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  • 特表-車両の運転方法 図1
  • 特表-車両の運転方法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-05
(54)【発明の名称】車両の運転方法
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/16 20060101AFI20240628BHJP
【FI】
G08G1/16 C
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023579090
(86)(22)【出願日】2022-05-23
(85)【翻訳文提出日】2024-02-22
(86)【国際出願番号】 EP2022063939
(87)【国際公開番号】W WO2022268425
(87)【国際公開日】2022-12-29
(31)【優先権主張番号】102021003284.5
(32)【優先日】2021-06-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】598051819
【氏名又は名称】メルセデス・ベンツ グループ アクチェンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Mercedes-Benz Group AG
【住所又は居所原語表記】Mercedesstrasse 120,70372 Stuttgart,Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100176946
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 智恵
(74)【代理人】
【識別番号】110003649
【氏名又は名称】弁理士法人真田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ケーファ ユージーン
【テーマコード(参考)】
5H181
【Fターム(参考)】
5H181AA01
5H181CC04
5H181CC14
5H181CC27
5H181LL02
(57)【要約】
本発明は、自動運転操作における車両(1)の運転方法に関する。本発明によると、前記車両(1)の車両後方空間が連続的に監視され、前記車両(1)に対する後続車両(2)の過度な接近が検知された場合、前記後続車両(2)に対して警告(W)が出力され、前記後続車両(2)が所定の時間の経過後も継続して前記車両(1)に過度に接近する場合、運転タスクに関する引き継ぎ要求が前記車両(1)の車両使用者に対して出力される。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動運転操作における車両(1)の運転方法において、
-前記車両(1)の車両後方空間が連続的に監視され、
-前記車両(1)に対する後続車両(2)の過度な接近が検知された場合、前記後続車両(2)に対して警告(W)が出力され、
-前記後続車両(2)が所定の時間の経過後も継続して前記車両(1)に過度に接近する場合、運転タスクに関する引き継ぎ要求が前記車両(1)の車両使用者に対して出力される
ことを特徴とする車両の運転方法。
【請求項2】
前記運転タスクが所定の追加時間の経過後に引き継がれない場合、前記後続車両(2)と前記車両(1)との前記過度な接近がなくなるまで、前記車両(1)の現在の走行速度が所定の値分低下する
ことを特徴とする、請求項1に記載の車両の運転方法。
【請求項3】
前記車両(1)は、前記所定の追加時間の経過後に、右側通行の場合はその車線(F1)内の右寄りの領域に移動し、左側通行の場合はその車線(F2)内の左寄りの領域に移動するように制御される
ことを特徴とする、請求項2に記載の車両の運転方法。
【請求項4】
前記警告(W)は、前記車両(1)の後部に配置された表示装置(6)上のテキストメッセージとして前記後続車両(2)に出力される
ことを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の車両の運転方法。
【請求項5】
前記警告(W)は、車両間通信によって前記後続車両(2)に送信される
ことを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の車両の運転方法。
【請求項6】
前記引き継ぎ要求が前記車両(1)に出力されるまでの前記時間は少なくとも30秒である
ことを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載の車両の運転方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動運転操作における車両の運転方法に関する。
【背景技術】
【0002】
独国特許出願公開第102018204572号明細書から、追突事故から車両を保護するための車両の制御装置および方法が公知である。この車両は、車両の緊急ブレーキが自動的に作動するように設定されている緊急ブレーキ機能を有している。この方法では、緊急ブレーキが自動的に作動する確率が高いことを制御装置が判断するようになっている。これに応じて、当該車両までの十分に高い安全距離を後続車両に維持させるために、少なくとも1つの警告信号が生成される。
【0003】
さらに、独国特許出願公開第10328755号明細書は、後続車両から前走車両、特に自動車までの距離が短くなり過ぎることを回避するためのシステムを説明している。そのために、前走車両は、後続車両までの距離を算出し、かつ後続車両に対する相対速度を算出するための装置を備えており、また、算出された距離と相対速度に基づいて最小距離が算出され、その最小距離を下回った場合、起こり得る衝突事故を回避するために、その距離がさらに縮まるのを防ぐための措置が講じられるようになっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、自動運転操作における車両の運転方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的は、本発明によれば、請求項1に示されている構成を有する方法によって達成される。
【0006】
本発明の有利な実施形態は、従属請求項の対象である。
【0007】
本発明による自動運転操作における車両の運転方法において、当該車両の車両後方空間が連続的に監視される。当該車両に対する後続車両の過度な接近が検知された場合、後続車両に対して警告が出力され、後続車両が所定の時間の経過後も継続して当該車両に過度に接近する場合、運転タスクに関する引き継ぎ要求が当該車両の車両使用者に対して出力される。
【0008】
本方法の適用により、当該車両と後続車両との間の事故のリスクを低減することができる。
【0009】
本方法は、当該車両までの距離を広げ、さらに、後続車両の運転者が、例えば誤って検出された障害物、いわゆる疑似オブジェクトまたはゴーストオブジェクトによる当該車両の予期せぬ制動操作に対して反応することができるように、当該車両までの適切な距離を後続車両に予防的に示唆する手法である。すなわち、本方法は、自動運転操作で走行している車両の誤った制動による後続車両との衝突に対し、追加的な保護を提供するものである。
【0010】
この場合、2台の車両間の距離、特に、後続車両が当該車両の緊急ブレーキに反応できる安全距離は、走行速度に依存している。これは、後続車両の制動距離が走行速度の増加に伴って長くなるからである。
【0011】
本方法が使用される場合、場合によっては不十分な側面も有している車両の自動運転操作に対する受容性を高めることができる。
【0012】
本方法の1つの実施形態では、運転タスクが所定の追加時間の経過後に引き継がれない場合、後続車両と当該車両との過度の接近がなくなるまで、当該車両の現在の走行速度が所定の値分低下する。例えば、当該車両が運転者なしで走行している場合、または車両使用者が、緊急事態などで手動による運転タスクを実行できない場合は、引き継ぎが行われない。
【0013】
当該車両の走行速度を低下させることによって、特に後続車両に対し、当該車両を追い越すように合図することになり、あるいは後続車両が当該車両に過度に接近しているため、当該車両の突然の制動に対して後続車両は反応できないことを再度示唆することとなる。速度を落とすことにより、特に、ゴーストターゲットを検知する危険もさらに低下させることができる。
【0014】
本方法のさらなる可能な実施形態では、当該車両は、所定の追加時間の経過後に、右側通行の場合はその車線内の右寄りの領域に移動するように、左側通行の場合はその車線内の左寄りの領域に移動するように制御される。このとき、当該車両は、特に、走行速度を落として自動運転操作を続行する。すなわち、このプロセスは、引き継ぎ要求が受け入れられず、当該車両がその走行速度を所定の値分低下させる場合に実行される。特に、後続車両に当該車両を追い越すことを合図するように、当該車両が右または左の車線区画線に向かって走行するとともに走行速度を低下することで、後続車両はそれ以上当該車両に過度に近づくことができなくなる。これにより、当該車両が、誤って検知された対象物によって急激な制動を開始しても、当該車両にとって後続車両はもはや追突のリスクにはならない。
【0015】
当該車両のさらなる発展形態では、後続車両に対する警告を、当該車両の後部に配置された表示装置上のテキストメッセージとして出力することができる。特に、このテキストメッセージには、当該車両に対する後続車両の距離を広げるように求める内容が含まれる。
【0016】
代替または追加の実施形態では、この警告は車両間通信によって後続車両に出力される。これにより、後続車両の運転者に直接警告することができる。すなわち、後続車両の運転者に直接的に警告を出力することが可能となる。つまり、この警告は後続車両の運転者に直接向けられている。
【0017】
本方法のさらなる実施形態では、引き継ぎ要求が当該車両に出力されるまでの時間は少なくとも30秒である。つまり、引き継ぎ要求の出力は、後続車両に向けて警告が出力された後、または後続車両内に警告が出力された後、最短で30秒後に行われる。すなわち、後続車両には、当該車両の警告に反応して、自動走行車両に対する距離を広げるために、少なくとも30秒の十分な時間が与えられる。
【0018】
以下では、本発明の実施例を、図面に基づき詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】対向する2つの車線を有する道路区間、自動運転車両、後続車両、対向車両、ゴーストオブジェクトを模式的に示す図である。
図2】追突を軽減するための方法を使用した場合の、対向する2つの車線を有する道路区間、自動運転車両、後続車両、ゴーストオブジェクトを模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
いずれの図においても、相互に対応する部分には、同一の参照符号を付している。
【0021】
図1は、対向する2つの車線F1、F2を有する道路区間Fを示している。右側車線F1では、自動運転操作中の車両1と、車両1の後続車両2が走行している。左側車線F2には対向車両3が存在する。
【0022】
車両1には自動運転操作のための支援システムが搭載され、車両1、特に支援システムは、車両使用者が自動運転操作中に別の活動を続けることができるように、運転タスク全体を実行する。
【0023】
支援システムは、車両1内および/または車両1上に多数の検知ユニットを備える周囲センサシステムを備えており、そのうちの少なくとも1つは、センサシステム4として設計されており、カメラ4.1を備えている。カメラ4.1の形態のセンサシステム4は、検知領域(詳細は不図示)が車両1の前方に向けられ、それによって車両1の前方にある道路区間Fの領域が検知されるように、車両1内または車両1上に配置されている。
【0024】
車両1の周囲にある障害物は、周囲センサシステム及びカメラ4.1の検知信号を用いて検出される。周囲センサシステムの制御装置により、特に検知された障害物に関連して、現状の危険度が判定される。判定された危険度に応じて、特に設定された閾値をこの危険度が上回った場合、例えば車両1と障害物との衝突リスクを軽減するために、車両1の制動が開始される。
【0025】
場合によっては、センサシステム4によって、疑似オブジェクト5、いわゆるゴーストオブジェクトが検出される状況が発生することがある。そのような疑似オブジェクトは、実際には存在しないオブジェクトであっても、センサシステム4によって検知されているため障害物となる。そのような疑似オブジェクト5の存在により、車両1の自動運転操作中に制動が誤って開始される。このことは、外部から理解可能な理由なく、車両1が制動、例えば緊急ブレーキを開始することを意味する。
【0026】
疑似オブジェクト5に対して、そのように開始された制動、いわゆる偽陽性エラーは、車両1と後続車両2の追突事故につながるおそれがある。特に、後続車両が、車両1に対して十分な距離を維持していない場合、つまり車両1に過度に接近する場合は、追突事故のリスクがある。
【0027】
車両1と後続車両2との間に十分な距離があれば、そのような追突事故を回避することができる。自動運転で走行中の車両1の場合、車間距離の制御は後続車両2により実現されるので、後続車両2に対して十分な距離を車両1が直接的に設定することは不可能である。
【0028】
車両1と後続車両2との距離が十分でないために起こるそのような追突事故のリスクを大幅に軽減するため、以下に説明する方法が提供される。
【0029】
図2は、対向する2つの車線F1、F2を有する道路区間Fを示しており、車両1は右側車線F1を自動運転操作で走行し、車両1の後方を走行する後続車両2が車両1に後方から過度に接近する様子を示している。
【0030】
周囲センサシステムは、少なくとも1つの検知装置、例えばレーダーベースの検知装置を備えており、少なくとも車両1の自動走行中に車両後方空間、すなわち車両1後部の領域を監視する。
【0031】
この周囲センサシステムの検知信号によって後続車両2が検出されると、車両1が疑似オブジェクト5によって誤った制動を開始した場合に、後続車両2が追突事故を回避するために一般的に必要となる距離a及び時間間隔tが算出される。この距離aと時間間隔tは、特に速度に依存する可能性がある。
【0032】
後続車両2が車両1に過度に接近し、検知された疑似オブジェクト5によって車両1が誤った制動を開始した場合に、さらなる距離aとさらなる時間間隔tとが後続車両2と車両1との追突事故を回避することができなくなるほど十分ではなくなると、車両1は後続車両2に対して警告を出す。
【0033】
1つの実施形態では、後続車両2に対する車両の警告Wがテキストメッセージの表示によって出力される。そのために、車両1の後方領域には表示装置6が配置されている。特に、距離aと時間間隔tとが十分でなくなった場合、テキストメッセージには、車両1に対する後続車両2の現在の距離aを広げるように求める内容が含まれる。
【0034】
代替的または追加的に、警告Wが車両間通信によって後続車両2に送信され、この車両内に出力される。後続車両2の運転者は、これにより、特に能動的安全(アクティブセーフティ)のための支援システムから直接警告を受ける。
【0035】
後続車両2が引き続き車両1に過度に接近し、距離aおよび時間間隔tが十分でなくなると、所定の時間、例えば30秒の経過後に、車両1の車両使用者が車両1の運転タスクを手動で実行するように、引き継ぎ要求が車両1に出力される。
【0036】
例えば車両1に車両使用者がいないという理由から、あるいは車両使用者が緊急事態で運転タスクを実行できないという理由から、追加時間が経過しても運転タスクが引き継がれない場合、車両1はその現在の走行速度を所定の値分低下させる。これは、後続車両2に対する、少なくとも1つの対向車線を考慮して車両1を追い越すような合図となる。
【0037】
さらに、この追加時間の経過後、車両1は車線F1の範囲内で右側の車線区画線Mの領域に寄り(移動し)、そこで走行速度を落として自動運転操作を継続することができる。車両1の右側の車線区画線Mの領域に寄り(移動し)、走行速度を低下させることにより、後続車両2はその他の道路利用者を危険にさらすことなく、追い越し操作を実行するように要求される。
【0038】
後続車両2が車両1を追い越すか、距離aを少なくとも距離aまで広げると、車両1は右側車線F1に関して位置を中央に戻し、自動運転操作に許可されている走行速度、特にその道路区間に適用されている走行速度まで現在の走行速度を上昇させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0039】
【特許文献1】独国特許出願公開第102018204572(A1)号明細書
【特許文献2】独国特許出願公開第10328755(A1)号明細書
図1
図2
【手続補正書】
【提出日】2024-02-29
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動運転操作における車両(1)の運転方法において、
-前記車両(1)の車両後方空間が連続的に監視され、
-前記車両(1)に対する後続車両(2)の過度な接近が検知された場合、前記後続車両(2)に対して警告(W)が出力され、
-前記後続車両(2)が所定の時間の経過後も継続して前記車両(1)に過度に接近する場合、運転タスクに関する引き継ぎ要求が前記車両(1)の車両使用者に対して出力される
ことを特徴とする車両の運転方法。
【請求項2】
前記運転タスクが所定の追加時間の経過後に引き継がれない場合、前記後続車両(2)と前記車両(1)との前記過度な接近がなくなるまで、前記車両(1)の現在の走行速度が所定の値分低下する
ことを特徴とする、請求項1に記載の車両の運転方法。
【請求項3】
前記車両(1)は、前記所定の追加時間の経過後に、右側通行の場合はその車線(F1)内の右寄りの領域に移動し、左側通行の場合はその車線(F2)内の左寄りの領域に移動するように制御される
ことを特徴とする、請求項2に記載の車両の運転方法。
【請求項4】
前記警告(W)は、前記車両(1)の後部に配置された表示装置(6)上のテキストメッセージとして前記後続車両(2)に出力される
ことを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の車両の運転方法。
【請求項5】
前記警告(W)は、車両間通信によって前記後続車両(2)に送信される
ことを特徴とする、請求項1に記載の車両の運転方法。
【請求項6】
前記引き継ぎ要求が前記車両(1)に出力されるまでの前記所定の時間は少なくとも30秒である
ことを特徴とする、請求項1に記載の車両の運転方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0025
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0025】
場合によっては、センサシステム4によって、疑似オブジェクト5、いわゆるゴーストオブジェクトが検出される状況が発生することがある。そのような疑似オブジェクトは、実際には存在しないオブジェクトであっても、センサシステム4によって検知されているため障害物となる。そのような疑似オブジェクト5の存在により、車両1の自動運転操作中に制動が誤って開始される。このことは、外部から理解可能な理由なく、車両1が制動、例えば緊急ブレーキを開始することを意味する。

【国際調査報告】