(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-05
(54)【発明の名称】ポリイミド共重合体及び膜、その調製方法及び利用、ならびにヘリウムを精製するためのシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
C08G 73/10 20060101AFI20240628BHJP
B01D 71/64 20060101ALI20240628BHJP
B01D 69/08 20060101ALI20240628BHJP
B01D 69/12 20060101ALI20240628BHJP
B01D 69/00 20060101ALI20240628BHJP
B01D 61/58 20060101ALI20240628BHJP
B01D 71/02 20060101ALI20240628BHJP
B01D 69/10 20060101ALI20240628BHJP
【FI】
C08G73/10
B01D71/64
B01D69/08
B01D69/12
B01D69/00
B01D61/58
B01D71/02 500
B01D69/10
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023579486
(86)(22)【出願日】2022-06-23
(85)【翻訳文提出日】2024-02-22
(86)【国際出願番号】 CN2022100611
(87)【国際公開番号】W WO2022268146
(87)【国際公開日】2022-12-29
(31)【優先権主張番号】202110699869.X
(32)【優先日】2021-06-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】202110866371.8
(32)【優先日】2021-07-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】202110864549.5
(32)【優先日】2021-07-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】503191287
【氏名又は名称】中国石油化工股▲ふん▼有限公司
(71)【出願人】
【識別番号】510016575
【氏名又は名称】中国石油化工股▲ふん▼有限公司北京化工研究院
【氏名又は名称原語表記】BEIJING RESEARCH INSTITUTE OF CHEMICAL INDUSTRY,CHINA PETROLEUM & CHEMICAL CORPORATION
【住所又は居所原語表記】NO.14,BEISANHUAN EAST ROAD,CHAOYANG DISTRICT,BEIJING 100013,CHINA
(71)【出願人】
【識別番号】509031567
【氏名又は名称】中国科学院過程工程研究所
【氏名又は名称原語表記】INSTITUTE OF PROCESS ENGINEERING,CHINESE ACADEMY OF SCIENCES
【住所又は居所原語表記】NO.1 Zhongguancun North Second Street,Haidian District Beijing 100190,P.R.China
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】呉長江
(72)【発明者】
【氏名】張鎖江
(72)【発明者】
【氏名】魏▲シン▼
(72)【発明者】
【氏名】▲リ▼和生
(72)【発明者】
【氏名】羅双江
(72)【発明者】
【氏名】王玉傑
(72)【発明者】
【氏名】張新妙
(72)【発明者】
【氏名】丁黎明
(72)【発明者】
【氏名】孟凡寧
(72)【発明者】
【氏名】▲シ▼仁傑
(72)【発明者】
【氏名】徐一瀟
【テーマコード(参考)】
4D006
4J043
【Fターム(参考)】
4D006GA41
4D006HA01
4D006KA53
4D006KA55
4D006KA56
4D006KA57
4D006MA06
4D006MA21
4D006MA31
4D006MC02X
4D006MC03
4D006MC58X
4D006NA04
4D006NA10
4D006PB01
4D006PB18
4D006PB70
4J043PA04
4J043PA08
4J043QB15
4J043QB26
4J043QB31
4J043RA35
4J043RA39
4J043SA06
4J043SA47
4J043SB01
4J043TA22
4J043TA71
4J043TB03
4J043UA082
4J043UA121
4J043UA132
4J043UA162
4J043UA171
4J043UA231
4J043UA232
4J043UA262
4J043UA632
4J043UA672
4J043UB062
4J043UB122
4J043UB131
4J043UB132
4J043UB152
4J043VA012
4J043VA022
4J043VA031
4J043VA041
4J043VA051
4J043VA052
4J043XA04
4J043XA16
4J043YA08
4J043YA25
4J043ZA23
4J043ZB13
4J043ZB15
(57)【要約】
本願は、式(I)で表される構造を有するポリイミドランダム共重合体に関する。本願はまた、ポリイミドランダム共重合体の調製方法、ポリイミドランダム共重合体からなる膜、及びポリイミド系中空糸膜の調製方法に関する。本願はさらに、ヘリウムを精製するためのシステムおよびヘリウムを精製するための方法に関する。
【化1】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)で表される構造を有することを特徴とするポリイミドランダム共重合体:
【化1】
式(I)中、m及びnは、それぞれ独立して、10~2000の整数である;
Xは、式(X3)及び(X4)からなる群から選択されるいずれか1つである;
【化2】
式(X3)及び式(X4)中、R
5、R
6、R
9及びR
10は、それぞれ独立して、H、任意選択で置換されたC1-C4アルキル基、又は任意選択で置換されたC6-C10アリール基である;
Yは、式(Y1)、(Y3)、(Y4)及びイプチセン基本構造からなる群から選択されるいずれか1つである;
【化3】
式(Y1)及び(Y3)中、R
7、R
8、R
11、R
12、R
13、及びR
14は、それぞれ独立して、H、任意選択で置換されたC1-C4アルキル基、又は任意選択で置換されたC6-C10アリール基である;
Z並びにZ’は、それぞれ独立して、イプチセン基本構造、及び任意選択で置換された式(Z1)からなる群から選択される。
【化4】
【請求項2】
m及びnは、それぞれ独立して、50~1000の整数であり;及び/又は、
0.95≧n/(m+n)≧0.5、好ましくは0.9≧n/(m+n)≧0.6である、請求項1に記載の共重合体。
【請求項3】
前記イプチセン基本構造は、トリプチセン基本構造及びペンチプチセン基本構造からなる群から選択され;好ましくは、Yとしての前記イプチセン基本構造は、式(Y5)であり、並びに/又は、Z及びZ’としての前記イプチセン基本構造は、それぞれ独立して式(Z2)である、請求項1または2に記載の共重合体:
【化5】
式(Y5)中、R
15及びR
16は、それぞれ独立して、H、任意選択で置換されたC1-C4アルキル基、又は任意選択で置換されたC6-C10アリール基である;及び
式(Z2)中、Ra及びRbは、それぞれ独立して、H、C1-C4アルキル基、又はC1-C4ハロアルキル基である。
【請求項4】
Xは、以下に示す構造からなる群より選択されるいずれか1つであり;及び/又は、
【化6】
Yは、以下に示す構造からなる群より選択されるいずれか1つであり;及び/又は、
【化7】
Z並びにZ’は、それぞれ独立して、Z1又はZ3で表される構造から選択される、
【化8】
請求項1~3のいずれか1項に記載の共重合体。
【請求項5】
XはXbであり、YはYaであり、Z及びZ’は共にZ1である;
又は、XはXbであり、YはYdであり、Z及びZ’は共にZ1である;
又は、XはXcであり、YはYaであり、Z及びZ’は共にZ1である;
又は、XはXcであり、YはYcであり、Z及びZ’は共にZ1である;
又は、XはXcであり、YはY4であり、Z及びZ’は共にZ1である;
又は、XはXcであり、YはYdであり、Z及びZ’は共にZ1である;
又は、XはXbであり、YはYaであり、Z及びZ’は共にZ3である;
又は、XはXbであり、YはYdであり、Z及びZ’は共にZ3である;
又は、XはXcであり、YはYaであり、Z及びZ’は共にZ3である;
又は、XはXcであり、YはYdであり、Z及びZ’は共にZ3である、請求項4に記載の共重合体。
【請求項6】
請求項1~5の何れか1項に記載のポリイミドランダム共重合体を調製する方法であって、該方法が以下の工程を含むことを特徴とする方法:
(1)第1の溶媒の存在下、式(II)で表される二無水物モノマー及び式(III)で表される二無水物モノマーを含む混合物とジアミンモノマーとを混合し、縮合重合反応を行い、ポリ(アミド酸)を得る;
【化9】
(2)ステップ(1)で得られたポリ(アミド酸)をイミド化し、ポリイミドランダム共重合体を得る。
【請求項7】
請求項1~5の何れか1項に記載のポリイミドランダム共重合体からなることを特徴とする膜。
【請求項8】
前記膜が、分離膜、好ましくはガス分離膜である、請求項7に記載の膜。
【請求項9】
前記膜が、中空糸膜であり、好ましくは、前記中空糸膜は、支持層と、前記支持層の外面に付着した緻密層とを含み;好ましくは、前記緻密層の厚さは1000nm以下であり、前記中空糸膜の空孔率は40~80%であり;より好ましくは、前記緻密層の厚さは100~500nmであり、前記中空糸膜の空孔率は50~70%である、請求項7または8に記載の膜。
【請求項10】
ガス分離における、請求項1~5の何れか1項に記載のポリイミドランダム共重合体、又は請求項7~9のいずれか1項に記載の膜の使用。
【請求項11】
ポリイミド系中空糸膜の調製方法であって、以下の工程を含むことを特徴とする方法:
(1)請求項1~5の何れか1項に記載のポリイミドを含むキャスト液を調製する工程;
(2)ボア液及び前記キャスト液を押し出し、固化して中空糸膜前駆体を得る工程;
(3)前記中空糸膜前駆体を巻き取り及び抽出し、ポリイミド系中空糸膜を得る工程。
【請求項12】
請求項11に記載のポリイミド系中空糸膜の調製方法であって、以下の工程を含むことを特徴とするポリイミド系中空糸膜の調製方法:
(1)前記ポリイミド、希釈剤、及び任意の添加剤を含むキャスト液を調製する工程であって、前記希釈剤が、前記ポリイミドに対する良溶媒、前記ポリイミドに対する第1の貧溶媒、及び前記ポリイミドに対する第2の貧溶媒を含み、前記ポリイミドに対する前記第1の貧溶媒の沸点B1が、前記ポリイミドに対する前記第2の貧溶媒の沸点B2よりも高い工程;
(2)ボア液及び前記キャスト液を温度Tで押し出し、固化して中空糸膜前駆体を得る工程であって、B2≦T<B1である工程;
(3)前記中空糸膜前駆体を巻き取り及び抽出し、ポリイミド系中空糸膜を得る工程。
【請求項13】
前記工程(1)において、前記キャスト液の総重量を基準に、前記ポリイミドの含有量は20~40重量%であり、前記希釈剤の含有量は50~75重量%であり、前記添加剤の含有量は、存在する場合、0.5~10重量%である;好ましくは、前記キャスト液の総重量を基準に、前記ポリイミドの含有量は25~35重量%であり、前記希釈剤の含有量は60~70重量%であり、前記添加剤の含有量は、存在する場合、1~5重量%である;及び/又は、
ここで、前記ポリイミドに対する前記第1の貧溶媒の前記沸点B1は、前記ポリイミドに対する前記第2の貧溶媒の前記沸点B2よりも5~200℃高く、好ましくは10~20℃高い;及び/又は、
前記ポリイミドに対する前記第1の貧溶媒は、C2~C4飽和一価アルコール、γ-ブチロラクトン、水、及びそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1つである;及び/又は、
前記ポリイミドに対する前記第2の貧溶媒は、C3~C5アルカン、テトラヒドロフラン、アセトン、クロロホルム、及びそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1つである;及び/又は、
前記ポリイミドに対する前記良溶媒は、N-メチル-2-ピロリドン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、及びそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1つである;及び/又は、
前記ポリイミドに対する前記良溶媒、前記ポリイミドに対する前記第1の貧溶媒、及び前記ポリイミドに対する前記第2の貧溶媒の重量比は、1:(0.001~0.5):(0.1~0.5)、好ましくは1:(0.15~0.3):(0.15~0.3)である;及び/又は、
ここで、前記添加剤はリチウム塩であり、好ましくは硝酸リチウム及び/又は塩化リチウムから選択される;及び/又は、
ここで、前記工程(1)において、前記キャスト液は、以下のステップを含む方法に従って調製される:前記ポリイミド、前記希釈剤及び前記任意の添加剤を20~50℃及び100~1200r/分で12~48時間撹拌し、次いで、真空脱気し、濾過により不純物を除去する;好ましくは、前記真空脱気の条件は、-0.1MPa~-0.095MPaの圧力、20~30℃の温度、10~50r/分の回転速度、及び12~24時間の期間を含む;及び/又は、
前記工程(2)において、前記ボア液は、溶媒A及び溶媒Bを含み、前記溶媒Aは、N-メチル-2-ピロリドン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、及びそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1つであり、前記溶媒Bは、C1-C4飽和一価アルコール、γ-ブチロラクトン、水、及びそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1つである;好ましくは、上記溶媒Aは、前記ボア液の総重量の50~99重量%、好ましくは60~95重量%を占める;及び/又は、
前記押し出しは紡糸口金で行われ、押し出し温度は40~75℃、好ましくは60~70℃である;及び/又は、
前記押し出しのプロセス中、前記キャスト液の流量は6~30mL/分である;及び/又は、
前記押し出しのプロセス中、上記ボア液の流量は2~10mL/分である;及び/又は、
前記固化の前に、前記押し出しにより得られた前記中空糸をエアギャップに通過させる;好ましくは、前記エアギャップの高さは5~30cmである;好ましくは、前記エアギャップは環状スリーブによって加熱され、好ましくは、50~150℃に温度制御される;及び/又は、
前記固化は、凝固浴中で行われ;好ましくは、前記凝固浴に使用される浴液は、溶媒C及び/又は水であり、前記凝固浴の温度は、40~70℃であり;好ましくは、前記溶媒Cは、C1-C4飽和一価アルコール、γ-ブチロラクトン、水、及びそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1つであり;及び/又は、
ここで、前記工程(3)において、前記巻取りの速度は0.5~2m/sである;及び/又は、
前記抽出に使用される抽出剤は、水、C1-C4飽和一価アルコール、C5-C7アルカン、及びそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1つである;及び/又は、
前記抽出の条件は、20~35℃の温度、及び3~48時間の期間を含み;及び/又は、
さらに、前記抽出後に乾燥工程を含み;好ましくは、前記乾燥の条件は、20~35℃の温度、2~15時間の期間を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
ヘリウムガスを精製するためのシステムであって、
触媒脱水素分離ユニット、高分子膜分離ユニット、及びパラジウム膜分離ユニットを含み;前記高分子膜分離ユニットは、請求項7~9のいずれか1項に記載の膜を含むことを特徴とする、システム。
【請求項15】
前記触媒脱水素分離ユニットは、触媒酸化装置と吸着装置とを含む、請求項14に記載のヘリウムガス精製システム。
【請求項16】
ヘリウムガスを精製する方法であって、ヘリウムガスを含む原料ガスを、触媒脱水素分離、高分子膜分離、及びパラジウム膜脱水素分離に順次供して精製ヘリウムガスを得ることを含み、前記高分子膜分離は、請求項7~9のいずれか1項に記載の膜を使用することを含むことを特徴とする方法。
【請求項17】
前記原料ガスは、天然ガス、シェールガス、ヘリウムリッチ水素含有ガス、及び液化天然ガスボイルオフガス(BOG)からなる群から選択される少なくとも1つである;及び/又は、
ここで、前記触媒脱水素分離は、触媒酸化及び吸着を含み、前記触媒酸化に使用される触媒は、Pt、Pd、Rh、Ru、Au及びそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1つの貴金属触媒である;及び/又は
前記触媒酸化の条件は:40~150℃、好ましくは50~120℃の温度;及び1~10000m
3/m
3・h、好ましくは10~1000m
3/m
3・hの原料ガスの空間速度がを含み;好ましくは、前記触媒酸化の条件は、前記原料ガス中の水素の90~99体積%がH
2Oに変換される条件である;好ましくは、前記吸着の方式はアルカリ吸着であり;好ましくは、前記吸着のための吸着剤は、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、生石灰、ソーダ石灰、及びそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1つであり;好ましくは、前記吸着の条件は、70~90℃の吸着温度を含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記高分子膜分離は、一段分離または多段分離を採用する、;及び/又は、
前記高分子膜分離の条件は、前記高分子膜分離を行う前に、前記触媒脱水素分離により得られたガスの圧力を0.01~50MPaに制御し、当該ガスの温度を20~100℃に制御することを含む、請求項16~17の何れか1項に記載の方法。
【請求項19】
前記パラジウム膜脱水素分離の条件は、パラジウム膜脱水素分離を行う前に、前記高分子膜分離により得られたガスの温度を50~500℃、好ましくは200~500℃に制御すること;及び当該ガスの圧力を1~50MPa、好ましくは2~20MPaに制御することを含む、請求項16~18の何れか1項に記載の方法。
【請求項20】
前記パラジウム膜脱水素分離に使用されるパラジウム膜の厚さが5~100μmである;及び/又は、
前記パラジウム膜は、管状膜又は多孔性支持体複合膜であり、好ましくは、前記多孔性支持体複合膜の多孔性支持体は、多孔性セラミックス、及び多孔性ステンレス鋼からなる群から選択される1つである;及び/又は、
前記パラジウム膜は、純パラジウム膜又はパラジウム系合金膜であり;好ましくは、前記パラジウム系合金膜は、パラジウム-イットリウム合金膜、パラジウム-セリウム合金膜、パラジウム-銅合金膜、パラジウム-金合金膜、パラジウム-ニッケル合金膜及びパラジウム-銀合金膜からなる群から選択される少なくとも1つである、請求項16~19の何れか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
〔技術分野〕
本願は、ポリイミド共重合体及びその調製方法に関する。
【0002】
本願はまた、ポリイミド共重合体からなる膜、当該膜の調製方法、当該膜を用いたガス分離方法、及びガス分離のための当該膜の利用に関する。
【0003】
本願はまた、ヘリウムガスを精製するシステム及び方法に関する。
【0004】
〔背景〕
ガス膜分離は「グリーンテクノロジー」である。吸着、吸収、低温分離などの従来の分離技術に比べ、膜分離技術は分離効率が高く、エネルギー消費が少なく、操作が簡単であるなどの利点がある。膜分離技術は、未来のガス分離の主流技術である。膜分離技術は、天然ガスのヘリウム除去、水素精製、脱炭素などの分野で幅広い応用が期待されている。
【0005】
ポリイミドは高い透過性と選択性とを併せ持ち、理想的なガス分離膜材料である。ポリイミドの分離膜への利用はある程度進んでいるが、より優れた透過性及び/または選択性を持ち、熱安定性、機械的安定性、化学的安定性、及び/または膜形成特性に優れたポリイミド材料を求めることは、依然として興味深い焦点である。
【0006】
ヘリウムは、その非常に安定した化学的性質と、非常に強い拡散性、優れた熱伝導性、低い溶解性、および低い気化潜熱といった特殊な特性とから、非常に重要な工業用ガスである。そのユニークな特性により、ヘリウムは、極低温学、航空宇宙産業、電子産業、生物医学、原子力施設などの分野で広く使用されている。現在のヘリウムの精製および精錬プロセスは極低温プロセスである。天然ガスからヘリウムを抽出する極低温プロセスには、厳しい設備設計及び製造要件、高い建設費及び運転費、設備の巨大化、高いエネルギー消費などの問題がある。そのため、技術者たちは、ヘリウムを精製するための新しいシステムおよび新しいプロセスを常に模索している。
【0007】
〔発明の内容〕
本願は、ポリイミドランダム共重合体(ランダムコポリイミド)を提供する。本発明により提供されるポリイミドランダム共重合体は、良好な透過性及び選択性を有する。
【0008】
本発明の第1の態様は、式(I)で表される構造を有するポリイミドランダム共重合体を提供する:
【0009】
【0010】
式(I)中、m及びnは、それぞれ独立して、10~2000の整数である;
Xは、式(X3)及び(X4)からなる群から選択されるいずれか1つである;
【0011】
【0012】
式(X3)及び式(X4)中、R5、R6、R9及びR10は、それぞれ独立して、H、任意選択で置換されたC1-C4アルキル基、または任意選択で置換されたC6-C10アリール基である;
Yは、式(Y1)、(Y3)、(Y4)及びイプチセン基本構造からなる群から選択されるいずれか1つである;
【0013】
【0014】
式(Y1)及び(Y3)中、R7、R8、R11、R12、R13、及びR14は、それぞれ独立して、H、任意選択で置換されたC1-C4アルキル基、又は任意選択で置換されたC6-C10アリール基である;
Z並びにZ’は、それぞれ独立して、イプチセン基本構造、及び任意選択で置換された式(Z1)からなる群から選択される。
【0015】
【0016】
本発明の第2の態様は、第1の態様のポリイミドランダム共重合体を調製する方法を提供し、該方法は以下の工程を含む:
(1)第1の溶媒の存在下、式(II)で表される二無水物モノマー及び式(III)で表される二無水物モノマーを含む混合物とジアミンモノマーとを混合し、縮合重合反応を行い、ポリ(アミド酸)を得る;
【0017】
【0018】
(2)ステップ(1)で得られたポリ(アミド酸)をイミド化し、ポリイミドランダム共重合体を得る。
【0019】
第2の態様において、前記X及びYは、第1の態様において定義された通りであり、前記ジアミンモノマーは、NH2-Z-NH2及びNH2-Z’-NH2に相当し、ここでZ及びZ’は、第1の態様において定義された通りである。
【0020】
本発明の第3の態様は、第2の態様に記載の方法により調製されたポリイミドランダム共重合体を提供する。
【0021】
本発明の第4の態様は、第1の態様のポリイミドランダム共重合体から調製された膜を提供する。いくつかの実施形態によれば、前記膜は分離膜、好ましくはガス分離膜である。いくつかの好ましい実施形態によれば、前記膜は、中空糸膜である。
【0022】
本発明の第5の態様は、ガス分離における、第1若しくは第3の態様に記載のポリイミドランダム共重合体、又は第4の態様に記載の膜の使用を提供する。
【0023】
本発明の第6の態様は、ポリイミド系中空糸膜の調製方法を提供し、該方法は以下の工程を含む:
(1)第1又は第3の態様のポリイミドを含むキャスト液を調製する工程;
(2)前記キャスト液及びボア液を押し出し、固化して中空糸膜前駆体を得る工程;
(3)前記中空糸膜前駆体を巻き取り及び抽出し、ポリイミド系中空糸膜を得る工程。
【0024】
本発明の第7の態様は、ヘリウムガスを精製するためのシステムを提供し、該システムは、触媒脱水素分離ユニット、高分子膜分離ユニット、及びパラジウム膜分離ユニットを含む。好ましくは、前記触媒脱水素分離ユニットは、触媒酸化装置と吸着装置とを含む。いくつかの実施形態によれば、高分子膜分離ユニットは、本発明の第4の態様の膜を備える。
【0025】
本発明の第8の態様は、ヘリウムガスを精製する方法を提供し、該方法は、原料ガスを、触媒脱水素分離、ポリマー膜分離、及びパラジウム膜脱水素分離に順次供して精製ヘリウムガスを得ることを含む。いくつかの実施形態によれば、高分子膜分離は、本発明の第4の態様の膜の使用を含む。
【0026】
本発明は、特定の構造を有する2つの二無水物と特定の構造を有するジアミンとをモノマーとして縮合重合することにより得られるポリイミドランダム共重合体を提供する。驚くべきことに、本発明のポリイミドにおける構造単位の選択は、本発明のポリイミド共重合体から調製される膜(例えば中空糸膜)に、特にHe及び/又はH2に対する優れたガス透過特性及び/又は選択性を付与することが見出された。さらに、本発明のポリイミドランダム共重合体は、熱安定性、機械的安定性、化学的安定性、及び膜形成性を含む他の良好な特性を有する。
【0027】
本発明により提供されるポリイミド系中空糸膜は、薄い緻密層(分離層)と、スポンジ状の細孔構造を有する支持層とを有する。高い気孔率を有する支持層、及び薄い分離層は、膜の抵抗を効果的に低減し、透過率を高めることができる。また、ポリイミド系中空糸膜は、圧縮強度などの機械的強度が高い。本発明により提供される中空糸膜の調製方法においては、二峰性の孔径分布を得ることができ、それによりガス分子の精密なスクリーニングを達成することができる。本発明において、非対称極薄ポリイミド中空糸膜は、ドライジェット湿式紡糸相反転法により調製され、その緻密層の厚さは1μm以下に制御可能であり、支持層は高い空孔率を有する。本発明によって提供される中空糸膜は、限定されないがCO2及びCH4、O2及びN2、He及びN2、He及びCH4、CO2及びN2、He及びCO2、H2及びN2、H2及びCH4、H2及びCO2分離などを含む混合ガスの分離に適しており、好ましくは、ヘリウム又は水素の精製に適している。
【0028】
高分子膜分離技術に触媒酸化脱水素プロセス及びパラジウム膜分離プロセスを組み合わせることによって、本発明は、天然ガス、シェールガス、多段ボイルオフガス等を原料ガスとして用いることにより高純度ヘリウムガス(5N級又は6N級ヘリウムガス)を調製することができる。本発明のヘリウム精製方法は、まず、原料ガス中の水素を触媒酸化およびアルカリ吸着乾燥工程による吸着によりH2O等に変換して予備的に水素を除去し、次いで、一段又は多段の高分子膜分離プロセスを用いてヘリウムを精製して粗ヘリウムを得、得られた粗ヘリウムガスをパラジウム膜脱水素分離に供して微量の水素を除去し、ヘリウムガスをさらに超高純度グレードに精製することを含む。本発明のヘリウム精製方法は、温和な温度及び圧力条件下で、ヘリウムを5N級又は6N級に精製することができ、ヘリウム精製手順におけるエネルギー消費及び設備要件が低減され、ヘリウム調製工程が簡素化され、経済的であり、連続的かつ安定的である。
【0029】
〔図面の説明〕
図1は、調製例2で調製したポリイミドランダム共重合体の赤外線スペクトルである;
図2は、調製例3で調製したポリイミドランダム共重合体の赤外線スペクトルである;
図3は、調製例4で調製したポリイミドランダム共重合体の赤外線スペクトルである;
図4は、中空糸膜作製例2で作製したポリイミド系中空糸膜の断面走査型電子顕微鏡像である;
図5は、中空糸膜作製例3で作製したポリイミド系中空糸膜の断面走査型電子顕微鏡像である;
図6は、中空糸膜調製例12で調製したポリイミド系中空糸膜の断面走査型電子顕微鏡像である;
図7は、比較中空糸膜作製例S2で作製したポリイミド系中空糸膜の断面走査型電子顕微鏡像である;
図8は、中空糸膜調製例1で調製したポリイミド系中空糸膜の
1H NMRスペクトルである;
図9は、調製例4及び調製例10のポリイミド共重合体から調製した平坦な均質膜の孔径分布であり、点で表した曲線が調製例10であり、四角で表した曲線が調製例4である。
【0030】
〔発明の実施の形態〕
本明細書で開示される範囲の終点及び任意の値は、正確な範囲又は値に限定されず、これらの範囲又は値は、当該範囲又は値の近傍の値を含むと理解される。数値範囲については、様々な範囲の終点値、様々な範囲の終点値及び個々の点値、並びに個々の点値を互いに組み合わせて、1つまたは複数の新しい数値範囲を得ることができ、これらの数値範囲は、本明細書に具体的に開示されているとみなされるものとする。
【0031】
本発明において「室温」とは、約20℃から約25℃までを意味する。
【0032】
本発明において、特に断りのない限り、記載されている圧力はゲージ圧である。
【0033】
本発明において、「及び/又は」という用語は、「及び」及び「又は」を包含する。「及び/又は」で修飾された要素は、任意の1つ及びその任意の組み合わせを包含することを意図している。例えば、A及び/又はBは、A、B、及びA+Bを包含する。A、B及び/又はCは、A、B、C、A+B、A+C、B+C、及びA+B+Cを包含する。
【0034】
本発明において、「C1-C4アルキル基」には、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、及びtert-ブチルが含まれる。「C6-C10アリール基」には、フェニル、トリル、(o-、m-、p-)キシリル、エチルフェニル、メチルエチルフェニル、プロピルフェニル、ブチルフェニル等が含まれる。C1-C4アルキル基は、ハロゲンから選択される置換基で任意に置換されていてもよい。ハロゲンは、例えば、フッ素、塩素、臭素及びヨウ素から選択され、好ましくはフッ素及び塩素から選択される。C6-C10アリール基は、ハロゲンから選択される置換基で任意に置換されていてもよい。ハロゲンは、例えば、フッ素、塩素、臭素及びヨウ素から選択され、好ましくはフッ素及び塩素から選択される。「C1-C4ハロアルキル」には、フッ素、塩素及び臭素から選択される1つまたは複数のハロゲンで置換されたC1-C4アルキルが含まれ、ここで、上記C1-C4アルキルは、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、tert-ブチルを含む;「C1-C4ハロアルキル」には、特に限定されないが、例えば、モノフルオロメチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、モノフルオロエチル、ジフルオロエチル、トリフルオロエチル、モノクロロメチル、ジクロロメチル、トリクロロメチル等が含まれる。「C1-C4飽和一価アルコール」には、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、及びイソブタノールが含まれる。「C3-C5アルカン」には、限定されないが、例えば、n-プロパン、イソプロパン、n-ブタン、イソブタン、n-ペンタン、イソペンタン、ネオペンタンを含む、炭素原子数3~5の直鎖状及び分枝状アルカン;又はシクロプロパン、シクロブタン、およびシクロペンタンなどのシクロアルカンが含まれる。「C5-C7アルカン」には、限定されないが、例えば、n-ペンタン、イソペンタン、ネオペンタン、n-ヘキサン、イソヘキサン、n-ヘプタン、及びイソヘプタンを含む、5~7個の炭素原子を有する直鎖状及び分枝状アルカン;又はシクロペンタン、シクロヘキサン、およびシクロヘプタンなどのシクロアルカンが含まれる。
【0035】
本発明の第一の態様は、式(I)で表される構造を有するポリイミドランダム共重合体を提供する:
【0036】
【0037】
式(I)中、m及びnは、それぞれ独立して、10~2000の整数である;
Xは、式(X3)及び(X4)からなる群から選択されるいずれか1つである;
【0038】
【0039】
式(X3)及び式(X4)中、R5、R6、R9及びR10は、それぞれ独立して、H、任意選択で置換されたC1-C4アルキル基、又は任意選択で置換されたC6-C10アリール基である;
Yは、式(Y1)、(Y3)、(Y4)及びイプチセン基本構造からなる群から選択されるいずれか1つである;
【0040】
【0041】
式(Y1)及び(Y3)中、R7、R8、R11、R12、R13、及びR14は、それぞれ独立して、H、任意選択で置換されたC1-C4アルキル基、又は任意選択で置換されたC6-C10アリール基である;
Z並びにZ’は、それぞれ独立して、イプチセン基本構造、及び任意選択で置換された式(Z1)からなる群から選択される。
【0042】
【0043】
本発明のいくつかの実施形態によれば、m及びnは、それぞれ独立して、50~1000の整数であってもよい。
【0044】
本発明のいくつかの実施形態によれば、m及びnは、0.95≧n/(m+n)≧0.3、好ましくは0.9≧n/(m+n)≧0.3、より好ましくは0.7≧n/(m+n)≧0.5と定義される。
【0045】
本発明のいくつかの好ましい実施形態によれば、m及びnは、0.95≧n/(m+n)≧0.5、好ましくは0.9≧n/(m+n)≧0.6と定義される。
【0046】
本発明のいくつかの実施形態によれば、前記イプチセン基本構造は、トリプチセン基本構造又はペンチプチセン基本構造からなる群から選択される。好ましくは、Yとしての前記イプチセン基本構造は、式(Y5)であり、並びに/又は、Z及びZ’としての前記イプチセン基本構造は、それぞれ独立して(Z2)である:
【0047】
【0048】
ここで、R15及びR16は、それぞれ独立して、H、任意選択で置換されたC1-C4アルキル基、又は任意選択で置換されたC6-C10アリール基であり;Ra及びRbは、それぞれ独立して、H、C1-C4アルキル基、又はC1-C4ハロアルキル基である。
【0049】
本発明において、「任意選択で置換されたC1-C4アルキル基」とは、1個以上のハロゲン置換基により任意選択で置換された「C1-C4アルキル基」である。「任意選択で置換されたC6-C10アリール基」は、ハロゲン及びC1-C4アルコキシからなる群より選択される1以上の置換基により任意選択で置換された「C6-C10アリール基」である。「任意選択で置換された式(Z1)」は、ハロゲン、C1-C4アルキル及びC1-C4アルコキシからなる群より選択される1つ以上の置換基により任意選択で置換された「式(Z1)」である。ハロゲンは、例えば、フッ素、塩素、臭素及びヨウ素から選択され、好ましくはフッ素及び塩素から選択される。C1-C4アルコキシは、例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシ及びブトキシからなる群から選択される。
【0050】
本発明のいくつかの実施形態によれば、Z及びZ’は同じである。
【0051】
本発明のいくつかの実施形態によれば、Xは、以下に示す構造からなる群より選択されるいずれか1つであり;及び/又は、
【0052】
【0053】
Yは、以下に示す構造からなる群より選択されるいずれか1つであり;及び/又は、
【0054】
【0055】
Z並びにZ’は、それぞれ独立して、Z1又はZ3で表される構造から選択される、
【0056】
【0057】
本発明に記載の構造式において、「-」は他の部分との接続位置を表す。
【0058】
本発明のいくつかの好ましい実施形態によれば、
XはXbであり、YはYaであり、Z及びZ’は共にZ1である;
又は、XはXbであり、YはYdであり、Z及びZ’は共にZ1である;
又は、XはXcであり、YはYaであり、Z及びZ’は共にZ1である;
又は、XはXcであり、YはYcであり、Z及びZ’は共にZ1である;
又は、XはXcであり、YはY4であり、Z及びZ’は共にZ1である;
又は、XはXcであり、YはYdであり、Z及びZ’は共にZ1である;
又は、XはXbであり、YはYaであり、Z及びZ’は共にZ3である;
又は、XはXbであり、YはYdであり、Z及びZ’は共にZ3である;
又は、XはXcであり、YはYaであり、Z及びZ’は共にZ3である;
又は、XはXcであり、YはYdであり、Z及びZ’は共にZ3である。
【0059】
本発明の好ましい実施形態によれば、X、Y、Z及びZ’の各々は特定の構造を有するが、本発明は、Xが2つの異なる構造を表し、Yが2つ、3つ又は4つの異なる構造を表し、Zが2つの異なる構造を表し、及び/又はZ’が2つの異なる構造を表すことを排除するものではない。
【0060】
本発明はまた、ポリイミドランダム共重合体を調製する方法に関する。この方法は、二無水物モノマー(下記式(II)で表される二無水物及び式(III)で表される二無水物)とジアミンモノマーとがまず縮合重合反応を起こしてポリ(アミド酸)を得、次いでこのポリ(アミド酸)をイミド化(分子内脱水)する原理に基づく。ポリイミド重合体を調製するためのこの一般的なプロセスは当技術分野で知られている。本発明の方法は、二無水物モノマーとジアミンモノマーとが縮合重合反応を起こしてポリ(アミド酸)を得るワンポットプロセス(すなわち、すべてのモノマーを反応器中で直接混合して反応させる)で実施することができる、あるいは、まず二無水物モノマー(すなわち、式(II)で表される二無水物及び式(III)で表される二無水物)を混合(好ましくは均一に混合)し、次いで当該二無水物モノマー混合物とジアミンモノマーとを混合して縮合重合反応を行うことにより実施することができる。反応の進行をよりよく制御するためには、後者の方法で反応を行うことが好ましい。
【0061】
本発明の第2の態様は、本発明のポリイミドランダム共重合体を調製する方法を提供し、該方法は以下の工程を含む:
(1)第1の溶媒の存在下、式(II)で表される二無水物モノマー及び式(III)で表される二無水物モノマーを含む混合物とジアミンモノマーとを混合し、縮合重合反応を行い、ポリ(アミド酸)を得る;
【0062】
【0063】
(2)ステップ(1)で得られたポリ(アミド酸)をイミド化し、ポリイミドランダム共重合体を得る。
【0064】
当業者に理解されるように、式(II)で表される二無水物モノマーのXは、本願の式(I)で表される構造のXに対応し、式(III)で表される二無水物モノマーのYは、本願の式(I)で表される構造のYに対応し、ジアミンモノマーは、式NH2-Z-NH2及び/又はNH2-Z’-NH2を有し、ここで、NH2-Z-NH2のZは式(I)で表される構造中のZに対応し、NH2-Z’-NH2のZ’は式(I)で表される構造中のZ’に対応する。
【0065】
上記方法において、X、Y、並びに、Z及びZ’は、それぞれ、上記第1の態様において定義されたとおりであってよい。
【0066】
本発明のいくつかの実施形態によれば、式(II)で表される二無水物モノマー及び式(III)で表される二無水物モノマーのモル量は、それぞれ、M及びNとして定義される。
【0067】
本発明のいくつかの好ましい実施形態によれば、M及びNは、0.95≧N/(M+N)≧0.5、好ましくは、0.9≧N/(M+N)≧0.6と定義される。
【0068】
本発明のいくつかの実施形態によれば、式(II)で表される二無水物モノマー及び式(III)で表される二無水物モノマーの合計モル量の、ジアミンモノマーのモル量に対するモル比は、1:(0.6~1.5)、好ましくは1:(0.8~1.2)である。
【0069】
縮合重合反応は、当該技術分野で公知であり、当該技術分野で一般に公知の縮合重合反応条件下で実施することができる。本発明のいくつかの実施形態によれば、ステップ(1)において、縮合重合反応の条件は、次を含み得る:-20℃~60℃、好ましくは-10℃~40℃の反応温度;5~30h、好ましくは8~24hの反応時間。
【0070】
本発明において、縮合重合反応は不活性雰囲気下で行うことができる。不活性雰囲気としては、当該技術分野で一般的に知られている不活性雰囲気を使用することができ、例えば、窒素ガスにより不活性雰囲気が提供されることが好ましい。重合反応の圧力又は不活性雰囲気の圧力は、当業者が自由に選択することができるが、好ましくは大気圧である。
【0071】
本発明のいくつかの実施形態によれば、第1の溶媒は、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、及びN-メチル-2-ピロリドン(NMP)、並びにそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1つであってよく、好ましくは、N-メチル-2-ピロリドン及び/又はN,N-ジメチルホルムアミドから選択される。
【0072】
本発明のいくつかの実施形態によれば、第1の溶媒の使用量は、ジアミンモノマー1molに対して1000~3000mLである。
【0073】
本発明において、式(II)で表される二無水物モノマー及び式(III)で表される二無水物モノマーは、混合物を得るために任意の適切な様式で混合され得る。いくつかの実施形態によれば、混合物は、次の方法で混合することによって得ることができる:機械的攪拌、振とう、又は超音波処理。機械的攪拌条件には、次が含まれ得る:20~40℃、2000~15000rpm、2~12時間。超音波処理条件としては、次が含まれ得る:20~40℃、0.5~2.0時間。振とう条件としては、次が含まれ得る:20~40℃、260~800rpm、12~36時間。あるいは、式(II)で表される二無水物モノマー及び式(III)で表される二無水物モノマーを第一の溶媒に添加し、さらにジアミンモノマーと混合することもできる。
【0074】
ポリ(アミド酸)のイミド化は、当技術分野で知られている。ステップ(1)で得られたポリ(アミド酸)は、ポリイミドランダム共重合体を得るために、当該技術分野で公知の様々な方法を用いてイミド化され得る。本発明のいくつかの実施形態によれば、イミド化は、ステップ(1)で得られたポリ(アミド酸)含有材料に脱水剤及び触媒を添加することと、0~200℃で12~24時間反応させることを含む。
【0075】
本発明のいくつかの実施形態によれば、上記脱水剤は、ジクロロベンゼン、トルエン、無水酢酸、キシレン、及びそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1つである。
【0076】
本発明のいくつかの実施形態によれば、上記触媒は、ピリジン及び/またはイソキノリンから選択される。
【0077】
本発明のいくつかの実施形態によれば、上記脱水剤の量は、ジアミンモノマー1molに対して2~15mol、好ましくは3~8molであってよい。
【0078】
本発明のいくつかの実施形態によれば、上記触媒の量は、ジアミンモノマー1molに対して2~15mol、好ましくは3~8molであってよい。
【0079】
本発明のいくつかの実施形態によれば、ポリイミドを調製する方法は、ステップ(2)でイミド化材料を希釈し、沈殿剤と接触させてポリイミド共重合体を得ることをさらに含む。上記沈殿剤は、ポリイミドに対して貧溶媒であり得る。例えば、上記沈殿剤は、エタノール、アセトン、及び水からなる群から選択される少なくとも1種であってもよく、より好ましくは、エタノール、アセトン、及び水からなる群から選択される少なくとも2種である。上記沈殿剤の総量は、ジアミンモノマー1molに対して、10~50Lとすることができる。希釈に使用する溶媒は、N-メチル-2-ピロリドンであってもよい。好ましくは、希釈に使用する溶媒の量は、ジアミンモノマー1molに対して、5~8Lである。
【0080】
本発明において、ステップ(2)のイミド化材料を沈殿剤と接触させる方法は、本発明の要件を満たすことができれば特に制限されない。例えば、次のように行ってもよい:ステップ(2)のイミド化材料(希釈後)を上記沈殿剤中に添加してポリイミドを沈殿させ、次いで、沈殿したままのポリイミドを上記沈殿剤ですすぎ(3~5回すすいでもよい)、最後に吸引濾過し、乾燥(70~150℃、24~48時間)して、ポリイミドランダム共重合体を得る。
【0081】
本発明の第3の態様は、第2の態様の方法によって調製されたポリイミドランダム共重合体を提供する。
【0082】
本発明の第4の態様は、ポリイミド重合体、好ましくは第1の態様のポリイミドランダム共重合体から調製された膜を提供する。
【0083】
いくつかの実施形態によれば、上記膜が、分離膜、好ましくはガス分離膜である。
【0084】
いくつかの実施形態によれば、上記膜は、平膜であってもよく、好ましくは平坦な均質膜である。
【0085】
本発明において、ガス分離膜等の上記平膜の作製方法は、特に限定されない。例えば、当該分野における従来の膜調製方法により実施することができる。例えば、CN107968214Aを参考にして上記ガス分離膜(均質膜)を作製することができる。
【0086】
あるいは、次の方法を用いて平膜を調製することができる:ポリイミドランダム共重合体を含むキャスト液を支持板(ガラス板など)上に塗布し、50~80℃で6~24時間第1乾燥に供する(溶媒の大部分を除去する);100~140℃で12~48時間第二乾燥に供する;次いで、浸漬(例えば、上記膜がガラス板の表面から落ちるまで脱イオン水に浸漬する)してポリイミドランダム共重合体ガス分離膜を得る。上記キャスト液は、次の手順で得ることができる:上記ポリイミドランダム共重合体を第2の溶媒と混合し、共重合体が完全に溶解するまで40~80℃で攪拌(例えば、シェーカー内で)して均一なキャスト液を得る;均一なキャスト液に超音波脱気処理を施して均一で安定なキャスト液を得る。
【0087】
いくつかの実施形態によれば、上記第2の溶媒は、上記ポリイミドランダム共重合体の固形分が5~60重量%となるような量で使用される。
【0088】
いくつかの実施形態によれば、上記第2の溶媒は、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、N-メチル-2-ピロリドン、テトラヒドロフラン、エタノール、及びそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1つであり得る。
【0089】
いくつかの実施形態によれば、上記第1の溶媒と上記第2の溶媒とは、同じであっても異なっていてもよい。
【0090】
いくつかの実施形態によれば、上記ポリイミド共重合体平膜の厚さは、30~50μmである。
【0091】
いくつかの実施形態によれば、ガス分離膜等の上記ポリイミド共重合体平膜は、均質膜である。
【0092】
いくつかの好ましい実施形態によれば、上記膜は、中空糸膜である。上記中空糸膜は、支持層と、前記支持層の外面に付着した緻密層とを含む。支持層及び緻密層は共に上記ポリイミドランダム共重合体から形成される。好ましくは、前記緻密層の厚さは、1000nm以下であり、上記中空糸膜(支持層)の空孔率は40~80%であり、より好ましくは、上記緻密層の厚さは100~500nmであり、上記中空糸膜の空孔率は50~70%である。上記中空糸膜の空孔率は、水銀圧入ポロシメトリーにより測定した。
【0093】
中空糸膜の外径及び内径は、当業者によって適切に決定され得る。例えば、上記中空糸膜の外径は、50ミクロン~2000ミクロン、好ましくは100ミクロン~1000ミクロン、より好ましくは200ミクロン~900ミクロン、なおより好ましくは300ミクロン~800ミクロンであり、例えば400ミクロン~700ミクロン、例えば好ましくは450ミクロン~650ミクロン、例えば約500ミクロン又は約600ミクロンであってよい。上記中空糸膜の内径は、10ミクロン~1000ミクロン、好ましくは40ミクロン~800ミクロン、より好ましくは60ミクロン~600ミクロン、さらにより好ましくは80ミクロン~400ミクロンであり、例えば100ミクロン~300ミクロン、例えば好ましくは120ミクロン~250ミクロン、例えば約150ミクロンまたは約200ミクロンであってもよい。
【0094】
本発明のいくつかの実施形態によれば、緻密層の厚さは、100~2000nm、好ましくは100~1000nm、より好ましくは200~500nmであり;例えば、100nm、150nm、200nm、250nm、300nm、350nm、400nm、又は上記の値の間の任意の値である。
【0095】
本発明のいくつかの実施形態によれば、中空糸膜(支持層)の空孔率は、50~70%である。
【0096】
本発明の第5の態様は、ガス分離における、第1若しくは第3の態様に記載のポリイミドランダム共重合体、又は第4の態様に記載の膜の使用を提供する。ガス分離のための高分子膜の使用は、当該技術分野で知られている。本発明の高分子膜は、当該技術分野で知られている任意の適切な様式で、ガス分離に使用することができる。
【0097】
本発明の第6の態様は、ポリイミド系中空糸膜の調製方法を提供する。この方法は以下の工程を含む:
(1)ポリイミド、好ましくは本発明の第1又は第3の態様のポリイミドを含むキャスト液を調製する工程;
(2)ボア液及び上記キャスト液を押し出し、固化して中空糸膜前駆体を得る工程;
(3)上記中空糸膜前駆体を巻き取り及び抽出し、ポリイミド系中空糸膜を得る工程。
【0098】
いくつかの実施形態によれば、本発明のポリイミド系中空糸膜の調製方法は、以下の工程を含む:
(1)ポリイミド、希釈剤、及び任意の添加剤を含むキャスト液を調製する工程であって、上記希釈剤が、上記ポリイミドに対する良溶媒、上記ポリイミドに対する第1の貧溶媒、及び上記ポリイミドに対する第2の貧溶媒を含み、上記ポリイミドに対する上記第1の貧溶媒の沸点B1が、上記ポリイミドに対する上記第2の貧溶媒の沸点B2よりも高い工程;
(2)ボア液及び上記キャスト液を温度Tで押し出し、固化して中空糸膜前駆体を得る工程であって、B2≦T<B1である工程;
(3)上記中空糸膜前駆体を巻き取り及び抽出し、ポリイミド系中空糸膜を得る工程。
【0099】
本発明のいくつかの実施形態によれば、工程(1)において、上記キャスト液の総重量を基準に、上記ポリイミドの含有量は20~40重量%であり、上記希釈剤の含有量は50~75重量%であり、上記添加剤の含有量は、存在する場合、0.5~10重量%である。
【0100】
本発明のいくつかの実施形態によれば、上記キャスト液の総重量を基準に、上記ポリイミドの含有量は25~35重量%であり、上記希釈剤の含有量は60~70重量%であり、上記添加剤の含有量は、存在する場合、1~5重量%である。
【0101】
本発明のいくつかの実施形態によれば、中空糸膜の緻密層の形成を容易にするために、上記ポリイミドに対する上記第1の貧溶媒の沸点B1は、上記ポリイミドに対する上記第2の貧溶媒の沸点B2よりも5~200℃高く、好ましくは10~20℃高い。ここで、沸点とは、常圧下での沸点を意味する。
【0102】
本発明のいくつかの実施形態によれば、上記ポリイミドに対する上記第1の貧溶媒は、C2~C4飽和一価アルコール、γ-ブチロラクトン、水、及びそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1つである。
【0103】
本発明のいくつかの実施形態によれば、上記ポリイミドに対する上記第2の貧溶媒は、C3-C5アルカン、テトラヒドロフラン、アセトン、クロロホルム、及びそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1つである。
【0104】
本発明のいくつかの実施形態によれば、上記ポリイミドに対する上記良溶媒は、N-メチル-2-ピロリドン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、及びそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1つである。
【0105】
本発明のいくつかの実施形態によれば、上記ポリイミドに対する上記良溶媒、上記ポリイミドに対する上記第1の貧溶媒、及び上記ポリイミドに対する上記第2の貧溶媒の重量比は、1:(0.001~0.5):(0.1~0.5)であり、好ましくは1:(0.15~0.3):(0.15~0.3)である。
【0106】
本発明のいくつかの実施形態によれば、上記添加剤はリチウム塩であってもよく、好ましくは硝酸リチウム及び/又は塩化リチウムから選択される。
【0107】
本発明のいくつかの実施形態によれば、上記キャスト液は上記添加剤を含む。本発明のいくつかの実施形態によれば、上記キャスト液は上記添加剤を含まない。
【0108】
本発明のいくつかの実施形態によれば、上記工程(1)において、上記キャスト液は、以下のステップを含む方法に従って調製される:上記ポリイミド、上記希釈剤及び上記任意の添加剤を20~50℃、100~1200r/分で12~48時間撹拌し、次いで、真空脱気し、濾過により不純物を除去し(例えば、20~50℃)、上記キャスト液を得る。
【0109】
本発明のいくつかの実施形態によれば、上記真空脱気の条件は、-0.1MPa~-0.095MPaの圧力、20~30℃の温度、10~50r/分の回転速度、12~24時間の期間を含む。
【0110】
本発明のいくつかの実施形態によれば、上記工程(2)において、上記ボア液は、溶媒A及び溶媒Bを含み、上記溶媒Aは、N-メチル-2-ピロリドン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、及びそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1つであり、上記溶媒Bは、C1-C4飽和一価アルコール、γ-ブチロラクトン、水、及びそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1つである。
【0111】
本発明のいくつかの実施形態によれば、上記溶媒Aは、上記ボア液の総重量の50~99重量%、好ましくは60~95重量%を占め;そして溶媒Bは、上記ボア液の総重量の50~1重量%、好ましくは40~5重量%を占める。
【0112】
本発明のいくつかの実施形態によれば、上記押出しは紡糸口金で行われる。いくつかの実施形態によれば、押し出し温度(紡糸口金温度)は40~75℃、好ましくは60~70℃である。中空糸膜調製用の紡糸口金は当技術分野で知られている。当業者であれば、使用する紡糸口金を適切に選択することができる。
【0113】
本発明のいくつかの実施形態によれば、上記押し出しのプロセス中、上記キャスト液の流量は6~30mL/分である。
【0114】
本発明のいくつかの実施形態によれば、上記押し出しのプロセス中、上記ボア液の流量は2~10mL/分である。
【0115】
本発明のいくつかの実施形態によれば、上記固化の前に、上記押し出しにより得られた上記中空糸をエアギャップに通過させて、緻密層の形成を促進し、緻密層の厚さをより良好に制御する。
【0116】
本発明のいくつかの実施形態によれば、上記エアギャップの高さは5~30cmである。
【0117】
本発明のいくつかの実施形態によれば、上記エアギャップは環状スリーブによって加熱してもよい。好ましくは、50~150℃に温度制御され、より好ましくは、70~150℃に温度制御される。
【0118】
本発明のいくつかの実施形態によれば、上記固化は、凝固浴中で行われる。好ましくは、上記凝固浴で使用される浴液は、溶媒C及び/又は水である。いくつかの実施形態によれば、上記凝固浴の温度は40~70℃である。
【0119】
本発明のいくつかの実施形態によれば、上記溶媒Cは、C1-C4飽和一価アルコール、γ-ブチロラクトン、水、及びそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1つである。
【0120】
本発明のいくつかの実施形態によれば、上記工程(3)において、上記巻取りの速度は0.5~2m/sである。
【0121】
本発明において、上記抽出の目的は、上記中空糸膜前駆体中の上記希釈剤及び上記添加剤を除去することである。
【0122】
本発明のいくつかの実施形態によれば、上記抽出に使用される抽出剤は、水、C1-C4飽和一価アルコール、C5-C7アルカン、及びそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1つである。上記抽出剤の使用量は、本発明の要件を満たすことができる限り、特に制限はない。
【0123】
本発明のいくつかの実施形態によれば、上記抽出の条件は、20~35℃の温度、及び3~48時間の期間を含む。抽出時間とは、膜フィラメント(中空糸膜前駆体)の浸漬時間を指す。
【0124】
本発明において、好ましくは、上記抽出は次の方法で行われる:C1-C4飽和一価アルコール及びC5-C7アルカンをそれぞれ水中で2-5回順次抽出する。
【0125】
本発明のいくつかの実施形態によれば、さらに、上記抽出の後に乾燥工程を含む。
【0126】
本発明のいくつかの実施形態によれば、上記乾燥の条件は、20~35℃の温度、及び2~15時間の期間を含む。
【0127】
本発明はまた、第6の態様に記載の方法により調製されたポリイミド系中空糸膜を提供する。
【0128】
本発明の第7の態様は、ヘリウムガスを精製するためのシステムを提供し、このシステムは、触媒脱水素分離ユニット、高分子膜分離ユニット、及びパラジウム膜分離ユニットを含む。好ましくは、上記高分子膜分離ユニットは、本発明の膜、好ましくは本発明のポリイミド系中空糸膜を使用する。好ましくは、上記触媒脱水素分離ユニットは、触媒酸化装置と吸着装置とを含む。
【0129】
本発明の第8の態様は、ヘリウムガスを精製する方法を提供し、該方法は:原料ガスを、触媒脱水素分離、高分子膜分離、及びパラジウム膜脱水素分離に順次供して、精製ヘリウムガスを得ることを含み、上記高分子膜分離は、本発明の膜、好ましくは本発明のポリイミド系中空糸膜を使用する。
【0130】
本発明のいくつかの実施形態によれば、上記原料ガスは、ヘリウム、水素及び他の不純物ガスを含む混合ガスであってもよい。好ましくは、上記原料ガスは、天然ガス、シェールガス、ヘリウムリッチ水素含有ガス(ヘリウム及び水素を含む混合ガス)、及び液化天然ガスボイルオフガス(BOG)からなる群から選択される少なくとも1つであってよい。天然ガス又はシェールガスは、多段フラッシュ蒸発にかけた後、ヘリウム精製のための原料ガスとして使用することができる。
【0131】
本発明のいくつかの実施形態によれば、上記触媒脱水素分離は、触媒酸化及び吸着を含む。
【0132】
本発明のいくつかの実施形態によれば、上記触媒酸化に使用される触媒は、貴金属触媒であり、好ましくは、Pt、Pd、Rh、Ru、Au及びそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1つである。
【0133】
本発明のいくつかの実施形態によれば、上記触媒酸化の条件は:40~150℃、好ましくは50~120℃の温度;1~10000m3/m3・h、好ましくは10~1000m3/m3・hの原料ガスの空間速度を含む。
【0134】
本発明のいくつかの実施形態によれば、上記触媒酸化の条件は、原料ガス中の水素の90~99体積%がH2Oに変換される条件である。
【0135】
本発明において、上記触媒脱水素分離プロセスで必要とされる酸素は、原料ガス自体に含まれる酸素によって供給されてもよいし、外部から供給されてもよい。水素をより完全に水に変換するために、上記触媒脱水素分離プロセス中の酸素の体積割合は8%以上に維持される。
【0136】
上記吸着は、水を吸着できる任意の吸着方式を採用できる。
【0137】
本発明のいくつかの実施形態によれば、上記原料ガスが二酸化炭素を含む場合、水と二酸化炭素とを同時に除去するために、上記吸着の方式は、好ましくはアルカリ吸着である。本発明のいくつかの実施形態によれば、上記アルカリ吸着に使用される吸着剤は、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、生石灰、及びソーダ石灰からなる群から選択される少なくとも1つである。
【0138】
本発明において、上記吸着の条件は、本発明の要件を満たすことができる限り、特に制限はない。本発明のいくつかの実施形態によれば、上記吸着の条件は:70~90℃の吸着温度を含む。
【0139】
本発明のいくつかの実施形態によれば、上記高分子膜分離及び上記高分子膜分離ユニットに使用される高分子膜は、中空糸膜、平膜、及び管状膜からなる群から選択される少なくとも1つであり、より好ましくは、中空糸膜である。
【0140】
いくつかの好ましい実施形態によれば、上記高分子膜分離は、本発明の第4の態様の膜を使用して実施される分離を含む。いくつかの実施形態によれば、上記高分子膜分離ユニットは、本発明の第4の態様の膜を含む。
【0141】
本発明のいくつかの実施形態によれば、上記高分子膜分離は、1段の膜(高分子膜)分離方式、又は多段の膜(高分子膜)分離方式(例えば、2段~5段)を採用する。本発明において、2段膜分離とは、透過ガスが加圧され、再び膜の原料ガスとして使用する高分子膜分離を指す。三段膜分離、四段膜分離、五段膜分離も同様の意味である。上記高分子膜分離プロセスは、1段、2段、3段、4段、5段など、1段から5段であってもよい。
【0142】
本発明のいくつかの実施形態によれば、上記高分子膜分離の条件は、上記高分子膜分離の前に、触媒脱水素分離により得られたガスの圧力を0.01~50MPaに制御し、当該ガスの温度を20~100℃に制御することを含む。ここで、上記高分子膜分離の透過側(出口側)の圧力は、正圧側(入口側)の圧力よりも低く、負圧であってもよい。
【0143】
本発明のいくつかの実施形態によれば、上記高分子膜分離に使用される高分子膜はポリイミド系中空糸膜であり、好ましくは本発明のポリイミド系中空糸膜である。
【0144】
本発明のいくつかの実施形態によれば、上記パラジウム膜脱水素分離の条件は、以下を含み得る:上記パラジウム膜脱水素分離を行う前に、上記高分子膜分離から得られたガスの温度を50~500℃、好ましくは200~500℃に制御する;ガス圧力を1~50MPa、好ましくは2~20MPaに制御する。
【0145】
本発明のいくつかの実施形態によれば、上記パラジウム膜脱水素分離に使用されるパラジウム膜の厚さは5~100μmである。
【0146】
本発明のいくつかの実施形態によれば、上記パラジウム膜は、管状膜又は多孔性支持複合膜である。
【0147】
本発明のいくつかの実施形態によれば、前記多孔性支持体複合膜の多孔性支持体は、多孔性セラミック、及び多孔性ステンレス鋼からなる群から選択される1つである。
【0148】
本発明のいくつかの実施形態によれば、上記パラジウム膜は、純パラジウム膜又はパラジウム系合金膜である。
【0149】
本発明のいくつかの実施形態によれば、上記パラジウム系合金膜は、パラジウム-イットリウム合金膜、パラジウム-セリウム合金膜、パラジウム-銅合金膜、パラジウム-金合金膜、パラジウム-ニッケル合金膜及びパラジウム-銀合金膜からなる群から選択される少なくとも1つである。
【0150】
当業者に理解されるように、本発明のヘリウムガスを精製するためのシステムにおける、上記触媒脱水素分離ユニット、上記高分子膜分離ユニット、及びパラジウム膜分離ユニットは、それぞれ、本発明のヘリウムガスを精製する方法における、上記触媒脱水素分離、上記高分子膜分離、及び上記パラジウム膜脱水素分離に使用されるか、又は対応する。当業者であれば、上述したヘリウムガスを精製する方法に基づいて、上記触媒脱水素分離ユニット、上記高分子膜分離ユニット及び上記パラジウム膜分離ユニットを適切に選択又は構成することができる。
【0151】
〔実施例〕
本発明において、略号の意味は以下の通りである:
PMDA:ピロメリット酸二無水物
BPDA:3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物
ODPA:4,4’-オキシジフタル酸無水物
6FDA:4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物
BTDA:3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物
TPDAn:トリプチセン系二無水物(式(III)で表される化合物、ここでYはYdである)(「LUO S J, WIEGAND J R, KAZANOWSKA B, et al. Finely Tuning the Free Volume Architecture in Iptycene-Containing Polyimides for Highly Selective and Fast Hydrogen Transport. Macromolecules 2016, 49, (9): 3395-3405」を参考にして調製した。)
mPDA:m-フェニレンジアミン
PPDA:ペンチプチセン系ジアミン(構造式は
【0152】
【0153】
)(「LUO S J, LIU Q, ZHANG B H, et al. Pentiptycene-based polyimides with hierarchically controlled molecular cavity architecture for efficient membrane gas separation. J Membrane Sci 2015, 480: 20-30」を参考にして調製した。)
以下、実施例により本発明を詳細に説明する。
【0154】
以下の調製例において、機械的攪拌条件:室温、10000rpm、5h;超音波処理条件:室温、1h;振とう条件:30℃、600rpm、15時間。
【0155】
中空紡糸口金は、Shanghai Trustech Technology Development Co., Ltdから購入した(湿式NIPSシリーズ、モデル0.6/0.4/0.2)。
【0156】
中空糸膜の支持層の空孔率は、GB/T 21650.1-2008に従って、水銀ポロシメーター(Poremaster-33, Quantachrome,米国)を用いて水銀圧入ポロシメトリーにより測定した。
【0157】
IR試験:フーリエ変換赤外分光計(Bruker Tensor 27 or Thermo Nicolet 380)を使用し、全反射法を用いて赤外スペクトルを測定した。試験波長範囲は、4,000cm-1~600cm-1である。
【0158】
核磁気試験:核磁気共鳴分光計(Bruker AVANCE III 500 MHz)を使用し、溶媒としてDMSO-d6を用い、走査周波数500MHzで、室温におけるポリイミドの1H NMRスペクトルの特徴を調べた。
【0159】
分子量Mn試験:ポリイミドの分子量を測定するためにゲル浸透クロマトグラフィー(Waters社のモデル1515)を使用した。溶媒としてDMFを用い、分子量の校正には単分散ポリスチレンを用いた。
【0160】
形態試験:走査型電子顕微鏡(S-4800、日立)を用いて中空糸膜の断面を評価した。膜繊維は液体窒素中で急冷・破断され、試験前に表面に金メッキ層が形成された。
【0161】
ガス体積分率試験:米国Agilent社製ガスクロマトグラフ6890Nを使用し、ガスクロマトグラフィーで試験した;クロマトグラフィーカラム:HP-PLOT分子篩いキャピラリーカラム;検出器:熱伝導度検出器TCD;カラム温度:50℃、キャリアガス流量:16mL/min。
【0162】
実施例において、1段高分子分離は1回の高分子膜分離を行うことを表し、2段高分子膜分離は1段高分子膜分離後のガスを原料ガスとして再度高分子膜分離を行う(新しい膜モジュールを使用する)ことを表し、3段高分子膜分離、4段高分子膜分離、5段高分子膜分離は上記実施例と同様である。
【0163】
以下の調製例を用いて、ポリイミドランダム共重合体の調製を説明する。
【0164】
調製例1(比較)
(S1)窒素保護下、1L三口フラスコに無水N-メチル-2-ピロリドン(200mL)及びm-フェニレンジアミン(10.81g,0.1mol)を順次加え、完全に溶解するまで攪拌した;ピロメリット酸二無水物(PMDA)(10.91g,0.05mol)及び4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物(6FDA)(22.2g,0.05mol)を機械的攪拌下で均一に混合した後、10℃で上記の系に添加した;得られた混合物を12時間縮合重合反応させ、ポリ(アミド酸)を含む材料を得た;
(S2)工程(S1)で得られたポリ(アミド酸)含有材料に、無水酢酸(40.836g、0.4mol)及びピリジン(31.60g、0.4mol)の混合物を加え、25℃で18時間分子内脱水し、ポリイミド含有材料を得た。その後、ポリイミド含有材料にN-メチル-2-ピロリドン(NMP)600mLを加えて希釈し、撹拌下、上記希釈物を水及びエタノールの混合溶媒(500mL:500mL)に注いだ。その結果、ポリイミドが析出し、ポリイミドが得られた。次いで、このポリイミドを水及びエタノールの混合物(1500mL:1500mL)で洗浄(1000mL×3)した後、吸引濾過し、乾燥(220℃で24時間真空乾燥;次いで70℃で48時間送風乾燥)して、ポリイミドランダム共重合体を得た。このポリイミドランダム共重合体をPI-1と命名した。赤外線試験から、PI-1はポリイミド構造を有することがわかった。また、ポリイミドを析出させた後の残存液相からは、原料は検出されなかった。ここで、重合体を析出させた後の混合溶媒をサンプリングし、DMSO-d6を溶媒として、室温で、核磁気共鳴分光計(Bruker Avance III 400 HD, Bruker社製)を用いて、混合溶媒の水素スペクトルを特性評価した。ベンゼン環の特徴的なピークは見られず、ポリイミドを析出させた後に残った液相からは原料が検出されなかったことを示している。これは、全てのモノマーが反応に参加したことを示している(全ての原料が反応に参加したことを示している)。
【0165】
調製例2(比較)
(S1)窒素保護下、1L三口フラスコに無水N-メチル-2-ピロリドン(200mL)及びm-フェニレンジアミン(10.81g,0.1mol)を順次加え、完全に溶解するまで攪拌した;3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)(14.71g,0.05mol)及び4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物(6FDA)(22.2g,0.05mol)を機械的攪拌下で均一に混合し、-10℃で上記の系に添加した;得られた混合物を18時間縮合重合反応させ、ポリ(アミド酸)を含む材料を得た;
(S2)工程(1)で得られたポリ(アミド酸)を含む材料に、無水酢酸(40.836g、0.4mol)及びピリジン(31.60g、0.4mol)の混合物を加え、20℃で24時間分子内脱水し、ポリイミド含有材料を得た。その後、ポリイミド含有材料にN-メチル-2-ピロリドン(NMP)600mLを加えて希釈し、撹拌下、上記希釈物を水及びエタノールの混合溶媒(500mL:500mL)に注いだ。その結果、ポリイミドが析出し、ポリイミドが得られた。次いで、ポリイミドを水及びエタノールの混合物(1500mL:1500mL)で洗浄(3回)した後、吸引濾過し、乾燥(220℃で24時間真空乾燥;次いで70℃で48時間送風乾燥)して、ポリイミドランダム共重合体を得た。このポリイミドランダム共重合体をPI-2と命名した。フーリエ変換赤外分光計(Thermo Nicolet 380)を用いて、ポリイミドランダム共重合体の赤外線試験を行った。赤外線スペクトルを
図1に示す。赤外線試験の結果、PI-2はポリイミド構造を有することがわかった。また、ポリイミドが析出した後の残存液相からは原料が検出されず、すべての原料が反応に参加していることがわかった。
【0166】
図1において、1775cm
-1及び1716cm
-1のピークは、それぞれ、ポリイミド中の5員イミン環中の、2つのカルボニル基の対称伸縮振動ピーク及び非対称伸縮振動ピークであり、1370cm
-1のピークはポリイミド中のC-N伸縮振動であり、721cm
-1のピークはイミン環の変角振動ピークであり、1110cm
-1のピークはC-Fの伸縮振動ピークである。すなわち、上記の特徴的なピークの出現は、PI-2の合成が成功したことを示している。
【0167】
調製例3(比較)
(1)窒素保護下、1L三口フラスコに無水N-メチル-2-ピロリドン(200mL)及びm-フェニレンジアミン(10.81g,0.1mol)を順次加え、完全に溶解するまで攪拌した;4,4-オキシジフタル酸無水物(ODPA)(16.51g,0.05mol)及び3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(BTDA)(16.11g,0.05mol)を機械的攪拌下で均一に混合し、0℃で上記の系に添加した;得られた混合物を18時間縮合重合反応させ、ポリ(アミド酸)を含む材料を得た;
(2)工程(1)で得られたポリ(アミド酸)を含む材料に、無水酢酸(55.1286g、0.54mol)及びピリジン(42.714g、0.54mol)の混合物を加え、0℃で24時間分子内脱水し、ポリイミド含有材料を得た。その後、ポリイミド含有材料にN-メチル-2-ピロリドン(NMP)600mLを加えて希釈し、撹拌下、上記希釈物を水及びエタノールの混合溶媒(500mL:500mL)に注いだ。その結果、ポリイミドが析出し、ポリイミドが得られた。次いで、ポリイミドを水及びエタノールの混合物(1500mL:1500mL)で洗浄(3回)した後、吸引濾過し、乾燥(220℃で24時間真空乾燥;次いで70℃で48時間送風乾燥)して、ポリイミドランダム共重合体を得た。このポリイミドランダム共重合体をPI-3と命名した。フーリエ変換赤外分光計(Thermo Nicolet 380)を用いて、ポリイミドランダム共重合体の赤外線試験を行った。赤外線スペクトルを
図2に示す。赤外線試験の結果、PI-3はポリイミド構造を有していることがわかった。また、ポリイミドが析出した後の残存液相からは原料が検出されず、すべての原料が反応に参加していることがわかった。
【0168】
図2において、1776cm
-1及び1715cm
-1のピークは、それぞれ、ポリイミド中の5員イミン環中の、2つのカルボニル基の対称伸縮振動ピーク及び非対称伸縮振動ピークであり、1372cm
-1のピークはポリイミド中のC-N伸縮振動であり、1255cm
-1のピークはアリールエーテル中のエーテル結合の伸縮振動であり、721cm
-1のピークはイミン環の変角振動ピークである。すなわち、上記の特徴的なピークの出現は、PI-3の合成に成功したことを示している。
【0169】
調製例4
(1)窒素保護下、1L三口フラスコに無水N-メチル-2-ピロリドン(200mL)、m-フェニレンジアミン(10.81g,0.1mol)を順次加え、完全に溶解するまで撹拌した;4,4-オキシジフタル酸無水物(ODPA)(12.4138g,0.04mol)及び4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物(6FDA)(26.6544g,0.06mol)を機械的攪拌下で均一に混合し、20℃で上記の系に添加した;得られた混合物を12時間縮合重合反応させ、ポリ(アミド酸)を含む材料を得た;
(2)工程(1)で得られたポリ(アミド酸)を含む材料に、無水酢酸(36.7524g,0.36mol)及びピリジン(28.4760g,0.36mol)の混合物を加え、20℃で18時間分子内脱水し、ポリイミド含有材料を得た。その後、ポリイミド含有材料にN-メチル-2-ピロリドン(NMP)600mLを加えて希釈し、撹拌下、上記希釈物を水及びエタノールの混合溶媒(500mL:500mL)に注いだ。その結果、ポリイミドが析出し、ポリイミドが得られた。次いで、ポリイミドを水及びエタノールの混合物(1500mL:1500mL)で洗浄(3回)した後、吸引濾過し、乾燥(220℃で24時間真空乾燥;次いで70℃で48時間送風乾燥)して、ポリイミドランダム共重合体を得た。このポリイミドランダム共重合体をPI-4と命名した。フーリエ変換赤外分光計(Thermo Nicolet 380)を用いて、ポリイミドランダム共重合体の赤外線試験を行った。赤外線スペクトルを
図3に示す。赤外線試験の結果、PI-4は式(I)で示される構造を有しており、XはXcであり、YはYaであり、Z及びZ’は共にZ1であった。また、ポリイミドを析出させた後の残存液相からは原料が検出されなかったことから、全ての原料が反応に参加していることがわかった。
【0170】
図3において、1784cm
-1及び1730cm
-1のピークは、それぞれ、ポリイミド中の5員イミン環中の、2つのカルボニル基の対称伸縮振動ピークと非対称伸縮振動ピークとであり、1357cm
-1のピークはポリイミド中のC-N伸縮振動であり、721cm
-1のピークはイミン環の変角振動であり、1255cm
-1のピークはアリールエーテル中のエーテル結合の伸縮振動であり、1144cm
-1のピークはC-F伸縮振動である。すなわち、上記の特徴的なピークの出現は、PI-4の合成が成功したことを示している。
【0171】
この調製例の重合体から調製した平坦な均質膜の孔径分布を、陽電子消滅寿命測定法(PALS)を用いて分析した。
図9を参照。
【0172】
重合体を固形分10重量%でNMPに添加し、50℃の振とう器で完全に溶解するまで攪拌し、均一で安定したキャスト液を得た。このキャスト液を室温まで冷却し、超音波脱気後、清浄なガラス板の表面に均一に塗布した。塗布したガラス板を70℃のブラストオーブンで6時間乾燥させた。多量の溶媒を除去した後、真空オーブンに移し、120℃で12時間乾燥させ、残った溶媒をさらに除去し、室温まで冷却した。膜が付着したガラス板を、膜がガラス板の表面から落ちるまで脱イオン水に浸漬し、膜を得た。
【0173】
上記膜を約15×15mmのサイズに切断し、総厚約2mmになるように積層した。このような膜積層体を、各膜サンプルに対して2つ用意した。陽電子源として22Naを用いた。陽電子線源は、2枚の7.5μmのカプトン箔で包まれ、2枚の膜積層体に挟まれた。膜の陽電子消滅寿命スペクトルの記録には、時間分解能200psの高速同時計数システムを用いた。測定システムは自作システムである。各サンプルは真空中で2回測定した。すべてのPALSデータはCONTINプログラムを用いて解析した。
【0174】
図9からわかるように、調製したポリイミドランダム共重合体膜の孔径分布は、二峰性である。
【0175】
調製例5
(1)窒素保護下、1L三口フラスコに無水N-メチル-2-ピロリドン(200mL)及びm-フェニレンジアミン(10.81g,0.1mol)を順次加え、完全に溶解するまで撹拌した;4,4-オキシジフタル酸無水物(ODPA)(0.04mol)及び4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物(6FDA)(0.06mol)を機械的攪拌下で均一に混合し、50℃で上記の系に添加した;得られた混合物は24時間縮合重合反応を行い、ポリ(アミド酸)を含む材料を得た;
(2)工程(1)で得られたポリ(アミド酸)を含む材料に、無水酢酸(0.36mol)及びピリジン(0.36mol)の混合物を加え、20℃で16時間分子内脱水し、ポリイミド含有材料を得た。その後、ポリイミド含有材料にN-メチル-2-ピロリドン(NMP)600mLを加えて希釈し、上記希釈物を水及びエタノールの混合溶媒(500mL:500mL)に撹拌しながら注いだ。その結果、ポリイミドが析出し、ポリイミドが得られた。次いで、ポリイミドを水及びエタノールの混合物(1500mL:1500mL)で洗浄(3回)し、吸引濾過し、乾燥(220℃で24時間真空乾燥;次いで70℃で48時間送風乾燥)し、ポリイミドランダム共重合体を得た。このポリイミドランダム共重合体をPI-5と命名した。赤外線試験から、PI-5は式(I)で示される構造を有しており、XはXcであり、YはYaであり、Z及びZ’は共にZ1であった。また、ポリイミドを析出させた後の残存液相からは原料が検出されず、全ての原料が反応に参加していることがわかった。
【0176】
調製例6
(1)窒素保護下、1L三口フラスコに無水N-メチル-2-ピロリドン(200mL)及びm-フェニレンジアミン(10.81g,0.1mol)を順次加え、完全に溶解するまで撹拌した;4,4-オキシジフタル酸無水物(ODPA)(0.03mol)及び4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物(6FDA)(0.07mol)を機械的撹拌下で均一に混合し、20℃で上記の系に添加した;得られた混合物は12時間縮合重合反応を行い、ポリ(アミド酸)を含む材料を得た;
(2)工程(1)で得られたポリ(アミド酸)を含む材料に、無水酢酸(0.36mol)及びピリジン(0.36mol)の混合物を加え、20℃で18時間分子内脱水し、ポリイミド含有材料を得た。その後、ポリイミド含有材料にN-メチル-2-ピロリドン(NMP)600mLを加えて希釈し、上記希釈物を水及びエタノールの混合溶媒(500mL:500mL)に撹拌しながら注いだ。その結果、ポリイミドが析出し、ポリイミドが得られた。次いで、ポリイミドを水及びエタノールの混合物(1500mL:1500mL)で洗浄(3回)した後、吸引濾過し、乾燥(220℃で24時間真空乾燥;次いで70℃で48時間送風乾燥)して、ポリイミドランダム共重合体を得た。このポリイミドランダム共重合体をPI-6と命名した。赤外線試験から、PI-6は式(I)で示される構造を有し、XはXcであり、YはYaであり、Z及びZ’は共にZ1であった。また、ポリイミドを析出させた後の残存液相からは原料が検出されず、全ての原料が反応に参加していることがわかった。
【0177】
調製例7
(1)窒素保護下、1L三口フラスコに無水N-メチル-2-ピロリドン(200mL)及びm-フェニレンジアミン(10.81g,0.1mol)を順次加え、完全に溶解するまで撹拌した;4,4-オキシジフタル酸無水物(ODPA)(0.03mol)及び4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物(6FDA)(0.07mol)を機械的撹拌下で均一に混合し、0℃で上記の系に添加した;得られた混合物は12時間縮合重合反応を行い、ポリ(アミド酸)を含む材料を得た;
(2)工程(1)で得られたポリ(アミド酸)を含む材料に、無水酢酸(0.36mol)及びピリジン(0.36mol)の混合物を加え、20℃で24時間分子内脱水し、ポリイミド含有材料を得た。その後、ポリイミド含有材料にN-メチル-2-ピロリドン(NMP)600mLを加えて希釈し、上記希釈物を水及びエタノールの混合溶媒(500mL:500mL)に撹拌しながら注いだ。その結果、ポリイミドが析出し、ポリイミドが得られた。次いで、ポリイミドを水及びエタノールの混合物(1500mL:1500mL)で洗浄(3回)した後、吸引濾過し、乾燥(220℃で24時間真空乾燥;次いで70℃で48時間送風乾燥)して、ポリイミドランダム共重合体を得た。このポリイミドランダム共重合体をPI-7と命名した。赤外線試験から、PI-7は式(I)で示される構造を有し、XはXcであり、YはYaであり、Z及びZ’は共にZ1であった。また、ポリイミドを析出させた後の残存液相からは原料が検出されず、全ての原料が反応に参加していることがわかった。
【0178】
調製例8
(1)窒素保護下、1L三口フラスコに無水N-メチル-2-ピロリドン(200mL)、m-フェニレンジアミン(10.81g,0.1mol)を順次加え、完全に溶解するまで撹拌した;4,4-オキシジフタル酸無水物(ODPA)(0.02mol)及び4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物(6FDA)(0.08mol)を機械的撹拌下で均一に混合し、20℃で上記の系に添加した。得られた混合物は12時間縮合重合反応を行い、ポリ(アミド酸)を含む材料を得た;
(2)工程(1)で得られたポリ(アミド酸)を含む材料に、無水酢酸(0.36mol)及びピリジン(0.36mol)の混合物を加え、20℃で18時間分子内脱水し、ポリイミド含有材料を得た。その後、ポリイミド含有材料にN-メチル-2-ピロリドン(NMP)600mLを加えて希釈し、撹拌下、上記希釈物を水及びエタノールの混合溶媒(500mL:500mL)に注いだ。その結果、ポリイミドが析出し、ポリイミドが得られた。次いで、ポリイミドを水及びエタノールの混合物(1500mL:1500mL)で洗浄(3回)した後、吸引濾過し、乾燥(220℃で24時間真空乾燥;次いで70℃で48時間送風乾燥)して、ポリイミドランダム共重合体を得た。このポリイミドランダム共重合体をPI-8と命名した。赤外線試験から、PI-8は式(I)で示される構造を有し、XはXcであり、YはYaであり、Z及びZ’は共にZ1である。また、ポリイミドを析出させた後の残存液相からは原料が検出されず、すべての原料が反応に参加していることがわかった。
【0179】
調製例9
(1)窒素保護下、1L三口フラスコに無水N-メチル-2-ピロリドン(200mL)、m-フェニレンジアミン(10.81g,0.1mol)を順次加え、完全に溶解するまで撹拌した;4,4-オキシジフタル酸無水物(ODPA)(0.01mol)及び4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物(6FDA)(0.09mol)を機械的撹拌下で均一に混合し、20℃で上記の系に添加した。得られた混合物は12時間縮合重合反応を行い、ポリ(アミド酸)を含む材料を得た;
(2)工程(1)で得られたポリ(アミド酸)を含む材料に、無水酢酸(0.36mol)及びピリジン(0.36mol)の混合物を加え、20℃で18時間分子内脱水し、ポリイミド含有材料を得た。その後、ポリイミド含有材料にN-メチル-2-ピロリドン(NMP)600mLを加えて希釈し、撹拌下、上記希釈物を水及びエタノールの混合溶媒(500mL:500mL)に注いだ。その結果、ポリイミドが析出し、ポリイミドが得られた。次いで、ポリイミドを水及びエタノールの混合物(1500mL:1500mL)で洗浄(3回)した後、吸引濾過し、乾燥(220℃で24時間真空乾燥;次いで70℃で48時間送風乾燥)して、ポリイミドランダム共重合体を得た。このポリイミドランダム共重合体をPI-9と命名した。赤外線試験から、PI-9は式(I)で示される構造を有し、XはXcであり、YはYaであり、Z及びZ’は共にZ1であった。また、ポリイミドを析出させた後の残存液相からは原料が検出されず、全ての原料が反応に参加していることがわかった。
【0180】
調製例10
(1)窒素保護下、1L三口フラスコに無水N-メチル-2-ピロリドン(200mL)及びm-フェニレンジアミン(10.81g,0.1mol)を順次加え、完全に溶解するまで撹拌した;4,4-オキシジフタル酸無水物(ODPA)(0.01mol)及び4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物(6FDA)(0.09mol)を機械的攪拌下で均一に混合し、0℃で上記の系に添加した。得られた混合物は12時間縮合重合反応を行い、ポリ(アミド酸)を含む材料を得た;
(2)工程(1)で得られたポリ(アミド酸)を含む材料に、無水酢酸(0.36mol)及びピリジン(0.36mol)の混合物を加え、20℃で24時間分子内脱水し、ポリイミド含有材料を得た。その後、ポリイミド含有材料にN-メチル-2-ピロリドン(NMP)600mLを加えて希釈し、撹拌下、上記希釈物を水及びエタノールの混合溶媒(500mL:500mL)に注いだ。その結果、ポリイミドが析出し、ポリイミドが得られた。次いで、ポリイミドを水及びエタノールの混合物(1500mL:1500mL)で洗浄(3回)した後、吸引濾過し、乾燥(220℃で24時間真空乾燥;及び70℃で48時間送風乾燥)して、ポリイミドランダム共重合体を得た。このポリイミドランダム共重合体をPI-10と命名した。赤外線試験から、PI-10は式(I)で示される構造を有し、XはXcであり、YはYaであり、Z及びZ’は共にZ1であった。また、ポリイミドを析出させた後の残存液相からは原料が検出されず、全ての原料が反応に参加していることがわかった。
【0181】
この調製例のポリマーから調製した平坦な均質膜の孔径分布を、調製例4に記載したように、陽電子消滅寿命分光法(PALS)を用いて分析した。
図9を参照。
【0182】
調製例11(比較例)
(1)窒素保護下、1L三口フラスコに無水N-メチル-2-ピロリドン(200mL)及びm-フェニレンジアミン(10.81g,0.1mol)を順次加え、完全に溶解するまで攪拌した。3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)(0.02mol)及び4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物(6FDA)(0.08mol)を振とう条件下で均一に混合し、-10℃で上記の系に添加した。得られた混合物を18時間縮合重合反応させ、ポリ(アミド酸)を含む材料を得た;
(2)工程(1)で得られたポリ(アミド酸)を含む材料に、無水酢酸(0.4mol)及びピリジン(0.4mol)の混合物を加え、20℃で24時間分子内脱水し、ポリイミド含有材料を得た。その後、ポリイミド含有材料にN-メチル-2-ピロリドン(NMP)600mLを加えて希釈し、上記希釈物を水及びエタノールの混合溶媒(500mL:500mL)に撹拌しながら注いだ。その結果、ポリイミドが析出し、ポリイミドが得られた。次いで、ポリイミドを水及びエタノールの混合物(1500mL:1500mL)で洗浄(3回)した後、吸引濾過し、乾燥(220℃で24時間真空乾燥;次いで70℃で48時間送風乾燥)して、ポリイミドランダム共重合体を得た。このポリイミドランダム共重合体をPI-11と命名した。赤外線試験から、PI-11はポリイミド構造を有することがわかった。また、ポリイミドが析出した後の残存液相からは原料が検出されず、すべての原料が反応に参加していることがわかった。
【0183】
調製例12(比較例)
(1)窒素保護下、1L三口フラスコに無水N-メチル-2-ピロリドン(200mL)及びm-フェニレンジアミン(10.81g,0.1mol)を順次加え、完全に溶解するまで撹拌した。3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(0.01mol)及び4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物(6FDA)(0.09mol)を振とう条件下で均一に混合し、-10℃で上記の系に添加した。得られた混合物を18時間縮合重合反応させ、ポリ(アミド酸)を含む材料を得た;
(2)工程(1)で得られたポリ(アミド酸)を含む材料に、無水酢酸(0.4mol)及びピリジン(0.4mol)の混合物を加え、20℃で24時間分子内脱水し、ポリイミド含有材料を得た。その後、ポリイミド含有材料にN-メチル-2-ピロリドン(NMP)600mLを加えて希釈し、上記希釈物を水及びエタノールの混合溶媒(500mL:500mL)に撹拌しながら注いだ。その結果、ポリイミドが析出し、ポリイミドが得られた。次いで、ポリイミドを水及びエタノールの混合物(1500mL:1500mL)で洗浄(3回)した後、吸引濾過し、乾燥(220℃で24時間真空乾燥;次いで70℃で48時間送風乾燥)して、ポリイミドランダム共重合体を得た。このポリイミドランダム共重合体をPI-12と命名した。赤外線試験から、PI-12はポリイミド構造を有することがわかった。また、ポリイミドが析出した後の残存液相からは原料が検出されなかったことから、全ての原料が反応に参加していることがわかった。
【0184】
調製例13(比較例)
(1)窒素保護下、1L三口フラスコに無水N-メチル-2-ピロリドン(200mL)、m-フェニレンジアミン(10.81g,0.1mol)を順次加え、完全に溶解するまで撹拌した。ピロメリット酸二無水物(PMDA)(0.03mol)及び4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物(6FDA)(0.07mol)を超音波条件下で均一に混合し、25℃で上記の系に添加した。得られた混合物を12時間縮合重合反応させ、ポリ(アミド酸)を含む材料を得た;
(2)工程(1)で得られたポリ(アミド酸)を含む材料に、無水酢酸(0.4mol)及びピリジン(0.4mol)の混合物を加え、0℃で18時間分子内脱水し、ポリイミド含有材料を得た。ポリイミド含有材料にN-メチル-2-ピロリドン(NMP)600mLを加えて希釈し、上記希釈材料を水とエタノールの混合溶媒(500mL:500mL)に撹拌しながら注いだ。その結果、ポリイミドが析出し、ポリイミドが得られた。次いで、ポリイミドを水及びエタノールの混合物(1500mL:1500mL)で洗浄(3回)した後、吸引濾過し、乾燥(220℃で24時間真空乾燥;次いで70℃で48時間送風乾燥)して、ポリイミドランダム共重合体を得た。このポリイミドランダム共重合体をPI-13と命名した。赤外線試験から、PI-13はポリイミド構造を有することがわかった。また、ポリイミドが析出した後の残存液相からは原料が検出されなかったことから、すべての原料が反応に参加していることがわかった。
【0185】
調製例14
(1)窒素保護下、1L三口フラスコに無水N-メチル-2-ピロリドン(200mL)及びm-フェニレンジアミン(10.81g,0.1mol)を順次加え、完全に溶解するまで撹拌した。4,4’-オキシジフタル酸無水物(0.05mol)及びトリプチセン系二無水物(0.05mol)を機械的攪拌下で均一に混合し、20℃で上記の系に添加した。得られた混合物を12時間縮合重合反応させ、ポリ(アミド酸)を含む材料を得た;
(2)工程(1)で得られたポリ(アミド酸)を含む材料に、無水酢酸(0.36mol)及びピリジン(0.36mol)の混合物を加え、20℃で18時間分子内脱水し、ポリイミド含有材料を得た。その後、ポリイミド含有材料にN-メチル-2-ピロリドン(NMP)600mLを加えて希釈し、上記希釈物を水及びエタノールの混合溶媒(500mL:500mL)に撹拌しながら注いだ。その結果、ポリイミドが析出し、ポリイミドが得られた。次いで、ポリイミドを水とエタノールの混合物(1500mL:1500mL)で洗浄(3回)した後、吸引濾過し、乾燥(220℃で24時間真空乾燥;次いで70℃で48時間送風乾燥)して、ポリイミドランダム共重合体を得た。このポリイミドランダム共重合体をPI-14と命名した。赤外線試験から、PI-14は式(I)で示される構造を有し、XはXcであり、YはYdであり、Z及びZ’は共にZ1であった。また、ポリイミドを析出させた後の残存液相からは原料が検出されず、全ての原料が反応に参加していることがわかった。
【0186】
調製例15
(1)窒素保護下、1L三口フラスコに無水N-メチル-2-ピロリドン200mL及びペンチプチセン系ジアミン(0.1mol)を順次加え、完全に溶解するまで攪拌した。3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(0.04mol)及び3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(0.06mol)を機械的攪拌下で均一に混合し、20℃で上記の系に添加した;得られた混合物を12時間縮合重合反応させ、ポリ(アミド酸)を含む材料を得た;
(2)工程(1)で得られたポリ(アミド酸)を含む材料に、無水酢酸(0.36mol)とピリジン(0.36mol)の混合物を加え、20℃で18時間分子内脱水し、ポリイミド含有材料を得た。その後、ポリイミド含有材料にN-メチル-2-ピロリドン(NMP)600mLを加えて希釈し、上記希釈物を水及びエタノールの混合溶媒(500mL:500mL)に撹拌しながら注いだ。その結果、ポリイミドが析出し、ポリイミドが得られた。次いで、ポリイミドを水及びエタノールの混合物(1500mL:1500mL)で洗浄(3回)した後、吸引濾過し、乾燥(220℃で24時間真空乾燥;次いで70℃で48時間送風乾燥)して、ポリイミドランダム共重合体を得た。このポリイミドランダム共重合体をPI-15と命名した。赤外線試験から、PI-15は式(I)で示される構造を有することがわかった。また、ポリイミドを析出させた後の残存液相からは原料が検出されず、全ての原料が反応に参加していることがわかった。
【0187】
調製例16
(1)窒素保護下、1L三口フラスコに無水N-メチル-2-ピロリドン(200mL)及びペンチプチセン系ジアミン(0.1mol)を順次加え、完全に溶解するまで撹拌した。4,4’-オキシジフタル酸無水物(0.02mol)及び4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物(0.08mol)を超音波条件下で均一に混合し、10℃で上記の系に添加した。得られた混合物を12時間縮合重合反応させ、ポリ(アミド酸)を含む材料を得た;
(2)工程(1)で得られたポリ(アミド酸)を含む材料に、無水酢酸(0.52mol)とピリジン(0.52mol)との混合物を加え、20℃で18時間分子内脱水し、ポリイミド含有材料を得た。その後、ポリイミド含有材料にN-メチル-2-ピロリドン(NMP)600mLを加えて希釈し、上記希釈材料を水とエタノールとの混合溶媒(500mL:500mL)に撹拌しながら注いだ。その結果、ポリイミドが析出し、ポリイミドが得られた。次いで、ポリイミドを水及びエタノールの混合物(1500mL:1500mL)で洗浄(3回)した後、吸引濾過し、乾燥(220℃で24時間真空乾燥;次いで70℃で48時間送風乾燥)して、ポリイミドランダム共重合体を得た。このポリイミドランダム共重合体をPI-16と命名した。赤外線試験から、PI-16は式(I)で示される構造3を有することがわかった。また、ポリイミドを析出させた後の残存液相からは原料が検出されなかったことから、全ての原料が反応に参加していることがわかった。
【0188】
調製例17
等モル量のトリプチセン系二無水物を4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物(6FDA)の代わりに用い、等モル量のペンチプチセン系ジアミンをm-フェニレンジアミンの代わりに用いた以外は、調製例4に従って調製を行った。調製したポリイミドランダム共重合体をPI-17と命名した。詳細な反応条件を表1にまとめた。赤外線試験の結果、PI-17は式(I)で示される構造を有し、XはXcであり、YはYdであり、Z及びZ’はともにZ3であった。また、ポリイミドを析出させた後の残存液相からは原料が検出されず、すべての原料が反応に参加していることがわかった。
【0189】
調製例18
等モル量の3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物を4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物の代わりに用い、等モル量のペンチプチセンジアミンをm-フェニレンジアミンの代わりに用いた以外は、調製例4に従って調製を行った。調製したポリイミドランダム共重合体をPI-18と命名した。詳細な反応条件を表1にまとめた。赤外線試験から、PI-18は式(I)で示される構造を有することがわかった。また、ポリイミドが析出した後の残存液相からは原料が検出されず、すべての原料が反応に参加していることがわかった。
【0190】
調製例19
等モル量の3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物を4,4-オキシジフタル酸無水物(ODPA)の代わりに用い、等モル量のペンチプチセン系ジアミンをm-フェニレンジアミンの代わりに用いた以外は、調製例4に従って調製を行った。調製したポリイミドランダム共重合体をPI-19と命名した。詳細な反応条件を表1にまとめた。赤外線試験から、PI-19は式(I)で示される構造を有することがわかった。また、ポリイミドが析出した後の残存液相からは原料が検出されず、すべての原料が反応に参加していることが示された。
【0191】
調製例20
m-フェニレンジアミンの代わりに等モル量のペンチプチセン系ジアミンを用いた以外は、調製例4に従って調製を行った。調製したポリイミドランダム共重合体をPI-20と命名した。詳細な反応条件を表1にまとめた。赤外線テストの結果、PI-20は式(I)で示される構造を有し、XはXcであり、YはYaであり、Z及びZ’は共にZ3であった。また、ポリイミドを析出させた後の残存液相からは原料が検出されなかったことから、すべての原料が反応に参加していることがわかった。
【0192】
調製例21
文献「YAMAMOTO H, MI Y, STERN S A. Structure/Permeability Relationships of Polyimide Membranes. II. Journal of Polymer Science: Part B: Polymer Physics 1990, 28: 2291-2304.」を参照して、6FDA-mPDA共重合体を調製した。
【0193】
調製例22
文献「LUO S J, LIU Q, ZHANG B H, et al. Pentiptycene-based polyimides with hierarchically controlled molecular cavity architecture for efficient membrane gas separation. J Membrane Sci 2015, 480: 20-30.」を参照して、6FDA-PPDA共重合体を調製した。
【0194】
調製例23
二無水物モノマーとして4,4-オキシジフタル酸無水物(0.04mol)及び4,4-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物(0.06mol)を用いた。窒素保護下、2つの0.5L三口フラスコにそれぞれ80mL(A)及び120mL(B)の無水N-メチル-2-ピロリドンを入れ、A及びBにそれぞれ0.04mol及び0.06molのm-フェニレンジアミンを加え、材料が完全に溶解するまで撹拌した。4,4-オキシジフタル酸無水物(ODPA)(12.4138g、0.04mol)及び4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物(6FDA)(26.6544g、0.06mol)をそれぞれA及びBに添加した(上記の系に20℃で添加)。得られた混合物を8時間縮合重合反応させた。2つの反応系の溶液を1L三口フラスコに移し、20℃で4時間反応を続け、ポリ(アミド酸)溶液を得た。無水酢酸(36.7524g,0.36mol)及びピリジン(28.4760g,0.36mol)の混合物を、ポリ(アミド酸)を含む材料に加え、20℃で18時間分子内脱水し、ポリイミド含有材料を得た。その後、ポリイミド含有材料にN-メチル-2-ピロリドン(NMP)を加えて希釈し、撹拌下、上記希釈物を水及びエタノールの混合溶媒に注いだ。その結果、ポリイミドが析出し、ポリイミドが得られた。その後、ポリイミドを水及びエタノールの混合物で洗浄し、吸引濾過した後、乾燥(220℃で24時間真空乾燥、その後70℃で48時間送風乾燥)し、ポリイミドブロック共重合体を得た。
【0195】
【0196】
以下の例を用いてポリイミド系中空糸膜の調製を説明する。
【0197】
中空糸膜の調製例1
(1)上記調製例10で得られたポリイミドランダム共重合体30重量%、NMP45重量%、エタノール(沸点:78℃)10重量%、THF(沸点:68.28℃)10重量%、及び硝酸リチウム5重量%を攪拌装置付き釜に添加し、50℃に加熱し、窒素保護下(回転数:600r/min)で36時間攪拌した。攪拌停止後、25℃、-0.1MPa、回転数10r/minで24時間脱気し、50℃のフィルタースクリーン(孔径100メッシュ)で濾過し、キャスト液を得た。
【0198】
(2)上記キャスト液及びボア液(NMP:水=95重量%:5重量%)を、それぞれキャスト液圧力0.8MPa、ボア液圧力20Paで定量ポンプを用いて単孔式紡糸口金(仕様:0.6/0.4/0.2)に輸送した。ボア液及びキャスト液を一緒に紡糸口金から押し出し、10cmのエアギャップを通過させた後、50℃の水中に入れて固化させ、ポリイミド系中空糸膜前駆体を得た。紡糸口金温度(押し出し温度)は75℃であり、中空紡糸口金へのキャスト液及びボア液の流量は、それぞれ6mL/min及び2mL/minであった;
(3)工程(2)で得られたポリイミド系中空糸膜前駆体を巻き取り機(直径50cmの円筒に巻き取り、1周157cm)で巻き取った後、水、エタノール、及びn-ヘキサンに各2回、順次投入し、抽出時間3時間で抽出した。その後、抽出した中空糸膜をヒュームフードに入れ、室温で12時間自然乾燥し、ポリイミド系中空糸膜を得た。ここで、巻き取り速度は1m/sであった。
【0199】
得られた中空糸膜を水銀圧入ポロシメトリーで評価したところ、空孔率は65.5%であった。緻密層の厚さは150nmであった。機械的特性評価(GB/T1040.1-2006に準拠)の結果、膜繊維の破断力は6N、破断伸度は50%であった。膜繊維を重水素化試薬DMSOで溶解し、
1H NMRスペクトルで分析した。
図8参照。
【0200】
中空糸膜の調製例2
(1)上記調製例4で得られたポリイミドランダム共重合体27.5重量%、DMF48.5重量%、エタノール(沸点:78℃)10重量%、及びTHF(沸点:68.28℃)10重量%、及び硝酸リチウム4重量%を攪拌装置付き釜に添加し、50℃に加熱し、窒素保護下(回転数120r/min)で36時間攪拌した。攪拌停止後、25℃、-0.1MPa、回転数10r/minで24時間脱気し、50℃のフィルタースクリーン(孔径100メッシュ)で濾過し、キャスト液を得た。
【0201】
(2)上記キャスト液及びボア液(NMP:水=95重量%:5重量%)を、それぞれキャスト液圧力0.8MPa、ボア液圧力20Paで定量ポンプを用いて単孔式紡糸口金(仕様:0.6/0.4/0.2)に輸送した。ボア液及びキャスト液を一緒に紡糸口金から押し出し、5cmのエアギャップを通過させた後、50℃の水中に入れて固化させ、ポリイミド系中空糸膜前駆体を得た。紡糸口金温度は70℃であり、中空紡糸口金へのキャスト液及びボア液の流量は、それぞれ8mL/min及び2.5mL/minであった。
【0202】
(3)工程(2)で得られたポリイミド系中空糸膜前駆体を巻き取り機(直径50cmの円筒に巻き取り、1周157cm)で巻き取った後、水、エタノール、及びn-ヘキサンに各2回、順次投入し、抽出時間3時間で抽出した。次いで、抽出した中空糸膜をヒュームフードに入れ、室温で12時間自然乾燥し、ポリイミド系中空糸膜を得た。ここで、巻き取り速度は1m/sであった。
【0203】
得られた中空糸膜を水銀圧入ポロシメトリーで評価したところ、支持層の空孔率は67.5%であった。緻密層の厚さは400nmであった。中空糸膜断面の電子顕微鏡走査像を
図4に示す。
【0204】
中空糸膜の調製例3(比較例)
(1)上記調製例11で得られたポリイミドランダム共重合体25重量%、NMP50重量%、エタノール(沸点:78℃)10重量%、及びTHF(沸点:68.28℃)10重量%、塩化リチウム5重量%を攪拌装置付き釜に添加し、50℃に加熱し、窒素保護下(回転数100r/min)で36時間攪拌した。攪拌停止後、25℃、-0.1MPa、回転数10r/minで24時間脱気し、50℃のフィルタースクリーン(孔径100メッシュ)で濾過し、キャスト液を得た。
【0205】
(2)上記キャスト液及びボア液(NMP:水=30重量%:70重量%)を、それぞれキャスト液圧力0.8MPa、ボア液圧力20Paで定量ポンプを用いて単孔式紡糸口金(仕様:0.6/0.4/0.2)に輸送した。ボア液及びキャスト液を一緒に紡糸口金から押し出し、30cmのエアギャップを通過させた後、50℃の水に入れて固化させ、ポリイミド系中空糸膜前駆体を得た。紡糸口金温度は60℃であり、中空紡糸口金へのキャスト液及びボア液の流量はそれぞれ6mL/min及び2mL/minであった;
(3)工程(2)で得られたポリイミド系中空糸膜前駆体を巻き取り機(直径50cmの円筒に巻き取り、1周157cm)で巻き取った後、水、エタノール、及びn-ヘキサンに各2回、順次投入し、抽出時間3時間で抽出した。その後、抽出した中空糸膜をヒュームフードに入れ、室温で12時間自然乾燥し、ポリイミド系中空糸膜を得た。ここで、巻き取り速度は1.5m/sであった。
【0206】
得られた中空糸膜を水銀圧入ポロシメトリーで評価したところ、上記空孔率は70%であった。緻密層の厚さは500nmであった。中空糸膜断面の電子顕微鏡走査像を
図5に示す。
【0207】
中空糸膜の調製例4~7
希釈剤の配合及び調製条件のパラメータ(押出温度など)を変更した以外は、中空糸膜の調製例1を繰り返した。調製した中空糸膜の詳細な条件及び緻密層の厚さを表2に示す。
【0208】
中空糸膜の調製例8
添加剤の添加割合を変えた以外は、中空糸膜の調製例1を繰り返した。
【0209】
ここで、添加材料は、20重量%のポリイミドランダム共重合体、50重量%のNMP、10重量%のエタノール、10重量%のTHF及び10重量%の硝酸リチウムであった。
【0210】
最終的に調製された中空糸膜の緻密層の厚さを表2に示す。
【0211】
中空糸膜の調製例9~11
調製例10で得られたポリイミドランダム共重合体の代わりに、上記調製例4、調製例14及び調製例17で得られたポリイミド共重合体を用いた以外は、中空糸膜の調製例1を繰り返した。
【0212】
最終的に調製された中空糸膜の緻密層の厚さを表2に示す。
【0213】
中空糸膜の調製例12
希釈剤の配合及び調製条件のパラメータ(押出温度など)を変更した以外は、中空糸膜調製例1を繰り返した。
【0214】
作製した中空糸膜の詳細な条件及び緻密層の厚さを表2に示す。中空糸膜断面の電子顕微鏡走査像を
図6に示す。
【0215】
中空糸膜の調製例13
(1)上記調製例10で得られたポリイミドランダム共重合体30重量%、NMP45重量%、エタノール(沸点:78℃)12重量%、THF(沸点:68.28℃)12重量%、及び硝酸リチウム1重量%を攪拌装置付き釜に添加し、50℃に加熱し、窒素保護下(回転数60r/min)で36時間攪拌した。攪拌停止後、25℃、-0.1MPa、回転数3r/minで24時間脱気し、50℃のフィルタースクリーン(孔径100メッシュ)で濾過し、キャスト液を得た。
【0216】
(2)上記キャスト液及びボア液(NMP:水=70重量%:30重量%)を、それぞれキャスト液圧力1.8MPa、ボア液圧力120Paで定量ポンプを用いて単孔式紡糸口金(仕様:0.6/0.4/0.2)に輸送した。ボア液及びキャスト液を一緒に紡糸口金から押し出し、15cmのエアギャップを通過させた後、50℃の水に入れて固化させ、ポリイミド系中空糸膜前駆体を得た。ここで、紡糸口金温度(押し出し温度)は60℃であり、中空紡糸口金へのキャスト液及びボア液の流量は、それぞれ6mL/min及び2mL/minであった;
(3)工程(2)で得られたポリイミド系中空糸膜前駆体を巻き取り機(直径50cmの円筒に巻き取り、1周157cm)で巻き取った後、水、エタノール、及びn-ヘキサンに各2回、順次投入し、抽出時間3時間で抽出した。次いで、抽出した中空糸膜をヒュームフードに入れ、室温で12時間自然乾燥し、ポリイミド系中空糸膜を得た。ここで、巻き取り速度は1m/sであった。
【0217】
中空糸膜の調製例14
(1)上記調製例10で得られたポリイミドランダム共重合体30重量%、NMP45重量%、エタノール(沸点:78℃)12.5重量%、及びTHF(沸点:68.28℃)12.5重量%を攪拌装置付き釜に添加し、50℃に加熱し、窒素保護下(回転数60r/min)で36時間攪拌した。攪拌停止後、25℃、-0.1MPa、回転数3r/minで24時間脱気し、50℃のフィルタースクリーン(孔径:100メッシュ)で濾過し、キャスト液を得た;
(2)上記キャスト液及びボア液(NMP:水=70重量%:30重量%)を、それぞれキャスト液圧力1.8MPa、ボア液圧力120Paで定量ポンプを用いて単孔式紡糸口金(仕様:0.6/0.4/0.2)に輸送した。ボア液及びキャスト液を一緒に紡糸口金から押し出し、15cmのエアギャップを通過させた後、50℃の水に入れて固化させ、ポリイミド系中空糸膜前駆体を得た。ここで、紡糸口金温度(押し出し温度)は65℃であり、中空紡糸口金へのキャスト液及びボア液の流量は、それぞれ8mL/min及び2.5mL/minであった;
(3)工程(2)で得られたポリイミド系中空糸膜前駆体を巻き取り機(直径50cmの円筒に巻き取り、1周157cm)で巻き取った後、水、エタノール、及びn-ヘキサンに各2回、順次投入し、抽出時間3時間で抽出した。次いで、抽出した中空糸膜をヒュームフードに入れ、室温で12時間自然乾燥し、ポリイミド系中空糸膜を得た。ここで、巻き取り速度は1m/sであった。
【0218】
中空糸膜の調製例15~16(比較例)
調製例10で得られたポリイミドランダム共重合体の代わりに、上記調製例11及び調製例13で得られたポリイミド共重合体を用い、条件及びパラメーターを調整した以外は、中空糸膜の調製例1を繰り返した。
【0219】
調製した中空糸膜の詳細な条件及び緻密層の厚さを表2に示す。
【0220】
中空糸膜の調製例17~18
調製例10で得られたポリイミドランダム共重合体の代わりに、上記調製例16及び調製例20で得られたポリイミド共重合体を用い、条件およびパラメーターを調整した以外は、中空糸膜の調製例14を繰り返した。
【0221】
調製した中空糸膜の詳細な条件と緻密層の厚さを表2に示す。
【0222】
比較中空糸膜の調製例S2
キャスト液を調製するプロセスにおいてTHFを添加しなかった以外は、中空糸膜の調製例1を繰り返し、ここで、添加材料は、ポリイミドランダム共重合体25重量%、NMP50重量%、エタノール20重量%、及び硝酸リチウム5重量%であった。
【0223】
最終的に調製した中空糸膜の断面の電子顕微鏡走査像を
図7に示す。本比較例で作製した中空糸膜は多孔質構造であり、有効な分離スキン層(緻密層)は形成されていないことがわかる。
【0224】
比較中空糸膜の調製例S3
キャスト液を調製するプロセスにおいてNMPを添加しなかった以外は、中空糸膜の調製例1を繰り返し、ここで、添加材料は、ポリイミドランダム共重合体30重量%、エタノール28重量%、THF28重量%、硝酸リチウム14重量%であった。
【0225】
最終的に調製した中空糸膜は破断し、紡糸できなくなった。
【0226】
比較中空糸膜の調製例S4
押出を100℃で行った以外は、中空糸膜の調製例1を繰り返した。
【0227】
最終的に調製されたポリイミド中空糸膜は膜形成性が悪く、有効な分離スキン層は形成されなかった。
【0228】
表2において、「溶媒1」はポリイミドに対する良溶媒、「溶媒2」はポリイミドに対する第1の貧溶媒、「溶媒3」はポリイミドに対する第2の貧溶媒を表し、「緻密層の厚さ」はポリイミド系中空糸膜の緻密層の厚さを表し、「ギャップ」は中空糸膜の調製工程におけるエアギャップを表す。
【0229】
【0230】
試験例1
上記中空糸膜の調製例で作製した中空糸膜をガス分離性能試験に供した。
【0231】
透過率(単位GPU)の試験方法:20℃、圧力差0.1MPaの条件下で、単位膜面積当たり及び単位時間当たりの、膜を通過するガス流量を試験した。分離係数αは無次元であり、膜中のガス成分の選択透過性を特徴付けるために使用される。分離係数は、膜中の2つのガスの透過速度の比である。試験結果を表3に示す。ここで、1GPU=10-6cm3(STP)/(cm2・s・cmHg)。
【0232】
市販のポリイミド材料Torlon 4000 TFで作製した中空糸膜(E1)についても、本発明のガス分離性能を試験した。試験結果を表3に示す。
【0233】
E1の調製:市販のポリイミド材料Torlon 4000 TFを使用した以外は、中空糸膜の調製例1を繰り返して、ポリイミド中空糸膜(E1)を得た。
【0234】
【0235】
市販のポリイミド材料から調製したポリイミド中空糸膜は、中空糸膜の調製例1で調製したポリイミド中空糸膜とはかなり異なることがわかった。試験した機械的特性は、次の通りである:膜繊維の破断力2.0N、及び破断伸度9%。中空糸膜の調製例1で調製したポリイミド中空糸膜の機械的特性は、市販のポリイミド材料から調製した中空糸膜の機械的特性よりも著しく優れていることがわかった。
【0236】
ヘリウムガスの精製プロセスについて、以下の実施例で説明する。
【0237】
実施例1
ガス田から生産された天然ガスを多段フラッシュ蒸発に供し、原料ガスを得た。ここで、原料ガス中のヘリウムの体積割合は8.5%であり、他のガス成分は、体積割合35%のメタン、体積割合37.3%の窒素、体積割合2.1%の水素、体積割合7.5%の二酸化炭素、体積割合0.1%の水、及び体積割合9.5%の酸素を含んでいた。
【0238】
原料ガス(空間速度200m3/m3・h)を触媒脱水素ユニットに通した。ここで、触媒脱水素ユニットの触媒としてPtを使用し、触媒酸化反応の温度を110℃とし、酸素の体積割合を8%以上に維持した。触媒脱水素ユニットの出口からのガスは、熱交換により95℃まで冷却された後、吸着装置(ソーダ石灰を吸着剤とするアルカリ吸着)に送られ、水蒸気及び炭酸ガスが除去された。その後、原料ガス中の残存ガスを圧縮および熱交換した後、上記中空糸膜の調製例4で作製したポリイミド中空糸膜の膜モジュールに、圧力5MPaおよび温度90℃で通過させることにより、第1段高分子膜分離及び第2段高分子膜分離を行い、粗ヘリウムガスを得た。次いで、この粗ヘリウムガスに圧縮及び熱交換を施し、圧力10MPaおよび温度400℃のパラジウム-銅合金膜(合金膜の厚さは20μm、義烏瑞盛新材料技術有限公司より購入したPdAM-600)分離ユニットに通して、深脱水素反応を行い、5Nグレードの超高純度ヘリウムガスを得た。ここで、各分離段階後のガス成分の体積割合を表4に示す。
【0239】
【0240】
実施例2
原料ガスは、液化天然ガスステーションからのボイルオフガス(BOG)であり、当該原料ガスにおいて、ヘリウムの体積比率は15.73%であった。他のガス成分は、体積比率19.9%のメタン、体積比率57.7%の窒素、体積比率6.62%の水素、および体積比率の合計0.05%の酸素を含んでいた。
【0241】
原料ガス(空間速度600m3/m3・h)を触媒脱水素ユニットに通した。ここで、触媒脱水素装置の触媒としてRuを使用し、触媒酸化反応の温度を90℃とし、酸素の体積割合を8%以上に維持した。触媒脱水素装置の出口からのガスは、熱交換により95℃まで冷却された後、吸着装置(ソーダ石灰を吸着剤とするアルカリ吸着)に送られ、水蒸気が除去された。その後、原料ガス中の残存ガスを圧縮および熱交換した後、上記中空糸膜の調製例2で作製したポリイミド中空糸膜の膜モジュールに、圧力3MPaおよび温度90℃で通過させることにより、第1段高分子膜分離及び第2段高分子膜分離を行い、粗ヘリウムガスを得た。次いで、この粗ヘリウムガスに圧縮及び熱交換を施し、圧力15MPa、温度277℃のパラジウム-金合金膜(合金膜の厚さは6μm、南京高前機能材料技術有限公司より購入したUHP-2L)分離ユニットに通して、深脱水素反応を行い、5Nグレードの超高純度ヘリウムを得た。ここで、各段階の分離後のガス成分の体積割合を表5に示す。
【0242】
【0243】
実施例3
原料ガスは、ガス田で生産された天然ガスを前処理(2段フラッシュ蒸発)して得られたもので、原料ガス中のヘリウムの体積割合は19.7%であった。他のガス成分は、体積割合15.9%のメタン、体積割合53.7%の窒素、体積割合0.05%の水素、体積割合10.65%の二酸化炭素、体積比率割合2.5%の水、および体積割合2.15%の酸素を含んでいた。
【0244】
原料ガス(空間速度520m3/m3・h)を触媒脱水素ユニットに通した。ここで、触媒脱水素装置の触媒としてPdを使用し、触媒酸化反応の温度を120℃とし、酸素の体積割合を8%以上に維持した。触媒脱水素装置の出口からのガスは、熱交換により80℃まで冷却された後、吸着装置(ソーダ石灰を吸着剤とするアルカリ吸着)に送られ、水蒸気と炭酸ガスが除去された。その後、原料ガス中の残存ガスを圧縮および熱交換した後、上記中空糸膜の調製例6で作製したポリイミド中空糸膜の膜モジュールに、圧力5MPaおよび温度85℃で通過させることにより、第1段高分子膜分離、第2段高分子膜分離、第3段高分子膜分離、及び第4段高分子膜分離を行い、粗ヘリウムガスを得た。次いで、この粗ヘリウムガスに圧縮及び熱交換を施し、パラジウム-金合金膜(厚さ10μm、南京高前機能材料技術有限公司より購入したUHP-500)分離ユニットに、圧力4MPaおよび温度304℃で通過させ、深脱水素反応を行い、5Nグレードの超高純度ヘリウムガスを得た。ここで、各段階分離後のガス成分の体積割合を表6に示す。
【0245】
【0246】
実施例4
ヘリウムリッチ水素含有ガス中のヘリウムの体積割合は49.33%であり、他のガス成分は、体積割合20.09%の水素、体積割合29.15%の二酸化炭素、及び体積割合1.43%の水を含んでいた。
【0247】
原料ガス(空間速度150m3/m3・h)を触媒脱水素ユニットに通した。当該触媒脱水素ユニットにおいて、触媒脱水素装置の触媒としてPtを使用し、触媒酸化反応の温度を120℃とし、酸素の体積割合を8%以上に維持した。触媒脱水素装置の出口からのガスは、熱交換により90℃まで冷却された後、吸着ユニット(ソーダ石灰を吸着剤とするアルカリ吸着)に送られ、水蒸気及び炭酸ガスが除去された。その後、原料ガス中の残存ガスを圧縮熱交換した後、上記中空糸膜の調製例10で作製したポリイミド中空糸膜の膜モジュールに、圧力2MPaおよび温度50℃で通過させて高分子膜分離を行い、粗ヘリウムガスを得た。次いで、この粗ヘリウムガスを圧縮及び熱交換した後、圧力22MPaおよび温度489℃のパラジウム-銀合金膜(厚さ12μm、義烏瑞盛新材料技術有限公司より購入したPdAM-800)分離ユニットに通して、深脱水素反応を行い、5Nグレードの超高純度ヘリウムガスを得た。ここで、各分離段階後のガス成分の体積割合を表7に示す。
【0248】
【0249】
実施例5
上記中空糸膜の調製例7で調製したポリイミド中空糸膜の膜モジュールを高分子膜分離に用いた以外は、実施例1と同様にして実施例5を行った。ここで、各分離段階後のガス成分の体積割合を表8に示す。
【0250】
【0251】
実施例6
上記中空糸膜の調製例1で調製したポリイミド中空糸膜の膜モジュールを高分子膜分離に用いた以外は、実施例1と同様にして実施例6を行った。ここで、各分離段階後のガス成分の体積割合を表9に示す。
【0252】
【0253】
比較例1
この比較例1は、触媒酸化装置を設けない以外は、実施例3と同様にして実施した。ここで、各分離段階後のガス成分の体積割合を表10に示す。
【0254】
【0255】
比較例2
この比較例2は、分離のために高分子膜分離ユニットを設けなかった以外は、実施例3と同様にして実施した。ここで、各分離段階後のガス成分の体積割合を表11に示す。
【0256】
【0257】
比較例3
この比較例3は、触媒脱水素ユニット及び高分子膜分離ユニットの順序を入れ替えた以外は、実施例3と同様にして行った。ここで、各分離段階後のガス成分の体積割合を表12に示す。
【0258】
【0259】
以上、本発明の好ましい実施形態について詳細に説明した。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではない。本発明の技術的概念の範囲内で、本発明の技術的解決策に多くの簡単な変更を加えることができ、他の任意の適切な態様における様々な技術的特徴の組み合わせを含む。これらの簡単な修正および組み合わせも本発明の開示内容とみなされるべきであり、そのすべてが本発明の保護範囲に含まれる。
【0260】
前述の実施形態の説明は、例示および説明の目的で提示されたものである。これは、網羅的であること、または本開示を限定することを意図するものではない。特定の実施形態の個々の要素または特徴は、一般に、その特定の実施形態に限定されない。しかしながら、それらは、該当する場合、交換可能であり、明示的に示されまたは記載されていなくても、選択された実施形態において使用することができる。また、様々な変更が可能である。そのような変更は本開示からの逸脱とはみなされず、そのような変更はすべて本開示の範囲内に含まれることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0261】
【
図1】調製例2で調製したポリイミドランダム共重合体の赤外線スペクトルである。
【
図2】調製例3で調製したポリイミドランダム共重合体の赤外線スペクトルである。
【
図3】調製例4で調製したポリイミドランダム共重合体の赤外線スペクトルである。
【
図4】中空糸膜作製例2で作製したポリイミド系中空糸膜の断面走査型電子顕微鏡像である。
【
図5】中空糸膜作製例3で作製したポリイミド系中空糸膜の断面走査型電子顕微鏡像である。
【
図6】中空糸膜調製例12で調製したポリイミド系中空糸膜の断面走査型電子顕微鏡像である。
【
図7】比較中空糸膜作製例S2で作製したポリイミド系中空糸膜の断面走査型電子顕微鏡像である。
【
図8】中空糸膜調製例1で調製したポリイミド系中空糸膜の
1H NMRスペクトルである。
【
図9】調製例4及び調製例10のポリイミド共重合体から調製した平坦な均質膜の孔径分布であり、点で表した曲線が調製例10であり、四角で表した曲線が調製例4である。
【国際調査報告】