(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-05
(54)【発明の名称】セパレータ及び該セパレータを備える電池
(51)【国際特許分類】
H01M 50/46 20210101AFI20240628BHJP
H01M 50/457 20210101ALI20240628BHJP
H01M 50/463 20210101ALI20240628BHJP
H01M 50/489 20210101ALI20240628BHJP
H01M 50/417 20210101ALI20240628BHJP
H01M 50/414 20210101ALI20240628BHJP
H01M 50/423 20210101ALI20240628BHJP
H01M 50/434 20210101ALI20240628BHJP
H01M 50/426 20210101ALI20240628BHJP
H01M 10/0569 20100101ALI20240628BHJP
H01M 10/0567 20100101ALI20240628BHJP
H01M 10/0568 20100101ALI20240628BHJP
H01M 10/052 20100101ALI20240628BHJP
H01M 50/42 20210101ALI20240628BHJP
【FI】
H01M50/46
H01M50/457
H01M50/463 Z
H01M50/489
H01M50/417
H01M50/414
H01M50/423
H01M50/434
H01M50/426
H01M10/0569
H01M10/0567
H01M10/0568
H01M10/052
H01M50/42
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023579760
(86)(22)【出願日】2022-10-25
(85)【翻訳文提出日】2023-12-26
(86)【国際出願番号】 CN2022127484
(87)【国際公開番号】W WO2023072107
(87)【国際公開日】2023-05-04
(31)【優先権主張番号】202111251994.0
(32)【優先日】2021-10-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】202111241330.6
(32)【優先日】2021-10-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】202111243132.3
(32)【優先日】2021-10-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521555605
【氏名又は名称】珠海冠宇電池股分有限公司
【氏名又は名称原語表記】Zhuhai CosMX Battery Co., Ltd.
【住所又は居所原語表記】No. 209, Zhufeng Road, Jing’an Town, Doumen District, Zhuhai City,Guangdong ,p,r,China, (1st Foor ,A plant south section)
(74)【代理人】
【識別番号】110002262
【氏名又は名称】TRY国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】母 英迪
(72)【発明者】
【氏名】張 祖来
(72)【発明者】
【氏名】王 海
(72)【発明者】
【氏名】李 素麗
【テーマコード(参考)】
5H021
5H029
【Fターム(参考)】
5H021AA06
5H021CC04
5H021EE02
5H021EE03
5H021EE04
5H021EE06
5H021EE07
5H021EE08
5H021EE10
5H021EE21
5H021EE22
5H021EE32
5H021HH00
5H021HH01
5H021HH03
5H021HH06
5H029AJ12
5H029AK03
5H029AL07
5H029AM03
5H029AM07
5H029DJ04
5H029EJ08
5H029EJ12
5H029HJ00
5H029HJ01
5H029HJ02
5H029HJ04
(57)【要約】
本発明はセパレータ及び該セパレータを備える電池を提供する。前記セパレータは基材、耐熱層及び接着層により構成され、前記耐熱層は対向するように基材の両面に設けられ、接着層は耐熱層上に設けられ、接着層と負極の間の接着力はAであり、耐熱層と基材の間の剥離力はBであり、AとBの比の値(A/B)は1より大きい。本発明においては、セパレータの耐熱層を正極、負極の表面に貼り付けることにより、正極、負極が高温においても短絡しにくくして、電池の安全性能を向上させる。また、本発明においては、非水電解液にプロピオン酸エチル溶媒を添加することにより、セルが低温性能を兼備できるようにする。さらに、本発明において、セパレータと電解液の協同作用により、製造される電池は、セルの安全性能を効果的に向上させるとともにセルの低温性能を兼備する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
セパレータであって、
基材、耐熱層及び接着層により構成され、前記耐熱層は対向するように前記基材の両面に設けられ、前記接着層は前記耐熱層上に設けられ、
前記接着層と負極の間の接着力はAであり、前記耐熱層と前記基材の間の剥離力はBであり、AとBの比の値(A/B)は1より大きい
ことを特徴とするセパレータ。
【請求項2】
AとBの比の値は2.5~6.5である
ことを特徴とする請求項1に記載のセパレータ。
【請求項3】
前記耐熱層の厚さは1μm~5μmである
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のセパレータ。
【請求項4】
前記耐熱層の、150℃における1時間の熱収縮は5%以下である
ことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一項に記載のセパレータ。
【請求項5】
前記接着層と前記負極の間の接着力Aは10N/m以上である
ことを特徴とする請求項1ないし4のいずれか一項に記載のセパレータ。
【請求項6】
前記耐熱層と前記基材の間の剥離力Bは5N/m以下である
ことを特徴とする請求項1ないし5のいずれか一項に記載のセパレータ。
【請求項7】
前記基材は、高分子ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリスチレン、ポリパラフェニレン、ポリナフタレン、ポリイミド、ポリアミド、アラミド、及び、ポリパラフェニレンベンズビスチアゾールのうちの1つ又は複数から選ばれる
ことを特徴とする請求項1ないし6のいずれか一項に記載のセパレータ。
【請求項8】
前記耐熱層はセラミック、耐熱ポリマー及びバインダーを含む
ことを特徴とする請求項1ないし7のいずれか一項に記載のセパレータ。
【請求項9】
前記耐熱層において、前記セラミックの重量割合は5~20wt.%である
ことを特徴とする請求項8に記載のセパレータ。
【請求項10】
前記耐熱層において、前記耐熱ポリマーの重量割合は60~94wt.%である
ことを特徴とする請求項8又は9に記載のセパレータ。
【請求項11】
前記耐熱層において、前記バインダーの重量割合は0.5~20wt.%である
ことを特徴とする請求項8ないし10のいずれか一項に記載のセパレータ。
【請求項12】
前記セラミックは、シリカ、三酸化アルミニウム、二酸化ジルコニウム、水酸化マグネシウム、ベーマイト、硫酸バリウム、フッ素金雲母、フルオロアパタイト、ムライト、コーディエライト、チタン酸アルミニウム、チタニア、酸化銅、酸化亜鉛、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化マグネシウム、及び、アタパルジャイトのうちの1つ又は複数から選ばれる
ことを特徴とする請求項8ないし11のいずれか一項に記載のセパレータ。
【請求項13】
前記耐熱ポリマーは、ポリイミド、アラミド樹脂、ポリアミド及びポリベンズイミダゾール、ポリフェニレンエステル、ポリボロジフェニルシロキサン、ポリフェニレンスルフィド、塩素化ポリエーテル、及び、ポリアリールスルホンのうちの1つ又は複数から選ばれる
ことを特徴とする請求項8ないし12のいずれか一項に記載のセパレータ。
【請求項14】
前記バインダーは、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体、ヘキサフルオロプロピレン変性ポリフッ化ビニリデン、ポリイミド、ポリアクリロニトリル、ポリメチルメタクリレート、セルロースアセテート、セルロースブチルアセテート、セルロースプロピルアセテート、シアノエチルプルラン、シアノエチルポリビニルアルコール、シアノエチルセルロース、シアノエチルスクロース、プルラン、カルボキシメチルセルロース、及び、アクリロニトリルスチレンブタジエン共重合体のうちの1つ又は複数から選ばれる
ことを特徴とする請求項8ないし13のいずれか一項に記載のセパレータ。
【請求項15】
前記接着層の厚さは0.5μm~2μmである
ことを特徴とする請求項1ないし14のいずれか一項に記載のセパレータ。
【請求項16】
前記接着層に用いられるポリマーは、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体、ヘキサフルオロプロピレン変性ポリフッ化ビニリデン、ポリイミド、ポリアクリロニトリル、ポリメチルメタクリレート、セルロースアセテート、セルロースブチルアセテート、セルロースプロピルアセテート、シアノエチルプルラン、シアノエチルポリビニルアルコール、シアノエチルセルロース、シアノエチルスクロース、プルラン、カルボキシメチルセルロース、及び、アクリロニトリルスチレンブタジエン共重合体のうちの1つ又は複数から選ばれる
ことを特徴とする請求項1ないし15のいずれか一項に記載のセパレータ。
【請求項17】
電池であって、
請求項1ないし16のいずれか一項に記載のセパレータを備える
ことを特徴とする電池。
【請求項18】
正極シート、負極シート及び非水電解液を更に備え、
前記正極シートと前記負極シートの間には請求項1ないし16のいずれか一項に記載のセパレータが設けられる
ことを特徴とする請求項17に記載の電池。
【請求項19】
前記非水電解液は非水有機溶媒、添加剤及びリチウム塩を含み、
前記非水有機溶媒はプロピオン酸エチルを含む
ことを特徴とする請求項18に記載の電池。
【請求項20】
前記プロピオン酸エチルの添加量は、前記非水電解液の総質量の10~50wt.%である
ことを特徴とする請求項19に記載の電池。
【請求項21】
前記リチウム塩は、前記非水電解液の総質量の13~20wt.%を占める
ことを特徴とする請求項19に記載の電池。
【請求項22】
電池であって、
正極シート、負極シート、前記正極シートと前記負極シートの間に配置されるセパレータ、及び、非水電解液を備え、
前記セパレータは請求項1に記載のセパレータであり、
前記非水電解液は非水有機溶媒、添加剤及びリチウム塩を含み、前記非水有機溶媒はプロピオン酸エチルを含み、前記添加剤はカーボネート系化合物を含む
ことを特徴とする電池。
【請求項23】
前記カーボネート系化合物は、前記非水電解液の総質量の1~10 wt.%を占める
ことを特徴とする請求項22に記載の電池。
【請求項24】
前記プロピオン酸エチルの添加量は、前記非水電解液の総質量の10~40wt.%である
ことを特徴とする請求項22又は23に記載の電池。
【請求項25】
前記カーボネート系化合物は、フルオロエチレンカーボネート、ビニレンカーボネート、ビニルエチレンカーボネート、及び、ビニルエチレンカーボネートのうちの少なくとも1つから選ばれる
ことを特徴とする請求項22ないし24のいずれか一項に記載の電池。
【請求項26】
前記添加剤は他の添加剤を更に含み、前記他の添加剤は、トリス(トリメチルシラン)フォスファイト、ホウ酸トリス(トリメチルシリル)、リチウムビストリフルオロメタンスルホニルイミド、リチウムビスフルオロスルホニルイミド、1,3-プロパンスルトン、1,3-プロペンスルトン、亜硫酸エチレン、硫酸エチレン、ビニレンカーボネート、フルオロエチレンカーボネート、リチウムビスオキサレートボレート、リチウムジフルオロオキサラトボレート、リチウムジフルオロ(オキサラト)フォスフェート、及び、ビニルエチレンカーボネートのうちの少なくとも1つである
ことを特徴とする請求項22ないし25のいずれか一項に記載の電池。
【請求項27】
前記他の添加剤の使用量は、前記非水電解液の総質量の0~10wt.%を占める
ことを特徴とする請求項26に記載の電池。
【請求項28】
前記非水有機溶媒は、エチレンカルボナート、炭酸プロピレン、炭酸ジメチル、炭酸ジエチル、炭酸エチルメチル、プロピオン酸プロピル、及び、酢酸プロピルのうちの少なくとも1つを更に含む
ことを特徴とする請求項22ないし27のいずれか一項に記載の電池。
【請求項29】
前記リチウム塩は、リチウムビストリフルオロメチルスルホニルイミド、リチウムビスフルオロスルホニルイミド、及び、ヘキサフルオロりん酸リチウムのうちの少なくとも1つから選ばれる
ことを特徴とする請求項22ないし28のいずれか一項に記載の電池。
【請求項30】
前記リチウム塩は、前記非水電解液の総質量の13~20wt.%を占める
ことを特徴とする請求項22ないし29のいずれか一項に記載の電池。
【請求項31】
前記セパレータにおいて、AとBの比の値は1.5~6.0である
ことを特徴とする請求項22ないし30のいずれか一項に記載の電池。
【請求項32】
前記セパレータにおいて、耐熱層の厚さは1~3μmである
ことを特徴とする請求項22ないし31のいずれか一項に記載の電池。
【請求項33】
前記セパレータにおいて、耐熱層の、150℃における1時間の熱収縮は5%以下である
ことを特徴とする請求項22ないし32のいずれか一項に記載の電池。
【請求項34】
前記セパレータにおいて、接着層と負極の間の接着力は10N/m以上である
ことを特徴とする請求項22ないし33のいずれか一項に記載の電池。
【請求項35】
前記セパレータにおいて、耐熱層と基材の間の剥離力Bは5N/m以下である
ことを特徴とする請求項22ないし34のいずれか一項に記載の電池。
【請求項36】
前記セパレータにおいて、基材は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイミド、ポリアミド、及び、アラミドのうちの1つ又は複数から選ばれる
ことを特徴とする請求項22ないし35のいずれか一項に記載の電池。
【請求項37】
前記セパレータにおいて、耐熱層はセラミック、耐熱ポリマー及びバインダーを含む
ことを特徴とする請求項22ないし36のいずれか一項に記載の電池。
【請求項38】
前記耐熱層において、前記セラミックが占める比は5~20 wt.%である
ことを特徴とする請求項37に記載の電池。
【請求項39】
前記耐熱層において、前記耐熱ポリマーが占める比は60~94 wt.%である
ことを特徴とする請求項37又は38のいずれか一項に記載の電池。
【請求項40】
前記耐熱層において、前記バインダーが占める比は0.5~20 wt.%である
ことを特徴とする請求項37ないし39のいずれか一項に記載の電池。
【請求項41】
前記セラミックは、アルミナ、ベーマイト、酸化マグネシウム、窒化ホウ素、及び、水酸化マグネシウムのうちの1つ又は複数から選ばれる
ことを特徴とする請求項37ないし40のいずれか一項に記載の電池。
【請求項42】
前記耐熱ポリマーは、ポリイミド、アラミド樹脂、ポリアミド及びポリベンズイミダゾールのうちの1つ又は2つから選ばれる
ことを特徴とする請求項37ないし41のいずれか一項に記載の電池。
【請求項43】
前記バインダーは、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン変性及びその共重合体、ポリイミド、ポリアクリロニトリル、及び、ポリメチルメタクリレートのうちの1つ又は複数から選ばれる
ことを特徴とする請求項37ないし42のいずれか一項に記載の電池。
【請求項44】
前記セパレータにおいて、接着層の厚さは0.5~2μmである
ことを特徴とする請求項37ないし43のいずれか一項に記載の電池。
【請求項45】
前記セパレータにおいて、接着層に用いられるポリマーは、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体及びその変性共重合体、ポリイミド、ポリアクリロニトリル、及び、ポリメチルメタクリレートのうちの1つ又は複数から選ばれる
ことを特徴とする請求項37ないし44のいずれか一項に記載の電池。
【請求項46】
電池であって、
正極シート、負極シート、前記正極シートと前記負極シートの間に配置されるセパレータ、及び、非水電解液を備え、
前記セパレータは請求項1に記載のセパレータであり、
前記非水電解液は非水有機溶媒、添加剤及びリチウム塩を含み、前記非水有機溶媒はプロピオン酸エチルを含み、前記添加剤は、ニトリル基を含む化合物を含む
ことを特徴とする電池。
【請求項47】
前記プロピオン酸エチルの添加量は前記非水電解液の総質量の10~40 wt.%である
ことを特徴とする請求項46に記載の電池。
【請求項48】
前記非水電解液において、前記ニトリル基を含む化合物の添加量は前記非水電解液の総質量の1~10 wt.%を占める
ことを特徴とする請求項46又は47に記載の電池。
【請求項49】
前記ニトリル基を含む化合物は、スクシノニトリル、グルタロニトリル、アジポニトリル、1,5-ジシアノペンタン、1,6-ジシアノヘキサン、1,7-ジシアノヘプタン、1,8-ジシアノオクタン、1,9-ジシアノノナン、1,10-ジシアノデカン、1,12-ジシアノドデカン、テトラメチルスクシノニトリル、2-メチルグルタロニトリル、2,4-ジメチルグルタロニトリル、2,2,4,4-テトラメチルグルタロニトリル、1,4-ジシアノペンタン、2,6-ジシアノヘプタン、2,7-ジシアノオクタン、2,8-ジシアノノナン、1,6-ジシアノデカン、1,2-ジシアノベンゼン、1,3-ジシアノベンゼン、1,4-ジシアノベンゼン、3,5-ジオキサ-ヘプタンジニトリル、1,4-ビス(シアノエトキシ)ブタン、エチレングリコールビス(2-シアノエチル)エーテル、ジエチレングリコールビス(2-シアノエチル)エーテル、トリスエチレングリコールビス(2-シアノエチル)エーテル、テトラエチレングリコールビス(2-シアノエチル)エーテル、3,6,9,12,15,18-ヘキサオキサエイコサンジニトリル、1,3-ジ(2-シアノエトキシ)プロパン、1,4-ジ(2-シアノエトキシ)ブタン、1,5-ジ(2-シアノエトキシ)ペンタン、エチレングリコールビス(4-シアノブチル)エーテル、1,4-ジシアノ-2-ブテン、1,4-ジシアノ-2-メチル-2-ブテン、1,4-ジシアノ-2-エチル-2-ブテン、1,4-ジシアノ-2,3-ジメチル-2-ブテン、1,4-ジシアノ-2 ,3-ジエチル-2-ブテン、1,6-ジシアノ-3-ヘキセン、1,6-ジシアノ-2-メチル-3-ヘキセン、1,6-ジシアノ-2-メチル-5-メチル-3-ヘキセン、1,3,5-ペンタントリカルボニトル、1,2,3-プロパントリカルボニトリル、1,3,6-ヘキサントリカルボニトリル、グリセリルトリニトリル、1,2,6-ヘキサントリカルボニトリル、1,2,3-トリス(2-シアノエトキシ)プロパン、1,2,4-トリス(2-シアノエトキシ)ブタン、1,1,1-トリス(シアノエトキシメチレン)エタン、1,1,1-トリス(シアノエトキシメチレン)プロパン、3-メチル-1,3,5-トリス(シアノエトキシ)ペンタン、1,2,7-トリス(シアノエトキシ)ヘプタン、1,2,6-トリス(シアノエトキシ)ヘキサン、及び、1,2,5-トリス(シアノエトキシ)ペンタンのうちの少なくとも1つから選ばれる
ことを特徴とする請求項46ないし48のいずれか一項に記載の電池。
【請求項50】
前記添加剤は他の添加剤を更に含み、前記他の添加剤は、トリス(トリメチルシラン)フォスファイト、ホウ酸トリス(トリメチルシリル)、リチウムビストリフルオロメタンスルホニルイミド、リチウムビスフルオロスルホニルイミド、1,3-プロパンスルトン、1,3-プロペンスルトン、亜硫酸エチレン、硫酸エチレン、ビニレンカーボネート、フルオロエチレンカーボネート、リチウムビスオキサレートボレート、リチウムジフルオロオキサラトボレート、リチウムジフルオロ(オキサラト)フォスフェート、及び、ビニルエチレンカーボネートのうちの少なくとも1つである
ことを特徴とする請求項46ないし49のいずれか一項に記載の電池。
【請求項51】
前記他の添加剤の添加量は前記非水電解液の総質量の0-10 wt.%である
ことを特徴とする請求項46ないし50のいずれか一項に記載の電池。
【請求項52】
前記非水有機溶媒は、エチレンカルボナート、炭酸プロピレン、炭酸ジメチル、炭酸ジエチル、炭酸エチルメチル、プロピオン酸プロピル、及び、酢酸プロピルのうちの少なくとも1つを更に含む
ことを特徴とする請求項46ないし51のいずれか一項に記載の電池。
【請求項53】
前記リチウム塩は、リチウムビストリフルオロメチルスルホニルイミド、リチウムビスフルオロスルホニルイミド、及び、ヘキサフルオロりん酸リチウムのうちの少なくとも1つから選ばれる
ことを特徴とする請求項46ないし52のいずれか一項に記載の電池。
【請求項54】
前記リチウム塩は前記非水電解液の総質量の13~20wt.%を占める
ことを特徴とする請求項46ないし53のいずれか一項に記載の電池。
【請求項55】
前記セパレータにおいて、AとBの比の値は1.5~4.5である
ことを特徴とする請求項46ないし54のいずれか一項に記載の電池。
【請求項56】
前記セパレータにおいて、耐熱層の厚さは1~3μmである
ことを特徴とする請求項46ないし55のいずれか一項に記載の電池。
【請求項57】
前記セパレータにおいて、耐熱層の、150℃における1時間の熱収縮は5%以下である
ことを特徴とする請求項46ないし56のいずれか一項に記載の電池。
【請求項58】
前記セパレータにおいて、接着層と負極の間の接着力は10N/m以上である
ことを特徴とする請求項46ないし57のいずれか一項に記載の電池。
【請求項59】
前記セパレータにおいて、耐熱層と基材の間の剥離力Bは5N/m以下である
ことを特徴とする請求項46ないし58のいずれか一項に記載の電池。
【請求項60】
前記セパレータにおいて、基材は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイミド、ポリアミド、及び、アラミドのうちの1つ又は複数から選ばれる
ことを特徴とする請求項46ないし59のいずれか一項に記載の電池。
【請求項61】
前記セパレータにおいて、耐熱層はセラミック、耐熱ポリマー及びバインダーを含む
ことを特徴とする請求項46ないし60のいずれか一項に記載の電池。
【請求項62】
前記耐熱層において、前記セラミックが占める比は5~20 wt.%である
ことを特徴とする請求項61に記載の電池。
【請求項63】
前記耐熱層において、前記耐熱ポリマーが占める比は60~94 wt.%である
ことを特徴とする請求項61又は62のいずれか一項に記載の電池。
【請求項64】
前記耐熱層において、前記バインダーが占める比は0.5~20 wt.%である
ことを特徴とする請求項61ないし63のいずれか一項に記載の電池。
【請求項65】
前記セラミックは、アルミナ、ベーマイト、酸化マグネシウム、窒化ホウ素、及び、水酸化マグネシウムのうちの1つ又は複数から選ばれる
ことを特徴とする請求項61ないし64のいずれか一項に記載の電池。
【請求項66】
前記耐熱ポリマーは、ポリイミド、アラミド樹脂、ポリアミド及びポリベンズイミダゾールのうちの1つ又は2つから選ばれる
ことを特徴とする請求項61ないし65のいずれか一項に記載の電池。
【請求項67】
前記バインダーは、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン変性及びその共重合体、ポリイミド、ポリアクリロニトリル、及び、ポリメチルメタクリレートのうちの1つ又は複数から選ばれる
ことを特徴とする請求項61ないし66のいずれか一項に記載の電池。
【請求項68】
前記セパレータにおいて、接着層の厚さは0.5~2μmである
ことを特徴とする請求項61ないし67のいずれか一項に記載の電池。
【請求項69】
前記セパレータにおいて、接着層に用いられるポリマーは、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体及びその変性共重合体、ポリイミド、ポリアクリロニトリル、及び、ポリメチルメタクリレートのうちの1つ又は複数から選ばれる
ことを特徴とする請求項61ないし68のいずれか一項に記載の電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
<関連出願の相互参照>
本発明は2021年10月25日に中国特許庁に出願された出願番号が202111251994.0であって出願名称が「電池」である中国特許出願と、2021年10月25日に特許庁に提出された出願番号が202111241330.6であって出願名称が「電池」である中国特許出願と、2021年10月25日に特許庁に出願された出願番号が202111243132.3であって出願名称が「セパレータ及び該セパレータを備える電池」である中国特許出願との、3つの中国特許出願の優先権を主張し、それらの内容はすべて引用により本発明に組み込まれる。
本発明は電池分野に属し、セパレータ及び該セパレータを備える電池に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、リチウムイオン電池はスマートフォン、タブレットパソコン、スマートウェアリング、電動道具及び電動自動車などの分野で広く応用されている。リチウムイオン電池の普及が広がるに伴って、消費者はリチウムイオン電池の使用環境に対する要求が絶えず高くなってきた。それを満たすために、リチウムイオン電池は高温及び低温性能を具備するとともに高い安全性も有しなければいけない。
【0003】
現在、リチウムイオン電池は使用中に安全リスクが存在しており、例えば、電池は持続的高温などの極端な使用状態において発火、爆発などの深刻な安全事故が発生しやすい。このような問題を引き起こす原因は主に以下である。一方で、正極材料は高温、高電圧において構造が不安定であり、金属イオンは正極から非常に溶出しやすくて負極表面において還元、堆積して負極表面のSEI膜構造を破壊し、それによって負極のインピーダンス及び電池の厚さが絶えず増大し、電解液とリチウム化黒鉛が激しく反応して大量の熱を放出し、したがってセル温度が持続的に上昇し、熱量がずっと貯まって放出できなくなると、安全事故が発生する。他方で、高温においてセパレータの熱収縮に起因して正極と負極が短絡してしまい、したがって電池の安全性能が顕著に低下する。
【0004】
上述した技術的課題を解決するために、高安全性を有する高電圧のリチウムイオン電池を開発する必要がある。現在、主にはポリオレフィン基材の表面に1層のセラミック層を塗布することや、電解液に難燃剤(例えばリン酸トリメチルなど)を添加することによって電池の安全性能を改善している。しかしながら、セラミックセパレータを使用することだけでは、高電圧システム中の電池の安全性能を満足できなくなっている。また、上述した難燃添加剤を入れることは一般に電池の性能劣化を誘発して、セルの寿命を深刻に短縮させてしまう。そこで、高電圧において電池の電気化学性能を影響しない前提で電池に高い安全性を持たせることを如何に達成するかは、リチウムイオン電池分野における至急解決必要な技術問題になっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
以上の技術問題を改善するために、本発明はセパレータ及び該セパレータを備える電池を提供し、前記電池は高い安全性能と高電圧を兼備する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以上の目的を達成するために、本発明は以下の技術案を採用する。
【0007】
本発明の第1態様はセパレータを提供し、前記セパレータは基材、耐熱層及び接着層により構成され、前記耐熱層は対向するように基材の両面に設けられ、接着層は耐熱層上に設けられ、接着層と負極の間の接着力はAであり、耐熱層と基材の間の剥離力はBであり、AとBの比の値(A/B)は1より大きい。
【0008】
本発明の第1態様によるセパレータにおいて、AとBの比の値は2.5~6.5であり、例示的には2.5、2.7、3.0、3.3、3.5、4.0、4.5、4.8、5.0、5.3、5.5、6.0、6.2、6.4、6.5である。
【0009】
本発明の第1態様によるセパレータにおいて、前記耐熱層の厚さは1μm~5μmであり、例示的には1μm、2μm、3μm、4μm、5μmである。
【0010】
本発明の第1態様によるセパレータにおいて、前記耐熱層の、150℃における1時間の熱収縮は5%以下であり、例示的には5%、4%、3%、2.5%、2%、1.5%、1%、0.5%である。
【0011】
本発明の第1態様によるセパレータにおいて、前記接着層と負極の間の接着力Aは10N/m以上である。
【0012】
本発明の第1態様によるセパレータにおいて、前記耐熱層と基材の間の剥離力Bは5N/m以下である。
【0013】
本発明の第1態様によるセパレータにおいて、本発明に係るセパレータを備えるセルが70~90℃の温度、0.6~3.0MPaの圧力、0.01C~1Cの電流、熱圧着時間30min~300minを経た後、前記耐熱層の、正極シート、負極シートとの接触部分の30%以上は、正極シート、負極シートの活物質層(電極シートにおける耐熱層の含有量)に粘着される。
【0014】
本発明の第1態様によるセパレータにおいて、前記した、正極シート、負極シートとの接触部分における、正極、負極上の耐熱層の厚さと、対応する領域におけるセパレータの厚さとの和は、正極、負極と接触していないセパレータの位置にある厚さに等しい。
【0015】
本発明の第1態様によるセパレータにおいて、前記基材は、高分子ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリスチレン、ポリパラフェニレン、ポリナフタレン、ポリイミド、ポリアミド、アラミド、ポリパラフェニレンベンズビスチアゾールのうちの1つ又は複数から選ばれる。
【0016】
本発明の第1態様によるセパレータにおいて、前記耐熱層はセラミック、耐熱ポリマー及びバインダーを含む。
【0017】
好ましく、前記耐熱層において、セラミックの重量割合は5~20wt.%であり、例示的には5wt.%、10wt.%、15wt.%、20wt.%、又はこれらのうちの2つずつの数値により構成される範囲内にある任意の値である。
【0018】
好ましく、前記耐熱層において、耐熱ポリマーの重量割合は60~94wt.%であり、例示的には60wt.%、70wt.%、80wt.%、90wt.%、94wt.%、又はこれらのうちの2つずつの数値により構成される範囲内にある任意の値である。
【0019】
好ましく、前記耐熱層において、バインダーの重量割合は0.5~20wt.%であり、例示的には0.5wt.%、1wt.%、5wt.%、10wt.%、15wt.%、20wt.%、又はこれらのうちの2つずつの数値により構成される範囲内にある任意の値である。
【0020】
本発明の第1態様によるセパレータにおいて、前記セラミックはシリカ、三酸化アルミニウム、二酸化ジルコニウム、水酸化マグネシウム、ベーマイト、硫酸バリウム、フッ素金雲母、フルオロアパタイト、ムライト、コーディエライト、チタン酸アルミニウム、チタニア、酸化銅、酸化亜鉛、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化マグネシウム及びアタパルジャイトのうちの1つ又は複数から選ばれる。
【0021】
本発明の第1態様によるセパレータにおいて、前記耐熱ポリマーはポリイミド、アラミド樹脂、ポリアミド及びポリベンズイミダゾール、ポリフェニレンエステル、ポリボロジフェニルシロキサン、ポリフェニレンスルフィド、塩素化ポリエーテル及びポリアリールスルホンのうちの1つ又は複数から選ばれる。
【0022】
本発明の第1態様によるセパレータにおいて、前記バインダーは、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ヘキサフルオロプロピレン変性ポリフッ化ビニリデン、六フッ化プロピレン-フッ化ビニリデン系共重合体(例えばポリフッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体)、ポリイミド、ポリアクリロニトリル、ポリメチルメタクリレート、セルロースアセテート、セルロースブチルアセテート、セルロースプロピルアセテート、シアノエチルプルラン、シアノエチルポリビニルアルコール、シアノエチルセルロース、シアノエチルスクロース、プルラン、カルボキシメチルセルロース、アクリロニトリルスチレンブタジエン共重合体のうちの1つ又は複数から選ばれる。
【0023】
本発明の第1態様によるセパレータにおいて、前記接着層の厚さは0.5μm~2μmであり、例示的には0.5μm、1μm、2μmである。
【0024】
本発明の第1態様によるセパレータにおいて、前記接着層に用いられるポリマーは、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体、ヘキサフルオロプロピレン変性ポリフッ化ビニリデン、ポリイミド、ポリアクリロニトリル、ポリメチルメタクリレート、セルロースアセテート、セルロースブチルアセテート、セルロースプロピルアセテート、シアノエチルプルラン、シアノエチルポリビニルアルコール、シアノエチルセルロース、シアノエチルスクロース、プルラン、カルボキシメチルセルロース、アクリロニトリルスチレンブタジエン共重合体のうちの1つ又は複数から選ばれる。
【0025】
本発明の第1態様によるセパレータにおいて、前記耐熱層及び接着層に用いられる溶媒は、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAC)、アセトン、テトラヒドロフラン、ジクロロメタン、クロロホルム、ジメチルホルムアミド、N-メチル-2-ピロリドン、シクロヘキサン、メタノール、エタノール、イソプロパノール及び水のうちの少なくとも1つから選ばれる。
【0026】
本発明の第2態様は電池を提供し、該電池は上述したセパレータを備える。
【0027】
本発明の第2態様による電池において、前記電池は正極シート、負極シート及び非水電解液を更に備え、前記正極シートと負極シートの間に上述したセパレータが設けられる。本発明に係る電池は例えばリチウムイオン電池であってもよく、
図1は本発明に係るリチウムイオン電池の局部断面模式図である。
【0028】
本発明の第2態様による電池において、前記非水電解液は非水有機溶媒及び添加剤を含み、ここで、前記非水有機溶媒はプロピオン酸エチルを含む。
【0029】
本発明の第2態様による電池において、前記添加剤は当分野の周知の非水電解液用添加剤から選ばれる。前記添加剤はいずれも当分野の周知の方法で製造されることができ、或いは市場ルートから購入可能である。
【0030】
本発明の第2態様による電池において、前記プロピオン酸エチルの添加量は非水電解液の総質量の10~50wt.%であり、好ましくは20~40wt.%であり、例示的には10wt.%、15wt.%、20wt.%、25wt.%、30wt.%、35wt.%、40wt.%、45%、50%である。
【0031】
本発明の第3態様は電池を提供し、該電池は正極シート、負極シート、正極シートと負極シートの間に設けられるセパレータ、及び非水電解液を備える。
【0032】
前記セパレータは基材、耐熱層及び接着層から構成され、前記耐熱層は対向するように基材の両面に設けられ、接着層は耐熱層上に設けられ、接着層と負極の間の接着力はAであり、耐熱層と基材の間の剥離力はBであり、AとBの比の値は1より大きい。
【0033】
前記非水電解液は非水有機溶媒及び添加剤を含み、ここで、前記非水有機溶媒はプロピオン酸エチルを含み、前記添加剤はカーボネート系化合物を含む。
【0034】
本発明の第3態様による電池において、前記カーボネート系化合物は、フルオロエチレンカーボネート、ビニレンカーボネート、ビニルエチレンカーボネート、及びビニルエチレンカーボネートのうちの少なくとも1つから選ばれる。
【0035】
本発明の第3態様による電池において、前記非水電解液において、カーボネート系化合物の添加量は、非水電解液の総質量の1~10wt.%を占め、好ましくは5~10wt.%であり、例示的には1wt.%、2wt.%、3wt.%、3.5wt.%、4wt.%、4.5wt.%、5wt.%、6wt.%、6.5wt.%、7wt.%、7.8wt.%、8wt.%、9wt.%、10wt.%、又はこれらのうちの2つずつの数値により構成される範囲内にある任意の値である。
【0036】
本発明の第3態様による電池において、前記AとBの比の値は1.5~6.0であり、例示的には1.5、2.0、2.5、3.0、3.5、4.0、4.5、5.0、5.5、6.0、又はこれらのうちの2つずつの数値により構成される範囲内にある任意の値である。
【0037】
本発明の第4態様は電池を提供し、該電池は正極シート、負極シート、正極シートと負極シートの間に設けられるセパレータ、及び非水電解液を備える。
【0038】
前記セパレータは基材、耐熱層及び接着層により構成され、前記耐熱層は対向するように基材の両面に設けられ、接着層は耐熱層上に設けられ、接着層と負極の間の接着力はAであり、耐熱層と基材の間の剥離力はBであり、AとBの比の値は1より大きい。
【0039】
前記非水電解液は非水有機溶媒及び添加剤を含み、ここで、前記非水有機溶媒はプロピオン酸エチルを含み、前記添加剤は、ニトリル基を含む化合物を含む。
【0040】
なお、上述した、ニトリル基を含む化合物は、すなわちシアノ基を含む化合物を指す。
【0041】
本発明の第4態様による電池において、前記した、ニトリル基を含む化合物は、スクシノニトリル、グルタロニトリル、アジポニトリル、1,5-ジシアノペンタン、1,6-ジシアノヘキサン、1,7-ジシアノヘプタン、1,8-ジシアノオクタン、1,9-ジシアノノナン、1,10-ジシアノデカン、1,12-ジシアノドデカン、テトラメチルスクシノニトリル、2-メチルグルタロニトリル、2,4-ジメチルグルタロニトリル、2,2,4,4-テトラメチルグルタロニトリル、1,4-ジシアノペンタン、2,6-ジシアノヘプタン、2,7-ジシアノオクタン、2,8-ジシアノノナン、1,6-ジシアノデカン、1,2-ジシアノベンゼン、1,3-ジシアノベンゼン、1,4-ジシアノベンゼン、3,5-ジオキサ-ヘプタンジニトリル、1,4-ビス(シアノエトキシ)ブタン、エチレングリコールビス(2-シアノエチル)エーテル、ジエチレングリコールビス(2-シアノエチル)エーテル、トリスエチレングリコールビス(2-シアノエチル)エーテル、テトラエチレングリコールビス(2-シアノエチル)エーテル、3,6,9,12,15,18-ヘキサオキサエイコサンジニトリル、1,3-ジ(2-シアノエトキシ)プロパン、1,4-ジ(2-シアノエトキシ)ブタン、1,5-ジ(2-シアノエトキシ)ペンタン、エチレングリコールビス(4-シアノブチル)エーテル、1,4-ジシアノ-2-ブテン、1,4-ジシアノ-2-メチル-2-ブテン、1,4-ジシアノ-2-エチル-2-ブテン、1,4-ジシアノ-2,3-ジメチル-2-ブテン、1,4-ジシアノ-2,3-ジエチル-2-ブテン、1,6-ジシアノ-3-ヘキセン、1,6-ジシアノ-2-メチル-3-ヘキセン、1,6-ジシアノ-2-メチル-5-メチル-3-ヘキセン、1,3,5-ペンタントリカルボニトル、1,2,3-プロパントリカルボニトリル、1,3,6-ヘキサントリカルボニトリル、グリセリルトリニトリル、1,2,6-ヘキサントリカルボニトリル、1,2,3-トリス(2-シアノエトキシ)プロパン、1,2,4-トリス(2-シアノエトキシ)ブタン、1,1,1-トリス(シアノエトキシメチレン)エタン、1,1,1-トリス(シアノエトキシメチレン)プロパン、3-メチル-1,3,5-トリス(シアノエトキシ)ペンタン、1,2,7-トリス(シアノエトキシ)ヘプタン、1,2,6-トリス(シアノエトキシ)ヘキサン、及び、1,2,5-トリス(シアノエトキシ)ペンタンのうちの少なくとも1つから選ばれる。
【0042】
本発明の第4態様による電池において、前記非水電解液において、ニトリル基を含む化合物の添加量は、非水電解液の総質量の1~10wt.%を占め、好ましくは2~5wt.%であり、例示的には1wt.%、2wt.%、3wt.%、3.5wt.%、4wt.%、4.5wt.%、5wt.%、5.5wt.%、6wt.%、7wt.%、8wt.%、9wt.%、10wt.%、又はこれらのうちの2つずつの数値により構成される範囲内にある任意の値である。
【0043】
本発明の第4態様による電池において、前記AとBの比の値(A/B)は1.5~4.5であり、例示的には1.5、2.0、2.5、3.0、3.5、4.0、4.5、又はこれらのうちの2つずつの数値により構成される範囲内にある任意の値である。
【0044】
本発明の第3態様、第4態様による電池において、前記プロピオン酸エチルの添加量は、非水電解液の総質量の10~40wt.%であり、好ましくは20~40wt.%であり、例示的には10wt.%、15wt.%、20wt.%、25wt.%、30wt.%、35wt.%又は40wt.%、又はこれらのうちの2つずつの数値により構成される範囲内にある任意の値である。
【0045】
本発明の第3態様、第4態様による電池において、前記添加剤は任意選択的に他の添加剤を更に含み、例えば、前記他の添加剤は、トリス(トリメチルシラン)フォスファイト、ホウ酸トリス(トリメチルシリル)、リチウムビストリフルオロメタンスルホニルイミド、リチウムビスフルオロスルホニルイミド、1,3-プロパンスルトン、1,3-プロペンスルトン、亜硫酸エチレン、硫酸エチレン、ビニレンカーボネート、フルオロエチレンカーボネート、リチウムビスオキサレートボレート、リチウムジフルオロオキサラトボレート、リチウムジフルオロ(オキサラト)フォスフェート、及びビニルエチレンカーボネートのうちの少なくとも1つであってもよい。
【0046】
好ましく、前記他の添加剤の添加量は、非水電解液の総質量の0~10wt.%を占め、例示的には0wt.%、1wt.%、2wt.%、5wt.%、8wt.%、10wt.%、又はこれらのうちの2つずつの数値により構成される範囲内にある任意の値である。
【0047】
本発明の第3態様、第4態様による電池において、前記添加剤はいずれも当分野の周知の方法で製造されることができ、或いは市場ルートから購入可能である。
【0048】
本発明の第3態様、第4態様による電池において、前記耐熱層の厚さは1~3μmであり、例示的には1μm、2μm、3μmである。
【0049】
本発明の第3態様、第4態様による電池において、前記耐熱層の、150℃における1時間の熱収縮は5%以下であり、例示的には5%、4%、3%、2%、1%である。
【0050】
本発明の第3態様、第4態様による電池において、前記接着層と負極の間の接着力は10N/m以上である。
【0051】
本発明の第3態様、第4態様による電池において、前記耐熱層と基材の間の剥離力は5N/m以下である。
【0052】
本発明の第3態様、第4態様による電池において、本発明に係るセパレータを備えるセルが70~90℃の温度、0.6~3.0MPaの圧力、0.01C~1Cの電流、熱圧着時間30~300minを経た後、前記耐熱層の、正極シート、負極シートとの接触部分の30%以上は、ペースト層が正極シート、負極シートの活物質層に粘着している。
【0053】
本発明の第3態様、第4態様による電池において、前記した、正極シート、負極シートとの接触部分における、正極、負極上の耐熱層の厚さと、対応する領域におけるセパレータの厚さとの和は、正極、負極と接触していないセパレータの位置にある厚さに等しい。
【0054】
本発明の第3態様、第4態様による電池において、前記基材はポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイミド、ポリアミド、及びアラミドのうちの1つ又は複数から選ばれる。
【0055】
本発明の第3態様、第4態様による電池において、前記耐熱層はセラミック、耐熱ポリマー及びバインダーを含む。
【0056】
好ましく、前記耐熱層において、セラミックが占める比は5~20wt.%であり、例示的には5wt.%、10wt.%、15wt.%、20wt.%、又はこれらのうちの2つずつの数値により構成される範囲内にある任意の値である。
【0057】
好ましく、前記耐熱層において、耐熱ポリマーが占める比は60~94wt.%であり、例示的には60wt.%、70wt.%、80wt.%、90wt.%、94wt.%、又はこれらのうちの2つずつの数値により構成される範囲内にある任意の値である。
【0058】
好ましく、前記耐熱層において、バインダーが占める比は0.5~20wt.%であり、例示的には0.5wt.%、1wt.%、1.5wt.%、3wt.%、4wt.%、5wt.%、6wt.%、8wt.%、10wt.%、15wt.%、20wt.%、又はこれらのうちの2つずつの数値により構成される範囲内にある任意の値である。
【0059】
本発明の第3態様、第4態様による電池において、前記セラミックはアルミナ、ベーマイト、酸化マグネシウム、窒化ホウ素、及び水酸化マグネシウムのうちの1つ又は複数から選ばれる。
【0060】
本発明の第3態様、第4態様による電池において、前記耐熱ポリマーはポリイミド、アラミド樹脂、ポリアミド、及びポリベンズイミダゾールのうちの1つ又は2つから選ばれる。
【0061】
本発明の第3態様、第4態様による電池において、前記バインダーはポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン変性及びその共重合体、ポリイミド、ポリアクリロニトリル、及び、ポリメチルメタクリレートのうちの1つ又は複数から選ばれる。
【0062】
本発明の第3態様、第4態様による電池において、前記接着層の厚さは0.5~2μmであり、例示的には0.5μm、1μm、2μmである。
【0063】
本発明の第3態様、第4態様による電池において、前記接着層に用いられるポリマーは、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体及びその変性共重合体、ポリイミド、ポリアクリロニトリル、及び、ポリメチルメタクリレートのうちの1つ又は複数から選ばれる。
【0064】
本発明の第3態様、第4態様による電池において、前記耐熱層及び接着層に用いられる溶媒は、アセトン、テトラヒドロフラン、ジクロロメタン、クロロホルム、ジメチルホルムアミド、N-メチル-2-ピロリドン、シクロヘキサン、メタノール、エタノール、イソプロパノール及び水のうちの少なくとも1つから選ばれる。
【0065】
本発明の第2態様、第3態様、第4態様による電池において、前記非水有機溶媒は、エチレンカルボナート(EC)、炭酸プロピレン(PC)、炭酸ジメチル、炭酸ジエチル、炭酸エチルメチル、プロピオン酸プロピル(PP)及び酢酸プロピルのうちの少なくとも1つを更に含む。好ましくはエチレンカルボナート(EC)、炭酸プロピレン(PC)、プロピオン酸プロピル(PP)のうちの3つを含む。
【0066】
本発明の第2態様及び第4態様に係る電池の1つの例示的な実施形態において、前記エチレンカルボナート(EC)、炭酸プロピレン(PC)、プロピオン酸プロピル(PP)は2:1:2の重量比で混合される。本発明の第3態様に係る電池の1つの例示的な実施形態において、前記エチレンカルボナート(EC)、炭酸プロピレン(PC)、プロピオン酸プロピル(PP)は1:1:1の重量比で混合される。
【0067】
本発明の第2態様、第3態様、第4態様による電池において、前記非水電解液にはリチウム塩が更に含まれる。
【0068】
本発明の第2態様、第3態様、第4態様による電池において、前記リチウム塩は、リチウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド、及びヘキサフルオロりん酸リチウム(LiPF6)のうちの少なくとも1つから選ばれ、好ましくはヘキサフルオロりん酸リチウム(LiPF6)である。
【0069】
本発明の第2態様、第3態様、第4態様による電池において、前記リチウム塩は非水電解液の総質量の13~20wt.%を占め、例示的には13wt.%、14wt.%、15wt.%、16wt.%、17wt.%、18wt.%、19wt.%、20wt.%、又はこれらのうちの2つずつの数値により構成される範囲内にある任意の値である。
【0070】
本発明の第2態様、第3態様、第4態様による電池において、前記電池は例えばリチウムイオン電池である。
【0071】
本発明の第2態様、第3態様、第4態様による電池において、前記正極シートは正極集電体と、正極集電体の少なくとも一側の表面に塗布された正極活物質層とを備える。
【0072】
好ましく、前記正極活物質層は正極活物質、導電剤及びバインダーを含む。
【0073】
本発明の第2態様に係る電池の1つの例示的な実施形態において、前記正極活物質、導電剤とバインダーの混合重量比は97.0:1.0:2.0である。本発明の第3態様に係る電池の1つの例示的な実施形態において、前記正極活物質、導電剤とバインダーの混合重量比は97.6:1.1:1.3である。本発明の第4態様に係る電池の1つの例示的な実施形態において、前記正極活物質、導電剤とバインダーの混合重量比は98.2:1.0:0.8である。
【0074】
本発明の第2態様、第3態様、第4態様による電池において、前記正極活物質は、コバルト酸リチウム(LiCoO2 )、又はAl、Mg、Mn、Cr、Ti、Zrのうちの2つ以上の元素によってドープクラッド処理されたコバルト酸リチウム(LiCoO2)から選ばれる。前記した、Al、Mg、Mn、Cr、Ti、Zrのうちの2つ以上の元素によってドープクラッド処理されたコバルト酸リチウム(LiCoO2)の化学式はLixCo1-y1-y2-y3-y4Ay1By2Cy3Dy4O2であり、ここで、0.95≦x≦1.05、0.01≦y1≦0.1、0.01≦y2≦0.1、0≦y3≦0.1、0≦y4≦0.1であり、A、B、C、DはAl、Mg、Mn、Cr、Ti、Zrのうちの2つ以上の元素から選ばれる。
【0075】
本発明の第2態様、第3態様、第4態様による電池において、前記した、Al、Mg、Mn、Cr、Ti、Zrのうちの2つ以上の元素によってドープクラッド処理されたコバルト酸リチウムのメディアン径D50は10~17μmであり、比表面積BETは0.15~0.45m2 /gである。
【0076】
本発明の第2態様による電池において、前記正極活物質層中の導電剤は、アセチレンブラック、カーボンナノチューブ、Super-P、ケッチェンブラック、気相成長炭素繊維のうちの少なくとも1つから選ばれる。本発明の第3態様、第4態様による電池において、前記正極活物質層中の導電剤はアセチレンブラックから選ばれる。
【0077】
本発明の第2態様による電池において、前記正極活物質層中のバインダーは、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリビニルピロリドン(PVP)のうちの少なくとも1つから選ばれる。本発明の第3態様、第4態様による電池において、前記正極活物質層中のバインダーはポリフッ化ビニリデン(PVDF)から選ばれる。
【0078】
本発明の第2態様、第3態様、第4態様による電池において、前記負極シートは負極集電体と、負極集電体の一側又は両側の表面に塗布された負極活物質層を備え、前記負極活物質層は負極活物質、導電剤及びバインダーを含む。
【0079】
本発明の第2態様、第3態様、第4態様による電池において、前記負極活物質は黒鉛から選ばれる。
【0080】
本発明の第2態様、第3態様、第4態様による電池において、前記負極活物質は任意選択的にSiOx/C又はSi/Cを更に含み、ここで、0<x<2である。例えば、前記負極活物質は1~12wt.%のSiOx/Cを更に含み、例示的には1wt.%、2wt.%、5wt.%、8wt.%、10wt.%、12wt.%、又はこれらのうちの2つずつの数値により構成される範囲内にある任意の値である。
【0081】
本発明の第2態様、第3態様、第4態様による電池において、前記電池の充電終止電圧は4.45V以上である。
【発明の効果】
【0082】
本発明の有益な効果は以下である。
(1)本発明に係るセパレータによれば、セパレータと電解液の協同作用に加えて、正極と負極の材料の組合せを共に使用して製造する電池は、セルの安全性能を効果的に向上させるとともにセルの低温性能も兼備することができる。
(2)本発明に係る安全セパレータにおいて、接着層と正極、負極の間の接着力は耐熱層と基材の間の剥離力より大きく、且つ耐熱層は200℃以上の高温を耐えることができる。本発明に係るセパレータは、耐熱層、接着層によって正極と負極の表面に付着されるため、正極と負極が高温においても短絡することがなく、したがって電池の安全性能を向上させ、このように、セルにおいて正極と負極の短絡が発生して発火することを避けて、電池安全性能を向上させる効果を達成する。
(3)本発明が提供する3つの態様による電池において採用される非水電解液は非水有機溶媒及び添加剤を含む。それとともに、電解液に適量のプロピオン酸エチルを添加することによって、電解液はセパレータの耐熱層及び接着層をある程度膨潤することができ、したがってセルの正極、負極はより良い境界を持つため、CEI膜の破壊と再結合を減少して、正極材料の、高温高電圧における安定性を向上させる。それとともに、溶媒の粘度を低下させることによって、電解液の浸潤性及びイオン電気伝導率を向上させて、ひいてはセルの低温性能を向上させる。
(4)本発明の第3態様による電池において採用される非水電解液は非水有機溶媒及び添加剤を含む。添加剤と非水有機溶媒の協同作用により、セルは長期サイクル及び低温性能を兼備することができる。非水電解液には、セルの低温性能を向上させるために適量のプロピオン酸エチルを添加する以外にも、さらにカーボネート系化合物を添加剤として添加する。ここで、カーボネート系化合物は負極表面において架橋して、厚くて安定なSEI保護膜を形成することができ、それによって電解液が負極表面において還元されることを防止して、副反応による放熱を低減する。
(5)本発明の第4態様による電池において採用される非水電解液は非水有機溶媒及び添加剤を含む。添加剤と非水有機溶媒の協同作用により、セルは高温と低温性能を兼備することができる。非水電解液には、セルの低温性能を向上させるために適量のプロピオン酸エチルを添加する以外にも、添加剤としてニトリル系官能基類を含む化合物を添加する。ここで、ニトリル系官能基類を含む化合物は正極表面において架橋して、厚くて安定なCEI保護膜を形成することができ、それによって電解液が正極表面において酸化されることを防止して、副反応による放熱を低減する。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【
図1】本発明に係るリチウムイオン電池の局部断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0084】
以下、具体的な実施例を参照しながら本発明に対してより詳しく説明する。なお、以下の実施例は例示的に本発明を説明、解釈するためのものに過ぎず、本発明の保護範囲に対する制限として解釈されてはいけない。本発明の上述した内容に基づいて実現される技術はすべて本発明が保護しようとする範囲に属するべきである。
【0085】
別途説明がない以上、以下の実施例で使用される原材料及び試薬はいずれも市販の商品であるか又は既知の方法で製造されることができる。
【0086】
比較例1-2及び実施例1-8
比較例1-2及び実施例1-8によるリチウムイオン電池はいずれも以下の製造方法に従って製造される。それらの差異はただ、セパレータと電解液の選択が相違することにあり、詳しい区別は表1に示す。
(1)正極シートの製造
正極活物質のLiCoO
2、バインダーのポリフッ化ビニリデン(PVDF)、導電剤のアセチレンブラックを97:1.0:2の重量比で混合し、N-メチルピロリドン(NMP)を添加し、混合体が均一流動性を有する正極スラリーになるまでに、真空ミクサーによって攪拌する。正極スラリーを厚さ11μmのアルミ箔に均一に塗布する。塗布後のアルミ箔を5段階の異なる温度勾配のオーブンで加熱した後、さらに120℃のオーブンで8h乾燥する。その後、圧延、裁断を行って、所望の正極シートを得る。
(2)負極シートの製造
負極材料の97重量%の人造黒鉛、導電剤の0.2重量%の単層カーボンナノチューブ(SWCNT)、導電剤の0.9重量%の導電性カーボンブラック(SP)、バインダーの0.9重量%のカルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC)、及びバインダーの1.0重量%のスチレン-ブタジエンゴム(SBR)を用いて、湿式プロセスを通じてスラリーを製作して、負極集電体である厚さ6μmの銅箔の表面に塗布し、乾燥(温度:85℃、時間:5h)、圧延、型抜きを行って、負極シートを得る。
(3)非水電解液の製造
アルゴン雰囲気のグローブボックス(水分<10ppm、酸素の分<1ppm)において、エチレンカルボナート(EC)、炭酸プロピレン(PC)、プロピオン酸プロピル(PP)を1:1:3の重量比で均一に混合する。非水電解液の総質量にあたり14wt.%のLiPF
6、非水電解液の総質量にあたり10~40wt.%のプロピオン酸エチル(プロピオン酸エチルの詳しい用量は表1に示す)を混合溶液へゆっくり添加し、均一に攪拌して非水電解液を得る。
(4)セパレータの製造
セラミックとDMACを、固形分含有量20%の比で、1500rpmの速度で30min攪拌し、溶液Mと記す。
バインダーとDMACを、固形分含有量10%の比で、1500rpmの速度で60min攪拌し、溶液Nと記す。
耐熱ポリマーとDMACを、固形分含有量5%の比で、1500rpmの速度で240min攪拌し、溶液Lと記す。
溶液M、N、LとDMACを所定の比で配置して固形分含有量6%の混合溶液を得る。混合溶液をグラビアロールの塗布手段によって厚さが5μmのセパレータPE基材の両側に塗布し、水を通して乾燥した後、両面それぞれ2μmのセパレータCを得て、セパレータCの両面それぞれに1μmの接着層を塗布する。
ここで、セラミックの種類、バインダーの種類、耐熱ポリマーの種類、接着層に用いられるポリマーの種類、及び耐熱層中のセラミック、バインダー、耐熱ポリマーの比は詳しく表1に示す。製造されるセパレータは、接着層と負極の間の接着力がAであり、耐熱層と基材の間の剥離力がBであり、AとBの比の値は表1に示す。
(5)リチウムイオン電池の製造
以上で用意した正極シート、セパレータ、負極シートを捲き回して液注入前のベアセルを得る。ベアセルを外装フィルム中に配置し、上述した通りに製作した電解液を乾燥後のベアセル中に注入し、真空バッケージ、静置、化成、成型、分類などの工程を経て、所望のリチウムイオン電池を得る。
注.「/」は添加していないことを表す。
【0087】
比較例3-7及び実施例9-16
比較例3-7及び実施例9-16によるリチウムイオン電池はいずれも以下の製造方法に従って製造される。それらの差異はただ、セパレータと電解液の選択が相違することにあり、詳しい区別は表2に示す。
(1)正極シートの製造
正極活物質のLiCoO
2、バインダーのポリフッ化ビニリデン(PVDF)、導電剤のアセチレンブラックを97.6:1.1:1.3の重量比で混合し、N-メチルピロリドン(NMP)を添加し、混合体が均一流動性を有する正極スラリーになるまでに、真空ミクサーによって攪拌する。正極スラリーを厚さ11μmのアルミ箔に均一に塗布する。塗布後のアルミ箔を5段階の異なる温度勾配のオーブンで加熱した後、さらに120℃のオーブンで8h乾燥する。その後、圧延、裁断を行って、所望の正極シートを得る。
(2)負極シートの製造
負極材料の97.4重量%の人造黒鉛、導電剤の0.1重量%の単層カーボンナノチューブ(SWCNT)、導電剤の0.6重量%の導電性カーボンブラック(SP)、バインダーの0.9重量%のカルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC)、及びバインダーの1.0重量%のスチレン-ブタジエンゴム(SBR)を用いて、湿式プロセスを通じてスラリーを製作して、負極集電体である厚さ6μmの銅箔の表面に塗布し、乾燥(温度:85℃、時間:5h)、圧延、型抜きを行って、負極シートを得る。
(3)非水電解液の製造
アルゴン雰囲気のグローブボックス(水分<10ppm、酸素の分<1ppm)において、エチレンカルボナート(EC)、炭酸プロピレン(PC)、プロピオン酸プロピル(PP)を1:1:1の重量比で均一に混合する。非水電解液の総質量にあたり14wt.%のLiPF
6、非水電解液の総質量にあたり10~40wt.%のプロピオン酸エチル(プロピオン酸エチルの詳しい用量は表2に示す)及び添加剤(添加剤の詳しい用量及び種類は表2に示す)を混合溶液へゆっくり添加し、均一に攪拌して非水電解液を得る。
(4)セパレータの製造
セラミックとN,N-ジメチルアセトアミドを、固形分含有量20%の比で、1500rpmの速度で30min攪拌し、溶液Mと記す。
バインダーとN,N-ジメチルアセトアミドを、固形分含有量10%の比で、1500rpmの速度で60min攪拌し、溶液Nと記す。
耐熱ポリマーとN,N-ジメチルアセトアミドを、固形分含有量5%の比で、1500rpmの速度で240min攪拌し、溶液Lと記す。
溶液M、N、LとN,N-ジメチルアセトアミドを所定の比で配置して固形分含有量6%の混合溶液を得る。混合溶液をグラビアロールの塗布手段によって厚さが5μmのセパレータポリエチレン基材の両側に塗布し、水を通して乾燥した後、両面それぞれ2μmのセパレータCを得て、セパレータCの両面それぞれに1μmの接着層を塗布する。ここで、セラミックはアルミナであり、バインダーはPVDF-HFPであり、耐熱ポリマーはアラミド樹脂であり、接着層に用いられるポリマーはポリメチルメタクリレートである。ここで、耐熱層中のセラミックと耐熱ポリマーの比は1:9であり、耐熱層におけるバインダーが占める比は詳しく表2に示す。製造されるセパレータは、接着層と負極の間の接着力がAであり、耐熱層と基材の間の剥離力がBであり、AとBの比の値は表2に示す。
(5)リチウムイオン電池の製造
以上で用意した正極シート、セパレータ、負極シートを捲き回して液注入前のベアセルを得る。ベアセルを外装フィルム中に配置し、上述した通りに製作した電解液を乾燥後のベアセル中に注入し、真空バッケージ、静置、化成、成型、分類などの工程を経て、所望のリチウムイオン電池を得る。
注.「/」は添加していないことを表す。
【0088】
比較例8-12及び実施例17-24
比較例8-12及び実施例17-24によるリチウムイオン電池はいずれも以下の製造方法に従って製造される。それらの差異はただ、セパレータと電解液の選択が相違することにあり、詳しい区別は表3に示す。
(1)正極シートの製造
正極活物質のLiCoO
2、バインダーのポリフッ化ビニリデン(PVDF)、導電剤のアセチレンブラックを98.2:1.0:0.8の重量比で混合し、N-メチルピロリドン(NMP)を添加し、混合体が均一流動性を有する正極スラリーになるまでに、真空ミクサーによって攪拌する。正極スラリーを厚さ10μmのアルミ箔に均一に塗布する。塗布後のアルミ箔を5段階の異なる温度勾配のオーブンで加熱した後、さらに120℃のオーブンで8h乾燥する。その後、圧延、裁断を行って、所望の正極シートを得る。
(2)負極シートの製造
負極材料の96.9重量%の人造黒鉛、導電剤の0.1重量%の単層カーボンナノチューブ(SWCNT)、導電剤の1重量%の導電性カーボンブラック(SP)、バインダーの1.0重量%のカルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC)、及びバインダーの1.0重量%のスチレン-ブタジエンゴム(SBR)を用いて、湿式プロセスを通じてスラリーを製作して、負極集電体である厚さ6μmの銅箔の表面に塗布し、乾燥(温度:85℃、時間:5h)、圧延、型抜きを行って、負極シートを得る。
(3)非水電解液の製造
アルゴン雰囲気のグローブボックス(水分<10ppm、酸素の分<1ppm)において、エチレンカルボナート(EC)、炭酸プロピレン(PC)、プロピオン酸プロピル(PP)を2:1:2の重量比で均一に混合する。非水電解液の総質量にあたり14wt.%のLiPF
6、非水電解液の総質量にあたり10~40wt.%のプロピオン酸エチル(プロピオン酸エチルの詳しい用量は表3に示す)、及び添加剤(添加剤の詳しい容量及び種類は表3に示す)を混合溶液へゆっくり添加し、均一に攪拌して非水電解液を得る。
(4)セパレータの製造
セラミックとN,N-ジメチルアセトアミドを、固形分含有量20%の比で、1500rpmの速度で30min攪拌し、溶液Mと記す。
バインダーとN,N-ジメチルアセトアミドを、固形分含有量10%の比で、1500rpmの速度で60min攪拌し、溶液Nと記す。
耐熱ポリマーとN,N-ジメチルアセトアミドを、固形分含有量5%の比で、1500rpmの速度で240min攪拌し、溶液Lと記す。
溶液M、N、LとN,N-ジメチルアセトアミドを所定の比で配置して固形分含有量6%の混合溶液を得る。混合溶液をグラビアロールの塗布手段によって厚さが5μmのセパレータポリエチレン基材の両側に塗布し、水を通して乾燥した後、両面それぞれ2μmのセパレータCを得て、セパレータCの両面それぞれに1μmの接着層を塗布する。ここで、セラミックはアルミナであり、バインダーはPVDF-HFPであり、耐熱ポリマーはアラミド樹脂であり、接着層に用いられるポリマーはポリメチルメタクリレートである。ここで、耐熱層中のセラミックと耐熱ポリマーの比は1:9であり、耐熱層におけるバインダーが占める比は詳しく表3に示す。製造されるセパレータは、接着層と負極の間の接着力がAであり、耐熱層と基材の間の剥離力がBであり、AとBの比の値は表3に示す。
(5)リチウムイオン電池の製造
以上で用意した正極シート、セパレータ、負極シートを捲き回して液注入前のベアセルを得る。ベアセルを外装フィルム中に配置し、上述した通りに製作した電解液を乾燥後のベアセル中に注入し、真空バッケージ、静置、化成、成型、分類などの工程を経て、所望のリチウムイオン電池を得る。
注.「/」は添加していないことを表す。
【0089】
電池に対して、耐熱層の耐熱性能テスト、解体後のセパレータ厚さテスト、接着力、剥離力及び電気化学性能テストを行う。関連の説明は以下の通りである。
耐熱層の耐熱性能テスト:
比較例1-12及び実施例1-24によるセパレータの耐熱層を(150±2)℃のオーブンで1h加熱する。加熱前のセパレータの寸法をL1と記し、加熱後のセパレータの寸法をL2(セパレータの寸法はセパレータの、MD又はTD方向における長さを指す)と記した場合、セパレータの熱収縮は(L1-L2)/L1である。ここで、比較例1-2及び実施例1-8のテスト結果は表1に示す通りであり、比較例3-7及び実施例9-16のテスト結果は表5に示す通りであり、比較例8-12及び実施例17-24のテスト結果は表6に示す通りである。
【0090】
解体後のセパレータ厚さテスト:
比較例1-12及び実施例1-24による電池を0.7Cの定電流で充電し、終止電流が0.05Cである。満充電後、電池を5min静置し、満充電の電池を解体し、解体されたセパレータに対して厚さテストを行う。電極シートとの接触位置におけるセパレータの厚さはT1であり、電極シートと接触しない位置におけるセパレータの厚さはT2であり、基材の厚さはTであり、電極シートにおける耐熱層の含有量(電極シートの耐熱層の残余量)は(T2-T1)/(T2-T)となる。ここで、比較例1-2及び実施例1-8のテスト結果は表1に示す通りであり、比較例3-7及び実施例9-16のテスト結果は表5に示す通りであり、比較例8-12及び実施例17-24のテスト結果は表6に示す通りである。
【0091】
粘着性能テスト:
比較例1-12及び実施例1-24による電池を0.7Cの定電流で充電し、終止電流が0.05Cである。満充電後、電池を5min静置し、満充電の電池を解体する。タブの方向に沿って長さ40mm×幅18mmの負極サンプルを選択し、15mm×100mmの3M片面テープを負極サンプルに貼り付け、3M片面テープと負極が180°の夾角を挟むようにする。万能引張機において100mm/minの速度で、テスト変位を50mmにする。テスト結果をセパレータの接着層と負極の間の接着力A(単位N/m)として記録する。
【0092】
剥離力テスト:
40mm×150mmの鋼板を選択し、18mm×100mmの1枚の3M両面テープを鋼板に貼り付け、さらに比較例1-12及び実施例1-24によるセパレータのテスト面の裏面を3M両面テープに貼り付け、さらに15mm×150mmの3M両面テープをセパレータのテスト面に貼り付け、3Mテープとセパレータが180°の夾角を挟むようにする。万能引張機において、100mm/minの速度で、テスト変位を50mmにする。テスト結果をセパレータの耐熱層と基材層の間の剥離力B(単位N/m)として記録する。
【0093】
粘着性能テストで取得したAの値と、剥離力テストで取得したBの値とに基づいて、A/Bの値を算出する。比較例1-2及び実施例1-8のテスト結果は表1に示す通りであり、比較例3-7及び実施例9-16のテスト結果は表2に示す通りであり、比較例8-12及び実施例17-24のテスト結果は表3に示す通りである。
【0094】
25℃サイクル試験:
比較例1-7及び実施例1-16による電池を(25±2)℃の環境で2-3時間静置し、電池本体が(25±2)℃になった後、電池を0.7 Cの定電流で充電し、終止電流は0.05Cである。満充電後、電池を5min静置してから、さらに0.5Cの定電流で、終止電圧3.0Vになるまで放電する。最初の3回のサイクルにおける最高放電容量を初期容量Qとして記録し、サイクル回数が1000回に達したとき、電池の最後1回の放電容量Q1を記録する。
【0095】
電池の容量維持率(%)=Q1/Q×100%である。ここで、比較例1-2及び実施例1-8のテスト結果は表4に示す通りであり、比較例3-7及び実施例9-16のテスト結果は表5に示す通りである。
【0096】
55℃サイクル試験:
比較例8-12及び実施例17-24で製造された電池を(55±2)℃の環境において2-3h静置し、電池本体が(55±2)℃になったとき、電池を0.7Cの定電流で充電し、終止電流が0.05Cである。満充電後、電池を5min静置してから、0.5Cの定電流で、終止電圧3.0Vになるまで放電する。最初の3回のサイクルにおける最高放電容量を初期容量Qとして記録し、サイクル回数が300回になったとき、電池の最後1回の放電容量Q1を記録する。
【0097】
電池の容量維持率(%)=Q1 /Q×100%である。テスト結果は表6に示す通りである。
【0098】
-20℃低温放電試験:
比較例1-2、比較例8-12、実施例1-8及び実施例17-24による電池を、環境温度(25±3)℃において、まずは0.2Cで3.0Vまで放電してから5min静置し、次に0.7Cで充電し、セル端子電圧が充電制限電圧に達したとき、定電圧充電に切り替え、充電電流≦終止電流になると、充電を停止する。5min静置した後、0.2Cで3.0Vまで放電し、今回の放電容量を常温容量Q2として記録する。さらに、セルを0.7Cで充電し、セル端子電圧が充電制限電圧に達したとき、定電圧充電に切り替え、充電電流が終止電流以下になると、充電を停止する。満充電の電池を(-20±2)℃の条件において4h静置した後、0.2Cの電流で、終止電圧3.0Vまで放電し、放電容量Q3を記録する。計算によって、低温放電容量維持率を得ることができる。
【0099】
電池の低温放電容量維持率(%)=Q3/Q2×100%である。ここで、比較例1-2及び実施例1-8のテスト結果は表4に示す通りであり、比較例8-12及び実施例17-24のテスト結果は表6に示す通りである。
【0100】
-10℃低温放電試験:
比較例3-7及び実施例9-16で得られた電池を環境温度(25±3)℃において、まずは0.2Cで3.0Vまで放電し、5min静置し、次に0.7Cで充電し、セル端子電圧が充電制限電圧に達したとき、定電圧充電に切り替え、充電電流≦終止電流になると、充電を停止する。5min静置した後、0.2Cで3.0Vまで放電し、今回の放電容量を常温容量Q2として記録する。さらに、セルを0.7Cで充電し、セル端子電圧が充電制限電圧に達したとき、定電圧充電に切り替え、充電電流が終止電流以下になると、充電を停止する。満充電の電池を(-10±2)℃の条件で4h静置した後、0.2Cの電流で終止電圧3.0Vまで放電し、放電容量Q3を記録する。計算によって、低温放電容量維持率を得ることができる。
【0101】
電池の低温放電容量維持率(%)=Q3/Q2×100%である。テスト結果は表5に示す通りである。
【0102】
150℃熱衝撃試験:
比較例1-12及び実施例1-24による電池に対して、対流方式又は熱循環の空気ボックスを用いて、初期温度25±3℃で加熱し、温度変化率5±2℃/minで温度を(150±2)℃まで上昇させ、60min維持してから試験を終了する。ここで、比較例1-2及び実施例1-8のテスト結果は表4に示す通りであり、比較例3-7及び実施例9-16のテスト結果は表5に示す通りであり、比較例8-12及び実施例17-24のテスト結果は表6に示す通りである。
【0103】
過充電試験:
比較例1-12及び実施例1-24で得られた電池を3Cレートの定電流で5Vまで充電し、電池状態を記録する。ここで、比較例1-2及び実施例1-8のテスト結果は表4に示す通りであり、比較例3-7及び実施例9-16のテスト結果は表5に示す通りであり、比較例8-12及び実施例17-24のテスト結果は表6に示す通りである。
【0104】
針刺し試験:
比較例1-12及び実施例1-24による電池を、直径Φ5~8mmの耐高温の鋼製針(針先端の円錐角が45℃-60℃であり、針の表面は滑らかで、錆や腐食、酸化層及び油汚れがない)を用いて、(25±5)mm/sの速度で、電池の電極シートに垂直な方向に沿って貫通する。好ましく、貫通位置は、刺される面の幾何的中心に近接する(鋼製針は電池中に留まれる)。1H経過後、又は、電池表面の最高温度がピーク温度10℃以下まで降下したと観察できたとき、試験を停止する。ここで、比較例1-2及び実施例1-8のテスト結果は表4に示す通りであり、比較例3-7及び実施例9-16のテスト結果は表5に示す通りであり、比較例8-12及び実施例17-24のテスト結果は表6に示す通りである。
表4 比較例1-2及び実施例1-8で得られた電池の試験テスト結果
表5 比較例3-7及び実施例9-16で得られた電池の試験テスト結果
【0105】
表4の結果からわかるように、本発明においては、電解液にプロピオン酸エチル溶媒を添加するとともに、接着層と正極、負極の間の接着力が耐熱層と基材の間の剥離力より大きいセパレータを採用し、これらの要件の協同作用により、リチウムイオン電池の安全性能を顕著に改善することができ、さらに電池に良好な高温及び低温電気性能を兼備させることができる。
【0106】
表5の結果からわかるように、本発明においては、電解液にカーボネート系化合物を添加するとともにプロピオン酸エチル溶媒を添加し、並びに接着層と正極、負極の間の接着力が耐熱層と基材の間の剥離力より大きいセパレータを採用し、これらの要件の協同作用により、リチウムイオン電池の安全性能を顕著に改善することができ、さらに電池に良好な長期サイクル及び低温電気性能を兼備させることができる。
【0107】
表6の結果からわかるように、本発明においては、ニトリル系官能基類を含む化合物を添加剤として電解液に添加するとともにプロピオン酸エチル溶媒を添加し、並びに接着層と正極、負極の間の接着力が耐熱層と基材の間の剥離力より大きいセパレータを採用し、これらの要件の協同作用により、リチウムイオン電池の安全性能を顕著に改善することができ、さらに電池に良好な高温及び低温電気性能を兼備させることができる。
【0108】
以上では本発明の実施形態を説明した。ただし、本発明は上述した実施形態に限られない。本発明の思想及び原則以内で行われる変更、同等置換、改善などはすべて本発明の保護範囲に属するべきである。
【符号の説明】
【0109】
101 基材
201 耐熱層
301 接着層
401 負極
501 正極
【手続補正書】
【提出日】2023-12-26
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電池に用いられるセパレータであって、
基材、耐熱層及び接着層により構成され、前記耐熱層は対向するように前記基材の両面に設けられ、前記接着層は前記耐熱層上に設けられ、
前記接着層と負極の間の接着力はAであり、前記耐熱層と前記基材の間の剥離力はBであり、AとBの比の値(A/B)は1より大きい
ことを特徴とするセパレータ。
【請求項2】
AとBの比の値は2.5~6.5である
ことを特徴とする請求項1に記載のセパレータ。
【請求項3】
前記耐熱層の厚さは1μm~5μmである
ことを特徴とする請求項
1に記載のセパレータ。
【請求項4】
前記耐熱層の、150℃における1時間の熱収縮は5%以下である
ことを特徴とする請求項
1に記載のセパレータ。
【請求項5】
前記接着層と前記負極の間の接着力Aは10N/m以上であ
り、及び/又は、
前記耐熱層と前記基材の間の剥離力Bは5N/m以下である
ことを特徴とする請求項
1に記載のセパレータ。
【請求項6】
前記基材は、
ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリスチレン、ポリパラフェニレン、ポリナフタレン、ポリイミド、ポリアミド、アラミド、及び、ポリパラフェニレンベンズビスチアゾールのうちの1つ又は複数から選ばれる
ことを特徴とする請求項
1に記載のセパレータ。
【請求項7】
前記耐熱層はセラミック、耐熱ポリマー及びバインダーを含む
ことを特徴とする請求項
1に記載のセパレータ。
【請求項8】
前記耐熱層において、前記セラミックの重量割合は5~20wt.%であ
り、及び/又は、
前記耐熱ポリマーの重量割合は60~94wt.%であり、及び/又は、
前記バインダーの重量割合は0.5~20wt.%である
ことを特徴とする請求項
7に記載のセパレータ。
【請求項9】
前記セラミックは、シリカ、
アルミナ、三酸化アルミニウム、二酸化ジルコニウム、水酸化マグネシウム、ベーマイト、硫酸バリウム、フッ素金雲母、フルオロアパタイト、ムライト、コーディエライト、チタン酸アルミニウム、チタニア、酸化銅、酸化亜鉛、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化マグネシウム、及び、アタパルジャイトのうちの1つ又は複数から選ばれる
ことを特徴とする請求項
7に記載のセパレータ。
【請求項10】
前記耐熱ポリマーは、ポリイミド、アラミド樹脂、ポリアミド及びポリベンズイミダゾール、ポリフェニレンエステル、ポリボロジフェニルシロキサン、ポリフェニレンスルフィド、塩素化ポリエーテル、及び、ポリアリールスルホンのうちの1つ又は複数から選ばれる
ことを特徴とする請求項
7に記載のセパレータ。
【請求項11】
前記バインダーは、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体、ヘキサフルオロプロピレン変性ポリフッ化ビニリデン、ポリイミド、ポリアクリロニトリル、ポリメチルメタクリレート、セルロースアセテート、セルロースブチルアセテート、セルロースプロピルアセテート、シアノエチルプルラン、シアノエチルポリビニルアルコール、シアノエチルセルロース、シアノエチルスクロース、プルラン、カルボキシメチルセルロース、及び、アクリロニトリルスチレンブタジエン共重合体のうちの1つ又は複数から選ばれる
ことを特徴とする請求項
7に記載のセパレータ。
【請求項12】
前記接着層の厚さは0.5μm~2μmである
ことを特徴とする請求項
1に記載のセパレータ。
【請求項13】
前記接着層に用いられるポリマーは、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体、ヘキサフルオロプロピレン変性ポリフッ化ビニリデン、ポリイミド、ポリアクリロニトリル、ポリメチルメタクリレート、セルロースアセテート、セルロースブチルアセテート、セルロースプロピルアセテート、シアノエチルプルラン、シアノエチルポリビニルアルコール、シアノエチルセルロース、シアノエチルスクロース、プルラン、カルボキシメチルセルロース、及び、アクリロニトリルスチレンブタジエン共重合体のうちの1つ又は複数から選ばれる
ことを特徴とする請求項
1に記載のセパレータ。
【請求項14】
電池であって、
請求項1ないし
13のいずれか一項に記載のセパレータを備える
ことを特徴とする電池。
【請求項15】
正極シート、負極シート及び非水電解液を更に備え、
前記正極シートと前記負極シートの間には請求項1ないし
13のいずれか一項に記載のセパレータが設けられる
ことを特徴とする請求項
14に記載の電池。
【請求項16】
前記非水電解液は非水有機溶媒、添加剤及びリチウム塩を含み、
前記非水有機溶媒はプロピオン酸エチルを含む
ことを特徴とする請求項
15に記載の電池。
【請求項17】
前記プロピオン酸エチルの添加量は、前記非水電解液の総質量の10~50wt.%であ
り、及び/又は、
前記リチウム塩は、前記非水電解液の総質量の13~20wt.%を占める
ことを特徴とする請求項
16に記載の電池。
【請求項18】
電池であって、
正極シート、負極シート、前記正極シートと前記負極シートの間に配置されるセパレータ、及び、非水電解液を備え、
前記セパレータは基材、耐熱層及び接着層により構成され、前記耐熱層は対向するように前記基材の両面に設けられ、前記接着層は前記耐熱層上に設けられ、前記接着層と前記負極シートの間の接着力はAであり、前記耐熱層と前記基材の間の剥離力はBであり、AとBの比の値(A/B)は1より大きく、
前記非水電解液は非水有機溶媒、添加剤及びリチウム塩を含み、前記非水有機溶媒はプロピオン酸エチルを含み、
前記添加剤は
、カーボネート系化合物を含む
か、又はニトリル基を含む化合物を含む
ことを特徴とする電池。
【請求項19】
前記プロピオン酸エチルの添加量は、前記非水電解液の総質量の10~40wt.%である
ことを特徴とする請求項
18に記載の電池。
【請求項20】
前記添加剤は他の添加剤を更に含み、前記他の添加剤は、トリス(トリメチルシラン)フォスファイト、ホウ酸トリス(トリメチルシリル)、リチウムビストリフルオロメタンスルホニルイミド、リチウムビスフルオロスルホニルイミド、1,3-プロパンスルトン、1,3-プロペンスルトン、亜硫酸エチレン、硫酸エチレン、ビニレンカーボネート、フルオロエチレンカーボネート、リチウムビスオキサレートボレート、リチウムジフルオロオキサラトボレート、リチウムジフルオロ(オキサラト)フォスフェート、及び、ビニルエチレンカーボネートのうちの少なくとも1つである
ことを特徴とする請求項
18に記載の電池。
【請求項21】
前記他の添加剤の使用量は、前記非水電解液の総質量の0~10wt.%を占める
ことを特徴とする請求項
20に記載の電池。
【請求項22】
前記非水有機溶媒は、エチレンカルボナート、炭酸プロピレン、炭酸ジメチル、炭酸ジエチル、炭酸エチルメチル、プロピオン酸プロピル、及び、酢酸プロピルのうちの少なくとも1つを更に含む
ことを特徴とする請求項
18に記載の電池。
【請求項23】
前記リチウム塩は、リチウムビストリフルオロメチルスルホニルイミド、リチウムビスフルオロスルホニルイミド、及び、ヘキサフルオロりん酸リチウムのうちの少なくとも1つから選ばれる
ことを特徴とする請求項
18に記載の電池。
【請求項24】
前記リチウム塩は、前記非水電解液の総質量の13~20wt.%を占める
ことを特徴とする請求項
18に記載の電池。
【請求項25】
前記セパレータにおいて、耐熱層の厚さは1~3μmである
ことを特徴とする請求項
18に記載の電池。
【請求項26】
前記添加剤はカーボネート系化合物を含み、
前記カーボネート系化合物は、前記非水電解液の総質量の1~10 wt.%を占める
ことを特徴とする請求項18ないし25のいずれか一項に記載の電池。
【請求項27】
前記カーボネート系化合物は、フルオロエチレンカーボネート、ビニレンカーボネート、及び、ビニルエチレンカーボネートのうちの少なくとも1つから選ばれる
ことを特徴とする請求項26に記載の電池。
【請求項28】
前記セパレータにおいて、AとBの比の値は1.5~6.0である
ことを特徴とする請求項26に記載の電池。
【請求項29】
前記添加剤は、ニトリル基を含む化合物を含み、
前記非水電解液において、前記ニトリル基を含む化合物の添加量は前記非水電解液の総質量の1~10 wt.%を占める
ことを特徴とする請求項
18ないし25のいずれか一項に記載の電池。
【請求項30】
前記ニトリル基を含む化合物は、スクシノニトリル、グルタロニトリル、アジポニトリル、1,5-ジシアノペンタン、1,6-ジシアノヘキサン、1,7-ジシアノヘプタン、1,8-ジシアノオクタン、1,9-ジシアノノナン、1,10-ジシアノデカン、1,12-ジシアノドデカン、テトラメチルスクシノニトリル、2-メチルグルタロニトリル、2,4-ジメチルグルタロニトリル、2,2,4,4-テトラメチルグルタロニトリル、1,4-ジシアノペンタン、2,6-ジシアノヘプタン、2,7-ジシアノオクタン、2,8-ジシアノノナン、1,6-ジシアノデカン、1,2-ジシアノベンゼン、1,3-ジシアノベンゼン、1,4-ジシアノベンゼン、3,5-ジオキサ-ヘプタンジニトリル、1,4-ビス(シアノエトキシ)ブタン、エチレングリコールビス(2-シアノエチル)エーテル、ジエチレングリコールビス(2-シアノエチル)エーテル、トリスエチレングリコールビス(2-シアノエチル)エーテル、テトラエチレングリコールビス(2-シアノエチル)エーテル、3,6,9,12,15,18-ヘキサオキサエイコサンジニトリル、1,3-ジ(2-シアノエトキシ)プロパン、1,4-ジ(2-シアノエトキシ)ブタン、1,5-ジ(2-シアノエトキシ)ペンタン、エチレングリコールビス(4-シアノブチル)エーテル、1,4-ジシアノ-2-ブテン、1,4-ジシアノ-2-メチル-2-ブテン、1,4-ジシアノ-2-エチル-2-ブテン、1,4-ジシアノ-2,3-ジメチル-2-ブテン、1,4-ジシアノ-2 ,3-ジエチル-2-ブテン、1,6-ジシアノ-3-ヘキセン、1,6-ジシアノ-2-メチル-3-ヘキセン、1,6-ジシアノ-2-メチル-5-メチル-3-ヘキセン、1,3,5-ペンタントリカルボニトル、1,2,3-プロパントリカルボニトリル、1,3,6-ヘキサントリカルボニトリル、グリセリルトリニトリル、1,2,6-ヘキサントリカルボニトリル、1,2,3-トリス(2-シアノエトキシ)プロパン、1,2,4-トリス(2-シアノエトキシ)ブタン、1,1,1-トリス(シアノエトキシメチレン)エタン、1,1,1-トリス(シアノエトキシメチレン)プロパン、3-メチル-1,3,5-トリス(シアノエトキシ)ペンタン、1,2,7-トリス(シアノエトキシ)ヘプタン、1,2,6-トリス(シアノエトキシ)ヘキサン、及び、1,2,5-トリス(シアノエトキシ)ペンタンのうちの少なくとも1つから選ばれる
ことを特徴とする請求項
29に記載の電池。
【請求項31】
前記セパレータにおいて、AとBの比の値は1.5~4.5である
ことを特徴とする請求項
29に記載の電池。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0034
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0034】
本発明の第3態様による電池において、前記カーボネート系化合物は、フルオロエチレンカーボネート、ビニレンカーボネート、及びビニルエチレンカーボネートのうちの少なくとも1つから選ばれる。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0104
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0104】
針刺し試験:
比較例1-12及び実施例1-24による電池を、直径Φ5~8mmの耐高温の鋼製針(針先端の円錐角が45°-60°であり、針の表面は滑らかで、錆や腐食、酸化層及び油汚れがない)を用いて、(25±5)mm/sの速度で、電池の電極シートに垂直な方向に沿って貫通する。好ましく、貫通位置は、刺される面の幾何的中心に近接する(鋼製針は電池中に留まれる)。1H経過後、又は、電池表面の最高温度がピーク温度10℃以下まで降下したと観察できたとき、試験を停止する。ここで、比較例1-2及び実施例1-8のテスト結果は表4に示す通りであり、比較例3-7及び実施例9-16のテスト結果は表5に示す通りであり、比較例8-12及び実施例17-24のテスト結果は表6に示す通りである。
【国際調査報告】