(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-05
(54)【発明の名称】核磁気共鳴
(51)【国際特許分類】
G01N 24/12 20060101AFI20240628BHJP
A61B 5/055 20060101ALI20240628BHJP
【FI】
G01N24/12 510L
G01N24/12 520C
A61B5/055 355
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023579609
(86)(22)【出願日】2022-06-23
(85)【翻訳文提出日】2024-02-26
(86)【国際出願番号】 GB2022051618
(87)【国際公開番号】W WO2022269276
(87)【国際公開日】2022-12-29
(32)【優先日】2021-06-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】511220821
【氏名又は名称】ザ・ユニヴァーシティ・オヴ・シェフィールド
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ワイルド ジェームズ エム.
(72)【発明者】
【氏名】ラオ マッドウェシャ ラマ
【テーマコード(参考)】
4C096
【Fターム(参考)】
4C096AA15
4C096AD10
4C096CC05
4C096CC18
4C096CC31
4C096CC37
(57)【要約】
同時二重核磁気共鳴直交送受信を行う受動フィルタ回路は、入力に、第1原子核のラーモア周波数において第1極性の直交位相シフトと、第2原子核のラーモア周波数において第1極性と反対の第2極性の直交位相差とを印加するように構成される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
同時二重核磁気共鳴直交送受信を行う受動フィルタ回路であって、入力に、第1原子核のラーモア周波数において第1極性の直交位相シフトと、第2原子核のラーモア周波数において前記第1極性と反対の第2極性の直交位相差とを印加するように構成される、受動フィルタ回路。
【請求項2】
少なくとも二次フィルタを備える、請求項1に記載の受動フィルタ回路。
【請求項3】
複数のカスケードフィルタモジュールを備える、先行する請求項のいずれか1項に記載の受動フィルタ回路。
【請求項4】
各カスケードフィルタモジュールは同じである、請求項3に記載の受動フィルタ回路。
【請求項5】
各カスケードフィルタモジュールは、前記受動フィルタ回路全体にわたって合計した結果、前記第1原子核のラーモア周波数で第1極性の直交位相変化を有し、前記第2原子核のラーモア周波数で前記第1極性とは反対の前記第2極性の直交位相変化を有する出力となる相対位相変化を与えるように構成される、請求項3または4に記載の受動フィルタ回路。
【請求項6】
各モジュールは少なくとも二次フィルタを備える、請求項5に記載の受動フィルタ回路。
【請求項7】
各モジュールは、
第1位相シフトを第1の向きに、前記第1原子核のラーモア周波数で、前記第1原子核のラーモア周波数に比例して印加するとともに、第2位相シフトを前記第1の向きに、前記第2原子核のラーモア周波数で、前記第2原子核のラーモア周波数に比例して印加するように構成される回路構成と、
前記第1原子核のラーモア周波数での前記第1位相シフトと前記第2原子核のラーモア周波数での前記第2位相シフトとの間のオフセットを印加することによって、前記オフセット後に前記第1位相シフトと前記第2位相シフトとの間の位相差を生成するように構成される回路構成であって、前記位相差は前記出力を供給するために使用される回路構成と、を備え、
前記出力は、前記第1原子核のラーモア周波数での第1極性の直交位相変化と、前記第2原子核のラーモア周波数での前記第1極性とは反対の前記第2極性の直交位相変化とを有する、請求項5または6に記載の受動フィルタ回路。
【請求項8】
前記第1原子核のラーモア周波数での前記第1位相シフトと前記第2原子核のラーモア周波数での前記第2位相シフトとの間の前記オフセットは、前記オフセット後に前記第1位相シフトと前記第2位相シフトとの間の位相差を生成し、前記位相差に全体の個数を乗じて、最終的な90°位相差を得ることができる、請求項4に記載の受動フィルタ回路。
【請求項9】
第1原子核及び第2原子核の様々な組み合わせに対して、複数のカスケードフィルタモジュールの個数の変更を制御するように、かつ/または、前記複数のカスケードフィルタモジュールの要素値の変更を制御するように構成される、請求項3から8のいずれか1項に記載の受動フィルタ回路。
【請求項10】
3つのカスケードフィルタモジュールが存在し、各フィルタモジュールは、
1H原子核のラーモア周波数では+90度の相対位相変化を導入し、
129Xe原子核のラーモア周波数では-30度の相対位相変化を導入する、請求項3から9のいずれか1項に記載の受動フィルタ回路。
【請求項11】
各モジュールは、
前記
1H原子核のラーモア周波数では-90°の位相シフトを印加し、前記
129Xe原子核ラーモア周波数ではほぼ-25°の位相シフトを印加するように構成される回路構成と、
前記
1H原子核のラーモア周波数と比較して、前記
129Xe原子核ラーモア周波数ではほぼ-5°の位相シフトのオフセットを印加するように構成される回路構成とを備えている、請求項10に記載の受動フィルタ回路。
【請求項12】
同時二重核磁気共鳴を行う装置であって、
先行する請求項のいずれか1項に記載の1つ以上の受動フィルタ回路であって、第1原子核のラーモア周波数では第1極性の直交位相差を有する第1出力信号を供給し、第2原子核のラーモア周波数では前記第1極性と反対の第2極性の直交位相差を有する第2出力信号を供給するように構成される受動フィルタ回路を備える、装置。
【請求項13】
第1出力信号を第1受動フィルタ回路に供給し、第2出力信号を第2受動フィルタ回路に供給するように構成される直角位相ハイブリッド回路であって、前記第1出力信号及び前記第2出力信号は前記第1原子核のラーモア周波数と前記第2原子核のラーモア周波数の両方において直交位相差を有し、前記第1及び第2受動フィルタ回路のうちの一方は請求項1から11のいずれか1項に記載の回路である、直角位相ハイブリッド回路を備える、
または、
第1出力信号と第2出力信号を供給するように構成される直角位相ハイブリッド回路であって、前記第1出力信号及び前記第2出力信号は前記第1原子核のラーモア周波数と前記第2原子核のラーモア周波数では極性が反対の直交位相差を有し、前記直角位相ハイブリッド回路は、第1出力と第2出力との間に接続されて前記1出力信号と前記第2出力信号を供給する少なくとも1つの受動フィルタ回路を含む、請求項1から11のいずれか1項に記載の複数の受動フィルタ回路を備える、直角位相ハイブリッド回路を備える、請求項12に記載の装置。
【請求項14】
同時二重核磁気共鳴のための送信器として、及び/または同時二重核磁気共鳴のための受信器として構成される、請求項12または13に記載の装置。
【請求項15】
請求項12,13,または14のいずれか1項に記載の偏波装置としての装置であって、
第1磁場の生成を行う前記第1原子核のラーモア周波数での前記第1極性の前記直交位相差を有する前記第1出力信号と、第2磁場の生成を行う前記第2原子核のラーモア周波数での前記第1極性とは反対の前記第2極性の前記直交位相差を有する前記第2出力信号とに連結される第1コイル構成を備え、
前記第1磁場と前記第2磁場のうちの一方は右回り円偏波であり、前記第1磁場と前記第2磁場のうちのもう一方は左回り円偏波である、装置。
【請求項16】
前記第1コイル構成は、人間の適用対象が装着するジャケットとして構成される、請求項15に記載の装置。
【請求項17】
前記第1コイル構成は、前記第1出力信号に連結されて前記第1磁場を生成する第1コイルを備えるとともに、前記第2出力信号に連結されて前記第2磁場を生成する第2コイルを備え、使用時には、前記第1磁場は第1方向にほぼ向いており、前記第2磁場は前記第1方向に直交する第2方向にほぼ向いている、請求項15または16に記載の装置。
【請求項18】
前記第1原子核と前記第2原子核に対して同時二重核磁気共鳴を行うシステムであって、請求項1から11のいずれか1項に記載の受動フィルタ回路、及び/または、請求項12,13,14,または15のいずれか1項に記載の装置を備え、前記第1原子核と前記第2原子核は磁気回転比の極性が反対である、システム。
【請求項19】
前記システムは、前記第1原子核と前記第2原子核とに対して、時分割スイッチングを用いずに同時二重核磁気共鳴を行うように構成される、請求項18に記載のシステム。
【請求項20】
前記第1原子核は
1Hであり、前記第2原子核は超偏極
129Xeであり、前記システムは前記超偏極
129Xeを生成する超偏極装置を備える、請求項18または19に記載のシステム。
【請求項21】
核磁気共鳴分光術、核磁気共鳴撮像術、または核磁気共鳴顕微鏡検査術を行うように構成される、請求項18から20のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項22】
核磁気共鳴分光術、核磁気共鳴撮像術、または核磁気共鳴顕微鏡検査術を実行する方法であって、請求項1から11のいずれか1項に記載の受動フィルタ回路、または請求項12から17のいずれか1項に記載の装置、または請求項18から21のいずれか1項に記載のシステムを使用する方法であり、前記受動フィルタ回路は極性が反対の円偏波核スピンの同時生成及び/または検波を可能にする、方法。
【請求項23】
第1原子核及び第2原子核において極性が反対の円偏波核スピンの同時生成を用いて、及び/または、第1原子核及び第2原子核において極性が反対の円偏波核スピンの同時検波を用いて、核磁気共鳴分光術、核磁気共鳴撮像術、または核磁気共鳴顕微鏡検査術を実行する方法。
【請求項24】
適用対象に対して二重核磁気共鳴直交送受信を行う受動構造ジャケットであって、第1原子核のラーモア周波数において第1円偏波を有する第1磁場を生成・検波するとともに、第1原子核のラーモア周波数において第2円偏波を有する第2磁場を生成・検波するように構成される回路構成を備え、前記適用対象において、前記第1円偏波は前記第2偏波とは反対である、受動構造ジャケット。
【請求項25】
横磁場の第1成分を生成する少なくとも第1コイル対及び前記横磁場の第2成分を生成する少なくとも第2コイル対と、前記第1コイル対の位置合わせ及び/または前記第2コイル対の位置合わせを較正する手段とを備える、
及び/または、
第1原子核のラーモア周波数での第1極性の直交位相シフトと、第2原子核のラーモア周波数での前記第1極性と反対の第2極性の直交位相差とを入力に印加して、前記第1円偏波を前記第2円偏波とは反対になるように制御するように構成される受動フィルタ回路を備える、請求項24に記載の受動構造ジャケット。
【請求項26】
核磁気共鳴分光術、核磁気共鳴撮像術、または核磁気共鳴顕微鏡検査術を実行する方法であって、第1原子核及び第2原子核において極性が反対の円偏波核スピンの同時生成を用いる方法であって、前記第1原子核の核スピンは前記第1原子核のラーモア周波数において第1極性の直交位相差を有し、前記第2原子核の核スピンは前記第2原子核のラーモア周波数において前記第1極性とは反対の第2極性の直交位相差を有し、かつ/または、第1原子核及び第2原子核において極性が反対の円偏波核スピンの同時検波を用いる方法であって、前記第1原子核の核スピンは前記第1原子核のラーモア周波数において第1極性の直交位相差を有し、前記第2原子核の核スピンは前記第2原子核のラーモア周波数において前記第1極性とは反対の第2極性の直交位相差を有する、方法。
【請求項27】
適用対象に対して二重核磁気共鳴直交送受信を行う受動構造ジャケットであって、第1原子核のラーモア周波数において第1円偏波を有する第1磁場を生成・検波するとともに、第1原子核のラーモア周波数において第2円偏波を有する第2磁場を生成・検波するように構成される回路構成を備え、前記第1円偏波は第1の回転の向きを有し、前記第1の回転の向きは前記適用対象において、前記第2偏波の第2の回転の向きとは反対である、受動構造ジャケット。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[技術分野]
本開示の各実施形態は核磁気共鳴(nuclear magnetic resonance:NMR)に関する。
[背景技術]
NMR装置は、ラーモア周波数において縦方向の静磁場(B0)と横方向の振動磁場(B1)を与える。B1磁場はB0磁場と直交し、ラーモア周波数で共鳴する無線周波(radio frequency:RF)コイルを用いて発生される。ラーモア周波数は、対象となる原子核の磁気回転比と静磁場(B0)の強度とによって決まる。対象となる原子核の磁気回転比の極性(符号)は、B1磁場の回転の必要な角度方向(B1磁場の円偏波の座標系の左右)を決定する。円偏波の必要な座標系の左右は磁気回転比の極性とともに変化する。
【0002】
外部の静磁場(B0)の影響下では、正の磁気回転比を有する原子核と負の磁気回転比を有する原子核とにおいて、核スピンの角運動量は互いに反対方向に整列する。そのため、磁気回転比が正と負の原子核に対して二重周波NMRを適用した場合、必要な振動磁場(B1)の円偏波は互いに反対になる。直交励起/検波を行う際に、正の磁気回転比を有する原子核には時計回りの円偏波が必要である場合、負の磁気回転比を有する原子核には反時計回りの円偏波が必要である。
[発明の概要]
必ずしも全てではないが、種々の実施形態によれば、添付請求項に記載されているような実施例が提供されている。
【0003】
必ずしも全てではないが、種々の実施形態によれば、同時二重核磁気共鳴直交送受信を行う受動フィルタ回路が提供されており、本回路は、入力に、第1原子核のラーモア周波数において第1極性の直交位相シフト(位相差)と、第2原子核のラーモア周波数において第1極性と反対の第2極性の直交位相差とを印加するように構成される。
【図面の簡単な説明】
【0004】
以下、いくつかの実施例を添付図面を参照して説明する。
【
図1B】
図1Bは同相信号からの直交位相オフセットが+90°(-270°)である直交信号と、同相信号からの直交位相オフセットが-90°である直交信号とを示している。
【
図2】
図2は、複数のカスケードフィルタモジュールを備える受動フィルタ回路を示している。
【
図3】
図3はフィルタモジュールの一例を図示している。
【
図4A】
図4Aは3つのカスケードフィルタモジュールを備える
1H及び
129Xeの受動フィルタ回路を図示している。
【
図5A】
図5Aはフィルタモジュールが引き起こした位相変化を図示している。
【
図5B】
図5Bは受動カスケードフィルタ回路によって生じた位相変化を図示している。
【
図6】
図6はフィルタモジュールの一例を図示している。
【
図7A】
図7Aは、フィルタモジュールのS-パラメータS11及びS21の大きさを図示している。
【
図7B】
図7Bは、フィルタモジュールのS-パラメータS11及びS21の位相を図示している。
【
図8】
図8はフィルタモジュールの他の例を図示している。
【
図9】
図9は同時二重核磁気共鳴直交送受信を行う装置の一例を図示している。
【
図10A】
図10Aは標準的な広帯域ハイブリッド回路を用いた装置の実施例を図示している。
【
図10B】
図10Bは、受動フィルタ回路のネットワークが二重モード直角位相ハイブリッド回路を設けるように構成される装置の代表的な実施例を図示している。
【
図11】
図11は核磁気共鳴(NMR)システムの一例を図示している。
【
図12】
図12は核磁気共鳴(NMR)システムの一例を図示している。
【
図13】
図13は核磁気共鳴(NMR)システムの一例を図示している。
【
図14】
図14は核磁気共鳴(NMR)システムの一例を図示している。
【
図15】
図15は、核磁気共鳴(NMR)システムを使用するキセノンの超偏極装置の一例を図示している。
【
図16A】
図16Aは、第1及び第2原子核のラーモア周波数における、所望の相対位相オフセットを得るための複数の変化に対する位相変化を図示している。
【
図16B】
図16Bは、第1及び第2原子核のラーモア周波数における、所望の相対位相オフセットを得るための複数の変化に対する位相変化を図示している。
【発明を実施するための形態】
【0005】
[発明の詳細な説明]
以下の実施例において、極性が反対の磁気回転比を有する2つの原子核に対する同時二重核磁気共鳴を、原子核の歳差運動を行っているスピン磁化ベクトルの横成分に同時に同調させることによって実現する。スピン磁化ベクトルは、2つの原子核に対して、異なるラーモア周波数で、異なる方向(極性)で歳差運動を行う。歳差運動するスピン磁化ベクトルの横成分は、横断面内における回転フェーザである。フェーザは、2つの原子核に対して、異なるラーモア周波数で、異なる方向で回転する。
【0006】
同調を所望するように実現するために、NMRシステムは、第1原子核のための第1横磁場と、第2原子核のための第2横磁場を送受信する。第1横磁場は、第1原子核の歳差運動するスピン磁化ベクトルの横成分に整合するラーモア周波数及び回転方向を有する、横断面内における回転フェーザである。第2横磁場は、第2原子核の歳差運動するスピン磁化ベクトルの横成分に整合するラーモア周波数及び回転方向を有し、第1横磁場の回転方向とは反対である、横断面内における回転フェーザである。
【0007】
直交位相の動作は横断面内の回転フェーザと関連する。回転フェーザは、ある一方向の同相信号と、互いに直交する別の方向の直交信号とによって表すことができる。直交信号が同相信号から+90°の直交位相オフセットを有する場合、フェーザはある一方向に回転し、直交信号が同相信号から-90°の直交位相オフセットを有する場合、フェーザは反対方向に回転する。
【0008】
図1Aは同相信号を図示している。
図2Aは、同相信号からの直交位相オフセットが+90°(-270°)である直交信号と、同相信号からの直交位相オフセットが-90°である直交信号とを示している。
【0009】
本目的は、第1原子核のラーモア周波数において第1極性の直交位相シフトを実現し、かつ、第2原子核のラーモア周波数において第1極性と反対の第2極性の直交位相差を実現することである。
【0010】
これは送信及び/または受信時に実現することができる。
【0011】
以下の説明は、入力に、第1原子核のラーモア周波数において第1極性の直交位相シフトと、第2原子核のラーモア周波数において第1極性と反対の第2極性の直交位相差とを印加するように構成される、同時二重核磁気共鳴直交送受信を行う受動フィルタ回路10に関するものである。
【0012】
入力は、次の送信のための入力であることも、受信した入力であることもあり得る。
【0013】
受動フィルタ回路10は、例えば二次フィルタまたは高次フィルタとして構築可能である。例えば、ゼロを2つ有する二次フィルタや、ゼロを3つ有する三次フィルタである。
【0014】
二次フィルタは、例えば、第1原子核のラーモア周波数で第1共鳴を、第2原子核のラーモア周波数で第2共鳴を有し得る。第1及び第2共鳴は互いに分離していて別個のものである、つまり、1つの広帯域共鳴に含まれるものではない。必ずしも全てではないが、いくつかの例では、第1原子核のラーモア周波数と第2原子核のラーモア周波数において、存在し得る挿入損失はほぼ同様で低い。
【0015】
図2に示されているように、受動フィルタ回路10は複数のカスケードフィルタモジュール20を備え得る。複数のフィルタモジュール20は直列に接続される。
【0016】
必ずしも全てではないが、いくつかの例では、カスケードフィルタモジュール20は全て同じである。
【0017】
各カスケードフィルタモジュール20は、受動フィルタ回路10全体にわたって合計した結果、入力信号11と比較すると、第1原子核のラーモア周波数で第1極性の直交位相変化を有し、第2原子核のラーモア周波数で第1極性とは反対の第2極性の直交位相変化を有する出力14になる、相対位相変化を与えるように構成される。
【0018】
入力12での入力信号11は
図1Aに相当し、出力14での出力信号13は
図1Bに相当する。
【0019】
図3はフィルタモジュール20の一例を図示している。フィルタモジュール20は、任意のインピーダンス整合ブロック22と位相回転ブロック24と位相オフセットブロック26を備える。
【0020】
位相回転ブロック24は、ある一定の時間遅延等に対して、第1位相シフトΔφ1を第1の向きに、第1原子核のラーモア周波数で印加するように構成される回路構成を備える。第1位相シフトは第1原子核のラーモア周波数に比例する。
【0021】
位相回転ブロック24は、上記と同じ時間遅延等に対して、第2位相シフトΔφ2を第2の向きに、第2原子核のラーモア周波数で同時に印加するように構成される回路構成を備える。第2位相シフトΔφ2は第2原子核のラーモア周波数に比例し、第1位相シフトと同じ極性を有する。
【0022】
したがって、Δφ1/Δφ2=|γ1/γ2|である。ここでγ1は第1原子核の磁気回転比であり、γ2は第2原子核の磁気回転比である。したがって、Δφ2=Δφ1/|R|である。ここで|R|=|γ1/γ2|は、第1原子核の磁気回転比γ1と第2原子核の磁気回転比γ2の比の絶対値である。
【0023】
図示されている例において、第1位相シフト+Xは第1原子核のラーモア周波数で印加され、第2位相シフト+X/|R|は第2原子核のラーモア周波数で印加される。
【0024】
位相オフセットブロック26は、第1原子核のラーモア周波数での第1位相シフトΔφ1と第2原子核のラーモア周波数での第2位相シフトΔφ2との間の相対位相オフセットθを印加することによって、オフセット後に第1位相シフトと第2位相シフトとの間の位相差βを生成するように構成される回路構成を備える。オフセット後の第2位相差がΔφ2
*bである場合、β=Δφ1-Δφ2
*b=Δφ1(1-b/|R|)である。
【0025】
位相差βをN個のカスケードフィルタモジュール全体にわたって合計することによって、第1原子核のラーモア周波数での第1極性の直交位相変化と、第2原子核のラーモア周波数での第1極性とは反対の第2極性の直交位相変化とを有する出力14を供給する。
【0026】
よって、N個の相対位相差βの合計が180°の相対位相差になる。
【0027】
第1原子核のラーモア周波数での第1位相シフトΔφ1と第2原子核のラーモア周波数での第2位相シフトΔφ2との間のオフセットθは、オフセット後に第1位相シフトと第2位相シフトとの間の位相差βを生成し、この位相差βに全体の個数を乗じて、第1原子核のラーモア周波数での最終的な+/-90°位相差と、第2原子核のラーモア周波数での最終的な-/+90°位相差とを得ることができる。第2原子核のラーモア周波数での直交位相差は、第2原子核のラーモア周波数での直交位相差とは向きが反対である。
【0028】
受動フィルタ回路10は、各フィルタモジュール20が第1原子核のラーモア周波数での第1位相シフトΔφ1と第2原子核のラーモア周波数での第2位相シフトΔφ2との間の相対位相オフセットθを個別に有するように、かつ、カスケードフィルタモジュール20の個数が第1原子核のラーモア周波数での第1極性の直交位相シフトと第2原子核のラーモア周波数での第1極性とは反対の第2極性の直交位相差とを生成するように設計可能である。
【0029】
磁気回転比の極性が反対である第1及び第2原子核の様々な組み合わせに対して同時二重核磁気共鳴を有することが所望される場合、受動フィルタ回路10は、第1原子核のラーモア周波数での第1位相シフトΔφ1と第2原子核のラーモア周波数での第2位相シフトΔφ2との間の相対位相オフセットθを変化させるように設計することができる。いくつかの例では、受動フィルタ回路10は、カスケードフィルタモジュール20の個数を変化させるように設計することができる。つまり、カスケードフィルタモジュール20をフィルタ回路10に追加したり、フィルタ回路10から取り去ったりすることができる。
【0030】
次に、特定の第1原子核が1H、第2原子核が129Xeである具体例を説明する。ただし、受動フィルタ回路10を用いて、他の第1及び第2原子核の組み合わせも同時探査可能であることを了解されよう。
【0031】
1Hは磁気回転比が42.57であり、129Xeは磁気回転比が-11.77である。
【0032】
これらの磁気回転比は互いに極性が反対である。よって、静磁場B0では、スピン磁化ベクトルは互いに反対方向に整列し、互いに反対の向きに歳差運動を行う。
【0033】
ラーモア周波数の比|R|(磁気回転比の比でもある)は3.6である。
【0034】
図4Aに示されているように、
1H及び
129Xeに対する受動フィルタ回路10は、3つのカスケードフィルタモジュール20を備え得る。ここでカスケードフィルタモジュール20は全て同一である。
【0035】
各カスケードフィルタモジュール20は、
図5Aに示されているように、
1Hのラーモア周波数では-90°の位相変化を、
129Xeのラーモア周波数では-30°の位相変化を与えるように構成される。3つのカスケードフィルタモジュール20が組み合わされて、
図5Bに示されているように、
1Hのラーモア周波数では-270°の位相変化(+90°の位相変化と等価である)を、
129Xeのラーモア周波数では+90°の位相変化を与える。よって、3つのカスケードフィルタモジュール20は組み合わされて、
1Hのラーモア周波数では第1極性の直交位相変化を、
129Xeのラーモア周波数では第1極性とは反対の第2極性の直交位相変化を与える。
【0036】
図4Bは
1H及び
129Xeに対するフィルタモジュール20の一例を図示している。フィルタモジュール20は、任意のインピーダンス整合ブロック22と位相回転ブロック24と位相オフセットブロック26とを備える。
【0037】
位相回転ブロック24は、-90°の第1位相シフトを第1の向きに、1Hのラーモア周波数で与えるように構成される回路構成を備える。第1位相シフトは1Hのラーモア周波数に比例する。
【0038】
位相回転ブロック24は、-25°の第2位相シフトを第1の向きに、129Xeのラーモア周波数で同時に印加するように構成される回路構成を備える。-25°の第2位相シフトは129Xeのラーモア周波数に比例し、第1位相シフトと同じ極性を有する。
【0039】
位相シフトの比-90°/-25°は比|R|=|γ1/γ2|=3.6と同じであり、ここでγ1は1Hの磁気回転比であり、γ2は129Xeの磁気回転比である。1Hのラーモア周波数では-90°の第1位相シフトを印加し、129Xeのラーモア周波数では-90°/3.6=-25°の第2位相シフトを印加する。
【0040】
位相オフセットブロック26は、
1Hのラーモア周波数での-90°の第1位相シフトと
129Xeのラーモア周波数での-25°の第2位相シフトとの間の相対位相オフセットθを印加することによって、オフセット後に第1位相シフトと第2位相シフトとの間の位相差βを生成するように構成される回路構成を備える。
図5Aに示されているように、オフセット後の第2位相差は-30°であり、位相差βは60°である。
【0041】
位相差(60°)を3つのカスケードフィルタモジュールにわたって合計することによって、
図5Bに示されているように、
1Hのラーモア周波数で第1極性の直交位相変化(+90)を有し、
129Xeのラーモア周波数で第1極性とは反対の第2極性の直交位相変化(-90)を有する出力14を供給する。
【0042】
本例において、位相回転ブロック24の回路構成は、1H原子核のラーモア周波数では-90°の位相シフトを、129Xe原子核のラーモア周波数ではほぼ-25°の位相シフトを印加するように構成され、オフセットブロック26の回路構成は、129Xe原子核のラーモア周波数では1H原子核のラーモア周波数と比較してほぼ-5°の位相シフトのオフセットを印加するように構成される。
【0043】
図6はフィルタモジュール20の一例を図示している。フィルタモジュール20はゼロを2つ有する二次フィルタである。
【0044】
図7Aは、
図6に示されているフィルタモジュール20のS-パラメータS11及びS21の大きさを図示している。
図7Bは、
図6に示されているフィルタモジュール20のS-パラメータS12の偏角(位相)を図示している。両図において、標識m1は
129Xeのラーモア周波数である17.65MHzにおけるものであり、標識m2は
1Hのラーモア周波数である63.86MHzにおけるものである。
【0045】
フィルタモジュール20は二次フィルタモジュールであり、第1原子核のラーモア周波数で第1共鳴を、第2原子核のラーモア周波数で第2共鳴を有する。第1及び第2共鳴は互いに分離していて別個のものである、つまり、単一の広帯域共鳴に含まれるものではない。図示されている例において、
図7AのグラフS11は2つの狭通過帯域を有しており、1つは
1Hのラーモア周波数(m2)におけるもの、1つは
129Xeのラーモア周波数(m1)におけるものである。
【0046】
第1原子核のラーモア周波数と第2原子核のラーモア周波数において、存在し得る挿入損失はほぼ同様で低い。
【0047】
図7Bは、
図6に示されているフィルタモジュール20のS-パラメータS12の位相を図示している。図示されている例において、グラフS11は、
1Hのラーモア周波数(m2)においてほぼ-90°の位相差を、
129Xeのラーモア周波数(m1)においてほぼ-30°の位相差を有する。
【0048】
フィルタモジュール20は、それぞれのポートからキャパシタC1,C2を介して接地(アース)につながる2つの並列経路を備える。LCネットワークはこれらのポートの間に接続される。LCネットワークは、並列LC回路に直列接続された1つ以上のインダクタ(L1,L2)を備える。並列LC回路は、インダクタL3と、並列接続されたキャパシタC3とを備える。2つの接地経路を分離するLCネットワークは、2つの共鳴(2つのゼロ)の分離を行う。共鳴と位相差との同調は、構成要素C1,C2,C3,L1,L2,L3の適正値を選定することによって得られる。
【0049】
必ずしも全ての例ではないが、図示されている例において、LCネットワークは、直列接続されたインダクタL1、並列LC回路、及びインダクタL2を対称に備えた状態である。しかし、他の例では、インダクタL1,L2を1つのインダクタとして連結可能であり、この場合インダクタのうちの1つのみが連結した値を有する状態で使用される。インダクタの対称配置は必須ではない。
【0050】
必ずしも全ての例ではないが、図示されている例において、キャパシタC1,C2は対称であり、同一の値を有する。
【0051】
図示されている例において、
図7A及び
図7Bに示されている反射S-パラメータ(S11)及び転移S-パラメータ(S12)の各特性は、L1,L2では89nHを、C1,C2では49pFを、L3では46nHを、C3では252pFの各値を用いることによって得られる。これにより、この特定の静磁場B
0の場合、63.86MHzである
1Hのラーモア周波数(m2)において共鳴が起こり、17.65MHzである
129Xeのラーモア周波数(m1)において共鳴が起こる。
【0052】
回路が単純であるのは、第1原子核の位相Δφ1(1Hのラーモア周波数では-90°)と第2原子核の位相Δφ2(129Xeのラーモア周波数では-30°)とに対して、C1及びC2に必要なキャパシタ値が同じであるため、インピーダンス整合のために必要となる追加要素がないということに起因する。この理由は以下の関係による。
【0053】
【0054】
ここで、Nはカスケードブロックの個数である。
【0055】
いくつかの例において、例えば要素C1,C2,C3,L1,L2,L3の各値は可変であってもよく、これにより、フィルタモジュール20を異なる値の静磁場B0に対して動作するように適用することができる。同じ回路配置を利用することができ、構成要素の値を比例させて変化させるために提供される手段が存在する。
【0056】
いくつかの例において、例えば要素C1,C2,C3,L1,L2,L3の各値は可変であってもよく、これにより、フィルタモジュール20を様々な第1及び第2原子核の組み合わせに対して動作するように適用することができる。
【0057】
インダクタL1とキャパシタC2の組み合わせとインダクタL2とキャパシタC1の組み合わせによって位相回転ブロック24が与えられ、インダクタL3とキャパシタC3の組み合わせによって位相オフセットブロック26が与えられる。
【0058】
図6のフィルタモジュール20はローパスπネットワークである。フィルタモジュール20は、
図8に示されているようなハイパスπネットワーク、ローパスTネットワーク、ハイパスTネットワーク等といった他の回路を用いて構築することもできる。
【0059】
図9は同時二重核磁気共鳴直交送受信を行う装置100の一例を図示している。上記で説明したように、装置100は1つ以上の受動フィルタ回路10を備える。
【0060】
装置100は、第1原子核のラーモア周波数において第1極性の直交位相差を有する第1出力1121,1122を供給し、同時に、第2原子核のラーモア周波数において第1極性と反対の第2極性の直交位相差を与えるように構成される。
【0061】
図示されている例において、第1原子核は1H、第2原子核は129Xeである。第1出力1121,1122は、同相と比較して、第1原子核のラーモア周波数での第1極性の直交位相差を有する第1出力信号131と、第2原子核のラーモア周波数での第1極性と反対の第2極性の直交位相差を有する第2出力信号132とを供給する。ただし、装置100は、磁気回転比の極性が反対である原子核の様々な組み合わせで動作可能である。
【0062】
装置100は第1出力1121,1122を供給するように構成され、ここで、第1出力1121,1122の間には、1Hのラーモア周波数では+90°(-270°)で、129Xeのラーモア周波数では-90°(反対の極性)である直交位相差がある。
【0063】
装置100は、出力1121,1122において、RF電力を同相(0°)RF電力と4位相(+/-90°)RF電力に分割する直角位相ハイブリッドカプラとして動作する。
【0064】
装置100は、出力1121,1122を介して直交偏波または円偏波したRFコイル構成204に連結して、円偏波が互いに反対の横磁場を生成することができる。
【0065】
図10Aは、標準的/代表的な広帯域または多帯域ハイブリッドカプラと併せて使用される装置10の実施例を図示している。
【0066】
本例において、広帯域または多帯域ハイブリッドカプラ102への入力は、ポート3において同相出力に、ポート2において直交位相出力に変換される。これは標準的な広帯域または多帯域ハイブリッドカプラであり、第1原子核のラーモア周波数(例えば1H)と第2原子核のラーモア周波数(例えば129Xe)とにおいて、同じ直交位相差を生成する。
【0067】
ポート3からの同相出力は、従来の広帯域位相シフタ104を通って第2出力1122へと進む。第1原子核のラーモア周波数(例えば1H)と第2原子核のラーモア周波数(例えば129Xe)とでは、同じ直交位相差が加えられる。
【0068】
ポート2からの直交位相出力は、受動フィルタ回路10を通って第1出力1121へと進む。第1原子核のラーモア周波数(例えば1H)と第2原子核のラーモア周波数(例えば129Xe)とでは、異なる直交位相差が加えられる。異なる直交位相シフトは、第1原子核のラーモア周波数での第1極性の直交位相シフトと、第2原子核のラーモア周波数での第1極性と反対の第2極性の直交位相シフトである。
【0069】
受動フィルタ回路10及び従来の広帯域位相シフタ104のそれぞれの出力ポート1121及び1122は、第1原子核のラーモア周波数での第1極性の直交位相シフトを有する差分第1出力信号131と、第2原子核のラーモア周波数での第1極性と反対の第2極性の直交位相差を有する差分第2出力信号132とを生成する。
【0070】
図10Bは装置100の実施例を図示している。受動フィルタ回路10のネットワークは、二重モード直角位相ハイブリッド回路110を設けるように構成される。
【0071】
本例において、ポート1における二重モード直角位相ハイブリッド回路110への入力は、ポート3において同相出力(第2出力1122)に、ポート2において直交位相出力(第1出力1121)に変換される。二重モード直角位相ハイブリッド回路110のポート2とポート3との間の出力は、第1原子核のラーモア周波数での第1極性の直交位相シフトを有する第1出力信号131と、第2原子核のラーモア周波数での第1極性と反対の第2極性の直交位相差を有する第2出力信号132とを供給する。
【0072】
二重モード直角位相ハイブリッド回路110は、上述したように第1出力1121と第2出力1122との間に接続される少なくとも1つの受動フィルタ回路10等の複数の受動フィルタ回路10を備える。
【0073】
図10Bに示されている二重モード直角位相ハイブリッド回路110の例は、ポート1とポート2との間に接続される受動フィルタ回路10、ポート2とポート3との間に接続される受動フィルタ回路10、ポート3とポート4との間に接続される受動フィルタ回路10、及びポート4とポート1との間に接続される受動フィルタ回路10を有している。しかし、これらの受動フィルタ10の特性インピーダンスは、代表的なハイブリッドカプラの設計に応じて変化する。
【0074】
各受動フィルタ回路10は、第1原子核のラーモア周波数(例えば1H)と第2原子核のラーモア周波数(例えば129Xe)とにおいて、異なる直交位相差を加える。異なる直交位相シフトとは、第1原子核のラーモア周波数での第1極性の直交位相シフトと、第2原子核のラーモア周波数での第1極性と反対の第2極性の直交位相差である。
【0075】
図11は核磁気共鳴(NMR)システム200の一例を図示している。磁石202は、方向zの縦磁場Boを与える。無線周波コイル204は、zに直交するx-y面内に横磁場B
1を与える。
【0076】
同時二重核磁気共鳴直交送受信を行う装置100を用いて、無線周波コイル204を介する無線周波電力の送信を行い、また、無線周波コイル204を介する無線周波電力の受信も行う。
図12は、無線周波コイル構成204に連結される装置100の一例を図示している。必ずしも全ての例ではないが、本例において、装置100は、1つ以上のバランを介して無線周波コイル204に接続する。バラン130は、装置100からの入力信号13
1,13
2に相当する差分出力信号を生成する。
【0077】
装置100は、第1原子核のラーモア周波数において第1極性の直交位相差を有する第1出力信号131を供給し、第2原子核のラーモア周波数において第1極性と反対の第2極性の直交位相差を有する第2出力信号132を供給するように構成される。
【0078】
送信中、第1出力信号131は、RFコイル204を介して、第1原子核のスピン磁化ベクトルと結合する第1円偏波磁場を生成し、第2出力信号132は、同じまたは異なるRFコイル204を介して、第2原子核のスピン磁化ベクトルと結合する第2円偏波磁場を生成する。第1及び第2磁場の円偏波は座標系の左右(角度方向)が反対である。つまり片方は左回り円偏波、もう片方は右回り円偏波である。
【0079】
受信中、第1出力信号131は、RFコイル204を介して、第1原子核のスピン磁化ベクトルと結合する第1円偏波磁場を検波し、第2出力信号132は、同じまたは異なるRFコイル204を介して、第2原子核のスピン磁化ベクトルと結合する第2円偏波磁場を検波する。第1及び第2磁場の円偏波は座標系の左右(角度方向)が反対である。つまり片方は左回り円偏波、もう片方は右回り円偏波である。
【0080】
システム200は、同時二重核磁気共鳴のための送信器として、及び/または同時二重核磁気共鳴直交送受信のための受信器として構成される。
【0081】
必ずしも全ての例ではないが、本例において、第1及び第2磁場の両方を生成するのに同じ無線周波コイル204を使用する。他の例では、第1及び第2磁場の両方を生成するために異なる無線周波コイル204を使用可能である。
【0082】
システム200は、第1磁場の生成を行う第1原子核のラーモア周波数での第1極性の直交位相差を有し、第2磁場の生成を行う第2原子核のラーモア周波数での第1極性とは反対の第2極性の直交位相差を有する、出力1121,1122に連結される第1コイル構成204を備える。ここで、第1磁場と第2磁場のうちの一方は右回り円偏波であり、第1磁場と第2磁場のうちのもう一方は左回り円偏波である。
【0083】
システム200は、第1原子核と第2原子核とに対して同時二重核磁気共鳴を行うが、ここで第1原子核と第2原子核は極性が反対の磁気回転比を有する。システム200は受動フィルタ回路10及び/または装置100を備え得る。システム200は、第1原子核と第2原子核とに対して、時分割スイッチングを用いずに同時二重核磁気共鳴を行うように構成される。
【0084】
図13は、
図12に図示されているものと類似したシステム200である。
図12において、RFコイル構成204は円偏波構成であり、ここでは第1原子核と第2原子核の両方に対して単独のバードケージコイルが用いられる。しかし、
図13では、RFコイル構成204は直交コイル構成であり、ここでは横磁場の直交成分を発生させるのに別々のRFコイルが用いられる。したがって、カプラ206からの出力は異なるコイル204
iに結合する。
【0085】
カプラ206は、広帯域または多帯域180度電力分割器(ラットレースカプラまたはウィルキンソン分配器として知られていることもある)であってもよい。
【0086】
コイル対2041,2043は適用対象の互いに反対側に配置される。コイル対2042,2044は適用対象の互いに反対側に配置される。コイル対2041-2042,2042-2043,2043-2044,及び2044-2041は横磁場の直交成分を生成する。
【0087】
コイル2041,2042,2043,2044は第1原子核(例えば1H)のラーモア周波数において、直交している横磁場成分を生成し、第1円偏波を有する第1磁場を生成する。コイル2041,2042,2043,2044の間の位相差は、第1原子核のラーモア周波数(例えば1H)では-90°ずつ変化する。
【0088】
コイル2041,2042,2043,2044は第2原子核(例えば129Xe)のラーモア周波数において、直交している横磁場成分を生成し、第2円偏波を有する第2磁場を生成する。コイル2041,2042,2043,2044の間の位相差は、第2原子核のラーモア周波数(例えば129Xe)では+90°ずつ変化する。第1偏波と第2偏波は、適用対象において座標系の左右(角度方向)が反対である。
【0089】
出力信号131,132は出力1121,1122を用いて規定可能である。第1出力信号131は、第1原子核のラーモア周波数(例えば1H)では+90°の位相差を与える。第2出力信号132は、第1原子核のラーモア周波数(例えば1H)では-90°の位相差を与える。
【0090】
出力1121からの信号は、電力分割器/ラットレースカプラ206によって分配されて、コイル2041につながる同相信号とコイル2043につながる逆位相信号になる。
【0091】
出力1122からの信号は、電力分割器/ラットレースカプラ206によって分配されて、コイル2042につながる同相信号とコイル2044につながる逆位相信号になる。
【0092】
図13に示されているシステム200は、適用対象に装着され、ジャケットデザインとして適用対象に人間工学的にフィットする、装着型システム二重同調直交送受信器アレイコイルとして構築可能である。
1H信号と
129Xe信号の両方の送受信を行う逆回転直交位相を用いる二重同調混成体であるという請求項記載の設計的な特徴と併せて使用する場合、同じ装着型コイルを、機械的または電気的スイッチングを必要としない1つの受動回路設計によって、MRIシステムに連携接続できる。
【0093】
いくつかの例において、ジャケット500は少なくとも部分的に適用対象を覆う。例えば、ジャケット500は人間の胴体上部に装着可能である。いくつかの例において、ジャケット500は肩に掛けるように設計可能である。したがって、コイル構成204は、適用対象、例えば人間の適用対象が装着するジャケット500として構成可能である。いくつかの例において、ジャケット500は、何らかの装着部材によって適用対象にフィットする。
【0094】
ジャケット500は受動構造も可能である。いくつかの例において、ジャケット500は、コイル204と、装置100のうちの全部または一部とを備える。本例において、ジャケット500は1つ以上の受動フィルタ回路10を備えることができる。例えば、必ずしも全てではないが、いくつかの例では、ジャケット500は二重モード直角位相ハイブリッド回路110を備えることができる。他の例では、受動構造ジャケット500はコイル204を備えるが装置100を備えず、装置100はジャケット500に接続される。
【0095】
ジャケットは例えば、第1原子核及び/または第2原子核を探査可能である。例えば、ジャケットを1つ以上の受動フィルタ10とともに使用して、磁気回転比の極性が反対である第1及び第2原子核の組み合わせを同時探査することができる。
【0096】
しかし、ジャケット500を例えば他の回路、例えば能動スイッチング回路とともに使用しても、磁気回転比の極性が反対である(反対極性の磁気回転比を有する)第1及び第2原子核の組み合わせを同時探査できることに留意すべきである。
【0097】
よって、適用対象に対して二重核磁気共鳴直交送受信を行う受動構造ジャケット500は、第1原子核のラーモア周波数において第1円偏波を有する第1磁場を生成・検波するとともに、第1原子核のラーモア周波数において第2円偏波を有する第2磁場を生成・検波するように構成される回路構成を備え、適用対象において、第1円偏波は第2偏波とは反対である。
【0098】
少なくともいくつかの例において、受動構造ジャケット500は、横磁場の第1成分を生成する少なくとも第1コイル対204及び横磁場の第2成分を生成する少なくとも第2コイル対204と、第1コイル対の位置合わせ及び/または第2コイル対の位置合わせを較正する手段とを備える。
【0099】
少なくともいくつかの例において、受動構造ジャケット500は、第1原子核のラーモア周波数での第1極性の直交位相シフトと、第2原子核のラーモア周波数での第1極性と反対の第2極性の直交位相差とを入力に印加して、第1円偏波を第2円偏波とは反対になるように制御するように構成される受動フィルタ回路10を備える。
【0100】
システム200は例えば、コイル2041,2043もコイル2042,2044も適切に位置合わせされるような装着型システムの調整を可能にする較正回路構成を備えてもよい。
【0101】
したがって、システム200は、バラン130を介して第1出力1121に連結され、第1磁場を生成する第1コイル2042,2044を備えるとともに、バラン130を介して第2出力1121に連結され、第2磁場を生成する第2コイル2041,2043を備える、コイル構成203を備え、使用時には、第1磁場は第1方向にほぼ向いており、第2磁場は第1方向に直交する第2方向にほぼ向いている。
【0102】
適用対象への誘導結合は、RFコイルの性能の鍵となる指標であり、周波数が高いほど、またはRFコイルの寸法が大きいほど高くなる。第1原子核と第2原子核の磁気回転比の差が大きい場合、ラーモア周波数にも大きな差が存在し、この差は印加される静磁場B0が大きくなるにつれて広がっていく。したがって、特定の寸法のRFコイルに対する感度は、第1原子核と第2原子核とで異なる可能性がある。例えば、特定の寸法のRFコイルに対する感度は、1Hよりも129Xeの方が低い。
【0103】
いくつかの例において、第1原子核のNMRと第2原子核のNMRとでは、異なるRFコイル204を使用することが望ましいこともある。
【0104】
NMRにおいて原子核の磁気回転比が小さいほど、より大きな、あるいはより高感度のRFコイル204を使用することができる。
【0105】
図14では、大きい方のコイル204
Xeが
129XeのNMRに使用され、小さい方のコイル204
Hが
1HのNMRに使用される。この回路の実装は受信器のRFコイル用である。
【0106】
増幅器A1,A2は、1チャネル出力を行う大きい方のコイル204Xeには差分モードで使用され、2チャネル出力を行う小さい方のコイル204Hには同相モードで使用される。
【0107】
増幅器A1への入力は、コイル対204Hのうちの第1コイルに接続される。増幅器A2への入力は、コイル対204Hのうちの第2コイルに接続される。コイル対204Hの第1コイルとコイル対204Hの第2コイルは、共通電圧(例えば接地)に接続される。したがって、増幅器A1はコイル対204Hの第1コイル両端の電圧を測定し、よって増幅器A2はコイル対204Hの第2コイル両端の電圧を測定する。増幅器A1が測定したコイル対204Hの第1コイル両端の電圧V1は、バラン1301を介して出力1321として供給される。増幅器A2が測定したコイル対204Hの第2コイル両端の電圧V2は、バラン1302を介して出力1322として供給される。
【0108】
コイル対204Hは、コイル204Xeを構成する共通ではない部分を有する。増幅器A1への入力のうちの一方はコイル204Xeに、もう一方の入力は共通電圧(例えば接地)に接続される。増幅器A2への入力のうちの一方はコイル204Xeに、もう一方の入力は共通電圧(例えば接地)に接続される。したがって、増幅器A1はコイル204Xeの一部分の両端の電圧を測定し、よって増幅器A2はコイル204Xeの他の部分の両端の電圧を測定する。これらの部分電圧が加算されて、コイル204Xeの両端の差分電圧が得られる。差分電圧は、バラン1303を介して出力1323として供給される。
【0109】
増幅器A1,A2は、1つの周波数(低い方のラーモア周波数、例えば129Xeのラーモア周波数)に対しては差分モードで、他の周波数(高い方のラーモア周波数、例えば1Hのラーモア周波数)に対しては同相モードで動作可能であるような広帯域増幅器である。
【0110】
受動フィルタ回路10は、低出力(10W未満)分光計にも適用可能である。低出力分光計は例えば超偏極を監視するのに使用可能である。
【0111】
スピン交換光ポンピング(Spin exchange optical pumping:SEOP)を用いて129Xeの超偏極を行うことができ、低出力(低磁場)分光計を用いて分極レベルを監視することができる。例えば、十分な超偏極が達成された時が分かることが望ましいこともある。システムの動作性能を測定して調整や保守が必要な時期を評価することが望ましいこともある。
【0112】
SEOPを行うように構成されるとともに、超偏極を監視する低磁場NMRシステム200も有する、超偏極装置を有することが望ましいと考えられる。
【0113】
SEOPを行うように構成されるとともに、超偏極を監視する低磁場NMRシステム200も有する、携帯型超偏極装置を有することが望ましいと考えられる。
【0114】
図15において、システム300は、静磁場B
0を生成するように構成される電磁システム202を備える。
【0115】
本システムはスピン交換光ポンピング(SEOP)のためのセル302を備える。セルは第1原子核(例えば129Xe)をガスとして受け入れ、少なくとも第1原子核の集団を偏極した後、偏極されたガスを出力ガスとして供給する。第2原子核(例えば1H)のNMRは、例えばH20からなる別個の幾何学的に整合するサンプルを用いてこのプロセスの収量(偏極)を較正するために使用される。
【0116】
セル302自体は1Hを受け入れない。NMRシステム200内部には既知の量の1H(例えば水や油)があるが、その位置はセル302の外側である。RFコイルシステム204は直交した状態で使用され、サンプル(偏極された129Xeガスまたは1H)が次々と測定される。これは、RFコイル構成204の同じ物理的な位置において、一方のサンプル(129Xeガス)を他方のサンプル(1H)で置き換えることによって実行される。
【0117】
上述したように、システム200を使用して、第1原子核(例えば129Xe)の偏極を決定することができる。
【0118】
代表的な動作磁場B0は3mTまでであるが、かなりの範囲で調整可能である。この結果、129Xeではラーモア周波数が35.3kHz(γ=11.777MHz/T)、1Hではラーモア周波数が127.60kHz(γ=42.57MHz/T)となる。
【0119】
NMR信号がコイル204に誘導する電圧は磁化(M0)に比例するが、超偏極原子核の磁化(M0)は以下のように与えられる。
【0120】
【0121】
ここでPは磁化のパーセント値、Nは原子密度である。
【0122】
セル内の偏極分布が測定できるように、同一の複数のコイル204をセルの長さ方向に配置することができる。
【0123】
1H温度信号(ある温度での1Hの予想偏極)を用いて、発生した超偏極129Xe信号を較正する。
【0124】
上述したシステムは、核磁気共鳴分光術、核磁気共鳴撮像術、または核磁気共鳴顕微鏡検査術のためものであり得る。本明細書において、適用対象への言及はサンプルへの言及に置き換えることができる。
【0125】
核磁気共鳴分光術、核磁気共鳴撮像術、または核磁気共鳴顕微鏡検査術は、受動フィルタ回路10、または装置100、またはシステム200を使用して行ってもよい。受動フィルタ回路10は、極性が反対の円偏波核スピンの同時生成及び/または検波を可能にする。
【0126】
核磁気共鳴分光術、核磁気共鳴撮像術、または核磁気共鳴顕微鏡検査術は、第1原子核及び第2原子核において極性が反対の円偏波核スピンの同時生成を用いて、かつ/または、第1原子核及び第2原子核において極性が反対の円偏波核スピンの同時検波を用いて、行ってもよい。
【0127】
二重NMRシステム200の動作は、129XeRFコイル204Xeに対してRF遮蔽を設けることによってさらに向上できる。RF遮蔽により、コイル204XeのQ値が改善するので、誘導負荷も改善し、したがってRFコイル204Xeの全体の性能が向上する。
【0128】
しかし、RF遮蔽が存在すると、送信に用いられるMRIシステムの1H送信用主コイルはRF遮蔽を透過することができないために、1HのNMRに悪影響を及ぼす可能性がある。
【0129】
特定の第1原子核が1Hで第2原子核が129Xeである実施例を詳細に説明したが、次は、これら様々な装置100、フィルタ10、回路、及びシステムを、磁気回転比の極性が反対である第1及び第2原子核の様々な組み合わせとともに使用する場合に、どのようにして適合することができるかを説明する。
【0130】
位相回転ブロック24は、第1位相シフトΔφ1を第1の向きに、第1原子核のラーモア周波数で印加するように、同時に、第2位相シフトΔφ2を第1の向きに、第2原子核のラーモア周波数で印加するように構成される回路構成を備える。ある一定の時間遅延等に対して、第1位相シフトは第1原子核のラーモア周波数に比例し、第2位相シフトΔφ2は第2原子核のラーモア周波数に比例して、第1位相シフトと同じ極性を有する。
【0131】
したがって、Δφ1/Δφ2=|γ1/γ2|=Rである。ここでγ1は第1原子核の磁気回転比であり、γ2は第2原子核の磁気回転比である。したがって、Δφ2=Δφ1/|R|である。ここで|R|は第1原子核の磁気回転比γ1と第2原子核の磁気回転比γ2の比率の絶対値である。
【0132】
位相オフセットブロック26は、第1原子核のラーモア周波数での第1位相シフトΔφ1と第2原子核のラーモア周波数での第2位相シフトΔφ2との間の相対位相オフセットθを印加することによって、オフセット後に第1位相シフトと第2位相シフトとの間の位相差βを生成するように構成される回路構成を備える。オフセット後の第2位相差がΔφ2
*bである場合、β=Δφ1-Δφ2
*b=Δφ1(1-b/|R|)である。
【0133】
位相差βをN個のカスケードフィルタモジュール全体にわたって合計することによって、第1原子核のラーモア周波数で第1極性の直交位相変化を有し、第2原子核のラーモア周波数で第1極性とは反対の第2極性の直交位相変化を有する出力14を供給する。
【0134】
よって、N個の相対位相差βの合計が180°の相対位相差になる。
【0135】
このことは
図16Aに図示されており、これは第1原子核が
1H、第2原子核が
129Xeで、N=3の場合である。
【0136】
図16Bには一般的な例が図示されており、ここでは第1原子核γ
1も第2原子核γ
2も特定されていない。しかし、第1原子核の磁気回転比の大きさは第2原子核の磁気回転比の大きさよりも大きく、第1原子核の磁気回転比と第2原子核の磁気回転比は極性が反対であるという制約条件は存在する。
【0137】
これは、N段後の総位相差(N*β)はN*Δφ1(1-b/|R|)であり、180°に等しいことを意味する。
【0138】
図を簡潔にするために、第1位相シフトΔφ
1は+90°であると設定されている。よって、N段後、第1位相シフトΔφ
1は-90°に等しく、第2位相シフトΔφ
2は+90°に等しい。第2位相シフトはΔφ
1
*b/|R|であり、N段後には+90°に等しく、よってb=|R|/Nである。第2位相シフトはΔφ
1/|R|+θであり、N段後には+π/2であり、よってθ=π/2(1/N-1/(|R|))である。
図6では、シャントキャパシタC1,C2の値を適したものにすることにより、第2原子核のラーモア周波数ではほぼ180°/2Nである1段当たりの位相遅れが、第1原子核のラーモア周波数ではほぼ90°である1段当たりの位相遅れが導入される。
【0139】
1Hと129Xeの組み合わせに対して、|R|=3.6、Δφ1=90°≧Δφ2=90°/|R|=25°であり、N=3の場合、θ=π/2(1/N-1/(|R|))=5°(0.0873rad)、b=|R|/N=1.2、よって129Xeに対して、3段後の位相シフトは3*(25°+5°)=90°である。
【0140】
1Hと15Nの組み合わせに対して、|R|=9.866、Δφ1=90°≧Δφ2=90°/|R|=9.12°であり、N=7の場合、θ=π/2(1/N-1/(|R|))=3.73°(0.651rad)、b=|R|/N=1.41、よって15Nに対して、7段後の位相シフトは7*(9.12°+3.73°)=90°である。
【0141】
1Hと17Oの組み合わせに対して、|R|=7.377、Δφ1=90°≧Δφ2=90°/|R|=12.2°であり、N=7の場合、θ=π/2(1/N-1/(|R|))=0.66°(0.0115rad)、b=1.054、よって17Oに対して、7段後の位相シフトは7*(12.2°+0.66°)=90°である。
【0142】
θを小さい値に抑えることが好ましい。
【0143】
N段後の総位相差(N*β)が180°に等しいことが好ましいが、ほぼ180°程度であればよく、必ずしも正確に180°である必要はない。
【0144】
N段後に第1位相シフトΔφ1の累積が-90°であることが好ましいこともあるが、ほぼ-90°程度であればよく、必ずしも正確に90°である必要はない。
【0145】
N段後に第2位相シフトΔφ2の累積が+90°であることが好ましいこともあるが、ほぼ+90°程度であればよく、必ずしも正確に+90°である必要はない。
【0146】
構造的な特徴が記載されている場合に、構造的な特徴の機能のうちの1つ以上を実行する手段によって置き換えられてもよい。ここで、その機能またはそれらの機能の記述が明示的であっても暗示的であってもかまわない。
【0147】
本明細書において、「備える(comprise)」という語は、排他的な意味ではなく包含的な意味を持って使用されている。つまり、「Yを備えるX」へのあらゆる言及は、XはYを1つだけ備え得ることも、Yを2つ以上備え得ることも意味している。「備える(comprise)」を排他的な意味で使用することを意図する場合には、「1つだけ備える(comprising only one..)」と言及することによって、または「からなる(consisting)」を使用することによって、文脈の中で明確にされる。
【0148】
本記載では、種々の実施例について言及してきた。ある例に関連した特徴または機能の記載は、それらの特徴または機能がその例に存在することを示している。文中で「例(example)」、「例えば(for example)」、「あり得る(can)」、または「ある場合もある(may)」という語を使用することは、明示的に記述しているかどうかにかかわらず、このような特徴または機能が、例として記載されているか否かにかかわらず、少なくとも記載例に存在すること、及び、他の例のうちのいくつかまたは全てに存在し得るが、必ず存在するわけではないことを意味している。よって、「例(example)」、「例えば(for example)」、「あり得る(can)」、または「ある場合もある(may)」は、あるクラスの例のうちの特定の例を指す。その例のある特性は、その例だけの特性であっても、そのクラスの特性であっても、または、そのクラスのうちの、クラス内の例の全てではないがいくつかを含むサブクラスの特性であってもよい。したがって、一例を参照しているが別の例は参照せずに説明されている特徴は、可能であれば、作用する組み合わせのうちの一部としてその別の例で使用可能であるが、必ずしもその別の例で使用する必要はないことが暗示的に開示されている。
【0149】
前段落では種々の例を参照して実施例を説明してきたが、請求項の範囲から逸脱することなく、与えられた例の修正が可能であることを了解されよう。
【0150】
前述の説明に記された特徴は、上記で明示した組み合わせ以外の組み合わせで使用されてもよい。
【0151】
特定の特徴を参照して機能を説明してきたが、それらの機能は、説明されているか否かにかかわらず、他の特徴によって実行可能であってもよい。
【0152】
特定の実施例を参照して特徴を説明してきたが、それらの特徴は、説明されているか否かにかかわらず、他の実施例にも存在していてもよい。
【0153】
本明細書において、「ある1つの(a)」または「その(the)」という語は、排他的な意味ではなく包含的な意味を持って使用されている。つまり、「ある1つの/そのYを備えるX」へのあらゆる言及は、文脈が明らかにそうでないことを示す場合を除き、XはYを1つだけ備え得ることも、Yを2つ以上備え得ることも意味している。「ある1つの(a)」または「その(the)」を排他的な意味で使用することを意図する場合には、文脈の中で明確にされる。いくつかの状況では、「少なくとも1つの(at least one)」または「1つ以上の(one or more)」の使用は、包含的な意味を強調するために使われることもあるが、これらの語がないことを、あらゆる排他的な意味を暗示すると受け取るべきではない。
【0154】
ある請求項に特徴(または特徴の組み合わせ)が存在することは、その特徴(または特徴の組み合わせ)自体への言及であり、また、実質的に同じ技術的効果を達成する特徴(等価の特徴)への言及でもある。この等価の特徴は、例えば、変形であって、実質的に同じ結果を実質的に同じやり方で達成する特徴を含む。この等価の特徴は、例えば、実質的に同じ機能を、実質的に同じ結果を達成するための実質的に同じやり方で実行する特徴を含む。
【0155】
本記載では、各実施例の特徴を説明する形容詞または形容詞句を用いて、種々の実施例について言及してきた。このように特徴を一例と関連して説明することは、その特徴が、正確に記載されているとおりにいくつかの例に存在し、かつ、ほぼ記載されているとおりに他の例に存在することを意味する。
【0156】
上述の明細書において、重要であると考える特徴に注目するように試みたが、出願人は、そこが強調されているか否かにかかわらず、本明細書で言及した、及び/または各図面に示した、あらゆる特許可能な特徴または特徴の組み合わせに関して、請求項による保護を求め得ることを理解されたい。
【国際調査報告】