(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-05
(54)【発明の名称】口腔ケア組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 8/36 20060101AFI20240628BHJP
A61K 8/37 20060101ALI20240628BHJP
A61K 8/34 20060101ALI20240628BHJP
A61K 8/9789 20170101ALI20240628BHJP
A61K 8/35 20060101ALI20240628BHJP
A61K 8/49 20060101ALI20240628BHJP
A61Q 11/00 20060101ALI20240628BHJP
【FI】
A61K8/36
A61K8/37
A61K8/34
A61K8/9789
A61K8/35
A61K8/49
A61Q11/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023579288
(86)(22)【出願日】2022-06-21
(85)【翻訳文提出日】2023-12-22
(86)【国際出願番号】 EP2022066805
(87)【国際公開番号】W WO2022268763
(87)【国際公開日】2022-12-29
(31)【優先権主張番号】PCT/CN2021/102153
(32)【優先日】2021-06-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(32)【優先日】2021-08-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】390009287
【氏名又は名称】フイルメニツヒ ソシエテ アノニム
【氏名又は名称原語表記】Firmenich SA
【住所又は居所原語表記】7,Rue de la Bergere,1242 Satigny,Switzerland
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ヤン ホァン
(72)【発明者】
【氏名】モニカ バンデラ
(72)【発明者】
【氏名】ヤン ハイネス
(72)【発明者】
【氏名】ブルーク シャオ-シー リン
(72)【発明者】
【氏名】チンボー オーヤン
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AA121
4C083AA122
4C083AC101
4C083AC102
4C083AC122
4C083AC211
4C083AC212
4C083AC241
4C083AC242
4C083AC312
4C083AC341
4C083AC342
4C083AC351
4C083AC352
4C083AC762
4C083AC862
4C083AD531
4C083AD532
4C083BB41
4C083BB48
4C083CC41
4C083DD14
4C083DD15
4C083DD22
4C083DD23
4C083DD41
4C083EE31
(57)【要約】
本発明は、ミリスチン酸、シス-3-ヘキセニルヘキサノエート、シトロネロール、ヌートカトン、アンブレットシードアブソリュート、ホウレンソウアブソリュート、ヘリクリサムイタリカムアブソリュート、ブタノール、ゲラニオール、β-イオノン、イソアミルアルコール、メチル(2-ペンチル-3-オキソシクロペンチル)アセテート、アネトール、デカン酸、ウンデカン酸、ナツメグ油、クラリセージ油、レモングラス油、ライム油、ペパーミント油(例えば、ミントピペリタレコナット、ミントピペリタボウルダーsx、もしくはミントピペリタヤキマシングルカット)、γ-オクタラクトン、3-ヘキセニルアセテート、ラベンダー油、シンナムアルデヒド、クローブ油、アルベンシスミント油(例えば、アルベンシスミントtpc)、アマニ油、およびチモールである化合物または組成物のうちの1種以上を含む口腔ケア組成物に関する。また、そのような組成物を組み込んだ口腔ケア製品、および関連する方法が提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ミリスチン酸、シス-3-ヘキセニルヘキサノエート、シトロネロール、ヌートカトン、アンブレットシードアブソリュート、ホウレンソウアブソリュート、ヘリクリサムイタリカムアブソリュート、ブタノール、ゲラニオール、β-イオノン、イソアミルアルコール、メチル(2-ペンチル-3-オキソシクロペンチル)アセテート、アネトール、デカン酸、ウンデカン酸、ナツメグ油、クラリセージ油、レモングラス油、ライム油、ペパーミント油(例えば、ミントピペリタレコナット、ミントピペリタボウルダーsx、もしくはミントピペリタヤキマシングルカット)、γ-オクタラクトン、3-ヘキセニルアセテート、ラベンダー油、シンナムアルデヒド、クローブ油、アルベンシスミント油(例えば、アルベンシスミントtpc)、アマニ油、およびチモールである化合物または組成物のうちの1種以上を含む、口腔ケア組成物。
【請求項2】
前記化合物または組成物が、ミリスチン酸、シトロネロール、ヌートカトン、ナツメグ油、クラリセージ油、レモングラス油、ペパーミント油、およびγ-オクタラクトンから選択される、請求項1記載の口腔ケア組成物。
【請求項3】
前記化合物または組成物が、総重量に対して、それぞれ0.001%~5%、特に好ましくは0.005%~3%、好ましくは0.05%~2.5%、好ましくは0.1%~2.5%、好ましくは0.5%~2%の濃度である、請求項1または2記載の口腔ケア組成物。
【請求項4】
フレーバー系、冷感剤、界面活性剤、保湿剤、顔料、抗菌剤、増粘剤、フッ化物源、歯石コントロール剤、および/または防腐剤である成分のうちの1種以上をさらに含む、請求項1から3までのいずれか1項記載の口腔ケア組成物。
【請求項5】
コーティングまたはカプセル化されている、請求項1から4までのいずれか1項記載の口腔ケア組成物。
【請求項6】
請求項1から5までのいずれか1項記載の口腔ケア組成物を含む、口腔ケア製品、または栄養もしくは清涼感を得るための製品。
【請求項7】
歯磨きペースト、歯磨き粉、歯磨きジェル、液体歯磨き、泡歯磨き、錠剤歯磨き、うがい薬、洗口液、マウススプレー、デンタルフロス、チューイングガム、デンタルアライナー、ロゼンジ、義歯用発泡錠;義歯用発泡錠およびデンタルアライナーからなる群から選択される、請求項6記載の口腔ケア製品。
【請求項8】
請求項1から5までのいずれか1項記載の組成物を、必要とする者の口腔に適用することを含む、酸蝕症による脱灰、歯肉炎、プラーク、歯周炎、口臭、および/またはう蝕を治療または予防する方法。
【請求項9】
口腔ヘルスケアへの用途を有する試験組成物を同定する方法であって、
(a)前記試験組成物が細菌の付着を減少させるか否かを評価すること、および/または
(b)前記試験組成物がバイオフィルム形成を減少させるか否かを評価すること、および/または
(c)前記試験組成物が前記バイオフィルムを破壊するか否かを評価すること
を含み、
1つ以上の評価において陽性である組成物が、口腔ヘルスケア組成物として有用である、
方法。
【請求項10】
ステップ(a)の前記評価が、試験組成物の添加または不存在下で、唾液および/または細菌に基材を曝露させて、前記試験組成物が前記基材への細菌の付着を減少させるか否かを判定することを含む、請求項1記載の方法。
【請求項11】
ステップ(b)の前記評価が、培養条件下で少なくとも24時間にわたり唾液および/または細菌に基材を曝露させて、次いで、培養された混合物を試験組成物に曝露させて、前記試験組成物が前記基材へのバイオフィルム形成を減少させるか否かを判定することを含む、請求項1記載の方法。
【請求項12】
ステップ(c)の前記評価が、培養条件下で少なくとも72時間にわたり唾液および/または細菌に基材を曝露させて基材にバイオフィルムを形成し、次いで、培養された混合物を試験組成物に曝露させて、前記試験組成物が前記バイオフィルムを破壊するか否かを判定することを含む、請求項1記載の方法。
【請求項13】
前記バイオフィルムに対する前記試験組成物の効果を、前記バイオフィルムを採取して、前記バイオフィルム中に存在する細菌の量および種類を特定することにより判定する、請求項9から12までのいずれか1項記載の方法。
【請求項14】
1つ以上の評価において陽性である試験組成物を使用して、口腔ケア組成物を調製することを含む、請求項9から13までのいずれか1項記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
序論
う蝕などの口腔疾患は社会で非常に多くみられる。口腔疾患は患者に慢性および急性の疼痛を引き起こすことがあり、死に至ることもある。口腔衛生は、このような疾患の影響を軽減するために重要な役割を果たす。口腔衛生の例には、定期的な歯磨き、デンタルフロス、舌のクリーニング、そして当然のことながら定期的な歯科医受診が含まれる。
【0002】
例えばうがい薬や洗口液などの口腔ケア製剤が古くから知られている。それらは、悪臭、う蝕、歯周病、歯肉炎、および歯周疾患を引き起こす微生物を抑制または殺滅することにより、口腔または口腔表面を清潔、爽快にするために開発されている。
【0003】
抗菌活性を有する口腔ケア組成物が知られている一方、口腔衛生を改善し、口腔疾患の症例を減らすための更なる組成物が、社会から求められている。
【0004】
発明の概要
本発明は、ミリスチン酸、シス-3-ヘキセニルヘキサノエート、シトロネロール、ヌートカトン、アンブレットシードアブソリュート、ホウレンソウアブソリュート、ヘリクリサムイタリカムアブソリュート、ブタノール、ゲラニオール、β-イオノン、イソアミルアルコール、メチル(2-ペンチル-3-オキソシクロペンチル)アセテート、アネトール、デカン酸、ウンデカン酸、ナツメグ油、クラリセージ油、レモングラス油、ライム油、ペパーミント油(例えば、ミントピペリタレコナット(mint piperita reco nat)、ミントピペリタボウルダーsx(mint piperita boulder sx)、もしくはミントピペリタヤキマシングルカット(mint piperita yakima single cut))、γ-オクタラクトン、3-ヘキセニルアセテート、ラベンダー油、シンナムアルデヒド、クローブ油、アルベンシスミント油(例えば、アルベンシスミントtpc)、アマニ油、およびチモールである化合物または組成物のうちの1種以上を含む、口腔ケア組成物を提供することにより、上述の課題を解決するものである。
【0005】
本発明の一実施形態は、化合物または組成物が、ミリスチン酸、シス-3-ヘキセニルヘキサノエート、シトロネロール、ヌートカトン、アンブレットシードアブソリュート、ホウレンソウアブソリュート、ヘリクリサムイタリカムアブソリュート、ブタノール、ゲラニオール、β-イオノン、イソアミルアルコール、メチル(2-ペンチル-3-オキソシクロペンチル)アセテート、ナツメグ油、クラリセージ油、レモングラス油、ペパーミント油、およびγ-オクタラクトンから選択される、口腔ケア組成物を提供する。
【0006】
本発明の一実施形態は、化合物または組成物が、ミリスチン酸、シトロネロール、ヌートカトン、ナツメグ油、クラリセージ油、レモングラス油、ペパーミント油、およびγ-オクタラクトンから選択される、口腔ケア組成物を提供する。
【0007】
本発明の一実施形態は、化合物または組成物が、口腔ケア組成物の総重量に対して、それぞれ0.001%~5%、特に好ましくは0.005%~3%、好ましくは0.05%~2.5%、好ましくは0.1%~2.5%、好ましくは0.5%~2%の濃度である、口腔ケア組成物を提供する。
【0008】
本発明の一実施形態は、フレーバー系、冷感剤、界面活性剤、保湿剤、顔料、抗菌剤、増粘剤、フッ化物源、歯石コントロール剤、および/または防腐剤である成分のうちの1種以上をさらに含む、口腔ケア組成物を提供する。
【0009】
本発明の一実施形態は、コーティングまたはカプセル化されている口腔ケア組成物を提供する。
【0010】
本発明の更なる態様は、本発明の口腔ケア組成物を含む、口腔ケア製品、または栄養もしくは清涼感を得るための製品を提供する。
【0011】
本発明の一実施形態において、口腔ケア製品は、歯磨きペースト、歯磨き粉、歯磨きジェル、液体歯磨き、泡歯磨き、錠剤歯磨き、うがい薬、洗口液、マウススプレー、デンタルフロス、チューイングガム、デンタルアライナー、ロゼンジ、義歯用発泡錠;義歯用発泡錠およびデンタルアライナーからなる群から選択される。
【0012】
本発明の更なる態様は、前記請求項のいずれか1項記載の組成物を、必要とする者の口腔に適用することを含む、酸蝕症による脱灰、歯肉炎、プラーク、歯周炎、口臭、および/またはう蝕を治療または予防する方法を提供する。
【0013】
本発明の更なる態様は、酸蝕症による脱灰、歯肉炎、プラーク、歯周炎、口臭、および/またはう蝕を治療または予防するための、本発明の口腔ケア組成物の使用を提供する。
【0014】
本発明の更なる態様は、口腔ヘルスケアへの用途を有する試験組成物を同定する方法であって、
(a)試験組成物が細菌の付着を減少させるか否かを評価すること、および/または
(b)試験組成物がバイオフィルム形成を減少させるか否かを評価すること、および/または
(c)試験組成物がバイオフィルムを破壊するか否かを評価すること
を含み、
1つ以上の評価において陽性である組成物が、口腔ヘルスケア組成物として有用である、
方法を提供する。
【0015】
試験組成物を同定する方法の一実施形態において、ステップ(a)の評価は、試験組成物の添加または不存在下で、唾液および/または細菌に基材を曝露させて、試験組成物が基材への細菌の付着を減少させるか否かを判定することを含む。
【0016】
試験組成物を同定する方法の一実施形態において、ステップ(b)の評価は、培養条件下で少なくとも24時間にわたり唾液および/または細菌に基材を曝露させて、次いで、培養された混合物を試験組成物に曝露させて、試験組成物が基材へのバイオフィルム形成を減少させるか否かを判定することを含む。
【0017】
試験組成物を同定する方法の一実施形態において、ステップ(c)の評価は、培養条件下で少なくとも72時間にわたり唾液および/または細菌に基材を曝露させて基材にバイオフィルムを形成し、次いで、培養された混合物を試験組成物に曝露させて、試験組成物がバイオフィルムを破壊するか否かを判定することを含む。
【0018】
試験組成物を同定する方法の一実施形態において、バイオフィルムに対する試験組成物の効果を、バイオフィルムを採取して、そのバイオフィルム中に存在する細菌の量および種類を特定することにより判定する。
【0019】
試験組成物を同定する方法の一実施形態は、1つ以上の評価において陽性である試験組成物を使用して、口腔ケア組成物を調製することをさらに含む。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】サンプリング時点間におけるプラーク指数の変化、および7日目における使用済み洗口液の細菌量を示す図である。
【0021】
発明の詳細な説明
口腔バイオフィルムは、当該技術分野で周知の用語である。口腔バイオフィルムとは、歯のエナメル質、および舌などの口内の軟組織に付着するマトリックスに包埋された微生物およびその産生物により構成される群集のことである。バイオフィルム内における微生物群集の協力的な性質は、そこに存在する細菌に対して利点をもたらし、より広い生息域で増殖を促進し、宿主の防御および抗菌剤に対するより高い耐性をもたらし、ひいては微生物群集の病原性をも高める。
【0022】
口腔バイオフィルムは、清潔な口内に一般的に見られるが、バイオフィルムは、酸蝕症による脱灰、歯肉炎、プラーク、歯周炎、口臭および/またはう蝕などの、口腔内病変を引き起こす場合がある。
【0023】
歯磨き、またはデンタルフロスでバイオフィルムを機械的に妨害することで、病原性微生物の一部を除去し、口腔衛生を手助けすることができるが、バイオフィルムは迅速に再生することができる。したがって、単独でまたは機械的破壊と組み合わせて使用して、口腔バイオフィルムの形成を遅延させることができる化合物および組成物を同定する必要がある。
【0024】
本発明者らは、口腔ケア組成物中で口腔衛生を改善するために使用され得る化合物または組成物を同定しようと努めた。
【0025】
本発明者らは、試験化合物または組成物が口腔ケア組成物に利用できるか否かを識別する方法であって、(a)試験組成物が細菌の付着を減少させるか否かを評価すること、および/または(b)試験組成物がバイオフィルム形成を減少させるか否かを評価すること、および/または(c)試験組成物がバイオフィルムを破壊するか否かを評価することを含み、1つ以上の評価において陽性である組成物が、口腔ヘルスケア組成物として有用である、方法を考案した。
【0026】
評価の実施に関する更なる情報は、添付の実施例によって明らかにされ、以下でさらに説明される。
【0027】
この研究から、本発明者らは、ミリスチン酸、シス-3-ヘキセニルヘキサノエート、シトロネロール、ヌートカトン、アンブレットシードアブソリュート、ホウレンソウアブソリュート、ヘリクリサムイタリカムアブソリュート、ブタノール、ゲラニオール、β-イオノン、イソアミルアルコール、メチル(2-ペンチル-3-オキソシクロペンチル)アセテート、アネトール、デカン酸、ウンデカン酸、ナツメグ油、クラリセージ油、レモングラス油、ライム油、ペパーミント油(例えば、ミントピペリタレコナット、ミントピペリタボウルダーsx、もしくはミントピペリタヤキマシングルカット)、γ-オクタラクトン、3-ヘキセニルアセテート、ラベンダー油、シンナムアルデヒド、クローブ油、アルベンシスミント油(例えば、アルベンシスミントtpc)、アマニ油、およびチモールである、細菌付着、および/またはバイオフィルム形成、および/またはバイオフィルム破壊を調整する化合物または組成物を数多く同定した。
【0028】
したがって、本発明は、本明細書中で言及する、抗口腔バイオフィルム効果、すなわち細菌の付着を減少させ、かつ/またはバイオフィルムの形成を減少させ、かつ/またはバイオフィルムを破壊するといった効果を有する化合物または組成物のうちの1種以上を含む口腔ケア組成物を提供する。よって、それらの口腔ケア組成物は、酸蝕症による脱灰、歯肉炎、プラーク、歯周炎、口臭、および/またはう蝕をなどの口腔内病変の予防または治療に有用である。
【0029】
「減少させる」とは、化合物または組成物が、本明細書に記載される本発明の態様で使用される評価の1つ以上において陽性の結果を示す場合を含む。本発明者らが「陽性の結果」で意図するのは、同じ試料混合物であるが、試験化合物または組成物を含まない試料混合物を使用した対照反応と比較して、統計的に有意な効果、つまり減少効果を組成物が付与することである。
【0030】
本明細書において使用される、「統計的に有意な効果」とは、化合物または組成物が、スチューデントのT検定で測定された0.05未満のp値(すなわち、95%の信頼区間)を有することである。当然のことながら、このような減少は、被験体が、上記のような口腔内病変を発症する可能性を減少させるのに有益であると考えられる。
【0031】
本発明の一実施形態において、口腔ケア製品は、歯磨きペースト、歯磨き粉、歯磨きジェル、液体歯磨き、泡歯磨き、錠剤歯磨き、うがい薬、洗口液、マウススプレー、デンタルフロス、チューイングガム、デンタルアライナー、ロゼンジ、義歯用発泡錠;義歯用発泡錠およびデンタルアライナーからなる群から選択される。
【0032】
本明細書で使用される「口腔ヘルスケア組成物」という用語は、通常の使用過程において、特定の治療剤の全身投与の目的で意図的に嚥下されるのではなく、むしろ口腔内に作用させる目的で、実質的に全ての歯の表面および/または口腔組織に接触するのに十分な時間にわたって口腔内に保持される製品を指す。口腔ヘルスケア組成物は、歯磨きペースト、歯磨き粉、歯磨きジェル、液体歯磨き、泡歯磨き、錠剤歯磨き、うがい薬、洗口液、マウススプレー、デンタルフロス、チューイングガム、デンタルアライナー、ロゼンジ、義歯用発泡錠;義歯用発泡錠およびデンタルアライナーなどの様々な形態であってよい。
【0033】
口腔用ヘルスケア組成物は、口腔表面へ直接適用し、または付着させるために、フロス、ストリップ、またはフィルム上に組み込まれるか、または歯ブラシ、デンタルアライナー、またはロールオンなどの装置またはアプリケータに組み込まれてもよい。そのようなアプリケータは、単回使用または複数回使用のためのものである場合がある。
【0034】
本明細書で使用される「歯磨き剤」という用語は、特に明記しない限り、ペースト、ジェル、または液体製剤などである。歯磨き剤組成物は、単相組成物であっても、または2種以上の別個の歯磨き剤組成物の組み合わせであってもよい。歯磨き剤組成物は、深い縞模様、表面縞模様、多層、ジェルに囲まれたペースト、またはそれらの任意の組み合わせなどのあらゆる所望の形態であってもよい。2種以上の別個の歯磨き剤組成物を含む歯磨き剤の歯磨き剤組成物のそれぞれを、ディスペンサーの物理的に分離された区画に収容し、並べて取り出してもよい。
【0035】
本明細書で使用される「ディスペンサー」という用語は、歯磨き剤などの組成物を取り出すのに適した任意のポンプ、チューブ、または容器を指す。
【0036】
上記のように、本発明者らは、口腔ヘルスケア組成物に使用することができる多数の化合物または組成物を同定した。
【0037】
本発明の1つの態様は、ミリスチン酸、シス-3-ヘキセニルヘキサノエート、シトロネロール、ヌートカトン、アンブレットシードアブソリュート、ホウレンソウアブソリュート、ヘリクリサムイタリカムアブソリュート、ブタノール、ゲラニオール、β-イオノン、イソアミルアルコール、メチル(2-ペンチル-3-オキソシクロペンチル)アセテート、アネトール、デカン酸、ウンデカン酸、ナツメグ油、クラリセージ油、レモングラス油、ライム油、ペパーミント油(例えば、ミントピペリタレコナット、ミントピペリタボウルダーsx、もしくはミントピペリタヤキマシングルカット)、γ-オクタラクトン、3-ヘキセニルアセテート、ラベンダー油、シンナムアルデヒド、クローブ油、アルベンシスミント油(例えば、アルベンシスミントtpc)、アマニ油、およびチモールである化合物または組成物のうちの1種以上を含む、口腔ケア組成物を提供する。
【0038】
本発明の口腔ケア組成物に使用される化合物または組成物について、以下に論じる。
【0039】
「ミリスチン酸」は、当該技術分野で周知の材料である。これはナツメグバターに含まれる。「ミリスチン酸」としては、CAS544-63-8で登録された材料が挙げられ、多くの供給元から市販されている。
【0040】
「シス-3-ヘキセニルヘキサノエート」は、当該技術分野で周知の材料であり、フルーティーなグリーンペアの香りを有し、香料に使用される。「シス-3-ヘキセニルヘキサノエート」としては、CAS31501-11-8で登録された材料が挙げられ、多くの供給元から市販されている。
【0041】
「シトロネロール」は、当該技術分野で周知の材料である。フレッシュなフローラルローズノートを有し、香料に使用される。「シトロネロール」としては、CAS000106-22-9で登録された材料が挙げられ、多くの供給元から市販されている。
【0042】
「ヌートカトン」は、当該技術分野で周知の材料である。これは、グレープフルーツ中に存在することで最も知られる香料である。「ヌートカトン」としては、CAS004674-50-4で登録された材料が挙げられ、多くの供給元から市販されている。
【0043】
「アンブレットシードアブソリュート」は、当該技術分野で周知の材料であり、香料に使用され、乾燥したムスクの香気を有する。「アンブレットシードアブソリュート」としては、CAS8015-62-1で登録された材料が挙げられ、多くの供給元から市販されている。
【0044】
「ホウレンソウアブソリュート」は、当該技術分野で周知の材料であり、香料に使用され、ホウレンソウ様の芳香プロファイルを有する。「ホウレンソウアブソリュート」としては、CAS68917-48-6で登録された材料が挙げられ、多くの供給元から市販されている。
【0045】
「ヘリクリサムイタリカムアブソリュート」は、当該技術分野で周知の材料であり、香料に使用され、フローラルアンバーノートを有する。「ヘリクリサムイタリカムアブソリュート」としては、CAS0008023-95-8で登録された材料が挙げられ、多くの供給元から市販されている。
【0046】
「ブタノール」は当該技術分野で周知の材料であり、香水の基剤として使用することができ、またアルコール様の香気も有する。「ブタノール」としては、CAS71-36-3で登録された材料が挙げられ、多くの供給元から市販されている。
【0047】
「ゲラニオール」は、当該技術分野で周知の材料である。多くの精油にとって共通の特徴である、バラのような香りを有し、香水およびフレーバーに使用される。「ゲラニオール」としては、CAS106-24-1で登録された材料が挙げられ、多くの供給元から市販されている。
【0048】
「β-イオノン」(化学式:(3E)-4-(2,6,6-トリメチルシクロヘキサ-1-エン-1-イル)ブタ-3-エン-2-オンを有する)は、当技術分野において周知の材料である。多くの精油にとって共通の特徴である、バラのような香りを有し、香水およびフレーバーに使用される。「β-イオノン」としては、CAS79-77-6で登録された材料が挙げられ、多くの供給元から市販されている。
【0049】
「イソアミルアルコール」は、当該技術分野で周知の材料である。フルーティーでバナナのような香気を有し、香水およびフレーバーに使用される。「イソアミルアルコール」としては、CAS123-51-3で登録された材料が挙げられ、多くの供給元から市販されている。
【0050】
「メチル(2-ペンチル-3-オキソシクロペンチル)アセテート」は、香料に使用される化合物である。柑橘類のフレッシュさを備えたフローラルなジャスミンノートを有する。「メチル(2-ペンチル-3-オキソシクロペンチル)アセテート」としては、Firmenich SA社(www.firmenich.com)から市販されているCAS0024851-98-7で登録された材料が挙げられる。
【0051】
「アネトール」は、当該技術分野で周知の材料である。香料に使用され、スイートリコリスのような香気を有する。「アネトール」としては、CAS004180-23-8で登録された材料が挙げられ、多くの供給元から市販されている。
【0052】
「デカン酸」は、当該技術分野で周知の材料である。香料に使用され、スイートリコリスのような香気を有する。「デカン酸」としては、CAS334-48-5で登録された材料が挙げられ、多くの供給元から市販されている。
【0053】
「ウンデカン酸」は、当該技術分野で周知の材料である。香料に使用され、ワックス様でクリーミーチーズ様の香気を有する。「ウンデカン酸」としては、CAS112-37-8で登録された材料が挙げられ、多くの供給元から市販されている。
【0054】
「ナツメグ油」は、当該技術分野で周知の材料である。香料に使用され、スパイシーでウッディーな香気を有する。「ナツメグ油」としては、CAS8008-45-5で登録された材料が挙げられ、多くの供給元から市販されている。
【0055】
「クラリセージ油」は、当該技術分野で周知の材料である。香料に使用され、フレッシュハーブティー様の香気を有する。「クラリセージ油」としては、CAS8016-63-5で登録された材料が挙げられる。
【0056】
「レモングラス油」は、当該技術分野で周知の材料である。これは、シトラール、ミルセン、およびリモネンなどのいくつかの化合物を含む複合油であり、レモングラス(Cymbopogon citratus plant)の葉および木茎から調製される。この油は、調理および健康目的のために一般に使用される。「レモングラス油」としては、CAS8007-02-1で登録された材料が挙げられ、多くの供給元から市販されている。
【0057】
「ライム油」は、当該技術分野で周知の材料である。これは、リモネン、γ-テルピネンおよびβ-ピネンなどのいくつかの化合物を含む複合油であり、メキシカンライム(Citrus aurantifolia plant)から調製される。「ライム油」としては、CAS8008-26-2で登録された材料が挙げられ、多くの供給元から市販されている。
【0058】
「ペパーミント油」は、当該技術分野で周知の材料である。これは、メントール、メントン、シネオールなどのいくつかの化合物を含む複合油であり、ペパーミント(Mentha x piperita plant)の葉および茎から調製される。この油は、調理および健康目的のために一般に使用される。「ペパーミント油」としては、多数の様々な品種の植物から得られる油が挙げられる。例えば、ミントピペリタレコナット(CAS0068917-18-0で登録された材料)、ミントピペリタボウルダーsx(CAS0008006-90-4で登録された材料)、またはミントピペリタヤキマシングルカット(CAS8006-90-4で登録された材料)として知られるペパーミント油は、この出願の目的のための「ペパーミント油」の範囲に含まれる。上記の「ペパーミント油」は、多くの供給元、例えばEssex Laboratories社(http://www.essexlabs.com/)から市販されている。
【0059】
「γ-オクタラクトン」は、当該技術分野で周知の材料である。甘いココナッツの匂いを有し、香水および他の芳香材料の調製に使用される。「γ-オクタラクトン」としては、CAS104-50-7で登録された材料が挙げられ、多くの供給元から市販されている。
【0060】
「3-ヘキセニルアセテート」は、当該技術分野で周知の材料である。グリーンでフルーティーな匂いを有し、香水および他の芳香材料の調製に使用される。「3-ヘキセニルアセテート」としては、CAS1708-82-3で登録された材料が挙げられ、多くの供給元から市販されている。
【0061】
「ラベンダー油」は、当該技術分野で周知の材料である。これは、リナロールおよび酢酸リナリルなどのいくつかの化合物を含む複合油であり、ラベンダー種、最も一般的には真正ラベンダー(Lavandula angustifolia)およびスパイクラベンダー(Lavandula latifolia)から調製される。ラベンダー油は、古くから香料目的で使用されている。「ラベンダー油」としては、CAS8008-28-0で登録された材料が挙げられ、多くの供給元から市販されている。
【0062】
「シンナムアルデヒド」は、当該技術分野で周知の材料である。シナモン様の香気を有し、香水およびフレーバーにおいて使用される。「シンナムアルデヒド」としては、CAS14371-10-9で登録された材料が挙げられ、多くの供給元から市販されている。
【0063】
「クローブ油」は、当該技術分野で周知の材料である。これは、オイゲノール、酢酸オイゲニルおよびカリオフィレンなどのいくつかの化合物を含む複合油であり、チョウジ(Syzygium aromaticum plant)から調製される。クローブ油は、古くから香料および医薬目的のために使用されている。「クローブ油」としては、CAS8008-34-8で登録された材料が挙げられ、多くの供給元から市販されている。
【0064】
「アルベンシスミント油」は、当該技術分野で周知の材料である。これは、メントールおよびメントンなどのいくつかの化合物を含む、ペパーミントのようなメントールミント油であり、ハッカ(Menthe arvensis)から調製される。アルベンシスミント油は、古くから香料およびフレーバーの目的のために使用されている。「アルベンシスミント油」としては、CAS68917-18-0で登録された材料が挙げられ、例えばSharp Mint Ltd(http://www.sharpmint.com/)およびSwati Menthol Allied(http://swatimenthol.com/)などの多くの供給元から市販されている。
【0065】
「アマニ油」は、当該技術分野で周知の材料である。これは、リノレン酸、パルミチン酸、およびステアリン酸などのいくつかの化合物を含む複合油であり、亜麻(Linum usitatissimum)から調製される。アマニ油は、古くから工業目的のために用いられている。「アマニ油」としては、CAS60-33-3で登録された材料が挙げられ、多くの供給元から市販されている。好ましい実施形態において、アマニ油は、リノール酸異性体(Z,Z)-9,12-オクタデカジエン酸と、(Z,Z,Z)-9,12,15-オクタデカトリエン酸との混合物を含む。
【0066】
「チモール」は当該技術分野で周知の材料である。香料および医薬目的のために使用されている。「チモール」としては、CAS89-83-8で登録された材料が挙げられ、多くの供給元から市販されている。
【0067】
本発明の口腔ケア組成物は、本明細書に記載の本発明の態様で使用される評価のうちの2つ以上において陽性の結果を示す1種以上の化合物または組成物を含むことが好ましい。したがって、本発明の更なる実施形態において、口腔ケア組成物は、ミリスチン酸、シス-3-ヘキセニルヘキサノエート、シトロネロール、ヌートカトン、アンブレットシードアブソリュート、ホウレンソウアブソリュート、ヘリクリサムイタリカムアブソリュート、ブタノール、ゲラニオール、β-イオノン、イソアミルアルコール、メチル(2-ペンチル-3-オキソシクロペンチル)アセテート、アネトール、デカン酸、ウンデカン酸、ナツメグ油、クラリセージ油、レモングラス油、ライム油、ペパーミント油(例えば、ミントピペリタレコナット、ミントピペリタボウルダーsx、もしくはミントピペリタヤキマシングルカット)、γ-オクタラクトン、3-ヘキセニルアセテート、ラベンダー油、シンナムアルデヒド、クローブ油、アルベンシスミント油(例えば、アルベンシスミントtpc)、アマニ油、およびチモールである化合物または組成物のうちの1種以上を含む。
【0068】
本発明の口腔ケア組成物は、本明細書に記載の本発明の態様で使用される3つの評価全てにおいて陽性の結果を示す1種以上の化合物または組成物を含むことがより好ましい。したがって、本発明の更なる実施形態において、口腔ケア組成物は、ミリスチン酸、シトロネロール、ヌートカトン、ナツメグ油、クラリセージ油、レモングラス油、ペパーミント油およびγ-オクタラクトンである化合物または組成物のうちの1種以上を含む。
【0069】
上記のように、本発明の口腔ケア組成物は、本明細書に記載の化合物または組成物のうちの1種以上を含む。本発明の一実施形態において、本発明の口腔ケア組成物は、ミリスチン酸、シス-3-ヘキセニルヘキサノエート、シトロネロール、ヌートカトン、アンブレットシードアブソリュート、ホウレンソウアブソリュート、ヘリクリサムイタリカムアブソリュート、ブタノール、ゲラニオール、β-イオノン、イソアミルアルコール、メチル(2-ペンチル-3-オキソシクロペンチル)アセテート、アネトール、デカン酸、ウンデカン酸、ナツメグ油、クラリセージ油、レモングラス油、ライム油、ペパーミント油(例えば、ミントピペリタレコナット、ミントピペリタボウルダーsx、もしくはミントピペリタヤキマシングルカット)、γ-オクタラクトン、3-ヘキセニルアセテート、ラベンダー油、シンナムアルデヒド、クローブ油、アルベンシスミント油(例えば、アルベンシスミントtpc)、アマニ油、およびチモールである化合物または組成物のうちの2種、3種、4種、5種、6種、7種、8種、9種、10種、11種、12種、13種、14種、15種以上を含む。
【0070】
添付の実施例に示されるように、本発明者らは、本明細書に記載の化合物または組成物の組み合わせを含む一連の口腔ケア組成物を調製した。それらを、「フレーバー組成物A~D」と呼ぶ。一連の口腔ケア組成物は、in vitroおよびin vivoで良好な抗バイオフィルム活性を示した。
【0071】
したがって、好ましい実施形態において、本発明の口腔ケア組成物は、イソアミルアルコール、アマニ油、およびメチル(2-ペンチル-3-オキソシクロペンチル)を含む。本発明の口腔ケア組成物は、10%のイソアミルアルコール、10%のアマニ油、および2.5%のメチル(2-ペンチル-3-オキソシクロペンチル)を含むことが好ましい。
【0072】
さらに好ましい実施形態において、本発明の口腔ケア組成物は、アルベンシスミントtpcおよびミントピペリタヤキマシングルカットを含む。本発明の口腔ケア組成物は、16.67%のアルベンシスミントtpcおよび16.67%のミントピペリタヤキマシングルカットを含むことが好ましい。
【0073】
さらに好ましい実施形態において、本発明の口腔ケア組成物は、シンナムアルデヒドおよびクローブ油を含む。本発明の口腔ケア組成物は、15%のシンナムアルデヒドおよび15%のクローブ油を含むことが好ましい。
【0074】
当然のことながら、化合物または組成物の量は、特定の化合物または組成物、ならびに形成および意図される用途に応じて変化し得る。
【0075】
しかしながら、本発明の実施形態は、化合物または組成物が、口腔ケア組成物の総重量に対して、それぞれ0.001%~5%、特に好ましくは0.005%~3%、好ましくは0.5%~2%の濃度である、本発明の口腔ケア組成物を提供する。
【0076】
本発明の一実施形態は、フレーバー系、冷感剤、界面活性剤、保湿剤、顔料、抗菌剤、増粘剤、フッ化物源、歯石コントロール剤、および/または防腐剤である成分のうちの1種以上をさらに含む、本発明の口腔ケア組成物を提供する。
【0077】
いくつかの態様において、組成物はフレーバー系をさらに含む。フレーバー系は、組成物に含まれる所与の成分、例えば抗菌活性物質または過酸化物などに起因するあらゆる不快な風味および感覚をマスキングすることができる。特定の理論に限定されることを意図するものではないが、心地よい風味の組成物は、口腔ケア製品の所定のまたは推奨される使用に対するユーザーのコンプライアンスを改善する。フレーバー系は、従来のフレーバー成分、特に通常の口腔ケア製品の担体材料または賦形剤の存在下で比較的安定なフレーバー成分を含んでもよい。選択されたフレーバー系と、本明細書に提示される組成物との組み合わせは、バランスのとれたフレーバープロファイルを備えた高インパクトの爽快感を提供することができる。
【0078】
いくつかの態様において、フレーバー系は、冬緑油、カッシア、セージ、パセリ油、マジョラム、オレンジ、シス-ジャスモン、2,5-ジメチル-4-ヒドロキシ-3(2H)-フラノン、5-エチル-3-ヒドロキシ-4-メチル-2(5H)-フラノン、バニリン、エチルバニリン、アニスアルデヒド、3,4-メチレンジオキシベンズアルデヒド、3,4-ジメトキシベンズアルデヒド、4-ヒドロキシベンズアルデヒド、2-メトキシベンズアルデヒド、ベンズアルデヒド、プロペニルグアエトール、ヘリオトロピン、4-シス-ヘプテナール、ジアセチル、メチル-p-tert-ブチルフェニルアセテート、サリチル酸メチル、サリチル酸エチル、L-酢酸メンチル、オキサノン、α-イリソン、酪酸エチル、酢酸エチル、アントラニル酸メチル、酢酸イソアミル、酪酸イソアミル、カプロン酸アリル、オイゲノール、ユーカリプトール、オクタノール、オクタナール、デカノール、デカナール、フェニルエチルアルコール、ベンジルアルコール、α-テルピネオール、マルトール、エチルマルトール、アネトール、ジヒドロアネトール、カルボン、メントン、b-ダマセノン、およびそれらの混合物などの更なるフレーバー成分を含有することができるが、それらに限定されない。
【0079】
一般的に、適切なフレーバリング成分は、酸化還元反応を起こしにくい構造的特徴および官能基を含む。これらには、飽和した、または安定した芳香環またはエステル基を含むフレーバー化学物質の誘導体が含まれる。また、ある程度の酸化、または分解を受けてもフレーバーの特性またはプロファイルに著しい変化をもたらすことがないフレーバー化学物質も適している。フレーバー成分は、単一もしくは精製された化学物質として組成物中に供給されるか、または天然油または抽出物を添加することにより、組成物中に供給される。天然油または抽出物は、精製処理をして、比較的不安定でかつ所望のフレーバープロファイルを劣化させるかまたは変更してしまい、その結果官能特性の観点から許容できない製品をもたらす可能性がある成分を取り除くことが好ましい。フレーバリング剤は、一般的には組成物の約0.001重量%~約5重量%のレベルで組成物に使用することができる。
【0080】
いくつかの態様において、フレーバー系は甘味料をさらに含む場合がある。適切な甘味料としては、天然および人工の甘味料の双方を含む、当該技術分野で周知のものが挙げられる。適切な水溶性甘味料としては、単糖類、二糖類、および多糖類、例えばキシロース、キシリトール、リボース、グルコース(デキストロース)、マンノース、ガラクトース、フルクトース(レブロース)、スクロース(糖)、マルトース、転化糖(スクロース由来のフルクトースとグルコースとの混合物)、部分加水分解デンプン、コムシロップ固形物、ジヒドロカルコン、モネリン、ステビオシド、およびグリチルリチンが挙げられる。モンクフルーツ由来の甘味料、例えばモグロシドが挙げられる。ステビア(Stevia rebaudiana)由来の甘味料、例えばステビオシドおよびレバウジオシド(特にレバウジオシドA)なども挙げられる。適切な水溶性人工甘味料としては、可溶性サッカリン塩、すなわち、ナトリウムまたはカルシウムのサッカリン塩、シクラメート塩、3,4-ジヒドロ-6-メチル-1,2,3-オキサチアジン-4-オン-2,2-ジオキシドのナトリウム、アンモニウムまたはカルシウム塩、3,4-ジヒドロ-6-メチル-1,2,3-オキサチアジン-4-オン-2,2-ジオキシドのカリウム塩(アセスルファム-K)、遊離酸形態のサッカリンなどが挙げられる。他の適切な甘味料としては、ジペプチド系の甘味料、例えばL-アスパラギン酸由来の甘味料、例えばL-アスパルチル-L-フェニルアラニンメチルエステル(アスパルテーム)、および米国特許第3,492,131号明細書に記載された材料、L-α-アスパルチル-N-(2,2,4,4-テトラメチル-3-チエタニル)-D-アラニンアミド水和物、L-アスパルチル-L-フェニルグリセリンとL-アスパルチル-L-2,5,ジヒドロフェニル-グリシンとのメチルエステル、L-アスパルチル-2,5-ジヒドロ-L-フェニルアラニン、L-アスパルチル-L-(l-シクロへキシレン)-アラニンなどが挙げられる。天然に産生される水溶性甘味料に由来する水溶性甘味料、例えば、通常の糖の塩素化誘導体(スクロース)であって、例えば、スクラロースの製品銘柄で知られているものだけでなく、タウマトコックスダニエリ(Thaumatoccous daniellii)(タウマチンIおよびII)などのタンパク質由来の甘味料も使用可能である。
【0081】
いくつかの態様において、組成物は、組成物の約0.1重量%~約10重量%、あるいは約0.1重量%~約1重量%の甘味料を含んでもよい。
【0082】
いくつかの態様において、フレーバー系は、唾液分泌剤、加温剤、およびしびれ薬をさらに含んでもよい。これらの薬剤は、組成物の約0.001重量%~約10重量%、あるいは約0.1重量%~約1重量%のレベルで、組成物中に存在してもよい。
【0083】
適切な唾液分泌剤としては、高砂社製のJambu(登録商標)が挙げられる。適切なしびれ薬としては、ベンゾカイン、リドカイン、クローブバッド油、およびエタノールが挙げられる。加温剤の例としては、エタノール、トウガラシ、およびニコチン酸ベンジルなどのニコチン酸エステルが挙げられる。
【0084】
いくつかの態様において、本発明の口腔ケア組成物は、さらに、例えば米国特許第9,394,287号明細書および同第9,732,071号明細書に記載されるような冷感剤をさらに含んでもよい。冷感剤の更なる例としては、5-メチル-2-(プロパン-2-イル)シクロヘキシル-N-エチルオキサメート、N-エチル-p-メンタンカルボキサミド(WS-3、メンタン-3-カルボン酸-N-エチルアミドとも呼ばれる)、N-2,3-トリメチル-2-イソプロピルブタンアミド(WS-23)、乳酸メンチル(Frescolat(登録商標)-ML)、メントングリセリンアセタール(Frescolat(登録商標) MGA)、コハク酸モノメンチル(Physcool(登録商標))、モノメンチルグルタラート、O-メンチル-グリセリン、メンチル-N,N-ジメチルスクシナメート、N-(4-シアノメチルフェニル)-p-メンタンカルボキサミド、N-(2-(ピリジン-2-イル)エチル)-3-p-メンタンカルボキサミド、メントールおよびメントール誘導体(例えば、L-メントール、D-メントール、ラセミ状メントール、イソメントール、ネオイソメントール、ネオメントール)、メンチルエーテル(例えば(L-メントキシ)-1,2-プロパンジオール、(L-メントキシ)-2-メチル-1,2-プロパンジオール、1-メンチル-メチルエーテル)、メンチルエステル(例えば、ギ酸メンチル、酢酸メンチル、イソ酪酸メンチル、乳酸メンチル、L-メンチル-L-乳酸、L-メンチル-D-乳酸、メンチル-(2-メトキシ)アセテート、メンチル(2-メトキシエトキシ)アセテート、メンチルピログルタメート)、N-(4-シアノメンチルフェニル)-p-メンタンカルボキサミド、N-(2-(ピリジン-2-イル)エチル)-3-p-メンタンカルボキサミド、メンチルカーボネート(例えば、メンチルプロピレングリコールカーボネート、メンチルエチレングリコールカーボネート、メンチルグリセリンカーボネート、またはそれらの混合物)、メンタンカルボン酸アミド(例えば、メンタンカルボン酸-N-エチルアミド[WS3]、N-α-(メンタン-カルボニル)グリシンエチルエステル[WS5]、メンタンカルボン酸-N-(4-シアノフェニル)アミド、メンタンカルボン酸-N-(アルコキシアルキル)アミド)、メントンおよびメントン誘導体(例えばL-メントングリセリンケタール)、2,3-ジメチル-2-(2-プロピル)-酪酸誘導体(例えば、2,3-ジメチル-2-(2-プロピル)-酪酸-N-メチルアミド[WS23])、イソプレゴールまたはそのエステル(1-(-)-イソプレゴール、1-(-)-イソプレゴルアセテート)、メンタン誘導体(例えば、p-メンタン-3,8-ジオール)、N-(4-シアノメチルフェニル)-p-メンタンカルボキサミド、N-(2-(ピリジン-2-イル)エチル)-3-p-メンタンカルボキサミド、クベボールまたはクベボールを含む合成または天然混合物、シクロアルキルジオン誘導体のピロリドン誘導体(例えば、3-メチル-2(1-ピロリジニル)-2-シクロペンテン-1-オン)またはテトラヒドロピリミジン-2-オン(例えば、イシリンまたは国際公開第2004/026840号に記載の関連化合物)、N-(4-シアノメチルフェニル)-p-メンタンカルボキサミド、N-(2-(ピリジン-2-イル)エチル)-3-p-メンタンカルボキサミド、メンチルエーテル(例えば、(L-メントキシ)-1,2-プロパンジオール、(L-メントキシ)-2-メチル-1,2-プロパンジオール)、より極性の高いメンチルエステル(例えば、乳酸メンチル、L-メンチル-L-乳酸、L-メンチル-D-乳酸、メンチル(2-メトキシ)アセテート、メンチル(2-メトキシエトキシ)アセテート、メンチルピログルタメート)、メンチルカーボネート(例えば、メンチルプロピレングリコールカーボネート、メンチルエチレングリコールカーボネート、メンチルグリセリンカーボネート)、メントールとジカルボン酸とのセミエステル、またはその誘導体(例えば、コハク酸モノメンチル、グルタル酸モノメンチル、マロン酸モノメンチル、O-メンチルコハク酸エステル-N,N-(ジメチル)アミド、O-メンチルコハク酸エステルアミド)、3,4-メチレンジオキシケイ皮酸-N-シクロヘキシル-N-2-ピリジルアミド、イソプロピル-(5-メトキシ-2-ピリジン-2-イル-ピリミジン-4-イル)-アミン、3,4,6,7,11b,12-ヘキサヒドロ-3,3-ジメチル-スピロ[13H-ジベンゾ[a,f]キノリジン-1--3,2’-[1,3]ジチオラン]-1(2H)-オン、5,6,10b,11-テトラヒドロ-3-メチル-スピロ[12H-ベンゾ[a]フロ[3,4-f]キノリジン-1--2,2’-[1,3]ジチオラン]-1(3H)-オンが挙げられる。冷感化合物として最も好ましいのは、5-メチル-2-(プロパン-2-イル)シクロヘキシル-N-エチルオキサメート、N-エチル-p-メンタンカルボキサミド(WS-3、メンタン-3-カルボン酸-N-エチルアミドとも呼ばれる)、乳酸メンチル(Frescolat(登録商標) ML)、メントングリセリンアセタール(Frescolat(登録商標) MGA)、N-(4-シアノメチルフェニル)-p-メンタンカルボキサミド、および(L-メントキシ)-1,2-プロパンジオール、2-(4-メチルフェノキシ)-N-(1H-ピラゾール-5-イル)-N-(2-チエニルメチル)アセトアミド、2-(4-メチルフェノキシ)-N-(1H-ピラゾール-3-イル)-N-(2-チエニルメチル)アセトアミド、ならびに2-(4-メチルフェノキシ)-N-(1H-ピラゾール-5-イル)-N-(2-チエニルメチル)アセトアミドと、2-(4-メチルフェノキシ)-N-(1H-ピラゾール-3-イル)-N-(2-チエニルメチル)アセトアミドとの混合物からなる群から選択される化合物である。
【0085】
上記の成分に加えて、本発明の組成物は、更なる任意の成分および/または経口摂取可能な担体材料を含んでもよい。
【0086】
いくつかの態様において、口腔ケア組成物は界面活性剤成分を含む。
【0087】
経口的に摂取可能な任意の界面活性剤(そのほとんどがアニオン性、非イオン性または両性である)を使用することができる。適切なアニオン性界面活性剤としては、ラウリル硫酸ナトリウム、ココナッツモノグリセリドスルホン酸ナトリウム、ラウリルサルコシン酸ナトリウム、ラウリルイセチオン酸ナトリウム、ラウレスカルボン酸ナトリウム、およびドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムが挙げられるが、これらに限定されない。適切な非イオン性界面活性剤としては、ポロキサマー、ポリオキシエチレンソルビタンエステル、脂肪アルコールエトキシレート、アルキルフェノールエトキシレート、第三級アミンオキシド、第三級ホスフィンオキシド、ジアルキルスルホキシドなどが挙げられる。適切な両性界面活性剤としては、カルボキシレート、スルフェート、スルホネート、ホスフェートまたはホスホネートなどのアニオン性基を有するCs2O脂肪族第二級および第三級アミンの誘導体が挙げられる。
【0088】
いくつかの実施形態において、界面活性剤成分は、(i)ポリ(オキシエチレン)-ポリ(オキシプロピレン)-ポリ(オキシエチレン)ブロックコポリマー、ポリ(オキシエチレン)変性水素化ヒマシ油、およびソルビタンのポリ(オキシエチレン)変性脂肪酸モノエステルからなる群から選択される界面活性剤と、(ii)ポリオールエステルおよび糖エステルからなる群から選択される界面活性剤とを含む。
【0089】
いくつかの態様において、口腔ケア組成物は顔料を含む。適切な経口摂取可能な顔料としては、タルク、マイカ、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸マグネシウムアルミニウム、シリカ、二酸化チタン、酸化亜鉛、赤色、黄色、褐色および黒色の酸化鉄、コンジョウ、マンガンバイオレット、ウルトラマリン、チタン化マイカ、塩化酸化ビスマスなどを使用することができる。
【0090】
いくつかの態様において、口腔ケア組成物はフッ化物イオン源を含む。適切なフッ化物イオン源としては、フッ化第一スズ、フッ化ナトリウム、フッ化カリウム、モノフルオロリン酸カリウム、モノフルオロリン酸ナトリウム、モノフルオロリン酸アンモニウム、フルオロケイ酸ナトリウム、フルオロケイ酸アンモニウム、フッ化アミン、フッ化アンモニウム、およびそれらの組み合わせが挙げられる。
【0091】
いくつかの態様において、口腔ケア組成物は抗菌剤を含む。適切な抗菌剤としては、エタノール、トリクロサン、塩化セチルピリジニウム(CPC)、クロルヘキシジン(CHX)、イソプロピルメチルフェノール(IPMP)、イソプロピルメチルフェノール(IPMP)、硫酸亜鉛(ZnSO4)、クエン酸亜鉛、塩化亜鉛(ZnCl2)が挙げられる。
【0092】
本発明の実施形態は、コーティングまたはカプセル化されている本発明の口腔ケア組成物を提供する。
【0093】
当該技術分野では、1つ以上の成分が、粉末でコーティングされた溶解可能なフィルムフラグメントでコーティング、またはカプセル化される口腔ケア組成物を製造するための様々な方法が知られており、例えばフィルムマトリックスは水不溶性の活性剤を含む。
【0094】
本発明の更なる態様は、本発明の口腔ケア組成物を含む、口腔ケア製品、または栄養もしくは清涼感を得るための製品を提供する。
【0095】
いくつかの態様において、口腔ケア組成物は保湿剤成分を含む。保湿剤の例としては、プロピレングリコール、ヘキシレングリコール、ブチレングリコール、アロエベラゲル、例えば乳酸、卵黄および卵白などのαヒドロキシ酸、グリセリル三酢酸、蜂蜜、塩化リチウム、糖蜜、例えばポリデキストロースなどの高分子ポリオール、キラヤ、ヘキサメタリン酸ナトリウムE452i、例えばグリセロール、ソルビトール、キシリトール、マルチトールなどの糖アルコール(糖ポリオール)、尿素、およびキャスターなどが挙げられる。
【0096】
本発明の更なる態様は、レモングラス油、ライム油、ペパーミント油(例えば、ミントピペリタレコナット、ミントピペリタボウルダーsx、もしくはミントピペリタヤキマシングルカット)、γ-オクタラクトン、3-ヘキセニルアセテート、ブタノール、ゲラニオール、ラベンダー油、β-イオノン、イソアミルアルコール、シンナムアルデヒド、クローブ油、アルベンシスミント油(例えば、アルベンシスミントtpc)、アマニ油、メチル(2-ペンチル-3-オキソシクロペンチル)アセテート、およびチモールである化合物もしくは組成物の1種以上を提供し、または抗口腔バイオフィルム剤としての使用のために、本発明の前記態様のいずれかの口腔ケア組成物を提供する。
【0097】
本発明の更なる態様は、本発明の口腔ケア組成物を含む消費者用食品または飲料製品を提供する。
【0098】
消費者用食品または飲料製品の好ましい実施形態において、本発明の口腔ケア組成物は、イソアミルアルコール、アマニ油、およびメチル(2-ペンチル-3-オキソシクロペンチル)を含む。本発明の口腔ケア組成物は、10%のイソアミルアルコール、10%のアマニ油、および2.5%のメチル(2-ペンチル-3-オキソシクロペンチル)を含むことが好ましい。
【0099】
消費者用食品または飲料製品の好ましい実施形態において、本発明の口腔ケア組成物は、アルベンシスミントtpc、およびミントピペリタヤキマシングルカットを含む。本発明の口腔ケア組成物は、16.67%のアルベンシスミントtpc、および16.67%のミントピペリタヤキマシングルカットを含むことが好ましい。
【0100】
消費者用食品または飲料製品の好ましい実施形態において、本発明の口腔ケア組成物は、シンナムアルデヒドおよびクローブ油を含む。本発明の口腔ケア組成物は、15%のシンナムアルデヒド、および15%のクローブ油を含むことが好ましい。
【0101】
「消費者用食品または飲料製品」とは、例えば、チューイングガム、ロゼンジ、ハードキャンディなどの菓子、ソフトドリンクおよびフレーバーウォーターなどの飲料、ヨーグルト飲料、ラクトース不含ヨーグルト、酸乳、コーヒークリームまたはホイップクリーム、チーズ、クワルク、アイスクリーム、およびその他の冷凍デザートなどの乳飲料および乳製品を包含する。アルコール飲料および非アルコール飲料も含まれる。他の適切な食品および飲料製品は、当業者に周知であると思われる。
【0102】
本発明の更なる態様は、本発明の前記態様のいずれかによる組成物を、必要とする者の口腔に適用することを含む、酸蝕症による脱灰、歯肉炎、プラーク、歯周炎、口臭、および/またはう蝕を治療または予防する方法を提供する。
【0103】
本発明の更なる態様は、酸蝕症による脱灰、歯肉炎、プラーク、歯周炎、口臭、および/またはう蝕を治療または予防するための、本発明の前記態様のいずれかによる口腔ケア組成物の使用を提供する。
【0104】
「抗口腔バイオフィルム剤」とは、口腔バイオフィルムに関連する口腔内病変を予防または治療する化合物または組成物などを指す。したがって、本発明は、本明細書に記載する化合物および組成物が、酸蝕症による脱灰、歯肉炎、プラーク、歯周炎、口臭、および/またはう蝕の予防または治療のために使用される場合を含む。
【0105】
本発明の更なる態様は、口腔ヘルスケアへの用途を有する試験組成物を同定する方法であって、
(a)試験組成物が細菌の付着を減少させるか否かを評価すること、および/または
(b)試験組成物がバイオフィルム形成を減少させるか否かを評価すること、および/または
(c)試験組成物がバイオフィルムを破壊するか否かを評価すること
を含み、
1つ以上の評価において陽性である組成物が、口腔ヘルスケア組成物として有用である、
方法を提供する。
【0106】
本発明の方法は、本発明の態様で使用される評価で得られる1つ以上の陽性の結果に従って、試験組成物が口腔ヘルスケアの用途を有するか否かを判定する。本発明者らが「陽性の結果」で意図するのは、同じ試料混合物であるが試験化合物または組成物を含まない試料混合物を使用した対照反応と比較して、統計的に有意な効果を組成物が付与することである。
【0107】
添付の実施例で、本発明のこの方法におけるそれぞれの評価の方法を詳細に説明する。更なる情報も以下に示す。
【0108】
1つの評価を使用して、試験組成物が細菌の付着を減少させるか否かを調べる。この評価を行うにあたり、歯のエナメル質代替材料を、口腔バイオフィルムを生成する細菌の付着に適した基材として使用する。歯のエナメル質代替材料は、試験組成物の存在下および非存在下で細菌を発生させる口腔バイオフィルムに曝露され、適切な培養時間の後に、試験組成物が細菌の付着に及ぼす効果が判定される。したがって、歯のエナメル質代替材料への口腔バイオフィルムを生成する細菌の付着の減少は、歯におけるバイオフィルムの形成を減少させ、したがって(上記のように)口腔バイオフィルムに関連する病変を減少させる意味で有益である。
【0109】
したがって、評価は、細菌の初期コロニー形成種の無菌表面上への付着、具体的には歯のエナメル質代替材料への付着を模倣するように設計されている。評価は、試験組成物を用いた処理を行う場合、行わない場合について実施する。これが、本発明の方法に挙げられた評価のステップ(a)である。
【0110】
したがって、試験組成物を同定する方法の一実施形態において、ステップ(a)の評価は、試験組成物の添加または非存在下で唾液および/または細菌に基材を曝露させ、試験組成物が基材への細菌の付着を減少させるか否かを判定することを含む。
【0111】
適切な歯のエナメル質代替材料としては、ヒドロキシアパタイト(HA)ディスクまたはウシの象牙質およびエナメル質が挙げられる。歯のエナメル質代替材料は、試験組成物の存在下または非存在下で、例えば30分間~24時間、好ましくは24時間の一定時間の間、口腔バイオフィルムを生成する微生物に曝露される。その後、バイオフィルムを採取し、微生物の数および状態を記録することにより分析する。
【0112】
更なる評価を使用して、試験組成物がバイオフィルム形成を減少させるか否かを調べる。この評価は、初期段階における歯のバイオフィルムの発生を模している。この評価を行うにあたり、唾液が塗布されたウェルを有する評価プレートを、培養期間中に何回か試験組成物に曝露させ、その後、微生物の数および状態を記録することにより、試験組成物がバイオフィルム形成に及ぼす影響を分析する。
【0113】
評価プレートは、試験組成物に何回か曝露され、好ましくは24時間で2回曝露される。
【0114】
したがって、この評価は、バイオフィルムが形成される初期段階を模倣するように設計されている。評価は試験組成物を用いた処理を行う場合、行わない場合について実施し、上述の通り、バイオフィルムが歯のエナメル質代替材料上で発生する際に、処理が適用される。これは、本発明の方法に挙げられた評価のステップ(b)である。
【0115】
したがって、本発明の方法の実施形態において、ステップ(b)の評価は、培養条件下で少なくとも24時間にわたり基材を唾液および/または細菌に曝露させ、次いで培養された混合物を試験組成物に曝露させ、試験組成物が基材へのバイオフィルム形成を減少させるか否かを判定することを含む。
【0116】
更なる評価を使用して、試験組成物がバイオフィルムを破壊するか否かを調べる。この評価は、試験組成物が有する、成熟したバイオフィルムを破壊する能力を評価するように設計されている。バイオフィルムは、上述の形成評価に従って形成する。次に、バイオフィルムが成熟したら(培養開始から約3日~7日後)、試験期間中に数回試験組成物に曝露され、その後、微生物の数および状態を記録することにより、試験組成物がバイオフィルム形成に及ぼす影響を分析する。
【0117】
したがって、この評価は、成熟したバイオフィルムを模倣するように設計されている。評価は、試験組成物による処理を行う場合、行わない場合について実施し、上記の通り、バイオフィルムが歯のエナメル質代替材料上で発生した後、例えば少なくとも3日間、好ましくは約7日間の後に、処理が適用される。これは、本発明の方法に挙げられた評価のステップ(c)である。
【0118】
試験組成物を同定する方法の一実施形態において、ステップ(c)の評価は、培養条件下で少なくとも72時間にわたり唾液および/または細菌に基材を曝露させて基材にバイオフィルムを形成し、次いで、培養された混合物を試験組成物に曝露させて、試験組成物がバイオフィルムを破壊するか否かを判定することを含む。
【0119】
試験組成物を同定する方法の更なる実施形態において、バイオフィルムに対する試験組成物の効果を、バイオフィルムを採取して、そのバイオフィルム中に存在する細菌の量および種類を特定することにより判定する。
【0120】
試験組成物を同定する方法の更なる実施形態は、1つ以上の評価において陽性である試験組成物を使用して、口腔ケア組成物を調製することを含む。
【0121】
本発明の利点を説明する以下の実施例に基づき、本発明をさらに詳細に説明する。
【実施例】
【0122】
実施例1:フレーバー成分の抗バイオフィルム活性に関するin vitroスクリーニング
接種材料調製
科学文献に基づき、計12の菌株を選択した。菌株サプライヤーが推奨する培地中で、菌株を増殖させた。培養液を、グリセロールを20%含有する増殖培地を用いてlog7CFU/mLに調整した。コリネバクテリウムマツルショッティ(C. matruchotii)については、グリセロールを含む増殖培地を使用してコロニー培養プレートを洗い流した後、細胞懸濁液をガラスビーズを用いてボルテックスし、均質化した。好気性株および嫌気性株を混合し、別々にアリコートした。使用まで、接種材料を-80℃で貯蔵した。
【0123】
【0124】
唾液および口腔接種材料の調製:
唾液および口腔微生物相の試料を、健康なボランティアから、前述の方法を用いて流涎法によって採取した[1]。
【0125】
(a)細菌付着評価:96ウェルMBECプレート(Innovotech社、カナダ)のペグを、唾液中に沈め、ペリクルを形成した。一晩培養したアクチノマイセスオリス(A. oris)、アクチノマイセスネスランディ(A. naeslundii)、ストレプトコッカスミティス(S. mitis)、およびストレプトコッカスオラリス(S. oralis)を、0.85%のNaClを使用してOD=0.1に正規化し、等割合で混合した。プレートを試料で2分間処理し、培養混合物で37℃およびCO2濃度5%で30分間培養した。次いで、採取する前に、96ウェルプレートのペグを3回洗浄した。
【0126】
(b)バイオフィルム形成評価:唾液でコートした96ウェルMBECプレートを接種材料で、嫌気的に一晩培養した。翌日、接種材料を改変BHI培養液(1g/Lのムチン、0.5mg/LのビタミンK、および10mg/Lのヘミンを補充したBHI)に置き換えた。これらの装置を、歯科用ケア製品の適用を模倣するために2分間にわたり2度処理し、その後、この処理溶液を新しい改質BHI培養液に置き換え、培養を継続した。2日後にバイオフィルムを採取した。
【0127】
(c)バイオフィルム破壊評価:培養時間を7日間に延長した以外は、形成評価に記載されるのと同じ方法により接種と培養を行い、その後、成熟したバイオフィルムを形成評価に記載されるのと同様に1日2回、3日間にわたって処理し、その後採取した。
【0128】
バイオフィルム採取:付着した細胞を採取するために、MBEC装置のペグを、ウェル1つあたり200μLの食塩溶液に浸漬した。プレートを超音波浴中で超音波処理して、細胞懸濁液を得た。付着評価のために、懸濁液を連続して希釈し、Microlab STAR(Hamilton社)を使用してトリプティックソイ寒天培地上で培養した。形成および破壊評価については、懸濁液を、製造業者の指示に従いLIVE/DEAD(登録商標) BacLight Bacterial Viability Kits L7012(Thermo Fisher Scientific社)を使用して、SYTO 9染色に供した。
【0129】
結果
表2に、3つの評価のいずれかにおいて、バイオフィルムを有意に減少させた全ての化合物および組成物を記載する。
【0130】
表2:規定の接種材料を用いた抗バイオフィルム評価で陽性の結果を示した化合物および組成物。p値は、対照ベースと処置ベースとの間のt検定の統計的有意性である;Δは、対照ベースと処置ベースとの間の相対的なバイオフィルム存在度の差である。付着評価については、バイオフィルムを、100を基準としたときの相対的なCFUとして定量化した。形成および破壊評価については、バイオフィルムを、100を基準としたときの相対的な蛍光強度として定量化した。
【0131】
【0132】
実施例2:口腔接種材料を使用した、化合物および組成物の抗バイオフィルム活性に関するin vitro実験
表2に記載された化合物および組成物を含むフレーバー組成物を、その抗バイオフィルム活性について、ボランティアから採取した口腔試料に由来するバイオフィルムを用いて評価した。表3に、3つの評価のいずれかにおいてバイオフィルムの有意な減少をもたらしたフレーバー組成物を示す。
【0133】
使用したフレーバー組成物は、以下の通りであった(全ての量は、組成物全体に対するパーセンテージ表示):
フレーバーA - 10% イソアミルアルコール、10% アマニ油、および2.5% メチル(2-ペンチル-3-オキソシクロペンチル)
フレーバーB - 16.67% アルベンシスミントtpc、および16.67% ミントピペリタヤキマシングルカット
フレーバーC - 25% ミントピペリタヤキマシングルカット
フレーバーD - 15% シンナムアルデヒド、および15% クローブ油。
表3:口腔接種材料を用いた抗バイオフィルム評価で陽性の結果を示したフレーバー組成物。p値は、対照ベースと処置ベースとの間のt検定の統計的有意性である;Δは、対照ベースと処置ベースとの間の相対的なバイオフィルム存在度の差である。付着評価については、バイオフィルムを、100を基準としたときの相対的なCFUとして定量化した。形成および破壊評価については、バイオフィルムを、100を基準としたときの相対的な蛍光強度として定量化した。
【0134】
【0135】
実施例3:最終製品の組成および調製
表4:洗口液の組成
表2に示した化合物および組成物のそれぞれについて、ならびに実施例2に記載したフレーバー混合物A~Dについて、うがい薬の試料を調製した。
【0136】
【0137】
表2に示した化合物および組成物、または実施例2に記載したフレーバー混合物を、RH40と混合した(成分A)。残りの成分を混合してマスター混合物(成分B)を調製し、次いでアリコートした。成分Aを、完全に溶解するまで一定速度で混合しながら、成分Bにゆっくりと添加した。
【0138】
実施例4:プラークのin vivo再増殖に対するうがい薬の効果
次いで、実施例3で調製したうがい薬溶液を、以下の実験で使用した。
主な口腔内疾患を有しないボランティアを集めた。歯科医2名により、簡略化されたプラーク指数、ソフトデブリ指数、および歯石指数が、口腔衛生状態の基準として実験全体を通して4回評価された。実験の0日目に、被験者は、専門家による歯の洗浄を受け、全ての歯石およびプラークを除去した。次いで、被験者に対して、洗浄後は20mLのうがい薬を使用し、1日目に行われる次の歯科検査まで、他の歯科用洗浄製品の使用を控えるように要請した。その後、被験者に対して、標準的な歯磨きペースト(製品名:ライオンフローラルミント)を使用して1日2回歯磨きし、うがい薬を1日3回使用するように指示した。7日目および14日目において、正午に使用したうがい薬を回収し、トリプティックソイ寒天培地およびミティスサリバリウス寒天培地で培養し、細菌量を判定した。
【0139】
結果
7日目と1日目との間において、フレーバーDで処理した群の平均プラーク指数の増加が、対照と比較して有意に低かった。その一方で、使用済みうがい薬における細菌量も低く、このことは、うがい薬が被験者の口腔衛生を改善したことを示している(
図1)。
【0140】
実施例5:フレーバー成分の抗バイオフィルム活性に関する、更なるin vitroスクリーニング
本発明者らは、上記の評価を使用して、モデルうがい薬において活性を有する更なる成分をスクリーニングした(表5)。
【0141】
表6に示す活性試験のための化合物および組成物を、DMSOに溶解した。表5に示す洗口液の残りの成分を混合し、水中でマスター混合物を作り、その後、アリコートした。次いで、DMSO溶液をマスター混合物に添加し、均質化した。
【0142】
【0143】
表6:規定の接種材料を用いた抗バイオフィルム評価で陽性の結果を示した化合物および組成物。p値は、対照ベースと処置ベースとの間のt検定の統計的有意性である;Δは、対照ベースと処置ベースとの間の相対的なバイオフィルム存在度の差である。付着評価については、バイオフィルムを、100を基準としたときの相対的なCFUとして定量化した。形成および破壊評価については、バイオフィルムを、100を基準としたときの相対的な蛍光強度として定量化した。
【0144】
【国際調査報告】