(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-05
(54)【発明の名称】血管から血栓を回収するための医療装置、システム、および方法、ならびに装置を製造するための方法
(51)【国際特許分類】
A61B 17/22 20060101AFI20240628BHJP
A61L 31/04 20060101ALI20240628BHJP
A61L 31/16 20060101ALI20240628BHJP
A61L 31/02 20060101ALI20240628BHJP
A61L 29/02 20060101ALI20240628BHJP
A61L 29/04 20060101ALI20240628BHJP
A61L 29/16 20060101ALI20240628BHJP
【FI】
A61B17/22
A61L31/04 120
A61L31/16
A61L31/02
A61L29/02
A61L29/04
A61L29/16
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023579273
(86)(22)【出願日】2022-06-23
(85)【翻訳文提出日】2024-02-21
(86)【国際出願番号】 EP2022067180
(87)【国際公開番号】W WO2022268956
(87)【国際公開日】2022-12-29
(32)【優先日】2021-06-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521130310
【氏名又は名称】アルテドローン
【氏名又は名称原語表記】ARTEDRONE
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】プポノー,ピエール
【テーマコード(参考)】
4C081
4C160
【Fターム(参考)】
4C081AC06
4C081AC08
4C081AC09
4C081CD122
4C081CD18
4C081CE03
4C081CF21
4C081DC01
4C081EA13
4C160EE21
4C160EE30
4C160MM36
(57)【要約】
本発明は、血管(3)から血栓(2)を回収するための医療装置(1)に関する。医療装置(1)は、医療装置(1)の遠位端(5)に配置された付着要素(4)を備える。付着要素(4)は、血栓(2)が付着要素(4)に引張力を作用させることによって回収可能であるように、血栓の近位面(6)に付着するように構成される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
血管(3)から血栓(2)を回収するための医療装置(1)であって、
医療装置(1)の遠位端(5)に配置された付着要素(4)を備え、
前記付着要素(4)は、前記血栓(2)が前記付着要素(4)に引張力(F)を作用させることによって回収可能であるように、前記血栓(2)の近位面(6)に付着するように構成されている、医療装置(1)。
【請求項2】
前記付着要素(4)は、生物学的付着機構(7)、好ましくは血栓形成性要素、特にトロンビン、塩化カルシウム、およびコラーゲンのうちの1つを含む血栓形成性要素、特に好ましくは乾燥させた凝固剤層を備える、請求項1に記載の医療装置(1)。
【請求項3】
前記付着要素(4)は、電気導体(9、9’)に取り付けられ、あるいは取り付け可能であり、温度上昇および/または電流電圧によって引き起こされる組織変化を通じて付着を生じさせるように構成された電気接点(8)を備える、先行する請求項のいずれかに記載の医療装置(1)。
【請求項4】
前記付着要素(4)は、化学的付着機構(10)、好ましくは接着剤組成物、特に好ましくは乾燥させた接着剤組成物を備える、先行する請求項のいずれか1項に記載の医療装置(1)。
【請求項5】
前記付着要素(4)は、機械的付着機構(11)、特に形状変化要素(12)を含む機械的付着機構(11)、好ましくはフック、フォーク、ばね、およびスパイクを含む群から選択される機械的付着機構(11)を備える、先行する請求項のいずれか1項に記載の医療装置(1)。
【請求項6】
吸引機構(13)をさらに備え、好ましくは、前記付着要素(4)は前記吸引機構を備える、先行する請求項のいずれか1項に記載の医療装置(1)。
【請求項7】
活性化機構(14;15;16;17)をさらに備え、前記付着要素(4)は、活性化状態および非活性化状態を有し、前記非活性化状態において、前記付着要素(4)は、血管壁(3)または前記血栓(2)と相互作用することがないように構成され、前記活性化状態において、前記付着要素(4)は、前記血栓(2)と相互作用するように構成され、前記活性化機構(14;15;16;17;22)は、前記付着要素(4)を少なくとも前記非活性化状態から前記活性化状態へともたらすように構成される、先行する請求項のいずれか1項に記載の医療装置(1)。
【請求項8】
前記医療装置(1)は、前記付着要素(4)を備えたマイクロロボット(18)を備える、先行する請求項のいずれか1項に記載の医療装置(1)。
【請求項9】
前記マイクロロボット(18)は、磁気部分(19)および制御ライン(23)の少なくとも一方を備え、前記磁気部分(19)は、磁場、好ましくは外部磁場と相互作用するように構成され、かつ/または前記制御ライン(23)は、前記マイクロロボット(18)の遠位部分に取り付け可能、または取り付けられている、請求項8に記載の医療装置(1)。
【請求項10】
前記医療装置(1)は、カテーテル装置(20)の少なくとも一部分によって形成される、先行する請求項のいずれかに記載の医療装置(1)。
【請求項11】
前記活性化機構(14;15;16;17;22)は、少なくとも前記付着要素(4)を前記医療装置(1)の収納領域(21)から解放するように構成された機構を備える、請求項7に記載の医療装置(1)。
【請求項12】
前記活性化機構(14;15;16;17;22)は、活性化可能材料を含む、請求項7または11のいずれか1項に記載の医療装置(1)。
【請求項13】
前記活性化機構は、保護層(14;15;17;22)、好ましくは保護コーティング(17)、保護シース(14)、保護フレーム(22)、および保護キャップ(15)を含む群から選択される保護層を備える、先行する請求項のいずれか1項に記載の医療装置(1)。
【請求項14】
軸方向に伸長可能であり、前記血栓(2)への軸方向の力を生じさせるように構成された延長部材、好ましくはばね(11、12)をさらに備える、先行する請求項のいずれか1項に記載の医療装置(1)。
【請求項15】
センサ(134)をさらに備える、先行する請求項のいずれか1項に記載の医療装置(1)。
【請求項16】
前記付着要素(4)は、前記血栓(2)に付着するように構成された実質的に平坦な表面(F)を備える、先行する請求項のいずれか1項に記載の医療装置(1)。
【請求項17】
前記医療装置(1)の長手軸に垂直な方向(r)のサイズ(S)、好ましくは前記付着要素(4)の最大サイズが、前記血栓(2)に付着したとき、3mmよりも小さく、好ましくは1mmよりも小さく、特に好ましくは0.8mmよりも小さい、先行する請求項のいずれか1項に記載の医療装置(1)。
【請求項18】
前記付着要素(4)は、前記血栓(2)に付着したとき、前記医療装置(1)の長手軸(L)に垂直な方向(r)において、前記医療装置(1)の最大サイズよりも小さい、先行する請求項のいずれか1項に記載の医療装置(1)。
【請求項19】
前記付着要素(4)は、前記医療装置の長手軸(L)に垂直な方向における最大サイズが、前記活性化状態と前記非活性化状態との間で、10%未満の違いであり、好ましくは5%未満の違いであり、特に好ましくは不変である、請求項7~18のいずれか1項に記載の医療装置(1)。
【請求項20】
軸方向の推進力を生成するための好ましくは化学的な推進部材(24)をさらに備える、先行する請求項のいずれか1項に記載の医療装置(1)。
【請求項21】
少なくとも1つの抗力部材(25)、好ましくは前記医療装置に作用する力を増加させるように構成された活性化可能な抗力部材をさらに備える、先行する請求項のいずれか1項に記載の医療装置(1)。
【請求項22】
医療装置(1)、好ましくは先行する請求項のいずれか1項に記載の医療装置(1)と、制御ユニットと、画像化装置とを備え、前記制御ユニットは、前記医療装置(1)を血管系内の目標の位置へと誘導するように構成されている、システム。
【請求項23】
医療装置(1)、好ましくは請求項1~21のいずれか1項に記載の医療装置(1)を製造する方法であって、
・磁気部分(19)と付着要素(4)とが取り付けられた可撓性ラインを用意するステップと、
・前記付着要素(4)の少なくとも一部分を一時層でコーティングするステップと、
・前記医療装置(1)の少なくとも一部分を、好ましくは樹脂および/またはポリマーでコーティングするステップであって、特に好ましくは浸漬ステップおよび/または乾燥ステップを含むステップと、
・前記一時層を除去するステップと
を含む方法。
【請求項24】
好ましくは請求項1~21のいずれか1項に記載の医療装置(1)を使用して、医療装置(1)で血管から血栓(2)を回収する方法であって、
・付着要素(4)を備えている前記医療装置(1)の遠位端(5)を血管内に導入するステップと、
・前記医療装置(1)を目標の位置まで誘導するステップと、
・随意により、前記付着要素(4)が、非活性化状態から、前記血栓(2)、好ましくは前記血栓(2)の近位側に付着可能となる活性化状態へと変換されるように、活性化機構(14;15;16;17;22)を活性化させるステップと、
・前記付着要素(4)を前記血栓(2)へと前記血栓(2)の近位側に付着させるステップと、
・随意により、前記血栓(2)を引き伸ばし、前記血管(3)の長手軸に垂直な断面における前記血栓(2)の直径を減少させるステップと、
・前記血栓(2)を引っ張ることによって前記血栓(2)を目標の部位から除去するステップと
を含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、独立請求項の冒頭部分に記載の血管から血栓を回収するための医療装置、システム、および方法、ならびに装置を製造するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
医療装置を使用して血管から血栓を除去することが、先行技術から知られている。
例えば、米国特許出願公開第2017/119407号明細書が、凝血塊を除去するための吸引装置を開示している。
【0003】
米国特許出願公開第2013/060269号明細書が、物質を貫通して物質に固定されるステント装置を開示している。
【0004】
米国特許出願公開第2013/289578号明細書が、凝血塊を取り囲んで把持するためのカテーテル装置を開示している。
【0005】
しかしながら、当技術分野で知られている装置および方法は、いくつかの欠点を有する。例えば、既知の装置は、典型的には大型であり、したがって血管系においてアクセス可能な場所が限られ、負傷につながりかねない組織との望ましくない相互作用の恐れが大きくなる可能性がある。さらに、大型の装置は、外科医による操作がより困難になりかねない。さらに、既知の装置は、血栓を安全に除去するために複雑な機構を必要とする場合がある。加えて、既知の装置および方法を用いた処置は、長い時間を要し、処置に関連する患者の不快および危険がより大きくなる可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、本発明の目的は、先行技術の欠点を克服し、特には血管の容易、安全、かつ汎用的な処置を提供するための装置、システム、および方法を提供することである。
【0007】
この目的および他の目的は、本発明の独立請求項の特徴部分による医療装置、システム、および方法によって達成される。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明による医療装置は、血管から血栓を回収するように構成される。装置は、医療装置の遠位端に配置された付着要素を備える。付着要素は、付着要素に引張力を作用させることによって血栓を回収することができるように、血栓の近位面に付着するように構成される。
【0009】
いくつかの実施形態において、装置は、2つ以上の付着要素を備え、例えば2つの付着要素または3つの付着要素を備える。複数の付着要素は、回収中の血栓への機械的応力を低減し、したがって処置をより安全にすることができる。
【0010】
付着要素は、血栓に付着するように構成された任意の要素であってよく、特には、フォークなどの機械的相互作用のための構造を備えることができるが、接着剤や繊維を備えてもよい。さらに、付着要素は、特には形状嵌合接続を介して、本体、例えば磁気部分に接続されてよい。
【0011】
1つの特に好ましい実施形態において、医療装置は、制御ラインに取り付けられた磁気部分と、付着要素を備え、あるいは付着要素からなる固定要素のための接続要素とを含む。固定要素は、形状嵌合接続、スナップ嵌合接続、接着接続、バヨネット接続、または当技術分野で知られている任意の他の接続手段を介して磁気部分に接続されてよい。接続は可逆的または非可逆的であってよい。
【0012】
特定の実施形態において、医療装置は、カテーテル装置および/またはマイクロロボットを備え、あるいはカテーテル装置および/またはマイクロロボットからなる。
【0013】
血栓において装置を近位側に付着させることは、血栓または血栓の周囲における装置要素の貫通または誘導を必要としない迅速な付着を可能にするため、きわめて好都合である。加えて、血栓の近位面に引張力が加えられるため、血栓を引き伸ばすことができ、したがって直径がより小さくなり、血管壁と血栓との間の摩擦を減らすことができるため、必要な引張力を低減することができる。
【0014】
血栓の近位面を、装置に向かう方向、すなわち血栓について意図される除去の方向における血栓の最も近位の領域と理解することができる。
【0015】
付着要素は、生物学的付着機構を備えることができる。特に、生物学的付着機構は、血栓形成性要素を含んでよく、あるいは血栓形成性要素からなってよい。血栓形成性要素は、トロンビン、塩化カルシウム、および/またはコラーゲンを含んでよい。血栓形成性要素は、乾燥させた凝固剤層であってよい。
【0016】
血栓形成性要素は、血栓形成性を有する繊維を含んでよく、あるいはそのような繊維からなってよい。
【0017】
生物学的付着機構は、ヒトまたは動物の身体に備わった機構を利用できるため、血栓を付着させるきわめて簡単なやり方を提供することができる。例えば、血栓形成性要素は、血液凝固から付着材料を形成することができる。したがって、付着材料の一部を処置部位に届ける必要がない。
【0018】
生物学的付着機構は、例えば凝固など、組織および/または血液との生物学的反応をトリガする任意の機構であってよい。
【0019】
血栓形成性要素は、乾燥状態で、例えば乾燥させた凝固剤層としてもたらされてよい。これにより、血液などの体液を用いたきわめて容易な活性化を可能にできる。したがって、乾燥させた凝固剤層は、血液または別の体液、あるいは処置部位に届けられた水または生理食塩水と接触したときにのみ、接着性となってよい。
【0020】
付着要素、好ましくは生物学的付着機構は、電気導体に取り付けられ、あるいは取り付けることができる電気接点を備えることができる。したがって、医療装置は、特に好ましくは、エネルギー源に取り付けられ、あるいは取り付けることができる電気導体を備えることができる。電気接点は、温度上昇および/または電流/電圧によって誘発される組織変化を通じて付着を生み出すように構成される。
【0021】
エネルギー源は、建物設備、それに接続されたコンバータ、バッテリ、または当技術分野で知られている任意の他の電気エネルギー供給源からの電気エネルギーであってよい。
【0022】
好ましくは、付着要素は、焼灼および/または電気血栓形成を介して血栓への付着をもたらすように構成される。
【0023】
付着要素は、化学的付着機構を備えてもよい。特には、化学的付着機構は、接着剤組成物、好ましくは乾燥させた接着剤組成物を含んでよい。
【0024】
接着剤組成物などの化学的付着機構は、例えば、凝塊形成のための時間経過を必要とせず、かつ/またはさらなる要素を必要とせず、例えばさらなる要素/より大きな要素を処置部位へと届ける必要なく、瞬時の付着をもたらすことができるため、きわめて好都合となり得る。
【0025】
接着剤組成物は、活性化可能であってよい。特に、接着剤組成物は、温度、光、湿度、および/またはpHの変化によって活性化可能であってよい。
【0026】
付着要素は、機械的付着機構、特には形状変化要素を備える機械的付着機構を備えてもよい。機械的付着機構を、フック、フォーク、ばね、およびスパイクを含む群から選択することができる。
【0027】
機械的付着機構は、化学的または生物学的な反応の要素を体内に導入する必要がないため、特に安全であり得る。生物学的または化学的付着機構が機械的付着機構と組み合わせられる場合であっても、機械的付着機構は、より確実かつ容易に調整可能な付着を提供することができるため、好都合であり得る。
【0028】
形状変化要素は、特には、例えば機械的付着または接着力を高めるために、血栓へと向かう力を増加させるための自己膨張性材料を含むことができ、あるいは自己膨張性材料で構成されてよい。
【0029】
さらに、形状変化要素は、例えばニチノール合金などの形状記憶材料を含んでよく、あるいは形状記憶材料で構成されてよい。
【0030】
好ましくは、形状変化要素は、軸方向/直線状の形状から、例えばらせんまたはフックなどの半径方向/三次元の形状に変化するように構成される。これに加え、あるいは代えて、形状変化要素は、形状の変化時に傘の形状をとるように構成されてもよい。
【0031】
特に好ましくは、形状記憶合金で作られた機械的アンカーが、直線形状を有するように構成され、血栓への付着時に、特にはコルクスクリューまたはフック形状へと形状を変化させるように構成されてよい。
【0032】
特にはねじ形状など、貫通後に付着を提供するために適した当技術分野で公知の任意の形状を使用することができる。
【0033】
医療装置は、吸引機構をさらに備えてもよい。好ましくは、付着要素が吸引機構を備える。
【0034】
吸引機構は、血栓への付着要素の付着を助けることができる。これに加え、あるいは代えて、吸引機構を使用して、処置部位から流体および/または組織を除去することができる。例えば、血栓の破片を除去して患者のリスクを低減するために、血液を処置部位から吸引してもよい。これに加え、あるいは代えて、血栓のより堅固な部分への到達および付着のために、柔らかい血栓部分(赤色血栓など)を吸引してもよい。
【0035】
これに加え、あるいは代えて、吸引機構を使用して、例えば気体の圧力および/または流体の圧力による機構を利用することによって、機械的要素を活性化させてもよい。この目的のために、医療装置は、空気の圧力または流体の圧力のラインを提供するように吸引機構に動作可能に接続されるカナルをさらに備えることができる。
【0036】
いくつかの実施形態においては、電気要素、好ましくはリングが、吸引機構によって吸引された後の血栓に電流を印加することができるように、付着要素に対して配置される。
【0037】
本明細書に記載の生物学的、化学的、および/または機械的付着機構の任意の組み合わせが可能であることが、理解されよう。さらに、付着機構が、同時に生物学的、化学的、および/または機械的なものであってもよいことが理解されよう。したがって、生物学的、化学的、または機械的付着のうちの1つへの言及は、特に明記されない限り、必ずしも他の2つの機構を除外するものとして理解されるべきではない。例えば、機械的付着機構が接着および/または凝固によって補助されてもよい。しかしながら、付着機構を機械的のみ、生物学的のみ、または機械的のみとして構成することも、当然ながら可能である。
【0038】
好ましくは、医療装置は活性化機構を備える。付着要素は、活性化状態および非活性化状態を有することができる。非活性化状態において、付着要素は、血管壁または血栓と相互作用することがないように構成される。活性化状態において、付着要素は、血栓と相互作用するように構成される。活性化機構は、付着要素を少なくとも非活性化状態から活性化状態へともたらすように構成される。
【0039】
活性化機構は、送入の最中に付着要素と組織および/または血液との間の意図せぬ相互作用を防止することができ、したがって、より安全な処置をもたらし、合併症を少なくし、送入をより容易にするため、好都合であり得る。
【0040】
好ましくは、医療装置は、付着要素を備えたマイクロロボットを備える。
マイクロロボットは、磁気部分および制御ラインの少なくとも一方を備えることができる。磁気部分は、好ましくは外部の磁場と相互作用するように構成されてよい。これに加え、あるいは代えて、制御ラインは、マイクロロボットの遠位部分に取り付け可能であってよく、あるいは取り付けられてよい。
【0041】
制御ラインは、血栓を引き戻すように構成されてよい。特には、材料の選択および/または適切な寸法によって、0.5N~20N、好ましくは8N~12Nの範囲の最小強度を有するように構成されてよい。
【0042】
マイクロロボットは、制御ラインよりも高い弾性率を有する保持ラインをさらに備えてもよい。保持ラインの曲げ剛性は、制御ラインの曲げ剛性と同様であってよい。保持ラインは、誘導に影響を及ぼすことなく制御ラインの過度の伸張を防止することができる。
【0043】
例えば、制御ラインは、高い可撓性および約300%の破断歪みを有するシリコーン製の中空管で実質的に構成されてよい。そのような例において、保持ラインは、約40%の破断歪みを有するポリアミドで製作されてよい。
【0044】
保持ラインの直径は、20μm~1mmの間、好ましくは50μm~200μmの間であってよい。
【0045】
保持ラインは、ポリマー、例えばポリアミド、ポリウレタン、またはシリコーンなどのエラストマーを備えても、あるいはこれらで構成されてもよく、あるいは中程度の破断歪み(100%未満)または小さい破断歪み(10%未満)を有するシリコーン系材料を使用してもよい。
【0046】
保持ラインは、制御ラインの一部であっても、別個の要素であってもよく、保持ラインは、制御ラインおよび/または装置とのいくつかの取り付け点を有してもよい。
【0047】
保持ラインは、接着剤、結び目、接着剤および樹脂、あるいは当技術分野で知られている種々の組み立て方法の組み合わせによって装置に固定されてよい。
【0048】
保持ラインは、0.01~50GPa、好ましくは1~20GPa、特に好ましくは1~3GPaのヤング率を有することができる。保持ラインは、0.0001~1N・mm2、好ましくは0.001~0.02N・mm2の曲げ剛性を有することができる。
【0049】
保持ラインは、20μm~500μm、好ましくは40μm~80μm、特に好ましくは70μmの直径を有することができる。
【0050】
医療装置は、カテーテル装置の少なくとも一部分によって形成されてもよい。これに加え、あるいは代えて、ガイドワイヤまたは任意の他の血管内装置を使用することも可能である。
【0051】
活性化機構は、少なくとも付着要素を医療装置の収納領域から解放するように構成された機構を備えることができる。
【0052】
例えば、付着要素は、カテーテルまたはマイクロロボットの一区画に収納されてよい。
いくつかの実施形態において、医療装置は、マイクロロボットを送入するように構成されたカテーテルを備える。カテーテルはバルーンを備えることができる。マイクロロボットは、血栓への付着後にカテーテル内に引き戻されるように構成されてよい。
【0053】
これに加え、あるいは代えて、付着要素はカプセル化されてもよい。
活性化機構は、活性化可能材料を含むことができる。
【0054】
活性化可能材料は、本明細書に記載の任意の活性化機構または当技術分野で公知の任意の活性化機構によって活性化可能であってよい。例えば、活性化可能材料は、磁場、磁気勾配、超音波、または光(光硬化性接着剤など)への曝露によって活性化可能であってよい。これに加え、あるいは代えて、活性化可能材料は、温度上昇、湿度/水への曝露、pHの変化、塩濃度への応答、炎症種の活性化、血流速度の変化、電気、などによって活性化されてもよい
活性化機構は、保護層を備えてもよい。保護層は、保護コーティング、保護シース、保護フレーム、および保護キャップを含む群から選択されてよい。
【0055】
一般に、保護層を、例えば付着要素を非活性化状態から活性化状態へともたらすために除去することができる。
【0056】
一般に、保護層は、生分解性または非生分解性であってよく、除去可能なキャップ、分離する層、あるいは孔および/または所定の破壊点を備える層であってよい。
【0057】
保護コーティングは、例えば血液中での一定の曝露時間の後に付着要素を自動的に活性化させるために、水または血液に可溶であってよい。曝露時間を、例えば10秒~20分、好ましくは2~5分の範囲内となるように構成することができる。
【0058】
保護コーティングは、PGAおよび/またはPLGAなどの生分解性ポリマーを含むことができ、あるいはこれらで構成されてよい。このような構成において、コーティングはいくつかの部分に分割される。分解の自然な機構は、加水分解である。加水分解は、典型的には、生理学的溶液との直接接触の後に数分以内に生じる。
【0059】
充分に速い分解を達成するために、PGAはきわめて低い分子量を有し得る。PGAの加水分解が始まると、生分解性コーティングの機械的強度が低下し、したがって保護コーティングの破壊がより容易になる。
【0060】
好ましくは、保護コーティングは、異なるポリマーの混合物(ブレンドおよび/またはコポリマー)を含み、あるいは異なるポリマーの混合物で構成される。したがって、混合比を調整することによって、機械的特性および分解速度を調整することができる。
【0061】
分解を熱などの刺激下で加速させることができる。生体吸収性コーティングを、ナノ粒子を担持した生分解性ポリマーで製作することができる。ポリマーは40~60℃の低い分解温度を呈する。ナノ粒子は、金、Fe2O3、Fe3O4、および/または銀で作られてよい。保護コーティングは、光および/または磁場などの刺激下でナノ粒子によって生成される熱によって分解される。これにより、コーティングは小さな生分解性部分へと壊れ、血流によって洗い流される。
【0062】
別の実施形態において、保護コーティングは、生体吸収性ポリマーに埋め込まれたリンカーとして作用するマグネシウム粉末で作られた膜を含む。粉末の分解が、制御ラインによってもたらされる電流の印加によって加速される。粒子の分解は、コーティングの破壊に寄与することができる。
【0063】
これに加え、あるいは代えて、生分解性コーティングを、マグネシウムまたは生物腐食によって分解される複合材料から製作することができる。生物腐食プロセスを、電流を印加することによって加速させることができる。
【0064】
コーティングは、生分解性部分および非生分解性部分で作られてよい。非生分解性部分は、装置、特には付着要素に取り付けられたままである。生分解性部分は、保護コーティングの除去/分解時に装置から除去されてよい。
【0065】
コーティングは、例えば、シリコン、ポリカーボネート骨格を有するポリウレタン、またはPTFEなどの非生分解性ポリマーで製作されてもよい。非生分解性ポリマーは、開放時に破壊されてよい。好ましくは、非生分解性コーティングは、コーティングが装置および/または付着要素に取り付けられたままであるように、引き裂きによって破壊される。好ましくは、カプセルに関して、PVDF、HDPE、PMMA、LCP、PA46、PI、などのポリマーを使用することができる。
【0066】
保護フレームは、保護フレームを取り外すまで、付着要素と周囲の組織との間の直接接触を防止することができる。
【0067】
医療装置は、延長部材をさらに備えてもよい。延長部材は、好ましくは、ばねを備えることができ、あるいはばねで構成されてよい。延長部材は、軸方向に伸長可能であってよく、血栓に軸方向の力を発生させるように構成されてよい。
【0068】
延長部材は、医療装置の近位端または遠位端に配置されてよい。延長部材は、好ましくは付着要素の一部である。
【0069】
特には、これに加え、あるいは代えて、延長部材によってもたらされる軸方向の力は、保護層の開放および/または除去に使用されるように構成されてもよい。
【0070】
医療装置は、センサをさらに備えることができる。
好ましくは、センサは、付着要素の血栓への誤った付着または不充分な付着を判断するように構成される。
【0071】
センサは、好ましくは、力センサ、温度センサ、pHセンサ、付着センサ、流量センサ、圧力センサ、および接触面センサを含む群から選択される。
【0072】
例えば、センサは、血栓に作用する引張力を測定するように構成された力センサ、および/または付着要素と血栓との間の接触面を測定するように構成されたセンサを含むことができる。
【0073】
特には、圧力センサを使用して、付着要素が血栓に接触しているか否かを監視すること、および/または血栓の性質を評価することが可能である。
【0074】
これに加え、あるいは代えて、センサは、付着要素が回収中に血栓に充分に付着しているかどうかを監視するように構成されてもよい。
【0075】
好ましくは、付着要素は、血栓に付着するように構成された実質的に平坦な表面を含む。
【0076】
実質的に平坦を、限られた最大曲率(すなわち、最小曲率半径)を有すると理解することができる。特には、実質的に平坦な表面は、3cm、好ましくは5cm、特に好ましくは50cmの最小曲率半径を呈してよい。
【0077】
これに加え、あるいは代えて、付着要素は、5~40mm、好ましくは15~25mm、特に好ましくは20mmの医療装置の軸方向の最大延在を有してよい。例えば、付着要素は、意図された使用における医療装置の最遠位部分であってよい。あるいは、最大延在は、1~5mmの間、好ましくは2mmであってもよい。
【0078】
好ましくは、血栓に付着したときの活性化位置における付着要素のサイズは、医療装置の長手軸に垂直な方向において、3mm未満、特に好ましくは1mm未満、さらにより好ましくは0.8mmである。好ましくは、このサイズは、医療装置の長手軸に垂直な付着要素の最大サイズである。
【0079】
したがって、付着要素は、小血管においても誘導が可能であり、したがってより万能な処置の選択肢を提供するサイズを有することができる。
【0080】
好ましくは、付着要素のサイズは、0.2~5mmの間、特に好ましくは0.3~1mmの間である。
【0081】
好ましくは、付着要素は、血栓に付着したとき、および/または活性化状態において、医療装置の長手軸に垂直な方向において、医療装置の任意の他の部分の最大サイズおよび/またはサイズよりも小さい。
【0082】
したがって、医療装置によってアクセスされるあらゆる場所が付着要素を使用して処置可能であることを、付着要素が処置場所の血管系に収まるがゆえに、保証することができる。
【0083】
特に好ましくは、医療装置の最大サイズは、医療装置の長手軸に垂直な方向における磁気部分のサイズである。
【0084】
好ましくは、付着要素は、医療装置の長手軸に垂直な方向における付着要素の最大サイズが、活性化状態と非活性化状態との間で、10%未満の違いであり、好ましくは5%未満の違いである。特に好ましくは、医療装置の長手軸に垂直な方向における付着要素の最大サイズは不変のままである。
【0085】
付着要素の最大サイズが非活性化状態と活性化状態との間で異なる場合、前記最大サイズは、活性化状態と比較して活性化状態においてより大きいことが特に好ましい。
【0086】
前記最大サイズの違いは、軸方向(すなわち、医療装置の長手軸に沿う)または半径方向(すなわち、医療装置の長手軸に対して垂直)あるいはその両方であってよい。
【0087】
好ましくは、医療装置は、軸方向の推進力を生成する推進部材、好ましくは化学的な推進部材を備える。
【0088】
医療装置、特には付着要素を備える磁気部分は、典型的には、主に血液によって及ぼされる流れの力によって前方に移動することができる。血栓が存在する場合、流れが変化し、あるいは減少する可能性がある。医療装置が処置部位および血栓の近位表面に到達できることを確実にするために、追加の推進システムが好都合であり得る。そのような追加の推進システムは、きわめて好都合であるが、磁場によって磁気部分に及ぼされる磁力が充分であり得るため、本発明に必須ではないことが理解されよう。
【0089】
追加の推進システムは、機械的であってよい。例えば、圧縮され他状態で制御ラインに埋め込むことができるばねを備えることができる。ばねは、制御ラインと磁気部分との間に配置されてよい。ばねを、障壁などの物理的なロック機構を除去し、あるいは劣化させることによって、解放することができる。ばねを、例えばニチノールなどの形状記憶合金で製作することができる。熱または電気などの刺激の影響下で、ばねを活性化させることができる。ばねを熱によって活性化させるために、加熱可能な材料でのコーティングが可能である。そのような構成の例は、例えば赤外光に曝露されたときに加熱する金ナノ粒子でコーティングされたばねであってよい。別の構成は、超常磁性ナノ粒子でコーティングされたばねであってよい。これらの粒子を交流磁場において加熱することができる。
【0090】
あるいは、追加の推進システムは、化学的であってもよい。推進部材が反応種を含むことができる。例えば、血液と接触したときに装置の推進に使用されるガスを形成することによってH2Oと反応することができるマグネシウムを使用することができる。典型的には、追加の推進力は、処置部位、すなわち血栓の付近においてのみ必要とされ、したがって活性化される。したがって、反応種をタンクに埋め込むことができる。一例として、タンクを、磁気部分の周りに設置され、シェルを介して取り付けられる管で製作することができる。タンクを栓で閉じることができる。栓を機械的に除去することができ、あるいは刺激下で分解することができる。栓を、制御ラインに接続されたライン設備に取り付けることができる。例えば制御ラインドライバおよび/またはカナル内の流体の流れ(例えば、空気または流体の圧力)によって引き起こされてこのラインに作用する力が、栓を除去することができ、したがってタンクの内容物を血液と接触させることができる。これに加え、あるいは代えて、栓を、本明細書に記載されるように、電気(例えば、電流による生物腐食)または光への曝露などの刺激下で分解することができる。そのような構成において、栓は、タングステンおよび/またはチタンなどの金属、あるいはシリコーン、PEEK、またはこれらの任意の組み合わせなどのポリマーで製作されてよい。そのような構成において、栓の外径は、特に好ましくは約240μmであってよい。タンクの内径は100μmであってよい。タンクの外径は200μmであってよい。タンクは、PDMSなどのポリマーで製作されてよい。
【0091】
好ましくは、医療装置は、少なくとも1つの抗力部材を備える。抗力部材は、活性化可能であってよい。抗力部材は、医療装置に作用する力を増加させるように構成される。
【0092】
抗力部材は、特には、磁気的および/または流体力学的であってよく、すなわち医療装置に作用する磁気力および/または流体力学的力を増加させるように構成されてよい。
【0093】
例えば、抗力部材は、磁気部分上または制御ライン上に配置された傘状要素を備えることができる。傘状要素を開くことで、医療装置に加わる血流による抗力を増加させ、したがって処置部位への医療装置の輸送を促進することができる。
【0094】
抗力部材は、血液などの流体との係合面積を増加させるように構成されてもよい。
本発明は、さらには、医療装置と、制御ユニットと、画像化装置とを備えるシステムに関する。好ましくは、医療装置は、本明細書に記載のとおりの医療装置である。制御ユニットは、血管系内の目標の位置、特には処置部位へと医療装置を誘導するように構成される。
【0095】
本発明によるシステムは、血管ネットワークにおける医療装置の移動に特に適することができる。医療装置は、カテーテル装置またはマイクロロボットであってよい。装置は、バルーンを備えることができる。医療装置は、磁気部分を有するヘッドセクションと、制御ラインを有するバックセクションとを備えることができる。医療装置を、患者を処置または診断するために血管ネットワーク内で移動させることができる。システムは、磁気アクチュエータ、制御ユニット、および制御ラインドライバを備えることができる。制御ラインは、制御ラインドライバに取り付けられてよい。制御ラインドライバは、前記制御ラインが制御ラインドライバに取り付けられたとき、制御ラインをさまざまな速度で保持、回収、および/または解放するように構成される。磁気アクチュエータは、所定の位置に磁場を発生させるように構成される。好ましくは、磁場は予め決定される。磁場は、医療装置、特には医療装置の磁気部分に力を及ぼし、医療装置を所定の方向に引っ張ることができる。制御ユニットを、医療装置に加わる少なくとも3つの力をバランスさせるように構成することができる。好ましくは、制御ユニットは、力をリアルタイムでバランスさせる。
【0096】
好ましくは、3つの力は、例えば血管内の血液などの流体の流れによって医療装置に作用する抗力、制御ラインによる力、および磁気アクチュエータによる磁力のうちの少なくとも1つを含む。さらに、制御ユニットは、磁気アクチュエータおよび/または制御ラインドライバを動作させる。
【0097】
装置、特にはマイクロロボットまたはカテーテルと組み合わせて使用されるバルーンが、特には非対称に膨張可能であってよい。例えば、バルーンを長手軸に対する片側においてのみ選択的に膨張させることが可能であってよい。あるいは、いくつかの選択的に膨張させることが可能なバルーンを使用してもよい。これにより、装置を意図的に付着させた組織または偶然に付着した組織から取り外すことを可能にできる。
【0098】
バルーンの厚さは、50μm~300μm、好ましくは80μm~150μmの間であってよい。さらに、膨張用の活性化システムまたは膨張を可能にするための活性化システムが存在してもよい。バルーンは、50μm~700μmの間、好ましくは200μm~400μmの間の直径を有する球形を有することができる。したがって、組織壁との接触面(したがって、意図せぬ接着)を低減することができる。バルーン壁を、ポリウレタンおよび/またはシリコーンなどの任意の適切な医療グレードのポリマーで製作することができる。活性化システムは、ソレノイド弁を備え、あるいはソレノイド弁で構成されてよく、さらには/あるいは回転体に対応する形状を有してよい。
【0099】
制御ユニットは、磁気による誘導を補助することができる。本明細書に記載の考え方は、軌道経路に沿って医療装置を誘導するために、医療装置に加わるさまざまな力、すなわち流れの力、重力、制御力、ならびに医療装置に作用する磁力または他の潜在的な力について、良好な平衡を見出すための助けとなる。システムは、力および力の間の関係を自動的に計算し、システムによって生成される力、とりわけ制御ラインの力および磁力を定めることで、結果として生じる力によって医療装置が所定の軌道に沿って移動することを保証することができる。
【0100】
このバランスモデルは、磁気アクチュエータおよび制御ラインによって引き起こされる力の分布を最適化することもできる。力のバランスは、例えばより弱い磁場および/またはより小さい制御ラインの力など、システム要件を最適化するためにも有益であり得る。
【0101】
制御ラインドライバは、プーリ、リニアアクチュエータ、リール、電気モータ、スピンドル、ギア、スクリューおよび/またはナット、直線ギアトラック、および連続トラックのうちの任意の1つ、またはこれらの組み合わせを含むことができ、好ましくはこれらで構成されてよい。さらに、制御ラインドライバは、これらの要素のうちの任意の1つを2つ以上、1つまたは2つ以上の任意の他の要素と組み合わせて備えてもよい。
【0102】
さらに、制御ラインドライバは、これに加え、あるいは代えて、制御ラインドライバと制御ラインとの間の動作可能な接続を提供するように構成された制御ラインコネクタを備えてもよい。
【0103】
好ましくは、制御ユニットは、プロセッサおよび/またはメモリを備えてよい。特に好ましい実施形態において、制御ユニットは、電気モータに動作可能に接続され、電気モータの速度、出力、およびトルクの少なくとも1つを制御するように構成される。
【0104】
速度は、少なくとも部分的に予め決定されても、自動的に決定されても、手動で選択されてもよい。所定の速度、自動的に決定される速度、および手動で選択される速度の組み合わせを使用することも考えられる。例えば、制御ユニットは、血管内の血液の流れに関するデータを考慮に入れて、血管内の計画された軌道に基づいて適切な速度プロファイルを計算し、速度プロファイルをメモリに保存することができる。これに加え、あるいは代えて、制御ラインの速度を、例えば計画された軌道および実際の位置データを考慮したフィードバックループを介して介入の最中に自動的に、かつ/またはユーザによって手動で、調整することができる。この目的のために、システムは、好ましくは、速度パラメータの入力を可能にするように構成されたユーザ用のインターフェース、例えば1つ以上のタッチスクリーン、ノブ、ボタン、レバーを備えることができる。同じインターフェースまたは追加のインターフェースを使用して、医療装置の位置および速度の制御に関連するさらなるパラメータを入力することが可能である。
【0105】
好ましくは、制御ユニットは、空間内の装置位置における磁場、および/または磁気要素が空間内の装置位置に位置するときに前記磁場が磁気要素に及ぼす力を計算するように構成される。制御ユニットは、特には、磁気アクチュエータの位置、向き、および/または出力の少なくとも1つを考慮に入れることができる。これに加え、あるいは代えて、制御ユニットは、装置位置またはその付近のセンサからデータ、特には装置位置における磁場および/または磁力に関するデータを、受信するように構成されてよい。
【0106】
これに加え、あるいは代えて、装置は、装置位置において磁場および/または磁力を達成するために適した磁気アクチュエータの位置、向き、および出力の少なくとも1つを計算することができる。磁場および/または磁力を、定性的(例えば、方向のみ)または定量的に計算することができる。
【0107】
好ましくは、制御ラインドライバは、医療装置に取り付けられた少なくとも2つの制御ラインを制御するように構成される。2つの制御ラインを同じ速度で解放することができる。あるいは、2つの制御ラインを、例えば血栓の前方に医療装置を位置させ、かつ/または配向するために、異なる速度で解放してもよい。
【0108】
制御ラインドライバは、血栓の回収の監視を可能にするセンサを備えることができる。一例として、血栓回収(処置全体)の最中に力を測定するために、動力計が使用される。血栓の回収速度を、制御ドライバおよび/またはセンサによって測定された力を使用して調節することができる。
【0109】
制御ユニットは、システムによって測定された生理学的データおよび/または他の装置によって測定されたデータを監視することができる。制御ユニットは、監視データに基づいて誘導システムの種々の要素への命令を調整することができる。
【0110】
さらに、本発明は、医療装置、特には本明細書に開示の医療装置を製造する方法に関する。本方法は、
・磁気部分と付着要素とが取り付けられた可撓性ラインを用意するステップと、
・付着要素の少なくとも一部分を一時層でコーティングするステップと、
・医療装置の少なくとも一部分、好ましくは全体を、好ましくは樹脂および/またはポリマーでコーティングするステップであって、好ましくは浸漬および/または乾燥によって実行されるステップと、
・一時層を除去するステップと
を含む。
【0111】
本方法は、付着要素が電気および/または電子部品を備え、例えば付着要素が本明細書に記載の焼灼および/または電気血栓形成のための電極を備える場合に、特に好適である。
【0112】
本方法は、一時層を設ける前に、付着層を凝固剤でコーティングし、この凝固剤を乾燥させるステップをさらに含んでもよい。
【0113】
一時層は、付着要素を保護する。医療装置の少なくとも一部分にコーティングされたコーティングを、一時層で保護された領域において容易に除去することができる。したがって、一時層は、付着要素がコーティングで覆われることを防止する。したがって、本方法は、コーティングを有する医療装置であって、装置の一部分が選択的にコーティングされていない医療装置を製造するきわめて簡単なやり方を提供する。
【0114】
さらに、本発明は、医療装置を使用して血管から血栓を回収する方法に関する。好ましくは、医療装置は、本明細書に開示のとおりの医療装置である。本方法は、
・付着要素を備えている医療装置の遠位端を血管内に導入するステップと、
・医療装置を目標の位置まで誘導するステップと、
・随意により、付着要素が、非活性化状態から、血栓、好ましくは血栓の近位側に付着可能となる活性化状態へと変換されるように、活性化機構を活性化させるステップと、
・付着要素を血栓へと血栓の近位側に付着させるステップと、
・随意により、血栓を引き伸ばし、血管の長手軸に垂直な断面における血栓の直径を減少させるステップと、
・血栓を、前記血栓を引っ張ることによって目標の部位から除去するステップと
を含む。
【0115】
好ましくは、回収速度は、血栓に加わる力を制御するように調整される。
好ましくは、本方法は、血栓への付着要素の付着後に、血栓の除去を促進するために医療装置に振動または振盪運動をもたらすステップをさらに含む。
【0116】
医療装置およびシステムの文脈において、特には制御ユニット、制御ライン、および磁力を用いる血管内の誘導に関して本明細書に記載されるすべての方法ステップを、本発明による方法において実行できることが理解されよう。
【0117】
本明細書の文脈において、近位とは、医療装置の長手軸に沿った方向であって、処置側から意図される使用における医療装置へと向かう方向を指し、遠位とは、医療装置から処置部位へと向かう方向を指すことが理解されよう。
【0118】
一般に、本明細書の文脈において、マイクロロボットは、制御ラインと磁気部分との組み合わせとして一般的に理解することができる。マイクロロボットは、治療ツールをさらに備える治療用マイクロロボットであってもよい。
【0119】
いくつかの実施形態において、装置は、例えば流体を充てんすることによって伸長可能な成長管を備えることができる。
【0120】
適切な流体は、気体、生理食塩水または粘性溶液などの液体、および磁気流体(例えば、生理食塩水、特には等張液中のFe3O4またはFe2O3の懸濁液)である。これにより、体液の流れが医療装置に抗力を及ぼすためには不充分である身体の領域、例えば閉塞動脈への到達が可能になる。
【0121】
成長管は、典型的には、内側に折り畳まれた軟質材料の管を備える。管の内側を、管がめくり返り、一方向の成長がもたらされるように、例えば空気または液体で加圧することによって、表面が外になるように移動させることができる。成長管は広く知られ、米国特許出願公開第2019/0217908号明細書に記載されており、その内容が参照によって本明細書に組み込まれる。
【0122】
成長管は、0.5mm~3mm、好ましくは0.9mm~2mmの間の外径を有することができる。成長管のシェルの厚さは、20μm~1mmの間、好ましくは100μm~400μmの間であってよい。管を、ポリウレタン、低密度ポリエチレン、および他の医療グレードのポリマーなどのポリマーで製作することができる。
【0123】
いくつかの実施形態において、医療装置は、MRIシステムによって生成される磁場と相互作用するように構成される。好ましくは、医療装置は、MRIシステムによって操作可能である。
【0124】
以下で、本発明を、以下の図を参照して詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0125】
【
図1a】血栓を有する血管内の本発明による装置、および血栓に到達して血栓を除去するための装置の使用の概略図を示している。
【
図1b】血栓を有する血管内の本発明による装置、および血栓に到達して血栓を除去するための装置の使用の概略図を示している。
【
図1c】血栓を有する血管内の本発明による装置、および血栓に到達して血栓を除去するための装置の使用の概略図を示している。
【
図2a】さまざまな付着要素を有する本発明による装置の実施形態の概略図を示している。
【
図2b】さまざまな付着要素を有する本発明による装置の実施形態の概略図を示している。
【
図2c】さまざまな付着要素を有する本発明による装置の実施形態の概略図を示している。
【
図3a】本発明による装置の磁気部分への付着要素の取り付けの詳細な概略図を示している。
【
図3b】本発明による装置の磁気部分への付着要素の取り付けの詳細な概略図を示している。
【
図3c】本発明による装置の磁気部分への付着要素の取り付けの詳細な概略図を示している。
【
図3d】本発明による装置の磁気部分への付着要素の取り付けの詳細な概略図を示している。
【
図3e】本発明による装置の磁気部分への付着要素の取り付けの詳細な概略図を示している。
【
図4a】本発明の一実施形態の活性化の概略図を示している。
【
図4b】本発明の一実施形態の活性化の概略図を示している。
【
図6a】生物学的付着に基づく
図2aの実施形態による血栓回収の概略図を示している。
【
図6b】生物学的付着に基づく
図2aの実施形態による血栓回収の概略図を示している。
【
図7a】電気血栓形成を用いた生物学的付着に基づく血栓回収のための代案の実施形態の概略図を示している。
【
図7b】電気血栓形成を用いた生物学的付着に基づく血栓回収のための代案の実施形態の概略図を示している。
【
図9】電気血栓形成を使用して付着するように構成された別の実施形態を示している。
【
図11a】化学的付着に基づく装置で血栓を回収する実施形態の概略図を示している。
【
図11b】化学的付着に基づく装置で血栓を回収する実施形態の概略図を示している。
【
図12a】機械的付着のための種々の実施形態の概略図を示している。
【
図12b】機械的付着のための種々の実施形態の概略図を示している。
【
図12c】機械的付着のための種々の実施形態の概略図を示している。
【
図13a】機械的付着に基づく装置による血栓回収の概略図を示している。
【
図13b】機械的付着に基づく装置による血栓回収の概略図を示している。
【
図13c】機械的付着に基づく装置による血栓回収の概略図を示している。
【
図13d】機械的付着に基づく装置による血栓回収の概略図を示している。
【
図14a】ばねを備えた実施形態の概略図を示している。
【
図14b】ばねを備えた実施形態の概略図を示している。
【
図15】追加の固定コーティング(血栓形成性、膨張性材料)を有する機械的付着に基づく別の実施形態の詳細な概略図を示している。
【
図16a】保護コーティングを有する装置の代案の実施形態の概略図を示している。
【
図16b】保護コーティングを有する装置の代案の実施形態の概略図を示している。
【
図17a】保護コーティングの活性化のための一実施形態を示している。
【
図17b】保護コーティングの活性化のための一実施形態を示している。
【
図18a】保護コーティングの活性化のための代案の実施形態を示している。
【
図18b】保護コーティングの活性化のための代案の実施形態を示している。
【
図18c】保護コーティングの活性化のための代案の実施形態を示している。
【
図19a】付着要素の活性化の種々の実施形態を示している。
【
図19b】付着要素の活性化の種々の実施形態を示している。
【
図19c】付着要素の活性化の種々の実施形態を示している。
【
図19d】付着要素の活性化の種々の実施形態を示している。
【
図20a】付着要素の種々の実施形態を示している。
【
図20b】付着要素の種々の実施形態を示している。
【
図20c】付着要素の種々の実施形態を示している。
【
図20d】付着要素の種々の実施形態を示している。
【
図20e】付着要素の種々の実施形態を示している。
【
図20f】付着要素の種々の実施形態を示している。
【
図21a】装置の種々の付着原理を概略的に示している。
【
図21b】装置の種々の付着原理を概略的に示している。
【
図21c】装置の種々の付着原理を概略的に示している。
【
図21d】装置の種々の付着原理を概略的に示している。
【
図21e】装置の種々の付着原理を概略的に示している。
【
図21f】装置の種々の付着原理を概略的に示している。
【
図22a】保護フレームを有する装置の概略図を示している。
【
図22b】保護フレームを有する装置の概略図を示している。
【
図23】追加の推進要素を有する装置の概略図を示している。
【
図24a】吸引機構を有する装置の概略図を示している。
【
図24b】吸引機構を有する装置の概略図を示している。
【
図25】機械的グリッパおよびシャフトを有する装置の概略図を示している。
【
図26】t-PAコーティングを有する装置の概略図を示している。
【
図27】t-PAを届けるように構成された代案の装置を示している。
【
図29】吸引機構を有する代案の装置の断面図を示している。
【
図30】バルーンを備える装置を概略的に示している。
【
図31a】センサを有する装置の第1の実施形態を概略的に示している。
【
図31b】センサを有する装置の第1の実施形態を概略的に示している。
【
図32a】センサを有する装置の第2の実施形態を概略的に示している。
【
図32b】センサを有する装置の第2の実施形態を概略的に示している。
【
図33a】成長要素を有する装置を概略的に示している。
【
図33b】成長要素を有する装置を概略的に示している。
【
図35】保持ラインを有する装置を概略的に示している。
【
図36a】カテーテルおよびバルーンを有する装置を概略的に示している。
【
図36b】カテーテルおよびバルーンを有する装置を概略的に示している。
【
図37】吸引機構および電気要素を有する装置を概略的に示している。
【
図38a】2つのバルーンを有する装置を概略的に示している。
【
図38b】2つのバルーンを有する装置を概略的に示している。
【
図39a】2つの保持ラインを有する装置を概略的に示している。
【
図39b】2つの保持ラインを有する装置を概略的に示している。
【発明を実施するための形態】
【0126】
図1aが、本発明による装置1およびその使用を概略的に示している。装置1は、血栓2への付着をもたらすように構成された付着要素4を備える。ここに示されている図が、一般的なものであり、読者による本発明の基本原理の理解を目的としているにすぎず、具体的な実施形態は後に示されることを理解されたい。装置1を、磁気による案内および/またはカテーテル装置(図示せず)によって、血栓2が位置する処置部位まで案内することができる。ひとたび血栓2の近位側6に付着すると、装置1に力Fを作用させて、例えば血栓2を処置部位から力Fの方向に引っ張ることができる。したがって、力Fは、血栓2と血管壁3との間の摩擦力に打ち勝つために充分な力である。
【0127】
図1bが、血栓2が血管壁3の間に位置し、したがって血流を妨げている処置部位へと誘導されている装置1を示している。装置1は、この血栓2への付着のための付着要素4を備える。ここで、装置1は、制御ライン23に取り付けられた磁気部分19を備える。
【0128】
制御ライン19を、血流中の速度を制御するために使用することができる。磁気部分23は、外部磁石によって生成される磁場による誘導を可能にすることができる。例えば、電磁石および/またはコイルを使用することができる。ここで、装置は、分岐部Bに到達している。処置部位の血栓2への到達のために、磁石(図示せず)を使用して、分岐部Bの意図された分岐に装置1を案内することができる。
【0129】
図1cが、本発明による装置1を用いた処置部位からの血栓2の除去を概略的に示している。分かりやすくするために、同一の特徴に関する参照符号は、1回だけ示されている。最初に(パネルA)、付着要素4が血栓2の近位側6に付着する。血栓2を除去するために、制御ライン23を介して力Fが加えられる。
【0130】
一般に、装置1は、磁気部分19および制御ライン23を備えることができる。磁気部分を、血管における装置1の軌道を制御するために使用することができる。
【0131】
磁気部分19は、鉄、コバルト、ニッケルなどの軟強磁性材料、Nd-Fe-B合金、Fe-Pt合金などの硬強磁性材料、酸化鉄などのフェリ磁性材料、を備えることができ、あるいはこれらで構成されてよい。磁気部分は、とりわけ酸化鉄で作られた超常磁性ナノ粒子などの磁性粒子の凝集体を備えることができ、あるいはそのような凝集体で構成されてよい。
【0132】
磁気部分19は、生物学的流体との直接接触を防止し、したがって腐食を回避するために、コーティングされてもよい。例えば、腐食に対するコーティング材料は、ポリマー(パリレンCなど)、セラミック(例えば、シリカ系、ジルコニウム系、TiO2)、または金属(金、銀)であってよい。
【0133】
制御ライン23を、装置1の移動を制御するために使用することができる。制御ライン23は、ドライバ(図示せず)に取り付けられてよい。ドライバは、制御ユニット(図示せず)によってもたらされる命令に従って制御ライン23を解放するように構成されてよい。
【0134】
制御ライン23を使用して、血流によって押される装置1の速度を下げること、移動を停止させること、および/または装置1を後退させることが可能である。これに加え、あるいは代えて、制御ライン23を、刺激をもたらすことによって装置1の機能をトリガするために使用することができる。
【0135】
制御ライン23を、接着剤によって磁気部分19に可逆的または不可逆的に接続することができる。加えて、磁気部分19および制御ラインへの磁気部分19の接続部を、樹脂に浸すことも考えられる。樹脂は、磁気部分19および制御ライン23の遠位部分を少なくとも部分的に取り囲むシェルを形成することで、磁気部分19と制御ライン19との間の接続の安定性を高めることができる。さらに、接着剤の接着が向上し、接着剤を磁性粒子で官能化させることができる。磁性粒子を磁気部分19に引き寄せることができる。したがって、制御ライン23と磁気部分19との間の接着を磁気的相互作用ゆえに高めることができる。
【0136】
パネルBに示されるように、血栓2に作用する力Fによって血栓を引っ張ることで、血栓2が引き伸ばされる。したがって、血栓2と血管壁3との間の摩擦力が小さくなり、血栓2の除去に必要な力が小さくて済む(パネルCを参照)。
【0137】
図2aが、本発明による装置1の1つの特定の実施形態を示している。装置1は、制御ライン23に取り付けられた磁気ヘッド部分19を備える。制御ライン23は、200μmの直径および13Nの破断力を有するナイロンで作られる。ここに示される付着要素は、磁気ヘッド部分19に配置され、生物学的付着要素7を備えているツール支持体102(
図3a~
図3dを参照)からなる。磁気ヘッド部分19は、医療装置1の遠位端5に配置される。装置1は、遠位端に、実質的に平坦な表面Fを有する。
【0138】
ここで、生物学的付着とは、生物学的付着要素7によって形成が誘導される凝血塊による血栓2と装置1との間の接着を指す。したがって、生物学的付着要素7は、任意の血栓形成物質であってよい。
【0139】
生物学的付着要素7は、装置1を血栓2の近位表面に付着させるための圧縮力をまったく必要とせず、あるいはあまり必要とせずに、付着要素4と血栓2との間に凝血塊を形成することができるため、特に好都合である。
【0140】
凝血塊の形成をトリガするために、生物学的付着要素は、好ましくは、トロンビンなどの凝固カスケードに関与する血栓形成剤を含んでよい。生物学的付着要素における血栓形成剤の濃度を、そのような介入において典型的に必要とされる抗凝固剤の存在にもかかわらず、局所的な凝固をトリガするために充分であるように選択することができる。
【0141】
ここで、生物学的付着要素7を形成する血栓形成性材料は、ツール支持体102の表面の表面に取り付けられる。血栓形成性材料を、グラフトによってツール支持体102の表面に化学的に結合させることができる。
【0142】
これに加え、あるいは代えて、血栓形成性材料をポリマー、好ましくは非生分解性ポリマーと混合して、恒久的な付着を保証する血栓形成性ポリマーを形成してもよい。血栓形成性ポリマーを、ツール支持体102の表面において乾燥させることができる。
【0143】
生物学的付着要素7、特にはツール支持体102上にコーティングされた血栓形成性ポリマーの厚さは、10μm~500μm、好ましくは90~110μmであってよい。
【0144】
これに加え、あるいは代えて、血栓形成性材料をポリマー溶液、例えば溶媒を含むポリウレタンと混合し、次いで、生物学的付着要素7を形成するようにツール支持体102の表面に紡糸された繊維として処理してもよい。好ましくは、ヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP)が溶媒として使用される。
【0145】
これに加え、あるいは代えて、膨潤ポリマーを使用してもよい。例えば、ヒドロゲル(PVA、PVP、ポリアクリルアミド)、多孔性ヒドロゲル、超吸収性ポリマー(ポリ(アクリル酸(PAA)、フォーム(PU)を、血液による水和後に血栓との接触面を増加させるために、生物学的付着要素4におけるマトリックス材料として使用することができる。
【0146】
生物学的付着要素7が繊維を含む場合、これらの繊維はコア-シェル構造を呈してよい。好ましくは、血栓形成剤はシェル内に配置される。好ましくは、生体吸収性ポリマーがコアおよび/またはシェルを形成する。
【0147】
繊維径は、好ましくは50nm~10μmの範囲であり、特に好ましくは800nm~3μmの間である。
【0148】
特に好ましくは、2ヵ月を超える分解時間を呈する生分解性ポリマーが使用される。PLGA、PLLA、PDO、PCLなどのポリマーが適切であり得る。
【0149】
あるいは、生物学的付着要素は、例えばフィブリンまたは赤血球などの血栓の成分と反応を生じるように構成された要素を含んでもよい。この反応は、凝血塊の形成をもたらす凝固カスケードをトリガすることができる。例えば、生物学的付着要素は、血栓2内のフィブリンと反応し得るペプチド、特にはTn6、Tn7、およびTnlOなどの環状ペプチドを含んでよい。
【0150】
図2bが、
図2aに示した実施形態によく似た代案の実施形態を示している。装置1は、マイクロロボット18として形成され、装置1の遠位端5において制御ライン23に接続された磁気ヘッド部分19を備える。付着要素4が、ツール支持体102を備える。生物学的付着要素の代わりに、ツール支持体は、化学的付着要素10を備える。装置1は、遠位端に、実質的に平坦な表面Fを有する。
【0151】
化学的付着要素10は、血栓2の近位表面に接着力をもたらすことができる。接着剤に作用し、接着剤を血栓2に押し付ける圧縮力が、充分な接着を作り出すために必要であるかもしれない。圧縮力は、0.001N~3Nの間、好ましくは0.02~0.08Nの間であってよい。好ましくは、圧縮力は、少なくとも30秒、特に好ましくは45秒~120秒にわたって加えられる。圧縮力を、外部磁場によって生成され、磁気ヘッド部分19に作用する磁気力によって達成することができる。
【0152】
これに加え、あるいは代えて、圧縮力を機械的な手段によって達成することができる。例えば、制御ライン23内にばねを設置することができる(
図11aおよび
図11b、ならびに同様の
図14aおよび
図14bを参照)。装置1が血栓2に対して付着のための適切な位置に位置すると、ばねエネルギーを放出することができる。
【0153】
これに加え、あるいは代えて、推進要素(
図23を参照)を使用してもよい。
これに加え、あるいは代えて、例えば制御ライン23上に配置される抗力要素(
図4aおよび
図4bを参照)を作動させて、接着剤を血栓表面6に押し付けてもよい。
【0154】
これに加え、あるいは代えて、当技術分野で公知の任意の他の手段を使用することができる。
【0155】
接着材料は、2-オクチル-2-シアノアクリレートなどのn-ブチル-2-シアノアクリレートであってよい。接着剤は、医療グレードの接着剤であり、固定支持体上に配置されてよい。典型的には、接着剤の接着力は、装置1、好ましくはツール支持体102上に接着剤を保持するために充分な接着力である。しかしながら、追加の表面コーティングなどの接着促進剤を使用することも考えられる。
【0156】
これに加え、あるいは代えて、接着材料は生物学的であってもよい。例えば、接着材料は、タンパク質系(フィブリン系、コラーゲン系、ゼラチン系、アルブミン系)、および/または多糖系(キトサン系、アルギン酸塩系(例えば、SealG)、およびコンドロイチン系)の接着剤であってよい。
【0157】
これに加え、あるいは代えて、接着剤は、ポリシアノアクリレート(例えば、2-オクチル-2-シアノアクリレートなどのn-ブチル-2-シアノアクリレート)、ポリウレタン(例えば、TissuGlu(登録商標))、ポリ(エチレングリコール)(PEG、例えば、DuraSeal(商標)、FoacaSeal(登録商標)、CoSeal(登録商標))、ポリエステル、ならびに超分岐およびデンドリマーポリマーなど、合成接着剤であってもよい。
【0158】
これに加え、あるいは代えて、接着剤は、イガイに着想を得た接着剤(例えば、ドーパミン修飾ゼラチン+Fe3++ゲニピン)、ヤモリに着想を得た接着剤、などの生体模倣の接着剤であってもよい。
【0159】
これに加え、あるいは代えて、接着剤は、不活性状態で存在し、光活性化(UVまたは他の波長)または少なくとも2つの成分のその場での混合など、当技術分野で公知であり、かつ/または本明細書で説明される任意の手段によって、活性化されてよい。光活性化による接着剤の例は、光重合性PEG接着剤またはメタクリル化トロポエラスチンであってよい。その場での混合の例は、(CoSeal(登録商標)などにおける)2つのPEGポリマーの混合、または(Adherusなどにおける)PEGポリマーとポリ(エチレンイミン)との混合であってよい。
【0160】
これに加え、あるいは代えて、接着剤は、磁性ナノ粒子、例えば酸化鉄ナノ粒子を含んでもよい。ナノ粒子は、硬強磁性、軟質強磁性、強磁性、または超常磁性の特性を呈してよい。ナノ粒子は、5nm~400nm、好ましくは10nm~50nmの特徴サイズ、特には直径を有してよい。これに加え、あるいは代えて、ナノ粒子は、50nm3~3.4・107nm3、好ましくは400nm3~5・104nm3の範囲の特徴体積を有してよい。
【0161】
ナノ粒子は、接着剤中に分散させられ、低エネルギーのファンデルワールス力を介して接着剤と相互作用することができる。あるいは、ナノ粒子は、共有結合および/またはイオン結合を介して接着剤に接続されてもよい。したがって、磁性ナノ粒子は、これらのナノ粒子を含む接着剤分散系に磁気特性をもたらすことができる。したがって、接着剤分散系と磁気ヘッド部分との間に磁力が生じ、接着剤の装置1へのより確実な付着をもたらすことができる。これらの磁力は、ツール支持体102からの接着剤の分離のリスクを低減し、血栓の回収中に接着剤に加わる負担を少なくとも部分的に和らげることができる。
【0162】
接着剤は、50μm~1mm、好ましくは300μm~600μmの直径を有するように装置1上に配置される。
【0163】
接着剤は、乾燥状態の接着剤であってよい。乾燥状態の接着剤は、湿潤状態と比べて接着強度が低い。したがって、乾燥状態の接着剤は、処置部位への誘導時に保護シェルが使用される場合に、保護シェルおよび/または装置の他の部分への付着要素の偶発的および/または恒久的な接着のリスクを低減できるため、特に好都合である。
【0164】
これに加え、あるいは代えて、接着剤をツール支持体102上に配置された多孔質材料に含浸させてもよい。多孔質材料は、繊維組織または多孔質ビーズであってよい。
【0165】
例えば、PETからなる繊維布帛を使用することができる。繊維布帛は、3μmの直径および約800nmの孔径を有する繊維を備えることができる。繊維組織を、PET繊維布帛の中心および/または周辺の接着剤層によってツール支持体102上に固定することができる。好ましくは、接着剤を、繊維布帛などの多孔質材料上で乾燥させることができる。
【0166】
中心において接着される繊維布帛を使用することが、周辺領域がツール支持体102に取り付けられていないままであり、したがって血栓2に向かって移動することによって付着を増大させることができるため、特に好都合である。
【0167】
図2cが、付着要素4が機械的付着手段11を備える装置1の一実施形態を概略的に示している。ここに示される実施形態は、付着の手段を除いて、
図2aおよび
図2bに示された実施形態と実質的に同様である。装置1は、遠位端に、実質的に平坦な表面Fを有する。
【0168】
ここで、機械的付着要素11は、血栓2の近位表面(
図1を参照)を貫くように構成されている。随意により、機械的付着要素は、血栓形成性コーティング(図示せず)、特には血栓の成分と反応して凝固をトリガするように構成されたコーティングを備えてよい。したがって、そのような実施形態が、機械的な付着手段と生物学的な付着手段とを組み合わせることができることが、理解されよう。これに加え、あるいは代えて、機械的付着要素を、本明細書に記載の接着剤および/または膨張性材料でコーティングしてもよい。
【0169】
膨張性材料を、一般に、血栓への付着を改善するために使用することができる。
ここでは、4つの機械的付着要素11が存在する。意図される用途、特には処置される血栓2のサイズに応じて、任意の数の要素11を使用してよいことが理解されよう。好ましくは、2~8個の要素11が使用される。ただ1つの要素11を使用することも可能である。
【0170】
機械的付着要素11は、血栓2よりも大きいヤング率を有し、好ましくは少なくとも1MPaを上回る。
【0171】
機械的付着要素11の直径は、ここでは各々が100μmであるが、50μm~700μm、好ましくは80μm~300μmの範囲であってよい。
【0172】
機械的付着要素11は、好ましくは、PET、PE、またはPPなどのポリマー、あるいはこれらの任意のブレンドまたはコポリマーを含み、あるいはこれらで構成される。
【0173】
機械的付着手段と生物学的付着手段とが組み合わされる場合、血栓形成性要素が、このポリマー材料と混合されてよい。したがって、機械的付着要素11は、血栓形成性材料で作られてもよい。
【0174】
これに加え、あるいは代えて、機械的付着要素は、金属を含むことができ、あるいは金属で構成されてよい。例えば、ステンレス鋼(316L)、チタン、タングステン、またはこれらの任意の合金を使用することができる。
【0175】
これに加え、あるいは代えて、血栓形成剤を、例えば浸漬コーティングによって、機械的付着要素11にコーティングすることができる。コーティングは、より多様な材料と共に使用することができる、すなわちポリマー、金属、または任意の他の材料を含む機械的付着要素に好適であるという点で、好都合である。
【0176】
特には、機械的付着要素11の表面を、CVD、プラズマ溶射、または物理蒸着によって、血栓形成剤でコーティングすることができる。
【0177】
使用可能な例示的な血栓形成性要素は、フォンヴィレブランド因子(vWF)、ラミニン、トロンボスポンジン、ビトロネクチン、フィブリノーゲン、またはトロンボキサンA2である。これらの血栓形成性要素は、血小板の接着、したがって凝血回の形成をトリガすることができる。
【0178】
トロンビンも好適であり、フィブリノーゲンをフィブリノペプチドAの切断によってフィブリンに変換する酵素である。したがって、フィブリンネットワークを形成して赤血球および血小板を捕捉し、凝血塊の形成をもたらすことができる。
【0179】
図3a~
図3eが、装置1、とりわけ磁気部分19および付着要素4のアセンブリを、より詳細に示している。
【0180】
図3aは、装置の遠位部分5において制御ライン12に取り付けられた磁気部分19を示している。磁気部分19は、ツール支持体(
図3cおよび
図3dを参照)のための形状嵌合接続部として機能する開口部100を備える。
【0181】
開口部100の直径は、図示の実施形態においては300μmである。しかしながら、直径が50~600μm、好ましくは200μm~400μmの範囲のどこかにあってよいことが、理解されよう。
【0182】
開口部100の高さまたは深さ106を、磁気部分19の直径と同じ、または磁気部分19の直径よりも小さくすることができる。高さは、好ましくは100~1000μmの間、特に好ましくは200μm~400μmの間であってよい。
【0183】
図3bは、装置の磁気部分19を概略的に示している。磁気部分19と、ツール支持体(
図3cおよび
図3dを参照)を固定するための磁気部分19の最も遠位の表面に配置された磁気部分19の開口部100とを、より詳細に見て取ることができる。分かりやすくするために、制御ラインは、この図には示されていない。しかしながら、ここに示されている磁気部分19が、本明細書に開示される任意の制御ライン23に接続されてよいことが理解されよう。
【0184】
ここに示される磁気部分19は、実質的に球の形状を有する。あるいは、磁気部分19は、他の任意の形状、特には立方体、平坦、楕円形、または棒状を有してもよい。磁気部分19の直径は、ここでは1500μmであるが、50μm~2000μm、好ましくは200μm~1000μmの範囲であってもよい。
【0185】
図3cは、ツール支持体102をさらに詳細に示している。ツール支持体102は、磁気部分19の遠位端に設置されるように構成されている。
【0186】
ツール支持体102を、例えば、接着、ねじ込み、クリップ、溶接、または溶融によって、磁気部分19に接続することができる。好ましくは、ツール支持体102は、磁気部分19の形状嵌合開口部100に配置されるように意図されたピン101を備える。上記の接続方法のいずれも、そのような形状嵌合接続部と組み合わせることができ、すなわち接着剤、ねじ、クリップ、溶接接続、または溶融接続を、形状嵌合接続に加えて構成できることが理解されよう。
【0187】
好ましくは、ツール支持体は、平坦面を呈する。ツール支持体102の特徴サイズ、特には直径は、磁気部分の直径と同じでも、より大きくても、より小さくてもよい。
【0188】
ツール支持体は、磁性材料、非磁性材料、またはこれらの任意の組み合わせを備えることができ、あるいはこれらで構成されてよい。例えば、ツール支持体102の一部が、磁気部分19への接続を改善するために磁性を有していてもよい。
【0189】
適切な非磁性材料は、
・チタン、ステンレス鋼、金、銀、などの金属、
・シリコン、PEEK、ポリウレタン、などのポリマー、
・セラミック、
・複合材料
である。
【0190】
ツール支持体102は、これに加え、あるいは代えて、凝集粒子を含んでも、凝集粒子で構成されてもよい。凝集粒子は、例えば導電率などの材料特性の調節可能性の向上をもたらすことができる。ツール支持体102は、随意により、その生体適合性を改善するために、生体適合性コーティング(図示せず)でコーティングされてもよい。
【0191】
図3dは、
図3cのツール支持体102と組み合わせられた
図3bの磁気部分19を示している。
【0192】
図3eは、マイクロロボット18として構成された組み立てられた装置1を示している。装置1は、
図3bに示されているような磁気部分19と、
図3cに示されているようなツール支持体102とを備え、装置1の遠位端5において制御ライン23に接続される。ここでは、ツール支持体102上に付着要素が示されていないが、本明細書に開示のとおりの任意の付着要素を図示の実施形態と組み合わせることができることが、理解されよう。
【0193】
ここでは、説明のために、長手軸Lと、長手軸に垂直な方向rとが示されている。装置1は、2mmという方向rにおける装置1の最大サイズを表す方向rにおけるサイズSを有する。
【0194】
図4aおよび
図4bが、追加の抗力要素25を備える装置1の一実施形態を示している。ここに示されている装置1は、
図2bの装置1と実質的に同様であり、ここではシアノアクリレート接着剤の液滴の形態の化学的付着要素10で構成されたツール支持体102を有する磁気部分19を備える。装置1は、マイクロロボット18として構成されている。さらに、ここに示されている装置は、PVDFの薄い箔からなるカプセルで構成された保護キャップ14を備える。これに加え、あるいは代えて、PMMAおよび/またはPA66を使用してもよい。保護キャップ14は、スライダ107上に摺動可能に配置されたリング108を備える。保護キャップ14を、スライダ107上のリング108を近位方向に移動させることによってマイクロロボット18から後退させることができる。後退により、保護キャップ14を引き裂いて、保護キャップの開放をもたらすことができる。
【0195】
保護キャップ14は、リング108に圧着されている。リング108は、ポリマー、金属、またはこれらの任意の組み合わせを備えても、これらで構成されてもよい。圧着は、血液などの生物学的流体の保護キャップ14への意図せぬ浸入を防止することができる。
【0196】
リング108およびスライダ107は、協働して摺動システムを形成し、制御ライン23上に設置される。
【0197】
スライダ107を、随意により遠位リング(図示せず)および近位リング109を有する直線管の構成として構成することができる。直線管は、リング108のためのレール状のガイドを提供することによって、カプセルの後退を可能にする。最初に、リング108はスライダ107の遠位端に位置する。保護キャップ14を後退させるために、リング108は、摺動システムの近位端へと動かされる。リングを、例えば、制御ラインドライバ(図示せず)を介して引っ張られるラインによって移動させることができる。あるいは、圧着リングを、リング108と遠位リングとの間に配置された剛体ラインの収縮によって移動させてもよい。剛体ラインは、例えば、電気刺激下で縮むニチノールを備えることができ、あるいは電気刺激下で縮むニチノールで構成されてよい。
【0198】
制御ラインと摺動システムとの間の液体、例えば血液の浸入を回避するために、近位リング109の内側に弁を配置することができる。
【0199】
随意により、保護キャップ14の破断を容易にするために、保護キャップは、例えば厚さの減少(図示せず)の形態の所定の破断点を備えることができる。厚さの減少は、10~70%、好ましくは30%~50%であってよい。これに加え、あるいは代えて、破断可能部分は、生体吸収性材料、特には本明細書に記載の生体吸収性材料を備えることができ、あるいはそれらで構成されてよい。分解は、本明細書に記載の任意の刺激でトリガ可能であってよい。
【0200】
あるいは、ツール支持体102が切断ツール(図示せず)を備えてもよい。切断ツールは、保護コーティング14を後退時に引き裂くことができる。
【0201】
好ましくは、切断ツールは、ツール支持体102の縁部に配置される。
抗力要素25は、制御ライン23上に配置される。一構成において、活性化可能な抗力要素25は、ポリマー層で覆われたニチノールフレームで作られる。ポリマー層は、ポリウレタンを備え、あるいはポリウレタンで構成されてよく、50μm~300μmの厚さを呈してよい。ニチノールフレームを熱などの刺激下で活性化させ、構造の開放をもたらすことができる。血流によって引き起こされる抗力の増加が、追加の推進力を提供することができる。
【0202】
図4aは、装置1の第1の構成を示している。ここで、保護キャップ14は、送入構成にあり、付着要素4を血液、他の生物学的流体、および組織との接触から保護している。抗力要素25は閉じた構成にある。
【0203】
図4bは、装置1の第2の構成を示している。ここで、保護キャップ14は、リング108をスライダ107上で近位方向に摺動させることによって開かれている。したがって、保護キャップ14は引き裂かれ、したがって装置1の最遠位端が、血栓(図示せず)を接着性の付着要素10に付着させることができるように、保護キャップ14から付着要素4を解放する。さらに、抗力要素15が開いた構成にあり、血流に起因する追加の抗力を生じさせる。
【0204】
図4aおよび
図4bに示される2つの構成、すなわち抗力要素が送入時には閉じられ、付着要素4が解放されるときに開かれることが、例示であることが理解されよう。抗力要素25を、保護キャップ14の構成とは無関係に開閉することも考えられる(すなわち、送入中または血栓への付着要素の付着中に、抗力要素25を開閉してもよい)。特には、抗力要素25を、送入中(すなわち、保護キャップ14が無傷であるとき)の追加の抗力のため、および/または追加の付着力の提供(すなわち、付着要素4が解放されたとき)のために使用することができる。抗力要素25を送入時にのみ開き、付着時には開かないことも可能であると考えられる。
【0205】
図5が、
図2aの装置と同様の装置1の遠位端領域のさらに詳細な図を示している。生物学的付着要素7は、多孔質ポリマー層を備え、多孔質ポリマー層内に血栓形成性要素が配置されている。生物学的付着要素は、磁気部分19に取り付けられたツール支持体102上に薄い層として取り付けられる。細いナイロン繊維で形成された制御ライン23が、磁気部分19に取り付けられ、したがって装置1の遠位端5に配置される。
【0206】
図6aおよび
図6bが、血栓2の近位面6への生物学的付着要素7の付着を概略的に示している。
【0207】
ここに示される装置1は、
図2aおよび
図5に示した装置と実質的に同様である。
図6aは、血栓2に比較的近接した位置まで送入された装置を示している。生物学的付着要素7は、血栓2の近位面6の方に向けられている。この位置において、生物学的付着要素7を活性化させることができる。ここで、電気信号が、制御ライン内のケーブルを介して伝送され、血栓形成剤を放出する。2つ以上のケーブルが使用されてもよいことが理解されよう。これに加え、あるいは代えて、本明細書に開示の任意の活性化機構、特には保護キャップ(
図4aおよび
図4bを参照)を使用してもよいことが理解されよう。装置は血栓の近位面6の近くまで移動しているが、近位面6と直接接触していないことに留意されたい。
【0208】
図示の実施形態は、特には、電気を印加することによって血栓の形成をトリガすること(電気血栓形成)を可能にする。
【0209】
図6bは、生物学的付着要素7の活性化後の
図6aの装置1を示している。生物学的付着要素の血栓形成活動ゆえに、生物学的付着要素7と血栓2の近位面6との間に凝血塊7’が形成されている。凝血塊7’は、血栓2と装置1との間の付着をもたらす。
【0210】
図6aおよび
図6bに示されるように、生物学的付着要素7は、たとえ付着要素4と血栓2との間の整列が不完全であっても、凝血塊7’が形成され、付着をもたらすように装置1と血栓との間の隙間全体を満たすことができるという点で、好都合であり得る。したがって、特には、血栓2と装置との相対位置が充分な精度では知られていない場合、および/または血栓2の近位表面6が不規則な形状である場合に、外科医にとって処置のより容易な実行を可能にすることができる。
【0211】
図7aおよび
図7bが、ツール支持体102を介して印加される電流を使用して生物学的固定を達成するための代替の戦略を概略的に示している。ここに示される方法に使用することができる装置が、以下でさらに詳細に説明されることが理解されよう。ここでは、分かりやすくするために、動作原理を説明する。
【0212】
電流は、電気血栓形成によって凝血塊の形成をもたらすことができる。したがって、例えば
図6aおよび
図6bに示した付着と同様の付着を、電流を使用して達成することができる。
【0213】
したがって、血栓2への生物学的付着を達成するために、ツール支持体102に電流を届けることができる。
【0214】
これに加え、あるいは代えて、電流によってツール支持体102の温度を上昇させ、焼灼によるツール支持体102の付着をもたらしてもよい。温度を60℃まで、好ましくは40~45℃の間の温度まで上昇させることができる。焼灼のためにツール支持体において極低温プローブを使用することも可能である。ツール支持体の加熱を、内部刺激または外部刺激によってもたらしてもよい。
【0215】
図7aは、装置1の磁気部分19に取り付けられ、送入後に血栓2の近位表面と接触し、しかしながら付着機構の活性化前であるツール支持体102を示している。当業者であれば、ツール支持体102が活性化前に血栓2の表面を貫通してもよいことを理解するであろう。これに加え、あるいは代えて、接着をさらに提供するために、加熱を図示の実施形態と組み合わせてもよい。
【0216】
図7bは、ツール支持体102を介して電流および/または熱を届けた後の血栓7’内の焼灼された組織7’の形成の形成を示している。焼灼された組織7’は、血栓を回収するために血栓2とツール支持体102との間の充分な付着を提供する。
【0217】
図8aが、電気血栓形成を引き起こすように構成された生物学的付着機構7を備える本発明によるマイクロロボット18として構成された装置1を概略的に示している。電気ワイヤ(図示せず、
図8bを参照)が制御ライン23内に配置される。制御ライン23は、装置1の遠位端5において磁気部分19に取り付けられている。ツール支持体102は、磁気部分19に取り付けられ、生物学的付着要素7として機能するように電流を届けるように構成されている。
【0218】
図8bが、
図8aの装置1の遠位領域5のさらに詳細な図を、断面図にて示している。ここで、電気ワイヤ9は、制御ライン23の内側領域に埋め込まれ、磁気部分19に接続される。分かりやすくするために、ワイヤが1つだけ示されているが、当業者は、2つ以上のワイヤ9が存在してもよいことを理解するであろう。電流をツール支持体102に到達するように磁気部分19を通って届けることができる。各々の電気ワイヤ9の直径は、10μm~500μm、好ましくは50μm~100μmである。電気ワイヤ9は、溶接、溶融、または導電性接着剤による接着によって磁気部分19に取り付けられてよい。
【0219】
絶縁体シェル110が、生物学的流体、特には血液における電流の散逸を回避するために、制御ライン23の外面に配置される。絶縁体シェル110は、好ましくは、ヤング率の小さい可撓性ポリマーで製作される。ヤング率は、好ましくは0.2GPA~50GPaの間、特に好ましくは0.5GPa~5GPaの間である。シェルの厚さは、20~200μmの間、好ましくは30~80μmの間である。
【0220】
図9が、生物学的付着要素7として構成されたツール支持体102を備える装置1の代案の実施形態を示している。
【0221】
ここで、2つの電気ワイヤ9、9’が、制御ライン23を通り、磁気部分19の周りに案内され、ツール支持体102に直接接続されている。電気ワイヤ9、9’とツール支持体102との間の接続は、この実施形態においては溶接による。電気ワイヤの直径は、10μm~200μmの間、好ましくは60pm~120μmの間である。これらのワイヤのヤング率は、0.2~50GPaの間、好ましくは0.5GPa~5GPaの間である。図示の実施形態において、ワイヤ9、9’は、磁気部分19の周囲に配置され、したがって磁気部分の直径を増大させる。そのような実施形態において、磁気部分19のサイズが大きくなると血管内での誘導がより困難になる可能性があるため、上述のワイヤ9、9’’の直径が一般的に好都合である。
【0222】
ここに示されている電気ワイヤ9、9’を、電流/電圧を届けるために本明細書に開示の任意の他の実施形態において使用できることが理解されよう。
【0223】
さらに、磁気部分19への電流の散逸を防止するために、磁気部分19は、保護シェル111で覆われている。保護シェル111は、電気絶縁性であり、腐食に対する追加の保護を提供することができる。保護シェル111は、ここでは厚さ100μmのポリエステル樹脂の層で構成されている。しかしながら、これに加え、あるいは代えて、保護シェル111は、任意のセラミック、ポリマー、または複合材料を備えてもよい。例えば、エポキシ樹脂、シリコーン、またはエポキシ-ポリウレタンのブレンドが適切な材料である。炭素、シリカ系セラミック、チッ化ジルコニウム、またはジルコニアも適切な材料である。保護シェル111の厚さは、50nm~200μmの範囲、好ましくは30μm~100μmの間であってよい。
【0224】
ツール支持体102を、電気血栓形成または焼灼のためのプローブとして使用することができる。示された形状は例示的なものであり、他の形状を使用してもよいことが理解されよう。
【0225】
図10aおよび
図10bが、本発明による装置1を製造する方法を概略的に示している。ここに示される方法は、
図9に示したような装置1の製造に特に適する。
【0226】
図10aは、磁気部分19が制御ライン23に組み付けられた装置1を示している。ツール支持体102は、実質的に本明細書に開示されるやり方で磁気部分19に接続される。ここでは、ツール支持体102上に一時層105が配置されている。一時層105は、ポリビニルアルコール(PVA)を含み、100μmの厚さを有する。厚さは、50μm~200μmの範囲内の任意の値であってよい。一時層105は、図示の例においてはツール支持体102を完全に覆うが、このツール支持体102を過ぎて延びてはいない。したがって、磁気部分19および制御ライン23は、一時層によって覆われていない。保護シェル(図示せず、
図10bを参照)を、一時層105を含む装置1上にコーティングすることができる。
【0227】
あるいは、一時層102は、ツール支持体102を覆って引き伸ばされて配置されてよいシリコーンカバーであってよい。シリコーンカバーは、好ましくは100μm~300μmの厚さを有する。
【0228】
図10bは、装置1の製造の完了後の装置1を示している。
図10aの文脈において説明したように、一時層105が依然として存在している間に、保護シェル111が装置1上にコーティングされている。保護シェルを、ツール支持体102の一般的な領域において切断することができる。続いて、一時層105(
図10aを参照)が水での溶解によって除去される。結果として、保護シェル111は、もっぱら磁気部分19上に配置される(一時層が存在した場所では、保護シェル111が一時層105と一緒に除去される)。ツール支持体102は、保護シェル111に覆われていない。ここで、装置1は、
図9に示した装置1と実質的に同様であり、ツール支持体102は、電流を届けるように構成されている。保護シェル111が存在しないことで、全体的な抵抗が減少し、したがって電流を容易に届けることができるようになる。
【0229】
あるいは、上述のようなシリコーンキャップが使用される場合、このキャップは、保護シェル111を除去するように、切断されてツール支持体102から除去される。
【0230】
上述のとおりの方法は、保護シェルで医療装置の特定の部分を選択的にコーティングし、他の部分はコーティングしない簡単かつミスの少ないやり方を可能にする。特には、他の方法(保護コーティングをエッチングし、あるいは引っかいて取り除く)は、装置を損傷させ、スクラップ率を高める可能性がある。
【0231】
上記の例が本質的に例示的なものであり、これに加え、あるいは代えて、医療装置の他の部分が一時層によって覆われてもよいことが理解されよう。
【0232】
図11aが、血栓2を血管3から回収する処置の最中の化学的付着要素10を備える装置1の実施形態を示している。ここに示される装置は、
図2bに示した装置と同様であり、磁気部分19と、接着剤10が配置されたツール支持体102と、装置1の遠位端5に取り付けられた制御ライン23とを備えるマイクロロボット18として構成される。ここで、装置は、ばねとして構成された伸長可能要素12をさらに備える。ばね12は、接着剤10を血栓に付着させるために、血栓2に0.1Nの圧縮力をもたらすように構成される。圧縮力は、0.05N~2Nの範囲内であってよい。
【0233】
図11bが、
図11aに示した処理工程と同様の処理工程を示している。しかしながら、ここに示されている装置は、ばねを備えていない。代わりに、外科医は、接着性の付着要素10を付着させるために、磁場を使用して磁気要素に遠位方向の力をもたらすことができる。
【0234】
図12aが、磁気部分19と制御ラインとを有する装置1の詳細図を示しており、機械的付着要素11が、磁気部分19の遠位端に配置されたツール支持体102に取り付けられている。制御ライン23および磁気部分19が、本明細書に記載の制御ラインおよび磁気部分と実質的に同様であることが理解されよう。ツール支持体102は、磁気要素に接着される。4つの機械的付着要素11が、ねじ込み機構(見て取ることができない)によってツール支持体102上に配置され、形状記憶合金を備える。これに加え、あるいは代えて、形状嵌合および/または接着剤を使用することもできる。機械的付着要素11は、60mpiの直径および0.5mmの長さを有する。直径は、0.3mm~0.8mmの範囲であってもよい。あるいは、カテーテルに基づく装置の場合、直径は1mm~3mmの間であってもよい。ここで、機械的付着要素11は、ツール支持体102の表面に対して垂直に配置される。しかしながら、10°~160°の間の任意の角度が考えられ、60°~120°の間の角度が好ましい。
【0235】
図12bが、機械的付着要素11が外側に曲げられた
図12aの装置1を示している。直線的な構成からここに示される曲がった構成への移行を、例えば電流を届けることによって達成されてよい温度の変化によってトリガすることができる。
【0236】
この設計において、機械的付着要素11は、当技術分野で知られている任意の刺激に応じて曲がることができる剛体ワイヤに基づく。例えば、上述のように、ワイヤは、電流に起因して曲がるニチノールを備えることができ、あるいはニチノールで構成されてよい。
【0237】
ワイヤの完全な曲がりを回避するために、ワイヤを剛体シャフトの内側に設置してもよい。シャフトを、ポリマー(例えば、PEEK)または金属(例えば、AISI 316Lのステンレス鋼)で作ることができる。シャフトの内径は、50μm~500μm、好ましくは100μm~300μmであってよい。シャフトの外径は、90μm~600μm、好ましくは140μm~350μmであってよい。
【0238】
上述したように、ワイヤは、ツール支持体102上に配置されてよい。ワイヤとツール支持体との間の接続は、貫通孔であってよく、あるいは支持体に固定されたマトリックスを介してもよい。ワイヤの直径は、一般に、50μm~300μm、好ましくは75μm~150μmであってよい。ワイヤの末端は、近位表面の貫通を改善するように形作られてよく、特には尖った形状および/または鋭い形状を有することができる。
【0239】
図12cが、機械的付着要素11が外側にではなく、内側に曲がった別の実施形態を示している。
【0240】
図12bおよび
図12cに示される特徴を、例えばいくつかの機械的付着要素を内側に曲がるように構成し、他のいくつかの機械的付着要素を外側に曲がるように構成することによって組み合わせることができることが理解されるであろう。さらに、機械的付着要素11の一部分がフック状の形状を形成するように曲がるここに示されている形状変化が、例示的な性質のものであることが理解されよう。機械的付着要素11を、コルクスクリュー形状、リング、キンク、および/または他の形状などの任意の他の適切な形状を形成するように構成することも考えられる。
【0241】
機械的付着は、一般に、機械的システムを用いた血栓の近位表面への付着を指す。本明細書に示される実施形態が、例示的な性質のものであることが理解されよう。
【0242】
一般に、機械的システムは、血栓を貫通するように使用される。貫通は、血栓構造の損傷を回避するために、好ましくは0.01mm/s~15mm/s、特に好ましくは0.1mm/s~1mm/sの速度で漸進的である。無傷の血栓は、回収中の破損または血管系への破片の放出の恐れが少なくなるため、好都合である。
【0243】
ツール支持体102上に配置される機械的付着要素11の数は、一般に、1~20、好ましくは2~8である。
【0244】
図13a~
図13dが、機械的フック11を備える付着要素4による血栓2の付着の方法を示している。ここに示される装置1は、
図12bの装置と同様である。
【0245】
図13aは、回収すべき血栓2に近接した装置1を示している。上述したように、装置は、
図12bで説明した装置と実質的に同様である。送入構成において、機械的付着要素11’、11’’は、刺激/トリガ機構がなく、ツール支持体102の中心を向いた曲がった形状に配向されるように構成される。ここで、装置1が処置すべき全体的領域に到達すると、機械的付着要素11の形状を直線的な形状に変化させるために刺激が使用される。例示的には、装置1は、ここでは、1つの要素11’が依然として内側に曲がっており、別の要素11’’がすでに真っ直ぐな構成にある状態で図示されている。
【0246】
機械的付着要素11’、11’’は、曲がっており、別個に作動させることが可能であってよい。この目的のために、各々の機械的付着要素11’、11’’は、各々別個の電気的接続に接続されてよく、あるいは接続可能であってよい。このような配置は、血栓が不規則な形状を有する場合に好都合になり得る。
【0247】
各々の機械的付着要素11’、11’’に別個の作動を提供するために、ツール支持体102は、電気絶縁をもたらす接着剤で互いに接着された4つの部品を含むことができる。このようにして、接着剤を通る電流の漏れが防止される。
【0248】
ツール支持体102の各々の部分が2つの電気ワイヤに接続されてもよい。
図13bは、
図13aの装置1を示しており、
図13aの文脈において説明した形状変化の完了の結果として、機械的付着要素が直線形状に構成されている。
【0249】
図13cは、血栓2の貫通後の
図13aおよび
図13bの装置を示している。ここで、外部磁石(図示せず)によって磁気部分19に及ぼされる磁場力が、血栓2を近位面6において貫通するように装置1を遠位方向に推進させるために使用される。一般に、血栓2への貫通を、
・本明細書に記載の外部磁場によって制御される磁気変位、および/または
・化学的推進力(
図23を参照)、および/または
・例えばばねで達成される機械的推進力(
図11aを参照)、および/または
・制御ライン23上に設置された追加の抗力要素によって達成される血流推進力(
図4aおよび
図4bを参照)
のうちのいずれか1つによって達成することができる。
【0250】
貫通を、制御ラインドライバによって解放された長さを介して監視することができる。これに加え、あるいは代えて、圧力センサ、特には血栓の回収を監視するために使用される制御ラインドライバに動作可能に接続された圧力センサを、制御ラインに取り付けることができる。
【0251】
これに加え、あるいは代えて、貫通を当技術分野において既知の任意の画像化手段によって監視してもよい。この目的のために、医療装置の任意の部分、特にはツール支持体および/または任意の付着要素を、放射線不透過性であるように構成し、血栓に付着したときに画像化してもよい。
【0252】
図13dは、付着要素4の血栓2との最終的な付着を示している。血栓2の内部において、機械的付着要素11を外側へと向け、したがって血栓2に付着するように配向させるために、刺激値を増加させることができる。
【0253】
ここで説明される特定の形状変化が、例示的な性質のものであり、初期の貫通およびその後の付着を可能にする任意の形状変化が好適であり得ることが理解されよう。特には、付着要素11は、外側にではなく、内側に曲げられてもよい(
図12bおよび
図12cを参照)。
【0254】
図14aおよび
図14bが、
図13a~
図13dに示した方法と実質的に同様の機械的付着要素11を用いた血栓の付着の方法を概略的に示している。
【0255】
ここで、装置1は、制御ライン23に組み込まれたばね12をさらに備える。ばね12は、機械的付着要素11によって血栓2を貫通するための推進力を提供することができる。特には
図13a~
図13dの文脈において説明した磁気推進など、任意の他の推進機構を、ここに示される実施形態と組み合わせることができることが理解されよう。
【0256】
図14aは、処理対象の全体的領域における装置1を示しており、ばね12は圧縮され、ロックされている。
【0257】
図14bが、ロックが解除されてばねが解放され、機械的付着要素11で血栓2を貫通するための充分な遠位方向の力をもたらしている装置1を示している。
【0258】
ばね12の解放を、機械的または電気的に制御することができる。機械的解放を、ばね12に取り付けられたラインを介して実行することができる。ラインに外力を加えることで、ばね12を解放することができる。
【0259】
特に、ばね12は、例えばニチノール合金などの形状記憶材料を含んでよく、第1の形状から第2の形状へと変化するようにトリガされてよい。
【0260】
ばね12を、物理的障壁の除去または分解によって解放してもよい。ばねを、特には、例えばニチノールなどの形状記憶合金で製作することができる。熱または電気などの刺激の下で、ばねを活性化させることができる。ばねを熱によって活性化させるために、加熱可能な材料でのコーティングが可能である。例えば、ばねを赤外線照射への曝露によって加熱することができる金ナノ粒子でコーティングすることができる。別の構成は、超常磁性ナノ粒子でコーティングされたばねであってよい。これらの粒子を、温熱療法に使用される交番磁場などの交番磁場中で加熱することができる。
【0261】
物理的障壁は、ロックであってよい。ロックを、圧縮ばねに平行なフレームで設定することができる。ロックは、長手方向に対して垂直に設定される。ロックを引っ張りによって取り除くことができ、あるいは急速分解(電流下でのマグネシウムの生物腐食)によって除去することができる。制御23ラインの一部を、ばね12によって形成してもよく、すなわち制御ライン23は、制御ラインドライバ(図示せず)とばね12との間に設定されてよく、制御ライン23の第2の部分が、ばね12と磁気部分19との間に設定されてよい。
【0262】
ばねは、50μm~800μm、好ましくは100μm~300μmの範囲に含まれる直径を有することができる。
図14bに示されるような伸長状態において、ばねは、1mm~30mmの間、好ましくは2mm~5mmの間の長さを有することができる。
図14aに示されるような圧縮状態において、ばね12は、0.5mm~10mmの範囲の長さを有することができる。
【0263】
好ましくは、ばね12は、圧縮状態から伸長状態へと移行するときに、その長さを少なくとも100%、好ましくは200%変化させるように構成される。
【0264】
好ましくは、ばねは、0.05N~0.6Nとの間の力を加えるように構成される。
ばね12は、制御ライン23によって形成されてよい。例えば、制御ライン23は、らせん状に形成されたニチノールワイヤを備えることができる。例えば電気などの刺激下で、らせん状のニチノールの形状を伸ばすことができる。ニチノールらせんの直径は、50μm~900μm、好ましくは100μm~300μmの間であってよい。
【0265】
ここに示されるばね12を、任意の他の付着要素、特には接着剤を含む化学的付着要素(例えば、
図2bを参照)と組み合わせてもよいことが理解されよう。
【0266】
あるいは、ばね12は、制御ライン23に接続された別個の要素として構成されてもよい。好ましくは、ばねは、磁気部分19と制御ライン23との間に配置される。
【0267】
図15が、血栓2に付着したときの
図2cの装置と実質的に同様の装置1を示している。ここでは、3つの機械的付着要素11がツール支持体上に一列に配置されている。付着要素11は、要素11の遠位端に向かって120μmの最小直径および200μmの最大直径を有する。要素11は、300μmの長さを有する。機械的付着要素は、外科用グレードの鋼で製作され、機械的付着要素11を血栓2にさらに固定する血栓形成を促進するために、塩化カルシウムでコーティングされる。一般的に言うと、任意の接着機構(化学的または生物学的)を使用して、貫通後の追加の固定を提供することができる。好ましくは、接着機構は、要素11の近位領域に配置される。
【0268】
随意により、要素11は、膨張性コーティングでコーティングされてもよい。そのようなコーティングは、ひとたび要素11が血栓2内に位置すると、膨張によって血栓2へのさらなる固定を提供することができる。
【0269】
図16aが、実質的に
図2bに示したような化学的付着要素10を備える装置1の実施形態を示している。保護層15が、付着要素4上および磁気部分19の一部分に配置されている。保護層15は、血液などの水溶液および水分散液において可溶性のポリマーを含む。好ましいポリマーは、多糖類、セルロース、デンプンおよび/またはデンプン系のコポリマーおよび誘導体、ゼラチン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ゼラチン-PEG、ならびに/あるいはPEOである。保護層15は、好ましくはその厚さにおいて、血液中での完全な溶解に典型的な処置時間よりも長い時間を要するように構成される。典型的には、溶解は5~30分以内、好ましくは5~15分以内に生じる。結果として、装置1を、化学的付着要素10を血液と接触させることなく、血管系を通って目標の部位まで誘導することができる。しかしながら、目標の部位に到達すると、保護シェル15は、例えば5分などの短時間のうちに自動的に溶解し、その後に化学的付着要素が解放され、血栓に付着することができる。
【0270】
図16bは、
図16bに示した装置と同様の装置1を示している。同様の保護キャップ15が、付着要素4を覆って配置されている。ここで、付着要素4は、血栓(図示せず)を貫通するための充分な剛性を有する細長い接着要素10を含む。要素10は、例えば、接着剤コーティングを有する金属またはポリマー要素であってよい。したがって、解放されると、化学的付着要素10は、血栓の近位面を貫通することができ、接着強度の向上およびより安全な回収をもたらす。ここには示されていないが、要素10は、血栓への貫通を改善するために鋭利であってもよい。
【0271】
図17aおよび
図17bが、ばねを備える機械的付着要素11を有する装置1の一実施形態を示している。
【0272】
図17aは、送入構成にある装置1を示している。ばね11は、ツール支持体102上へと圧縮され、おおむね平坦な形状を有している。保護キャップ14が、磁気部分19に取り付けられ、ばね11と体液および組織との間の接触を防止する。
【0273】
図17bは、活性化後の装置1を示している。ここで、ばね11が、保護キャップ14の一部であるフィルム14’を破るために使用されている。ばね11を伸張させることにより、フィルム14’の穿孔が達成される。
【0274】
保護キャップ14を穿孔するためのばね11の解放を、除去時にばね11を元の構成へと再び伸長させるロック機構によって行うことができる。
【0275】
ばね11を圧縮構成に維持するために、ニチノール部品を使用することができる。電流の印加によって、ニチノール部品は加熱されて自身の構成を変化させることができ、したがってばねを解放することができる。
【0276】
ここで、保護キャップ14は、フィルム14’およびリング14’’を備える。好ましくは、フィルム14’は、PEなどのポリマーから製作される。フィルムは、浸漬コーティングによる処理の際にリングに取り付けられてもよい。これに加え、あるいは代えて、フィルム14’をリング14’’に接着し、融着させ、あるいは溶接することができる。フィルム14’の厚さは、20μm~500μmの間、好ましくは100μm~300μmの間であってよい。
【0277】
リング14’’は、PEEK(ポリエーテルケトン)、ポリスルホン(PSU、PPSU)、またはポリエチレン(HDPE)などのポリマーを含むことができ、あるいはこれらで構成されてよい。これに加え、あるいは代えて、リング14’’は、ステンレス鋼(304または316L)、チタン、タングステン、などの金属を含むことができる。
【0278】
リング14’’は、リング14’’に磁気特性を与える酸化鉄、鉄、Nd-Fe-B、FePt、などの磁性材料をさらに含むことができる。磁気リングは、誘導に使用される磁気部分19との磁気的相互作用をもたらすことができる。この相互作用は、リングと装置1との接着を向上させる。
【0279】
リング14’’は、腐食の低減または防止のためにコーティングされてもよい。
ばね11は、さらなる生物学的または化学的付着を提供するために、血栓形成性材料または接着材料でさらにコーティングされてもよい。
【0280】
これに加え、あるいは代えて、血栓形成性材料をツール支持体102上に配置することができる。
【0281】
ばねを、保護キャップ14の貫通、すなわち別個の付着機構の活性化のためだけに使用することも考えられる。
【0282】
この目的のために、血栓形成性材料を、ばね11に取り付けられた足場および/またはばね11自体に固定することができる(
図28を参照)。足場を合成繊維で製作することができる。合成繊維を、ポリジオキサノン(PDO)またはポリ-ε-カプロラクトン(PCL)などの生体吸収性ポリマー、あるいはPETまたはポリウレタンなどの非生体吸収性ポリマーで製作することができる。さらに、足場は、例えばコラーゲンの繊維などの天然繊維を含むこともでき、あるいは天然繊維で構成されてもよい。天然繊維と合成繊維との組み合わせを使用することも考えられる。足場の厚さは、50μm~2mmの間、好ましくは150μm~300μmの間である。
【0283】
特定の実施形態において、ばね11、12は、磁気部分19とツール支持体102との間に設置されてよい。ツール支持体102は、保護キャップ14を切り開くための切断領域を備えることができる。好ましくは、4つの切断領域がツール支持体の周辺領域に配置される。
【0284】
図18aおよび
図18bが、送入構成にある活性化可能装置の代案の実施形態を示している。保護キャップ14は、
図17aに示した保護キャップと同様であり、リング14に取り付けられたポリマーフィルム14’を含む。装置1は、接着剤として形成された化学的付着要素10を備える。
【0285】
図18bは、装置1を装置1の長手軸に平行な平面における断面図にて示している。ここで、装置の詳細な構造、特にはツール支持体102、磁気部分19、および制御ライン23の取り付けを見て取ることができる。さらに、化学的付着要素内に配置された活性化可能な破断支持体112を見て取ることができる。
【0286】
ここで、一般に、ポリマーフィルム14’’は引っ張られた状態で装置1上に配置される。したがって、遠位側にて破断すると、ポリマーフィルム14’’は、リング14’上へと折れ曲がる傾向を有する。
【0287】
ポリマーフィルム14’の厚さは、20μm~700μm、好ましくは100μm~200μmの間であってよい。ポリマーは、好ましくは100%未満の破断歪みを呈する。ポリマー層を、特には
図17aおよび
図17bの文脈において本明細書で説明された任意のやり方でリング14’’に取り付けることができる。
【0288】
ポリマーフィルム14’に引っ張りを生じさせるために、活性化可能な破断支持体112は、ツール支持体102上に設置される。ポリマー層14’を、リング14’’が意図された位置に達するまで近位方向に動かされるときに、破断支持体112によって引き張ることができる。
【0289】
活性化可能な破断支持体112は、刺激の作用によってその形状を変化させるように構成される。例えば、活性化可能な破断支持体112は、ニチノールで製作されてよい。したがって、活性化可能な破断支持体112は、電流を受けたときに延びることができる。結果として、保護キャップ14、特にはポリマーフィルム14’に、さらなる引っ張りが加えられる。
【0290】
あるいは、活性化可能な破断支持体112は、ポリマーフィルム14’に接触することなく支持体112内に配置されるが、フィルムが穿孔されるようにフィルム14’に接触することができる位置まで移動することができる針などの鋭利な要素を含んでもよい。鋭利な要素は、ステンレス鋼またはチタンなどの金属を含んでよく、あるいはそのような金属で構成されてよい。鋭利な要素は、40μm~200μm、好ましくは70μm~150μmの間の直径を有することができる。これに加え、あるいは代えて、鋭利な要素を血栓に固定されるように構成してもよい。
【0291】
これに加え、あるいは代えて、活性化可能な破断支持体112を、ポリマーフィルム14’を不安定にし、したがって破ることができる電流などの刺激をトリガするように構成することができる。電流、または電流によって引き起こされる熱が、ポリマーフィルム14’を不安定にさせることができる。
【0292】
電気ワイヤを活性化可能な破断支持体112に直接接続することができる。あるいは、とりわけ装置が
図9に示した装置と実質的に同様に構成される場合に、電流をツール支持体102を介してもたらすことができる。
【0293】
図18cが、磁気部分19とツール支持体102との間に配置された膨潤材料113の膨張をさらに示している。ここで、膨潤材料113は、膨潤性ポリマーであり、血栓(図示せず)へと向かうさらなる圧縮力を提供するように構成される。膨潤材料113は、ここでは例示的な実施形態として示されているが、随意であり、活性化可能な破断支持体112との関連において必ずしも必要ではないことが理解されよう。さらに、ここに示されるような膨潤材料を、本明細書に開示される任意の他の実施形態と組み合わせることが可能である。
【0294】
一般に、膨潤材料、特には上述のポリマーのいずれかを使用して、血栓の近位表面との接触面を最適化することができる。この目的のために、接着材料または血栓形成性材料などの付着材料を、膨潤材料に取り付けることができる。材料のサイズが、水和下で大きくなる。膨張中、接着材料は活性化可能な支持体を覆うことができる。
【0295】
特に適切な膨潤材料は、ヒドロゲル(PVA、PVP、ポリアクリルアミド)、多孔質ヒドロゲル、超吸収性ポリマー(ポリ(アクリル酸(PAA)、フォーム(PU)である。
【0296】
図19a~
図19dが、カテーテル装置20によって形成された本発明による装置1の種々の実施形態を示している。分かりやすくするためにカテーテル装置の遠位部分5のみが示されていることが理解されよう。
【0297】
図19aは、収納区画21を有するカテーテル装置10を示している。収納区画21内に、案内ワイヤ114に取り付けられた付着要素4が配置されている。案内ワイヤ114は、付着要素4を前後に移動させるため、および圧縮力を提供するために充分な剛性を有する。ここで、カテーテル装置は、PEなどの生体適合性ポリマーで作られた箔16をさらに備える。箔16は、収納区画21を外側の領域から封じ、収納区画21への血液の進入を防止する。
【0298】
図19bに示されるように、ガイドワイヤを押すことによって、付着要素4は、箔16を破り、カテーテル20の外部の位置へと移動することができる。したがって、付着要素4が活性化され、血栓に付着することができる。
【0299】
ガイドワイヤ114を押すことに加え、あるいは代えて、生理食塩水の注入を、特には流体の圧力による手段の作動によって付着要素4を移動させるために使用することができる。
【0300】
これに加え、あるいは代えて、ラインおよび/またはガイドワイヤに取り付けられた付着要素4を、カテーテル装置10の外部に洗い流してもよい。付着要素4を、カテーテルが血栓に位置するときにカテーテル内に移動させてもよく、あるいは送入時にカテーテル装置10の遠位部分に収納してもよい。
【0301】
付着要素4を、ガス活性化(例えば、空気)、液体(例えば、生理食塩)、熱(例えば、電気または誘導)、および/または電気(例えば、圧電材料)によってカテーテル装置10の外へと移動させることができる。
【0302】
図19cは、カテーテル装置20の代案の実施形態を示している。カテーテル装置20の区画21内への付着要素4の配置および箔16による閉鎖は、
図19aおよび
図19bのカテーテル装置と実質的に同様である。ここで、拡張可能要素12が、ガイドワイヤと付着要素4との間にさらに配置される。拡張可能要素12は、例えば、ばねであってよく、収納区画21に対してカテーテル20に固定に取り付けられる。
【0303】
図19dに示されるように、付着要素4を、ガイドワイヤ114を押す必要なしに拡張可能要素12を拡張させることによってカテーテル20の外部に移動させることができ、このプロセスにおいて箔16が破られる。
【0304】
拡張可能要素12の拡張を、本明細書に開示される任意の刺激、特には超音波、電気、電磁放射(好ましくは、UV放射)、熱、水和、によってトリガすることができる。
【0305】
本明細書に記載の任意の付着要素、特には生物学的、機械的、および化学的付着機構を、
図19a~
図19dに示されるカテーテル装置と組み合わせて使用することができることが理解されよう。
【0306】
図20a~
図20fが、付着要素4の種々の実施形態を概略的に示している。ここに示される付着要素4のいずれも、本明細書に開示のマイクロロボット式装置のカテーテル装置のいずれとも組み合わせることができることが理解されよう。
【0307】
図20aは、接着剤組成物10を含む付着要素4を示している。
図20bは、フォーク状の機械的付着機構11を備える付着要素4を示している。
【0308】
図20cは、血栓形成性材料7を含む付着要素4を示している。
図20dは、吸引機構115を備える付着要素4を示している。
【0309】
図20eは、血栓形成性繊維7を備える付着要素4を示している。血栓形成性繊維7は、繊維が血栓の近位面の形状に適応して、きわめて確実な付着をもたらすことができるため、特に好都合であり得る。
【0310】
図20fは、電気血栓形成および/または焼灼を誘発するために使用することができる電気接点8を備える付着要素4を示している。
【0311】
図21a~
図21fが、本発明による種々の装置1を概略的に示しており、装置は、装置5の遠位端において制御ライン23に取り付けられた磁気部分19を備えるマイクロロボット18として構成されている。ここに示されるすべての実施形態は、送入中に付着要素4と血液との間の接触を防止する生分解性ポリマー層として構成された保護層17を備える。ここでは説明のために送入構成のみが図示されているが、保護層17の分解によって付着要素4が解放され、本明細書において一般的に説明されるやり方による血栓への付着をもたらすことができることが理解されよう。あるいは、非生分解性ポリマーを保護層17として使用してもよい。
【0312】
図21aは、接着剤組成物10が磁気部分19上に配置され、保護層17によって保護されている実施形態を示している。
【0313】
図21bは、磁気部分19に取り付けられたフォーク状の機械的付着要素11を有する実施形態を示している。
【0314】
図21cは、磁気部分19に取り付けられた血栓形成性要素7を有する実施形態を示している。
【0315】
図21dは、血栓に穴を形成しつつねじ込まれ、付着をもたらすために特に適したねじ状要素116を有する実施形態を示している。回転する外部磁場を使用して、ドリル状要素116を回転させることができる。例えば、永久磁石を回転させて、そのような回転磁場を生成することができる。
【0316】
図21eは、生物学的付着要素として作用する繊維7を有する実施形態を示している。繊維7は、例えば、トロンビンでコーティングされたPTFE繊維であってよい。したがって、血液と接触したときに凝固をトリガすることができ、形成された凝血塊が、回収すべき血栓に付着することができる。繊維7は、回収すべき血栓の近位面の形状に適応できるがゆえに、きわめて好都合である。これに加え、あるいは代えて、繊維7を乾燥させた接着剤組成物でコーティングしてもよい。乾燥した接着剤は、血液などの流体と接触したときに再活性化されてよい。したがって、ひとたび繊維7が血栓と接触すると、接着剤による付着をもたらすことができる。
【0317】
図21fは、制御ライン23内にカナル117が配置されている実施形態を示している。カナル117は、磁気部分19の最遠位端に配置された開口部118に連通している。保護層17の除去後に、開口部118およびカナル117を、吸引をもたらして処置部位から要素を除去するために使用することができる。ここに示される実施形態の特徴は、
図21fの実施形態との組み合わせに特に適する。ドリル状要素116が、血栓の一部を除去することができ、それらの部分を、カナル117および開口部118によってもたらされる吸引作用によって直ちに取り除いて運び去ることができる。
【0318】
図22aおよび
図22bが、保護要素としてのフレーム22を備える装置1の実施形態を示している。説明のために、ここでは、生物学的付着要素7を備える装置1が示されている。ここに示されるようなフレーム22を、本明細書に開示の任意の装置1と組み合わせて使用できることが理解されよう。さらに、保護層および保護キャップなどのさらなる保護要素を、ここに示されるフレーム22と組み合わせて使用できることが理解されよう。特に、血液接触を防止するためにフレーム22上にコーティングを使用することができる。
【0319】
図22aは、送入構成にある装置1を示している。フレームは、リング119を備え、リング119から4つのバー120が遠位方向に延び、装置1から遠位側に離れた位置で互いにつながっている。これに加え、あるいは代えて、ロッドを使用してもよい。したがって、フレームは、組織と付着要素4との偶発的な接触を防止する。
【0320】
図22bは、フレーム22が開いた後の
図22aの装置1を示している。バー120の互いの接続が除去されており、バー120はリング119から遠ざかるように延びている。したがって、付着要素4が露出し、組織と接触することが可能である。
【0321】
フレーム22は、好ましくは活性化可能である。フレーム22は、一般に、リング119に固定された直線フレーム要素と、活性化時にフレームを開くことができる活性化可能要素とで構成される。
【0322】
好ましくは、ポリマーフィルムがフレーム22上に配置される。特に好ましくは、
図16および/または
図17に示されるようなキャップが、フレーム22上に配置される。
【0323】
好ましくは、直線要素は、ポリマー、セラミック、または金属を含むことができ、あるいはこれらから構成されてよい。特に好ましくは、ステンレス鋼(316L)、ニチノール、および/またはチタンが使用される。
【0324】
フレーム22のバー120の直径は、80μm~300μm、好ましくは100μm~200μmの範囲にあってよい。
【0325】
好ましくは、フレーム22、特にはバー120とリング119との間の接続は、溶接される。
【0326】
フレーム22の外径は、好ましくは80μm~400μmの範囲にあり、特に好ましくは100μm~200μmの範囲にある。中空フレームの内径は、50μm~300μm、好ましくは70μm~150μmの範囲にあってよい。
【0327】
好ましくは、フレーム22を開くために電流が使用される。結果として、バー120をツール支持体102の半径方向へと曲げることができる。例えば、バー120が曲がることで、ポリマー層を裂いて開くことができる。
【0328】
フレーム22のバー120を、装置1の長手軸(すなわち、リング119の平面に垂直な軸線)に対して10°~170°、好ましくは80°~130°の範囲の角度に曲げることができる。
【0329】
いくつかの実施形態において、リングは、保護を強化するために、例えばフレーム22および/または本明細書に記載のような保護キャップなどの保護要素の端部に配置されてよい。このリングは、例えばバー120が曲がるときに破断してよい。このリングは、PGAまたはPLGAなどの生体吸収性ポリマーを含むことができ、あるいはそのような生体吸収性ポリマーで構成されてよい。これに加え、あるいは代えて、リングは、非生分解性ポリマーまたは生分解性ポリマーを含むことができ、あるいは非生分解性ポリマーまたは生分解性ポリマーで構成されてよい。このリングは、滑らかな破断を保証するために所定の破断点を備えることができる。例えば、所定の破断点は、局所的な厚さの減少を含むことができる。このリングは、100μm~1000μm、好ましくは150μm~250μmの範囲の直径を有してよい。
【0330】
複数のトリガ/活性化機構を1つの装置において実現することも考えられる。例えば、いくつかの活性化可能要素のうちの1つが、電流によってトリガされてよい一方で、他の活性化可能要素は、温度の上昇によってトリガされてよい。
【0331】
好ましくは、保護層がフレーム22上に配置される。保護フレーム22は、付着要素と血管壁との直接接触を最小限に抑えることを可能にする。
【0332】
図23が、追加の推進機構を有する装置1の例示的な実施形態を示している。説明および明確化のために、ここでは、付着要素を省いた装置1が図示されている。ここに記載される推進機構を、本明細書に開示の任意の装置1と組み合わせることができることが理解されよう。
【0333】
ここに示される追加の推進システムは、化学的なシステムである。推進システムは、水または血液と反応して装置の推進に使用することができるガスを形成するように構成された反応種を含む。ここでは、マグネシウムが用いられる。
【0334】
マグネシウム(見て取ることができない)は、タンク24に埋め込まれる。タンク24は、ここでは、磁気部分19の周囲に設置され、シェル121に取り付けられた管として構成される。シェル121は、例えば樹脂シェルなど、本明細書に記載のような保護コーティングであってよい。タンク24は、栓104で閉じられている。栓は、タンク24に取り外し可能に取り付けられ、機械的に取り外すことができ、かつ/または刺激によって分解させることができる。例えば、栓104は、制御ライン23に関連付けられたラインに取り付けられてよい。例えば制御ラインドライバによって引き起こされてこのラインに作用する力によって、栓104を除去することができ、したがってタンクの内容物、ここではマグネシウムを、血液と接触させることができる。結果として、ガスが形成され、タンクの開口部103を通って押し出され、したがって装置1に前進力をもたらす。
【0335】
ここで、栓104はチタンで製作される。しかしながら、例えばタングステンまたは鋼などの任意の金属、および/またはシリコン、PEEK、あるいはこれらの任意のブレンドまたは組み合わせなどの任意のポリマーを使用することができる。
【0336】
ここで、栓104の外径は240μmである。タンク24および開口部103の内径は、100μmである。タンクの外径は200μmである。
【0337】
好ましくは、タンクは、PDMSなどのポリマー材料を含み、あるいはPDMSなどのポリマー材料からなる。他のポリマー、ならびにポリマーの任意のブレンドまたは組み合わせを使用してもよい。
【0338】
図24aおよび
図24bが、吸引機構を備える装置1の代案の実施形態を示している。ここで、吸引機構は、例示のために、付着機構4として構成されている。しかしながら、ここに示されるような吸引機構を、特には、他の付着手段との組み合わせにおいてさらなる付着を提供し、さらには/あるいは破片または血栓残留物を除去して処置の安全性を向上させるために、本明細書に開示の任意の他の付着機構と組み合わせて使用できることが理解されよう。
【0339】
ここで、機械的付着の一変形が、吸引によって実行される。吸引システムは、ツール支持体102上に配置された吸引面122を備える。ツール支持体102は、吸引作用を達成することができる開口部118をさらに備える。ツール支持体102は、特には、血栓の形状との充分な適合を提供するために、平坦な形状および/または湾曲した形状を有することができ、さらには/あるいは周辺突出部を備えることができる。ここで、開口部118の直径は600μmである。血栓(図示せず)を吸引面122へと引っ張り、ツール支持体102上に吸引によって保持することができる。ここに示される吸引機構は、例えば確実な付着がもたらされるまで、血栓の付着および再付着を繰り返し可能にする。
【0340】
図24bは、
図24aの装置を装置の長手軸に平行な平面における断面図にて示している。ここで、制御ライン23および磁気部分19を通って配置された中空チャネル117を見て取ることができる。チャネル117の内径は、50μm~800μm、好ましくは70μm~200μmの範囲にある。使用されるとき、吸引機構は、好ましくは、血栓に近接しているときに活性化される。
【0341】
中空チャネル117は、ここでは制御ライン23内のチャネルとして構成され、制御ライン23は、吸引チャネルとして機能する。あるいは、吸引チャネルは、特にはカテーテル装置(
図19a~
図19dを参照)との組み合わせの場合に、制御ラインに組み込まれていない別個の要素として構成されてもよい。
【0342】
中空ライン117を、吸引機構の提供以外の目的に使用してもよいことも理解されよう。特には、流体の圧力による活性化、ガス圧縮による活性化、または他の流体の送達に使用することが可能である。
【0343】
制御ライン23および/またはチャネル117(特には、別個の要素として構成されている場合)のヤング率は、血管系内での案内に適合するように、0.5GPa~100GPa、好ましくは0.5GPa~5GPaの範囲にあってよい。
【0344】
いくつかの実施形態の構成において、吸引システム、すなわちツール支持体102は、中空管117と直接接続されてもよく、すなわち磁気部分19が中間に配置されなくてもよい。
【0345】
図25が、制御ライン23に接続された磁気ヘッド部分19と機械的付着要素11とを備えるマイクロロボットとして構成された装置1を示している。装置1は、
図12bにおいて説明した装置と同様である。機械的付着要素11は、ニチノール系形状記憶合金を備え、加熱時に外側に曲がるように構成される。さらに、機械的付着要素11は、各々がシャフト130を備える。シャフト130は、機械的付着要素11の曲がりを制限するように構成される。したがって、シャフト130を、固定のための特定の形状、特にはツール支持体102に近い領域における直線形状を達成するために使用することができる。これに加え、あるいは代えて、シャフト130は、機械的付着要素11よりも高い剛性を示してよい。したがって、シャフトは、誘導の最中に機械的付着要素11を保護することができる。
【0346】
これに加え、あるいは代えて、シャフト130は、機械的付着要素11の動きをトリガするように構成されてよい。例えば、シャフトは、電気ワイヤ(
図9を参照)に接続されてよい。したがって、各々の機械的付着要素の動きが、シャフト130への電流の印加によって制御可能であってよい。
【0347】
ここで、シャフト130は、ステンレス鋼で製作され、200μmの内径および300μmの外径を有する。
【0348】
図26が、
図12a~
図12cに示した装置と実質的に同様の装置1を示している。さらに、機械的付着要素は、血栓溶解性コーティング131を備える。ここで、血栓溶解性コーティング131は、組織プラスミノゲン活性化因子(t-PA)を放出するように構成される。t-PAは、血栓組織を軟化させ、白色凝血塊への近位付着に必要な力を減らすことができる。さらに、t-PAの放出は、血栓と血管壁との間の摩擦力を減少させ、したがって血栓回収に必要な力を減らすことができる。
【0349】
これに加え、あるいは代えて、コーティング131が、本質的に血栓と装置との間の接着力を増加させることができる膨張性材料で製作されてよいことが理解されよう。
【0350】
本明細書に記載される血栓溶解剤を、本明細書に開示される任意の他の実施形態と組み合わせて使用できることが理解されよう。
【0351】
t-PA以外の別の血栓溶解剤をさらに使用、または代案として使用できることが理解されるであろう。
【0352】
血栓溶解剤を、例えば化学蒸着(CVD)または物理蒸着(PVD)など、医療装置の表面に直接グラフトすることができる。
【0353】
さらに、血栓溶解剤は、マトリックス、好ましくはポリマーマトリックスに埋め込まれてもよい。シリコーン、PDMS、ポリウレタン、ポリエチレン-コ-酢酸ビニル(PEVA)、ポリ(スチレン-b-イソブチレン-b-スチレン)、ポリブチルメタクリレート(PBMA)、ポリ(フッ化ビニリデン-コ-ヘキサフルオロプロピレン)、ホスホリルコリン、またはポリエステルなどの非生分解性ポリマーを使用することができる。PLGA(任意のPLA:PGA比、好ましくは10:90)、PDO、PGA、デンプン、セルロース、および/またはキトサンなどの生分解性ポリマーも同様に使用することができる。
【0354】
マトリックスを、ゲル、特にはヒドロゲルで製作することができる。ゲルは、分解性であっても、非分解性であってもよい。マトリックスは、ツール支持体102上に配置され、付着要素、特には機械的付着要素11によって、ツール支持体102を保持することができる。
【0355】
血栓溶解性マトリックスは、ツール支持体102上の足場上に配置されてもよい。足場は、ツール支持体上に接着されてよい。血栓溶解性マトリックスは、付着要素のための穴を呈することができる。マトリックスは、平坦な形状または湾曲した形状を有してよい。血栓溶解性マトリックスの形状は、血栓溶解剤の放出に影響を及ぼす可能性があるため、血栓溶解性マトリックスの形状を変えることによって放出の動態を調整することができる。
【0356】
典型的には、平坦な表面は、血栓溶解剤の比較的ゆっくりとした放出をもたらす。対照的に、曲面は、より速い放出をもたらすことができる。例えば、この効果を達成するために、ドーム形状を、特には頂部を血栓の方に向けて使用することができる。
【0357】
成形足場を使用して、所望の形状を提供することができる。血栓溶解剤を含むゲルを、その上に配置することができる。湾曲を、足場が、特には足場の表面と装置の長手軸との間に10~45°の間、好ましくは30°の角度を包含するように選択することができる。
【0358】
血栓溶解性マトリックスは、ツール支持体上に分布した異なる要素で作られる。
ポリマーの混合物を使用して、放出の動態を調整することができる。低分子量のポリマーを使用して、放出の動態を調整することができる。
【0359】
典型的には、低分子量のポリマーは、より速く分解して、薬物、血栓形成剤、血栓溶解剤、などのより速い放出もたらすことができる。より大きい分子量のポリマーは、より遅い速度で分解し得る。したがって、活性剤の放出の動態を、異なる分子量を有するポリマーを混合することによって調整することができる。
【0360】
典型的には、ポリマーに対する血栓溶解剤の比(重量比)は、0.1%~50%の間、好ましくは2%~15%の間である。
【0361】
血栓溶解性マトリックスを、医療装置の任意の部分、例えば機械的付着要素11および/またはツール支持体102上に配置し、乾燥させることができる。
【0362】
これに加え、あるいは代えて、血栓溶解性マトリックスは、粒子を含んでも、粒子からなってもよい。例えば、粒子をエレクトロスプレーによって堆積させることができる。血栓溶解性マトリックスをツール支持体102上に成形してもよい。あるいは、血栓溶解性マトリックスを、例えば機械的付着要素11、ツール支持体102、シャフト130、などの装置1の任意の部分に直接配置される部品へと、成形または鋳造によって形作ることができる。
【0363】
血栓溶解剤を、例えばペプチドグラフトまたは加水分解性リンカーによって医療装置1の任意の表面に固定することができる。
【0364】
血栓溶解剤を表面に付着させる1つの方法において、血栓溶解剤を、PVAまたはPVPなどの水溶性ポリマーと混合する。ポリマー溶液を表面にコーティングし、乾燥させる。
【0365】
本明細書に記載の任意の血栓溶解性マトリックスを、血栓溶解性コーティング131を生成するために、機械的付着要素11上にコーティングすることができる。
【0366】
図27が、血栓溶解剤を放出するように構成された医療装置1の代案の実施形態を示している。ここで、血栓溶解剤は、ツール支持体102上に配置された血栓溶解性マトリックス132に埋め込まれる。機械的付着要素11は、血栓溶解性マトリックス131を貫いて穿刺される。
【0367】
血栓溶解性マトリックス132は、本明細書に記載のような任意の血栓溶解性マトリックスであってよい。ここには
図12a~
図12cに示した付着要素に実質的に対応する機械的付着要素11が示されているが、これらが例示的な性質のものであることが理解されよう。ここに示される血栓溶解性マトリックス132を、本明細書に記載の任意の医療装置1と組み合わせることができる。
【0368】
任意の血栓溶解剤を、目標の部位への誘導の際に血液との直接接触から保護することができる。血栓溶解剤を、付着要素の前または付着要素と同時に活性化させることができる。
【0369】
活性化されると、血栓溶解剤を血液によって血栓まで運ぶことができる。
図28が、ばね11として構成された機械的付着要素を有する医療装置1の実施形態を示している。さらに、繊維7がばね上に配置されている。繊維7は、接着性繊維および/または血栓形成性繊維であってよい。繊維7は、繊維7が血栓(図示せず)との接触面を増加させるため、好都合な付着をもたらす。
【0370】
図29が、付着要素4が吸引機構を備える医療装置1を示している。図示の実施形態は、
図24aおよび
図24bに示した実施形態と同様である。ここで、制御ライン23内の中空ライン117は、磁気ヘッド部分19を貫通していない。代わりに、Y字フォークが、中空ライン117を磁気ヘッド部分19の周囲に配置された2つのサブライン117’、117’’に分割している。このような配置とすることで、磁気ヘッド部分19を変更する必要がない。吸引システム117、118、122は、少なくとも1つの中空ライン117に接続される。
【0371】
2つ以上中空ライン117を使用することも考えられる。複数の中空ラインが使用される場合、少なくとも1つのラインが吸引に使用される。他のラインを使用して、例えば生理食塩水の注入のために、追加のマイクロロボット機能を作動させることができる。あるいは、異なるラインが異なる吸引領域に接続されてよく、あるいは接続可能であってよい。このような構成は、血栓への接着を向上させることができる。
【0372】
1つの吸引オリフィス118が存在する場合、近位側から遠位側へと直径を漸進的に大きくすることで、血栓への接着を向上させることができる。
【0373】
中空なサブライン117’、117’’の内径は、好ましくは60pmであり、外径は、好ましくは90μmである。ここに示される制御ラインの直径は、70μmである。吸引オリフィス118の直径は、100μmから200μmに増加する。
【0374】
特定の実施形態において、制御ライン23は、中空なサブライン117’、117’’によって形成されてもよい。
【0375】
図30が、
図21bの装置と実質的に同様の医療装置1を示している。装置1は、制御ライン12と、機械的グリッパ11と、保護コーティング17とを備える。医療装置が、活性化前(A)、付着中(B)、および血栓(2)の回収中(B)について図示されている。
【0376】
ここに示される装置1は、制御ライン23上の付着要素4の遠位位置に配置されたバルーン133をさらに備える。バルーン133の内部は、制御ライン内に配置され、バルーン133を膨張させるように構成された中空ライン117に連通している。バルーン133は、シリコーンパウチを備える。
【0377】
バルーン133は、機械的グリッパ11への付着の前および最中における血栓2の領域の血流/血圧を低下させることを可能にする。血栓2を回収するために、バルーン133を再び収縮させることができる。
【0378】
当業者であれば、付着要素、送入システム、保護コーティング、および活性化機構のすべての具体的な組み合わせが、例示的な性質のものであり、任意の他の組み合わせで使用されてもよいことを理解するであろう。
【0379】
一般に、ニチノールの代わりに、導電性ポリマーを使用してもよい。好ましい導電性ポリマーは、ポリチオフェン(PT)、PA、PPy、PANI、PEDOTである。
【0380】
一般に、本明細書に記載の接着剤組成物は、カプセル化された形態で使用されてよい。
図31aが、センサ134を有する装置1の第1の実施形態を示している。装置1は、本明細書に記載の他の装置と実質的に同様であり、センサ134を本明細書に記載の任意の装置1と組み合わせることができることが理解されよう。
【0381】
ここで、センサ134は、圧力センサとして構成される。センサ134は、ツール支持体102と磁気部分19との間に配置される。したがって、ツール支持体102が別の構造体(例えば、血栓)に押し付けられるとき、この構造体に及ぼされる力136をセンサ134によって測定することができる。特には、センサの歪みによって力を測定することが考えられる。
【0382】
図31bが、
図31aの実施形態を断面図にて示している。
センサ134は、ケーブル(図示せず)に接続されてよく、かつ/または外部装置への無線接続を備えてよい。
【0383】
ここで、センサ134は、300μmの外径、200μmの内径、および300μmの高さを有する。
【0384】
図32aが、センサ134を有する装置1の第2の実施形態を示している。ここで、センサ134は、ツール支持体102の周囲に配置された周状リングとして構成される。センサ134は、例えば血液などの流体が流れることができる貫通孔135を備える。ここで、センサ134は、流量センサとして構成される。好ましくは、マイクロタービン(図示せず)が孔135内に配置され、装置1に対する血液の流速を測定する。センサ134をケーブル(図示せず)または無線によって接続することが可能である。
【0385】
図32bが、
図32bの装置1を、センサ134の近位側を示す異なる視点から示している。
【0386】
図33aが、本明細書に示されて説明される他の装置と同様の装置1を示している。装置1は、血栓(図示せず)を近位側に引っ張るように構成された磁気要素19および付着要素4を備える。付着要素4のための活性化機構201が、送入カテーテル20内に配置され、付着要素4に動作可能に接続される。ここで、装置は、成長管200をさらに備える。成長管は、漸進的にガスを充てんすることによって展開されるように構成される。あるいは、生理食塩水などの液体、粘性溶液、または磁気流体を使用してもよい。付着要素4は、本明細書に開示の任意の付着要素であってよく、成長管に取り付けられる。成長管は、磁気要素に及ぼされる磁力によって曲げることが可能であってよい。これは、例えば、湾曲した動脈における誘導を容易にすることができる。
【0387】
本発明による装置が主に抗力および磁力によって移動する場合、閉塞した動脈においては抗力が小さくなり得る。結果として、装置1の移動を磁力で行う必要があるかもしれない。血栓の場所、とりわけ血栓と頭蓋骨の表面との間の距離に応じて、装置1を移動させるために磁力を充分に制御することができない可能性がある。成長管は、血管系において装置を移動させるための代替の手段を提供でき、したがってこの問題を克服することができる。
【0388】
図33bは、成長管200が延びた状態の
図33aの装置1を示している。
図34が、本発明による装置を案内するための磁場Mを生成するために使用することができるMRIシステム202を概略的に示している。磁場Mの相対強度が模式的に示されている。MRIシステム202は、装置(図示せず)を有するシステムの一部であってよい。システムによって生成される磁気勾配を使用することができる。好ましくは、装置(図示せず)は、特には送入システムによって、磁場Mの磁場強度が低い領域に配置される。
【0389】
図35が、
図34に示したMRIシステムによって案内することができる装置を示している。装置1は、付着要素4、磁気要素19、および制御ライン23を備える。MRIシステムの近傍に位置すると、装置1は、少なくとも最初はMRIシステムによる強い引力に曝される可能性がある。制御ライン23または装置1の遠位部分(例えば、磁気部分19)への制御ライン23の接続の破損を回避するために、装置1は高速において解放されてもよい。この文脈における高速は、2cm/s~100cm/sの間、好ましくは10cm/s~30cm/sの間であってよい。これに加え、あるいは代えて、装置1は保持ラインを備えてもよい。ここに示される装置1は、第1の保持ライン203’および第2の保持ライン203’’を備える。保持ラインは、制御ライン23に加わるMRIシステムの磁力による力を小さくする。
【0390】
保持ライン203’、203’’は、装置1の遠位部分から取り外し可能であってもよい。取り外しを、例えば電流を印加することによって行うことができる。ここで、両方の保持ライン203’、203’’は、100μmの直径を有し、ポリウレタンで作られている。
【0391】
送入システムを、管、好ましくは可撓管を介して送入カテーテルに接続することができる。可撓管は、0.5mm~4mmの間、好ましくは0.8mm~2.5mmの間の内径を有することができる。
【0392】
保持ラインの取り外しは、保持ラインが誘導に関しては堅固すぎるが、(強い磁力に起因する)身体への最初の導入時の破損を防止するために必要である場合に、好都合となり得る。したがって、保持ラインを導入時に使用し、その後に、血管内での案内の前に取り外すことができる。
【0393】
図36aが、血栓回収装置1を少なくとも途中まで送入するように構成されたカテーテル装置20を示している。装置1は、本明細書に示される任意の装置1であってよく、制御ライン23と、付着要素4と、磁気要素19とを備える。カテーテル20を誘導システムによって制御することができる。カテーテルは、活性化機構205による活性化によって膨張させることができるバルーン204を備える。膨張すると、バルーン204は、バルーンが位置する領域の血管内の血流を減少させることができる。血流の減少は、装置の誘導時および血栓の回収時の両方において好都合となり得る。
【0394】
バルーンを、流れの完全な停滞を回避するために完全には膨張させなくてもよい。カテーテルの外径は、0.8mm~5mmの間、好ましくは1mm~2mmの間であってよい。カテーテルは、カテーテル管の遠位開口部にダイヤフラム206をさらに備える。ダイヤフラム206を、送入時または血栓の回収後(
図36cを参照)のいずれかにおいて装置1がカテーテル装置内に収容されているときに閉じることができる。特に、ダイヤフラム206は、カテーテル内に血栓を保持することができる。ダイヤフラム206が開かれたとき、その開口部は、1mm~4mmの間、好ましくは2mm~3mmの間であってよい直径を有することができる。
【0395】
図37が、
図24aおよび
図24bの実施形態に基づいており、
図24aおよび
図24bの実施形態と実質的に同様である装置1の実施形態を示している。ここで、装置1は、吸着カップとして設計された付着要素4に対して配置された電気リング208をさらに備える。付着要素4が血栓(図示せず)と接触すると、血栓をカップ内および表面122上へと少なくとも部分的に引っ張る真空を、開口部118を介して引くことができる。電気ワイヤ207を介して電気リング208に電流を印加することで、リング208の温度を上昇させ、したがって、例えば部分的および/または局所的な乾燥によって、吸着カップへの血栓の付着を促進することができる。
【0396】
例えば3つの吸着カップなど、複数の吸着カップが存在することが考えられる。
特には、装置がマイクロロボットを備え、あるいはマイクロロボットからなる場合、装置は、例えば動脈壁の湾曲に起因して、血管内での誘導中にスタックする可能性がある。したがって、いくつかの実施形態においては、1つまたは複数のバルーンを、装置の遠位領域(例えば、マイクロロボットまたはカテーテル装置の遠位領域の周り)に配置することができる。
【0397】
図38aが、2つのバルーン204’、204’’を有するマイクロロボット1の実施形態を示している。バルーン204’、204’’のいずれかにガスまたは溶液を充てんすることができる。ここで、放射線不透過性の生理食塩水を使用し、中空な制御ライン23を介してバルーン204’、204’’を膨張させる。活性化システム205が、第1のバルーン204’および第2のバルーン204’’の入口に接続され、いずれかのバルーンの選択的な膨張を可能にする。両方のバルーン204’、204’’は、円筒形を有するが、球形であってもよい。活性化システム205は、膜または電磁弁を備えることができる。活性化システムは、電気、熱、あるいはアルカリ性または酸性溶液への曝露などの刺激下で開かれる。両方のバルーン204’、204’’は、120μmの壁厚を有し、実質的にポリウレタン箔から製作される。あるいは、シリコーンを使用してもよい。
【0398】
図38bが、第2のバルーン204’’が膨張しているが、第1のバルーン204’は膨張していない
図38aの装置1を示している。そのようにするために、活性化機構205を、電気パルスによって第2のバルーン204’についてのみ選択的に活性化させた。結果として、放射線不透過性の生理食塩水は、第2のバルーン204’’に押し込まれ、結果として、第2のバルーンが膨張する。
【0399】
さらに、バルーン204’、204’’を、血管(例えば、動脈)の管腔内および/または血栓の近位側で安定化するように構成し、そのように使用することもできる。
【0400】
制御ラインは、シリコンなどの高弾性材料で製作されてよい。したがって、制御ラインを装置の誘導または引き込み時に引き伸ばし、あるいは長くすることができる。伸びを抑えるために材料の剛性を高めると、曲げ剛性が大きくなり、したがって制御ラインは、曲がりくねったネットワークにおける誘導に関して可撓性が不足する。
【0401】
したがって、いくつかの実施形態は、1つまたは複数の保持ラインを備える。保持ラインは、中空な制御ラインが使用される場合に特に好都合である。
【0402】
図39aが、第1および第2の保持ライン203’、203’’を有する装置1の実施形態を示している。保持ライン203’、203’’は、70μmの直径を有し、制御ライン23とは別個に配置されている。保持ライン203’、203’’は、制御ライン23の伸びを抑えることができる。両方の保持ラインは、接着剤によって装置の磁気部分19に取り付けられる。
【0403】
図39bは、第1および第2の保持ライン203’、203’’が制御ライン23内に配置された代案の実施形態を示している。
【0404】
図39aおよび
図39bに示した実施形態は、付着要素4を備える。しかしながら、本明細書に開示の任意の装置が、ここに示されるような1つまたは複数の保持ラインを備えてもよいことが理解されよう。
【国際調査報告】