(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-05
(54)【発明の名称】ロータ、製造方法、同期電気機械、および車両
(51)【国際特許分類】
H02K 1/22 20060101AFI20240628BHJP
H02K 19/10 20060101ALI20240628BHJP
【FI】
H02K1/22 Z
H02K19/10 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2023579566
(86)(22)【出願日】2022-06-21
(85)【翻訳文提出日】2024-02-22
(86)【国際出願番号】 IB2022055756
(87)【国際公開番号】W WO2022269490
(87)【国際公開日】2022-12-29
(31)【優先権主張番号】102021000016667
(32)【優先日】2021-06-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523483843
【氏名又は名称】スピン アプリカツィオーニ マグネティケ ソチエタ ア レスポンサビリタ リミタータ
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】弁理士法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】タッシ、アレッサンドロ
【テーマコード(参考)】
5H601
5H619
【Fターム(参考)】
5H601AA22
5H601CC01
5H601CC17
5H601DD01
5H601DD09
5H601DD11
5H601GA02
5H601GA26
5H601GA34
5H601HH06
5H619AA01
5H619BB01
5H619BB24
5H619PP04
(57)【要約】
N個の極を有するロータ(1)であって、Nが偶数の整数であり、ロータ(1)が、希土類元素を含む永久磁石を備えておらず、筒状体(2)および充填材(16)を備える、ロータ(1)が提供される。筒状体(2)は、本体軸(X)に沿って延在し、本体軸(X)に垂直な面内で、N個の隣接する角度セクター(4、6)を区画する。各角度セクター(4、6)は、曲線断面を有する筒状空洞(8、12、14、8’、12’、14’)を区画し、筒状空洞(8、12、14、8’、12’、14’)の凹面(18、20、22、18’、20’、22’)は、本体軸(X)とは反対の方向に方向づけられる。充填材(16)は、少なくとも部分的に筒状空洞(8、12、14、8’、12’、14’)を充填し、ポリマーマトリックスを含むか、またはポリマーマトリックスからなる。少なくとも1つの第1の角度セクター(6)は、第1の幾何学的形状(タイプA)を有する筒状空洞(8’、12’、14’)を区画し、少なくとも1つの第2の角度セクター(4)は、第1の幾何学的形状とは異なる第2の幾何学的形状(タイプB)を有する筒状空洞(8、12、14)を区画する。第1の角度セクター(6)は、第2の角度セクター(4)と角度的に交互に配置されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
N個の極を有するロータ(1)であって、Nが偶数(好ましくは、N=4またはN=6)であり、前記ロータ(1)が、希土類元素を含む永久磁石を備えておらず、
本体軸(X)に沿って延在する、および前記本体軸(X)に垂直な面内で、N個の隣接する角度セクター(4、6)を区画する、筒状体(2)であって、各角度セクター(4、6)が、曲線断面を有する筒状空洞(8、12、14、8’、12’、14’)を区画し、前記筒状空洞(8、12、14、8’、12’、14’)の凹面(18、20、22、18’、20’、22’)が、前記本体軸(X)とは反対の方向に向けられている、筒状体(2)を備え、
前記N個の極の各々が、前記筒状体(2)の第1のシリンダベース(60)から前記第1のシリンダベース(60)とは反対側の第2のシリンダベース(62)まで前記本体軸(X)に沿って軸方向に延在し、前記ロータ(1)がさらに、
少なくとも部分的に前記筒状空洞(8、12、14、8’、12’、14’)を充填し、ポリマーマトリックスを含む、または前記ポリマーマトリックスからなる充填材(16)を備え、
少なくとも1つの第1の角度セクター(6)が、第1の幾何学的形状(タイプA)を有する筒状空洞(8’、12’、14’)を区画し、少なくとも1つの第2の角度セクター(4)が、前記第1の幾何学的形状とは異なる第2の幾何学的形状(タイプB)を有する筒状空洞(8、12、14)を区画し、前記第1の角度セクター(6)が前記第2の角度セクター(4)と角度的に交互に配置されている、ロータ(1)。
【請求項2】
前記筒状体(2)が複数のシリンダプレートによって形成され、シリンダプレートのN個の極の各々の極性が、隣接するシリンダプレートのN個の極の極性に軸方向に対応するように、前記複数のシリンダプレートが軸方向に重ねられて接合されている、請求項1に記載のロータ(1)。
【請求項3】
前記筒状空洞(8、12、14、8’、12’、14’)の少なくとも1つが、半径方向の中央面(M)によって横断され、前記筒状体(2)が外側円筒面(34)によって囲まれ、前記筒状空洞(8、12、14、8’、12’、14’)が、前記筒状体(2)の周方向での可変厚さおよび最小厚さ点(58)を有する隔壁(56)によって前記外側円筒面(34)から分離されている、請求項1または2に記載のロータ(1)。
【請求項4】
半径方向面(R)が、前記本体軸(X)および隔壁(56)の前記最小厚さ点(58)を含み、前記半径方向面(R)が、前記中央面(M)と所定の角度(α、β)をなし、前記第1の角度セクター(6)によって区画された少なくとも1つの筒状空洞(8’、12’、14’)が、第1の角度(α)によって特徴づけられ、前記第2の角度セクター(4)によって区画された少なくとも1つの対応する筒状空洞(8、12、14)が、前記第1の角度(α)とは異なる第2の角度(β)によって特徴づけられ、前記角度(α、β)間の差によって、筒状空洞の前記第1の幾何学的形状(タイプA)または前記第2の幾何学的形状(タイプB)を決定する、請求項3に記載のロータ(1)。
【請求項5】
各筒状空洞(8、12、14、8’、12’、14’)が、内部容積を囲み、外周によって区画され、角度セクター(4、6)内に特定の角度配置を有し、前記第1の角度セクター(6)によって区画された前記筒状空洞(8’、12’、14’)が、前記第2の角度セクター(4)によって区画された前記筒状空洞(8、12、14)のものとは異なる内部容積、外周の形状および/または長さ、および特定の半径方向配置を有する、請求項1~4のいずれか1項に記載のロータ(1)。
【請求項6】
前記筒状空洞(8、12、14、8’、12’、14’)が、近位筒状空洞(8、8’)、少なくとも1つの中間筒状空洞(12、12’)、および前記本体軸(X)から半径方向に離間された遠位筒状空洞(14、14’)を含み、前記近位筒状空洞(8、8’)および前記少なくとも1つの中間筒状空洞(12、12’)が、前記近位軸方向空洞(8、8’)および前記少なくとも1つの中間筒状空洞(12、12’)を中心で分割する半径方向ブリッジ(24、26)に対する鏡像対称を有し、
前記第1の角度セクター(6)によって区画された前記筒状空洞(8’、12’、14’)が、前記第2の角度セクター(4)で区画された前記筒状空洞(8、12、14)と比較して、以下の異なる特性:
(i)前記本体軸(X)からの前記近位軸方向空洞(8、8’)および前記少なくとも1つの中間筒状空洞(12、12’)の半径方向距離(D1、D2);
(ii)前記ロータ(1)の外側円筒面または円周(34)に対する前記筒状空洞(8、12、14、8’、12’、14’)の凸面(28、30、32、28’、30’、32’)の半径方向距離(D3、D4);
(iii)前記半径方向ブリッジ(24、26)の長さ(L1)および/または幅(L2);および
(iv)1つまたは複数の凹面(18、20、22、18’、20’、22’)の、または前記凹面の一部の曲率半径(C1、C2);
(v)1つまたは複数の凸面(28、30、32、28’、30’、32’)の、または前記凸面の一部の曲率半径(C3、C4);
(vi)任意に、1つまたは複数の凹面(18、20、22、18’、20’、22’)に沿って位置する任意の直線セクション(T1、T2)の長さ、交互配置、および/または範囲、を有する、請求項1~5のいずれか1項に記載のロータ(1)。
【請求項7】
タイプAの幾何学的形状が、
図3、5、12、または15に示される通りであり、タイプBの幾何学的形状が、
図4、6、13、または16に示される通りである、請求項1~6のいずれか1項に記載のロータ(1)。
【請求項8】
前記充填材(16)が、
150mT~450mT、好ましくは180mT~380mT、より好ましくは220mT~320mT、さらにより好ましくは250mT~310mTの間に含まれる、DIN EN 60404-5に従って判定された、残留流密度または残留磁気(Br)、
130kA/m~350kA/m、好ましくは150kA/m~320kA/m、より好ましくは170kA/m~280kA/m、さらにより好ましくは190kA/m~250kA/mの間に含まれる、DIN EN 60404-5に従って判定された、保磁界強度または保磁力(jHc)、および
10kJ/m
3~20kJ/m
3、好ましくは12kJ/m
3~18.8kJ/m
3、より好ましくは13kJ/m
3~16kJ/m
3、さらにより好ましくは14kJ/m
3~15.8kJ/m
3の間に含まれる、DIN EN 60404-5に従って判定された、最大エネルギー積(BH max)、を有する、請求項1~7のいずれか1項に記載のロータ(1)。
【請求項9】
前記ポリマーマトリックスが、熱可塑性マトリックスまたは熱硬化性マトリックスであり、好ましくは、前記ポリマーマトリックスが、ポリアミド(PA)、ポリアミド6(PA6)、ポリアミド6.6(PA6.6)、ポリアミド12(PA12)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、液晶ポリマー(LCP)、ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、フェノール樹脂、およびエポキシ樹脂を含む、または代替的にそれらからなる群から選択され、より好ましくは、前記ポリマーマトリックスが、PA、PA6、またはPPSであり、さらにより好ましくは、前記ポリマーマトリックスが、PA6またはPPSであり、
前記充填材(16)が、前記ポリマーマトリックスに埋め込まれた1つまたは複数の磁化可能なまたは磁化された充填材を含み、前記磁化可能な充填材が、マグネタイト、フェライト、およびそれらの混合物から選択され、好ましくは、前記磁化可能な充填材がフェライトであり、より好ましくは、前記フェライトが、ストロンチウム、バリウム、マンガン、ニッケル、亜鉛、およびそれらの混合物を含む、または代替的にそれらからなる群から選択される1つまたは複数の金属元素を含み、さらにより好ましくは、前記フェライトが、金属元素としてストロンチウムを含むか、またはストロンチウムのみを含む、請求項1~8のいずれか1項に記載のロータ(1)。
【請求項10】
前記ポリマーマトリックスが、PA6またはPPSであり、前記磁化可能な充填材が、金属元素としてストロンチウムのみを含むフェライトである、請求項1~9のいずれか1項に記載のロータ(1)。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか1項に記載のロータ(1)または前記ロータ(1)と同じ特徴を有するロータモジュールを製造するための方法であって、前記方法が、
(I)複数のシリンダプレートを重ねて接合する工程であって、本体軸(X)に沿って延在する、および前記本体軸(X)に垂直な面内で、N個の隣接する角度セクター(4、6)を区画する、モジュール要素(36)または筒状体(2)を設け、各角度セクター(4、6)が、曲線断面を有する筒状空洞(8、12、14、8’、12’、14’)を区画し、前記筒状空洞(8、12、14、8’、12’、14’)の凹面(18、20、22、18’、20’、22’)が、前記本体軸(X)とは反対の方向に向けられる、工程と、
(II)任意に、工程(I)の前記モジュール要素(36)または筒状体(2)を、50℃~120℃、好ましくは60℃~100℃、さらにより好ましくは70℃~90℃の間に含まれる温度に予熱する工程と、
(III)少なくとも部分的に工程(I)また(II)の前記筒状体(2)または前記モジュール要素(36)の前記筒状空洞(8、12、14、8’、12’、14’)に充填材(16)の流動前駆体を充填する工程と、
(IV)前記ロータ(1)またはロータモジュールを設けるように工程(III)から得られた前記筒状体(2)または前記モジュール要素(36)の前記筒状空洞(8、12、14、8’、12’、14’)内で前記流動前駆体を固化させる工程と、
(V)好ましくは、工程(IV)から得られた前記ロータ(1)またはロータモジュールを磁化させる工程と、を含む方法。
【請求項12】
工程(IV)に続いて、前記方法が、
前記ロータ(1)に所定の軸方向長さおよび高さを与えるように工程(IV)または工程(V)から得られた2つまたはそれ以上のロータモジュールを機械的に接合する工程(VI)を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
請求項1~10のいずれか1項に記載のロータ(1)または請求項11もしくは12に記載の製造方法で得られたロータ(1)もしくはロータモジュール(36)を備える同期電気機械(10)。
【請求項14】
前記同期電気機械(10)が、同期リラクタンスモータであり、好ましくは、前記同期リラクタンスモータが、ステータコンパートメント(38)を区画するステータ(40)を備え、前記ロータ(1)が、回転軸(R1)を中心に回転可能に収容され、トランスミッションシャフト(44)に接続される、請求項13に記載の同期電気機械(10)。
【請求項15】
請求項13または14に記載の同期電気機械(10)を備える電気車両またはハイブリッド車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筒状体と充填材とを備えるロータに関する。
【0002】
本発明はまた、ロータまたはロータモジュールを製造するための方法に関する。
【0003】
本発明はまた、上記ロータを備える同期電気機械、または上記製造方法を使用して得られたロータに関する。
【0004】
本発明はまた、上記同期電気機械を備える電気車両またはハイブリッド車両に関する。
【背景技術】
【0005】
リラクタンスモータは、技術的にはおよそ1世紀前に遡るモータである。特に、「Kostko」多相同期反応モータは1923年にまで遡る。リラクタンスモータは、巻線を有さない磁気異方性であるロータ構造によって特徴づけられる。
【0006】
リラクタンスモータは、技術的制限がある機械であり、大規模な使用には適していない。
【0007】
技術的制限の1つは、電圧と電流との間の位相変位角に起因して力率が比較的低いことにある。「アクティブな」電流量は有用な機械力を生成し得るが、電圧に対して90°位相がずれている別の電流量は「リアクティブ」であるため、ロータを励起することはできても、有益な効果は生まない。
【0008】
別の技術的制限は、ロータの空気室によって生成され、結果として騒音および共振を引き起こすトルクリップル(振動)にある。
【0009】
米国特許出願公開第2015/0372546号明細書、米国特許出願公開第2019/207490号明細書、および国際公開第2017/021078号は、先行技術によるリラクタンスモータ用のロータを例示している。
【発明の概要】
【0010】
出願人は、長く熱心な研究開発活動を経て、リラクタンスモータが今後数年間(たとえば、排他的ではないが、電気自動車の分野において)ますます大きな関心を集めるという確固たる確信のもと、制限、欠点、既存の課題に適切に対応することができるロータ、製造方法、同期電気機械、および車両を開発した。
【0011】
実際、出願人は、驚くべきことに、ロータの空洞に非対称性を導入することによって、ロータのトルクリップル(およびしたがって騒音と共振)を低減し、上記ロータを備える同期電気機械のトルクの平均値を増加させることが可能であることを発見した。
【0012】
したがって、本発明は、添付の請求項において定義される特徴を有する、筒状体と充填材とを備えるロータに関する。
【0013】
本発明はまた、添付の請求項において定義される特徴を有する、ロータまたはロータモジュールを製造するための方法に関する。
【0014】
本発明はまた、添付の請求項において定義される特徴を有する、上記ロータ、または上記製造方法を使用して得られたロータを備える同期電気機械に関する。
【0015】
本発明はまた、添付の請求項において定義される特徴を有する、上記同期電気機械を備える電気車両またはハイブリッド車両に関する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
本発明の好ましい実施形態は、図面を参照して非限定的な例によって以下で説明される。
【0017】
【
図1】本発明の可能な実施形態によるロータの平面図を示す。
【
図2】本発明の可能な実施形態による筒状体の平面図を示す。
【
図3】可能な実施形態による第1の角度セクターの詳細を拡大して示す。
【
図4】可能な実施形態による第2の角度セクターの詳細を拡大して示す。
【
図5】可能な実施形態による、
図2中で強調されるゾーンVの詳細を拡大して示す。
【
図6】可能な実施形態による、
図2中で強調されるゾーンVIの詳細を拡大して示す。
【
図7A】可能な実施形態による筒状体の斜視図を示す。
【
図7B】可能な実施形態によるモジュール要素の斜視図を示す。
【
図8】本発明による非対称ロータと先行技術による対称軸方向空洞を有するロータのトルクリップルと平均トルクを比較したロータのトルク/位置ダイアグラムを示す。
【
図10】本発明による同期電気機械の縦断面図を示す。
【
図11】本発明による同期電気機械の断面図を示す。
【
図12】第1の角度セクターのさらなる可能な実施形態による、
図2中で強調されるゾーンVの詳細を拡大して示す。
【
図13】第2の角度セクターのさらなる可能な実施形態による、
図2中で強調されるゾーンVIの詳細を拡大して示す。
【
図14】本発明の別の可能な実施形態による筒状体の平面図を示す。
【
図15】
図14の実施形態による第1の角度セクターの詳細を拡大して示す。
【
図16】
図14の実施形態による第2の角度セクターの詳細を拡大して示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
添付の図面を参照すると、参照番号1は、希土類元素を含む永久磁石のない(たとえば、ネオジムのない、および/またはサマリウムのない)、N個の極を有するロータ1であって、筒状体2と充填材16とを備えるロータ1を全体的に示す。
【0019】
Nは、偶数であり、好ましくは2、4、6、8、10、または12、より好ましくはN=2、N=4、またはN=6である。さらに好ましくは、N=4またはN=6である。
【0020】
筒状体2は、第1のシリンダベース60と反対側のシリンダベース62との間で本体軸X(または筒状体の高さ)に沿って延在する。本体軸Xに垂直な面内で、上記筒状体2は、N個の隣接する角度セクター4、6を区画する(ここで、角度セクターの数は極の数Nに等しい)。好ましくは、筒状体2は、外側円筒面34によって区画される(delimited)か、または囲まれる(circumscribed)。
【0021】
本明細書では、「軸方向」、「半径方向」、「角度」、「周方向」、「近位」、「遠位」、「直交」という表現は、特に指定されない限り、常に本体軸Xに関して使用される。
【0022】
筒状体2は、好ましくは、軸方向孔42によって(一端側から他端側に)横切られる。好ましくは、軸方向孔42は、略円形の直交断面を有し、これは、任意に、(たとえば
図9に示される)トランスミッションシャフト44と接続され得るように適切に形作られる。好ましくは、筒状体2とトランスミッションシャフト44との間の上記接続は、上記筒状体2と上記トランスミッションシャフト44とが回転式に一体となるように、角柱状の(または回転防止の)接続または連結である。
【0023】
筒状体2は、好ましくは50mm~200mm、より好ましくは60mm~150mm、さらにより好ましくは80mm~100mm、またさらにより好ましくは85mm~95mmの間に含まれる外径(または筒状体のベースの直径)を有する。
【0024】
軸方向孔42が存在する場合、筒状体2は、好ましくは20mm~150mm、好ましくは25mm~100mm、さらにより好ましくは30mm~50mmの間に含まれる内径を有する。
【0025】
筒状体2は、好ましくは金属合金、好ましくは鉄合金、より好ましくは鉄-ケイ素合金で作られる。さらにより好ましくは、上記合金はM400-50AまたはM330-35合金である。略称M400またはM330-35Aは、規格EN 10106:2015を参照し、ここで、最初の3桁は、標準周波数および磁気誘導条件下での材料1キログラムに対する鉄の損失の値の10分の1および100分の1の単位を示し、一方で、各略語の最後の2桁は、100分の1ミリメートルで表される上記合金の積層厚さを示す。
【0026】
この規格が、本明細書で言及されるすべての規格と同様に、本特許出願の優先日において有効なバージョンであると考えられることが指摘されている。
【0027】
好ましくは、筒状体2は、軸方向に重ねられて接合された複数のシリンダプレートからなる。たとえば、シリンダプレートは、形状嵌合および/または圧力嵌合の接続によって、溶接によって、および/または充填材16によって加えられる凝集力によって接合される。上述した積層厚さとは、金属合金によって形成されたシリンダプレートの厚さを指す。
【0028】
シリンダプレートは、好ましくは、シリンダプレートのN個の極の各々の極性(正および負)が、隣接するシリンダプレートのN個の極の極性(正および負)に軸方向に対応するように、軸方向に重ねられて接合される。換言すれば、シリンダプレートの極性は、隣接するシリンダプレートの極性に対して位相ずれ(たとえば90°)していない。
【0029】
好ましくは、各シリンダプレートは、0.1mm~1mm、好ましくは0.2mm~0.8mm、より好ましくは0.3mm~0.6mm、さらにより好ましくは0.35mm~0.5mmの間に含まれる(軸方向の)厚さを有する。
【0030】
例として、筒状体2は、10~500、好ましくは20~400、さらにより好ましくは50~300の間に含まれる多数のシリンダプレートからなる。
【0031】
角度セクターは、1つまたは複数の分離面P(i)によって互いに分割される。上記少なくとも1つの分離面P(i)は本体軸Xを含む。
【0032】
例として、
図2は、4つの角度セクター4、6を分離する2つの分離面P1、P2を備えたロータを示す。ここで、上記分離面P1、P2は本体軸Xに沿って互いに交差している。分離面P1、P2は、好ましくは、互いに90°の角度をなして配置され、それにより、上記角度セクター4、6はすべて、同じ角度展開を有するようになる。
【0033】
さらなる例として、
図14は、6つの角度セクター4、6を分離する3つの分離面P1、P2、P3を備えたロータを示す。ここで、上記分離面P1、P2、P3は本体軸Xに沿って互いに交差している。分離面P1、P2、P3は、好ましくは、互いに60°の角度をなして配置され、それにより、上記角度セクター4、6はすべて、同じ角度展開を有するようになる。
【0034】
N個の極を備えるロータに関して、分離面P(i)は、好ましくは、角度セクターがすべて同じ角度展開を有するような角度を互いになして配置されている。
【0035】
好ましくは、上記N個の極の各々は、シリンダ本体2の第1のシリンダベース60から第2のシリンダベース62まで本体軸Xに沿って軸方向に延在する。
【0036】
各角度セクター4、6は、軸方向空洞8、12、14、8’、12’、14’、好ましくは曲線状のまたは内側に湾曲した断面を有する筒状空洞8、12、14、8’、12’、14’を区画する。上記軸方向空洞または筒状空洞8、12、14、8’、12’、14’の凹面18、20、22、18’、20’、22’は、本体軸Xと反対の方向に向けられている。
【0037】
この記載において、「筒状」という表現は、前述の空洞が筒状面によって区画され、したがって、上記空洞が一定の断面を有することを意味している。以下に記載される凹部54についても同じ意味が適用されるものとする。
【0038】
好ましくは、軸方向空洞または筒状空洞8、12、14、8’、12’、14’は、凸面28、30、32、28’、30’、32’によっても区画されている。凸面28、30、32、28’、30’、32’は、凹面18、20、22、18’、20’、22’の前に位置し、本体軸Xに面している。
【0039】
好ましくは、軸方向空洞または筒状空洞8、12、14、8’、12’、14’は、半径方向外側に先細っている。
【0040】
好ましくは、筒状空洞8、12、14、8’、12’、14’の少なくとも1つは、半径方向の中央面Mによって横断されている。
【0041】
好ましくは、分離面P(i)は、軸方向空洞または筒状空洞を横断せずに角度セクターを分割し、ロータおよび(設けられる場合に)軸方向孔42の大部分のみを収容する。
【0042】
充填材16は、少なくとも部分的に(好ましくは完全にまたは略完全に)上記軸方向空洞または筒状空洞8、12、14、8’、12’、14’を占有する(または充填する)。
【0043】
第1の実施形態によれば、充填材16は、1つまたは複数の磁化可能なまたは磁化された充填材を組み込んだポリマーマトリックスを含むか、またはそれからなる。
【0044】
第2の実施形態によれば、充填材16は、ポリマーマトリックスを含むか、またはそれからなり、ここで、上記ポリマーマトリックスは、好ましくは、上記ポリマーマトリックス内に埋め込まれた1つまたは複数の磁化可能なまたは磁化された充填剤を備えていない。
【0045】
軸方向空洞または筒状空洞8、12、14、8’、12’、14’の内部の充填材16の存在は、特にポリマーマトリックスが1つまたは複数の磁化可能なまたは磁化された充填剤を組み込む実施形態では、同期電気機械の力率に有意な利益をもたらす。この利益は、軸方向空洞または筒状空洞が空であり、したがって空気で占有されている、他のすべての条件が等しい対応する同期電気機械よりも予想外に高い。
【0046】
この利益は、上記充填材が希土類を含む永久磁石よりも弱い磁石を形成するという事実にもかかわらず存在している。これは、同期電気機械の「再位相(re-phase)」を行う、つまり少なくとも部分的に電圧と電流との間の位相ずれ角を減少させる充填材の能力によるものである。
【0047】
好ましくは、上記充填材16中の上記1つまたは複数の磁化可能な充填材の量は、上記充填材の総重量の好ましくは50~98重量%、好ましくは60~96重量%、より好ましくは65~95重量%、さらにより好ましくは75~94重量%の間に含まれる。
【0048】
好ましくは、充填材16は、
150mT~450mT、好ましくは180mT~380mT、より好ましくは220mT~320mT、さらにより好ましくは250mT~310mTの間に含まれる、DIN 60404-5に従って判定された、残留磁束密度または残留磁気(Br)、および/または
130kA/m~350kA/m、好ましくは150kA/m~320kA/m、より好ましくは170kA/m~280kA/m、さらにより好ましくは190kA/m~250kA/mの間に含まれる、DIN EN 60404-5に従って判定された、保磁界強度または保磁力(jHc)、および/または
10kJ/m3~20kJ/m3、好ましくは12kJ/m3~18.5kJ/m3、より好ましくは13kJ/m3~16kJ/m3、さらにより好ましくは14kJ/m3~15.8kJ/m3の間に含まれる、DIN EN 60404-5に従って判定された、最大エネルギー積(BH max)、を有する。
【0049】
ISO 1183に従って判定される充填材密度16は、好ましくは3000.00kg/m3~4000.00kg/m3、より好ましくは3500.00kg/m3~3700.00kg/m3、さらにより好ましくは3550.00kg/m3~3650.00kg/m3の間に含まれる。
【0050】
好ましくは、充填材16は、以下のレオロジー特性の1つまたは両方を有する:
0.2%~2%、好ましくは0.6%~1.5%、より好ましくは0.7%~1%の間に含まれる、さらにより好ましくは0.8%に等しい、ISO 294-4に従って測定された、流れ方向の収縮、および/または
0.2%~2%、好ましくは0.5%~1%、より好ましくは0.45%~0.8%の間に含まれる、さらにより好ましくは0.5%に等しい、ISO 294-4に従って測定された、流れ方向に横断する方向の収縮。
【0051】
充填材16のポリマーマトリックスは、好ましくは、熱可塑性マトリックスまたは熱硬化性マトリックスである。
【0052】
熱可塑性ポリマーマトリックスは、好ましくは、ポリアミド(PA)、ポリアミド6(PA6)、ポリアミド6.6(PA6.6)、ポリアミド12(PA12)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、液晶ポリマー(LCP)を含む、または代替的にそれらからなる群から選択される。より好ましくは、上記ポリマーマトリックスはPA、PA6、またはPPSであり、さらにより好ましくは、上記ポリマーマトリックスはPA6またはPPSである。
【0053】
熱硬化性ポリマーマトリックスは、好ましくは、ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、より好ましくはポリエステル樹脂またはエポキシ樹脂を含む、または代替的にそれらからなる群から選択される。
【0054】
少なくとも1つの磁化可能な充填剤は、好ましくは、マグネタイト、フェライト、およびそれらの混合物から選択される。より好ましくは、上記磁化可能な充填材はフェライトである。
【0055】
上記フェライトは、好ましくは、ストロンチウム、バリウム、マンガン、ニッケル、亜鉛、およびそれらの混合物を含む、または代替的にそれらからなる群から選択される1つまたは複数の金属元素を含み、より好ましくは、上記フェライトは、金属元素としてストロンチウムを含むか、またはストロンチウムのみを含む。
【0056】
好ましくは、上記ポリマーマトリックスはPA6またはPPSであり、上記磁化可能な充填材は金属元素としてストロンチウムのみを含むフェライトである。
【0057】
非限定的な例として、上記充填材16は、BARLOG Plastics GmbH(51491 Overath, Germany)によって市販されているコード「KEBABLEND/M 14/22 PA6」の製品である。
【0058】
少なくとも1つの第1の角度セクター6は、第1の幾何学的形状(タイプAの幾何学的形状)を有する軸方向空洞または筒状空洞8’、12’、14’を区画し、少なくとも1つの第2の角度セクター4は、上記第1の幾何学的形状とは異なる第2の幾何学的形状(タイプBの幾何学的形状)を有する軸方向空洞または筒状空洞8、12、14を区画し、第1の角度セクター6は上記第2の角度セクター4と角度的に交互になる。
【0059】
したがって、本発明の革新的な態様によれば、ロータの軸方向空洞または筒状空洞(したがって角度セクター)の幾何学的非対称性および異なる幾何学的形状を有するセクターの角度的に交互の配置によって、本発明によるロータは、トルクリップル(およびしたがって騒音および共振)を低減することおよび同期電気機械のトルクの平均値を増加させることを可能にしている。
【0060】
特に
図8に示されるグラフを参照すると、上記グラフは、試験されるさまざまなロータの角度位置に応じたトルク値を示している。上記グラフでは、
破線T
ABは、(たとえば
図1および2に示されるような、幾何学的形状A-B-A-Bの交互の配置での)本発明によるロータの可能な実施形態のトルクリップルを表し、
0°で約12Nmのトルクを有する曲線T
Aは、タイプAの角度セクター(A-A-A-A)のみが存在する先行技術の第1のロータのトルクリップルを示し、
0°で約9Nmのトルクを有する曲線T
Bは、タイプBの角度セクター(B-B-B-B)のみが存在する先行技術の第2のロータのトルクリップルを示す。
【0061】
図8から、本発明によるロータが、試験した他の2つのロータと比較して、より小さいリップルを有し、特に、1Nmでの振幅がより小さく、周期がより長いことを特徴とすることが分かる。
【0062】
同様の試験を、4つとは異なるN個の数の極を有するロータに対して実行した。これらの試験の結果は、
図8に示される進行状況と同等である。
【0063】
1つまたは複数の筒状空洞8、12、14、8’、12’、14’は、好ましくは、各々が好ましくは筒状体2の周方向での可変厚さおよび最小厚さ点58を有する1つまたは複数の隔壁56によって外側円筒面34から分離される。
【0064】
より好ましくは、隔壁56は、筒状空洞8、12、14、8’、12’、14’の半径方向外側端部と外側円筒面34との間に配置されている。
【0065】
最小厚さ点58は、好ましくは、1つまたは複数の軸方向空洞または筒状空洞8、12、14、8’、12’、14’の半径方向外側への先細りによって判定される。例として、1つまたは複数の軸方向空洞または筒状空洞8、12、14、8’、12’、14’は、外側円筒面34で最小厚さ点58を区画する略丸い端部(本体軸Xに向けられた空洞を有する)で終端する。
【0066】
隔壁56の可変厚さは、好ましくは、
図5および6に概略的に示される筒状空洞8、12、14、8’、12’、14’のすべてに存在するが、この特徴は、遠位軸方向空洞または筒状空洞14、14’ではそれほど明白ではない。
【0067】
半径方向面Rは、本体軸Xおよび隔壁56の最小厚さ点58を含む。この半径方向面Rは、前述の中央面Mと所定の角度α、βをなす。
【0068】
本実施形態によれば、第1の角度セクター6によって区画された少なくとも1つの筒状空洞8’、12’、14’は、好ましくは、第1の角度αによって特徴づけられる。第2の角度セクター4によって区画された少なくとも対応する筒状空洞8、12、14は、好ましくは、上記第1の角度αとは異なる第2の角度βによって特徴づけられる。
【0069】
「対応する」筒状空洞という表現は、たとえば
図5および6に概略的に示されるように、特に、類似の近位軸方向空洞または筒状空洞8、8’、中間軸方向空洞または筒状空洞12、12’、および/または遠位軸方向空洞または筒状空洞14、14’間の角度α、βを比較して、第1の角度セクター6および第2の角度セクター4において類似している半径方向の配置および形状を有する筒状空洞間で角度α、βが考慮されなければならないことを意味していると理解される。
【0070】
実施形態によれば、前述の角度α、β間の差によって、好ましくは、軸方向空洞または筒状空洞の、およびそれぞれのセクターの第1の幾何学的形状(タイプA)または第2の幾何学的形状(タイプB)を決定する。
【0071】
好ましくは、各軸方向空洞または筒状空洞8、12、14、8’、12’、14’は、内部容積を囲み、外周によって区画され、その角度セクター4、6内に特定の半径方向配置を有する。ここで、上記内部容積、上記外周、および上記特定の半径方向配置によって、軸方向空洞または筒状空洞の、およびしたがってそれぞれのセクターの幾何学的形状(タイプAまたはタイプB)を決定する。したがって、第1の角度セクター6によって区画された軸方向空洞または筒状空洞8’、12’、14’は、第2の角度セクター4によって区画された軸方向空洞または筒状空洞8、12、14のものとは異なる内部容積、外周の形状および/または長さ、および/または特定の半径方向配置を有する。
【0072】
より好ましくは、軸方向空洞または筒状空洞8、12、14、8’、12’、14’は、近位軸方向空洞または筒状空洞8、8’、少なくとも1つの中間軸方向空洞または筒状空洞12、12’(つまり、1つのみまたは複数の中間軸方向空洞または筒状空洞)、および本体軸Xから半径方向に離間されている遠位軸方向空洞または筒状空洞14、14’を含む。
【0073】
各セクター4、6において、近位軸方向空洞または筒状空洞8、8’および少なくとも1つの中間軸方向空洞または筒状空洞12、12’は、好ましくは、上記近位軸方向空洞または筒状空洞8、8’および上記少なくとも1つの中間軸方向空洞または筒状空洞12、12’を中心で分割する半径方向ブリッジ24、26に対する鏡像対称を有する。
【0074】
軸方向空洞または筒状空洞の内部容積が大きい場合、半径方向ブリッジ24、26の存在は重要な特徴となる。より具体的には、各空洞がロータの構造的弱体化を構成するため、少なくとも1つの半径方向ブリッジ24、26の存在によって、上記ロータに作用する大きな遠心力にもかかわらず、回転ロータの構造的完全性が確かなものとされる。
【0075】
他の実施形態によれば(図示せず):
近位軸方向空洞または筒状空洞8、8’および少なくとも1つの中間軸方向空洞または筒状空洞12、12’は、半径方向ブリッジを有さないか、または
各セクター4、6は、近位軸方向空洞または筒状空洞8、8’、少なくとも1つの中間軸方向空洞または筒状空洞12、12’、および/または遠位軸方向空洞または筒状空洞14、14’を分割または通過する1つまたは複数の半径方向ブリッジ24、26を備え、好ましくは、上記1つまたは複数の半径方向ブリッジ24、26は、上記軸方向空洞または筒状空洞を非対称に分割する。
【0076】
好ましくは、各半径方向ブリッジ24、26は、0.1mm~2mm、好ましくは0.2mm~1mm、さらにより好ましくは0.3mm~0.7mmの間に含まれる(半径方向に垂直な方向での)平均厚さを有する。
【0077】
好ましくは、第1の角度セクター6によって区画された軸方向空洞または筒状空洞8’、12’、14’は、第2の角度セクター4によって区画された軸方向空洞または筒状空洞8、12、14と比較して、以下の異なる特性を有する:
(i)本体軸Xからの近位軸方向空洞または筒状空洞8、8’および/または少なくとも1つの中間軸方向空洞または筒状空洞12、12’の半径方向距離D1、D2;および/または
(ii)上記ロータ1の外側円筒面または円周34に対する上記軸方向空洞または筒状空洞8、12、14、8’、12’、14’の凸面28、30、32、28’、30’、32’の半径方向距離D3、D4;および/または
(iii)半径方向ブリッジ24、26の長さL1および/または幅L2;および/または
(iv)1つまたは複数の凹面18、20、22、18’、20’、22’の、または上記凹面の一部の曲率半径C1、C2;および/または
(iv)1つまたは複数の凸面28、30、32、28’、30’、32’の、または上記凸面の一部の曲率半径C3、C4;および/または
(iv)任意に、1つまたは複数の凹面18、20、22、18’、20’、22’に沿って位置する任意の直線セクションT1、T2の長さ、交互配置、および/または範囲(incidence)。
【0078】
本実施形態によれば、特性(i)~(v)、任意に(i)~(vi)のうちの1つまたは複数によって、軸方向空洞または筒状空洞の、およびそれぞれのセクターの幾何学的形状(タイプAまたはB)を決定する。
【0079】
好ましくは、ロータ1は、外側円筒面または円周34によって区画されるか、または囲まれる。この外側円筒面34は、好ましくは、上記円筒面34から筒状体2の内側に向かって延在する複数の円筒状または軸方向の凹部54を備える。好ましくは、各軸方向または円筒状の凹部54は、本体軸Xとは反対の方向に向けられた凹面によって(好ましくは本体軸Xに沿った一定の断面を有する、好ましくは円弧または楕円弧の形態で)区画される。たとえば、
図14~16の実施形態を参照されたい。
【0080】
好ましくは、各角度セクター4、6は、少なくとも1つの軸方向または円筒状の凹部54、より好ましくは単一の軸方向または円筒状の凹部54、さらにより好ましくは角度セクター4、6の略中央に配置された単一の軸方向または円筒状の凹部54を備える。
【0081】
実施形態によれば、充填材16は、少なくとも部分的に複数の軸方向または円筒状の凹部54を(好ましくは完全に、または略完全に)占有する(または充填する)。
【0082】
別の実施形態によれば、複数の軸方向または円筒状の凹部54は充填材16を有さない。
【0083】
好ましい実施形態によれば、タイプAの幾何学的形状は、
図3、5、12、または15に示される通りであり、タイプBの幾何学的形状は、
図4、6、13、または16に示される通りである。
【0084】
本発明はまた、上に示した実施形態のいずれか1つによるロータ1、または上記ロータ1と同じ特徴を有するロータモジュール36を製造するための方法に関する。
【0085】
本発明において、「ロータモジュール」という表現は、ロータよりも低い軸方向高さを有する、およびロータに所定の軸方向長さまたは高さを与えるべく1つまたは複数の他のロータモジュールと機械的に接合されるように設計された、ロータセグメントを示す。
【0086】
当然、ロータ1に言及する特徴は、必要な変更を加えて、ロータモジュールにも有効である。
【0087】
上記製造方法は、
(I)複数のシリンダプレートを重ねて接合する工程であって、本体軸Xに沿って延在する、および本体軸Xに垂直な面内で、N個の隣接する角度セクター4、6を区画する、モジュール要素36または筒状体2を設け、各角度セクター4、6が、曲線断面を有する軸方向空洞または筒状空洞8、12、14、8’、12’、14’を区画し、そこで、上記軸方向空洞または筒状空洞8、12、14、8’、12’、14’の凹面18、20、22、18’、20’、22’が、本体軸Xとは反対の方向に向けられる、工程と、
(II)任意に、工程(I)のモジュール要素36または筒状体2を、50℃~120℃、好ましくは60℃~100℃、さらにより好ましくは70℃~90℃の間に含まれる温度に予熱する工程と、
(III)少なくとも部分的に(たとえば完全にまたは略完全に)工程(I)また(II)の筒状体2またはモジュール要素36の軸方向空洞または筒状空洞8、12、14、8’、12’、14’に上記充填材16の流動前駆体(たとえば、液体、流体前駆体、または流動粉末の形態の前駆体)を充填する工程と、
(IV)上記ロータ1またはロータモジュールを設けるように工程(III)から得られた筒状体2またはモジュール要素36の軸方向空洞または筒状空洞8、12、14、8’、12’、14’内で上記流動前駆体を固化させる工程と、
(V)好ましくは、工程(IV)から得られたロータ1またはロータモジュールを磁化させる工程と、を含む。
【0088】
好ましくは、重ねる工程(I)の間に、複数のシリンダプレートは、筒状体の軸方向空洞または筒状空洞を形成するような方法で、各プレートによって区画された軸方向空洞または筒状空洞を整列させるように重ねられる。
【0089】
好ましくは、上記工程(I)または上記工程(II)に続く上記充填する工程(III)は、少なくとも1つの成形工程または射出成形工程を含む。
【0090】
好ましくは、工程(III)の流動前駆体は、熱硬化性ポリマーマトリックスの前駆体の場合には45℃~350℃、好ましくは50℃~100℃の間に含まれる、または熱可塑性ポリマーマトリックスの前駆体の場合には250℃~300℃の間に含まれる温度を有する。
【0091】
好ましくは、熱可塑性ポリマーマトリックスを使用する製造方法において、充填する工程(III)に続く固化させる工程(IV)は、室温まで冷却することを伴う工程を含む。上記冷却は、より好ましくは以下の2段階:工程(III)の流動前駆体が軸方向空洞または筒状空洞から流出しないように十分に固化させられるまでの金型内の第1の段階、および室温に達するまでの金型外の第2の段階で実施される。
【0092】
好ましくは、熱硬化性ポリマーマトリックスが使用される製造方法において、充填する工程(III)に続く上記固化させる工程(IV)は、上記熱硬化性ポリマーマトリックスの架橋または熱硬化温度まで加熱することを含む。
【0093】
好ましくは、固化させる工程(IV)に続いて、上記方法は、上記ロータ1に所定の軸方向長さおよび高さを与えるように工程(IV)または工程(IV)から得られた2つまたはそれ以上のロータモジュールを機械的に接合する工程(VI)を含む。
【0094】
本実施形態は、ロータ1が長い軸方向長さを有する場合、および狭くて長い軸方向空洞または筒状空洞がある場合に有用であり得る。この場合、たとえ任意の予熱工程(II)が実施された場合でも、所望の方法で(たとえば完全にまたは略完全に)空洞を充填する前に前駆体が固化し得るため、上記空洞の完全な充填は困難になり得る。
【0095】
好ましくは、機械的に接合する工程(VI)の間に、2つまたはそれ以上のロータモジュールが共通のトランスミッションシャフト44によって接続される。好ましくは、工程(VI)の間に、上記トランスミッションシャフト44は、好ましくは角柱状の接続または連結システムによって、少なくとも部分的に(たとえば完全に)2つまたはそれ以上の軸方向に隣接するロータモジュールの軸方向孔42の内側に挿入される。
【0096】
好ましくは、磁化工程(V)は、工程(IV)で行われる固化に続いて行われる。
【0097】
より好ましくは、上記方法が2つまたはそれ以上のロータモジュールを機械的に接合する工程(VI)を含む場合、磁化工程(V)は、機械的に接合する工程(VI)の後または前に、好ましくは前に実施される。
【0098】
本発明はまた、上記ロータ1を備える、または上記製造方法を使用して得られるロータ1もしくはロータモジュールを備える同期電気機械10に関する。
【0099】
上記電気機械10は、ステータ40の磁界がロータ1と同期して回転するため、同期しているものとして理解される。
【0100】
好ましくは、上記同期電気機械10は、同期リラクタンスモータ、三相同期リラクタンスモータ、三相モータとは異なる(3つ以外の多数のステータ相を有する)同期リラクタンス機械、スイッチドリラクタンス機械、(ロータ1が、1つまたは複数のリスかごを挿入するためのさらなる軸方向空洞または筒状空洞を区画する)自己始動型同期リラクタンス機械から選択される。より好ましくは、上記同期電気機械10は同期リラクタンスモータである。
【0101】
上記同期リラクタンスモータは、好ましくは、上記ロータ1が回転軸R1を中心に回転可能に内部に収容されるステータコンパートメント38を区画するステータ40を備える。回転軸R1は、好ましくは本体軸Xと平行であり、より好ましくは本体軸Xと一致している。ロータ1は、好ましくは、トランスミッションシャフト44に接続される。
【0102】
図9~11による実施形態を参照すると、同期リラクタンスモータは、少なくとも部分的に(たとえば完全に)ステータ40およびロータ1を収容するモータハウジング46を備える。
【0103】
モータハウジング46は、好ましくは、貫通開口部50を区画する少なくとも1つのハウジングフランジ48を備え、貫通開口部50内にはロータ1に回転的にロックされたトランスミッションシャフト46が回転可能に収容され、貫通開口部50は上記ハウジングフランジ48から突出している。
【0104】
ステータ40は、好ましくは少なくとも部分的にロータと同じ材料、より好ましくは金属合金、さらにより好ましくは鉄合金、またさらにより好ましくはフェロシリコン合金、たとえばM400-50AまたはM330-35Aで作られる。
【0105】
トランスミッションシャフト44は、好ましくは、アルミニウムまたは軽アルミニウム合金で作られる。
【0106】
モータハウジング46およびハウジングフランジ48は、好ましくは、金属、好ましくはアルミニウム、軽アルミニウム合金、または炭素鋼、より好ましくはアルミニウムまたは軽アルミニウム合金(その熱伝導率のため)で作られる。
【0107】
ロータとステータとの間の空隙52は、0.1mm~0.8mm、好ましく0.2mm~0.6mm、さらにより好ましく0.4mm~0.5mmの間に含まれる。
【0108】
上記同期電気機械10のロータ1の角速度は、好ましくは500rpm~20,000rpm、好ましくは700rpm~15,000rpm、より好ましくは1,000rpm~10,000rpm、さらにより好ましくは1,200rpm~1,800rpm、たとえば1,300rpm~1,700rpmの間に含まれる。
【0109】
以下の表1は、同期電気機械10の動作パラメータの例を示す。
【0110】
【0111】
本発明はまた、上記同期電気機械10を備える電気車両またはハイブリッド車両に関する。
【0112】
革新的な態様によれば、本発明によるロータによって、先行技術のロータと比較して、以下のパラメータに関連したパレート最適性を得ることが可能になる。
(i)より低いトルクリップル、および
(ii)より高い平均トルク値。
このようにして、本発明によるロータは、より静かな動作性能を有し、発生する共振がより少ない。
【0113】
実際、幾何学的形状の角度変更がない従来のロータ(タイプAの幾何学的形状のみを有するロータまたはタイプBの幾何学的形状のみを有するロータ)と比較して、本発明によるロータが、他のすべての動作条件が等しい場合、約2/3のトルクリップルの減少を達成することができることが計算されている。
【0114】
利点として、「非対称」ロータの存在により、本発明の目的を達成するために変更可能な独立パラメータの数を2倍にすることが可能である。
【0115】
利点として、本発明によるロータは、希土類元素を含む永久磁石を備えていないため、このタイプの元素を含む永久磁石を使用するロータよりもコストが低くなる。さらに、このロータは、希土類の供給に関連して将来起こり得る困難から意図的に切り離される。
【0116】
利点として、本発明によるロータは、高いトルク、突極性、力率、および効率を確かなものとするように設計されている。
【0117】
利点として、本発明によるロータは、軸方向空洞または筒状空洞の領域において最適化された磁束バリア角度を有する。
【0118】
利点として、隔壁の領域における筒状体のゾーンは、磁気的に飽和したゾーンとなるように設計されており、したがって、空気と同様の磁気挙動を有する。
【0119】
利点として、角度α、β、および特にそれらの差は、トルクリップルを低減するのを助ける主な要因のうちの1つである。
【0120】
実際に、当該現象を必ずしも科学的に説明する必要はないが、同期電気機械の空隙でのトルクの発生は、磁気抵抗の最小化の原理を用いて局所的に説明可能であり、同期電気機械の領域を横切る磁束線は、最小エネルギー状態に到達する物理系の傾向に従って、最も抵抗の少ない経路をたどろうとする。したがって、物理系は、この最小エネルギー状態に到達することを目的とした力を生成する。柔らかい強磁性材料で作られた領域の磁気抵抗は、典型的に、空気よりも100~10,000小さい(この変動は非線形飽和効果によるものである)。空隙の領域に、隔壁に由来するステータの凹部およびロータの「疑似空洞」がある場合、磁束線は、より長い距離にもかかわらずより低い抵抗で、強磁性領域の内側を通過するように直線経路に対するねじれを起こす。このねじれ動作によって局所的なトルクが生成され、これは、対称構成の場合に、ロータの円周に沿ってn回繰り返され、それゆえ、その効果も加算される。一方で、本発明によるロータにおいて、非対称性の存在の結果として、トルクは加算されないが、部分的であっても互いに打ち消し合い、その結果、トルクリップル全体に有益な効果がもたらされる。この有益性は、たとえば
図8のダイアグラムに示されるように、簡単に測定することができる。
【0121】
利点として、本発明による製造方法は、好ましくない幾何学的比率での軸方向空洞または筒状空洞の定量的な充填も可能にする。
【0122】
利点として、本発明によるロータにおいて、複数の軸方向または円筒状の凹部の存在は、平均トルクを増加させ、トルクリップルを低減する助けになり得る。
【0123】
当業者であれば、必要に応じて、上記したロータ、製造方法、同期電気機械、および車両の実施形態の特徴を置き換えたり変更したりすることができるであろう。これらの実施形態もまた、以下の請求項によって正式に定義される保護の範囲内に含まれるものと見なされるべきである。
【0124】
また、いずれの実施形態も、記載される他の実施形態とは独立して実施され得ることが指摘されるべきである。
【符号の説明】
【0125】
1 ロータ
2 筒状体
4 角度セクター、特に第2の角度セクター
6 角度セクター、特に第1の角度セクター
8 軸方向空洞または筒状空洞、特に近位軸方向空洞または筒状空洞
8’ 軸方向空洞または筒状空洞、特に近位軸方向空洞または筒状空洞
10 同期電気機械、好ましくは同期リラクタンスモータ
12 軸方向空洞または筒状空洞、特に中間軸方向空洞または筒状空洞
12’ 軸方向空洞または筒状空洞、特に中間軸方向空洞または筒状空洞
14 軸方向空洞または筒状空洞、特に遠位軸方向空洞または筒状空洞
14’ 軸方向空洞または筒状空洞、特に遠位軸方向空洞または筒状空洞
16 充填材
18 凹面
18’ 凹面
20 凹面
20’ 凹面
22 凹面
22’ 凹面
24 半径方向ブリッジ
26 半径方向ブリッジ
28 凸面
28’ 凸面
30 凸面
30’ 凸面
32 凸面
32’ 凸面
34 外周または外側円筒面
36 モジュール要素
38 ステータコンパートメント
40 ステータ
42 軸方向孔または円筒孔
44 トランスミッションシャフト
46 モータハウジング
48 ハウジングフランジ
50 貫通開口部
52 空隙
54 軸方向凹部または疑似空洞
56 隔壁(バリア)
58 最小厚さブリッジ
60 第1のシリンダまたはモジュールベース
62 第2のシリンダまたはモジュールベース
Α 半径方向面Rと中央面Mとがなす角度
Β 半径方向面Rと中央面Mとがなす角度
C1 凹面の曲率半径
C2 凹面の曲率半径
C3 凸面の曲率半径
C4 凸面の曲率半径
D1 本体軸からの近位軸方向空洞または筒状空洞の半径方向距離
D2 本体軸からの中間軸方向空洞または筒状空洞の半径方向距離
D3 ロータの外周からの凸面の半径方向距離
D4 ロータの外周からの凸面の半径方向距離
L1 半径方向ブリッジの長さ
L2 半径方向ブリッジの幅
M 中央面
P1 分離面
P2 分離面
P3 分離面
R 半径方向面
T1 凹面に沿った直線
T2 凹面に沿った直線
X 本体軸
【手続補正書】
【提出日】2024-02-26
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
N個の極を有するロータ(1)であって、Nが偶数
であり、好ましくは、N
が4に等しいか、または6
に等しく、前記ロータ(1)が、希土類元素を含む永久磁石を備えておらず、
本体軸(X)に沿って延在する、および前記本体軸(X)に垂直な面内で、N個の隣接する角度セクター(4、6)を区画する、筒状体(2)であって、各角度セクター(4、6)が、曲線断面を有する筒状空洞(8、12、14、8’、12’、14’)を区画し、前記筒状空洞(8、12、14、8’、12’、14’)の凹面(18、20、22、18’、20’、22’)が、前記本体軸(X)とは反対の方向に向けられている、筒状体(2)を備え、
前記N個の極の各々が、前記筒状体(2)の第1のシリンダベース(60)から前記第1のシリンダベース(60)とは反対側の第2のシリンダベース(62)まで前記本体軸(X)に沿って軸方向に延在し、前記ロータ(1)がさらに、
少なくとも部分的に前記筒状空洞(8、12、14、8’、12’、14’)を充填し、ポリマーマトリックスを含む、または前記ポリマーマトリックスからなる充填材(16)を備え、
少なくとも1つの第1の角度セクター(6)が、第1の幾何学的形状(タイプA)を有する筒状空洞(8’、12’、14’)を区画し、少なくとも1つの第2の角度セクター(4)が、前記第1の幾何学的形状とは異なる第2の幾何学的形状(タイプB)を有する筒状空洞(8、12、14)を区画し、前記第1の角度セクター(6)が前記第2の角度セクター(4)と角度的に交互に配置されている、ロータ(1)。
【請求項2】
前記筒状体(2)が複数のシリンダプレートによって形成され、シリンダプレートのN個の極の各々の極性が、隣接するシリンダプレートのN個の極の極性に軸方向に対応するように、前記複数のシリンダプレートが軸方向に重ねられて接合されている、請求項1に記載のロータ(1)。
【請求項3】
前記筒状空洞(8、12、14、8’、12’、14’)の少なくとも1つが、半径方向の中央面(M)によって横断され、前記筒状体(2)が外側円筒面(34)によって囲まれ、前記筒状空洞(8、12、14、8’、12’、14’)が、前記筒状体(2)の周方向での可変厚さおよび最小厚さ点(58)を有する隔壁(56)によって前記外側円筒面(34)から分離されている、請求項
1に記載のロータ(1)。
【請求項4】
半径方向面(R)が、前記本体軸(X)および隔壁(56)の前記最小厚さ点(58)を含み、前記半径方向面(R)が、前記中央面(M)と所定の角度(α、β)をなし、前記第1の角度セクター(6)によって区画された少なくとも1つの筒状空洞(8’、12’、14’)が、第1の角度(α)によって特徴づけられ、前記第2の角度セクター(4)によって区画された少なくとも1つの対応する筒状空洞(8、12、14)が、前記第1の角度(α)とは異なる第2の角度(β)によって特徴づけられ、前記角度(α、β)間の差によって、筒状空洞の前記第1の幾何学的形状(タイプA)または前記第2の幾何学的形状(タイプB)を決定する、請求項3に記載のロータ(1)。
【請求項5】
各筒状空洞(8、12、14、8’、12’、14’)が、内部容積を囲み、外周によって区画され、角度セクター(4、6)内に特定の角度配置を有し、前記第1の角度セクター(6)によって区画された前記筒状空洞(8’、12’、14’)が、前記第2の角度セクター(4)によって区画された前記筒状空洞(8、12、14)のものとは異なる内部容積、外周の形状および/または長さ、および特定の半径方向配置を有する、請求項
1に記載のロータ(1)。
【請求項6】
前記筒状空洞(8、12、14、8’、12’、14’)が、近位筒状空洞(8、8’)、少なくとも1つの中間筒状空洞(12、12’)、および前記本体軸(X)から半径方向に離間された遠位筒状空洞(14、14’)を含み、前記近位筒状空洞(8、8’)および前記少なくとも1つの中間筒状空洞(12、12’)が、前記近位軸方向空洞(8、8’)および前記少なくとも1つの中間筒状空洞(12、12’)を中心で分割する半径方向ブリッジ(24、26)に対する鏡像対称を有し、
前記第1の角度セクター(6)によって区画された前記筒状空洞(8’、12’、14’)が、前記第2の角度セクター(4)で区画された前記筒状空洞(8、12、14)と比較して、以下の異なる特性:
(i)前記本体軸(X)からの前記近位軸方向空洞(8、8’)および前記少なくとも1つの中間筒状空洞(12、12’)の半径方向距離(D1、D2);
(ii)前記ロータ(1)の外側円筒面または円周(34)に対する前記筒状空洞(8、12、14、8’、12’、14’)の凸面(28、30、32、28’、30’、32’)の半径方向距離(D3、D4);
(iii)前記半径方向ブリッジ(24、26)の長さ(L1)および/または幅(L2);および
(iv)1つまたは複数の凹面(18、20、22、18’、20’、22’)の、または前記凹面の一部の曲率半径(C1、C2);
(v)1つまたは複数の凸面(28、30、32、28’、30’、32’)の、または前記凸面の一部の曲率半径(C3、C4);
(vi)任意に、1つまたは複数の凹面(18、20、22、18’、20’、22’)に沿って位置する任意の直線セクション(T1、T2)の長さ、交互配置、および/または範囲、を有する、請求項
1に記載のロータ(1)。
【請求項7】
第1のまたはタイプAの幾何学的形状が、
図3、5、12、または15に示される通りであり、
第2のまたはタイプBの幾何学的形状が、
図4、6、13、または16に示される通りである、請求項
1に記載のロータ(1)。
【請求項8】
前記充填材(16)が、
150mT~450mT、好ましくは180mT~380mT、より好ましくは220mT~320mT、さらにより好ましくは250mT~310mTの間に含まれる、DIN EN 60404-5に従って判定された、残留流密度または残留磁気(Br)、
130kA/m~350kA/m、好ましくは150kA/m~320kA/m、より好ましくは170kA/m~280kA/m、さらにより好ましくは190kA/m~250kA/mの間に含まれる、DIN EN 60404-5に従って判定された、保磁界強度または保磁力(jHc)、および
10kJ/m
3~20kJ/m
3、好ましくは12kJ/m
3~18.8kJ/m
3、より好ましくは13kJ/m
3~16kJ/m
3、さらにより好ましくは14kJ/m
3~15.8kJ/m
3の間に含まれる、DIN EN 60404-5に従って判定された、最大エネルギー積(BH max)、を有する、請求項
1に記載のロータ(1)。
【請求項9】
前記ポリマーマトリックスが、熱可塑性マトリックスまたは熱硬化性マトリックスであり、好ましくは、前記ポリマーマトリックスが、ポリアミド(PA)、ポリアミド6(PA6)、ポリアミド6.6(PA6.6)、ポリアミド12(PA12)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、液晶ポリマー(LCP)、ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、フェノール樹脂、およびエポキシ樹脂を含む、または代替的にそれらからなる群から選択され、より好ましくは、前記ポリマーマトリックスが、PA、PA6、またはPPSであり、さらにより好ましくは、前記ポリマーマトリックスが、PA6またはPPSであり、
前記充填材(16)が、前記ポリマーマトリックスに埋め込まれた1つまたは複数の磁化可能なまたは磁化された充填材を含み、前記磁化可能な充填材が、マグネタイト、フェライト、およびそれらの混合物から選択され、好ましくは、前記磁化可能な充填材がフェライトであり、より好ましくは、前記フェライトが、ストロンチウム、バリウム、マンガン、ニッケル、亜鉛、およびそれらの混合物を含む、または代替的にそれらからなる群から選択される1つまたは複数の金属元素を含み、さらにより好ましくは、前記フェライトが、金属元素としてストロンチウムを含むか、またはストロンチウムのみを含む、請求項
1に記載のロータ(1)。
【請求項10】
前記ポリマーマトリックスが、PA6またはPPSであり、前記磁化可能な充填材が、金属元素としてストロンチウムのみを含むフェライトである、請求項
1に記載のロータ(1)。
【請求項11】
請求項
1に記載のロータ(1)または
請求項1に記載の前記ロータ(1)と同じ特徴を有するロータモジュールを製造するための方法であって、前記方法が、
(I)複数のシリンダプレートを重ねて接合する工程であって、本体軸(X)に沿って延在する、および前記本体軸(X)に垂直な面内で、N個の隣接する角度セクター(4、6)を区画する、モジュール要素(36)または筒状体(2)を設け、各角度セクター(4、6)が、曲線断面を有する筒状空洞(8、12、14、8’、12’、14’)を区画し、前記筒状空洞(8、12、14、8’、12’、14’)の凹面(18、20、22、18’、20’、22’)が、前記本体軸(X)とは反対の方向に向けられる、工程と、
(II)任意に、工程(I)の前記モジュール要素(36)または筒状体(2)を、50℃~120℃、好ましくは60℃~100℃、さらにより好ましくは70℃~90℃の間に含まれる温度に予熱する工程と、
(III)少なくとも部分的に工程(I)また(II)の前記筒状体(2)または前記モジュール要素(36)の前記筒状空洞(8、12、14、8’、12’、14’)に充填材(16)の流動前駆体を充填する工程と、
(IV)前記ロータ(1)またはロータモジュールを設けるように工程(III)から得られた前記筒状体(2)または前記モジュール要素(36)の前記筒状空洞(8、12、14、8’、12’、14’)内で前記流動前駆体を固化させる工程と、
(V)好ましくは、工程(IV)から得られた前記ロータ(1)またはロータモジュールを磁化させる工程と、を含む方法。
【請求項12】
工程(IV)に続いて、前記方法が、
前記ロータ(1)に所定の軸方向長さおよび高さを与えるように工程(IV)または工程(V)から得られた2つまたはそれ以上のロータモジュールを機械的に接合する工程(VI)を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
請求項
1に記載のロータ(1)または請求項1
1に記載の製造方法で得られたロータ(1)もしくはロータモジュール(36)を備える同期電気機械(10)。
【請求項14】
前記同期電気機械(10)が、同期リラクタンスモータであり、好ましくは、前記同期リラクタンスモータが、ステータコンパートメント(38)を区画するステータ(40)を備え、前記ロータ(1)が、回転軸(R1)を中心に回転可能に収容され、トランスミッションシャフト(44)に接続される、請求項13に記載の同期電気機械(10)。
【請求項15】
請求項1
3に記載の同期電気機械(10)を備える電気車両またはハイブリッド車両。
【国際調査報告】