(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-05
(54)【発明の名称】既存の自動車用サウンドシステムにポータブルスピーカを容易に追加するためのデバイス
(51)【国際特許分類】
H04B 1/3822 20150101AFI20240628BHJP
H04R 3/00 20060101ALI20240628BHJP
B60R 11/02 20060101ALI20240628BHJP
【FI】
H04B1/3822
H04R3/00 310
B60R11/02 C
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023579404
(86)(22)【出願日】2022-06-21
(85)【翻訳文提出日】2024-02-21
(86)【国際出願番号】 US2022034236
(87)【国際公開番号】W WO2022271625
(87)【国際公開日】2022-12-29
(32)【優先日】2021-06-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523480901
【氏名又は名称】トゥルッリ エンジニアリング,エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110001612
【氏名又は名称】弁理士法人きさらぎ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】プライス,スティーヴン
(72)【発明者】
【氏名】マチエイェフスキ,ジェイク
(72)【発明者】
【氏名】トミッチ,ピーター,アレクサンダー
【テーマコード(参考)】
3D020
5D220
5K011
【Fターム(参考)】
3D020BA02
3D020BA10
3D020BA11
3D020BC01
3D020BE03
5D220AA50
5K011JA01
(57)【要約】
デバイスは、モバイルデバイスから信号を受信し、その信号を自動車のヘッドユニットに受け渡し、デバイスがモバイルデバイスから受信する信号から一部のオーディオ関連情報をフィルタリングして取り出してデコードし、そのオーディオ関連情報をポータブルスピーカに渡す。好適には、ポータブルスピーカから発せられるオーディオがヘッドユニットから発せられるオーディオと同期するように、デバイスまたはポータブルスピーカのいずれかにより遅延が算出され、追加される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
モバイルデバイス、自動車のヘッドユニットおよびポータブルスピーカとともに使用するためのデバイスであって、
前記モバイルデバイスからデータを受信するように構成されているデータレシーバと、
前記自動車のヘッドユニットにデータを渡すように構成されているデータ受け渡し部と、
オーディオ関連信号を前記ポータブルスピーカに送信するように構成されているフィルタおよびデコーダと、
を備えるデバイス。
【請求項2】
自動車用スピーカを通して前記自動車のヘッドユニットにより発せられるオーディオと同期されたオーディオを前記ポータブルスピーカが発するように、前記デバイスが、前記ポータブルスピーカに送信するオーディオ関連信号に適切な遅延を前記デバイスが追加するように構成されている、
請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
有線接続を介して前記モバイルデバイスに接続するように前記デバイスが構成されている、
請求項1に記載のデバイス。
【請求項4】
無線接続を介して前記モバイルデバイスに接続するように前記デバイスが構成されている、
請求項1に記載のデバイス。
【請求項5】
BLUETOOTH(登録商標)またはWi‐Fiを介して前記モバイルデバイスに接続するように前記デバイスが構成されている、
請求項4に記載のデバイス。
【請求項6】
有線接続を介して前記自動車のヘッドユニットに接続するように前記デバイスが構成されている、
請求項1に記載のデバイス。
【請求項7】
無線接続を介して前記自動車のヘッドユニットに接続するように前記デバイスが構成されている、
請求項1に記載のデバイス。
【請求項8】
BLUETOOTH(登録商標)またはWi‐Fiを介して前記自動車のヘッドユニットに接続するように前記デバイスが構成されている、
請求項7に記載のデバイス。
【請求項9】
有線接続を介して前記ポータブルスピーカに接続するように前記デバイスが構成されている、
請求項1に記載のデバイス。
【請求項10】
オーディオケーブル線を介して前記ポータブルスピーカに接続するように前記デバイスが構成されている、
請求項9に記載のデバイス。
【請求項11】
無線接続を介して前記ポータブルスピーカに接続するように前記デバイスが構成されている、
請求項1に記載のデバイス。
【請求項12】
BLUETOOTH(登録商標)またはWi‐Fiを介して前記ポータブルスピーカに接続するように前記デバイスが構成されている、
請求項11に記載のデバイス。
【請求項13】
前記デバイスが、マイクロコントローラ(MCU)と、オーディオ遅延バッファと、RFトランスミッタと、を備え、
前記MCUが、信号を前記オーディオ遅延バッファに送信するように構成され、
前記オーディオ遅延バッファが、信号に前記適切な遅延を追加して次に前記RFトランスミッタに信号を送信するように構成され、
前記ポータブルスピーカが自動車用スピーカを通して前記自動車のヘッドユニットにより発せられるオーディオと同期しているオーディオを発するように、前記RFトランスミッタが、RF信号を前記ポータブルスピーカに送信するように構成されている、
請求項2に記載のデバイス。
【請求項14】
前記MCUが、USBトラフィックフィルタと、HID iAP1/iAP2プロトコルデコーダと、アイソクロナスUSBオーディオデコーダと、を含み、
前記USBトラフィックフィルタが、前記モバイルデバイスと前記自動車のヘッドユニットとの間のトラフィックを特定し、
前記アイソクロナスUSBオーディオデコーダが、信号を抽出し、前記信号をI2S信号に変換し、そのI2S信号を、前記信号に前記適切な遅延を追加して前記信号を前記RFトランスミッタに送信する前記オーディオ遅延バッファに送信する、
請求項13に記載のデバイス。
【請求項15】
前記デバイスが、AppleCarPlay(登録商標)で動作するように構成され、かつ、CarPlay(登録商標)プロトコルデコーダと、CarPlay(登録商標)プロトコル対応デバイスと、を備え、
前記CarPlay(登録商標)プロトコルデコーダが、前記オーディオ遅延バッファおよび前記CarPlay(登録商標)プロトコル対応デバイスに信号を送信する、
請求項1に記載のデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2021年6月22日に出願された米国仮出願第63/213、470号の利益を主張するものであり、その全体が参照により本明細書に組み込まれている。
【0002】
本発明は、一般的に自動車用サウンドシステムに関し、より具体的には自動車の既存のサウンドシステムにポータブルスピーカを容易に追加するためのデバイスに関する。
【背景技術】
【0003】
最近の自動車は、自動車のサウンドおよび情報システムの中心となるヘッドユニット(時としてインフォテインメントシステムと呼ばれる)と呼ばれる主要なコンポーネントを含む。そのヘッドユニットは、ダッシュボードまたはコンソールの中央に目立つように設置され、一体型電子パッケージを提供している。具体的には、ヘッドユニットは、ボタン、画面、および多くの統合情報とエンターテイメント機能のためのシステム制御を含む統合ハードウェアインターフェースを提供している。例えば、ヘッドユニットは、オーディオ関連情報をモバイルデバイスから受信するためにそのモバイルデバイスへの接続を提供し、また音量、スピーカのバランス、スピーカのフェード・低音域・高音域・イコライゼーションなどのオーディオ機能の制御を提供する場合が多い。
【0004】
ヘッドユニットをモバイルデバイスに接続する一般的な方法の1つは、BLUETOOTH(登録商標)などの無線接続を介するものである。ヘッドユニットによっては、多くの場合USBポートを介する有線接続によってモバイルデバイスに接続されるように構成されている場合もある。
【0005】
自動車には、ヘッドユニットに物理的に接続される複数のスピーカを含むサウンドシステムが装備されている。モバイルデバイスとヘッドユニットとの間の接続が無線式であるかもしくは有線式であるかにかかわらず、モバイルデバイスとヘッドユニットが接続されることで、モバイルデバイスは、ヘッドユニットを通してまた従って自動車のスピーカを通してオーディオを再生することができる。
【0006】
自動車には、ドア、ダッシュボードなどに組み込まれる予め設定された数のスピーカが装備されており、ヘッドユニットは、ダッシュボードに組み込まれている。自動車用サウンドシステムにスピーカを追加することは簡単な仕事ではなく、ヘッドユニットの背面にアクセスするためにダッシュボードを分解することや増幅器を追加することなど、かなりの労力が必要となる。
【発明の概要】
【0007】
本発明の実施形態の1つの目的は、既存の自動車用サウンドシステムにポータブルスピーカを容易に追加するためのデバイスを提供することである。
【0008】
本発明の実施形態の別の目的は、スピーカを自動車のヘッドユニットに物理的に接続する必要がなく、既存の自動車用サウンドシステムにスピーカを追加することを可能にするデバイスを提供することである。
【0009】
本発明の実施形態の別の目的は、自動車のヘッドユニットとヘッドユニットに配線されていないポータブルスピーカの両方にオーディオデータを送信するデバイスを提供することである。
【0010】
手短に言えば、本発明の実施形態は、モバイルデバイスから信号を受信し、その信号を自動車のヘッドユニットまで通過させ、そのデバイスがモバイルデバイスから受信した信号から一部のオーディオ関連情報をフィルタリングにより取り出してデコードし、遅延を決定し、その遅延をオーディオ関連情報と合成してスピーカ用信号を生成し、次にそのスピーカ用信号をスピーカに無線で送信するように構成されたデバイスを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
本発明の構造および動作の構成および方法は、さらなる目的とその利点とともに、類似の参照符号が類似の要素を特定する添付の図面に関連付けて行われている以下の説明を参照することによって最良に理解することができる。
【
図1】本発明の実施形態に係るデバイスを組み込むシステムの図を示しており、デバイスは、オーディオデータの受け渡し部、フィルタおよびデコーダであり、モバイルデバイスと自動車のヘッドユニットとの間に配置され、モバイルデバイスと自動車のヘッドユニットの両方と通信し、そしてモバイルデバイスから受信したデータを処理してポータブルスピーカにオーディオ関連信号を送信するように構成されている。
【
図2】本発明の実施形態に係るデバイスを組み込むシステムの図を示しており、デバイスは、Appleデバイスと自動車のヘッドユニットとの間に配置され、Appleデバイスと自動車のヘッドユニットの両方に有線接続を介して接続されており、ポータブルスピーカにオーディオ関連信号を送信するように構成されている。
【
図3】本発明の実施形態に係るデバイスを組み込むシステムの図を示しており、デバイスは、Appleデバイスと自動車のヘッドユニットとの間に配置され、Appleデバイスと自動車のヘッドユニットの両方に有線接続を介して接続されており、ポータブルスピーカにオーディオ関連信号を送信するように構成されており、ここではAppleのCarPlay(登録商標)システムが採用されている。
【
図4】本発明の実施形態に係るデバイスを組み込むシステムの図を示しており、デバイスは、Appleデバイスと自動車のヘッドユニットとの間に配置され、Appleデバイスと自動車のヘッドユニットの両方に無線接続を介して接続されており、ポータブルスピーカにオーディオ関連信号を送信するように構成されており、ここではAppleのCarPlay(登録商標)システムが採用されている。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、様々な形態の実施形態の余地があり得るが、本開示は本発明の原理の例示とみなされるべきであり、本発明を図示のものに限定することを意図するものではないことを理解した上で、特定の実施形態を図面に示し、本明細書で詳細に説明する。
【0013】
図1は、本発明の実施形態に係るデバイス12を組み込むシステム10の図を示す。具体的には、デバイス12は、オーディオデータの受け渡し部、フィルタおよびデコーダであり、それの機能をより十分に以下で説明する。
【0014】
図示するように、デバイス12は、モバイルデバイス14と自動車のヘッドユニット16との間に配置され、モバイルデバイス14と自動車のヘッドユニット16の両方と通信する。デバイス12は、モバイルデバイス14からデータを受信し、そのデータを自動車のヘッドユニット16に渡すように構成されている。これに加えて、デバイス12は、モバイルデバイス14から受信したそのデータからオーディオデータをフィルタリングして取り出してデコードし、次にオーディオ関連信号をポータブルスピーカ18に送信するように構成されている。デバイス12は、また、ポータブルスピーカ18が自動車のスピーカを通してヘッドユニット16により発せられるオーディオと同期したオーディオを発するように、ポータブルスピーカ18に送信されるそのオーディオデータに適切な遅延を追加するように構成されることが好ましい。あるいは、デバイス12が適切な遅延を追加するように構成される代わりに、ポータブルスピーカ18が遅延を追加してヘッドユニット16により生成されるオーディオに対して同期されたオーディオを提供するようにポータブルスピーカ18が構成されてもよい。デバイス12のすべての構成要素は、単一の筐体の中に包含されることが好ましい。
【0015】
すべての構成要素間の接続は、有線もしくは無線であってもよい。例えば、モバイルデバイス14と、ヘッドユニット16とモバイルデバイス14との間に配置されているデバイス12との間の接続は、USB接続などの有線接続、あるいはBLUETOOTH(登録商標)および/またはWi‐Fiなどの無線接続であってもよい。同様に、ヘッドユニット16と、ヘッドユニット16とモバイルデバイス14との間に配置されているデバイス12との間の接続は、USB接続などの有線接続、あるいはBLUETOOTH(登録商標)および/またはWi‐Fiなどの無線接続であってもよい。最後に、ポータブルスピーカ18と、ヘッドユニット16とモバイルデバイス14との間に配置されているデバイス12との間の接続は、オーディオケーブル線などの有線接続、あるいはBLUETOOTH(登録商標)および/またはWi‐Fiなどの無線接続であってもよい。
【0016】
さらに、モバイルデバイス14は、多くの形態をとることができる。例えば、モバイルデバイス14は、iPhone(登録商標)、iPad(登録商標)、iPod(登録商標)などのAppleブランド製品であってもよい。代わりに、モバイルデバイス14は、いくつかの他のブランドの携帯電話、タブレット、MP3プレイヤーなど、あるいは、基本的には、USB、Wi‐Fi、BLUETOOTH(登録商標)などを介してオーディオデータを出力できる任意のデバイスであってもよい。
【0017】
図2乃至4は、これらの変形例のいくつかの具体例を示すが、本発明の範囲を限定する意図ではない。次に、
図2乃至4について説明する。
【0018】
図2は、デバイスが、有線接続、具体的にはUSB接続を介してモバイルデバイスとヘッドユニットの両方に接続されているシステム10aを示し、モバイルデバイスはApple製品(例えば、iPhone(登録商標)、iPad(登録商標)、iPod(登録商標)など)であり、AppleのCarPlay(登録商標)(以下でより詳細に説明する)は採用されていない。
【0019】
Appleデバイスは、オーディオアプリケーションに対して、標準化された「USBオーディオクラス」(「オーディオデバイスのユニバーサル・シリアル・バスデバイスクラス定義リリース1.0」以降)のサブセットを現在のバージョンでは「iAP2」、以前のバージョンでは「iAP1」、または一般的に「iAP」と呼ばれる独自のプロトコルと一緒に用いた有線ユニバーサル・シリアル・バス(「ユニバーサル・シリアル・バス規格改定2.0」以降で規定されているUSB)接続を介し、「アクセサリ」(例えば、ヘッドホン、マイクロホン、および自動車のヘッドユニット)と通信することが知られている。USBオーディオクラスがオープンに文書化され、多くのオープンソース実装があり、ストリーミングオーディオとそのメタデータ関するiAPのサブセットが相対的に簡易なため、追加のオーディオレンダリングデバイスがオーディオストリーミングに参加できるようにし、Appleデバイスまたはアクセサリから開始されたユーザの介在を認識できるようにする目的で、Appleデバイスとアクセサリ間の通信を受動的に監視することが可能である。
【0020】
古いAppleアクセサリの実装(通常、iAP1を使用して)では、AppleデバイスはUSBの「周辺機器」の役割を果たし、アクセサリは「ホスト」の役割を果たす。より新しい実装(通常、iAP2を使用)では、「USB2.0仕様のOn‐The‐Go Supplement(補足)、改訂1.0a」以降で説明されているようにAppleデバイスが最初に周辺機器としてアクセサリに対して存在し、その後ホストに役割を切り替えることが可能である。そのような役割の切り替えは、適切に検出し、監視することができる。
【0021】
次に、
図2に示されるシステム10aについて詳細に説明し、その後
図3および4のシステム10bおよび10cについて、それぞれ、主に相違点に焦点を合わせて説明する。デバイス12は、区別が重要であり、バリエーションが指定されている場合を除き、12a、12b、もしくは12cのいずれかを指す。
【0022】
図2に示されるように、システム10aは、モバイルデバイス14、本発明の実施形態に係るデバイス12a、自動車のヘッドユニット16、およびポータブルスピーカ18を含む。
図2は、モバイルデバイス14がUSB‐Cポート20を介してデバイス12aに接続されたAppleデバイス(例えば、iPhone(登録商標)、iPad(登録商標)、iPod(登録商標)など)を含み、CarPlay(登録商標)が採用されていない状態を具体的に示している。デバイス12aは、USBポート22(すなわち、ケーブル線を使用)を介してヘッドユニット16にも接続されている。ポータブルスピーカ18は、音量の変更、一時停止、再生、および停止などのユーザの介在に応答し、トラックの位置、アーティスト、アルバム、およびトラック名などのストリーミングオーディオメタデータを認識できるように構成されることが好ましい。
【0023】
図示されているように、デバイス12は、マイクロコントローラ(MCU)24ならびにオーディオ遅延バッファ26およびRFトランスミッタを含むことが好ましい(より具体的には、RFトランスミッタは、ポータブルスピーカ18のRFトランシーバ30にRF信号を送信し、RFトランシーバ30からRF信号を受信するように構成されているRFトランシーバ28を含むことが好ましい)。
【0024】
図2に示されるように、デバイス12aのMCU24は、USBトラフィックフィルタ32、HID iAP1/iAP2プロトコルデコーダ34、およびアイソクロナスUSBオーディオデコーダ36を含むことが好ましい。
図2に示されるように、USBバスは、MCU24(USBホストの役割が可能)により監視される。具体的には、USBトラフィックフィルタ32は、モバイルデバイス14とヘッドユニット16との間のトラフィックを特定するように構成されている。
【0025】
アイソクロナスUSBオーディオデコーダ36は、USBオーディオクラストラフィックから信号を抽出し、その信号をオーディオ遅延バッファ26(適切な遅延を追加するように構成されている)に送信されるI2S信号に変換し、次にその信号はRFトランシーバ28に渡される。iAPトラフィックは、USBヒューマンインターフェースデバイス(HID)クラス(ヒューマンインターフェースデバイス(HID)バージョン1.11以降のデバイスクラス定義)から抽出され、プロトコルは、メタデータと接続情報(Apple制御データ)を監視するためにデコードされる。このデータは、UARTまたは他のデータ伝送などを介して、RFトランシーバ28に渡され、I2Cを介してオーディオ遅延バッファ26を構成するために利用される。
【0026】
ポータブルスピーカ18はRFレシーバを含む(より具体的には、RFトランスミッタは、RF信号をデバイス12から受信し、またRF信号をデバイス12に送信するように構成されているRFトランシーバ30を含むことが好ましい)。ポータブルスピーカ18は、自動車のスピーカを通してヘッドユニット16から発せられるオーディオと時間同期および音量同期されたオーディオを発する。
【0027】
ポータブルスピーカ18と、ヘッドユニット16によって駆動されるスピーカとの間のオーディオの同期は、最初に、ポータブルスピーカ18とデバイス12との間の無線リンクがUSBオーディオを受信するヘッドユニット16とヘッドユニット16に接続されているスピーカによりレンダリングされているオーディオとの間の遅延より小さい待ち時間を有することを確保することによって達成することが可能である。次に、デバイス12またはポータブルスピーカ18は、オーディオがポータブルスピーカ18によってレンダリングされる前に上乗せ分の遅延を追加できるように、設定可能なオーディオ遅延を提供する。ヘッドユニット16が受信するUSBオーディオとヘッドユニット16に接続されているスピーカによってレンダリングされているオーディオとの間の遅延は、iAPを介して、Appleアクセサリとしてヘッドユニット16により開示される。Appleデバイスが、Appleデバイス上の映像を遅延することによって、Appleデバイス上に表示される映像をアクセサリによりレンダリングされるオーディオに同期させることができるように、アクセサリは、この遅延を開示する必要がある。
【0028】
USBポート40に加えて、ヘッドユニット16は、そのいくつかが
図2に示されているその他の構成要素を含む(例えば、インフォテインメントプロセッサ42、増幅部(Amp)44、およびヘッドユニットにMade for iPhone(登録商標)(MFi)技術を効果的に装備するハードウェア46など)。
【0029】
図2は、モバイルデバイスがAppleデバイスでかつデバイスに有線接続されており、CarPlay(登録商標)が採用されていない状態を示すが、
図3および4は、モバイルデバイスがAppleデバイスでかつCarPlay(登録商標)が採用されている状態を示す。
図3は勇有線接続を示し、
図4は無線接続を示す。
図3および4にそれぞれ示されているデバイス12aおよび12bは同じであってもよい。デバイス12が無線接続で使用される場合は、デバイスは充電可能な蓄電池15を含むことが好ましい。
【0030】
Appleデバイスおよび自動車のヘッドユニットは、「CarPlay(登録商標)」として販売されている機能をサポートし、この機能では、Appleデバイス上のモバイルアプリケーションがオーディオ、映像、およびその他の様々なデータをヘッドユニットに通信し、Appleデバイスの画面とスピーカの代わりに、ヘッドユニットおよび接続されているスピーカをユーザインタフェースとして使用して、ユーザがAppleデバイス上で実行されているモバイルアプリケーションと対話することを可能にする。CarPlay(登録商標)は、前に述べたUSBオーディオクラスおよびiAPよりも複雑なプロトコルを使用する。
【0031】
CarPlay(登録商標)セッションは、最初はiAP2経由で確立されるが、USB、WLAN、またはその他の「伝送」経由で、インターネットプロトコル(IP)、伝送制御プロトコル(TCP)、およびユーザーデータグラムプロトコル(UDP)にすぐに切り替わる。IPアドレス割り当てとサービスの発見にはAppleの「Bonjour」が使用される。CarPlay(登録商標)セッションの制御では、RTSP(RFC 2326)を利用した制御チャネルがiAP2通信に取って代わる。線形パルス符号変調(LPCM)を利用するオーディオストリーム自体は暗号化されないが、制御チャネルは、ポータブルスピーカがストリーミングオーディオをレンダリングすることに参加し、ユーザの介在を認識し、ヘッドユニットに接続されているスピーカによりレンダリングされたオーディオに同期できるようにするために監視する必要があるデータ交換を含む。
【0032】
設計上、iAPは様々な伝送をサポートする。USB経由のiAPは、HIDクラスを介したバルクデータ伝送によってサポートされる。CarPlay(登録商標)がUSB経由のiAP2を介して確立される場合、CarPlay(登録商標)セッションは、USB経由のIPを使用する。iAPに対しもう一つのサポートされている伝送は、無線接続用のBLUETOOTH(登録商標)である。CarPlay(登録商標)がBLUETOOTH(登録商標)経由で確立されている場合、CarPlay(登録商標)セッションは、WLAN経由のIP、特にIEEE 802.11 n、ac、およびサポートされている場合はそれ以降の規格で規定された、「Wi‐Fi」のような市販されたものを使用する。
【0033】
CarPlay(登録商標)セッションの制御チャネルは、業界標準のプロトコルとベストプラクティスを用いて暗号化される。そこで、制御チャネルデータの対称暗号化に使用される鍵は、Diffle-Hellman鍵交換(US4200770A)、またはD.J.バーンスタインのCurve25519(〈https://cr.yp.to/ecdh.html〉で文書化および指定されている)や、その変形版を介してネゴシエートされるので、前述の「パススルー式Appleオーディオデコーダ」(
図2参照)は、交換されるすべてのトラフィックを監視しているにもかかわらず、鍵を確認することができない。RSA(US4405829A)もデジタル署名の検証に使用される。
【0034】
暗号化されたCarPlay(登録商標)制御チャネルを監視するには、コンピュータセキュリティで「中間者」とよく呼ばれるものが必要である。このシナリオでは(
図3では「有線式CarPlay(登録商標)インフォテインメントエミュレータとAppleデバイスエミュレータ」、
図4では「無線式CarPlay(登録商標)インフォテインメントエミュレータとAppleデバイスエミュレータ」として図示されている)、「インフォテインメントエミュレータ/Appleデバイスエミュレータ」12bまたは12cは、実際のAppleデバイス14に対して(ヘッドユニット16の代わりに)アクセサリとして、また実際のヘッドユニット16に対して(Appleデバイス14の代わりに)Appleデバイスとして存在する。CarPlay(登録商標)トラフィックは、MCU IE(インフォテインメントエミュレータ)49のCarPlay(登録商標)プロトコルデコーダ47から「MCU ADE」(Appleデバイスエミュレータ)53のCarPlay(登録商標)プロトコル対応デバイス51に中継される。CarPlay(登録商標)プロトコルデコーダ47は、すべてのトラフィックが暗号化されていないと認識するため、前述の「パススルー式Appleオーディオデコーダ」12aと同様に、LPCMオーディオデータ、ユーザの介在、および同期情報を抽出することができる。デコードされたCarPlay(登録商標)データから抽出されたオーディオデータは、I2S経由で設定可能なオーディオ遅延バッファ26を通した後RFトランシーバ28に送信される。Apple制御データは、UART経由でRFトランシーバ28に送信され、I2Cを介してオーディオ遅延バッファ26を構成するために使用される。すべてのCarPlay(登録商標)データもMCU IE49からMCU ADE53に送信される。このようにして、「有線式CarPlay(登録商標)インフォテインメントエミュレータおよびAppleデバイスエミュレータ」12bおよび「無線式CarPlay(登録商標)インフォテインメントエミュレータおよびAppleデバイスエミュレータ」12cにより、ポータブルスピーカ18は、ストリーミングオーディオのレンダリングに参加し、ユーザの介在を認識し、ヘッドユニット16に接続されているスピーカによってレンダリングされるオーディオに同期することができる。
【0035】
Appleは、「Made For iPod(登録商標)/iPhone(登録商標)/iPad(登録商標)」(MFi)プログラムへの登録を要求することで自社のデバイスに接続するアクセサリの品質を保証する。MFiプログラムは、Appleのアクセサリ仕様に準拠することおよびAppleのコンプライアンステスト手順に合格することを要求する。MFi準拠を実施するために、Appleデバイスは自身に接続するアクセサリ認証する。この認証は、iAP経由でのAppleデバイスによるアクセサリのチャレンジレスポンス署名認証の形式をとる。アクセサリは、X.509(国際電気通信連合の「標準化部門」によって規定されている)証明書(公開鍵)をAppleデバイスに送信する。Appleデバイスが証明書を受け入れると、Appleデバイスはアクセサリが署名する必要があるというチャレンジで応答する。アクセサリは署名を返す必要があり、Appleデバイスは以前に受信した証明書に従って署名を検証する。Appleによって分配され厳密に管理されている独自の特定用途向け集積回路(ASIC)を利用してアクセサリ上で暗号計算が行われる。
【0036】
iAP通信が確立された場合にMFi認証が行われる。Appleデバイス14がアクセサリ(すなわち、ヘッドユニット16)と直接通信するため、パススルー式Appleオーディオデコーダ12a(
図2参照)はMFi認証によって妨げられず、認証は正常に処理される。証明書、チャレンジ、および署名は、ユーザの介在およびメタデータに関連するUSB HID経由のUSBオーディオクラスデータまたはiAPトランザクションの後続の受動的な監視に対しては必要とされない。
【0037】
「有線式CarPlay(登録商標)インフォテインメントエミュレータおよびAppleデバイスエミュレータ」12bおよび「無線式CarPlay(登録商標)インフォテインメントエミュレータおよびAppleデバイスエミュレータ」12cのAppleデバイスエミュレータ53側は、アクセサリがAppleデバイスを認証する可能性があるため、MFi認証に合格する必要がある場合がある。エミュレートされたAppleデバイス53は、任意のアクセサリが認証に合格できるようにすることが可能であるが、Appleデバイス14の認証が望ましい場合がある。それでも、インフォテインメントエミュレータ49側は、Appleデバイス14と通信するために、MFi認証に合格する必要がある。有線実装と無線実装は両方ともMFiチップ50を利用してAppleデバイス14で認証し(すなわち、エミュレータ49が準拠していることをAppleデバイス14が保証する)、必要に応じてヘッドユニット16で認証し(すなわち、エミュレータ53が準拠していることをヘッドユニット16が保証する)、ならびに、必要に応じてAppleデバイス14を認証する(すなわち、Appleデバイス14が準拠していることをエミュレータ49が保証する)。
【0038】
図1乃至4に示されているように、ポータブルスピーカ18への接続は双方向であることが好ましく、これは情報がデバイス12とポータブルスピーカ18との間を行き来することを意味する。電源の状態、バッテリレベル、温度、音量レベル、内部オーディオの遅延などの状態情報は、ポータブルスピーカ18からデバイス12に送り返されてもよい。また、ポータブルスピーカ18には、音量および電源制御のために少なくとも3つのボタンが搭載されていてもよく、設定に関する情報がデバイス12に送り返されてもよい。自動車の環境において、ユーザは、ポータブルスピーカ18に搭載されているボタンを使用することは想定されていないが、そうであったとしても、ユーザはデバイス12と対話する必要があり、デバイス12は、ポータブルスピーカ18に搭載されているボタンを使用することがより実用的である場合がある非自動車シナリオで使用されてもよい。
【0039】
デバイス12は、ポータブルスピーカ18が低電力スタンバイ、ユーザの直接的なアクションでビジー(例えば、ポータブルスピーカ18での代替のオーディオ入力の選択や進行中のユーザ設定など)、電源オンまたはオフなどのどの状態にあるかを知るために、ポータブルスピーカ18からの状態情報を必要とする。また、例えば、デバイス12がポータブルスピーカのバッテリ低下、ポータブルスピーカ18のRFリンクの切断、ポータブルスピーカ18の過熱などのためのLEDインジケータを有し得るなど、ポータブルスピーカ18がユーザの介入を必要とする状態にあるかどうかをユーザに知らせるために、デバイス12上にいくつかのインジケータがあってもよい。
【0040】
ポータブルスピーカ18のボタンで実行できるいくつかの例としては、音量の上げ下げ、トラックの一時停止と再開、次のトラックへのスキップ、BLUETOOTH(登録商標)のペアリング、電源のオンとオフが挙げられる。ポータブルスピーカ18/デバイス12の接続に使用される正確なRFプロトコルに応じて、BLUETOOTH(登録商標)ペアリング用のボタンとは異なるRFプロトコルのペアリング用のボタンがあってもよい。
【0041】
接続が有線式であるか無線式であるかにかかわらず、またモバイルデバイスがApple製品であるか否かにかかわらず、本発明の実施形態に係るデバイスは、モバイルデバイスから信号を受信し、その信号を自動車のヘッドユニットに受け渡し、デバイスがモバイルデバイスから受信する信号から一部のオーディオ関連情報をフィルタリングして取り出してデコードし、そしてそのオーディオ関連情報をポータブルスピーカに渡す(遅延の有無にかかわらず)。
【0042】
Apple、BLUETOOTH(登録商標)、iPad(登録商標)、iPhone(登録商標)、iPod(登録商標)およびCarPlay(登録商標)は、すべてそれらの各所有者の登録商標である。Appleは電子機器のブランド、BLUETOOTH(登録商標)は特定の種類の無線接続、iPhone(登録商標)はスマートフォン、iPad(登録商標)はタブレット型パーソナルコンピュータ、iPod(登録商標)はポータブルメディアプレーヤであり、CarPlay(登録商標)は、ユーザがスマートフォンまたはタブレット型パーソナルコンピュータに接続し、ダッシュボードのメディアシステムを通じてどちらかのデバイス上の移動地図ナビゲーション機能を含む特定のアプリケーションを制御しかつ閲覧することを可能にする自動車上(および一部のアフターマーケットのカーステレオ)の機能である。
【0043】
本発明の具体的な実施形態を図示し説明してきたが、当業者であれば本発明の思想および範囲から逸脱することなく様々な変更を考案できることが考えられる。
【国際調査報告】