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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-05
(54)【発明の名称】電着可能なコーティング組成物
(51)【国際特許分類】
   C09D 201/00 20060101AFI20240628BHJP
   C09D 5/44 20060101ALI20240628BHJP
   C09D 7/61 20180101ALI20240628BHJP
   C09D 7/20 20180101ALI20240628BHJP
   C09D 7/63 20180101ALI20240628BHJP
【FI】
C09D201/00
C09D5/44
C09D7/61
C09D5/44 B
C09D5/44 A
C09D7/20
C09D7/63
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023579315
(86)(22)【出願日】2022-06-24
(85)【翻訳文提出日】2023-12-22
(86)【国際出願番号】 US2022034967
(87)【国際公開番号】W WO2022272110
(87)【国際公開日】2022-12-29
(31)【優先権主張番号】63/202,790
(32)【優先日】2021-06-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】399074983
【氏名又は名称】ピーピージー・インダストリーズ・オハイオ・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】PPG Industries Ohio,Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】デドメニック、コーリー ジェイムス
(72)【発明者】
【氏名】ロック、レーザ マイケル
(72)【発明者】
【氏名】サクソン、デレク ジェイムズ
(72)【発明者】
【氏名】ダッコ、クリストファー アンドリュー
【テーマコード(参考)】
4J038
【Fターム(参考)】
4J038DB061
4J038DB281
4J038HA026
4J038HA166
4J038HA246
4J038JA27
4J038JB18
4J038JC09
4J038KA08
4J038MA07
4J038NA24
4J038PA04
4J038PB06
4J038PC02
(57)【要約】
本開示は、電着可能なコーティング組成物であって、イオン性塩基含有フィルム形成ポリマーおよび硬化剤を含む、電着可能な結合剤と、少なくとも1つの顔料と、を含み、電着可能なコーティング組成物が、電着可能なコーティング組成物の総重量に基づいて、30重量%未満の樹脂固形分含有量、および浴粘度試験方法によって測定した場合、0.1/秒の剪断速度で少なくとも15cPの粘度を有し、顔料が、任意選択的に、フィロシリケート顔料を含み、フィロシリケート顔料の電着可能な結合剤に対する顔料対結合剤比率は、電着可能なコーティング組成物がカチオン性電着可能なコーティング組成物であり、かつカチオン性電着可能なコーティング組成物中に顔料分散酸が存在する場合、0.2:1未満である、電着可能なコーティング組成物を対象とする。また、コーティング、コーティングされた基材、および基材をコーティングする方法も開示される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電着可能なコーティング組成物であって、
イオン性塩基含有フィルム形成ポリマーおよび硬化剤を含む、電着可能な結合剤と、
少なくとも1つの顔料と、を含み、
前記電着可能なコーティング組成物が、前記電着可能なコーティング組成物の総重量に基づいて、30重量%未満の樹脂固形分含有量、および浴粘度試験方法によって測定した場合、0.1/秒の剪断速度で少なくとも15cPの粘度を有し、
前記顔料が、任意選択的に、フィロシリケート顔料を含み、前記フィロシリケート顔料の前記電着可能な結合剤に対する顔料対結合剤比率は、前記電着可能なコーティング組成物がカチオン性電着可能なコーティング組成物であり、かつ前記カチオン性電着可能なコーティング組成物中に顔料分散酸が存在する場合、0.2:1未満である、電着可能なコーティング組成物。
【請求項2】
前記電着可能なコーティング組成物が、前記電着可能なコーティング組成物の総固形分に基づいて、30重量%未満の樹脂固形分含有量、および前記浴粘度試験方法によって測定した場合、100/秒の剪断速度で15cP未満の粘度を有する、請求項1に記載の電着可能なコーティング組成物。
【請求項3】
前記電着可能なコーティング組成物が、少なくとも0.3:1の顔料対結合剤比率を有し、前記電着可能なコーティング組成物から電着されたコーティングが、複素粘度試験方法によって測定した場合、5,000~300,000cP以下の硬化中の最小複素粘度を有する、請求項1に記載の電着可能なコーティング組成物。
【請求項4】
前記組成物が、1.5lb/ガロン未満のVOCを有する、先行請求項のいずれか一項に記載の電着可能なコーティング組成物。
【請求項5】
前記電着可能なコーティング組成物が、0.3:1~2.0:1の顔料対結合剤(P:B)比率を有する、先行請求項のいずれか一項に記載の電着可能なコーティング組成物。
【請求項6】
前記電着可能なコーティング組成物から堆積されたコーティングが、Lパネル表面粗さ試験方法によって測定した場合、90マイクロインチ未満の水平表面粗さを有する、先行請求項のいずれか一項に記載の電着可能なコーティング組成物。
【請求項7】
前記電着可能なコーティング組成物から堆積されたコーティングが、前記Lパネル表面粗さ試験方法によって測定した場合、75マイクロインチ未満の垂直表面粗さを有する、先行請求項のいずれか一項に記載の電着可能なコーティング組成物。
【請求項8】
顔料分散酸を更に含む、先行請求項のいずれか一項に記載の電着可能なコーティング組成物。
【請求項9】
前記顔料が、酸化鉄、酸化鉛、クロム酸ストロンチウム、カーボンブラック、炭塵、二酸化チタン、硫酸バリウム、着色顔料、フィロシリケート顔料、金属顔料、熱伝導性電気絶縁性充填材、難燃性顔料、またはそれらの任意の組み合わせを含む、先行請求項のいずれか一項に記載の電着可能なコーティング組成物。
【請求項10】
前記電着可能なコーティング組成物が、アニオン性電着可能なコーティング組成物である、先行請求項のいずれか一項に記載の電着可能なコーティング組成物。
【請求項11】
前記電着可能なコーティング組成物が、カチオン性電着可能なコーティング組成物である、請求項1~9のいずれか一項に記載の電着可能なコーティング組成物。
【請求項12】
前記カチオン性電着可能なコーティング組成物が、顔料分散酸またはシラン分散剤を実質的に含まない、請求項11に記載の電着可能なコーティング組成物。
【請求項13】
前記カチオン性電着可能なコーティング組成物が顔料分散酸を含む場合、前記カチオン性電着可能なコーティング組成物が、フィロシリケート顔料を実質的に含まない、請求項11に記載の電着可能なコーティング組成物。
【請求項14】
前記電着可能なコーティング組成物が、金属顔料および/もしくは電気伝導性顔料を実質的に含まないか、それを本質的に含まないか、またはそれを完全に含まない、先行請求項のいずれか一項に記載の電着可能なコーティング組成物。
【請求項15】
前記硬化剤が、少なくとも部分的にブロックされたポリイソシアネート、アミノプラスト樹脂、フェノプラスト樹脂、またはそれらの組み合わせを含む、先行請求項のいずれか一項に記載の電着可能なコーティング組成物。
【請求項16】
前記硬化剤が、以下の構造を含むブロッキング剤で少なくとも部分的にブロックされた、少なくとも部分的にブロックされたポリイソシアネートを含み、
【化1】

式中、RおよびRが、各々、水素であるか、またはRおよびRの一方が、水素であり、かつもう一方が、メチル基であり、Rが、HまたはC~Cアルキル基、例えば、C~Cアルキル基、例えば、C~Cアルキル基であり、nが、1~50の整数である、請求項1~14のいずれか一項に記載の電着可能なコーティング組成物。
【請求項17】
前記硬化剤が、以下の構造を含むブロッキング剤で少なくとも部分的にブロックされた、少なくとも部分的にブロックされたポリイソシアネートを含み、
【化2】

式中、nが、整数であり、mが、1~20の整数である、請求項1~14のいずれか一項に記載の電着可能なコーティング組成物。
【請求項18】
水、および任意選択的に、1つ以上の有機溶媒を含む水性媒体を更に含む、先行請求項のいずれか一項に記載の電着可能なコーティング組成物。
【請求項19】
前記有機溶媒が、以下の構造を含み、
【化3】

式中、RおよびRが、各々、水素であるか、またはRおよびRの一方が、水素であり、かつもう一方が、メチル基であり、Rが、HまたはC~Cアルキル基、例えば、C~Cアルキル基、例えば、C~Cアルキル基であり、nが、1~50の整数である、請求項18に記載の電着可能なコーティング組成物。
【請求項20】
レオロジー改質剤を更に含む、先行請求項のいずれか一項に記載の電着可能なコーティング組成物。
【請求項21】
前記イオン性塩基含有フィルム形成ポリマーが、40重量%~90重量%の量で前記電着可能なコーティング組成物中に存在し、前記硬化剤が、前記電着可能なコーティング組成物の前記樹脂固形分の総重量に基づいて、10重量%~60重量%の量で前記電着可能なコーティング組成物中に存在する、先行請求項のいずれか一項に記載の電着可能なコーティング組成物。
【請求項22】
前記電着可能なコーティング組成物が、相対沈降試験方法によって測定した場合、90mg/P:B以下の相対沈降を有する、先行請求項のいずれか一項に記載の電着可能なコーティング組成物。
【請求項23】
基材をコーティングするための方法であって、請求項1~22のいずれか一項に記載の電着可能なコーティング組成物に由来するコーティングを、前記基材の少なくとも一部分上に電着することを含む、方法。
【請求項24】
請求項1~22のいずれか一項に記載の電着可能なコーティング組成物からのコーティングを、基材上に堆積させることによって形成される、コーティング。
【請求項25】
請求項1~22のいずれか一項に記載の電着可能なコーティング組成物から堆積されたコーティングで少なくとも部分的にコーティングされている、基材。
【請求項26】
前記基材が、前記電着可能なコーティング組成物から堆積された前記コーティングの下に前処理層を更に含む、請求項25に記載の基材。
【請求項27】
前記基材が、前記電着可能なコーティング組成物から堆積された前記コーティングの上部にトップコート層を更に含む、請求項25または26に記載の基材。
【請求項28】
前記基材が、前記電着可能なコーティング組成物から堆積された前記コーティングと前記基材との間に、介在コーティング層および/または前処理層を含まない、請求項25に記載の基材。
【請求項29】
電着可能な結合剤および顔料を含む電着コーティング層を含む基材であって、前記電着コーティング層が、少なくとも0.3:1の顔料対結合剤比率を有し、前記電着コーティング層が、Lパネル表面粗さ試験方法によって測定した場合、90マイクロインチ未満の水平表面粗さを有する、基材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電着可能なコーティング組成物、コーティングされた基材、および基材をコーティングする方法を対象とする。
【背景技術】
【0002】
コーティング塗布方法としての電着は、印加された電位の影響下での伝導性基材上へのフィルム形成組成物の堆積を伴う。電着は、非電気泳動コーティング手段と比較して、より少ない廃棄物を伴った塗料利用の増加、基材に対する改善された腐食保護、および最小の環境汚染を供与するため、コーティング産業において標準になっている。しかしながら、比較的多い量の顔料を有する電着可能なコーティング組成物では、浴内での沈降および/または不均一もしくは粗いコーティングが生じる場合がある。沈降または外観不良なしに高い顔料レベルを有する電着可能なコーティング組成物が望ましい。
【発明の概要】
【0003】
本開示は、電着可能なコーティング組成物であって、イオン性塩基含有フィルム形成ポリマーおよび硬化剤を含む、電着可能な結合剤と、少なくとも1つの顔料と、を含み、電着可能なコーティング組成物が、電着可能なコーティング組成物の総重量に基づいて、30重量%未満の樹脂固形分含有量、および浴粘度試験方法によって測定した場合、0.1/秒の剪断速度で少なくとも15cPの粘度を有し、顔料が、任意選択的に、フィロシリケート顔料を含み、フィロシリケート顔料の電着可能な結合剤に対する顔料対結合剤比率は、電着可能なコーティング組成物がカチオン性電着可能なコーティング組成物であり、かつカチオン性電着可能なコーティング組成物中に顔料分散酸が存在する場合、0.2:1未満である、電着可能なコーティング組成物を提供する。
【0004】
本開示はまた、基材をコーティングするための方法であって、イオン性塩基含有フィルム形成ポリマーおよび硬化剤を含む、電着可能な結合剤と、少なくとも1つの顔料と、を含む、電着可能なコーティング組成物に由来するコーティングを電着することを含み、電着可能なコーティング組成物が、電着可能なコーティング組成物の総重量に基づいて、30重量%未満の樹脂固形分含有量、および浴粘度試験方法によって測定した場合、0.1/秒の剪断速度で少なくとも15cPの粘度を有し、顔料が、任意選択的に、フィロシリケート顔料を含み、フィロシリケート顔料の電着可能な結合剤に対する顔料対結合剤比率は、電着可能なコーティング組成物がカチオン性電着可能なコーティング組成物であり、かつカチオン性電着可能なコーティング組成物中に顔料分散酸が存在する場合、0.2:1未満である、方法を提供する。
【0005】
本開示は、イオン性塩基含有フィルム形成ポリマーおよび硬化剤を含む、電着可能な結合剤と、少なくとも1つの顔料と、を含む、電着可能なコーティング組成物からコーティングを堆積させることによって形成されるコーティングであって、電着可能なコーティング組成物が、電着可能なコーティング組成物の総重量に基づいて、30重量%未満の樹脂固形分含有量、および浴粘度試験方法によって測定した場合、0.1/秒の剪断速度で少なくとも15cPの粘度を有し、顔料が、任意選択的に、フィロシリケート顔料を含み、フィロシリケート顔料の電着可能な結合剤に対する顔料対結合剤比率は、電着可能なコーティング組成物がカチオン性電着可能なコーティング組成物であり、かつカチオン性電着可能なコーティング組成物中に顔料分散酸が存在する場合、0.2:1未満である、コーティングを更に提供する。
【0006】
本開示は、イオン性塩基含有フィルム形成ポリマーおよび硬化剤を含む、電着可能な結合剤と、少なくとも1つの顔料と、を含む、電着可能なコーティング組成物から堆積されたコーティングで少なくとも部分的にコーティングされている基材であって、電着可能なコーティング組成物が、電着可能なコーティング組成物の総重量に基づいて、30重量%未満の樹脂固形分含有量、および浴粘度試験方法によって測定した場合、0.1/秒の剪断速度で少なくとも15cPの粘度を有し、顔料が、任意選択的に、フィロシリケート顔料を含み、フィロシリケート顔料の電着可能な結合剤に対する顔料対結合剤比率は、電着可能なコーティング組成物がカチオン性電着可能なコーティング組成物であり、かつカチオン性電着可能なコーティング組成物中に顔料分散酸が存在する場合、0.2:1未満である、基材を更に提供する。
【0007】
本開示はまた、電着可能な結合剤および顔料を含む電着コーティング層を含む基材であって、電着コーティング層が、少なくとも0.3:1の顔料対結合剤比率を有し、電着コーティング層が、Lパネル表面粗さ試験方法によって測定した場合、90マイクロインチ未満の水平表面粗さを有する、基材を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本開示は、電着可能なコーティング組成物であって、イオン性塩基含有フィルム形成ポリマーおよび硬化剤を含む、電着可能な結合剤と、少なくとも1つの顔料と、を含み、電着可能なコーティング組成物が、電着可能なコーティング組成物の総重量に基づいて、30重量%未満の樹脂固形分含有量、および浴粘度試験方法によって測定した場合、0.1/秒の剪断速度で少なくとも15cPの粘度を有し、顔料が、任意選択的に、フィロシリケート顔料を含み、フィロシリケート顔料の電着可能な結合剤に対する顔料対結合剤比率は、電着可能なコーティング組成物がカチオン性電着可能なコーティング組成物であり、かつカチオン性電着可能なコーティング組成物中に顔料分散酸が存在する場合、0.2:1未満である、電着可能なコーティング組成物を対象とする。
【0009】
本開示によれば、「電着可能なコーティング組成物」という用語は、印加された電位の影響下で電気伝導性基材上に堆積することができる組成物を指す。
【0010】
本明細書で使用される場合、「浴粘度試験方法」という用語は、本明細書の実施例セクションで説明されるような試験方法を指す。
【0011】
本開示によれば、電着可能なコーティング組成物は、電着可能なコーティング組成物の総重量に基づいて、30重量%未満の樹脂固形分含有量、および浴粘度試験方法によって測定した場合、0.1/秒の剪断速度で少なくとも15cP、例えば、少なくとも25cP、例えば、少なくとも35cP、例えば、少なくとも45cP、例えば、少なくとも55cP、例えば、少なくとも65cP、例えば、少なくとも75cP、例えば、少なくとも85cP、例えば、少なくとも95cP、例えば、少なくとも100cPの粘度を有し得る。
【0012】
本開示によれば、電着可能なコーティング組成物は、電着可能なコーティング組成物の総固形分に基づいて、30重量%未満の樹脂固形分含有量、および浴粘度試験方法によって測定した場合、100/秒の剪断速度で15cP未満、例えば、12cP未満、例えば、10cP未満、例えば、8cP未満、例えば、6cP未満の粘度を有する。
【0013】
本開示によれば、電着可能なコーティング組成物は、少なくとも0.3:1の顔料対結合剤比率を有し得、電着可能なコーティング組成物から電着されたコーティングは、複素粘度試験方法によって測定した場合、5,000~300,000cP以下の硬化中の最小複素粘度を有する。
【0014】
本明細書で使用される場合、「複素粘度試験方法」は、硬化サイクル中のコーティングフィルムの粘度を測定するために使用される手順を指し、この方法は、(a)PPR25/23スピンドルおよび0.1mmのギャップを有するAnton Paar MCR302レオメータを設定するステップと、(b)未硬化の電着コーティング試料にテトラヒドロフラン(THF)を塗布し、金属ヘラを使用して、未硬化の電着コーティング試料をパネルからそぎ落とし、試料をPeltierプレート上に配置するステップと、(c)試験の長さ全体を通して保持される5%の一定剪断ひずみ(振動)および1Hzの周波数下にある試料で、経時的に試料の粘度を測定し、40℃で30分間の周囲フラッシュの硬化サイクル、続いて40℃から175℃までの温度上昇を41分間(3.3℃/分)かけて測定するステップと、を含む。
【0015】
本開示によれば、電着可能なコーティング組成物から堆積されたコーティングは、Lパネル表面粗さ試験方法によって測定した場合、90マイクロインチ未満、例えば、85マイクロインチ未満、例えば、80マイクロインチ未満、例えば、75マイクロインチ未満、例えば、60マイクロインチ未満、例えば、50マイクロインチ未満、例えば、45マイクロインチ未満、例えば、40マイクロインチ未満、例えば、35マイクロインチ未満、例えば、30マイクロインチ未満の水平表面粗さを有し得る。
【0016】
本明細書で使用される場合、「Lパネル表面粗さ試験方法」という用語は、本明細書の実施例セクションで説明されるような試験方法を指す。
【0017】
本開示によれば、電着可能なコーティング組成物から堆積されたコーティングは、Lパネル表面粗さ試験方法によって測定した場合、75マイクロインチ未満、例えば、60マイクロインチ未満、例えば、50マイクロインチ未満、例えば、40マイクロインチ未満、例えば、30マイクロインチ未満、例えば、25マイクロインチ未満、例えば、20マイクロインチ未満、例えば、15マイクロインチ未満、例えば、10マイクロインチ未満の垂直表面粗さを有する。
【0018】
本開示によれば、電着可能なコーティング組成物は、相対沈降試験方法によって測定した場合、90mg/P:B以下、例えば、85mg/P:B以下、例えば、80mg/P:B以下、例えば、50mg/P:B以下、例えば、40mg/P:B以下、例えば、35mg/P:B以下、例えば、25mg/P:B以下、例えば、20mg/P:B以下の相対沈降を有し得る。
【0019】
本明細書で使用される場合、「相対沈降試験方法」という用語は、本明細書の実施例セクションで説明されるような試験方法を指す。
【0020】
本開示によれば、電着可能なコーティング組成物は、1.5lb/ガロン(179.7g/L)未満、例えば、1.3lb/ガロン(155.8g/L)未満、例えば、1.1lb/ガロン(131.8g/L)未満、例えば、1.0lb/ガロン(119.8g/L)未満、例えば、0.8lb/ガロン(95.9g/L)未満のVOCを有し得る。本明細書で使用される場合、「揮発性有機含有物」または「VOC」という用語は、電着可能な結合剤または硬化剤の成分と化学的に反応せず、250℃未満の沸点を有する組成物中に存在する有機溶媒を指す。本明細書で使用される場合、「沸点」という用語は、通常の沸点とも称される、101.325kPa(1.01325バールまたは1気圧)の標準大気圧での物質の沸点を指す。揮発性有機含有物は、揮発性有機溶媒を含む。本明細書で使用される場合、「揮発性有機溶媒」という用語は、250℃未満、例えば、200℃未満の沸点を有する有機化合物を指す。VOCは、以下の式に従って計算され得る。
【数1】
【0021】
本開示によれば、電着可能な結合剤は、イオン性塩基含有フィルム形成ポリマーを含む。
【0022】
本開示によれば、イオン性塩基含有フィルム形成ポリマーは、カチオン性塩基含有フィルム形成ポリマーを含み得る。カチオン性塩基含有フィルム形成ポリマーは、カチオン性電着可能なコーティング組成物に使用され得る。本明細書で使用される場合、「カチオン性塩基含有フィルム形成ポリマー」という用語は、正電荷を付与するスルホニウム基およびアンモニウム基などの少なくとも部分的に中和されたカチオン性基を含むポリマーを指す。本明細書で使用される場合、「ポリマー」という用語は、オリゴマー、ならびにホモポリマーおよびコポリマーの両方を包含するが、これらに限定されない。カチオン性塩基含有フィルム形成ポリマーは、活性水素官能基を含み得る。本明細書で使用される場合、「活性水素官能基」という用語は、JOURNAL OF THE AMERICAN CHEMICAL SOCIETY,Vol.49,page 3181(1927)で説明されるようなZerewitnoff試験によって決定される、イソシアネートと反応性であるこれらの基を指し、例えば、ヒドロキシル基、一級または二級アミン基、およびチオール基を含む。活性水素官能基を含むカチオン性塩基含有フィルム形成ポリマーは、活性水素含有カチオン性塩基含有フィルム形成ポリマーと称され得る。
【0023】
本開示におけるカチオン性塩基含有フィルム形成ポリマーとしての使用に好適なポリマーの例としては、とりわけ、アルキドポリマー、アクリル、ポリエポキシド、ポリアミド、ポリウレタン、ポリ尿素、ポリエーテル、およびポリエステルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0024】
好適な活性水素含有カチオン性塩基含有フィルム形成ポリマーのより具体的な例としては、ポリエポキシド-アミン付加物、例えば、ビスフェノールAなどのポリフェノールのポリグリシジルエーテルと、一級アミンおよび/または二級アミンとの付加物、例えば、米国特許第4,031,050号の第3欄27行目~第5欄50行目、米国特許第4,452,963号の第5欄58行目~第6欄66行目、および米国特許第6,017,432号の第2欄66行目~第6欄26行目で説明されているものが挙げられ、これらの部分は、参照により本明細書に組み込まれる。ポリエポキシドと反応するアミンの一部分は、米国特許第4,104,147号の第6欄23行目~第7欄23行目(この引用部分は、参照により本明細書に組み込まれる)で説明されているように、ポリアミンのケチミンであり得る。また、非ゲル化ポリエポキシド-ポリオキシアルキレンポリアミン樹脂、例えば、米国特許第4,432,850号の第2欄60行目~第5欄58行目で説明されているものも好適であり、この引用部分は、参照により本明細書に組み込まれる。加えて、カチオン性アクリル樹脂、例えば、米国特許第3,455,806号の第2欄18行目~第3欄61行目および同第3,928,157号の第2欄29行目~第3欄21行目で説明されているものを使用することができ、これらの両方の部分は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0025】
アミン塩基含有樹脂の他に、四級アンモニウム塩基含有樹脂もまた、本開示においてカチオン性塩基含有フィルム形成ポリマーとして採用され得る。これらの樹脂の例は、有機ポリエポキシドを三級アミン酸塩と反応させることから形成されるものである。そのような樹脂は、米国特許第3,962,165号の第2欄3行目~第11欄7行目、同第3,975,346号の第1欄62行目~第17欄25行目、および同第4,001,156号の第1欄37行目~第16欄7行目で説明されており、これらの部分は、参照により本明細書に組み込まれる。他の好適なカチオン性樹脂の例としては、三元スルホニウム塩基含有樹脂、例えば、米国特許第3,793,278号の第1欄32行目~第5欄20行目で説明されているものが挙げられ、この部分は、参照により本明細書に組み込まれる。また、エステル交換反応のメカニズムを介して硬化するカチオン性樹脂、例えば、欧州特許出願第12463B1号の2頁1行目~6頁25行目で説明されているものも採用することができ、この部分は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0026】
他の好適なカチオン性塩基含有フィルム形成ポリマーとしては、光分解耐性の電着可能なコーティング組成物を形成することができるものが挙げられる。そのようなポリマーとしては、米国特許出願公開第2003/0054193A1号の段落[0064]~[0088]に開示されているペンダントおよび/または末端アミノ基に由来するカチオン性アミン塩基を含むポリマーが挙げられ、この部分は、参照により本明細書に組み込まれる。また、2つ以上の芳香族基が結合している脂肪族炭素原子を本質的に含まない多価フェノールのポリグリシジルエーテルに由来する活性水素含有カチオン性塩基含有樹脂も好適であり、これは、米国特許出願公開第2003/0054193A1号の段落[0096]~[0123]で説明されており、この部分は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0027】
活性水素含有カチオン性塩基含有フィルム形成ポリマーは、樹脂中和酸で少なくとも部分的に中和することにより、カチオン性および水分散性になる。好適な樹脂中和酸としては、有機酸および無機酸が挙げられる。好適な有機酸の非限定的な例としては、ギ酸、酢酸、メタンスルホン酸、および乳酸が挙げられる。好適な無機酸の非限定的な例としては、リン酸およびスルファミン酸が挙げられる。「スルファミン酸」とは、スルファミン酸自体、または以下の式を有するものなどのその誘導体を意味し、
【化1】

式中、Rが、水素または1~4個の炭素原子を有するアルキル基である。上述の酸の混合物もまた、本開示において使用され得る。
【0028】
カチオン性塩基含有フィルム形成ポリマーの中和の程度は、関与する特定のポリマーとともに変化し得る。しかしながら、カチオン性塩基含有フィルム形成ポリマーを水性分散媒体中に分散することができるように、十分な樹脂中和酸を使用して、カチオン性塩基含有フィルム形成ポリマーを十分に中和するべきである。例えば、使用される樹脂中和酸の量は、全理論的中和の全ての少なくとも20%を提供し得る。100%の全理論的中和に必要とされる量を超える過剰な酸を使用することもできる。例えば、カチオン性塩基含有フィルム形成ポリマーを中和するために使用される樹脂中和酸の量は、活性水素含有カチオン性塩基含有フィルム形成ポリマー中の総アミンに基づいて、≧0.1%であり得る。代替的に、活性水素含有カチオン性塩基含有フィルム形成ポリマーを中和するために使用される樹脂中和酸の量は、活性水素含有カチオン性塩基含有フィルム形成ポリマー中の総アミンに基づいて、≦100%であり得る。カチオン性塩基含有フィルム形成ポリマーを中和するために使用される樹脂中和酸の総量は、記載された値を含む、先行する文に記載された値の任意の組み合わせ間の範囲であり得る。例えば、活性水素含有カチオン性塩基含有フィルム形成ポリマーを中和するために使用される樹脂中和酸の総量は、カチオン性塩基含有フィルム形成ポリマー中の総アミンに基づいて、20%、35%、50%、60%、または80%であり得る。
【0029】
本開示によれば、カチオン性塩基含有フィルム形成ポリマーは、電着可能なコーティング組成物の樹脂固形分の総重量に基づいて、少なくとも40重量%、例えば、少なくとも50重量%、例えば、少なくとも60重量%の量でカチオン性電着可能なコーティング組成物中に存在し得る。カチオン性塩基含有フィルム形成ポリマーは、電着可能なコーティング組成物の樹脂固形分の総重量に基づいて、90重量%以下、例えば80重量%以下、例えば75重量%以下の量でカチオン性電着可能なコーティング組成物中に存在し得る。カチオン性塩基含有フィルム形成ポリマーは、電着可能なコーティング組成物の樹脂固形分の総重量に基づいて、40重量%~90重量%、例えば、40重量%~80重量%、例えば、40重量%~75重量%、例えば、50重量%~90重量%、例えば、50重量%~80重量%、例えば、50重量%~75重量%、例えば、60重量%~90重量%、例えば、60重量%~80重量%、例えば、60重量%~75重量%の量でカチオン性電着可能なコーティング組成物中に存在し得る。
【0030】
本明細書で使用される場合、「樹脂固形分」は、イオン性塩基含有フィルム形成ポリマー、硬化剤、および電着可能なコーティング組成物中に存在する任意の追加の水分散性非着色成分を含む。
【0031】
本開示によれば、イオン性塩基含有フィルム形成ポリマーは、アニオン性塩基含有フィルム形成ポリマーを含み得る。本明細書で使用される場合、「アニオン性塩基含有フィルム形成ポリマー」という用語は、負電荷を付与するカルボン酸基およびリン酸基などの、少なくとも部分的に中和されたアニオン性官能基を含むアニオン性ポリマーを指す。本明細書で使用される場合、「ポリマー」という用語は、オリゴマー、ならびにホモポリマーおよびコポリマーの両方を包含するが、これらに限定されない。アニオン性塩基含有フィルム形成ポリマーは、活性水素官能基を含み得る。本明細書で使用される場合、「活性水素官能基」という用語は、上述のようなZerewitinoff試験によって決定される、イソシアネートと反応性であるこれらの基を指し、例えば、ヒドロキシル基、一級または二級アミン基、およびチオール基を含む。活性水素官能基を含むアニオン性塩基含有フィルム形成ポリマーは、活性水素含有アニオン性塩基含有フィルム形成ポリマーと称され得る。アニオン性塩基含有フィルム形成ポリマーは、アニオン性電着可能なコーティング組成物に使用され得る。
【0032】
アニオン性塩基含有フィルム形成ポリマーは、乾性油もしくは半乾性脂肪酸エステルのジカルボン酸もしくはその無水物との反応生成物または付加物、ならびにポリオールと更に反応する、脂肪酸エステル、不飽和酸またはその無水物、および任意の追加の不飽和修飾材料の反応生成物などの、塩基で可溶化されたカルボン酸基含有フィルム形成ポリマーを含み得る。また、不飽和カルボン酸のヒドロキシ-アルキルエステル、不飽和カルボン酸、および少なくとも1つの他のエチレン性不飽和単量体の少なくとも部分的に中和されたインターポリマーも好適である。なお別の好適なアニオン性電着可能な樹脂は、アルキド-アミノプラストビヒクル、すなわち、アルキド樹脂およびアミン-アルデヒド樹脂を含有するビヒクルを含む。別の好適なアニオン性電着可能な樹脂組成物は、樹脂性ポリオールの混合エステルを含む。リン酸化ポリエポキシドまたはリン酸化アクリルポリマーなどの、他の酸官能性ポリマーもまた使用され得る。例示的なリン酸化ポリエポキシドは、米国特許出願公開第2009-0045071号の[0004]~[0015]および米国特許出願第13/232,093号の[0014]~[0040]に開示されており、これらの引用部分は、参照により本明細書に組み込まれる。また、米国特許第6,165,338号で説明されているものなどの、1つ以上のペンダントカルバメート官能基を含む樹脂も好適である。
【0033】
本開示によれば、アニオン性塩基含有フィルム形成ポリマーは、電着可能なコーティング組成物の樹脂固形分の総重量に基づいて、少なくとも50重量%、例えば、少なくとも55重量%、例えば、少なくとも60重量%の量でカチオン性電着可能なコーティング組成物中に存在し得る。アニオン性塩基含有フィルム形成ポリマーは、電着可能なコーティング組成物の樹脂固形分の総重量に基づいて、90重量%以下、例えば、80重量%以下、例えば、75重量%以下の量でアニオン性電着可能なコーティング組成物中に存在し得る。アニオン性塩基含有フィルム形成ポリマーは、電着可能なコーティング組成物の樹脂固形分の総重量に基づいて、50重量%~90重量%、例えば、50重量%~80重量%、例えば、50重量%~75重量%、例えば、55重量%~90重量%、例えば、55重量%~80重量%、例えば、55重量%~75重量%、例えば、60重量%~90重量%、例えば、60重量%~80重量%、例えば、60%~75%の量でアニオン性電着可能なコーティング組成物中に存在し得る。
【0034】
本開示によれば、イオン性塩基含有フィルム形成ポリマーは、電着可能なコーティング組成物の樹脂固形分の総重量に基づいて、少なくとも40重量%、例えば、少なくとも50重量%、例えば、少なくとも55重量%、例えば、少なくとも60重量%の量で電着可能なコーティング組成物中に存在し得る。イオン性塩基含有フィルム形成ポリマーは、電着可能なコーティング組成物の樹脂固形分の総重量に基づいて、90重量%以下、例えば、80重量%以下、例えば、75重量%以下の量で電着可能なコーティング組成物中に存在し得る。イオン性塩基含有フィルム形成ポリマーは、電着可能なコーティング組成物の総重量に基づいて、40重量%~90重量%、例えば、40重量%~80重量%、例えば、40重量%~75重量%、例えば、50重量%~90重量%、例えば、50重量%~80重量%、例えば、50重量%~75重量%、例えば、55重量%~90重量%、例えば、55重量%~80重量%、例えば、55重量%~75重量%、例えば、60重量%~90重量%、例えば、60重量%~80重量%、例えば、60重量%~75重量%の量で電着可能なコーティング組成物中に存在し得る。
【0035】
本開示によれば、本開示の電着可能なコーティング組成物は、硬化剤を更に含む。硬化剤は、イオン性塩基含有フィルム形成ポリマーの、活性水素基などの反応性基と反応して、コーティング組成物の硬化をもたらして、コーティングを形成し得る。本明細書で使用される場合、「硬化する」、「硬化された」という用語または同様の用語は、本明細書で説明される電着可能なコーティング組成物に関連して使用される場合、電着可能なコーティング組成物を形成する成分の少なくとも一部分が架橋されて、コーティングを形成することを意味する。追加的に、電着可能なコーティング組成物の硬化は、上記組成物を硬化条件(例えば、高温)に供して、電着可能なコーティング組成物の成分の反応性官能基の反応を導き、この組成物の成分の架橋および少なくとも部分的に硬化したコーティングの形成を生じさせることを指す。好適な硬化剤の非限定的な例は、少なくとも部分的にブロックされたポリイソシアネート、アミノプラスト樹脂、およびフェノプラスト樹脂、例えば、そのアリルエーテル誘導体を含む、フェノールホルムアルデヒド縮合物である。
【0036】
好適な少なくとも部分的にブロックされたポリイソシアネートとしては、脂肪族ポリイソシアネート、芳香族ポリイソシアネート、およびそれらの混合物が挙げられる。硬化剤は、少なくとも部分的にブロックされた脂肪族ポリイソシアネートを含み得る。好適な少なくとも部分的にブロックされた脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、完全にブロックされた脂肪族ポリイソシアネート、例えば、米国特許第3,984,299号の第1欄57行目~第3欄15行目(この部分は、参照により本明細書に組み込まれる)で説明されるもの、またはポリマー骨格と反応する部分的にブロックされた脂肪族ポリイソシアネート、例えば、米国特許第3,947,338号の第2欄65行目~第4欄30行目(この部分もまた、参照により本明細書で組み込まれる)で説明されるものが挙げられる。「ブロックされた」とは、得られるブロックされたイソシアネート基が周囲温度で活性水素に対して安定であるが、90℃~200℃などの高温でフィルム形成ポリマー中の活性水素と反応性であるように、イソシアネート基が化合物と反応していることを意味する。ポリイソシアネート硬化剤は、遊離イソシアネート基を実質的に含まない完全にブロックされたポリイソシアネートであり得る。
【0037】
ポリイソシアネート硬化剤は、ジイソシアネート、より高い官能性のポリイソシアネート、またはそれらの組み合わせを含み得る。例えば、ポリイソシアネート硬化剤は、脂肪族および/または芳香族ポリイソシアネートを含み得る。脂肪族ポリイソシアネートとしては、(i)アルキレンイソシアネート、例えば、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(「HDI」)、1,2-プロピレンジイソシアネート、1,2-ブチレンジイソシアネート、2,3-ブチレンジイソシアネート、1,3-ブチレンジイソシアネート、エチリデンジイソシアネート、およびブチリデンジイソシアネート、ならびに(ii)シクロアルキレンイソシアネート、例えば、1,3-シクロペンタンジイソシアネート、1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、1,2-シクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、メチレンビス(4-シクロヘキシルイソシアネート)(「HMDI」)、1,6-ヘキスメチレンジイソシアネート(1,6-hexmethylene diisocyanate)のシクロ三量体(HDIのイソシアヌレート三量体としても知られており、Convestro AGからDesmodur N3300として市販されている)、およびメタ-テトラメチルキシリレンジイソシアネート(Allnex SAからTMXDI(登録商標)として市販されている)が挙げられ得る。芳香族ポリイソシアネートとしては、(i)アリーレンイソシアネート、例えば、m-フェニレンジイソシアネート、p-フェニレンジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、および1,4-ナフタレンジイソシアネート、ならびに(ii)アルカリーレンイソシアネート、例えば、4,4’-ジフェニレンメタン(「MDI」)、2,4-トリレンジイソシアネートもしくは2,6-トリレンジイソシアネート(「TDI」)、またはそれらの混合物、4,4-トルイジンジイソシアネート、およびキシリレンジイソシアネートが挙げられ得る。トリイソシアネート、例えば、トリフェニルメタン-4,4’,4’’-トリイソシアネート、1,3,5-トリイソシアナトベンゼン、および2,4,6-トリイソシアナトトルエン、テトライソシアネート、例えば、4,4’-ジフェニルジメチルメタン-2,2’,5,5’-テトライソシアネート、および重合ポリイソシアネート、例えば、トリレンジイソシアネート二量体および三量体などもまた使用され得る。硬化剤は、ポリマーポリイソシアネート、例えば、ポリマーHDI、ポリマーMDI、ポリマーイソホロンジイソシアネートなどから選択されるブロックされたポリイソシアネートを含み得る。硬化剤はまた、Covestro AGからDesmodur N3300(登録商標)として入手可能なヘキサメチレンジイソシアネートのブロックされた三量体を含み得る。ポリイソシアネート硬化剤の混合物も使用され得る。
【0038】
ポリイソシアネート硬化剤は、1,2-アルカンジオール、例えば、1,2-プロパンジオール;1,3-アルカンジオール、例えば、1,3-ブタンジオール;ベンジル型アルコール、例えば、ベンジルアルコール;アリル型アルコール、例えば、アリルアルコール;カプロラクタム;ジアルキルアミン、例えば、ジブチルアミン;およびそれらの混合物から選択される少なくとも1つのブロッキング剤で少なくとも部分的にブロックされていてもよい。ポリイソシアネート硬化剤は、3つまたは3つより多くの炭素原子を有する少なくとも1つの1,2-アルカンジオール、例えば、1,2-ブタンジオールで少なくとも部分的にブロックされていてもよい。
【0039】
他の好適なブロッキング剤としては、例えば、メタノール、エタノール、およびn-ブタノールなどの低級脂肪族アルコール;シクロヘキサノールなどの脂環式アルコール;フェニルカルビノールおよびメチルフェニルカルビノールなどの芳香族アルキルアルコール;ならびにフェノール自体ならびにクレゾールおよびニトロフェノールなどの置換基がコーティング操作に影響しない置換フェノールなどのフェノール化合物を含む、脂肪族、脂環式、もしくは芳香族アルキルモノアルコールまたはフェノール化合物が挙げられる。グリコールエーテルおよびグリコールアミンもブロッキング剤として使用することができる。好適なグリコールエーテルとしては、エチレングリコールブチルエーテル、ジエチレングリコールブチルエーテル、エチレングリコールメチルエーテル、およびプロピレングリコールメチルエーテルが挙げられる。他の好適なブロッキング剤としては、メチルエチルケトキシム、アセトンオキシム、およびシクロヘキサノンオキシムなどの、オキシムが挙げられる。
【0040】
例えば、ブロッキング剤は、ヒドロキシル基および構造-O-Rを有する末端基を含むエーテルまたはポリエーテルを含んでもよく、Rが、C~Cアルキル基、例えば、C~Cアルキル基、例えば、C~Cアルキル基、または2つの末端ヒドロキシル基である。ポリエーテルは、ホモポリマー、ブロックコポリマー、またはランダムコポリマーを含み得る。例えば、ポリエーテルは、エチレンオキシドもしくはプロピレンオキシドのホモポリマーを含み得るか、またはポリエーテルは、エチレンオキシドとプロピレンオキシドとの組み合わせをブロックもしくはランダムパターンで含む、ブロックもしくはランダムコポリマーを含み得る。そのようなブロッキング剤は、以下の構造を含み得、
【化2】

式中、RおよびRが、各々、水素であるか、またはRおよびRの一方が、水素であり、かつもう一方が、メチル基であり、Rが、HまたはC~Cアルキル基、例えば、C~Cアルキル基、例えば、C~Cアルキル基であり、nが、1~50、例えば、1~40、例えば、1~30、例えば、1~20、例えば、1~12、例えば、1~8、例えば、1~6、例えば、1~4、例えば、2~50、例えば、2~40、例えば、2~30、例えば、2~20、例えば、2~12、例えば、2~8、例えば、2~6、例えば、2~4、例えば、3~50、例えば、3~40、例えば、3~30、例えば、3~20、例えば、3~12、例えば、3~8、例えば、3~6、例えば、3~4の整数である。
【0041】
例えば、ブロッキング剤は、エトキシル化ビスフェノールを含み得る。そのようなブロッキング剤は、以下の構造を含み得、
【化3】

式中、nが、整数であり、mが、1~20の整数である。例えば、mおよびnは、等しくてもよく、各々独立して、2、3、4、5、6、7、8、9、または10であってもよい。他の例では、mおよびnは等しくなく、合計20になる整数の任意の組み合わせであってもよい。
【0042】
硬化剤は、任意選択的に、高分子量揮発性基を含み得る。本明細書で使用される場合、「高分子量揮発性基」という用語は、少なくとも70g/mol、例えば、少なくとも125g/mol、例えば、少なくとも160g/mol、例えば、少なくとも195g/mol、例えば、少なくとも400g/mol、例えば、少なくとも700g/mol、例えば、少なくとも1000g/mol、またはそれより大きい分子量を有する電着可能なコーティング組成物の硬化反応中に生成および揮発されるブロッキング剤および他の有機副生成物を指し、70~1,000g/mol、例えば、160~1,000g/mol、例えば、195~1,000g/mol、例えば、400~1,000g/mol、例えば、700~1,000g/molの範囲であり得る。例えば、有機副生成物は、フィルム形成ポリマーと、アミノプラストまたはフェノプラスト硬化剤との反応から生じるアルコール性副生成物を含み得、ブロッキング剤は、硬化中にブロックされないポリイソシアネートのイソシアナト基をブロックするために使用される、アルコールを含む有機化合物を含み得る。明確にするために、高分子量揮発性基は、硬化前に硬化剤に共有結合され、電着可能なコーティング組成物中に存在し得る任意の有機溶媒を明示的に除外する。硬化時に、堆積されたフィルムの顔料対結合剤比率は、硬化中に揮発されるブロッキング剤および硬化剤に由来する他の有機副生成物のより多い質量の損失のため、電着可能なコーティング組成物中の堆積された未硬化の顔料対結合剤比率と比べて、硬化したフィルムにおいて増加し得る。高分子量揮発性基は、フィルム形成結合剤の総重量に基づいて、フィルム形成結合剤の5重量%~50重量%、例えば、7重量%~45重量%、例えば、9重量%~40重量%、例えば、11重量%~35重量%、例えば、13重量%~30重量%を構成し得る。低分子量ブロッキング剤および硬化中に生成される有機副生成物などの、硬化中に生成される高分子量揮発性基および他の低分子量揮発性有機化合物は、硬化後のフィルム形成結合剤の重量に対する基材上に堆積されたフィルム形成結合剤の相対的な重量損失が、硬化前後のフィルム形成結合剤の総重量に基づいて、フィルム形成結合剤の5重量%~50重量%、例えば、7重量%~45重量%、例えば、9重量%~40重量%、例えば、11重量%~35重量%、例えば、13重量%~30重量%であるような量で存在し得る。
【0043】
硬化剤は、アミノプラスト樹脂を含み得る。アミノプラスト樹脂は、アルデヒドの、アミノ基またはアミド基を運ぶ物質との縮合生成物である。アルコールおよびアルデヒドの、メラミン、尿素、またはベンゾグアナミンとの反応から得られる縮合生成物を使用することができる。しかしながら、他のアミンおよびアミドの縮合生成物、例えば、トリアジン、ジアジン、トリアゾール、グアニジン、グアナミン、ならびにアルキル置換尿素およびアリール置換尿素、ならびにアルキル置換メラミンおよびアリール置換メラミンを含むそのような化合物のアルキル置換誘導体およびアリール置換誘導体のアルデヒド縮合物もまた採用することができる。そのような化合物のいくつかの例は、N、N’-ジメチル尿素、ベンゾ尿素、ジシアンジアミド、ホルムグアナミン、アセトグアナミン、アンメリン、2-クロロ-4,6-ジアミノ-1,3,5-トリアジン、6-メチル-2,4-ジアミノ-1,3,5-トリアジン、3,5-ジアミノトリアゾール、トリアミノピリミジン、2-メルカプト-4,6-ジアミノピリミジン、3,4,6-トリス(エチルアミノ)-1,3,5-トリアジンなどである。好適なアルデヒドとしては、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、クロトンアルデヒド、アクロレイン、ベンズアルデヒド、フルフラール、グリオキサールなどが挙げられる。
【0044】
アミノプラスト樹脂は、メチロールまたは同様のアルキロール基を含有してもよく、これらのアルキロール基の少なくとも一部分は、アルコールとの反応によってエーテル化されて、有機溶媒可溶性樹脂を提供してもよい。メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノールなどのアルコール、ならびにベンジルアルコールおよび他の芳香族アルコール、シクロヘキサノールなどの環状アルコール、セロソルブおよびカルビトールなどのグリコールのモノエーテル、ならびに3-クロロプロパノールおよびブトキシエタノールなどのハロゲン置換または他の置換アルコールを含む、任意の一価アルコールをこの目的のために使用することができる。
【0045】
市販のアミノプラスト樹脂の非限定的な例は、CYMEL 1130および1156などのAllnex Belgium SA/NVからの商標CYMEL(登録商標)で入手可能なもの、ならびにRESIMENE 750および753などの、INEOS MelaminesからのRESIMENE(登録商標)で入手可能なものである。好適なアミノプラスト樹脂の例としてはまた、米国特許第3,937,679号の第16欄3行目~第17欄47行目で説明されているものが挙げられ、この部分は、参照により本明細書に組み込まれる。この’679特許の前述の部分に開示されるように、アミノプラストは、メチロールフェノールエーテルと組み合わせて使用され得る。
【0046】
フェノプラスト樹脂は、アルデヒドとフェノールとの縮合によって形成される。好適なアルデヒドとしては、ホルムアルデヒドおよびアセトアルデヒドが挙げられる。パラホルムアルデヒドおよびヘキサメチレンテトラミンなどのメチレン放出剤およびアルデヒド放出剤もまた、アルデヒド剤として利用することができる。フェノール自体、クレゾール、または直鎖、分枝鎖、もしくは環状構造のいずれかを有する炭化水素ラジカルが芳香族環中の水素と置換されている置換フェノールなどの、様々なフェノールを使用することができる。フェノールの混合物も採用することができる。好適なフェノールのいくつかの特定の例は、p-フェニルフェノール、p-tert-ブチルフェノール、p-tert-アミルフェノール、シクロペンチルフェノール、およびブテニル基をオルト位、メタ位、またはパラ位に含み、二重結合が炭化水素鎖中の様々な位置に発生するモノブテニルフェノールなどの不飽和炭化水素置換フェノールである。
【0047】
上述のようなアミノプラスト樹脂およびフェノプラスト樹脂は、米国特許第4,812,215号の第6欄20行目~第7欄12行目で説明されており、この引用部分は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0048】
硬化剤は、電着可能なコーティング組成物の樹脂固形分の総重量に基づいて、少なくとも10重量%、例えば、少なくとも20重量%、例えば、少なくとも25重量%の量でカチオン性電着可能なコーティング組成物中に存在し得る。硬化剤は、電着可能なコーティング組成物の樹脂固形分の総重量に基づいて、60重量%以下、例えば50重量%以下、例えば40重量%以下の量でカチオン性電着可能なコーティング組成物中に存在し得る。硬化剤は、電着可能なコーティング組成物の樹脂固形分の総重量に基づいて、10重量%~60重量%、例えば、10重量%~50重量%、例えば、10重量%~40重量%、例えば、20重量%~60重量%、例えば、20重量%~50重量%、例えば、20重量%~40重量%、例えば、25重量%~60重量%、例えば、25重量%~50重量%、例えば、25重量%~40重量%の量でカチオン性電着可能なコーティング組成物中に存在し得る。
【0049】
硬化剤は、電着可能なコーティング組成物の樹脂固形分の総重量に基づいて、少なくとも10重量%、例えば、少なくとも20重量%、例えば、少なくとも25重量%の量でアニオン性電着可能なコーティング組成物中に存在し得る。硬化剤は、電着可能なコーティング組成物の樹脂固形分の総重量に基づいて、50重量%以下、例えば45重量%以下、例えば40重量%以下の量でアニオン性電着可能なコーティング組成物中に存在し得る。硬化剤は、電着可能なコーティング組成物の樹脂固形分の総重量に基づいて、10重量%~50重量%、例えば、10重量%~45重量%、例えば、10重量%~40重量%、例えば、20重量%~50重量%、例えば、20重量%~45重量%、例えば、20重量%~40重量%、例えば、25重量%~50重量%、例えば、25重量%~45重量%、例えば、25重量%~40重量%の量でアニオン性電着可能なコーティング組成物中に存在し得る。
【0050】
硬化剤は、電着可能なコーティング組成物の樹脂固形分の総重量に基づいて、少なくとも10重量%、例えば、少なくとも20重量%、例えば、少なくとも25重量%の量で電着可能なコーティング組成物中に存在し得る。硬化剤は、電着可能なコーティング組成物の樹脂固形分の総重量に基づいて、60重量%以下、例えば、50重量%以下、例えば、45重量%以下、例えば、40重量%以下の量で電着可能なコーティング組成物中に存在し得る。硬化剤は、電着可能なコーティング組成物の樹脂固形分の総重量に基づいて、10重量%~60重量%、例えば、10重量%~50重量%、例えば、10重量%~45重量%、例えば、10重量%~40重量%、例えば、20重量%~60重量%、例えば、20重量%~50重量%、例えば、20重量%~45重量%、例えば、20重量%~40重量%、例えば、25重量%~60重量%、例えば、25重量%~50重量%、例えば、25重量%~45重量%、例えば、25重量%~40重量%の量で電着可能なコーティング組成物中に存在し得る。
【0051】
本開示によれば、電着可能なコーティング組成物は、顔料を更に含む。顔料は、酸化鉄、酸化鉛、クロム酸ストロンチウム、カーボンブラック、炭塵、二酸化チタン、硫酸バリウム、着色顔料、フィロシリケート顔料、金属顔料、熱伝導性電気絶縁性充填材、難燃性顔料、またはそれらの任意の組み合わせを含み得る。
【0052】
本明細書で使用される場合、「フィロシリケート」という用語は、無限シートで外向きに延在するSiO -4四面体の相互接続された6員環に基づく基本構造を有するシリケートのシートを有する鉱物の群を指し、各四面体からの4つの酸素のうちの3つが、Si -2の基本構造単位を有するフィロシリケートを生じさせる他の四面体と共有される。フィロシリケートは、四面体の中心に位置する水酸化物イオンおよび/または例えば、Fe+2、Mg+2、またはAl+3などのカチオンを含み得、これらは、カチオンがシリケート層の酸素および/または水酸化物イオンと協調し得るシリケートシート間にカチオン層を形成する。「フィロシリケート顔料」という用語は、フィロシリケートを含む顔料材料を指す。フィロシリケート顔料の非限定的な例としては、雲母、クロライト、サーペンタイン、タルク、および粘土鉱物が挙げられる。粘土鉱物としては、例えば、カオリン粘土およびスメクタイト粘土が挙げられる。フィロシリケート顔料のシート状構造は、顔料がプレート状構造を有する顔料を生じさせる傾向があるが、顔料は、他の粒子構造を有するように(機械的手段などを通して)操作することができる。液体媒体に曝露されたときのこれらの顔料は、膨潤しても膨潤しなくてもよく、または浸出可能な成分(例えば、水性媒体に向かって引き寄せられ得るイオン)を有しても有していなくてもよい。
【0053】
フィロシリケート顔料は、プレート状顔料を含み得る。例えば、フィロシリケート顔料は、プレート状の雲母顔料、プレート状のクロライト顔料、プレート状のサーペンタイン顔料、プレート状のタルク顔料、および/またはプレート状の粘土顔料を含み得る。プレート状の粘土顔料は、カオリン粘土、スメクタイト粘土、またはそれらの組み合わせを含み得る。
【0054】
上記のように、電着可能なコーティング組成物がカチオン性電着可能なコーティング組成物であり、カチオン性電着可能なコーティング組成物中に顔料分散酸が存在する場合、フィロシリケート顔料の電着可能な結合剤に対する顔料対結合剤比率は、0.2:1未満である。
【0055】
電着可能なコーティング組成物がカチオン性電着可能なコーティング組成物であり、カチオン性電着可能なコーティング組成物中に顔料分散剤(pigment dispersing agent)が存在する場合、フィロシリケート顔料の電着可能な結合剤に対する顔料対結合剤比率は、0.2:1未満である。
【0056】
カチオン性電着可能なコーティング組成物が顔料分散酸を含む場合、カチオン性電着可能なコーティング組成物は、フィロシリケート顔料を実質的に含まないか、それを本質的に含まないか、またはそれを完全に含まなくてもよい。
【0057】
カチオン性電着可能なコーティング組成物が顔料分散剤を含む場合、カチオン性電着可能なコーティング組成物は、フィロシリケート顔料を実質的に含まないか、それを本質的に含まないか、またはそれを完全に含まなくてもよい。
【0058】
本明細書で使用される場合、「熱伝導性電気絶縁性充填材」という用語は、25℃で少なくとも5W/m・Kの熱伝導率(ASTM D7984に従って測定)および少なくとも10Ω・mの体積抵抗率(ASTM D257、C611、またはB193に従って測定)を有する顔料、充填材、もしくは無機粉末を指すか、または「TC/EI充填材」は、それを意味する。TC/EI充填材材料は、有機または無機材料を含み得、単一のタイプの充填材材料の粒子を含み得るか、あるいは2つまたは2つより多くのタイプのTC/EI充填材材料の粒子を含み得る。つまり、TC/EI充填材材料は、第1のTC/EI充填材材料の粒子を含み得、第1のTC/EI充填材材料とは異なる少なくとも第2(すなわち、第2、第3、第4など)のTC/EI充填材材料の粒子を更に含み得る。充填材材料のタイプに関して本明細書で使用される場合、「第1の」、「第2の」などへの言及は、便宜のためだけであり、添加の順序などを指すものではない。
【0059】
TC/EI充填材材料は、25℃で少なくとも5W/m・K(ASTM D7984に従って測定)、例えば、少なくとも18W/m・K、例えば、少なくとも55W/m・Kの熱伝導率を有し得る。TC/EI充填材材料は、25℃で3,000W/m・K以下(ASTM D7984に従って測定)、例えば、1,400W/m・K以下、例えば、450W/m・K以下の熱伝導率を有し得る。TC/EI充填材材料は、25℃で5W/m・K~3,000W/m・K(ASTM D7984に従って測定)、例えば、18W/m・K~1,400W/m・K、例えば、55W/m・K~450W/m・Kの熱伝導率を有し得る。
【0060】
TC/EI充填材材料は、少なくとも10Ω・m(ASTM D257、C611、またはB193に従って測定)、例えば、少なくとも20Ω・m、例えば、少なくとも30Ω・m、例えば、少なくとも40Ω・m、例えば、少なくとも50Ω・m、例えば、少なくとも60Ω・m、例えば、少なくとも60Ω・m、例えば、少なくとも70Ω・m、例えば、少なくとも80Ω・m、例えば、少なくとも80Ω・m、例えば、少なくとも90Ω・m、例えば、少なくとも100Ω・mの体積抵抗率を有し得る。
【0061】
TC/EI充填材材料の好適な非限定的な例としては、窒化物、金属酸化物、半金属酸化物、金属水酸化物、ヒ化物、炭化物、鉱物、セラミック、およびダイヤモンドが挙げられる。例えば、TC/EI充填材材料は、窒化ホウ素、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、ヒ化ホウ素、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、重焼酸化マグネシウム、酸化ベリリウム、二酸化ケイ素、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ニッケル、酸化銅、酸化スズ、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、ヒ化ホウ素、炭化ケイ素、メノウ、エメリー、セラミック微小球、ダイヤモンド、またはそれらの任意の組み合わせを含むか、それらから本質的になるか、またはそれらからなり得る。窒化ホウ素の市販のTC/EI充填材材料の非限定的な例としては、例えば、Saint-GobainからのCarboTherm、MomentiveからのCoolFlowおよびPolarTherm、ならびにPanadyneから入手可能な六方晶窒化ホウ素粉末としてのもの、窒化アルミニウムの例としては、例えば、Micron Metals Inc.から入手可能な窒化アルミニウム粉末、およびToyalからのToyalniteとしてのものが挙げられ、酸化アルミニウムの例としては、例えば、Micro AbrasivesからのMicrogrit、NabaltecからのNabalox、EvonikからのAeroxide、およびImerysからのAlodurとしてのものが挙げられ、重焼酸化マグネシウムの例としては、例えば、Martin Marietta Magnesia SpecialtiesからのMagChem(登録商標)P98が挙げられ、水酸化アルミニウムの例としては、例えば、Nabaltec GmbHからのAPYRALおよびSibelcoからの水酸化アルミニウムが挙げられ、セラミック微小球の例としては、例えば、Zeeospheres Ceramicsまたは3Mからのセラミック微小球が挙げられる。これらの充填材はまた、表面改質することができる。例えば、Kyowa Chemical Industry Co.,Ltd.から入手可能なPYROKISUMA 5301Kとして入手可能な表面改質された酸化マグネシウム。代替的に、TC/EI充填材材料は、任意の表面改質剤を含まない場合がある。
【0062】
TC/EI充填材材料は、任意の粒子形状または幾何学形状を有し得る。例えば、TC/EI充填材材料は、規則的または不規則的な形状であってもよく、球状、楕円状、立方体状、板状、針状(細長いまたは繊維状)、棒状、ディスク状、角柱状、フレーク状、不規則的、岩状など、それらの凝集体、およびそれらの任意の組み合わせであってもよい。
【0063】
TC/EI充填材材料の粒子は、少なくとも1つの寸法において、製造業者によって報告されているように、少なくとも0.01ミクロン、例えば、少なくとも2ミクロン、例えば、少なくとも10ミクロンの報告された平均粒子径を有し得る。TC/EI充填材材料の粒子は、少なくとも1つの寸法において、最大100ミクロンまたはそれより大きい、例えば、100ミクロン以下、例えば、50ミクロン以下、例えば、40ミクロン以下、例えば、25ミクロン以下の報告された平均粒子径を有し得る。TC/EI充填材材料の粒子は、少なくとも1つの寸法において、製造業者によって報告されているように、0.01ミクロン~100ミクロン、例えば、0.01ミクロン~50ミクロン、例えば、0.01ミクロン~40ミクロン、例えば、0.01ミクロン~25ミクロン、例えば、2ミクロン~100ミクロン、例えば、2ミクロン~50ミクロン、例えば、2ミクロン~40ミクロン、例えば、2ミクロン~25ミクロン、例えば、10ミクロン~100ミクロン、例えば、10ミクロン~50ミクロン、例えば、10ミクロン~40ミクロン、例えば、10ミクロン~25ミクロンの報告された平均粒子径を有し得る。平均粒子径を測定する好適な方法としては、例えば、Quanta 250 FEG SEMなどの機器または同等の機器を使用する測定が挙げられる。
【0064】
電着可能なコーティング組成物のTC/EI充填材材料の粒子は、少なくとも1(モース硬度スケールに基づく)、例えば、少なくとも2、例えば、少なくとも3の報告されたモース硬度を有し得る。電着可能なコーティング組成物のTC/EI充填材材料の粒子は、10以下、例えば、8以下、例えば、7以下の報告されたモース硬度を有し得る。電着可能なコーティング組成物のTC/EI充填材材料の粒子は、1~10、例えば、2~8、例えば、3~7の報告されたモース硬度を有し得る。
【0065】
本明細書で使用される場合、「難燃剤」は、火の広がりを減速もしくは停止させるか、またはその強度を低減する材料を指す。難燃剤は、組成物、発泡体、またはゲルと混合することができる粉末として入手可能であり得る。例では、本開示の組成物が難燃剤を含む場合、そのような組成物は、基材表面上にコーティングを形成することができ、そのようなコーティングは、難燃剤として機能することができる。
【0066】
以下に詳細に記述されるように、難燃剤は、鉱物、有機化合物、有機ハロゲン化合物、有機リン化合物、またはそれらの組み合わせを含み得る。
【0067】
鉱物の好適な例としては、ハンタイト、ハイドロマグネサイト、様々な水和物、赤リン、ボレートなどのホウ素化合物、炭酸カルシウムおよび炭酸マグネシウムなどのカーボネート、ならびにそれらの組み合わせが挙げられる。
【0068】
有機ハロゲン化合物の好適な例としては、クロレンド酸誘導体および塩素化パラフィンなどの有機塩素、デカブロモジフェニルエーテル(decaBDE)、デカブロモジフェニルエタン(decaBDEの代替品)などの有機臭素、臭素化ポリスチレン、臭素化カーボネートオリゴマー(BCO)、臭素化エポキシオリゴマー(BEO)、テトラブロモフタル酸無水物、テトラブロモビスフェノールA(TBBPA)、およびヘキサブロモシクロドデカン(HBCD)などのポリマー臭素化化合物が挙げられる。そのようなハロゲン化難燃剤は、それらの効率を高めるために相乗剤と併せて使用することができる。他の好適な例としては、三酸化アンチモン、五酸化アンチモン、およびアンチモン酸ナトリウムが挙げられる。
【0069】
有機リン化合物の好適な例としては、トリフェニルホスフェート(TPP)、レゾルシノールビス(ジフェニルホスフェート)(RDP)、ビスフェノールAジフェニルホスフェート(BADP)、およびトリクレジルホスフェート(TCP);ジメチルメチルホスホネート(DMMP)などのホスホネート;ならびにアルミニウムジエチルホスフィネートなどのホスフィネートが挙げられる。難燃剤の1つの重要なクラスにおいて、化合物は、リンおよびハロゲンの両方を含有する。そのような化合物は、トリス(2,3-ジブロモプロピル)ホスフェート(臭素化トリス)、ならびにトリス(1,3-ジクロロ-2-プロピル)ホスフェート(塩素化トリスまたはTDCPP)およびテトラキス(2-クロルエチル(2-chlorethyl))ジクロロイソペンチルジホスフェート(V6)などの塩素化有機ホスフェートを含む。
【0070】
有機化合物の好適な例としては、カルボン酸、ジカルボン酸、メラミン、および有機窒素化合物が挙げられる。
【0071】
他の好適な難燃剤としては、ポリリン酸アンモニウムおよび硫酸バリウムが挙げられる。
【0072】
本開示によれば、顔料は、任意の粒子形状または幾何学形状を有し得る。例えば、顔料は、規則的または不規則的な形状であってもよく、球状、楕円状、立方体状、板状、針状(細長いまたは繊維状)、棒状、ディスク状、角柱状、フレーク状、不規則的、岩状など、それらの凝集体、およびそれらの任意の組み合わせであってもよい。
【0073】
顔料は、少なくとも1つの寸法において、製造業者によって報告されているように、少なくとも0.01ミクロン、例えば、少なくとも2ミクロン、例えば、少なくとも10ミクロンの報告された平均粒子径を有し得る。顔料は、少なくとも1つの寸法において、最大100ミクロンまたはそれより大きい、例えば、100ミクロン以下、例えば、50ミクロン以下、例えば、40ミクロン以下、例えば、25ミクロン以下の報告された平均粒子径を有し得る。顔料は、少なくとも1つの寸法において、製造業者によって報告されているように、0.01ミクロン~100ミクロン、例えば、0.01ミクロン~50ミクロン、例えば、0.01ミクロン~40ミクロン、例えば、0.01ミクロン~25ミクロン、例えば、2ミクロン~100ミクロン、例えば、2ミクロン~50ミクロン、例えば、2ミクロン~40ミクロン、例えば、2ミクロン~25ミクロン、例えば、10ミクロン~100ミクロン、例えば、10ミクロン~50ミクロン、例えば、10ミクロン~40ミクロン、例えば、10ミクロン~25ミクロンの報告された平均粒子径を有し得る。平均粒子径を測定する好適な方法としては、例えば、Quanta 250 FEG SEMなどの機器または同等の機器を使用する測定が挙げられる。
【0074】
本開示によれば、電着可能なコーティング組成物は、金属顔料を実質的に含まないか、それを本質的に含まないか、またはそれを完全に含まない。
【0075】
本開示によれば、電着可能なコーティング組成物は、電気伝導性顔料を実質的に含まないか、それを本質的に含まないか、またはそれを完全に含まない。
【0076】
本開示によれば、電着可能なコーティング組成物は、任意選択的に、顔料の分散を改善し、電着可能な結合剤および電着可能なコーティング組成物の粘度を増加させるために機能する顔料分散添加剤を更に含み得る。顔料分散の改善は、少なくとも5のヘグマン読み取りを達成するために必要な顔料粉砕時間またはエネルギーの低減によって実証することができる。
【0077】
本明細書で使用される場合、「分散された顔料」または「顔料分散体」という用語は、液体媒体中で脱凝集された顔料を指す。顔料分散および/または脱凝集の程度は、ヘグマンゲージを使用して測定することができる。
【0078】
顔料分散添加剤は、任意選択的に、フィロシリケート顔料分散剤を含み得る。本明細書で使用される場合、「フィロシリケート顔料分散剤」という用語は、フィロシリケート顔料と化学的複合体を形成することができる材料を指し、フィロシリケート顔料の分散を促進するのに役立ち得る。複合体は、フィロシリケート顔料分散剤-フィロシリケート顔料複合体と称され得る。
【0079】
代替的に、電着可能なコーティング組成物は、フィロシリケート顔料分散剤を実質的に含まないか、それを本質的に含まないか、またはそれを完全に含まなくてもよい。本明細書で使用される場合、電着可能なコーティング組成物は、フィロシリケート顔料分散剤が、存在するとしても、組成物の総固形分重量に基づいて、1重量%未満の量で存在する場合、フィロシリケート顔料分散剤を実質的に含まない。本明細書で使用される場合、電着可能なコーティング組成物は、フィロシリケート顔料分散剤が、存在するとしても、組成物の総固形分重量に基づいて、0.1重量%未満の量で存在する場合、フィロシリケート顔料分散剤を本質的に含まない。本明細書で使用される場合、電着可能なコーティング組成物は、フィロシリケート顔料分散剤が、組成物中に存在しない、すなわち、組成物の総固形分重量に基づいて、0.00重量%である場合、フィロシリケート顔料分散剤を完全に含まない。
【0080】
代替的に、電着可能なコーティング組成物は、フィロシリケート顔料分散剤-フィロシリケート顔料複合体を実質的に含まないか、それを本質的に含まないか、またはそれを完全に含まなくてもよい。本明細書で使用される場合、電着可能なコーティング組成物は、フィロシリケート顔料分散剤-フィロシリケート顔料複合体が、存在するとしても、組成物の総固形分重量に基づいて、1重量%未満の量で存在する場合、フィロシリケート顔料分散剤を実質的に含まない。本明細書で使用される場合、電着可能なコーティング組成物は、フィロシリケート顔料分散剤-フィロシリケート顔料複合体が、存在するとしても、組成物の総固形分重量に基づいて、0.1重量%未満の量で存在する場合、フィロシリケート顔料分散剤を本質的に含まない。本明細書で使用される場合、電着可能なコーティング組成物は、フィロシリケート顔料分散剤-フィロシリケート顔料複合体が、組成物中に存在しない、すなわち、組成物の総固形分重量に基づいて、0.00重量%である場合、フィロシリケート顔料分散剤-フィロシリケート顔料複合体を完全に含まない。
【0081】
本明細書で使用される場合、分散添加剤は、顔料と化学的複合体を形成することができる材料を含んでもよく、顔料分散添加剤は、任意選択的に、顔料と化学的複合体を形成することができる材料、または顔料との物理的相互作用を含んでもよく、任意選択的に、顔料分散添加剤-顔料複合体を形成してもよい。
【0082】
顔料分散添加剤は、顔料分散酸を含み得る。カチオン性電着可能なコーティング組成物において、顔料分散酸は、電着可能な結合剤の樹脂成分、および/もしくは組成物のpHを調整するために添加される酸を分散ならびに/または可溶化するために使用される任意の可溶化酸に加えて存在し、顔料分散酸は、顔料との化学的複合体または物理的相互作用を形成し得る。顔料分散酸は、一塩基酸または多塩基酸であり得る。本明細書で使用される場合、「多塩基酸」という用語は、2つ以上の酸性プロトンを有する化学的化合物を指す。本明細書で使用される場合、「酸性プロトン」という用語は、酸基の一部を形成するプロトンを指し、リンのオキシ酸、カルボン酸、硫黄のオキシ酸などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0083】
顔料分散酸は、少なくとも1.1、例えば、少なくとも1.5、例えば、少なくとも1.8のpKaを有する第1の酸性プロトンを含み得る。顔料分散酸は、4.6以下、例えば、4.0以下、例えば、3.5以下のpKaを有する第1の酸性プロトンを含み得る。顔料分散酸は、1.1~4.6、例えば、1.5~4.0、例えば、1.8~3.5のpKaを有する第1の酸性プロトンを含み得る。
【0084】
顔料分散酸は、カルボン酸、リンのオキシ酸(リン酸またはホスホン酸などの)、またはそれらの組み合わせを含み得る。
【0085】
顔料の顔料分散添加剤のモル数に対する重量の比率は、少なくとも0.25g/mmol、例えば、少なくとも0.5g/mmol、例えば、少なくとも1.0g/mmol、例えば、少なくとも1.5g/mmol、例えば、少なくとも1.75g/mmolであり得る。顔料の顔料分散添加剤のモル数に対する重量の比率は、25g/mmol以下、例えば、15g/mmol以下、例えば、10g/mmol以下、例えば、8.25g/mmol以下、例えば、6.5g/mmol以下、例えば、5.0g/mmol以下であり得る。顔料の顔料分散添加剤のモル数に対する重量の比率は、0.25~25g/mmol、例えば、0.25~15g/mmol、例えば、0.25~10g/mmol、例えば、0.25~8.25g/mmol、例えば、0.25~6.5g/mmol、例えば、0.25~5.0g/mmol、例えば、0.5~25g/mmol、例えば、0.5~15g/mmol、例えば、0.5~10g/mmol、例えば、0.5~8.25g/mmol、例えば、0.5~6.5g/mmol、例えば、0.5~5.0g/mmol、例えば、1~25g/mmol、例えば、1~15g/mmol、例えば、1~10g/mmol、例えば、1~8.25g/mmol、例えば、1~6.5g/mmol、例えば、1~5.0g/mmol、例えば、1.5~25g/mmol、例えば、1.5~15g/mmol、例えば、1.5~10g/mmol、例えば、1.5~8.25g/mmol、例えば、1.5~6.5g/mmol、例えば、1.5~5.0g/mmol、例えば、1.75~25g/mmol、例えば、1.75~15g/mmol、例えば、1.75~10g/mmol、例えば、1.75~8.25g/mmol、例えば、1.75~6.5g/mmol、例えば、1.75~5.0g/mmolの量であり得る。
【0086】
本開示に記述されるような顔料対結合剤(P:B)比率は、電着可能なコーティング組成物における顔料対結合剤の重量比率、および/または堆積した湿潤フィルムにおける顔料対結合剤の重量比率、および/または乾燥した未硬化の堆積フィルムにおける顔料対結合剤の重量比率、および/または硬化したフィルムにおける顔料対結合剤の重量比率を指し得る。顔料の電着可能な結合剤に対する顔料対結合剤(P:B)比率は、少なくとも0.30:1、例えば、少なくとも0.35:1、例えば、少なくとも0.40:1、例えば、少なくとも0.50:1、例えば、少なくとも0.60:1、例えば、少なくとも0.75:1、例えば、少なくとも1:1、例えば、少なくとも1.25:1、例えば、少なくとも1.5:1であり得る。顔料の電着可能な結合剤に対する顔料対結合剤(P:B)比率は、2.0:1以下、例えば、1.75:1以下、例えば、1.5:1以下、例えば、1.25:1以下、例えば、1:1以下、例えば、0.75:1以下、例えば、0.70:1以下、例えば、0.60:1以下、例えば、0.55:1以下、例えば、0.50:1以下であり得る。顔料の電着可能な結合剤に対する顔料対結合剤比率(P:B)は、0.3:1~2.0:1、例えば、0.3:1~1.75:1、例えば、0.3:1~1.50:1、例えば、0.3:1~1.25:1、例えば、0.3:1~1:1、例えば、0.3:1~0.75:1、例えば、0.3:1~0.70:1、例えば、0.3:1~0.60:1、例えば、0.3:1~0.55:1、例えば、0.3:1~0.50:1、例えば、0.35:1~2.0:1、例えば、0.35:1~1.75:1、例えば、0.35:1~1.50:1、例えば、0.35:1~1.25:1、例えば、0.35:1~1:1、例えば、0.35:1~0.75:1、例えば、0.35:1~0.70:1、例えば、0.35:1~0.60:1、例えば、0.35:1~0.55:1、例えば、0.35:1~0.50:1、例えば、0.4:1~2.0:1、例えば、0.4:1~1.75:1、例えば、0.4:1~1.50:1、例えば、0.4:1~1.25:1、例えば、0.4:1~1:1、例えば、0.4:1~0.75:1、例えば、0.4:1~0.70:1、例えば、0.4:1~0.60:1、例えば、0.4:1~0.55:1、例えば、0.4:1~0.50:1、例えば、0.5:1~2.0:1、例えば、0.5:1~1.75:1、例えば、0.5:1~1.50:1、例えば、0.5:1~1.25:1、例えば、0.5:1~1:1、例えば、0.5:1~0.75:1、例えば、0.5:1~0.70:1、例えば、0.5:1~0.60:1、例えば、0.5:1~0.55:1、例えば、0.6:1~2.0:1、例えば、0.6:1~1.75:1、例えば、0.6:1~1.50:1、例えば、0.6:1~1.25:1、例えば、0.6:1~1:1、例えば、0.6:1~0.75:1、例えば、0.6:1~0.70:1、例えば、0.75:1~2.0:1、例えば、0.75:1~1.75:1、例えば、0.75:1~1.50:1、例えば、0.75:1~1.25:1、例えば、0.75:1~1:1、例えば、1:1~2.0:1、例えば、1:1~1.75:1、例えば、1:1~1.50:1、例えば、1:1~1.25:1、例えば、1.25:1~2.0:1、例えば、1.25:1~1.75:1、例えば、1.25:1~1.50:1、例えば、1.50:1~2.0:1、例えば、1.50:1~1.75:1であり得る。
【0087】
顔料分散添加剤は、組成物の総固形分重量に基づいて、少なくとも0.1重量%、例えば、少なくとも0.3重量%、例えば、少なくとも0.5重量%、例えば、少なくとも0.7重量%、例えば、少なくとも0.8重量%、例えば、少なくとも1重量%の量で存在し得る。顔料分散添加剤は、組成物の総固形分重量に基づいて、10重量%以下、例えば、7.5重量%以下、例えば、5重量%以下、例えば、3重量%以下、例えば、2重量%以下、例えば、1.5重量%以下、例えば、1重量%以下、例えば、0.8重量%以下の量で存在し得る。顔料分散添加剤は、組成物の総固形分の重量に基づいて、0.1重量%~10重量%、例えば0.1重量%~7.5重量%、例えば0.1重量%~5重量%、例えば0.1重量%~3重量%、例えば、0.1重量%~2重量%、例えば、0.1重量%~1.5重量%、例えば、0.1重量%~1重量%、例えば、0.1重量%~0.8重量%、例えば、0.3重量%~10重量%、例えば、0.3重量%~7.5重量%、例えば、0.3重量%~5重量%、例えば、0.3重量%~3重量%、例えば、0.3重量%~2重量%、例えば、0.3重量%~1.5重量%、例えば、0.3重量%~1重量%、例えば、0.3重量%~0.8重量%、例えば、0.5重量%~10重量%、例えば、0.5重量%~7.5重量%、例えば、0.5重量%~5重量%、例えば、0.5重量%~3重量%、0.5重量%~2重量%、例えば、0.5重量%~1.5重量%、例えば、0.5重量%~1重量%、例えば、0.5重量%~0.8重量%、例えば、0.7重量%~10重量%、例えば、0.7重量%~7.5重量%、例えば、0.7重量%~5重量%、例えば、0.7重量%~3重量%、例えば、0.7重量%~2重量%、例えば、0.7重量%~1.5重量%、例えば、0.7重量%~1重量%、例えば、0.7重量%~0.8重量%、例えば、0.8重量%~10重量%、例えば、0.8重量%~7.5重量%、例えば、0.8重量%~5重量%、例えば、0.8重量%~3重量%、例えば、0.8重量%~2重量%、例えば、0.8重量%~1.5重量%、例えば、0.8重量%~1重量%、例えば、1重量%~10重量%、例えば、1重量%~7.5重量%、例えば、1重量%~5重量%、例えば、1重量%~3重量%、例えば、1重量%~2重量%、例えば、1重量%~1.5重量%、例えば、1重量%~1重量%、例えば、1重量%~0.8重量%の量で存在し得る。
【0088】
本開示によれば、電着可能なコーティング組成物は、顔料分散剤を実質的に含まないか、それを本質的に含まないか、またはそれを完全に含まなくてもよい。本明細書で使用される場合、電着可能なコーティング組成物は、顔料分散剤が、存在するとしても、組成物の総固形分重量に基づいて、1重量%未満の量で存在する場合、顔料分散剤を実質的に含まない。本明細書で使用される場合、電着可能なコーティング組成物は、顔料分散剤が、存在するとしても、組成物の総固形分重量に基づいて、0.1重量%未満の量で存在する場合、顔料分散剤を本質的に含まない。本明細書で使用される場合、電着可能なコーティング組成物は、顔料分散剤が、組成物中に存在しない、すなわち、組成物の総固形分重量に基づいて、0.00重量%である場合、顔料分散剤を完全に含まない。
【0089】
本開示によれば、電着可能なコーティング組成物は、顔料分散酸を実質的に含まないか、それを本質的に含まないか、またはそれを完全に含まなくてもよい。本明細書で使用される場合、電着可能なコーティング組成物は、顔料分散酸が、存在するとしても、組成物の総固形分重量に基づいて、1重量%未満の量で存在する場合、顔料分散酸を実質的に含まない。本明細書で使用される場合、電着可能なコーティング組成物は、顔料分散酸が、存在するとしても、組成物の総固形分重量に基づいて、0.1重量%未満の量で存在する場合、顔料分散酸を本質的に含まない。本明細書で使用される場合、電着可能なコーティング組成物は、顔料分散酸が、組成物中に存在しない、すなわち、組成物の総固形分重量に基づいて、0.00重量%である場合、顔料分散酸を完全に含まない。
【0090】
本開示によれば、電着可能なコーティング組成物は、シラン分散剤(silane dispersant)を実質的に含まないか、それを本質的に含まないか、またはそれを完全に含まなくてもよい。本明細書で使用される場合、電着可能なコーティング組成物は、シラン分散剤が、存在するとしても、組成物の総固形分重量に基づいて、1重量%未満の量で存在する場合、シラン分散剤を実質的に含まない。本明細書で使用される場合、電着可能なコーティング組成物は、シラン分散剤が、存在するとしても、組成物の総固形分重量に基づいて、0.1重量%未満の量で存在する場合、シラン分散剤を本質的に含まない。本明細書で使用される場合、電着可能なコーティング組成物は、シラン分散剤が、組成物中に存在しない、すなわち、組成物の総固形分重量に基づいて、0.00重量%である場合、シラン分散剤を完全に含まない。
【0091】
本開示によれば、電着可能なコーティング組成物は、電気伝導性粒子を実質的に含まないか、それを本質的に含まないか、またはそれを完全に含まなくてもよい。電気伝導性粒子は、電気を伝導することができる任意の粒子を含み得る。本明細書で使用される場合、電気伝導性粒子は、材料が少なくとも1×10S/mの伝導率および20℃で1×10W-m以下の抵抗率を有する場合、「電気を伝導することができる」。電気伝導性粒子は、活性炭、アセチレンブラックおよびファーネスブラックなどのカーボンブラック、グラフェン、単層カーボンナノチューブおよび/または多層カーボンナノチューブを含むカーボンナノチューブ、カーボンファイバー、フラーレン、金属粒子、およびそれらの組み合わせ、などの炭素質材料を含み得る。本明細書で使用される場合、電着可能なコーティング組成物は、電気伝導性粒子が、組成物の顔料の総重量に基づいて、5重量%未満の量で存在する場合、電気伝導性粒子を実質的に含まない。本明細書で使用される場合、電着可能なコーティング組成物は、電気伝導性粒子が、組成物の顔料の総重量に基づいて、1重量%未満の量で存在する場合、電気伝導性粒子を本質的に含まない。本明細書で使用される場合、電着可能なコーティング組成物は、電気伝導性粒子が、組成物中に存在しない、すなわち、組成物の顔料の総重量に基づいて、0.00重量%である場合、電気伝導性粒子を完全に含まない。
【0092】
本開示によれば、電着可能なコーティング組成物は、金属粒子を実質的に含まないか、それを本質的に含まないか、またはそれを完全に含まなくてもよい。本明細書で使用される場合、「金属粒子」という用語は、主に元素(ゼロ価)状態の金属からなる金属顔料および金属合金顔料を指す。金属粒子としては、亜鉛、アルミニウム、カドミウム、マグネシウム、ベリリウム、銅、銀、金、鉄、チタン、ニッケル、マンガン、クロム、スカンジウム、イットリウム、ジルコニウム、白金、スズ、およびそれらの合金、ならびに様々なグレードの鋼が挙げられ得る。本明細書で使用される場合、電着可能なコーティング組成物は、金属粒子が、組成物の顔料の総重量に基づいて、5重量%未満の量で存在する場合、金属粒子を実質的に含まない。本明細書で使用される場合、電着可能なコーティング組成物は、金属粒子が、組成物の顔料の総重量に基づいて、1重量%未満の量で存在する場合、金属粒子を本質的に含まない。本明細書で使用される場合、電着可能なコーティング組成物は、金属粒子が、組成物中に存在しない、すなわち、組成物の顔料の総重量に基づいて、0.00重量%である場合、金属粒子を完全に含まない。
【0093】
本開示によれば、電着可能なコーティング組成物は、リチウム含有化合物を実質的に含まないか、それを本質的に含まないか、またはそれを完全に含まなくてもよい。本明細書で使用される場合、リチウム含有化合物は、例えば、LiCoC、LiNiC、LiFePO、LiCoPCO、LiMnO、LiMn、Li(NiMnCo)O、およびLi(NiCoAl)Oなどの、リチウムを含む化合物または複合体を指す。本明細書で使用される場合、電着可能なコーティング組成物は、リチウム含有化合物が、組成物の総固形分重量に基づいて、1重量%未満の量で電着可能なコーティング組成物中に存在する場合、リチウム含有化合物を「実質的に含まない」。本明細書で使用される場合、電着可能なコーティング組成物は、リチウム含有化合物が、組成物の総固形分重量に基づいて、0.1重量%未満の量で電着可能なコーティング組成物中に存在する場合、リチウム含有化合物を「本質的に含まない」。本明細書で使用される場合、電着可能なコーティング組成物は、リチウム含有化合物が、電着可能なコーティング組成物中に存在しない、すなわち、組成物の総固形分重量に基づいて、<0.001%である場合、リチウム含有化合物を「完全に含まない」。
【0094】
本開示によれば、電着可能なコーティング組成物は、任意選択的に、粉砕樹脂を実質的に含まないか、それを本質的に含まないか、またはそれを完全に含まなくてもよい。本明細書で使用される場合、「粉砕樹脂」という用語は、結合剤の主なフィルム形成ポリマーとは別に顔料ペーストを形成するために顔料を粉にする間に使用される主なフィルム形成ポリマーとは化学的に異なる樹脂を指す。例えば、粉砕樹脂は、四級アンモニウム塩基および/または三級スルホニウム基を含み得る。本明細書で使用される場合、電着可能なコーティング組成物は、粉砕樹脂が、存在するとしても、組成物の総樹脂固形分重量に基づいて、5重量%以下の量で存在する場合、粉砕樹脂を実質的に含まない。本明細書で使用される場合、電着可能なコーティング組成物は、粉砕樹脂が、存在するとしても、組成物の総樹脂固形分重量に基づいて、3重量%以下の量で存在する場合、粉砕樹脂を本質的に含まない。本明細書で使用される場合、電着可能なコーティング組成物は、粉砕樹脂が、組成物中に存在しない、すなわち、組成物の総樹脂固形分重量に基づいて、0.00重量%である場合、粉砕樹脂を完全に含まない。
【0095】
本開示による電着可能なコーティング組成物は、任意選択的に、上述のイオン性塩基含有フィルム形成ポリマーおよび硬化剤に加えて、1つ以上の更なる成分を含み得る。
【0096】
本開示によれば、電着可能なコーティング組成物は、任意選択的に、硬化剤とポリマーとの間の反応を触媒するための触媒を含み得る。カチオン性電着可能なコーティング組成物に好適な触媒の例としては、限定するものではないが、有機スズ化合物(例えば、ジブチルスズオキシドおよびジオクチルスズオキシド)およびそれらの塩(例えば、ジブチルスズジアセテート);他の金属酸化物(例えば、セリウム、ジルコニウム、およびビスマスの酸化物)およびそれらの塩(例えば、スルファミン酸ビスマスおよび乳酸ビスマス);または米国特許第7,842,762号の第1欄53行目~第4欄18行目および第16欄62行目~第19欄8行目(これらの引用部分は、参照により本明細書に組み込まれる)で説明されるような環状グアニジンが挙げられる。アニオン性電着可能なコーティング組成物に好適な触媒の例としては、潜在性酸触媒が挙げられ、これらの特定の例は、WO2007/118024の[0031]において特定され、ヘキサフルオロアンチモン酸アンモニウム、SbFの四級塩(例えば、NACURE(登録商標)XC-7231)、SbFのt-アミン塩(例えば、NACURE(登録商標)XC-9223)、トリフル酸のZn塩(例えば、NACURE(登録商標)A202およびA218)、トリフル酸の四級塩(例えば、NACURE(登録商標)XC-A230)、およびトリフル酸のジエチルアミン塩(例えば、NACURE(登録商標)A233)(全て、King Industriesから市販されている)、ならびに/またはそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。潜在性酸触媒は、パラ-トルエンスルホン酸(pTSA)または他のスルホン酸などの酸触媒の誘導体を調製することによって形成され得る。例えば、ブロックされた酸触媒の周知の群は、ピリジニウムパラ-トルエンスルホネートなどの芳香族スルホン酸のアミン塩である。そのようなスルホン酸塩は、架橋を促進する際に遊離酸よりも低い活性である。硬化中、触媒は、加熱によって活性化され得る。
【0097】
本開示によれば、電着可能なコーティング組成物は、任意選択的に、レオロジー改質剤を含み得る。本明細書で使用される場合、「レオロジー改質剤」という用語は、電着可能なコーティング組成物に添加されると、例えば、剪断減粘特性、剪断増粘特性、チキソトロピー特性などを付与するなどの、流体のレオロジー特性を改質する材料を指す。レオロジー改質剤は、電着可能なコーティング組成物の沈降を阻止するのに役立つことができ、レオロジー改質剤は、電着可能なコーティング組成物を電着することによって生成される電着コーティングの均一性を更に改善し得る。レオロジー改質剤は、例えば、1つ以上のセルロース誘導体、1つ以上のアルカリ膨潤性レオロジー改質剤、1つ以上の酸膨潤性レオロジー改質剤、1つ以上の疎水基変性型ウレタン-エトキシレート(HEUR)会合性増粘剤、コロイド層状シリケート、スメクタイト粘土、フュームドシリカなどを含み得る。
【0098】
セルロース誘導体は、電着可能なコーティング組成物のレオロジーを改質するための当技術分野で既知のいずれかを含み得る。例えば、セルロース誘導体は、カルボキシメチルセルロースおよびその塩、微結晶性セルロース、ナノ結晶性セルロース、および他のセルロース系化合物を含み得る。好適な市販のセルロース系化合物の非限定的な例としては、Renmatix,Inc.から入手可能なCRYSTOセルロースが挙げられ、これは、0.5~1.5pmの範囲の粒子径を有する高結晶性セルロース誘導体であり、微結晶性セルロースおよび高度なナノ結晶性セルロースの両方の特性を並行して提供する。
【0099】
レオロジー改質剤は、アルカリ膨潤性レオロジー改質剤を含み得る。アルカリ膨潤性レオロジー改質剤の非限定的な例としては、アルカリ膨潤性エマルション(ASE)、疎水基変性型アルカリ膨潤性エマルション(HASE)、ATRPスターポリマー、および低pHでpHトリガーされたレオロジー変化を提供する他の材料が挙げられる。市販のアルカリ膨潤性レオロジー改質剤としては、ACRYSOL(商標)ASE60などのアルカリ膨潤性エマルション(ASE)、ACRYSOL(商標)HASE TT-615およびACRYSOL(商標)DR-180 HASEなどの疎水基変性型アルカリ膨潤性エマルション(HASE)(これらの各々は、Dow Chemical Companyから入手可能である)、ならびにfracASSIST(登録商標)プロトタイプ2などのATRPスターポリマーが挙げられる。ACRYSOL ASEアルカリ膨潤性レオロジー改質剤は、(メタ)アクリル酸およびアクリレートエステルを、約2:1~1:2、例えば、1.5:1~1:1.5、例えば、約1.1:1~1:1.1、例えば、約1:1の比率で含むコポリマーを含む。ACRYSOL HASEアルカリ膨張性レオロジー改質剤は、疎水性アクリルエステル単量体で改質されたASEファミリーで使用される(メタ)アクリル酸およびアクリレートエステルコポリマーを含む三級ポリマーを含む。酸が低pHで中和されていない場合、レオロジー改質剤は水に不溶性であり、組成物を増粘させないが、酸がより高いpH値で完全に中和されている場合、レオロジー改質剤は可溶性になり、組成物を増粘させる。
【0100】
レオロジー改質剤は、疎水基変性型ウレタン-エトキシレート(HEUR)会合性増粘剤を含み得る。疎水基変性型ウレタン-エトキシレート(HEUR)会合性増粘剤の非限定的な例としては、BORCHI Gel 0620などが挙げられるが、これらに限定されない、Borchers Americas Inc.からBORCHI Gelマークで販売されている製品が挙げられる。
【0101】
レオロジー改質剤は、コロイド層状シリケートを含み得る。本明細書で説明される電着可能なコーティング組成物における使用に好適であるコロイド層状シリケートとしては、例えば、LAPONITE RD、LAPONITE RDS、LAPONITE XL21、およびLAPONITE JSが挙げられ、これらの組み合わせを含む。LAPONITE RDは、1,000kg/mの嵩密度、370m/gの表面積(BET)、水中の2%懸濁液のpH9.8を有する自由流動合成層状シリケートであり、組成物は、乾燥重量基準で59.5%のSiO、27.5%のMgO、0.8%のLiO、および2.8%のNaOである。LAPONITE RDSはまた、1,000kg/mの嵩密度、330m/gの表面積(BET)、水中の2%懸濁液のpH9.7を有する自由流動合成層状シリケートであり、組成物は、乾燥重量基準で54.5%のSiO、26.0%のMgO、0.8%のLiO、5.6%のNaO、および4.1%のPである。LAPONITE XL21は、フルオロケイ酸マグネシウムナトリウムである。上述のものなどのコロイド層状シリケートの粒子径は、平均直径で1nm~2μmであり得る。本明細書に開示される粒子径を測定する好適な方法としては、例えば、透過型電子顕微鏡(TEM)が挙げられる。TEMによって粘土粒子径を測定する好適な方法としては、粒子を溶媒中に懸濁し、次いで、懸濁液を、周囲条件下で乾燥させたTEMグリッドにドロップキャスティングすることが挙げられる。例えば、粘土粒子をドロップキャスティングのために水で希釈してもよく、200kVで動作するTecnai T20 TEMから取得した画像から測定値を得て、ImageJソフトウェア、または同等の溶媒、機器、およびソフトウェアを使用して分析することができる。
【0102】
本明細書で使用される場合、「スメクタイト粘土」という用語は、層間表面上で外部に吸着された正電荷によってバランスを取る可変の正味の負電荷を有する粘土を指す。
【0103】
本明細書で使用される場合、「酸膨潤性レオロジー改質剤」という用語は、高pHで不溶性であり、組成物を増粘させず、低pHで可溶性であり、組成物を増粘させるレオロジー改質剤を指す。
【0104】
レオロジー改質剤は、ヒュームドシリカを含み得る。ヒュームドシリカは、四塩化ケイ素の炎熱分解または石英砂から作製され、3000℃の電気アークで蒸発される。好適なヒュームドシリカの非限定的な例としては、Evonik Resource Efficiency GmbH(AEROSILの名称で販売している)、Cabot Corporation(Cab-O-Sil)、Wacker Chemie(HDK)、Dow Corning,Heraeus(Zandosil)、Tokuyama Corporation(Reolosil)、OCI(Konasil)、Orisil(Orisil)、およびXunyuchem(XYSIL)から入手可能なものが挙げられる。
【0105】
レオロジー改質剤は、電着可能なコーティング組成物の樹脂固形分の総重量に基づいて、0.5重量%、例えば、少なくとも1重量%、例えば、少なくとも2重量%、例えば、少なくとも2.5重量%の量で存在し得る。レオロジー改質剤は、電着可能なコーティング組成物の樹脂固形分の総重量に基づいて、15重量%以下、例えば、10重量%以下、例えば、8重量%以下、例えば、5重量%以下の量で存在し得る。レオロジー改質剤は、電着可能なコーティング組成物の樹脂固形分の総重量に基づいて、0.5重量%~15重量%、例えば、0.5重量%~10重量%、例えば、0.5重量%~8重量%、例えば、0.5重量%~5重量%、例えば、1重量%~15重量%、例えば、1重量%~10重量%、例えば、1重量%~8重量%、例えば、1重量%~5重量%、例えば、2重量%~15重量%、例えば、2重量%~10重量%、2重量%~8重量%、例えば、2重量%~5重量%、例えば、2.5重量%~15重量%、例えば、2.5重量%~10重量%、例えば、2.5重量%~8重量%、例えば、2.5重量%~5重量%の量で存在し得る。
【0106】
本開示によれば、本開示の電着可能なコーティング組成物は、任意選択的に、例えば、ブチレンオキシドおよびプロピレンオキシドのコポリマーを含み得るポリアルキレンオキシドポリマーなどの、コーティング組成物に組み込まれ得るクレーター制御添加剤を含み得る。本開示によれば、ブチレンオキシドのプロピレンオキシドに対するモル比率は、少なくとも1:1、例えば、少なくとも3:1、例えば、少なくとも5:1であり得、場合によっては、50:1以下、例えば、30:1以下、例えば、20:1以下であり得る。本開示によれば、ブチレンオキシドのプロピレンオキシドに対するモル比率は、1:1~50:1、例えば、3:1~30:1、例えば、5:1~20:1であり得る。
【0107】
ポリアルキレンオキシドポリマーは、少なくとも2つのヒドロキシル官能基を含み得、単官能性、二官能性、三官能性、または四官能性であり得る。本明細書で使用される場合、「ヒドロキシル官能基」は、-OH基を含む。明確にするために、ポリアルキレンオキシドポリマーは、ヒドロキシル官能基に加えて、追加の官能基を含み得る。本明細書で使用される場合、「単官能性」は、特定の単量体またはポリマーが含むヒドロキシル官能基の数に関して使用される場合、分子当たり1つの(1)ヒドロキシル官能基を含む単量体またはポリマーを意味する。本明細書で使用される場合、「二官能性」は、特定の単量体またはポリマーが含むヒドロキシル官能基の数に関して使用される場合、分子当たり2つの(2)ヒドロキシル官能基を含む単量体またはポリマーを意味する。本明細書で使用される場合、「三官能性」は、特定の単量体またはポリマーが含むヒドロキシル官能基の数に関して使用される場合、分子当たり3つの(3)ヒドロキシル官能基を含む単量体またはポリマーを意味する。本明細書で使用される場合、「四官能性」は、特定の単量体またはポリマーが含むヒドロキシル官能基の数に関して使用される場合、分子当たり4つの(4)ヒドロキシル官能基を含む単量体またはポリマーを意味する。
【0108】
ポリアルキレンオキシドポリマーのヒドロキシル当量は、少なくとも100g/mol、例えば、少なくとも200g/モル、例えば、少なくとも400g/molであり得、2,000g/mol以下、例えば、1,000g/mol以下、例えば、800g/mol以下であり得る。ポリアルキレンオキシドポリマーのヒドロキシル当量は、100g/mol~2,000g/mol、例えば200g/mol~1,000g/mol、例えば400g/mol~800g/molであり得る。本明細書で使用される場合、ポリアルキレンオキシドポリマーに関して、「ヒドロキシル当量」は、ポリアルキレンオキシドポリマーの分子量をポリアルキレンオキシドポリマー中に存在するヒドロキシル基の数で除算することによって決定される。
【0109】
ポリアルキレンオキシドポリマーは、少なくとも200g/mol、例えば、少なくとも400g/mol、例えば、少なくとも600g/molのz平均分子量(M)を有し得、5,000g/mol以下、例えば、3,000g/mol以下、例えば、2,000g/mol以下であり得る。本開示によれば、ポリアルキレンオキシドポリマーは、200g/mol~5,000g/mol、例えば、400g/mol~3,000g/mol、例えば、600g/mol~2,000g/molのz平均分子量を有し得る。本明細書で使用される場合、900,000未満のz平均分子量(M)を有するポリアルキレンオキシドポリマーに関して、「z平均分子量(M)」という用語は、Waters 410示差屈折計(RI検出器)を有するWaters 2695分離モジュール、約500g/mol~900,000g/molの分子量を有するポリスチレン標準物質、0.5mL/分の流速での溶出液としての0.05Mの臭化リチウム(LiBr)を有するテトラヒドロフラン(THF)、および分離のための1つのAsahipak GF-510 HQカラムによって決定される、z平均分子量(M)を意味する。
【0110】
ポリアルキレンオキシドポリマーは、樹脂ブレンド固形分の総重量に基づいて、少なくとも0.1重量%、例えば、少なくとも0.5重量%、例えば、少なくとも0.75重量%の量で電着可能なコーティング組成物中に存在し得、場合によっては、樹脂ブレンド固形分の総重量に基づいて、10重量%以下、例えば、4重量%以下、例えば、3重量%以下の量で電着可能なコーティング組成物中に存在し得る。ポリアルキレンオキシドポリマーは、樹脂ブレンド固形分の総重量に基づいて、0.1重量%~10重量%、例えば、0.5重量%~4重量%、例えば、0.75重量%~3重量%の量で電着可能なコーティング組成物中に存在し得る。
【0111】
本開示によれば、電着可能なコーティング組成物は、顔料組成物などの他の任意選択の配合成分、および所望される場合、様々な添加剤、例えば、充填材、可塑剤、酸化防止剤、殺生物剤、UV光吸収剤および安定剤、ヒンダードアミン光安定剤、消泡剤、殺真菌剤、分散助剤、流動制御剤、界面活性剤、湿潤剤、またはそれらの組み合わせを含み得る。代替的に、電着可能なコーティング組成物は、任意選択の配合成分のうちのいずれをも完全に含まなくてよく、すなわち、任意選択の配合成分は、電着可能なコーティング組成物中に存在しない。上述の他の添加剤は、電着可能なコーティング組成物の樹脂固形分の総重量に基づいて、0.01重量%~3重量%の量で電着可能なコーティング組成物中に存在し得る。
【0112】
本開示によれば、電着可能なコーティング組成物は、水、および任意選択的に、1つ以上の有機溶媒を含む水性媒体を含む。水性媒体は、電着可能なコーティング組成物の総重量に基づいて、例えば、40重量%~90重量%、例えば、50重量%~75重量%の量で存在する。好適な有機溶媒の例としては、酸素化有機溶媒、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、およびアルキル基中に1~10個の炭素原子を含有するジプロピレングリコールのモノアルキルエーテル、例えば、これらのグリコールのモノエチルおよびモノブチルエーテルなどが挙げられる。他の少なくとも部分的に水混和性の溶媒の例としては、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、およびジアセトンアルコールなどのアルコールが挙げられる。使用される場合、有機溶媒は、典型的に、電着可能なコーティング組成物の総重量に基づいて、10重量%未満、例えば、5重量%未満の量で存在し得る。電着可能なコーティング組成物は、特に、水性分散体などの分散体の形態で提供され得る。
【0113】
例えば、有機溶媒は、ヒドロキシル基および構造-O-Rを有する末端基を含むエーテルまたはポリエーテルを含んでもよく、Rが、C~Cアルキル基、例えば、C~Cアルキル基、例えば、C~Cアルキル基、または2つの末端ヒドロキシル基である。ポリエーテルは、ホモポリマー、ブロックコポリマー、またはランダムコポリマーを含み得る。例えば、ポリエーテルは、エチレンオキシドもしくはプロピレンオキシドのホモポリマーを含み得るか、またはポリエーテルは、エチレンオキシドとプロピレンオキシドとの組み合わせをブロックもしくはランダムパターンで含む、ブロックもしくはランダムコポリマーを含み得る。そのような有機溶媒は、以下の構造を含み得、
【化4】

式中、RおよびRが、各々、水素であるか、またはRおよびRの一方が、水素であり、かつもう一方が、メチル基であり、Rが、HまたはC~Cアルキル基、例えば、C~Cアルキル基、例えば、C~Cアルキル基であり、nが、1~50、例えば、1~40、例えば、1~30、例えば、1~20、例えば、1~12、例えば、1~8、例えば、1~6、例えば、1~4、例えば、2~50、例えば、2~40、例えば、2~30、例えば、2~20、例えば、2~12、例えば、2~8、例えば、2~6、例えば、2~4、例えば、3~50、例えば、3~40、例えば、3~30、例えば、3~20、例えば、3~12、例えば、3~8、例えば、3~6、例えば、3~4の整数である。
【0114】
本開示によれば、電着可能なコーティング組成物の総固形分含有量は、電着可能なコーティング組成物の総重量に基づいて、少なくとも1重量%、例えば、少なくとも5重量%であり得、50重量%以下、例えば、40重量%以下、例えば、20重量%以下であり得る。電着可能なコーティング組成物の総固形分含有量は、電着可能なコーティング組成物の総重量に基づいて、1重量%~50重量%、例えば、5重量%~40重量%、例えば、5重量%~20重量%であり得る。本明細書で使用される場合、「総固形分」は、電着可能なコーティング組成物の不揮発性含有量、すなわち、110℃で15分間加熱されたときに揮発しない材料を指す。
【0115】
本開示によれば、電着可能なコーティング組成物は、基材に電気泳動的に塗布され得る。カチオン性電着可能なコーティング組成物は、任意の電気伝導性基材上に電気泳動的に堆積させることができる。好適な基材は、金属基材、金属合金基材、および/またはニッケルめっきされたプラスチックなどの金属化された基材を含む。加えて、基材は、例えば、炭素繊維または導電性炭素を含む材料などの複合材料を含む非金属導電性材料を含み得る。本開示によれば、金属または金属合金は、冷間圧延鋼、熱間圧延鋼、亜鉛金属でコーティングされた鋼、亜鉛化合物、または亜鉛合金、例えば、電気亜鉛めっき鋼、溶融亜鉛めっき鋼、亜鉛めっき鋼、および亜鉛合金でめっきされた鋼を含み得る。2XXX、3XXX、4XXX、5XXX、6XXX、または7XXXシリーズのアルミニウム合金、ならびにA356シリーズのクラッドアルミニウム合金および鋳造アルミニウム合金も基材として使用され得る。AZ31B、AZ91C、AM60B、またはEV31Aシリーズのマグネシウム合金も基材として使用され得る。本開示で使用される基材は、チタンおよび/またはチタン合金も含み得る。他の好適な非鉄金属には、銅およびマグネシウム、ならびにこれらの材料の合金が含まれる。本開示で使用するのに好適な金属基材としては、多くの場合、車両本体(例えば、限定するものではないが、ドア、車体パネル、トランクデッキリッド、ルーフパネル、フード、ルーフおよび/もしくはストリンガー、リベット、ランディングギア構成要素、および/または航空機に使用される外板)、車両フレーム、車両部品、オートバイ、車輪、産業用構造体、ならびに洗濯機、乾燥機、冷蔵庫、ストーブ、食器洗い機などを含む電化製品、農業用装置、芝生用および庭用装置、空調ユニット、ヒートポンプユニット、芝生用家具、および他の物品などの構成要素の組み立てに使用されるものが挙げられる。本明細書で使用される場合、「車両」またはその変形形態としては、民間、商用、および軍用航空機、ならびに/または車、オートバイ、および/もしくはトラックなどの陸上車両が挙げられるが、これらに限定されない。金属基材はまた、例えば、金属シートまたは製作された部品の形態であり得る。基材が、例えば、米国特許第4,793,867号および同第5,588,989号で説明されるものなどのリン酸亜鉛前処理溶液を含む前処理溶液、または例えば、米国特許第7,749,368号および同第8,673,091号で説明されるものなどの前処理溶液を含有するジルコニウムで前処理され得ることも理解されよう。
【0116】
本開示はまた、上述の導電性基材のいずれか1つなどの基材をコーティングするための方法を対象とする。本開示によれば、そのような方法は、上述のような電着可能なコーティング組成物を基材の少なくとも一部分に電気泳動的に塗布するステップと、コーティング組成物を硬化させて基材上に少なくとも部分的に硬化したコーティングを形成するステップと、を含み得る。本開示によれば、本方法は、(a)本開示の電着可能なコーティング組成物を基材の少なくとも一部分に電気泳動的に堆積させるステップと、(b)コーティングされた基材を基材上の電着コーティングを硬化させるのに十分な温度および時間まで加熱するステップと、を含み得る。本開示によれば、本方法は、任意選択的に、(c)少なくとも部分的に硬化した電着コーティングに、1つもしくは1つより多くの顔料含有コーティング組成物および/または1つもしくは1つより多くの顔料非含有コーティング組成物を直接塗布して、少なくとも部分的に硬化した電着コーティングの少なくとも一部分の上にトップコートを形成するステップと、(d)ステップ(c)のコーティングされた基材を、トップコートを硬化させるのに十分な温度および時間まで加熱するステップと、を更に含み得る。
【0117】
本開示によれば、本開示のカチオン性電着可能なコーティング組成物は、組成物を電気伝導性カソードおよび電気伝導性アノードと接触させて配置することによって、電気伝導性基材上に堆積され得、コーティングされる表面は、カソードである。組成物との接触後、十分な電圧が電極間に印加されると、コーティング組成物の接着性フィルムがカソード上に堆積される。電着が実施される条件は、一般に、他のタイプのコーティングの電着に使用される条件と同様である。印加電圧は、様々であり得、例えば、1ボルトのような低電圧から数千ボルトのような高電圧、例えば、50~500ボルトであり得る。電流密度は、平方フィート当たり0.5アンペア~15アンペアであり得、電着中に減少する傾向があり、絶縁フィルムの形成を示す。
【0118】
カチオン性電着可能なコーティング組成物が導電性基材の少なくとも一部分の上に電着されると、コーティングされた基材は、基材上の電着コーティングを少なくとも部分的に硬化させるのに十分な温度および時間まで加熱される。本明細書で使用される場合、コーティングに関して「少なくとも部分的に硬化した」という用語は、コーティング組成物の成分の反応性基の少なくとも一部分の化学反応が起こってコーティングを形成するように、コーティング組成物を硬化条件に供することによって形成されたコーティングを指す。コーティングされた基材は、250°F~450°F(121.1℃~232.2℃)、例えば、275°F~400°F(135℃~204.4℃)、例えば、300°F~360°F(149℃~180℃)の範囲の温度まで加熱され得る。硬化時間は、硬化温度ならびに他の変数、例えば、電着コーティングのフィルム厚さ、組成物中に存在する触媒のレベルおよびタイプなどに依存し得る。本開示の目的で、必要な全てのことは、基材上のコーティングを硬化させるのに十分な時間だけである。例えば、硬化時間は、10分~60分、例えば、20~40分の範囲であり得る。得られた硬化した電着コーティングの厚さは、15~50ミクロンの範囲であり得る。
【0119】
本開示によれば、本開示のアニオン性電着可能なコーティング組成物は、組成物を電気伝導性カソードおよび電気伝導性アノードと接触させて配置することによって、電気伝導性基材上に堆積することができ、コーティングされる表面は、アノードである。組成物との接触後、十分な電圧が電極間に印加されると、コーティング組成物の接着性フィルムがアノード上に堆積される。電着が実施される条件は、一般に、他のタイプのコーティングの電着に使用される条件と同様である。印加電圧は、様々であり得、例えば、1ボルトのような低電圧から数千ボルトのような高電圧、例えば、50~500ボルトであり得る。電流密度は、平方フィート当たり0.5アンペア~15アンペアであり得、電着中に減少する傾向があり、絶縁フィルムの形成を示す。
【0120】
カチオン性電着可能なコーティング組成物が導電性基材の少なくとも一部分の上に電着されると、コーティングされた基材は、基材上の電着コーティングを少なくとも部分的に硬化させるのに十分な温度および時間まで加熱され得る。本明細書で使用される場合、コーティングに関して「少なくとも部分的に硬化した」という用語は、コーティング組成物の成分の反応性基の少なくとも一部分の化学反応が起こってコーティングを形成するように、コーティング組成物を硬化条件に供することによって形成されたコーティングを指す。コーティングされた基材は、200°F~450°F(93℃~232.2℃)、例えば、275°F~400°F(135℃~204.4℃)、例えば、300°F~360°F(149℃~180℃)の範囲の温度まで加熱され得る。硬化時間は、硬化温度ならびに他の変数、例えば、電着コーティングのフィルム厚さ、組成物中に存在する触媒のレベルおよびタイプなどに依存し得る。本開示の目的で、必要な全てのことは、基材上のコーティングを硬化させるために時間が十分であることである。例えば、硬化時間は、10~60分、例えば、20~40分の範囲であり得る。得られた硬化した電着コーティングの厚さは、15~50ミクロンの範囲であり得る。
【0121】
本開示の電着可能なコーティング組成物はまた、所望される場合、フローコーティング塗布、ディップコーティング塗布、スプレーコーティング塗布、およびロールコーティング塗布などの非電気泳動コーティング塗布技法を使用して基材に塗布することができる。非電気泳動コーティング塗布のために、コーティング組成物は、ガラス、木材、およびプラスチックなどの伝導性基材ならびに非伝導性基材に塗布することができる。
【0122】
本開示は、更に、本明細書で説明される電着可能なコーティング組成物を少なくとも部分的に硬化させることによって形成されるコーティングを対象とする。
【0123】
本開示は、更に、少なくとも部分的に硬化した状態で本明細書で説明される電着可能なコーティング組成物で少なくとも部分的にコーティングされた基材を対象とする。コーティングされた基材は、イオン性塩基含有フィルム形成ポリマーおよび硬化剤を含むコーティングを含み得る。
【0124】
本開示はまた、電着可能な結合剤および顔料を含む電着コーティング層を含む基材を対象とし、電着コーティング層は、少なくとも0.3:1の顔料対結合剤比率を有し、電着コーティング層は、Lパネル表面粗さ試験方法によって測定した場合、90マイクロインチ未満の水平表面粗さを有する。
【0125】
本開示の電着可能なコーティング組成物は、様々なコーティング層を有する基材を含む多層コーティング複合体の一部であるエレクトロコーティング層に利用され得る。コーティング層は、ホスフェート層(例えば、リン酸亜鉛層)などの前処理層、本開示の水性樹脂分散体から生じるエレクトロコーティング層、および好適なトップコート層(例えば、ベースコート、クリアコート層、着色されたモノコート、およびカラープラスクリア複合体組成物)を含み得る。好適なトップコート層は、当技術分野において既知のもののうちのいずれかを含み、各々独立して、水系、溶媒系、固体微粒子状形態(すなわち、粉末コーティング組成物)、または粉末スラリーの形態であり得ることが理解される。トップコートは、典型的には、フィルム形成ポリマー、架橋材料、および有色ベースコートまたはモノコートの場合、1つ以上の顔料を含む。本開示によれば、プライマー層は、エレクトロコーティング層とベースコート層との間に配設される。本開示によれば、トップコート層のうちの1つ以上は、実質的に未硬化の下地層上に塗布される。例えば、クリアコート層は、実質的に未硬化のベースコート層の少なくとも一部分上に塗布することができ(ウェットオンウェット)、両方の層は、下流プロセスにおいて同時に硬化され得る。
【0126】
更に、トップコート層は、電着可能なコーティング層上に直接塗布され得る。換言すれば、基材は、プライマー層を欠いている。例えば、ベースコート層は、電着可能なコーティング層の少なくとも一部分上に直接塗布されてもよい。
【0127】
トップコート層は、下地層が完全に硬化していないという事実にもかかわらず、下地層上に塗布することができることも理解されよう。例えば、クリアコート層は、ベースコート層が硬化ステップに供されていなくても、ベースコート層上に塗布することができる。次いで、両方の層は、後続の硬化ステップ中に硬化することができ、それによって、ベースコート層およびクリアコート層を別々に硬化する必要性がなくなる。
【0128】
本開示によれば、着色剤および充填材などの追加の配合成分は、トップコート層を生じさせる様々なコーティング組成物中に存在してもよい。任意の好適な着色剤および充填材が使用され得る。例えば、着色剤は、個別の粒子、分散体、溶液、および/またはフレークなどの任意の好適な形態でコーティングに添加することができる。本開示のコーティングには、単一の着色剤あるいは2つまたは2つより多くの着色剤の混合物を使用することができる。一般に、着色剤は、所望の特性、視覚、および/または色効果を付与するのに十分な任意の量で、多層複合体の層中に存在することができる。
【0129】
着色剤の例としては、顔料、染料、およびチント、例えば、塗料業界で使用されるもの、および/またはDry Color Manufacturers Association(DCMA)に記載されるもの、ならびに特殊効果組成物が挙げられる。着色剤は、例えば、使用条件下で不溶性であるが湿潤可能である、細かく分割された固体粉末を含んでいてもよい。着色剤は、有機または無機であり得、凝集または非凝集であり得る。着色剤は、粉砕または単純混合によってコーティングに組み込むことができる。着色剤は、アクリル粉砕ビヒクルなどの粉砕ビヒクルを使用して、粉砕によってコーティングに組み込むことができ、この使用は、当業者によく知られているであろう。
【0130】
例示的な顔料および/または顔料組成物としては、カルバゾールジオキサジン粗顔料、アゾ、モノアゾ、ジスアゾ、ナフトールAS、塩型(レーキ)、ベンゾイミダゾロン、縮合体、金属錯体、イソインドリノン、イソインドリンおよび多環式フタロシアニン、キナクリドン、ペリレン、ペリノン、ジケトピロロピロール、チオインジゴ、アントラキノン、インダントロン、アントラピリミジン、フラバントロン、ピラントロン、アンタントロン、ジオキサジン、トリアリールカルボニウム、キノフタロン顔料、ジケトピロロピロールレッド(「DPPレッド BO」)、二酸化チタン、カーボンブラック、酸化亜鉛、酸化アンチモンなど、ならびに酸化鉄、透明な赤色もしくは黄色の酸化鉄、フタロシアニンブルーなどの有機または無機のUV不透明顔料、ならびにそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。「顔料」および「着色充填材」という用語は、互換的に使用することができる。
【0131】
例示的な染料としては、酸性染料、アゾ染料、塩基性染料、直接染料、分散染料、反応性染料、溶媒染料、硫黄染料、モルダント染料、例えば、バナジン酸ビスマス、アントラキノン、ペリレン、アルミニウム、キナクリドン、チアゾール、チアジン、アゾ、インジゴイド、ニトロ、ニトロソ、オキサジン、フタロシアニン、キノリン、スチルベン、ならびにトリフェニルメタンなどの溶媒系および/または水系であるものが挙げられるが、これらに限定されない。
【0132】
例示的なチントとしては、Degussa,Inc.から市販されているAQUA-CHEM 896、Eastman Chemical,Inc.のAccurate Dispersions部門から市販されているCHARISMA COLORANTSおよびMAXITONER INDUSTRIAL COLORANTSなどの水系キャリアまたは水混和性キャリア中に分散した顔料が挙げられるが、これらに限定されない。
【0133】
着色剤は、ナノ粒子分散体を含む分散体の形態であり得るが、これに限定されない。ナノ粒子分散体は、所望の可視色および/または不透明度および/または視覚効果を生成する1つ以上の高度に分散したナノ粒子着色剤および/または着色剤粒子を含むことができる。ナノ粒子分散体は、150nm未満、例えば、70nm未満、もしくは30nm未満の粒子径を有する顔料または染料などの着色剤を含むことができる。ナノ粒子は、0.5mm未満の粒子径を有する粉砕媒体で原料の有機顔料または無機顔料を粉にするステップによって生成することができる。例示的なナノ粒子分散体およびそれらを作製するための方法は、米国特許第6,875,800B2号に特定されており、これは、参照により本明細書に組み込まれる。ナノ粒子分散体はまた、結晶化、沈殿、気相凝縮、および化学的摩擦(すなわち、部分溶解)によっても生成することができる。コーティング内のナノ粒子の再凝集を最小限に抑えるために、樹脂コーティングされたナノ粒子の分散体を使用することができる。本明細書で使用するとき、「樹脂コーティングされたナノ粒子の分散体」とは、ナノ粒子およびナノ粒子上の樹脂コーティングを含む、目立たない「複合材料微粒子」が分散している連続相を指す。樹脂コーティングされたナノ粒子の例示的な分散体およびそれらを作製するための方法は、参照により本明細書に組み込まれる2004年6月24日に出願された米国特許出願第10/876,031号、および参照により本明細書に組み込まれる2003年6月24日に出願された米国仮特許出願第60/482,167号に特定されている。
【0134】
本開示によれば、多層コーティング複合体の1つ以上の層に使用され得る特殊効果組成物としては、反射率、真珠光沢、金属光沢、リン光、蛍光、フォトクロミズム、感光性、サーモクロミズム、ゴニオクロミズム、および/または色変化などの1つ以上の外観効果を生成する顔料および/または組成物が挙げられる。追加の特殊効果組成物は、反射率、不透明度、またはテクスチャなどの他の知覚可能な特性を提供し得る。例えば、特殊効果組成物は、コーティングが異なる角度で見られる場合、コーティングの色が変化するように、カラーシフトを生成し得る。例示的な色効果組成物は、参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第6,894,086号に特定されている。追加の色効果組成物としては、透明コーティングされた雲母および/または合成雲母、コーティングされたシリカ、コーティングされたアルミナ、透明液晶顔料、液晶コーティング、ならびに/または任意の組成物を挙げることができ、干渉は、材料内の屈折率の差から生じ、材料の表面と空気との間の屈折率の差によるものではない。
【0135】
本開示によれば、1つ以上の光源に曝露したときにその色を可逆的に変える感光性組成物および/またはフォトクロミック組成物を、多層複合体における層の数に使用することができる。フォトクロミック組成物および/または感光性組成物は、指定された波長の放射線に曝露することによって活性化することができる。組成物が励起されると、分子構造が変化し、変えられた構造は、組成物の元の色とは異なる新しい色を示す。放射線への曝露が除去されるとき、フォトクロミック組成物および/または感光性組成物は、組成物の元の色が戻る休止状態に戻ることができる。例えば、フォトクロミックおよび/または感光性組成物は、非励起状態では無色であり、励起状態では色を示すことができる。フルカラーチェンジは、20秒~60秒などのミリ秒から数分以内に現れ得る。例示的なフォトクロミックおよび/または感光性組成物としては、フォトクロミック色素が挙げられる。
【0136】
本開示によれば、感光性組成物および/またはフォトクロミック組成物は、共有結合などによって、ポリマーおよび/または重合性成分のポリマー性材料に関連付けることができ、かつ/またはそれらに少なくとも部分的に結合することができる。感光性組成物がコーティングから移動し、基材中に結晶化し得るいくつかのコーティングとは対照的に、本開示によるポリマーおよび/もしくは重合性成分と会合したかつ/またはそれらと少なくとも部分的に結合した感光性組成物ならびに/またはフォトクロミック組成物は、コーティングからの最小限の移動を有する。例示的な感光性組成物および/またはフォトクロミック組成物ならびにそれらを作製するための方法は、2004年7月16日に出願された米国特許出願第10/892,919号に特定されており、参照により本明細書に組み込まれる。
【0137】
本明細書で使用される場合、別途定義されない限り、「実質的に含まない」という用語は、成分が、存在するとしても、組成物の総樹脂固形分重量に基づいて、1重量%未満の量で存在することを意味する。
【0138】
本明細書で使用される場合、別途定義されない限り、「本質的に含まない」という用語は、成分が、存在するとしても、組成物の総樹脂固形分重量に基づいて、0.1重量%未満の量で存在することを意味する。
【0139】
本明細書で使用される場合、別途定義されない限り、「完全に含まない」という用語は、成分が、組成物中に存在しない、すなわち、組成物の総樹脂固形分重量に基づいて、0.00重量%であることを意味する。
【0140】
この詳細な説明の目的のために、本開示が、相反することが明示的に指定されている場合を除き、代替的な変形およびステップシーケンスが想定され得ることが理解されるべきである。更に、任意の実施例以外で、または別段の指示がない限り、例えば、本明細書および特許請求の範囲で使用される配合成分の量を表す全ての数は、「約」という用語によっていかなる場合も修飾されているものとして理解されるべきである。したがって、相反することが示されない限り、以下の明細書および添付の特許請求の範囲に記載される数値パラメータは、本開示によって得られる所望の特性に依存して変動し得る近似値である。少なくとも、かつ、等価物の見解の適用を特許請求の範囲に限定しようとするものではなく、各数値パラメータは、少なくとも報告された有意な桁の数に照らし合わせて、かつ通常の四捨五入技法を適用することによって解釈されるべきである。
【0141】
本開示の広範な範囲を示す数値範囲およびパラメータは近似値ではあるが、特定の例で示される数値は、可能な限り正確に報告される。しかしながら、任意の数値は、それらのそれぞれの試験測定値に見られる標準偏差から必然的に得られる特定の誤差を本来含有する。
【0142】
また、本明細書に記載される任意の数値範囲は、その中に包含される全ての部分範囲を含むことを意図していることを理解されたい。例えば、「1~10」の範囲は、記載された最小値1と記載された最大値10との間の(およびそれらを含む)全ての部分的な範囲、つまり、1に等しいまたは1を超える最小値と、10に等しいまたは10未満の最大値と、を有することが意図される。
【0143】
本明細書で使用される場合、「含む(including)」、「含有する(containing)」、および同様の用語は、本出願の文脈において「含む(comprising)」と同義であることが理解され、したがって、オープンエンドであり、追加の非説明または非記載の要素、材料、配合成分、または方法ステップの存在を除外しない。本明細書で使用される場合、「からなる」は、任意の不特定の要素、配合成分、または方法ステップの存在を除外するために、本出願の文脈において理解される。本明細書で使用される場合、「から本質的になる」は、特定の要素、材料、配合成分、または方法ステップ、および記載されているもののうち「基本的かつ新規の特徴に著しく影響を及ぼさないもの」を含むように、本出願の文脈において理解される。
【0144】
本出願では、別段の明記がない限り、単数形の使用は複数形を含み、複数形は単数形を包含する。例えば、本明細書では、「1つ(an)」のイオン性塩基含有フィルム形成ポリマーおよび「1つ(a)」の硬化剤に言及するが、これらの成分の組み合わせ(すなわち、複数)を使用することができる。加えて、本出願では、「および/または」がある特定の場合において明示的に使用され得るが、別段の明記がない限り、「または」の使用は、「および/または」を意味する。
【0145】
本開示の特定の態様が詳細に説明されているが、本開示の全体的な教示に照らして、それらの詳細に対する様々な修正および代替案が開発され得ることが当業者によって理解されるであろう。したがって、開示される特定の構成は、例示のみであり、添付の特許請求の範囲の全容ならびにその任意のおよび全ての等価物を与える本開示の範囲に対する限定ではないことが意図される。
【0146】
以下の実施例は本開示を例示するものであるが、本開示をそれらの詳細に限定するとみなすべきではない。別途示されない限り、以下の実施例における、ならびに本明細書の全体を通して、全ての部およびパーセンテージは、重量によるものである。
【実施例
【0147】
樹脂系の調製:樹脂系I
架橋剤Iの調製:電着可能なコーティング樹脂における使用に好適なブロックされたポリイソシアネート架橋剤を、以下の様式で調製した。以下の表1に列挙される成分2、3a、および3bを、窒素下で撹拌しながら、全還流用に設定されたフラスコに添加した。フラスコの内容物を35℃の温度まで加熱し、反応発熱により温度が上昇し、100℃より下に維持されるように、成分1を滴下添加した。成分1の添加が完了した後、成分4を添加し、反応混合物において100℃の温度を確立した。IR分光法によって残留イソシアネートが検出されなくなるまで、反応混合物をその温度で保持した。次いで、成分5aおよび5bを添加し、反応混合物を30分間撹拌し、周囲温度まで冷却した。
【表1】
【0148】
カチオン性アミン官能化ポリエポキシド系樹脂(樹脂系I)の調製:電着可能なコーティング組成物を配合する際に使用するのに好適なカチオン性アミン官能化ポリエポキシド系ポリマー樹脂を、以下の様式で調製した。以下の表2に列挙される成分1~4を、窒素下で撹拌しながら、全還流用に設定されたフラスコ内で合わせた。混合物を130℃の温度まで加熱し、発熱させた(最大で175℃)。反応混合物中で145℃の温度を確立し、次いで、反応混合物を1時間保持した。次いで、成分5、続いて成分6~7をフラスコに導入し、反応混合物中で100℃の温度を確立した。次いで、予め混合した成分8および9を反応混合物に素早く添加し、反応混合物を発熱させた。中で110℃の温度を確立し、反応混合物を1時間保持した。次いで、成分10を添加し、15分間混合した。保持後、フラスコの内容物を注ぎ出し、室温まで冷却した。
【表2】
【0149】
樹脂系の調製:樹脂系:樹脂系II
架橋剤IIの調製:電着可能なコーティング樹脂における使用に好適なブロックされたポリイソシアネート架橋剤を、以下の様式で調製した。以下の表3に列挙される成分1a、1b、1c、1d、および1eを、窒素下で撹拌しながら、全還流用に設定されたフラスコに添加した。フラスコの内容物を35℃の温度まで加熱し、反応発熱により温度が上昇し、110℃より下に維持されるように、成分2を滴下添加した。成分2の添加が完了した後、成分3を添加し、反応混合物において110℃の温度を確立した。IR分光法によって残留イソシアネートが検出されなくなるまで、反応混合物をその温度で保持した。次いで、成分4を添加し、反応混合物を30分間撹拌し、周囲温度まで冷却した。
【表3】
【0150】
カチオン性アミン官能化ポリエポキシド系樹脂(樹脂系II)の調製:電着可能なコーティング組成物を配合する際に使用するのに好適なカチオン性アミン官能化ポリエポキシド系ポリマー樹脂を、以下の様式で調製した。以下の表4に列挙される成分1~4を、窒素下で撹拌しながら、全還流用に設定されたフラスコ内で合わせた。混合物を130℃の温度まで加熱し、発熱させた(最大175℃)。反応混合物中で145℃の温度を確立し、次いで、反応混合物を1時間保持した。次いで、成分5、続いて成分6~7をフラスコに導入し、反応混合物中で100℃の温度を確立した。次いで、予め混合した成分8および9を反応混合物に素早く添加し、反応混合物を発熱させた。中で110℃の温度を確立し、反応混合物を1時間保持した。次いで、成分10を添加し、15分間混合した。保持後、フラスコの内容物を注ぎ出し、室温まで冷却した。
【表4】
【0151】
電着可能なコーティング組成物の調製
配合顔料、添加剤、および化学物質の供給元:エレクトロコート浴の配合に使用される化学物質を様々な供給業者から入手した。溶媒DOWANOL PMを純度98%でDow Chemical Companyから入手した。スルファミン酸をPPG industriesから入手した。TIONA595二酸化チタン顔料は、Tronox Incから入手することができる。硫酸バリウム顔料は、Venator Materials PLCから入手することができる。ASP-200粘土顔料は、BASFから入手することができる。
【0152】
対照組成物1:このエレクトロコートは、PPG IndustriesからFRAMECOAT(登録商標) IIの名称で市販されており、2成分組成物として供給されている。エレクトロコート浴を、1801グラムのCR681樹脂(PPGから入手可能)、CP524ペースト(243.8グラム、PPGから入手可能)、および脱イオン水(1755.2グラム)を混合することによって調製した。この塗料のP:Bは、0.1:1.0であった。組成物1を技術告示書に従って使用した。
【0153】
組成物2:ステンレス鋼ビーカー(3リットル)に、熱電対および加熱マントルを使用して80℃に温めた593グラムの樹脂系Iを投入した。Fawcettエアモーター(Model 103A)によって動力供給した3インチのプロペラブレードを使用して、1500RPMで樹脂を撹拌した。以下の配合成分を、列挙した順序で添加した。この樹脂に57.5グラムの脱イオン水を添加し、5分間混合した。次に、300グラムのASP-200を5分間かけて樹脂に添加した。この混合物を20分間撹拌した。別のステンレス鋼ビーカー(1リットル)中で、7.41グラムのスルファミン酸を387.4グラムの脱イオン水に添加し、穏やかな撹拌下で15分間混合した。樹脂混合物で十分な分散が達成された後、酸溶液を、撹拌を継続しながら樹脂混合物にゆっくりと注ぎ込んだ。酸性化された樹脂混合物を、撹拌を継続しながら1時間保持した。1時間保持した後、樹脂混合物を448.6グラムの脱イオン水で20分間かけて薄め、温度を自然に変動させた。次いで、21.2グラムのE6165(PPG Industriesから入手可能なジブチルスズオキシド[DBTO]ペースト)を添加することによってスズ触媒を添加して、樹脂固形分に対して0.7重量%のSn投入量を提供した。最後に、追加の1435.4グラムの脱イオン水を添加して、25重量%固形分の完成したエレクトロコート浴を作製した。最終浴のpHは5.89であり、伝導率は960μSであった。
【0154】
組成物3:ステンレス鋼ビーカー(3リットル)に、熱電対および加熱マントルを使用して80℃に温めた593グラムの樹脂系Iを投入した。Fawcettエアモーター(Model 103A)によって動力供給した3インチのプロペラブレードを使用して、1500RPMで樹脂を撹拌した。以下の配合成分を、列挙した順序で添加した。この樹脂に57.5グラムの脱イオン水を添加し、5分間混合した。次に、95グラムのASP-200を5分間かけて樹脂に添加し、続いて55グラムの硫酸バリウム顔料、続いて150グラムのTIONA595二酸化チタン顔料を添加した。この混合物を20分間撹拌した。別のステンレス鋼ビーカー(1リットル)中で、7.41グラムのスルファミン酸を387.4グラムの脱イオン水に添加し、穏やかな撹拌下で15分間混合した。樹脂混合物で十分な分散が達成された後、酸溶液を、撹拌を継続しながら樹脂混合物にゆっくりと注ぎ込んだ。酸性化された樹脂混合物を、撹拌を継続しながら1時間保持した。1時間保持した後、樹脂混合物を448.6グラムの脱イオン水で20分間かけて薄め、温度を自然に変動させた。次いで、21.2グラムのE6165(PPG Industriesから入手可能なジブチルスズオキシド[DBTO]ペースト)を添加することによってスズ触媒を添加して、樹脂固形分に対して0.7重量%のSn投入量を提供した。最後に、追加の1435.4グラムの脱イオン水を添加して、25重量%固形分の完成したエレクトロコート浴を作製した。最終浴のpHは5.78であり、伝導率は974μSであった。
【0155】
組成物4:ステンレス鋼ビーカー(4リットル)に、熱電対および加熱マントルを使用して80℃に温めた807.9グラムの樹脂系IIを投入した。Fawcettエアモーター(Model 103A)によって動力供給した3インチのプロペラブレードを使用して、1500RPMで樹脂を撹拌した。以下の配合成分を、列挙した順序で添加した。この樹脂に80.5グラムの脱イオン水を添加し、5分間混合した。次に、420グラムのASP-200を5分間かけて樹脂に添加した。この混合物を20分間撹拌した。別のステンレス鋼ビーカー(1リットル)中で、10.57グラムのスルファミン酸を736.7グラムの脱イオン水に添加し、穏やかな撹拌下で15分間混合した。樹脂混合物で十分な分散が達成された後、酸溶液を、撹拌を継続しながら樹脂混合物にゆっくりと注ぎ込んだ。酸性化された樹脂混合物を、撹拌を継続しながら1時間保持した。1時間保持した後、樹脂混合物を456.8グラムの脱イオン水で20分間かけて薄め、温度を自然に変動させた。次いで、29.6グラムのE6165(PPG Industriesから入手可能なジブチルスズオキシド[DBTO]ペースト)を添加することによってスズ触媒を添加して、樹脂固形分に対して0.7重量%のSn投入量を提供した。最後に、追加の2009.9グラムの脱イオン水を添加して、25重量%固形分の完成したエレクトロコート浴を作製した。最終浴のpHは5.72であり、伝導率は1085μSであった。
【0156】
組成物5:レオロジー添加剤溶液を、脱イオン水(945グラム)、Borchers Americas Incから市販されている、BORCHI Gel 0620(150グラム)、およびエチレングリコールブチルエーテル(405グラム)を鋼ビーカー(3リットル)に添加することによって調製し、Fawcettエアモーター(モデル103A)によって動力供給した高揚力インペラブレードで、500RPMで1時間撹拌した。
【0157】
別のステンレス-鋼ビーカー(4リットル)内に、熱電対および加熱マントルを使用して80℃に温めた807.9グラムの樹脂系IIを投入した。Fawcettエアモーター(Model 103A)によって動力供給した3インチのプロペラブレードを使用して、1500RPMで樹脂を撹拌した。以下の配合成分を、列挙した順序で添加した。この樹脂に80.5グラムの脱イオン水を添加し、5分間混合した。次に、420グラムのASP-200を5分間かけて樹脂に添加した。この混合物を20分間撹拌した。別のステンレス鋼ビーカー(1リットル)中で、10.57グラムのスルファミン酸を577.8グラムの脱イオン水に添加し、穏やかな撹拌下で15分間混合した。樹脂混合物で十分な分散が達成された後、酸溶液を、撹拌を継続しながら樹脂混合物にゆっくりと注ぎ込んだ。酸性化された樹脂混合物を、撹拌を継続しながら1時間保持した。1時間保持した後、樹脂混合物を175グラムのレオロジー添加剤溶液および461.3グラムの脱イオン水で20分間かけて薄め、温度を自然に変動させた。次いで、29.8グラムのE6165(PPG Industriesから入手可能なジブチルスズオキシド[DBTO]ペースト)を添加することによってスズ触媒を添加して、樹脂固形分に対して0.7重量%のSn投入量を提供した。最後に、追加の2029.8グラムの脱イオン水を添加して、25重量%固形分の完成したエレクトロコート浴を作製した。最終浴のpHは5.85であり、伝導率は1101μSであった。
【0158】
組成物6:ステンレス鋼ビーカー(3リットル)に、熱電対および加熱マントルを使用して80℃に温めた534グラムの樹脂系Iを投入した。Fawcettエアモーター(Model 103A)によって動力供給した3インチのプロペラブレードを使用して、1500RPMで樹脂を撹拌した。以下の配合成分を、列挙した順序で添加した。この樹脂に51.8グラムの脱イオン水を添加し、5分間混合した。次に、382.5グラムのASP-200を5分間かけて樹脂に添加した。この混合物を20分間撹拌した。別のステンレス鋼ビーカー(1リットル)中で、6.67グラムのスルファミン酸を423.7グラムの脱イオン水に添加し、穏やかな撹拌下で15分間混合した。樹脂混合物で十分な分散が達成された後、酸溶液を、撹拌を継続しながら樹脂混合物にゆっくりと注ぎ込んだ。酸性化された樹脂混合物を、撹拌を継続しながら1時間保持した。1時間保持した後、樹脂混合物を466.2グラムの脱イオン水で20分間かけて薄め、温度を自然に変動させた。次いで、19グラムのE6165(PPG Industriesから入手可能なジブチルスズオキシド[DBTO]ペースト)を添加することによってスズ触媒を添加して、樹脂固形分に対して0.7重量%のSn投入量を提供した。最後に、追加の932.4グラムの脱イオン水を添加して、30重量%固形分の完成したエレクトロコート浴を作製した。最終浴のpHは5.7であり、伝導率は928μSであった。
【0159】
試験方法
沈降量試験方法:設定された時間にわたる沈降量を、白金パンを装備したBiolin Scientific Attension Force Tensiometer (モデル:Sigma 703)を使用して決定した。電着可能なコーティング組成物の少量の試料を4オンスのガラス瓶に入れた。電着可能なコーティング組成物を含むガラス瓶を張力計プラットフォームに投入し、白金パンを液体表面の下方の塗料に挿入した。機器をゼロ設定にし、データ収集を開始した。組成物の成分の沈降量(mgで報告)を30分間にわたって監視した。
【0160】
沈降を、電着可能なコーティング組成物のP:Bに対しても評価した。これを、組成物の沈降した成分の総量を組成物のP:Bで除算することによって決定した。これは、本明細書では「相対沈降試験方法」と称される。
【0161】
浴粘度試験方法:剪断速度の関数として粘度を測定することによって、液体浴の流動曲線を決定した。粘度を、温度制御付きの同心シリンダー(カップおよびボブ)セットアップを使用するAnton-Paar MCR302レオメータで測定した。温度は、一定の32℃であった。最初に、コーティング系を定常状態に安定化させるために、エレクトロコート浴の粘度を、デバイスによって設定された持続時間で、21のデータ点について、0.1s-1の一定剪断速度で測定した。次いで、0.1~1000s-1の剪断速度の対数勾配で粘度を測定し、デバイスによって設定された持続時間で、ディケード当たり5ポイントのポイント間隔で剪断速度を変化させた。低剪断粘度は0.1s-1の剪断速度であり、高剪断粘度は100s-1の剪断速度で報告される。この試験方法は、本明細書では、浴粘度試験方法と称される。
【0162】
Lパネル表面粗さ試験方法:金属基材をパネルにし(任意選択的に、前処理組成物(例えば、リン酸亜鉛前処理組成物)で前処理される)、半分に切断して、4インチ×6インチのパネルを得る。次いで、0.25インチをパネルの各側面から除去して、3.5インチ×6インチであるパネルを得て、これを「L」形状に曲げて、4インチの垂直表面および2インチの水平表面を得た。このパネルを、撹拌下にあるエレクトロコート浴中に浸漬し、撹拌を停止することができる。撹拌されていない浴中で3分間静置した後、組成物の電着を進行させた。整流器を使用して電着可能なコーティング浴に電流を印加して、基材をコーティングした。標的のフィルム構築物は、基材の垂直面上で0.5~0.7ミル(12.7~17.8ミクロン)であった。このフィルム厚さを、25.4ミクロンのDFTのための電圧/温度/電流条件(2分間の条件)を使用することによって堆積させたが、1分間で堆積させた。正確なコーティング条件は、組成によって様々であり得る。パネルをエレクトロコートした後、パネルを脱イオン水ですすぎ、電気オーブン内で、350°Fで30分間焼成する。水平表面および垂直表面の粗さは、Taylor Hobsonから入手可能なPrecision Surtronic 25表面粗さ計を使用して測定した。この機器は、Ted Pella Inc.から入手可能な3インチのシリコンウェハ(製品番号16013)を使用して参照され、これは、10回の繰り返し測定後に1.0±0.7マイクロインチの粗さを有していた。この試験方法は、本明細書では、Lパネル表面粗さ試験方法と称される。
【0163】
複素粘度試験方法:硬化サイクル中の堆積されたコーティングの粘度を、以下の方法で測定した。(a)PPR25/23スピンドルおよび0.1mmのギャップを有するAnton Paar MCR302レオメータを設定するステップ、(b)未硬化の電着コーティング試料にテトラヒドロフラン(THF)を塗布し、金属ヘラを使用して、未硬化の電着コーティング試料をパネルからそぎ落とし、試料をPeltierプレート上に配置するステップ、(c)試験の長さ全体を通して保持される5%の一定剪断ひずみ(振動)および1Hzの周波数下にある試料で、経時的に試料の粘度を測定し、40℃で30分間の周囲フラッシュの硬化サイクル、続いて40℃から175℃までの温度上昇を41分間(3.3℃/分)かけて測定するステップ。この試験方法は、本明細書では、複素粘度試験方法と称される。
【0164】
実施例A:浴安定性の評価
リン酸亜鉛(ACT(Hillsdale,MI)から入手可能なC700品目:28630)で前処理したCRSパネルを、Lパネル表面粗さ試験方法で説明される様式で調製した。DC電力供給される整流器(XantraxモデルXFR600-2(Elkhart,Indiana)、またはSorensen XG300-5.6(Ameteck,Berwyn,Pennsylvania))を使用して、電着可能なコーティングを塗布した。このフィルム厚さを、2分間の電圧/温度/電流条件を使用することによって堆積した。各塗料のための正確なコーティング条件は、表5に見られる。パネルをエレクトロコートした後、パネルを脱イオン水ですすぎ、電気オーブン(Despatch モデルLFD-1-42)内で、350°Fで30分間焼成した。焼成後、パネルを周囲条件で20分間冷却した。Lパネル表面粗さ試験方法および対応する電着可能なコーティング浴上で行った浴粘度試験方法からの結果は、以下の表6にある。
【表5】

【表6】
【0165】
表6の結果は、電着可能なコーティング組成物のレオロジー特性を使用して、組成物を沈降に対して安定化させることができることを示す。例えば、組成物2、3、および5は各々、0.6:1のP:Bを有し、少なくとも15の低剪断粘度を有し、良好な比較的低い沈降量、組成物の総P:B比率に対する低い沈降量、および得られた塗布されたコーティングの良好な水平表面粗さを実証している。これは、ポリエーテルブロッキング剤を含むポリイソシアネート硬化剤を含めた組成物2および3に特に当てはまる。対照的に、組成物4は、多量の沈降を阻止するのに十分な低剪断粘度を有しておらず、粗い水平表面を生じさせた。しかしながら、組成物5に示されるように、組成物4に増粘剤を添加すると、低剪断粘度が増加し、沈降およびP:B当たりの沈降が大幅に低減し、粗い水平表面が少なくなった。
【0166】
表6の結果はまた、0.1:1のより低いP:Bを有する市販の組成物である対照組成物1との比較を示す。対照組成物1は、非常に高い低剪断粘度を有していなかったが、組成物は、依然として安定しており、比較的少ない顔料含有量のために高い水平表面粗さを生じさせなかった。対照的に、組成物2および3は、より多くの沈降を有すると予想される6倍多い顔料含有量を有するにもかかわらず、わずかに粗いが同等の水平表面粗さを提供する。同じように、組成物は、対照組成物1よりも、組成物P:Bに対してより少ない沈降を有していた。
【0167】
実施例B:硬化粘度および外観
複素粘度試験方法で説明されるような最小複素粘度を測定するために、電着されたフィルムを、Q-Lab Corporationによって提供される剥き出しで未洗浄の3003 H14 アルミニウム基板上に塗布した。コーティングを、90°Fの浴温度で120秒間、285Vで1アンペアの電流制限で塗布した。次いで、未硬化の堆積されたコーティングを、複素粘度試験方法で説明されているように取り扱った。
【0168】
硬化したフィルムの外観を測定するために、リン酸亜鉛(ACT(Hillsdale,MI)から入手可能なC700品目:28630)で前処理したCRSパネルを、パネルを半分に切断することによって調製し、4インチ×6インチのパネルを得た。次いで、電着可能な組成物を、90°Fの浴温度で120秒間、285ボルトで1アンペアの電流制限で塗布した。パネルを電着した後、パネルを脱イオン水ですすぎ、電気オーブン内で、350°Fで30分間焼成した。焼成後、パネルを30分間冷却した。次いで、硬化したコーティングされた表面の粗さを、Taylor Hobsonから入手可能なPrecision Surtronic 25表面粗さ計を使用して測定した。
【0169】
複素粘度試験方法および硬化したフィルムの外観の結果は、表7に見ることができる。
【表7】
【0170】
表7の結果は、色素沈着の増加が硬化プロセス中の粘度プロファイルの増加につながり得、これは、最終的な硬化されたコーティングの外観に影響を及ぼすことを示す。最小複素粘度の低減は、硬化したコーティングの外観粗さの低下を生じさせ得る。
【0171】
本明細書に記載および例示される広範な本発明の概念から逸脱することなく、上述の開示に照らして、多数の修正および変形が可能であることが当業者によって理解されるであろう。したがって、前述の開示は、本出願の様々な例示的な態様の単なる例示であり、多数の修正および変形が、本出願および添付の特許請求の範囲の趣旨および範囲内において、当業者によって容易に行われ得ることが理解されるべきである。

【国際調査報告】