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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-05
(54)【発明の名称】調節性核酸配列
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/11 20060101AFI20240628BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20240628BHJP
   C12N 15/861 20060101ALI20240628BHJP
   C12N 15/864 20060101ALI20240628BHJP
   C12N 15/867 20060101ALI20240628BHJP
   C12N 7/01 20060101ALI20240628BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20240628BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20240628BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20240628BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20240628BHJP
   C12P 21/02 20060101ALI20240628BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20240628BHJP
   A61K 35/761 20150101ALI20240628BHJP
   A61K 35/76 20150101ALI20240628BHJP
   A61P 21/04 20060101ALI20240628BHJP
   A61P 21/00 20060101ALI20240628BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240628BHJP
   A61K 31/7088 20060101ALI20240628BHJP
【FI】
C12N15/11 Z ZNA
C12N15/63 Z
C12N15/861 Z
C12N15/864 100Z
C12N15/867 Z
C12N7/01
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12P21/02 C
A61K48/00
A61K35/761
A61K35/76
A61P21/04
A61P21/00
A61P43/00 105
A61K31/7088
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023579317
(86)(22)【出願日】2022-06-23
(85)【翻訳文提出日】2024-02-16
(86)【国際出願番号】 GB2022051611
(87)【国際公開番号】W WO2022269269
(87)【国際公開日】2022-12-29
(31)【優先権主張番号】2108997.4
(32)【優先日】2021-06-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(31)【優先権主張番号】2111317.0
(32)【優先日】2021-08-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520063510
【氏名又は名称】アスクバイオ・ユーケー・リミテッド
(71)【出願人】
【識別番号】520375033
【氏名又は名称】アスクレピオス バイオファーマシューティカル, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ホルヘ・オマール・ジャニェス-クニャ
(72)【発明者】
【氏名】フアン・マヌエル・イグレシアス
(72)【発明者】
【氏名】シンクレア・クーパー
(72)【発明者】
【氏名】マイケル・エル・ロバーツ
(72)【発明者】
【氏名】アントニア・イヴリピオティ
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
4C084
4C086
4C087
【Fターム(参考)】
4B064AG01
4B064CA02
4B064CA05
4B064CA06
4B064CA08
4B064CA10
4B064CA19
4B064CC24
4B064DA01
4B064DA13
4B065AA01X
4B065AA01Y
4B065AA57X
4B065AA57Y
4B065AA72X
4B065AA72Y
4B065AA83X
4B065AA83Y
4B065AA90X
4B065AA90Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065CA44
4B065CA46
4C084AA13
4C084NA14
4C084ZA941
4C084ZA942
4C084ZB211
4C084ZB212
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086EA16
4C086NA14
4C086ZA94
4C086ZB21
4C087AA01
4C087AA02
4C087BC83
4C087NA14
4C087ZA94
4C087ZB21
(57)【要約】
本発明は、調節性核酸配列、特に、筋特異的プロモーター、そのエレメント、及び遺伝子の筋特異的発現を増強することが可能な、他のこのような核酸配列に関する。本発明はまた、このような筋特異的調節性核酸配列を含む、発現構築物、ベクター、及び細胞、並びにこれらの使用方法にも関する。調節性核酸配列は、遺伝子治療への適用に、特に有用であるが、また、バイオプロセシング及びバイオテクノロジー等、他の領域においても有用である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)配列番号1~29、66のうちのいずれか1つに従う配列、若しくはその機能的バリアント;又は
b)配列番号30~47のうちのいずれか1つに従う配列、若しくはその機能的バリアントを含むシス調節性モジュール(CRM)
を含む合成筋特異的プロモーター。
【請求項2】
配列番号1~29、66のうちのいずれか1つと少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、又は99%同一である配列を含む、請求項1a)に記載の合成筋特異的プロモーター。
【請求項3】
CRMが、配列番号30~47のうちのいずれか1つと少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、又は99%同一である配列を含む、請求項1b)に記載の合成筋特異的プロモーター。
【請求項4】
プロモーターエレメントに作動可能に連結された、上記で規定される前記CRMを含む、請求項3に記載の合成筋特異的プロモーター。
【請求項5】
機能的バリアントが、参照プロモーターの活性のうちの少なくとも25%、50%、75%、80%、85%、90%、95%、又は100%を保持する、請求項1から4のいずれか一項に記載の合成筋特異的プロモーター。
【請求項6】
配列番号48~61、67のうちのいずれか1つに従う配列、又はその機能的バリアントを含む、筋特異的シス調節性エレメント(CRE)。
【請求項7】
配列番号48~61、67のうちのいずれか1つと少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、又は99%同一である配列を含む、請求項6に記載の筋特異的CRE。
【請求項8】
請求項6又は7に記載のCREを含む、合成筋特異的プロモーター。
【請求項9】
配列番号62~65、68のうちのいずれか1つに従う配列、又はその機能的バリアントを含む、単離された最小プロモーター又は単離された近位プロモーター。
【請求項10】
配列番号62~65、68と少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、又は99%同一である配列を含む、請求項9に記載の単離された最小プロモーター又は単離された近位プロモーター。
【請求項11】
請求項9又は10に記載の最小プロモーター又は近位プロモーターを含む合成筋特異的プロモーター。
【請求項12】
発現産物をコードする配列に作動可能に連結された、請求項1から5、8、及び11のいずれか一項に記載の合成筋特異的プロモーターを含む発現カセット。
【請求項13】
請求項1から5、8、及び11のいずれか一項に記載の合成筋特異的プロモーター、又は請求項12に記載の発現カセットを含むベクター。
【請求項14】
AAVベクター、アデノウイルスベクター、レトロウイルスベクター、又はレンチウイルスベクターである、請求項13に記載のベクター。
【請求項15】
請求項14に記載のベクターを含むビリオン。
【請求項16】
請求項1から5、8、及び11のいずれか一項に記載の合成筋特異的プロモーター、請求項12に記載の発現カセット、請求項13若しくは14に記載のベクター、又は請求項15に記載のビリオンを含む医薬組成物。
【請求項17】
治療における使用のための、請求項1から5、8、及び11のいずれか一項に記載の合成筋特異的プロモーター、請求項12に記載の発現カセット、請求項13若しくは14に記載のベクター、請求項15に記載のビリオン、又は請求項16に記載の医薬組成物。
【請求項18】
請求項1から5、8、及び11のいずれか一項に記載の合成筋特異的プロモーター、請求項12に記載の発現カセット、請求項13又は14に記載のベクター、請求項15に記載のビリオンを含む細胞。
【請求項19】
医学的状態又は疾患の処置のための医薬組成物の製造における使用のための、請求項1から5、8、及び11のいずれか一項に記載の合成筋特異的プロモーター、請求項12に記載の発現カセット、請求項13若しくは14に記載のベクター、請求項15に記載のビリオン、又は請求項16に記載の医薬組成物。
【請求項20】
発現産物を産生するための方法であって、請求項12に記載の合成筋特異的発現カセットを筋細胞内に提供する工程と、合成筋特異的発現カセット内に存在する遺伝子を発現させる工程とを含む方法。
【請求項21】
治療用導入遺伝子を、筋細胞内で発現させる方法であって、筋細胞へと、請求項12に記載の合成筋特異的発現カセット、請求項13又は14に記載のベクター、請求項15に記載のビリオンを導入する工程を含む方法。
【請求項22】
それを必要とする対象、好ましくは、ヒトを治療する方法であって、
対象へと、請求項1から5、8、及び11のいずれか一項に記載のプロモーターに作動可能に連結された治療用産物をコードする配列を含む、請求項12に記載の発現カセット、請求項13若しくは14に記載のベクター、請求項15に記載のビリオン、又は請求項16に記載の医薬組成物を投与する工程と;
治療量の治療用産物を、前記対象の筋内で発現させる工程と
を含む方法。
【請求項23】
治療量の治療用産物が、骨格筋内及び/又は心筋内で発現される、請求項22に記載の対象を治療する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、調節性核酸配列、特に、筋特異的合成プロモーター、そのエレメント、及び遺伝子の筋特異的発現を増強することが可能な、他のこのような核酸配列に関する。本発明はまた、このような筋特異的調節性核酸配列を含む、発現構築物、ベクター、及び細胞、並びにこれらの使用方法にも関する。調節性核酸配列は、遺伝子治療への適用に、特に有用であるが、また、バイオプロセシング及びバイオテクノロジー等、他の領域においても有用である。
【背景技術】
【0002】
以下の議論は、本開示の理解において、読者の一助となるように提示されるものであり、先行技術の内容又は関与性についての、いかなる容認も構成するものではない。
【0003】
遺伝子治療を含む、多くの領域において、所望の細胞内、組織内、又は臓器内において、タンパク質又は核酸の発現産物を産生するように、遺伝子の発現を駆動することが可能な、調節性核酸配列をもたらすことが所望される。
【0004】
筋内の治療用遺伝子の発現は、遺伝子治療のために魅力的である。筋内の遺伝子治療は、ジストロフィン及びサルコグリカン等、多様な筋肉タンパク質の発現を是正又は強化する潜在的可能性を有する。これは、筋ジストロフィー、例えば、デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)等の状態を処置するのに使用されうる。筋肉はまた、うっ血性心不全等、他の状態の処置のための治療用タンパク質を発現させるプラットフォームとしても使用されうる。
【0005】
遺伝子を、筋細胞へと送達するのに、多様なベクター、例えば、アデノウイルス、レトロウイルス、レンチウイルス、及びアデノ随伴ウイルス(AAV)の他、プラスミド等の非ウイルスベクターが使用されている。アデノウイルスベクターは、比較的大きなクローニング能力を有し、一部の細胞への、効率的な形質導入が可能である。しかし、アデノウイルスベクターは、それらが誘発する傾向がある、強力な免疫応答の点で、著明な難題に直面している。レトロウイルス及びレンチウイルスベクターは、ゲノムへと、安定的に組み込まれるが、これは、利益及び不利益のいずれとも関連している。レンチウイルスベクターは、分裂細胞及び非分裂細胞のいずれへも形質導入するが、大半の常套的レトロウイルスベクターは、分裂細胞だけへと形質導入するため、非分裂筋細胞における、それらの使用を制限している。プラスミドDNAは、in vitroにおいて、遺伝子を、筋細胞へと導入するのに使用されうるが、臨床的文脈における、それらの潜在的有用性は、それほど明らかではない。AAVベクターは、特に、筋内における遺伝子治療の適用のために魅力的である。AAVベクターは、筋細胞への、天然の指向性を提示し、治療用ペイロードの、長期にわたる発現を駆動することが可能であり、免疫応答の誘発が最小限である。一部の遺伝子治療用ベクターの、筋細胞へと優先的に形質導入する能力にもかかわらず、オフターゲットの形質導入は、やはり生じている。AAVの血清型1、2、及びキメラ2.5を、デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)及びアルファ1アンチトリプシン欠損症の処置に使用するための、いくつかのフェーズ1及びフェーズ2の臨床試験が報告されている(D. E. Bowles、S. WJMcPhee、C. Li、S. J. Gray、J. J. Samulski、A. S. Camp、J. Li、B. Wang、P. E. Monahan、J. E. Rabinowitz、J. C. Grieger、La. Govindasamy、M. Agbandje-McKenna、X. Xiao、及びR. J. Samulski、「Phase 1 gene therapy for Duchenne Muscular Dystrophy using a translational optimised AAV vector」、Molecular Therapy、20、443~455(2012);M. L. Brantly、J. D. Chulay、L. Wang、C. Mueller、M. Humphries、L. T. Spencer、F. Rouhani、T. J. Conlon、R. Calcedo、M. R. Berts、C. Spencer、B. J. Byrne、J. M. Wilson、T. R. Flotte、「Sustained transgene expression despite T lymphocyte responses in a clinical trial of rAAVl-AAT gene therapy」、Proceedings of National Academy of Sciences of United States of America 106、16363~16368 (2009);T. R. Flotte、M. L. Brantly、L. T. Spencer、B. J. Byrne、C. T. Spencer、D. J. Baker、M. Humphries、「15 Phase I trial of intramuscular injection of a recombinant adeno-associated virus alpha 1 -antitrypsin (rAAV2-CB-hAAT) gene vector to AAT-deficient adults」、Human gene therapy、15、93~128 (2004);T. R. Flotte、B. C. Trapnell、M. Humphries、B. Carey、R. Calcedo、F. Rouhani、M. Campbell-Thompson、A. T. Yachnis、R. A. Sandhaus、N. G. McElvaney、C. Mueller、L. M. Messina、J. M. Wilson、M. Brantly、D. R. Knop、G. J. Ye、J. D. Chulay、「Phase 2 clinical trial of a recombinant adeno-associated viral vector expressing alphal -antitrypsin: interim results」、Human gene therapy、22、1239~1247(2011);C. Mueller、J. D. Chulay、B. C. Trapnell、M. Humphries、B. Carey、R. A. Sandhaus、N. G. McElvaney、L. Messina、Q. Tang、F. N. Rouhani、M. Campbell-Thompson、A. D. Fu、A. Yachnis、D. R. Knop、G. J. Ye、M. Brantly、R. Calcedo、S. Somanathan、L. P. Richman、R. H. Vonderheide、M. A. Hulme、T. M. Brusko、J. M. Wilson、T. R. Flotte、「Human Treg responses allow sustained recombinant adeno-associated virus-mediated transgene expression」、The Journal of clinical investigation、123、5310~5318 (2013))。
【0006】
遺伝子の発現を、筋特異的な形で調節するシステムをもたらすことが所望される。理想的には、このようなシステムは、筋肉に高度に特異的であり(これにより、非標的組織内のオフターゲット発現を回避又は最小化し)、また、強力でもある、すなわち、筋内の高発現レベルを駆動する。更に、遺伝子発現を、主に骨格筋特異的に、又は、主に心筋特異的に調節するシステムを提供することが所望されうる。このようなシステムは、骨格筋又は心筋の疾患又は障害の処置に所望される遺伝子特異的発現のための、発現構築物及び発現ベクターに組み込まれうる。シス作用型調節エレメントの使用が、特異性及び活性のいずれをももたらすことが仮定されている。典型的に、これは、シス調節性エンハンサー配列、すなわち、プロモーターの活性を増大させるように、シスにおいて作用する核酸配列に関する。
【0007】
多様な筋特異的プロモーターは、当技術分野で公知であり、典型的に、例えば、デスミン、骨格アクチン、心α-アクチン、筋クレアチンキナーゼ(CKM)、ミオシンの重鎖及び軽鎖、並びにトロポニンT/Iをコードする遺伝子等、主に筋内で発現される遺伝子から得られる。C5~C12プロモーターは、公知の合成プロモーターを表す。
【0008】
調節配列により占められる遺伝子治療ベクターの比率を最小化するように、長さが短い調節配列が特に所望され、これは、特に、AAVベクター等、能力(ペイロード)が限定的な遺伝子治療用ベクターに重要である。更に、強力なプロモーターを施すことが所望されるが、多くの場合に、当業者は、例えば、多様な能力を有する、広範なプロモーターから、所望の能力を有する、適切なプロモーターの選択が可能であることが所望される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許第6,200,560号
【特許文献2】米国特許第6,221,349号
【特許文献3】米国特許第4,683,195号
【特許文献4】米国特許出願第20050272923号
【特許文献5】米国特許出願第20050266552号
【特許文献6】米国特許出願第20050142581号
【特許文献7】米国特許出願第20050075492号
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】D. E. Bowles、S. WJ McPhee、C. Li、S. J. Gray、J. J. Samulski、A. S. Camp、J. Li、B. Wang、P. E. Monahan、J. E. Rabinowitz、J. C. Grieger、La. Govindasamy、M. Agbandje-McKenna、X. Xiao and R. J. Samulski、「Phase 1 gene therapy for Duchenne Muscular Dystrophy using a translational optimised AAV vector」、Molecular Therapy、20、443~455(2012)
【非特許文献2】M. L. Brantly、J. D. Chulay、L. Wang、C. Mueller、M. Humphries、L. T. Spencer、F. Rouhani、T. J. Conlon、R. Calcedo、M. R. Berts、C. Spencer、B. J. Byrne、J. M. Wilson、T. R. Flotte、「Sustained transgene expression despite T lymphocyte responses in a clinical trial of rAAVl-AAT gene therapy」、Proceedings of National Academy of Sciences of United States of America 106、16363~16368 (2009)
【非特許文献3】T. R. Flotte、M. L. Brantly、L. T. Spencer、B. J. Byrne、C. T. Spencer、D. J. Baker、M. Humphries、「15 Phase I trial of intramuscular injection of a recombinant adeno-associated virus alpha 1 -antitrypsin (rAAV2-CB-hAAT) gene vector to AAT-deficient adults」、Human gene therapy、15、93~128 (2004)
【非特許文献4】T. R. Flotte、B. C. Trapnell、M. Humphries、B. Carey、R. Calcedo、F. Rouhani、M. Campbell-Thompson、A. T. Yachnis、R. A. Sandhaus、N. G. McElvaney、C. Mueller、L. M. Messina、J. M. Wilson、M. Brantly、D. R. Knop、G. J. Ye、J. D. Chulay、「Phase 2 clinical trial of a recombinant adeno-associated viral vector expressing alphal -antitrypsin: interim results」、Human gene therapy、22、1239~1247(2011)
【非特許文献5】C. Mueller、J. D. Chulay、B. C. Trapnell、M. Humphries、B. Carey、R. A. Sandhaus、N. G. McElvaney、L. Messina、Q. Tang、F. N. Rouhani、M. Campbell-Thompson、A. D. Fu、A. Yachnis、D. R. Knop、G. J. Ye、M. Brantly、R. Calcedo、S. Somanathan、L. P. Richman、R. H. Vonderheide、M. A. Hulme、T. M. Brusko、J. M. Wilson、T. R. Flotte、「Human Treg responses allow sustained recombinant adeno-associated virus-mediated transgene expression」、The Journal of clinical investigation、123、5310~5318 (2013)
【非特許文献6】http://jaspar.genereg.net/ and http://gene-regulation.com/pub/databases.html
【非特許文献7】Gene Ther.、2008年11月;15(22):1489~99
【非特許文献8】「Current Protocols in Molecular Biology」(Ausubel、2000、Wiley and son Inc、Library of Congress、USA)
【非特許文献9】「Molecular Cloning: A Laboratory Manual」、3版、(Sambrookら、2001、Cold Spring Harbor、New York:Cold Spring Harbor Laboratory Press)
【非特許文献10】「Oligonucleotide Synthesis」(M. J. Gait編、1984)
【非特許文献11】「Nucleic Acid Hybridization」(Harries及びHiggins編、1984)
【非特許文献12】「Transcription and Translation」(Hames及びHiggins編、1984)
【非特許文献13】「Culture of Animal Cells」(Freshney、Alan R. Liss, Inc.、1987)
【非特許文献14】「Immobilized Cells and Enzymes」(IRL Press、1986)
【非特許文献15】Perbal、「A Practical Guide to Molecular Cloning」(1984)
【非特許文献16】「Methods in Enzymology」(Abelson及びSimon責任編集、Academic Press,Inc.、New York)、特に、154及び155巻(Wuら編)及び185巻、「Gene Expression Technology」(Goeddel編)
【非特許文献17】「Gene Transfer Vectors For Mammalian Cells」(Miller及びCalos編、1987、Cold Spring Harbor Laboratory)
【非特許文献18】「Immunochemical Methods in Cell and Molecular Biology」(Mayer及びWalker編、Academic Press、London、1987)
【非特許文献19】「Handbook of Experimental Immunology」、I~IV巻(Weir及びBlackwell編、1986)
【非特許文献20】「Manipulating the Mouse Embryo」(Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、N.Y.、1986)
【非特許文献21】Hellman及びFried、Nat Protoc.、2007、2(8):1849~1861
【非特許文献22】Altschulら、1990(J Mol Biol、215:403~10)
【非特許文献23】Tatusova及びMadden、1999(FEMS Microbiol Lett、174:247~250
【非特許文献24】Smith及びWaterman(1981)、Adv.Appl.Math.、2:482
【非特許文献25】Needleman及びWunsch(1970)、J.Mol.Biol.、48:443
【非特許文献26】Pearson及びLipman(1988)、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.、85:2444
【非特許文献27】Higgins及びSharp(1988)、Gene、73:237~44
【非特許文献28】Higgins及びSharp(1989)、CABIOS、5:151~3
【非特許文献29】Corpetら(1988)、Nucleic Acids Res.、16:10881~90
【非特許文献30】Huangら(1992)、Comp.Appl.Biosci.、8:155~65
【非特許文献31】Pearsonら(1994)Methods Mol.Biol.、24:307~31
【非特許文献32】Tatianaら(1999)、FEMS Microbiol.Lett.、174:247~50
【非特許文献33】Frommら(1986)、Nature、319:791~3
【非特許文献34】Feignerら(1987)、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、84:7413~7
【非特許文献35】Muellerら(1978)Cell、15:579~85
【非特許文献36】Fraleyら(1983)、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、80:4803~7
【非特許文献37】Kleinら(1987)、Nature、327:70
【非特許文献38】Limら、2003、Genes & Development、17、991~1008
【非特許文献39】Limら、2003、Science、299、1540
【非特許文献40】Lee及びAmbrose、2001、Science、294、862
【非特許文献41】Lauら、2001、Science 294、858~861
【非特許文献42】Lagos -Quintanaら、2002、Current Biology、12、735~739
【非特許文献43】Lagos-Quintanaら、2001、Science、294、853~857
【非特許文献44】Lagos-Quintanaら、2003、RNA、9、175~179
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
当技術分野では、筋特異的遺伝子の発現を駆動することが可能な調節性核酸が、依然として必要とされている。特に、所望の遺伝子(例えば、遺伝子治療の文脈における、治療用導入遺伝子)の筋特異的発現のために、発現構築物及びベクターに組み込まれうる、小型サイズの筋特異的調節配列(例えば、プロモーター、シス調節性モジュール、シス調節性エレメント、及び最小プロモーターエレメント又は近位プロモーターエレメント)が必要とされている。更に、主に、骨格筋内又は心筋内で活性である、小型サイズの筋特異的調節配列であって、所望される遺伝子の骨格筋特異的発現又は心筋特異的発現のための発現構築物及び発現ベクターに組み込まれうる筋特異的調節配列が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の第1の態様では、
a)配列番号1~29、66のうちのいずれか1つに従う配列、若しくはその機能的バリアントを含むか、若しくはこれらからなる合成筋特異的プロモーター;又は
b)配列番号30~47のうちのいずれか1つに従う配列、若しくはその機能的バリアントを含む、シス調節性モジュール(CRM)を含むか、若しくはこれらからなる合成筋特異的プロモーター
が提供される。
【0013】
一部の実施形態では、合成筋特異的プロモーターは、配列番号1~29、66のうちのいずれか1つと少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%同一である配列を含む。
【0014】
一部の実施形態では、合成筋特異的CRMは、配列番号30~47のうちのいずれか1つと少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、又は99%同一である配列を含む。一部の実施形態では、本発明に従う合成筋特異的シス調節性モジュール(CRM)は、
- CRE0119(配列番号48)又はその機能的バリアント;
- CRE0127(配列番号49)又はその機能的バリアント;
- CRE0137(配列番号50)又はその機能的バリアント;
- CRE0138(配列番号51)又はその機能的バリアント;
- CRE0139(配列番号52)又はその機能的バリアント;
- CRE0143(配列番号53)又はその機能的バリアント;
- CRE0145(配列番号54)又はその機能的バリアント;
- CRE0077(配列番号55)又はその機能的バリアント;
- DES_MT_エンハンサー_48bp(配列番号56)又はその機能的バリアント;
- CRE0075(配列番号57)又はその機能的バリアント;
- CRE0083(配列番号58)又はその機能的バリアント;
- Ch2EnhMYL1_3_v1(配列番号59)又はその機能的バリアント;
- CRE0050(配列番号60)又はその機能的バリアント;
- CRE0031(配列番号67)又はその機能的バリアント;及び
- CRE0069(配列番号61)又はその機能的バリアント
からなる群から選択される、2つ又はこれを超える作動可能に連結されたシス調節性エレメント(CRE)を含む。
【0015】
一部の実施形態では、b)に従う、合成筋特異的プロモーターは、プロモーターエレメント(典型的に、最小プロモーター又は近位プロモーター)に作動可能に連結された、上記で明示されたCRMを含む。近位プロモーターは、好ましくは、筋特異的近位プロモーターである。
【0016】
一部の実施形態では、本発明に従う合成筋特異的合成プロモーターは、
- BG_mp(配列番号62)又はその機能的バリアント;
- SCP1(配列番号63)又はその機能的バリアント;
- CRE0070(配列番号64)又はその機能的バリアント;
- CRE0037(配列番号68)又はその機能的バリアント;及び
- CRE0053(配列番号65)又はその機能的バリアント
からなる群から選択される、少なくとも1つのプロモーターエレメントに作動可能に連結された、
- CRE0119(配列番号48)又はその機能的バリアント;
- CRE0127(配列番号49)又はその機能的バリアント;
- CRE0137(配列番号50)又はその機能的バリアント;
- CRE0138(配列番号51)又はその機能的バリアント;
- CRE0139(配列番号52)又はその機能的バリアント;
- CRE0143(配列番号53)又はその機能的バリアント;
- CRE0145(配列番号54)又はその機能的バリアント;
- CRE0077(配列番号55)又はその機能的バリアント;
- DES_MT_エンハンサー_48bp(配列番号56)又はその機能的バリアント;
- CRE0075(配列番号57)又はその機能的バリアント;
- CRE0083(配列番号58)又はその機能的バリアント;
- Ch2EnhMYL1_3_v1(配列番号59)又はその機能的バリアント;
- CRE0050(配列番号60)又はその機能的バリアント;
- CRE0031(配列番号67)又はその機能的バリアント;及び
- CRE0069(配列番号61)又はその機能的バリアント
からなる群から選択される、少なくとも1つのシス調節性エレメント(CRE)を含む。
【0017】
したがって、本発明は、多様な合成筋特異的プロモーター、及びその機能的バリアントを提供する。配列番号1~29、66のうちのいずれか1つのバリアントである、本発明に従う合成プロモーターは、参照プロモーターの活性のうちの少なくとも25%、50%、75%、80%、85%、90%、95%、又は100%を保持することが一般に好ましい。適切には、前記活性は、本明細書で記載される例のうちの1つを使用して評価されるが、他の方法も使用されうる。
【0018】
本発明の別の態様では、配列番号48~61、67のうちのいずれか1つに従う配列、又はそのいずれかの機能的バリアントを含むか、又はこれらからなる、筋特異的シス調節性エレメント(CRE)が提供される。一部の実施形態では、筋特異的CREは、配列番号48~61、又は67のうちのいずれか1つと少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、若しくは99%同一である又はこれらの中の任意のポイント分同一である配列を含む。
【0019】
配列番号48~61、又は67のうちのいずれか1つのバリアントである、本発明に従う筋特異的CREは、参照CREの活性のうちの少なくとも25%、50%、75%、80%、85%、90%、95%、又は100%を保持することが一般に好ましい。適切には、前記活性は、本明細書で記載される例のうちの1つを使用して評価されるが、他の方法も使用されうる。
【0020】
本発明の別の態様では、本発明の任意の態様によるCREを含む合成プロモーターが提供される。
【0021】
本発明の別の態様では、配列番号30~47、又はこれらの機能的バリアントのうちのいずれか1つに従う配列を含むCRMが提供される。一部の実施形態では、筋特異的CRMは、配列番号30~47のうちのいずれか1つと少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、若しくは99%同一である又はこれらの中の任意のポイント分同一である配列を含む。
【0022】
一部の実施形態では、CRMは、
- CRE0119(配列番号48)又はその機能的バリアント;
- CRE0127(配列番号49)又はその機能的バリアント;
- CRE0137(配列番号50)又はその機能的バリアント;
- CRE0138(配列番号51)又はその機能的バリアント;
- CRE0139(配列番号52)又はその機能的バリアント;
- CRE0143(配列番号53)又はその機能的バリアント;
- CRE0145(配列番号54)又はその機能的バリアント;
- CRE0077(配列番号55)又はその機能的バリアント;
- DES_MT_エンハンサー_48bp(配列番号56)又はその機能的バリアント;
- CRE0075(配列番号57)又はその機能的バリアント;
- CRE0083(配列番号58)又はその機能的バリアント;
- Ch2EnhMYL1_3_v1(配列番号59)又はその機能的バリアント;
- CRE0050(配列番号60)又はその機能的バリアント;
- CRE0031(配列番号67)又はその機能的バリアント;及び
- CRE0069(配列番号61)又はその機能的バリアント
からなる群から選択される、2つ又はこれを超える作動可能に連結されたシス調節性エレメント(CRE)を含む。
【0023】
本発明のさらなる態様では、配列番号62~65、68のうちのいずれか1つに従う配列、又はその機能的バリアントを含むか、又はこれらからなる、最小プロモーター又は近位プロモーターが提供される。本発明の別の態様では、前記最小プロモーター又は近位プロモーターを含む合成プロモーター、適切には、前記最小プロモーター又は近位プロモーターを含む合成筋特異的プロモーターが提供される。適切には、機能的バリアントは、配列番号62~65又は68と少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%同一である配列を含む。上記で指し示された通り、「プロモーターエレメント」は、最小プロモーター又は近位プロモーターを指すのに使用されうる。
【0024】
本発明のCRE、CRM、最小/近位プロモーター、及び合成プロモーターは、多様な筋組織において活性であることが可能であり、特に、骨格筋及び/又は心筋において活性でありうるが、これらにおいてもっぱら活性であるわけではない。少なくとも1つの筋組織型、又は少なくとも1つの筋細胞型において活性であるCRE、CRM、プロモーターエレメント、又は合成プロモーターは、「筋特異的」と称されうる。簡便のために、筋特異的CRE、筋特異的CRM、筋特異的プロモーターエレメント、又は筋特異的合成プロモーターは、CRE、CRM、プロモーターエレメント、又は合成プロモーターが、主に、骨格筋内で活性であるのか、心筋内で活性であるのかに応じて、更に亜種に細分されうる。
【0025】
一部の実施形態では、本発明のシス調節性エレメント、CRM、プロモーターエレメント、及び合成プロモーターは、骨格筋特異的である。主に、骨格筋内で活性であり、心筋内では活性が小さいか、又は非活性であるシス調節性エレメント、CRM、プロモーターエレメント、及び合成プロモーターは、「骨格筋特異的」と呼ばれる。骨格筋の非限定例は、大腿四頭筋、横隔膜、前脛骨筋及びヒラメ筋である。
【0026】
一部の実施形態では、本発明のシス調節性エレメント、CRM、プロモーターエレメント、及び合成プロモーターは、心筋特異的である。主に、心筋内で活性であり、骨格筋内では活性が小さいか、又は非活性である、本発明のシス調節性エレメント、CRM、プロモーターエレメント、及び合成プロモーターは、「心筋特異的」と呼ばれる。
【0027】
一部の実施形態では、本発明のシス調節性エレメント、CRM、プロモーターエレメント、及び合成プロモーターは、骨格特異的であり、かつ、心筋特異的である。
【0028】
一部の実施形態では、骨格筋特異的CRE、CRM、プロモーターエレメント、及び合成プロモーターが好ましい場合がある。これらのCRE、CRM、プロモーターエレメント、及び合成プロモーターは、骨格筋内では活性が要求されるが、心臓(心筋)内では、活性を、ほとんど、又は全く伴わない場合に、好ましいプロモーターでありうる。主に、骨格筋内で活性であるようにデザインされた合成筋特異的プロモーター(骨格筋特異的合成プロモーター)の例は、SP0497、SP0498、SP0499、SP0500、SP0501、SP0502、SP0503、SP0504、SP0505、SP0506、SP0507、SP0508、SP0509、SP0510、SP0511、SP0512、SP0513、SP0514、SP0515、SP0516、SP0517、SP0518、SP0519、SP0520、SP0521、SP0522、SP4169、SP0523、及びSP0524を含む。好ましい合成骨格筋特異的プロモーターの例は、SP0498、SP0500、SP0505、SP0508、SP0509、SP0513、SP0519、SP0522、及びSP0524である。骨格筋特異的プロモーターは、速筋及び/又は遅筋において活性でありうる。一部の実施形態では、速筋において活性であり、骨格筋特異的であるCRE、CRM、プロモーターエレメント、及び合成プロモーターが、好ましい場合がある。一部の実施形態では、遅筋において活性であり、骨格筋特異的であるCRE、CRM、プロモーターエレメント、及び合成プロモーターが、好ましい場合がある。一部の実施形態では、遅筋及び速筋のいずれにおいても活性であり、骨格筋特異的であるCRE、CRM、プロモーターエレメント、及び合成プロモーターが、好ましい場合がある。遅筋内で活性であるようにデザインされた骨格筋特異的プロモーターの例は、SP0500、SP0501、及びSP0514である。
【0029】
骨格筋特異的プロモーターは、主に、骨格筋内で活性でありうるが、心筋内でも低度の活性を有しうる。主に、骨格筋内で活性であるようにデザインされているが、また、心筋内でも低度の活性を有することが期待される合成筋特異的プロモーターの例は、SP0497、SP0498、SP0499、及びSP0512を含む。
【0030】
骨格筋特異的プロモーターは、主に、骨格筋内で活性でありうるが、心筋内でも活性を有しうる。主に、骨格筋内で活性であるようにデザインされているが、また、心筋内でも活性を有することが期待される合成筋特異的プロモーターの例は、SP0502、SP0515、SP0521、SP4169、SP0522、SP0523、及びSP0524を含む。
【0031】
一部の実施形態では、配列番号1(SP0497)、配列番号4(SP0500)、配列番号5(SP0501)、配列番号10(SP0506)、配列番号12(SP0508)、配列番号14(SP0510)、配列番号18(SP0514)、配列番号23(SP0519)、配列番号24(SP0520)、配列番号25(SP0521)、及び配列番号26(SP4169)のうちのいずれか1つに従う配列を含むか、又はこれらからなる合成筋特異的プロモーターが、特に好ましい。一部の実施形態では、配列番号4(SP0500)、配列番号14(SP0510)、配列番号18(SP0514)、及び配列番号23(SP0519)のうちのいずれか1つに従う配列を含むか、又はこれらからなる合成筋特異的プロモーターが、特に好ましい。一部の実施形態では、ある特定の筋特異的プロモーターは、ある特定の筋内で、他の筋内、例えば、心筋内、骨格筋内より高度に発現し、配列番号18(SP0514)及び配列番号23(SP0519)が、特に好ましい。
【0032】
一部の実施形態では、配列番号4(SP0500)又はその機能的バリアントを含むか、又はこれらからなる合成筋特異的プロモーターが、特に好ましい。SP0500は、主に、心筋等、ある特定の筋肉内で活性であるが、骨格筋内でも、活性が観察され;SP0500は、心筋内で、骨格筋と比較して、高度に発現される(例えば、図5図6、及び図12を参照されたい)。このように、SP0500は、強力な心筋特異的プロモーターであり、270ヌクレオチド長未満である。
【0033】
一部の実施形態では、配列番号27(SP0522)又はその機能的バリアントを含むか、又はこれらからなる合成筋特異的プロモーターが、特に好ましい。SP0522は、主に、心筋内で活性であるが、骨格筋内でも、活性が観察され;SP0522は、心筋内で、骨格筋と比較して、高度に発現される(例えば、図5図6、及び図17を参照されたい)。このように、SP0522は、強力な心筋特異的プロモーターであり、240ヌクレオチド長未満である。
【0034】
一部の実施形態では、配列番号29(SP0524)又はその機能的バリアントを含むか、又はこれらからなる合成筋特異的プロモーターが、特に好ましい。SP0524は、心筋内及び骨格筋内で活性であり;SP0524は、心筋内と、骨格筋内とで、同等の発現レベルを呈する(例えば、図5図6、及び図18を参照されたい)。このように、SP0524は、長さが250ヌクレオチド未満である筋特異的プロモーターである。
【0035】
一部の実施形態では、配列番号22(SP0518)又はその機能的バリアントを含むか、又はこれらからなる合成筋特異的プロモーターが、好ましい。SP0518は、骨格筋内で活性を有するが、心筋内でも活性が観察される。
【0036】
一部の実施形態では、配列番号11(SP0507)又はその機能的バリアントを含むか、又はこれらからなる合成筋特異的プロモーターが、好ましい。SP0507は、骨格筋内及び心筋内で、活性を有する。
【0037】
一部の実施形態では、配列番号18(SP0514)又はその機能的バリアントを含むか、又はこれらからなる合成筋特異的プロモーターが、好ましい。SP0514は、心筋で活性を有し、骨格筋内でも活性が観察されるが;SP0514は、心筋内で、骨格筋と比較して、高度に発現される(例えば、図5図6、及び図14を参照されたい)。
【0038】
一部の実施形態では、配列番号23(SP0519)又はその機能的バリアントを含むか、又はこれらからなる合成筋特異的プロモーターが、好ましい。SP0519は、骨格筋で活性を有し、心筋内でも活性が観察されるが;SP0519は、一部の骨格筋型における発現を、心筋と比較して増大させている(例えば、図5図6、及び図16を参照されたい)。
【0039】
一部の実施形態では、配列番号4(SP0500)若しくは配列番号27(SP0522)、又はこれらの機能的バリアントを含むか、又はこれらからなる合成筋特異的プロモーターが、特に好ましい。SP0500及びSP0522は、主に、心筋内で活性であるが、骨格筋内でも活性を有する。
【0040】
一部の実施形態では、配列番号4(SP0500)、配列番号27(SP0522)、及び配列番号29(SP0524)、又はこれらの機能的バリアントを含むか、又はこれらからなる合成筋特異的プロモーターが、特に好ましい。
【0041】
一部の実施形態では、配列番号4(SP0500)、配列番号27(SP0522)、配列番号22(SP0518)、及び配列番号29(SP0524)、又はこれらの機能的バリアントを含むか、又はこれらからなる合成筋特異的プロモーターが、特に好ましい。
【0042】
一部の実施形態では、配列番号4(SP0500)、配列番号27(SP0522)、配列番号22(SP0518)、配列番号29(SP0524)、配列番号11(SP0507)、配列番号18(SP0514)、及び配列番号23(SP0519)、又はこれらの機能的バリアントを含むか、又はこれらからなる合成筋特異的プロモーターが、特に好ましい。
【0043】
一部の実施形態では、配列番号66(SP0321)又はその機能的バリアントを含むか、又はこれらからなる合成筋特異的プロモーターが、特に好ましい。SP0321は、筋内で活性であることが期待される。SP0321はまた、肺内で活性であることも期待される。このように、SP0321は、筋特異的プロモーターであり、かつ、肺特異的プロモーターであることが期待される。
【0044】
一部の実施形態では、本発明に従う合成筋特異的合成プロモーターは、横隔膜において、CK8、CK7、又はCMVより高度の活性を有する。一部の実施形態では、本発明に従う合成筋特異的合成プロモーターは、前脛骨筋において、CK8、CK7、又はCMVより高度の活性を有する。一部の実施形態では、本発明に従う合成筋特異的合成プロモーターは、心臓において、CK8、CK7、又はCMVより高度の活性を有する。一部の実施形態では、本発明に従う合成筋特異的合成プロモーターは、大腿四頭筋において、CK8、CK7、又はCMVより高度の活性を有する。一部の実施形態では、本発明に従う合成筋特異的合成プロモーターは、ヒラメ筋において、CK8、CK7、又はCMVより高度の活性を有する。一部の実施形態では、本発明に従う合成筋特異的合成プロモーターは、肝臓において、CK8、CK7、又はCMVより低度の活性を有する。一部の実施形態では、高度の活性は、対照、例えば、CK8、CK7、又はCMVと比較して、少なくとも5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、99%、若しくはこれを超える活性、又は少なくとも1倍、2倍、3倍、4倍、5倍、10倍、20倍、30倍、40倍、50倍、100倍、500倍、1000倍、若しくはこれを超える活性である。合成プロモーターの活性について調べるための、例示的方法は、実施例2及び実施例3において見出されうる。
【0045】
一部の実施形態では、本発明に従う合成筋特異的プロモーターはまた、他の組織又は細胞においても活性である。一部の実施形態では、本発明に従う合成筋特異的プロモーターはまた、以下の組織又は細胞の群:CNS、肝臓、腎臓、脾臓、肺、及び十二指腸のうちの1つ又は複数においても、活性である。
【0046】
一部の実施形態では、本発明に従う合成筋特異的プロモーターは、下記のTable 5(表6)に明示された通り、プロモーターエレメント又はその機能的バリアントに作動可能に連結された、CRE又はその機能的バリアントの組合せの1つを含む。
【0047】
本明細書で開示されるCRE又はその機能的バリアントの組合せのうちのいずれかにおいて、列挙されるCREは、任意の順序で存在しうる。一部の好ましい実施形態では、CREは、列挙された順序で(すなわち、作動可能に連結されたプロモーターエレメント又は遺伝子に照らしたそれらの位置に言及して、上流から下流への順序で)存在する。本明細書で開示されるCRE又はその機能的バリアントの組合せのうちのいずれかにおいて、列挙されたCREの一部又は全部は、適切には、CRM内に、互いと隣接して位置しうる(すなわち、CRE又は他の調節エレメントの介在を伴わない)。CREは、連続的な場合もあり、非連続的な場合もある(すなわち、それらは、互いと直に隣接して位置する場合もあり、スペーサー又は他の配列により隔てられる場合もある)。一部の実施形態では、CREの一部又は全部は、連続的であることが好ましい。一部の好ましい実施形態では、CRE又はその機能的バリアントは、列挙される順序で、互いと隣接して施される。例えば、合成筋特異的CRMは、CRE0077を、CRE0075のすぐ上流に含みうる等である。一部の実施形態では、プロモーターエレメントは、CREの下流にあり、典型的に、近位CREと隣接する。プロモーターエレメントは、隣接するCREと連続する場合もあり、スペーサーにより隔てられる場合もある。
【0048】
本発明のさらなる態様では、発現産物をコードする配列、適切には、遺伝子、例えば、導入遺伝子に作動可能に連結された、本発明の任意の態様の合成筋特異的プロモーター、又は合成骨格筋特異的プロモーターを含む発現カセットが提供される。一部の実施形態では、発現産物は、治療用発現産物である。
【0049】
治療用発現産物は、例えば、筋状態の処置のために、筋内の発現が有用でありうる、任意の状態の処置、又は筋肉からの治療用発現産物の分泌が所望される状態の処置において有用な治療用発現産物でありうる。治療用発現産物は、心不全又はCHF等、心血管状態、又は心疾患及び心障害の処置において有用な治療用発現産物でありうる。治療用発現産物は、任意の種類の筋ジストロフィー等、骨格筋状態、骨格筋疾患、又は骨格筋障害の処置において有用な治療用発現産物でありうる。
【0050】
治療用発現産物をコードする配列は、常染色体優性疾患若しくは常染色体劣性疾患、X連鎖優性疾患若しくはX連鎖劣性疾患、又はY連鎖優性疾患若しくはY連鎖劣性疾患において機能が損なわれているか、又は機能的でない、1つ又は複数の遺伝子の機能を置きかえる、1つ又は複数の遺伝子でありうる。治療用発現産物をコードする配列は、常染色体優性疾患若しくは常染色体劣性疾患、X連鎖優性疾患若しくはX連鎖劣性疾患、又はY連鎖優性疾患若しくはY連鎖劣性疾患において機能が損なわれているか、又は機能的でないタンパク質の置換用野生型対応物をコードする、1つ又は複数の遺伝子でありうる。治療用発現産物をコードする配列は、常染色体劣性疾患において機能が損なわれているか、又は機能的でないタンパク質の置換用野生型対応物をコードする遺伝子でありうる。
【0051】
治療用発現産物をコードする配列は、ヒトゲノム内又は合成遺伝子内で見出される遺伝子でありうる。適切には、治療用発現産物は、ヒトゲノム内で見出される遺伝子でありうる。治療用発現産物をコードする配列は、ジスフェルリン遺伝子(DYSF遺伝子)であることが可能であり、治療用発現産物は、ジスフェルリンタンパク質でありうる。ジスフェルリンタンパク質の機能を損なう、DYSF遺伝子内の突然変異は、ジスフェルリン異常症をもたらす。DYSF遺伝子内の突然変異により引き起こされるジスフェルリン異常症の例は、三好型筋障害、2B型肢帯型筋ジストロフィー、及び遠位型筋障害を含む。治療用発現産物をコードする配列に作動可能に連結された、本発明の任意の態様による合成筋特異的プロモーター又は合成骨格筋特異的プロモーターを含み、治療用発現産物をコードする配列が、DYSF遺伝子である、発現カセットは、三好型筋障害、2B型肢帯型筋ジストロフィー、及び遠位型筋障害等のジスフェルリン異常症の処置において有用でありうる。
【0052】
治療用発現産物をコードする配列は、ジストロフィン遺伝子(DMD遺伝子)であることが可能であり、治療用発現産物は、ジストロフィンタンパク質でありうる。ジストロフィンタンパク質の機能を損なう、DMD遺伝子内の突然変異は、筋力低下により特徴付けられるX連鎖劣性筋ジストロフィー障害である、ベッカー型筋ジストロフィー又はデュシェンヌ型筋ジストロフィーをもたらす。治療用発現産物をコードする配列に作動可能に連結された、本発明の任意の態様による合成筋特異的プロモーター又は合成骨格筋特異的プロモーターを含み、治療用発現産物をコードする配列が、DMD遺伝子である、発現カセットは、ベッカー型筋ジストロフィー又はデュシェンヌ型筋ジストロフィーの処置において有用でありうる。
【0053】
DMD遺伝子は、ヒトにおいて最大であることが公知の遺伝子(約240万塩基対)である。したがって、全長DMD遺伝子は、AAVベクター等、容量(ペイロード)が限定された、一部のウイルスベクターへとパッケージングされるには、大型であり過ぎる。DMD遺伝子の短鎖形(ミニジストロフィンと呼ばれる)は、この問題に対処するために使用されている。しかしながら、ミニジストロフィンであってもなお、かなり大型(例えば、3.5~4kB)であり、AAVへのパッケージングを、なおも困難としている。したがって、発現カセット内では、長さが短い(例えば、400ヌクレオチド未満の長さ、350ヌクレオチド未満の長さ、好ましくは、300ヌクレオチド未満の長さ、なおより好ましくは、290ヌクレオチド未満の長さ、最も好ましくは、280、270、260、250、240、230、220、210、200、150、100、75、70、68ヌクレオチド未満の長さ)合成筋特異的プロモーターが、特に好ましい場合があり、この場合、治療用発現産物をコードする配列は、DMD遺伝子又はDMD遺伝子のミニ変化形(ミニジストロフィン)である。
【0054】
一部の実施形態では、発現カセットは、DMD遺伝子の短鎖形(ミニジストロフィン)に作動可能に連結された、本発明の任意の態様による合成筋特異的プロモーター又は合成骨格筋特異的プロモーターを含む。一部の実施形態では、発現カセットは、DMD遺伝子の短鎖形(ミニジストロフィン)に作動可能に連結された、配列番号29(SP0524)に従う合成筋特異的プロモーター又はその機能的バリアントを含む。
【0055】
治療用発現産物をコードする配列は、内因性DUX4遺伝子の発現をターゲティングし、低減する、miRNA又はsnRNAでありうる。DUX4遺伝子内の機能獲得突然変異は、DUX4転写因子の抑制喪失をもたらし、これは、進行性筋機能障害により特徴付けられる、常染色体優性筋ジストロフィー障害である、顔面肩甲上腕型筋ジストロフィー(FSHD)を引き起こす、有害な遺伝子発現変化を結果としてもたらす。治療用発現産物をコードする配列に作動可能に連結された、本発明の任意の態様による合成筋特異的プロモーター又は合成骨格筋特異的プロモーターを含み、治療用発現産物をコードする配列が、内因性DUX4遺伝子の発現をターゲティングし、低減する、miRNA又はsnRNAである、発現カセットは、FSHDの処置において有用でありうる。
【0056】
治療用発現産物をコードする配列は、内因性ミオトニンプロテインキナーゼ遺伝子(DMPK遺伝子)の発現をターゲティングし、低減する、miRNA又はsnRNAでありうる。DMPK遺伝子内の突然変異は、筋機能障害により特徴付けられる、常染色体優性筋ジストロフィー障害である、1型筋強直性ジストロフィー(DM1)をもたらす。治療用発現産物をコードする配列に作動可能に連結された、本発明の任意の態様による合成筋特異的プロモーター又は合成骨格筋特異的プロモーターを含み、治療用発現産物をコードする配列が、内因性DMPK遺伝子の発現をターゲティングし、低減する、miRNA又はsnRNAである、発現カセットは、DM1の処置において有用でありうる。一部の実施形態では、発現カセットは、内因性DMPK遺伝子、及び野生型置換用DMPK遺伝子の発現をターゲティングし、低減する、miRNA又はsnRNAに作動可能に連結された、1つ又は複数の、本発明の任意の態様による合成筋特異的プロモーター又は合成骨格筋特異的プロモーターを含みうる。一部の実施形態では、発現カセットは、内因性DMPK遺伝子、及び野生型置換用MBNL1遺伝子の発現をターゲティングし、低減する、miRNA又はsnRNAに作動可能に連結された、1つ又は複数の、本発明の任意の態様による合成筋特異的プロモーター又は合成骨格筋特異的プロモーターを含みうる。一部の実施形態では、発現カセットは、内因性DMPK遺伝子、野生型置換用DMPK遺伝子、及び野生型置換用MBNL1遺伝子の発現をターゲティングし、低減する、miRNA又はsnRNAに作動可能に連結された、1つ又は複数の、本発明の任意の態様による合成筋特異的プロモーター又は合成骨格筋特異的プロモーターを含みうる。
【0057】
治療用発現産物をコードする配列は、内因性細胞核酸結合タンパク質遺伝子(CNBP遺伝子)の発現をターゲティングし、低減する、miRNA又はsnRNAでありうる。CNBP遺伝子内の機能獲得突然変異は、筋機能障害により特徴付けられる、常染色体優性筋ジストロフィー障害である、2型筋強直性ジストロフィー(DM2)をもたらす。治療用発現産物をコードする配列に作動可能に連結された、本発明の任意の態様による合成筋特異的プロモーター又は合成骨格筋特異的プロモーターを含み、治療用発現産物をコードする配列が、内因性CNBP遺伝子の発現をターゲティングし、低減する、miRNA又はsnRNAである、発現カセットは、DM2の処置において有用でありうる。
【0058】
治療用発現産物をコードする配列は、内因性ポリ(A)結合タンパク質1遺伝子(PABPN11遺伝子)の発現をターゲティングし、低減する、miRNA又はsnRNAでありうる。CNBP遺伝子内の機能獲得突然変異は、常染色体優性又は常染色体劣性の筋ジストロフィー障害である、眼咽頭型筋ジストロフィーをもたらす。治療用発現産物をコードする配列に作動可能に連結された、本発明の任意の態様による合成筋特異的プロモーター又は合成骨格筋特異的プロモーターを含み、治療用発現産物をコードする配列が、内因性PABPN1遺伝子の発現をターゲティングし、低減する、miRNA又はsnRNAである、発現カセットは、眼咽頭型筋ジストロフィーの処置において有用でありうる。一部の実施形態では、発現カセットは、内因性PABPN1遺伝子及び合成置換用PABN1遺伝子の発現をターゲティングし、低減する、miRNA又はsnRNAに作動可能に連結された、1つ又は複数の、本発明の任意の態様による合成筋特異的プロモーター又は合成骨格筋特異的プロモーターを含みうる。適切には、合成置換用遺伝子は、内因性PABPN1遺伝子の発現を低減する、miRNA又はsnRNAの標的とならないように、修飾又はコドン最適化されている。
【0059】
治療用発現産物をコードする配列は、ClC-1イオンチャネル遺伝子(CLCN1遺伝子)でありえ、治療用発現産物は、ClC-1イオンチャネルでありうる。CLCN1遺伝子内の突然変異は、骨格筋に影響を及ぼす、常染色体優性又は常染色体劣性のチャネル病である、先天性ミオトニーをもたらす。治療用発現産物をコードする配列に作動可能に連結された、本発明の任意の態様による合成筋特異的プロモーター又は合成骨格筋特異的プロモーターを含み、治療用発現産物をコードする配列が、CLCN1遺伝子である、発現カセットは、先天性ミオトニーの処置において有用でありうる。
【0060】
治療用発現産物をコードする配列は、電位依存性ナトリウムチャネルNav1.4遺伝子(SCN4A遺伝子)でありえ、治療用発現産物は、電位依存性ナトリウムチャネルNav1.4でありうる。SCN4A遺伝子内の突然変異は、先天性パラミオトニア、カリウム惹起性ミオトニア、高カリウム血性周期性麻痺、及び低カリウム血性周期性麻痺をもたらす。治療用発現産物をコードする配列に作動可能に連結された、本発明の任意の態様による合成筋特異的プロモーター又は合成骨格筋特異的プロモーターを含み、治療用発現産物をコードする配列が、SCN4A遺伝子である、発現カセットは、先天性パラミオトニア、カリウム惹起性ミオトニア、高カリウム血性周期性麻痺、及び低カリウム血性周期性麻痺の処置において有用でありうる。
【0061】
治療用発現産物をコードする配列は、SEPN1遺伝子又はRYR1遺伝子でありうる。SEPN1遺伝子内又はRYR1遺伝子内の突然変異は、マルチ/ミニコア病をもたらす。治療用発現産物をコードする配列に作動可能に連結された、本発明の任意の態様による合成筋特異的プロモーター又は合成骨格筋特異的プロモーターを含み、治療用発現産物をコードする配列が、SEPN1遺伝子又はRYR1遺伝子である、発現カセットは、マルチ/ミニコア病の処置において有用でありうる。
【0062】
適切には、治療用発現産物をコードする配列は、合成遺伝子でありうる。合成遺伝子は、短縮された、例えば、AAVベクター内のパッケージングを可能とするように短縮された、ヒトゲノム内で見出される遺伝子でありうる。合成遺伝子は、迅速な翻訳のために最適化された、ヒトゲノム内で見出される遺伝子、例えば、コドン最適化構築物又は、代替的に、人工構築物でありうる。コドン最適化は、当業者により十分に理解されており、遺伝子発現を改善し、翻訳の効率を増大させるために、同義コドンを調整して、宿主生物のコドンバイアスを適合させることを指す。合成遺伝子は、その発現タンパク質が、特異的に細胞内に局在するように修飾された、ヒトゲノム内で見出される遺伝子、例えば、このシグナルを伴うタンパク質が、核内輸送により、細胞核内に移入されるよう、核局在シグナルを含むように修飾された遺伝子でありうる。合成遺伝子は、より効率的に分泌されるように修飾された、ヒトゲノム内で見出される遺伝子、例えば、このシグナルを伴うタンパク質が、小胞体膜を越える移動及び環境への分泌のためにターゲティングされるよう、分泌シグナルを含むように修飾された遺伝子でありうる。一部の実施形態では、合成遺伝子は、例えば、B細胞エピトープの除去により、その発現産物の免疫原性が低下するように修飾された、ヒトゲノム内で見出される遺伝子でありうる。合成遺伝子は、その機能が増大又は低下されるように修飾された、ヒトゲノム内で見出される遺伝子でありうる。合成遺伝子は、特異的miRNA又は特異的snRNAによりサイレンシングされないように修飾された、ヒトゲノム内で見出される遺伝子でありうる。ヒトゲノム内で見出される、任意の遺伝子は、合成遺伝子を結果としてもたらす、上記で記載された修飾のうちの1つ又は複数により修飾されうる。一部の実施形態では、修飾される遺伝子は、本明細書の態様のうちのいずれかに列挙された遺伝子のうちのいずれか1つである。
【0063】
治療用発現産物をコードする配列は、合成ジスフェルリン遺伝子(DYSF遺伝子)であることが可能であり、治療用発現産物は、合成ジスフェルリンタンパク質でありうる。治療用発現産物をコードする配列は、短縮された合成ジスフェルリン遺伝子(DYSF遺伝子)でありうる。治療用発現産物をコードする配列は、AAVベクター内のパッケージングを可能とするように短縮された合成ジスフェルリン遺伝子(DYSF遺伝子)でありうる。治療用発現産物をコードする配列は、6kb未満、5.5kb未満、5kb未満、4.5kb未満、4kb未満、3.5kb未満、又は3kb未満へと短縮された合成ジスフェルリン遺伝子(DYSF遺伝子)でありうる。治療用発現産物をコードする配列は、単一のAAVベクターへのパッケージングに適するように短縮された、合成ジスフェルリン様分子でありうる。治療用発現産物をコードする配列は、Table 1(表2)及び(Llangaら、2017)の図1Aに詳述されているNano-Dysferlinでありうる。
【0064】
一部の好ましい実施形態では、発現カセットは、Table 1(表2)及び(Llangaら、2017)の図1Aに詳述されているNano-Dysferlinに作動可能に連結された、本発明の任意の態様に従う筋特異的プロモーターを含む。
【0065】
治療用発現産物は、ホスファターゼ活性、例えば、1型ホスファターゼ活性のモジュレーターでありうる。モジュレーターは、ホスファターゼ活性を阻害するタンパク質、例えば、1型ホスファターゼ活性でありうる。モジュレーターは、転写因子等、ホスファターゼ活性を阻害するタンパク質をコードする内因性核酸の発現を増大させる核酸でありうる。モジュレーターは、ホスファターゼ活性を阻害するタンパク質をコードする内因性核酸に、又はこの近傍に組み込まれる調節配列でありうる。モジュレーターは、siRNA等、遺伝子発現の核酸モジュレーターをもたらしうる核酸でありうる。
【0066】
治療用発現産物は、プロテインホスファターゼ1(PP1)、例えば、I-1ポリペプチドの阻害剤でありうる。1型ホスファターゼは、PP1cα、PP1cβ、PP1cδ、及びPP1cγを含むがこれらに限定されない。ホスファターゼ阻害剤1(又は「I-1」)タンパク質は、1型ホスファターゼの内因性阻害剤である。I-1のレベルの上昇又は活性の増大は、不全性ヒト心筋細胞におけるβ-アドレナリン作用の応答性を復活させうる。適切には、I-1タンパク質は、トレオニン35が、アスパラギン酸ではなく、グルタミン酸で置きかえられたI-1タンパク質等、構成的に活性でありうる。治療用発現産物は、プロテインホスファターゼ1の内因性核内阻害剤である、ホスファターゼ阻害剤2(PP2);オカダ酸又はカリクリン;及びnipplから選択される阻害剤のうちの任意の1つ又は複数でありうる。
【0067】
治療用発現産物は、1型ホスファターゼ阻害剤、例えば、I-1、又は筋小胞体Ca2+ATPアーゼ(SERCA)、例えば、SERCA1(例えば、1a又は1b)、SERCA2(例えば、2a又は2b)、又はSERCA3等、心活動をモジュレートする、任意のタンパク質でありうる。
【0068】
治療用発現産物は、ホスファターゼ阻害剤1タンパク質の突然変異体形態をコードする核酸配列であることが可能であり、この場合、突然変異体形態は、野生型におけるPKC-αリン酸化部位である位置における、少なくとも1つのアミノ酸を含み、少なくとも1つのアミノ酸が、構成的に非リン酸化状態にあるか、又は突然変異体形態における非リン酸化状態を模倣する。治療用発現産物は、アデニルシクラーゼ6(AC6;アデニルシクラーゼVIともまた称される)、S100A1、β-アドレナリン作動性受容体キナーゼ-ct(βARKct)、筋/小胞体(SR)Ca-ATPアーゼ(SERCA2a)、IL-18、VEGF、VEGF活性化因子、ウロコルチン、及びB細胞性リンパ腫2(Bcl2)関連アタノ遺伝子3(BAG3)でありうる。
【0069】
治療用発現産物は、IL-18阻害剤等、サイトカインの阻害剤でありうる。治療用発現産物は、心機能を増強するように、ベータ-アドレナリン作動性シグナル伝達タンパク質(ベータ-ASPs)(ベータ-アドレナリン作動性受容体(ベータ-Ars)、G-タンパク質受容体キナーゼ阻害剤(GRK阻害剤)、及びアデニルシクラーゼ(Acs)を含む)をコードしうる。
【0070】
治療用発現産物は、血管形成性タンパク質でありうる。血管形成性タンパク質は、血管の発生及び分化を促進する。血管形成性タンパク質の例は、aFGF(FGF-1)、bFGF(FGF-2)、FGF-4(「hst/KS3」としてもまた公知である)、FGF-5、及びFGF-6等、線維芽細胞増殖因子(FGF)ファミリーのメンバー、血管内皮増殖因子(VEGF)ファミリー、血小板由来増殖因子(PDGF)ファミリー、インスリン様増殖因子(IGF)ファミリー等を含む。
【0071】
さらなる態様では、本発明に従う合成筋特異的プロモーター、骨格筋特異的プロモーター又は発現カセットを含むベクターが提供される。一部の実施形態では、ベクターは、発現ベクターである。一部の実施形態では、ベクターは、ウイルスベクターである。一部の実施形態では、ベクターは、遺伝子治療用ベクター、適切には、AAVベクター、アデノウイルスベクター、レトロウイルスベクター、又はレンチウイルスベクターである。AAVベクターは、特に対象である。AAVベクターは、AAV2、AAV6、AAV8、AAV9、BNP116、rh10、AAV2.5、AAV2i8、AAVDJ8、及びAAV2G9、又はこれらの誘導体からなる群から選択されうる。AAV血清型9(AAV9)は、心筋及び骨格筋における、効率的な形質導入を達成することが注目されており、このため、AAV9及びその誘導体は、適切なAAVベクターについての、1つの非限定例を表す。一部の実施形態では、rAAVベクターは、AAV3b265Dビリオン、AAV3b265D549Aビリオン、AAV3b549Aビリオン、AAV3bQ263Yビリオン、又はAAV3bSASTGビリオン(すなわち、Q263A/T265突然変異を含む、AAV3bカプシドを含むビリオン)を含むがこれらに限定されない、AAV3b血清型である。一部の実施形態では、ビリオンは、カプシドが、所望の位置、例えば、心臓又は骨格筋における更新の増大のために調整されうる等、理論的な一倍体、又はキメラ体若しくは任意の突然変異体でありうる。他のカプシドは、AAV1、AAV3、AAV4、AAV5、AAV7、AAV10等を含む、公知のAAV血清型のうちのいずれかに由来するカプシドを含みうる。一部の好ましい実施形態では、AAVベクターは、AAV2i8である。一部の実施形態では、AAVベクターは、AAV9である。
【0072】
本発明に従うベクターは、筋ジストロフィーの処置のための治療用発現産物をコードする核酸を含むAAVベクターであることが可能であり、この場合、核酸は、骨格筋特異的プロモーター又は筋特異的プロモーターに作動的に連結されている。
【0073】
本発明に従うベクターは、心不全の処置のための治療用発現産物をコードする核酸を含むAAVベクターであることが可能であり、この場合、核酸は、心筋特異的プロモーターでありうる、筋特異的プロモーターに作動的に連結されている。
【0074】
さらなる態様では、本発明に従うベクター、適切には、ウイルスベクターを含むビリオン(ウイルス粒子)が提供される。一部の実施形態では、ビリオンは、AAVビリオンである。適切なビリオンについては、上記で記載されている。
【0075】
さらなる態様では、本発明に従う合成筋特異的プロモーター、合成骨格筋特異的プロモーター、発現カセット、ベクター、又はビリオンを含む医薬組成物が提供される。
【0076】
さらなる態様では、治療、すなわち、医学的状態又は疾患の防止又は処置における使用のための、本発明に従う合成筋特異的プロモーター、合成骨格筋特異的プロモーター、発現カセット、ベクター、ビリオン、又は医薬組成物が提供される。適切には、それを必要とする対象の治療における使用のためである。適切には、状態又は疾患は、筋細胞(muscle cell(myocyte))又は組織における遺伝子発現の異常、任意選択で、遺伝子発現の異常と関連する。適切には、状態又は疾患は、骨格筋又は骨格組織における、異常な遺伝子発現と関連する。適切には、状態又は疾患は、心筋細胞又は心臓組織における、異常な遺伝子発現と関連する。適切には、骨格及び/又は心筋における、治療用発現産物の発現における使用のための、本発明に従う合成筋特異的プロモーター、合成骨格筋特異的プロモーター、発現カセット、ベクター、ビリオン、又は医薬組成物が提供される。
【0077】
一実施形態では、疾患は、骨格筋疾患又は骨格筋障害でありうる。一実施形態では、疾患は、ベッカー型筋ジストロフィー、先天性筋ジストロフィー、デュシェンヌ型筋ジストロフィー、遠位型筋ジストロフィー、エメリー-ドレイフス型筋ジストロフィー、顔面肩甲上腕型筋ジストロフィー、肢帯型筋ジストロフィー、1型筋強直性筋ジストロフィー、2型筋強直性筋ジストロフィー、又は眼咽頭型筋ジストロフィー等の筋ジストロフィーでありうる。一実施形態では、疾患は、先天性ミオトニー、先天性パラミオトニア、カリウム惹起性ミオトニア、高カリウム血性周期性麻痺、又は低カリウム血性周期性麻痺等のミオトニアでありうる。一実施形態では、疾患は、ネマリン性筋障害、マルチ/ミニコア病、及び中心核筋障害から選択される先天性筋障害でありうる。一実施形態では、疾患は、ミトコンドリア性筋障害、周期性麻痺、炎症性筋障害、代謝性筋障害、ブロディー型筋障害、及び遺伝性封入体筋障害から選択されうる。適切には、使用は、好ましくは、異常な遺伝子発現を伴う疾患の処置における使用のための遺伝子治療のための使用である。適切には、遺伝子治療は、筋細胞又は筋組織、適切には、骨格筋細胞若しくは骨格筋組織、及び/又は心筋細胞若しくは心臓組織における、治療用発現産物の発現を伴う。
【0078】
一実施形態では、疾患は、心血管状態又は心疾患及び心障害でありうる。一実施形態では、疾患は、うっ血性心不全等の心不全でありうる。一実施形態では、疾患は、虚血症、不整脈、心筋梗塞(MI)、心収縮の異常、非虚血性心筋症、末梢動脈閉塞性疾患、及びCa2+代謝の異常、並びにこれらの組合せから選択されうる。一部の実施形態では、疾患は、うっ血性心不全、心筋症、心筋梗塞、組織虚血症、心虚血症、血管疾患、後天性心疾患、先天性心疾患、アテローム性動脈硬化、伝導系の機能不全、冠動脈の機能不全、肺心高血圧症の群から選択されうる。一部の実施形態では、疾患は、うっ血性心不全、冠動脈疾患、心筋梗塞、心筋虚血症、アテローム性動脈硬化、心筋症、特発性心筋症、心不整脈、ダノン病、筋ジストロフィー、筋量異常、筋変性、感染性心筋炎、薬物誘導性筋異常又は毒素誘導性筋異常、過敏性心筋炎、自己免疫性心内膜炎、及び先天性心疾患から選択されうる。適切には、使用は、遺伝子治療のためであり、好ましくは、遺伝子発現の異常を伴う疾患の処置における使用のためである。適切には、遺伝子治療は、筋細胞若しくは筋組織における治療用発現産物の発現、適切には、心筋細胞若しくは心筋組織における治療用発現産物の発現、及び/又は、適切には、骨格筋細胞若しくは骨格筋組織における治療用発現産物の発現を伴う。
【0079】
一部の実施形態では、本明細書で開示される方法及び組成物は、心筋障害を伴う対象を処置するのに使用される場合があり、この場合、心筋障害を伴う対象は、心不全を有する。このような実施形態では、心不全を伴う対象は、New York Heart Association(NYHA)分類システムにおいて、クラスIII以上と同等の分類を有する。一部の実施形態では、心不全を伴う対象は、左室リモデリング、末梢動脈閉塞性疾患(PAOD)、特発性拡張性心筋障害(IDCM)を含む拡張性心筋障害(DCM)、冠動脈疾患、虚血症、不整脈、心筋梗塞(MI)、心臓収縮性異常、急性(非代償性)心不全(AHF)、Ca2+代謝異常、心筋虚血症、アテローム性動脈硬化、心筋障害、特発性心筋障害、遺伝性障害誘導性心筋障害、心不整脈、ダノン病、筋ジストロフィー、筋量異常、筋変性、感染性心筋炎、薬物誘導性筋異常又は毒素誘導性筋異常、過敏性心筋炎、自己免疫性心内膜炎、及び先天性心疾患、並びに肺高血圧症のうちのいずれかから選択される心血管疾患又は心疾患を有する。
【0080】
一部の実施形態では、本明細書で開示される方法及び組成物は、心筋障害を伴う対象を処置するのに使用される場合があり、この場合、心筋障害を伴う対象は、感染又は毒素等の結果として獲得された心筋障害である、後天性心筋障害、又は先天性心筋障害若しくは心症状を伴う遺伝性障害を含むがこれらに限定されない、非虚血性心不全及び/又は非虚血性心筋障害を有する。一部の実施形態では、先天性心筋障害又は心症状を伴う遺伝性障害を伴う対象は、催不整脈性右室性心筋障害、心房性粘液腫、家族性、心房性中隔欠損性一次口、心房性中隔欠損性静脈洞、バース症候群、筋ジストロフィー、バージャー病、心脳筋症、第1p36染色体欠失症候群、4型先天性全身性リポジストロフィー、先天性心ブロック、拡張性心筋障害、デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)、ファブリー病、家族性心房性細動、家族性拡張性心筋障害、家族性肥厚性心筋障害、家族性進行性心伝導欠損、家族性胸部大動脈瘤及び大動脈切除、線維筋性異形成、フリードライヒ運動失調症、ゴーシェ病、糖原病(2型、3型、又は4型糖原病)、ヒス束頻脈、ハーラー症候群、左心低形成症候群、小児組織球様心筋障害、頭蓋内動静脈奇形、イソブチル-CoAデヒドロゲナーゼ欠損症、カリクレイン高血圧症、川崎病、カーンズ-セイヤー症候群、左室性緻密化障害、肢帯型筋ジストロフィー(1B型、2E型、2F型、2M型、2C型、2D型肢帯型筋ジストロフィー)、限局性全身性硬化症、1型QT延長症候群、リンパ浮腫及び脳動静脈異常、リンパ球性血管炎、小頭症-心筋障害;ミトコンドリア脳筋症乳酸アシドーシス脳卒中様エピソード、ミトコンドリア性三機能タンパク質欠損症、1型筋強直性ジストロフィー、新生児脳卒中、1型、2型、3型、4型、5型、及び6型ヌーナン症候群、周産期心筋障害、ペータースプラス症候群、PGM1-CDG、PHACE症候群、ホスホランバンArg14欠失、体位性起立性頻脈症候群、原発性カルニチン欠損症、進行性家族性心ブロック(1A型、1B型、及び2型進行性家族性心ブロック)、2型偽性アルドステロン血症、肺動脈性高血圧症、無傷心室中隔を伴う肺閉鎖症、心室中隔欠損を伴う肺閉鎖症、肺動脈弁狭窄症、肺静脈狭窄症、肺動脈狭窄症、腎機能欠損性高血圧症、弁上肺動脈狭窄症を伴う網膜動脈大動脈瘤、右室性低形成、サルコイドーシス、センジャーズ症候群、内臓逆位、不整脈突然死症候群、弁上大動脈狭窄症、スワイヤー症候群、TANGO2関連代謝性脳症及び不整脈、TARP症候群、ファロー四徴症、ティモシー症候群、三尖弁閉鎖症、ヴィシ症候群、VLCAD欠損症、並びにウィリアムズ症候群からなる群から選択される疾患又は障害を有する。
【0081】
一部の実施形態では、本明細書で開示される方法及び組成物は、心筋障害を伴う対象を処置するのに使用される場合があり、この場合、心筋障害を伴う対象は、虚血性心筋障害を有する。
【0082】
適切には、治療を必要とする対象は、骨格筋状態に特徴的な症状、例えば、上記で論じられた筋ジストロフィーを提示するであろう。医学的使用は、典型的に、治療量の治療用産物を発現させることにより、それを必要とする対象により提示される症状を改善することを含む。一部の実施形態では、発現カセットは、骨格筋特異的プロモーター又は筋特異的プロモーターに作動可能に連結された、ジスフェルリン又は合成ジスフェルリンをコードする遺伝子を含む。治療は、適切には、前記対象の骨格筋組織内で、治療量のジスフェルリン又は合成ジスフェルリンを発現させるステップを含む。適切には、骨格筋組織内で、治療量のジスフェルリン又は合成ジスフェルリンを発現させるステップは、対象におけるジスフェルリン異常症の症状を軽減する。適切には、骨格筋組織内で、治療量のジスフェルリン又は合成ジスフェルリンを発現させるステップは、骨格筋の筋力低下及び萎縮を緩和しうる。
【0083】
適切には、治療を必要とする対象は、心血管状態に特徴的な症状、例えば、上記で論じられた心疾患又は心不全を提示するであろう。医学的使用は、典型的に、治療量の治療用産物を発現させることにより、それを必要とする対象により提示される症状を改善することを含む。一部の実施形態では、発現カセットは、筋特異的プロモーターに作動可能に連結された、PP1阻害剤をコードする遺伝子を含む。治療は、適切には、前記対象の心組織内において、治療量のPP1阻害剤を発現させることを含む。適切には、心組織内における、治療量のPP1阻害剤の発現は、対象の心不全又は心障害の症状を軽減する。適切には、心組織内における、治療量のPP1阻害剤の発現は、心リモデリングを緩和する場合もあり、身体運動能力を改善する場合もあり、心収縮を改善する場合もある。適切には、心組織内における、治療量のPP1阻害剤の発現は、筋細胞短縮、弛緩についての時定数の低下、及びカルシウムシグナル減衰の加速化、収縮末期圧容積関係の改善、及びこれらの組合せを結果としてもたらしうる。
【0084】
さらなる態様では、本発明の合成筋特異的プロモーター、合成骨格筋特異的プロモーター、発現カセット、ベクター、又はビリオンを含む細胞が提供される。一部の実施形態では、細胞は、真核細胞、任意選択で、哺乳動物細胞、任意選択で、ヒト細胞である。適切には、細胞は、筋細胞であることが可能であり、任意選択で、この場合、細胞は、ヒト筋細胞である。ヒト骨格筋細胞又はヒト心筋細胞が適切である。本発明の合成筋特異的プロモーター、合成骨格筋特異的プロモーター、発現カセット、ベクター、又はビリオンは、エピソーム性の場合もあり、細胞のゲノム内にある場合もある。
【0085】
さらなる態様では、医学的状態又は疾患の処置のための医薬組成物の製造における使用のための、本明細書で記載される、合成筋特異的CRE、CRM、合成筋特異的プロモーター、合成骨格筋特異的プロモーター、発現カセット、ベクター、ビリオン、又は医薬組成物が提供される。
【0086】
さらなる態様では、発現産物を産生するための方法であって、本発明の合成筋特異的発現カセット又は骨格筋特異的発現カセットを、筋細胞内に提供する工程と、発現カセット内に存在する遺伝子を発現させる工程とを含む方法が提供される。方法は、in vitro法の場合もあり、ex vivo法の場合もあり、in vivo法の場合もある。一部の実施形態では、方法は、バイオプロセシング法である。一実施形態では、筋細胞は、骨格筋細胞である。一実施形態では、筋細胞は、心筋細胞である。
【0087】
さらなる態様では、治療用導入遺伝子を、筋細胞内で発現させる方法であって、筋細胞へと、本明細書で記載される、合成筋特異的発現カセット又は骨格筋特異的発現カセット、ベクター、又はビリオンを導入する工程を含む方法が提供される。一実施形態では、筋細胞は、骨格筋細胞である。一実施形態では、筋細胞は、心筋細胞である。
【0088】
さらなる態様では、それを必要とする対象、好ましくは、ヒトを治療する方法であって、
- 対象へと、本明細書で記載される、本発明に従うプロモーターに作動可能に連結された治療用産物をコードする配列を含む発現カセット、ベクター、ビリオン、又は医薬組成物を投与する工程と;
- 治療量の治療用産物を、前記対象の筋内で発現させる工程と
を含む方法が提供される。
【0089】
治療用産物とは、生理学的過程又は疾患を防止するか、緩和するか、治癒させるか、又は肯定的に修飾するのに使用される産物である。
【0090】
一実施形態では、筋肉は、骨格筋細胞又は骨格筋組織である。一実施形態では、筋肉は、心筋細胞又は心筋組織である。適切には、対象の治療法は、骨格及び/又は心筋における、治療量の治療用産物の発現を含む。
【0091】
一部の実施形態では、方法は、
- 対象の筋肉へと、治療用産物をコードする遺伝子を含む、本明細書で記載される、発現カセット、ベクター、ビリオン、又は医薬組成物を導入する工程と;
- 治療量の治療用産物を、前記対象の筋内で発現させる工程と
を含む。
【0092】
一実施形態では、筋肉は、骨格筋細胞又は骨格筋組織である。一実施形態では、筋肉は、心筋細胞又は心筋組織である。適切には、方法は、前記対象の骨格及び/又は心筋における、治療量の治療用産物の発現を含む。
【0093】
適切には、方法は、本明細書で記載されるベクター、ビリオン、又は医薬組成物を、対象へと投与する工程を含む。一部の好ましい実施形態では、ベクターは、遺伝子治療用ウイルスベクター、好ましくは、AAVベクターである。
【0094】
一部の実施形態では、治療法は、対象へと、本発明に従うプロモーターに作動可能に連結された、治療用産物をコードする配列を含むウイルスベクターを投与するステップを含む。一部の好ましい実施形態では、ウイルスベクターは、対象へと、順行姓心外膜冠動脈注入(AECAI)により投与される。特に好ましい一部の実施形態では、ウイルス性遺伝子治療ベクターは、対象へと、経皮大腿部アクセスを介する順行姓心外膜冠動脈注入(AECAI)により投与される。一部の実施形態では、対象は、心不全又はうっ血性心不全を有する。一部の実施形態では、対象の治療法は、心不全又はうっ血性心不全の処置のための方法である。
【0095】
以下の節の下に、本発明のさらなる特色及び実施形態が記載される。任意の節における、任意の特色又は実施形態は、本発明の任意の他の特色若しくは実施形態、又は任意の態様と、任意の実行可能な組合せにおいて組み合わされうる。
【0096】
一部の実施形態では、合成筋特異的プロモーターは、2つ又はこれを超えるプロモーターエレメントを含む。本明細書では、2つ又はこれを超えるプロモーターエレメントを含む合成プロモーターは、「タンデムプロモーター」と称される。本明細書でCREと名指されるCRE0138は、TNNI2遺伝子の転写開始部位を含み、プロモーターエレメントと同様に作動することが期待されうる。したがって、例えば、SP0508は、プロモーターエレメントであるCRE0138及びCRE0053を含むので、タンデムプロモーターであると考えられうる。同様に、SP0519は、プロモーターエレメントであるCRE0138及びBG mpを含むので、タンデムプロモーターであると考えられうる。
【0097】
一部の実施形態では、タンデムプロモーターは、プロモーターエレメントを、別のプロモーターエレメントのすぐ上流に含みうる。一部の実施形態では、タンデムプロモーターは、1つ又は複数のCREを、プロモーターエレメントのうちの1つ又はこれらの各々の上流に含みうる。一部の実施形態では、タンデムプロモーターは、1つ又は複数のCREを、プロモーターエレメント間に含みうる。一部の実施形態では、本明細書で開示される合成筋特異的プロモーターのうちのいずれか1つは、さらなるプロモーターエレメントに作動可能に連結されうる。本明細書で開示される、他の任意の合成プロモーターは、本明細書で開示される、任意のプロモーターエレメントに更に作動可能に連結されうることが察知されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0098】
図1】心筋管へと分化されたH9C2細胞系における、本発明の一部の実施形態に従う合成筋特異的プロモーターの平均活性を示す図である。誤差バーは、標準偏差である。CBA及びCK8は、対照プロモーターである。y軸は、ルシフェラーゼ活性(相対発光単位)である。
図2】心筋管へと分化されたH9C2細胞系における、本発明の一部の実施形態に従う合成筋特異的プロモーターの平均活性を示す図である。誤差バーは、標準偏差である。CBA及びCK8は、対照プロモーターである。平均活性は、対照プロモーターであるCBAと比べて正規化した。y軸は、ルシフェラーゼ活性(相対発光単位)である。
図3】横隔膜における、合成筋特異的プロモーターである、SP0500、SP0507、SP0514、SP0518、SP0519、SP0522、及びSP0524、並びに対照プロモーターである、CK8、CMV、CK7のin vivo活性を示す図である。生理食塩液対照(バックグラウンド)もまた、実験に組み入れた。生理食塩液対照(バックグラウンド)を、各プロモーターによるルシフェラーゼ発現から控除し、次いで、この値を、横隔膜内の各プロモーターのベクターコピー数により除した。
図4】前脛骨筋(TA)における、合成筋特異的プロモーターである、SP0500、SP0507、SP0514、SP0518、SP0519、SP0522、及びSP0524、並びに対照プロモーターである、CK8、CMV、CK7のin vivo活性を示す図である。生理食塩液対照(バックグラウンド)もまた、実験に組み入れた。生理食塩液対照(バックグラウンド)を、各プロモーターによるルシフェラーゼ発現から控除し、次いで、この値を、横隔膜内の各プロモーターのベクターコピー数により除した。
図5】心臓における、合成筋特異的プロモーターである、SP0500、SP0507、SP0514、SP0518、SP0519、SP0522、及びSP0524、並びに対照プロモーターである、CK8、CMV、CK7のin vivo活性を示す図である。生理食塩液対照(バックグラウンド)もまた、実験に組み入れた。生理食塩液対照(バックグラウンド)を、各プロモーターによるルシフェラーゼ発現から控除し、次いで、この値を、横隔膜内の各プロモーターのベクターコピー数により除した。
図6】大腿四頭筋における、合成筋特異的プロモーターである、SP0500、SP0507、SP0514、SP0518、SP0519、SP0522、及びSP0524、並びに対照プロモーターである、CK8、CMV、CK7のin vivo活性を示す図である。生理食塩液対照(バックグラウンド)もまた、実験に組み入れた。生理食塩液対照(バックグラウンド)を、各プロモーターによるルシフェラーゼ発現から控除し、次いで、この値を、横隔膜内の各プロモーターのベクターコピー数により除した。
図7】ヒラメ筋における、合成筋特異的プロモーターである、SP0500、SP0507、SP0514、SP0518、SP0519、SP0522、及びSP0524、対照プロモーターであるCK8、CMV、CK7、及び生理食塩液対照のin vivo活性を示す図である。ベクターコピー数は、ヒラメ筋内では得られず、このグラフは、各プロモーターによるルシフェラーゼ発現を示す。
図8】肝臓における、合成筋特異的プロモーターである、SP0500、SP0507、SP0514、SP0518、SP0519、SP0522、及びSP0524、対照プロモーターである、CK8、CMV、CK7のin vivo活性を示す図である。生理食塩液対照(バックグラウンド)を、各プロモーターによるルシフェラーゼ発現から控除し、次いで、この値を、横隔膜内の各プロモーターのベクターコピー数により除した。
図9】横隔膜、前脛骨筋(TA)、大腿四頭筋、心臓、及び肝臓における、対照プロモーターであるCK8のin vivo活性を示す図である。
図10】横隔膜、前脛骨筋(TA)、大腿四頭筋、心臓、及び肝臓における、対照プロモーターであるCMVのin vivo活性を示す図である。
図11】横隔膜、前脛骨筋(TA)、大腿四頭筋、心臓、及び肝臓における、対照プロモーターであるCK7のin vivo活性を示す図である。
図12】横隔膜、前脛骨筋(TA)、大腿四頭筋、心臓、及び肝臓における、合成筋特異的プロモーターであるSP0500のin vivo活性を示す図である。
図13】横隔膜、前脛骨筋(TA)、大腿四頭筋、心臓、及び肝臓における、合成筋特異的プロモーターであるSP0507のin vivo活性を示す図である。
図14】横隔膜、前脛骨筋(TA)、大腿四頭筋、心臓、及び肝臓における、合成筋特異的プロモーターであるSP0514のin vivo活性を示す図である。
図15】横隔膜、前脛骨筋(TA)、大腿四頭筋、心臓、及び肝臓における、合成筋特異的プロモーターであるSP0518のin vivo活性を示す図である。
図16】横隔膜、前脛骨筋(TA)、大腿四頭筋、心臓、及び肝臓における、合成筋特異的プロモーターであるSP0519のin vivo活性を示す図である。
図17】横隔膜、前脛骨筋(TA)、大腿四頭筋、心臓、及び肝臓における、合成筋特異的プロモーターであるSP0522のin vivo活性を示す図である。
図18】横隔膜、前脛骨筋(TA)、大腿四頭筋、心臓、及び肝臓における、合成筋特異的プロモーターであるSP0524のin vivo活性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0099】
CRE及びその機能的バリアント:
本明細書では、筋特異的プロモーターの構築に使用されうる、多様なCREが開示される。これらのCREは、一般に、ゲノムプロモーター配列及びエンハンサー配列に由来するが、本明細書では、それらの天然ゲノム環境とは、全く異なる文脈において使用される。一般に、CREは、それらが通常関連する遺伝子の発現を制御する、はるかに大型のゲノム調節ドメインの小部分を構成する。驚くべきことに、それらの多くが、極めて小型である、これらのCREは、それらの通常の環境からの単離が可能であり、多様な合成プロモーターを構築するのに使用された場合、筋特異的調節活性を保持することが見出された。複合体であり、かつ、「三次元」である、ゲノム内の天然の文脈からの、調節配列の摘出は、しばしば、著明な活性の喪失を結果としてもたらすので、所与のCREが、それらの天然環境から摘出されても、観察される活性レベルを保持することを期待する理由は存在しないため、これは、驚くべきことである。これらのCREの多くの組合せが調べられ、最小プロモーター及び近位プロモーターと組み合わされた場合に、筋特異的プロモーター活性の増強において、高度に効果的であることが見出された。本発明のCRE配列は、活性の実質的な喪失を引き起こさずに、変更されうることに注目されたい。CREの機能的バリアントは、CREの活性に対して、著明に有害な修飾が回避される条件下において、CREの配列を修飾することにより調製されうる。本開示において提示される情報を念頭に置くと、機能的バリアントをもたらすための、CREの修飾は、単純である。更に、本開示は、所与の任意のCREバリアントの機能性を、簡単に評価するための方法論を提示する。下記では、機能的バリアントの例について論じられる。
【0100】
CRE0145は、CRE0050の機能的バリアントであり、CRE0145は、CRE0050の短鎖形であるので、逆も成り立つ。
【0101】
本発明に従う、ある特定のCREの、比較的小さなサイズは、CRE、より具体的に、それらを含有するプロモーターが、ベクターのペイロードの占有を最小量としながら、ベクター内に施されることを可能とするために有利である。これは、CREが、AAVベースのベクター等、容量が限定的であるベクター内で使用される場合に、特に重要である。
【0102】
本発明のCREは、ある特定の筋特異的TFBSを含む。一般に、CREの機能的バリアント内において、これらの筋特異的TFBSは、機能性を維持することが所望される。当業者は、TFBS配列は変動しうるが、機能性を保持することを十分に承知している。これを念頭に置くと、TFBSのための配列は、典型的に、コンセンサス配列により例示され、典型的には、これに由来する、ある程度のバリエーションが存在する。TFBS内で生じるバリエーションについてのさらなる情報は、所与のヌクレオチドが、コンセンサス配列内の所与の位置において、典型的に見出される頻度を表す、位置重み行列(PWM)を使用して例示されうる。TFコンセンサス配列及び関連する位置重み行列についての詳細は、例えば、Jasparデータベース又はTransfacデータベース(http://jaspar.genereg.net/ and http://gene-regulation.com/pub/databases.html)において見出されうる。この情報は、当業者が、所与の任意のTFBS内のCREの配列を、CREの機能性を保持し、場合によって、これを更に増大させる形で修飾することを可能とする。これを念頭に置くと、当業者は、所与の任意のTFに対して、所望のTFに結合する能力を維持しながら、どのようにして、TFBSが修飾されうるのかについて、豊富な指針を与えられるが、例えば、Jasparシステムは、推定TFBSを、所与のPWMに照らした、その類似性に基づき評定する。更に、全てのTFBSを同定/解析するように、JASPARデータベースに由来する、全てのPWMに照らした、CREの走査も可能である。当然ながら、当業者は、文献においても、さらなる指針を見出すことができ、更に、任意のバリアントCRE内の推定TFBSへの、TFの結合を確認するのに、規定の実験も使用されうる。機能を保持しながら、CRE内において、更に、CRE内のTFBS内であってもなお、著明な配列の修飾がなされうることが明らかであろう。
【0103】
合成筋特異的CRM及びその機能的バリアント:
本明細書では、合成筋特異的プロモーターの構築において使用されうる、多様な合成筋特異的CRMが開示される。本発明のCRMは、広範にわたる、適切な最小プロモーター又は筋特異的近位プロモーターと組み合わせて使用されうる。
【0104】
CRMの機能的バリアントは、参照CRMエレメントから変動しているが、筋特異的CRMとしての活性を実質的に保持する配列を含む。当業者により、適切な筋特異的転写因子(TF)を動員する、その能力を保持しながら、CRMの配列を変動させ、これにより、発現を増強することが可能であることが察知されるであろう。CRMの機能的バリアントは、CRMを、実質的に非機能的としない条件下において、参照CRMと比較した、置換、欠失、及び/又は挿入を含みうる。
【0105】
一部の実施形態では、CRMの機能的バリアントは、プロモーター内において、参照CRMに代えて置換された場合に、その活性を、実質的に保持するCRMであると考えられうる。例えば、所与のCRMの機能的バリアントを含む筋特異的プロモーターは、好ましくは、その活性のうちの少なくとも80%、より好ましくは、その活性のうちの少なくとも90%、より好ましくは、その活性のうちの少なくとも95%を保持し、なおより好ましくは、その活性の100%を保持する(非修飾CRMを含む参照プロモーターと比較して)。
【0106】
適切には、CRMの機能的バリアントは、参照CRMに対する、著明レベルの配列同一性を保持する。適切には、機能的バリアントは、参照CRMと少なくとも70%同一であり、より好ましくは、参照CRMと少なくとも80%、90%、95%、又は99%同一である配列を含む。
【0107】
活性の保持は、参照プロモーターの制御下における、適切なレポーターの発現を、同等な条件下で、CRMの置換を含む、他の点では同一なプロモーターと比較することにより評価されうる。筋特異的プロモーター活性を評価するのに適するアッセイは、本明細書、例えば、実施例で開示される。
【0108】
一部の実施形態では、所与のCRMの機能的バリアントは、参照CRM内に存在するCREのうちの1つ又は複数の機能的バリアントを含みうる。例えば、所与のCRMの機能的バリアントは、参照CRM内に存在するCREのうちの1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、又は6つの機能的バリアントを含みうる。
【0109】
一部の実施形態では、所与のCRMの機能的バリアントは、参照CRMと、同じ組合せのCREを含みうるが、CREは、参照CRMと異なる順序で存在しうる。通例、CREは、参照CRMと同じ順序で存在することが好ましい(したがって、CRMの機能的バリアントは、適切には、参照CRM内に明示されるCREの同じ順列を含む)。
【0110】
一部の実施形態では、所与のCRMの機能的バリアントは、参照CRM内に存在するCREに加えて、1つ又は複数のさらなるCREを含みうる。さらなるCREは、参照CRM内に存在するCREの上流に施される場合もあり、参照CRM内に存在するCREの下流に施される場合もあり、かつ/又は参照CRM内に存在するCREの間に施される場合もある。さらなるCREは、本明細書で開示されるCREの場合もあり、他のCREの場合もある。一般に、所与のCRMの機能的バリアントは、同じCRE(又はその機能的バリアント)を含み、さらなるCREを含まないことが好ましい。
【0111】
所与のCRMの機能的バリアントは、参照CRMと比較して、1つ又は複数のさらなる調節エレメントを含みうる。例えば、所与のCRMの機能的バリアントは、CRMを、実質的に非機能的としない条件下において、誘導性エレメント又は抑制性エレメント、境界制御エレメント、絶縁体、遺伝子座制御領域、応答エレメント、結合性部位、末端リピートセグメント、応答性部位、安定化エレメント、不安定化エレメント、及びスプライシングエレメント等を含みうる。
【0112】
所与のCRMの機能的バリアントは、隣接するCRE間に、さらなるスペーサーを含む場合もあり、1つ又は複数のスペーサーが、参照CRM内に存在する場合、前記1つ又は複数のスペーサーは、参照CRM内で、長鎖の場合もあり、短鎖の場合もある。
【0113】
本発明に従う合成筋特異的プロモーターをもたらすために、本明細書で開示されるCRM、又はその機能的バリアントが、任意の適切なプロモーターエレメントと組み合わされうることが明らかであろう。
【0114】
多くの場合に、短いプロモーター配列は、特に、ベクター(例えば、AAV等のウイルスベクター)の容量が限定的である状況における使用のために好ましい。したがって、一部の実施形態では、合成筋特異的CRMは、250ヌクレオチド又はこれ未満、例えば、220、200、180、150、100、75、60、50ヌクレオチド又はこれ未満の長さを有する。特に好ましい一部の実施形態では、合成筋特異的CRMは、200ヌクレオチド又はこれ未満の長さを有する。
【0115】
プロモーターエレメント及びその機能的バリアント:
本発明のCRE及びCRMは、まとめて、プロモーターエレメントと呼ばれる、広範にわたる、適切な最小プロモーター又は筋特異的近位プロモーターと組み合わせて使用されうる。
【0116】
プロモーターエレメントの機能的バリアントは、参照プロモーターエレメントから変動しているが、筋特異的プロモーターエレメントとしての活性を実質的に保持する配列を含む。当業者により、発現を促進する、その能力を保持しながら、プロモーターエレメントの配列を変動させることが可能であることが察知されるであろう。プロモーターエレメントの機能的バリアントは、プロモーターエレメントを、実質的に非機能的としない条件下において、参照プロモーターエレメントと比較した、置換、欠失、及び/又は挿入を含みうる。
【0117】
一部の実施形態では、プロモーターエレメントの機能的バリアントは、合成プロモーター内において、参照プロモーターエレメントに代えて置換された場合に、その活性を、実質的に保持するプロモーターエレメントであると考えられうる。例えば、所与のプロモーターエレメントの機能的バリアントを含む筋特異的な合成プロモーターは、好ましくは、その活性のうちの少なくとも80%、より好ましくは、その活性のうちの少なくとも90%、より好ましくは、その活性のうちの少なくとも95%を保持し、なおより好ましくは、その活性の100%を保持する(非修飾プロモーターエレメントを含む参照プロモーターと比較して)。
【0118】
適切には、プロモーターエレメントの機能的バリアントは、参照プロモーターエレメントに対する、著明レベルの配列同一性を保持する。適切には、機能的バリアントは、参照プロモーターエレメントと少なくとも70%同一であり、より好ましくは、参照プロモーターエレメントと少なくとも80%、90%、95%、又は99%同一である配列を含む。
【0119】
活性の保持は、参照プロモーターの制御下における、適切なレポーターの発現を、同等な条件下で、プロモーターエレメントの置換を含む、他の点では同一なプロモーターと比較することにより評価されうる。筋特異的プロモーター活性を評価するのに適するアッセイは、本明細書、例えば、実施例で開示される。
【0120】
合成筋特異的プロモーター及びその機能的バリアント:
本明細書では、多様な合成筋特異的プロモーターが開示される。参照の合成筋特異的プロモーターの機能的バリアントは、参照の合成筋特異的プロモーターから変動しているが、筋特異的プロモーター活性を実質的に保持する配列を含むプロモーターである。当業者により、適切な筋特異的転写因子(TF)を動員し、RNAポリメラーゼIIを動員する、その能力を保持しながら、合成筋特異的プロモーターの配列を変動させて、作動可能に連結された配列(例えば、オープンリーディングフレーム)の筋特異的発現をもたらすことが可能であることが察知されるであろう。合成筋特異的プロモーターの機能的バリアントは、置換、欠失及び/又は挿入が合成筋特異的プロモーターを、参照プロモーターと比較して、実質的に非機能的としない条件下において、参照プロモーターと比較した、置換、欠失、及び/又は挿入を含みうる。
【0121】
したがって、一部の実施形態では、合成筋特異的プロモーターの機能的バリアントは、参照プロモーターの筋特異的プロモーター活性を、実質的に保持するバリアントであると考えられうる。例えば、合成筋特異的プロモーターの機能的バリアントは、参照プロモーターの活性のうちの好ましくは、少なくとも70%、より好ましくは、その活性のうちの少なくとも80%、より好ましくは、その活性のうちの少なくとも90%、より好ましくは、その活性のうちの少なくとも95%を保持し、なおより好ましくは、その活性の100%を保持する。
【0122】
合成筋特異的プロモーターの機能的バリアントは、しばしば、参照の合成筋特異的プロモーターに対する、著明レベルの配列類似性を保持する。一部の実施形態では、機能的バリアントは、参照の合成筋特異的プロモーターと少なくとも70%同一であり、より好ましくは、参照の合成筋特異的プロモーターと少なくとも80%、90%、95%、又は99%同一である配列を含む。
【0123】
機能的バリアント内の活性は、同等の条件下において、参照合成筋特異的プロモーターの制御下における、適切なレポーターの発現を、推定機能的バリアントの制御下における、適切なレポーターの発現と比較することにより評価されうる。筋特異的プロモーター活性を評価するのに適するアッセイは、本明細書、例えば、実施例で開示される。
【0124】
所与の合成筋特異的プロモーターの機能的バリアントは、参照の合成筋特異的プロモーター内に存在するCREのうちの1つ又は複数の機能的バリアントを含みうる。例えば、所与のCRMの機能的バリアントは、参照CRM内に存在するCREのうちの1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、又は6つを含みうる。CREの機能的バリアントについては、上記で論じられている。
【0125】
所与の合成筋特異的プロモーターの機能的バリアントは、参照の合成筋特異的プロモーターと比較された場合に、プロモーターエレメントの機能的バリアント、又は異なるプロモーターエレメントを含みうる。
【0126】
所与の合成筋特異的プロモーターの機能的バリアントは、参照の合成筋特異的プロモーターと同じCREを含みうるが、CREは、参照の合成筋特異的プロモーターと異なる順序で存在しうる。
【0127】
所与の合成筋特異的プロモーターの機能的バリアントは、参照の合成筋特異的プロモーター内に存在するCREに加えて、1つ又は複数のさらなるCREを含みうる。さらなるCREは、参照CRM内に存在するCREの上流に施される場合もあり、参照の合成筋特異的プロモーター内に存在するCREの下流に施される場合もあり、かつ/又は参照の合成筋特異的プロモーター内に存在するCREの間に施される場合もある。さらなるCREは、本明細書で開示されるCREの場合もあり、他のCREの場合もある。
【0128】
所与の合成筋特異的プロモーターの機能的バリアントは、参照合成筋特異的プロモーターと比較して、1つ又は複数のさらなる調節エレメントを含みうる。例えば、所与のCRMの機能的バリアントは、プロモーターを、実質的に非機能的としない条件下において、誘導性エレメント、イントロンエレメント、境界制御エレメント、絶縁体、遺伝子座制御領域、応答エレメント、結合性部位、末端リピートセグメント、応答性部位、安定化エレメント、不安定化エレメント、及びスプライシングエレメント等を含みうる。
【0129】
所与の合成筋特異的プロモーターの機能的バリアントは、さらなるスペーサーを、隣接するCRE及びプロモーターエレメントの間に含む場合もあり、1つ又は複数のスペーサーが、参照の合成筋特異的プロモーター内に存在する場合、前記1つ又は複数のスペーサーは、参照の合成筋特異的プロモーター内で、長鎖の場合もあり、短鎖の場合もある。機能的バリアントの例は、下記に提示される。
【0130】
SP0522は、SP0502の機能的バリアントであり、SP0522は、SP0502の短鎖形であるので、逆も成り立つ。SP0523は、SP0515の機能的バリアントであり、SP0523は、SP0515の短鎖形であるので、逆も成り立つ。SP0524は、SP0521の機能的バリアントであり、SP0524は、SP0521の短鎖形であるので、逆も成り立つ。
【0131】
本発明の合成筋特異的プロモーターは、本発明の合成筋特異的プロモーターと、さらなる調節配列とを含みうることが明らかであろう。例えば、本発明の合成筋特異的プロモーターは、プロモーターを、実質的に非機能的としない条件下において、1つ又は複数のさらなるCRM、誘導性エレメント又は抑制性エレメント、境界制御エレメント、絶縁体、遺伝子座制御領域、応答エレメント、結合性部位、末端リピートセグメント、応答性部位、安定化エレメント、不安定化エレメント、及びスプライシングエレメント等を含みうる。
【0132】
本発明の好ましい合成筋特異的プロモーターは、筋細胞内のCBAプロモーター又はRSVプロモーターにより呈される活性のうちの少なくとも15%、20%、25%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、125%、150%、175%、200%、250%、300%、350%、又は400%である、筋特異的プロモーター活性を呈する。多くの場合に、高レベルのプロモーター活性が好ましいが、これが常に当てはまるわけではなく、このため、場合によって、より中レベルの発現が好ましい場合もある。場合によって、要件に照らして、発現レベルが調整されることを可能とするように、利用可能な範囲にわたり、活性レベルが異なるプロモーターを有することが所望され;本開示は、このような範囲の活性をもたらすことが期待されるプロモーターを提示する。本発明の所与の合成筋特異的プロモーターの、CBA又はRSVと比較した活性は、2つのプロモーターが、他の点では同等な発現構築物中において、同等な条件下で施される場合に、合成筋特異的プロモーターの制御下における、レポーター遺伝子の筋特異的発現を、CBAプロモーター又はRSVプロモーターの制御下における、同じレポーターの発現と比較することにより評価されうる。
【0133】
一部の実施形態では、本発明の合成筋特異的プロモーターは、対象の筋肉又は筋細胞においてにおける遺伝子(例えば、治療用遺伝子又は目的の遺伝子)の発現を、公知の筋特異的プロモーター、適切には、SPc5-12プロモーター(Gene Ther.、2008年11月;15(22):1489~99)と比べて、少なくとも20%、少なくとも40%、少なくとも60%、少なくとも80%、少なくとも100%、少なくとも200%、少なくとも300%、少なくとも500%、少なくとも1000%又はこれを超えて増大させることが可能である。
【0134】
本発明の好ましい合成筋特異的プロモーターは、非筋細胞(例えば、Huh7細胞及びHEK293細胞)において、CMV-IEと比較して、50%若しくはこれ未満、好ましくは、CMV-IEの25%若しくはこれ未満、より好ましくは、CMV-IEの10%若しくはこれ未満であり、場合によって、CMV-IEの5%若しくはこれ未満、又はCMV-IEの1%若しくはこれ未満である活性を呈する。
【0135】
多くの場合に、短いプロモーター配列は、特に、ベクター(例えば、AAV等のウイルスベクター)の容量が限定的である状況における使用のために好ましい。したがって、一部の実施形態では、合成筋特異的プロモーターは、300ヌクレオチド又はこれ未満、例えば、290、280、270、260、250、240、230、220、210、200、150、100、75、70、68ヌクレオチド又はこれ未満の長さを有する。一部の実施形態では、合成筋特異的プロモーターは、300ヌクレオチド又はこれ未満、好ましくは、290ヌクレオチド又はこれ未満、より好ましくは、280ヌクレオチド又はこれ未満、なおより好ましくは、270ヌクレオチド又はこれ未満の長さを有する。一部の実施形態では、合成筋特異的プロモーターは、260ヌクレオチド又はこれ未満、好ましくは、250ヌクレオチド又はこれ未満、より好ましくは、240ヌクレオチド又はこれ未満、なおより好ましくは、230ヌクレオチド又はこれ未満の長さを有する。
【0136】
特に好ましい合成筋特異的プロモーターは、短鎖であり、かつ、高レベルの活性を呈する、合成筋特異的プロモーターである。
【0137】
合成筋特異的発現カセット:
本発明はまた、発現産物をコードする配列、適切には、遺伝子(例えば、導入遺伝子)に作動可能に連結された合成筋特異的プロモーターを含む、本発明の合成筋特異的発現カセットも提供する。
【0138】
遺伝子は、典型的に、ポリペプチド(タンパク質)又はRNA等、所望の遺伝子の発現産物をコードする。遺伝子は、少なくとも何らかの、所望される生物学的活性を有する、全長cDNA配列若しくはゲノムDNA配列、又はこれらの任意の断片、サブユニット、若しくは突然変異体でありうる。
【0139】
遺伝子が、タンパク質をコードする場合、本質的に任意の種類のタンパク質でありうる。非限定例として述べると、タンパク質は、酵素、抗体若しくは抗体断片(例えば、モノクローナル抗体)、ウイルスタンパク質(例えば、REP-CAP、REV、VSV-G、又はRD114)、治療用タンパク質、又は毒性タンパク質(例えば、カスパーゼ3、8、又は9)でありうる。
【0140】
本発明の、一部の好ましい実施形態では、遺伝子は、治療用発現産物、好ましくは、任意選択で、心筋内の遺伝子発現の異常、任意選択で、骨格筋及び/又は筋内の遺伝子発現の異常と関連する疾患又は状態の処置における使用に適する治療用ポリペプチドをコードする。
【0141】
一部の実施形態では、治療用発現産物は、筋疾患の処置に有用な治療用発現産物を含む。「筋疾患(muscular disease)」又は「筋疾患(muscle disease)」という用語は、原則として、当業者により理解されている。「筋疾患」という用語は、活性化合物の、筋肉、特に、筋細胞への投与による処置及び/又は防止に適する疾患に関する。一部の実施形態では、筋疾患は、骨格筋疾患である。一部の実施形態では、筋疾患は、心筋疾患である。
【0142】
一部の実施形態では、治療用発現産物は、デュシェンヌ型筋ジストロフィーの処置において有用である治療用発現産物である。一部の実施形態では、治療用発現産物は、DMD遺伝子又はその機能的バリアントである。
【0143】
一部の実施形態では、治療用発現産物は、心不全又はうっ血性心不全の処置において有用である治療用発現産物である。
【0144】
一部の実施形態では、筋疾患は、血管疾患、筋ジストロフィー、心筋症、筋強直、筋萎縮、ミオクローヌス・ジストニア(罹患遺伝子:SGCE)、ミトコンドリア性筋障害、横紋筋融解症、線維筋痛症、及び/又は筋膜痛症候群である。
【0145】
一実施形態では、疾患は、心血管状態又は心疾患又は心障害でありうる。一実施形態では、疾患は、うっ血性心不全等の心不全でありうる。一実施形態では、疾患は、虚血症、不整脈、心筋梗塞(MI)、心収縮の異常、非虚血性心筋症、末梢動脈閉塞性疾患、及びCa2+代謝の異常、並びにこれらの組合せから選択されうる。一部の実施形態では、疾患は、うっ血性心不全、心筋症、心筋梗塞、組織虚血症、心虚血症、血管疾患、後天性心疾患、先天性心疾患、アテローム性動脈硬化、伝導系の機能不全、冠動脈の機能不全、肺心高血圧症の群から選択されうる。一部の実施形態では、疾患は、うっ血性心不全、冠動脈疾患、心筋梗塞、心筋虚血症、アテローム性動脈硬化、心筋症、特発性心筋症、心不整脈、ダノン病、筋ジストロフィー、筋量異常、筋変性、感染性心筋炎、薬物誘導性筋異常又は毒素誘導性筋異常、過敏性心筋炎、自己免疫性心内膜炎、及び先天性心疾患から選択されうる。
【0146】
一部の実施形態では、心筋症は、肥厚性心筋症、催不整脈性右心室異形成、拡張型心筋症、拘束型心筋症、左心室緻密化障害、たこつぼ型心筋症、心筋炎、好酸球性心筋炎、及び虚血性心筋症である。好ましくは、肥厚性心筋症は、CMH1(遺伝子:MYH7)、CMH2(遺伝子:TNNT2)、CMH3(遺伝子:TPM1)、CMH4(遺伝子:MYBPC3)、CMH5、CMH6(遺伝子:PRKAG2)、CMH7(遺伝子:TNNI3)、CMH8(遺伝子:MYL3)、CMH9(遺伝子:TTN)、CMH10(遺伝子:MYL2)、CMH11(遺伝子:ACTC1)、又はCMH12(遺伝子:CSRP3)である。好ましくは、催不整脈性右心室異形成は、ARVD1(遺伝子:TGFB3)、ARVD2(遺伝子:RYR2)、ARVD3、ARVD4、ARVD5(遺伝子:TMEM43)、ARVD6、ARVD7(遺伝子:DES)、ARVD8(遺伝子:DSP)、ARVD9(遺伝子:PKP2)、ARVD10(遺伝子:DSG2)、ARVD11(遺伝子:DSC2)、及び/又はARVD12(遺伝子:JUP)である。
【0147】
一部の実施形態では、筋疾患は、血管疾患である。血管疾患は、冠動脈疾患、末梢動脈疾患、脳血管疾患、腎動脈狭窄、又は大動脈瘤でありうる。一部の実施形態では、筋疾患は、心筋症でありうる。心筋症は、高血圧性心疾患、心不全(うっ血性心不全等)、肺性心疾患、心調律異常、炎症性心疾患(心内膜炎、炎症性心肥大、心筋炎等)、心弁性心疾患、先天性心疾患、及びリウマチ性心疾患でありうる。
【0148】
一部の実施形態では、筋ジストロフィーは、デュシェンヌ型筋ジストロフィー(遺伝子罹患:DMD)、ベッカー型筋ジストロフィー(遺伝子罹患:DMD)、肢帯筋ジストロフィー(亜型遺伝子及び罹患遺伝子:LGMD1A(遺伝子:TTID)、LGMD1B(遺伝子:LMNA)、LGMD1C(遺伝子:CAV3)、LGMD1D(遺伝子:DNAJB6)、LGMD1E(遺伝子:DES)、LGMD1F(遺伝子:TNP03)、LGMD1G(遺伝子:HNRPDL)、LGMD1H、LGMD2A(遺伝子:CAPN3)、LGMD2B(遺伝子:DYSF)、LGMD2C(遺伝子:SGCG)、LGMD2D(遺伝子:SGCA)、LGMD2E(遺伝子:SGCB)、LGMD2F(遺伝子:SGCD)、LGMD2G(遺伝子:TCAP)、LGMD2H(遺伝子:TRIM32)、LGMD2I(遺伝子:FKRP)、LGMD2J(遺伝子:TTN)、LGMD2K(遺伝子:POMT1)、LGMD2L(遺伝子:AN05)、LGMD2M(遺伝子:FKTN)、LGMD2N(遺伝子:POMT2)、LGMD20(遺伝子:POMGNT1)、LGMD2Q(遺伝子:PLEC1))、先天性筋ジストロフィー、デュシェンヌ型筋ジストロフィー、エメリー・ドレイフス型筋ジストロフィー、遠位型筋ジストロフィー(亜型遺伝子及び罹患遺伝子:三好型筋障害(遺伝子:DYSF)、前脛骨筋における発症を伴う、遠位型筋障害(遺伝子:DYSF)、ウェランダー遠位型筋障害(遺伝子:TIA1)、ガウワーーレイン遠位型筋障害(遺伝子:MYH7)、野中遠位型筋障害、1型遺伝性封入体筋炎、声帯及び咽頭の衰弱を伴う遠位型筋障害、ZASP関連筋障害)、顔面肩甲上腕型筋ジストロフィー(亜型遺伝子及び罹患遺伝子:1型(遺伝子:DUX4)、2型(遺伝子:SMCHD1))、眼咽頭筋ジストロフィー(罹患遺伝子:PABPN1)、及び/又は筋強直性ジストロフィー(亜型遺伝子及び罹患遺伝子:DM1(遺伝子:DMPK)及びDM2(遺伝子:ZNF9))である。
【0149】
一部の実施形態では、ミオトニアは、先天性ミオトニア(罹患遺伝子:CLCN1;亜型:トムゼン型、ベッカー型)、カリウム惹起性ミオトニア、及び/又は先天性パラミオトニア(罹患遺伝子:SCN4A)である。
【0150】
一部の実施形態では、筋疾患は、デュシェンヌ型筋ジストロフィー(遺伝子:DMD)、ミオチュビュラーミオパチー(遺伝子:MTM1)、脊髄性筋委縮症(遺伝子:SMA)、II型グリコーゲン蓄積症(ポンペ病;遺伝子:GAA)、又は心筋症である。
【0151】
一部の実施形態では、疾患は、高カリウム血性周期性麻痺又は低カリウム血性周期性麻痺でありうる。
【0152】
一部の実施形態では、疾患は、ネマリン性筋障害、マルチ/ミニコア病、及び中心核筋障害から選択される先天性筋障害でありうる。
【0153】
一部の実施形態では、疾患は、炎症性筋障害、代謝性筋障害、ブロディー型筋障害、又は遺伝性封入体筋障害から選択されうる。
【0154】
一部の実施形態では、遺伝子は、非疾患媒介性バリアント、例えば、DMD GALGT2、SMA、GAA、MTM1、TTID、LMNA、CAV3、DNAJB6、DES、TNP03、HNRPDL、CAPN3、DYSF、SGCG、SGCA、SGCB、SGCD、TCAP、TRIM32、FKRP、TTN、POMT1、AN05、FKTN、POMT2、PFEC1、TIA1、MYH7、DUX4、SMCHD、PABPN1、DMPK、MBNL1、ZNF9、CFCN1、SCN4A、MYH7、TNNT2、TPM1、MYBPC3、PRKAG2、TNNI3、MYF3、TTN、MYF2、ACTC1、CSRP3、TGFB3、RYR2、TMEM43、DES、DSP、PKP2、DSG2、DSC2、JUP、CNBP、CLCN1、SEPN1、RYR1及びHYPPからなる群から選択される、少なくとも1つのヒト遺伝子の野生型バリアントをコードする。
【0155】
一部の実施形態では、遺伝子は、DMD GALGT2、SMA、GAA、MTM1、TTID、LMNA、CAV3、DNAJB6、DES、TNP03、HNRPDL、CAPN3、DYSF、SGCG、SGCA、SGCB、SGCD、TCAP、TRIM32、FKRP、TTN、POMT1、AN05、FKTN、POMT2、PFEC1、TIA1、MYH7、DUX4、SMCHD、PABPN1、DMPK、MBNL1、ZNF9、CFCN1、SCN4A、MYH7、TNNT2、TPM1、MYBPC3、PRKAG2、TNNI3、MYF3、TTN、MYF2、ACTC1、CSRP3、TGFB3、RYR2、TMEM43、DES、DSP、PKP2、DSG2、DSC2、JUP、CNBP、CLCN1、SEPN1、RYR1、及びHYPPからなる群から選択される、少なくとも1つのヒト遺伝子の合成野生型バリアントをコードする。
【0156】
さらなる例示的な筋組織関連疾患は、酸性マルターゼ欠損症(AMD)、アルファ-1アンチトリプシン欠損症、筋委縮性側索硬化症(ALS)、アンデルセン-タウィル症候群、ベッカー型筋ジストロフィー(BMD)、ベッカー型先天性筋強直、ベスレム型筋障害、心血管疾患、カルニチン欠損症、カルニチンパルミチルトランスフェラーゼ欠損症(CPT欠損症)、セントラルコア病(CCD)、中心核筋障害、シャルコー-マリー-トゥース病(CMT)、先天性筋無力症候群(CMS)、先天性筋強直性ジストロフィー、うっ血性心不全、コリー病(脱分枝酵素欠損症)、脱分枝酵素欠損症、デジェリーヌ・ソッタス病(DSD)、皮膚筋炎(DM)、内分泌性筋障害、オイレンベルク病(先天性パラミオトニア)、フォーブス病(脱分枝酵素欠損症)、フリードライヒ運動失調症(FA)、10型糖原病、11型糖原病、2型糖原病、3型糖原病、5型糖原病、7型糖原病、9型糖原病、ガウワーーレイン型遠位型筋障害、ハウプトマン-タンホイザー型MD(エメリー-ドレイフス型筋ジストロフィー)、遺伝性封入体筋炎、遺伝性運動感覚性神経障害(シャルコー-マリー-トゥース病)、甲状腺機能亢進性筋障害、甲状腺機能低下性筋障害、封入体筋炎(IBM)、遺伝性筋障害、インテグリン欠損性先天性筋ジストロフィー、乳酸デヒドロゲナーゼ欠損症、ランバート-イートン筋無力症候群(LEMS)、マッカードル病(ホスホリラーゼ欠損症)、筋代謝性疾患、ミトコンドリア性筋障害、三好型遠位型筋障害、運動ニューロン病、筋肉-眼-脳病、重症筋無力症(MG)、ミオアデニル酸デアミナーゼ欠損症、筋線維性筋障害、ミオホスホリラーゼ欠損症、先天性筋強直(MC)、筋強直性筋ジストロフィー(MMD)、筋管性筋障害(MTM又はMM)、ネマリン性筋障害、野中型遠位型筋障害、眼咽頭筋ジストロフィー(OPMD)、先天性パラミオトニア、ピアソン症候群、周期性四肢麻痺、腓骨筋萎縮症(シャルコー-マリー-トゥース病)、ホスホフルクトキナーゼ欠損症、ホスホグリセリン酸キナーゼ欠損症、ホスホグリセリン酸ムターゼ欠損症、ホスホリラーゼ欠損症、ホスホリラーゼ欠損症、多発性筋炎(PM)、ポンベ病(酸性マルターゼ欠損症)、進行性外眼筋麻痺症候群(PEO)、ネマリン小体病(ネマリン性筋障害)、脊髄性筋委縮症(SMA)、球脊髄性筋萎縮症(SBMA)、スタイナート病(筋強直性筋ジストロフィー)、垂井病(ホスホフルクトキナーゼ欠損症)、トムセン病(先天性筋強直)、ウルリッヒ先天性筋ジストロフィー、ウォーカー-ワルブルク症候群(先天性筋ジストロフィー)、ウェランダー型遠位型筋障害、及びZASP関連筋障害を含むがこれらに限定されない。
【0157】
一部の実施形態では、筋疾患は、心筋疾患である。一部の実施形態では、筋疾患は、うっ血性心不全である。
【0158】
一部の実施形態では、有用な発現産物は、ジストロフィン(マイクロジストロフィンを含む)、ベータ1,4-n-アセチルガラクトサミンガラクトシルトランスフェラーゼ(GALGT2)、カルバモイルシンセターゼI、アルファ-1アンチトリプシン、オルニチントランスカルバミラーゼ、アルキノコハク酸シンセターゼ、アルキノコハク酸リラーゼ、アルギナーゼ、フマリルアセト酢酸ヒドロラーゼ、フェニルアラニンヒドロキシラーゼ、グルコース-6-ホスファターゼ、ポルホビリノーゲンデアミナーゼ、シスタチオンベータ-シンターゼ、分枝鎖ケト酸デカルボキシラーゼ、アルブミン、イソバリルcoAデヒドロゲナーゼ、プロピオニルCoAカルボキシラーゼ、メチルマロニルCoAムターゼ、グルタリルCoAデヒドロゲナーゼ、インスリン、ベータ-グルコシダーゼ、ピルビン酸カルボキシラーゼ、肝ホスホリラーゼ、ホスホリラーゼキナーゼ、グリシンデカルボキシラーゼ、Hプロテイン、Tプロテイン、及び嚢胞性線維症膜貫通型調節因子(CFTR)を含む。
【0159】
更に他の有用な発現産物は、酵素置換療法において有用であり、酵素活性の欠損から生じる、様々な状態において有用な酵素を含む。例えば、マンノース-6-リン酸を含有する酵素は、リソソーム蓄積症のための治療において利用されうる(例えば、β-グルクロニダーゼ(GUSB)のコードを含む、適切な遺伝子)。
【0160】
一部の実施形態では、例示的なポリペプチド発現産物は、神経保護性ポリペプチド及び抗血管形成性ポリペプチドを含む。適切なポリペプチドは、グリア由来神経栄養因子(GDNF)、線維芽細胞増殖因子2(FGF-2)、ニュールツリン、毛様体神経栄養因子(CNTF)、神経増殖因子(NGF;例えば、神経増殖因子β)、脳由来神経栄養因子(BDNF)、ニューロトロフィン3(NT-3)、ニューロトロフィン4(NT-4)、ニューロトロフィン6(NT-6)、表皮増殖因子(EGF)、色素上皮由来因子(PEDF)、Wntポリペプチド、可溶性Fit-1、アンギオスタチン、エンドスタチン、VEGF、抗VEGF抗体、可溶性VEGFR、第VIII因子(FVIII)、第IX因子(FIX)、及びヘッジホッグファミリーのメンバー(ソニックヘッジホッグ、インディアンヘッジホッグ、及びデザートヘッジホッグ等)を含むがこれらに限定されない。
【0161】
一部の実施形態では、有用な治療用発現産物は、限定せずに述べると、インスリン、グルカゴン、成長ホルモン(GH)、副甲状腺ホルモン(PTH)、成長ホルモン放出因子(GRF)、濾胞刺激ホルモン(FSH)、黄体形成ホルモン(LH)、ヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG)、血管内皮増殖因子(VEGF)、アンギオポエチン、アンギオスタチン、顆粒球コロニー刺激因子(GCSF)、エリスロポエチン(EPO)、結合組織増殖因子(CTGF)、塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)、酸性線維芽細胞増殖因子(aFGF)、表皮増殖因子(EGF)、血小板由来増殖因子(PDGF)、インスリン増殖因子I及びII(IGF-I及びIGF-II)、TGFαを含む、形質転換増殖因子アルファスーパーファミリー、アクチビン、インヒビン、又は骨形成タンパク質(BMP)である、BMP1~BMP15のうちのいずれかのうちのいずれか1つ、増殖因子のヘレグリン/ニューレグリン/ARIA/neu分化因子(NDF)ファミリーのうちのいずれか1つ、神経増殖因子(NGF)、脳由来神経栄養因子(BDNF)、ニューロトロフィンNT-3及びNT-4/5、毛様体神経栄養因子(CNTF)、グリア細胞系由来神経栄養因子(GDNF)、ニュールツリン、アグリン、セマフォリン/コラプシンのファミリー、ネトリン1及びネトリン2、肝細胞増殖因子(HGF)、エフリン、ノッギン、ソニックヘッジホッグ、及びチロシンヒドロキシラーゼのうちのいずれか1つを含む、ホルモン並びに増殖因子及び分化因子を含む。
【0162】
一部の実施形態では、有用な発現産物は、限定せずに述べると、トロンボポエチン(TPO)、IL-1~IL-25のインターロイキン(IL)(IL-2、IL-4、IL-12、及びIL-18を含む)、単球走化性タンパク質、白血病阻害性因子、顆粒球-マクロファージコロニー刺激因子、Fasリガンド、腫瘍壊死因子α及び腫瘍壊死因子β、インターフェロン(インターフェロンアルファ、インターフェロンベータ、及びインターフェロンガンマ)、幹細胞因子、flk-2/flt3リガンド等のサイトカイン及びリンホカインを含む、免疫系を調節するタンパク質を含む。本発明では、免疫系により産生される遺伝子産物もまた有用である。これらは、限定せずに述べると、免疫グロブリンである、IgG、IgM、IgA、IgD、及びIgE、キメラ免疫グロブリン、ヒト化抗体、単鎖抗体、T細胞受容体、キメラT細胞受容体、単鎖T細胞受容体、クラスI MHC分子クラスII MHC分子の他、操作免疫グロブリン分子及び操作MHC分子を含む。有用な遺伝子産物はまた、補体調節的タンパク質、膜補因子タンパク質(MCP)、分解促進因子(DAF)、CR1、CF2、及びCD59等の補体調節タンパク質も含む。
【0163】
一部の実施形態では、有用な発現産物は、ホルモン、増殖因子、サイトカイン、リンホカイン、調節的タンパク質、及び免疫系タンパク質に対する受容体のうちのいずれか1つを含む。有用な異種核酸配列はまた、低密度リポタンパク質(LDL)受容体、高密度リポタンパク質(HDL)受容体、極低密度リポタンパク質(VLDL)受容体、及びスカベンジャー受容体を含む、コレステロールの調節及び/又は脂質のモジュレーションのための受容体も含む。本発明はまた、グルココルチコイド受容体及びエストロゲン受容体を含む、ステロイドホルモン受容体スーパーファミリーのメンバー、ビタミンD受容体、並びに他の核内受容体等の遺伝子産物の使用も包含する。加えて、有用な遺伝子産物は、jun、fos、max、mad等の転写因子、血清応答因子(SRF)、AP-1、AP-2、myb、MyoD及びミオゲニン、ETSボックス含有タンパク質、TFE3、E2F、ATF1、ATF2、ATF3、ATF4、ZF5、NFAT、CREB、HNF-4、C/EBP、SP1、CCAATボックス結合性タンパク質、インターフェロン調節因子(IRF-1)、ウィルムス腫瘍タンパク質、ETS結合性タンパク質、STAT、GATAボックス結合性タンパク質、例えば、GATA-3、及びウィングドヘリックスタンパク質のフォークヘッドファミリーを含む。
【0164】
一部の実施形態では、有用な発現産物は、B型血友病(第IX因子を含む)、及びA型血友病(第VIII因子、並びにヘテロ二量体の軽鎖及び重鎖、並びにB欠失ドメイン等、そのバリアント;米国特許第6,200,560号及び米国特許第6,221,349号を含む)を含む血友病の処置に使用される発現産物を含む。
【0165】
一部の実施形態では、有用な発現産物は、ホスファターゼ活性、例えば、1型ホスファターゼ活性のモジュレーターでありうる。モジュレーターは、ホスファターゼ活性を阻害するタンパク質、例えば、1型ホスファターゼ活性でありうる。モジュレーターは、転写因子等、ホスファターゼ活性を阻害するタンパク質をコードする内因性核酸の発現を増大させる核酸でありうる。モジュレーターは、ホスファターゼ活性を阻害するタンパク質をコードする内因性核酸に、又はこの近傍に組み込まれる調節配列でありうる。モジュレーターは、siRNA等、遺伝子発現の核酸モジュレーターをもたらしうる核酸でありうる。
【0166】
一部の実施形態では、有用な発現産物は、プロテインホスファターゼ1(PP1)、例えば、I-1ポリペプチドの阻害剤でありうる。ホスファターゼ阻害剤1(又は「I-1」)タンパク質は、1型ホスファターゼの内因性阻害剤である。I-1のレベルの上昇又は活性の増大は、不全性ヒト心筋細胞におけるβ-アドレナリン作用の応答性を復活させうる。適切には、I-1タンパク質は、トレオニン35が、アスパラギン酸ではなく、グルタミン酸で置きかえられたI-1タンパク質等、構成的に活性でありうる。治療用発現産物は、プロテインホスファターゼ1の内因性核内阻害剤である、ホスファターゼ阻害剤2(PP2);オカダ酸又はカリクリン;及びnipplから選択される阻害剤のうちの任意の1つ又は複数でありうる。
【0167】
一部の実施形態では、有用な発現産物は、1型ホスファターゼ阻害剤、例えば、I-1、又は筋小胞体Ca2+ATPアーゼ(SERCA)、例えば、SERCA1(例えば、1a又は1b)、SERCA2(例えば、2a又は2b)、又はSERCA3等、心活動をモジュレートする、任意のタンパク質でありうる。
【0168】
一部の実施形態では、有用な発現産物は、ホスファターゼ阻害剤1タンパク質の突然変異体形態をコードする核酸配列であることが可能であり、この場合、突然変異体形態は、野生型におけるPKC-αリン酸化部位である位置における、少なくとも1つのアミノ酸を含み、少なくとも1つのアミノ酸が、構成的に非リン酸化状態にあるか、又は突然変異体形態における非リン酸化状態を模倣する。治療用発現産物は、アデニルシクラーゼ6(AC6;アデニルシクラーゼVIともまた称される)、S100A1、β-アドレナリン作動性受容体キナーゼ-ct(βARKct)、筋/小胞体(SR)Ca-ATPアーゼ(SERCA2a)、IL-18、VEGF、VEGF活性化因子、ウロコルチン、及びB細胞性リンパ腫2(Bcl2)関連アタノ遺伝子3(BAG3)でありうる。
【0169】
一部の実施形態では、有用な発現産物は、IL-18阻害剤等、サイトカインの阻害剤でありうる。治療用発現産物は、心機能を増強するように、ベータ-アドレナリン作動性シグナル伝達タンパク質(ベータ-ASPs)(ベータ-アドレナリン作動性受容体(ベータ-Ars)、G-タンパク質受容体キナーゼ阻害剤(GRK阻害剤)、及びアデニルシクラーゼ(Acs)を含む)でありうる。
【0170】
一部の実施形態では、有用な発現産物は、血管形成性タンパク質でありうる。血管形成性タンパク質は、血管の発生及び分化を促進する。血管形成性タンパク質の例は、aFGF(FGF-1)、bFGF(FGF-2)、FGF-4(「hst/KS3」としてもまた公知である)、FGF-5、及びFGF-6等、線維芽細胞増殖因子(FGF)ファミリーのメンバー、血管内皮増殖因子(VEGF)ファミリー、血小板由来増殖因子(PDGF)ファミリー、インスリン様増殖因子(IGF)ファミリー等を含む。
【0171】
一部の実施形態では、有用な発現産物は、挿入、欠失、又はアミノ酸置換を含有する非自然発生のアミノ酸配列を有するキメラポリペプチド又はハイブリッドポリペプチド等、非自然発生のポリペプチドを含む。一部の実施形態では、発現産物は、野生型ジスフェルリンの短鎖形である、Table 1(表2)及び(Llangaら、2017)の図1Aに詳述されているNano-Dysferlin等の、合成ジスフェルリンタンパク質でありうる。
【0172】
さらなる、適切な発現産物は、マイクロRNA(miRNA)、干渉RNA、アンチセンスRNA、リボザイム、及びアプタマーを含む。
【0173】
一部の好ましい実施形態では、発現産物は、プロテインホスファターゼ1(PP1)の阻害剤である。
【0174】
本発明の一部の実施形態では、合成筋特異的発現カセットは、遺伝子編集に有用な遺伝子、例えば、メガヌクレアーゼ、亜鉛フィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、転写活性化因子様エフェクターベースのヌクレアーゼ(TALEN)、又はクラスター化規則的間隔短鎖回文反復配列システム(CRISPR-Cas)等、部位特異的ヌクレアーゼをコードする遺伝子を含む。適切には、部位特異的ヌクレアーゼは、切れ目(典型的に、部位特異的二重鎖切断)を作り、次いで、これが、非相同性末端結合(NHEJ)又は相同性依存性修復(HDR)を介して修復される結果として、所望の編集をもたらすことにより、所望の標的ゲノム遺伝子座を編集するように適合される。編集は、機能不全であるか、又は機能的遺伝子のノックダウン若しくはノックアウトである遺伝子の、部分的修復の場合もあり、完全な修復の場合もある。代替的に、編集は、当技術分野で公知である、適切なシステムを使用する、塩基編集又はプライム編集を介する編集でありうる。
【0175】
本発明の一部の実施形態では、合成筋特異的発現カセットは、遺伝子モジュレーションに有用な遺伝子、例えば、遺伝子抑制因子又は遺伝子活性化因子へと融合されたDNA結合性タンパク質の遺伝子、例えば、遺伝子抑制因子又は遺伝子活性化因子へと融合された亜鉛フィンガータンパク質遺伝子、又は遺伝子抑制因子又は遺伝子活性化因子へと融合されたエンドヌクレアーゼ欠損型cas9を含む。
【0176】
適切には、合成筋特異的発現カセットは、リボソーム結合性部位、開始コドン、終止コドン、及び転写終結配列のうちの1つ又は複数をもたらすか、又はコードし、好ましくは、これらの全てをもたらすか、又はコードする配列を含む。適切には、発現カセットは、転写後調節エレメントをコードする核酸を含む。適切には、発現カセットは、ポリAエレメントをコードする核酸を含む。
【0177】
ベクター及びウイルス粒子:
本発明は、更に、本発明に従う合成筋特異的プロモーター又は発現カセットを含むベクターを提供する。
【0178】
本発明の一部の実施形態では、ベクターは、プラスミドである。このようなプラスミドは、1つ又は複数の選択用マーカー、1つ又は複数の複製起点、複数のクローニング部位等、他の様々な機能的核酸配列を含みうる。本発明の一部の実施形態では、ベクターは、ウイルスベクターである。
【0179】
本発明の一部の実施形態では、ベクターは、真核細胞内の発現のための発現ベクターである。真核生物用発現ベクターの例は、;Stratagene社から入手可能なpW-LNEO、pSV2CAT、pOG44、pXT1、及びpSG;Amersham Pharmacia Biotech社から入手可能なpSVK3、pBPV、pMSG、及びpSVL;並びにClontech社から入手可能なpCMVDsRed2-express、pIRES2-DsRed2、pDsRed2-Mito、pCMV-EGFPを含むがこれらに限定されない。他の多くのベクターも周知であり、市販されている。哺乳動物細胞用のアデノウイルスベクターについて、pSVシリーズ及びpCMVシリーズのベクターは、特に周知の非限定例である。限定せずに述べると、酵母組込み型プラスミド(Yip)、及び酵母複製型プラスミド(Yrp)を含む、周知の多くの酵母発現ベクターが存在する。植物のために、アグロバクテリアのTiプラスミドは、例示的な発現ベクターであり、植物ウイルス、例えば、タバコモザイクウイルス(TMV)、バレイショウイルスX、及びササゲモザイクウイルスもまた、適切な発現ベクターをもたらす。
【0180】
一部の好ましい実施形態では、ベクターは、遺伝子治療用ベクターである。当技術分野では、多様な遺伝子治療用ベクターが公知であり、AAVベクター、アデノウイルスベクター、レトロウイルスベクター、及びレンチウイルスベクターについて言及されうる。ベクターが、遺伝子治療用ベクターである場合、ベクターは、好ましくは、治療用産物、適切には、治療用タンパク質をコードする、本発明の合成筋特異的プロモーターに作動可能に連結された核酸配列を含む。治療用タンパク質は、分泌性タンパク質でありうる。分泌性タンパク質の非限定例については、上記で論じられたが、例示的な分泌性治療用タンパク質は、第VIII因子又は第IX因子等の凝固因子、インスリン、エリスロポエチン、リポタンパク質リパーゼ、抗体又はナノボディー、増殖因子、サイトカイン、ケモカイン、血漿因子、毒性タンパク質等を含む。
【0181】
本発明の一部の実施形態では、ベクターは、レトロウイルスベクター、レンチウイルスベクター、アデノウイルスベクター、又はアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター等のウイルスベクターである。一部の好ましい実施形態では、ベクターは、AAVベクターである。一部の好ましい実施形態では、AAVは、筋内の形質導入に適する血清型を有する。一部の実施形態では、AAVは、AAV2、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9BNP116、rh10、AAV2.5、AAV2i8、AAVDJ8、及びAAV2G9、又はこれらの誘導体からなる群から選択される。一本鎖AAVベクター(ssAAV)の使用もまた、本明細書に包含されるが、AAVによる形質導入の律速段階のうちの1つ(すなわち、一本鎖AAVから、二本鎖AAVへの転換)を克服するために、AAVベクターは、好ましくは、自己相補性二本鎖AAVベクター(scAAV)として使用される。本発明の一部の実施形態では、AAVベクターは、キメラAAVベクターであり、これは、AAV2のITR及びAAV5のカプシドタンパク質等、少なくとも2つのAAV血清型に由来する構成要素を含むことを意味する。AAV9は、骨格筋へと、効果的に形質導入し、心筋へと、特に効果的に形質導入することが公知であるので、AAV9及びその誘導体は、骨格筋及び心筋をターゲティングするために、特に対象である。AAV1、AAV6、AAV7、及びAAV8もまた、骨格筋をターゲティングすることが公知であるので、これらのAAV血清型及びこれらの誘導体もまた、骨格筋をターゲティングするために、特に対象である。AAV1及びAAV8もまた、心筋をターゲティングすることが公知であるので、これらのAAV血清型及びこれらの誘導体もまた、心筋をターゲティングするために、特に対象である。一部の実施形態では、rAAVベクターは、AAV3b265Dビリオン、AAV3b265D549Aビリオン、AAV3b549Aビリオン、AAV3bQ263Yビリオン、又はAAV3bSASTGビリオン(すなわち、Q263A/T265突然変異を含む、AAV3bカプシドを含むビリオン)を含むがこれらに限定されない、AAV3b血清型である。一部の実施形態では、ビリオンは、カプシドが、所望の位置、例えば、心臓における更新の増大のために調整されうる等、理論的な一倍体、又はキメラ体若しくは任意の突然変異体でありうる。他のカプシドは、AAV1、AAV3、AAV4、AAV5、AAV7、AAV10等を含む、公知のAAV血清型のうちのいずれかに由来するカプシドを含みうる。
【0182】
本発明は、更に、上記で記載されたベクターを含む組換えビリオン(ウイルス粒子)を提供する。
【0183】
医薬組成物:
本発明のベクター又はビリオンは、薬学的に許容される賦形剤、すなわち、1つ又は複数の薬学的に許容される担体物質及び/又は添加剤、例えば、緩衝剤、担体、賦形剤、安定化剤等と共に、医薬組成物中に製剤化されうる。医薬組成物は、キットの形態で提供されうる。当技術分野では、AAVベクターに適切な医薬組成物及び送達システム、又はこれらの方法及び使用が公知である。
【0184】
したがって、本発明のさらなる態様は、本明細書で記載されるベクター又はビリオンを含む医薬組成物を提供する。
【0185】
治療法及び他の方法並びに使用:
本発明はまた、疾患、好ましくは、任意選択で、筋内の遺伝子発現の異常と関連する疾患(例えば、遺伝子性筋疾患)の処置における使用のための、本発明の多様な態様に従う合成筋特異的プロモーター、発現カセット、ベクター、ビリオン、又は医薬組成物も提供する。一実施形態では、本発明は、骨格筋疾患の処置における使用のための、本発明の多様な態様に従う合成筋特異的プロモーター、発現カセット、ベクター、ビリオン、又は医薬組成物を提供する。一実施形態では、本発明はまた、心筋疾患の処置における使用のための、本発明の多様な態様に従う合成筋特異的プロモーター、発現カセット、ベクター、ビリオン、又は医薬組成物も提供する。
【0186】
関与性の状態、疾患、及び治療用発現産物については、上記で論じられている。
【0187】
本発明はまた、本明細書で言及される任意の状態又は疾患の処置のための医薬組成物の製造のための使用における、本発明の多様な態様に従う合成筋特異的プロモーター、発現カセット、ベクター、ビリオンも提供する。
【0188】
本発明は、更に、本発明の多様な態様に従う合成筋特異的プロモーター、発現カセット、ベクター、ビリオンを含む細胞を提供する。適切には、細胞は、真核細胞である。真核細胞は、適切には、真菌細胞(例えば、酵母細胞)の場合もあり、動物(後生動物)細胞(例えば、哺乳動物の細胞)の場合もあり、植物細胞の場合もある。代替的に、細胞は、原核細胞でありうる。
【0189】
本発明の一部の実施形態では、細胞は、ex vivo細胞である、例えば、細胞培養物中にある。本発明の他の実施形態では、細胞は、組織又は多細胞生物の一部でありうる。
【0190】
好ましい実施形態では、細胞は、ex vivo細胞の場合もあり、in vivo細胞の場合もある、筋細胞(muscle cell(myocyte))である。好ましい実施形態では、細胞は、ex vivo細胞の場合もあり、in vivo細胞の場合もある、心筋細胞である。代替的な好ましい実施形態では、細胞は、ex vivo細胞の場合もあり、in vivo細胞の場合もある、骨格筋細胞である。筋細胞は、初代筋細胞の場合もあり、筋由来細胞系、例えば、不死化細胞系による細胞の場合もある。細胞は、筋組織環境内に(例えば、動物の筋内に)存在する場合もあり、筋組織から単離される場合もあり、例えば、細胞培養物中に存在する場合もある。適切には、細胞は、ヒト細胞である。
【0191】
骨格筋細胞は、速筋の場合もあり、遅筋の場合もある。
【0192】
心筋細胞は、心臓内の心室心筋細胞、心房心筋細胞、心線維芽細胞、又は内皮細胞(EC)の他、血管周囲細胞及びペースメーカー細胞から選択されうる。
【0193】
本発明に従う合成筋特異的プロモーター、発現カセット、又はベクターは、細胞のゲノムへと挿入される場合もあり、エピソーム性(例えば、エピソームベクター内に存在する)の場合もある。
【0194】
さらなる態様では、本発明は、発現産物を産生するための方法であって、本発明に従う合成筋特異的発現カセット(好ましくは、上記で明示されたベクター内の)を、細胞内、好ましくは、筋細胞内に提供する工程と、合成筋特異的発現カセット内に存在する遺伝子を発現させる工程とを含む方法を提供する。方法は、前記筋細胞を、遺伝子の発現に適する条件下で、適切に維持する工程を含む。培養において、これは、細胞又は細胞を含む組織を、適切な培養条件下でインキュベートする工程を含みうる。発現は、当然ながら、in vivo、例えば、対象の筋内の、1つ又は複数の細胞内の発現でありうる。一実施形態では、筋細胞は、心筋細胞である。一実施形態では、筋細胞は、骨格筋細胞である。
【0195】
適切には、方法は、合成筋特異的発現カセットを、筋細胞へと導入する工程を含む。当技術分野では、筋細胞にトランスフェクトする、広範にわたる方法が周知である。筋細胞にトランスフェクトする好ましい方法は、合成筋特異的発現カセットを含むウイルスベクター、例えば、AAVベクターを、細胞へと形質導入する方法である。
【0196】
当業者には、本発明の多様な態様に従う合成筋特異的プロモーター、発現カセット、ベクター、又はビリオンが、遺伝子治療に使用されうることが明らかであろう。したがって、このような核酸構築物の、遺伝子治療における使用は、本発明の一部を形成する。
【0197】
したがって、一部の実施形態では、本発明は、対象における遺伝子治療、好ましくは、治療用遺伝子の筋特異的発現を介する遺伝子治療における使用のための、本発明に従う発現カセット、ベクター、又はビリオンを提供する。適切には、治療用遺伝子の骨格筋特異的発現、及び/又は治療用遺伝子の心筋特異的発現を介する遺伝子治療である。治療は、治療用産物の、筋細胞からの分泌を介する、疾患、適切には、筋内の異常な遺伝子発現を伴う疾患等、上記で論じられた疾患の処置を伴いうる。
【0198】
本発明はまた、治療用導入遺伝子を、筋細胞内で発現させる方法であって、筋細胞へと、本発明に従う発現カセット又はベクターを導入する工程を含む方法も提供する。筋細胞は、in vivo細胞の場合もあり、ex vivo細胞の場合もある。一実施形態では、筋細胞は、心筋細胞である。一実施形態では、筋細胞は、骨格筋細胞である。
【0199】
本発明はまた、それを必要とする対象、好ましくは、ヒトに対する遺伝子治療の方法であって、
- 対象へと、治療用産物をコードする遺伝子を含む、本発明の合成筋特異的発現カセット、ベクター、ビリオン、又は医薬組成物を投与する工程(適切には、対象の筋肉へと、これらを導入する工程)
を含む方法も提供する。
【0200】
一実施形態では、筋肉は、心筋である。一実施形態では、筋肉は、骨格筋である。一実施形態では、筋肉は、心筋及び/又は骨格筋である。方法は、適切には、前記対象の筋内の遺伝子から、治療量の治療用産物を発現させる工程を含む。処置されうる、多様な状態及び疾患については、上記で論じられている。一実施形態では、筋肉は、心筋である。一実施形態では、筋肉は、骨格筋である。
【0201】
適切な治療用産物をコードする遺伝子については、上記で論じられている。
【0202】
方法は、適切には、本発明に従うベクター又はビリオンを、対象へと投与する工程を含む。適切には、ベクターは、遺伝子治療用ウイルスベクター、例えば、AAVベクターである。
【0203】
一部の実施形態では、方法は、対象へと、治療用産物をコードする遺伝子を含む、合成筋特異的ウイルス性遺伝子治療ベクター(すなわち、本明細書で記載される筋特異的プロモーターを含む、ウイルス性遺伝子治療ベクター)を投与するステップを含む。
【0204】
一部の実施形態では、方法は、遺伝子治療用ウイルスベクターを全身投与する工程を含む。全身投与は、腸内(例えば、経口、舌下、及び直腸内)投与の場合もあり、非経口投与(例えば、注入)の場合もある。好ましい注入経路は、静脈内注入、筋内注入、皮下注入、動脈内注入、関節内注入、髄腔内注入、及び皮内注入を含む。一部の好ましい実施形態では、ウイルス性遺伝子治療ベクターは、対象へと、順行姓心外膜冠動脈注入(AECAI)により投与される。特に好ましい一部の実施形態では、ウイルス性遺伝子治療ベクターは、対象へと、経皮大腿部アクセスを介する順行姓心外膜冠動脈注入(AECAI)により投与される。
【0205】
一部の実施形態では、対象は、心不全を有する。一部の実施形態では、対象の遺伝子治療の方法は、心不全の処置のための方法である。
【0206】
一部の実施形態では、方法は、対象へと、順行姓心外膜冠動脈注入(AECAI)を介して、心不全の処置のための、合成筋特異的ウイルス性遺伝子治療ベクターを投与するステップを含み、この場合、ベクターは、治療用産物をコードする遺伝子を含む。
【0207】
一部の実施形態では、遺伝子治療用ウイルスベクターは、1つ若しくは複数のさらなる治療剤、又は細網内皮系によるベクターのクリアランスを防止するようにデザインされた、1つ若しくは複数の飽和剤と共に、共時的に投与される場合もあり、逐次的に投与される場合もある。
【0208】
ベクターが、AAVベクターである場合、ベクターの投与量は、1×1010gc/kg~1×1015gc/kg又はこれを超える投与量であることが可能であり、適切には、1×1012gc/kg~1×1014gc/kg、適切には、5×1012gc/kg~5×1013gc/kgでありうる。
【0209】
一般に、「それを必要とする対象」は、哺乳動物であり、好ましくは、霊長動物、より好ましくは、ヒトであろう。典型的に、「それを必要とする対象」は、疾患に特徴的な症状を提示するであろう。方法は、典型的に、治療量の治療用産物を発現させることにより、それを必要とする対象により提示される症状を改善する工程を含む。
【0210】
当技術分野では、in vitro及びin vivoの標的細胞内の、治療用遺伝子の発現のための遺伝子治療プロトコールが周知であり、本明細書では、詳細には論じられない。略述すると、遺伝子治療プロトコールは、プラスミドDNAベクター(ネイキッドのプラスミドDNAベクター又はリポソーム内のプラスミドDNAベクター)又はウイルスベクターの、筋内注入、間質注入、気道内の滴下、内皮への塗布、肝実質内投与、及び静脈内投与又は動脈内投与(例えば、肝動脈内投与、肝静脈内投与)を含む。DNAの、標的細胞へのアベイラビリティーを増強するための、多様なデバイスが開発されている。単純な手法は、標的細胞を、関与性のベクターを含有するカテーテル又は植込み型材料と、物理的に接触させることであるが、より複合的な手法は、ジェット式注入デバイス等を使用する。哺乳動物の筋細胞への遺伝子導入は、ex vivo手順及びin vivo手順の両方を使用して実施されている。ex vivo法は、典型的に、筋細胞の採取、in vitroにおける、適切な発現ベクターによる形質導入に続く、形質導入された筋細胞の、筋内への再導入を要求する。in vivoにおける遺伝子導入は、DNA又はウイルスベクターの、筋内への注入により達成されている。順行姓心外膜冠動脈注入は、DNA又はウイルスベクターを、心臓に近接して注射するために使用されうる。
【0211】
一部の好ましい実施形態に従い、上記で明示された方法は、上記で論じられた筋関連疾患、例えば、筋ジストロフィー又はうっ血性心不全を伴う対象の処置ために使用されうる。
【0212】
定義及び一般的諸点:
下記では、本発明の多様な実施形態の実行及び使用について、詳細に論じられるが、本発明は、多種多様な具体的文脈において実施されうる、多くの適用可能な発明概念を提示することを察知されたい。本明細書で論じられる具体的実施形態は、本発明を実行及び使用するための具体的方途を例示するだけのものであり、本発明の範囲を画定するものではない。
【0213】
本明細書における、本発明に対する背景についての議論は、本発明の文脈を説明するために組み入れられる。これは、言及された素材のうちのいずれかが、請求項のうちのいずれかの優先日現在、任意の国において、公表されているか、公知であるか、又は一般的な共通の知見の一部であったことの容認としては理解されないものとする。
【0214】
本開示を通して、多様な刊行物、特許、及び特許明細書の公開は、引用を同定することにより参照される。本明細書で引用される全ての文献は、参照によりそれらの全体において組み込まれる。特に、本明細書で具体的に言及される、このような文献の教示又は節は、参照により組み込まれる。
【0215】
本発明の実施は、そうでないことが指し示されない限りにおいて、当技術分野の技術の範囲内にある、細胞生物学、細胞培養物、分子生物学、トランスジェニック生物学、微生物学、組換えDNA、及び免疫学の常套的技法を援用する。このような技法については、文献において、十分に説明されている。例えば、「Current Protocols in Molecular Biology」(Ausubel、2000、Wiley and son Inc、Library of Congress、USA);「Molecular Cloning: A Laboratory Manual」、3版、(Sambrookら、2001、Cold Spring Harbor、New York:Cold Spring Harbor Laboratory Press);「Oligonucleotide Synthesis」(M. J. Gait編、1984);米国特許第4,683,195号;「Nucleic Acid Hybridization」(Harries及びHiggins編、1984);「Transcription and Translation」(Hames及びHiggins編、1984);「Culture of Animal Cells」(Freshney、Alan R. Liss, Inc.、1987);「Immobilized Cells and Enzymes」(IRL Press、1986);Perbal、「A Practical Guide to Molecular Cloning」(1984);「Methods in Enzymology」(Abelson及びSimon責任編集、Academic Press, Inc.、New York)、特に、154及び155巻 (Wuら編)及び185巻、「Gene Expression Technology」 (Goeddel編);「Gene Transfer Vectors For Mammalian Cells」(Miller及びCalos編、1987、Cold Spring Harbor Laboratory);「Immunochemical Methods in Cell and Molecular Biology」(Mayer及びWalker編、Academic Press、London、1987);「Handbook of Experimental Immunology」、I~IV巻(Weir及びBlackwell編、1986);並びに「Manipulating the Mouse Embryo」(Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、N.Y.、1986)を参照されたい。
【0216】
本発明の理解を容易にするため、下記では、多数の用語が規定又は説明される。本明細書で使用される用語は、本発明に関与する領域の当業者により一般に理解される意味を有する。「ある(a)」、「ある(a)」、及び「その」等の用語は、単数の実体だけを指すことが意図されものではなく、それらの具体例が、例示のために使用されうる、一般的なクラスを含むことが意図される。本明細書における用語法は、本発明の具体的実施形態について記載するのに使用されるが、それらの用法は、特許請求の範囲で概括されるのでない限り、本発明を画定しない。
【0217】
「筋肉」という用語は、当業者により十分に理解されている。好ましくは、筋肉は、骨格筋(横隔膜を含む)又は心筋である。本発明のプロモーターは、骨格筋内及び/又は心筋内で活性でありうる。好ましくは、筋肉は、脊椎動物、より好ましくは、哺乳動物、なおより好ましくは、ヒト対象の筋肉である。好ましくは、筋肉は、横紋筋である。
【0218】
「筋細胞(muscle cell)」又は「筋細胞(myocyte)」という用語は、本出願において、筋(筋組織)内に見出される細胞、又は筋組織に由来する細胞に関する。筋細胞は、初代細胞の場合もあり、細胞系(C2C12細胞又はH2K細胞(骨格筋細胞系)又はH9C2細胞(心細胞系)等)の場合もある。筋細胞は、in vivo(例えば、筋組織内)の場合もあり、in vitro(例えば、細胞培養物中)の場合もある。筋組織内で見出される筋細胞(myocyte)は、典型的に、筋芽細胞から発生して、筋形成として公知の過程において、筋肉を形成する、長型の管状細胞である。本明細書で使用される、「筋細胞(muscle cell)」又は「筋細胞(myocyte)」という用語は、骨格筋及び心筋(心筋細胞)に由来する筋細胞(myocyte)を含む。本発明のプロモーターは、骨格筋細胞内及び/又は心筋細胞内で活性でありうる。
【0219】
「シス調節性エレメント」又は「CRE」という用語は、当業者に周知の用語であり、隣接する遺伝子(すなわち、シスにおける遺伝子)の転写を調節しうるか、又はモジュレートしうる、エンハンサー、プロモーター、絶縁体、又はサイレンサー等の核酸配列を意味する。CREは、それらが調節する遺伝子の近傍に見出される。CREは、典型的に、TFに結合することにより、遺伝子転写を調節する、すなわち、CREは、TFBSを含む。単一のTFは、多くのCREに結合することが可能であり、したがって、多くの遺伝子の発現を制御しうる(多面発現性でありうる)。CREは、通例、それらが調節する遺伝子の転写開始部位(TSS)の上流に配置されるが、常にこのように配置されるわけではない。本文脈における「エンハンサー」とは、それらが作動可能に関連する遺伝子の転写を増強する(すなわち、を上方調節する)CREであり、それらが調節する遺伝子の上流、下流に見出されうるが、イントロン内に見出される場合もある。1つの遺伝子の転写を調節するのに、複数のエンハンサーが、協同的に作用する場合もある。この文脈における「サイレンサー」は、遺伝子の転写を防止又は下方調節するように作用する、リプレッサーと呼ばれるTFに結合するCREに関する。「サイレンサー」という用語はまた、メッセンジャーRNAの3'側非翻訳領域内の領域であって、このmRNA分子の翻訳を抑制するタンパク質に結合する領域を指す場合もあるが、この用法は、CREについて記載する場合のその使用と顕著に異なる。一般に、本発明のCREは、筋特異的エンハンサーエレメント、又は骨格筋特異的エンハンサーエレメント(しばしば、筋特異的CRE、若しくは骨格筋特異的CRE、又は筋特異的CREエンハンサー、若しくは骨格筋特異的CREエンハンサー等と称される)である。本文脈では、CREは、転写開始部位(TSS)から2500ヌクレオチド又はこれ未満、より好ましくは、TSSから2000ヌクレオチド又はこれ未満、より好ましくは、TSSから1500ヌクレオチド又はこれ未満配置され、適切には、TSSから、1000、750、500、250、200、150、若しくは100ヌクレオチド、又はこれ未満の位置に配置されることが好ましい。本発明のCREは、好ましくは、長さが比較的短く、好ましくは、250ヌクレオチド又はこれ未満の長さであり、例えば、200、175、150、90、80、70、60、若しくは50ヌクレオチド、又はこれ未満の長さでありうる。本発明のCREは、典型的に、最小プロモーター又は近位プロモーターでありうる、作動可能に連結されたプロモーターエレメントと組み合わせて施され;本発明のCREは、プロモーターエレメントの筋特異的活性、又は骨格筋特異的活性を増強する。本明細書で開示されるCRE又はその機能的バリアントの組合せのうちのいずれかにおいて、列挙されたCRE及びプロモーターエレメントの一部又は全部は、適切には、プロモーター内に、互いと隣接して位置しうる(すなわち、CRE又は他の調節エレメントの介在を伴わない)。CREは、連続的な場合もあり、非連続的な場合もある(すなわち、それらは、互いと直に隣接して位置する場合もあり、スペーサー又は他の配列により隔てられる場合もある)。CREは、任意の順序に置かれうる。一部の好ましい実施形態では、CRE又はその機能的バリアントは、列挙される順序で、互いと隣接して施される。例えば、合成筋特異的調節性核酸は、CRE0075のすぐ上流におけるCRE0077等を含みうる。一部の実施形態では、CREの一部又は全部は、連続的であることが好ましい。
【0220】
「シス調節性モジュール」又は「CRM」という用語は、通例、2つ又はこれを超えるCREを含む、機能的調節性核酸モジュールを意味し、本発明では、CREは、典型的に、筋特異的エンハンサー、又は骨格筋特異的エンハンサーであるので、CRMは、合成筋特異的調節性核酸、又は合成骨格筋特異的調節性核酸である。したがって、本出願において、CRMは、典型的に、複数の筋特異的CRE、又は骨格筋特異的CREを含む。典型的に、CRM内の、複数のCREは、CRMを含む合成プロモーターが作動可能に関連する遺伝子の転写を増強するように、一体に(例えば、相加的に、又は相乗的に)作用する。シャッフルし(すなわち、順序の並べ替え)、反転させ(すなわち、逆配向性)、CRM内のCREの間隔を変更する余地が、広範に存在する。したがって、本発明のCRMの機能的バリアントは、とりわけ、参照CRMのバリアントを含むが、この場合、それらの中のCREは、シャッフルされ、かつ/又は反転され、かつ/又はCRE間の間隔が、変更されている。
【0221】
本明細書で使用される、「プロモーター」という語句は、一般に、転写される核酸配列の上流に配置される、DNAの領域であって、転写が生じるために必要とされる領域、すなわち、転写を誘発する領域を指す。プロモーターは、それらの制御下において、コード配列の転写の、適正な活性化又は抑制を可能とする。プロモーターは、典型的に、複数のTFにより認識され、結合される、特異的配列を含有する。TFは、プロモーター配列に結合し、遺伝子のコード領域から、RNAを合成する酵素である、RNAポリメラーゼの動員を結果としてもたらす。当技術分野では、多くの多様なプロモーターが公知である。
【0222】
場合によって、本明細書では、「プロモーター」又は「複合プロモーター」という用語は、プロモーターと、さらなる調節エレメント、例えば、転写開始部位(TSS)のすぐ下流に配置された調節配列、例えば、5'UTR、並びに/又は5'UTR及びイントロンとの組合せを指すように使用される。TSSの下流における、このような配列は、転写段階及び/又は翻訳段階における発現の調節に寄与しうる。
【0223】
本明細書で使用される、「合成プロモーター」という用語は、自然発生ではないプロモーターに関する。本文脈において、「合成プロモーター」は、典型的に、最小(又はコア)プロモーター、又は筋特異的近位プロモーター、若しくは骨格筋特異的近位プロモーター(プロモーターエレメント)に作動可能に連結された、本発明のCRE及び/又はCRMを含む。本発明のCRE及び/又はCRMは、合成プロモーターに作動可能に連結された遺伝子の、筋特異的転写、又は骨格筋特異的転写を増強するのに用いられる。合成プロモーターの部分は、自然発生(例えば、最小プロモーター、又はプロモーター内の1つ若しくは複数のCRE)でありうるが、実体としての合成プロモーターは、自然発生ではない。
【0224】
本明細書で使用される、「最小プロモーター」(「コアプロモーター」としてもまた公知である)とは、典型的に、それ自体では不活性であるか、又は大部分不活性であるが、他の転写調節エレメントと組み合わされると、転写を媒介しうる、短鎖DNAセグメントを指す。最小プロモーター配列は、原核生物遺伝子及び真核生物遺伝子を含む、多様な異なる供給源に由来しうる。最小プロモーターの例については、上記で論じられており、デスミン最小プロモーター、ドパミンベータ-ヒドロキシラーゼ遺伝子最小プロモーター、サイトメガロウイルス(CMV)即初期遺伝子最小プロモーター(CMV-MP)、及びヘルペスチミジンキナーゼ最小プロモーター(MinTK)を含む。最小プロモーターは、典型的に、転写開始部位(TSS)及びRNAポリメラーゼIIの結合性部位のすぐ上流のエレメント、並びに一般的な転写因子結合性部位(しばしば、TATAボックス)を含む。最小プロモーターはまた、TSSの下流における、一部のエレメントも含みうるが、これらは、典型的に、さらなる調節エレメントがなければ、ほとんど機能性を有さない。
【0225】
本明細書で使用される、「近位プロモーター」は、最小プロモーター+少なくとも一部のさらなる調節配列に関し、典型的に、一次調節エレメントを含有する傾向がある、遺伝子の上流における近位配列に関する。「近位プロモーター」は、しばしば、TSSの上流において、約250塩基対にわたり、特異的TFBSを含む。近位プロモーターはまた、TSSの下流における、1つ又は複数の調節エレメント、例えば、UTR又はイントロンも含みうる。この場合、近位プロモーターは、適切には、1つ又は複数の、本発明のCRE又はCRMと組み合わされうる、自然発生の筋特異的近位プロモーター、又は骨格筋特異的近位プロモーターでありうる。しかし、近位プロモーターは、合成近位プロモーターでありうる。
【0226】
本明細書で使用される、「プロモーターエレメント」とは、上記で規定された、最小プロモーター又は近位プロモーターを指す。本発明の文脈では、プロモーターエレメントは、本発明の合成筋特異的プロモーター、又は合成骨格筋特異的プロモーターをもたらすために、典型的に、1つ又は複数のCREと組み合わされる。
【0227】
本発明の文脈におけるCRE、CRM、プロモーターエレメント、合成プロモーター、又は他の調節性核酸の「機能的バリアント」は、参照配列、例えば、筋特異的CRE、若しくは骨格筋特異的CRE、筋特異的CRM、若しくは骨格筋特異的CRM、又は筋特異的プロモーター、若しくは骨格筋特異的プロモーターと同じ形で機能する能力を保持する、参照配列のバリアントである。このような機能的バリアントのための代替的用語は、「生物学的同等物」又は「同等物」を含む。
【0228】
筋特異的エンハンサー、又は骨格筋特異的エンハンサーとして機能する、所与のCRE、CRM、プロモーター、又は他の調節配列の能力は、参照配列に結合する、同じ筋特異的TF、心筋特異的TF、又は骨格筋特異的TFに結合する配列の能力により有意味に決定されることが察知されるであろう。したがって、大半の場合、CRE又はCRMの機能的バリアントは、参照CRE、参照CRM、又は参照プロモーターと同じTFの大半又は全てに対するTFBSを含有するであろう。機能的バリアントのTFBSが、参照CRE、CRM、又はプロモーターと同じ相対位置(すなわち、順序及び全体的な位置)にあることは、好ましいが、不可欠ではない。また、機能的バリアントのTFBSが、参照配列と同じ配向性にある(TFBSは、場合によって、逆配向性で存在する、例えば、参照配列内の向かい合わせの配列である逆相補体として存在することが注目されるであろう)ことも好ましいが、不可欠ではない。また、機能的バリアントのTFBSが、参照配列と同じ鎖上にあることも好ましいが、不可欠ではない。したがって、好ましい実施形態では、機能的バリアントは、参照配列と同じ順序、同じ位置、同じ配向性にあり、同じ鎖上にある、同じTFに対するTFBSを含む。また、TFBSの間にある配列(場合によって、スペーサー配列等と称される)は、CRE又はCRMの機能に対して、それほど重要ではないことも察知されるであろう。このような配列は、典型的に、大幅に変動させられる場合があり、それらの長さも変更されうる。しかし、好ましい実施形態では、間隔(すなわち、隣接するTFBS間の距離)は、機能的バリアント内において、参照配列と実質的に同じ(例えば、20%を超えて変動せず、好ましくは、10%を超えて変動せず、より好ましくは、ほぼ同じである)である。場合によって、CREの機能的バリアントは、逆配向性で存在しうる、例えば、上記で記載したCRE、又はそのバリアントの逆相補体でありうることが明らかであろう。
【0229】
機能的バリアントと、参照配列との配列同一性のレベルはまた、機能性の保持のための指標でもありうる。CRE、CRM、又はプロモーターのTFBSにおける、高レベルの配列同一性は、スペーサー配列内の配列同一性より、一般に高度の重要性を有する(配列のいかなる保存に対しても、ほとんど、又は全く要件が存在しない)。しかし、機能的TFBSの配列が、コンセンサス配列に正確にマッチする必要がないことを踏まえると、TFBS内であってもなお、かなりの程度の配列バリエーションが適合されうることが察知されるであろう。
【0230】
1つ又は複数のTFが、所与の機能的バリアント内のTFBSに結合する能力は、ゲルシフトアッセイ(EMSA)、結合アッセイ、クロマチン免疫沈降(ChIP)、及びChIPシークエンシング(ChIP-seq)を含むがこれらに限定されない、当技術分野で公知の、任意の関与性の手段により決定されうる。好ましい実施形態では、1つ又は複数のTFが、所与の機能的バリアントに結合する能力は、EMSAにより決定される。EMSAを実施する方法は、当技術分野で周知である。適切な手法については、上記で引用された、Sambrookらにおいて記載されている。この手順について記載する、多くの関与性の論考、例えば、Hellman及びFried、Nat Protoc.、2007、2(8):1849~1861が入手可能である。
【0231】
「筋特異的」又は「筋特異的発現」とは、筋細胞(又は筋由来細胞)内において、他の組織(例えば、肝臓、腎臓、脾臓、心、肺、及び脳)と比較して、優先的な形で、又は主要な形で遺伝子の発現を増強又は駆動する、シス調節性エレメント、シス調節性モジュール、又はプロモーターの能力を指す。遺伝子の発現は、mRNAの形態の場合もあり、タンパク質の形態の場合もある。好ましい実施形態では、筋特異的発現は、他の(すなわち、非筋肉)組織又は細胞における発現が無視できる程度である、すなわち、発現が、高度に筋特異的であるような発現である。例えば、他の細胞と対比された筋細胞内の発現は、少なくとも75%、80%、85%、90%、又は95%である。「心筋特異的」又は「心筋特異的発現」とは、心筋内において、他の組織(例えば、脾臓、肝臓、肺、及び脳)と比較して、かつ骨格筋組織と比較して、優先的な形で、又は主要な形で遺伝子の発現を増強又は駆動する、シス調節性エレメント、シス調節性モジュール、プロモーターエレメント、又はプロモーターの能力を指す。「骨格筋特異的」又は「骨格筋特異的発現」とは、骨格筋内において、他の組織(例えば、脾臓、肝臓、肺、及び脳)と比較して、かつ心筋組織と比較して、優先的な形で、又は主要な形で遺伝子の発現を増強又は駆動する、シス調節性エレメント、シス調節性モジュール、プロモーターエレメント、又はプロモーターの能力を指す。低度の特異性が所望される場合もあり、本発明の一部である。
【0232】
筋特異的CRE、心筋特異的CRE、若しくは骨格筋特異的CRE、筋特異的CRM、心筋特異的CRM、若しくは骨格筋特異的CRM、又は筋特異的プロモーター、心筋特異的プロモーター、若しくは骨格筋特異的プロモーターとして機能する、CRE、CRM、又はプロモーターの能力は、当業者により、たやすく評価されうる。したがって、当業者は、上記で列挙された特異的CRE、特異的CRM、又は特異的プロモーターの任意のバリアントが、機能性を維持する(すなわち、上記で規定された機能的バリアントである)のかどうかを容易に決定しうる。例えば、評価される、任意の所与のCRMは、最小プロモーター(例えば、CMV-MPの上流に位置する)に作動可能に連結される場合があり、筋特異的遺伝子、心筋特異的遺伝子、又は骨格筋特異的遺伝子(典型的に、レポーター遺伝子)の発現を駆動するシス調節性エレメントの能力が測定される。代替的に、参照CRE又は参照CRMに代えて、CRE又はCRMのバリアントが、合成筋特異的プロモーター、合成心筋特異的プロモーター、又は合成骨格筋特異的プロモーターへと置換される場合があり、前記修飾プロモーターにより駆動される筋特異的発現、心筋特異的発現、又は骨格筋特異的発現に対する効果は、決定され、非修飾形態と比較されうる。同様に、筋特異的発現、心筋特異的発現、又は骨格筋特異的発現を駆動するプロモーターの能力は、当業者により、たやすく評価されうる(例えば、下記の実施例で記載される通り)。参照プロモーターのバリアントにより駆動される、遺伝子の発現レベルは、参照プロモーターにより駆動される発現レベルと比較されうる。バリアントプロモーターにより駆動される筋特異的発現、又は骨格筋特異的発現のレベルが、参照プロモーターにより駆動される発現レベルの、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、又は少なくとも100%である、一部の実施形態では、バリアントが、機能性を維持すると言うことができる。筋特異的発現、心筋特異的発現、又は骨格筋特異的発現の増強を評価するのに適する核酸構築物及びレポーターアッセイは、容易に構築することができ、下記に明示される実施例は、適切な方法論を示す。
【0233】
筋特異性、心筋特異的、又は骨格筋特異性は、遺伝子(例えば、治療用遺伝子又はレポーター遺伝子)の発現が、筋由来細胞、又は骨格筋由来細胞において、優先的に、又は主要に生じる場合に同定されうる。優先的発現又は主要な発現は、例えば、発現レベルが、筋由来細胞、心筋特異的細胞、又は骨格筋由来細胞において、他の細胞型(すなわち、非筋由来細胞、非心筋特異的細胞、又は非骨格筋由来細胞)におけるより著明に高度である場合に規定されうる。例えば、筋由来細胞、心筋特異的細胞、又は骨格筋由来細胞における発現は、適切には、非筋細胞、又は非骨格筋細胞における場合の、少なくとも5倍、好ましくは、非筋細胞、非心筋特異的細胞、又は非骨格筋細胞における場合の、少なくとも10倍であり、場合によって、50倍又はこれを超える場合がある。簡便のため、筋特異的発現は、適切には、筋細胞系(例えば、C2C12細胞又はH2K細胞(骨格筋)又はH9C2細胞(心臓)等の筋由来細胞系)における発現レベルの、肝臓由来細胞系(例えば、Huh7又はHepG2)、腎臓由来細胞系(例えば、HEK-293)、子宮頸部組織由来細胞系(例えば、HeLa)、及び/又は肺由来細胞系(例えば、A549)における発現レベルとの比較を介して裏付けられうる。心筋特異的発現は、適切には、心筋細胞系(例えば、H9C2等の心筋由来細胞系)又は初代心筋細胞における発現レベルの、肝臓由来細胞系(例えば、Huh7又はHepG2)、腎臓由来細胞系(例えば、HEK-293)、子宮頸部組織由来細胞系(例えば、HeLa)、肺由来細胞系(例えば、A549)、及び/又は骨格筋由来細胞(例えば、C2C12又はH2K)における発現レベルとの比較を介して裏付けられうる。骨格筋特異的発現は、適切には、骨格筋由来細胞(例えば、C2C12又はH2K)、又は初代骨格筋細胞における発現レベルの、肝臓由来細胞系(例えば、Huh7又はHepG2)、腎臓由来細胞系(例えば、HEK-293)、子宮頸部組織由来細胞系(例えば、HeLa)、肺由来細胞系(例えば、A549)、及び/又は心筋細胞系(例えば、H9C2)における発現レベルとの比較を介して裏付けられうる。
【0234】
本発明の合成筋特異的プロモーター、合成心筋特異的プロモーター、又は合成骨格筋特異的プロモーターは、好ましくは、CMV-IE等の非組織特異的プロモーターと比較した場合に、非筋肉由来細胞、適切には、Huh7細胞、HEK-293細胞、HeLa細胞、及び/又はA549細胞における発現の低減を呈する。本発明の合成筋特異的プロモーター、合成心筋特異的プロモーター、又は合成骨格筋特異的プロモーターは、好ましくは、非筋肉由来細胞(適切には、Huh7細胞、HEK-293細胞、HeLa細胞、及び/又はA549細胞における)において、CMV-IEであるプロモーターの50%若しくはこれ未満、適切には、25%若しくはこれ未満、20%若しくはこれ未満、15%若しくはこれ未満、10%若しくはこれ未満、5%若しくはこれ未満、又は1%若しくはこれ未満の活性を有する。一般に、非筋肉由来細胞内の発現は、最小化されることが好ましいが、場合によって、これは、必要でない場合もある。本発明の合成プロモーターは、例えば、1つ又は2つの非筋細胞内で、高度の発現を有する場合であってもなお、非筋細胞に対して、筋細胞の範囲全体において、全般的に高度の発現を有する限りにおいて、やはり、筋特異的プロモーターでありうる。一部の実施形態では、筋特異的プロモーターは、筋細胞内において、遺伝子を、非筋細胞と比較して、少なくとも25%、若しくは少なくとも35%、若しくは少なくとも45%、若しくは少なくとも55%、若しくは少なくとも65%、若しくは少なくとも75%、若しくは少なくとも80%、若しくは少なくとも85%、若しくは少なくとも90%、若しくは少なくとも95%、又は25%~95%の間の任意の整数の百分率で、高度に発現させる。
【0235】
本発明の合成筋特異的プロモーターは、好ましくは、対象の筋内の発現を促進するために適する、例えば、導入遺伝子、好ましくは、治療用導入遺伝子の筋特異的発現を駆動するために適する。本発明の合成骨格筋特異的プロモーターは、好ましくは、対象の骨格筋内の発現を促進するために適する、例えば、導入遺伝子、好ましくは、治療用導入遺伝子の骨格筋特異的発現を駆動するために適する。本発明の好ましい合成筋特異的プロモーターは、導入遺伝子の筋特異的発現を促進するために適し、CBAプロモーターの活性の、少なくとも15%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、125%、150%、175%、200%、250%、300%、350%、又は400%である、筋細胞内の活性を有する。一部の実施形態では、本発明の合成筋特異的プロモーターは、導入遺伝子の筋特異的発現を、CBAプロモーターの活性の、少なくとも100%、好ましくは、CBAプロモーター又はspc5-12プロモーターの活性の150%、200%、300%、又は500%のレベルにおいて促進するために適する。一部の実施形態では、本発明の合成骨格筋特異的プロモーターは、導入遺伝子の骨格筋特異的発現を、Tnnt2プロモーター又はMyl2プロモーターの活性の、少なくとも100%、好ましくは、spc5-12プロモーターの活性の150%、200%、300%、又は500%のレベルにおいて促進するために適する。このような筋特異的発現は、適切には、例えば、C2C12細胞又はH2K細胞(骨格筋)又はH9C2細胞(心臓)又は初代筋細胞(muscle cell)(適切には、初代ヒト筋細胞(myocytes))としての筋由来細胞内で決定される。
【0236】
本発明の合成筋特異的プロモーター、合成心筋特異的プロモーター、又は合成骨格筋特異的プロモーターはまた、遺伝子の筋特異的発現、又は骨格筋特異的発現を、筋由来細胞(例えば、c2c12細胞又はH2K細胞(骨格筋)又はh9C2細胞(心臓))内のCMV-IEと比較して、少なくとも50%、100%、150%、又は200%のレベルにおいて促進することが可能でもありうる。
【0237】
本明細書で使用される、「核酸」という用語は、典型的に、ヌクレオチドから本質的に構成される、任意の長さのオリゴマー又はポリマー(好ましくは、直鎖状ポリマー)を指す。ヌクレオチド単位は、一般に、複素環塩基、糖基、及び修飾リン酸基又は置換リン酸基を含む、少なくとも1つのリン酸基、例えば、1つ、2つ、又は3つのリン酸基を含む。複素環塩基は、とりわけ、自然発生の核酸内に広範に存在する、アデニン(A)、グアニン(G)、シトシン(C)、チミン(T)、及びウラシル(U)等のプリン塩基及びピリミジン塩基、他の自然発生の塩基(例えば、キサンチン、イノシン、ヒポキサンチン)、並びに化学的又は生化学的な修飾(例えば、メチル化)塩基、非天然塩基又は誘導体化塩基を含みうる。糖基は、好ましくは、自然発生の核酸内で一般的なリボース及び/又は2-デオキシリボース等、とりわけ、ペントース(ペントフラノース)基、又はアラビノース糖基、2-デオキシアラビノース糖基、トレオース糖基、又はヘキソース糖基の他、修飾糖基又は置換糖基を含みうる。本明細書で意図される核酸は、自然発生のヌクレオチド、修飾ヌクレオチド、又はこれらの混合物を含みうる。修飾ヌクレオチドは、修飾複素環塩基、修飾糖部分、修飾リン酸基、又はこれらの混合物を含みうる。リン酸基又は糖の修飾は、安定性、酵素的分解に対する抵抗性、又は他の一部の有用な特性を改善するように導入されうる。「核酸」という用語は、具体的には、hnRNA、プレmRNA、mRNA、cDNA、ゲノムDNA、増幅産物、オリゴヌクレオチド、及び合成(例えば、化学合成)DNA、RNA、又はDNA/RNAハイブリッドを含む、DNA、RNA、及びDNA/RNAハイブリッド分子を包含することが更に好ましい。核酸は、例えば、天然において存在するか、又は天然から単離された、自然発生の核酸の場合もあり;すなわち、組換えDNA技術により産生され、且つ/又は部分的に、若しくは全体的に、化学合成若しくは生化学合成された、非自然発生の核酸、例えば、組換え核酸の場合もある。「核酸」は、二本鎖の場合もあり、部分的に二本鎖の場合もあり、一本鎖の場合もある。一本鎖の場合、核酸は、センス鎖の場合もあり、アンチセンス鎖の場合もある。加えて、核酸は、環状の場合もあり、直鎖状の場合もある。
【0238】
核酸を指す場合の「単離された(単離)」とは、天然において、それが通常会合する配列の全部若しくは一部を欠いている核酸分子;又は天然において存在するが、異種配列を会合させている配列;又は染色体から解離している分子を意味する。
【0239】
「同一性」及び「同一」等の用語は、2つのポリマー性分子の間、例えば、2つのDNA分子の間等、2つの核酸分子の間の配列類似性を指す。配列アライメント及び配列同一性の決定は、例えば、Tatusova及びMadden、1999(FEMS Microbiol Lett、174:247~250)により記載されている「Blast 2 sequences」アルゴリズム等、元来、Altschulら、1990(J Mol Biol、215:403~10)により記載されている基本的局所アライメント検索ツール(BLAST)を使用してなされうる。
【0240】
当技術分野では、比較のために配列をアライメントするための方法が周知である。多様なプログラム及びアライメントアルゴリズムについては、例えば、Smith及びWaterman(1981)、Adv.Appl.Math.、2:482;Needleman及びWunsch(1970)、J.Mol.Biol.、48:443;Pearson及びLipman(1988)、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.、85:2444;Higgins及びSharp(1988)、Gene、73:237~44;Higgins及びSharp(1989)、CABIOS、5:151~3;Corpetら(1988)、Nucleic Acids Res.、16:10881~90;Huangら(1992)、Comp.Appl.Biosci.、8:155~65;Pearsonら(1994)Methods Mol.Biol.、24:307~31;Tatianaら(1999)、FEMS Microbiol.Lett.、174:247~50において記載されている。配列アライメント法及び相同性の計算についての詳細な検討は、例えば、Altschulら(1990)、J.Mol.Biol.、215:403~10において見出される。
【0241】
National Center for Biotechnology Information(NCBI)による基本的局所アライメント検索ツール(BLAST(商標);Altschulら(1990))は、National Center for Biotechnology Information(Bethesda、MD)を含む、いくつかの供給源から入手可能であり、いくつかの配列解析プログラムと接続して使用するために、インターネットにおいても入手可能である。このプログラムを使用して、どのようにして配列同一性を決定するのかについての記載は、BLAST(商標)については、インターネット上の、「ヘルプ」セクションの下で入手可能である。核酸配列の比較のために、デフォルトのパラメータを使用する、BLAST(商標)(Blastn)プログラムの「Blast 2 sequences」関数が援用されうる。参照配列に照らして、類似性がなお大きな核酸配列は、この方法により評価された場合、同一性百分率の増大を示すであろう。典型的に、配列同一性百分率は、配列長の全体にわたり計算される。
【0242】
例えば、グローバル最適アライメントは、適切には、以下の評定パラメータ:マッチスコア:+2、ミスマッチスコア:-3;ギャップペナルティー:ギャップオープン:5、ギャップエクステンション:2を伴う、Needleman-Wunschアルゴリズムにより見出される。結果として得られる最適グローバルアライメントの百分率同一性は、適切には、アライメントされた塩基の数の、マッチ及びミスマッチの両方を含む、アライメントの全長に対する比により計算され、100が乗じられる。
【0243】
「ハイブリダイズさせること」という用語は、ハイブリダイゼーション工程において、2つの、少なくとも部分的に相補性のヌクレオチド配列がアニールすることを意味する。ハイブリダイゼーションが生じることを可能とするために、相補性核酸分子は、一般に、二重鎖を、2つの単鎖へと溶解させ、且つ/又はヘアピン若しくは他の二次構造を、一本鎖核酸から除去するように、熱的に、又は化学的に変性させられる。ハイブリダイゼーションの厳密性は、温度、塩濃度、及びハイブリダイゼーション緩衝液の組成等の条件により影響を受ける。常套的なハイブリダイゼーション条件については、例えば、Sambrook(2001)、「Molecular Cloning: a laboratory manual」、3版、Cold Spring Harbor Laboratory Press、CSH、New Yorkにおいて記載されているが、当業者は、多数の異なるハイブリダイゼーション条件が、核酸配列についての、既知であるか、又は予測される相同性及び/又は長さの関数によりデザインされうることを察知するであろう。ハイブリダイゼーションのための、高度な厳密性条件は、高温及び/若しくは低ナトリウム/塩濃度(塩は、例えば、NaCl及びクエン酸Naにおけるナトリウムを含む)、並びに/又はハイブリダイゼーション緩衝への、ホルムアミドの組入れ、並びに/又はハイブリダイゼーション緩衝液中のSDS(ドデシル硫酸ナトリウム洗浄剤)等、化合物濃度の低下、並びに/又はハイブリダイゼーション緩衝液からの、硫酸デキストラン又はポリエチレングリコール等、化合物の除外(分子の過密を促進する)を含む。非限定例として述べると、厳密なハイブリダイゼーションのための、代表的な塩条件及び温度条件は、65℃、1倍濃度のSSC、0.5%のSDSである。SSCという略号は、核酸ハイブリダイゼーション溶液中で使用される緩衝液を指す。SSC緩衝剤溶液(pH 7.0)の20倍原液(20倍濃縮液)1リットルは、175.3gの塩化ナトリウム及び88.2gのクエン酸ナトリウムを含有する。ハイブリダイゼーションを達成するための代表的な時間は、12時間である。
【0244】
「転写因子結合性部位」(TFBS)という用語は、当技術分野で周知である。当業者には、それらが、意図されるTFにより結合される条件下において、代替的なTFBS配列も使用されうることが明らかであろう。本明細書では、当技術分野で公知の、多様なTFBSについてのコンセンサス配列が開示され、当業者は、代替的なTFBSを決定するのに、この情報を、たやすく使用しうる。更に、所与の推定配列に結合するTFの能力は、当業者により、実験を介して(例えば、EMSA、及び当技術分野で周知であり、本明細書で論じられる、他の手法により)たやすく決定されうる。
【0245】
当技術分野では、「コンセンサス配列」の意味が周知である。本出願では、文脈がそうでないことを指示しない限りにおいて、コンセンサス配列のために、以下の表記が使用される。以下の例示的なDNA配列:
A[CT]N{A}YR
を検討する場合、Aは、Aが、この位置において、常に見出されることを意味し;[CT]は、この位置におけるC又はTを表し;Nは、この位置における、任意の塩基を表し;{A}は、Aを除く、任意の塩基が、この位置において見出されることを意味し、Yは、任意のピリミジンを表し、Rは、任意のプリンを指し示す。
【0246】
本出願における「合成」とは、自然発生ではない核酸分子を意味する。本発明の合成核酸は、典型的に、組換え技術又はデノボ合成により、人工的に産生される。このような合成核酸は、自然発生の配列(例えば、プロモーター、エンハンサー、イントロン、及び他のこのような調節配列)を含有しうるが、これらは、非自然発生の文脈において存在する。例えば、合成遺伝子(又は遺伝子の部分)は、典型的に、天然において連続しない、1つ若しくは複数の核酸配列(キメラ配列)を含有し、且つ/又は置換、挿入、及び欠失、並びにこれらの組合せを包含しうる。
【0247】
本明細書で使用される、「相補的」又は「相補性」とは、2つの核酸配列の、ワトソン-クリック型塩基対合を指す。例えば、配列5'-AGT-3'は、相補性配列である、3'-TCA-5'に結合する。2つの核酸配列間の相補性は、塩基のうちの一部だけが、それらの相補体に結合する、「部分的」相補性の場合もあり、配列内のあらゆる塩基が、その相補性塩基に結合する場合である、完全相補性の場合もある。核酸鎖の間の相補性の程度は、核酸鎖の間のハイブリダイゼーションの効率及び強度に対して、著明な影響を及ぼす。
【0248】
本出願における「トランスフェクション」とは、核酸を、細胞へと、意図的に導入する、任意の過程を、広く指し、ウイルスベクター及び非ウイルスベクターの導入を対象とし、形質転換、形質導入等の用語及び工程を含むか、又はこれらと同義である。例は、ウイルスベクターによるトランスフェクション;プラスミドベクターによる形質転換;電気穿孔(Frommら(1986)、Nature、319:791~3);リポフェクション(Feignerら(1987)、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、84:7413~7);マイクロインジェクション(Muellerら(1978)Cell、15:579~85);アグロバクテリウム属(Agrobacterium)媒介導入(Fraleyら(1983)、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、80:4803~7);直接的なDNAの取込み;ウィスカー媒介形質転換;及び遺伝子銃(Kleinら(1987)、Nature、327:70)を含むがこれらに限定されない。
【0249】
本明細書で使用される、「導入遺伝子」という語句は、外因性核酸配列を指す。一例では、導入遺伝子は、産業的に有用な化合物、若しくは薬学的に有用な化合物をコードする遺伝子、又は所望の形質をコードする遺伝子である。更に別の例では、導入遺伝子は、アンチセンス核酸配列等、有用な核酸をコードし、この場合、アンチセンス核酸配列の発現は、標的核酸配列の発現を阻害する。導入遺伝子は、好ましくは、治療用産物、例えば、タンパク質をコードする。
【0250】
「ベクター」という用語は、当技術分野で周知であり、本明細書で使用され、その中に、本発明に従う核酸配列が挿入されている可能性がある、核酸分子、例えば、二本鎖DNAを指す。ベクターは、適切には、挿入された核酸分子を、適切な宿主細胞へと輸送するのに使用される。ベクターは、典型的に、インサートである核酸分子の転写と、好ましくは、転写物の、ポリペプチドへの翻訳を可能とする、必要なエレメントの全てを含有する。ベクターは、典型的に、宿主細胞内に入ると、ベクターは、宿主の染色体DNAから独立であるか、又はこれと同時の複製が可能であり;ベクター及びその挿入核酸分子のいくつかのコピーが作出されうるように、必要なエレメントの全てを含有する。本発明のベクターは、エピソームベクター(すなわち、宿主細胞のゲノムへと組み込まれない)の場合もあり、宿主細胞のゲノムへと組み込まれる場合もある。この定義は、非ウイルスベクター及びウイルスベクターの両方を含む。非ウイルスベクターは、プラスミドベクター(例えば、pMA-RQ、pUCベクター、Bluescriptベクター(pBS)、及びpBR322、又は細菌配列を欠く、これらの誘導体(ミニサークル))、トランスポゾンベースのベクター(例えば、PiggyBac(PB)ベクター、又はSleeping Beauty(SB)ベクター)等を含むがこれらに限定されない。人工染色体(細菌人工染色体(BAC)、酵母人工染色体(YAC)、又はヒト人工染色体(HAC))等の大型ベクターは、大型のインサートを収容するのに使用されうる。ウイルスベクターは、ウイルスに由来し、レトロウイルス、レンチウイルス、アデノ随伴ウイルス、アデノウイルス、ヘルペスウイルス、肝炎ウイルスベクター等を含むがこれらに限定されない。必ずではないが、典型的に、ウイルスベクターは、複製に不可欠なウイルス遺伝子は、ウイルスベクターから消失しており、所与の細胞内で繁殖する能力を喪失しているので、複製欠損性である。しかし、一部のウイルスベクターはまた、例えば、がん細胞等、所与の細胞内で特異的に複製されるように適合される場合もあるが、典型的に、(がん)細胞特異的(腫瘍)溶解を誘発するのに使用される。ウィロソームは、ウイルスエレメント及び非ウイルスエレメントの両方を含むベクターの非限定例であり、特に、ウィロソームは、リポソームを、不活化HIV又は不活化インフルエンザウイルスと組み合わせる(Yamadaら、2003)。別の例は、カチオン性脂質と混合されたウイルスベクターを包含する。
【0251】
本明細書で使用される、「作動可能に連結された」、「作動可能に接続された」という用語、又は同等な表現は、エレメントが、機能的に接続され、意図される形で、互いと相互作用することが可能であるような、互いと比べた、多様な核酸エレメントの配置を指す。このようなエレメントは、限定せずに述べると、合成プロモーター、CRE(例えば、エンハンサー又は他の調節エレメント)、CRM、プロモーターエレメント、ポリアデニル化配列、1つ又は複数のイントロン及び/又はエクソン、並びに発現させる、目的の遺伝子のコード配列を含みうる。核酸配列エレメントは、適正に配向させられるか、又は作動可能に連結された場合、互いの活性をモジュレートするように、一体に作用し、最終的に、発現産物の発現レベルに影響を及ぼしうる。「~をモジュレートする」とは、特定のエレメントの活性レベルを上昇させること、これを低下させること、又はこれを維持することを意味する。他のエレメントと比べた、各エレメントの位置は、各エレメントの5'末端及び3'末端、又は別のエレメント若しくは位置(TSS又はプロモーターエレメント等)の、上流若しくは下流におけるそれらの位置との関係で表される場合があり、任意の特定のエレメント間の距離は、エレメントの間に介在するヌクレオチド又は塩基対の数により言及されうる。当業者により理解される通り、「作動可能に連結された」とは、機能的活性を含意し、必ずしも、天然における位置的連関に関するわけではない。実際、核酸発現カセット内で使用される場合、CREは、典型的に、プロモーターエレメントのすぐ上流に配置される(一般の場合には、これが成り立つが、核酸発現カセット内の位置の制限又は除外として、確定的には解釈されないものとする)が、in vivoでは、必ずしもこれが成り立つわけではない、例えば、それが、その転写に影響を及ぼす遺伝子の下流において自然発生する調節エレメント配列は、プロモーターの上流に配置された場合と同じ形で機能することが可能である。よって、具体的実施形態に従い、調節エレメントの調節効果又は増強効果は、位置非依存的でありうる。
【0252】
本明細書で使用される、「スペーサー配列」又は「スペーサー」とは、2つの機能的核酸配列(例えば、TFBS、CRE、CRM、プロモーターエレメント等)を隔てる核酸配列である。それは、機能的核酸配列(例えば、シス調節性エレメント)が、所望の通りに機能することを妨げる(例えば、所望の転写因子のサイレンサー配列を含み、この結合を妨げる場合等に、これは生じうる)ことがない条件下で、本質的に任意の配列を有しうる。典型的に、それは、隣接する機能的核酸配列に、互いの間隔を開けるためだけに存在するので、非機能的である。一部の実施形態では、スペーサーは、75、50、40、30、30、又は10ヌクレオチド、又はこれ未満の長さでありうる。一部の実施形態では、1つ又は複数のスペーサーは、1つ又は複数の制限酵素のための認識部位でありうる。
【0253】
本明細書で使用される、「薬学的に許容される」という用語は、当技術分野と整合的であり、医薬組成物の他の成分と適合性であり、そのレシピエントに対して有害ではないことを意味する。
【0254】
「治療有効量」等の語句は、所望の特異的薬理学的効果をもたらす、例えば、筋内で、治療用遺伝子を発現させる用量又は対象における血漿濃度を意味する。治療有効量は、本明細書で記載される状態の処置において、常に効果的でない場合もあるが、このような投与量も、当業者により、治療有効量と見なされる。治療有効量は、投与経路及び剤形、対象の年齢及び体重、並びに/又は処置される疾患又は状態に基づき変動しうる。
【0255】
本明細書で使用される、「AAVベクター」という用語は、当技術分野で周知であり、一般に、多様な核酸配列を含む、AAVベクターの核酸配列を指す。本明細書で使用されるAAVベクターは、典型的に、AAV由来でない異種核酸配列を、ベクターの一部として含む。この異種核酸配列は、典型的に、本明細書で開示されるプロモーターの他、細胞の遺伝子形質転換のための、他の目的の配列を含む。一般に、異種核酸配列は、少なくとも1つの反転末端反復配列(ITR)により挟まれ、一般に、2つのAAV ITRにより挟まれる。「AAVビリオン」又は「AAVウイルス」又は「AAVウイルス粒子」又は「AAVベクター粒子」とは、少なくとも1つのAAVカプシドポリペプチド(バリアントAAVカプシドポリペプチド及び非バリアント親カプシドポリペプチドの両方を含む)と、カプシド化ポリヌクレオチドによるAAVベクターとから構成されるウイルス粒子を指す。粒子は、異種核酸(すなわち、哺乳動物細胞へと送達される導入遺伝子等、野生型AAVゲノム以外のポリヌクレオチド)を含む場合、「AAVベクター粒子」と称される場合もあり、単に、「AAVベクター」と称される場合もある。したがって、AAVビリオン又はAAV粒子の産生は、必然的に、AAVビリオン内又はAAV粒子内に含有される、このようなベクターとしてのAAVベクターの産生を含む。
【0256】
「低分子干渉RNA」又は「短鎖干渉RNA」又はsiRNAは、目的の遺伝子(「標的遺伝子」)へとターゲティングされるヌクレオチドによるRNA二重鎖である。「RNA二重鎖」とは、RNA分子の2つの領域間の相補性対合により形成される構造を指す。siRNAは、遺伝子へと「ターゲティングされ」、siRNAの二重鎖部分のヌクレオチド配列は、標的遺伝子のヌクレオチド配列と相補性である。一部の実施形態では、siRNAの二重鎖の長さは、30ヌクレオチド未満である。一部の実施形態では、二重鎖は、29、28、27、26、25、24、23、22、21、20、19、18、17、16、15、14、13、12、11、又は10ヌクレオチドの長さでありうる。一部の実施形態では、二重鎖の長さは、19~25ヌクレオチドの長さである。siRNAのRNA二重鎖部分は、ヘアピン構造の一部でありうる。二重鎖部分に加えて、ヘアピン構造は、二重鎖を形成する、2つの配列の間に位置するループ部分を含有しうる。ループは、長さが変動しうる。一部の実施形態では、ループは、5、6、7、8、9、10、11、12、又は13ヌクレオチドの長さである。ヘアピン構造はまた、3'突出部分又は5'突出部分も含有しうる。一部の実施形態では、突出は、0、1、2、3、4、又は5ヌクレオチドの長さの、3'突出又は5'突出である。
【0257】
本明細書で使用される、「マイクロRNA」という用語とは、内因性マイクロRNA及び人工マイクロRNA(例えば、合成miRNA)を含むがこれらに限定されない、任意の種類の干渉RNAを指す。内因性マイクロRNAは、mRNAの産生的利用をモジュレートすることが可能な、天然のゲノム内でコードされる低分子RNAである。人工マイクロRNAは、mRNAの活性をモジュレートすることが可能な、内因性マイクロRNA以外の、任意の種類のRNA配列でありうる。マイクロRNA配列は、これらの配列のうちの任意の1つ又は複数から構成されるRNA分子でありうる。マイクロRNA(又は「miRNA」)配列については、Limら、2003、Genes & Development、17、991~1008;Limら、2003、Science、299、1540;Lee及びAmbrose、2001、Science、294、862;Lauら、2001、Science 294、858~861;Lagos -Quintanaら、2002、Current Biology、12、735~739;Lagos-Quintanaら、2001、Science、294、853~857;並びにLagos-Quintanaら、2003、RNA、9、175~179等の刊行物において記載されている。マイクロRNAの例は、大型RNAの、任意のRNA断片を含むか、又はmiRNA、siRNA、stRNA、sncRNA、tncRNA、snoRNA、smRNA、shRNA、snRNA、又は他の低分子非コード性RNAである。例えば、米国特許出願第20050272923号、同第20050266552号、同第20050142581号、及び同第20050075492号を参照されたい。「マイクロRNA前駆体」(又は「プレmiRNA」)とは、その中にマイクロRNA配列を組み込んだステムループ構造を有する核酸を指す。「成熟マイクロRNA」(又は「成熟miRNA」)は、マイクロRNA前駆体(「プレmiRNA」)から切断されるか、又は合成された(例えば、実験室において、無細胞合成により合成された)マイクロRNAを含み、約19ヌクレオチド~約27ヌクレオチドの長さを有し、例えば、成熟マイクロRNAは、19nt、20nt、21nt、22nt、23nt、24nt、25nt、26nt、又は27ntの長さを有しうる。成熟マイクロRNAは、標的mRNAに結合し、標的mRNAの翻訳を阻害しうる。
【0258】
「処置」又は「~を処置すること」という用語は、疾患又は状態の、1つ又は複数の徴候、症状、又は影響を軽減するか、改善するか、又は消失させることを指す。したがって、本明細書で使用される、「処置」は、哺乳動物、特に、ヒトにおける疾患の任意の処置を含み、(a)疾患に対する素因があるか、又は疾患に罹患する危険性があるが、未だ、疾患を有すると診断されていない対象において、疾患が生じることを防止すること;(b)病気を阻害すること、すなわち、その発生を停止させること;及び(c)病気を緩和すること、すなわち、疾患の退縮を引き起こすことを含む。
【0259】
対象への薬剤の「投与」は、その意図される機能を果たすように、対象へと、薬剤を導入又は送達する、任意の経路を含む。投与は、経口経路、鼻腔内経路、眼内(intraocularly、ophthalmically)経路、非経口(静脈内、筋内、腹腔内、又は皮下)経路、又は局所経路を含む、任意の適する経路により実施されうる。投与は、順行姓心外膜冠動脈注入を介する投与でありうる。投与は、自己投与及び別人による投与を含む。筋内投与は、本発明において、特に対象である。
【0260】
「個体」、「対象」、及び「患者」という用語は、互換的に使用され、処置を必要とする疾患又は状態を伴う、任意の個体対象を指す。本開示の目的では、対象は、霊長動物、好ましくは、ヒト、又はイヌ、ネコ、ウマ、ブタ、ヤギ、若しくはウシ等、別の哺乳動物でありうる。
【実施例
【0261】
それらを、レポーター遺伝子であるルシフェラーゼへと作動可能に連結することにより、本発明のある特定の実施形態に従う合成筋特異的プロモーター又は合成骨格筋特異的プロモーターの強度を調べた。被験筋特異的プロモーター又は被験骨格筋特異的プロモーターと、ルシフェラーゼ遺伝子とを含む発現カセットを、適切なプラスミドへと挿入し、次いで、細胞に、これらのプラスミドをトランスフェクトして、これらの細胞内における、プロモーターからの発現について調べた。
【0262】
(実施例1)
in vitro試験
材料及び方法
H9C2(ラットBDIX心筋芽細胞系;ATCCから入手可能である)に、DNA調製物をトランスフェクトして、転写活性について評価した。H9C2細胞系は、既往の実験が、in vivoにおける骨格筋活性及び心筋活性の良好な予測素材であること示したので使用した。DNA調製物は、ルシフェラーゼに作動可能に連結された合成プロモーター(例えば、SP0500)を含んだ。
【0263】
H9C2細胞の培養及びトランスフェクション
H9C2は、ラットBDIX心筋芽細胞系である。H9C2は、心筋特性を有する、例えば、コンフルエンシーにおいて形成された筋管は、アセチルコリンに応答する。
【0264】
細胞の維持
H9C2細胞を、T-75フラスコ内、1%のFBS(熱不活化;Gibco社製:10270-106;ロット番号:42G2076K)、1%のGlutamax(35050~038;Gibco社製)、1%のペニシリン-ストレプトマイシン溶液(15140~122;Gibco社製)を伴うDMEM(高グルコース;D6546;Sigma社製)中において培養した。細胞が、コンフルエントとなり、融合して、筋管を形成する危険性を回避するように、細胞を、サブコンフルエント段階(70~80%)で継代培養した。
【0265】
細胞維持中における継代培養のために、培養培地を除去し、細胞を、CaCl2を伴わず、MgCl2を伴わない、5mlのDPBS(14190-094;Gibco社製)により、2回にわたり洗浄した。1mlのトリプシンEDTA(25200-056;Gibco社製)と共に、約5分間にわたりインキュベートすることにより、細胞を、フラスコから解離させた。次いで、4mlの培養培地を、フラスコへと添加し、混合物を、上下に静かにピペッティングして、細胞を、フラスコ表面から解離させる一助とした。細胞を、100gで、3分間にわたりペレット化した。上清を廃棄し、細胞を、3mlの培養培地中に再懸濁させた。細胞を、Countess自動式細胞カウンター上でカウントし、1:3~1:10で播種した、すなわち、1cm2当たりの細胞1~3×10,000個を播種し、37℃、5%のCO2でインキュベートした。
【0266】
細胞のトランスフェクション及び分化
上記で記載された通り、DPBSで洗浄し、1mlのトリプシンEDTAを使用して、フラスコから解離させ、4mlの培養培地で、フラスコの表面から洗い落とし、100gで、3分間にわたりペレット化することにより、H9C2細胞を、コンフルエンシー約70~80%のT-75フラスコ2つから回収した。細胞を、45mlの培養培地中に再懸濁させ、ウェル1つ当たりの細胞40,000個の密度で、48ウェル平底プレート(ウェル1つ当たり300μl)(353230;Corning社製)内に播種した。48ウェルプレート内の細胞を、37℃、5%のCO2でインキュベートした。
【0267】
24時間後、細胞上の培養培地を、300μlの抗生剤非含有培養培地(すなわち、1%のFBS(熱不活化;Gibco社製:10270-106;ロット番号:42G2076K)、1%のGlutamax(35050-038;Gibco社製)を伴うDMEM(高グルコース;D6546;Sigma社製))で置きかえた。ウェル1つ当たり30μlの総複合体容量のViaFect(E4981;Promega社製)により、ウェル1つ当たりDNA 300ngをトランスフェクトした。トランスフェクション後、プレートを、静かに混合し、37℃、5%のCO2でインキュベートした。
【0268】
24時間後、培養培地を、トランスフェクト細胞から除去し、DMEM(高グルコース;D6546;Sigma社製)、1%のGlutamax(35050-038;Gibco社製)、1%のFBS(熱不活化;Gibco社製:10270-106;ロット番号:42G2076K)、1%のペニシリン-ストレプトマイシン溶液(15140-122;Gibco社製)、及び0.1%のレチノイン酸(Sigma社製:R2625)からなる、300μlの分化培地で置きかえた。プレートを、37℃、5%のCO2で、7日間にわたりインキュベートして、分化を誘導した。分化の後、細胞の形状を観察して、筋管への分化を確認した。
【0269】
次いで、細胞を、500μlのDPBSで洗浄し、Milli-Q水を使用して、1×へと希釈された、100μlのLuciferase Cell Culture Lysis 5×Reagent(E1531;Promega社製)により溶解させた。細胞の溶解試薬を、10回にわたり上下にピペッティングし、次いで、プレートを、中程度の出力で、30分間にわたりボルテクシングして、細胞の溶解を促進した。ルシフェラーゼアッセイを完了する前に、プレートをシーリングし、-80℃で保管した。H9C2細胞内のトランスフェクション後におけるルシフェラーゼアッセイから回収されたデータは、1回の生物学的反復での3回にわたる技術的反復に基づく。
【0270】
ルシフェラーゼ活性の測定
- ルシフェラーゼ活性は、LARII(Dual Luciferase Reporter 1000アッセイシステム;Promega社製;E1980)を使用して測定した。
- トランスフェクションの24時間後、細胞から培地を除去した。
- 細胞を、300μlのDPBS中で、1回洗浄した。
- 100μlの受動溶解用緩衝剤を使用して、細胞を溶解させ、振盪しながら、15分間にわたりインキュベートした。
- ベンチトップ用遠心分離機内、最高速度で、1分間にわたる、プレートの遠心分離により、細胞破砕物をペレット化した。
- 10μlの試料を、白色96ウェルプレートへと移し、50μlのLARII基質の、BMG Labtech FLUOstar Omegaプレートリーダーへの注入により発光を測定した。
【0271】
これらの細胞培養物からもたらされた結果を、図1に示す。この図は、合成プロモーターである、SP0500、SP0510、SP0514及びSP0519が、筋細胞系であるH9C2内で、良好な活性を示すことを示す。本明細書で記載される、他の同様のプロモーターも、同じであるか、又は良好な性能を有することが期待される。
【0272】
(実施例2)
in vitroデータ
実験は、上記の実施例1で詳述された通りに実施した。しかし、本実施例の、H9C2細胞内のトランスフェクション後において、ルシフェラーゼアッセイから回収されたデータは、それらの各々が、三連の技術的反復の平均である、三連の生物学的反復に基づく。
【0273】
これらの細胞培養物からもたらされた結果を、図2に示すが、結果は、CBAと比べて正規化する。この図は、合成プロモーターである、SP0497、SP0500、SP0501、SP0506、SP0508、SP0510、SP0514、SP0519、SP0520、SP0521及びSP4169が、筋細胞系であるH9C2内で、良好な活性を示すことを示す。プロモーターである、SP0498、SP0499、SP0502、SP0503、SP0504、SP0505、SP0507、SP0509、SP0511、SP0512、SP0513、SP0515、SP0516、SP0517、SP0518、SP0522、SP0523、及びSP0524についてもまた、H9C2細胞系内で、実験により調べたが、低度の活性を示した(データは示さない)。
【0274】
(実施例3)
in vivoデータ
合成筋特異的プロモーターの選択について、in vivoにおいて調べた(例えば、図3~18を参照されたい)。
【0275】
材料及び方法
ルシフェラーゼに作動可能に連結された合成プロモーター(例えば、;SP0500、SP0507、SP0514、SP0518、SP0519、SP0522、及びSP0524)を含むAAVを、0.9%の生理食塩液中で希釈し、尾静脈注射を介して、8週齢の雄Balb/cマウス(群1つ当たりのマウス6匹)へと、マウス1匹当たり、200μl当たり1×1011vgで送達した。注射の6週間後に、マウスを屠殺した。横隔膜、心臓、大腿四頭筋、ヒラメ筋、前脛骨筋(TA)、及び肝臓を、各マウスから回収した。ベクターコピー数(VCN)解析のために、切出しの直後に、試料を、液体窒素中で瞬時凍結させ、-80℃で保管した。
【0276】
製造元に指示書に従い、BCA Pierceタンパク質アッセイキット(ThermoFisher社製;23225)を使用して、タンパク質を抽出し、定量した。
【0277】
ルシフェラーゼの定量は、ONE-Glo Luciferase Assay System(Promega社製;E6120)により行った。
【0278】
DNAを抽出し、全ての試料及び試薬を、完全に融解され、平衡温度となるまで、室温でインキュベートした。全ての試料及び試薬を、使用の前に、十分に混合した。ONE-Glo(商標)試薬を、各試料へと、等容量で添加し、試料を、完全に混合した。3分後、完全な細胞溶解を確保するために、試料を、ルミノメーターにより測定した。
【0279】
ベクターコピー数試験は、dual Taqman qPCRにより行った。DNAは、DNeasy(登録商標)Blood & Tissue Kit(250)(QIAGEN社製;型番:69506)を使用して抽出した。各試料に対して、以下のルシフェラーゼ特異的プライマー/プローブセット及びGAPDH特異的プライマー/プローブセットの両方を使用して、Taqman qPCRを実施した:
【0280】
【表1】
【0281】
解析を目的として、ルシフェラーゼ及びGAPDHについて、検量線を使用した。マルチプレックスqPCRプロトコールでは、以下の最終濃度の試薬及びDNA:Luc2 fwプライマー(350nM)、Luc2 RVプライマー(350nM)、mGapdH FWプライマー(350nM)、mGapdH RVプライマー(350nM)、Luc2プローブ(250nM)、mGapdHプローブ(250nM)、及びDNA(10ng/uL)を使用した。PCRサイクルプロトコールは、以下の通り:95℃:20秒間、PCR:40サイクル、95℃:1秒間、60℃:20秒間であった。ゲノム1つ当たりのベクターコピー数(コピー量)のΔΔCt(閾値)は、生理食塩液試料についてのゲノム1つ当たりの平均ベクターコピー数(コピー量)を控除することにより計算した。
【0282】
結果
図12に示される通り、合成筋特異的プロモーターであるSP0500は、心筋(心臓)内で、高度の活性を示した。加えて、SP0500は、骨格筋(例えば、前脛骨筋、大腿四頭筋、及び横隔膜)内で、活性を示した。
【0283】
図13に示される通り、合成筋特異的プロモーターであるSP0507は、骨格筋(例えば、前脛骨筋)内及び心筋(心臓)内で、活性を示す。
【0284】
図14に示される通り、合成筋特異的プロモーターであるSP0514は、心筋(心臓)内で、活性を示す。加えて、SP0514は、骨格筋(例えば、横隔膜及び前脛骨筋)内で、ある程度の活性を示す。
【0285】
図15に示される通り、合成筋特異的プロモーターであるSP0518は、骨格筋(例えば、前脛骨筋)内で、活性を示す。加えて、SP0518は、心筋内で、ある程度の活性を示す。
【0286】
図16に示される通り、合成筋特異的プロモーターであるSP0519は、骨格筋(例えば、前脛骨筋)内で、活性を示す。加えて、SP0519は、心筋内で、ある程度の活性を示す。
【0287】
図17に示される通り、合成筋特異的プロモーターであるSP0522は、心筋(心臓)内で、高度の活性を示した。加えて、SP0522は、骨格筋(例えば、前脛骨筋及び横隔膜)内で、活性を示した。
【0288】
図18に示される通り、合成筋特異的プロモーターであるSP0524は、心筋(心臓)及び骨格筋(例えば、前脛骨筋、横隔膜、及び大腿四頭筋)内で、高度の活性を示した。
【0289】
図3に示される通り、合成筋特異的プロモーターであるSP0524は、横隔膜において、対照プロモーターである、CMV及びCK8と比較して、同等以上の活性を示した。合成筋特異的プロモーターである、SP500、SP0518、及びSP0522は、横隔膜内で、CK7に照らして、同等以上の活性を示した。
【0290】
図4に示される通り、合成筋特異的プロモーターであるSP0524は、前脛骨筋内で、対照プロモーターである、CMV、CK7、及びCK8と同様の活性を示した。
【0291】
図5に示される通り、合成筋特異的プロモーターである、SP500、SP0522、及びSP0524は、心臓において、対照プロモーターである、CK8、CMV、及びCK7と比較して、同等以上の活性を示した。
【0292】
図6に示される通り、全ての被験合成プロモーターは、大腿四頭筋内で、対照プロモーターである、CK8、CMV、及びCK7と比較して、低度の活性を示した。
【0293】
図7に示される通り、合成筋特異的プロモーターであるSP0524は、ヒラメ筋において、対照プロモーターである、CK8及びCMVと比較して、同等以上の活性を示した。合成筋特異的プロモーターである、SP0500及びSP0522は、対照プロモーターであるCK7と比較して、同等以上の活性を示した。
【0294】
図8に示される通り、被験合成筋特異的プロモーターである、SP500、SP0507、SP0514、SP0518、SP0519、SP0522、及びSP0524は、対照プロモーターである、CK8及びCMVにおいて、肝臓と比較して、低度であるか、又は同様の活性を示した。
【0295】
書誌
Llanga, T. et al. (2017) ‘Structure-Based Designed Nano-Dysferlin Significantly Improves Dysferlinopathy in BLA/J Mice’, Molecular Therapy. Elsevier Ltd., 25(9), pp. 2150-2162. doi: 10.1016/j.ymthe.2017.05.013.
【0296】
配列情報
【0297】
【表2A】
【0298】
【表2B】
【0299】
【表2C】
【0300】
【表2D】
【0301】
【表3A】
【0302】
【表3B】
【0303】
【表4A】
【0304】
【表4B】
【0305】
【表5】
【0306】
【表6】
図1
図2
図3
図4
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図6
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【配列表】
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【国際調査報告】