(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-05
(54)【発明の名称】質量分析法適合性pH勾配緩衝系
(51)【国際特許分類】
G01N 30/26 20060101AFI20240628BHJP
G01N 30/72 20060101ALI20240628BHJP
G01N 30/88 20060101ALI20240628BHJP
G01N 30/02 20060101ALI20240628BHJP
G01N 27/62 20210101ALI20240628BHJP
C07K 16/00 20060101ALN20240628BHJP
C07K 1/18 20060101ALN20240628BHJP
【FI】
G01N30/26 A
G01N30/72 C
G01N30/88 J
G01N30/02 B
G01N27/62 X
C07K16/00
C07K1/18
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023579552
(86)(22)【出願日】2022-06-22
(85)【翻訳文提出日】2024-02-21
(86)【国際出願番号】 US2022034559
(87)【国際公開番号】W WO2022271853
(87)【国際公開日】2022-12-29
(32)【優先日】2021-06-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2022-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523483485
【氏名又は名称】フェノメネックス,インコーポレイティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100138210
【氏名又は名称】池田 達則
(74)【代理人】
【識別番号】100225598
【氏名又は名称】桐島 拓也
(72)【発明者】
【氏名】アベリノ シー.サンチェス
【テーマコード(参考)】
2G041
4H045
【Fターム(参考)】
2G041CA01
2G041EA04
2G041FA12
2G041GA06
2G041HA01
4H045AA11
4H045AA50
4H045CA40
4H045DA76
4H045EA50
4H045GA23
(57)【要約】
モノクローナル抗体及びその電荷変異体のpH勾配LC-MS特性評価のための改善された移動相緩衝液組成物、方法、及びキットが提供される。
【選択図】
図6ー5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体クロマトグラフィーのための即時使用可能な移動相組成物であって、水、
2~50mMのカルボン酸アンモニウム、
1~50mMのN-メチルモルホリン、その異性体、又はその類似体、及び
室温で約pH4.5~約pH10.5の範囲内にあるpHを含む、即時使用可能な移動相組成物。
【請求項2】
2~25mMの前記カルボン酸アンモニウム、及び
1~10mMの前記N-メチルモルホリン、前記その異性体、又は前記その類似体を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記カルボン酸アンモニウムが、酢酸アンモニウム及びギ酸アンモニウムからなる群から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記N-メチルモルホリン異性体が、2-メチルモルホリン、2-メチルモルホリン、2-メチル-1,3-オキサジナン、3-メチル-1,3-オキサジナン、4-メチル-1,3-オキサジナン、5-メチル-1,3-オキサジナン、及び6-メチル-1,3-オキサジナンからなる群から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記類似体が、アルキルC1-C6モルホリン、ジアルキルC1-C6モルホリン、アルキルC1-C6-1,3-オキサジナン、及びジアルキルC1-C6-1,3-オキサジナンからなる群から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記移動相が、2部水性緩衝系を含み、
前記水性緩衝系の部分Aが、約10mM~約20mMの酢酸アンモニウム、約3~約8mMのN-メチルモルホリン、及びpH5.0~5.5の範囲内にあるpHを含み、
前記水性緩衝系の部分Bが、2~10mMの酢酸アンモニウム、1~5mMのN-メチルモルホリン、及びpH9.5~10.5の範囲内にあるpHを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
部分A緩衝液の前記pHが、酢酸で調節される、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
部分B緩衝液の前記pHが、水酸化アンモニウムで調節される、請求項6に記載の組成物。
【請求項9】
部分A緩衝液が、約14~約16mMの前記酢酸アンモニウム、約4~約6mMの前記N-メチルモルホリンを含み、前記pHが、約pH5.1~約pH5.3である、請求項6に記載の組成物。
【請求項10】
部分B緩衝液が、約4~約6mMの前記酢酸アンモニウム、約1mM~約3mMの前記N-メチルモルホリンを含み、前記pHが、約10.0~約10.4である、請求項6に記載の組成物。
【請求項11】
前記酢酸アンモニウムの濃度が、25mM以下、20mM以下、又は約15mM以下である、請求項1~10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
100ppb以下の個々の金属不純物を含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
前記液体クロマトグラフィーが、固定相を含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項14】
前記固定相が、イオン交換固定相、サイズ排除固定相、親水性相互作用固定相、及び逆相固定相からなる群から選択される、請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
前記イオン交換固定相が、カチオン交換固定相である、請求項14に記載の組成物。
【請求項16】
前記カチオン交換固定相が、強カチオン交換固定相及び弱カチオン交換固定相からなる群から選択される、請求項15に記載の組成物。
【請求項17】
前記液体クロマトグラフィーが、質量分析計に直接結合(オンライン)される、請求項1~16のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項18】
試料中の分析物を分離及び/又は特性評価する方法であって、
移動相をクロマトグラフィーカラムを通して流すことであって、前記移動相が、2部水性緩衝系を含み、
前記水性緩衝系の部分Aが、約10~50mMのカルボン酸アンモニウム、3~16mMのN-メチルモルホリン、又はその異性体、若しくは類似体、及び約pH5~約pH5.5の範囲内にあるpHを含み、
前記水性緩衝系の部分Bが、2~25mMのカルボン酸アンモニウム、1~10mMのN-メチルモルホリン、又はその異性体、若しくは類似体、及び約pH9.5~約pH10.5の範囲内にあるpHを含む、流すことと、
前記分析物を含む試料を前記移動相に注入することと、
前記カラムから前記分析物を溶出することと、
溶出液中の前記分析物を検出することと、を含む、方法。
【請求項19】
移動相をクロマトグラフィーカラムを通して流すことであって、前記移動相が、2部水性緩衝系を含み、
前記水性緩衝系の部分Aが、約10~25mMの酢酸アンモニウム、3~8mMのN-メチルモルホリン、及び約pH5~約pH5.5の範囲内にあるpHを含み、
前記水性緩衝系の部分Bが、2~10mMの酢酸アンモニウム、1~5mMのN-メチルモルホリン、及び約pH9.5~約pH10.5の範囲内にあるpHを含む、流すことと、
前記分析物を含む試料を前記移動相に注入することと、
前記カラムから前記分析物を溶出することと、
前記溶出液中の前記分析物を検出することと、を含む、請求項18に記載の試料中の分析物を分離及び/又は特性評価する方法。
【請求項20】
前記分析物が、生体分子である、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
前記生体分子が、モノクローナル抗体、モノクローナル抗体の抗原結合断片、及び/又はその電荷変異体である、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記モノクローナル抗体又は断片が、約pI6.5~約pI9.5のpIを有する、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記クロマトグラフィーカラムが、イオン交換固定相、サイズ排除固定相、親水性相互作用固定相、及び逆相固定相からなる群から選択される固定相を含む、請求項18~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記イオン交換固定相が、強カチオン交換固定相及び弱カチオン交換固定相からなる群から選択されるカチオン交換固定相である、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記検出することが、前記溶出液の前記UV吸光度を決定することを含む、請求項18~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記分析物を質量分析計(MS)で検出することを含む、請求項18~25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記MSが、セクタ、飛行時間型(TOF)、四重極、イオントラップ、フーリエ変換イオンサイクロトロン共鳴、及びタンデム質量分析計、又はタンデム若しくは直交プラットフォーム内で組み合わせられた前記質量分析計のうちの2つ以上からなる群から選択される、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
MS検出が、分析物イオンを生成することを含む、請求項26又は27に記載の方法。
【請求項29】
前記生成することが、エレクトロスプレーイオン化(ESI)、マトリックス支援レーザ脱着/イオン化(MALDI)、高速原子爆撃(FAB)、化学イオン化(CI)、電子衝撃(EI)、大気固体分析イオン化(ASAI)、大気圧力光イオン化(APPI)、脱着エレクトロスプレーイオン化(DESI)、及び大気圧力蒸気源(APVS)からなる群から選択されるイオン化技術を含む、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記MS検出が、前記分析物イオンの質量スペクトルを取得することを更に含む、請求項28又は29に記載の方法。
【請求項31】
前記分析物イオンの質量スペクトルが、前記N-メチルモルホリン、その異性体、又は類似体を含まない酢酸アンモニウムを含む移動相緩衝系を用いる同等の方法よりも、分析物アイソフォームに対するより低い電荷状態を呈する、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
分析物アイソフォームに対する前記より低い電荷状態が、前記N-メチルモルホリン、又はその異性体、若しくは類似体を含まない酢酸アンモニウムを含む移動相緩衝系を用いる同等の方法よりも、電荷状態エンベロープ内の増加した分析物質量をもたらす、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記MS検出が、前記分析物の分子量を決定することを更に含む、請求項25~32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
前記水性緩衝系の部分Aは、酢酸でpH5.2に調節された、約15mMの酢酸アンモニウム、約5mMのN-メチルモルホリンを含み、
前記水性緩衝系の部分Bは、水酸化アンモニウムでpH10.2に調節された、約5mMの酢酸アンモニウム、約2mMのN-メチルモルホリンを含む、請求項19に記載の方法。
【請求項35】
前記移動相が、約100ppb以下の個々の金属不純物を含有する、請求項19に記載の方法。
【請求項36】
溶出が、
前記注入の後に前記カラムを通って流れる緩衝液A%に対して、経時的に緩衝液B%を増加させることであって、前記緩衝液A%+緩衝液B%=前記移動相の100%である、増加させることを含む、pH勾配を形成することを含む、請求項19に記載の方法。
【請求項37】
前記勾配の傾きが、前記溶出液の0.1~10%B/CV、又は0.5~5%B/カラム体積(CV)の範囲内にある、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記pH勾配が、線形pH勾配、セグメント化pH勾配、湾曲pH勾配、又はステップpH勾配である、請求項36又は37に記載の方法。
【請求項39】
キットであって、
水で希釈して、10~50mMのカルボン酸アンモニウム、3~16mMのN-メチルモルホリン、又はその異性体、若しくは類似体、及び約pH4.5~約pH5.5の範囲内にあるpHを含む緩衝液Aを得るための第1の濃縮液体組成物の体積を有する第1の容器と、
水で希釈して、2~25mMのカルボン酸アンモニウム、1~10mMのN-メチルモルホリン、又はその異性体、若しくは類似体、及び約pH9.5~約pH10.5の範囲内にあるpHを含む緩衝液Bを得るための第2の濃縮液体組成物の体積を有する第2の容器と、
使用説明書と、を備える、キット。
【請求項40】
水で希釈して、10~25mMの酢酸アンモニウム、3~8mMのN-メチルモルホリン、及び約pH4.5~約pH5.5の範囲内にあるpHを含む緩衝液Aを得るための第1の濃縮液体組成物の体積を有する第1の容器と、
水で希釈して、2~10mMの酢酸アンモニウム、1~5mMのN-メチルモルホリン、及び約pH9.5~約pH10.5の範囲内にあるpHを含む緩衝液Bを得るための第2の濃縮液体組成物の体積を有する第2の容器と、
使用説明書と、を備える、請求項39に記載のキット。
【請求項41】
前記第1の濃縮液体組成物及び前記第2の濃縮液体組成物が、それぞれ、2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、11倍、12倍、13倍、14倍、15倍、16倍、17倍、18倍、19倍、又は20倍濃縮の前記緩衝液A及び前記緩衝液Bからなる群から選択される濃度を含む、請求項39又は40に記載のキット。
【請求項42】
クロマトグラフィーカラムを更に備える、請求項39~41のいずれか一項に記載のキット。
【請求項43】
前記クロマトグラフィーカラムが、強イオン交換クロマトグラフィーカラム又は弱イオン交換クロマトグラフィーカラムである、請求項42に記載のキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、PCT国際特許出願として2022年6月22日に出願され、2021年6月22日に出願された米国仮特許出願第63/213,562号及び2021年3月30日に出願された同第63/325,392号の優先権及び利益を主張し、その開示は、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
モノクローナル抗体(mAb)翻訳後修飾(PTM)は、治療用mAbの重要な品質属性である。翻訳後修飾は、製造、精製、及び貯蔵中に生じ得る。PTMは、治療用mAbsの有効性、活性、及び安定性に影響を及ぼし得る。一次アミノ酸配列変動及びPTMは、C末端リジン切断、N末端ピログルタマート形成、N-グリコシル化時に存在するシアリル化、及びアスパラギン又はグルタミン残基の脱アミド化を含み得る。これらの修飾は、mAbの酸性及び塩基性電荷変異体をもたらす分子の等電点(pI)を変更し得る。
【0003】
モノクローナル抗体は、PTMの製造及び製剤化中に定期的に監視される。典型的な監視は、溶出のために塩又はpH勾配を使用する紫外線監視(UV)を伴うイオン交換クロマトグラフィー(IEC)の使用を含む。天然高分解能質量分析法(HRMS)に結合されたIECを有するmAb PTMを監視することは、修飾の迅速な同定を可能にする。無傷のmAbsの天然MSは、PTMの同定を容易にする、より少ないスペクトルオーバーラップ及びより少ない干渉を伴うより単純なスペクトルを与える。
【0004】
改良された再現性、分解能、感度、及びpH直線性を実証する、モノクローナル抗体のIEC-HRMS電荷変異体分析のための改良された移動相緩衝組成物及び方法が望ましい。
【発明の概要】
【0005】
本開示は、pH勾配移動相緩衝組成物及び方法を提供し、低イオン強度(約50mM以下、約30mM以下、又は約20mM以下)を有する広範囲のpH値(pH5.2~10.2)にわたって良好なpH制御を与え、無傷のタンパク質についての改善されたMS感度「より天然な」質量スペクトルを与え、タンパク質アイソフォームについてより低い電荷状態を与え、電荷状態エンベロープ内の増加した質量、並びに向上したpH勾配直線性、堅牢性、及び再現性を与えるという利点を有する。
【0006】
イオン交換クロマトグラフィーを使用するとき、低等電点(pI)mAbs(例えば、インフリキシマブ、pI7.6)を含む無傷のモノクローナル抗体(mAbs)の電荷変異体の改善されたクロマトグラフィー分解能を実証する、移動相pH勾配緩衝組成物及び方法が提供される。
【0007】
移動相緩衝組成物及び方法は、タンパク質分析物の直接結合したIEC-HRMSにおいて使用され得、例えば、移動相緩衝中の約50mM未満、30mM未満、25mM未満、又は20mM未満の塩濃度に起因する、良好なMS感度を実証し得る。
【0008】
移動相緩衝組成物及び方法は、無傷のタンパク質のより低い電荷状態、すなわち、変性が減少した無傷のタンパク質分析物を示すMSスペクトルに起因して、質量分析(MS)分解能が改善された天然タンパク質分析物のIEC-HRMS中で使用され得る。
【0009】
本明細書に提供される緩衝組成物及び方法は、無傷のタンパク質分析物のUV及びHRMS検出の両方に好適である。
【0010】
本開示は、水、2~50mMのカルボン酸アンモニウム、1~50mMのN-メチルモルホリン、その異性体、又はその類似体、及び室温で約pH4.5~約pH10.5の範囲内にあるpHを含む、液体クロマトグラフィーのための即時使用可能な移動相組成物を提供する。液体クロマトグラフィーのための即時使用可能な移動相組成物は、2~25mMのカルボン酸アンモニウムと、1~10mMのN-メチルモルホリン、その異性体、又はその類似体と、を含み得る。カルボン酸アンモニウムは、酢酸アンモニウム又はギ酸アンモニウムであり得る。N-メチルモルホリン、その異性体、又はその類似体は、N-メチルモルホリンであり得る。N-メチルモルホリン異性体は、2-メチルモルホリン、2-メチルモルホリン、2-メチル-1,3-オキサジナン、3-メチル-1,3-オキサジナン、4-メチル-1,3-オキサジナン、5-メチル-1,3-オキサジナン、及び6-メチル-1,3-オキサジナンからなる群から選択され得る。N-メチルモルホリン類似体は、アルキルC1-C6モルホリン、ジアルキルC1-C6モルホリン、アルキルC1-C6-1,3-オキサジナン、及びジアルキルC1-C6-1,3-オキサジナンからなる群から選択され得る。
【0011】
水、2~25mMの酢酸アンモニウム、1~10mMのN-メチルモルホリン、及び室温で約pH4.5~約pH10.5の範囲内にあるpHを含む、液体クロマトグラフィーのための即時使用可能な移動相組成物が提供される。
【0012】
移動相は、2部水性緩衝系を含み得、水性緩衝系の部分Aは、約10mM~約20mMの酢酸アンモニウム、約3~約8mMのN-メチルモルホリン、及びpH5.0~5.5の範囲内にあるpHを含み、水性緩衝系の部分Bは、2~10mMの酢酸アンモニウム、1~5mMのN-メチルモルホリン、及びpH9.5~10.5の範囲内にあるpHを含む。いくつかの実施形態では、部分A緩衝液は、約14mM~約16mMの酢酸アンモニウム、約4mM~約6mMのN-メチルモルホリン、及び約pH5.1~約pH5.3のpHを含み得る。いくつかの実施形態では、部分B緩衝液は、約4mM~約6mMの酢酸アンモニウム、約1mM~約3mMのN-メチルモルホリン、及び約pH10~約pH10.4のpHを含み得る。
【0013】
部分A緩衝液のpHは、酢酸で調節され得る。部分B緩衝液のpHは、水酸化アンモニウムで調節され得る。
【0014】
即時使用可能な移動相組成物は、25mM以下、20mM以下、又は約15mM以下の酢酸アンモニウム濃度を含み得る。
【0015】
いくつかの実施形態では、即時使用可能な移動相組成物は、100ppb以下の個々の金属不純物を含み得る。
【0016】
即時使用可能な移動相組成物は、固定相を含む液体クロマトグラフィー法で使用され得る。いくつかの実施形態では、固定相は、イオン交換固定相、サイズ排除固定相、親水性相互作用固定相、及び逆相固定相からなる群から選択され得る。いくつかの実施形態では、イオン交換固定相は、カチオン交換固定相であり得る。
【0017】
カチオン交換固定相は、強カチオン交換固定相及び弱カチオン交換固定相からなる群から選択され得る。
【0018】
即時使用可能な移動相組成物は、質量分析計に直接(オンライン)連結された液体クロマトグラフィーを含む方法において使用され得る。
【0019】
本開示は、試料中の分析物を分離及び/又は特性評価する方法であって、移動相をクロマトグラフィーカラムを通して流すことであって、移動相が、2部水性緩衝系を含み、水性緩衝系の部分Aが、約10~50mMのカルボン酸アンモニウム、3~16mMのN-メチルモルホリン、又はその異性体、若しくはその類似体、及び約pH5~約pH5.5の範囲内にあるpHを含み、水性緩衝系の部分Bが、2~25mMのカルボン酸アンモニウム、1~10mMのN-メチルモルホリン、又はその異性体、若しくはその類似体、及び約pH9.5~約pH10.5の範囲内にあるpHを含む、流すことと、分析物を含む試料を移動相に注入することと、カラムから分析物を溶出することと、溶出液中の分析物を検出することと、を含む、方法を提供する。
【0020】
方法は、試料中の分析物を分離及び/又は特性評価するために提供され、移動相をクロマトグラフィーカラムを通して流すことであって、移動相が、2部水性緩衝系を含み、水性緩衝系の部分Aが、約10~25mMの酢酸アンモニウム、3~8mMのN-メチルモルホリン、及び約pH5~約pH5.5の範囲内にあるpHを含み、水性緩衝系の部分Bが、2~10mMの酢酸アンモニウム、1~5mMのN-メチルモルホリン、及び約pH9.5~約pH10.5の範囲内にあるpHを含む、流すことと、分析物を含む試料を移動相に注入することと、カラムから分析物を溶出することと、溶出液中の分析物を検出することと、を含む。
【0021】
いくつかの実施形態では、分析物は、生体分子である。生体分子は、モノクローナル抗体、モノクローナル抗体の抗原結合断片、又はその電荷変異体であり得る。
【0022】
モノクローナル抗体又は断片は、約pI6.5~約pI9.5のpIを有し得る。
【0023】
クロマトグラフィーカラムは、イオン交換固定相、サイズ排除固定相、親水性相互作用固定相、及び逆相固定相からなる群から選択される固定相を含み得る。イオン交換固定相は、カチオン交換固定相であり得る。カチオン交換固定相は、強カチオン交換固定相及び弱カチオン交換固定相からなる群から選択され得る。
【0024】
いくつかの実施形態では、検出は、溶出液のUV吸光度を決定することを含み得る。いくつかの実施形態では、検出は、質量分析計(MS)で分析物を検出することを含み得る。MSは、セクタ、飛行時間(TOF)、四重極、イオントラップ、フーリエ変換イオンサイクロトロン共鳴、及びタンデム(タンデム又は直交プラットフォーム内で組み合わされた上記のうちの2つ以上)質量分析計からなる群から選択され得る。
【0025】
MS検出は、分析物イオンを生成することを含み得る。生成は、エレクトロスプレーイオン化(ESI)、マトリックス支援レーザ脱着/イオン化(MALDI)、高速原子爆撃(FAB)、化学イオン化(CI)、電子衝撃(EI)、大気固体分析イオン化(ASAI)、大気圧力光イオン化(APPI)、脱着エレクトロスプレーイオン化(DESI)、及び大気圧力蒸気源(APVS)からなる群から選択されるイオン化技術を含み得る。MS検出は、分析物イオンの質量スペクトルを取得することを更に含み得る。MS検出は、分析物の分子量を決定することを更に含み得る。
【0026】
いくつかの実施形態では、本開示の移動相緩衝組成物は、N-メチルモルホリンを含まない酢酸アンモニウムを含む同等の移動相緩衝系よりも、分析物アイソフォームに対するより低い電荷状態を呈する分析物イオンの質量スペクトルをもたらす。本開示の移動相緩衝組成物の使用は、N-メチルモルホリンを含まない酢酸アンモニウムを含む同等の移動相緩衝系よりも、分析物アイソフォームに対するより低い電荷状態、及び電荷状態エンベロープ内の分析物の質量をもたらし得る。
【0027】
いくつかの実施形態では、水性緩衝系の部分Aは、約10~25mMの酢酸アンモニウム、3~8mMのN-メチルモルホリン、及び約pH5~約pH5.5の範囲内にあるpHを含み、水性緩衝系の部分Bは、2~10mMの酢酸アンモニウム、1~5mMのN-メチルモルホリン、及び約pH9.5~約pH10.5の範囲内にあるpHを含む。pHは、水酸化アンモニウムを用いて、約pH9.5~約pH10.5の範囲内で調節され得る。移動相は、約100ppb以下の個々の金属不純物を含有し得る。
【0028】
いくつかの実施形態では、溶出は、pH勾配を形成することを含み得る。pH勾配は、注射後にカラムを通って流れる緩衝液A%に対して、経時的に緩衝液B%を増加させることを含み得、緩衝液A%+緩衝液B%=移動相の100%である。いくつかの実施形態では、pH勾配の傾きは、溶出液の0.1~10%B/CV、又は0.5~5%B/カラム体積(CV)の範囲内にある。いくつかの実施形態では、pH勾配は、線形pH勾配、セグメント化されたpH勾配、湾曲したpH勾配、又はステップpH勾配であり得る。
【0029】
本開示は、水で希釈して、10~50mMのカルボン酸アンモニウム、3~16mMのN-メチルモルホリン、又はその異性体、若しくは類似体、及び約pH4.5~約pH5.5の範囲内にあるpHを含む緩衝液Aを得るための第1の濃縮液体組成物の体積を有する第1の容器と、2~25mMのカルボン酸アンモニウム、1~10mMのN-メチルモルホリン、又はその異性体、若しくはその類似体、及び約pH9.5~約pH10.5の範囲内にあるpHを含む緩衝液Bを得るために水で希釈するための第2の濃縮液体組成物の体積を有する第2の容器と、使用説明書と、を備えるキットを提供する。
【0030】
水で希釈して、10~25mMの酢酸アンモニウム、3~8mMのN-メチルモルホリン、及び約pH4.5~約pH5.5の範囲内にあるpHを含む緩衝液Aを得るための第1の濃縮液体組成物の体積を有する第1の容器と、2~10mMの酢酸アンモニウム、1~5mMのN-メチルモルホリン、及び約pH9.5~約pH10.5の範囲内にあるpHを含む緩衝液Bを得るために、水で希釈するための第2の濃縮液体組成物の体積を有する第2の容器と、使用説明書と、を備えるキットが提供される。いくつかの実施形態では、緩衝液Aは、10~20mMの酢酸アンモニウム、3~8mMのN-メチルモルホリン、及び約pH5~約pH5.5の範囲内にあるpHを含み得る。緩衝液Bは、2~10mMの酢酸アンモニウム、1~3mMのN-メチルモルホリン、及び約pH9.5~約pH10.5の範囲内にあるpHを含む緩衝液Bを含み得る。第1の濃縮液体組成物及び第2の濃縮液体組成物は、それぞれ2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、11倍、12倍、13倍、14倍、15倍、16倍、17倍、18倍、19倍、又は20倍濃縮の緩衝液A及び緩衝液Bからなる群から選択される濃度を含み得る。キットは、クロマトグラフィーカラムを更に備え得る。例えば、クロマトグラフィーカラムは、強イオン交換クロマトグラフィーカラム又は弱イオン交換クロマトグラフィーカラムであり得る。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1-1】NH4Ac+NMMを有する新しい緩衝系を使用する、Phenomenex(登録商標)bioZen WCX弱カチオン交換カラム上のトラスツズマブ-annsからのHRMS総イオン電流(TIC)クロマトグラムを示す。pI9.1を有するモノクローナル抗体トラスツズマブ-anns(Kajinti、10mg/mL)を、新しい緩衝液を使用して天然WCX-HRMSに供し、10uL(100ug)を、Phenomenex(登録商標)bioZen 6μm WCX、150×2.1mmの弱カチオン交換カラムに、表3に従って15分間にわたる30~60%のB勾配、+TOF MS(2000~7000)を使用して注入した。
【
図1-2】NMMを含まない標準緩衝系NH4Acを使用して、Phenomenex(登録商標)bioZen WCXカラム上のトラスツズマブ-annsに関する総イオン電流(TIC)クロマトグラムを示す。pI9.1を有するモノクローナル抗体トラスツズマブ-anns(Kajinti,10mg/mL)を、表2に従って15分間にわたる20~50%Bの勾配を使用し、最適化された標準緩衝液を使用して天然WCX-HRMSに供し、10uL(100ug)を、Phenomenex(登録商標)bioZen 6μm WCX、150×2.1mmの弱カチオン交換カラムに表2、+TOF MS(2000~7000)に従って、注入した。
【
図2-1】NH4Ac+NMMを有する新しい緩衝系を使用する、Phenomenex(登録商標)bioZen WCXカラム上のリツキシマブ-abbsに関する総イオン電流(TIC)クロマトグラムを示す。pI9.4を有するモノクローナル抗体リツキシマブ-abbs(Rituxan)(10mg/mL)を、新しい緩衝液を使用して天然のWCX-HRMSに供した。10μL(100μg)のアリコートを、Phenomenex(登録商標)bioZen 6μm WCX、150×2.1mmの弱カチオン交換カラムに注入し、表4に示されるように15分間にわたる65-100%のB勾配、+TOF MS(2000~7000)を使用してクロマトグラフィーを行った。
【
図2-2】NMMを含まない標準緩衝系NH4Acを使用して、Phenomenex(登録商標)bioZen WCXカラム上のリツキシマブ-abbsの総イオン電流(TIC)クロマトグラムを示す。pI9.4を有するモノクローナル抗体リツキシマブ-abbs(Rituxan、10mg/mL)を、表4に示されるように、15分間にわたる60~100%のB勾配で最適化された標準緩衝液を使用して天然WCX-HRMSに供し、10μL(100μg)を、Phenomenex(登録商標)bioZen 6μm WCX、150×2.1mmの弱カチオン交換カラム、+TOF MS(2000~7000)に注入した。
【
図3-1】NH4Ac+NMMを有する新しい緩衝系を使用する、Phenomenex(登録商標)bioZen WCX カラム上のNISTリファレンスmAbに関する総イオン電流(TIC)クロマトグラムを示す。pI9.2を有するモノクローナル抗体NISTリファレンスmAb(10mg/mL)を、新しい緩衝液を使用して天然WCX-HRMSに供し、10uL(100ug)を、bioZen 6μm WCX、150×2.1mmの弱カチオン交換カラムに、15分間にわたる65~100%Bの勾配、+TOF MS(2000~7000)を使用して、注入した。
【
図3-2】NMMを含まない標準緩衝系NH4Acを使用して、Phenomenex(登録商標)bioZen WCXカラム上のNISTmAbに関する総イオン電流(TIC)クロマトグラムを示す。pI9.2を有するモノクローナル抗体NISTリファレンスmAbを、表4に示されるように、最適化された標準緩衝液及び15分間にわたる60~100%のB勾配を使用して天然WCX-HRMSに供し、10μL(100μg)を、Phenomenex(登録商標)bioZen 6μm WCX 150×2.1mmの弱カチオン交換カラムに、表4に示される勾配、+TOF MS(2000~7000)を使用して、注入した。
【
図4】NH4Ac+NMMを有する新しい緩衝系を使用する、Phenomenex(登録商標)bioZen WCX カラム上のインフリキシマブの総イオン電流(TIC)クロマトグラムを示す。pI7.6を有するモノクローナル抗体インフリキシマブ(Remicade、10mg/mL)を、表5に従って新しい緩衝液及び15分間にわたる20~35%Bの勾配を使用して、天然WCX-HRMSに供し、10uL(100ug)を、Phenomenex(登録商標)bioZen 6μm WCX、150×2.1mmの弱カチオン交換カラムに、+TOF MS(2000~7000)で、注入した。
【
図5】NH4Ac+NMMを有する新しい緩衝系を使用する、Phenomenex(登録商標)bioZen WCX カラム上のセツキシマブに関する総イオン電流(TIC)クロマトグラムを示す。pI8.8を有するモノクローナル抗体セツキシマブ(Erbitux、10mg/mL)を、表6に従って新しい緩衝液及び15分間にわたる25~55%Bの勾配を使用して、天然WCX-HRMSに供し、10uL(100ug)を、Phenomenex(登録商標)bioZen 6μm WCX、150×2.1mmの弱カチオン交換カラムに、+TOFMS(2000-700)で注入した。
【
図6-1】Abs280nmのトラスツズマブ-anns(Kanjinti)(10mg/mL、4uL inj)によって監視されたUVクロマトグラムを示す。モノクローナル抗体を、0.3mL/分の流量で10分間にわたって、NH4Ac+NMM及び35~65%BのpH勾配を含有する新しい緩衝系を使用して、強カチオン交換カラム(試験的に3μm SCX、100×2.1mm)上に注入した。
【
図6-2】NH4Ac+NMMを含有する新しい緩衝系及び0.3mL/分の流量で10分にわたる35~65%BのpH勾配、30℃、+TOF(2000~7000)、MS温度500℃で、強カチオン交換LCカラム(試験的に3μm SCX、100×2.1mm)を使用するトラスツズマブ-anns(4uL inj、10mg/mL)のSCX-HRMS分析からの総イオン電流(TIC)クロマトグラムを示す。4.83分のRTにおいて主ピーク内にボックスを形成する点線は、
図6ー4及び
図6ー5に示されるようなMS分析のためのおおよその面積を例解する。
【
図6-3】NH4Acのみを含有する標準緩衝系及び10分にわたる20~50%BのpH勾配、30℃、+TOFMS(2000~7000)、MS温度500℃で、強カチオン交換LCカラム(試験的に3μmSCX、100×2.1mm)を使用するトラスツズマブ-anns(4uL inj、10mg/mL)のSCX-HRMSからの総イオン電流(TIC)クロマトグラムを示す。5.09分のRTにおいて主ピーク内にボックスを形成する点線は、
図6ー6及び
図6ー7に示されるようなMS分析のためのおおよその面積を例解する。
【
図6-4】NH4Ac+NMMを含有する新しい緩衝系及び10分にわたる35~65%BのpH勾配、4.909~5.131分間の+TOFMS(2000~7000)で、強カチオン交換カラム(試験的に3μmSCX、100×2.1mm)を使用する、トラスツズマブ-anns(4ul inj、10mg/mL)のSCX-HRMSからの生のMSスペクトルを示す。2000~7000Daの質量/電荷(m/z)範囲が示される。
【
図6-5】NH4Ac+NMMを含有する新しい緩衝系及び10分にわたる35~65%BのpH勾配、+TOFMS(2000~7000)で、強カチオン交換LCカラム(試験的に3μmSCX、100×2.1mm)を使用する、4,858~5.217分、pI9.1を有するトラスツズマブ-anns(4ul inj、10mg/mL)のSCX-HRMSからの生のMSスペクトルを示す。表示されたm/z範囲は、この緩衝系を伴う、天然分析物(約4800~6600Da)に関して最高の強度を与えるものに絞った。追加的に、電荷状態エンベロープ内の分析物イオンの電荷が示される。新しい緩衝系では、最も強烈なMSピークは、
図6ー6に示されるように、最適化された標準NH4Ac緩衝系(+25~+30)で見られるよりも高い質量/より低い電荷(+22~+27)で現れる。同じ質量範囲が、スペクトル6E及び6Fの両方に使用される。
【
図6-6】NMMのないNH4Acを含有する標準緩衝系及び20~50%B/10分のpH勾配、+TOFMS(2000~7000)で、強カチオン交換LCカラム(試験的に3μmSCX、100×2.1mm)を使用する、4,960~5.217分、pI9.1を有するトラスツズマブ-anns(4ul inj、10mg/mL)のSCX-HRMSからの生のMSスペクトルを示す。表示されたm/z範囲は、この緩衝系を伴う、天然分析物(約4800~6900Da)に関して最高の強度を与えるものに絞った。追加的に、電荷状態エンベロープ内の分析物イオンの電荷が示される。最適化された標準緩衝系では、最も強烈なMSピークは、
図6ー5に示されるように、新しいNH4Ac+NMM緩衝系(+22~+27)と比較した場合、より低い質量/より高い電荷(+25~+30)で現れる。
【
図6-7】NMMのないNH4Acを含有する最適化された標準緩衝系及び20~50%B/10分のpH勾配、4,960~5,217分の+TOF(2000~7000)で、強カチオン交換カラム(試験的に3μmSCX、100×2.1mm)を使用する、pI9.1を有するトラスツズマブ-anns(4ul、10mg/mL)のSCX-HRMSからの生のMSスペクトルを示す。2000~7000Daの質量/電荷範囲が示される。
【
図7-1】NH4Ac+NMMを含有する新しい緩衝系及び0.3mL/分の流量で10分にわたる25~40%BのpH勾配で、強カチオン交換カラム(試験的に、3μmSCX、100×2.1mm)を使用する、インフリキシマブ(10mg/mL、4uL inj)のSCX-UV分析からのAbs280nmによって監視されたUVクロマトグラムを示す。変異体の良好な分離は、新しい緩衝系を伴うpH勾配を使用して観察された:3.357、4.249、5.018、5.759、及び6.563分のRTにおいて溶出する5つの別個のピークが観察された。
【
図7-2】NH4Ac+NMMを含有する新しい緩衝系及び0.3mL/分の流量で10分間にわたって20~35%BのpH勾配、30℃、+TOF(2000~7000)、MS温度500℃で、強カチオン交換LCカラム(試験的に3μmSCX、100×2.1mm)を使用するインフリキシマブ(4ul、5mg/mL)のSCX-HRMSからの総イオン電流(TIC)クロマトグラムを示す。変異体の良好な分離が、新しい緩衝系を用いたpH勾配を使用して観察された:6.07、6.57、7.17、7.87、及び8.57分のRTにおいて溶出する5つの別個のピークが観察された。8.57分のRTにおいて主ピーク内にボックスを形成する点線は、
図7ー4及び
図7ー5に示されるようなMS分析のためのおおよその面積を例解する。
【
図7-3】NH4Acのみを含有する標準緩衝系及び10分にわたる15~25%BのpH勾配、30℃、+TOF(2000~7000)、MS温度500℃で、強カチオン交換LCカラム(試験的に3μm SCX、100×2.1mm)を使用するインフリキシマブ(4ul、5mg/mL)のSCX-HRMSからの総イオン電流(TIC)クロマトグラムを示す。5.63分のRTにおいて主ピーク内にボックスを形成する点線は、
図7ー6及び
図7ー7に示されるMS分析のおおよその面積を例解する。電荷変異体の非常に不十分な分離を、この低pI mAb(pI=7.6)の標準緩衝液で与えた。この図と前の図(
図7ー2)との比較は、標準緩衝液で日常的に可能なものよりも低いpHで良好なpH制御を有することによって得られる性能上の利点を実証する。
【
図7-4】NH4Ac+NMMを含有する新しい緩衝系及び20~35%B/10分のpH勾配、8.621~9.032分の+TOF(2000~7000)で、強カチオン交換カラム(試験的に3μmSCX、100×2.1mm)を使用する、インフリキシマブ(4ul、5mg/mL)のSCX-HRMSからの生のMSスペクトルを示す。2000~7000Daの質量/電荷範囲が示される。
【
図7-5】NH4Ac+NMMを含有する新しい緩衝系及び10分にわたる20~35%BのpH勾配、+TOF(2000~7000)で、強カチオン交換カラム(試験的に3μmSCX、100×2.1mm)を使用する、8.621~9.032分のインフリキシマブ(4ul、5mg/mL)のSCX-HRMSからの生のMSスペクトルを示す。表示されたm/z範囲は、この緩衝系を用いた天然分析物の最高の強度(約4800~6900Da)を与えるものに絞った。追加的に、電荷状態エンベロープ内の分析物イオンの電荷が示される。
図7ー5に示されるように、新しい緩衝系では、最も強烈なMSピークは、
図7ー6に示される最適化された標準NH4Ac緩衝系(+25~+30)で見られるよりも高い質量/より低い電荷(+22~+27)で現れる。
【
図7-6】NMMのないNH4Acを含有する標準緩衝系及び10分にわたる15~25%BのpH勾配、+TOF(2000~7000)で、強カチオン交換LCカラム(試験的に3μmSCX、100×2.1mm)を使用する、5.593~5.730分のインフリキシマブ(4ul、5mg/mL)のSCX-HRMSからの生のMSスペクトルを示す。表示されたm/z範囲は、この緩衝系を伴う、天然分析物(約4800~6900Da)に関して最高の強度を与えるものに絞った。追加的に、電荷状態エンベロープ内の分析物イオンの電荷が示される。最適化された標準緩衝系では、最も強烈なMSピークは、
図7ー5に示されるように、新しいNH4Ac+NMM緩衝系(+22~+27)と比較した場合、より低い質量/より高い電荷(+25~+30)で現れる。
【
図7-7】NMMのないNH4Acを含有する最適化された標準緩衝系及び15~25%B/10分のpH勾配、5.559~5.696分の+TOF(2000~7000)で、強カチオン交換カラム(試験的に3μmSCX、100×2.1mm)を使用する、インフリキシマブ(4ul、5mg/mL)のSCX-HRMSからの生のMSスペクトルを示す。2000~6900Daの質量/電荷範囲が示される。
【
図8-1】NH4Ac+NMMを含有する新しい緩衝系及び0.3mL/分の流量で10分にわたる30~60%BのpH勾配で、強カチオン交換カラム(試験的に、3μmSCX、100×2.1mm)を使用する、セツキシマブ(4mg/mL)のSCX-UV分析からのAbs280nmによるUVクロマトグラムを示す。複数の別個の変異体ピークが、例えば、3.65、4.03、4.58、5.20、及び5.93分のRTで観察された。
【
図8-2】NH4Ac+NMMを含有する新しい緩衝系及び0.3mL/分の流量で10分にわたる30~60%BのpH勾配、30℃、+TOF(2000~7000)、MS温度500℃で、強カチオン交換LCカラム(試験的に3μmSCX、100×2.1mm)を使用するセツキシマブ(5mg/mL、10uL inj)のSCX-HRMSからの総イオン電流(TIC)クロマトグラムを示す。複数の別個の変異体ピークが、3.33、3.92、4.54、及び5.22分のRTにおいて観察された。4.54分のRTにおいて主ピーク内にボックスを形成する点線は、
図8ー4及び
図8ー5に示されるようなMS分析のためのおおよその面積を例解する。
【
図8-3】NH4Acのみを含有する標準緩衝系及び17~40%B/10分のpH勾配、30℃、+TOF(2000~7000)、MS温度500℃で、強カチオン交換LCカラム(試験的に3μmSCX、100×2.1mm)を使用するセツキシマブ(5mg/mL、10uL inj)のSCX-HRMS分析からの総イオン電流(TIC)クロマトグラムを示す。4.68分のRTにおいて主ピーク内にボックスを形成する点線は、
図8ー6及び
図8ー7に示されるMS分析のためのおおよその面積を例解する。
【
図8-4】NH4Ac+NMMを含有する新しい緩衝系、及び10分にわたる30~60%BのpH勾配、4.601~9.032分の+TOF(2000~7000)で、強カチオン交換カラム(試験的に3μmSCX、100×2.1mm)を使用する、セツキシマブ(5mg/mL、10uL inj)のSCX-HRMSからの生のMSスペクトルを示す。2000~7000Daの質量/電荷範囲が示される。
【
図8-5】NH4Ac+NMMを含有する新しい緩衝系及び10分にわたる30~60%BのpH勾配、+TOF(2000~7000)で、強カチオン交換LCカラム(試験的に3μmSCX、100×2.1mm)を使用する、4.601~4.892分のセツキシマブ(5mg/mL、10uL inj)のSCX-HRMSからの生のMSスペクトルを示す。表示されたm/z範囲は、この緩衝系を伴う、天然分析物(約4800~6900Da)に関して最高の強度を与えるものに絞った。追加的に、電荷状態エンベロープ内の分析物イオンの電荷が示される。
図8ー5に示されるように、新しい緩衝系でpH勾配溶出を使用する場合、最も強烈なMSピークは、
図8ー6に示されるように、最適化された標準NH4Ac緩衝系(+25~+30)で見られるよりも高い質量/低い電荷(+22~+27)で現れる。
【
図8-6】NMMなしのNH4Acを含有する標準緩衝系及び10分にわたる17~40%BのpH勾配、+TOF(2000~7000)で、強カチオン交換LCカラム(試験的に3μmSCX、100×2.1mm)を使用する、4.533~4.892分のセツキシマブ(5mg/mL、10uL inj)のSCX-HRMSからの生のMSスペクトルを示す。表示されたm/z範囲は、この緩衝系を伴う、天然分析物(約4800~6900Da)に関して最高の強度を与えるものに絞った。追加的に、電荷状態エンベロープ内の分析物イオンの電荷が示される。最適化された標準緩衝系では、最も強烈なMSピークは、
図8ー5に示されるように、新しいNH4Ac+NMM緩衝系(+22~+27)と比較した場合、より低い質量/より高い電荷(+25~+30)で現れる。
【
図8-7】NMMなしのNH4Acを含有する最適化された標準緩衝系及び10分にわたる17~40%BのpH勾配、+TOF(2000~7000)で、強カチオン交換カラム(試験的に3μmSCX、100×2.1mm)を使用する、4.533~4.892分のセツキシマブ(5mg/mL、10uL inj)のSCX-HRMSからの生のMSスペクトルを示す。2000~6900Daの質量/電荷範囲が示される。
【
図9-1】NH4Ac+NMMを含有する新しい緩衝系及び0.3mL/分の流量で10分にわたる75~100%BのpH勾配で、強カチオン交換カラム(試験的に、3μmSCX、100×2.1mm)を使用する、pI9.4(10mg/mL)を有するリツキシマブ(Rituxan)のSCX-HRMSからのAbs280nmによるUVクロマトグラムを示す。5.03分のRTにおける主ピークが観察された。
【
図9-2】NH4Ac+NMMを含有する新しい緩衝系及び0.3mL/分の流量で10分にわたる65~100%BのpH勾配、30℃、+TOFMS(2000~7000)、MS温度500℃で、強カチオン交換LCカラム(試験的に3μm SCX、100×2.1mm)を使用するリツキシマブ(10mg/mL、4uL inj)のSCX-HRMS分析からの総イオン電流(TIC)クロマトグラムを示す。5.88分のRTにおいて主ピーク内にボックスを形成する点線は、MS分析のためのおおよその面積を例解する。
【
図9-3】NH4Acのみを含有する標準緩衝系及び、10分にわたる55~100%BのpH勾配、30℃、+TOFMS(2000~7000)、MS温度500℃で、強カチオン交換LCカラム(試験的に3μmSCX、100×2.1mm)を使用するリツキシマブ(10mg/mL、4uL inj)のSCX-HRMS分析からの総イオン電流(TIC)クロマトグラムを示す。4.65分のRTにおいて主ピーク内にボックスを形成する点線は、
図9ー6及び
図9ー7に示されるMS分析のためのおおよその面積を例解する。
【
図9-4】NH4Ac+NMMを含有する新しい緩衝系、及び10分にわたる65~100%BのpH勾配、6.021~6.363分の+TOFMS(2000~7000)で、強カチオン交換カラム(試験的に3μmSCX、100×2.1mm)を使用する、リツキシマブ(10mg/mL、4uL inj)のLC-HRMSからの生のMSスペクトルを示す。2000~7000Daの範囲内にある質量/電荷、m/zデータが示される。
【
図9-5】NH4Ac+NMMを含有する新しい緩衝系及び65~100%B/10分のpH勾配、6.021~6.363分の+TOFMS(2000~7000)で、強カチオン交換LCカラム(試験的に3μmSCX、100×2.1mm)を使用する、リツキシマブ(10mg/mL、4uL inj)のSCX-HRMS分析からの生のMSスペクトルを示す。表示されたm/z範囲は、この緩衝系を用いた天然分析物の最高の強度(約4800~6800Da)を与えるものに絞った。追加的に、電荷状態エンベロープ内の分析物イオンの電荷が示される。
図9ー5に示されるように、新しい緩衝系でpH勾配を使用する場合、最も強力なMSピークは、
図9ー6に示される、最適化された標準NH4Ac緩衝系(+25~+30)で見られるよりも高い質量/より低い電荷(+22~+27)で現れる。
【
図9-6】NMMのないNH4Acを含有する標準緩衝系及び10分にわたる55~100%BのpH勾配、4.550~4.772分の+TOFMS(2000~7000)で、強カチオン交換LCカラム(試験的に3μmSCX、100×2.1mm)を使用する、リツキシマブ(10mg/mL、4uL inj)のSCX-HRMS分析からの生のMSスペクトルを示す。表示されたm/z範囲は、この緩衝系を用いた天然分析物の最高の強度(約4800~6800Da)を与えるものに絞った。追加的に、電荷状態エンベロープ内の分析物イオンの電荷が示される。最適化された標準緩衝系では、最も強烈なMSピークは、
図9ー5に示されるように、新しいNH4Ac+NMM緩衝系(+22~+27)と比較した場合、より低い質量/より高い電荷(+25~+30)で現れる。
【
図9-7】NMMなしのNH4Acを含有する最適化された標準緩衝系及び55~100%B/10分のpH勾配、+TOFMS(2000~7000)で、強カチオン交換カラム(試験的に3μmSCX、100×2.1mm)を使用する、4,550~4.772分のリツキシマブ(10mg/mL、4uL inj)のSCX-HRMS分析からの生のMSスペクトルを示す。2000~7000Daの質量/電荷範囲が示される。
【
図10-1】NH4Ac+NMMを含有する新しい緩衝系及び0.3mL/分の流量で10分にわたる95~100%BのpH勾配で、強カチオン交換カラム(試験的に、3μmSCX、100×2.1mm)を使用する、pI9.2(10mg/mL)を有するNISTmAbのSCX-UV分析からのAbs280nmにおいて監視されたUVクロマトグラムを示す。
【
図10-2】NH4Ac+NMMを含有する新しい緩衝系及び0.3mL/分の流量で10分にわたる90~100%BのpH勾配、30℃、+TOFMS(2000~7000)、MS温度500℃で、強カチオン交換LCカラム(試験的に3μmSCX、100×2.1mm)を使用するNISTmAb(10mg/mL、10uL inj)のSCX-HRMSからの総イオン電流(TIC)クロマトグラムを示す。4.39~4.82のRTのピーク内にボックスを形成する点線は、MS分析のためのおおよその面積を例解する。
【
図10-3】NH4Acのみを含有する標準緩衝系及び80~100%B/10分のpH勾配、30℃、+TOFMS(2000~7000)、MS温度500℃で、強カチオン交換LCカラム(試験的に3μmSCX、100×2.1mm)を使用するNISTmAb(10mg/mL、10uL inj)のSCX-HRMS分析からの総イオン電流(TIC)クロマトグラムを示す。4.5分のRTにおいて主ピーク内にボックスを形成する点線は、
図10ー6及び
図10ー7に示されるMS分析のためのおおよその面積を例解する。
【
図10-4】NH4Ac+NMMを含有する新しい緩衝系及び90~100%B/10分のpH勾配、5.012~5.627分の+TOFMS(2000~7000)で、強カチオン交換カラム(試験的に3μmSCX、100×2.1mm)を使用するNISTmAb(10mg/mL、10uL inj)のSCX-HRMSからの生のMSスペクトルを示す。2000~7000Daの範囲にわたる質量/電荷(m/z)データが示される。
【
図10-5】NH4Ac+NMMを含有する新しい緩衝系及び90~100%B/10分のpH勾配、5.012~5.627分の+TOFMS(2000~7000)で、強カチオン交換LCカラム(試験的に3μmSCX、100×2.1mm)を使用するNISTmAb(10mg/mL、10uL inj)のSCX-HRMS分析からの生のMSスペクトルを示す。表示されたm/z範囲は、この緩衝系を用いた天然分析物の最高の強度(約4800~6900Da)を与えるものに絞った。追加的に、電荷状態エンベロープ内の分析物イオンの電荷が示される。新しい緩衝系では、最も強烈なMSピークは、
図10ー6に示されるように、最適化された標準NH4Ac緩衝系(+25~+30)で見られるよりも高い質量/より低い電荷(+22~+27)で現れる。
【
図10-6】NMMなしのNH4Acを含有する標準緩衝系及び80~100%B/10分のpH勾配、4.259~4.841分の+TOFMS(2000~7000)で、強カチオン交換LCカラム(試験的に3μmSCX、100×2.1mm)を使用する、NISTmAb(10mg/mL、10uL inj)のSCX-HRMS分析からの生のMSスペクトルを示す。表示されたm/z範囲は、この緩衝系を伴う、天然分析物(約4800~6900Da)に関して最高の強度を与えるものに絞った。追加的に、電荷状態エンベロープ内の分析物イオンの電荷が示される。最適化された標準緩衝系では、最も強烈なMSピークは、
図10ー5に示されるように、新しいNH4Ac+NMM緩衝系(+22~+27)と比較した場合、より低い質量/より高い電荷(+25~+30)で現れる。
【
図10-7】NMMなしのNH4Acを含有する最適化された標準緩衝系及び80~100%B/10分のpH勾配、+TOFMS(2000~7000)で、強カチオン交換カラム(試験的に3μmSCX、100×2.1mm)を使用する、4.259~4.841分のNISTmAb(10mg/mL、10uL inj)のSCX-HRMS分析からの生のMSスペクトルを示す。2000~6800Daの質量/電荷範囲が示される。
【
図11】NMMなしのNH4Acを含有する標準緩衝系及び60~100%BのpH勾配、+TOFMS(2000~7000)、500℃、4.772~5.012分で、弱カチオン交換LCカラム(Phenomenex(登録商標)bioZen 6μmWCX、150×2.1mm)を使用するNISTmAb(10mg/mL、10uL inj)のWCX-HRMS分析からの生のMSスペクトルを示す。表示されたm/z範囲は、この緩衝系を用いた天然分析物の最高の強度(約4800~7000Da)を与えるものに絞った。追加的に、電荷状態エンベロープ内の分析物イオンの電荷が示される。最適化された標準緩衝系では、WCX-HRMSを使用するNISTmAbに関する生のMSスペクトルはまた、
図10ー6に示されるSCX-HRMSの生のスペクトルと同様に、+25~+30の最も強力なMSピークを呈する。
【発明を実施するための形態】
【0032】
モノクローナル抗体(mAb)は、治療用タンパク質の重要かつ急速に成長している分野である。それらの固有の複雑さ及び多種多様な可能性のある翻訳後修飾(PTM)は、効果的な特性評価及び品質監視を困難にする。mAbの電荷変異体は、一般に、製造プロセス中に生じるPTMに由来する。C末端リジンクリッピング及びN-グリコシル化などのこれらのPTMは、天然タンパク質に対して塩基性及び/又は酸性残基の欠失/付加をもたらし、このため、分子の全体的な電荷に差異を付与する。典型的には、mAb及び他の生体分子分析物の分析は、液体クロマトグラフィー(LC)及び質量分析法(MS)の組み合わせを使用して実施される。高分解能質量分析法(HRMS)を使用する電荷変異体分析(CVA)のためのIECの有用性を示すいくつかの研究が発表されている。本開示では、最適化されたMS適合性緩衝系が開発され、HRMSにオンラインで結合されたイオン交換クロマトグラフィー(IEC)を使用する場合、pH勾配の制御、このためmAbの電荷変異体の分解能を改善するために使用された。異なるカチオン交換体タイプ(強/弱)、吸着剤粒径、カラム長、流量、緩衝系、及び勾配の傾きを使用した。方法及び試薬は、広範囲のpIに及ぶ市販のmAbを使用して開発されている。本開示は、ルーチン分析における最適な性能のための改善された緩衝系及び方法を提供する。
【0033】
天然モノクローナル抗体などのタンパク質分析物のIEC-HRMSの問題に対処するアプローチが説明されているが、各々に著しい欠点がある。
【0034】
Bailey et al.,2018は、電荷変異体天然質量分析法が、モノクローナル抗体の無傷の質量分析の質量精度及びダイナミックレンジに利益をもたらすことを記載している。pH勾配溶出によるIEC分離を可能にするために、MS適合方法が求められた。移動相緩衝液Aは、50mMの酢酸アンモニウム(NH4Ac)、pH調節なしでpH6.6であり、緩衝液Bは、水酸化アンモニウムを使用してpH10.1に調節した50mMの酢酸アンモニウムであった。酢酸アンモニウムは、4.75の+/-1pH単位(酢酸pKa)及び9.25の+/-1pH単位(アンモニウムpKa)内の緩衝を提供する。pKa値の間に広いギャップがあるため、酢酸アンモニウムを使用するpH勾配は、実験的な直線性の点で損なわれ得る。IEC分離中のpH勾配の不十分な直線性を呈した。Bailey et al.,2018MABS,vol.10,No.8,1214-1225.doi.org/10.1080/1940862.2018.1521131。
【0035】
Fussl et al.2018は、高分解能天然質量分析法への直接結合pH勾配カチオン交換クロマトグラフィーを使用するモノクローナル抗体の電荷変異体分析を実施した。Fussl et al.,2018、Anal Chem 90,2018-4669。25mMの重炭酸アンモニウム、30mMの酢酸、pH5.3(緩衝液A)、及び2mMの酢酸、pH10.8(緩衝液B)中の10mMの水酸化アンモニウムを有する揮発性pH勾配緩衝系を、5マイクロメートルの粒径を有するMAbPacSCX-10RSスルホン酸強カチオン交換カラムを使用して用いた。混合後、緩衝液を室温で24時間休息させた。24時間の休息期間は、問題があることが見出され、本発明者らは、著者の結果を再現することができなかった。Fussl緩衝液の組成及び化学的性質に基づいて、化学変化(ガス放出、「ビカルボナート」の濃度における変化及びpH)は、「休息」期間中に生じ得る。加えて、pH制御は、特に、このpH範囲にわたる不十分な緩衝能力に起因して、pH7~8では困難であった。
【0036】
Fussl et al.,2019は、天然分解能Orbitrap質量分析法にオンラインでハイフン化された(hyphenated)電荷変異体分析を介したアダリムマブの不均一性の特性評価を記載している。緩衝液Aは、水中に25mMの炭酸水素アンモニウム及び30mMの酢酸(pH5.3)からなり、緩衝液Bは、水中に10mMの水酸化アンモニウム(pH10.9)からなる。緩衝液を、5倍ストックで調製し、使用前に4℃で2週間保存した。MS検出のために重要である、相対的に低いイオン強度の溶離液の使用は、低い緩衝能力をもたらすと言われ、これは、高いpI値を有するmAbの分析を損なう可能性がある。Fussl et al.,2019MABS vol.11,No.1,116-128,doi.org/10.1080/19420862.2018.1531664。
【0037】
pH勾配緩衝系もまた市販されている。例えば、CX-1pH勾配緩衝液(Thermo Fischer Scientific)は、4つの両性イオン性緩衝塩、すなわちNaCl及びNaOHに加えて、(2-(N-モルホリノ)エタンスルホン酸、3ー(N-モルホリノ)プロパンスルホン酸、N-トリス(ヒドロキシメチル)メチル-3-アミノプロパンスルホン酸、及び3-(シクロヘキシルアミノ)-2-ヒドロキシ-1-プロパンスルホン酸)を含有する。この緩衝系は、pH=5.6~10.2のpH勾配を提供し、それに伴ってわずかなイオン強度勾配を提供するように調整されると想定される。BioResolveCXpH緩衝液(Waters)はまた、コハク酸、Bis-Trisプロパン、トリエタノールアミン及びN-シクロヘキシル-3-アミノプロパンスルホン酸を含む4つの緩衝塩を含み、pH=5.0~10.2のpH勾配を提供すると想定される。Farsang et al.,2020 J Chromatography A,vol.1626,30 Aug 2020,461350。
【0038】
本開示は、試料中の分析物を分離及び/又は特性評価するための方法及び組成物を提供する。本方法は、液体クロマトグラフィー(LC)を含み得る。LCは、任意の適切なLC方法を伴う可能性がある。LC方法は、分析物の特性評価のための分析LCを含み得る。LC方法は、分析物の分離及び/又は精製のためのプロセスLCを含み得る。例えば、LCは、UHPLC、HPLC、イオン交換クロマトグラフィー(IEC)、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)、親水性相互作用クロマトグラフィー(HILIC)、及び/又は逆相クロマトグラフィー(RPLC)を含み得る。したがって、液体クロマトグラフィーカラム、超高性能クロマトグラフィーカラム、高速クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィーカラム、サイズ排除クロマトグラフィーカラム、親水性相互作用クロマトグラフィーカラム、逆相クロマトグラフィーカラムが、本開示の方法において使用され得る。
【0039】
本明細書において説明された方法は、親和性クロマトグラフィー(例えば、タンパク質A又はタンパク質G)、アニオン交換クロマトグラフィー(AEC)、疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)、低pHウイルス不活性化、ウイルス濾過、限外濾過、及び/又は透析濾過などの追加のプロセスを上流又は下流に更に含み得る。
【0040】
液体クロマトグラフィー(LC)は、質量分析計に結合され得る。液体クロマトグラフィーは、質量分析計に直接結合され得る。
【0041】
分析物は、モノクローナル抗体(mAb)及び/又はその電荷変異体などの生体分子であり得る。mAbにおける電荷変異体を特性評価するために使用される最も一般的なLC技法のうちの1つは、イオン交換クロマトグラフィー(IEC)である。
【0042】
定義
本明細書で使用される用語は、特定の実施形態を説明することのみを目的とし、本開示を限定することは意図されていない。
【0043】
単数形の「a」、「an」、及び「the」は、別途文脈が明確に示していない限り、複数形も含むことを意図している。
【0044】
「及び/又は」という用語は、関連する列挙された項目のうちの1つ以上との任意及び全ての可能な組み合わせを指し、包含する。
【0045】
「約」という用語は、化合物の量、容量、時間、温度などの測定可能な値を指す場合、指定された量の±10%、5%、1%、0.5%、又は更には0.1%の変動を包含することを意味する。
【0046】
「含む(comprises)」及び/又は「含む(comprising)」という用語は、本明細書で使用される場合、記載された特徴、整数、ステップ、作用、要素、及び/又は構成要素の存在を指定するが、1つ以上の他の特徴、整数、ステップ、作用、要素、構成要素、及び/又はそれらの群の存在又は追加を排除するものではない。別段の定義がない限り、本説明で使用される技術的及び科学的用語を含む全ての用語は、本開示が属する当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。用語に矛盾のある場合、本明細書が優先する。
【0047】
「室温」という用語は、別段の指定がない限り、23℃(293~298K、71°F)の温度及び1気圧(14.696psi、101.325kPa)の絶対圧力を指す。
【0048】
「異性体」という用語は、同じ化学式を有するが、分子内の原子の異なる配置を有する2つの化合物を指す。
【0049】
「類似体」又は「構造的類似体」という用語は、別の化合物と同様の分子構造を有するが、特定の成分に関して異なる化合物を指す。
【0050】
本明細書において参照される全ての特許、特許出願、及び公開は、それらの全体が参照により組み込まれる。
【0051】
本開示の一態様に記載される実施形態は、記載される態様に限定されない。また、実施形態は、本開示のこれらの態様がその意図された目的のために作用することを妨げない限り、本開示の異なる態様に適用され得る。
【0052】
カチオン交換クロマトグラフィーは、正味の表面変化に基づいて、分子を分離するために使用され得るイオン交換クロマトグラフィー(IEX)の一形態である。カチオン交換クロマトグラフィーは、正味の正の表面電荷を有する分子に対する親和性を有する負に帯電したイオン交換樹脂を用いる。
【0053】
タンパク質の正味表面電荷は、タンパク質の等電点(pI)によって決定される際pHと共に変化し得る。pIに等しいpHでは、タンパク質は、正味電荷を持たないことになる。pI未満のpHでは、タンパク質は、正味の正電荷を担持することになる。pIを上回るpHでは、タンパク質は、正味の負電荷を担持することになる。タンパク質のpIは、その一次アミノ酸配列によって計算され得る。負に帯電したカチオン交換樹脂は、対象のタンパク質が作業pHで正味の正電荷を担持する場合に選択され得る。緩衝液pHは、タンパク質の正味表面電荷に影響を与えることになる。タンパク質は全てのpHで安定ではない可能性があるため、タンパク質の安定性及び緩衝液の選択は、精製のための適切なIEX培地を決定するのに役立ち得る。
【0054】
カチオン交換クロマトグラフィーカラム樹脂は、樹脂上の官能基のpKaによって分類され得る。強酸又は塩基を含有するこれらの樹脂は、「強」イオン交換体と呼称されるが、弱酸又は塩基を含有するものは「弱」イオン交換体と呼称される。
【0055】
「強カチオン交換」(SCX)又は「強カチオン交換樹脂」又は「強カチオン交換固定相」という用語は、Sと指定され得るメチルスルホネート官能基(例えば、-OCH2CH2OH-CH2-O-CH2-CHOH-CH2-SO3-)又はSPと指定され得るスルホニル官能基(例えば、-CH2-CH2-CH2SO3-)などのスルホン酸官能基を含むイオン交換樹脂を指す。S強カチオン交換樹脂の典型的なpH範囲は、pH2~12であり得る。SP強カチオン交換樹脂の典型的なpH範囲は、pH2~14であり得る。
【0056】
「弱カチオン交換」(WCX)又は「弱カチオン交換樹脂」又は「弱カチオン交換固定相」という用語は、典型的には、CMと指定され得るカルボキシメチル官能基(例えば、-O-CH2-CO2-)、又はCと指定され得る他のカルボン酸官能基(-CO2-)などのカルボン酸官能基を含むイオン交換樹脂を指す。
【0057】
「SEC」という用語は、サイズ排除クロマトグラフィーを指す。サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)は、溶液中の分子サイズに比例して、最大から最小までのサイズに基づいて、分子を分離することを伴う。非常に大きい分子が、充填床から除外され、第一に空隙体積内で溶出される。より小さい分子は、サイズに応じて、様々な程度に細孔を貫通し得る。最小の分子が最も遠くの細孔に拡散し、最後に溶出する。異なる移動相は、例えば、流体力学的半径又は回転半径に起因して、溶液中のサイズ変化のために、溶出順序に影響を及ぼし得る。SECは、モノクローナル抗体などのタンパク質を凝集体、断片、複合体、賦形剤、不純物などから分離するために使用され得る。SECは、生物学的化合物のサイズベースの分離に使用され得る。例えば、SECは、生物学的治療分子の研究、開発、及び製造における凝集体及び断片分析に適切である。
【0058】
質量スペクトルにおける「m/z」という用語は、個々の分子の質量対電荷比を表し、各分子の正確な同位体組成を表す。最も強烈なピークは、最も可能性の高い同位体の組成から生じる。
【0059】
「電荷エンベロープ」又は「電荷状態エンベロープ」という用語は、例えば、無傷のmAbのLC/MS生データにおけるピークの群を指す。タンパク質は、エレクトロスプレーイオン化中に多重帯電イオンを形成する。モノクローナル抗体などの大きいタンパク質は、電荷分布エンベロープ、又は「電荷エンベロープ」又は「電荷状態エンベロープ」を有する。例えば、トラスツズマブのための新しい緩衝系を使用して、エンベロープの中心は、
図6ー5に示されるように電荷+24である。これは、
図6ー6に示されるように、エンベロープの中心が電荷+27である、トラスツズマブの標準緩衝系と比較される。複数のピークが観察され、これらは、mAbの異なる糖型又は電荷変異体に起因するものである。ESI-MSにおける天然タンパク質の電荷状態は、いくつかのパラメータの複雑な関数であり、これらの相対的な重要性は依然として議論されている。議論された異なるパラメータのうち、溶液中のタンパク質の立体配座(溶媒がアクセス可能な表面積)、タンパク質配列(タンパク質の「表面」での荷電AAの数、溶媒アクセス可能なAA)、及びイオン化環境における成分の気相塩基性が、典型的には重要であると考えられる。より低い電荷状態は、デコンボリューションされた質量スペクトルにおいてより高い分解能を与えることができるため、分析物の電荷状態は、生体巨大分子のMS検出において重要である。低減されたタンパク質変性(「より天然の」立体配座)若しくはより少ない付加物、又は両方を示すため、より低い電荷状態は、概して、生体分子の天然MSにおいて好ましい。いくつかの実施形態では、新しい緩衝系は、標準緩衝系と比較して、タンパク質分析物の生の質量スペクトルにおいて、少なくとも約3又は少なくとも約2の電荷状態のより低い電荷状態エンベロープをもたらす。
【0060】
LC溶出液の検出は、任意の適切な方法によるものであり得る。溶出液は、UV検出によって、例えば、UV検出器による事前選択された波長における吸光度の測定によって、及び/又はUV範囲内での、例えば、ダイオードアレイ検出器(DAD)を使用して、監視され得る。UV検出は、任意の適切なUV波長における吸光度によって溶出液を監視することを含み得る。例えば、タンパク質アミド結合(220nm)、オフピーク(230nm)、Tyr、Phe、Trp(280nm)、若しくは核酸(260nm)のタンパク質芳香族アミノ酸側鎖、又はその間の任意の他の適切なUV波長値のUV検出。LC溶出液はまた、質量分析法(MS)、屈折率(RI)、レーザ光散乱(LS)、蛍光検出器(FL)、又は任意の他の適切な検出方法によって監視され得る。pHメータはまた、緩衝系によってオンラインで提供される流出物のpH応答を監視するためにも用いられ得る。
【0061】
「分解能」という用語は、2つのピークがいかに良好に分離されているかの尺度を指す。分解能は、Rs=(tr,2-tr,1)/(0.5×(w1+w2))によって決定され得、式中、trは、ピーク1又はピーク2のいずれかの保持時間であり、w1は、ピーク1又はピーク2の半分の高さでのピーク幅である。同様の様式で、分解能及びピーク容量は、所与の分離空間内に収まることができるピークの数の尺度を指すために使用される。
【0062】
ピーク容量は、Pc=1+(t/wavg)として決定され得、式中、tは、所与の分離空間に対応する時間であり、wavgは、所与の分離におけるピークについて観察された半分の高さでの平均ピーク幅である。
【0063】
総イオン電流(「TIC」)クロマトグラムのピーク高さ及びTICピークの信号対ノイズ比は、LC-MS分析の感度を定義するために使用され得る2つの値である。TIC信号対ノイズは、移動相の選択によって影響を受け得る。
【0064】
クロマトグラフィー分解能に加えて、LC-MS方法は、それらが提供する質量スペクトルの品質によって評価され得る。
【0065】
「溶離液」という用語は、クロマトグラフィーにおいて使用される緩衝液又は緩衝液混合物であり、移動相と同義である。
【0066】
「溶出液」という用語は、クロマトグラフィーカラムから出る分析物及び溶媒を含有する溶液を指す。溶出液は、分離の過程中に生じる。
【0067】
「流出物」という用語は、分離が行われているかどうかにかかわらず、クロマトグラフィーカラムから出てくる流れを指す。
【0068】
質量分析法(「MS」)は、試料から形成された荷電分子又は分子断片の質量電荷比を測定する分析技術である。MSは、対象の試料の質量、化学組成、及び/又は化学構造を分析するために使用され得る。概して、MSは、3つのステップ:試料をイオン化して、荷電分子又は分子断片(すなわち、イオン)を形成することと、それらの質量電荷比に従って、イオンを分離することと、分離されたイオンを検出して、質量電荷信号(すなわち、スペクトル)を形成することと、を含む。イオンの形成は、例えば、エレクトロスプレーイオン化(ESI)、高速原子爆撃(FAB)、化学イオン化(CI)、電子インパクト(EI)、大気固体分析イオン化(ASAI)、大気圧力光イオン化(APPI)、脱着エレクトロスプレーイオン化(DESI)、大気圧力蒸気源(APVS)、マトリックス支援レーザ脱着/イオン化(MALDI)などの所定のMSイオン化技術によって達成することができる。MSデバイスには多くの異なるタイプがある。例えば、セクタ、飛行時間(TOF)、四重極、イオントラップ、フーリエ変換イオンサイクロトロン共鳴、及びタンデム(タンデム又は直交で組み合わされた上記のうちの2つ以上)質量分析計は、MSデバイスであると考えられる全ての異なる機器である。MS分析の特定の特性評価としては、例えば、質量精度、分解能、感度、ダイナミックレンジ、選択性、及び特異性などが挙げられる。
【0069】
質量分析法(MS)は、試料の調製及び導入、イオン形成、質量分離、並びにデータ処理を含み得る。
【0070】
MSイオン形成は、例えば、エレクトロスプレーイオン化(ESI)又はマトリックス支援レーザ脱離イオン化(MALDI)を含み得る。エレクトロスプレーイオン化(ESI)では、対象の試料を含有する溶液は、細かい液滴に噴霧される。液滴は、乾燥し、サイズが低減され、より小さい液滴に分割され、最終的には、1つ以上の残留電荷を有する脱溶媒和分析物イオンを生成する。タンパク質は、エレクトロスプレー分析中に多重帯電イオンを形成する傾向があり、質量分析法による分析を容易にする。質量分離は、例えば、四重極、TOF、Orbitrapを含み得る。
【0071】
MSデータ処理は、生のMSスペクトルのデコンボリューションを含み得る。例えば、ESI MS質量スペクトルは、数学的デコンボリューションに供して、m/zを含む生の質量スペクトルをタンパク質分析物質量データに変換し得る。例えば、
m/z=質量対電荷比
Mr=タンパク質の質量
n=m/zに対する電荷の数
mp=H+の質量=1.0073
所与のm/z1=(Mr+nlmp)/n1
かつn2=n1+1
n1を解くために並べ替えることができる:
n1=(m/z2-mp)/(m/z1-m/z2)及び
calcMr1=(n1*m/z1)-(n1*1.0073)=Mr1
calcMr2=(n2*m/z2)-(n2*1.0073)=Mr2。
【0072】
例えば、Covey et al.,The determination of protein,oligonucleotide and peptide molecular weights by ion-spray mass spectrometry,Rapid Commun.Mass Spectrom.2:11,1988を参照されたい。生質量スペクトルのコンピュータ支援によるデコンボリューションも実施され得る。Mann,M.、Meng,C.K.、Fenn,J.B.Interpreting Mass Spectra of Multiply Charged Ions.Anal.Chem.1989,61,1702-1708、Labowsky,M.、Whitehouse,C.M.、Fenn,J.B.Three-Dimensional Deconvolution of Multiply Charged Spectra.Rapid Commun.Mass Spectrom.1993,7,71-84、Zhang,Z.、Marshall,A.G.A Universal Algorithm for Fast and Automated Charge State Deconvolution of Electrospray Massーto-Charge Ratio Spectra.J.Am.Soc.Mass Spectrom.1998,9,225-233。
【0073】
MALDIは、天然モノクローナル抗体MSなどの天然タンパク質分析に適した軟イオン化技術である。
【0074】
ESI及びMALDIイオン形成プロセスは、競合的であり、異なる化合物は、イオン化効率において大きい変動を有し得る。イオン抑制は、塩、洗剤、ポリマーによって引き起こされる場合がある。タンパク質分析物は、イオン化ステップの前に干渉材料から分離され得る。様々な塩及び緩衝成分の許容濃度は、Harvard Center for Mass Spectrometry.https://massspec.fas.harvard.edu/files/smms/files/saltbufferによって記載されている。不揮発性塩(例えば、NaCl)は、不十分な検出感度につながる無傷のタンパク質の抑制を引き起こす可能性があるため、これらの化合物のMSへの導入を最小限に抑えることが重要である。
【0075】
従来、MSイオン抑制を回避するために、希釈、透析/緩衝交換、ジップチップ、分子量カットオフ(MWCO)フィルタ、及び/又は脱塩カラムなどのオフライン試料洗浄及び脱塩技術が利用されてきた。例えば、BioRad Micro Biospin P-6ゲルカラムは、MWCO 6000Daで、小分子、塩を除去する。オフライン試料クリーンアップの欠点は、10uLを超える試料及び/又は高濃度の試料、沈殿に起因するタンパク質損失を最小限に抑えるための方法開発のための時間及び試料、培地への付着又は培地からの溶出の失敗、並びに分析物タンパク質の分解を含む。試料が、事前の最適化なしに制限されている場合、オフラインの脱塩/クリーンアップは、実行不可能な場合がある。LC-MSのための典型的なオンライン脱塩技術としては、例えば、逆相(RP)クロマトグラフィー、サイズ排除、又は毛細血管電気泳動を含み得る。RP脱塩カラムは、例えば、フェニル、ジフェニル、ポリフェニル、C4、C8、又はポリマー逆相(PLRP-S)を利用し得る。RPオンライン調製カラムは、質量分析計へのタンパク質溶出前に、塩を洗浄して廃棄することを可能にするタンパク質を保持することになる。しかしながら、脱塩カラムの使用は、無傷の抗体に対して少なくとも数分間分、労力及びサイクル時間を増加させ得る。本開示は、MSイオン抑制を回避するための低塩濃度を含み、再現可能なpH勾配溶出を提供し、UV及びMS検出の両方に対応する、IEC-HRMSに対して好適な単一移動相緩衝系を提供する。高分解能質量分析法への直接結合pH勾配カチオン交換クロマトグラフィーを含む方法が提供される。
【0076】
いくつかの実施形態では、本開示の移動相緩衝組成物は、50mM以下、30mM以下、25mM以下の塩濃度、約20mM以下の塩濃度、又は約15mM以下の塩濃度を含有し得る。いくつかの実施形態では、本開示の組成物は、2~25mM、2~20mM、又は2~15mMの塩濃度を含有し得る。塩は、カルボン酸アンモニウム塩であり得る。カルボン酸アンモニウムは、C1-C2カルボン酸アンモニウムであり得る。カルボン酸アンモニウムは、酢酸アンモニウム又はギ酸アンモニウムであり得る。いくつかの実施形態では、本開示の組成物は、2mM~25mM、2mM~20mM、又は2mM~15mMの酢酸アンモニウム濃度を含有し得る。いくつかの実施形態では、本開示の組成物は、25mM以下、20mM以下、又は約15mM以下の酢酸アンモニウム濃度を含有し得る。
【0077】
いくつかの実施形態では、移動相緩衝組成物は、約1mM~約50mM、約1mM~約25mM、約1mM~約20mM、約1mM~約10mM、約1mM~約6mM、又は約2mM~約5mMのN-メチルモルホリン(NMM)又はその異性体、若しくはその類似体を更に含む。
【0078】
N-メチルモルホリンの異性体としては、2-メチルモルホリン、2-メチルモルホリン、2-メチル-1,3-オキサジナン、3-メチル-1,3-オキサジナン、4-メチル-1,3-オキサジナン、5-メチル-1,3-オキサジナン、及び6-メチル-1,3-オキサジナンを含み得る。
【0079】
N-メチルモルホリンの類似体は、任意の適切なアルキル若しくはジアルキルモルホリン、又はアルキル若しくはジアルキル1,3-オキサジナンを含み得る。N-メチルモルホリンの類似体は、アルキルC1-C6モルホリン、ジアルキルC1-C6モルホリン、アルキルC1-C6-1,3-オキサジナン、及びジアルキルC1-C6-1,3-オキサジナンからなる群から選択され得る。
【0080】
N-メチルモルホリンの類似体は、アルキルモルホリン化合物を含み得る。アルキルモルホリン化合物は、アルキルC1-C6モルホリン化合物、アルキルC1-C4モルホリン化合物、又はアルキルC1-C3モルホリン化合物を含み得る。アルキルモルホリンは、例えば、エチルモルホリン、プロピルモルホリン、イソプロピルモルホリン、ブチルモルホリン、又はイソブチルモルホリンなどであり得る。
【0081】
N-メチルモルホリンの類似体は、N-アルキルモルホリン化合物を含み得る。N-アルキルモルホリン化合物は、N-アルキルC1-C6モルホリン化合物、N-アルキルC1-C4モルホリン化合物、又はN-アルキルC1-C3モルホリン化合物を含み得る。N-アルキルモルホリンは、例えば、N-エチルモルホリン、N-プロピルモルホリン、N-イソプロピルモルホリン、N-ブチルモルホリン、又はN-イソブチルモルホリンなどであり得る。
【0082】
N-メチルモルホリンの類似体は、ジアルキルモルホリンを含み得る。ジアルキルモルホリン化合物は、ジアルキルC1-C6モルホリン化合物、ジアルキルC1-C4モルホリン化合物、又はジアルキルC1-C3モルホリン化合物を含み得る。ジアルキルモルホリンは、2,2-ジアルキルモルホリン、2,3-ジアルキルモルホリン、2,4-ジアルキルモルホリン、2,5-ジアルキルモルホリン、2,6-ジアルキルモルホリン、3,3-ジアルキルモルホリン、3,4-ジアルキルモルホリン、又は3,5-ジアルキルモルホリンなどであり得る。
【0083】
例えば、ジアルキルモルホリンは、2,2-ジメチルモルホリン、2,3-ジメチルモルホリン、2,4-ジメチルモルホリン、2,5-ジメチルモルホリン、2,6-ジメチルモルホリン、3,3-ジメチルモルホリン、3,4-ジメチルモルホリン、又は3,5-ジメチルモルホリンなどであり得る。
【0084】
ジアルキルモルホリン又はジアルキル-1,3-オキサジナンは、任意の構成であり得る。ある特定のジアルキルモルホリン又は1,3-オキサジナン化合物は、シス配置、トランス配置、又はシス及びトランス配置の混合物であり得る。例えば、シス、トランス-2,6-ジメチルモルホリン、シス-2,6-ジメチルモルホリン、又はトランス-2,6-ジメチルモルホリン、又はこれらの任意の組み合わせである。
【0085】
N-メチルモルホリンの類似体は、アルキル1,3-オキサジナン化合物を含み得る。
【0086】
アルキル1,3-オキサジナン化合物は、アルキルC1-6-1,3-オキサジナン化合物、アルキルC1-4-1,3-オキサジナン化合物、アルキルC1-3-1,3-オキサジナン化合物、N-アルキルC1-6-1,3-オキサジナン化合物、N-アルキルC1-4-1,3-オキサジナン化合物、又はN-アルキルC1-3-1,3-オキサジナン化合物を含み得る。
【0087】
例えば、N-アルキル1,3-オキサジナンは、N-メチル-1,3-オキサジナン、N-エチル-1,3-オキサジナン、N-プロピル-1,3-オキサジナン、N-イソプロピル-1,3-オキサジナン、N-ブチル-1,3-オキサジナン、N-イソブチル-1,3-オキサジナンなどを含み得る。
【0088】
N-メチルモルホリンの類似体は、ジアルキル1,3-オキサジナン化合物を含み得る。N-メチルモルホリンの異性体は、ジアルキルC1-C6-1,3-オキサジナン、ジアルキルC1-C4-1,3-オキサジナン、又はジアルキルC1-C3-1,3-オキサジナンを含み得る。ジアルキル1,3-オキサジナンは、2,4-ジアルキル-1,3-オキサジナン、2,5-ジアルキル-1,3-オキサジナン、2,6-ジアルキル-1,3-オキサジナン、3,5-ジアルキル-1,3-オキサジナン、3,4-ジアルキル-1,3-オキサジナン、2,2-ジアルキル-1,3-オキサジナン、又は3,3-ジアルキル-1,3-オキサジナンであり得る。例えば、ジアルキル1,3-オキサジナンは、2,4-ジメチル-1,3-オキサジナン、2,5-ジメチル-1,3-オキサジナン、2,6-ジメチル-1,3-オキサジナン、3,5-ジメチル-1,3-オキサジナン、3,4-ジメチル-1,3-オキサジナン、2,2-ジメチル-1,3-オキサジナン、又は3,3-ジメチル-1,3-オキサジナンであり得る。
【0089】
「アルキル」という用語は、C1-6アルキル、又はC1-4アルキル、又はC1-3アルキル、又はC1-2アルキルを指し得る。アルキルは、直鎖であっても分岐鎖であってもよい。例えば、アルキルは、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、sec-ブチル、イソブチル、ペンチル、ヘキシルなどであり得る。
【0090】
「分析物」は、生体分子であり得る。分析物は、タンパク質、ペプチド、グリカン、又はこれらの組み合わせであり得る。分析物は、複数のタンパク質、複数のペプチド、複数のグリカン、又はこれらの組み合わせを含むことができる。タンパク質は、抗体、その抗原結合断片、又は抗体-薬剤複合体(ADC)であり得る。生体分子分析物は、組み換え、合成、又は単離された生体分子であり得る。生体分子は、タンパク質分析物であり得る。
【0091】
本明細書で使用される場合、「タンパク質」という用語は、ポリペプチドと呼ばれるアミノ酸のポリマー鎖を指す。タンパク質はまた、翻訳後修飾(PTM)、リン酸化、脂質化、プレニル化、硫酸化、ヒドロキシル化、アセチル化、炭水化物の添加(グリコシル化及び糖化)、人工基又は補因子の添加、ジスルフィド結合の形成、タンパク質分解、高分子複合体への組み立てなどを含む、多数の修飾を含み得る。抗体は、モノクローナル抗体(mAb)又はポリクローナル抗体、若しくはその抗原結合断片であり得る。抗体は、全長抗体(例えば、IgG1又はIgG4抗体)、二重特異性抗体(bsAb)であり得、又は抗原結合部分(例えば、Fab、F(ab’)2、Fab3、scFv、bis-scFv、ミニボディ、ダイアボディ、テトラボディ、トリアボディ、断片)のみを含み得、及び機能性に影響を及ぼすように修飾され得、一価、二価、三価、四価であり得、より高い価を有し得るか、又は抗体複合体であり得る。抗原結合断片は、例えば、(i)Fab断片、(ii)F(ab’)2断片、(iii)Fd断片、(iv)Fv断片、(v)単鎖Fv(scFv)分子、(vi)dAb断片、及び(vii)抗体の超可変領域(例えば、CDR3ペプチドなどの単離された相補性決定領域(CDR))を模倣するアミノ酸残基、又は拘束FR3-CDR3-FR4ペプチドからなる最小認識単位を含み得る。生体分子分析物は、天然のmAb及びその電荷変異体であり得る。
【0092】
組成物
水性移動相緩衝系は、モノクローナル抗体などの無傷の生体分子の分析における高分解能質量分析法に任意選択的に直接結合された液体クロマトグラフィーにおける使用のために提供される。いくつかの実施形態では、LCは、イオン交換クロマトグラフィー(IEC)又はサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)である。
【0093】
全ての成分が、揮発性であり、タンパク質分析のために一般的に使用されるUV波長で著しいUV吸光度を有するものはないため、本明細書において提供される新しい移動相緩衝系は、UV及びMS検出の両方に好適である。新しい移動相緩衝系は、約25mM以下の低塩濃度を含み、HRMSに直接結合されたIECにおけるpH勾配溶出における使用に好適である。
【0094】
新しい移動相緩衝系は、モノクローナル抗体(mAb)などの天然生体分子の分析において最適なpH制御、感度、及び分解能を提供する。緩衝組成物及びpH値は、mAb電荷変異体分析のために最適化されている。勾配範囲及び傾きは、各分析物、例えば、天然mAbについて最適化され得る。MS条件は、感度を最大化及び/又は付加物を最小限に抑えるように最適化され得る。緩衝成分に使用される含有物は、好ましくは、感度を改善し、金属付加物によって引き起こされるスペクトルの複雑さを低減するために、高純度、微量金属グレードである。
【0095】
緩衝液pH及びイオン強度は、全ての形態のイオン交換クロマトグラフィーに対して重要である。典型的には、緩衝液pHは、塩濃度が調節された後に調節され得る。緩衝液pH及びイオン強度は、カラム樹脂へのタンパク質の結合に大きく影響するため、pHが適切に調節され、適切な対イオンが使用されることを確認することが重要である。
【0096】
本明細書において説明された技術は、高分解能質量分析法(オンラインHRMS)に直接結合されたイオン交換クロマトグラフィーを使用する場合、pH勾配溶出の非線形性及び不十分なクロマトグラフィー再現性などの従来技術で発見された問題を解決する。
【0097】
本明細書において説明された技術は、HRMSを用いたイオン交換クロマトグラフィーにおける移動相緩衝液中の過剰な塩濃度に起因する不十分なMS感度を含む、先行技術で発見された問題を解決する、典型的には、約40mM以上の塩濃度が、MS感度を低減させ得ることが発見されている。本開示は、HRMSにおける使用に適切な最低のイオン強度と組み合わせて、最高の緩衝液容量を有する緩衝系を提供する。いくつかの実施形態では、25mM以下の塩濃度のイオン強度が用いられる。
【0098】
本明細書において説明された技術は、高分解能質量分析法(HRMS)を用いたイオン交換クロマトグラフィーを使用する場合、無傷のモノクローナル抗体(mAb)、の電荷変異体の不十分なクロマトグラフィー分解能、特に低等電点(pI)mAb(例えば、インフリキシマブ、pI7.6)などの従来技術で発見された問題を解決する。
【0099】
本明細書において説明された技術は、IEC-HRMSにおける無傷のタンパク質の高電荷状態、すなわち、著しいタンパク質変性を示すMSスペクトルに起因する、低減された質量分析(MS)分解能を含む、先行技術で発見された問題を解決する。
【0100】
本明細書において提供された新しい移動相緩衝系緩衝系は、イオン交換クロマトグラフィーを使用する無傷のモノクローナル抗体の電荷変異体分析など、1)改善されたpH制御、2)改善されたMS感度、及び3)増加した質量スペクトル分解能(「より天然な」状態を示す無傷のタンパク質のためのより高い質量スペクトル電荷エンベロープ)をもたらす質量分析(MS)検出(すなわち、MS互換性)で、pH勾配に基づくクロマトグラフィー分離に使用され得る。
【0101】
本明細書において提供される改良された緩衝系の他の利点は、無傷のmAb電荷変異体のより良好なクロマトグラフィー及び質量分析分解能を含む。これらは、多くの場合、生物療法剤の開発及び製造中に特定及び特性評価されなければならない重要な品質属性である。
【0102】
改良された緩衝系は、弱イオン交換固定相又は強イオン交換固定相材料のいずれか及びカラムと共に利用され得る。
【0103】
具体的には、新しいpH勾配緩衝系成分は、mAbなどの生体分子の一次関心のpH範囲に及ぶpKa値、すなわち、pH4.5~10.8、pH4.5~10.5、pH5~10.5、又はpH5.2~10.2の範囲内にあるpKa値を有する。例えば、酢酸塩pKa=4.8、N-メチルモルホリンpKa=7.4、アンモニアpKa=9.2である。N-メチルモルホリンが新しい緩衝系における使用のために選択された1つの理由は、約7.4の中間pKaであり、これにより、pH勾配がより線形であり、より再現可能になる。
【0104】
新しい緩衝系はまた、UV適合性であり、これは、他の弱塩基と比較してN-メチルモルホリンを使用することの更なる利点である。N-メチルモルホリンは、塩基形態であり得る。所望の範囲に近いpKaを有する他の潜在的なMS適合性弱塩基(例えば、ピリジン系)は、有意なUV吸収を有する。N-メチルモルホリンは、生体治療薬に一般的に使用されるUV波長(280nm)において良好な透明性を有し、MS及びUV検出の両方に同じ緩衝液を使用することを可能にする。これは、全てのピーク(不純物を含む)の保持時間/溶出順序が、典型的に、MSを使用して識別され、次いで、MSで決定された保持時間(RT)/溶出順序を使用して、UV検出によるルーチン監視が実施されるため、有益である。各検出器に対して使用される緩衝液を変更すると、この作業が非常に複雑になる可能性がある。
【0105】
生体分子(例えば、タンパク質、ペプチド、及び/又はグリカン)LC-MSは、単に高感度検出を達成することに関するものではない。この方法の能力は、クロマトグラフィーの分解能によって大きく影響される。
【0106】
本開示は、LC分離、及び任意選択的に、生体分子分析物のMSにおける使用に適切なpH勾配緩衝系を提供する。
【0107】
例えば、本pH勾配緩衝系の開発は、インフリキシマブpI7.6(例えば、Remicade)、セツキシマブpI8.8(例えば、Erbitux)、トラスツズマブpI9.1(例えば、Kanjinti)、NISTリファレンスmAbpI9.2、及びリツキシマブpI9.4(例えば、Rituxan)を含む、関連するpIの範囲に及ぶ5つの無傷の天然モノクローナル抗体の分析を伴った。本明細書で提供される緩衝系は、弱イオン交換クロマトグラフィー及び/又は強イオン交換クロマトグラフィーにおける使用に適切である。例えば、本明細書に提供される緩衝系は、Phenomenex(登録商標)bioZen 6um WCXなどの弱イオン交換カラム、又はThermoScientific(商標)mAbPac(商標)5um SCXなどの強イオン交換カラムを使用する天然mAbの電荷変異体などの分析物の分離に適している。
【0108】
本発明の緩衝系は、25mM未満の酢酸アンモニウム、約2~約25mMの酢酸アンモニウム、約2~20mMの酢酸アンモニウム、又は約5mM~約15mMの酢酸アンモニウムの即時使用可能な緩衝液濃度を含み得る。本発明の移動相緩衝系は、約1mM~約10mMのN-メチルモルホリン、約2mM~約8mMのN-メチルモルホリン、又は約2mM~約5mMのN-メチルモルホリンの即時使用可能な緩衝濃度を含み得る。本発明の緩衝系は、25mM未満の酢酸アンモニウム、20mM以下の酢酸アンモニウム、約2~25mMの酢酸アンモニウム、約2~約20mMの酢酸アンモニウム、約2~約15mMの酢酸アンモニウム、又は約5mM~約15mMの酢酸アンモニウム、及び約1mM~約10mMのN-メチルモルホリン、約2mM~約8mMのN-メチルモルホリン、又は約2mM~約5mMのN-メチルモルホリンの即時使用可能な緩衝液濃度を含み得る。緩衝系は、約pH4.5~約pH10.5、pH5~10.5、又はpH5.2~10.2の範囲内にあるか、又はこれらの範囲に及ぶpHを含み得る。
【0109】
本開示は、1つ以上、2つ以上、又は3つ以上の部分を含む水性緩衝系を提供する。緩衝系は、2部水性緩衝系を含む移動相を含み得る。2部水性緩衝系は、部分A緩衝液及び部分B緩衝液を含み得る。いくつかの実施形態では、水性緩衝系の部分Aは、酢酸で調節された約pH4.5~約pH5.5のpHにおいて、約10mM~約25mMの酢酸アンモニウム、及び約2mM~約10mMのN-メチルモルホリンを含み得る。ある特定の実施形態では、水性緩衝系の部分Aは、酢酸で調節された約pH5~約pH5.5のpHにおいて、約10mM~約20mMの酢酸アンモニウム、及び約3mM~約8mMのN-メチルモルホリンを含み得る。いくつかの実施形態では、水性緩衝系の部分Bは、水酸化アンモニウムで調設されたpH9~約10.5において、約2mM~約10mMの酢酸アンモニウム、及び約1mM~約5mMのN-メチルモルホリンを含み得る。ある特定の実施形態では、水性緩衝系の部分Bは、水酸化アンモニウムで調節されたpH9.5~約10.5において、約3mM~約8mMの酢酸アンモニウム、及び約1mM~約3mMのN-メチルモルホリンを含み得る。2部水性緩衝系は、pH4.5~10.5、pH5~10.5、又はpH5.2~10.2のpH範囲に及ぶように設計され得る。約pH3.8~10.8のより広いpH範囲が用いられてもよい。
【0110】
移動相添加剤は、約100ppb以下の任意の個々の金属不純物を含み得る。換言すると、移動相添加剤中に含有される各金属不純物は、約100ppbを超える量では存在しない。いくつかの実施形態では、移動相添加剤は、各々、約90ppb、80ppb、70、ppb、60、ppb、50ppb、40ppb、30ppb、20ppb、又は10ppb未満の任意の個々の金属不純物を含む。いくつかの実施形態では、移動相添加剤は、各々、約95ppb、85ppb、75、ppb、65、ppb、55ppb、45ppb、35ppb、25ppb、又は15ppb未満の任意の個々の金属不純物を含む。金属不純物は、質量スペクトルの望ましい特徴、例えば、質量スペクトルの品質に影響を与える任意の金属である。金属不純物は、例えば、ナトリウム、カリウム、カルシウム、ニッケル、銅、及び/又は鉄であり得る。本技術のこれらの態様は、上で説明された移動相添加剤を用いて後に調製された即時使用可能な移動相又はその任意の濃縮物に及ぶ。
【0111】
緩衝系は、LC/MSグレードの水、MSグレードの水、又は0.2マイクロメートルフィルタを通して濾過された約18.2メガオーム-cmの比抵抗を有するタイプ1試薬グレードの水を使用する脱イオン水(重量/重量又は体積/体積)を用いてもよい。
【0112】
水は、20ppb以下の微量不純物を有し得る。移動相添加剤と同様に、水は、約100ppb未満の任意の個々の金属不純物、又は約95ppb、85ppb、75、ppb、65、ppb、55ppb、45ppb、35ppb、25ppb、又は15ppb未満の任意の個々の金属不純物を有し得る。
【0113】
移動相は、約100ppb、90ppb、80ppb、70ppb、60ppb、50ppb、40ppb、30ppb、20ppb、又は10ppb未満の任意の個々の金属不純物を有し得る。移動相は、約50ppb未満の任意の個々の金属不純物を有し得る。移動相は、約20ppb未満の任意の個々の金属不純物を有し得る。個々の金属不純物は、例えば、アルミニウム、バリウム、カドミウム、カルシウム、クロム、コバルト、銅、鉄、鉛、マグネシウム、マンガン、ニッケル、カリウム、銀、ナトリウム、スズ、又は亜鉛であり得る。
【0114】
本開示の組成物は、即時使用可能な緩衝液、希釈のための濃縮された緩衝液、並びにLCカラム又はデバイスと共に本開示による緩衝液からなる組み合わされた生成物などのキットの構成要素の形態で市販され得る。希釈のための即時使用可能な緩衝液又は濃縮された緩衝液は、任意の適切な容器内に貯蔵され得る。容器は、清潔で、抽出可能な材料/残留物が含まれていないはずである。例えば、緩衝液貯蔵容器は、適切なプラスチック又はガラス貯蔵容器であり得る。いくつかの実施形態では、例えば、ガラスからの汚染物質の浸出を低減するために、緩衝液貯蔵のためのプラスチック容器の使用が好ましい。容器は、任意の適切なプラスチック材料を含み得る。いくつかの実施形態では、容器は、高密度ポリエチレン(HDPE)、ポリプロピレン(PP)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、又はポリスチレン(PS)プラスチック材料を含み得る。容器は、例えば、汚染物質を排除するために封止され得る。
【0115】
キットは、クロマトグラフィーカラム、一定量の濃縮移動相を有する容器、及び使用説明書、並びに/又は使用説明書のウェブサイトアドレスを含み得る。クロマトグラフィーカラムは、カラム内側に固定相材料を有する。固定相材料は、本明細書において説明される任意の固定相材料、例えば、イオン交換固定相、サイズ排除固定相、親水性相互作用固定相、及び/又は逆相固定相であり得る。
【0116】
移動相組成物は、即時使用可能な緩衝液の形態の、又は濃縮された緩衝液中の液体であり得る。濃縮緩衝液は、使用前の希釈のための2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、11倍、12倍、13倍、14倍、15倍、16倍、17倍、18倍、19倍、又は20倍以上の濃度、又はその間の任意の値であり得る。いくつかの実施形態では、移動相緩衝液は、10倍濃縮物である。任意選択的に、アセトニトリル又はイソプロパノールなどの有機溶媒は、最大10%v/vの濃度で用いられ得る。濃縮物は、希釈されて、1倍緩衝系を調製し得る。いくつかの実施形態では、移動相緩衝液は、即時使用可能な移動相緩衝組成物である。
【0117】
使用説明書は、ユーザに、試料マトリックス中に少なくとも1つの生体分子(例えば、mAbプロセス試料又はmAb精製試料などのタンパク質)を含有する試料を得るように、並びに移動相濃縮物を適切な水で希釈して、約2mM~約25mMの酢酸アンモニウム、約2mM~約20mMの酢酸アンモニウム、(両端の値を含む)、又は約5mM~約15mMの酢酸アンモニウム、及び約1mM~10mM、又は約2mM~約5mMのN-メチルモルホリン(NMM)を得るように指示し得る。2部緩衝系中の各希釈移動相濃縮物のpHは、それぞれ、約pH5.2及び約pH10.2であり得る。
【0118】
ユーザは、少なくとも1つの生体分子(例えば、mAbなどのタンパク質)を実質的に分解して保持するために、希釈された移動相又は即時使用可能な移動相を有する試料をカラムを通して流すように指示され得る。加えて、この指示は、ユーザに、検出器を使用して少なくとも1つの生体分子(例えば、mAbなどのタンパク質)を検出するように指示する。
【0119】
安定性研究は、工場で約4℃の冷蔵温度で封止されて貯蔵された場合、少なくとも6ヶ月、少なくとも12ヶ月、少なくとも18ヶ月以上の10倍緩衝系濃縮物の許容可能な保存寿命を示す。任意選択的に、貯蔵寿命を延長させるために、アセトニトリル又はイソプロパノールなどの有機溶媒は、最大10%v/vの濃度で用いられ得る。安定性研究は、工場で約4℃の冷蔵温度で封止されて貯蔵された場合、少なくとも3ヶ月、少なくとも6ヶ月、少なくとも12ヶ月以上の即時使用可能な緩衝液の許容可能な保存寿命を示す。室温での緩衝液の予備保存寿命の研究が行われ、少なくとも3ヶ月、少なくとも6ヶ月、少なくとも12ヶ月以上の室温における即時使用可能な10倍緩衝系濃縮物の見込みのある工場封止保存寿命の結果が示された。即時使用可能な緩衝液の室温貯蔵寿命は、微生物の増殖を最小限に抑えるために適切な容器で少なくとも1ヶ月である(流入する空気は濾過される)。
【0120】
使用
分析物を試料から分離する方法が提供され、方法は、移動相をクロマトグラフィーカラムを通して流すことであって、移動相が、2部水性緩衝系を含み、水性緩衝系の部分Aが、約10~25mMの酢酸アンモニウム、3~10mMのN-メチルモルホリン、及び酢酸でpH4.5~5.5に調節されたpHを含み、水性緩衝系の部分Bが、2~10mMの酢酸アンモニウム、1~5mMのN-メチルモルホリンを含み、水酸化アンモニウムで調節されたpH9.5~約10.5である、流すことと、分析物を含む試料を移動相に注入することと、カラムから分析物を溶出することと、を含む。方法は、溶出液中の分析物を検出することを更に含み得る。方法は、カラムを溶出する前に、注入後にカラムを洗浄することを更に含み得る。方法は、分析物の分子量を決定することを更に含み得る。方法は、分析物を質量分析計で検出することを更に含み得る。方法は、分析物イオンを生成することを更に含み得る。方法は、分析物イオンの質量スペクトルを取得することを更に含み得る。
【0121】
いくつかの実施形態では、水性緩衝系の部分Aは、酢酸でpH5.2に調節された、約15mMの酢酸アンモニウム、約5mMのN-メチルモルホリンを含む。
【0122】
いくつかの実施形態では、水性緩衝系の部分Bは、水酸化アンモニウムでpH10.2に調節された、約5mMの酢酸アンモニウム、約2mMのN-メチルモルホリンを含む。
【0123】
実施形態では、酢酸アンモニウム、酢酸、水酸化アンモニウム、及びN-メチルモルホリンは、各々、約100ppb以下の個々の金属不純物を含有し得る。
【0124】
分析物は、タンパク質であり得る。タンパク質は、抗体であり得る。タンパク質は、モノクローナル抗体、抗体の抗原結合断片、単離されたタンパク質、合成タンパク質、及び組み換えタンパク質からなる群から選択され得る。
【0125】
いくつかの実施形態では、タンパク質分析物は、勾配溶出又はステップイソクラティック溶出を使用するカラムから溶出され得る。勾配溶出は、pH勾配溶出であり得る。pH勾配溶出は、線形勾配、セグメント化勾配、湾曲勾配、ステップ勾配などから選択され得る。線形pH勾配は、クロマトグラフィー分離を実施する過程にわたって、より低いpHからより高いpHへの移動相pHにおける線形変化を含み得る。ステップpH勾配は、クロマトグラフィー分離の過程にわたる移動相pHにおける段階的変化を含み得る。セグメント化されたpH勾配は、クロマトグラフィー分離の過程にわたって、より低いpHからより高いpHまでの異なる傾きの2つ以上の線形勾配を含み得る。湾曲したpH勾配は、クロマトグラフィー分離の過程にわたって凸状又は凹状の湾曲したpH勾配を含み得る。勾配溶出は、線形勾配であり得る。線形勾配は、線形pH勾配であり得る。勾配は、溶出液の0.1~10%B/CV、又は0.5~5%B/カラム体積(CV)の範囲内の傾きを含み得る。勾配は、溶出液の1~3%B/カラム体積(CV)の範囲内の傾きを含み得る。
【0126】
クロマトグラフィーカラムは、液体クロマトグラフィーカラムであり得る。クロマトグラフィーカラムは、イオン交換樹脂を含み得る。クロマトグラフィーカラムは、サイズ排除クロマトグラフィー樹脂を含み得る。イオン交換樹脂は、カチオン交換樹脂であり得る。カチオン交換樹脂は、強カチオン交換樹脂か、又は弱カチオン交換樹脂であり得る。
【0127】
実施例2及び3における結果は、異なる装置(Thermo Orbitrap MS対Sciex X500B MS)を使用して、契約施設(Intertek)で再現されている。
【実施例】
【0128】
実施例1.緩衝液の調製
この実施例では、再現可能なMS適合性クロマトグラフィー方法、例えば、カチオン交換クロマトグラフィーを使用するpH勾配溶出のための新しい緩衝系を開発した。全ての材料は、微量金属ベースで99.99+%の純度であった。総金属不純物<100ppb。微量金属試薬は、MSにおいて観察される金属付加物を低減するために重要である。
【0129】
標準酢酸アンモニウム緩衝系を、比較用緩衝系として使用するために最適化した。従来技術と比較して、MS適合性を最適化するために、比較用標準緩衝液中の酢酸アンモニウム(NH4Ac)の濃度を減少させた:NH4Ac濃度は、40~50mMのNH4Acを有する従来技術のpH勾配緩衝系と比較して、約20mM以下のNH4Acに減少した。比較用に最適化された標準緩衝液(酢酸アンモニウムのみ)を以下のように調製した。緩衝液A=酢酸でpH5.2に調節した20mMのNH4Ac。緩衝液B=水酸化アンモニウムでpH10.2に調節した5mMのNH4Ac。比較用に最適化された標準NH4Acのみの緩衝系は、室温(入口エアフィルタ下)で少なくとも約4週間安定であることが見出された。最適化された酢酸アンモニウムのみの比較用緩衝液は、低pI mAbの良好な分離を達成するために利用され得るが、その使用は、著しい最適化(非常に浅い勾配)及び日々の傾き調節(緩衝液pHの非常にわずかな変化に感受性である)を必要とし、バッチ間の変動に苦しむ。
【0130】
酢酸アンモニウム及びN-メチルモルホリンを用いる新しいpH勾配緩衝系は、以下のように調製した。新しい緩衝系1倍緩衝液A=酢酸でpH5.2に調節された、15mMのNH4Ac+5mMのN-メチルモルホリン、及び1倍緩衝液B=水酸化アンモニウムでpH10.2に調節された、5mMのNH4Ac+2mMのN-メチルモルホリン。手順:酢酸アンモニウムを1LのMSグレードの水に溶解し、N-メチルモルホリンを添加し、次いで混合し、酢酸でpH5.2に調節する。酢酸アンモニウムを1LのMSグレードの水に溶解し、N-メチルモルホリンを添加し、次いで混合し、水酸化アンモニウムでpH10.2に調節する。pH調節のためにpHプローブを用いた。好ましくは、pHプローブは、pHプローブ塩で緩衝液を汚染するのを回避するために、バルク緩衝溶液内に浸漬されるべきではない。代わりに、アリコートのpHは、pH調節中に試験されるべきである。酢酸アンモニウム及びNMMを含む新しい緩衝液は、より急な、より実用的な勾配、並びに非常に浅い勾配で再現可能な性能を与え、日々、又はバッチごとに変化しない。天然MSを実施するときの堅牢性及び使いやすさは、新しいNMM緩衝液が解決する大きな問題である。酢酸アンモニウム及びNMMを含む新しい緩衝液は、UV及びMS検出の両方に好適である。
【0131】
新しい1倍緩衝系は、室温(入口エアフィルタ)で少なくとも約4週間安定であることが見出された。入口エアフィルタは、実験室の雰囲気からの微生物汚染の侵入を防止するか又は大幅に低減させる。緩衝系は、LC/MSグレードの水、MSグレードの水、又は0.2マイクロメートルフィルタを通して濾過された18.2メガオーム-cmの比抵抗を有するタイプ1試薬グレードの水を使用する脱イオン水を用いる。水は、20ppb以下の微量不純物を有し得る。
【0132】
10倍緩衝系は、使用前に希釈のために調製される。緩衝液A=酢酸でpH5.2に調節された150mMのNH4Ac+50mMのN-メチルモルホリン。緩衝液B=水酸化アンモニウムでpH10.2に調節された50mMのNH4Ac+20mMのN-メチルモルホリン。手順:酢酸アンモニウムを1LのMSグレードの水に溶解し、N-メチルモルホリンを添加し、次いで混合し、酢酸でpH5.2に調節する。酢酸アンモニウムを1LのMSグレードの水に溶解し、N-メチルモルホリンを添加し、次いで混合し、水酸化アンモニウムでpH10.2に調節する。pHプローブを、pH調節のために用いる。
【0133】
溶離液の溶液は、LC/MSグレードの水、MSグレードの水、又は0.2マイクロメートルフィルタを通して濾過された約18.2メガオーム-cmの比抵抗を有するタイプ1試薬グレードの水を使用して、脱イオン水(重量/重量又は体積/体積)で10倍緩衝液A及びBを希釈することによって、10倍から調製され得る。水は、20ppb以下の微量不純物を有し得る。例えば、100mLの10倍緩衝液は、1Lの1倍緩衝液を提供するために、900mLのMSグレードの水で希釈され得る。標準のベンチトップpHメータで、1倍緩衝液A及び1倍緩衝液BのpHを測定し、記録する。
【0134】
実施例2.天然WCX-HRMSを使用するmAbの電荷変異体分析に対するクロマトグラフィー結果
この実施例では、弱カチオン交換カラムを使用する様々なpI値の5つのmAbに対して新しい緩衝系を使用するpH勾配を開発した。mAbは、測定されたpI値を用いて表1Aに示される。全ての実施例では、WCXカラムを、高分解能質量分析計、すなわち、オンライン天然HRMSに直接結合した。スペクトルを、2000~7000のm/z範囲にわたってESI+モードで収集した。
【表1】
【0135】
全てのmAb試料は、インフリキシマブpI7.6(Remicade)、セツキシマブpI8.8(Erbitux)、トラスツズマブpI9.1(Kanjinti)、NISTリファレンスmAb pI9.2、及びリツキシマブpI9.4(Rituxan)を含む10mg/mLであった。5つ全てのmAbを、新しい緩衝系でカチオン交換クロマトグラフィーを使用して分析した。3つのmAbを、トラスツズマブ-ann、リツキシマブ-abb、及びNISTリファレンスmAbを含む、比較用標準緩衝系でカチオン交換クロマトグラフィーを使用して試験した。pH勾配を、表1B及び表2に示される例示的なpH勾配から開始して、各mAbに対して最適化した。
【0136】
LC系は、Agilent 1290 Infinity II UHPLC系:Binaryポンプ:G7120A(JetWeaver V35)、Multisampler:G7167B(20uLループ)、Multicolumn Thermostat:G7116B、及びDAD:G7117B.質量分析計は、正イオンエレクトロスプレーモード(ESI+)で作用するSciex X500B四極飛行時間質量分析計であった。取得した質量範囲は、m/z2000~7000であった。
【0137】
弱カチオン交換カラムは、Phenomenex(登録商標)bioZen 6μm WCX、150×2.1mm、モノ化ポリマー非多孔質粒子[-CH2CH2CH(CO2-)-CH(CO2-)-CH2-]であった。
【0138】
クロマトグラフィー条件は、(高速均衡法)、流量:0.3mL/分、_温度:30℃、Inj Vol:10uL(カラム上100ug)を含んだ。表1Bに示されるように、新しい緩衝液に対して使用される第1の例示的なpH勾配は、15分間にわたる20~50%B(傾き=1.2%B/CV)を含む。カラム平衡化中の流量は、高速平衡化に対して0.6mL/分に増加される。
【0139】
新しい緩衝系は、緩衝液A=15mMのNH4Ac+5mMのN-メチルモルホリン、酢酸でpH5.2(HAc)、及び緩衝液B=5mMのNH4Ac+2mMのN-メチルモルホリン(NMM)、水酸化アンモニウムでpH10.2(NH4OH)を含んだ。
【0140】
比較用に最適化された標準緩衝系は、緩衝液A=20mMのNH4Ac、HAcでpH5.2、及び緩衝液B=5mMのNH4Ac、NH4OHでpH10.2を含んだ。上で挙げられたように、最適化された比較用標準緩衝系中の酢酸アンモニウム(NH4Ac)の量は、従来技術の参考文献と比較して著しく低減された。
【表2】
【0141】
15分間にわたる20~50%B(傾き=1.2%B/CV)を含む、比較用の標準緩衝液を使用する第2の例示的なpH勾配は、表2に示される。標準緩衝系は、緩衝液A=HAcでpH5.2に調節された、20mMのNH4Ac、及び緩衝液B=NH4OHでpH10.2に調節された5mMのNH4Acを含んだ。
【表3】
【0142】
クロマトグラフィー結果
実施例2A.トラスツズマブ-annsのWCX-HRMS
pI9.1を有するモノクローナル抗体トラスツズマブ-anns(Kajinti、10mg/mL)を、新しい緩衝液を使用して天然WCX-HRMSに供し、10uL(100ug)を、Phenomenex(登録商標)bioZen 6μm WCX、150×2.1mmの弱カチオン交換カラムに、表3に従って15分間にわたる30~60%のB勾配、+TOF MS(2000~7000)を使用して注入した。NH4Ac+NMMを有する新しい緩衝系を使用するPhenomenex(登録商標)bioZen WCX弱カチオン交換カラムでトラスツズマブ-anns(Kanjinti)からのHRMS総イオン電流(TIC)クロマトグラムを、
図1ー1に示す。
【表4】
【0143】
pI9.1を有するモノクローナル抗体トラスツズマブ-anns(Kajinti,10mg/mL)を、表2に従って15分間にわたる20~50%Bの勾配を使用し、最適化された標準緩衝液を使用して天然WCX-HRMSに供し、10uL(100ug)を、Phenomenex(登録商標)bioZen 6μm WCX、150×2.1mmの弱カチオン交換カラムに表2、+TOF MS(2000~7000)に従って、注入した。NMMを含まない標準緩衝系NH4Acを使用するbioZen WCXカラムでトラスツズマブ-anns(Kanjinti)に対する総イオン電流(TIC)クロマトグラムが、
図1ー2に示される。
【0144】
実施例2B.リツキシマブ-abbsのWCX-HRMS
pI9.4を有するモノクローナル抗体リツキシマブ-abbs(Rituxan)(10mg/mL)を、新しい緩衝液を使用して天然のWCX-HRMSに供した。表4に示されるように、10μL(100μg)のアリコートを、Phenomenex(登録商標)bioZen6μm WCX、150×2.1mmの弱カチオン交換カラムに注入し、15分にわたる65~100%のB勾配、+TOF MS(2000~7000)を使用してクロマトグラフィーを行った。NH4Ac+NMMを有する新しい緩衝系を使用するbioZen WCXカラム上のリツキシマブ-abbs(Rituxan)の総イオン電流(TIC)クロマトグラムが、
図2-1に示される。
【表5】
【0145】
pI9.4を有するモノクローナル抗体リツキシマブ-abbs(Rituxan、10mg/mL)を、表4に示されるように、15分間にわたる60~100%のB勾配で最適化された標準緩衝液を使用して天然WCX-HRMSに供し、10μL(100μg)を、Phenomenex(登録商標)bioZen 6μm WCX、150×2.1mmの弱カチオン交換カラム、+TOF MS(2000~7000)に注入した。NMMを含まない標準緩衝系NH4Acを使用する、bioZen WCXカラム上のリツキシマブ-abbs(Rituxan)の総イオン電流(TIC)クロマトグラムが、
図2-2に示される。
【0146】
実施例2C.NISTリファレンスmAbのWCX-HRMS
pI9.2を有するモノクローナル抗体NISTリファレンスmAb(10mg/mL)を、新しい緩衝液を使用して天然WCX-HRMSに供し、10uL(100ug)を、bioZen 6μm WCX、150×2.1mmの弱カチオン交換カラムに、15分間にわたる65~100%Bの勾配、+TOF MS(2000~7000)を使用して、注入した。NH4Ac+NMMを有する新しい緩衝系を使用するbioZen WCXカラム上のNISTリファレンスmAbの総イオン電流(TIC)クロマトグラムが、
図3ー1に示される。
【0147】
pI9.2を有するモノクローナル抗体NISTリファレンスmAbを、表4に示されるように、最適化された標準緩衝液及び15分間にわたる60~100%のB勾配を使用して天然WCX-HRMSに供し、10μL(100μg)を、Phenomenex(登録商標)bioZen 6μm WCX 150×2.1mmの弱カチオン交換カラムに、表4に示される勾配、+TOF MS(2000~7000)を使用して、注入した。NMMを含まない標準緩衝系NH4Acを使用する、bioZen WCXカラム上のNISTmAbの総イオン電流(TIC)クロマトグラムが、
図3ー2に示される。
【0148】
実施例2D.インフリキシマブのWCX-HRMS
pI7.6を有するモノクローナル抗体インフリキシマブ(Remicade、10mg/mL)を、表5に従って新しい緩衝液及び15分間にわたる20~35%Bの勾配を使用して、天然WCX-HRMSに供し、10uL(100ug)を、Phenomenex(登録商標)bioZen 6μm WCX、150×2.1mmの弱カチオン交換カラムに、+TOF MS(2000~7000)で、注入した。NH4Ac+NMMを有する新しい緩衝系を使用するbioZen WCXカラム上のインフリキシマブの総イオン電流(TIC)クロマトグラムが、
図4に示される。
【表6】
【0149】
実施例2E.セツキシマブのWCX-HRMS
pI8.8を有するモノクローナル抗体セツキシマブ(Erbitux、10mg/mL)を、表6に従って新しい緩衝液及び15分間にわたる25~55%Bの勾配を使用して、天然WCX-HRMSに供し、10uL(100ug)を、Phenomenex(登録商標)bioZen 6μm WCX、150×2.1mmの弱カチオン交換カラムに、+TOF MS(2000-700)で注入した。NH4Ac+NMMを有する新しい緩衝系を使用するbioZen WCXカラム上のセツキシマブの総イオン電流(TIC)クロマトグラムが、
図5に示される。
【表7】
【0150】
実施例3.改善されたpH勾配のための新しいMS互換緩衝液を使用するSCX-HRMSデータ
この例では、方法は、新しい緩衝系(酢酸アンモニウム+N-メチルモルホリン)によるpH勾配溶出、又は最適化された標準緩衝系(酢酸アンモニウムのみ)によるpH勾配溶出を使用して、高分解能質量分析法(HRMS)に直接結合した強カチオン交換液体クロマトグラフィー(SCX)によって、5つのモノクローナル抗体及びその電荷変異体の分析のために開発された。
【0151】
インフリキシマブpI7.6(Remicade)、セツキシマブpI8.8(Erbitux)、トラスツズマブpI9.1(Kanjinti)、NISTリファレンスmAbpI9.2、及びリツキシマブpI9.4(Rituxan)を含む5つの異なるmAbを試験した。
【0152】
新しい緩衝系は、酢酸でpH5.2に調節された緩衝液A=15mMのNH4Ac+5mMのN-メチルモルホリン。緩衝液B=水酸化アンモニウムでpH10.2に調節された5mMのNH4Ac+2mMのN-メチルモルホリンであった。
【0153】
比較用に最適化された標準緩衝系は、酢酸でpH5.2に調節された緩衝液A=20mMのNH4Ac。緩衝液B=水酸化アンモニウムでpH10.2に調節された5mMのNH4Acであった。
【0154】
両方の緩衝系は、別段の指定がない限り、実施例1に従って調製された。
【0155】
強カチオン交換(SCX)カラムは、Phenomenex R&Dによって調製された実験用3μmSCX、100×2.1mmであった。
【0156】
LCカラム溶出液を、280nmのUV吸光度、又はHRMS総イオン電流(TIC)クロマトグラムを使用して監視した。新しい及び標準緩衝系の生のMSスペクトルデータを以下のように比較した。
【0157】
この実施例に示される結果は、新しい緩衝液を使用するMS信号強度及びスペクトル分解能が、最適化された標準pH勾配で以前に観察されたものと同様であることを示す。しかしながら、最適化された標準緩衝系(NH4Acのみ)と比較して、新しい緩衝系(NH4Ac+NMM)を有する最も強烈なMSピークは、より高い質量/より低い電荷状態(新しい緩衝液での+22~+27対最適化された標準緩衝液で+25~+30)にシフトされる。この現象は、トラスツズマブ(
図6ー5対FIG.6F)、インフリキシマブ(
図7ー5対
図7ー6)、セツキシマブ(
図8ー5対
図8ー6)、リツキシマブ(
図9ー5対
図9ー6)、及びNISTmAb(
図10ー5対
図10ー6)を含む、試験した全てのmAbについて見られる。この現象はまた、WCXカラムを使用しても見られた(データ図示せず)。最適化された標準緩衝液を使用して、WCX-HRMSにおけるNISTmAbについての生のMSデータ(
図11)は、SCX-HRMSにおけるNISTmAbについての生のMSデータ(
図10ー6)と同様に、+25~+30で最も強烈なピークを示す。概して、再構築された無傷の質量スペクトルで微分することができる質量差が、より低い電荷(より小さい分母)で改善されるため、より高い質量/より低い電荷状態が好ましい。
【0158】
系:
Binaryポンプ:G7120A(JetWeaver V35)を使用するAgilent 1290 Infinity II UHPLCシステム、
Multisampler:G7167B(20uLループ)、
Multicolumn Thermostat:G7116B、
DAD:G7117B、
+TOF MS(2000~7000)。
【0159】
条件:流量:0.3mL/分、
温度:30℃、
検出:280nmでのUV、
Inj Vol:4μL(カラム上40μg)、又は10μL(NISTmAb及びセツキシマブのカラム上100μg)。
【0160】
勾配:%Bが及び、このため、pH勾配を、実験用3umSCX、100×2.1mmカラムpH勾配(傾き=1.2%B/CV、5.6CV平衡)を使用して、各mAbに対して最適化した。表7は、35~65%B/10分の例示的なpH勾配を示す。
【表8】
【0161】
実施例3A.トラスツズマブのSCX-HRMS
トラスツズマブ-anns(Kanjinti)のSCX-HRMSを実施した。
【0162】
トラスツズマブ-anns(Kanjinti)(10mg/mL、4uL inj)を、NH4Ac+NMMを含有する新しい緩衝系及び0.3mL/分の流量で10分間にわたる35~65%BのpH勾配を使用する、強カチオン交換カラム(試験的に3μm SCX、100×2.1mm)上に注入した。Abs280nmによって監視されたUVクロマトグラムは、
図6ー1に示される。主ピークは、5.784分RTで溶出した。
【0163】
図6ー2は、NH4Ac+NMMを含有する新しい緩衝系及び0.3mL/分の流量で10分にわたる35~65%BのpH勾配、30℃、+TOF(2000~7000)、MS温度500℃で、強カチオン交換LCカラム(試験的に3μm SCX、100×2.1mm)を使用するトラスツズマブ-anns(4uL inj、10mg/mL)のSCX-HRMS分析からの総イオン電流(TIC)クロマトグラムを示す。4.83分のRTにおいて主ピーク内にボックスを形成する点線は、
図6ー4及び
図6ー5に示されるようなMS分析のためのおおよその面積を例解する。
【0164】
図6ー3は、NH4Acのみを含有する標準緩衝系及び10分にわたる20~50%BのpH勾配、30℃、+TOFMS(2000~7000)、MS温度500℃で、強カチオン交換LCカラム(試験的に3μmSCX、100×2.1mm)を使用するトラスツズマブ-anns(4uL inj、10mg/mL)のSCX-HRMSからの総イオン電流(TIC)クロマトグラムを示す。5.09分のRTにおいて主ピーク内にボックスを形成する点線は、
図6ー6及び
図6ー7に示されるようなMS分析のためのおおよその面積を例解する。
【0165】
図6ー4は、NH4Ac+NMMを含有する新しい緩衝系及び10分にわたる35~65%BのpH勾配、4.909~5.131分間の+TOFMS(2000~7000)で、強カチオン交換カラム(試験的に3μmSCX、100×2.1mm)を使用する、トラスツズマブ-anns(4ul inj、10mg/mL)のSCX-HRMSからの生のMSスペクトルを示す。2000~7000Daの質量/電荷(m/z)範囲が示される。
【0166】
図6ー5は、NH4Ac+NMMを含有する新しい緩衝系及び10分にわたる35~65%BのpH勾配、+TOFMS(2000~7000)で、強カチオン交換LCカラム(試験的に3μmSCX、100×2.1mm)を使用する、4,858~5.217分、pI9.1を有するトラスツズマブ-anns(4ul inj、10mg/mL)のSCX-HRMSからの生のMSスペクトルを示す。表示されたm/z範囲は、この緩衝系を伴う、天然分析物(約4800~6600Da)に関して最高の強度を与えるものに絞った。追加的に、電荷状態エンベロープ内の分析物イオンの電荷が示される。新しい緩衝系では、最も強烈なMSピークは、
図6ー6に示されるように、最適化された標準NH4Ac緩衝系(+25~+30)で見られるよりも高い質量/より低い電荷(+22~+27)で現れる。同じ質量範囲が、スペクトル6E及び6Fの両方に使用される。
【0167】
図6ー6は、NMMのないNH4Acを含有する標準緩衝系及び20~50%B/10分のpH勾配、+TOFMS(2000~7000)で、強カチオン交換LCカラム(試験的に3μmSCX、100×2.1mm)を使用する、4,960~5.217分、pI9.1を有するトラスツズマブ-anns(4ul inj、10mg/mL)のSCX-HRMSからの生のMSスペクトルを示す。表示されたm/z範囲は、この緩衝系を伴う、天然分析物(約4800~6900Da)に関して最高の強度を与えるものに絞った。追加的に、電荷状態エンベロープ内の分析物イオンの電荷が示される。最適化された標準緩衝系では、最も強烈なMSピークは、
図6ー5に示されるように、新しいNH4Ac+NMM緩衝系(+22~+27)と比較した場合、より低い質量/より高い電荷(+25~+30)で現れる。
【0168】
図6ー7は、NMMのないNH4Acを含有する最適化された標準緩衝系及び20~50%B/10分のpH勾配、4,960~5,217分の+TOF(2000~7000)で、強カチオン交換カラム(試験的に3μmSCX、100×2.1mm)を使用する、pI9.1を有するトラスツズマブ-anns(4ul、10mg/mL)のSCX-HRMSからの生のMSスペクトルを示す。2000~7000Daの質量/電荷範囲が示される。
【0169】
実施例3B.インフリキシマブのSCX-HRMS
pI7.6を有するインフリキシマブ(Remicade)のSCX-HRMSを実施した。
【0170】
図7ー1は、NH4Ac+NMMを含有する新しい緩衝系及び0.3mL/分の流量において10分にわたる20~35%BのpH勾配で強カチオン交換カラム(実験用3μm SCX、100×2.1mm)を使用するインフリキシマブ(10mg/mL、4uL inj)のSCX-UV分析からのAbs280nmによって監視されたUVクロマトグラムを示す。変異体の良好な分離は、新しい緩衝系を伴うpH勾配を使用して観察された:3.357、4.249、5.018、5.759、及び6.563分のRTにおいて溶出する5つの別個のピークが観察された。
【0171】
図7ー2は、NH4Ac+NMMを含有する新しい緩衝系及び0.3mL/分の流量で10分間にわたる20~35%BのpH勾配、30℃、+TOF(2000~7000)、MS温度500℃で、強カチオン交換LCカラム(試験的に3μm SCX、100×2.1mm)を使用するインフリキシマブ(4ul、5mg/mL)のSCX-HRMSからの総イオン電流(TIC)クロマトグラムを示す。変異体の良好な分離が、新しい緩衝系を用いたpH勾配を使用して観察された:6.07、6.57、7.17、7.87、及び8.57分のRTにおいて溶出する5つの別個のピークが観察された。8.57分のRTにおいて主ピーク内にボックスを形成する点線は、
図7ー4及び
図7ー5に示されるようなMS分析のためのおおよその面積を例解する。
【0172】
図7ー3は、NH4Acのみを含有する標準緩衝系及び10分にわたる15~25%BのpH勾配、30℃、+TOF(2000~7000)、MS温度500℃で、強カチオン交換LCカラム(試験的に3μm SCX、100×2.1mm)を使用するインフリキシマブ(4ul、5mg/mL)のSCX-HRMSからの総イオン電流(TIC)クロマトグラムを示す。5.63分のRTにおいて主ピーク内にボックスを形成する点線は、
図7ー6及び
図7ー7に示されるMS分析のおおよその面積を例解する。電荷変異体の非常に不十分な分離を、この低pI mAb(pI=7.6)の標準緩衝液で与えた。この図と前の図(
図7ー2)との比較は、標準緩衝液で日常的に可能なものよりも低いpHで良好なpH制御を有することによって得られる性能上の利点を実証する。
【0173】
図7ー4は、NH4Ac+NMMを含有する新しい緩衝系及び20~35%B/10分のpH勾配、8.621~9.032分の+TOF(2000~7000)で、強カチオン交換カラム(試験的に3μmSCX、100×2.1mm)を使用する、インフリキシマブ(4ul、5mg/mL)のSCX-HRMSからの生のMSスペクトルを示す。2000~7000Daの質量/電荷範囲が示される。
【0174】
図7ー5は、NH4Ac+NMMを含有する新しい緩衝系及び10分にわたる20~35%BのpH勾配、+TOF(2000~7000)で、強カチオン交換LCカラム(試験的に3μmSCX、100×2.1mm)を使用する、8.621~9.032分のインフリキシマブ(4ul、5mg/mL)のSCX-HRMSからの生のMSスペクトルを示す。表示されたm/z範囲は、この緩衝系を用いた天然分析物の最高の強度(約4800~6900Da)を与えるものに絞った。追加的に、電荷状態エンベロープ内の分析物イオンの電荷が示される。
図7ー5に示されるように、新しい緩衝系では、最も強烈なMSピークは、
図7ー6に示される最適化された標準NH4Ac緩衝系(+25~+30)で見られるよりも高い質量/より低い電荷(+22~+27)で現れる。
【0175】
図7ー6は、NMMのないNH4Acを含有する標準緩衝系及び10分にわたる15~25%BのpH勾配、+TOF(2000~7000)で、強カチオン交換LCカラム(試験的に3μmSCX、100×2.1mm)を使用する、5.593~5.730分のインフリキシマブ(4ul、5mg/mL)のSCX-HRMSからの生のMSスペクトルを示す。表示されたm/z範囲は、この緩衝系を伴う、天然分析物(約4800~6900Da)に関して最高の強度を与えるものに絞った。追加的に、電荷状態エンベロープ内の分析物イオンの電荷が示される。最適化された標準緩衝系では、最も強烈なMSピークは、
図7ー5に示されるように、新しいNH4Ac+NMM緩衝系(+22~+27)と比較した場合、より低い質量/より高い電荷(+25~+30)で現れる。
【0176】
図7ー7は、NMMのないNH4Acを含有する最適化された標準緩衝系及び15~25%B/10分のpH勾配、5.559~5.696分の+TOF(2000~7000)で、強カチオン交換カラム(試験的に3μmSCX、100×2.1mm)を使用する、インフリキシマブ(4ul、5mg/mL)のSCX-HRMSからの生のMSスペクトルを示す。2000~6900Daの質量/電荷範囲が示される。
【0177】
実施例3C.セツキシマブのSCX-HRMS
pI8.8を有するセツキシマブのSCX-HRMSを実施した。
【0178】
図8ー1は、NH4Ac+NMMを含有する新しい緩衝系及び0.3mL/分の流量で10分にわたる30~60%BのpH勾配で、強カチオン交換カラム(試験的に3μmSCX、100×2.1mm)を使用するセツキシマブ(4mg/mL)のSCX-UV分析からのAbs280nmによるUVクロマトグラムを示す。複数の別個の変異体ピークが、例えば、3.65、4.03、4.58、5.20、及び5.93分のRTで観察された。
【0179】
図8ー2は、NH4Ac+NMMを含有する新しい緩衝系及び0.3mL/分の流量で10分にわたる30~60%BのpH勾配、30℃、+TOF(2000~7000)、MS温度500℃で、強カチオン交換LCカラム(試験的に3μmSCX、100×2.1mm)を使用するセツキシマブ(5mg/mL、10uL inj)のSCX-HRMSからの総イオン電流(TIC)クロマトグラムを示す。複数の別個の変異体ピークが、3.33、3.92、4.54、及び5.22分のRTにおいて観察された。4.54分のRTにおいて主ピーク内にボックスを形成する点線は、
図8ー4及び
図8ー5に示されるようなMS分析のためのおおよその面積を例解する。
【0180】
図8ー3は、NH4Acのみを含有する標準緩衝系及び17~40%B/10分のpH勾配、30℃、+TOF(2000~7000)、MS温度500℃で、強カチオン交換LCカラム(試験的に3μmSCX、100×2.1mm)を使用するセツキシマブ(5mg/mL、10uL inj)のSCX-HRMS分析からの総イオン電流(TIC)クロマトグラムを示す。4.68分のRTにおいて主ピーク内にボックスを形成する点線は、
図8ー6及び
図8ー7に示されるMS分析のためのおおよその面積を例解する。
【0181】
図8ー4は、NH4Ac+NMMを含有する新しい緩衝系、及び10分にわたる30~60%BのpH勾配、4.601~9.032分の+TOF(2000~7000)で、強カチオン交換カラム(試験的に3μmSCX、100×2.1mm)を使用する、セツキシマブ(5mg/mL、10uL inj)のSCX-HRMSからの生のMSスペクトルを示す。2000~7000Daの質量/電荷範囲が示される。
【0182】
図8ー5は、NH4Ac+NMMを含有する新しい緩衝系及び10分にわたる30~60%BのpH勾配、+TOF(2000~7000)で、強カチオン交換LCカラム(試験的に3μmSCX、100×2.1mm)を使用する、4.601~4.892分のセツキシマブ(5mg/mL、10uL inj)のSCX-HRMSからの生のMSスペクトルを示す。表示されたm/z範囲は、この緩衝系を伴う、天然分析物(約4800~6900Da)に関して最高の強度を与えるものに絞った。追加的に、電荷状態エンベロープ内の分析物イオンの電荷が示される。
図8ー5に示されるように、新しい緩衝系でpH勾配溶出を使用する場合、最も強烈なMSピークは、
図8ー6に示されるように、最適化された標準NH4Ac緩衝系(+25~+30)で見られるよりも高い質量/低い電荷(+22~+27)で現れる。
【0183】
図8ー6は、NMMなしのNH4Acを含有する標準緩衝系及び10分にわたる17~40%BのpH勾配、+TOF(2000~7000)で、強カチオン交換LCカラム(試験的に3μmSCX、100×2.1mm)を使用する、4.533~4.892分のセツキシマブ(5mg/mL、10uL inj)のSCX-HRMSからの生のMSスペクトルを示す。表示されたm/z範囲は、この緩衝系を伴う、天然分析物(約4800~6900Da)に関して最高の強度を与えるものに絞った。追加的に、電荷状態エンベロープ内の分析物イオンの電荷が示される。最適化された標準緩衝系では、最も強烈なMSピークは、
図8ー5に示されるように、新しいNH4Ac+NMM緩衝系(+22~+27)と比較した場合、より低い質量/より高い電荷(+25~+30)で現れる。
【0184】
図8ー7は、NMMなしのNH4Acを含有する最適化された標準緩衝系及び10分にわたる17~40%BのpH勾配、+TOF(2000~7000)で、強カチオン交換カラム(試験的に3μmSCX、100×2.1mm)を使用する、4.533~4.892分のセツキシマブ(5mg/mL、10uL inj)のSCX-HRMSからの生のMSスペクトルを示す。2000~6900Daの質量/電荷範囲が示される。
【0185】
実施例3D.リツキシマブのSCX-HRMS
pI9.4を有するリツキシマブ(Rituxan)のSCX-HRMSを実施した。
【0186】
図9ー1は、NH4Ac+NMMを含有する新しい緩衝系及び0.3mL/分の流量で10分にわたる75~100%BのpH勾配で、強カチオン交換カラム(試験的に、3μmSCX、100×2.1mm)を使用する、pI9.4(10mg/mL)を有するリツキシマブ(Rituxan)のSCX-HRMSからのAbs280nmによるUVクロマトグラムを示す。5.03分のRTにおける主ピークが観察された。
【0187】
図9ー2は、NH4Ac+NMMを含有する新しい緩衝系及び0.3mL/分の流量で10分にわたる65~100%BのpH勾配、30℃、+TOFMS(2000~7000)、MS温度500℃で、強カチオン交換LCカラム(試験的に3μm SCX、100×2.1mm)を使用するリツキシマブ(10mg/mL、4uL inj)のSCX-HRMS分析からの総イオン電流(TIC)クロマトグラムを示す。5.88分のRTにおいて主ピーク内にボックスを形成する点線は、MS分析のためのおおよその面積を例解する。
【0188】
図9ー3は、NH4Acのみを含有する標準緩衝系及び、10分にわたる55~100%BのpH勾配、30℃、+TOFMS(2000~7000)、MS温度500℃で、強カチオン交換LCカラム(試験的に3μmSCX、100×2.1mm)を使用するリツキシマブ(10mg/mL、4uL inj)のSCX-HRMS分析からの総イオン電流(TIC)クロマトグラムを示す。4.65分のRTにおいて主ピーク内にボックスを形成する点線は、
図9ー6及び
図9ー7に示されるMS分析のためのおおよその面積を例解する。
【0189】
図9ー4は、NH4Ac+NMMを含有する新しい緩衝系、及び10分にわたる65~100%BのpH勾配、6.021~6.363分の+TOFMS(2000~7000)で、強カチオン交換カラム(試験的に3μmSCX、100×2.1mm)を使用する、リツキシマブ(10mg/mL、4uL inj)のLC-HRMSからの生のMSスペクトルを示す。2000~7000Daの範囲内にある質量/電荷、m/zデータが示される。
【0190】
図9ー5は、NH4Ac+NMMを含有する新しい緩衝系及び65~100%B/10分のpH勾配、6.021~6.363分の+TOFMS(2000~7000)で、強カチオン交換LCカラム(試験的に3μmSCX、100×2.1mm)を使用する、リツキシマブ(10mg/mL、4uL inj)のSCX-HRMS分析からの生のMSスペクトルを示す。表示されたm/z範囲は、この緩衝系を用いた天然分析物の最高の強度(約4800~6800Da)を与えるものに絞った。追加的に、電荷状態エンベロープ内の分析物イオンの電荷が示される。
図9ー5に示されるように、新しい緩衝系でpH勾配を使用する場合、最も強力なMSピークは、
図9ー6に示される、最適化された標準NH4Ac緩衝系(+25~+30)で見られるよりも高い質量/より低い電荷(+22~+27)で現れる。
【0191】
図9ー6は、NMMのないNH4Acを含有する標準緩衝系及び10分にわたる55~100%BのpH勾配、4.550~4.772分の+TOFMS(2000~7000)で、強カチオン交換LCカラム(試験的に3μmSCX、100×2.1mm)を使用する、リツキシマブ(10mg/mL、4uL inj)のSCX-HRMS分析からの生のMSスペクトルを示す。表示されたm/z範囲は、この緩衝系を用いた天然分析物の最高の強度(約4800~6800Da)を与えるものに絞った。追加的に、電荷状態エンベロープ内の分析物イオンの電荷が示される。最適化された標準緩衝系では、最も強烈なMSピークは、
図9ー5に示されるように、新しいNH4Ac+NMM緩衝系(+22~+27)と比較した場合、より低い質量/より高い電荷(+25~+30)で現れる。
【0192】
図9ー7は、NMMなしのNH4Acを含有する最適化された標準緩衝系及び55~100%B/10分のpH勾配、+TOFMS(2000~7000)で、強カチオン交換カラム(試験的に3μmSCX、100×2.1mm)を使用する、4,550~4.772分のリツキシマブ(10mg/mL、4uL inj)のSCX-HRMS分析からの生のMSスペクトルを示す。2000~7000Daの質量/電荷範囲が示される。
【0193】
実施例3E.NISTmAbのSCX-HRMS
pI9.2を有するNISTmAbのSCX-HRMSを実施した。
【0194】
図10ー1は、NH4Ac+NMMを含有する新しい緩衝系及び0.3mL/分の流量で10分にわたる95~100%BのpH勾配で、強カチオン交換カラム(試験的に、3μmSCX、100×2.1mm)を使用する、pI9.2(10mg/mL)を有するNISTmAbのSCX-UV分析からのAbs280nmにおいて監視されたUVクロマトグラムを示す。
【0195】
図10ー2は、NH4Ac+NMMを含有する新しい緩衝系及び0.3mL/分の流量で10分にわたる90~100%BのpH勾配、30℃、+TOFMS(2000~7000)、MS温度500℃で、強カチオン交換LCカラム(試験的に3μmSCX、100×2.1mm)を使用するNISTmAb(10mg/mL、10uL inj)のSCX-HRMSからの総イオン電流(TIC)クロマトグラムを示す。4.39~4.82のRTのピーク内にボックスを形成する点線は、MS分析のためのおおよその面積を例解する。
【0196】
図10ー3は、NH4Acのみを含有する標準緩衝系及び80~100%B/10分のpH勾配、30℃、+TOFMS(2000~7000)、MS温度500℃で、強カチオン交換LCカラム(試験的に3μmSCX、100×2.1mm)を使用するNISTmAb(10mg/mL、10uL inj)のSCX-HRMS分析からの総イオン電流(TIC)クロマトグラムを示す。4.5分のRTにおいて主ピーク内にボックスを形成する点線は、
図10ー6及び
図10ー7に示されるMS分析のためのおおよその面積を例解する。
【0197】
図10ー4は、NH4Ac+NMMを含有する新しい緩衝系及び90~100%B/10分のpH勾配、5.012~5.627分の+TOFMS(2000~7000)で、強カチオン交換カラム(試験的に3μmSCX、100×2.1mm)を使用するNISTmAb(10mg/mL、10uL inj)のSCX-HRMSからの生のMSスペクトルを示す。2000~7000Daの範囲にわたる質量/電荷(m/z)データが示される。
【0198】
図10ー5は、NH4Ac+NMMを含有する新しい緩衝系及び90~100%B/10分のpH勾配、5.012~5.627分の+TOFMS(2000~7000)で、強カチオン交換LCカラム(試験的に3μmSCX、100×2.1mm)を使用するNISTmAb(10mg/mL、10uL inj)のSCX-HRMS分析からの生のMSスペクトルを示す。表示されたm/z範囲は、この緩衝系を用いた天然分析物の最高の強度(約4800~6900Da)を与えるものに絞った。追加的に、電荷状態エンベロープ内の分析物イオンの電荷が示される。新しい緩衝系では、最も強烈なMSピークは、
図10ー6に示されるように、最適化された標準NH4Ac緩衝系(+25~+30)で見られるよりも高い質量/より低い電荷(+22~+27)で現れる。
【0199】
図10ー6は、NMMなしのNH4Acを含有する標準緩衝系及び80~100%B/10分のpH勾配、4.259~4.841分の+TOFMS(2000~7000)で、強カチオン交換LCカラム(試験的に3μmSCX、100×2.1mm)を使用する、NISTmAb(10mg/mL、10uL inj)のSCX-HRMS分析からの生のMSスペクトルを示す。表示されたm/z範囲は、この緩衝系を伴う、天然分析物(約4800~6900Da)に関して最高の強度を与えるものに絞った。追加的に、電荷状態エンベロープ内の分析物イオンの電荷が示される。最適化された標準緩衝系では、最も強烈なMSピークは、
図10ー5に示されるように、新しいNH4Ac+NMM緩衝系(+22~+27)と比較した場合、より低い質量/より高い電荷(+25~+30)で現れる。
【0200】
図10ー7は、NMMなしのNH4Acを含有する最適化された標準緩衝系及び80~100%B/10分のpH勾配、+TOFMS(2000~7000)で、強カチオン交換カラム(試験的に3μmSCX、100×2.1mm)を使用する、4.259~4.841分のNISTmAb(10mg/mL、10uL inj)のSCX-HRMS分析からの生のMSスペクトルを示す。2000~6800Daの質量/電荷範囲が示される。
【0201】
図11は、NMMなしのNH4Acを含有する標準緩衝系及び60~100%BのpH勾配、4.772~5.012分の+TOFMS(2000~7000)、500℃で、弱カチオン交換LCカラム(Phenomenex(登録商標)bioZen 6μmWCX、150×2.1mm)を使用する、NISTmAb(10mg/mL、10uL inj)のWCX-HRMS分析からの生のMSスペクトルを示す。表示されたm/z範囲を、この緩衝系を用いた天然分析物の最高強度(約4800~7000Da)を与えるものに絞った。追加的に、電荷状態エンベロープ内の分析物イオンの電荷が示される。最適化された標準緩衝系では、WCX-HRMSを使用するNISTmAbに関する生のMSスペクトルはまた、
図10ー6に示されるSCX-HRMSの生のスペクトルと同様に、+25~+30の最も強力なMSピークを呈する。
【0202】
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