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特表2024-524261切削インサート及びこれを含む回転切削工具
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-05
(54)【発明の名称】切削インサート及びこれを含む回転切削工具
(51)【国際特許分類】
   B23C 5/22 20060101AFI20240628BHJP
   B23C 5/10 20060101ALI20240628BHJP
【FI】
B23C5/22
B23C5/10 C
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023579256
(86)(22)【出願日】2022-06-20
(85)【翻訳文提出日】2023-12-22
(86)【国際出願番号】 KR2022008699
(87)【国際公開番号】W WO2023287045
(87)【国際公開日】2023-01-19
(31)【優先権主張番号】17/374,501
(32)【優先日】2021-07-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508151781
【氏名又は名称】デグテック エルティーディー
(74)【代理人】
【識別番号】100123674
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 亮
(74)【代理人】
【識別番号】100097559
【弁理士】
【氏名又は名称】水野 浩司
(72)【発明者】
【氏名】パク,チャンギュ
(72)【発明者】
【氏名】ジョン,カンスル
(72)【発明者】
【氏名】キム,ドンヒョン
【テーマコード(参考)】
3C022
【Fターム(参考)】
3C022KK02
3C022KK12
3C022MM04
3C022MM06
(57)【要約】
切削インサートは、上面、上面に対向する下面、上面及び下面を連結する第1側面及び第2側面、上面と下面を貫通する装着ホール、第1側面と会う上面の縁部に形成される第1切削エッジ、及び第2側面と会う上面の縁部に形成される第2切削エッジを含む。下面は、リッジ部、及びリッジ部を境界とした両方にそれぞれ位置する第1傾斜面及び第2傾斜面を備える。下面を見たとき、第1傾斜面と第2傾斜面は、リッジ部を基準として非対称形状を有する。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面;
前記上面に対向する下面、;
前記上面及び前記下面を連結する第1側面及び第2側面;
前記上面と前記下面を貫通する装着ホール;
前記第1側面と会う前記上面の縁部に形成される第1切削エッジ;
前記第2側面と会う前記上面の縁部に形成される第2切削エッジ;及び
前記第1側面と前記第2側面が会う前記上面の両端部に備えられる第1コーナー部及び第2コーナー部を含み、
前記下面は、リッジ部、及び前記リッジ部を境界とした両方にそれぞれ位置する第1傾斜面及び第2傾斜面を備え、
前記下面を見たとき、前記リッジ部を基準に前記第1傾斜面と前記第2傾斜面は、非対称形状を有する、切削インサート。
【請求項2】
前記第1切削エッジは、前記第1コーナー部から曲線形状に延長するペリフェラルエッジ及び前記ペリフェラルエッジと連結されて前記第2コーナー部に延長するロングエッジを含み、
前記第2切削エッジは、前記第2コーナー部から曲線形状に延長するセンターエッジ、及び前記センターエッジと連結されて前記第1コーナー部に延長するショートエッジを含み、
前記ロングエッジの両側間の直線距離は、前記ショートエッジの両側間の直線距離より長い、請求項1に記載の切削インサート。
【請求項3】
前記ロングエッジ及び前記ショートエッジのそれぞれは、直線形状を有する、請求項2に記載の切削インサート。
【請求項4】
前記下面を見たとき、前記リッジ部は、前記第2コーナー部から離隔され、前記ペリフェラルエッジと前記ロングエッジが接する地点と前記第2コーナー部を連結する仮想線に対して傾き、前記装着ホールを横切る、請求項2に記載の切削インサート。
【請求項5】
前記下面を見たとき、前記リッジ部は前記ロングエッジと隣接する前記下面の縁部から前記ショートエッジと隣接する前記下面の縁部まで延長するように形成される、請求項2に記載の切削インサート。
【請求項6】
前記リッジ部は、前記第1傾斜面と前記第2傾斜面の間の設定幅を有する面形状に形成される、請求項1に記載の切削インサート。
【請求項7】
前記リッジ部は、前記第1傾斜面と前記第2傾斜面が会う線形状に形成される、請求項1に記載の切削インサート。
【請求項8】
前記第1傾斜面及び前記第2傾斜面のそれぞれは、前記リッジ部から遠ざかるほど上向き傾斜して形成される、請求項1に記載の切削インサート。
【請求項9】
前記装着ホールの中心を通って前記装着ホールの延長方向に向かう中心軸線と垂直である基準線に対し、前記第1傾斜面及び前記第2傾斜面のそれぞれは、5°~30°範囲内の傾斜角に傾いた、請求項8に記載の切削インサート。
【請求項10】
前記上面は、前記装着ホールが形成されるセンター面、前記第1切削エッジ及び前記第2切削エッジに沿って形成されるランド面、及び、前記センター面と前記ランド面の間に形成されるレーキ面を含み、
前記切削インサートを側面視したとき、前記第1コーナー部及び前記第2コーナー部のそれぞれは、前記センター面より盛り上がった、請求項1に記載の切削インサート。
【請求項11】
被削材をミーリング加工するための回転切削工具であり、
長手方向の先端部に2列の螺旋状のフルートが形成された円筒状の工具本体;
前記工具本体に交換可能に装着される一対の切削インサート;及び
前記一対の切削インサートのそれぞれを前記工具本体に固定する一対のスクリュを含み、
前記一対の切削インサートのそれぞれは、
上面;
前記上面に対向し、リッジ部及び前記リッジ部を境界とした両方にそれぞれ位置し、前記リッジ部を基準として非対称形状を有する第1傾斜面及び第2傾斜面を備える下面、;
前記上面及び前記下面を連結する第1側面及び第2側面;
前記上面と前記下面を貫通するように形成され、前記一対のスクリュがそれぞれ嵌められる装着ホール;
前記第1側面と前記第2側面が会う前記上面の両端部に備えられる第1コーナー部及び第2コーナー部;
前記第1側面と前記上面の間に形成され、前記第1コーナー部から曲線形状に延長するペリフェラルエッジを含む第1切削エッジ;及び
前記第2側面と前記上面の間に形成され、前記第2コーナー部から曲線形状に延長するセンターエッジを含む第2切削エッジを含み、
前記2列の螺旋状のフルートのそれぞれには、前記一対の切削インサートのそれぞれを収容するための第1インサートポケット及び第2インサートポケットが形成され、
前記一対の切削インサートは、前記工具本体の先端が向く軸方向前方に前記第1コーナー部が位置するように前記第1インサートポケットに装着される第1切削インサートを含み、前記第1切削インサートの前記ペリフェラルエッジが前記センターエッジより前記工具本体の半径外側方向及び前記工具本体の軸方向前方に位置するようになり、
前記一対の切削インサートは、前記工具本体の軸方向前方に前記第2コーナー部が位置するように前記第2インサートポケットに装着される第2切削インサートを含み、前記第2切削インサートの前記センターエッジが前記ペリフェラルエッジより前記工具本体の半径外側方向及び前記工具本体の軸方向前方に位置するようになる、
回転切削工具。
【請求項12】
前記第1インサートインサートを側面視したとき、前記第1切削インサートの前記下面はV‐形状を有し、前記第1インサートポケットは、前記第1切削インサートの前記下面を支持する第1底面、及び、前記第1底面の内側から前記工具本体の半径外側方向に延長して前記第1切削インサートの前記第2側面を支持する第1側壁を備え、
前記第2切削インサートを側面視したとき、前記第2切削インサートの前記下面はV‐形状を有し、前記第2インサートポケットは、前記第2切削インサートの前記下面を支持する第2底面、及び、前記第2底面の内側から前記工具本体の半径外側方向に延長して前記第2切削インサートの前記第1側面を支持する第2側壁を備える、
請求項11に記載の回転切削工具。
【請求項13】
前記第1底面は、前記第1切削インサートの前記ペリフェラルエッジと隣接する前記第1傾斜面と接触する第1外側底面、前記第1切削インサートの前記センターエッジと隣接する前記第2傾斜面と接触する第1内側底面、及び、前記第1外側底面と前記第1内側底面との間に形成され、前記第1切削インサートの前記リッジ部を収容する第1リッジ収容溝を含み、
前記第2底面は、前記第2切削インサートの前記ペリフェラルエッジと隣接する前記第1傾斜面と接触する第2内側底面、前記第2切削インサートの前記センターエッジと隣接する前記第2傾斜面と接触する第2外側底面、及び、前記第2内側底面と前記第2外側底面との間に形成されて前記第2切削インサートの前記リッジ部を収容する第2リッジ収容溝を含む、請求項12に記載の回転切削工具。
【請求項14】
前記回転切削工具は、ボールノーズエンドミルである、請求項11に記載の回転切削工具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、被削材のミーリング加工に用いられる回転切削工具に関するものである。また、本開示は、このような回転切削工具に装着される切削インサートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ミーリング加工に用いられる回転切削工具の一例として、エンドミル(または、「エンドミーリングカッター」ともいう)が知られている。穴をあける加工にのみ用いられるドリルとは異なり、エンドミルは、外周と先端に切削刃があるため、被削材の溝切削、側面切削などに用いることができる。エンドミルのうち、先端部が丸いボールノーズエンドミルは、切削インサートの装着の有無によって、エンドミル本体とボールノーズ部が一体に構成されるソリッドボールノーズエンドミル(solid ball nose end mill)と、エンドミル本体(または、工具本体)に切削インサートが交換可能に装着されるインデキサブルボールノーズエンドミル(indexable ball nose end mill)に分けられる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
インデキサブルボールノーズエンドミルにおいて、通常、切削インサートは、スクリュによって工具本体に結合されるが、スクリュは、切削インサートに垂直方向(例えば、スクリュの引き締めによって切削インサートが工具本体に密着する方向)の締結力のみを提供するので、切削力による反力を十分に支持することができない。特に、ボールノーズエンドミルに用いられる切削インサートは、曲面切削のために円弧状のエッジを有するので、スクリュのみで切削インサートを工具本体に固定する場合、加工中に切削力による反力によって切削インサートがスクリュを中心に回転するので、工具本体に堅固に固定されないという問題点があった。即ち、スクリュの変形や切削インサートの破損が引き起こされるという問題点があった。
【0004】
このような従来の問題点を解決するために、切削インサートと工具本体に備えられたインサートポケットの装着構造を変更したボールノーズエンドミルが開示されている。このようなボールノーズエンドミルによれば、切削インサートの下部面に凹溝が形成され、切削インサートが安着するインサートポケットの底面には、凹溝に対応する形状の突起が突出形成される。切削インサートは、スクリュによってインサートポケットに対して垂直方向に固定され、突起と凹溝間の結合によってインサートポケット上で回転しないように堅固に固定される。ところが、このような装着構造を有するボールノーズエンドミルの場合、インサートポケットの底面に突起を形成するために追加の製造工程が必要で、切削インサートの下部面に凹溝を精密に加工するために研削工程が追加で必要になるので、切削インサートの製造単価の上昇をもたらす。また、突起が凹溝に結合した状態で切削振動または切削分力がこれら結合部分に集中するので、疲労が増加して切削インサートが破損しやすいという短所がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の多様な実施例は、回転切削工具の工具本体に安定的に締結されるようにリッジ部が下面に形成された切削インサートを提供する。また、本開示の多様な実施例は、センターエッジ(center edge)とペリフェラルエッジ(peripheral edge)をいずれも有する切削インサートを提供する。また、本開示の多様な実施例は、このような切削インサートを備える回転切削工具を提供する。
【0006】
本開示の一側面は、切削インサートに関するものである。例示的実施例による切削インサートは、上面;上面に対向する下面、;上面及び下面を連結する第1側面、及び、第2側面;上面と下面を貫通する装着ホール;第1側面と会う上面の縁部に形成される第1切削エッジ;第2側面と会う上面の縁部に形成される第2切削エッジ;及び第1側面と第2側面が会う上面の両端部に備えられる第1コーナー部及び第2コーナー部を含む。下面は、リッジ部、及びリッジ部を境界とした両方にそれぞれ位置する第1傾斜面及び第2傾斜面を備え、下面を見たとき、第1傾斜面と第2傾斜面はリッジ部を基準に非対称形状を有する。
【0007】
一実施例において、第1切削エッジは、第1コーナー部から曲線形状に延長するペリフェラルエッジ及びペリフェラルエッジと連結されて第2コーナー部に延長するロングエッジを含み、第2切削エッジは、第2コーナー部から曲線形状に延長するセンターエッジ、及びセンターエッジと連結されて第1コーナー部に延長するショートエッジを含み、ロングエッジの両側間の直線距離は、ショートエッジの両側間の直線距離より長いようになる。
【0008】
一実施例において、ロングエッジ及びショートエッジのそれぞれは、直線形状を有し得る。
【0009】
一実施例において、切削インサートの下面を見たとき、リッジ部は、第2コーナー部から離隔され、ペリフェラルエッジとロングエッジが接する地点と第2コーナー部を連結する仮想線に対して傾き、装着ホールを横切り得る。
【0010】
一実施例において、切削インサートの下面を見たとき、リッジ部は、ロングエッジに隣接する下面の縁部からショートエッジと隣接する下面の縁部まで延長するように形成され得る。
【0011】
一実施例において、リッジ部は、第1傾斜面と第2傾斜面の間の設定幅を有する面形状に形成され得る。
【0012】
一実施例において、リッジ部は、第1傾斜面と第2傾斜面が会う線形状に形成され得る。
【0013】
一実施例において、第1傾斜面及び第2傾斜面のそれぞれは、リッジ部から遠ざかるほど上向き傾斜して形成され得る。
【0014】
一実施例において、装着ホールの中心を通って装着ホールの延長方向に向かう中心軸線と垂直である基準線に対し、第1傾斜面及び第2傾斜面のそれぞれは、5°~30°範囲内の傾斜角で傾いてもよい。
【0015】
一実施例において、上面は、装着ホールが形成されるセンター面、第1切削エッジ及び第2切削エッジに沿って形成されるランド面、及び、センター面とランド面の間に形成されるレーキ面を含み、切削インサートを側面視したとき、第1コーナー部及び第2コーナー部のそれぞれは、センター面より盛り上がってもよい。
【0016】
本開示の他側面は、被削材をミーリング加工するための回転切削工具に関するものである。例示的実施例による回転切削工具は、長手方向における先端部に2列の螺旋状のフルートが形成された円筒状の工具本体;工具本体に交換可能に装着される一対の切削インサート;及び、一対の切削インサートのそれぞれを工具本体に固定する一対のスクリュを含む。一対の切削インサートのそれぞれは、上面;上面に対向し、リッジ部及びリッジ部を境界とした両方にそれぞれ位置し、リッジ部を基準として非対称形状を有する第1傾斜面及び第2傾斜面を備える下面、;上面及び下面を連結する第1側面及び第2側面;一対のスクリュのそれぞれが嵌められるように、上面と下面を貫通する装着ホール;第1側面と第2側面が会う上面の両端部に備えられる第1コーナー部及び第2コーナー部;第1側面と上面の間に形成され、第1コーナー部から曲線形状に延長するペリフェラルエッジを含む第1切削エッジ;及び、第2側面と上面の間に形成され、第2コーナー部から曲線形状に延長するセンターエッジを含む第2切削エッジを含み、2列の螺旋状のフルートのそれぞれには、一対の切削インサートのそれぞれを収容するための第1インサートポケット及び第2インサートポケットが形成される。一対の切削インサートに備えられる第1切削インサートは、工具本体の先端が向く軸方向前方に第1コーナー部が位置するように第1インサートポケットに装着され、第1切削インサートのペリフェラルエッジがセンターエッジより工具本体の半径外側方向及び工具本体の軸方向前方に位置するようになり、一対の切削インサートに備えられる第2切削インサートは、工具本体の軸方向前方に第2コーナー部が位置するように第2インサートポケットに装着され、第2切削インサートのセンターエッジがペリフェラルエッジより工具本体の半径外側方向及び工具本体の軸方向前方に位置するようになる。
【0017】
一実施例において、第1切削インサートを側面視したとき、第1切削インサートの下面は、V‐形状を有し得る。第1インサートポケットは、第1切削インサートのV‐形状の下面を支持する第1底面、及び、第1底面の内側から工具本体の半径外側方向に延長して第1切削インサートの第2側面を支持する第1側壁を備え得る。また、第2切削インサートを側面視したとき、第2切削インサートの下部は、V‐形状を有し得る。第2インサートポケットは、第2切削インサートのV‐形状の下面を支持する第2底面、及び、第2底面の内側から工具本体の半径外側方向に延長して第2切削インサートの第1側面を支持する第2側壁を備え得る。
【0018】
一実施例において、第1底面は、第1切削インサートのペリフェラルエッジと隣接する第1傾斜面と接触する第1外側底面、第1切削インサートのセンターエッジと隣接する第2傾斜面と接触する第1内側底面、及び、第1外側底面と第1内側底面との間に形成され、第1切削インサートのリッジ部を収容する第1リッジ収容溝を含み得る。また、第2底面は、第2切削インサートのペリフェラルエッジと隣接する第1傾斜面と接触する第2内側底面、第2切削インサートのセンターエッジと隣接する第2傾斜面と接触する第2外側底面、及び、第2内側底面と第2外側底面との間に形成されて第2切削インサートのリッジ部を収容する第2リッジ収容溝を含み得る。
【0019】
一実施例において、回転切削工具は、ボールノーズエンドミルであってもよい。
【発明の効果】
【0020】
本開示の実施例によると、切削インサートの底面の突出したV‐形状の役割によって、回転切削工具は、回転方向、半径方向、軸方向の3次元切削でも安定した締結能力を有する。切削インサートの下面は、非対称形状に形成された一対の傾斜面を有するため、切削インサートの交差装着を防止することができる(即ち、第1インサートポケットに第2切削インサートが装着されることが防止され、第2インサートポケットに第1切削インサートが装着されることが防止される)。また、切削インサートの下面が、リッジ部によって一対の傾斜面が最大限均等なポケット接触面を有するように分配される。従って、安定した工具寿命が期待でき、これを通じて切削工程の生産性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
明細書に含まれ、明細書の一部を構成する添付の図面は、本開示の実施例を示す。
【0022】
図1は、本開示の一実施例による切削インサートを示した斜視図である。
【0023】
図2は、本開示の一実施例による切削インサートを他の方向から見た斜視図である。
【0024】
図3は、本開示の一実施例による切削インサートの平面図である。
【0025】
図4は、図1に示された切削インサートの底面図である。
【0026】
図5は、本開示の一実施例による切削インサートの一側面図である。
【0027】
図6は、本開示の他の実施例による切削インサートの一側面図である。
【0028】
図7は、本開示の一実施例による回転切削工具を示した斜視図である。
【0029】
図8は、本開示の一実施例による回転切削工具の分解斜視図である。
【0030】
図9は、本開示の一実施例による回転切削工具において工具本体から第1切削インサートを分離して示した図面である。
【0031】
図10は、本開示の一実施例による回転切削工具において工具本体から第2切削インサートを分離して示した図面である。
【0032】
図11は、本開示の一実施例による回転切削工具を軸方向前方から見た図面である。
【0033】
図12は、本開示の一実施例による回転切削工具によって被削材がミーリング加工される様子を概略的に示した図面である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本開示の実施例は、本開示の技術的思想を説明するための目的で例示されたものである。本開示による権利範囲は、以下に提示される実施例やこれら実施例に関する具体的説明に限定されるものではない。
【0035】
本開示に用いられる全ての技術的用語及び科学的用語は、特に定義されない限り、本開示が属する技術分野において通常の知識を有する者に一般に理解される意味を有する。本開示の全ての用語は、本開示をさらに明確に説明する目的で選択されたものであり、本開示による権利範囲を制限するために選択されたものではない。
【0036】
本開示で用いられる「含む」、「備える」、「有する」等の表現は、該表現が含まれる語句または文章で特に言及されない限り、他の実施例を含む可能性を内包する開放型用語(open‐ended terms)として理解されるべきである。
【0037】
本開示で記述された単数形の表現は特に言及されない限り複数形の意味を含み得、これは請求の範囲に記載された単数形の表現にも同様に適用される。
【0038】
本開示で用いられる「第1」、「第2」等の表現は、複数の構成要素を相互区分するために用いられ、該構成要素の順序または重要度を限定するものではない。
【0039】
本開示で用いられる「上方」、「上」等の方向指示語は、添付の図面において上面が下面に対して位置する方向を基準とする。「下方」、「下」等の方向指示語は「上方」または「上」の反対方向を意味する。添付の図面に示す切削インサートは、異なって配向されることもあり、この方向指示語は、それに合わせて解釈されることができる。
【0040】
以下、添付の図面を参照して切削インサート及びこれを含む切削工具組立体の実施例を説明する。添付の図面において、同一または対応する構成要素には同一の参照符号が付与されている。また、以下の実施例の説明において、同一または対応する構成要素の重複記述は省略されることがある。しかし、構成要素に関する技術が省略されても、そのような構成要素がある実施例に含まれないことを意図するものではない。
【0041】
図1は、本開示の一実施例による切削インサート(100)を示した斜視図である。図2は、図1に示された切削インサート(100)を他の方向から見た斜視図である。
【0042】
図1及び図2を参照すると、一実施例による切削インサート(100)は、上面(110)、上面(110)に対向する下面(120)、及び、上面(110)と下面(120)を連結する複数の側面を有する。複数の側面と会う上面(110)の縁部に切削エッジが備えられる。このような切削インサート(100)は、片面型切削インサートとして参照され得る。
【0043】
一実施例において、切削インサート(100)は、複数の側面として第1側面(130)と第2側面(140)を有する。第1側面(130)と第2側面(140)のそれぞれは一部が曲面からなり、他の一部は平面からなり得る。しかし、これに限定されるものではなく、切削エッジの形状によって、第1側面(130)と第2側面(140)のそれぞれは、その全体が曲面からなってもよい。
【0044】
切削インサート(100)には、回転切削工具に切削インサート(100)が装着され得るように、上面(110)と下面(120)を貫通するように装着ホール(150)が形成される。装着ホール(150)に挿入されるスクリュを引き締めたとき、切削インサート(100)が回転切削工具の工具本体に向かって押されて密着するように、装着ホール(150)にはスクリュのヘッドが引っかかることができる段差部(150A)が形成される。
【0045】
切削インサート(100)は、上面(110)の第1側面(130)と会う縁部に形成される第1切削エッジ(160)を有する。また、切削インサート(100)は上面(110)の第2側面(140)と会う縁部に形成される第2切削エッジ(170)を有する。装着ホール(150)の中心(CP)を通って装着ホール(150)の延長方向に向かう中心軸線(CL)を基準に切削インサート(100)を基準として、切削インサート(100)の第1切削エッジ(160)と第2切削エッジ(170)は、互いに異なる形状を有する。即ち、一実施例による切削インサート(100)は、第1切削エッジ(160)を用いるために回転切削工具に装着されるか、または、第2切削エッジ(170)を用いるために回転切削工具に装着され得る。即ち、切削インサート(100)に備えられる全ての切削エッジを使用できるため、経済的な使用が可能である。
【0046】
図1及び図2に示された通り、切削インサート(100)の上面(110)は、楕円形状と類似の形状を有する。上面(110)は、第1側面(130)と第2側面(140)が会う両端部に第1コーナー部(C1)と第2コーナー部(C2)を備える。切削インサート(100)の上面(110)には、回転切削工具に切削インサート(100)を装着するとき、切削インサート(100)の装着方向を肉眼でも容易に確認できるよう、溝または突起のような様々な形状のマーク部(111、112)が形成され得る。第1コーナー部(C1)は、相対的に第2コーナー部(C2)に比べてマーク部(111、112)に、より近く位置する。
【0047】
一実施例による切削インサート(100)は、被削材の加工(例えば、エンドミル加工)の際、半径方向分力(主分力)、移送方向分力(配分力)及び、軸方向分力(軸分力)を受けても回転切削工具に安定的に装着が維持され得るようにV‐形状の下面(120)を有する。即ち、下面(120)は、リッジ部(121)及びリッジ部(121)を境界として両方にそれぞれ位置する第1傾斜面(122)及び第2傾斜面(123)を含む。リッジ部(121)は、第1切削エッジ(160)に対応する下面(120)の縁部と、第2切削エッジ(170)に対応する下面(120)の縁部の間を横切るように形成される。
【0048】
下面(120)の第1傾斜面(122)と第2傾斜面(123)は、リッジ部(121)を基準に非対称形状を有するため、回転切削工具に切削インサート(100)が誤装着されるのを防止することができる。これに関連しては、後述する回転切削工具と関連した内容で再び説明する。
【0049】
一方、切削インサート(100)において、切削力向上のために、上面(110)に対して第1側面(130)と第2側面(140)のそれぞれは、正の逃げ角を有するように傾斜して形成され得る。
【0050】
図3は、本開示の一実施例による切削インサート(100)の平面図である。図4は、本開示の一実施例による切削インサート(100)の底面図である。
【0051】
図3に示された通り、切削インサート(100)の上面(110)は、その中央の部分に装着ホール(150)が形成されるセンター面(151)を含む。また、上面(110)は、第1切削エッジ(160)及び第2切削エッジ(170)に沿って形成されるランド面(152)を含む。ランド面(152)は、設定された幅(WL)を有する負のランド面として形成されてもよい。ランド面(152)は、被削材の切削初期に発生する切削インサートの折損を防止し、切削刃の強度を維持できるようにする。上面(110)は、センター面(151)とランド面(152)の間に形成されるレーキ面(153)を含む。切削インサート(100)において、第1コーナー部(C1)と第2コーナー部(C2)は、センター面(151)より盛り上がるように形成される(図5及び図6参照)。レーキ面(153)は、曲面を含むように形成される。被削材の切削加工の際に発生するチップは、レーキ面(153)に沿ってその流れが誘導されて円滑に排出され得る。
【0052】
図3及び図4を参照すると、第1切削エッジ(160)は、第1コーナー部(C1)から曲線形状に延長するペリフェラルエッジ(161)、及びペリフェラルエッジ(161)と連結されて第2コーナー部(C2)に延長するロングエッジ(162)を含む。また、第2切削エッジ(170)は、第2コーナー部(C2)から曲線形状に延長するセンターエッジ(171)、及びセンターエッジ(171)と連結されて第1コーナー部(C1)に延長するショートエッジ(172)を含む。
【0053】
一実施例において、ロングエッジ(162)の両側間の直線距離(D1)は、ショートエッジ(172)の両側間の直線距離(D2)より長い。ここで、ロングエッジ(162)の両側間の直線距離(D1)は、ペリフェラルエッジ(161)と会うロングエッジ(162)の一側と、第2コーナー部(C2)に延長するロングエッジ(162)の他側との間の直線距離を意味し、ショートエッジ(172)の両側間の直線距離(D2)は、センターエッジ(171)と会うショートエッジ(172)の一側と、第1コーナー部(C1)に延長するショートエッジ(172)の他側との間の直線距離を意味する。
【0054】
一実施例において、ロングエッジ(162)とショートエッジ(172)のそれぞれは、直線形状を有する。しかし、これに限定されず、ロングエッジ(162)とショートエッジ(172)は、曲線形状を含む多様な形態に変形が可能である。
【0055】
図4に示された通り、下面(120)を見ると、下面(120)は、リッジ部(121)によって第1傾斜面(122)と第2傾斜面(123)に分けられる。リッジ部(121)は、第1傾斜面(122)と第2傾斜面(123)が非対称形状を有するように、即ち、第1傾斜面(122)と第2傾斜面(123)が、面積及び形状に違いがあるように形成される。一実施例において、リッジ部(121)は、第2コーナー部(C2)から離隔されてペリフェラルエッジ(161)とロングエッジ(162)が接する地点(P)と、第2コーナー部(C2)を連結する仮想線(VL)に対して傾くように形成される。リッジ部(121)は、装着ホール(150)を横切るように形成される。一実施例のように、ロングエッジ(162)が直線形状を有する場合、仮想線(VL)は、ロングエッジ(162)に沿って延長するように形成され得る。
【0056】
また、一実施例において、リッジ部(121)は、ロングエッジ(162)と隣接する下面(120)の縁部からショートエッジ(172)と隣接する下面(120)の縁部まで延長するように形成される。切削インサート(100)において、下面(120)は、上面(110)と同様に、2つのコーナー部[即ち、第1コーナー部(C1)及び第2コーナー部(C2)]を有する楕円形状と類似の形状を有する。ここで、例えば、上面(110)に形成されたロングエッジ(162)と隣接する下面(120)の縁部は、図1に示された切削インサート(100)が配置された方向からロングエッジ(162)の下方に位置する下面(120)の縁部を意味することがある。ロングエッジ(162)と隣接する下面(120)の縁部から延長するリッジ部(121)が、ペリフェラルエッジ(161)と隣接する下面(120)の縁部に向かって延長するか、または、センターエッジ(171)と隣接する下面(120)の縁部に向かって延長する場合、第1傾斜面(122)と第2傾斜面(123)が均等な大きさ(例えば、回転切削工具に装着される際の回転切削工具に接触する部分の面積の大きさ)を有するように形成することができない。また、第1コーナー部(C1)または第2コーナー部(C2)が回転切削工具の先端部において軸方向前方を向くように、切削インサート(100)が回転切削工具に装着されるので(図9及び図10参照)、リッジ部(121)がペリフェラルエッジ(161)と隣接する下面(120)の縁部からセンターエッジ(171)と隣接する下面(120)の縁部との間で延長するように形成される場合は、仮に切削インサート(100)の下面(120)がV状に形成されるとしても、被削材の加工時に発生する切削分力のうちの軸方向分力を安定的に支持するのが難しくなる。それにより、切削振動が発生して被削材の加工品質が低下し得る。また、切削インサート(100)の破損または脱落などの問題を引き起こして工具寿命が低下し、加工の生産性が低くなり得る。
【0057】
このように、リッジ部(121)を第2コーナー部(C2)から離隔された下面(120)の縁部から延長するように形成するとともに、リッジ部(121)が仮想線(VL)に対して傾くように形成することによって、下面(120)における両傾斜面[第1傾斜面(122)と第2傾斜面(123)]を最大限均等に配分することができる。従って、切削インサート(100)を第1切削エッジ(160)を用いるために回転切削工具に装着するときと、切削インサート(100)を第2切削エッジ(170)を用いるために回転切削工具に装着するときのいずれも十分な支持面(例えば、回転切削工具に接触して支持される部分の面積)を提供できるため、堅固かつ安定した装着が可能である。また、リッジ部(121)に区切られた第1傾斜面(122)と第2傾斜面(123)が非対称形状を有するようになることで、切削インサート(100)が回転切削工具に誤装着されるのを防止することができる。即ち、切削インサート(100)の回転切削工具への装着が効率よく行われることができる。
【0058】
リッジ部(121)が仮想線(VL)に対して傾いた角度(A)は、両傾斜面[第1傾斜面(122)と第2傾斜面(123)]の面積をエラー防止(error proof)可能な範囲内で最大限均等に配分できる範囲に設定され得る。
【0059】
図5は、本開示の一実施例による切削インサート(100)の一側面図である。図6は、本開示の他の実施例による切削インサート(100’)の一側面図である。
【0060】
図5及び図6を参照すると、リッジ部(121)は、第1傾斜面(122)と第2傾斜面(123)との間の設定幅(WR)を有する面形状に形成され得る(図5参照)。しかし、リッジ部(121)の形状は、これに限定されず、第1傾斜面(122)と第2傾斜面(123)が会う境界線のように、線形状にも形成され得る(図6参照)。
【0061】
図5及び図6に示された通り、略第1コーナー部(C1)を向く方向における切削インサート(100、100’)を見ると、第1傾斜面(122)と第2傾斜面(123)は、リッジ部(121)から遠ざかるほど上向き傾斜して形成される。即ち、切削インサート(100、100’)のそれぞれは、V状、または、これと類似の形状の下面(120)を有する。
【0062】
第1傾斜面(122)及び第2傾斜面(123)のそれぞれは、装着ホール(150)の延長方向に向かう中心軸線(CL)と垂直である基準線(BL)に対して、5°~30°範囲内の傾斜角(B)に傾く。一実施例では、第1傾斜面(122)及び第2傾斜面(123)のそれぞれは、基準線(BL)に対して10°に傾いた傾斜角(B)を有する。傾斜角(B)が5°未満の場合は、下面(120)が平面に近い形状になり、被削材の切削加工時に発生する半径方向分力(主分力)、移送方向分力(配分力)及び軸方向分力(軸分力)を、切削インサート(100)が装着される工具本体のインサートポケットで効果的に支持するのが難しくなる。また、傾斜角(B)が30°を超える場合は、切削インサート(100)が装着される工具本体のインサートポケットに深い溝を形成しなければならないので、工具本体の剛性自体が構造的に弱くなる。
【0063】
以下では、前述した実施例による切削インサートが交換可能に装着される回転切削工具を説明する。以下の説明では、前述した切削インサート(100)に関する説明と重複する内容は簡単に言及するか省略することにする。
【0064】
図7は、本開示の一実施例による回転切削工具(1000)を示した斜視図である。図8は、図7に示された回転切削工具(1000)の分解斜視図である。
【0065】
図8において、回転切削工具(1000)は、回転方向(S)が定義される回転軸(RA)を有する。回転切削工具(1000)は、ミーリングカッターとして参照され得る。回転軸(RA)上で、矢印(FAD)は、回転切削工具(1000)の前方に向かう軸方向を指し、矢印(RAD)は、回転切削工具(1000)の後方に向かう軸方向を指す。また、図8の矢印(ROD)は、回転切削工具(1000)の半径外側方向を指し、矢印(RID)は、回転切削工具(1000)の半径内側方向を指す。ここで、回転切削工具(1000)の半径内側方向(RID)は、回転切削工具(1000)の回転中心に向かう方向を指し、回転切削工具(1000)の半径外側方向(ROD)は、その反対方向を指す。
【0066】
図7及び図8を参照すると、一実施例による回転切削工具(1000)は、一対の切削インサート(100)、工具本体(200)、及び一対のスクリュ(300)を含む。回転切削工具(1000)は、被削材を曲面加工することができるボールノーズエンドミルとして参照され得る。特に、回転切削工具(1000)は、2つの切削刃を有するインデキサブルボールノーズエンドミルとして参照され得る。
【0067】
工具本体(またはシャンク(SHANK)ともいう)(200)は、円筒状を有する。一対の切削インサート(100)は工具本体(200)の長手方向の先端部(201)に装着され、工具本体(200)は、工具本体(200)の長手方向の後端部(202)によりミーリングマシンに装着される。
【0068】
工具本体(200)の先端部(201)には、被削材の切削加工の際、チップ排出を円滑にするために2列の螺旋状のフルート(210)が形成される。2列の螺旋状のフルート(210)のそれぞれには、切削インサート(100)を収容するためのポケット部、即ち、第1インサートポケット(220)と第2インサートポケット(230)が形成される(図9及び図10参照)。切削インサート(100)は、第1インサートポケット(220)と第2インサートポケット(230)に方向を異ならせて装着され、一対のスクリュ(300)によって工具本体(200)にそれぞれ固定される。
【0069】
切削インサート(100)は、切削インサート(100)の互いに異なる切削エッジがミーリング加工に用いられるように工具本体(200)に装着される。例えば、一実施例による回転切削工具(1000)を用いて被削材をミーリング加工するとき、切削インサート(100)のうちのいずれか1つの切削エッジは、被削材の側面を切削するのに用いられ、切削インサート(100)のもう1つの切削エッジは、被削材の上面(平面または溝)を切削するのに用いられ得る。
【0070】
図9は、本開示の一実施例による回転切削工具(1000)における工具本体(200)から第1切削インサート(100A)を分離して示した図面である。図10は、本開示の一実施例による回転切削工具(1000)において、工具本体(200)から第2切削インサート(100B)を分離して示した図面である。図11は、本開示の一実施例による回転切削工具(1000)を軸方向前方(FAD)から見た図面である。
【0071】
以下では、説明の便宜上、回転切削工具(1000)の第1インサートポケット(220)に装着される切削インサート(100)を第1切削インサートとし、回転切削工具(1000)の第2インサートポケット(230)に装着される切削インサート(100)を第2切削インサートとする。
【0072】
図9図11を参照すると、第1切削インサート(100A)は、工具本体(200)の先端が向く軸方向前方(FAD)、及び、これと類似の方向に第1コーナー部(C1)が位置するように第1インサートポケット(220)に装着される。従って、第1切削インサート(100A)のペリフェラルエッジ(161)がセンターエッジ(171)より工具本体(200)の半径外側方向(ROD)及び軸方向前方(FAD)に位置することになる。また、第2切削インサート(100B)は工具本体(200)の軸方向前方(FAD)及びこれと類似の方向に第2コーナー部(C2)が位置するように第2インサートポケット(230)に装着される。従って、第2切削インサート(100B)のセンターエッジ(171)は、ペリフェラルエッジ(161)より工具本体(200)の半径外側方向(ROD)及び軸方向前方(FAD)に位置することになる。
【0073】
ペリフェラルエッジ(161)とロングエッジ(162)からなる第1切削エッジ(160)と、センターエッジ(171)とショートエッジ(172)からなる第2切削エッジ(170)が互いに異なる形状を有するので、工具本体(200)が回転する際、第1切削インサート(100A)と第2切削インサート(100B)のそれぞれの切削に寄与する切削エッジは、互いに異なる軌跡を有するように回転する。
【0074】
第1切削インサート(100A)を側面視したとき、第1切削インサート(100A)の下面(120)は、V‐形状を有する。第1インサートポケット(220)は、第1底面(221)及び第1側壁(222)を備える。第1インサートポケット(220)に第1切削インサート(100A)が安着するとき、第1底面(221)は、第1切削インサート(100A)のV‐形状の下面(120)を支持し、第1底面(221)の内側から工具本体(200)の半径外側方向(ROD)に延長する第1側壁(222)は、第1切削インサート(100A)の第2側面(140)を支持する。第1底面(221)には締結ホール(223)が形成され、締結ホール(223)には、第1切削インサート(100A)装着のためにスクリュ(300)が締結され得る。
【0075】
これと同様に、第2切削インサート(100B)を側面視したとき、第2切削インサート(100B)の下面(120)は、V‐形状を有する。第2インサートポケット(230)は、第2底面(231)及び第2側壁(232)を備える。第2インサートポケット(230)に第2切削インサート(100B)が安着するとき、第2底面(231)は、第2切削インサート(100B)のV‐形状の下面(120)を支持し、第2底面(231)の内側から工具本体(200)の半径外側方向(ROD)に延長する第2側壁(232)は、第2切削インサート(100B)の第1側面(130)を支持する。第2底面(231)には締結ホール(233)が形成され、締結ホール(233)には第2切削インサート(100B)を装着するためにスクリュ(300)が締結され得る。
【0076】
第1インサートポケット(220)の第1底面(221)は、第1外側底面(221A)、第1内側底面(221B)及び第1リッジ収容溝(221C)を含む。第1インサートポケット(220)に第1切削インサート(100A)が装着されるとき、ペリフェラルエッジ(161)と隣接する下面(120)の第1傾斜面(122)が第1外側底面(221A)に接触して支持され、センターエッジ(171)と隣接する下面(120)の第2傾斜面(123)が第1内側底面(221B)に接触して支持される。このとき、下面(120)のリッジ部(121)は、第1リッジ収容溝(221C)内に位置する。
【0077】
また、第2インサートポケット(230)の第2底面(231)は、第2外側底面(231A)、第2内側底面(231B)及び第2リッジ収容溝(231C)を含む。第2インサートポケット(230)に第2切削インサート(100B)が装着されるとき、センターエッジ(171)と隣接する下面(120)の第2傾斜面(123)が第2外側底面(223A)に接触して支持され、ペリフェラルエッジ(161)と隣接する下面(120)の第1傾斜面(122)が第2内側底面(231B)に接触して支持される。このとき、下面(120)のリッジ部(121)は、第2リッジ収容溝(231C)内に位置する。
【0078】
第1インサートポケット(220)の第1底面(221)及び第1側壁(222)の間と、第2インサートポケット(230)の第2底面(231)及び第2側壁(232)の間には、エンドミーリングまたはドリリングによってリリーフ溝(240)が形成される。リリーフ溝(240)は、第1切削インサート(100A)と第2切削インサート(100B)の切削エッジの損傷を防止し、第1切削インサート(100A)と第2切削インサート(100B)が該インサートポケットに正確に位置し得るようにする。
【0079】
また、工具本体(200)の第1側壁(222)及び第2側壁(232)それぞれの半径外側方向(ROD)部分には、工具本体(200)の先端から軸方向後方(RAD)に延長するように形成された凹溝(250)が形成されているため、切削インサート(100)を該インサートポケットに容易に装着することができるようにする。工具本体(200)に切削インサート(100)が装着された状態で切削インサート(100)の上面(110)を見ると、凹溝(250)の軸方向後方(RAD)にある一部分(260)が上面(110)の内側縁部の一部を覆うことができる。従って、被削材のミーリング加工の際に発生するチップが切削インサート(100)とインサートポケットの間に流入するのを構造的に防止することができる。
【0080】
図9及び図10に示された通り、工具本体(200)には、第1インサートポケット(220)及び第2インサートポケット(230)のそれぞれに向かって開放された開口(270)が備えられる。また、工具本体(200)の内部には、その長手方向に延長形成されて開口(270)と連結される工具ホール(図示せず)が備えられる。被削材のミーリング加工の際、ミーリングマシンから供給される切削オイルが工具ホールを介して供給され、開口(270)を介して噴射されてチップ排出を円滑にすることができる。
【0081】
図12は、本開示の一実施例による回転切削工具(1000)によって被削材(10)がミーリング加工される様子を示した概略的な図面である。
【0082】
図12に示された通り、回転する回転切削工具(1000)を移送(M3)しながら、半径方向切込(M1)及び軸方向切込(M2)して被削材(10)を切削加工するとき、回転切削工具(1000)には、半径方向分力(Fx)、移送方向分力(Fy)及び軸方向分力(Fz)が作用する。一実施例による回転切削工具(1000)では、切削インサート(100)の下面(120)がV状に形成され、切削インサート(100)が装着されるインサートポケットは、これに対応する底面形状を有する。従って、回転切削工具(1000)は、3軸方向に作用する分力を安定的に支持することができる。即ち、ミーリング加工の際、半径方向分力(Fx)と軸方向分力(Fz)は、第1インサートポケット(220)の第1外側底面(221A)と第1内側底面(221B)、第2インサートポケット(230)の第2外側底面(231A)と第2内側底面(231B)が支持することができ、移送方向分力(Fy)は、第1インサートポケット(220)の第1側壁(222)、第2インサートポケット(230)の第2側壁(232)が支持することができる(図9及び図10参照)。
【0083】
一実施例では、第1側壁(222)と第2側壁(232)が工具本体(200)の半径外側方向(ROD)に延長する部分を含んでいるため、第1側壁(222)と第2側壁(232)が軸方向分力(Fz)の一部を支持することもできる。
【0084】
以上、一部の実施例と添付の図面に示す例によって、本開示の技術的思想が説明されたものの、本開示が属する技術分野で通常の知識を有する者が理解できる本開示の技術的思想及び範囲を逸脱しない範囲で多様な置換、変形及び変更がなされ得るという点を理解する必要がある。また、そのような置換、変形及び変更は添付の請求の範囲内に属するものと考えられるべきである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
【国際調査報告】