(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-05
(54)【発明の名称】貴金属代替物としての青銅層
(51)【国際特許分類】
C25D 7/00 20060101AFI20240628BHJP
C25D 7/06 20060101ALI20240628BHJP
【FI】
C25D7/00 J
C25D7/06 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023579316
(86)(22)【出願日】2022-06-30
(85)【翻訳文提出日】2023-12-22
(86)【国際出願番号】 EP2022068007
(87)【国際公開番号】W WO2023275215
(87)【国際公開日】2023-01-05
(31)【優先権主張番号】102021117095.8
(32)【優先日】2021-07-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513151152
【氏名又は名称】ウミコレ・ガルファノテフニック・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ロベルト・ツィーバルト
(72)【発明者】
【氏名】ギュンター・ヴィルト
(72)【発明者】
【氏名】ジルヴィア・ノイハウス
(72)【発明者】
【氏名】シュテファン・ミューラー
【テーマコード(参考)】
4K024
【Fターム(参考)】
4K024AA03
4K024AA09
4K024AA12
4K024AA15
4K024AA21
4K024AB02
4K024AB04
4K024BA09
4K024BB11
4K024BC02
4K024DA04
4K024DA07
4K024DA09
4K024GA02
4K024GA05
(57)【要約】
本発明は、例えば、電子支払いカード及び身分証明書に使用するための、電子回路の貴金属電気めっきの代替としての電解青銅堆積物の使用に関する。本発明はまた、青銅層の新規な層配列にも関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スマートカードに適用された金属表面を介して読取り/書込み装置にチップを接続することができるようにするために、スマートカードのリードフレームの外部接触面におけるガルバニック堆積された貴金属層の代替層としての、電解堆積された青銅層の使用であって、前記層が、以下の組成:
Cu 45~60%、Sn 30~50%及びZn 5~15%(いずれの場合も青銅層に対して) 及び/又は
Cu 70~90%、Sn 1~10%及びZn 5~30%(いずれの場合も青銅層に対して)を有することを特徴とする、使用。
【請求項2】
前記青銅層が、Cu、Ni、ニッケル-リン、Pd、PdNi、Au及び白金からなる群から選択される下層上に堆積されることを特徴とする、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
堆積された青銅層が、0.1~2μmの厚さを有することを特徴とする、請求項1又は2に記載の使用。
【請求項4】
金属性下層と、最上層として2つの連続した電解堆積された青銅層と、を有する層配列であって、これら2つの層のうちの一方は、次の組成:
Cu 45~60%、Sn 30~50%及びZn 5~15%(いずれの場合も青銅層に対して)を有し、
これらの2つの層のうちのもう一方は、次の組成:
Cu 70~90%、Sn 1~10%及びZn 5~30%(いずれの場合も青銅層に対して)を有する、ことを特徴とする、層配列。
【請求項5】
前記下層が、Cu、Ni、ニッケル-リン、Pd、PdNi、Au及び白金からなる群から選択されるものであることを特徴とする、請求項1に記載の層配列。
【請求項6】
前記堆積された青銅層が、それぞれ、0.1~2μmの厚さを有することを特徴とする、請求項1又は2に記載の層配列。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、電子支払いカード及び身分証明書に使用するための、電子部品の外部接触面における貴金属電気めっきの代替としての電解青銅堆積物の使用に関する。本発明はまた、青銅層の新規な層配列に関する。
【背景技術】
【0002】
消費財又は装飾品上への黄銅(Cu-Zn合金)及び青銅(Cu-Sn合金)の電解堆積は、周知である(Praktische Galvanotechnik(Practical Electroplating),Eugen G.Leuze Verlag KG,7th edition 2013,p.261 et seq.)。とりわけ、それらは、ニッケル含有仕上げ層の代替物として役立ち、例えば、電気めっきドラム又はラックコーティング法において、低コストで対応する基材に適用される。
【0003】
黄銅層及び青銅層の堆積において、はんだ付け性、及び、適用可能であれば、それらの機械的接着性は、これらの生成層が示さなければならない重要な特性である。電子用途において、層の外観は、一般に、それらの機能性に比べて重要ではない。一方、消費財、例えば、電子決済カード上に青銅又は黄銅コーティングを生成するためには、外観をできるだけ変化しないように維持しながら、コーティングの表面堅牢性及び長期耐久性に加えて、装飾効果も重要な目標パラメータである。
【0004】
銅、錫及び亜鉛からなる三元合金の堆積は、当業者に十分に知られている。シアン化物不含電解質からの堆積は、例えば、欧州特許第2116634号において説明されている。そこでは、電解質中の高濃度のピロホスフェートアニオンに加えて、ヘキサメチレンテトラミンとエピクロロヒドリンとの特別な反応生成物も、電解質のpHがほぼ中性である場合に使用される。米国特許出願公開第2001/0014407号には、腐食保護として銅表面上にCu/Sn/Znの三元合金を堆積させることが記載されている。
【0005】
米国特許出願公開第2010/0147696号から、ホスホン酸を含有する電解質からCu-Zn-Sn合金を堆積させることが知られている。そこに記載されている堆積物は白色コーティングを与えるが、これは亜鉛が比較的少ない。
【0006】
Thin Solid Films,517(2009)2511-2514には、三元銅-亜鉛-錫合金の堆積のための、シアン化物を含まないピロリン酸塩含有電解質が記載されている。この場合、詳細に定義されていない層は、+2の酸化状態の銅金属、+2の酸化状態の亜鉛、及び+4の酸化状態の錫の金属を有するアルカリ電解液から堆積される。
【0007】
欧州特許第2037006号には、互いに非常に特異的な原子比の銅-錫-亜鉛合金の電解堆積が記載されている。堆積された層は、式Cu2ZnSnに近い組成を有する。このようにして得られた層は、黄錫亜鉛鉱(CZTS又はCu2ZnSn(S,Se)4)を生成させるための基礎としての役割を果たすことができ、これは、光起電活性モジュールを製造するための有望な材料である(Solar Energy Materials&Solar Cells 2011,95,2136-2140;Chemical Physics Letters 2011,501,619-622)。
【0008】
リードフレームは、打ち抜かれたストリップの形状の半導体のためのキャリアである。それは、半導体チップ又は他の電子部品の自動製造のためのフレーム又はコームの形態のはんだ付け可能な金属リードキャリアである。チップキャリアの他に、将来の構成要素の接続ピンもリードフレームに組み込まれる。チップは、リードフレーム上にダイボンディングされる。チップの接触面は、ワイヤボンドを介して接続ピンに接続される。ボンディングの後、リードフレームは、熱硬化性プラスチックで押出コーティングされる。接続ピンは、プラスチックハウジングから延び、その後に切断されて形成される。(https://ts.kurtzersa.com/electronics-production-equipment/solderlexicon/begriff/leadframe-1.html)。したがって、リードフレームは、信号をチップから外部に送信するチップパッケージ内の金属構造である(https://en.wikipedia.org/wiki/Lead_frame)。更に、「リードフレーム」という用語は、リードフレームを用いて製造されたマイクロチップの形状、すなわち、(突出している)接続部を有する形状も指す。リードフレームは、絶縁キャリア上又はパッケージ内に実装される。接触が機械的に固定されている場合、接触を互いに分離することができる。リードフレームは打ち抜かれるが、より少量の場合にはレーザー切断することもできる。それらは、例えば、スマートカード又はチップカードにおいて使用される。
【0009】
スマートカード、チップカード又は集積回路カードは、典型的には、表面にチップを有するプラスチックカードである。これらのスマートカードは、IDカード、クレジットカード等として知られている。集積チップは、外部読取り/書込み装置との接触を確立する様々な金属表面を介して制御される。序論、https://en.wikipedia.org/w/index.php?title=Smart_card&oldid=1009449492で見ることができる。
【0010】
上記した接触及び金属表面は、非常に異なる周囲条件下において、読取り/書込み装置との接触を生成できなければならない。例えば、腐食性液体は、金属表面の導電性に影響を与えてはならない。理想的には、それらの外観及び感触も悪影響を受けない。これらの理由から、金及びパラジウム等の非常に貴重な金属が、今日まで金属表面に使用されてきた。通常は、これらの用途における貴金属層は、他の金属表面、特に銅及びニッケル上に堆積される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
高価な貴金属を使用すると、リードフレーム又はスマートカード自体が高価になる。したがって、これらの製品上の金属表面において貴金属を含有する層を、より安価であるが、同等に耐性があり、視覚的に魅力的な金属表面で置き換えることができれば、重要かつ革新的な前進であろう。
【課題を解決するための手段】
【0012】
当業者にとって従来技術から生じるこれらの目的及び更なる目的は、それぞれ、本独立請求項1及び4に従う使用によって達成される。好ましい実施形態は、従属請求項2及び3又は5及び6に示されている。
【0013】
リードフレーム等の電子部品の外部接触面において、ガルバニック堆積された貴金属層の代替層として、以下の組成:
Cu 45~60%、Sn 30~50%及びZn 5~15%(いずれの場合も青銅層の重量に対して)及び/又は
Cu 70~90%、Sn 1~10%及びZn 5~30%(いずれの場合も青銅層の重量に対して)を有する電解堆積された青銅層を使用することによって、上記目的に対する解決策が達成される。驚くべきことに、黄色青銅層又は銀色青銅層は、置き換えられる金又はパラジウム層と色が非常に類似している。それらはまた、加工性及び耐久性の点で貴金属層に決して劣らない。このようにして適用されると、例えばリードフレーム又はチップカードに通常存在する貴金属層を排除することができ、対応製品は、より経済的なものになる。
【0014】
有利な実施形態は、錫リッチな青銅中に以下の組成を含む:
【0015】
【0016】
有利な実施形態は、銅リッチな青銅中に以下の組成を含む:
【0017】
【0018】
リードフレームのような電子部品の外部接触面は多くの製品に見られる。最近数十年のエレクトロニクスの急速な発展により、半導体及びリードフレームは、ほとんどすべての産業において、特に自動車工学において、不可欠な構成要素となっている。電気自動車及びハイブリッド自動車において必要とされるパワーエレクトロニクスは、他の産業における産業製品においてユビキタスな電子システムがどのように存在するかの一例にすぎない。当業者は、この点で考慮され得る他の適用分野を承知している。特に、これらのリードフレームは、スマートカードに見られる。前述したように、それらは、スマートカードに取り付けられた金属表面を介してチップを読取り/書込み装置に接続することができるように使用される。したがって、特にこの用途のために青銅層を使用することが有利である。
図2は、接触面として貴金属含有金表面を有する対応スマートカードを示している。
【0019】
本発明によれば、青銅層は、導電性基材に適用される。後者は、青銅電解質中にカソードとして浸漬され、電流の流れは、同様に電解質と接触しているアノードを介してカソードとアノードとの間に確立される。当業者には、ここからの進め方は既知である。好ましくは、青銅層は、Cu、Ni、ニッケル-リン、Pd、PdNi、Au及び白金からなる群から選択される下層上にこのような方法で堆積させることができる。特に好ましい実施形態では、青銅層は、銅又はニッケル下層の上に堆積され得る。本発明による使用の分野における好ましい層配列は、金属、好ましくは銅の下層と、それに続くニッケル層及び青銅層(複数可)からなる。
図1は、1つ又は2つの青銅層の適用のための非常に特に好ましいフローチャートを示している。
【0020】
第1の工程では、下層を洗浄及びエッチングすることができる。当業者には、ここからの進め方は既知である(Praktische Galvanotechnik(Practical Electroplating),Eugen G.Leuze Verlag KG,7th edition of 2013,page 167以下参照)。続いて、ニッケル層を、好ましくは下層に適用する。これにより、システム全体の耐食性が確実に改善される。ここでも、当業者は、十分によく知られた手順によってガイドされる(https://de.wikipedia.org/w/index.php?title=Galvanisch_Nickel&oldid=206755991)。別の洗浄工程の後、第1の青銅層をニッケル層に適用する。白色の外観を有する上層(upper layer)が所望される場合、上記のように錫リッチ青銅が堆積できる青銅電解質を選択する。このトップ層(top layer)は、パラジウム層に非常に類似しているように見える。しかしながら、表面をより金のように見せたい場合、対応電解質から、銅リッチな青銅合金を堆積させる。これらの目的のために好ましく使用することができる電解質は、以下に開示した特許出願において見出すことができる:EP1961840A1、EP2116634A1、EP2310558A1、EP2606164A1、DE102011121799A1、DE102011121798A1。対応電解質はまた、例えば、Umicore Galvanotechnik GmbHから、パラジウム代替物としてMiralloy(登録商標)2841 HS及び金代替物としてMiralloy(登録商標)2847 1N HSの名称でも市販されている。
【0021】
使用される青銅電解質に関して、それぞれの表面の色は、堆積パラメータの選択によって決定的に影響を受け得る。白色の堆積をもたらす青銅電解質については、好ましくは、Miralloy(登録商標)2841 HSなどの錫リッチ青銅電解質を使用する。堆積中の高い温度、電解質中の高すぎる錫含有量又は高すぎるシアン化物含有量は、いくらか灰色がかった堆積をもたらす。高い電流密度又は電解質中の高い銅含有量、並びに高すぎるpH値は、より黄色がかった堆積物をもたらす。当業者にとって許容可能な堆積が生成されるように好適なパラメータを選択することは、当業者にとって重要である。黄金色の堆積をもたらす青銅電解質については、Miralloy(登録商標)2847 1N HS等の銅がより豊富な青銅電解質が、好ましくは使用される。堆積中の高い温度、電解質中の高すぎる錫含有量又は高すぎるシアン化物含有量は、いくらか白っぽい灰色がかった堆積をもたらす。高い電流密度又は電解質中の高い銅含有量、並びに高すぎるpH値は、より赤みがかった堆積をもたらす。当業者にとって許容可能な堆積が生成されるように好適なパラメータを選択することは、当業者にとって重要である。
【0022】
パラジウム(白色)又は金(黄色)層を置き換える青銅層の色に関しては、それらは、以下のようにCielab系で特徴付けできることに留意すべきである。堆積された白色(錫が豊富な)青銅金属層は、有利なことに、+84を超えるL*値を有する。Cielab表色系(EN ISO11664-4-出願日における最新版)によって、a*値は好ましくは-0.2~0.25であり、b*値は+2~+4である。これらの値はコニカミノルタのCM-700dを用いて決定された。堆積された黄色(銅リッチ)青銅層は、有利なことに、+97を超えるL*値を有する。Cielab表色系(EN ISO11664-4-出願日における最新版)によって、a*値は好ましくは-0.2~0.2であり、b*値は+2~+4である。これらの値はコニカミノルタのCM-700dを用いて決定された。
【0023】
上記のニッケル下層は、当業者によって製造することができる(例えば、DE102018133244A1及びそこに引用された文献)。好ましくは、このようなニッケル層は、スルファミン酸ニッケル電解質から生じる。古くから知られており、今日でも様々な変形形態で使用されているニッケル堆積用浴は、300~450g/lのスルファミン酸ニッケル、0~30g/Lの塩化ニッケル及び30~45g/Lのホウ酸の基本成分を有するスルファミン酸ニッケル浴である(Praktische Galvanotechnik(Practical Electroplating),Eugen G.Leuze Verlag KG,7th edition 2013,p.272以下参照)。他のものは、例えば、Umicore Galvanotechnik GmbHからNIPHOS(登録商標)964又はNIPHOS(登録商標)964 HSの名称で市販されており、並びに、例えば、https://www.microchemicals.com/de/produkte/galvanik/nickel_elektrolyt_nb_semiplate_ni_100.htmlで市販されている。ニッケル層の厚さは、当業者によって決定されるべきであり、この用途の場合、2~4μm、好ましくは2.5~3.5μm、非常に好ましくは2.75~3.25μmであるべきである。
【0024】
青銅層の厚さもまた、当業者によって彼又は彼女の好みに従って設定することができる。パラジウム代替物と考えられる白色に見える青銅層は、好ましくは0.1~2μm、好ましくは0.2~1μm、非常に好ましくは0.3~0.7μmの厚さを有する。金の代替物と考えられる黄色に見える青銅層は、好ましくは0.1~2μm、好ましくは0.2~1μm、非常に好ましくは0.3~0.7μmの厚さを有する。
【0025】
本発明はまた、少なくとも1つの導電性下層と、第1の青銅層と、少なくとも組成において第1の青銅層と異なる第2の青銅層と、の有利な層配列にも関する。したがって、本発明は、金属下層と、2つの連続した電解堆積された青銅層と、を有する層配列を含み、これら2つの層のうちの一方は、次の組成:
Cu 45~60%、Sn 30~50%及びZn 5~15%(いずれの場合も青銅層に対して)、
これらの2つの層のうちもう一方は、次の組成:
Cu 70~90%、Sn 1~10%及びZn 5~30%(いずれの場合も青銅層に対して)を有する。組成に関して上記した好ましい実施形態は、必要な変更を加えて、ここで層配列にも適用される。
【0026】
どの表面色が所望されるかに応じて、錫リッチ又は銅リッチな青銅層が、最終表層を形成することができる。好ましくは、表層は、より銅リッチな、すなわち黄色がかった合金を有する層である。層又は下層の堆積については、使用に関する上記の説明が適宜適用される。当業者であれば、上記の説明に従って下層を選択し、確立することもできる。青銅層の厚さについても、上記の説明を参照されたい。青銅層は、一般に、コンタクト材料の最上層を形成する。最後に、それらには、変色防止保護、トップコート及び/又はパッシベーションとして当業者に知られている透明な有機保護膜のみが有利に提供される。当業者は、これらの工程を実施する方法を知っている(Praktische Galvanotechnik(Practical Electroplating),Leuze Verlag,7th edition of 2013,page 167以下参照)。変色防止保護の適用は、例えば、装飾貴金属に関する保護プロセスである。ナノメートル範囲のこの完全に透明な層は、酸化、変色及び機械的応力から基材を保護する。色及び光沢は、影響を受けない。コーティングは、耐薬品性、防汚性及び撥水性(dirt and water repellent)であり、長い耐用年数を有する。
【0027】
ここで提示される青銅層は、少なくとも特定の用途のために、問題なく、対応のより高価な貴金属表層を容易に置き換えることができる。これにより、対応の貴金属は高価であるため、使用コストの劇的な低減につながる。特に、金及びパラジウム表面は、このようにして有利に置き換えることができる。試験において、本発明は驚くほど有利であることが証明された。以下の表1は、標準的な金又はパラジウム表面と比較した、まさに説明している本発明による層配列に関する対応する試験及び結果を示している。金又はパラジウムと比較して、青銅堆積物は、より低いスクラッチ感受性、必要とされる腐食試験における同等の耐性、及びほとんど同一の外観を提供する。
【0028】
【0029】
コーティング又は層構造全体の腐食に対する感受性を検出するために、4成分有害ガス試験を、検定に用いた。
【0030】
4成分有害ガス試験(EN 60068-2-60)は、SO2、NO2、Cl2、H2Sからなり、特殊な有害ガス空調システムでも実施される。
【0031】
プレッシャークッカー保存試験(https://storage.googleapis.com/verasol-assets/Global-LEAP-EPC-Test-Method_v1.pdf)は、高圧及び高温でプリント回路板製品に対して通常実施される層間剥離試験である。堆積された層の層間剥離をもたらし得る堆積された層からのガス放出も、この試験で検出される。
【0032】
表1のリストから、より低コストの青銅層が、検討されている適用分野での使用に関していかなる悪影響も引き起こすことなく、貴金属層を確実に置き換えることができることは、明らかである。これは、優先日においては決して予想されなかった。
【0033】
以下の方法は、本発明に関連して特に成功することが見出されている。
【0034】
方法工程1:
1a)基材(例えば、銅クラッドL/Fスマートカード箔)+銅活性化(酸化銅を除去するためのマイクロ銅エッチング)+1~2μmニッケル+0.5~1μm白色青銅+変色防止保護/トップコート/パッシベーション(透明有機保護膜)
1b)基材(例えば、銅クラッドL/Fスマートカード箔)+銅活性化+1~2μmニッケル+0.5~1μm白色青銅
1c)基材(例えば、銅クラッドL/Fスマートカード箔)+銅活性化+0.2~1μm白色青銅+変色防止保護/トップコート/パッシベーション
1d)基材(例えば、銅クラッドL/Fスマートカード箔)+銅活性化+0.2~1μm白色青銅
【0035】
方法工程2:
2a)基材(例えば、銅クラッドL/Fスマートカード箔)+銅活性化+1~2μmニッケル+0.2μm~1μm黄色青銅+変色防止保護/トップコート/パッシベーション
2b)基材(例えば、銅クラッドL/Fスマートカード箔)+銅活性化+1~2μmニッケル+0.2μm~1μm黄色青銅
2c)基材(例えば、銅クラッドL/Fスマートカード箔)+銅活性化+0.2μm~1μm黄色青銅+変色防止保護/トップコート/パッシベーション
2d)基材(例えば、銅クラッドL/Fスマートカード箔)+銅活性化+0.2μm~1μmの黄色青銅
2e)基材(例えば、銅クラッドL/Fスマートカード箔)+銅活性化+1~2μmニッケル+0.5~1μm白色青銅+0.2μm~1μm黄色青銅+変色防止保護/トップコート/パッシベーション
2f)基材(例えば、銅クラッドL/Fスマートカード箔)+銅活性化+1~2μmニッケル+0.5~1μm白色青銅+0.2μm~1μm黄色青銅
2g)基材(例えば、銅クラッドL/Fスマートカード箔)+銅活性化+0.5~1μm白色青銅+0.2μm~1μm黄色青銅+変色防止保護/トップコート/パッシベーション
2h)基材(例えば、銅クラッドL/Fスマートカード箔)+銅活性化+0.5~1μmの白色青銅+0.2μm~1μmの黄色青銅
【図面の簡単な説明】
【0036】
【
図1】1つ又は2つの青銅層の適用のための非常に特に好ましいフローチャートである。
【
図2】接触面として貴金属含有金表面を有する対応スマートカードである。
【発明を実施するための形態】
【0037】
[実施例]
以下の層を、ポリイミド箔が積層された予め構造化された銅箔に電解塗布した:
・1~2μmの厚さを有するニッケルの層と、
・0.1~2μmの厚さを有する、白色青銅の、例えばUmicore Miralloy 2841 HSの層;
・黄色青銅の層、例えば、0.1~2μmの厚さを有するUmicore Miralloy 2847 1N HS;
・各場合において0.1~2μmの間の厚さを有する、これらの白色青銅プロセス及び黄色青銅プロセスの両方の組み合わせ。
【0038】
当業者であれば、
図1に示した上記の実施形態によって進めるが、好ましくは以下の通りである。
【0039】
1.基材の調製、洗浄及び活性化
2.ニッケルの接着促進層の堆積
3.次の工程の準備
4.白色青銅合金層の電解堆積
5.黄色青銅合金層の電解堆積
6.又は白色+黄色青銅合金層の電解堆積
7.次の工程の準備
8.不動態化/変色防止保護/トップコートの堆積
9.後処理、乾燥
【0040】
堆積のためのそれぞれの基材の電解洗浄、脱脂、リンス及び活性化のための工程が、本発明による層配列の堆積に含まれることは、有利である。したがって、上に記載した方法工程における調製工程は、これらの活動を含むことができる。好ましくは、次の電解工程の準備は、以下の通りである:
・節約リンスでリンスし、
・水で、好ましくはカスケードリンス技術で、繰り返しリンスし、
・最後に、青銅合金でコーティングされた得られた物品を乾燥させる。
【0041】
本発明によれば、「電解」という用語は、プロセスが外部電源を使用して(例えば、電解的に)行われることを意味している。
【0042】
実行に関する更なる情報:
第1の工程:
前洗浄のために、酸性クリーナー、例えば、Umicore Galvanotechnik製のUmicore Cleaner 865(https://ep.umicore.com/storage/ep/umicoregt-list-of-products-april-2021.pdf)
組成:
Umicore Cleaner 865濃縮液:30ml/l g/l(20~40ml/l)
作業条件:
pH1~2、
温度35℃(25~40℃)
銅活性化のために:銅マイクロエッチング剤、
例えば、Umicore Galvanotechnik製のUmicore Micro-Etch 910(https://ep.umicore.com/storage/ep/umicoregt-list-of-products-april-2021.pdf)
組成:
Umicore Micro-Etch 910塩混合物50g/l(40~60g/l)。
取扱説明書の製造元の指示による更なる成分
作業条件:
pH約1~2、
温度25℃(25~35℃)
【0043】
第2の工程:
接着促進ニッケル層を生成させるために:
例えば、Umicore NIRUNA 808(https://ep.umicore.com/storage/ep/umicoregt-list-of-products-april-2021.pdf)
組成:
NIRUNA 808補充濃縮液:ニッケル80g/l(75~85g/l)
塩化ニッケル8g/l(6~10g/l)
ホウ酸45g/l(42~48g/l)。取扱説明書の製造元の指示による更なる成分
作業条件:
pH3.8(3.5~4.1)
温度57℃(55~59℃)
電流密度5A/dm2(2~8A/dm2)
【0044】
第3の工程:
アルカリ洗浄、例えば、Umicore Galvanotechnik製のUmicore Cleaner 6032(https://ep.umicore.com/storage/ep/umicoregt-list-of-products-april-2021.pdf)
組成:
補充塩60g/l(50~100g/l)
取扱説明書の製造元の指示による更なる成分
作業条件:
pH11.5(10~13)
温度55℃(40~60℃)
電流密度12A/dm2(5~15A/dm2)
【0045】
第4~第6の工程:
金又はパラジウム代替物として青銅層を適用するための方法
以下の方法:
金に類似した青銅層を生成させるために、例えば、MIRALLOY(登録商標)2847 1N HS、Umicore Galvanotechnik(https://ep.umicore.com/storage/ep/umicoregt-list-of-products-april-2021.pdf)
組成:
MIRALLOY亜鉛塩1 6.25g/l
MIRALLOY銅塩1 25.4g/l
MIRALLOY錫塩2 67g/l
取扱説明書の製造元の指示による更なる成分
作業条件:
pH値:アルカリ性
温度60℃(58~62℃)
電流密度9A/dm2(7~10A/dm2)
パラジウムに類似した青銅層を生成させるために、例えば、Umicore Galvanotechnik製のMIRALLOY(登録商標)2841 HS(https://ep.umicore.com/storage/ep/umicoregt-list-of-products-april-2021.pdf)
組成:
MIRALLOY錫塩2 69g/l
MIRALLOY亜鉛塩1 3.375g/l
MIRALLOY銅塩1 14.8g/l
取扱説明書の製造元の指示による更なる成分
作業条件:
pH値:アルカリ性
温度60℃(58~62℃)
電流密度4A/dm2(3~4A/dm2)
【0046】
第7の工程:
アルカリ洗浄、例えば、Umicore Galvanotechnik製のUmicore Cleaner 6032(https://ep.umicore.com/storage/ep/umicoregt-list-of-products-april-2021.pdf)
組成:
補充塩60g/l(50~100g/l)
取扱説明書の製造元の指示による更なる成分
作業条件:
pH11.5(10~13)
温度55℃(40~60℃)
電流密度12A/dm2(5~15A/dm2)
【0047】
第8の工程:
不動態化、変色防止保護又はトップコートを適用するための方法、例えば、Umicore Sealing 692 EL(https://ep.umicore.com/storage/ep/umicoregt-list-of-products-april-2021.pdf)
組成:
Umicore Sealing 692濃縮液10ml/l(2~50ml/l)
取扱説明書の製造元の指示による更なる成分
作業条件:
pH9.5(9~10)
温度55℃(53~57℃)
電圧3V(2.0~4.0V)
個々のプロセス工程の間の方法工程は、一般的に、適切な品質の水によるリンスプロセスである。
【国際調査報告】