舵機能を解除するものである。好ましくは、少なくとも1つの操舵角センサがステアリング・アクスルに取り付けられている。更により好ましくは、少なくとも2つの操舵角センサが、ステアリング・アクスルに取り付けられ、1つは直接駆動モータに取り付けられ、もう1つは車両に元々搭載されている(内蔵型ステアリング・ホイール位置センサ)。上で説明したように、安全上の理由から、冗長信号の使用が好ましい。
d)ステアリング・ホイール又はステアリング・アクスルの目標位置。好ましくは、ステアリング・ホイール又はステアリング・アクスルの目標位置も、主に、好ましくは高精度(±0.05~0.1°)を有する直接駆動モータの位置センサによって監視される。二次的に、内蔵型ステアリング・ホイール位置センサをステアリング・ホイールの目標位置の監視に使用することもできるが、通常は精度がより低く、したがって、内蔵型ステアリング・ホイール位置センサの使用は、好ましくは、フォールバックの選択肢のみである。
e)操舵の可能性の推定。自律ソフトウェアは、好ましくは、目標位置又は目標トルク値を計算し、直接駆動モータに、好ましくは、上位コントローラ及び下位コントローラを介して送信する。上位コントローラの要求が下位コントローラによって無視される場合、解除制限を超えると推定される位置又はトルクの目標値に達するため、本発明によるステアリング・システムは、好ましくは、解除が起こる前に運転者に通知し、したがって、運転者が必要な安全アクションを行うための時間を確保する。図8は、カーブで解除制限を超えることが想定される例を示している。
f)直接駆動モータの電流。下位コントローラは、直接駆動モータの出力電流をトルクに変換する。直接駆動モータの電流に関連して、1つよりも多い解除制限を定義することができる。例えば、ハードウェア制限であって、ハードウェア制限を超えると解除がもたらされるため、超えることができない制限を定義することができる。ハード制限(すなわち、超えることができない制限)の他に、ソフト制限も解除制限として定義することができる。ソフト制限は、好ましくは、例えば、所与の時間にわたって超えることができる。ソフトウェア制限の場合、制限を超えた時間がある制限を超えるか、又はパラメータの累積値がある制限を超える場合にのみ、解除が起こる。図9は、直接駆動モータの電流に関連する、異なる解除制限に達する、及び/又は超える場合の例示的な影響を示している。
【0083】
上記のパラメータのうちの1つ又は複数を使用して、所与の時点において車両がどの予め定義された状態に属するかを判定することができる。例えば、車両の速度のみが決定的な要因となり得、場合によっては、他のパラメータの組合せも使用できる。
【0084】
上述したように、図8は、操舵の可能性の推定、すなわち、規定の目標パラメータで安全な操舵が可能であるか、又は将来の解除が想定されるかどうかの推定に基づく解除アクションを示している。
【0085】
車両80の自律運転ソフトウェアは、通常、ルート計画ユニットを備え、ルート計画ユニットは、知覚距離内に道路モデル84を有する。道路モデル84に基づいて、道路85がカーブしている場合でも、車両80を道路85上に保持するために必要となる絶対操舵トルク83を計算することができる。車両80がカーブ86に接近するにつれて、車両80を道路85に沿って運転するのに必要なトルクは増加する。想定される将来のトルクを、推定ユニット81によって、好ましくは、操舵可能性推定装置によって計算し、操舵トルクに関連して解除制限82と比較することができる。トルクの推定の結果、後の時点、すなわち車両80がカーブ86に入ったときに、解除制限82を超えることが想定される場合、車両80の運転者に警告87を送信することができ、運転者は、カーブ86に入る前に手動制御を再開することができる。ステアリング・ホイールに作用するトルクの他に、他のパラメータも、所定の解除制限に関して計算することができる。
【0086】
図9は、直接駆動モータの電流信号90に基づく解除事象を示すグラフである。電流信号90は、直接駆動モータの出力電流値を構成するものであり、時間の関数として示されている。下位コントローラでは、直接駆動モータの出力電流は、ステアリング・アクスルに作用するトルクに変換される。図8に関連して説明したトルクと同様に、所定の解除制限も、直接駆動モータの出力電流に関連付けることができる。出力電流については、所定の解除制限は、ハードウェア制限91(超えることができないハード制限)、及び/又は電流閾値92(特定の条件下で超えることができるソフト制限)とすることができる。ハードウェア制限91は、好ましくは、直接駆動モータのハードウェアによって定義され、ハードウェア制限91はハード制限であるため、ハードウェア制限91に達すると、解除が生じる(図9の解除点93を参照)。図9の例によれば、出力電流のハードウェア制限91は30Aに設定されており、したがって、出力電流の実際の値が解除点93でハード制限91である30Aに達するとすぐに、解除が生じる。出力電流が所定の解除制限、すなわちハードウェア制限91を下回り、電流閾値92も下回ると、自律運転を再作動させることができる(再作動点94を参照)。
【0087】
電流閾値92は、ソフト制限であり、したがって、例えば予め定義された時間間隔を超えることができる。電流信号90が電流閾値92を超える場合、好ましくはタイマーが始まり、電流信号90が電流閾値92を超える限りタイマーが動作する。タイマーによって測定された時間間隔が予め定義された時間間隔よりも短い場合、解除は生じない(解除を伴わない点95を参照)。図9はまた、電流信号90がより長い時間間隔にわたって電流閾値92を超える、したがって、解除点96で解除が生じる場合を示している。
【0088】
ソフト制限の場合、代替として、タイマーによって測定された時間間隔と電流閾値92を超える出力電流値とに基づいて、累積過剰信号を測定することができる。累積過剰信号は、電流閾値92を超える電流信号90の積分値、すなわちストライプで示される面積として計算することができる。積分の代わりに、示された面積を近似する他の方法を使用することもできる。例えば、出力電流値の和に、タイマーによって測定される時間間隔を乗じることができる。
【0089】
例えば、超えた解除制限又は回復不可能な重大なエラーのために解除アクションが開始されると、車両の制御を引き継ぐために人間の運転者に信号が送信され、運転者引き継ぎウィンドウが始まる。運転者引き継ぎウィンドウの間、ステアリング・システムと自律ソフトウェアは、人間の運転者が車両の制御を引き継ぐまで、又は運転者引き継ぎウィンドウがタイムアウトするまで、車両の運転を継続する。人間の運転者は、車両を手動で操舵すること、作動レバーを使用すること、又は運転者のオーバーライドを示す任意の他の手段によって、制御を引き継ぐことができる。人間の運転者が車両の制御を引き継ぐことなく運転者引き継ぎウィンドウがタイムアウトした場合、安全操作が始まる。
【0090】
重大なエラーが発生し、ステアリング・システム及び自律ソフトウェアがもはや車両を確実に制御できなくなった場合、運転者引き継ぎウィンドウを開始することなく、直ちに安全操作が始まる。この場合でも、可能な限り早く車両の制御を引き継ぐために、人間の運転者に信号が送信される。この場合の信号は、好ましくは、より強く、より目立つ信号である。
【0091】
安全操作は、好ましくは、ドライブ・バイ・ワイヤ・コントローラに、下位安全機能として実装される。安全操作の間、ステアリングが先進運転支援システム(ADAS:advanced driver-assistance system)によって作動していた場合は、最後に受信した操舵要求が保持され、加速要求は受け付けられない。ただし、エラー時に制動要求が作動していた場合は、制動要求が保持される。エラー時に制動が作動していなかったが、ADASが制動を制御していた場合は、安全操作中に車両を減速させるためにわずかな減速が要求される。
【0092】
人間の運転者が運転者のオーバーライドを開始するか、又は作動レバーを押すと、安全操作はいつでも停止し、人間の運転者は車両に対する手動制御を得る。
【0093】
一例として、安全操作が始まると、最後の操舵角位置が保持され、車両が停止するまで車両の縦方向速度が低下する。
【0094】
更なる例では、安全操作が始まると、車両は、駐車位置を見つけ、減速し、車両を停止するように要求される。好ましくは、車両のハザード・ランプが作動する。
【0095】
予め定義された状態は、車両の運転中に生じる様々な動作環境に基づき得る。このような予め定義された状態としては、例えば、高速道路運転、市街地運転、郊外運転、駐車、閉軌道運転などを挙げることができる。予め定義された状態が異なれば、各運転状況の特徴に応じて、異なる解除制限を設定することが必要となることがある。車両の実際の予め定義された状態を判定する決定は、上記のパラメータa)~f)のうちの1つ又は複数に基づいて行うことができる。決定は、車両の速度などの1つのパラメータのみに基づいて行うことも、上記パラメータの組合せに基づいて行うこともできる。
【0096】
例えば、車両の実際の予め定義された状態に関する決定は、意思決定ユニットによって行うことができ、意思決定ユニットは、好ましくは、車両速度、車両の横方向加速度、ヨーレート、及び/又は縦方向加速度などの外部の慣性測定ユニット(IMU:inertial measurement unit)からの情報などの入力を有する。
【0097】
好ましくは、意思決定ユニットは、車両の環境の地図データ(例えば、SD又はHD地図データ)を受信し、地図データは、好ましくは、車両の高精度位置データ(例えば、リアルタイム・キネマティック測位(RTK:real-time kinematic)又はGPSデータ)及び/又は視覚データと融合される。視覚データは、好ましくは、カメラから導出され、交通標識(例えば、速度制限)に基づく情報を含むことができ、決定の信頼性を向上させることができる。意思決定ユニットは、車両の実際の状態を判定するために訓練された特定のニューラル・ネットワーク又は任意の他の機械学習アルゴリズムを実装することができ、したがって、車両の状態の変化も検出することができる。
【0098】
決定に追加のパラメータを含めることによって、決定の精度及び信頼性を向上させ、したがって、車両の予め定義された状態の誤分類の可能性を減少させることができる。任意選択で、以下のパラメータ及び測定値を更に決定に含めることができ、解除制限を判定する基礎としても機能させることができる。
【0099】
ほとんどの車両には、車両のトルクを測定するトーション・バーなどのトルク・センサ(TSUセンサ)が装備されている。トルク・センサの信号を監視することによって、意思決定ユニットは、人間の運転者によって加えられたトルクからフィードバックを得る。テスト運転の間、人間の運転者と直接駆動モータとの両方がステアリング・アクスルにトルクを加えることができ、完全な自律運転では、人間の運転者がステアリング・ホイール又は任意の他の手動操舵手段にいずれの力も加えなくても、車両は通常、運転者入力として直接駆動モータによって加えられたトルクを検出する。解除の可能性がある場合、人間の運転者、直接駆動モータ、又はその両方がステアリング・アクスルにトルクを加えたかどうかを知ることが好ましい。追加論理層を追加して、人間の運転者、直接駆動モータ、又はその両方がステアリング・アクスルにトルクを加えたかどうかを判定することができる。追加論理層は、決定に役立つ入力をトルク・センサから得ることができる。
【0100】
車両のサーボ・ドライブによって導入されるステアリング・アクスルの速度(ラックスピード速度としても知られている)に関する情報は、意思決定ユニットの堅牢性を高める可能性がある。サーボ・ドライブの許容可能な最大速度制限は、コントローラが人間の運転者に警告し、直接駆動モータをステアリング・システムから解除する、解除制限とすることもできる。
【0101】
あらゆる種類の機械的、音響的、及び/又は光学的センサ(すなわち、ひずみセンサ)を、ステアリング・ホイール又はステアリング・ホイールの周囲に取り付けることができる。ひずみセンサの信号に基づいて、解除を開始することができる。例えば、ある特定のデシベル制限を上回ると、大きな叫び声(例えば、「停止してください」)がステアリング・システムによって検出され、横方向制御が即座に解除される。これは、例えば、緊急制動及び車両の安全な停止を開始することによって、車両の乗員の安全を確保することができ、ステアリング・ホイール又は手動運転のための他の手段を備えない完全な自律車両に使用することができる。
【0102】
好ましくは、各テスト車両は、自動運転を可能にするための外部IMUセンサを装備している。IMUセンサは、車両のピッチ、ロール、及び/又はヨーを監視することができ、したがって、一方では直接駆動モータからの必要なトルクを瞬間的に増加させるが、他方ではいずれの危険ももたらさない、外部ノイズ、スピード・バンプ、岩を判定するためにも有用であり得る。岩やスピード・バンプにぶつかるような事象は、解除の理由であってはならず、したがって、1つ又は複数のIMUセンサの信号を意思決定ユニットに入力することで、不必要な解除の危険を低減することができる。スピード・バンプがトルク信号に及ぼす影響を図15に示す。
【0103】
本発明によるステアリング・システムは、少なくとも2つの異なる予め定義された状態を有する。以下では、典型的な予め定義された状態のいくつかの例をより詳細に説明する。図12図13、及び図14はまた、それぞれ、2つ、3つ、及び4つの予め定義された状態を有するステアリング・システムの好ましい実施形態を示している。
【0104】
自律車両の可能な運転シナリオは、閉軌道での運転である。自律車両のテストには通常、閉軌道が使用され、なぜなら、閉軌道では公共の交通が存在しないため、テストを安全で安心な環境で実施できるためである。閉軌道運転の状態では、すべての解除制限をオフにして、車両の真の自動運転能力をテストすることが可能である。このようなテストは、車両内に人間の運転者がいない場合でも実施することができる。解除制限がオフになっているか、又は達することができない値に設定されていた場合でも、不測のソフトウェア・エラーが発生した場合に車両自体の安全を保持するために、人間の運転者は、車両内にいることができ、本発明によるステアリング・システムの手動操舵のための手段(例えば、ステアリング・ホイール)を介して、車両の自律動作をオーバーライドすることができる。
【0105】
閉軌道運転の状態により、車両製造者又は車両テスト者は、自身のテスト車両(完全に自動化された運転者がいない車両であっても)に、車両のテスト日のために本発明によるステアリング・システムを装備することができる。このようにして、車線保持支援、緊急追い越し、事故回避、及び他の自動化された運転機能などの機能をテストすることができる。人間の運転者は、車両の内部からテストを監督し、緊急の場合には介入して、事故及び車両の可能な損傷を防ぐことができる。
【0106】
他の予め定義された状態は、駐車場での運転を含み得る駐車の状態とすることができる。駐車の場合、又は車両が駐車場で動作している場合、車両の速度は相対的に低く、典型的には、0~15km/hの範囲内であるが、車両を移動させるためにより高いトルクが必要になる場合がある。この状態では、速度がより低いことに部分的に起因して、危険レベルは相対的に低く、人間の運転者は、ステアリング・システムを容易にオーバーライドし、車両を手動で操舵しなければならない。ピーク・トルクは、±10Nmの範囲内、好ましくは、±8Nm、又は±6Nmの範囲内とすることができる。ピーク・トルクは、縦方向の力、横方向の力、線形減衰、慣性効果、フロント・リフト、摩擦などの様々な要因に依存し得る。直接駆動モータからの必要な平均トルクは、典型的には、4Nmよりも高い。
【0107】
更なる予め定義された状態は、渋滞中の運転も含み得る市街地運転の状態とすることができる。都市及び町などの市街地エリアでは、最高速度は、典型的に、50km/hに制限されるが、正確な速度制限は国の法律及び規制によって規制される。そのため、市街地エリアでの運転は適度な速度での移動に相当するが、歩行者などに起因する不測の状況が、駐車場にいる場合よりも頻繁に起こり得る。市街地環境はまた、急な坂道、ロータリー、急な曲がり角又はカーブのある道など、様々な道路条件及びルートを含み得る。市街地環境であっても、緊急制動は可能であるべきであり、したがって、市街地運転の状態の速度範囲は、0km/h~50km/hであるべきである。市街地環境では、車両は適度な速度で移動するため、パワー・アシストは、円滑な動作のために直接駆動モータに十分なトルクを提供することができる。人間の運転者、特に訓練されたテスト運転者の反応時間は、車線を逸脱することなく動作をオーバーライドするのに十分である。ハンズオン動作は、必須のユース・ケースではないが、推奨される。自動緊急制動(AEB)作動中は、自動運転ソフトウェアは車両をその車線内に保持しなければならず、ステアリング・システムは、交差点及びロータリーでの状況に対処しなければならない。
【0108】
郊外エリアでの移動については、更に別の状態を定義することができる。郊外エリアでは通常、速度制限が市街地エリアでよりも高い速度を許容しており、したがって、郊外エリアでは、車両の速度は、典型的には約50~70km/hの範囲内である。50~70km/hの速度範囲では、既存のステアリング・アシストは、通常、最高の性能を有し、すなわち、制限が適用されなければ、ステアリング・ホイールは、可能な最大速度で回転することができる。この速度範囲では、ステアリング・ホイールのこのような高速移動は車線逸脱をもたらし、したがって、車両を制御する人間の運転者には高レベルの注意力及び迅速な介入の能力が想定される。したがって、ステアリング・システムに制限が適用されない場合、人間の運転者は、いつでも車両の制御を引き継げるように準備していなければならない。この理由から、人間の運転者は、ステアリング・ホイール又は手動操舵のための任意の他の手段に絶えず手を置き続けることが想定される。ハンズオン運転の場合、人間の運転者の反応速度は著しく低下する。
【0109】
道路が1車線以上あり、車両を50~70km/hの速度で運転する郊外エリアでは、人間の運転者は、オーバーライドを上手く行うための時間をより多く有しており、又は解除の場合には、人間の運転者は、車両の制御を引き継ぐための時間をより多く有している。郊外運転の状態では、テスト中に直接駆動モータから必要とされる平均トルクは、約±3~6Nmの範囲内である。
【0110】
高速道路での運転もまた、予め定義された状態の基礎とすることができる。前述の予め定義された状態とは逆に、高速道路では、車両は、他の種類の道路よりも高い速度での走行することが許容されており、許容される最大速度は通常、国の交通規制によって異なる。典型的な最高速度は、130km/hであるが、ドイツのように、速度制限のない高速道路も存在する国がある。この理由から、他の車両も高速で移動している環境では、車両が高速で運転されることが想定される。可能な速度のカバー範囲は、0km/h~130km/hである。自動化された車両は、高速道路でも自動緊急制動(AEB)を行うことができなければならないので、高速道路を運転するための速度範囲には、より低い速度も含める必要があり、極端な場合には、0km/hも含める必要がある。つまり、ステアリング・システムはアクティブでなければならず、テスト車両の前方の車両が完全に停止したときに反応することが可能でなければならない。本発明によるステアリング・システムは、例えば、インターチェンジ又はジャンクションにある急カーブにも対処することができる。ステアリング・システムはまた、高速道路上の傾斜したカーブでも車両を誘導することができる。
【0111】
通常の動作では、緊急制動状況が生じる場合でも、車両は高速道路上でその車線を保持することになっている。人工知能、又は、例えばレーダー、視覚センサ、ライダーなどのセンサ・データに基づいて、及び予測モデルを使用することによって、テスト車両は、事故を回避するために緊急状況でも車線変更を行うことができる。車線変更は、自律的に行うことも、人間の運転者からのオーバーライドによって行うこともできる。車線変更操作を行う前に、センサ及び運転者によっても目標車線を確認しなければならない。
【0112】
テストが車両の車線保持能力を分析するために行われる場合、単一の車線変更では、人間の運転者と車両の乗員とに対する最高の快適性を達成するために、迅速かつ正確な位置決めによる左右への軽い操舵(約±15°)が必要となる。2車線の変更では、よりダイナミックな動きが必要となる。
【0113】
高速道路運転の状態では、ステアリング・システムの直接駆動モータのピーク・トルクはそれほど高くなく、通常、約7Nmである。このようなトルクの抵抗は、人間の運転者によって容易に克服することができる。高速道路運転の状態で人間の運転者がテスト車両の制御を引き継ぎたい場合は、別の車線への進入を回避するために、ステアリング・ホイールを非常に慎重かつ円滑に旋回しなければならない。高速道路で生じる速度の高さにより、あらゆる不要な車線変更を回避するために、ステアリング・ホイールに過度の力又はトルクを加えないように、細心の注意を払わなければならない。
【0114】
ステアリング・システムが適切に機能しておらず、人間の運転者に車両を操舵させたくない場合、人間の運転者は、ステアリング・システムのトルクに打ち勝たなければならない。運転者がステアリング・システムをオーバーライドして解除を行うために、10Nmよりも大きいトルクを使用する必要がある場合、テスト車両はその過程で車線変更を行う可能性がある。
【0115】
直接駆動モータは、車線保持及び1回の車線変更に最大2~3Nmの平均トルクを使用することができる。このような場合、不十分なトルク、例えば、1.1Nm未満のトルクは、車両を旋回させない。これとステアリング・システムの摩擦とにより、角度誤差及び横方向誤差が生じる可能性があるが、このことは、平均トルク値を上回るトルクを提供することによって回避することができる。この現象は、他の予め定義された状態にも作用する可能性がある。
【0116】
高速道路運転の例示的な状態では、以下の制限が適用される。100ms超の間、車両の速度が25m/s~37.5m/sである場合、車両は、高速道路運転の状態にあることが想定される。高速道路運転の状態に関連する解除制限は、以下のとおりとすることができる。
- 100ms超の間、車両のヨーレートは±0.11rad/sを超えてはならない、
- 100ms超の間、車両の横方向加速度は、±4.2m/sを超えてはならない、
- 100ms超の間、ステアリング・ホイールの位置は±0.262radを超えてはならない、
- 100ms超の間、ステアリング・ホイール・トルクは±5Nmを超えてはならない、また
- 100ms超の間、手動でステアリング・ホイールに加えられるステアリング・ホイール・トルクは±2.5Nmを超えてはならない。
【0117】
上記の制限のうちのいずれか1つを超えると、解除がもたらされ、人間の運転者は、車両の制御を引き継ぐ必要がある。
【0118】
可能な更なる予め定義された状態は、緊急操作の状態とすることができる。この状態は、0km/hから高速道路で典型的に許容可能である可能な最高速度、例えば130km/h又は200km/hまでの速度範囲をカバーしなければならない。緊急状態は、緊急状況に相当し、緊急状況では、更に車両の高速で急な旋回、すなわち、事故を回避するための旋回が想定される。ステアリング・システムの直接駆動モータによって加えられるトルクは、±10Nmの範囲内とすることができる。
【0119】
異なる予め定義された状態は、典型的には異なる解除制限を有し、したがって、車両の状態が変化する場合、解除制限も大幅に変化し、不安定な車両動作、又は新しい状態の解除制限を超えることによる突然の解除アクションにつながる可能性がある。
【0120】
状態の変化に伴う問題を回避するために、異なる予め定義された状態間に、予め定義された状態間の解除制限の円滑な移行を可能にする中間ブリッジ状態を導入することできる。
【0121】
コントローラ・アセンブリは、利用可能なデータ、例えば、制御パラメータの実際の値に基づいて、車両の適切な実際の予め定義された段階を検出及び判定するために、意思決定ユニット、例えば、ニューラル・ネットワークを使用することがある。実際の予め定義された段階の変化が検出された場合、予め定義された状態間の解除制限の円滑な移行を可能にするブリッジ関数を適用するために、ブリッジ指令を生成することができる。車両の制御に不具合が存在する場合、又はブリッジ指令をある一定の時間内に配信できない場合、ステアリング・システムは、好ましくは、人間の運転者に警告し、制御を戻す。
【0122】
ステアリング・システムの意思決定ユニットは、可能な予め定義された状態及びそれらの変化を識別する必要があり、予め定義された状態間に中間ブリッジ状態を適用しなければならない。好ましくは、意思決定ユニットは、高速道路での渋滞などの状況を認識することができなければならない。意思決定ユニットが状況を緊急と定義する場合、状況は、高速道路運転の予め定義された段階から、渋滞を含む市街地運転の状態に即座に切り替わることができる。このような状況では、好ましくは、コントローラ・アセンブリが車両を操舵するための可能な最大速度制限が利用可能である。
【0123】
例えば、駐車の状態と市街地運転の状態との間、市街地運転の状態と郊外運転の状態との間、及び郊外運転の状態と高速道路運転の状態との間にも、ブリッジ状態を適用することができる。図10及び図11は、ブリッジ状態の有無による車両の状態の変化の影響を示している。
【0124】
図10は、ステアリング・システムにブリッジ状態を使用しない一例である。この例によると、まず、車両は、より低い、例えば、市街地又は郊外の速度(例えば、第1の道路標識108で示されるように、40km/h)で運転しており、これにより加えられるトルク100はより高く、次に、車両は、カーブ107に沿って、より高い速度制限を有する道路(例えば、第2の道路標識109で示されるように、110km/h)に入る。車両の速度の変化により、車両の実際の予め定義された状態も、例えばtにおいて、市街地又は郊外運転に対応する第1の状態から、高速道路運転に対応する第2の状態へと変化する。実際の予め定義された状態の変化に伴って、適用可能な解除制限も変化し、すなわち、第1の状態に対応する第1の解除制限101から、第2の状態に対応する第2の解除制限102へと変化する。図12に示される例によると、高速道路では大きなトルクが加わると望ましくない車線変更につながる可能性があり、そのためこれは回避すべきであることが示されているため、第1の状態の第1の解除制限101は、第2の状態の第2の解除制限102よりも高い。図10からわかるように、状態の変化はカーブ107の後に生じ、したがって、ステアリング・システムに加わるトルク100は、解除制限101と解除制限102との両方を下回るレベルまですでに減少している。したがって、この場合、ブリッジ状態の有無にかかわらず、点103、104では解除は生じない。
【0125】
逆に、図11は、車両がカーブ117内を移動し、カーブ117の間に状態の変化が生じる(tにおいて)一例を示している。この例では、カーブ117の第1の部分における速度制限は、カーブ117の第2の部分におけるそれ(例えば、第2の道路標識119によって示されるように、90km/h)よりも低い(例えば、第1の道路標識118によって示されるように、40km/h)。この場合、ステアリング・システムに加わるトルク110は、車両が第2の状態に入った時点で、第2の状態の第2の解除制限112よりも高くなる。これは、カーブ117の途中、すなわち、解除点114において即座に解除につながることになり、人間の運転者が車両の制御を引き継ぐために即座にアクションをとらない場合、危険な状態になる可能性がある。このような状況は、道路又は車線からの逸脱につながる可能性さえある。このような突然の解除は、解除制限の円滑な移行を可能にするブリッジ状態によって回避することができる。ブリッジ状態は、好ましくは、ブリッジ開始点113とブリッジ終了点116とをブリッジ関数115で接続することによって、状態の解除制限111と解除制限112との間の移行を定義するブリッジ関数115を含む。理解されるように、ブリッジ関数115は、移行時間を拡張することによって、第1の解除制限111と第2の解除制限112との間の円滑な移行を定義する。したがって、トルク110は、ブリッジ関数115よりも下に留まることができ、その結果、解除は生じない。
【0126】
ブリッジ関数は、状態の解除制限111、112を接続する任意の単調な関数とすることができ、例えば、ブリッジ関数115は、線形関数又は非線形関数とすることができる。
【0127】
図12は、異なる運転状況に対応する2つの予め定義された状態を有する本発明によるステアリング・システムの一例を示している。図12による運転状況は、低速運転に対応する第1の状態120を含み、これは好ましくは、駐車状況及び市街地環境での運転を含む。車両の典型的な速度は、市街地エリアにおける通常の速度制限が50km/hであることに起因して、約0~50km/hの範囲内である。ステアリング・アクスルに加わることになるトルクは、通常±8~10Nmの範囲内であり、これは特に駐車の場合、低い速度が典型的であり、ただし車両は、ステアリング・アクスルに、より高いトルクを必要とする急旋回も行うことが想定されるためである。加わるトルクに関する解除制限は、好ましくは、±10Nmに設定することができる。本発明によるステアリング・システムの他の実施形態では、第1の状態120を更なる状態、すなわち、図14と同様に、一方では駐車に対応し、他方では市街地運転に対応する別々の状態に分割することができる。
【0128】
図12の第2の状態122は、高速運転などの別の運転状況に対応し、約50~70km/hの典型的な運転速度を有する郊外エリアでの運転、約70~90km/hの典型的な運転速度を有する幹線道路での運転、及びまた典型的な運転速度が約90~200km/hの範囲内である高速道路又は自動車道での運転のシナリオをカバーする。好ましくは、第2の状態122では、車両は、典型的に、約50~200km/hの範囲内の速度で移動する。本発明によるステアリング・システムの他の実施形態では、図13及び図14と同様に、第2の状態122を更なる状態に分割することができる。
【0129】
第2の状態122では、車両の速度は相対的に高く、第1の状態120に比べてステアリング・アクスルに加わるトルクが小さいことが想定される。高速での高すぎるトルクは、意図しない車線変更につながる可能性があるため、回避されるべきである。第2の状態122では、±3~6Nmのトルク範囲が想定され、したがって、好ましくは、解除制限を±4Nm又は±6Nmに設定することができる。
【0130】
図11に関連して説明したように、ブリッジ状態121を導入して、状態120と状態122との間の解除制限の移行を円滑化することができる。図12によると、ブリッジ状態121は、第1の状態120と第2の状態122との間に導入される。
【0131】
好ましくは、図12によるステアリング・システムはまた、緊急状況に対処するための緊急状態(図示せず)を含む。緊急状態は、好ましくは、0~200km/hの速度範囲をカバーし、第1の状態120と同等の、好ましくは、±10Nmの解除制限を伴うトルク範囲を有する。
【0132】
図13は、異なる運転状況に対応する3つの予め定義された状態を有する本発明によるステアリング・システムの一例を示している。図13による運転状況は、駐車状況(駐車の状態)に対応する第1の状態130を含み、この場合、車両の典型的な速度は、約0~5km/hの範囲内であり、駐車の場合、低速が典型的であるため、ステアリング・アクスルに加わるトルクは通常±10Nm以内の範囲内であり、ただし、車両は、ステアリング・アクスルに対してより高いトルクが必要な急旋回も行うことが想定される。加わるトルクに関する解除制限は、好ましくは、±10Nmに設定することができる。
【0133】
図13の第2の状態132は、市街地環境での運転(市街地運転の状態)などの別の運転状況に対応する。市街地環境では、市街地エリアが通常、約50km/hの速度制限を有するため、車両は、典型的には、約5~50km/hの範囲内の速度で移動する。市街地運転の状態では、駐車の状態に比べてステアリング・アクスルに加わるトルクは小さくなることが想定されるが、急旋回も想定される可能性があり、市街地運転の状態では、±8Nmのトルク範囲が想定され、したがって、解除制限を±8Nmに設定することができる。
【0134】
図13に示す第3の状態134は、典型的な運転速度が約50~70km/hの郊外エリアでの運転などの高速運転、典型的な運転速度が約70~90km/hの幹線道路での運転、及びまた典型的な運転速度が約90~200km/hの範囲にある高速道路又は自動車道での運転に対応する。本発明によるステアリング・システムの他の実施形態では、図14と同様に、第3の状態134を更なる状態に分割することができる。
【0135】
異なる国の交通規制を考慮すると、第3の状態134には異なる速度制限が適用される。例えば、ドイツのようにいくつかの国では、速度制限のない高速道路も存在する。好ましくは、高速運転の状態の速度上限は、特定の国における道路車両の許容される最高速度又は可能な最高速度に対応する。高速運転の場合、高速道路は、カーブ及び急旋回が少ない傾向があるため、通常の動作では、より低いトルクが想定される。この理由から、トルクに関する高速運転の状態の解除制限は、市街地運転の状態のもの又は駐車の状態のものよりも低い。一例として、第3の状態134における解除制限を±4Nmに設定することができる。
【0136】
図11に関連して説明したように、ブリッジ状態131、133を導入して、隣接する状態130、132、134間の解除制限の移行を円滑化することができる。図13によると、第1のブリッジ状態131は、第1の状態130と第2の状態132との間に導入され、第2のブリッジ状態133は、第2の状態132と第3の状態134との間に導入される。
【0137】
好ましくは、図13によるステアリング・システムはまた、緊急状況に対処するための緊急状態(図示せず)を含む。緊急状態は、好ましくは、0~200km/hの速度範囲をカバーし、±10Nmの同様の解除制限を有する第1の状態130(すなわち、駐車の状態)と同等のトルク範囲を有する。
【0138】
図14は、図12、及び図13のステアリング・システムよりも多くの予め定義された状態を有するステアリング・システムの一例を示している。図14は、4つの異なる予め定義された状態(状態140、142、144、146)、及びそれらの間の3つのブリッジ状態141、143、145を示している。
【0139】
図14によるステアリング・システムは、第1の状態140として駐車のための状態を含み、第1の状態140の特徴は、約±9~10Nmの解除制限を有する図13の第1の状態130のものと同様である。
【0140】
図14の第2の状態142は、好ましくは、市街地運転の状態に対応し、その速度範囲は、約5~50km/hである。図14の第2の状態142の特徴は、約±7~8Nmの解除制限を有する図13の第2の状態132の特徴に対応する。
【0141】
50km/hを上回ると、図14によるステアリング・システムは、更に2つの予め定義された状態、つまり、郊外運転に対応する第3の状態144と、高速道路での運転に対応する第4の状態146と、を含む。第3の状態144(郊外運転の状態)は、好ましくは、約50~70km/hの速度範囲をカバーし、許容される最大トルクは、好ましくは、3~6Nmの範囲内にあり、したがって、第3の状態144は、約±6Nmの解除制限を有する。
【0142】
第4の状態146(高速道路運転の状態)は、好ましくは、約70~200km/hの速度範囲に対応する。高速道路での運転の制限速度が200km/hより高い場合には、第4の状態146は、好ましくは、そのより高い速度範囲も同様にカバーする。しかしながら、安全上の理由から、車両の可能な最高速度を制限すること、すなわち、車両が予め設定された最高速度制限よりも速く運転しようとした場合に、解除を行うことは合理的である。上述したように、高速運転の場合、ステアリング・アクスルに加わるトルクが相対的に小さい場合でも、車線を逸脱することを含む、危険な状況につながる可能性がある。この理由から、許容される最大トルクは、好ましくは2~4Nmの範囲にあり、したがって、第4の状態146は、好ましくは、約±4Nmの解除制限を有する。
【0143】
異なる予め定義された状態140、142、144、146間には、3つのブリッジ状態141、143、145が配置され、各ブリッジ状態141、143、145は、異なる予め定義された状態140、142、144、146の解除制限間の円滑で単調な移行を定義するブリッジ関数を有する。ブリッジ関数は、線形関数又は任意の他の単調な関数とすることができ、異なるブリッジ状態は、異なるブリッジ関数を有することができる。場合によっては、予め定義された状態140、142、144、146の解除制限間の差がより大きいとき、ブリッジ関数は、好ましくは、より長い時間期間に対応し、より長くより急峻でない移行を可能にし、それによって、解除事象の発生の確率を減少させる。
【0144】
好ましくは、図14によるステアリング・システムはまた、緊急状況に対処するための緊急状態(図示せず)を含む。緊急状態は、好ましくは、0~200km/hの速度範囲(すなわち、許容可能な全速度範囲)をカバーし、同様の解除制限、つまり、±9~10Nmの解除制限を有する第1の状態140(すなわち、駐車の状態)と同等のトルク範囲を有する。
【0145】
本発明によるステアリング・システムの他の好ましい実施形態では、第3の状態144及び第4の状態146は、異なる速度範囲に対応することができる。例えば、第3の状態144は、好ましくは、約±5~6Nmの解除制限を有する約50~90km/hの速度範囲に対応することができ、第4の状態146は、好ましくは、約±3~4Nmの解除制限を有する約90~200km/hの速度範囲に対応することができる。
【0146】
図15は、車両がスピード・バンプの上を運転した場合の影響に関する図を示している。スピード・バンプ151は、その高さにより、車両の垂直方向加速度150(Z加速度)の変化をもたらし、図15によると、Z軸の方向の加速度が変化する。スピード・バンプ151は、図15のグラフに示すように、垂直方向加速度150の信号に特徴的な変化を引き起こす。意思決定ユニットは、垂直方向加速度150の信号を受信した場合、垂直方向加速度150の変化がスピード・バンプ151の影響であることを容易に識別することができる。スピード・バンプ151を超えることも、トルクの増加をもたらすが、これは、解除を開始する理由にはならないものとする。
【0147】
図16は、異なる運転状況における、本発明によるステアリング・システムの直接駆動モータとEPASアシスト・トルクとの間のトルクの典型的な分布のグラフを示しており、X軸は、ステアリング・アクスル上の直接駆動モータによって加えられるトルクを示しており、Y軸は、EPASによって加えられるトルクを示している。運転状況は、駐車に対応する第1の状態161、市街地又は郊外運転に対応する第2の状態162、高速道路運転に対応する第3の状態163、市街地又は郊外運転に対応する第4の状態164、及び駐車に対応する第5の状態165を含む。
【0148】
高速道路運転に対応する第3の状態163では、EPAS側からのトルクはほとんど必要ないが、直接駆動モータは、高速道路での運転に必要なトルクをすべて提供することができ、直接駆動モータによって加えられるトルクも制限されており、すなわち、トルクは、±5Nmの範囲内にあることがわかる。これとは逆に、駐車状況(状態161、165を参照)では、直接駆動モータとEPASとの両方によって、より高いレベルのトルク(最大±10Nm)が必要となる。
【0149】
図17は、本発明によるステアリング・システムの様々な使用(すなわち、使用181、182、183、184、185)の図である。車両が公道で完全に自動化された自律運転を行うことを可能にするために、好ましくは、車両、その乗員、輸送される物品、並びにまた自律車両のルートにいる任意の他の車両、人、及び物体の安全を確保するために、以下のステップがとられることになる。
【0150】
第1のステップ171として、運転者は自律車両をテストするための訓練を受けることができ、運転者はタスクに慣れるようにすることができる。この第1のステップ171は、任意の訓練及び/又はシミュレーション環境を使用して実施することができ、好ましくは、本発明によるステアリング・システムを、運転者と自律運転ソフトウェアとの間のインターフェースとして使用することができ、ステアリング・システムは、好ましくは、テスト・ベンチに取り付けられている。したがって、本発明によるステアリング・システムの第1の使用181は、運転者の訓練とすることができる。第1のステップの第1の目標191は、車両及びステアリング・システムに精通し、したがって、通常の運転者よりも安全な様式でテスト運転を実施できる、訓練を受けた運転者を有することである。
【0151】
テストの第2のステップ172として、車両は、本発明によるステアリング・システムを装備することができ、したがって、第2の使用182として、本発明によるステアリング・システムは、いずれの自律運転ソフトウェアも用いずに、ステアリング・システム及びその構成要素の評価に使用することができる。第2のステップ172により、通常は自律ソフトウェアによって導入されるリミッタを用いずにステアリング・システムをテストすることができ、したがって、ハードウェア制限をテスト及び推定することができ、ステアリング・システムを可変入力で動作させることができる。したがって、第2のステップ172に関連付けられている第2の目標192は、本発明によるステアリング・システムのハードウェア制限を判定することである。
【0152】
テストの第3のステップ173として、自律シミュレーション・ソフトウェアを用いてテストを実施することができ、したがって、第3の使用183として、本発明によるステアリング・システムをシミュレーション運転環境で使用することができる(図7を参照)。シミュレーション環境では、ステアリング・システムの自律ソフトウェア及びハードウェアの堅牢性をテストすることができる。更に、本発明によるステアリング・システムの助けを借りて、運転者のオーバーライドの影響をテストすることもできる。第3のステップ173は、テスト運転者の更なる訓練にも使用することができ、これは、シミュレーション環境では、運転制限、解除制限も含めてシミュレートすることができ、更に、故障もシミュレーションに追加することができるので、テスト運転者は、そのような状況での対応の仕方を学ぶことができるためである。したがって、第3のステップ173に関連付けられている第3の目標193は、ハードウェア、ソフトウェア、及びファームウェアの堅牢性をテストすることであり、現実のような状況でテスト運転者の訓練を継続し、運転者のオーバーライドの徹底的なテストも可能にすることである。
【0153】
テストの第4のステップ174は、好ましくは、閉軌道運転によるステアリング・システムの微調整とすることができる。したがって、第4の使用184として、本発明によるステアリング・システムは、閉軌道運転において、またステアリング・システムのハードウェア及びソフトウェアの微調整のために使用することができる。テストの第4のステップ174に関連付けられている第4の目標194は、各予め定義された状態に対する解除制限を定義することである。
【0154】
テストの第5のステップ175は、公道におけるテストとすることができ、本発明によるステアリング・システムは、好ましくは、任意の製造者によって提供されるテスト車両に組み込まれ、本発明によるステアリング・システムの第5の使用185として機能する。第5のステップ175に関連付けられている第5の目標195として、車両の完全な自律動作をテストすることである。この場合、人間の運転者は、好ましくは車両内に存在し、警戒しており、必要に応じて制御を引き継ぐ準備ができている。テストの第5のステップ175の焦点は、自律ソフトウェアに置くことができるが、本発明によるステアリング・システムは、緊急状況においても、人間の運転者が介入し、あらゆる可能な事故を回避できることを保証する。
【0155】
本発明はまた、本発明によるステアリング・システムの直接駆動モータを手動操舵手段から解除する方法に関する。この方法は、制御パラメータの規定の値を達成するようにステアリング・システムの直接駆動モータに指令するステップを含み、制御パラメータは、好ましくは、手動操舵手段の位置、手動操舵手段のトルク、手動操舵手段の力、手動操舵手段の速度、又は駆動モータの電流である。
【0156】
本方法は更に、制御パラメータの実際の値を監視するステップと、制御パラメータの規定の値と制御パラメータの実際の値との差分値を生成するステップと、を含む。
【0157】
本方法はまた、差分値に基づいて、実際の予め定義された状態に対応する少なくとも1つの予め定義された解除制限に達した場合に、解除を開始するステップを含む。
【0158】
本発明はまた、本発明による方法のステップを実施するための手段を含むデータ処理システムに関する。
【0159】
本発明は更に、プログラムがコンピュータによって実行されると、本発明による方法の実施形態をコンピュータに実行させる命令を含むコンピュータ・プログラム製品に関する。
【0160】
コンピュータ・プログラム製品は、1つ又は複数のコンピュータによって実行可能であってもよい。
【0161】
本発明はまた、コンピュータによって実行されると、本発明による方法の実施形態をコンピュータに実行させる命令を含むコンピュータ可読媒体に関する。
【0162】
コンピュータ可読媒体は、単一のものであっても、より多くの別個の部分を備えてもよい。
【0163】
もちろん、本発明は、上記で詳細に説明した好ましい実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって決定される保護範囲内において、更なる変形、修正及び発展が可能である。更に、任意の従属請求項の組合せによって定義され得るすべての実施形態は、本発明に属する。
【符号の説明】
【0164】
10 ステアリング・アクスル
11 軸受け
12 駆動ギア
13 角度センサ
14 減速ギアボックス
15 モータ
16 整流エンコーダ
17 第1の軸
18 第2の軸
20 ステアリング・アクスル
21 軸受け
22 ギア
23 角度センサ
25 直接駆動モータ
27 第1の軸
28 第2の軸
30 ステアリング・アクスル
31 軸受け
32 内側コラム
33 角度センサ
34 外側コラム
35 直接駆動モータ
35a ステータ
35b ロータ
35c モータ・シャフト
36 モータ・ハウジング
37 軸
38 軸受けハウジング
39 連結具
40 クラッチ
41 第1のブラケット
42 プーリ
43 タイミング・ベルト
44 プーリ
45 第2のブラケット
46 第3のブラケット
47 第4のブラケット
48 軸受けハウジング
49a 第2の軸受け
49b 第3の軸受け
50 ステアリング・アクスル
51 中間シャフト
52 ステアリング・ホイール
53 角度センサ
54 人間の運転者
55 直接駆動モータ
56 コントローラ・アセンブリ
57 外部ネットワーク
58 電気制御ユニット(ECU)
59 トルク・センサ
60 ホイール
61 ラック・アンド・ピニオン
62 ギア
63 電動パワー・アシスト・ステアリング(EPAS)
600 アーキテクチャ
601 ステアリング・アクスル
602 サーボモータ
610 運転席
611 ステアリング・ホイール
620 助手席
621 コントローラ・アセンブリ
630 トランク
631 主バッテリ
632 電源
640 中央コンソール
641 緊急停止のための手段
650 ステアリング・コラム
651 クラッチ
652 温度センサ
653 操舵角センサ
655 直接駆動モータ
70 ステアリング・アクスル
71 ステアリング・ホイール
72 エミュレート・アシスト・ステアリング
73 電動パワー・アシスト・ステアリング(EPAS)エミュレータ
74 ドライブ・バイ・ワイヤ・ユニット
75 直接駆動モータ
76 ペダル
77 電子制御ユニット(ECU)エミュレータ
78 シミュレーション・コンピュータ
79a シミュレーション・ソフトウェア
79b 仮想センサ
80 車両
81 推定ユニット
82 解除制限
83 絶対操舵トルク
84 道路モデル
85 道路
86 カーブ
87 警告
90 電流信号
91 ハードウェア制限
92 電流閾値
93 解除点
94 再作動点
95 点
96 解除点
100 トルク
101 第1の解除制限
102 第2の解除制限
103 点
104 点
107 カーブ
108 第1の道路標識
109 第2の道路標識
110 トルク
111 第1の解除制限
112 第2の解除制限
113 ブリッジ開始点
114 解除点
115 ブリッジ関数
116 ブリッジ終了点
117 カーブ
118 第1の道路標識
119 第2の道路標識
120 第1の状態
121 第1のブリッジ状態
122 第2の状態
130 第1の状態
131 第1のブリッジ状態
132 第2の状態
133 第2のブリッジ状態
134 第3の状態
140 第1の状態
141 第1のブリッジ状態
142 第2の状態
143 第2のブリッジ状態
144 第3の状態
145 第3のブリッジ状態
146 第4の状態
150 垂直方向加速度
151 スピード・バンプ
160 トルク
161 第1の状態
162 第2の状態
163 第3の状態
164 第4の状態
165 第5の状態
171 第1のステップ
172 第2のステップ
173 第3のステップ
174 第4のステップ
175 第5のステップ
181 第1の使用
182 第2の使用
183 第3の使用
184 第4の使用
185 第5の使用
191 第1の目標
192 第2の目標
193 第3の目標
194 第4の目標
195 第5の目標
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
【国際調査報告】