(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-05
(54)【発明の名称】アルツハイマー病の治療方法
(51)【国際特許分類】
C12N 15/113 20100101AFI20240628BHJP
A61K 31/7125 20060101ALI20240628BHJP
A61K 31/7088 20060101ALI20240628BHJP
A61P 25/28 20060101ALI20240628BHJP
【FI】
C12N15/113 Z ZNA
A61K31/7125
A61K31/7088
A61P25/28
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023579741
(86)(22)【出願日】2022-07-01
(85)【翻訳文提出日】2023-12-26
(86)【国際出願番号】 EP2022068313
(87)【国際公開番号】W WO2023275376
(87)【国際公開日】2023-01-05
(32)【優先日】2021-07-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】509168656
【氏名又は名称】オーフス ウニベルシテット
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】アンデルセン,オラフ マイケル
【テーマコード(参考)】
4C086
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA16
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA66
4C086NA14
4C086ZA16
(57)【要約】
本開示は、SORL1のプレmRNA上の標的部位に結合することができるアンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)に関する。本開示はさらに、前記ASOを含む組成物に関する。本開示はさらに、医薬にて使用するためのASOに関する。本開示はさらに、アルツハイマー病(AD)、またはアルツハイマー病に関連する疾患もしくは障害の予防、治療、及び/または緩和に使用するためのASOに関する。本開示はさらに、SORL1転写物におけるエクソンスキッピングに介在する方法、ASO介在性SORL1エクソンスキッピングの効率を決定する方法、SORL1突然変異で特定された患者がASO介在性エクソンスキッピングによる治療から利益を得るかどうかを調べる方法、及びASOを製造する方法に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
SORL1のプレmRNA上の標的部位に結合する及び/または前記標的部位と相補性であるアンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)であって、前記標的部位のヌクレオチド配列が配列番号36、配列番号37、配列番号38、配列番号39、配列番号40、配列番号41、配列番号42、配列番号43、配列番号44、配列番号45及び配列番号46から成る群から選択されるヌクレオチド配列に含まれ、または配列番号36、配列番号37、配列番号38、配列番号39、配列番号40、配列番号41、配列番号42、配列番号43、配列番号44、配列番号45及び配列番号46から成る群から選択されるヌクレオチド配列に対して少なくとも80%の配列同一性もしくは相同性、例えば、それに対して少なくとも80%、85%、90%、95%、98%もしくは99%の配列同一性もしくは相同性を有するヌクレオチド配列に含まれる、前記アンチセンスオリゴヌクレオチド。
【請求項2】
標的部位に結合する、及び/または標的部位と相補性である前記オリゴヌクレオチドが、SORLAの相補体型反復(CR)ドメインをコードするエクソンのエクソンスキッピングを引き起こし、前記エクソンが、配列番号1の配列を有するエクソン23、配列番号2の配列を有するエクソン24、配列番号3の配列を有するエクソン25、配列番号4の配列を有するエクソン26、配列番号5の配列を有するエクソン27、配列番号6の配列を有するエクソン28、配列番号7の配列を有するエクソン29、配列番号8の配列を有するエクソン30、配列番号9の配列を有するエクソン31、配列番号10の配列を有するエクソン32、及び配列番号11の配列を有するエクソン33から成る群から選択されるヌクレオチド配列、または配列番号1~配列番号11のいずれか1つに対して少なくとも80%の配列同一性もしくは相同性、例えば、それに対して少なくとも80%、85%、90%、95%、98%もしくは99%の配列同一性もしくは相同性を有するヌクレオチド配列を含む、またはそれから成る、請求項1に記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項3】
前記オリゴヌクレオチドが10~30の間のヌクレオチド長、例えば10~13のヌクレオチド、例えば10~16のヌクレオチド、例えば10~19のヌクレオチド、例えば10~22のヌクレオチド、例えば10~23のヌクレオチド、例えば10~26のヌクレオチド、例えば10~29のヌクレオチド、例えば10~30のヌクレオチドである、先行請求項のいずれか1項に記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項4】
前記オリゴヌクレオチドが、少なくとも10ヌクレオチド長、例えば、少なくとも12ヌクレオチド長、及び/または少なくとも14ヌクレオチド長、及び/または少なくとも16ヌクレオチド長及び/または少なくとも18ヌクレオチド長、及び/または少なくとも20、及び/または少なくとも22ヌクレオチド長、及び/または少なくとも24ヌクレオチド長、及び/または少なくとも26ヌクレオチド長、及び/または少なくとも28ヌクレオチド長、及び/または少なくとも30ヌクレオチド長である、先行請求項のいずれか1項に記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項5】
前記オリゴヌクレオチドが21ヌクレオチド長である、先行請求項のいずれか1項に記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項6】
前記オリゴヌクレオチドが40~60%、例えば45~55%のGC含量を有する、先行請求項のいずれか1項に記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項7】
前記オリゴヌクレオチドがホスホロチオエート(PS)を含む骨格を含む、先行請求項のいずれか1項に記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項8】
前記オリゴヌクレオチドがさらに、少なくとも1つのヌクレオチド位置、または各ヌクレオチド位置にて修飾を含む、先行請求項のいずれか1項に記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項9】
前記修飾が、前記核酸骨格、前記核酸塩基、リボース糖及び/または2’-リボース置換の修飾である、先行請求項のいずれか1項に記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項10】
前記オリゴヌクレオチドが2’-O-メトキシエチル糖修飾を含む、先行請求項のいずれか1項に記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項11】
前記オリゴヌクレオチドが2’-O-メチルリボース修飾を含む、先行請求項のいずれか1項に記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項12】
前記標的部位が、3’スプライス部位境界、5’スプライス部位境界及び/またはエクソンスプライスエンハンサー(ESE)部位にある、先行請求項のいずれか1項に記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項13】
前記標的部位が、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号20、配列番号21、配列番号22、配列番号23、配列番号28、配列番号29、配列番号30、配列番号31、配列番号36、配列番号37、配列番号38、配列番号39、配列番号40、配列番号41、配列番号42、配列番号43、配列番号44、配列番号45及び配列番号46から成る群から選択されるヌクレオチド配列、または配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号20、配列番号21、配列番号22、配列番号23、配列番号28、配列番号29、配列番号30、配列番号31、配列番号36、配列番号37、配列番号38、配列番号39、配列番号40、配列番号41、配列番号42、配列番号43、配列番号44、配列番号45及び配列番号46から成る群から選択されるヌクレオチド配列に対して少なくとも80%の配列同一性もしくは相同性、例えば、それに対して少なくとも80%、85%、90%、95%、98%、もしくは99%の配列同一性もしくは相同性を有するヌクレオチド配列から成る、またはそれを含む、先行請求項のいずれか1項に記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項14】
前記オリゴヌクレオチドが、配列番号16、配列番号17、配列番号18、配列番号19、配列番号24、配列番号25、配列番号26、配列番号27、配列番号32、配列番号33、配列番号34及び配列番号35から成る群から選択されるヌクレオチド配列、または配列番号16、配列番号17、配列番号18、配列番号19、配列番号24、配列番号25、配列番号26、配列番号27、配列番号32、配列番号33、配列番号34及び配列番号35から成る群から選択されるヌクレオチド配列に対して少なくとも80%の配列同一性もしくは相同性、例えば、それに対して少なくとも80%、85%、90%、95%、98%または99%の配列同一性もしくは相同性を有するヌクレオチド配列から成る、またはそれを含む、先行請求項のいずれか1項に記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項15】
前記オリゴヌクレオチドが、高ストリンジェントな溶液ハイブリッド形成条件下で標的部位と特異的にハイブリッド形成する、先行請求項のいずれか1項に記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項16】
前記標的部位に結合する際、前記オリゴヌクレオチドはスプライシング因子が結合することを阻止する、先行請求項のいずれか1項に記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項17】
前記オリゴヌクレオチドが、ある部分またはナノ粒子配合物にコンジュゲートされる、先行請求項のいずれか1項に記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項18】
前記部分が、細胞を標的とする部分及び/または細胞を透過する部分である、先行請求項のいずれか1項に記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項19】
前記オリゴヌクレオチドが、トリアンテナリーN-アセチルガラクトサミン(GalNAc)部分及び/またはペプチドにコンジュゲートされる、先行請求項のいずれか1項に記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項20】
前記オリゴヌクレオチドが5’スプライス部位、3’スプライス部位及び/またはエクソンスプライスエンハンサー部位(ESE)を標的とする、先行請求項のいずれか1項に記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項21】
前記オリゴヌクレオチドがさらに、前記オリゴヌクレオチドの一方または双方の末端に、少なくとも1つの追加のヌクレオチド、少なくとも2つの追加のヌクレオチド、少なくとも3つの追加のヌクレオチドを含む、先行請求項のいずれか1項に記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項22】
先行請求項のいずれか1項に記載のオリゴヌクレオチドを含む、組成物。
【請求項23】
前記組成物が医薬組成物である、請求項22に記載の組成物。
【請求項24】
前記組成物がさらに、薬学的に許容される担体を含む、請求項22~23のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項25】
前記オリゴヌクレオチドを1以上含む、請求項22に記載の組成物。
【請求項26】
医薬で使用するための、請求項1~21のいずれか1項に記載のアンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)及び/または請求項22~25のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項27】
アルツハイマー病(AD)またはアルツハイマー病に関連する疾患もしくは障害の予防、治療及び/または緩和に使用するための、請求項1~21のいずれか1項に記載のアンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)、及び/または請求項22~25のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項28】
有効量の前記オリゴヌクレオチドが、眼、脊髄、脳髄液、脳及び/または肝臓に投与される、請求項26~27のいずれか1項に記載のアンチセンスオリゴヌクレオチド。
【請求項29】
個人の近親者がアルツハイマー病と診断された場合に、前記個人に有効量の前記オリゴヌクレオチドが投与される、請求項27~28のいずれか1項に記載のアンチセンスオリゴヌクレオチド。
【請求項30】
アルツハイマー病(AD)またはアルツハイマー病に関連する疾患もしくは障害を治療するための薬物の製造における請求項1~21のいずれか1項に記載のアンチセンスオリゴヌクレオチドまたは請求項22~25のいずれか1項に記載の組成物の使用。
【請求項31】
請求項1~21のいずれか1項に記載のアンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)及び/または請求項22~25のいずれか1項に記載の組成物を使用して、細胞、組織または臓器にてSORL1転写物におけるエクソンスキッピングに介在する方法であって、前記エクソンが、SORL1のエクソン23、エクソン24、エクソン25、エクソン26、エクソン27、エクソン28、エクソン29、エクソン30、エクソン31、エクソン32及び、及びエクソン33から成る群から選択される、前記方法。
【請求項32】
1つのASOが使用される、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
1を超えるASO、例えば2つのASO、例えば3つのASO、例えば5つのASO、例えば6つのASOが使用される、請求項31~32のいずれか1項に記載の方法。
【請求項34】
1つのエクソンのエクソンスキッピングに介在する、請求項31~33のいずれか1項に記載の方法。
【請求項35】
1を超えるエクソン、例えば2つのエクソン、例えば3つのエクソン、例えば4つのエクソンのエクソンスキッピングに介在する、請求項31~34のいずれか1項に記載の方法。
【請求項36】
対象にてASO介在性のSORL1エクソンスキッピングの効率を決定する方法であって、前記方法が以下の工程:
a)ASOによる治療の前に得られる、患者由来の脳脊髄液を含む第1の試料にて排出SORLAのレベルを分析する工程と、
b)ASOによる治療の後に得られる、a)と同じ患者由来の脳脊髄液を含む第2の試料にて排出SORLAのレベルを分析する工程と、
c)a)及びb)の前記試料における排出SORLAの前記レベルを比較する工程とを含み、
それによって、b)における排出SORLAの前記レベルがa)よりも高ければエクソンスキッピングと判定する、前記方法。
【請求項37】
任意で、ASOによる治療の後に複数の時点で試料b)を得る工程を含み、したがって経時的にASO介在性のエクソンスキッピングの効率をモニターすることを含む、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
SORL1に突然変異があると特定された患者が、ASO介在性のエクソンスキッピングによる治療から利益を得るかどうかを調べる方法であって、前記方法が以下の工程:
a)SORL1のエクソン23~33のいずれか1つにて突然変異を特定する工程と、
b)前記患者にて特定された前記SORL1の突然変異を細胞株に導入する工程と、
c)前記特定された突然変異を保有する前記エクソンを標的とする1以上のASOを選択する工程と
d)前記選択された1以上のASOを含む培地と細胞の第1のアリコートを接触させ、ASOを含まない培地と細胞の第2のアリコートを接触させる工程と、
e)前記第1のアリコート及び前記第2のアリコートにおける排出SORLAのレベルを分析する工程と、
f)前記第1のアリコート及び前記第2のアリコートにおける排出SORLAの前記レベルを比較する工程とを含み、
それによって、前記第1のアリコートにおける排出SORLAの前記レベルが前記第2のアリコートより高ければ、前記患者が1以上のASOによる治療から利益を得ると判定する、前記方法。
【請求項39】
前記方法が試験管内の方法である、請求項36~38のいずれか1項に記載の方法。
【請求項40】
アルツハイマー病(AD)患者の治療に好適なASOを生成する方法であって、前記患者がSORLAの相補体型反復(CR)ドメインをコードするエクソンにて突然変異を保有し、前記方法が以下の工程:
a)請求項1~21のいずれか1項に記載のASOを特定する、例えば、コンピューターによって特定する工程と、
b)前記ASOの前記標的部位が前記突然変異を含むかどうか、または前記ASOの前記標的部位が前記突然変異を含まないかどうかを決定する工程とを含み、
それによって、前記突然変異を含まない標的部位に結合するASOがAD患者の治療に好適であると判定する、前記方法。
【請求項41】
前記突然変異がカルシウムケージ突然変異または奇数システイン突然変異である、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記突然変異がヒトSORL1の1080位でのアルギニンからシステインへの置換(R1080C)である、または前記突然変異がヒトSORL1の1105位でのアスパラギン酸からヒスチジンへの置換(C1105H)である、請求項40~41のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書で開示されているのは、細胞、組織または動物におけるSORL1のmRNAのスプライシングを調節するための化合物、組成物及び方法である。また、提供されているのは、アルツハイマー病(AD)を含む疾患及び障害の治療のための薬物の製造における開示されている化合物及び組成物の使用である。具体的には、本開示はSORL1の転写物にてエクソンスキッピングを引き起こすアンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)に関する。
【背景技術】
【0002】
SORLAは、エンドソームから出たアミロイド前駆体タンパク質(APP)の輸送に重要であり、その際、SORLAによって妨害されなければ、APPの病原性断片(すなわちアミロイドβ-ペプチド(Aβ))へのアミロイド生成性のプロセシングが発生する。このSORLAが支えるAPPの輸送はβ-セクレターゼによるAPPの切断の減少を保証し、それによって、その後さらに処理されてアミロイドベータ(Aβ)ペプチドを生成することができるβ-C末端断片(CTF)の生成を減らす。ADでは、Aβは脳内のアミロイド斑に蓄積し、疾患の最も重要な病理学的特徴である。しかしながら、この疾患の病因は、むしろ、β-CTF及び他のカーゴタンパク質のレベルと関連しており、ADではそれらはエンドソームから出て再利用されることができず、エンドソームの腫脹及び機能不全のエンドソーム活性(すなわち、アルツハイマー病に関するエンドソーム交通渋滞仮説)につながる。SORLAがエンドソームの再利用に関与する能力は、レトロマー複合体との相互作用に重要であり、且つエンドソームから出てカーゴを輸送するのに役立つ細胞質尾部におけるモチーフ(すなわちFANSHYモチーフ)に関連する。
【0003】
エンドソーム選別受容体SORLAをコードするSORL1遺伝子は過去15年間、アルツハイマー病の発症に関連してきた。近年、大規模な全エクソーム配列決定研究によって、SORL1がAD患者群におけるヒトゲノム全体にわたる最も高い遺伝的変異を抱える遺伝子であることが特定されている。SORL1に位置する「機能喪失型」(LOF)の変異型の組み合わせ群は、早発性ADのオッズ比リスクが36倍(OR=36)増加し、晩発性ADのリスクが7倍に増加することに関連している。ミスセンス変異型の群全体は、それぞれ早発性AD及び遅発性ADのリスクが2.7倍及び1.9倍増加することに関連することが分かっている。
【0004】
興味深いことに、アルツハイマー病患者由来のSORL1変異型は、SORL1遺伝子全体に広がり、したがって、すべての変異型の25%超が11の相補体反復(CR)ドメインをコードするゲノム領域に位置する。CRドメインは、CRドメインのクラスターを含有するすべての既知の受容体における主要なリガンド結合部位である。また、SORLAのCRドメインのクラスターはAPPを含むリガンドへの結合に関与する。その結果、CRドメインにおける突然変異は、リガンド結合に関しても、タンパク質の誤った折り畳み及びER保持に関しても、SORLAの機能に重大な影響を及ぼすことができる。
【0005】
AD発症のリスクまたは因果関係を予測する遺伝的マーカーに関する知識が得られている一方で、ADに関する実行可能な治療は今のところ得られておらず、ADは患者及び医療制度に対する多大な負担のままである。
【発明の概要】
【0006】
近年、本開示の発明者らは、追加のSORLA突然変異、すなわち、SORLAのCRドメインにおける突然変異がADと関連していることを示す証拠を蓄積してきた。11のCRドメインのクラスターをコード化するSORL1の領域に位置するミスセンス変異型の2つの亜群が特定されており、これは、ADのリスク増大と関連する(データは公開されていない)。
【0007】
CRドメインは、CRドメインのクラスターを含有するすべての既知の受容体における主要なリガンド結合部位を表す。また、SORLAのCRドメインのクラスターはAPPを含むリガンドへの結合に関与している。しかしながら、任意のリガンドの典型的な結合は単離されたCRドメインに依存するものではないが、多くの研究はむしろ、多くのCRドメインとリガンド上のいくつかのエピトープとの合わせた相互作用によってどのように結合が達成されるかを示している。
【0008】
本開示の発明者らは、生理学及び病理学におけるSORLAドメイン及びそれらの機能性を慎重に検討することによって、個々のCRドメインの存在または非存在がSORLAリガンドに対する親和性に微妙な影響しか与えないので、突然変異に起因して機能性ではないCRドメインを除去することを目的として、1以上のSORLAのCRドメインを標的にすることが実現可能なアプローチであることに気付いた。本明細書に開示されているように、変異したCRドメインは、エクソンスキッピング法を採用することによってSORLAから除去され、その際、特異的に設計されたアンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)は突然変異を保有するCRドメインのエクソンの除去に使用される。結果として、例えば1つのCRドメインを欠く、または複数のCRドメインにおける突然変異の場合、1より多くのCRドメインを欠く機能的SORLAタンパク質を生成することができる。このアプローチはいくつかの利点を有する。
【0009】
第1に、AD患者の脳に送達されたASOは機能的SORLAタンパク質をその場で回復させることができる。CR突然変異を保有するAD患者はSORLAタンパク質を産生していてもよいが、突然変異のために、このタンパク質は機能しない。例えば、この変異したSORLAタンパク質は誤った折り畳みを生じることができ、且つ病理学的に小胞体(ER)に保持され得る。変異したCRエクソンをエクソンスキッピングにより除去することによって、リガンド結合に関してその機能性を保持し、且つ多くの重要なドメインを含むSORLAが生理的な方法でエンドソーム経路を介して進むことを保証する機能的なSORLAタンパク質を生成することができる。要約すると、タンパク質全体の機能性を完全に消失させる変異したタンパク質の代わりに、1以上のCRドメインを欠く変異型を生成することができ、この変異型は、生理学的機能することができ、または生理学的に近く機能することができる。
【0010】
第2に、変異したSORLAタンパク質は、SORLA二量体形成のために、変異していないSORLA(非罹患対立遺伝子から産生される)に対して主要な負の効果を有することができる。変異したSORLAは誤った折り畳み及び二量体における非変異SORLAの保持をもたらす場合がある。したがって、機能的なSORLAのレベルは一層さらに低下し、その結果、APPの病原性断片へのアミロイド形成性プロセシングはもはや妨げられない。しかしながら、本開示の教示、すなわち、変異したSORLAのCRドメインのASOが介在するエクソンスキッピングを使用することによって、1以上のCRドメインを欠くSORLAタンパク質が細胞内で生成されるが、この変異型は、それ自体の誤った折り畳みも、または二量体での影響を受けていない他のSORLA変異型の誤った折り畳みを誘導することはない。
【0011】
主要な態様では、本開示は、SORL1のプレmRNA上の標的部位に結合する、及び/または標的部位に相補性であるアンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)に関するものであり、標的部位のヌクレオチド配列は、配列番号36、配列番号37、配列番号38、配列番号39、配列番号40、配列番号41、配列番号42、配列番号43、配列番号44、配列番号45及び配列番号46から成る群から選択されるヌクレオチド配列に、または配列番号36、配列番号37、配列番号38、配列番号39、配列番号40、配列番号41、配列番号42、配列番号43、配列番号44、配列番号45及び配列番号46から成る群から選択されるヌクレオチド配列に対して少なくとも80%の配列同一性もしくは相同性を有する、例えば、それに対して少なくとも80%、85%、90%、95%、98%または99%の配列同一性もしくは相同性を有するヌクレオチド配列に含まれる。
【0012】
さらなる態様では、本開示は前記オリゴヌクレオチドを含む組成物に関する。
【0013】
さらなる態様では、本開示は薬物で使用するための前記アンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)及び/または前記組成物を対象とする。
【0014】
さらなる態様、本開示は、アルツハイマー病(AD)またはアルツハイマー病に関連する疾患もしくは障害の予防、治療及び/または緩和に使用するための前記アンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)及び/または前記組成物を対象とする。
【0015】
さらなる態様、本開示は、アルツハイマー病(AD)またはアルツハイマー病に関連する疾患もしくは障害を治療するための薬物の製造における前記アンチセンスオリゴヌクレオチドまたは前記組成物の使用を対象とする。
【0016】
さらなる態様では、本開示は、前記アンチセンスオリゴヌクレオチドまたは/または前記組成物を使用して、細胞、組織または臓器におけるSORL1転写物にてエクソンスキッピングに介在する方法を対象とするものであり、その際、当該エクソンは、SORL1のエクソン23、エクソン24、エクソン25、エクソン26、エクソン27、エクソン28、エクソン29、エクソン30、エクソン31、エクソン32及びエクソン33から成る群から選択される。
【0017】
さらなる態様では、本開示は、対象にてASOが介在するSORL1のエクソンスキッピングの効率を決定する方法を対象とするものであり、当該方法は以下の工程:
a)ASOによる治療の前に得られる患者由来の脳脊髄液を含む第1の試料にて排出SORLAのレベルを分析する工程と、
b)ASOでの処理後に得られるa)と同じ患者由来の脳脊髄液を含む第2の試料にて排出SORLAのレベルを分析する工程と、
c)a)及びb)の試料における排出SORLAのレベルを比較する工程とを含み、
それによって、b)における排出SORLAのレベルがa)よりも高ければエクソンスキッピングと判定する。
【0018】
さらなる態様では、本開示は、SORL1突然変異があると特定された患者が、ASO介在性のエクソンスキッピングによる治療から利益を得るかどうかを調べる方法を対象とするものであり、当該方法は以下の工程:
a)SORL1のエクソン23~33のいずれか1つにて突然変異を特定する工程と、
b)患者にて特定されたSORL1突然変異を細胞株に導入する工程と、
c)特定された突然変異を保有するエクソンを標的とする1以上のASOを選択する工程と、
d)選択された1以上のASOを含む培地と細胞の第1のアリコートを接触させ、ASOを含まない培地と細胞の第2のアリコートを接触させる工程と、
e)第1のアリコート及び第2のアリコートにおける排出SORLAの濃度を分析する工程と、
f)第1のアリコート及び第2のアリコートにおける排出SORLAのレベルを比較する工程とを含み、
それによって、第1のアリコートにおける排出SORLAのレベルが第2のアリコートよりも高ければ、患者が1以上のASOによる治療から利益を得ると判定する。
【0019】
さらなる態様では、本開示は、AD患者の治療に好適なASOを生成する方法を対象とするものであり、その際、患者はSORLAの相補体型反復(CR)ドメインをコードするエクソンにて突然変異を保有し、当該方法は以下の工程:
a)請求項1~21のいずれか1項に記載のASOを特定する、例えば、コンピューターによって特定する工程と、
b)ASOの標的部位が突然変異を含むかどうか、またはASOの標的サイズが突然変異を含まないかどうかを判定する工程とを含み、
それによって、突然変異を含まない標的部位に結合するASOがAD患者の治療に好適であることを決定する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】SORLAドメイン集合体の概略図である。ヒトSORLAポリペプチドは2214のアミノ酸を含有し、それらのアミノ酸はVPS10pドメイン、EGFドメインと連結されたYWTD-b-プロペラドメイン、11のCRドメイン、6の3Fnドメイン、膜貫通ドメイン、及び細胞質尾部ドメインを含む多数のタンパク質ドメインに折り畳まれる。CRドメインはエクソン23~33によってコードされている。(Ex=エクソン)
【
図2A】SORLAのCRドメインの構造及び配列を示す。A及びB:CRドメイン配列は3つのドメイン内ジスルフィド(システインを接続する黒いバー)を形成する6つの厳密に保存されたシステイン(システイン=「C」)を含む約40のアミノ酸を含有する。酸性側鎖を持つ4つの残基も保存され、それらはカルシウムイオンの8面体配位で機能する。CR1はここでは例示的なCRドメインを示す。
【
図2B】SORLAのCRドメインの構造及び配列を示す。A及びB:CRドメイン配列は3つのドメイン内ジスルフィド(システインを接続する黒いバー)を形成する6つの厳密に保存されたシステイン(システイン=「C」)を含む約40のアミノ酸を含有する。酸性側鎖を持つ4つの残基も保存され、それらはカルシウムイオンの8面体配位で機能する。CR1はここでは例示的なCRドメインを示す。
【
図2C】SORLAのCRドメインの構造及び配列を示す。SORLAの11のCRドメイン配列の配列比較を示し、ドメイン境界はそれらの個々のエクソン(すなわち、エクソン23~33)構造に従う。配列比較の上部の数字はB及びCにおけるアミノ酸間の関係を示す。
【
図3】アンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)をエクソンスキッピングにてどのように使用することができるかを示す概略図である。11のCRドメインのそれぞれはそれ自体のエクソン(エクソン23~33)によってコードされる。これらのエクソンのそれぞれは3ヌクレオチドの倍数を含有するので、エクソンのスキッピングは下流のエクソンのリーディングフレームに影響を与えない。したがって、3’スプライス部位、5’スプライス部位及び/または1以上のエクソンのスプライスエンハンサー部位(ESE)を標的とする個々のエクソンのためのASO(波線として図示)を使用して、ここでエクソン23によって例示されるように、SORL1転写物から変異したエクソンを除去することによってアルツハイマー病を治療することができる。
【
図4A】ASO処理及び細胞SORLA活性についての概略図である。SORLAは野生型対立遺伝子から発現し、11のCRドメイン(11×)を有し、且つエンドソームでのカーゴ再利用にて機能する。
【
図4B】ASO処理及び細胞SORLA活性についての概略図である。病原性SORL1変異型(黒色CRドメインとして示される)、例えば、AD患者に特徴的な変異型、例えば、ONC型またはCC型の変異型の対立遺伝子からSORLAが発現したが、変異型は受容体の誤った折り畳み及びER保持を引き起こし、野生型対立遺伝子からの翻訳産物にも影響を及ぼす可能性がある。
【
図4C】ASO処理及び細胞SORLA活性についての概略図である。エクソンスキッピングASOで処理された疾患対立遺伝子のSORLAは10の機能的なCRドメイン(10×)を含有し、完全長SORLAタンパク質と区別できない機能を含有するであろう。
【
図5A】エクソン23を標的とするASOを示す。エクソン23のエクソンスキッピングを誘導するための標的設定戦略を示す。表は4つのASO(ASO23.1~ASO23.4)、各ASO配列及び各RNA標的配列を示す。
【
図5B】エクソン27を標的とするASOを示す。エクソン27のエクソンスキッピングを誘導するための標的設定戦略を示す。表は4つのASO(ASO27.1~ASO27.4)、各ASO配列及び各RNA標的配列を示す。
【
図5C】エクソン33を標的とするASOを示す。エクソン33のエクソンスキッピングを誘導するための標的設定戦略を示す。表は4つのASO(ASO33.1~ASO33.4)、各ASO配列及び各RNA標的配列を示す。
【
図5D】前駆体mRNA上のそれらの各結合部位に関して、エクソン23を標的とするために特定された4つのASOを示す。灰色のさまざまな色合いのバーはスプライス因子の結合部位を示す。各バーの幅はスプライシング因子によって推定上結合された配列を表す。エクソンのスプライシングを促進または抑制する予測された強度は、各スプライシング因子に対するスコアとして表される。正のスコアはエクソンスプライスエンハンサー(ESE)を表す一方で、負のスコアはエクソンスプライスリプレッサー(ESR)を表す。配列の下の数字は、両側にエクソン+25bpの隣接イントロン配列(小文字)を含む配列内でのヌクレオチドの位置を示す。
【
図5E】前駆体mRNA上のそれらの各結合部位に関して、エクソン27を標的とするために特定された4つのASOを示す。灰色のさまざまな色合いのバーはスプライス因子の結合部位を示す。各バーの幅はスプライシング因子によって推定上結合された配列を表す。エクソンのスプライシングを促進または抑制する予測された強度は、各スプライシング因子に対するスコアとして表される。正のスコアはエクソンスプライスエンハンサー(ESE)を表す一方で、負のスコアはエクソンスプライスリプレッサー(ESR)を表す。配列の下の数字は、両側にエクソン+25bpの隣接イントロン配列(小文字)を含む配列内でのヌクレオチドの位置を示す。
【
図5F】前駆体mRNA上のそれらの各結合部位に関して、エクソン33を標的とするために特定された4つのASOを示す。灰色のさまざまな色合いのバーはスプライス因子の結合部位を示す。各バーの幅はスプライシング因子によって推定上結合された配列を表す。エクソンのスプライシングを促進または抑制する予測された強度は、各スプライシング因子に対するスコアとして表される。正のスコアはエクソンスプライスエンハンサー(ESE)を表す一方で、負のスコアはエクソンスプライスリプレッサー(ESR)を表す。配列の下の数字は、両側にエクソン+25bpの隣接イントロン配列(小文字)を含む配列内でのヌクレオチドの位置を示す。
【
図6】エクソン23を標的とするASOによる形質移入されたヒト細胞株におけるRT-PCRによって測定されたエクソン23のスキッピング効率を示す。我々は、HEK293細胞の形質移入、内在性SORL1 mRNAの回収によってSORL1のエクソン23のエクソンスプライスエンハンサー(ESE)エレメントに対して向けられた4つのASO(ASO23.1、ASO23.2、ASO23.3及び23.4)を調べ、エクソン23の周りの領域にまたがるプライマー対を使用したRT-PCRを行った。PCR産物をアガロースゲル電気泳動によって分離し、独立した2つの実験のデータを示す(上図、下図)。双方の実験では、我々は、エクソン23欠失断片をコードするプラスミド(pΔEx23、対照として使用される組換え産生されたエクソン23の変異型)を鋳型として使用して生成した生成物と同一に移動するさらに短いPCR産物(矢印参照)の存在により実証されるように、ASO23.2及びASO23.3がエクソン23のスキッピングを誘導する明確な証拠を観察した。pFL(完全長SORLAをコードするプラスミド)は含まれたエクソン23を有する断片に相当するPCR産物を特定するのに対照鋳型として役立った。
【
図7】SORL1デルタ-エクソン23の発現を示す。A)SORLA完全長またはSORLA-デルタ-エクソン23をコードする構築物で形質移入したN2a細胞からの溶解物及び培地のウェスタンブロット分析を示す。溶解物中の完全長SORLAのレベル(左)は、エクソン23を含まないSORLAのレベルと区別できないが(注:デルタEx23の第2の複製におけるバンドは部分的に気泡で覆われている)、それでも、隣接するレーンのバンドと同程度に強い。中程度(右)の完全長SORLAのレベルは、エクソン23を含まないSORLAのレベルと区別できない。したがって、エクソン23を含まないSORLAは、完全長SORLAと同様に排出され、したがって、その機能性を保持している。B)SORLA完全長、SORLA-D1105H(病原性突然変異)、エクソン23がないSORLA、またはSORLA-R1080C(病原性突然変異)で形質移入したN2a細胞からの溶解物及び培地のウェスタンブロット分析を示す。欠失したCR1(すなわちΔエクソン23)の培地中でのsSORLAのレベルは、完全長SORLAの場合と同様であるのに対して、双方の病原性突然変異はsSORLA産生の量を大幅に減らす(sSORLA=排出SORLA)。
【
図8A】SORLAデルタ-エクソン23の機能発現を示す。APP単独で形質移入した(「対照」、レーン1~2)、APP/完全長SORLAで二重形質移入した(「完全長」、レーン3~4)、またはAPP/SORLA デルタEx23で二重形質移入した(「デルタエクソン23」、レーン5~6)N2a細胞からの培地のウェスタンブロット分析を示す。排出APP(すなわちsAPPa)の量は、抗体WO2を使用して検出し、且つ排出SORLA(すなわちsSORLA)の量は、SORLAルミナル断片についてのポリクローナル血清を使用して検出する。外来性SORLAの過剰発現がない細胞(対照)は培地にてsAPPについて強いシグナルを示す。対照的に、完全長SORLAまたはエクソン23の欠失を伴うSORLA構築物のいずれかを使用して形質移入した細胞由来の培地はsAPPのレベルが大幅に低下したことを示す。結論として、CR1(エクソン23によりコードされた)を欠失したSORLAは完全長SORLA受容体と同様にAPPプロセシングを抑制するのに有効である。
【
図8B】SORLAデルタ-エクソン23の機能発現を示す。独立した実験でも再び、排出SORLA(sSORLA)のレベルがSORLA-WTとSORLA-ΔEx23との間で類似していることが示され、CR1(エクソン23によりコードされた)の欠失は受容体生物学に観察可能な影響を有しないことが示された。我々はまた、2つのSORLA変異型(完全長及びSORLA-デルタ-エクソン23)タンパク質が、APPタンパク質分解を減少させることによってsAPPαの生成を低下させることに対して区別できない効果を有することも再び観察した。
【
図8C】SORLAデルタ-エクソン23の機能発現を示す。独立した実験でも再び、排出SORLA(sSORLA)のレベルがSORLA-WTとSORLA-ΔEx23との間で類似していることが示され、CR1(エクソン23によりコードされた)の欠失は受容体生物学に観察可能な影響を有しないことが示された。我々はまた、2つのSORLA変異型(完全長及びSORLA-デルタ-エクソン23)タンパク質が、APPタンパク質分解を減少させることによってsAPPαの生成を低下させることに対して区別できない効果を有することも再び観察した。
【
図8D】SORLAデルタ-エクソン23の機能発現を示す。3回の独立した反復からのブロットを定量し、外来性SORLAを含まない細胞に対するレベルの反復試料の平均値としてデータを提示した。この定量はさらに、SORLAのΔEx23が排出APPa(sAPPa)を低減するのにWTと同等に有効であることを示している(ns=非有意)。
【
図9】SORL1デルタ-エクソン33の発現を示す。SORL1-WTまたはSORL1-ΔEx33のいずれかの構築物でN2a細胞に形質移入し、細胞からの溶解物及び調整培地を、(溶解物試料中の)SORLAまたはアクチン、または(培地試料中の)排出SORLAに対する抗体を使用してウェスタンブロットによって分析した。内在性SORLAの発現はN2a細胞にて低い/存在せず、したがって、形質移入されていない細胞(ブランク)にて検出できない。CRドメイン11(構築物SORL1-ΔEx33から取り除かれているエクソン33によってコードされる)を欠くSORLAを、野生型SORLAと比較して溶解物及び培地にて類似したレベルで検出した。培地での同様の検出は、CR11の欠失がSORLA受容体生物学に観察可能な影響を与えないこと、すなわち、CR11を欠くSORLAさえもプロセシングされて、SORLA-WTと同様に排出されることを示す。
【
図10】追加のSORL1のCRドメインのエクソンに拡張されたエクソンスキッピング技術。個々のCRドメインについて欠失した、すなわちCR1(ΔEx23)、CR2(ΔEx24)、CR3(ΔEx25)、CR4(ΔEx26)、CR5(ΔEx27)、CR6(ΔEX28)、CR7+8(ΔEx29+30)、CR8(ΔEx30)、CR9(ΔE31)、CR10(ΔE32)またはCR11(ΔE33)SORLAタンパク質を生成するように操作した構築物でHEK293細胞に形質移入した。形質移入の72時間後に回収した細胞から溶解物を調製し、26レーンのSDS-PAGE NuPAGEシステムによってタンパク質を分離し、ウサギ由来のポリクローナルSORLA血清(sol-SORLA)を使用してウェスタンブロット分析によって分析した。SORLAブロットはHEK細胞でSORLAを発現するときに二重バンドを示すことが知られており、上部バンド(分子サイズが大きいためゲル中でより遅く流れる)は成熟SORLAを表し、下部バンド(分子サイズが小さいためゲル中でより速く流れる;矢印を参照)。構築物のそれぞれは、特異的なCRドメイン欠失SORLA受容体の発現をもたらした。興味深いことに、いくつかの欠失は、潜在的に全てのCRドメインが、受容体機能を妨害しないで欠失され得るわけではないことを示唆する驚くべき結果を示した、すなわち、SORLA二重バンドパターンが妨害されているCR4(ΔE26)及びCR9(ΔEx31)である。FL=完全長SORLA、Δ=デルタは除かれたエクソン/ドメインを示す、Ex=エクソン、CR。
【発明を実施するための形態】
【0021】
定義
本明細書で使用されるとき、文脈上明らかにそうでない場合を除き、「a」、「an」及び「the」という単数形には複数の指示対象が含まれる。
【0022】
「いくつかの実施形態」という用語は1または1を超える実施形態を含むことができる。
【0023】
「アルツハイマー病」及び「AD」という用語は本記載全体を通して相互交換可能に使用される。
【0024】
本文全体で使用される場合、または特許請求の範囲及び/または本明細書にて用語「含む(comprising)」と併せて使用される場合の「a」または「an」という単語の使用は、「1つ」を意味してもよいが、それはまた「1以上」、「少なくとも1」、及び「1または1以上」の意味とも一致する。したがって、例えば、「ASO」への言及は、複数のそのようなASO、例えば、1以上のASO、少なくとも1つのASO、または2以上のASOを含む。
【0025】
本明細書で使用されるとき「SORLA」という用語は、SORLA、ソルチリン関連の受容体、ソルチリン関連の受容体1、SORL1、11のリガンド結合反復と関連する低密度リポタンパク質受容体、11のリガンド結合反復と関連するLDLR、LR11、SorLA-1、LDLRクラスA反復を含有する選別タンパク質関連受容体及びgp250という用語と同義である。ヒトsorLAは、UniProtにおいて受入番号Q92673でアノテーションされている。
【0026】
本明細書で定義されるときポリヌクレオチド(またはポリペプチド)に関する相同性、同一性及び類似性という用語は、相互交換可能に使用され、配列を並べ、必要に応じてギャップを導入して最大のパーセント同一性/類似性を達成し、NCIUB規則(hftp://www.chem.qmul.ac.uk/iubmb/misc/naseq.html;NC-IUB,Eur.J.Biochem.(1985))に従って配列同一性の一部として保存的置換を検討したのち、対応するネイティブ核酸(またはアミノ酸)の残基とそれぞれ相同である、同一であるまたは類似する、候補配列における核酸(またはアミノ酸)の割合を指す。特に、類似性の割合は類似の物理化学的特性で保存された残基の割合を指す。5’または3’の伸長も、挿入(核酸の場合)も、またはN’もしくはC’の伸長も、挿入(ポリペプチドの場合)も同一性または類似性の低下をもたらさない。配列比較のための方法及びコンピュータプログラムは当該技術分野にて周知である。一般に、2つの配列間の所与の類似性は、これらの配列間の同一性が少なくとも類似性に等しいことを意味する;例えば、2つの配列が互いに80%類似する場合、それらは互いに80%未満の同一性は得られないが、90%の同一性を共有し得る。
【0027】
本明細書で定義されるように、「少なくとも80%の相同性、類似性または同一性」という用語は、本開示全体を通して、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%または少なくとも99%の相同性、類似性または同一性を意味する。
【0028】
ASOが介在するエクソンスキッピング
アンチセンスオリゴヌクレオチドを使用して、プレmRNA(前駆体mRNAとも呼ばれる)転写物にてエクソンスキッピングを誘導することができる。この種類のアンチセンスが介在するスプライシング調節は、例えば、スプライシング因子のプレmRNA(前駆体mRNAとも呼ばれる)転写物への結合を立体的に阻止することによって、スプライシングを操作するのにアンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)を使用する。
【0029】
主要な態様では、本開示は、SORL1のプレmRNA上の標的部位に結合する、及び/または標的部位と相補性であるアンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)に関するものであり、当該標的部位のヌクレオチド配列は、配列番号36、配列番号37、配列番号38、配列番号39、配列番号40、配列番号41、配列番号42、配列番号43、配列番号44、配列番号45及び配列番号46から成る群から選択されるヌクレオチド配列に、または配列番号36、配列番号37、配列番号38、配列番号39、配列番号40、配列番号41、配列番号42、配列番号43、配列番号44、配列番号45及び配列番号46から成る群から選択されるヌクレオチド配列に対して少なくとも80%の配列同一性もしくは相同性を有する、例えば、それに対して少なくとも80%、85%、90%、95%、98%もしくは99%の配列同一性もしくは相同性を有するヌクレオチド配列に含まれる。
【0030】
代わりの態様では、本開示は、SORL1のプレmRNA上の標的部位に結合することができるアンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)に関するものであり、当該標的部位のヌクレオチド配列は、配列番号36、配列番号37、配列番号38、配列番号39、配列番号40、配列番号41、配列番号42、配列番号43、配列番号44、配列番号45及び配列番号46から成る群から選択されるヌクレオチド配列に、または配列番号36、配列番号37、配列番号38、配列番号39、配列番号40、配列番号41、配列番号42、配列番号43、配列番号44、配列番号45及び配列番号46から成る群から選択されるヌクレオチド配列に対して少なくとも80%の配列同一性もしくは相同性を有する、例えば、それに対して少なくとも80%、85%、90%、95%、98%もしくは99%の配列同一性もしくは相同性を有するヌクレオチド配列に含まれる。
【0031】
当業者は、ASOの標的部位への十分な結合には相補性の塩基を介した結合が必要であることを理解するであろう。
【0032】
当業者は、SORL1のプレmRNAが、各エクソン(複数可)に隣接する上流配列及び/または下流配列から転写されるような追加のヌクレオチドの有無にかかわらず1以上のSORL1エクソンからの転写物として理解されることを認識するであろう。例えば、SORL1のプレmRNAは以下を含んでもよい:
-上流/下流の隣接イントロンから転写される100のヌクレオチドを含むエクソン23転写物(配列番号36)、
-上流/下流の隣接イントロンから転写される100のヌクレオチドを含むエクソン24転写物(配列番号37)、
-上流/下流の隣接イントロンから転写される100のヌクレオチドを含むエクソン25転写物(配列番号38)、
-上流/下流の隣接イントロンから転写される100のヌクレオチドを含むエクソン26転写物(配列番号39)、
-上流/下流の隣接イントロンから転写される100のヌクレオチドを含むエクソン27転写物(配列番号40)、
-上流/下流の隣接イントロンから転写される100のヌクレオチドを含むエクソン28転写物(配列番号41)、
-上流/下流の隣接イントロンから転写される100のヌクレオチドを含むエクソン29転写物(配列番号42)、
-上流/下流の隣接イントロンから転写される100のヌクレオチドを含むエクソン30転写物(配列番号43)、
-上流/下流の隣接イントロンから転写される100のヌクレオチドを含むエクソン31転写物(配列番号44)、
-上流/下流の隣接イントロンから転写される100のヌクレオチドを含むエクソン32転写物(配列番号45)、
-上流/下流の隣接イントロンから転写される100のヌクレオチドを含むエクソン33転写物(配列番号46)、
その際、エクソン23はSORLAのCRドメイン1をコードし、エクソン24はSORLAのCRドメイン2をコードし、エクソン25はSORLAのCRドメイン3をコードし、エクソン26はSORLAのCRドメイン4をコードし、エクソン27はSORLAのCRドメイン5をコードし、エクソン28はSORLAのCRドメイン6をコードし、エクソン29はSORLAのCRドメイン7をコードし、エクソン30はSORLAのCRドメイン8をコードし、エクソン31はSORLAのCRドメイン9をコードし、エクソン32はSORLAのCRドメイン10をコードし、及びエクソン33はSORLAのCRドメイン11をコードする。
【0033】
本開示のいくつかの実施形態では、標的部位のヌクレオチド配列は、配列番号36のヌクレオチド配列、または配列番号36に対して少なくとも80%の配列同一性もしくは相同性、例えば、それに対して少なくとも80%、85%、90%、95%、98%もしくは99%の配列同一性もしくは相同性を有するヌクレオチド配列を含む。
【0034】
本開示のいくつかの実施形態では、標的部位のヌクレオチド配列は、配列番号37のヌクレオチド配列、または配列番号37に対して少なくとも80%の配列同一性もしくは相同性、例えば、それに対して少なくとも80%、85%、90%、95%、98%もしくは99%の配列同一性もしくは相同性を有するヌクレオチド配列を含む。
【0035】
本開示のいくつかの実施形態では、標的部位のヌクレオチド配列は、配列番号38のヌクレオチド配列、または配列番号38に対して少なくとも80%の配列同一性もしくは相同性、例えば、それに対して少なくとも80%、85%、90%、95%、98%もしくは99%の配列同一性もしくは相同性を有するヌクレオチド配列を含む。
【0036】
本開示のいくつかの実施形態では、標的部位のヌクレオチド配列は、配列番号39のヌクレオチド配列、または配列番号39に対して少なくとも80%の配列同一性もしくは相同性、例えば、それに対して少なくとも80%、85%、90%、95%、98%もしくは99%の配列同一性もしくは相同性を有するヌクレオチド配列を含む。
【0037】
本開示のいくつかの実施形態では、標的部位のヌクレオチド配列は、配列番号40のヌクレオチド配列、または配列番号40に対して少なくとも80%の配列同一性もしくは相同性、例えば、それに対して少なくとも80%、85%、90%、95%、98%もしくは99%の配列同一性もしくは相同性を有するヌクレオチド配列を含む。
【0038】
本開示のいくつかの実施形態では、標的部位のヌクレオチド配列は、配列番号41のヌクレオチド配列、または配列番号41に対して少なくとも80%の配列同一性もしくは相同性、例えば、それに対して少なくとも80%、85%、90%、95%、98%もしくは99%の配列同一性もしくは相同性を有するヌクレオチド配列を含む。
【0039】
本開示のいくつかの実施形態では、標的部位のヌクレオチド配列は、配列番号42のヌクレオチド配列、または配列番号42に対して少なくとも80%の配列同一性もしくは相同性、例えば、それに対して少なくとも80%、85%、90%、95%、98%もしくは99%の配列同一性もしくは相同性を有するヌクレオチド配列を含む。
【0040】
本開示のいくつかの実施形態では、標的部位のヌクレオチド配列は、配列番号43のヌクレオチド配列、または配列番号43に対して少なくとも80%の配列同一性もしくは相同性、例えば、それに対して少なくとも80%、85%、90%、95%、98%もしくは99%の配列同一性もしくは相同性を有するヌクレオチド配列を含む。
【0041】
本開示のいくつかの実施形態では、標的部位のヌクレオチド配列は、配列番号44のヌクレオチド配列、または配列番号44に対して少なくとも80%の配列同一性もしくは相同性、例えば、それに対して少なくとも80%、85%、90%、95%、98%もしくは99%の配列同一性もしくは相同性を有するヌクレオチド配列を含む。
【0042】
本開示のいくつかの実施形態では、標的部位のヌクレオチド配列は、配列番号45のヌクレオチド配列、または配列番号45に対して少なくとも80%の配列同一性もしくは相同性、例えば、それに対して少なくとも80%、85%、90%、95%、98%もしくは99%の配列同一性もしくは相同性を有するヌクレオチド配列を含む。
【0043】
本開示のいくつかの実施形態では、標的部位のヌクレオチド配列は、配列番号46のヌクレオチド配列、または配列番号46に対して少なくとも80%の配列同一性もしくは相同性、例えば、それに対して少なくとも80%、85%、90%、95%、98%もしくは99%の配列同一性もしくは相同性を有するヌクレオチド配列を含む。
【0044】
本開示のいくつかの実施形態では、標的部位に結合する及び/または標的部位に相補性であるオリゴヌクレオチドは、SORLAの相補体型反復(CR)ドメインをコードするエクソンのエクソンスキッピングを引き起こし、その際、当該エクソンは、配列番号1に示されているエクソン23、配列番号2に示されているエクソン24、配列番号3に示されているエクソン25、配列番号4に示されているエクソン26、配列番号5に示されているエクソン27、配列番号6に示されているエクソン28、配列番号7に示されているエクソン29、配列番号8に示されているエクソン30、配列番号9に示されているエクソン31、配列番号10に示されているエクソン32、及び配列番号11に示されているエクソン33から成る群から選択されるヌクレオチド配列、または、配列番号1~配列番号11のいずれか1つに対して少なくとも80%の配列同一性もしくは相同性、例えば、それに対して少なくとも80%、85%、90%、95%、98%もしくは99%の配列同一性もしくは相同性を有するヌクレオチド配列を含む、またはそれから成る。
【0045】
本開示のいくつかの実施形態では、エクソンは、配列番号1に示されているエクソン23、配列番号2に示されているエクソン24、配列番号3に示されているエクソン25、配列番号4に示されているエクソン26、配列番号5に示されているエクソン27、配列番号6に示されているエクソン28、配列番号7に示されているエクソン29、配列番号8に示されているエクソン30、配列番号9に示されているエクソン31、配列番号10に示されているエクソン32、及び配列番号11に示されているエクソン33から成る群から選択されるヌクレオチド配列、または、配列番号1~配列番号11のいずれか1つに対して少なくとも80%の配列同一性もしくは相同性、例えば、それに対して少なくとも80%、85%、90%、95%、98%もしくは99%の配列同一性もしくは相同性を有するヌクレオチド配列を含む、またはそれから成る。
【0046】
本開示のいくつかの実施形態では、標的部位はSORLAの相補体型反復(CR)ドメインをコードするエクソンのエクソンスキッピングを引き起こし、その際、当該エクソンは配列番号1に示されているエクソン23から成るヌクレオチド配列を含む、またはそれから成る。
【0047】
本開示のいくつかの実施形態では、標的部位はSORLAの相補体型反復(CR)ドメインをコードするエクソンのエクソンスキッピングを引き起こし、その際、当該エクソンは配列番号2に示されているエクソン24から成るヌクレオチド配列を含む、またはそれから成る。
【0048】
本開示のいくつかの実施形態では、標的部位はSORLAの相補体型反復(CR)ドメインをコードするエクソンのエクソンスキッピングを引き起こし、その際、当該エクソンは配列番号3に示されているエクソン25から成るヌクレオチド配列を含む、またはそれから成る。
【0049】
本開示のいくつかの実施形態では、標的部位はSORLAの相補体型反復(CR)ドメインをコードするエクソンのエクソンスキッピングを引き起こし、その際、当該エクソンは配列番号4に示されているエクソン26から成るヌクレオチド配列を含む、またはそれから成る。
【0050】
本開示のいくつかの実施形態では、標的部位はSORLAの相補体型反復(CR)ドメインをコードするエクソンのエクソンスキッピングを引き起こし、その際、当該エクソンは配列番号5に示されているエクソン27から成るヌクレオチド配列を含む、またはそれから成る。
【0051】
本開示のいくつかの実施形態では、標的部位はSORLAの相補体型反復(CR)ドメインをコードするエクソンのエクソンスキッピングを引き起こし、その際、当該エクソンは配列番号6に示されているエクソン28から成るヌクレオチド配列を含む、またはそれから成る。
【0052】
本開示のいくつかの実施形態では、標的部位はSORLAの相補体型反復(CR)ドメインをコードするエクソンのエクソンスキッピングを引き起こし、その際、当該エクソンは配列番号7に示されているエクソン29から成るヌクレオチド配列を含む、またはそれから成る。
【0053】
本開示のいくつかの実施形態では、標的部位はSORLAの相補体型反復(CR)ドメインをコードするエクソンのエクソンスキッピングを引き起こし、その際、当該エクソンは配列番号8に示されているエクソン30から成るヌクレオチド配列を含む、またはそれから成る。
【0054】
本開示のいくつかの実施形態では、標的部位はSORLAの相補体型反復(CR)ドメインをコードするエクソンのエクソンスキッピングを引き起こし、その際、当該エクソンは配列番号9に示されているエクソン31から成るヌクレオチド配列を含む、またはそれから成る。
【0055】
本開示のいくつかの実施形態では、標的部位はSORLAの相補体型反復(CR)ドメインをコードするエクソンのエクソンスキッピングを引き起こし、その際、当該エクソンは配列番号10に示されているエクソン32から成るヌクレオチド配列を含む、またはそれから成る。
【0056】
本開示のいくつかの実施形態では、標的部位はSORLAの相補体型反復(CR)ドメインをコードするエクソンのエクソンスキッピングを引き起こし、その際、当該エクソンは配列番号11に示されているエクソン33から成るヌクレオチド配列を含む、またはそれから成る。
【0057】
本開示のいくつかの実施形態では、オリゴヌクレオチドは10~30の間のヌクレオチド長、例えば10~13のヌクレオチド、例えば10~16のヌクレオチド、例えば10~19のヌクレオチド、例えば10~22のヌクレオチド、例えば10~23のヌクレオチド、例えば10~26のヌクレオチド、例えば10~29のヌクレオチド、例えば10~30のヌクレオチドである。
【0058】
本開示のいくつかの実施形態では、オリゴヌクレオチドは、少なくとも10ヌクレオチド長、例えば、少なくとも12ヌクレオチド長、及び/または少なくとも14ヌクレオチド長、及び/または少なくとも16ヌクレオチド長及び/または少なくとも18ヌクレオチド長、及び/または少なくとも20ヌクレオチド長、及び/または少なくとも22ヌクレオチド長、及び/または少なくとも24ヌクレオチド長、及び/または少なくとも26ヌクレオチド長、及び/または少なくとも28ヌクレオチド長、及び/または少なくとも30ヌクレオチド長である。
【0059】
本開示のいくつかの実施形態では、オリゴヌクレオチドは21ヌクレオチド長である。
【0060】
本開示のいくつかの実施形態では、オリゴヌクレオチドは、40~60%、例えば、45~55%のGC含量を有する。
【0061】
本開示のいくつかの実施形態では、オリゴヌクレオチドはホスホロチオエート(PS)を含む骨格を含む。
【0062】
本開示のいくつかの実施形態では、オリゴヌクレオチドはさらに、少なくとも1つのヌクレオチド位置、または各ヌクレオチド位置に修飾を含む。
【0063】
本開示のいくつかの実施形態では、修飾は、核酸骨格、核酸塩基、リボース糖及び/または2’-リボース置換の修飾である。
【0064】
本開示のいくつかの実施形態では、オリゴヌクレオチドは2’-O-メトキシエチル糖修飾を含む。
【0065】
本開示のいくつかの実施形態では、オリゴヌクレオチドは2’-O-メチルリボース修飾を含む。
【0066】
本開示のいくつかの実施形態では、標的部位は3’スプライス部位境界、5’スプライス部位境界、及び/またはエクソンスプライスエンハンサー(ESE)部位にある。
【0067】
本開示のいくつかの実施形態では、標的部位は、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号20、配列番号21、配列番号22、配列番号23、配列番号28、配列番号29、配列番号30、配列番号31、配列番号36、配列番号37、配列番号38、配列番号39、配列番号40、配列番号41、配列番号42、配列番号43、配列番号44、配列番号45及び配列番号46から成る群から選択されるヌクレオチド配列、または配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号20、配列番号21、配列番号22、配列番号23、配列番号28、配列番号29、配列番号30、配列番号31、配列番号36、配列番号37、配列番号38、配列番号39、配列番号40、配列番号41、配列番号42、配列番号43、配列番号44、配列番号45及び配列番号46から成る群から選択されるヌクレオチド配列に対して少なくとも80%の配列同一性もしくは相同性、例えば、それに対して少なくとも80%、85%、90%、95%、98%、もしくは99%の配列同一性もしくは相同性を有するヌクレオチド配列から成る、またはそれを含む。
【0068】
本開示のいくつかの実施形態では、標的部位は配列番号12に示されているヌクレオチド配列、または配列番号12に対して少なくとも80%の配列同一性もしくは相同性、例えば、それに対して少なくとも80%、85%、90%、95%、98%もしくは99%の配列同一性もしくは相同性を有するヌクレオチド配列から成る、またはそれを含む。
【0069】
本開示のいくつかの実施形態では、標的部位は配列番号13に示されているヌクレオチド配列、または配列番号13に対して少なくとも80%の配列同一性もしくは相同性、例えば、それに対して少なくとも80%、85%、90%、95%、98%もしくは99%の配列同一性もしくは相同性を有するヌクレオチド配列から成る、またはそれを含む。
【0070】
本開示のいくつかの実施形態では、標的部位は配列番号14に示されているヌクレオチド配列、または配列番号14に対して少なくとも80%の配列同一性もしくは相同性、例えば、それに対して少なくとも80%、85%、90%、95%、98%もしくは99%の配列同一性もしくは相同性を有するヌクレオチド配列から成る、またはそれを含む。
【0071】
本開示のいくつかの実施形態では、標的部位は配列番号15に示されているヌクレオチド配列、または配列番号15に対して少なくとも80%の配列同一性もしくは相同性、例えば、それに対して少なくとも80%、85%、90%、95%、98%もしくは99%の配列同一性もしくは相同性を有するヌクレオチド配列から成る、またはそれを含む。
【0072】
本開示のいくつかの実施形態では、標的部位は配列番号20に示されているヌクレオチド配列、または配列番号20に対して少なくとも80%の配列同一性もしくは相同性、例えば、それに対して少なくとも80%、85%、90%、95%、98%もしくは99%の配列同一性もしくは相同性を有するヌクレオチド配列から成る、またはそれを含む。
【0073】
本開示のいくつかの実施形態では、標的部位は配列番号21に示されているヌクレオチド配列、または配列番号21に対して少なくとも80%の配列同一性もしくは相同性、例えば、それに対して少なくとも80%、85%、90%、95%、98%もしくは99%の配列同一性もしくは相同性を有するヌクレオチド配列から成る、またはそれを含む。
【0074】
本開示のいくつかの実施形態では、標的部位は配列番号22に示されているヌクレオチド配列、または配列番号22に対して少なくとも80%の配列同一性もしくは相同性、例えば、それに対して少なくとも80%、85%、90%、95%、98%もしくは99%の配列同一性もしくは相同性を有するヌクレオチド配列から成る、またはそれを含む。
【0075】
本開示のいくつかの実施形態では、標的部位は配列番号23に示されているヌクレオチド配列、または配列番号23に対して少なくとも80%の配列同一性もしくは相同性、例えば、それに対して少なくとも80%、85%、90%、95%、98%もしくは99%の配列同一性もしくは相同性を有するヌクレオチド配列から成る、またはそれを含む。
【0076】
本開示のいくつかの実施形態では、標的部位は配列番号28に示されているヌクレオチド配列、または配列番号28に対して少なくとも80%の配列同一性もしくは相同性、例えば、それに対して少なくとも80%、85%、90%、95%、98%もしくは99%の配列同一性もしくは相同性を有するヌクレオチド配列から成る、またはそれを含む。
【0077】
本開示のいくつかの実施形態では、標的部位は配列番号29に示されているヌクレオチド配列、または配列番号29に対して少なくとも80%の配列同一性もしくは相同性、例えば、それに対して少なくとも80%、85%、90%、95%、98%もしくは99%の配列同一性もしくは相同性を有するヌクレオチド配列から成る、またはそれを含む。
【0078】
本開示のいくつかの実施形態では、標的部位は配列番号30に示されているヌクレオチド配列、または配列番号30に対して少なくとも80%の配列同一性もしくは相同性、例えば、それに対して少なくとも80%、85%、90%、95%、98%もしくは99%の配列同一性もしくは相同性を有するヌクレオチド配列から成る、またはそれを含む。
【0079】
本開示のいくつかの実施形態では、標的部位は配列番号31に示されているヌクレオチド配列、または配列番号31に対して少なくとも80%の配列同一性もしくは相同性、例えば、それに対して少なくとも80%、85%、90%、95%、98%もしくは99%の配列同一性もしくは相同性を有するヌクレオチド配列から成る、またはそれを含む。
【0080】
本開示のいくつかの実施形態では、標的部位は配列番号36に示されているヌクレオチド配列、または配列番号36に対して少なくとも80%の配列同一性もしくは相同性、例えば、それに対して少なくとも80%、85%、90%、95%、98%もしくは99%の配列同一性もしくは相同性を有するヌクレオチド配列から成る、またはそれを含む。
【0081】
本開示のいくつかの実施形態では、標的部位は配列番号37に示されているヌクレオチド配列、または配列番号37に対して少なくとも80%の配列同一性もしくは相同性、例えば、それに対して少なくとも80%、85%、90%、95%、98%もしくは99%の配列同一性もしくは相同性を有するヌクレオチド配列から成る、またはそれを含む。
【0082】
本開示のいくつかの実施形態では、標的部位は配列番号38に示されているヌクレオチド配列、または配列番号38に対して少なくとも80%の配列同一性もしくは相同性、例えば、それに対して少なくとも80%、85%、90%、95%、98%もしくは99%の配列同一性もしくは相同性を有するヌクレオチド配列から成る、またはそれを含む。
【0083】
本開示のいくつかの実施形態では、標的部位は配列番号39に示されているヌクレオチド配列、または配列番号39に対して少なくとも80%の配列同一性もしくは相同性、例えば、それに対して少なくとも80%、85%、90%、95%、98%もしくは99%の配列同一性もしくは相同性を有するヌクレオチド配列から成る、またはそれを含む。
【0084】
本開示のいくつかの実施形態では、標的部位は配列番号40に示されているヌクレオチド配列、または配列番号40に対して少なくとも80%の配列同一性もしくは相同性、例えば、それに対して少なくとも80%、85%、90%、95%、98%もしくは99%の配列同一性もしくは相同性を有するヌクレオチド配列から成る、またはそれを含む。
【0085】
本開示のいくつかの実施形態では、標的部位は配列番号41に示されているヌクレオチド配列、または配列番号41に対して少なくとも80%の配列同一性もしくは相同性、例えば、それに対して少なくとも80%、85%、90%、95%、98%もしくは99%の配列同一性もしくは相同性を有するヌクレオチド配列から成る、またはそれを含む。
【0086】
本開示のいくつかの実施形態では、標的部位は配列番号42に示されているヌクレオチド配列、または配列番号42に対して少なくとも80%の配列同一性もしくは相同性、例えば、それに対して少なくとも80%、85%、90%、95%、98%もしくは99%の配列同一性もしくは相同性を有するヌクレオチド配列から成る、またはそれを含む。
【0087】
本開示のいくつかの実施形態では、標的部位は配列番号43に示されているヌクレオチド配列、または配列番号43に対して少なくとも80%の配列同一性もしくは相同性、例えば、それに対して少なくとも80%、85%、90%、95%、98%もしくは99%の配列同一性もしくは相同性を有するヌクレオチド配列から成る、またはそれを含む。
【0088】
本開示のいくつかの実施形態では、標的部位は配列番号44に示されているヌクレオチド配列、または配列番号44に対して少なくとも80%の配列同一性もしくは相同性、例えば、それに対して少なくとも80%、85%、90%、95%、98%もしくは99%の配列同一性もしくは相同性を有するヌクレオチド配列から成る、またはそれを含む。
【0089】
本開示のいくつかの実施形態では、標的部位は配列番号45に示されているヌクレオチド配列、または配列番号45に対して少なくとも80%の配列同一性もしくは相同性、例えば、それに対して少なくとも80%、85%、90%、95%、98%もしくは99%の配列同一性もしくは相同性を有するヌクレオチド配列から成る、またはそれを含む。
【0090】
本開示のいくつかの実施形態では、標的部位は配列番号46に示されているヌクレオチド配列、または配列番号46に対して少なくとも80%の配列同一性もしくは相同性、例えば、それに対して少なくとも80%、85%、90%、95%、98%もしくは99%の配列同一性もしくは相同性を有するヌクレオチド配列から成る、またはそれを含む。
【0091】
本開示のいくつかの実施形態では、オリゴヌクレオチドは、配列番号16、配列番号17、配列番号18、配列番号19、配列番号24、配列番号25、配列番号26、配列番号27、配列番号32、配列番号33、配列番号34及び配列番号35から成る群から選択されるヌクレオチド配列、または配列番号16、配列番号17、配列番号18、配列番号19、配列番号24、配列番号25、配列番号26、配列番号27、配列番号32、配列番号33、配列番号34及び配列番号35から成る群から選択されるヌクレオチド配列に対して少なくとも80%の配列同一性もしくは相同性、例えば、それに対して少なくとも80%、85%、90%、95%、98%もしくは99%の配列同一性もしくは相同性を有するヌクレオチド配列から成る、またはそれを含む。
【0092】
本開示のいくつかの実施形態では、オリゴヌクレオチドは配列番号16に示されているヌクレオチド配列、または配列番号16に対して少なくとも80%の配列同一性もしくは相同性、例えば、それに対して少なくとも80%、85%、90%、95%、98%もしくは99%の配列同一性もしくは相同性を有するヌクレオチド配列から成る、またはそれを含む。
【0093】
本開示のいくつかの実施形態では、オリゴヌクレオチドは配列番号17に示されているヌクレオチド配列、または配列番号17に対して少なくとも80%の配列同一性もしくは相同性、例えば、それに対して少なくとも80%、85%、90%、95%、98%もしくは99%の配列同一性もしくは相同性を有するヌクレオチド配列から成る、またはそれを含む。
【0094】
本開示のいくつかの実施形態では、オリゴヌクレオチドは配列番号18に示されているヌクレオチド配列、または配列番号18に対して少なくとも80%の配列同一性もしくは相同性、例えば、それに対して少なくとも80%、85%、90%、95%、98%もしくは99%の配列同一性もしくは相同性を有するヌクレオチド配列から成る、またはそれを含む。
【0095】
本開示のいくつかの実施形態では、オリゴヌクレオチドは配列番号19に示されているヌクレオチド配列、または配列番号19に対して少なくとも80%の配列同一性もしくは相同性、例えば、それに対して少なくとも80%、85%、90%、95%、98%もしくは99%の配列同一性もしくは相同性を有するヌクレオチド配列から成る、またはそれを含む。
【0096】
本開示のいくつかの実施形態では、オリゴヌクレオチドは配列番号24に示されているヌクレオチド配列、または配列番号24に対して少なくとも80%の配列同一性もしくは相同性、例えば、それに対して少なくとも80%、85%、90%、95%、98%もしくは99%の配列同一性もしくは相同性を有するヌクレオチド配列から成る、またはそれを含む。
【0097】
本開示のいくつかの実施形態では、オリゴヌクレオチドは配列番号25に示されているヌクレオチド配列、または配列番号25に対して少なくとも80%の配列同一性もしくは相同性、例えば、それに対して少なくとも80%、85%、90%、95%、98%もしくは99%の配列同一性もしくは相同性を有するヌクレオチド配列から成る、またはそれを含む。
【0098】
本開示のいくつかの実施形態では、オリゴヌクレオチドは配列番号26に示されているヌクレオチド配列、または配列番号26に対して少なくとも80%の配列同一性もしくは相同性、例えば、それに対して少なくとも80%、85%、90%、95%、98%もしくは99%の配列同一性もしくは相同性を有するヌクレオチド配列から成る、またはそれを含む。
【0099】
本開示のいくつかの実施形態では、オリゴヌクレオチドは配列番号27に示されているヌクレオチド配列、または配列番号27に対して少なくとも80%の配列同一性もしくは相同性、例えば、それに対して少なくとも80%、85%、90%、95%、98%もしくは99%の配列同一性もしくは相同性を有するヌクレオチド配列から成る、またはそれを含む。
【0100】
本開示のいくつかの実施形態では、オリゴヌクレオチドは配列番号32に示されているヌクレオチド配列、または配列番号32に対して少なくとも80%の配列同一性もしくは相同性、例えば、それに対して少なくとも80%、85%、90%、95%、98%もしくは99%の配列同一性もしくは相同性を有するヌクレオチド配列から成る、またはそれを含む。
【0101】
本開示のいくつかの実施形態では、オリゴヌクレオチドは配列番号33に示されているヌクレオチド配列、または配列番号33に対して少なくとも80%の配列同一性もしくは相同性、例えば、それに対して少なくとも80%、85%、90%、95%、98%もしくは99%の配列同一性もしくは相同性を有するヌクレオチド配列から成る、またはそれを含む。
【0102】
本開示のいくつかの実施形態では、オリゴヌクレオチドは配列番号34に示されているヌクレオチド配列、または配列番号34に対して少なくとも80%の配列同一性もしくは相同性、例えば、それに対して少なくとも80%、85%、90%、95%、98%もしくは99%の配列同一性もしくは相同性を有するヌクレオチド配列から成る、またはそれを含む。
【0103】
本開示のいくつかの実施形態では、オリゴヌクレオチドは配列番号35に示されているヌクレオチド配列、または配列番号35に対して少なくとも80%の配列同一性もしくは相同性、例えば、それに対して少なくとも80%、85%、90%、95%、98%もしくは99%の配列同一性もしくは相同性を有するヌクレオチド配列から成る、またはそれを含む。
【0104】
本開示のいくつかの実施形態では、オリゴヌクレオチドは、高ストリンジェント溶液ハイブリッド形成条件下で標的部位と特異的にハイブリッド形成する。
【0105】
本開示のいくつかの実施形態では、標的部位への結合の際、オリゴヌクレオチドはスプライシング因子が結合するのを防止する。
【0106】
本開示のいくつかの実施形態では、オリゴヌクレオチドは部分またはナノ粒子配合物にコンジュゲートされる。
【0107】
本開示のいくつかの実施形態では、部分は細胞標的化部分及び/または細胞透過部分である。
【0108】
本開示のいくつかの実施形態では、オリゴヌクレオチドはトリアンテナリーN-アセチルガラクトサミン(GalNAc)部分及び/またはペプチドにコンジュゲートされる。
【0109】
本開示のいくつかの実施形態では、オリゴヌクレオチドは5’スプライス部位、3’スプライス部位及び/またはエクソンスプライスエンハンサー部位(ESE)を標的とする。
【0110】
前記オリゴヌクレオチドがさらに、前記オリゴヌクレオチドの一方または双方の末端に、少なくとも1つの追加のヌクレオチド、少なくとも2つの追加のヌクレオチド、少なくとも3つの追加のヌクレオチドを含む、先行請求項のいずれか1項に記載のオリゴヌクレオチド。
【0111】
さらなる態様では、本開示は前記オリゴヌクレオチドを含む組成物を対象とする。
【0112】
本開示のいくつかの実施形態では、組成物は医薬組成物である。
【0113】
本開示のいくつかの実施形態では、医薬組成物はさらに、薬学的に許容される担体を含む。
【0114】
本開示のいくつかの実施形態では、組成物は前記オリゴヌクレオチドの1以上を含む。
【0115】
本開示のいくつかの実施形態では、組成物は配列番号16及び配列番号17に示されているASOを含む。
【0116】
本開示のいくつかの実施形態では、組成物は配列番号16及び配列番号18に示されているASOを含む。
【0117】
本開示のいくつかの実施形態では、組成物は配列番号16及び配列番号19に示されているASOを含む。
【0118】
本開示のいくつかの実施形態では、組成物は配列番号17及び配列番号18に示されているASOを含む。
【0119】
本開示のいくつかの実施形態では、組成物は配列番号17及び配列番号19に示されているASOを含む。
【0120】
本開示のいくつかの実施形態では、組成物は配列番号18及び配列番号19に示されているASOを含む。
【0121】
本開示のいくつかの実施形態では、組成物は配列番号16及び配列番号17及び配列番号18に示されているASOを含む。
【0122】
本開示のいくつかの実施形態では、組成物は配列番号16及び配列番号18及び配列番号19に示されているASOを含む。
【0123】
本開示のいくつかの実施形態では、組成物は配列番号17及び配列番号18及び配列番号19に示されているASOを含む。
【0124】
本開示のいくつかの実施形態では、組成物は配列番号16及び配列番号17及び配列番号18及び配列番号19に示されているASOを含む。
【0125】
本開示のいくつかの実施形態では、組成物は配列番号24及び配列番号25に示されているASOを含む。
【0126】
本開示のいくつかの実施形態では、組成物は配列番号24及び配列番号26に示されているASOを含む。
【0127】
本開示のいくつかの実施形態では、組成物は配列番号24及び配列番号27に示されているASOを含む。
【0128】
本開示のいくつかの実施形態では、組成物は配列番号25及び配列番号26に示されているASOを含む。
【0129】
本開示のいくつかの実施形態では、組成物は配列番号25及び配列番号27に示されているASOを含む。
【0130】
本開示のいくつかの実施形態では、組成物は配列番号26及び配列番号27に示されているASOを含む。
【0131】
本開示のいくつかの実施形態では、組成物は配列番号24及び配列番号25及び配列番号26に示されているASOを含む。
【0132】
本開示のいくつかの実施形態では、組成物は配列番号24及び配列番号26及び配列番号27に示されているASOを含む。
【0133】
本開示のいくつかの実施形態では、組成物は配列番号25及び配列番号26及び配列番号27に示されているASOを含む。
【0134】
本開示のいくつかの実施形態では、組成物は配列番号24及び配列番号25及び配列番号26及び配列番号27に示されているASOを含む。
【0135】
本開示のいくつかの実施形態では、組成物は配列番号32及び配列番号33に示されているASOを含む。
【0136】
本開示のいくつかの実施形態では、組成物は配列番号32及び配列番号34に示されているASOを含む。
【0137】
本開示のいくつかの実施形態では、組成物は配列番号32及び配列番号35に示されているASOを含む。
【0138】
本開示のいくつかの実施形態では、組成物は配列番号33及び配列番号34に示されているASOを含む。
【0139】
本開示のいくつかの実施形態では、組成物は配列番号33及び配列番号35に示されているASOを含む。
【0140】
本開示のいくつかの実施形態では、組成物は配列番号34及び配列番号35に示されているASOを含む。
【0141】
本開示のいくつかの実施形態では、組成物は配列番号32及び配列番号33及び配列番号34に示されているASOを含む。
【0142】
本開示のいくつかの実施形態では、組成物は配列番号32及び配列番号34及び配列番号35に示されているASOを含む。
【0143】
本開示のいくつかの実施形態では、組成物は配列番号33及び配列番号34及び配列番号35に示されているASOを含む。
【0144】
本開示のいくつかの実施形態では、組成物は配列番号32及び配列番号33及び配列番号34及び配列番号35に示されているASOを含む。
【0145】
さらなる態様では、本開示は医薬で使用するための前記アンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)及び/または前記組成物を対象とする。
【0146】
さらなる態様では、本開示は、アルツハイマー病(AD)またはアルツハイマー病に関連する疾患もしくは障害の予防、治療及び/または緩和に使用するための前記アンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)及び/または前記組成物を対象とする。
【0147】
当業者は、本明細書に開示されている発明が、SORLAのCRドメインにて病的突然変異を保有するAD患者にてADを防止する及び/またはADを治療する及び/またはADの症状を緩和するのに使用され得ることを理解するであろう。ADは構造的レベルで脳に影響を及ぼす破壊的疾患である。したがって、初期段階で、例えば、症状の発症前、またはAD初期段階で、または実質的な構造的脳リモデリングの前に、病的に変異したCRドメインのASOが介在するエクソンスキッピングを提供することが有益であってもよい。例えば、本明細書に記載されているアプローチは、疾患発生前のAD患者の家族の治療に適用可能であろう。
【0148】
本開示のいくつかの実施形態では、本発明の1以上のASOまたは本発明の1以上のASOを含む組成物は、AD症状の発症前に個人に投与される。
【0149】
本開示のいくつかの実施形態では、本発明の1以上のASOまたは本発明の1以上のASOを含む組成物は、AD症状の発症前に個人に投与される。
【0150】
本開示のいくつかの実施形態では、本発明の1以上のASO、または本発明の1以上のASOを含む組成物は、家族がADと診断されたときに個人に投与される。
【0151】
あるいは、本明細書に開示されている発明は早期症状がある患者を治療するのに適用可能であろう。
【0152】
本開示のいくつかの実施形態では、本発明の1以上のASOまたは本発明の1以上のASOを含む組成物は早期AD症状がある個人に投与される。
【0153】
あるいは、本明細書に開示されている発明はADの種々の疾患段階における患者の治療に適用可能であろう。
【0154】
本開示のいくつかの実施形態では、本発明の1以上のASOまたは本発明の1以上のASOを含む組成物は種々の程度のAD症状がある個人に投与される。
【0155】
さらに、本明細書に開示されている発明は、生理的SORLA機能を回復させるというその性質から、ADの後期段階の患者の治療に適用可能であろう。
【0156】
本開示のいくつかの実施形態では、本発明の1以上のASOまたは本発明の1以上のASOを含む組成物はAD後期段階である患者に投与される。
【0157】
本開示のいくつかの実施形態では、有効量のアンチセンスオリゴヌクレオチドは眼、脊髄、脳脊髄液、脳及び/または肝臓に投与される。
【0158】
本開示のいくつかの実施形態では、有効量のアンチセンスオリゴヌクレオチドは、個人の近親者がアルツハイマー病と診断された場合に、前記個人に投与される。
【0159】
本開示のいくつかの実施形態では、有効量のアンチセンスオリゴヌクレオチドは、個人の近親者がアルツハイマー病に今罹患している、またはアルツハイマー病にずっと罹患していることが判明した場合に、前記個人に投与される。
【0160】
例えば、ある個人の近親者がADに罹患していることは、前記近親者が臨床医によって診断されたときに判明してもよい。あるいは、例えば、前記個人の近親者がアルツハイマー病に今罹患している、またはずっと罹患していることは、家族の記録または思い出のような他の供給源から情報を得ることによって判明してもよい。
【0161】
ある個人の近親者は個人の家族の一員として理解されてもよい。
【0162】
ある個人の近親者は前記個人と遺伝物質を共有している人として理解されてもよい。
【0163】
例えば、個人の近親者は曾祖母である。
例えば、個人の近親者は曾祖父である。
例えば、個人の近親者は祖母である。
例えば、個人の近親者は祖父である。
例えば、個人の近親者は母である。
例えば、個人の近親者は父である。
【0164】
例えば、個人の近親者は同胞である。
例えば、個人の近親者は兄弟である。
例えば、個人の近親者は娘である。
例えば、個人の近親者は息子である。
【0165】
本開示のいくつかの実施形態では、有効量のアンチセンスオリゴヌクレオチドは、個人の家族の1人以上がアルツハイマー病に罹患していることが証明された時点で、前記個人に投与される。
【0166】
本開示のいくつかの実施形態では、有効量のアンチセンスオリゴヌクレオチドは、個人の家族の1人以上がアルツハイマー病に罹患していることが証明された時点で、前記個人に投与される。
【0167】
当業者は、ADを発症するリスクの遺伝的素因を理解するであろう。当業者は、ADを発症するリスクがある個人に、例えば、ADと診断された人の近親者である場合にリスクを有する個人に本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドを投与することは、例えば、疾患の発症前にADを予防する可能性、またはADの症状を軽減する可能性を提供することを理解するであろう。
【0168】
さらなる態様では、本開示は、アルツハイマー病(AD)またはアルツハイマー病に関連する疾患もしくは障害を治療するための薬物の製造における、前記アンチセンスオリゴヌクレオチドまたは前記組成物の使用を対象とする。
【0169】
さらなる態様では、本開示は、アルツハイマー病(AD)またはアルツハイマー病に関連する疾患もしくは障害を治療するための薬物の調製のための前記アンチセンスオリゴヌクレオチドの使用を対象とする。
【0170】
さらなる態様では、本開示は、前記アンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)及び/または前記組成物を使用して細胞、組織または臓器におけるSORL1転写物にてエクソンスキッピングに介在する方法を対象とするものであり、その際、エクソンは、SORL1のエクソン23、エクソン24、エクソン25、エクソン26、エクソン27、エクソン28、エクソン29、エクソン30、エクソン31、エクソン32及びエクソン33から成る群から選択される。
【0171】
本開示のいくつかの実施形態では、1つのASOが前記方法に使用される。
【0172】
本開示のいくつかの実施形態では、2つ以上のASO、例えば2つのASO、例えば3つのASO、例えば4つのASO、例えば5つのASO、例えば6つのASOが前記方法にて使用される。
【0173】
本開示のいくつかの実施形態では、前記方法に使用されるASOは配列番号16及び配列番号17に示されているASOである。
【0174】
本開示のいくつかの実施形態では、前記方法に使用されるASOは配列番号16及び配列番号18に示されているASOである。
【0175】
本開示のいくつかの実施形態では、前記方法に使用されるASOは配列番号16及び配列番号19に示されているASOである。
【0176】
本開示のいくつかの実施形態では、前記方法に使用されるASOは配列番号17及び配列番号18に示されているASOである。
【0177】
本開示のいくつかの実施形態では、前記方法に使用されるASOは配列番号17及び配列番号19に示されているASOである。
【0178】
本開示のいくつかの実施形態では、前記方法に使用されるASOは配列番号18及び配列番号19に示されているASOである。
【0179】
本開示のいくつかの実施形態では、組成物は配列番号16及び配列番号17及び配列番号18に示されているASOを含む。
【0180】
本開示のいくつかの実施形態では、前記方法に使用されるASOは配列番号16及び配列番号18及び配列番号19に示されているASOである。
【0181】
本開示のいくつかの実施形態では、前記方法に使用されるASOは配列番号17及び配列番号18及び配列番号19に示されているASOである。
【0182】
本開示のいくつかの実施形態では、前記方法に使用されるASOは配列番号16及び配列番号17及び配列番号18及び配列番号19に示されているASOである。
【0183】
本開示のいくつかの実施形態では、前記方法に使用されるASOは配列番号24及び配列番号25に示されているASOである。
【0184】
本開示のいくつかの実施形態では、前記方法に使用されるASOは配列番号24及び配列番号26に示されているASOである。
【0185】
本開示のいくつかの実施形態では、前記方法に使用されるASOは配列番号24及び配列番号27に示されているASOである。
【0186】
本開示のいくつかの実施形態では、前記方法に使用されるASOは配列番号25及び配列番号26に示されているASOである。
【0187】
本開示のいくつかの実施形態では、前記方法に使用されるASOは配列番号25及び配列番号27に示されているASOである。
【0188】
本開示のいくつかの実施形態では、前記方法に使用されるASOは配列番号26及び配列番号27に示されているASOである。
【0189】
本開示のいくつかの実施形態では、前記方法に使用されるASOは配列番号24及び配列番号25及び配列番号26に示されているASOである。
【0190】
本開示のいくつかの実施形態では、前記方法に使用されるASOは配列番号24及び配列番号26及び配列番号27に示されているASOである。
【0191】
本開示のいくつかの実施形態では、前記方法に使用されるASOは配列番号25及び配列番号26及び配列番号27に示されているASOである。
【0192】
本開示のいくつかの実施形態では、前記方法に使用されるASOは配列番号24及び配列番号25及び配列番号26及び配列番号27に示されているASOである。
【0193】
本開示のいくつかの実施形態では、前記方法に使用されるASOは配列番号32及び配列番号33に示されているASOである。
【0194】
本開示のいくつかの実施形態では、前記方法に使用されるASOは配列番号32及び配列番号34に示されているASOである。
【0195】
本開示のいくつかの実施形態では、前記方法に使用されるASOは配列番号32及び配列番号35に示されているASOである。
【0196】
本開示のいくつかの実施形態では、前記方法に使用されるASOは配列番号33及び配列番号34に示されているASOである。
【0197】
本開示のいくつかの実施形態では、前記方法に使用されるASOは配列番号33及び配列番号35に示されているASOである。
【0198】
本開示のいくつかの実施形態では、前記方法に使用されるASOは配列番号34及び配列番号35に示されているASOである。
【0199】
本開示のいくつかの実施形態では、前記方法に使用されるASOは配列番号32及び配列番号33及び配列番号34に示されているASOである。
【0200】
本開示のいくつかの実施形態では、前記方法に使用されるASOは配列番号32及び配列番号34及び配列番号35に示されているASOである。
【0201】
本開示のいくつかの実施形態では、前記方法に使用されるASOは配列番号33及び配列番号34及び配列番号35に示されているASOである。
【0202】
本開示のいくつかの実施形態では、前記方法に使用されるASOは配列番号32及び配列番号33及び配列番号34及び配列番号35に示されているASOである。
【0203】
本開示のいくつかの実施形態では、1つのエクソンのエクソンスキッピングには前記方法が介在する。
【0204】
本開示のいくつかの実施形態では、1を超えるエクソン、例えば2つのエクソン、例えば3つのエクソン、例えば4つのエクソンのエクソンスキッピングには前記方法が介在する。
【0205】
代わりのさらなる態様では、本開示は、対象にてASOが介在するSORL1のエクソンスキッピングの効率を判定する方法を対象とするものであり、当該方法は以下の工程:
a)ASOによる治療の前に得られる、患者由来の脳脊髄液を含む第1の試料にて排出SORLAのレベルを分析する工程と
b)ASOによる治療後に得られる、a)と同じ患者由来の脳脊髄液を含む第2の試料にて排出SORLAのレベルを分析する工程と
c)a)及びb)の試料における排出SORLAのレベルを比較する工程とを含み、
それによって、b)における排出SORLAのレベルがa)よりも高ければエクソンスキッピングと判定する。
【0206】
代わりの態様では、本開示は、対象にてASOが介在するSORL1のエクソンスキッピングの効率を判定する方法を対象とするものであり、当該方法は以下の工程:
a)ASOによる治療の前に得られる、患者由来の脳脊髄液を含む第1の試料にて排出SORLAのレベルを分析する工程と
b)ASOによる治療後に得られる、a)と同じ患者由来の脳脊髄液を含む第2の試料にて排出SORLAのレベルを分析する工程と
c)a)及びb)の試料における排出SORLAのレベルを比較する工程と、
d)b)における排出SORLAのレベルがa)よりも高ければエクソンスキッピングと判定する工程とを含む。
【0207】
当業者は、本明細書に開示されている実施例にも記載されているように、排出SORLAのレベルが、細胞内で生理的に処理されるので生理的プロセスに従って排出され得る機能的なSORLAの指標として使用されてもよいことを理解するであろう。例えば、1以上のCRドメインにおける突然変異のせいで誤って折り畳まれている機能的ではないSORLAは生理的に処理されず、排出されない、または排出の程度が低くなる。例えば、本明細書に開示されているASOを使用するエクソンスキッピング法によって機能性が回復すると、変異したエクソンをそのように除去し、SORLAのプロセシング及び排出が回復する。
【0208】
本開示のいくつかの実施形態では、前記方法は任意で、ASOによる治療後のいくつかの時点で試料b)を得る工程を含むので、ASO介在性のエクソンスキッピングの効率を経時的にモニターすることを含む。
【0209】
さらなる態様では、本開示は、SORL1突然変異があると特定された患者がASO介在性のエクソンスキッピングによる治療から利益を得るかどうかを調べる方法を対象とするものであり、当該方法は以下の工程:
a)SORL1のエクソン23~33のいずれか1つにて突然変異を特定する工程と、
b)当該患者にて特定されたSORL1突然変異を細胞株に導入する工程と
c)特定された突然変異を保有するエクソンを標的とする1以上のASOを選択する工程と
d)選択された1以上のASOを含む培地と細胞の第1のアリコートを接触させ、ASOを含まない培地と細胞の第2のアリコートを接触させる工程と、
e)第1のアリコート及び第2のアリコートにおける排出SORLAのレベルを分析する工程と、
f)第1のアリコート及び第2のアリコートにおける排出SORLAのレベルを比較する工程とを含み、
それによって、第1のアリコートにおける排出SORLAのレベルが第2のアリコートよりも高ければ、患者が1以上のASOによる治療から利益を得ると判定する。
【0210】
本開示のいくつかの実施形態では、前記方法は試験管内の方法である。
【0211】
さらなる態様では、本開示は、アルツハイマー病(AD)患者の治療に好適なASOを生成する方法を対象とするものであり、その際、患者はSORLAの相補体型反復(CR)ドメインをコードするエクソンにて突然変異を保有し、当該方法は以下の工程:
a)請求項1~21のいずれか1項に記載のASOを特定する、例えば、コンピューターによって特定する工程と、
b)ASOの標的部位が突然変異を含むかどうか、またはASOの標的サイズが突然変異を含まないかどうかを決定する工程とを含み、
それによって、突然変異を含まない標的部位に結合するASOがAD患者の治療に好適であると判定する。
【0212】
当業者は、ASO標的部位における突然変異がASOの効果的な結合を損なう場合があることを理解するであろう。
【0213】
本開示のいくつかの実施形態では、前記突然変異は、カルシウムケージ突然変異または奇数システイン突然変異である。
【0214】
本開示のいくつかの実施形態では、前記突然変異はヒトSORL1の1080位におけるアルギニンからシステインへの置換(R1080C)である、または当該突然変異はヒトSORL1の1105位におけるアスパラギン酸からヒスチジンへの置換(C1105H)である。
【実施例】
【0215】
実施例1:SORL1特異的エクソンスキッピングASOの開発
目的
概念実証を提供するために、我々はSORL1のエクソン23、SORL1のエクソン27及びSORL1のエクソン33のエクソンスキッピングを誘導する、または誘導する候補である個々のASOを特定した。
【0216】
背景:
ヒトSORLAポリペプチドは、VPS10pドメイン、EGFドメインと連結されたYWTD-b-プロペラドメイン、11のCRドメイン、6の3Fnドメイン、膜貫通ドメイン、及び細胞質尾部ドメインを含む多数のタンパク質ドメインに折り畳まれる2214のアミノ酸を含有する(
図1)。CRドメインはエクソン23~33によってコードされている。CRドメイン配列は、3つのドメイン内ジスルフィドを形成する6つの厳密に保存されたシステインを含む約40のアミノ酸を含有する(
図2A及びB)。また、酸性側鎖を持つ4つの残基も保存され、それらはカルシウムイオンの8面体配位で機能する。
図2CはSORLAの11のCRドメイン配列の配列比較を示し、ドメイン境界はそれらの個々のエクソン構造(すなわち、エクソン23~33)に従う。
【0217】
図3はアンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)をエクソンスキッピングにてどのように使用することができるかを示す概略図である。11のCRドメインのそれぞれはそれ自体のエクソン(エクソン23~33)によってコードされている。これらのエクソンのそれぞれは3ヌクレオチドの倍数を含有するので、エクソンのスキッピングは下流のエクソンのリーディングフレームに影響を与えない。したがって、3’スプライス部位、5’スプライス部位及び/または1以上のエクソンのスプライスエンハンサー部位(ESE)を標的とする個々のエクソンに対するASOを使用して、本明細書でエクソン23によって例示されるように、SORL1転写物から変異したエクソンを除去することによってアルツハイマー病を治療することができる。
【0218】
興味深いことに、アルツハイマー病患者由来のSORL1変異型はSORL1遺伝子全体に広がっており、したがって、すべての変異型の25%超が11のCRドメインをコードするゲノム領域に位置する(Holstege,2020)。
【0219】
我々は最近、CRドメイン配列におけるONC(奇数システイン)変異型及びCC(カルシウムケージ)変異型の分布を分析した(データは示さない)。最近公開されたエクソーム配列決定データのAD患者にて特定されたSORL1変異型を、AD患者及び非認知症対照からマッピングした。11のCRドメインはそれぞれ、AD患者由来の突然変異を抱いている
【0220】
図4はASO処理及びSORLA活性へのその後の効果の根拠を示す。
図4Aは正常なタンパク質機能及びエンドソームプロセシングをもたらす野生型(WT)SORL1の遺伝子発現を説明している。野生型対立遺伝子から発現されるSORLAは、11のCRドメイン(11×)を有し、エンドソームでのカーゴ再利用にて機能する。
図4Bは野生型対立遺伝子からの翻訳生成物にも影響を及ぼす可能性がある受容体の誤った折り畳み及びER保持につながるONC型またはCC型のAD変異(黒色のCRドメインとして示される)がある対立遺伝子から発現されたSORLAを示す。結果として、変異したSORLAは、正常なエンドソームでのプロセシングを受けることができず、APPのアミロイド形成性プロセシングを妨げることができないのでADにつながる。
図4Cは、10の機能的なCRドメイン(10×)を含有し、且つ完全長SORLAタンパク質と区別できない機能、すなわち、正常なタンパク質機能及びエンドソームでのプロセシングの機能を有する、エクソンスキッピングASOで処理した疾患対立遺伝子由来のSORLAを説明している。その結果、AD症状が軽減し、理想的にはADが治癒するであろう。
【0221】
エクソン23、エクソン27またはエクソン33を標的とするASO候補の特定
材料及び方法:
エクソン23、27及び33における予測されたESE(エクソンスプライスエンハンサー)エレメントに基づいて、我々はエクソン23(以下に記載されているASO23.1、23.2、23.3、23.4)、エクソン27(ASO27.1、27.2、27.3、27.4)及びエクソン33(以下に記載されているASO 33.1、33.2、33.3、33.4)を標的とするASO候補を特定した。第1セットの実験では、これらの分子が初期細胞実験に好適であり、細胞培養実験でこれらの分子を調べているので、我々は2’-O-メチル(2’OMe)リボース修飾を持つ標準骨格ホスホロチオエート(PS)ASO(ASO 23.1、23.2、23.3、23.4)を購入した。エクソン27及び33を標的とするASO候補も購入し、追跡実験で調べる。
【0222】
スキッピング効率を向上させるために、我々は、最適な配列を系統的に定義し、さまざまな骨格及びリボースの化学の影響を調査し、追加の実験にて、エクソンスキッピングに最も大きな効果があるESEを標的とするASOを選択する一次評価からの結果に基づいて、一連の新しいASOを設計するであろう。
【0223】
リボースの化学的性質について、我々は2’-O-メトキシエチル修飾に対する効果を調べる予定である。特に、我々は、ホスホロジアミデートモルホリンオリゴマー(PMO)、ペプチド核酸(PNA)、及びロック核酸(LNA)を含む修飾された骨格化学を有するASOを調べるであろう(Dhuri 2020に概説されている)。
【0224】
結果:
我々は、オンラインツールSpliceAid(Piva 2009)を使用して、(予測された)強力なエクソンスプライスエンハンサー(ESE)を特定するためにコンピューターによる分析を行った。SORLAのCRドメイン(40の位置のうちの14の位置が11のCRドメインにて保存されたアミノ酸を含有する)間での高い配列類似性のため、我々は3’ssの境界を標的とする配列を優先することを決定した。3’ssでの転写物を標的とすることのさらなる利点は、ASOはカルシウムケージに影響を及ぼす疾患変異型を含有するエクソンを標的とすることができるはずなので、最適な状況ではASO配列の一部ではなく、疾患対立遺伝子にとってミスマッチとなる、カルシウムケージの一部である残基をコードする配列までの距離である。さらなる実験では、他の選択肢、例えば、エクソン23~33のいずれか1つに関する3’スプライス部位(3’ss)境界、5’スプライス部位(5’ss)境界、及び/または1以上のエクソンスプライスエンハンサー(ESE)部位を標的とする他の選択肢が探索されるであろう。
【0225】
3つのエクソン23,27及び33のそれぞれについて、我々はスプライシング増強配列の存在を予測する最も高い正のスコア(負のスコアは、スプライシング抑制配列を予測する)を持つESEを標的とする合計4つの配列を選択した:(
図5及び表1~3に概説されているようにASO23.1、ASO23.2、ASO23.3、ASO23.4(Ex23については
図5A,Dを参照のこと)、ASO27.1、ASO27.2、ASO27.3、ASO27.4(Ex27については
図5B、Eを参照のこと)、ならびにASO33.1、ASO33.2、ASO33.3、及びASO33.4(Ex33は
図5C、Fを参照のこと)。
図5D~Fでは、灰色のさまざまな色合いのバーはスプライス因子の結合部位を示す。ASOがこれらの部位を標的とする場合、ASOは標的配列へのスプライス因子のアクセスを遮断し、その結果、スプライシングが阻害され、エクソンがスキッピングされるので、エクソンスキッピングを誘導する可能性が高い。
【0226】
【0227】
以下の配列(5’-3’、センス鎖)はエクソン23(大文字)と、5’及び3’隣接イントロン配列(小文字)とを示す:
tcccctgccgcactctgatgggtagAGAACACCTGTCTTCGCAACCAGTATCGCTGCAGCAACGGGAACTGTATCAACAGCATTTGGTGGTGTGACTTTGACAACGACTGTGGAGACATGAGCGATGAGAGAAACTGCCgtgagtcttctggattggacgttaa
【0228】
エクソン23を含むそれぞれの(部分的な)前駆体mRNA転写物は(下線部:ASO23.1-ASO23.4の標的部位)である:
uccccugccgcacucugauggguagAGAACACCUGUCUUCGCAACCAGUAUCGCUGCAGCAACGGGAACUGUAUCAACAGCAUUUGGUGGUGUGACUUUGACAACGACUGUGGAGACAUGAGCGAUGAGAGAAACUGCCgugagucuucuggauuggacguuaa
【0229】
【0230】
以下の配列(5’-3’、センス鎖)はエクソン27(大文字)と、5’及び3’の隣接イントロン配列(小文字)とを示す:
tctgtgttgttgaattctatttcagAGAAGAAGTGCAATGGATTCCGCTGCCCAAACGGCACTTGCATCCCATCCAGCAAACATTGTGATGGTCTGCGTGATTGCTCTGATGGCTCCGATGAACAGCACTGCGgtgagttcattccttgcccccagga
【0231】
エクソン27を含むそれぞれの(部分的な)前駆体mRNA転写物は(下線部:ASO27.1-ASO27.4の標的部位)である:
ucuguguuguugaauucuauuucagAGAAGAAGUGCAAUGGAUUCCGCUGCCCAAACGGCACUUGCAUCCCAUCCAGCAAACAUUGUGAUGGUCUGCGUGAUUGCUCUGAUGGCUCCGAUGAACAGCACUGCGgugaguucauuccuugcccccagga
【0232】
【0233】
以下の配列(5’-3’、センス鎖)はエクソン33(大文字)と、5’及び3’の隣接イントロン配列(小文字)とを示す:
cttaagaagcctctctgtgtttcagCCACACACAGCACCTTGACTTGCATGAGCAGGGAGTTCCAGTGCGAGGACGGGGAGGCCTGCATTGTGCTCTCGGAGCGCTGCGACGGCTTCCTGGACTGCTCGGACGAGAGCGATGAAAAGGCCTGCAGTGgtgagtgccggtccacgggctgggc
【0234】
エクソン33を含むそれぞれの(部分的な)前駆体mRNA転写物は(下線部:ASO33.1-ASO33.4の標的部位)である:
cuuaagaagccucucuguguuucagCCACACACAGCACCUUGACUUGCAUGAGCAGGGAGUUCCAGUGCGAGGACGGGGAGGCCUGCAUUGUGCUCUCGGAGCGCUGCGACGGCUUCCUGGACUGCUCGGACGAGAGCGAUGAAAAGGCCUGCAGUGgugagugccgguccacgggcugggc
【0235】
意図したエクソンスキッピングに対する効果を評価するために、我々は、標的とされるエクソンにまたがるプライマーのセットを設計して、さまざまなASOの漸増量(20、50、100及び200ナノモル)で形質移入した細胞にてSORL1転写物を増幅できるようにした。エクソンのスキッピングは、エクソン23、27及び33のそれぞれについて、それぞれ114bp、108bpまたは132bp未満のさらに小さなサイズのアンプリコンをもたらす。
【0236】
ASOの親和性、特異性、効率、安定性及び耐性は単量体及び骨格の内部の構造の化学修飾により増加させることができる。したがって、最終的な一連の実験では、我々は、エクソンスキッピングに対する効果を増大させるように意図した多数の化学修飾を伴う最も効果的なASO配列を使用して実験を繰り返す。また、可能であればエクソン特異性を失うことなく、我々は、長さ(18塩基長まで短く、または25塩基長まで長く)、GC含量(45~55%を目指す)、RNA二次構造(最適融点を目指す)、多量体よりも好ましい二量体構造の予測など、配列の最適化を行うであろう。
【0237】
さらに、表4は、この実施例に記載されているASO及び手順を使用してエクソン23~24のいずれか1つを標的とするのに使用することができるイントロン/エクソン境界及び3’スプライスアクセプターまたは5’スプライスドナーの部位を示す。下線を引いたヌクレオチドはエクソンを表し、下線を引いていないヌクレオチドは隣接するイントロンの一部を表す。太字ヌクレオチドは、イントロンとエクソンとの間の境界、すなわちイントロン(ag/gt)の末端のヌクレオチドを表す。
【表4】
【0238】
ASOが介在するエクソンスキッピング
材料及び方法:
標準的な形質移入試薬、例えば、リポフェクタミンを使用して、野生型のSORL1遺伝子型を持つヒトリンパ芽球様細胞株(LCL)にASOで形質移入する。形質移入してから24時間後または48時間後のいずれかで細胞を回収し、RNAeasy単離キットを使用して全RNAを抽出する。鋳型としての全RNAとともに1段階のSuperScript RTを使用して転写物を増幅する。エクソン23のスキッピングを評価するために、Ex20fw(fw=順行)及びEx26rev(rev=逆行)のプライマーならびに標準的なPCR条件を使用してSORL1転写物を増幅する。エクソン27のスキッピングを評価するために、Ex24fw及びEx30revのプライマー対を使用してSORL1の転写物を増幅し、エクソン33のスキッピングを評価するために、Ex30fw及びEx36revのプライマーを使用してSORL1の転写物を増幅する。PCRアンプリコンは、トリス-酢酸-EDTA緩衝液中の2%アガロースゲルにて分画する。相対的なエクソンスキッピング効率は、ImageJ画像解析ソフトウェアを使用する画像の濃度測定分析を介して推定する。
【0239】
別の実験では、ヒトHEK293細胞にASOで形質移入し、形質移入の24時間後に、細胞及び培地を回収する。別の実験では、形質移入にiPSC由来のニューロンを使用し、上記に記載されているようにRT-PCRを行う。
【0240】
エクソン23を標的とする上記に記載されているASO候補の場合、エクソンスキッピングは試験管内で調べた。ASO処理のために、4ウェルディッシュ上に1ウェルあたり1×105細胞の密度でHEK細胞を播種した。翌日、製造業者のプロトコールに従って無血清培地にて希釈したオリゴフェクタミン形質移入試薬(Thermo Fischer,#12255011)を使用して、エクソン23スプライシングを標的とするASOによって最終濃度250nMで細胞に形質移入した。形質移入の48時間後に細胞を回収し、その後、製造業者のプロトコールに従ってRNeasy Kit(Qiagen)を使用してRNA抽出を行い、次いでcDNAキットに対するHigh-Capacity RNA(Applied Biosystems,#4387406)によってcDNAを調製した。以下のプライマー:順行,5’-ACACTGGAAGCAATGCCTGT-3’(配列番号47);逆行:5’-CGGCACTGGTGCATTTCAC-3’(配列番号48)を使用してRT-PCRによってエクソン23のスキッピングを検証した。
【0241】
結果:
HEK293細胞の形質移入、内在性SORL1 mRNAの回収によって、SORL1のエクソン23のエクソンスプライスエンハンサー(ESE)エレメントに対して向けられた4つのASO(ASO23.1、ASO23.2、ASO23.4及び23.4)を調べ、且つエクソン23の周りの領域にまたがるプライマー対を使用したRT-PCRを行った。PCR産物をアガロースゲル電気泳動によって分離し、独立した2つの独立した実験からのデータを示す(
図6、上図及び下図)。双方の実験では、我々は、鋳型としてのエクソン23欠失断片をコードするプラスミド(pΔEx23、対照として使用したエクソン23を欠いている組換え生成された変異型)を使用して生成した生成物と同一に移動するさらに短いPCR産物(矢印参照)の存在によって実証されているように、ASO23.2及びASO23.3がエクソン23のスキッピングを誘導する明確な証拠を観察した。pFLは含まれたエクソン23を有する断片に相当するPCR産物を特定するのに対照鋳型として役立った。同様にさらに短いPCR産物のかすかなバンドも見られるので、潜在的に、ASO23.1及びASO23.4も特定のエクソンスキッピング効率を有する。
【0242】
結論:
我々の結果は、我々の候補ASOの少なくとも2つによるエクソン23のスキッピングによって例示されているように、ASO介在性のエクソンスキッピングを達成できることを示している。我々はさらに、ヒトSORL1転写物のエクソン27またはエクソン33、ならびにCRドメインをコードする他のエクソンのスキッピングを誘導することができるASOを特定するであろう。このアプローチは、エクソン23~33のいずれか1つまたはいくつかを標的にして取り除くのに使用することができる。
【0243】
実施例2:修飾されたSORLAタンパク質(1以上のCRドメインを欠く)の保持された機能性
目的
目的は、CRドメイン1(取り除かれたエクソン23に相当)によって例示されるCRドメインがSORLAにとって不要であるかどうかを決定することである。
【0244】
材料及び方法:
完全長SORL1のための特定のプライマー及び発現構築物を使用して、エクソン23の欠失につながる断片をPCRによって生成した。これらの断片をギブソンアセンブリを使用して結合させた。
完全長のSORLAタンパク質またはエクソン23欠失SORLAタンパク質のいずれかをコードするプラスミドによってN2a細胞に形質移入した。形質移入細胞由来の溶解物及び調整培地のウェスタンブロットを記載されているように行った。HEK細胞における特徴的な二重バンドとは対照的に、N2A細胞にてSORLAはウェスタンブロットにて約250kDaの1つのバンドとして示されることに留意のこと。
【0245】
SORL1のcDNA構築物の生成
SORL1のcDNAにおける個々のエクソンの欠失は、pcDNA3.1/zeoベクターにてSORL1-wt cDNAを鋳型として使用して、ギブソンアセンブリ技術によって実施した(Jacobsen et al.2001)。特定のプライマーセット(表5)と共にハーキュラーゼII融合DNAポリメラーゼ(Agilent)を使用してベクター及びSORL1断片を増幅した。PCR産物を先ずDpnl酵素(New England Biolabs)で消化して、メチル化DNA鋳型を除去し、続いてPCR精製キット(Qiagen、#28104)を使用して精製した。ギブソンアセンブリキット(NEB、#5510S)を使用して精製断片を連結し、製造業者のプロトコール(NEB、#C29871)に従って連結産物によってNEB 5αコンピテントE.coliを形質転換した。各プラスミドにおけるエクソンの正しい欠失はサンガー配列決定(Eurofins)によって検証した。
【表5】
【0246】
SORL1エクソン欠失構築物による細胞の形質移入
APPプロセシング及びSORLA排出の分析については、10%のFBS及びペニシリン/ストレプトマイシンで補完したDMEMにてN2a細胞を培養し、形質移入の前日にウェルあたり5×105細胞を6ウェルプレートに播種した。次に、製造業者のプロトコール(Promega)に従ってFugene HD形質移入試薬を使用して、APPをコードするmycフラグ付き構築物及びSORL1-wt構築物またはエクソン欠失構築物のいずれかで細胞に一時的に同時形質移入した。48時間の回復後、培養培地を条件付き無血清培地に交換し、さらに48時間後、溶解物及び培地の回収を行った。
【0247】
ウェスタンブロット
N2a形質移入細胞の溶解物及び培地からの等量のタンパク質をNupage4~12%のビストリスゲル(Invitrogen、#NP0321BOX)に負荷し、iBlot2ゲル移動装置(Life Technologies)を使用してニトロセルロース膜に移した。以下の一次抗体、抗myc(1:1000,Invitrogen)、抗APP(WO2,1:1000,Sigma,MABN10)、LR11(1:500,BD Transduction Laboratories)、抗solSORLA(1:1000,IgG5387,Jacobsen et al.2001)、及び抗アクチン(1:5000、Sigma、A2066)によって4℃にて一晩、膜を探索した。翌日、膜を洗浄し、HRP結合二次抗体(抗マウス、抗ウサギ;1:1500、)と共に室温で1時間インキュベートした。iBright画像解析システム(Thermo Fischer)を使用して、SuperSignal West Femto最大感度基質(Thermo Fischer Scientific)によってタンパク質を検出した。
【0248】
結果:
我々は、SORLAのCRクラスターの第1のCRドメインをコードするエクソン23を欠失したヒトSORLAをコードするcDNAを調製した。形質移入した細胞は溶解物にて区別できない発現レベルを示した(
図7A、左パネル)。細胞表面から培地に排出されたSORLA(sSORLA)の量は、SORLA-wtまたはSORLA-デルタ-エクソン23で形質移入した細胞では区別できなかったが(
図7A、右パネル)、その結果、エクソン23に対応するCRドメインを欠いたSORLA変異型は、wt SORLAと同様の輸送及び成熟を受けると思われ、機能性である。このことは、SORLAがエンドソームへの輸送及び成熟を受けるためには、それぞれのリガンドと相互作用する必要があるという事実に起因する。エクソン23に対応するCRドメインを欠く排出SORLAは完全長SORLAと同程度のレベルで検出され得るので、この相互作用は機能性であると思われる。
【0249】
結論:
我々は、その第1のCRドメインを欠失したSORLAが、野生型SORLAと区別できない方法で細胞内にて発現され、且つ選別されることができると結論付けている。
【0250】
実施例3:同じCRドメインに位置する病原性SORL1変異型に対応する変異タンパク質と比べて1つのCRドメイン(スキッピングされたエクソン23に対応)を欠いたSORLAタンパク質の保持された機能性
目的:
目的は、最もN末端のCRドメインによって例示されているCR欠失タンパク質またはSORLAに対するCR変異タンパク質の活性を比較することである。
【0251】
材料及び方法:
完全長SORLA、変異D1105Hがある完全長SORLA、変異R1080Cがある完全長SORLA、またはCR1が欠失した(エクソン23によりコードされた配列の除去により)SORLAのいずれかをコードするプラスミドでN2a細胞に形質移入した。市販の抗体LR11(抗SORLA抗体、例えば、Sigma Aldrich、SAB2500979)によって、形質移入細胞からの溶解物及び調整培地のウエスタンブロット分析を行った。
使用した材料及び方法に関するさらなる詳細は実施例2に記載されている。
【0252】
結果:
我々は、SORLAのCRクラスターの第1のCRドメインをコードするエクソン23を欠失したヒトSORLAをコードするcDNAを調製した。標準的な部位特異的変異誘発を使用して、我々は、変異型D1105HまたはR1080Cに対応する変異型構築物を調製した。変異型R1080Cは奇数のシステインを有し、病原性があると見なされる特定された変異型の群に相当する。変異型D1105Hは、CRドメインにてAsxターンを形成するのに重要な残基に影響を及ぼすだけでなく、カルシウムケージに影響を及ぼす変異型と同程度に、強く病原性であると考えられる。
【0253】
形質移入した細胞は溶解物にて区別できない発現レベルを示した(
図7B、左パネル)。SORLA-wtまたはSORLA-デルタ-エクソン23で形質移入した細胞では、細胞表面から培地へ排出されたSORLA(sSORLA)の量は区別できなかったのに対して、病原性SORL1変異型(ここでは、変異D1105H及びR1080Cによって表されている)を発現する細胞ではそれは大きく減少した(
図7B、下パネル)。
【0254】
結論:
我々は、CR1(エクソン23)にて病原性変異型を持つSORLAが強く低減された排出、したがって強く低減されたsSORLAの生成を示すのに対して、その第1のCRドメインを欠失したSORLAは野生型SORLAと区別できない方法で排出されると結論付けている。
【0255】
我々はさらに、病原性SORL1変異型を発現する細胞ではsSORLAの産生が損なわれており、sSORLAをモニターすることはASO誘導性のエクソンスキッピングの効率を評価するのに非常に効率的な方法であると結論付けている。変異したエクソンに相当するCRドメインを欠くSORLA変異型のみが排出されるようになる一方で、CRドメイン変異がある完全長SORLAはERに保持される可能性が高く、エンドソームでのプロセシングを受けることができないので、このことはさらに、SORL1変異型を是正するようにASOで治療された患者は、その脳脊髄液(CSF)でのsSORLAの増加を伴うことを意味する。このデータは、SORL1関連ADを治すための本明細書に開示されているエクソンスキッピング戦略を支持している。
【0256】
実施例4:エクソン23のASO介在性エクソンスキッピングのAD治療効果についての適応
目的:
目的は、エクソン23によってコードされたCRドメインを欠失するSORLAが、APPを(エンドソーム)プロセシングから保護することができることを実証することである。
【0257】
材料及び方法
APP単独(対照)で、またはSORLA-wt(完全長)もしくはSORLA-デルタ-エクソン23(cDNAクローニング戦略によるエクソン23の欠失)のいずれかと組み合わせたAPPでN2a細胞に形質移入した。APP、SORLAもしくはアクチン(溶解物試料中)、または排出されたAPPα(sAPPα)もしくはSORLA(sSORLA)(培地試料中)に対する抗体を使用したウェスタンブロットによって細胞からの溶解物及び調整培地を分析した。使用した材料及び方法に関するさらなる詳細は実施例2に記載されている。
【0258】
結果:
実験1:この設定では、N2a細胞は内在性SORLAを全く発現しない、または無視できる量で発現する、すなわち、ウェスタンブロットでは、内在性SORLAは外因性SORLA(形質移入による過剰発現)と比べて検出することができない。SORLAの細胞外ドメイン(5387)またはAPP(細胞形態については抗mycまたは排出sAPPaについてはWO2)についての抗体を使用して、形質移入された細胞からの溶解物(データは示されていない)及び調整培地をウェスタンブロットによって分析した。
外因性SORLAの過剰発現がない細胞(対照)は培地にてsAPPについて強いシグナルを示す。対照的に、完全長SORLAまたはエクソン23の欠失があるSORLA構築物のいずれかを使用して形質移入した細胞由来の培地はsAPPのレベルが大幅に低下したことを示す(
図8A)。
【0259】
実験2:
再び我々は、排出SORLA(sSORLA)のレベルがSORLA-WTとSORLA-ΔEx23との間で類似していること観察したということは、CR1(エクソン23によりコードされた)の欠失は受容体生物学に対して観察可能な影響を有しないことを示している。
我々はまた、2つのSORLA変異型(完全長及びSORLA-デルタ-エクソン23)タンパク質が、APPタンパク質分解を減少させることによってsAPPαの生成を低下させることに対して区別できない効果を有することも再び観察した(
図8、B~C)。
3回の独立した反復からのブロットを定量し、外来性SORLAを含まない細胞に対する相対的なレベルの2つ組試料の平均値としてデータを提示した(
図8D)。この定量はさらに、SORLAのΔEx23が排出APPa(sAPPa)を低減するのにWTと同等に有効であることを示している。
【0260】
結論:
CR1(エクソン23によりコードされた)を欠失したSORLAは完全長SORLA受容体と同様にAPPプロセシングを抑制するのに有効である。このことは、変異したエクソン23のスキッピングを誘導するためのASOによるCR1の標的化欠失が機能性の受容体につながることを実証している。
【0261】
実施例5:CRドメイン11を欠く修飾されたSORLAタンパク質の保持された機能性
目的
目的は、CRドメイン11(取り除かれたエクソン33に相当)によって例示されるCRドメインがSORLAにとって不要であるかどうかを決定することである。
【0262】
材料及び方法:
SORL1-WTまたはSORL1-ΔEx33のいずれかの構築物でN2a細胞に形質移入し、SORLAまたはアクチン(溶解物試料中の)または排出SORLA(sSORLA)(培地試料中の)に対する抗体を使用してウェスタンブロットによって細胞由来の溶解物及び調整培地を分析した。
使用した材料及び方法に関するさらなる詳細は実施例2に記載されている。
【0263】
結果:
我々は、排出SORLA(sSORLA)のレベルがSORLA-WTとSORLA-ΔEx33との間で類似していることが観察されたということは、CR11(エクソン33によりコード)の欠失がSORLA受容体の生物学に観察可能な影響を与えないこと、すなわち、CR11を欠いているSORLAさえも処理されて、SORLA-WTと同様のように排出されることを観察した(
図9;培地試料)。
【0264】
結論:
我々は、CRドメイン11を欠失したSORLAが野生型SORLAと区別できない方法で細胞内にて発現され、且つ選別されることができると結論付けている。我々のデータは、本明細書にてCR11によって例示されている、病的突然変異を含み得る特定のCRドメインの欠失がSORLAのプロセシング及び機能を損なっておらず、したがって、それぞれのCRドメインのエクソンスキッピングは実現可能な治療戦略であることを示している。
【0265】
実施例6:さらなるCRドメインエクソンへの技術拡張
目的:
我々は、どのSORL1のエクソンがASO誘導性のエクソンスキッピング治療戦略に好適であるかを決定することを望んだ。
【0266】
材料及び方法:
実施例3~5は、SORLA機能(例えば、細胞でのプロセシング処理、排出、APPプロセシングへの影響)を保持しつつ、特定のSORLAエクソンがスキッピングされてもよいことを示している。我々はさらなるエクソンの欠失を調べ、エクソン23~33(組換え産生構築物)の系統的な欠失を行った。単一のCRドメイン(CRF7+8のタンデム欠失;ΔEx29+30に含まれていたCR7を除く)を欠失したSORLAをコードするプラスミドを生成した。個々のCRドメインについて欠失したSORLAタンパク質、すなわちCR1(ΔEx23)、CR2(ΔEx24)、CR3(ΔEx25)、CR4(ΔEx26)、CR5(ΔEx27)、CR6(ΔEx28)、CR7+8(ΔEx29+30)、CR8(ΔEx30)、CR9(ΔE31)、CR10(ΔE32)またはCR11(ΔE33)を生成するように操作した構築物でHEK293細胞に形質移入した。形質移入の72時間後に回収した細胞から溶解物を調製し、26レーンのSDS-PAGE NuPAGEシステムによってタンパク質を分離し、SORLAの細胞外断片(sol-SORLA)に対して産生させたウサギ由来のポリクローナルSORLA血清によるウェスタンブロット分析によって分析した。
使用した材料及び方法に関するさらなる詳細は実施例2に記載されている。
【0267】
結果:
図10のウエスタンブロットは、SORLAのCRドメイン1~11に対応する各エクソン23~33それぞれの系統的な欠失の結果を示している。SORLAのブロットは、HEK細胞でSORLAを発現させると二重バンドを示すことが知られており、上部バンド(分子サイズが大きいためゲル中でより遅く流れる)は成熟SORLAを表し、下部バンド(分子サイズが小さいためゲル中でより速く流れる)。これは、例えば、レーン1及び2における完全長(FL)SORLAについて示された二重バンドにて見ることができる。
構築物のそれぞれは、特異的なCRドメインを欠失したSORLA受容体の発現をもたらした。興味深いことに、いくつかの欠失は、潜在的に全てのCRドメインが、受容体機能を妨害しないで欠失され得るわけではないことを示唆する驚くべき結果を示した、すなわち、CR4(ΔE26)及びCR9(ΔEx31)ではSORLA二重バンドパターンが妨害されている(*)。我々は追跡実験にてこれをさらに分析するであろう。同様の結果は実験を反復した場合に得られた。エクソン29の欠失に関する課題は実施例7にて以下で議論されている。エクソン29をスキッピングすると、エクソン28とエクソン30との間の新規のエクソン-エクソンの境界にて意図しない停止コドンが生じる。したがって、エクソン29における変異型を標的とするには隣接するCRドメインの同時欠失が必要になる。
【0268】
結論:
我々は、SORL1のいくつかのエクソンが、これらのエクソンにおける病原性SORL1変異型の保有者についてのADに対する本明細書に開示されているASO誘導性のエクソンスキッピング療法に好適であると結論付けている。我々の結果はさらに、特定のCRドメインが、他のCRドメインのように、例えば、エクソンスキッピングを介した欠失にさらに好適である場合があることを示している。
【0269】
実施例7:エクソン29の欠失の試み:二重欠失ASO処理
目的:
エクソン29をスキッピングすると、エクソン28とエクソン30との間の新規のエクソン-エクソンの境界にて意図しない停止コドンが生じる。したがって、エクソン29における変異型を標的とするには隣接するCRドメインの同時欠失が必要になる。
【0270】
材料及び方法:
我々は、SORLAのエクソン29及び隣接するCRドメイン、例えば、エクソン28またはエクソン30のエクソンスキッピングを確立する。2つのエクソンを欠失させるには、それぞれエクソン28及びエクソン29またはエクソン29及びエクソン30の標的部位を標的とする2つのASOを必要とする。使用した材料及び方法に関するさらなる詳細は実施例2に記載されている。
【0271】
結果:
我々は、エクソン28+29を欠失したSORLA及びエクソン29+30を欠失したSORLAについてのcDNAを調製する。
【0272】
結論:
1を超えるエクソンのASO介在性エクソンスキッピングの実現可能性が示されるであろう。
【0273】
実施例8:ASOレスキュー実験
目的:
我々は、変異したSORL1のエクソン23/27/33を標的とするASOが処理された対立遺伝子の活性を増大させるという証拠を提供する。
【0274】
材料及び方法:
EBVを使用して患者由来の細胞株(すなわちリンパ芽球)を不死化する。並行して健康な保有者からの対照細胞を得て、並行して不死化する。双方の起源の細胞をASOで48時間処理する、または対照のために未処理のままにする。ウェスタンブロット及びSORLAに対する抗体を使用して細胞溶解物及び調整培地を分析する。
【0275】
結果:
健康な保有者からの未処理の細胞は、成熟完全長SORLAと未成熟完全長SORLAに対応する溶解物における2つの明瞭なバンドを示すのに対して、SORLAのCRドメインの病原性変異型を持つ患者の未処理の細胞は大部分、未成熟な受容体変異型のみを示す。
ASOで処理した細胞は双方とも溶解物にて成熟タンパク質についての強いシグナルを示す。培地試料のWB分析は、細胞内成熟SORLAタンパク質を有する細胞に由来する高レベルのsSORLAがある同様のパターンを示す。
【0276】
結論:
我々は、ASOが病原性の誤って折り畳まれたSORLAタンパク質(11のCRドメインを持ち、そのうち1つが病的に変異している)の産生を是正することができ、ASO処理により、病原性変異型を保有するエクソンのスキッピングがもたらされ、これらの細胞が、溶解物における成熟SORLAの存在及び培地におけるsSORLAの存在によって証明されるように機能性タンパク質(変異CRドメインを取り除いた10のCRドメインを持つ)を発現すると結論付けている。
【0277】
実施例9:ASO23.2及びASO23.3の最適化
目的:
目的は、例えば、実施例1に記載されている結果に基づいて、SORL1のエクソン23を標的とする主力ASOを最適化することである。
【0278】
材料及び方法:
ASO23.2及びASO23.3が、形質移入されたHEK293細胞を使用する我々の予備試験(実施例1)にてSORL1のエクソン23の最も効率的な除外を示したという我々の記載された観察に基づいて、我々は、その効率性の最適化を目的としてこれら2つのASOの新しい変異型を調製する。
先ず、標的配列の5’側と3’側にその時点で1塩基ずつ移動することによって、また、ASOの長さを伸ばすように試す、もしくは配列を短くするように試すことによって配列を整える。次に、例えば、ホスホロジアミデートモルホリンオリゴマー(PMO)、ペプチド核酸(PNA)、及びロック核酸(LNA)(Dhuri 2020 et al.に概説されている)を調べる骨格化学に関して各ASOを最適化する。
エクソンスキッピング効率を分析するために、ヒト細胞株(HEK293及びSH-SY5Y)に形質移入し、標準的なRNA抽出プロトコールを使用して形質移入から48時間後にRNAを回収する。cDNAの調製後、Ex23に隣接するエクソンに特異的なプライマーを使用してRT-PCR分析を行い、次いでEx23の排除が成功した転写物のレベルを定量する。
【0279】
結果:
本発明者らは、SORL1のEx23をスキッピングするために、ヒト細胞への適用に最適化された1以上のASOを特定する。
【0280】
結論:
特定された1以上のASOは、臨床的有効性を調べるための試験に使用される。
【0281】
実施例10:SORL1関連アルツハイマー病(SAAD)細胞モデル(iPSC)の調製
目的:
我々は、SORL1のEx23の遺伝子操作した変異型を持つ人工多能性幹細胞(iPSC)株を生成することを目的とする。
【0282】
材料及び方法:
アルツハイマー病の病理学的特徴であるアミロイドベータ(Aβ)ペプチドはメソスケール発見アッセイを使用して決定し、エンドソームサイズはRab5抗体を適用する免疫細胞化学及びImageJプラグインを使用する共焦点画像からのRab5陽性構造の定量を使用して決定する。
【0283】
結果:
SORL1変異型D1105H及びR1080C(例えば、実施例3)を持つN2a細胞における我々の研究に基づいて、これらが病原性変異型であるという証拠を提供する場合、我々は、ガイドRNA及びCRIPS-Cas9方法論のための標準的なプロトコールに従ってこれらの2つの突然変異を個別に導入する。突然変異の導入は、配列決定と、選択された突然変異タンパク質を発現するクローンとを使用して検証される。各細胞株は、公開された分化プロトコールに従ってヒトニューロンを生成するために使用され、その後、標準的なプロトコールに従ってアミロイドベータ分泌及びエンドソーム膨潤の測定を行うためのアッセイによって「表現型決定」される。
【0284】
結論:
我々は、Ex23に存在する病原性SORL1変異型をそれぞれ保有する2つのiPSCモデルを生成し、Rab5陽性エンドソーム構造及びアミロイド前駆体タンパク質のアミロイドベータペプチドへのエンドソームプロセシングに基づいて疾患の表現型を確立する。これらの細胞モデルは有効性実験に使用されるであろう。
【0285】
実施例11:リンパ芽球疾患モデルの調製
目的:
我々は、AD患者及びSORL1のEx23病原性変異型の保有者に由来するリンパ芽球細胞を生成することを目的とする。
【0286】
材料及び方法:
SORLAの成熟は、病原性変異型の保有者に由来する細胞を対照細胞と比較する細胞溶解物のWB分析を使用して決定する。
【0287】
結果:
SORL1の病原性変異型は成熟欠陥タンパク質をもたらす。野生型SORL1を持つ対照の個人からのリンパ芽球の溶解物のウェスタンブロット分析は、成熟したSORLAタンパク質と未成熟なSORLAタンパク質との双方を示すのに対して、病原性SORL1変異型の保有者から単離された細胞の溶解物では、比較的未熟なSORLAタンパク質が多く、成熟したSORLAタンパク質は少ない。
さらに、排出されたsSORLA断片を生成する排出は、成熟SORLAについてのみ生じるので、これらの細胞からの培地中のsSORLAのレベルは野生型SORL1ヒト由来の細胞と比較して、SORL1変異型保有者由来のリンパ芽球からのsSORLAのレベルが低いことを示す。
【0288】
結論:
我々は、Ex23で病原性SORL1変異型を保有する個人からの患者由来リンパ芽球細胞株を生成し、SORLAの成熟と分泌に基づく疾患表現型を確立する。
【0289】
実施例12: iPSC疾患モデルのAD表現型をレスキューするために必要な有効性レベルを確立する
目的:
目的は、細胞性疾患の表現型を元に戻して野生型SORL1を持つ対照細胞と区別がつかなくなるようにするのに必要とされるEx23スキッピングのレベルを決定することである。
【0290】
材料及び方法:
我々は、SORL1のEx23病原性突然変異を持つiPSC細胞及び同系の対照細胞からニューロンを調製し、次いでSORL1のEx23のスキッピングを誘導する我々の主力ASO(複数可)で細胞を処理する。我々は、2nM~500nMの範囲の濃度を使用する我々のASO(複数可)の用量設定を行い、同様に、複数の可変時間経過で処理を実施する。
【0291】
結果:
突然変異型SORL1を持つ細胞では、疾患表現型が徐々にレスキューされ、得られたエクソンスキッピングの程度が最も高い細胞に対して最大の効果が見られる。アミロイドβ分泌のレベル及びRab5陽性エンドソームのサイズは、疾患表現型のパラメーターとして使用される。エクソンスキッピングの程度は、Ex23欠失転写物を検出するqPCRアッセイを使用して評価されるであろう。
【0292】
結論:
これらの実験から、疾患表現型に対する効果と誘導されたSORL1のエクソンスキッピングのレベルとを相関させることができるであろう。我々は、変異したSORL1のEx23のスキッピングを誘導するASOがiPSCモデルの細胞表現型を非疾患細胞に類似されたものに戻すために必要な有効性を特定する。
【0293】
実施例13:リンパ芽球性疾患モデルのAD表現型をレスキューするのに必要な有効性レベルを確立する
目的:
目的は、細胞性疾患の表現型を元に戻して野生型SORL1を持つ対照細胞と区別がつかなくなるようにするのに必要とされるEx23スキッピングのレベルを決定することである。
【0294】
材料及び方法:
我々は、SORL1のEx23のスキッピングを誘導する我々の主力ASO(複数可)で(保有者及び非保有者由来の)リンパ芽球細胞を処理する。我々は、2nM~500nMの範囲の濃度を使用する我々のASO(複数可)の用量設定を行い、同様に、複数の可変時間経過で処理を実施する。突然変異型SORL1を持つ細胞では、疾患表現型が徐々にレスキューされ、得られたエクソンスキッピングの程度が最も高い細胞に対して最大の効果が見られる。SORLA成熟及びsSORLA分泌のレベルは疾患表現型のパラメーターとして使用される。エクソンスキッピングの程度は、Ex23欠失転写物を検出するqPCRアッセイを使用して評価されるであろう。
【0295】
結果:
これらの実験から、疾患表現型に対する効果と誘導されたSORL1のエクソンスキッピングのレベルとを相関させることができるであろう。
【0296】
結論:
我々は、変異したSORL1 Ex23のスキッピングを誘導するASOがリンパ芽球モデルの細胞表現型を非疾患細胞に類似されたものに戻すために必要な有効性を特定する。
【0297】
【0298】
配列番号49~配列番号75:SORL1断片の増幅に使用されたPCRプライマー(実施例2、表5)。以下は、上記の表で使用された命名の説明例である:
-「順方向-SORL1E1 ΔΕ23-Δ28,及びΔΕ30-ΔΕ33」は、この配列が、SORL1-ΔE23(E1-22PCR産物)、SORL1-ΔE24(E1-23)、SORL1-ΔE25(E1-24)、SORL1-ΔE26(E1-25)、SORL1-ΔE27(E1-26)、SORL1-ΔE28(E1-27)、SORL1-ΔE30(E1-29)、SORL1-ΔE31(E1-30)、SORL1-ΔE32(E1-31)、SORL1-ΔE33(E1-32)のための順行プライマーであることを意味する。
-「逆行-SORL1-ΔE23-E1-22」は、この配列が、SORL1-ΔE23(E1-22PCR産物)のための逆行プライマー(5’-3’)であることを意味する。
【0299】
参照文献
Dhuri 2020,Antisense Oligonucleotides:An Emerging Area in Drug Discovery and Development,J.Clin.Med.2020,Jun.26;9(6):2004.doi:10.3390/jcm9062004.
Holstege 2020,Exome sequencing identifies novel AD-associated genes.24,2020,July.24,doi.org/10.1101/2020.07.22.2015925
Jacobsen 2001,Activation and functional characterization of the mosaic receptor SorLA/LR11,J.Biol.Chem.2001,Jun.22;276(25):22788-96.doi:10.1074/jbc.M100857200.Epub.2001,Apr.9.
Piva 2009,SpliceAid:a database of experimental RNA target motifs bound by splicing proteins in humans,Bioinformatics.2009,May.1;25(9):1211-3.doi:10.1093/bioinformatics/btp124.Epub.2009,Mar.4.
【配列表】
【手続補正書】
【提出日】2024-01-18
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】配列表
【補正方法】追加
【補正の内容】
【配列表】
【国際調査報告】