(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-05
(54)【発明の名称】3Dプリンティングによるミラーを製造するための方法
(51)【国際特許分類】
B28B 1/30 20060101AFI20240628BHJP
B22F 1/00 20220101ALI20240628BHJP
B22F 1/10 20220101ALI20240628BHJP
B22F 10/10 20210101ALI20240628BHJP
B22F 3/10 20060101ALI20240628BHJP
B33Y 10/00 20150101ALI20240628BHJP
B33Y 80/00 20150101ALI20240628BHJP
B29C 64/118 20170101ALI20240628BHJP
B33Y 40/20 20200101ALI20240628BHJP
B29C 64/379 20170101ALI20240628BHJP
【FI】
B28B1/30
B22F1/00 N
B22F1/10
B22F10/10
B22F3/10 C
B33Y10/00
B33Y80/00
B29C64/118
B33Y40/20
B29C64/379
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023579400
(86)(22)【出願日】2021-06-22
(85)【翻訳文提出日】2024-02-20
(86)【国際出願番号】 FR2021051136
(87)【国際公開番号】W WO2022269143
(87)【国際公開日】2022-12-29
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523480886
【氏名又は名称】サフラン・レオスク
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ロドルフォ,ジャック
【テーマコード(参考)】
4F213
4G052
4K018
【Fターム(参考)】
4F213AA03
4F213AC02
4F213WA25
4F213WB01
4F213WL02
4F213WL22
4F213WL27
4F213WL55
4F213WW06
4F213WW24
4F213WW37
4F213WW38
4G052DA02
4G052DB12
4G052DC06
4K018AA14
4K018BA08
4K018BC30
4K018CA44
4K018DA03
4K018EA51
4K018KA63
(57)【要約】
本発明は、ミラーを製造するための方法に関するものであり、本方法は、溶解フィラメント製法(FFF)プリンティング技術を使用して、3Dプリンタ(1)のトレイ(2)上に配置されたモールド(10)上での3Dプリンティングによって前記ミラーを構築するステップであって、前記モールドは、製造されるミラー(22)の光学面(20)に一致する自由表面(10a)を備え、前記構築は、セラミック粉末を充填した溶解ポリマーフィラメント(4)のモールド上に連続層を堆積させることを含み、前記堆積は、モールドの前記自由表面(10a)上のミラーの光学面(20)から開始する、ステップと;ミラーとモールドとを取り外すステップと;セラミック粉末を脱脂するステップと;ミラーを固化するためにセラミック粉末を焼結するステップとを含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ミラー製造方法であって、溶解材料の堆積(FFF)によるプリンティング技術を使用して、3Dプリンタ(1)のトレイ(2)上に配置されたモールド(10)上での3Dプリンティングによる、前記ミラーの構築のステップ(120)を含むことを特徴とし、前記モールドは、製造されるミラー(22)の光学面(20)と相補的な自由表面(10a)を備え、前記構築は、
溶解セラミックおよび/または金属材料の粉末を充填したポリマーフィラメント(4)の連続層をモールド上に堆積させるステップであって、前記堆積がモールドの前記自由表面(10a)上のミラーの光学面(20)から開始する、ステップと、
ミラーとモールドとを取り外すステップ(130)と、
セラミックおよび/または金属粉末を脱脂するステップ(140)と、
ミラーを固化するためにセラミックおよび/または金属粉末を焼結するステップ(150)と
を含む、ミラー製造方法。
【請求項2】
セラミックが、炭化ケイ素SiCおよび/または窒化ケイ素Si
3N
4および/またはアルミナおよび/またはコーディエライトを含む、請求項1に記載のミラー製造方法。
【請求項3】
金属がアルミニウムである、請求項1または2に記載のミラー製造方法。
【請求項4】
機械に対してミラー(22)とモールド(10)のアセンブリを除去するステップ(130)と、モールドとミラー(30)とを分離するステップとを含む、請求項1または2に記載のミラー製造方法。
【請求項5】
脱脂するステップ(140)が、セラミックおよび/または金属材料に対する結合を構成するポリマーを取り除き、化学的脱脂のステップおよび/またはポリマーを取り除くための適切な温度での炉内における熱処理のステップを含む、請求項1から4のいずれか一項に記載のミラー製造方法。
【請求項6】
ポリマー結合剤がポリオレフィンを含み、脱脂するステップ(140)が、前記熱処理が後に続く、ミラーをアセトンバスに浸すことによる化学的脱脂を含み得る、請求項4に記載のミラー製造方法。
【請求項7】
3Dプリンタが、モールドの下面から開始することにより、一連の一定の等高線に沿ってモールド上にフィラメントを堆積させるようにプログラムされ得、一方、凸面ミラーの場合、3Dプリンタのプログラムが、モールドの最も高い部分から開始する、一連の一定の等高線上にフィラメントを堆積させるためのものである、請求項1から6のいずれか一項に記載のミラー製造方法。
【請求項8】
前記ミラーの構築に先立って、モールドのベースを受け入れるために予め機械のトレイ上にインプリントをプリントすることによってなされる、または、ツールであって、当該ツールの位置が機械の座標に対して参照されるツールを使用することによってなされる、モールドを位置決めするステップを含む、請求項1から7のいずれか一項に記載のミラー製造方法。
【請求項9】
堆積させるステップが、少なくとも、第1のフィラメント層の堆積の前に、フィラメントの第1の層をモールド上に接着することと、前記第1の層によるモールドの表面状態の再現とに適した、30°Cから80°Cの温度にモールドを加熱するステップを含む、請求項1から8のいずれか一項に記載のミラー製造方法。
【請求項10】
焼結後にミラーの光学面に仕上げ層を堆積させ、それを研磨するステップを含む、請求項1から9のいずれか一項に記載のミラー製造方法。
【請求項11】
再利用されてもよいし、再利用されなくてもよいモールド(10)であって、ミラーのプリンティングによって作り出される収縮および/またはミラーの焼結によって作り出される収縮のような製造チェーンの偏りを考慮するために、モールドのジオメトリと、相補的な表面の形状とが決定されるモールド(10)の製造のための1つまたはいくつかのステップ(100)が先行することを特徴とする、請求項1から10のいずれか一項に記載のミラー製造方法。
【請求項12】
5nmRMS未満の粗さを達成するためのモールドの研磨を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項13】
モールドが、ビトロセラミックガラス、アルミニウム、セラミック、炭化ケイ素、コーディエライト、アルミナSi
3N
4、またはフィラメントの堆積温度に耐性があり、5nmRMS未満の粗さを有する任意の他の材料で作成される、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
請求項1から13のいずれか一項に記載の方法によって得られるミラー(22)であって、第1の側に光学面(20)、および第2の側に取り付けプロファイル(23)を備える、ミラー(22)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高精度ミラー、特に炭化ケイ素(SiC)、アルミナ、コーディエライト、窒化ケイ素Si3N4などのセラミックの、またはアルミニウムなどの金属の、ミラーの製造の分野からのものであり、3Dプリンティングによるそのようなミラーの製造方法を提案する。
【背景技術】
【0002】
ミラー、特にセラミックSiCの、現在の製造方法では、焼結技術で作成された基板が使用されている。それらの製造方法は、粉末の調製、粉末に圧力をかけることによるSiCブロックの製造、SiCブロックを機械加工して成形した後、材料の粒子を互いに溶接するための焼結またはシリコンなどの結合材料の浸透を含む。結果として得られる基板はこのように成形されるが、十分な精度は得られない。したがって、光学面と界面ゾーンの研削に続いて、光学面の研磨、研磨層の堆積、研磨の完成が続く必要がある。
【0003】
研磨のステップは、光学用途に必要な表面状態に達するまで、ミラーの形状とその粗さを改善することからなる。これらのステップは長くて高価であり、特に前述のセラミック、特に炭化ケイ素の場合、これらのミラーを研磨するのに適した特に高価な機械やツールが必要になる。
【0004】
ミラーの新しいコピーを作成したいと望むたびに、これらすべてのステップを繰り返す必要がある。特に非球面ミラーや自由曲面ミラーのように表面を研磨するのが難しい場合、ステップは時間がかかり、単一ミラーのコピーを大量に製造するのには適していない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
これらの知られている解決策ではミラーを複製することはできず、作成された各ミラーは研磨段階を経る必要がある。
【0006】
さらに、古典的な付加製造によるミラーの製造が知られており、これは、ベースから開始してミラー表面で仕上げることを意味するが、付加製造では製造中に所望の表面状態に到達できないため、依然として研磨動作が必要である。
【0007】
したがって、解決すべき問題は、求められる品質レベルの表面状態を有する部品を生成する付加製造法を見つけることである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
先行技術を考慮して、本出願は、得られる表面に対する研磨動作を回避するために、形状および粗さが十分に正確な光学品質の表面を作り出す方法を提案する。それをするために、本発明の原理は、3Dプリンティング法においてモールディング面として作成されるミラーの光学面と相補的な面を備えたモールドを使用することである。
【0009】
より正確には、本出願は、ミラー製造方法であって、溶解フィラメント製法の頭字語FFFで知られている溶解材料の堆積によるプリンティング技術を使用して、3Dプリンタのトレイ上に配置されたモールド上での3Dプリンティングによる、前記ミラーの構築のステップを含むことを特徴とし、前記モールドは、製造されるミラーの光学面と相補的な自由表面を備え、前記構築は:
- 溶解セラミックおよび/または金属材料の粉末を充填したポリマーフィラメントの連続層をモールド上に堆積させるステップであって、前記堆積がモールドの前記自由表面上のミラーの光学面から開始する、ステップと;
- ミラーとモールドとを取り外すステップと;
- セラミックおよび/または金属粉末を脱脂するステップと;
- ミラーを固化するためにセラミックおよび/または金属粉末を焼結するステップと
を含む、ミラー製造方法を提案する。
【0010】
以下の段落で開示される特徴は、任意選択で実現され得る。これらは互いに独立して実現されてもよいし、または相互に組み合わせて実現されてもよい。
【0011】
セラミックは、有利には、炭化ケイ素SiCおよび/または窒化ケイ素Si3N4および/またはアルミナおよび/またはコーディエライトを含む。
【0012】
本発明の方法は、特に硬くて研磨が難しいが、その機械的および熱的特性により高性能材料を実現できる材料に特によく適用される。
【0013】
金属は特に、高価なダイヤモンド加工機が必要なため研磨が困難である、アルミニウムであってもよい。
【0014】
この方法は、機械からミラーとモールドのアセンブリを除去するステップと、モールドとミラーとを分離するステップとを含んでもよい。
【0015】
脱脂するステップが、セラミックまたは金属材料に対する結合を構成するポリマーを取り除き、化学的脱脂のステップおよび/またはポリマーを取り除くための適切な温度での炉内における熱処理のステップを含む。
【0016】
ポリマー結合剤がポリオレフィンを含む場合、脱脂するステップが、前記熱処理が後に続く、ミラーをアセトンバスに浸すことによる化学的脱脂を含んでもよい。
【0017】
凹面ミラーの場合、3Dプリンタが、モールドの下面から開始することにより、一連の一定の等高線に沿ってモールド上にフィラメントを堆積させるようにプログラムされ得、一方、凸面ミラーの場合、3Dプリンタのプログラムが、モールドの最も高い部分から開始する、一連の一定の等高線上にフィラメントを堆積させるためのものである。
【0018】
前記ミラーの構築に先立って、この方法は、モールドのベースを受け入れるために予め機械のトレイ上にインプリントをプリントすることによってなされる、または、ツールであって、当該ツールの位置が機械の座標に対して参照されるツールを使用することによってなされる、モールドを位置決めするステップを含んでもよい。
【0019】
好ましくは、堆積させるステップが、少なくとも、第1のフィラメント層の堆積の前に、フィラメントの第1の層をモールド上に接着することと、前記第1の層によるモールドの表面状態の再現とに適した、30°Cから80°Cの温度にモールドを加熱するステップを含む。
【0020】
焼結された材料の形状や残留粗さ/多孔性が用途に比べて大きすぎる場合には、焼結後にミラーの光学面に仕上げ層を堆積させ、それを研磨するステップを行ってもよい。
【0021】
ガラスなどの非晶質材料を堆積させることによって作成されるこのような仕上げ層は、焼結された材料が表面多孔性を有するときに特に望ましい。
【0022】
再利用されてもよいし、再利用されなくてもよいモールドであって、ミラーのプリンティングによって作り出される収縮および/またはミラーの焼結によって作り出される収縮のような製造チェーンの偏りを考慮するために、モールドのジオメトリと相補的な表面の形状とが決定されるモールドの製造のための1つまたはいくつかのステップが、本方法に先行してもよい。
【0023】
本方法は、有利には、5nmRMS未満の粗さを達成するための、モールドの研磨を含む。
【0024】
モールドは、ビトロセラミックガラス、アルミニウム、セラミック、炭化ケイ素、コーディエライト、アルミナSi3N4、またはフィラメントの堆積温度に耐性があり、粗さが5nmRMS未満である、任意のその他の材料で作成されてもよい。
【0025】
別の態様によれば、第1の側に光学面、および第2の側に取り付けプロファイルを備える、本発明による方法によって得られるミラーが提案される。
【0026】
本発明の他の特徴、詳細および利点は、以下の詳細な説明および添付図面の分析を読めば明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】3Dプリンタに関する本出願による、ミラーの製造のための予備ステップを示す図である。
【
図2】3Dプリンタに関する本出願による、ミラーの製造のための第1のステップを示す図である。
【
図3】3Dプリンタに関する本出願による、ミラーの製造のための第2のステップを示す図である。
【
図4】3Dプリンタに関する本出願による、ミラーの製造のための第3のステップを示す図である。
【
図5】本出願のミラーとモールドとの分離のステップを示す概略図である。
【
図6】本出願のミラーを脱脂するステップを示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下の説明における図面の大部分は、明確な性質の要素を含む。したがって、それらは本発明をよりよく理解するのに役立つだけでなく、適用可能な場合にはその定義にも貢献し得る。
【0029】
本出願のミラー製造方法は、セラミックまたは金属を有するプラスチック結合剤フィラメントからミラーをモールド上に複製して造るために、付加製造機械を使用することにより、焼結セラミックまたは金属基板の製造および研磨という従来のステップをプリンティング動作に置き換えることを目的としている。
【0030】
アイデアをより具体的にするために、焼結された基板に基づく高精度ミラーの場合、従来の方法は、5μmRMS(RMSは二乗平均平方根)未満の形状欠陥と1μmRMS未満の粗さを含むミラー基板の製造を含む。
【0031】
100nmRMS未満の形状欠陥と5nmRMS未満の粗さを得るために、ミラーにおいて基板を研磨する1つ以上のステップが行われる。
【0032】
最後に、特に基板の多孔性を補償するために、非晶質仕上げ層が堆積される。次いで、この層は、仕上がったミラーが10nmRMS未満の形状欠陥、および2nm未満の粗さを含むように研磨される。
【0033】
本発明は、そのようなミラーの製造を簡素化し、前述したように、ミラーの研磨を取り除くと同時に、100nmRMS以下の形状欠陥と5nmRMS以下の粗さを得ることを目的とする。
【0034】
これを行うために、
図1に示すモールド10が製造される。このモールドは、作成したいミラーの光学面の相補的な形状を表す上面を含む。ミラーの所望の湾曲を備えた相補的な表面には、ミラーの目標とする粗さが与えられる。さらに、モールドの相補的な表面の形状は、本方法からもたらされる偏差、特にミラーのプリンティングとその後の焼結中に生じ、ミラーの光学面の形状を変化させる可能性がある収縮を考慮する必要がある。
【0035】
モールドは、特にブランドZerodurで知られているビトロセラミックガラス、アルミニウム、または所望の研磨および粗さの仕様を達成できる任意の材料で製造されてもよい。
【0036】
モールドは、好ましくは、一連のミラーを製造するための再利用可能なモールドである。
【0037】
さらに
図1によれば、モールド10は、溶解フィラメント製法(FFF)技術を使用する3Dプリンタ1のトレイ上に設置される。プリンティングはミラーの光学面と相補的なモールドの表面10a上で行われなければならないため、モールドは機械上で正確に位置決めされる。モールドの正確な位置決めは、モールドのベースを受け入れて所定の位置に保持するために、機械のトレイ2に事前にインプリント11をプリントすることによって、または、ツールであって、当該ツールの位置が機械の座標に対して参照されるツールを使用することによって行われ得る。
【0038】
プリンタ1は、ミラーの実現に適したセラミックまたは金属、特に炭化ケイ素SiC、窒化ケイ素Si3N4、アルミナ、コーディエライト、またはアルミニウムのような材料の微粉末が充填されたポリマーフィラメント4を使用するプリンタである。ポリマーフィラメントは粉末セラミックまたは金属の結合剤を構成する。
【0039】
フィラメント4は、フィラメント層を堆積させるために、2つの水平軸に沿って電動デバイス3によって駆動されるノズル5によって溶解され堆積され、一方、トレイ2は、ミラーの連続層を実現するために垂直軸に沿って移動する。
【0040】
図2による第1のステップでは、ミラーの光学面20は、モールドの上面10a上に作成され、その後、
図3および
図4に従って、ミラー22の本体21を実現するために3Dプリンティングが行われ、その後ミラー22の後部23が実現される。
【0041】
結合剤は、例えば、当該分野で知られているように、PLA(ポリ乳酸)、ポリオレフィン、またはポリスチレンなどの熱可塑性物質であり、この結合剤は、ミラーをプリントした後に取り除かれることになる。
【0042】
標準的な、3軸を有する3D機械の場合、光学面と相補的なモールドの表面10aは、一般に平坦な面ではなく、凹面または凸面であるため、堆積機械のプログラミングは、平坦なトレイ上に部品を作成する機械のプログラミングとは異なる。
【0043】
実際、技術的な問題は、現在の機械は、障害物がないと想定されている可動範囲内で物体をプリントすることである。したがって、機械のプリントヘッドは、プリントされる各層の平面内で制約なく移動する。モールド10の形状がヘッドの移動の間に障害となるので、溶解フィラメント4を堆積させるためのノズル5を備えたヘッド3の動作を変更するためには、モールドの存在が、機械の動作を再検討することを要求する。
【0044】
本発明のコンテキストでは、ヘッドの移動パスは、モールドの形状が占める体積、機械のプリントヘッドの体積、およびその移動の運動学を考慮する。層におけるスライシングという伝統的戦略と、機械のそれに対応するアルゴリズムとは使用できず、したがって、そのプログラミングが再検討される。
【0045】
カバーされる表面から0.2mmから1mm程度の距離を保つ必要がある、フィラメントを堆積させるヘッドが、プリントされる層の上に位置するモールドのゾーンと接触するのを避けるため、機械駆動ソフトウェアは、ヘッドの平行線に沿う移動のかわりに、モールドの最下点または表面から開始することにより、高まる等高線上でヘッドを移動させるように構成されている。例えば、上面が円形の凸面であるモールドでは直径が徐々に小さくなる同心円上に、または上面が円形の凹面であるモールドでは直径が増加する円上にフィラメントを堆積させるように、機械はプログラムされる。
【0046】
より複雑な形状のミラーの場合、ヘッドは常にモールドの最下点または表面から開始して、適切な形状の等高線上に堆積を作成するように移動する。
【0047】
モールドの光学面の形状やミラーに求められるジオメトリにしたがって、他の軌道も可能である。
【0048】
機械の運動学は最終的なものではないことに留意されたい。特に、本発明の範囲内で使用できる3軸に沿ったノズルの移動を可能にする機械がある。
【0049】
特に、ミラーの湾曲が、ヘッドの寸法によりヘッドがモールドの壁に接触する可能性があるようなものである場合には、少なくとも5軸を有するロボッティックアーム、または少なくとも5軸を有する数値制御機械にヘッドが固定されている機械が使用される。
【0050】
したがって、この方法は、さまざまなフィラメントの設置の運動学、特に表面に対して垂直を保つためのノズルの変位のためのシステムの傾斜の実現をカバーする。
【0051】
現在の3DFFF機械では、材料は、主に加熱トレイまたは接着促進剤を使用することにより、トレイ上に堆積される第1の層の接着を促進するように設計されたトレイ上に堆積される。モールドへのプリンティング中は、堆積されたミラーがモールドの表面状態を再現するように接着性を維持する必要がある。
【0052】
モールド上での第1の層の接着を可能にするために、モールドは、ノズルから出るペースト状フィラメントがあまりに速く冷却されない適切な温度にされることになる。
【0053】
この考慮に対し、モールドは、使用するフィラメントにしたがって、約30°Cから最高80°Cまで、フィラメントの材料に応じて適切な温度に達するまで予熱される。堆積物を均一にするために、この温度を堆積物全体に維持することができる。
【0054】
モールド上で堆積させることによりミラーを作成したら、モールドとミラーを一緒に機械から外す。
【0055】
次のステップでは、モールドと接触している光学面に損傷を与えることなく、ミラーをモールドから分離する。これを行うために、例えば
図5に示すように超音波発生器バス30内に設置することによる超音波法、または熱的方法などの方法を特に使用することができる。
【0056】
次にミラーの実現は、脱脂と呼ばれる、ポリマーを取り除くための動作を含む。
【0057】
この脱脂は、例えばアセトンバスを使用する化学ステップと、その後、適切な加熱デバイス41を備えた
図6に概略的に示される炉40内での熱処理とを組み合わせることによって行われ得る。
【0058】
参考までに、ポリオレフィン/アルミナフィラメントの場合、約500°Cの温度を段階的に作り出すのに適した炉40が使用され、炉床または耐火性の材料のベッド42の上にミラーが設置される。使用するフィラメントの材質にしたがって、他の温度と加熱プロファイルが使用されてもよい。
【0059】
結合剤次第で、結合剤の、昇華、蒸発、または熱分解を引き起こす可能性のある脱脂は、使用する結合剤およびフィラメントのメーカーの推奨に従って、おそらくは熱的に直接行うことができる可能性がある。
【0060】
脱脂が行われると、本方法は、必要な温度に適している場合は炉40内で、または別の炉内で、例えば、15時間で20°Cから1550°Cまで上昇させ、4時間保持するといった、材料に適した熱サイクルにしたがった材料の焼結を含む。
【0061】
仕上がったミラー22の例が
図7に示されており、例えば凹面または凸面である光学面20の底部、ミラー21の本体、および搬送デバイスに取り付けるための穴を設けられた翼23を備えた取り付け足22aが、上から下まで見える。
【0062】
プリントされる物体のジオメトリを所望の最終形状に対応させるため、また、プリンティング中およびプリントされる物体の熱処理中の収縮現象により、本方法は、製造中の部品の挙動モデルと、方法の終了時にミラーが正しいジオメトリになるようにモールドが持つべき形状を決定するために、このモデルからの計算の逆を含む必要がある。
【0063】
図8は、モールドの製造100から開始する方法のステップを概略的に示しており、本方法は:
- ステップ110において、モールドをプリンタ上に設置するステップと、
- ステップ120において、ミラーをプリントするステップと、
- ステップ130において、モールドとミラーとを取り外し、モールドとミラーとを分離するステップであって;モールドが、再利用されるためにステップ180において再調整され得る、ステップと、
- ステップ140において、ミラーの化学的および/または熱的脱脂を行うステップと、
- ステップ150において、ミラーを焼結するステップと、次いで、
- ミラーが所望の表面状態および光学特性に達した場合には処理の終了、ミラーの改訂版が必要な場合には仕上げ層を堆積および研磨するステップ170、および処理の終了のステップと
を含む。
【0064】
ミラーは示された例に限定されず、特に、本発明の範囲内に全てがとどまりながら、モールドが凹面、ミラーが凸面であり得る。
【国際調査報告】