(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-05
(54)【発明の名称】マズチドの使用
(51)【国際特許分類】
A61K 38/22 20060101AFI20240628BHJP
A61P 19/06 20060101ALI20240628BHJP
A61K 47/18 20170101ALI20240628BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20240628BHJP
A61K 47/54 20170101ALI20240628BHJP
C07K 14/605 20060101ALN20240628BHJP
【FI】
A61K38/22
A61P19/06
A61K47/18
A61K47/26
A61K47/54
C07K14/605 ZNA
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023579334
(86)(22)【出願日】2022-06-23
(85)【翻訳文提出日】2024-02-13
(86)【国際出願番号】 CN2022100878
(87)【国際公開番号】W WO2022268174
(87)【国際公開日】2022-12-29
(31)【優先権主張番号】202110711050.0
(32)【優先日】2021-06-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519274183
【氏名又は名称】イノベント バイオロジクス(スーチョウ)カンパニー,リミティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100138210
【氏名又は名称】池田 達則
(74)【代理人】
【識別番号】100225598
【氏名又は名称】桐島 拓也
(72)【発明者】
【氏名】アン ペイ
(72)【発明者】
【氏名】トン ホアン
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4H045
【Fターム(参考)】
4C076AA12
4C076BB11
4C076CC21
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4H045AA10
4H045AA30
4H045BA18
4H045BA34
4H045BA50
4H045DA30
4H045EA26
4H045FA10
4H045FA20
(57)【要約】
本発明はマズチド(mazdutide)の使用を開示する。患者の尿酸値を降下する薬物の製造における式(I)に示される化合物の使用であって、式(I)は本発明に示される通りである。本発明のマズチドは顕著な尿酸値降下効果を有する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の尿酸値を降下する薬物の製造における式(I)に示される化合物またはその薬学的に許容される塩の使用。
【化1】
【請求項2】
前記化合物またはその薬学的に許容される塩は前記薬物の唯一の活性成分または有効成分の1つである、
請求項1に記載の使用。
【請求項3】
前記薬物はヒドロキシメチルアミノメタンおよびマンニトールをさらに含み、好ましくはスクロースまたはプロピレングリコールをさらに含む、
請求項1もしくは2に記載の使用。
【請求項4】
前記尿酸値は280μmol/Lより大きく、または/かつ前記患者は痛風、高尿酸血症、尿毒症、アテローム性動脈硬化症、高血圧、脂肪肝、糖尿病、肥満、または合併症を伴う過体重に罹患し、前記尿酸値は降下前の患者血清中の尿酸値である、
請求項1~3のいずれか1項に記載の使用。
【請求項5】
前記尿酸値は420μmol/Lより大きい、
請求項4に記載の使用。
【請求項6】
患者の尿酸値を降下する方法であって、
患者に有効量の式(I)に示される化合物またはその薬学的に許容される塩を投与することを含む、方法。
【化2】
【請求項7】
前記化合物またはその薬学的に許容される塩は前記薬物の唯一の活性成分または有効成分の1つである、
請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記薬物はヒドロキシメチルアミノメタンおよびマンニトールをさらに含み、好ましくはスクロースまたはプロピレングリコールをさらに含む、
請求項6もしくは7に記載の方法。
【請求項9】
前記尿酸値は280μmol/Lより大きく、または/かつ前記患者は痛風、高尿酸血症、尿毒症、アテローム性動脈硬化症、高血圧、脂肪肝、糖尿病、肥満、または合併症を伴う過体重に罹患し、前記尿酸値は降下前の患者血清中の尿酸値である、
請求項6~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記尿酸値は420μmol/Lより大きい、
請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記薬物は1.0mg~10mgの用量で週に1回投与され、好ましくは、前記薬物は約1.0mg、1.5mg、2.0mg、2.5mg、3.0mg、4.0mg、4.5mg、5mg、6mg、7.5mg、9mgもしくは10mgの用量で週に1回投与され、
より好ましくは、前記薬物は約週に1回、少なくとも1つの漸増用量で最短約4週間投与され、且つ漸増用量の後に約週に1回、少なくとも1つの維持用量で最短約4週間投与され、ここで、漸増用量は約1.0mgおよび約2.0mgから選ばれ、ここで、維持用量は約3.0mgから選ばれ、あるいは
前記薬物は約週に1回、少なくとも1つの漸増用量で最短約4週間投与され、且つ漸増用量の後に約週に1回、少なくとも1つの維持用量で最短約4週間投与され、ここで、漸増用量は約1.5mgおよび約3.0mgから選ばれ、ここで、維持用量は約4.5mgから選ばれ、あるいは
前記薬物は約週に1回、少なくとも1つの漸増用量で最短約4週間投与され、且つ漸増用量の後に約週に1回、少なくとも1つの維持用量で最短約4週間投与され、ここで、漸増用量は約2.0mgおよび約4.0mgから選ばれ、ここで、維持用量は約6.0mgから選ばれる、
請求項6~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
患者の尿酸値を降下するための医薬組成物であって、
式(I)に示される化合物またはその薬学的に許容される塩、および少なくとも1つの薬学的に許容される担体を含む、医薬組成物。
【化3】
【請求項13】
前記化合物またはその薬学的に許容される塩は前記薬物の唯一の活性成分または有効成分の1つである、
請求項12に記載の医薬組成物。
【請求項14】
前記薬物はヒドロキシメチルアミノメタン、マンニトールをさらに含み、好ましくはスクロースまたはプロピレングリコールをさらに含む、
請求項12もしくは13に記載の医薬組成物。
【請求項15】
前記尿酸値は280μmol/Lより大きく、または/かつ前記患者は痛風、高尿酸血症、尿毒症、アテローム性動脈硬化症、高血圧、脂肪肝、糖尿病、肥満、または合併症を伴う過体重に罹患し、前記尿酸値は降下前の患者血清中の尿酸値である、
請求項12~14のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項16】
前記尿酸値は420μmol/Lより大きい、
請求項15に記載の医薬組成物。
【請求項17】
前記薬物は1.0mg~10mgの用量で週に1回投与され、好ましくは、前記薬物は約1.0mg、1.5mg、2.0mg、2.5mg、3.0mg、4.0mg、4.5mg、5mg、6mg、7.5mg、9mgもしくは10mgの用量で週に1回投与され、
より好ましくは、前記薬物は約週に1回、少なくとも1つの漸増用量で最短約4週間投与され、且つ漸増用量の後に約週に1回、少なくとも1つの維持用量で最短約4週間投与され、ここで、漸増用量は約1.0mgおよび約2.0mgから選ばれ、ここで、維持用量は約3.0mgから選ばれ、あるいは
前記薬物は約週に1回、少なくとも1つの漸増用量で最短約4週間投与され、且つ漸増用量の後に約週に1回、少なくとも1つの維持用量で最短約4週間投与され、ここで、漸増用量は約1.5mgおよび約3.0mgから選ばれ、ここで、維持用量は約4.5mgから選ばれ、あるいは
前記薬物は約週に1回、少なくとも1つの漸増用量で最短約4週間投与され、且つ漸増用量の後に約週に1回、少なくとも1つの維持用量で最短約4週間投与され、ここで、漸増用量は約2.0mgおよび約4.0mgから選ばれ、ここで、維持用量は約6.0mgから選ばれる、
請求項12~14のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先権および関連出願
本願は、2021年6月25日に提出された、名称が「OXM3の使用」の中国特許出願202110711050.0の優先権を主張し、付録を含む当該出願の全ての内容は参照として本願に組み込まれる。
【0002】
本発明は医薬分野に属し、より具体的には、本発明は尿酸値降下分野に属し、本発明はマズチド(mazdutide)の使用に関する。
【背景技術】
【0003】
高尿酸症は、人間の体内のプリンと呼ばれる物質の代謝障害により、血液中の尿酸が増加する代謝性疾患であり、体内の尿酸の生成量と排泄量は1日あたりほぼ同じであり、生成量では、3分の1が食物に由来し、3分の2が体内で自己合成され、排泄経路では、3分の1が腸から排泄され、3分の2が腎臓から排泄される。上記のさまざまな経路は、いずれか1つに問題がある限り、尿酸の増加が引き起こされる。
【0004】
高尿酸値と肥満や糖尿病とが一定の関係がある。肥満は代謝障害の状態であり、同時に体内の高インスリン血症やインスリン抵抗をもたらし、その結果として体内で循環する脂肪サイトカインのレベルが増加し、2型糖尿病は血糖代謝障害が支配される疾患であり、インスリン抵抗、膵臓β細胞機能の進行性低下による慢性血糖値の上昇を特徴とする。両方ともインスリン代謝に関連し、グルコースや脂肪に対するインスリンの代謝作用は多くの脂肪細胞の影響を受け、さらにインスリン抵抗を強化し、最後に尿酸の生成の増加および尿細管による尿酸の再吸収の増加につながり、尿酸値の上昇が引き起こされる。肥満や糖尿病に加えて、尿酸が高いと、尿毒症、アテローム性動脈硬化症、高血圧などの他の合併症を引き起こす可能性もある。尿酸値が高すぎると、高尿酸血症や痛風などの他の疾患を引き起こす可能性もある。高尿酸血症(『中国の高尿酸血症と痛風の診断と治療ガイドライン(2019)』では、男女を問わず、別の日に2回の血中尿酸値が420μmol/Lを超える場合、高尿酸血症と呼ばれる)と痛風は、慢性腎臓疾患、高血圧、心血管疾患と脳血管疾患、糖尿病などの疾患の独立した危険因子であり、早期死亡の独立した予測因子である(Bardin T、 Richette P.Impact of comorbidities on gout and hyperuricaemia:an update on prevalence and treatment options [J].BMC Med、2017、15(1):123を参照)。
【0005】
GLP-1R/GCGRデュアルアゴニスト
グルカゴン様ペプチド-1(Glucagon-likepeptide-1、GLP-1)は腸から分泌されるペプチドホルモンであり、グルコース依存性インスリン分泌の増加、グルカゴン分泌の抑制、胃内容排出の遅延および中枢性食欲の抑制の作用を含む、血糖値降下および体重減少を目的とする複数のメカニズムがある。
【0006】
グルカゴン(Glucagon)は、膵臓α細胞によって分泌されるホルモンであり、29アミノ酸長の単鎖ポリペプチドで構成される。グルカゴンは、肝臓と腎臓の標的細胞の表面にあるグルカゴン受容体(GCGR)に特異的に結合し、細胞内のアデニル酸シクラーゼ(adenylatecyclase)を活性化することで、細胞内のcAMPレベルを向上させ、生理学的効果を発揮する。グルカゴンは分解や代謝を促進するホルモンであり、グルカゴンの短期間注射はグリコーゲン分解と糖新生作用を促進し、血糖値を上昇することができる。しかし、研究では、グルカゴン注射によるGCGRの長期活性化により、食欲を減退し、脂肪酸の分解を刺激し、脂肪組織のエネルギー消費を大幅に増加できることを見出した(Campbell JE、Drucker DJ.Nature ReviewsEndocrinology、2015、11(6):329~338を参照)。
【0007】
内因性オキシントモジュリンOxyntomodulin(OXM)は、栄養摂取後にヒト腸L細胞によって分泌されるペプチドホルモンである。OXMは、グルカゴン様ペプチド-1受容体(GLP-1R)とグルカゴン受容体(GCGR)のデュアルアゴニストであり、GLP-1Rアゴニストの食欲抑制および血糖値降下作用とGCGR媒介性エネルギー消費増加作用とを組み合わせ(Pocai A.Unraveling Oxyntomodulin、GLP1’s enigmatic brother.J Endocrinol.2012;15:335~346;Day JW、Ottaway N、Patterson JT、et al.A new glucagon and GLP-1co-agonist eliminates obesity in rodents.Nat Chem Biol.2009;5:749~757.を参照)、肥満の治療や血糖値降下において、GLP-1Rアゴニストよりも効果的である可能性がある。同時に体内でOXMを注射すると、体重および食欲を大幅に減少させ、エネルギー消費を増加させる。研究では、OXMを徐々に注入した後にGLP-1Rノックアウトマウス(GLP-1R-/-)の体重が減少したが、野生型(WT)マウスと比較すると、減少の幅が小さいことを見出した。これは、OXMの体重減少効果にはGLP1R受容体とGCGR受容体の両方の同時活性化が必要であることを示した(Kosinski JR、Huber J、Carrington PE、et al.The glucagon receptor is involved in mediating the body weight-lowering effects of oxyntomodulin.Obesity.2012;20:1566~1571.)。げっ歯類動物の前臨床データは、GLP-1R/GCGRアゴニストがGLP-1Rアゴニストよりも体重減少に効果的であることを示した。同様に、Laoらは、彼らのGLP-1R/GCGRデュアルアゴニストが食餌誘発性肥満アカゲザルにおいて、より高い体重減少効果を示したと報告した(Lao J、Hansen BC、DiMarchi R、et al.Effect of GLP1R/GCGR dual agonist in monkeys.Diabetes.2013;62(suppl 1):A257;Ralf Elvert、Andreas W.Herling.Running on mixed fuel-dual agonistic approach of GLP-1 and GCG receptors leads to beneficial impact on body weight and blood glucose control:A comparative study between mice and non-human primate.Diabetes Obes Metab.2018;20:1836~1851.を参照)。OXM治療後の動物試験において、中枢神経系におけるGCGRの活性化により、その全身のグルコース代謝を改善する可能性がある(Mighiu PI、Yue JT、Filippi BM & Lam TK 2012 Hypothalamic glucagon signaling regulates glucose production.Diabetes 61(Suppl 1)A55.Nauck MA 2012 The design of the liraglutide clinical trial programme.Diabetes、Obesity and Metabolism 14(Suppl 2)4~12.を参照)。OXMの血糖降下効果は、主に体重減少、インスリン分泌の促進、および中枢神経系GCGRの活性化による肝臓のグルコース産生の抑制により、血糖降下効果を達成する可能性がある。
【0008】
これらのデータは、OXMが薬剤耐性の良好な抗肥満薬および血糖降下薬となる可能性があることを示唆しており、キサンチンオキシダーゼ阻害剤(XOI)および尿酸排泄促進薬など、現在市販されている尿酸降下薬はいくつかあるが、OXMの尿酸値への影響についての関連研究は現時点ではまだない。そのうち、アロプリノール、フェブキソスタットおよびベンズブロマロンは中国の第一選択薬である。米国では、アロプリノールのみが第一選択薬として使用されている。しかし、現在の尿酸降下薬には、アロプリノールの重篤な過敏症反応率、フェブキソスタットの心血管リスク、ベンズブロマロンの副作用、血中尿酸遵守率の低さなど、治療効果や安全性の問題がある。したがって、現在、痛風の治療に使用されている尿酸降下薬は臨床上のニーズを満たすことができない。そのため、現在、特に肥満患者または糖尿病患者の尿酸を降下させるために、安全性および薬剤耐性が強く、かつ尿酸降下効果が明らかである尿酸降下製剤が緊急に必要とされている。
【発明の概要】
【0009】
安全性および薬剤耐性が強く、かつ尿酸降下効果が明らかである尿酸降下製剤の欠如などの従来技術に存在する問題を解決するために、本発明は、顕著な尿酸降下作用を有するマズチドの使用を提供する。
【0010】
この研究におけるマズチドはOXM類似体マズチドである。マズチドは、哺乳動物のオキシントモジュリンoxyntomodulin(OXM)と類似する長時間作用型合成ペプチドであり、それが脂肪酸アシル側鎖を利用して作用持続時間を延長し、週に1回の投与が可能である。体外から投与される場合、OXMは耐糖能を向上させ、体重減少を引き起こす可能性がある(Pocai A.Action and therapeutic potential of oxyntomodulin.Mol Metab.2013;3(3):241~251.)。ヒトにおいて、このホルモンは、グルカゴン様ペプチド-1受容体(GLP-1R)およびグルカゴン受容体(GCGR)の活性化により、その生物学的効果を発揮すると考えられている(Tan TM、Coadministration of glucagon-like peptide-1 during glucagon infusion in humans results in increased energy expenditure and amelioration of hyperglycemia.Diabetes.2013;62(4):1131~1138.を参照)。OXM類似体として、マズチドの作用は、GLP-1RおよびGCGRの結合および活性化によって媒介されると考えられている。
【0011】
本発明は、患者の尿酸値を降下する薬物の製造における、式(I)に示される化合物(マズチド)またはその薬学的に許容される塩の使用を提供する。
【化1】
【0012】
上記化合物またはその薬学的に許容される塩は、好ましくは上記薬物の唯一の活性成分または有効成分の1つである。
【0013】
上記薬物は、好ましくはヒドロキシメチルアミノメタンおよびマンニトールをさらに含み、より好ましくはスクロースまたはプロピレングリコールをさらに含む。
【0014】
さらに、上記化合物を使用する前、患者の血清中の尿酸値は、好ましくは280μmol/Lより大きい。
【0015】
あるいは、上記患者は、痛風、高尿酸血症、尿毒症、アテローム性動脈硬化症、高血圧、脂肪肝、糖尿病、肥満、または合併症を伴う過体重に罹患している。
【0016】
特定の場合において、患者は、血清中の尿酸値が280μmol/Lより大きいだけでなく、同時に以上の病症に罹患している。
【0017】
特定の実施形態において、上記尿酸値は420μmol/Lより大きい。
【0018】
本発明は、患者に式(I)に示される化合物または上記に定義された薬物を投与することを含む、患者の尿酸値を降下する方法をさらに提供する。
【0019】
本発明は、患者に式(I)に示される化合物または上記に定義された薬物を投与することを含む、痛風を治療する方法をさらに提供する。
【0020】
上記に記載の薬物の投与量に関して、上記薬物は1.0mg~10mgの用量で週に1回投与され、好ましくは、上記薬物は約1.0mg、1.5mg、2.0mg、2.5mg、3.0mg、4.0mg、4.5mg、5mg、6mg、7.5mg、9mgもしくは10mgの用量で週に1回投与され、
一実施形態において、上記薬物は約週に1回、少なくとも1つの漸増用量で最短約4週間投与され、且つ漸増用量の後に約週に1回、少なくとも1つの維持用量で最短約4週間投与され、ここで、漸増用量は約1.0mgおよび約2.0mgから選ばれ、ここで、維持用量は約3.0mgから選ばれ、
一実施形態において、上記薬物は約週に1回、少なくとも1つの漸増用量で最短約4週間投与され、且つ漸増用量の後に約週に1回、少なくとも1つの維持用量で最短約4週間投与され、ここで、漸増用量は約1.5mgおよび約3.0mgから選ばれ、ここで、維持用量は約4.5mgから選ばれ、
一実施形態において、上記薬物は約週に1回、少なくとも1つの漸増用量で最短約4週間投与され、且つ漸増用量の後に約週に1回、少なくとも1つの維持用量で最短約4週間投与され、ここで、漸増用量は約2.0mgおよび約4.0mgから選ばれ、ここで、維持用量は約6.0mgから選ばれる。
【0021】
本発明の別の態様によれば、患者の尿酸値を降下するための医薬組成物であって、式(I)に示される化合物またはその薬学的に許容される塩、および少なくとも1つの薬学的に許容される担体を含む、医薬組成物を提供する。
【0022】
予備研究では、マズチドは、健常者を対象とした単回および複数回の用量上昇試験で良好な安全性および薬剤耐性を有すると同時に、肥満患者および糖尿病患者において尿酸降下作用を有することを示した。
【0023】
健常者を対象とした単回投与研究(I8P-MC-OXAA):単一中心、二重盲検、プラセボランダム対照SAD研究(上昇用量が0.03mg、0.1mg、0.3mg、1.0mg、2.5mg、5.0mg)が完了し、主に健康な対象におけるマズチドの安全性、薬剤耐性、PK/PDを評価した。結果は、すべての対象が用量を2.5mgに上昇しても耐えられるが、5mgに上昇する時に、6例の対象全員が胃腸関連のAE(主に吐き気、嘔吐)を経験したことを示すため、2.5mgは単回投与の最大耐量(MTD)として使用可能である。
【0024】
本明細書で使用されるように、「漸増用量」とは、患者が必要とする最高有効用量よりも小さい用量を指す。
【0025】
本明細書で使用されるように、「維持用量」とは、患者が必要とする最高有効用量として機能する用量を指す。
【0026】
本明細書で使用されるように、「薬学的に許容される塩」は、当業者によく知られている。一実施形態において、薬学的に許容される塩はトリフルオロ酢酸塩である。
【0027】
本明細書で使用されるように、「患者」とは、病状または病症の治療を必要とする哺乳動物を指す。一実施形態において、患者は、マズチドによる治療から利益が得られる疾患または病状に罹患する人である。
【0028】
本明細書で使用されるように、数字に関連する場合、「約」という用語は、例えば±5%、±4%、±3%、±2%、±1%もしくは±0.5%を表すことができる。
【0029】
本明細書で使用されるアミノ酸の参照、例えばAla(A)、Val(V)、Leu(L)、Ile(I)、Pro(P)、Phe(F)、Trp(W)、Met(M)、Gly(G)、Ser(S)、Thr(T)、Cys(C)、Tyr(Y)、Asn(N)、Gln(Q)、Asp(D)、Glu(E)、Lys(K)、Arg(R)、His(H)は、当業者によく知られている。
【0030】
過体重または肥満患者を対象とした研究の予備結果は、マズチドが患者の尿酸値を降下することができることを示した(詳しくは
図2を参照)。2型糖尿病患者を対象とした研究の予備結果は、マズチドが当該患者集団の尿酸値を降下することもできることを示した(詳しくは表6および
図3を参照)。
【0031】
本発明の積極的な進歩効果は、以下の通りである:
マズチドは、顕著な尿酸値降下作用を有し、高尿酸患者の体内の尿酸値を80μmol/L以上降下させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図2】過体重/肥満集団における投与後のベースラインに対する尿酸の変化値である。
【
図3】糖尿病集団における投与後のベースラインに対する尿酸の変化値である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、実施例により本発明をさらに説明するが、本発明はこれらの実施例の範囲に限定されるものではない。以下の実施例において具体的な条件を明記しない実験方法は、慣用の方法および条件、または製品の仕様書に従って選択される。
【実施例】
【0034】
実施例1 研究薬物および患者
マズチドの構造は式(I)の通りである。
【化2】
その配列は配列番号1に示され、具体的な配列は、
His-Xaa-Gln-Gly-Thr-Phe-Thr-Ser-Asp-Tyr-Ser-Lys-Tyr-Leu-Asp-Glu-Lys-Lys-Ala-Lys-Glu-Phe-Val-Glu-Trp-Leu-Leu-Glu-Gly-Gly-Pro-Ser-Ser-Glyであり、ここで、XaaはAib(2-アミノイソ酪酸)であり、20位のLysは、([2-(2-アミノ-エトキシ)-エトキシ]-アセチル)
2-(γGlu)
1-CO-(CH
2)
18-CO
2HをLys側鎖のε-アミノ基に結合することによって化学的に修飾され、且つC末端のGlyのカルボキシ基がC末端第一級アミドにアミド化される。
【0035】
1.1研究薬物の物理的および化学的特徴は表1に示される。
【表1】
【0036】
1.2研究薬物の規格および製造業者
マズチド製剤は、注射用マズチドであり、2mgのマズチド、不活性成分であるトリスヒドロキシメチルアミノメタン、マンニトールおよびスクロースで構成される。注射用滅菌水でバイアル内容物を再溶解し、マズチドの清澄溶液を得た。あるいは、マズチド、不活性成分であるトリスヒドロキシメチルアミノメタン、マンニトールおよびプロピレングリコールで構成され、製造方法はPCT/CN2022/089742を参照する。プラセボはマズチド模倣薬であり、プラセボは、不活性成分であるトリスヒドロキシメチルアミノメタン、マンニトールおよびスクロースで構成される。注射用滅菌水でバイアル内容物を再溶解し、不活性成分の清澄溶液を得た。この研究では、製剤規格が2mg/ボトルであり、プラセボ規格が製剤と一致している。デュラグルチド(Dulaglutide):規格1.5mg/チューブ、製造業者:Vetter Pharma-Fertigung GmbH&Co.KGである。
【0037】
1.3保存
製剤およびプラセボは冷蔵条件(2℃~8℃)で保存する必要がある。
【0038】
1.4投与方式
マズチドおよびプラセボはいずれも、週に1回で皮下注射により投与される。毎回の投与は、研究看護師が製剤化および注射を行い、研究薬物の調製および使用の詳細については薬物使用説明書を参照する。
【0039】
1.5選択基準
一、以下のすべての基準を満たす肥満または過体重の対象がこの研究に選択される:
1.年齢18歳~75歳(2つの端点値を含む)の男性または女性。
2.BMI≧28.0kg/m2の肥満者または24≦BMI<28.0kg/m2の過体重者であり、以下少なくとも1つを伴う:i.食欲が旺盛、食前に耐えられない空腹感があり、毎食事に大量に食べること、ii.前糖尿病(空腹時血糖値異常および/または糖耐量異常)、高血圧、脂質異常(参考基準は付録4を参照)、脂肪肝(スクリーニング前6ヶ月以内)の1つまたは複数を合併すること、iii.体重を支える関節の痛みを合併すること、iv.肥満による呼吸困難または閉塞性睡眠時無呼吸症候群。
3.スクリーニング時、簡単な食事および運動によって少なくとも12週間制御すると、体重変化が5%未満である。
【数1】
4.この研究の手順と方法を理解し、臨床試験計画を厳格に遵守してこの試験を完了する意欲があり、インフォームドコンセントに自発的に署名することができる。
二、以下の基準を満たす糖尿病の対象がこの研究に選択される:
1.2型糖尿病は、1999年のWHO基準に従って少なくとも6ヶ月間診断された。
2.インフォームドコンセントに署名する際、18歳≦年齢≦75歳の男性または女性である。
3.スクリーニング前の2ヶ月以内に、生活習慣介入または安定用量のメトホルミン(≧1000mg/日または最大耐量)により治療されても血糖への制御が依然として不十分な2型糖尿病患者である。
4.スクリーニング時、現地実験室で7.5%≦HbA1c≦11.0%と検査された。
5.ボディマス指数が20≦BMI≦35kg/m2(BMI=体重(kg)/身長(m)2)である。
6.研究期間中、本来の食事と運動習慣を安定的に維持できる。
7.対象はインフォームドコンセントに自発的に署名し、この計画の要求を厳格に遵守して実行できる。
【0040】
1.6除外基準
一、以下のいずれか1つの基準を満たす肥満または過体重の対象が、この研究から除外される:
1.研究者は、対象が研究薬または成分に対してアレルギーまたはアレルギー体質の可能性がある患者と疑われる。
2.スクリーニング前に以下のいずれか1つの薬物または治療を使用する:
1) 過去にGLP-1受容体(GLP-1R)アゴニストまたはGLP-1R/GCGRアゴニストを使用した。
2) スクリーニング前の3ヶ月以内に、全身性ステロイドホルモン治療薬(静脈、経口または関節内投与)、メトホルミン、SGLT2阻害剤、チアゾリジンジオン(TZD)、三環系抗うつ薬、精神疾患の治療薬または鎮静剤(イミプラミン、アミトリプチリン、ミルタザピン、パロキセチン、フェネルジン、クロルプロマジン、チオリダジン、クロザピン、オランザピン、バルプロ酸、バルプロ酸誘導体、リチウム塩など)などを含む、体重に影響を与える薬物を使用した。
3) スクリーニング前の3ヶ月以内に、体重に影響を与える漢方薬または健康食品を使用した。
4) スクリーニング前の3ヶ月以内に、シブトラミン塩酸塩、オルリスタット、フェンテルミン、フェニルプロパノールアミン、クロルベンジンドール、フェンテルミン、ブプロピオン、ロルカセリン、フェンテルミン/トピラメート混合物、ナルトレキソン/ブプロピオン混合物などの、体重減少薬を使用したか、または現在使用している。
5) スクリーニング前の3ヶ月以内に、他の臨床試験に参加した(試験薬物による治療を受けた)。
3.スクリーニング前に、以下のいずれか1つの疾患の既往歴または証拠がある:
1) WHO1999基準に従って糖尿病患者と診断された。
2) スクリーニング時、空腹時静脈血糖値≧7.0mmol/Lであるか、または75g経口ブドウ糖負荷試験(OGTT)の糖負荷後2時間に、静脈血糖値≧11.1mmol/Lである(スクリーニング時、空腹時血糖値が6.1mmol/L~7.0mmol/Lの対象に対して、確認のためにOGTT糖負荷後2時間の静脈血糖値を採取する必要がある)。
3) 過去にまたはスクリーニング時に網膜症を有する患者である。
4) コルチゾールホルモンの上昇(例えば、クッシング症候群)、下垂体および視床下部の損傷による肥満、体重減少薬の減量/停服による肥満などを含む、二次疾患または薬物による肥満である。
5) 過去に体重減少のための手術を受けたか、あるいはスクリーニング前の1年以内に体重減少のための鍼治療などを受けたことがある。
6) 過去にうつ病の既往歴があるか、あるいは過去に統合失調症、双極性障害などの重篤な精神疾患の既往歴がある。
7) 少なくとも4週間の降圧薬による治療後、スクリーニング時に依然として安定的に制御できない高血圧であり、収縮期血圧>140mmHgおよび/または拡張期血圧>100mmHgとして定義された。
8) スクリーニング時、収縮期血圧<90mmHgおよび/または拡張期血圧<50mmHgである。
9) スクリーニング時、悪性腫瘍の既往歴がある(治癒した皮膚基底細胞癌および子宮頸部上皮内癌を除く)。
10) スクリーニング時、心臓関連疾患(狭心症、心筋梗塞、心筋症、急性および慢性心不全など)がある。
11) スクリーニング前の6ヶ月以内に、出血性脳卒中もしくは虚血性脳卒中または一過性脳虚血が発作した。
12) スクリーニング時、甲状腺C細胞癌の既往歴、MEN(多発性内分泌腫瘍症)2Aもしくは2B症候群の既往歴または関連家族歴がある。
13) スクリーニング時、急性もしくは慢性膵炎の既往歴、胆嚢炎の既往歴、膵臓損傷の既往歴がある。
14) スクリーニング時、胃腸の運動性に影響を与える可能性のある慢性胃腸疾患、全身性疾患があるか、あるいはスクリーニング前の3ヶ月以内に、胃腸の運動性、食欲または吸収を変化させる可能性のある薬物を使用した。
15) 四肢の奇形や切断があり、身長、体重などの指標を正確に決定することはできない。
16) スクリーニング前の1ヶ月以内に、大・中規模の手術、重度の外傷、重度の感染症などがあり、研究者がこの研究への参加に不適当と判断した者。
17) 過去に自殺傾向または自殺行動がある。
18) 試験期間に手術が予定されるが、研究者が対象の安全性および試験結果に影響を与えないと判断した外来手術は除外される。
19) スクリーニング時、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)抗体、B型肝炎表面抗原(HBsAg)、C型肝炎(HCV)抗体または梅毒抗体が陽性の対象である。
20) スクリーニング前1ヶ月以内に、アルコール乱用歴がある。週平均のアルコール摂取量が男性で21単位、女性で14単位を超えるか、あるいは投与日の24時間前および研究期間全体を通じて飲酒を止める意思がない(1単位=ビール360mL、または赤ワイン150mL、または蒸留酒/白酒45mL)。
21) 薬物や麻薬の乱用に対する尿スクリーニング検査で陽性である。
4.いずれか1つの実験室検査指標が以下の基準を満たす(スクリーニング時、明確な再確認理由がある場合は、1週間以内に再確認を行うことができ、研究者は再確認の理由を記録すべきである):
1)スクリーニング時、血清カルシトニン≧15ng/Lである。
2)スクリーニング時、グルタミン酸アミノトランスフェラーゼ≧2.0×ULNおよび/またはアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ≧2.0×ULNおよび/または総ビリルビン≧1.0×ULNおよび/またはアルカリホスファターゼ≧2.0×ULNである。
3)スクリーニング時、eGFR<60mL/min/1.73m2であり、CKD-EPI式による推定(下記の表2を参照):CKD-EPI式による推定:eGFR=a×[(血清クレアチニン(μmol/L)/b)]c×(0.993)年齢:
【表2】
4)スクリーニング時、甲状腺機能(FT3、FT4またはTSH)が異常である。
5)スクリーニング時、空腹時のトリグリセリド≧5.64mmol/L(500mg/dl)である。
6)スクリーニング時、血液アミラーゼまたはリパーゼ>2.0×ULNである。
7)スクリーニング時、プロトロンビン時間の国際正規化比(INR)が正常値範囲の上限を超えた。
5.スクリーニング時、12誘導心電図で心拍数<50拍/分または>90拍/分が示された。
6.スクリーニング時、臨床的に12誘導心電図(ECGs)異常:ペースメーカーを使用しない場合、II度またはIII度房室ブロック、QT延長症候群またはQTcF>450ms(QTc Fridericia式の計算式:QTcF=QT/(RR^0.33))、PR間隔<120msまたはPR間隔>220ms、QRS>120ms、左脚ブロックまたは右脚ブロック、前興奮症候群または治療が必要な重篤な不整脈が現れた。
7.妊娠中または授乳中の女性、妊娠の可能性のある男性または女性は研究期間全体を通じて避妊を望ましくない。
8.スクリーニング前の3ヶ月以内に、献血量および/または失血量≧400mLであり、あるいは骨髓献血されたか、あるいは異常ヘモグロビン症、溶血性貧血、鎌状赤血球貧血があるか、あるいはヘモグロビン<110g/L(男性)または<100g/L(女性)である。
9.研究者は、対象が、この研究の有効性または安全性評価に影響を与える可能性のある任意の他の要因を有し、この研究への参加に適切ではないと考えられる。
【0041】
二、以下のいずれか1つの基準を満たす糖尿病の対象が、この研究から除外される:
1.1型糖尿病、特定型糖尿病または妊娠糖尿病。
2.スクリーニング前の6ヶ月以内に、ケトアシドーシスまたは乳酸アシドーシスが発生した。
3.スクリーニング前の6ヶ月以内に、重度低血糖の発症の既往歴があり、これは神経低血糖症状が出現し、回復するために他の者の補助治療を必要とすること、または低血糖が全く分からないこともしくは低血糖症状に対する認知不足であると定義された。研究者は、患者が低血糖症状および適切な治療に合意して理解することができない場合も、この研究から除外されると考えられる。
4.スクリーニング前の6ヶ月以内に、急性心筋梗塞、不安定狭心症、冠動脈バイパス移植、経皮冠動脈インターベンション(診断血管造影を除く)、一過性脳虚血発作(TIA)、脳血管障害、急性および慢性心不全が発生した。
5.スクリーニング時、研究者は対象のリスクを増加させるか、または心電図データ分析の混乱(QT)が引き起こされると考えられる異常12誘導心電図(例えば、QTcF>450ms、PR間隔<120msまたはPR間隔>220ms、II度およびIII度房室ブロック、心室伝導遅延即ちQRS>120ms、右脚ブロック、左脚ブロック、前興奮症候群)、あるいは心臓QT間隔に影響が与えられる薬物(抗不整脈薬クラスIAおよびクラスIII、シサプリド、マクロライド系抗生物質および向精神薬(フェノチアジン(メトダジン、クロルプロマジン、ミソプリダジン)、ブチロフェノン(フッ素ペリドール、ハロペリドール)ならびにロペラミド)を服用している。
6.過去にQT延長症候群と診断された。
7.スクリーニング時、安定的に制御できない血圧、収縮期血圧>140mmHgまたは<90mmHg、拡張期血圧>90mmHgまたは<50mmHgである。
8.スクリーニング時、心拍数<50bpmまたは>90bpmである。
9.スクリーニング前の5年以内に、活動性または未治療の悪性腫瘍があるか、あるいは臨床悪性腫瘍の寛解状態にある(皮膚基底細胞癌および扁平上皮癌、子宮頸部上皮内癌、甲状腺乳頭状癌の手術後に再発のない患者は除外される)。
10.過去に急性または慢性膵炎の既往歴があるか、あるいはスクリーニング時の血清リパーゼ/アミラーゼが正常値の上限の2倍を超えるか、あるいは空腹時のトリグリセリド>5.65mmol/L(500mg/dl)である。患者が脂質調節療法を受けている場合、スクリーニング前の薬物用量を30日安定させる必要がある。
11.スクリーニング時、臨床症状の肝臓疾患、急性または慢性肝炎があるか、あるいはスクリーニング時、アミノトランスフェラーゼ(ALTとAST)およびアルカリホスファターゼ(ALP)>正常値の上限の2倍を超え、総ビリルビンが正常値の上限よりも高い。
12.スクリーニング時、カルシトニン≧15ng/Lである。
13.スクリーニング時、系球体濾過率eGFR<60mL/min/1.73m2であり、改変したMDRD式による推定:eGFR=175×[(血液クレアチニン(μmol/L)/88.4)]-1.234×[年齢(歳)]-0.179×0.79(女)または×1(男)。
14.過去にまたはスクリーニング時に精神疾患があり、研究者は、この研究への参加に適切ではないと考えられる。
15.胃不全麻痺または何らかの形態の肥満手術と診断されたか、あるいは、研究者は、臨床的に胃内容の排出異常が考えられる。
16.公知の薬物乱用の規則性の既往歴である。
17.HIVウイルス感染および/またはスクリーニング時HIV抗体陽性、梅毒抗体陽性である。
18.B型肝炎の病歴および/またはスクリーニング時B型肝炎表面抗原陽性、あるいはC型肝炎(HCV)抗体陽性である。
19.過去にGilbert症候群がある。
20.スクリーニング時、INRが正常値の上限を超える。
21.甲状腺骨髄C細胞癌の既往歴、MEN(多発性内分泌腫瘍症)2Aもしくは2B症候群の既往歴、または関連家族歴がある。
22.過去に、尿閉、安静時頻脈、起立性低血圧、糖尿病性下痢に表現された自律神経障害と明確に診断された。
23.スクリーニング前の3ヶ月以内に、体重が変化百分比(>5%)で明らかに変化した。
24.スクリーニング前の3ヶ月以内に、献血量≧400mLまたは失血量が多すぎるか、あるいは骨髓移植を行ったか、あるいは異常ヘモグロビン症、溶血性貧血、鎌状赤血球貧血があるか、あるいはヘモグロビン<110g/L(男性)または<100g/L(女性)である。
25.研究者が患者リスクの増加と考えられる臨床評価および/またはTSH異常により証明された甲状腺機能亢進または甲状腺機能低下である。
26.スクリーニング前の2ヶ月以内に、メトホルミン以外の血糖降下薬を使用した。
27.スクリーニング前の3ヶ月に、リラグルチド、オルリスタット、シブトラミン塩酸塩、フェニルプロパノールアミン、クロルフェニラミンインドール、フェンテルミン、ロルカセリン塩酸塩、フェンテルミン、フェンテルミン/トピラメート、アンフェタミンケトン、ナルトレキソン/ブプロピオンなどの、体重減少薬を使用したか、または試験期間に使用する予定がある。
28.スクリーニング前の1年以内に、グルココルチコイドを長期間使用(累積または連続使用>2週間)するか、あるいはスクリーニング前の4週間以内に、グルココルチコイドを使用した(局所、眼内、鼻腔内、関節内、吸入投与を除く)。
29.スクリーニング時、カフェイン含有飲料を除いた中枢神経刺激剤(例えば、メチルフェニデート塩酸塩)を使用している。
30.試験薬物または成分に対してアレルギー性であることが知られている。
31.スクリーニング前の3ヶ月以内に、任意の薬物または医療機器の臨床試験に参加した(ランダムな投与段階に入ると定義された)。
32.不妊手術を受けた場合や月経が止まっている場合を除き、妊娠の可能性のある女性対象は性的パートナーに臨床研究に参加することを知らせたがらず、研究期間に効果的な避妊手段も講じない。男性対象は、女性パートナーに臨床研究に参加することを知らせたがらず、研究期間に効果的な避妊手段も講じない。
33.妊娠中もしくは授乳中、または研究期間に妊娠もしくは授乳を予定する対象である。
34.研究者は、この研究の治療効果および安全性データの解釈を妨害する可能性のある任意の顕著な臨床的実験室異常値であると考えられる。
35.研究者は、対象が精神疾患などの、この研究の対象の適合性、治療効果または安全性評価に影響が与えられる他の要因を有すると考えられる。
36.週平均のアルコール摂取量が男性で21単位、女性で14単位を超えるか、あるいは投与日の24時間前および研究期間全体を通じて飲酒を止める意思がない(1単位=ビール360mL、または赤ワイン150mL、または蒸留酒/白酒45mL)。
【0042】
実施例2 全体的な研究設計
一、肥満または過体重
この研究は、食事および運動によって少なくとも12週間管理して体重変化が5%未満の過体重または肥満の患者36例が登録される予定であった。二重盲検治療期間の研究は、それぞれコホート1(n=12)、コホート2(n=12)、コホート3(n=12)である3つのコホートに分けられ、各コホートの対象は2:1の比率でマズチド治療群(n=8)、プラセボ群(n=4)にランダムに分けられた。コホート1、コホート2およびコホート3におけるマズチドまたはプラセボの皮下注射投与計画についての説明はそれぞれ以下の通りであった(
図1に示す):
コホート1:対象の開始用量は1.0mg、週に1回投与され、4週間連続投与後、対象の薬剤耐性が良好*である場合、用量を2.0mgに増やし、週に1回投与され、4週間連続投与後、対象の薬剤耐性を再度観察し、薬剤耐性が良好*である場合、用量を3.0mgに増やし続け、週に1回投与され、4週間連続投与された。(目標用量まで4週間ごとに1mgの上昇速度で増加)。
コホート2:対象の開始用量は1.5mg、週に1回投与され、4週間連続投与後、対象の薬剤耐性が良好*である場合、用量を3.0mgに増やし、週に1回投与され、4週間連続投与後、対象の薬剤耐性を再度観察し、薬剤耐性が良好*である場合、用量を4.5mgに増やし続け、週に1回投与され、4週間連続投与された(目標用量まで4週間ごとに1.5mgの上昇速度で増加)。
コホート2において、対象が3.0mgもしくは4.5mgで薬剤に耐えられない場合、表3に示す基準で投与量を調整する必要がある。
【表3】
備考:
*コホート2群の対象が上昇過程において、3mgに耐えられない場合、コホート2(backup1)で1週間投薬停止後に2.25mgに減らし、後続の用量上昇はコホート2(backup1)で実施する必要がある。
#コホート2群の対象が上昇過程において、4.5mgに耐えられない場合、コホート2(backup2)で1週間投薬停止後に3.75mgに減らし、試験終了まで当該用量を維持する必要がある。
&コホート3群の対象への投与は、コホート2の対象が1.5mg、4週間の薬剤耐性試験を完了させた後に開始され、コホート2の対象が1.5mgに耐えられない場合、コホート3の対象については、2.0mg以上の高用量の検討を行う必要がない。
コホート3:対象への投与は、コホート2の対象が良好な薬剤耐性で1.5mg、4週間の投与を完了させた後に開始され、コホート2の対象が1.5mgに耐えられない場合、コホート3の対象については、2.0mg以上の高用量の検討を行う必要がない。当該コホートの対象の開始用量は2.0mg、週に1回投与され、4週間連続投与後、対象の薬剤耐性が良好*である場合、用量を4.0mgに増やし、週に1回投与され、4週間連続投与後、対象の薬剤耐性を再度観察し、薬剤耐性が良好*である場合、用量を6.0mgに増やし続け、週に1回投与され、4週間連続投与された。(目標用量まで4週間ごとに2mgの上昇速度で増加)。
【0043】
二、糖尿病
この研究は、少なくとも2ヶ月の生活習慣介入または安定用量メトホルミン(≧1000mg/日または最大耐量)による治療後にグリコヘモグロビンへの制御が依然として標準に達しなかった、2型糖尿病患者42例が登録される予定であった。この研究は、それぞれコホート1(n=14)、コホート2(n=14)、コホート3(n=14)である3つのコホートに分けられ、各コホートは8:4:2の比率でマズチド治療群(n=8)、プラセボ群(n=4)およびDulaglutide 1.5mg治療群(n=2)にランダムに分けられた。コホート1、コホート2およびコホート3における活性対照薬Dulaglutideの投与方法はいずれも1.5mg QWであり、12週間連続投与され、マズチドおよびプラセボの投与計画についての説明はそれぞれ以下の通りであった:
コホート1:対象の開始用量は1.0mg、週に1回投与され、4週間連続投与後、対象の薬剤耐性が良好である場合、2.0mgに増やし、週に1回投与され、4週間連続投与後、対象の薬剤耐性を再度観察し、薬剤耐性が良好である場合、3.0mgに増やし続け、週に1回投与され、4週間連続投与された。(目標用量まで4週間ごとに1mgの上昇速度で増加)。
コホート2:対象の開始用量は1.5mg、週に1回投与され、4週間連続投与後、対象の薬剤耐性が良好である場合、3.0mgに増やし、週に1回投与され、4週間連続投与後、薬剤耐性を再度観察すると、対象の3.0mgに対する薬剤耐性が低く、薬剤耐性の基準に達した場合、当該対象に対してコホート2(backup1)で次の用量の検討を行う必要があり、薬剤耐性が良好である場合、4.5mgに増やし続け、週に1回投与され、4週間連続投与後、対象の4.5mgに対する薬剤耐性が低く、薬剤耐性の基準に達した場合、当該対象に対してコホート2(backup2)で次の用量の検討を行う必要がある。(目標用量まで4週間ごとに1.5mgの上昇速度で増加)。
コホート2(backup1):対象が3.0mgの用量に耐えられない場合、1週間投薬停止して2.25mgに減らし、2週間連続投与後、対象の薬剤耐性を再度観察し、薬剤耐性が良好である場合、3.0mgに増やし続け、4週間連続投与された。
コホート2(backup2):対象が4.5mgの用量に耐えられない場合、1週間投薬停止して3.75mgに減らし、試験終了まで2週間連続投与された。
コホート3:対象は、コホート2の対象が1.5mg、4週間の薬剤耐性試験を完了させた後に開始され、コホート2の対象が1.5mgに耐えられない場合、コホート3の対象については、2.0mg以上の高用量の検討を行う必要がない。当該コホートの対象の開始用量は2.0mg、週に1回投与され、4週間連続投与後、対象の薬剤耐性が良好である場合、4.0mgに増やし、週に1回投与され、4週間連続投与後、対象の薬剤耐性を再度観察し、薬剤耐性が良好である場合、6.0mgに増やし続け、週に1回投与され、4週間連続投与された。(目標用量まで4週間ごとに2mgの上昇速度で増加)。
【0044】
実施例3 安全性研究評価
肥満または過体重患者:2021年3月15日まで、合計36例が登録され、36例が分析に組み込まれた。この研究は、患者が全般的に安全性および薬剤耐性が良好であり、SAEが発生せず、用量停止に関するAEが発生せず、低血糖事象がなく、重度の有害事象がなく急性膵炎が発生せず、有害事象による投与中止または研究から脱退する対象がなく、注射部位反応がなく、コホート1群の2例の対象のみが軽度蕁麻疹を生じた。胃腸の有害反応は最も一般的な不良反応であり(15/24例、62.5%)、その中で、食欲減退(29.2%)、下痢(25%)、吐き気(16.7%)の発生率が最も高かった。胃腸反応の発生比率がプラセボよりも高く、これは当該薬物作用機序に一致した。さらに、マズチド試験群はプラセボ群よりも平均心拍数が増加したが、重篤な心臓疾患関連の有害事象は見られなかった。
糖尿病患者:2021年4月26日まで、合計42例が登録され、42例が分析に組み込まれた。この研究の対象は、全般的に安全性および薬剤耐性が良好であり、用量上昇による停止の有害事象が発生せず、急性膵炎、重度の低血糖、アレルギー反応または注射部位有害反応がなかった。
【0045】
実施例4 臨床安全性研究によって決定されたマズチドの尿酸降下作用
1.肥満の対象:2021年3月15日まで、合計36例が登録され、36例が分析に組み込まれた。表4は投与前の各群の尿酸値、即ちベースライン値である。
【表4】
図2は、投与前(ベースライン)に対する投与後の各群の変動値の平均値であり、
図2から、投与後にコホート1、2、3の尿酸値がいずれも明らかに降下し、且つプラセボ群よりも明らかに優れることが分かった。
【0046】
2.糖尿病の対象:2021年4月26日まで、合計42例が登録され、36例が分析に組み込まれた。表5は投与前の各群の尿酸値、即ちベースライン値である。
【表5】
表6は、投与前(ベースライン)に対する投与後の85日目の各群の変動値の平均値であり、表6および
図3から、コホート1、2、3の尿酸値がいずれもプラセボ群およびデュラグルチド対照群より明らかに低く、そのうち、コホート1およびコホート3の降下が最も顕著であることが分かった。
【表6】
【配列表】
【手続補正書】
【提出日】2024-03-29
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】配列表
【補正方法】変更
【補正の内容】
【配列表】
【国際調査報告】